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第15回有期労働契約研究会議事録
日時
平成22年4月20日(火) 10:00~12:00
場所
厚生労働省労働基準局第1・2会議室(16F)
出席者
〈委員〉
荒木委員、鎌田委員、佐藤委員、橋本委員、山川委員
〈事務局〉
渡延労働基準局審議官
前田労働基準局総務課長
青山労働基準局総務課労働契約企画室長
荒木委員、鎌田委員、佐藤委員、橋本委員、山川委員
〈事務局〉
渡延労働基準局審議官
前田労働基準局総務課長
青山労働基準局総務課労働契約企画室長
議題
(1)有期労働契約に係る施策の方向性について
(2)その他
(2)その他
議事
○鎌田座長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第15回有期労働契約研究会を開催したいと思います。
委員の皆様方には、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございました。
本日は、阿部委員、奥田委員が御欠席と聞いております。
本日は、前回、前々回と行いました労使関係者ヒアリングにおいて出された御議論を踏まえ、意見交換をさせていただきたく存じます。
まず、労使関係者ヒアリングにおいて出された意見につきまして、事務局で資料を用意しておりますので、御説明をお願いします。
○青山室長 私の方から御説明します。
今日の資料を御紹介しますと、資料1と資料2は中間取りまとめの本文と概要でございます。これは既にまとまっているものでございまして、前々回と前回にお出ししておりますので、議論の御参考でございます。
今日御説明いたしますのが資料3でございまして、今、座長からも紹介がありましたとおり、第13回と第14回におきまして、日付的には3月25日と30日におきまして中間取りまとめを踏まえ、労使関係者からヒアリングをさせていただきました。そこで出された意見を項目ごとに整理したのが資料3でございます。
ヒアリングにおきましては、資料を出された対象者、出されない対象者がいらっしゃいましたけれども、資料についてはファイルにつづられておりますが、口頭でのやりとりも含めてまとめさせていただいております。ヒアリング時に御欠席の委員もいらっしゃいますので、全体的に御説明させていただきます。
まず、1ページでございます。中間取りまとめの項目でいうと「第1 総論的事項」の部分でございます。意見につきましては、連合については、連合が正式に機関決定している考え方は、2001年のパート有期労働契約法案要綱、労働契約法2006年版の骨子なので、この考え方に基づいてヒアリングでは意見をおっしゃったところでございます。具体的には、有期契約の区分別の更なる実態調査が必要で、60歳以上の再雇用者等々についても必要と。また、有期を景気変動の調整機能とするのであれば、有期労働者を上回るプレミアなどの義務付けが不可欠ではないか等々の意見がございました。
次に、連合の関係で来られましたUIゼンセン同盟の御意見ですが、UIゼンセン同盟の中でも短時間労働者の比率が高く、外食業種の比率が高いフードサービス部会からいらっしゃいましたけれども、そういうところで外食産業の組合を中心に行ったヒアリングも基にしながら発言なさいました。実態としては、外食産業は離職率が非常に高いため、結果として雇用調整は現実には行われていないということでございます。有期労働者は中間取りまとめや調査では4タイプに分類いたしましたが、もっと意識というところに着目して分類し、論議をする必要があるのではないかという御意見がございました。
次の団体、連合の関係で来られました日本サービス・流通連合でございますが、流通サービス業関係の組合ということで、特にパートタイムの組織化を進めているということで、比率が上がってきていると。実際、勤続年数は平均7年を超えているという状況で、決して臨時的ではない反復の契約をしているという実態があると。実際にアンケートなどをとると、愛社精神を含めて企業に対する思い入れもありながら働いているという有期の実態があるということでございました。考え方としては、無期が原則と考えるべきということでございます。契約更新している有期といった不安定な雇用については、見直す方向で考えてほしいということでございます。
以上が、労働者団体からでございます。
次が使用者団体ですが、日本経団連につきましては、有期労働契約というものはサービス産業化や労働者側の意識の変化等々に対応して、雇用形態の多様化という労使双方のニーズ、要請によって拡大したものと認識しているということで、社会保険、税制、正規労働者の処遇、解雇法制という問題も含めて、法体系全体でバランスをとっていくべきということや、全体を視野に入れた検討が必要という御意見でございました。規制の強化等をすれば、結果として雇用機会が減少するのではないかという懸念があるという御意見でございます。むしろ、セーフティネットを充実させて、訓練などの基盤整備を図ることが現実的ではないかということでございました。
諸外国の例についてですが、検討する場合には、諸外国での運用実態、社会・労働市場に与えた効果は十分に調査してほしいということでございます。リスク配分は中間取りまとめでも記述がありましたが、リスクを負っているのは企業のほか有期労働者、正社員、さまざまな関係者であると。政府も含まれるということで、あと、有期労働者の中でもさまざまにリスクの配分があるだろうということでございます。有期労働契約を強制的に縮小させるというのではなく、良好な雇用形態として多様な選択肢の一つとして活用されるという視点を残しておいていただきたいということでございました。次は、有期の区分の話で、主婦や学生、正社員になれない方など、有期労働者の背景もさまざまということで政策的に区別した議論が必要ということでございます。
日本商工会議所でございますが、有期労働契約は需要変動に応じた雇用調整を弾力的に行うために欠かせない。有期の雇用が規制されれば、正社員の残業で対応して長時間労働を誘発する。短期的・一時的な業務を中心とする労働力需給システムは必要不可欠と。特に、中小企業は業務の時期・内容・量などが取引先等の注文によって決まるケースが多いため、必要な人材をあらかじめ予測することが難しいという御意見でございます。もう一つ中小企業の実態としまして、正社員を採用したくても思うようにいかない。有期労働契約により必要な人材を確保している側面があるという実態を検討いただきたいということでございます。その関係で、有期労働契約が安定雇用へのステップという役割も果たしていることを評価すべきということでございます。次は諸外国ですが、日本経団連さんの意見にもありましたけれども、諸外国で導入されている制度の検討に当たっては、システムの全体像やその中での有期の位置付け等にも十分留意すべきという意見でございました。 次は、一律のルールによるのではなく、当事者の自主的な創意工夫による在り方といったものを検討すべきだ等々の意見でございました。
次が、全国中小企業団体中央会でございますが、この研究会で調査を踏まえて行いました4つの職務タイプ区分につきまして、これは切り口の一つであることを十分に踏まえてほしいということでございます。次が、リスク配分の点でございまして、専ら有期労働者の側に負わせているというのではなく、企業、正社員、有期労働者が相互にリスクを負っているのが現状であるという御意見でございました。また、過度な規制を設けることは有期労働契約の活用が阻害されると。企業にとっては雇用に手をつければ地域社会における評価に響き、採用に困難を来すので、有期であれ、正社員であれ、可能な限り雇用を維持しているという実態の御紹介がありました。
総論は以上でございます。
次が「第2 有期労働契約の範囲、勤続年数等の上限、契約の更新・雇止め」のルールについてでございます。
基本的考え方として、連合ですが、入口と出口はセットで議論することが必要。ただ、有期労働者を類型ごとに区分して対応を勘案するということでございます。
日本商工会議所は、雇用の機会を狭めるのことないよう注意すべきだという意見でございました。
第2の中の「2 締結事由の規制」の項目につきましては、連合は、有期労働は臨時的・合理的理由がある場合に限定すべきということで、具体的には、2001年の連合が出されました法案要綱骨子の内容を紹介されました。一定の事由とそれに対応させた法案要綱骨子の内容の御紹介でございます。詳細は省きます。基本的には、一時的・臨時的なものに限るという趣旨の限定でございます。
連合の関係で来られました日本サービス・流通連合におきましても、合理的な理由がない場合は、有期では雇えないとすべきということでございます。
一方、使用者団体ですが、日本経団連につきましては、無期労働契約を原則とした締結事由規制を設けると労働法全体の在り方に影響を及ぼすため明確に反対。雇用創出を制限し、過剰な規制となる。雇用の安定・維持という観点から、労働者にとってもマイナス。無期原則についてどうするか、研究会で方向性を示していただきたいという意見でございました。
日本商工会議所でございますが、多様なニーズに応えるためにも締結事由を制限すべきではない。新規の雇用抑制や企業の海外移転の加速などの影響を懸念するということでございます。
全国中小企業団体中央会につきましても、締結事由の制限につきましては、安定的な雇用への移行をもたらすとは考えにくいことから反対。こういう規制は正社員の採用ができず、有期の労働者に頼っている中小企業の労働力確保を困難にするという問題が提起されました。
第2の「3 更新回数・利用可能期間に係るルール」につきましては、労働者団体の連合が、一定の区切りを超えるに至った場合には無期とみなすべきということでございます。その関係で、2001年10月に出されました法案要綱骨子の内容を紹介されまして、例えば、更新や年数につきましては、1回に限り1年以下の期間を定めて更新ができるとすべきなどの提案を紹介されました。
次に、連合の関係で来られましたUIゼンセン同盟につきましては、実態として2か月の契約期間ということが多いが、それをやると1年で5回更新となるけれども、更新回数の上限を規制することが現実としてできるのかということでございます。ということで、勤続年数の上限とセットにしないと難しいという意見でございました。
連合の関係で来られた日本サービス・流通連合でございますが、10年以上も反復して契約を続ける人が有期であることはどうなのかについて検討すべきということでございます。入口をきちんと規制すれば出口規制については余り縛らなくてもいいのではないかという御意見も出されました。
次は使用者団体ですが、日本経団連からは7割の事業所は雇止めを行っていない、それなりに実際には雇用は安定しているという意見でございました。更新回数・利用可能期間に係る制限は、雇用機会を著しく狭めるおそれがあると。契約期間の長さが業種・業態によって異なっており、回数制限を一律にするのは現実としては難しい。制限を設けると、予測可能性は向上するが、雇用機会の確保、意欲の向上につながるかどうかは課題ではないかという意見でございます。予防的な雇止めがなくなるという観点から、雇止めが疑問の余地なく成立するというルールを明確にすることが、かえって雇用の安定等につながるという御意見も出てきました。利用可能期間についてルールを設ける場合には、例えば、8割くらいに収まるなどレンジを適切に設定してほしいということでございます。次が、このルールの区切りを超えた場合の法的効果として、無期雇用への転化というのは行き過ぎとございます。例えば、雇止めの予告義務というのが穏当ではないか等の御意見でございました。区切りの明確化の場合には、クーリング期間の設定が重要という御意見も出されました。
次は日本商工会議所ですが、雇止めについて規制を強化すると、雇用機会を狭めるおそれがあると。あと、業種・業態によって契約期間が異なっており、一律の制限は無理がある。あと、無期みなし、変更申込みみなしなどの規定は導入すべきではないという意見でございました。
全国中小企業団体中央会につきましても同様で、業種・業態等によって契約期間に差がある現状を見ると、一律の制限は難しい等々の意見がございました。
次が「4 解雇権濫用法理の類推適用」の項目でございますが、労働者団体の連合は、濫用法理の趣旨を法律に明文化する必要がある。
UIゼンセン同盟につきましても、法律で明文化すれば対応がきちんとできるという意見でございました。
使用者団体・日本経団連は、雇止め法理は、予測可能性という意味で課題があるものになっていると。法理は法理として入れるとしても、行政が文書で裏打ちすると中間取りまとめで読めるけれども、それはかなりハードルが高いのではないかという意見でございました。
日本商工会議所は、雇止め法理につきましては、判例において、正社員と有期の間でどのような違いがあるかも踏まえて検討していただきたいとのことでした。
全国中小企業団体中央会は、中小企業では雇止め法理についての知識を持っていないことも多いという実態が紹介されました。
次が「第3 労働条件明示等の契約締結時の課題」でございます。1つ目が「契約締結時の明示事項等」でございまして、労働者団体・連合は、契約期間と期間を定める理由を書面で明示すべきということでございます。
一方、使用者団体に共通しておりますけれども、現行制度でも問題ないのではないかということでございました。
次に「2 契約期間について書面明示がなされなかった場合の効果」でございますが、労働者団体・連合につきましては、書面明示がない場合には無期契約として取り扱うか、罰則規定を検討すべきという意見。
使用者団体・日本経団連は、書面明示の欠如によって期間の定めが無効ということは難しい、妥当性を欠くという意見。明示ルールを設けるのであれば、一定期間内に明示するという救済措置、期間の猶予を設けてほしいという意見でございました。
日本商工会議所などは、無期みなしは反対等の意見でございました。
次に「第4 有期労働契約の終了(雇止め等)に関する課題」でございます。1つ目が「契約期間の設定」で、いわゆる細切れの問題が中心ですが、連合-UIゼンセン同盟につきましては、短期契約がニーズによりなされている。一方、ほとんど毎日誰かの契約更新の場があるというデメリットがあるということでございました。
使用者団体・日本経団連につきましては、区切りの基準の明確化が図られれば、細切れの問題は落ち着いてくるのではないかという提起がございました。
「2 雇止めの予告等」でございます。連合におきましては、雇止めにまつわるトラブルが多いということにかんがみて慎重な議論が必要ということで、解雇の金銭解決につながらないようにすべきという意見でございました。
「3 雇止め後の生活安定等」につきましては、手当の支払いなどが課題になっておりますが、UIゼンセン同盟につきましては、一律に支払いを求めることについては慎重に議論すべき。退職金や雇用保険の充実が先ではないかということでございます。
使用者団体・日本経団連は、雇止め手当、雇止め保障というものは有期労働契約こそなじむものではないかという意見とともに、予告手当とフランスのような契約終了手当の違いがどうなのかという疑問が出されました。
日本商工会議所、全国中小企業団体中央会におきましては、企業に支払い義務を課すにことについては反対であるという意見でございました。
「第5 均衡待遇、正社員への転換等」でございます。「2 均衡待遇など公正な処遇」部分ですが、労働者団体・連合は、期間の定めを理由に、類似の通常の労働者と差別的取扱いをしてはならないとすべきという意見でございまして、2001年の法案要綱骨子を御紹介されました。
UIゼンセン同盟につきましては、賃金における格差につきましては、労労対決のような構図も出てくる可能性もあるという提起もありました。
日本サービス・流通連合におきましては、均等待遇につきましては今できる状況にあると考えており、同一価値労働同一賃金という観点から、新しい正社員制度をつくれば雇用も安定するのではないかという意見でございました。
一方、使用者団体・日本経団連におきましては、EU諸国のような有期であることを理由とした合理的理由のない差別禁止ということを我が国に即導入することは不可能ではないか。比較し得る正社員の在り方について検討がなければ難しいということでございました。
日本商工会議所におきましても、職務が同じというだけでは正社員との比較は困難であり、有期と正社員はそもそも責任・役割が異なっていると。均等・均衡待遇の一律な適用は無理があるということでございました。限られた原資の中で有期労働契約者の処遇を改善すれば、正社員の待遇を見直さざるを得ないという意見も出されました。
全国中小企業団体中央会も、一律の均等待遇の適用は困難であるという意見でございました。
次が「3 正社員への転換等」でございます。労働者団体・連合につきましては、常時ある業務を有期で契約することは問題で、無期への転換を図るべきとございます。
UIゼンセン同盟につきましても、基本的には正規労働者への転換を推進すべきということで、特に外食産業では、まず、短時間労働者を雇って、知識、経験を有する者を正社員にして即戦力とするとなっているので、非常に重要だという話がございました。
日本サービス・流通連合につきましては、二者択一ではなく多様な無期の労働者という働き方をつくっていくべきということで意見がありました。
