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2013年6月25日 第2回 平成25年度化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会  議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成25年6月25日(火) 13:30~


○場所

農林水産省三番町共用会議所 大会議室


○議事

○中西化学物質情報管理官 本日はお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより平成25年度の第2回健康障害防止措置検討会を開催いたします。なお、恐縮ですが、本日の検討会におきまして、御発言いただく際はお手元の緑のスイッチを押していただきますよう、お願いいたします。御発言が終わりましたら、スイッチを押して電源を切っていただきますよう、お願いいたします。以下の議事進行を菅野先生にお願いいたします。

○菅野座長 本日もよろしくお願いいたします。本日は、ジメチルアセトアミドについての検討です。まず、議事に入ります前に、事務局から資料の確認をお願いいたします。

○大淵有害性調査機関査察官 事務局より資料を確認させていただきます。議事次第の次のページの配布資料一覧に沿って、確認をさせていただきます。資料は大きく2グループに分かれており、資料1-1から始まるもの、もう1つが参考資料のグループでして、それぞれホチキス止めの形をとらせていただいております。まず、ページですが、資料の右下に、つづったホチキスごとに通しページをつけております。資料1-1が、通しページの1ページから始まります。資料1-23ページから、資料1-319ページからです。資料1-421ページ、資料1-5は机上配布とさせていただいており、ページのつかない形で、1枚ものです。資料1-623ページからです。配布資料一覧にミスがあり、1つ抜けております。資料2「今後の予定」が27ページに付いております。

 続きまして、参考資料関係です。まず、参考資料の1の名簿が1ページ、参考資料23ページから、参考資料37ページから、参考資料413ページからです。資料は以上です。皆様方、おそろいになっていますでしょうか。

○菅野座長 本日の議題に移りたいと思います。まず、議事ですが、「健康障害防止指針(がん原性指針)の対象物質に追加について」、資料1-1から資料1-3まで、説明をお願いします。

○大淵有害性調査機関査察官 資料1-1から資料1-3まで説明をさせていただきます。まず、資料1-11ページを御覧ください。「健康障害防止指針(がん原性指針)の対象物質の追加について」ということで、資料を説明いたします。

 まず、ローマ数字I「指針公表の根拠及び指針の統合」のところです。厚生労働省では健康障害防止という観点で「化学物質のがん原性指針」を出しておりますが、その根拠です。国ががん原性試験を実施し、その結果、哺乳動物にがんが認められた化学物質に関して、平成3年以降、労働安全衛生法第28条第3項の規定に基づいて、大臣名で指針を出しております。大臣は「がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのあるもの」に該当するような化学物質を告示で定め、告示の下に具体的な健康障害防止指針を公示の形で公表しております。

 平成3年から指針を出し始め、平成18年までに、四塩化炭素をはじめとする計18物質について告示で定め、物質ごとに18の指針を公表してまいりましたが、平成23年に、少し指針の形を変えており、物質ごとに1本の形から、対象物質全体で1本の形に変えております。その際、8物質を追加する形にしたので、平成23年の段階で、計26物質について、指針を公表しております。

 その後、ローマ数字IIですが、「指針統合後の対象物質の追加」ということで、平成2410月に2物質、具体的には1-ブロモブタン、2-アミノ-4-クロロフェノール、こちらを告示の対象物質として追加し、それを取り込んだ形の指針に改正をしております。

 昨年改正した、平成24年の指針の内容がローマ数字IIIです。1番の趣旨のところは従来と変わっておりません。対象物質及び対象物質を重量の1%を超えて含有するものを製造し、又は取り扱う労働者の健康障害を防止するため、事業者が講ずべき措置を定めることとしております。2番の対象物質では、28物質について、物質名とCAS登録番号を列挙しております。

 具体的な指針の中身が3番以降です。3番として、対象物質へのばく露を低減するための措置についてです。指針対象物質を適用法令により3つのグループに類型化し、措置を規定しております。3つのグループは、その下の(1)(2)(3)のとおりです。グループ分けをし、さらに、それぞれの中で作業環境管理、作業管理、排気・排液等による汚染防止、保護具、作業基準の策定といったことを定めております。この平成24年の指針においては、1-ブロモブタン、2-アミノ-4-クロロフェノール、これらの保護具に関しては、指針本体ではなく施行通達の中で、具体的にどんな保護具が適切であるかを記載しております。

4番の作業環境測定については、適用法令により2つのグループに類型化し、措置を規定しております。評価指標が設定できるものは測定と評価の両方を記載し、評価指標が設定できない場合には測定のみということを規定しております。測定結果、評価結果の保存は30年間ということで、これは発がん性の物質であることを考慮し、保存期間を長く設定しております。追加した2物質については測定は可能なのですが、現段階では評価指標が設定できないため、指針では測定のみ行う形で規定しており、測定の具体的な方法については、施行通達で示しております。

 これ以外の内容としては、5番の労働衛生教育について、及び6番の労働者の把握について、1月を超えない期間ごとに氏名や業務概要の記録を行うことを規定しております。7番は、危険有害性等の表示及び譲渡提供時の文書交付についてです。適用法令により3つのグループに分け、表示とSDSが義務付けられている物質、SDSの交布のみが義務付けられている物質、どちらも義務付けられていない物質に分けて、措置を規定しております。これが最新の指針の中身です。

 今回、先生方に御議論していただく物質は、国ががん原性試験を行った1物質のN,N-ジメチルアセトアミドです。平成252月に開催したリスク評価検討会の第1回有害性評価小検討会で、がん原性が認められるという評価がされております。資料1-2にその報告の記載があります。こうしたデータの評価結果に基づき、労働安全衛生法第28条第3項に基づく指針を策定していただくこととなります。

 申し訳ありません、訂正ですが、「リスク評価の対象とする予定としている」と記載しておりますが、通常ですと、指針を作り、次にリスク評価を行うという段取りで進むのですが、この物質については、リスク評価のほうが先行しており、直近では先週621日にリスク評価検討会が開催され、評価が行われております。最終的な報告書は後日公表になりますが、先生方には、先週621日の検討会の資料、「初期リスク評価書()N,N-ジメチルアセトアミド」を追加資料としてお配りしております。

