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2013年11月19日 第10回足場からの墜落防止措置の効果検証・評価検討会 議事録
労働基準局安全衛生部安全課建設安全対策室
○日時
平成25年11月19日(火)10:00~12:00
○場所
中央合同庁舎第5号館専用第23会議室(6階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
○出席者
参集者(敬称略)
小林謙二(座長) | 大幢勝利 |
臼井伸之介 | 田村幸雄 |
鈴木芳美 | 小野辰雄 |
原田保 | 金森勝三 |
鈴木敏彦 | 小島政章 |
才賀清二郎 | 宗像祐司 |
児玉猛 | 高橋元 |
加藤正勝 | 宮本一 |
オブザーバー
屋敷次郎 (国土交通省土地・建設産業局建設市場整備課長) |
事務局
奈良篤 (安全課長) | |
野澤英児 (建設安全対策室長) | 釜石英雄 (主任技術審査官) |
川越俊治 (技術審査官) | 磯崎勇太 (指導係長) |
○議題
(1)各団体からの意見表明に対する意見等
(2)労働安全衛生規則に基づく措置及び手すり先行工法の墜落災害防止効果(推計)
(3)労働者へのアンケート調査の実施について
(4)今後の足場からの墜落・転落災害防止対策等の現実的なあり方について
○議事
○事務局 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第10回「足場からの墜落防止措置の効果検証・評価検討会」を開催いたします。
本日はお忙しい中、本検討会に御出席いただき、まことにありがとうございます。事務局を務めます厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課建設安全対策室の磯崎と申します。よろしくお願いいたします。
まず、 資料の確認をさせていただきます。議事次第の下部【配付資料】に書かれてありますとおり、
資料1「検討会での意見を踏まえた今後の足場からの墜落・転落災害防止対策等の現実的なあり方について(案)」
資料2「足場からの墜落・転落災害防止対策等に係るその他の意見等」
資料3「労働安全衛生規則に基づく措置及び手すり先行工法の墜落災害防止効果(推計)」
資料4「足場からの墜落防止措置の効果検証・評価検討会での議論を受けた労働者へのアンケート調査の実施について(案)」
資料5「全国仮設安全事業協同組合からの提出資料」
資料6「一般社団法人日本建設業連合会からの提出資料」
資料7「大橦委員(独立行政法人労働安全衛生研究所)からの提出資料」
別冊としまして、資料8「各団体等からの意見表明に対する意見等」ということで、全国仮設安全事業協同組合から資料を提出いただいています。
資料に不足がありましたら、お知らせください。
本日の検討会は、第8回及び第9回で関係団体等からの意見表明に対する追加意見等に関する議論等、その後、今後の足場からの墜落・転落災害防止対策等の現実的なあり方について議論する予定です。また、大変恐縮ですが、本会議室は午後1時から別の会議が予定されておりますので、予定時刻である12時までに本日の会議を終了する必要がありますので、委員の皆様の御協力をよろしくお願いいたします。
次に、傍聴される方への注意事項を説明いたします。
事務局の指定した場所以外に立ち入ることはできません。
携帯電話等音の出る機器については、電源を切るか、マナーモードに設定してください。
写真撮影やビデオカメラ等の使用は事務局の指示に従ってください。
カメラ撮りは会議の冒頭までといたします。
会議の妨げにならないように静かにしてください。
その他、座長と事務局の指示に従っていただくようお願いいたします。
また、報道関係者の皆様方におかれましては、カメラ撮りはここまでとさせていただきますので、御了承ください。それでは、以降の進行を小林座長にお願いいたします。
○小林座長 皆さん、おはようございます。お忙しいところ、ありがとうございます。小林でございます。
今、事務局から御説明がありましたが、本日は、議題1、これまで御議論いただいた中でもって足りない部分について、追加の質問、意見を御説明いただくということ、2番では、厚労省で行っていただきました推計の御説明、さらにアンケートの御要望がありましたので、そのアンケートの実施についての御説明をいただきます。さらに、時間がありましたら、今後の足場からの墜落・災害防止に向けての現実的なあり方について御議論いただきます。
先ほど事務局からもありましたように、本日は時間が限られているということでありますので、後で出てくる話かもしれませんけれども、次回12月16日が予定されていますが、そういうところで御議論を、またいただかなければいけないということになっています。これまで8回、9回検討会を開いて御議論いただきましたが、まだ不十分であるということであります。意見あるいは質問が提出されておりますので、まずはそれぞれ御説明をいただきたいと思っております。既に提出されている団体に対する御質問については、説明の後に回答をいただきたいと思っております。
まずは資料の順に御説明いただきたいと思います。資料5、全国仮設安全事業協同組合からの趣旨を御説明いただきたいと思います。小野委員からお願いいたします。
○小野委員 それでは、資料5について御説明申し上げます。
標題は、「『墜落防止の手立て』がありながら法制化せず、人命を損ない続けているのは『不作為』であり、それは『無責任』であり、『罪深い』ことである」という具合にまとめております。なぜかといえば、その理由について説明をいたします。
・「墜落防止の手立て」とは、平成19年5月から平成20年10月まで10回に亘って開催された「足場からの墜落防止措置に関する調査研究会」が全会一致で取りまとめた「手すり先行工法を含む『より安全な措置』」を言います。
・何故「不作為」であり、「無責任」で「罪深い」のか。以下の事実を知りながら「手すり先行工法を含む『より安全な措置』」を法制化せず、安衛則を遵守しているかどうか、何年も堂々巡りをしているからです。
マル1厚生労働省は、「手すり先行工法」における「手すり据置方式」と「手すり先行専用方式」が安衛則第563条第1項第3号に基づく措置をも兼ねることから、データ分析により、足場の組立・解体時における最上層からの墜落・転落のみならず通常作業時における墜落・転落災害の防止にも効果が高いと評価しています。また、「手すり先行工法」を適用した現場の墜落災害率が「安衛則」を適用した現場の58分の1であることは厚生労働省のデータから明らかです。
マル2国土交通省は「手すり先行工法による二段手すりと幅木の設置」を平成15年度から共通仕様書に位置づけており、その結果、直轄工事では、適正に設置された足場からは1件の墜落死亡災害も発生していません。
マル3本年2月25日に厚生労働大臣が策定した第12次労働災害防止計画において、「労働災害をゼロにする」ことが目標とされております。
それを受けまして、提言です。
(1(ローマ数字))手すり先行工法を含む「より安全な措置」を法制化すべきです。
(2(ローマ数字))足場の組立・変更・解体後において仮設安全監理者等の十分な知識・経験を有する第三者によるチェックリストに基づく安全点検を法制化すべきです。
・国土交通省は「重点対策」において第三者点検を重視しており、直轄工事において、事業者から指名を受けた仮設安全監理者等の十分な知識・経験を有する第三者(=「足場の組立て作業を行った者以外の者」)という位置づけで点検を行うこととしています。
(3(ローマ数字))上記(1(ローマ数字))、(2(ローマ数字))の措置が確実に実施されるためには、官民の発注者の責任において安全経費と労災保険料を別枠計上するとともに、安全経費については受注者である元請の責任において関係請負人に確実に渡るようにし、災害補償については元請が一括して補償の責任を負い、下請けの一人親方であっても労働者とみなし同等の補償が受けられるよう、法制化すべきです。別枠計上という意味は、競争入札の対象にさせないということを言っております。
・一人親方は、元請による労災の対象になれないだけでなく、保険料が高いため労災に特別加入できない者が多い。労災保険料が発注者の責任において別枠計上され、労働者とみなされることにより救済され、これによって一人親方問題は解決されます。
(4(ローマ数字))上記(1(ローマ数字))、(2(ローマ数字))及び(3(ローマ数字))の措置が確実に実施されるためには監督体制の強化が必要であり、民間人を活用した監視員制度の導入等を法制化すべきです。
(4(ローマ数字))その他、墜落防止のための重要課題
マル1一側足場の使用は「躯体からのスペースが1m未満」の場合に限定するよう、使用規定を法制化すべきです。
マル2足場の組立て等作業主任者に係わる高さ5mの規制については、高さ5m未満の墜落災害が全体の70%も占めていることに鑑み規制を廃止し、また、計画の届出に関わる高さ10m・足場の設置期間60日の規制については、近年メンテナンスの時代に入っていることに鑑み対象を拡大する方向で再検討すべきです。
マル3屋根や斜面・法面からの墜落防止対策として、JISA8971(屋根工事用足場及び施工方法)やJISA8972(斜面・法面工事用仮設設備)を積極的に適用するよう、安衛則に規定すべきです。
以上が資料5における私の説明であります。
○小林座長 小野委員、どうもありがとうございました。これに対する御意見、いろいろあろうかと思いますけれども、まずは一般社団法人日本建設業連合会から資料6が提出されておりますので、それに移らせていただきたいと思います。鈴木委員に御説明をお願いいたします。