一方、使用者団体につきましては、日本経団連から正社員転換の義務付け、インセンティブは助成金などをイメージするが、そのほかにどういうものがあるか議論を深めてほしいとの意見がございました。時間限定、勤務地限定、職種限定といったものにつきましては、多様なモデルを労使が選択し得るようにすることについて検討してみたい。ただ、解雇権濫用法理の扱いも含めて議論を深める必要があるという意見でございました。
日本商工会議所は、有期と無期は期待する成果に違いがあり、差を無視した一律な対応をとるべきではない。企業の実情に応じて対応すれば足り、実際、正社員転換を視野に入れているということで、そこをよく分析してほしいという意見でございました。
全国中小企業団体中央会におきましては、正社員転換の措置を義務付けることは反対。例えば、定年後5年間を最長に再雇用した者についても、正社員化の義務を課すのは無理ではないかということでございました。
次が「第6 一回の契約期間の上限、その他」でございます。「1 平成15年労働基準法改正の影響等」ということで、平成15年に原則1年から原則3年に引き上げた検証の項目でございました。労働者団体・連合は、原則3年という上限の引き上げは反対ということでございます。その引き上げの影響を検証しつつ、改正前に戻すべきかどうかを検討すべきということでございます。
UIゼンセン同盟も、3年という例は見かけないということで、延長するよりも最低の期間を規制する方向があるのではないかという意見でございます。
サービス・流通連合につきましても、3年を延ばす必要はない。一方、高度の専門知識の類型は延ばすことも検討してもいいという意見もありました。
一方、使用者団体の日本経団連は、選択の自由を広げる観点からは上限引き上げは望ましいが、1年より長い契約を結んでいる例が余り多くないので、総合的に検討するということではないかということでございます。
全国中小企業団体中央会は、原則3年を維持することが望ましいが、総合的に検討することが必要という意見でございました。
「2 暫定措置についての取扱い」ですが、暫定措置として定められた労働者は1年経過後いつでも退職できるという措置でございますが、この扱いにつきましては、労働者団体・連合は、有期の労働者も予告を経て退職できるものとすべきであり、そのリスクは使用者が負うべきという意見でございました。
一方、使用者団体の日本経団連におきましては、この暫定措置について片面性が解消されることが検討されるべきだと思うが、国会修正という経緯も踏まえた議論が必要という意見でございました。
全国中小企業団体中央会は、この暫定措置は役割を終えたものと認識しているので、廃止して構わないという意見でございました。
簡単ですが、以上でございます。
○鎌田座長 ありがとうございます。
それでは、今、御紹介いただいた労使関係者ヒアリングで出された意見を基にして、少し皆さんと自由に御議論していただきたいと思います。私としては、それぞれの御意見は御意見として伺って、なお今後、私どもが議論をすべき点を更に深く整理していくという観点から御意見をいただければと思います。
そこで、全般にわたって一括でお話ししていただくよりは、少し区切って御議論いただいた方がいいのかなと思いましたので、まずは「第1 総論的事項」につきまして、意見の4ページ目の上まで、基本的な考え方あるいは基本的な問題点、問題意識を出されておりますので、これについて御議論いただければと思います。
自由に御議論いただきたいわけですが、幾つか私の中で論点として印象に残ったものを御紹介して、これにとらわれる必要は全くありませんので、先生方で自由に御発言いただければと思うんですが、それを少し紹介して、更に御議論いただければと思います。
まず、総論部分についての御議論の中で1つ私が論点として考えたのは、需給変動に伴うリスクの問題は労働側も経営者側も触れておられました。ところが、どうもこれに関する理解あるいはそれに対する対応というところが、必ずしも一致していなかったと思っているわけです。例えば、需給変動等に伴うリスクについて使用者団体からは、私どもが中間取りまとめで述べたような、専ら有期契約労働者の側に負わせているということについては違和感が唱えられ、企業のほかにも有期契約労働者や正社員、政府もリスクを負うものだという御意見があって、この辺は現状をどう捉えるか。そして、需給変動のリスクをどのように公正に配分するかいうところで労働側と使用者側で意見も違うし、また、中間取りまとめの考え方が十分理解されているかどうかということが、私などは少し疑問に思ったわけです。
幾つか先にお話しして、それから皆さんに自由に御議論いただきたいと思いますが、総論部分について第2にいただいた御意見で私の意識に残っているものは、法体系全体のバランス、とりわけ正社員の在り方も含めて議論すべきであるという御意見でした。特に、これは使用者団体の方から有期の問題は非正規の施策全体、それから、正社員の在り方を含めた雇用システム全体から考えるべきであるという御意見でした。
その際に、私が少し確認しておきたかったことは、正社員にかかわる問題を除外して、この問題を解決していくのが困難だと考えるのか、そうではなくて、私はその場では過渡期の議論と言いましたけれども、法律・制度というのは真っ白なキャンバスに一からつくるということではなくて、必ずさまざまな諸制度の中で少しずつ改良・改革を加えていくということだと思いますので、そうしたことから考えれば、他の例えば正社員にかかわる問題を除外してこの問題は解決できないということでは必ずしもないのではないかと思っているわけですが、しかし、法体系全体のバランスや影響というものを視野に入れながら議論してほしいというのは、そうかなという感じがしております。
3番目ですが、類型の実態把握に伴って4つに区分したわけですが、これについて更に連合の方たちがおっしゃっていたのは、高齢者についての類型化も進めて考えるべきであるということでした。いわゆる年齢という切り口ですが、更に有期労働者の類型については深い議論をすべきであるといったことだったと思います。
総論として私が少し注意したい第4点は、諸外国の事例を検討するに当たって、運用の実態なども含めて考えてほしいという御意見がありました。これはなかなか難しい問題ですが、諸外国の事例について法制だけではなく、運用の実態や社会・労働市場に与える効果を含めて、できるだけ更に情報を集めてはどうかということでした。
それ以外にも総論部分で先生方がお気付きの点もあったかと思いますが、私の問題提起としてはそういったところが少し気付いたところです。あとは先生方に自由に御議論いただければと思います。それ以外の論点でも、総論部分であれば構いませんので。
○荒木委員 非常に重要な4つの論点をまとめていただいたと思います。最初の需給変動リスクを専ら有期契約労働者に負わせるのは公正ではないという中間取りまとめの議論について、いろいろとヒアリングでは御指摘があったところで、御指摘はもっともかなと思っております。といいますのは、いろいろな実態があって、まさに有期は非正規なんだから非正規から切って当たり前ではないかという対応をしている企業もある。恐らくそういうことであれば公正ではないだろうというのが中間取りまとめの指摘だったと思いますが、同時に、有期契約を切る前に会社全体でさまざまなコスト削減を行った上で、有期契約労働者の雇用問題を捉えているという企業も恐らくありましょうから、そういった会社全体でリスクを分配しつつ、やむを得ないときに有期契約の雇止めに至っているという実態も踏まえて議論してほしいという指摘であれば、それはそのとおりかなという気もいたします。
有期契約労働者の雇用保障と正規の雇用保障について、かつて日立メディコ事件では、正規労働者の希望退職の前に有期契約労働者を雇止めしても不当とは言えないという判断がなされましたが、裁判例の中にも、有期契約労働者の整理解雇的な雇止めについて、相当な配慮を要求するような裁判例も幾つか出てきております。そういうことで、有期契約労働者と正社員の雇用保障の比較にもいろいろなレベルがあるので、非正規だから、有期だからという議論については反省を求めるべきですが、どのくらい正社員との雇用保障の違いを認めるかということについては、慎重な議論をするべきだろうという御指摘だったかと思います。
それと関連しますけれども、法体系全体とのバランスの中で有期契約をどう捉えるべきかという議論がございました。以前の研究会で正社員の雇用をどうするかという問題を正面から扱うのは、この研究会のマンデートとして少し違うのではという議論をしたことがありますが、有期契約を規制した場合に、そのことが正規従業員、無期契約労働者の雇用保障にどう影響するかということは、座長がおっしゃったとおり、当然視野に入れて議論すべきということは、この研究会でも恐らくコンセンサスがあるだろうと思います。
とりあえず以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。
あと、ほかの先生はいかがですか。
○山川委員 それぞれ労使からも貴重な御意見をいただきました。私も、座長が整理されたようなところが重要なポイントかなと思っておりました。荒木先生の御感想とおおむね共通しているところが多かったので、多少追加的なことだけ申しますと、リスク負担をめぐる議論は先生方の御指摘のとおりという感じがいたします。この報告書の趣旨もそうですが、現実にあるいは一般的にといいますか、すべての場合において有期契約労働者に負担を負わせているという趣旨ではなかったと認識しております。
1点追加的に考える必要があったかなと思いますのは、需給変動の意味でして、そのときに質問もしましたけれども、本当に日々変わるような激しい需給変動という場合と、一応平常時は需要があるけれども、場合によってリーマンショックとか、そこまでいかないまでも変動が生じるようなリスクというのがあり得ると。そのリスクの質について、それぞれ念頭に置かれている事態に若干違いがあるのかなということも考えまして、その辺りも将来どういう方向を考えるかというときには、どういうリスクかを考えた方がいいのかなと思っております。
あと、諸外国の実態というのはおっしゃるとおり重要だと思いまして、例えば、フランスで入口・出口両方の規制があるけれども、比較的利用のパーセンテージは割と多いとか、その辺りは一体なぜかとか、どうなっているのかということは知りたいところで、これは外国の方に聞くのがある意味では一番いいので、何か有益な資料があればと思っております。
あと、特に定年後の高齢者について特色があるという御指摘も、ちょっと各論にかかわりますけれどもありましたので、この辺りももっともなことだと思って伺いました。
以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。
今、荒木先生と山川先生のコメントは私もそうだなと思って、私の問題提起についてもう少し突っ込んだことを言いますと、やはりリスクの性質が分配・配分の公正さということとかかわっている。まず、短期的なというのは、一番典型なのは一時的な労働需要や一時的な労働削減というような意味での、まさに臨時的・一時的なリスクをどうするか。それは、恐らくある程度は組合側の方たちもそういった調整は考えなければいけないと。ところが、もう一つ中長期的なといいましょうか、業務の性質といったようなことから臨時的・一時的というのではなくて、要するに、ある程度中長期にわたって労働組織の柔軟性を保つために、いわばできるだけ削減のリスクを負わないようにするという意味での考え方もあるんですね。これについて、どう公正に配分するのかということは実は大きな問題で、そもそもこれを否定してしまうという議論もあると思うんです。つまり、臨時的・一時的なものだけに限って、それ以外の需給調整のリスクはあったとしても、法的には使用者のリスクとして負うべきだという考え方もあるかと思うんですが、中間取りまとめは必ずしもそういったように割り切ってはいなかったと思います。そういう意味で、今おっしゃったように、リスクの性質や配分の仕方についての公正さをもう少し丁寧に御説明す
る必要があるのかなと思っています。
ほかにございますか。
○佐藤委員 今の座長のコメント及びお二方からの意見に大筋で違和感はないんですけれども、1点目のリスクの捉え方ですが、まさに業種・業界、企業によってリスクの性質が随分違うんじゃないかということが示唆されてきたのではないかという印象です。例えば、新設事業所や店舗みたいなものをつくって、それがそのまま永続的に事業が立ち上がってスタートしていけるのかどうかというところにリスクのあるような小売店のような御意見、事情があるんだろうと。また、今回のリーマンショックのようにグローバルな、いわば業務量自体の激変という、業務量自体が恐ろしく減ってしまうような要素もリスクと言えばリスクであると。また、日々発生する短期の一時的業務、オペレーショナルなところでも、いろいろな要素が入ってリスクということもあるだろうということで、まさに業種・業界によって、また企業によって違うということが示唆されてきたという点が一つで、しかし、そこをしっかり考えなければいけないだろうということについては、全く同じです。
それといわば同じようなことから出てくる問題として、使用者団体もあるいは労働者団体も労働者のニーズや現場同士の取り組みが多様であって、一律のルールによるのではなく、当事者の自主的な創意工夫によって、それぞれの業種に合った、あるいは企業の風土に合った活用の在り方も必要ではないかということで、私どもタイプに分けた議論ということでそこをやってきたかと思いますが、まさにそこが重要になってくるのかなということで、かなりトーンは違うとはいえ労使双方の接点としてある部分は、今言ったような事情が違うものに一律的なルールでやるというのは、やはり実態との乖離を招くのではないかと、その辺りの意見があったように思うんです。そこをどう考えていくか、その辺りが重要になってくるのかなという印象を持ちました。
○鎌田座長 ありがとうございます。
特に高齢者について、1つ新たな類型を加えるという問題提起ですが、それは確かにそうかなという感じで私も改めて感じたところです。
○佐藤委員 あと補足してよろしいですか。
特に使用者団体の方では、有期契約労働の在り方についての規制をもし強めたとすれば、雇用量あるいは正社員も含めて雇うということがネガティブなインパクトを与えるのではないかということで、今までそこがそんなにきつくなかったがゆえに有期でリスクを対応していた部分を強めることによって、今度はそこがもっと慎重になってしまうからということで、かなり懸念の部分が強かったように思うんですが、ここのところはまさに問題をどう扱うかのいわば出発点のような認識のようにも思うんです。ここも恐らく多分2つぐらいの考え方があって、1つは、例えば、派遣労働などは緩和してきましたけれども、2000年初頭からの一方での緩和と、雇用構造全体でトレンドを見たときに、勿論派遣は増えましたけれども正規は増えたのかというと正規は減っているわけですね。したがって、そこが緩むことが正規の拡大になったかというと、なってこなかったという経験があると。その辺りはどう考えたらいいのかというところで、まさに規制のインパクトのところは出発点であるがゆえに重要なので、要はその辺のデータも含めた精査というか、議論が必要になってくるような気がしました。
○鎌田座長 今、先生がおっしゃった、いわば規制の事実的効果というか社会的効果といったものをどう考えればいいのか、何か先生のお考えはありますか。法律などをやっている人間というのは、えてして規範だけで考える側面もあるので、その辺は非常に重要な指摘だと思うんですけれども。
○佐藤委員 難しいですね。つまり、そういう法規制の緩和かあるいは強化かということが要因となって、雇用の採用なりあるいは退職なりというところにどういう影響が及ぶかということを特定していくこと自体がかなり難しい面があって、やはり細かい雇用ルール以外の影響も非常に大きいので、全体的ないろいろなファクターを想定して、慎重に見ていくしかないということなんだと思うんです。ただ、そこのところは、きつくしたからすぐどうだとなるかどうかも、また慎重に考えなければならない面を持っているだろうということは言えると思うんです。
○荒木委員 今のお話に関連して、総論的な点で2点ほど。1つ、論点としてはまだ出てこなかったんですが、ヒアリングで言われたのは有期契約雇用の捉え方として、不安定雇用なのでなるべく制限すべきだという見方が一方であるのに対して、これは安定雇用へのステップとして、むしろ活用するという視点が必要ではないかという御指摘もあったように思います。有期契約を規制する場合に、規制すると無期契約、安定雇用に移るというのが理想的なのかもしれません。逆に、それだったらとても雇えないよというので失業が増えるという、その両方に作用するということを認識した上で、現状をよくするためにはどういう規制をすべきかを考えてほしいという御指摘だったと思いまして、総論的には非常に重要な点ではないかと思っています。
