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2013年12月6日 第2回 平成25年度化学物質のリスク評価検討会(有害性評価小検討会) 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成25年12月6日(金)  15:30~


○場所

厚生労働省 22階専用第14会議室


○議事

○大淵有害性調査機関査察官 定刻より若干早いですが、先生方がお集まりになりましたので、ただいまから第2回有害性評価小検討会を開催します。本日はお忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、以下の進行については座長の大前先生にお願いするのですが、本日の出席者の関係で、簡単に御報告させていただきます。委員のうち池田先生と高田先生については、所用で御欠席ということです。それから、通常の出席者に加えて、今回はバイオアッセイの試験結果等の評価のために、日本バイオアッセイ研究センターから西沢さん、梅田さん、鈴木さんに御出席いただいています。よろしくお願いします。それでは大前先生、お願いします。

○大前座長 それでは、第2回の有害性評価小検討会を開催させていただきます。まず、事務局から資料の確認をお願いします。

○大淵有害性調査機関査察官 それでは、資料の確認をさせていただきます。まず議事から確認をしますが、本日、大きな議事としては3点ありまして、(1)は「がん原性試験結果の評価について」ということで、4-tert-ブチルカテコールについて評価していただきます。それから、(2)は「長期発がん性試験対象物質の選定について」ということで、国が委託して試験を行う物質の選定をしていただきます。それから、(3)は「がん原性指針対象物質の選定ルールの見直しについて」ということで、事務局から御提案をさせていただきたいと思います。それから、「その他の議題」として、2つのワーキンググループの検討内容の一部見直し、リスク評価手法の改定版について、御説明をさせていただきたいと思います。

 次の配布資料一覧を御覧ください。資料については、四角で囲んであるグループごとにホチキス止めをさせていただいています。まず資料1、大きな1のグループですが、こちらは試験結果の評価の関係の資料でして、資料1-1が通しページで1ページから、資料1-215ページから、資料1-347ページから、資料1-479ページからとなっています。

 次のホチキス止めが資料2ですが、こちらは長期発がん性試験の対象物質の選定の関係の資料でして、まず資料2-1が通しページの1ページから、資料2-25ページから、資料2-313ページから、資料2-421ページからとなっています。

 続いて大きなグループの資料3ですが、こちらは「指針対象物質の選定ルールの見直しについて」ということの関係の資料でして、資料3-11ページから、資料3-29ページからということです。

 参考資料については、参考資料だけで一括りにさせていただいていまして、参考資料1が通しの1ページから、参考資料2-13ページから、参考資料2-25ページから、参考資料3-113ページから、参考資料3-219ページから、最後の参考資料421ページからとなっています。

 それ以外の、資料目次には書いていない資料ですが、追加資料ということで、「4-tert-ブチルカテコールの染色体異常試験結果の概要」という、A42枚紙のものをお配りしています。

 それと、少しサイズの大きいA3のものが机上にあるかと思いますが、こちらはホチキス止めのほうにも入っている資料2-1が、少し字が小さくて見づらいので、拡大版もお配りしています。どちらでも御覧になりやすいほうを見ていただければと存じます。配布資料は以上です。

○大前座長 おそろいでしょうか。それでは、さっそく本日の議題に入りたいと思います。最初の議題は、「がん原性試験結果の評価について」です。まず試験結果の評価を行いまして、がん原性ありの場合には、大臣指針の公表の要否についても検討します。それでは、4-tert-ブチルカテコールについて、事務局とバイオから御説明をお願いします。

○大淵有害性調査機関査察官 まず事務局から簡単に説明させていただきまして、その後、詳細な説明をバイオのほうからお願いしたいと思っています。それでは、資料1-1ですが、まず1の被験物質は4-tert-ブチルカテコールで、こちらに書いてある構造式のとおり、ベンゼン環に水酸基が2つと、tert-ブチル基が付いた構造のものです。1-3の物理化学的性状ですが、白色から薄い赤褐色の固体ということでして、融点が53℃ということです。

 それから、1-5の用途ですが、重合禁止剤、酸化防止剤、各種有機化合物の安定剤という用途で使われているとのことです。1-6の許容濃度等ですが、こちらは私どもの規制対象物質ということではありませんので、管理濃度は設定されていません。また、日本産業衛生学会等の許容濃度についても、設定はされていません。IARC等の評価も、未評価ということです。参考ということで、構造類似物質の許容濃度等ということで書かせていただいていまして、tert-ブチル基が付いていないカテコールですが、こちらはACGIHTLV5ppm、また、IARCの発がん性分類がグループ2Bとなっています。

 続いて1-7の遺伝毒性ですが、こちらはtert-ブチルカテコールについてのいろいろな試験がされていまして、既存の試験ということでは、まず微生物を用いる復帰突然変異試験、こちらは陰性の結果。それから、「また」という所ですが、ラット培養肝細胞を用いた染色体異常試験が陰性。それから、マウスリンパ腫細胞を用いた遺伝子突然変異試験では陽性。それから、げっ歯類を用いる小核試験で、手法として2つの方法が、こちらでは書いてあります。ラットに1回腹腔内投与した場合の骨髄細胞の小核試験、それから、マウスに14週間混餌投与した場合の末梢血の小核試験、こちらはいずれも陰性ということでした。ですので、既存の試験の中では、陽性のものがマウスリンパ腫細胞の試験、これだけが陽性で、ほかの試験は陰性という結果でした。こういう状況でしたので、今般、バイオアッセイセンターで自主的にチャイニーズハムスター培養細胞を用いた染色体異常試験を実施いただきまして、陽性の結果が出ています。最小D20値が0.0039mg/mLということでして、こちらは未公表の資料ということなので、詳細な中身については、本日は机上のみ配布の追加資料という形でお配りさせていただいています。

 こちらの机上のみ配布の資料についても簡単に御説明させていただきます。チャイニーズハムスター培養細胞を用いての染色体異常試験の、短時間処理法の-S9処理と+S9処理及び、連続処理法の24時間処理及び48時間処理において、構造異常の誘発が認められた。それから、数的異常についても、短時間処理法の-S9処理で認められたということで、4つの処理法での染色体異常は、用量依存性を示し、かつ細胞増殖率が50%以上の用量で異常が認められており、4-tert-ブチルカテコール自体の染色体異常誘発能を正しく検出したものと考えたということです。

 この試験は試験計画書の承認手続などの事務手続を簡略化しているので、いわゆる非GLP試験ということになるのですが、試験手順ですとか異常の判定等の、試験の中身そのものは、GLP試験と同様に実施されています。構造異常に関してのD20値、20%の細胞に異常が生じる濃度をD20値と言いますが、こちらについては短時間処理法の-S90.014+S90.029、連続処理法の24時間処理で0.005148時間処理で0.0039ということです。染色体異常試験の判断基準としては、このD20値が小さいものほど染色体異常が強いと判断しており、0.01mg/mL以下を「強い陽性」と判断しますので、今回のものは連続処理の所が、非常に数値としては低くなっており、強い陽性です。

 それから、少し行を空けて、参考データということで書いていますが、染色体異常試験と同じ培養細胞、CHLを用いて、短時間処理法のみですが、in vitroの小核試験も実施していまして、こちらにおいても明らかな小核誘発が認められたということです。詳しい説明は省略させていただきますが、実際の試験結果の表が2ページ以降です。2ページに短時間処理法の結果、3ページが連続処理法の結果で、4ページが小核試験の結果になっています。ここに出ている数値を元に計算したのが、先ほど御説明したD20値ということです。

 この後、バイオアッセイさんに説明をしていただくのですが、事務局からの説明で、もう1つだけ資料を説明させていただきたいと思いまして、資料1-4、冊子のほうの資料で79ページになりますが、「tert-ブチルカテコールに関するがん原性指針策定の要否について」ということでして、がん原性の試験結果の評価自体、これからしていただくのですが、その後の指針の策定の要否というときに、少し関係するものです。詳細はまた後ほどの議論にさせていただきたいと思いますが、簡単に申し上げますと、今回の試験結果は、高用量の所で、良性の腫瘍が認められているという試験結果でした。一方、遺伝毒性に関しては、ただいま申し上げたように陽性の結果のものが一部ありますが、陰性の結果のものもあります。このため、遺伝毒性のあり、なしと、発がん性の試験結果、それを絡めた形で後ほど御議論していただく必要があると思っています。

 参考ということで、過去の評価の中で行ったものとしては、1の「基本的な考え方」の所に書いてあります。アンダーラインを引いてあります、「当該物質に遺伝毒性がなく、かつ、試験の高用量のみで腫瘍発生増加が認められた場合」は、労働環境中の濃度がどうかというのを考慮して、指針の策定の要否を判断しています。この基準に基づいて判断した結果、がんは出ているけれども指針の公表は必要ないとされた物質がこれまでに2物質ありまして、酢酸イソプロピルとジフェニルアミン、こちらについては、がんは出たけれども指針の対象とはしていないというものです。

