第16回有期労働契約研究会議事録

日時

平成22年5月27日(木)10:00~12:00

場所

厚生労働省労働基準局第1・2会議室(16F)

出席者

   〈委員〉
   荒木委員、奥田委員、鎌田委員、佐藤委員、
   橋本委員、藤村委員、山川委員
  〈事務局〉
   渡延労働基準局審議官
   青山労働基準局総務課労働契約企画室長
   丸山労働基準局監督課中央労働基準監察監督官

議題

(1)有期労働契約に係る施策の方向性について
(2)その他

議事

○鎌田委員(座長) それでは、定刻となりましたので、ただいまから「第16回有期労働契約研究会」を開催いたします。
 委員の皆様方には、御多忙のところ御出席いただきありがとうございます。
 本日は、阿部委員が御欠席されるということであります。
 それでは、本日は、前回の御議論を踏まえまして、年齢等に着目した有期契約労働者の実態、諸外国の有期労働契約法制の適用の実態等に関する資料を事務局に作成していただきましたので、それを踏まえ、意見交換をさせていただきたく存じます。
 それでは、まず事務局から資料に基づき御説明をお願いいたします。
○青山室長 では、御説明いたします。私の方から、まず資料を一括して御説明いたします。
 まず、資料1の第15回、前回の研究会の議事概要を簡単に御紹介いたします。
 1ページでございますが、前回は、3月にやりました労使ヒアリングでの意見も踏まえて意見交換いただいたものでございまして、この議事概要も大まかな中間まとめの項目に沿ってまとめております。
 1ページ目は第1の総論的事項に関する御議論でございますが、まず1つ目の論点で「需給変動に伴うリスク」。これを補足しますと、もともと中間まとめでは、中長期だけでなく、短期のものも含めて需要変動等に伴うリスクをもっぱら有期労働者に負わせることは公正と言えないなどの記述があったのですが、それに対して労使のヒアリングでは、使用者団体の方から、リスクは企業とか社会全体で負っているのではないかなどの意見も出ましたことを踏まえて議論があったものでございます。
 一部かいつまんでの御説明になりますが、2つ目の○にありますように、2行目あたり、会社全体でリスクを分配しつつ、やむを得ないときに有期契約の雇止めに至っているという企業もあるという実態も踏まえて議論してほしいという指摘であれば、もっともな点もあるという議論がありました。
 あと、次の○ですが、中間まとめの記載は、すべての場合において有期労働者に負担を負わせている趣旨ではないのではないか。あと、リスクといっても、日々変わるような需給変動とか急激な需給変動など、リスクの質の違いも考えた方がいいという御指摘がございました。
 2枚目に行きまして、1つ目の○ですが、臨時的・一時的なリスクをどうするか。一方、長期にわたって組織の柔軟性を保つために、できるだけ削減のリスクを負わないという意味での考え方もあって、そういうリスクの性質、配分の仕方について、その公正さをもう少し丁寧に説明する必要があるのではないかとございます。
 次の総論的な論点ですが、3つ目と4つ目の○のところですが、「法体系全体のバランス」を踏まえ議論すべきとの意見についてとあります。これは、主に労使ヒアリングで使用者団体から、有期労働者だけではなく、非正規労働者全体の施策や、あと正社員に係る体系も踏まえた、全体を踏まえた議論をすべきという意見があったことについての議論でございました。
 それについては、1つ目の○でありますが、正社員にかかわる問題を除外して有期労働契約の問題を解決できないということでは必ずしもないのではないか。
 一方で、2つ目の○ですが、有期契約の規制がほかの部分にどう影響するのかを考えながら議論すべきというのは、指摘どおりではないかという御指摘もございました。
 次の○は実態調査における4つの類型とありますが、これは労使ヒアリングでも、実態調査でやった職務タイプの4つの類型のみならず、例えば高齢者についての類型化も考えるべきという意見があったということも踏まえて、事務局で資料を整理してほしいという御要請がありました。
 あと、次の実態ということで諸外国の関係ですが、ヒアリングでは、法制だけでなく運用の実態なども含めて考えてほしいという意見であったが、最新の情報を含めて資料を用意してほしいと。
 特に、フランスは入口・出口両方の規制があるけれども、その中で有期の利用の割合が比較的多い理由などがわかればということでございました。
 次が、有期労働契約の規制一般でございますが、労使とも、労働者のニーズや現場の取組みがさまざまであって、一律のルールによるのではなく、当事者の自主的な創意工夫によって、その業種の風土に合った活用のあり方も必要ではないかという部分をどう考えるかという御指摘がありました。
 3ページに行きまして、有期契約をどうとらえるかという場合に、不安定雇用なのでなるべく制限すべきという指摘があった一方、安定雇用へのステップとして活用する視点が必要ではないかという指摘もあった。重要な点ではないかという指摘でございました。
 2つ目の○は、1つ前に御説明した当事者の創意工夫というところでございますが、EU諸国では、法律の規制を労働協約によって変えることが認められているという例が引用されまして、そういう一律の規制と現場に適合した規制の組み合わせの問題は念頭に置くべきということでございます。
 ちょっと飛びますが、3ページの下から3番目の○ですが、労使関係者の意見からは、有期そのものをできるだけなくすという考え方が一つの方向性としてあり、一方では、経営側のメリット、労働側のニーズといった部分もあると。もう一つ中間的な議論もあり、認めるけれども、これ以上増やすのはいかがかという常用代替防止という観点の議論もあった。そういうことも必要ではないかという視点でございました。
 次が、各論についての議論でございまして、3ページの一番下の○ですが、無期原則について議論になったかと思いますけれども、外国では、締結事由を要するという制約によって、それをまとめると無期原則と位置づけられているという説明がされまして、4ページに行きますが、そういうことで、2行目ですが、無期契約を「原則」と定めること自体は余り議論の対象になっていないのではないかとございます。
 2つ目の○で、我が国では、解雇権濫用法理があって、濫用における解雇は無効だが、外国ではそうではないという面を考慮に入れるべきということでございます。
 次の次の○でございますが、無期原則に絡む議論だったかと思いますが、最後から3行目あたりですが、例えばドイツやスウェーデンでも、出口規制のところで、2年以上使った場合には無期への移行を促進するとなっているということで、無期原則といってもいろいろなレベルがあるという御議論がありました。
 その1つ飛んだ○でございますが、労使の意見への評価として、入口規制については、かなり労使が対立しているという感じがするが、出口規制については、独立して議論はできないけれども、相対的にそれほど大きな対立ではないのではないか。ただ、出口規制については、副作用に関する懸念が労使共通してあったのではないか。期限については長い方がいいのではないかという議論が振り返られると思います。
 4ページの一番下の○になります解雇権濫用法理の類推適用については、利用可能期間を規制する場合に、その可能期間の期間が長いと、その間の雇止めをどうするかということで、この類推適用の論点とも関連してくるのではないかという議論でございました。
 5ページ目に行きまして、一番上の○ですけれども、企業としても、例えば行動指針になり得るような客観的ルールであれば、受け入れ可能ということが示唆されていたのではないかという労使ヒアリングについての評価がありました。
 次が、第4の終了に関する課題という各論でございます。
 雇止め手当につきましては、フランスの契約終了手当は、不安定だから、その分、本来賃金が高くないとバランスが取れないという議論があって支払われているということなどで、この手当についての性格についての御議論もございました。
 次の各論、第5の均衡待遇、正社員への転換等につきましては、2つ目の○でありますように、同一であるべき比較対象とする労働者をどうするのか、それを制度設計においては考えなければいけないという議論でございました。
 正社員転換につきましては、使用者側の日本経団連は、勤務地限定、職種限定というモデルを用意して、どういうものが合っているかという検討をしたいという提案があったのかなという印象を持ったということでございます。
 その次の○で、この勤務地限定、職種限定のモデルについては、まさに労使において創意工夫を凝らして追求いただくべきものではないかという意見もございました。法律や行政でモデルをつくるのは難しいのではないかということでございます。
 1つ飛びまして、6ページの上から2つ目の○ですが、正社員転換は、利用期間の規制と連動して議論する必要があるということで、利用可能期間を長くする場合には、例えばそれ以上になれば無期に転換するけれども、その前の時点でも、正社員転換促進措置ということを考えることはあり得るのではないかという組み合わせについての議論もございました。
 以上が各論についての御議論で、最後、その他ということで、こういう入口から出口までのさまざまな規制のパターンがあるので、施策の関連というものは整理する必要がある。一気通貫で見たときどうなるかというモデルを少し考えてみて議論した方がいいのではないかという趣旨の御議論もございました。
 前回の議論は以上でございます。