それから、佐藤先生のコメントの中にもありましたけれども、一律規制ではなくて現場の労使、当事者の自主的な創意工夫による規制に委ねるべきではないかという指摘がありました。これは法規制を考える場合に常に難しい問題なんですが、例えばドイツでは、有期契約を客観的な理由なく使っていいのは2年間で、その間、更新は3回までという法律上の規定がありますが、これは協約によってもっと回数を増やしたり、あるいは2年の上限をもっと長くしたりという緩和措置が認められております。これはイギリスもそうですし、オランダもそうです。EUの多くの国は一応法律で決めるけれども、それを当該業種あるいは産業にとってより適切なものに協約で変えることが認められております。その背景には、ヨーロッパの組合というのは産業別組合であって、当該企業の中で議論するのではなくて産業別で議論すると。法律に準ずるような公正な決定ができるという信頼があるんですけれども、そういう形で当該業界あるいは業態に応じた規制が採用できる、それを前提に法律は業界でそう決めなければこういうルールでやってくださいという規制の仕方をしているということです。
各論でも出てきますけれども、業界によって製造業の場合とサービス業の場合とでは有期契約についての、例えば更新回数についてもヒアリングでの回答は随分違ったところがあります。一律の規制をやった場合に、当事者がこれは自分たちにとっては必ずしも合理的ではないという場合に、どうやって現場に適応するルールに変えていくか、その方策があるのかどうかを考えなければいけないと思います。
この問題は現在、労基法の規制は労使協定で緩和するということを認めておりますが、労使協定の担い手をどうするのかという従業員代表制の問題にも関係する大変大きな議論をしなければいけない問題ですけれども、一律の規制と現場に適応した規制の組み合わせについては、その問題は念頭に置きながら考える必要があると思います。
○橋本委員 ヒアリングでその他の印象に残った御指摘としては、特に使用者側から有期契約で働くことを望む労働者も少なくないという認識が再三出されたかと思います。この点、法規制でどう対応するのかということは労働法は強行法規であるので、今のデロゲーションの論点に関連して個別の逸脱を認めるということはできないと思いますが、参考としてドイツなどでも有期契約を正当化する客観的事由の一つとして、労働者の個人的事情を認めていますので、極めて限定的ではありますが、そういう事由で対応する余地は、コンメンタールによればドイツでは学生アルバイトは「個人的事情による期間設定」に入るようですし、そういう余地はあり得るのではないかとちょっと考えました。
以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。
かなり大きな問題、特に規制との関係、それから、規制をどう柔軟に個々の労働者あるいは業種・業態に応じて生かしていくか、大きな問題だったと思います。労基法などは労使協定のようなもので少し緩和といいますか、実情に合わせたような対応を考えるという仕組みだと。今ちょっと思い出したのは派遣法なんですけれども、派遣法もそういう話がかつてありまして、御存じのように、専門的な派遣ではなくて、一般派遣を導入したときに原則1年だったんですが、それを延長してほしいという話があって、3年に延長するという議論があったときに、延長する仕掛けを受け入れ先の労使の合意といったもので、それは法律になっているわけでは全然なくて、そういう議論もちょっとあったなと。ところが、派遣の期間限定を含めて原則派遣というものを認めないという一方の考え方があって、その規制をどういうふうに緩めるかというところで大きな問題があったように私は記憶しています。結局、今のような派遣法の仕組みになっています。
派遣法は御存じのように複雑で、専門的な業務とそれ以外の業務という形で、業務で大きく規制の中身を変えるということをやっていまして、有期の場合も今申しましたように、どういうふうに実態との整合性をとるかというのが大きな一つのテーマではないかと思っています。
あと、総論のところで佐藤先生も、ほかの委員の先生も、有期をどう捉えるかというのはなかなか大きな出発点として難しい問題があって、荒木先生も有期を安定雇用にしていくというような視点も必要ではないかということで、捉え方はさまざまな立場で違ってくるわけです。ただ、議論していて、あるいは労使関係者の御意見を聞いていて感じたことは、有期そのものをできるだけなくすという考え方が一つ方向性としてある。もう一方では、対極にあるのは有期というものをさまざまなメリット、それは経営側のメリットとか労働側のニーズに合ったメリットもある。派遣のときの議論でいくと、もう一つ中間的な議論もあったんですね。認めるけれども、これ以上増やすのはいかがなものかという、常用代替防止という発想ですね。つまり、かつては2割とかその程度のものだったのが、3割、4割に近づこうというときに、それは勿論、実際のデータを見てみないとよくわかりませんが、いわゆる常用職場が非正規あるいは不安定な職場に移ったという意味で、そういう文脈の中でそれをどれだけ抑制していくかという発想ですかね。こういうものが派遣のときに特に議論になって、それは常用代替防止という観点から幾つかの仕組みを考えるということも議論されていたように思っています。
それでは、総論部分だけで余り時間をとるわけにもいきませんので、次に移っていきたいと思うんですが、ただ、類型の実態把握のところで年齢別などの実態については必ずしもこの研究会で十分に整理していなかったところもありますので、事務局にその辺で宿題と申しますか、何か整理したものをいただければと思います。
あと、難しいんですけれども、諸外国の事例、特に法制だけではなくて運用の実態についても御指摘がありまして、これについても最新の情報を含めて事務局で用意できるものであれば用意していただければと思います。よろしくお願いします。
それでは次に、資料3のヒアリングで出された意見の4ページの「第2 有期労働契約の範囲、勤続年数等の上限、契約の更新・雇止め」以降について、少し御議論いただければと思います。
幾つか印象深く残っている議論というのがありまして、まず第1に、締結事由の規制については、かなり労使で意見の対立があったように思っています。言うまでもありませんが、労働者側は締結事由、有期の期間を定める理由を厳格に制限すべきだという意見に対して、使用者団体、特に中小企業の団体などは人材確保の点から、非常に懸念を持っておられたのではないかと思います。
更に、これは日本経団連の御意見だったと思うんですが、無期労働契約の原則をどうするか、方向性を示してもらいたいというような御意見もありました。そういったことをどう考えるかということが一つ論点としてあるのではないかと。
それから、回数制限、利用可能期間の制限についても、いろいろな御意見があったんですが、とりわけ回数制限について一律というのは、なかなか難しいんじゃないかという御意見が出ておりました。こういったことについてどうお考えなのかということです。
それから、第2に関して言いますと、7ページの解雇権濫用法理の類推適用ですが、現在の判例法理を法律にすることについてどう思うかということですけれども、これについては予測可能性ということから、かなりハードルが高いのではないかというような御意見がありました。また、解雇権濫用法理の類推適用に当たって、正社員の解雇と有期の雇止めなどでも違いがあるといったようなことも指摘があったように思います。これについては先ほど少し御議論いただいたところでもありますが、こういう予測可能性という観点から、幾つかこの点については懸念といいますか、問題意識が提起されたように思っています。
第2については大体そのような印象があるんですけれども、いかがでしょうか。それ以外についてでも結構ですので、御意見をいただければと思います。
余り私がしゃべるのもどうかと思うんですけれども、御意見を伺いながら自分で論点を考えていくときに気付いた点というのは、先ほど法体系全体で考えることが必要だという御指摘もあって考えていたんですが、無期契約原則という立場をとった場合に、これは法律論になるかもしれませんが、他の法制度との整合性という点からいうと、例えば、解雇権の規制とはどういう影響があるんでしょうかということを考えたんです。この問題はこの問題なので、別にそこまで考える必要はないと言えばないんですが、いわゆる一般論としてこういう原則を立てた場合に、労働法の体系、とりわけ解雇権の問題にどういう影響があるのかなというのが、ちょっと私などはそういう問題があるのかなという気がしたんですけれども。派遣法の根幹にかかわっても多少影響があるのかなという感じがしますが、ただ、この研究会でその議論を突っ込んでやるということでもありませんので、あくまでも無期原則をとった場合に想定され得る波及的な効果、波及的影響力という意味でしかないんですけれども。
○山川委員 そもそも無期原則そのものを法律として定めるというよりも、多分外国では有期労働契約の締結に一定の事由を要するとか、そういった制約を課していることをまとめると無期原則になるということで、どれだけ厳密な法的効果があるかどうかは必ずしも明確ではないし、差もあるのではないかと思います。ですから、表現自体を使うのがどうかという問題もあるかと思います。ただ、そう言われているのは、やはり無期雇用を中心に考えるといいますか、そちらの法的な地位に引きつける方向で考えていくということで、多分、無期契約の取扱いをどう考えるかということ自体は、一般には余り議論の対象になっていないのではなかろうかと思います。ただ、波及効果として結果的に影響が出てくるということはあり得ると思いますので、視野に入れておくことは必要かと思います。
ただ、その場合、外国で言われていることと日本で言われていることに差があるかもしれませんのは、無期と言った場合に、日本の解雇権濫用法理が無期契約についてはあって、濫用に当たる解雇は無効になるというのが外国では少なくとも実態面ではそうではないということもありますので、それももし無期原則で議論するとしたら、そういうことまで考慮に入れないといけないかなという気はします。
一方で、波及効果を考える場合に、無効になるということは確立したことなんですが、解雇権濫用法理の中身自体が御承知のように、ああいう条文で一般化されていないものですから、ある意味では柔軟でして、特に、外資系企業の管理職で職種限定で高給を受け取っているような場合の解雇権濫用法理の在り方というのは、通常の場合とは相当違っているということもありますので、では、無期雇用をどういじるかということ自体が、少なくともある部分だけを取り出して変えるということは、逆に解雇法理自体からすればかなり特殊な取扱いだけを先行させるということになってしまって、そこは現行の解雇法理の柔軟性で、その中でもし何か波及効果があり得るとしたら、ある意味では解釈とか事案の実態に応じた適用によっても対処できるのかなという感じがあります。ただ、類推適用を明文化するという場合は無効になるということ自体まで、雇止めですからそもそも無効自体を議論しにくいわけで、その辺りは考慮する必要があろうかと思いますけれども、そもそも現行の労働契約法第16条がかなり柔軟な規定になっているものですから、それはちょっと念頭に置いておく必要があるのではないかと思います。
○鎌田座長 要するに、無期雇用原則という言葉を労働側もお使いになっているんですけれども、必ずしもそういうものを法律で定めて、何か整合性をとるというニュアンスではなくて、言わばさまざまな制度の背景の思想というような意味ですよね。
○荒木委員 同じことかもしれませんけれども、ヨーロッパで労働契約は無期であることを原則とするということを書いてあることもあるんですが、それによって要請されることとして、客観的な事由が必要だという法制をとっているときはそれで済んでいたんですが、ヨーロッパの多くの国では、労働市場が非常に硬直的になって失業問題が深刻になったと。それでむしろ有期契約をより広く認めることによって失業を減らそうという方向に移った国が多くあるんですね。その結果、ドイツもそうですし、スウェーデンもそうですが、例えば、2年間については客観的な理由なく有期契約を結んでよろしいと言っております。では、そういう客観的理由なく有期契約を使った場合は無期原則に反しているのかというと、反しているという議論は少ないわけですね。その場合には、出口規制のところで2年以上使った場合には無期契約に移行するという形で無期への移行を促進すると。その限りでは、無期契約が望ましい雇用形態だという認識は維持している。つまり無期原則といっても、いろいろなレベルがあるということだろうと思います。ですか
ら、無期原則をとること、すなわち入口規制をしなければいけないということではヨーロッパでもなくなっているということです。
それから、入口規制についてもう一つ言いますと、前回のヒアリングで臨時的な場合に限るんだという議論がありましたが、今回のまとめの中では、臨時的に加えて合理的というのがあります。フランスでも臨時的なものには限っておりませんで、まさに雇用対策的に福祉目的に有期契約を使うということを認めています。つまり、有期契約を使っていい事由が臨時的以外に合理的な理由のある場合にも認められ、有期を使ってもいいという事由が増えてきている。そういうことをしながらもなおフランスでは無期が原則であると言っています。無期原則は、そういう多様な対応を可能としつつ議論されているということではないかと思います。
○鎌田座長 ありがとうございます。
これは、私などはフランス型と思っていて、無期原則、そして利用事由限定とセットで考えているんですけれども、今の荒木先生の御発言を聞いていると、無期を原則とするということが必ずしも一つの法政策と対応するわけではないということですね。柔軟な工夫の中でヨーロッパでは考えているということですね。これは今までの議論、私などだと、もう少し日本の法を考える上で柔軟性を高める話だったのではないかと思います。
○佐藤委員 事由のところは、入口のところでとても大事だと思うんですね。連合、日本経団連、それぞれこれについての考え方を示されていますけれども、私はたまたま日本経団連の方は欠席させていただいたのであれなんですが、まず違うのか、そんなに違っていないのかなんですね。連合の方は有期は臨時的・合理的な理由がある場合に限定すべきであると。それから、サービス・流通も合理的な理由がない場合は有期では雇えないということで、有期という形態をとって雇う場合には合理的な理由が要るよとおっしゃっているわけですね。他方で、経団連とか商工会議所の方はそれぞれまた違うんですが、無期労働契約を原則として締結事由規制を設けると労働法全体に影響を及ぼすために反対であって、いろいろな雇用機会の創出を制約してしまうということで御回答になっているんですが、そもそも一定の理由がないと有期では雇えないよという考え方と、日本経団連の考え方との間に違いがあるのかどうかというのは私としてはよくわからないんですよ。すなわち、日本経団連の考え方で言うと、合理的な理由が必要であるということにしてしまうと、原則、無期原則になるのかと。無期原則にしてしまうのは反対だよというようにも聞こえるんですね。だけれども、今の荒木先生のヨーロッパの話で言うと、合理的な理由を必要と
するものについてイコール無期原則ではない、すなわち一定有期は認めているわけです。したがって、そうであるとすると、無期原則にいきなりいくわけではないです。そうなると、日本経団連の考え方としては、有期は合理性が有れば認めるということなのか、そもそもそういうことさえもやってほしくないということなのか、そこがよくわからないところなんです。だけれども、労使間の認識として確認しておく点としては重要だと思っているものですから、ちょっと確認させていただきたいということです。
○鎌田座長 これについては、前に事務局でおまとめいただいたのですが、何か御質問は。
○青山室長 今の話は、締結事由制限する場合にどういう理由で制限するかによるのだと思うんですけれども、労働者団体の方は一時的な業務や一時的な労働、あとは休業者の補充などの合理的な理由がある場合に限定すべきと。使用者団体の方は、確かにこういう事由であれば問題で、こういう事由ならいいという細かい御意見は特になかったのではないかと思います。
ただ、多様なニーズ、多様な事由で活用されている実態を締結事由制限によって阻害されることの懸念というのが強く示されたのかということで、細かいところはなかなか労使の意見ですり合わせというのが余り見られなかったのかなと感じております。
○荒木委員 私の印象ですけれども、有期契約をどう捉えるかという総論にも関係するんですが、有期契約を認めるべきではないということからすると、厳格にこれとこれとこれの時しか結んではいけませんよという議論になると思うんです。それに対して総論の方で使用者団体から御指摘があったように、これは安定雇用のステップだとすれば、入口でこれしかだめと制限するより、むしろまず、失業、仕事がない状況から、とにかく有期であっても雇用のある状態に入ってもらうと。そこはむしろ制限すべきではなくて、その後、安定雇用に移行する、そこをどうすべきかという、そちらの方が議論としてあるべき方向だ、という主張なのかなと私は受け止めました。
