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2013年5月2日 第1回 平成25年度化学物質のリスク評価検討会(有害性評価小検討会) 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成25年5月2日(木) 13:30~


○場所

厚生労働省19階専用23会議室


○議事

○岸室長補佐 本日は大変お忙しいところを御参集いただきまして、誠にありがとうございます。定刻前ですが、既に皆様おそろいですし、本日は検討項目が多数ありますので、これより平成25年度第1回有害性評価小検討会を開催いたします。まず、出席者を御紹介いたします。参考資料1に参集者が記載されておりますので、併せて御確認ください。本日は資料が多数ありまして、大変恐縮でございます。参考資料は資料の後にありますが、また、後ほど御説明いたします。それでは、以降の議事進行を座長の大前先生にお願いいたします。
○大前座長 本日はお忙しいところを御参集いただきまして、ありがとうございます。ただいま御紹介がありましたように、本日は議事がたくさんありますので、何とか時間内に終わるように努力していきたいと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。最初に、配布資料の確認をお願いいたします。
○岸室長補佐 まず、1つ目の束は皆様に配布している資料でして、議事次第から配布資料一覧に続きまして資料1-1、資料1-2-1、1-2-2、1-3、1-4、2-1、2-2、3-1、4-1、5と続いております。次は動物実験の関係の資料で、資料3-2、3-3、4-2と続いており、こちらは机上配布となっております。参考資料は3つに分かれており、最初の束は皆様に配布している資料で、参考資料1、参考資料2-1、2-2-1、2-2-2、2-3、2-4となっております。次の束は机上配布の提案理由書関係の資料で、3-1、3-2、3-3、3-4、3-5、3-6、3-7、4、5、6-1、6-2となっております。もう1つの束は皆様に配布している資料で、参考資料7、8-1、8-2となっております。種類が大変多く恐縮ですが、不足等がありましたら、事務局までお申し出ください。
○大前座長 いかがでしょうか。多数ありまして、追いかけるのが大変だったと思いますが、もし、不足のものがありましたら、事務局まで御連絡ください。
 最初に、「平成24年度ばく露実態調査対象物質(初期評価)の評価値について」です。4物質ありますが、丸数字4N,N-ジメチルアセトアミドと、(2)のがん原性試験結果の評価は同じ物質ですので、この2つはまとめて後で説明していただいてから決めたいと思っております。また、時間によっては少し飛ばしまして、ほかのを先にやるということもあるかもしれませんので、その際はよろしくお願いいたします。それでは、丸数字1三酸化二アンチモンについて、事務局から説明をお願いいたします。
○岸室長補佐 三酸化二アンチモンの評価値の決定ですが、まず、三酸化二アンチモンに関するこれまでの経緯について若干説明いたします。平成23年度に、アンチモン及びその化合物として初期リスク評価を行ったところですが、その際に三酸化二アンチモンのみを詳細評価することで検討結果が出されたところです。有害性評価小検討会においては、アンチモン及びその化合物として、一次評価値は「なし」、二次評価値は「0.1mg/m3」とされました。評価値に関する資料は、資料1-1を御覧ください。有害性について、ざっと御説明いたします。
物質名は「三酸化二アンチモン」、物理的化学的性状としては白色の結晶性粉末、融点は656℃、蒸気圧は574℃で130Paです。生産量は6,845トン(2010年実績)、輸入量は報告なし、用途としては、各種樹脂、ビニル電線、帆布、繊維、塗料などの難燃助剤、高級ガラス清澄剤、ほうろう、吐酒石、合繊触媒、顔料などとして使われております。
 重視すべき有害性のうち、発がん性については「ヒトに対して、おそらく発がん性がある」ということで、IARCにおいては2Bに分類されております。ここでは、三酸化二アンチモンのヒトにおける発がん性の証拠は不十分であるが、動物における発がん性の証拠は三酸化二アンチモンでは十分である。ただし、ACGIHはアンチモン工程に従事する労働者の職業がん疫学調査報告を評価して、三酸化二アンチモンの発がんをA2「ヒトに対しておそらく発がん性がある」に分類しています。IARCでは2B、産衛学会では2B、NTPでは報告なし、ACGIHではA2、EUではカテゴリー3となっております。
 発がん性以外の有害性としては、生殖・発生毒性については「判断できない」、遺伝毒性については「あり」といったところです。また、閾値の有無としては、「判断できない」としております。
 許容濃度ですが、ACGIHでは0.5mg/m3、アンチモンとして1979年に設定されております。根拠としては、アンチモン及びその化合物のTWA値0.5mg/m3は、上気道の刺激、腹痛及び食欲減退発現の可能性を最小限にする意図で設定した。著しく高い単回、又は繰り返しばく露による重大な影響、例えば心臓の血液の障害が発生することがある。入手できる全てのアンチモン化合物に共通の有害性情報からTLVを導くことは困難である。当該TLVは、生物学的に活性なアンチモン化合物の中の1つである五塩化アンチモンで特定できる健康影響から外挿によって設定された。経皮吸収性、感作性、発がん性の注釈の付記、又はTLV-STELの勧告をするための十分な情報はないということです。
 日本産衛学会においては、TWA値は0.1mg/m3で、1991年に設定されております。根拠としては、アンチモン及びその無機化合物の許容濃度の提案に当たっては、肺がんの発生と胚ないし胎児(仔)への影響、及び心臓毒性を考慮すべきと考える。ラットの胚への影響として報告のあった酸化アンチモン82μmg/m3を最小作用濃度と考えるべきであるが、この値を最小作用濃度と考えるとすれば、現行のTLVやMAKの勧告値0.5mg/m3と8倍近い違いとなり、ラットの感受性が高いと仮定したとしても、十分な安全性を確保しているとは言い難い。したがって、現行のTLVやMAKの勧告値0.5mg/m3より低い値を提案すべきであると考える。また、労働者の心臓毒性を報告した報告では、ばく露濃度が0.6~5.5mg/m3となっており、やはり0.5mg/m3が十分な安全率を見込んだ値とは言い難く、暫定的に0.1mg/m3を提案する。そのほかDFGは設定なし、NIOSHではTWA0.5mg/m3、OSHAでは0.5mg/m3となっております。
 一次評価値としてはなし、二次評価値としては、産衛学会が0.1mg/m3としている中、ACGIHでは0.5mg/m3としており、どちらを評価するかについては検討が必要ということです。なお、参考資料3に三酸化二アンチモン関係の提案理由書等を付けておりますけれども、3-2が日本産衛学会の提案理由書、3-5はACGIHの提案理由書で、ANTIMONY TRIOXIDEの関係です。そのほか国際的な評価文書を探したところ、3-6にあるように、OECDの初期リスク評価書「アンチモン及びその化合物」についてもあって、ここに生殖・発生毒性や遺伝毒性、発がん性に関する評価もなされております。3-7においては、OECDのSIAM評価要旨(英文)も添付しておりますので、併せて御検討いただければと思います。
○大前座長 ただいまの説明について、御意見、御質問があればお願いいたします。
○江馬委員 質問ですが、許容濃度等の第2パラグラフで、日本産業衛生学会等の2行目から3行目にかけて、「肺がんの発生と胚ないし胎児(仔)への影響および心臓毒性を考慮するべきと考える。ラットの胚への影響として報告のあった」となっていますけれども、ラットの胚・胎児に対しては影響がなかったというデータしか、ここには載っていなかったのです。
○大前座長 評価書ですね。
○江馬委員 はい。
○大前座長 有害性評価書の参考資料2-1には、82μmg/m3というのは載っていないということですね。
○江馬委員 ここにラットのembryo fetusに対する影響はないという報告が記載されているのに、なぜ、ここで考慮すべきであるという文章があるのかなと思ったのです。ラットの胚・胎児への影響があるというデータはあるのですか。
○大前座長 これは産業衛生学会が1991年に設定した数字で、参考資料3-2は産業衛生学会の提案理由です。21ページの右下にソ連からの報告というのがあります。これはロシア語で書いてある2ページの報告です。その際、産業衛生学会はロシア語で読んだわけではなくて、多分どこかの評価書から抜き出してきたりしたと思うのです。そして、この数字が随分低いので、0.5mg/m3では十分安全ではないという判断をして、このような表記になっておりますけれども、どうもソ連の2ページのものも怪しいので、参考資料2-1の有害性評価書では、それを採らなかったということだと思います。時代が違って、考え方も少し違ってきているということです。
 ACGIHの0.5は五塩化アンチモンから出てきている数字で、今回の三酸化二アンチモンの話ではないので、ちょっとつらいところがあります。また、今言ったように、生殖・発生毒性に関しては、1991年ですから、既に20数年前になりますので、採用しないほうがよいデータを使っているというところで、この0.1に関しても若干つらいところはあるというのが、恐らく今の現状だと思います。このような現状ですから、二次評価値を0.5か、0.1かに決めるのはつらい状態ではあるのです。ちなみに、今月ある産業衛生学会の総会で、多分アンチモンの許容濃度が提案されるのではなかったでしょうか。
○宮川委員 記憶が定かではないのですけれども。
○大前座長 見直しをやっているのは事実ですが、提案までいきませんでしたでしょうか。そこまで、まだいっていなかったでしょうか。
○宮川委員 いずれにせよ、この古い産衛学会のものは、ちょっとお預けにしておいたほうがよろしいと思います。
○大前座長 そうですね。古い産衛の根拠で0.2にするのは、いずれにしてもちょっとまずいなという気はします。また、五塩化アンチモンの0.5で三酸化二アンチモンの数字を決めるのも、どうかなということも若干あるのです。いかがでしょうか。結論として、例えばもう少しペンディングにして検討するなり、あるいはACGIHや産衛の値を使わないで別個に計算するなりという手は、当然あると思います。今までのルールですと、産衛かACGIHかということにはなっておりますが、この物質に関しては両方とも根拠としては採りづらいところがありますので、評価書から独自に作るという可能性はあると思うのです。