 次に、資料2でございます。これは、今、御紹介した前回の議論の御要請も受けまして、我が国の有期労働契約の実態について、年齢等で分析したものでございます。具体的には、この有期研で行いました平成21年有期労働契約に関する実態調査(個人調査)について、可能な範囲で追加集計させていただきました。同調査について、昨年9月30日の研究会で御紹介させていただいていますし、それを製本化したものを机の上に置かせていただいております。水色の製本ですが、それの再集計ということでございます。
 資料2に沿いまして御説明いたします。まず、年齢によって分析いたしました。
 更に1枚めくっていただきまして、ページ数が1とあるページでございます。前提として留意申し上げたいのは、この調査は年齢ごとにクロス集計をかけたものでございますが、もともとこの調査は、個人で5,000サンプルをとらまえてやった調査でございますが、属性等についてのウエートバックは基本的にしていないので、ちょっとそこは留意して見る必要がある。層によってはサンプルが少なかったり、多かったりというのもちょっと考えなければいけない部分があるかと思いますので、あくまでも傾向を全体的に見るということで見ていただければと思います。
 全体的な説明に入りますが、1ページの1の就業形態ですが、これは年齢と就業形態、本人がどういう呼称で呼ばれて有期として働いているかというもののクロスでございます。特に年齢との関係で見ますと、下のコメントにもありますように、契約社員は、年齢が高くなるにつれて割合も高くなると。あと、60歳以上においては嘱託社員の割合が高いということでございます。特に前回や労使の御意見で、高年齢者はちょっと扱いが違うのではないかという意見があったので、特に、今後このように高年齢者について特徴的なものを中心に御説明していきたいと思うのですが、高年齢者という場合には60歳以上を軸に御説明していきます。我が国の高齢者施策上、定年年齢の最低は60歳という義務があり、あと、今65歳までの継続雇用などの高齢者雇用確保というものは、法律上、措置として義務づけて推進していますし、定年年齢引き上げも措置の一つとして推奨していますので、定年は企業によってまちまちではありますけれども、とりあえず60歳以上で切って考えたいと思います。
 2ページでございます。これは1回当たりの契約期間ですが、これで一つ特徴がわかるのが、60歳以上のところを見ていただきますと、1年超の割合がほかの年齢層より高くなっております。普通は1年以内というのがほとんどなのですが、60歳以上になると、1年超えるものを合計すると15%を超えるということで高くなっております。
 あと、一部表を飛ばして申し訳ないのですが、5ページでございます。これは、年齢と、まさにこの研究会で分析したもととなった職務タイプのクロスでございます。これは本人が答えている部分でございますが、例えば年齢との関係では、55歳~60歳、64歳あたり、つまり60歳の手前の55歳~59歳と60歳~64歳のところで特に正社員と同様の職務に従事していると答えている人の割合が高くなっております。
 6ページでございます。6の有期になることを選んだ理由でございます。これは複数回答でございますが、全体で見ていただきますと、理由として、総計で見ると一番多いのが正社員としての働き口がなかったから、あと仕事の内容、責任の程度が希望にあっていた、勤務時間が短く希望に合っていたが続くのですが、年齢別に見ますと、60代においては、全体では一番多い「正社員としての働き口がなかったから」の割合が比較的低くなっております。
 飛びますが、8ページの8番でございます。これは、今後の働き方についてのニーズを聞いた部分でございますが、これは総計では有期で働きたいという人が約5割強、正社員が足すと30何%になるのですが、特に60歳以上については、「引き続き現在の職場で有期として働きたい」という割合が高くなっております。
 またちょっと飛んですみませんが、10ページでございます。これは、現状に満足しているか満足していないかを聞いた上で、「満足している」と回答した人にその理由を聞いた複数回答でございます。これは全体的に年齢による傾向差はそんなにないのですけれども、1つだけ、理由の中で右から3番目にある「契約期間が自分の希望に合致しているから」というものが、ほかの年齢層ではそれほど多くないのですが、60歳以上については多少高くなっております。
 11ページですが、今度は不満の人に不満である理由を聞いたものでございます。まずこの不満である理由の総計での傾向としては、一番下の行をごらんいただきましてわかりますように、一番右の頑張ってもステップアップが見込めないから、一番左のいつ解雇・雇止めされるかわからないから、あと、真ん中の方にあります賃金水準が正社員に比べて低いとか絶対的に低いというのが3大理由みたいになっているかと思いますが、特に年齢で傾向を見ますと、60歳以上では、一番左の「いつ解雇・雇止めされるかわからない」の割合は、ほかの年齢よりも低くなっております。
 13ページでございます。現在の労働契約について改善してほしい点でございます。これは、年齢別に見ますと、例えば正社員として雇用してほしいという一番左の理由で見ますと、20代、30代は3割近くなったりするのですが、60歳以上になると1.7%、2%と非常に少ない、ほとんどいなくなるということでございます。一方、60歳以上の方を見ますと、右から2番目の「特に改めてもらう必要はない」という回答が3割を超えてほかの年齢層より高くなっております。
 以上が年齢での追加集計でございます。
 次は、就業形態での追加集計でございます。
 1ページ目ですが、これは、この調査で本人がそう呼ばれているという意味での呼称としての就業形態を選択肢により尋ねておりまして、それごとに分析したものでございます。1ページの一番上にありますように、契約社員、期間工というふうにこの人数がなっていまして、これはちょっとサンプルが少ない類型もありますので、その点を留意しながら見ていただければと思います。呼称でございますので、一定の定義を置いて調査しているものではございませんので、これは統一した概念で切られているものではないことも留意いただければと思います。
 1回当たりの契約期間ですが、これは当然、1年以内が全般的には多い中で、契約社員、嘱託社員は1年超の割合が1割を超えるなど、相対的に長くなっております。
 ちょっと飛んでいただきまして4ページでございます。勤務先事業所における正社員との比較でございます。これは、呼称上の就業形態と職務タイプをクロスしたものでございます。傾向として見ますと、契約社員、期間工、嘱託社員は「正社員と同様の職務に従事」していると答えている人が4~5割で、ほかの就業形態より多い。パートタイマーでは「軽易な職務」という者が5割以上で、ほかの形態より多いという傾向になっております。
 次の5ページでございますが、有期になることを選んだ理由でございます。これもちょっと就業形態別に御説明しますと、真ん中のパートタイマーのところでは、理由として左から2番目の「勤務時間、日数が短く、希望にあっていたから」が最も多くございます。契約社員、期間工、派遣労働者などでは、一番右の「正社員としての働き口がなかったから」が比較的多くなっております。
 次が、1ページ飛びまして7ページでございます。今後の働き方の希望でございますが、これは、短時間やその他のパートタイマーでは、「引き続き現在の職場で有期労働者として」というのが6割以上で、あと嘱託職員でも5割以上となっています。それで、全体としても、この「引き続き有期として」という理由はほかの就業形態を通じて多いのですが、ただ、就業形態での比較をいたしますと、契約社員、期間工は、左から2番目の「正社員として」という希望がほかの就業形態よりは高くなっております。
 次が8ページでございます。8ページの2つの表は、この労働者に対しまして、更新回数の上限や勤続年数の上限が設けられているかと聞いて、設けられていると答えた人に聞いた具体的な上限回数なり上限の年数でございます。もともと設けられていると答えた割合は非常に低いですので、その中での割合になりますのでサンプルは非常に少ないと思うのですが、御説明いたします。特に下の9番目の勤続年数の上限がある場合のその上限でございますが、全体として1年超~3年以内というのが一番多いのですが、特に期間工、派遣労働者は、1年超~3年以内が7割を超えて特に多くなっております。例えば契約社員とかを見ますと、3年超~5年以内も3割とか、嘱託社員とかもありますので、多少違いがございます。
 次が、9ページの満足している部分でございます。9ページの11の表でございますが「満足している」と答えた人にその理由を聞いたものでございますが、形態別に傾向を見ますと、契約社員、期間工、嘱託社員は、その中では「失業の心配がない」という割合が4割前後で比較的高いということでございます。パートタイマーにつきましては、左から3番目の「労働時間、日数が自分の希望に合致している」という割合が特に高くなっております。
 次の10ページでございますが、今度は「不満である」と答えた人に不満である理由を聞いた複数選択の傾向でございます。理由別を見ますと、一番左の「いつ解雇・雇止めされるかわからないから」は、もともとこれも全体として高い割合で出ている理由ではありますが、派遣労働者が5割超、契約社員、期間工が約4割などとなっております。あと、「契約期間が短い」という左から2番目の理由につきましては期間工等に多い。あと、真ん中辺にある「賃金水準が正社員に比べて低いから」が、短時間パートタイマーでは約2割とほかよりも少ないという傾向になっております。