 資料1-1に戻り、ローマ数字V「今回の検討会での検討事項について」です。指針追加予定のN,N-ジメチルアセトアミドについて、指針を運用するための専門的な事項として、丸数字1保護具の関係、丸数字2作業環境測定の方法・測定結果の評価指標について、検討いただく予定としております。検討していただいた事項は、指針の施行通達に反映させる予定です。

 引き続き、資料1-23ページの「発がん性試験結果の評価について」を御覧ください。今年度は2物質(N,N-ジメチルアセトアミド、4-tert-ブチルカテコール)について、有害性評価小検討会での評価を予定しております。そのうち、既に試験結果が出ておりますN,N-ジメチルアセトアミドの評価結果について、資料に記載しております。平成2552日の第1回有害性評価小検討会において、評価を行っております。試験結果の概要ですが、N,N-ジメチルアセトアミドではラットの雄、マウスの雌雄に対して発がん性が認められると評価されております。また、ラットの雌に対しては、発がん性は認められないと評価されております。関連して、変異原性についても併せて議論がされております。こちらの物質については様々な変異原性関係の試験が実施されており、結果が陽性のものと陰性のものと混ざっている状態で、現時点ではこの物質について、変異原性の有無は判断できないとされております。

 実際に、発がん性試験において腫瘍が認められた状況ですが、ラットの雄、マウスの雌雄のいずれにおいても腫瘍の有意な発生増加が認められたのは最高用量のみであったが、N,N-ジメチルアセトアミドは変異原性の有無が判断できないことから、安全側を考慮し、健康障害を防止するための指針の対象とすべきとされています。また、N,N-ジメチルアセトアミドについては、経皮吸収を考慮した対策が必要であるとされております。

 より細かい資料については、次の5ページ目から資料1-2の別添ということで、52日の小検討会の資料をそのまま付けております。先ほど最後に申し上げた辺りと、実際どの辺りで腫瘍が発生しているかどうかという資料については、資料の通しページで1213ページに、試験結果の表を付けております。12ページはラット、上が雄、下が雌の結果です。13ページはマウスの雄、雌それぞれの結果です。ラットの雄、マウスの雌雄、いずれも肝臓関係にがんの発生が見られます。濃度について、ラットは01890450ppm、マウスは01260300ppmでとっておりますが、腫瘍の発生増加が見られるのは、一番高い濃度のところにおいてのみという状況でした。

 先ほど変異原性関係の説明を少しさせていただきましたが、こうした高濃度のところだけがんが発生するようなものについては変異原性があるかないかによって、指針の対象にすべきかどうかを少し考慮しなければいけないということで、変異原性についても説明させていただきました。小検討会での議論では、現在得られているデータからは変異原性有りとも、無しとも判断できないので、安全側を考え、この物質については指針対象とすることとなったものです。

 机上配布のみで申し訳ございませんが、追加資料も併せて御覧ください。初期リスク評価書、ジメチルアセトアミドの資料です。こちらについてはリスク評価ということで、有害性の評価、ばく露の評価を行っております。図の資料としては、今お配りしている資料の最後の6ページに、N,N-ジメチルアセトアミドの個人ばく露測定の結果があります。リスク評価の際には、2次評価値として産業衛生学会やACGIHで用いている10ppmを基準値としております。実際の現場での吸入ばく露の結果はそれぞれグラフのとおりの状況で、10ppmよりは大きく下回っています。

 この委員会の評価として、5ページにリスク判定及び今後の対応ということで、以上のことからジメチルアセトアミドの製造取扱事業場におけるリスクは低いと考えられるが、当該物質は人に対して発がん性が疑われる物質であり、事業者は当該作業に従事する労働者等を対象として、自主的なリスク管理を行うことが必要と考える。なお、N,N-ジメチルアセトアミドは経皮吸収性が極めて高いことから、十分注意が必要であり、この観点からも事業者による自主的なリスク管理が必要であるとしております。

 これは委員会での資料ですので、確定版ということではありませんが、遠くない将来、最終的な評価書という形で、公表させていただくことになろうかと思います。今申し上げたように、吸入ばく露の観点から見ますと、必ずしもばく露は高くないということで、リスクは高くないというような判断でしたが、経皮吸収が高い物質という観点からの配慮が必要という議論が、リスク評価検討会でなされています。

 資料1-3を説明いたします。指針対象物質として予定しているN,N-ジメチルアセトアミドの基本情報について、構造式、別名、CAS番号、物理化学的な性質、生産量、用途、有害性関係の情報について整理しております。物理学的性質のところは省略をしますが、生産量としては約1万トン程度、用途としては反応触媒、精製溶剤、樹脂溶剤、塗料はく離剤、医薬品関係(難溶化合物の溶剤)の形で使用されております。

 労働安全衛生法上の規制ですが、現行では施行令別表第9SDSの通知対象物質となっております。がん原性の評価ですが、IARC、日本産業衛生学会、ACGIH、いずれも現段階では評価が決まっていない物質です。国が実施した試験結果の概要は、先ほど説明したものを文章の形でまとめたものです。変異原性については、微生物を用いる試験の結果について記載しております。総合的ないろいろな試験の評価からすると、現段階では変異原性については判断できない状況です。これ以外の有害性ということでは眼の刺激、生殖能や胎児への悪影響、眠気やめまい、長期にわたる又は反復ばく露による肝臓の障害、呼吸器系の障害のおそれがあるなどの有害性があります。ばく露限界としては、ACGIH、日本産業衛生学会ともに10ppmという数値を示しております。ジメチルアセトアミドの基本情報については、以上です。説明は一旦ここで区切らせていただきます。よろしくお願いいたします。

○菅野座長 ありがとうございました。ただいまの御説明について御質問、御意見等がありましたらお願いします。

○唐沢委員 1ページ目の下から2行目の(2)の「特定化学物質障害予防規則の対象物質(含有量5%超え)」と書いてあるのですが、パッと見ると1%超えのほうがより適切な表現ではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。次のページの上から6行目の(1)も特化則の対象物質で、両方5%かかるのですかね。念のためにお願いします。