○鈴木(敏)委員 日建連からは、全国仮設安全事業協同組合さんの御意見に対する質疑ということでまとめています。
まず、1つ目なのですが、災害率が例の58分の1に減るというところですけれども、今のページの裏側を見ていただくと、同じような算式でこれを出していくと、ここでは手すり先行工法、基本的にはわく組足場とくさび緊結足場での比較をすべきだろうということで、改めてこれを計算してみたところ、2.6分の1程度の減少になろうということです。この表で誤りがあって、この枠の一番下の段「すべてのわく組、くさび緊結足場現場で手すり先行工法を適用した場合の災害者数(D)とその割合」の「17人」というのは、「24」になると思います。20件と上の4件を足して24件。それが12人ということで、50%減ということになろうかと思います。今の58分の1というところは、2.6分の1というふうな捉え方をすべきだろうという意見でございます。
1-マル2です。9月5日の意見書のマル1のマル3では、先行手すり自体の具体的効果というところで、容易に安全帯を取り付けられるということのように読めますけれども、それでよいのでしょうかということです。
1-マル3は、そのような効果は非常にわかりやすいと言うのですが、その他に具体的な効果としてはどのようなことが考えられるでしょうかということです。
1-マル4として、第三者の点検に関するところなのですが、作業所内で選定する足場の点検者ではなくて、第三者にする目的というのは、具体的にはどのようなことを指しているのでございましょうかということです。
基本的に災害を発生させたくないというのは、当然ながら作業所の人間が最も強く思っているところです。日々、現場の足場というのは、作業の状況によって部分的に変わっていったりするようなところがあるということです。そういう状況を踏まえた、認識した作業所の関係者による点検が必要ではないかと思います。
建設会社では、いろんな現場の状況を把握しながら、いつ危険な状態であるのかということをいろいろ把握しながら現場を回っています。そういう中で災害が発生しているのは事実かなと思っています。一生懸命危険な状態を把握しながら、そのポイントで点検に回っているのが実情ではないかなと思っています。そこをわけも知らずに第三者が入ってきて、どのような足場のタイミングであるかということを認識しないまま点検されて、言いたいことを言うとか、そういうものは避けていただきたいなと思っています。
適宜作業所のパトロールを実施しているということで、必要に応じて現場の方はやっているということで、それが一番効果を高めることかなと思っています。ということで、第三者にする目的とはどのようなことなのか、そのほかに御意見があるのだろうか、お伺いしたいという旨でございます。以上です。
○小林座長 どうもありがとうございました。
ただいま日本建設業連合会からいただきましたことは、直接的に全国仮設安全事業協同組合の御意見に対しての御質問ですので、この場で小野委員に御回答いただけますか。
○小野委員 それでは、鈴木委員にお答えいたします。
まず、1-マル1の件ですが、当組合の推計は、「手すり先行工法を採用可能な全ての現場(わく組・くさび緊結足場以外のものを含む。)に同工法を採用した場合に、墜落災害をどの程度防止できるか」という観点から、安衛則に基づく措置を講じていない現場も含めて、過去3回の検討会報告書で示されたデータをもとに行ったものであります。足場の種類別のデータは、その後、安全衛生部から示されたものであります。
日建連さんの推計についてですが、災害の割合の「20件」の出所の教示をお願いしたいと思います。その計算の捉え方からすれば、「17人→12人」は「24人→12人」となるのではないでしょうか。それは今、鈴木委員がそのように訂正されました。
マル2として、追加で示された足場の種類別データをもとに、わく組・くさび緊結足場について、「墜落防止措置を全くしていなかったもの」を「安衛則適用」に含めずに推計すると、「79人→12人(7分の1)」になります。当組合の推計と同様に、「墜落防止措置を全くしていなかったもの」を「安衛則適用」に含めて推計しますと、「206人→12人(17分の1)」となるということです。
1-マル2及び1-マル3について。「手すり先行工法」は、「墜落・転落」そのものを防止することを目的とする工法であり、安全帯は、万が一墜落・転落した場合の二次的な措置という考えであります。
「手すり先行工法」は、まず、墜落・転落を防止することを目的とするものであって、安全帯を取り付けることを目的とするものではありませんが、万一の場合に備えるための安全帯の取り付けももちろん可能であります。
1-マル4についてです。第三者とは、国土交通省の重点対策と同様に、「足場の組立て作業を行った者以外の十分な知識と経験を有する者」という位置付けであります。足場の組立・変更後の使用前の点検は、公平、中立な立場から「ダメなものをダメと指摘し、改善指導の徹底を図ることにより、墜落災害を未然に防止する」との観点から、直接の当事者ではなく、第三者が行うことが社会の常識であるということです。
ですから、今、日建連さんから御発言がありました。一生懸命やっているよと。それは十分わかります。しかしながら、やった結果、営々として墜落災害が続いているということであります。やり方を変えなければ、本当に視点を変えなければ、これはとまりません。ですから、よそ者はいけない、現場へ入ってきて指摘してどうのこうのと、そんなことは言わないでください。安全衛生コンサルタントもいるでしょう。そういう専門の方がもう6,000名もいるのですよ。場内にも当該足場の組立て作業を行った者以外のスペシャリストもいるのです。そういう方も利用しながら、第三者の視点でやるべきだという意味であります。以上です。
○小林座長 どうもありがとうございました。
今、御質問に対して御回答をいただきましたけれども、鈴木委員、何か御意見はありますか。
○鈴木(敏)委員 今の話で、最初の全ての足場において、ローリング、一側足場、つり足場等においても手すり先行を前提にされているということですね。
○小野委員 もちろん、そうです。ローリングタワーも非常に安易です。容易にできます。くさび緊結式足場などというのは、わく組足場より簡単に手すり先行工法が実施できます。しかも、くさび緊結足場については業界内で広く知れ渡っています。たくさんあります。
○鈴木(敏)委員 私どもがやったのは、くさび緊結とわく組足場においては、当然ながら手すり先行という前提で比較をしているわけですから、それはそれでいいと思うのですけれども、おっしゃられたのは、そのほかについてもということだと思います。
マル2では、万一のために安全帯を使用するということなのですが、私の経験から言うと、安全帯が優先のような気がします。最上階での足場の組立ては、たとえ手すり先行とは言いながら、片側は手すりがないような状態で墜落のおそれが十分にあり得るところというふうに思っています。ということで、そういうところでも安全帯の使用を最優先にしろという指導を今、しているところですが、その辺の認識が違うということですね。
○小野委員 私は、その意見に反対です。まず、墜落しないための措置をして、その後、安全帯だという基本的な考えはそこから来ています。だから、安全帯ありきで全部スタートするのではありません。墜落防止策をまず施して、それで念のため二次的に安全帯を使用するというのが基本的な考えであります。
○小林座長 よろしいですか。この御回答に関する。どうぞ。
○小島委員 小野委員の資料5で、点検のところですけれども、確かに国土交通省さんの資料とか、さまざまなところで書かれてあるのが「足場の組立完了時等の点検においては」ということで、例えば作業主任者とか、コンサルタントとか、仮設安全監理者の資格取得者とかそういったところに、国土交通省の場合は点検を半ば義務付けているような状況になっていると思うのです。
2ページのここの提言では「組立・変更・解体後」と明確に書かれてありますけれども、その部分での点検というふうに限定された話ということでよろしいのですね。
○小野委員 そうです。
○小島委員 鈴木委員の方の話は、つまり、現場は組立てしたけれども、その後さまざまな状況で変更する。一番気になるところは変更というところなのです。つまり、現場は仕事の状況に応じて、特に躯体側については日常、変更したりすることがあるわけです。恐らくそこの話がちょっと食い違うところだと思うのです。
つまり、第三者、第三者と言うのですけれども、極論を言いますと、その第三者はずっと常駐していないと現場は成り立たなくなるのではないかということがあって、今のような意見もあると思うのです。
つまり、何度も申し上げますけれども、組立てしました、例えば大きな変更がありました、あるいはこれを解体しますという、狭義の意味での断面で第三者が監視、そういう言葉が的確かどうかわかりませんけれども、そういうことだというふうに理解してよろしいでしょうか。
○小野委員 私の言わんとしていることは、組立てあるいは変更後の使用前の点検のことについて指しております。ですから、変更した場合、小さな変更であっても大きな変更であっても同じように捉えなければいけない。組んだ人が自前で点検をするというのは、もうだめですよということを言っているわけです。ですから、場内にはスペシャリスト、あるいは能力向上教育を受けた人、あるいは計画作成参画者の資格を持った人とか、厚労省が指摘している「十分な知識・経験を有する者」というのが必ずおりますから、そういう人の目でやってくださいという意味です。
私たちが今、言っているところは、車で言えば定期点検のことを指します。日々の日常運転は運転者がやってくださいという部分ですからね。そういうことです。
