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2012年7月31日 第76回独立行政法人評価委員会労働部会議事録

○日時

平成24年7月31日(火)9:29~12:09


○場所

専用第18・19・20会議室


○出席者

今村部会長、宮本部会長代理、高田委員、伊丹委員、中野委員

○議事

(以下、議事録)

○今村部会長
定刻になりましたので、ただいまから第76回「独立行政法人評価委員会労働部会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。本日は、労働者健康福祉機構の個別評価となります。委員の皆様には、ご審議をよろしくお願いいたします。
本日は松尾委員、加藤委員、川端委員、本寺委員がご欠席です。なお、松尾委員は起草委員であるため、事前に労福機構の平成23年度業績評価の評定を行っていただいており、その他の審議事項については、部会長である私に一任する旨連絡をいただいているとのことです。
審議に入ります。最初に武谷理事長からご挨拶と、平成23年度における業務実績概要の説明をお願いいたします。

○労働者健康福祉機構理事長
おはようございます。理事長の武谷です。本日はお集まりいただきましてありがとうございます。今回ご評価いただく私どもの事業実績は、第2期の中期目標の3年目になります。当機構が行っております事業は非常に多岐にわたっており、いちばん重要なものは労災病院を通じての、高度・専門的医療の提供、地域医療への貢献、勤労に関連する疾病の予防、職場復帰への支援、労災に関連する研究活動、産業保健活動、未払賃金立替払いというようなものです。
冒頭に私から、過年度の事業の概括的なお話をし、その後、当機構の小山理事長補佐から各論的なご説明をさせていただきます。このようなことで進めたいと思います。
最も特別な活動として、東日本大震災への対応があります。本機構の対応としては、震災直後に、機構本部に災害対策本部を立ち上げ、自主的に、あるいは国や地方自治体からの要請に応じ、全国の労災病院から被災地への医療チーム派遣、被災された患者さん方の受入れ、メンタルヘルスケアに関する相談などの対応を迅速に行ってまいりました。
現在も、東京電力福島第一原子力発電所のJヴィレッジにおいて、労働者の健康管理等のための緊急医療として、緊急の医師派遣要請に基づき、全国の労災病院の医師派遣を行っており、24時間体制での健康管理を可能ならしめています。
労災病院事業についてご説明いたします。当機構の事業では最もウエイトを占めております。特に、我々が力を入れてきたものの中で、私どもが自己評価としてSを付けさせていただいたものを中心にご説明いたします。
1点目は、勤労者医療の地域支援への貢献です。近隣の診療所等から紹介状を持って来院される患者さんの割合(紹介率)が60.9%。労災病院で治療をした患者さんを、また近隣の診療所等に紹介する逆紹介率が49.4%。いずれも目標を上回っております。
労災病院が行っている研修会・講習会で、近隣の医師等が参加する症例検討会を定期的に開催しております。大型の医療機器、CT、MRIなどの近隣病院との共同利用も積極的に行っています。この結果、取得条件が大変厳しい地域医療支援病院の基準を満たし、30ある病院のうちの22の病院でその承認を受けています。指定病院は全国で400もないと思いますので、労災病院の30のうちの22というのは非常にアクティビティが高いということができるかと思います。このようなことでS評価としております。
2点目は、行政機関への貢献です。国等の要請に応じ、労災病院の医師などが、多くの労災関連の審議会、委員会等に参画し、労災疾病等にかかわる医学的知見を提供しています。加えて労災認定にかかわる意見書を、より短期間に相当数作成している実績があります。
代表的な労災疾患であるアスベスト関連疾患に対応するため、アスベスト疾患センター等において健診や相談、アスベスト関連疾患の診断に必須であるアスベスト小体等を計測しています。このようなことを通じて診断技術研修等を積極的に行ってまいりました。日本と中国、日中政府間の二国間技術協力プロジェクトの一環として、中国人研修医を我が国に受け入れて、じん肺、石綿に関する健康管理に関する研修を実施したこと等により、私どもはS評価といたしました。
3点目は、労災疾患等に関する研究や開発への活動です。労災疾患というのは、我々は現状で13分野に分けて研究開発に鋭意取り組んでいるわけですが、いずれも質・量ともに高いレベルにあると思っております。さらに研究成果の普及に関しても、国内外での関連学会の発表、論文発表、情報提供としてホームページに掲載しておりますが、そのアクセスの件数が増加の一途にあります。アスベスト関連疾患の研究成果については、モンゴル、中国等アジア諸国などとの学術交流、指導の実を上げていて、近隣諸国から大変高い評価を受けているという理由でS評価とさせていただいております。
産業保健推進センター事業についてです。本事業に関しては、事業内容の質や利用者の利便性の向上を高めてまいりました。産業保健にかかわる研修回数、相談件数及び情報提供などへの取組みも積極的に行っていきました。特に、東日本大震災に際しては、被災された労働者・事業者などに対し、迅速に相談や研修を行ってまいりました。これもS評価といたしました。
未払賃金の立替払事業については、立替払いの迅速化に努めてきており、それなりの成果を上げております。また、東日本大震災に関する臨時の支払いなどを行ってまいりました。さらに倒産した事業主に対し、債権の回収などにも努め、かつてない回収率となっております。このような事由に鑑みてS評価といたしました。
最後に、労災病院の財務状況についてご報告いたします。労災病院は、経営基盤の確立が重要であることは認識しているところですが、平成23年度の財務内容については、12億円の当期損失となっております。この大きな要因としては、臨時損失において、独立行政法人の会計基準の改訂に伴う減損損失14億円が発生したことによるものです。労災病院自体の経営状況に関しては、東日本大震災による収入減など、ネガティブな要因があったにもかかわらず、診療報酬改定へ迅速かつ適切に対応し、収益を確保いたしました。さらに支出削減に努めた結果、経常損益は5億円の利益となり、平成22年度に引き続き黒字を維持しています。
本日は、各領域を代表する専門の委員の方々からいろいろなご意見、あるいはご示唆を賜り、これからの事業活動に活かし、さらにそれを通じて本機構として期待される使命を果たしていきたいと存じております。何とぞよろしくお願いいたします。以上です。

○今村部会長
これからの進め方ですが、労働者健康福祉機構の個別評価については、評価シートの個別項目を4つのグループに分け、グループごとに評価を行っていきます。グループ1は、「高度・専門的医療の提供」「勤労者医療の地域支援」及び「行政機関等への貢献」の項目について評価を行います。使用時間は、法人からの説明が20分、委員の評定と質疑が15分、合計35分となっております。それでは法人から説明をお願いいたします。

