第7回有期労働契約研究会議事録

日時

平成21年10月23日(金)18:00~20:00

場所

厚生労働省専用第21会議室(17F)

出席者

〈委員〉
荒木委員、奥田委員、鎌田委員、橋本委員
〈事務局〉
渡延労働基準局審議官
前田労働基準局総務課長
富田労働基準局勤労者生活部企画課調査官
青山労働基準局総務課労働契約企画室長
丸山労働基準局監督課中央労働基準監察監督官

議題

(1)平成21年有期労働契約に関する実態調査結果について 
(2)論点(総論、有期労働契約の範囲等、契約期間)について
(3)その他

議事

 
○鎌田座長 それでは、ちょうど定刻となりましたので、ただいまから第7回「有期労働契約研究会」を開催したいと思います。委員の皆様には、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
 また、本日は阿部委員、佐藤委員、藤村委員、山川委員が御欠席されています。
 本日は、これまでのヒアリングや実態調査の結果などを踏まえて、有期労働契約に関する今後の施策の方向性について、各論点について御議論を今回以降を行いますが、本日は、総論、有期労働契約の範囲、勤続年数などの上限等について御議論いただきます。
 まず、事務局より、前回の研究会での御指摘を踏まえて、平成21年有期労働契約に関する実態調査の結果について追加の資料を用意しておりますので御説明をお願いいたします。
○富田調査官 それでは、資料No.1-1をごらんいただきたいと思います。
 これは、前回の研究会におきまして、佐藤先生から満足している、していないということで、クロスを取ってみると面白い傾向が出るのではないか。
 それから、特に山川先生ですか、派遣労働者である、ないという特徴では示せないのかということ。
 それから、荒木先生からフルタイムとパートで違いがないんでしょうかということで、その3点についてクロス集計をかけたものを今回提出しております。
 事業所調査についてはクロスが取れませんでしたので、個人調査についてのみ取っております。
 それでは、分量もありますので、ポイントのみ絞って説明させていただきたいと思います。
 まず、おめくりいただきまして、第1表でございますけれども、これをごらんいただきますと、仕事の満足で、不満足な方は正社員同様職務型の方が39.1と多い。軽易職務型だと満足の方が43.3と多いとなっておりまして、所定労働時間の方で見ますと、フルタイムだと正社員同様職務型が多く、パートだと軽易職務型が多いというふうになっております。
 少し飛ばしまして、11ページをごらんいただきたいと思いますけれども、これは契約期間を定めて就業している理由について尋ねたものでございます。
 こちらの方をごらんいただきますと、まず、仕事の満足のところですが、満足しているということにつきましては、これは当然かもしれませんけれども、左から2番目の勤務時間、日数が短く自分の希望に合っていたからとか、あるいはその隣の仕事の内容、責任の程度が自分の希望に合っていたからという方が多目の数字になっている一方、不満足といった方については、右から2番目のところですが、正社員としての働き口がなかったからという声が高くなっているところでございます。
 それから、派遣労働者の方をごらんいただきますと、派遣労働者のある方について右から2番目ですが、正社員としての働き口がなかったからというのが、42.8ということで少し高めの数字が出ております。
 それから、フルタイム、パートの比較で申し上げますと、パートの方は左から2番目、3番目のような項目が高めの数字が出ているのに比べまして、フルタイムの方については正社員としての働き口がなかったからというものが高めの数字になっているという状況でございます。
 また、少し飛んでいただきまして、17ページをごらんいただきたいと思います。これは、第17-1表でございますが、今後も現在の勤務先で働きたいのかというところでございます。これは、まず、仕事の満足、不満足で見ていただきますと、満足と答えた方については、引き続き現在の職場で、有期契約労働者として働きたいという方が69.1と最も多い。
 一方、不満足と答えた方につきましては、その隣、ただし正社員として働きたい24.8、1つ飛ばしていただきまして、別の会社で正社員で働きたいというのが26.9ということになっております。
 これは、フルタイムとパートでまた特徴が出ておりまして、一番下でございますが、パートの方につきましては、引き続き現在の職場で有期として働きたいというのが58.3と少し高めになっている一方、フルタイムの方につきましては、その隣ですが、ただし、正社員で働きたいという数字が少し高めのものになっております。
 また少し資料を飛んでいただきまして、23ページをごらんいただきたいと思います。23ページは、これまで退職を申し出たことがあるのか、ないのかということを聞いておりますけれども、仕事の満足度で見ますと、満足している方については、退職を申し出たことがないというのが、当然かもしれませんけれども、73.4というふうになっているのに比べまして、不満足の方は退職を申し出たことがあるというのが32.5と少し高めになっているところでございます。
 また、1ページ飛ばしていただきまして25ページでございます。21-1表は、契約締結時に、契約期間を明示したのかどうかということを尋ねたところ、これは少しだけの差ではあるのですが、仕事の満足度が高い人の方が明示されたというふうにお答えになっている方が96.5と、少しだけ高くなっております。
 これは、21-2表あるいは21-3表も同じように明示されたと答えた方の方が、満足度が高いという結果が出ております。
 また、少し飛んでいただきまして、29ページでございます。これは満足して働いている理由について聞いたものでございまして、これはパートの方に少し特徴が出ておりますので御紹介いたしますと、パートの欄の左から3番目でございますけれども、労働時間、日数が自分の希望に合致しているから、これは当然かもしれませんけれども、そういうのが71.5と高めの数字になっているということでございます。
 隣のページが、今度は不満のある理由でございます。これは派遣のところをまずごらんいただきたいと思いますけれども、派遣労働者である方については、一番左です。いつ解雇・雇止めされるかわからないというのが52.4ということで、派遣労働者でない方に比べて高めの数字。
 その隣の契約期間が短く、長く働けないからというのが、派遣労働者ではない方に比べますと高い数字になっているということでございます。
 一方、フルタイム、パートでございますが、どちらかというとフルタイムの方の方が、いつ解雇・雇止めされるかわからないと答えた方が多いというのと、1つ間を空けていただきまして、賃金水準が正社員に比べて低いからというのが46.7ということで、少し高めの数字が出ているところでございます。
 次の31ページをごらんいただきますと、これは契約更新について説明を受けたのかどうかということでございます。1つだけ御紹介いたしますと、派遣労働者のところをごらんいただきますと、派遣労働者でない方の方が、真ん中のところの特別な事情がなければ自動的に更新する旨の説明があったというふうに、34.5対27.2ということで少しだけ高めの数字が出ているところでございます。
 右のページが、今度は残業の有無についてでございますが、これも仕事の満足度のところをごらんいただきますと、満足しているとお答えになった方は残業することがないというのが47.3ということで、不満足の方よりも高めの数字になっております。
 フルタイム、パートでごらんいただきますと、やはりフルタイムの方の方がパートに比べまして、残業することがあるとお答えになった方が69.1対48.5ということで、高めの数字になっております。
 少し飛ばしていただきまして、35ページでございます。25-1表でございます。これは異動・転勤の有無のところでございますが、これも満足度のところをごらんいただきますと、満足している方は、異動・転勤することがないということが78.1ということで、少し高めの数字になっております。
 それから、フルタイム、パートで見ますと、パートの方の方が異動・転勤することがないというのが79.9で高めの数字になっているところでございます。
 次に、38ページをごらんいただきたいと思いますが、第26-1表でございます。これも昇進することがあるのか、ないのかということですが、これは当然かもしれませんけれども、不満足とお答えになった方は、昇進することがないというのが72.3%ということで、満足している方に比べまして高めの数字になっているところでございます。
 少し飛ばしていただきまして、43ページでございます。第29表をごらんいただきたいと思いますが、これは賞与があるのか、ないのかということでございまして、仕事を満足している方は、やはり賞与が有りというのが、ちょっとだけ高い数字になっているところでございます。
 少し飛ばしましたけれども、41ページに戻っていただきまして、基本給の水準のところをごらんいただきますと、第27表ですが、仕事の満足度が満足しているという方は、正社員と同水準とお答えになっている方が10.5でございまして、不満足の方よりも高め。
 それから、正社員に比べてかなり低いというところをごらんいただきますと、やはり不満足の方の方がこう答えることが多い。
 これは、フルタイム、パートについても同じような傾向でございまして、フルタイムの方の方が、正社員と同水準とお答えになった方が多い。パートの方は正社員比べてかなり低いとお答えになっているところでございます。
 手当関係はだいたい同じような傾向が出ておりますので飛ばしていただきまして47ページでございます。これは、賃金形態がどうなっているのかということでございます。これをごらんいただきますと、フルタイム、パートのところをごらんいただきたいんですが、フルタイムの方は月給制の方が多く、パートの方は時給制が多いという傾向が出ているところでございます。
 1ページ飛ばしていただきまして、49ページでございますが、これは正社員の方と賃金形態が一緒なのかどうかということを聞いているんですが、派遣のところをごらんいただきますと、これは当然かもしれませんけれども、派遣労働者でないという方の方が、要するに直用の方の方が正社員と同じ形態であるというものが多いというのと、あとフルタイム、パートで見ますと、フルタイムの方の方が正社員と同じ賃金形態ということをお答えになっている方が多いとなっております。
 飛ばしていただきまして、52ページをごらんいただきたいと思いますが、今度は賃金制度です。職能給とか職務給とか、賃金制度の性格についてのクロスをかけているところでございますが、満足度のところをごらんいただきますと、満足している方の方は、賃金制度についても正社員と同じという方が56.1と高めの数字になっております。
 派遣のところをごらんいただきましても、派遣労働者ではない方の方が同じということが多いのと、フルタイム、パートでも、フルタイムの方の方が、正社員と同じ賃金制度というふうにお答えになっているところでございます。
 あとは、待遇関係は同じような傾向が出ておりまして、少し飛んでいただきまして、59ページをごらんいただきたいと思います。59ページは教育訓練機会でございます。