○小林座長 どうもありがとうございました。それでは、資料7に進ませていただきたいと思います。大幢委員から全部で5枚ぐらいの資料をいただいております。では、大幢委員、説明をお願いします。
○大幢委員 それでは、資料7について説明したいと思います。私の方から3つほど意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、建設労務安全研究会と建設産業専門団体連合会さんが躯体と足場のすき間について提案されていますが、人体の測定データから考察をしてみました。そのもととなるのは、一般社団法人人間生活工学研究センターの「日本人の人体計測データベース2004-2006」を参考にしました。墜落するときに人体はどこかがひっかかるということが考えられるのですが、人体の前後の幅は下の図のDということで、この幅がある一定より狭ければ人が落ちないということが考えられます。人間生活工学研究センターのデータを見ますと、臀部が最も厚く、落下する際にこの部分が引っかかると考えられます。このデータベースの中に99%をカバーする値、これを「1%タイル値」と呼んでおりますが、というのが掲載されておりまして、統計的に99%をカバーする幅は、20歳から69歳男子を対象に調べてみますと、60から69歳というのが最も小さく、平均値で237.8mm、標準偏差σ20.6mmで、1%タイル値が191.3mmとなりまして、作業着等の厚さ、これは安全帯とかいろいろ含めまして200mm以下にすることが妥当ではないかと考えます。
参考値として、フランス、ドイツ、米国の基準がありまして、フランスが200mm、ドイツが300mm、アメリカは360mm。イギリスは、「人が墜落するおそれがあるすき間を生じないようにh」という概念になっておりますが、そこからしても200mmというのは妥当な数字ではないかと考えられます。
下の図を見ていただきたいと思います。これは上から見た図なのですが、躯体と足場のすき間が200mm以下になればいいのではないかということをデータとして提案したいと思います。
2番目として各団体の用いた労働災害データなのですが、各団体でいろんなデータを用いて意見表明がなされていますが、これは客観的に精査すべきではないか。例えば日建連さんの第8回の資料6の1ページ目の1のマル1で、平成21~23年度の組立解体中の足場最上階からの墜落災害発生時に、全体の98%(308件中302件)で安衛則に定める措置を講じていなかったと記載されております。
一方で、全国仮設安全事業協同組合の第8回の資料4-1に付随する資料3では、平成23年度の足場からの墜落災害のうち99.1%(422件中418件)が安衛則適用とされている。どちらが正しいのか精査して論ずるべきではないかと考えます。ただ、検討会の平成23年度分の報告書では、足場からの墜落災害のうち89.6%(422件中378件)で安衛則に定める措置を講じていなかったと報告されております。
最後のは、23年度の報告書にそう記載されているというデータであります。「3.くさび緊結式足場の組立・解体時における安全帯取付方法の実験的検討について」ということです。
その次の別添資料は、ある学会で出した論文に少し加筆したものですが、その論文の2ページ目の図1に「足場からの墜落防止に関する安全対策を検討する上での基本的な考え方の例」ということで、平成22年度のこの検討会の報告書に記載されていることでありますが、リスクアセスメントの観点から、それぞれの作業に適した対策をしましょうということが提言されております。
優先順位マル4というのは、それが4番目だから安全ではないということではなくて、それぞれの段階において適切なこと、もしかしたらマル1よりマル4のほうが安全な場合も現場においては十分考えられることだと思いますが、その中で、足場を使用しないということが最も適切な墜落防止対策であります。それが1番目の話なのですが、そういうことができないことが多いということで、それぞれの場面においてリスクを同定して安全対策を行うというふうになっておりますが、その中で、マル4に「臨時に手すり等を外す際や組合・解体時等において、あらかじめ手すり等を設けることが困難な場合における安全帯の使用」というのがあるのですが、そのことに基づきまして、くさび緊結式足場におきまして、3ページ目のような形でくさびポケットというのがありまして、ここにくさびをかけて組み立て、解体ができるのではないかということです。この3種類に限ってですが、選んだ理由というのは特になく、入手しやすさからこれを選んだのですが、これに安全帯のフックをかけて、人体ダミーを用いまして落下試験を行いました。くさびをこういう状態でかけた場合に足場が安全かどうかということを検討しました。そのようなことがここに書いてあります。
今回実験を行った製品に限って、あと、フックもいろんな種類があって、割と入りやすい細目のフックを選んだのですが、そういう製品では、足場のくさび取付穴に安全帯をかけて使用できるということが確認できました。これを参照していただきたいと思います。以上です。
○小林座長 どうもありがとうございました。先へ進む前に、ここら辺のデータに関して、田村先生とか臼井先生、何かございますか。
○臼井委員 大幢さん、Dの200mmというのは、人間生活工学研究センターで、男性の場合ですね。
○大幢委員 そうです。
○臼井委員 だから、女性の場合はもっと前後の幅が狭くなるということですね。
○大幢委員 狭くなると思います。それは確認すべきことであると思います。
○臼井委員 あと、これはへこむといったら変ですけれども、圧縮する場合もあるのですね。
○大幢委員 あると思います。
○臼井委員 そういった意味では、そんなに急にすぽーんと落ちるわけでもないでしょうから、そこまで考えなくてもいいのかもしれませんけれども、ちょっと押されたら、もっと狭くなるかなと、そんな印象を持ちました。
○大幢委員 そうですね。その辺をどこにするのかということについては、これはあくまで寸法からの設定ですので、ある程度使う側で合意をする必要があるのではないかと考えております。作業着を着たりとか、安全帯をしたりとか、人間の幅だけでは規定できないものがありますので、それは必要だと。
○小林座長 そこら辺はお尻だけでなくて、腕や何かで止まるなどということも含めて見ないと。これは動的な動きで通過するかどうかという話ですので、余り静的な寸法だけだとうまくないという気がしますけれども。
○大幢委員 もし決めるのでしたら、本当に人体ダミーを落として。ただ、そういう薄い人体ダミーがあるのかというのが問題なのですが、決める必要があるのではないかなと思います。
○小林座長 1つの例といいますか、根拠の例ということですね。
○大幢委員 根拠の例です。
○小林座長 どうもありがとうございました。また後でお話が出ることと思います。どうぞ。
○鈴木(芳)委員 仮設工業会の鈴木です。
3番目のくさびにフックをかける件なのですが、このレポートをよく読むと、いろんな条件のもとで実験されていることがわかるので、その実験結果については非常に尊重すべきだと思うのですが、幾つかちょっと懸念されることがありまして、そういう点をコメントさせていただきたいのです。
1つは、同じ会社の機材であっても型式の違う機材がたくさんありますので、そういったものについてはどうか。それから、ほかのメーカーのものについてはどうか。それは大幢さんが発言されていましたので、その点は十分注意する必要がある。それから、飛行機などでも問題になっていますけれども、ポケットの部分というのは溶接ですから、どうしても金属疲労の問題と不可分な話なので、その辺をどう考えていくかということもちょっと検討しなければいけないということがあるのではないか。
あと、フックなのですが、安全帯のフックというのは、垂直方向については規格か何かがあったかと思うのですけれども、横方向というか、ねじれとかそういう力が加わった場合、定めがなかったように思うのです。そういうことがあるということを承知の上で、この辺については慎重な検討がまだまだ必要なのではないかと思いますので、その点をコメントさせてください。以上です。
○小林座長 どうもありがとうございました。よろしいですか。
○大幢委員 そうですね。私もその点は重々承知で提案させていただいております。あとは無理やりポケットにつける必要がなくて、これは製品名がどうかわかりませんが、取元クランプ、キャッチクランプというのですか、単管につけて安全帯をかけられるようなクランプがありますので、そういうのをうまく使ってもいいのではないか。要するに、強度的に余り保証できない場合ですね。そうすればフックも確実にどんな製品でも大丈夫でしょうし、いいのではないかと考えています。以上です。
○小林座長 どうぞ。
○小野委員 大幢さんの御提案は非常に大切な部分を突いていると思うのです。特に人が落下しない間隔、すき間のことを上から見た平面の部分で言われています。ですから、これは狭ければ狭いほどいい。私たちが通常考えているのは300mm。ドイツを見習ったわけではないですけれども、私たちの実験では、300mmを超えますと墜落しやすいという実験データが出ています。これは上から見た平面の図ですから、これと同等に大切なのは、縦方向の部分のすき間です。特に足元の縦方向のすき間、下さんとかあるいは中さんと床の間ですが、これも私たちは実験をやっています。やはり300mmを超えると簡単に落ちるということです。300mmだと何とか助かるということなのです。これも実験をやっています。
