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第9回有期労働契約研究会議事録
日時
平成21年12月11日(金)15:00~17:00
場所
厚生労働省労働基準局第1・2会議室(16F)
出席者
〈委員〉 荒木委員、阿部委員、鎌田委員、佐藤委員、橋本委員、 藤村委員、山川委員 〈事務局〉 渡延労働基準局審議官 前田労働基準局総務課長 富田労働基準局勤労者生活部企画課調査官 青山労働基準局総務課労働契約企画室長 丸山労働基準局監督課中央労働基準監察監督官
議題
(1)論点(契約の更新・雇止め、その他)について (2)その他
議事
○鎌田座長 定刻より少し早目ですが、皆様お集まりのようですので、ただいまから第9回「有期労働契約研究会」を開催したいと思います。
委員の皆様方には、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
また、本日は奥田委員が御欠席されています。
本日は、契約の更新・雇止め、その他について御議論いただきます。
まず、前回の議論の内容について、資料として提出されています。阿部委員におかれては、前回までの論点について御意見がおありでありましたら御発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○阿部委員 何度か欠席をしまして、座長始め皆さんに御迷惑をおかけして申し訳ありません。7回目の研究会で議論されました総論のところで、前回議論がなされました均衡待遇と正規労働者への転換のところで、若干私の意見を述べさせていただきたいと思います。
現状認識のところで、まず有期契約労働者がどのような位置づけになっているか。1980年代以降増加傾向にあるがその位置づけに変化はあるかということなんですが、私は1980年以降に増加している有期契約労働者というのは、さまざまな要因によって増加し、多分その位置づけも大きく変わってきたのではないかと思います。
とりわけ、要因としては企業のビジネスモデルですとか、企業の中での生産技術、その他のさまざまな技術が大きく変化したことによって、それまで正社員でしかできなかったような、あるいは教育訓練を非常に多く投入しないとできなかったような仕事が短期契約、短期の教育訓練でも済むような仕事に変わってきたということがあったのではないかと考えておりまして、したがって、それまでは正社員がやるような仕事もビジネスモデルやさまざまな技術の影響によって有期契約労働者でもできるようになってきているということで、かなりその位置づけも大きく変わってきたのではないかということであります。
その結果、今回の調査でも4つのタイプに分かれて、さまざまなレベルで仕事をする有期契約労働者が出てきているということが実態としてわかってきていますけれども、それは今述べたようなビジネスモデルや生産技術の大きな変化が生じたことに影響を及ぼしているのではないかと思っています。
最後に、解雇規制が厳しいから有期契約労働者が増えたという意見もあるとは思うんですが、私はこれまでも解雇規制が厳しい我が国の中でも、解雇というか雇用調整は行われてきているわけですので、それほど強く影響したようには思っていません。実際に実証分析の結果もこの点はなかなか白黒付けられていない部分でもあります。
むしろこの有期契約労働者が増えたのは、先ほど申しましたような技術的変化ですとか、ビジネスモデルの変化ですとか、場合によっては国際競争の激化とかといったこともあるのではないかなと思っております。
もう一つ、前回の議論で均衡待遇、正規労働者への転換ということでございますが、私の認識としては、さまざまなタイプの有期契約労働者がいる中でどのような形で均衡待遇あるいは均等処遇というものをしていくのかというのは、法律に書くのは非常に難しいのではないかと思っております。むしろこういった均衡待遇ですとかというのは、それぞれに任せるということも1つあり得る考え方ではないかと思います。それは前回荒木先生がお話しになったことに私はかなり賛成すると思っております。
私は均衡待遇、均衡処遇といったものよりも、正社員への転換というのをうまく企業にインセンティブを与えて、転換を行えるようなことが可能にならないかなということを考えております。
実はこれまでの実証分析になりますと、幾つか転換制度が企業の生産性にプラスの影響をもたらしているというような結果が見られております。例えばスペインの製造業を分析した結果ですと、企業別のデータを使って有期雇用労働者の割合と企業の生産性、正確には全要素生産性と言われるものの関係を丁寧に調べると、有期雇用労働者の多い企業ほど生産性は低いという結論が見られております。ただし、正社員への転換率が高い企業はそうではない企業に比べて生産性は高いということもわかっております。
ですので、このスペインの例では、そもそも有期雇用割合が高い企業というのは生産性が低いんだと。ただし、転換をすることによって労働者にある意味インセンティブを与えることで生産性を高め、実際に正社員になるということもありますので、生産性が高くなっているということもあり得るということです。
スイスでも有期雇用者、特に正社員の転換の可能性の高い労働者ほど、正規労働者よりも一生懸命仕事をするという結果が実証分析の結果わかっております。一生懸命仕事をするというのは、それが果たしていいことかどうかというのはわからないんですけれども、この実証分析ではサービス残業をどれぐらいやっているかというのをはかってやっているんですが、転換可能性の高い労働者ほど正規労働者よりもサービス残業をしたりしているという結論があって、ある意味、一生懸命働くというインセンティブに転換制度はつながっているということであります。
もう一つ、ポルトガルの例ですけれども、有期から正社員の転換というのは、実は正社員に雇うかどうかのスクリーニングになっているということが強く発見されています。つまり、有期雇用という雇い方がスクリーニング、選抜のメカニズムを持っていて、いい人かどうかというのをそこで有期雇用の間に調べるというか、スクリーニングするということになっているそうです。
その結果、有期雇用が多い企業ほど正社員への転換率が高くて、それが有期雇用の社員の働き振りをよくしているとか、働くインセンティブを高めているというような効果につながっているということでありまして、結局この結論の逆を言うと、有期雇用のまま使い続ける、あるいは有期雇用で雇い止めをするというような場合には、その企業の生産性はマイナスになるとか、下がってしまうとか、労働者の働き振りに悪影響を及ぼすというようなことがこれらの結果では見られるわけです。
そういう意味で均衡処遇云々というもので何かやっていくというよりも、この正規労働者への転換というのをうまく制度的に位置づけることによって、企業の生産性が上がり、それが結果的に新たな正社員の雇用創出につながるとかといういい循環に持っていけるのではないかなと、実はこのヨーロッパの3か国の結果から考えているということであります。
以上です。
○鎌田座長 どうもありがとうござまいす。今日の議論にも非常に参考となるお話だったのではないかと思います。また今の阿部先生に対する質問なども、後のところで皆さんもしよければしていただければと思います。
それでは、今日の論点について御議論いただきたいと思います。事務局で資料を用意しておりますので、説明をお願いいたします。
○富田調整官 それでは、私の方から資料2~資料3-4まで御説明申し上げます。資料2が今日御議論いただきます論点を書いております。
1ページ目は7回の論点、2~3ページにかけましては前回第8回の論点、4ページ目になりまして、第9回今回の論点が出てまいりますので、4ページからごらんいただきたいと思います。
「1 契約の更新・雇止め」となっております。まず現状認識でございますが、有期契約労働者については昨秋以降、多数の者が雇い止めに遭い、今回のヒアリングや実態調査結果においてもその相当数が契約期間の短期化とも相まって雇用不安を抱いていることが明らかになったが、このような雇止め等の問題に労働法制として対応すべきという考え方についてはどのように評価すべきかということでございます。
現行法制の評価でございます。有期契約労働者の更新や雇止めに係るルールについては、使用目的に照らして短期の反復更新をしないよう使用者への配慮を求めた労働契約法のほか、手続面について定めた大臣告示がある程度でありますが、労働基準法におきます罰則付きの手続規制や労働契約法における解雇権濫用法理が適用される解雇に係るルールに比べまして比較的厳しくないということがありますが、今回のヒアリング結果等も踏まえまして、これらの雇止め、解雇という両者間のルールのバランスについてどのように考えるべきかということでございます。
有期契約労働者については、労働契約法により労働者を使用する目的に照らして必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならないものとされておりますけれども、今回のヒアリング結果等を踏まえまして、契約期間の細切れ化の問題についてはどのように考えるべきかということです。
大臣告示におきましては、一定の有期契約を更新しない場合には、契約期間満了日の30日前までに予告をしなければならないことなどが定められておりますが、雇止めに関するトラブル防止の観点から、更にこれを法律によって規範性を高めるべきという考え方につきましてはどのように評価すべきかということです。
有期契約労働者の契約が更新され、実質的に無期契約と異ならない状態で存続していると考えられる場合。東芝柳町工場事件判決がこの例です。雇用継続への合理的な期待が認められる場合、これは本日も紹介しますが、日立メディコという裁判例がありますが、このような場合は、裁判法理によって雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されるが、これを法律で明確化すべきという考え方についてどのように評価すべきかということです。
諸外国の法制との比較です。諸外国の法制においては、雇止めよりも、主として有期契約労働が使用できる場合を限定することにより労働契約の問題に対応しているものがありますけれども、このように入り口の規定の問題と雇止めといった出口の規制のバランスにつきまして、我が国の雇用システムの特徴に照らしてどのように評価すべきかということでございます。
諸外国の法制においては、フランスのように、契約終了後に労働者が不安定な状態に置かれることを防止するために、使用者に契約終了手当の支払い義務を課しているものがありますけれども、我が国の雇用システムの特徴等に照らしましてこれについてはどのように評価すべきかということです。
上記のほか、有期労働契約の更新、雇止めに係るルールとして具体的にどのようなものが考えられるか。有期契約労働者が一定期間の勤続年数後、一定期間を置いた後に再び雇用される、いわゆるクーリング期間の問題につきまして、今回の実態調査結果等を踏まえ、どのように考えるべきかということです。
「2 その他」としましては、有期契約労働者を取り巻く実態にかんがみ、上記の論点のほか、労働条件等の改善のためにとるべき施策の方向性としてどのようなものが考えられるかということでございます。
資料3-1でございます。これはこの研究会で行いましたヒアリング結果のうち、更新・雇止め等に関するものについて抜き出したものでございます。上からごらんいただきますと、まず契約期間の更新は、育児・介護等の状況に応じて労働者の方が労働時間や休日等の労働条件の見直し、切りかえを行う契機として機能していると流通業の方が言っておられます。
契約期間満了には雇止めだが、反復更新より業務の縮小や店舗の返済がなければ原則65歳まで勤続することも可能ということを同じく流通業の方が言っております。
経営状況を理由とした自己都合による退職以外の労働契約の終了は、現下の不況下を含めて行なわれていない。そういう状況ではあるんですが、制度的には常に雇止めの不安を抱えているという声を聞いておられると製造業関係の労働組合の方が言っておられます。
雇止めを巡る大きなトラブルは起きていない。正社員は希望退職者の募集を行った例はあるものの、有期契約労働者には行っていないことも理由かもしれないと、流通関係の労働組合の方が言っておられます。
有期契約であることから更新されないことを恐れて、職場以内で意見を述べたり権利の主張もできない状況になっている。これは非正規労働者を組織している労働組合の方です。
販売ノルマの引上げを拒否したら更新してもらえないと思い込み、メンタルヘルスの不調の状態になっている例がある。これも同じく労働組合でございます。
使用者が試用期間自体を形式的にとらえており、試用期間を徒過した後、本来の契約期間の満了直前になって能力不足等を理由に雇止めの話が出されることがあるが、労働者にはこれは予見できず、納得もできない。事前に指導や教育の至らない点の指摘やより軽度な処分を行うことも含めて、段階を踏んで手続をしていくことが重要ではないかと、労働相談の担当者が言っておられます。
有期労働契約を反復、更新した場合など、期間の定めのないものと同視すべき状態になっているときに雇止めをすると、雇止めといえども解雇権濫用法理と同様の制限がかかることは判例上もはっきりしているが、使用者、特に中小企業には十分知られていないのが現状であり、当然雇止めできるという認識が非常に強い。雇止めの制限については何らかの形で明確化する必要があるのではないかと同じく相談の担当者が言っておられます。
その他ですが、期間満了まで務めることを促すため、契約期間を満了した場合には退職金のようなものを一定額支給しているというのが製造業で出ています。
雇止め時に労働者の希望に応じて、他の派遣先への就業をあっせんしているというのが人材派遣業で出ています。
仕事は恒常的であるにもかかわらず、実際の契約期間は細切れ化しており、6か月以下が圧倒的に多くなっているという現状を非正規労働者を組織している組合が言っておられます。
契約期間中の解雇について、特段の事情がないと困難であることについても認識が乏しいということについて、労働相談担当者は言っておられます。
資料3-2でございます。これは本研究会が行いました実態調査の今回の論点に関わる部分を抜き出したものでございます。(1)は1回当たりの契約期間でございます。これは参考の17年の実態調査と比較したものでございますけれども、これをごらんいただきますと、直接の比較はできないにしましても、3か月以上6か月以内とかというものを比較していただきますと何となく少し増えているとかそういう印象があるというものでございます。
2番のクーリング期間でございます。今回の論点にも上がっておりますけれども、クーリング期間を置いているという事業所については○で囲んでおりますが、2.5%となっております。
2ページの第3表は契約の更新形態でございます。契約の更新形態は事業所の方に聞いたところを○で囲んでおりますが、更新の都度、契約期間等について詳しく説明を行った上で、署名、記名、押印を求めているというのが52.3%。雇止めをする理由ですが、過去3年間の雇止めの理由としては、業務量の減少のためとか、労働者の勤務態度不良のためというものが多くなっております。
雇止めに対する考え方でございますが、雇止めはあるかもしれないが、やむを得ない場合に限って行うというところが52.9%となっております。
3ページ、雇止めに先立つ手続でございます。これはごらんいただきますと契約を更新しない旨を書面で伝えたあるいは口頭で伝えたというところがそれぞれ38.2と59.0となっているところでございます。
(7)が解雇・雇止め時の退職金または慰労金の支給の有無でございますが、雇止めのところを○で囲んでおるんですが、中途解雇時も雇止め時も支給しているのが13.2、雇止め時のみ支給しているのが5.1となっております。
(8)は、雇止めや契約更新をめぐるトラブルの有無、原因ですが、トラブルになったことがないというところは93.2ということで非常に多いわけですが、あえてあったことがある理由を見ますと、雇止めを伝えたのが急であったためというようなものや、更新後の労働条件についても納得してもらえなかったため、あるいは更新への期待についても認識の違いといったものが高くなっております。
次が個人の調査でございます。(1)の現在の契約期間も、17年調査と並べておりますが事業所調査と似たような感じでございまして、今回の調査結果の方が若干短くなっているような印象があるということでございます。
(2)の契約更新についての説明でございます。これについては真ん中のところですが、特別な事情がなければ自動的に更新する旨の説明というところが32.0%で、高い数字が出ておるということでございます。
(3)は解雇・雇止めの経験でございます。これは自分が解雇・雇止めの経験があるというのが20.7、自分に解雇・雇止めの経験がない場合が79.3なんですが、同僚に雇止めがあったというものが37.2になっております。
(4)が雇止めの理由ですが、理由を尋ねてみますと、景気要因などによる業務量の減少あるいは経営状況の悪化というものが挙げられております。
2ページ、雇止め時の手続ですが、これも書面で更新しない旨が伝えられたというのが16%、口頭で伝えられたというのが49.6となっております。
(6)は解雇・雇止め時の退職金または慰労金の支給ですが、この雇止めのときに退職金が支給されたというのが5.3%と個人の方が答えておられます。
雇止め時のトラブルですが、トラブルになったことがあるという方が41.4と少し事業所調査よりは高めに出ておるんですが、その理由を見ますと、雇止めの理由が納得できなかったのが52.8、雇止めの予告がなかった、あるいは遅かったが27.7となっております。
最後は雇止め時のトラブルへの対応ですけれども、こちらをごらんいただきますと、個人で会社の上司と話し合ったというものが34.2と最も大きい数字となっております。
資料3-3でございますが、こちらの方では今回の論点にかかります諸外国の法制との比較を整理したものでございます。まず、更新に係るルールを左で縦に並べておりますけれども、これは前回と重複する部分もありますが、今回の論点に関わるということで再度整理させていただいているものでございます。
我が国におきましては、更新回数については特に制限がないところでございます。ドイツは2つに分かれまして期間の定めが正当化される場合は更新回数に制限がない。正当化されない場合は、最長2年の間における更新は原則3回までとなっております。
客観的な理由を欠く反復更新は、解雇制限法を潜脱するものであり、最後の有期契約の締結は無効で期間の定めがないものとなるとなっております。
フランスの更新は最長原則18か月以内に1回のみ可能。更新時にも有期契約を利用する正当な理由を証明することは必要となっております。
イギリスは、原則として雇用期間が4年未満であれば更新回数に制限がない。
韓国は、雇用期間が2年以下であれば更新回数に制限なし。
デンマークは、更新の濫用防止として、更新は原則として客観的な理由によって正当化される場合のみ可能。ただ、大学における教師や研究者等におきましては、更新は2回まで。これらの違反については損害賠償請求の対象となる。
反復継続的利用の濫用があった場合は、無期契約となるのが判例法理で書かれております。
アメリカは特にないということです。
期間満了、雇止めに係るルールでございますが、我が国におきましては3回以上更新されている場合等には、契約期間満了日の30日前までに雇止めの予告が必要。また、労働者の請求により更新しない場合の理由の証明書を交付することが必要となっております。
判例法理によりまして、実質無期または雇用保護への合理的期待が認められる場合の雇止めは、解雇権濫用法理の類推適用などで無効とされることがございます。
ドイツは特に雇止めそのものに係るルールはございませんで、最後の期間の定めの正当性を争う形になります。
フランスにおきましては、期間満了時に期間の定めのない契約での継続が使用者から提示されなかった場合に、使用者から契約終了手当が支払われる。ただ、季節的雇用等は適用除外になっております。その額は契約期間中に支払われた税込総報酬の10%が原則となっております。
イギリスは特にございませんで、韓国は雇用期間が2年以下であれば原則雇止め可能でございますが、2007年法以前の裁判例で自動更新で長期雇用の場合、その更新拒否に正当な理由が必要とするものがございます。
その他にまいりまして、我が国におきましては、労働契約法におきまして使用する目的に照らして必要以上に短い期間を定めることにより、反復更新することのないように配慮しなければならないとなっております。
大臣告示で一定の有期契約を更新する場合は、実態及び希望に応じて契約期間をできる限り長く設定する必要がございます。
ドイツでございますが、同一使用者と以前に労働関係にあった場合は、正当事由が不要な有期契約を締結できないということで、ある意味でクーリング期間的なものは認めていないということです。