○大淵有害性調査機関査察官 こちらはちょっと分かりにくい表現になっており、申し訳ないのですが、具体的な指針の内容について参考資料3に指針そのもの、参考資料4にパンフレットのコピーをお付けしておりますが、指針の書き方が一般の方が読むと少し分かりづらいような形になっております。具体的なところで申し上げますと、ばく露低減のための措置の関係ですが、参考資料の通しページの8ページに、3「対象物質へのばく露を低減するための措置について」が書いてあり、ここのところで3の中に(1)(2)、次の3ページの真ん中辺に(3)と書いてあります。なぜこういう形になっているのかといいますと、まず、指針は全体的にはその物質を1%を超えて含有するようなものを指針の対象とさせていただいております。ただ、対策については、既に有機則なり特化則で規制がかかっている物質と、それ以外のもので書き分けをさせていただいています。

 

3(1)ですが、有機則で規制がかかっている部分ということで、有機溶剤業務であって、かつこちらに書いてあるようなクロロホルム以下のこういった物質を重量の5%を超えて含有するものについては有機則がかかっていますので、これは有機則に基づく措置を講じてくださいというのがこの(1)の概要です。

8ページの下の(2)、こちらはパラ-ニトロクロルベンゼンの関係です。これはパラ-ニトロクロルベンゼンのほうは特化則がかかっており、重量の5%を超えて含有する部分について特化則がかかっていますので、そこの部分は特化則に基づいて措置を講じてくださいというのが、(2)の基本的な趣旨です。

9ページの(3)は、大きくいうと有機則・特化則の関係の物質以外の物質と、有機則・特化則の物質であっても含有量が1%から5%の間については、有機則なり特化則のものがかかりませんので、それについては(3)で読むという作りになっています。

 あるいは有機則の関係でいきますと、有機溶剤でも有機溶剤業務以外のを業務についてもやはりこの(3)で読むという形になっています。これを表したのが資料1-11ページ目の下の(1)(2)(3)で、今申し上げたところに対応する構成になっています。

○唐沢委員 今の御説明で分かりましたので結構です。

○菅野座長 ほかの点についてはいかがでしょうか。

○大前委員 私から1つお伺いしたいのですが、初期リスク評価書案の4ページの評価値で、2次評価値が10ppmというのは発がん性は全く考慮されていない値と理解してよろしいわけですね。

○菅野座長 これは発がんの情報がない時代の数字ですからおっしゃるとおりです。

○大前委員 1次評価値のほうはこれは危険性というか、確率がどのくらいの値なのですか。

○菅野座長 これは閾値があるということを前提として計算しておりますので、今の前の3ページの10行目のところで計算した場合にこういうようになるということです。

○大前委員 ありがとうございます。

○大淵有害性調査機関査察官 それでこの関係で補足させていただきますと、今、1次評価値のところに4.5×10-1と書いてあるのですが、こちらは参考値というような値を最終的には報告書の中では追加する予定にしております。それもありまして後ろの6ページにあるグラフには、今のバイオアッセーの試験結果から求めた数字は特にグラフには入れておりません。バイオの値から求めた値は、あくまでも1次評価値の参考値扱いになろうかと思います。

○菅野座長 すみません、もう1点ですが、先ほどリスク評価書案の5ページの4で、リスクが低いと考えられると書いてあるのですが、これは10ppmと比べた場合の結論のように見えるのですが。

○名古屋委員 リスクの手順に従いますと、ばく露濃度が2次評価値より下回っているときには初期リスク評価で終了という約束になっています。ただ、そうは言っても経皮吸収があるので、ここのところは注意したほうがいいですねということです。だから、初期リスク評価で終わっています。これから先へは進めないということになります。

○菅野座長 発がん性は考慮の対象外という形ですね。

○名古屋委員 はい、そうです。

○菅野座長 どうもありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。

○名古屋委員 1点いいですか。2ページのローマ数字IVで最後の段落で結構なのですが、「に基づく指針を策定するとともに、リスク評価の対象とする予定としている」と書いて、リスク評価の対象の文章がちょっと違うような気がするのですが。

○大淵有害性調査機関査察官 資料の1-12ページですが、ローマ数字IVの最後の行ですが、こちらは訂正させていただきます。リスク評価を行って、それが現段階ではリスクは低いと評価されたというような書き振りに直させていただきます。そこは修正した上でホームページの掲載はさせていただきます。

 同じくローマ数字IVのところで動きがあり、2行目の「平成252月」と書いてあるのですが、これは5月の誤りです。申し訳ございません。

○菅野座長 ほかにはいかがでしょうか。それでは引き続きまして資料1-4から1-6までの御説明をお願いします。

○大淵有害性調査機関査察官 資料1-4以下について説明をさせていただきます。資料1-4「指針対象物質において使用すべき保護具()」ということで、こちらはこの検討会の委員であります田中先生に原案を作成していただいております。N,N-ジメチルアセトアミドです。順に説明をしてまいりますが、まず呼吸用保護具の関係で推奨されるもの及び留意事項ということで、右側の規格のところは読み上げを省略させていただきます。呼吸用保護具、送気マスク、有機ガス用防毒マスク。作業環境中の濃度や作業時間を考慮して、適切なものを選択すること。常温で液体であり、特徴的な臭気がある。

 次は保護衣、保護手袋等です。耐透過性、耐浸透性、反発性については、それぞれJIST8115に定める試験の結果から得られた等級を踏まえ、等級ごとに示されている透過時間等を考慮した対応(使用時間を記録し、透過時間を経過する前に保護服を交換する)が望ましい。なお、当該物質を使用する際に、化学防護服、化学防護手袋及び化学防護長靴については、別にJIST8115に定める試験を行うことが望ましい。また、気密型保護服、密閉型保護服の使用にあたっては、暑熱環境等物理的要因を考慮し、適切な対応を取ることが必要である。注意事項として、経皮吸収による健康障害を防止するため、保護衣、保護手袋等を確実に使用すること。