○江馬委員 OECDのSIDSがあれば、OECDのHPVのSIDS Initial Assessment Reportが出ているのであれば、そこのDossierとか、Initial Assessment Reportに詳しくは出ているはずなのです。
○大前座長 先生がおっしゃるのはSIDSですから、参考資料3-7ですか。
○江馬委員 はい。これはOECDの高生産量化学物質プログラムの文書で、今、配られている資料は、それの一番簡単なサマリーに当たるもので、その基になるレポートはかなり大きな文書で出ているし、Dossierにはここに載っているデータがフルデータで全部入っているはずですので、少なくともSIAMに載っている報告のデータはDossierから取れると思います。
○大前座長 三酸化二アンチモンに関しては、今のSIDSの元の文章を見て、それで数字を決められれば決めていくという御意見ですけれども、いかがでしょうか。取りあえず、今日のところはペンディングにしておいて、今のSIDS等々を検討してみると。
○宮川委員 参考資料2-1にある資料では、これを作ったときには、確かSIDSのことも頭に入れて作られていたような気がいたしますが、私の記憶違いでしょうか。
○大前座長 もしあるとすれば、評価表の21ページに書いてあるか、あるいは本文のほうにありますか。本文ですと、12ページの許容濃度の設定の辺り、場所的にはこの辺ではないかと思います。
○宮川委員 13~15ページの中だけですと、これはどうも引用文献には入っていないようです。
○大前座長 なさそうですね。そうしましたら、この物質に関しては、今日はペンディングということでよろしいですか。今のSIDSの文章等々でもう一度確認をして、今までのルールはACGIHか産衛ですので、それから少し外れることになりますけれども、今の産衛とACGIHの根拠だとまずいので、そのような扱いで、ペンディングでよろしいでしょうか。それでは、今日の段階では三酸化二アンチモンに関してはペンディングで、もう少し他の文献を使って二次評価値を求めていくということにさせていただきます。
○岸室長補佐 事務局で何か収集する資料等はありますでしょうか。Dossierのデータを収集するということでよろしいですか。
○大前座長 そうですね。OSHAやNIOSHなどは、ドキュメンテーションはなかったでしょうか。いずれにしても、今のOECDのものを集めていただくということでお願いいたします。
○宮川委員 そのほかについても、13~15ページの資料2-1を見ると、結構いろいろ引いてあって、去年作ったもので、特に生殖・発生毒性は判断できないとなっていますので、多分そのような状況が本来だと。
○大前座長 三酸化二アンチモンに関しては、そのような形で二次評価値の決定をペンディングにしておくということで。
○津田委員 コメントですが、参考資料2-1の5ページの発がん性の所で、吸入ばく露の上から3行目に、「肺に硬性がん」と書いてあるのですが、病理学的にはあり得ない病変ですので、御確認願います。
○大前座長 確か、これは議論になったと思うのですけれども、福島先生はこれでいいとおっしゃったような記憶が若干ありまして、いずれにしても確認いたします。肺ではそのような。
○津田委員 ほかの臓器では無いことはないのですが、肺ではそのような診断名はありません。それから、ほかにも関係することですけれども、18ページの発がん性の所に「三酸化二アンチモンは、ヒトに対して、おそらく発がん性がある」と書いてありますが、この「おそらく」というのはどこから出てきたのか、可能性が高いという意味でしょうか。
○大前座長 これはグループ2Bというのを、「おそらく」と訳しているのではないでしょうか。
○津田委員 2Bは「おそらく」とは通常は訳されないです。日本語では、2Aが「おそらく」(可能性が高い)という意味で、2Bは可能性がある。英語で言いますと、2Aはprobable、2Bはpossibleです。
○大前座長 この表現に関しては一応ルールブックがありますので、それをもう一度確認いたします。
○津田委員 分かりました。
○大前座長 三酸化二アンチモンに関して、そのほかコメント、御意見があればお願いいたします。ないようですので、次の酸化チタンに進みたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。
○岸室長補佐 「酸化チタン(ナノ粒子以外)」については、平成22年度に初期リスク評価が行われ、詳細評価を行うよう検討結果が出されたところです。その際、評価値については、有害性小検討会において、一次評価値はナノ粒子と合わせて判断する、二次評価値は10mg/m3として、中間的な取りまとめがされたところです。一方、ナノ粒子については、平成24年3月27日に初期リスク評価が行われ、一次評価値はなし、二次評価値は0.15mg/m3とされました。今般、ナノ粒子の評価値が出されたことに伴い、ナノ粒子以外についても一次評価値等を御検討いただきたいというものです。
 資料1-2-1を御覧ください。こちらは評価値に関するペーパーです。物質名は「酸化チタン」、物理的化学的性状は、無色から白色の結晶性粉末、融点は1,855℃です。生産量は24万トン、輸入量は1万6,000トン、輸出量は3万1,000トンです。用途としては、塗料、化合物のつや消し、印刷インキ、化粧品、乳白ガラス、有機チタン化合物原料、ゴム/プラスチックの着色、リノニューム用顔料、絵の具、クレヨン、陶器の釉薬、静止、コンデンサー、溶接棒の被覆材、歯科材料、レザー、石けん、な染原料、皮革なめし、アスファルトタイルです。重視すべき有害性で発がん性については、「人に対する発がん性が疑われる」ということで、IARCでは2Bとなっています。根拠としては、ラットの肺腫瘍発症の増加の結果に基づいて、酸化チタンが実験動物において発がん性があるという十分な証拠であるという結論です。産衛学会では設定なし、EUでは分類されていない、NTPでは報告なし、ACGIHではA4となっております。
 発がん性以外の重視すべき有害性としては、反復投与毒性はNOAELが35mg/m3、生殖・発生毒性については「報告が得られていない」、遺伝毒性については「なし」となっております。
 また、閾値の有無については「あり」、許容濃度については、ACGIHがTWAが10mg/m3。根拠としては、ラットに二酸化チタン粉末を0,10,50,250mg/m3の濃度で吸入ばく露させた慢性実験において、250mg/m3投与群で肺への炎症及び扁平上皮がんの形成を認めたとの報告がある。なお、10mg/m3の投与群では、肺の含気腔構造に損傷はなく、繊維化を示す兆候も認められず、また肺組織の応答は可逆的と考えられる。疫学的調査では、二酸化炭素のばく露と呼吸器疾患との間に関連性はなかったとの報告がされている。さらに二酸化チタンへの職業ばく露が肺の繊維化、発がん、若しくは他の健康影響との関連を示す確実な証拠はない。以上のことから、TLV-TWA値として10mg/m3を勧告する。二酸化チタンの発がん活性を調べた動物実験は陰性若しくは結論に達していないことから、これらの結果をもとに二酸化チタンをA4に分類する。SkinやSENの表記あるいはTLV-STELを提言する十分なデータはない。日本産衛学会における許容濃度は、総粉じん4mg/m3、吸入性粉じん1mg/m3と2種の粉じんに分類されております。
 案としては、一次評価値は設定なし、二次評価値は前回のとおり、10mg/m3としております。
 次ページの資料1-2-2では、3月27日に検討していただいたナノ粒子に関する評価書を付けております。右下にあるように、一次評価値は設定なし、二次評価値は0.15mg/ m3、こちらは検討結果として記載しております。参考資料2-2-1が酸化チタンのナノ粒子以外の有害性評価書、参考資料4は酸化チタンのACGIHの提案理由書となっております。これらも併せて御検討をお願いいたします。
○大前座長 ナノとナノ以外のものと分けてありますので、最初はナノ以外のものから検討したいと思います。ここにあるように、二次評価値はACGIHの10mg/m3を採っており、産業衛生学会は総粉じんとして4mg/m3、第2種粉じんとして4mg/m3ですけれども、これは酸化チタン特有のものではなくて、まとめて第2種粉じんというのを作って4mg/m3にしているということです。これが提案されたのは、はっきりした年度は覚えていませんが、多分30年ぐらい前だと思います。それに対してACGIHは、酸化チタンそのものを使って10mg/m3という数字を出しているので、どちらを採るかといったら、ACGIHのほうが根拠はしっかりしているだろうということで、10mg/m3ではどうかというのがナノ以外の粒子についての根拠になりますけれども、いかがでしょうか。
○江馬委員 ナノは一次粒子が100nm以下となっているのですが、分布があるので、ナノとナノ以外のもの含まれていると思います。ナノとナノ以外のものの分け方というのは、どのような考え方をするのでしょうか。例えばレスピラブルは幾ら以下かというと、10μm以上と書いてあるものもあるし、4μmが50%あると書いてあるものもあって、よく分かりません。どこで区別をしているのかが疑問です。
○大前座長 いかがでしょうか。非常に難しい質問だと思います。有害性評価書を作るという計画からいくと、最近はナノに注目して実験をしたデータが多く出ているけれども、先生が言われるように、それ以前は当然分布があるのでナノも含まれていた可能性はあるのですが、マイクロサイズがメインだっただろうということで分けているだけで、実際に分かっているわけではないですから、厳密には先生がおっしゃるとおりです。しかし、少なくともマイクロがたくさんある酸化チタンの物質ですと、余り出てこなかったという実験結果が多くあるということなので、現実的にはそのような形而的な状況としか言いようがないです。
○江馬委員 生殖・発生の所にナノとして書かれているものがあるのです。ナノの評価書(案)の10ページ、参考資料2-2-2の10ページの鼻腔内投与の実験はレスピラブルサイズの二酸化チタンだったと思います。分布があるので、当然ナノも含まれているわけですけれども、論文上の記載はレスピラブルなので、多分ナノには入らずに、区分けとしてはナノ以外に入ってくるだろうと思います。
○大前座長 43番の文献は。
○江馬委員 43番はFedulovです。
○大前座長 タイトルだけ見ても分からないですけれども、これはナノの実験ではないということですね。
○江馬委員 レスピラブルです。
