第14回有期労働契約研究会議事録

日時

平成22年3月30日(火) 9:30~12:00

場所

厚生労働省労働基準局第1・2会議室(16F)

出席者

〈委員〉    
荒木委員、鎌田委員、佐藤委員、橋本委員、山川委員
 
〈ヒアリング対象者〉
   ○全国中小企業団体中央会 調査部長兼国際部長  三浦 一洋 氏  
                労働政策部長     小林  信氏
   ○(社)日本経済団体連合会
                労働法制本部長    田中 秀明 氏 
                労働法制本部主幹   輪島  忍氏
  〈事務局〉
   渡延労働基準局審議官
   前田労働基準局総務課長
   青山労働基準局総務課労働契約企画室長
   丸山労働基準局監督課中央労働基準監察監督官
 

議題

(1)労使関係者からのヒアリング  
(2)その他

議事

○鎌田座長 それでは、定刻より1分ほど早いようですが、お客様もいらっしゃいましたので、ただいまから第14回有期労働契約研究会を開催したいと思います。
 委員の皆様方、ヒアリング対象者の皆様方には、御多忙のところ御出席いただき、ありがとうございました。
 本日は、阿部委員、奥田委員、佐藤委員、藤村委員が欠席されるということでございます。
 また、本日は、労使関係者からのヒアリングとして、全国中小企業団体中央会及び(社)日本経済団体連合会の方からのヒアリングを予定しております。
 まず、全国中小企業団体中央会からのヒアリングを行います。
 本日は、全国中小企業団体中央会から調査部長兼国際部長の三浦一洋様、労働政策部長・小林信様にお越しいただいております。30分程度で御説明をいただき、その後、質疑を行いたいと思います。それでは、御説明をお願いいたします。よろしくどうぞ。
○小林氏 ただいまご紹介いただきました全国中小企業団体中央会の小林でございます。私の説明させていただきます。皆様方にお配りいたしました資料3に私どもの提出資料がございますので、その資料3に基づきまして説明をさせていただければと思っております。
 このたび、こういう意見発表の機会をお与えいただきまして誠にありがとうございます。私どもの「有期労働契約研究会中間取りまとめに対する意見」を各項目に従いまして説明をさせていただければと考えております。
 資料の1ページ目をお開きいただきまして、まず「第1 総論的事項について」という部分について説明をさせていただきます。
 報告書でいきますと、「現状と課題」というところの指摘事項がありますけれども、若干分析する有期労働契約者につきまして分析する観点から2点ばかり申し上げたいと思います。報告書の中では、「労働者の意識の多様化等により、就業形態の多様化が進行している」という記述の部分がありますけれども、労働者の意識、就業形態がどのように多様化しているのか、そして、有期労働契約との関係での分析がもっと必要ではないかというのが1つの意見です。
 現状いろんな雇用形態があります。一般的に中小企業で有期契約というと、パートの形態ですとか、嘱託、臨時、契約社員、高齢者の再雇用というような形で雇用しているかと思います。確かに多様化している部分が多いと思うのですけれども、その中でどんな雇用形態の有期労働契約者との関係があるのか、もう少し突っ込んで分析していただければありがたいというのが1点です。
 それと同様に、「2 検討に当たっての基本的考え方」の部分ですけれども、有期契約労働者を4つの職務タイプの区分でこの報告書の中では分析しているところですけれども、切り口の1つであるのは確かだと思うのですが、先ほど申し上げましたいろんな雇用形態での分析も必要ではないか。その辺、十分踏まえて御検討いただければありがたいというのが2点目です。 ちょっと戻りまして、「検討に当たっての基本的考え方」の(1)のところで、需要変動等に
伴う「リスク」を「専ら有期契約労働者の側に負わせることは公平とは言えない」というような同様な記述がありますけれども、一般的なリスクの考え方ですが、企業が当然ながらそのリスクを負うところですけれども、有期契約労働者というよりか、正社員とか有期契約労働者が相互にリスクを負っているというのが現状だと考えますので、その見方もひとつよろしくお願いできればと思っております。
 それから、全体的な項目でいきますと、下の2点ですけれども、有期労働契約法制の検討に当たっては、いたずらに複雑な制度にするのではなく、中小企業にわかりやすく、シンプルな制度とするようなことが必要かと存じます。
 もう一つ、過度な制限を設けることは、有期労働契約の良好な活用が阻害されることが懸念されることから、制度設計に当たっては十分な配慮をお願いしたいというのが総論的な事項についての考え方です。
 それから、次のページをめくっていただきまして、「第2 有期労働契約の範囲、勤続年数等の上限、契約の更新・雇止めについて」のところです。
 報告書では、11ページの「2 締結事由の規制」のところですが、ここで2点ばかり意見を申し上げたいと思います。
 有期労働契約の締結事由を制限することが、安定的な雇用への移行をもたらすとは考えにくい側面も多いことから、締結事由についての規制については反対というのが私どもの1つの考え方です。
 それから、締結事由の規制は、正社員の採用ができず有期契約労働者に頼っている中小企業の労働力確保を困難にすることも考えられるというのがもう一点です。現在有効求人倍率が低い状況ですけれども、中小企業にとってみますと、人材を求めるために、現在でもかなり人材を募集している企業が多いのが現状です。ところがハローワークを通じて募集をかけてもなかなか来ていただけないというような現状があって、いろんな採用形態をとっているところです。座長が出席されている派遣の問題でも、結構あのときでも、私どもの市川専務理事から申し上げたのですけれども、なかなか採用に結びつかないということで、派遣社員という形で、派遣会社にお願いして、派遣で来ていただいている方に、正規社員になってくれないかとお願いしているが多々中小企業を回ると、聞くところですけれども、なかなか正規社員にといっても来ていただけないような状況があるようです。一部派遣を通じての採用なども行っているようなところもあり、また、違った意味で正社員の募集というよりか、有期の契約、先ほど申し上げましたように、契約社員、臨時の社員から、正社員の登用などを行うというような形もとられているところです。
 そんな中、ここに書いてございますように、正社員の採用がなかなかできないというところが1つの悩みでして、また、この締結事由の規制が、中小企業の労働力確保という困難にもつながってくるのかとも思います。
 それから、13ページに「3 更新回数・利用可能期間に係るルール」ということにおいても、更新回数の制限については、業種・業態・職種によって契約期間に長短がある現状をみますと、これを一律に制限することというのも1つは困難ではないか。
 報告書の中で、「更新回数・利用可能期間について、一定の『区切り』を、一律のものとして設けることとした場合、我が国の社会に妥当なものとして受容されものとなるよう検討する」とありますけれど、この部分については、一律に制限することは若干困難ではないのかというのが1つの考え方です。
 利用可能期間の制限についても同様でして、雇用の安定の見地からその設定に当たっては十分な配慮をお願いしたいというのが、この第2の項目についての意見です。
 続きまして、次のページをおめくりいただきまして、「第3 労働条件明示等の契約締結時の課題について」のところです。
 現行の契約締結時の明示事項については、現行の制度で問題ないという認識です。
 中小企業では、契約書は作成してないケースも若干見られるようでして、書面での契約期間が明示されていない場合や、当事者間で有期であると合意している場合も散見される状況にあります。書面での欠如ですべて「無期とみなす」ということのないようにする必要があるのではないかというのが1つの御意見です。
 それから、「第4 有期労働契約の終了(雇止め等)に関する課題について」です。
 有期労働契約の満了、雇止めの際の一定の手当について、企業に支払い義務を課すことについては反対というのが意見です。
 一般的に、一方的な企業者側からの終了の場合、手当をお支払いしているというのは一般的にはあると思うのですけれども、これを義務化することについては反対というのがこの御意見です。
 4ページですけれども、「第5 均衡待遇、正社員への転換等について」です。
 正社員と有期契約労働者とは、責任や役割が異なるというのが一般的です。均衡待遇の一律的な適用は困難と考えるということです。正社員として新規、例えば新卒者を雇用した場合、将来のいろんな形での責任も予期した上での採用、賃金体系をとっているも1つであると思います。すべてが均等・均衡待遇というのは困難ではないかと考えております。
 それから、事業主に対して、有期契約労働者から正社員への転換を推進するための措置を義務付けることについては、反対というのが1つの意見です。
 最初にも申し上げましたけれども、現在のところ、いろんな有期労働契約があり、例を挙げるのであれば、高齢者の60歳過ぎて5年間再雇用についても、有期契約というような形態をとっているところです。この正社員化を推進するのをすべて義務付けるというのには問題があると思いますので、いろんな形態の有期契約というものを見た上での御判断をしていただければと思っております。
 それから「第6 一回の契約期間の上限、その他について」ですが、一回の契約期間の上限については、現状の原則3年とすることを維持することが望ましいと考えてます。更新回数制限、利用可能期間との関係も含めて総合的に検討する必要があります。
 最後のその他のところで、暫定措置についての記述がありますけれども、これはある一定の役割をもう終えたのではないかと考えております。  
 30分の説明時間ということですけれども、早めに終わってしまい、御質問等にお答えできればと考えてますので、よろしくお願いいたします。
○鎌田座長 どうもありがとうございました。
 それでは、私どものほうからいくつか御質問したいと思います。委員の皆様、どうぞ自由に御発言をください。
○山川委員 ありがとうございます。まず実態についてお伺いしたいのですが、先ほどの御説明いただいた資料の2ページ目でありまして、「○」の2番目で、正社員の採用ができず有期労働者に頼るということで、先ほど、有期労働契約あるいは派遣として採用して正社員に登用するというような事例もあるとお伺いしましたけれども、実態として、正社員としては応募しないけれども、有期契約なら応募するとか、あるいは正社員としての採用は断るけれども、有期契約なら採用に応ずると、そういう方はかなり多いということなのでしょうか。
○三浦氏 特にこれは小規模な層、従業員数で30人未満くらいの小規模な層については、もともと正社員の雇用の数は少ないのですけれども、正社員としてずっと勤めたいというのではなく、もちろんそういう方もいらっしゃるわけですけれども、臨時で、あるいは有期、ある一定の期間だけだったら勤めていいよという方々もいらっしゃるということがございます。特に小規模なところでは、パートのような形態で、有期でちょっと時間等の自由を与えながら来てもらうということがございます。
 もし有期ということで一律に締結事由を制限されることになれば、そういった部分の雇用も失われるということはあると思いますし、それは働く側にとってもいいことではないし、零細企業の側にとっては、人が来てくれなくなるという問題が生まれるおそれがあるということを心配しております。
 有期の労働契約という形での調査というのはなかなかなくて、具体的にはパートとか臨時、嘱託、そういった言い方で調査をするので、パートの中でも有期とそうでない人がいらっしゃるし、小規模なところですと、なかなかそういった区別があいまいなまま雇用されているということは実際にあろうかと思いますけれども。
