ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(生活保護基準部会)> 第15回 社会保障審議会生活保護基準部会議事録(2013年11月22日)
2013年11月22日 第15回 社会保障審議会生活保護基準部会議事録
社会・援護局
○日時
平成25年11月22日(金)15:00~17:00
○場所
厚生労働省共用第8会議室
○出席者
駒村 康平 (部会長) |
岩田 正美 (部会長代理) |
阿部 彩 (委員) |
大竹 文雄 (委員) |
岡部 卓 (委員) |
園田 眞理子 (委員) |
栃本 一三郎 (委員) |
道中 隆 (委員) |
宮本 みち子 (委員) |
山田 篤裕 (委員) |
○議題
・生業扶助及び一時扶助について
・その他
○議事
○大西課長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「第15回社会保障審議会生活保護基準部会」をお願いいたします。
まず、本日の委員の出欠状況につきまして事務局より御報告をさせていただきます。
本日の委員の御出欠の状況でございますが、全委員御出席の御予定でございますけれども、栃本先生が鉄道の遅延の関係で少しおくれるとの御連絡がありました。
それでは、部会長、議事進行のほうをよろしくお願いいたします。
○駒村部会長 こんにちは。それでは、本日の議事に入りたいと思います。
前回の部会では、今後の基準部会における議論の進め方について事務局から資料を提出いただき、議論を行いました。
そこで、今年度については、マル1大規模調査の特別集計データの活用などが必要になると考えられる扶助等については、分析に取り組むための準備をどう進めてはかどうか。
マル2生業扶助や一時扶助について、活用実態を踏まえながら今日的な役割や効果的な見直しができないかどうか
などを議論することで、特段異論もなく了承されたものと思います。
このため本日は事務局より、生業扶助及び一時扶助の概要、活用実態、また、今後の大規模調査のデータを用いた検証が必要になると考えられるものとして、まずは住宅扶助について簡単に御報告いただきたいと思います。
それでは、まず事務局より提出された資料1及び参考資料について御報告をお願いいたします。
○伊沢補佐 それでは、資料の1について説明いたします。
資料1ですが、先回の部会におきまして、委員の先生方から御依頼のありました資料をまとめおります。
資料の1ページですが、本年8月に施行になりました生活扶助基準改定に伴いまして、被保護者から上がってきております審査請求の都道府県別の提起件数をお示ししております。被保護者の方から審査請求の上がってきている提起件数ですが、9月末現在で、全国で1万654件となっております。
続きまして、2ページですが、保護の開始、廃止の世帯数の動向でございます。前回、岩田部会長代理から、廃止世帯数では、死亡廃止のケースが大きな割合を占めている。死亡廃止を除いて、その動向を別途見たほうがよいのではないかと御意見を賜りました。グラフの一番下の線が死亡廃止のケースを除いたものとなっております。御注意いただきたいのですが、平成24年度以降は各月でお示ししておりますが、23年までは毎年9月現在の数字しか把握していなかったという事情がございまして、年単位での表示になっております。保護廃止の動向を下の2本の点線でお示ししておりますが、保護の廃止から死亡を除いた場合であっても、形態に大きな変化は見られなかったということが確認されております。
3ページですが、前回、山田委員から最低生活費に占める住宅扶助費の割合が増加している要因は何かといった御質問がございました。事務局では、主だった要因について考えられるものをデータでお示ししております。図1ですが、被保護者がお住まいになっている住宅の状況をお示ししております。近年、借家・借間にお住まいになっております被保護者の割合がふえてきているのが見てとれます。
図2でございますが、借家・借間にお住まいの方が公営住宅等にお住まいなのか、または民営住宅にお住まいなのか、この10年の推移をグラフ化しております。ごらんのとおり、民営住宅にお住まいの方の割合が増加してきているということが確認されます。
図3でございますが、借家・借間にお住まいの単身世帯の割合がふえているといったことが確認できるかと思います。
図4でございます。住宅扶助の基準額が比較的高い都市部、こちらのほうが含まれます1級地にお住まいの被保護世帯の割合が増加してきているという状況が確認できます。
以上のデータを勘案いたしますと、住宅扶助費が増加している要因としましては、家賃等の住居費を必要としない持ち家率が減少している点がまず1点。それと家賃等の比較的高目な民営住宅の割合が増加しているのが2点目。また、家賃が割高になりがちな単身世帯でのお住まいがふえている点、それに住居費の高い都市部に世帯がシフトしていることが上げられるのではないかと事務局としては考えております。
資料1の説明につきましては以上でございますが、なお、資料には付けてございませんが、前回基準部会でフォローアップについて整理させていただきますと申し上げました、国の制度について若干御説明をさせていただきます。
生活扶助基準の見直しに伴います他制度への影響でございますが、できる限り影響が及ばないようにそれぞれの制度の趣旨や目的、実態を踏まえて対応することを政府の基本方針として上げております。全閣僚で2月5日の閣僚懇談会でございますが、申し合わせをしているところでございます。
生活扶助基準の見直しに直接影響を受け得る国の制度につきましては、今、申し上げました閣僚懇の申し合わせの中でも、影響を受ける制度の趣旨や目的、実態を十分考慮しながらできる限りその影響が及ばないよう対応することを基本的な考え方とするとされております。これを踏まえまして、本年度は影響が及ばないよう対応されているものと理解しております。問題は来年度に影響が出るかどうかでございますが、平成26年度の概算要求の状況を省内関係局、関係省庁のほうに確認いたしましたところ、結果といたしましては、各制度とも生活扶助基準の見直しの影響が及ばないよう、来年度に向けても対応しているとのことでございました。本年度と同様、影響が及ばないよう対応を進めていくことになるものと考えられます。
なお、個人住民税の非課税限度額でございますが、この閣僚懇申し合わせの中でも、平成25年度の影響はなく、平成26年度以降の税制改正の議論を踏まえて対応することとされております。そもそも本年度は影響ございません。来年度に影響が出るかどうかにつきましては、年末の与党におけます税政改正の議論を踏まえ、決定されるものと承知しております。
地方単独事業につきましては、閣僚懇申し合わせの中で、国の取り組みを説明の上、その趣旨を理解した上で、各自治体において判断いただくよう依頼することとされております。本年度の事業につきまして、5月16日の予算成立時に厚生労働事務次官の通知を自治体宛に発出しております。政府の対応方針につきまして、その通知の中でお示しをし、その趣旨を御理解いただいた上で御判断いただくようお願いしているところでございます。また、来年度の概算要求が取りまとまったことを受けまして、9月3日にも再度厚生労働事務次官通知を発出いたしまして、来年度の自治体の予算編成に当たっても、政府の対応方針の趣旨を御理解いただいた上で、適切に御判断いただくよう改めてお願いしているところでございます。
なお、地方単独事業につきましては、生活扶助基準の見直しに連動する事業があることを把握しても、その事業の性質上、国が自治体に対しまして判断、対応を強制できません。また、調査を行うこと自体が自治体への過度な介入と受けとめられるおそれもございます。
そのため一律に実態把握をするのではなく、機会を捉えて説明を尽くしてまいりたいと存じます。
以上、資料1関連の御説明でございます。なお、参考資料といたしまして、一番最後のところでございますが、平成25年8月の生活保護の動向、速報をつけさせていただいております。
以上でございます。
○駒村部会長 ありがとうございました。
では、委員の皆様から今の資料1及び参考資料について、質疑を始めたいと思いますが、質問、意見がございましたら、どうぞ挙手でお願いします。
山田委員、お願いします。
○山田委員 資料を御用意いただきましてありがとうございます。
私からは2つコメントがございます。1つ目ですけれども、これはきょう非常に丁寧に作成いただいた資料の最低生活費に占める住宅扶助費割合の増加要因なのですけれども、ここでやはり借家・借間世帯が増大していると、特に民営住宅に住まわれる方が増大しているということで、住宅扶助費が伸びていることが非常によくわかりました。
ただ、もう一つ、これは資料の制約等で難しいとは思いますが、最近は生活保護受給者をターゲットにしたさまざまな住居の提供が行われているところがございますので、こちらがどれくらいの割合を占めているのかということも適宜調査をしていただければというのがお願いでございます。
2点目ですが、これは口頭で御説明いただきましたが、他制度への影響が及ばないように、政府の基本方針また通知を発している。非常に政府としてもいろいろと他制度に影響が及ばないように手を尽くしているということは大変よく理解しております。
ただ、及ばないようにと各自治体とか関係省庁にお願いしているということと、実際にそれが及ばなかったのかということとは、また別問題だと考えます。もちろん調査をすること自体、過度な介入と受け取られかねないという御意見については理解しますけれども、やはり政策というのは根拠に基づいて行うべきものであって、その調査をすること自体が過度な介入につながるというのは、やや私としては納得しがたいことでありまして、やはりデータに基づく議論は重要でありますから、資料の整備等、非常に時間のかかるものと理解はしておりますけれども、適当な時期に一体どういうふうに、例えば就学援助が生活保護等の基準引き下げに伴い、実際に引き下げられる自治体はどれほどあるのかとか、そういったことについて事実を私は非常に知りたいと思っておりますので、前回に引き続き調査を重ねてお願いする次第です。
これは繰り返しになりますけれども、どうしてこのようなことを重ねてお願いするのかというところでありますけれども、これはやはりこれまでの基準検証のあり方、低所得世帯との比較参照において、生活保護基準を大枠では考えるという手続を踏まえていたわけです。
ところが、この生活保護基準の引き下げによって、もし低所得世帯に影響が及ぶのであれば、参照基準である低所得世帯の所得水準が落ち込むと。それにあわせて生活保護基準がまた連動してしまうといったような悪いループが起こらないように、どういったことが起きているのかという事実把握をしたいということで、私は非常に重要だと考えます。
さらにつけ加えて申し上げるならば、マスコミの報道の一部には、「生活保護受給者」対「受給していない低所得世帯」といったようなどちらかというと対立をあおるような一部報道がなされているところです。こういった生活保護基準改定が一体どういうふうに影響を及ぼすのかということを明らかにすることで、実は低所得者一般への影響もあるのかどうかという実態を把握しておいていただく必要があるということで、重ねてお願いする次第でございます。
私からは以上でございます。
○駒村部会長 少しまとめて質疑をしたいと思います。
ほかに御意見、御質問あれば。はい、大竹先生、お願いいたします。
○大竹委員 今、山田委員がおっしゃった、最低生活費に占める住宅扶助の件で、生活保護者をターゲットにした借家の話がありましたけれども、それの問題点は質に応じた家賃がとられているかどうかのチェックが必要だということだと思います。非常に質が低いにもかかわらず、生活保護の住宅扶助費を当てにした家賃がとられているかどうか。それによって、もしそういうビジネスがたくさんあれば、そのせいで過大な家賃が、生活保護費から支給されてしまうことになって、それが結局、生活保護者にいくのではなくて、そのビジネスをしている人たちにいってしまうというのが大きな問題だと思いますから、その質と対応した家賃かどうかというチェックがなされるべきだとは思います。