現実的に厚労省から災害のデータが出ています。今回も出ています。下さんの下から、あるいは中さんの床との間から落っこちて死亡している例があるわけです。ですから、私たちが主張しているのは、下さんとか中さん、それはそれで大事なのですが、まず足元には爪先板、幅木を設けて、滑ってもそこで滑り止めになるようなものが必要だと。それが爪先板だということを言っているわけです。ですから、中さんの下には必ず爪先板が必要ですよということなのです。現実に毎回出てくる厚労省のデータから下さんあるいは中さんと床の間から落っこっている例があるわけです。
ですから、大幢さんの今の指摘は、私たちも物すごく大事な部分だと思います。くさび緊結式足場についての安全帯の取り付け方法という指摘の論文についてですが、まず、くさび緊結式足場というのは手すり先行工法が一番実施しやすいやつで、これは非常に普及しています。
もう一つ、安全帯を物すごく堅い支柱に取りつけるということですから、これはものすごい衝撃が強いのです。例えばこの場合ですと少なくとも衝撃荷重が800キロで、この場合は1,200キロの衝撃荷重が加わります。これが私たちのデータであります。
ですから、安全帯を付ける場合、なるべく衝撃を吸収してくれるような部分に付けたらいい。それから必ず腰より上につけなければいけないということだと思います。
それから、手すり先行工法でやったら、衝撃荷重を吸収するようなやつは大体300キロぐらいになっています。800キロから300キロに落ちているということです。
○小林座長 どうぞ。
○宗像委員 すき間の話と手すり、安全帯をつけるというところに関して今、お話が出ていましたので、意見でも何でもないのですけれども、現実的なところをちょっとお話ししようかなと思っています。
実際足場を組み立てる作業者の中には、今、フックのところに安全帯を引っかけるというのを自分のところの作業手順として実施しているところがあります。良し悪しというのは、実験のデータその他もろもろ、いろんなことを加味して良しとしなければいけないのか、悪しとしなければいけないのかということになると思いますが、実際にそういう運用が行われていることがあるということを皆さんにも御認識いただきたいと思います。
このすき間のところですけれども、理論的に物すごく正しく検証されているのだと思いますが、実際に足場を組む場合というのは、糸を張って、墨を出してというわけではないので、今、30センチ以内という基準で運用されている場合に、実際にそのすき間は25センチから30センチの間ぐらいでやられている。30センチ以内におさめるということが基本になります。
31 センチになると、足場屋さんはやり直しとなってしまうのです。ですから、内側にアローアンスを見てやります。
そういう状態でやっていって躯体との離れですから、実際仕上げ面になると、そこからプラスアルファ足場側に寄ってくるのです。そこのところの足場をどう立てるか。今、30センチのところで26~27センチの間隔でやっている。そこに10センチぐらいの仕上げ面がふけてくると、15~16センチのすき間になってくる。15~16センチでようやっと作業ができるか、できないかということ。それが20からスタートになると、17~18センチ、場合によっては15センチぐらいからスタートになって、10センチふけたら、残りは5センチ、7センチというところになってくると、現実的に作業を行うためには、もう一回足場を組み直さなければいけない。などということが出てくるということも御認識の中につけ加えていただければなと思います。余計なことでした。
○小林座長 どうもありがとうございました。それでは、次へ進めさせていただきたいと思います。
前回、宮本委員の方から、仮設安全事業協同組合に関して、一人親方の数あるいは状況に関して御質問があったのですが、資料8の中にその御回答が含まれていることと思いますけれども、宮本委員の御質問に関して御説明いただけますか。
○小野委員 それでは、回答いたします。宮本委員の御質問「『一人親方の54万人が労災に加入できず』とあるが、この数字の根拠は何か。また、総務省の統計には『雇無業主』という言葉はあるが、『一人親方』という表現はない」というものに対する回答です。
「一人親方の54万人」ではなく、「一人親方等の54万人」である。この質問は、「一人親方等:91万人」のうちの「特別労災未加入者:54万人」についての質問であります。91万人という数字は、総務省「労働力統計」の「自営業主・家族従業者」の総数91万人を意味しております。これを「一人親方等」と表現したのは、「自営業主・家族従業者」の大宗をなす「雇無業種」を「一人親方」と表現している厚生労働省に倣ったものであります。「一人親方等の特別労災未加入者:54万人」の根拠でありますが、「一人親方」を除く「自営業主・家族従業者」のうちに「特別労災加入者」が何人いるかが不明であったので、厚生労働省の確定値である「一人親方の特別労災加入者:37万人」を91万人から単純に差し引いて算出したものであります。以上が宮本委員に対する回答です。
○小林座長 どうもありがとうございました。宮本委員、御質問の御回答としてはこれでいいですか。
○宮本委員 ただ今の小野委員の御説明なのですけれども、あくまで推計ということなのですね。そこは行政側としてどのように考えられるのかなというのがちょっと気になるところではあります。今、「一人親方」という表現そのものがさまざまな形を含んでいますので、正確にそういうものを捉え切れない現状だと思うのです。そういう中で、何万人という確定値的なものが果たして今後の議論の中でどのような位置になるのかなというのは、ちょっと懸念をしているところであります。
○小林座長 どうもありがとうございます。
それでは、今、一人ずつの御質問あるいは御回答をいただきましたが、今までの御意見、追加資料、あるいは御質問、御回答に関して、まとめて御議論いただきたいと思いますけれども、何かございますでしょうか。どうぞ。
○ 川越技術審査官 先ほど小野委員から説明があった件で、宮本委員のほうで少し注意したほうがいいというお話がありましたが、念のため、労災保険の特別加入の状況について、手元にデータがあるので、御紹介いたします。
「自営業主・家族従事者」の総数が、総務省の統計で91万人。これは一人親方を含んでいる数字でます。一人親方、先ほど来出ている雇用無し業主というものを「一人親方」と仮定すると、その数が60万人です。雇用無し業主は「自営業主・家族従事者」の中に含まれていますので、一人親方の特別加入者及び自営業者・家族従事者の特別加入者を合計すると、76万人の方が特別加入者として登録されています。単純にこれを差し引きすると約15万人程度が未加入ということになろうかと思いますが、そこまでははっきり言えないであろうということで、そこまでは言っておりません。そういう数字があるということを御理解いただければと思います。
○小林座長 加藤委員、どうぞ。
○加藤委員 労研の加藤ですけれども、今、議論にしているのは足場をいかに安全にすべきかという話であって、特別加入の話とかをすると、これはいわゆる労働保険の方の労災保険法だとか徴収法の話で、法律が全然違うものですから、話が一元の話でできないと思うのです。だから、この辺は話を分けたほうがいいと思います。
○小林座長 ありがとうございます。他に御意見、いかがでしょうか。どうぞ。
○小野委員 今の加藤委員のお話ですけれども、一人親方問題というのは非常に大切な問題でありまして、法律が違うからではなくて、少なくともこれは厚労省の管轄であります。ですから、ここの会議を切り口としてこの問題まで入っていかないと、建設業界の未来はありませんと言いたい。しかも、そういう中小零細、特に一人親方の部分、30人未満のところで被災率、災害の90%を背負っているという現実。こういうところに日が当たるようにしてあげなければいけないということです。
厚労省の第12次労災防止計画で、とにかく安全経費がみんな行き渡るように、確保するようにしなければいけない、しかも、墜落災害ゼロにするのだという意気込みでやらなければいけないと言っています。だから、ここの部門が担当しなくてどこがやるのですかということです。しかも、これは全部厚労省に関係した問題です。ここからそういう問題が派生して、大きくうねりを上げて業界全体が幸せになるようにしていかないといけないという問題です。と私は考えます。だから、その旨、全体の思想が私の発言の中で流れています。
○加藤委員 私が言いたいのは、ここの席は足場の安全についていかに検討すべきかということであって、そういう問題があるならば、違う検討会でやるべきではないのでしょうかということですよ。
○小野委員 主催者である厚労省がどういう形をとるかですが、ここで切ってしまうのではなくて、この問題を積み残しながら厚労省は進むべきだと思います。
○小林座長 ここでの解決策を探るということではなく、課題として今、持っているということですね。
○小野委員 ここで消化できなければ、それを別の部門に送るという部分ですけどね。だから、それをここで切って捨てるべきではないということです。
確かに宮本委員のところなどはその体制が本当に多いわけですよ。私らのところにもたくさんおります。一人親方問題ですね。結局、安全経費をもらえないから、しわ寄せを全部受けるということですね。それから労災の加入もできない。保険料が物すごく高いのですよ。加入していると先ほど厚労省さんが発表しました。だけど、本当に微々たる金額しか掛けていないのです。本来なら日当1万円前後保証してもらいたい部分ですけれども、日当2,000~3,000円の部分でしか掛けられないのです。現実にそういう人が多いのです。労災保険も掛けられないということになりますと、結局、どこへ行くかというと、今、建設業界から生活保護者のところへたくさん行っていますよ。認定を受けて。
○小林座長 どうぞ。
