ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会)> 第13回 社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会議事録(2013年7月29日)




2013年11月1日 第13回 社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会議事録

年金局

○日時

平成25年11月1日(金)10:30~12:30


○場所

全国都市会館3階 第2会議室
東京都千代田区平河町2-4-2


○出席者

吉野 直行 (委員長)
植田 和男 (委員)
小野 正昭 (委員)
川北 英隆 (委員)
駒村 康平 (委員)
武田 洋子 (委員)
西沢 和彦 (委員)
山田 篤裕 (委員)
米澤 康博 (委員)

○議題

(1)検討作業班における議論について
(2)その他

○議事

○吉野委員長 それでは、定刻になりましたので、第13回「年金財政における経済前提と積立金運用のあり方に関する専門委員会」を開催させていただきます。

 委員の皆様におかれましては、御多用のところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。

 本日の出欠状況でございますが、本日は小塩委員が御欠席となっております。

では早速、議事に入らせていただきたいと思います。

 それでは、恐縮ですけれども、カメラの方は、撮影の後、出ていただければと思います。

(報道関係者退室)

○吉野委員長 では、事務局のほうからお願いいたします。

○森大臣官房参事官 年金局の資金運用担当参事官の森でございます。

 最初に、前回の専門委員会以降、人事異動がございましたので、事務局のメンバーを紹介させていただきます。

 大臣官房審議官年金担当の藤井でございます。

○藤井大臣官房審議官 藤井でございます。よろしくお願いいたします。

○森大臣官房参事官 ただいま風邪がはやっておりまして、本日、山崎数理課長は体調不良のために欠席させていただきます。

 続きまして、資料の確認をさせていただきます。

 本日の資料でございますが、

 資料1 検討作業班における議論について

 資料2-1 検討作業班における議論について(資料参考集)-第1分冊-

 資料2-2 検討作業班における議論について(資料参考集)-第2分冊-

 資料2-3 検討作業班における議論について(資料参考集)-第3分冊-

 資料2-4 検討作業班における議論について(資料参考集)-第4分冊-

 参考資料1 雇用政策研究会において議論していただく論点(案)

 参考資料2 今後の年金部会における議論の進め方

ということでございますが、皆様、お手元にございますでしょうか。

○吉野委員長 おはようございます。

  それでは、資料を皆さんに確認していただきましたので、専門委員会における審議の進め方に関しまして、事務局から参考資料1と参考資料2に関して御説明をお願いいたします。

○武藤数理調整管理官 それでは、私から資料説明をさせていただきます。

 前回、7月29日の当専門委員会におきまして、定量的な検討を進めるために詰めが必要となる幾つかの事項について検討作業班を組織して予備的な検討を行うこととされたところですが、この検討を進めている間に当専門委員会の審議の進め方に関する客観情勢の変化が幾つか生じておりますので、これについて簡単に御紹介申し上げます。

 まず、参考資料1でございます。

 これは、9月25日に開催された雇用政策研究会の資料の抜粋でございます。これによりますと、雇用政策研究会におきまして、本年6月に閣議決定された日本再興戦略を踏まえた新たな労働力需給推計を行い、来年1月を目途に報告書の取りまとめを行う予定とのことです。当専門委員会では、これまで、昨年8月に公表された労働力需給推計に基づいて議論を進めてまいりましたところですが、平成26年財政検証の前提を最終的に設定する際には当然この新たな推計を考慮に入れる必要があるものと考えられるところです。

 次に、参考資料2でございます。

 これは、10月7日に開催された年金部会の資料の抜粋です。去る8月6日に社会保障制度改革国民会議の報告書が取りまとめられ、これを受けて年金部会において平成26年財政検証に向けての議論が進められていますが、資料の裏面の「財政検証に向けた議論のプロセス」をごらんいただきますと、今回の検討作業班からの御報告を受けた上で、当専門委員会において年内に一定の議論の整理を行い、年金部会に御報告して、御議論願う段取りとしております。

 しかしながら、年内の段階ではまだ新たな労働力需給推計も公表されていない見込みであることから、ここでの議論の整理は経済前提の設定の枠組みや考え方についての整理にとどまらざるを得ず、最終的な経済前提と積立金運用のあり方の取りまとめにつきましては、新たな労働力需給推計とともに、例年年明けの時期に公表される内閣府の経済財政の中長期試算や、この秋に予定されている公的・準公的資金に関する有識者会議の提言なども踏まえ、当専門委員会における議論を経た上で、来年改めて年金部会に御報告して御議論願う段取りとなるものと考えているところです。

 参考資料1・2の説明は以上です。

○吉野委員長 ありがとうございました。

 それでは、きょうの議事に移りたいと思いますが、前回の専門委員会でお話しさせていただきましたとおり、経済前提の設定に関する議論を収束させていくための予備的な検討を行う場としまして検討作業班が設置され、全体で3回会議がなされました。きょうは、その検討結果の報告をいただきながら、専門委員会でさらに議論を深めさせていただきたいと思っております。

 米澤委員が検討作業班の座長でございましたので、米澤先生から御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○米澤委員 それでは、資料1に基づきまして、どういうことを行ってきたかを本当に簡単にお話しさせていただきたいと思います。

 詳細に関しては、この後、改めて説明があるかと思いますので、どんなことをやったかということを中心にお話ししたいと思っております。

 資料1の2つ目の○の1から4にございますけれども、そういうテーマでもって計3回、議論をさせていただきました。

 どういうことが整理されたかというと、こういう議論があるということで改めての整理と、一部は暫定的なデータでもってどういう数字になるのかということを見てみた程度でございます。いずれにしましても、本格的な議論はこの委員会のほうで、改めてということではないのですけれども、もう一度お願いしたいという格好でもってまとめさせていただいております。

 改めて簡単に1から4でどんなことをやったかということをもう一度見させていただきたいと思います。やや詳細なことが資料1に文章で書かれていますけれども、それをさらにかいつまんで説明します。

 1の基本的な考え方は、経済前提の設定としては一つの経済モデルを決め打ちするのではなくて、改めて幅を持った設定を行うということを確認しました。前回の財政検証のときもTFPに関しては幅を持たせたのですが、それ以外のパラメータに関しても幅を持たせてやりましょうということです。

 その際に、例えば幾つかのケース、2つ以上のものでケース分けしていきますと非常に大きな各個別のケースになってしまう可能性があります。そのうち、この数字とこの数字はあり得ないというのは結構あるわけですので、そこに関しては整合的なシナリオでもって、マトリックスで全部埋めていくわけではなくて、経済的に考えて整合的な部分だけをピックアップして、数をそんなにふやさないで見ていくということになります。

 それから、やはり今回出た、改めて需要のことを考えなくてはいけないのではないだろうかということはそのとおりなのですが、なかなか難しいということでございます。

 それは2に相当するところでもかかわってきますので、2に関してお話しさせていただきます。需要側の要素を考慮する方法としては稼働率というものがあるかと思います。具体的に稼働率をデータとして持ってくるとそれもまたなかなか難しい問題があるので、一つの方法としては、景気循環をならすような格好でもって潜在的GDPに着目する。そのときには平均的な稼働率でもって経済が運営されているという設定のもとで、初期時点を現実のGDPではなくて潜在的なGDPからスタートさせるというのも、うまく平均的な稼働率ということで取り込んでいく一つの方法ではないだろうかということで、もとに戻ると、そこでもってある程度需要のことも考慮できるのではないだろうかということが議論されました。

 同時に2では、やはり開放経済が今後必要ということに関しまして、これも正面からやるとなかなか難しいのですけれども、ISのバランス、ISのインバランスみたいなものをイメージ的に考慮して、最終的に欲しいのは投資関数みたいな総投資率なのですが、その設定に関しては貯蓄率との関係も見ながら決めていくということで整理させていただいております。

 3の長期の運用利回りの設定でございますが、ここに関しても、まず最初は前回の財政検証のとき行ったように、利潤率が一つキーになるということで、長期の利子率を決めるときも利潤率との関係を見てみました。今回は統計的なテストもしたのですが、統計的なテストをすると、ちゃんとした関係があるということに関してはやや怪しい点もあるのですが、長期でとれば大丈夫ではないだろうかということで、結論としては、やはり同じ方法をとっていって、それをメーンにしていったらどうだろうかということでございます。

 そうはいっても、マーケットで結構最近は超長期の利子率もついていますので、そこのところを参考にするということです。例えば超長期のイールドを見てみますと、そこから計算される何年か先の長期の金利は、おおむね2%から3%程度の金利がインプライされているということもありますので、それは参考にして使っていく必要があるということです。

 ただ、ここにおいては国債で運用したときのリスクでもってどのぐらい分散投資することによってリターンが稼げるか、いわゆる分散投資効果も暫定的にちょっとはかってみました。どうしてはかれるのかというと、これからやります生産関数のほうの話ではなくて、ちょっと過去のデータをのぞいてみて、さらに内閣府から出ています今後の見通しに関して2つぐらいのケースがありましたので、それらをあわせて過去のデータからどのぐらいの数字が得られるのかということも暫定的な数字として計算していただいております。常識的なというか、こちらでもって想定するような数字が得られたということになっています。