○山川委員 そうしますと、応募する側としては、先ほど申し上げた質問との関係では、おっしゃられた点では、時間的な自由といったことを重視すると、パートと有期が比較的一体として考えられる。それで正社員になるのは躊躇するとか、そういうことなんでしょうか。
○三浦氏 そうですね。もっと違うところに行きたいけれども、今はここで働いておこうというふうな選択というのは、働く側の方々にもあろうと考えております。
○鎌田座長 ほかの先生方。
○荒木委員 1ページの「○」の3番目で、リスクの分担について、企業、正社員、有期労働契約者が相互に「リスク」を負っているというふうに考えるべきだという指摘がありますが、この内容についてもう少し御説明いただけますでしょうか。
○三浦氏 私どものやっている調査の中にもありますけれども、リーマン・ショック以後の不況の中で雇用調整というのは当然なされているわけですが、中小企業の場合、なるべく雇用調整助成金なども活用しながら解雇はしないようにということでやっているわけですけれども、それでもやむを得ず人員削減を行っているのは2割ぐらいある。その中で、人員削減の方法として、いろんな方法があるのですけれども、正社員の解雇と契約社員や臨時・パートといった方々の雇止め、いわゆる有期の労働者の雇止めといったものを選択したというのはほぼ半々ですね。私どもの調査では、特に小規模層については。
 従業員100人を超える規模になると、パート・臨時、いわゆる有期の方々の雇止めは多いのですけれども、それ以下の層だと、全体的に有期の方の比率が少ないこともあるかもしれませんけれども、どうしても正社員の解雇に踏み込まないと人員削減というのはできないということがございますので、個別の企業だといろんな話があるかもしれませんが、トータルとして見ると、単に有期契約労働者だけがリスクを負っているというのではなくて、正社員も、企業としても、例えば役員の報酬を半分以下に下げて、それでも雇用は維持しようといった形で雇用の維持に努めているという企業もあるわけですし、そういったことを考えると、単に企業対有期契約労働者のリスク配分という、対立あるいは二分法で考えていっていいのかなという疑問があると、そういう意味でございます。
○荒木委員 今、正社員の雇用調整と有期契約労働者の雇止めとフィフティー・フィフティーの、小さい企業ですね。
○三浦氏 小さい企業。
○荒木委員 そういうことでしたけれども、これは、例えばリーマン・ショックというあまりに苛烈な自体であったが故にそうなったということなのか。それから、同時に正社員と有期契約の人がともに雇用調整されたのか、有期契約労働者を雇用調整しても、なお対応できなかったので、正社員にも及んだという、そういう時間的な差というのはないのでしょうか。
○三浦氏 この調査自体が1時点で調査しているので、時間的な差というのはとらえられていないのですけれども、小規模層のことを考えると、人を減らさざるを得ないということは、正社員、パート、有期の人たちもあまり変わらない労働力として扱われていることが多いので、推測になってしまうのですけれども、同時に両方とも雇止め、あるいは解雇をせざるを得なくなったということではないかと考えております。ぎりぎりまで我慢し、その上で人を減らすというところに手をつけざるを得ないというのが小規模企業の実態です。どうしても一度解雇というようなことをしてしまうと、次に人が来てくれないということをすごく心配をしますので、そこのところはあまり差をつけてということはなく、特に小規模なところでは、同時期ではないかというふうに考えております。
○荒木委員 多分連動するかどうかわかりませんが、先ほどの山川先生の御指摘、御質問のように、正社員ではなかなか人が採れないので有期でということになっているのですが、しかし雇った後での雇用保障が正規と有期であまり差がないということだと、有期によって労働力確保ということとつながるのかなという気もしたのですが、リーマン・ショックのような世界的な未曽有の危機は別ですが、通常の状況での景気変動の場合、小企業の場合だと正社員と有期で雇用保障の程度はあまり差がないというふうに認識していいんでしょうか、それともやはりそこは差があるといった認識がよろしいのでしょうか。
○小林氏 あまり差がないと言ったほうがいいかもしれないです。かなり労働力の確保という面でいきますと、地域の人たちを雇い入れてということですので、一人を解雇するとか、パートの方にしろお断りをする、雇止めをするというようなことをした場合、かなり地域にうわさ話になるというのが事実なんです。あそこの会社は、今、人員を切ったぞというようなことで広まってしまって、冷たい会社だみたいに思われるところがあって、有期であり、正社員であり、雇った方を解雇するというのは、次の雇用での障害になりますので、一度雇った方をかなり維持しているという部分があると思います。
  先ほどの山川先生の御質問ですけれども、正社員を採りたいというのはすごく多いのです。ところがなかなか来ていただけないというのが実情です。ですからあらゆる手段をとって、例えば、期間的な契約社員として試しに入っていただいて、よかったら来てくれないかみたいな形でお願いするケースも含めて、本当は正社員になっていただきたいのだけれども、いろんなパターンでの募集をかけていく。また、パートで来ていただいた方を正社員に登用していくというような形をとっているのが多いというのも否めない事実だと思います。
○荒木委員 更に関連するかもしれませんけれども、零細企業の場合ですと、いわゆる解雇権濫用法理の認識が十分でない。更に雇止めのほうについては、いわんや認識が十分でないといった話も時々指摘されるのですけれども、そういうことが大企業におけるような正社員と有期の雇用保障の違いという形で現れていないという、そういう部分はあるのでしょうか。
○三浦氏 そういう部分はあると思います。中小企業の場合、大企業のように、労務担当みたいな部署はないわけですし、大体総務部の人がほかの仕事と同時にそういったことを担当している。しかも中小企業の場合、総務的な仕事は、直接生産に結びつかないものですからなるべく小さくしようといったことがございまして、実際に企業へ行ってみるとわかりますけれども、総務的な仕事の人員というのは少ないんですね。そういった中で、十分労働法とか解雇権濫用の法理、そういったものについての知識まで十分に持っているかというとなかなかそこは難しい。何かあったときには、例えば社労士の方に相談をして知識を得るというような形で対応するということが通常です。特に、難しい問題については。そういった中で、正社員も有期契約もあまり違わない形で考えているというところはあると思います。簡単には解雇できないというふうに考えているということも含めて、そういったことがあり得ますし、実際にあると思います。
○荒木委員 ありがとうございました。
○橋本委員 1ページ目の一番最初の御指摘についてお伺いしたいと思います。就業形態の多様化の分析をもう少し深めるべきではないかという御指摘だと思いますが、三浦様が例として、企業内では有期労働者は、パート、嘱託、臨時社員、高齢者の再雇用などさまざまな呼称で採用されているので、そのタイプに応じて分析を深めるべきかという御指摘だと思ったのですが、その呼称による相違というのは具体的にどのように違いがあるのか、あるいは共通点があるのかについて、もし何かございましたら教えていただければと思います。
○三浦氏 あまり具体的にどういった人をどういった呼称でということで区別して調査をしたことがないのでわからないところもあるのですけれども、例えばパートというのは、フルタイムパートも含めて、時間、勤務日数、その辺のところが通常の正社員よりも短い人たちということで一括して考えているところが多いだろうと思いますし、嘱託はどちらかというと、定年後の再雇用、60歳を超えて再雇用する場合に嘱託というような名称を使って再雇用するケースが多いかと思います。そのほか契約社員というのはあまり中小企業で聞いたことはないんですけれども、これは特別な仕事をやってもらうようなケースではないかと思います。明確に調査してないので、どういった人たちをどういうふうに呼んでいるかというところが明確には出てこないのですけれども、大体今申し上げたような形で分けているケースが多いのではないかと考えております。
○橋本委員 それぞれの有期契約の期間が、長短があるとか、違いがあるとか、そういうことは
ありますか。
○三浦氏 パートタイムですと雇用期間は1年ということが多いと思うんですけれども、3年以上の継続勤務というのが、中小企業の場合は6割以上であるというのが実態です。嘱託のケースですと、そんなに長くはないということで、今、仮に再雇用のケースですと、継続も含めて、5年とか、長くても10年くらいの範囲ではないかと思います。
○橋本委員 ありがとうございました。
○鎌田座長 私のほうからいくつかまとめて質問したいので、よければお答えいただきたいと思います。まず2ページ目の「○」の3つ目ですが、「更新回数の制限については、業種・業態・職種によって契約期間に長短がある現状をみると」と、こういうことでありまして、今、就業形態の違いによって多少の契約期間の違いがあるというお話があったのですが、業種・業態・職種によって違いがあるということの具体的な中身、もしご存じでしたら教えていただきたい。私どもが以前、企業に調査をしたときには、例えば自動車などは3年というようなことで目処を立てているというようなお話もあったのですが、その辺の多様な違いがあるということについての少し具体的なお話を聞かせていただければと思います。
 それから、2ページの「○」の4番目なのですが、「利用可能期間の制限については、雇用の安定の見地からその設定にあたっては十分な配慮が必要」ということでありまして、先ほどの御説明で聞き漏らしてしまったのかもしれませんが、雇用の安定の見地からというのはどういった中身なんでしょうかということと、十分な配慮というのをもしイメージとして何かあれば教えていただきたいということです。
 それから、3ページ目に移りたいのですが、「第4 有期労働契約の終了(雇止め等)に関する課題について」というところの御説明のところで、「雇止めの際の一定の手当について、企業に支払い義務を課すことについては反対」であるということですが、こういうものを課されて困る理由というんですか、具体的にどういったところが困るといいますか、あるいは反対の理由ということになるのかということを、もしよろしければ、やや深く説明いただければと思います。
 それから、これは最後になるのですが、4ページ目の「第6 一回の契約期間の上限・その他について」の「○」の1つ目ですが、「一回の契約期間の上限については、現状の原則3年を維持することは望ましいが、更新回数制限、利用可能期間制限との関係も含めて総合的に検討することが必要」ということでございますが、この「更新回数制限、利用可能期間制限との関係を含め」ということの御趣旨といいますか、これは私が全く推測なのですが、一部に一回の契約期間の上限3年というのを更新含めての誤解があると、こういうことでございまして、そういったようなこととの関係をおっしゃっておられるのか、それともそういうことではなくて、全く別なことでおっしゃっておるのか、今、少し質問をいくつか挙げましたが、もし可能であれば教えていただきたいと思います。
○小林氏 まず2ページ目の先生のお話がございました3つ目の業種・業態・職種というところのことですけれども、先ほど先生は製造業のお話をされていたと思うのですが、飲食店とかサービスというような形で、例えば飲食関係でいきますと、かなりのところでパートの方、有期の方が入っていられるケースが多いと思います。その方々、一般的に短期間労働の形態で、契約期間も長く、結構主婦の方が長くお勤めになっている方が多いと思います。またスーパー等の販売系統のレジの方なども主婦の方で長い期間お勤めになっているというケースが多いと思います。そういう方々が実際更新回数の制限で、3年間という形で、例えば上限あったとして、10年働いたりというようなこともあると思います。製造業、卸・小売・サービス業といった業種によって、また職種によって、いろんな形の契約期間の長短があるのが現状だと思います。一律に制限というのはかなり難しいという意味で書かせていただいた次第です。