フランスは有期契約の終了後、同じ職に有期契約や派遣で労働者を採用するためにはクーリング期間を置かなければならないとなっておりまして、それは具体的に(1)(2)のようになってございます。このクーリング期間を遵守しない場合は、無期契約とみなされるほか、刑事制裁の対象となります。
イギリスですが、中断期間後の再雇用は当該期間が継続期間として一定の範囲に収まるようなものであれば継続期間として扱われることになっております。
資料3-4にまいりまして、主な裁判例を整理したものでございます。2ページは、解雇権濫用法理の類推適用がなされた裁判例の類型を整理したものでございます。
これは平成12年、反復更新に係る研究会が労働省に設置されておりまして、それで4タイプに整理されたということがございます。その4タイプに整理された中の代表的なものを紹介させていただいたものでございますが、まず1つ目は実質無期契約タイプとなっておりまして、東芝柳町工場事件が代表例です。
各労働契約は期間の終了ごとに当然更新を重ねて実質上期間の定めのない契約と異ならない状態で存在しており、雇止め意思表示は実質において解雇の意思表示に当たり、その効力の判断に当たっては、解雇に関する法理を類推すべきものであるとした原審の判断を是認した。
2番目は実質無期ではないんですけれども、期待保護を図ったというもので、それも反復更新に関わるものでございます。日立メディコが代表例でございまして、臨時的作業のために雇用されるものではなく、雇用関係はある程度の継続が期待されており、5回にわたり契約更新がされていることから、雇止めに当たっては解雇に関する法理が類推されるとした原審の判断が認定されたというものでございます。
3点目は期待保護です。反復更新というよりも継続特約に重きを置いたものでございます。その代表例として挙げておりますのが龍神タクシー事件でございます。これは臨時雇いのタクシー運転手に対する1年間の雇用契約期間満了時の雇止めという1回での雇止めなんですけれども、本件雇用契約はその実態に関する諸般の事情に照らせば、実質は期間の定めのない雇用契約に類するものであり、雇用の継続を期待することに合理性を肯認できるものとして更新拒絶が相当と認められるような特段の事情が存しない限り、期間満了のみを理由とした雇止めは信義則に照らし許されないとされたものでございます。
最近の事例としまして、学校法人立教女学院事件を挙げておりますけれども、これは被告が運営する短期大学において派遣労働者として3年間勤務した後に、従前と同様の業務に有期嘱託職員として勤務していた原告が、2回の更新後に雇止めされた事案につきまして、これも担当していた業務の恒常性であるとか、契約更新時の合意内容、これが例えば原告の勤務成績で判断するとか書いてあった。更新時の事務局長等の説明などから、本契約がなお数回にわたって継続されることに対する合理的な期待利益があるとされたものでございます。
これでユニークなところは次のパラグラフでございまして、嘱託職員の雇用継続期間の上限を3年にするという方針が実は決まりまして、それを理由として雇止めするためには、その方針が出された時点で既にこれを超える継続雇用に対する合理的な期待利益を有している嘱託職員に対しては、当該方針を的確に理解され、その納得を得る必要があるところ、本件雇止めはこの方針を形式的に適用した一方的なものであり、この継続利用に対する合理的な期待利益をいたずらに侵害するものであって、これは認められないとされたものでございます。
4番は純粋有期契約タイプでございまして、その代表例として2つ挙げておりますが、まず亜細亜大学事件でございます。これは20回更新されて21年間にわたった非常勤講師の雇用契約ですが、専任教員との職務・待遇・拘束性の相違性などから、それが期間の定めのないものに転化したとは認めないし、また期間の定めのない契約と異ならない状態で存在したとは認められず、期間満了後も雇用関係は継続するものと期待することに合理性があるとも認められないとされたものでございます。
次の旭川大学事件でございますが、外国人語学教員の労働契約は、実質的に当事者双方とも期間は定められているが、格別な意思表示がなければ当然に更新されるべき労働契約を締結する意思であったと認めることは当然できないということで、これも期間の定めのない労働契約に転化した、あるいは解雇に関する法理を類推すべきと解することはできないとされたものでございます。
次は解雇権濫用法理の類推適用などにより、雇止めが認められない場合にどういう効果が生じるのかということを裁判例で紹介させていただいたものでございます。1番目は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係とされたものでございます。
この代表的なのが日立メディコ、お読みいただきますと、解雇権濫用法理の類推適用によって、解雇であれば解雇無効とされるような事実関係の下に、使用者が新契約を締結しなかったとすると、期間満了後における使用者と労働者の間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられるということで、従前の労働契約が有期ですから、無期になるものはないということでございます。
次の龍神タクシー事件がより明確に書いておりまして、3行目ぐらいからごらんいただきいと思いますが、更新により雇用契約が期間の定めのないものに転化するものではなく、また当該1年間経過後に当然に再更新がされることになるものでもないと認定がされております。
不法行為責任まで問われた例というのが次の恵和会宮の森事件でございまして、病院準職員介護員、これは3か月の試用期間で1年契約3回更新された方ですが、職員は当然に更新されるとの期待を有していたとはいえ、また病院側に長期雇用の意図があり労働者が継続雇用の期待を持つ状況にあったといえ、実質的に期間を定めない契約と異ならず解雇権濫用法理が類推適用されるとした。
効力は次のところでございまして、当該雇止めを無効として、雇用契約上の権利を有する地位を確認したほか、当該雇止めは不法行為に該当するということでございまして、これは理由としましては後ろの方に付けておりますけれども、かなり主観的な理由によって雇止めをしたとかというようなものがありまして、そういうものもあって不法行為に該当するということが判断されております。
その他の裁判例で2つほど付けさせていただいておりますけれども、まず近畿コカ・コーラボトリング事件です。まず当初の契約は無期契約であったか否かは明らかではないが、期間の定めのある労働契約を交わした勤続期間の途中からは、有期契約を締結していたと認められたというものでございます。
当初は無期だったかもしれないけれども、有期の契約を結んだときから有期ですねということで、お互いの合意を尊重したというような判例でございます。
報徳学園事件でございます。これは前回もお出ししましたが、常勤講師として雇用され、契約を3回更新後に雇止めをされた原告につき、常勤講師の雇用は3年が上限との校長らの発言があったが、原告は当該発言前の時点において既に雇用継続に関し強い期待をしており、かつ、期待するにつき高い合理性があるから、このような期待利益が遮断または消滅したというためには、雇用継続を期待しないことがむしろ合理的と見られるような事情変更や雇用継続しないとの当事者間の新合意を要するとされたというものでございまして、立教女学院事件にも近いものがあるんですが、継続期待がありましたらそれを変更するような事情変更とかコーラボトリング事件のように当事者間の慌しい合意がないと無理なのではないかと判断したのが報徳学園の事件でございます。
私からの説明は以上でございます。
○鎌田座長 ありがとうございます。
それでは、契約の更新・雇止め、そのほかの論点について御質問、御意見がありましたら自由に御発言をお願いいたします。また、論点について追加すべき点があればそれもまた御発言をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○藤村委員 そもそも有期労働契約というのは、仕事の終わりがほぼ見えているという場合に雇うものだと思うんです。例えば3階から4階に引越しをする。今は普通は引越し業者に頼みますけれども、その会社が引越し作業をやるためには現社員だけでは無理なので外から人を雇ってきて、例えば1か月の間やって、引越し作業が終わったら終わりですという、非常に明確な有期雇用ですね。そういう合意も勿論あるんですが、その場合に雇止めというのは終わりねということで余り問題にはならない。
問題になるのは、仕事の終わりがよく見えていない、今のあれでいうと例えば3階から4階に何か書類を運ぶというのが毎日のように発生する。そういう仕事は単純な作業だから余り会社としては給料を払いたくない。正社員の給料を払いたくないから、では有期雇用でという。でも、実は仕事の終わりは明確でないですね。その場合に多分更新というのが発生するという。
なかなか仕事の終わりが明確か明確でないかということと、企業側から見たときに正社員としての賃金を払うだけの価値があるかないかという。今そういう2つの軸でやられる4つの領域が出てきますけれども、多分問題なのは仕事の終わりが明確でないけれども、正社員の賃金を払うほどの仕事ではないと会社が思っている。この人たちは期間が来るとまた継続、終わるとまた継続となっていますね。それを制限するということの議論になると思うんですが、そもそもそういった仕事を有期契約でつなぐということはいいのかなと。単に私が考えていることを言っているにすぎないんです。
○鎌田座長 今、重要な御指摘だと思うんですけれども、1つは有期を用いる理由というものは期間を定めるということの合理的な理由というニュアンスが入っていると思うんですが、それは仕事自体に臨時的、一時的な性格がある、あるいは臨時的な一時的な労働需要の必要性があるということから有期というものを使っているんだ。それが1つの考え方。
もう一つ、今、藤村先生は終わりがよく見えないというかはっきりしないということもありましたけれども、私などが見ていると要するに別に終わりがあるとかないとかではなくて、一言で言ってしまうとずっとある仕事であっても有期を使う。なぜかというのは、雇用調整のしやすさということもあるのかもしれないし、今、先生がおっしゃったように賃金が数千円で安いという、あけすけな言い方ですけれども、そういうような使い方ということなのかもしれない。
藤村先生のおっしゃったことを私なりに言ったんですが、そういった場合も後者の方が有期という形で使う場合に適正なのかどうかという問題が出てくるのではないかというまとめ方でよろしいですか。
○藤村委員 はい。ありがとうございます。
○鎌田座長 一方では、これも何回か前の議論の中で、つまりグローバル化の中で競争が厳しくなって、正社員として人件費コストをできるだけ削減したいという要求がある。言わばそれはリスクなわけですね。景気の変動の中で雇用数。そういった変動を企業はなぜ人件費をそういうふうに調整してはいけないんですかという疑問もありますね。そこですね。それはそれで企業としての1つの経営的なポリシーというのもあると思うんです。それも1つは見ていかなければいけないという気もするんです。労働者の側から見るとそれが納得できるかどうかという問題はあると思います。
今の議論に絡んでも結構ですし、またほかの議論でも結構です。
○佐藤委員 今のことであるかどうかは定かではないんですが、入り口、つまり雇い入れということで雇用契約の開始のときに理由というのを、今回もやりましたけれども、まずはアンケートで聞くといろんな理由があるわけです。1個の理由ではないんです。マルチで付けると勿論、人件費業務変動対応、正社員になじまないとかいろいろあります。複数あるということがまず1つ考えておく必要があるだろうというぐらいの意味です。
雇止めの理由も聞くと、2ページの資料でいうと表4で出ていますが、業務量の減少、つまり仕事がなくなる。当初仕事があってかなり限定的だと思われたので有期契約で雇った。それがなくなるので雇止め、終了であるという非常に明快なのもあるんですが、それは単に43.4%にすぎず、次いで多いのが例えば労働者の勤務態度不良のためとか、こういうのは業務の変動性とかコストの問題というよりも、雇い入れたその人の働き振りという属人的な理由によって、しかも雇い入れた後に事前には十分に情報として持っていない、ある種の非対称性のようなものがあって、雇い入れることによってその情報が獲得されてそれが理由で解約に至っているというケースがなんと38.8%ある。
また業務内容に照らした労働者の能力不足も今と類似していますが27.3%。あらかじめ更新しないと契約していたためという、つまりこれはあらかじめ契約していたとおりで更新しないとしましたねということで解約に至っているのはなんと23.2%にすぎないわけであって、要は明確に一個の理由で雇い入れて一個の理由で解除に至っているというケースがむしろレアであって、実は実際にはいろんな要因が絡まっている。しかも悩ましいのは、業務の変動性とかコストという問題はさることながら、雇い入れた後に働きぶり云々によって実際問題として理由になっているという点。この点をどう考えるか、議論していく上で実態の認識のレベルにおいて、まず確認すべきことではないのかなということです。
○鎌田座長 働き振りというのはある種試しで使うというのか、試用的な使い方ということですか。
○佐藤委員 そうでしょうね。
○鎌田座長 要するに働いてみてもらわないと実際のところよくわからない。そこを有期という形で少し考えているという理由もあるのではないかと思います。
○佐藤委員 あるかもしれないですね。
○藤村委員 でも、同じ表を見ると7割が雇止めを行ったことがないと言っているんです。結果として、勤続年数が10年を超えるような有期契約の人もいる。そうなると、それはほぼ無期契約に近い。
○鎌田座長 法的にはそうなっていませんけれどもね。実質、当事者の中では無期に近いようなイメージというか意識を持っている方もいるかもしれません。
○藤村委員 そうすると、ほかの国の決め方などを見ると、最長何年ですという決め方がありますね。それは割と合理的なのかなと思います。つまり、それを超えて発生するような仕事であれば、それはもう無期契約の人でいいでしょうと。そうは言っても急に仕事がなくなるということがあるから、そこの部分の解雇の仕方、労働契約法の中に解雇してはいけないとは書いていないですから、そこが整理されていれば雇う側はもう少し気楽に雇えるのかなという気もします。
○鎌田座長 今おっしゃった最長というのは、例えば更新を含めて何年までというイメージですね。
○藤村委員 はい。
○鎌田座長 そうすると、その途中での雇止めというのはあるわけですね。つまり、例えば3か月契約を結んで更新をして仮に3年だとすると、3年までの雇止めというのはあるわけだけれども、更新をするのは3年以上してはいけないというようなことですか。
○藤村委員 そうですね。
○鎌田座長 現在のそういう規制というのは先ほど御紹介いただいた判例法理があるんですけれども、何か法律系の方で御意見があれば。
どうぞ。
○山川委員 やはり入口規制と言われるものと出口規制と言われるものが結構連続性かがあるような気がしまして、そもそも有期契約として利用すべきでないという規制パターンがあって、そこに入らない場合でも、先ほどお話のあったような期間の制限を課したり、あるいは更新の上限をかけたりという規制のと、上限はかけないけれども、雇止めについて解雇権濫用法理を類推適用するという規制の3つくらいがあって、連続的な感じもするんですけれども、やはりそこは使う理由によっても異なるのかなと。
有期労働契約者の類型によって整理しているというのは余りヨーロッパでは聞いたことのないような気もするんですけれども、ある程度持続的な雇用というのもあり得るけれども、雇止めに合理的理由を要するという形で制約することと、例えば更新に上限を設けることというのは、多分使われ方とかによって違ってくるような性格のものではないかという感じもするので、この研究会で行っている職務別といいますか類型別に考えることと、いろんな施策を考える際の組み合わせを行うことがある意味で連動してくる場面があり、自分では頭を整理しきれていないんですけれども、入口規制と出口規制もある意味では連続的なものがあって、これまでのお話ですと上限規制というのはある意味で入り口規制の方で議論していましたが、それも若干雇止め規制と両立するもので、しかし、連続的なものでもありうるので、いろんな仕組みを利用の類型ごとに検討するというのはあり得るのではないかなと思います。
別の話ですけれども、今問題になっているのは、一時的な仕事と一時的でない仕事のほかに、先ほど阿部先生の言われたこととの関係で、仕事が持続的にはあるんだけれども、いつ切られるかわからないという状態がいろいろ出てきている。いつ受注が切れるかもしれない。多分、そういう観点から有期契約を利用しているということもあるのではないか。つまり、本来的に一時的なものと、本来的に永続的なものと、永続的ではあるんだけれども、いつ切られるかわからないという不安定要因があるものがあり、最後のものが多分増えているのかなと思います。現状の話だけなんですけれども、そこもいろいろ類型があるのかなと思います。
○鎌田座長 ありがとうございます。今、御意見というか御質問の中で1つだけ私も確認しておきたいんですけれども、欧米、ヨーロッパ型の中で、例えばドイツなどは期間制限の合理性は言うけれども、雇止めの合理性ではないんですね。そうすると、いわゆるヨーロッパ型の中で雇止めの合理性というものを規制の中に組み込んだものはあるんですか。
○山川委員 そこは多分橋本先生から御説明があるかと思いますが、最後の更新時に正当事由を要求することによって、そこから後は解雇規制がかかってくるという理解でよろしいですね。
○橋本委員 はい。
○鎌田座長 その際、雇止めというよりも、そもそもそのときの期間を定めたことの合理性なんですよね。
○橋本委員 そうです。雇用が終了された段階で争われるということで雇止めに近いような運用だということを説明したんですが、雇止めではなくて。
○鎌田座長 そうですよね。だから、日本だとそうではなくて、そこで雇止めすることが合理的かどうかということなんですね。
○橋本委員 日本の場合ですね。
○鎌田座長 だから、大きく違う。
○山川委員 私が言ったのは一般的にという趣旨で、そうすると雇止め規制というのはヨーロッパ型の正当事由を求める入口規制を問らないこととする場合にも十分あり得るというか、むしろだからこそその役割が強くなる。入り口規制が強かったり、上限規制を入れてつくるとすると、上限規制を破ったところで期間の定めのない雇用とみなされるという問題は別としても、有期のままで雇止めの制約がかかるのは、入り口はそんなに強くない規制にしているがゆえにその役割が大きくなるという位置づけかなと思います。
○鎌田座長 どうぞ。
○荒木委員 よくわからなかったので教えていただきたいのですが、今日の資料3-3で、更新に係るルールのドイツの3つ目のポツで「客観的な理由を欠く反復更新は、解雇制限法を潜脱するものであり、最後の有期契約の締結は無効であり、期間の定めない契約となる(判例法理)」とあります。ここで、客観的な理由を欠くというのは、つまり正当事由が要求されていない場合のことですね。
○橋本委員 そうではなくて、正当事由が要求されている場合のことです。これは、もともと60年代の判例法理にのっとっています。つまり、その判例法理を立法化したのが、今、客観的な理由が必要な有期契約の締結には客観的な理由が必要であるという大原則なので。
○荒木委員 大原則ですね。それを法改正して2年間については客観的な理由が要らないとしたでしょう。ここで書いている判例法理というのは今も生きている法理なのですか。
○橋本委員 はい。その大原則がこれだと、この内容だということです。だから、正当事由の要らない契約、最長2年の契約とは関係ないです。
○荒木委員 関係ない話ですか。
○橋本委員 はい。
○荒木委員 そうすると、2年間については正当事由なく、しかし更新は3回までできるというのがドイツなのですが、その中ではたとえば2回更新したときに雇止めしたという場合に、何かそれが不当なものとして日本の雇止め法理みたいな議論がされているというわけではないということでいいんですね。
○橋本委員 はい。
○荒木委員 わかりました。
○橋本委員 2年以内で、更新が3回以内ならば自由ということになります。
○鎌田座長 これは阿部先生が冒頭に御説明、生産性との関連でお聞きしたいのですが、例えばこれまでも話をしてきたんですが、何か臨時的、一時的な業務の性格からそういうものであったり、労働需要が臨時的、一時的である、だから有期にするという場合ではない。つまり、業務の性質も労働需要としてもある程度永続的である。
だけれども、企業として見ると、いつ景気の動向から人件費コストが過剰になってくる、負担になってくるということを考えて、言わば雇用調整要員として一定のそういった比較的雇用調整ができる人たちを抱えておくというのは、私のように余りよくわからぬ人間はそれも一種の生産性の問題というんですか、雇用の経営上の合理性の1つの判断ではないかと思うんですが、そのことと先ほど先生がおっしゃった生産性、有期の方たちをそのまま不安定な状態で置くということは生産性の低下をもたらす、あるいはやる気を失うというようなデータがあるということとどういうふうに考えればいいんでしょうか。