 事務局からの説明は以上でして、以下はバイオから説明をお願いします。

○日本バイオアッセイ研究センター鈴木氏 それでは、4-tert-ブチルカテコールのがん原性の試験結果について、御説明させていただきます。まず方法から説明します。試験はラットとマウスを用いて、被験物質を3群、対照群を1群、4群の構成で各群雌雄とも50匹を使用しました。合計でラット400匹、マウス400匹を使用しています。

 被験物質の投与は、4-tert-ブチルカテコールを混合した粉末飼料を、動物に自由接種させることによって行いました。投与群の投与濃度は、ラットは雌雄とも4441,3334,000ppmとし、マウスの雄は1,250ppm2,500ppm5,000ppm、雌は2,500ppm5,000ppm10,000ppmとしました。

 マウスの公比はここに2と記載してありますが、ラットのほうの公比は記載されていません。ラットの公比は3です。観察項目としては、一般状態の観察、体重及び摂餌量の測定、血液学検査、血液生化学的検査、尿検査、剖検、臓器重量、並びに病理組織学的検査を行っています。

 それでは、結果について御説明します。まず生存率、体重について説明します。10ページの図1を御覧ください。上段に雄、下段に雌の生存率が表示してあります。生存率については、投与による生存率の低下は、雌雄ともにありませんでした。体重については11ページを御覧ください。生存率と同様に、上段に雄、下段に雌の体重の推移を示しています。雄のほうは1,333ppm4,000ppm、こちらは投与期間を通して、低値が見られています。雌のほうも同様に1,333ppm4,000ppmで、試験期間を通して体重の低値が見られています。

 それでは、3ページに戻っていただき、雄で発生した腫瘍について御説明します。8ページの表1を合わせて御覧ください。まず胃について。胃では前胃の扁平上皮乳頭腫が444ppm群に1匹、1,333ppm群に1匹、4,000ppm群に10匹発生しました。これはPeto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示しており、Fisher検定で4,000ppm群に増加が見られています。加えて4,000ppm群における発生は、当センターのヒストリカルコントロールデータの範囲を超えています。したがいまして、前胃の扁平上皮乳頭腫の発生増加は、投与によるものと考えています。

 次は舌です。舌の扁平上皮乳頭腫の発生が、4,000ppm群に2匹見られています。これは当センターのヒストリカルコントロールの範囲内です。また、扁平上皮がんの発生が、1,333ppm群と4,000ppm群に1匹ずつ見られています。これも当センターのヒストリカルコントロールデータの範囲内です。これら2つの扁平上皮乳頭腫と扁平上皮がんを併せて集計しますと、Peto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示しますが、こちらもヒストリカルコントロールと比較すると、範囲内ということになります。

 続きまして、食道についてです。食道の扁平上皮乳頭腫の発生は、4,000ppm群に1匹認められました。この腫瘍は1匹ですが、当センターではヒストリカルコントロールに見られない腫瘍です。

 続きまして、耳道腺に発生した腫瘍です。耳道腺に発生した良性の耳道腺腫瘍と、悪性の耳道腺腫瘍を併せますと、Peto検定の死亡率法で増加傾向を示します。4,000ppm群の発生は、当センターのヒストリカルコントロールを1匹超える結果です。しかしながら、良性腫瘍と悪性腫瘍の発生、それぞれの発生は当センターのヒストリカルコントロールの範囲内でありますし、対照群にも1匹発生が見られていますので、耳道腺の良性と悪性を併せた発生については、投与の影響とは考えていません。雄の腫瘍性病変は以上です。そのほか、非腫瘍性病変として、雄の前胃、過形成が4,000ppmで増えています。

 次に雌の腫瘍性病変について御説明します。8ページの表2を合わせて御覧ください。雄と同じく胃ですが、前胃の扁平上皮乳頭腫が、1,303ppm群に2匹、4,000ppm群に6匹発生しています。Peto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示し、Fisher検定で4,000ppm群に増加が見られています。また、4,000ppm群における発生は、当センターのヒストリカルコントロールデータの範囲を超えています。したがいまして、前胃の雌の扁平上皮乳頭腫の発生増加は、投与の影響と考えています。

 また、前胃の扁平上皮がんの発生が、中間ドーズであります444ppm1匹見られています。この腫瘍は、当センターのヒストリカルコントロールデータにはない、発生が見られていない腫瘍です。雌ラットの腫瘍は胃のみです。

 続きまして、雌ラットの非腫瘍性病変について御説明します。雄と同様に、前胃の過形成が4,000ppmで増加していまして、また、腺胃のほうですが、潰瘍が4,000ppm群で減少しています。そのほか、脾臓でヘモジデリンの沈着が、1,333ppm以上の群で増加しています。

 続きまして、マウスの試験結果について御説明します。12ページの図3、同様にグラフをお示ししています。上段に雄、下段に雌の生存率をお示ししています。投与による生存率の低下は、ラットと同様、雌雄ともにありませんでした。雄のほうは一番上に、これは最高投与群の5,000ppm群です。雌のほうはグラフを御覧いただくと分かるのですが、コントロール、5,000ppm10,000ppm、これは最終的には生存率50%を切っています。OECDのガイドラインですと、78週までは生存率が半数を切ってはならないということになっていますが、当センターのこの試験の場合は、コントロールのデータが102週、5,000ppm10,000ppm103週目に50%を切っています。試験には問題なかったと判断しています。

 次のページに体重の推移をグラフで示しています。同様に上段が雄、下段が雌です。雄のほうですが、5,000ppmについては投与期間を通して、低値が見られています。2,500ppmについては試験開始直後、あるいは試験の終了間際については、低値は見られていないのですが、投与の間については、散発的に低値が見られていました。

 雌のほうですが、5,000ppm10,000ppmについては投与期間を通して、低値が見られていました。2,500ppmについては、投与の間、おおむね10週から90週くらいの間について、低値が見られていました。

 続きまして、腫瘍の説明をさせていただきます。5ページにお戻りください。雄の腫瘍について、御説明させていただきます。9ページの表3を合わせて御覧ください。マウスの雄の胃では、前胃の扁平上皮乳頭腫が2,500ppm群に2匹、5,000ppm群に5匹発生しました。これはPeto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示し、Fisher検定では5,000ppm群に増加が見られていました。また、2,500ppm群と5,000ppm群の発生は、当センターのヒストリカルコントロールを超えています。したがいまして、前胃の扁平上皮乳頭腫の発生は、被験物質の投与によるものと考えています。

 そのほか、前胃の扁平上皮がんが1,250ppm1匹認められていますが、こちらはヒストリカルコントロールの範囲でした。また、腺胃ですが、5,000ppm群に腺がんが1匹認められました。この腺がんは、腺胃の幽門部に認められまして、当センターのヒストリカルコントロールデータには見られない、まれな腫瘍でした。雄マウスの腫瘍は以上です。

 雄マウスに見られた非腫瘍性病変について説明します。同じく胃ですが、腺胃の過形成が1,250ppm以上の群で、発生が増加しています。この腺胃の過形成は、通常、加齢性変化として、前胃との境界部から胃底腺部に認められる変化ですが、投与群ではこれの通常見られる過形成に加えて、幽門部の上皮にも増殖が認められました。

 そのほか、アミロイドの沈着が5,000ppm群で増加しています。このアミロイド沈着は、アミロイドタンパクが血管壁や組織内に沈着する変化です。次は精巣です。精巣にもアミロイド沈着が、5,000ppm群で増加しました。

 続きまして、マウスの雌について御説明します。9ページの表4に、発生した腫瘍を示していますが、投与によって増加した腫瘍は、マウスの雌についてはありませんでした。雌マウスの非腫瘍性病変について、御説明します。肺ではアミロイド沈着の発生が、10,000ppm群で増加しました。胃でもアミロイド沈着が、5,000ppm以上の群で増加しました。そのほか、大腸と肝臓でも、それぞれアミロイド沈着が10,000ppm群で増加しています。

 以上、4-tert-ブチルカテコールの2年間にわたる今時試験を行った結果、雌雄ラットの前胃の扁平上皮乳頭腫の発生が認められました。このことは、雌雄のラットに対するがん原性を示す証拠であると考えています。雄マウスでも、前胃の扁平上皮乳頭腫の発生が認められ、このことは雄マウスに対するがん原性を示す証拠であると考えています。雌マウスについては、腫瘍の発生増加は認められませんでした。以上です。