○駒村部会長 ほかに。では、ひとまず今のお二人の御質問。1つは住宅扶助の話で、そこにかかわって家賃が住宅の質にふさわしい家賃なのかどうなのかということに関する把握も含めて、あるいは今後の動向を含めての調査なり、資料収集をしたらどうかという議論が1つありまして、もう一つは、扶助基準の見直しが自治体の施策に対してどういう影響を与えているのかというのはきちんと把握をしたほうが、いろいろなルートで低所得世帯にまた影響を与えていくことになるのでというお話がありました。事務局のほうから、これに対して御意見をいただければと思いますが。
○大西課長 ありがとうございます。
まず、住宅扶助の関係の御示唆、御指摘につきましては、まさにきょうの最後の部分でまた意見交換、お知恵のお出しをお願いしている部分でございますが、まさに重要な視点の1つかと思っておりますので、いろいろさまざまな制約もデータ収集にはあるかもしれませんが、努力してまいりたいと思っております。
あと、実態把握、影響の把握につきましても、先ほど補佐のほうからも、国としていろいろ慎重に自治体との関係は進めなければいけないという基本的な思いがあるところは述べさせていただきました。さらに前回、私も申し上げましたが、地方単独事業となりますと、自治体に事業をかけますと膨大な数になります。そういうものをどこまでどうお願いするのかという悩ましさもございます。
他方、今回の改定の影響を後々検証しようという大きなテーマは、基準部会としていただいており、今後、どんなやり方が考えられるのかということで前回も御議論いただいたところでございますので、少しタイムスケジュール、そういうことも含めながら、どんなタイミングでどんなことが可能なのかということを、それぞれのまた御関心の分野が、例えば就学援助とかあれば担当の省庁と相談しながらということになろうかと思いますが、そういうことも含めながら受けとめさせていただければと思っております。
そういう意味では、住宅扶助のデータの関係も国交省とは緊密に連携をとりながら進めていかないといけないと思っております。
以上です。
○駒村部会長 資料1、参考資料に関して御質問、御意見はいかがでしょうか。
では、とりあえずここは一度離れまして、続けて、事務局より資料2についての御報告をお願いいたします。なお、本日岡部委員より資料の提出があるため、資料3については岡部委員よりあわせて御説明をお願いいたします。
○野田補佐 それでは、資料2について御説明したいと思います。
3ページをお開きください。今回御検討いただきますのは生業扶助と一時扶助についてでございます。そのうちの生業扶助についてでございますが、1番目のところ、生業扶助の内容のところでございます。「要保護者の稼働能力を引き出し、それを助長することによって、その者の自立を図ることを目的として」おりますのが生業扶助でございます。「社会福祉制度的な性格を有して」おりますので、ほかの制度と異なりまして、困窮のために最低限度の生活を維持できない方のほかに、そのおそれがある人についても対象としているところが特徴でございます。
種類としましては、一番下の3番目のところに「生業扶助の種類」ということで、マル1からマル3を挙げさせていただいております。内容については、後ほどのページのところで御説明したいと思います。
めくっていただきまして、裏面でございます。生業扶助について、就労による自立支援全体の取り組みの中で、どのように活用しているのかについて整理したものでございます。就労支援につきましては、稼働能力があると認められる方に対して行っているわけでございますが、この稼働能力がある者というのは、資料一番上段のほうにございます「稼働能力のある者」ということで、マル1からマル3の要件を満たしていらっしゃる方を対象に支援をしておるところでございます。当然、受給されている方々それぞれの能力は異なりますので、それぞれの実情に応じて支援のほうを進めさせていただいておるところでございます。
まず、生業の関係につきましてですけれども、就労による自立の方法としては大きく2つ。1つは、食料品店の経営など、自営業などによってみずから生業を営まれる場合。それと雇用されて生活を営まれる場合があるかと思います。資料のほうもそのように整理をさせていただきました。
自営業などにより生業を営む場合の支援としましては、記載のとおり小規模な事業を営むために必要な資金、必要な器具等に生業扶助の1つでございます生業費を支給しております。具体的には、福祉事務所に幾つかお聞きしたのでございますけれども、大工で生計を立てていらっしゃった方が傷病で生活保護受給という形になって、治癒された後に再び大工で自立するという際において、お持ちになられていた工具が使用できなくなった場合に、その工具の買いかえという形で、このような生業費というものを支給させていただいております。
次に、技能修得費につきましてはごらんのような形で同じく生業による場合に必要な技能を修得する必要がある場合に、その経費を支援しております。
次に、雇用によって生活を営もうという方に対しての就労支援でございますが、これにつきましては、本人の意思を尊重して、本人の納得を得た支援を行うことが重要であると考えております。本人の状況に応じまして、次のマル1からマル3の取り組みを自立支援プログラムに基づきまして、組織的に支援することとしております。意欲喚起という観点からいきますと、技能修得費を活用しまして、コミュニケーション能力など、就労に必要な基礎的な能力の取得についても経費の支援をしております。あるいはマル2のほうですけれども、生計維持のために役立つもの、必要な技能の修得についての経費を支援しております。
働く場所の確保、マル3でございますけれども、こちらにおいても技能を修得することによって、働く場所の確保というところに支援をしておるところでございます。
めくっていただきまして5ページのほうをお願いします。さきに行われました生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会で、いただきました報告書の中の御意見等を踏まえまして、今年度から稼働可能な方に対して、先ほど御説明しました技能修得費等の支援によって可能となられた方に対して、ことしから特に実施している支援の内容でございます。マル1からマル6のそれぞれの段階にあわせて必要な支援を切れ目なく実施するということで、就労自立支援を進めているところでございます。
マル1につきましては、保護の開始段階でございますけれども、まず、本人の納得を得た集中的な支援を行うということをしております。一定期間に就労自立が見込まれる方に対して、その方の主体的な自立に向けた計画的な取り組みを、福祉事務所とその方の間で確認させていただいて、その上で御本人の納得を得て集中的な支援を開始するという取組を進めております。
2つ目の○でございますが、就労活動促進費ということで、これは特にみずから積極的に活動に取り組んでいらっしゃる方に対して、活動内容等を踏まえて月額5,000円、原則6カ月でございますけれども、就労活動促進費を支給しております。
マル2でございますが、保護開始から3カ月~6カ月の段階においてはそれぞれそれまでの取組を評価しまして、2つの項目を基本方針としております。1つは職種・就労場所を広げての就職活動ということ、それと低額であっても一旦就労という2つの項目を挙げさせていただいております。それぞれその時点での結果を踏まえまして、支援という形で方針を挙げさせていただいているものでございます。
3番目のところ、就労開始段階、これから就労というところに至って、今回検討いただく項目の1つであります就職支度費を支給する場合がございます。就職のために直接必要とする洋服類、通勤費について必要な方に対して支給をしております。
マル4でございますが、開始後の取組としまして御審議いただいたことでもございますけれども、勤労控除の見直しを25年8月から実施しているところでございます。
5番目の項目でございます。保護脱却段階での取組ですが、就労自立給付金、これは今、法律の中で検討することとしております。「保護脱却後に税、社会保険料等の負担が生じることを踏まえて、生活保護脱却のインセンティブを強化」するということで、就労自立給付金というものを創設することを検討しております。
あと、6番目の項目としまして、脱却した後についても支援が必要な方がいらっしゃいますので、これも今、法案のほうを提出させていただいているところでございますけれども、新たな相談支援事業の中で、その支援を継続的に進めていくということを検討しております。
めくっていただきまして、6ページでございます。生業費でございます。生業費、先ほど御説明したような内容のものでございますが、中ほどに支給の対象となる事例ということで挙げさせていただいております。基準額につきましては記載のとおりの状況でございます。
7ページをごらんいただければと思います。これはこのたび福祉事務所を設置する全国の自治体に対して、24年度の実績について調査を行ったものでございます。7ページは生業費について確認しました事項をまとめさせていただいております。
生業費につきましては、支給実績がある自治体が2割ということになっております。主な支給実績につきましては、ごらんのとおりでございます。支給した後の結果ということで、その結果についても確認をしているところでございますが、これは1人でも就労しなかった人がいれば「いる」という回答になりますので、実数を、悉皆を確認しているわけではないのですけれども、ほとんど107の自治体ではそういった者がいないという回答をいただいているところでございます。
あと、実績がない自治体が逆に8割程度ございますが、その理由としてはこの生業費を使って自立を目指すあるいは生業により自立を目指す方がいらっしゃらなかったという回答が9割を占めております。主な自治体の意見ですが、下の囲みに書いてあります。基準額の見直しが必要ではないかですとか、自営業の支援については福祉事務所で判断が難しい部分があるですとか、逆に見直しは不要であるというさまざまな御意見が寄せられているところでございます。
めくっていただきまして、8ページでございます。これらを踏まえまして、検討事項としまして、ごらんのとおり、支給実績と支給後の結果などをどう考えるべきか、支給範囲についてどう考えるか、基準額についてどう考えるか、という項目を検討事項として挙げさせていただいております。
引き続きまして9ページをごらんください。今度は「技能修得費」でございます。これは生計の維持に役立つ生業につくために必要な技能を修得する経費を支給しているものでございます。こちらのほうは資料の中ほどに支給対象となる例と書いております。その2段目、「さらに」書きのところでございますけれども、必ずしも就労に直結する場合に限らず、その前の段階でありますコミュニケーション能力等の就労に必要な基礎的な能力の修得というような段階についても、その経費を支援しているものでございます。
基準額については記載のとおりでございます。なお、下のほうに書いておりますが、マル1からマル3に該当する場合には38万円以内の特別基準という形で支援をしているものでございます。
10ページをお願いします。自治体に確認した結果でございます。支給実績は7割、主な支給実績はごらんのような項目に支給がされております。このものにつきまして、その支給した結果についてもまとめさせていただいております。こちらのほうについては1人でも就労しなかった方がいらっしゃるという回答があったものが6割程度の自治体から寄せられております。その支給しなかった理由については、記載のとおりの回答を得ております。
めくっていただきまして、11ページをお願いいたします。今回の調査において、自治体から寄せられた意見の主なものでございます。特に多く寄せられていましたのは、自動車の免許取得費についてですけれども、現在は免許の取得が雇用条件になっているという場合でございます。就労が確実な場合のみ認めているわけでございますけれども、これについて、一般的に免許を保有していることが就職に結びつきやすい等の事情から、要件を緩和してはどうかという意見が寄せられております。