 満足、不満足のところをごらんいただきますと、満足している方は、左から2番目のところですけれども、正社員とほぼ同じ教育訓練機会が与えられているというのが10.1。その右隣の業務に必要な教育訓練機会を正社員とほぼ同じという方は15.9ということで不満足という方に比べまして高めでございます。
 一方、不満足の方は、教育訓練機会がないというふうに右から2番目のところですが、お答えになった方が、46.3と高めになっております。
 これは、フルタイム、パートも同じような傾向でございまして、フルタイムの方は、教育訓練機会が多く、パートの方は教育訓練機会が少ないということでございまして、これはほぼ職務タイプの傾向と似たような傾向が出ているのかなと思っております。
 60ページ、隣のページをごらんいただきたいんですが、36表でございます。正社員転換制度がある、ないで聞いたところでございますが、満足している方は正社員転換制度があるとお答えになった方が、不満足の方に比べまして多めの数字なってございます。
 派遣労働者につきましても、派遣労働者である方は正社員転換制度がないとお答えになった方は53.8と高めの数字になっているというところでございます。
 フルタイム、パートでごらんいただきますと、正社員転換制度がないとお答えになった方は余り差がない。一方であるとお答えになった方については、フルタイムの方が多いというふうになっております。
 61ページをごらんいただきますと、最も改善してほしい点でございます。満足している方は、一番左から数えますと、3番目のところで、現在の有期契約でいいから、更新を続け、長期間働きたいという方が28.8ということで高いのに比べまして、不満足の方については、一番多いのがちょうど真ん中辺りの賃金等の労働条件を改善してほしいというのが35.9。それから、左から2番目の正社員として雇用してほしいというのが29.3となっているところでございます。
 解雇・雇止めのところで、38表でございますが、これも当然の数字だと思いますが、仕事への満足度が不満足と答えた方が、自分に解雇・雇止めの経験があるとお答えになっている方が少し高めの数字が出ている。派遣である、ないで見ますと、派遣労働者であるという方が解雇・雇止めの経験があるという方が多いのと、フルタイムとパートについて見ますと、フルタイムの方が自分に解雇・雇止めの経験があるとお答えになった方が少し多めの数字なっているということでございます。
 最後に65ページをごらんいただきたいと思いますが、第41表でございます。解雇あるいは雇止め時に退職金が支給されたかというふうに見ますと、満足された方については、退職金が支給されたという比率が高い。一方、不満足の方については支給されていないという方が高めの数字になっております。
 派遣労働者につきましては、派遣労働者でない方の方が退職金が支給されたと、少しではございますが高めの数字。
 フルタイム、パートで見ますと、フルタイムの方の方が、退職金が支給されたと、これもわずかでございますけれども高めの数字になっているということでございます。
 ポイントだけ説明しましたので、かなり省略しましたけれども、私からの説明は以上でございます。
○鎌田座長 ありがとうございます。それでは、ただいまの御説明について御質問、御意見がありましたら御発言をお願いします。
 確認なんですけれども、満足、不満足というのは、例えば11ページの11表を手元で見ていたんですけれども、仕事への満足と不満足、例えば仕事内容、責任の程度が自分の希望に合っていたから、満足、不満足という勿論差が付いていますね。
 ただ、これは因果関係がここから出てくるというわけではないですね。要するにそういうデータになっていると、ただ、ある程度一定の関連性はあるかもしれないということですね。
○富田調査官 そうです。かもしれないという程度です。
○鎌田座長 ありがとうございます。どうぞ。
○奥田委員 37表の読み方なのですが、仕事への満足度のところで、満足度の高い人は、左から2つ目の現在の有期契約のままでよいから更新を続けて長期間働きたい。現在のままで、更新が続けばそのまま働きたいという希望になっています。
 これは、契約の期間等を含めた希望だと思うのですが、その人たちの数字と、特に改めてもらう必要はないという人たちの数字は、どういうふうに分かれていると理解したらよろしいのでしょうか。
 例えば、ほかのことに何も不満がなくて、今のまま働き続ければいいというのは、見方によれば特に改める必要はないと見えるんですけれども、それはどういうふうに理解すればいいんでしょうか。
○富田調査官 これは、こうふうな項目を出して選んでいただいたということでございますので、それほど考えずにどちらかを選ばれたということだと思うのですが、あえて差を申し上げますと、左から2番目のところは、長期間働きたいというのが、恐らく特に改める必要がないという差かなと思っておりまして、ですから、現在の有期契約のままでいいか、更新を続けて長期間働きたいという方については、有期で長く働きたいという意思を持っている方、希望を持っている方と認識しております。
○奥田委員 そこに特に着目されているという理解ですか。
○富田調査官 そうではないかと思っております。
○鎌田座長 どうぞ。
○橋本委員 前回、ひょっとしてもう確認されたかと思うんですが、忘れてしまって申し訳ないんですが、第3表で年齢との満足度の関係が出ていますが、満足度とは、今回の満足度の分析とはちょっと離れてしまいますが、そもそも年齢構成と職務タイプとの間に何か特徴はあったでしょうか。つまり若い人が多いのは、軽易職務型なのか、同水準型なのか、ひょっとしてもう前回に確認があったかもしれないんですが、これだけぱっと見ると、余り年齢の特徴はないのかなと思ったんですが。
○富田調査官 そうですね。前回説明させていただいた中では、有期契約労働者全体の中では、30代の方が多いですよと説明させていただきましたけれども、職務タイプでは、それほど有意な結果が、見た限りでは見受けられなかったので、説明を飛ばしたというところでございます。
○橋本委員 ありがとうございます。
○鎌田座長 後でまた戻っていただいても結構ですので、それでは少し先に進めたいと思います。
 それでは、次に論点について御議論いただきたいと思います。事務局で資料を用意しておりますので、説明をお願いいたします。
○富田調査官 そうしましたら、資料No.1-2から最後まで説明を一括してさせていただきたいと思います。
 まず、資料No.1-2をごらんいただきたいと思います。これは、論点を御説明申し上げる前に、今回、実態調査結果を行いましたので、それを整理した上で議論を進めさせていただいた方がいいかと思いまして、事務局において作成したものでございます。
 これをごらんいただきますと、右の方に、同様職務型・別職務同水準型をまとめて書いておりまして、その下に軽易職務型、並んで隣に、高度技能活用型で、今回、日雇いについては対象にしておりませんので、それではみ出たものとして日雇いということで整理しております。
 これをごらんいただきますと、同様職務型あるいは別職務同水準型という方につきましては、正社員の方と同じような仕事の内容の困難度であるとか、責任の程度が近い方々でございますので、正社員と並べて書いておりますけれども、「事」と書いてあるのが事業所調査で「個」が個人調査ですが、事業所調査の方で見ますと、この2つを合わせると、大体41.4%、個人調査で見ますと53.4%の方が、この枠の中に入っておりまして、そのうちの異動・転勤がありというふうにお答えになった方が、こちらの数字になっているということでございます。
 軽易職務型の方につきましては、事業所調査では全体の中の54.4%、個人の方ですと39%。
 高度技能活用型になりますと、少し少なめの数字なってございまして、事業所調査では1.0%、個人調査では4.4%となっております。これが今回の議論に生かせるかと思いまして整理したところでございます。
 次のペーパーをごらんいただきたいんですが、正規労働者と有期契約労働者の位置づけに関する論述ということになっておりまして、この事務局で資料No.1-2で図を作成したのですが、学者の先生方がどのように整理されているのかというのを少し紹介させていただきたいと思っております。
 まず、菅野和夫先生が新・雇用社会の法というところで書いておられるのをちょっと紹介させていただきますと、このように正社員とか有期契約労働者の位置づけでございますが、長期雇用システムというのが、我が国の社会の特徴ではなかったか。
 その中で、企業組織の中核的労働力を長期的に育成し、活用する労働者と位置づけまして、これを正社員ということで呼んでいる。
 3.でございますが、一方、正社員のような長期勤続を予定されず、雇用保障と経済的待遇について正社員と区別される非典型労働者が存在して、その方は、長期雇用システムの枠外にありますということを書いております。
 1つ飛ばしていただきまして、期間雇用労働者ということで書いておりますけれども、期間雇用労働者は、どういう位置づけかといいますと、1.目でございますけれども、長期雇用システム下の労働者とは明確に区別されまして、賃金の体系・形態などにおいて別個の取扱いを受けているというのが普通である。
 次でございますが、アンダーラインを引いてございますが、多様な目的で利用されていきまして、労働力の調達や調整や人件費の削減に利用されてきたというのが特徴ではないかと書いております。
 2ページの方にまいりまして、今度は人材活用の関係の先生でございます、佐藤博樹先生の論文等を紹介させていただきますが、まず、2のところでございますが、企業の人材活用の方針として、これまでは長期の人材資源投資を前提に育成されるコア人材としてフルタイム正社員を雇ってきたのですが、それは縮小していまして、他方でパート社員とか、契約社員などのいわゆる非典型社員の雇用拡大してきているということで、佐藤先生は、ほかの論文で書かれていますのは、有期の方についても長期的な雇用も増えているということも言っております。
 3番の方にまいりますと、ここで正社員と非正社員の雇用区分の特徴についてまとめておりますので紹介させていただきますと、正社員の特徴といたしましては、雇用期間に定めがない。それから仕事の範囲や勤務地が限定されていない。昇進されることを予定されている。4点目としましては、長期的な視点から技能を習得させる。5番目としましては月給制が適用。
 非正社員といたしましては、有期の雇用契約、通常は契約更新がされる。2点目としましては、仕事の範囲とか勤務地が限定されている。3点目としましては、管理職的なポジションには従事しない。4点目としましては、どちらかというと、定型的年業務をこなせる程度の技能を習得させる。5点としましては、市場の賃金相場が基本給の主な決定基準とする時間制が適用されているものと整理されております。
 以上のような整理も念頭におきまして、資料No.2で、今回の分の論点をまとめさせていただいております。
 資料No.2をごらんいただきますと、まず、総論で、今日事務局で作成したものでございまして、これを参考に論点が足りないとか、御議論いただきたいと思っておりますけれども、まず、総論でございます。
 現状認識でございますが、1つ目としましては正規労働者と有期契約労働者はそれぞれ企業内でどのような位置づけになっているか。今、ちょっと紹介させていただきましたけれども、先生方の御意見もありましたらお願いいたします。また、有期契約労働者数は80年代以降増加傾向にありますけれども、その位置づけに変化はあるのか。