○半田安全衛生部長 確かにおっしゃったようにここの中心課題は足場でございますけれども、それをめぐったさまざまな問題があれば、まとまれば一番いいのですが、まとまらないならまとまらないでも結構ですが、こういう意見がありましたということを私どもが責任を持って担当部局に伝えますので、それはそれで御議論いただければと思います。
ただ、中心議題、今回特にお願いしているのは、足場からの墜落防止ということが中心にあったかと思いますので、ここはぜひおまとめをお願いしたいなと考えております。以上です。
○小野委員 ですから、墜落を物理的に防げるということは私もわかっています。しかし、物理的に防ぐための背景がどこにあるのか。費用がない、お金がない、しわ寄せが全部そういうところへ行くという背景が物すごく大事なのです。そこを解決しない限りはだめですね。というか、費用の負担は国民の負担だということなのです。発注者が負担して、それを元請であるゼネコンがちゃんともらって、そこでは競争をしてはだめだということです。安全経費と保険料までたたき合いの対象にさせてはだめだということなのです。
元請さんは一次受注者として、そこで働く労働者に対してそういう経費が行き渡るように配慮しなければ墜落災害の撲滅にはつながらない。それが今の社会の実勢ですよ。
○小林座長 建設業の中でずっと続いている問題、そういう残された課題をここの委員会としても課題として持っていくということは重要なことだと思います。
○小野委員 ありがとうございます。
○小林座長 ほかに。どうぞ。
○金森委員 今、第三者を現場に入れて足場の検査というふうなことが小野さんのほうからありましたけれども、それに関してはそんなに悪いことではないとは思うのですが、ただ、先ほどいろんな意見があったように、やはり現場には現場のいろんな事情もありますし、現場から見直して、先般私が申し上げているように、今まで資格を取っている主任者の方々の再教育を定期的にやっていかないと良くならないと思います。
木造の一般住宅等をやっている職人にしてみますと、足場はかなりの範囲で良くなってきているのですね。今、私はそんなに不便を感じたものはないわけですけれども、ただ、資格を持っている人も持っていない人も自由に組み立てているような状況があるので、そうした中で事故が起きる。そういうことがないような教育方法をしながら、資格を持ったら、それに見合った責任を持たせるということをやっていかないと、いろんなものを開発しても良くならないのではないかなと思っております。3年、5年に1回は最低でも再講習をやりながら教育していくという方法が大事だと思っています。
○小林座長 どうもありがとうございました。御意見は他にございますか。どうぞ。
○加藤委員 資料5ですけれども、1つ目は私の感覚の違いだけの話で、一番最初に「墜落防止の手立て」という書き方をしていまして、説明の中に「平成19年から」というふうな話で、「全会一致で取りまとめた『手すり先行工法』を含む『より安全な措置』」という表現があります。これは前回、私も出ていた検討会の話でよろしいですか。
○小野委員 そうです。
○加藤委員 私の認識としては、この表現は、いろいろ表現の自由があるかもしれないけれども、書き方として納得できないということは申し上げておきたいと思います。
あと、質問ですけれども、下のマル2で「平成15年度から共通仕様書に位置付けられており、その結果、直轄工事では、適正に設置された足場からは1件の墜落死亡災害も発生していない」ということで、修飾語が入っているのですが、適正でない足場からの墜落事故というのがあったのかないのか、1件も本当にないのか、その辺をちょっとお聞きしたいのですが。
○小野委員 お答えいたします。まず最初の御質問ですけれども、平成19年5月から20年10月までの約1年半に10回にわたって「足場からの墜落防止措置に関する調査研究会」が行われました。その結果、厚生労働省から「手すり先行工法」あるいは「より安全な措置」という通達、文書が出ましたという意味です、これは。ですから、それは厚生労働省にお聞きになってもらえば結構だと思います。
適正に手すり先行工法により足場が設置されたところから1件の墜落事故もないというのは、国交省の発言であります。国交省のデータから国交省の方が国会で答弁しておりましたということです。
○小林座長 加藤委員、よろしいですか。どうぞ。
○川越技術審査官 国交省の現場ではということをおっしゃいましたけれども、一応、行政で3年間分のデータを持っています。その中で、手すり先行工法を採用していた現場での足場からの墜落災害を全部確認したところ、手すり先行工法採用現場で起きたものが全部で19件ありました。そのうち公共工事で起きたものが14件、民間工事で5件あります。公共工事の中で国発注のものが2件ありました。以上です。
○小林座長 どうぞ。
○小野委員 それは国交省とお打ち合わせをされた数字でしょうか。というか、国交省が国会で答弁なさっていたことなのですね。だから、国交省直轄工事で2件という話でしたね。国交省ではゼロだったと言っています。
○小林座長 そこら辺はちょっと精査が必要かもしれません。
○小野委員 それは厚労省と国交省がお打ち合わせをしてもらえばいいことだと思います。
○小林座長 どうぞ。
○小島委員 先ほど国交省の話になりましたので、この場で皆さん御承知の話だと思いますけれども、足場からの墜落事故防止重点対策というのが出されたりして、我々の団体にも実施という通達が回ってきまして、先ほど来小野委員の方から出されているような話も当然存じ上げています。
その中の7番目に「安全活動の評価 直轄工事においては、請負者から提出された安全活動の創意工夫の成果を、工事成績評価の判断材料の1つとする(各種チェックリストの活用や看板設置等)」という項目があります。
これはどういうことかと申しますと、これも御存じだと思いますが、今は手すり先行のありなしという少し狭義のお話をなさっていますけれども、私もゼネコンの立場で申し上げますが、公共工事については工事成績評価というのがありまして、仕事が終わりますと、評価があります。その中には安全の評価とか創意工夫とか、さまざまな評価がありまして、私どももその仕様書を守るのは当然ですし、法律を守るのは当然ですし、御指示をされるのは一生懸命守るというのは当然なのですが、やはり最終的な評価というのがありますので、点検とかパトロールとか、そういうところもきちっとやるというのが背景にあるということだけは御承知ください。
公共工事についてはそういう評価がある。結果として墜落した、していないというのは大きなポイントなのですが、それ以上に、工事の取組について評価があるということは、我々ゼネコンにとってはすごく重要な意識付けになっているということを御理解ください。
○小林座長 どうもありがとうございました。今、資料5から7に関して特に御意見を伺っているつもりですけれども、この範囲の中でさらに御意見、御質問がありますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、話の順序ですが、事務局から出していただいている資料3と4に関して御説明をいただきたいと思います。「労働安全衛生規則に基づく措置及び手すり先行工法の墜落災害防止効果(推計)」と、アンケートに関する項目です。よろしくお願いします。
○川越技術審査官 それでは、お手元の資料3をご覧ください。1枚目、表紙にグラフがありますが、安衛則に基づく措置と手すり先行工法の墜落災害防止効果がどれぐらいなのかということについて、各団体からいろいろ意見が出ていますので、厚生労働省で改めてこれまで蓄積したデータをもとに集計、分析した結果です。根拠は、少し細かい字で恐縮ですが、裏に記載しています。
まず、左側上に1(ローマ数字)と書いていますが、わく組足場からの墜落災害による死傷者数、3年間の合計で390件ほどです。このうち安衛則に基づく措置なし、不十分であったものが355件、それ以外の安衛則に基づく措置があったものが35件。その中で手すり先行工法を採用していたものと不採用であったものをそれぞれ出しますと、採用が9件、不採用が26件でした。
その中で不安全行動があった場合はどんな措置をしていても墜落してしまうということがありますので、不安全行動なしの部分がどれぐらいあったかということを数値として出しますと、安衛則に基づく措置を実施していなかったものが232件、安衛則に基づく措置があったものについては7件。うち手すり先行工法を採用していたものが1件、不採用のものが6件でした。
また、全現場がどれぐらいあって、手すり先行工法がどれぐらい採用されているかということを推計するために、厚生労働省で3年間実施した調査の中で、労働基準監督署の職員、労働局の職員が立ち入った現場で調べた対象が、約9,000件強あります。これらの現場のうち、安衛則に基づく措置があったものが全体の84%、安衛則に基づく措置がなかった、又は不十分であった現場が16%でした。先ほどの措置があった現場84%のうち手すり先行工法を採用した現場が37.8%、不採用の現場が46.2%という割合です。
3(ローマ数字)では、日本全国でどれぐらい足場が必要な現場があるかを推計しています。国土交通省の建築着工統計から毎年新規の住宅の着工件数を調べたところ、3年間で170万件ほどあります。これは建物の数です。そのうち木造の建築物については、わく組足場よりもくさび緊結式足場、また単管足場といったものが比較的多く使われていますので、木造を除いた残りの数、3年間合計で約45万棟ほどです。これに全てわく組足場が使われていたと仮定しますと、45万現場あるということです。
この現場数に監督署等が立ち入って見た現場のそれぞれの割合、84%、37.8%、46.2%、16%を掛けて実際の現場数を推計したものが、一番右側の表の「採用現場数」というところに記載した数値です。3年間のわく組足場からの墜落災害の死傷者数、それぞれの場合の数字をそれぞれの現場数で割ったものを計算すると、一番右側にあるように、「不安全行動等がなかった場合の発生件数」、「わく組足場全体の発生件数」が分かります。数字がかなり小さくなりますので、1,000を掛けまして1,000現場当たりの数値として集計しました。