あと2つ目の項目でございますけれども、今、技能修得期間2年ということにしておりますが、看護学校等において、正看護師を目指すような場合などにおいては、自立更生に特に効果があるのではないかということで、そこにつきましても支給年限の緩和等をしてはどうかという御意見をいただいております。
なお、逆に下のほうにございます、最後の意見としましては、判断基準を明確にすべきですとか、逆に就職に至らない場合には返還を求めるべきではないかというような御意見もいただいております。その項目につきましての検討事項は先ほどと同様の項目を挙げさせていただいております。
12ページをお願いいたします。技能修得費の中には高等学校等就学費という制度がございます。これは生活保護を受けておられる世帯の自立支援という観点から、高等学校就学費用を生活保護制度において制度化したものでございます。具体的には、ごらんのとおり高校就学に伴い必要となる学用品費、交通費、授業料等を支給しているものでございます。なお、この費用につきましては高校生に対し一律に支給しているものでございますので、実態調査を行っておりません。記載のとおり参考のところに書かせていただいておりますが、財政制度等審議会のほうからこの項目等につきましては、指摘があるところでございます。
続きまして、13ページをお願いいたします。生業扶助の最後「就職支度費」についてでございます。就職が確定した方に対して、その就職に直接必要とする洋服類等の購入費が必要な場合に支給するものでございます。支給のある自治体は55%、約5割。「主な支給実績」につきましてはごらんのとおりでございます。
下囲みのほうの「主な自治体の意見」でございますけれども、基準額を見直すべきではないかですとか、対象を拡大すべきではないかというような御意見が寄せられているところでございます。この項目につきましても、これまでと同じく検討事項を挙げさせていただいているところでございます。
14ページをお願いします。生業扶助につきましては、昨年、会計検査院からごらんの1のような指摘と2に記載していますように、改善に向けた取り組みを行うことが求められております。これに対し、厚生労働省としては下囲み、点線で囲っている部分でございますけれども、25年5月に、要求のあった事項について自治体に取り組みを求め、適正な支給を行うよう周知徹底を図っているところでございます。ここまでが生業扶助に関する御説明となります。
めくっていただきまして15ページ、一時扶助のほうの説明に入らさせていただきます。
一時扶助でございますけれども、被服あるいは家具什器費の更新という部分につきましては、経常的な最低生活費で賄われることを原則としております。しかし、予想外の事情によって、臨時多額な需要が生じる場合がございますので、その場合において「経常的最低生活費の範囲内でのやりくりは困難」と考えられますので、そういった特別条件下において、「臨時特別の需要に対応するもの」として一時扶助という制度を設けております。下の3の「一時扶助の種類」のとおりのようなメニューがあります。
めくっていただきまして、被服費から御説明したいと思います。被服費につきましては、16ページと17ページに記載させていただいております。まず、マル1でございますけれども、保護開始時において、その方が布団がないというふうな場合などにおいて、基準額の範囲内で必要最低限の額を支給しております。
そのほかマル2のほうですけれども、被服についても同等の対応をしております。また、被服につきましては、学童服について特別な需要があると実施機関が認めた場合、これは今は小学校第4学年に進級する児童に対してでございますけれども、基準額の範囲内でその必要最小限度の額を計上することとしております。
マル3の災害時においても、災害によって布団あるいは被服というものを失ってしまった場合について、災害救助法等の対応がされないときに支給しているものでございます。
続きまして、次のページのほうでございますが、4番目の被服費のメニューとしまして出産時でございます。出産を控えた場合に新生児に対しての寝具等が必要な場合がございます。それについて支給をしているものでございます。
また、マル5でございますが、「入院を必要とする者」に対して、寝巻等がないというような場合に、基準の範囲内で必要な額を支給しているものでございます。
6番目はおむつでございますが、常時失禁状態にある患者さんに対して、紙おむつ等が必要とされる場合に、基準額の範囲内で必要最小限度の額を計上しております。下が実績について調査した内容でございます。それによりますと、ほぼどの項目につきましても支給の実績があるという状況にございます。
めくっていただきまして18ページでございます。こちらのほうに現行で支給できなかった事例があるかないか、あるいは支給実績のない理由等についてまとめさせていただいております。
一番下の項目におきまして、自治体から寄せられた意見としましては、就労活動時におけるの被服費について、就職支度費または被服費でスーツ代などを支給できるようなことができないだろうかという御意見をいただいております。
19ページにまとめさせていただいておりますのが、被服費のうち小学校第4学年に進級する児童の学童服についての支給の状況でございます。半数の自治体において支給の実績があるということと、支給対象としてはごらんのとおり制服から通学用の靴、体操服等に対して支給がされております。
めくっていただきまして20ページをお願いします。「家具什器費」でございます。生活保護開始時において、最低生活に直接必要な家具什器費の持ち合わせがない場合など、マル1からマル4に記載のような状態において、支給をしているものでございます。基準額としては2万5,300円以内、真にやむを得ない場合には4万500円まで支給しているものでございます。
21ページをごらんいただきまして、その実績のほうでございますが、約8割の自治体において支給の実績がございます。その主な内容については複数回答でございますが、炊飯器、冷蔵庫、コンロ等の家具について支給がされております。自治体からの主な意見としましては、基準額の見直し等について御意見が寄せられております。
続きまして「移送費」でございます。移送費につきましては、ごらんの22ページから23ページにまたがりまして、(ア)から(ソ)までの項目に該当する場合において、必要なものを支給させていただいております。その実績につきましては、23ページの点線囲みからでございますけれども、ほとんどの自治体で現行の制度で支給できなかった事例はないという回答をいただいております。9割の自治体から回答をいただいております。また、意見としては、今回の調査では特に寄せられてはおりません。
めくっていただいて、24ページがそれぞれの項目ごとに支給実績を確認させていただいたものでございます。項目によっては数が少ないものもございますが、全てにおいて支給実績があるという状況にございます。
25ページのほうをお開きください。今度は「入学準備金」でございます。「小学校又は中学校に入学する児童、生徒が、入学の際」、その準備のために経費を必要とするときに支給しております。基準額については、小学校3万9,500円以内、中学校入学時には4万6,100円となっております。約9割の自治体で支給実績がございます。対象としておりますのは、記載のとおり制服、ランドセルから体操服等にございます。
自治体から寄せられた意見としましては、入学準備に必要な需要が賄えない場合もあるので、見直しが必要ではないかという御意見も寄せられております。
26ページは、先ほど説明の冒頭で説明しました就職活動促進費、この8月から実施しているものでございます。導入開始して間もないということで、特に調査を行ってはおりません。
27ページのほうをお願いします。27ページ以降につきましては、件数的には非常に少ないのですけれども、それぞれで実績はございます。まず、配電設備費ということで、配電設備が家屋にない場合に、その設備費用を基準額の中で支給しているものでございます。
28ページは「水道、井戸又は下水道設備費」、これも同様に水道、井戸を整備することが真に必要な場合等においてその整備費を支給しているものでございます。
29ページは、液化石油ガス等の設備費でございます。プロパンガス等のガス整備をすることが真に必要と認められる場合において、その設置が近郊の均衡と失することがないと認められる場合に基準額の範囲内で支給しているものでございます。これらについてもそれぞれ5%から20%程度の支給実績がございます。意見としては、特に自治体からはこの項目については寄せられておりません。
30ページは「家財保管料」でございます。医療機関に入院あるいは社会福祉施設に入所される単身の保護を受けておられる方がやむを得ない事由により、家財を自分の家以外の場所に保管する必要があるというときに、その経費を支援しているものでございます。支給実績としましては、7割の自治体で支給の実績がございます。意見としては、特に寄せられてはおりません。
31ページのほう、今度は「家財処分料」のほうでございます。借家にお住まいの単身の保護を受けていらっしゃる方が入院ないしは施設等に入所される場合に、家財の処分が必要というときに、敷金の返還金などからその経費を賄うことができない場合に支給しているものでございます。必要最小限度の額を基準としております。実績があるのは2割弱というところでございます。主な意見としましては、支給対象を拡大してほしいと。特に単身の方がお亡くなりになった後の原状復帰あるいはいわゆるごみ屋敷と言われるような状況になった場合の原状回復費というところに支援ができないかというような御意見をいただいております。
32ページは「妊婦定期検診料」というものでございます。基本的には市町村において行われます妊婦の方の健康診査事業を利用していただくことにしておりますけれども、それができない場合で、医療機関において定期検診を受ける場合に支給しているものでございます。支給実績は4分の1の自治体であります。自治体からは特にこのことについては御意見はいただいておりません。
33ページ、「不動産鑑定費用等」ということで、これは生活保護の申請を行った方または保護受給中の方が要保護世帯向けの不動産担保型生活資金を利用される場合に支給しているものでございます。支給実績については、約2割の自治体で実績がございます。自治体からの意見としてはごらんのような御意見が寄せられているところでございます。
「その他」34ページでございますが、今、御説明しました扶助の項目以外に新たにこのようなことについても一時扶助の必要があるのではないかということで御意見をいただいております。一括してでございますけれども、この生活扶助の一時扶助につきましても、検討事項としまして、まず「臨時的需要への対応方法として、一時扶助として対応するのが適当かどうか」。2つ目としまして、「一時扶助の支給対象項目は、現行のもので十分需要に対応しているかどうか」。3つ目としまして、「一時扶助の基準額についてどう考えるか」というのを検討事項として挙げさせていただいております。
説明のほうは以上でございます。よろしくお願いいたします。
○駒村部会長 では、引き続き資料3を岡部先生からでよろしいですか。では、お願いいたします。
○岡部委員 では、「生業扶助に関するメモ」について、私のほうからお話をさせていただきます。
私は、3つのことを報告させていただきます。1つはそもそも生業扶助をどのように捉えるかということ。2つには、生業扶助の対象とする労働について、どのように捉えるかという点。3点目については、このようなことを受けて私のほうから若干の提言をさせていただきます。
まず、最初の「生業扶助の位置づけ」なのですが、言うまでもなく生活保護制度は、最低生活保障と自立の助長にあります。そこで生活保護受給者に対し、最低生活保障を行うとともに、生活再建に向けた援助・支援をどのように図っていくかということが重要になってきます。8つある扶助のうち生業扶助は「最も自立助長の促進に寄与する扶助である」と言われております。
