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第13回有期労働契約研究会議事録
日時
平成22年3月25日(木)14:00~16:30
場所
厚生労働省労働基準局第1・2会議室(16F)
出席者
〈委員〉 荒木委員、鎌田委員、佐藤委員、 橋本委員、山川委員 〈ヒアリング対象者〉 ○日本労働組合総連合会 ・日本労働組合総連合会 総合労働局長 新谷 信幸 氏 ・UIゼンセン同盟フードサービス部会 労働政策部長 新山 斉氏 ・日本サービス・流通連合 事務局次長 石黒 生子 氏 ○日本商工会議所 産業政策第二部長 関口 史彦 氏 産業政策第二副部長 佐藤 健志 氏 〈事務局〉 渡延労働基準局審議官 前田労働基準局総務課長 青山労働基準局総務課労働契約企画室長 丸山労働基準局監督課中央労働基準監察監督官
議題
(1)労使関係者からのヒアリング (2)その他
議事
○鎌田座長 ただいまから第13回「有期労働契約研究会」を開催いたします。
委員の皆様方、ヒアリング対象者の皆様方には、御多忙のところ御出席いただき誠にありがとうございます。
本日は、阿部委員、奥田委員、藤村委員が御欠席されています。
また、本日は労使関係者からのヒアリングとして、日本労働組合総連合会及び日本商工会議所の方からのヒアリングを予定しております。
まず事務局から報告がありますので、お願いいたします。
○青山室長 事務局から報告いたします。
有期労働契約研究会で先月まで議論いただきましたが、前回2月24日の会合では中間取りまとめ案について御議論いただきました。そこで出された御意見を踏まえまして、その後、座長御一任の下にお取りまとめをいただきまして、3月17日に中間取りまとめとして公表いたしました。その本文が資料1であり、概要が資料2でございます。それを基に今回ヒアリングをいただくことになっております。
御報告は以上でございます。
○鎌田座長 それでは、続いて日本労働組合総連合会の方からのヒアリングを行います。本日は日本労働組合総連合会から3人にお越しいただいております。全体で45分程度で御説明をいただき、その後、質疑をいたしたいと思います。
それでは、日本労働組合総連合会総合労働局長、新谷信幸様から御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○新谷信幸氏 新谷でございます。
それでは、機会をいただきましたので、有期労働契約研究会の中間取りまとめに対しまして、連合としての考え方、意見を申し上げたいと思ってございます。
本研究会の委員各位の精力的な検討に対し、まずは敬意を表したいと思います。論点を整理していただいて、中間取りまとめを示していただきました。ありがとうございます。
私ども連合の考え方でございますが、実は有期労働契約につきまして、しばらく検討をしておりませんでした。現在、私どもとしては、2001年のパート・有期労働契約法律案要綱、労働契約法の2006年版の骨子が連合の正式な機関決定された考え方ということでございます。本日はこの考え方に基づきまして、中間取りまとめに対する意見を申し上げます。
お手元に資料を配付させていただきましたが、まず「第1 総論的事項について」でございます。中間取りまとめの中では4つの切り口から検討されておりますが、私どもとしては、有期労働契約を一括りに論じるのはかなり難しく、もう少し区分を区切り、さらなる実態調査が必要ではないかと思っています。
例えば60歳以降の再雇用者と若年者の有期労働者では、同じ「有期労働者」ではあっても規制に対する期待は違うのではないかと思っており、こういった区分をした上での検討が必要ではないかと考えてます。
また、中間取りまとめの中にも記載されておりますが、有期契約労働者を景気変動の調整機能として扱い、雇用変動リスクを労働者側にも負わせるのであれば、労働条件にプレミアの付加を義務づけることも必要ではないでしょうか。
連合も「なんでも労働相談」を全国で展開しております。有期労働契約で働いておられる方々からの相談がたくさんきております。現行の労働基準法を下回る法違反が多々ございまして、今後の有期労働契約の検討に際しては、両罰規定も含めた罰則についても御検討いただければと思っています。
次に「第2 有期労働契約の範囲、勤続年数等の上限、契約の更新・雇止めについて」についてです。
これは冒頭に申し上げましたように、今、私どもの機関決定を経た2つの法律案要綱に基づいて申し上げれば、入口規制と出口規制はセットで論議することが必要だと考えてございます。ただ、冒頭に申しましたように、有期労働者の区分をもう少し細かくする。例えば先ほど言いましたように、60歳以上の再雇用の有期労働者等々の対応を含めてセットで論議するなど、区分ごとの対応を勘案する必要があると思います。
入口と出口を規制することで、常用代替が起こらないようにするべきだと考えており、入口規制としては「臨時的・合理的な理由がある場合に限定」するべきではないかと考えています。
また、有期労働契約の現状を見たときに、権利の濫用的な反復更新等々もございますし、雇止めについても現在は規制する立法がないことから、有期労働契約自体の濫用を防止するような立法措置、法の制度の創設についても御検討いただければと思っています。
中間取りまとめの中でも触れられておりますが、更新をして一定の区切りを超えたといったときには、これを無期労働契約とみなすべきであると考えます。
現状では有期労働契約を規制する法律がないということで、期間満了における雇止めがトラブルになります。これについては解雇権濫用法理の類推適用、判例法理としては類推適用があるわけですが、無期契約の労働者との均衡と念頭に、法律に明文化することの検討をお願いできればと思っています。
先ほどの雇用リスクのプレミアに関連しますが、有期契約労働者に対しては、個々の企業において職業能力開発について一定の投資をすることも契約締結の条件としてお考えいただければ幸いです。
4ページ、5ページは、2001年に確認した連合の有期労働契約の内容でございまして、有期労働契約を許容する場合の条件です。
(1)は一定の事業の完了に必要な期間を定める場合について、有期労働契約を締結できる。
(2)は3年を超えない範囲での許容ということで、[1]~[3]でございます。
(3)は許容ということで[1]~[4]に該当する場合、1年に限っての有期を認める。ただし、(3)については、違反があった場合、無期に転換させるということも盛り込んでいます。
5ページですが、契約期間については現状の労基法でも書面による明示が義務づけられておりますが、加えまして、労働契約期間を定める理由、有期であることの理由を書面によって明示すべきということを考えています。
契約の更新については、3年以内については1回に限って1年以下の期間を定めて更新するということです。60歳以上については別途ということになるわけでありますが、1回に限って更新ができる。
それと4ページの(3)の部分でありますけれども、これについては、1回に限り更新をするということで考えています。
中間取りまとめの第3は飛ばして、第4の中にある、雇止めの予告あるいは雇止め後の生活安定については、雇止めにまつわるトラブルが非常に多いため、十分かつ慎重な論議をしていただきたいと思っています。特に今後の論議において、解雇の金銭解決に類似するような雇止めにつながらないよう配慮をお願いします。
さらに字句の問題ですが、中間取りまとめの23ページの上のところに「多様な選択を可能とするべく総合的な取組みが期待されるものと言えよう」という表現がありますが、これについてはいろんな解釈が成り立ってしまいます。多様な選択というのは労働市場分野の規制改革の中でよく言われたことですけれども、読み手によって「同床異夢」とならないよう、ここについては表現を留意いただければと思っています。
22ページに「パートタイム労働法も踏まえて」ということで、有期労働契約の無期化、正社員転換を推進するという非常に長い書きぶりが書かれていますが、もう少し端的に「パートタイム労働法を踏まえて、無期化、正社員転換を推進する」といったような表現でよいのではないかと思っています。
中間取りまとめの中に、実態を踏まえて10年以上も有期で契約の反復更新がされているような、常時ある業務についての言及があるわけですが、これを有期で契約するということは非常に問題である。常時ある業務については、無期化の転換を図るということに強く触れていただければと思っています。
8ページは、私どもの法律案要綱の2001年分に記述をしているわけでありますが、均等待遇の原則でございます。これについては、労働契約に期間の定めがあることを理由に、類似の通常の労働者と差別的な取扱いをしてはならないという基本原則を記述させていただいております。 労使協議でございますが、有期の方々の労働条件についても、個別の労働者ごとに行うのではなく、事業主と過半数労働組合との協議を行うべきということを追記させていただいております。
9ページは「第6 一回の契約期間の上限、その他について」でございます。
中間取りまとめの中で、現状の契約期間の上限の取扱いについて論述があるわけですが、私どもとしては、現行の契約期間の上限の引き上げに対しては反対を申し上げたいと思っています。
契約の上限が1年から3年に延長されましたが、この影響についてももう少し検証していただきたいと思います。これについては、改正前の上限1年に戻すかどうかも含めて検討の中に入れていただければありがたいと思っております。
たびたび出ておりますように、雇用リスクも労働者側が負わせられるという現状の中で、有期の労働者の退職の予告についてですが、無期の場合は民法に定めた2週間を超えれば退職できるわけです。他方、有期の場合は1年という期間がついてますので、このリスクをどう負担すべきなのか。使用者が負うべきリスクの配分や程度についても、検討していただきたいと思ってございます。
上限規制とも関連しますが、安定雇用への誘導をどう図るべきなのかについてや、利用可能期間の上限規制の在り方についても御検討いただければと思ってございます。
最後に全体を通じて、募集・採用から始まって中間の均等処遇、終了または更新・継続の全過程において、規制の検討範囲に入れるべき。入口から中間、出口、すべてのステージにおいて規制の検討範囲に入れるべきと考えています。
中間取りまとめの中にも安定雇用につながるステップという考え方があるという論述がございましたが、まさしく安定雇用につながる道筋をしっかりと示していただきたいと思っております。
私どもは今こういう考え方を持っておりますが、この研究会の最終報告は夏ぐらいに取りまとめをされるとお聞きしています。私どもとしても、この問題は対象労働者の数も多いということもございますし、処遇の面でも非常に問題が多い、雇用の不安定さも問題が多いため、この研究会の最終報告書を十分にそしゃくし、実態把握をした上で、私どもの構成産別の意見を聞きながら、いささか古い2001年、2006年の方針を今日的にどう整合させるのか。この研究会で御指摘いただいた内容をどうとらえていくのかについて、私どもとしても連合内部に研究会を設置して検討していく所存です。その結果を踏まえて、今後の対応方針を確定させたいと考えています。
私の方からは以上でございます。
○鎌田座長 ありがとうございました。
続きまして、UIゼンセン同盟フードサービス部会労働政策部長の新山斉様から御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
○新山斉氏 新山でございます。どうぞよろしくお願いします。
大変申し訳ございませんけれども、資料は提出していません。今、私どもは賃上げの真っ最中でございまして、今も夜中まで交渉されている組合が1,000組合ぐらいある中で、今日の午前中に私の資料として取りまとめたものがございますので、もしよろしければこちらを連合を通じてお配りいただければと思っていますので、よろしくお願いいたします。
有期労働契約ということでございますけれども、私どもUIゼンセン同盟として契約に関する問題について論議をしてきたかというと、そこまでの論議というのはまだされていないというのが現状でございます。今までの論議の中で均等処遇についての在り方は指針等も出させていただいています。
今回、有期労働契約研究会のヒアリングということでございまして、フードサービス部会ということで御指名をいただいたということでございますので、私どもフードサービス部会の中の所属組合、特に外食の比率が非常に高いということでございます。UIゼンセン同盟全体として短時間労働者の組合員が約45%いる中で、私どもフードサービス部会としては全体の51%が短時間、更に外食業種と言われるところの短時間組合員の比率というのは更に高くなりまして65%という状況にあります。今日はフードサービス部会を御指名いただいたということでございますので、基本的には今回の有期労働契約に関する現場レベルでの意見をお聞きしたいのではないかということで、私も現場の外食の組合を中心に若干ヒアリングをさせていただきましたので、今回は説明させていただきたいと思っております。
特出すべき点ということでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、外食については短時間組合員の比率が非常に高いということで、その内訳の半分が学生でございます。残りがフリーター、主婦の方になります。これは企業によって若干のばらつきがあります。
そうしたときに、大きな問題としては離職率が非常に高い。これが問題かどうかというのはわかりませんけれども、結果として離職率が高い。先ほど65%程度が短時間というお話をしましたけれども、仮にそこの企業で短時間の方が1万人いれば、1年間で1万人離職するということなんです。当然ながら10年、20年勤務されている方もいるんですけれども、それぐらい出入りが多い産業でございます。
そういったことをと踏まえて、この中間取りまとめの中の「第1 総論的事項」というところからお話をさせていただきたいと思います。総論的事項の中にもございましたように、有期契約労働者の位置づけとはどういうものかということが記載されておりました。やはり外食としても雇用調整を弾力的に行うという考え方は持っています。ただし、先ほど申し上げましたとおり、離職率が非常に高いということがございますから、結果として雇用調整というものが現実に行われていないという状況でございます。当然ながら65%が短時間の労働者でございますから、短時間の労働者の方がいなければ成り立たない産業であるというのは皆さん御存じのとおりだと思います。そういう状況の中で、企業、組合サイドでも雇用調整という意識はありつつも、結果としてはそれが行われていないということでございます。
次にタイプということで、今回、中間取りまとめの中で調査を基に4タイプに分類されたということが記載されておりますが、これを読んでおりまして、これは、今、働いていている、働き方としての分類ということだと思います。たまたま今は4分類の中の1つに分類されているけれども、あとは意識の問題というのが非常に多くあると思います。本当はもう少し働きたいけれども働けない、もう少し上の職務に就きたいんだけれども就けないみたいなところもあって、一概に4部類でいいのかどうかということも含めて、もう少し意識的なところの分類なり論議をする必要があるのではないかと感じております。
そういった中で、国際的に見た場合、正規労働者の解雇規制が厳しいため有期契約の労働者が増えたという見解云々が記載してありますけれども、やはり雇用を守るという労働組合の運動の視点からいいますと、当然ながら、安定・安心ということからも正規労働者と同レベルの解雇規制を行う必要があると考えております。そうはいっても、先ほど申し上げましたとおり、外食の場合は離職率が非常に高いということで、結果として雇用調整は行われていないんですけれども、もっというならば評価制度があって、短時間の方も評価を受けられているんですが、多少評価が悪くても続けていただかないと職場が回らないという状況にあるんです。先ほど申し上げましたとおり、1万人入っても1万人辞めるという世界の中で、余程のことがない限り雇用調整を行うという実態はほとんどないのではないかと考えております。
次に「第2 有期労働契約の範囲、勤続年数等の上限、契約の更新・雇止め」でございますけれども、この中で更新回数の上限の規制を行う云々ということが書かれておりますが、今、外食の契約期間というのは短期が主流なんです。短い場合ですと2か月ですから、これを反復更新すると1年で5回更新するところもあります。こうした中で、一律的に更新の回数の上限を規制することが現実問題として本当にできるのかどうかという問題があるのではないか。もし規制を行うのであれば、勤続年数の上限というものをセットに考えないと、今の外食産業で行われている2か月の契約からするとちょっと難しいのではないかと思います。
勤続年数の上限規制をセットで行うのであれば、その後は無期契約等にみなしていく。もしくは本人の希望があれば正社員への登用も行っていくようなことを併せて検討していかなければいけないのではないかと思っております。
契約の更新・雇止めについてでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、短期の期間で反復更新しているケースが多いということでございますが、なぜ短期で契約しているのかというと、企業側と実際に働いてくれる側にいろいろなニーズがあると思うんです。例えば契約内容が1年に1回、もしくは3年に1回ということになりますと、実際に働いている本人からすると忘れるケースというのが非常にあるわけです。自分の契約はどうなっていたんだろうということも含めて、それが短期であると、その都度、実際に働く内容、実際に仕事をどうしていくのかということも含めて確認し合える。
それと併せて、主婦の方もかなりの人数がお勤めされている中で、主婦の方についてはやはり子どもなどで家庭環境が変化することによって、当然ながら働き方を変えざるを得ないということになるわけですから、そうすると、長期の契約よりも短期の契約をして、その都度、働き方が変えられるということも、働く側からのニーズとしては少しあるのではないかと思っています。
外食でいう店長というのは基本的には組合員の方ですから、店長と短時間組合員の方とのコミュニケーションの場という位置づけも持ち合わせているということであります。
契約期間が短いということは、当然、期間ごとの評価を行うということですから、仮に2か月の契約であれば2か月間の評価をして、その評価を次の契約のときに生かすということになるわけです。それを仮に賃金に置き換えると、2か月で評価されたものが、次にどのぐらい上がるかは企業によって違いますが、それがすぐに反映できるというメリットもあります。
逆にデメリットということでいいますと、外食の1店舗の短時間労働者というのは、店の規模にもよりますけれども30人から40人です。2か月に1回ということになると、ほとんど毎日のように短時間の方との契約更新の場を持たなければいけないということで、お客様が来られて食事を提供するという主たる業務以外のことが非常に増えるというデメリットもあります。そういうデメリットを踏まえると、実際に今2か月で契約更新しているところでも、もう少し長く契約した方がいいという話も一部で出ているというところでございます。
次に実質的に無期契約と異ならない状態で存続している場合、先ほどもありましたとおり、裁判法理によって雇止めについて正規労働者と同様の云々ということがありましたけれども、今、短時間労働者の方は非常にグレーなところにいると思います。グレーな状況にあるからこそ、経営者側もしくは現場の責任者の方も間違った解釈でとられる方がいるのではないかと思っています。私どもの労働運動と違う思想の労働組合に加入をして、雇止めに関しての問題が起きたときに、そこが会社側に団体交渉等の申し入れをして交渉を重ねるといったケースが非常に多くあるんですけれども、これもきちっと雇止めについて法律で明文化なり明確化すれば、経営者の方もそれをきちっと認識して、きちっとした対応ができると思っております。無駄な労力を使わざるを得ない状況にあるというところからすると、こういったことも含めて法律できちっと明文化して、経営者側にも認識してもらう必要があるのではないかと思っております。
「第3 労働条件明示等の契約締結時の課題」でございますけれども、基本的にこれは義務づけされているわけですから、それをしていないことがおかしな話であって、これを明示していない場合については、ここに書かれているとおり無期契約として取り扱うか、もしくは罰則規定なものも含めて考えていかないといけないのではないかと思っております。
2点目として、契約更新時の判断基準ということが記載されておりましたが、判断基準というのは現実問題としてどこまで具体的にその基準を求められるかということがポイントになると思います。例えば勤怠管理上の遅刻、早退ということであれば、客観的に見て、だれが見ても判断できる基準だと思うんですけれども、重要なのは仕事ぶりとかコミュニケーション能力といった情緒が変われば見方も変わるといった状況になったときに、どこまで具体的なものを示せるかということがポイントになるので、この辺は十分に検討しないといけないんだろうと考えております。
「第4 有期労働契約終了(雇止め等)に関する課題」でございまして、一部諸外国では雇止めの際に手当といった対応をしているという記載をされておりますが、雇止めをするということは基本的にはそこで働く場がなくなる、要は事業所閉鎖等の合理化というときに、そういった問題が発生するということでございます。基本的にそういった店舗閉鎖による合理化等が発生した場合については、労働組合側から当然ながら退職金もしくは慰労金等の要求をして、その中で具体的に手当に代わるものを会社側にお支払いいただいているということも行っておりますので、雇止めをしたからといって一律的に手当云々というのは、もう少し慎重に論議をしていかないといけないのではないか。
それよりも先に、社員の方については、今、退職金制度を導入されているところが多い中で、短時間組合員の方にも退職金制度なりそれに代わるものの制度の導入もしくはここにも書かれておりましたとおり、雇用保険の充実も含めた対応をまず先にやるべきではないかと思っております。
「第5 均衡待遇、正社員への転換等」でございますが、当然ながら、均衡待遇というのは非常に重要なことだと認識しておりますが、賃金面において現状格差があるということは十分に承知しております。今の環境下でいいますと、労使間で是正するというのは非常に難しい状況にあるのではないかと思われます。特に人件費というコストの配分をどうするかという問題になりがちなので、1つの財布の中で社員への支払いと短時間の方への支払いになりますと、労使間の対決というよりも、もしかすると正社員の方と短時間組合員の方の労労対決みたいな構図が出てくる可能性もあるので、この辺は慎重に考えていかなければいけないと思っております。
賃金面でいいますと、労使間というよりも法的にどういった形で是正をしていくかということも含めて、これが最賃の問題なのかどうかということも含めて論議をしていかないとなかなか難しいのではないかと思います。そういう中で、先ほども労労対立というお話をしましたが、財布が1つの中で、仮に短時間組合員の方の賃金が引き上げられたら、逆に正社員の方が引き下げられるということも考えられるわけで、その辺の対応も含めてどうしていくかというのはセットで考えていかないといけないのではないかと思います。確かに上げることは重要なんですが、ある一方では正社員の方もいるということで、その方の賃金をどうするかということも含めて論議をしていかなければいけないのではないかと思います。