○大前座長 レスピラブルの実験ということですね。
○江馬委員 そうです。
○大前座長 それではナノではない。もちろん、ナノも入っているでしょうけれども、メインはマイクロレベルであるということですね。そうすると、少なくとも鼻腔内注入の実験は、この評価書では除くべきであるということですね。
○江馬委員 はい。
○大前座長 そのほかはいかがでしょうか。取りあえず、ナノ以外で、先ほどいろいろな先生が言われたように、恐らく実質的にはナノも分布の中に入っている実験結果を持ってきて、10という数字を作っているわけですが、当時、ナノは全然注目されていなかったということで、基本的に酸化チタンは何の毒性もない、イナートな粒子であると思われていた時代の実験だということです。ナノ以外に関しては、二次評価値は10でよろしいですか。産衛の4ですと、やはり根拠が少し薄いと思います。
○津田委員 この評価では、ルチル型とアナターゼ型と分けていないのですか。
○大前座長 それも分けていないですね。多分、そのように分けた実験は、昔はなかったのではないでしょうか。宮川先生、何か御存じですか。
○宮川委員 ナノの話をしたときに、分ける、分けないの話があって、それぞれデータが少ないので、基準値を別々に設定するのは無理だということで、アナターゼを代表させることになったと思います。しかし、今であれば、本当は別々のほうが良いと思っております。
○大前座長 ナノ以外については、そのように分かれた実験というのは昔はあったのでしょうか。
○宮川委員 一部書いてあるのもあったと思います。
○大前座長 それほどクリアにはなっていないということなので、情報の量等で両方をはっきり分けるのは少し難しいのではないかと。それでは、ナノ以外については10ということで、よろしいですか。次に、ナノについての御議論をお願いいたします。
○西川委員 資料1-2-2の閾値の有無に係る部分ですけれども、根拠に「二次的な遺伝毒性はないと考えられる」というのは恐らく間違いで、一次的なということではないでしょうか。
○大前座長 この有害性評価書を作るときの委員会では、一次的な遺伝毒性は参考資料2-2-2の有害性評価書の12ページに遺伝毒性の結果を載せております。+、-、様々な結果となっております。+に出ているものは、多分、二酸化チタンによるフリーラジカル産生のせいだろうといったことが書いてあります。
○宮川委員 この表の左下に、「二次的な遺伝毒性はないと考えられる」とあるのですけれども、これは「二次的な遺伝毒性ではないかと考えられる」の間違いではないですか。
○大前座長 「か」が抜けているのですね。
○西川委員 それならまだ分かります。

○清水委員 参考資料2-2-2の表の下からは、フリーラジカルが関係しているのではないかという議論があって、恐らく二次的なのではないかという結論になったような気がします。
○西川委員 ですから、「か」を加えればいいということですか。
○清水委員 そうです。
○西川委員 ナノの場合、遺伝毒性の結果がどうであったかは全く記載されていないので、ちょっとこれはいかがなものかと思います。ナノ以外の場合は遺伝毒性は全くネガティブで、ナノの場合はそれなりに陽性所見があるので、やはりそれは書かないと、一緒くたに評価していいかどうか、それはちょっと難しいかなと思います。閾値の有無については、確か遺伝毒性の専門家の方々に議論していただくということになっていたと思うのですけれども、やはり、判断できないとするのが妥当かなと思います。
○大前座長 ナノについては今のようなことで、メカニズムはフリーラジカルであったとしても、現段階では判断できないと判断するのが妥当ではないかということです。有害性評価書は、最終的にはどちらにしたのでしょうか。
○宮川委員 29ページでは、遺伝毒性は「あり」になっています。
○大前座長 フリーラジカルによる二次的な遺伝毒性だろうけれども、ありはありだということで、結論としては「あり」になっているのですね。現段階では判断できないとしたほうがいいのではないかという西川先生の御意見です。
○西川委員 閾値のほうのことで、閾値は判断できないということです。
○大前座長 失礼しました。閾値の部分が判断できないということですね。遺伝毒性ではなくて、閾値の部分が判断できないということです。
○西川委員 そのようにしてはどうかという提案です。関連して、ナノとナノ以外を合わせて評価する場合、資料としては1つの資料としてまとめるのでしょうか。そうすると、書き方がまた違ってくる可能性があると思いますので、確認です。
○大前座長 これは別々に考えていいということですか。
○岸室長補佐 別々です。
○大前座長 1つにまとめるのではなくて、別々でやるという方針だそうです。二次評価値の0.15はどこから出てくるのでしたでしょうか。
○宮川委員 反復投与の値だったと思います。
○大前座長 そうすると、ページ数では。
○宮川委員 評価表の27ページです。
○大前座長 反復投与毒性でNOAELが2を使いまして、UF等々で計算すると0.15になるということで、この0.15を二次評価値としてはどうかという提案です。
○宮川委員 いろいろ見ていくと、現段階ではこれが最も妥当な数字だとは思うのですが、先ほども少し言いましたように、ルチルとアナターゼで違うとすると、これはアナターゼ型のP25についてのデータに基づくものであって、一次評価値であれば行政指導のレベルに思うのですけれども、その先を行く二次評価値として考えるときに、これをルチル型にまでこのままいっていいかというと、疑問が多少残るところです。やはり、実際の運用については事務局で御検討いただくのがよろしいかと思います。
○大前座長 0.15はアナターゼのデータであることを実際にやるときは付記して、ルチルの場合はもっと気を付けなさいといいますか、行政的にも何らかの文章なり何なりにしていただくということにしてはどうかという御意見ですが、よろしいですか。それでは、今日の段階では酸化チタンのナノに関しては二次評価値0.15ということで、今言ったように、ルチル、アナターゼについては注意書きをしていただいて、実際に使うときは使うということにさせていただきます。次に、金属インジウムについて説明をお願いいたします。
○岸室長補佐 「金属インジウム」につきましては、平成23年度の措置検討会におきまして、インジウム及びその化合物を製造し又は取り扱う作業のうち、金属インジウム又はその合金の取扱い作業については、現時点では有害性に関する情報が不足しているため健康障害防止措置の適用を除外するが、今後調査、研究の進展を待ち、必要な措置を検討することが適当であるという結論が出されたことから、当時規制の対象からは除外されたところです。今般、大前先生のところで金属インジウムに関する作業別の血清中インジウム濃度の測定に関する発表がなされたところですので、この内容を踏まえて今後の取扱いを検討いただければと考えております。
 まずは資料1-3について説明します。インジウムにつきましては、物理的化学的性状は銀白色のやわらかい金属で、沸点は2,072℃、融点は156℃ということです。生産量は70トン、輸入量は215トンで、用途としては銀ロウ、銀合金接点、ハンダ、低融点合金、液晶セル電極用、歯科用合金、防食アルミニウム、テレビカメラ、ゲルマニウムとなっております。
 重視すべき有害性で、発がん性につきましては「ヒトに対しておそらく発がん性がある」ということで、根拠としては、IARCではリン化インジウムとしての発がん性はグループ2Aと分類した。またITOの長期吸入ばく露試験によりラットに発がん性が確認されている。発がん性はインジウムに起因していると考えられる。ただし、他のインジウム化合物の発がん性に関しては現在まで明らかな証拠はない。IARCでは2A、NTPでは設定なし、産衛学会では設定なし、DFG MAKではカテゴリー2となっております。
 発がん性以外の有害性につきましては、生殖・発生毒性につきましては、現在実験報告からはまとめられていない。遺伝毒性については「判断できない」ということになっております。
 閾値については「閾値あり」ということで、マウスを用いたリン化インジウムのin vivoにおける小核試験や、体細胞突然変異試験結果から遺伝毒性を疑われるが確定的ではない。吸入ばく露実験結果より、肺の持続的な炎症反応の結果、肺胞・細気管支上皮が増生し、肺がんに進展すると考えられる。
 ACGIH、許容濃度におきましてはACGIHがTLV-TWAで0.1mg/m3ということで、インジウムとして1969年に設定されております。根拠としては、ラットを用いて酸化インジウムを24~97mg/m3濃度で連日吸入ばく露し、合計224時間ばく露が行われた。その結果、ラットの肺では広範な肺水腫が観察され、通常の肺水腫と異なり顆粒状の浸出液や異物を貧食した僅かなマクロファージ、多核巨細胞、核の壊死片が肺胞内に貯留していた。さらにばく露期間中及びばく露終了後においても、これらの病変はほとんど変化せず、繊維化もほとんど観察されなかった。この値で0.1mg/m3では肺水腫、急性肺炎、骨格系・胃腸系障害及び肺への悪影響の可能性を最小限とする意図で設定されたということです。日本産衛学会では許容濃度は「設定はない」ということです。評価値につきましては一次評価値は「設定なし」、二次評価値については「今後検討」ということとしております。
 資料としては参考資料2-3が有害性評価書となります。そして参考資料5が大前先生のほうで行っていただいた血清中インジウムの測定に関する調査結果です。私からの説明は以上で、参考資料5につきましては大前先生、お願いできますでしょうか。
○大前座長 参考資料5を御覧ください。インジウム化合物につきましては、今年の1月から特化則の第2類ということで様々な規制が始まっております。その中では金属インジウムを除くということで、特化則の第2類から現在外れております。除くとした理由は金属インジウムに関する情報がないということで除くことになりました。そういう状況でしたので、昨年度、厚労省から金属インジウムを扱っている事業所を10か所ぐらい紹介していただき、金属インジウム作業は大丈夫なのかということで調査した結果の一部です。これは調査した事業所に対する結果報告会で使ったパワーポイントになります。