○大前座長 今、がん原性試験の結果を報告していただき、それからバイオでやられた染色体異常試験、両方の報告を頂きましたが、がん原性について御意見をお願いします。

○西川委員 結論はそれでいいと思いますが、1つ確認したいのは雄ラットで見られた食道の扁平上皮乳頭腫、これは背景データにはない腫瘍のようですが、これは誘発されたものかどうかはどのようにお考えでしょうか。

○日本バイオアッセイ研究センター鈴木氏 私どものセンターでは評価をする際に、臓器ごとの評価をしております。この物質については遺伝毒性があるかなしかというところも関係してくるかと思いますが、私どもの中では遺伝毒性があるかなしかということは、判断ができない物質でした。したがいまして、例数が少ないものについては、疑いはあるというような感触は持っておりますけれども、食道の扁平上皮について発がん性を示したというような結論には至りませんでした。

○西川委員 食道に乳頭腫があった個体というのは前胃にもあったのですか。なかったのですか。

○日本バイオアッセイ研究センター梅田氏 病理を担当した梅田です。個体のデータについては実ははっきり覚えていないのですが、舌から前胃につながった扁平上皮ですので、関連はあると思うのですが、あまりにもこの例数が少ないものですから、こういったものを評価するのははっきり言って難しいかなと、バイオの中でも大分議論にはなりました。

○西川委員 その極端な場合、前胃から食道に浸潤したものではないのですよね。

○日本バイオアッセイ研究センター梅田氏 舌から前胃に浸潤したという。

○西川委員 前胃から食道に浸潤してというか、これは乳頭腫だからないのでしょうけれども。

○日本バイオアッセイ研究センター梅田氏 はい、先生がおっしゃるとり乳頭腫ですので、内腔に突出するような像を示していて、がんとは異なっており、連続したといった標本でもなかったので、転移ではないと考えております。

○西川委員 分かりました。いいと思います。あとマウスの雄で見られた腺胃の腺がんについても同じような取り扱いをされるということですね。これもヒストリカルデータにはないけれども、積極的には誘発したとは判断しないと。そういうことですね。

○日本バイオアッセイ研究センター梅田氏 はい、マウスの前胃ですが、実はマウスの前胃は投与の影響と考えております。たった1例の。

○津田委員 腺胃の話です。

○西川委員 腺胃です。

○日本バイオアッセイ研究センター梅田氏 腺胃の腺がんの1匹の発生については、全腫瘍性変化である過形成が増えており、先ほど鈴木からも御説明申し上げましたが、幽門部に多く過形成が投与群で特徴的に増えておりまして、今回見られた腺がんについても、幽門部に認められたもので、過形成の増加に関連したものと考えております。そういった意味で本当に1例と少ないのですが、これががんの評価に直接どれだけ関係するかについては、実はバイオで答えを出しているわけではないのですが、1例について影響があったと考えております。

○西川委員 そうすると腺胃の腺がんについては、まとめにも追記しないといけないということなのでしょうか。まとめの所、結論です。

○日本バイオアッセイ研究センター梅田氏 今回、最終的な判断を統計的に有意であった前胃の扁平上皮がんを最終的に結果を出したので、あえてまとめの所には出していないのですが、今回の腺がんが認められた濃度も同じ最高濃度ですので、特に今回載せませんでした。

○西川委員 腺がんについては投与の影響の可能性がありそうだという考察をされるということですね。

○日本バイオアッセイ研究センター梅田氏 はい。

○西川委員 はい、分かりました。

○津田委員 今のことに関連しますが、これは過形成を入れるとどうなりますか。便宜上こういう過形成は非腫瘍病変ですが、過形成はがんのひとつ手前に近い病変なので大事です。過形成と腫瘍を足した場合にこの頻度はどうなりますか?

○日本バイオアッセイ研究センター梅田氏 過形成を足すと最低濃度までマウスの血管に増加をしております。

○津田委員 最低線はゼロでもあるということですか。

○日本バイオアッセイ研究センター梅田氏 いいえ、マウスの1,250ppmまで増加が認められます。

○津田委員 増加している、ということは腺胃の1例を除いてこの試験では扁平上皮系の腫瘍がほとんどなのですが。そうするとこの物質は扁平上皮をターゲットとして過形成から腫瘍まで起こすと考えてよろしいですね。

○日本バイオアッセイ研究センター梅田氏 はい。

○津田委員 データを見るとそういう気がするのですけれども。

○日本バイオアッセイ研究センター梅田氏 腺胃、前胃をターゲットとして増えたと考えております。

○津田委員 いや、私の質問は扁平上皮に全部きていますね。P valueは別として。そうですね。

○日本バイオアッセイ研究センター梅田氏 はい。

○津田委員 標的は扁平上皮ですね。そしてその過形成を足すと既に低用量から発生が見られると。それについて統計はないけれども、バイオロジカルに見た場合にこの物質は扁平上皮を標的として発がんさせていると解釈していいかということです。

○日本バイオアッセイ研究センター梅田氏 扁平上皮をターゲットとしたものを最終的にまとめに載せたわけなのですが、実際に腺がんが出ているのは腺胃なので。

○津田委員 いいえ、そのことではないです。この物質は扁平上皮を標的としていますねということです。

○日本バイオアッセイ研究センター梅田氏 はい。

○日本バイオアッセイ研究センター鈴木氏 すいません、扁平上皮の、前胃の扁平上皮の過形成ですが、それは雌雄とも4,000ppmのみで増加。

○津田委員 最高用量だけですか。

○日本バイオアッセイ研究センター鈴木氏 そうです。扁平上皮のほうは扁平上皮4,000ppm

○津田委員 それは前胃ですね。

○日本バイオアッセイ研究センター鈴木氏 前胃です。

○津田委員 食道その他ではどうですか。ほかの所の扁平上皮のある所、口腔、舌、食道も含めて。

○日本バイオアッセイ研究センター鈴木氏 統計的には増加は見られて。

○津田委員 足し算をした場合を聞いています。

○日本バイオアッセイ研究センター鈴木氏 すみません。

○津田委員 それぞれだったらバラけてしまって出ないと思います。例えばこの表では、良性腫瘍と悪性腫瘍を足しますね。それに扁平上皮、過形成を足した場合はどうなりますかという質問です。

○日本バイオアッセイ研究センター鈴木氏 申し訳ありません。そちらの検討はしておりません。

○津田委員 やはりこれは標的が扁平上皮だから、そういうデータのまとめも必要だと思います。それから腺胃ですが、腺胃というのは滅多にない。ほとんどないですね。恐らくバイオさんの何万匹の中になかったと思います。ですからこの所見は大事だと思います。IARCでは滅多にない腫瘍があった場合、P valueがなくても、一応腫瘍の発生を重視するということがプレアンプルに書いてありますね。そういう意味ではサマリーには入れたほうがいいと思います。

○日本バイオアッセイ研究センター梅田氏 ありがとうございます。

○津田委員 それともう1つ、長期試験というのは自分たちで多く実施したことがないので分からないのですが、マウスで生存率はコントロールのほうが最終的には少ないというのはどうしてですか。

○日本バイオアッセイ研究センター鈴木氏 マウスですか。

○津田委員 はい。12ページ、これ、一番低いのは○ですね。少し見にくいのですが。

○日本バイオアッセイ研究センター鈴木氏 はい。

○津田委員 コントロールですね。

○日本バイオアッセイ研究センター鈴木氏 はい。マウスの生存率は最終的には40%です。

○津田委員 はい、投与しているほうが多いということ、よく生きるということになりますね。投与群のほうが生存率はいいですね。

○日本バイオアッセイ研究センター鈴木氏 そうですね、若干ですが、2,500ppmが一番よく58%、5,000ppm44%、トップの10,000ppm42%。当センターの平均的な生存率と比較しても、この数字は若干低いのですが、今回少し低いということで、死因について少し調べてみましたが、特定のコントロール等に特定の死因が今回多いということではなくて、特に通常見られるこの系統ですと組織球性肉腫、リンパ腫などの発生が多いのですが、そういう腫瘍を含めたものの死因がそれぞれ少しずつ1匹、2匹ずつ多かった。これは対照群だけではなくて、5,000ppmなどでも通常よりも少し多かった。トップの10,000ppmについては、アミロイドの沈着によって肺の沈着が多かったものに死亡が多かったこともあり、10,000ppmについては死因として特にアミロイド蛋白の沈着、主に肺ですが、そういうものが死因になっているものが多かったのですが、ほかについては通常見られるものが少しずつ多かったと解釈しています。

○大前座長 先ほどの腺胃の話ですが、先ほどおっしゃったのは腺胃の場合は過形成は1,250からあったということをおっしゃいましたよね。腺胃に関しては1,250から過形成も含めるとドーズ レスポンスのようなものはあったということですか。