 次が、飛びまして12ページでございます。正社員転換制度が会社にあるかと聞いたものでございますが、これは本人に聞いていますので、当然知らない場合も含めて、あっても知らない場合には「わからない」の方に回答されているかと思いますので、それを前提に見ていただきたいのですが、それでも契約社員では35%、ほかの就業形態でも、おおむね2~3割が転換制度があると答えていますが、嘱託社員は12.7%しか「ある」というのはございません。
 13ページの改善してほしい点でございますが、理由別に見ますと、「正社員として雇用してほしい」というのは、期間工、契約社員、派遣労働者で約3割と高目になっております。一方、短時間のパートタイマーでは「特に改めてもらう必要はない」という理由がほかよりも高くなっております。
 簡単ですが、資料2の御説明は以上でございます。
 続きまして、資料3以降に入ります。資料3、4は諸外国の資料でございまして、資料3-1と3-2がセットになっております。
 紹介しますと、JILPT、労働政策研究・研修機構におきましては、今年3月に有期労働法制の国際比較に関するフォーラムをなさいました。3月8日においては、イギリス、スウェーデン、ドイツ、フランスの労働法の研究者を招聘して、その法制の実態等を報告いただくとともに、ディスカッションという形で進められたものでございます。
 そのディスカッションの全体の概要は資料3-2に議事録的な形で載せております。このフォーラムは、各国の方を招聘したのですが、コーディネーターを委員でもいらっしゃいます荒木先生が務められたものでございます。
 文章ですと全体が長いものでございますし、有期労働契約研究会でも諸外国の制度につきましては昨年の7月31日の研究会以降、専門家に話を聞いたりして研究を進めてきておりますので、制度の基本はこちらも既知の情報だと思いますので、そういうものではなく、実態とか最近の動きとかで知見があったものについて、資料3-1の方に取り出してまとめさせていただいておりますので、こちらで御説明いたします。
 1つ目がイギリスでございます。イギリスのアリステア・クキアダーキ先生からの御報告の中の抜粋でございますが、1つ目の○が有期労働契約の継続利用の制限違反とありますが、これは、御案内のように、イギリスでは出口規制、4年以上継続した場合に、期間の定めは無効となっていわゆる無期となるという規制を設けております。ただ、客観的な理由がある場合とか協約がある場合は例外です。
 そういう規制が原則ですが、ただ、一方、紹介されていますのは、この国の解雇法制の仕組みとして、有期労働契約の雇止めにもこの解雇法制が適用されると。この国の不公正解雇の解雇法制では、1年間という期間を過ぎたら解雇手当、剰員整理手当が請求できる仕組みですが、この場合も有期の雇止めについても同じように請求できるということで、雇止めにはそういう保護が法律上はあるのですが、ただ、実態としては、やはり有期労働者の雇用安定に関する保護は限定的という紹介がなされました。
 もう1点、均等待遇でございますが、これも前提として申し上げますと、この編注の小さい字にありますように、以前の有期研でもありましたように、イギリスでも、規則において、有期労働者は、比較対象となる被用者と比較して不利に扱われない権利を有するという差別禁止が書かれていますけれども、実態をこの先生からお話しいただくと、比較対象となる労働者を探すことは非常に難しいという話があると。どういう雇用期間がある労働者と比較するかについては定義がなく、裁判所でも問題となっていると。最近は、全く同じ職業でなくてもよい、広義で同じような職であればなるという判断をされているという実例の紹介がございました。
 次は2ページ目でございます。2ページ目はスウェーデンとあります。スウェーデンはもともとこの研究会では有識者の報告などをしてきておらず、研究の対象としてこなかった国でございますが、非常に参考となる内容が紹介されていますので、ここで紹介いたします。
 1つ目の○にありますように、この国はどういう規制の変遷を経てきたかと申しますと、70年代から、締結事由を特定の季節業務等に制限してきたけれども、その範囲は法律とか判例法によりだんだん拡大してきたと。その結果、利用可能事由、つまり締結理由のリストが増えてきて、多岐にわたり、その結果、複雑過ぎて、労使にとっても解釈が非常に難しくなった。一方、政府としても有期労働契約の活用機会を増やしたいという目的があったということで、法律が大きく改正されたということが2007年に起こったようでございます。
 どのように変わったかというのが2つ目の○でございますが、1つ目の・にありますように、これまで必要であった客観的理由は、一般的な有期労働契約については不要となったと。入口規制を変えたということでございます。その一方で期間上限を設けた。合計2年まで、更新3回までで、超えると無期化という仕組みに変えたということでございます。例えば、一部の理由については多少特則があるようですけれども、このように期間上限規制に変えたという国でございます。
 3つ目の○で、その期間上限を新たに2007年に設定してどうなったかというところでございますが、まさに期間上限に達する前に雇止めするというマイナスの副作用はある。例えばメディア部門では、12カ月前の11カ月を契約期間として、雇用継続の資格が発生されないようにする例が多いと説明されました。スウェーデンでは、12カ月以上雇うと雇止め予告みたいな通知の保護を受けられることになっているので、その保護が受けられる手前で雇止めをするという紹介がされました。ただ、一方、一部の業者では2年という上限が設けられたことで、無期契約に転換させることも考えられますという紹介もされていました。
 あと、この国で1つ注意すべきは、労働協約で法規制と異なる規制を定めることができる。準強行的と説明されていましたけれども、労働協約があれば、それはそちらが優先した内容となるということでございまして、しかも最近、労働協約より規制を緩和する方向にあるということも紹介されました。3ページに行きまして、ただ、労働組合は、こういう法改正はEU指令に従っていないとして異論を唱えているという紹介もなされました。
 次に、ドイツの例でございますが、ドイツにつきましては、1つ目の○は経緯を書いていますが、基本的には、前に橋本先生にも御紹介いただきました内容で明らかになっている部分でございますので、さらっとおさらい的に話しますと、もともと判例法理で、解雇保護法の規定を潜脱しない限りにおいて有効であると聞かされていましたが、そういうことを積み重ねて、締結事由が例示列挙の中から法定化された。ただ、その後、就業促進法で客観的理由がない場合が可能となり、現在の法律の制定となって、客観理由がなくても期間上限を前提に許容する。一方、客観理由があれば期間上限はないという仕組みになっております。
 この法律の規制緩和によって失業者を減少できるのではないかと考えられたのですが、この評価については意見の対立があるという紹介がされました。労働組合は失業者は減少していないと主張する、使用者は、規制緩和が行われていなかったらもっと失業者は増えていただろうと主張しているという紹介がありました。この国の状況としてこの報告にありましたのが、解雇に関する保護が非常に厳格であることを背景に、解雇制限法を改正して雇用を生み出すということをするよりは、有期労働契約に係る改正をした方が容易だったという事情があるという御紹介もされました。
 今の規制に対する評価ですが、3ページの下の○にありますように、2つの混合システム、入口規制と出口規制をミックスしたシステムについては、メリット・デメリットが両方あるが、労働組合は満足していないと。他方、使用者にとっては、今でも過酷だということで、有期労働契約についてもっと柔軟性を導入するのではなくて、端的に解雇制限法の適用を一部緩和するという議論もあるということが紹介されました。
 次は4ページでございますが、フランスでございます。フランスも、規制の内容につきましてはこれまでの研究会でも奥田先生から御紹介いただいたものでございますが、最近の動きということでここでの報告がありました。
 規制緩和の動きということで、やはり労働法の規制が厳しいという従来のお話の中で、実は規制が徐々に衰退しつつあると。企業は、長期的な雇用関係を維持するより、臨時雇用や有期雇用をしばしば選択するようになっているということなどでございます。
 2つ目の○で、そのような無期雇用の減少の動きということでございますが、使用者は、そのように業務が終わったら契約を終了したいという考えが選択されるようになってきているということでございますが、業務が終わったら契約を終えたいという場合には、外注、請負の活用という方法もあるし、無期契約で使用して解雇するという方法もある。ただ、2つ目の方法は、解雇の規制が厳しいので難しいということで、結果的に、やはり有期労働契約の活用がなされているということでございます。
 3つ目の○にもありますように、最近、今現在の有期労働契約の法律上認められている締結事由は、一時的な業務という一般的な理由のほかに、ここにありますような労働者の代替とか企業活動の拡大、[4]の慣行的な有期契約等、あと福祉目的等が許容されてきているということでございます。
 先ほどの前回の議論でもありましたように、こういう締結事由規制がありながら有期契約が広く利用されている理由ということで、4ページの一番下の○でございますが、報告者はこのように御説明しております。特に使用者は解雇規制をおそれていると。だから、正社員の解雇は非常に大変だということでございます。
 2つ目に、使用者は、締結事由規制があるのですけれども、優秀な弁護士を活用してうまくそれを回避していると。例えば、先ほどの締結事由の一つである慣行的有期契約、5ページに行きますが、セクター契約として、観光業、レントラン業では、もうそれが当てはまると解釈して頻繁的に有期が使われていると。また、業務量の拡大という理由もありましたけれども、その理由も活用すると。ただ、これは裁判所も厳しい判断をしているという紹介もございました。