○労働者健康福祉機構理事長補佐
理事長補佐兼総務部長の小山からご説明させていただきます。説明に使用いたします資料は、主として資料1-1「平成23年度業務実績説明資料」というポンチ絵を中心に業務実績についてご説明させていただきます。また、適宜、資料1-2の評価シートについても必要に応じて参照していただきます。
「高度・専門的医療の提供」については、資料1-1の資料01-01から01-08まであるわけですが、ここに該当する部分です。資料01-02をご覧ください。これは、労災病院の全国的な配置と、それぞれ地域においてどういう役割を担っているかということで、主たる機能を図示したものです。昨年も同じような資料をまとめましたが、昨年と変わった点だけ申し上げます。左下のボックスの中を見ますと、赤い四角の災害拠点病院が9病院となっておりますが、これは平成22年度に比べて、和歌山労災が平成23年度に新たに災害拠点病院に指定されております。◇の地域医療支援病院22となっておりますが、これは平成23年度においては中部労災、大阪労災、長崎労災の3施設が新たに指定を受けています。
資料01-03は、急性期医療への対応ということで、高度な医療を提供するということで急性期医療の対応を行っております。看護体制の充実ということで、7対1看護体制については、平成22年度の13施設から、平成23年度には新たに6施設が7対1の基準を取得し、トータルで19施設となっております。なお、今年度に入って5施設がさらに導入予定となっております。この結果、在院日数も右の折れ線グラフのとおり年々短縮し、平成23年度は14.7日となっております。
救急医療体制の強化ということで、平成23年度は7万2,961人の救急患者を受けております。地域の開業医等との連携強化ということで、地域連携パスの導入実績です。これは、医療の標準化のためにクリニカルパスというものを、各労災病院で作成しておりますが、単に院内で使うクリニカルパスに加え、地域の開業医等を含めて共通のパスを積極的に導入しております。右の棒グラフのとおり、平成23年度は前年度に比べて大きく増加して114となっております。
資料01-04で、医療の高度化・専門化を進めるために、大きく3つの取組みを行っております。学会参加、専門センター化、高度医療機器の計画的整備ということで、人、組織運営、物についての対応をまとめたものです。学会への参加等については、学会認定医、専門医、指導医がそれぞれ大幅に増加しております。各種学会の認定施設も延べで712施設になっております。組織運営の面では、診療科横断的な専門センター、チーム医療の推進に取り組んでいます。高度医療機器の計画的整備については、平成23年度はすべて自己資金で整備しております。平成22年度が92億円でしたが、平成23年度は115億円の整備を行いました。代表的な機器の例をそこに列挙しております。
資料01-05は、私ども労働者健康福祉機構で、各病院共通の尺度で評価するための臨床評価指標をいま作成しております。平成23年度は検討会を設け、どういう指標を採用するかという検討を行いました。この結果、採用する指標項目について取りまとめを行い、平成24年度にはそれに対応するデータの収集を行っております。当初の計画どおり、平成25年度から公表する予定となっております。このことにより、労災各個別病院ごとの特徴や強み、弱みを含め、客観的な指標で評価するものとして活用していきたいと考えております。下の例は、アスベスト関連疾患を例に挙げた具体的な指標の例示です。特に私どもとしては、右のほうにある行政への協力状況等についても指標として取り上げております。
資料01-06から資料01-08までは人材の確保・育成です。資料01-06は医師の確保・育成です。左が確保ですが、適切な医療を提供するためには優秀な人材を確保することが大事で、とりわけ医師の確保には我々も重点的に取り組んでいるところです。具体的には、各種の募集活動等を行うとともに、特に研修医の確保に努めております。
この結果、左側のボックスの中の◆のところに、初期臨床研修マッチ率が出ています。臨床研修医が募集に対してどれだけ充足できたかということですが、平成23年度は78.9%となっております。また、採用した医師が働きやすい環境をつくるということで、医師が医療活動に専念できる環境を整えるということで、医師事務作業補助体制加算の取得を進めていて、平成23年度は新たに2施設が加算を受けて、トータルで32施設となっております。育児のための短時間勤務制度を整備し、現在6名が利用している状況です。労災病院グループとしての医師の交流派遣にも取り組んでいて、平成23年度は15名の実績を上げました。
医師の育成については、右の上のように、初期臨床研修医に対する集合研修を実施しております。平成23年度は117名に対して研修を実施しております。特に労災病院の特色、政策的な役割、意義等についての理解を深めてもらうためのカリキュラム等を用意して実施しております。右の下は、研修医に対して日常的に指導する指導医の講習会を実施しております。平成23年度は2回実施して、トータルで82名の医師が受講しております。この指導医講習会を受講すると、これは全国で通用する指導医として認定されます。
資料01-07は、看護師の確保・育成です。看護師についても、各種説明会等、あるいは媒体を活用した募集活動を行うとともに、特に働きやすい環境を整備するということで、院内保育所の計画的な整備を進めております。現在は17カ所で整備されております。また、確保した看護師の育成に関しては、大学あるいは大学院への進学の支援、外部での研修への積極的な派遣等を行っております。その結果、看護師の確保状況は右のボックスの中のように、平成24年4月1日現在での平成23年度の採用は1,065名でした。平成23年度1年間の離職率は8.6%で、全国平均は11.0%です。
認定看護師、専門看護師もそこにあるとおりです。特に認定看護師については、平成24年度は207名です。この表にはありませんが、平成21年度の91名から順次増加していて、平成24年4月1日現在では207名になりました。
資料01-08は、私ども労災病院に付属する看護専門学校という看護師の養成施設を運営しておりますが、そこでの取組みの状況をご紹介したものです。特に、労災病院の特徴である勤労者医療の実践について、看護師等にその理論と実践についての講義を行っています。いちばん下に国家試験の合格率が書いてあり、平成23年度は99.1%でした。全国平均の90.1%に対して10ポイントほど高くなっております。例年私どもの看護専門学校では98~99%台で、全国平均は90%前後で推移をしております。
資料01-09は、提供する医療の質の評価ということです。これについては、患者から80%以上の満足度の評価を得る計画を立てていて、結果は81.4%でした。患者満足度向上のための取組みの例として、待ち時間対策とか院内敷地内の美化運動等を行い、相談窓口の充実を図りました。右に満足度の推移の数字を並べております。第2期中期計画以降は80%台をキープしています。いちばん下は外部評価機関、日本医療機能評価機構の評価の受審です。平成23年度は6施設が更新時期を迎え、すべて更新認定を受けています。
資料01-10は医療の標準化です。ここではクリニカルパスとDPCの活用という項目を挙げております。先ほど、地域連携パスの話をいたしましたが、院内パスについては、右の棒グラフにあるとおり、平成23年度は4,390件のパスを作成して運用しております。これも年々増加しております。これによって、計画的な医療活動、標準的な無駄のない効率的な医療活動を実施しているということです。
DPCの活用については、右上の棒グラフにありますが、現在30施設がDPC対象病院になっております。これを医療の質の向上、その経営指標としてベンチマークを使って分析評価することが可能になっています。そのためにはその分析評価するための人材を育成する必要があるということで、診療情報管理士の資格取得を進めております。現在、有資格者が133名です。右下の棒グラフにあるように年々増加しております。
高度・専門的医療提供の最後は資料01-11です。医療の安全確保ということで、特に労災病院の特徴としては、労災病院の3病院から4病院をまとめ、それぞれグループ内で他の病院を相互チェックする取組みを進めております。これは、それぞれのグループ内で、重点的なチェック項目を毎回定めてチェックをする。そのことによって、外から見た問題点・改善点が明らかになるとともに、チェックに赴いた職員についても、他の病院で取り組んでいる先進的な取組み、有益な取組みなどを参考にすることができる、双方向にメリットのある取組みとして進めているということです。以上が、高度・専門的医療の提供です。
続いて資料02です。これは、「勤労者医療の地域支援の推進」です。資料02-01では、評価の視点として、地域の労災指定医療機関、開業医等の労災指定医療機関の、労災病院に対する有益度の評価75%以上を得るようにすること。それから理事長の挨拶にもありました紹介率60%、逆紹介率40%、講習会、症例検討会の開催、受託検査の実施に取り組んでいます。労災指定医療機関の有益度評価は79.2%ということで目標を上回っています。しかも前年を上回ったということです。患者紹介率等の実績については、下のボックスの中にあります。患者紹介率については、中期目標の最終年度までに60%以上を達成する目標になっていて、平成23年度は56%の目標を掲げたところ、60.9%ということで初めて中期目標を上回りました。逆紹介率は、既に中期目標の40%を達成していて、平成23年度はさらに前年度より上昇して49.4%になっております。紹介率、逆紹介率の推移については、右のグラフの2番目にあります。
症例検討会、講習会については、中期目標期間の5年間で10万人ということで、平成23年度はその5分の1の2万人を目標にしたところ、2万4,418人ということで目標を大きく上回っております。受託検査についても同様で、3万件の目標に対して3万3,809件ということで、目標を大きく上回ったということです。
資料02-02は地域医療の推進の、特に地域医療支援病院の承認についての取組みとその結果について簡単にまとめております。これは冒頭のところでもご説明いたしましたので省略させていただきます。
資料02-03は地域支援の一環として、特に東日本大震災への対応をここで取りまとめております。大きくは、被災地への医療チームの派遣、被災患者の受入れ、各種相談等への対応という形でまとめております。これは、昨年も昨年6月時点での状況をご報告させていただきましたが、今回は今年の3月、昨年の9月末の状況を数字として挙げております。特に大きく増えているのは、いちばん下のメンタルヘルスの相談実績です。昨年は632件だったのが2,403件となりました。健康相談も昨年は112件だったのが、今年は375件になっております。
資料03-01は、「行政機関等への貢献」ということです。国の審議会、委員会、研究会等への積極的な参加ということで、アスベスト関連、労災補償行政への貢献ということで参加状況をまとめております。
もう1つは、労災認定に係る意見書の作成を迅速に行うということで、下のほうにある処理日数の短縮ということで、平成23年度は14.8日でした。平成15年度に比べて約半分の日数に短縮されております。平成22年度の実績の15.6日に対しても0.8日の短縮が実現されました。特に複雑困難な事案等については、複数の診療科にまたがるケースもあるわけですが、そういうものについては院内での連携を密にして迅速な処理に心がけているところです。
資料03-02は、東日本大震災への対応の一環として、福島第一原子力発電所の作業員・従業員に対する健康・医療活動を実施しているということです。これについては、昨年5月から8月末までは免震重要棟の医師を派遣しております。9月以降はJヴィレッジに医師を派遣していて、いずれも東京電力から、厚生労働省を通じて私どもに医師派遣の要請があって対応しているものです。実績としては、昨年8月までの免震重要棟への派遣は46名、Jヴィッジへの派遣は3月までの間に51名派遣しておりますが、これは現在も継続中です。これによって24時間体制での作業員の健康管理を実施できる体制を構築しています。
資料03-03は行政機関等への貢献、特に労災病院としての特徴的なものとして、アスベスト関連疾患への取組みです。アスベスト疾患センターを25の労災病院に設置しておりますが、ここにおける健康診断、相談の実施、アスベストの診断基準になるアスベスト小体の計測の実施、アスベスト関連疾患の診断技術、労災病院に蓄積したノウハウを広く提供するということで、診断技術研修を実施しております。平成23年度の研修については、過去最高の697名が受講しています。以上がグループ1の業務実績です。
資料1-2の11頁をご覧ください。これは「高度・専門的医療の提供」ですが、7対1の看護体制を積極的に取得を進めて19施設に拡大したこと、あるいは地域連携パスも拡大した等々積極的な取組みが実を結んでいるということで自己評価をAとさせていただいております。
16頁は、「勤労者医療の地域支援」の自己評価です。東日本大震災への積極的な対応、[2]の各種目標指標が目標値を大幅に上回って達成したこと等々により、自己評価をSとさせていただいております。
21頁は、「行政機関等への貢献」です。福島第一原子力発電所の作業員の健康管理に対して医師派遣を継続的に実施していること、国の審議会、研究会等への積極的参加、意見書作成日数の大幅な短縮、アスベスト疾患への取組みといった、労災病院ならではの取組みに積極的に実績を上げたということで、自己評価をSとさせていただいております。以上です。

○今村部会長
委員の皆様は、評価シートへ評定等の記入をお願いいたします。質問等がありましたら適宜ご発言ください。

○中野委員
基本的なことで申し訳ないのですが、資料1-8ということで、別冊資料の中に、個別病院ごとの診療機能一覧があります。その中の3頁に、首都圏は大変多く救急患者等を受け入れておられて、横浜が大変多くの患者を受けておられます。それに比べて労災患者の入院比率が1.7%と非常に少ないということです。これは、労災病院としての指針といいますか、方針があるのでしょうか。入院比率が高い所と、そうでない所が非常にありますが、これは連携する施設等の関連で早く出ていただくことが可能になっているということでしょうか。

○労働者健康福祉機構理事
これは病院の規模、立地している所によって当然医療需要が違います。例えば、いま例を挙げられました横浜労災病院はまるで市街地にあります。そういう所では、いわゆる典型的な労災患者は少ないものの、働いている方が非常にたくさん、新横浜駅の前ですぐにアクセスできる所ということで、さまざまな救急が搬送されます。住宅地よりも、市街地なので働いている人が多いということにはなりますが、必ずしも労災認定される患者ではないけれども、勤労者の医療という点ではかなり積極的にやっています。
一方で、例えばいちばん上の道央せき損等を見ますと、労災患者比率は10%を超えております。これは当然のことながら、脊髄損傷の患者さんが比較的長期に入院するということで、割合として高くなるというように特殊性を持った病院の場合と、広く地域に根差し、救急を取りつつ労災も診る病院と、その立地等によって違ってくるものです。誘導するというよりは、規模、条件による患者さんの構成割合の違いが出ていると見られると思います。

○中野委員
そういう立地条件等に反映される個別病院の特徴を、機構としてはより活かしつつということでよろしいのでしょうか。

○労働者健康福祉機構理事
地域のニーズ、地域の働く人のニーズに応えるという意味では、必ずしも労災疾病だけではないニーズが当然あるわけです。一方で、例えば新潟、富山、山陰のように、その地域の中核をなす病院と、都会地にあっていくつか連携できる同規模の病院がたくさんある病院とでは位置づけが違いますので、病院の規模が同じであっても、周りにある病院との関係によって違うと。そういう地域性を基盤に置きながら、その中でどのように勤労者医療を展開できるかという意味では、すべての病院が一律にということではなく、その地域に応じ、地域の患者さんに応じた形で進めていこうということで、本部として一括してさまざまな指導も行いますが、地域の事情も聞くということで、個別に病院協議を毎年行っていて、その地域の事情を院長先生、病院の幹部から聞いて、本部とともに次年度の運営方針を決めるという形で進めております。

○高田委員
地域連携パスが進んでいるという紹介がありました。パワーポイントのシートの3頁の資料01-03で、地域医療連携の強化のところに件数が出ています。これが適用される人数というような資料はありますか。

○労働者健康福祉機構医療事業部長
地域連携パスの資料はありません。

○高田委員
当然そのパス導入で、人数も増えていることが想定できるわけですね。

○労働者健康福祉機構医療事業部長
ただいま資料を持ち合わせておりませんで失礼いたしますが、当然そういうことを想定しております。

○高田委員
それから、資料01-09で医療の質の評価ということで、患者満足度の統計が出ております。ほぼ80%で推移しているのですが、この水準をどう評価するか。つまり、ほかの病院と比べてとか、その病院の特性に照らしての評価ということもあるかと思うのですが、それはどのように見ていますか。

○労働者健康福祉機構理事
患者満足度は、あくまでも患者さんの側の主観的な評価となりますので、都会地と地方でも当然基準が違います。ディマンディングな患者さんが多い場合と、かなり感謝してもらえる患者さんと、そういう意味では各病院が前年度に比べてもっと向上させようということで、ほかと比べるというよりは、自らの病院の指標として昨年度より、より向上させようという取組みの指標として主に使っているものです。

○宮本委員
7頁の、看護師の確保に向けた取組みのところで、離職率が8.6%で、全国平均よりも低かったということですが、大きな病院ほど離職率は低いということでよろしいのでしょうか。8.6%という水準がどのぐらい良いのかどうなのかということが、これではちょっとわかりかねるというか、平均と比べればもちろん良いのですけれども、良好な病院というのはどのぐらいになっているのでしょうか。