3つ目の項目の保護眼鏡です。ゴグル型の使用が望ましい。また、一度破損又は汚染したものは使用しないことが望ましいです。

 こちらに関係して、資料1-5ではいろいろな保護具関係の性能のデータを、田中先生に取りまとめをしていただいております。こちらは田中先生に説明を今お願いしてよろしいですか。

○田中委員 はい。各保護具メーカーに協力いただきまして、N,N-ジメチルアセトアミドに対する基礎データの有無について確認しました。その得られた情報を整理したものが資料1-5です。有機ガス用吸収缶に関してはA社から破過濃度5ppm、流量30L/min、温度20℃、相対湿度50%で、試験濃度として100ppmの試験条件で、DMAC(ジメチルアセトアミド)に対する破過時間は1362分というデータでしたある。参考に基準ガスであるシクロヘキサンを同一の吸収缶で行いますと520分ということですので、およそシクロヘキサンに対しては2.6倍近い相対破過比を有する結果が得られたというわけです。300ppm500ppmに関しては、これは田中が間違えまして、後でまた正式にはきちんと直したものを出したいと思いますが、試験条件として、温度が30℃、湿度が80%で試験をしたときのデータでした。すみません。これはそういう意味では削除してもいいかと思います。A社のほうからは取りあえずはシクロヘキサンに対して2.6倍の破過時間が得られたという結果です。

 次にB社において、破過濃度5ppm、流量30L/min、温度20℃、相対湿度50300ppmで試験を行ったとき、ジメチルアセトアミドに対する破過時間は1093分と、同一の条件でシクロヘキサンを用いた場合の破過時間260分と比較すると、相対破過比が4.2でありました。

 以上の結果から、このジメチルアセトアミドのばく露防護のための吸収缶としては、有機ガス用吸収缶が有効であるということが両メーカーからの結果から言えました。

2番目に化学防護手袋に関して、ジメチルアセトアミドに対する透過時間は長ければ長いほうが望ましいという結果ですが、A社からはナイロンをラミネートしたフィルムですが、480分以上というような結果が得られています。それ以外はA社の製品に関しては、短い透過時間でありました。

B社の試験結果においては、エチレン・ビニルアルコールの共重合体を含んだラミネートのフイルムによる結果が4時間以上、ブチルの素材が8時間以上というようなことでした。

 「Quick Selection Guide to Chemical Protective Clothing」という書籍の中で、推奨できる素材として8時間以上の透過時間が3種類の素材の手袋を、推奨できない素材として、透過時間が1時間以内の素材としては6種類の素材が記載されていました。以上の結果から、化学防護手袋にしても、ジメチルアセトアミドについて透過しにくい素材というのは市販されているということが分かりました。

3番目に化学防護服についても同様に透過時間、公表しているデータを整理したらA社の製品の中で、3種類の素材の防護服においては480分以上という結果が得られました。化学防護服についても、現場で透過しにくい素材の服を選ぶといった際にも選定することが可能であるということが分かりました。これらの基礎データを踏まえて、先ほどの資料1-4という形での「使用すべき保護具()」というのを作成したということです。

○大淵有害性調査機関査察官 ありがとうございました。それでは続きまして資料1-623ページを引き続き御覧いただければと思います。資料1-6が「指針対象物質の作業環境測定の方法及び測定結果の評価指標()」です。こちらについては先ほどお話に出ましたリスク評価を行う際に、測定方法の検討等が行われており、それを基に、こちらの資料を作成しています。リスク評価の際の測定の関係を取りまとめた資料が資料1-6の次のページ、25ページにあります「N,N-ジメチルアセトアミドの標準測定分析方法」というものですが、これをより簡単にまとめたものが23ページになります。

 測定の方法ですが、試料採取方法としては固体捕集方法、分析方法はガスクロマトグラフ分析方法ということで、評価指標としてはACGIHTLV10ppm、日本産業衛生学会の許容濃度の10ppmが評価指標の案ということです。

 参考としては作業関係測定方法のもう少し詳細ということですが、こちらが定量下限、捕集法、分析法及び検出器となっておりますが、定量下限のほうは数字に誤りがありまして、0.06ppmと書いてありますが、次ページの資料に合わせますと、こちらが0.5×10-3ppmということです。次のページの下から4分の1ぐらいに定量下限がありますが、そこに0.5×10-3 ppmと書いてありまして、採気量が24Lということです。

 こちらは捕集法としては具体的には活性炭管を使っておりまして、0.1L/minということですので、定量下限に書いてある24Lを取るためには240分かかっていますので、より現場に近い方法ということですと、これを240Lではなくて、1L捕集の形にして、定量下限の数値を改めたほうがより適切かと事務局では思っております。分析法及び検出器ですが、こちらについては溶媒脱着でガスクロマトグラフをかけており、検出器としてはNPD検出器を使用しています。こちらは測定方法の参考の例ということです。

 次ページは参考資料という形で、リスク評価検討会の資料をお付けしましたので、特に事務局からは説明いたしませんが、必要に応じ御覧いただけたらと思っております。説明は以上です。

○菅野座長 ありがとうございました。保護具及び測定法の具体的な目的ですが、ただいまの御説明について御意見、御質問がありましたらお願いします。

○保利委員 資料1-5です。先ほど田中先生から、300500については30℃、80%ということでしたが、これはシクロヘキサンも同じ条件ですか。

○田中委員 同じです。

○保利委員 そうすると、例えば20℃、50%にすると、基本的にもっと長くなると考えてよろしいのですね。

○田中委員 はい。

○保利委員 先ほどの作業測定のところですけれども、別添で書かれているのは240分ということですので、個人ばく露を想定した条件ですよね。資料1-6では「作業環境測定の方法の詳細」と書いてあるので、ここをどういう形でまとめるか。個人ばく露とはかなり条件が違いますので、その辺は御検討をお願いしたいと思うのです。

○東久保氏(中災防) このときのばく露測定の方法を開発した関係で、同じ開発している間に作業環境測定は、10分間測定でのデータも採取しておりますので、その分についてお話させていただきます。10分間0.1L/分で10分間引いたとき、1L採気のときに定量下限として、このときの報告書では0.142ppmが記載されておりますので、この方法、つまり100mg/50mg2層式の合成活性炭チューブを用いてアセトン脱着をして、ガスクロマトグラフ/NPD検出器を用いて分析しますと、0.142ppmはクリアできるものと考えております。