 4のその他の論点で何をやったかというと、物価上昇率はどのようにして決めたらいいのかというところで、結論は出ておりませんが、これまでいろんなところでこういう考え方でこういうような数字が予想値として出ているということを整理していただいております。

 これも今回新しく出ていたのですけれども、マクロ経済スライドがどのぐらい効くというのか、そういうような状況になるのかどうかということで、インフレ率、賃金上昇率も、平均値ではこうなるけれども、その回りで循環するとしますとマイナスになるケースもあるということなので、そういうのを織り込む場合にはどうしたらいいかということで検討しました。緩やかな循環を描いて、プラスのときはスライドが効きますけれども、マイナスのときは効きませんということでもって、平均値だけで議論するのではなくて中身も見ていって、その効き方のところを最終的に議論していくということになっております。

 大体、大きく出てきたところはそういうことでございます。

 繰り返してみますと、本来この委員会で行います今後の生産関数を用いたアプローチに関しては特段進んでおりませんので、それはここでもって引き続きやっていただきたいということで、それを使わないで数字を見るとどうなるかということを特に3あたりでもって見たということです。

 以上です。

○吉野委員長 米澤先生、ありがとうございました。

 それでは、検討作業班の議論の詳細につきましては、事務局から御説明をお願いしたいと思いますが、皆様のお手元に資料2-1から資料2-4まで4つの部分に分かれておりますので、順々に説明を受けながら議論を進めたいと思います。

 事務局から最初の部分の説明をお願いしたいと思います。

○武藤数理調整管理官 それでは、資料1と資料2-1に沿って説明したいと思います。

 今回お配りしている資料ですけれども、4分冊になっております資料のほうが検討作業班で議論された資料でございまして、資料1は議論されたポイントを要約したという形になっております。ということで、資料1のポイントのほうを眺めながら、資料2-1に沿って御説明していきたいと思っております。

 まず、資料2-1の2ページ目をごらんください。「経済モデルを活用する際のパラメータの設定に関する基本的な考え方」のところです。

 1点目にございますように、財政検証の結果は、前提に依存しますが、前提については検証を行う時点において使用可能なデータを用いて、最善の努力を払って長期的に妥当なものとして設定する必要があるということでございます。ただし、時間がたつにつれて新たなデータが蓄積されると実績との乖離も生じてきますので、少なくとも5年ごとに最新のデータを用いて諸前提を設定し直した上で、現実の軌道を出発点として新たな財政検証を行うということが法律で定められております。

 こういう意味で、財政検証の結果は、将来の状況の予測(forecast)というよりも、人口や経済等に関して現時点で得られるデータの将来の年金財政への投影(projection)という性格のものであることに留意が必要で、また将来の人口や社会・経済状況はさまざまに変化し得るものですから、複数の前提を設定して財政検証を行うものであるとの整理がなされております。

 平成21年財政検証での長期の経済前提の設定においては、先ほど来話がありますけれども、TFP上昇率について3通りの設定を行って、幅を持たせた経済前提の設定が行われたところですが、今回、検討作業班の議論におきましては、その他のパラメータも不確実性を伴うものであることから、それぞれのパラメータごとに幅を持った設定を行う方法も考えられるのではないかという議論が行われております。

 おめくりいただきまして、3ページですけれども、幅を持ったパラメータを設定するに当たっての留意点です。

 まず、長期的に妥当と考えられるシナリオを設定した上で、どの程度の幅に入るかを検討する必要があるのではないか。

 2つ目の点ですけれども、パラメータごとに幅を持たせる場合に、全ての組み合わせに即した経済前提を設定するのは適切ではなく、背景となるシナリオがそれぞれ整合的な組み合わせとするべきである。したがって、結果として設定すべき経済前提の数は限られたものになると考えられるのではないかとの議論がなされております。

 最後の点ですけれども、用いておりますコブ・ダグラス型生産関数ですが、供給側から見たモデルとなっているのではないかという指摘がございます。これに対しては、供給されたものの全てがおのずと需要されるという仮定に立脚するのではなくて、裏づけとなる需要があるという想定シナリオのもとでの供給であるものと考えるという立場をとるものとしてはどうかというような議論が検討作業班でなされたところです。

 続きまして「経済モデルの建て方とパラメータの設定について」です。

 「需要側の要素を考慮することについて」の説明に入ります。資料2-1は5ページ目をごらんください。

 需要側の要素を考慮することの一つのアプローチとして、先ほどもお話がありましたが、潜在GDPを算出するための潜在資本投入量を推計する際に用いられている稼働率にまず着目することとしました。点線で枠囲いした、第10回専門委員会における経済産業研究所の森川副所長からヒアリングを行ったときの議事録の抜粋がございますが、これらのヒアリングの結果が参考となって、そのような議論がなされております。

 そこで、稼働率に関する統計を調べてみたのですが、資料2-1の7ページにありますように、経済産業省の鉱工業指数において民間部門における製造工業の稼働率指数が参考となるということがわかりましたが、実稼働率については統計が作成されておらず、指数として公表されているということです。

 また、非製造業や公的部門についての稼働率の統計も調べてみたところですけれども、こちらについては参考となるデータが余りない状況ということでございました。

 そこで、資料2-1の9ページの1つ目の点に書いていることですが、稼働率を乗じる対象となる資本ストックは、資本の生産能力という観点から見た粗資本ストックである一方、従来の経済モデルで用いられている資本ストックは市場価値に相当する純資本ストックとなっていることに留意する必要があるという議論がなされました。

 さらには、10ページでまとめられていますように、従来の経済モデルを活用する場合に足元のGDP及び資本ストックの実績値を推計初期値として用いていたところ、このうち、先ほど来申し上げたような理由で資本ストックを稼働率で調整することは困難なところですが、GDPについては平均的な稼働率で生産要素を使用したときに達成できる潜在GDPを用いるという工夫を行って、稼働率の要素を間接的に組み込むことについて検討がなされたところでございます。

 ちなみに、足元の潜在GDPについては内閣府による分析が参考になるということが確認されておりまして、資料としましては、11ページ、12ページです。内閣府のホームページより抜粋した資料が11ページ以降に出ておりますけれども、12ページの下に表がありますように、GDPギャップの推移が四半期ごとに確認されているという状況でございます。

 続きまして「開放経済を考慮することと総投資率の設定について」のパートに入ります。

 資料2-1の14ページをごらんください。開放経済を考慮することの一つのアプローチとして、総貯蓄率に着目して、総投資率との関係に留意しつつ、海外経済とのやりとりによる影響を考慮してはどうかと考えられたところです。

 これは、資料2-1の16ページの左下のグラフで確認していきたいと思いますけれども、貯蓄と投資の差が海外経済とのやりとりによるものと考えられるためということです。総貯蓄率と総投資率の関係のグラフでございますけれども、細い実線が総貯蓄率の推移でございます。点線が総投資率の推移でございまして、似たような動きをとりながら、一定の差が保たれながら推移しているという状況でございます。ここで、総貯蓄率から経常収支を引いたものの対GDP比を見てみますと総投資率の線に近くなるという確認がなされたというところでございます。

 また、その差ですけれども、15ページの下のグラフで確認できますように、1980年代以降の推移を見てみますと、総貯蓄率は総投資率よりもおおむね2~5%程度高く、幅を持っておりますけれども、同じような動きで推移しています。一方、経常収支の対名目GDP比はおおむね2~3%程度で推移していることから、総貯蓄率から対経常収支の名目GDP比を控除するとおおむね総投資率の水準となることが見られたというところでございます。

 また、16ページの右下のグラフで確認できますように、これまで用いてきた経済モデルにおける総投資率は、過去の実績の傾向が長期的に低下していることを踏まえて、対数正規曲線により外挿して設定しているということでございます。総投資率の実績値が点線のグラフでございまして、それを外挿して右に滑らかに流れる総投資率の推計値ということになっておりますが、これは先ほど来の話でおおむね2~3%程度の経常収支対名目GDP比が勘案されたものとなっていると考えられるのではないかということです。

 経常収支の先行きについては、17ページ、18ページあたりにありますが、いろんな機関が経常収支の先行きについていろんな見方を持っておりまして、赤字化する、黒字は継続するなど、さまざまな見方があります。この表で見ましても、表の右から2列目に経常収支の見方がありますが、上から3機関ぐらいに線を引いているものを見てみますと、経常収支が赤字化するという見通しを持っているところもあれば、下から3つぐらいに線を引かれているところを見てみますと、経常収支は黒字が継続するという見方を持たれているところがございます。

 今回の総投資率を設定するに当たっては、総投資率の過去からの傾向を単に外挿するものだけではなくて、総貯蓄率の過去からの傾向を対数正規曲線で外挿したものも考えながら、幅を持った設定とする必要があるのではないかとの議論がなされております。

 資料としては19ページにございますが、外挿した線が3本ございます。一点鎖線のグラフが平成21年財政検証の際に用いた総投資率の設定値ということです。新たに判明した総投資率の実績を織り込んで、同じように対数正規曲線による外挿を見直した場合が太い点線になりますけれども、総投資率は緩やかに下がってきていることを踏まえて、線が低くなるということです。先ほどまでの議論を踏まえて、参考として、仮に総貯蓄率の実績をもとに対数正規曲線による外挿を行ったものが細い点線で、一本目の線と重なっているように見えるのですけれども、こういった線になっています。これら幅を持った設定を考えていく必要があるのではないかという議論がなされております。