正規労働者への転換でございますが、基本的には転換を推進するべきであると考えております。現行、外食においても正社員への登用制度、もしくは制度がなくても実態として登用しているケースが非常に多くあるということでございます。特に外食産業においては、短時間労働者が正社員になるということは即戦力なんです。大学の学生さんなどでもアルバイトで入られて、そのままそこの面接を受けて就職するというケースは、ほかの業種より割合としては非常に高いのではないかと思われます。今、外食は非常に厳しい状況にありますので、新規採用はほとんど抑制しておりますから、そういう中でも短時間の労働者を正社員に登用するということが非常に重要なことになっております。
今までは社員の中途採用も行っていたんですが、それもこういう状況ですので、採用するのはいいんですけれども、もともと外食を知らない方を採用したときに、やはり一からのスタートということも含めると、今、実際にそういう余裕が外食産業はないんです。そうだとすれば、現場の方を社員に採用することが、今の情勢からすると、今後ますます増えていくのではないかと思います。
最後「第6 1回の契約期間の上限、その他」でございますが、先ほど申し上げましたとおり、今、最低で2か月という期間です。今、上限は3年ということもございますが、実際に3年契約が本当に外食の中であるのかというとないんです。そうしたときに、3年も含めて長期の契約が実態に即しているのか、それを更に延長するという論議が本当に必要なのかということからすると、契約期間の上限というのは延長ではなくて、逆に最低限を規制するような方向の方が外食産業にとってはいいのではないかということが考え方としてはあるのではないかと思っております。
そういうことでございまして、若干長くなりましたけれども、今回、現場の外食産業の労働組合の意見もお聞きしながら、中間取りまとめとしての意見を述べさせていただいたということでございます。
以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。
続きまして、日本サービス・流通連合事務局次長の石黒生子様から御説明をお願いいたします。どうぞよろしくお願いします。
○石黒生子氏 日本サービス・流通連合の石黒です。
今回はこのような機会をいただきまして、ありがとうございます。
座らせていただきます。
まず初めに、今日の資料は見解ではなくて実態という資料をお持ちしていますけれども、私どもの有期契約労働者の実態を少しお話させていただいてから、今回の中間取りまとめについてお話をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
配付した資料をごらんいただければと思います。
1ページ目を開けていただきますと、私たちサービス・流通連合の組織人員が載っています。私たちは百貨店、スーパー、生協、専門店、ホテル、クレジット会社といったいわゆる流通サービス業に従事する136の組織でございます。
構成人員は、去年10月1日現在で組合員約22万人のうち、私たちはフルタイマー、パートタイマーと分けていますが、基本的には有期雇用の者が9万人ということで、4割を超えるところが私どもの組合員の中のいわゆる有期雇用者だということでございます。
2ページを見ていただきますと、私たちは2001年に結成していますけれども、この間、パートタイマーの組織化ということを最重点課題としてまいりまして、結成したときのパート率は18.5%でしたが、今は41.6%になったということで、全体的に組合の中でも増えてきたところでございます。
それをなぜやらなければいけないのかということが3ページ目にありますが、これは経産省の商業統計ですので、皆さんも御存じのとおりですが、特に小売業の中では半分近くがこういったパート、アルバイトです。業態別に違いますけれども、私の出身は総合スーパーですが、総合スーパーなどは8割以上がパートタイマー、アルバイトでございます。コンビニもそれに準じておりまして、こういったところから考えると、パートタイマーの組合員が私どもの産別の中で4割を超えたというものの、実際はまたまだだと思います。今、一生懸命やっているんですが、先ほどのお話のように、入れ替わりがかなりいますので、正確な数字がなかなか把握できません。私どもの企業で働いているパートタイマー、いわゆる有期の組織率は4割を切っているのではないかというぐらいのところでございます。それでも全体ではパートタイマーが4割ぐらいはいますけれども、まだまだ非組合員、未組織のパートタイマー、有期の方が多いというのが私どもの状況でございます。
4ページは、総合労働条件調査というものを毎年やっておりまして、後でお話します契約期間の状況の今の実態でございます。私どもは調査をするときに、企業の方でパートタイマーとかアルバイトとかパートナーとかいろいろ言っていまして、混乱しますので、基本的に時間給の有期雇用者をパートタイマー、月例給与の有期雇用者を契約社員というふうに調査などは全部統一するという原則でやっております。
ですので、左側のパートタイマーは時間給で払われている有期の雇用ということです。有期の中に無期も入っていますけれども、基本的に時間給で払われる人ということでやっております。それでいきますと、1年のところが一番多くて今66%。そのあと、6か月が24.8%でございます。
先ほど申し上げたように、月例給与で払っている人が契約社員の右側のところですけれども、これも1年というのが89.6%でございまして、1年がほとんどだということです。
ちなみに、契約社員というのは正社員と同じ契約時間、フルタイマーに近いところがほとんどだということで、正社員より短い時間の契約社員は2つか3つぐらいの例しかないということで、ほとんどフルタイムに近い働き方をしている。
時間給の労働者などで正社員と同じく定年までとか期間の定のない契約となっているものについては下に表があります。これは1つの企業で幾つかの雇用形態を持っていますので、トータルの数でありますけれども、パートタイマーでは4件、契約社員では2件ということで、基本的には時間給で働く労働者の中で無期の契約で働いているものというのは、ほとんどないというのが状でございます。
5ページは、正社員、パートタイマー、契約社員のところの勤続年数とかそういったところでございます。
一番左のところは全従業員といっていますけれども、基本的は全正社員のことです。そちらのところでいくと、トータルで16年、パートタイマーで7.7年、契約社員で5.4年でありました。
年齢につきましても、パートタイマーの組合員ベースはかなり高い年齢ということが、今の私どもの組織の現状でございます。
6ページのところは、正社員の賃金プロット調査やパートタイマーの賃金調査から明らかとなった雇用形態ごとの賃金水準の違いでございます。
上の線は正社員を時間給に割り戻したものです。これは月間の所定労働時間を165時間で換算し、大卒の初任給から勤続4年までのところをそれぞれ時間給に換算したものです。真ん中が契約社員、先ほど申し上げた月例でもらっている有期雇用です。下が時間給でもらっている有期雇用の平均の数値をグラフにしたものでございます。
これでいきますと、正社員の勤続4年の1,342円の時給に対して、有期の場合、時間給だと867円ということで、65%ぐらいの差があるということでございます。
パートタイム労働法等で指導されております、パートタイマーの類型、働き方に応じた分け方が下のグラフになります。グラフのイというのは、通常の労働者と業務の内容が同じで、人材活用の仕組みや運用が一定期間同じのパートタイマーです。ハのところは、両方異なるものです。
両方全く同じところは違法ですから、いないという前提です。
残念ながら、これはパートタイマーの制度を持っているところのモデル賃金の比較でございます。これでみますと、イのところ、正社員に近い、一定期間は同じだといったところについては78%程度ですし、一切違うところは62%になっていまして、働き方による賃金制度、同じパートタイマーのところでも働き方による賃金制度というものはかなり区分されて、またパートタイム労働法等々の導入の後は変わってきたということが示されていると思っています。
7ページ以降は、2年に一度組合員を対象にやっている意識調査の結果からです。大変残念ですが、今年のものは、今、調査表をつくって出すところなので、最新のデータは2008年となります。回答数は4万枚、その中で有期労働者は1万5千人、38%となっています。特に有期雇用労働者のところにスポットを当てた意識調査の結果を持ってまいりました。
7ページは、あなたはどうしてパートタイマーや契約社員で働くんですかという理由についてでございます。上の段が前回と今回の比較でございまして、右側で線が引いてあるように、ある程度働く時間や日が選べるとか、ゆとりを持たせる、生活を維持するためとなっています。
下のところは、先ほど申し上げた時間給とフルタイムに近い月例給で分けますと、パートタイマーの場合は、ある程度働く時間や日が選べるということが2割を超えていますけれども、月例給の契約社員、いわゆるフルタイムに近い方からは、21%が正社員になれなかったからという理由が出ているのが現状でございます。
8ページは、フルタイマーと全部一緒に調べたものですが、愛社精神というものです。よく会社に対する考え方が正社員とは違うと言われますけれども、これを見ている限り、役付きの社員は除いて、一般職と時間給のパートタイマーでは、「私は愛社精神が強いと思うか」という設問について、「非常に強い」と「どちらかと言えば強い」という回答の割合が余り変わらない。むしろ、パートの方が多いぐらいでございまして、私たちも結果を見てちょっと驚いたわけではございます。先ほど申し上げたように、勤続年数も平均で7年を超えていることを考えると、臨時的な働き方で、それほど会社との関わりも強くないということは決して言えないのではないかと考えております。
9ページの「職場で不満や不安を感じること」でございます。トップは賃金が安いというところでございまして、先ほど申し上げたように、特に月例給のフルタイムに近い人たちはやはり正社員になれないということが職場での一番の不安、不満だということで、逆に時間給の方は有休が取りにくい。これは組合としては非常に問題なんですけれども、有給休暇が取れないということが次になっているということで、契約社員というのはある程度契約時間が長いということも含めて、かなり正社員に近い働き方をしている。だから、逆に処遇がもっと正社員に近くなるべきだと思いますし、パートタイマーの方は時間とかそういったものに縛られない、自分の働き方を選択できることを望んでいるということが読み取れると思います。
次に「今後、制度化あるいは充実してほしいと思うもの」ということで、「一時金、臨時手当の支給」「毎年賃金が上がる制度をつくってほしい」「退職金の支給」という3つが一番大きなウェートを占めておりまして、これは月例給の有期契約労働者でも時間給の有期契約労働者でも大きくは変わらないといったところでございます。
11ページ、12ページはまた後でご覧いただければいいと思いますが、JSDでは様々な形で均等・均衡待遇の取り組みを進めておりまして、通勤手当とか慶弔の付与とか、そういったところはかなり進んでいます。逆に12ページの一番最後のグラフでは、退職金がないところがほとんどです。それが今の私どもの有期のパートタイムの意識、働き方の現実だということでございます。
有期雇用の実態から見れば、平均勤続が7年ですので、決して臨時的ではない反復の契約はしているということですし、愛社精神等々を含めて企業に対するいろんな思い入れもありながら、有期で働いているというのが平均的なところなのではないかと思っています。
よく私は冗談で言っているんですけれども、できるだけ長い期間働いてほしい有期契約労働者とか、逆にできるだけ長い時間働いてほしいパートタイマーとか、パートタイムは短いはずなのに長い時間働いてほしいとか、期間を定めて雇用するのにできるだけ長い期間働いてほしい有期雇用労働者といったような矛盾したものはなくしていくことが一番大事ではないかと思っています。
それでは、今回の中間取りまとめについて、私どもの見解を少し述べたいと思います。
まず総論というか全体的なところでございますが、基本的な考えとして、日本の労働法では無期原則でも有期原則でもないと研究会の中では書かれていますが、今後はやはり無期労働契約が原則だと考えるべきではないかと思っております。そうしなければ、有期雇用労働というのが良好な雇用形態にはなっていかないと考えております。
今回の2ページのところにありますように、日本においては正社員を中心とした長期雇用システムを基本にしてきたわけですので、正社員を想定していろんな雇用法制、さまざまな企業の在り方が決まってきているということで、その網から外れた有期雇用が増加してきたということが、今回の不安定な雇用を生んだ大きな原因だと思っています。まず無期労働契約ということを原則としていろんな検討をしていくことが、より公正を確保した雇用システムをつくれるのではないかと思っていますので、基本原則として無期雇用なんだということを入れて考えていった方がいいのではないかと思っています。
その上で締結事由等の規制、いわゆる入口規制についてですけれども、基本は無期が原則ですので、合理的な理由がない場合は有期では雇用できないとすべきではないかと思っております。有期雇用契約の締結が制限されると、新規の雇用が抑制されるという見解も入っていましたけれども、新規の有期雇用がどんどん増えるというよりは、無期雇用を増やしていく。要は有期雇用の拡大ではなくて、無期の雇用を増やしていくことが大事なんだ、安定雇用、良好な雇用を増やす道なんだと思っています。
はっきり言って私どものスーパー業界では、今、有期雇用労働者の割合は8割、9割となっています。これはコスト削減のために有期を増やしてきたことは明らかであります。そういったコスト削減のために無期と変わらないような反復契約をする有期雇用といったものを、多くを生み出してきたものをここで変えていかなければならないと思っております。
その観点からどう規制していくかということを考えるべきだと思います。したがって入口規制としては合理的な理由、臨時的・一時的な業務でなければ有期雇用契約は締結できないと規制すべきと考えております。諸外国でやっているように、企業の立ち上げの期間に限り有期契約でもいいとか、そういった特段の事情でなければ、入口規制をして、それ以外の有期雇用は認めないということをやっていくべきではないかと思っております。
先ほどの意識調査のところで、9ページに戻っていただくと、「職場で不満や不安を感じること」というところで、「解雇や雇止め」というのがそれぞれ5%ぐらいしかないんです。私どもの組合員は余り不安ではないのかと突っ込まれるといけないので先に言っておきますが、有期雇用契約ということから発生する「解雇や雇止め」について不安を持っているわけではないという調査結果になるわけですが、勿論この人たちは反復契約をしている組合員が多いということ、あくまで労働組合がある組合員ですので、安易な雇止めはできない、解雇権濫用法理の類推適用についても労働組合から周知しているので、「簡単に次の契約更改で雇止め」いうことはできないと労働組合からも言っていますので、そういったところを含めてよく理解できているので、「解雇、雇止め」に関する不安が少ないのではないかと思っています。これは意識調査の設問の内容にもよりますので、次回の調査では少し違う聞き方をして、また検討したいと思っています。
私もパートタイマーの集会などに出ていろいろお話を聞くんですけれども、「やはり契約更改の時期になると憂鬱なんだ。もう10回も契約書にハンコを押しているが、契約更改のときになると来年の何月までという契約書にハンコを押せと言われる。私はもう10回もやっているんだ」ということをよく聞きます。「労働組合は反復契約をしているから、無期契約と一緒だから心配ないんだ」ということを言うけれども、「それではどうして有期なんだ。10回も20回もハンコを押すというのはどういうことなんだ」という話はよく聞きます。
正社員への転換制度も多くのところでやっていますので、正社員になることはどうなんだという話をすると、2通りありまして、多くの契約社員の方が正社員になってきたという現実がありますが、やはり正社員になると長時間働いて、休日出勤も残業もしないといけないということを考えると、無期雇用イコール正社員、正社員イコールのべつ幕なし会社に奉公という選択肢であれば、有期、パートタイマーでいいんだ。ただ、雇用の不安定については不安な材料だと言っている。そういうことをいろんな集会とか一般のパートタイマーの集まりで聞かれます。無期雇用と変わらないほどの反復更新は本当にどうなのかということは思っています。
私どもの業界では、店ができてから閉店するまで30年ぐらい働いた、30回ぐらいの契約というのは珍しいことではないものですから、10年ぐらいというのがほとんどです。初めの1年で合わないから辞める方が結構いるので、平均が7年ということは、10年を超えているところが平均に近いと私どもは認識をしておりますので、そういった10年以上も反復して契約を続けて労働している人がなぜ有期なのかということについては、検討すべきではないかと思っております。
入口規制を行わなければならないと思ったもう一つの理由は、パートタイム労働法でいろんな形で均衡・均等待遇の概念を入れなければならないということが言われていますが、現状ではどこまでいっても、「この人は有期雇用なんだ、この人は無期なんだ」というところで、職務とか働き方の中身による均衡・均等の議論ができない。初めから箱が違うので、職務とか働く内容、働き方によって賃金の水準やいろんな処遇を決めなさいと、いくらパート労働法や指針で示しても企業はどうしても「この人はパートだから、有期だから、この人は正社員だから」ということで、なかなか進まない。中間取りまとめの均衡・均等の議論のところにありましたように、働く側からのニーズも含めて安定した無期雇用の中に働き方の選択肢、いわゆる地域限定とか短時間勤務だとか、そういった働き方の選択肢を置く。要は10回も20回も雇用契約をするのではなくて、無期雇用となる中で、働く側にとっても、また企業にとっても最良の形があると思います。多くの有期雇用労働者に実際に辞められたら困るわけですから、10回、20回の契約更新を続けていく、労使の両方のニーズが合うところではないかと考えております。
それから、出口規制、いわゆる更新回数・利用可能期間等々ですが、基本的に入口をきちんと規制すれば、出口の規制というのは余り縛らなくてもいいのではないかと思っております。
例えば韓国の事例でありますように、2年やったらその次は正社員化していくとか、無期に近くしていくといったような、どこかで区切りをつけると、その区切りの前での雇止めもしくは契約打ち切りといったものを規制できるかどうかというところは、自分の業界としてはかなり難しいと思っています。
今までの派遣労働等のところもそうですけれども、例えば厚生年金の適用拡大とかいろんなことをやると、常にそういう話があるだけで、例えば20時間まで適用拡大する方向だとなると19.5時間契約が急に増えたり、そういう現状は確かにある。
JSDの組合員ではパートタイマーでも1年がメインの契約ではございましたが、6か月に減らした企業もここ数年で幾つかあるということを踏まえると、組合としては6か月にしようがどうしようが何回も契約更新をしていれば一緒だということを企業にも言っていますが、企業としては、6か月契約であれば、店舗閉鎖とか売上の急激な減少とか何かあったときに雇用を打ち切れるという部分が非常に強く働くんです。何回または何年か契約更新していればそれは無期にしていくとか、そういう形で出口規制ができればいいんですが、むしろ、ここの中で書かれている「副作用」のところが多いのではないかと考えておりますので、入口をきちんとやって、出口のところは、逆に決められた有期を締結できる理由の期間を超えないという契約期間という考え方でやっていけば、それほど強い必要はないのではないかと考えております。
「第5 均衡待遇、正社員への転換等」でございます。先ほど申し上げたように、無期イコール今の正社員の処遇というところは企業にとってハードルも高いですし、働く側によってもハードルが高いというのが現状だと考えています。そういった無期、正社員イコール会社に縛られるという二者択一ではない形で、多様な無期の労働者という働き方をつくっていく。これは話の企業労使の問題ではありますけれども、そのときにいかに正社員との均等を考慮してつくっていくかということが1つあるわけで、そういったところについてはいろいろな形で法的な規制が必要と考えます。いわゆる同一価値労働、同一賃金といったものは難しいと言われていますし、ここのミッションではありませんけれども、そういったものをつくりながら今までの正社員ではない、安定した無期雇用の労働者みたいなものをつくっていくことが一番大事なのではないかと思っています。
23ページのところに「正社員は長期間を見据えて賃金決定システムが設計されている」と書かれていますけれども、私どもの産業でも完全ないわゆる年功序列の職能等級制度のところはほとんどありません。どちらかというと、職務給と職能給の合体版のところが多いので、職務の内容や成果、意欲、能力等々の要素での均等待遇については、今できる状況にあると思っていますので、きちっと同一価値労働、同一賃金といった観点から、新しい正社員の制度をつくっていけば、雇用も安定して、企業的にもそれなりの水準でできると考えております。
そのほかの課題でございますが、1回の契約期間の上限を一旦3年としたけれども、どうなんだというところでございます。いろいろな検討をする必要があると思いますが、先ほど申し上げたように、基本的に有期というのは期間限定で臨時的な仕事だけですので、臨時的な仕事であるとか、期間限定のところで3年を超えるものはいかがなものかと思っていますので、上限3年はそのままでいいのではないか。むしろ、狭める必要もあるのかもしれないと思っていますが、延ばすということは考えておりません。
また、高度の専門知識を有する労働者は、今の基準法では5年と入っていますが、延ばすということも検討してもいいと思いますし、別な上限が必要かということも考えてもおります。
本論ではないので最後になりますが、19ページの「2 雇止めの予告等」というところで、家計補助的に働いている場合を対象に、家庭環境の変化に応じた労働条件の見直しの節目として、契約更新時に見直しをして紛争を回避しているような例が書かれていますけれども、これは非常に有効な労使のコミュニケーションが図られているところの事例だとは思います。これとは逆の例も多く見られております。簡単にいえば、子どもができたんだから次の契約で辞めたらどうだ、という話が結構行われている事実もございます。労使対等のところできちんと労働契約が結ばれているのが労働契約法の基本ですけれども、実際は契約満了が近くなった時点で子どもも大きくなったからどうだとか、退職勧奨みたいなものが行われる可能性があることを踏まえると、そういったところの事例としては少し難しいという気がしております。
有期でありながら無期と変わらない雇用をたくさん抱えている私どもの産業としては、いろんな形で働き方とそれに対する対価、労働条件も含めて検討しなければいけませんけれども、やはり何度も契約更改をしている有期といった不安定な雇用については見直していく方向で、法律等々も是非いろんな形で考えていただきたいと思っています。
長くなりましたが、以上です。
○鎌田座長 どうもありがとうございました。
次のヒアリングか3時30分からの開始予定ということで、もし可能であれば、これから25分まで、あと十数分質疑をしたいと思うんですが、御都合の方はよろしいでしょうか。そういうことですので、委員の皆さんから何か御質問があったらお願いいたします。
どうぞ。
○荒木委員 今日は大変貴重な御意見をありがとうございました。
最後の石黒さんにお聞きしたいんですけれども、規制の在り方としては入口規制をすべきだろう、出口を規制すると、むしろ副作用が大きいので問題があるだろうという御指摘だとお聞きいたしました。そうしたときに、ドイツなどもそうなんですが、客観的な理由があればずっと更新も可能だという規制がなされているんですけれども、客観的な理由があれば何回更新してもあるいは何年使ってよい。それはそれでよろしいということになりましょうか。