○日本バイオアッセイ研究センター梅田氏 投与の影響としてはあります。

○津田委員 そういうことも含めてやはりがん原性については強く疑われるということになると思います。

○江馬委員 消化器系の変化ですが、これらは経口投与による特有な変化なのですか。

○日本バイオアッセイ研究センター鈴木氏 今回の試験は根治試験でやっておりますので、当然最初に被験物質が接触する舌から胃にかけて直接触れる機会がもちろん一番多いわけですので、経口試験でやったからこの部位に出たのだろうという感触は持っています。

○江馬委員 基本的には吸入ばく露の結果を評価すべきだと思うのですが、経口投与による試験結果を外挿というか、吸入ばく露に当てはめるというか、そういう考え方はできるのでしょうか。物質によっては吸入ばく露ができないものもあるとは思うのですが。それはどのように考えるのでしょうか。○日本バイオアッセイ研究センター鈴木氏 その物質に関しては、蒸気圧が非常にゼロに近い、とても低いものなので、吸入試験の実施は非常に難しいものであったと考えております。これだけの物質を動物に投与する手法であれば、経口からやるしかなかったのかなと考えています。

○大前座長 多分、江馬先生の御質問は労働現場というのは経口ということはあり得ないわけですから、しかもこの場合は消化管の上部だけですから、刺激などいろいろなことでがんが起きているのだろうと。それを基にして労働現場のがん原性ありと見ていいいかどうか、そういう御議論だと思います。その辺についていかがですか。

○津田委員 確かにそれはもう大事なところなのですが、だからといって動物で吸入をやってもヒトと同じところに腫瘍ができるとは限らないということもあるので、ひとまず吸入では莫大な経費が必要なので経口投与は仕方ないことではないかなと思います。ご存じの印刷工場の例でも吸入と経口のデータはあるわけですね。両者の発がん標的が違うのです。またヒトとは違う所にできることもあるので、なかなか難しいところではないかと思います。

○大前座長 そのほかはいかがでしょうか。

○西川委員 経口投与しか投与の方法はないので、やむを得ないとしか言いようがないと思います。

○大前座長 ただ経口投与しても、ターゲットが例えば肝、腎などの上部消化管でなければ非常に分かりやすい話だと思いますが、上部消化管であるからこそ、刺激なり何なりでで話が済んでしまうのだったら、という考え方もあるとは思うのです。そこのところはやはり難しいですよね。絶対的にどちらがいいというような判断はなかなかできないわけです。いかがでしょうか。今のような問題が残ってはいるのですが、この段階で解決のしようがない問題は残ってはいるのですが、今の皆さまの御議論ではがん原性はありそうだと。それから変異原性も今回のバイオの実験でずいぶんD20の値が小さいということで、遺伝毒性もありそうだというような結論のように伺いましたが、いかがでしょうか。そういう形でよろしゅうございますか。そうすると大臣の指針の公表に話が進むことになりますが、そのような結論でよろしいでしょうか。そうしますとそのような方向、フローが参考資料2-1に載っていますが、労働者に発がんの恐れがあるということで、指針に進んでいただくことになります。よろしゅうございますか。ありがとうございました。

 ではこの件はそういうことで終わらせていただきます。では2番目のテーマです。長期発がん性試験、対象物質の選定について、事務局から御説明をお願いします。

○大淵有害性調査機関査察官 それでは事務局から説明いたします。資料は資料2です。まず事務局から説明して、その後にフィージビリティテストの関係で今回新しくデータが追加された酸化チタンのフィージビリティについてバイオから説明していただく予定です。

 資料2-1で説明いたします。平成26年度発がん性試験、吸入試験の候補物質です。従来から企画検討会でフィージビリティ試験にかける物質を選んでいただき、フィージビリティ試験の終わったものについて、こちらの有害性評価小検討会にかけて、長期試験に使う物質をどれにするかの決定をしてきていただいています。今回の資料2-17物質リストを作っておりますが、こちらはいずれもフィージビリティ試験の終わったもので、今回新たに追加したのが3ページにある7番の酸化チタン(ナノ粒子のアナターゼ型)のものです。こちらが新たに追加した物質で、それ以外の6物質は昨年度にお配りした資料にも掲載していた物質です。計7物質のうち7番の酸化チタン、5番目の物質が粉状の物質で、ほかの5物質については液体です。1物質ずつ簡単に見てまいります。資料の項目は多いのですが、主に用途、遺伝毒性の関係、それと留意事項の辺りを中心に御説明いたします。

 まず1番、酢酸エチルで、塗料、印刷インキ等に使われる物質です。遺伝毒性の状況はエームス試験は陰性、染色体は陽性、vivoの小核は陰性という状況です。留意事項として、毒性は比較的低いので、もし発がん性試験をするとすれば、高濃度での試験となおります。それからアルキル基の部分が違う酢酸イソプロピルはバイオで既に試験実施済みで、閾値のあるがん原性の結果が出ております。この物質についてはこれまでの議論において、試験対象として選ぶ優先順位は比較的低いだろうという判断がされてきております。

2番目のエチレングリコールモノエチルエーテルは、用途は各種樹脂用溶剤、医薬品抽出剤で、遺伝毒性はエームスが陰性、染色体が陽性というデータが出ております。留意事項は類縁化学物質はバイオアッセイで試験実施中ということであり、これも試験対象物質として選ぶ優先順位はあまり高くないだろうというのが昨年度までの御議論です。

3番目の酢酸ノルマルブチルは用途が溶剤、人造真珠塗料、天然ゴムです。遺伝毒性はエームス試験は陰性、染色体異常試験も陰性です。留意事項は、類縁化学物質である酢酸イソプロピルがバイオで試験済みです。

2ページ、4番の物質、アリルアルコールです。用途はジアリルフタレート樹脂、医薬、香料、難燃化剤などの原料で、遺伝毒性はエームス試験は陽性、陰性の両方の報告があります。染色体異常試験は陽性で、D20値が0.0062ということでかなり強い陽性です。in vivoの小核についてはマウス末梢血とラット骨髄、それぞれ陰性のデータがあります。留意事項は、代謝産物のアクリル酸及びアクロレインのがん原性試験を日本バイオアッセイ研究センターで実施していて、アクリル酸はもう試験が済んでおり、発がん性なしで、アクロレインは試験実施中です。

5番の物質は1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオンですが、この物質は用途が粉体塗料、はんだレジストインク等々です。遺伝毒性はエームス試験が陽性、最大比活性値が2,640、染色体異常試験が陽性、D20値が0.00013で非常に遺伝毒性が強い物質です。この物質は昨年度までは、留意事項欄にバイオアッセイの短期吸入試験設備で他の粉状物質のフィージビリティテストを行っているので、この物質の発がん性試験は難しい旨を書いていたのですが、バイオでの粉状物質のフィージビリティが終了したので、平成26年度はこの物質について発がん性試験の対象とすることは特に問題ないものです。

6番はブチルアルデヒドです。用途は合成樹脂原料、2-エチルヘキシルアルコールの原料等です。遺伝毒性はエームス試験は複数の試験で陰性、染色体は陽性でD20値が0.021です。小核試験は陰性です。留意事項はNTPでは13週間の試験を終えていますが、報告書は出さないとしていて、特になぜ出さないかの理由は公表されておりません。

 最後の7番目の物質は、3ページの酸化チタンのナノ粒子のアナターゼ型のものです。今回新しくこの資料に追加した物質です。用途が光触媒、工業用触媒、担体塗料です。この物質は、本年度先生方に初期リスク評価をしていただいていますので、そのリスク評価の中身を抜粋しておりますが、そこでは遺伝毒性はありと評価されており、詳細資料は2-3です。IARCの発がん性区分は2Bとなっておりますが、これはナノに限定したものということではなく、酸化チタンの全ての粒子に対する分類ということです。留意事項では、なぜこの物質をフィージビリティの物質に選んだかの補足をしています。国ではこれからナノマテリアルもいろいろ調べていこうということで、リスク評価を始めたわけですが、その中で酸化チタンについては、ナノ酸化チタンについては生産量が多く労働者がばく露するおそれがある作業がある。ナノ酸化チタンのうちアナターゼ型のほうがルチル型より毒性が強いことが分かっています。アナターゼ型の吸入発がん性試験は行われているが、肺への炎症が起きるような過負荷の状態でかつ1用量の試験であるため、低用量での影響を確認する必要があるという理由でフィージビリティ試験の対象として選ばれました。資料2-1は以上で、ただ今説明した酸化チタンについてのフィージビリティ試験の結果を、バイオアッセイさんから、資料2-421ページの資料を使って説明をお願いします。