 続きまして「資本分配率、資本減耗率の設定について」の項に入ります。

 資料2-1の21ページをごらんください。これまで用いてきた経済モデルにおける資本分配率と資本減耗率につきましては、それぞれ直近の過去10年間における実績値で一定とされてきたところでございます。

 2つ目の点にありますように、資本分配率については、当委員会では労働分配率の推移と賃金の動向との関係性に留意しながら設定する必要があるとの指摘がございました。

22ページ目にグラフがございますが、これは過去の実績値を見たものです。下に棒グラフがありまして、これは現金給与総額の伸び率ということです。上に実線あるいは点線がございますけれども、これは資本分配率の線ということでございます。

 このように過去の実績値を見てみますと、2000年代に入って賃金が低下する時期に資本分配率が上昇している状況が見られます。このため、機械的に直近の過去10年平均をとるとした場合に、資本分配率の水準が高まった2000年以降の平均をとることになるけれども、長期的な動向という観点からは、さらに長期の平均をとることも検討して幅を持った設定を考えるべきではないかとの議論がなされております。過去10年の平均をとったものとして、平成21年財政検証の設定値と機械的に過去10年の平均値に置きかえたものとを横線で引いておりますけれども、単純に置きかえると上方改定されるということになっております。

 続く23ページですが、資本減耗率につきましては、国民経済計算の平成12年基準から平成17年基準への変更に伴いまして、基準変更に伴う改定後の実績値は平成21年財政検証における設定値よりも低い水準で推移していることが確認されました。また、1980年以降の推移を見ると減少傾向が緩やかであり、直近の過去10年間の平均と、さらに長期間の平均との差が小さいことを踏まえつつも、資本分配率と同様に幅を持った設定とすることも考慮し得るのではないかという議論がなされております。

 第1分冊の最後になりますけれども、「国民経済計算の基準改定への対応について」のところに移ります。

 基準改定の検討に当たっては、基本的には国民経済計算に基づく過去の実績値を用いてきたところですけれども、平成12年基準から平成17年基準への改定で有形固定資産の額が大きく変化しているものの、平成17年の新しい基準の数値がそれほど過去にさかのぼって公表されていないという問題がございました。

26ページの左下のグラフで確認したいと思いますが、ここには3つの水準の線が描かれております。一番下にある細い点線が従来用いられておりました平成12年基準の有形固定資産の額でございます。これが今回、基準改定によりまして、公表された値があるのですけれども、太い実線で2001年以降描かれているのが公表値ということになりまして、それ以前の有形固定資産の新しい基準による数値がないという状況でございますので、今回、太い点線で描いておりますような推計を行ったということでございます。

 その際の考え方ですけれども、国民経済計算部会という基準改定への対応を検討する場があるのですが、そこで試算しながら基準改定を検討されていたという経緯がございます。試算値というのは実際に最終的に公表された値とは違うのだけれども、一番上の細い線が試算値として公表されている資料ということです。平成17年基準値として公表された系列と比較すると、試算値は有形固定資産の水準にかなりの差が見られるところですけれども、2001年以降の動きは試算値と同じような動きをしているということになっております。

 したがって、過去に遡及する場合に、公表されている値からぴょんと試算値に飛んで試算値そのものを使用するのではなくて、既に公表されている平成17年基準で最も古い年度が2001年になるのですけれども、それより前は、前年の比が試算値と同じようになるようにして順次過去にさかのぼった系列を暫定的な平成17年基準の過去の遡及値としてはどうかという議論がなされたところです。固定資本減耗も有形固定資産と同様の方法で過去の遡及を行ってはどうかという議論がなされたところです。

 結果として、それらの考え方を用いて遡及した数字が29ページにあるということでございます。

 第1分冊については以上でございます。

○吉野委員長 御説明ありがとうございました。

 それでは、資料2-1の御説明につきまして、どなたからでも結構ですけれども、御意見あるいは御質問があればお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

 もしよろしければ私から、資料2-1の10ページ、先ほど米澤先生からも御説明があったのですが、「潜在GDPを用いる」をもうちょっと説明していただければ、これを使うといいというのがわかれば教えていただきたいと思います。

○米澤委員 私からですか。一つの方法ですけれども、潜在GDPというのは、11ページのところに書かれていますけれども、「経済の過去のトレンドから見て平均的な水準で生産要素を投入した時に実現可能なGDP」というふうに定義されていますので、周辺の循環的な要素のところを取り計らって、このところが平均的な水準で稼働されてGDPが生産されているとみなせば、長期の予測としてはこのところから出発して積み上げていくというのが一つの方法ではないだろうかという考え方です。

12ページの図を見ていただくとわかりますが、実は最近はずっとデフレギャップで下回っているのですけれども、下のところから出発するのではないし、また逆にどこかバブルのときとか、一時期のリーマンショックの前のときの高いところ、そこのところから出発するのではなくて、ゼロ時点あたりから出発するというのが一つの考え方ではないだろうかというのがこの考え方です。

○吉野委員長 ありがとうございます。

 ほかに、川北先生、どうぞ。

○川北委員 まず、1つお聞きしたかったのが、開放経済。

○吉野委員長 ページ数を言っていただけますか。

○川北委員 済みません。13ページ以降に「開放経済を考慮することについて」とあります。そこで最終的には総貯蓄と総投資を両方考えましょうということで、経常収支がその差分になる、そこは理解できるのですけれども、17ページに書いてありますが、将来の経常収支に関してはいろんな見方があるということです。これは実際にはどういうふうに作業に落とされようとしているのか、1点はそこをお伺いしたい。

 ここで総投資が決まってくると、20ページ以下の資本分配、資本減耗のところともかかわってくるわけです。特に資本減耗が、今までずっと減耗率が下がってきたというのは、設備投資のビンテージが古くなっている反映だと思うのですけれども、ここでもしも投資が活発に行われると資本減耗率が上がってくる可能性があります。このあたりのルートというのですか、ここが推計作業において確保されるのかどうか、これをお聞きしたかったのが2点目です。

22ページは、資本分配率に関しては過去10年ではなくてもう少し長いところも考慮して考えましょうということなのですけれども、このあたりも今の政府の政策にもある意味では依存すると思うのですが、資本分配率が下がってくると逆に労働分配率が上がって、それがインフレなりに影響してくるということが出てくると思います。資本分配率に関しても幾つかのシナリオが考えられると思われているのかどうか。

 その3点をお伺いしたいと思います。

○吉野委員長 事務局のほうからよろしいでしょうか。

○武藤数理調整管理官 1点目の総投資率と総貯蓄率を両方見て、実際、作業にどう落としていくのかというところでございます。これは19ページのグラフが参考になるとは思うのですが、従来の方法を踏襲して総投資率を単純に外挿するということになりますと一番下の線になります。仮にですけれども、総貯蓄率を外挿すると細い点線になります。海外とのやりとりをどう考えるかというのは、この辺あたりに幅があるのではないか。いずれにしても、従来のTFPだけ幅を持たせるということではなく、その他のパラメータについても幅を持たせたほうがいいのではないのかというのが検討作業班の先生方の議論だったと思いますので、この辺の資料をもとにそこをどう考えていくかというのを御議論いただければと思っております。

○川北委員 それに関して多少質問なのですけれども、19ページの図を参考にするということでいくと、総投資率は過去の実績値からの傾向ラインをそのまま踏襲することになる。ここで例えば、海外に対する進出が非常に活発になったとすると国内での投資が落ちる。傾向値から落ちてしまうということがあり得るのですけれども、そのあたりはとりあえず考慮しないというふうに考えてよろしいのでしょうか。

○武藤数理調整管理官 今後の議論だと思っております。

○川北委員 わかりました。

○吉野委員長 2番目は減耗率でしたね。米澤先生あるいは事務局、どちらからでも結構です。

○米澤委員 減耗率のところは、これ以上深い議論はしていませんので、こちらの部会で必要があればお願いしたいと思っております。

 3点目は何でしたか。分配率。

○川北委員 はい。

○米澤委員 分配率も、先ほど事務局から説明していただいたように、かなり最近上がっているので、薄めていったとおりなのです。最近上がっているところだけで推計すると少し高目に出てくるのではないだろうかということで、もう少し長期のところで推計する必要があるのではないだろうかぐらいのところです。今後、高どまったところで推移するのかどうかはまだわからないので、ケースでやるのか、さもなければ、同じことでしょうけれども、生産関数を推計したときのパラメータでもって、これと近いような数字がコブ・ダグラス型を使えば出てくるかどうかということでもってチェックしていく必要があるかということで、ポイントはどうも最近高くなったところで高どまっているのでというのが一番の認識で、これを単に伸ばしていくのか、いや、もう少し下げるのかということになるかと思います。

○吉野委員長 この全体の推計の仕方が、労働分配率と資本分配率のほうからコブ・ダグラスの係数を出すやり方ですね。そうだとすると、例えば政策的に賃金をもっと上げようとすると労働分配率は上がってきますね。そうするとコブ・ダグラスの係数もこのやり方でいくと変わってくるわけです。ただ、逆に、生産関数が変わらないのだとすると、こっちのデータでの積み上げのほうは本来の生産関数を反映していないことになりますね。もう一つのやり方は、コブ・ダグラス型生産関数を推計して、それは分配率から出すのではなくて、普通の生産関数にして、そこから労働分配率と資本分配率は自動的に出てきますね。そのほうが本当の分配をあらわしているように思うのです。