 それから、もう一つ、「利用可能期間の制限」、次のページのほうを先に行かせていただきまして、有期労働契約の満了とか、雇止めの部分の支払い義務を課すということですけれども、有期労働契約という形で、例えば何年間で賃金、月当たりとか時間帯でいくら出すというような形での契約ですので、満了ということであれば、それに当たって、最終的に退職金のような形でお支払いするというのは、これは違った考え方で、もともと退職金の規程があれば、支払い義務を終わった時点で支払うような契約は1つはあると思いますけれども、満了、それから、雇止めというのは、これは逆に言って期間を残してのケースで、それを企業の都合によって当然ながら出店していたお店を撤退するとかということで雇止めのとき、キャンセル料はお支払いするようなケースも一般的にはあると思うんですけれども、それを義務化するということになると、これは話が違うので、この意味で、支払い義務という部分については反対だということでここに書かせていただいたものです。
 それから、最後のページの一回当たりの契約期間の上限という考え方です。先ほど先生の御指摘がございましたように、一回当たりの上限というのが、利用可能期間の制限と同様に見られるというのも1つ誤解があるというのもあると思いますし、先ほどの業種・業態によっても、利用可能の期間の一律の制限というのもお話したところでますけれども、これは例えば2年が5回で10年間になりますね。3年で3回ということは9年間みたいな話もありますので、この辺、一回当たりの契約期間、2年にするのか、3年にするのか、5年にするのかとか、その辺のものと、それ掛ける倍数で回数の制限、また、それが最終的に利用可能な期間の制限につながるわけですから、実態に合わせという形での関係を含めて、一回当たりの期間の上限を考える必要があるのではないかということで言わせていただいたところです。一般的には今3年で大体いいのではないのかというのが、一回当たりの期間の上限について、これを延ばしてくれとかというような、中小企業からあまり声は聞かないものですから、確かに誤解、利用可能期間制限との誤解はあるようですけれども、あまり声としては出てきてないのかなと。別段問題はないのかなというふうにとらえているということですけれども、一回の契約期間の上限を定めるのであれば、その更新回数の制限と利用可能期間の制限という意味では十分御配慮をいただいて御検討いただければありがたい。
○三浦氏 実態のところを補足しますと、業種・業態によっての更新回数といいますと、パートで代替しみた場合、例えば情報通信業、運輸業、木材の関係、窯業、このような業種というのは、継続勤務年数が短い人たちの割合が比較的高いところがある。先ほど3年以上が6割を超えると申しましたけれども、今、言った業種のところでは短いケースもあるということです。
例えば食品とか繊維は比較的長く、更新の回数が多くて継続勤務の期間が長くなるといったことがございます。
 あとは規模の面で見ますと、例えば、今、小規模層、10人未満の層だとかなり高齢者、60歳以上の方々を雇っておりまして、そういった方々を含めてパートのような形で雇う場合に、どうしても長くなってしまうケースがあります。この辺は、今言った食品の製造業は比較的高齢者比率が高くなってきているんですけれども、そういったところも踏まえないと、更新回数を制限すると、そういった人たちは制限にひっかかってしまう可能性があるのではないか。そういった懸念がございます。
○鎌田座長 ちょっと確認ですけど、2ページの「○」の3つ目と4つ目、まとめて御説明いただいたと思うのですが、「雇用の安定の見地からその設定にあたっては十分な配慮」ということでいえば、今、おっしゃったのは、高齢者などは長期にわたって働いていることもあるので、こういったところは十分な配慮が必要だというようなことで理解してよろしいんですか。
○三浦氏 そうですね。ほかにもあるかもしれないので、私どもの調査では、特に高齢者についてはそういったことがあると考えています。ほかのケースについても、もう少し精査をして考えていただければありがたいと思います。私どものデータでは、なかなかほかのところは直接は出ていないので。
 
○荒木委員 今の点に関連して、2ページの3「○」と4「○」の関係なのですが、4「○」の意味、「雇用の安定の見地から」というのは、例えば、有期の利用期間を2年とか3年と法律が定めてしまうと、制限がなければ反復更新して、雇用が継続した人たちが2年とか3年という区切りをつけると、その前に雇止めをされてしまうということによって雇用の安定が失われるということを懸念されているのかというふうにもとったのですが、そういう趣旨ということもあるのかというのが1つ。
 もう一つ、3「○」のほうは、更新回数の制限、4「○」が、利用可能期間の制限と分けて議論されているかと思ったのですが、3「○」のほうは、回数の制限についてはということで、契約期間に長短がある現状を見るというふうに、両方一緒の議論なのかどうか。例えば具体的に言いますと、2か月契約であれば、5回更新しても1年ですよね。回数のほうで、例えば3回とかやってしまうとそれで終わってしまう。ところが利用期間としては2年とか3年とした場合にはもっと長くやれるのに、一回の契約期間が短い場合には利用期間の制限はかからないけど、回数の制限で非常に使いづらくなってしまうと、そういう業種による違いがあるので、回数については一律は困難だけれども、利用可能期間については、雇用の安定の見地から十分な配慮をすれば、一定の規制というものはあり得ると。最初読んだときはそういう趣旨かなという気もしたのですけど、何か補足的に御説明いただければお願いしたいと思います。 
○三浦氏 更新回数と利用可能期間というのは多分関連をして考えられていると思うんですけれども、回数で単純に考えますと、今、荒木先生がおっしゃったような形でやりますと、これを業種とか、そういった実態にかかわりなく一律に5回までといった形にしますと、違いが出てきてしまうことが確かにございます。そういったことも懸念して書かせていただいたところでございます。
 利用可能期間、これは回数の制限とどういうふうに関連して規制されるかということもかかわってくるかもしれませんけれども、かなり長く継続して、パートならパートとして勤務されている方々もいらっしゃるということがございますので、あまり利用可能期間、例えばパートのような形で有期の場合に、3年以上になった場合には正社員にしなければいけないというような形になった場合、中小企業の側もパートを使うということについて躊躇をするケースが出るかもしれませんし、働く側として、3年でパートという働き方で働きたいという希望があった場合に、その人たちの職場が失われる可能性もあるのではないかということです。地域の中で意外にパートのまま長く働いてもいいという方々もいらっしゃるということですので、そういった現状を踏まえると、一定の期間、どちらかというと、長めにとるような配慮というのが、そこのところで必要になってくるのではないかと考えているところでございます。
○山川委員 4ページ目の第5の最初の「○」の「正社員と有期契約労働者とは、責任や役割が異なり、均衡待遇の一律的な適用は困難」というところなのですが、そのこと、つまり責任や役割が正社員と有期契約労働者とでは異なっているということと、先ほどお伺いました第2の2番目の「○」で、正社員の採用が困難であると、両者の関係をどのように考えるのか。つまり正社員としての責任や役割を果たすような人の採用が困難であるということになりそうな感じがするわけですけれども、そうなると、先ほどおっしゃられたような、正社員としての採用は困難であっても、有期契約として採用して、その中から正社員としての責任や役割を果たす人を登用していくというふうに、この2つの関係は考えてよろしいのでしょうか。ほかに考えられるのは、正社員としての責任や役割を果たす人が少なくても、そのままで構わないという論理的な選択肢ですが、多分それは難しいだろうと思いますので、両者の関係についてお伺いしたいのですけど。
○三浦氏 ケースが違うかもしれませんけれども、どうしても正社員が欲しいのですが、パートでしか働けないという話であれば、正社員とは違った役割とか責任になり、全く同じ役割を課すということは難しいと思います。正社員でなくて有期で働くのならいいよということで中小企業に来てくれた人たちに対して、正社員と同じ責任とか役割を課すということができない。一定の正社員とは違う働き方をしてもらうという形になると思います。もちろんその中から正社員になるという方はいらっしゃると思いますけれども、そういったことを考えると、正社員に採用できないというのは、有期でもいいから来てもらうということをした場合には、正社員と同じ責任や役割を課すというのはちょっと難しくなる。その辺はほかの有期でない人たちが担わざるを得ないという形になると思います。そういった関係で、この2つは考えていただければと思います。
○山川委員 そうしますと、数少ない正社員の責任と役割がすごく重くなるということになるのでしょうか。
○三浦氏 それはそうです。中小企業の場合、どうしてももともと従業員の数が少ないわけですから、同時でも一人ひとりの責任、役割はかなり大きくなってくるわけです。その中で有期の方で、正社員よりもその責任を軽くしなければいけない人たちがいた場合には、まさに正社員として働いている人たちがかなり無理をするケースが出てきます。それは正社員だから仕方ないということでやってくれているところはあるんですけれども、そこのところの無理は出てきます。あるいは小規模だと経営者が無理をして、その分はカバーしなければいけないということになってくる。
○鎌田座長 よろしいでしょうか。
  それでは、本日はお忙しいところ、ありがとうございました。私どもこれを参考にしていろいろまた今後検討したいと思います。ありがとうございました。
(三浦氏・小林氏退席)
(田中氏・輪島氏着席)
○鎌田座長 よろしいですか、引き続きということで、お約束の時間より少し早めになりますけれども、それでは、引き続きまして、日本経済団体連合会からのヒアリングを行いたいと思います。
 本日は、労働法制本部長の田中秀明様、労働法制本部主幹・輪島忍様にお越しいただいております。30分程度で御説明いただき、その後、質疑を行いたいと思います。
 それでは、御説明をよろしくどうぞお願いいたします。 
○田中氏 日本経団連の田中、輪島でございます。本日はこのような場を与えていただきましてありがとうございます。
 本日の資料として「経営労働政策委員会報告」と、私どもが、この中間取りまとめをどのように理解したかということを図でまとめたものをお配りさせていただいております。こうした理解に基づいて我々としてはコメントとしております。
 もう一つ、申し上げますと、有期労働契約について、私ども経団連の正式な意見というのは、経営労働政策委員会の報告に触れているものがすべてでございまして、中間取りまとめに書いているすべての項目について、私どもの正式な意見というものはありません。ただし、私どもの大方針の下で考えているところを今日率直に申し上げたいと思っております。
 私のほうから総論を申し上げます。輪島から各論、それぞれの部分について申し上げたいと思っております。
 私どもの有期労働契約の考え方について申し上げますと、中間取りまとめでも指摘されているとおり、雇用形態の多様化というのは労使双方のニーズ・要請によって拡大したものだと考えています。これについては、「経営労働政策委員会報告」の21ページから、有期労働契約、いわゆる非正規の方々の増加がどのようにして起きたかということを申し述べています。これは簡単にいえば、1980年代以降、労使の取組で徐々に増えてきているというのが大認識でございます。