 先ほどの紹介ですと、そういう位置づけとしましては、やはり正社員と同じような仕事をしている方が増えてきているという紹介もございました。
 2番目でございますが、有期契約労働者は多様な集団でございまして、今回の実態調査結果におきましても、同様職務型、高度技能活用型、別職務・同水準型、軽易職務型という職務タイプ4類型について、それぞれ実態が異なることが明らかになりましたけれども、これらの職務タイプを踏まえつつ各課題を考えていくことが有効と考えられるのではないかということ書かせていただいております。
 3点目といたしましては、正規労働者の解雇規制が国際的に見て厳しいから有期契約労働者が増えたという見解がございます。これは、どのように評価すべきか、ということでございます。これは後ほど説明いたしますけれどもOECDがよくこのように言っておりまして、その評価がどうなのかということでございます。
 ここで書かせていただいていますのは、賃金等のコストが低い点や、解雇に比べ雇止めの規制が緩やかであるという点も考慮すべきではないかということを書かせていただいております。
 2点目でございます。有期労働契約の範囲、勤続年数等の上限というところでございます。これは一般には入口規制とか、そういうことも言われたりすることもございますけれども、ここでは、そもそも有期契約の方をどのような活用方針で使うのかといったことまで含めて書いておりますので、少し出口にまたがるような部分も書かさせていただいております。
 まず、1つ目として現行法制の評価でございます。我が国の法制においては、有期労働契約の締結事由や勤続年数・更新回数の上限に係る規制、これは1回の契約期間ではなくて、反復更新も含めまして、何年働けるのかという上限、そういうふうな規制はありませんということです。それについては、今回のヒアリングとかを踏まえますと、どのように考えるべきか。
 次に、諸外国の法制との比較でございます。外国におきましては、EU指令のように有期契約または有期の反復継続した利用から生ずる濫用を防止するための措置を講じているものがございますが、これについては我が国の雇用システムの特徴あるいは後ほど御紹介いたしますが、労使のニーズに照らしましてどのように評価すべきか。
 次の○は、このような濫用防止措置の1つとして、フランス型のように有期労働契約の締結事由を合理的なものに限定すべきというような考え方がございますけれども、これについてはどのように評価すべきか。
 一方、別の措置といたしまして、諸外国の中には、英国とか韓国のように、締結事由は限定しないですが、勤続年数の上限を定めているという法制があるほか、フランスは締結事由とともに、勤続年数と更新回数の上限等を定めておりますけれども、このような勤続年数や更新回数の上限を定めることについては、我が国の雇用システムの特徴等に照らしましては、どのように評価すべきか、ということを書いております。
 2ページにまいりまして、ここでドイツのことを注で触れさせていただきます。ドイツは、フランス型に近いのではないかということで、締結事由が厳しい国ではないかというような御議論もあるのですが、後ほどまたごらんいただきますけれども、第5回の研究会でも報告いただいた中身等によりますと、有期とするのに正当な理由があれば上限規制がないというのと、正当な理由がなければ勤続年数等の上限を定めるという、どちらかというと、組み合わせの法制になっているのかという感じになっております。それを注で書かせていただいております。
 3点目は、1回の契約期間の上限ということで、これはちょっと誤解があるかもしれませんので補足いたしますと、基準法によります1回の契約期間、現在は原則3年となっておりますけれども、これは先ほど申し上げました反復更新も含めました上限ではなくて、1回の契約期間でどれだけの上限にするのかというので、むしろ人身拘束期間を規制したというものでございます。それについては、現行法制の評価として、15年改正で1年から3年に上限を延長したわけでございますけれども、この問題についてどのように考えるのか。
 これは、注で審議会の議論を書いておりますけれども、その際は、常用代替が進むのではないかなどの懸念が示されていたところでございます。
 一方で、各種論文等を拝見いたしますと、正規労働者と有期契約労働者の契約期間の差が大きいため、例えば10年などの契約期間を認めるべきという見解もあるところでございます。
 次の○でございますが、基準法の第137条、附則の部分ですが、当分の間の措置といたしまして、1年を超える期間の有期労働契約を締結した労働者について、契約期間の初日から1年を経過した日以後においては、使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができることとしておりますけれども、その見直しの要否については、どのように考えるべきか、ということでございます。
 これも諸外国の法制との比較を書いておりますが、諸外国の法制につきましては、実は1回の契約期間という規制は、第5回の研究会でヒアリングをした国においてはなくて、更新による延長期間を含めた期間の上限規制となっておりまして、そこでは原則2年とするものや4年以内とするものがございますけれども、このように1回の契約期間の問題と反復更新も含めた上限の問については、我が国の雇用システムの特徴に照らして、どのように評価するのかと書いております。
 ここは注で、フランスでは18か月で書いておりまして、また、これらの諸国では、当該上限を超えた場合には無期契約とみなされると書いております。
 恐らく、時間的にここまでで今回は議論が終わると思っておりますが、次回以降は契約締結時の課題あるいは均衡待遇・正規労働者への転換の話、更新・雇止め、その他の問題を次回以降御議論いただければと思っております。
 資料No.3-1をごらんいただきたいと思いますが、これは第3回、第4回の研究会でヒアリングした結果のうち、今回の議論に参考になりそうなものを抜粋したものを、まとめております。
 簡単に説明させていただきますと、まず、有期労働契約を締結することが必要な理由といたしましては、需要変動とか季節変動への対応が主なもの。
 2点目も同じようなことで書いております。
 3点目を見ますと、必要な期間に必要な人を派遣してほしいという派遣先企業のニーズと、一定期間だけ働きたいといった労働者のニーズに対応するものである。
 次のところですが、労働者側の事情について書いておりますが、特に主婦が多いことから、残業は原則なし、人事異動についても事業所単位の契約なので、原則なしの勤務としていることと相まって、家庭との両立を実現しつつ働きたいという希望にかなうものとなっているということで、労使双方のニーズについて書かせていただいております。
 次に、有期契約労働者の役割でございますが、製造業の方からは正社員は監督的な仕事など幅広い業務、有期の方は直接製造に関わる仕事に携わっている。
 流通業の方については、定型業務でサポート的なものに従事している。
 流通業関係の労働組合の方に聞いたところは、基幹労働力になっています。中小企業につきましても戦力として正社員と同様に働くことになっております。
 次に、非正規労働者を組織している労働組合の方からは、メリットは余り労働者の方にとってはないのではないかという御意見。
 それから、労働相談担当者の方にお聞きしても、労働者の希望によって有期となっているものは、ほとんどないんではないかというようなことをお答えになっております。
 次に、有期契約労働者に係る問題点の指摘のところですが、まず1つ目の○ですが、仕事は恒常的にもかかわらず、実際の契約期間は細切れ化しているということが組合側の方から出ております。
 それから、製造業関係労働組合の方も、常に雇止めの不安を抱えている。
 次の意見も労働組合側からですけれども、やはり更新されないことを恐れて意見を述べることができにくいという状況。
 次のところも、同じように、神経衰弱になっているとか、そういうようなことを抱える声を聞かれるとお答えになっております。
 次に、有期労働契約では、締結できなくなった場合の影響ということで、今回、活用方針について御議論いただきますので参考になるかと思いますが、流通業の方は、経営状況の悪化、雇用の減少あるいは事業活動の低下につながるのではないか。
 それから、派遣先労働者双方のニーズに応えられなくなること、結果として失われる雇用が相当の量になるんではないかということは、人材派遣業の方は言われております。
 一方、労働組合の側の方は、締結事由を制限することについては、無期との違いを明確にするために賛成とお答えになっております。
 次に、勤続年数の上限、更新の状況及び考え方でございますけれども、製造業の方は契約の更新についてはその時点・時点での本人及び職場のニーズの見極めをすることが必要である。
 同じように、製造業の方は、更新回数に上限を設けておりまして、一定の期間以上は雇用しないことを原則にしております。
 次に、製造業関係の労働組合の方でございますけれども、ここでは平均勤続年数が約10年という、同じ製造業でもいろいろとあるのかもしれませんけれども、10年というのが実態になっておりまして、自己都合による退職以外の労働契約の終了というのは、余り行われていないとお答えいただいています。
 流通業の方も同じでして、平均勤続年数が約11年となっております。
 労働組合の方は次も書いているのですけれども、契約更新を反復すれば、一定期間経過後、無期契約に切り替えるべきではないかという御意見をいただいております。
 製造業の労働組合の方からは、6か月の契約を20回更新しているのはおかしいとの考え方から、現在、無期契約に移行することを労使で協議中ということを言われております。
 次に、1回の契約期間の上限の延長についてでございますが、製造業の方は、長期勤続になる方が、労働者の習熟度とが高まるので、需要変動等に対応しつつも、一定の程度の勤続を可能とするものであればよく、期間、現在の基準法上の制限を延長する必要は薄い。中小企業の方は現状が望ましいと、同じように言って、むしろ長期に働く人は、社員になってもらいたいと、これはひょっとしたら1回の更新と勤続年数と混乱しているのかもしれませんが、そういうようにお答えになってございます。
 それから、労働組合の側の方は不安定雇用を継続することになるため反対ということ。
 それから、非正規を組織している労働組合の方は、拘束の指摘があるんではないかということがあるんですけれども、実態として、細切れになっている中では、実際には余り関係ないんではないかという御意見をいただいております。
 資料No.3-2は前回と重複しますので、本当に抜粋にとどめたいと思いますけれども、資料No.3-2は別様になっていまして、事業所調査の方をごらんいただきますと、有期を雇用している理由としましては、前回説明しましたとおり人件費を抑えるためというのと、業務量の中長期的な変動に対応するためという方が多い。
 第2表でございますが、有期を雇用できなくなった場合は事業が成り立たないとする方が53.8%と高い数字になっております。
 次のページにまいりまして、第3表は、希望する継続雇用期間別事業者の割合で、右から2番目ですが、できる限り長くという方が40.4ということで長くなっているところでございます。