○米澤委員 サンプルをどこからとるかに結局依存してきてしまう。

○吉野委員長 怖いのは、政策的に例えば労働分配率が急に上がったりすると、コブ・ダグラス型生産関数自身が変わったようにこのやり方だと見えてしまうのです。

 普通は生産関数を計測して、そのα、βから労働分配率と資本分配率を求めるのですけれども、こちらのやり方は、データとして資本分配率、労働分配率が出て、それからコブ・ダグラスの係数を推計しますから、企業が本当に自分で生産性に応じてやっているのであればコブ・ダグラスでやった生産関数と同じなのですけれども、政策的にそっちをふやしなさいと言われて労働分配率をふやすと、労働の係数のほうが高く見えてしまう。

○米澤委員 両方をにらみながらやっていくのかなと思います。

○吉野委員長 ほかにいかがでしょうか。

 先ほどの川北先生の関連で、19ページで私もちょっと質問させていただきたいのですが、これは対数正規曲線でずっと外挿されているわけです。そうすると、総貯蓄と総投資の差額が経常収支の差額になるわけですね。ここで見ると差が安定的だということになるわけですね。こういうふうに考えてシナリオとしては。

○米澤委員 本文でも考え方は、差はどうなるかはわからないと言っているので、実際には、幅と言いましたけれども、あくまでもやりたいのは総投資率なのですが、仮に貯蓄を伸ばしていったときにどういう格好になるかを見ながら、少しいい意味で調整していくということぐらいしかできないのかと、私、個人的にはそういうふうに考えています。

 もちろん、経常収支がかなり安定してわかれば、貯蓄率のほうが計算的に安定して得られますので、そこから差し引くという方法もあるかと思います。なかなかそれも難しいということなので、前回は貯蓄のほうは一切見なかったのですけれども、今回は貯蓄のほうも見ながら、例えばどんどん差が開いていくようだったらば、どっちかがちょっとおかしいのではないだろうかということでもって調整していくのが適当かと思っております。

○植田委員 経常収支をそれで見るのであれば、投資率の線が貯蓄率の線のほうに近づいていくというパスを一個考え得るケースとして置く手もあるのではないですか。

○吉野委員長 そうですね。シナリオとしては、ここがだんだん下がっていくというのもあったほうがいいような気がいたします。

 駒村先生、どうぞ。 

○駒村委員 技術的なところから少し離れますが、確認です。2ページは前回の資料ですから、具体的な考え方は、もう「案」が取れているのかと思いますが、一番最後の「TFP上昇率だけでなく、その他のパラメータ」というふうに、推計に影響を与える係数という意味だと思いますけれども、これはどういうものをいろんなパターンで考えるか、どのパラメータについて幅を持たせるのかというのは、きょうこれから後の話で出てくるかもしれませんが、想定しているものを教えていただければと思います。これは事務局に。

○武藤数理調整管理官 21年財政検証のときはTFP上昇率だけ3パターンを置いて、ほかのパラメータについては1パターン置きました。ほかのパラメータというのは、きょう議論になっておりますような総投資率、資本分配率、資本減耗率ということになります。今回の検討作業班の議論では、TFP上昇率だけに限らず、今申し上げた3つのパラメータのようなものも含めて幅を持って考えるべきではないのかという文脈の中で、また、先ほど開放経済との関係をどう考えるかという文脈の中では、総投資率と総貯蓄率を単純に外挿すると差があるという話を申し上げたところですけれども、幅を考える中でそういうところが参考になっていくのではないかという議論がなされたところです。

○吉野委員長 その他のパラメータというのは、きょうずっと御説明があった減耗率、投資率、そういうことを全部含めているということですね。

○駒村委員 はい。

○吉野委員長 ほかによろしいでしょうか。

 私から、5ページの稼働率のところで、この中に御説明がありますけれども、製造業の稼働率ですから、やはりサービス業がすごくふえてきている中でサービス業も含めた全体の稼働率をどう考えるかというのは非常に大きな点ではないかと思います。米澤先生、何かコメントがあれば。

○米澤委員 コメントはないのですが、稼働率は、今やろうとしている方法が決してベストな方法ではないと思います。要するに、データの制約から稼働率がなかなか得られないというのにぶち当たって、アイデアはいいのですけれども、なかなか信頼できるデータがないということなので、正面からは分析できないのかなという格好でこういうふうに提案させていただいているという状況です。

○吉野委員長 ほかにございますか。

 なければ、また後で戻っていただいても結構ですけれども、先に進ませていただきたいと思います。

 それでは、事務局から引き続きまして、資料2-2をお願いいたします。

○武藤数理調整管理官 それでは、資料2-2の2ページ目をごらんください。「全要素生産性(TFP)上昇率の設定について」のところでございます。

 ここでは、今後の検討の参考となる資料が整理されているという状況でございます。

 まず、平成21年財政検証における長期の経済前提の設定に用いたTFP上昇率ということですけれども、ここに書いております3パターンでございまして、中位の係数では1.0%、高位の係数では1.3%、低位の係数では0.7%というふうに設定されておりました。

 これは、当時から見た最近の動向を見ると、内閣府の平成19年度年次報告等において足元で1%程度の水準まで高まっているとの分析がなされておりました。内閣府から例年1月に出されております中長期の経済財政試算におきまして、平成23年度にかけて成長シナリオでは1.41.5%程度まで上昇、リスクシナリオでは0.9%程度で推移するとの前提が置かれておりましたので、これらを踏まえて設定されたものでございます。

 3ページ目は、平成16年のときの設定でございまして、ほぼ同様な考え方などで設定されております。

 続きまして、4ページ目の直近の内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」についてのところでございます。これは、ことし8月8日の経済財政諮問会議に提出されております。

 具体的なTFP上昇率につきましては、6ページ目に表がございます。表が縦で2つに分かれておりまして、左側が経済再生ケース、右側が参考ケースとなっております。一番上の行にTFP上昇率の設定が書かれておりますけれども、経済再生ケースでは、2020年代初頭にかけて1.8%程度まで上昇、右のほうの参考ケースでは、2020年代初頭にかけて1.0%程度にまで上昇するとの前提が置かれていることを確認したところです。

 ただ、検討作業班の議論ですけれども、上記の試算におけるTFP上昇率1.8%は高いとの意見もあり、このような試算や過去の実績に関する分析等を踏まえつつ、上記試算のみにとらわれない幅広い設定を考えるべきではないかとの議論がなされていたところでございます。

 続きまして、9ページの「労働投入量の設定について」のところに入りたいと思います。

 ここでは、現時点で得られる統計データを用いて、平成21年財政検証で用いられた方法と同様の方法を採用した場合に、マンアワーベースの労働投入量の将来値がどうなるか、機械的に算出して検討されたところでございます。

 以下、資料の分量が多くなっておりますけれども、労働投入量の設定と関連させて厚生年金の被保険者数を推定する手法として、平成21年財政検証と同様の方法を採用する場合についても検討されたところでございまして、10ページにフローチャートがあります。この従来からの方法をフォローしてみたということでございます。

 労働力率の将来推計につきましては、先ほどからお話が出ておりますけれども、ことし9月より、今後5年程度の間に重点的に実施すべき雇用・労働政策の方向性について検討するための雇用政策研究会が開催されているというところでございます。雇用政策研究会において平成26年1月を目途に報告書を取りまとめるという予定になっておりまして、これにあわせて日本再興戦略を踏まえた新たな労働力率等の将来推計が実施される予定になっておりますので、この部分につきましては、改めて年明けに結果の御確認をお願いしたいと考えております。本日は、その他の部分の時間の関係もありますので、こちらについては大胆に省略させていただきたいと思います。

 検討作業班の議論におきましては、特段ここの部分の見直しについての大きな意見は出ていなかったという状況でございます。

 資料は飛びまして、25ページ目の経済モデルを適用する期間についての議論でございます。

26ページ目の2つ目の点にありますように、コブ・ダグラス型生産関数に基づく経済モデルにつきましては、2030年の期間における経済成長の見込み等について推計する際に用いられることから、これまで用いられたマクロ経済に関する試算では、3つ目の点に書いてありますように、25年間の平均値が将来における長期的な値として用いられてきているという状況でございます。

 なお、参考までに、資料をおめくりいただきまして、28ページですけれども、平成21年財政検証で用いたモデルを用いて機械的に推計期間を延長した試算を行ってみました。下のほうのグラフですけれども、利潤率がございます。長期の期間に延ばしてみると利潤率は高まっていく挙動を示すことが見られるということがわかりまして、これは総投資率が過去のトレンドを外挿して緩やかに低下していく設定となっていることが影響しているものと考えられるのではないかという議論がなされて、それらのことが確認されたところです。

 第2分冊の最後の部分になりますけれども、29ページの長期均衡の考え方についてです。古典的なソロー・モデルに基づく方程式は、各パラメータ、パラメータというのは総投資率、資本分配率、資本減耗率などのことですが、その設定に応じて利潤率がどう変化するかを検討する際に有用であると考えられたところです。