 その要因としては、21ページにございますが、第一に、第三次産業、サービス産業化ということ。第二に、女性、高齢者などの多様な主体の労働市場への参画の高まり。第三に、労働者の働き方の意識の変化。第四に、国際競争の激化に伴う企業の対応ということになろうかと思います。
 ですから結論として、24ページにございますけれども、このように、労働力の需給双方のニーズが一致し、雇用の多様化が進展してきている。それで労働市場の基盤もそれに適合されていく方策を模索していくべきであろうということです。ただ、「むろん」というところに、まさに労働市場にメリットだけをもたらしているわけではなく、対応すべき課題も多いと認識しております。そういう意味で、この研究会が、有期労働契約のあり方を検討されることは時宜にかなっていると私どもは理解しています。しかし申し上げるまでもなく、有期労働契約に関する規制は、労働法制の一部を構成しておりますので、そのあり方の変化は、有期労働者の働き方及びいわゆる正社員の働き方全体に影響を及ぼすだろうと考えております。
 今回の中間取りまとめで取り上げられた論点は非常に多方面にわたっているため、法改正に当たっては、社会保険料の取扱いや税制の問題も出てくるだろうと思いますし、また正規労働者の処遇や解雇法制のあり方ということの問題も含めて、法体系全体でバランスをとっていく必要があると思います。全体を視野に入れた慎重な検討が必要ではないかと考えております。
 そのような観点から見ますと、中間取りまとめでは、3ページに、「OECDからは、我が国においては、正規労働者に強度の雇用保障がある一方で、非正規労働者の雇用保護は実際には弱く『労働市場の二重性』が見られるとの指摘もなされている」という記述がある一方で、5ページに「本研究会は、正社員に適用されるルールそのものを論ずる場ではない」とされておりますけれども、有期労働契約法制のみを議論をするというのでは議論がかなり狭いものになってしまうと感じております。狭いテーマで結論を出すということが可能であるとしても、我々としては全体を視野に入れて考えていく必要があると思っておりますので、最終的に正社員にかかわる問題を除外して、本件の諸問題を解決していくというのは非常に困難ではないかというのが率直な感想です。
 これが第一の感想といいますか、論点でございます。
 第二に、中間取りまとめでは、有期労働契約の雇用の不安定性の解消を目的として、有期労働契約の内容の明確化、規制の強化という方向が示されていると思っておりますが、先ほど中央会の関係者の方もおっしゃっていますけれども、結果として、労働者の雇用機会が減少するのではないかという懸念があります。研究会の検討結果から影響を受ける労働者、企業も非常に多数にのぼるわけですので、結論から導き出される施策が及ぼす効果などを慎重に考慮していただきたいということでございます。
 経労委報告の20ページ、お手元の資料5の最後にイメージを載せておりますが、雇用の安定を図るためには、持続的な成長を実現することが求められます。「成長戦略の策定・実行」とございますが、大きく経済成長を実現するということ、そして有期労働契約者または全体としてのセーフティーネットを充実させて、必要な場合は職業訓練を受けられるような基盤整備を図るということが最も現実的であろうと考えております。その上に立って、この図にもありますように、企業としては、正社員として働けるような会社となっていく。ですから正社員として働けるような会社を増やしていくという経済政策を展開するということが求められているのではないかと思っております。これが第2点でございます。
 第3点は、中間取りまとめにおいて、諸外国の事例がいろいろ引用されております。これは非常に参考になるのですが、日本の有期労働契約のあり方を考えるに当たって、諸外国の法制と経験は参考にすることはできるものの、各国の雇用制度、人事制度、慣行、労使関係はそれぞれ歴史的、社会的な背景によって形成されてきたものですから、有期労働契約の規制のあり方はいちがいに同じではないと考えております。日本の場合、中間取りまとめにもございますように、いわゆる正社員を中心とする期間の定めのない労働契約、長期雇用システムを典型とし、解雇規制が厳しいということに特徴があって、有期労働はそれを補う形となっております。
 したがって、諸外国の例を引用し、それを日本に入れよう、習おうとしても、その運用の実態、社会や労働市場に与えた効果を十分に調査していただきたい。一部、そういう調査が必要であるという記述があったかと思いますけれども、そういう形で引き続き研究を行っていただいて、日本との相違を十分検討していただきたいというお願いでございます。
 第4点は、先ほど中央会の方が、リスクの配分のところを少しご発言されましたけれども、経営サイドから言いますと、5ページの「リスク配分の公正さ」という記述のところで、リスクが専ら有期労働者の側に負わされているという記述があるところは、若干違和感があるということでございます。それは先ほど中央会の方からも言われたように、リスクを負っているのは、企業のほか有期労働者、正社員ほかいろんな関係者の方がたくさんいます。雇用保険のことを考えれば政府も含まれていると思っております。
 有期労働者にとってみても、リスクの高い人、例えば若者とか、主たる生計者にあって有期労働者の方もいれば、主たる生計者は別にいて、時間とか場所とか移動とかのリスクを減らして、ある限られた範囲で有期労働をしようというリスクの低い方もいらっしゃいます。ですから有期労働者全体でリスクを負っているというよりは、その中でもいろいろ配分があるだろうと思っています。
 経営労働政策委員会の報告の12ページから17ページまでに企業としてリスクというのをどのようにとらえているのかについて書いてありますけれども、企業としては、中長期的な成長を目指しつつ、生産活動の急激な変動や需要の変動に直面し、それに対して雇用をできるだけ維持していこうと努力をしている点も認めていただきたいと思っています。雇用という面で、リスクを相互に分担しようということで、経労委報告では、16、17ページに1つの事例としての【日本型ワークシェアリングとは何か】ということを申し上げているところでございます。
 第5に、中間取りまとめで、有期労働契約が良好な雇用形態として、また多様な選択肢の1つとして活用されるようにするという御指摘がございます。この視点は今後最終的な報告書取りまとめに当たりぜひ進めていただきたい視点でございます。
 私どもざっと読ませていただいた印象では、どうしても法律などさまざまな形で強制的に有期労働契約を縮小させる方向を意図しているような印象を、誤解かもしれませんが受けておりますので、その辺をまさに有期労働契約が良好な雇用形態として今後も活用できるというような方向で、ぜひお考えを進めていただきたい。ここはお願いでございます。
 これが私のほうから、まず総論として申し上げたい点でございます。
 以下、各論について、輪島から、率直な感想も申し上げさせていただきたいと思います。
○輪島氏 それでは、私のほうから各論についてコメントをさせていただきたいと思います。中間まとめでは9ページ以降の第2以降の点ということでございます。
 まず第1点目は、11ページでございますが、「2 締結事由の規制」と書いてあるところの「無期労働契約の原則」というところが記述をされておりますけれども、その点について申し上げておきたいと思います。我が国の労働法制の体系から見て締結事由を規制する、入口の採用事由まで制限するのはなじまないと考えております。この考え方、つまり無期労働契約原則を入れると、労働法全体のあり方に影響を及ぼすと思われますので、これについては明確に反対をしておきたいと思っております。また、多様な雇用機会の創出を制限すると思いますので、過剰な規制なのではないかと思っております。雇用の安定、維持という観点からいえば、労働者側にとってもマイナスになるのではないかと思っております。
 特に11ページ目の下から4行目でありますけれども、「転換の是非についての議論が必要」と書かれておりますが、最終取りまとめに当たって、無期労働契約の原則についてどのようにするのかということについては、ぜひ方向性を示していただきたいと思います。そうでないと、無期労働契約原則について、労政審で議論をするということになりますので、大議論にならざるを得ないと思います。
 それから、2番目でございますけれども、戻っていただきまして、10ページ目でございます。
10ページ目には「基本的考え方」というところで、5行目でございますけれども、「セットで議論する」、つまり入口規制と出口規制をセットで議論するというように書かれています。現行の法体系について、私どもは、入口については基本的にはこの中間取りまとめで書かれておりますように、規制がない。出口については、雇止め法理、つまり解雇権濫用法理の類推適用がされるというような意味合いでは、現行の体系でも出口規制が入っていると理解をしておりますけれども、入口と出口というところのセットがどういう意味合いになるのかというところをどのように理解するべきなのかお教えいただければと思います。
 もう一つ、セット論の話と入口規制そのものの話ですけれども、入口規制ということについての議論はよくわかりますし、外国の事例もここに書かれているわけですけれども、少なくとも私どもでいろいろ勉強した限りでは、入口規制をしている諸外国の事例で適切に運用されている事例があるのかどうか。フランスの事例が特にここで書かれていますけれども、本当にフランスでは適切に運用されているのかどうか、法的な問題ではなくて実態も含めて検証が必要なのではないかと思っております。入口規制というのは非常にわかりやすいですし、導入することによっての達成感といいますか、よくそれはわかるのですが、非常に大きなデメリットがあるのではないかと思っております。雇用の安定維持、創出に全体として寄与するものではないと思っております。
 それから、3番目でございますけれども、11ページの上から2つ目の段落、「なお」書きのところですが、「高度技能活用型」ということについては、更新・雇止めに係る規制は、必要があまりないのではないか。労働市場においては、交渉力が強く、相対的に高い処遇をされていると書かれております。判例で見てみますと、亜細亜大学事件、東京地裁の判決、昭和63年11月25日でございますが、雇用契約を1年とする大学の非常勤講師の方が20回更新をして、21年間更新を重ねたわけですけれども、雇止めが有効とされたという判決等々がございます。
この点はもう少し議論をする必要があるのではないかと思っています。
 それから、13ページ「更新回数・利用可能期間に係るルール」のところでございます。いわゆる、こちらのほうが出口規制のところになるわけですけれども、菅野先生の教科書を読みますと、「我が国における長期雇用を前提とした典型的雇用が期間の定めのない労働契約の形態をとり、その契約形態については解雇権法理が確立し立法化されている」。これが労働契約法16条で、このことから「期間の定めのある期間雇用」という表現になっていますが、この「法的実際的な意義は極めて大きい。実際には企業は2か月、3か月等の短期間の労働契約により、契約を終了させやすい労働者を多数雇い入れるとともに、それらの労働者に対する労働需要が続く限り、期間雇用を更新し続けることが多い。つまり期間雇用は雇用調整もしやすく継続的な労働需要にも対応できる柔軟な雇用形態として機能している」と、こういうふうに書かれております。
 これが非常に実態に近いものだと思っております。
 また、中間取りまとめの中でも、「7割の事業所が雇止めを行ったことがない」という記述が3か所ぐらい出てくるかと思いますけれども、実態としてはこういうところで、雇止めを行った経験がないということはそれなりに雇用が安定をしているということだと思います。それぞれ個別の問題はいろいろあるかと思いますが、相対的にはそういう状況ではないかと見てとれるわけでございます。