○岡部委員 呼吸用保護具については、動物実験のデータが出ていますので分かるのですけれども、経皮の関係で、極めて経皮の吸収が高いという記述があるのです。ここについての詳細なデータなどを、今日の資料から読めることはできるのでしょうか。

○大淵有害性調査機関査察官 経皮吸収のストレートの測定ではないのですが、ジメチルホルムアミドの尿中代謝物の測定を、621日の検討会の際に委員である圓藤陽子先生から、資料として配布いただきました。御自身の所属される病院で受託している尿中代謝物の測定結果ということで、受託数が何件あって、そのうち基準値30mg/Lを超える超えないということで、その検討会の中で数値を追加資料としてお出しいただきました。

 これは2011年度と2012年度の2年間にわたって、データをお示しいただいたのですけれども、、2011年度については受託した試験の数が1,279件、そのうち尿中代謝物が基準値である30mg/Lを超えたものが93件ということで、割合にすると7.3%が基準値を超えました。2012年の場合、件数が全体で1,812件あって、そのうち215件、割合にして11.9%が基準値を超えるような値だったということで、それなりに高いばく露が尿中代謝物から推測されます。検診の結果、がんではないけれども、労災の事例として今、アセトアミドを使って劇症肝炎などの症状の労働者が出ているという話も、その会議の際にしていただいております。

○岡部委員 今のお話ですと、そういったものが経皮吸収から起こっているということで、そういうデータが出ているのですね。

○小野委員 今の圓藤先生のデータについてです。尿中代謝物についての結果ですが、作業者の方は皆さんマスクをしていて、ばく露は経皮からだけというデータですか。

○中西化学物質情報管理官 申し訳ございません。そこまでの情報は、先生からお伺いしておりません。

○小野委員 両方込みの可能性もあるのですね。分かりました。

○大前委員 1990年の半ば頃に、我々の教室で経皮吸収のみと、経気道吸収のみのヒトのばく露実験をやっております。尿中の代謝物で見ているのですけれども、安静時、同じもので大体半々ぐらい出ています。それから確かDMFのほうで、実際に現場の労働者にもやっていただきました。そのときは呼吸量が増えますので、当然気道からの吸収のほうが多くなるわけですけれども、それでもやはり相当な量が、皮膚から入ってきます。これは確か産業衛生学雑誌の英文誌のほうに投稿したと思います。特にそういうのはあると思います。

○櫻井委員 追加資料の初期リスク評価書案の4ページの一番上に、「許容濃度等」ということで、いろいろな種類の許容濃度等が列記してありますけれども、全て経皮吸収に注意というマークが付いております。今、手元にありませんが、それぞれこれを勧告したときに、その根拠が明確に示されているはずだと思います。ヒトのデータか動物のデータか分かりませんけれども、根拠は明記されていると思います。

○菅野座長 ありがとうございます。別件ですけれども、田中先生におまとめいただいた資料1-5についてです。化学防護服には商品名が載っていますが、材質は分かるものでしょうか。

○田中委員 化学防護服は何層もバインディングした素材のために、記載しにくい、あるいはメーカーが公表できないものがあるということで、委員だけに見ていただくという形を取りました。メーカーとしては素材を提示できないという条件だったものですから、委員だけに資料を見ていただいたということで、御理解いただければと思います。素材としては少ないものでも6種類ぐらい、多いものですと10種類ぐらいの素材をバインディングして、バリア性を持たせたり特性を出したりしています。

○菅野座長 お伺いしたかったのは、1番目に「即時」と書いてあるのは、持たないという意味ですよね。

○田中委員 はい。これは確か素材のメインの所はポリエチレンです。ですから手袋でも同様ですが、持たないし、バリア性はないということです。そういうデータも公表されています。

○菅野座長 保護具を推奨するときに、特定の銘柄の特定の製品というわけにもいかないでしょうから、一般的にできるといいなと思ったのです。

○田中委員 私案として素材などを発表するのはいいと思うのですが、公的には配慮が必要でしょう。

○大淵有害性調査機関査察官 行政通達で書きますので、商品名はなかなか書けないため、きちんと必要なデータを取って、その上で使えるかどうかを判断してくださいということを、通達の文章として書き加えております。

○菅野座長 もう1点。化学防護手袋や防護服というのは、全て使い捨てと理解してよろしいのでしょうか。

○田中委員 中にはそれほど安くないものもありますので、高いものに関しては現場でうまく、再使用するような方法を考えて使用しています。

○櫻井委員 質問させていただきたいのは、保護眼鏡についてです。望ましいということは分かるのですが、角膜からの吸収を予防するということなのでしょうか。

○田中委員 はい。あと、気体であるのでゴグル型という、きちんと密閉の形のものが望ましいということで記載しております。

○小野委員 保護衣・保護手袋の透過時間についてです。透過性の場合はガスの透過の話というか、蒸気の透過の話だと思うのです。溶液があると結果として、多分透過がより早まるという形になると思うのですが、そういうことについての記載がないようなのです。その点については、どう考えればよろしいのでしょうか。

○田中委員 試験方法としては、ガラス製のげんこつのような2つのセルの間に素材を挟み込みます。こういう場合、一方のセルには試験薬剤を液体の状態で入れて、接触させて、時間の経過とともに反対側のセル、手のほうに相当する部分に新鮮空気を送り込んで、出口側で高感度な分析機器で分析しなさいという形になっています。液体で接触させて、素材の中は気体の状態で移動しながら透過する時間を求めているわけです。記載された透過時間は、単位時間、単位表面積当たり0.1μg/min/cm2が得られるまでの時間であります。我々は一般的にFIDのガスクロの定量下限の10倍前後、すなわち比較的低い濃度で得られるまでの時間を求めているのです。その結果が、例えば480分以上ということで記載しています。

