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第8回有期労働契約研究会議事録
日時
平成21年11月25日(水)10:00~12:00
場所
厚生労働省共用第8会議室(6F)
出席者
〈委員〉
荒木委員、奥田委員、鎌田委員、佐藤委員、橋本委員、
藤村委員、山川委員
〈事務局〉
渡延労働基準局審議官
前田労働基準局総務課長
富田労働基準局勤労者生活部企画課調査官
青山労働基準局総務課労働契約企画室長
丸山労働基準局監督課中央労働基準監察監督官
荒木委員、奥田委員、鎌田委員、佐藤委員、橋本委員、
藤村委員、山川委員
〈事務局〉
渡延労働基準局審議官
前田労働基準局総務課長
富田労働基準局勤労者生活部企画課調査官
青山労働基準局総務課労働契約企画室長
丸山労働基準局監督課中央労働基準監察監督官
議題
(1)論点(契約締結時の課題、均衡待遇、正社員転換)
(2)その他
(2)その他
議事
○鎌田座長 定刻にまだ少し前ですが、皆様がおそろいのようですので、ただいまから「第8回有期労働契約研究会」を開催したいと思います。委員の皆様には御多忙のところ、御出席いただき、誠にありがとうございます。また、本日は阿部委員が御欠席ということでございます。
本日は「契約締結時の課題、均衡待遇、正社員転換」について御議論をいただきます。
まず、前回の議論の内容について資料として提出されていますが、これは資料1ということで前回の議論、論点としては総論、有期労働契約の範囲等、契約期間についてということで、御議論いただいております。
前回、御欠席された委員の皆さんで前回の論点について御意見がありましたら、是非、ここで御発言をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
○藤村委員 前回、欠席いたしましてどうも済みませんでした。前回の議事概要を拝見して、3点ほど申し上げておきたいと思います。
まず第1点は、今回、この有期労働契約の研究会をやっているわけですけれども、将来、法律としてこれをつくっていく場合に、是非、派遣も含めたいわゆる有期労働全体をカバーするようなものにしていく必要があると思っています。
私は法律の専門家ではありませんが、いわゆる労働基準法が基本的にあって、それぞれいろんな法律があるわけですけれども、正社員以外の契約期間の定めのない雇用の以外の人たち全体をカバーするようなものであればいいと思っています。これは希望です。
2点目は、この間、日本の労働市場の状況が20年ぐらい前と比べると相当様変わりをしてきています。よく「雇用の流動化」と言われますが、雇用の流動化の中身は人によって大分とらえ方が違うように思います。相反する事実が出てきています。
例えば「賃金構造基本統計調査」で見ると平均勤続年数は伸びています。平均勤続年数が伸びているということは、定着化が進んでいるというのが一つの事実としてあります。逆に離職率がやや上昇している。ということは、どうも固定的に働いている1つの会社で長くという人たちと、割と頻繁に移る人と、2つの層があるように思います。
統計上は10人の人が1回転職をした場合と、1人の人間が10回転職をした場合と同じように出てきますので、どうも1人の人間が頻繁に転職を繰り返すというのがある。そういうのは実は日本経済全体にとって余りいいことだとは思っていません。 企業の教育訓練投資の回収とか、そういうものを考えると、ある程度、定着をしてもらった方がいい。そうなると、今回、議論をしているような法律で少し定着化を促すような、そういう方向での誘導は意味があると思います。
3点目はそういう割と短期の雇用を回していくような企業行動の原因がどこにあるか。私なりに見ておりますと、例えば電器産業などで部品をつくっている会社に伺うと、今月、来月の受注量はわかっているけれども、3か月先はわからないとおっしゃいます。ですから、当面、雇える人を非常に短期間で雇って、それで回していくと。
なぜそうなるかというと、一番大元のいわゆる最終組立てをやっているような会社が市場の変動に合わせて柔軟に対応したいと。大きなところがそういう行動をとると、末端に行くと非常に振れが大きくなる。それがここ15年ぐらいの状況かなと思います。
実はこれも企業の競争力、少し中長期の競争力を考えたときには余りいい状況ではない。つまり部品メーカーも含めて、全体で産業の底上げをしていかなければいけないときに、目先の市場対応のために短期雇用、採ったり採らなかったり、そういうのもやはり少し制限するような方向の方が、実は日本全体にとっては、日本の将来にとってはいいのではないか。そんなことを考えながら、前回の議事概要を拝見しておりました。以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。何か事務局の方に御質問ということではありませんね。
○藤村委員 そうではありません。
○鎌田座長 よろしいですか。
○佐藤委員 いいですか。
○鎌田座長 はい、どうぞ。
○佐藤委員 前回、欠席しましたが、私は今日の論点に関わるのかなとも思うのですが、厳密に前回の論点に即してどうなのかというのはちょっとあれですけれども、一つはやはり実態です。つまり、活用する方、それから働く方の実態。活用する側には有期として活用する理由があるはずで、有期としての雇用形態を活用する側が選択した理由が、この実態に即して非常に重要になってくるのではないかと。
それから、働く方も、結局、有期としての働き方を選択している。これはほかにも正規もパートも派遣もあるわけですから、なぜ有期であるのか、その理由です。
その2つがまず非常に重要な点ではないかと思いまして、その点、法律論、議論をされるでしょうけれども、実態に即した規制のあり方を考えていくことが重要ではないかと思いました。これが一つです。
もう一つは、それと関連してですが、実態調査の中では、今回、4タイプの類型化を行っています。これは非常に重要だと思います。全体として見ますと、要は有期契約としての活用とか働き方はどうなのかというと、一つは正社員同様職務型は、これは理由はいろいろあるでしょうけれども、本来、仕事が正社員と同じで、正社員としてではなく有期として活用する理由は何なのかということがより強く求められるのかなと思います。正社員と同じ仕事なわけですから。
もう一つは、軽易作業のようなものがありますが、これは要するに業務の変動性のゆえに先が見えない。つまり不確実性が高いので、長期で雇ってしまうリスクを回避するために有期なのだということで、結果的には、そこは軽微な仕事も含めて、変動性に富んでいるがゆえに有期だというタイプがあり得ると思います。
それから、真ん中のところが要するに専門職型というもので、これが高度な専門能力を持っているがゆえに、いわば正規の処遇体系にはなじまないから、別立てで有期契約という形が多いですね。
例えばデザイナー、研究開発技術者、あるいは金融のデリバティブの専門家、こういうものは非常に高額な年俸でしばしば外国からも雇い入れている。こうしたタイプについては我が国の、日本の雇用システムの中での処遇の箱に収まらないから有期なのだと。
そういうふうに、これは活用する事由というか、理由が全部違うわけです。これを全部、「有期」としていいのかどうかということになると、私としてはこれは分けて議論をする必要があるし、要するに有期の事由が強く求められるのは最初の正社員同様職務型ということになるのかなと。これはわかりませんが、そういう印象を持って議論を伺っていました。それが2つ目です。
3つ目はいわゆる均等待遇、真ん中のところですが、均等待遇と正社員への転換ということですが、ここは要するにパートで長時間、あるいは職務の相当性、同等性がある場合には、キャリアの実態等から見てそれがない場合には、これは賃金の決定方式を正規に合わせなさいということですよね。
そういう考え方が有期にも当てはまるかどうかというのは、結構、デリケートな問題で、というのは要するに、例えばこの専門業務型のようなものは有期には入っているわけです。これはしばしば、賃金水準からいうと正規より高いのです。
そういうことになったときに、合わせるといったときに、一体、どちらにどちらを合わせるのかという悩ましい問題が出てくる。そういう問題が一つあると思います。
それから、もう一つはやはりパートの場合には短時間のゆえに短時間の仕事に就いてもらう人を雇うということがありますが、それゆえに長く働いていたり、期間性を持っている場合にはそろえなさいという話になりますが、有期の場合は時間というよりも、3年とか、期間ですよね。
こういう期間の中で雇い入れるということなので、これは要するに賃金の払い方の考え方からすると、正規は例えば20年、40年という長期の中での収支決済を図っているわけです。つまり、働き方、貢献と報酬のバランスからいうと20年、30年、非常に長期で採る。その中で賃金システムを設計して支給する。こういう考え方でいくわけです。
ところが、有期はそもそも3年という期間の中で雇い入れているわけですから、若いときにはゆっくり育成して、それから返してもらうということではないわけです。即戦力になってもらわなければ困るというところがあると思います。
そう考えていったときに、要するに賃金制度の設計としての考え方からいうと、使用者の場合にはやはりそこを分けて考えなければいけないという考え方を多く持ってくるのかなと思います。有期のゆえに期間限定なのだから、そこはそこで賃金制度を分けて考えた方がいいのかなという考え方があり得るように思います。
そういうことから考えると、均等待遇の問題に関してパートと有期に関しての扱い方というか、考え方の共通点もあると思いますが、違いも少し議論をする必要があるのかなと思いました。以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。では、山川さん。
○山川委員 前回はどうも失礼いたしました。前回は比較法の話が多かったように見受けまして、議論の整理程度のことかもしれませんが、政策の選択肢には、有期契約の締結事由を制限するという政策と、それから更新回数とか勤続年数に上限を設けるという政策と、それから日本で現在、判例でありますような雇止めの制限を一定程度、設けるという3つぐらい、入り口とか出口と言われますが、一応その3つぐらいがあって、それらを国によって組み合わせて採用したり、どれかを選択したりという方式をとっていまして、入り口と出口、両方、規制をかけているところもあるし、そうでもないところもあるので、そこは雇用システムとの関連でどういうポリシーを選択していく、あるいは組み合わせていくのがいいかということを考えるということだと思います。
いずれにしても、どこの国でも、ある範囲ではその有期契約の存在自体を肯定しているので、そうすると欠けているのが、さっき藤村先生も言われましたそういった人たちのスキルの向上とか、その地位の向上という点をどうするかということです。
これは外国では余りそれほど注目されてはいない、重視されてはいないようですけれども、今日、恐らく議論になる正社員転換などはもし有期契約の存在を認めるとしても、それをよりスキルを向上させていくという点で、それも政策的に組合せの対象になり得るというか、補完的なものになるのではないかという整理になるかと思います。
なお、これは先ほど藤村先生の御意見を伺って触発された点で、前回の議論には関係ないかもしれませんが、昔から景気変動に対して受注が変動したということはあって、昔は臨時工をたくさん採用していって、それがだんだんと定着していったという歴史があると思うのですが、最近、昨今の経済状況では非常に受注の変化のスピードが速いのではないか。私は専門ではないので、それもちょっとわかりませんが、そうすると、そういう受注行動自体をどう考えていくかということが問題になりえます。
もう一つは、かつても受注の変動があった中で、現在ほど有期契約が活用されていなかったとすると、要員管理といいましょうか、受注の変動と人の使い方のようなものの工夫が若干違ってきているのではないか。
これは全くの推測ですが、つまり、昔は何とか要員管理をやりくりして雇用安定を図っていたのに対し、やりくりしないで有期契約で単純に受注の変動に合わせて雇止めをするという方法は簡単なやり方かもしれないのですが、そういった要員管理の態勢がどうなってきたか、法律の問題ではないかもしれませんが、それらの工夫が何か考えられないか。ついでながらちょっとそういうことを思いました。
○鎌田座長 ありがとうございます。三先生から今日の御議論の中にも踏み込んだ非常に貴重なお話が出たと思います。それでは、今回の論点について議論を始めていただきたいと思います。事務局で資料を用意しておりますので、まずはその説明をお願いいたします。
○富田調査官 それでは、私の方から資料番号の2から4-6まで一気に説明をさせていただきたいと思います。資料2を御覧いただきますと、今回、議論いたします論点と前回の論点を一部修正したものを提示しております。
まず、初めの書いております「第7回研究会 論点(1)」のところは、前回、荒木先生からの御指摘による修正を行ったところでございまして、それが2ページのところのちょうど1つ目の丸でございます。
諸外国の法制では、契約期間について上限規制となっているということで、1回ごとの更新ではありませんということを、これは3のところの「1回の契約期間の上限」のところに書いていましたが、座りからすると「勤続年数等の上限」のところに置いた方がいいのではないかという御指摘がございましたので、こちらの方に移動をさせたという修正を行っております。
それで、本日の論点でございますが、「第8回研究会 論点(2)」というところに書いてございます。1としまして「契約締結時の課題」。
まず、「現行法制の評価」でございます。労働基準法は労働契約の締結に際し、「労働契約の期間に関する事項」を書面で明示することを使用者に義務付けているが、契約期間が非常に重要な要素であることから書面の明示がない場合の効力についても定めるべきという考え方については、どのように評価をするべきかと。
それから、2点目としましては「有期契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」が大臣告示でございますけれども、これによりますと使用者は有期労働契約の締結に際し、更新の有無を明示しなければならず、更新する場合があると明示したときは、その判断基準を明示しなければならないこととされておりますけれども、労働者の更新に係る予測可能性を高める観点から手続面、あるいは実体面において強化すべきという考え方については、どのように評価すべきかということで、これは17年に行いました研究会報告におきましては、この辺についてもコメント、言及があったということでございます。
「諸外国の法制との比較」でございますが、諸外国の法制におきましてはドイツのように労働契約の期間設定は書面でなければ有効とならないとするものや、フランスのように期間だけではなくて、利用事由も書面で明示しなければ無期契約とみなされるものがございますけれども、我が国の雇用システムの特徴等に照らしてどのように評価すべきかということでございます。
「その他」。トラブル防止等の観点から、契約締結時に係るルールとして何か考えられるものがあるかと書いております。
2点目が「均衡待遇・正規労働者への転換」でございまして、総論的なものをまず書いております。
今回のヒアリングや実態調査結果等を踏まえて、有期契約労働者の正規労働者との待遇の格差に係る課題にはどのようなものがあると考えられるか。とりわけ、職務タイプ4類型について、それぞれ課題は異なると考えられるかということです。
それから、有期契約労働者の正規労働者との待遇の格差に係る課題への対応としては、今回、議論になっております、論点になっております均衡待遇の確保と、正規労働者への転換の推進という2つの手法が考えられますが、我が国の雇用システムの特徴等も踏まえて、どのように考えるべきか。片方だけでいのか、両方やるべきかといった議論があろうかと思います。
3点目は正規労働者と有期契約労働者の二極化を橋渡しするものとして、例えば、「業務や職場・事業所を限定した契約期間に定めのない雇用契約」により雇用されている者が、これは「労働市場改革専門委員会」や第4次報告で提言されておりますけれども、これを研究会においてはどのように評価すべきかということでございます。
3点目は「均衡待遇」でございます。まず、有期契約労働者のうち通常の労働者より所定労働時間が短い者、いわゆるパートタイム労働者でございますが、これは「パートタイム労働法」の適用がございまして、事業主はこの法律に基づいて均衡待遇を確保する必要がありますけれども、これはパートでございますので、フルタイムの有期の方につきましてはこのような法的な枠組みがないところでございます。
今回のヒアリング等を踏まえまして、こういった課題についてはどのように考えるべきかということでございます。
次は、これもパート法のことについて書いていますが、差別的取扱いの禁止。これは後ほど詳しく説明いたしますけれども、対象者といたしましては短時間労働者のうち、正社員と一緒ということで無期契約の方、あるいは、この「実質無期」といいますのは東芝柳町工場事件型でございまして、反復更新によって実質的に無期契約と異ならない状態で存続している者、そういった無期とほとんど変わらない方に限定されていますが、この有期契約労働者に係る差別的取扱いの禁止の問題について考えるときには、この「実質無期」以外の有期の方についても検討すべきという考え方についてはどのように考えるべきかということでございます。
「諸外国の法制との比較」でございますが、諸外国におきましては、我が国と異なりまして、正規労働者、有期ということではなくて、無期と有期という差別的取扱いが禁止されておりますけれども、我が国の雇用システムの特徴等に照らしてどのように評価すべきかということでございます。
それから、「正規労働者への転換」のところでございますが、これも先ほどの議論と同じでございまして、フルタイムの有期の方につきましてはパート法の適用がないわけですが、こうした方々につきましても正規労働者への転換を推進すべきという考え方についてはどのように評価すべきかということでございます。
それから、「諸外国の法制との比較」でございますが、諸外国の法制におきましては有期に係る規制の違反があった場合に無期とみなす法制が多く、転換推進措置といたしましては、フランス、ドイツのように無期契約に係る欠員の情報提供といった程度のものしかありませんが、我が国の雇用システムの特徴等に照らしてどのように評価すべきかということでございます。
それから、資料3-1を御覧いただきたいと思います。今回の均衡待遇、あるいは正社員転換といったことにつきまして、より理解を深めるために事務局の方でペーパーを用意しておりますので、ちょっと説明をさせていただきたいと思います。
3-1は、均衡待遇と諸外国の法制における不利益取扱いの禁止がどのように異なるのかを整理したものでございます。まず、上の方を御覧いただきますと、均衡待遇があります。
重要なことは、これは諸外国にはない我が国独特の概念でございまして、通常の労働者との職務、人材活用の仕組み・運用や契約期間の違いに応じて、それぞれ法律に定めた措置を講ずることにより、待遇面のバランスを図るということでございまして、ここで重要なことは措置を講ずることによってバランスを図るということで、賃金水準がどうだこうだということがまず第一に出てくるわけではないという措置義務の規定になっているということでございまして、これはちょっとおめくりいただきますと、パート法におきます均衡待遇の確保がどのようになっているのかを書いております。
これはマトリックスになっておりますが、左側を御覧いただきますと、先ほど説明しましたとおり、通常の労働者と比較して職務の内容が同じなのかどうか、あるいは人材活用の仕組みや運用など、これは人事異動の有無及び範囲と見ておりますけれども、それが一緒なのかどうか。あるいは契約期間がどうなのか。無期なのか、有期なのかということによりまして、例えばすべて通常の労働者と同じですということになりますと、賃金等のすべての待遇につきまして差別的取扱いをしてはならないと二重丸で書いておりますけれども、そうしなければならないとなっております。
それぞれ、職務は一緒ですが、人材活用の仕組みは一部しか一緒ではありません、一定期間しか一緒ではありませんということになりますと、これは賃金の決定方法を同じようにしなければならないとなったり、それぞれ、丸とか三角で書いているような措置を講じなければならないとするようになっております。
そのほか、職務の内容が同じで人材活用の仕組みが異なる場合とか、職務の内容が異なる場合ということについても、ここに書いておりますような措置を講じなければならないということがパート法における均衡待遇の確保になっております。
ちょっともとに戻っていただきまして、御覧いただきますとわかりますとおり、よく均衡、均等といいますとどうしても同じ仕事をしている人だけが念頭に行くわけですけれども、我が国の均衡待遇の考え方は職務内容の相違にかかわらず、すべての短時間労働者が一つの対象になっているということが重要なところではないかということでございます。
次に賃金ということでございますけれども、今、御覧いただきましたとおり、これは決定方法のような規制でございまして、これは一番上の二重丸のところを除きまして、賃金の水準につきましては直接の規制がないということが、また諸外国とも若干異なっているということでございます。
主な履行確保手段は、こういう措置義務をいかに担保するのかというのは、基本的にパート法は行政指導と紛争解決援助制度が利用されることを念頭に置いた法律構成になっているということでございます。
一方、諸外国の有期法制はどうなっているかということでございますが、諸外国はこういう措置義務の考え方ではなくて、特にEU法制、EUの諸国でございますけれども、客観的な理由により正当化される場合を除き、有期契約労働者であることを理由として、比較可能な無期契約労働者よりも不利な取扱いをしてはならないという規定が置かれているということでございます。
これは勿論、「比較可能な無期契約労働者と」ということでございますので、職務、あるいは格付けが同じ無期契約労働者がいる方が対象になるということで、ここでは職務内容が異なる場合は対象にならないということで、我が国のパート法とは異なってきていると。
いわゆる同一価値労働は職務内容が異なっても、例えば価値が一緒であれば同じ賃金にしなさいという発想はこの有期法制においてはとられていないということでございます。
それから、諸外国の有期法制で出てきますのは、「報酬比例の原則」が明文に書かれたりしておりますけれども、そのように賃金の水準につきましても直接的な規制の対象になっているということでございます。
次に主な履行確保手段としましては、ある意味ではちょっとふわっとしたこういう規定を置いて、具体的な解決は民事裁判に委ねられるということが諸外国の法制になっているということでございます。
続きまして、資料3-2を御覧いただきたいと思います。
これは「均衡待遇確保」と「正社員転換推進」がどのように違うのか。これもできる限り違いを際立たせる感じで整理したものでございます。
まず、目的を御覧いただきますと、均衡待遇は正社員と同様に労働者の働きと貢献に応じた待遇の確保を図るということでございまして、一方、正社員転換の方は意欲と能力がある者について正社員となる道を開くということで、特徴を御覧いただきますと、先ほどの説明にもつながりますけれども、均衡待遇はあくまでも、これは仮に有期契約労働者にも同じことをやった場合ということですが、全員が対象になるということでございます。一方、正社員転換は希望する者のみがこの対象になってくるということで、違いが生じてきています。