 それから、1回当たりの契約期間はどうなっているのかといいますと、第4表ですが、ちょうど真ん中辺りの6か月から1年以内という方が54.2と最も多いとなっております。
 第5表は、更新回数の上限の有無と上限回数でして、これは設けているとお答えになったところは、9.7%という少なめの数字になっております。
 3ページにまいりまして、第6表でございます。
 これは、実際に更新回数でございますが、これをごらんいただきますと、3~5回というところが39.5%と最も高い。
 今度は勤続年数の上限の有無が第7表でございまして、これを設けているという事業所は8.5%と1割を切っているような状況でございます。
 4ページにまいりまして、実際の勤続年数ですけれども、これは1年から3年あるいは3年から5年というところが最も多いというところになっております。
 雇止めについては省略いたします。
 次の個人調査の方をごらんいただきたいと思いますが、第1表、第2表、第3表はプロフィール的なものを書いておりますので省略させていただきまして、2ページをごらんいただきたいと思いますが、第4表が期間を定めて就業している理由です。これも繰り返しになりますけれども、勤務時間が短く自分の希望に合っていたからという方が、軽易職務型で多いと、41%というところになっております。
 その隣の仕事の内容や、責任の程度が自分の希望に合っていたからというのも軽易職務型で35.6という数字になっております。
 一方、正社員としての働き口がなかったからという、右から2番目のところは、総数で言うと、38.7と多いですが、その中では、同様職務型が43.3と多い数字になっております。
 現在の契約期間、個人に聞きましたところ、第5表ですが、平均契約期間が約7.8か月となっております。
 第6表は、今後も現在の勤務先で働きたいですかと聞いたところ、引き続き現在の職場で有期として働きたいとお答えになった方が50.9で、その中では軽易職務型の方が56.9ということで最も高いということになっております。
 その隣の正社員として働きたいという方は、同様職務型で27.3という数字になっております。
 3ページにまいりまして、今度は更新回数の上限でございます。更新回数の上限があるとお答えになった方は4.4%ということで、事業所調査よりも少ない数字になっております。
 現在の更新回数といたしましては、平均更新回数で5.7回という数字を書いております。
 次に勤続年数の上限が第9表でございますが、勤続年数の上限であるとお答えになった方は7.7%でございます。
 4ページにまいりまして、通算勤続年数が第10表でございます。これをごらんいただきますと、平均勤続年数は3.2年という数字になっております。
 次に仕事についての満足感でございます。これも繰返しになりますが、満足している方が55.7で、その中では軽易職務型の方が62ということで、少し高めの数字になっております。
 満足している理由につきましては、重複になりますので、ちょっと飛ばします。5ページの不満の理由でございます。不満理由も繰返しになりますが、念のため申し上げますと、頑張ってもステップアップが見込めないからという右から2番目が42%で最も多く、次に多いのが左のところの、いつ解雇・雇止めされるかわからないからというのが41.1%。
 それから、賃金水準が正社員に比べて低いからというのが39.9という数字になっております。
 第12表が契約更新についての説明ですが、特別な事情がなければ、自動的に更新するという説明が32%になっております。
 第13表が労働契約について最も改善してほしい点でございますが、これは総数でごらんいただきますと、真ん中の賃金等の労働条件を改善してほしいという方が24.6で最も多く、次に多いのが正社員として雇用してほしいという人が22.1%、その中では正社員同様職務型の方が31.5というので多いとなっているところでございます。
 次に、資料3-3をごらんいただきたいと思います。これは、今回、論点のところでも諸外国の比較のことを書いておりますので、諸外国の法制をまとめさせていただいたものでございますが、これをごらんいただきますと、我が国におきましては、締結事由の制限は行っておりません。行っておりますのは、ドイツとフランスでございます。
 ただ、ドイツにつきましては、2年間までは締結事由の制限はないということでございまして、期間の定めは、客観的な理由によって正当化される場合に許容されるとなっておりまして、その客観的な理由というのは、法律的に例示列挙されているところでございます。
 フランスについて、労働法典におきまして、労働契約は期間の定めなく締結されることが原則であるということで、無期が原則だということを法律において明確にしているのと、あと、締結できる場合は厳格に限定列挙で書いております。
 その効果といたしまして、フランスのところは、期間の定めのない契約とみなされたりとか、賠償金の支払い、あるいは刑事罰の対象になったりするところでございます。
 それから、勤続年数または契約更新回数の制限でございます。
 我が国の法制にはないのですが、解雇と同視し得る更新拒否については、裁判所におきまして、解雇権濫用法理で保護されるようになっております。
 ドイツでございますが、ドイツは客観的理由から正当化される場合には制限がないということでございまして、客観的理由が存在しない場合については、最長2年という場合で、その間の更新は3回まで許容。勿論、これは労働協約で別の定めをすることができるようになっております。
 特徴は、次の2点でございまして、これは80年代以降付け加えたところでございまして、企業の設立後、最初の4年間においては最長4年で、その間における複数の更新も許容。
 それから、52歳以上の労働者は最長5年であって、その間における複数回の更新も許容というようなことで、もともとはなかったんですが、少し緩和されてきているということで、効果としましては、違反した場合には無期契約とみなされるとなっております。
 フランスにつきましては、例外を認めず、原則最長18か月ということで、その間における更新は1回までで、違反した場合は無期となったり、賠償金の支払いがあったりとか、刑事罰の対象になったりとかになっております。
 次にイギリスですが、イギリスは初回締結時から4年経過後に契約が更新された場合等には無期契約になるということで、4年までは使っていいですという法制になっております。
 ただし、これは例外がございまして、客観的に正当化される場合とか、労働協約等で延長されている場合は除くということで、この労働協約等のところについては、反復的継続利用の濫用を防ぐため、上限とか、正当化事由については変更可能となっております。
 韓国ですが、韓国はイギリスと似たように、最長2年ということでございます。2年を超えた場合は、無期契約とみなされる。
 次のポツは、これは今回2007年にできました上限を定められた法律の以前の裁判例でございますけれども、日本と同じように自動更新で長期雇用の場合、その更新拒否に正当な理由が必要とするものがあると、以前報告があったところでございます。
 デンマークでございますが、デンマークは有期契約の更新は原則として客観的理由により正当化される場合に限定となっておりまして、その理由としましては、例えば病気や妊娠などの予期できない状況などとなっております。
 それから、大学における教師や研究者等については、更新は2回まで、これらの法違反については、損害賠償請求の対象となります。
 それから、判例法理では、反復的、継続的利用の濫用があった場合は無期契約となるとするものがあるところでございます。
 次のページに書いておりますのが、ドイツ、フランスにおける有期契約の利用可能事由についてまとめております。
 今回、どういう場合に利用できるのかということが議論になるかと思いまして、ドイツ、フランスのところについて第5回の研究会資料を基に作成したものでございまして、ドイツにつきまして、簡単にだけ紹介いたしますと、経営上の需要が一時的に存在する場合であったりとか、あるいは教育訓練または大学の課程の終了に引き続いて期間設定が行われる場合あるいはほかの労働者の代理のため、あるいは労働給付の特性が期間設定を正当化する場合。あるいは試みの使用のため、あるいは個人的な事由で期間設定が正当化される場合。それから、財政法上の措置として雇用される場合、あるいは裁判上の和解となっております。
 フランスの方にまいりますと、ドイツと似たようなことが書いてあるんですけれども、労働者の代替であったりとか、あるいは事業活動の変動。事業活動が一時的に増加する場合など。
 3点目としまして、一時的な性質の業務であることのような場合に有期を締結することができるとなっております。
 次に、時間の関係もありますので、資料No.3-4をごらんいただきたいと思いますが、今回の御議論の参考になるような裁判例を事務局の方で整理させていただいております。
 2ページをごらんいただきますと、まず、整理解雇におきまして、正社員と有期契約労働者の人選の優先順位が判断された裁判例ということでございまして、今回、有期契約だけでなくて、正社員との関係でどうなのかという位置づけの問題が議論になるかと思いますので、裁判所はどう考えているのかというのを整理させていただいたものでございます。
 まず、基本となるものでございまして、日立メディコ事件、ここでは比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約であったことが、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結している者とはおのずから合理的な差異があるべきというふうにされまして、先に雇止めされてもやむを得ないということでございます。
 高松重機事件でございます。これは、むしろ有期を優先しないで整理する基準をつくったところ、それは合理性がありませんとされたものでございます。
 その理由といたしましては、有期の方は準社員と呼んでいたのですが、終身雇用の保証がなく、仕事量の多寡に応じて雇用される流動的な労働者の方であって、雇用調整が容易であることからすれば、終身雇用制の期待の下で雇用される正社員とは企業の結び付きの程度が全く異なる。そ
れで、整理解雇の場面におきましては、準社員の人員削減をまず図るのが合理的。
 それから、アイレックス事件は、雇用継続に対する信頼の差というものが見られておりまして、やはり正社員と一時的な臨時的社員とは雇用の継続に対する信頼の差がありますということが書かれております。
 次の静岡県富士自動車学校事件でございますが、これは日立メディコと同じような判断でございまして、採用手続が比較的簡単であったので、やはり違うのではないかということを書いているところでございます。
 三洋電機事件でございますけれども、これは、むしろどちらかというと、肯定的な判断なんですけれども、定勤社員という方が有期の方なんですけれども、事業本来の目的のために直接に必要不可欠であったこと等から、勿論、終身雇用の期待の下にいる正社員を解雇する場合とは合理的な差異があることは否定できないというふうに従来の見解を踏襲しているのですが、基幹的な作業に従事していることから、特段の事情がある場合に限って雇止めができると判断されたものでございます。
 ヘルスケアセンター事件も同じようでございまして、これも業務内容が正社員と同一であると認められるような基幹的な方でございましたので、人員削減の必要性とか人選の相同性が厳しく審査されたものでございます。