この点、自立助長及び生業扶助について生活保護法制定当時、社会局長の職にあられました木村忠二郎さん、また保護課長であられました小山進次郎さんがそれぞれの著書で次のように述べております。
まず、自立の助長について、木村氏は「国民の最低限度の生活の保護と維持に当たるだけではなく、進んでその自立を助長するという自立更生を図る」と、また、小山氏は、「凡そ人はすべてその中に何等かの自主独立の意味において可能性を包蔵している。この内容的可能性を発見し、これを助長育成し、而して、その人をしてその能力に相応しい状態において社会生活を適応させることこそ、真実の意味において生存権を保障する所以である」と述べております。
また生業扶助について、木村氏は「要保護者の自立を助長するという本法の目的に最も適応した種類の保護である」と、また、小山氏は「多少なりとも残されている要保護者の労働能力を引き出し、これを育て上げることによって現在の生活資料を得させると共に窮極的にはそれによってその要保護者が自立できるようにするものであって、生活保護の七つの扶助の中でも最も社会福祉的色彩の強いものである」と述べております。
以上のように生活保護法において最低生活保障とともに自立助長を図ることが必要であること、また、生業扶助は自立助長の促進を図る上で最も有効な扶助であると位置付けております。
参考資料の1について、自立の考え方ということで、中段で、社会福祉法並びに生活保護制度の在り方に関する検討委員会で、自立・自律概念の整理が行われて、広く地域の中で公私の社会資源を活用し自立・自律した生活を行うことを指して使用しております。依存から自立へ、他律から自律への方向で、生活再建に向けて、援助・支援していくことが求められるといえます。この図は私が「社会福祉法の解説」と「生活保護制度の在り方に関する検討委員会」報告書をもとに作成したものです。
では、2つ目のところにちょっと入らせていただきたいと思います。「生業扶助の対象とする『働くこと』(労働)に関する考え方」をどう捉えるかについてです。
働くということは、単に言えば賃金を、稼得収入を得るということだけではなくて、人や社会とのつながりややりがいや達成感を持つことができるということが、もう一つ大きな意義としてあるのではないか。
その中で労働を通して積極的に個人に社会に働きかける扶助として、生業扶助というのはあるのではないか。そう考えますと、その目的というのは能力の活用と能力の開発を通して、労働市場に積極的に参加促進していくととらえることができます。
この生業扶助において能力の活用は、先ほどちょっと御説明がありました生業費と就職支度費、能力開発については技能修得費や高等学校等就学費がそれに当たるということになります。
ここで子どもの支援という観点から生業扶助をみていきますと、「将来の生産(労働)の担い手として労働の質の向上(ひいては納税者、社会保障の負担、生活保護費の圧縮)につながる」ということから、未来への投資と考えておりますので、その点について高等学校就学費等がそのようになっているかということになります。
稼働年齢層の支援という観点から生業扶助をみてみますと、生業費・就職支度の提供や技能修得費を提供し、雇用の促進を図っているという側面があります。
このように生業扶助は「福祉から就労へ」の結節点となる扶助と位置づけることができます。そう考えますと、「就労」に向けた支援や貧困の世代間継承を防止する子ども・若者の学習・進学支援に生業扶助がどのように貢献していくかその範囲、水準が先ほども事務局から報告しましたがそれを検討するということが必要であると考えます。
またそれと併せて生活保護の受給者の中で稼働年齢層が一定数いらっしゃいます。失業が長期間に及ぶと労働意欲が減退しかねないだけに、就労意欲を喚起する支援や就労支援の中身について柔軟に対応して、一般就労のほかに「半福祉半就労」的な、中間的就労という場を提供することも重要になってきます。この点、福祉事務所に配置されている就労支援員や就労意欲喚起事業等の自立支援プログラム等が充実化が図られて、一定の成果が上がっていると考えております。
その次に参考資料の2ということで何点か挙げさせていただいております。生活保護の中で働くことをどう考えたらいいのかということで、先ほど簡単に個人や社会にとってどのような意味を持つのかとについて書かせていただいております。
次いでもう一つは労働環境との関係をどう考えるかということです。先ほどちょっと生業扶助の適用で一定の実績を挙げていることは喜ばしいというお話をさせていただきましたが、もう一方で生活保護に至った方については、多くの課題が、例えば労働市場になかなか働くことが難しい状況にあることも指摘しておきたいと思います。労働市場からすると雇用者側にとってはよりよい労働力も選別して雇用する傾向があります。中高年より若者、熟練度が低いひとよりも高い人、定時の時間帯よりもフレックスタイムで働いている人、心身に障がいのある人よりも健常者を、病者よりも健康な人。このような状況ですから、有給労働になかなかつけない人がいるということがあります。そのことをどう考えるかということでもありますが、積極的に就労への道筋をつけるということと同時に、労働環境の整備ということを図っていかなければならないと考えております。
そういう意味では、生活困窮者の自立支援法の中で中間的就労がうたわれており、実際にそれは1つの道筋をつけるということでもあるのではないかと思います。
その次に「就労の三条件」ということで、就労と考えたとしても、この図の2-1のところに働くためには就労の意思、能力、場という3つが揃って初めて就労が可能になるわけですので、そのことに対して生業扶助がどのように機能していくかということにもなります。
それとその次に「就労移行への三段階」ということで、これの意欲ということと場の問題をあわせたのが図の2-2のところに書かせていただきました。
それと「多様な働き方」ということで、一般労働市場の中で働くということ、これもある意味では、その人の状態、必要と労働市場との状況にも決まってきます。それ以外に中間的就労などの準労働市場、社会的参加などの非労働市場など一般的考える。ここでの多様な働き方という広く労働をとらえ返し考えていくことを述べています。
それと先ほど福祉から雇用への結節点という言い方をしましたけれども、「福祉から雇用へ」の考え方をここの中で示させていただいて、その流れ図をつくらせていただきました。
最後のところで、このようなことを考えて生業扶助は、これは将来的な観点から書かせていただいておりますが、「生業扶助の在り方に関する提言」ということで、多様な働き方。先ほど、一般就労と中間的な就労あるいは社会参加型のことをちょっと述べさせていただきましたけれども、それ以外にも正規/非正規あるいはフルタイム/パートタイムと多様な働き方を視野に入れた形で、生業扶助の適用というものを考える必要があるのではないか。
2つ目には、年齢を超えた労働を視野に入れるということです。これは生業扶助の適用はどうしても稼働年齢層を想定して考えられておりますけれども、現下の中のことを考えますと、やはり人口の構造であるとか、平均寿命が非常に延びておりますので、ある意味では高齢者の雇用は所得を得ること以外にも社会とのつながりということでは、積極的に生業扶助の適用ということも考えていく必要もあるのではないかと考えます。
3点目なのですけれども、能力活用だけではなく能力開発を視野に入れるということ。
これは労働の質を高め、労働市場への参入を促すということが必要。先ほども実績を見させていただきましたけれども、それはある職域に偏って運用されていると感じました。もう少し年齢や職域を広げる方向でできないか、例えば「若者・子どもへの訓練・教育の拡大」ということで、実際に現行の技能修得費あるいは高等学校等の就学費の引き上げを行ってもよいのではないかと考えます。
このことと関連してもう一点。高校卒業後の就学費用は、生活保護の中では夜間大学までは世帯内で適用ということになっておりますが、昼間部等の大学あるいは専門学校は世帯分離ということで行っておりますので、もう少し労働の質を高め、積極的に労働市場に参入ということを考えるならば、このあたりのところも今後、考えていただくということが必要なのではないかと考えます。
この参考資料の3というのが、基本的には私が主張したいということで、義務教育までは教育扶助の適用、それから、高等学校等、これは高等学校等の就学費が出ておりますし、それ以上のところは生業扶助で先ほど出させていただいたものですが、それを積極的に活用して、労働市場への参入、一定の収入を上げるということだけではなくて、もう一点は社会とのつながり、参加という側面からも有給労働につながらない社会参加についても生業扶助の適用(または別の扶助、さらには新たな扶助)が考えられないか、意見を述べさせて頂きました。基準部会ですので、基準ということを特化してお話をすることなのですけれども、自立助長にもっとも寄与する生業扶助が自立助長に最も寄与する性格を有する扶助であることから、その位置付け、意見等を述べさせていただきました。
以上です。
○駒村部会長 はい、ありがとうございました。
では、この2つの資料について質疑を始めたいと思います。どうぞ、どなたからでも。
道中委員、どうぞ。
○道中委員 ありがとうございます。
事務局のほうから生業扶助、一時扶助の概要も御説明いただいて、非常に間口の広い、たくさん費目があるなと。費目といってもなかなか言えないぐらいたくさんあります。それから、岡部委員のただいまの生業の関係の説明で、基本的な背景という形で再確認もさせていただいてありがとうございます。
就労問題、生業問題は本制度始まって以来の積年にわたる非常に重大な課題であると認識しておりますけれども、とりわけ労働にかかわるところの生業はちょっと重たいので、私のほうからは一時扶助というところで、少しそこをフォーカスさせていただいて、3~4点意見を申し述べさせていただきたいと思います。
資料が15ページから一時扶助になるわけですけれども、一時扶助ということですので、一般的な経常的な経費とまた別にダブルスタンダードという言い方がどうかわかりませんけれども、臨時的な最低生活費という枠でございますが、その一時扶助というのは、御説明がありましたように、臨時の特別需要であるということと、そして、必要不可欠、緊急、やむを得ないというような大きな要素があろうかと思うのですけれども、そこで16ページを見ていただきたいのですけれども、まず、被服費のところでありますけれども、これはまず布団ですけれども、ここの基準額、やや上のほうから基準額とありまして、「再生(打ち直し)」とうちの家族とか近所に聞くのですけれども、打ち直しは何というような、最近都市部ではまずないのです。ですから、そういうところで実際に需要があるのかどうかちょっとわからないのですけれども、その辺は時代とともに消費実態にそぐわなくなる、これは当たり前の話ですので、そういった当然のところの文言整理もこの際、御検討いただくということなのです。
そしてまた、限度額につきましても、1万7,200円というような額が妥当なものかどうかというようなことなのですが、これはそれぞれ個別の費目を列挙されている以上は、実態を踏まえて調査していただいて、その金額の妥当性についての検証をお願いしたいと考えます。
続けて、被服費なのですけれども、ここもやはり臨時的最低生活費ですので、特別需要、必要不可欠、緊急やむを得ないということなのでありますが、この原則とか関連性というところから考えますと、この特に学童服の4年次になぜ緊急性があるのか。原則から考えてあるいは関連性から考えますと、どうも子供は教育的配慮という視点もわかりますし、小学生は発育が早いあるいはさまざまな服も消耗が激しいというような視点ももちろん理解できます。
しかし、こうしたものは十分日々の生活の中のやりくりでやっていくはずだという原則論の話です。いきなり小学校4年で被服がぼろぼろになってしまうのか。そんなことないです。高校生あるいは中学生はもっと衣服は消耗していくかもわかりません。なぜ小学校4年生なのだろうかと。だから、日々のスタイルから考えますと、やはり一般世帯あるいは低所得者層でも、日々の生活のやりくりの中でそういうものは賄っていかざるを得ないということなのです。したがいまして、なぜ必要なのか、どうして小学校4年でなければならないのか、中学校はだめなのですか、そういった基準額は妥当なものなのでしょうかということで、先ほど冒頭の最低生活費の臨時的最低生活費といった考え方からしますと、そういった原則からしますと、やや必要性という説得力に弱いものなのではないかと考えます。