2点目としましては、均衡待遇はどこまで進めていっても、期間の定めがあること自体を変更するものではない。待遇は正社員と同じようになるかもしれませんけれども、期間の定め自体は変わらない。
一方、正社員転換の方は有期の方を無期に変更するということで、属性の変更まで生じてくるということが違うということでございます。
3点目といたしましては、均衡でございますので、正社員との待遇の差は生じますが、正社員との就業の実態の違いに応じて待遇を決定することになりますので、この対象になる方の納得性は向上するのかなということ。
それから、その下にまいりまして、2点目ともつながりますけれども、雇止め自体は有期という性格に基づいて発生するものでございますので、仮に同じ待遇にするとした場合でも、雇止めはなくならず、雇用の安定には必ずしも結びつかないということがございます。
一方、正社員転換の3ぽつ(・)目でございますけれども、正社員にするということですから、通常は待遇が改善されると考えられますけれども、正社員という枠組みの中では待遇の差が設けられるということはあり得るということでございます。
例えば、総合職と一般職に区分されている場合に一般職にだけ転換しますという考え方は当然、あり得ます。それから、無期契約であるわけですから、雇用の安定は雇止めがないという観点で一定程度、図られるということは正社員転換の特徴だと思います。
課題といたしましては、まず、均衡待遇ですが、先ほど佐藤先生からも御指摘がありましたけれども、正社員の方は長期勤続を前提とした人事・賃金制度となっているということ。一方、有期契約労働者は短期的な雇用を前提にした制度となっているということで、この両者の間の均衡をいかに図るのか。これが課題になってこようかと思います。いわゆる職務の同一性だけで均衡を図るのは、なかなか難しい面もあるのではないかと考えられます。
それから、現時点においてということですが、有期契約ということが今はパート法では有期で差を設けることが認められておりますけれども、待遇の差を設ける合理的理由となるのかというのは議論をする必要があるだろうと思っております。
それから、正社員転換の方ですが、労働者のニーズからすると責任が重くなるから正社員になりたくないという方が今回の実態調査等でも出てきておりますけれども、こういう労働者がいることをどう考えるのか。
あるいは企業側のニーズといたしましても、正社員を幹部候補生と位置づける場合には正社員転換のハードルが非常に高くなってしまう。そのことをどう考えるのかという課題があろうかと思います。
したがいまして、正社員転換を進めるにしても、こういった労使のニーズにどう対応するのかという課題が出てくるだろうと思っております。
それから、資料4-1でございます。
これは当研究会で行いましたヒアリング結果のうち、今回の論点に関わるものを抜粋させていただいたものでございます。
まず、「契約締結時の課題」でございます。契約締結・更新時に契約内容の明示、捺印・手交等によりまして、本人に内容を確認することでトラブルが発生しないようにしているということを流通業の方は言っておられます。
それから、人材派遣業の方は大臣告示に沿いまして、更新の有無等について明示をしておられると。また、更新について労使で互いに確認する時期をいつにするか、事前に具体的に労働者に伝えるようにして納得性の向上を図っているということでございます。
それから、中小企業の方は契約締結時に労働者一人ひとりに時間をかけて、一つひとつの契約内容を確認することで納得することで契約締結をしてもらえるようにしている。
一方、労働相談担当者の中からは、この大臣告示につきましては判断基準の明示とか雇止め理由の明示については、必ずしも守られていないということで、より周知徹底が必要ではないかという御発言をいただいております。
それから、均衡待遇でございますけれども、この製造業関係の労働組合の方からはパートの方と正社員のうちの日給月給者を比べると、日給月給者以外にも実は月給者の方がおられますが、日給月給者と比べますと業務面では明確な差がない。
一方、正社員との待遇の差として賃金水準自体が異なる。賞与の額が勤続年数に応じて変わるほか、通勤手当等がその月の労働時間が少ない場合には支給されないとか、いろんな違いがあるということを挙げて言われております。
流通業関係の労働組合の方からは、この組合の方はこれまでかなり取り組んできておられまして、忌引き休暇とか退職慰労金の導入等の取組みを図ってきておりまして、近年、人事処遇制度を一本化したと。
この処遇制度におきましては、属性に関わる手当をすべて仕事基準にする、要するに職務給へ一本化したほか、教育訓練機会も同様であり、同じ評価基準で昇進することにしているということで、有期の方からも評価されていると言われております。
流通業関係の労働組合の方からは、正社員はフルタム・無期雇用であり、「シフト勤務」に組み込まれ、日によって勤務時間帯が異なるなど、不規則勤務であると。それから、自宅から離れた他事業場へ配置転換されるケースもあるということで、先ほどのパート法の枠組みを使うのであれば、人材活用の仕組みが有期の方とは異なってきているということを言われております。
一方、非正規労働者を組織している労働組合の方からは、10年ぐらいかかって、少しずつ賃上げがあっても、1回の契約更新で大幅に金額が下がることがあるので、均等待遇を実現するためには有期労働契約そのものの問題とセットにして是正していかないと、実効性がなくなるということを懸念されております。
それから、正社員転換ですが、有期の方にも正社員登用の道を開いておりまして、かなりの数の方が正社員に登用されているということを製造業の方は言われております。
それから、流通業の方は正社員転換の登用制度を設けておられますが、応募は思ったよりも少ないと。これは正社員になると時間外労働や人事異動を伴うということで、家庭と仕事の両立面で支障が生じかねないということを気にされているのではないかと言われております。
裏にまいりまして、中小企業の方はやはり正社員登用制度については拘束時間や自由度という点で大分変わってくるので、申し出が少ないのではないかと言われております。
製造業関係の労働組合の方も正社員転換へのニーズは高く、大きいのですが、この1年間の転換事例はないということで、この労働組合の方はトップダウンで推進することが効果的ではないかと言われております。
流通業関係の労働組合の方は複数の有期契約の方が正社員に転換されている実績がありますと。ただ、正社員を希望するよりも、そのまま、今の仕事のまま雇用の安定を望むと。恐らく無期にしてくれという声だと思いますが、その声については会社側が受けとめるに至っていないと言われております。
それから、資料4-2を御覧いただきたいと思います。
これは7月に実施いたしました実態調査のうち、今回の論点に関わることを抜粋したものでございます。まず、事業所調査でございますが、1ページ目は労働条件の明示のところでございます。
御覧いただきますとわかりますとおり、契約期間、更新の有無、判断基準の明示といったものが、この丸で囲んでおりますように、それぞれ9割、8割、6割ということで明示されているということが出ております。
2ページにまいりまして、今度は就業の実態を明らかにするために残業の有無を聞いております。残業をすることがあるという有期の方は62.5%ということで、これを職務タイプごとに見ますと同様職務型が68.2%ということで、丸が別職務のところに付いていますが、軽易職務型の56.7%からするとちょっと多くなっているということでございます。
3番は人材活用の仕組みということで、異動・転勤の有無と範囲ということでございますが、異動・転勤することがあるとする同様職務型が26.8%。これが軽易職務型になりますと、ない方が8割を超えているということで、職務タイプによって差が生じてきているということがここで出てきております。
3ページにまいりまして、これも人材活用の仕組みの1つでございますが、昇進の有無でございます。これを御覧いただきますと、正社員が昇進することがあるのは87%でございますが、同様職務型で20.9%、軽易職務型になりますと8割以上の方は昇進することがないということになっております。
一方、基本給の水準でございますけれども、正社員と比較した基本給の水準が同様職務型で6割から8割、あるいは8割から10割というのが3割弱ということで、軽易職務型になりますと6割から8割が38.4%で最も多くなっているところでございます。
次のページにまいりまして、退職金、賞与の有無でございます。これを御覧いただきますと、退職金がある有期契約が12.6%、賞与があるとするのが45.6%でございまして、これもタイプごとに見ていただきますと、同様職務型が軽易職務型に比べて多いということになっています。
諸手当につきましては、丸で囲んでおりますが、通勤手当は職務タイプによる大きな差はないのではないかと見ております。
退職金の水準でございます。これを御覧いただきますと、これは仕事の中身が高度だからということでしょうが、高度技能活用型で正社員と同額程度というのが63.1%ということで、ほかのところは低くなっておりまして、とりわけ2割未満とするのが軽易職務型で37%となっておりま
す。
次のページにまいりまして、教育訓練機会でございます。正社員と比較した教育訓練機会でございますが、同様職務型で全般的に正社員とほぼ同じ教育訓練機会が与えられているとするのが42.3%、一方、軽易職務型になりますとむしろ少ない、あるいはほとんどないとするところが2割を超えてくるということでございます。
それから、福利厚生の内容でございます。これを御覧いただきますと、福利厚生があるとする有期契約労働者は84.2%ということで、何らかあるというのが8割を超えているということでございます。
次のページをおめくりいただきまして、正社員転換制度及び実績でございます。制度があるとお答えになった事業所が46.5%、そのうちの実績があるとするところが52.2%でございます。
先ほど、ヒアリングに出ていました「少ない」ということで、何か支障があるのかというところでございますが、実は支障がないとするところが51.3%で最も多いのですが、個々の「ある」とするところの中身を見ますと、ポストが少ないというところがこの調査では20.8%ということで多くなっているところでございます。
次のページは個人調査の方でございます。まず、(1)は、これも労働条件の明示でございまして、御覧いただきますとわかりますとおり、契約期間、あるいは更新の有無、更新の判断基準の明示については95%、87%、62%という明示の割合になっております。
それから、残業でございます。これを御覧いただきますと、やはり職務タイプによって差が出ておりまして、同様職務型で残業することがあるとするのが69.6%、軽易職務型になりますと52%の方が残業することはないとなっております。
おめくりいただきまして、今度は正社員と比較した場合でございます。これは正社員と比較したらどうかと見た場合は同様職務型で7割を超える方が同じように残業をしていますと。なおかつ残業時間が等しいとしているのが65%おられます。
一方、軽易職務型になりますと、残業もするというのが55%ですが、この残業時間は64%の方が、有期の方の方が短いと答えております。
異動・転勤の有無が次の(3)でございます。異動・転勤することがあるとするのがやはり同様職務型の方がほかのタイプに比べて高いということで、軽易職務型に至りましては転勤することがないとするのが8割を超えてくるということでございます。
正社員と比較した場合でございますが、これも御覧いただきますと、ここで御留意いただきたいのは正社員も転勤がないというのが22%、これは恐らく中小企業も含めますとこういう数字になってくるのかなということ。
軽易職務型になりますと、正社員のみがするというのが68%と高くなってくるということでございます。
3ページにまいりまして、今度は昇進の有無でございます。まず、一般的なことを申し上げますと、昇進することがないとするのが67%でございます。タイプ別に見ますと、あるとするのが同様職務型が比較的高く、17%となっております。
正社員と比較いたしますと、勿論、正社員のみがするというのが77%で多いわけですが、両方するとするのがタイプ別に見ますと同様職務型で20.5%で、最も高くなっているところでございます。
基本給の水準でございますが、正社員に比べて少し低いとするのが同様職務型で、23.8%。かなり少ないとなりますと、勿論、同様職務型も40%を割りますが、軽易職務型で56%と最も多くなっております。
それから、退職金でございますけれども、退職金があるとする有期の方が10.2%。これも職務タイプごとに異なりまして、あるとしても、特に軽易職務型になりますと正社員に比べて少ないということになっております。
次のページにまいりまして、賞与でございます。賞与があるとする有期の方は28%でございまして、これもタイプ別に見ますと同様職務型で最も高く、35.3%になっております。軽易職務型になりますと、少ないというのが95%を超えてくるというふうになっております。
それから、諸手当でございます。これは両方、諸手当があるとするのが同様職務型でタイプごとには最も多く、69.4%でございますが、正社員よりも諸手当の数が少ないとするのが有期全体で81%を超えてきているということでございます。
それから、昇給でございます。正社員のみ昇給があるとするのが57.9%という数字が出ております。
次の5ページにまいりまして、福利厚生でございます。これも正社員にも有期にもあるとする有期の方が73.8%でございますけれども、これも数を見ますと73.8%の方が、やはり有期の方の方が福利厚生の数が少ないとお答えになっているところでございます。
それから、教育訓練機会でございます。これは前回も事業調査とちょっと違う結果だと申し上げましたが、比較的に同様職務型がほかのタイプに比べまして正社員とほぼ同じ教育訓練機会が与えられているということになっておりまして、軽易職務型になりますと、少ないとお答えになっております。
転換制度になりますと、転換制度があるとするのが25.4%とお答えになっているところでございます。
次に資料4-3でございます。こちらの方は今回の論点に係る諸外国の法制との比較を、第5回の研究会資料などを基に作成したものでございます。
まず、「契約締結時の労働条件等の明示」でございます。我が国につきましては、労働基準法によりまして契約期間、賃金、その他、一定の労働条件は書面で明示する必要がありまして、これは罰則がございます。
それから、更新の有無、判断基準につきましては、これは大臣告示によりまして明示する必要があるとしていまして、違反に対しましては助言・指導の対象になるということでございます。
それから、労働契約におきましては、契約の中身についてはできる限り書面で確認してくださいということが書かれております。
ドイツでございますが、ドイツは契約期間の設定については、有効となるためには書面性を必要とするとなっております。それから、契約期間を含む主要な労働条件につきましては、遅くとも労働関係開始の1か月後までに書面で交付する必要があるということで、ドイツにおきましてはある程度の幅が認められていると。 仮に期間設定が無効になった場合につきましては、この有期契約は期間の定めなく締結されたものとみなされるとされております。
フランスでございます。フランスも同様、有期契約は必ず書面で締結しなければならないとなっております。それから、契約書には利用事由、契約満了日、更新条項、不確定期限の場合は最低期間等を記載する必要がございます。
契約書はドイツと異なりまして、採用日から2日の就業日以内に交付する必要があるとなっております。書面の欠如、あるいは利用事由、必要的記載事項の記載がない場合は無期とみなされるほか、賠償金の支払い義務があったり、あるいはここについては刑事制裁もございます。
イギリスでございます。イギリスは1か月以上勤続している被用者には雇用継続期間等につきまして、雇用開始の2か月以内に雇用条件明細書で交付する必要があるとなっております。
この不交付、あるいは誤った内容の交付の場合につきましては、被用者は雇用審判所に対して雇用条件の特定、または修正を求めることができるということが認められております。
アメリカでございます。これは詐欺防止法等で書かれているということでございますが、多くの州では1年を超える有期契約を締結する場合、書面によらなければ当事者は法的拘束力を否定されるというものがあるということでございます。
裏にまいりまして、今度は均衡待遇、あるいは正社員転換ということで比較表をつくったものでございます。ちょっと字が小さくて恐縮でございますが、ここで御留意いただきたいのは、ちょっと見出しを付けておりますけれども、均衡待遇については我が国に独特の制度で、諸外国については不利益取扱いの禁止という形になってきているということでございます。
我が国につきましては、先ほど説明いたしましたとおり、短時間労働者について均衡待遇を推進というものが書かれているということでございます。
ドイツにつきましては、不利益取扱いの禁止ということでございまして、客観的な理由が異なる取扱いを正当化する場合を除きまして、比較可能な無期の方よりも不利に取り扱われてはならないと。
一定の算定期間について支給される賃金等については、少なくとも就業期間の割合に応じて保障しなければならないと。仮に一定の雇用条件が就業期間に係っている場合は、その異なる取扱いが客観的に正当化される場合を除いて、無期の方と同じ期間を考慮してくださいとなっております。
フランスにつきましても同じでございまして、比較可能な条件にある無期の方と同じ権利・義務を享受するということになっております。
それから、報酬につきましては同等の格付けで同じ職務に従事する無期の方が試用期間後に受け取る報酬額を下回ってはならないということで、ここは違反に対して刑事制裁が書かれております。
労働条件については、勤続年数要件がある場合は異なる待遇も許容されることがあるとされております。
イギリスでございますが、イギリスも同様でございまして、比較対象となる被用者と比較して不利に扱われない権利を有するとなっております。それから、勤続期間の資格要件についても不利な取扱いを受けない事項としまして規則に明示的に書かれております。
それから、報酬についても比例原則が適用されることになっております。
それから、不利な扱いを受けていると考えている有期の方は使用者に対しまして、その扱いの理由を示した書面の交付を求めることができるとなっております。
韓国でございますが、韓国もヨーロッパと同様でございまして、期間労働者であることを理由に類似の無期の労働者の方と比べて差別的取扱いをしてはならないということになっております。 デンマークもEU指令が適用される国でございまして、比較可能な無期の方よりも不利になってはならないとなっておりまして、報酬の期間比例の原則、あるいは勤続年数を資格とする場合は同じにしてくださいということが書かれております。
右側にまいりまして、正社員転換の推進等でございます。「正社員転換推進」とあるのは我が国に独特でございまして、これも短時間労働者についてパート法に書いてございまして、事業主は通常の労働者への転換を推進するために、通常の労働者に係る求人情報をその雇用する短時間労働者に周知しなければならない。あるいは社内公募の機会提供、あるいは通常の労働者への転換試験の整備等の措置を講じなければならないという措置義務の規定が書かれております。
ドイツについては正社員ではなくて、あえて無期契約の転換の推進策と整理をさせていただきましたけれども、期間の定めのない労働ポストに関する情報を提供しなければならないというものがございます。ドイツは違反に係る無期みなしの規定があるということは、前回の研究会で申し上げたところでございます。
フランスについてもドイツと同様でございまして、ただ、ここは無期のポスト、その職のリストを提供する措置が存在する場合は、有期の方についても通知しなければならないというルール、平等取扱いの規定がございます。違反に係る無期みなしがあるということはドイツと一緒でございます。
イギリスでございますが、イギリスについてもやはりその期間の定めのない雇用契約の職を得る機会について無期の方との平等取扱いの義務があります。それから、違反に係る無期みなしは締結事由ではなくて、上限を超した場合に原則的に無期となるというものがございます。
韓国でございます。韓国はどちらかというと我が国に近い規定でございますけれども、期間の定めのない労働契約を締結して新たに労働者を雇用する場合、当該事業、または事業場の同種、
または類似業務に従事する期間制労働者を優先的に雇用するように努めなければならないという規定がございます。それから、違反に係る無期みなしがやはり韓国もございまして、2年を超えた有期契約は無期とみなされるというものがございます。
デンマークでございますが、やはりデンマークも有期契約の方につきまして常用機会の情報提供、ポストの情報提供がございます。それから、これはある意味、藤村先生の御指摘に近いのかもしれませんが、有期の方が技能やキャリア機会を改善し、職業的移動可能性を高めるために適当な訓練へのアクセスを容易にするものとするような規定がございます。それから、違反に係る無期みなしが判例法理でデンマークもあるところでございます。
それから、資料4-4を御覧いただきたいと思います。今回の論点に参考になりそうな裁判例を幾つか事務局でピックアップしたものでございます。おめくりいただきまして、2ページを御覧いただきたいと思います。契約締結時の期間の定めの明示に関する裁判例を3つほど紹介しております。
まず、ソニー長崎事件がございます。これは雇用契約書がなかったというものでございますが、これは募集広告に雇用期間が書かれていた、あるいは使用者の方が一方的に送ってくる採用通知書の内容などから、雇用契約には書いていませんでしたが、期間の定めのある契約であると判断されたものでございます。
次は愛徳姉妹会事件でございます。これは中途採用者につきまして求人票には雇用期間の欄に記載がなかった。それで定年が60歳であることは書いてあった。この労働者の方は他企業の内定を断って応募してきた等を勘案しまして、特段の事情がない限り、この求人票の内容が雇用契約の内容となり、契約書には1年間と書いてありましたが、求人票によって応募したものであることから期間の定めのない職員であることを内容として成立されたとしたものでございます。
これは実はこの後、本訴がございまして、その本訴の方ではこの契約書に1年と書いてあったのだから、これは期間の定めがあるという判決が出されております。
それから、日欧産業協力センター事件でございます。これは1年間の期間の定めのある労働契約である初期契約の締結後、6年間、手続は全くなかったということです。期間の定めのあることを確認する手続もなかったということですけれども、この初期契約を締結したときの説明内容、あるいはこの契約の記載内容が、これは申し出がなければ自動的に更新するようなことが書いてあった。あるいは勤務内容等から判断すると、初期契約の契約更新後の契約についても、1年の期間の定めがあるものと了解されていたものと考えるのが最も自然であり、合理的であるとして、第一審判決は期間の定めのない契約として存続することになりましたが、それではないということになったというものでございます。