○日本バイオアッセイ研究センター西沢氏 それではフィージビリティの結果について御説明します。資料2-422ページの7番目として酸化チタンが出ています。16までは既に終了しており、以前に御説明いたしました。7番目の酸化チタン、使用した被験物質はアナターゼ型97.9%、一次粒子径が30nmのナノ粒子です。ばく露の目標濃度0.1mg/m3 50mg/m3 2濃度に設定して、6時間の発生検討試験を行いました。清浄圧縮空気を使用して、エアロゾルを発生させて、光散乱式の粒子測定装置のデータを帰環制御して、これによりチャンバー内濃度の一定を維持しました。

 ばく露時間中に6回濃度測定を行い、0.10プラスマイナス0.01mg/m3 50.5プラスマイナス1.85mg/m3 の精度でばく露ができました。カスケードインパクターを用いて、測定した空気力学的質量中位径及び幾何標準偏差はそれぞれ0.81.3μm及び1.81.3となり、OECDのテスト、ガイドラインが推奨しているMMAD13μmの間を満たすことを確認しました。なお、ばく露の設定濃度はラットの50mg/m3 5日間、16時間のばく露で肺の重量の増加及び軽度ですが、病理組織学的変化が認められたの報告があり、最初の試験、2週間試験(10回ばく露)を想定して、50mg/m3 を設定しました。最低濃度は現時点で制御できる最低濃度0.1mg/m3 を設定して行いました。ナノの酸化チタンのばく露の影響ができる範囲内での吸入試験はできると思っています。以上です。

○大前座長 ここに挙げてある7物質から1物質を選びます。前回までに146番の物質に関しては、それぞれ優先順位に関しては、既に類似物質のデータがある、あるいは代謝物等々でやっているということで、優先順位は低いという議論でした。5番に関しては、粉体ですので、粉体のフィージビリティ、これは多分酸化チタンでやったと思いますが、それでチャンバーが空かないからできないということで5番は今までやってまいりませんでした。それで今回7番、酸化チタンのナノが入ってきておりますので、新規に入ったのは酸化チタンのナノ、それから前回から状況が違ったのは5番の難しい物質になります。この7物質からどれが今回、選択すべきかですが、御意見いかがでしょうか。これはあくまでも吸入の話です。

○宮川委員 私としては、二酸化チタンのナノ粒子を是非、試験をしていただきたいと思います。ナノ粒子はいろいろ問題になっていますが、国内できちんとした吸入による発がん性試験をしているものは非常に限られており、その中で既に繊維状のものについては実施されているかと思いますが、金属酸化物ではきちんと用量を設定したものがない。モデルとして是非やっていただきたいと思います。またここに書いてありませんが、産衛の許容濃度は現在、暫定値が比較的低い値が提唱されておりますが、この産衛の値を導いた場合も、国のリスク評価書を作る場合も、発がんの試験を基にすることができずに、がん以外の毒性を基に計算しています。したがって是非、がんのデータを求めて、そこからこの許容濃度あるいはリスク評価値を見るということも重要だと思います。

 さらに現在陽性報告のある吸入の発がん試験は1用量のもので、それでは使いものにならない。過負荷の状態と書かれておりますが、過負荷がかからないような低い濃度まで含めて試験を行い、高い濃度での再現性を見るとともに、低い濃度で影響があるかどうかを是非、見ていただきたい。

 それからIARCについては、ナノに限らず2Bということだと思いますが、これは少し上のグループに上がるという話はなかったのでしょうか。もしそういう情報があれば、それも加味していただきたいと思います。

○大前座長 その辺りはいかがでしたか。IARC2Bで現在のところはよろしいのでしたか。

津田委員 volume93でグループ3からで2Bに一応なりましたので、新たなデータが出ない限りやらないと思います。多分これが出れば、また別のデータが出れば、再評価で変わるかもしれません。

 

○大前座長 もう1点は、日本以外の国でこの酸化チタンのナノの実験を始めているという情報はありますでしょうか。もしあれば重複してやっても仕方ないということになりますので。それは特にないということですね。例えばNTPがもう始めてしまったなど、そういうようなことはないということでよろしいですか。

○角田化学物質評価室長 今のところそういう情報は把握はしておりません。

○津田委員 これはルチルではなくて、アナターゼでやったというのは、今までのデータで、どちらかというとアナターゼのほうがラジカルを作りやすいという理由からでしょうか。生産量はどうなのですか。

○大淵有害性調査機関査察官 生産量はルチルのほうが確か多かったかと思います。

○大前座長 宮川先生から今、酸化チタンという御意見がありましたが、そのほかの先生方はいかがでしょうか。

○清水委員 5番か7番ということですね。5番はエポキサイドが付いているので、染色体はすごく強く出るのは当たり前だと思います。私としては酸化チタンは5番よりも倍ぐらいの生産量ですし、遺伝毒性のメカニズムが全然違うのです。むしろこちらがどうなのかが一番興味があり、酸化チタンを是非、推薦したいと思います。

○大前座長 いかがでしょうか。酸化チタン、よろしゅうございますか。そういたしますと今日の段階ではこの委員会ではナノの酸化チタン、アナターゼ型でいきたいということでよろしゅうございますか。では、ありがとうございました。

 今度は3番目の議題です。がん原性指針対象物質の選定ルールの見直しについて、事務局から説明をお願いします。

○大淵有害性調査機関査察官 それでは事務局から説明いたします。資料31ページ、「安衛法第28条第3項の規定に基づくがん原性指針の対物質の選定ルールの見直しについて()」についてです。

 こちらについては、同じ資料を今年の9月に開催した「健康障害防止措置の検討会」にも提出しまして御議論を頂いたものです。

 「1.これまでの選定ルール及び問題点」です。がん指針の対象物質というのは、法律をそのまま条文でいきますと、「がん、その他の重度の健康障害を労働者に生じるおそれのあるもの」と規定されております。この規定を踏まえて、国が実施した発がん性試験により、動物への発がん性は認められた化学物質を、これまでの指針の対象としてきております。

 しかしながら、労働省の健康障害防止のためには、国の試験により発がん性が明らかになったという物質だけではなく、それと同等又はそれ以上の発がん可能性を国際機関等で指摘されている物質についても、指針の対象としていく必要があると考えております。

 これを問題意識に踏まえて、2として「選定ルールの見直し」ということです。指針対象物質の選定ルールを次のように改めてはどうかと考えております。具体的には、次のいずれかに該当する化学物質をがん原性指針の対象とする。(1)国が実施した試験には、今年度から始めた短期・中期の発がん性試験を含む。その結果によって、動物への発がん性が認められた物質。(2)IARCの発がん性分類の12Bに該当する物質。あるいは国際機関等による発がん性分類、あるいはその他の知見で、12Bに相当すると専門家が判断した物質。(1)(2)のいずれかを指針の対象にということです。

 「なお」書きとして、これは違う観点ですが、一旦、がん原性指針の対象物質とされた物質、あるいは業務であっても、リスク評価の結果等により、特化則によって発がん予防の観点での規制がなされた場合には、指針の対象から除外するというルールも決めたいと思います。

 具体的なものとしては、リスク評価の枠組みの中で評価した1.2-ジクロロプロパンは、平成23年に指針にすでに加わっていたのですが、胆管がんの問題を踏まえたリスク評価によって、全ての業務ではなく、洗浄・払拭業務のみが特化則で規制されましたので、その規制に合わせてジクロロプロパンについては、洗浄・払拭業務は除外して、他の業務のみ指針の対象とする内容ですでに改正をしております。

 「2.選定ルール見直し」の(1)(2)のうち、(1)については、従来からやっていたことに少し試験の幅が広がって、長期の試験だけではなく、短期・中期の試験も含めて指針の材料として活用していこうということです。(2)が新しい事項です。

(2)については、具体的にはどういうものが対象になるかというのが、「3.新ルールに基づく指針対象物質の検討」ということで、2(2)の具体例として、次のようなものを考えております。

 「(1)発がん性のおそれのある有機溶剤」ということです。印刷業の胆管がん事案を契機として、有機溶剤の規制を見直していこうということで、リスク評価検討会でもしていただいたところです。有機溶剤中毒予防規則で規制されている物質のうち、発がんのおそれのある10物質についての(含有量1%超の有機溶剤業務に限る)、この部分を今後の予定ということですが、特化則のほうで規制したいと考えております。

 具体的な10物質の内訳は、2ページの上に書いてあります。10物質のうち、6物質は既に指針対象物質となっておりますが、残りの4物質は指針の対象になっていないということで、他の4物質について有機溶剤業務以外の業務について、指針の対象に追加する必要があると考えております。

 また、10物質のうち既に指針対象となっている6物質については、現在は業務の内容に関わらず、製造取扱い業務全般について指針の対象となっておりますが、有機溶剤業務が特化則でもし規制されることになりましたら、特化則で規制される部分は除外した形で、それ以外の業務について指針のほうに残すという整理をすべきかと考えております。