 そうした中で、更新回数・利用可能期間に係るルールを設けてはどうかと提案をされているわけですが、短時間労働者、高度技能労働者の雇用機会を著しく狭めるようなおそれがあるのではないかと思っています。
 更新回数の件ですが、先ほど中央会の方からもお話がありましたけれども、業種・業態によって契約期間の長さがそれぞれ異なっている。外食産業であるとか、先ほど御説明があったとおりだと思いますが、そういうところで回数の制限を一律にするというのは現実としては難しいのではないかと思っております。制限を設けることで、確かに労使にとっても予測可能性は向上すると思いますが、雇用機会の確保、労働者の意欲の向上につながるかどうかというのは少し課題があるのではないかと思っております。
 それから、この「区切り」の手前で雇止めの誘発という副作用をもたらす懸念が13ページの下から14ページのところに書かれています。そもそももう一度、雇止めというものについて整理した議論が必要なのではないかと感じているところでございます。今回のリーマン・ショック以降の雇用調整期というか、そういうところで有期労働者や派遣労働者の期間途中での解約が相次いで行われた。日本経済全体が急ブレーキを踏んだわけでありますので、そういうような意味合いでは期間途中の解約というのがあったというのが実態だと思っておりますが、これは論外だと思っておりまして、あってはならないことだろうと思っております。しかしながら、期間途中の解約と雇止めというものは本質的には違うものだと思っておりますし、雇止め法理というようなものも既に確立をされていて、裁判所で判断をされているという点からすると、中間取りまとめでは、13ページのちょうど真ん中ぐらいですが、「それに関連して」という段落の3行目に「誤解」、その次の行に「リスク回避的考慮」と表現をされておりますが、先ほど菅野先生の教科書にあるとおりに、需要に対する雇用量の調整という点と有期雇用の意味というようなものをもう一度整理をする必要があると。その点で言うと、今の現状でいえば「3年」以上できると言われていても、どうしても短期間の雇用にならざるを得ないという面があるのではないかと思っております。ですから1年契約で2回更新をして3年になったらもうおしま
いとなるわけですけれども、果たしてこの実態がそれでいわゆるハッピーなのかどうか。働く人にとっても本意ではないでしょうし、企業側にとっても大変不本意なことが多いと思っております。当然人が入れ替わるということになりますと、もちろん採用のコストとか教育・訓練のコストというものがあるわけでありますので、できるならばお互いにこのまま働き続けたいと思っていますけれども、今のところ現状ではある意味で不透明さがあるために、残念ながら予防的に雇止めをして泣く泣く別れるというようなことになるのではないか。そういったケースは、結果として人材育成やキャリア形成という観点から見ても望ましいものではないと思っています。そういったものをきちんと明確化するというようなことでは、今後の議論ですけれども、1つ必要なのではないかという意味では、疑問の余地なく雇止めがきちんと成立をするということについてのルールの明確化ということが、一見、労働者の雇用を不安定にするように見えるかもしれないけれども、実質的に予防的な雇止めがなくなるという観点からでは、雇用の安定につながり、企業内教育や教育訓練といったようなものも行われることになるのではないかと思っております。
 それから、利用可能期間についてでありますけれども、この研究会で実態調査が行われております。調査結果を見ますと、契約期間のマックスのところは6か月から1年、回数から言うと3回~5回というのが実態調査からでは一番大きい数字だと思います。それを掛け算すると、3年~5年というのが利用可能期間の多分全体だろうと思いますが、もう少し詳細に見ていただいて、現状からすれば、8割程度がその利用可能期間の中におさまるようなのが私どもの手計算ではなくて、実態としてどれぐらいのレンジのものが今の実態に一番合うのか、5年とか6年とか、半端な数字にもなるのかもしれませんけど、実態を見ていただいて、そういうような適切なレンジで利用可能期間を設定をしていただくということが必要なのではないかと思っております。
 それから、次が14ページでございますけれども、「また」書きのところのこの一定の「区切り」を超えるに至った場合の法的効果、ここでは1番目には「無期労働契約とみなす」、2番目には「無期労働契約への変更の申込みがあったものとみなす」、3番目が「無期労働契約への変更の申込みを使用者に義務付ける」、4番目が「解雇権濫用法理と同様のルールが適用されるものとする」、5番目が「同ルールが適用可能な状況にあることを推定する」、6番目が「解雇予告制度を参考に雇止め予告義務を課す」、6つの選択肢が示されていると理解をしております。
 この「区切り」を超えた場合の法的効果として、無期雇用への転化ということがいくつか示されているわけですが、この「区切り」を超えたという点で、無期雇用への転化というのは少し行き過ぎなのではないかと思っております。
 派遣法では、間接雇用から直接雇用へという点での議論と、そもそもそのみなす時点が違法状態、つまり禁止業務であるとか、無許可の業者であるとか、偽装請負のところはどのように認定するのか難しいところだと思いますけれども、そういうような意味合いで今回の派遣法の改正では、そのような結論になったという点は理解をしています。しかし、この有期契約において、区切りを超えているので、そういう意味では違法状態であることには違いないとは思いますが、即無期でみなすというようなことは非常に強い規定ではないかと感じているというところでございます。その点から言いますと、6番目の「解雇予告制度を参考にした雇止めの予告義務」というものが穏当なのではないかと思っております。
 そういう意味で、前段の区切りのルールを明確化するということによって、違法状態になるとしても、その点についての契約自体がどのようになるかを議論をしていただく必要があるのではないかと思っております。15ページに記載があるとおり、「裁判でも雇止めが無効とされた場合でも、その労働契約が無期労働契約に転化するわけではなく、期間の定めのある契約が更新して存続する」。これは、15ページの「また」と書いてあるところにそういう記述があるわけでありますので、裁判でもそのようになっているところとのバランスが必要なのではないかと思っております。
 もう一つ、菅野先生の教科書では、労働基準法15条の第2項のところでございますけれども、「事実と相違する場合の即時解除権」という項目があって、「労働契約締結の際に明示された労働条件が事実と相反する場合には、労働者は労働契約の即時解除権を有する(労基法15条2者に対しては使用者は必要な旅費を負担しなければなら
ない」というのが3項にあると書かれておりまして、そうしますと、先ほどの「区切り」で、例えば利用可能期間の規制を選択をするとして、例えば5年として、今日、雇入れ日があって、3月30日が雇入日で、5年後の3月31日が超過期間、5年の超過をする。つまり違法状態になるというところになるとすると、労働契約の締結の際に明示された労働条件、つまり5年の事実と相反する場合に、労働者が即時解除権を有しているという点と、そことの整合性がどのようになるのかということは後ほどお教えをいただければと思っています。
 それから、第6の「解雇予告制度を参考にした雇止めの予告義務」に加えて、できれば御検討いただきたいと思っているのは、いわゆるその相当日数分の雇止め手当、雇止め保障といったものです。疑問の余地なく雇止めが成立をするという観点からすれば、有期労働契約こそ雇止めについての保障という制度が非常になじむものなのではないかと思っております。本体の金銭解決というものとの趣旨とは違って、有期労働契約者についての保障という意味での検討をしていただければありがたいと思っているところでございます。
 それから、次の論点は、同じく14ページのクーリング期間でございます。利用可能期間や区切りを超えた後のクーリング期間の設定は大変重要だろうと思っております。特に主婦のパートの働き方を見てみますと、遠くに通うということではなくて、地域に根差した働き方をしている人が大多数だと見ております。そういう人たちにとって、その地域で求人が多ければ次のところへ移っていけばいいわけですけれども、求人が少ないというような状況であれば、当該企業に引き続き、次もということはあると思いますが、先ほどのように区切りを明確化すれば、自ずとそれについてのクーリングをする期間は重要だと思いますので、クーリング期間明けに前職に復帰をすることについても可能な仕組みを設けていただきたいと思っております。
 また、中間取りまとめの中にも記述があると思いますが、クーリング期間については、当然個人単位で考えるというふうに理解をしておりますし、また、期間の設定、クーリング期間の設定というようなものも、ある意味で単純なわかりやすいルールにしていただければありがたいと思っております。
 それから、次に14ページの「4 解雇権濫用法理の類推適用」でございます。
 これは何度も言及をいたしましたように、雇止め法理として確立をしているものと理解をしておりますけれども、中間取りまとめの中で指摘をされていますとおり、私どもにとっても、予測可能性というような意味合いでは大変課題があるのではないかと思っております。そういう意味で、15ページ目の2行目にありますが、「行政が助言指導の一環として抽象性を残さざるを得ない法律の規定を補足する内容を示し得るか」というところで、「法理は法理として入れるにしても、行政が告示なり通達なり、文書で裏打ちをする」というふうに読めるわけですけれども、その点について、そういうことをすることによって、本当に予測可能性が高まるのかどうかという点は、それでも裁判所に行ってみないとわからないという話になるとなかなかきつい話かなと思っております。
 そういう意味で、改正労働基準法があさってから施行されますけれども、基準局のほうでQ&Aをつけたパンフレットをつくっていただいております。これは相当企業実務に踏み込んだQ&Aで企業側からも大変参考になると評価をいただいているものであります。このような中身であれば、通達とかそういうことではなくて、企業実務にわかるようなQ&Aで示していただくことが、企業にとっては一番ありがたいと思いますけれども、解雇権濫用法理の類推適用の予測可能性を高めるQ&Aというのは、かなり実務に踏み込んだものを書かざるを得ないと思いますので、その点は非常にハードルが高いのではないかと思います。実現可能性としては基準局に御苦労をお願いをするわけですけれども、それは御期待申し上げるということでお願いをしておきたいと思っております。
 それから、16ページ以降の労働条件の明示のところでございます。
 ここの「1 契約締結時の明示事項等」というところで、厚生労働省の実態調査においても、労働条件の書面明示は比較的多く行われていて、定着していると理解をしておりまして、現行制度でも大きな問題はないのではないかと思っております。更に書面明示のルールを徹底するということがまずもって一番大切なことではないかと思っております。
 ただ、17ページの上から2行目ですが、「法律に規定することによって規範性を高めることが1つの方向性として考えられる」、ここは私どもとしてはあまりイメージがわかないのですが、どういうものをイメージされているのか、今後の参考として、私どもも議論したいと思っておりますので、何か方向性があるのであれば、お示しをいただければありがたいと思っております。
 それから、区切りを明確化してルールを決める。つまり第2のところで、ルールが導入されていれば利用可能期間内の判断基準とか、中間まとめに指摘されるように、相対的に課題は逓減をしていくのではないかと思っているところでございます。