それから、均衡関係でございます。これはまず1つ目は非常に有名な丸子警報器事件というものでございますが、同一価値労働・同一賃金の原則が労働関係を規律する一般的な法規範として存在しているとは認められないと。
しかし、同原則の基礎にある均等待遇の理念は賃金格差の違法性判断において一つの重要な判断要素として考慮されるべきものであり、原告ら女性臨時社員と同じライン作業に従事する女性正社員について、従事する職種、作業の内容、勤務時間、日数、並びにいわゆるQC活動への関与などがすべて同種であることなど、労働内容が外形面でも帰属意識という内面においても同一であるにもかかわらず、原告らの賃金が同じ勤続年数の女性正社員の8割以下となっているときは許容される賃金格差の範囲を明らかに超え、その限度において使用者の裁量が公序良俗違反になるとされたものでございます。
次も有名な日本郵便逓送事件でございますが、こちらの方は同一労働・同一賃金の原則が一般的な法規範として存在しているとは言いがたいとされたものでございまして、一般的に期間雇用の臨時従業員について、これを正社員と異なる賃金体系によって雇用することは正社員と同様の労働を求める場合であっても、契約の自由の範疇であるということで何ら違法ではないとしたものでございます。
それから、次の2つは比較的新しいものを紹介いたしたいと思います。
1つ目が京都市女性協会事件でございます。これによりますと、憲法14条、労働基準法4条の根底にある均等待遇の理念、あるいはILO100号条約等が締結されているもとでの国際情勢及び労働契約法等が制定されたことを考慮すると、パートタイム労働法8条、これは就業の実態が同じ場合に差別的取扱いは禁止と書いてありますが、パートタイム労働法8条に反していること、ないし同一価値労働であることが明らかであることが明らかに認められるのに、労働に対する賃金が相応の水準に達していないことが明らかであり、かつその差額が具体的に認定し得る特段の事情がある場合には、その当該賃金処遇が均衡処遇の原則に対して不法行為を構成する余地があるとされたものでございます。
実際はどうであったかというのが次のパラグラフでございまして、1年の有期契約を更新していた嘱託職員、これは短時間の方でしたが、主体的に責任を持って業務を遂行し、質の高い業務を行っていたことは認められた。ただ、業務が限定されていた。あるいは有期で職務ローテーションの対象ではなかったということで、人材活用の仕組みが異なっていたということからすると、原告はパート法の8条が適用されるような通常の労働者と同視すべき短時間労働者に該当するとは認めがたく、ほかにどのような賃金にするべきか判断すべき事実がなかったので、訴えが退けられたということでございます。
それから、学校法人立教女学院事件でございますが、これも佐藤先生から御指摘のあったようなことが書かれておりまして、いまだ我が国は長期雇用が予定されている労働者と短期雇用が予定されている有期雇用労働者との間に単純な同一労働・同一賃金の原則が適応されることが公序、公の秩序になっているとは言えないということで、同一労働の賃金原則はあるかもしれないが、この2つには単純には適用されないのではないかということが指摘されたということでございます。
次のいすゞ自動車事件、これも新しいものでございます。これはなぜ紹介するかといいますと、労働契約法第3条の均衡処遇のことが引用されたということで紹介させていただくものでございます。
これは事案としましては、有期の方が初め、中途解雇されたのですが、それが撤回されて、その残りの期間を休業にするということで休業手当60%を支給されたものでございますが、この休業手当についても使用者の一方的決定によって40%を不支給とすることが重大な不利益であり、包括的、一律に長期間にわたり休業させることの合理性は非常に高度なものを要するものとされたというものでございます。
「さらに」のところが労働契約法から引用されたところでございまして、正社員の方はこういう長期の休業にはなっていないということで、この差別的取扱いについては労働契約法の基本理念の規定中に均衡処遇の概念、理念が盛り込まれていることを併せて考慮すると、その差別的取扱いをもって直ちに合理性を否定することはしないとしても、少なくとも、そのような差別の有無、程度、内容は合理性の判断における重要な考慮要素になるとされたというものでございます。
次に職種の限定に関する裁判例。今回、職種限定正社員のようなものがちょっと論点に挙がっておりますので、ちょっと挙げたものでございます。
東京海上日動火災保険事件でございますが、これは損害保険の契約募集等に従事する外勤の正規従業員、正社員の方ですが、その労働契約につきまして業務内容、勤務形態及び給与体系が、正社員はほかに内勤職員がおりましたが、その内勤の方とは異なる職種としての特殊性、及び独立性が存在しまして、そのため使用者は初めは有期として職種及び勤務地を限定した労働者を募集して、その後、正社員に登用したのですが、その後もその限定した合意は黙示的に引き継がれているとされたものでございます。
実際にこういうふうに職種限定の合意を伴う労働契約があるわけですが、採用経緯と当該職種の内容、あるいは職種変更の必要性の有無、程度、変更後の業務内容の相当性、配転による労働者の不利益の有無、程度、代替措置等を考慮しますと、他職種への配転を命ずるについて正当な理由があるとの特段の事情が認められる場合には、職種限定ではありましたが、当該職種を別の職種への配転を有効と認めることが相当であるとされたものでございます。
これは実際は不利益は非常に大きいということで、この配転も認められなかったということでございます。ちょっと参考までにこういうものも紹介させていただいております。
資料4-5はこれまでの提言を紹介させていただいております。
まず、17年の研究会報告でございます。この下の方のアンダーラインを御覧いただきたいと思います。下の3行です。このときも有期と正社員の均等待遇につきましては雇用形態にかかわらず、その就業の実態に応じた均等待遇が図られるべきことを明らかにすることが適当であるとされたところでございます。
おめくりいただきまして、今度は契約の書面における明示でございます。1パラグラフ目の下線のところを御覧いただきますと、使用者が契約期間を書面で明示しなかったときの労働契約の法的性質については、期間の定めのない契約であるとみなすことが適当であるということを、このとき、御提案されております。
それから、(2)のところでございます。
これも1パラグラフの傍線のところを御覧いただきますと、更新の可能性の有無や更新の基準の明示の手続を法律上必要とすることとし、使用者がこれを履行したことを雇止めの有効性の判断に当たっての考慮要素とすることが適当であるということが、この際、言われております。
ちょっと1ページ飛ばしていただきまして、4ページでございます。
これは「労働市場改革専門委員会第4次報告」でございます。ここでは幾つかの壁の一つとして働き方の壁を是正する方策が提言されております。その中の(3)のところに正社員と非正社員の中間的な働き方が提案されております。
これもアンダーラインのところを御覧いただきますと、この有期で契約更新を繰り返す非正社員の雇用の安定を図るために短期雇用と長期雇用の中間に位置する中間的な雇用契約についてルールを設けることが有効となっておりまして、具体的には、期間の定めのある有期契約と契約期間に定めのない雇用契約の中間に業務や職場・事業所を限定した契約期間に定めのない雇用契約という選択肢を設けることが適当ということを御提案いただいているものでございます。
それから、最後、資料4-6は今回の論点に関わる参照条文を付けております。
ちょっと説明が長くなりましたが、私からの説明は以上でございます。
○鎌田座長 ありがとうございます。それでは、これから御議論をいただきたいのですが、まず、前回の議論の残りがございまして、それは何かといいますと、1回の契約期間の上限についてということで、資料でいいますと資料2の2ページ目の真ん中辺、3、「1回の契約期間の上限」という論点がちょっと残っておりましたので、まず、これについて先生方に御議論いただきたいと思います。いかがでしょうか。
○佐藤委員 よろしいですか。
○鎌田座長 どうぞ。
○佐藤委員 これはどうすべきかというのは早急には言えませんが、考えなければならない要素として2つあるのではないかと。やや相矛盾しますが、一つは使用者側から見たときに非常に市場環境が不確実性、不透明性が高まっている中で、何をどれだけつくったらいいのかということの判断が非常に難しくなってきているということは、よく指摘されているところです。 そういうところから考えたときには、通常、契約期間を短くして、そしてその契約をして雇用するのが合理的だと考えるという考え方が1つあると思います。
もう一つはそれとちょっと違うのですが、働く方から見たときに、不透明性の高い状況の中で短期で契約を区切って断続的にやるという働き方は、将来展望が見えない。それから、また仕事に対するコミットメントということから言っても、これは組織心理学などの研究ではそういう不透明性が高くて断続的な期間のもとで仕事をさせるのは、そうでない人たちよりもコミットメントやモラルにおいて問題があるという知見もあります。
したがって、一方で合理性が、短期で、ここの文脈で言うと期間を短くするか、長くするかということについて言いますと、短くするのが合理的だという考え方と長くした方がよいという考え方が共存しているのではないかという点があるのではないかということです。
○鎌田座長 よろしいですか。
○佐藤委員 はい。
○鎌田座長 ちょっと基本的なことをお聞きします。労基法の137条、「当分の間の措置として」ということですが、この当分の間の措置として、ある種、片面的規定になっているわけですけど、その理由を少し御説明いただけますか。
○富田調査官 これは条文を御覧いただいた方がわかりやすいかと思います。恐らく第1回の資料4です。お手元にあると思いますけれども、第1回の資料4のところに労働基準法の引用をしておりまして、ここの附則第137条が14条の下に書かれております。
ここで「期間の定めのある労働契約を締結した労働者は労働基準法の一部を改正する法律の附則第3条に規定する措置が講じられる前の間」ということで、民法628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以降においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができるということでございまして、これは「附則の第3条」と書いておりますが、国会修正で入ったものでございまして、この「当分の間」はこの附則第3条にありますこの法律の施行後3年を経過した場合において、この法律による改正後の労働基準法第14条の規定についてその施行の状況を勘案しつつ、検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするということで、今はまさしくこの14条の施行状況等を踏まえまして御議論いただいているわけでございますので、「当分の間」はこの14条の検討とセットであるという感じかなと考えております。
○鎌田座長 ありがとうございます。私の方から少し聞きたいことは、事務局にお答えいただければと思いますが、契約ですので、期間を定めて、その間、労使ともに期間内には拘束されるということはまさにその契約の原則、もっとわかりやすい言い方をすれば、期間を定めて、その間、就労するということはその間の他の転職機会についてのリスクを契約の中で合意によって分配する、適正に配分するということが大原則だと思うのです。
ところが、この規定はいわゆる片面になっていまして、その辺のところ、契約論からいうとその辺が恐らく労働者保護の観点から片面化しているということだと思うのですが、それはいわば労働者にとってその拘束性が1年以上を超えた場合には、少しその保護から言って問題がある。こういうことなわけですね。
○富田調査官 前回の15年の改正はこの論点にも書いたとおり、原則1年から3年に延長したということで、このときに議論になりましたのは常用代替が進むのではないかとか、あるいは若年定年制がたくさん出てくるのではないかということでございます。
したがいまして、この1年を3年に延ばすこと自体がかなり議論になっていた。その当時の契約期間は1年だったわけです。ですから、それを議論がまだ詰まっていないのに3年にするということで、そこはやはりその当時の1年という原則を維持した上で議論を先に延ばしてやろうということで、この1年という期間は恐らく民法の原則に従って、その両当事者の拘束性が維持されたわけでございますが、それを超える部分については労働者に少し有利なものになっているのではないかと理解しております。
○鎌田座長 なるほど。そうすると、その常用代替の防止などの雇用システムの在り方に関する政策的な議論、政策的な目的があって、その1つの流れの中でこういう片面的な規定になっているということですね。
ただ、それはその常用代替防止を含めて、そういった政策的な課題は単にここだけで解決するわけではなくて、つまり、その期間の定めのある労働契約についての退職の自由をどう保障するかということだけにとどまらず、全体で考えていくことだろうと思います。
もう一つ、しかし、期間を定めることが契約上、両当事者に一定の拘束性を持つというのは契約法から言って、非常に重要なことでありまして、そういったことを原則的に考えておくという立場も必要ではないかと思います。
○荒木委員 2003年改正のときは、審議会では上限1年を3年に上げようと。そのときの考え方は上限1年までということであれば、そもそも、例えば3年使いたいという場合でも1年契約を2回更新しなければいけない。つまり、結局、短期契約になってしまう。
労使双方に一定の期間を定めた雇用関係を設定するニーズがあるのであれば、むしろ短期契約と長期契約の間の中期雇用を認めた方が有期契約の雇用自体の質も上がるのではないか。そういう議論で1年から3年に上げるという審議会での結論になったと記憶しております。
これが国会の修正で1年を過ぎたらいつでも辞めることができることになりました。これは国会の意思でありますので、そういう審議会と異なる意思決定がなされたということだと思います。
ただ、国会修正でありましたので、余り法的には詰めていないままに立法された結果、無期契約、正社員であっても、2週間の予告を置かないと雇用関係を解消できないのですが、この137条はいつでも退職することができるということで、無期契約労働者と比べてもちょっと均衡がとれていない点があります。
それから、3年の通常の有期契約についてのみこういう解約、労働者に片面的な解約自由を与えていますが、他方で5年まで上限で決められている専門能力のある有期契約については対処はされておりませんが、それはそれで平仄が合っているのかといった問題もあります。
もしこれを維持するのであれば、そういう点についてどうするのかということを考えなければいけないと思います。
もう一つ、この137条が国会修正で入った結果、審議会での中期雇用、すなわち労使ともに3年間、雇用関係が存続するということを前提に有期契約がより質の高い契約として使われるかどうか、そうなるとかならないとか、いろんな議論がありましたが、それがこの修正によって、結局、労働者はいつでも辞められるということですから、中期雇用自体は導入されなかった。
つまり、中期雇用としての活用が現行法制でどうなるかということは、実は試して検証することができない状況のまま、今日まで来ている。そういう状況かなと思っております。
○鎌田座長 ありがとうございます。はい、どうぞ。
○奥田委員 今、荒木先生の方から検証の問題をおっしゃったのですが、今回のヒアリングとか実態調査の結果を踏まえてどう考えていくかということで、この研究会が設定された目的の1つでもあったと思いますが、これをどう考えるかというときに、やはり前提として、例えばこれまでに出てきた統計であるとか、そういうものからしますと、この2003年に3年契約が結べるようになったことによって、その3年契約が増えたのかどうか、そういうことが必ずしも出てきていないと思うのです。
ですから、初回のときにも一度発言をさせていただきましたが、そのときの統計でも2003年以降に3年契約が増えたかどうかはわからない統計でしたし、その点でいいますと、2003年の法改正をどう評価するか、その根拠となる資料といいますか、そういうものがはっきりと明示されていないとは思っています。今、おっしゃった検証という点と同じだと思います。
この間のヒアリング等で2003年以降でも契約自体は必ずしも1年から3年に延ばしたわけではなくて、契約自体は1年で結ばれているということも出てきていたと思いますので、その契約期間が延びることの利用がもしかしたらそれほどないのかもしれませんし、逆に、今、137条の話が出てきましたように、この規定があるから3年契約が結ばれていないのかもしれませんし、その辺りの判断をする材料が、検証をするための材料が必ずしもないのではないかとも思いますので、若干、判断しかねるという点があります。
○鎌田座長 この点については事務局の方で、いわばその判断、検証できるようなデータがもしございましたら、御紹介いただければと思います。
○富田調査官 今回の実態調査におきましては、この契約期間のところは非常に重要な論点の1つと考えておりましたので、それを念頭に調査表もつくらせていただいたと考えておりまして、すぐにちょっと出てきませんが、例えば、今回、基準法の改正によりまして1年から3年に延びたから有期が増えているのかということを、実はこれは第6回の研究会資料を御覧いただきますと、ちょうど資料3の例えば17ページのところに、第10表があります。
この第10表の真ん中辺りに、基準法の改正により1回の契約期間の上限が1年から3年に延びたから有期を増やしているのですとお答えになった事業所は0.5%ということで、非常に少ないということがあろうかと思います。
それから、おめくりいただきまして、同じ資料ですが、19ページには1回当たりの契約期間が非常に延びているのかということをまとめた第12表がございます。これを御覧いただきましても、これをどう評価するかはちょっと私どもには直ちに判断しかねる部分がありますけれども、1年以内というところが非常に多い。
むしろ、17年に統計情報部の方で同じような調査をしておりますけれども、それと比較しても、そんなに1年を超えるような契約が増えているとは見えないということがありますので、こういったことをどのように評価するのかということがあるのではないかと考えております。
○鎌田座長 ありがとうございます。今、幾つか、データについての御指摘がありまして、このデータをどう読むかということを今すぐに御意見をいただくのも難しいのではないかと思いますので、後ほど、また次回、あるいは次々回の方でもし御発言があればそういうときに回していただきまして、今回、ちょっと本題の話し合いが、本題の議題にまだ入っておりませんので、この次の本日議論をする論点についての議論に進めさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
○鎌田座長 はい。では、もしデータについて参考になるものがあれば、後日、事務局の方からも各先生の方にこの論点について提示をしていただければと思います。
それでは、もう時間がかなり押していますが、今日、本来の議題の方に議論を進めたいと思います。まず、第一の議題は「契約締結時の課題」でございまして、この点につきまして先生方、自由に御発言をお願いできればと思います。
大きく2つに分けまして、今、少し時間を使っていただいて、その後、「均衡待遇、正規労働者の転換」というもう一つの議題でまた時間をとろうということで考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
○奥田委員 いいですか。
○鎌田座長 はい、どうぞ。
○奥田委員 これは労働契約の研究会のときにも出ていたと思いますが、一番問題になる点というか、一番大きかった点は恐らく期間が明示されていないときに有期と考えるか、無期と考えるかという問題だと思います。
率直に申し上げて、契約期間の明示は罰則付きで義務付けられている内容でもありますし、そのことがなされていない場合に、全くの契約解釈でどちらもあり得るというのは少し考え方としては無理があるのではないか。これは率直な私の意見です。
つまり、契約期間を設けるかどうか自体が契約上の自由、当事者の自由だとしても、ただ、その契約期間を設けるのであれば、明示をするということは労基法上の義務でもありますので、そういうことから考えますと、例えばその期間の明示がされていない場合には、場合によってはみなし、無期のみなしであるとか、あるいはみなしとまでいかなくても推定であるとか、反証があり得る推定であるとか、そういうことは少なくとも十分あり得ると思います。それがもし望ましくないとすれば、どういう理由があるのかということを少し知りたいと思います。
○鎌田座長 今は御意見をいただいて。
○奥田委員 1つの意見です。
○鎌田座長 先生方の御意見を聞いて、もし先生方の御意見以外にこういう意見があるというなら、事務局にちょっと御紹介いただくという形にいたしましょう。そのほか、この点につきまして。今、奥田先生から問題提起がありましたが、この点に関してでも結構ですし、そのほかの点についても御意見をいただければと思います。
はい、どうぞ。
○荒木委員 今、奥田先生の指摘は非常にもっともで、私も同じですが、明示の意味、使用者の方が有期契約であることを何ら説明も、口頭でも言っていなければ、それは無期契約と解される。これは通常の解釈だろうと思います。
問題はその明示を書面によって行わなかった場合に、書面によって行うことを罰則付きで労基法は義務付けておりますが、その場合に、しかし口頭では有期だという合意があったという場合に、どう扱うか。これが難しいところで、諸外国ではその場合には無期契約とみなすというものが多いようであります。
労働契約法研究会もそういう提案をしたところでありますけれども、この点をそういうふうに踏み切るのかどうかというのが、一つ、議論をしなければいけない問題だと思います。
これはもし橋本先生が御存じであれば教えていただきたいのですが、ドイツも書面明示をしなければいけないのですが、この有期の書面明示は契約締結時でしょうか、それともドイツでは一般的に労働契約内容の書面明示は契約締結後1か月以内にすればよいとなっていると思いますが、有期については締結時でいいのか、それとも締結後1か月以内でいいのか、もし何か御存じであれば教えていただければと思います。
○橋本委員 済みません、ちょっとわからないのですが、先生の御指摘のとおり、有期の契約期間の設定は書面でなければ有効にならないという規定がパートタイム労働法・有期契約法の方にあり、他方で先生のおっしゃった労働条件明示のための法律が別にあって、そこでも期間設定は書面で明示しなければいけないとありまして、そちらの労働条件明示の方の法律、証明法という法律ですが、そこでは書面による明示は1か月以内でいいという規定なのです。
その両者の規定の関係がよくわからないのですが、ちょっとまだ調べておりません。申し訳ありません。
○荒木委員 例えば、イギリスでも、1か月以上勤続している被用者については2か月以内に雇用条件明細書を交付するということです。フランスは2就業日以内に交付ということで、書面で明示するというのをいつまでに、締結時に要求するのか、それとも一定期間内に明示するのかということも併せてその効果を考える必要があるのかなと考えているところです。
○奥田委員 よろしいですか。
○鎌田座長 はい、どうぞ。