○労働者健康福祉機構理事
非常に離職率の低い病院は、平成23年度で見ると3.8%、あるいは3.0%という病院もあります。必ずしも都会地がということではなく、逆に都会は離職してもすぐに次の職があるとか、流動性が高い場合があります。地域によっては、労災病院が本当に基幹病院、公的病院としては唯一の病院だったりする所では、離職率は比較的低いという地域性はあります。それにしても、全国平均よりも3ポイント低い8.6%というのは大きく評価していただけるものと考えております。
具体的にはどういう人が最初に離職するかというと、新人が入ってすぐに、新人の教育ができなくて離職していくというのがまず最初の波としてあります。その次には、出産・育児の時期に離職をすることがあります。そういう意味で、新人の教育をきめ細かくする体制がある、それから出産・育児では育児支援を十分にできる体制がある、このようなことが離職を防ぐことに大きくつながると考え、そのような活動をしております。

○宮本委員
この説明の中に育児休業・介護休暇制度の周知とか、院内保育所整備のようなそこのところはあるのですけれども、新人教育によって離職率を減らしているというような説明がないので、いま伺ってわかりました。その辺りが重要であるということであると、ここに盛り込むべきではないかという感じがいたします。

○伊丹委員
同じ7頁の認定看護師数を平成21年度から比べると倍増以上しているというご説明でした。基本的な質問なのですが、こういう認定者が全国でどのぐらいいるのか、目標としてどの辺のレベルを目指していくのが妥当なのか。全体数が増えていること自体は評価できると思うのです。上のほうの離職率は全国平均とか、いろいろデータも整備されていると思うのですが、認定看護師の平均的な姿、将来に向けての目標となるような姿はどのようなレベルなのかを教えてください。

○労働者健康福祉機構医療事業部長
全国の認定看護師の数は、平成24年5月現在で8,993名と伺っております。これはいろいろな分野があり、それぞれ病院の中で必要とされるものが、病院によっても異なっておりますので、どの水準を目指すかというのはなかなか難しいです。労災病院でいちばんたくさんいる分野が、ウォックという皮膚、排泄ケアです。続いて感染の分野が非常に多いです。それから、がんであるとか、緩和ケアであるとか、病院のタイプによって育てたい専門の看護師の領域が異なります。また、必要とされる人数も病院によって異なりますので、それぞれの病院のタイプに応じて増やしていけたらと考えております。

○伊丹委員
これは何かインセンティブといいますか、資格を取ったら処遇が上がるとか、本人にとっても、周辺にとっても明示的にインセンティブを与えられているのでしょうか。

○労働者健康福祉機構医療事業部長
資格を取得するときの受験料などでお金がかかりますので、それを補助する。資格を取っても、たしか5年に1回ぐらい更新をしなければなりませんのでそのときの費用、勉強するために月いくらというように研究費のようなものを支給しております。

○今村部会長
9頁の患者満足度の推移が、平成17年度から平成22年度まであって、平成20年度がピークで82.5%、平成21年度が81.8%、平成22年度が81.5%と若干伸び悩みというか停滞の傾向があります。それに対して、そのすぐ左に職員による環境美化運動とか、また意見箱によるご意見・要望収集と書いてあります。これで十分かどうかということが気になっております。
次に、資料1-2の評価シートの13頁の上から2つ目のカラムの○ですが、患者参加型の医療安全が推進されているかのところで文章をよく見ますと、「医療安全推進週間において」と、特定の週間において一時的に患者とのコミュニケーション等を実施していると書いてあります。
お伺いしたいことは、例えば資料1-1の6頁の、好循環と書いたサイクルの右下の人材確保のところに、「プライマリー・ケアの指導法等に関する講習会」ということを実際にプライマリー・ケアに関してもやっているわけです。急性期医療の病院として発生した労災病院としては、発生した病状に対して対応するというのはもともとの発端だと思うのですが、地域との連携を考えたときに、プライマリー・ケアとか、もっと言ったら保健に関する配慮といったものも含めて、患者数を減らすといった地域との連携はどう考えているのか。それが、もしかしたらそれが患者満足度を高めることになるのかもしれないなと。これは、かなり漠然とした視点ですけれども、その辺についてどう考えているかをお伺いします。
要点は、患者をどの程度参加させているかということと、地域とどのように保健、プライマリー・ケアで連携しているかということです。

○労働者健康福祉機構理事
プライマリー・ケア、もしくはその前のヘルスに関する産業保健活動ということになろうかと思います。

○今村部会長
そうです。

○労働者健康福祉機構理事
その部分については、すべての病院が同じ程度とは言いませんが、地域に応じて、例えば東京労災病院であれば蒲田に工場群があるので、そういう所に対して産業保健活動を積極的に行う。私どもの組織の中に、産業保健推進センターがありますので、そういう所の活動と一緒になって、講師として臨床の経験を産業現場での労務管理者に対して行う。そういう予防活動には積極的に参加しております。
ただ、一旦罹患して病院を受診した方への調査になりますので、その入口より前の部分での活動は、そういう方からは直接評価していただきにくいのかもしれません。患者満足度調査は調査の限界があります。こちらに小さく書いてありますけれども、特定の2日間を選んでアンケートを取っている都合上、その日にたまたま雨が降っていて来るのが不便だったとか、たまたま混んでいる日でたくさん待たされた患者さんがいるときには、どうしても不満を持つ方が増えるというように、ほかの要因によるぶれがこの調査の設計上あります。そのために、2年前が良くて、今が下がっているということでは必ずしもないかもしれないということです。大きなトレンドとしては、比較的保っていると自己評価をしております。

○今村部会長
医療関係の方にはあまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、医療のコ・プロダクションというか、医療サービス自体は、患者も参加して医療サービスを作っていくという考え方が、標準とは言いませんけれども世界的にはかなり注目されていることですので、是非ご検討いただきたいと思います。それから、データの取り方に関しても継続的にフィードバックする、活用する形でお取りいただければと。ご検討いただければという私の感想です。
もう1点お伺いします。どこで聞いたらいいかわからないのですが、例の胆管がんの問題に関して、その発生を予見できたかどうかということと、その後どう対応しているかということ。これは、まさに機構の重要な役割ではないかと思いますので教えてください。

○労働者健康福祉機構理事
これは、平成23年度には発生していなかったことですけれども、特定の事業場に異常な集積があるということから、一般的なばく露ではないと公衆衛生上は考えられます。その特定の事業場で、非常に高濃度、大量のばく露が偶発的というか、事故的、事件的に起こったと考えるのが一般的ではないかと思われます。こういうものについても、研究班が組まれる際には当然協力する。それ以外に私ども労災病院グループで病職歴データベースを作っておりますので、そういうところで何か浮かび上がってくるものがないかという解析をする。そういう研究的な部分への関与は積極的に進めていっております。
それから、産業保健推進センターに、既に相談窓口を開設しておりますが、そういう所で受診を希望し、ばく露のおそれがある方が見えた場合には、積極的に労災病院へ紹介し、引き受けて診療に当たることも既に開始しております。

○今村部会長
平成23年度に発生しなかったということですけれども、これ自体はずっとそれ以前から症例としてはあったわけですので、どう対応してきたかということです。

○労働者健康福祉機構理事
はい。ただ、事故的にはなくて、若年の胆管がんは非常に希なものですから、全国でも各病院で1例経験するかしないかというぐらいです。50歳未満の胆管がんは、もともと非常に希で、高齢者の胆管がんはどんどん増えているのですが、そういうものは従来から労災病院の、特に肝胆膵の専門科が、消化器内科が強い所ではたくさん診療しております。そういう所であっても、今回の事案のように、若い患者さんを診た経験のある労災病院はというか、全国のほかの病院を見ても、そんなにたくさんはなかったというのが、現在振り返っての現状です。

○伊丹委員
看護師の育成について労災病院間の看護師同士の交流、あるいは国立病院や私立病院など他の医療機関との交流はどの程度行われているのでしょうか。また医師同士の交流についても教えてください。

○労働者健康福祉機構理事
医師については、当然医療レベル、学術的なレベルを保つという意味では、学会の活動が非常に重要になります。専門医等を目指すということで、まず学会に所属する、そこで研究発表、論文を作成する。そういう学会へ参加することにより、相互の他機関との交流を図るということがある程度保たれるわけですが、そういうものに積極的にサポートする体制があります。
看護のほうでも看護の学会がありますし、職業・災害医学会のような、私ども労災病院が中心になっているような学会への参加もあります。それ以外に、先ほど話題になりました認定看護師、専門看護師の研修会に出ることにより、横のつながり、ネットワークへの参加は当然できております。
労災病院間の交流という意味では、看護副部長と、看護部長については、全国規模で異動することにより、ある程度看護レベルの平準化を図っております。一方で看護師さん特有の事情として、労働供給事業としては、地域に根ざし、そこに家庭を持って働く看護師さんが大多数ということでは、全国規模で異動することをルーチンにするのはなかなか難しい面もありますので、そういう意味で幹部は異動する、幹部になっていない看護師長以下では、ローカルで採用するわけですが、さまざまな研修会等によって横のつながりを保っていく、というような形で一定の水準を保っているつもりではおります。

○伊丹委員
その辺をもう少し見える化すると良いですね。

○今村部会長
ありがとうございました。次にグループ2です。「労災疾病等にかかる研究・開発」「過労死予防等の推進」及び「医療リハビリテーションセンター及び総合せき損センターの運営」の項目について評価を行います。所要時間は法人からの説明を20分、委員の評定と質疑15分の合計35分となっております。それでは、法人からの説明をお願いします。