 それから、17ページの2のところに「書面明示がされなかった場合」というところの効果でございます。書面明示の欠如によって雇用期間の定めが無効ということについては、相当難しいかなと、妥当性を欠くのではないかと思っております。個別の事情によって書面明示の欠如にそれぞれ重みの違いがあるのではないかと思います。何らかの労働契約の申込みがあったと推定するということについては理解ができますけれども、「無期労働契約とみなす」というところまでは非常に強いのではないかと思っております。その労働契約の内容について、裁判で争うというようなことに結果としてなってしまうのではないかと思いますので、そもそも明示をされなかったときにどういうふうになるのかということになれば、私どもの理解は、書面明示の欠如により、契約自体に何かの瑕疵があるということであれば、契約自体が無効になると考えるのですけれども、そうでないというところについての考え方について御教示をいただければと思っております。
 それから、書面明示の点で、仮に口頭で雇用期間については有期と明示をされていたけれども、例えば賃金支払いのところで日給なのか、月給なのかというのを示されていなかったというようなことについても、書面明示がなかったという一事をもって無期になるということになるのかどうか、少しアクロバティックな話なのかもしれませんが、そういうようなところの疑問も生じますので、その点も御教示をいただければと思います。
 それから、一定期間内に明示をするということで、担保ができれば、そういうところで救済措置を設けていただくという必要があると思います。フランスでは2日以内ですか、それはなかなか我が国の実情、現状から考えるとなかなか難しいかと思いますので、例えば30日以内とか、1か月以内というような範囲を基準にして議論をしていただければ大変ありがたいと思っております。
 次、18ページ目の「1 契約期間の設定」というところですけれども、「1回の契約期間の短縮化(細切れ化)が進んでいる」とあるわけで、これは、先日の労働側のヒアリングで御発言があったように、確かに業種によって、そういうようなものもあると思っております。その点をどのように理解をするのか。これも第2についての区切りの基準の明確化ということが図られれば、自然に落ちついてくるものではないかと思っているところですが、細切れ化について、どのように評価するのか。1つひとつの契約の締結時を見て、それが1週間なのか、1日だとか、それが短いという議論をしてもあまり意味がある議論だとは思えません。結果として見てみて、振り返ってみたら、細切れの契約が反復更新されていたということについてどう見るのかという観点で御議論いただく必要があるのではないかと思います。極論すれば、細切れ化ということになると、1日単位の契約がだめだということになるわけでありますので、そういった点での細切れ化の議論は実態に合わないのではないかと思っているところであります。
 それから、次ですが、19ページの2の点の「雇止め予告」のところでございますけれども、「大臣告示に定める雇止めの予告等についても、対象を広げることも含めて見直しの上、法律に基づくものとする」と書いてありますが、対象を広げる理由というのがどのようなものなのかというのはぜひ御教示をいただければと思っております。
 同じく19ページ目の「3 雇止め後の生活安定等」というところでありますけれども、ここにある「現行の解雇予告の制度における予告手当」ということと、フランスのような、「契約終了手当」、ここの違いというものが、私どもとしてはよく理解ができないところでありまして、どの点がどのように意味合いが違うのかというところを御教示いただければと思っております。有期契約労働者の生活保障としての手当の支給という制度化と、公的な支援の充実や雇用保険も変わりますので、明日雇用保険法の改正が行われるとすれば、そういう点をどういうふうに継続をして、その中に入れ込むのかどうかという点が必要ではないかというふうに思っております。
 その中で言うと、雇用保険法の中に有期労働契約者を入れるというところを、どのように整理をするのかというところだと思います。雇用保険制度は雇用保険事故の発生に応じて、給付を行うという制度ですけれども、有期労働契約で働くわけですから、そもそも有期労働契約が終了すれば、保険事故が予め予定されている人を雇用保険の中に入れるという制度を仕組むということになると、それは今の全体の雇用保険の中との整合性をどのようにするのか、予め予定をされているのであれば、保険料率を労使双方、違う料率にするというような工夫が必要だと思いますが、そもそも雇用保険制度になじむのかどうかも含めて雇用保険のほうの議論が必要なのではないかと思っております。
 次が21ページ以降の「均衡待遇、正社員への転換等」でございます。
 中間取りまとめで述べられているように、EU諸国のような有期労働契約者であることを理由とした合理的理由のない差別の禁止ということを即我が国に導入するということは不可能なのではないか。比較し得る正社員のあり方について検討がなければ、有期労働契約者の処遇のあり方を論ずることが難しいのではないかと感じております。
 その点で「パート労働法」の枠組みを有期労働契約者にも応用するということについては慎重な検討が必要なのではないかと思っております。
 それから、23ページの「3 正社員への転換等」ということでございます。
 ここのところが、むしろ私どもは非常に重要だと思っておりますが、まず言葉遣いの整理で、23ページの下からが「正社員への転換等」でありますが、ここのところで言うと、23~24ページにかけては、すべて正社員の話で、24ページの最後の段落の「また」というところが、「等」という記述で、正社員と正社員等というところの違いが多分ここで書き分けられているのだろうと思うのですけれども、多分一般的にはそういう理解はないのではないかと思っております。
 そこで、お渡ししているパワーポイントの資料でありますが、右下に数字を載せておりまして、1ページでありますが、有期労働契約研究会中間取りまとめで、私どもとしての理解は、縦軸に契約の期間が無期雇用なのか、有期雇用なのかととりまして、横軸にフルタイムなのか、パートタイムなのかという時間軸をとって4つの象限をつくっております。この中間取りまとめの正社員の定義は、ここの無期雇用でフルタイムで、そして直接雇用という定義が書かれています。直接雇用のところは三次元になるので表現しておりませんけれども、原則、この面では直接雇用を原則として考えると、正社員のところと、この24ページで言っている「時間限定」、「勤務地限定」、「職種限定」というのは、いわゆる正社員ではなくて、私どもとして、今、「無期契約限定社員」という名前を仮につけまして、かつ私ども経労委報告で、この何年か短時間正社員も多様な雇用形態としては重要とずっと言っているものですから、短時間正社員はそのまま左の上に載せた上で、しかし、時間限定ということになると、短時間の方も入ってくるとすれば、黄色い枠囲み、一応真ん中に位置づけています。そういう理解ですると、例えば左下のパートタイム社員や契約社員から正社員になる道、これが23ページに書かれている正社員への転換ということですし、もう一つは、黄色いところの無期契約限定社員のところに誘導していくと、それが2つの方向性があるので、特に黄色い無期契約限定社員のところに政策的に誘導していくということは非常に重要なのではないかと思っております。
 その点から言うと、まず正社員転換についてコメントをさせていただくと、海外の実証分析が紹介をされておりまして、その点、参考にはなるわけですけれども、日本において効果が上がるかどうかという点については十分検討が必要ではないか。その点で、義務付けとかインセンティブというのは、通常考えれば企業に対する奨励金や制度導入の助成金、そのようなものをイメージしますけれども、それ以外にどういうものがあるのかという点についてぜひ議論を深めていただきたいと思います。
 例えば正社員転換が義務付けられるということになると、有期契約労働者の雇用機会そのものについてどのようになるのか、そういう議論をしなくてはならなくなるのではないかと思っております。
 その次に、先ほどの無期契約限定社員についてですが、時間限定、勤務地限定、職種限定というような多様な雇用モデルを労使が選択し得るようにするということについては、私どもとしてもぜひ検討してみたいと思っているところです。ただ、解雇権濫用法理の扱いも含めて、その点の議論を深める必要があるのではないか。この無期契約限定社員については、最近でも玄田有史先生、佐藤宏樹先生、久本憲夫先生も、そういうアイディアがあるのではないかと論文等々で紹介をされていると理解をしております。ただ、先生方の表現も、例えば準正社員であるとか、ジョブ型正社員であるとか、限定正社員とか、「正社員」と使っていらっしゃるケースが非常に多いと思います。それぞれの先生のイメージと、それから、今、ここで中間取りまとめで示されている、また、私どもが表現した「無期契約限定社員」というものが、同じものなのかどうかということ。特に「正社員」という言葉を使うのか、使わないのかということについてぜひ整理をしていただきたいと思っております。
 それから、判例ですけれども、少なくとも今でもこういう契約ベースで契約をするということで可能なことは可能だとも思っておりますけれども、判例を調べてみますと、勤務地限定では支店閉鎖に伴う整理解雇が有効とされたシンガポール・デベロップメント銀行事件(大阪地裁、平成12月6月23日)。一方、無効とされたものもあって、アメリカン・エキスプレス・インターナショナル事件(那覇地裁、昭和63年3月20日)というものがあるようでございまして、いちがいに今入れられるとしても、裁判としては、結果としていろいろあるのではないかと思います。
 職種限定でも同じで、職務に限定する合意を伴うものと認められるのが相当とされた東京海上日動火災保険事件(東京地裁、平成19年3月26日)というものがありますけれども、今、企業側としてこの有期研究会で推奨されたので、ここでやってみようかという環境には多分なっていないので、この点についての整理というのをぜひしていただきたいと思います。特にお願いをしたいと思っているのが、モデルの労働条件の明示、どのように明示したらいいのか。またはモデルの就業規則。それから、恐らく労働協約の中でも違いが見つけられないので、労働協約としても、そこの違いが、正社員とここが違うのだというところのモデルがないと、なかなか企業のほうも検討しづらいのではないかと思いますので、そういう意味でのモデル様式を御検討いただいて、お示しをいただければ大変ありがたいと思っております。
 それから、25ページの第6、「平成15年労働基準法改正の影響等」でありますけれども、選択の自由を広げる観点からは、契約期間の上限を引き上げることということは望ましいと思っておりますけれども、1年より長い有期契約を結んでいる例があまり多くはないということからは総合的に検討するということであります。実務の観点というよりは、理念系として、5年を超える有期労働契約というようなものがあってもいいのではないかと個人的には思っているところであります。
 それから、26ページの「暫定措置について」でありますが、法的な整合性をとって、日常生活の常識的な判断からすると、この片面性というものについて解消されるということについて、検討されるべきだと思っておりますけれども、ただ、国会で修正されたという事実がありますので、その点は重いかなということも一方で理解をしておりますので、そのところを含めた総合的な議論だろうと思っております。
 それから、少し離れますけど、最後に何点か申し上げておきたいと思います。この中間取りまとめの中で、御指摘をいただいている点は、確かにそのとおりで、問題は有期労働契約の現状の何が問題なのかというところで、それに対して、何をしなくてはならないのかというところの方向性についてであります。