○奥田委員 ちょっと言葉足らずでしたが、私も先ほどは書面での明示を前提に意見を言わせていただいたのですが、今、荒木先生がおっしゃったことで言いますと、書面化するかどうかというときに、書面化がされていないけれども、口頭では十分な期間合意がされているというときに、まず、それをどう評価するか。そういう御趣旨だと考えてよろしいですか。
例えば、書面化されていないときに無期としての推定はあり得るけれども、考え方としては、口頭で十分な期間説明がされていたことを反証としてとらえることもあり得るわけですよね。その辺りで違いが出てくるということですね。
○鎌田座長 荒木先生にお答えいただかなくても、よろしいのでしょうか。
○奥田委員 はい。今、確認をさせていただきましたので。
○藤村委員 よろしいですか。
○鎌田座長 はい、どうぞ。
○藤村委員 書面で労働条件を提示するというときに、期間を書かない理由、使用者側がなぜ書かないのかというところがわかれば、法律でどう対応するかというのもわかってくると思います。単に書くのを忘れたというのであれば、書いてくださいで済むと思うのです。
そうではなくて、もっと別の理由があって、その期間を書かないというのであれば、そこが何か争点になるような気がするのですが、現実には何か書かない特段の理由があるのでしょうか。
○荒木委員 基本的に日本の契約は書面化することは要求されておりませんので、合意してしまえばいいわけです。「諾成契約」といいますが、合意すればよい。口では合意していると。ですから、それで明示はされているかもしれない。
今、議論をしていたのは口で合意していても、書面化されていなかったら無期とみなしてしまっていいのか。そういう議論なのです。
ですから、中小企業ではそんなにきちんと契約書を作成していない。しかし、当人同士では有期ということでちゃんと合意をしていた。それを書面化されていなかったら、全部、無期とみなすということについては、それはもう大きな変革となるので、そこまで法規制をダイレクトにするかどうかということでいろいろ議論があるということだと思います。
○鎌田座長 はい、どうぞ。
○山川委員 労基法との関係でいいますと、労基法は労働条件の明示で書面をかなりの部分について必要として、強行法規ですから、当事者が合意しようがしまいが、それは明示しなければいけないということになります。
そうしますと、労基法違反が成立することはともかくとして、では書面は省略しましょうとか、あるいは書面はちょっと後にしましょうという合意をして、有期契約であることは明確に合意していた場合にまでみなしの効果が及ぶのかというと、やはり、ちょっと厳し過ぎるといえるかもしれない。
労働契約法研究会では確かにみなしということでしたが、もし、このような場合や、書面での明示を忘れたが有期契約とする明確な合意があった場合にも適用するのはちょっと厳しいとすれば、奥田先生が選択肢としてさっき言われたような推定という方法で対処するのも立法政策としてはあり得るのではないかと思います。
○鎌田座長 いいですか。私もこの問題をちょっと考えたときに、2つの見方があると思うのです。1つは先ほど奥田先生が冒頭におっしゃった、つまり、義務付けられているのにそれをやっていないから、ある種、民事制裁的に無期とみなすという考え方もあると思います。
もう一つは、どういう事情であるかよくわからないが、契約期間を定めていないということから、当事者の意思に沿って明確化を進めていく必要があるのではないか。そうした場合にはみなしではなくて、むしろ推定という形で、裁判を通じてでもいいですけど、当事者の真意を確定していくということ。
そうすると、推定という考え方はむしろフィットするわけです。要するにはっきりさせましょうと。ところが、そうではなくて、契約期間を定めていないということが、義務付けられているのに、それをしていないから制裁として無期になるのですという一種の威嚇を与える。これは違うと思うのです。
奥田先生が冒頭におっしゃった義務付けられて違反であるからということで無期みなしとおっしゃったのは、どちらかというと後の経緯からいくと推定とおっしゃったから、当事者の意思を確認するための1つの法的なツールとして考えているということなのかなと理解したのですが、どうでしょうか。
○奥田委員 例えば、これまでの裁判例を見た場合でも、有期か無期かが全くわからない状態で、それをいつから当事者がどうであったかというふうに認定をしているのがやはり多いと思うのです。
そうだとすると、私は義務付けられているのにやっていないとすれば、みなしという方法もあり得るし、そこまで言わなくても、少なくとも推定という方法はあるだろうという意味で申し上げたので、全くのその当事者意思の解釈でということではなく、そういう意味で言うと、若干、折衷的ということになりましょうか、推定ぐらいはやはりルール化をして、ただ、口頭での明確な確認があったり、そういうことを反証として認めることはあり得ることではないかという理解です。
○鎌田座長 私はそのみなしについてはここで議論をするつもりはありませんが、実は派遣のところでもこのみなしは大変な問題になっておりまして、この「労働者派遣の今後の在り方についての研究会」の中でも、みなしということで違法派遣があった場合の派遣先への雇用、直接雇用みなしということが議論になったときに、その研究会の中でいろいろ議論がありまして、これは違法な派遣に対する法的な、労働者を保護するための措置として考えられる手段として何があるかという議論の中で、実は4つの選択肢を考えたのです。
それは何かというと、まず第一はまさに直接雇用みなし。第二は派遣先による契約申込みなし。これもみなしです。そういう制度がある。ただし、この契約申込みなしの場合には労働者の意思にかかわりなく整理するということはありません。3番目に派遣先から労働契約の申込みの義務付け。契約申込義務を課すというやり方。4番目に行政による勧告という制度を考えていたわけです。
みなしという手段はかなり強烈な側面、強烈な効果がありまして、そういったものをとるか、あるいは今言ったような幾つかの効果の面での選択肢を議論したことがありまして、効果の面でも、どう考えるのかということは、是非、その辺も含めて考えていただくと私としてはありがたいと思っています。
ただ、これは今日すぐにその面で議論をしていただくという趣旨で言ったわけではなくて、紹介といいましょうか、派遣のところでみなしということで議論になっておりますので、御紹介をしたということであります。
先生方、あとは、ほかにございますか。はい、どうぞ。
○荒木委員 1点、付け加えますと、有期であることを明示しなかった、書面で明示しなかったことで無期とみなすのは1つの在り方ですが、もう一つ、有期契約の利用期間、更新回数、そちらを規制するということもあり得まして、その場合には一定期間、例えばドイツなら2年間、更新3回を超えた場合には、まさに無期契約とみなされるわけです。
そちらの規制もあるということも視野に入れながら、書面明示をどう位置づけるか。そこでもう一度考えるという在り方もあるかなと考えています。
○鎌田座長 今、契約期間だけが少し議論になっていますが、そのほかの締結時の事項についてはいかがでしょうか。
雇止めに関する基準、大臣告示ですけど、先ほど御紹介いただいたデータで見ますと、期間の定めについてはかなり達成率、遵守率は高い。資料4-2の1ページ目。これは事業所調査ですが、期間に関する明示の有無ということで、「明示している」が91.7%、それから更新の有無に関する明示の有無は82.9%、これはかなり高いように感じます。
更新の判断基準に関する明示の有無というところは62.2%で、やや低目です。これが低いと見るか、高いと見るかはなかなか微妙なところだと思いますが、こういうものをどう見ればいいのだろうか。確かに事業所としては更新の判断基準を明示するのはなかなか大変なところもあるかなという感じもします。
○山川委員 よろしいですか。
○鎌田座長 はい。
○山川委員 先ほどの労働基準法の明示と、例えばこちらの労働契約ルールとして明示するということでは、その効果という点でも随分意味が違うと思いまして、したがって、もし労働基準法の労働条件明示に付け加えるとすると、かなり重い効果が発生することになります。
契約ルールとしてでしたら、紛争防止のためには、判断基準の書き方はいろいろあるにしても、雇止めの効力判断に当たって考慮するという民事上の効果ですので、それを推進するということもあり得るのではないかと思います。
○鎌田座長 民事上の効果ということになると、やはり何らかの形で法律に組み込むという形になりますか。
○山川委員 そうですね。逆にもし法律に組み込むとしても、労働基準法ほどハードルは高くないのではないかと思います。そういう観点です。
○鎌田座長 そうですね。この論点につきましていかがでしょうか。後でまた触れていただいても結構ですが、次の論点に進めたいと思います。
次は均衡待遇、正社員転換の論点でございます。これについて自由に御発言をお願いしたいと思います。
○荒木委員 ちょっと確認をさせていただけますか。
○鎌田座長 はい。
○荒木委員 事務局に確認です。資料3-2で有期契約労働者に係る「均衡待遇確保対策」と「正社員転換推進対策」と書いてありますが、これは「仮に考えると」ということですか、それとも何か現行法でこういうふうに考えられているということですか。
後ほどの説明の中で「これは諸外国と日本の有期の均衡待遇と同じなのですが」という説明があったものですから、若干、混乱しました。確認をいただけますか。
○富田調査官 済みません。わかりづらくなりまして申し訳ございません。資料3-2はあくまでも現在のパートタイム労働法の均衡待遇の考え方を、ここは「有期」と書いていますので、有期に適用した場合にこうなるのではないかということを書いたということでございまして、現在、有期に関してこういう規定が適用されているわけではございませんので、そこはちょっと言葉、説明が悪かったとすると訂正をさせていただきたいと思います。
○荒木委員 ありがとうございました。そうしますと、これも確認ですが、例えば、今、資料3-1でパートタイム労働法における均衡待遇、これは一番広義、広い意味で使っていらっしゃるわけですね。すなわち、均衡待遇は恐らく2つに分かれていまして、一つは均等待遇、パート法8条の通常労働者と同視されるパートタイマーについては正社員と差別をしてはならないという規制。実は私はこれは諸外国の不利益取扱いと同じだと考えております。
それに対して、パート法の8条以外の部分は均等待遇ではなくて、均衡待遇でありまして、これについては全体的に配慮義務や努力義務にとどまっていて、強行的な規範ではない規制がなされている。そういう両方を含んだ意味で、ここでは「均衡待遇」という言葉を使われているという理解でよろしいでしょうか。
○富田調査官 はい。まさしく御指摘のとおりでございまして、言葉で補ったつもりではあったのですが、この資料3-1の裏に書いておりますとおり、通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者につきましては、このすべての待遇につきまして差別的取扱いをしてはならないということで、まさしく諸外国の法制と同じと。
ただし、範囲については大分、人材活用の仕組みもありますので狭くなるということ。あるいは行政指導、紛争解決援助制度が履行確保手段になっているということで、異なってくるということだろうと思います。
ただ、我が国の特徴としましては、職務の内容が異なるものにつきましても措置を講じなければならないということで特徴があるということを際立たせるために、こういうペーパーをつくらせていただいたということでございます。
○奥田委員 同じ資料の3-2ですが、一つは質問で、一つは疑問点です。私の理解では均等待遇とか均衡待遇とか平等取扱いとか、そういう問題と正社員転換は全然、質の違う問題だと思っていまして、正社員転換は非常に重要な1つの施策ではあると思いますが、均等待遇とか均衡待遇はどちらかというともっと原則的な問題なので、3-2でこれが比較されているのはなぜか。
それがちょっとよく趣旨がわからなかったのです。それが単純な質問です。
もう一点は、これは考え方の問題なのですが、そこの課題に示していただいているように、人事・賃金制度が異なっている正社員とそうでない人たちを均衡という形でどうとらえていくかということが非常に難しい問題だということは、重々、承知をしております。
それから、そういうことを事実、実態として考えていくというのも必要だとは思いますが、私の基本的な考え方は、先生方もいろいろかと思いますけれども、何か人事制度や賃金制度が前提にあって、そこから均衡とか均等を考えるよりも、均等待遇とか均衡処遇ということを考えるとすれば、原則として考えていって、まさにここに書いていただいているように、合理的理由があれば差があることについては全く差別でも何でもありませんので、そこに人事とか賃金制度とかそういうものが合理性があるかどうかという形で反映されてくるのではないかと思っておりますので、順序が違うのではないかという気がしたのです。
別にそういう御趣旨ではないということであればいいのですが、均等待遇、均衡処遇を考えた中で、合理性があるかどうかの範囲の中でそういう具体的な人事制度などが考えられていくべきではないかと思いますので、それはあくまでも意見として申し上げたいと思うので、前者の質問だけお願いいたします。
○富田調査官 この資料3-2を作成した趣旨は、まさしく奥田先生のおっしゃるとおり、均衡待遇と正社員転換は全く異なるものだと私どもは考えておりますけれども、中には均等待遇だけをすれば正社員転換は要らないのではないかという御意見もあるところでございます。
均衡待遇の中の一部の方につきましては、まさしく同じ就業実態にあれば同じ待遇にしなければならないとなっていまして、そうすると正社員転換など要らないでしょうという御議論があるわけです。
ただ、ここでクローズアップしたかったのは、仮に均等待遇にしたとしても、期間の定めがあること自体は変更されない、雇止め自体はなくならないということがあるので、それとは別に無期に転換するという法制度も、政策も必要という考え方もあるのではないかということで、あえてこの両者を並べて資料を作成したということが趣旨でございます。
○鎌田座長 奥田先生、よろしいですか。
○奥田委員 はい。
○鎌田座長 冒頭にこの均衡待遇を考える上で4タイプに分けております。そういったタイプ分けをした上でどう見ればいいのかという問題提起。それから、そもそも期間を短いものと無期のものとでいうと、やはり報酬、賃金をどう払うのかという心構えが違うのではないかという問題提起もありました。
こうしたことを含めまして、均衡待遇についてどう見ればいいのか、もし御意見をいただければありがたいと思います。
○山川委員 よろしいですか。
○鎌田座長 はい。
○山川委員 先ほどの荒木先生の御発言とも関係がありますが、資料3-1で均衡待遇で、ここにはある意味では現在の8条のようなものも、不利益取扱いの禁止に属すると思われるようなものも入るという御理解で、そうだと思いますけれども、そうすると、この両者は割と連続的な色彩があるような気がいたします。
先ほどの奥田先生のお話とも関係がありますが、現在のパートタイム労働法のスタイルは「通常の労働者と同視すべき者」をかなり厳格に、いろんな要件をかけて絞っていって、そうであれば、特に8条で言えば差別をしてはならないと、その要件をかなり特定して厳格化していくというシステムをとっている。
これに対して諸外国、欧州諸国の不利益取扱いの禁止はむしろ要件はすごく一般的な形でかけていって、先ほど奥田先生も言われましたように、その合理的な理由があれば別ですという形で、いわばその立証責任を転換するようなシステムになっている。
ということは、その要件が例えばA、B、Cとあったとすると、A、B、Cを全部課しているのは現在の8条のような均衡待遇の仕組みであると。これに対してA、B、C、そういうものをすべて合理的な理由の方に盛り込んで、「Aではない」「Bではない」「Cではない」のどれかを立証すればよいという形になっていますが、そうすると、その中間的なものがあって、例えばAという要件は課す、しかしBとCという要件はその合理的な理由の方に持っていくという形で、連続性のある制度設計も可能ではないかという感じがしています。
それをどうするかはまた別で、そこはまた措置義務形式とか、努力義務形式とか、法律の規制のかけ方も関係するものですから、なかなかポートフォリオ的に難しい面はありますが、いずれにしても、組合せは可能ではないかという点と、あと、正社員転換もちょっとよろしいですか。
○鎌田座長 どうぞ。
○山川委員 「正社員転換」という言葉の問題もあるような気がしますが、ハードルが高いというのがパートタイム労働法でも言われていることで、先ほどの労働市場専門委員会の話にも関わりますが、正社員転換の意味として、もし雇用の安定を中心に考えるのでしたら、特に有期契約の場合は有期、無期という点が1つのポイントで、無期契約への転換ということで、雇止めにより地位が非常に不安定になるということは一定程度、防止できるので、転換のハードルを下げていくためには「勤務地限定正社員」、あるいは「職種限定」と言われるような選択肢を加えることも考えられるのではないか。
そういうことで、ある程度、雇用安定という点に重心を置いた形で無期契約の転換の中で選択肢を広げていくという考え方もありうるのではないか、一足飛びに狭い意味での正社員への転換のみと必ずしも限定的に考えなくてもよいのではないかという感じもいたします。以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。
○藤村委員 よろしいですか。
○鎌田座長 どうぞ。
○藤村委員 人事管理を研究していると、そもそも企業はなぜ正社員を雇うのかという議論をするわけです。私の理解ではあらかじめ予測できない事態が、企業経営上、いろいろ起こり得る。それに対処するためには、やはりその企業の将来と自分の生活の安定とか繁栄を同一視してくれる従業員がいた方が、企業としてはやりやすい。それが正社員だろうと思います。
ですから、例えば場合によっては個人生活を一部食い込むような労働時間、例えば急に残業しなければいけないとか、そういうこともあり得るだろう。それには対応してもらわなければいけない。
均衡待遇といったときに、例えばそういう不確実な状態が毎日のように起こるのか、あるいは1年に1回ぐらいしか起こらないのかで、恐らく扱い方は違うだろうと思います。多くの企業は毎日のようにいろいろ、不確実。例えばお客様から夕方4時半ぐらいになって急に来てほしいと言われたと。うちの終業時間は5時半ですと。それを超えると残業になる。でも、そういうことには対応してもらわなければいけない。だから正社員が必要だ。こういう話になると思います。
正社員への転換を考えたときに、実は1960年代の初めぐらいまでの日本の地方の工場は、基本的には臨時工で雇って、一緒に働いている仲間からあの人はいいという評価をもらってから、本工になる。そういうのが割と普通でした。それが1960年代半ば以降、人手不足が非常に深刻になってきて、最初から正社員として雇わないと人が来てくれない。だから、採用は最初から正社員ということになったのです。
その後、いろんな変化があり、今、どちらかというと人手が余っている状況であれば、最初はいわゆる臨時工で入って、その中から正社員を雇っていく。例えば製造業の自動車の現場はそういうことを普通にやっています。その現場のリーダーから言わせると、高卒でよくわからない人を雇うよりは、そうやって半年ぐらい一緒に働いた人から正社員に上げてくれた方がやりやすいと。そういう声も上がっています。だから、現場としては実際の人事の施策としてはそれを無視できない。だから正社員に上がってくるという仕組みを持っているわけです。
ですから、正社員はそもそも何をしてもらう人かというところから考えていくと、この均衡待遇とか、正社員になる仕組みを用意するというのは、企業側の経営の実態からいうと非常に合理的であり、そこに余りにも制限をかけ過ぎると、かえって本来なら正社員になれる人がなれなくなってしまうとか、そういうふうになる可能性があるので、この辺りは曖昧にしておくのがいいのかなという感じがします。
○鎌田座長 普通の企業で正社員転換というのは、一応、就業規則か何かで定める、それとも慣行のような形でやっているのでしょうか。
○藤村委員 規則でやっているところもあるでしょうし、それはさまざまではないでしょうか。
○鎌田座長 さまざまですね。
○藤村委員 例えば、実際、これはトヨタ自動車の現場で聞いた話ですが、期間工で半年間の定めで入ってくる人たちの中に最初から正社員転換の仕組みを目指してくる人もいるわけです。そうではない人たちもいます。ですから、現場のリーダーは、最初、一人ずつ面接をする。
何を求めてこの期間工という働き方をしたいのかと。だから、一人ずつ聞いていくと実は自分は正社員になりたいと。そうであれば、正社員になるのは決して簡単ではないけれども、君がそこまで思うなら、これから半年間、そのように鍛えるからついてきなさいというふうにして、仕事の配分などを決めていく。
だから、それはそれで正社員になれるという制度を持っているということは、そういう意欲のある人たちを非正社員として、入り口はそうだけれども、入ってきてもらうという点ではいい制度で、今のところはちゃんと機能している制度だと思います。
○鎌田座長 そうしますと、法律などで正社員転換制度を設けましょうということをもし言ったとすると、そこは自然とコース分け人事のようになりますね。つまり、臨時社員の中でも正社員転換を予定する人として採用する、来てもらう。そうでない人。
そうすると、先生がさっきおっしゃったように、曖昧にしないとその部分がかなり硬直してしまうという側面もあるわけですね。
○藤村委員 そうですね。現実には例えば自分は別に正社員になりたくないと思って働き始めたけれども、いろんな事情で賃金をもっと稼げるような仕事にならなければいけなくなった。それで正社員転換制度があれば、そちらに乗っていきたいという人も現実にはいると思います。
○鎌田座長 わかりました。
○藤村委員 そういうものをうまく拾えるような仕組みが何か必要だと思います。
○鎌田座長 はい、どうぞ。
○荒木委員 最初に佐藤先生が御指摘になったように、有期契約労働者はいろいろいます。正社員同様職務型がいれば、軽易職務型もいれば、専門職型もいる。非常に多様な有期契約労働者がいるとすると、やはりその多様性に応じた規制をしないと、ある一つの人を見て、この人たちのみをターゲットに法律で規制してしまうと、ほかのタイプの人についてはむしろ適切ではないということになると思います。
例えばパート労働法は非常にユニークなアプローチをしまして、先ほどの通常労働者と同視される者については差別的取扱い禁止。つまり、均等待遇を要求してよい人については非常にかたい規制を行ったのです。
それ以外の、つまり同一労働を行っているとは必ずしも言えないような人たちについては、均衡処遇、均衡待遇を、これは配慮義務や努力義務を課し、しかし、それは非常にソフトな規制ですので、その実効性を担保するためにパート法13条で、なぜそういう処遇になっているのかを労働者から問われたらきちんと説明しなさいという規制をかけている。
つまり、ある強行的な規制、法的な効力で契約の内容を無効にしたり、あるいは一定の金銭請求権を与えたりするのではなくて、当事者にちゃんと交渉をさせて、妥当な労働条件に仕向ける。そういう行為規範を課していると言ってもいいと思いますが、そういうアプローチをしている。これは実態は多様である中での工夫された新しいアプローチとして注目していいことだと思います。