29ページの下に、第6回専門委員会において植田先生から提出いただいた資料をもとに書いておりますソロー・モデルの式がございます。これに基づいて考えてみますと、上にポイントを書いておりますが、総投資率を低く設定するほど、利子率(利潤率)が大きくなる。資本分配率を高く設定するほど、利子率(利潤率)は大きくなる。資本減耗率を低く設定するほど、利子率(利潤率)が小さくなる。これらの傾向は、従来用いております経済モデルにおいても定性的には同様の傾向があると確認されたところです。

 なお、30ページでございますけれども、各パラメータについてある程度の期間における過去の実績値の平均値をとって、長期均衡モデルに基づく方程式を用いてこれらの実績平均値に対応する均衡時の利潤率を計算してみました。均衡時における利潤率の水準の差というのが、この表の下から3行目に書いているrの計算値のところでございまして、下から2行目が実績の平均の利潤率の差でございます。均衡時における利潤率の水準の差は、下から2行目に比べてみると大きくないということがわかりました。これは、実際の経済は均衡状態ではないことから動学的な要因も働くために理論上の均衡値との差が生じるものと考えられるとの議論が検討作業班においてなされたところでございます。

 第2分冊につきましては以上でございます。

○吉野委員長 御説明ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明に関しまして、どなたからでも結構ですが、御質問いかがでしょうか。

 駒村先生、どうぞ。

○駒村委員 5ページから6ページのところで確認ですけれども、6ページに労働力率が出ていまして、ここに掲げられている政策というのはどういう政策が検討されているのか。5ページの上のほうではマクロ政策が掲げられていますが、それだけなのか。それとも労働政策なのか、年金にかかわるような政策も何か含められているのかというのを確認させていただきたいと思います。

 というのも、6ページの労働力の「例えば」からのところがどの資料で見ればいいかよくわからないのですけれども、労働参加率というのは12ページで言う労働力率のことなのでしょうか。そう見るとするならば、2010年の65歳以上の男性の労働参加率は49%、12ページの左の絵も49%ぐらいで、2023年で50%と、やや上がるのですけれども、その後、もしこれと比べたとしても、7年ぐらいで65%に、すぽんと15%ぐらい飛び上がるということになってしまいます。「例えば」に書かれている数字というのはこれではなくて、1月に発表される再興戦略に基づく別途推計されている労働力率を指しているのか、この辺の資料の読み方がわからなかったので教えていただきたいと思います。

○吉野委員長 事務局のほうからお願いしてよろしいでしょうか。

○武藤数理調整管理官 内閣府の中長期試算で用いられている労働力につきましては、用語の使い方としての労働参加率は、先生がおっしゃるとおり、労働力率のことではないかと認識しております。

 では、具体的にどういう政策が入っているかという部分についてですけれども、今ある資料で見るところ、数字の結果がこう書いてあるだけですので、どこまで織り込まれているかということについては後ほど確認させていただきたいと思っております。

 ちなみに、数字の関係で言いますと、6ページの資料は平成25年8月に出た内閣府の中長期試算に関するものですけれども、10ページ以降のものにつきましては、平成24年8月の労働力需給の推計というものを用いて、9ページの2つ目の点に書いておりますように、平成24年8月のものを用いておりますので、そこは若干の違いがあるということでございます。

○駒村委員 資料の中で違う資料が使われて用語が統一されていないということですね。わかりました。

○武藤数理調整管理官 恐縮です。気をつけてまいります。

○吉野委員長 ほかにいかがでしょうか。

 山田先生、どうぞ。

○山田委員 簡単な確認です。雇用政策研究会の労働力需給の推計というのは、いつも人口推計のタイミングに合わせて行われていたような気がするのですけれども、それとは別途アドホックにこれまでも推計というのが行われていたのでしょうか。そこを確認していただきたい。

 というのも、政権がかわればいろんな政策の立案実行が行われて、ということで、前の駒村先生のお話にもかかわるのですけれども、政策が実現したらという、ある意味では楽観的なシナリオに基づいてこれが推計してあると、人口推計とは異なって、かなり政策によって左右されている数値になるという受けとめ方になると思います。タイミングが以前とはちょっと違っているように思いますので、そこの辺りについて教えていただければと思います。

○武藤数理調整管理官 当方の承知している範囲内でのお答えということになってしまいますけれども、山田先生がおっしゃったとおり、人口推計の後にそれを踏まえて見直すというような見直しは行われているように感じております。ただ、人口推計や年金の財政検証のように定期的に何年ごとに行うということではないと思います。必要に応じて雇用政策研究会で需給推計が見直されるということだと思いますけれども、今回につきましては、6月に閣議決定された日本再興戦略を踏まえた労働力需給推計を行うということになっていると認識しています。

○吉野委員長 ほかにいかがでしょうか。

○川北委員 これもある意味、確認ですけれども、資料の6ページにTFP1.8%のケースと1.0%のケースがあって、それに基づいて7ページにGDPの成長率が設定されています。経済再生ケースは、ある意味、今の政府の目標で、特に消費者物価の上昇率などを見るとそういうふうな印象を強く受けます。これに関連して資料1の4ページにTFP上昇率の設定に関してということでまとめの意見が載っかっているのですけれども、TFP1.8%というものにどの程度こだわる必要性があるのか、これと違う数字をこの部会で出したとして、それが許されるというと変な言い方ですけれども、そういうことでいいのかどうか、確認です。

○吉野委員長 では、米澤先生から。

○米澤委員 特に決まった合意があるわけではないのですが、まさに幅のところの上限値の上限という理解だと思います。もう一つは1%も出ておりますので、それも使いますし、その間かどうかわかりませんけれども、多分1.8%が上限になるのは間違いないかと思います。それを無視するわけにもいかないのではないだろうかということなので。

○川北委員 1.8はシナリオに入れつつ、その他の幾つかのシナリオとかケース分けをする、そういうイメージで考えていていいわけですか。

○米澤委員 はい。

○川北委員 わかりました。

○吉野委員長 山田先生、どうぞ。

○山田委員 資料2-1に絡むことで、ごらんいただく必要はないと思いますが、先ほど駒村委員からも質問がありましたように、それぞれのパラメータごとに幅を持たせるというのと、持たせた結果、理論的にもしTFPのほうに最終的に多くの部分が集約されるのであれば、パラメータごとに幅を持たせる意味というのは一体何か、積極的な意義は何かということについて改めてお伺いできればと思います。

○吉野委員長 米澤先生、どうぞ。

○米澤委員 きょうもこの後、予定利率というか、ポートフォリオの話をするときに一部そのケース分けの話も出てきますので、そこで何となくイメージをつかんでいただくと参考になるかなと思っております。

○山田委員 わかりました。

○吉野委員長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 よろしければまた先に進んで、後に戻っていただいても結構ですが、次は資料2-3について事務局から説明をお願いいたします。

○森大臣官房参事官 資料2-3、資料1でいきますと5ページの長期運用利回り、積立金の運用などにかかわる分でございますが、それにつきまして、私のほうから御説明させていただきます。

 資料2-3をめくっていただきまして、長期金利と利潤率の関係ということでございまして、網線のところを見ていただきたいのですが、従前から長期金利の推計につきましては利潤率と一定の関係がある。過去の一定期間における平均実質金利を基準としまして、利潤率、これは当時の経済データで算定されたものでございますが、その相関で算出しているということでございます。

 考え方でございますが、めくっていただきまして、3ページでございますけれども、経済学的な考えでは、利潤率というのはそもそも資本ストックがどれだけの価値を生み出すかをあらわす指標と見ることができますし、金利の根拠となる利子の源泉は資本ストックが生み出した利潤であるということでございますので、密接な関係がある。また、そのほかに、長期金利につきましては、日本経済の長期的な見通しと整合性をとって算出しなければいけないということで、平成21年につきましては、このような考え方で算出しているところでございます。

 ただ、今回の専門委員会におきまして、デフレ下ということもございますし、利潤率と長期金利につきまして数値的にも確かな関係があるか、検証してみろというお話もございましたので、検討作業班のほうで検討させていただいた次第でございます。

 4ページでございますけれども、これは過去の利潤率と実質長期金利の推移でございます。グラフを見ていただきますと、大体パラレルな関係にはあるのですが、バブル崩壊前とバブル崩壊後で水準の差がございます。すなわち利潤率につきましては、1980年度から1991年度まではおおむね10%中心、1991年度以降はおおむね6~8%、実質長期金利につきましても、バブル崩壊後で若干分かれておりまして、1980年度から1991年度はおおむね4%中心でしたが、バブル崩壊後はおおむね2%という形になっております。

 次のページでございますが、過去の利潤率と実質長期金利の相関関係はどうなっているかといいますと、足元で申しますと、バブル崩壊後の過去20年で相関係数を見ますと0.26と非常に低い形になっております。ただし、過去25年の間、長期で見ると相変わらず相関係数は0.6ということで高い値を持っていますので、長期で考えますと相関係数は安定しているのではないかということでございます。

 ただ、このように概念的に関係があるといいましても、この関係は見せかけの相関ではないかという考え方もございます。見せかけ的相関かどうかを判定するグレンジャー検定、単位根を検定するものでございますが、それを6ページでやってみたところでございます。そうしますと、見せかけの相関ではないかという仮説につきましては、完全に棄却されたというわけではございませんが、この検定の特性といいますか、例えばバブル崩壊のような構造変化があると検出力が弱くなるということに留意する必要があり、ここら辺の結果をどう見るか、灰色的な結果でございました。