○石黒生子氏 客観的な理由があって何度も更新をする。それはちょっと微妙なところですね。でも、両輪規制をしたときにどうかという問題はよくあるんです。
○荒木委員 今日の御主張の中で、有期が増えるのは望ましくないので、なるべく無期で雇うようにすべきだということで、その場合、現状では有期から無期に移行するような手当はありませんので有期のままいきますけれども、そうではないような規制をした場合には、むしろ有期から無期への移動がある。有期を締結するときに、最初の入口で規制をしてしまうと、そもそも有期にも入れない人も出てくるかもしれないという問題が1つあります。
もう一つ、そうではなくて、有期に客観的な理由を要求しても、更に反復更新した場合には、今の雇止め法理の濫用に当たるとして規制をするということもあるかと思うんですが、その場合、今度は客観的な基準はありませんので、今の判例法理と同じように非常に基準があいまいになって、一体この人は客観的な理由があって反復更新されたんだけれども、無期とみなすべき人なのか、そうではない人なのかという、同じ問題は残るということです。
○石黒生子氏 クーリングオフの問題はありますけれども、逆に反復というのは臨時的業務であればあり得ないと思います。有期契約締結の合理的な理由というのは、臨時的であるとか一時的であるとかそういうことに限りますので、反復はあり得ないという原則だと思います。なので、基本原則として入口が有期であるということは、この期間しか要らないということで有期の事由を決めますので、その期間に限った雇用契約の締結であり意味反復はあり得ない。その原則が崩れる場合には何かあるかもしれませんけれども、その原則でやっていけば、今おっしゃったような反復継続を有期の入口のところで規制しても、反復が行われることはないと思っています。ただ、本当に入口できちっとできるかどうかということにかかっていますので、それはもう少し中身を含めた検討が要ると思っています。
○荒木委員 どの国でも認められているのは、例えば産休を取った労働者の代替にある人を雇われた。代替される労働者がいろいろ変わっていくということがあります。例えばAさんという人がXさんの代替で雇われた。今度はYさんの代替としてまた有期契約で雇われる。そういうことは大体どこの国も認めているんですけれども、その場合、その人は反復更新されることはあり得るということですか。
○石黒生子氏 ほかの企業でということですか。
○荒木委員 同じ企業です。つまり、代替の必要性というのは客観的に認められています。それは1例ですけれども、そういうふうに客観的な事由がある場合もある気がします。いずれにしても、どの規制をとっても完全にすぱっといくことはありません。
○石黒生子氏 同じ企業で何人も産休が出て、この産休が終わったら次の産休の人にいくということですね。
○荒木委員 はい。
○石黒生子氏 それはある程度どこかで規制しなければいけないと思いますけれども、基本的に臨時的な仕事というところでは何度も反復できることはないと思っていました。確かにおっしゃるとおり、産休だけはこれからどんどん子どもが増えれば、同じ企業で何人も産休を五月雨式に取っていくかもしれないのであるかもしれませんけれども、それは少し別の規制の仕方を検討するべきだと思います。そういうものであれば、出口のところで少し違うものが必要かもしれません。
○荒木委員 ありがとうございます。
○鎌田座長 ほかの先生方はありませんでしょうか。どうぞ。
○佐藤委員 貴重な御意見ありがとうございました。
新谷さんに1点と、石黒さんに1点確認的な意味での御質問ということです。
新谷さんの資料の中で、ページでいうと2ページ目ですけれども「◆『入口規制』と『出口規制』はセットで議論することが必要→ただし、有期労働者の区分ごとの対応を勘案する必要がある」と書いてあります。これは研究会でも随分議論されたところで、いろんなタイプがあるわけです。その中で例として若手あるいは若年の有期と高齢者などはやはり違うので、その点の対応を勘案する必要があるということなんですが、仮に年齢的なものとして分けたときに、それぞれどういう要素を勘案したらいいとお考えなのか。特に若年のところなど年齢で区切ったときのお考えを教えていただきたいということが1つです。
まとめてやってしまった方がいいんですか。1点ずつでいいですか。
○鎌田座長 御質問は一緒にされて、それぞれにお答えいただいた方がいいと思います。
○佐藤委員 石黒さんの報告では、実態のところが大変興味深かったんですが、細かくいうと2つあるんだけれども、1つはこの業界における契約社員の割合です。パートは短時間だし時給ベースなんだけれども、契約社員は月例給与で、非正規の中にもタイプがあるんですが、例えば3ページ目にありますそれぞれの業界の中での非正規の割合での有期契約労働者というのは、どのぐらいの割合と考えたらいいんでしょうか。パート、アルバイトは点でくくっているところですね。
○石黒生子氏 はい。
○佐藤委員 これはいわゆる短時間ですね。
○石黒生子氏 はい。
○佐藤委員 有期契約労働者というのはこの中に入っているのか、それともそうではないのかという辺りのところです。これは全部有期と考えていいのかどうかというところです。
それから、併せて7ページ目のところには、就労理由によっては都合がいいから契約社員とかパートで働いている方もいるんだけれども、正規になれない方がいて、その方の問題は正社員になれないということが強く出てくるということですが、そういうことでいうと、この人たちに対する解消の方向というのは、登用とかそういうことが非常に重要になってくると思います。登用というものを導入してもうまく登用されていかないという実態もあるように聞くんですが、制度を入れればこの辺りの不満は解消されていくとお考えか、それともそこは実態を踏まえてもう少し本質的に考えた方がいいのか。その辺りのところでお気づきの点を教えてください。
以上です。
○鎌田座長 新谷さんの方からお願いします。
○新谷信幸氏 年齢の区分は例の中で私も申し上げました。私どもとしても詳細な検討をしているわけではございませんが、今、私が考えている問題点としては、中間取りまとめの4ページにもありますが、正社員を希望しながらも就職できず、有期契約になっておられる方もいますが、これも年齢によって規制に対する希望は違うのではないかと思っております。60歳以上の有期契約で再雇用された方々の出口の規制として、例えばまた無期化することが保護として重要かどうかというと、これもちょっと違うのではないかと思います。やはり若年者と60歳以降の方に対する規制のあり方は当然違うはずですから、60歳以降の再雇用者や産休・育児休業代替など労働者の類型ごとにあるべき規制や対応策を考えていくべきではないかというのが私どもの提起でございます。
○石黒生子氏 1点目の3ページのものは経産省の資料を使っていますけれども、基本的には先ほど申し上げたように、パートタイマー、契約社員のフルタイマーのところもパート、アルバイトのところに入っているのではないかと類推しています。
2点目のいわゆるフルタイマーに近い有期雇用の人たちにどう対処するかという問題ですが、パートタイム労働法等々の結果、今、自分の傘下のところでは7割ぐらいが正社員への転換制度を入れているんです。ただ、運用実態等々を踏まえると、今、状況的に非常厳しい状況にあるので、新規採用もとっていないという状況でちょっと時期が悪いんですが、企業によって違いますけれども、数年前まではそれなりに新規採用の何パーセントぐらいは、0ではないある程度のウェートは正社員にしてきた。有期を無期にしてきたという実態もあります。
もう一つは、それをきちんとやっていけばある程度は解決できるとは思っていますけれども、ただ、年齢の問題とかで少し課題があると思います。職務給に完全に移行してきて、職務給プラス年齢の要素も踏まえた賃金体系を持っていますので、40代とかの契約社員が正社員になるときの格付けの問題ですとか、そういったところも含めて、現状の正社員の1本しかないという人事制度の中ではなかなか格付けが難しいので、そういったところも少し検討が必要だと思っています。
○鎌田座長 よろしいですか。
○佐藤委員 はい。
○鎌田座長 どうぞ。
○山川委員 ありがとうございました。
お三方それぞれ均衡待遇と労働組合の役割について言及されたかと思います。新谷さんからお話のあった法案の中で労使協議が出ていますし、新山さんからは労労対立のお話があって、石黒さんは職務給のお話と労使の役割ということに言及されましたが、例えば労使で均衡待遇について話し合って改善していく際の見込みというんでしょうか、あるいは問題点はございますか。お三方のどなたでも結構ですけれども、何か御意見がございましたら、より具体的に、例えばこういうふうにすれば協議がより進むとか、あるいはこの点が特に難しいとか、簡単で結構ですので、何かございましたら教えていただければと思います。
○新谷信幸氏 まず私からお話をさせていただきます。あとは何か実態を補足していただければと思います。
私ども今ちょうど春闘で交渉しておりまして、今年の春闘の取組みの目玉の1つが、「すべての労働者を対象に労働条件の底上げを図っていく」ということでございます。具体的にどんなことをやっているのかというと、各産業別、組織によって違いますが、例えば企業内での最賃協定を締結するといったことに取り組んでいます。従来は正社員を中心にした対象範囲でありましたけれども、非正規の方々、有期雇用の方々にもこれを広げていくという取組みを現在進行形で行っているところでございます。その取組みによる今年の成果についてはまた別の場で報告をさせていただければと思います。そういった事例がございます。
○石黒生子氏 最賃もそうですけれども、法的な規制がないと、要は業界は業界内の競争をしているんです。先ほど申し上げたように、スーパー業界でもパート比率を上げたかったわけではないと思うんですけれども、パート比率を上げている。それはイコールコストの低い労働力になったということなので、正確なデータはありませんけれども、1人当たりの利益といったものは格段に上がっていると思っています。売り上げはそんなに伸びていませんけれども、店も増えて、人も増えて、要は正社員の半分とか6割の賃金で、正社員もしている仕事をしていると考えると、公正競争の話になってくると思います。最賃もそうですけれども、やはり法の下支えがないと、それを労使の中でやっていくことはできないと思います。
私どもはこれだけパートタイマーの有期の方がいらっしゃるので、有期の方に納得いく働き方をさせなければ会社は成り立たないということで大体労使協議をしていまして、それぞれの納得というところを個別労使でやっていますけれども、どうしても引き上げるためには法的な規制も必要です。逆に言えば、そんなに安く物が売れなくなるとか、労働のコストというのはある程度かかるということを前提にやっていかないと、難しいというところのコンセンサスが得られないと業界としてはかなり逆圧力が出てくるだろうと思います。やはり最賃の問題ですと、均衡・均等、同一価値労働、同一賃金といったところの法的な規制をして、ある程度の水準を示していかないと、なかなかうまくいかないと思っています。
○新山斉氏 同じなんですけれども、外食は離職率が高いということからすると、募集をどんどんしなければいけないわけです。産業自体の魅力も含めて、募集をしても人が来ないということからすると、募集規模をどんどん上げていかないと採用できないんです。確かに法的な規制からスタートしなければいけないと思うんですけれども、今の最賃であればかなりその上をいっているわけです。ここ何年かは何十円かという話もあるんですけれども、もっと引き上げていかないといけないんだろうと思いますので、まずは最賃というところから見直しなりをしていただきたいと思います。もともと今の最賃の金額がどうなのかということも含めて考えていかないと、今の延長線上で最賃を考えると、ちょっと間違った方向にいくこともありますので、その辺も含めて検討が必要だと思います。
以上です。
○鎌田座長 ありがとうございました。
本当はお聞きしたいことがたくさんあるんですけれども、時間がまいりましたので、この程度にしたいと思います。
私としては一言だけ感想でございますが、新谷さんが途中で総論的なこととしまして、有期契約労働者の景気変動のリスクを労働者の側に転嫁するということをどううまく規制をしていくかというところがポイントではないかとおっしゃられたことが、私としては非常に感銘深く聞いたところであります。本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。参考にさせていただきます。
(日本労働組合総連合会関係者退室)
(日本商工会議所関係者入室)
○鎌田座長 本日はお忙しいところ、誠にありがとうございます。
それでは、引き続きまして、日本商工会議所からのヒアリングを行いたいと思います。
本日は日本商工会議所から産業政策第二部長、関口史彦様においでいただいております。よろしくお願いしたいと思います。
○関口史彦氏 今日は私と副部長の佐藤健志の2人で出席させていただきます。
○鎌田座長 佐藤様もよろしくお願いいたします。
○関口史彦氏 ただいま御紹介いただきました関口と申します。
本日はこのような意見を発表する場をいただきまして感謝しております。また、日頃から商工会議所活動に対しましては御理解いただいておりまして、ありがとうございます。
本題に入る前でございますけれども、今いろんな場面で商工会議所の現状についてPRというか、いろんな方に知っていただくということで説明をさせていただいておりますので、数分のお時間をいただいて、簡単に御説明をさせていただきます。
商工会議所といえば、皆様方も珠算であるとか簿記の検定試験で小さいころにお知りおきの方もいらっしゃると思いますけれども、今、エコ検定ということで環境検定をやっておりまして、既に13万人ほどの受験者数に伸びております。小さいところでは8歳のお子さんから上は80歳までということで、非常に幅広い方々に環境に対する理解を深めていただくという検定試験なども実施しております。
商工会議所は商工会議所法という法律に基づいて設立、認可をされた民間法人であります。原則は市の地域にありまして、今、全国で515の商工会議所がありまして、会員数の総計は約138万会員でございます。会員のうち94.8%が中小零細企業です。各地の商工会議所はそれぞれの地区において、商工業の総合的な発展を図ることを目的にしておりまして、また同時に社会一般の福祉の増進に資するという幅広い活動を行っているわけです。
日本商工会議所につきましては、同じく商工会議所法に基づいて設立されている民間法人でありまして、全国の商工会議所を代表するとともに各地の活動の支援を役割としているところです。日本商工会議所は経済3団体の1つと言われておりますけれども、組織の規模からいっても日本最大規模の経済団体と言えるかと思います。
商工会議所は商工業者の育成、発達を図ることによって、強固な産業基盤を築く。また商工業者の民意を集約して発言していくことによって、我が国の発展に貢献すべく創設されたわけです。
その理念は、今もなお不変的な商工会議所の存立意義であると考えております。
日本の全企業数は約420万社と言われておりますが、そのうち中小企業は99.7%です。従業員にしましては約70%を占めているということで、商工会議所の会員は大企業も含まれておりますが、規模も業種も問わない、すべての企業が会員に加わっておりまして、我が国の企業構成を反映いたしまして、会員の大多数が地域の中小企業で占められております。このことが商工会議所の原点でありまして、他の組織にない強みと言えると思います。
会議所のミッションは、先ほどもちょっと触れましたが、中小企業の活力強化と地域経済の活性化の実現なくして、我が国の経済社会の発展はないという強い信念に基づいて政策提言と個々の中小企業の経営支援を活動の柱としているわけです。他の経済団体につきましては、政策提言に主を置いた活動をベースにしているわけですけれども、商工会議所は個別企業の支援活動を併せ持っているところに大きな違いがあると思っております。
また、本日は有期労働契約の在り方についての意見ということでお話をさせていただくわけですが、中小企業が今どのような状況に置かれているかということと深く関係してまいりますので、本題に入る前に若干中小企業の今の景況について述べさせていただきたいと思います。
日本経済につきましては、新興国を中心とした海外経済の回復であるとか、国内経済対策の効果によって持ち直しをしつつあると言われているわけですが、やはり設備や雇用の過剰感はいずれも強くて、景気回復は厳しい状況が続いていると思います。
日本商工会議所で実施をしております早期景気観測、LOBO調査と言っていますが、2月の結果を見ますと、全産業の業況DIは-56.2ポイントということです。前月比+6.1なわけですけれども、確かに2か月連続でマイナス幅は縮小しております。前月比+5ポイント以上となったのは2004年7月以来、5年7か月ぶりのプラスということです。ただ、このことは比較対象となる昨年2月の業況DIが過去最悪値で-73.4という数字を記録しておりまして、極めて低い水準が昨年であったということで、それに比較して考えますれば、中小企業の景況は横ばい状態だと言えると思います。
業況につきましても、製造業、輸出関連を中心に持ち直しの動きが続いておりますけれども、大幅な需要不足によるデフレの深刻化などの影響によって、水準は依然厳しく楽観を許さない状況と言えます。各地からは景気回復の実感がないという厳しい現状を訴える声が数多く寄せられておりまして、先行きに対する不安も強く示されております。
また、帝国データバンクの2月の企業倒産件数も966件ということで、前月比1.8%の上昇になっております。負債額が5,000万円未満の倒産ケースが半分近くを占めるということで、大型倒産は減っておりますが、むしろ中小の倒産件数が増えているという状況かと思います。このように、中小企業につきましては、まだまだ厳しい経営環境に置かれているということをまず御理解いただきたいと思っております。
そのような状況の中、労働法の制定、改正が相次いでおりまして、ここ3年間で約11件の法律の改正等々がありまして、中小企業もその対応に迫られている状況だと思います。
次に研究会の中間取りまとめで示された各論点について、早速意見を申し上げたいと思っております。
2ページの「第1 総論的事項」「1 現状と課題」でございますが、需要変動への対応ということで、有期労働契約は中間取りまとめにもありますとおり、企業にとっては需要の変動に応じて雇用の調整を弾力的に行うために欠かせない制度です。研究会による実態調査でも、有期契約労働者を雇用できなくなると事業が成り立たたないという事業者が53.8%と過半数を超えているわけです。有期契約労働者による雇用が規制されれば、繁忙期には正社員の残業で対応して、当該労働者の長時間労働といったことを誘発しかねません。
中間取りまとめの2ページの最後の方にも指摘されているとおり、労働者の意識の多様化等によって就業形態の多様化が進んで有期契約労働者も増加しており、多様化の度合いが更に増しているのが現状です。
また、中間取りまとめではほとんど言及されていませんが、研究会の実態調査によりますと、労働者が有期契約労働者で働く理由を見ると、正社員としての働き口がなかったからというのが38.7%。その一方、仕事の内容、責任の程度が自分の希望に合っていたからというのは32.3%という数字が出ております。勤務時間、日数が短く、自分の希望に合っていたからというのも31.0%という同程度の割合に達しています。このほかにも労働者が希望して有期労働契約を選んだと思われる回答の割合が高くなっておりました。こうした点を踏まえながら、今後の議論を行うべきであろうと考えております。有期労働契約に対する一律的な規制は、労働者の多様な働き方を狭め、雇用の確保という政策目的にも反することになるとも考えております。
(2)といたしまして、中小企業の人材確保でございます。有期労働契約をめぐる現状と課題という点では、中小企業の人材確保の実態という観点も御検討いただきたいと思っております。平成20年に東京商工会議所が会員企業を対象に行った調査がありますが、有期労働契約社員を始めとしてパート、アルバイト、派遣労働者など非正社員の雇用が3年前に比べて増加したと回答した企業に聞いたところ、増加の理由としては、正社員の採用が困難だというのが37.5%ということで、最も多い理由の1つでありました。また、非正社員が減少した企業に減少の理由を聞いたところ、正社員の転換促進というのが40.7%で最も多いという結果になりました。
このことから、中小企業の実態としましては、正社員を採用したくても思うようにいかず、有期労働契約により必要な人材を確保している側面がある。それと同時に、現状でも有期労働契約で雇用している場合、多くの企業で正社員への転換を視野に入れているということもまた伺えると思います。
次に5ページの「2 検討に当たっての基本的考え方」で「(1)我が国の労働市場(雇用システム)が公正を確保しつつ機能するためのルール作りを図ること」でございます。中間取りまとめで指摘されておりますように、有期労働契約は安定雇用に至るまでのステップという点で役割を果たしているということは評価する必要があると思います。特に雇用のミスマッチの解消という点では、重要な意味を持っております。
実際、先日も東商の会員企業に雇用労働に関する意見を聞く機会がありましたが、ある印刷業でございますが、工場の働き手が足りない。そのためハローワークで募集をしておりますが、これはミスマッチが多いということで、そのため有期契約にして、最長3年間かけてこれを見極めているという話も聞いたところであります。
また、全国の商工会議所と日本商工会議所ではジョブ・カード制度という制度によって企業が有期労働契約によって職業訓練生を受け入れるため、協力する企業の開拓事業を実施しているところです。中間取りまとめの5ページの13行目「有期労働契約が活用されることで、職業能力の向上に寄与する役割も期待できよう」とあるとおり、これまでに訓練実施計画の認定企業が3,607社、うち965社が訓練を終了しております。訓練を終了した1,880人のうち1,346人が正社員として雇用されております。マッチング率で見ますと、約72%という実績が上がっているというのが現実であります。訓練受講生あるいは受け入れ企業の双方からミスマッチの解消に役立つということで、大変喜ばれている事業であります。
中小企業にとりまして人材の確保というのは、やはり最も大きな経営課題の1つであります。いつの時代でもヒト・モノ・カネと言われておりますが、経営課題の1つであります。知名度が低い場合が多いこと、また求職者の大企業志向、地域によっては大学や職業教育機関が少ないことなどによって、通常の状況でも必要な人材を十分に確保できていない企業が多くあるわけです。
中間取りまとめの5ページ3段落目「有期労働契約の機能に関し、企業側からは、中長期的ばかりでなく短期のものも含めて需要変動等に伴う『リスク』へ対応するといった労働市場全体における『柔軟性』への要請があるところである。これについては、そのリスクを専ら有期労働契約労働者の側に負わせることは公正とは言えないと考えられ、こうした『リスク配分の公平さ』にも配慮しつつ、検討すべきである」とされております。しかし、企業にとっては景気の変動、製品、商品のライフサイクルの短縮化などに対応するためには、短期的、一時的な業務を中心とする一定の労働力の需給システムは必要不可欠なものです。特に中小企業は業務の時期、内容、量などを自社の都合で決めるのではなく、取引先、他社の注文によって決まるケースが多いため、あらかじめ必要な人材を予測することが難しい場合が多いというのが実態でもあります。
働き方という観点でいえば、企業が有期契約労働者として受け入れた方の能力を見込んで、企業と労働者の双方が納得の上で正社員化しているケースもあれば、今の形のまま働き続けたいとして労働者側から断られるなど、自ら有期契約労働という形態を希望して働いている労働者もいると思います。特に有期契約労働という働き方を希望している労働者にとっては、有期契約労働に対する制限が強化されると雇用の機会が少なくなってしまうのではないか。わざわざ彼らの就