○山川委員 あと、出口規制も考えた上で私の印象を申しますと、入口規制に関してはかなり労使の御意見は対立しているという感じ、先ほど安定雇用についてとかいろいろな使い方があるという点はそうなんですけれども、締結事由の規制に関してはかなり御意見が明確に対立していたような感じはあるんですが、出口規制に関しては総体的にはそれほどでもないといいますか、ただ、前提が入口規制を置くかどうかというのと関連しているので独立しては議論されないんですけれども、むしろ出口規制、つまり上限規制に関しては、副作用に関する懸念が割と労使共通して出ていたということもあって、とすれば、現実に合わせたある程度長い方がいいのではないかという御議論はあったと記憶しています。
あとは若干のコメントになりますが、そうなると、雇止めに関する解雇権濫用法理の類推適用の位置付けが若干変わってきまして、出口規制までの利用可能期間がすごく短いとすれば、それでほぼ終わって解雇権濫用法理の類推適用の必要性は総体的にはそれほど大きくはないんですが、利用可能期間が長いとしますと、その間の雇止めをどうするかという問題がありますので、それとかかわって、やや3つの論点が総合関連してくるかなという印象を抱いたところです。
○荒木委員 関連してなんですが、前回の使用者団体のヒアリングで大変注目したところなんですが、7ページの一番最後のところ、解雇権濫用法理の類推適用、いわゆる雇止め法理について明確化を図るといっても限界があるのではないかと。
それと併せて読みますと6ページの下から3つ目の「・」ですけれども、雇止めが疑問の余地なく成立するルールを明確化することがかえって、雇用の安定につながり、企業内教育や教育訓練といったものも行われるというように、現在の雇止め法理の明確化とか精緻化といった方向とは違う、企業にとって行動指針になり得るような客観的ルールであれば、企業としても受入れ可能だということが示唆されていたかなと思われまして、そのことが恐らく関係するのではないかと思っていたところです。
○鎌田座長 後で戻っても結構ですので、一通り御意見に沿って御議論していただければと思います。
次に、8ページの「第3 労働条件明示等の契約締結時の課題」についてはいかがでしょうか。幾つか論点があったと思いますが、私としては重要ではないという意味ではないんですけれども、格別目新しいと言ったらちょっと語弊があるんですが、それぞれのお立場の議論をお聞きしたというような感じなんですけれども。何か先生方、ここで特に印象に残ったようなことはございますか。
これは書面明示の欠如によってみなしという議論は私どもも議論したところで、改めて日本経団連の方から反対という意見が出されていたと記憶しています。
特に御意見がなければ次に移りたいと思います。「第4 有期労働契約の終了に関する課題」ということで、これにつきましては雇止め手当といいますか、これはフランス法などを参考にしながら、手当の支払いについて考えてみたいというようなことを中間取りまとめでも書いておりますが、これについてはどういった性格のものなのかという質問が出ていたと思います。退職金や雇用保険などの施策との関係を含め、この手当についてどういう性格なんですかということなんですが、ここでの議論で言えば例えば、雇止めの手当に関しては、解雇予告の手当のようなものとの類似性あるいはこれはフランスですけれども、契約終了手当と言いましたか、そういったものとの関連性を議論したわけです。特に経営側の御意見では、ややネガティブな反応があったかなとは思いますけれども、いかがでしょうか。
解雇の予告手当とのパラレルで考えますと、雇止めの予告手当と言いますと、雇止め自体は契約締結時に期間を定めていますので、まさに両当事者が予定して結んでいるものなので、雇用期間の定めのない労働者に対する予告という意味とはちょっと違うんですけれども、反復更新しているという実態があった場合に、今回でもう終わりですよといった場合には、特に無期と同視できるような状態になっている場合には、やはり何らかの形での保障を考えるという理屈もあり得ると思います。
フランスの契約終了手当というのは、性格上まだ理解していないんですが、そういうものとはまたちょっと違うというようなことだった気がしますけれども、あれは要するに、不安定雇用というものに対する手当として支払うという性格のものでしたよね。予告とかそういうものではなくて。
○荒木委員 経済学者的に言うと、不安定雇用ですからその分本来賃金は高くないとバランスがとれないという議論があるんですが、それからまさにステップとして安定雇用に移行した場合には特に払わなくていいんですけれども、これ以上雇ったら無期に移行しなさいという前に雇止めするのであれば、安定雇用に移行できなかったことを補償する分の手当を払いなさいという発想です。
○鎌田座長 予告とフランスの場合の契約終了手当というのは性格は違うんですね。
あと、雇用保険との関連で言いますと、雇用保険というのは労使を含めて社会全体で保険でリスクを分散して、それぞれ広い範囲で負担するという考えなんですけれども、そういう意味では契約終了手当の方がいわば親和性があって、反復更新して長くやって、ある年限以上長く働いている人については、経営者としてもその人に対してはちゃんとした保障もしなさいというと、それはむしろ個々の使用者が負担すべきということになるんですかね、理屈から言うと。不安定雇用というと、もっと社会全体でということなので、保険的な対応ということが親和性を持つということになるのかなと思いますが。
あと、第4に関して、先生方からほかに追加的な議論はありませんか。
連合側から解雇の金銭解決につながるようなものについては反対であるという御意見があったんですが、今の手当とはちょっと違うという議論を既に研究会でやっておりまして、もう少ししっかりと説明した方がいいかもしれませんね。それは以前ここでも議論したように、雇止め無効というのはちょっと難しいんですけれども、仮に雇止め無効とした場合、その無効を金銭的に保障するという性格の話とここでの手当はまた違うと。恐らく解雇の金銭解決というのは、解雇無効を前提にした話なんですよね。だから、そこは私としては委員の皆さんのお話を聞いて、これは明確に違うものだと理解しているんですが、それはそれでよろしいですね。
それでは、戻っても結構ですので次々と先に進みたいと思います。次は「第5 均衡待遇、正社員への転換等」。最後の「第6 一回の契約期間の上限、その他」、暫定措置の話も併せて少し御議論いただければと思います。
ここで私が気付いた点は、均衡待遇については確かに議論もあったんですが、連合、経営者側ともにそれほど御意見はなかった。既に議論されている問題ということなんでしょうけれども、特に細かな議論が出されていたというわけではありません。やはり比較すべき労働者というのはどうするのかということが大きな問題となっているのかなという感じがいたしました。
それから、存外に御議論が結構あったのは正社員転換ですね。特に、使用者団体から勤務限定、職種等の限定社員について、労使が活用しやすい仕組みとすることのほか、解雇権濫用法理の扱いを含め議論を深めるべきだという御意見があって、要するに、正社員転換を図る上でさまざまなメニューを労使で検討してほしいといったことについて、どういうモデルを考えているのか。
正社員と言うけれども、正社員あるいは無期社員と言うのでしょうか、どういうイメージでこれを考えているのかという御意見があったと思います。
あと、正社員転換についての義務付け、インセンティブをどう捉えるかということだったわけですが、これについて先生方から何か御意見ありますか。
正社員転換につきましては、ここでも議論しましたけれども、理想は労使で就業規則なり協約なりで制度をつくって、個々の労働者、企業の実態を踏まえて転換していくということが理想として望ましいということなんですが、一方ではそれがなかなかうまく進んでいないということで、
仮にそういったものを法的に何か促す仕組みをつくった場合に、私の印象では、使用者団体ではいわゆる法律で何かをやるということについてはネガティブな印象を受けたんですけれども、正社員転換がうまくいっているのであれば、ネガティブでお任せしますということでもいいと思うんですが、問題はうまくいっていないとすればうまくいっていない理由はどの辺にあるのか、それが気になるところなんですが、佐藤先生、何かありますか。
○佐藤委員 均等問題と転換問題で言うと、転換問題の方がいろいろ意見があったなという印象がまず一つです。
転換に関して言えば、組合は当然そういうものを促すような措置をかなり強調されています。使用者の日本商工会議所と中央会では一律的な対応はまずいのかというようなことで、実情に応じてそれなりにニーズがあれば企業はそういうふうにしていくはずなのだから、それ以上のことをここで促すようなことはできればというようなニュアンスが強いんですが、日本経団連につきましては、もう少し検討してみたいというようなことで、報告書にもありました正社員の時間限定とか勤務地限定とか職種限定というようなモデルを用意した上で、どういうものが合っているのかという検討をしたいということで、もう少し踏み込んだというのは変ですが、捉え方をされているのかなとも思いました。
そういう意味で言うと、その下にもモデル様式といいますか、実際にどういう形で制度設計をすればよいのかということについての提案があったのかなという意味では、ヒアリング等を含めまして、そこのところをもう少し考えてみる必要があるのかなと、そういう印象を持ちました。
○鎌田座長 ありがとうございます。
○山川委員 私も同じような感想を抱きまして、正社員の転換という論点につきましては、比較的労使の御意見の対立度がそれほど強くはないといいますか、法的にどういう仕組みをつくるかというのはなお御議論がありましたけれども、労働側の御意見でもハードルの高さという点で残業が必要になったりするということでは困る人もいるという御意見がありましたので、必ずしも今で言う残業の義務付けがあったり、転勤の義務付けがあったりするというような意味での正社員転換に限らない道も考えるべきであるということでは、共通性がある程度あったのではないかと思っています。
均衡待遇の方は、労働側からも難しいという御意見がありまして、一体どういうものをイメージしているのかということもあるのかと。均衡待遇の目指すべきものは一体どういうものをイメージしているのかによっても変わるかと思います。この点、合理的な理由のない差別の禁止という方法とパート労働的な枠組みという、それぞれについての御議論もありまして、これは感想になるんですけれども、合理的な理由のない差別の禁止という規制方法と、同一であると見なされる場合に同一の取扱いをするというのは法規制の発想が違うところがあって、合理的な理由のない差別の禁止というのは、いわば差別意図に基づいて不利益な取扱いをするのを禁止すると。現在の労働基準法第4条と同じで、別に同一の人がいなくても、この人はこういう理由で低く賃金を決定すると決めれば、別に比較対象者はいなくても構わないんですね、現実的には。ところが、同一であるべき取扱いをする者が存在すると。それに合わせるべきであるとすると、比較対象者がいなければいけないという点で、もし具体的な制度設計をするとしたら、その辺りも考える必要があるかもしれません。もっとも両者そんなに現実的には違うわけではなくて、差別の意図を考える場合には同一の取扱いをすべき人といいますか、例えば、職務その他いろいろな面で同一状態の労働者がいるのに違う取扱いをしたとすれば、差別意図が推認されるというのが現在でも取扱いにはなっていると思います。基本的には、2つの仕組みはいわゆる違った性格を持っているということを、もし今後、具体的な法設計をするとしたら検討する必要があるのかなと思います。
ただ、いずれにしても両方の問題、先ほど座長も佐藤先生もおっしゃったことですが、基本的には労使の工夫を促進するといいますか、均衡に関しても労労問題になりかねないという御指摘もありましたけれども、だからこそ労使で業務や職場に応じて工夫するということが納得が得られるためには必要かなと思いました。でも、それをどういうふうに法制的に仕組んでいくかということは今はありませんので、今後の検討課題かなと思いました。
以上です。
○荒木委員 正社員転換の方は、有期契約利用期間の規制と連動するところがありまして、例えば、ドイツやスウェーデンのように2年間しか客観的な理由なく使ってはいけないとしますと、それ以上雇っていれば自動的に無期契約に転換しますから、あえて無期契約に転換ということについて議論するまでもなく対応できるということになろうかと思います。例えば、これをいろいろな業態があるんだから2年とか短期だと難しいということで長くとりますと、例えば、5年以上になったら自動的転換になるけれども、その前の時点で正社員転換促進措置をとることを努力義務なり、とれないのだったらなぜかという説明義務を課すなり、そういう二段階でやるといったときに、こういう転換問題が具体的に出てくるのかなという気がしました。つまり転換問題は、利用期間規制と連動して議論することかなという気がしています。
もう一点、日本経団連の方からいろいろな時間限定、勤務地限定、職種限定といった多様なモデルを検討してみたいということで、これは是非御検討いただきたいんですけれども、そういったモデルについて行政あるいは法律でどの程度関与できるのか、できないのか。基本的に私は労使がいろいろな雇用モデル、これはまさに労使が創意工夫を凝らして追求していただくべきで、これまで正社員という言葉を使うかどうかわからないですが、非常に雇用も守られて処遇もいいいわゆる正社員と、そうではない非正規従業員という両極にあるものを、もっとなだらかなグラデーションをつくっていくべきではないかということは盛んに言われております。そうなってくると、それぞれに応じた雇用保障、処遇の在り方というのが出てくるので、その実態を変更するというのが本来であって、実態がないところに法律がこれこれこういうモデルをつくりなさいと言うのは、なかなか難しいのかなという気もしますので、是非これは労使双方が議論して工夫していただくのがいいのではないかという感想を持ちました。
○鎌田座長 ありがとうございます。
一通り見て、法律論としていろいろな規制やインセンティブあるいはモデルを考える場合に、それぞれについて議論してきたんですが、ちょっとわかりづらいので、要するに、入口から出口まで導入するさまざまなパターンがありますよね。だから、どれがいいという議論をするときに、最初から正社員になるまでと言ってもいいんですけれども、こういう仕組みを入れた場合に、この間にはこういった問題が入ってきますよとか、あるいはこういう仕組みが出てくる可能性がありますよというパターンを幾つかつくっていくと、もう少しわかりやすくなるのかなという気がします。あるいは、今、荒木先生もおっしゃったけれども、こういう利用可能期間限定を入れると、もう一つの問題はトレードオフで余り必要ないとか、あるいは今日はちょっと議論しなかったですが、細切れ化の問題であれば、こういう仕組みを入れた場合には細切れ化はそれほど問題にならないのではないかと。
要するに、さまざまな施策との関連で考えなければいけないことというのは整理しておく必要があるんじゃないかと思うんです。どれがいいかというのはまた別の議論であるんですけれども、パターン化してチャートといいますか、一目でわかるような仕組みを幾つかモデルとしてつくっていくとわかりやすいと。私たちはずっとこの議論をしていますので、何となく頭の整理はできているんですよね。でも、一般の人が見たときに、総合的にそれで何かイメージをつくってもらうには難しいかなという感じもしますので、それは事務局の方で、今すぐにというわけでは勿論ないのですが、つまり、議論をする場合の一つの参考になるようなモデルというか、パターンを少し考えて工夫していただければと思います。
それから、いわゆる有期労働者を類型化するというところで年齢の問題も考慮すべきということでもございますので、そういったデータや諸外国の最新の情報、できれば運用の実態を含めて、そういったことも少し参考資料をいただければと思います。
あと、先生方からも幾つか今日の議論の中で注文があれば、事務局にお願いすることになると思いますが、今私が考えたところで、こういったところを今後工夫していただければと思っていますが、ほかにありますか。
○佐藤委員 今の点と全く同じで、たまたま日本経団連の方ではモデル様式の提示をという具体的な要望があるわけですので、そういうところを手かがりに、また、実態のないところに法律論の方からいろいろな議論をかぶせていっても、なかなかわかりづらいかなというところがあるように思うんですね。この報告書は、法律を専門としていない私をもってしても、なかなか難しいところがありまして、入口・真ん中・出口というものにそれぞれ分けて論点を議論していますけれども、やはり一気通貫で見たときにどうなのか。労使として見ると、どういうモデルの中に有期労働が位置付けられていると制度設計しやすいのかという辺りがもうちょっとあると、労使の意見もどこが共通点で、どこが違っているのかということがわかりやすくなってくるのかなという印象を持ちました。ですので、全く同じ意見です。
○鎌田座長 あと、何かありますか。よろしいですか。
それでは、ヒアリングで出された意見を基にいろいろと御議論いただきまして、私どもの更に深めなければいけない課題についても、幾つか問題あるいは事務局に対する要望も出たところです。こういったことも踏まえて今後また議論を進めていたきたいと思います。