 フランスの事情は大体以上ですが、もう一つ、一番下の○でございますが、先ほども事由の中に福祉目的とありましたが、やはり世界的なこの状況の中で、政府は、失業問題に対処するために有期労働契約に目を向けていて、若年労働者が有期労働契約により仕事をしながら訓練を受ける仕組みがあるという紹介もされまして、こういう類型での有期が活用されているという紹介がございました。
 ざっぱくですが、フォーラムの概要は以上です。必要に応じ、後ろの資料も御参照いただければと思います。
 あと、海外の情報ということで資料4を用意させていただいております。これは韓国の情報でございまして、ちょっと古いので恐縮ですが、昨年9月に韓国の政府が発表した期間制勤労者の実態調査の結果でございます。
 これは、これまで有期研でも研究させていただきましたように、韓国では2007年7月1日に期間制及び短時間労働者等の保護等に関する法律が施行されました。この法律によって、有期労働者について2年という期間上限が設けられ、それを超えるともう無期とみなすということで出口規制が設けられたわけでございますが、昨年9月の韓国政府の調査は、ちょうどその施行から2年たった時点で、要は法律の規制の上限の時期が来ますので、会社はどのように行動しているかということを調べたものでございます。
 具体的には、2年たったらどうなったかというものは、この1ページの下の□で始まる文章でございます。これで見ますと、2009年7月に2年の契約期間が到来して、法律上もうそこまでしかできないという期限が到来した満了者の中での扱いの内訳でございますが、「正規職転換」が36.8%、「契約終了」が37%、「その他」が26.1%であったということでございます。
 2つ目の○と2ページの上の表でありますとおり、法の効果が現れる直前の時期である2009年6月、その1カ月前の状況を調査しているのですけれども、正社員転換等の割合はそんなに変わっていないという結果が出ております。これの見方はいろいろ、まだこれ以上の評価は政府もはっきり書いていないのですが、ちょっとこれはまだ施行して2年たった時点のものでございまして、本来ならば最近の情報があればいいと思うのですが、一つ確認したところ、やはり韓国政府も調査を続けているものの、発表するに値するまとめはまだできていないということで、ちょっとまだわかっておりません。ただ、韓国政府も当然、注意深くこの法律の施行状況を注視して対応していくようでございます。
 ただ、2ページの最後の方に「法による正規職転換効果は大きくない」とか、そういう評価が多少書いてあるのですが、半分想像ですが、それに絡む背景としてちょっと紹介させていただきますと、今回のこの研究会研究資料の参考1、参考2という形で、過去に有期研で出した資料を参考にさせていただくのですが、韓国について、有期研の去年7月の研究会で報告者が出されました資料の一番最後の5ページにあるのですが、実は昨年の夏の段階で韓国政府は、この法律の施行によって、企業が無期に転換せずに、非正規労働者を解雇してしまうのではないかということをおそれていたようです。特に金融危機もありましたので、そういう懸念が大きくあったみたいで、そういうこともあって、ちょうどそのころ韓国政府は、この2年という上限を4年に延長する法案を出していたころだったようです。そういうことで、そもそも2年で本当にいいのか、2年でむしろ雇用不安、大量解雇が出るのではないかというおそれがもともとある中での昨年9月の韓国政府の発表があったようでございまして、そういう背景と併せて見ると、ちょっとこの評価も理解できるのかもしれないと思います。
 大変長くなりましたが、説明は以上でございます。
○鎌田委員(座長) どうもありがとうございます。
 それでは、かなり大部な資料を提出していただきましてありがたかったのですが、分量も少し多いので、2つに分けまして、まずは前半で、実態調査に基づいて御議論いただこうかと思っています。年齢、就業形態の2つの観点から個人調査を再度整理して報告していただきましたので、まずはこれについて御意見をいただきと思います。その後に、海外調査を踏まえまして、あとJILPTの労働政策フォーラムで荒木先生がコーディネートをされておりますが、これでの御報告を受けながら、少し御議論いただければと思っております。
 それでは、まず、実態調査に基づいてデータが提出されましたが、これについていかがでしょうか。何か御意見がありましたらいただきたいと思いますが。
○佐藤委員 大変興味深い分析でして、ヒアリングのときでも、有期は多様なので、タイプと同時に年齢も考慮して少し傾向を見たらどうかということで、たしか組合からの御意見もあったかと思うんですが、それに沿った分析になっていて大変よいかと思います。
 これは、高齢者に注目するという傾向で事務局から報告がありましたし、それはまた重要な点を含んでいると思います。もう一つは、35歳以下の若年に注目するという見方もあるのかなということです。高齢者に沿って説明があったので、ちょっと高齢者について言うと、1つは、60歳以上とか、あるいは55歳以上で、1ページ目を見ますと契約社員が、3割超えていますのが55歳以上、やはり高齢者ですね。もうちょっと60歳以降のいわゆる定年以降の人たちが多くなってくるという傾向にあるわけですが、そのときに一つ、こういう55あるいは65歳以降の高齢者の方の有期としての雇われるときのイメージがどういうものなのかなということでちょっと考えておく必要があると思うのは、やはりそれぞれ、65歳以降は、多くは引退過程に入っていくわけであって、キャリアの先は若年に比べますとそれほど長くないと。いわゆる雇用と、それから年金生活で引退に入っていくまでのつなぎ的な期間の中で有期としてどうだという条件の中で、個別事情、体力とか、あるいは年金の支給事情とか、世帯構成等々の要因を考慮しながら、多分個別的に、条件的に決めて1年契約ごとに更新していくケースというのが、一般的なイメージとしてあるだろうと考えられるわけですね。
 そうしますと、そういうふうに見ますと、例えば正規になれないから有期という働き方を選択したという割合は、これは若年より非常に少ないですし、それから生活事情に応じて働けるからということが非常に多く出てきたのかなということです。例示的に言いますと、例えば13ページみたいなところにそういう傾向が出ているのかなということですね。
 例えば6ページなどが、そういうようなことで言うと、働き口がなかったということで言うと、若干ですけれども、いわゆる若いところよりも高齢者の方がそういう比率が少ないということと、あとは、8ページに関連して、その後どういう働き方を希望しますかというと、今の職場で有期としてという割合が55%とかなり顕著に多くなってきますよね。逆に、正規として働きたいというのは、若年のところで少し多いというようなことです。
 あと、そういうことを引きずってかどうか、9ページのところでは満足度を聞いていますが、今の有期としての働き方は、これは高齢者の満足度がかなり高い。若年も過半数は超えていますけれども、不安の割合は結構高いということはありますよね。
 そういうようなことから考えますと、先ほどのイメージから考えると、高齢者の場合にはやや、本意、不本意で言うと、本意で選択して、そして今の働き方にも比較的満足しているという割合が、若い人と比べると相対的には多いという傾向が見てとれるかなというのが一つです。
 もう一つは、雇用形態別ということで言いますと、同じような本意、不本意、それから満足度ということで言いますと、例えば5ページ目のところで言いますと、契約が、47.7%が「正規として働き口がなかった」というので、いわゆる短時間のパートとかそういう人たちと比べると、かなり不本意性が強いということが言えるのかなということです。
 それからあと、正規になりたいかどうか、つまり希望する働き方ということから言うと、例えば13ページのところにありますように、いわゆる短時間のパートやその他のパートが10%台ですが、「正規として雇用してほしい」というのは、契約とか期間のところでは3割弱とか3割強というような形になっていく傾向があるのかなということです。
 そんなようなところが、雇用形態別では契約の一つの働いている方の特徴というものが少しあるのかなということで、ちょっと2点コメントさせていただきました。
○鎌田委員(座長) ありがとうございます。
 あとないですか。
○藤村委員 こうやって見ると、改めて多様だなという感じですよね。満足度でいくと、全体で55%が満足、45%が不満。不満の人の中で更に分けていくと、本当にもうどうしようもなくて、何とかしてほしいという人もいれば、不満だけれども、そんなに緊急に今の状況を変えないと困るという人でもないと。ですから、年齢による傾向とか職種による傾向は勿論あるのですけれども、法律をつくるというと全体をカバーしますから、全体をカバーしたときに、では、さわる必要がない人たちまで影響が及ぼされると、これはまずいのかなと思います。
 ですから、やはり法律で保護しなければいけないような働き方に追い込まれてしまっている人たちをどうするか、そういう議論、あるいは非常に慎重にそこをやっていかなければいけないのかなと思いました。
 そういう意味では、高齢者、60歳以上の部分については、今のところはそれなりに満足をして働いていらっしゃるし、雇用形態についても、賃金が低いというのが不満として上がっていますけれども、でも、雇用の場があり、一定の収入があるというところは、それなりに働いている方々も満足している。