○阿部委員 例えばスペインの例ですと、このデータがかなり長期にわたったデータで、約15年分のデータを使って分析されているんです。その中には勿論景気の変動というのもありますけれども、多くの場合には景気の変動を考慮した上でも、有期労働者の多い企業で生産性の低下というのが確認されているということで、もしかしたら正社員と有期労働者はそもそも個人の労働生産性の質が違うとかということがあり得るかもしれない。ただ、それだけではなくて先ほど申したのは、転換が可能になると生産性が高くなるということは、転換するという制度を置くことによって、その中で正社員になろうとして頑張ってくる人とかいるところが出てきて、それが生産性を押し上げている可能性はあります。
つまり、どれだけやる気を引き出すかというのを仕組みとして入れているか、入れていないか。もともとは有期契約労働者の生産性は正社員よりは低い。だから、有期労働者の割合が高い企業では生産性が低くなってしまうということがあると思います。
○鎌田座長 わかりました。こういうことですか。要するに、有期あるいは正社員それ自体の生産性の比較ではなくて、その中に正社員への転換ということを仕組むことによって生産性が高まると。
○阿部委員 そういうこともあります。
○鎌田座長 なるほど。そうすると、例えば雇用調整の容易さというのはその場合の、言わばずっと本来ならば正社員として雇ってもいいような人を有期のままにおいておくというのは。
○阿部委員 というのは生産性を引き下げるという。
○鎌田座長 一方では、スペインの場合はどうなのかよくわからないんですけれども、雇用調整の容易さというものとバランス、比較考慮になるんですか。
○阿部委員 それは話としては少し違うので、そううまく言えないんですけれども、企業が必ずしも雇用調整がしやすいからといって有期契約の方を雇っているわけではなくて、例えば外部労働市場から調達可能な仕事が増えてきたから外部労働市場から調達しているというケースが多いのではないかと思います。
○鎌田座長 なるほど。では、雇用調整だけで考える必要もないということですね。先ほど佐藤先生もいろんな理由があるとおっしゃっていますから、確かにそうなんだ。
○佐藤委員 今のことに関連してよろしいですか。ある産業間でも非正規は特に有期比率、例えば正規有期比率と言うと流通業が多いとか、業種によってまずは違うではないですか。それはそれとしてもありますね。おっしゃった有期が多いと生産性インパクトというのは、変動ですか。つまり、有期が例えば30ぐらいの水準。それがある時点から50ぐらいになったという変化があったときには、少し落ちるではないかということですね。
○阿部委員 そういうことです。
○佐藤委員 もう一つは、正規への転換可能性が一種の働く側から見てインセンティブになってくるということで、スキル形成を促すとかパフォーマンスにプラスに効いてくる。非常に興味深いし、ここでの議論にとって極めて重要な意味を持っていると思うんです。そうすると、この場合も日本においても、やはり均等待遇とかということよりも、正規への転換という形で、法制度をどう書くかは別として、そういうものを重視した方がいいという理解でよろしいんですね。
○阿部委員 はい。
○佐藤委員 それは理由はインセンティブだとか。
○阿部委員 あるいはそれによって正社員への転換が促されるということも労働者にとってはプラスですし、企業にとってもそれによって生産性が上がるということがあるのであればプラスだと思うんです。
例えば先ほど私は均衡処遇のところでもそう思ったんですが、単に正社員と有期との均衡処遇だとか均衡待遇というのを実現するだけではそのまま終わってしまうので、そこを抜け出していくためには正社員転換という仕組みをむしろうまく使った方がいいのではないかと思っているんです。
○鎌田座長 あと1点だけ確認なんですけれども、均衡処遇、均等待遇と正社員転換、必ずしもトレードオフの関係ではないんですね。
○阿部委員 はい。トレードオフではないと思います。
○鎌田座長 つまり、正社員転換を強化すれば均等待遇はしなくてもいいというトレードオフの関係は別にないんですね。それはそれでまた別な問題ということでね。
○阿部委員 はい。
○鎌田座長 この法律論といたしましては、判例はたくさん紹介されたんですけれども、判例法理をどう理解するかという問題なんです。判例法理というのは皆さん詳しいと思うんですが、やはり業務の性質の一時さとか、例えば雇止めの期待の合理性だとかというものを考える場合に、その業務の性質あるいはそういった有期を導入したことの経営的な合理性とかそういったようなことというのはやはり考慮になっているんですか。
経営的なということを言ってしまえば、極論ですが、業務自体は永続的でも、経営的には言わば景気の動向によるリスクがあるわけですね。そのリスクをそれなりに解消するというのは合理的だという、こういうふうに判例はいっているわけではないと思うんですが、そういうことも言えないわけでもないわけです。この判例法理の特に合理的期待保護という判例法理というのは、その辺どう考えたらいいのかなというのが。
○山川委員 東芝柳町工場事件のように実質正社員と同じというのはやや別類型かもしれませんが、そこまで至らない場合の合理的期待はまさに文字どおりかなり主観的なところに依存している部分がある。どう説明したかとか、正社員になれますよとか、雇止めは余りしませんよというところに依っているので、そんなに客観的な事由は大きくはないように思うんですけれども、ただ、客観的に永続的な仕事であればそれが雇用継続への期待を合理性があるものにさせる要素に働くとか、そういうことでヨーロッパ型のような形で客観的に合理的な有期労働者の利用が合理的な理由が法的規制に直結はしていない。要素としてはあるんですけれども、判例を詳しくそういう観点から見たわけではないんですが、それはあくまでも合理的期待というものの要素の基礎付けとして使われるということかなと思います。
○鎌田座長 そこら辺のところは少し先生方の御意見も。
どうぞ。
○荒木委員 日本では、有期契約を使ってよい場合を制限していないですから自由に使ってよろしいと。しかし、そのときに雇用継続への期待が生じたのに単に期間が満了しただけというだけで雇用関係が終了していいのかということで、雇止め法理というのができてきた。その場合には解雇権濫用法理を類推適用すべきだろうと。それはそれとして非常に自然な流れだと思うんです。
そういうときに、例えば座長あるいは藤村先生がおっしゃったように、業務としては恒常的にある業務だと。業務がなくなるわけではないから一時的な需要ではないということはどう効いてくるかで、ここは見方にもよると思うんです。山川先生がおっしゃったように、確かに業務があるんだから、この仕事はそこにある。自分は有期だけれども、仕事がある以上は自分の雇用は継続するだろうという期待が生じることは恐らく多いですね。その限りではそのことも合理的な雇用継続への期待に影響してくるということは言える。
最初に藤村先生が言われていたように、有期契約が利用されている理由が幾つかあって、1つは雇用関係終了のトラブルを避けるために、正社員ではなくて有期契約を使うというのがあるんでしょう。これが今のように恒常的に仕事があって、労働者も雇用継続を期待した場合には、やはりそれだけでは済まないので解雇権濫用法理を類推適用しようということになってきている。これが1つです。
もう一つは、正社員ではないから、非正規従業員だから賃金が安い。安い労働力として使うというインセンティブが使用者の側にはあるかもしれません。今までは、従来よく言われたように正社員は労働条件もよくて雇用も保障されている。他方で非正規従業員は雇用が不安定で、しかも労働条件が悪い。この余りの格差を何らかの形で是正しなくていいのかということが問題となってきていて、それにどうアプローチするかということだと思うんです。
正社員化を促すことによってその状態を全部回復するということかもしれませんが、現状を維持しながら非正規従業員が非常に高い処遇の正規従業員に転換するというのは現実的ではないでしょうし、余りうまくいかないかもしれません。
結局その間にグラデーションがあるので、いろんな雇用タイプを設けるべきではないかという気がします。前にもヒアリングで聞いたんですが、サービス業などで何年も10年も20年も働いている方がおられるという場合には、むしろ有期であることのデメリットを解消して、ふさわしい処遇で、しかし期間の定めのない契約で雇うことはできないのかとお聞きしたところ、なかなか難しい、本人も望んでいないんだ、というお答えがたしかあったと思います。しかし、正社員と言うかどうかは別にして、雇用不安のない、しかしふさわしい処遇の雇用形態というものをもう少しつくるように使用者の方に働きかけることはあっていいのではないか。
今回のヒアリングの中で非常に印象が残っているのは、3-1でいうと真ん中の辺りで非正規労働者の組合の方がおっしゃったように、有期であるばかりに権利が侵害されていてもそれを主張することすらできない。そういうことを言うと雇止めされるのではないかと恐れて権利主張できない、ということをおっしゃったんですが、こういう事態は非常に問題で、何か対応が必要ではないかという気がしました。
○鎌田座長 ありがとうございます。今、荒木先生がおっしゃったことで私なりに2つのことを少し。1つは、判例法理をどう理解するかということで、業務が永続的なものの場合に雇止めというものをどう考えるか。雇用継続の期待の合理性判断というのを主観的な手続といいますか、主観的なもので評価するという側面と、今、言ったように言わば業務の性質的に客観的に両方あるということなんですか。
その際、今ぱっと思いつきなんですけれども、伊予銀スタッフ事件は派遣の話ですが、あれは派遣には合理的な期待というのは発生しないという言い方をしていますね。あれは明らかにもう客観的なことを言っていますね。
あの判例自体をどう評価するかというのは難しいんですけれども、あれは今は最高裁にも行って、最高裁は上告を不受理して棄却したんですが、最高裁ははっきりものを言っていないのでよくわからないんですが、少なくとも一審、二審は雇止め法理は派遣においても適用があるけれども、そもそも派遣というのは派遣先との契約があって有期雇用契約が成立するんだから、それがなければたとえ反復更新を何回、あれはたしか10年ぐらいだったのかな。そうしても雇用継続の期待に合理性はないと言っており、制度というか客観的な合理性というものを考えているような気がしました。
もう一つは、荒木先生、つまり正社員転換と言うけれども、実際に転換のメカニズム、転換をするというのは企業の側から見た場合にどういうふうにとらえればいいのだろうかという問題提起でしたか。つまり、今ある有期を正社員にという転換というのはかなりハードルが高いというような御趣旨でしたか。
○荒木委員 ヒアリングの中で感じたのは、現在の正社員の処遇はそのままに、非常にそれと対応が違った非正規従業員をいきなり正社員とに同じような処遇をするというのはなかなかリアリティがないというお話だったのかと思いまして、むしろいろんな働き方、もっと多様な雇用モデルを提供して、仕事がずっとあるのであれば、そこに必ずしも正社員と同じ賃金を払うということではなく、むしろ異なる処遇でもいいから、しかし雇用不安というのは除くということ考えてもらってもいいのかなという気はします。
○鎌田座長 つまり、企業の有期の処遇のものをそのまま現在の企業の正社員にぼんと移しなさいというのは、かなり大変だということであるのは事実だ。そうした場合に、今の正社員登用制度がありますかという問題意識の中では、企業がある意味で社会的責任というのかよくわかりませんけれども、そういうようなグラデーションを持ったような制度を企業自身の努力でつくっていって、言わば希望者があればその希望者を段階的に上げていきましょうというものなんですか。
それは別に法律がいろんなことをいう意味もないわけですね。
ところが、それがうまくいかないと考えるとすれば、どこかの段階で法律というのか強制的なもので転換を図るシステム、阿部先生の言葉でインセンティブ。インセンティブは多分いろんなニュアンスがあると思うんです。
○阿部委員 例えば私が知っている範囲で言えば、パートタイム労働者を短時間正社員化しましょうということは、既に政策として行われていると認識しているんですけれども、そういうことをやったらどうかということなんです。
つまり、非正規雇用のパートタイマーがどういう政策、例えば補助金が出るとかいろんな啓蒙活動をするとかということで企業が短時間正社員という仕組みを取り入れて、そこでパートタイマーを短時間正社員になってもいいという人にはなっていくとか、ある一定のハードルを設けて短時間正社員にふさわしいという人にはなってもらおうとか、そういう制度をつくってもらうということだけでも相当違ってくるのでないかと。
だから、短時間正社員でもいいですし、フルタイムの正社員でもいいですけれども、そういういろんな人事施策を企業が取り得るような後押しを政策として既にやっているところもあるので、そういうのを組み込むという趣旨なんです。
○鎌田座長 それは事務局の方で、恐らくこのニュアンスは助成金というような形でのインセンティブなのかわかりませんけれども、必ずしも法律的に強制するという性格のものではないようなニュアンスだったと思うんですが、今どういうふうなことになっているんですか。
○富田調査官 今、阿部先生がおっしゃられた短時間正社員の問題につきましては、これは法律に確かに位置づけられたものはございませんで、雇用均等・児童家庭局でやっておりますのは、1つは短時間正社員制度をつくったような場合で、たしか1名以上出た場合とかに助成金を出す。
もう一つは、それだけではなかなか難しい部分がありますので、短時間正社員制度を導入するための企業のマニュアルをつくって、あるいは事例集は厚生労働省のホームページからもアクセスできますけれども、そういうものを提供するといったことを通じて、できる限り短時間正社員制度が普及していくようにという活動を行っているということはございます。
○鎌田座長 それは現在既に行っているわけですね。
○富田調査官 行っております。
○鎌田座長 どうぞ。
○山川委員 私もそういう方向はあり得るのではないかと思います。前回も少し申し上げましたけれども、時間のほかに、例えば勤務地を限定することも考えられますが、特に有期の場合だと職種限定という可能性も結構あるのではないかと。
つまり、1つはハードルが高いということであれば、そのハードルを低めて選択肢を増やすというのも1つのインセンティブになるのではないかと思いまして、その意味で雇用安定という要請の中心は多分期間の定めがないという点で、完全なる正社員まではまた段階があるかもしれないのですが、そういうものをインセンティブと言えるかどうかはわかりませんけれども、それはあるのではないかと思います。
その場合、先ほどの雇止めの話と関わるんですけれども、業務の臨時性とかそういう客観的なファクターが実は別の方向でも判例に影響を与えていると思われます。というのは、経営上の理由で雇止めをするときに、正社員と同視すべき場合は別ですけれども、正社員に用いられる4要件とか4要素のようなものを必ずしも厳密には要求していないのが判例だとすると、判例がある意味では雇止めの制約に関しても中間的な領域を既につくっていると言えなくもないような感じがしまして、正社員転換の方でも中間的なことがあり得るかもしれませんし、雇止めのルールを仮に立法化するにしても、全く正社員と同じとは必ずしも限らない。
少なくとも現在の判例からしてもそうではないかということで、要は客観的な状況とか職務の内容とか、正社員転換にしても雇止めのルール化にしてもタイプに応じていろんなものがあり得るのかなという感じはしました。
先ほど阿部先生の言われたビジネスモデルの変化というのは客観的には重要なことではないかと思いまして、つまりもともと長期雇用でなければできなかった仕事を有期雇用でもやれるというような変化が起きた。それを単純に元に戻して、そのような仕事を全て正社員に転換してやってくださいというのは事実上厳しいのではないかという感じがありますので、そういった雇用形態でもできるようになったということを考慮に入れると、中間的なものも考えるメリットあるのかなと思います。
○鎌田座長 どうぞ。
○佐藤委員 中間的な領域といいますか、有期と正規との間に有期から正規へ促す、あるいはそういう道筋を付けるという転換という形での問題の対応というのがある。それはいろいろ経済学でもインセンティブの議論から出てきている。
それはそういうものがこの研究会としての考え方の中で1つのオプションとしてあるとは思うんです。そのときにその話というのはパートのときの研究会でもいろいろ議論し、有期の研究会でもそういう議論が出てくるんですけれども、これは実態の方からいきますと、一言で言いますとその評価についてはなかなか芳しくないんです。つまり、制度があるというのは今回の調査でも25%、約4分の1なんですが、これがこの間余り増えていないですね。今までより多少増えているのかもしれませんけれども、制度の有無ということで言っても余り増えていない。
活用実績というか登用実績ということでいうとなおのこと、これもかなりパート等でも促すような方向性で政策的な誘導を図ってきたようにも思うんですが、どうも実績も余り伸びているようにも思えない。むしろこのテーマに関心を持っている研究者の中ではかなり足踏み状態が続いているというのがやや常識になっているということなんです。
ヒアリングでもそういう実績があるところについて伺った話でも、制度はあるけれども、実績はないんですというような話をされていました。そういうようなことで、問題なのはそういう道筋とか規範的な政策的な後押しというところまでは付いているんだけれども、そこは実効性がどうも伴っていないので、もっと踏み込んだ形でそこを促すようにするのかしないのかというところが、この研究会としての重要な判断の基準になってくるのかなという印象を持っています。
うまくいっていないという理由を申し上げればいろいろ出てくるんですが、そういうところが1つ大きな、そこのところにもう少し踏み込むのか、基本的には企業の方で人事制度の設計やキャリアの設計は任せていますし、そういう形で自然に誘導させていくということできているんだけれども、実効性がないのでもう少し強く規制というのが適切かどうかわかりませんが、するのがよいのかどうかというところが1つ大きな判断基準になるのかなと思います。
○鎌田座長 これは余り伸びていないんですか。もう何年か経験があるわけですね。
○山川委員 これは事務局にお伺いしたいんですけれども、正社員転換制度が伸びていない理由に関して、転換先の中間的なものというのは、短時間正社員しか現在のパートタイム労働法では選択肢として用意していなくて、基本的には通常の労働時間の正社員ですね。その辺りの実態をお伺いできればと思います。
○富田調査官 伸びていない理由ということでございますけれども、前回の実態調査で聞いておりまして、前回の資料がお手元にあるかと思います。
○鎌田座長 前回は第8回。
○富田調査官 第8回、前回の資料4-2というのが事業所に聞きましたものなんですが、その6ページです。正社員転換制度及び転換実績を(10)(11)で聞いておりまして、この(10)は制度があるというのが46.5、実はこれだけ見ると転換実績もそのうちの半分ぐらいはあると出ております。
(11)の方は、支障があるのかないのかで切ってみたところ、支障はないというのが半分で、ただ支障がある中身を言いますと、一番多いのが正社員としてのポストが少ない。その2つ隣、正社員に転換するには能力が不足している。あるいはその真ん中のところの右隣、応募が少ない。そういったところが最も多い。その次が正社員に転換すると雇用調整がしにくくなるが9.3。こういったところが大きな理由として実態調査では出てきているというところでございます。
○藤村委員 以前もこの研究会で、正社員はなぜ会社が雇うのかというのを申し上げたことがあるんですが、正社員は雇用契約の期間に定めがない。会社としては予期しないいろいろな出来事に対応してくれる従業員がいないと強制力にならないから、雇用契約に定めがないということは会社の繁栄が自分自身の生活の安定とか繁栄にもつながるから、会社の都合に従って働いてくれる人たちが必要だと。本来だったら5時半に終わるんだけれども、急に対応しなければいけないことがあるから7時までにやってほしいと言われたらやりますよと。
短時間正社員といった場合に、例えば1日5時間ですという、それが決まっているけれども、突発対応はやりますというのが正社員だと思うんです。ただし、そうなると、例えば突発対応というのが毎日発生するのか、あるいは1年に1回なのかで働く側の負担は変わってくる。