 最初のページの右下、「職種別血清中インジウム濃度の分布」という図を見てください。縦軸が血清中のインジウムの濃度です。今、産業衛生学会が3μg/Lを生物学的許容値にしてますので、3に線が引いてあります。これ以下ですと生物学的許容値以下ということになります。横軸が職種で分けています。ボンディング、研磨、歯科技工等々幾つかあります。この中で血清中のインジウムが高かったのが「溶解(大型)」と書いてあるところになります。したがって職種別に見ますと溶解(大型)、これは具体的にどういうものかといいますと、歯科合金は1,000度くらいの温度でインジウムを含んだパラジウム、インジウム等々を歯科合金を作る工程です。ここでは間違いなくばく露があって、しかも結構濃度が高い。ちなみにボンディングで1人高い方がいますが、この方は実は同じ会社の中のITOの製造工場から移動してきた方で、今はボンディングやっているのですが、実は当時のITOのばく露をそのまま反映していますので、このボンディングの1名の方は金属インジウムのばく露ではないと考えていただきたいと思います。ということで、比較的高温で合金を作るような工程では、やはりインジウム濃度が高くなります。
 次のページの左上が職種別KL-6の分布です。縦軸がKL-6で、臨床医学的に500までが正常範囲ということになっています。やはり大型のところで500を超えている方がいる。この高い方2人が先ほどのインジウム濃度が高い方になっております。それから、この会社以外でも金属インジウムの会社を調査といいますか、紹介していただきましてお話を伺いますと、やはりこの大型の溶解のところでは血清中のインジウムが30を超えている方もいらっしゃいますし、KL-6が同時に高い、かつCT上少し所見があるということもありますので、やはり金属インジウムの中でも、高温で合金を作るような工程は、やはり少しリスクが高いのではないかというのがこの結果です。以下、後ほど見ていただければということです。
 一番最後のページ、「総合所見」です。今回やりました調査の結果が、ほかのITO等々とのインジウムばく露集団と結局同じである。濃度が高いところ、あるいはインジウムの濃度が高ければKL-6は上がるし、CTに若干の変化が出てくるということで、本質的には変わらないということです。ただし、インジウム濃度は非常に低いということで、先ほど言いましたように溶解の工程以外は問題ないだろう。溶解で大型の高温による溶解ですけども、その工程以外は問題ないだろうということです。それが今回の金属インジウムの調査の結果です。先ほど言いましたように、これまで報告会のレベルですので、ピアレビューでも論文でもございません。そういう状況です。
 ということで今回金属インジウムにつきまして資料1-3に戻りますが、二次評価値は「今後検討」とありますが、実は二次評価値に該当するような資料は今のところございません。ACGIHが0.1とありますけども、これは先ほどもらいましたように古いですし、それから最近日本で起きたインジウム障害のことは一切反映していない数字ですので、とても0.1を使うわけにはいかない。技術指針のレベル、それから今回の特化則のレベルでも、目標濃度やあるいはばく露が許容される濃度とちょっと違ったタイプの濃度を作ってやってますけれども、それは当然0.1よりも低いので、当然0.1を二次評価値に使うわけにはいかないので、現在実は使える数字がないという意味で「今後検討」とここには書いています。日本産業医学会も当分許容濃度は出せない、出すような情報がないという意味で出せないと思っております。
 よろしいですか。現段階では作れないので、今後情報が出てきたら新たに検討するという段階にならざるを得ないという状況です。これはそういうことで次に進みます。次はN,N-ジメチルアセトアミドです。これは発がんの問題と両方ありますので、両方説明していただいて、それから検討していただきたいと思います。では、よろしくお願いします。
○岸室長補佐 それでは、動物試験の説明を大淵有害性調査機関査察官からお願いします。
○大淵有害性調査機関査察官 それでは日本バイオアッセイセンターで実施した、N,N-ジメチルアセトアミドの吸入試験の結果について御説明いたします。こちらについては、国から過去からずっと発がん性についても委託事業で試験をして、こちらの小検討会で試験結果を評価し、発がん性が認められるものについて、必要なものはがん原性の指針を出すという仕事をずっとしてまいりました。
 お手元の資料3-1、資料3-2がラット、資料3-3がマウスの資料です。資料3-2と資料3-3は、先生方のみの配布となっております。今回の物質については、単なる試験結果の資料だけではなく、別の資料として、全員に配布の資料として資料3-4ということで「N,N-ジメチルアセトアミドに関するがん原性指針策定の要否について」の資料もありまして、4種類の資料を使って説明をさせていただきます。説明については、私からと、実際の試験の結果については、バイオアッセイから説明をしていただきます。
 資料3-1の1ページ、N,N-ジメチルアセトアミドの物性等については、構造式はこちらに書いてある構造です。物性としては、1-3で無色の液体で、融点、沸点等も、こちらに書いてあるものです。1-4が抜けておりますが、「用途」としては、溶けにくい物質、難溶性の物質を溶かすための溶剤として広く使われております。1-5の「生産量等」については、製造・輸入量が年間約1万トンです。1-6の「許容濃度等」については、管理濃度はなく、日本産業衛生学会、ACGIHで10ppmの値が示されております。規制については、労働安全衛生法でSDSの交付対象物質になります。発がん性の評価の関係では、IARCは未評価、ACGIHではA4「ヒト発がん性物質とは区分できない」という評価になっております。
 2ページの「変異原性」については、微生物の変異原性試験で陰性の結果があります。いずれの試験でも陰性ということで、この物質については変異原性はないと考えられるかと思います。2以降については「試験結果」等にもありますので、バイオアッセイに説明していただきます。
 資料3-4「N,N-ジメチルアセトアミドに関するがん原性指針策定の要否について」を説明をさせていただきます。1「基本的な考え方」については、先ほども申し上げましたが、国が実施した発がん性試験については、専門家による評価を行い、「発がん性がある」と評価された物質については、原則として、労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づいて「がん原性指針」を策定し公表しております。ただし、当該物質に変異原性がなく、かつ試験の高用量のみで腫瘍発生増加が認められた場合については、労働環境中の濃度を考慮して、指針策定の要否を判断することとしております。発がん性はあるが、こういった理由でがん原性指針を策定しなかった物質については、必要がある場合には、更に有害性情報を収集した上で、リスク評価を行うというスキームも設けております。
 これまでに発がん性はあるが、がん原性指針の策定は要さずリスク評価の対象とすべきとした物質が2物質あります。具体的には、酢酸イソプロピルとジフェニルアミン、それぞれ平成21年度、平成23年度に有害性小検討会で評価していただいた物質です。
 今回のN,N-ジメチルアセトアミドの場合については、ラットの雄、マウスの雄・雌の両方において、最高用量のみ腫瘍発生増加が認められております。また変異原性はないということになっておりますので、上記の基本的な考え方からいうと、仮に今日の検討会で「発がん性あり」と評価された場合には、がん原性指針策定の要否について検討する必要が生じてきます。
 その際の参考ということで、試験結果から得られたNOAEL(最大無毒性量)と、労働環境中の濃度の参考値を示しております。発がん性に関するNOAELについては、この試験からはラットで90ppm、マウスで60ppmの値が得られます。慢性毒性に関するNOAELについてはラットが18ppm、マウスが12ppmという結果が得られます。また、労働環境中の濃度の参考値については、実測をしているわけではないので、飽くまで参考ということで示しております。ACGIH、日本産業衛生協会で10ppmの値が示されております。こういった値を参考として比較する形になるかと思います。私からの説明は以上とさせていただきまして、具体的な試験の中身については、バイオアッセイから説明をお願いいたします。
○バイオアッセイセンター(西沢氏) N,N-ジメチルアセトアミドのがん原性を検索する目的で、ラットとマウスの吸入の長期試験を実施いたしました。動物はF344ラットと、B6D2F1マウスです。被験物質投与群3群と対照群1群の計4群の構成で、各群雌雄とも50匹を使用して、ラット400匹、マウス400匹を使用しました。N,N-ジメチルアセトアミドは、1日6時間、1週5日間で、104週間、全身ばく露を行いました。投与濃度は、ラットは雌雄とも0、18、90、450ppm。マウスは雌雄とも0、12、60、300ppmです。
 ラットの結果については、資料3-1の10ページにラットの生存率を示しております。上段が雄で、下段が雌です。雄の生存率は投与群、対照群とも同様な推移を示しております。雌の一番生存率が良いのは、最高投与群の450ppmで、投与によると考えられる生存率の低下は見られておりません。
 11ページにラットの体重推移を示しております。上段が雄で、下段が雌です。雌雄とも最高投与群の450ppmで体重増加抑制が見られて、試験を通して体重が低値となっております。雄の450ppm群は最終体重は対照群の84%、雌の最終体重は対照群に比べて91%です。
 ラットの腫瘍性病変についてお話します。資料の3ページに文章がありますが、主な腫瘍の発生は資料の8ページに示しております。上段が雄で、下段が雌です。腫瘍発生ラットの雄の腫瘍性病変としては肝臓で、肝細胞腺腫の発生がPeto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示して、Fisher検定で450ppmに増加が認められております。450ppm群の当センターの発生率は、当センターの背景データの範囲を超えております。また、肝臓の肝細胞がんの発生、Peto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示して、450ppm群の発生率は4匹(8%)は、当センターの背景データの範囲を超えております。したがって、450ppm群における肝細胞腺腫の肝細胞がん、それぞれの発生増加は、被験物質のばく露によるものと考えました。肝細胞腺腫と肝細胞がんを合わせた肝腫瘍の発生も増加を示しております。
 その他では、副腎の褐色細胞腫の発生が、Peto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示しましたが、450ppm群の発生率10%は、当センターの背景データの範囲内ということで、この発生は被験物質の投与による影響ではないと判断いたしました。その他の臓器では、投与群に腫瘍の発生増加は見られておりません。