2ページに書いてある上の6物質については、既に指針対象としている6物質です。下の4物質については、発がん性のおそれがあるという、IARC12Bのいずれかになっていますが、まだ、指針に入っていない物質ということです。こちらの4物質を新たに追加していく必要があるのではないかということです。

 「(2)発がん性評価ワーキンググループにおいて、IARCの発がん性分類の12Bに相当すると判断された物質」です。平成25年度から発がん性評価ワーキンググループを立ち上げております。そこでの評価としては、既存の知見に基づいた評価をするということです。具体的には、国際機関との発がん性分類の結果と、分類の際には、まだ根拠資料となっていない比較的新しい試験結果等を含めて、総合的にワーキングのほうで評価をしていきたいと考えております。

 評価の内容としては、いろいろな情報を踏まえた評価で発がん性がIARC12Bに相当するか否かということを判断していただく予定です。

 これと絡めて、平成24年度、有害性評価小検討会で発がん性評価の加速化ということを、先生方で御議論いただきました。昨年度の議論の結果、既存の知見により、「発がん性のおそれあり」とされた物質については、指針又はリスク評価の対象とする等により対応するということが、昨年の検討会のまとめとなっております。

 補足の資料としては、3ページにフローチャートがあります。これが去年のまとめです。上から2つ目の四角の枠の中に、「既存の発がん性に関する情報による判断」というのがあります。「情報あり」、つまり発がん性の証拠が既存の知見としてあるという場合には、その矢印が伸びていく先が、1つは一番下にある「リスク評価」です。もう1つの矢印は、二重枠で囲んである「健康障害防止措置の指針による指導」にもつながっております。既存の知見による評価についても、こういった指針にしようというのが昨年のまとめでしたので、それを2ページの(2)では表しております。

2ページの「(3)リスク評価において発がん性のおそれありとされた物質のうち、リスクが高くないと評価された物質又は業務」です。こちらは今回新しい話になるかと思います。厚生労働省では、平成18年度から主として発がん性のおそれのある化学物質について、リスク評価を行ってきておりま、労働現場でのリスクが高い物質については、特化則等による規制を行っております。

 一方、リスク評価の結果、労働現場での発がん性に関しリスクが高くない、リスクなしとかリスクが低いというのも含みますが、そういうふうに評価された物質については、法令での規制ではなく、安全衛生部長名の行政指導の通達を出して行政指導を行うということで対応しております。

 また、リスク評価の結果、特化則で規制することになった物質についても、業務によっては、健康障害防止措置の対象となっていないケースがあります。例えば、先ほど御説明した1.2-ジクロロプロパンなども特定の業務だけが規制対象となっております。前年のリスク評価で御議論いただいた物質のうちエチルベンゼンも、塗装関係だけを特化則の規制対象にしており、他の業務については特化則規制とはなっておりません。

 こういう状況を踏まえて、今後はリスクが高くないと評価された物質、あるいは業務についても、発がん性があるものは、ハザードに鑑み、指針の対象とすることが適当であるという考え方を事務局は持っております。

 リスク評価の中で、最終的にリスクが高い、低いという判断まで至らずに、対象事業場等がないために、リスク評価を打ち切った物質もあります。こういった物質も一応ハザードの面では発がん性ということになるので、こういうものまで含める必要があるかどうかというのは、なかなか議論は難しいかと思っており、一応、問題意識として持っております。

 具体的には、(3)の考え方に対応すると、どんな物質が今後の指針の候補になるかということを、別添2の資料の5ページから、これまでのリスク評価の進捗状況の表で示しております。この中で、一番左側に、「指針の追加候補」という欄を追加しており、○あるいは△を記載しておりますが、○はリスク評価においてリスクがない、低い、あるいは高くないと評価されたものです。

 △は、ばく露作業報告の事業場がないということで、リスク評価を途中で打ち切ったものです。数にするとかなり多く、○が約40物質、△が約20物質あります。こういったものもこれから対象にしようとすると、かなり対象物質の枠は広がる状況です。

 これらの資料は、9月の健康障害防止措置の検討会でも配らせていただきました。今回、それ以降追加した資料があります。9ページ、資料3-2です。こちらは今申し上げた9月の健康障害防止措置検討会にかけたときに、委員の先生方からいただいたコメントを簡単に整理したものです。大きく3つほど挙げております。その下の矢印の所は、事務局から会議の際にお答えしたコメントです。

 少し長いですが読み上げさせていただきます。1つ目の御意見です。「リスク評価においては、例えば発がんの過剰発生率、10のマイナス4乗に対応した濃度を一次評価値としているが、それ以下であるようなリスクが高くないものを、単に定性的に発がん性があるという、質的な評価のみで指針に入れるということになると、今までの定量的なリスク評価の考え方と矛盾するのではないか。」という御意見です。事務局からは、「指針はリスク評価結果を踏まえた規制導入とは異なり、注意喚起の意味もあるので、ハザードベースで出している。」ということを御説明しております。

2つ目の御意見です。「企業にとっては、厚生労働省からのガイドライン(指針)は、法律的な規制という感覚ではないか。指針には、この対象物質は安全なものではないという情報提供の意味があり、その意味では、対象物質を増やしていくというのはよい方向である。しかし、物質によっては、業務ごとに指針又は特化則での判断、対応が求められる等、指針対象物質が増えていくと業務が難しくなると思われる。ナノの情報提供の指針が出たときも、ナノ事業が下向きになった。情報提供の部分と、義務の部分が錯綜、輻輳しないよう、わかりやすい整理を希望する。」。

3つ目の御意見は、「指針は、ハザードベースで注意喚起すると理解できるが、現実にはSDSの仕組みがあり、その中にハザードの発がん性等のマーク、情報もあるので、それを活用していけばよいのではないか。発がん性の物質には、有機則や特化則の対象となるものがあり、事業者から見ると、複雑でなかなか整理ができていない。その中で、更に指針の対象物質を増やしていくと対応は難しいのではないか。注意喚起ということであるが、SDSでリスクの高低等の情報があるので、新たに指針の注意喚起はそれとダブってしまうのではないか。」。事務局からは、「SDSをもらっても十分に活用できない事業場もあるので、指針によるがん原性物質である等の周知も必要ではないか」というお答えをさせていただいております。こちらは前回の健康障害防止措置の御意見です。参考資料2-1について、室長の角田から説明申し上げます。

○角田化学物質評価室長 今、御説明がありました中身を簡単に資料にしたものが参考資料2-1です。同じような図が、資料3-13ページにありますが、基本的には3ページというのは、新しく導入した部分です。それが従来の仕組みの中のどこに入ってくるのか、入れようとして作ったのが、この資料です。細かくなってしまい、分かりにくい部分もあるかもしれませんが、そこは御容赦いただければと思います。

3ページのフロー図が、ここで言っている太線の矢印に大体合致しているようなイメージです。要は、太線の部分というのは、今説明をしたとおり、要するに加速化をしていきましょうということです。その加速化の中身としては、右上の塊に書いてある遺伝毒性の関係です。ここの長期発がん試験につなげる手順を明確化して、エームスなり、短・中期の試験で、こういうルールでやっていきましょう、この塊で進めてみましょうというのが1つです。

 真ん中辺に「長期発がん性試験実施」という枠がありますが、この長期の発がん性試験も、動物を2種類やっていたのを1種類にしたりして、効率的にやっていくというのが加速化です。一番上の左上のほうから、情報がありということで、太い矢印が降りています。こういったものをリスク評価なり、がんの指針につなげていくというのも、先ほどの加速化の話ということで、太い線を加速化と見ていただければと思います。

 二重枠で囲った部分が、右の少し上の部分と、真ん中辺の所にあります。右上のほうは、変異原性の指針です。これは局長の通知でやっているものです。

 下の二重枠ががん原性指針です。今までは、長期の発がん性試験を実施して、そこから試験結果で、労働者に発がんのおそれがありますよということが出てきたときに、がん原性指針でやっていくという形になっていたわけです。先ほどの資料で御説明したのは、1つは、左下の部分のリスク評価のスキームです。リスク評価でリスクが高くないとなって、通知で指導したものから点線が上のがん原性指針に来ていますが、こういうものも指針ということで検討しないといけないのではないかという問題意識です。

 ばく露作業報告の下の所に「打切り」と「報告がなし」と書いてあり、先ほども御説明したところですが、これらもハザードはあるということで、これから点線でがん原性指針の所へ行っています。今までやったのが何十もあるわけですが、そういうものをがん原性指針でやっていかなければならないのではないかということです。

 左の上から降りてくる太い線の所でも、丸数字2の矢印で、がん原性指針に至っているのがあります。これも先ほどの説明にあったように、がん原性指針にいくものということです。それを右下の注書に書きましたが、「新たな指針対象の検討()」ということで、リスク評価の結果、リスクが高くないとされたものは図の丸数字1ということです。これは先ほどの有機溶剤の関係と、その他、これまでのリスク評価、実施打切り物質。あとはIARCの発がん性分類が12Bなど、図の丸数字2という形です。一応、全体の流れと、先ほどの御説明がどこに当たるのかということをまとめたものです。御説明は以上です。