○小野委員 では、直接液体に触れないような所だと、かなり安全側に見ているという考え方でよろしいわけでしょうか。

○田中委員 はい、そうです。

○櫻井委員 先ほど大前委員から御説明があったのは、ガスの皮膚からの吸収のデータということになりますか。

○大前委員 発生蒸気のデータです。

○菅野座長 気体なのですか。

○櫻井委員 それで50%ぐらいですか。ジメチルホルムアミドのデータですか。

○大前委員 両方やりました。どちらがどちらか、今ははっきり記憶がないのですけれども、両方とも余り変わりません。50%弱という似たような挙動を示します。

○櫻井委員 DMFDMACでは、溶けにくいものを溶かす溶剤だと書いてありましたので、正にそういうものだからこそ、何でもよく透るという感想を持ちました。

○菅野座長 私は液体だとばかり思っていました。気体でばく露して、経皮吸収が。

○大前委員 そうです。蒸気ばく露です。ガスではありません。

○菅野座長 肺からの吸入と皮膚からの吸入が半々ぐらいですか。

○大前委員 同じぐらいです。同じ濃度です。通常の安静で呼吸した場合に出てくる尿中代謝物と、皮膚だけにばく露した場合に出てくる尿中代謝物の濃度は余り変わらない。

○小野委員 要するに全身ばく露だと思うのですけれども、皮膚というのは、普通に洋服を着ているということですか。

○大前委員 この場合は実験しているレベルですので、上半身裸の状態です。

○岡部委員 先ほど保護眼鏡のところで、ゴグル型のほうが望ましい理由として、いわゆる蒸気の話が出ています。普通、ゴグル型が望ましいと使用者側が考えた場合、飛まつが飛んで目に入ってしまったら、薬傷になるといった形で考えられるのが普通かと思います。ガスからの吸入を考えるのであれば「ゴグル型が望ましい」という後に、その注釈として、「経皮の吸収を防ぐため」といったものを入れたほうがいいのではないでしょうか。なぜゴグル型かといったことがあれば、よりその理由がはっきりするのではないかという気がいたしました。

○櫻井委員 私も全く同じ意見です。意味がよく分かったほうがいいという気がいたします。

○田中委員 分かりました。

○菅野座長 経皮吸収に対する結果が、気体のばく露で得られたということになりますと、保護衣や保護手袋を使っても、ほとんど意味がないということにはならないですか。

○大前委員 意味がないとは全く思いません。例えば、保護手袋などは非常に効果がありますよね。これは液体の場合もそうですし、もちろん気体ですと、もっと安全側に効果があります。確かこれは田中先生がやられたのではなかったですか。保護衣の場合も、保護衣の裏側と表側にサンプラーを付けてやっていらっしゃいましたよね。

○田中委員 はい。実は、一般の混紡の作業着で作業をしている事業場が多いわけです。とりわけDMF(ジメチルホルムアミド)を対象にして、一般の作業着でどのくらい透過してくるのだろうかということで、大前先生に御紹介いただいた活性炭のフェルトを外側に付けたものと下着、つまり混紡の作業着の内側にどれだけ透過してくるかを測定するため、1日作業をしてもらいました。活性炭のフェルトは8か所、部位を変えてしました。混紡の作業着で作業をすると、部位によって若干の変動はあるのですけれども、外側に捕集したDMF量に対して、内側に透過したDMF量の比率は、夏の時期で大体5060%、冬の時期で40%前後の透過率を示しました。

 それを化学防護服、先ほどの素材の中で480分以上という結果が得られている素材を使用しますと、5%未満になりました。通常、多くはガス状で浮遊している中で作業をしていて、中には一部、飛まつが飛ぶような作業もあるわけですけれども、防護服を着ることによって、ばく露はかなり防げるという結果を得ています。

○菅野座長 それは実際の作業員でですか。

○田中委員 作業者6名に協力いただいて、1日作業をしてもらいました。手袋に関しても、ウレタン樹脂で車の椅子を作っている工場でしたが、そこでは1日の作業が終わりますと、ウレタンを噴射するノズルを取り外してそれをバケツにDMF溶液を入れて、手袋をして洗浄するという作業を行っていました。その事業場の産業医の先生が、特殊健康診断で金曜日の作業終了時時に尿中のNMF(尿中代謝産物)を測定してみると、必ず基準値を超える作業者が、毎回1割ぐらい得られました。作業環境測定をやっても第1管理区分で問題がないのにと、悩んでいました。 産業医の先生が「ちょっと田中君、来い」ということで、現場へ行きましたら、その事業場では、天然ゴムの手袋を穴が開くまで使用していたということです。結構丈夫で、2か月ぐらい使用していました。しかし、DMFに対しては数分で透過する素材でしたので、作業者はDMFによる経皮吸収によるばく露をしていたのです。そこで事業場では、透過しにくい手袋に替えました。ガスではなく、液体との接触の中で手袋を使っていた事例ですが、効果があるということを紹介させていただきました。

○菅野座長 効果がないという私の発言は、適切ではないかもしれませんけれども、作業をする時期によっても違うのではないかと思います。夏場だと風通しを良くしますよね。そうすると化学防護服とか、密閉されているものもあるとは思いますが、首などは開いているわけですよね。そうしたら当然入り込み得るわけです。作業をするとポンピングの効果もありますから、気体のばく露だけでそれだけ吸収があるとしたら、防ぐのはなかなか難しいのではないかと思うのです。冬とか、余り通気性のない状態でしたら大丈夫かとは思いますが。

○田中委員 先生のおっしゃるとおり、原子力発電所で着ているように完全に防護してもらえれば、ばく露はもっと少なくなるのでしょうけれども、先ほどの実験をやったときも、例えばフードは日本の作業現場ではなじまないということで、フードの部分を切りました。やはり首の周りに隙間ができてしまうのです。足のほうも、ブーツまでカバーができるのですけれども、それも作業で1日着ているのは作業しにくいということで、その実験のときもブーツの所、安全靴の部分は切りました。そうすると、どうしても隙間が出てくる。それがもしかしたら5%に相当する、それに近いばく露が確認されたことに結び付くのだろうと考えました。全体としてはかなり防護できているのですけれども、その隙間から入ってきたことが、結果として出ているのではないかと解釈しました。よりばく露を減らせということであれば、また工夫が必要なところです。