それの関連で、19ページのところをちょっとごらんいただきたいと思いますが、これは被服費のフロー図を書いていただいて、この一時扶助、本当に事務局は御苦労だったと思います。こういった調査をされた事例はほとんどこれまでないですね。それでざくっとした形で全体像が明らかになったわけでございますが、この小学校第4学年進級する学童服ですね。これで支給実績がある自治体が53.9%、実績のない自治体が413、46.1%と半分に分かれているのです。この意味はどういうことなのでしょうということですね。これはつまり後ほどの入学準備金との関連もあるのですが、どういった支給の手順を踏んで、こういうことになっているでしょうかというような素朴な疑問ですね。
それで、その辺のところを一律支給するというのは、要保護者あるいは被保護者の方が知らなかったら申請できないとか、その辺の申請がある人だけがそういった給付を受けられることになっているのではないかとか、そういった懸念が考えられるということです。半分の自治体が出して、半分出しておられないということです。その辺の公平性という視点からも、少し内容も詰めていただく必要があるのではないかというのが2つ目だったのです。だから、個々の費目については原則という現実的最低生活費という原則に当てはまらないところを当てはめているので、ちょっと無理が出てきているのかなと考えました。
ですので、それはひょっとしたら経常的な最低生活費として一般化されるべき類いのものが、この臨時的最低生活費というところで出てきている。だから、そこに少し矛盾が生じていると見られます。考えているわけです。
それから、済みません、続けておむつということで被服費6なのですけれども、この月額2万600円という金額です。これも算出された金額というのが、できるだけ実勢価格、実態に沿うような近似値として妥当なものであるかどうかということで、そういったものがこの限度額とかこの範囲内ということになりますれば、市場のほうでは、こういった金額が需要の程度が検討されないまま、ひょっとしたら2万600円以内が目いっぱいですので、そういうところで機械的にその辺の運用がなされているということが、少し心配だなと思うわけです。
その下の「23年度支給実績」というところで、福祉事務所設置自治体全体に占める割合というところで、先ほどの学童服が真ん中ぐらいにあります。小学校4年進級時学童被服です。これが50.1%という実態になっているということであります。
その辺の申請がないので支給されていないのか、実際の需要がつぶさに精査されていながら上がってきていないのか、その辺の現場のこれは運用というところなのでしょうけれども、その運用もこういった形の出るか出ないかと極端に言われてしまうようなデータになりますと、ここはちょっと御指導いただくような時期が出てくるのではないかと考えます。
私のほうから、とりあえずテクニカルな細かい話なのですけれども、そういったところの一時扶助ということを4点御意見として申し上げた次第です。
○駒村部会長 ありがとうございます。
では、岩田先生、お願いします。
○岩田部会長代理 今、道中委員から非常に個別の、細かい話が出たわけですけれども、私もそれぞれの金額とかあるいは内容について、なぜこういうふうに決めたかということも伺いたいのですが、その前にもうちょっと大きな枠組みとして、そもそも一時扶助とは何かということをしっかり捉えるべきではないかと思います。
15ページにその概要が書いてあるわけですけれども、確かにこういうふうに実施要領などに書いてありまして、本来は通常の月々の生活保護費の中から計画的に順次更新していくべきものだと書いてあって、したがって、災害とか出産とかそういう非常に特別の場合の必要即応という精神でなされているのだとなっているのですけれども、ところが、ちょっとここには矛盾がありまして、生活保護の最低生活費を決める場合、現在は相対比較でやっておりますが、最下10%の平均消費支出の、しかも全消使っていますので、9、10、11の3カ月ないしは2カ月の家庭も1カ月の家庭もその中には含まれております。したがって、1年間を通じた消費が必ずしも押さえられているわけではないのです。
私の了解では、生活保護はゼロから始まって、今月お金が入ると次の支給日にゼロになる、また入るという仕組み、つまり、貯蓄とか計画とか更新ということが最初からきちんと組み込まれているわけではないと思うのです。もしもそうであれば、そのような相対比較とかあるいはマーケットバスケットのときにも当然、一定の家計平準化のための予備金というものがないと、生活は回っていかないですね。
かつて、上智大学におられた篭山京先生がそういうのは家計運転資金だというふうなことをおっしゃっていましたけれども、そういう予備金というものは基本的には生活扶助には含まれない。ですから、生活保護を申請する場合には、ほぼ預金も底をついて、生活保護をもしも受けるとすると、もらえる月額の半額ぐらいになったときに申請が認められるという実態なわけです。
そうするとここで計画的に順次更新していくというのは計画性とか自主性とか、そういうものが生活保護制度のどこにあるのかというのが、私には大変疑問なのです。もしもそうであれば、生活扶助自体がこういうものを更新できるような範囲になっているか、あるいは切り詰めて平準化できるような貯蓄を奨励していく、認めるあるいは最初の手持ち金をある程度認めていくということが一方でないと、これは絵に描いた餅になりますね
もう一点ですけれども、一時扶助をこのように見ますと原則として、現物給付している形になっているようです、実際どうやっているかちょっと知りませんけれども。そうすると、例えばお布団を1万7,200円以内ということになりますと、多分、業者はディスカウントしないで、一番高いものを現物で出すと思うのです。本人に任せればもう少しもしかすると倹約して、安いものを買うかもしれない。その辺はわかりません。ワーカーのほうが倹約するように勧めるかもしれませんし、わかりませんけれども、少なくともこういう現物支給はほかに使うなという考えが一方であるわけですけれども、同時に家計を自主的に運営していって、計画的に生活をするという態度を、生活保護利用者に求めるという姿勢はほとんどないのです。
一方で生活扶助においては、そういうふうにしておいて、他方で計画的に就労に向けてやりましょうといっても、無理なのではないかというような感じもしているのです。つまり、生活保護やそれ自体への姿勢がそれぞれの家庭が毎月毎月要るものは違っている部分がありますから、普通はそれを平準化するために倹約したり、ある月はオーバーしたりということをやるのですが、生活保護費の場合は基本的にそういうことをしないことになっているし、そのように相対比較をして決めてきたと私は思っています。それがもう一点なのです。
それから、もう3点目ですけれども、家財保管費と家財処分費の話なのですけれども、入院や施設入所の場合に、アパートをたたんでしまって、それを一時保管しておく。早く出てくれば、それがまた戻って生活ができるということになりますけれども、そうならないときには処分費をかけて処分してしまうわけです。そうすると退院したときに事実上ホームレス状態になると、また1から住宅を建ち上げ、この基礎的な家財を整えてとなっていくことになります。何となくわからなくはないけれども、何か無駄なことをしているような感じもしないことはないですね。
これは仕組みの問題ですけれども、リサイクル的な考え方とかこういうものをどこかでプールしておいて、NPO的な何か中古家財の保管及び販売または処分ができるような社会的な組織があって、そして、また再開するときにはそういうものを利用してもいいし、場合によってこういう限度額の中でやってもいいと、地域によってもいろいろ違いがあるでしょうから、何かそういう考え方もあるのではないかと思うのですね。まとめますと、そもそも一時扶助というものが何のためにあるかということが、何となく生活扶助の考え方と必ずしもフィットしていないといいますか、生活扶助の考えがその月の消費のことだけ考えて比較して決めていますので、一時扶助がそれを補完すると考えないと生活が成り立たないのだと。これが運転資金だと考えると、ちょっと内容も変わってくると思うのです。だから、一時扶助の見直しをする場合に、そもそも一時扶助とは何かということが当然議論されてしかるべきで、そのときに繰り返しですけれども、貯金の問題、計画性、自主性の問題、保管処分というサイクルの無駄の3点を考慮に入れるべきではないかと思います。
○駒村部会長 ありがとうございます。
岡部委員、お願いします。
○岡部委員 一時扶助についてお話をします。2点です。
この費目はその時々、経常的な最低生活費では賄えないということで臨時的最低生活費、いわゆる一時扶助ができてきたという経緯があります。つまり、被保護者の生活の需要が経常的な最低生活費で賄えない、被保護者の個々の特別の臨時的な生活需要に対応してきたという歴史があるのです。最初からこの費目が全部あったわけではなく、その時代、状況に即して出てきており、経常的最低生活費では賄えないということが前提でできていたということで考えると、今、道中委員おっしゃったように、例えば、ほとんどの学生が学校の制服で通学するということが変わってくると、それぞれの地域・学校の実態に即して被服費の給付の適用を考えればよいと考えます。給付する自治体があってもあるいは給付しない自治体があってもいいのではないか。そういう意味での必要度に応じた裁量があっていいのではないかと考えます。これが1点目です。
2つ目は個々の費目が実勢価格に合っているかどうかです。それはやはり見直しをする必要があるのではないかと思います。
ですから、そもそも論の岩田委員がおっしゃったことは、経常的最低生活費と臨時的最低生活費の考え方、どういうふうに組み合わさっているのかということを考えた上で、お話をされているということですので、必要があって、経常的最低生活費で賄えないのだと、それも目的外使用をしてはいけないということで、費目を限定しているということがあります。
その範囲とか水準がこれでいいかどうか、また実態に合っているかどうかということの吟味は必要なのではないかと思います。
○駒村部会長 宮本委員、お願いします。
○宮本委員 生業扶助に関してでよろしいですか。
○駒村部会長 はい、どうぞ。
○宮本委員 生業扶助に関して、先ほど岡部委員のほうから非常に整理をして、位置づけていただいたので、大変わかりやすくそこで発言しやすいのですけれども、この生業扶助の重要な部分に自立助長というのがあるとすると、特に強化しなければならないのは、もちろん子供もそうですけれども、高校生年齢ぐらい、つまり、一番社会に出るのに近い年齢段階の青少年、若者の時期の問題ではないかと思うのですが、日ごろから仕事上、実態を見ていく中で感じるのは、高校生年齢の特に生活保護世帯、低所得世帯も全く同じですけれども、在学中に高校としての基礎教育と職業教育、つまり就労させるための職業教育をセットにしない限り、その時期が終わってからやるのでは遅いということでありまして、その点で日本の高校教育の大半はいわゆる教養教育ですので、この生活保護世帯の子供にとっては、全く合わないという実態があるように思います。
例えば具体的に言うと、卒業する前に就職できるために必要な幾つかの資格等があると思いますけれども、例えば例で言うとヘルパーにつくための資格を高校段階で取る。そうすると、それで就職がより有利になるけれども、今の高校では取れない、そのお金もない。それから、例えばパソコンの基礎に関しては、学校ではやることになっていますけれども、家庭にいろいろな事情がある生徒たちは、パソコンというのはほとんどキーボード入力もできないような実態があって、ハローワークの求人広告を見るとどんな職種もパソコンの最低限度、できることという資格があって全部それではねられる。それから、車の免許に関しては、その先で大きな問題になりますけれども、こういうことが学校教育段階では全く対応できず、それでは、家庭の力でできるかというとそういうことはできない。