有期契約も同様にいろんなタイプの人がいるということになると、ある部分については確かに差別禁止を導入していいかもしれません。しかし、それですべて行うのは必ずしも妥当ではないという場合には、別のアプローチ、なぜそういう処遇になっているのかをきちんと説明させ、それで当事者の交渉のきっかけとする、そういうアプローチも考えられる。多様なアプローチを重層的に使っていくというのは恐らく藤村先生が言われたように、ある部分について、全部、法律でそれは禁止だとか、そういうことではない別のアプローチとして当事者の創意工夫をいい方向に向ける。そういうことにもなるかもしれないという気がいたしました。
○鎌田座長 ありがとうございます。あとはありませんでしょうか。
○橋本委員 前提の確認ですが、有期契約のパートで働いている方はたくさんいるわけで、その人にはパート法の規制がかかるので、現在、議論しているのはフルタイム有期ということで何か新しい規制を考える。前提の確認なのですが、そういうことでよろしいでしょうか。
○富田調査官 そういうことを念頭に、論点で書かせていただいたところです。
○鎌田座長 何か、それに付け加えるということではなくて。それでいいですか。
○橋本委員 はい。それで荒木先生や佐藤先生がおっしゃったとおり、タイプごとの規制は勿論、おっしゃるとおり必要かと思いますが、フルタイム有期でどういう方が、どういう類型が多いのかということもわかればいいのかなと思いました。
○富田調査官 ちょっと言葉が足りなかったかもしれません。論点に書かせていただきましたのは、パート法で一定程度、均衡待遇の確保とか、あるいは正社員転換の規定がありますが、ただ、パートタイム労働法はあくまでも時間が短いということに着目した均衡待遇、ないしは正社員転換でございますので、当研究会におきましては、勿論、有期という特徴に着目した均衡待遇というものも、もしあるのであれば御議論いただきたいと事務局としては考えております。
○鎌田座長 ほかに御発言はありませんでしょうか。今日は全体に関わったことでも結構ですが、よろしいですか。
それでは、一応、時間もちょうど予定の時間がまいりましたので、本日の議論はここまでとしたいと思います。
それでは、今後の日程について事務局から説明をお願いいたします。
○富田調査官 次回の日程でございますけれども、現在、まだ調整中でございますので、委員の皆様には改めて御連絡させていただきます。
○鎌田座長 それでは、以上をもちまして本日の研究会は終了させていただきます。貴重な御意見をありがとうございました。
(照会先)労働基準局総務課政策係(内線:5587)
本日は「契約締結時の課題、均衡待遇、正社員転換」について御議論をいただきます。
まず、前回の議論の内容について資料として提出されていますが、これは資料1ということで前回の議論、論点としては総論、有期労働契約の範囲等、契約期間についてということで、御議論いただいております。
前回、御欠席された委員の皆さんで前回の論点について御意見がありましたら、是非、ここで御発言をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
○藤村委員 前回、欠席いたしましてどうも済みませんでした。前回の議事概要を拝見して、3点ほど申し上げておきたいと思います。
まず第1点は、今回、この有期労働契約の研究会をやっているわけですけれども、将来、法律としてこれをつくっていく場合に、是非、派遣も含めたいわゆる有期労働全体をカバーするようなものにしていく必要があると思っています。
私は法律の専門家ではありませんが、いわゆる労働基準法が基本的にあって、それぞれいろんな法律があるわけですけれども、正社員以外の契約期間の定めのない雇用の以外の人たち全体をカバーするようなものであればいいと思っています。これは希望です。
2点目は、この間、日本の労働市場の状況が20年ぐらい前と比べると相当様変わりをしてきています。よく「雇用の流動化」と言われますが、雇用の流動化の中身は人によって大分とらえ方が違うように思います。相反する事実が出てきています。
例えば「賃金構造基本統計調査」で見ると平均勤続年数は伸びています。平均勤続年数が伸びているということは、定着化が進んでいるというのが一つの事実としてあります。逆に離職率がやや上昇している。ということは、どうも固定的に働いている1つの会社で長くという人たちと、割と頻繁に移る人と、2つの層があるように思います。
統計上は10人の人が1回転職をした場合と、1人の人間が10回転職をした場合と同じように出てきますので、どうも1人の人間が頻繁に転職を繰り返すというのがある。そういうのは実は日本経済全体にとって余りいいことだとは思っていません。 企業の教育訓練投資の回収とか、そういうものを考えると、ある程度、定着をしてもらった方がいい。そうなると、今回、議論をしているような法律で少し定着化を促すような、そういう方向での誘導は意味があると思います。
3点目はそういう割と短期の雇用を回していくような企業行動の原因がどこにあるか。私なりに見ておりますと、例えば電器産業などで部品をつくっている会社に伺うと、今月、来月の受注量はわかっているけれども、3か月先はわからないとおっしゃいます。ですから、当面、雇える人を非常に短期間で雇って、それで回していくと。
なぜそうなるかというと、一番大元のいわゆる最終組立てをやっているような会社が市場の変動に合わせて柔軟に対応したいと。大きなところがそういう行動をとると、末端に行くと非常に振れが大きくなる。それがここ15年ぐらいの状況かなと思います。
実はこれも企業の競争力、少し中長期の競争力を考えたときには余りいい状況ではない。つまり部品メーカーも含めて、全体で産業の底上げをしていかなければいけないときに、目先の市場対応のために短期雇用、採ったり採らなかったり、そういうのもやはり少し制限するような方向の方が、実は日本全体にとっては、日本の将来にとってはいいのではないか。そんなことを考えながら、前回の議事概要を拝見しておりました。以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。何か事務局の方に御質問ということではありませんね。
○藤村委員 そうではありません。
○鎌田座長 よろしいですか。
○佐藤委員 いいですか。
○鎌田座長 はい、どうぞ。
○佐藤委員 前回、欠席しましたが、私は今日の論点に関わるのかなとも思うのですが、厳密に前回の論点に即してどうなのかというのはちょっとあれですけれども、一つはやはり実態です。つまり、活用する方、それから働く方の実態。活用する側には有期として活用する理由があるはずで、有期としての雇用形態を活用する側が選択した理由が、この実態に即して非常に重要になってくるのではないかと。
それから、働く方も、結局、有期としての働き方を選択している。これはほかにも正規もパートも派遣もあるわけですから、なぜ有期であるのか、その理由です。
その2つがまず非常に重要な点ではないかと思いまして、その点、法律論、議論をされるでしょうけれども、実態に即した規制のあり方を考えていくことが重要ではないかと思いました。これが一つです。
もう一つは、それと関連してですが、実態調査の中では、今回、4タイプの類型化を行っています。これは非常に重要だと思います。全体として見ますと、要は有期契約としての活用とか働き方はどうなのかというと、一つは正社員同様職務型は、これは理由はいろいろあるでしょうけれども、本来、仕事が正社員と同じで、正社員としてではなく有期として活用する理由は何なのかということがより強く求められるのかなと思います。正社員と同じ仕事なわけですから。
もう一つは、軽易作業のようなものがありますが、これは要するに業務の変動性のゆえに先が見えない。つまり不確実性が高いので、長期で雇ってしまうリスクを回避するために有期なのだということで、結果的には、そこは軽微な仕事も含めて、変動性に富んでいるがゆえに有期だというタイプがあり得ると思います。
それから、真ん中のところが要するに専門職型というもので、これが高度な専門能力を持っているがゆえに、いわば正規の処遇体系にはなじまないから、別立てで有期契約という形が多いですね。
例えばデザイナー、研究開発技術者、あるいは金融のデリバティブの専門家、こういうものは非常に高額な年俸でしばしば外国からも雇い入れている。こうしたタイプについては我が国の、日本の雇用システムの中での処遇の箱に収まらないから有期なのだと。
そういうふうに、これは活用する事由というか、理由が全部違うわけです。これを全部、「有期」としていいのかどうかということになると、私としてはこれは分けて議論をする必要があるし、要するに有期の事由が強く求められるのは最初の正社員同様職務型ということになるのかなと。これはわかりませんが、そういう印象を持って議論を伺っていました。それが2つ目です。
3つ目はいわゆる均等待遇、真ん中のところですが、均等待遇と正社員への転換ということですが、ここは要するにパートで長時間、あるいは職務の相当性、同等性がある場合には、キャリアの実態等から見てそれがない場合には、これは賃金の決定方式を正規に合わせなさいということですよね。
そういう考え方が有期にも当てはまるかどうかというのは、結構、デリケートな問題で、というのは要するに、例えばこの専門業務型のようなものは有期には入っているわけです。これはしばしば、賃金水準からいうと正規より高いのです。
そういうことになったときに、合わせるといったときに、一体、どちらにどちらを合わせるのかという悩ましい問題が出てくる。そういう問題が一つあると思います。
それから、もう一つはやはりパートの場合には短時間のゆえに短時間の仕事に就いてもらう人を雇うということがありますが、それゆえに長く働いていたり、期間性を持っている場合にはそろえなさいという話になりますが、有期の場合は時間というよりも、3年とか、期間ですよね。
こういう期間の中で雇い入れるということなので、これは要するに賃金の払い方の考え方からすると、正規は例えば20年、40年という長期の中での収支決済を図っているわけです。つまり、働き方、貢献と報酬のバランスからいうと20年、30年、非常に長期で採る。その中で賃金システムを設計して支給する。こういう考え方でいくわけです。
ところが、有期はそもそも3年という期間の中で雇い入れているわけですから、若いときにはゆっくり育成して、それから返してもらうということではないわけです。即戦力になってもらわなければ困るというところがあると思います。
そう考えていったときに、要するに賃金制度の設計としての考え方からいうと、使用者の場合にはやはりそこを分けて考えなければいけないという考え方を多く持ってくるのかなと思います。有期のゆえに期間限定なのだから、そこはそこで賃金制度を分けて考えた方がいいのかなという考え方があり得るように思います。
そういうことから考えると、均等待遇の問題に関してパートと有期に関しての扱い方というか、考え方の共通点もあると思いますが、違いも少し議論をする必要があるのかなと思いました。以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。では、山川さん。
○山川委員 前回はどうも失礼いたしました。前回は比較法の話が多かったように見受けまして、議論の整理程度のことかもしれませんが、政策の選択肢には、有期契約の締結事由を制限するという政策と、それから更新回数とか勤続年数に上限を設けるという政策と、それから日本で現在、判例でありますような雇止めの制限を一定程度、設けるという3つぐらい、入り口とか出口と言われますが、一応その3つぐらいがあって、それらを国によって組み合わせて採用したり、どれかを選択したりという方式をとっていまして、入り口と出口、両方、規制をかけているところもあるし、そうでもないところもあるので、そこは雇用システムとの関連でどういうポリシーを選択していく、あるいは組み合わせていくのがいいかということを考えるということだと思います。
いずれにしても、どこの国でも、ある範囲ではその有期契約の存在自体を肯定しているので、そうすると欠けているのが、さっき藤村先生も言われましたそういった人たちのスキルの向上とか、その地位の向上という点をどうするかということです。
これは外国では余りそれほど注目されてはいない、重視されてはいないようですけれども、今日、恐らく議論になる正社員転換などはもし有期契約の存在を認めるとしても、それをよりスキルを向上させていくという点で、それも政策的に組合せの対象になり得るというか、補完的なものになるのではないかという整理になるかと思います。
なお、これは先ほど藤村先生の御意見を伺って触発された点で、前回の議論には関係ないかもしれませんが、昔から景気変動に対して受注が変動したということはあって、昔は臨時工をたくさん採用していって、それがだんだんと定着していったという歴史があると思うのですが、最近、昨今の経済状況では非常に受注の変化のスピードが速いのではないか。私は専門ではないので、それもちょっとわかりませんが、そうすると、そういう受注行動自体をどう考えていくかということが問題になりえます。
もう一つは、かつても受注の変動があった中で、現在ほど有期契約が活用されていなかったとすると、要員管理といいましょうか、受注の変動と人の使い方のようなものの工夫が若干違ってきているのではないか。
これは全くの推測ですが、つまり、昔は何とか要員管理をやりくりして雇用安定を図っていたのに対し、やりくりしないで有期契約で単純に受注の変動に合わせて雇止めをするという方法は簡単なやり方かもしれないのですが、そういった要員管理の態勢がどうなってきたか、法律の問題ではないかもしれませんが、それらの工夫が何か考えられないか。ついでながらちょっとそういうことを思いました。
○鎌田座長 ありがとうございます。三先生から今日の御議論の中にも踏み込んだ非常に貴重なお話が出たと思います。それでは、今回の論点について議論を始めていただきたいと思います。事務局で資料を用意しておりますので、まずはその説明をお願いいたします。
○富田調査官 それでは、私の方から資料番号の2から4-6まで一気に説明をさせていただきたいと思います。資料2を御覧いただきますと、今回、議論いたします論点と前回の論点を一部修正したものを提示しております。
まず、初めの書いております「第7回研究会 論点(1)」のところは、前回、荒木先生からの御指摘による修正を行ったところでございまして、それが2ページのところのちょうど1つ目の丸でございます。
諸外国の法制では、契約期間について上限規制となっているということで、1回ごとの更新ではありませんということを、これは3のところの「1回の契約期間の上限」のところに書いていましたが、座りからすると「勤続年数等の上限」のところに置いた方がいいのではないかという御指摘がございましたので、こちらの方に移動をさせたという修正を行っております。
それで、本日の論点でございますが、「第8回研究会 論点(2)」というところに書いてございます。1としまして「契約締結時の課題」。
まず、「現行法制の評価」でございます。労働基準法は労働契約の締結に際し、「労働契約の期間に関する事項」を書面で明示することを使用者に義務付けているが、契約期間が非常に重要な要素であることから書面の明示がない場合の効力についても定めるべきという考え方については、どのように評価をするべきかと。
それから、2点目としましては「有期契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」が大臣告示でございますけれども、これによりますと使用者は有期労働契約の締結に際し、更新の有無を明示しなければならず、更新する場合があると明示したときは、その判断基準を明示しなければならないこととされておりますけれども、労働者の更新に係る予測可能性を高める観点から手続面、あるいは実体面において強化すべきという考え方については、どのように評価すべきかということで、これは17年に行いました研究会報告におきましては、この辺についてもコメント、言及があったということでございます。
「諸外国の法制との比較」でございますが、諸外国の法制におきましてはドイツのように労働契約の期間設定は書面でなければ有効とならないとするものや、フランスのように期間だけではなくて、利用事由も書面で明示しなければ無期契約とみなされるものがございますけれども、我が国の雇用システムの特徴等に照らしてどのように評価すべきかということでございます。
「その他」。トラブル防止等の観点から、契約締結時に係るルールとして何か考えられるものがあるかと書いております。
2点目が「均衡待遇・正規労働者への転換」でございまして、総論的なものをまず書いております。
今回のヒアリングや実態調査結果等を踏まえて、有期契約労働者の正規労働者との待遇の格差に係る課題にはどのようなものがあると考えられるか。とりわけ、職務タイプ4類型について、それぞれ課題は異なると考えられるかということです。
それから、有期契約労働者の正規労働者との待遇の格差に係る課題への対応としては、今回、議論になっております、論点になっております均衡待遇の確保と、正規労働者への転換の推進という2つの手法が考えられますが、我が国の雇用システムの特徴等も踏まえて、どのように考えるべきか。片方だけでいのか、両方やるべきかといった議論があろうかと思います。
3点目は正規労働者と有期契約労働者の二極化を橋渡しするものとして、例えば、「業務や職場・事業所を限定した契約期間に定めのない雇用契約」により雇用されている者が、これは「労働市場改革専門委員会」や第4次報告で提言されておりますけれども、これを研究会においてはどのように評価すべきかということでございます。
3点目は「均衡待遇」でございます。まず、有期契約労働者のうち通常の労働者より所定労働時間が短い者、いわゆるパートタイム労働者でございますが、これは「パートタイム労働法」の適用がございまして、事業主はこの法律に基づいて均衡待遇を確保する必要がありますけれども、これはパートでございますので、フルタイムの有期の方につきましてはこのような法的な枠組みがないところでございます。
今回のヒアリング等を踏まえまして、こういった課題についてはどのように考えるべきかということでございます。
次は、これもパート法のことについて書いていますが、差別的取扱いの禁止。これは後ほど詳しく説明いたしますけれども、対象者といたしましては短時間労働者のうち、正社員と一緒ということで無期契約の方、あるいは、この「実質無期」といいますのは東芝柳町工場事件型でございまして、反復更新によって実質的に無期契約と異ならない状態で存続している者、そういった無期とほとんど変わらない方に限定されていますが、この有期契約労働者に係る差別的取扱いの禁止の問題について考えるときには、この「実質無期」以外の有期の方についても検討すべきという考え方についてはどのように考えるべきかということでございます。
「諸外国の法制との比較」でございますが、諸外国におきましては、我が国と異なりまして、正規労働者、有期ということではなくて、無期と有期という差別的取扱いが禁止されておりますけれども、我が国の雇用システムの特徴等に照らしてどのように評価すべきかということでございます。
それから、「正規労働者への転換」のところでございますが、これも先ほどの議論と同じでございまして、フルタイムの有期の方につきましてはパート法の適用がないわけですが、こうした方々につきましても正規労働者への転換を推進すべきという考え方についてはどのように評価すべきかということでございます。
それから、「諸外国の法制との比較」でございますが、諸外国の法制におきましては有期に係る規制の違反があった場合に無期とみなす法制が多く、転換推進措置といたしましては、フランス、ドイツのように無期契約に係る欠員の情報提供といった程度のものしかありませんが、我が国の雇用システムの特徴等に照らしてどのように評価すべきかということでございます。
それから、資料3-1を御覧いただきたいと思います。今回の均衡待遇、あるいは正社員転換といったことにつきまして、より理解を深めるために事務局の方でペーパーを用意しておりますので、ちょっと説明をさせていただきたいと思います。
3-1は、均衡待遇と諸外国の法制における不利益取扱いの禁止がどのように異なるのかを整理したものでございます。まず、上の方を御覧いただきますと、均衡待遇があります。
重要なことは、これは諸外国にはない我が国独特の概念でございまして、通常の労働者との職務、人材活用の仕組み・運用や契約期間の違いに応じて、それぞれ法律に定めた措置を講ずることにより、待遇面のバランスを図るということでございまして、ここで重要なことは措置を講ずることによってバランスを図るということで、賃金水準がどうだこうだということがまず第一に出てくるわけではないという措置義務の規定になっているということでございまして、これはちょっとおめくりいただきますと、パート法におきます均衡待遇の確保がどのようになっているのかを書いております。
これはマトリックスになっておりますが、左側を御覧いただきますと、先ほど説明しましたとおり、通常の労働者と比較して職務の内容が同じなのかどうか、あるいは人材活用の仕組みや運用など、これは人事異動の有無及び範囲と見ておりますけれども、それが一緒なのかどうか。あるいは契約期間がどうなのか。無期なのか、有期なのかということによりまして、例えばすべて通常の労働者と同じですということになりますと、賃金等のすべての待遇につきまして差別的取扱いをしてはならないと二重丸で書いておりますけれども、そうしなければならないとなっております。
それぞれ、職務は一緒ですが、人材活用の仕組みは一部しか一緒ではありません、一定期間しか一緒ではありませんということになりますと、これは賃金の決定方法を同じようにしなければならないとなったり、それぞれ、丸とか三角で書いているような措置を講じなければならないとするようになっております。
そのほか、職務の内容が同じで人材活用の仕組みが異なる場合とか、職務の内容が異なる場合ということについても、ここに書いておりますような措置を講じなければならないということがパート法における均衡待遇の確保になっております。
ちょっともとに戻っていただきまして、御覧いただきますとわかりますとおり、よく均衡、均等といいますとどうしても同じ仕事をしている人だけが念頭に行くわけですけれども、我が国の均衡待遇の考え方は職務内容の相違にかかわらず、すべての短時間労働者が一つの対象になっているということが重要なところではないかということでございます。
次に賃金ということでございますけれども、今、御覧いただきましたとおり、これは決定方法のような規制でございまして、これは一番上の二重丸のところを除きまして、賃金の水準につきましては直接の規制がないということが、また諸外国とも若干異なっているということでございます。
主な履行確保手段は、こういう措置義務をいかに担保するのかというのは、基本的にパート法は行政指導と紛争解決援助制度が利用されることを念頭に置いた法律構成になっているということでございます。
一方、諸外国の有期法制はどうなっているかということでございますが、諸外国はこういう措置義務の考え方ではなくて、特にEU法制、EUの諸国でございますけれども、客観的な理由により正当化される場合を除き、有期契約労働者であることを理由として、比較可能な無期契約労働者よりも不利な取扱いをしてはならないという規定が置かれているということでございます。