 次にラットの雄の非腫瘍性病変を御説明いたします。資料の3ページの下側、ラットの雄の非腫瘍性病変では、肝臓で好酸性の小増殖巣の発生匹数の増加が450ppm群で認められております。それ以外にも肝臓では、巣状の脂肪変性の発生匹数の増加が90ppm以上の群。褐色色素沈着の発生増加が450ppm群で認められております。
 腎臓では、近位尿細管の褐色色素の沈着、嚢胞、腎盂の尿路上皮過形成が450ppmで増加しております。また、慢性腎症が90ppm以上群で程度の増強を示しております。
 ラットの雌の腫瘍性病変については、表は先ほどの8ページの下段に示しております。ラットの雌では、乳腺、脾臓、肝臓に腫瘍が少し見られておりますが、被験物質のばく露によると考えられる腫瘍の発生増加は見られませんでした。
 非腫瘍性病変については、4ページの中段から下、肝臓で明細胞性小増殖症の発生匹数の増加が450ppm群で認められております。また褐色色素の沈着の発生増加は90ppm以上の群で見られて、程度の増強が450ppm群で認められております。肉芽形成の発生増加と程度の増強が450ppm群で認められております。統計学的な有意差は示しませんでしたが、巣状の脂肪変性の発生が450ppm群でやや多く見られております。腎臓では、近位尿細管の褐色色素の沈着が90ppm以上の群で増加しております。以上がラットの結果です。
 マウスの結果については、まず、生存率を12ページのグラフに示しております。一番上は12ppm群ですが、少し差があるように見えますが、大きな差は見られておりません。マウスの雌の生存率は、対照群と投与群はほぼ同様な推移を示しております。なお、対照群の生存率が50%を切っておりますが、50%を切ったのが102週以降ということで、最後まで投与を続行いたしました。
 13ページにマウスの体重推移を示しております。雄では、最高濃度群の300ppmがやや対照群よりも低値となっております。雌は対照群、投与群ともほぼ同様な体重推移を示しております。マウスの雄の最終体重は、対照群に比べて91%ということです。
 それでは、マウスの雄の腫瘍性病変について御説明します。5ページと、表は9ページの上段が雄、下段が雌と表示しております。マウスの雄の腫瘍性病変については、肝臓で肝細胞腺腫の発生が、Peto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示して、Fisher検定で300ppm群に増加が見られました。300ppm群の発生28匹(56%)は、当センターの背景データの最大範囲を超えております。したがいまして、300ppm群の肝細胞腺腫の発生はばく露によるものと考えました。なお、肝細胞がんについては、発生の増加は認められておりませんが、幹細胞腺腫と肝細胞がんを合わせた肝腫瘍の発生は増加は見られております。
 その他では、リンパ節で、悪性リンパ腫の発生がPeto検定で増加傾向を示しました。しかしながら、300ppm群の悪性リンパ腫の発生率24%は、当センターの背景データの範囲内でしたので、悪性リンパ腫の発生増加は、被験物質の投与による影響ではないと判断いたしました。その他の臓器では、投与群に腫瘍の発生増加は見られておりません。
 マウスの雄の非腫瘍性病変については、6ページ。マウスの雄の非腫瘍性病変は、肝臓で好酸性小増殖巣の発生匹数の増加が300ppm群で認められております。腎臓では乳頭壊死が60ppm以上の群で認められ、発生数は300ppm群で増加しております。また、瘢痕が300ppm群で増加しております。
 マウスの雌の腫瘍性病変については、表は9ページの下段です。マウスの雌の腫瘍性病変では、肝臓で肝細胞がんの発生がPeto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示して、Fisher検定で300ppm群に増加が見られました。300ppm群における肝細胞がんの発生は8匹(16%)は、当センターの背景データの範囲を超えております。また、肝細胞腺腫の発生が、Peto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示して、Fisher検定で300ppm群に増加が見られました。300ppm群の肝細胞腺腫の発生、35匹(70%)は背景データの範囲を超えております。したがって、300ppm群の肝細胞がんと肝細胞腺腫のそれぞれの発生はばく露によるものと考えました。肝細胞がんと肝細胞腺腫を合わせた肝腫瘍の発生も増加を示しております。
 その他では、下垂体の腺腫の発生が、Peto検定の死亡率のみで増加傾向を示しました。しかし、各群の発生率はいずれも当センターの背景データの範囲内ですので、被験物質の投与による増加ではないと判断いたしました。その他の臓器では、投与群に腫瘍の発生増加は見られませんでした。
 最後に、マウスの雌の非腫瘍性病変については、7ページ。肝臓では好酸性小増殖巣の発生匹数が300ppmで増加しました。腎臓では乳頭壊死が60ppm以上の群で認められて、発生数が300ppmで増加しました。また、瘢痕が300ppm群で増加をしております。
 以上の結果より、最後、7ページの「まとめ」を読ませていただきます。雄ラットでは、肝細胞腺腫と肝細胞がんを合わせた肝腫瘍の発生増加が認められ、雄ラットに対するがん原性を示す証拠であると考えました。雌ラットでは、腫瘍の発生増加は認められませんでした。雄のマウスでは肝細胞腺腫の発生増加が認められ、雄マウスに対するがん原性を示す証拠であると考えました。雌マウスでは、肝細胞がんと肝細胞腺腫の発生増加が認められ、雌マウスに対するがん原性を示す明らかな証拠であると考えました。以上です。
○大淵有害性調査機関査察官 試験の結果の関係の説明は以上です。
○岸室長補佐 続きまして、評価値の説明をいたします。資料1-4、評価値です。今回は、平成24年度の委託事業において有害性の評価が終了しましたので、初期リスク評価を行うものです。物理的化学的性状や生産量等については、先ほど大淵有害性調査機関査察官から話がありましたので省略いたします。
 重視すべき有害性、発がん性の有無については、「ヒトに対する発がん性は判断できない」ということです。根拠としては、ACGIHは当該物質の発がん性をA4「ヒトに対して発がん性が分類できない物質」に分類しております。アクリル繊維工場で働いていた671人の労働者を対象とした後向きコホート調査では、対象労働者のうち571人はN,N-ジメチルアセトアミドに加え、アクリロニトリルのばく露も受けていたと。小腸及び結腸がんによる死亡と、N,N-ジメチルアセトアミド及びアクリロニトリルばく露に関連は認められなかった。ラットとマウスに25、100又は350ppmのN,N-ジメチルアセトアミドを1日6時間、週5日で2年間反復して吸入ばく露させ、慢性毒性及び発がん性を調べたが、ラット、マウスともにこの条件での発がん性は認められなかったということです。IARCでは設定なし。産衛学会では設定なし。EUでは設定なし。NTPでも設定なし。ACGIHではA4となっております。
 生殖・発生毒性は「あり」。NOAELが100ppmとなっております。閾値については「判断できない」となっておりますが、先ほどの動物の吸入の発がん性試験の結果から、閾値がある場合では「NOAEL=60ppm」。マウスを用いた吸入による発がん性試験の結果から、NOAELを60ppmとして採用して計算したところ、不確実性係数が、種差10、がんの重大性10ということで100。労働補正としては、1日6時間、週5日ばく露のため6/8ということで60×6/8×1/100ということで、4.5×10-1ppmということで計算しております。
 許容濃度については、ACGIHのTLV-TWAは10ppmということで、1986年に設定されております。勧告の根拠としては、動物試験及び労働現場での経験値に基づき、N,N-ジメチルアセトアミドのTLV-TWA値をSkinの表記付きで10ppmを勧告する。これは肝障害や胎児への障害の可能性を減弱させるための濃度であり、N,N-ジメチルアセトアミドへの皮膚接触を防いだ場合という条件付きである。N,N-ジメチルアセトアミドにばく露された労働者での既報データが不足していることから、A4の表記を勧告する。SEN表記あるいはTLV-STELの表記を提言する十分なデータはないということです。
 日本産衛学会では10ppmとなっております。1990年に設定されました。勧告の根拠としては、N,N-ジメチルアセトアミドは主に肝臓に悪影響を及ぼす。イヌとラットの6か月間反復ばく露実験では、40ppmの吸入又は0.1mL/kg bw/日の皮膚塗布により、軽微であるが肝臓への影響が認められた。ばく露量を増加することによりその影響も強くなっていること、ヒトの障害事例では経皮吸収の寄与があるとは言え、20~25ppmで黄疸が認められていることから、諸外国が定めているTWA10ppmについて疑問が残るものの、これより小さい値を提案するに足る情報は今のところは見い出せない。以上のことから、N,N-ジメチルアセトアミドの許容濃度として10ppmを提案する。
 DFG MAKは10ppm、NIOSHでも10ppm、OSHAでも10ppm。UKにおきましては10ppmで、STELが20ppmということです。
 評価値(案)としては、一次評価値は、先ほどのマウスを用いた吸入による発がん性試験結果から4.5×10-1のppm。二次評価値としては、産衛学会、ACGIHで定めている10ppmを案としております。
 資料2-4に評価書があります。提案理由書については、参考資料6-1が産衛学会、参考資料6-2がACGIHとなっておりますので、これらをもとに御検討をお願いいたします。以上です。
○大前座長 ありがとうございました。2つテーマがありまして、1つは資料3-4、がん原性指針を策定するかどうか、その要否についてというテーマと、もう1つは、二次評価値、一次評価値を作るというテーマの2つがあります。説明をされた順番に、N,N-ジメチルアセトアミドに関するがん原性指針の策定をするかどうか、あるいはリスク評価の対象とすべきかどうか、その辺も含めて、これについてはいかがでしょうか。
○西川委員 先ほどバイオアッセイから説明された試験のデータが書かれてないので、なぜかということを確認したいです。肝細胞腺腫が誘発されたという結果だったと思いますが、ここに記載されているのは、用量も違うし、また別の試験であると判断されます。
○大前座長 資料1-4に書いてある発がん試験と、今回のバイオアッセイのとは違うと。