そういう意味で、15から18歳になるまでのその3年間の自立助長のためのその生活保護の活用がもっと真剣に考えられてよいのではないかと。それをすれば、高校を卒業する段階で就職ができる可能性が広がる。そうでないと就職できないまま出るということになって、まさに貧困の再生産が始まるということがあると思います。
それから、もう一つ、先ほども岡部委員から中間的就労の話が出まして、今、これは国としても検討しているわけですけれども、現に中間的就労で若者支援をやっている現場でどういうことが起こっているかというと、生活保護世帯の受給している家庭の青少年、若者層のある部分が中間的就労に出てくるわけですけれども、交通費が全くない、それから、昼食代ももちろん出ませんので、1時間から2時間歩いてくる、自転車で来る、それから、ローカル線を乗り継いでくる、1日2時間合計4時間移動に費やす。それから、お昼を持ってこない。なぜお昼を持ってこないかは、これはお金がないということもあれば、親が全くその配慮がなく、手ぶらで来るというわけです。
こういう若者たちを支援する民間団体は、それに援助する力を持っていません。それから、報償金を例えばある団体が2,000円を1日払うと、相当努力して、スタッフの収入を削って払うわけですけれども、その2,000円を家のための食費に入れなければいけないという若者たちだというわけで、中間的就労をこれから拡大するのだとすると、特に低所得の若者たちに関しては、中間的就労が成り立つだけの経済的支援をしないと、自立助長にはならないだろうと。このあたりのところは生業扶助の中身として、検討すべきではないかと思います。
○駒村部会長 ちょっと1回ここで事務局からまた御回答というか、考え方を整理していただきたいのですけれども、2つあります。
1つは一時扶助の役割というか性格、これは少しきちんと整理したほうがいいのではないかというお話。もちろんその上で金額とか費目がどうなのか、偏在的にどうなのか、どういうふうになっていくのか。見直しとは改定していくのかという意味だと思いますけれども、そういう議論がありました。この一時扶助の役割は非常にこれからこの議論の流れで大変重要な話だとは思います。
それから、もう一つは、今の生業扶助の中での15歳から18歳の方への支援、それから、新しい形としての中間的就労について、この生業扶助のほうで何か対応はないのかというお話があったと思いますけれども、これは事務局のほうから一応、考え方をいただければと思いますが。
○大西課長 大変多岐にわたる重要なお話をたくさんいただいたと思います。まず、一時扶助の関係で道中先生、岩田先生から実勢価格を踏まえて、また必要に応じ見直していく必要性も御指摘いただきました。この点は、それぞれ長い歴史の中で大分前に最初の価格を実勢価格で決めまして、あとは物価で見直ししてきていたりするようなものが多数ございます。そういうものもまたいろいろと都市と地方で、またいろいろな販売形態がふえてきたりしまして、どのあたりの価格が最も適正なのかというところが、また今後、よく検討しなくてはいけない部分も出てくると思いますけれども、御指摘を踏まえていろいろ検討を進めてまいりたいと思います。
また、岩田先生のほうから家財保管費とか家財処分費の関係なども、実際は非効率になっているのではないかというような御指摘もございました。実際に経済的にどういう評価になるかは、ここで単純に申し上げるだけのデータはございませんけれども、例えば、中古品の保管、販売、あっせんするような組織があったらいいのではないかというようなお話は、イギリスですとOxfamなどという団体がいろいろな活動をされているといったようなこともお伺いしますし、国内でどのような団体が、どのような活動をされているかというところも、私どももよくわかっていないところもございますが、そういうところも情報収集ができればと考えます。
あと宮本先生、岡部先生からいただきました、特に若年層の方々への社会の担い手になっていただく方向での支援が重要だという御指摘はごもっともでございまして、それも今のところ生業扶助とは別に、アルバイト収入を、その後のいろいろ免許を取得していただくために充てていただけるように、基準や運用を緩和するといった取り組みをいろいろやっておりますけれども、さらに生業扶助のほうでどんなことができるのか、宿題として検討していきたいと思っております。
また、中間的就労についても、どこまでどういうふうに支援ができるのか。もしかしたら生業扶助とは別の世界で、何かの形でできないかということも含めまして、例えばセーフティネット補助金という財源を用意しまして、自治体において、特に中学生の方々の高校への進学、高校中退の防止の支援なども取り組んでいただいておりますけれども、そういうふうなことの活用も含めまして、いろいろ考えていきたいと思っております。
○駒村部会長 一時扶助の性格については、少し見方が違っていたと思うのです。ここは少し整理しなければいけなくて、道中先生はある程度、予期されるようなものについてはどうなのかというお話があって、一般的にはそういう我々もある程度、お金の使い方を予定しながら使うわけですけれども、一方で、岩田先生のほうからはかなり遊びがない、使い切りに近いお金の中で、予期されたとしてもそういう準備が実は十分できていないのではないでしょうかというお話があったかと思います。それから、また岡部先生のほうからも、その使い方については自治体がさまざま工夫しているという話と、知っている人と知らない人がいて、その辺の運用はどうなのかというお話もあったと思います。その辺はこれから議論していくということなのでしょうか。
○大西課長 一時扶助、生業扶助につきましても、非常に多岐にわたり奥の深いテーマだと思っております。今後の進め方の御相談のようなお話になりますけれども、前回まず一時扶助、生業扶助ということでお願いしましたけれども、この1回で終わりといったことでなくて、引き続きほかのテーマと並行し、間に挟みながらいろいろなお知恵を御提言いただきましたらありがたいと考えております。
○駒村部会長 では、ほかの委員から。
では、栃本委員と大竹委員の順でお願いします。
○栃本委員 先ほど岡部先生から生活保護の成立のときの当時のことがお話があったのですけれども、そのときも木村忠二郎さんと小山さんは実は、結構議論としては対立していたのです。そういうのもあるから、いろいろ本当は研究者のレベルの話だけれども、本当はいろいろあると思うので、それが1点。
それと篭山先生の話になったので、私も篭山先生に直接聞いたのだけれども、先ほど部会長代理からお話があったけれども、篭山先生があのときに言ったのだけれども、すってんてんになるとある意味では逆に天国みたいなものなのだと。しかし、それでも上がれないのだよという話をしていた。今、最近の先ほど岡部先生が話されたことも、宮本先生が話されたことも、そうではない仕組みをどう考えるかということで、それを生業扶助との関係で論議しているわけなのだけれども、先ほど道中先生から平成24年度のこの実際の生業扶助の調査、立派な調査ですねというお褒めのお言葉があったのですけれども、ただ、その数字を見てみるといろいろな理由があるとはいいながら、実際に市町村でこれを活用していない。だから、いろいろ理由はあるのです。それぞれこうこうこういうことだから、額が低いとか何とかということがあるのだけれども、その一方で、果たして生業により自立を目指す対象者がいなかったためとかそういう理由が挙げられているのだけれども、前も話したように一体ソーシャルワーカーが、ケースワーカーがそういうものをきちんと実態を、それをきちんと見抜く、また支援するというような体制、そういう姿勢とか資質があるやなしやということもやはりせっかく制度をつくったとしても、それは動いていくためにはこのような利用率の実態の中で、新たな法律をつくってということをやりますよと、中間支援をやりますよといったとしても、実際の町村の行政のそういう人たちがきちんとやらなければ全然進みません。だから、そこら辺はこれで返事とか全然必要ありませんので、私が言っているだけですので、そういうこともよく考えてしていただきたいということです。
そういう意味では、先ほど来根底に返ってというか、一番出発点に返って、この生業扶助というものが社会福祉制度的な性格を有していると書いてあるのだけれども、もう一つのほうは社会保障的である。だから、生活保護が社会保障法なのか、社会福祉法なのかという議論があって、今度の中間層に対する支援の組み立てが、社会福祉法的なものか、社会保障法的なものかというのは、かなりよく吟味してやっていかないとうまくいかない。先ほどの話に通じることなのだけれども、そういうふうに思いました。
それから、もう一つはちょっと前後しますけれども、3ページ目のところで、これは生業扶助の初歩の初歩としての説明で、事務局より説明があったわけですけれども、生業扶助の方法として、現在36条でいわゆる金銭給付とか現物給付の関係なのだけれども、第36条第2項、「前項但書に規定する現物給付のうち、就労のために必要な施設の供用及び生業に必要な技能の授与は、授産施設若しくは訓練を目的とするその他の施設を利用させ、又はこれらの施設にこれを委託して行うものとする」ということと、第36条第3項、ただし書きの部分。「但し、施設の供用又は技能の授与のために必要な金品は、授産施設の長に対して交付することができる」という形で、現在のところ36条の生業扶助の方法の部分では、このような形で規定されているのだけれども、果たしてこの授産施設もしくは云々、授産施設の長に対して交付するという組み立てというか、そういうもので今後、先ほど中間層に対する支援とかそういうものを考えた場合、かなり幅広い多様な形でこれを確保していかなければならないという時代になるわけだから、ここら辺もこれはお答えの必要はないです。ということで、そういう視点も必要ではないかと思いました。
それとあともう1~2点だけですけれども、先ほども御説明いただいたワークケアということで、就労支援の保護開始段階での取り組みから保護脱却の取り組みについてということで、これは先ほど厚生労働省のケースワーカーとかそういうので非常にかなり受け継ぐところがあるのだけれども、前からお話ししている、前回の議論のときもそうだけれども、伴走型であるとかそういう議論があったけれども、やはり精神保健福祉とか社会福祉とかそういう技能をきちんと持った人がやらないと、これはなかなかうまくいかないです。
それともう一つは、25年5月から実施されている部分、また、25年8月から実施されている部分というのは始まったところなので、なかなか実績というのはまだまだということであるのだけれども、これからまさに法律が通って、その他もろもろあることだから、やはり1年後調べましたというのではなくて、かなり早い時期にどういう感じで進んでいるのか。それは市町村の取り組みを促進するという意味でも、何か調べるといったらあれなのだけれども、中間経緯みたいなのを調べられたり、報告されたりしたほうがいいのではないかと思いました。
それと15ページの会計検査院の生業扶助に関する意見についても、先ほど来申し上げていますように、会計検査院の処置要求がありますからして、当然なのですけれども、被保護者に対して向けられているものより当然のことなのだけれども、福祉事務所のワーカーに対する言及の部分はすごく実際には多いわけだ。そこら辺をよくよく認識して、この生業扶助の非常に難しい部分は私はよく知りませんけれども、十分全てにわたって承知しているわけでないけれども、運用の部分をきちんとしていただきたいということを意見として申し上げたいということです。
○駒村部会長 大竹委員、お願いします。
○大竹委員 私の意見は栃本委員が最後におっしゃったことに重ねて申し上げたいと思います。