業の道を閉ざす必要はないのではないかということを申し上げたいと思っております。
7ページの「(2)雇用・労働をめぐるシステムやその中での有期労働契約の位置付けを含め総合的な比較法的検討を行うこと」でございます。ここでは諸外国で導入されている制度について触れられておりますが、こういった検討をする場合には、単にある制度の導入を検討するのではなくて、中間取りまとめにもあるとおり、当該国と日本の雇用、労働をめぐるシステムの全体像やその中での有期労働契約、ないしは法制の位置づけなどにも十分に留意すべきことと考えます。
「(4)様々な性格の規定・行政手法の総合的な活用を図ること」ですが、中間取りまとめにもあるとおり、労働者のニーズや現場の労使の取組み方は多様であります。一律のルールによって雇用管理を一定の方向に促すのではなくて、当事者の自主的な創意工夫による有期労働契約の在り方といったものを検討すべきではないでしょうか。
9ページの「第2 有期労働契約の範囲、勤続年数等の上限、契約の更新・雇止め」でございます。
10ページの「1 基本的な考え方」でありますが、先ほども触れましたように、労働者の価値観が多様化する中で多様な働き方が求められております。学びながら、子育てをしながら、介護をしながら働きたいというニーズに対して、雇用の機会を狭めることのないように注意をすることが重要だと思います。先ほど申し上げましたように、労働環境が全く異なる国の制度の一部だけを持ってきても、過去の経緯、国民性、雇用、経済情勢などが異なっているわけでして、労働法制全体の整合性もとれません。
また、中国あるいは韓国などアジア諸国との国際競争も激化しております。我が国の競争力をどう維持していくかという観点も重要ではないかと思います。
11ページ「2 締結事由の規制」でございます。多様な働き方に対するニーズに応えるためにも、有期労働契約の締結事由を限定すべき理由があるとは思えません。また、繰り返しになりますが、外国の制度の一部だけを持ってきても全体としての整合性がとれません。中間取りまとめでも言及されているとおり、締結事由により有期労働契約を制限した場合、新規の雇用が抑制されたり、企業の海外移転が加速するなど、結果として雇用に悪い影響が及ぶことが懸念されます。したがって、締結事由を制限すべきではないと考えます。
13ページ「3 更新回数・理由可能期間に係るルール」でございます。無期労働契約との公平を有期労働契約の締結を規制することによってのみ確保しようとすれば、均衡がとれないと思います。バランスをとるためには、有期労働契約の在り方と同時に、無期労働契約の解消についても検証すべきではないかと思います。雇止めについて規制を強化すると、企業はリスクを回避するために、かえって雇用機会を狭めてしまうおそれもあります。多様な働き方を認めていく観点から、利用可能期間の制限については、特に短時間労働者や高度技能者の雇用機会を著しく狭めることになります。むしろ、雇用の安定の観点から、比較的中長期間とすべきであると思いますが、これは景気循環との整合性も考えなければならないのではないでしょうか。業種や業態によって契約期間の長さがそれぞれ異なっており、一律に制限するのは無理があるのではないでしょうか。勤続年数や更新回数など区切りをつけて、無期みなし、無期雇用への変更申し込みみなしなどの規定は導入すべきではないと考えます。
14ページの「4 解雇権濫用法理の類推適用」です。有期労働契約の雇止めに関する基準からすると、契約書に業績が悪化、売り上げの減少であるとか利益の減少、そうした場合は契約を更新しないと明示しておけば解雇権の濫用には当たらず、雇止めをすることができると考えております。この機会にこういった考え方でよろしいのかどうかの確認ができればと思っております。
また、中間取りまとめでは雇止め法理を法律で明確化することについて言及されていますが、判例において、正社員の場合と有期契約労働者の場合でどのような違いがあるかも踏まえた上で検討していただきたいと思っております。
16ページ「第3 労働条件明示等の契約締結時の課題」についてです。
「1 契約締結時の明示事項等」につきまして、労働基準法で労働契約に際しまして、労働条件の明示が義務づけられております。また、研究会の実態調査によっても労働条件の書面表示は多くの企業で行われているということです。したがって、制度を変更するのではなく、今の制度の周知を図って、更に浸透させていくことが重要だと思っております。
「2 契約期間について書面表示がなされなかった場合の効果」です。無期契約とみなすとの意見については使用者の意思が反映されていないこと、有期と無期とでは仕事と責任範囲、期待などが異なっている部分が多く、有期の契約を自動的に無期に変更することは難しいといった理由から、これにつきましては反対です。
19ページの「3 雇止め後の生活安定等」です。雇止め時の手当につきましては、労働の対価以外に企業に支払い義務を課すものとなります。導入には反対です。正規労働者の場合の退職金制度につきましては、賃金の後払いという考えもありますが、有期労働契約の場合はどういう考え方に基づくものなのでしょうか。生活の安定のためということであれば、労働政策で考えるのではなくて、社会政策や福祉政策といった観点から対応を検討すべきではないでしょうか。
「第5 均衡待遇、正社員への転換等」です。
「1 基本的な考え方」につきましては、中間取りまとめの22ページの5行目ぐらいで指摘されているとおり、我が国においては単に職務が同じというだけでは正社員との比較は困難であります。有期契約労働者と正社員とはそもそも責任や役割が異なっておりまして、均等・均衡待遇の一律的な適用は無理があると思います。
有期労働契約と正社員との関係では、特に次の点について研究会における今後の議論を見守りたいと思っております。限られた原資で有期労働契約者の処遇を改善すれば、正社員の待遇を見直さざるを得ないということもあると思います。また、正社員は職務、転勤可能性、責任、期待などさまざまな役割を担っているわけです。有期労働契約者は、すべてにわたり正社員と同じ労働者というのはほとんどいないのではないでしょうか。有期労働契約によって雇用する理由として、一般に正社員の解雇が難しいことが挙げられております。この点につきまして、どのように考えていくのかということです。
23ページの「2 均衡待遇など公正な待遇」です。繰り返しになりますが、有期契約労働者と正社員とはそもそも責任や役割が違っているということです。特に均等待遇については、労働者派遣制度について商工会議所の会員にヒアリングした際、複数の企業から指摘された意見を紹介したいと思っております。日本企業の賃金体系は年功を重視しているケースが多く、かつ企業ごとに決められております。そのため派遣先企業の同じ職務を行っている正社員の間でも均等待遇ではない場合が多い。どの社員との均等を図るのかが不明確であって、均等待遇の実現には無理があるという意見がございました。
「3 正社員への転換等」です。研究会取りまとめでは、事業主に対して正社員への転換を推進するための措置を義務づけることが議論されているようですが、そもそも有期と無期では根本的に期待する成果に違いがあります。したがって、両者の差を無視した一律な対応をとるべきではないと考えます。職務や職場、事業所を限定した契約期間に定めのない雇用計画につきましては、一律に規定すべきものではないと考えます。個々の企業の実情に応じて対応すれば足りるのではないでしょうか。転換の制度化を検討する前に、まず実態をよく分析していただきたいと思っております。
これから申し上げるのはパート労働者の場合ですが、先ほどの東京商工会議所の調査では、正社員への転換制度を持つ企業は30%ですが、正社員への転換の実績がある企業は56%でありました。46%の企業が転換はケース・バイ・ケースとしておりまして、中小企業の場合、正社員の転換については制度の有無に関わらず柔軟に対応しているという実態が浮かび上がっております。
「第6 一回の契約期間の上限、その他」です。
「1 平成15年労働基準法改正の影響等」。平成15年の労働基準法の改正で1回の契約期間の上限が原則1年から3年に延長されました。しかし、この改正の影響からでしょうか、多くの労使関係者が有期労働契約の更新を重ねた場合、3年が有期労働契約を利用できる上限と勘違いして認識をしている実態があるようです。この点につきましては、誤解されないように明示すべきと考えております。
最後に今後の研究会での議論に向けて、特に強調したい点を3点申し上げたいと思っております。
第1には、冒頭御説明しましたように、企業、特に経営環境が厳しい中小企業の実態を十分に踏まえた上での議論をしていただきたいと思っております。お願いします。
第2に、労使自治を基本とすることです。一律の規制により企業経営を拘束すれば、結果として雇用に悪い影響を及ぼしかねないと思います。
第3といたしまして、政府から先般出されました新成長戦略にも示されているとおり、今後、我が国がアジアの経済と一体となった経済成長を目指すことになれば、有期労働契約も含めて労働問題は単に国内だけの問題ではなくて、外国人労働者問題も含めて議論を更に深めていく必要があると考えます。
日本商工会議所、東京商工会議所を始めとしまして、各地の商工会議所で有期労働契約についても議論を行いまして、今後の研究会の議論につきまして、また随時意見を申し上げていきたいと考えています。
私からは以上でございます。
○鎌田座長 ありがとうございます。
それでは、委員の皆さんから御質問をお願いいたします。どうぞ。
○橋本委員 貴重なお話ありがとうございました。
御意見を伺いますと、規制の強化につながるような面につきまして、かなり消極的でしたが、その理由として中小企業の柔軟な人材活用が損なわれるという理解でよろしいでしょうか。
○関口史彦氏 そうです。
○橋本委員 冒頭、正社員の採用がなく困難なので、有期雇用でゆくゆくは正社員転換を視野に入れた従業員の採用を行っているとおっしゃいましたので、正社員への転換の制度化や更新回数、利用可能期間の上限の規制というのは、中小企業の実務に反するものではないと考えたのですけれども、やはりそれでも規制はかなり厳格になるという理解でしょうか。
○関口史彦氏 そうですね。現実的には今おっしゃられたように、現実的には正社員化への道もつくっております。現実がそういうことで進んでいるので、余り厳しい規制的な網かけをされると、むしろ委縮してしまう部分が出てくる可能性がありますので、そういった意味で反対をしているということです。
○橋本委員 ありがとうございました。
○鎌田座長 よろしいですか。
○橋本委員 はい。
○鎌田座長 ほかの先生方はありませんか。どうぞ。
○荒木委員 現在、判例法理で雇止め法理というのがありまして、無期契約と同視されるような状況に至っていたり、あるいは雇用継続の合理的な期待があるような場合には、解雇権濫用法理の類推適用ということで対応しているんですが、これは予測可能性がないということで、労働者もそうですけれども、企業側にとっても予測がつかずに困っておられるという状況にあるのではないかという気もしているんですが、その点についてはどういう方向が望ましいというお考えがありましたら、お聞かせいただきたいと思います。
○佐藤健志氏 今の判例法理のお話につきましては、私どもも今後また会員企業の意見もよく聞いて、いろいろと検討したいと思うんですけれども、判例の中でも正社員の方の場合と有期契約労働者の方の場合とで違いがあるのではないかという印象も持っておりますので、正社員の方の場合と有期契約労働者の方の場合、これまでの判例でどういった違いがあるかということも踏まえた上での御議論が今後行われることを期待させていただいているということでございます。
○荒木委員 現在の判例も、例えば整理解雇の場合には正社員と有期契約労働者では保護の程度は違う立場をとっているとは思うんですが、どのぐらい違うのかとか、その辺は予測がつかない結果、先ほど御指摘があったように1回の契約の上限の3年が利用可能の上限といったものと、ある意味では誤解したような行動を誘発している感じもします。そういった点から、先ほどのヒアリングでは、もう少し客観的な基準をつくるのがいいのではないかという議論もあったんですけれども、そういった点についてはいかがでしょうか。
○佐藤健志氏 先ほども申し上げましたけれども、この辺は私どもも十分に議論をしていないところがございますので、最後に関口も申し上げましたが、今後また有期労働契約について商工会議所の中で議論するときに、更に検討してみたいと思います。
○荒木委員 ありがとうございました。
○鎌田座長 どうぞ。
○佐藤委員 雇用環境というか経営環境が厳しい中で雇用に関して規制を強めると、かえって雇用機会を委縮させてしまうということで、とりわけ中小の場合には採用の困難さ、特に正社員としての採用の困難さがあって、そういう中で有期を始めとする非正規の柔軟な活用が重要な機能を果たしてきたということが基本認識されている。私も基本認識の厳しさと雇用の多様化の機能については同じです。
1つ、中小の中でも人的資源管理ルール、人事労務管理ルールという制度をきちっと整備する中で優秀な人材を採用して、ケース・バイ・ケースとか柔軟な運用という面が中小のよさとして
あるんだけれども、しかし、ルールを透明化して、客観的なルールをつくっていく中で優秀な人材を採用して定着させて育成する。それが会社の強みになっていくという面からいうと、ルールをしっかりつくっていくことも重要な競争力の源泉になっていくのではないかと思います。
そういう観点からいくと、勿論規制を一律的にというのは難色を示されるのもよくわかるわけですが、まだ不透明な部分によってトラブルが発生するところは、きちっとルールをつくってやっていたらどうか。登用などにしても、ルール的なものをきちっと明示する中で、有期で雇われた方が将来のキャリアステップが透明化して、そのことで不安感がなくなって、会社のコミットメントや定着も高まっていくというロジック問題あると思います。そういう考え方については、御意見としてはどうでしょうか。
○関口史彦氏 そういう御意見もあると思いますが、逆にそれを盾にとって有期契約労働者側が権利を主張するとか、逆のことが起こり得ることもありますので、その辺は非常に危惧するところであります。
現実的に私ども商工会議所の役員企業でも、中小企業ですが、年齢に関係なく優秀な技術を持っている人は70歳を超えても働いてもらっているところもございます。中小企業といっても、規模によっては大きな差がありますが、現実の法的なものを踏まえた上で、更にそれを超えるような柔軟な人材の活用の仕方をしている企業があるというのが実情です。
○鎌田座長 どうぞ。
○山川委員 今の質問との関連でもあるんですけれども、正社員としての採用が困難であるので非正社員を採用して、場合によっては正社員に転換あるいは登用もあるというお話でした。私は経済の専門家ではないんですが、需要と供給で考えると、正社員としての採用が困難であるということは、供給側、つまり求職側の力が強いということを意味するような気もしまして、そうすると、非正社員であれば一層採用しにくくなりそうですが、非正社員であれば採用がしやすいということは、供給側の質に違いがあるのかということ、供給側が一律ではないということなんでしょうか。
○関口史彦氏 それはおっしゃるとおり一律ではないと思います。新卒で就職を希望する方とか、あるいはキャリアを積んで、例えばリストラを受けて就職を希望する方とか、そういった年齢の問題もあるでしょうし、男女差とかさまざまではないでしょうか。その辺の違いは当然あると思います。
○山川委員 つまり、新卒が正社員としてはなかなか就職してくれない、あるいは応募してくれないけれども、中途採用ですと応募が増える。新卒市場とそれ以外の市場との区分が背景にあるということなんでしょうか。
○関口史彦氏 実態としては、恐らくほとんどの中小企業が新卒採用ということが頭にないと思います。まず企業をPRするというか、どういう企業でどういう内容のことをやっているという接点がないんです。それは一部上場企業とは全然違います。また、学生側もそれを知るすべもなくて、そういったところで商工会議所の合同会社説明会という事業で中小企業の会員を集めて、20社、30社のブースをつくって、それを学生に案内していくという就職説明会などをやっています。中小企業の場合、基本は中途採用です。
○山川委員 ありがとうございました。
○佐藤健志氏 若干関連するのではないかと思うので申し上げますが、先ほど関口からジョブ・カード制度のところで、商工会議所で職業訓練の受け入れをさせていただく企業さんを開拓しておりますということを申し上げました。これもまず有期契約で、働く方からしてみると、そこの会社でどういう仕事をするのかということを実際に体験していただき、御本人と受け入れの企業との両方の合意があって、先ほどの千数百名が正社員になれたということがあるわけです。今、申し上げたようなところに新しいジョブ・カードという制度があって、そこをうまく御活用いただけた方々が今だんだん出てきているというのも1つの側面ではないかと思います。
○鎌田座長 あとはありますでしょうか。どうぞ。
○佐藤委員 今後、重点的に検討していただきたい点を最後に3点ほどおっしゃった中で、労使自治の原則といいますか、ルールを法的に一律的にかぶせていくのではなくて、それぞれの企業事情や業界事情、中小企業とかそういう事情も含めて実態に合って展開していくためには、労使自治が必要である。それも非常に大事だと思います。
ただ、規模別で見ると、例えば労使間のコミュニケーションといいますか、使用者と働く側のコミュニケーションはとても大事だと思うんですが、その点で例えば組合があるところは組合を通じてとか、ルールがある程度つくりやすいわけですけれども、中小の場合は統計的に見ますと、組織率も低いですし、そういう中で従業員とのコミュニケーションとか企業の中での働く者の不満とか苦情が出てきたときの処理の仕組みとか、いろんな面でいろんな仕組みが求められてくるようにも思うんですが、その辺りは中小の実情に合った形での有期とか非正規の方の不満とか、そういうものがあったときの対応というのをどのように構築していくことが実態に合って、望ましいとお考えになっているのかという点を教えていただければと思います。
○関口史彦氏 済みません。そこのところはかなり難しい質問でして、すぐにお答えしかねますので、また持ち帰って議論したいと思います。
○佐藤委員 申し訳ありませんでした。
○関口史彦氏 かなり難しい質問です。
○鎌田座長 先生方、何かありませんでしょうか。
私から1つ質問なんですけれども、途中、中間取りまとめの中で、有期労働者を継続して更新して長期間にわたって利用する、使用するという中でのリスク配分の問題を議論されておりました。御説明の中で、やはり業務の臨時性とか一時性ということもあるので、こういった需給変動のリスクを規制して減少させるということについては問題があるのではないかということと、もう一つ、有期で長く働きたいという労働者のニーズもあるのではないかということから一律の規制については反対するといったような御趣旨の御発言だったかと思います。
確かに有期を利用する理由というのは、企業側から見てもさまざまであるだろうと思うわけですが、しかし、業務の特性から臨時的、一時的なものであれば、恐らく長くても3年とかそういった段階で必要性というのはなくなるんだろうと思います。しかし、これもいろんな方がいろんな調査で言われているんですが、かなり長期にわたって反復更新をする。5年以上ということもある。そのときに雇用調整をする場合、雇止めという形で調整をするということになって、そのことの経営側のメリットがあるということだろうと思うんですが、そうしますと、業務の特性から、あるいは仕事の性格から臨時的なということでは説明できないものもあるのではないかと思うわけです。こういったことについて、何か御意見があれば少しお伺いしたいと思います。
○佐藤健志氏 今のお話を伺っていて思ったのは、需要の変動とはいっても、1つはある程度予測がつくのではないかというのがお話の前提にあるのではないかと思いました。ただ、先ほど関口が話の中でも申し上げましたが、極めて厳しい状況であれば尚更なんですけれども、ある日、急な注文が入りました。それを逃したら、いつ仕事がくるかわからない。ただ、一体どういう波で注文がくるかもわからないという状況に迫られている企業があるのは事実でありまして、企業を経営している以上は勿論先行きの見通しを考え、計画を立てて経営するわけですけれども、特に規模が小さくなればなるほど、そのとおりにいかない可能性も非常に高い。ですから、今ある仕事は恒常的かどうかという見極めもできない。これは恒常的な仕事、そうではないと言い切れない部分があるのではないかということは、今、お話を伺っていて思いました。直接のお答えになっていないかもしれませんが。
○鎌田座長 それはわかりました。つまり、予測できないというのはリスクですね。予測できないものをどういうふうにシェアするかという問題です。これは勿論企業側のリスクとしてあるというのはわかります。それをどう配分するかという問題になってくるときに、一方では、労働者の方でも安定雇用へのステップとしては評価するとおっしゃっているわけですから、そういったリスクを労働者の側からもできるだけ軽減していくということが、企業の競争力とか企業の中の従業員の意識、生産力の高度化に好影響を与えるということで考えれば、その辺のところをどう考えるかという問題ではないかと思います。予測できないものは予測できないんです。予測できないもののリスクをだれがどう配分するかという問題です。これから御検討いただくということであると理解しております。
○関口史彦氏 余りにも急激な昨年からの需要の減少というか、仕事が消えたという言葉が大田区辺りの工場経営者からは随分聞きましたし、そういった中では少なくとも正社員の雇用を守るのが精一杯ということが事実としてあって、有期の方については本当に申し訳ないというのが実情だと思います。
今回の事例が100年に1回ということもありましたけれども、ある意味イレギュラーに近い、これからこういうことがたびたび起こると困るんですが、今の状況の中で考えて、どういうリスク配分、どういうリスクをどちらがとるんだというのは、なかなか答えにくいところもあります。難しいです。
○鎌田座長 どうぞ。
○山川委員 今の点で臨時性という言葉の意味の問題なんですけれども、伺っていると2つあるような気がします。例えば注文がきて、すぐにある程度はさばけてしまう場合のように、プラスの方向で急に需要が増えて一定期間が過ぎれば終わるという形の臨時性と、今回のリーマンショックみたいに、経常的にある程度の仕事はあるけれども、急に変化が起きて、むしろ需要が下がってしまうことも生じうる。そういう2つのパターンで臨時性というものをイメージできる。非常に大ざっぱというか単純な分け方なんですが、労働基準法14条等で考えているのは、ある一定時期にしか仕事が存在しないというパターンですが、そうではなくて通常は仕事が存在するが、急な変化が生じたときに非常に落ち込みが出てくる可能性があるパターンもある。そういう2つがあり得るということなんでしょうか。ちょっと単純化し過ぎかもれませんが。
○関口史彦氏 あり得るということです。
○鎌田座長 ほかの先生方は何かありますでしょうか。よろしいですか。
本日は貴重なお話をありがとうございました。これも感想なんですが、改めて経営サイドの皆さんの思いというものを間近に聞かせていただきまして、一つひとつの問題についてより深い理解が求められるという感想を持ちました。これを参考にして、今後とも検討したいと思います。
本日はどうもありがとうございました。
(日本商工会議所関係者退室)
○鎌田座長 それでは、次回の日程等について、事務局から御説明をお願いいたします。