それでは、次回の日程について事務局から説明をお願いします。
○青山室長 次回の研究会の日程については現在調整中ですので、委員の皆様には改めて御連絡させていただきます。
以上です。
○鎌田座長 今日は、藤村先生は何か御用事があったようですので、欠席ということで取扱いたいと思います。
それでは、以上をもちまして本日の研究会は終了させていただきます。ありがとうございました。
(照会先)労働基準局総務課労働契約企画室政策係(内線:5587)
委員の皆様方には、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございました。
本日は、阿部委員、奥田委員が御欠席と聞いております。
本日は、前回、前々回と行いました労使関係者ヒアリングにおいて出された御議論を踏まえ、意見交換をさせていただきたく存じます。
まず、労使関係者ヒアリングにおいて出された意見につきまして、事務局で資料を用意しておりますので、御説明をお願いします。
○青山室長 私の方から御説明します。
今日の資料を御紹介しますと、資料1と資料2は中間取りまとめの本文と概要でございます。これは既にまとまっているものでございまして、前々回と前回にお出ししておりますので、議論の御参考でございます。
今日御説明いたしますのが資料3でございまして、今、座長からも紹介がありましたとおり、第13回と第14回におきまして、日付的には3月25日と30日におきまして中間取りまとめを踏まえ、労使関係者からヒアリングをさせていただきました。そこで出された意見を項目ごとに整理したのが資料3でございます。
ヒアリングにおきましては、資料を出された対象者、出されない対象者がいらっしゃいましたけれども、資料についてはファイルにつづられておりますが、口頭でのやりとりも含めてまとめさせていただいております。ヒアリング時に御欠席の委員もいらっしゃいますので、全体的に御説明させていただきます。
まず、1ページでございます。中間取りまとめの項目でいうと「第1 総論的事項」の部分でございます。意見につきましては、連合については、連合が正式に機関決定している考え方は、2001年のパート有期労働契約法案要綱、労働契約法2006年版の骨子なので、この考え方に基づいてヒアリングでは意見をおっしゃったところでございます。具体的には、有期契約の区分別の更なる実態調査が必要で、60歳以上の再雇用者等々についても必要と。また、有期を景気変動の調整機能とするのであれば、有期労働者を上回るプレミアなどの義務付けが不可欠ではないか等々の意見がございました。
次に、連合の関係で来られましたUIゼンセン同盟の御意見ですが、UIゼンセン同盟の中でも短時間労働者の比率が高く、外食業種の比率が高いフードサービス部会からいらっしゃいましたけれども、そういうところで外食産業の組合を中心に行ったヒアリングも基にしながら発言なさいました。実態としては、外食産業は離職率が非常に高いため、結果として雇用調整は現実には行われていないということでございます。有期労働者は中間取りまとめや調査では4タイプに分類いたしましたが、もっと意識というところに着目して分類し、論議をする必要があるのではないかという御意見がございました。
次の団体、連合の関係で来られました日本サービス・流通連合でございますが、流通サービス業関係の組合ということで、特にパートタイムの組織化を進めているということで、比率が上がってきていると。実際、勤続年数は平均7年を超えているという状況で、決して臨時的ではない反復の契約をしているという実態があると。実際にアンケートなどをとると、愛社精神を含めて企業に対する思い入れもありながら働いているという有期の実態があるということでございました。考え方としては、無期が原則と考えるべきということでございます。契約更新している有期といった不安定な雇用については、見直す方向で考えてほしいということでございます。
以上が、労働者団体からでございます。
次が使用者団体ですが、日本経団連につきましては、有期労働契約というものはサービス産業化や労働者側の意識の変化等々に対応して、雇用形態の多様化という労使双方のニーズ、要請によって拡大したものと認識しているということで、社会保険、税制、正規労働者の処遇、解雇法制という問題も含めて、法体系全体でバランスをとっていくべきということや、全体を視野に入れた検討が必要という御意見でございました。規制の強化等をすれば、結果として雇用機会が減少するのではないかという懸念があるという御意見でございます。むしろ、セーフティネットを充実させて、訓練などの基盤整備を図ることが現実的ではないかということでございました。
諸外国の例についてですが、検討する場合には、諸外国での運用実態、社会・労働市場に与えた効果は十分に調査してほしいということでございます。リスク配分は中間取りまとめでも記述がありましたが、リスクを負っているのは企業のほか有期労働者、正社員、さまざまな関係者であると。政府も含まれるということで、あと、有期労働者の中でもさまざまにリスクの配分があるだろうということでございます。有期労働契約を強制的に縮小させるというのではなく、良好な雇用形態として多様な選択肢の一つとして活用されるという視点を残しておいていただきたいということでございました。次は、有期の区分の話で、主婦や学生、正社員になれない方など、有期労働者の背景もさまざまということで政策的に区別した議論が必要ということでございます。
日本商工会議所でございますが、有期労働契約は需要変動に応じた雇用調整を弾力的に行うために欠かせない。有期の雇用が規制されれば、正社員の残業で対応して長時間労働を誘発する。短期的・一時的な業務を中心とする労働力需給システムは必要不可欠と。特に、中小企業は業務の時期・内容・量などが取引先等の注文によって決まるケースが多いため、必要な人材をあらかじめ予測することが難しいという御意見でございます。もう一つ中小企業の実態としまして、正社員を採用したくても思うようにいかない。有期労働契約により必要な人材を確保している側面があるという実態を検討いただきたいということでございます。その関係で、有期労働契約が安定雇用へのステップという役割も果たしていることを評価すべきということでございます。次は諸外国ですが、日本経団連さんの意見にもありましたけれども、諸外国で導入されている制度の検討に当たっては、システムの全体像やその中での有期の位置付け等にも十分留意すべきという意見でございました。 次は、一律のルールによるのではなく、当事者の自主的な創意工夫による在り方といったものを検討すべきだ等々の意見でございました。
次が、全国中小企業団体中央会でございますが、この研究会で調査を踏まえて行いました4つの職務タイプ区分につきまして、これは切り口の一つであることを十分に踏まえてほしいということでございます。次が、リスク配分の点でございまして、専ら有期労働者の側に負わせているというのではなく、企業、正社員、有期労働者が相互にリスクを負っているのが現状であるという御意見でございました。また、過度な規制を設けることは有期労働契約の活用が阻害されると。企業にとっては雇用に手をつければ地域社会における評価に響き、採用に困難を来すので、有期であれ、正社員であれ、可能な限り雇用を維持しているという実態の御紹介がありました。
総論は以上でございます。
次が「第2 有期労働契約の範囲、勤続年数等の上限、契約の更新・雇止め」のルールについてでございます。
基本的考え方として、連合ですが、入口と出口はセットで議論することが必要。ただ、有期労働者を類型ごとに区分して対応を勘案するということでございます。
日本商工会議所は、雇用の機会を狭めるのことないよう注意すべきだという意見でございました。
第2の中の「2 締結事由の規制」の項目につきましては、連合は、有期労働は臨時的・合理的理由がある場合に限定すべきということで、具体的には、2001年の連合が出されました法案要綱骨子の内容を紹介されました。一定の事由とそれに対応させた法案要綱骨子の内容の御紹介でございます。詳細は省きます。基本的には、一時的・臨時的なものに限るという趣旨の限定でございます。
連合の関係で来られました日本サービス・流通連合におきましても、合理的な理由がない場合は、有期では雇えないとすべきということでございます。
一方、使用者団体ですが、日本経団連につきましては、無期労働契約を原則とした締結事由規制を設けると労働法全体の在り方に影響を及ぼすため明確に反対。雇用創出を制限し、過剰な規制となる。雇用の安定・維持という観点から、労働者にとってもマイナス。無期原則についてどうするか、研究会で方向性を示していただきたいという意見でございました。
日本商工会議所でございますが、多様なニーズに応えるためにも締結事由を制限すべきではない。新規の雇用抑制や企業の海外移転の加速などの影響を懸念するということでございます。
全国中小企業団体中央会につきましても、締結事由の制限につきましては、安定的な雇用への移行をもたらすとは考えにくいことから反対。こういう規制は正社員の採用ができず、有期の労働者に頼っている中小企業の労働力確保を困難にするという問題が提起されました。
第2の「3 更新回数・利用可能期間に係るルール」につきましては、労働者団体の連合が、一定の区切りを超えるに至った場合には無期とみなすべきということでございます。その関係で、2001年10月に出されました法案要綱骨子の内容を紹介されまして、例えば、更新や年数につきましては、1回に限り1年以下の期間を定めて更新ができるとすべきなどの提案を紹介されました。
次に、連合の関係で来られましたUIゼンセン同盟につきましては、実態として2か月の契約期間ということが多いが、それをやると1年で5回更新となるけれども、更新回数の上限を規制することが現実としてできるのかということでございます。ということで、勤続年数の上限とセットにしないと難しいという意見でございました。
連合の関係で来られた日本サービス・流通連合でございますが、10年以上も反復して契約を続ける人が有期であることはどうなのかについて検討すべきということでございます。入口をきちんと規制すれば出口規制については余り縛らなくてもいいのではないかという御意見も出されました。
次は使用者団体ですが、日本経団連からは7割の事業所は雇止めを行っていない、それなりに実際には雇用は安定しているという意見でございました。更新回数・利用可能期間に係る制限は、雇用機会を著しく狭めるおそれがあると。契約期間の長さが業種・業態によって異なっており、回数制限を一律にするのは現実としては難しい。制限を設けると、予測可能性は向上するが、雇用機会の確保、意欲の向上につながるかどうかは課題ではないかという意見でございます。予防的な雇止めがなくなるという観点から、雇止めが疑問の余地なく成立するというルールを明確にすることが、かえって雇用の安定等につながるという御意見も出てきました。利用可能期間についてルールを設ける場合には、例えば、8割くらいに収まるなどレンジを適切に設定してほしいということでございます。次が、このルールの区切りを超えた場合の法的効果として、無期雇用への転化というのは行き過ぎとございます。例えば、雇止めの予告義務というのが穏当ではないか等の御意見でございました。区切りの明確化の場合には、クーリング期間の設定が重要という御意見も出されました。
次は日本商工会議所ですが、雇止めについて規制を強化すると、雇用機会を狭めるおそれがあると。あと、業種・業態によって契約期間が異なっており、一律の制限は無理がある。あと、無期みなし、変更申込みみなしなどの規定は導入すべきではないという意見でございました。
全国中小企業団体中央会につきましても同様で、業種・業態等によって契約期間に差がある現状を見ると、一律の制限は難しい等々の意見がございました。
次が「4 解雇権濫用法理の類推適用」の項目でございますが、労働者団体の連合は、濫用法理の趣旨を法律に明文化する必要がある。
UIゼンセン同盟につきましても、法律で明文化すれば対応がきちんとできるという意見でございました。
使用者団体・日本経団連は、雇止め法理は、予測可能性という意味で課題があるものになっていると。法理は法理として入れるとしても、行政が文書で裏打ちすると中間取りまとめで読めるけれども、それはかなりハードルが高いのではないかという意見でございました。
日本商工会議所は、雇止め法理につきましては、判例において、正社員と有期の間でどのような違いがあるかも踏まえて検討していただきたいとのことでした。
全国中小企業団体中央会は、中小企業では雇止め法理についての知識を持っていないことも多いという実態が紹介されました。
次が「第3 労働条件明示等の契約締結時の課題」でございます。1つ目が「契約締結時の明示事項等」でございまして、労働者団体・連合は、契約期間と期間を定める理由を書面で明示すべきということでございます。
一方、使用者団体に共通しておりますけれども、現行制度でも問題ないのではないかということでございました。
次に「2 契約期間について書面明示がなされなかった場合の効果」でございますが、労働者団体・連合につきましては、書面明示がない場合には無期契約として取り扱うか、罰則規定を検討すべきという意見。
使用者団体・日本経団連は、書面明示の欠如によって期間の定めが無効ということは難しい、妥当性を欠くという意見。明示ルールを設けるのであれば、一定期間内に明示するという救済措置、期間の猶予を設けてほしいという意見でございました。
日本商工会議所などは、無期みなしは反対等の意見でございました。
次に「第4 有期労働契約の終了(雇止め等)に関する課題」でございます。1つ目が「契約期間の設定」で、いわゆる細切れの問題が中心ですが、連合-UIゼンセン同盟につきましては、短期契約がニーズによりなされている。一方、ほとんど毎日誰かの契約更新の場があるというデメリットがあるということでございました。
使用者団体・日本経団連につきましては、区切りの基準の明確化が図られれば、細切れの問題は落ち着いてくるのではないかという提起がございました。
「2 雇止めの予告等」でございます。連合におきましては、雇止めにまつわるトラブルが多いということにかんがみて慎重な議論が必要ということで、解雇の金銭解決につながらないようにすべきという意見でございました。
「3 雇止め後の生活安定等」につきましては、手当の支払いなどが課題になっておりますが、UIゼンセン同盟につきましては、一律に支払いを求めることについては慎重に議論すべき。退職金や雇用保険の充実が先ではないかということでございます。
使用者団体・日本経団連は、雇止め手当、雇止め保障というものは有期労働契約こそなじむものではないかという意見とともに、予告手当とフランスのような契約終了手当の違いがどうなのかという疑問が出されました。
日本商工会議所、全国中小企業団体中央会におきましては、企業に支払い義務を課すにことについては反対であるという意見でございました。
「第5 均衡待遇、正社員への転換等」でございます。「2 均衡待遇など公正な処遇」部分ですが、労働者団体・連合は、期間の定めを理由に、類似の通常の労働者と差別的取扱いをしてはならないとすべきという意見でございまして、2001年の法案要綱骨子を御紹介されました。
UIゼンセン同盟につきましては、賃金における格差につきましては、労労対決のような構図も出てくる可能性もあるという提起もありました。
日本サービス・流通連合におきましては、均等待遇につきましては今できる状況にあると考えており、同一価値労働同一賃金という観点から、新しい正社員制度をつくれば雇用も安定するのではないかという意見でございました。
一方、使用者団体・日本経団連におきましては、EU諸国のような有期であることを理由とした合理的理由のない差別禁止ということを我が国に即導入することは不可能ではないか。比較し得る正社員の在り方について検討がなければ難しいということでございました。
日本商工会議所におきましても、職務が同じというだけでは正社員との比較は困難であり、有期と正社員はそもそも責任・役割が異なっていると。均等・均衡待遇の一律な適用は無理があるということでございました。限られた原資の中で有期労働契約者の処遇を改善すれば、正社員の待遇を見直さざるを得ないという意見も出されました。
全国中小企業団体中央会も、一律の均等待遇の適用は困難であるという意見でございました。
次が「3 正社員への転換等」でございます。労働者団体・連合につきましては、常時ある業務を有期で契約することは問題で、無期への転換を図るべきとございます。
UIゼンセン同盟につきましても、基本的には正規労働者への転換を推進すべきということで、特に外食産業では、まず、短時間労働者を雇って、知識、経験を有する者を正社員にして即戦力とするとなっているので、非常に重要だという話がございました。
日本サービス・流通連合につきましては、二者択一ではなく多様な無期の労働者という働き方をつくっていくべきということで意見がありました。
一方、使用者団体につきましては、日本経団連から正社員転換の義務付け、インセンティブは助成金などをイメージするが、そのほかにどういうものがあるか議論を深めてほしいとの意見がございました。時間限定、勤務地限定、職種限定といったものにつきましては、多様なモデルを労使が選択し得るようにすることについて検討してみたい。ただ、解雇権濫用法理の扱いも含めて議論を深める必要があるという意見でございました。