○岡部委員 「保護衣・保護手袋等」の※に、「経皮吸収による」というのがあるのですが、そうであれば、ここも「蒸気による」とか「ガスによる」と書けば、なぜこれをしなければならないのかというところに結び付くのではないかという気がいたします。

○田中委員 はい、分かりました。

○櫻井委員 もう1つ質問させていただきたいのは、保護衣等の場合はマスクと同じように、透過した歴史は積み重なっていくわけですか。それとも、時間で廃棄するのは高いから余り簡単にはとおっしゃいましたけれども、やはり何回も使っては具合が悪いということですね。

○田中委員 有機ガス用吸収缶と同じ理屈ではないかと思うのです。ですから何回か使用することによって、破過(破過)時間は短くなるのです。ただ、保管する方法を考えると、ガスクロのバックフラッシュというのもいつも言っているのですけれども、現実的にはなかなか行われていないのですが。内側から空気を送る方法で、バックフラッシュをかけて脱着する。例えば手袋なども、中は汗でたまってしまうわけです。使用後の手袋を置いて、乾かすときにバックフラッシュという発想で処理すれば、また使用時間が延びるのではないかと頭の中では考えられているのですが、まだ実験はしていないところです。

○保利委員 これは洗えるのですか。洗ったら変わってしまうということはあるのでしょうか。

○田中委員 大きく言うと樹脂でできた手袋と、フィルムの手袋があるのですが、バリア性があるのは比較的フィルム状態の手袋で、結果として透過時間が長いのが多いです。ところがちょっと傷が付くだけで、透過時間が短くなるということを経験したことがあります。そうすると、洗うことで性能を維持するというのは、またひと工夫必要ではないかと思っております。

○保利委員 表面状態が変わると、当然変わってくる可能性があると思いますので、余り洗わないほうがいいかと思うのです。ただ吸着、いわゆる過圧着をしなければ、再生は活性炭に比べるとしやすいのではないかという気がするのです。その辺はまだやる必要があるかと思います。

○櫻井委員 それを何とか延ばす研究というのは、多分メーカーの方はなさらないと思いますので、労働安全衛生研究所とか産業医科大学でやっていただけたらと思います。田中先生はもちろんですけれども、お一人で頑張っていただくのもあれですから。

○菅野座長 例えば、8時間本当に連続して使ったら、浸透するのに8時間分浸透しているわけで、それを16時間置いたらなくなるかというと、なくならないと思うのです。濃度の効果が低くなってしまうので、出てくるほうは余計に時間がかかりますから。ですから本当は、繰り返し使用というのは非常に難しいのではないかと思うのです。田中先生が御指摘になったように、漏れてくる濃度自体は非常に低くなっていますので、23回で問題があるかどうかは分かりませんけれども、長期間何回も繰り返すと、中に溜まった状態になってしまうということです。

○田中委員 メーカーは廃棄してもらいたいと思います。ただ、保利先生がやっていらっしゃるバックフラッシュをかけ、加熱するか、温度の高い空気を流すか、水分をうまく使うか、何か工夫すれば、座長がおっしゃる時間の短縮はできるかもしれません。

○小野委員 熱を掛けて風を流せば、脱着する可能性はありますけれども、結局出てきたジメチルホルムアミドをどう処理するかとか、熱を掛けるということはエネルギーを食うということで、どちらが安く付くかということと、安全性をどうはかりに掛けるかということだと思います。私としては、使い捨てができるような値段のものを作っていただきたいと考えます。

○菅野座長 保護具について付け加えるべき項目は、経皮吸収、液体のみならず、状況によっても起こるということと、ゴグル型の使用が望ましい理由を追加するということですね。

○田中委員 はい。

○菅野座長 ほかにいかがでしょうか。

○名古屋委員 できたら使い捨てのほうがいい。

○田中委員 はい。

○菅野座長 それを明記したほうがよろしいという御意見ですね。

○名古屋委員 基本ですか。基本は使い捨てが望ましいでいいです。

○菅野座長 分かりました。田中先生、それでよろしいですか。

○田中委員 はい。

○田中委員 これは分析のことですかね。25ページの分析のガスクロマトグラフのところで、NPD検出器とありますが、NPを分析するというのは、作業環境測定等では余りなじみのない検出器であるように思えますので、これはいかがなものかというところがあります。あるいは、6行目に記載の脱着時間が20時間というのは、こんなにかけることが必要だということでしょうか。この2点を教えてください。

○東久保氏 今言われたNPDの検出器は、窒素リン検出器です。これは農薬を分析するような所で一般的に使われている検出器です。ただ作業環境でということになると、ここまで持っていらっしゃる所は、なかなかないかもしれません。ただ、ジメチルアセトアミドではなくて、ジメチルホルムアミドで検討した結果等々を見ると、FIDでも使えばできそうなところもあります。ジメチルアセトアミドの検討をした時点では、感度の高い測定方法を開発してくれということでしたので、特に感度の高いNPDの検出器を使うことを選択いたしましたが、再度検討するということであれば、FID等々を使って評価基準の10ppm10分の11ppmを出すということであれば、多分実現できるのではないかと考えております。脱着時間も、当初はこのような脱着時間をやっておりますが、その後の開発を見ますと、どうもここまでの脱着時間は必要ないということになっていますので、新たに開発するというか、報告することはできるかと考えております。

○小野委員 要するに、評価値の関係で10ppmだったら、NIOSHのマニュアルのほうはFIDで、OSHANPDでということでしたよね。先日、厚労省対策課から送っていただいた資料では、そういうことになっていました。ですから、どこまで測るかということで検出器を選んでいくという形で、あとはMSという可能性もあると思うのです。それで実際にどこを測りたいかということで、分けていくしかないかという感じはいたします。脱着時間などについても、中災防さんからいただいていた参考資料に、30分超音波を掛けて2時間置いたところからの時間変化とか、いろいろな条件でのデータもあったと思いますので、より実効性のありそうなところで、この資料をもう少し分かりやすくしていく。この濃度までだったらこの測定法という形でしていただけると、より使いやすい形になるかと思います。