○労働者健康福祉機構医療企画部長
医療企画部長の高野と申します。私から労災疾病等13分野の研究についてご報告いたします。資料1-1、実績説明資料の資料04-01、18頁をご覧ください。
まず初めに、研究の数値目標の達成状況についてご報告いたします。学会発表については左下のグラフのとおり、13分野全体で国外58件、国内208件、合わせて266件の発表がなされており、目標を大きく上回っております。論文発表は英文が48件、和文が104件、合わせて152件となっております。また、ホームページへのアクセス件数につきましては、コンテンツの充実を図るとともに、頁の見出しに検索されやすいキーワードを追加するなどの技術的な工夫も併せて行いまして、右側のグラフのとおり、アクセス件数は42万631件となり、昨年度より10万件以上増え、平成23年度の目標値の1.6倍となっております。
資料04-02、19頁をご覧ください。研究への取組状況ですが、第2期においては、第1期の研究結果等を踏まえまして、重点項目を定めて取り組んでおります。本日はこれらの重点項目を中心にご説明させていただきます。
資料04-03をご覧ください。まず「アスベスト関連疾患」分野です。第2期の研究においては、悪性胸膜中皮腫の早期発見・治療法の確立を目指した共同研究に取り組んでおります。その中で、MicroRNA-34b/cのメチル化が腫瘍形成に重要な役割を果たしていること、CD26が化学療法の感受性を示す臨床的に重要なバイオマーカーであることが明らかになりました。この研究成果につきましては、インパクトファクターが7.742と大変影響力の大きい医学雑誌「クリニカル・キャンサー・リサーチ」にも掲載されたところです。なお、この研究成果を臨床へ応用するにはもう少し研究が必要となりますが、アスベスト関連疾患分野の研究から得られた知見や診断技術につきましては、先ほど資料03でもご紹介したように、広く普及を図るとともに、迅速かつ適切な労災給付にも活用しています。
また、この分野につきましては、次頁のじん肺等による呼吸器疾患分野と共同で、平成22年度に引き続き23年度においても、9月にモンゴルの保健省でモンゴル人の医師35名に対してワークショップを開催し、またJICAからの依頼を受けまして、11月と2月の2回、中国人研修員17名に対しても、講義やX線写真の読影実習等を実施して、両国から高い評価を受けたところでございます。
続きまして資料04-05、22頁をご覧ください。「物理的因子による疾患」分野です。第2期の研究においては、職業性皮膚疾患に関する情報蓄積を進めるために、職業性皮膚疾患NAVIを開発しましたが、さらに工夫を加え、外来診療において医師がスマートフォンでも閲覧できるように改良を加えております。また、職業性皮膚疾患に関連する論文リストの日本語訳等にも取り組み、コンテンツの充実を図ったことにより、グラフにありますように月平均アクセス件数が785.8件と、昨年度に比べて大きく伸びています。
次に「過労死」分野の取組みです。資料04-08、25頁をご覧ください。第2期の研究においては、宮城県亘理町におけるコホート研究から、長時間の労働が肥満とうつの危険因子になること、また、あまり技能が活用されないことは、高血圧とうつの危険因子になることが明らかになりました。東日本大震災発生前後の健康状態の比較から、亘理町の職員の血圧が震災後に116mmから125mmへと急に上昇していることがわかっており、さらに、疲労やうつを訴える回答も多くて、職員の過労死予防のための健康管理の徹底が必要ということが明らかになっております。ちなみに、本研究につきましては、平成24年度から山形大学が高畠町と共同で実施しているいわゆる高畠研究と連携を取り、さらに研究を進めることとしています。
資料04-12、29頁をご覧ください。「勤労者のメンタルヘルス」分野です。第2期の研究では、脳血流の低下と唾液中のホルモン分泌に関連があることが示唆されました。また、不眠スコアが高く睡眠に問題がある勤労者は、抑うつ感が強く、脳血流も低下していることが判明し、睡眠状況について問診することが勤労者のうつ病を早期発見する上で重要であるということが明らかになりました。こうした結果を踏まえて、今後は勤労者予防医療センターとも連携をとりながら、実際の予防医療活動に活用できる睡眠に関する問診ツールの開発・普及を目指していきたいと考えております。なお、メンタル労災につきましては、現在2事業所に協力いただいて、メンタル労災の効果を検証しており、平成25年度には広く普及を図りたいと考えております。
資料04-14、31頁をご覧ください。「疾病の治療と職業の両立支援」分野の取組みです。糖尿病に関して、第2期の研究では、患者アンケート調査から、産業医のいない職場よりも産業医のいる職場のほうが血糖コントロール状況が良好であること、また企業アンケート調査から、企業によってHbA1c値の正常値や要加療値の判定に大きな差があること、小企業ほど糖尿病の有病率が高い一方で受診勧告率が低いなどの、糖尿病患者に対する様々な課題があることが明らかとなっております。また、名古屋市で「就労と糖尿病治療の両立」をテーマに、医療関係者、企業の産業保健スタッフ、一般市民等、約250名の参加を得まして、勤労者医療フォーラムを開催し、多くの方々から高い関心と評価をいただきました。また、今年度はアンケート調査をさらに全国規模で行い、来年度末までには、糖尿病治療と就労の両立支援ガイドラインの作成・普及を目指しています。以上が平成23年度における労災疾病等13分野の医学研究に関する主な実績・取組状況です。
資料1-2、評価シートの37頁をご覧ください。自己評定につきましては、いちばん上の欄にありますように、S評価とさせていただいております。その理由についてです。労災疾病等13分野の研究につきましては、実績・取組状況は先ほどご説明させていただき、その内容は[1]から[7]に書いてありますが、[8]にありますように、筋・骨格系疾患分野の研究において、腰痛対策には物理的な対策のほかに、不安や恐怖などの心的ストレス等の心理・社会的な問題への対応も重要であることが明らかとなっております。この研究成果は、テレビや雑誌等でも取り上げられております。
37頁の下から38頁の「数値目標」に係る達成状況については、初めにご報告しましたとおり、ホームページのアクセス件数、学会の発表ともに目標値を大きく上回っております。また、「評価の視点」のうち、それぞれの研究に関しては、外部有識者を含む業績評価委員会医学研究評価部会を開催し、各研究の中間評価も行って研究計画の改善に反映しています。国立病院等との症例データに係る連携体制の構築については、共同研究者として37名の国立病院機構職員や大学等の研究者にも研究に参画していただいて連携を進めています。以上、申し上げましたような実績・取組状況によりまして、平成23年度における「労災疾病等にかかる研究・開発」に関しては、S評価とさせていただいたところです。研究関係のご報告は以上です。

○労働者健康機構理事長補佐
引き続きまして、「過労死予防等の推進」についてご説明させていただきます。資料1-1の、資料05-01、35頁です。これは労災病院に併設されている過労死予防センター等における予防活動の実績です。内容としては、過労死予防対策、メンタルヘルス不調予防対策、勤労女性の健康管理対策を中心に活動を行っておりまして、それぞれ上にある「評価の視点」の数値目標が課されております。真ん中の3つのボックスにあるように、それぞれ平成23年度の年度計画については、いずれも実績は目標を大きく上回っています。
資料05-02ですが、過労死予防等の効果的な高いレベルの対策を行うために、いろいろな工夫・取組みを行っています。1つは研究会や学会等での発表、あるいはそのスキルアップのための研究会等への参加を行っています。研究会や学会等での発表では、例として3つ挙げております。職場の喫煙対策、職種別体操、食品カードを使用した食事療法です。特に職場の喫煙については、昨年5月の日本産業衛生学会において優秀演題賞を受賞しております。こうした成果をそれぞれの地域の産業医、あるいは企業の産業保健スタッフ等に普及するという活動にも取り組んでおりまして、産業保健推進センターに講師を派遣し、研修などを行っています。
資料05-03です。左下ですが、アウトカム指標として、80.0%以上の利用者からの評価をいただくということを目標にしています。右にありますが、利便性の向上のための取組みを行っており、結果として91.1%と、非常に高い満足度の評価をいただいています。具体的な取組みの1つとしては、休日、時間外の指導・講習会等の実施で、昨年に比べて2.8ポイント増加しております。また、企業や地域のいろいろな催し物に出向いて指導や講習会を行っています。これも昨年に比べて増加しており、4万3,166人の方に相談・指導等を行いました。特に支店、工場、事業場等を全国展開している企業に対して、労災病院のネットワークを活用して、企業内の全国の拠点に対して出張して相談・指導等を行っています。
資料05-04は、横浜労災を中心に実施している、メンタルヘルス対策の一環としての職場復帰支援のための試行的な取組みをご紹介したものです。企業と連携して、あるいは企業に出向いて、メンタルヘルス不調者の職場復帰支援をいくつかの企業と協力して実施をしておりますが、平成24年度におきましては、この取組みを取りまとめ・分析しまして、ほかの労災病院でも、平成25年度以降展開できるようにしていきたいと考えているところです。
続きまして、資料06-01です。これは岡山県の吉備高原医療リハビリテーションセンター及び福岡県にあります総合せき損センターの運営です。この両施設は、リハビリテーョンの専門施設ということで、非常に特殊な施設ですが、特に社会復帰、職場復帰に重点を置いた取組みを行っています。これは「評価の視点」にありますが、職場・自宅復帰の確保と患者満足度において80%以上を確保することを目標にしています。真ん中に実績が書いてありますが、医療リハビリテーションセンターでは社会復帰率88.8%、患者満足度91.6%、総合せき損センターでは社会復帰率80.5%、患者満足度80.8%で、いずれも目標を達成しております。総合せき損センターの患者満足度が、平成22年度の92.4%から大きく低下しておりますが、これは施設の増改築工事を行っているために、遠回りをするとか、あるいはうるさいというようなことがあって満足度の低下に影響したのではないかと考えております。非常に特殊な施設でございまして、この両施設とも全国から幅広く患者を受け入れているということで、県外患者の受入比率は41%と31%です。
資料06-02は、その高い社会復帰率を確保するために、どういう取組みをやっているかを図式的にまとめたものです。いずれの場合も、患者さんのリハビリプログラムを作成する際に、職場あるいは家庭とよく連携をとり、話を聞いたり現地へ実際に訪問をして、社会復帰・職場復帰のために必要なハードウェア・ソフトウェアの面での対応を企業に対してお願いするというようなことを含めて、リハビリプログラムに反映させるというような取組みを行っております。そのことによって、場合によっては企業が配置転換する、あるいは企業にいろいろな設備面での対応をしていただくことによって、高い社会復帰率に結び付けているというものです。以上が第2グループです。
資料1-2、評価シートの43頁をご覧ください。「過労死予防等の推進」の自己評価です。これにつきましては、数値目標等については大幅に目標を上回る実績を上げることができて、満足度も91.1%と非常に高い水準にあるということ、利便性向上のための取組みを積極的に行っているということで、自己評価をAとさせていただいております。
続きまして50頁をご覧ください。「医療リハ・せき損センターの運営」の自己評価です。これにつきましても各種の取組みにより、社会復帰率、職場復帰率、及び患者満足度等をいずれも目標を上回って達成したということで、自己評価をAとさせていただいています。以上です。

○今村部会長
ありがとうございました。委員の皆様は、評価シートへ評定等の記入をお願いいたします。質問等ありましたら適宜ご発言ください。

○中野委員
1つは、産業保健推進センターというのはかなり重要な役割を担っている、つまり難しい研究を勤労者レベルまで落とし込むための中核的な機能にあるようです。都道府県に1カ所しかないという感じなのですが、それが先ほどの地域連携のようなところとどのように組み合わせながら展開をして、どういう効果があるかということが1点です。
2点目は、特に労災リハビリについては、高齢・障害・求職者雇用支援機構でもかなりプログラムを持っているように思いますが、その辺りの連携の効果はどのようにお考えか、2点お願いします。