○青山室長 次回の研究会の日程でございますが、3月30日火曜日の9時半から12時まで、引き続き労使関係者からのヒアリングを実施させていただきたいと思います。委員の皆さんには、日程確保に御配慮いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
以上です。
○鎌田座長 それでは、以上をもちまして、本日の研究会は終了したいと思います。どうもありがとうございました。
(照会先)労働基準局総務課労働契約室政策係(内線:5587)
委員の皆様方、ヒアリング対象者の皆様方には、御多忙のところ御出席いただき誠にありがとうございます。
本日は、阿部委員、奥田委員、藤村委員が御欠席されています。
また、本日は労使関係者からのヒアリングとして、日本労働組合総連合会及び日本商工会議所の方からのヒアリングを予定しております。
まず事務局から報告がありますので、お願いいたします。
○青山室長 事務局から報告いたします。
有期労働契約研究会で先月まで議論いただきましたが、前回2月24日の会合では中間取りまとめ案について御議論いただきました。そこで出された御意見を踏まえまして、その後、座長御一任の下にお取りまとめをいただきまして、3月17日に中間取りまとめとして公表いたしました。その本文が資料1であり、概要が資料2でございます。それを基に今回ヒアリングをいただくことになっております。
御報告は以上でございます。
○鎌田座長 それでは、続いて日本労働組合総連合会の方からのヒアリングを行います。本日は日本労働組合総連合会から3人にお越しいただいております。全体で45分程度で御説明をいただき、その後、質疑をいたしたいと思います。
それでは、日本労働組合総連合会総合労働局長、新谷信幸様から御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○新谷信幸氏 新谷でございます。
それでは、機会をいただきましたので、有期労働契約研究会の中間取りまとめに対しまして、連合としての考え方、意見を申し上げたいと思ってございます。
本研究会の委員各位の精力的な検討に対し、まずは敬意を表したいと思います。論点を整理していただいて、中間取りまとめを示していただきました。ありがとうございます。
私ども連合の考え方でございますが、実は有期労働契約につきまして、しばらく検討をしておりませんでした。現在、私どもとしては、2001年のパート・有期労働契約法律案要綱、労働契約法の2006年版の骨子が連合の正式な機関決定された考え方ということでございます。本日はこの考え方に基づきまして、中間取りまとめに対する意見を申し上げます。
お手元に資料を配付させていただきましたが、まず「第1 総論的事項について」でございます。中間取りまとめの中では4つの切り口から検討されておりますが、私どもとしては、有期労働契約を一括りに論じるのはかなり難しく、もう少し区分を区切り、さらなる実態調査が必要ではないかと思っています。
例えば60歳以降の再雇用者と若年者の有期労働者では、同じ「有期労働者」ではあっても規制に対する期待は違うのではないかと思っており、こういった区分をした上での検討が必要ではないかと考えてます。
また、中間取りまとめの中にも記載されておりますが、有期契約労働者を景気変動の調整機能として扱い、雇用変動リスクを労働者側にも負わせるのであれば、労働条件にプレミアの付加を義務づけることも必要ではないでしょうか。
連合も「なんでも労働相談」を全国で展開しております。有期労働契約で働いておられる方々からの相談がたくさんきております。現行の労働基準法を下回る法違反が多々ございまして、今後の有期労働契約の検討に際しては、両罰規定も含めた罰則についても御検討いただければと思っています。
次に「第2 有期労働契約の範囲、勤続年数等の上限、契約の更新・雇止めについて」についてです。
これは冒頭に申し上げましたように、今、私どもの機関決定を経た2つの法律案要綱に基づいて申し上げれば、入口規制と出口規制はセットで論議することが必要だと考えてございます。ただ、冒頭に申しましたように、有期労働者の区分をもう少し細かくする。例えば先ほど言いましたように、60歳以上の再雇用の有期労働者等々の対応を含めてセットで論議するなど、区分ごとの対応を勘案する必要があると思います。
入口と出口を規制することで、常用代替が起こらないようにするべきだと考えており、入口規制としては「臨時的・合理的な理由がある場合に限定」するべきではないかと考えています。
また、有期労働契約の現状を見たときに、権利の濫用的な反復更新等々もございますし、雇止めについても現在は規制する立法がないことから、有期労働契約自体の濫用を防止するような立法措置、法の制度の創設についても御検討いただければと思っています。
中間取りまとめの中でも触れられておりますが、更新をして一定の区切りを超えたといったときには、これを無期労働契約とみなすべきであると考えます。
現状では有期労働契約を規制する法律がないということで、期間満了における雇止めがトラブルになります。これについては解雇権濫用法理の類推適用、判例法理としては類推適用があるわけですが、無期契約の労働者との均衡と念頭に、法律に明文化することの検討をお願いできればと思っています。
先ほどの雇用リスクのプレミアに関連しますが、有期契約労働者に対しては、個々の企業において職業能力開発について一定の投資をすることも契約締結の条件としてお考えいただければ幸いです。
4ページ、5ページは、2001年に確認した連合の有期労働契約の内容でございまして、有期労働契約を許容する場合の条件です。
(1)は一定の事業の完了に必要な期間を定める場合について、有期労働契約を締結できる。
(2)は3年を超えない範囲での許容ということで、[1]~[3]でございます。
(3)は許容ということで[1]~[4]に該当する場合、1年に限っての有期を認める。ただし、(3)については、違反があった場合、無期に転換させるということも盛り込んでいます。
5ページですが、契約期間については現状の労基法でも書面による明示が義務づけられておりますが、加えまして、労働契約期間を定める理由、有期であることの理由を書面によって明示すべきということを考えています。
契約の更新については、3年以内については1回に限って1年以下の期間を定めて更新するということです。60歳以上については別途ということになるわけでありますが、1回に限って更新ができる。
それと4ページの(3)の部分でありますけれども、これについては、1回に限り更新をするということで考えています。
中間取りまとめの第3は飛ばして、第4の中にある、雇止めの予告あるいは雇止め後の生活安定については、雇止めにまつわるトラブルが非常に多いため、十分かつ慎重な論議をしていただきたいと思っています。特に今後の論議において、解雇の金銭解決に類似するような雇止めにつながらないよう配慮をお願いします。
さらに字句の問題ですが、中間取りまとめの23ページの上のところに「多様な選択を可能とするべく総合的な取組みが期待されるものと言えよう」という表現がありますが、これについてはいろんな解釈が成り立ってしまいます。多様な選択というのは労働市場分野の規制改革の中でよく言われたことですけれども、読み手によって「同床異夢」とならないよう、ここについては表現を留意いただければと思っています。
22ページに「パートタイム労働法も踏まえて」ということで、有期労働契約の無期化、正社員転換を推進するという非常に長い書きぶりが書かれていますが、もう少し端的に「パートタイム労働法を踏まえて、無期化、正社員転換を推進する」といったような表現でよいのではないかと思っています。
中間取りまとめの中に、実態を踏まえて10年以上も有期で契約の反復更新がされているような、常時ある業務についての言及があるわけですが、これを有期で契約するということは非常に問題である。常時ある業務については、無期化の転換を図るということに強く触れていただければと思っています。
8ページは、私どもの法律案要綱の2001年分に記述をしているわけでありますが、均等待遇の原則でございます。これについては、労働契約に期間の定めがあることを理由に、類似の通常の労働者と差別的な取扱いをしてはならないという基本原則を記述させていただいております。 労使協議でございますが、有期の方々の労働条件についても、個別の労働者ごとに行うのではなく、事業主と過半数労働組合との協議を行うべきということを追記させていただいております。
9ページは「第6 一回の契約期間の上限、その他について」でございます。
中間取りまとめの中で、現状の契約期間の上限の取扱いについて論述があるわけですが、私どもとしては、現行の契約期間の上限の引き上げに対しては反対を申し上げたいと思っています。
契約の上限が1年から3年に延長されましたが、この影響についてももう少し検証していただきたいと思います。これについては、改正前の上限1年に戻すかどうかも含めて検討の中に入れていただければありがたいと思っております。
たびたび出ておりますように、雇用リスクも労働者側が負わせられるという現状の中で、有期の労働者の退職の予告についてですが、無期の場合は民法に定めた2週間を超えれば退職できるわけです。他方、有期の場合は1年という期間がついてますので、このリスクをどう負担すべきなのか。使用者が負うべきリスクの配分や程度についても、検討していただきたいと思ってございます。
上限規制とも関連しますが、安定雇用への誘導をどう図るべきなのかについてや、利用可能期間の上限規制の在り方についても御検討いただければと思ってございます。
最後に全体を通じて、募集・採用から始まって中間の均等処遇、終了または更新・継続の全過程において、規制の検討範囲に入れるべき。入口から中間、出口、すべてのステージにおいて規制の検討範囲に入れるべきと考えています。
中間取りまとめの中にも安定雇用につながるステップという考え方があるという論述がございましたが、まさしく安定雇用につながる道筋をしっかりと示していただきたいと思っております。
私どもは今こういう考え方を持っておりますが、この研究会の最終報告は夏ぐらいに取りまとめをされるとお聞きしています。私どもとしても、この問題は対象労働者の数も多いということもございますし、処遇の面でも非常に問題が多い、雇用の不安定さも問題が多いため、この研究会の最終報告書を十分にそしゃくし、実態把握をした上で、私どもの構成産別の意見を聞きながら、いささか古い2001年、2006年の方針を今日的にどう整合させるのか。この研究会で御指摘いただいた内容をどうとらえていくのかについて、私どもとしても連合内部に研究会を設置して検討していく所存です。その結果を踏まえて、今後の対応方針を確定させたいと考えています。
私の方からは以上でございます。
○鎌田座長 ありがとうございました。
続きまして、UIゼンセン同盟フードサービス部会労働政策部長の新山斉様から御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
○新山斉氏 新山でございます。どうぞよろしくお願いします。
大変申し訳ございませんけれども、資料は提出していません。今、私どもは賃上げの真っ最中でございまして、今も夜中まで交渉されている組合が1,000組合ぐらいある中で、今日の午前中に私の資料として取りまとめたものがございますので、もしよろしければこちらを連合を通じてお配りいただければと思っていますので、よろしくお願いいたします。
有期労働契約ということでございますけれども、私どもUIゼンセン同盟として契約に関する問題について論議をしてきたかというと、そこまでの論議というのはまだされていないというのが現状でございます。今までの論議の中で均等処遇についての在り方は指針等も出させていただいています。
今回、有期労働契約研究会のヒアリングということでございまして、フードサービス部会ということで御指名をいただいたということでございますので、私どもフードサービス部会の中の所属組合、特に外食の比率が非常に高いということでございます。UIゼンセン同盟全体として短時間労働者の組合員が約45%いる中で、私どもフードサービス部会としては全体の51%が短時間、更に外食業種と言われるところの短時間組合員の比率というのは更に高くなりまして65%という状況にあります。今日はフードサービス部会を御指名いただいたということでございますので、基本的には今回の有期労働契約に関する現場レベルでの意見をお聞きしたいのではないかということで、私も現場の外食の組合を中心に若干ヒアリングをさせていただきましたので、今回は説明させていただきたいと思っております。
特出すべき点ということでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、外食については短時間組合員の比率が非常に高いということで、その内訳の半分が学生でございます。残りがフリーター、主婦の方になります。これは企業によって若干のばらつきがあります。
そうしたときに、大きな問題としては離職率が非常に高い。これが問題かどうかというのはわかりませんけれども、結果として離職率が高い。先ほど65%程度が短時間というお話をしましたけれども、仮にそこの企業で短時間の方が1万人いれば、1年間で1万人離職するということなんです。当然ながら10年、20年勤務されている方もいるんですけれども、それぐらい出入りが多い産業でございます。
そういったことをと踏まえて、この中間取りまとめの中の「第1 総論的事項」というところからお話をさせていただきたいと思います。総論的事項の中にもございましたように、有期契約労働者の位置づけとはどういうものかということが記載されておりました。やはり外食としても雇用調整を弾力的に行うという考え方は持っています。ただし、先ほど申し上げましたとおり、離職率が非常に高いということがございますから、結果として雇用調整というものが現実に行われていないという状況でございます。当然ながら65%が短時間の労働者でございますから、短時間の労働者の方がいなければ成り立たない産業であるというのは皆さん御存じのとおりだと思います。そういう状況の中で、企業、組合サイドでも雇用調整という意識はありつつも、結果としてはそれが行われていないということでございます。
次にタイプということで、今回、中間取りまとめの中で調査を基に4タイプに分類されたということが記載されておりますが、これを読んでおりまして、これは、今、働いていている、働き方としての分類ということだと思います。たまたま今は4分類の中の1つに分類されているけれども、あとは意識の問題というのが非常に多くあると思います。本当はもう少し働きたいけれども働けない、もう少し上の職務に就きたいんだけれども就けないみたいなところもあって、一概に4部類でいいのかどうかということも含めて、もう少し意識的なところの分類なり論議をする必要があるのではないかと感じております。
そういった中で、国際的に見た場合、正規労働者の解雇規制が厳しいため有期契約の労働者が増えたという見解云々が記載してありますけれども、やはり雇用を守るという労働組合の運動の視点からいいますと、当然ながら、安定・安心ということからも正規労働者と同レベルの解雇規制を行う必要があると考えております。そうはいっても、先ほど申し上げましたとおり、外食の場合は離職率が非常に高いということで、結果として雇用調整は行われていないんですけれども、もっというならば評価制度があって、短時間の方も評価を受けられているんですが、多少評価が悪くても続けていただかないと職場が回らないという状況にあるんです。先ほど申し上げましたとおり、1万人入っても1万人辞めるという世界の中で、余程のことがない限り雇用調整を行うという実態はほとんどないのではないかと考えております。
次に「第2 有期労働契約の範囲、勤続年数等の上限、契約の更新・雇止め」でございますけれども、この中で更新回数の上限の規制を行う云々ということが書かれておりますが、今、外食の契約期間というのは短期が主流なんです。短い場合ですと2か月ですから、これを反復更新すると1年で5回更新するところもあります。こうした中で、一律的に更新の回数の上限を規制することが現実問題として本当にできるのかどうかという問題があるのではないか。もし規制を行うのであれば、勤続年数の上限というものをセットに考えないと、今の外食産業で行われている2か月の契約からするとちょっと難しいのではないかと思います。
勤続年数の上限規制をセットで行うのであれば、その後は無期契約等にみなしていく。もしくは本人の希望があれば正社員への登用も行っていくようなことを併せて検討していかなければいけないのではないかと思っております。
契約の更新・雇止めについてでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、短期の期間で反復更新しているケースが多いということでございますが、なぜ短期で契約しているのかというと、企業側と実際に働いてくれる側にいろいろなニーズがあると思うんです。例えば契約内容が1年に1回、もしくは3年に1回ということになりますと、実際に働いている本人からすると忘れるケースというのが非常にあるわけです。自分の契約はどうなっていたんだろうということも含めて、それが短期であると、その都度、実際に働く内容、実際に仕事をどうしていくのかということも含めて確認し合える。
それと併せて、主婦の方もかなりの人数がお勤めされている中で、主婦の方についてはやはり子どもなどで家庭環境が変化することによって、当然ながら働き方を変えざるを得ないということになるわけですから、そうすると、長期の契約よりも短期の契約をして、その都度、働き方が変えられるということも、働く側からのニーズとしては少しあるのではないかと思っています。
外食でいう店長というのは基本的には組合員の方ですから、店長と短時間組合員の方とのコミュニケーションの場という位置づけも持ち合わせているということであります。
契約期間が短いということは、当然、期間ごとの評価を行うということですから、仮に2か月の契約であれば2か月間の評価をして、その評価を次の契約のときに生かすということになるわけです。それを仮に賃金に置き換えると、2か月で評価されたものが、次にどのぐらい上がるかは企業によって違いますが、それがすぐに反映できるというメリットもあります。
逆にデメリットということでいいますと、外食の1店舗の短時間労働者というのは、店の規模にもよりますけれども30人から40人です。2か月に1回ということになると、ほとんど毎日のように短時間の方との契約更新の場を持たなければいけないということで、お客様が来られて食事を提供するという主たる業務以外のことが非常に増えるというデメリットもあります。そういうデメリットを踏まえると、実際に今2か月で契約更新しているところでも、もう少し長く契約した方がいいという話も一部で出ているというところでございます。
次に実質的に無期契約と異ならない状態で存続している場合、先ほどもありましたとおり、裁判法理によって雇止めについて正規労働者と同様の云々ということがありましたけれども、今、短時間労働者の方は非常にグレーなところにいると思います。グレーな状況にあるからこそ、経営者側もしくは現場の責任者の方も間違った解釈でとられる方がいるのではないかと思っています。私どもの労働運動と違う思想の労働組合に加入をして、雇止めに関しての問題が起きたときに、そこが会社側に団体交渉等の申し入れをして交渉を重ねるといったケースが非常に多くあるんですけれども、これもきちっと雇止めについて法律で明文化なり明確化すれば、経営者の方もそれをきちっと認識して、きちっとした対応ができると思っております。無駄な労力を使わざるを得ない状況にあるというところからすると、こういったことも含めて法律できちっと明文化して、経営者側にも認識してもらう必要があるのではないかと思っております。
「第3 労働条件明示等の契約締結時の課題」でございますけれども、基本的にこれは義務づけされているわけですから、それをしていないことがおかしな話であって、これを明示していない場合については、ここに書かれているとおり無期契約として取り扱うか、もしくは罰則規定なものも含めて考えていかないといけないのではないかと思っております。
2点目として、契約更新時の判断基準ということが記載されておりましたが、判断基準というのは現実問題としてどこまで具体的にその基準を求められるかということがポイントになると思います。例えば勤怠管理上の遅刻、早退ということであれば、客観的に見て、だれが見ても判断できる基準だと思うんですけれども、重要なのは仕事ぶりとかコミュニケーション能力といった情緒が変われば見方も変わるといった状況になったときに、どこまで具体的なものを示せるかということがポイントになるので、この辺は十分に検討しないといけないんだろうと考えております。
「第4 有期労働契約終了(雇止め等)に関する課題」でございまして、一部諸外国では雇止めの際に手当といった対応をしているという記載をされておりますが、雇止めをするということは基本的にはそこで働く場がなくなる、要は事業所閉鎖等の合理化というときに、そういった問題が発生するということでございます。基本的にそういった店舗閉鎖による合理化等が発生した場合については、労働組合側から当然ながら退職金もしくは慰労金等の要求をして、その中で具体的に手当に代わるものを会社側にお支払いいただいているということも行っておりますので、雇止めをしたからといって一律的に手当云々というのは、もう少し慎重に論議をしていかないといけないのではないか。
それよりも先に、社員の方については、今、退職金制度を導入されているところが多い中で、短時間組合員の方にも退職金制度なりそれに代わるものの制度の導入もしくはここにも書かれておりましたとおり、雇用保険の充実も含めた対応をまず先にやるべきではないかと思っております。
「第5 均衡待遇、正社員への転換等」でございますが、当然ながら、均衡待遇というのは非常に重要なことだと認識しておりますが、賃金面において現状格差があるということは十分に承知しております。今の環境下でいいますと、労使間で是正するというのは非常に難しい状況にあるのではないかと思われます。特に人件費というコストの配分をどうするかという問題になりがちなので、1つの財布の中で社員への支払いと短時間の方への支払いになりますと、労使間の対決というよりも、もしかすると正社員の方と短時間組合員の方の労労対決みたいな構図が出てくる可能性もあるので、この辺は慎重に考えていかなければいけないと思っております。
賃金面でいいますと、労使間というよりも法的にどういった形で是正をしていくかということも含めて、これが最賃の問題なのかどうかということも含めて論議をしていかないとなかなか難しいのではないかと思います。そういう中で、先ほども労労対立というお話をしましたが、財布が1つの中で、仮に短時間組合員の方の賃金が引き上げられたら、逆に正社員の方が引き下げられるということも考えられるわけで、その辺の対応も含めてどうしていくかというのはセットで考えていかないといけないのではないかと思います。確かに上げることは重要なんですが、ある一方では正社員の方もいるということで、その方の賃金をどうするかということも含めて論議をしていかなければいけないのではないかと思います。
正規労働者への転換でございますが、基本的には転換を推進するべきであると考えております。現行、外食においても正社員への登用制度、もしくは制度がなくても実態として登用しているケースが非常に多くあるということでございます。特に外食産業においては、短時間労働者が正社員になるということは即戦力なんです。大学の学生さんなどでもアルバイトで入られて、そのままそこの面接を受けて就職するというケースは、ほかの業種より割合としては非常に高いのではないかと思われます。今、外食は非常に厳しい状況にありますので、新規採用はほとんど抑制しておりますから、そういう中でも短時間の労働者を正社員に登用するということが非常に重要なことになっております。