日本商工会議所は、有期と無期は期待する成果に違いがあり、差を無視した一律な対応をとるべきではない。企業の実情に応じて対応すれば足り、実際、正社員転換を視野に入れているということで、そこをよく分析してほしいという意見でございました。
全国中小企業団体中央会におきましては、正社員転換の措置を義務付けることは反対。例えば、定年後5年間を最長に再雇用した者についても、正社員化の義務を課すのは無理ではないかということでございました。
次が「第6 一回の契約期間の上限、その他」でございます。「1 平成15年労働基準法改正の影響等」ということで、平成15年に原則1年から原則3年に引き上げた検証の項目でございました。労働者団体・連合は、原則3年という上限の引き上げは反対ということでございます。その引き上げの影響を検証しつつ、改正前に戻すべきかどうかを検討すべきということでございます。
UIゼンセン同盟も、3年という例は見かけないということで、延長するよりも最低の期間を規制する方向があるのではないかという意見でございます。
サービス・流通連合につきましても、3年を延ばす必要はない。一方、高度の専門知識の類型は延ばすことも検討してもいいという意見もありました。
一方、使用者団体の日本経団連は、選択の自由を広げる観点からは上限引き上げは望ましいが、1年より長い契約を結んでいる例が余り多くないので、総合的に検討するということではないかということでございます。
全国中小企業団体中央会は、原則3年を維持することが望ましいが、総合的に検討することが必要という意見でございました。
「2 暫定措置についての取扱い」ですが、暫定措置として定められた労働者は1年経過後いつでも退職できるという措置でございますが、この扱いにつきましては、労働者団体・連合は、有期の労働者も予告を経て退職できるものとすべきであり、そのリスクは使用者が負うべきという意見でございました。
一方、使用者団体の日本経団連におきましては、この暫定措置について片面性が解消されることが検討されるべきだと思うが、国会修正という経緯も踏まえた議論が必要という意見でございました。
全国中小企業団体中央会は、この暫定措置は役割を終えたものと認識しているので、廃止して構わないという意見でございました。
簡単ですが、以上でございます。
○鎌田座長 ありがとうございます。
それでは、今、御紹介いただいた労使関係者ヒアリングで出された意見を基にして、少し皆さんと自由に御議論していただきたいと思います。私としては、それぞれの御意見は御意見として伺って、なお今後、私どもが議論をすべき点を更に深く整理していくという観点から御意見をいただければと思います。
そこで、全般にわたって一括でお話ししていただくよりは、少し区切って御議論いただいた方がいいのかなと思いましたので、まずは「第1 総論的事項」につきまして、意見の4ページ目の上まで、基本的な考え方あるいは基本的な問題点、問題意識を出されておりますので、これについて御議論いただければと思います。
自由に御議論いただきたいわけですが、幾つか私の中で論点として印象に残ったものを御紹介して、これにとらわれる必要は全くありませんので、先生方で自由に御発言いただければと思うんですが、それを少し紹介して、更に御議論いただければと思います。
まず、総論部分についての御議論の中で1つ私が論点として考えたのは、需給変動に伴うリスクの問題は労働側も経営者側も触れておられました。ところが、どうもこれに関する理解あるいはそれに対する対応というところが、必ずしも一致していなかったと思っているわけです。例えば、需給変動等に伴うリスクについて使用者団体からは、私どもが中間取りまとめで述べたような、専ら有期契約労働者の側に負わせているということについては違和感が唱えられ、企業のほかにも有期契約労働者や正社員、政府もリスクを負うものだという御意見があって、この辺は現状をどう捉えるか。そして、需給変動のリスクをどのように公正に配分するかいうところで労働側と使用者側で意見も違うし、また、中間取りまとめの考え方が十分理解されているかどうかということが、私などは少し疑問に思ったわけです。
幾つか先にお話しして、それから皆さんに自由に御議論いただきたいと思いますが、総論部分について第2にいただいた御意見で私の意識に残っているものは、法体系全体のバランス、とりわけ正社員の在り方も含めて議論すべきであるという御意見でした。特に、これは使用者団体の方から有期の問題は非正規の施策全体、それから、正社員の在り方を含めた雇用システム全体から考えるべきであるという御意見でした。
その際に、私が少し確認しておきたかったことは、正社員にかかわる問題を除外して、この問題を解決していくのが困難だと考えるのか、そうではなくて、私はその場では過渡期の議論と言いましたけれども、法律・制度というのは真っ白なキャンバスに一からつくるということではなくて、必ずさまざまな諸制度の中で少しずつ改良・改革を加えていくということだと思いますので、そうしたことから考えれば、他の例えば正社員にかかわる問題を除外してこの問題は解決できないということでは必ずしもないのではないかと思っているわけですが、しかし、法体系全体のバランスや影響というものを視野に入れながら議論してほしいというのは、そうかなという感じがしております。
3番目ですが、類型の実態把握に伴って4つに区分したわけですが、これについて更に連合の方たちがおっしゃっていたのは、高齢者についての類型化も進めて考えるべきであるということでした。いわゆる年齢という切り口ですが、更に有期労働者の類型については深い議論をすべきであるといったことだったと思います。
総論として私が少し注意したい第4点は、諸外国の事例を検討するに当たって、運用の実態なども含めて考えてほしいという御意見がありました。これはなかなか難しい問題ですが、諸外国の事例について法制だけではなく、運用の実態や社会・労働市場に与える効果を含めて、できるだけ更に情報を集めてはどうかということでした。
それ以外にも総論部分で先生方がお気付きの点もあったかと思いますが、私の問題提起としてはそういったところが少し気付いたところです。あとは先生方に自由に御議論いただければと思います。それ以外の論点でも、総論部分であれば構いませんので。
○荒木委員 非常に重要な4つの論点をまとめていただいたと思います。最初の需給変動リスクを専ら有期契約労働者に負わせるのは公正ではないという中間取りまとめの議論について、いろいろとヒアリングでは御指摘があったところで、御指摘はもっともかなと思っております。といいますのは、いろいろな実態があって、まさに有期は非正規なんだから非正規から切って当たり前ではないかという対応をしている企業もある。恐らくそういうことであれば公正ではないだろうというのが中間取りまとめの指摘だったと思いますが、同時に、有期契約を切る前に会社全体でさまざまなコスト削減を行った上で、有期契約労働者の雇用問題を捉えているという企業も恐らくありましょうから、そういった会社全体でリスクを分配しつつ、やむを得ないときに有期契約の雇止めに至っているという実態も踏まえて議論してほしいという指摘であれば、それはそのとおりかなという気もいたします。
有期契約労働者の雇用保障と正規の雇用保障について、かつて日立メディコ事件では、正規労働者の希望退職の前に有期契約労働者を雇止めしても不当とは言えないという判断がなされましたが、裁判例の中にも、有期契約労働者の整理解雇的な雇止めについて、相当な配慮を要求するような裁判例も幾つか出てきております。そういうことで、有期契約労働者と正社員の雇用保障の比較にもいろいろなレベルがあるので、非正規だから、有期だからという議論については反省を求めるべきですが、どのくらい正社員との雇用保障の違いを認めるかということについては、慎重な議論をするべきだろうという御指摘だったかと思います。
それと関連しますけれども、法体系全体とのバランスの中で有期契約をどう捉えるべきかという議論がございました。以前の研究会で正社員の雇用をどうするかという問題を正面から扱うのは、この研究会のマンデートとして少し違うのではという議論をしたことがありますが、有期契約を規制した場合に、そのことが正規従業員、無期契約労働者の雇用保障にどう影響するかということは、座長がおっしゃったとおり、当然視野に入れて議論すべきということは、この研究会でも恐らくコンセンサスがあるだろうと思います。
とりあえず以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。
あと、ほかの先生はいかがですか。
○山川委員 それぞれ労使からも貴重な御意見をいただきました。私も、座長が整理されたようなところが重要なポイントかなと思っておりました。荒木先生の御感想とおおむね共通しているところが多かったので、多少追加的なことだけ申しますと、リスク負担をめぐる議論は先生方の御指摘のとおりという感じがいたします。この報告書の趣旨もそうですが、現実にあるいは一般的にといいますか、すべての場合において有期契約労働者に負担を負わせているという趣旨ではなかったと認識しております。
1点追加的に考える必要があったかなと思いますのは、需給変動の意味でして、そのときに質問もしましたけれども、本当に日々変わるような激しい需給変動という場合と、一応平常時は需要があるけれども、場合によってリーマンショックとか、そこまでいかないまでも変動が生じるようなリスクというのがあり得ると。そのリスクの質について、それぞれ念頭に置かれている事態に若干違いがあるのかなということも考えまして、その辺りも将来どういう方向を考えるかというときには、どういうリスクかを考えた方がいいのかなと思っております。
あと、諸外国の実態というのはおっしゃるとおり重要だと思いまして、例えば、フランスで入口・出口両方の規制があるけれども、比較的利用のパーセンテージは割と多いとか、その辺りは一体なぜかとか、どうなっているのかということは知りたいところで、これは外国の方に聞くのがある意味では一番いいので、何か有益な資料があればと思っております。
あと、特に定年後の高齢者について特色があるという御指摘も、ちょっと各論にかかわりますけれどもありましたので、この辺りももっともなことだと思って伺いました。
以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。
今、荒木先生と山川先生のコメントは私もそうだなと思って、私の問題提起についてもう少し突っ込んだことを言いますと、やはりリスクの性質が分配・配分の公正さということとかかわっている。まず、短期的なというのは、一番典型なのは一時的な労働需要や一時的な労働削減というような意味での、まさに臨時的・一時的なリスクをどうするか。それは、恐らくある程度は組合側の方たちもそういった調整は考えなければいけないと。ところが、もう一つ中長期的なといいましょうか、業務の性質といったようなことから臨時的・一時的というのではなくて、要するに、ある程度中長期にわたって労働組織の柔軟性を保つために、いわばできるだけ削減のリスクを負わないようにするという意味での考え方もあるんですね。これについて、どう公正に配分するのかということは実は大きな問題で、そもそもこれを否定してしまうという議論もあると思うんです。つまり、臨時的・一時的なものだけに限って、それ以外の需給調整のリスクはあったとしても、法的には使用者のリスクとして負うべきだという考え方もあるかと思うんですが、中間取りまとめは必ずしもそういったように割り切ってはいなかったと思います。そういう意味で、今おっしゃったように、リスクの性質や配分の仕方についての公正さをもう少し丁寧に御説明す
る必要があるのかなと思っています。
ほかにございますか。
○佐藤委員 今の座長のコメント及びお二方からの意見に大筋で違和感はないんですけれども、1点目のリスクの捉え方ですが、まさに業種・業界、企業によってリスクの性質が随分違うんじゃないかということが示唆されてきたのではないかという印象です。例えば、新設事業所や店舗みたいなものをつくって、それがそのまま永続的に事業が立ち上がってスタートしていけるのかどうかというところにリスクのあるような小売店のような御意見、事情があるんだろうと。また、今回のリーマンショックのようにグローバルな、いわば業務量自体の激変という、業務量自体が恐ろしく減ってしまうような要素もリスクと言えばリスクであると。また、日々発生する短期の一時的業務、オペレーショナルなところでも、いろいろな要素が入ってリスクということもあるだろうということで、まさに業種・業界によって、また企業によって違うということが示唆されてきたという点が一つで、しかし、そこをしっかり考えなければいけないだろうということについては、全く同じです。
それといわば同じようなことから出てくる問題として、使用者団体もあるいは労働者団体も労働者のニーズや現場同士の取り組みが多様であって、一律のルールによるのではなく、当事者の自主的な創意工夫によって、それぞれの業種に合った、あるいは企業の風土に合った活用の在り方も必要ではないかということで、私どもタイプに分けた議論ということでそこをやってきたかと思いますが、まさにそこが重要になってくるのかなということで、かなりトーンは違うとはいえ労使双方の接点としてある部分は、今言ったような事情が違うものに一律的なルールでやるというのは、やはり実態との乖離を招くのではないかと、その辺りの意見があったように思うんです。そこをどう考えていくか、その辺りが重要になってくるのかなという印象を持ちました。
○鎌田座長 ありがとうございます。
特に高齢者について、1つ新たな類型を加えるという問題提起ですが、それは確かにそうかなという感じで私も改めて感じたところです。
○佐藤委員 あと補足してよろしいですか。
特に使用者団体の方では、有期契約労働の在り方についての規制をもし強めたとすれば、雇用量あるいは正社員も含めて雇うということがネガティブなインパクトを与えるのではないかということで、今までそこがそんなにきつくなかったがゆえに有期でリスクを対応していた部分を強めることによって、今度はそこがもっと慎重になってしまうからということで、かなり懸念の部分が強かったように思うんですが、ここのところはまさに問題をどう扱うかのいわば出発点のような認識のようにも思うんです。ここも恐らく多分2つぐらいの考え方があって、1つは、例えば、派遣労働などは緩和してきましたけれども、2000年初頭からの一方での緩和と、雇用構造全体でトレンドを見たときに、勿論派遣は増えましたけれども正規は増えたのかというと正規は減っているわけですね。したがって、そこが緩むことが正規の拡大になったかというと、なってこなかったという経験があると。その辺りはどう考えたらいいのかというところで、まさに規制のインパクトのところは出発点であるがゆえに重要なので、要はその辺のデータも含めた精査というか、議論が必要になってくるような気がしました。
○鎌田座長 今、先生がおっしゃった、いわば規制の事実的効果というか社会的効果といったものをどう考えればいいのか、何か先生のお考えはありますか。法律などをやっている人間というのは、えてして規範だけで考える側面もあるので、その辺は非常に重要な指摘だと思うんですけれども。
○佐藤委員 難しいですね。つまり、そういう法規制の緩和かあるいは強化かということが要因となって、雇用の採用なりあるいは退職なりというところにどういう影響が及ぶかということを特定していくこと自体がかなり難しい面があって、やはり細かい雇用ルール以外の影響も非常に大きいので、全体的ないろいろなファクターを想定して、慎重に見ていくしかないということなんだと思うんです。ただ、そこのところは、きつくしたからすぐどうだとなるかどうかも、また慎重に考えなければならない面を持っているだろうということは言えると思うんです。
○荒木委員 今のお話に関連して、総論的な点で2点ほど。1つ、論点としてはまだ出てこなかったんですが、ヒアリングで言われたのは有期契約雇用の捉え方として、不安定雇用なのでなるべく制限すべきだという見方が一方であるのに対して、これは安定雇用へのステップとして、むしろ活用するという視点が必要ではないかという御指摘もあったように思います。有期契約を規制する場合に、規制すると無期契約、安定雇用に移るというのが理想的なのかもしれません。逆に、それだったらとても雇えないよというので失業が増えるという、その両方に作用するということを認識した上で、現状をよくするためにはどういう規制をすべきかを考えてほしいという御指摘だったと思いまして、総論的には非常に重要な点ではないかと思っています。
それから、佐藤先生のコメントの中にもありましたけれども、一律規制ではなくて現場の労使、当事者の自主的な創意工夫による規制に委ねるべきではないかという指摘がありました。これは法規制を考える場合に常に難しい問題なんですが、例えばドイツでは、有期契約を客観的な理由なく使っていいのは2年間で、その間、更新は3回までという法律上の規定がありますが、これは協約によってもっと回数を増やしたり、あるいは2年の上限をもっと長くしたりという緩和措置が認められております。これはイギリスもそうですし、オランダもそうです。EUの多くの国は一応法律で決めるけれども、それを当該業種あるいは産業にとってより適切なものに協約で変えることが認められております。その背景には、ヨーロッパの組合というのは産業別組合であって、当該企業の中で議論するのではなくて産業別で議論すると。法律に準ずるような公正な決定ができるという信頼があるんですけれども、そういう形で当該業界あるいは業態に応じた規制が採用できる、それを前提に法律は業界でそう決めなければこういうルールでやってくださいという規制の仕方をしているということです。