○大前座長 がん原性指針の対象物質の選定ルール、資料3-11ページ、2(1)はこれまでやってきたことですので、これは既存のままです。それに更に(2)を加えようということです。(2)の中身が、1ページの3の指針に基づく指針対象物質の検討で、(1)発がんのおそれがある有機溶剤、(2)発がん性評価ワーキンググループにおいてIARC発がん分類の12Bに相当するということです。(3)リスク評価において、発がん性のおそれがあるとされた物質のうち、リスクが高くないと評価された物質又は業務。(1)から(3)に関してもがん原性指針の対象にしたらどうかという御意見です。

 順番にやっていきたいと思います。1ページの3(1)発がん性のおそれがある有機溶剤が10物質ということですが、このうち6物質は既に指針の対象となっていますが、他の4物質、2ページの上から4行目、「スチレン、1,1,2,2-テトラクロルエタン、トリクロルエチレン、メチルイソブチルケトン」の4つに関しては、まだ指針の対象になっていないので、これをがん原性指針の対象に入れたらどうかという点について、いかがでしょうか。これは特に御意見はありませんか。

 次に(2)、発がん性評価ワーキンググループにおいて、IARCの発がん性分類の12Bに相当すると。今まで判断された物質も同様に、がん原性指針の対象にしたらどうかという案ですが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ワーキンググループがしっかり評価していただいて、これは12Bに相当すると。そうしましたら、(2)もいいだろうと。

(3)、リスク評価において発がん性のおそれがあるとされた物質のうち、リスクが高くない、若しくは先ほどの例でいきますと、打切りになった物質についても、がん原性指針の対象としてはどうかというお話ですが、これはいかがでしょうか。

○宮川委員 リスクが高くはないと評価されたということは、一次評価値及び二次評価値と比べて、調べた現場での濃度は高くはなかったということから判断された結果だと思いますが、国内で行われている全ての業態について、正確に把握し切っていない可能性があり、そういう特別な使い方をしている所が、もしかするとあるかもしれないということを考慮すると、やはり、そういうものについても一定の注意喚起をするという意味から、(3)に書かれたように、取りあえずリスクは高くない現状であるものについても、ある程度の対応は必要だと私は思います。この追加に賛成です。

○大前座長 リスク評価の事業場を選択する場合には、コントロール・バンディングか何かを使って、高い所を選択して測定しているはずです。かつそれの統計学的には95%、あそこが値を取ってやっているということなので、そこから外れる所というのは非常に少ない。もちろんゼロということは言えないわけですが、非常に少ないのですが、それも対象にしますか。

○宮川委員 というよりは、特別な事業場で見つかった例で、こういうことがあったというのが、ジクロロプロパンの例ですが。

○大前座長 胆管がんの場合はそうですが、ちょっと胆管がんにこだわり過ぎではないかと。一般論の話と特殊な話は分けて考えたほうがいいのではないかと、実は私は思っているのです。特に、打切りになった、すなわち使っていない。そうではなくて、あれは500kgでしたか。量の制限があるので、使っていないのではなくて、500kgは使っていないというあれはあるのですが。そういう少量しか使っていない所も入れるということですか。

○宮川委員 私は使っていないものは入れなくていいと思います。

○大前座長 報告がないですよね。500kg以下という所では報告がない。そういう物質の話で打切りですが。そこの辺の御意見はいかがですか。ハザードによる評価と、アセスメントによるリスク評価と話が違うというのはそのとおりですが、ハザードでやるのでしたら、リスク評価は余りやらなくてもいいのではないかという気がしているのですが。これはがんの話だけですが。ほかの影響の話はまた少し別ですが。

○宮川委員 あと1つ気になったのは、委員会からの報告のほうでは、SDSにリスク情報が記載されているとあります。これは事務局が作ったものではなく、委員の先生の意見かもしれませんが、それは実態と少し違うような気がいたします。

○大前座長 いかがでしょうか。あるいはもしやるとしても、遺伝毒性がある、ないで分けることはありますか。遺伝毒性がないものまでやるのは、少しやり過ぎではないかと。遺伝毒性があるものに関しては、ここに入れる価値はあるかもしれないです。

○宮川委員 一律にやるのではなくて、何らかの基準を考えておき、やるべきという専門家の判断によるとか、あるいはあらかじめ少し細かいルールを作っておいてやるということでもよろしいのではないかと思います。

○清水委員 遺伝毒性は、ある程度の強さ以上では指針を出していますよね。

○角田化学物質評価室長 強い遺伝物質では。

○大淵有害性調査機関査察官 ただし、製造・輸入事業者の行った変異原性試験により強い陽性だった新規物質か、若しくは国の委託試験で強い陽性だった既存物質しか、今までは通達を出していなかったので、ほかの情報で遺伝物質が強かったものは必ずしも行政指導の対象になっていませんでした。この辺は少し漏れがあるかもしれません。

 

○清水委員 あそこでやるのは、エームスでしか評価していないですよね。ほかの遺伝毒性も考慮するとなると、また違ってきますね。

○大淵有害性調査機関査察官 そうですね。今年から遺伝毒性のワーキンググループが動き始めたので、今回も遺伝毒性のワーキンググループで遺伝毒性が強いと評価を頂いた物質は5物質ほどあったのですが、それを新しく変異原性通達のほうに、つい先頃11月の終わりに加えたところです。遺伝毒性(変異原性)の通達についても、国がやった試験結果だけではなくて、既存の情報を踏まえて、専門家が評価した結果を活用していくということで動き始めたところです。

○大前座長 そのほか御意見はいかがでしょうか。基本的にはリスク評価で発がんのおそれがありという判断は、まず前提にあるということですが。

○宮川委員 追加でいいですか。これから中期発がん試験等をやった場合、評価値をそこから求めることにひと工夫必要なことが出る可能性もあります。リスクが高くないという判断にも曖昧さが残るようなものもあります。そういうものに対して何らかの対応ができるようにということを考えると、リスクが高くないとされたものも含めるとなります。幾つか出てきた情報によって要因を考えて、必要なものについて対応するというところがやはり望ましいのではないかと思います。

○大前座長 そのほか御意見はいかがですか。今までの意見を少しまとめますと、基本的に発がん性があることが前提のもとですが、それを全部引っくるめてやるのか、あるいは宮川先生がおっしゃったような形、あるいは遺伝毒性の有無ごとの条件を少し付けて区分を分けるのか、そういうところの意見が出ておりますが。

○津田委員 リスクが高くないというのは、動物実験、あるいは変異原性等できちんと分かったという意味でしょうか。それとも使用量が少ないという意味でしょうか。

○大前座長 現場を測定してみて、現場の濃度が非常に低いと。十分低いといいますか、評価値に比べて低いというデータで。

○津田委員 動物だとか、そういうことのデータが有る無しとは関係ないのですね。

○大前座長 動物実験なり、あるいは過去のヒトのデータで、発がん性があることは分かっていると。ただ、実際の現場で測定した量は低いと。したがって、リスクは小さいだろうということで、あるいは500kg未満の報告はないということで、外しているという意味です。

○津田委員 現場で低いというのは、動物実験等から推定した一定のレベルよりは低いだろうということで、その前提としては、現場の把握状況がかなり普遍的に推定できる精度で、データが集まっているということが前提で、例外はあるが、動物実験の精度がそこでは問題になっているということです。

○宮川委員 現場が使用の安全値を分かっていて、きちんと守っていればという条件が付くわけですね。

○大前座長 まあ、そうですね。測定してみたら、結構低かったということで、リスクが低いという評価がされているわけです。

○西川委員 よく分からないので教えてほしいのですが、リスク評価はがん原性試験だけではなくて、当然、変異原性試験の結果を盛り込むわけですよね。

○大前座長 あるはずです。

○西川委員 変異原性があれば閾値なし、なければ閾値ありということですよね。先ほど宮川先生の意見がよく理解できなかったのですが。

○宮川委員 1つは、非常に特殊な閉鎖に近いような空間で、高濃度ばく露しているような事業場が後から見つかるという事例もあるのではないかと思います。リスク評価事業で調べた所から相当外れる事業場があったときに、それなりの注意喚起を、「ハザードとしては、これがあるのですよ」と注意喚起をしていくことは、取りこぼしをなくすという意味で有用です。

 毒性試験をもとに、評価レベルを決めて評価をするわけですが、細かな所を申しますと、遺伝毒性がある、なしの判定が難しいような物質があります。評価方法は何が正しいのか、安全性係数をかけるのがいいのか、ベンチマークドースでいくのがいいのか、場合によっては、多少曖昧さが入る。そういうことも考慮すると、リスクがそれほど高くないと判断した場合についても、ある程度情報が提供されることに意味があるという考えを理解できると思いますが。