○西川委員 恐らく違うものだと思います。
○大前座長 それで、バイオアッセイのが、ここに書いていないのはなぜかという御質問ですね。いかがでしょうか。
○岸室長補佐 資料1-4は、参考資料2-4の有害性評価書から主に取ってきているもので、今回、動物試験とリスク評価がたまたま一緒になったということで、こちらは飽くまで有害性評価からのデータを主として記載しております。ただ、動物試験のデータがありましたので、閾値だけはそこのデータを取ってきているということです。
○大前座長 この物質は、資料3-2、資料3-3を見ますと、報告が3月28日で、それが有害性評価書にはまだ入っていない状態という意味でしょうか。
○西川委員 せっかく出てきた重要なデータだと思いますので、それを加味して評価したほうがいいかと思います。
○大前座長 できれば資料1-2に入れておいてほしかったと。そのほか、御質問や御意見はいかがでしょうか。ラットでは雄、雌で肝腫瘍がポジティブで、マウスでは雄だけがポジティブ、雌がネガティブだったという結果だと思いますが。
○西川委員 逆です。
○大前座長 バイオのデータは逆で、資料1-4に書いてある情報では、発がん性はなかったという情報で、ちょっと食い違っていることになります。濃度が若干違うことはあるでしょう。
○津田委員 この記載は、どこのデータですか。同じような濃度で、今のバイオアッセイのものでは最高用量で肝発がん性がありで、こちら側は似たような350ppmでは発がん性はなしですが。
○大前座長 25番は参考資料2-4、有害性評価書の16ページの一番下、Chronic Toxicity/oncogenicity of dimethylacetamide in rats and mice following inhalation exposure.の論文ですが、これはNTPの実験ですか。何の実験ですか。これは1995年なので、そんなに古くはないデータではあるのですが。これがどこのデータかによりますね。NTPだったら、もちろんしっかりしたものだと思うので。食い違いがむしろ困るのですが。
○大淵有害性調査機関査察官 バイオアッセイの資料が手元にありまして、デュポンの関係で行われた試験です。
○大前座長 多分、そんなにいい加減なデータではないでしょうね。メーカーがやっているという問題はあるにしても。
○津田委員 直すときに併記でもいいのですが、一番新しいデータで、きちんとした日本の施設で行われているので、やはり、そちらを採用するほうがいいと思います。
○大前座長 いかがでしょうか。デュポンのデータはあるにしても、バイオアッセイの今年の新しい情報で、もちろん試験の中身はしっかりしていると思いますので、この物質に関しては、マウスでは腫瘍発がん性あり、ラットでは雄でありと判断すべきだと。まず、そこのがん原性の有無です。そういう判断でよろしいですか。
 次は、がん原性の指針を作るかどうかということです。資料3-4を見ますと、先ほど大淵さんに読んでいただきましたが、「基本的な考え方」の2段落目、「ただし、当該物質に変異原性がなく、かつ試験の高用量のみで腫瘍発生増加が認められた場合には、労働環境中の濃度を考慮して、指針策定の要否を判断することとしている」というところがあります。今回は高用量のみで論じられている。それから、変異原性があるかないかというところは、また1つ議論があるところだと思います。バイオの資料3-2、資料3-3では、変異原性がないとしておりまして、有害性評価書は判断できないと判断をしております。有害性評価書は23ページです。
 バイオの記載と有害評価書の記載は若干違っているということで、もとの情報は参考資料2-4の9ページに一覧表があります。-、+あるいは?と様々になっております。変異原性がある、とは言えない、判断できないとは言えない、ないともあるとも言えないということです。資料3-4にいう「当該物質の変異原性がなく」というところに該当するかどうかということについて、また御意見を伺いたいと思います。
 濃度の問題では、労働環境中は許容濃度が10ppmですので、これは実態調査をやっているわけではないですから現実には分かりませんが、これがある程度守られていれば、今回の発がん濃度450、300と比べると、随分低いということにはなりますが。対策課から何かアイディアはありますか。
○大淵有害性調査機関査察官 変異原性が判断できない、変異原性がありという可能性もあるというのであれば、今までも指針を作成する際には、どの濃度で腫瘍増加があったということとは関係なく、一応、指針策定に持っていく仕組みにはしていますので、有害性評価書の変異原性の判断に従ってやるとすると、特に現場の濃度と比べてどうこうということを考える必要なく、ほかのものと同じような形で指針作成を進めさせていただこうかと思います。
○大前座長 ということは、変異原性がなく、あるいは分からないところをどう判断するかというところが、非常に重要な問題であると。資料3-4の真ん中の○で「発がん性あり」と評価されたが、策定は要さず、リスク評価の対象とすべきとなったのが2物質ありますが、こういう考え方は今回には該当し得るのですか。これは該当しない。要するに、変異原性があるか分からないというのもあると考えるか、あるいはなしと考えるかで、指針を策定するか、しないかが決まってしまうという、ルールどおりいけばですが。微妙なところですが、いかがでしょうか。
○大淵有害性調査機関査察官 以前、評価していただいた2物質は、非常に許容濃度とNOAELの値に数十倍の開きがあったと。今回は、開きは数倍程度なので、その辺も考慮に入れてもいいかもしれないというところはあります。酢酸イソプロピルやジフェニルアミンのときは、許容濃度に比べて、NOAELが数十倍程度の非常に高いところで出ていたということで、その程度であれば、指針策定までは必要ないだろうという整理になってきたかと思います。
○大前座長 今回の場合は、30倍とか45倍というレベルであると。10ppmが守られていればの話ですが。清水先生、変異原性について御意見はいかがですか。
○清水委員 やはり、このデータだけでは変異原性を判断することはできないと思うのです。今まで、生殖毒性はこの中でどういうふうに考えられていますか。全く無視しているのですか。
○大淵有害性調査機関査察官 生殖毒性の考慮は、特に指針を出す、出さないというときには、その点は特に考慮はしておりません。
○清水委員 動物で発がん性があって、変異原性は分からないが、生殖毒性に関しては、これはあると判断していますので、これから女性労働者のことを考えると、ちょっと要注意かなと考えたらいかがでしょうか。
○大前座長 そうすると、がん原性指針を作ったほうがいいだろうと。
○清水委員 ばく露をなるべく低くしたほうがいいという考え方です。
○宮川委員 類似物質で、ホルムアミドの場合はどうなっていますか。
○大前座長 DMFの場合は、どうなっていましたか。ジメチルホルムアミドです。
○大淵有害性調査機関査察官 N,N-ジメチルアセトアミドのときに、どういう評価をしたかということですか。
○宮川委員 指針を作ったのか、それともリスク評価だけで。
○大淵有害性調査機関査察官 ホルムアミドのほうは、指針を進めております。当時はまだリスク検討会の仕組みがなかったときでしたが、そのときは試験結果を受けて指針作成というふうにしております。その辺は、参考資料の7番に今までの試験結果、行政対応の状況の簡単な資料が入っております。参考資料の7番の3ページに一覧表が入っております。ジメチルホルムアミドについては、試験の報告年度でいきますと、平成12年の所になっております。平成17年に指針公示をしたということです。
○大前座長 当時は、資料3-4のようなルールはなかったが、DMFに関しては指針を出したと。現実的に使い方みたいなものは、似たようなものですものね。障害部位も、物化的性質も余り変わらないですよね。そのほかに御意見はいかがでしょうか。
○西川委員 直接的な判断材料にはならないと思いますが、バイオアッセイのがん原性試験で見られた肝細胞腫瘍の発生の状況を見ますと、最高用量だけに限定された腫瘍の発生であって、コントロール群にもそれなりの発生があるということは、自然発生するものをプロモートしたパターンによく似ています。したがって、遺伝毒性については判断が難しいということですが、これは恐らく、遺伝毒性が関与しない発がんのパターンのような気がします。
○大前座長 いかがでしょうか。直接この発がんに関して遺伝毒性は関与しない可能性があると。
○津田委員 そういう推測も成り立つのですが、先ほど清水先生がおっしゃられたように、確実に否定する材料がまだないということでは、やはり、一般に言うワーストケースを考えれば「ない」と判定するのは難しいと思います。
○大前座長 いずれにしても、決定的なことは、どちらに転んでも言えないということで。津田先生は多分、安全側に見込んでやったらどうかという御意見ではないかと思いますが。
○津田委員 そういう意味です。
○大前座長 特に御意見がなければ、DMFも出していると。これもDMFは、物性、毒性、ほとんど変わらない。皮膚吸収も両方とも非常に強いことがあるということで、変異原性に関しては、確実に黒とは言えないにしても、やはり、出したほうがいいのではないかという結論で、この場はよろしいですか。それでは、この場はそのようにさせていただきます。
 次は、指針値をどうするかということです。ACGIH、産衛学会いずれも10ppmという数字を出しておりますので、あるいはMAKなども同じような数字を出しておりますので、第二評価値は10ということでよろしいですか。ルールどおりということですが。第一評価値は、バイオアッセイのデータを使った数字が出ておりますが、これをそのまま使うと。日本で出たデータですし、これを使わない理由はないということで、単純に第一評価値は、バイオからのデータということでよろしいですか。どうもありがとうございました。DMF指針に関しては、以上のようなことで終了したいと思います。
 次の議題は、(3)有機則対象物質の一部の発がん性評価について、事務局から御説明をよろしくお願いします。
○岸室長補佐 資料2-1を御覧ください。ここは提案の趣旨がまず書いてあります。有機溶剤中毒予防規則で規制対象としている有機溶剤については、中枢神経系に対する中毒を予防するための措置を義務づけているところです。しかし、今般の胆管がん事案を踏まえ、既に有機溶剤中毒予防規則で規制されている化学物質であっても、発がん性が認められるものについては、大量又は長期ばく露による職業がんの予防を観点とした管理が必要であると考えています。なお、上記の有機溶剤の発がん性に関する評価については、IARCにより評価されているところでして、資料2-2にその一覧を添付しているところです。また後ほど御説明します。