正社員になりたくないという理由の割と大きな部分が、時間の制約が正社員の方は相当かかりますから、それが嫌だと。だから、正社員以外の働き方の要因だというのが出てきますね。有期雇用契約という本来だったら期間の定めという今日最初に言った話に戻っていくわけですけれども、それ以外の労働条件の部分で正社員との違いというのを現実に働いている人たちは意識をしている。それが勿論、雇用の不安定さという点ではマイナスだけれども、時間がきっちり決まっていて、その時間になれば帰れるというのはプラスなんです。
そこのところで、では有期だから1年で、それを先ほど私は3年ぐらいでというのは1つの目安にはなるでしょうねと申し上げましたけれども、働いている側からして責任がないとか時間がはっきり決まっているというところからすると、では正社員になったらそこはどうなるのかという疑問はあるでしょう。
○鎌田座長 どうぞ。
○荒木委員 正社員の概念だと思うんですけれども、言われたのはイデアルティプス(Idealtypus)としての正社員ですね。そういう正社員は突発的な対応が可能。正社員転換をしないときにいろいろ企業の方に聞いても、正社員というのはそういうことができる人ですと、最初からそういうことができるかどうかを考えてリクルートしてコストもかけて雇っている。それに対して、有期のような方はそういうセレクションは何もせずに有期だからということで簡単に雇用しているので、転換といってもなかなか難しいということをおっしゃいます。
そういう企業からしても本当に必要な理念型としての正社員の要件を満たさなければ、それ以外は無期で雇えないということであると恐らく話は進まなくて、そうした理念型の正社員ではないけれど、しかし期間の定めのない雇用形態というものも考えていいのではないかという気がするんです。
突発的な対応という話で言いますと、今、育児休業法の中で育児休業を取れる正社員の方が育児休業の代わりに短時間勤務を選択することができます。その人は短時間ですからパートタイマーです。でも、パートタイマーであっても今まで正社員でやってきた人を、パートタイマーの受け皿は時給制の人しかいないとして、時給の人に合わせるのか、というとナンセンスですね。その方が半日間勤務できなくても正社員としてのサラリーを基に計算する、そういう短時間正社員がどんどん増えてきていると思いますが、そういう方は突発対応できるかというとこれは育児ゆえの短時間勤務であれば突発対応の残業はできないでしょうね。しかし、そういう働き方も認めていくべきなので、言うなれば正社員という概念をもう少しフレキシブルにして、いろんな正社員があると考えるべきでしょう。
先ほど言ったように、確かに労働者の雇用継続への期待は一方であるでしょうけれども、会社としても正社員にするつもりで雇った人と、するつもりはなくて有期で雇った人というのは、その人に対する期待も違うと思うんです。それが余りに違い過ぎるとうまくいかないので、そこら辺のところは双方が納得できるようなところに着地点を考えないとうまくないかなという気はしております。
○鎌田座長 今のお話は、正社員というのはいろんな属性というかいろんな機能の集積なわけですが、例えば雇用の安定ということで考えれば、いわゆる無期ということしか言っていないわけですね。だから、無期イコール今考えられている正社員と、必ずしもイコールで考える必要はないのではないかという御意見なんですね。
雇用の安定ということで考えれば、確かに無期ということで安定はするんだけれども、それがイコール常に今の私たちが思っている、先生方がおっしゃったような正社員の理念系というものに常にそれが結び付く必要がないということですね。
○佐藤委員 あえて法律に詳しくないので大胆なことを申し上げるんですが、そういうことで考えていきますと、今、雇用不安が非常に広がっているし、他方で企業を取り巻く環境は厳しくなっています。そういう中で1つは正規への道筋を付けるということに端的に表れていますように、もう少し働く側から見た雇用保護といいますか、安定性を何とか確保したいというものについての配慮がかなり強まっているように思うんです。
そういう中で入り口、真ん中という言い方をすると、入り口のところである一定の規制といいますか、いわゆる有期契約で雇う場合にはかなり強い理由が要るんだと、原則理由は特段なくていいというものではなくて、非常に強い理由が要るんだと、正確を期した言い方は私はできませんけれども、要するに原則ちゃんとした理由があって初めて有期という働き方を認めるという形の中で、それは結果的に企業の方の活用に関していうとかなり縛ってきますね。そういう形で結果的にゾーンを少し狭めるわけですから、むしろ期待を保護するような働き方、つまり正社員としての働き方を促すような、それは特段理由が要るわけですから、そうでなければ通常の雇用で正規の働き方というのをしなさいと、暗黙のうちに持っていくのが入り口のところで1つはあり得るという。
もう一つは真ん中のところで、要はいろいろ均等だとか道筋を付ける、転換だとかという形で、入り口で雇い入れるのはともかく、そこはある程度余り縛らないで、しかし入ってから雇ってからはいろいろ手を尽くして配慮しなさいと、そしてその期待保護に答えなさいというような考え方でいくのがあると思うんです。
そういうものをこの研究会としてどう組み合わせるかはともかく、1つの判断基準としてそういう考え方に立つのか立たないのかというところが非常に今後の議論をしていく上で重要かなと思うんです。そういう雇用者側の期待の保護とか不安をできるだけ軽減していくような方向で措置していくべきではないかといくのか、そうでないのかというところが、うまい言葉では表現できないんですが思いました。
○鎌田座長 ありがとうございます。この近年の特にリーマンショック以来の中でかなりの雇止めが行われているというのは事実なわけですから、そういったような現代の情勢に対しての認識を踏まえた御意見だと思うんですが、佐藤先生の方から幾つかの規制モデルみたいなものを御紹介いただいた。
1つは入り口で利用目的、利用事由で規制をするという考え方があるだろう。入り口では格別の規制をしないけれども、途中に均衡待遇などで両者の格差を減らしていくという考え方もある。もう一つあると思うんです。出口も藤村先生がおっしゃったんだと思うんですけれども、更新を含めて一定の期間で限定をするという考え方、そういうような理解でよろしいですか。
○藤村委員 はい。
○鎌田座長 仮に3年ということであれば3年の間は雇止めができるけれども、それ以上はだめだと。もしそれ以上その人を使いたいということであれば、これは無期ということで考えてみたらどうかというようなことだと思います。
現在の日本の法制度で言うと、そういったものではなくて、まさに雇止めすることの中で雇用継続に期待があって、それが保護されるかどうかで今の日本の法制度があって少し性格が違う。それは判例法理ですから体系的に何かそういうものをつくってきたわけではないとは思うんです。
今、御提案いただいたのはどちらかヨーロッパのようなものを想定して、佐藤先生、先ほど有期については1つの理由だけではなくていろんな理由があるんだと。そうすると、例えば先ほどお話との関連で言うと、入り口を規制するということになるとなかなか大変なことになりますね。
○佐藤委員 そうですね。そこで前回でも冒頭申し上げたんですが、これを法律でどう書くかは難しいとは思うんですけれども、今回の調査でもタイプに分けていますね。その中で、いわゆる正規とは余り変わらないタイプ、軽易な仕事をする、専門的な仕事をするというのがあって、それは有期といえども随分違いますね。その中で正規と同等のものであって、変わらない仕事をしている方を有期で雇っているという場合には、有期というものの雇う合理的な理由をより強く求めるような考え方になってくる必要があるのかなと。
それ以外は専門性あるいは正規でない仕事をやるわけですから、期間限定して持っているとか、それはそれでそんなに強くしなくてもいいのではないか。ただ、正規と同等のというか、表現ではそういうようなタイポロジーをつくりましたね。そういうタイプについてはかなり強く雇い入れるときの合理的な理由が必要になってくるのではないかと、基本的にはそういうふうに考えているんです。
○鎌田座長 法律の方から見ると、タイプ別をどういうふうに法律でするかというのはなかなか難しいところで、それはそれとして1つの議論になるとは思うんですか、しかし規制モデルとしてのイメージは。
その際、例えば入り口を規制して出口も規制するという両方というのはあり得るのかな。
○荒木委員 フランスはそうだと思います。
○鎌田座長 多分入り口を規制して更に出口を規制するという理屈は違うんですよね。その場合、どう違うのかな。入り口規制は先ほどおっしゃったようなことですね。
○山川委員 入口で規制のかからないものについて出口も規制する、あるいは入口の規制をクリアーして、無期にみなした場合にはもう出口規制どころかみなしの方にいってしまうわけですからね。両立し得ない場合は確かにあるとは思いますが、両立し得る場合も一部はあるのではないかと、フランスがそうなっている。
○荒木委員 フランスはとにかく有期契約の利用自体を客観的な理由がある場合に限っています。ドイツみたいに理由がなくて使ってはいけないので、その場合も上限18か月だったと思います。
○鎌田座長 今日の資料の中でも出ていますね。
○荒木委員 要するに、有期契約を使うこと自体がよろしくないという発想に立っているんです。
○鎌田座長 限定された場合しか使えませんということは、逆に言うと限定された場合はOKですということですね。
○荒木委員 はい。
○鎌田座長 しかし、それでも18か月までですよという理屈は、ドイツ的な発想でいくと理由があるものについてはいいんですよということですね。
○橋本委員 期間制限はない。
○鎌田座長 でも、それもフランスは規制しているわけですね。それは無期原則だからできるだけ有期はなくしていこうというだけなんだ。では、理屈できているというよりは、理屈は理屈だけれども、とにかく有期が発生する場合をもう縮減していこうという発想なのかな。そうすると、かなりがんじがらめにしていくという感じで、無期原則だからそうなってしまうのか。
○荒木委員 ただ、比率自体はフランスの有期が少ないかというと、諸外国と余り変わらないぐらい有期の人がいるということなので、一定の事由がかなり緩やかに解釈されているかなと議論して思った次第です。
○鎌田座長 わかりました。では、入り口と出口の両方というのも、無期原則を前提にすればあるということですね。
○荒木委員 その場合だと、使用者を変えなければいけない。今の派遣と同じように、18か月でだめだとすると、そこで働き続けたくても別の使用者のところに移らざるを得ないということです。
○鎌田座長 どうぞ。
○藤村委員 今、実態として約3分の2が正社員、3分の1が非正社員ですね。これは20年ぐらいの間にだんだん非正規の部分が増えてきた、有期雇用が増えてきた。阿部さんの先ほどの話を聞いていると、余り非正規、有期の方が増え過ぎるのは、日本経済にとっても企業にとっても本人にとってもよくない。そうすると、今が実態として例えば35%ぐらいの人が非正規なんだけれども、実際働き方とかやっている仕事とか見ると、もうこれは正社員にほぼ近い。
そういう人たちは正社員なんですと法律でちゃんと認めるとなれば、実は企業の経営者にしてみると、経営の手足を縛るのかというような反論が出てきそうなんだけれども、実はそうではないんですよと、あなた方のためにはこの方がいいんだ、日本社会のためにもその方がいいんだということが言えるようになればいいんです。そうすると、法律に対する納得性も出てくる。その部分をどうすればいいかがよくわからない。
○鎌田座長 また少し違う話になってきているんですけれども、つまり法律論として例えば仮に3年で上限規制をして、更に違法に更新をした場合にどうするかという問題も絡んでくると思うので、そのときに法律論として正社員とみなすという意味はありますか。
つまり、無期とみなすというのはあるけれども、正社員とみなすということは法律論としてどういうふうにイメージしたらいいのかな。
○山川委員 合わせて、待遇差別も一般的に禁止するとかということでしょうか。権利の面について具体的に書くことは難しいかもしれません。
○荒木委員 正社員というのは法律用語ではないので。
○鎌田座長 イメージ。
○荒木委員 そのときの「正社員」は、やっている仕事が違っても期間についてだけは無期になるかもしれませんが、そのときにどういう処遇をするのかは別の問題となる。処遇を規制するときには、同等の仕事をしているから同等の処遇となるのが普通なので、正社員と有期の方の仕事が違えば処遇は違ってもいいということになると思います。それを「正社員とした」と言うかどうかは定義の問題になってきて、無期だから正社員ですよ、といえばそういうことかもしれません。
○鎌田座長 これからの議論の進め方にもなるのかもしれませんけれども、法律系の発想とすると、例えば有期のものを違反だということで仮にみなすとすると、無期というイメージなんです。つまり正社員とみなしというのは何となくぴんと来ないというか。そうすると、処遇の問題はどうしますかというと、それは例えば前、派遣のときに御紹介しましたけれども、例えば無期契約としてのみなしをするというと、その瞬間に無期ということになるだろうし、法律で無期みなしということにすると、その無期の人の処遇というのをどういうふうな契約関係なんですかと法律上書かなければいけないんです。これは結構大変な問題という。
次に契約申込みみなしということになると、労働者の方が申込みみなしに承諾するかどうかの選択肢があるんだけれども、その場合でも申し込んだ場合の契約内容はなんですかというのをもし法律で強制する場合には考えなければいけないという問題があって。
契約申込み義務ということになると、今度はその場合には無期の契約申込みをしなさいというのははっきりしているんだけれども、処遇の中身は企業の方で考えてちゃんと申込みなさい、その処遇を見て労働者の方がそんなものでは私は嫌ですという場合も出てくるということですか。
これは非常に乱暴なまとめ方をしているんですが、どれも可能といえば可能なのかもしれませんけれども、最初に無期みなしとした場合には、法律論として無期みなしは法律で無期とみなすというのがいいんだけれども、では処遇をどうするんですかというのを、無期みなしにするということになると法律論でも特定しなければいけないですね。そんなことはないですか。
○橋本委員 必要ないような気もします。今までの有期だった部分だけが無期になるので、残りはとりあえず今のまま維持されると。
○鎌田座長 では、従前の労働条件で無期だけ変わって、あとは皆同じという形でやるということになるわけですね。そうすると、例えば職務級的に時給何ぼと決まっていると、そういう制度が自動的に会社でできてしまうという感じになるのかな。
○橋本委員 そうですね。
○荒木委員 ヨーロッパでも正社員と無期契約労働者との差別規制はあくまで仕事が同じ場合の話なので、仕事が違えば単に契約が有期から無期になっても処遇自体は変わらないということがあると思います。
○鎌田座長 では、業務をどこまで特定しているかわからないけれども、従前の処遇についてはそのままで、無期のところだけ変わるということにするんだ。なるほど。派遣とは違うからそこは簡単といえば簡単なのか。
○橋本委員 派遣の場合には、使用者が変わるので、全く別の契約が新しく成立して、今までの派遣元との労働契約がすべて白紙になってしまうので、みなし規定が発動された場合に、労働条件の内容そのものがどうなるのかが問題になるのかと思います。
○鎌田座長 でも、事実上、強制されてしまうから、会社とするとそういうタイプの人が1人でも2人でもいれば処遇しなければいけないということだ。新しい処遇を置いておくということになるわけですね。無期だから3か月経ったらいなくなるという予想も立たないわけだから、会社としても何とかちゃんと処遇するためのシステムをつくらなければいけないということになるわけですね。わかりました。
○阿部委員 ただ、こういうことを言っていいかどうかわからないんですけれども、その場合に多分会社の中の処遇が非常に複雑になると思うんです。だから、賃金テーブルを2つ、3つ用意すれば楽でしょうけれども、普通は1本でやろうと考えたらどういうふうに当てはめるかというのがすごく煩雑で、多分そういうことをするとそもそも雇わないという選択をする可能性はありますね。
○鎌田座長 雇わないというのは、期間が来る前にということですか。
○阿部委員 3年以上になったらもう絶対だめだというのだったら、もう3年でむしろ雇止めしてしまうということが起こって、結果的にはキャリア形成上もしかしたら労働者側が不利になるかもしれません。
○鎌田座長 それはここだけではなくていろんなところで出てくる話だ。
○阿部委員 これを見ると、正社員同等型の労働者でも正社員と同じ水準の賃金をもらっていないと答えていますし、多分賃金テーブルは1本にはならないということなんでしょう。私はわかりません。どうなるのかなという。
○山川委員 なかなか難しいのは、パート労働法ですと無期契約ないしそれと実質的に同視しうるという要件をかけていますので、こういう難しい問題はある意味でクリアーできているんですが、そこがないのがここの有期契約の問題ですので、職務ということだけで果たして同等にすべきということが言えるかどうか。無期と有期の将来への期待度とか、こういう人だからこういう仕事ができるんだとか、こういう処遇ができるんだとかということが法的に考慮できるかどうかというのは難しいところかな。
本当はそういうのは企業でいろいろ工夫して、非正規の改善行動計画みたいな形で実情に合わせて考えていってくれるのが一番いいのかもしれませんけれども、法的にいうとなかなか難しい面があって、まず何が必要なのかを絞っていって、例えば雇用安定という点に絞るかとか、待遇まではかなりソフトな形にしておいて、みなしで無期にする場合、あるいは雇止めには合理的な理由が必要だという判例法のようにする場合でも、効果の方といいますか、手法自体をニーズとか実情に合わせていろいろ検討するということもあるのかもしれないです。
○鎌田座長 そのことで1つ法律家の先生方に、話は全く変わってしまうんだけれども、例えば
雇用継続の期待に合理性とかは、予測可能性という点でどうですか。
○荒木委員 前回も議論したんですけれども、1つは阿部先生が言われたとおりに、有期契約を利用していい期間を決めてしまうと、どう作用するかわからない。これで正社員転換を法が促しているとも見得るのですが、使用者が正社員転換を望まないからその前にもう雇止めをして、その規制にかからないようにするという両方に作用し得るものですね。そこは考えておく必要がある。
それに対して、現在の雇止め法理は、とにかく上限はなく更新していいんです。雇止めをされた時点でその雇止めは有効かどうかということを考えますから、ある上限規制の前にモラルハザード的に雇止めをするということはない。かつ、さまざまな事情のある、いろんなタイプの有期契約に見合った期待というものを考えながら判断しますから、実情には合った解決になる可能性は高い。そういうメリットがあるんですが、今、座長がおっしゃったように、合理的期待というのは予測可能性がない。このルールの問題点は、だれもよくわからないから裁判所に行くまで予想が付かないという点。いずれもメリットとデメリットがあるということなので、どれかをとればすべていいということにはなっていないということは認識する必要があると思います。
○山川委員 1つ、完全に明確化するというのは荒木先生がおっしゃられたように難しい面があると思うんですけれども、こういう要素、こういう行動をとっていれば合理性の判断において考慮されますというようなことは、例の労働契約法制研究会では、告示で示されているような雇止めの基準とか可能性とかそういうものを明示しておけば、合理性の判断に当たって考慮されるという提言をしたところですが、少し予測可能性を高めるということは不可能ではないかもしれないです。
○鎌田座長 要するに山川先生が最初に言われた、雇用の不安定をどう解消するかという観点でいうと、労働者にとってそういったシステムをつくったことがどうプラスになるかということも1つの観点ですね。これは裁判に行けばはっきりするんでしょうけれども、かなり負担はかかりますね。
あと何か御発言はありますか。時間もそろそろ予定の時間に来たんですけれども、また全体で御議論する時間もとれそうですか。
今日は今日のところだけで議論しているんですが、全体でまた入り口、出口。今日も入り口、出口、中間という話も出ましたけれども、また全体で御議論いただくようなこともできると思っていますので、何か最後に一言ということであればお聞きしたいんですが、特になければ今日はこの程度で終わりたいと思います。
では、今後の日程について、事務局から御説明をお願いいたします。
○富田調査官 今後の日程でございますけれども、今、座長からお話がありましたとおり、もう少し論点の抜けている部分とかの補足的な御議論もお願いしたいとも思っておりますし、厚生労働省からJILPTの方にヒアリングをお願いしている部分がございまして、その報告も聞きたいということも考えております。そういうことを踏まえまして、日程は現在調整中でございますので、委員の皆様には改めて御連絡させていただきたいと思います。