 次に、有期契約といっても、いろいろと性格がございますので、それで特徴的なものを2つだけ紹介させていただきたいと思います。
 まず、伊予銀行・いよぎんスタッフサービス事件でございます。これは、登録型派遣労働者の方を13年余り反復更新で利用されてきたという方でございます。
 これは、当然、長期間継続雇用されていますので、雇用継続の期待も抱くのも当然だと述べられているのですが、やはり登録型派遣ですから、常用代替防止という派遣法の趣旨からすると、この雇用継続に対する期待というのは、保護すべきではないとされて、これは最高裁でもその方針が認められた、維持されたということでございます。
 それから、神戸弘陵学園事件でございます。これも有期なんですけれども、この有期というのが、労働者の適性を評価・判断するために期間設定をしたとなっておりまして、それは契約の存続期間ではなくて、試用期間とするのが相当とされた事案でございます。
 次に、今回、勤続年数等の上限に関することを取り上げておりますので、少し関連するものを3点ほど紹介させていただきますと、まず、コンチネンタル・ミクロネシア・インク事件でございます。
 これは、有期契約を5年更新するという内容の契約でございまして、これはパンフレットにこういうことも書いてあるということもあったりして、この雇用継続に対する信頼を抱くことが合理的であると言える事情が認められないとして、5年以内の雇止めを有効としたわけでありまして、実際は、これは上限以内の雇止めを行っている例でございます。
 次のカンタス航空事件でございますが、これはむしろ上限で雇止めを行おうとしたんですけれども、諸般の事情から認められなかった事件でございます。
 中身は書いてありますとおり、期間を1年とする有期契約で、ただし、5年を限度として1年契約の更新を保障するとなっていたので、契約の性格自体は、契約期間1年、勤続期間上限が5年と認めたわけでございますが、ただ、これは更新がそれぞれいろいろとあったというのと、使用者の言動で期待が形成されていたということがありまして、それで特段の事情がない限り、信義則上雇止めは認められないとされたものでございます。
 次の報徳学園事件でございます。これは、常勤講師として雇用されて、契約を3回更新後に雇止めをされたという方でございます。
 これは、書いていないのですが、実は内勤で上限が3年として書いてあったということで、それを実は、この雇止めされた方は、勿論知らなかったということで、ただ、初めの校長はもっと長く働けるようなニュアンスのことを言っていて、常勤講師の雇用は3年と明確に言ったのは、2番目の校長でして、ただ、その校長らの発言というのは、明確性、確定性を欠くということで、解雇予告をする旨の意思表示をしたものとは認められないということで、雇用契約の終了とは評価できないとされたものでございます。
 4ページ以降は、詳しく付けておりますけれども、時間の関係で省略させていただきます。
 資料No.3-5は、審議会において、今回の関係で指摘がありますので、ちょっと紹介させていただきますと、まず、平成14年の建議でございます。これは労使双方から御意見をいただいておりまして、これは1年から3年に延長した改正の際ですが、やはり常用代替が進んだりとか、若年定年制のケースが増大するのかという懸念がありまして、常用代替が進まぬよう、一定の期間を超えて雇用された場合の常用化や均等待遇を要件とすべきではないかということが労働側から出たのと、使用者側の方は、基幹的な方はそもそも期間の定めのない雇用としていますということを言われています。
 それから、18年12月の答申のところは、これは労働者側の意見だけ書いておりますけれども、入口と出口と均等待遇の3点がそろわない限り、本質的な解決にならないという御意見があったところでございます。
 最後、資料3-6でちょっと解雇規制が厳しいんではないかとい御意見もあり、OECDが言っているので、OECDの指標等を紹介させていただきたいと思いますけれども、英文で恐縮なんですけれども、これは、今年出されましたOECDの雇用保護指標でして、2004年の雇用アウトルックで出されたものからは、大幅に改定が実はなされております。
 ちょうど真ん中のジャパンというところを太くハイライトしておりますけれども、一番右端が全体の雇用保護指標でございます。
 右側の数字がOECD30か国の中の順位でございます。厳しい方から数えて順位を付けておりますので、例えば一番下のアメリカは30位ということで一番緩いとなっております。
 日本は24位ということでございまして、真ん中よりは緩い方になっております。これは、実は2004年のアウトルックの中では、2003年の数字として、18位から24位ということで落ちている状況でございます。
 この内数をごらんいただきますと、左端がパーマネントワーカースと、要するに常用労働者を対象としました雇用保護指標でございまして、これが18位ということで、これは2003年の数字が10位でしたので、10位から18位に落ちているということになっておりまして、これをもって解雇規制が厳しいと言えるのかどうかというのは、少し微妙かなという感じはしております。
 ただ、勿論、これは相対的な数字でございますので、ほかの国が変われば変わりますし、あるいはOECD自身が指標の取り方を変更したりしておりますので、順位は変更するのかなということがございます。
 その隣がテンポラリーフォームと書いてございます。これは有期の方でございます。これが最新の数字が20位でございまして、2003年の16位から20位に落ちているということでございます。
 その隣がコレクティブというのは、集団解雇規制でございます。これは、日本で言いますと、整理解雇に対する規制と考えていただいてもいいかと思いますが、これが29位ということでございます。
 したがいまして、弱い方から数えて2番目ということでございまして、アメリカが一番下にありましたけれども、16位でございますので、アメリカよりも我が国の解雇規制は緩いとなっておりまして、これを見ますに、OECDの雇用保護指標がよく解雇規制が厳しいということで使われているんですけれども、恐らく実感からすると、整理解雇はアメリカよりも厳しいんではないかという実感を持たれる方も多いかと思いますので、これをもってちょっと議論するのは、いかがなものかということは、厚生労働省としては常々感じているところでございます。
 裏には、OECDが改定前に言っていることを紹介しておりまして、ここで仮訳の方をごらんいただきますと、正規労働者に対する強度の保護ということが書かれておりまして、一番下の方に提言と書いてあるんですが、ポツで書いてありますけれども、正規労働者への雇用保護を縮小することで非正規労働者を雇用するインセンティブを削減することと書いておりますけれども、ですから、この前提となるOECDの数字については、もう少し議論するべきではないのかなということは考えているところでございます。
 これは、どう評価されるかにつきましては、委員の皆様の忌憚のない御意見をいただきたいと思います。
 ちょっと長くなりましたが、事務局からは以上でございます。
○鎌田座長 どうもありがとうございます。では、これから議論をしていただくんですが、資料の2を先生方に見ていただきたいんですが、資料2に今回の論点が示されております。
 大きくは、総論と各論に当たる有期労働契約の範囲、勤続年数等の上限ということになっておりまして、その後、3もありますが、一応、総論のところを少し御議論いただいて、それから残りの時間を各論の方にと考えております。
 勿論、各論の方が議論する論点は多いかと思いますが、都合上、そういうようなことで取扱いたいと思います。
 それでは、どなたからでも結構ですが、まず、総論のところで少し御質問なり、御意見なりをお願いしたいと思います。
○奥田委員 総論の現状認識というところに書いてあるわけではないのですが、後の各論のところで、幾つかの論点を考えるに当たって、我が国の雇用システムの特徴や労使のニーズに照らしてどう評価するかということが何か所か出てくるんです。
 そうだとしますと、この総論の現状認識のところで、雇用システムの特徴とか変化ということについて、まず共通認識を得ていくということになるのでしょうか。ちょっと話の順序というか、この辺りがまだ少しつかめないのですけれども。
○鎌田座長 事務局の方で、何か今の御質問に対してありますか。
○富田調査官 雇用システムというのがどうなっているのかというのを、共通認識を持っていただきたく、図とか諸先生方の書かれたものを紹介させていただきました。
 それから、労使のニーズというところでは、ヒアリング結果とか、実態調査報告を紹介させていただいたということでありまして、確かに総論のところには書いていないんですけれども、そこは、例えば一番目の位置づけがどうなっているのかとか、そういうところなどで御議論いただければいいのではないかと思っております。
○奥田委員 それは、一応、総論の内容として議論していくことになるわけですね。
○鎌田座長 ちょっと総論というものが少し抽象的といいますか、どのような形で御議論いただいていいのか、少し戸惑いもあるかと思いますので、派遣のとき、研究会のときに、やはり総論と各論で分けて議論いたしまして、そのとき、総論ということで、どういった論点が議論されたかということを、別に派遣ですから、ここと一緒にする必要は全然ないと思うんですけれども、派遣のときに、キーワードとして議論になったのは、就業形態の多様化ということをどう評価するのか。これは両方あり得ると思うんです。
 もう一つ、労働者保護は、強化すべきなのかどうか。労働者保護をどう図っていくのか。その中には、雇用の安定も含まれています。
 こういったことを考えてみると、非常に錯綜した議論がありまして、とりわけ派遣に関しては、特に就業形態の多様化の中で、これは説明しなくても皆さん御存じだと思いますけれども、常用雇用代替を防止するというのが派遣法に関しては、一つの柱になっていると思います。
 そういったことの観点から就業形態の多様化を推し進めるという御意見の方たちは、現にある、例えば派遣について常用雇用代替防止の措置として講じられている派遣期間の制限はない方がいいといった御議論をされる方もいました。
 ただ、そのことと、労働者保護を強化するということは必ずしも一緒ではなくて、つまり就業形態の多様化を図りながら、労働者保護は確保しましょう。雇用の安定は強化しましょうと、これはあり得るわけですね。
 そうすると、この辺、総論のところで非正規雇用というのは、どこかにもありましたが、非常に多彩でさまざまな形態のものがあるわけですが、こういった流れの中でどのように考えていけばいいのかということが派遣では議論に、かなり御意見の対立もあろうかと思いますけれども、一般にあったんですけれども、こういったようなことも含めて御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
○奥田委員 現状認識の3つ目に関わると思うのですが、労働者の保護という場合、ちょっと一律には言えないのですけれども、労働者の保護を強化すべきかどうかというときに、今の幾つかの資料の中でも、例えば整理解雇の人選基準とかにも表われていますけれども、従来の雇用システムから考えれば、正社員の保護ということがやはり中心になって、それが有期の保護のレベルとかなり違いがあるという話がずっとあったと思うんです。