これは勿論、「比較可能な無期契約労働者と」ということでございますので、職務、あるいは格付けが同じ無期契約労働者がいる方が対象になるということで、ここでは職務内容が異なる場合は対象にならないということで、我が国のパート法とは異なってきていると。
いわゆる同一価値労働は職務内容が異なっても、例えば価値が一緒であれば同じ賃金にしなさいという発想はこの有期法制においてはとられていないということでございます。
それから、諸外国の有期法制で出てきますのは、「報酬比例の原則」が明文に書かれたりしておりますけれども、そのように賃金の水準につきましても直接的な規制の対象になっているということでございます。
次に主な履行確保手段としましては、ある意味ではちょっとふわっとしたこういう規定を置いて、具体的な解決は民事裁判に委ねられるということが諸外国の法制になっているということでございます。
続きまして、資料3-2を御覧いただきたいと思います。
これは「均衡待遇確保」と「正社員転換推進」がどのように違うのか。これもできる限り違いを際立たせる感じで整理したものでございます。
まず、目的を御覧いただきますと、均衡待遇は正社員と同様に労働者の働きと貢献に応じた待遇の確保を図るということでございまして、一方、正社員転換の方は意欲と能力がある者について正社員となる道を開くということで、特徴を御覧いただきますと、先ほどの説明にもつながりますけれども、均衡待遇はあくまでも、これは仮に有期契約労働者にも同じことをやった場合ということですが、全員が対象になるということでございます。一方、正社員転換は希望する者のみがこの対象になってくるということで、違いが生じてきています。
2点目としましては、均衡待遇はどこまで進めていっても、期間の定めがあること自体を変更するものではない。待遇は正社員と同じようになるかもしれませんけれども、期間の定め自体は変わらない。
一方、正社員転換の方は有期の方を無期に変更するということで、属性の変更まで生じてくるということが違うということでございます。
3点目といたしましては、均衡でございますので、正社員との待遇の差は生じますが、正社員との就業の実態の違いに応じて待遇を決定することになりますので、この対象になる方の納得性は向上するのかなということ。
それから、その下にまいりまして、2点目ともつながりますけれども、雇止め自体は有期という性格に基づいて発生するものでございますので、仮に同じ待遇にするとした場合でも、雇止めはなくならず、雇用の安定には必ずしも結びつかないということがございます。
一方、正社員転換の3ぽつ(・)目でございますけれども、正社員にするということですから、通常は待遇が改善されると考えられますけれども、正社員という枠組みの中では待遇の差が設けられるということはあり得るということでございます。
例えば、総合職と一般職に区分されている場合に一般職にだけ転換しますという考え方は当然、あり得ます。それから、無期契約であるわけですから、雇用の安定は雇止めがないという観点で一定程度、図られるということは正社員転換の特徴だと思います。
課題といたしましては、まず、均衡待遇ですが、先ほど佐藤先生からも御指摘がありましたけれども、正社員の方は長期勤続を前提とした人事・賃金制度となっているということ。一方、有期契約労働者は短期的な雇用を前提にした制度となっているということで、この両者の間の均衡をいかに図るのか。これが課題になってこようかと思います。いわゆる職務の同一性だけで均衡を図るのは、なかなか難しい面もあるのではないかと考えられます。
それから、現時点においてということですが、有期契約ということが今はパート法では有期で差を設けることが認められておりますけれども、待遇の差を設ける合理的理由となるのかというのは議論をする必要があるだろうと思っております。
それから、正社員転換の方ですが、労働者のニーズからすると責任が重くなるから正社員になりたくないという方が今回の実態調査等でも出てきておりますけれども、こういう労働者がいることをどう考えるのか。
あるいは企業側のニーズといたしましても、正社員を幹部候補生と位置づける場合には正社員転換のハードルが非常に高くなってしまう。そのことをどう考えるのかという課題があろうかと思います。
したがいまして、正社員転換を進めるにしても、こういった労使のニーズにどう対応するのかという課題が出てくるだろうと思っております。
それから、資料4-1でございます。
これは当研究会で行いましたヒアリング結果のうち、今回の論点に関わるものを抜粋させていただいたものでございます。
まず、「契約締結時の課題」でございます。契約締結・更新時に契約内容の明示、捺印・手交等によりまして、本人に内容を確認することでトラブルが発生しないようにしているということを流通業の方は言っておられます。
それから、人材派遣業の方は大臣告示に沿いまして、更新の有無等について明示をしておられると。また、更新について労使で互いに確認する時期をいつにするか、事前に具体的に労働者に伝えるようにして納得性の向上を図っているということでございます。
それから、中小企業の方は契約締結時に労働者一人ひとりに時間をかけて、一つひとつの契約内容を確認することで納得することで契約締結をしてもらえるようにしている。
一方、労働相談担当者の中からは、この大臣告示につきましては判断基準の明示とか雇止め理由の明示については、必ずしも守られていないということで、より周知徹底が必要ではないかという御発言をいただいております。
それから、均衡待遇でございますけれども、この製造業関係の労働組合の方からはパートの方と正社員のうちの日給月給者を比べると、日給月給者以外にも実は月給者の方がおられますが、日給月給者と比べますと業務面では明確な差がない。
一方、正社員との待遇の差として賃金水準自体が異なる。賞与の額が勤続年数に応じて変わるほか、通勤手当等がその月の労働時間が少ない場合には支給されないとか、いろんな違いがあるということを挙げて言われております。
流通業関係の労働組合の方からは、この組合の方はこれまでかなり取り組んできておられまして、忌引き休暇とか退職慰労金の導入等の取組みを図ってきておりまして、近年、人事処遇制度を一本化したと。
この処遇制度におきましては、属性に関わる手当をすべて仕事基準にする、要するに職務給へ一本化したほか、教育訓練機会も同様であり、同じ評価基準で昇進することにしているということで、有期の方からも評価されていると言われております。
流通業関係の労働組合の方からは、正社員はフルタム・無期雇用であり、「シフト勤務」に組み込まれ、日によって勤務時間帯が異なるなど、不規則勤務であると。それから、自宅から離れた他事業場へ配置転換されるケースもあるということで、先ほどのパート法の枠組みを使うのであれば、人材活用の仕組みが有期の方とは異なってきているということを言われております。
一方、非正規労働者を組織している労働組合の方からは、10年ぐらいかかって、少しずつ賃上げがあっても、1回の契約更新で大幅に金額が下がることがあるので、均等待遇を実現するためには有期労働契約そのものの問題とセットにして是正していかないと、実効性がなくなるということを懸念されております。
それから、正社員転換ですが、有期の方にも正社員登用の道を開いておりまして、かなりの数の方が正社員に登用されているということを製造業の方は言われております。
それから、流通業の方は正社員転換の登用制度を設けておられますが、応募は思ったよりも少ないと。これは正社員になると時間外労働や人事異動を伴うということで、家庭と仕事の両立面で支障が生じかねないということを気にされているのではないかと言われております。
裏にまいりまして、中小企業の方はやはり正社員登用制度については拘束時間や自由度という点で大分変わってくるので、申し出が少ないのではないかと言われております。
製造業関係の労働組合の方も正社員転換へのニーズは高く、大きいのですが、この1年間の転換事例はないということで、この労働組合の方はトップダウンで推進することが効果的ではないかと言われております。
流通業関係の労働組合の方は複数の有期契約の方が正社員に転換されている実績がありますと。ただ、正社員を希望するよりも、そのまま、今の仕事のまま雇用の安定を望むと。恐らく無期にしてくれという声だと思いますが、その声については会社側が受けとめるに至っていないと言われております。
それから、資料4-2を御覧いただきたいと思います。
これは7月に実施いたしました実態調査のうち、今回の論点に関わることを抜粋したものでございます。まず、事業所調査でございますが、1ページ目は労働条件の明示のところでございます。
御覧いただきますとわかりますとおり、契約期間、更新の有無、判断基準の明示といったものが、この丸で囲んでおりますように、それぞれ9割、8割、6割ということで明示されているということが出ております。
2ページにまいりまして、今度は就業の実態を明らかにするために残業の有無を聞いております。残業をすることがあるという有期の方は62.5%ということで、これを職務タイプごとに見ますと同様職務型が68.2%ということで、丸が別職務のところに付いていますが、軽易職務型の56.7%からするとちょっと多くなっているということでございます。
3番は人材活用の仕組みということで、異動・転勤の有無と範囲ということでございますが、異動・転勤することがあるとする同様職務型が26.8%。これが軽易職務型になりますと、ない方が8割を超えているということで、職務タイプによって差が生じてきているということがここで出てきております。
3ページにまいりまして、これも人材活用の仕組みの1つでございますが、昇進の有無でございます。これを御覧いただきますと、正社員が昇進することがあるのは87%でございますが、同様職務型で20.9%、軽易職務型になりますと8割以上の方は昇進することがないということになっております。
一方、基本給の水準でございますけれども、正社員と比較した基本給の水準が同様職務型で6割から8割、あるいは8割から10割というのが3割弱ということで、軽易職務型になりますと6割から8割が38.4%で最も多くなっているところでございます。
次のページにまいりまして、退職金、賞与の有無でございます。これを御覧いただきますと、退職金がある有期契約が12.6%、賞与があるとするのが45.6%でございまして、これもタイプごとに見ていただきますと、同様職務型が軽易職務型に比べて多いということになっています。
諸手当につきましては、丸で囲んでおりますが、通勤手当は職務タイプによる大きな差はないのではないかと見ております。
退職金の水準でございます。これを御覧いただきますと、これは仕事の中身が高度だからということでしょうが、高度技能活用型で正社員と同額程度というのが63.1%ということで、ほかのところは低くなっておりまして、とりわけ2割未満とするのが軽易職務型で37%となっておりま
す。
次のページにまいりまして、教育訓練機会でございます。正社員と比較した教育訓練機会でございますが、同様職務型で全般的に正社員とほぼ同じ教育訓練機会が与えられているとするのが42.3%、一方、軽易職務型になりますとむしろ少ない、あるいはほとんどないとするところが2割を超えてくるということでございます。
それから、福利厚生の内容でございます。これを御覧いただきますと、福利厚生があるとする有期契約労働者は84.2%ということで、何らかあるというのが8割を超えているということでございます。
次のページをおめくりいただきまして、正社員転換制度及び実績でございます。制度があるとお答えになった事業所が46.5%、そのうちの実績があるとするところが52.2%でございます。
先ほど、ヒアリングに出ていました「少ない」ということで、何か支障があるのかというところでございますが、実は支障がないとするところが51.3%で最も多いのですが、個々の「ある」とするところの中身を見ますと、ポストが少ないというところがこの調査では20.8%ということで多くなっているところでございます。
次のページは個人調査の方でございます。まず、(1)は、これも労働条件の明示でございまして、御覧いただきますとわかりますとおり、契約期間、あるいは更新の有無、更新の判断基準の明示については95%、87%、62%という明示の割合になっております。
それから、残業でございます。これを御覧いただきますと、やはり職務タイプによって差が出ておりまして、同様職務型で残業することがあるとするのが69.6%、軽易職務型になりますと52%の方が残業することはないとなっております。
おめくりいただきまして、今度は正社員と比較した場合でございます。これは正社員と比較したらどうかと見た場合は同様職務型で7割を超える方が同じように残業をしていますと。なおかつ残業時間が等しいとしているのが65%おられます。
一方、軽易職務型になりますと、残業もするというのが55%ですが、この残業時間は64%の方が、有期の方の方が短いと答えております。
異動・転勤の有無が次の(3)でございます。異動・転勤することがあるとするのがやはり同様職務型の方がほかのタイプに比べて高いということで、軽易職務型に至りましては転勤することがないとするのが8割を超えてくるということでございます。
正社員と比較した場合でございますが、これも御覧いただきますと、ここで御留意いただきたいのは正社員も転勤がないというのが22%、これは恐らく中小企業も含めますとこういう数字になってくるのかなということ。
軽易職務型になりますと、正社員のみがするというのが68%と高くなってくるということでございます。
3ページにまいりまして、今度は昇進の有無でございます。まず、一般的なことを申し上げますと、昇進することがないとするのが67%でございます。タイプ別に見ますと、あるとするのが同様職務型が比較的高く、17%となっております。
正社員と比較いたしますと、勿論、正社員のみがするというのが77%で多いわけですが、両方するとするのがタイプ別に見ますと同様職務型で20.5%で、最も高くなっているところでございます。
基本給の水準でございますが、正社員に比べて少し低いとするのが同様職務型で、23.8%。かなり少ないとなりますと、勿論、同様職務型も40%を割りますが、軽易職務型で56%と最も多くなっております。
それから、退職金でございますけれども、退職金があるとする有期の方が10.2%。これも職務タイプごとに異なりまして、あるとしても、特に軽易職務型になりますと正社員に比べて少ないということになっております。
次のページにまいりまして、賞与でございます。賞与があるとする有期の方は28%でございまして、これもタイプ別に見ますと同様職務型で最も高く、35.3%になっております。軽易職務型になりますと、少ないというのが95%を超えてくるというふうになっております。
それから、諸手当でございます。これは両方、諸手当があるとするのが同様職務型でタイプごとには最も多く、69.4%でございますが、正社員よりも諸手当の数が少ないとするのが有期全体で81%を超えてきているということでございます。
それから、昇給でございます。正社員のみ昇給があるとするのが57.9%という数字が出ております。
次の5ページにまいりまして、福利厚生でございます。これも正社員にも有期にもあるとする有期の方が73.8%でございますけれども、これも数を見ますと73.8%の方が、やはり有期の方の方が福利厚生の数が少ないとお答えになっているところでございます。
それから、教育訓練機会でございます。これは前回も事業調査とちょっと違う結果だと申し上げましたが、比較的に同様職務型がほかのタイプに比べまして正社員とほぼ同じ教育訓練機会が与えられているということになっておりまして、軽易職務型になりますと、少ないとお答えになっております。
転換制度になりますと、転換制度があるとするのが25.4%とお答えになっているところでございます。
次に資料4-3でございます。こちらの方は今回の論点に係る諸外国の法制との比較を、第5回の研究会資料などを基に作成したものでございます。
まず、「契約締結時の労働条件等の明示」でございます。我が国につきましては、労働基準法によりまして契約期間、賃金、その他、一定の労働条件は書面で明示する必要がありまして、これは罰則がございます。
それから、更新の有無、判断基準につきましては、これは大臣告示によりまして明示する必要があるとしていまして、違反に対しましては助言・指導の対象になるということでございます。
それから、労働契約におきましては、契約の中身についてはできる限り書面で確認してくださいということが書かれております。
ドイツでございますが、ドイツは契約期間の設定については、有効となるためには書面性を必要とするとなっております。それから、契約期間を含む主要な労働条件につきましては、遅くとも労働関係開始の1か月後までに書面で交付する必要があるということで、ドイツにおきましてはある程度の幅が認められていると。 仮に期間設定が無効になった場合につきましては、この有期契約は期間の定めなく締結されたものとみなされるとされております。
フランスでございます。フランスも同様、有期契約は必ず書面で締結しなければならないとなっております。それから、契約書には利用事由、契約満了日、更新条項、不確定期限の場合は最低期間等を記載する必要がございます。
契約書はドイツと異なりまして、採用日から2日の就業日以内に交付する必要があるとなっております。書面の欠如、あるいは利用事由、必要的記載事項の記載がない場合は無期とみなされるほか、賠償金の支払い義務があったり、あるいはここについては刑事制裁もございます。
イギリスでございます。イギリスは1か月以上勤続している被用者には雇用継続期間等につきまして、雇用開始の2か月以内に雇用条件明細書で交付する必要があるとなっております。
この不交付、あるいは誤った内容の交付の場合につきましては、被用者は雇用審判所に対して雇用条件の特定、または修正を求めることができるということが認められております。
アメリカでございます。これは詐欺防止法等で書かれているということでございますが、多くの州では1年を超える有期契約を締結する場合、書面によらなければ当事者は法的拘束力を否定されるというものがあるということでございます。
裏にまいりまして、今度は均衡待遇、あるいは正社員転換ということで比較表をつくったものでございます。ちょっと字が小さくて恐縮でございますが、ここで御留意いただきたいのは、ちょっと見出しを付けておりますけれども、均衡待遇については我が国に独特の制度で、諸外国については不利益取扱いの禁止という形になってきているということでございます。
我が国につきましては、先ほど説明いたしましたとおり、短時間労働者について均衡待遇を推進というものが書かれているということでございます。
ドイツにつきましては、不利益取扱いの禁止ということでございまして、客観的な理由が異なる取扱いを正当化する場合を除きまして、比較可能な無期の方よりも不利に取り扱われてはならないと。
一定の算定期間について支給される賃金等については、少なくとも就業期間の割合に応じて保障しなければならないと。仮に一定の雇用条件が就業期間に係っている場合は、その異なる取扱いが客観的に正当化される場合を除いて、無期の方と同じ期間を考慮してくださいとなっております。
フランスにつきましても同じでございまして、比較可能な条件にある無期の方と同じ権利・義務を享受するということになっております。
それから、報酬につきましては同等の格付けで同じ職務に従事する無期の方が試用期間後に受け取る報酬額を下回ってはならないということで、ここは違反に対して刑事制裁が書かれております。
労働条件については、勤続年数要件がある場合は異なる待遇も許容されることがあるとされております。
イギリスでございますが、イギリスも同様でございまして、比較対象となる被用者と比較して不利に扱われない権利を有するとなっております。それから、勤続期間の資格要件についても不利な取扱いを受けない事項としまして規則に明示的に書かれております。
それから、報酬についても比例原則が適用されることになっております。
それから、不利な扱いを受けていると考えている有期の方は使用者に対しまして、その扱いの理由を示した書面の交付を求めることができるとなっております。
韓国でございますが、韓国もヨーロッパと同様でございまして、期間労働者であることを理由に類似の無期の労働者の方と比べて差別的取扱いをしてはならないということになっております。 デンマークもEU指令が適用される国でございまして、比較可能な無期の方よりも不利になってはならないとなっておりまして、報酬の期間比例の原則、あるいは勤続年数を資格とする場合は同じにしてくださいということが書かれております。
右側にまいりまして、正社員転換の推進等でございます。「正社員転換推進」とあるのは我が国に独特でございまして、これも短時間労働者についてパート法に書いてございまして、事業主は通常の労働者への転換を推進するために、通常の労働者に係る求人情報をその雇用する短時間労働者に周知しなければならない。あるいは社内公募の機会提供、あるいは通常の労働者への転換試験の整備等の措置を講じなければならないという措置義務の規定が書かれております。
ドイツについては正社員ではなくて、あえて無期契約の転換の推進策と整理をさせていただきましたけれども、期間の定めのない労働ポストに関する情報を提供しなければならないというものがございます。ドイツは違反に係る無期みなしの規定があるということは、前回の研究会で申し上げたところでございます。
フランスについてもドイツと同様でございまして、ただ、ここは無期のポスト、その職のリストを提供する措置が存在する場合は、有期の方についても通知しなければならないというルール、平等取扱いの規定がございます。違反に係る無期みなしがあるということはドイツと一緒でございます。
イギリスでございますが、イギリスについてもやはりその期間の定めのない雇用契約の職を得る機会について無期の方との平等取扱いの義務があります。それから、違反に係る無期みなしは締結事由ではなくて、上限を超した場合に原則的に無期となるというものがございます。
韓国でございます。韓国はどちらかというと我が国に近い規定でございますけれども、期間の定めのない労働契約を締結して新たに労働者を雇用する場合、当該事業、または事業場の同種、
または類似業務に従事する期間制労働者を優先的に雇用するように努めなければならないという規定がございます。それから、違反に係る無期みなしがやはり韓国もございまして、2年を超えた有期契約は無期とみなされるというものがございます。
デンマークでございますが、やはりデンマークも有期契約の方につきまして常用機会の情報提供、ポストの情報提供がございます。それから、これはある意味、藤村先生の御指摘に近いのかもしれませんが、有期の方が技能やキャリア機会を改善し、職業的移動可能性を高めるために適当な訓練へのアクセスを容易にするものとするような規定がございます。それから、違反に係る無期みなしが判例法理でデンマークもあるところでございます。
それから、資料4-4を御覧いただきたいと思います。今回の論点に参考になりそうな裁判例を幾つか事務局でピックアップしたものでございます。おめくりいただきまして、2ページを御覧いただきたいと思います。契約締結時の期間の定めの明示に関する裁判例を3つほど紹介しております。
まず、ソニー長崎事件がございます。これは雇用契約書がなかったというものでございますが、これは募集広告に雇用期間が書かれていた、あるいは使用者の方が一方的に送ってくる採用通知書の内容などから、雇用契約には書いていませんでしたが、期間の定めのある契約であると判断されたものでございます。