 いわゆる働いても、せいぜい長くてあと10年という終わりが見えている人たちですから、そうすると、現状の中で何とかやっていくかという感じなんですね。逆に、先ほど佐藤委員もおっしゃったけれども、30代以下となると、まだまだこれから少なくとも30年ぐらい働かなければいけない。そうすると、そういう中で現在の雇用のあり方を見たときに、やはり不安は大きいし、何かもっとその先を見通せるような働き方が実現できればそっちの方へ移りたいという、これは非常に切実なものとしてあると思いますね。ですから、本当にどこを主に対象として議論するかというので、相当その議論の中身が変わってくると思いました。
 以上です。
○鎌田委員(座長) どうもありがとうございます。
 あと、ほかの先生方。どうぞ。
○奥田委員 年齢層でどこにターゲットを当てるかということで見ていく必要があると、今、藤村委員がおっしゃったとおりで、同じように思います。
 それともう1点、今後も現在の勤務先で働きたいかという両方のところ、最初の年齢別だと8ページですし、就業形態別だと7ページになるのですが、ここを見るときに、やはり従来からの疑問ともつながるのですが、有期で働きたいということと正社員として働きたいということとの間には、かなりギャップがあると思います。だから、例えば後の就業形態の方の7ページなんかであれば、短時間パートの人の66.6%が、引き続き現在の職場で労働者としてと出てくるのですが、あくまで推測ということで言いますと、これはやはりパートとして働きたいとは思っていらっしゃるかもしれないです。正社員になると労働時間も長くなるということで。でも、有期として働きたいと思っていらっしゃるかどうかというのは非常に疑問の残るところです。もしかしたらそうなのかもしれないですけれども、JILPTのヒアリングに来ていただいたときでも、有期、期間が定まっているということで、例えば期間を定めずに働いていると辞めにくいかもしれないという誤解をされている可能性もあるということもありましたし。だから、契約期間が決まっているということを労働者の方がどのように認識されているかというのは、正社員になるということで時間が長くなるとか、あるいは責任が重くなるとか、そういうことを含めて現在の形態と考えていらっしゃると判断した方がいいのではないかと思うので、余り有期として働くニーズをここのところで読み取るのは若干、もしかしたら違うのではないかという印象を持っています。
○藤村委員 今、奥田委員がおっしゃったように、実際、例えばあるスーパーマーケットでパートタイマーとして10年以上働いている人って、感覚としては、多分、有期とか無期とかというのではなくて、もうずっとここで働くという感覚なんでしょうね。だから、改めて聞かれてもよくわからないということだと思いますね。
○鎌田委員(座長) どうぞ。
○山川委員 今の点との関連で、確かに有期契約労働者として引き続き働きたいという回答は多いのですが、他方で、不満である理由、これはパートと契約社員とで若干違いますけれども、いつ解雇・雇止めされるかわからないという不満も結構多いということで、この2つは、有期が必然的に雇止めの可能性が高いとすると、読み方としては若干矛盾する可能性も出てきます。やはり有期、無期、正社員という3つのカテゴリーで考えると、正社員というのは、やはり労働時間とか転勤とか、そういう点での拘束性が高いという意識でこういう回答がなされているのかなと思います。従来議論になっている正社員と無期社員との関係を、やはりちょっと慎重に見る必要はあるのかなと思いました。
○鎌田委員(座長) あとほかにありませんでしょうか。
 なければ、また後で戻っても結構ですので次のところに移りたいのですが。今ちょっと御議論いただいたところで、私の感想というのは、やはり先生方が御指摘のとおり、かなり多様な実態があるなということでありますが、60歳以上の高齢者に関しては、その多様な中でも、やはり一定の固まりとしてちょっと違う傾向が見られるのかと思いました。あと、ただ、サンプル数もそれぞれの年齢あるいは就業形態においても違っておりますので、その辺は、もう少し慎重にこれから見ていければと思っております。
 では、後でまたこのデータに戻っていただいても結構ですが、それでは次に、海外の制度についての話に移したいと思っております。
 まず、コーディネーターをされた荒木先生、何か補足のようなものがあれば。
○荒木委員 特にありません。
○鎌田委員(座長) そうですか。
 ではほかに、これに直接関係しなくても結構ですので、海外のいろいろな知見について、先生方から何か御意見があればおっしゃっていただければと思います。
○奥田委員 先によろしいでしょうか。フランスの話も出てきましたし、それから、以前からフランスの入口規制とか、出口規制とか、契約終了手当とかに御関心の向きとかもありましたので、先ほどのロキエクさんのお話も含めて少しだけコメントさせていただきますと、先ほど整理していただいた資料3-1の4ページからフランスのケースが出てくるのですが、勿論、これはまとめていただいているところで、この間の傾向を示しているとは言えると思います。
 ただ、労働法の規制が衰退しつつあると言えるかどうかというと、規制自体がそれほど変わっていませんので、無期契約を基本とするといった労働法の規制が衰退する、言葉の問題かもしれませんが、規制自体は基本的に変わっていないので、そういう原則が少し空洞化してくるというか形骸化してくるというか、そういうニュアンスだと思います。おっしゃるように、一番下の有期労働契約が広く利用されている理由というのが、労使のヒアリングの中でも、入口規制と出口規制があんなに厳しいのに、なぜこれだけ利用されているのかということも出てきていました。ただ、このあたりに関する明確な実態調査とかが存在するわけではありませんので、ある程度文献で指摘されている点とか、若干推測等も交えてということになりますし、明確な数字的な資料があるというわけではないです。ただ、ここでロキエク氏が指摘されているような点というのは、幾つか従来から指摘されている点ですので、有期労働契約が利用されている理由として考えることができると思います。
 まず1つは、この慣行的有期契約というもので、以前にもフランスの制度のときに紹介させていただいたのですが、そこで観光業とかレストラン業というもの、勿論そのときにも御紹介したように、この産業部門に入っている職種すべてについて有期契約が締結できるというわけではなくて、この産業部門の中での恒常的ではない仕事ということに当然なるわけです。でも、この観光業とかレストラン業とか、それから、私が以前、JILPTの報告書のところでも書かせていただいたところにも出てきますように、教育部門であるとか、レクリエーション部門であるとか、農業部門であるとか、いわゆる季節的な契約とか慣行的有期契約というものにリストアップされたりしているものが有期契約の対象になっていることが多いということは出ています。だから、それが理由として利用されているかどうかということはあくまで推測にすぎませんけれども、ただ、慣行的有期契約とか季節的契約というものは、以前も御紹介したように、例えば契約終了手当の適用対象外になっていますし、それから、有期契約を継続していくときのクーリング期間とかの適用対象外になっていたりとか、そういう幾つかの規制の適用対象外になっていることが多い。また、季節的契約とか、この慣行的有期契約というものが多いので、このあたりを利用する
ようになっているというのは、現在の制度の中での解釈の範囲内で可能なものですので、裁判になると可能かどうかわかりませんが、制度を変えなくてもなし得ることですので、このあたりが使われているというのは、恐らく有期が使われている理由としては推測し得るところだろうとは思います。
 それから、この資料の5ページでも書いていただいている業務量の増加というのが締結事由の半ば一般的な条項のようになって、これを理由として使われているということは、学説等においても広く従来から指摘されてきていますので、これが裁判になれば、かなり厳格に判断されるのですけれども、でも、実際にこれを使っているというところでは、従来から、いわゆる抜け穴になっているということは言われていますので、この点も、その有期契約の利用が実際には存在するということで考えていただけると思います。
 もう一つは、一番最後に述べられている失業対策としての有期契約なんですけれども、これも今回のリーマンショックのような緊急的なものだけではなくて、従来から、若年者と高齢者の失業率というのは非常に高かったので、特に若年者対象の職業訓練とセットにしたような有期契約であるとか、それから今回、いわゆるシニア契約ということで御紹介したかと思いますが、高齢者を対象とした有期契約とか、そういう失業対策的な有期契約の範囲というのは、現在の制度のもとで特例的なものとして広がってきていますので、このあたりが有期契約の活用につながっているかもしれないというのも理由としては考えられると思います。