 ですから、労働者の保護というときに、正社員の保護ということをとりあえず念頭に置くのか、あるいは有期の今問題になってきているところを中心に、有期の人の保護を考えていくのかということがあると思います。
 3番の論点でいいますと、必ずしもそれが対立的なものなのか、どちらかを緩めて、どちらかを強めるということなのかということもあると思いますし、先ほど出てきました雇用システムがどういうふうに変化してきているかということを、ある程度共通認識を持っていかないと、その
方向性がなかなか判断できないというのが1つあります。
 また先ほど出てきた就業形態の多様化というときに、労働力の流動化ということが有期の場合にも出てくると思うので、その点を、ここは有期の研究会なので余り範囲を広げてということは難しいと思うのですが、例えば派遣との共通性であるとか、そういうところを含めて「非正規」の場合をどういうふうに位置づけるのかということが、何か前提になるような認識が必要かなと思うのですが、それは今日の段階ですべて議論することになるのか。まだそこまで全体の整理とかができないと思うので、ただ、幾つかそういう点を考えていかないと、また、各論をやることによって、ここに戻っていくのかもしれないんですけれども。
○鎌田座長 各論の中に入りながら総論に戻った方が話しやすいでしょうかね。
○奥田委員 そうですね。
○鎌田座長 わかりました。では、もう各論の中に入りまして、そして御意見をいただければと思います。
○富田調査官 1点、補足の説明をさせていただきたいと思うんですが、先ほどOECDの指標のところで、資料3-6ですが、集団解雇のところ、私はこれが整理解雇というふうに申し上げたところでございまして、確かに注意しなければいけないところですが、整理解雇の日本の場合は、解雇権濫用法理の中で整理されている可能性がありますので、OECDは法律上のものをかなり念頭においてやりますので、ひょっとしたら整理解雇の日本の判例法理は、こちらの常用労働者の方で評価されているかもしれないということで、これはちょっと確認が取れていませんので、先ほどの説明を少し修正させていただきたいと思っております。
○鎌田座長 わかりました。どうぞ。
○奥田委員 その点について、1点だけ。今の集団的解雇がそういう理解だとしますと、フランスの集団的解雇は手続が極めて厳しいのですが、それでも25位というのが出てくるので、あと、どういうふうに理解したらいいかというのを、もしおわかりになれば、また後日に教えていただければと思います。
○鎌田座長 その点は後日で結構ですので、お願いいたします。
○富田調査官 わかりました。
○鎌田座長 どうぞ。
○奥田委員 今後議論していくに当たってということで、私個人の考え方もいろいろありますが、とりあえずそれとは別にいくつかの可能性を考えますと、考え方として例えば、締結事由の入口で規制する、しないということ自体から議論していくことになると思うんですが、仮にその締結事由を規制するかどうかという議論をするときにでも、例えばフランスのように、こういう場合というふうな限定事由を列挙するような方法もあれば、合理的な理由が必要だという一般的な規定になる場合もあり得ると思うので、そういうことを含めて議論をしていく必要があるのではないかというのを1つ思っておりました。
 それと、今回の研究会では、契約期間の上限、2003年改正のときに、1年が3年になったことを受けて、それを評価して、それをどう改善するかということがあったと思うのですが、これに関しては、今回、いろんな資料を出していただいたところに既に表われているように、余り契約期間の上限自体を引き上げるというのは、ニーズとしては表われていないと評価していいんでしょうか。
 ただ、一方で、必ずしも一般的とは言えないのですが、あくまで経験上ということですけれども、契約期間の上限自体は、必ずしも3年になったからということで大きな変化があったりとか、
意味を持ったりということはないと思うんですが、一方で、若干誤解に基づいているところもあると思うんですけれども、3年を超えると、雇止めができなくなるという理解が割と実務の中ではあったりしますので、そういう意味で言うと、更新規制のような、事実上のインパクトを持っているのかなというところもありますので、そういうところも含めて考えていく必要があるのかなと思っています。
○鎌田座長 ありがとうございました。先生方に自由に発言していただいて結構なんですけれども、今、奥田先生から締結事由の規制の問題、特に事由の規定の仕方についても少し詳しいお話がありまして、もう一つ、期間の上限の話と、勤続年数の上限の問題が、少し誤解に基づくのか、どうなのかよくわかりませんが、その辺のところから、一定の実務においては勤続年数の上限規制などもあるのではないかということが言われていました。
 もう一つ、契約期間の上限の延長についてはニーズがないという認識なのか。そこまではまだどうもヒアリングからははっきりしないというようなこと、これは御質問かと思いますが、まず、この点についてはどうですか。
○富田調査官 今回のヒアリングを踏まえる限りは、ニーズは少なかったということでございます。ただ、今回来ていただいた方は、全部で8人ですので、その範囲内ですから、それを一般化するのが適当かどうかというのは、また別の御議論があるかと思いますけれども。
○鎌田座長 この点については、厚生労働省のところで延長についてのアンケートなり、最近のもので参考になるようなデータというのはないんですか。なければ、後でも結構です。
○富田調査官 ちょっとすぐに思い当たるものはございませんので。
○鎌田座長 では、それはまた後で、ただ、ヒアリングの中では、これは経営側も含めて延長してほしいという御意見はなかった。
 締結事由の話ですけれども、先生方から御意見をいただきたいんですが、これは前々回でしょうか、フランスとドイツの話を聞いていて、少しよくわかっていないというか混乱もしたんですが、先生方の説明を自分自身がよく理解していないというところもあるんですけれども、フランスとドイツが少し微妙に違うんではないかという感じがしたんです。
 その違いがどこにあるのかというのが、今、はっきりしていないので、あのときは両先生が御報告をされて、そして、どちらかというと、客観的に制度の御説明というのが主だったと思うんですが、これから御意見も含めてお聞きしたいのは、フランス法は、まず無期原則というのがあるんですね。ドイツは、必ずしも無期原則になっているわけではなくて、濫用防止というところから来ている。これは、もしかして幾らか違うのではないかということだったんですけれども、どうでしょうか。
○奥田委員 その違いというのが、私、今一つ飲み込めていないところがあるのですが、すごく細かいことで1点だけ申し上げますと、先ほど資料で整理していただいた資料の3-3で、括弧付きで「締結されることが原則である」という規定があると書いていただいているんですが、私が紹介したときの説明が悪かったのかもしれないんですけれども、労働法典では期間の定めなく締結されると書いてあるだけなので、原則だというふうに書いているわけでは必ずしもないんです。ただ、実質は同じことで、そういう規定があるから、それが原則になっているという理解には全く間違いはありません。ですから、考え方としては、実質はそれを原則として、だから有期は不安定形態として例外になっていると、それは全く実質上は変わりありません。今、鎌田先生がおっしゃったこととの関係では、実質はやはりそれが原則と考えられているので、その場合とドイツの場合との考え方の違いというのが具体的にどういうふうに表れてくるのかというのが、まだ理解しかねているんですが、それをどういうふうに考えればよろしいですか。
○鎌田座長 橋本先生、もし、今の御質問に何か御意見があれば、どうぞ。
○橋本委員 奥田先生のおっしゃるとおりに、余り具体的な有期労働契約の規制に、根本的な考え方の違いが反映されているかどうかというのはわからないんですけれども、鎌田先生がおっしゃったように、ドイツのもともとの民法典に、期間の定めのない契約と有期契約と両方が労働契約にあるということが入っていて、期間の定めのない契約が原則であるというような規定にはなっていません。これは、日本の民法の雇用の規定と同じだといっていいと思います。
 ですので、無期原則というものはないと言っていいと思います。その後、解雇制限法というのが戦後できて、解雇規制が厳しくなったときに、有期契約を反復更新しているような場合というのは、事実上、解雇制限法、つまり期間の定めのない契約の解雇を規制する法律を潜脱することだということで、有期契約の締結には、合理的な事由が必要だという判例法理ができてきますので、反復更新を繰り返すことの濫用規制だという理解も正しいと思うんです。
 ただ、現在、立法化されたものを見ると、フランスとかなり似ているとは言えると思うんです。ちょっと、細かい違いを言うと、判例で主に認められてきた、客観的な理由というのが条文に挙がっているんですが、例示列挙だということで、その点はフランスより柔軟なのではないかと考えます。
 ですので、先ほどの奥田先生の御意見にもありましたが、どう規制するのかというところで事由を挙げても例示列挙と解すれば、柔軟な解釈の余地もまだ出てくるのかなと思いました。余り回答になっていないかもしれません。
○鎌田座長 どうぞ。
○荒木委員 私は前回の外国の紹介のときに欠席してしまいまして、よくフォローしていないかもしれませんけれども、ドイツとフランスは、私は少しタイプが違うと考えた方がいいかなと思っています。
 フランスは、有期契約の締結には、必ず客観的な事由が必要だということで、それを限定列挙としています。
 ドイツは、有期契約の規制の展開を踏まえた方がわかりやすいと思うんですけれども、橋本先生がおっしゃったように、解雇の規制があるという中で、1960年に連邦労働裁判所の大法廷決定が出まして、それで客観的な事由が必要だという判例法理ができたんです。その時点では、要するに有期契約を締結するには客観的な事由が必要だということになった。
 しかし、それでいきますと、非常に労働市場は硬直的になるということでしたので、立法で1985年に客観的な事由がなくても有期契約を締結できるという、1985年の就業促進法というものができたんです。
 このときから、フランスとは違う道を行き出した。すなわち客観的事由は要らない。しかし、その利用期間については、85年法では18か月。18か月は客観的事由なく使えるということでしたが、それでもなお高い失業率に対処できないというので、1996年法で客観的な事由がなく使える期間を18か月から2年間に延長するということになりました。そして、今のパート有期契約法に2年間というのが引き継がれているということですが、今は、その2年間というのを協約で更に延長したり、あるいは新規立ち上げ企業の場合には、4年間客観的な事由なく使ってよろしいということになっております。
 つまり、当初は有期契約の利用を解雇規制の潜脱というふうに見て厳格に制限したんですけれども、それが非常に市場の硬直性をもたらしたということで、これを立法によってどんどん緩和してきたというのがドイツの経験ではないかと思っております。
 したがって、客観的な事由の要件については、少しフランスとドイツは、違う位置づけにした方がわかりやすいかなと思っております。