表に戻りまして、わく組足場1,000現場当たりの墜落災害発生件数のうち、わく組足場から墜落した災害全部を考えますと、白抜きで表した棒グラフになります。
一番下にマル1とマル2とありますが、マル1が「安衛則に基づく措置あり」ということで、1,000現場のうち0.091件の災害が発生するということになります。
マル2として一番右側の白抜きの棒グラフ「安衛則に基づく措置なし又は不十分」については、1,000現場当たり4.866件の災害が発生するということです。
つまり、安衛則を守れば50分の1ぐらいに災害の発生を抑えることができる。そういった数字が出ております。また、不安全行動がなかった場合に限定して墜落災害の件数を見ますと、今度は斜線になっているグラフでして、「安衛則に基づく措置あり」の現場では、1,000現場当たり0.018件の墜落災害が起きる。
また、マル2として「安衛則に基づく措置なし又は不十分」であった現場については、1,000現場当たり3.18件起きるということで、これも安衛則に基づく措置があれば約180分の1になるということが言えます。
また、手すり先行工法の採用現場と不採用の現場で見ますと、白抜きのわく組足場から全体のもので見ますと、採用現場では1,000現場当たり0.052件、不採用現場では1,000現場当たり0.124件ということで、約2.4分の1になると言えます。
ちなみに、不安全行動がなかった場合については4.8分の1になると言えます。
続いて、資料4について説明いたします。前回、小野委員から労働者に対するアンケート調査を実施すべきである、現場の生の声を聞くべきであるということで、事務局の方で検討いたしました。アンケート方法について紹介いたします。まず、対象者としましては、これまで厚生労働省が表彰してまいりました建設業に係る安全優良職長厚生労働省大臣顕彰の受賞者を対象に実施したいと考えています。この受賞者は、職長としての実務経験が10年以上で、かつ職長として担当した現場において過去5年以上、休業4日以上の労働災害が発生していない。
また、自身も職務に必要な各種資格を取得し、各種安全衛生教育を十分に受講し、さらに安全管理に関する部下の指導教育等に積極的に活動している方々です。
このようなことから、建設現場における安全衛生対策に関する有識者として、これらの方々に意見を聞くことは有意義であると考えています。
実施人数は、平成20年度から平成24年度までの受賞者、5年間分の約350人程度に対して実施したいと考えています。
実施時期につきましては、ある程度論点がまとまった段階で実施したいと考えていまして、今年の12月から来年1月にかけて実施し、2月にはそれを集計、取りまとめを行いたいと考えています。
また、このアンケートを実施するのは、行政自らが実施したいと考えています。
アンケートの内容につきましては、まず第7回で論点を出していますが、それに対する皆様方の意見、また、第8回、第9回で各団体から意見表明がありました。その後、本日の議論等もあります。そういったものを含めてアンケート票を事務局で作成しまして、皆様に意見を伺った後、座長一任で細かい点は決定して実施したいと考えています。
こういったアンケート調査を行うことで、一番下に書いてありますとおり、年内の取りまとめを予定していた検討会のスケジュールを、このアンケート結果を待って最終的な結論を出すということから、今年度一杯までにまとめるということで、スケジュールの後ろ倒しを合わせて提案したいと考えております。
こちらについては皆さんから御意見を賜りたいと考えています。よろしくお願いします。
○小林座長 ありがとうございました。今、事務局から資料3「労働安全規則に基づく措置及び手すり先行工法の墜落災害防止効果」に関する数値的な効果の推計と、現場で実際に働く方の御意見を伺うというアンケート調査の概要を説明いただきました。これに関して御意見、いかがでしょうか。小野委員、どうぞ。
○小野委員 今、川越審査官の御説明、資料3と資料4について、私の方の意見を文書で出させていただいています。
資料8の2ページの上から2つ目「資料3『わく組足場1000現場当たりの墜落災害発生件数(推計)』に対する意見」というところです。平成21年度の「マル1手すり先行工法採用・不安全行動なし」の死傷者数「1」についてということで、表に「1」とあるわけです。平成21年度の分で、手すり先行工法の採用現場で「不安全行動なし」の「1」というのは何を意味するかということで、よく調べてみました。調べたら、厚生労働省の事故データの表現の中で2つありました。
2つのうち1つを選んだと思うのですが、どちらを選んだのかわかりませんけれども、1つは作業床が外れて落っこったというやつです。妻側の手すりはあったけれども、中さんがなかったということで落っこった。この2つでした。
これは直接手すり先行工法に関係ない「不安全行動なし」という部分なのです。ですから、手すり先行工法を採用してこういうふうになったのだということでは全くありません。ついては、「1」というのは「0」に訂正すべきであるということであります。
したがいまして、3年間の統計を見ても、手すり先行工法を採用した現場で不安全行動がなかったということになりますと、それはゼロになりますということです。今、「0.006」になっていますけれども、これが0.0、0になるということです。
資料4、アンケート調査についてですが、アンケートの対象者について、「安全優良職長厚生労働大臣顕彰受賞」を対象とすることとなっています。これについてはもちろん賛成ですが、しかし、作業員の生の声を反映するという観点から、足場からの墜落・転落により負傷した被災者たちの意見も聞きたい。
それから「手すり先行工法を採用した現場での作業経験者」も対象にしていただきたいということです。手すり先行工法で今、いろいろ議論しているわけですが、実際にそれを使用した作業者、そういう人たちの意見も聞いてほしいということです。
それから、足場から墜落・転落した被災者も対象にしていただきたい。合計1,000人程度。だから、安全優良職長厚生労働大臣顕彰受賞者350人とすれば、おのおのその程度で、1,000人程度で実施すべきではないのかということです。そしたら意見が偏ってこないと思います。
もともと受賞者というのは非常に優秀な人なのです。現行の安衛則で優秀な成績を上げて、指導もしてきた方々ですから、どうしても優秀なのです。だから、現行で十分でないのかという意見が出てくるのはもう目に見えています。もちろん、そういう方の意見も結構ですよということです。
それから、アンケートの内容等についてです。「ア及びイ」の具体的な内容については、対象者の本音が引き出せるものとすることが大事です。その結果、持ち回りでなく、改めてその内容について検討会を開催して審議すべき事項ではないでしょうかという意味です。以上が私の意見です。
○小林座長 今、3つほど御意見が出されましたけれども、いかがでしょうか。
○川越技術審査官 では、お答えいたします。まず、手すり先行工法の導入効果ということで、これは0件にすべきではないかというお話がありました。法令違反がなく、かつ不安全行動がなかった事案は具体的にどのような災害かを申し上げますと、手すり先行工法を用いた足場の組立て作業中、何らかの原因により転倒し、手すり枠の中さん(40センチ)の下から墜落したもの。これは、既に組み立て済みの箇所には交差筋交いに加え、下さん及び上さんが設置されていたという事案でございます。
これは、災害の概要の中には「中さん」と書いてありますが、床から40センチまでの間にさんを設置するというのが法令の基準になっておりますので、法令は守っていたというふうに考えて分析をいたしました。労働者死傷病報告から分析しているために、労働者死傷病報告の記載からは不安全行動等が分からなかったということで、「不安全行動なし」に分類しているものです。そういったことからこの1件というものが計上されています。
次に、アンケート調査につきまして、手すり先行工法を採用した現場の労働者や被災者を対象としてはどうかという御意見がありましたが、今回のアンケート調査を実施する中で、どのような足場で従事していたかを聞くことで、その中に手すり先行工法を採用した現場が含まれている職長からの回答があれば、そこの点は明らかにできるのではないかと考えております。被災者を対象にして実施するか否かということについては、実際にどなたに送るかということも含めて、事務局のほうでさらに検討していきたいと考えております。また、本音を聞けるような調査票にすべきというお話で、検討会の場で一度議論すべきというお話については、本音を聞くということであれば、まず無記名で提出して本音をまず答えていただくということを考えております。
また、検討会の場で議論するというお話については、皆様に事前に見ていただくことができれば見ていただいて、意見をもらったもので修正したものをアンケート調査票の案として次回の検討会に提示することを考えたいと思います。以上です。
○小林座長 どうもありがとうございます。小野委員、いかがでしょうか。
○小野委員 被災者というのは、厚生労働省で全部記録が取られているのです。労災が給付されていますから。だから、そういう人たちにアンケートをとるというのはそう難しいことではないということだと思います。
それから、今、現場で足場の組み立て・解体、それから組み立てる人だけでなくて、足場を使用する側である現役の職人さんの意見も聞くべきだということです。もちろん、受賞した立派な方の意見も聞いてもらって結構です。