 ただ1点だけですが、4ページのところで、御紹介いただいたときに、解雇規制が非常に厳しいので、有期契約が広く利用されている理由の[1]というところなんですが、確かに、解雇規制が厳しいから有期契約が広がっているのではないかという推測というのは勿論できますし、ここに書かれていること自体が間違っているというわけではないのですが、そのときのイメージとして、ここに書いてある、経済的理由による解雇の法規制が極めて厳しいと考えていただいたほうがいいと思います。。日本の整理解雇の比では全然なくて、手続が極めて厳しくて、詳細で、コストも非常にかかるということが従来から問題になっていまして、企業委員会との交渉を何日間の中にどれだけやるとか、それから雇用計画をつくらなかったらどうなるとか、そういうようなことがすべて法律で規制されていて、経済的理由による解雇の法規制というのは確かに極めて厳しいものがあって、コストに関しても非常に問題視されているところですので、その経済的理由による解雇の法規制を回避してということは、そういう意味では理由になっているかと思います。ただ、それが解雇の法規制一般ということで言うと、日本の整理解雇のようなイメージとは全く違いますので、少し区別が必要かなと思います。
 それともう1点、すみません、ちょっと長くなりますが、以前から契約終了手当のことが議論の中でも何度か言及していただいていると思うのですけれども、この契約終了手当に関しても、これがどういう意味で設けられているのか、例えば日本の解雇手当とかと違うのかどうかとか、失業保険と違ってくるのかとか、いろいろなことがありました。どういう趣旨で設けられているかということを少し調べたりもしたのですが、なかなかそのあたりがはっきりとはわからないのですが、失業保険とかのような失業時の所得補償という性格のものではないし、それから解雇手当のように、解雇されて、次の職を探すための期間のという性格のものでもない。実際に立法過程等で言及されているところから少し拾っていくとしますと、そもそも労働者に対して契約関係、有期契約を利用する企業が、一定、有期契約を利用することによって雇用調整の容易さというものを得られるとすれば、労働者に対して契約関係の不安定さというものを補うべきという意味が紹介されていまして、ですから、解雇手当とか失業保険とかの性格というよりも、契約関係の不安定さというもの自体を補うという趣旨でこの手当が設けられていると紹介されています。したがって、その点で言うと、これがあるから失業保険との関係が問題になるわけでもありませんし、
それから解雇手当等とも基本的には性格が違うものと述べられています。
 実際には、それによって何を促進しようとしているのかというのはなかなか明確には出てこないところです。今日整理していただいた、私は欠席させていただいていたのですけれども、前回議事録のところでも御指摘いただいているように、有期契約が終了したとしても、それが期間の定めのない契約に引き継がれれば、この手当は支払われないということになりますので、それを促進する意味も持っているということは、一応考えることはできるかと思います。
 ただ、この有期契約の中でも、同じように労働者に対して契約関係の不安定さが有期契約にはあるのだということを前提として、それを補う手当だと考えれば、すべての有期契約に関してこれが払われるはずなのですが、先ほど御紹介したように、季節的契約とか慣行的有期契約のようなものはすべて適用対象外になっていますので、そのあたりの説明は、なかなか制度的な整合性というのは理解しにくいところはあります。
 以上です。
○鎌田委員(座長) どうもありがとうございました。特にフランスについてはかなり詳細に補足していただきましてありがとうございます。大変助かりました。
 あと、ほかの先生から何かありますでしょうか。どうぞ。
○荒木委員 貴重な御指摘ありがとうございました。フランスのまとめ、今日の資料の4ページで、奥田委員が最初におっしゃいましたように、フランスでは「労働法の規制は以下の理由により徐々に衰退しつつある」というのは、後の理由から推測すると、「労働法の規制の実効性が低下している」という趣旨ではないかと思います。法律自体が緩和されているということではなくて、こういう規制があるものだから、労働法の規制が及ばないような外注とか請負とか、そういう方向に行っているのではないか。それから、無期契約であれば今の整理解雇の非常に厳しい規制がある。それを回避するために有期契約に流れる。そういうことで、規制は変わっていなくても、その規制がなるべく及ばないような形に行動していると。そういうことで規制の実効性が低下している、そういう趣旨かなと聞きました。
 それから、慣行的な有期のところですが、慣行的有期契約というのが有期契約締結事由として認められているわけですね。この場合に、臨時的な必要という要件がやはりかかってくるんですか。
○奥田委員 要するに活動の性質上ということが言われるのですが、活動の性質上、無期契約を締結しないことが慣行になっている産業部門ということで、それが政令とか労働協約でリストアップしてあって、リストがずっとあるのですけれども、その中にホテル観光業とか教育とかいろいろずっと並んでいまして、ただ、その産業に属する職がすべてそれに該当するというわけではなくて、その中で恒常性のないという条件はかかってきます。というのは、フランスの労働法典の整理からいいましても、有期契約の一番最初の出発点として、恒常的な職務には使えないということが入口の部分でありまして、だけど代替とか季節的契約とかというケース、それプラスで使えるということになっているので、リストアップされている産業のすべての職が有期契約の対象になり得るということではないと、そこはかなり厳密に判断することになっているはずです。どこまでなされているかはわかりませんけれども。
○荒木委員 その慣行的な有期雇用の場合には、契約終了手当などの規制がかからないというものがありましたけれども、更新回数とか、それもかからないのですか。
○奥田委員 そのあたりは若干難しいのですけれども、ちょっと文献によって違うものがあったりもするのですが、例えば契約の期間に関して、原則として上限18カ月という期間制限がありまして、それ以外に9カ月になるもの、24カ月になるものということを御紹介したことがあったかと思うのですが、ある文献では、この期間制限というのは、季節的契約と慣行的有期契約には適用されていないと紹介されているものもあります。
 しかし、私が見た労働省のホームページでは、季節的契約に関してはそれが適用されていないという紹介になっているのですが、慣行的有期に関しては適用されているということになっています。そのあたりがちょっと情報として定かでないところはあります。
 ただ、一番重要な点としては、クーリング期間が必要な継続、一たん終わってから何日か置いてという継続について、季節的契約とか慣行的有期契約は適用対象外であるということが明記されていますので、労働法典で適用除外の対象になっております。
○荒木委員 ありがとうございました。
○鎌田委員(座長) よろしいですか。
○荒木委員 はい。ありがとうございます。
○鎌田委員(座長) すみません、私もよくわからない慣行的有期契約ですけれども、更に細かく聞いて申し訳ないですが、具体例というと、先ほど、観光業、レストラン業という例が業種で出てきたのですが、産業で。しかし、その業種とか産業で一括するわけではなくて、やはり個別なんですよね。
○奥田委員 そうですね。
○鎌田委員(座長) それで、季節的なものでもないですよね。季節は別なんですか。
○奥田委員 季節的なものとの区別というのは非常に難しいところは確かにありますね。ただ、あくまでリストに上がっているものでという、そのあたりは勿論区別はされていますけれども。
○鎌田委員(座長) 具体的にセクター契約が、慣行的有期契約というものの判断というのは、リストがあって、そのリストに従って形になっているんですかね。
○奥田委員 まず、このリストに勿論、活動部門として掲載されていなければいけないですし、それから、掲載されていたとしても、それが恒常的でない、一時的な職務であるかどうかということも判断の対象にはなります。ただ、それは実際には問題になった段階で判断されることになりますので、リストに載っているか載っていないかということは、事前に明確にわかりますが、それが一時的かどうかということは、他の職務と同じように、問題になった段階でないと判断の対象にはなり得ないと思うのですけれども。
○鎌田委員(座長) 何かこれ、契約締結するのは勿論当事者だと思うのですけれども、それがこれに該当すると認定するというのは、どこかが認定するんですか。それとも、当事者がこれにしますと決めて、裁判で後で争われるだけなんですか。
○奥田委員 裁判例で出て、そうですね。例えばそれがここで言うところの適用対象外になるかどうかというのは、裁判で争われるということだと思います。何か認定機関があるとかというふうには、全く出てきていませんので。
○鎌田委員(座長) では、当事者がこれに当たりますよねと言うと、とりあえずはそれで進んでいくわけですよね。
○奥田委員 そうですね。ですから、例えば季節的業務でも、季節的業務だと思って実施していたけれども、訴訟になったら、実は季節的業務の概念に入らないという判断がされる場合もありますので、それはもう当事者の判断が、法に合致したものになっているかということになってきます。
 この慣行的業務の具体的なケースというものの御紹介がもし必要であれば、ちょっと今すぐにはわからないので、あればまたお示ししたいと思います。
○鎌田委員(座長) すみません、よろしくお願いしたいと思います。
○荒木委員 ロキエクさんが紹介しているのでは、レストランとか、プロスポーツ、エンターテインメント、文化活動、放送、映画制作、教育、国際会議の枠内で行われる研究等が挙げられており、いずれもデクレとか協約でリストアップされていることが必要だということになっているようですね。
○鎌田委員(座長) 今聞いた瞬間には、例えばプロスポーツとか、かなり特徴のある業務というか業種で、かつ長い間の伝統というものが影響を与えているということなんですかね。