各論でも出てきますけれども、業界によって製造業の場合とサービス業の場合とでは有期契約についての、例えば更新回数についてもヒアリングでの回答は随分違ったところがあります。一律の規制をやった場合に、当事者がこれは自分たちにとっては必ずしも合理的ではないという場合に、どうやって現場に適応するルールに変えていくか、その方策があるのかどうかを考えなければいけないと思います。
この問題は現在、労基法の規制は労使協定で緩和するということを認めておりますが、労使協定の担い手をどうするのかという従業員代表制の問題にも関係する大変大きな議論をしなければいけない問題ですけれども、一律の規制と現場に適応した規制の組み合わせについては、その問題は念頭に置きながら考える必要があると思います。
○橋本委員 ヒアリングでその他の印象に残った御指摘としては、特に使用者側から有期契約で働くことを望む労働者も少なくないという認識が再三出されたかと思います。この点、法規制でどう対応するのかということは労働法は強行法規であるので、今のデロゲーションの論点に関連して個別の逸脱を認めるということはできないと思いますが、参考としてドイツなどでも有期契約を正当化する客観的事由の一つとして、労働者の個人的事情を認めていますので、極めて限定的ではありますが、そういう事由で対応する余地は、コンメンタールによればドイツでは学生アルバイトは「個人的事情による期間設定」に入るようですし、そういう余地はあり得るのではないかとちょっと考えました。
以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。
かなり大きな問題、特に規制との関係、それから、規制をどう柔軟に個々の労働者あるいは業種・業態に応じて生かしていくか、大きな問題だったと思います。労基法などは労使協定のようなもので少し緩和といいますか、実情に合わせたような対応を考えるという仕組みだと。今ちょっと思い出したのは派遣法なんですけれども、派遣法もそういう話がかつてありまして、御存じのように、専門的な派遣ではなくて、一般派遣を導入したときに原則1年だったんですが、それを延長してほしいという話があって、3年に延長するという議論があったときに、延長する仕掛けを受け入れ先の労使の合意といったもので、それは法律になっているわけでは全然なくて、そういう議論もちょっとあったなと。ところが、派遣の期間限定を含めて原則派遣というものを認めないという一方の考え方があって、その規制をどういうふうに緩めるかというところで大きな問題があったように私は記憶しています。結局、今のような派遣法の仕組みになっています。
派遣法は御存じのように複雑で、専門的な業務とそれ以外の業務という形で、業務で大きく規制の中身を変えるということをやっていまして、有期の場合も今申しましたように、どういうふうに実態との整合性をとるかというのが大きな一つのテーマではないかと思っています。
あと、総論のところで佐藤先生も、ほかの委員の先生も、有期をどう捉えるかというのはなかなか大きな出発点として難しい問題があって、荒木先生も有期を安定雇用にしていくというような視点も必要ではないかということで、捉え方はさまざまな立場で違ってくるわけです。ただ、議論していて、あるいは労使関係者の御意見を聞いていて感じたことは、有期そのものをできるだけなくすという考え方が一つ方向性としてある。もう一方では、対極にあるのは有期というものをさまざまなメリット、それは経営側のメリットとか労働側のニーズに合ったメリットもある。派遣のときの議論でいくと、もう一つ中間的な議論もあったんですね。認めるけれども、これ以上増やすのはいかがなものかという、常用代替防止という発想ですね。つまり、かつては2割とかその程度のものだったのが、3割、4割に近づこうというときに、それは勿論、実際のデータを見てみないとよくわかりませんが、いわゆる常用職場が非正規あるいは不安定な職場に移ったという意味で、そういう文脈の中でそれをどれだけ抑制していくかという発想ですかね。こういうものが派遣のときに特に議論になって、それは常用代替防止という観点から幾つかの仕組みを考えるということも議論されていたように思っています。
それでは、総論部分だけで余り時間をとるわけにもいきませんので、次に移っていきたいと思うんですが、ただ、類型の実態把握のところで年齢別などの実態については必ずしもこの研究会で十分に整理していなかったところもありますので、事務局にその辺で宿題と申しますか、何か整理したものをいただければと思います。
あと、難しいんですけれども、諸外国の事例、特に法制だけではなくて運用の実態についても御指摘がありまして、これについても最新の情報を含めて事務局で用意できるものであれば用意していただければと思います。よろしくお願いします。
それでは次に、資料3のヒアリングで出された意見の4ページの「第2 有期労働契約の範囲、勤続年数等の上限、契約の更新・雇止め」以降について、少し御議論いただければと思います。
幾つか印象深く残っている議論というのがありまして、まず第1に、締結事由の規制については、かなり労使で意見の対立があったように思っています。言うまでもありませんが、労働者側は締結事由、有期の期間を定める理由を厳格に制限すべきだという意見に対して、使用者団体、特に中小企業の団体などは人材確保の点から、非常に懸念を持っておられたのではないかと思います。
更に、これは日本経団連の御意見だったと思うんですが、無期労働契約の原則をどうするか、方向性を示してもらいたいというような御意見もありました。そういったことをどう考えるかということが一つ論点としてあるのではないかと。
それから、回数制限、利用可能期間の制限についても、いろいろな御意見があったんですが、とりわけ回数制限について一律というのは、なかなか難しいんじゃないかという御意見が出ておりました。こういったことについてどうお考えなのかということです。
それから、第2に関して言いますと、7ページの解雇権濫用法理の類推適用ですが、現在の判例法理を法律にすることについてどう思うかということですけれども、これについては予測可能性ということから、かなりハードルが高いのではないかというような御意見がありました。また、解雇権濫用法理の類推適用に当たって、正社員の解雇と有期の雇止めなどでも違いがあるといったようなことも指摘があったように思います。これについては先ほど少し御議論いただいたところでもありますが、こういう予測可能性という観点から、幾つかこの点については懸念といいますか、問題意識が提起されたように思っています。
第2については大体そのような印象があるんですけれども、いかがでしょうか。それ以外についてでも結構ですので、御意見をいただければと思います。
余り私がしゃべるのもどうかと思うんですけれども、御意見を伺いながら自分で論点を考えていくときに気付いた点というのは、先ほど法体系全体で考えることが必要だという御指摘もあって考えていたんですが、無期契約原則という立場をとった場合に、これは法律論になるかもしれませんが、他の法制度との整合性という点からいうと、例えば、解雇権の規制とはどういう影響があるんでしょうかということを考えたんです。この問題はこの問題なので、別にそこまで考える必要はないと言えばないんですが、いわゆる一般論としてこういう原則を立てた場合に、労働法の体系、とりわけ解雇権の問題にどういう影響があるのかなというのが、ちょっと私などはそういう問題があるのかなという気がしたんですけれども。派遣法の根幹にかかわっても多少影響があるのかなという感じがしますが、ただ、この研究会でその議論を突っ込んでやるということでもありませんので、あくまでも無期原則をとった場合に想定され得る波及的な効果、波及的影響力という意味でしかないんですけれども。
○山川委員 そもそも無期原則そのものを法律として定めるというよりも、多分外国では有期労働契約の締結に一定の事由を要するとか、そういった制約を課していることをまとめると無期原則になるということで、どれだけ厳密な法的効果があるかどうかは必ずしも明確ではないし、差もあるのではないかと思います。ですから、表現自体を使うのがどうかという問題もあるかと思います。ただ、そう言われているのは、やはり無期雇用を中心に考えるといいますか、そちらの法的な地位に引きつける方向で考えていくということで、多分、無期契約の取扱いをどう考えるかということ自体は、一般には余り議論の対象になっていないのではなかろうかと思います。ただ、波及効果として結果的に影響が出てくるということはあり得ると思いますので、視野に入れておくことは必要かと思います。
ただ、その場合、外国で言われていることと日本で言われていることに差があるかもしれませんのは、無期と言った場合に、日本の解雇権濫用法理が無期契約についてはあって、濫用に当たる解雇は無効になるというのが外国では少なくとも実態面ではそうではないということもありますので、それももし無期原則で議論するとしたら、そういうことまで考慮に入れないといけないかなという気はします。
一方で、波及効果を考える場合に、無効になるということは確立したことなんですが、解雇権濫用法理の中身自体が御承知のように、ああいう条文で一般化されていないものですから、ある意味では柔軟でして、特に、外資系企業の管理職で職種限定で高給を受け取っているような場合の解雇権濫用法理の在り方というのは、通常の場合とは相当違っているということもありますので、では、無期雇用をどういじるかということ自体が、少なくともある部分だけを取り出して変えるということは、逆に解雇法理自体からすればかなり特殊な取扱いだけを先行させるということになってしまって、そこは現行の解雇法理の柔軟性で、その中でもし何か波及効果があり得るとしたら、ある意味では解釈とか事案の実態に応じた適用によっても対処できるのかなという感じがあります。ただ、類推適用を明文化するという場合は無効になるということ自体まで、雇止めですからそもそも無効自体を議論しにくいわけで、その辺りは考慮する必要があろうかと思いますけれども、そもそも現行の労働契約法第16条がかなり柔軟な規定になっているものですから、それはちょっと念頭に置いておく必要があるのではないかと思います。
○鎌田座長 要するに、無期雇用原則という言葉を労働側もお使いになっているんですけれども、必ずしもそういうものを法律で定めて、何か整合性をとるというニュアンスではなくて、言わばさまざまな制度の背景の思想というような意味ですよね。
○荒木委員 同じことかもしれませんけれども、ヨーロッパで労働契約は無期であることを原則とするということを書いてあることもあるんですが、それによって要請されることとして、客観的な事由が必要だという法制をとっているときはそれで済んでいたんですが、ヨーロッパの多くの国では、労働市場が非常に硬直的になって失業問題が深刻になったと。それでむしろ有期契約をより広く認めることによって失業を減らそうという方向に移った国が多くあるんですね。その結果、ドイツもそうですし、スウェーデンもそうですが、例えば、2年間については客観的な理由なく有期契約を結んでよろしいと言っております。では、そういう客観的理由なく有期契約を使った場合は無期原則に反しているのかというと、反しているという議論は少ないわけですね。その場合には、出口規制のところで2年以上使った場合には無期契約に移行するという形で無期への移行を促進すると。その限りでは、無期契約が望ましい雇用形態だという認識は維持している。つまり無期原則といっても、いろいろなレベルがあるということだろうと思います。ですか
ら、無期原則をとること、すなわち入口規制をしなければいけないということではヨーロッパでもなくなっているということです。
それから、入口規制についてもう一つ言いますと、前回のヒアリングで臨時的な場合に限るんだという議論がありましたが、今回のまとめの中では、臨時的に加えて合理的というのがあります。フランスでも臨時的なものには限っておりませんで、まさに雇用対策的に福祉目的に有期契約を使うということを認めています。つまり、有期契約を使っていい事由が臨時的以外に合理的な理由のある場合にも認められ、有期を使ってもいいという事由が増えてきている。そういうことをしながらもなおフランスでは無期が原則であると言っています。無期原則は、そういう多様な対応を可能としつつ議論されているということではないかと思います。
○鎌田座長 ありがとうございます。
これは、私などはフランス型と思っていて、無期原則、そして利用事由限定とセットで考えているんですけれども、今の荒木先生の御発言を聞いていると、無期を原則とするということが必ずしも一つの法政策と対応するわけではないということですね。柔軟な工夫の中でヨーロッパでは考えているということですね。これは今までの議論、私などだと、もう少し日本の法を考える上で柔軟性を高める話だったのではないかと思います。
○佐藤委員 事由のところは、入口のところでとても大事だと思うんですね。連合、日本経団連、それぞれこれについての考え方を示されていますけれども、私はたまたま日本経団連の方は欠席させていただいたのであれなんですが、まず違うのか、そんなに違っていないのかなんですね。連合の方は有期は臨時的・合理的な理由がある場合に限定すべきであると。それから、サービス・流通も合理的な理由がない場合は有期では雇えないということで、有期という形態をとって雇う場合には合理的な理由が要るよとおっしゃっているわけですね。他方で、経団連とか商工会議所の方はそれぞれまた違うんですが、無期労働契約を原則として締結事由規制を設けると労働法全体に影響を及ぼすために反対であって、いろいろな雇用機会の創出を制約してしまうということで御回答になっているんですが、そもそも一定の理由がないと有期では雇えないよという考え方と、日本経団連の考え方との間に違いがあるのかどうかというのは私としてはよくわからないんですよ。すなわち、日本経団連の考え方で言うと、合理的な理由が必要であるということにしてしまうと、原則、無期原則になるのかと。無期原則にしてしまうのは反対だよというようにも聞こえるんですね。だけれども、今の荒木先生のヨーロッパの話で言うと、合理的な理由を必要と
するものについてイコール無期原則ではない、すなわち一定有期は認めているわけです。したがって、そうであるとすると、無期原則にいきなりいくわけではないです。そうなると、日本経団連の考え方としては、有期は合理性が有れば認めるということなのか、そもそもそういうことさえもやってほしくないということなのか、そこがよくわからないところなんです。だけれども、労使間の認識として確認しておく点としては重要だと思っているものですから、ちょっと確認させていただきたいということです。
○鎌田座長 これについては、前に事務局でおまとめいただいたのですが、何か御質問は。
○青山室長 今の話は、締結事由制限する場合にどういう理由で制限するかによるのだと思うんですけれども、労働者団体の方は一時的な業務や一時的な労働、あとは休業者の補充などの合理的な理由がある場合に限定すべきと。使用者団体の方は、確かにこういう事由であれば問題で、こういう事由ならいいという細かい御意見は特になかったのではないかと思います。
ただ、多様なニーズ、多様な事由で活用されている実態を締結事由制限によって阻害されることの懸念というのが強く示されたのかということで、細かいところはなかなか労使の意見ですり合わせというのが余り見られなかったのかなと感じております。
○荒木委員 私の印象ですけれども、有期契約をどう捉えるかという総論にも関係するんですが、有期契約を認めるべきではないということからすると、厳格にこれとこれとこれの時しか結んではいけませんよという議論になると思うんです。それに対して総論の方で使用者団体から御指摘があったように、これは安定雇用のステップだとすれば、入口でこれしかだめと制限するより、むしろまず、失業、仕事がない状況から、とにかく有期であっても雇用のある状態に入ってもらうと。そこはむしろ制限すべきではなくて、その後、安定雇用に移行する、そこをどうすべきかという、そちらの方が議論としてあるべき方向だ、という主張なのかなと私は受け止めました。
○山川委員 あと、出口規制も考えた上で私の印象を申しますと、入口規制に関してはかなり労使の御意見は対立しているという感じ、先ほど安定雇用についてとかいろいろな使い方があるという点はそうなんですけれども、締結事由の規制に関してはかなり御意見が明確に対立していたような感じはあるんですが、出口規制に関しては総体的にはそれほどでもないといいますか、ただ、前提が入口規制を置くかどうかというのと関連しているので独立しては議論されないんですけれども、むしろ出口規制、つまり上限規制に関しては、副作用に関する懸念が割と労使共通して出ていたということもあって、とすれば、現実に合わせたある程度長い方がいいのではないかという御議論はあったと記憶しています。