○鎌田座長 それでは、以上をもちまして、本日の研究会はこれで終了させていただきます。ありがとうございました。
(照会先)労働基準局総務課政策係(内線:5587)
委員の皆様方には、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
また、本日は奥田委員が御欠席されています。
本日は、契約の更新・雇止め、その他について御議論いただきます。
まず、前回の議論の内容について、資料として提出されています。阿部委員におかれては、前回までの論点について御意見がおありでありましたら御発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○阿部委員 何度か欠席をしまして、座長始め皆さんに御迷惑をおかけして申し訳ありません。7回目の研究会で議論されました総論のところで、前回議論がなされました均衡待遇と正規労働者への転換のところで、若干私の意見を述べさせていただきたいと思います。
現状認識のところで、まず有期契約労働者がどのような位置づけになっているか。1980年代以降増加傾向にあるがその位置づけに変化はあるかということなんですが、私は1980年以降に増加している有期契約労働者というのは、さまざまな要因によって増加し、多分その位置づけも大きく変わってきたのではないかと思います。
とりわけ、要因としては企業のビジネスモデルですとか、企業の中での生産技術、その他のさまざまな技術が大きく変化したことによって、それまで正社員でしかできなかったような、あるいは教育訓練を非常に多く投入しないとできなかったような仕事が短期契約、短期の教育訓練でも済むような仕事に変わってきたということがあったのではないかと考えておりまして、したがって、それまでは正社員がやるような仕事もビジネスモデルやさまざまな技術の影響によって有期契約労働者でもできるようになってきているということで、かなりその位置づけも大きく変わってきたのではないかということであります。
その結果、今回の調査でも4つのタイプに分かれて、さまざまなレベルで仕事をする有期契約労働者が出てきているということが実態としてわかってきていますけれども、それは今述べたようなビジネスモデルや生産技術の大きな変化が生じたことに影響を及ぼしているのではないかと思っています。
最後に、解雇規制が厳しいから有期契約労働者が増えたという意見もあるとは思うんですが、私はこれまでも解雇規制が厳しい我が国の中でも、解雇というか雇用調整は行われてきているわけですので、それほど強く影響したようには思っていません。実際に実証分析の結果もこの点はなかなか白黒付けられていない部分でもあります。
むしろこの有期契約労働者が増えたのは、先ほど申しましたような技術的変化ですとか、ビジネスモデルの変化ですとか、場合によっては国際競争の激化とかといったこともあるのではないかなと思っております。
もう一つ、前回の議論で均衡待遇、正規労働者への転換ということでございますが、私の認識としては、さまざまなタイプの有期契約労働者がいる中でどのような形で均衡待遇あるいは均等処遇というものをしていくのかというのは、法律に書くのは非常に難しいのではないかと思っております。むしろこういった均衡待遇ですとかというのは、それぞれに任せるということも1つあり得る考え方ではないかと思います。それは前回荒木先生がお話しになったことに私はかなり賛成すると思っております。
私は均衡待遇、均衡処遇といったものよりも、正社員への転換というのをうまく企業にインセンティブを与えて、転換を行えるようなことが可能にならないかなということを考えております。
実はこれまでの実証分析になりますと、幾つか転換制度が企業の生産性にプラスの影響をもたらしているというような結果が見られております。例えばスペインの製造業を分析した結果ですと、企業別のデータを使って有期雇用労働者の割合と企業の生産性、正確には全要素生産性と言われるものの関係を丁寧に調べると、有期雇用労働者の多い企業ほど生産性は低いという結論が見られております。ただし、正社員への転換率が高い企業はそうではない企業に比べて生産性は高いということもわかっております。
ですので、このスペインの例では、そもそも有期雇用割合が高い企業というのは生産性が低いんだと。ただし、転換をすることによって労働者にある意味インセンティブを与えることで生産性を高め、実際に正社員になるということもありますので、生産性が高くなっているということもあり得るということです。
スイスでも有期雇用者、特に正社員の転換の可能性の高い労働者ほど、正規労働者よりも一生懸命仕事をするという結果が実証分析の結果わかっております。一生懸命仕事をするというのは、それが果たしていいことかどうかというのはわからないんですけれども、この実証分析ではサービス残業をどれぐらいやっているかというのをはかってやっているんですが、転換可能性の高い労働者ほど正規労働者よりもサービス残業をしたりしているという結論があって、ある意味、一生懸命働くというインセンティブに転換制度はつながっているということであります。
もう一つ、ポルトガルの例ですけれども、有期から正社員の転換というのは、実は正社員に雇うかどうかのスクリーニングになっているということが強く発見されています。つまり、有期雇用という雇い方がスクリーニング、選抜のメカニズムを持っていて、いい人かどうかというのをそこで有期雇用の間に調べるというか、スクリーニングするということになっているそうです。
その結果、有期雇用が多い企業ほど正社員への転換率が高くて、それが有期雇用の社員の働き振りをよくしているとか、働くインセンティブを高めているというような効果につながっているということでありまして、結局この結論の逆を言うと、有期雇用のまま使い続ける、あるいは有期雇用で雇い止めをするというような場合には、その企業の生産性はマイナスになるとか、下がってしまうとか、労働者の働き振りに悪影響を及ぼすというようなことがこれらの結果では見られるわけです。
そういう意味で均衡処遇云々というもので何かやっていくというよりも、この正規労働者への転換というのをうまく制度的に位置づけることによって、企業の生産性が上がり、それが結果的に新たな正社員の雇用創出につながるとかといういい循環に持っていけるのではないかなと、実はこのヨーロッパの3か国の結果から考えているということであります。
以上です。
○鎌田座長 どうもありがとうござまいす。今日の議論にも非常に参考となるお話だったのではないかと思います。また今の阿部先生に対する質問なども、後のところで皆さんもしよければしていただければと思います。
それでは、今日の論点について御議論いただきたいと思います。事務局で資料を用意しておりますので、説明をお願いいたします。
○富田調整官 それでは、私の方から資料2~資料3-4まで御説明申し上げます。資料2が今日御議論いただきます論点を書いております。
1ページ目は7回の論点、2~3ページにかけましては前回第8回の論点、4ページ目になりまして、第9回今回の論点が出てまいりますので、4ページからごらんいただきたいと思います。
「1 契約の更新・雇止め」となっております。まず現状認識でございますが、有期契約労働者については昨秋以降、多数の者が雇い止めに遭い、今回のヒアリングや実態調査結果においてもその相当数が契約期間の短期化とも相まって雇用不安を抱いていることが明らかになったが、このような雇止め等の問題に労働法制として対応すべきという考え方についてはどのように評価すべきかということでございます。
現行法制の評価でございます。有期契約労働者の更新や雇止めに係るルールについては、使用目的に照らして短期の反復更新をしないよう使用者への配慮を求めた労働契約法のほか、手続面について定めた大臣告示がある程度でありますが、労働基準法におきます罰則付きの手続規制や労働契約法における解雇権濫用法理が適用される解雇に係るルールに比べまして比較的厳しくないということがありますが、今回のヒアリング結果等も踏まえまして、これらの雇止め、解雇という両者間のルールのバランスについてどのように考えるべきかということでございます。
有期契約労働者については、労働契約法により労働者を使用する目的に照らして必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならないものとされておりますけれども、今回のヒアリング結果等を踏まえまして、契約期間の細切れ化の問題についてはどのように考えるべきかということです。
大臣告示におきましては、一定の有期契約を更新しない場合には、契約期間満了日の30日前までに予告をしなければならないことなどが定められておりますが、雇止めに関するトラブル防止の観点から、更にこれを法律によって規範性を高めるべきという考え方につきましてはどのように評価すべきかということです。
有期契約労働者の契約が更新され、実質的に無期契約と異ならない状態で存続していると考えられる場合。東芝柳町工場事件判決がこの例です。雇用継続への合理的な期待が認められる場合、これは本日も紹介しますが、日立メディコという裁判例がありますが、このような場合は、裁判法理によって雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されるが、これを法律で明確化すべきという考え方についてどのように評価すべきかということです。
諸外国の法制との比較です。諸外国の法制においては、雇止めよりも、主として有期契約労働が使用できる場合を限定することにより労働契約の問題に対応しているものがありますけれども、このように入り口の規定の問題と雇止めといった出口の規制のバランスにつきまして、我が国の雇用システムの特徴に照らしてどのように評価すべきかということでございます。
諸外国の法制においては、フランスのように、契約終了後に労働者が不安定な状態に置かれることを防止するために、使用者に契約終了手当の支払い義務を課しているものがありますけれども、我が国の雇用システムの特徴等に照らしましてこれについてはどのように評価すべきかということです。
上記のほか、有期労働契約の更新、雇止めに係るルールとして具体的にどのようなものが考えられるか。有期契約労働者が一定期間の勤続年数後、一定期間を置いた後に再び雇用される、いわゆるクーリング期間の問題につきまして、今回の実態調査結果等を踏まえ、どのように考えるべきかということです。
「2 その他」としましては、有期契約労働者を取り巻く実態にかんがみ、上記の論点のほか、労働条件等の改善のためにとるべき施策の方向性としてどのようなものが考えられるかということでございます。
資料3-1でございます。これはこの研究会で行いましたヒアリング結果のうち、更新・雇止め等に関するものについて抜き出したものでございます。上からごらんいただきますと、まず契約期間の更新は、育児・介護等の状況に応じて労働者の方が労働時間や休日等の労働条件の見直し、切りかえを行う契機として機能していると流通業の方が言っておられます。
契約期間満了には雇止めだが、反復更新より業務の縮小や店舗の返済がなければ原則65歳まで勤続することも可能ということを同じく流通業の方が言っております。
経営状況を理由とした自己都合による退職以外の労働契約の終了は、現下の不況下を含めて行なわれていない。そういう状況ではあるんですが、制度的には常に雇止めの不安を抱えているという声を聞いておられると製造業関係の労働組合の方が言っておられます。
雇止めを巡る大きなトラブルは起きていない。正社員は希望退職者の募集を行った例はあるものの、有期契約労働者には行っていないことも理由かもしれないと、流通関係の労働組合の方が言っておられます。
有期契約であることから更新されないことを恐れて、職場以内で意見を述べたり権利の主張もできない状況になっている。これは非正規労働者を組織している労働組合の方です。
販売ノルマの引上げを拒否したら更新してもらえないと思い込み、メンタルヘルスの不調の状態になっている例がある。これも同じく労働組合でございます。
使用者が試用期間自体を形式的にとらえており、試用期間を徒過した後、本来の契約期間の満了直前になって能力不足等を理由に雇止めの話が出されることがあるが、労働者にはこれは予見できず、納得もできない。事前に指導や教育の至らない点の指摘やより軽度な処分を行うことも含めて、段階を踏んで手続をしていくことが重要ではないかと、労働相談の担当者が言っておられます。
有期労働契約を反復、更新した場合など、期間の定めのないものと同視すべき状態になっているときに雇止めをすると、雇止めといえども解雇権濫用法理と同様の制限がかかることは判例上もはっきりしているが、使用者、特に中小企業には十分知られていないのが現状であり、当然雇止めできるという認識が非常に強い。雇止めの制限については何らかの形で明確化する必要があるのではないかと同じく相談の担当者が言っておられます。
その他ですが、期間満了まで務めることを促すため、契約期間を満了した場合には退職金のようなものを一定額支給しているというのが製造業で出ています。
雇止め時に労働者の希望に応じて、他の派遣先への就業をあっせんしているというのが人材派遣業で出ています。
仕事は恒常的であるにもかかわらず、実際の契約期間は細切れ化しており、6か月以下が圧倒的に多くなっているという現状を非正規労働者を組織している組合が言っておられます。
契約期間中の解雇について、特段の事情がないと困難であることについても認識が乏しいということについて、労働相談担当者は言っておられます。
資料3-2でございます。これは本研究会が行いました実態調査の今回の論点に関わる部分を抜き出したものでございます。(1)は1回当たりの契約期間でございます。これは参考の17年の実態調査と比較したものでございますけれども、これをごらんいただきますと、直接の比較はできないにしましても、3か月以上6か月以内とかというものを比較していただきますと何となく少し増えているとかそういう印象があるというものでございます。
2番のクーリング期間でございます。今回の論点にも上がっておりますけれども、クーリング期間を置いているという事業所については○で囲んでおりますが、2.5%となっております。
2ページの第3表は契約の更新形態でございます。契約の更新形態は事業所の方に聞いたところを○で囲んでおりますが、更新の都度、契約期間等について詳しく説明を行った上で、署名、記名、押印を求めているというのが52.3%。雇止めをする理由ですが、過去3年間の雇止めの理由としては、業務量の減少のためとか、労働者の勤務態度不良のためというものが多くなっております。
雇止めに対する考え方でございますが、雇止めはあるかもしれないが、やむを得ない場合に限って行うというところが52.9%となっております。
3ページ、雇止めに先立つ手続でございます。これはごらんいただきますと契約を更新しない旨を書面で伝えたあるいは口頭で伝えたというところがそれぞれ38.2と59.0となっているところでございます。
(7)が解雇・雇止め時の退職金または慰労金の支給の有無でございますが、雇止めのところを○で囲んでおるんですが、中途解雇時も雇止め時も支給しているのが13.2、雇止め時のみ支給しているのが5.1となっております。
(8)は、雇止めや契約更新をめぐるトラブルの有無、原因ですが、トラブルになったことがないというところは93.2ということで非常に多いわけですが、あえてあったことがある理由を見ますと、雇止めを伝えたのが急であったためというようなものや、更新後の労働条件についても納得してもらえなかったため、あるいは更新への期待についても認識の違いといったものが高くなっております。
次が個人の調査でございます。(1)の現在の契約期間も、17年調査と並べておりますが事業所調査と似たような感じでございまして、今回の調査結果の方が若干短くなっているような印象があるということでございます。
(2)の契約更新についての説明でございます。これについては真ん中のところですが、特別な事情がなければ自動的に更新する旨の説明というところが32.0%で、高い数字が出ておるということでございます。
(3)は解雇・雇止めの経験でございます。これは自分が解雇・雇止めの経験があるというのが20.7、自分に解雇・雇止めの経験がない場合が79.3なんですが、同僚に雇止めがあったというものが37.2になっております。
(4)が雇止めの理由ですが、理由を尋ねてみますと、景気要因などによる業務量の減少あるいは経営状況の悪化というものが挙げられております。
2ページ、雇止め時の手続ですが、これも書面で更新しない旨が伝えられたというのが16%、口頭で伝えられたというのが49.6となっております。
(6)は解雇・雇止め時の退職金または慰労金の支給ですが、この雇止めのときに退職金が支給されたというのが5.3%と個人の方が答えておられます。
雇止め時のトラブルですが、トラブルになったことがあるという方が41.4と少し事業所調査よりは高めに出ておるんですが、その理由を見ますと、雇止めの理由が納得できなかったのが52.8、雇止めの予告がなかった、あるいは遅かったが27.7となっております。
最後は雇止め時のトラブルへの対応ですけれども、こちらをごらんいただきますと、個人で会社の上司と話し合ったというものが34.2と最も大きい数字となっております。
資料3-3でございますが、こちらの方では今回の論点にかかります諸外国の法制との比較を整理したものでございます。まず、更新に係るルールを左で縦に並べておりますけれども、これは前回と重複する部分もありますが、今回の論点に関わるということで再度整理させていただいているものでございます。
我が国におきましては、更新回数については特に制限がないところでございます。ドイツは2つに分かれまして期間の定めが正当化される場合は更新回数に制限がない。正当化されない場合は、最長2年の間における更新は原則3回までとなっております。
客観的な理由を欠く反復更新は、解雇制限法を潜脱するものであり、最後の有期契約の締結は無効で期間の定めがないものとなるとなっております。
フランスの更新は最長原則18か月以内に1回のみ可能。更新時にも有期契約を利用する正当な理由を証明することは必要となっております。
イギリスは、原則として雇用期間が4年未満であれば更新回数に制限がない。
韓国は、雇用期間が2年以下であれば更新回数に制限なし。
デンマークは、更新の濫用防止として、更新は原則として客観的な理由によって正当化される場合のみ可能。ただ、大学における教師や研究者等におきましては、更新は2回まで。これらの違反については損害賠償請求の対象となる。
反復継続的利用の濫用があった場合は、無期契約となるのが判例法理で書かれております。
アメリカは特にないということです。
期間満了、雇止めに係るルールでございますが、我が国におきましては3回以上更新されている場合等には、契約期間満了日の30日前までに雇止めの予告が必要。また、労働者の請求により更新しない場合の理由の証明書を交付することが必要となっております。
判例法理によりまして、実質無期または雇用保護への合理的期待が認められる場合の雇止めは、解雇権濫用法理の類推適用などで無効とされることがございます。
ドイツは特に雇止めそのものに係るルールはございませんで、最後の期間の定めの正当性を争う形になります。
フランスにおきましては、期間満了時に期間の定めのない契約での継続が使用者から提示されなかった場合に、使用者から契約終了手当が支払われる。ただ、季節的雇用等は適用除外になっております。その額は契約期間中に支払われた税込総報酬の10%が原則となっております。
イギリスは特にございませんで、韓国は雇用期間が2年以下であれば原則雇止め可能でございますが、2007年法以前の裁判例で自動更新で長期雇用の場合、その更新拒否に正当な理由が必要とするものがございます。
その他にまいりまして、我が国におきましては、労働契約法におきまして使用する目的に照らして必要以上に短い期間を定めることにより、反復更新することのないように配慮しなければならないとなっております。
大臣告示で一定の有期契約を更新する場合は、実態及び希望に応じて契約期間をできる限り長く設定する必要がございます。
ドイツでございますが、同一使用者と以前に労働関係にあった場合は、正当事由が不要な有期契約を締結できないということで、ある意味でクーリング期間的なものは認めていないということです。
フランスは有期契約の終了後、同じ職に有期契約や派遣で労働者を採用するためにはクーリング期間を置かなければならないとなっておりまして、それは具体的に(1)(2)のようになってございます。このクーリング期間を遵守しない場合は、無期契約とみなされるほか、刑事制裁の対象となります。
イギリスですが、中断期間後の再雇用は当該期間が継続期間として一定の範囲に収まるようなものであれば継続期間として扱われることになっております。