次は愛徳姉妹会事件でございます。これは中途採用者につきまして求人票には雇用期間の欄に記載がなかった。それで定年が60歳であることは書いてあった。この労働者の方は他企業の内定を断って応募してきた等を勘案しまして、特段の事情がない限り、この求人票の内容が雇用契約の内容となり、契約書には1年間と書いてありましたが、求人票によって応募したものであることから期間の定めのない職員であることを内容として成立されたとしたものでございます。
これは実はこの後、本訴がございまして、その本訴の方ではこの契約書に1年と書いてあったのだから、これは期間の定めがあるという判決が出されております。
それから、日欧産業協力センター事件でございます。これは1年間の期間の定めのある労働契約である初期契約の締結後、6年間、手続は全くなかったということです。期間の定めのあることを確認する手続もなかったということですけれども、この初期契約を締結したときの説明内容、あるいはこの契約の記載内容が、これは申し出がなければ自動的に更新するようなことが書いてあった。あるいは勤務内容等から判断すると、初期契約の契約更新後の契約についても、1年の期間の定めがあるものと了解されていたものと考えるのが最も自然であり、合理的であるとして、第一審判決は期間の定めのない契約として存続することになりましたが、それではないということになったというものでございます。
それから、均衡関係でございます。これはまず1つ目は非常に有名な丸子警報器事件というものでございますが、同一価値労働・同一賃金の原則が労働関係を規律する一般的な法規範として存在しているとは認められないと。
しかし、同原則の基礎にある均等待遇の理念は賃金格差の違法性判断において一つの重要な判断要素として考慮されるべきものであり、原告ら女性臨時社員と同じライン作業に従事する女性正社員について、従事する職種、作業の内容、勤務時間、日数、並びにいわゆるQC活動への関与などがすべて同種であることなど、労働内容が外形面でも帰属意識という内面においても同一であるにもかかわらず、原告らの賃金が同じ勤続年数の女性正社員の8割以下となっているときは許容される賃金格差の範囲を明らかに超え、その限度において使用者の裁量が公序良俗違反になるとされたものでございます。
次も有名な日本郵便逓送事件でございますが、こちらの方は同一労働・同一賃金の原則が一般的な法規範として存在しているとは言いがたいとされたものでございまして、一般的に期間雇用の臨時従業員について、これを正社員と異なる賃金体系によって雇用することは正社員と同様の労働を求める場合であっても、契約の自由の範疇であるということで何ら違法ではないとしたものでございます。
それから、次の2つは比較的新しいものを紹介いたしたいと思います。
1つ目が京都市女性協会事件でございます。これによりますと、憲法14条、労働基準法4条の根底にある均等待遇の理念、あるいはILO100号条約等が締結されているもとでの国際情勢及び労働契約法等が制定されたことを考慮すると、パートタイム労働法8条、これは就業の実態が同じ場合に差別的取扱いは禁止と書いてありますが、パートタイム労働法8条に反していること、ないし同一価値労働であることが明らかであることが明らかに認められるのに、労働に対する賃金が相応の水準に達していないことが明らかであり、かつその差額が具体的に認定し得る特段の事情がある場合には、その当該賃金処遇が均衡処遇の原則に対して不法行為を構成する余地があるとされたものでございます。
実際はどうであったかというのが次のパラグラフでございまして、1年の有期契約を更新していた嘱託職員、これは短時間の方でしたが、主体的に責任を持って業務を遂行し、質の高い業務を行っていたことは認められた。ただ、業務が限定されていた。あるいは有期で職務ローテーションの対象ではなかったということで、人材活用の仕組みが異なっていたということからすると、原告はパート法の8条が適用されるような通常の労働者と同視すべき短時間労働者に該当するとは認めがたく、ほかにどのような賃金にするべきか判断すべき事実がなかったので、訴えが退けられたということでございます。
それから、学校法人立教女学院事件でございますが、これも佐藤先生から御指摘のあったようなことが書かれておりまして、いまだ我が国は長期雇用が予定されている労働者と短期雇用が予定されている有期雇用労働者との間に単純な同一労働・同一賃金の原則が適応されることが公序、公の秩序になっているとは言えないということで、同一労働の賃金原則はあるかもしれないが、この2つには単純には適用されないのではないかということが指摘されたということでございます。
次のいすゞ自動車事件、これも新しいものでございます。これはなぜ紹介するかといいますと、労働契約法第3条の均衡処遇のことが引用されたということで紹介させていただくものでございます。
これは事案としましては、有期の方が初め、中途解雇されたのですが、それが撤回されて、その残りの期間を休業にするということで休業手当60%を支給されたものでございますが、この休業手当についても使用者の一方的決定によって40%を不支給とすることが重大な不利益であり、包括的、一律に長期間にわたり休業させることの合理性は非常に高度なものを要するものとされたというものでございます。
「さらに」のところが労働契約法から引用されたところでございまして、正社員の方はこういう長期の休業にはなっていないということで、この差別的取扱いについては労働契約法の基本理念の規定中に均衡処遇の概念、理念が盛り込まれていることを併せて考慮すると、その差別的取扱いをもって直ちに合理性を否定することはしないとしても、少なくとも、そのような差別の有無、程度、内容は合理性の判断における重要な考慮要素になるとされたというものでございます。
次に職種の限定に関する裁判例。今回、職種限定正社員のようなものがちょっと論点に挙がっておりますので、ちょっと挙げたものでございます。
東京海上日動火災保険事件でございますが、これは損害保険の契約募集等に従事する外勤の正規従業員、正社員の方ですが、その労働契約につきまして業務内容、勤務形態及び給与体系が、正社員はほかに内勤職員がおりましたが、その内勤の方とは異なる職種としての特殊性、及び独立性が存在しまして、そのため使用者は初めは有期として職種及び勤務地を限定した労働者を募集して、その後、正社員に登用したのですが、その後もその限定した合意は黙示的に引き継がれているとされたものでございます。
実際にこういうふうに職種限定の合意を伴う労働契約があるわけですが、採用経緯と当該職種の内容、あるいは職種変更の必要性の有無、程度、変更後の業務内容の相当性、配転による労働者の不利益の有無、程度、代替措置等を考慮しますと、他職種への配転を命ずるについて正当な理由があるとの特段の事情が認められる場合には、職種限定ではありましたが、当該職種を別の職種への配転を有効と認めることが相当であるとされたものでございます。
これは実際は不利益は非常に大きいということで、この配転も認められなかったということでございます。ちょっと参考までにこういうものも紹介させていただいております。
資料4-5はこれまでの提言を紹介させていただいております。
まず、17年の研究会報告でございます。この下の方のアンダーラインを御覧いただきたいと思います。下の3行です。このときも有期と正社員の均等待遇につきましては雇用形態にかかわらず、その就業の実態に応じた均等待遇が図られるべきことを明らかにすることが適当であるとされたところでございます。
おめくりいただきまして、今度は契約の書面における明示でございます。1パラグラフ目の下線のところを御覧いただきますと、使用者が契約期間を書面で明示しなかったときの労働契約の法的性質については、期間の定めのない契約であるとみなすことが適当であるということを、このとき、御提案されております。
それから、(2)のところでございます。
これも1パラグラフの傍線のところを御覧いただきますと、更新の可能性の有無や更新の基準の明示の手続を法律上必要とすることとし、使用者がこれを履行したことを雇止めの有効性の判断に当たっての考慮要素とすることが適当であるということが、この際、言われております。
ちょっと1ページ飛ばしていただきまして、4ページでございます。
これは「労働市場改革専門委員会第4次報告」でございます。ここでは幾つかの壁の一つとして働き方の壁を是正する方策が提言されております。その中の(3)のところに正社員と非正社員の中間的な働き方が提案されております。
これもアンダーラインのところを御覧いただきますと、この有期で契約更新を繰り返す非正社員の雇用の安定を図るために短期雇用と長期雇用の中間に位置する中間的な雇用契約についてルールを設けることが有効となっておりまして、具体的には、期間の定めのある有期契約と契約期間に定めのない雇用契約の中間に業務や職場・事業所を限定した契約期間に定めのない雇用契約という選択肢を設けることが適当ということを御提案いただいているものでございます。
それから、最後、資料4-6は今回の論点に関わる参照条文を付けております。
ちょっと説明が長くなりましたが、私からの説明は以上でございます。
○鎌田座長 ありがとうございます。それでは、これから御議論をいただきたいのですが、まず、前回の議論の残りがございまして、それは何かといいますと、1回の契約期間の上限についてということで、資料でいいますと資料2の2ページ目の真ん中辺、3、「1回の契約期間の上限」という論点がちょっと残っておりましたので、まず、これについて先生方に御議論いただきたいと思います。いかがでしょうか。
○佐藤委員 よろしいですか。
○鎌田座長 どうぞ。
○佐藤委員 これはどうすべきかというのは早急には言えませんが、考えなければならない要素として2つあるのではないかと。やや相矛盾しますが、一つは使用者側から見たときに非常に市場環境が不確実性、不透明性が高まっている中で、何をどれだけつくったらいいのかということの判断が非常に難しくなってきているということは、よく指摘されているところです。 そういうところから考えたときには、通常、契約期間を短くして、そしてその契約をして雇用するのが合理的だと考えるという考え方が1つあると思います。
もう一つはそれとちょっと違うのですが、働く方から見たときに、不透明性の高い状況の中で短期で契約を区切って断続的にやるという働き方は、将来展望が見えない。それから、また仕事に対するコミットメントということから言っても、これは組織心理学などの研究ではそういう不透明性が高くて断続的な期間のもとで仕事をさせるのは、そうでない人たちよりもコミットメントやモラルにおいて問題があるという知見もあります。
したがって、一方で合理性が、短期で、ここの文脈で言うと期間を短くするか、長くするかということについて言いますと、短くするのが合理的だという考え方と長くした方がよいという考え方が共存しているのではないかという点があるのではないかということです。
○鎌田座長 よろしいですか。
○佐藤委員 はい。
○鎌田座長 ちょっと基本的なことをお聞きします。労基法の137条、「当分の間の措置として」ということですが、この当分の間の措置として、ある種、片面的規定になっているわけですけど、その理由を少し御説明いただけますか。
○富田調査官 これは条文を御覧いただいた方がわかりやすいかと思います。恐らく第1回の資料4です。お手元にあると思いますけれども、第1回の資料4のところに労働基準法の引用をしておりまして、ここの附則第137条が14条の下に書かれております。
ここで「期間の定めのある労働契約を締結した労働者は労働基準法の一部を改正する法律の附則第3条に規定する措置が講じられる前の間」ということで、民法628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以降においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができるということでございまして、これは「附則の第3条」と書いておりますが、国会修正で入ったものでございまして、この「当分の間」はこの附則第3条にありますこの法律の施行後3年を経過した場合において、この法律による改正後の労働基準法第14条の規定についてその施行の状況を勘案しつつ、検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするということで、今はまさしくこの14条の施行状況等を踏まえまして御議論いただいているわけでございますので、「当分の間」はこの14条の検討とセットであるという感じかなと考えております。
○鎌田座長 ありがとうございます。私の方から少し聞きたいことは、事務局にお答えいただければと思いますが、契約ですので、期間を定めて、その間、労使ともに期間内には拘束されるということはまさにその契約の原則、もっとわかりやすい言い方をすれば、期間を定めて、その間、就労するということはその間の他の転職機会についてのリスクを契約の中で合意によって分配する、適正に配分するということが大原則だと思うのです。
ところが、この規定はいわゆる片面になっていまして、その辺のところ、契約論からいうとその辺が恐らく労働者保護の観点から片面化しているということだと思うのですが、それはいわば労働者にとってその拘束性が1年以上を超えた場合には、少しその保護から言って問題がある。こういうことなわけですね。
○富田調査官 前回の15年の改正はこの論点にも書いたとおり、原則1年から3年に延長したということで、このときに議論になりましたのは常用代替が進むのではないかとか、あるいは若年定年制がたくさん出てくるのではないかということでございます。
したがいまして、この1年を3年に延ばすこと自体がかなり議論になっていた。その当時の契約期間は1年だったわけです。ですから、それを議論がまだ詰まっていないのに3年にするということで、そこはやはりその当時の1年という原則を維持した上で議論を先に延ばしてやろうということで、この1年という期間は恐らく民法の原則に従って、その両当事者の拘束性が維持されたわけでございますが、それを超える部分については労働者に少し有利なものになっているのではないかと理解しております。
○鎌田座長 なるほど。そうすると、その常用代替の防止などの雇用システムの在り方に関する政策的な議論、政策的な目的があって、その1つの流れの中でこういう片面的な規定になっているということですね。
ただ、それはその常用代替防止を含めて、そういった政策的な課題は単にここだけで解決するわけではなくて、つまり、その期間の定めのある労働契約についての退職の自由をどう保障するかということだけにとどまらず、全体で考えていくことだろうと思います。
もう一つ、しかし、期間を定めることが契約上、両当事者に一定の拘束性を持つというのは契約法から言って、非常に重要なことでありまして、そういったことを原則的に考えておくという立場も必要ではないかと思います。
○荒木委員 2003年改正のときは、審議会では上限1年を3年に上げようと。そのときの考え方は上限1年までということであれば、そもそも、例えば3年使いたいという場合でも1年契約を2回更新しなければいけない。つまり、結局、短期契約になってしまう。
労使双方に一定の期間を定めた雇用関係を設定するニーズがあるのであれば、むしろ短期契約と長期契約の間の中期雇用を認めた方が有期契約の雇用自体の質も上がるのではないか。そういう議論で1年から3年に上げるという審議会での結論になったと記憶しております。
これが国会の修正で1年を過ぎたらいつでも辞めることができることになりました。これは国会の意思でありますので、そういう審議会と異なる意思決定がなされたということだと思います。
ただ、国会修正でありましたので、余り法的には詰めていないままに立法された結果、無期契約、正社員であっても、2週間の予告を置かないと雇用関係を解消できないのですが、この137条はいつでも退職することができるということで、無期契約労働者と比べてもちょっと均衡がとれていない点があります。
それから、3年の通常の有期契約についてのみこういう解約、労働者に片面的な解約自由を与えていますが、他方で5年まで上限で決められている専門能力のある有期契約については対処はされておりませんが、それはそれで平仄が合っているのかといった問題もあります。
もしこれを維持するのであれば、そういう点についてどうするのかということを考えなければいけないと思います。
もう一つ、この137条が国会修正で入った結果、審議会での中期雇用、すなわち労使ともに3年間、雇用関係が存続するということを前提に有期契約がより質の高い契約として使われるかどうか、そうなるとかならないとか、いろんな議論がありましたが、それがこの修正によって、結局、労働者はいつでも辞められるということですから、中期雇用自体は導入されなかった。
つまり、中期雇用としての活用が現行法制でどうなるかということは、実は試して検証することができない状況のまま、今日まで来ている。そういう状況かなと思っております。
○鎌田座長 ありがとうございます。はい、どうぞ。
○奥田委員 今、荒木先生の方から検証の問題をおっしゃったのですが、今回のヒアリングとか実態調査の結果を踏まえてどう考えていくかということで、この研究会が設定された目的の1つでもあったと思いますが、これをどう考えるかというときに、やはり前提として、例えばこれまでに出てきた統計であるとか、そういうものからしますと、この2003年に3年契約が結べるようになったことによって、その3年契約が増えたのかどうか、そういうことが必ずしも出てきていないと思うのです。
ですから、初回のときにも一度発言をさせていただきましたが、そのときの統計でも2003年以降に3年契約が増えたかどうかはわからない統計でしたし、その点でいいますと、2003年の法改正をどう評価するか、その根拠となる資料といいますか、そういうものがはっきりと明示されていないとは思っています。今、おっしゃった検証という点と同じだと思います。
この間のヒアリング等で2003年以降でも契約自体は必ずしも1年から3年に延ばしたわけではなくて、契約自体は1年で結ばれているということも出てきていたと思いますので、その契約期間が延びることの利用がもしかしたらそれほどないのかもしれませんし、逆に、今、137条の話が出てきましたように、この規定があるから3年契約が結ばれていないのかもしれませんし、その辺りの判断をする材料が、検証をするための材料が必ずしもないのではないかとも思いますので、若干、判断しかねるという点があります。
○鎌田座長 この点については事務局の方で、いわばその判断、検証できるようなデータがもしございましたら、御紹介いただければと思います。
○富田調査官 今回の実態調査におきましては、この契約期間のところは非常に重要な論点の1つと考えておりましたので、それを念頭に調査表もつくらせていただいたと考えておりまして、すぐにちょっと出てきませんが、例えば、今回、基準法の改正によりまして1年から3年に延びたから有期が増えているのかということを、実はこれは第6回の研究会資料を御覧いただきますと、ちょうど資料3の例えば17ページのところに、第10表があります。
この第10表の真ん中辺りに、基準法の改正により1回の契約期間の上限が1年から3年に延びたから有期を増やしているのですとお答えになった事業所は0.5%ということで、非常に少ないということがあろうかと思います。
それから、おめくりいただきまして、同じ資料ですが、19ページには1回当たりの契約期間が非常に延びているのかということをまとめた第12表がございます。これを御覧いただきましても、これをどう評価するかはちょっと私どもには直ちに判断しかねる部分がありますけれども、1年以内というところが非常に多い。
むしろ、17年に統計情報部の方で同じような調査をしておりますけれども、それと比較しても、そんなに1年を超えるような契約が増えているとは見えないということがありますので、こういったことをどのように評価するのかということがあるのではないかと考えております。
○鎌田座長 ありがとうございます。今、幾つか、データについての御指摘がありまして、このデータをどう読むかということを今すぐに御意見をいただくのも難しいのではないかと思いますので、後ほど、また次回、あるいは次々回の方でもし御発言があればそういうときに回していただきまして、今回、ちょっと本題の話し合いが、本題の議題にまだ入っておりませんので、この次の本日議論をする論点についての議論に進めさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「はい」と声あり)
○鎌田座長 はい。では、もしデータについて参考になるものがあれば、後日、事務局の方からも各先生の方にこの論点について提示をしていただければと思います。
それでは、もう時間がかなり押していますが、今日、本来の議題の方に議論を進めたいと思います。まず、第一の議題は「契約締結時の課題」でございまして、この点につきまして先生方、自由に御発言をお願いできればと思います。
大きく2つに分けまして、今、少し時間を使っていただいて、その後、「均衡待遇、正規労働者の転換」というもう一つの議題でまた時間をとろうということで考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
○奥田委員 いいですか。
○鎌田座長 はい、どうぞ。
○奥田委員 これは労働契約の研究会のときにも出ていたと思いますが、一番問題になる点というか、一番大きかった点は恐らく期間が明示されていないときに有期と考えるか、無期と考えるかという問題だと思います。
率直に申し上げて、契約期間の明示は罰則付きで義務付けられている内容でもありますし、そのことがなされていない場合に、全くの契約解釈でどちらもあり得るというのは少し考え方としては無理があるのではないか。これは率直な私の意見です。
つまり、契約期間を設けるかどうか自体が契約上の自由、当事者の自由だとしても、ただ、その契約期間を設けるのであれば、明示をするということは労基法上の義務でもありますので、そういうことから考えますと、例えばその期間の明示がされていない場合には、場合によってはみなし、無期のみなしであるとか、あるいはみなしとまでいかなくても推定であるとか、反証があり得る推定であるとか、そういうことは少なくとも十分あり得ると思います。それがもし望ましくないとすれば、どういう理由があるのかということを少し知りたいと思います。
○鎌田座長 今は御意見をいただいて。
○奥田委員 1つの意見です。
○鎌田座長 先生方の御意見を聞いて、もし先生方の御意見以外にこういう意見があるというなら、事務局にちょっと御紹介いただくという形にいたしましょう。そのほか、この点につきまして。今、奥田先生から問題提起がありましたが、この点に関してでも結構ですし、そのほかの点についても御意見をいただければと思います。
はい、どうぞ。
○荒木委員 今、奥田先生の指摘は非常にもっともで、私も同じですが、明示の意味、使用者の方が有期契約であることを何ら説明も、口頭でも言っていなければ、それは無期契約と解される。これは通常の解釈だろうと思います。
問題はその明示を書面によって行わなかった場合に、書面によって行うことを罰則付きで労基法は義務付けておりますが、その場合に、しかし口頭では有期だという合意があったという場合に、どう扱うか。これが難しいところで、諸外国ではその場合には無期契約とみなすというものが多いようであります。
労働契約法研究会もそういう提案をしたところでありますけれども、この点をそういうふうに踏み切るのかどうかというのが、一つ、議論をしなければいけない問題だと思います。