今までは社員の中途採用も行っていたんですが、それもこういう状況ですので、採用するのはいいんですけれども、もともと外食を知らない方を採用したときに、やはり一からのスタートということも含めると、今、実際にそういう余裕が外食産業はないんです。そうだとすれば、現場の方を社員に採用することが、今の情勢からすると、今後ますます増えていくのではないかと思います。
最後「第6 1回の契約期間の上限、その他」でございますが、先ほど申し上げましたとおり、今、最低で2か月という期間です。今、上限は3年ということもございますが、実際に3年契約が本当に外食の中であるのかというとないんです。そうしたときに、3年も含めて長期の契約が実態に即しているのか、それを更に延長するという論議が本当に必要なのかということからすると、契約期間の上限というのは延長ではなくて、逆に最低限を規制するような方向の方が外食産業にとってはいいのではないかということが考え方としてはあるのではないかと思っております。
そういうことでございまして、若干長くなりましたけれども、今回、現場の外食産業の労働組合の意見もお聞きしながら、中間取りまとめとしての意見を述べさせていただいたということでございます。
以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。
続きまして、日本サービス・流通連合事務局次長の石黒生子様から御説明をお願いいたします。どうぞよろしくお願いします。
○石黒生子氏 日本サービス・流通連合の石黒です。
今回はこのような機会をいただきまして、ありがとうございます。
座らせていただきます。
まず初めに、今日の資料は見解ではなくて実態という資料をお持ちしていますけれども、私どもの有期契約労働者の実態を少しお話させていただいてから、今回の中間取りまとめについてお話をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
配付した資料をごらんいただければと思います。
1ページ目を開けていただきますと、私たちサービス・流通連合の組織人員が載っています。私たちは百貨店、スーパー、生協、専門店、ホテル、クレジット会社といったいわゆる流通サービス業に従事する136の組織でございます。
構成人員は、去年10月1日現在で組合員約22万人のうち、私たちはフルタイマー、パートタイマーと分けていますが、基本的には有期雇用の者が9万人ということで、4割を超えるところが私どもの組合員の中のいわゆる有期雇用者だということでございます。
2ページを見ていただきますと、私たちは2001年に結成していますけれども、この間、パートタイマーの組織化ということを最重点課題としてまいりまして、結成したときのパート率は18.5%でしたが、今は41.6%になったということで、全体的に組合の中でも増えてきたところでございます。
それをなぜやらなければいけないのかということが3ページ目にありますが、これは経産省の商業統計ですので、皆さんも御存じのとおりですが、特に小売業の中では半分近くがこういったパート、アルバイトです。業態別に違いますけれども、私の出身は総合スーパーですが、総合スーパーなどは8割以上がパートタイマー、アルバイトでございます。コンビニもそれに準じておりまして、こういったところから考えると、パートタイマーの組合員が私どもの産別の中で4割を超えたというものの、実際はまたまだだと思います。今、一生懸命やっているんですが、先ほどのお話のように、入れ替わりがかなりいますので、正確な数字がなかなか把握できません。私どもの企業で働いているパートタイマー、いわゆる有期の組織率は4割を切っているのではないかというぐらいのところでございます。それでも全体ではパートタイマーが4割ぐらいはいますけれども、まだまだ非組合員、未組織のパートタイマー、有期の方が多いというのが私どもの状況でございます。
4ページは、総合労働条件調査というものを毎年やっておりまして、後でお話します契約期間の状況の今の実態でございます。私どもは調査をするときに、企業の方でパートタイマーとかアルバイトとかパートナーとかいろいろ言っていまして、混乱しますので、基本的に時間給の有期雇用者をパートタイマー、月例給与の有期雇用者を契約社員というふうに調査などは全部統一するという原則でやっております。
ですので、左側のパートタイマーは時間給で払われている有期の雇用ということです。有期の中に無期も入っていますけれども、基本的に時間給で払われる人ということでやっております。それでいきますと、1年のところが一番多くて今66%。そのあと、6か月が24.8%でございます。
先ほど申し上げたように、月例給与で払っている人が契約社員の右側のところですけれども、これも1年というのが89.6%でございまして、1年がほとんどだということです。
ちなみに、契約社員というのは正社員と同じ契約時間、フルタイマーに近いところがほとんどだということで、正社員より短い時間の契約社員は2つか3つぐらいの例しかないということで、ほとんどフルタイムに近い働き方をしている。
時間給の労働者などで正社員と同じく定年までとか期間の定のない契約となっているものについては下に表があります。これは1つの企業で幾つかの雇用形態を持っていますので、トータルの数でありますけれども、パートタイマーでは4件、契約社員では2件ということで、基本的には時間給で働く労働者の中で無期の契約で働いているものというのは、ほとんどないというのが状でございます。
5ページは、正社員、パートタイマー、契約社員のところの勤続年数とかそういったところでございます。
一番左のところは全従業員といっていますけれども、基本的は全正社員のことです。そちらのところでいくと、トータルで16年、パートタイマーで7.7年、契約社員で5.4年でありました。
年齢につきましても、パートタイマーの組合員ベースはかなり高い年齢ということが、今の私どもの組織の現状でございます。
6ページのところは、正社員の賃金プロット調査やパートタイマーの賃金調査から明らかとなった雇用形態ごとの賃金水準の違いでございます。
上の線は正社員を時間給に割り戻したものです。これは月間の所定労働時間を165時間で換算し、大卒の初任給から勤続4年までのところをそれぞれ時間給に換算したものです。真ん中が契約社員、先ほど申し上げた月例でもらっている有期雇用です。下が時間給でもらっている有期雇用の平均の数値をグラフにしたものでございます。
これでいきますと、正社員の勤続4年の1,342円の時給に対して、有期の場合、時間給だと867円ということで、65%ぐらいの差があるということでございます。
パートタイム労働法等で指導されております、パートタイマーの類型、働き方に応じた分け方が下のグラフになります。グラフのイというのは、通常の労働者と業務の内容が同じで、人材活用の仕組みや運用が一定期間同じのパートタイマーです。ハのところは、両方異なるものです。
両方全く同じところは違法ですから、いないという前提です。
残念ながら、これはパートタイマーの制度を持っているところのモデル賃金の比較でございます。これでみますと、イのところ、正社員に近い、一定期間は同じだといったところについては78%程度ですし、一切違うところは62%になっていまして、働き方による賃金制度、同じパートタイマーのところでも働き方による賃金制度というものはかなり区分されて、またパートタイム労働法等々の導入の後は変わってきたということが示されていると思っています。
7ページ以降は、2年に一度組合員を対象にやっている意識調査の結果からです。大変残念ですが、今年のものは、今、調査表をつくって出すところなので、最新のデータは2008年となります。回答数は4万枚、その中で有期労働者は1万5千人、38%となっています。特に有期雇用労働者のところにスポットを当てた意識調査の結果を持ってまいりました。
7ページは、あなたはどうしてパートタイマーや契約社員で働くんですかという理由についてでございます。上の段が前回と今回の比較でございまして、右側で線が引いてあるように、ある程度働く時間や日が選べるとか、ゆとりを持たせる、生活を維持するためとなっています。
下のところは、先ほど申し上げた時間給とフルタイムに近い月例給で分けますと、パートタイマーの場合は、ある程度働く時間や日が選べるということが2割を超えていますけれども、月例給の契約社員、いわゆるフルタイムに近い方からは、21%が正社員になれなかったからという理由が出ているのが現状でございます。
8ページは、フルタイマーと全部一緒に調べたものですが、愛社精神というものです。よく会社に対する考え方が正社員とは違うと言われますけれども、これを見ている限り、役付きの社員は除いて、一般職と時間給のパートタイマーでは、「私は愛社精神が強いと思うか」という設問について、「非常に強い」と「どちらかと言えば強い」という回答の割合が余り変わらない。むしろ、パートの方が多いぐらいでございまして、私たちも結果を見てちょっと驚いたわけではございます。先ほど申し上げたように、勤続年数も平均で7年を超えていることを考えると、臨時的な働き方で、それほど会社との関わりも強くないということは決して言えないのではないかと考えております。
9ページの「職場で不満や不安を感じること」でございます。トップは賃金が安いというところでございまして、先ほど申し上げたように、特に月例給のフルタイムに近い人たちはやはり正社員になれないということが職場での一番の不安、不満だということで、逆に時間給の方は有休が取りにくい。これは組合としては非常に問題なんですけれども、有給休暇が取れないということが次になっているということで、契約社員というのはある程度契約時間が長いということも含めて、かなり正社員に近い働き方をしている。だから、逆に処遇がもっと正社員に近くなるべきだと思いますし、パートタイマーの方は時間とかそういったものに縛られない、自分の働き方を選択できることを望んでいるということが読み取れると思います。
次に「今後、制度化あるいは充実してほしいと思うもの」ということで、「一時金、臨時手当の支給」「毎年賃金が上がる制度をつくってほしい」「退職金の支給」という3つが一番大きなウェートを占めておりまして、これは月例給の有期契約労働者でも時間給の有期契約労働者でも大きくは変わらないといったところでございます。
11ページ、12ページはまた後でご覧いただければいいと思いますが、JSDでは様々な形で均等・均衡待遇の取り組みを進めておりまして、通勤手当とか慶弔の付与とか、そういったところはかなり進んでいます。逆に12ページの一番最後のグラフでは、退職金がないところがほとんどです。それが今の私どもの有期のパートタイムの意識、働き方の現実だということでございます。
有期雇用の実態から見れば、平均勤続が7年ですので、決して臨時的ではない反復の契約はしているということですし、愛社精神等々を含めて企業に対するいろんな思い入れもありながら、有期で働いているというのが平均的なところなのではないかと思っています。
よく私は冗談で言っているんですけれども、できるだけ長い期間働いてほしい有期契約労働者とか、逆にできるだけ長い時間働いてほしいパートタイマーとか、パートタイムは短いはずなのに長い時間働いてほしいとか、期間を定めて雇用するのにできるだけ長い期間働いてほしい有期雇用労働者といったような矛盾したものはなくしていくことが一番大事ではないかと思っています。
それでは、今回の中間取りまとめについて、私どもの見解を少し述べたいと思います。
まず総論というか全体的なところでございますが、基本的な考えとして、日本の労働法では無期原則でも有期原則でもないと研究会の中では書かれていますが、今後はやはり無期労働契約が原則だと考えるべきではないかと思っております。そうしなければ、有期雇用労働というのが良好な雇用形態にはなっていかないと考えております。
今回の2ページのところにありますように、日本においては正社員を中心とした長期雇用システムを基本にしてきたわけですので、正社員を想定していろんな雇用法制、さまざまな企業の在り方が決まってきているということで、その網から外れた有期雇用が増加してきたということが、今回の不安定な雇用を生んだ大きな原因だと思っています。まず無期労働契約ということを原則としていろんな検討をしていくことが、より公正を確保した雇用システムをつくれるのではないかと思っていますので、基本原則として無期雇用なんだということを入れて考えていった方がいいのではないかと思っています。
その上で締結事由等の規制、いわゆる入口規制についてですけれども、基本は無期が原則ですので、合理的な理由がない場合は有期では雇用できないとすべきではないかと思っております。有期雇用契約の締結が制限されると、新規の雇用が抑制されるという見解も入っていましたけれども、新規の有期雇用がどんどん増えるというよりは、無期雇用を増やしていく。要は有期雇用の拡大ではなくて、無期の雇用を増やしていくことが大事なんだ、安定雇用、良好な雇用を増やす道なんだと思っています。
はっきり言って私どものスーパー業界では、今、有期雇用労働者の割合は8割、9割となっています。これはコスト削減のために有期を増やしてきたことは明らかであります。そういったコスト削減のために無期と変わらないような反復契約をする有期雇用といったものを、多くを生み出してきたものをここで変えていかなければならないと思っております。
その観点からどう規制していくかということを考えるべきだと思います。したがって入口規制としては合理的な理由、臨時的・一時的な業務でなければ有期雇用契約は締結できないと規制すべきと考えております。諸外国でやっているように、企業の立ち上げの期間に限り有期契約でもいいとか、そういった特段の事情でなければ、入口規制をして、それ以外の有期雇用は認めないということをやっていくべきではないかと思っております。
先ほどの意識調査のところで、9ページに戻っていただくと、「職場で不満や不安を感じること」というところで、「解雇や雇止め」というのがそれぞれ5%ぐらいしかないんです。私どもの組合員は余り不安ではないのかと突っ込まれるといけないので先に言っておきますが、有期雇用契約ということから発生する「解雇や雇止め」について不安を持っているわけではないという調査結果になるわけですが、勿論この人たちは反復契約をしている組合員が多いということ、あくまで労働組合がある組合員ですので、安易な雇止めはできない、解雇権濫用法理の類推適用についても労働組合から周知しているので、「簡単に次の契約更改で雇止め」いうことはできないと労働組合からも言っていますので、そういったところを含めてよく理解できているので、「解雇、雇止め」に関する不安が少ないのではないかと思っています。これは意識調査の設問の内容にもよりますので、次回の調査では少し違う聞き方をして、また検討したいと思っています。
私もパートタイマーの集会などに出ていろいろお話を聞くんですけれども、「やはり契約更改の時期になると憂鬱なんだ。もう10回も契約書にハンコを押しているが、契約更改のときになると来年の何月までという契約書にハンコを押せと言われる。私はもう10回もやっているんだ」ということをよく聞きます。「労働組合は反復契約をしているから、無期契約と一緒だから心配ないんだ」ということを言うけれども、「それではどうして有期なんだ。10回も20回もハンコを押すというのはどういうことなんだ」という話はよく聞きます。
正社員への転換制度も多くのところでやっていますので、正社員になることはどうなんだという話をすると、2通りありまして、多くの契約社員の方が正社員になってきたという現実がありますが、やはり正社員になると長時間働いて、休日出勤も残業もしないといけないということを考えると、無期雇用イコール正社員、正社員イコールのべつ幕なし会社に奉公という選択肢であれば、有期、パートタイマーでいいんだ。ただ、雇用の不安定については不安な材料だと言っている。そういうことをいろんな集会とか一般のパートタイマーの集まりで聞かれます。無期雇用と変わらないほどの反復更新は本当にどうなのかということは思っています。
私どもの業界では、店ができてから閉店するまで30年ぐらい働いた、30回ぐらいの契約というのは珍しいことではないものですから、10年ぐらいというのがほとんどです。初めの1年で合わないから辞める方が結構いるので、平均が7年ということは、10年を超えているところが平均に近いと私どもは認識をしておりますので、そういった10年以上も反復して契約を続けて労働している人がなぜ有期なのかということについては、検討すべきではないかと思っております。
入口規制を行わなければならないと思ったもう一つの理由は、パートタイム労働法でいろんな形で均衡・均等待遇の概念を入れなければならないということが言われていますが、現状ではどこまでいっても、「この人は有期雇用なんだ、この人は無期なんだ」というところで、職務とか働き方の中身による均衡・均等の議論ができない。初めから箱が違うので、職務とか働く内容、働き方によって賃金の水準やいろんな処遇を決めなさいと、いくらパート労働法や指針で示しても企業はどうしても「この人はパートだから、有期だから、この人は正社員だから」ということで、なかなか進まない。中間取りまとめの均衡・均等の議論のところにありましたように、働く側からのニーズも含めて安定した無期雇用の中に働き方の選択肢、いわゆる地域限定とか短時間勤務だとか、そういった働き方の選択肢を置く。要は10回も20回も雇用契約をするのではなくて、無期雇用となる中で、働く側にとっても、また企業にとっても最良の形があると思います。多くの有期雇用労働者に実際に辞められたら困るわけですから、10回、20回の契約更新を続けていく、労使の両方のニーズが合うところではないかと考えております。
それから、出口規制、いわゆる更新回数・利用可能期間等々ですが、基本的に入口をきちんと規制すれば、出口の規制というのは余り縛らなくてもいいのではないかと思っております。
例えば韓国の事例でありますように、2年やったらその次は正社員化していくとか、無期に近くしていくといったような、どこかで区切りをつけると、その区切りの前での雇止めもしくは契約打ち切りといったものを規制できるかどうかというところは、自分の業界としてはかなり難しいと思っています。
今までの派遣労働等のところもそうですけれども、例えば厚生年金の適用拡大とかいろんなことをやると、常にそういう話があるだけで、例えば20時間まで適用拡大する方向だとなると19.5時間契約が急に増えたり、そういう現状は確かにある。
JSDの組合員ではパートタイマーでも1年がメインの契約ではございましたが、6か月に減らした企業もここ数年で幾つかあるということを踏まえると、組合としては6か月にしようがどうしようが何回も契約更新をしていれば一緒だということを企業にも言っていますが、企業としては、6か月契約であれば、店舗閉鎖とか売上の急激な減少とか何かあったときに雇用を打ち切れるという部分が非常に強く働くんです。何回または何年か契約更新していればそれは無期にしていくとか、そういう形で出口規制ができればいいんですが、むしろ、ここの中で書かれている「副作用」のところが多いのではないかと考えておりますので、入口をきちんとやって、出口のところは、逆に決められた有期を締結できる理由の期間を超えないという契約期間という考え方でやっていけば、それほど強い必要はないのではないかと考えております。
「第5 均衡待遇、正社員への転換等」でございます。先ほど申し上げたように、無期イコール今の正社員の処遇というところは企業にとってハードルも高いですし、働く側によってもハードルが高いというのが現状だと考えています。そういった無期、正社員イコール会社に縛られるという二者択一ではない形で、多様な無期の労働者という働き方をつくっていく。これは話の企業労使の問題ではありますけれども、そのときにいかに正社員との均等を考慮してつくっていくかということが1つあるわけで、そういったところについてはいろいろな形で法的な規制が必要と考えます。いわゆる同一価値労働、同一賃金といったものは難しいと言われていますし、ここのミッションではありませんけれども、そういったものをつくりながら今までの正社員ではない、安定した無期雇用の労働者みたいなものをつくっていくことが一番大事なのではないかと思っています。
23ページのところに「正社員は長期間を見据えて賃金決定システムが設計されている」と書かれていますけれども、私どもの産業でも完全ないわゆる年功序列の職能等級制度のところはほとんどありません。どちらかというと、職務給と職能給の合体版のところが多いので、職務の内容や成果、意欲、能力等々の要素での均等待遇については、今できる状況にあると思っていますので、きちっと同一価値労働、同一賃金といった観点から、新しい正社員の制度をつくっていけば、雇用も安定して、企業的にもそれなりの水準でできると考えております。
そのほかの課題でございますが、1回の契約期間の上限を一旦3年としたけれども、どうなんだというところでございます。いろいろな検討をする必要があると思いますが、先ほど申し上げたように、基本的に有期というのは期間限定で臨時的な仕事だけですので、臨時的な仕事であるとか、期間限定のところで3年を超えるものはいかがなものかと思っていますので、上限3年はそのままでいいのではないか。むしろ、狭める必要もあるのかもしれないと思っていますが、延ばすということは考えておりません。
また、高度の専門知識を有する労働者は、今の基準法では5年と入っていますが、延ばすということも検討してもいいと思いますし、別な上限が必要かということも考えてもおります。
本論ではないので最後になりますが、19ページの「2 雇止めの予告等」というところで、家計補助的に働いている場合を対象に、家庭環境の変化に応じた労働条件の見直しの節目として、契約更新時に見直しをして紛争を回避しているような例が書かれていますけれども、これは非常に有効な労使のコミュニケーションが図られているところの事例だとは思います。これとは逆の例も多く見られております。簡単にいえば、子どもができたんだから次の契約で辞めたらどうだ、という話が結構行われている事実もございます。労使対等のところできちんと労働契約が結ばれているのが労働契約法の基本ですけれども、実際は契約満了が近くなった時点で子どもも大きくなったからどうだとか、退職勧奨みたいなものが行われる可能性があることを踏まえると、そういったところの事例としては少し難しいという気がしております。
有期でありながら無期と変わらない雇用をたくさん抱えている私どもの産業としては、いろんな形で働き方とそれに対する対価、労働条件も含めて検討しなければいけませんけれども、やはり何度も契約更改をしている有期といった不安定な雇用については見直していく方向で、法律等々も是非いろんな形で考えていただきたいと思っています。
長くなりましたが、以上です。
○鎌田座長 どうもありがとうございました。
次のヒアリングか3時30分からの開始予定ということで、もし可能であれば、これから25分まで、あと十数分質疑をしたいと思うんですが、御都合の方はよろしいでしょうか。そういうことですので、委員の皆さんから何か御質問があったらお願いいたします。
どうぞ。
○荒木委員 今日は大変貴重な御意見をありがとうございました。
最後の石黒さんにお聞きしたいんですけれども、規制の在り方としては入口規制をすべきだろう、出口を規制すると、むしろ副作用が大きいので問題があるだろうという御指摘だとお聞きいたしました。そうしたときに、ドイツなどもそうなんですが、客観的な理由があればずっと更新も可能だという規制がなされているんですけれども、客観的な理由があれば何回更新してもあるいは何年使ってよい。それはそれでよろしいということになりましょうか。
○石黒生子氏 客観的な理由があって何度も更新をする。それはちょっと微妙なところですね。でも、両輪規制をしたときにどうかという問題はよくあるんです。
○荒木委員 今日の御主張の中で、有期が増えるのは望ましくないので、なるべく無期で雇うようにすべきだということで、その場合、現状では有期から無期に移行するような手当はありませんので有期のままいきますけれども、そうではないような規制をした場合には、むしろ有期から無期への移動がある。有期を締結するときに、最初の入口で規制をしてしまうと、そもそも有期にも入れない人も出てくるかもしれないという問題が1つあります。