資料3-4にまいりまして、主な裁判例を整理したものでございます。2ページは、解雇権濫用法理の類推適用がなされた裁判例の類型を整理したものでございます。
これは平成12年、反復更新に係る研究会が労働省に設置されておりまして、それで4タイプに整理されたということがございます。その4タイプに整理された中の代表的なものを紹介させていただいたものでございますが、まず1つ目は実質無期契約タイプとなっておりまして、東芝柳町工場事件が代表例です。
各労働契約は期間の終了ごとに当然更新を重ねて実質上期間の定めのない契約と異ならない状態で存在しており、雇止め意思表示は実質において解雇の意思表示に当たり、その効力の判断に当たっては、解雇に関する法理を類推すべきものであるとした原審の判断を是認した。
2番目は実質無期ではないんですけれども、期待保護を図ったというもので、それも反復更新に関わるものでございます。日立メディコが代表例でございまして、臨時的作業のために雇用されるものではなく、雇用関係はある程度の継続が期待されており、5回にわたり契約更新がされていることから、雇止めに当たっては解雇に関する法理が類推されるとした原審の判断が認定されたというものでございます。
3点目は期待保護です。反復更新というよりも継続特約に重きを置いたものでございます。その代表例として挙げておりますのが龍神タクシー事件でございます。これは臨時雇いのタクシー運転手に対する1年間の雇用契約期間満了時の雇止めという1回での雇止めなんですけれども、本件雇用契約はその実態に関する諸般の事情に照らせば、実質は期間の定めのない雇用契約に類するものであり、雇用の継続を期待することに合理性を肯認できるものとして更新拒絶が相当と認められるような特段の事情が存しない限り、期間満了のみを理由とした雇止めは信義則に照らし許されないとされたものでございます。
最近の事例としまして、学校法人立教女学院事件を挙げておりますけれども、これは被告が運営する短期大学において派遣労働者として3年間勤務した後に、従前と同様の業務に有期嘱託職員として勤務していた原告が、2回の更新後に雇止めされた事案につきまして、これも担当していた業務の恒常性であるとか、契約更新時の合意内容、これが例えば原告の勤務成績で判断するとか書いてあった。更新時の事務局長等の説明などから、本契約がなお数回にわたって継続されることに対する合理的な期待利益があるとされたものでございます。
これでユニークなところは次のパラグラフでございまして、嘱託職員の雇用継続期間の上限を3年にするという方針が実は決まりまして、それを理由として雇止めするためには、その方針が出された時点で既にこれを超える継続雇用に対する合理的な期待利益を有している嘱託職員に対しては、当該方針を的確に理解され、その納得を得る必要があるところ、本件雇止めはこの方針を形式的に適用した一方的なものであり、この継続利用に対する合理的な期待利益をいたずらに侵害するものであって、これは認められないとされたものでございます。
4番は純粋有期契約タイプでございまして、その代表例として2つ挙げておりますが、まず亜細亜大学事件でございます。これは20回更新されて21年間にわたった非常勤講師の雇用契約ですが、専任教員との職務・待遇・拘束性の相違性などから、それが期間の定めのないものに転化したとは認めないし、また期間の定めのない契約と異ならない状態で存在したとは認められず、期間満了後も雇用関係は継続するものと期待することに合理性があるとも認められないとされたものでございます。
次の旭川大学事件でございますが、外国人語学教員の労働契約は、実質的に当事者双方とも期間は定められているが、格別な意思表示がなければ当然に更新されるべき労働契約を締結する意思であったと認めることは当然できないということで、これも期間の定めのない労働契約に転化した、あるいは解雇に関する法理を類推すべきと解することはできないとされたものでございます。
次は解雇権濫用法理の類推適用などにより、雇止めが認められない場合にどういう効果が生じるのかということを裁判例で紹介させていただいたものでございます。1番目は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係とされたものでございます。
この代表的なのが日立メディコ、お読みいただきますと、解雇権濫用法理の類推適用によって、解雇であれば解雇無効とされるような事実関係の下に、使用者が新契約を締結しなかったとすると、期間満了後における使用者と労働者の間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられるということで、従前の労働契約が有期ですから、無期になるものはないということでございます。
次の龍神タクシー事件がより明確に書いておりまして、3行目ぐらいからごらんいただきいと思いますが、更新により雇用契約が期間の定めのないものに転化するものではなく、また当該1年間経過後に当然に再更新がされることになるものでもないと認定がされております。
不法行為責任まで問われた例というのが次の恵和会宮の森事件でございまして、病院準職員介護員、これは3か月の試用期間で1年契約3回更新された方ですが、職員は当然に更新されるとの期待を有していたとはいえ、また病院側に長期雇用の意図があり労働者が継続雇用の期待を持つ状況にあったといえ、実質的に期間を定めない契約と異ならず解雇権濫用法理が類推適用されるとした。
効力は次のところでございまして、当該雇止めを無効として、雇用契約上の権利を有する地位を確認したほか、当該雇止めは不法行為に該当するということでございまして、これは理由としましては後ろの方に付けておりますけれども、かなり主観的な理由によって雇止めをしたとかというようなものがありまして、そういうものもあって不法行為に該当するということが判断されております。
その他の裁判例で2つほど付けさせていただいておりますけれども、まず近畿コカ・コーラボトリング事件です。まず当初の契約は無期契約であったか否かは明らかではないが、期間の定めのある労働契約を交わした勤続期間の途中からは、有期契約を締結していたと認められたというものでございます。
当初は無期だったかもしれないけれども、有期の契約を結んだときから有期ですねということで、お互いの合意を尊重したというような判例でございます。
報徳学園事件でございます。これは前回もお出ししましたが、常勤講師として雇用され、契約を3回更新後に雇止めをされた原告につき、常勤講師の雇用は3年が上限との校長らの発言があったが、原告は当該発言前の時点において既に雇用継続に関し強い期待をしており、かつ、期待するにつき高い合理性があるから、このような期待利益が遮断または消滅したというためには、雇用継続を期待しないことがむしろ合理的と見られるような事情変更や雇用継続しないとの当事者間の新合意を要するとされたというものでございまして、立教女学院事件にも近いものがあるんですが、継続期待がありましたらそれを変更するような事情変更とかコーラボトリング事件のように当事者間の慌しい合意がないと無理なのではないかと判断したのが報徳学園の事件でございます。
私からの説明は以上でございます。
○鎌田座長 ありがとうございます。
それでは、契約の更新・雇止め、そのほかの論点について御質問、御意見がありましたら自由に御発言をお願いいたします。また、論点について追加すべき点があればそれもまた御発言をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○藤村委員 そもそも有期労働契約というのは、仕事の終わりがほぼ見えているという場合に雇うものだと思うんです。例えば3階から4階に引越しをする。今は普通は引越し業者に頼みますけれども、その会社が引越し作業をやるためには現社員だけでは無理なので外から人を雇ってきて、例えば1か月の間やって、引越し作業が終わったら終わりですという、非常に明確な有期雇用ですね。そういう合意も勿論あるんですが、その場合に雇止めというのは終わりねということで余り問題にはならない。
問題になるのは、仕事の終わりがよく見えていない、今のあれでいうと例えば3階から4階に何か書類を運ぶというのが毎日のように発生する。そういう仕事は単純な作業だから余り会社としては給料を払いたくない。正社員の給料を払いたくないから、では有期雇用でという。でも、実は仕事の終わりは明確でないですね。その場合に多分更新というのが発生するという。
なかなか仕事の終わりが明確か明確でないかということと、企業側から見たときに正社員としての賃金を払うだけの価値があるかないかという。今そういう2つの軸でやられる4つの領域が出てきますけれども、多分問題なのは仕事の終わりが明確でないけれども、正社員の賃金を払うほどの仕事ではないと会社が思っている。この人たちは期間が来るとまた継続、終わるとまた継続となっていますね。それを制限するということの議論になると思うんですが、そもそもそういった仕事を有期契約でつなぐということはいいのかなと。単に私が考えていることを言っているにすぎないんです。
○鎌田座長 今、重要な御指摘だと思うんですけれども、1つは有期を用いる理由というものは期間を定めるということの合理的な理由というニュアンスが入っていると思うんですが、それは仕事自体に臨時的、一時的な性格がある、あるいは臨時的な一時的な労働需要の必要性があるということから有期というものを使っているんだ。それが1つの考え方。
もう一つ、今、藤村先生は終わりがよく見えないというかはっきりしないということもありましたけれども、私などが見ていると要するに別に終わりがあるとかないとかではなくて、一言で言ってしまうとずっとある仕事であっても有期を使う。なぜかというのは、雇用調整のしやすさということもあるのかもしれないし、今、先生がおっしゃったように賃金が数千円で安いという、あけすけな言い方ですけれども、そういうような使い方ということなのかもしれない。
藤村先生のおっしゃったことを私なりに言ったんですが、そういった場合も後者の方が有期という形で使う場合に適正なのかどうかという問題が出てくるのではないかというまとめ方でよろしいですか。
○藤村委員 はい。ありがとうございます。
○鎌田座長 一方では、これも何回か前の議論の中で、つまりグローバル化の中で競争が厳しくなって、正社員として人件費コストをできるだけ削減したいという要求がある。言わばそれはリスクなわけですね。景気の変動の中で雇用数。そういった変動を企業はなぜ人件費をそういうふうに調整してはいけないんですかという疑問もありますね。そこですね。それはそれで企業としての1つの経営的なポリシーというのもあると思うんです。それも1つは見ていかなければいけないという気もするんです。労働者の側から見るとそれが納得できるかどうかという問題はあると思います。
今の議論に絡んでも結構ですし、またほかの議論でも結構です。
○佐藤委員 今のことであるかどうかは定かではないんですが、入り口、つまり雇い入れということで雇用契約の開始のときに理由というのを、今回もやりましたけれども、まずはアンケートで聞くといろんな理由があるわけです。1個の理由ではないんです。マルチで付けると勿論、人件費業務変動対応、正社員になじまないとかいろいろあります。複数あるということがまず1つ考えておく必要があるだろうというぐらいの意味です。
雇止めの理由も聞くと、2ページの資料でいうと表4で出ていますが、業務量の減少、つまり仕事がなくなる。当初仕事があってかなり限定的だと思われたので有期契約で雇った。それがなくなるので雇止め、終了であるという非常に明快なのもあるんですが、それは単に43.4%にすぎず、次いで多いのが例えば労働者の勤務態度不良のためとか、こういうのは業務の変動性とかコストの問題というよりも、雇い入れたその人の働き振りという属人的な理由によって、しかも雇い入れた後に事前には十分に情報として持っていない、ある種の非対称性のようなものがあって、雇い入れることによってその情報が獲得されてそれが理由で解約に至っているというケースがなんと38.8%ある。
また業務内容に照らした労働者の能力不足も今と類似していますが27.3%。あらかじめ更新しないと契約していたためという、つまりこれはあらかじめ契約していたとおりで更新しないとしましたねということで解約に至っているのはなんと23.2%にすぎないわけであって、要は明確に一個の理由で雇い入れて一個の理由で解除に至っているというケースがむしろレアであって、実は実際にはいろんな要因が絡まっている。しかも悩ましいのは、業務の変動性とかコストという問題はさることながら、雇い入れた後に働きぶり云々によって実際問題として理由になっているという点。この点をどう考えるか、議論していく上で実態の認識のレベルにおいて、まず確認すべきことではないのかなということです。
○鎌田座長 働き振りというのはある種試しで使うというのか、試用的な使い方ということですか。
○佐藤委員 そうでしょうね。
○鎌田座長 要するに働いてみてもらわないと実際のところよくわからない。そこを有期という形で少し考えているという理由もあるのではないかと思います。
○佐藤委員 あるかもしれないですね。
○藤村委員 でも、同じ表を見ると7割が雇止めを行ったことがないと言っているんです。結果として、勤続年数が10年を超えるような有期契約の人もいる。そうなると、それはほぼ無期契約に近い。
○鎌田座長 法的にはそうなっていませんけれどもね。実質、当事者の中では無期に近いようなイメージというか意識を持っている方もいるかもしれません。
○藤村委員 そうすると、ほかの国の決め方などを見ると、最長何年ですという決め方がありますね。それは割と合理的なのかなと思います。つまり、それを超えて発生するような仕事であれば、それはもう無期契約の人でいいでしょうと。そうは言っても急に仕事がなくなるということがあるから、そこの部分の解雇の仕方、労働契約法の中に解雇してはいけないとは書いていないですから、そこが整理されていれば雇う側はもう少し気楽に雇えるのかなという気もします。
○鎌田座長 今おっしゃった最長というのは、例えば更新を含めて何年までというイメージですね。
○藤村委員 はい。
○鎌田座長 そうすると、その途中での雇止めというのはあるわけですね。つまり、例えば3か月契約を結んで更新をして仮に3年だとすると、3年までの雇止めというのはあるわけだけれども、更新をするのは3年以上してはいけないというようなことですか。
○藤村委員 そうですね。
○鎌田座長 現在のそういう規制というのは先ほど御紹介いただいた判例法理があるんですけれども、何か法律系の方で御意見があれば。
どうぞ。
○山川委員 やはり入口規制と言われるものと出口規制と言われるものが結構連続性かがあるような気がしまして、そもそも有期契約として利用すべきでないという規制パターンがあって、そこに入らない場合でも、先ほどお話のあったような期間の制限を課したり、あるいは更新の上限をかけたりという規制のと、上限はかけないけれども、雇止めについて解雇権濫用法理を類推適用するという規制の3つくらいがあって、連続的な感じもするんですけれども、やはりそこは使う理由によっても異なるのかなと。
有期労働契約者の類型によって整理しているというのは余りヨーロッパでは聞いたことのないような気もするんですけれども、ある程度持続的な雇用というのもあり得るけれども、雇止めに合理的理由を要するという形で制約することと、例えば更新に上限を設けることというのは、多分使われ方とかによって違ってくるような性格のものではないかという感じもするので、この研究会で行っている職務別といいますか類型別に考えることと、いろんな施策を考える際の組み合わせを行うことがある意味で連動してくる場面があり、自分では頭を整理しきれていないんですけれども、入口規制と出口規制もある意味では連続的なものがあって、これまでのお話ですと上限規制というのはある意味で入り口規制の方で議論していましたが、それも若干雇止め規制と両立するもので、しかし、連続的なものでもありうるので、いろんな仕組みを利用の類型ごとに検討するというのはあり得るのではないかなと思います。
別の話ですけれども、今問題になっているのは、一時的な仕事と一時的でない仕事のほかに、先ほど阿部先生の言われたこととの関係で、仕事が持続的にはあるんだけれども、いつ切られるかわからないという状態がいろいろ出てきている。いつ受注が切れるかもしれない。多分、そういう観点から有期契約を利用しているということもあるのではないか。つまり、本来的に一時的なものと、本来的に永続的なものと、永続的ではあるんだけれども、いつ切られるかわからないという不安定要因があるものがあり、最後のものが多分増えているのかなと思います。現状の話だけなんですけれども、そこもいろいろ類型があるのかなと思います。
○鎌田座長 ありがとうございます。今、御意見というか御質問の中で1つだけ私も確認しておきたいんですけれども、欧米、ヨーロッパ型の中で、例えばドイツなどは期間制限の合理性は言うけれども、雇止めの合理性ではないんですね。そうすると、いわゆるヨーロッパ型の中で雇止めの合理性というものを規制の中に組み込んだものはあるんですか。
○山川委員 そこは多分橋本先生から御説明があるかと思いますが、最後の更新時に正当事由を要求することによって、そこから後は解雇規制がかかってくるという理解でよろしいですね。
○橋本委員 はい。
○鎌田座長 その際、雇止めというよりも、そもそもそのときの期間を定めたことの合理性なんですよね。
○橋本委員 そうです。雇用が終了された段階で争われるということで雇止めに近いような運用だということを説明したんですが、雇止めではなくて。
○鎌田座長 そうですよね。だから、日本だとそうではなくて、そこで雇止めすることが合理的かどうかということなんですね。
○橋本委員 日本の場合ですね。
○鎌田座長 だから、大きく違う。
○山川委員 私が言ったのは一般的にという趣旨で、そうすると雇止め規制というのはヨーロッパ型の正当事由を求める入口規制を問らないこととする場合にも十分あり得るというか、むしろだからこそその役割が強くなる。入り口規制が強かったり、上限規制を入れてつくるとすると、上限規制を破ったところで期間の定めのない雇用とみなされるという問題は別としても、有期のままで雇止めの制約がかかるのは、入り口はそんなに強くない規制にしているがゆえにその役割が大きくなるという位置づけかなと思います。
○鎌田座長 どうぞ。
○荒木委員 よくわからなかったので教えていただきたいのですが、今日の資料3-3で、更新に係るルールのドイツの3つ目のポツで「客観的な理由を欠く反復更新は、解雇制限法を潜脱するものであり、最後の有期契約の締結は無効であり、期間の定めない契約となる(判例法理)」とあります。ここで、客観的な理由を欠くというのは、つまり正当事由が要求されていない場合のことですね。
○橋本委員 そうではなくて、正当事由が要求されている場合のことです。これは、もともと60年代の判例法理にのっとっています。つまり、その判例法理を立法化したのが、今、客観的な理由が必要な有期契約の締結には客観的な理由が必要であるという大原則なので。
○荒木委員 大原則ですね。それを法改正して2年間については客観的な理由が要らないとしたでしょう。ここで書いている判例法理というのは今も生きている法理なのですか。
○橋本委員 はい。その大原則がこれだと、この内容だということです。だから、正当事由の要らない契約、最長2年の契約とは関係ないです。
○荒木委員 関係ない話ですか。
○橋本委員 はい。
○荒木委員 そうすると、2年間については正当事由なく、しかし更新は3回までできるというのがドイツなのですが、その中ではたとえば2回更新したときに雇止めしたという場合に、何かそれが不当なものとして日本の雇止め法理みたいな議論がされているというわけではないということでいいんですね。
○橋本委員 はい。
○荒木委員 わかりました。
○橋本委員 2年以内で、更新が3回以内ならば自由ということになります。
○鎌田座長 これは阿部先生が冒頭に御説明、生産性との関連でお聞きしたいのですが、例えばこれまでも話をしてきたんですが、何か臨時的、一時的な業務の性格からそういうものであったり、労働需要が臨時的、一時的である、だから有期にするという場合ではない。つまり、業務の性質も労働需要としてもある程度永続的である。
だけれども、企業として見ると、いつ景気の動向から人件費コストが過剰になってくる、負担になってくるということを考えて、言わば雇用調整要員として一定のそういった比較的雇用調整ができる人たちを抱えておくというのは、私のように余りよくわからぬ人間はそれも一種の生産性の問題というんですか、雇用の経営上の合理性の1つの判断ではないかと思うんですが、そのことと先ほど先生がおっしゃった生産性、有期の方たちをそのまま不安定な状態で置くということは生産性の低下をもたらす、あるいはやる気を失うというようなデータがあるということとどういうふうに考えればいいんでしょうか。