○小林座長 どうもありがとうございました。そのほかに御意見。どうぞ。
○野澤建設安全対策室長 先ほどの川越の回答にちょっと補足したいと思うのですが、アンケートにつきましては、要するに、我々としては偏りが生じないようにどう取れるかというのを一番考えました。小野委員の御指摘の趣旨も考えて、例えば各団体から何人かずつ出してもらおうとか、そんなことも途中で考えたりしましたが、そういったことを偏りなくやるという意味で、では、無作為というのもある意味ではなかなか難しくて、どこにどういう職人さんがどういるかというのを我々は分からないということで、受賞したところというのは、別に足場のこういった問題についてどうのこうのという話ではないので、いいのかなと思った次第だということです。
提案のあった3分の1ずつの件ですが、これも川越の話にあったように、我々としても少し検討はしてみたいと思うのですが、今、言った3分の1ということをまず考えますと、先ほど言っている偏りのないという意味では、では、3分の1の職人さんは例えば墜落しているのかという話になってしまいますので、その辺もどういう人数にするかとか、そういうのも含めて、仮に検討するときにも検討したいなと私としては思っております。
○小野委員 結局、墜落災害防止のためのアンケートなわけですね。ですから、原因を究明するには、実際墜落して今、生存している方に何で墜落したのかというのを聞くのが一番効果的だと思います。それから今の現役さんです。足場を組む人だけでなくて、使用する人。こういう人にも平等に聞くべきだということです。
○小林座長 小島委員、どうぞ。
○小島委員 小野委員の御意見ももっともだと思うのですけれども、私の会社でも墜落災害の被災者の方におおむねヒアリングするのです。何で落ちたのとか、どうしていたのとか、話をするのです。ちょっとしたけが、3~4日程度のけが、あるいは不休程度のけがだったら、自分がこうしましたとか、うっかりしましたとか、そういう話は出てくるのです。ところが、大きな災害をしますと、ほとんどの人が、覚えていない、何で落ちたのか分からないという発言が実は圧倒的に多いのです。つまり、どういうことかといいますと、我々は落ちたところの措置とか防止、客観的な評価をしたいがためにいろんな調査をするわけですけれども、最終的に被災者、重症の人を含めて、4日以上の災害をした人は、何で落ちたかわからないという話がかなり多いのです。
なので、意見としてお聞きするのも確かに重要なことかと思うのですが、正直なベース、何が悪かったのかとか、どうだったのかとか、どういったアンケートの中身になるかわかりませんけれども、そういった部分についての正確な答えが返ってくるかどうかというのは少し疑問であります。
○小野委員 私もいろいろ思うのです。ですから、ある程度の数、ロットが必要だということだと思います。
○小林座長 どうぞ。
○川越技術審査官 1点補足をさせていただきます。
確かに行政全体として被災者の名前とかを把握しているのかといえば、監督署に労働者死傷病報告が提出されますので、分からないことはないです。ただ、そういった被災された方に直接アンケート票を送るということについては、慎重に検討すべき問題もあるということを申し上げておきます。そこも含めて行政で考えた上で次回提案をさせていただきます。
○小林座長 データの目的外使用みたいなことに係らない方法というのがどうあるかよく分かりませんけれども、そこら辺も問題になるでしょうから、慎重に検討していただきたいと思います。
アンケート対象、サンプルの数に関しては、先ほど平等にと言われましたが、数を同じにすることが必ずしも平等ではないので、対象となる母集団の数の検討とか、そういうことも統計的に検討していただいた上で数などを決めていただきたいと思います。どうぞ。
○田村委員 今までいろいろとお聞きして、皆さん、もうお分かりだと思うのですけれども、安全性というのは、結局はお金と手間が多分要るのだと思うのです。災害をどこまで許容するかというところが問題なのです。今までいろいろ議論したり、去年までのいろんな活動で原因とかいうのはある程度分かってきていて、こういうことをすればより良いだろうということは、分かっているのだと思うのです。それを法令として制度化すべきかどうかというところが重要なのです。
僕は風災害が専門なのですけれども、例えばガラス窓をこういうふうにすれば割れませんよというのは、お金をかければ幾らでもあるわけです。フイルム入りにしなさいとか。だけど、コストが何倍かかかったりする。どうやればより安全になるかは明らかなのだけれども、それを法制化するべきかどうかというところが議論すべき点だと思うのです。
そういうものが採れるようなアンケートをやらないと、原因を探すようなアンケートをしても、今までと余り変わらない結果になるのではないか、というのが僕の懸念です。
だから、どちらかというと、そういう観点で我々の判断の材料になるような資料をどうやって集めるかということの方が重要ではないかなと思うのです。
○小林座長 どうもありがとうございました。その他に御意見。どうぞ。
○宮本委員 アンケートの対象者、350人、職長ということなのですけれども、偏りなくというお話もありましたので、その中で木造の職長の受賞者というのがどのぐらいの割合か、分かれば教えていただきたい。
○小林座長 どうぞ。
○川越技術審査官 人数は今、手元にありませんが、含まれていることは間違いありません。含まれていますので、アンケート調査をする中で、どういった足場を使っている方々なのか、どういった工事で使っている方々なのかということを併せて聞く、また、職種を聞くとか、そういった調査票の工夫の中で木造の住宅建築工事での特徴といったものが出てくればというふうに考えています。
○小林座長 アンケート項目の中に含めて検討していただくということです。その他いかがでしょうか。
それでは、特にアンケートの項目あるいは実施の方法などに関しては、早目に決まりましたら皆さんにお送りいただくというのもいいかと思いますけれども、いずれにしても、次回の検討会に実施方法あるいはアンケートの項目について出していただいて、さらに検討をしていただくということでよろしいでしょうか。
○川越技術審査官 はい。
○小林座長 では、そういうふうにさせていただきたいと思います。次回、間に合いますか。
○川越技術審査官 できるだけそのようになるように努力いたします。
○小林座長 よろしくお願いします。
それでは、さらに次の議題へ進めさせていただきたいと思います。資料1です。これまで意見をいろいろいただいておりますけれども、それではということで、「今後の足場からの墜落・転落災害防止対策等の現実的なあり方」というのを事務局で取りまとめていただいていますので、それについて御説明いただきたいと思います。
○川越技術審査官 では、お手元の資料1をご覧ください。
第8回、第9回で意見表明を行っていただいたものと追加で提出のあった意見などを総合して、今後の取りまとめの方向性を論点ごとに整理させていただきました。
1枚目が、これまで意見表明を行った団体に番号をつけて表示しています。
2枚目からはこの団体名を省略して、かわりに番号で記載しています。
1枚めくってください。【論点1】ということで、これまで検討会で出された意見を真ん中で整理しています。手すり先行工法の義務化についての意見として、「わく組足場、くさび緊結足場等の足場(つり足場、一側足場等を除く)全層(最上層を含む)で、手すり先行工法を義務化すべき」という意見がありました。
それに対して、手すり先行工法の有効性は否定しないものの、災害の原因である現行規制の遵守徹底について意見があったということでまとめておりますが、「墜落災害のほとんどが、安全帯の使用等の現行の規則が守られていないこと、不安全行動によって発生しているので、規制の強化ではなく、現行規則の遵守徹底が必要」ということに集約できるかと思います。
さらに、足場を安全に組み立てるための手すり先行工法以外の有効な工法について意見があり、「高所作業自体を減らことができる『大組』、『大払』工法、移動昇降式足場も効果的である」ということがありました。また、本日提出し、説明がありましたくさび緊結式足場の建地のポケットに安全帯を取り付けて作業することができるといったものもあるということが示されています。
こういった中で、事務局としまして「とりまとめの方向性」として考えられることを右側に記載しています。「足場の最上層での組立て等の作業において安全帯を安全に使用するために設備面の措置(足場の最上層での作業に先行して設置した手すりわくを含む)が必要ではないか」ということでまとめています。設備面での措置ということで、大幢委員からあったような、安全帯の取り付け設備や親綱先行で設置するもの、そういったものも含めて設備面の措置と考えられるのではないかと思います。
次に、足場の組立て作業における不安全行動、法令の遵守徹底のための意見ということで、「足場の組立て等作業主任者の職務の励行、能力向上教育の義務化、足場の組立て等作業者に対する教育の義務化等が必要」という意見がありました。右側の「とりまとめの方向」として、「足場の組立て等作業主任者の能力向上教育の受講を促進してはどうか」、「足場の組立て等の業務を危険な業務として当該業務に就く者に対し、あらかじめ安全のための特別教育を行うことが必要ではないか」、としています。
次に、【論点2】をご覧ください。
足場の通常作業での墜落災害防止のための管理対策ということで、「わく組足場、くさび緊結式足場等の足場全層で、手すり先行工法による二段手すりと幅木の設置を義務化すべき」という御意見もありました。
また、幅木について、「作業床の幅が十分に確保できない足場の場合、墜落防止用の幅木は歩行等の障害となり、危険である」という意見もありました。