もう一つ、そうではなくて、有期に客観的な理由を要求しても、更に反復更新した場合には、今の雇止め法理の濫用に当たるとして規制をするということもあるかと思うんですが、その場合、今度は客観的な基準はありませんので、今の判例法理と同じように非常に基準があいまいになって、一体この人は客観的な理由があって反復更新されたんだけれども、無期とみなすべき人なのか、そうではない人なのかという、同じ問題は残るということです。
○石黒生子氏 クーリングオフの問題はありますけれども、逆に反復というのは臨時的業務であればあり得ないと思います。有期契約締結の合理的な理由というのは、臨時的であるとか一時的であるとかそういうことに限りますので、反復はあり得ないという原則だと思います。なので、基本原則として入口が有期であるということは、この期間しか要らないということで有期の事由を決めますので、その期間に限った雇用契約の締結であり意味反復はあり得ない。その原則が崩れる場合には何かあるかもしれませんけれども、その原則でやっていけば、今おっしゃったような反復継続を有期の入口のところで規制しても、反復が行われることはないと思っています。ただ、本当に入口できちっとできるかどうかということにかかっていますので、それはもう少し中身を含めた検討が要ると思っています。
○荒木委員 どの国でも認められているのは、例えば産休を取った労働者の代替にある人を雇われた。代替される労働者がいろいろ変わっていくということがあります。例えばAさんという人がXさんの代替で雇われた。今度はYさんの代替としてまた有期契約で雇われる。そういうことは大体どこの国も認めているんですけれども、その場合、その人は反復更新されることはあり得るということですか。
○石黒生子氏 ほかの企業でということですか。
○荒木委員 同じ企業です。つまり、代替の必要性というのは客観的に認められています。それは1例ですけれども、そういうふうに客観的な事由がある場合もある気がします。いずれにしても、どの規制をとっても完全にすぱっといくことはありません。
○石黒生子氏 同じ企業で何人も産休が出て、この産休が終わったら次の産休の人にいくということですね。
○荒木委員 はい。
○石黒生子氏 それはある程度どこかで規制しなければいけないと思いますけれども、基本的に臨時的な仕事というところでは何度も反復できることはないと思っていました。確かにおっしゃるとおり、産休だけはこれからどんどん子どもが増えれば、同じ企業で何人も産休を五月雨式に取っていくかもしれないのであるかもしれませんけれども、それは少し別の規制の仕方を検討するべきだと思います。そういうものであれば、出口のところで少し違うものが必要かもしれません。
○荒木委員 ありがとうございます。
○鎌田座長 ほかの先生方はありませんでしょうか。どうぞ。
○佐藤委員 貴重な御意見ありがとうございました。
新谷さんに1点と、石黒さんに1点確認的な意味での御質問ということです。
新谷さんの資料の中で、ページでいうと2ページ目ですけれども「◆『入口規制』と『出口規制』はセットで議論することが必要→ただし、有期労働者の区分ごとの対応を勘案する必要がある」と書いてあります。これは研究会でも随分議論されたところで、いろんなタイプがあるわけです。その中で例として若手あるいは若年の有期と高齢者などはやはり違うので、その点の対応を勘案する必要があるということなんですが、仮に年齢的なものとして分けたときに、それぞれどういう要素を勘案したらいいとお考えなのか。特に若年のところなど年齢で区切ったときのお考えを教えていただきたいということが1つです。
まとめてやってしまった方がいいんですか。1点ずつでいいですか。
○鎌田座長 御質問は一緒にされて、それぞれにお答えいただいた方がいいと思います。
○佐藤委員 石黒さんの報告では、実態のところが大変興味深かったんですが、細かくいうと2つあるんだけれども、1つはこの業界における契約社員の割合です。パートは短時間だし時給ベースなんだけれども、契約社員は月例給与で、非正規の中にもタイプがあるんですが、例えば3ページ目にありますそれぞれの業界の中での非正規の割合での有期契約労働者というのは、どのぐらいの割合と考えたらいいんでしょうか。パート、アルバイトは点でくくっているところですね。
○石黒生子氏 はい。
○佐藤委員 これはいわゆる短時間ですね。
○石黒生子氏 はい。
○佐藤委員 有期契約労働者というのはこの中に入っているのか、それともそうではないのかという辺りのところです。これは全部有期と考えていいのかどうかというところです。
それから、併せて7ページ目のところには、就労理由によっては都合がいいから契約社員とかパートで働いている方もいるんだけれども、正規になれない方がいて、その方の問題は正社員になれないということが強く出てくるということですが、そういうことでいうと、この人たちに対する解消の方向というのは、登用とかそういうことが非常に重要になってくると思います。登用というものを導入してもうまく登用されていかないという実態もあるように聞くんですが、制度を入れればこの辺りの不満は解消されていくとお考えか、それともそこは実態を踏まえてもう少し本質的に考えた方がいいのか。その辺りのところでお気づきの点を教えてください。
以上です。
○鎌田座長 新谷さんの方からお願いします。
○新谷信幸氏 年齢の区分は例の中で私も申し上げました。私どもとしても詳細な検討をしているわけではございませんが、今、私が考えている問題点としては、中間取りまとめの4ページにもありますが、正社員を希望しながらも就職できず、有期契約になっておられる方もいますが、これも年齢によって規制に対する希望は違うのではないかと思っております。60歳以上の有期契約で再雇用された方々の出口の規制として、例えばまた無期化することが保護として重要かどうかというと、これもちょっと違うのではないかと思います。やはり若年者と60歳以降の方に対する規制のあり方は当然違うはずですから、60歳以降の再雇用者や産休・育児休業代替など労働者の類型ごとにあるべき規制や対応策を考えていくべきではないかというのが私どもの提起でございます。
○石黒生子氏 1点目の3ページのものは経産省の資料を使っていますけれども、基本的には先ほど申し上げたように、パートタイマー、契約社員のフルタイマーのところもパート、アルバイトのところに入っているのではないかと類推しています。
2点目のいわゆるフルタイマーに近い有期雇用の人たちにどう対処するかという問題ですが、パートタイム労働法等々の結果、今、自分の傘下のところでは7割ぐらいが正社員への転換制度を入れているんです。ただ、運用実態等々を踏まえると、今、状況的に非常厳しい状況にあるので、新規採用もとっていないという状況でちょっと時期が悪いんですが、企業によって違いますけれども、数年前まではそれなりに新規採用の何パーセントぐらいは、0ではないある程度のウェートは正社員にしてきた。有期を無期にしてきたという実態もあります。
もう一つは、それをきちんとやっていけばある程度は解決できるとは思っていますけれども、ただ、年齢の問題とかで少し課題があると思います。職務給に完全に移行してきて、職務給プラス年齢の要素も踏まえた賃金体系を持っていますので、40代とかの契約社員が正社員になるときの格付けの問題ですとか、そういったところも含めて、現状の正社員の1本しかないという人事制度の中ではなかなか格付けが難しいので、そういったところも少し検討が必要だと思っています。
○鎌田座長 よろしいですか。
○佐藤委員 はい。
○鎌田座長 どうぞ。
○山川委員 ありがとうございました。
お三方それぞれ均衡待遇と労働組合の役割について言及されたかと思います。新谷さんからお話のあった法案の中で労使協議が出ていますし、新山さんからは労労対立のお話があって、石黒さんは職務給のお話と労使の役割ということに言及されましたが、例えば労使で均衡待遇について話し合って改善していく際の見込みというんでしょうか、あるいは問題点はございますか。お三方のどなたでも結構ですけれども、何か御意見がございましたら、より具体的に、例えばこういうふうにすれば協議がより進むとか、あるいはこの点が特に難しいとか、簡単で結構ですので、何かございましたら教えていただければと思います。
○新谷信幸氏 まず私からお話をさせていただきます。あとは何か実態を補足していただければと思います。
私ども今ちょうど春闘で交渉しておりまして、今年の春闘の取組みの目玉の1つが、「すべての労働者を対象に労働条件の底上げを図っていく」ということでございます。具体的にどんなことをやっているのかというと、各産業別、組織によって違いますが、例えば企業内での最賃協定を締結するといったことに取り組んでいます。従来は正社員を中心にした対象範囲でありましたけれども、非正規の方々、有期雇用の方々にもこれを広げていくという取組みを現在進行形で行っているところでございます。その取組みによる今年の成果についてはまた別の場で報告をさせていただければと思います。そういった事例がございます。
○石黒生子氏 最賃もそうですけれども、法的な規制がないと、要は業界は業界内の競争をしているんです。先ほど申し上げたように、スーパー業界でもパート比率を上げたかったわけではないと思うんですけれども、パート比率を上げている。それはイコールコストの低い労働力になったということなので、正確なデータはありませんけれども、1人当たりの利益といったものは格段に上がっていると思っています。売り上げはそんなに伸びていませんけれども、店も増えて、人も増えて、要は正社員の半分とか6割の賃金で、正社員もしている仕事をしていると考えると、公正競争の話になってくると思います。最賃もそうですけれども、やはり法の下支えがないと、それを労使の中でやっていくことはできないと思います。
私どもはこれだけパートタイマーの有期の方がいらっしゃるので、有期の方に納得いく働き方をさせなければ会社は成り立たないということで大体労使協議をしていまして、それぞれの納得というところを個別労使でやっていますけれども、どうしても引き上げるためには法的な規制も必要です。逆に言えば、そんなに安く物が売れなくなるとか、労働のコストというのはある程度かかるということを前提にやっていかないと、難しいというところのコンセンサスが得られないと業界としてはかなり逆圧力が出てくるだろうと思います。やはり最賃の問題ですと、均衡・均等、同一価値労働、同一賃金といったところの法的な規制をして、ある程度の水準を示していかないと、なかなかうまくいかないと思っています。
○新山斉氏 同じなんですけれども、外食は離職率が高いということからすると、募集をどんどんしなければいけないわけです。産業自体の魅力も含めて、募集をしても人が来ないということからすると、募集規模をどんどん上げていかないと採用できないんです。確かに法的な規制からスタートしなければいけないと思うんですけれども、今の最賃であればかなりその上をいっているわけです。ここ何年かは何十円かという話もあるんですけれども、もっと引き上げていかないといけないんだろうと思いますので、まずは最賃というところから見直しなりをしていただきたいと思います。もともと今の最賃の金額がどうなのかということも含めて考えていかないと、今の延長線上で最賃を考えると、ちょっと間違った方向にいくこともありますので、その辺も含めて検討が必要だと思います。
以上です。
○鎌田座長 ありがとうございました。
本当はお聞きしたいことがたくさんあるんですけれども、時間がまいりましたので、この程度にしたいと思います。
私としては一言だけ感想でございますが、新谷さんが途中で総論的なこととしまして、有期契約労働者の景気変動のリスクを労働者の側に転嫁するということをどううまく規制をしていくかというところがポイントではないかとおっしゃられたことが、私としては非常に感銘深く聞いたところであります。本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。参考にさせていただきます。
(日本労働組合総連合会関係者退室)
(日本商工会議所関係者入室)
○鎌田座長 本日はお忙しいところ、誠にありがとうございます。
それでは、引き続きまして、日本商工会議所からのヒアリングを行いたいと思います。
本日は日本商工会議所から産業政策第二部長、関口史彦様においでいただいております。よろしくお願いしたいと思います。
○関口史彦氏 今日は私と副部長の佐藤健志の2人で出席させていただきます。
○鎌田座長 佐藤様もよろしくお願いいたします。
○関口史彦氏 ただいま御紹介いただきました関口と申します。
本日はこのような意見を発表する場をいただきまして感謝しております。また、日頃から商工会議所活動に対しましては御理解いただいておりまして、ありがとうございます。
本題に入る前でございますけれども、今いろんな場面で商工会議所の現状についてPRというか、いろんな方に知っていただくということで説明をさせていただいておりますので、数分のお時間をいただいて、簡単に御説明をさせていただきます。
商工会議所といえば、皆様方も珠算であるとか簿記の検定試験で小さいころにお知りおきの方もいらっしゃると思いますけれども、今、エコ検定ということで環境検定をやっておりまして、既に13万人ほどの受験者数に伸びております。小さいところでは8歳のお子さんから上は80歳までということで、非常に幅広い方々に環境に対する理解を深めていただくという検定試験なども実施しております。
商工会議所は商工会議所法という法律に基づいて設立、認可をされた民間法人であります。原則は市の地域にありまして、今、全国で515の商工会議所がありまして、会員数の総計は約138万会員でございます。会員のうち94.8%が中小零細企業です。各地の商工会議所はそれぞれの地区において、商工業の総合的な発展を図ることを目的にしておりまして、また同時に社会一般の福祉の増進に資するという幅広い活動を行っているわけです。
日本商工会議所につきましては、同じく商工会議所法に基づいて設立されている民間法人でありまして、全国の商工会議所を代表するとともに各地の活動の支援を役割としているところです。日本商工会議所は経済3団体の1つと言われておりますけれども、組織の規模からいっても日本最大規模の経済団体と言えるかと思います。
商工会議所は商工業者の育成、発達を図ることによって、強固な産業基盤を築く。また商工業者の民意を集約して発言していくことによって、我が国の発展に貢献すべく創設されたわけです。
その理念は、今もなお不変的な商工会議所の存立意義であると考えております。
日本の全企業数は約420万社と言われておりますが、そのうち中小企業は99.7%です。従業員にしましては約70%を占めているということで、商工会議所の会員は大企業も含まれておりますが、規模も業種も問わない、すべての企業が会員に加わっておりまして、我が国の企業構成を反映いたしまして、会員の大多数が地域の中小企業で占められております。このことが商工会議所の原点でありまして、他の組織にない強みと言えると思います。
会議所のミッションは、先ほどもちょっと触れましたが、中小企業の活力強化と地域経済の活性化の実現なくして、我が国の経済社会の発展はないという強い信念に基づいて政策提言と個々の中小企業の経営支援を活動の柱としているわけです。他の経済団体につきましては、政策提言に主を置いた活動をベースにしているわけですけれども、商工会議所は個別企業の支援活動を併せ持っているところに大きな違いがあると思っております。
また、本日は有期労働契約の在り方についての意見ということでお話をさせていただくわけですが、中小企業が今どのような状況に置かれているかということと深く関係してまいりますので、本題に入る前に若干中小企業の今の景況について述べさせていただきたいと思います。
日本経済につきましては、新興国を中心とした海外経済の回復であるとか、国内経済対策の効果によって持ち直しをしつつあると言われているわけですが、やはり設備や雇用の過剰感はいずれも強くて、景気回復は厳しい状況が続いていると思います。
日本商工会議所で実施をしております早期景気観測、LOBO調査と言っていますが、2月の結果を見ますと、全産業の業況DIは-56.2ポイントということです。前月比+6.1なわけですけれども、確かに2か月連続でマイナス幅は縮小しております。前月比+5ポイント以上となったのは2004年7月以来、5年7か月ぶりのプラスということです。ただ、このことは比較対象となる昨年2月の業況DIが過去最悪値で-73.4という数字を記録しておりまして、極めて低い水準が昨年であったということで、それに比較して考えますれば、中小企業の景況は横ばい状態だと言えると思います。
業況につきましても、製造業、輸出関連を中心に持ち直しの動きが続いておりますけれども、大幅な需要不足によるデフレの深刻化などの影響によって、水準は依然厳しく楽観を許さない状況と言えます。各地からは景気回復の実感がないという厳しい現状を訴える声が数多く寄せられておりまして、先行きに対する不安も強く示されております。
また、帝国データバンクの2月の企業倒産件数も966件ということで、前月比1.8%の上昇になっております。負債額が5,000万円未満の倒産ケースが半分近くを占めるということで、大型倒産は減っておりますが、むしろ中小の倒産件数が増えているという状況かと思います。このように、中小企業につきましては、まだまだ厳しい経営環境に置かれているということをまず御理解いただきたいと思っております。
そのような状況の中、労働法の制定、改正が相次いでおりまして、ここ3年間で約11件の法律の改正等々がありまして、中小企業もその対応に迫られている状況だと思います。
次に研究会の中間取りまとめで示された各論点について、早速意見を申し上げたいと思っております。
2ページの「第1 総論的事項」「1 現状と課題」でございますが、需要変動への対応ということで、有期労働契約は中間取りまとめにもありますとおり、企業にとっては需要の変動に応じて雇用の調整を弾力的に行うために欠かせない制度です。研究会による実態調査でも、有期契約労働者を雇用できなくなると事業が成り立たたないという事業者が53.8%と過半数を超えているわけです。有期契約労働者による雇用が規制されれば、繁忙期には正社員の残業で対応して、当該労働者の長時間労働といったことを誘発しかねません。
中間取りまとめの2ページの最後の方にも指摘されているとおり、労働者の意識の多様化等によって就業形態の多様化が進んで有期契約労働者も増加しており、多様化の度合いが更に増しているのが現状です。
また、中間取りまとめではほとんど言及されていませんが、研究会の実態調査によりますと、労働者が有期契約労働者で働く理由を見ると、正社員としての働き口がなかったからというのが38.7%。その一方、仕事の内容、責任の程度が自分の希望に合っていたからというのは32.3%という数字が出ております。勤務時間、日数が短く、自分の希望に合っていたからというのも31.0%という同程度の割合に達しています。このほかにも労働者が希望して有期労働契約を選んだと思われる回答の割合が高くなっておりました。こうした点を踏まえながら、今後の議論を行うべきであろうと考えております。有期労働契約に対する一律的な規制は、労働者の多様な働き方を狭め、雇用の確保という政策目的にも反することになるとも考えております。
(2)といたしまして、中小企業の人材確保でございます。有期労働契約をめぐる現状と課題という点では、中小企業の人材確保の実態という観点も御検討いただきたいと思っております。平成20年に東京商工会議所が会員企業を対象に行った調査がありますが、有期労働契約社員を始めとしてパート、アルバイト、派遣労働者など非正社員の雇用が3年前に比べて増加したと回答した企業に聞いたところ、増加の理由としては、正社員の採用が困難だというのが37.5%ということで、最も多い理由の1つでありました。また、非正社員が減少した企業に減少の理由を聞いたところ、正社員の転換促進というのが40.7%で最も多いという結果になりました。
このことから、中小企業の実態としましては、正社員を採用したくても思うようにいかず、有期労働契約により必要な人材を確保している側面がある。それと同時に、現状でも有期労働契約で雇用している場合、多くの企業で正社員への転換を視野に入れているということもまた伺えると思います。
次に5ページの「2 検討に当たっての基本的考え方」で「(1)我が国の労働市場(雇用システム)が公正を確保しつつ機能するためのルール作りを図ること」でございます。中間取りまとめで指摘されておりますように、有期労働契約は安定雇用に至るまでのステップという点で役割を果たしているということは評価する必要があると思います。特に雇用のミスマッチの解消という点では、重要な意味を持っております。
実際、先日も東商の会員企業に雇用労働に関する意見を聞く機会がありましたが、ある印刷業でございますが、工場の働き手が足りない。そのためハローワークで募集をしておりますが、これはミスマッチが多いということで、そのため有期契約にして、最長3年間かけてこれを見極めているという話も聞いたところであります。
また、全国の商工会議所と日本商工会議所ではジョブ・カード制度という制度によって企業が有期労働契約によって職業訓練生を受け入れるため、協力する企業の開拓事業を実施しているところです。中間取りまとめの5ページの13行目「有期労働契約が活用されることで、職業能力の向上に寄与する役割も期待できよう」とあるとおり、これまでに訓練実施計画の認定企業が3,607社、うち965社が訓練を終了しております。訓練を終了した1,880人のうち1,346人が正社員として雇用されております。マッチング率で見ますと、約72%という実績が上がっているというのが現実であります。訓練受講生あるいは受け入れ企業の双方からミスマッチの解消に役立つということで、大変喜ばれている事業であります。
中小企業にとりまして人材の確保というのは、やはり最も大きな経営課題の1つであります。いつの時代でもヒト・モノ・カネと言われておりますが、経営課題の1つであります。知名度が低い場合が多いこと、また求職者の大企業志向、地域によっては大学や職業教育機関が少ないことなどによって、通常の状況でも必要な人材を十分に確保できていない企業が多くあるわけです。
中間取りまとめの5ページ3段落目「有期労働契約の機能に関し、企業側からは、中長期的ばかりでなく短期のものも含めて需要変動等に伴う『リスク』へ対応するといった労働市場全体における『柔軟性』への要請があるところである。これについては、そのリスクを専ら有期労働契約労働者の側に負わせることは公正とは言えないと考えられ、こうした『リスク配分の公平さ』にも配慮しつつ、検討すべきである」とされております。しかし、企業にとっては景気の変動、製品、商品のライフサイクルの短縮化などに対応するためには、短期的、一時的な業務を中心とする一定の労働力の需給システムは必要不可欠なものです。特に中小企業は業務の時期、内容、量などを自社の都合で決めるのではなく、取引先、他社の注文によって決まるケースが多いため、あらかじめ必要な人材を予測することが難しい場合が多いというのが実態でもあります。
働き方という観点でいえば、企業が有期契約労働者として受け入れた方の能力を見込んで、企業と労働者の双方が納得の上で正社員化しているケースもあれば、今の形のまま働き続けたいとして労働者側から断られるなど、自ら有期契約労働という形態を希望して働いている労働者もいると思います。特に有期契約労働という働き方を希望している労働者にとっては、有期契約労働に対する制限が強化されると雇用の機会が少なくなってしまうのではないか。わざわざ彼らの就
業の道を閉ざす必要はないのではないかということを申し上げたいと思っております。