○阿部委員 例えばスペインの例ですと、このデータがかなり長期にわたったデータで、約15年分のデータを使って分析されているんです。その中には勿論景気の変動というのもありますけれども、多くの場合には景気の変動を考慮した上でも、有期労働者の多い企業で生産性の低下というのが確認されているということで、もしかしたら正社員と有期労働者はそもそも個人の労働生産性の質が違うとかということがあり得るかもしれない。ただ、それだけではなくて先ほど申したのは、転換が可能になると生産性が高くなるということは、転換するという制度を置くことによって、その中で正社員になろうとして頑張ってくる人とかいるところが出てきて、それが生産性を押し上げている可能性はあります。
つまり、どれだけやる気を引き出すかというのを仕組みとして入れているか、入れていないか。もともとは有期契約労働者の生産性は正社員よりは低い。だから、有期労働者の割合が高い企業では生産性が低くなってしまうということがあると思います。
○鎌田座長 わかりました。こういうことですか。要するに、有期あるいは正社員それ自体の生産性の比較ではなくて、その中に正社員への転換ということを仕組むことによって生産性が高まると。
○阿部委員 そういうこともあります。
○鎌田座長 なるほど。そうすると、例えば雇用調整の容易さというのはその場合の、言わばずっと本来ならば正社員として雇ってもいいような人を有期のままにおいておくというのは。
○阿部委員 というのは生産性を引き下げるという。
○鎌田座長 一方では、スペインの場合はどうなのかよくわからないんですけれども、雇用調整の容易さというものとバランス、比較考慮になるんですか。
○阿部委員 それは話としては少し違うので、そううまく言えないんですけれども、企業が必ずしも雇用調整がしやすいからといって有期契約の方を雇っているわけではなくて、例えば外部労働市場から調達可能な仕事が増えてきたから外部労働市場から調達しているというケースが多いのではないかと思います。
○鎌田座長 なるほど。では、雇用調整だけで考える必要もないということですね。先ほど佐藤先生もいろんな理由があるとおっしゃっていますから、確かにそうなんだ。
○佐藤委員 今のことに関連してよろしいですか。ある産業間でも非正規は特に有期比率、例えば正規有期比率と言うと流通業が多いとか、業種によってまずは違うではないですか。それはそれとしてもありますね。おっしゃった有期が多いと生産性インパクトというのは、変動ですか。つまり、有期が例えば30ぐらいの水準。それがある時点から50ぐらいになったという変化があったときには、少し落ちるではないかということですね。
○阿部委員 そういうことです。
○佐藤委員 もう一つは、正規への転換可能性が一種の働く側から見てインセンティブになってくるということで、スキル形成を促すとかパフォーマンスにプラスに効いてくる。非常に興味深いし、ここでの議論にとって極めて重要な意味を持っていると思うんです。そうすると、この場合も日本においても、やはり均等待遇とかということよりも、正規への転換という形で、法制度をどう書くかは別として、そういうものを重視した方がいいという理解でよろしいんですね。
○阿部委員 はい。
○佐藤委員 それは理由はインセンティブだとか。
○阿部委員 あるいはそれによって正社員への転換が促されるということも労働者にとってはプラスですし、企業にとってもそれによって生産性が上がるということがあるのであればプラスだと思うんです。
例えば先ほど私は均衡処遇のところでもそう思ったんですが、単に正社員と有期との均衡処遇だとか均衡待遇というのを実現するだけではそのまま終わってしまうので、そこを抜け出していくためには正社員転換という仕組みをむしろうまく使った方がいいのではないかと思っているんです。
○鎌田座長 あと1点だけ確認なんですけれども、均衡処遇、均等待遇と正社員転換、必ずしもトレードオフの関係ではないんですね。
○阿部委員 はい。トレードオフではないと思います。
○鎌田座長 つまり、正社員転換を強化すれば均等待遇はしなくてもいいというトレードオフの関係は別にないんですね。それはそれでまた別な問題ということでね。
○阿部委員 はい。
○鎌田座長 この法律論といたしましては、判例はたくさん紹介されたんですけれども、判例法理をどう理解するかという問題なんです。判例法理というのは皆さん詳しいと思うんですが、やはり業務の性質の一時さとか、例えば雇止めの期待の合理性だとかというものを考える場合に、その業務の性質あるいはそういった有期を導入したことの経営的な合理性とかそういったようなことというのはやはり考慮になっているんですか。
経営的なということを言ってしまえば、極論ですが、業務自体は永続的でも、経営的には言わば景気の動向によるリスクがあるわけですね。そのリスクをそれなりに解消するというのは合理的だという、こういうふうに判例はいっているわけではないと思うんですが、そういうことも言えないわけでもないわけです。この判例法理の特に合理的期待保護という判例法理というのは、その辺どう考えたらいいのかなというのが。
○山川委員 東芝柳町工場事件のように実質正社員と同じというのはやや別類型かもしれませんが、そこまで至らない場合の合理的期待はまさに文字どおりかなり主観的なところに依存している部分がある。どう説明したかとか、正社員になれますよとか、雇止めは余りしませんよというところに依っているので、そんなに客観的な事由は大きくはないように思うんですけれども、ただ、客観的に永続的な仕事であればそれが雇用継続への期待を合理性があるものにさせる要素に働くとか、そういうことでヨーロッパ型のような形で客観的に合理的な有期労働者の利用が合理的な理由が法的規制に直結はしていない。要素としてはあるんですけれども、判例を詳しくそういう観点から見たわけではないんですが、それはあくまでも合理的期待というものの要素の基礎付けとして使われるということかなと思います。
○鎌田座長 そこら辺のところは少し先生方の御意見も。
どうぞ。
○荒木委員 日本では、有期契約を使ってよい場合を制限していないですから自由に使ってよろしいと。しかし、そのときに雇用継続への期待が生じたのに単に期間が満了しただけというだけで雇用関係が終了していいのかということで、雇止め法理というのができてきた。その場合には解雇権濫用法理を類推適用すべきだろうと。それはそれとして非常に自然な流れだと思うんです。
そういうときに、例えば座長あるいは藤村先生がおっしゃったように、業務としては恒常的にある業務だと。業務がなくなるわけではないから一時的な需要ではないということはどう効いてくるかで、ここは見方にもよると思うんです。山川先生がおっしゃったように、確かに業務があるんだから、この仕事はそこにある。自分は有期だけれども、仕事がある以上は自分の雇用は継続するだろうという期待が生じることは恐らく多いですね。その限りではそのことも合理的な雇用継続への期待に影響してくるということは言える。
最初に藤村先生が言われていたように、有期契約が利用されている理由が幾つかあって、1つは雇用関係終了のトラブルを避けるために、正社員ではなくて有期契約を使うというのがあるんでしょう。これが今のように恒常的に仕事があって、労働者も雇用継続を期待した場合には、やはりそれだけでは済まないので解雇権濫用法理を類推適用しようということになってきている。これが1つです。
もう一つは、正社員ではないから、非正規従業員だから賃金が安い。安い労働力として使うというインセンティブが使用者の側にはあるかもしれません。今までは、従来よく言われたように正社員は労働条件もよくて雇用も保障されている。他方で非正規従業員は雇用が不安定で、しかも労働条件が悪い。この余りの格差を何らかの形で是正しなくていいのかということが問題となってきていて、それにどうアプローチするかということだと思うんです。
正社員化を促すことによってその状態を全部回復するということかもしれませんが、現状を維持しながら非正規従業員が非常に高い処遇の正規従業員に転換するというのは現実的ではないでしょうし、余りうまくいかないかもしれません。
結局その間にグラデーションがあるので、いろんな雇用タイプを設けるべきではないかという気がします。前にもヒアリングで聞いたんですが、サービス業などで何年も10年も20年も働いている方がおられるという場合には、むしろ有期であることのデメリットを解消して、ふさわしい処遇で、しかし期間の定めのない契約で雇うことはできないのかとお聞きしたところ、なかなか難しい、本人も望んでいないんだ、というお答えがたしかあったと思います。しかし、正社員と言うかどうかは別にして、雇用不安のない、しかしふさわしい処遇の雇用形態というものをもう少しつくるように使用者の方に働きかけることはあっていいのではないか。
今回のヒアリングの中で非常に印象が残っているのは、3-1でいうと真ん中の辺りで非正規労働者の組合の方がおっしゃったように、有期であるばかりに権利が侵害されていてもそれを主張することすらできない。そういうことを言うと雇止めされるのではないかと恐れて権利主張できない、ということをおっしゃったんですが、こういう事態は非常に問題で、何か対応が必要ではないかという気がしました。
○鎌田座長 ありがとうございます。今、荒木先生がおっしゃったことで私なりに2つのことを少し。1つは、判例法理をどう理解するかということで、業務が永続的なものの場合に雇止めというものをどう考えるか。雇用継続の期待の合理性判断というのを主観的な手続といいますか、主観的なもので評価するという側面と、今、言ったように言わば業務の性質的に客観的に両方あるということなんですか。
その際、今ぱっと思いつきなんですけれども、伊予銀スタッフ事件は派遣の話ですが、あれは派遣には合理的な期待というのは発生しないという言い方をしていますね。あれは明らかにもう客観的なことを言っていますね。
あの判例自体をどう評価するかというのは難しいんですけれども、あれは今は最高裁にも行って、最高裁は上告を不受理して棄却したんですが、最高裁ははっきりものを言っていないのでよくわからないんですが、少なくとも一審、二審は雇止め法理は派遣においても適用があるけれども、そもそも派遣というのは派遣先との契約があって有期雇用契約が成立するんだから、それがなければたとえ反復更新を何回、あれはたしか10年ぐらいだったのかな。そうしても雇用継続の期待に合理性はないと言っており、制度というか客観的な合理性というものを考えているような気がしました。
もう一つは、荒木先生、つまり正社員転換と言うけれども、実際に転換のメカニズム、転換をするというのは企業の側から見た場合にどういうふうにとらえればいいのだろうかという問題提起でしたか。つまり、今ある有期を正社員にという転換というのはかなりハードルが高いというような御趣旨でしたか。
○荒木委員 ヒアリングの中で感じたのは、現在の正社員の処遇はそのままに、非常にそれと対応が違った非正規従業員をいきなり正社員とに同じような処遇をするというのはなかなかリアリティがないというお話だったのかと思いまして、むしろいろんな働き方、もっと多様な雇用モデルを提供して、仕事がずっとあるのであれば、そこに必ずしも正社員と同じ賃金を払うということではなく、むしろ異なる処遇でもいいから、しかし雇用不安というのは除くということ考えてもらってもいいのかなという気はします。
○鎌田座長 つまり、企業の有期の処遇のものをそのまま現在の企業の正社員にぼんと移しなさいというのは、かなり大変だということであるのは事実だ。そうした場合に、今の正社員登用制度がありますかという問題意識の中では、企業がある意味で社会的責任というのかよくわかりませんけれども、そういうようなグラデーションを持ったような制度を企業自身の努力でつくっていって、言わば希望者があればその希望者を段階的に上げていきましょうというものなんですか。
それは別に法律がいろんなことをいう意味もないわけですね。
ところが、それがうまくいかないと考えるとすれば、どこかの段階で法律というのか強制的なもので転換を図るシステム、阿部先生の言葉でインセンティブ。インセンティブは多分いろんなニュアンスがあると思うんです。
○阿部委員 例えば私が知っている範囲で言えば、パートタイム労働者を短時間正社員化しましょうということは、既に政策として行われていると認識しているんですけれども、そういうことをやったらどうかということなんです。
つまり、非正規雇用のパートタイマーがどういう政策、例えば補助金が出るとかいろんな啓蒙活動をするとかということで企業が短時間正社員という仕組みを取り入れて、そこでパートタイマーを短時間正社員になってもいいという人にはなっていくとか、ある一定のハードルを設けて短時間正社員にふさわしいという人にはなってもらおうとか、そういう制度をつくってもらうということだけでも相当違ってくるのでないかと。
だから、短時間正社員でもいいですし、フルタイムの正社員でもいいですけれども、そういういろんな人事施策を企業が取り得るような後押しを政策として既にやっているところもあるので、そういうのを組み込むという趣旨なんです。
○鎌田座長 それは事務局の方で、恐らくこのニュアンスは助成金というような形でのインセンティブなのかわかりませんけれども、必ずしも法律的に強制するという性格のものではないようなニュアンスだったと思うんですが、今どういうふうなことになっているんですか。
○富田調査官 今、阿部先生がおっしゃられた短時間正社員の問題につきましては、これは法律に確かに位置づけられたものはございませんで、雇用均等・児童家庭局でやっておりますのは、1つは短時間正社員制度をつくったような場合で、たしか1名以上出た場合とかに助成金を出す。
もう一つは、それだけではなかなか難しい部分がありますので、短時間正社員制度を導入するための企業のマニュアルをつくって、あるいは事例集は厚生労働省のホームページからもアクセスできますけれども、そういうものを提供するといったことを通じて、できる限り短時間正社員制度が普及していくようにという活動を行っているということはございます。
○鎌田座長 それは現在既に行っているわけですね。
○富田調査官 行っております。
○鎌田座長 どうぞ。
○山川委員 私もそういう方向はあり得るのではないかと思います。前回も少し申し上げましたけれども、時間のほかに、例えば勤務地を限定することも考えられますが、特に有期の場合だと職種限定という可能性も結構あるのではないかと。
つまり、1つはハードルが高いということであれば、そのハードルを低めて選択肢を増やすというのも1つのインセンティブになるのではないかと思いまして、その意味で雇用安定という要請の中心は多分期間の定めがないという点で、完全なる正社員まではまた段階があるかもしれないのですが、そういうものをインセンティブと言えるかどうかはわかりませんけれども、それはあるのではないかと思います。
その場合、先ほどの雇止めの話と関わるんですけれども、業務の臨時性とかそういう客観的なファクターが実は別の方向でも判例に影響を与えていると思われます。というのは、経営上の理由で雇止めをするときに、正社員と同視すべき場合は別ですけれども、正社員に用いられる4要件とか4要素のようなものを必ずしも厳密には要求していないのが判例だとすると、判例がある意味では雇止めの制約に関しても中間的な領域を既につくっていると言えなくもないような感じがしまして、正社員転換の方でも中間的なことがあり得るかもしれませんし、雇止めのルールを仮に立法化するにしても、全く正社員と同じとは必ずしも限らない。
少なくとも現在の判例からしてもそうではないかということで、要は客観的な状況とか職務の内容とか、正社員転換にしても雇止めのルール化にしてもタイプに応じていろんなものがあり得るのかなという感じはしました。
先ほど阿部先生の言われたビジネスモデルの変化というのは客観的には重要なことではないかと思いまして、つまりもともと長期雇用でなければできなかった仕事を有期雇用でもやれるというような変化が起きた。それを単純に元に戻して、そのような仕事を全て正社員に転換してやってくださいというのは事実上厳しいのではないかという感じがありますので、そういった雇用形態でもできるようになったということを考慮に入れると、中間的なものも考えるメリットあるのかなと思います。
○鎌田座長 どうぞ。
○佐藤委員 中間的な領域といいますか、有期と正規との間に有期から正規へ促す、あるいはそういう道筋を付けるという転換という形での問題の対応というのがある。それはいろいろ経済学でもインセンティブの議論から出てきている。
それはそういうものがこの研究会としての考え方の中で1つのオプションとしてあるとは思うんです。そのときにその話というのはパートのときの研究会でもいろいろ議論し、有期の研究会でもそういう議論が出てくるんですけれども、これは実態の方からいきますと、一言で言いますとその評価についてはなかなか芳しくないんです。つまり、制度があるというのは今回の調査でも25%、約4分の1なんですが、これがこの間余り増えていないですね。今までより多少増えているのかもしれませんけれども、制度の有無ということで言っても余り増えていない。
活用実績というか登用実績ということでいうとなおのこと、これもかなりパート等でも促すような方向性で政策的な誘導を図ってきたようにも思うんですが、どうも実績も余り伸びているようにも思えない。むしろこのテーマに関心を持っている研究者の中ではかなり足踏み状態が続いているというのがやや常識になっているということなんです。
ヒアリングでもそういう実績があるところについて伺った話でも、制度はあるけれども、実績はないんですというような話をされていました。そういうようなことで、問題なのはそういう道筋とか規範的な政策的な後押しというところまでは付いているんだけれども、そこは実効性がどうも伴っていないので、もっと踏み込んだ形でそこを促すようにするのかしないのかというところが、この研究会としての重要な判断の基準になってくるのかなという印象を持っています。
うまくいっていないという理由を申し上げればいろいろ出てくるんですが、そういうところが1つ大きな、そこのところにもう少し踏み込むのか、基本的には企業の方で人事制度の設計やキャリアの設計は任せていますし、そういう形で自然に誘導させていくということできているんだけれども、実効性がないのでもう少し強く規制というのが適切かどうかわかりませんが、するのがよいのかどうかというところが1つ大きな判断基準になるのかなと思います。
○鎌田座長 これは余り伸びていないんですか。もう何年か経験があるわけですね。
○山川委員 これは事務局にお伺いしたいんですけれども、正社員転換制度が伸びていない理由に関して、転換先の中間的なものというのは、短時間正社員しか現在のパートタイム労働法では選択肢として用意していなくて、基本的には通常の労働時間の正社員ですね。その辺りの実態をお伺いできればと思います。
○富田調査官 伸びていない理由ということでございますけれども、前回の実態調査で聞いておりまして、前回の資料がお手元にあるかと思います。
○鎌田座長 前回は第8回。
○富田調査官 第8回、前回の資料4-2というのが事業所に聞きましたものなんですが、その6ページです。正社員転換制度及び転換実績を(10)(11)で聞いておりまして、この(10)は制度があるというのが46.5、実はこれだけ見ると転換実績もそのうちの半分ぐらいはあると出ております。
(11)の方は、支障があるのかないのかで切ってみたところ、支障はないというのが半分で、ただ支障がある中身を言いますと、一番多いのが正社員としてのポストが少ない。その2つ隣、正社員に転換するには能力が不足している。あるいはその真ん中のところの右隣、応募が少ない。そういったところが最も多い。その次が正社員に転換すると雇用調整がしにくくなるが9.3。こういったところが大きな理由として実態調査では出てきているというところでございます。
○藤村委員 以前もこの研究会で、正社員はなぜ会社が雇うのかというのを申し上げたことがあるんですが、正社員は雇用契約の期間に定めがない。会社としては予期しないいろいろな出来事に対応してくれる従業員がいないと強制力にならないから、雇用契約に定めがないということは会社の繁栄が自分自身の生活の安定とか繁栄にもつながるから、会社の都合に従って働いてくれる人たちが必要だと。本来だったら5時半に終わるんだけれども、急に対応しなければいけないことがあるから7時までにやってほしいと言われたらやりますよと。
短時間正社員といった場合に、例えば1日5時間ですという、それが決まっているけれども、突発対応はやりますというのが正社員だと思うんです。ただし、そうなると、例えば突発対応というのが毎日発生するのか、あるいは1年に1回なのかで働く側の負担は変わってくる。
正社員になりたくないという理由の割と大きな部分が、時間の制約が正社員の方は相当かかりますから、それが嫌だと。だから、正社員以外の働き方の要因だというのが出てきますね。有期雇用契約という本来だったら期間の定めという今日最初に言った話に戻っていくわけですけれども、それ以外の労働条件の部分で正社員との違いというのを現実に働いている人たちは意識をしている。それが勿論、雇用の不安定さという点ではマイナスだけれども、時間がきっちり決まっていて、その時間になれば帰れるというのはプラスなんです。