また、「わく組足場等においては、墜落災害のほとんどが、下さんの設置等現行の規則が守られていないこと、不安全行動によって発生しているので、現行規則の強化ではなく、現行規則の遵守徹底が必要」という意見があります。
また、作業の必要上、手すりを取り外すことについて、「事前点検後に作業の必要上、手すりを外し、放置されることがあるため、作業者への安全衛生教育等が必要である」という意見です。
また、躯体側への墜落災害については、「躯体と作業床の離隔の許容数値が法令上明記されていないため、躯体と作業床のすき間が20cm以下のときは『墜落による労働者に危険を及ぼす箇所』に該当しないと明示してはどうか」という意見がありました。
これについて、「とりまとめの方向」として「作業床と建地のすき間等について一定の基準を設ける等何らかの措置が必要ではないか」、「作業床と躯体とのすき間については、躯体の条件が多様であるため、引き続き検討することとしてはどうか」、「作業の必要上、手すりを外したときに必要な措置をとること、作業の終了後直ちに元の状態に戻すことを徹底することが必要ではないか」ということを示しています。
また、【論点2】の通常作業ということについては、議論が発散しないように、ぜひ前提を置いて議論いただきたいと思います。足場上の作業では、臨時に手すり等を取り外して安全帯を使用するという場合が法令上も認められています。ここでは、作業員が足場上を移動に使う場合、どういった措置が足場にあればいいのか、また、躯体側で作業しますので、その反対側でどういった措置が必要かということに限定して検討いただきたいと思います。
足場における通常作業時の作業員に対する教育ということで、「不安全行動の防止のためには、作業者に対する教育の充実が必要」ということがありまして、これについても、「安全衛生教育等の安全意識の高揚を図るための方策を検討してはどうか」という方向性を示しています。
次のページ【論点3,4】をまとめています。足場の点検と法令遵守のための対策ということで、足場の点検に関しては、「足場の組立て及び変更時に、足場の組立てを行った者以外の十分な知識と経験を有する者による点検を義務化すべき」という意見があります。
それに対して、「足場の点検・補修は、事業者責任として、事業者に義務付けられており、責任を負わない第三者による点検は、事業者が任意に受けることは別として、不要」という意見があります。
また、法令の遵守につながる対策として、「民間人を活用した監視員制度を導入すべき」という意見がありました。
「とりまとめの方向性」として、「事業者の点検が義務化されていることから、第三者による点検を必ずしも実施する必要はないのではないか」としています。
また、「各団体の取組として、会員が他の会員の現場の足場に問題があることを把握した場合に、互いに指摘する取組などを含め、引き続き検討することとしてはどうか」。
具体的には、団体が行うパトロールといった取り組みを進めるというようなことを想定した記載としています。
最後に、【その他】です。わく組足場以外の足場等に係る対策についても意見がありました。
まず、「作業床設置の例外措置である安全帯の使用及び一側足場の使用についての範囲の限定、高さによる墜落防止措置の義務付けの見直し等が必要」ということでまとめています。
他の意見として、「わく組足場以外の足場における墜落防止対策の検討が必要」という意見がありました。
「とりまとめの方向性」として、「一側足場における墜落防止対策を検討してはどうか」ということで示しています。説明は以上です。よろしくお願いします。
○小林座長 どうもありがとうございました。資料1に関して、項目別に論点1、2、3、4、その他ということで御意見を伺う予定ではありましたが、先ほど事務局から御説明があったように、本日は12時にはぴったり終わりにしたいということがありましたので、どうしてもこれに関して今という御意見を1つ、2つ伺って、これに関する検討は次回にさせていただきたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。
○小野委員 それでは、私の方から今の資料1について、かいつまんで御意見を申し上げたいと思います。
【論点1】について。大組、大払の足場のやり方でも手すり先行工法が絶対必要であります。必要ないというふうな表現がされていますから。
大瞳委員の意見については、くさび緊結式足場は最も容易に「手すり先行工法」の採用が可能な足場であり、安全帯使用の前にまず手すり先行足場を設置すべきである。
「とりまとめの方向性(案)」についてです。足場の最上層での組立て等の作業においては、墜落防止措置として、第一に先行手すりを設置し、第二次的にそれに安全帯を使用することにすべきだと思います。
【論点2】についてです。「とりまとめの方向性(案)」については、より安全な措置としての「二段手すり」と「幅木」が必要であります。
【論点3,4】については、「とりまとめの方向性(案)」の文を次のように修正すべきである。
国士交通省の重点対策と同様に、「足場の組立て作業を行った者以外の十分な知識と経験を有する第三者による点検」が必要であり、足場の組立・変更後の使用前の点検は、公平、中立な立場から、『ダメなものをダメと指摘し、改善指導の徹底を図ることにより、墜落災害を未然に防止する。』との観点に立ち、直接当事者ではなく、第三者が行うことが重要である。
それから、「民間人を活用した監視員制度」が必要だと。
【その他】については、「とりまとめの方向性(案)」の中では、一側足場について「検討してはどうか」ではなく、これは非常に災害が多いので、「検討する」とすべきである。
また、第7回の【提言3】のマル1(JIS規定の活用等)及びマル2(高さ制限の見直し)についても除外しないで検討されるべきことであります。
最後に、これとは別に、資料8の5ページのところです。これは物すごく大事な問題ですが、表題は「何人も納得する解決策として実施すべき提言」ということで、新たな提言をさせてもらいました。
現行労働安全衛生規則による足場と手すり先行工法による「より安全な措置」の足場の比較による公開安全安心検証実験と体験の実施についてであります。
これまで10回にわたって検討会が開催され議論が重ねられてきましたが、残念ながら議論は堂々めぐりに終始しております。「百聞は一見に如かず」と言いますが、単に見るだけでなく、「百の議論より一つの体験」という言葉があるとおり、「百論は一験に如かず」であります。そこで、以下の要領により、まずダミー人形による検証実験を見学していただき、その後、実際に。
○小林座長 小野委員、資料1の話はまだ続きますので、今のお話については次回にさせていただけますか。よろしいですか。
○小野委員 それは結構です。
○小林座長 ちょっとお話が長くなりそうなので。
○小野委員 いえいえ、長くはないです。このままですけどね。100回の議論より1回の経験とか、こういうものが非常に大事なのです。そうしたら、みんな納得できることだと思うのですよ。同じことを堂々めぐり、もう10回もやっている。それはだめだと思うのです。
これを公開で第三者の人に見ていただいて、私たち委員が全員参加して公開の場でやってみましょうということなのですよ。これはそういうことの提案です。
○小林座長 これについての資料がありましたけれども、次回、論点1から順番に御意見を伺うつもりでおりますので、その場でもお話を伺うことができると思います。そういうことで、ちょっと中途半端かもしれませんが、次回で更に御検討いただくということにしたいと思います。
事務局から次回あるいはそのほかの連絡事項がありましたら、よろしくお願いします。
○川越技術審査官 今日は時間がありませんので、資料2について説明ができませんでしたので、簡単に御説明いたします。
足場からの墜落・転落災害防止対策等に関するその他の意見として、残念ながら安全衛生行政で直接的に対応することが難しい面もある意見がありました。こちらに書いてあるような3つの意見に集約していますけれども、こういったものについては、事務局の方からそれぞれ関係部署の方にきちんと説明した上で、最終的に報告書にどのように書けるかどうかを含めて検討していきたいと考えております。
続いて、次回の検討会の予定ですが、御案内のとおり、第11回は12月16日月曜日15時から、厚生労働省専用第17会議室、16階です。追って正式な開催案内を送付いたします。事務局で本日の議論を踏まえて、また同じ資料を出すものもありますけれども、アンケートなどを検討した上で御議論をいただきたいと考えています。よろしくお願いいたします。
○小林座長 今の資料2に関する事務局からのコメントをいただきました。それから第11回として12月16日の予定を説明いただきました。これについて御意見が特にということであれば、お聞きしたいと思います。御了解いただいて、今日はこれにて終了ということにさせていただきたいと思います。
○小野委員 資料2についてはまだ継続ですね。
○小林座長 はい。
○小野委員 私も発言したいものがあります。
○小林座長 中身に対するコメントといいますかね。
○小野委員 ここに出してありますけれども、まだ発言させていただいていませんので。
○小林座長 次回でまた御意見をいただきます。では、そういうことで終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。
<照会先>
労働基準局安全衛生部安全課建設安全対策室
問い合わせ先: | 03(5253)1111(内線5486) |
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