 また、現時点で有機溶剤のばく露測定のデータはないものの、有機溶剤業務における作業環境測定状況に関するデータは、参考資料8-1にあります。これもまた後で御説明します。それぞれの有機溶剤で、第2又は第3管理区分に評価されるものが認められています。また、有機溶剤等特殊健康診断の生物学的モニタリングに関する検査状況に関するデータが資料8-2に添付してありますが、それぞれの有機溶剤で分布3に区分されるものが認められたところです。
 次のページ、資料2-2を御覧ください。これがIARCにおいて「発がん性の評価区分のある有機溶剤一覧」です。順に説明しますと、テトラクロロエチレンがIARC2Aで、第2種有機溶剤です。トリクロロエチレンが2A、1が準備中です。それで第1種有機溶剤。クロロホルムについては2Bということで、第1種有機溶剤。四塩化炭素については2Bということで、第1種有機溶剤。1,4-ジオキサンが2Bということで、第2種有機溶剤。1,2-ジクロロエタンが2Bということで、第1種有機溶剤。ジクロロメタンが2Bということで、第2種有機溶剤。スチレンがBということで、第2種有機溶剤。メチルイソブチルケトンが2Bということで、第2種有機溶剤。N,N-ジメチルホルムアミドは3ということで、第2種有機溶剤。1,1,1-トリクロロエタンが3ということで、第2種有機溶剤。1,1,2,2-テトラクロロエタンが2B(準備中)ということで、第1種有機溶剤です。
 続きまして参考資料8-1を御覧ください。これは平成17年、18年に日本作業環境測定協会が調査した調査結果。統一精度管理事業調査の中の調査結果ですが、測定機関が各物質ごとに測定した状況、第一管理区分から第三管理区分までの区分状況を表にしたものです。この中で第三管理区分は、「当該単位作業場所の気中有害物質の濃度の平均が管理濃度を超える状態」。B測定にあっては管理濃度の1.5倍を超える状態ということです。第二管理区分については、「単位作業場所の気中有害物質の濃度の平均が管理濃度を超えない状態」ということで、B測定にあっては管理濃度を超え、管理濃度の1.5倍以下の状態であるということです。これを見てみますと、第二管理区分、第三管理区分の中で、それぞれ実数が上がっているということで、高いものはトリクロロエチレンなどでしたら、第二、第三で29.2%、ジクロロエタンでは22.8%という、2割超えの状態になっているという状況です。
 また、参考資料8-2を御覧ください。有機溶剤の特殊健康診断で、一部の物質については代謝物の検査を義務づけているところですが、その対象でスチレン、テトラクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、N,N-ジメチルホルムアミドにおいては分布3ですね。超えるものがあるということで、分布2と分布3の境界がACGIHで定めた基準値を超えているというものでして、体内のばく露があるということを示唆するものです。
 再び資料2-1に戻ります。このように有機溶剤であっても、発がん性が認められるものについては、職業がんを予防とした観点が必要であるということで考えているところです。検討していただきたいものとしては、発がん性が認められる有機溶剤とはどのレベルのものを考えればいいかということ。IARCの発がん性の評価レベルでは、1、2A、2B、3、4とあるのですが、3は「この物質はヒトに対する発がん性について分類できない」というものですので、2B以上のもので、かつ準備中というモノグラフを作成準備中のものも含めて、1、2A、2Bのものについては発がん性が認められるということではいかがか、ということですので、この辺りについて御意見、御検討をお願いします。
○大前座長 いかがでしょうか。大阪の胆管がんの例を鑑みて、有規則に載っている有機溶剤で、IARCで2A、2B、あるいは場合によっては3ですか。そこら辺に載っているもの等々は、「発がん性あり」と見なして管理をしたらどうかということのようですが。実際に環境測定、あるいは生物学的モニタリングで、分布3のところも結構あると。特にトリクロロエチレン、あるいはジクロロメタンですと、20何パーセントくらいが分布3になっているという、ちょっと信じられないくらいのデータですが、そのような状況があるということです。
 今リクエストがあったのは、検討事項として、発がん性があると認められる有機溶剤とは、どこのレベルまで考えたらいいのかと。案としてはIARCの1、2A、2B。それから、「準備中も含む」とありますから、3のものであっても、準備中と書いてあれば入れるということだと思いますが、そのような考え方でいいかどうか。
○津田委員 IARCのグループ分類、特に「2」は動物実験でかなりはっきりしたデータがあるということなので、それを参考にするのは大変に良いことだと思います。ただし、1、2とある場合に、1のほうから先にやらなくてはいけないことは間違いないと思います。理由は1の場合、ヒトにばく露事例があったということなので、その次が2A、2Bとなります。その辺を頭に入れて、やはりプライオリティをつけてやっていく必要があると思います。

○宮川委員 発がん性があるとして、それに応じた予防を観点とした管理をするということですが、具体的にはどういう管理が入るということですか。
○岸室長補佐 これについては、これから案を、また措置検討会などで検討していきたいとは思っていますが、少なくともまず記録は、がんということを考えれば、長期にわたって置いていただく必要はあるのかなと思っています。
 措置については、本来はばく露測定をちゃんとして、しっかりした措置を考えていくことも必要だと思いますので、その辺りは現行の措置内容をベースにした上で、あとはばく露測定結果なども踏まえて検討していきたいと考えています。
○大前座長 具体的にはこれから検討会を作るという、そういうことを考えていらっしゃるということですね。
○津田委員 このリストを見ますと、たくさんの物質が順番待ちとなっているようですが、先ほど見ると1年に1物質しかバイオアッセイセンターでやれないように見受けられるのですが、実際はどうなのでしょうか。もっとどんどんやらないと、積み残しがあって大変になるのではないかと思うのですが。
 もう1つは、IARCの評価会議は、私は1年か2年に一度呼ばれてモノグラフをお手伝いするのですが、日本発のデータが非常にないので肩身が狭い思いをしています。ほとんどアメリカのNTPのTRシリーズが多いのですが、やはり日本からもきちんと発信したデータが必要なので、そういう意味でももっとバイオアッセイセンターという、世界で1、2の施設があるので、しっかりやっていただきたいと思います。
○大淵有害性調査機関査察官 1点、誤解のないように補足させていただきたいのですが、資料2-2に記載されている物質については、これはIARCのほうで既に評価がされているようなものについては、改めて厚生労働省のほうで発がん性の試験をするという、そちらを考えているわけではなくて、既に有機溶剤中毒予防規則で規制をしているのですが、その発がん性の程度によっては、規制内容をもう少し見直していくべきという、そういうスキームになっています。
 一部の物質については、先ほど少し補足しましたが、参考資料7のほうで、バイオアッセイセンターがやった試験の物質の一覧表を載せていますが、それに該当している物質も一部ありますが、これから新たにこの物質について何か試験をやろうということでは、基本的にはありません。
○津田委員 もちろん、そういう意味で申し上げたのです。既に2Aくらいになっているのを、わざわざやる必要はほとんどないと思います。ほとんど確実なデータがあるわけです。データのないもので、予定がまだはっきりしていないのは、やはりまずいですね。よそからデータが出てくるのを待っているだけということになるのは、やはり健康を守るという意味では、少し遅きに失する可能性があると思います。
○清水委員 具体的には、これは特化則の扱いに持っていくということですか。
○角田化学物質評価室長 はい。去年のエチルベンゼンと同じような形が考えられるのではないかと考えています。御承知のとおり有機則の世界では、発散源の対策、作業環境測定、健康診断という世界はもちろんかかっているわけですが、やはり作業環境の測定結果の保存が、それぞれ3年とか5年とか、健康診断は5年だと思いますが、そこが短いということ等がありますとか、規制対象になる含有量が、ほかの有機溶剤とセットでということもありますので、そういったことを鑑みますと、胆管がん案件に関連しては、こういうのを特化則のほうに移して、それなりの長期の規制をかけていくということが、データを取るとか、そういうことが必要ではないかという考えで、特化則の改正等も視野に入れる必要があるのではないかと考えています。
○大前座長 そうしますと方向性としては、そのような方向性で、先ほどのお話ですと検討会を作って、具体的に詰めるというお話。それから、このとおりでしたら検討事項として、今日やるべき事項はIARCをまず優先的に考えていく。もちろん2A、2B、1というのは当然もうあるものですから、それは当然として、そのほかに可能性があるもの。有機則の中にあるもので、可能性がある物質。今回の場合ですと、恐らく有機塩素系みたいなものがメインになるのではないかと思うのですが、そういうものは考えていくということで、方向性はよろしいですか。
 すみません、あと10分しかないのですが、間に合うかな。では、できるところまでということで。
○岸室長補佐 15分くらいまでだったら大丈夫です。
○大前座長 そうですか。では(4)のアクリル酸メチルについて、説明をお願いします。
○大淵有害性調査機関査察官 資料の説明をさせていただきます。お手元の資料4-1になります。先ほどの発がん性試験の説明をした資料の、少し後ろになります。こちらも日本バイオアッセイセンターの試験結果の評価ということですが、経緯だけ先に申し上げます。
 このリスク評価の枠組みの中で、もともとは発がん性の関係の物質の評価から始まりましたが、ここ最近では発がん性だけではなくて、生殖毒性や神経毒性の物質についても評価をしていこうということになっています。そういった中で、生殖毒性の情報が若干足りないようなものについては、国のほうでも試験をして、情報を補ってリスク評価を進めようということで始めたところで、そういった御検討を平成23年度に、先生方のほうに小検討会でしていただきまして、生殖毒性の試験対象物質というのを選定いただきました。それがアクリル酸メチルです。