○労働者健康福祉機構理事
まず、1点目の産業保健推進センター及び連絡事務所ですが、もともとはすべての都道府県にありましたが、これが政府の方針で集約化・合理化をしろというご指示が出まして、現在、一部の都道府県では連絡事務所という形に規模を縮小しておりまして、これを3年計画で47カ所から15カ所にするということで、今年度が3年目なのですが、規模を縮小している段階にあります。規模を縮小してもその機能を失わないように、様々な支援体制を組んで活動しているというのが実態です。実際には都道府県の産保センターまたは連絡事務所はすべて県庁所在地にありまして、そういうことで、各都道府県の労働局と連携を図り、産業保健活動の薄い事業場に対しては、産保センターでちゃんと勉強しなさいと労働局から言っていただくという形で、どこの事業場をターゲットにするべきかというようなことは、労働局とも相談をしながら、より必要な所に対して働きかけるという形で活動をしています。
労災病院はどういう関係にあるかといいますと、産業保健推進センターが開催する様々な講習会に講師として参加するのみならず、その講習会自体を労災病院の先生が積極的に企画・提案されて、産保センターで行われる場合もあります。ただ、労災病院は32しかございませんし、全都道府県にあるわけではないので、その都道府県内にある場合は、労災病院と産保センターが連携を比較的取りやすいのですが、そうでない場合も、都道府県を越えて労災病院の先生が他県の産保センターへ講師で出かける場合もありまして、そういう形で何とか全国で様々な産業保健活動への協力をしているという状況です。
それから、2点目のリハビリテーションですが、資料06-02、40頁にありますが、吉備高原医療リハビリテーションセンターと国立吉備高原リハビリテーションセンターは、もちろんここにありますように年10回以上カンファレンスを実施し、共有化しておりますが、医療リハのほうはどちらかというと、やはりまだ医療的な需要の高い方、例えば褥瘡が非常にできやすい方とか、完全な四肢麻痺の方とかが入院している。それに対して職リハのほうはもう少し職業に力点を置いたものというように、少し棲み分けをしております。連携という意味では、本当に見える範囲にあるお隣の施設ですので、非常に密な連携をとって活動しているというように聞いております。
こういった中で、医療リハの特徴としては、患者さんに必要な医療機器、医療分野の機器というよりは、福祉的なというようなイメージがあるかもしれませんが、例えば、職場で使うパソコンのキーボードを四肢まひの方が顎を使って打てるとか、そのような障害を持った方が職業に就けるような医用工学的な機器の開発を、患者さんと一緒に進めているという特徴があります。機器の開発は、実際に使う人がいなければ開発できませんので、患者さんと一緒に開発するというような形で、様々な機器を現在も開発しています。

○中野委員
それはやはり高齢・障害・求職者雇用支援機構の範疇でもあるような印象を持っているのですが、是非、協力をしていただくと、3倍以上の力が出るかもしれないという印象があります。
すみません、まだお答えいただいていないですが、労災で、雇用につながらない方への支援の方向性のリンクがこの表の中では見えなくて、職業へつながらなくて自宅へ帰られる方への、労災病院としてのアウトリーチ的なところの開発のようなものについてはあまり見えなかったので、それはどうなのでしょうか。

○労働者健康福祉機構理事
実際にはこの社会復帰率の中には、説明の中でも少し触れたかと思いますが、職場へ復帰する場合も家庭へ復帰する場合も含めて、社会復帰という位置づけで見ています。家庭復帰の部分は、労災病院ならではというよりは、一般の医療機関も当然同じようなことをしている部分がありますので、あまり強調してご説明はしませんでしたが、リハビリが非常に強い労災病院の強みを活かして、当然家庭復帰へのサポートもきめ細かくかなり積極的に進めているという事実があります。ただ、労災病院の特徴ということではないのかなということで、強調してお示ししていないということです。

○中野委員
勤労者目線からすると、やはり暮しとの接点で、ワーカー辺りのケアもしているというのがあると、地域の中の労災病院の機能がより見えやすいかなという印象があったものですから質問させていただきました。

○労働者健康福祉機構理事
つまり、福祉サービスを提供している側との連携のようなものについて。

○中野委員
そうですね。

○労働者健康福祉機構理事
ありがとうございました。

○伊丹委員
資料05-04の過労死予防のメンタルヘルス不調者の件です。「職場訪問型職場復帰支援」というのは、非常に良い仕組みだと思うのですが、まだ試行にとどまっているわけです。今回この5年間の計画の中で、少しよくわかならいところもあるのですが、ケースバイケースのメンタルヘルス不調者への対応の中にあっても、共通して言えるものについては、知見として成果を整理明確にしていくという取組みがあってもいいのだろうと思うのです。こうした面談を通じてどういう職場復帰のあり方がよいかと、労災病院としての知見の蓄積状況、あるいは他の機関への働きかけなど、その辺の方向性なり現時点での取組実態が見えません。単に回数を実施して評価が高かったというレベルにとどまっているのですが、もう少し突っ込んだ状況を教えていただければと思います。

○労働者健康福祉機構理事
研究的な部分の1つとして、今回ご紹介したのは主に横浜労災病院の例ですが、香川労災病院では、同じく研究の一環として、休職中、あるいは復職しようとしている勤労者への面談という観点だけではなくて、事業場への具体的な面談というか訪問などの活動をしています。それで非常に大きな効果を上げております。これは新聞でもかなり取り上げられたりしております。ただ、この部分は、診療報酬で認められていない活動で、あくまでも研究費としてサポートしているからできるという部分です。精神科の先生や、心療内科の先生が自分の患者さんを職場復帰させるときに、事業場を訪問する、あるいは臨床心理士を訪問させるという費用は、どこもみてくれていない中では、なかなか一般にできないと。でも非常に効果があるということで、研究的に試みて、さまざまな学会等で発表し、論文化し、いろいろな講演会でその重要性を訴えているというのが現状です。そういう意味では、まだ試行にとどまると。これを労災病院のみならず、一般の医療に適用するためには、診療報酬でそういう手当てをする、あるいは事業場の側にそういう義務をかけるのがいいのかわかりませんが、何がしかどこかが手当てを持たなければ、病院側がボランティアでやるというのは限界があるのかなと。そういう中でも、そういう取組みが有効だという研究結果として発表しているところでございます。

○伊丹委員
先ほどの糖尿病の件も含めて、産業医をはじめ個別に職場指導できる人材を質的にも量的にも充実していかないと、労災対応では十分成果が出てこないという実感があります。行政への大きな働きかけに繋がる研究成果をもう少し明示していくべきではないかと思います。

○宮本委員
22頁ですが、ここに理・美容師の皮膚荒れについての調査結果が出ています。昨年も同じようなことが載っていたと思うのですが、結果としてこうであったということと、普及と予防をするということがセットになるべきだと思うのです。例えば普及に関しては、業界に対して働きかけ、予防することが十分できるはずですが、具体的にそういうことがどのような形で行われているのでしょうか。

○労働者健康福祉機構医療企画部長
予防等につきましては、業界の雑誌等にこういう研究成果を載せていただきまして、多くの方々に皮膚疾患の関係についての知識を得ていただいて、それを活用してやっていただくというようなことをいま取り組んでいるところです。たしかにシャンプー等による手荒れで仕事ができなくなるわけですが、シャンプーのような有機溶剤に対する予防法とか、そういったものの根本的な予防法については、今後の課題かなと考えております。

○宮本委員
素人目には、こういうレベルのものというのは予防も十分可能と考えると、もっと予防のための強化をすればよいのではないかと思います。評価で毎年この例が出てくるので、もっと早急に、行政の責任も含めて、予防ができるのではないかと。それが毎年、研究・開発という形で出てくるということに、少し違和感があるのです。

○労働者健康福祉機構医療企画部長
ご指摘を踏まえまして、帰りましてすぐ、予防の関係についてまた皆で打合せをしたいと思います。

○今村部会長
いまの件に関して、まさに宮本先生と意見を共有するところであります。研究レベルの高いことは評価できるのですが、例えば1つの例といいますか、32頁に治療と職業の両立支援があります。この右側の「今後の展開」のところに、はっきりと「ガイドラインを作成し、患者側、企業側双方への啓発を目指し、治療と就労を両立するための支援手法を確立する」とは書いてあるのですが、具体的にどういう手法を確立して、雇用者と労働者、地域社会といった様々な現場の利害関係者に、どうやって普及していくかということが見えないのです。これはまさに機構さんが従来のフィジカル、物理的な障害から、メンタルな障害、つまり心の問題に若干シフトしているということになるわけですが、そうすると、物理的な障害は一回きりで再生して復帰すればいいという問題になるのですが、メンタルな問題やがんのような問題というのは、再発性、継続性があるわけですね。そういうことに対して、本当に職場の利害関係に立ち入って、機構側が問題解決をしていくというスタンスがあるのかということについては、若干申し訳ないですが、資料を見ていくと、例えば、35頁の過労死予防対策の「職種や勤労実態等を踏まえた個別又は集団指導」、それから37頁で、イベント等への出張による指導・講習会等と書いてありまして、典型的なのは、その左の下に「アウトカム指標」と書いて、何かと思ったら満足度指標と書いてあるのです。アウトカムという言葉は、本来それではないのではないか。実績が上がって、個別の人たちが就労を、これは復帰させるという言葉ですが、メンタルとかがんの問題に関しては、職場をどうやって維持するか、雇用をいかに継続させるかという問題もあるわけです。
これは難しい問題ですけれども、ただ講習会を実施したらいいのか、ただ手法を確立して、雑誌に載せればいいのかという問題ではないと思います。やり方としては、講習会という形でやるのではなくて、もう少し参加者の間でネットワークを作っていく。予算に限度があるとか付いていないということで、先ほどもそういう理由をおっしゃいましたが、知恵を絞れば、限られた予算でもやり方があるのではないかと思います。つまり、研究にそれだけの高い能力を発揮させるだけの人的資源があるのであれば、もう少し成果を普及して、職場の利害関係を調整して、何か対抗していくようなネットワークづくり、機構の中を離れてしまうかもしれませんが、地域社会なり、職場の利害関係の違った中にインパクトを与えるような研修の方法、具体的に言うと、ワールド・カフェとか、いろいろなやり方がありますが、参加者の間でそこでもネットワークを作ってお持ち帰りいただくという手法がたぶんあるのではないかと。そういうことに関して、本来の目的ではないかと思いますが、限られた予算の中で努力されれば、まだまだ余地はあるのではないかと思います。是非、努力していただければと思います。

○労働者健康福祉機構理事
いま部会長ご指摘の観点で、まさに労災病院だけではやはり限界がありますので、産業保健推進センターが事業場とのネットワークを持っているということで、この13分野の研究の成果を、産業保健推進センターの側が受け取って、事業場へ展開するという道筋を作るために、今年の日本職業・災害医学会でそういうセッションを設けまして、13分野の発表のあとで、産保センターの代表の方々と13分野の研究者との交流会を今年度初めて持つことにしております。そういう形で産業保健現場、さらに事業場へ、研究成果を噛み砕いて展開するという試みを、23年度ではありませんが、今年の12月から始める予定で準備を現在進めております。こういうようなことを、病院の中にとどまらない成果の普及、現場への反映・還元ということにつながるきっかけにしたいということで始めます。一方では、産業保健現場の産保センターがちゃんと労災病院での先端的な研究を理解する、それから労災病院の側の研究テーマにも、産業保健現場での問題点をもっと反映させた研究テーマがあるのではないかということで、様々な意見交換を進めていかなければいけないと認識しておりまして、職業・災害医学会だけではなく、産業保健推進センターとの連携をもっと強めようということをいま検討しています。

○今村部会長
少しだけ申し上げます。私は前回か前々回からも質問しているのですが、産業保健センターの評価シートは、このあと出てくるのですけれども、例えば、38頁に書いてありますが、いま職場の担当者への普及というふうにおっしゃいました。つまり、企業目線なのですね。これは仕方のないことかもしれませんが、企業に対して働きかけることで職場に影響を与えるということは、もちろん1つのルートではあるのですが、一方で患者や個人からのアプローチはどうするのですかと聞いたら、ホームページに個人の方はどうぞここにご相談くださいと書いてあるとおっしゃる。機構にやってきた人に対しては指導するということでは、不十分でアンバランスではないかと。両方に対してセットでやられるアプローチはもしかしたらあるのではないかなと思うのです。これは機構の性質上、産保センターの性質上、やむを得ないことかもしれませんが、私が申し上げたいのは、患者さんの目線、個人の目線から、どのように個人にまさに問題解決ができるかという手法を、是非、難しいかもしれませんがご努力いただきたいと思います。それが本当の問題解決になるのではないかと思います。あくまで個人的な私見でございます。どうぞよろしくご検討いただければと思います。
それでは、次にグループ3、「労災リハビリテーション作業所の運営」「産業保健関係者に対する研修・相談及び産業保健に関する情報の提供」「産業保健助成金の支給」「未払賃金の立替払」及び「納骨堂の運営」の項目について評価を行います。所要時間は法人からの説明20分、委員の評定と質議15分の合計35分となります。それでは、法人から説明をお願いいたします。