7ページの「(2)雇用・労働をめぐるシステムやその中での有期労働契約の位置付けを含め総合的な比較法的検討を行うこと」でございます。ここでは諸外国で導入されている制度について触れられておりますが、こういった検討をする場合には、単にある制度の導入を検討するのではなくて、中間取りまとめにもあるとおり、当該国と日本の雇用、労働をめぐるシステムの全体像やその中での有期労働契約、ないしは法制の位置づけなどにも十分に留意すべきことと考えます。
「(4)様々な性格の規定・行政手法の総合的な活用を図ること」ですが、中間取りまとめにもあるとおり、労働者のニーズや現場の労使の取組み方は多様であります。一律のルールによって雇用管理を一定の方向に促すのではなくて、当事者の自主的な創意工夫による有期労働契約の在り方といったものを検討すべきではないでしょうか。
9ページの「第2 有期労働契約の範囲、勤続年数等の上限、契約の更新・雇止め」でございます。
10ページの「1 基本的な考え方」でありますが、先ほども触れましたように、労働者の価値観が多様化する中で多様な働き方が求められております。学びながら、子育てをしながら、介護をしながら働きたいというニーズに対して、雇用の機会を狭めることのないように注意をすることが重要だと思います。先ほど申し上げましたように、労働環境が全く異なる国の制度の一部だけを持ってきても、過去の経緯、国民性、雇用、経済情勢などが異なっているわけでして、労働法制全体の整合性もとれません。
また、中国あるいは韓国などアジア諸国との国際競争も激化しております。我が国の競争力をどう維持していくかという観点も重要ではないかと思います。
11ページ「2 締結事由の規制」でございます。多様な働き方に対するニーズに応えるためにも、有期労働契約の締結事由を限定すべき理由があるとは思えません。また、繰り返しになりますが、外国の制度の一部だけを持ってきても全体としての整合性がとれません。中間取りまとめでも言及されているとおり、締結事由により有期労働契約を制限した場合、新規の雇用が抑制されたり、企業の海外移転が加速するなど、結果として雇用に悪い影響が及ぶことが懸念されます。したがって、締結事由を制限すべきではないと考えます。
13ページ「3 更新回数・理由可能期間に係るルール」でございます。無期労働契約との公平を有期労働契約の締結を規制することによってのみ確保しようとすれば、均衡がとれないと思います。バランスをとるためには、有期労働契約の在り方と同時に、無期労働契約の解消についても検証すべきではないかと思います。雇止めについて規制を強化すると、企業はリスクを回避するために、かえって雇用機会を狭めてしまうおそれもあります。多様な働き方を認めていく観点から、利用可能期間の制限については、特に短時間労働者や高度技能者の雇用機会を著しく狭めることになります。むしろ、雇用の安定の観点から、比較的中長期間とすべきであると思いますが、これは景気循環との整合性も考えなければならないのではないでしょうか。業種や業態によって契約期間の長さがそれぞれ異なっており、一律に制限するのは無理があるのではないでしょうか。勤続年数や更新回数など区切りをつけて、無期みなし、無期雇用への変更申し込みみなしなどの規定は導入すべきではないと考えます。
14ページの「4 解雇権濫用法理の類推適用」です。有期労働契約の雇止めに関する基準からすると、契約書に業績が悪化、売り上げの減少であるとか利益の減少、そうした場合は契約を更新しないと明示しておけば解雇権の濫用には当たらず、雇止めをすることができると考えております。この機会にこういった考え方でよろしいのかどうかの確認ができればと思っております。
また、中間取りまとめでは雇止め法理を法律で明確化することについて言及されていますが、判例において、正社員の場合と有期契約労働者の場合でどのような違いがあるかも踏まえた上で検討していただきたいと思っております。
16ページ「第3 労働条件明示等の契約締結時の課題」についてです。
「1 契約締結時の明示事項等」につきまして、労働基準法で労働契約に際しまして、労働条件の明示が義務づけられております。また、研究会の実態調査によっても労働条件の書面表示は多くの企業で行われているということです。したがって、制度を変更するのではなく、今の制度の周知を図って、更に浸透させていくことが重要だと思っております。
「2 契約期間について書面表示がなされなかった場合の効果」です。無期契約とみなすとの意見については使用者の意思が反映されていないこと、有期と無期とでは仕事と責任範囲、期待などが異なっている部分が多く、有期の契約を自動的に無期に変更することは難しいといった理由から、これにつきましては反対です。
19ページの「3 雇止め後の生活安定等」です。雇止め時の手当につきましては、労働の対価以外に企業に支払い義務を課すものとなります。導入には反対です。正規労働者の場合の退職金制度につきましては、賃金の後払いという考えもありますが、有期労働契約の場合はどういう考え方に基づくものなのでしょうか。生活の安定のためということであれば、労働政策で考えるのではなくて、社会政策や福祉政策といった観点から対応を検討すべきではないでしょうか。
「第5 均衡待遇、正社員への転換等」です。
「1 基本的な考え方」につきましては、中間取りまとめの22ページの5行目ぐらいで指摘されているとおり、我が国においては単に職務が同じというだけでは正社員との比較は困難であります。有期契約労働者と正社員とはそもそも責任や役割が異なっておりまして、均等・均衡待遇の一律的な適用は無理があると思います。
有期労働契約と正社員との関係では、特に次の点について研究会における今後の議論を見守りたいと思っております。限られた原資で有期労働契約者の処遇を改善すれば、正社員の待遇を見直さざるを得ないということもあると思います。また、正社員は職務、転勤可能性、責任、期待などさまざまな役割を担っているわけです。有期労働契約者は、すべてにわたり正社員と同じ労働者というのはほとんどいないのではないでしょうか。有期労働契約によって雇用する理由として、一般に正社員の解雇が難しいことが挙げられております。この点につきまして、どのように考えていくのかということです。
23ページの「2 均衡待遇など公正な待遇」です。繰り返しになりますが、有期契約労働者と正社員とはそもそも責任や役割が違っているということです。特に均等待遇については、労働者派遣制度について商工会議所の会員にヒアリングした際、複数の企業から指摘された意見を紹介したいと思っております。日本企業の賃金体系は年功を重視しているケースが多く、かつ企業ごとに決められております。そのため派遣先企業の同じ職務を行っている正社員の間でも均等待遇ではない場合が多い。どの社員との均等を図るのかが不明確であって、均等待遇の実現には無理があるという意見がございました。
「3 正社員への転換等」です。研究会取りまとめでは、事業主に対して正社員への転換を推進するための措置を義務づけることが議論されているようですが、そもそも有期と無期では根本的に期待する成果に違いがあります。したがって、両者の差を無視した一律な対応をとるべきではないと考えます。職務や職場、事業所を限定した契約期間に定めのない雇用計画につきましては、一律に規定すべきものではないと考えます。個々の企業の実情に応じて対応すれば足りるのではないでしょうか。転換の制度化を検討する前に、まず実態をよく分析していただきたいと思っております。
これから申し上げるのはパート労働者の場合ですが、先ほどの東京商工会議所の調査では、正社員への転換制度を持つ企業は30%ですが、正社員への転換の実績がある企業は56%でありました。46%の企業が転換はケース・バイ・ケースとしておりまして、中小企業の場合、正社員の転換については制度の有無に関わらず柔軟に対応しているという実態が浮かび上がっております。
「第6 一回の契約期間の上限、その他」です。
「1 平成15年労働基準法改正の影響等」。平成15年の労働基準法の改正で1回の契約期間の上限が原則1年から3年に延長されました。しかし、この改正の影響からでしょうか、多くの労使関係者が有期労働契約の更新を重ねた場合、3年が有期労働契約を利用できる上限と勘違いして認識をしている実態があるようです。この点につきましては、誤解されないように明示すべきと考えております。
最後に今後の研究会での議論に向けて、特に強調したい点を3点申し上げたいと思っております。
第1には、冒頭御説明しましたように、企業、特に経営環境が厳しい中小企業の実態を十分に踏まえた上での議論をしていただきたいと思っております。お願いします。
第2に、労使自治を基本とすることです。一律の規制により企業経営を拘束すれば、結果として雇用に悪い影響を及ぼしかねないと思います。
第3といたしまして、政府から先般出されました新成長戦略にも示されているとおり、今後、我が国がアジアの経済と一体となった経済成長を目指すことになれば、有期労働契約も含めて労働問題は単に国内だけの問題ではなくて、外国人労働者問題も含めて議論を更に深めていく必要があると考えます。
日本商工会議所、東京商工会議所を始めとしまして、各地の商工会議所で有期労働契約についても議論を行いまして、今後の研究会の議論につきまして、また随時意見を申し上げていきたいと考えています。
私からは以上でございます。
○鎌田座長 ありがとうございます。
それでは、委員の皆さんから御質問をお願いいたします。どうぞ。
○橋本委員 貴重なお話ありがとうございました。
御意見を伺いますと、規制の強化につながるような面につきまして、かなり消極的でしたが、その理由として中小企業の柔軟な人材活用が損なわれるという理解でよろしいでしょうか。
○関口史彦氏 そうです。
○橋本委員 冒頭、正社員の採用がなく困難なので、有期雇用でゆくゆくは正社員転換を視野に入れた従業員の採用を行っているとおっしゃいましたので、正社員への転換の制度化や更新回数、利用可能期間の上限の規制というのは、中小企業の実務に反するものではないと考えたのですけれども、やはりそれでも規制はかなり厳格になるという理解でしょうか。
○関口史彦氏 そうですね。現実的には今おっしゃられたように、現実的には正社員化への道もつくっております。現実がそういうことで進んでいるので、余り厳しい規制的な網かけをされると、むしろ委縮してしまう部分が出てくる可能性がありますので、そういった意味で反対をしているということです。
○橋本委員 ありがとうございました。
○鎌田座長 よろしいですか。
○橋本委員 はい。
○鎌田座長 ほかの先生方はありませんか。どうぞ。
○荒木委員 現在、判例法理で雇止め法理というのがありまして、無期契約と同視されるような状況に至っていたり、あるいは雇用継続の合理的な期待があるような場合には、解雇権濫用法理の類推適用ということで対応しているんですが、これは予測可能性がないということで、労働者もそうですけれども、企業側にとっても予測がつかずに困っておられるという状況にあるのではないかという気もしているんですが、その点についてはどういう方向が望ましいというお考えがありましたら、お聞かせいただきたいと思います。
○佐藤健志氏 今の判例法理のお話につきましては、私どもも今後また会員企業の意見もよく聞いて、いろいろと検討したいと思うんですけれども、判例の中でも正社員の方の場合と有期契約労働者の方の場合とで違いがあるのではないかという印象も持っておりますので、正社員の方の場合と有期契約労働者の方の場合、これまでの判例でどういった違いがあるかということも踏まえた上での御議論が今後行われることを期待させていただいているということでございます。
○荒木委員 現在の判例も、例えば整理解雇の場合には正社員と有期契約労働者では保護の程度は違う立場をとっているとは思うんですが、どのぐらい違うのかとか、その辺は予測がつかない結果、先ほど御指摘があったように1回の契約の上限の3年が利用可能の上限といったものと、ある意味では誤解したような行動を誘発している感じもします。そういった点から、先ほどのヒアリングでは、もう少し客観的な基準をつくるのがいいのではないかという議論もあったんですけれども、そういった点についてはいかがでしょうか。
○佐藤健志氏 先ほども申し上げましたけれども、この辺は私どもも十分に議論をしていないところがございますので、最後に関口も申し上げましたが、今後また有期労働契約について商工会議所の中で議論するときに、更に検討してみたいと思います。
○荒木委員 ありがとうございました。
○鎌田座長 どうぞ。
○佐藤委員 雇用環境というか経営環境が厳しい中で雇用に関して規制を強めると、かえって雇用機会を委縮させてしまうということで、とりわけ中小の場合には採用の困難さ、特に正社員としての採用の困難さがあって、そういう中で有期を始めとする非正規の柔軟な活用が重要な機能を果たしてきたということが基本認識されている。私も基本認識の厳しさと雇用の多様化の機能については同じです。
1つ、中小の中でも人的資源管理ルール、人事労務管理ルールという制度をきちっと整備する中で優秀な人材を採用して、ケース・バイ・ケースとか柔軟な運用という面が中小のよさとして
あるんだけれども、しかし、ルールを透明化して、客観的なルールをつくっていく中で優秀な人材を採用して定着させて育成する。それが会社の強みになっていくという面からいうと、ルールをしっかりつくっていくことも重要な競争力の源泉になっていくのではないかと思います。
そういう観点からいくと、勿論規制を一律的にというのは難色を示されるのもよくわかるわけですが、まだ不透明な部分によってトラブルが発生するところは、きちっとルールをつくってやっていたらどうか。登用などにしても、ルール的なものをきちっと明示する中で、有期で雇われた方が将来のキャリアステップが透明化して、そのことで不安感がなくなって、会社のコミットメントや定着も高まっていくというロジック問題あると思います。そういう考え方については、御意見としてはどうでしょうか。
○関口史彦氏 そういう御意見もあると思いますが、逆にそれを盾にとって有期契約労働者側が権利を主張するとか、逆のことが起こり得ることもありますので、その辺は非常に危惧するところであります。
現実的に私ども商工会議所の役員企業でも、中小企業ですが、年齢に関係なく優秀な技術を持っている人は70歳を超えても働いてもらっているところもございます。中小企業といっても、規模によっては大きな差がありますが、現実の法的なものを踏まえた上で、更にそれを超えるような柔軟な人材の活用の仕方をしている企業があるというのが実情です。
○鎌田座長 どうぞ。
○山川委員 今の質問との関連でもあるんですけれども、正社員としての採用が困難であるので非正社員を採用して、場合によっては正社員に転換あるいは登用もあるというお話でした。私は経済の専門家ではないんですが、需要と供給で考えると、正社員としての採用が困難であるということは、供給側、つまり求職側の力が強いということを意味するような気もしまして、そうすると、非正社員であれば一層採用しにくくなりそうですが、非正社員であれば採用がしやすいということは、供給側の質に違いがあるのかということ、供給側が一律ではないということなんでしょうか。
○関口史彦氏 それはおっしゃるとおり一律ではないと思います。新卒で就職を希望する方とか、あるいはキャリアを積んで、例えばリストラを受けて就職を希望する方とか、そういった年齢の問題もあるでしょうし、男女差とかさまざまではないでしょうか。その辺の違いは当然あると思います。
○山川委員 つまり、新卒が正社員としてはなかなか就職してくれない、あるいは応募してくれないけれども、中途採用ですと応募が増える。新卒市場とそれ以外の市場との区分が背景にあるということなんでしょうか。
○関口史彦氏 実態としては、恐らくほとんどの中小企業が新卒採用ということが頭にないと思います。まず企業をPRするというか、どういう企業でどういう内容のことをやっているという接点がないんです。それは一部上場企業とは全然違います。また、学生側もそれを知るすべもなくて、そういったところで商工会議所の合同会社説明会という事業で中小企業の会員を集めて、20社、30社のブースをつくって、それを学生に案内していくという就職説明会などをやっています。中小企業の場合、基本は中途採用です。
○山川委員 ありがとうございました。
○佐藤健志氏 若干関連するのではないかと思うので申し上げますが、先ほど関口からジョブ・カード制度のところで、商工会議所で職業訓練の受け入れをさせていただく企業さんを開拓しておりますということを申し上げました。これもまず有期契約で、働く方からしてみると、そこの会社でどういう仕事をするのかということを実際に体験していただき、御本人と受け入れの企業との両方の合意があって、先ほどの千数百名が正社員になれたということがあるわけです。今、申し上げたようなところに新しいジョブ・カードという制度があって、そこをうまく御活用いただけた方々が今だんだん出てきているというのも1つの側面ではないかと思います。
○鎌田座長 あとはありますでしょうか。どうぞ。
○佐藤委員 今後、重点的に検討していただきたい点を最後に3点ほどおっしゃった中で、労使自治の原則といいますか、ルールを法的に一律的にかぶせていくのではなくて、それぞれの企業事情や業界事情、中小企業とかそういう事情も含めて実態に合って展開していくためには、労使自治が必要である。それも非常に大事だと思います。
ただ、規模別で見ると、例えば労使間のコミュニケーションといいますか、使用者と働く側のコミュニケーションはとても大事だと思うんですが、その点で例えば組合があるところは組合を通じてとか、ルールがある程度つくりやすいわけですけれども、中小の場合は統計的に見ますと、組織率も低いですし、そういう中で従業員とのコミュニケーションとか企業の中での働く者の不満とか苦情が出てきたときの処理の仕組みとか、いろんな面でいろんな仕組みが求められてくるようにも思うんですが、その辺りは中小の実情に合った形での有期とか非正規の方の不満とか、そういうものがあったときの対応というのをどのように構築していくことが実態に合って、望ましいとお考えになっているのかという点を教えていただければと思います。
○関口史彦氏 済みません。そこのところはかなり難しい質問でして、すぐにお答えしかねますので、また持ち帰って議論したいと思います。
○佐藤委員 申し訳ありませんでした。
○関口史彦氏 かなり難しい質問です。
○鎌田座長 先生方、何かありませんでしょうか。
私から1つ質問なんですけれども、途中、中間取りまとめの中で、有期労働者を継続して更新して長期間にわたって利用する、使用するという中でのリスク配分の問題を議論されておりました。御説明の中で、やはり業務の臨時性とか一時性ということもあるので、こういった需給変動のリスクを規制して減少させるということについては問題があるのではないかということと、もう一つ、有期で長く働きたいという労働者のニーズもあるのではないかということから一律の規制については反対するといったような御趣旨の御発言だったかと思います。
確かに有期を利用する理由というのは、企業側から見てもさまざまであるだろうと思うわけですが、しかし、業務の特性から臨時的、一時的なものであれば、恐らく長くても3年とかそういった段階で必要性というのはなくなるんだろうと思います。しかし、これもいろんな方がいろんな調査で言われているんですが、かなり長期にわたって反復更新をする。5年以上ということもある。そのときに雇用調整をする場合、雇止めという形で調整をするということになって、そのことの経営側のメリットがあるということだろうと思うんですが、そうしますと、業務の特性から、あるいは仕事の性格から臨時的なということでは説明できないものもあるのではないかと思うわけです。こういったことについて、何か御意見があれば少しお伺いしたいと思います。
○佐藤健志氏 今のお話を伺っていて思ったのは、需要の変動とはいっても、1つはある程度予測がつくのではないかというのがお話の前提にあるのではないかと思いました。ただ、先ほど関口が話の中でも申し上げましたが、極めて厳しい状況であれば尚更なんですけれども、ある日、急な注文が入りました。それを逃したら、いつ仕事がくるかわからない。ただ、一体どういう波で注文がくるかもわからないという状況に迫られている企業があるのは事実でありまして、企業を経営している以上は勿論先行きの見通しを考え、計画を立てて経営するわけですけれども、特に規模が小さくなればなるほど、そのとおりにいかない可能性も非常に高い。ですから、今ある仕事は恒常的かどうかという見極めもできない。これは恒常的な仕事、そうではないと言い切れない部分があるのではないかということは、今、お話を伺っていて思いました。直接のお答えになっていないかもしれませんが。
○鎌田座長 それはわかりました。つまり、予測できないというのはリスクですね。予測できないものをどういうふうにシェアするかという問題です。これは勿論企業側のリスクとしてあるというのはわかります。それをどう配分するかという問題になってくるときに、一方では、労働者の方でも安定雇用へのステップとしては評価するとおっしゃっているわけですから、そういったリスクを労働者の側からもできるだけ軽減していくということが、企業の競争力とか企業の中の従業員の意識、生産力の高度化に好影響を与えるということで考えれば、その辺のところをどう考えるかという問題ではないかと思います。予測できないものは予測できないんです。予測できないもののリスクをだれがどう配分するかという問題です。これから御検討いただくということであると理解しております。
○関口史彦氏 余りにも急激な昨年からの需要の減少というか、仕事が消えたという言葉が大田区辺りの工場経営者からは随分聞きましたし、そういった中では少なくとも正社員の雇用を守るのが精一杯ということが事実としてあって、有期の方については本当に申し訳ないというのが実情だと思います。
今回の事例が100年に1回ということもありましたけれども、ある意味イレギュラーに近い、これからこういうことがたびたび起こると困るんですが、今の状況の中で考えて、どういうリスク配分、どういうリスクをどちらがとるんだというのは、なかなか答えにくいところもあります。難しいです。
○鎌田座長 どうぞ。
○山川委員 今の点で臨時性という言葉の意味の問題なんですけれども、伺っていると2つあるような気がします。例えば注文がきて、すぐにある程度はさばけてしまう場合のように、プラスの方向で急に需要が増えて一定期間が過ぎれば終わるという形の臨時性と、今回のリーマンショックみたいに、経常的にある程度の仕事はあるけれども、急に変化が起きて、むしろ需要が下がってしまうことも生じうる。そういう2つのパターンで臨時性というものをイメージできる。非常に大ざっぱというか単純な分け方なんですが、労働基準法14条等で考えているのは、ある一定時期にしか仕事が存在しないというパターンですが、そうではなくて通常は仕事が存在するが、急な変化が生じたときに非常に落ち込みが出てくる可能性があるパターンもある。そういう2つがあり得るということなんでしょうか。ちょっと単純化し過ぎかもれませんが。
○関口史彦氏 あり得るということです。
○鎌田座長 ほかの先生方は何かありますでしょうか。よろしいですか。
本日は貴重なお話をありがとうございました。これも感想なんですが、改めて経営サイドの皆さんの思いというものを間近に聞かせていただきまして、一つひとつの問題についてより深い理解が求められるという感想を持ちました。これを参考にして、今後とも検討したいと思います。
本日はどうもありがとうございました。
(日本商工会議所関係者退室)
○鎌田座長 それでは、次回の日程等について、事務局から御説明をお願いいたします。
○青山室長 次回の研究会の日程でございますが、3月30日火曜日の9時半から12時まで、引き続き労使関係者からのヒアリングを実施させていただきたいと思います。委員の皆さんには、日程確保に御配慮いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
以上です。
○鎌田座長 それでは、以上をもちまして、本日の研究会は終了したいと思います。どうもありがとうございました。
(照会先)労働基準局総務課労働契約室政策係(内線:5587)