 今回、その試験結果の報告をさせていただきます。平成23年度に予備試験を行いまして、平成24年度に本試験を行いましたので、その本試験の結果を本日御説明させていただきます。
 では、バイオアッセイセンターから試験結果を説明しますので、席を入れ替えさせていただきます。資料を説明しますが、先ほどの発がん性の試験と若干違うのは、発がん性の試験については、単独にその試験結果だけで行政対応、いわゆるがん原性指針にするかどうかというスキームで検討しているわけですが、こちらの生殖毒性の試験結果については、これ単独で何か行政的なアクションを起こすということではなくて、この結果も踏まえて、既存の情報を総合的に判断して有害性の評価書作成の作業を行い、リスク評価をしていくということで、その有害性評価書を作成する際の資料の1つになるという、そういった位置づけの試験結果です。
 それでは資料4-1を説明します。まず物質の情報についてですが、構造式はこちらに書いてあるようなものです。被験物質の物理的化学的性状ですが、刺激臭のある無色の液体で、沸点が80.5℃というものです。
 2番目以下については、試験結果をバイオアッセイセンターから説明してもらいますが、資料としては、全員にお配りしているものが資料4-1。それから、先生方のみにお配りしているものが資料4-2で、ラットの試験結果の詳細を資料4-2のほうでお付けしています。それでは、バイオアッセイセンターにお願いします。
○バイオアッセイセンター(奥田氏) バイオアッセイ研究センターの奥田です。よろしくお願いします。今日はアクリル酸メチルの生殖・発生毒性に特化して説明することになっているので、資料4-1を使って御説明させていただきます。必要がありましたら資料4-2も使わせていただきます。
 まず「目的」ですが、アクリル酸メチルの吸入による生殖・発生毒性を検討するために、これはOECDのテストガイドライン422というものを用いました。この試験の方法は、一般毒性、反復投与毒性と生殖・発生毒性を両方併合して流す試験です。OECDの初期評価のときに、反復投与毒性がはっきりしない物質をやるときに、生殖・発生毒性も併せて行ったほうが素早く対応ができるということで、開発された試験法です。
 試験の「方法」は、アクリル酸メチルを0、8、40、200ppm、この濃度を用いまして、CD(SD)系のラットの雌雄、1群12匹ずつ、10週齢を用いています。試験としては交配前の2週間、それから交配期間としての2週間、それから交配後、雄に関しては2週間、合わせて雄は6週間、42日間のばく露ということになります。雌に関しては、交配前2週間。それから、交配をかけますと、すぐにかかるもの、あるいは時間、日にちを置いてかかるものがありますので、その後、妊娠19日までばく露します。したがいまして、雌では少ない動物ですと34日間、長い動物ですと42日間という幅を持っています。
 雌に関しては、妊娠19日でばく露が終わった後、ほぼ21日で分娩しまして、その後、子供が生後4日になるまで育てて、その後、解剖するという流れになっています。ばく露は1日6時間、毎日全身ばく露という形で雌雄の反復投与。それから、雌に関しては先ほど言いましたように、父親、母親の生殖毒、それから子供の発生・発育に関しての影響を調べています。
 それでは結果に移らせていただきます。資料4-1の2ページ目になります。反復投与毒性と生殖・発生毒性、2つに分けて話させていただきます。「反復投与毒性」に関しては、基本的にこのアクリル酸メチルの刺激性による鼻腔への病変という形で発現しています。200ppmの雌雄では、吸入後からくしゃみ状のもの。口から呼吸して鼻からものを出すという症状が見られています。それと同時に、鼻孔の周囲に血性様の分泌物が付着されている例も見られています。こういう症状に関しては、8ppm、40ppmには見られていません。それから、病理組織的な検査でいきますと、先ほど言いました鼻腔への病変が40ppm群から見られています。主に鼻腔の中間領域から後ろのほうにかけての、鼻腔の嗅上皮に壊死、再生が見られています。
 200ppmになりますと、それらの病変は非常に広範囲にわたって見られ、ずっと鼻腔の後ろのほうの篩骨コウカイ辺りまで見られるという形になります。なおかつ損傷の程度がひどくて、嗅上皮の多くは萎縮するという形をとっています。
 それから200ppmに関しては、鼻腔の前側のほうにあります移行上皮の再生、過形成、あるいは再生移行上皮の扁平上皮化生。それから、呼吸上皮でも同じように扁平上皮化生が見られるということです。それから、200ppmはもう少し下部のほうで鼻咽頭、喉頭及び気管等の上皮の再生も見られています。なお、雌に関しては数例ですが、角膜の浮腫や混濁が見られて、病理的には角膜炎が見られています。以上、鼻にかなり強いダメージがあるということが得られています。
 これらの動物に関しては、飼育全般に当たって体重増加の抑制が見られています。それに伴って摂餌量も減少しています。40ppmにおいては、それほどひどい変化という形にはなっていません。
 それから、この物質によって神経・行動毒性というものは見られていません。血液に関しては、最高用量でここに見られますように、いくつかのパラメータで変化がありました。それから血液生化学検査のほうも見られていますが、いずれも軽度の変化ですし、最高用量で見られたものです。なおかつ肝障害あるいは腎臓障害というような、器質的変化も見られていませんので、これらの変化に関しては有害なものではないという判断をしています。臓器重量に関してはパラパラと変化が見られていますが、体重の低値によるものと判断しています。以上、反復投与毒性はこれで終わらせていただきます。
 「生殖・発生毒性」に関しては、200ppm群、この最高用量、反復投与毒性で異常が見られた濃度でのみ変化が見られています。性周期を投与開始時から見ていますと、12匹中7例で性周期、発情周期とも言いますが、発情期が間期したものに関して、2回間期すると数値として平均値が出せますので、そういうものをレギュラーという形で正常。それ以外のものに関しては異常性周期が見られたということで、7匹に関してはそういう動物が見られています。また、計算された動物でいきますと、資料4-2のテーブル19のほうに、サイクルとして200ppm群では、計算値でいきますと有意な差が見られています。
○大淵有害性調査機関査察官 テーブル19は資料4-2の48ページです。
○バイオアッセイセンター(奥田氏) そちらのほうですと、この12匹をペアにしまして、2週間交配で、200ppm群だけ2匹交配しない動物が出てきています。数値としては2匹、率としては83.3%です。有意な差は見られていませんが、若干下がっている。交配した10匹中、そのうちまた2匹が分娩しなかったということで、10匹中8匹、80%が分娩したという数値になります。したがいまして、数値としては有意差は出ていませんが、12匹交配したにもかかわらず、4匹に関しては分娩・出産がなされなかったという見方をしています。
 次の49ページに行きますと、これは排卵した数。妊娠黄体数が200ppm群で少し減少気味。それから、着床数に関しては5%で有意差が出ています。黄体・排卵数が少なく、なおかつ着床が少なかったということで、その数値でずっとその後、出産時の子供の数であるとか、その辺も低い値で推移しています。ただし、その生まれた後の子供の生存率であるとか、あるいは体重であるとか、そういうものに関しては影響は見られていません。また、8ppm、40ppmでは全くそのような影響は見られていませんでした。
 以上、生殖・発生毒性の結果はそういうことになります。
 したがいまして、無毒性量として、本試験におけるアクリル酸メチルのNOAELは、反復投与毒性に関しては雌雄ともに40ppmの濃度から見られた鼻腔の嗅上皮の病変をエンドポイントとして、雌雄ともに8ppmと結論しています。また、生殖・発生に関しては、雄に影響は見られていませんでしたが、雌は200ppmの濃度で性周期の異常、分娩成立雌数の減少、着床痕数の減少が見られたということで、それをエンドポイントとして、40ppmであると結論しています。ただし、飽くまで高用量の200ppmで、反復投与毒性がある濃度の中での、生殖毒性の発現という条件になります。以上です。
○大前座長 ありがとうございました。今の御説明に対して、御質問はいかがでしょうか。反復投与毒性がある状態での生殖・発生毒性は、200ppmではあったというお話ですが、よろしいですか。
○江馬委員 前もって質問をして、了解しています。
○大前座長 それでは、この結果はリスク評価のほうで、リスク評価書に使わせていただくということでしたので、これは報告ということでよろしいわけですね。ありがとうございました。
 それでは最後の5番、その他ですが、事務局から何かありますか。
○岸室長補佐 今後の予定ですが、資料5に記載しています。第2回目の小検討会については、秋頃を予定しています。9月から11月頃ですが、その際には4-tert-ブチルカテコールの経口投与のがん原性試験結果の評価を予定しています。第3回は来年の1月から3月の間で、平成25年度ばく露実態調査対象物質の評価値の検討と、がん原性試験対象物質の選定を予定しています。そのほか、今月24日には第2回のリスク評価の合同検討会が、19階の専用第23会議室、ここで15時30分からありますので、またよろしくお願いします。以上です。
○大前座長 それでは一応、予定の議事を終わりましたので、これで終了したいと思います。まだ三酸化二アンチモン等、ペンディングが幾つか残っているものはありますが、そのほか幾つかの物質については、決定ができたと思います。
 それでは、少し時間が過ぎてしまいましたが、今日はどうもありがとうございました。
○津田委員 すみません。資料を探すのに、あちこち行って出てこないので、例えば物質ごとに整理するとか、もう少し分かりやすいようにならないのでしょうか。
○大前座長 それは多分、皆さんのお考えだと思うのです。
○津田委員 皆さん立板に水を流すようにおっしゃるけれども、探すほうは右を見たり、左を見たりして、見つけた頃には終わっているということなので、何とかよろしくお願いします。
○角田化学物質評価室長 分かりました。
○大前座長 是非その辺の工夫は、よろしくお願いいたします。それでは、本日はどうもありがとうございました。


(了)
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電話番号: 03-5253-1111(内線 5511)

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