○労働者健康福祉機構理事長補佐
ポンチ絵の資料の41頁、資料07-01「労災リハビリテーション作業所の運営」です。評価の視点としては、社会復帰率を30%以上にする、閣議決定を踏まえた段階的な縮小・廃止に取り組むということです。まず社会復帰率については36.5%と過去最高です。廃止に向けた取組みについては、23年度は千葉作業所、これは当初の計画では今年の3月末廃止予定でしたが、1月末に廃止しています。今年度は福井と愛知を年度末までに廃止することになっていますが、それぞれ入居者の退所先を現在確保しつつあるところで、計画どおり廃止できる見通しとなっています。さらに残った宮城、福岡、長野についても今後廃止に向けた取組みを進めていくとしています。
資料08-01は「産業保健推進センター」についてです。これについては先ほど上家理事からお話があったように、上の右のフロー図にあるとおり段階的に集約化することになっています。そういう中で、業務運営についてはサービス水準を低下させないということで各種工夫を行って、相談・研修等については過去最高の実績を上げています。
具体的な中身は資料08-02です。例えば、研修事業については研修の内容やテーマについて工夫をし、利便性の向上に取り組みました。相談事業については、22年度に一部施設で導入していましたが、特に23年度からは全センターで事前予約制を導入しました。
資料08-03がその実績です。(1)が研修の成果、(2)が産業医等に対する相談の実績、(3)はホームページのアクセス件数、メールマガジンの配信件数等です。いずれも前年度を上回り、なおかつ目標も大きく上回っています。
資料08-04は、産業保健推進センターにおける震災への対応ということで、特に電話等による相談対応、研修等を行っています。左下の写真は事業主や企業の産業保健担当者、産業医等に対する研修ですが、放射線による健康障害、がれき処理における粉じんばく露防止対策等のテーマで研修を行っているところです。
資料09-01。「産業保健関係の助成金の支給業務」です。現在私どもが実施している産業保健関係の助成金は、小規模の事業場が共同で産業医を選任した場合に助成金を支給するという業務を行っています。この業務については平成22年度をもって新規の募集を廃止していまして、現在は22年度までに支給決定した方について3年間助成金を支給する業務をやっていて、今年度末でこの業務を終了することになっています。23年度は、40日以内に支給することに対して平均支給日数38日で目標を達成しています。
資料10-01は「未払賃金の立替払事業」です。迅速な支給ということで、中期目標では30日以内に支払いを済ませるということに対して、年度計画では25日以内という目標を立てていますが、実績としては18.8日と過去最短になっています。 具体的な取組みとして下の右にいくつか掲げています。1つは東日本大震災に対応して臨時の支払日を設定した。また、特に大型倒産の場合は一時に申請が輻輳するということもあるので、そういった場合には事前調整などを実施する。あるいは弁護士や裁判所の担当の方にこの制度についての理解を深めてもらい、迅速な処理が行えるようにする取組みを行っています。この結果、特に書類不備があると書類を作成し直すということで時間がかかるわけですが、書類不備が45.0%から36.6%に減少したことが迅速化につながっていると考えています。
資料10-02は、今回初めて付けた資料ですが、立替払をしたあとの回収の実績です。これは制度発足以来の累積回収率が、分母にこれまで立替払した累積の金額、分子を回収金額の累積額にした比率ですが、23年度末では24.3%と過去最高になっています。具体的な回収率向上のための取組みとしては左にあります。中小企業の事実上の倒産の場合と、法的な整理の場合とに分かれるわけですが、事実上の倒産の場合ですと、例えば社長が夜逃げして所在がわからない等があって非常に回収が難しい面もあるわけですが、これについては監督署等と連携を密にして、所在確認やできるだけ漏れのない求償通知等、繰り返し回収督励を行ったということです。法律上の倒産の場合には、法的整理の手続きに漏れなく参加して取りはぐれのないように対応しています。そういったことで24.3%の回収率となっています。
資料11-01は「納骨堂(高尾みころも霊堂)」です。年に1回、産業殉職者合祀慰霊式を開催しています。これについては参列者の満足度の中期目標は90%以上となっていますが、92.8%で非常に高い数字です。23年度の改善事項としては、この慰霊式は800人の方が参列しますので、会場の後ろのほうにお座りの方は慰霊式の進行状況がよく見えないということがあるので、23年度はTVモニターを設置しました。以上が業務実績です。
評価シートをご覧ください。54頁です。労災リハビリテーション作業所については、社会復帰率が目標を上回った、施設の段階的な廃止・縮小についても入所者の退所先を確保した上で円滑に進めたということで、自己評価をAとしています。
63頁です。産業保健推進センターについては、数値目標的なものについては全て目標を大きく上回っている、センターの集約化についても、医師会等の関係者と調整を綿密に行って円滑に進め、体制がスリム化された中で過去最高の実績を上げた、震災対応についても積極的に取り組んだということで、自己評価をSとしています。
68頁。産業保健助成金の支給ですが、目標の40日以内をほぼ達成したということで自己評価をBとしています。
73頁。未払賃金の立替払ですが、支払日までの期間が18.8日で過去最短だったこと、回収率も過去最高だったということで、自己評価をSとしています。
75頁。納骨堂の運営については、モニター設置などの改善を行って92.8%の高い満足度をいただいたということで、自己評価をAとしています。以上です。

○今村部会長
委員の皆様は評価シートへの評定等の記入をお願いします。ご質問等あれば、適宜ご発言ください。

○伊丹委員
資料の08-03です。産保センター等へのアクセスについて、非常にアクセスが増えている、専門的な相談が増えているということですが、今回の震災との関係はありますか。件数だけではなく内容も含め、震災との関係を教えてください。

○労働者健康福祉機構産業保健・賃金援護部長
まず、どういう相談や研修が多いかという点については、現在非常に問題となってるメンタルヘルスの関係があります。その辺は評価シートのほうにも詳しく書いていると思います。資料08-03で、例えば左側の研修で言うと、だいたい前年度より300回弱増えているわけですが、このうち100回分ぐらいは震災の関係と考えていただければいいと思います。震災の数字は結構出ていますが、右側の相談のほうも震災の関係の相談が3.000件弱あるということで、もちろんこれらは震災の対応も含んでということで、震災の関係でもニーズがあったということです。

○伊丹委員
では、このシートに書いてあるデータ程度であれば、震災影響のウェイトは大きくないということですね。

○労働者健康福祉機構産業保健・賃金援護部長
産業保健推進センター自体が、全国の企業の産業医、衛生管理者などのいわゆる産業保健の関係者に対するものが中心です。震災の関係で特別に被災地の被災労働者やその家族の皆様に対する相談等を行いました。もちろんそれは非常に重要なことですが、全国の活動の中では先ほど申し上げたぐらいのウエイトであるということでご理解いただければと思います。

○伊丹委員
未払賃金の件で「回収率をもう少し調査すべきではないか」と昨年意見申し上げて、今回非常にわかりやすく説明いただいていると思っています。ただ、いろいろな倒産のケースがある中で、それぞれごとにどういう回収をすべきなのかを管理する必要がありますし、ほかのいろいろな支援事業と同じように、悪用するケースもあると思います。報告書には書いていないのですが、本当に倒産した社員の方々にとっては賃金未払い大変なことなので一刻も早く立替払いを行うことが大切である一方で、夜逃げなど制度を悪用するなど事業者のモラルハザードも気にもなります。回収も含めどのような難しい問題があるのかを教えてください。

○労働者健康福祉機構産業保健・賃金援護部長
年間かなりの支払件数になっているのですが、基本的に企業ごとに出てくるので、残念ながら年間1件あるかないかというところです。実際には倒産していないのに倒産したように見せかけて立替払を不正に取得するとか、労働者でない方を労働者と見せかける案件があることは事実です。もちろんそういうことのないようにホームページ、パンフレット等で呼びかけていますし、資料の中にもありますが、日弁連と連携して、未払賃金がどのくらいの額かと証明するのは弁護士の破産管財人ですので、直接かなり時間をかけて研修するということも行っているところです。
ご質問にありましたが、我々が審査をやるときにどういうことが難しいかということですが、いま申し上げたことと関連するのですが、例えば役員や家族従業者が書かれていた場合に、本当に労働者性があるかとか、実際に倒産したものであるかとか、そのへんは破産管財人さんに追加的な資料を要求したりとか、そういうことで制度的にどこまでやるべきなのかという問題は別として、私どもは公金を預かる立場として一生懸命やっているところでございます。

○伊丹委員
わかりました。その辺は引き続き強化というか、しっかりやっていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○高田委員
助成金の支給の自己評価がBで、ほかの項目と比べると著しく自己評価が低いのですが、それはどういう根拠で評価されたのですか。

○労働者健康福祉機構産業保健・賃金援護部長
逆に担当部長として答えづらい部分もあります。目標は達成しておりますのでDとかEではないということは言えると思うのですが、40日以内のところが38日であると。それから先ほどの説明にございましたように、この助成金自体は平成22年度末で制度としては廃止されていると。ただ、これは平成23年度の実績ですので、21年度あるいは22年度に登録というか、そこからこの助成金の対象となった企業の方は23年度も対象となっているという段階で、要するに対象がだんだん減っていく、既にその段階に入っていまして、対象が減っていくので処理も簡単になっていくと。ただ、その分もちろん内部の合理化も図られているのですが、そのような観点から、内部でもいろいろ議論はあったのですが、Bでやむを得ないかなという感じです。

○高田委員
いまのご説明だと、いまひとつここがBになっているという根拠としては理解しにくいところがあるのです。要するに比重が小さくなったというだけのことで、それは部門の業績の評価ということにはならないと思うのです。

○労働者健康福祉機構理事
規模が縮小されていても、例えば産保センターの活動等は規模は縮小されていますが、その中でも特にさまざまなことで頑張ったということで評価をする。未払賃金等の場合も決して件数がどんどん増えているわけではないけれども、「詐欺事件に引っかからないようにしてください裁判所さん」ということまでやるとか、いろいろ思いついたことをどんどんやっていくというプラスアルファの部分がかなりあったわけですが、この事業に関しては、プラスアルファの部分はなくて、ルーチンでやっただけということで、B評価を自己評価としているということでございます。

○高田委員
そうですか。

○労働者健康福祉機構理事
特に問題があったということではありません。

○高田委員
特に目立つような改善点がなかった、粛々とやったと、そういう評価ですね。

○労働者健康福祉機構理事
はい。通常のことを通常にやったのでBと。23年度に、踏みこんでさらに積極的に何かやったという部分がなかったので、B評価を付けたということです。