そこのところで、では有期だから1年で、それを先ほど私は3年ぐらいでというのは1つの目安にはなるでしょうねと申し上げましたけれども、働いている側からして責任がないとか時間がはっきり決まっているというところからすると、では正社員になったらそこはどうなるのかという疑問はあるでしょう。
○鎌田座長 どうぞ。
○荒木委員 正社員の概念だと思うんですけれども、言われたのはイデアルティプス(Idealtypus)としての正社員ですね。そういう正社員は突発的な対応が可能。正社員転換をしないときにいろいろ企業の方に聞いても、正社員というのはそういうことができる人ですと、最初からそういうことができるかどうかを考えてリクルートしてコストもかけて雇っている。それに対して、有期のような方はそういうセレクションは何もせずに有期だからということで簡単に雇用しているので、転換といってもなかなか難しいということをおっしゃいます。
そういう企業からしても本当に必要な理念型としての正社員の要件を満たさなければ、それ以外は無期で雇えないということであると恐らく話は進まなくて、そうした理念型の正社員ではないけれど、しかし期間の定めのない雇用形態というものも考えていいのではないかという気がするんです。
突発的な対応という話で言いますと、今、育児休業法の中で育児休業を取れる正社員の方が育児休業の代わりに短時間勤務を選択することができます。その人は短時間ですからパートタイマーです。でも、パートタイマーであっても今まで正社員でやってきた人を、パートタイマーの受け皿は時給制の人しかいないとして、時給の人に合わせるのか、というとナンセンスですね。その方が半日間勤務できなくても正社員としてのサラリーを基に計算する、そういう短時間正社員がどんどん増えてきていると思いますが、そういう方は突発対応できるかというとこれは育児ゆえの短時間勤務であれば突発対応の残業はできないでしょうね。しかし、そういう働き方も認めていくべきなので、言うなれば正社員という概念をもう少しフレキシブルにして、いろんな正社員があると考えるべきでしょう。
先ほど言ったように、確かに労働者の雇用継続への期待は一方であるでしょうけれども、会社としても正社員にするつもりで雇った人と、するつもりはなくて有期で雇った人というのは、その人に対する期待も違うと思うんです。それが余りに違い過ぎるとうまくいかないので、そこら辺のところは双方が納得できるようなところに着地点を考えないとうまくないかなという気はしております。
○鎌田座長 今のお話は、正社員というのはいろんな属性というかいろんな機能の集積なわけですが、例えば雇用の安定ということで考えれば、いわゆる無期ということしか言っていないわけですね。だから、無期イコール今考えられている正社員と、必ずしもイコールで考える必要はないのではないかという御意見なんですね。
雇用の安定ということで考えれば、確かに無期ということで安定はするんだけれども、それがイコール常に今の私たちが思っている、先生方がおっしゃったような正社員の理念系というものに常にそれが結び付く必要がないということですね。
○佐藤委員 あえて法律に詳しくないので大胆なことを申し上げるんですが、そういうことで考えていきますと、今、雇用不安が非常に広がっているし、他方で企業を取り巻く環境は厳しくなっています。そういう中で1つは正規への道筋を付けるということに端的に表れていますように、もう少し働く側から見た雇用保護といいますか、安定性を何とか確保したいというものについての配慮がかなり強まっているように思うんです。
そういう中で入り口、真ん中という言い方をすると、入り口のところである一定の規制といいますか、いわゆる有期契約で雇う場合にはかなり強い理由が要るんだと、原則理由は特段なくていいというものではなくて、非常に強い理由が要るんだと、正確を期した言い方は私はできませんけれども、要するに原則ちゃんとした理由があって初めて有期という働き方を認めるという形の中で、それは結果的に企業の方の活用に関していうとかなり縛ってきますね。そういう形で結果的にゾーンを少し狭めるわけですから、むしろ期待を保護するような働き方、つまり正社員としての働き方を促すような、それは特段理由が要るわけですから、そうでなければ通常の雇用で正規の働き方というのをしなさいと、暗黙のうちに持っていくのが入り口のところで1つはあり得るという。
もう一つは真ん中のところで、要はいろいろ均等だとか道筋を付ける、転換だとかという形で、入り口で雇い入れるのはともかく、そこはある程度余り縛らないで、しかし入ってから雇ってからはいろいろ手を尽くして配慮しなさいと、そしてその期待保護に答えなさいというような考え方でいくのがあると思うんです。
そういうものをこの研究会としてどう組み合わせるかはともかく、1つの判断基準としてそういう考え方に立つのか立たないのかというところが非常に今後の議論をしていく上で重要かなと思うんです。そういう雇用者側の期待の保護とか不安をできるだけ軽減していくような方向で措置していくべきではないかといくのか、そうでないのかというところが、うまい言葉では表現できないんですが思いました。
○鎌田座長 ありがとうございます。この近年の特にリーマンショック以来の中でかなりの雇止めが行われているというのは事実なわけですから、そういったような現代の情勢に対しての認識を踏まえた御意見だと思うんですが、佐藤先生の方から幾つかの規制モデルみたいなものを御紹介いただいた。
1つは入り口で利用目的、利用事由で規制をするという考え方があるだろう。入り口では格別の規制をしないけれども、途中に均衡待遇などで両者の格差を減らしていくという考え方もある。もう一つあると思うんです。出口も藤村先生がおっしゃったんだと思うんですけれども、更新を含めて一定の期間で限定をするという考え方、そういうような理解でよろしいですか。
○藤村委員 はい。
○鎌田座長 仮に3年ということであれば3年の間は雇止めができるけれども、それ以上はだめだと。もしそれ以上その人を使いたいということであれば、これは無期ということで考えてみたらどうかというようなことだと思います。
現在の日本の法制度で言うと、そういったものではなくて、まさに雇止めすることの中で雇用継続に期待があって、それが保護されるかどうかで今の日本の法制度があって少し性格が違う。それは判例法理ですから体系的に何かそういうものをつくってきたわけではないとは思うんです。
今、御提案いただいたのはどちらかヨーロッパのようなものを想定して、佐藤先生、先ほど有期については1つの理由だけではなくていろんな理由があるんだと。そうすると、例えば先ほどお話との関連で言うと、入り口を規制するということになるとなかなか大変なことになりますね。
○佐藤委員 そうですね。そこで前回でも冒頭申し上げたんですが、これを法律でどう書くかは難しいとは思うんですけれども、今回の調査でもタイプに分けていますね。その中で、いわゆる正規とは余り変わらないタイプ、軽易な仕事をする、専門的な仕事をするというのがあって、それは有期といえども随分違いますね。その中で正規と同等のものであって、変わらない仕事をしている方を有期で雇っているという場合には、有期というものの雇う合理的な理由をより強く求めるような考え方になってくる必要があるのかなと。
それ以外は専門性あるいは正規でない仕事をやるわけですから、期間限定して持っているとか、それはそれでそんなに強くしなくてもいいのではないか。ただ、正規と同等のというか、表現ではそういうようなタイポロジーをつくりましたね。そういうタイプについてはかなり強く雇い入れるときの合理的な理由が必要になってくるのではないかと、基本的にはそういうふうに考えているんです。
○鎌田座長 法律の方から見ると、タイプ別をどういうふうに法律でするかというのはなかなか難しいところで、それはそれとして1つの議論になるとは思うんですか、しかし規制モデルとしてのイメージは。
その際、例えば入り口を規制して出口も規制するという両方というのはあり得るのかな。
○荒木委員 フランスはそうだと思います。
○鎌田座長 多分入り口を規制して更に出口を規制するという理屈は違うんですよね。その場合、どう違うのかな。入り口規制は先ほどおっしゃったようなことですね。
○山川委員 入口で規制のかからないものについて出口も規制する、あるいは入口の規制をクリアーして、無期にみなした場合にはもう出口規制どころかみなしの方にいってしまうわけですからね。両立し得ない場合は確かにあるとは思いますが、両立し得る場合も一部はあるのではないかと、フランスがそうなっている。
○荒木委員 フランスはとにかく有期契約の利用自体を客観的な理由がある場合に限っています。ドイツみたいに理由がなくて使ってはいけないので、その場合も上限18か月だったと思います。
○鎌田座長 今日の資料の中でも出ていますね。
○荒木委員 要するに、有期契約を使うこと自体がよろしくないという発想に立っているんです。
○鎌田座長 限定された場合しか使えませんということは、逆に言うと限定された場合はOKですということですね。
○荒木委員 はい。
○鎌田座長 しかし、それでも18か月までですよという理屈は、ドイツ的な発想でいくと理由があるものについてはいいんですよということですね。
○橋本委員 期間制限はない。
○鎌田座長 でも、それもフランスは規制しているわけですね。それは無期原則だからできるだけ有期はなくしていこうというだけなんだ。では、理屈できているというよりは、理屈は理屈だけれども、とにかく有期が発生する場合をもう縮減していこうという発想なのかな。そうすると、かなりがんじがらめにしていくという感じで、無期原則だからそうなってしまうのか。
○荒木委員 ただ、比率自体はフランスの有期が少ないかというと、諸外国と余り変わらないぐらい有期の人がいるということなので、一定の事由がかなり緩やかに解釈されているかなと議論して思った次第です。
○鎌田座長 わかりました。では、入り口と出口の両方というのも、無期原則を前提にすればあるということですね。
○荒木委員 その場合だと、使用者を変えなければいけない。今の派遣と同じように、18か月でだめだとすると、そこで働き続けたくても別の使用者のところに移らざるを得ないということです。
○鎌田座長 どうぞ。
○藤村委員 今、実態として約3分の2が正社員、3分の1が非正社員ですね。これは20年ぐらいの間にだんだん非正規の部分が増えてきた、有期雇用が増えてきた。阿部さんの先ほどの話を聞いていると、余り非正規、有期の方が増え過ぎるのは、日本経済にとっても企業にとっても本人にとってもよくない。そうすると、今が実態として例えば35%ぐらいの人が非正規なんだけれども、実際働き方とかやっている仕事とか見ると、もうこれは正社員にほぼ近い。
そういう人たちは正社員なんですと法律でちゃんと認めるとなれば、実は企業の経営者にしてみると、経営の手足を縛るのかというような反論が出てきそうなんだけれども、実はそうではないんですよと、あなた方のためにはこの方がいいんだ、日本社会のためにもその方がいいんだということが言えるようになればいいんです。そうすると、法律に対する納得性も出てくる。その部分をどうすればいいかがよくわからない。
○鎌田座長 また少し違う話になってきているんですけれども、つまり法律論として例えば仮に3年で上限規制をして、更に違法に更新をした場合にどうするかという問題も絡んでくると思うので、そのときに法律論として正社員とみなすという意味はありますか。
つまり、無期とみなすというのはあるけれども、正社員とみなすということは法律論としてどういうふうにイメージしたらいいのかな。
○山川委員 合わせて、待遇差別も一般的に禁止するとかということでしょうか。権利の面について具体的に書くことは難しいかもしれません。
○荒木委員 正社員というのは法律用語ではないので。
○鎌田座長 イメージ。
○荒木委員 そのときの「正社員」は、やっている仕事が違っても期間についてだけは無期になるかもしれませんが、そのときにどういう処遇をするのかは別の問題となる。処遇を規制するときには、同等の仕事をしているから同等の処遇となるのが普通なので、正社員と有期の方の仕事が違えば処遇は違ってもいいということになると思います。それを「正社員とした」と言うかどうかは定義の問題になってきて、無期だから正社員ですよ、といえばそういうことかもしれません。
○鎌田座長 これからの議論の進め方にもなるのかもしれませんけれども、法律系の発想とすると、例えば有期のものを違反だということで仮にみなすとすると、無期というイメージなんです。つまり正社員とみなしというのは何となくぴんと来ないというか。そうすると、処遇の問題はどうしますかというと、それは例えば前、派遣のときに御紹介しましたけれども、例えば無期契約としてのみなしをするというと、その瞬間に無期ということになるだろうし、法律で無期みなしということにすると、その無期の人の処遇というのをどういうふうな契約関係なんですかと法律上書かなければいけないんです。これは結構大変な問題という。
次に契約申込みみなしということになると、労働者の方が申込みみなしに承諾するかどうかの選択肢があるんだけれども、その場合でも申し込んだ場合の契約内容はなんですかというのをもし法律で強制する場合には考えなければいけないという問題があって。
契約申込み義務ということになると、今度はその場合には無期の契約申込みをしなさいというのははっきりしているんだけれども、処遇の中身は企業の方で考えてちゃんと申込みなさい、その処遇を見て労働者の方がそんなものでは私は嫌ですという場合も出てくるということですか。
これは非常に乱暴なまとめ方をしているんですが、どれも可能といえば可能なのかもしれませんけれども、最初に無期みなしとした場合には、法律論として無期みなしは法律で無期とみなすというのがいいんだけれども、では処遇をどうするんですかというのを、無期みなしにするということになると法律論でも特定しなければいけないですね。そんなことはないですか。
○橋本委員 必要ないような気もします。今までの有期だった部分だけが無期になるので、残りはとりあえず今のまま維持されると。
○鎌田座長 では、従前の労働条件で無期だけ変わって、あとは皆同じという形でやるということになるわけですね。そうすると、例えば職務級的に時給何ぼと決まっていると、そういう制度が自動的に会社でできてしまうという感じになるのかな。
○橋本委員 そうですね。
○荒木委員 ヨーロッパでも正社員と無期契約労働者との差別規制はあくまで仕事が同じ場合の話なので、仕事が違えば単に契約が有期から無期になっても処遇自体は変わらないということがあると思います。
○鎌田座長 では、業務をどこまで特定しているかわからないけれども、従前の処遇についてはそのままで、無期のところだけ変わるということにするんだ。なるほど。派遣とは違うからそこは簡単といえば簡単なのか。
○橋本委員 派遣の場合には、使用者が変わるので、全く別の契約が新しく成立して、今までの派遣元との労働契約がすべて白紙になってしまうので、みなし規定が発動された場合に、労働条件の内容そのものがどうなるのかが問題になるのかと思います。
○鎌田座長 でも、事実上、強制されてしまうから、会社とするとそういうタイプの人が1人でも2人でもいれば処遇しなければいけないということだ。新しい処遇を置いておくということになるわけですね。無期だから3か月経ったらいなくなるという予想も立たないわけだから、会社としても何とかちゃんと処遇するためのシステムをつくらなければいけないということになるわけですね。わかりました。
○阿部委員 ただ、こういうことを言っていいかどうかわからないんですけれども、その場合に多分会社の中の処遇が非常に複雑になると思うんです。だから、賃金テーブルを2つ、3つ用意すれば楽でしょうけれども、普通は1本でやろうと考えたらどういうふうに当てはめるかというのがすごく煩雑で、多分そういうことをするとそもそも雇わないという選択をする可能性はありますね。
○鎌田座長 雇わないというのは、期間が来る前にということですか。
○阿部委員 3年以上になったらもう絶対だめだというのだったら、もう3年でむしろ雇止めしてしまうということが起こって、結果的にはキャリア形成上もしかしたら労働者側が不利になるかもしれません。
○鎌田座長 それはここだけではなくていろんなところで出てくる話だ。
○阿部委員 これを見ると、正社員同等型の労働者でも正社員と同じ水準の賃金をもらっていないと答えていますし、多分賃金テーブルは1本にはならないということなんでしょう。私はわかりません。どうなるのかなという。
○山川委員 なかなか難しいのは、パート労働法ですと無期契約ないしそれと実質的に同視しうるという要件をかけていますので、こういう難しい問題はある意味でクリアーできているんですが、そこがないのがここの有期契約の問題ですので、職務ということだけで果たして同等にすべきということが言えるかどうか。無期と有期の将来への期待度とか、こういう人だからこういう仕事ができるんだとか、こういう処遇ができるんだとかということが法的に考慮できるかどうかというのは難しいところかな。
本当はそういうのは企業でいろいろ工夫して、非正規の改善行動計画みたいな形で実情に合わせて考えていってくれるのが一番いいのかもしれませんけれども、法的にいうとなかなか難しい面があって、まず何が必要なのかを絞っていって、例えば雇用安定という点に絞るかとか、待遇まではかなりソフトな形にしておいて、みなしで無期にする場合、あるいは雇止めには合理的な理由が必要だという判例法のようにする場合でも、効果の方といいますか、手法自体をニーズとか実情に合わせていろいろ検討するということもあるのかもしれないです。
○鎌田座長 そのことで1つ法律家の先生方に、話は全く変わってしまうんだけれども、例えば
雇用継続の期待に合理性とかは、予測可能性という点でどうですか。
○荒木委員 前回も議論したんですけれども、1つは阿部先生が言われたとおりに、有期契約を利用していい期間を決めてしまうと、どう作用するかわからない。これで正社員転換を法が促しているとも見得るのですが、使用者が正社員転換を望まないからその前にもう雇止めをして、その規制にかからないようにするという両方に作用し得るものですね。そこは考えておく必要がある。
それに対して、現在の雇止め法理は、とにかく上限はなく更新していいんです。雇止めをされた時点でその雇止めは有効かどうかということを考えますから、ある上限規制の前にモラルハザード的に雇止めをするということはない。かつ、さまざまな事情のある、いろんなタイプの有期契約に見合った期待というものを考えながら判断しますから、実情には合った解決になる可能性は高い。そういうメリットがあるんですが、今、座長がおっしゃったように、合理的期待というのは予測可能性がない。このルールの問題点は、だれもよくわからないから裁判所に行くまで予想が付かないという点。いずれもメリットとデメリットがあるということなので、どれかをとればすべていいということにはなっていないということは認識する必要があると思います。
○山川委員 1つ、完全に明確化するというのは荒木先生がおっしゃられたように難しい面があると思うんですけれども、こういう要素、こういう行動をとっていれば合理性の判断において考慮されますというようなことは、例の労働契約法制研究会では、告示で示されているような雇止めの基準とか可能性とかそういうものを明示しておけば、合理性の判断に当たって考慮されるという提言をしたところですが、少し予測可能性を高めるということは不可能ではないかもしれないです。
○鎌田座長 要するに山川先生が最初に言われた、雇用の不安定をどう解消するかという観点でいうと、労働者にとってそういったシステムをつくったことがどうプラスになるかということも1つの観点ですね。これは裁判に行けばはっきりするんでしょうけれども、かなり負担はかかりますね。
あと何か御発言はありますか。時間もそろそろ予定の時間に来たんですけれども、また全体で御議論する時間もとれそうですか。
今日は今日のところだけで議論しているんですが、全体でまた入り口、出口。今日も入り口、出口、中間という話も出ましたけれども、また全体で御議論いただくようなこともできると思っていますので、何か最後に一言ということであればお聞きしたいんですが、特になければ今日はこの程度で終わりたいと思います。
では、今後の日程について、事務局から御説明をお願いいたします。
○富田調査官 今後の日程でございますけれども、今、座長からお話がありましたとおり、もう少し論点の抜けている部分とかの補足的な御議論もお願いしたいとも思っておりますし、厚生労働省からJILPTの方にヒアリングをお願いしている部分がございまして、その報告も聞きたいということも考えております。そういうことを踏まえまして、日程は現在調整中でございますので、委員の皆様には改めて御連絡させていただきたいと思います。
○鎌田座長 それでは、以上をもちまして、本日の研究会はこれで終了させていただきます。ありがとうございました。
(照会先)労働基準局総務課政策係(内線:5587)