 これが利潤率との関係から見た長期金利でございますが、7ページ以降、では今の市場の見方から見て長期金利というのはどうなっているかについて検証してみました。

 8ページの図は、201212月末から2013年6月末のスポットレート、期間が長くなるとどれだけ金利が高くなるかというものでございます。これを使いますと、純粋期待仮説に立脚した場合でございますけれども、将来の長期金利が織り込まれているから金利が高くなると見ることができますので、その考え方のもとで将来の長期金利がどうなっているかにつきまして機械的に算出しましたのが9ページの図でございます。

 見ていただきますと、将来の10年国債の金利につきましては、10年後から15年後に2%から3%に上昇しまして、その後また緩やかに下降したのですが、30年後ぐらいには2%から3%になると市場参加者は現段階では見ていることが推定されるということでございます。

 次に、ではインフレ率について市場参加者はどう見ているかということです。物価連動債は発行を中断していますので、年限5年物しかないのですが、物価連動債の利回りと通常の利回りを使いますと、ブレークイーブン・インフレ率といいますけれども、そういう形でインフレ率が推定できます。ただ、これは年限が短うございますので、厚みは薄いのですけれども、インフレスワップといいまして、満期までの物価上昇率に応じた金額を固定金利のものとスワップ、交換して受け取るような取引がございますので、そこでどんな形でインフレが想定されているかにつきまして見たものでございます。

11ページは物価連動債の関係、12ページはインフレスワップの関係でございます。そこで見ますと、インフレ率でございますけれども、今後10年以上の期間を含めまして1%ぐらいと市場が見ているという姿が見てとれるかと思います。

 他方、それを使いまして、先ほどの現在のスポットレートとあわせて、実質金利のイールドカーブはどうなっているか見ているものが13ページの図でございます。これを見ますと、実質金利の部分、物価上昇率を引いた部分につきましては、大体0.5~1%、スワップレートのほうも1%程度でございますので、今の市場関係者は長期の実質金利につきましては1%程度を見ているという姿でございます。

 ただ、これは前にもちょっと申し上げましたが、インフレスワップというのは取引層が薄うございまして、外国人の方が一部やっている。もしくは物価連動債については途切れていますので、これらの数値をどれだけ参考にできるかということが一つ課題かと存じています。

 次に、分散投資効果、つまり国内債券だけではなく株式や海外資産に分散して投資いたしますとどのくらいリターンがふえるものか、推定しておるものでございます。

 平成21年の方法でございますが、先ほど座長からも御説明がございましたけれども、TFP上昇率は、そのときの内閣府の推定では1%が経済中位モデルだったわけですが、そのTFP上昇率を使い、そのときの経済モデルで利潤率を求めます。その利潤率を参考にいたしまして、各資産の期待リターンを求め、もしくはリスク、相関係数につきましては、過去の37年間の数値ということでヒストリカルなものをつくりまして、有効フロンティアを引き、それで算出するものでございます。

 具体的には、18ページ以下でございますが、短期資産につきましては、その利潤率を使いまして、TFP1%のケースで過去15年から25年まで見ると0.61.8%でございますので、中間値が1.2です。国内債券につきましても、同様な考え方で中間値が2.7%という形です。

 各資産の期待リターンを引きまして、23ページでございますが、リスクと相関係数の場合は34年のものを使いまして、有効フロンティアを引きましたら、その当時の分散投資効果ということでは0.30.5%です。

 具体的に言いますと、24ページに表にございます。当時は国内債券のみのリスクでいいますと5.45%だったわけでございまして、黒い三角でございますが、そのときのリターンは3.7%です。今申しましたように、国内債券だけではなくて株式や海外資産に投資した場合、最大限とれるリターン、点の領域が有効フロンティアでございまして、そこが4.2%ぐらいでございましたので、分散投資効果としては0.4%程度という形で置かせていただいたところでございます。

 今回も平成21年と同様の方法を使いました。ただし、座長から御指摘ございましたように、まだTFPが定まっていない。また、TFPを定めても、それに基づいて利潤率を計算する各要素というのは定まっていないわけでございますので、今回は内閣府試算の1.8%のケース、後は参考ケースである1.0%のほかに、幅を持たせるという考え方でございまして、1994年以降のヒストリカルな平均値、並びに市場で物価上昇率1%、実質金利1%というケースもございましたので、それを加え、マトリックス的にパターンをつくりまして、分散投資効果をはかったところでございます。

 一番最初のケースは40年で出したものでございまして、26ページに各期待リターンの値を書いております。

27ページは、それぞれ物価上昇率について場合分けしたケースで、極端なケースは除いたものでパターン1からパターン10まで出したものでございます。それを見ますと分散投資効果は0.470.61%の範囲という形になっております。

 また、今のは40年のケースでございますが、今回は過去25年のケースと過去10年のケース、そしてリスクと相関係数につきましても、前回は一律、34年という数字でやっていましたが、それぞれ25年、10年にあわせて算出もやってみました。

 そうしますと、分散投資効果につきましては、30ページの表を見ていただきたいと思いますけれども、過去25年と過去10年でいいますと0.30.4%前後になっております。また今回、GPIFさんのほうでデュレーションが長期化します。国内債券についてはヒストリカルというのはリスクだけではなくて年限が長期化するということもありましたので、40年のケースにつきましては、国内債券のデュレーションが長期化したら分散投資効果がどのぐらいになるかということで、30ページの表の上から2つ目でございますけれども、そういうものをつくってみました。このケースにつきましては、おおむね0.30.9%の値になるということでまとめさせていただいています。

 また、今までの手法というのは名目値でやっておるわけでございますけれども、年金につきましては、従前から私ども、名目賃金上昇率をどれだけ上回るかということで説明してきたところでございます。各資産のリターン等につきましても、名目賃金上昇率を基準としますとどれだけとれているのか、どれだけふえているのかについてヒストリカルなデータがございますので、それで有効フロンティアを引いてみるとどうなるかにつきまして、31ページ以降、作業をしたところでございます。

 これにつきましても、それぞれのリターンにつきましては、TFP1.8%のケース、TFP1%のケース、また1994年以降の平均ケースと市場の見方ということで、4ケースに分けまして作業をしてみました。

 総括表は35ページでございますが、分散投資効果につきましては、0.4%近傍みたいな形になっております。今のは、TFPに関しましてヒストリカルな利潤率をとって計算したものでございますが、検討作業班のほうでは、今後、経済前提の具体的数値を設定する中で、算定された利潤率等、整合的な形で再検証すべきではないかという御意見をいただいたところでございます。

 私からは以上でございます。

○吉野委員長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明に関しまして何かございますでしょうか。

 川北委員、どうぞ。

○川北委員 30ページのところでデュレーションを長期化した場合の分散投資の効果を測定されています。実質運用利回りに関しても36ページに同じ考えの表があるのですけれども、GPIFさんがデュレーションを長期化されているというのは、それはそうかなと思います。同時に、デュレーションを長期化したリスクのところで分散投資効果を計測するということは、ほかの資産、株式とか外物に関してリスクをとるということに等しいわけですけれども、そのあたりはちょっと整理しておく必要性があります。本当に株なり外物にシフトするのか、それとも債券のデュレーションだけを長期化して、ほかのリスクはとらないのか。もしもデュレーション長期化を一つのシナリオとして計算するのであれば、そのあたりのスタンスの整理も必要になってきて、それは有識者会議で議論されているところとも密接に関連するのですけれども、そういう少し印象を持ちました。

○吉野委員長 米澤先生、何かコメントがあれば。

○米澤委員 私が答えるべきかよくわからないですけれども、今、川北先生がおっしゃるとおり、デュレーションの長期化というと特に債券だけに関して少し長いものを持とうというようなイメージなのですが、これらのデュレーション長期化というのは、ベンチマークとするオール債券並みのリスクといったときに、債券の長さを少し長くする、デュレーションも長くなったのでリスクも大きくなりましたというので、ベンチマークとなるリスクを少し多目にとっているということなのです。ですから、川北先生がおっしゃったように、縦軸が少し右のほうにシフトしたので、いろいろほかのリスクアセットもたくさん入れてくるということになったので、そこのところの整理が必要というのはそのとおりだと思います。リスクをより多くとったということに等しくなるかと思いますので、それがけしからんというわけではないのですけれども、まさに整理をしていただくということです。

 加えて、有識者会議でも、GPIFの債券の運用のほうがNOMURA-BPIの総合にベンチマークしているのは余り意味がないのではないかということはこの間の議論で出てきております。そういうことも含めて、GPIF側のポートフォリオのほうの見直しで検討していただければいいのですけれども、そういう意見も出ていますので、少しそこのところ整理して議論していく必要があるかと思っております。

 もう一回整理しますと、デュレーション長期化というのは、少し多目にリスクをとった場合に全体としてどうなるかということの内容ですので、誤解のないようにというか、そういうことでどのぐらい分散投資効果が出てきたかというふうに正しく理解しておく必要があるかなと思っています。