○高田委員
はい。了解しました。

○今村部会長
ちょっとよろしいですか。いまの「産業保健関係者に対する研修・相談及び産業保健に関する情報の提供」というところですが、1つ数字的な質問です。44頁の(2)の相談事業の「産業医等に対する専門的相談」ということで、前年度に比べて数値でも1万件以上と急激に増えているのです。この背景に何があるかを知りたいと思いました。つまり、産業医自体が悩んで問題を抱える状態が増えていると理解していいのか。そうすると42頁にあるように、連絡事務所、産業保健推進センターが段階的に集約されているという中で、たしかによく頑張った、前年水準を維持したということは高く評価しますが、問題はそこではなくて、メンタルヘルスの問題や、機構自身が指摘されているように、がん患者の治療と両立の支援とか、そういった産業医に期待され課される部分が逆に増えているのではないか。そういうことに対して、相談をした、研修をしたという形で十分なのかという質問です。先ほど来申し上げていることと関係するのですが、特に産業医の場合は、立場を考えれば、企業の中にあって、企業にどの程度積極的に改善を要求することができるのかを考えると、利害関係の調整という面からすると産業医は決して強い立場にないわけでして、本当の問題の解決になっているかどうかというのが少し気になるところです。
質問の趣旨は、相談件数が増えているという背景はどうなのか、特にメンタルヘルスとかがん患者の治療と就労の両立といった問題に関して、本当に産業医が問題解決に当たれるかどうかの対応がなされているかの2点です。

○労働者健康福祉機構理事
現在、相談内容が増えている一番の理由はメンタルヘルスです。残念ながら、両立支援・復職支援に関する相談が急激に増えているということではありません。事業場側の問題意識がまだそこにないというのは感じ取れるのではないかと思います。メンタルヘルスがなぜ増えているかですが、この業績評価には入っていませんが、機構が委託事業を受けています。メンタルヘルスに関する事業と小規模事業場に関する事業を一部国から受託していまして、メンタルヘルスに関する事業と相まって相談件数が増えていると言えます。
受託しているメンタルヘルスの事業のほうはどういうことかというと、メンタルヘルスに関する対策が進んでいない事業場に出向いて行って、「あなたのところは遅れているからこんなことをやりなさい」とセールスしてくる部分がある。そのようにすると相談が掘り起こされて出てくる。事業場の側も実際にはメンタルでなかなか出社しない人がいて困っている事業場がかなりあるわけです。何をしていいか、何をすればいいのか、そもそも問題意識、対応がわかっていない零細企業が非常にたくさんあるのです。そこへ出向いて行った結果、相談につながるという部分が出てきているわけで、メンタルヘルスに関する事業と相まってこのように増えているのではないかと考えています。
そういった意味では、産業医の立場を考えればという部会長のご指摘にもありますが、むしろ産業医も選任されていないような50人未満事業場等については、もっと何もされていない大変な状況があるわけです。産業保健推進センターはむしろ50人以上の産業医がいるような事業場を主にターゲットにしてるのですが、メンタルヘルスあるいは地域産業保健の事業を受託すると、50人未満事業場に対してもさまざまな関与がある。そういったことが相談件数の増加につながっていて、実際にまだまだ手薄なところにちゃんと届けるという意味では、この受託事業が非常に大きな意味をなしているのは事実です。メンタルヘルスに関する事業と地産保に関する事業と産業保健推進センターの事業とが相まって産業保健活動をもっと底支えしている。そういう意味では、機構としての本務の評価の対象になっていませんが、そういう部分が大きく影響していると考えています。いまのところは、そういった観点で、メンタルヘルスが大企業から小規模事業場まで一番大きな課題になっています。ただ、今後は両立支援や復職支援、さらには胆管がんに端を発する、思わぬ落とし穴で大量ばく露で何か古典的な災害が起こっていないかと、そういうような観点も今後はもっと目を光らせるようなことができればということですが、平成23年度の段階では以上のようなことでございます。

○今村部会長
よろしいですか。特になければ、次にまいります。最後のグループ4、「業務運営の効率化」「予算、収支計画及び資金計画」「短期借入金等」「人事、施設・整備に関する計画」「業績評価の実施」の項目について評価を行います。また、「監事監査報告書」に関する説明も併せてお願いいたします。所要時間は法人からの説明20分、委員の評定と質疑15分で、合計35分となっております。それでは法人から説明をお願いいたします。

○労働者健康福祉機構理事長補佐
ポンチ絵の50頁、資料12-01をご覧ください。「業務運営の効率化」ですが、50頁、51頁でひとまとまりの資料で、業務運営効率化のための取組みをまとめたものです。
まず、機構としての経営方針をしっかり確立した上で、それを各施設職員、本部職員を含めて十分周知徹底、浸透させることが1番目です。
2番目は、内部業績評価制度です。バランス・スコアカード(BSC)を使い、各事業ごと、部門ごとに年間の業務運営計画プランを立て、PDCAサイクルを回していくということです。その計画については財務の視点、利用者の視点、質の向上の視点、効率化の視点、組織の学習と成長の視点の5つの視点で構成されているわけです。これ自体は前年度と変わっておりませんが、質の向上の視点の中に、23年度にはリスクマネジメントの観点での個別指標を追加しております。これを用いて各部門・施設、あるいはその事業ごとに業務運営を行ったということです。
その結果としての代表的な指標を右のほうにまとめております。財務の視点では、理事長の挨拶にもございましたが、経常損益が5億円の黒字を確保した、患者満足度でも80%台を確保した。クリニカルパスが4,390件になった。これは後ほどまたご説明しますが、一般管理費の削減は5.8億円です。
資料12-02は、特に経営に関しての取組みをまとめたものです。本部に経営改善推進会議を理事長をトップにして設置し、個々の病院ごとの経営状況の把握と分析、あるいはその改善指導、改善計画の策定等についてのフォローを行っております。これについては、右の施設のほうですが、経営改善を早急に進める必要のある病院ということで、特に12病院を重点的に改善のための取組みを行いました。具体的な取組内容は、左下の「経営目標実現に向けた取組」にいくつか代表的な取組みを掲げております。
その結果、どういうことをやったかというのは、右の収入・支出関係にまとめております。収入関係としては、まず医師の確保、患者数確保、診療単価アップ、医療の質の向上に取り組みました。支出関係では、人件費の抑制、薬品費の縮減ということで、後発医薬品の共同購入、診療材料費の削減のための共同購入、医療機器の共同購入、それからリース料率の低減等の取組みを行ったということです。
そのうちの一般管理費・事業費等の削減については、資料12-03にまとめております。中期目標で、一般管理費を5年間で15%、1年間に3%、事業費は5年間で10%、1年間で2%節減すると定められております。23年度は、それぞれ中期目標のスタート時に比べて、一般管理費で9.2%、事業費で37.6%ということで、いずれも目標を上回っております。具体的な取組内容は右のほうに例示的に書いております。
資料12-04は、先ほどご説明しました医療リハビリテーションセンターと総合せき損センターの運営費交付金についてです。この2つの施設は非常に特殊なリハビリテーションの専門施設ということで、普通の労災病院と違い、運営費に国からの交付金が充当されており、その割合を0.6%にすることになっております。中期目標では、平成20年度の割合を超えないという表現になっていますが、具体的には0.6%以内に国からの交付金を抑えることになっており、これについても目標を達成したということです。
資料13-01は、「予算、収支計画及び資金計画」についてです。まず平成23年度の決算ですが、先ほども申しましたように、右側いちばん上の23年度の当期損益が12億円の赤字です。22年度は13億円の黒字であったわけですが、23年度は12億円の赤字ということで悪化した。その主たる要因としては、23年度の臨時損益が17億円の赤字で、昨年度2億円の赤字から15億円悪化しております。これは、昨年6月に独法会計基準が改訂され、従来は不要資産の減損損失は損益外で処理するという独法会計基準になっていたものが、損益に反映させる基準に変わった結果、過去の減損損失も含めて23年度に一括して反映させたということで、臨時損失が発生しております。その臨時損益を除いた経常損益では、5億円の黒字です。ちなみに震災等による一時的な影響、あるいは厚生年金資産の積立不足に伴う費用の発生等を除くと、55億円の黒字ではあるということです。
ポンチ絵にはありませんが、評価シートで101頁をご覧ください。これは、短期借入金等です。計画では35億9,800万円を計上しておりますが、実績はありませんでした。また、重要な財産の譲渡については、労災病院跡地等について譲渡等の手続きを進めたということです。特に、借入金等については実績もないということで、ポンチ絵も作成はしておりません。
またポンチ絵に戻り、56頁、資料15-01です。「人事に関する計画」ということで、国家公務員の再就職について廃止をすることになっております。ここに書いてありますが、1つは交付金職員、交付金で人件費を賄っている職員の数がどうなったかということで、23年度は675人で、前年度691人から16人減りました。独法に当初800人いたのが125人削減ということです。
労災病院間での人事交流ですが、医師あるいはその他の人事交流を行っているということ。国家公務員の再就職者は、いわゆる天下りですが、23年度にはいなかったことを書いております。
資料16-01は、先ほど内部評価制度を説明しましたが、外部の有識者による評価を加えております。左のほうはPDCAサイクルで、純粋な内部の評価システムとして行っております。それに対して、外部有識者による業績評価委員会を設置し、年2回、私どもの取組状況をご説明し、ご意見をいただいております。実績についての説明は、以上です。
評価シートに移らせていただきます。88頁です。「業務運営の効率化」については、バランス・スコアカードによるPDCAサイクルを回すことによって、しっかりとした実績を確保できていること、各種経費削減にかなり成果を上げていること等により、自己評価をAとしております。
続きまして97頁、「予算・収支計画及び資金計画」です。損益について、当期損益は12億円の赤字であったわけですが、臨時損失を除いた経常損益では5億円の黒字を2年続けて確保したことなどにより、自己評価をAとしております。
資料1-2の102頁は「短期借入金等」です。これは借入れの実績がなかったこと、財産処分については予定どおり、計画どおりやったということで、自己評価をBとしております。
107頁、「人事、施設・設備に関する計画」についてです。特に、人事については交付金、国費で支弁する職員を減らしたこと、人事交流に積極的に取り組んでいること、ポンチ絵では特に載せておりませんが、震災関連での病院の建物被害等について対応を行ったこともあり、自己評価をAとしております。
最後は111頁、「業績評価の実施」です。バランス・スコアカードを使った日常的なそれぞれの部門での評価システムを基にした業務運営を行っていること、外部有識者からなる業績評価委員会を年2回開催し、貴重なご意見をいただいて運営方針に反映させているということで、こちらもAとしております。以上です。