 私どもも実態が長期雇用であるにもかかわらず、反復更新される有期契約の下に置かれた労働者が雇止めに直面すること、特に安易に雇止めに直面することが問題だと思いますし、求められるスキルの水準が比較的高くないために処遇があまり高くないということも課題だろう。それから、勤続が短い傾向にあるために、教育訓練などの機会が得にくいということも問題だと思っておりますけれども、それはそれぞれの中にそういう課題があるにしても、今、何をするのかということになると、先ほど田中が申し上げたように、生活のためにパートで働かざるを得ない人たちが増えていること。それから、学校を卒業しても正社員になることができないために仕方なくアルバイトで働いている人が増えている。こういうところが喫緊の課題なのではないかと思っています。
 その点と、子育てが一段落した専業主婦が家計の補助のために働くとか、学生が小遣い稼ぎのために臨時的な仕事をするという面について言うと、その限りにおいては、有期労働契約で働いていたとしても、それぞれに問題・課題はあるにしても、相対的には社会的な問題として取り上げられることが今まではなかったわけで、その点については、そのところの違いというものを、政策的な必要性をどう濃淡をつけるのかということで、生活のためにしなければいけないとか、学校を卒業しても正社員になることができないという働き方と、そもそも現風景というか、そういうものの違いというところを区別して議論する必要があるのではないか。
 もう一つは、働く側にとってのニーズでありますけれども、有期労働契約としての雇用の不安定さは、一方で仕事が容易だったり、責任が軽かったりということについての裏返しですので、有期労働者としての働き方が望ましくないという点については、実はそういうふうに働いている人たちの虚像を見ているのであって、その実像を見ると、当人たちは不満を持っておらず、現在の働き方に満足をしているという調査もあるわけです。もちろん正社員並みに仕事をさせたり、責任を負わされたりしているのに処遇が悪いことで不満を抱く人もあると思いますけれども、こういう中での現風景で働いている人や有期契約で働いていることを選択している人をそのまま、ある意味で残しつつ、課題がある人に対してスポットを当てるというところをどのようにすくい上げていくのかということを政策的に行うことが重要なのですが、一方で、ここに書いてあるように、労働法のところで、それにがさっと網をかぶせて、政策目的が本当になし遂げられるのかどうかというところは、議論が必要なのではないかと思っております。
 そういう点から言うと、この中間取りまとめの中に、正社員への転換や無期契約へのみなしというものが指摘をされておりますけれども、本来、法律がこうしたことを義務付けるということが本当に必要なのかどうかということも含めて慎重に議論をしていただきたいと思っております。
 それから、第2番目に人事労務管理の担当者からすると、最近の法律改正は非常に多岐にわたって、難しい内容になっているという点から言うと、制度設計自身をシンプルにしていただきたいと、これはお願いでございます。
 3番目ですけれども、今回の議論は、いわゆる民間の有期労働契約の方向性ということについての議論ですが、国や地方公共団体にも有期労働契約で働いている方がたくさんいらっしゃると思います。この方についても、無期みなしというようなことになってくるのかどうかということについても、一方で課題があるのではないかと思います。
 4番目ですが、高年齢者雇用安定法で雇用継続措置の対象となっている高年齢者は非常に多いと思います。それも65歳までの雇用確保措置がありますけれども、将来的にはもう少し伸びていくということも政策的には課題があるとすると、一旦正社員から契約ベースになって、契約を超えるとまた無期みなしということになるのも、それも論理矛盾だろうと思いますので、そのような意味合いでの政策的な整合性もとっていただきたいと思っております。
 もう一つは、説明を漏らしてしまいましたが、先ほどの1ページを御説明させていただきましたけれども、2ページ目のところでございます。
 先ほど申しましたように、私どもは入口規制の議論はなかなかしづらいなということなので、入口のところのことは書いてなくて、2ページ目は出口のところだけ書いてあるということで、そういう意味で片面性があるというふうに御理解いただければと思いますが、出口のところで言うと、いずれにしても真ん中の青いところですけれども、契約期間が満了するという局面がいつか迎えるわけで、そういう意味で、上の(1)の正社員に向かうところと、(2)の先ほどしつこく説明しました無期契約限定社員のほうへ誘導していく方向と、3番目にクーリング期間を設けた上で、再度、これは当事者の合意が絶対の条件だと思いますが、再度有期契約を結んで働くということと、期間満了による雇止めというところとそれぞれに契約終了についての手当、保障というようなものがあるというところで、政策的には(1)と(2)にどうやって誘導していくのかという点が重要だろうと思っております。
 最後のページは、先ほど田中が申し上げた点で、繰り返しになりますけれども、そういう政策的なターゲットを置くということになれば、迂遠な方法なのかもしれませんけれども、経済状況をよくして雇用を増やし、労働条件をよくして、下に「政府の役割」としてありますけれども、学校を卒業して就職ができなかった人であるとか、家計の維持をしていかなくてはならない人には、右側にあります「マッチング機能の強化」、特に職業紹介機能の強化、公的職業訓練の拡充をして、スキルを身につけた上で、労働市場に入っていくというふうにすることが、繰り返しになりますけれども、迂遠なようですけれども、それが一番あるべき方向性だと思っておりまして、中間取りまとめの中のいくつかの規制を入れることによって、それが達成できるのかどうかということになると、そういう方向性ではむしろないのではないかというのが全体的な感想でございます。
 私のほうからは以上でございます。
○鎌田座長 どうもありがとうございます。大変な論点を、更に私どもに提示していただいたということで感謝を申し上げたいと思っております。
 これから少し質疑をさせていただきたいのですが、一言だけ、私、お聞きしたところの感想みたいなものを申し上げたい。1つだけなんですが、田中さんも、また輪島さんもおっしゃいましたけど、要するに問題を労働法あるいは雇用政策全体でとらえるべきであって、この一部分を切り取るということでは解決に資するわけではない。あるいは無理があるのではないかというようなお話が随所にあらわれていたと思うのですが、もちろんそのこと自体は総論として私も否定するところではありません。ただ、派遣のときの議論も私ずっとやってきて感じることなのですが、ここで我々が議論していることは、一口で言うと、過渡期の議論なんですよね。過渡期はゴールがどういうものなのかということは、それは実はわからないのですが、しかしすべて一挙に変えなければいけない、あるいはこういったことをしなければ、さまざまな問題を十分解決できますかという問題を立てられますと、それはできるところから、そして我々が、現に置かれているこの時代の中でさまざまな方たちの御意見を聞いて、そして合理性を持って部分的に解決していくということでしかないと思うんですね。
 これが私の基本的な考え方、そういう意味では過渡期ということなんです。経済の方とかいろんな方がモデルを出して、いろんなモデルに向かってどう進むかというような議論、あるいはこのモデルから見ると、この議論というのは整合性がどうかという議論あるのですけれども、しかし私がここで考えていることは、さまざまな問題を、それをこの限られた合理性の中でどう解決していくか、その知恵をぜひとも労働側・経営側の皆さんに御協力を得ながら前進をさせていくことが必要であって、それを十分ご存じだと思うのですが、問題は正社員の問題もあるでしょう、あるいは雇用政策の問題もあるでしょう、保険の問題もあるでしょうというような形で、全体を一挙に議論をし、それの解決を図る。それがなければこの問題に手をつけられないということではないと思います。そのレベルは十分御理解いただきたいと思っております。
 これが、一応私の感想ということでありますけれども、あと、先生方、どうぞ、さまざまな宿題に当たるようなこともあったと思いますが、御質問をしていただければと思います。
○山川委員 均衡のところで、パート労働法的な枠組みの応用につきまして、慎重に考えるべきであるという御趣旨のお話をされた際、あまりこのあたりは詳しくはおっしゃられなかったと思うのですが、具体的にどういう問題が考えられるかとか、何かありましたら教えていただければと思います。
○輪島氏 資料の1ページ目のところですけれども、そういう意味では、パートタイム労働法のエリアというのは左側だと思います。右の下の契約社員のところが、今、パートタイム労働法はカバーをしていない部分。しかし、この研究会報告で言うと、高度技能者は市場での競争力があるので、それはいいよという、実態調査からでも1%ないし2%ぐらいだったと思いますけれども、そこのところは、右下の緑のところは除外をすると、そうすると左側全体のところと右の下の青いところをどのようにバランスさせるのかという多分議論だと思うのですが、あまりにも難しい課題なので、そこまで想像力が及んでいないので、特に踏み込んだ回答をしていないというのが実際です。
○山川委員 ある意味では、短時間正社員の取扱いとパート社員の取扱いのバランスといいますか、双方とも視野に入れた検討が必要であると、そういうことは具体的にはともかく言えるということでしょうか。
○輪島氏 はい。
○荒木委員 大変多岐にわたる重要な論点を御指摘いただきまして勉強になりました、ありがとうございました。中間報告に対するコメントでしたので、今日おっしゃったことを全部つなげると整合性のあることになっているかどうかというのが少しわかりにくかった点もあるので、ちょっと確認的なことなのですが、14ページの「区切り」の効果のところで、区切りを超えると無期への転化というのは行き過ぎだと。いろいろ選択肢ある中では、今日の時点でおっしゃったのは、雇止め予告義務が発生するということだろうということですが、その後のところ、クーリング期間というのは非常に重要だという話がありまして、それもわかりやすい個人単位で考えられるという話ですが、雇止め予告義務しか発生しなければあまりクーリング期間の話は出てこないかなという気もいたしますので、これは仮に予告義務以上の規制になった場合についてのコメントと、そのように理解すべきということでしょうか。
○輪島氏 というふうに思いますけど。
○荒木委員 そうですか。ほかにもいろいろありましたけれども。
○輪島氏 組み合わせがありますので。
○荒木委員 組み合わせがありますよね。こういう政策をとって、つまりこうすべきだと、あまり規制強化にならないようにということをとれば、後は議論しなくて済む問題もあるけれども、今日のコメントなさったのは、もし実際の規制をしたときには、それを前提にするとこの問題はこう考えられるという、そういうコメントというふうに受けとめるべきだと。
○田中氏 今、輪島が申し上げたように、この全体をいろいろ考えたときに、中間取りまとめのそれぞれについてコメントをしようとすると、全体としてのバランスというか、整合性がとれるかどうかということがあります。整合性をとろうとすると、例えば入口規制や上限規制などを考えないとしてしまえば、残りの取りまとめ部分にコメントする必要はなくなるわけですけれども、議論の整合性をとろうとするよりは、中間とりまとめのパーツ、パーツに、私どもとして考えられることをコメントしてみようということなので、齟齬が出るかもしれません。ただ、おっしゃっているように、若干そういう規制が入れば、私どもとしては問題だとコメントする部分と、そもそもそれは認めてくださいという部分とが混在しているというのは、大変恐縮ですけど。
○荒木委員 わかりました。
○輪島氏 そういう意味で言うと、1つ申し上げなかったのは、区切りを明確にすれば、労使双方にとって予測可能性が高まりますけれども、現状でも10年とか、長い人も利用可能期間の中でおさめてしまうということになりますので、そこからすると、新しい制度が施行された以降に、そこのところをどのようにするのかということなど、かなり予測可能性が高まってクリアカットになるにしても、戸惑いがあるということもあるかなと思います。