○森大臣官房参事官 技術的な説明でございますけれども、今回は分散投資効果ということでございますので、専ら国内債券に投資したところからいろんな資産に投資したらどのぐらいリターンが上がるかということでございます。40年で想定したケースというのは国内債券のリスクを5.21%でやったのですけれども、あくまで国内債券を6.2%で設定した場合にどのぐらいリターンが伸びるかという話でございます。

 もう一つつけ加えさせていただきますと、名目値で見ますと、確かにデュレーション長期化の場合というのは分散投資効果が0.9%程度と非常に高くなるのですが、実質的な運用利回りを見ますと、デュレーション長期化しても多少は分散投資効果が長くはなるのですが、見ていただくとそんなにほかのケースと比べて著しく高いというわけでもないことは、感想ですが、申し上げさせていただきたいと存じます。

○吉野委員長 ありがとうございます。

 では、植田先生、どうぞ。

○植田委員 米澤先生のお話に含まれていたのですけれども、現実問題としては、川北さんがおっしゃったデュレーションを長くしたところに対応してどうしたかというのは、もうスタンスをとっていて、GPIFは、債券のところだけを長目にするのではなくて、長目の債券のリスクに合わせてそこのリスクでコントロールした分散投資効果を入れているので、株及び外国資産の運用割合を6月に引き上げたということではあります。

○吉野委員長 含まれているということですね。ありがとうございます。

 ほかにございますでしょうか。先ほどの中でインフレ連動債とインフレスワップのところは、インフレ連動債はフロアがことし10月1日から新しいのが出ましたので、多分それでもう少し売れるようになると思います。これを使って本当にブレークイーブン・インフレを考えていいかどうかは少しあると思います。

 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 よろしければ次の資料2-4の御説明に移っていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○武藤数理調整管理官 それでは、最後の分冊になりますけれども、資料2-4です。

 「その他経済前提の設定に関する論点」についてのうち、まず最初に「物価上昇率の設定について」のところを見ていきたいと思います。大まかに申し上げますと、ここについては今後の検討の参考となる資料が整理されたという状況でございます。

 2ページ目の「これまでの財政検証における経済前提の設定」は、経済前提は3つございますけれども、一番右に物価上昇率の欄がございまして、このような結果になっております。

 その際、具体的にどういう考え方で設定されてきたかというのが3ページでございます。平成21年財政検証と平成16年財政再計算を見ていきたいと思います。

 平成21年財政検証につきましては、1.0%と設定されております。長期の物価上昇率の前提については、日銀の金融政策決定会合において議決されたものとして「中長期な物価の安定の理解」というものがございますが、それが「前年比で0~2%程度の範囲内にあり、委員の中心値は、大勢として1%程度となっている」とされたことを踏まえて、長期の前提として1%とすることとされました。

 平成16年再計算のときも1.0%と設定されております。平成21年以降は、物価上昇率の過去20年の平均が1.0%であることや、内閣府の「改革と展望」の中の参考資料におきまして、平成16年度から平成20年度の平均消費者物価上昇率が1.0%であることから、1.0%と設定したとなっておりますように、これまでの財政検証では、日銀の見解、過去の実績の平均値、内閣府の試算などを参考にして設定されているという状況でございます。

 4ページ目は、消費者物価上昇率の長期的な推移を見ております。右にグラフが2つございますけれども、上のグラフは、5年ごとの期間で区切って物価上昇率の平均を見たもの、下のグラフは、過去何年という見方で5年ずつ年数をふやしていって物価上昇率がどのように変化してきたかということを見たものでございます。

 いわゆるオイルショックのときのインフレ、昭和48年以降ということだと思いますけれども、そのあたりで物価上昇率が高くなって、下の過去の平均値を見てみますとだんだん下がってきているという状況が見てとれると思います。

 なお、議論の中で、物価上昇率と実質経済成長率は互いに無関係であるとは考えにくいという議論がございまして、次の5ページで数字を確認してみました。折れ線グラフが実質経済成長率、棒グラフが物価上昇率でございます。ここで確認できるように、過去の実績値から、両者には明確な関係、相関関係は見出しにくかったという状況でございました。

 6ページは、日本銀行の物価安定の目標についてでございます。日銀はこういった目標を新たに導入して、消費者物価の前年比上昇率で2%とすることとされておりますが、こういった事項をどの程度まで考慮するのか、検討する必要があるという議論がございました。

 最後になりますけれども、「変動を織り込む場合の前提について」の議論がございました。資料は8ページになりますが、点線枠囲いの中に問題意識を書いております。平均的には同水準の経済前提であっても、変動がない場合と変動が大きい場合ではマクロ経済スライドによる調整の効き方が異なってくるということがございますので、変動を織り込んだ場合の前提についても検討が必要ではないかとの議論がございました。

 具体的な変動の織り込み方で、変動の幅及び周期をどう設定するかということでございますけれども、9ページ、10ページに過去の景気循環等の資料がございます。議論の中で、変動の周期につきましては、これまでの景気循環の長さとして、景気基準日付における第15循環の山までにおける景気の1周期は、ここで平均値を見ておりますけれども、約4年となっております。3つ目の点に書いておりますように、景気拡張期におきまして、景気の谷から山までの平均期間の長さが3年程度、景気後退期の長さが1年4カ月程度、足すと4年ちょっとということになると思いますので、これが参考となるのではないかという議論もございました。

 また、変動の幅についてでございますけれども、物価や賃金の過去の実績を見ながら検討するということではないかという議論がありまして、11ページにグラフをつけておりますけれども、このようなグラフの推移が確認されたということでございます。

 4分冊目につきましては以上でございます。

○吉野委員長 御説明ありがとうございました。

 それでは、先生方、いかがでしょうか。

 植田先生、物価に関してはコメントございますか。よろしいですか。

○植田委員 いえ。

○吉野委員長 武田委員、どうぞ。

○武田委員 御説明いただきましてどうもありがとうございました。

 物価に関しては、冒頭の米澤先生からの御説明とも絡むと思います。恐らく需給ギャップと物価の関係が一つの鍵になると考えるのですが、先ほど米澤先生から、需給ギャップをゼロとするというお話があったと思います。需給ギャップは考えないということで想定されていらっしゃいますでしょうか。

 需給ギャップをどう見るかで、フィリップス曲線の考え方に基づくならば、そこで物価の整合性といいますか、その目安が変わってくる部分はあろうかと思います。

 その結果、最初に御説明いただいた各種経済前提がそれぞれ整合性を持つようなかたちで幅を持たせられる、つまり総当たりするのではなくて、このシナリオであれば物価はこういう見通しでしょうということで前提のパターンを減らせると思うのですが、その辺の整合性をどのように御検討されたかをお聞かせいただければと思います。

○吉野委員長 米澤先生、お願いいたします。

○米澤委員 正確にはまだその辺まで検討していなくて、それをここでこれから検討していただこうということで先延ばしにしています。もし違ったら事務局のほうで直してください。

 というのは、前回の財政検証のときも、足元といいながら10年ぐらいは内閣府のデータを使って、そこから先を延ばしていったのです。一つは、先ほどの均衡といっていいのでしょうか、長期的な稼働率を見たいというのも、先を延ばしたときの出発点として一つ考えるとすると、そうなるのかなということです。そこのところ、うまくどう接続させるか問題もありますけれども、その場合には、足元はどこかの数字を、政府の数字をもらってくるとなると、物価もそこのところの数字を使うというのは一つの方法だと思います。

 あくまでも先ほど言った潜在的というのは、そこから先の、何といっても一応100年までやらなくてはいけなくて、実際には25年間ぐらいの数字をやるわけですけれども、そのときに延ばすので、自然失業率に対応するような物価上昇率ということで、細かな山、谷のところは議論できないのではないかと思っております。足元をどうするかというところ、まだペンディングになっていると思いますので、もしありましたら、事務局ないしは吉野先生のほうからちょっと。

○吉野委員長 今の武田委員の関連ですと、フィリップス曲線みたいなものを考えると本当は両者の関係で出てきますが、ここはそれぞれ別々に、インフレ率はインフレ率で、景気のほうは景気でと与えることになるわけですね。

○米澤委員 多分、先は長期的なフィリップス曲線。

○吉野委員長 結果的にそれがフィリップス曲線の傾きで。

○米澤委員 自然失業率で立ってしまうような。

○吉野委員長 立ってしまうような形になるんですね。

○米澤委員 学問的にいえばそういうふうなところを説明しているということになります。先ほどの潜在的な稼働率みたいなのもそのイメージではないかと思います。

 ただ、だからといって足元のところは、もしほかのものを持ってくれば背後にフィリップスカーブみたいなのが入ってというふうに見ることもできる。まだそこのところをどうするかは決まっていないという理解でよろしいのかな。

○吉野委員長 では、駒村先生。

○駒村委員 8ページに書かれていることは前回年金部会のほうでも同じようなことを申し上げていて、ここに書いてあるように、デフレ期においてはマクロ経済スライドが効かなくなります。景気変動を想定するか想定しないかによって景気変動のデメリット・メリットが世代間で変わってくることになりますので、ぜひこのやり方はやってもらいたい。

 イメージとしては、100年間で何らかの周期のルールを決めて、ランダムにシミュレーション上、景気循環を起こさせていく。周期と谷の深さを余り大きくすると非常に怖いメッセージが国民に出てしまうわけですので、そこをリーズナブルなものとしてどう設定するか難しいと思いますけれども、何通りかストーリーをつくる、こういう理解でいいかどうか、確認です。