○労働者健康福祉機構監事室長
続きまして、平成23年度の監事監査の状況について、報告書を基にご説明をいたします。資料1-3「平成23年度業務実績評価別添資料」の71頁、72頁に、監査報告書を添付しております。監事は常勤監事1名、非常勤監事1名の計2名体制です。「監査の方法」ですが、理事会や、先ほどお話がありましたような経営改善推進会議等の重要な会議に出席するほか、役職員からその職務の執行状況について報告を受け、重要な決裁書類等を閲覧し、必要に応じて直接説明を聴取しました。また、大阪や熊本労災など、主要な30施設について実地往査を行い、病院等幹部職員から直接説明を聴取し、監査を行いました。これらを踏まえて、平成23年度の財務諸表、決算報告書、事業報告書について検討いたしました。さらに、会計監査人有限責任あずさ監査法人から、職務の執行状況及び監査結果について報告と説明を聴取しました。
「監査の結果」ですが、「財務の状況」として、(1)貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、行政サービス実施コスト計算書及び附属明細書は、通則法などの関係法令、業務方法書、その他諸規程等に従い、財政状態、運営状況、キャッシュ・フローの状況及び行政サービス実施コストの状況を、すべての重要な点において適正に表示していると認められました。(2)損失の処理に関する書類は法令に適合し、(3)決算報告書は予算区分に従い、決算の状況を正しく示し、(4)事業報告書は関係法令に従い業務運営の状況を正しく示していると認められ、(5)会計監査人有限責任あずさ監査法人の監査の方法と監査結果については、相当であると認められました。
次に、「業務運営の状況」として、(1)年度計画の達成状況ですが、第2期中期目標期間の3年目に当たる年度計画については、平成23事業年度業務実績報告書等に記載のとおり概ね達成されていると認められました。(2)「独立行政法人整理合理化計画」等への対応ですが、閣議決定により講ずべき措置とされている、随意契約の見直し、給与水準の適正化、内部統制の構築、保有財産の見直し、透明性確保のための情報開示の各項目については、いずれも着実に取り組まれていることを確認いたしました。(3)「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(閣議決定)において機構が講ずべき措置として、事務・事業の見直し、資産運営等の見直しに示された業務・施設の一部廃止、宿舎料の適正化などの各事項については、いずれも着実に取り組まれていることを確認しました。(4)平成22事業年度業務実績評価結果への対応として、中皮腫疾患の研究成果の周知や学会発表、モンゴル・ベトナム等の医師に対する講演等、いずれも各項目ごとに適切に対応されていることを確認しました。(5)「その他」として、今年1月20日の閣議決定「独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針」と、2月15日に公表された「国立病院・労災病院等の在り方を考える検討会報告書」を踏まえた対応として、新法人へ移行するための改革等推進本部設置など、諸作業を開始するとともに、国立病院機構との医薬品や医療機器の共同購入、治験共同実施など、連携の推進と強化が図られていることを確認しました。平成23年度の監事監査の状況については、以上です。

○今村部会長
ただいまの監事監査報告書も含めて、委員の皆様は評価シートの評定等の記入を行いながら、質問等ありましたら、適宜ご質問ください。

○伊丹委員
15-01の「人事に関する計画」のところで、人事交流について活性化するということで、期間限定的に、医師を除いて着実に増やしてきているとのことですが、医師以外の対象となる職員の方で、他労災病院との人事交流の対象となる方はどの程度いらっしゃるのでしょうか。
私はずっと企業で人事をやっていたから思うのですが、先ほどお話もありましたけれど、労災病院も各県ごとにあるわけなので、そう簡単には異動できません。そういう中で、どのような仕組みで交流しているのかこの短期というのは1年とか2年なのか、もう少し詳しく教えて下さい。

○労働者健康福祉機構理事長補佐
ケースにより、受入れ側と送出し側と、あるいは本人との話合いの中でやるわけですが、1年あるいは2年のケースもございます。

○伊丹委員
いわゆる人事異動として行っているわけではないのですね。あくまでも戻ってくる前提で交流しているにすぎないと理解してよいのですね。

○労働者健康福祉機構理事長補佐
そうです。転任制度はもう片道切符です。交流制度はまた戻ってくるということです。人事異動としては、先ほどもお話が出ましたが、管理職、例えば看護師であれば看護部長、副部長あるいは技士長などの管理職は、人事異動として異動させます。それ以外の職員は各病院採用で、病院所属の職員ということで、あくまで本人の同意のもとに交流、あるいは転任をさせる、希望に応じてやるということです。

○伊丹委員
その意味で転任制度や期間限定の交流制度の対象となる職員の数は、どの程度いると理解したらよいでしょうか。

○労働者健康福祉機構理事長補佐
全体で職員が1万4,700何人ですが、医師と技能職を除いた職員ですから、約1万人ですね。

○伊丹委員
1万人ぐらい。となると交流は若干少ない感じがしなくもないですね。

○労働者健康福祉機構理事長補佐
看護師が大部分でございます。そのうち9,000人以上が看護師ですので。

○伊丹委員
実質1,000人強ほどの対象者に対してこういう転任・交流を行っているということですか。

○労働者健康福祉機構理事長補佐
はい。

○今村部会長
1つだけ内部統制のことについてお伺いします。「業務運営の効率化」に入っているかと思うのですが、いまの監査報告のところの合理化計画等で、内部統制の構築という項目があって気がついたのですが、こちらの資料1-2の大きいものの中には、78頁の(3)で、23年度業務実績として以下のことを実施したということが書いてあるのに、こちらのポンチ絵の資料のほうにあえて取り上げられなかったのは何か意味があるのかということをお伺いしたいのです。趣旨は、内部統制が、コンプライアンス、ガバナンス、いろいろな理解がありますが、それがきちっと実施されているかどうかを確認したいということです。

○労働者健康福祉機構理事長補佐
特に他意はないのですが、ちゃんとやっているかどうかに関しては、コンプライアンス委員会を定期的に、あるいは必要な折りに開催をしております。そういった場を通じて、私どもとしては、コンプライアンス、内部統制についての体制を構築した上で適切に運営していると思っております。

○今村部会長
病院というのは、いろいろなリスクにさらされていることはもちろんご存じだと思います。そういうことに対して組織的にどの程度対応できているかを、項目の羅列ではなくて、例えば公益通報者保護制度とか、そういったものがきちっと整理されているかどうかというのは、従来から、この委員会でも質問の対象になっていたかと思うのですが、そういうことについては特に書いていないのですが、その辺はきちっと構築されているのでしょうか。

○労働者健康福祉機構理事長補佐
全般的にはコンプライアンス委員会、それから個別の特定の事案については、例えば医療安全については、実際の医療過誤に至らないものも含めて、レポートする仕組みを構築していまして、その結果も対外的にもホームページ上で公表をいたしております。

○今村部会長
わかりました。

○伊丹委員
資料12-01の「業務運営の効率化」と、資料16-01の「業績評価制度による具体的な改善効果」に関連するのですが、内部的な意味でのリスクで一番大きいものは、医師、看護師他、職員のモラールだと思います。アンケート調査というのがありますが、これは職員の研修後のアンケート調査ということで、学習と成長に関するところだけに視点がいっているように思います。外部有識者による評価では職員のモチベーション向上策が指摘されていますが、研修後のアンケート調査だけでは不十分ではないかと思います。
今、いろいろな企業で社内アンケート調査を行っています。その中で、例えばコンプライアンスについて設問すると、必ずしも全員がルールを守っていますという実態になっていないことがわかります。自分はルールを守っているとしても、ルールどおりに行っていない上司、同僚がいるとか、上司や取引先から強要されたらルール違反をするかもしれないとか、人間ですから、どうしても完璧にならない実態が見えてきます。現在様々な改善施策を行っている中でリストラ的なことも余儀なくされています。その中で、職員の皆さんもいろいろな思いを抱いておられるのではないかと思います。一国民として見れば、労災病院の職員の皆さんには他の機関以上にしっかり仕事をしていただきたいと願っています。処遇の問題も含めて、様々な施策によって職員の方の意識がどう変わっているのか、あるいはどういった分野で問題があるのか、この辺はもう少しチェックすべきではないかと思います。こういう議論はいままでございましたか。

○労働者健康福祉機構理事長補佐
私どもは毎年、職員にアンケート調査を実施し、こちらにご紹介したのは研修の満足度ですが、この職場で働いてよかったかという総合的な満足度、それから個々のいろいろな、例えば将来への希望についてどう思うかとかいうような項目でアンケートをしていますが、総合的な満足度について言えば大体6割の職員が満足しているということなのですが。

○伊丹委員
それはどこかに書いてありましたか。

○労働者健康福祉機構理事長補佐
これは、今回の資料には載っていないです。手元の昨年の結果をご紹介させていただきますと、独法移行時の平成16年には、これが51.7%だったのが、横這いかあるいは若干上がっているという状況です。ただ、調査の項目によっては満足度が低いものもございます。例えば、将来への希望ですとか、自分らしさが発揮できているかどうかということについては若干低い、過半数を割っている。逆に、機構なり労災病院施設の理念や基本方針についての理解度などは、8割を超える職員が十分理解しているという、そういう組織のミッションについての理解度が高いという特徴がございます。

○伊丹委員
職員の意識については、今後体系的にフォローしていくマネジメントを強化し、前面に出してよいのではないかと思います。少し工夫していただきたいと思います。

○労働者健康福祉機構理事長補佐
いま申し上げたのは、機構全体の集計した結果なのですが、これを各施設ごとに集計していまして、それぞれの施設においては、自分のところの数字をほかの施設と比較した上で、それぞれ対応策を検討するという形で、いまは活用しております。

○今村部会長
資料の作り方の問題だと思うのですが、付属資料の資料1-3の50頁に、かなり詳しく内部統制に関して、具体的な取組みを書いておられます。表紙を見ますと「評価委員会が特に厳正に評価する事項」と書いてあります。これを落として報告されるというのはいかがなものかと思いますので。資料の作り方の問題だと思います。しっかりと取り組んでおられるということを、我々評価委員会のほうでもデータがないと評価しにくいと思いますので、是非その辺の工夫というか、対応をしていただければと思います。よろしくお願いいたします。
よろしいでしょうか。では、評定等の記入は一旦ここで中断させていただきまして、以上で、すべての項目の評価が終わりました。事務局から、この後の取扱いについて説明をお願いいたします。

○政策評価官室長補佐
本日お配りしている資料の送付をご希望される場合については、部会の終了後に事務局にお申し付けいただければと思います。本部会が終了した後に、こちらの会場にお残りになって記入いただくことも可能ですし、また、評価シート及び評定記入用紙をお持ち帰りになって記入いただくことも可能となっております。もしくは、先日送らせていただいた評定記入用紙の電子媒体版のほうにご記入をいただいてご回答いただくことも可能ですので、よろしくお願いします。お持ち帰りいただく場合については、8月3日の金曜日までに事務局に評定記入用紙をご提出ください。よろしくお願いいたします。

○宮本委員
1つ希望なのですが、今日の評定記入用紙は厚労省のほうで作るのでしょうか。つまり、この記入用紙の事項名の表示と、このポンチ絵のほうの目次と、この評価シートの関係が非常にわかりにくくて、絶えず混乱するのです。表現の仕方がだいぶ違ったり、このポンチ絵の目次を見ていくと、これとこれとがあったりなかったりして、追うのにとても困るのです。その辺りを是非工夫していただきたいということ。このポンチ絵のほうに関しては、非常に詳細に作られて、ご苦労であるということはよく理解しているのですが、1、2、3となったときに、最初の1、2、3、4辺りは評価の視点というのがなく、途中から入り、また、ないところもありで、全体の対応がよくわからないのです。その辺りを是非次回に対応させていただけると、助かります。

○政策評価官室長補佐
先日の部会の際も、頁数で混乱があったりという話もありまして。その辺りについては、今後の話にはなりますがもう少し工夫をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

○今村部会長
特に、この評価用紙は事前に配付されてなくて当日配られるものですね。ただ、これを頼りに我々は評価することになりますので、できるだけ正確な質の高い評価をするためにも、ご検討、ご努力いただければと思います。よろしいですか。それでは、本日の議事は以上となります。次回の開催等については、事務局からご案内をお願いいたします。

○政策評価官室長補佐
次回の開催については8月9日の木曜日の13時から、場所は厚生労働省内の19階の専用第23会議室になっております。それから次々回の開催は、8月10日の金曜日の9時から、会場は同じく専用第23会議室になっております。以上です。

○今村部会長
本日は、以上とさせていただきます。長時間にわたり熱心なご審議をいただきまして、ありがとうございました。どうもお疲れさまでした。


(了)

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