○西川委員 参考資料2-1の所で、リスク評価に向かう矢印の中に、変異原性のデータがどのように関わっているか。ちょっと離れているような気がするのですが。

○角田化学物質評価室長 変異原性の部分で、新しい部分で言えば、変異原性が確認されたものについては、変異原性指針で指導すると同時に、短期・中期の発がん性試験をやりますと。発がん性試験をやったら、がん原性指針から長期の発がん性試験に行く場合もありますし、そのままリスク評価に行く形もあります。いずれにしても、長期発がん性試験を経由する形もありますが、直接リスク評価にいくような道もあるかと思います。

○西川委員 はい、分かりました。

○清水委員 確認ですが、発がん性が分かっていると。実際にばく露する量は少ないし、使っている量も少ないと。それを全く何の治療もしないと、大量に使った場合にはまた危険性があると。例えば、ジクロロプロパンにしても、有機則では何も制限されていなかった。それが大量に使われたために、こういう事故が起こったと。そういうことを防ぎたいという単純に考えた、そういうことでよろしいのですね。

○角田化学物質評価室長 そういうことですね。確かに、こういったものは、例えば、先ほどの図の点線で書いているようなリスクが低いと評価したものとか、打ち切ったものというのは何十もあるわけですし、それを今から一気にやるというのはなかなか大変なことでもあります。その辺はどういうふうに仕組んでいくのか、いろいろこれから詰めなければならない部分があるというのは、私ども事務局も重々承知はしております。

 やはり、ハザード面を考えたときに、ある程度指針で注意喚起をしておかないといけないのではないか、そういう問題意識で御意見を聞いているということです。

○大前座長 これは前回、あるいは今日もハザードをメインとしているので、やはりいくだろうと。この場合はリスクのことは考えなくてもいいとは言いませんが、基本的にはハザードベースでやるから、こういう指針を作るべきだというお話だと思います。そういうことでよろしいですか。3番の「発がん性のおそれありとされた物質のうち、リスクが高くないと評価された物質又は業務」及び打ち切った場合。これも含まれると思います。打ち切ったものと、リスクが高くないと評価されたものを分ける理由は特にないですよね。

○津田委員 これは生産量がごく少ないからという枠もないのですか。打ち切ったものは当然必要ないと思うのですが、現在、発がん性が分かっていて、ある程度の使用があるものもこの中に入るのですか。

○大前座長 今回はハザードベースですから、そういうことはないと思います。量の問題ではない話ですので。

○角田化学物質評価室長 打ち切った場合というのは、大分、前に作業報告を出していただいて、その後どうなったかということもあるかと思います。その辺はその後ずっと把握しているわけでもありませんので、そういう要素も考えなければいけないかと思います。

○津田委員 調査の結果、適正に使われているとか、そういうことがあればいいと思うのですが、そういうことが分からずに、そのままこちらに入ってしまうというのは、まだ危険性が残る気がします。

○大前座長 そうしましたら、皆様の多くの意見は、3番のがん原性指針を対象にするということで、よろしいですか。ハザードベースでこれをやるべきものであって、リスクベースのことは考えないと。

○宮川委員 表現として、最終的に文章にするときに、できるだけ一律ではなく、状況を考えて検討をするとか、そういうような言い方にしていただくほうが、無駄なことはしなくて済むかと思います。

○大前座長 多分、40ぐらいある物質のどれを先に選ぶかというときには、今、先生がおっしゃったように、そういうことを考える必要がありますね。今、宮川先生がおっしゃったことも含めて、(3)については、がん原性指針の対象とするということにさせていただきます。最後、「その他」について事務局から説明をよろしくお願いします。

○大淵有害性調査機関査察官 「その他」として、報告事項付きの所を予定していますので、簡単に御説明いたします。

1つ目は、今年度立ち上げた2つのワーキンググループの検討内容の一部見直しについてということで、参考資料に資料があります。参考資料3-113ページ、ワーキンググループの一部検討内容の見直しということで、先生方にはメールで御相談させていただいたのですが、今年、立ち上げた発がん性評価のワーキンググループと遺伝毒性評価のワーキンググループの業務の担当の中で、当初、発がん性のほうで掲げてきたテーマについて、遺伝毒性でやるテーマにしたほうが、より適切になるのではないかということで、一部組換えをしております。

 これが分かりやすいのが、19ページ、参考資料3-2に横長の図がありますので、こちらで御説明いたします。横長の図の縦の真ん中辺りに書いてあるのが、先ほどのフローチャートですが、右側には遺伝毒性ワーキンググループの検討事項、左側には発がん性ワーキングの検討事項ということで書いてあります。今回、役割分担を変更したのは、右側の遺伝毒性のほうで、下の2つ目の横長の四角で書いてある項目で、アンダーラインが引いた項目です。非遺伝毒性発がん性物質のスクリーニング試験対象物質の選定。同じ非遺伝毒性の発がん性物質のスクリーニング試験の試験方法の選択、試験の細部検討、結果の評価。この部分については、最初は左側の発がん性のワーキングで予定していたのですが、遺伝毒性のワーキングのほうにこの内容は変更させていただくことにしました。

 ただし、この領域というのは、簡単にどちらの領域と言いづらいところもありまして、実際の検討に当たっては、遺伝毒性のワーキングに発がん性のワーキングの先生をお二方加わっていただきます。ここにいらっしゃる西川先生と静岡の若林先生は発がん性のメンバーですが、遺伝毒性のワーキングのほうにも、非遺伝毒性のテーマについて議論するときには加わっていただくことで調整をさせていただきました。ワーキングの関係で変更があったことを御報告申し上げます。2つ目の報告事項については、角田から御説明いたします。

○角田化学物質評価室長 参考資料421ページに「リスク評価の手法」というのがあります。右上に「平成24322日有害性検討修正反映」と書いてありますが、これは実は平成243月にこの場にお諮りをして決定したものです。その際に、若干の微修正が入ってきたのですが、修正したものをまだお届けしていなかったものですから、それを入れたもので再度お配りして、御確認いただくという趣旨で今回付けさせていただきました。

 これは5ページにゴシックで書かれている文体の部分もあるのですが、このゴシックは平成243月に検討したときに修正して付け加わった部分がゴシックです。要は5ページのイ「発がん性以外の有害性を中心として評価を行う物質の場合」ということで、こういった記載がなかったものですから、この部分を入れたほうがいいのではないかということで、平成243月にお諮りして、御確認を頂いたところです。

 その際に、大変細かい話ですが、22ページの不確実係数の所で、がんの重大性についての記述がないのではないかとか、補正係数の上限についての記述がないのではないかということとか、あるいは25ページ、一番下にOECDのガイドライン等ということで、ほかのガイドラインなども読めるようにということで、上のほうにも若干文言の修正などもありますが、小検討会の名称を正しくしたとか、そういった微修正が入りました。それを直しましたということで、今回参考に提出させていただきました。あとお気付きの点があれば、御連絡をしていただいて、また整理はしたいと思います。そういう意味での御報告です。

○大前座長 ありがとうございました。今の2つの御報告について、何か御質問、あるいは御意見はありますか。

○津田委員 細かいことですが、「量-反応関係」と書いてある所は、これは用量とは違うのですか。

○角田化学物質評価室長 どこでしょうか。

○津田委員 例えば、21(2)

○角田化学物質評価室長 量-反応関係の把握。この部分が。

○津田委員 用量とは違うのですか。

○角田化学物質評価室長 同じだと思います。

○宮川委員 実験では「用量」と言いますが、そうではなくて、一般的に調査のときに「用量」という言い方はしないかもしれないので、ここは広くとって「量」。細かく言うと、「反応」のほうも、計量値と計数値で、「影響」なのか「反応」なのかということがあります。その辺は曖昧に書いてあるものとして読んでいただくのがよろしいかと思います。

○津田委員 分かりました。

○大前座長 そのほか、何か御質問はありますか。よろしいですか。なければ、今の2点の御報告をお伺いしたということです。何か、そのほか事務局からありますか。

○大淵有害性調査機関査察官 有害性評価小検討会は、今年度は、今のところこれが最終回ということで予定をしております。例年ですと2月、3月頃に評価値を決めていただく検討があるのですが、今年は委託事業の進捗状況が例年と若干異なっており、今年度中はこれが最後で、評価値の検討等は次年度になってからになるかと思います。よろしくお願いいたします。

○大前座長 次年度ということなので、4月以降ということだそうです。それでは「有害性評価小検討会」はこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

 


(了)
<照会先>

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室
電話番号: 03-5253-1111(内線 5511)

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