 その辺を出すときには、こういうことをやるとこういうリスク、こういう世代間に影響があるということについては丁寧に説明をしないと、必要以上に怖いというか、よくないというようなメッセージも出てしまうと思います。この辺の幅と周期は確かに難しいのかなと思っていますけれども、今、何か考えがあるのかどうか。

○武藤数理調整管理官 検討作業班のほうでは、先ほど申し上げたような議論がございまして、先生が今おっしゃった話の中で言うと、ランダムに変動させるかどうかというところまではなくて、むしろどっちかというと景気循環を見ながら機械的にやるしかないみたいな話だったかと思います。

 確かにマクロ経済スライドは、賃金とか物価の伸びの範囲内で行うことになっていますので、賃金や物価の伸びが少なければ名目額で下限を置くということになっていますし、ゼロまでしか効かせない。あるいは賃金や物価がマイナスの伸びであれば、マクロ経済スライドはかけないということになっております。そういった中で、検討作業班の中でも変動を織り込む場合の前提の重要性の話が出てきておりますので、いずれにしても、今後の御議論に応じて変動の幅や周期については設定されていくものと考えております。取り扱いのお話についても念頭に置きながら考えていきたいと思います。

○吉野委員長 ほかにいかがでしょうか。

 今回はいろいろいろんな変数に幅を持たせるということですので、最良のシナリオから最悪のシナリオまで、幅が出ればいろいろなケースが出てくるのではないかと思います。

 ただ、正直言って、2ページと4ページを比較しますと、経済前提の設定の例えば物価上昇率が2ページで一番右側にありまして、4ページに実際の消費者物価の上昇率があるのですが、前提と実際が大分違っているという感じはあります。前提のときも幅を持たせて、必ずそこの中には実際のが入るぐらいにしないと、2ページの一番右の物価上昇率と4ページのでは違っているような気がしますので、きちんと見ていったほうがいいと思います。

 植田先生、どうぞ。

○植田委員 きょうの話全体なのですけれども、ここの我々がやっている作業のある種の大事な側面は、必ずしもソロー型モデルそのものではないですけれども、大体そういうモデルに沿って長期的に利潤率がどういうふうになるのか計算してみて、その上で、過去の利潤率とその他の資産の収益率、例えば実質短期金利、実質長期金利の関係をデータから調べて、その関係が将来も当てはまるものだと仮定して、将来の利潤率の予測から将来のほかの資産のリターンを計算するという方法をこれまでも使っていますし、このままいくと今後も使うということだと思います。

 ソロー型モデルで利潤率を計算するというのは、非常に簡便な方法であるけれども、いろんな問題があって、とりあえずそれくらいかなというところで走っていると思いますが、ほかの資産の収益率を出すときに先ほどのようなやり方でいいかどうかというのも、物すごい簡便法なわけですね。

 細かい問題から申し上げますと、例えば先ほど、今も議論がありましたが、需要サイドの要因をどういうふうに取り入れるかというところで、将来については完全雇用のところにあったようなパスで計算してみたらどうかという話が出ましたが、それをもっと厳密に突き詰めていきますと、過去のデータについても現実は完全雇用のところでないので、それが完全雇用のところにあったら利潤率や金利はどういう姿であったかというのをできることであれば計算して、そこの関係を求めて、それで将来を予測するという作業をしないと、ある意味、厳密ではないわけですね。ただ、ほとんど不可能だとは思うのですけれども、そういう概念的な問題があります。

 それから、過去の利潤率と例えば長期金利の関係というようなところを見るときに、日本のデータですと、足元10年、15年は、ゼロ実質金利ではないですけれども、名目金利のゼロ金利制約に近いような状態にありましたので、そうではない平時とは大分関係が変わっている可能性もあるわけですね。そういう問題をどう考えるかということはあります。

 もっと一般論として、例えばリスク資産の収益率と、安全資産、国債の収益率の間にどれくらいのギャップがあるか、リスクプレミアムの問題になるわけですが、これはマクロ経済学の世界では最も重要で難しい問題の一つというふうに考えられている問題で、マクロないしファイナンスの研究の過去2030年の中心のテーマの一つだったと思います。

 特に、アメリカでは30年くらい前にエクイティリスクプレミアムパズルというパズルがあるという論文が書かれまして、つまり安全資産の金利に比べて株の利回りがえらい高い、ここのリスクプレミアム、何でこんなにあるのか説明が難しいということから始まったのですが、リスクプレミアムの水準の説明が難しいということもありますし、その後、厳密にデータを私も見ていないですが、時間とともに当然変化して、それをまた説明できるかということが大きなテーマとなっていると思います。

 そうはいっても、なるべく簡単に処理するしか現実問題としてはないのだと思いますけれども、ある程度そこら辺を考えた、考慮を払ったという形になっていないと、という気が全体を見ていてしました。どうやればいいという具体的な提案は私からはありません。

○吉野委員長 米澤先生、どうぞ。

○米澤委員 みんなごもっともなのだけれども、一つは、資本とか、別途はかっていく労働も将来の失業率は入っているのですね。何となく入っているのですね。ですから、レーバーも本当の完全雇用ではないと理解しているのですけれども、キャピタルも、先ほど稼働率のところでギャップがないということはフルか、稼働率のところはノーマルな稼働率で、レーバーは失業率が入っていますね。

○山田委員 労働力率に含まれています。

○米澤委員 含まれているので。

○山田委員 ただ、それは実際に働いている就業率とは異なっている。

○米澤委員 逆に言うと、目いっぱいの人が、全く自発的失業率がないようなところでもってレーバーが決まっているわけではないというので、少しは低いところでもってGDPが生産されているという理解なのですけれども、それでもって植田さんの今言ったのは全部解決されるというわけではないのですが、多少はというか、整合的ではないかもしれないのですけれども、どこかところどころに入っているのですね。

○吉野委員長 一度ここのモデルのフローチャートみたいなものを、私も考えますが、示して、ソロー型関数がどう出てきて、ここは外生で与えてというのがあると、今の植田先生のとちょうど整合して、後どこを考えるべきかというのが出てくると思いますから、次回の前までにフローチャートを考えます。

 では、事務局、どうぞ。

○森大臣官房参事官 植田先生の御指摘の中で、例えば私ども年金財政上必要な運用利回りを例えばGPIFに与えたとして、GPIFはそれで専門的にアセットアロケーション等をつくるわけでございます。その際は、またGPIFのほうで実際のアセットの利回りにつきましては、それはもしかしたらフォワードルッキング的なものも入るかもしれませんけれども、それを含めまして推定していただくようになりますので、そこは、私どもの目標の与え方とGPIFがどのように推定するかという、もう一つの議題でございます積立金の目標の与え方にも関係する御議論だと理解しております。

○吉野委員長 ほかにございませんか。山田委員、どうぞ。

○山田委員 フローチャートを作成してくださるというのは大変助かります。いろんなそれぞれのパラメータごとに幅を持たせるという話ですけれども、今、稼働率とか、いろいろと新しいアイデアもありますので、稼働率ということであれば需給ギャップや失業率への影響というのにもいろいろと関係していますから、一体何が関係していて、どのパラメータに幅を持たせるのかという議論を整理する上でも、フローチャートがあれば大変助かると思います。よろしくお願いいたします。

○吉野委員長 米澤先生、どうぞ。

○米澤委員 1点、これは事務局のほうにお願いしたいのですけれども、極めて難しくなくて、今言った植田先生の問題の解決にはならないかと思うのですけれども、利潤率倍率みたいなもので過去、計算していますね。そのときに切片をつけた単回帰みたいなものでやってください。利潤率倍率は切片がないのです。切片はかなり有意に出てくるので、切片をつけないほうがいいというのは先験的に何もないですので、自由度を与えてあげて、計算は難しくないですから、それでもってもう一度見ていただくといいかなと思っています。それをお願いします。

○吉野委員長 植田先生、どうぞ。

○植田委員 森参事官がおっしゃっていただいたとおりだと思うのですけれども、私がさっき申し上げたことは、どちらかというとGPIFがどういうポートフォリオを組むかというときに問題になる核心の部分で、それはそれとして、年金財政の将来姿のところはそれとやや独立に計算できるのだと思うのです。

 つまり、いろいろなマクロの前提、人口、賃金上昇率、物価上昇率を置けば、将来の保険料と支払いの差額がどういうパターンになるかというのは一応出せて、その割引現在価値が現在の積立金残高に等しくなるという、要求収益率が幾らかというのも計算できて、その上で、さっきのような話とあわせて、うんということになるのだと思いますが、両者一応やや独立であるということだと思います。

○吉野委員長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、ほぼ時間になりましたので、きょうも活発な御議論をありがとうございました。

 本日の議論を踏まえまして、次回また続きをさせていただきたいと思いますが、事務局から御連絡をよろしくお願いいたします。

○森大臣官房参事官 日程につきましては、改めて調整させていただきたいと考えておりますので、後日、連絡差し上げたいと存じます。

○吉野委員長 これで終了させていただきたいと思います。

 本日も活発な御議論、どうもありがとうございました。


(了)

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