 ついでに、今日、お配りいただいた資料2の2番目のところで有期契約の範囲、勤続年数等の上限の話があって、3では、よく誤解されるのでということで、富田さんからお話があった1回の契約期間の上限、つまり1回の契約で何年まで契約で拘束する期間を設定してよいかという規制、諸外国にない規制なんですけれども、この2つは、よく区別しなければいけないんですが、3の下に書いてある諸外国の法制との比較の内容は恐らく2に持ってきた方がいいのではないかと思います。これは、諸外国では反復継続の回数とか利用期間の上限について制限しているという話しですので、2の後で書かれた方がわかりやすいかと思いました。
○鎌田座長 この中身自体は、やはり勤続期間の上限の話ですね。そうすると、どちらかというと、2の方の話。それは、私もそういうふうに思います。
 つまり、3年で更新も含めて止めるというのは、本当に誤解なんですかね。実務ではよく聞くんです。ですから、誤解かもしれないんだけれども、でも行われているという感じですね。
○荒木委員 この前のヒアリングでは、誤解に基づくような答えがあったんですけれども、その後、私もいろんな弁護士さんとかに誤解しているんでしょうかというふうに聞いたんですが、3年以上使うと雇止め法理の適用をされかねないということで、わかった上で、誤解ではなくて、3年でやめているということかもしれませんね。
○鎌田座長 どの辺が出発点なのかよくわかりませんけれども、今、言ったように勤続年数含めて制限するというのがどのくらいの範囲であるかわかりませんけれども、実務では少し広がりつつある。それがほかに基づくものなのかどうなのかというのはよくわかりませんが。
○奥田委員 私がさっき申し上げたのも、今、荒木先生がおっしゃった、その意味です。3年を超えたら雇止めができなくなるというのが割と広がっているようだということです。
○鎌田座長 なるほど、その面では誤解というのではなくて、言わば企業防衛的な行動なんです
ね。
○奥田委員 判例法理でも別に3年で雇止めができなくなるとか、そんなラインがあるわけではないのですが、、何かそういうのが広がっているというのがよくあります。
○鎌田座長 今、ドイツとフランスの違いについて、皆さんの御意見をいただきました。特に荒木先生からも、少し歴史的な経緯も含めて御意見をいただいて、少しわかってきたんですけれども、フランスというのは、やはり契約期間を定めること自体にも規制がかかるんですね。そういう発想なんですね。つまり、契約というのは、両当事者の自由な合意によって決まるというんですが、まさに契約を正義に基づいて、一定の方に強制するという発想なんですね。
○奥田委員 そうなりますね。
○鎌田座長 ドイツは、要するに解雇法制の脱法は許さぬという発想なんですね。実態としては同じになっているんでしょうけれども、要するに客観的な事由によって限定ということにはならない。
 ただ、今、言ったように、解雇法制の脱法規制みたいな発想だから、労働市場的な政策論も入ってきて、ただ、そこは緩めるということも比較的、言わば政策的な観点も少しは言ってきているのかなという感じがしましたけれども、それは間違いですかね。
○橋本委員 そうはっきり書いてある文献は、私の知る限りないんですが、そういう考えが背景にあるかもしれません。
○荒木委員 逆にちょっと知りたいんですけれども、フランスのように、常に有期契約締結に客観的な事由を要求するという場合であれば、派遣のファイリングではありませんが、特定の事由が非常に緩やかに解釈されるとか、そういう現象が起きていないのかという気がするんですが、その辺はどうでしょうか。
○奥田委員 その辺りを、なかなか実際にどういう形で利用されているかという実態を、実証的にはお示しできないので、余り明確なことというのをお話しすることが前回もできなかったんですけれども、ただ、いろいろな論文等で指摘されているのは、今おっしゃったように、例えば、先ほどまとめていただいたところで言いますと、(2)の(1)に当たる事業活動が一時的に増加する場合というのは非常に不明確なので、ここの範囲というのが、結局は一般条項的な形になりかねないということは、従来から指摘されております。それから(3)の季節的雇用とか慣行的有期労働契約というのは、前々回御紹介させていただいたように、いわゆるクーリング期間の遵守とか、そういうものの対象から除外されています。ですから、クリーリング期間の遵守という規制から離れている有期雇用の類型というのがかなりあるということ。慣行的有期契約、ちょっと細かくなりますが、ここの対象となっている業種とかは結構ありますので、そういうところで、もしかしたら通常の規制から離れている領域が多いというのも考えられます。あと、場合によってはクーリング期間というのが繰り返されている可能性も十分あり得るということ。ただ、そこはもう少し実態というのがわかれば、精査していかないと、具体的にはわからないです。
 経済状況によってということで言いますと、勿論、フランスも非常に失業率が高く推進してきている国ですが、そういうことで言うと、客観的な理由は要らないというふうになってきたかと言えば、逆に利用可能事由というのを広げているという方向も1つあります。例えば、下に特別なタイプの有期労働契約というのをまとめていただいて、前回も簡単にだけ挙げさせていただいたんですが、特に若年層の労働者の失業率が極めて高いのでそういう若年層を対象にしたよう訓練とリンクしたような有期労働契約の形態がどんどん増えていったり、そういう形での対応というのは見られます。
 まとめていいますと、利用可能事由が限定されているけれども、その利用可能事由がいろんな雇用政策の中で対象自体が増えてきているという1つの側面と、それと先ほどおっしゃったように利用可能事由の中の比較的内容が明確なものでないところにいろんなものが入ってきている可能性は、従来から学説等では指摘されているということと、制度の中自体でも、有期労働契約の規制の対象から外れるんではないんですが、幾つかの規制が適用除外されているものが実際には存在するということ。その辺りが、恐らく有期労働契約のフランス的な柔軟性とでも言うんでしょうか。そうなっているんだと思います。有期労働契約者は、最近はちょっと減っておりますけれども、特別他国よりも少ないというわけでありませんので、恐らくそういうところがないと、有期契約の利用というのはできないんだと思っています。
○鎌田座長 クーリング期間というのは、フランスは何か月でしたか。
○奥田委員 契約期間によって14日以上か14日未満かによって違っていたかと思います。
○富田調査官 研究会資料がお手元にあるかと思いますが、その資料No.3番の4ページに、クーリング期間が書いております。
○奥田委員 契約期間が14日以上の場合は、更新を含めた最大契約期間の3分の1を置かなければいけないというのと、14日未満の場合は、更新を含めた最初の契約期間の半分というふうに、14日で区別がされています。
○荒木委員 これも前回話があったのかもしれませんけれども、韓国で7月ですか、ちょうど2年間の上限が来るということで、そうすると、有期契約労働者がそれ以上雇い続けますと、無期契約、正社員扱いが強制されるので、どっと雇止めされるのではないかという議論もあったんですが、それはどういう議論だったのでしょうか。報告はありましたか。
○富田調査官 韓国の報告者の方から2年が経過した後、それで雇止めがたくさん発生するんではないかという御議論がありまして、御議論にもあったんですけれども、その後も実は新聞報道でもなされていまして、その結果がどうだったかといいますと、3割の者が雇止めされたと、3割が正社員に登用されたと、残りの方々につきましては、引き続き有期みたいな感じで、よくわからないような感じで使われていると、ひょっとしたら違法かもしれないという、そういうふうな報道がなされておりますので、3割が正社員、3割は雇止めされたということです。
○鎌田座長 ちょっと話を日本法に移して皆さんの御意見を伺いたいけれども、まず、日本の労働法典、民法典も含めてですが、無期原則を定める、あるいは無期原則を読み取ることができる規定というのがありますか。
○荒木委員 ないでしょうね。
○奥田委員 ないですね。
○鎌田座長 では次に、要するにドイツ法的な、言わば濫用防止的な規定があるか、あるいはそれを読み込むことが可能な規定があるか、論者によっては、労働契約法の16条の解雇規制、あれ
を言わば有期の濫用規制の根拠になるんだという論者もあるように聞いたことがあるんですけれども、あれ自体は有期についての規定では、直接立法的には意図していないとは思うんですけれども、あるいは判例法理、解雇権濫用の法理の類推適用法理と言うんでしょうか、そういったものを含めて、言わば有期、期間を定めることによって、一種の濫用防止的な法理というのか、濫用法理というのは少し一般化していますけれども、どういうふうに読んだらよろしいでしょうか。
○荒木委員 現行法自体は、有期の利用を制約するような法律にしていないんですね。
○鎌田座長 締結に関してはね。
○荒木委員 それから、反復継続についてもないんですね。
○鎌田座長 そうすると、判例法理みたいなものは、類推適用というのは、どういうふうな位置づけと考えるんでしょうか。
○荒木委員 実態として、当時は臨時工みたいな形ですね。本工と同じように長期間にわたって反復継続される。同じような仕事をしている。それで、不況が来るわけですが、そのときに、たまたまあなたは有期契約でしたねということだけで雇止めになるというのは、明らかに均衡を失すると、そういうことで、解雇権濫用法理を類推適用するというような法理ができてきたんでしょうね。
○鎌田座長 これにもう少し突っ込んで皆さんの御意見を伺いたいんですけれども、例えば、これには出ていなかったかな、東芝柳町工場事件のような枠組みというのは、少し読むと、言わば有期を定めた当事者意思から見ても無期に、期間の定めのないものと実質的に異ならないような状態で更新が行われていたという、ちょっと正確な理由は忘れましたけれども、どちらかというと、更新手続だとか、意思の確認ということがルーズに行われていて、意思解釈レベルで無期と
実質的に近いと、そんなニュアンスがあったような気がするんです。
 ところが、日立メディコに至りますと、これははっきり更新という手続を取っていたような事例なんですが、期待権ということを言っていますね。これは、当事者意思と言うよりは、労働者の期待権ということだと思うんですが、それを法的に何らかの形で吸い上げているということになろうかと思うんです。
 そうすると、今、荒木先生がおっしゃったように、均衡というのか、私はどちらかというと、濫用防止的なというか、性格が少し出てきているのかなという感じがしているんですけれども、勿論、個別事案ですから、法典のように一般論としてこれを明確にしているわけでは全然ないと思うんですけれども、ただ、判例の読み方として、特に日立メディコのような場合に、どう理解したらいいのか。
 私たちも、これからこの問題を考え場合、どういったところを手がかりにして、なるべくやはり実務とか現に行われている司法実務とかあるいは実態に照らして、非常に溝があるようなやり方ではなくて、それを少し先に進めるような方向というのも考えた方がいいんではないかと思うのでお聞きしているんですけれども。