○荒木委員 いわゆるレストランとか観光業とか、そこでもうずっと、慣行的な有期契約、普通、雇うとしたら有期で雇っているというものが、有期を結んでよい事由としてそのまま認められていることかなと考えていたんですけれども。
○鎌田委員(座長) なるほどね。でも、今の奥田委員の話だと、にもかかわらず、恒常的なものについてはだめですよということにはなっているんですね。
○奥田委員 そうですね、基本的にはそういう判断になっていますね。
○鎌田委員(座長) そういう意味では同じなんですね。つまり、無期原則に対して、例外というのはあくまでも一時的というか、恒常的なものはだめだと。
○奥田委員 恒常的なものはだめですね。ただ、若干、先ほど言った季節的業務との関係でわかりにくいのは、この観光とかレストラン業とかでも、例えば冬季にだけ行うようなスキーのインストラクターのようなものとかというのは、これは季節的業務の方で判断されるんですね。だから、どこまでがこちらの慣行的有期契約で判断されるものなのか、あるいは季節的業務で判断、かなり共通性はあるのですが、そういうことが非常に明確な基準がわかりにくいところだと思います。
○鎌田委員(座長) どうもありがとうございました。
○佐藤委員 ちょっとその点で、有期契約の規制は、コーディネーターの荒木先生がビジネスレバートレンドの31ページのところの最後に、「要するに、有期契約の規制は、無期契約の解雇規制のレベルとの相関で決まってくる」ということで、これはとても大事なところだと思うんですね。フランスの今の話などを聞いていますと、客観的な理由がなければ締結できないという原則が維持されていて、日本に比べると厳しいということで理解してきたのですが、そのときに、今のような慣行的というようなことでいろいろあることはわかったのですが、無期は、奥田委員のお話だと、金銭的なというか経済的な理由による解雇の法規制をおそれる余り非常に厳しいという御指摘があるわけですね。そうすると、これは日本より無期については厳しいということですかね。そうすると、ちょっとイメージが大分変わってくるんですね。いわゆる日本の場合には無期が、つまり正規はかなり雇用保障を守る。そこは、したがって、雇ったら、そうそう簡単に解雇できないから使用者は正規で雇うことを慎重にする。しかし、業務変動はある。それで、対応するためには有期だという組み合わせの中で対応してきたという理解が一つありますね。
 その枠組みで考えていくと、フランスの場合は、無期も厳しいし、有期も厳しいという状況になっていて、そこでどういうふうに対応していくかという話になったときに、今言ったような慣行的とか、季節でスキー客が増えたら増えるという、それは事情として何となくイメージできるのですが、しかし、何か厳しい、厳しいという組み合わせを彷彿とさせるのですが、そういう理解でいいのかどうかということをちょっとお伺いしたい。
○奥田委員 法制度上はそうだと思います。勿論、無期に関する解雇規制ができてきて、有期に流れてきて、でも、有期も大々的になるのはいけないから規制されてきたという流れになって、実際にどちらかを緩めてどちらかを規制するという構造もあり得ると思うのですが、法制度的には、今おっしゃったように、実際には無期も厳しいし、有期も規制は厳しいとは言えると思いま
す。
 ただ、解雇規制の厳しさというときに、確かに経済的理由による解雇というのは、手続的には極めて厳しいのですけれども、日本との違いで言えば、解雇は基本的に金銭賠償だというところがあります。でも、例えば経済的解雇の中では、この手続を取らなかったら、金銭賠償ではなくて無効だという効果になる場合もあります。そういう点で言うと、委員がおっしゃったように、法制度上は両方厳しいということになると思います。
○荒木委員 ビジネスレバートレンドの13ページで、これはOECDで調査した有期契約、このテンポラリーというのはほぼ有期契約と考えていいという概念なのですが、その労働者がどのくらいいるかというのを比較しているものがありまして、この研究会でも1回出たことがありますが、フランスは、あれだけ法律では厳しい有期の制限をしているのですが14.2%ということで、最も緩い規制のイギリスなんかよりもはるかに多いわけですね。
 そういうこともあって、このセミナーでも質問が出ました。何でフランスはそんなに厳しい規制をしているのに、これだけたくさん有期がいるんですかと。これは、違法なのにやっているのか、それとも特定の事由が拡張して解釈されているのかという質問、資料3-2の28ページにあるような質問が出ました。
 それに対するロキエク先生の答えは、第1に現実的な理由があると。そこはさっき議論になったように、無期では非常に大変なことになるので、何とか無期ではない、有期で雇おうとするんだということですね。それから、法的な理由としては、客観的な理由が必要だというけれども、それをうまく回避している。例えばというので、29ページですが、いわゆる慣行的有期契約ということで、観光業とかレストランとか、そういうところでは有期契約が活用されている。奥田委員が言われているように、これは実は濫用かもしれない。かなり濫用があるということも言われています。だから、法的には本当はだめなのかもしれませんが、それで雇っている。
 もう一つが、一時的な業務量の増加というのがあります。有期を使うことができる理由としてよく使われがちなものとして、業務量の増加がある。これは、まさに裁判所に行きますと、そんなのでは法が認めた業務量の増加になりませんよということで違法と判断されるのですが、それで実際上は雇っているということがある。そういうお答えがあったということで、裁判所に行った法的な解釈の問題と、実際上そうした事由で有期契約が導入されているというところで少し齟齬がある可能性がある、そういう報告でした。
○鎌田委員(座長) 業務量の増加というこの例外条項、そういう部分で認められるケースというのは結構多いんですかね。これは数字的なことなので、今すぐにというのは難しいかな。
○奥田委員 数字的なことは全くわかりませんが、これを理由として有期契約を利用しているケースというのが非常に多いということは言われています。ただ、言われている文献の中でもパーセンテージが出てくるわけではありませんので、明確には統計とかそういうものによって立証されているわけではないのですが、これを理由として有期契約を締結していて、実際には、ここで法が予定しているような業務量の増加という理由に当たらないものがここに流れているということは、これはもうかなり前から指摘はされています。
○鎌田委員(座長) なるほど。わかりました。今、荒木委員と奥田委員の御説明で、やはり実際、実務のニーズに合わせたような形で、法外でいろいろな試みが行われているということなんですかね。裁判所に持ち込まれると結構厳しいことがあるかもしれないけれども。どういうことですかね。
○荒木委員 それとの関連で、実はスウェーデンが非常に面白かったんですが、スウェーデンもフランスと同じように、かつては使ってよい事由を非常に詳細に法律で定めていたんですね。しかし、それはもう使う方も使われる方も非常に細か過ぎて、実際上、法が守られていないということがあると。もう一つは、失業対策としての有期契約の活用ということもある。そこで、限定的に使ってよい事由を列挙するのをやめまして、原則として5年間のうち2年間は理由なく使ってよろしい。しかし、2年以上使う場合には、それは有期から無期への転換を図りなさい、そういうふうに方向の転換を図ったということなんですね。
 最初から有期は使わせない、だから無期で雇いなさいということをやっていて、実際、無期契
約で良好な雇用に結びつけばそれはいいでしょうが、必ずしもそうはなっていないときに、有期
は使っていいけれども、しかし、一定期間以上使うのであれば、より良好な無期契約に誘導しな
さいというように、スウェーデンは恐らく方針を変えたんだと思います。
 同じことがドイツでもありまして、ドイツは、1960年の裁判所の決定では、客観的事由がなけ
れば有期契約は締結できないと言ったのですが、1985年以降、1年半さらには2年間は客観的な
理由なく使ってよい。しかし、2年を過ぎる場合には無期に転換させなさいという規制と組み合
わせていった。つまり、入口を厳しく規制したけれど、しかし、実際は違法状態がかなり多いと
いう状況の反省などが、恐らくスウェーデンとか、あるいはドイツにあったのかもしれませんね。
○鎌田委員(座長) わかりました。ありがとうございます。
 話がちょっと飛ぶのですけれども、これは事務局にちょっとお聞きしたいのですが、例の韓国
の資料4ですが、先ほどの御説明は2年後に無期転換ということですが、そのほかというのがあ
りますね。そのほかも含めて評価がされているようですが、このそのほかというのは何かといい
ますと、資料4の2ページ目に注がついていまして、「期間制契約を再び締結」、「法と関係な
く慣行どおり期間制として雇用」、「方針を決めていない」というのは、先ほどのいわば事実上
違法、そこまで言うと強いかもしれないけれども、何か私にはよく理解できないんですよね。つ
まり、本当は無期にしなければいけないのですが期間制契約として再び締結するというのは、ク
ーリング期間みたいなものがあって、それで言っているのか、あるいは法と関係なく、慣行どお
り期間制として雇用と、これは別ルールみたいなものなのか、それとも単に違法なのか。でも、その他って結構ありますよね。
○青山室長 そうですね。
○鎌田委員(座長) そうすると、これはどういうふうに、もしわかれば教えていただきのですが。
○青山室長 正直言って、これ以上わからないのですが、ただ、まず、韓国のこの有期制度には、クーリング期間みたいな仕組みはないようです。ですから、企業が自主的というか、自らこんなふうに勝手に扱っているとしか思えないのかなと。