生業扶助の自立助長に対する重要性とか、あるいは一時扶助の理屈も十分わかるのですが、14ページの会計検査院の意見というのはもっともな話で、実態がそもそもわかっていない。今回のアンケート調査は、自治体レベルで就労につながったかどうか、いたかいなかったかというレベルの、ゼロイチの指標が自治体ごとにしかわからないというアンケートです。このアンケートも大変だったと思うのですけれども、ただ、常識的に考えれば、やはりお金を出している以上、支給したうちのどれだけが就労につながったというパーセンテージが、業務データとして得られるべきだと思うのです。そうなっていないということ自体が、やはりこれはおかしいと思います。
今回生業扶助が大切であると、あるいは新しいものを入れていくということにするにしても、それが検証できない状態で果たして入れることができるのかというのは、私はこの意見を見て、もっともだろうと思います。現状の調査もそうできていないということを、第一に反省していく必要があると思います。
それから、もう一点はこういった自治体レベルで差が出てくる理由を道中委員も、栃本委員もおっしゃいましたけれども、自治体レベルで差が出てきているというのと、もう一つはケースワーカーレベルで差が出てきているのと両方あると思うのです。その本人が知っているかどうかというのは、本人がみずからこれだけの情報を得ているとはとても思えないので、ケースワーカーでどうか、自治体の指導がどうかということで決まってくると思いますが、そのあたりのことも細かい業務データをきちんと整備しないことには何もわからないと思うのです。一体ケースワーカーごとにどれだけの差があるのか、一律に自治体ごとに違いがあるのかということもわからないと、制度をこれからどれだけよくしようと、それが有効に使われるか、無駄遣いとなるかも検証できないということで、私はこの14ページの意見というのは、やはり第一に真摯に取り上げて、業務データの整備は第一番にすべきだと思います。
○駒村部会長 ありがとうございます。
この資料に関してほかにいかがでしょうか。阿部委員、お願いします。
○阿部委員 一時扶助の観点で、家具什器費がありますけれども、これもほかのものもそうなのですけれども、何が必要で、何が必要でないで、どれぐらいまで壊れたらこれが充当できるか、恐らく今は各ケースワーカーの裁量に委ねられているのだろうと思うのです。ですけれども、この自治体からの主な意見の中でも、支給範囲を明確にしてほしいとか、冷房器具や暖房器具なども考慮してほしいという意見があるように、一体今現在の生活の中に何が必要なのかということについて、もう少し明確にする必要があるのではないかなと思います。
必需品についてはいろいろな調査もありますし、大体どれぐらいの人がどれぐらいのものを持っているかというものも調べることは可能ですので、そうでないと結局のところ、ケースワーカーが厳しい人だと使ってもらえなくて、優しい人だと買ってもらえるような恣意的なところになってしまって、それで本当に最低生活が満たされているのかということは、保証できないかと思いますので、そこのところは何らかの基準が必要なのではないかと思いました。
○駒村部会長 ほかに。山田委員、お願いします。
○山田委員 私が気になっているのは2点ありまして、1つ目は先ほどから出てくるデータ整備で、いろいろな新しい制度が今、予定されているのですけれども、何か制度を入れたときには制度を入れた後に調査するというのではやや遅くて、制度が始まる前に調査を入れて、調査が入った後にどういう変化があったかというのをきちんと追えるようなデータ整備の仕組みというのが重要なのです。ですから、何か制度が入った後にデータ整備をするというのではやや手おくれですので、それは先手先手でデータ整備をもう既に始めていただいて、一体どういう仕組みが、あるいはどういう自治体で、あるいはどういう工夫がその就労に結びついたのかというのがわかるようなデータを整備していただきたいということが1つです。
あともう一つが、これはヒアリングをしていて気になったのは、もちろん最終的に自立ということで、就労できる人は就労による自立ということになると思うのですけれども、そういった就労に結びつく場合というのは、一番重要なのは各国いろいろとアクティベーションポリシーとかプログラムとかやっているのですけれども、一番効くのは教育訓練なわけですね。そのときに一番ヒアリングなどをしていて懸念されるのは、例えば、こういった技能があれば、就職に結びつくということがわかっていながら、例えば介護関係ですけれども、そういった教育訓練プログラムが地域的に提供されないような場所というのは当然あるわけです。そういった本来だったら就職に結びつくような技能訓練があるにもかかわらず、それが提供されていないという可能性にも注意をしなくてはいけないというのが、もう一つずっと気になっている点です。
私からは以上です。
○駒村部会長 ほかの委員は。では、宮本委員、お願いします。
○宮本委員 先ほどの私の発言、ちょっと補わせていただきたいと思うのですけれども、例えば自立助長で特に若い人にこれから強化するというときに、生活扶助費、このことは言うまでもない話ですけれども、生活扶助費で若干の補てんをするというだけで自立助長できるわけではないと。例えば、国際的な動きを見ると、18歳が成年年齢の国は、18歳までは学校教育または職業教育に従事させることを義務化して、特に生活保護を受給している世帯に関しては、その18歳までの間の教育訓練の責任と、それをチェックするという仕組みを相当強化していて、これは国によって若干強弱ありますけれども、制裁措置をかなりとっている。
先日、私はドイツへ行ったのですけれども、ドイツで生活保護受給をしている家庭の16から18、年齢は若干違うかもしれませんけれども、その年齢の若者に関しては、学校教育または職業訓練に必ず入らなければいけなくて、定期的に情報センターがチェックして、そこに行ってない場合には1割カットとか、親に対してもかなり制裁措置をとる。これがいいかどうかはかなり批判もありますけれども、自立助長するというのは、サービスと一緒にならない限りは効果が上がらないわけで、そのあたりの議論というのはここでやるべきことなのか、私は生活保護の制度に関しては素人なので、発言が非常にちゅうちょするところがあるのですけれども、自立助長はそう簡単ではないだろうなということを日ごろから感じていますので、ちょっと補わせていただきました。
○駒村部会長 では、栃本委員。
○栃本委員 今、ドイツの話が出ていましたからあれなのですけれども、かなりドイツは警察国家的というところがあるのと、あと密告社会、告発社会なので、非常に厳しい形で行っているわけです。これは生活保護、社会保障のみならずそれ以外のものでもかなり、例えば高齢者が介護の部分が足りない場合、充当する場合に、それの財産隠しをどうしているかとか、相当綿密にやるのです。
そういう社会がいいかどうかというのはやはりすごくあるので、だから、今、お話になった自立助長とか自立支援の差の裏表というか、ハードアプローチとソフトアプローチというか、そこら辺のころ合いを相当うまくやらないと、特に先ほどから申し上げているように我が国における、先ほど大竹先生が話されていたけれども、市町村、それともう一つは市におけるソーシャルワーカーの力量や専門性であるとか認識、ヒューマンライツアンティグリティとか、そういうことを含めて、そういうものが規定があった上でのことをしなければいけないから、そこら辺は比較的我々のここでの議論というのは、太陽と北風ということでいうと、穏やかなことを議論しているわけなのだけれども、どういうふうな形でそれをチェックするかとかそういうものについての運用とかそういうものについては、かなり慎重にというか、先ほど大竹先生が話されたように、きちんと統計とかとらなければいけません、それはそうなのだけれども、まさに人にかかっている部分があるので、そこら辺はやはり慎重に執り行うべきであると私は思います。
○駒村部会長 はい、どうぞ。
○宮本委員 この問題は、私も制裁措置をとるべきだという主張をしているわけではなく、現実の問題は自立ということを強めるときに、余りにもその条件がない中で今あるということがありまして、やはり自立助長をするためには生業扶助をいじるというだけでは、とても成果が上がらないということで、ちょっと補足させていただいたということです。
○駒村部会長 これはこの2つのテーマはまだまだ議論していくと思います。きょうは最初の手がかりということですけれども、いろいろ検討事項に書かれている実績と給付の結果をどう考えていくのか。この辺も今、御質問、御議論があったようにきちんとした根拠がないと、統計的な根拠も含めてないとなかなかこれだけだと評価しにくいという御意見があったかなと、今までの福祉事務所におけるそういうデータに関する問題点もちょっと御議論があったと思います。
それから、今の御議論はこの高校の時期にある子供たちに対する対応ということに対して、いろいろ議論があったかとは思いますけれども、またこの話は諸外国いろいろあると存じ上げておりますので、またどこまで守備範囲かというのもありますし、生業扶助だけでという議論ではないというのはそうは思うのですけれども、ちょっときょうはこの辺で引き取らせていただいて、実はもう一個資料がございますので、資料4のほうがまだ残っておりますので、ちょっと時間も押しておりますので、事務局から資料4について御説明をお願いできますでしょうか。
○伊沢補佐 では、引き続きまして資料4につきまして、御説明させていただきます。
住宅扶助ですが、困窮のために最低限度の生活を維持することができない方に対しまして家賃、間代、地代等や補修費等住宅維持費を給付するものであると。住宅扶助の方法は原則といたしまして、金銭給付でございますが、これができない場合や適当でない場合、またはその他保護の目的を達成するために必要がある場合には、例外的に宿所提供施設等を活用することにより現物給付することができるということになっております。
住宅扶助の基準は、厚生労働省の告示でございますが、生活保護法による保護の基準により定められております。1ページの(1)に現行の基準額をお示ししております。現在の家賃、間代、地代等の基準額は1級地及び2級地で月額1万3,000円以内、または3級地で8,000円以内となっております。また、補修費等住宅等維持費の額でございますが、全級地共通で年額11万7,000円となっております。家賃等が(1)の基準額を超える場合でございますが、そのページの(2)にお示しのとおり都道府県、指定都市もしくは中核市ごとに厚生労働大臣が定める特別基準額の範囲内で必要な額を認定することが可能となっております。さらに、この限度額によりがたい場合でございますが、こういった場合には世帯人員や世帯員の状況、当該地域の住宅事情によりやむを得ないと認められるものにつきましては、限度額の1.3倍、7人以上の世帯につきましてはさらにその1.2倍の範囲内で必要な額を認定することができるようになっております。
参考で平成25年度の特別基準額を47都道府県及び61市別に一覧にしたものを資料の3ページですが、載せております。
そのほか2ページにございますように、敷金・礼金、契約更新料等につきましても、必要となる場合には一定の範囲内で給付が可能となっております。また、被保護者が現に居住する家屋の畳、建具、水道設備等の従属物の修理または現に居住する家屋の補修等を行う場合には、住宅維持費が給付されます。参考でございますが、現に居住されております被保護世帯の住宅の状況を表で載せさせていただいております。平成23年7月現在、公営住宅等の借家・借間等にお住まいの世帯は、総世帯147万世帯のうち約85%の125万世帯弱となっております。住宅扶助費の支給総額は平成23年度実績で5,383億円、生活保護費全体の15.4%を占めている状況でございます。
住宅扶助に関する意見といたしまして、平成25年度予算執行調査結果及び財政制度等審議会が本年1月に報告いたしました、平成25年度予算編成に向けた考え方を載せております。本年5月に出ました財政審の財政健全化に向けた基本的考え方におきましても、これは資料2の12ページに載せておりますが、住宅扶助も含め生活扶助以外の扶助制度については、生活保護の一層の適正化に向けて生活保護基準部会において、さらなる検討が行われることが期待されるとの意見が明記されているところでございます。