○東久保氏 そのようにさせていただきます。

○保利委員 20時間というのは、脱着率としてどのぐらいとされているのでしょうか。

○小野委員 うろ覚えですけれども、そちらにあると思います。90何パーセントという数字が出ていたと思います。

○東久保氏 そうですね。最低でも95%以上必要だということでしたので、それをクリアするためにということになっています。報告書では、98%程度と書いております。

○菅野座長 追加しますと、1時間だと80%強で、20時間後には96%以上になるということだそうです。ただ、時間について私は、前の日にやればいいだけで、それほど障害にはならないと思います。逆に脱着してから24時間放っておいてもいいということであれば、メリットもあるかとは思います。分析法について、NPDを使わないでFID1ppmまで測れるという結論は出せるのでしょうか。

○東久保氏 残念ながらジメチルアセトアミドについて、私どもはその検討はやっておりませんので、今すぐにということは言えないと思いますが、ジメチルホルムアミドの検討結果を見ると、どうもできそうだという気はしております。

○菅野座長 DMFではどのくらいまで測れるのですか。ジメチルホルムアミドの定量下限は何ppmですか。

○東久保氏 うろ覚えですが、FIDで、1ppmは確実にできていたと思っております。

○大淵有害性調査機関査察官 事務局からの質問です。今のFIDの関係ですけれども、FIDのとき、普通のガスクロで大丈夫でしょうか。それともGCMSを使用してFIDですか。

○東久保氏 カラムが通常より少し細い、作業環境測定で用いるところで言うと、パックドカラムを使っているような、ちょっと太いカラムを使っているような所は厳しいかもしれないのですが、キャピラリーカラムを使っているような所であれば、それを選択することによって、分析できるのではないかと考えております。

○菅野座長 訂正しておきますと、GCMSというのは、MSのほうが検出器ですのでFIDの代わりです。ですからMSFIDを一遍に使うというのは、なかなかできないということです。

○小野委員 追加します。今、NIOSHのマニュアルを見ているのですけれども、10ppmの基準のものを測るという目的でやっていて、FIDで測れるということが一応出ているようです。ですから0.05mg/sampleということですので、恐らく大丈夫な可能性はあると思います。

○菅野座長 それは10分間捕集ですか。

○小野委員 NIOSHマニュアルですから、240ppmです。18時間サンプリングになりますよね。

○菅野座長 均質にしたらその辺で。

○小野委員 50mL/min8時間かな。

○菅野座長 多分最終的にお示しするのは、10分間の捕集で1ppmが測れる必要があるということですよね。

○小野委員 ただ、やはりパックドカラムですよね。パックドでGC/FIDです。

○菅野座長 確認します。つまり、10分間捕集で1ppmが測れる方法を提示するということが必要なわけですよね。

○大淵有害性調査機関査察官 マストとまではいかないかもしれないのですが、そういう方法があれば、できるだけそういった方法を示すのが理想だと思っております。

○菅野座長 そうしますと、検出器を取り替えますと確認作業が必要になってしまいますが。

○大淵有害性調査機関査察官 こちらに書いてあるのは、参考例ということで書いてありますので、必ずしもこの方法を使いなさいというわけではないのです。必要な1ppmなりが測れれば、別の方法を使っていただいても当然構わないのです。そういう中ではここをもう一度、確認実験をして追求するか、飽くまでも参考例ということであれば、このままの形にする。今は240分の捕集になっているので、そこは直す必要があるのかもしれないのですけれども、NPD検出器と書いてあって絶対にまずいかというと、そこまではいかないかと思うのです。それは検証する時間なり、お金的な面が大丈夫かどうかという相談になるかと思います。検証することが可能であれば、また検証して書き直すということもありますけれども、もし、そういうことが難しいということであれば、今の手法をベースにお示しすることでも足りるかなと、事務局としては思っております。

○菅野座長 確か中災防さんで検討されるときには、10ppm1000分の1の濃度まで測れる方法ということで検討しておりますので。

○大淵有害性調査機関査察官 今回の際には、非常に低い濃度まで測っていただくような方法を開発していただいているので、そういう形になっています。実際の現場測定でそこまでの精度は求めませんので、そこで違いが出てきているかと思います。

○名古屋委員 聞きたいのですが、スポット測定のときはこれを使ったのですか。やっていましたよね。

○東久保氏 使っております。

○名古屋委員 ですからリスク評価のときのやり方なのです。これが詳細リスク評価に行くのだったら、今の議論が必要だけれども、詳細リスクで終わっているので、使うところは自分の所でこれを使うか選択すればいい。そこの議論は別の話だと思うのです。これが詳細リスクではなくて、本来的に測定基準に関わってくるのだったら、今の議論で最初のリスクが要るけれども、そこの議論は要らなくて、これは飽くまでもリスク評価のときにこういう検証をしましたというデータなのです。そこはそこで終わらないと、先に進まないと思うのです。

○菅野座長 では、このままでいいということでよろしいですね。

○名古屋委員 はい。NIOSHとかいろいろありますので、やるのだったら自分たちで研究すればいいだけの話でしょう。

○菅野座長 ほかの点についていかがでしょうか。御意見も出尽くしたようですけれども、これで指標の作成ということでよろしいでしょうか。

○大淵有害性調査機関査察官 本日いただいた意見を踏まえて、若干の修正を行った上で、また念のための確認の御連絡をさせていただければと思います。ありがとうございました。

○菅野座長 それではその他の通知について、事務局から御説明をお願いします。

○中西化学物質情報管理官 資料227ページを御覧ください。今後の予定ですが、第3回、第4回、第5回、予備として第6回の日程を調整させていただいております。今後の第3回以降ですが、今まで行ったリスク評価の結果で、まずジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト(DDVP)が、健康障害防止措置の検討が必要と判断されましたので、そちらについて御検討いただきたいと考えております。併せて発がんのおそれのある有機溶剤についても、今後、健康障害防止措置のほうで検討していただきたいということで予定しております。場所等が決まりましたら、また追って先生方に御連絡したいと考えております。よろしくお願いいたします。

○菅野座長 本日はこれで閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。


(了)
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電話番号: 03-5253-1111(内線 5511)

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