○鎌田座長 今、田中さんおっしゃったように、私どもの中間取りまとめに対して、全体として一貫させるということでなくて、それぞれについてコメントをするということで、それはありがとうございます。ただ、今、御説明いただいた理念といいますか、基本的な価値観が少し逆に見えにくくなったところもあったので、もう一度確認を含めてお聞きしたいのですが、まず1つは、一番最初に、これは田中さんが最初に御指摘いただいた基本的な政策、有期についての考え方はここに書かれているものであるということで、特に24ページのところを挙げて、さまざまな視点もあるが、問題も残っているだろうというようなことで、「むろん」というところから、検討課題としては残っているものもあると、こういうようなことで提起をされて、そして私どもの中間取りまとめが、現在、ここでの文章の対応すべき課題に対して検討するものであって、その点で位置づけていただいているということでよろしいのですねということが1つなんですね。私ども中間取りまとめがどういった位置づけで今とらえられているのか、この大原則といいますか、方針の中で、それを1つひとつお聞きしたいということ。
 それから、経営側の価値観ということになろうかと思うのですが、制度のシンプルさといいましたか、制度設計のシンプルさというようなことを、輪島さんが最後のところで、先ほど来、議論になっている予測可能性の問題も含めて、予測可能性が高まれば、それから副作用的に弊害もあるというのはいろいろあると思うのですけど、しかし、シンプルさというのは予測可能性ととらえて、それは1つは優先すべき課題として考えていいのだということで、そう理解してよろしいのかということ。
 それから、途中で、特に就業形態とか、労働者の特性などを見ながら対応すべきであるというような御指摘があったのですが、一言でまとめてしまいますと、私、これは乱暴ですが、労働者の多様なニーズをとらえる必要があるのだとまとめてよろしいのかということなんですが、それはニーズをどうとらえるかというのはいろいろあろうかと思いますので、基本的に労働者のニーズということを考えてみたらどうかというようなことで言われていたのかと思います。
 今、3つほど、基本的な観点といいますか、そういったようなお考えを少し確認したいと思うのですが、いかがでしょう。
○田中氏 まず、第1の御質問ですが、この研究会の位置づけ、中間取りまとめについて。
○鎌田座長 中間取りまとめをどう受けとめておられるか。
○田中氏 私どもとして、経営労働政策委員会報告の中でも、労働市場におけるいろんな問題点を認識しておりますので、それを法的な側面から御検討するのは、1つの材料といいますか、試みだろうという位置づけはそのとおりだと思っています。ですから、そういう意味では中間取りまとめを否定するとか、そういうことではございません。
○鎌田座長 ありがとうございます。
○輪島氏 予測可能性を高めるということは、別途の副作用ももちろんあると思いますが、ただ、有期の関係でいうと、わかりにくさというのは随所にあるのではないかという点からすると、予測可能性を高めるということが1つの論点だとは思います。しかし先ほど少し申しましたように、現状からすると予測可能性が高まったがゆえに影響が出てしまうところも確実にあると思いますので、そのところのケアも一方で必要なのだろうと思います。予測可能性が高まった制度が定着をしていけば、そういう意味ではなくなるとは思うのですけれども、入れた当初のところの影響はかなり大きい部分もある。それのケアは別途必要だろうと思っています。
○鎌田座長 シンプルさというのは、予測可能性以外のことも想定されているんですか。
○輪島氏 同義だというふうには思いますけれども。
○鎌田座長 そういうことなんですね、わかりました。
○田中氏 3点目の労働者のニーズといいますか、ニーズというのを企業側と労働者側がお互いに、1つの仕事をどうするかということで決まってくるものであって、一方的に労働者側がこれをやりたいとか、こういうふうになりたい、こういった処遇であるべきだということで決まる話ではなくて、一方で片側に、企業として、こういう条件で、賃金、労働時間も含めて、これでどうだと提案していくわけです。そこでお互いに合意したところで契約になるわけですから、一方的に労働者のニーズだけで決まるとは私どもは考えてなくて、それは労使双方が契約に基づいて決まってくるものであろうと思っております。
○輪島氏 労働者のニーズも多様だと思うんですね。前回は労働組合からのニーズ、意見から、アンケート調査から出てくるニーズ、さまざまなものがあると思いますので、さまざまなものを踏まえて御検討いただければと思っています。
○鎌田座長 さっきど忘れして、済みません、もう一点だけ、基本的な理念のところで。需給変動のリスクの話なんですけど、これは田中さんが冒頭のところで、特に私どもの中間取りまとめの5ページ、需給変動のリスクの記述について違和感があるとおっしゃった。何かそのような表現だったと思うんですが、私がよく理解してないので少し確認をしたいのですが、確か御指摘ありましたよね。このリスクの問題で言うと、関係者、関係者というのは経営者と労働者、それプラス政府というようなこともおっしゃって、それぞれがリスクをどう負担するかという問題で、一方的に有期労働者がリスクを負っているというような表現は違和感があると、そういうような文脈だったと理解しているのですけど、こちらでよくわからなかったのは、先ほど来、特に雇止めのところで議論になっていることは、需給変動のリスク、それは予測が難しいというのがあると思うので、そういうリスクを、有期契約労働者を利用し、あるいは反復更新の形で雇用調整を図るということは、それは有期という労働者が、そういったような契約形式を用いることによってリスクを負っているということになるのではないですか。つまりそういう表現が違和感があるというのは、どこがどういうふうに違和感があるのか、私よく理解できなかったのですけれども。
○田中氏 私どもが違和感があるというところは、経労委報告で言うと、16、17ページに、日本型ワークシェアリングがありますけれども、先生がおっしゃるように、需給変動が起きて、企業として、そういう急激な業績の悪化に直面したとき、どう対応するかといったことです。誤解があるかもしれないと申し上げたのは、一方的に需給変動で業績が悪化したら、すぐ有期労働者に悪化の影響を専ら押しつけていくというような感じの印象が受けたのでそういうふうに申し上げました。ですから経営サイドからすれば、経労委報告の「ワークシェアリングとは何か」の部分に書いてあるように、いろんな手だてを考えながら、雇用を何とか維持しよう、または政府にもお願いをしながら維持しようとしているわけで、そういう企業努力というのを見ていただきたいというのが、先ほどの説明です。先ほど中央会の方も、この部分についてコメントをされていたと思うんですけど、多分同じような印象を受けたのだろうと推測しています。だからそこは誤解かもしれませんけれども、非常に狭い労働市場だけを考えれば、確かにそういうふうに見えるかもしれませんけれども、私どもとしては、経営サイドとして、それなりの努力をしてきているというつもりでございます。
○輪島氏 文字としては「専ら」というところ、専らというのは有期労働者だけにリスクを負わせているという、有期労働者の実態はさまざまなのに、有期労働者全体に専らなのかどうかというのはよくわからない、そういう意味合いです。
○鎌田座長 時間が、予定時間が参りまして……
○田中氏 済みません。
○鎌田座長 いやいや、とんでもない。もしよろしければ、もう1問ぐらい、先生方、いいですか。
○橋本委員 済みません、御発言の確認だけお願いさせていただければと思います。14ページあたりの区切りの効果のところのコメントのところで、雇止め手当について検討に値するのではないかと御発言があったと思うのですが、この雇止め手当というのは、報告書では、19ページ以降に書かれています契約終了手当、―ここでは「予告手当」という文言も使われているので、この関係を明らかにすべきではないかというコメントもいただきましたが―ここにある契約終了手当と同じということでよろしいでしょうか。
○輪島氏 同じものなのかどうか、私どもとして読み取れないので、そういう趣旨です。
○橋本委員 わかりました。
○山川委員 正社員転換等を考える際に、安定化ということと、もう一つはキャリア形成というのでしょうか、スキルの向上とか、そういう2つがあると思うんですけれども、どちらかというと、経労委報告への御質問になってしまうのかもしれませんが、例えば無期化した場合に、更に正社員として活躍できるようなスキルを形成するというような可能性もあるのですが、67ページのところで、非正規労働者の職業能力開発、確かにこれは御指摘のように重要なことであると思うのですけれども、ここで何か具体的なことを考えられておられるかどうか。先ほどのイメージ図では、公的職業訓練ということでいえば、労働市場に出た後のイメージが強かったのですが、ここでは在職中の非正規労働者の能力開発が問題となっていて、かつ官民協力ということでしたので、何か具体的な、あるいは抽象的でもイメージがあればお教えいただきたいと思います。
○輪島氏 実はそれは非常に難しくて悩ましいですね。パート労働法8条、9条のところの運用のことを考えると、実はこの仕事をしておいてほしいと。しかし、もう少し多分できるよねということになると、もう少し難しい仕事をやってほしい。それを与えてやってもらう。更にもう少しやってほしい。ということになると、だんだん正社員との均衡ないし活用のところがむしろグレーになっていきますよね。ですから、今、パート労働法の中で、8条の範疇にならないようにするためには、むしろこの仕事に限って、これだけをやってねといった雇用管理をしたほうがよい。予測可能性を高めるためには、企業としてはそうならざるを得ないですよね。ですから労働法のところでそういう規制を入れて、それを過度に遵守しようとすると、そういうふうになってしまうのかもしれませんが、人を育てようとすることになると、そういったことではなくて、もっとやってほしい。そしたら、こういうふうになるよねということでインセンティブになるし、本人にも動機付けになるはずなのに、それを押し込めてしまうようなことが一方であるというのが企業の現場では一番困るところで、それがなければ、むしろおっしゃったように、能力開発やインセンティブを与えて、もっと育ってほしい、正社員になってほしい、だからできるよねというふうになるところが、今の現行のものでいうと、むしろそれをやめておいたほうがクリアカットだというふうになると、お互いに不幸なのだろう。それが企業の現場の実務としての悩ましいところだと思っています。ですから問題解決にはなかなかならないのですけど、非常に悩ましいと思います。
○山川委員 官民協力というのは、その辺も何か検討してほしいとか、そういうのもあるということでしょうか。
○輪島氏 わかりやすいのは、ジョブカードだとか、資格とかというのは非常にわかりやすいのですけれども、その資格だけ持っていて、労働市場で通用するかというと、またそれはそういうわけでもないので、非常に難しいですよね。
○山川委員 ありがとうございました。
○鎌田座長 よろしいですか。
 それでは、長時間にわたり貴重な御意見ありがとうございました。私ども今いただいたさまざまな論点、新しい論点も含まれていたかと思いますが、これについても、更に検討を加えたいと思っております。
 本日はどうもお忙しいところ、ありがとうございました。
(田中氏・輪島氏退席)
○鎌田座長 それでは、次回の日程をお願いしたいと思います。
○青山室長 次回の研究会の日程は調整中でございますので、委員の皆様には改めて御連絡させていただきます。以上でございます。
 ○鎌田座長 それでは、以上をもちまして、本日の研究会は終了いたします。ありがとうございました。
 
(照会先)労働基準局総務課労働契約室政策係(内線:5587)