最後になりますが、今後、住宅扶助を検討するに当たりまして、基本的なデータベースとして活用することとなるであろう総務省所管のものですが、住宅土地統計調査につきまして、その概要を5ページに載せております。直近の調査が今年度行われておりますので、検証データとして使うにはスケジュール的にも制約がございますが、当該調査から一般低所得帯の居住実態を把握することによって、住宅扶助の検証に活用してまいりたいと考えております。
住宅扶助の概要と資料4の説明は以上でございます。今後の検討に当たり、大規模調査のデータ処理等、膨大な事務的作業も想定されております。まずは基本的な部分から御議論を開始していただければと考えます。
以上でございます。
○駒村部会長 では、資料について、きょうは入口の議論ですけれども、今後必要な切り口とか資料などについても含めて、御意見いただきたいと思いますけれども。では、園田先生、次に大竹先生もですか。では、その順番で。
○園田委員 余り時間もないと思うので、特に4ページの住宅扶助に関する意見に関連して、気になる点を5点ばかり指摘しておきたいと思います。
1つ目は、特に賃貸住宅の家賃の価格形成について、どういうふうに考えるのかが明確になっていないという点です。基本的には、こういう場合には市場家賃、近傍同種のものを比較するということで、アメリカですと、フェアマーケットレント(公正市場家賃)として、一応、かなり手続的にも明確にした市場家賃の算定方法というのがあります。日本ではそういうことについてのコンセンサスが得られたものがないということです。もう一つは、先ほど一番最初に大竹先生が御指摘になったことなのですが、比較するにもどういう住宅水準、どういう居住水準のものをもってよしとするのかという点です。住宅居住に関する水準は国交省に住生活基本法というものがありまして、そこの中で住生活基本計画というのがあって、居住人員に応じた必要面積とかあるいは設備等に関する基準は定めています。しかし、法定的な拘束力はそれほど強くありません。住宅の水準と家賃をどういうふうに算定するのかというのがベースの問題だと思います。
それから、2点目は今度の住宅土地統計調査でも出てくると思うのですが、日本は今これから急速な需給状況の変化が起きていて、空き家化が進んでいる点です。、5年前のデータで日本全体で13.1%の空き家ですが、多分今度の調査ではもっと出てくると思うのです。ところが、完全にマーケットで需要と供給がバランスするのではなくて、空き家にしてそのままになっているという状況があるので、その辺をどう考えるのかというのが2点目です。
3つ目は貧困ビジネス等があるのですが、実は住宅の家賃を下げてでも困窮者に入っていただきたいという動機が十分に働く背景があります。それはいわゆる高齢者の場合ですと、介護扶助と医療扶助が期待できるからです。そちらからの収入をある意味見込んで、そのためにとにかく居どころを定めてもらうということがあるのではないかというのが3点目です。
4点目は、日本の場合は、低所得者に対して、一つは公営住宅というものと、生活保護の住宅扶助というものがあるのですが、その間の「違い」の問題があります。公営住宅のほうが家賃が低くて、住宅としての水準としては高い。さらに、その下層に低質な民間賃貸住宅があって、相対的には家賃が高いのに住宅の水準が低いという国交省と厚労省にまたがるかなり大きな問題があります。そのときに、実は公営住宅というのは、住宅政策はある意味暗黙のうちに2人以上の世帯を前提にしてきたので、今、一番多い世帯型の単身世帯は実は専門の住宅政策の中では範疇外として長年扱われてきました。単身者の問題は、むしろ厚労省の寮とか施設の範疇だったわけですけれども、もはや単独世帯が一番多くなっているときに、公営住宅の中でも単身入居を認めているのですけれども、世帯の人数と住宅ということの関係をどう捉えるかということも、その公営住宅と民間の低質な賃貸住宅の間に、含まれている問題だと思います。
最後に5点目なのですが、住宅扶助は例えば東京都の単身5万3,700円というのは,すごく過大ではないかというような見方もできるのですが、実はその住宅扶助の中でかなりのことが含まれているという実情があります。何が含まれているかというと、1つはひとり暮らしの人たちが、全く1人で住宅をあてがっても生活ができない部分を、いわゆる今の言い方ですと関係資本を補うような生活支援を人的に手当てするというような部分に充当されている側面があります。その5万3,700円の中から住宅の部分と、生活保護上は位置づけていない生活支援的なものに費用を割り出しているというような側面をどう考えるか。もう一つは東京でも大阪でも、大都市では住宅扶助費が市場家賃をつくっているというか、マーケットを形成しているような状況の問題です。それは何かというと、家主さんにとってみれば一種の変な言い方ですが、何かあったときの保険料というか、ちょっといい言い方ではないと思いますが、迷惑料的なものが含まれているという問題です。私が今日の時点で気がついたのは以上5点ですけれども、そういう問題があると思います。
○駒村部会長 大竹委員、お願いします。
○大竹委員 園田先生と少し重なりますけれども、私、1点だけ申し上げたいと思います。
今後、大規模調査を使ってレベルを決定するという議論、意見を事務局からご説明いただいたのですが、レベルを決める話と、それから、全体の4万幾らとか5万とかというレベルを決めるのと、個別の家賃が市場家賃あるいは質をきちんと反映したものかということを検証するということは別の話で、後者が多分全然できていないと思うのですね。基本的には、どんな質のものでも大家が言ってきたらその額を払うという形になっているから、貧困ビジネスがつけ入るすきがある。
園田先生がおっしゃった、その地域の家賃を生活保護、この住宅扶助が規定しているという部分も、質を伴っていたら私はそんなに大きな問題ではないと思うのですね。最低生活というのを基準にした、それにふさわしい質の住宅を提供されていて、そこにみんなが住んでいるというのは、国交省との方向とも近いとは思うのですけれども、ただ、それを伴っていない住宅にもかかわらず、その住宅扶助の家賃が支払われているということであればかなり大きな問題で、この金額のかなりの部分が生活保護受給者ではなくて、家主に行っているということになりますから、そこの質に対応した家賃かどうかの仕組みづくりというのを同時にやらないと、幾ら地域レベルというのを決めていっても、この問題というのは解消しないと思います。
○駒村部会長 ほかにいかがでしょうか。栃本委員。
○栃本委員 ちょっと今、園田委員から5点挙げられて、それぞれ重要なのですけれども、非常に重要な部分、住宅扶助の内訳というか、住宅扶助の中に含まれているものという部分を非常に短く話されたので、ちょっとわかりにくい部分があるので、私はよくわかるのですけれども、よくわかるというか、前からお聞きにしているので、もう少しだけちょっと説明していただけますか。
○駒村部会長 では、園田委員。
○園田委員 例えば、ある東京の事例で申し上げますと、1人ずつにアパートを5万3,700円という形だと、確かに箱はあるわけですけれども、その人は生活の規律も守れないし、1人でいるともうどうにもならない。そうすると、例えばその5万3,700円の人たちを4人とか5人とか集めてくると、住宅は大型になればワンルームの比例家賃かというとそうではないので、例えば一軒家にそういう方たちを集めてくるとそこの部分で家賃はある程度集約できるわけです。そこの部分で生み出されてくる金額があるので、善意の人であればそこの部分を使って見守りだとか、何かあったときの「まあまあとか」あるいは食事を提供するとかという部分に補っているという形です。真逆にものすごく貧困ビジネスであれば、その住宅の部分を本当に今の脱法ハウスみたいに、1人1.7畳ぐらいをあてがって、5万3,700円をもらって、そこの部分を別のところに流用しているという問題です。
○栃本委員 ありがとうございました。それともう一つ、住宅扶助が要するに空間論というか、空間としての住宅という部分が、もちろん当たり前だけれども、基本というかそれが一番根本なのだけれども、実はそうではない部分というものが実は派生的にというか、先ほど関係財とかそういう話もあったけれども、そういう部分があるのだということも、少し頭の中に入れておく必要があるなということですね。
○園田委員 そうですね。最近、地域包括ケアを説明するときに、お皿の上に植木鉢が乗って、その植木鉢は住まいであって、その中に土を入れる必要がある。それが生活支援で、それがないと介護保険だろうと医療保険だろうと花が咲かないという図式があります。そういう意味でいうと、今、栃本先生が御指摘してくださったことは、植木鉢とその土の部分がえも言われぬ不可分の部分があって、普通元気で自立した人だと、家賃というと植木鉢の部分だけなのだけれども、生活保護の対象になる人は実は土の部分もパッケージでないと生活が成り立たないので、「住居」というのか「居住」というのかというので微妙に違うのですけれども、そこをセットにして考えると5万3,700円でも足りないかもしれないということです。
最後にどこで底を抜けないようにするのかという点で、権利養護だけではなくて、保障すべき最低の住宅の水準の問題があります。ハードに見れば防災性ということで、耐震と防火ということになるのだと思うのですが、もう一つはやはり生活の質ということで居住面積等が論点になります。そこの底が抜けないところの住宅の水準も今まで余り明解に議論されてこなかったのではないかと、そういうことだと思います。
○駒村部会長 では、岩田先生、お願いします。
○岩田部会長代理 済みません、今のお話ですけれども、生活保護の場合も保護施設というのがあって、その中に宿所提供施設もあります。園田先生も、もちろん御承知のように、イギリスの住宅手当の積み上げ方の中にはそういう施設のサービス費用が含まれて、いいサービスするとその施設利用者の住宅手当が高くなるというようなそういう仕組みがあるので、それは今後施設問題も含めて考えるべきところだなと思っています。
もう一点ですけれども、住宅扶助は歴史的に公営住宅2種の家賃と連動させて、それを建設省と厚生省が協議して決めてきたという経緯があるので、今、住宅扶助どうするという話になったとき、先ほどおっしゃったように、公営住宅との関係が切れてしまっているので、そもそも一体何と比較してするかという、そこが一番大きな問題だと思います。最後にちょっと付け加えさせていただきました。
○駒村部会長 非常に住宅扶助、きょう最初の議論でありましたので、資料の4ページにあるような意見に対しても、ちょっといろいろな見方があって、こういう単純な比較というよりは、やはり家賃の決定とか質のコントロールとかあるいはどういうサポートがついているかということもきちんと考慮して議論を進めていかなければいけないという話もありました。公営住宅の話やあるいは施設の話もございましたので、ちょっとかかわる話がいろいろ多岐にわたると思います。
きょうのところは、とりあえず入り口としてはこのくらいで、今のお話を事務局のほうでまた吸収して、整理していただきたいと。その上で、例えばこのデータだけでいけるのかどうか、あるいは住宅扶助を受けている方の居住の質というのでしょうか、サポート状況というのはどこまでわかるのか、どういう資料があるのかというのも踏まえてちょっと検討していただければと思います。
ちょっと時間もオーバーして大変申しわけございません。私の不手際です。次回の開催について、事務局から連絡をお願いいたします。
○伊沢補佐 申しわけございません。今、調整中でございますので、追って御連絡をさせていただくということでよろしくお願いいたします。
○駒村部会長 それでは、本日の議論は以上とさせていただきます。御多忙のところ、どうもありがとうございました。
ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(生活保護基準部会)> 第15回 社会保障審議会生活保護基準部会議事録(2013年11月22日)