あとは若干のコメントになりますが、そうなると、雇止めに関する解雇権濫用法理の類推適用の位置付けが若干変わってきまして、出口規制までの利用可能期間がすごく短いとすれば、それでほぼ終わって解雇権濫用法理の類推適用の必要性は総体的にはそれほど大きくはないんですが、利用可能期間が長いとしますと、その間の雇止めをどうするかという問題がありますので、それとかかわって、やや3つの論点が総合関連してくるかなという印象を抱いたところです。
○荒木委員 関連してなんですが、前回の使用者団体のヒアリングで大変注目したところなんですが、7ページの一番最後のところ、解雇権濫用法理の類推適用、いわゆる雇止め法理について明確化を図るといっても限界があるのではないかと。
それと併せて読みますと6ページの下から3つ目の「・」ですけれども、雇止めが疑問の余地なく成立するルールを明確化することがかえって、雇用の安定につながり、企業内教育や教育訓練といったものも行われるというように、現在の雇止め法理の明確化とか精緻化といった方向とは違う、企業にとって行動指針になり得るような客観的ルールであれば、企業としても受入れ可能だということが示唆されていたかなと思われまして、そのことが恐らく関係するのではないかと思っていたところです。
○鎌田座長 後で戻っても結構ですので、一通り御意見に沿って御議論していただければと思います。
次に、8ページの「第3 労働条件明示等の契約締結時の課題」についてはいかがでしょうか。幾つか論点があったと思いますが、私としては重要ではないという意味ではないんですけれども、格別目新しいと言ったらちょっと語弊があるんですが、それぞれのお立場の議論をお聞きしたというような感じなんですけれども。何か先生方、ここで特に印象に残ったようなことはございますか。
これは書面明示の欠如によってみなしという議論は私どもも議論したところで、改めて日本経団連の方から反対という意見が出されていたと記憶しています。
特に御意見がなければ次に移りたいと思います。「第4 有期労働契約の終了に関する課題」ということで、これにつきましては雇止め手当といいますか、これはフランス法などを参考にしながら、手当の支払いについて考えてみたいというようなことを中間取りまとめでも書いておりますが、これについてはどういった性格のものなのかという質問が出ていたと思います。退職金や雇用保険などの施策との関係を含め、この手当についてどういう性格なんですかということなんですが、ここでの議論で言えば例えば、雇止めの手当に関しては、解雇予告の手当のようなものとの類似性あるいはこれはフランスですけれども、契約終了手当と言いましたか、そういったものとの関連性を議論したわけです。特に経営側の御意見では、ややネガティブな反応があったかなとは思いますけれども、いかがでしょうか。
解雇の予告手当とのパラレルで考えますと、雇止めの予告手当と言いますと、雇止め自体は契約締結時に期間を定めていますので、まさに両当事者が予定して結んでいるものなので、雇用期間の定めのない労働者に対する予告という意味とはちょっと違うんですけれども、反復更新しているという実態があった場合に、今回でもう終わりですよといった場合には、特に無期と同視できるような状態になっている場合には、やはり何らかの形での保障を考えるという理屈もあり得ると思います。
フランスの契約終了手当というのは、性格上まだ理解していないんですが、そういうものとはまたちょっと違うというようなことだった気がしますけれども、あれは要するに、不安定雇用というものに対する手当として支払うという性格のものでしたよね。予告とかそういうものではなくて。
○荒木委員 経済学者的に言うと、不安定雇用ですからその分本来賃金は高くないとバランスがとれないという議論があるんですが、それからまさにステップとして安定雇用に移行した場合には特に払わなくていいんですけれども、これ以上雇ったら無期に移行しなさいという前に雇止めするのであれば、安定雇用に移行できなかったことを補償する分の手当を払いなさいという発想です。
○鎌田座長 予告とフランスの場合の契約終了手当というのは性格は違うんですね。
あと、雇用保険との関連で言いますと、雇用保険というのは労使を含めて社会全体で保険でリスクを分散して、それぞれ広い範囲で負担するという考えなんですけれども、そういう意味では契約終了手当の方がいわば親和性があって、反復更新して長くやって、ある年限以上長く働いている人については、経営者としてもその人に対してはちゃんとした保障もしなさいというと、それはむしろ個々の使用者が負担すべきということになるんですかね、理屈から言うと。不安定雇用というと、もっと社会全体でということなので、保険的な対応ということが親和性を持つということになるのかなと思いますが。
あと、第4に関して、先生方からほかに追加的な議論はありませんか。
連合側から解雇の金銭解決につながるようなものについては反対であるという御意見があったんですが、今の手当とはちょっと違うという議論を既に研究会でやっておりまして、もう少ししっかりと説明した方がいいかもしれませんね。それは以前ここでも議論したように、雇止め無効というのはちょっと難しいんですけれども、仮に雇止め無効とした場合、その無効を金銭的に保障するという性格の話とここでの手当はまた違うと。恐らく解雇の金銭解決というのは、解雇無効を前提にした話なんですよね。だから、そこは私としては委員の皆さんのお話を聞いて、これは明確に違うものだと理解しているんですが、それはそれでよろしいですね。
それでは、戻っても結構ですので次々と先に進みたいと思います。次は「第5 均衡待遇、正社員への転換等」。最後の「第6 一回の契約期間の上限、その他」、暫定措置の話も併せて少し御議論いただければと思います。
ここで私が気付いた点は、均衡待遇については確かに議論もあったんですが、連合、経営者側ともにそれほど御意見はなかった。既に議論されている問題ということなんでしょうけれども、特に細かな議論が出されていたというわけではありません。やはり比較すべき労働者というのはどうするのかということが大きな問題となっているのかなという感じがいたしました。
それから、存外に御議論が結構あったのは正社員転換ですね。特に、使用者団体から勤務限定、職種等の限定社員について、労使が活用しやすい仕組みとすることのほか、解雇権濫用法理の扱いを含め議論を深めるべきだという御意見があって、要するに、正社員転換を図る上でさまざまなメニューを労使で検討してほしいといったことについて、どういうモデルを考えているのか。
正社員と言うけれども、正社員あるいは無期社員と言うのでしょうか、どういうイメージでこれを考えているのかという御意見があったと思います。
あと、正社員転換についての義務付け、インセンティブをどう捉えるかということだったわけですが、これについて先生方から何か御意見ありますか。
正社員転換につきましては、ここでも議論しましたけれども、理想は労使で就業規則なり協約なりで制度をつくって、個々の労働者、企業の実態を踏まえて転換していくということが理想として望ましいということなんですが、一方ではそれがなかなかうまく進んでいないということで、
仮にそういったものを法的に何か促す仕組みをつくった場合に、私の印象では、使用者団体ではいわゆる法律で何かをやるということについてはネガティブな印象を受けたんですけれども、正社員転換がうまくいっているのであれば、ネガティブでお任せしますということでもいいと思うんですが、問題はうまくいっていないとすればうまくいっていない理由はどの辺にあるのか、それが気になるところなんですが、佐藤先生、何かありますか。
○佐藤委員 均等問題と転換問題で言うと、転換問題の方がいろいろ意見があったなという印象がまず一つです。
転換に関して言えば、組合は当然そういうものを促すような措置をかなり強調されています。使用者の日本商工会議所と中央会では一律的な対応はまずいのかというようなことで、実情に応じてそれなりにニーズがあれば企業はそういうふうにしていくはずなのだから、それ以上のことをここで促すようなことはできればというようなニュアンスが強いんですが、日本経団連につきましては、もう少し検討してみたいというようなことで、報告書にもありました正社員の時間限定とか勤務地限定とか職種限定というようなモデルを用意した上で、どういうものが合っているのかという検討をしたいということで、もう少し踏み込んだというのは変ですが、捉え方をされているのかなとも思いました。
そういう意味で言うと、その下にもモデル様式といいますか、実際にどういう形で制度設計をすればよいのかということについての提案があったのかなという意味では、ヒアリング等を含めまして、そこのところをもう少し考えてみる必要があるのかなと、そういう印象を持ちました。
○鎌田座長 ありがとうございます。
○山川委員 私も同じような感想を抱きまして、正社員の転換という論点につきましては、比較的労使の御意見の対立度がそれほど強くはないといいますか、法的にどういう仕組みをつくるかというのはなお御議論がありましたけれども、労働側の御意見でもハードルの高さという点で残業が必要になったりするということでは困る人もいるという御意見がありましたので、必ずしも今で言う残業の義務付けがあったり、転勤の義務付けがあったりするというような意味での正社員転換に限らない道も考えるべきであるということでは、共通性がある程度あったのではないかと思っています。
均衡待遇の方は、労働側からも難しいという御意見がありまして、一体どういうものをイメージしているのかということもあるのかと。均衡待遇の目指すべきものは一体どういうものをイメージしているのかによっても変わるかと思います。この点、合理的な理由のない差別の禁止という方法とパート労働的な枠組みという、それぞれについての御議論もありまして、これは感想になるんですけれども、合理的な理由のない差別の禁止という規制方法と、同一であると見なされる場合に同一の取扱いをするというのは法規制の発想が違うところがあって、合理的な理由のない差別の禁止というのは、いわば差別意図に基づいて不利益な取扱いをするのを禁止すると。現在の労働基準法第4条と同じで、別に同一の人がいなくても、この人はこういう理由で低く賃金を決定すると決めれば、別に比較対象者はいなくても構わないんですね、現実的には。ところが、同一であるべき取扱いをする者が存在すると。それに合わせるべきであるとすると、比較対象者がいなければいけないという点で、もし具体的な制度設計をするとしたら、その辺りも考える必要があるかもしれません。もっとも両者そんなに現実的には違うわけではなくて、差別の意図を考える場合には同一の取扱いをすべき人といいますか、例えば、職務その他いろいろな面で同一状態の労働者がいるのに違う取扱いをしたとすれば、差別意図が推認されるというのが現在でも取扱いにはなっていると思います。基本的には、2つの仕組みはいわゆる違った性格を持っているということを、もし今後、具体的な法設計をするとしたら検討する必要があるのかなと思います。
ただ、いずれにしても両方の問題、先ほど座長も佐藤先生もおっしゃったことですが、基本的には労使の工夫を促進するといいますか、均衡に関しても労労問題になりかねないという御指摘もありましたけれども、だからこそ労使で業務や職場に応じて工夫するということが納得が得られるためには必要かなと思いました。でも、それをどういうふうに法制的に仕組んでいくかということは今はありませんので、今後の検討課題かなと思いました。
以上です。
○荒木委員 正社員転換の方は、有期契約利用期間の規制と連動するところがありまして、例えば、ドイツやスウェーデンのように2年間しか客観的な理由なく使ってはいけないとしますと、それ以上雇っていれば自動的に無期契約に転換しますから、あえて無期契約に転換ということについて議論するまでもなく対応できるということになろうかと思います。例えば、これをいろいろな業態があるんだから2年とか短期だと難しいということで長くとりますと、例えば、5年以上になったら自動的転換になるけれども、その前の時点で正社員転換促進措置をとることを努力義務なり、とれないのだったらなぜかという説明義務を課すなり、そういう二段階でやるといったときに、こういう転換問題が具体的に出てくるのかなという気がしました。つまり転換問題は、利用期間規制と連動して議論することかなという気がしています。
もう一点、日本経団連の方からいろいろな時間限定、勤務地限定、職種限定といった多様なモデルを検討してみたいということで、これは是非御検討いただきたいんですけれども、そういったモデルについて行政あるいは法律でどの程度関与できるのか、できないのか。基本的に私は労使がいろいろな雇用モデル、これはまさに労使が創意工夫を凝らして追求していただくべきで、これまで正社員という言葉を使うかどうかわからないですが、非常に雇用も守られて処遇もいいいわゆる正社員と、そうではない非正規従業員という両極にあるものを、もっとなだらかなグラデーションをつくっていくべきではないかということは盛んに言われております。そうなってくると、それぞれに応じた雇用保障、処遇の在り方というのが出てくるので、その実態を変更するというのが本来であって、実態がないところに法律がこれこれこういうモデルをつくりなさいと言うのは、なかなか難しいのかなという気もしますので、是非これは労使双方が議論して工夫していただくのがいいのではないかという感想を持ちました。
○鎌田座長 ありがとうございます。
一通り見て、法律論としていろいろな規制やインセンティブあるいはモデルを考える場合に、それぞれについて議論してきたんですが、ちょっとわかりづらいので、要するに、入口から出口まで導入するさまざまなパターンがありますよね。だから、どれがいいという議論をするときに、最初から正社員になるまでと言ってもいいんですけれども、こういう仕組みを入れた場合に、この間にはこういった問題が入ってきますよとか、あるいはこういう仕組みが出てくる可能性がありますよというパターンを幾つかつくっていくと、もう少しわかりやすくなるのかなという気がします。あるいは、今、荒木先生もおっしゃったけれども、こういう利用可能期間限定を入れると、もう一つの問題はトレードオフで余り必要ないとか、あるいは今日はちょっと議論しなかったですが、細切れ化の問題であれば、こういう仕組みを入れた場合には細切れ化はそれほど問題にならないのではないかと。
要するに、さまざまな施策との関連で考えなければいけないことというのは整理しておく必要があるんじゃないかと思うんです。どれがいいかというのはまた別の議論であるんですけれども、パターン化してチャートといいますか、一目でわかるような仕組みを幾つかモデルとしてつくっていくとわかりやすいと。私たちはずっとこの議論をしていますので、何となく頭の整理はできているんですよね。でも、一般の人が見たときに、総合的にそれで何かイメージをつくってもらうには難しいかなという感じもしますので、それは事務局の方で、今すぐにというわけでは勿論ないのですが、つまり、議論をする場合の一つの参考になるようなモデルというか、パターンを少し考えて工夫していただければと思います。
それから、いわゆる有期労働者を類型化するというところで年齢の問題も考慮すべきということでもございますので、そういったデータや諸外国の最新の情報、できれば運用の実態を含めて、そういったことも少し参考資料をいただければと思います。
あと、先生方からも幾つか今日の議論の中で注文があれば、事務局にお願いすることになると思いますが、今私が考えたところで、こういったところを今後工夫していただければと思っていますが、ほかにありますか。
○佐藤委員 今の点と全く同じで、たまたま日本経団連の方ではモデル様式の提示をという具体的な要望があるわけですので、そういうところを手かがりに、また、実態のないところに法律論の方からいろいろな議論をかぶせていっても、なかなかわかりづらいかなというところがあるように思うんですね。この報告書は、法律を専門としていない私をもってしても、なかなか難しいところがありまして、入口・真ん中・出口というものにそれぞれ分けて論点を議論していますけれども、やはり一気通貫で見たときにどうなのか。労使として見ると、どういうモデルの中に有期労働が位置付けられていると制度設計しやすいのかという辺りがもうちょっとあると、労使の意見もどこが共通点で、どこが違っているのかということがわかりやすくなってくるのかなという印象を持ちました。ですので、全く同じ意見です。
○鎌田座長 あと、何かありますか。よろしいですか。
それでは、ヒアリングで出された意見を基にいろいろと御議論いただきまして、私どもの更に深めなければいけない課題についても、幾つか問題あるいは事務局に対する要望も出たところです。こういったことも踏まえて今後また議論を進めていたきたいと思います。
それでは、次回の日程について事務局から説明をお願いします。
○青山室長 次回の研究会の日程については現在調整中ですので、委員の皆様には改めて御連絡させていただきます。
以上です。
○鎌田座長 今日は、藤村先生は何か御用事があったようですので、欠席ということで取扱いたいと思います。
それでは、以上をもちまして本日の研究会は終了させていただきます。ありがとうございました。
(照会先)労働基準局総務課労働契約企画室政策係(内線:5587)