○荒木委員 現在の判例法理のココロを読んでいらっしゃるんですけれども、そのココロは何かと、確かにおっしゃるとおりだろうと思いますけれども、現在の雇止め法理、判例法理としては確立していると言われているんですけれども、実は問題点もあります。それはさきほど奥田先生からの御指摘があったように、現在は反復更新して無期契約と同視できるという場合のみならず、おっしゃったように日立メディコの場合は、無期契約と同視できなくても雇用継続への期待が保護に値すればよろしいと。
 では、どういう場合に、雇用継続の期待を保護すべきか、というところは非常に予測可能性がないわけです。そこで、実務では何にもないと困るからということで3年という数字が独り歩き
しているという状況ということになります。
 ですから、諸外国の立法を見て一つわかることは、更新回数が例えば3回とか上限は2年とか、18か月とか極めて客観的なわけですから、予測可能性はあるという点がメリットということになります。
 しかし、同時に、先ほど韓国の紹介がありましたけれども、実際に日本でもいろんなところで、例えば大学の非常勤職員が5年とか、あるいは今日は挙がっていませんでしたけれども、最近のある女学院の事件で非常勤の方は3年という勤続期間の上限を決めたがゆえにそこで雇い続けてもいいんだけれども、とにかくそこで切る。つまり、上限を定めるとそれ以上雇用すると正社員扱いが強いられるということになると、むしろ雇用をそこで切るという副作用もある。明確性のメリットもありますけれども、それによって雇用が奪われる可能性もある。要するに両方を考えないといけないということだろうと思います。
 それに対して、予測可能性を犠牲にはしているけれども、現在の判例法理は、個別、個別の事案に即した処理をしているということでありますので、それはそれとして一長一短あるということかなという気がします。
○鎌田座長 派遣のときの議論を少し思い出したんですけれども、派遣でも同じようなことがありまして、要するに規制を強化すると派遣労働者にとってマイナスになる、例えば派遣について、一定の勤続年数の規制を置きますと、そこで切られるということになって、むしろ労働者の不利益になるんではないかという御主張もあった。
 そこで、私が考えたのは、確かにそういう側面もある。一方では派遣の場合については、先ほど来の問題だけれども、雇用システムというか、日本の雇用システムをどういうふうに将来的に考えていくのか。それは単に個々の労働者の利害も大切だけれども、雇用システムをどういうふうに考えていくのかということから、恐らく、今、言ったような規制ということの正当性が問われてきたんではないか。
 そうしますと、結局バランスの問題というのか、要するに就業形態が非常に多様化してだれでもが自由に好きなものをやって、その中で問題がある人についてその個々の労働者あるいはその就業形態にある労働者をどう保護するかという問題と、そういうふうにとらえるか、あるいはやはり一定の雇用システムというものの中で、日本の労働者保護を考えて、その中でやはり個々の労働者の在り方についても、そうしますと、今、荒木先生がおっしゃったように、個々の労働者とって見ると、もっと派遣で働きたいのに、なぜここで切ってしまうんですかと、もっと有期で働きたいのに、なんでここで切られてしまうんですかと、そういった利害との対立というのが出てきますね。それをどう考えるかということだと思うんです。
 それは、フランスなんかはかなりドラスチックに、期間を定めるところで、がちっと規定しているということなんですね。それはなぜかというと、無期原則があるからということ。恐らく日本はそういうふうには考えていなかった、今まではね。
○奥田委員 期間を定める以上は、期間を定めて、そこで終了する理由があるはずだということになってくるのだと思います。
○鎌田座長 そうですね。有期を使いたい人は、一時的、臨時的な業務があるから有期でやっているんですね。逆に言うと、そういう理由があるからこの契約にも合理性があるんですねという
ことなんですね。
○奥田委員 そういう考え方ですね。
○鎌田座長 だけれども、実際には、例えば正社員と比べて有期の人の方が、例えば解雇において緩やかである。つまり、雇用調整がしやすい。では、雇用調整がしやすいというのが、経営者にとって切実なニーズであるとすれば、それはだめですとなぜ言えるかです。これは切実な要望として経営者にしてみるとあると思うんです。リーマン・ショックのときもそうでしたけれども、それがだめだというのはなぜかということですね。
○奥田委員 例えば今回でも業務量の調整であるとか、事業主の方での終了の原因というのがやはり幾つかあって、そこを全く無視するというのはできないと思うんです。
 その際に、ごくごく単純な疑問として思ったのは、この場合でも、やはり有期の場合の終了原因は期間満了ということになるわけですね。ですから、有期の雇止めであっても、明確な雇止めの理由があれば、それは当然認められるはずで、それが形式どおり期間満了ということになると、実質的な雇止めの理由と、形式的な雇止めの理由というのがどうしても違ってくるわけですね。期間が来たからではなくて業務量を調整したいから、あるいは期間が来たからではなくて、この労働者の職務能力に問題があるからという理由がやはり出てくると思うんです。
 ですから、そういうことで言うと、期間を決めて期間が満了したからやめるという理由というのは非常に少ないのかなという気がするんです。
 そうだとしますと、これはあくまで考え方の問題としてですが、雇止めの場合でも、例えば先ほどから出てきている長期雇用との関係で言いますと、度合というのはかなり違うかもしれませんけれども、雇止めの理由というものがある程度要求されるという可能性もあるのかなと思うんです。
 ただ、そうなると、有期というのはそもそも期間を定めて期間が満了することによって終了するという有期契約の基本の部分とかなり違ってきますので、そうだとすると、やはり有期契約で3年と決めたら、そこで終わるというのも一方であり、でも、そうなっていないものについては雇止めの理由が必要になってくるというような、いわゆる東芝柳町的な考え方の方がストレートに理解できるかなという気がするのです。
○鎌田座長 出口の話に、もう入ってしまっているので、また後で議論にもなりますけれども、もうそろそろ時間が迫ってきているんですけれども、私としては少し先生方にお聞きしたかったのは、出口の話は濫用ということで出てくると思うんですけれども、入口のところで、日本法の今までの伝統的な判例法理だとか、あるいは幾つかの法律、契約期間を定めることについて一定の規制を働かせるということについての手がかりといいますか、それがあればお聞きしたい。今のところどうも余り見当らない。そうすると、それは立法で導入するということになると思うんですけれども、そうすると、導入する際に、言ってみれば契約形式を一定の場合に制限するということですね。かなりドラスチックなやり方ということになりますので、どういう理由があり得
るのかなというのが、そこを先生方に、なければないでいいんですけれども。
○奥田委員 ちょっと質問ですが、それは締結事由を一定程度限定すればということですか。
○鎌田座長 そういうことです。
○奥田委員 少なくとも現在は有期契約を締結するか、無期契約を締結するかというのは、あく
まで契約当事者の自由ですね。
○鎌田座長 規制はありますけれどもね。
○奥田委員 それはそうですね。ただ、例えば更新制限とかを仮にかけたとしても、それでもや
はり有期契約の締結自体は入口部分で全く自由なわけですね。そうだとすると、今おっしゃった
のは、あくまで締結事由を限定するかどうかということで考えて、もし限定するんだとすれば、
どういう理屈があるかということですか。
○鎌田座長 そうです。
○橋本委員 前回も申し上げたんですが、何度も反復更新された有期契約を雇止めしたときに裁判になって、そこで形成されたのが、有期契約の締結には客観的事由が必要である、というドイツの法理ですので、これは、実質、雇止め法理に近いという認識を持っています。それで、何度も何度も更新されていますが、裁判所がどこに注目するかというと、最後の更新のときに、これに正当事由があるかというところを見るので、一時的な労働需要への対応という理由があったか、なかったかという事由が問題になっているときだと、もう何度も続いているので、恒常的な仕事だったんだということで、この正当事由は認められない、すなわち最初から無期契約だという判断をするわけですけれども、結論を見ますと、それほどドラスチックだという印象は私自身を持っていなくて、労働者が裁判を起こして裁判所が判断するというのが、客観的な理由の場合の争いことですので、それほどドラスチックな大きな変更かなという理解は、私自身は持っていない
んです。
○鎌田座長 でも、今、雇止めの話ですね。よくわかりませんけれども、民法的に言うと、やはり契約締結においての、契約形式選択の自由が、やはり規制されるということなのかなと思うんです。ドイツ法あるいはフランス法的に考えるとね。ドイツはある意味で雇止めというところから、結局、合理性があるか、ないかという話で、そこに出てくる話なんでしょう。
 ですから、フランス法とドイツ法の違いというのは、私はそういうふうに理解していたので、違うんだったら違うということで。
○奥田委員 それはそのとおりだと思います。フランスでは両方が等価ではありませんので。
○鎌田座長 ですから、やはり契約形式を選択するときに規制されてしまうということですね。
○奥田委員 そうですね。
○荒木委員 いわゆる非正規の雇用というのは、有期契約もありますし、派遣もありますし、仮に有期契約の締結を制限すれば、労働力を調達するために、かつ正社員と同じような硬直性をもたらさない雇用への需要というのはなくならないと思われますので、別の形態を模索するということになると思います。
 ドイツの経験は、最初に判例が、客観的な事由をすべて要求したところ、非常に高い失業率となって跳ね返っていったので、それで客観的な事由がなくても締結できるというのを立法でつくっていって、その拡大路線というのがずっと今日まで続いているんではないかと、これは一つの経験かなという気がします。
 それから、韓国は2年前ですか、有期契約立法をいたしましたが、これも諸外国の制度をいろいろと精査しまして、締結事由の制限もするかどうかも大議論があったと聞いておりますが、結局締結については制限をしないのがいいだろうということになって、そして、利用期間について2年間という出口の規制を導入したというのが、韓国の経験ということだと思います。
○鎌田座長 そうですね。まさにそれは実態判断というか、実務の経済の中での円滑な経済運営とも調整を図っていたという側面が非常に重要なわけですね。
 そろそろ時間もまいりまして、恐らくこの議論はここで終わりということではなくて、後の方でもまた議論は続くと思いますので、そのときに御議論いただければいいかと思いますが、最後に何か双方で、皆さんにおっしゃっていただければありがたいんですが、なければないで、よろしいですか。
○鎌田座長 では、ありがとうございます。今後の日程について事務局から説明をお願いします。
○富田調査官 次回の研究会の日程につきましては、11月中に開催させていただきたいと考えておりますけれども、現在調整中でございますので、委員の皆様には改めて御連絡させていただきます。
○鎌田座長 それでは、以上をもちまして第7回の研究会は、これで終了させていただきます。
 本日は、貴重な御意見をありがとうございました。
 
(照会先)労働基準局総務課政策係