○荒木委員 実は、JILPTの方では、今日報告があった4カ国以外に、全部で9カ国について有期契約に関する国際セミナーをやりました。そちらは全部英語でやりましたので公開ではなかったのですが、そこでは韓国もお呼びしました。それで、我々もその「その他」というのは何なのですかと聞いたのですが、結論的には、この「その他」というのは、裁判所に持ち込めば、法的に無期に転換しなければいけないけれども、していない状態ということのようでした。ですから、本当は2年を超えて有期で雇用してはいけないという法律ができているのですけれども、そのとおり法に従っていない、要するに無期に転換もしていないし雇止めもしていないという違法状態ですが、裁判にならない限りは、事実上はそういう状況にあるということではないかと理解しました。
○鎌田委員(座長) なるほど。ありがとうございます。ほかに先生方、何か。
○橋本委員 ドイツについて、やや細かいのですけれども、今日、3ページにベルント・バース先生の講演の概要がまとめられていますが、こちらには載っていないのですが、セミナーのもとのペーパーを読ませていただきまして、そこに書いてあったことで、この研究会で私が紹介しなかったことがございまして、この機会にちょっと御紹介させていただければと思います。
 いわゆる出口規制と言われている客観的な理由の必要のない有期契約の締結に関するパートタイム労働有期契約法の14条2項ですけれども、ここでは、上限の期間2年間の中で3回の更新が許容されるということになっています。その更新の意義を明らかにしないまま、議論してきておりましたが、ドイツではかなり厳格な定義がされているということで、判例の定義などもペーパーの中に御紹介がありました。
 更新というのは、最初の契約がまだ続いている間に次の契約について合意するということで、間に中断があってはいけないということ、そして、注目すべき内容としては、労働条件が基本的に同一であることを意味するということです。同一内容の契約が続く場合のみを更新ということで、更新の機会に労働条件を見直すというようなことは、基本的に許容されないようであります。この点の有期契約の場合の労働条件の保護の問題というのは、日本では従来、余り議論はなかったことかと思いますが、ちょっと御参考までにということで御指摘させていただきます。
○鎌田委員(座長) ありがとうございます。
 あと、先生方ありませんでしょうか。
○山川委員 今の橋本委員の御説明への質問でもよろしいでしょうか。更新で中断があってはいけないというのと、労働条件が基本的に同一でなければいけないというルールの効果の問題で、もし適法な更新に当たらないとした場合にはどうなるということなのでしょうか。
○橋本委員 やはりその効果もドイツ法の規定が前提となっているのですけれども、適法な更新ではないということで、更新が2年以内3回まで許されるという有期労働契約には当たらないことになります。それで、更新ではなく、新しい契約が締結されたとなります。そうすると、新しい有期契約の締結というのは、このパート・有期法の14条2項の第2文の規定が生きてくるのですけれども、同一使用者のもとで、以前、労働契約関係が存在したときには、客観的事由の不要な有期契約は締結できないことになりますという規定があるので、それに違反するので無期契約になる、そういう効果になります。
 連結の禁止、接続の禁止とこちらの資料で訳されていましたが、それがないとなると、余り労働者保護には働かないかもしれません。
○山川委員 締結事由を制限しないという取扱いがなくなってしまうということでしょうか。
○橋本委員 はい。
○山川委員 ありがとうございました。
○鎌田委員(座長) それでは、統計のところも含めまして、もう一度、何かお気づきのようなことがあれば御意見をいただきと思いますが。冒頭、佐藤委員から、若年者もちょっと注目した方がいいのではないかということをおっしゃって、主にその後は高齢者のところでの特徴づけが多かったのですが、若年者というところで見てみますと、何か面白い、興味深いデータはありますでしょうか。
○佐藤委員 先ほどとほとんど重なってしまうので。
○鎌田委員(座長) ちょっとすみません。9ページの「満足して働いているか」というところで、15~19歳、これが格別に高いですよね。全く想像ですけれども、これはアルバイトのようなことを想定しているのかなと思うんですが。
○佐藤委員 そうですね。それからあと、ここのサンプルが36人ですので、ほかの200~300人の年齢層刻みのサンプル数に比べると少ないので、ちょっと極端なデータに引っ張られるという不安定さがあるのかもしれないですね。だから、15~19歳はちょっと注意して見た方がいいかなという感じはしますね。
○鎌田委員(座長) あと、私がちょっと見ていて幾つか気づいた点ということで、もしコメントいただければと思うのですが、今の年齢とは違うのですが、就業形態別の8ページの9の「勤続年数の上限がある場合の上限」、更新を含めてですけれども、勤続年数に上限がある場合、それでの上限はどの年限ですかということですが、注目したいのは、まず派遣労働者ですが、1年超~3年以内が76.5%。これは恐らく法規制の影響があるのではないかと推測しているのですけれども、もう一つ、期間工が71.4%となっていますね。これは、製造業の方たちがよく、実質的に3年で広く更新もやめて、いわば上限規制をしているという、これは企業の方で、いわば企業防衛的にそういうルールをつくっているということの反映なのかなという気もするのですが、読み方としてどうですかね。
○佐藤委員 この期間工と契約社員というのは呼称でいろいろありますので、僕が聞いた事例で言うと、大手自動車メーカー、最大手と言ってもいいですが、そのケースで言うと、やはり期間工という言い方をしていますよね。それは、従来からそういう慣行があったということであるので、その話で言うと、有期で雇っていますから、やはり2年11カ月までで雇用を一たん終了して、それで、もう一度その方が雇用されたいという場合には、それは一応白紙からもう一回採用という形で採用することはあり得るという形で、それを繰り返す方もいるようなことをちょっと言っていました。そういう意味で言うと、2年11カ月なので、ここが多くなるのは、1つはそういうことと重なっているかなという印象を持ちました。
 ただ、その理由が、それを超えることをおそれていることによるものなのかどうなのかというところまでは、ちょっと定かではないです。
○鎌田委員(座長) どうもありがとうございます。
 あと、私どもがさまざまに分析したところを裏打ちしているようなデータもありますけれども、いかがでしょうか。
 先ほど荒木委員からスウェーデンの話が出まして、フォーラムでお話しされたことをこういう形で紹介していただいて、私は、スウェーデンについては余りよく知らなかったもので非常に新鮮な感じがしたのですが、最近の動向についてスウェーデンについて別に紹介されているものというのはありますでしょうか。あればちょっとまた紹介していただければ。あるいは事務局でもし見つかれば、御紹介いただければ。
○青山室長 探してみます。ちょっとにわかにはあれですが。
○荒木委員 今回、講演のほかにペーパーを出してもらっていますが、それがJILPTで、英文ですけれども、近々まとまると思います。そこに詳細に書いてあります。
○鎌田委員(座長) よろしければ、そういうものをちょっと見せていただければ。
○荒木委員 はい。
○青山室長 補足で、韓国の話でちょっと御紹介的に。韓国でこういう報道がされているというのをちょっと聞きましたので紹介したいと思います。今たまたま思い出しましたので。
 韓国で例の法を施行してから2年の分析というのは、データとしては昨年9月のああいうものでしかないのですが、先ほど荒木委員にもおっしゃっていただいたように、「その他」というものがあったりして、非常に不安定な評価につながる調査結果なのかなと思いますし、政府自身も、2年という規制ではなくて、もう4年に延ばしたりすべきではないかと。2年のままでは大量解雇が発生するのではないかという懸念を持っていたふうはうかがい知れたかと思いますが、今年の2月に韓国の新聞に乗った情報がありまして、韓国の研究機関の人が言っていたコメントでしかないのですが、といっても施行後に雇用が大幅に減ったかというと、もともと失業が発生するのではないかというおそれがあったのですが、それほどではなかったということを研究者の一人が言っていたという報道は目にしております。ですから、むしろ会社によっては、やはり法律の効果によって正規を増やすところも出てきているのではないか、雇用が回復した部分があるのではないかという分析もあるということで、雇用が減ったという事実は当然一部はあるけれども、両方の効果があるのではないかと、最近、識者が言い始めているということは聞きましたので、ちょっと御紹介させていただきます。
○鎌田委員(座長) その辺の最新の情報なんかも、もしいただければありがたいと思います。
○青山室長 わかりました。
○鎌田委員(座長) そのほか、全体的に先生方、何か御意見ありますでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、本日はここで終了ということにしたいと思います。
 では、次回の日程について御説明をお願いいたします。
○青山室長 次回につきましては、調整中でございますので、また連絡させていただきます。
○鎌田委員(座長) それでは、以上をもちまして本日の研究会は終了させていただきます。貴重な御意見ありがとうございました。
 
 
(照会先)労働基準局総務課労働契約企画室政策係(内線:5587)