これはもし橋本先生が御存じであれば教えていただきたいのですが、ドイツも書面明示をしなければいけないのですが、この有期の書面明示は契約締結時でしょうか、それともドイツでは一般的に労働契約内容の書面明示は契約締結後1か月以内にすればよいとなっていると思いますが、有期については締結時でいいのか、それとも締結後1か月以内でいいのか、もし何か御存じであれば教えていただければと思います。
○橋本委員 済みません、ちょっとわからないのですが、先生の御指摘のとおり、有期の契約期間の設定は書面でなければ有効にならないという規定がパートタイム労働法・有期契約法の方にあり、他方で先生のおっしゃった労働条件明示のための法律が別にあって、そこでも期間設定は書面で明示しなければいけないとありまして、そちらの労働条件明示の方の法律、証明法という法律ですが、そこでは書面による明示は1か月以内でいいという規定なのです。
その両者の規定の関係がよくわからないのですが、ちょっとまだ調べておりません。申し訳ありません。
○荒木委員 例えば、イギリスでも、1か月以上勤続している被用者については2か月以内に雇用条件明細書を交付するということです。フランスは2就業日以内に交付ということで、書面で明示するというのをいつまでに、締結時に要求するのか、それとも一定期間内に明示するのかということも併せてその効果を考える必要があるのかなと考えているところです。
○奥田委員 よろしいですか。
○鎌田座長 はい、どうぞ。
○奥田委員 ちょっと言葉足らずでしたが、私も先ほどは書面での明示を前提に意見を言わせていただいたのですが、今、荒木先生がおっしゃったことで言いますと、書面化するかどうかというときに、書面化がされていないけれども、口頭では十分な期間合意がされているというときに、まず、それをどう評価するか。そういう御趣旨だと考えてよろしいですか。
例えば、書面化されていないときに無期としての推定はあり得るけれども、考え方としては、口頭で十分な期間説明がされていたことを反証としてとらえることもあり得るわけですよね。その辺りで違いが出てくるということですね。
○鎌田座長 荒木先生にお答えいただかなくても、よろしいのでしょうか。
○奥田委員 はい。今、確認をさせていただきましたので。
○藤村委員 よろしいですか。
○鎌田座長 はい、どうぞ。
○藤村委員 書面で労働条件を提示するというときに、期間を書かない理由、使用者側がなぜ書かないのかというところがわかれば、法律でどう対応するかというのもわかってくると思います。単に書くのを忘れたというのであれば、書いてくださいで済むと思うのです。
そうではなくて、もっと別の理由があって、その期間を書かないというのであれば、そこが何か争点になるような気がするのですが、現実には何か書かない特段の理由があるのでしょうか。
○荒木委員 基本的に日本の契約は書面化することは要求されておりませんので、合意してしまえばいいわけです。「諾成契約」といいますが、合意すればよい。口では合意していると。ですから、それで明示はされているかもしれない。
今、議論をしていたのは口で合意していても、書面化されていなかったら無期とみなしてしまっていいのか。そういう議論なのです。
ですから、中小企業ではそんなにきちんと契約書を作成していない。しかし、当人同士では有期ということでちゃんと合意をしていた。それを書面化されていなかったら、全部、無期とみなすということについては、それはもう大きな変革となるので、そこまで法規制をダイレクトにするかどうかということでいろいろ議論があるということだと思います。
○鎌田座長 はい、どうぞ。
○山川委員 労基法との関係でいいますと、労基法は労働条件の明示で書面をかなりの部分について必要として、強行法規ですから、当事者が合意しようがしまいが、それは明示しなければいけないということになります。
そうしますと、労基法違反が成立することはともかくとして、では書面は省略しましょうとか、あるいは書面はちょっと後にしましょうという合意をして、有期契約であることは明確に合意していた場合にまでみなしの効果が及ぶのかというと、やはり、ちょっと厳し過ぎるといえるかもしれない。
労働契約法研究会では確かにみなしということでしたが、もし、このような場合や、書面での明示を忘れたが有期契約とする明確な合意があった場合にも適用するのはちょっと厳しいとすれば、奥田先生が選択肢としてさっき言われたような推定という方法で対処するのも立法政策としてはあり得るのではないかと思います。
○鎌田座長 いいですか。私もこの問題をちょっと考えたときに、2つの見方があると思うのです。1つは先ほど奥田先生が冒頭におっしゃった、つまり、義務付けられているのにそれをやっていないから、ある種、民事制裁的に無期とみなすという考え方もあると思います。
もう一つは、どういう事情であるかよくわからないが、契約期間を定めていないということから、当事者の意思に沿って明確化を進めていく必要があるのではないか。そうした場合にはみなしではなくて、むしろ推定という形で、裁判を通じてでもいいですけど、当事者の真意を確定していくということ。
そうすると、推定という考え方はむしろフィットするわけです。要するにはっきりさせましょうと。ところが、そうではなくて、契約期間を定めていないということが、義務付けられているのに、それをしていないから制裁として無期になるのですという一種の威嚇を与える。これは違うと思うのです。
奥田先生が冒頭におっしゃった義務付けられて違反であるからということで無期みなしとおっしゃったのは、どちらかというと後の経緯からいくと推定とおっしゃったから、当事者の意思を確認するための1つの法的なツールとして考えているということなのかなと理解したのですが、どうでしょうか。
○奥田委員 例えば、これまでの裁判例を見た場合でも、有期か無期かが全くわからない状態で、それをいつから当事者がどうであったかというふうに認定をしているのがやはり多いと思うのです。
そうだとすると、私は義務付けられているのにやっていないとすれば、みなしという方法もあり得るし、そこまで言わなくても、少なくとも推定という方法はあるだろうという意味で申し上げたので、全くのその当事者意思の解釈でということではなく、そういう意味で言うと、若干、折衷的ということになりましょうか、推定ぐらいはやはりルール化をして、ただ、口頭での明確な確認があったり、そういうことを反証として認めることはあり得ることではないかという理解です。
○鎌田座長 私はそのみなしについてはここで議論をするつもりはありませんが、実は派遣のところでもこのみなしは大変な問題になっておりまして、この「労働者派遣の今後の在り方についての研究会」の中でも、みなしということで違法派遣があった場合の派遣先への雇用、直接雇用みなしということが議論になったときに、その研究会の中でいろいろ議論がありまして、これは違法な派遣に対する法的な、労働者を保護するための措置として考えられる手段として何があるかという議論の中で、実は4つの選択肢を考えたのです。
それは何かというと、まず第一はまさに直接雇用みなし。第二は派遣先による契約申込みなし。これもみなしです。そういう制度がある。ただし、この契約申込みなしの場合には労働者の意思にかかわりなく整理するということはありません。3番目に派遣先から労働契約の申込みの義務付け。契約申込義務を課すというやり方。4番目に行政による勧告という制度を考えていたわけです。
みなしという手段はかなり強烈な側面、強烈な効果がありまして、そういったものをとるか、あるいは今言ったような幾つかの効果の面での選択肢を議論したことがありまして、効果の面でも、どう考えるのかということは、是非、その辺も含めて考えていただくと私としてはありがたいと思っています。
ただ、これは今日すぐにその面で議論をしていただくという趣旨で言ったわけではなくて、紹介といいましょうか、派遣のところでみなしということで議論になっておりますので、御紹介をしたということであります。
先生方、あとは、ほかにございますか。はい、どうぞ。
○荒木委員 1点、付け加えますと、有期であることを明示しなかった、書面で明示しなかったことで無期とみなすのは1つの在り方ですが、もう一つ、有期契約の利用期間、更新回数、そちらを規制するということもあり得まして、その場合には一定期間、例えばドイツなら2年間、更新3回を超えた場合には、まさに無期契約とみなされるわけです。
そちらの規制もあるということも視野に入れながら、書面明示をどう位置づけるか。そこでもう一度考えるという在り方もあるかなと考えています。
○鎌田座長 今、契約期間だけが少し議論になっていますが、そのほかの締結時の事項についてはいかがでしょうか。
雇止めに関する基準、大臣告示ですけど、先ほど御紹介いただいたデータで見ますと、期間の定めについてはかなり達成率、遵守率は高い。資料4-2の1ページ目。これは事業所調査ですが、期間に関する明示の有無ということで、「明示している」が91.7%、それから更新の有無に関する明示の有無は82.9%、これはかなり高いように感じます。
更新の判断基準に関する明示の有無というところは62.2%で、やや低目です。これが低いと見るか、高いと見るかはなかなか微妙なところだと思いますが、こういうものをどう見ればいいのだろうか。確かに事業所としては更新の判断基準を明示するのはなかなか大変なところもあるかなという感じもします。
○山川委員 よろしいですか。
○鎌田座長 はい。
○山川委員 先ほどの労働基準法の明示と、例えばこちらの労働契約ルールとして明示するということでは、その効果という点でも随分意味が違うと思いまして、したがって、もし労働基準法の労働条件明示に付け加えるとすると、かなり重い効果が発生することになります。
契約ルールとしてでしたら、紛争防止のためには、判断基準の書き方はいろいろあるにしても、雇止めの効力判断に当たって考慮するという民事上の効果ですので、それを推進するということもあり得るのではないかと思います。
○鎌田座長 民事上の効果ということになると、やはり何らかの形で法律に組み込むという形になりますか。
○山川委員 そうですね。逆にもし法律に組み込むとしても、労働基準法ほどハードルは高くないのではないかと思います。そういう観点です。
○鎌田座長 そうですね。この論点につきましていかがでしょうか。後でまた触れていただいても結構ですが、次の論点に進めたいと思います。
次は均衡待遇、正社員転換の論点でございます。これについて自由に御発言をお願いしたいと思います。
○荒木委員 ちょっと確認をさせていただけますか。
○鎌田座長 はい。
○荒木委員 事務局に確認です。資料3-2で有期契約労働者に係る「均衡待遇確保対策」と「正社員転換推進対策」と書いてありますが、これは「仮に考えると」ということですか、それとも何か現行法でこういうふうに考えられているということですか。
後ほどの説明の中で「これは諸外国と日本の有期の均衡待遇と同じなのですが」という説明があったものですから、若干、混乱しました。確認をいただけますか。
○富田調査官 済みません。わかりづらくなりまして申し訳ございません。資料3-2はあくまでも現在のパートタイム労働法の均衡待遇の考え方を、ここは「有期」と書いていますので、有期に適用した場合にこうなるのではないかということを書いたということでございまして、現在、有期に関してこういう規定が適用されているわけではございませんので、そこはちょっと言葉、説明が悪かったとすると訂正をさせていただきたいと思います。
○荒木委員 ありがとうございました。そうしますと、これも確認ですが、例えば、今、資料3-1でパートタイム労働法における均衡待遇、これは一番広義、広い意味で使っていらっしゃるわけですね。すなわち、均衡待遇は恐らく2つに分かれていまして、一つは均等待遇、パート法8条の通常労働者と同視されるパートタイマーについては正社員と差別をしてはならないという規制。実は私はこれは諸外国の不利益取扱いと同じだと考えております。
それに対して、パート法の8条以外の部分は均等待遇ではなくて、均衡待遇でありまして、これについては全体的に配慮義務や努力義務にとどまっていて、強行的な規範ではない規制がなされている。そういう両方を含んだ意味で、ここでは「均衡待遇」という言葉を使われているという理解でよろしいでしょうか。
○富田調査官 はい。まさしく御指摘のとおりでございまして、言葉で補ったつもりではあったのですが、この資料3-1の裏に書いておりますとおり、通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者につきましては、このすべての待遇につきまして差別的取扱いをしてはならないということで、まさしく諸外国の法制と同じと。
ただし、範囲については大分、人材活用の仕組みもありますので狭くなるということ。あるいは行政指導、紛争解決援助制度が履行確保手段になっているということで、異なってくるということだろうと思います。
ただ、我が国の特徴としましては、職務の内容が異なるものにつきましても措置を講じなければならないということで特徴があるということを際立たせるために、こういうペーパーをつくらせていただいたということでございます。
○奥田委員 同じ資料の3-2ですが、一つは質問で、一つは疑問点です。私の理解では均等待遇とか均衡待遇とか平等取扱いとか、そういう問題と正社員転換は全然、質の違う問題だと思っていまして、正社員転換は非常に重要な1つの施策ではあると思いますが、均等待遇とか均衡待遇はどちらかというともっと原則的な問題なので、3-2でこれが比較されているのはなぜか。
それがちょっとよく趣旨がわからなかったのです。それが単純な質問です。
もう一点は、これは考え方の問題なのですが、そこの課題に示していただいているように、人事・賃金制度が異なっている正社員とそうでない人たちを均衡という形でどうとらえていくかということが非常に難しい問題だということは、重々、承知をしております。
それから、そういうことを事実、実態として考えていくというのも必要だとは思いますが、私の基本的な考え方は、先生方もいろいろかと思いますけれども、何か人事制度や賃金制度が前提にあって、そこから均衡とか均等を考えるよりも、均等待遇とか均衡処遇ということを考えるとすれば、原則として考えていって、まさにここに書いていただいているように、合理的理由があれば差があることについては全く差別でも何でもありませんので、そこに人事とか賃金制度とかそういうものが合理性があるかどうかという形で反映されてくるのではないかと思っておりますので、順序が違うのではないかという気がしたのです。
別にそういう御趣旨ではないということであればいいのですが、均等待遇、均衡処遇を考えた中で、合理性があるかどうかの範囲の中でそういう具体的な人事制度などが考えられていくべきではないかと思いますので、それはあくまでも意見として申し上げたいと思うので、前者の質問だけお願いいたします。
○富田調査官 この資料3-2を作成した趣旨は、まさしく奥田先生のおっしゃるとおり、均衡待遇と正社員転換は全く異なるものだと私どもは考えておりますけれども、中には均等待遇だけをすれば正社員転換は要らないのではないかという御意見もあるところでございます。
均衡待遇の中の一部の方につきましては、まさしく同じ就業実態にあれば同じ待遇にしなければならないとなっていまして、そうすると正社員転換など要らないでしょうという御議論があるわけです。
ただ、ここでクローズアップしたかったのは、仮に均等待遇にしたとしても、期間の定めがあること自体は変更されない、雇止め自体はなくならないということがあるので、それとは別に無期に転換するという法制度も、政策も必要という考え方もあるのではないかということで、あえてこの両者を並べて資料を作成したということが趣旨でございます。
○鎌田座長 奥田先生、よろしいですか。
○奥田委員 はい。
○鎌田座長 冒頭にこの均衡待遇を考える上で4タイプに分けております。そういったタイプ分けをした上でどう見ればいいのかという問題提起。それから、そもそも期間を短いものと無期のものとでいうと、やはり報酬、賃金をどう払うのかという心構えが違うのではないかという問題提起もありました。
こうしたことを含めまして、均衡待遇についてどう見ればいいのか、もし御意見をいただければありがたいと思います。
○山川委員 よろしいですか。
○鎌田座長 はい。
○山川委員 先ほどの荒木先生の御発言とも関係がありますが、資料3-1で均衡待遇で、ここにはある意味では現在の8条のようなものも、不利益取扱いの禁止に属すると思われるようなものも入るという御理解で、そうだと思いますけれども、そうすると、この両者は割と連続的な色彩があるような気がいたします。
先ほどの奥田先生のお話とも関係がありますが、現在のパートタイム労働法のスタイルは「通常の労働者と同視すべき者」をかなり厳格に、いろんな要件をかけて絞っていって、そうであれば、特に8条で言えば差別をしてはならないと、その要件をかなり特定して厳格化していくというシステムをとっている。
これに対して諸外国、欧州諸国の不利益取扱いの禁止はむしろ要件はすごく一般的な形でかけていって、先ほど奥田先生も言われましたように、その合理的な理由があれば別ですという形で、いわばその立証責任を転換するようなシステムになっている。
ということは、その要件が例えばA、B、Cとあったとすると、A、B、Cを全部課しているのは現在の8条のような均衡待遇の仕組みであると。これに対してA、B、C、そういうものをすべて合理的な理由の方に盛り込んで、「Aではない」「Bではない」「Cではない」のどれかを立証すればよいという形になっていますが、そうすると、その中間的なものがあって、例えばAという要件は課す、しかしBとCという要件はその合理的な理由の方に持っていくという形で、連続性のある制度設計も可能ではないかという感じがしています。
それをどうするかはまた別で、そこはまた措置義務形式とか、努力義務形式とか、法律の規制のかけ方も関係するものですから、なかなかポートフォリオ的に難しい面はありますが、いずれにしても、組合せは可能ではないかという点と、あと、正社員転換もちょっとよろしいですか。
○鎌田座長 どうぞ。
○山川委員 「正社員転換」という言葉の問題もあるような気がしますが、ハードルが高いというのがパートタイム労働法でも言われていることで、先ほどの労働市場専門委員会の話にも関わりますが、正社員転換の意味として、もし雇用の安定を中心に考えるのでしたら、特に有期契約の場合は有期、無期という点が1つのポイントで、無期契約への転換ということで、雇止めにより地位が非常に不安定になるということは一定程度、防止できるので、転換のハードルを下げていくためには「勤務地限定正社員」、あるいは「職種限定」と言われるような選択肢を加えることも考えられるのではないか。
そういうことで、ある程度、雇用安定という点に重心を置いた形で無期契約の転換の中で選択肢を広げていくという考え方もありうるのではないか、一足飛びに狭い意味での正社員への転換のみと必ずしも限定的に考えなくてもよいのではないかという感じもいたします。以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。
○藤村委員 よろしいですか。
○鎌田座長 どうぞ。
○藤村委員 人事管理を研究していると、そもそも企業はなぜ正社員を雇うのかという議論をするわけです。私の理解ではあらかじめ予測できない事態が、企業経営上、いろいろ起こり得る。それに対処するためには、やはりその企業の将来と自分の生活の安定とか繁栄を同一視してくれる従業員がいた方が、企業としてはやりやすい。それが正社員だろうと思います。
ですから、例えば場合によっては個人生活を一部食い込むような労働時間、例えば急に残業しなければいけないとか、そういうこともあり得るだろう。それには対応してもらわなければいけない。
均衡待遇といったときに、例えばそういう不確実な状態が毎日のように起こるのか、あるいは1年に1回ぐらいしか起こらないのかで、恐らく扱い方は違うだろうと思います。多くの企業は毎日のようにいろいろ、不確実。例えばお客様から夕方4時半ぐらいになって急に来てほしいと言われたと。うちの終業時間は5時半ですと。それを超えると残業になる。でも、そういうことには対応してもらわなければいけない。だから正社員が必要だ。こういう話になると思います。
正社員への転換を考えたときに、実は1960年代の初めぐらいまでの日本の地方の工場は、基本的には臨時工で雇って、一緒に働いている仲間からあの人はいいという評価をもらってから、本工になる。そういうのが割と普通でした。それが1960年代半ば以降、人手不足が非常に深刻になってきて、最初から正社員として雇わないと人が来てくれない。だから、採用は最初から正社員ということになったのです。
その後、いろんな変化があり、今、どちらかというと人手が余っている状況であれば、最初はいわゆる臨時工で入って、その中から正社員を雇っていく。例えば製造業の自動車の現場はそういうことを普通にやっています。その現場のリーダーから言わせると、高卒でよくわからない人を雇うよりは、そうやって半年ぐらい一緒に働いた人から正社員に上げてくれた方がやりやすいと。そういう声も上がっています。だから、現場としては実際の人事の施策としてはそれを無視できない。だから正社員に上がってくるという仕組みを持っているわけです。
ですから、正社員はそもそも何をしてもらう人かというところから考えていくと、この均衡待遇とか、正社員になる仕組みを用意するというのは、企業側の経営の実態からいうと非常に合理的であり、そこに余りにも制限をかけ過ぎると、かえって本来なら正社員になれる人がなれなくなってしまうとか、そういうふうになる可能性があるので、この辺りは曖昧にしておくのがいいのかなという感じがします。
○鎌田座長 普通の企業で正社員転換というのは、一応、就業規則か何かで定める、それとも慣行のような形でやっているのでしょうか。
○藤村委員 規則でやっているところもあるでしょうし、それはさまざまではないでしょうか。
○鎌田座長 さまざまですね。
○藤村委員 例えば、実際、これはトヨタ自動車の現場で聞いた話ですが、期間工で半年間の定めで入ってくる人たちの中に最初から正社員転換の仕組みを目指してくる人もいるわけです。そうではない人たちもいます。ですから、現場のリーダーは、最初、一人ずつ面接をする。
何を求めてこの期間工という働き方をしたいのかと。だから、一人ずつ聞いていくと実は自分は正社員になりたいと。そうであれば、正社員になるのは決して簡単ではないけれども、君がそこまで思うなら、これから半年間、そのように鍛えるからついてきなさいというふうにして、仕事の配分などを決めていく。
だから、それはそれで正社員になれるという制度を持っているということは、そういう意欲のある人たちを非正社員として、入り口はそうだけれども、入ってきてもらうという点ではいい制度で、今のところはちゃんと機能している制度だと思います。
○鎌田座長 そうしますと、法律などで正社員転換制度を設けましょうということをもし言ったとすると、そこは自然とコース分け人事のようになりますね。つまり、臨時社員の中でも正社員転換を予定する人として採用する、来てもらう。そうでない人。
そうすると、先生がさっきおっしゃったように、曖昧にしないとその部分がかなり硬直してしまうという側面もあるわけですね。
○藤村委員 そうですね。現実には例えば自分は別に正社員になりたくないと思って働き始めたけれども、いろんな事情で賃金をもっと稼げるような仕事にならなければいけなくなった。それで正社員転換制度があれば、そちらに乗っていきたいという人も現実にはいると思います。
○鎌田座長 わかりました。
○藤村委員 そういうものをうまく拾えるような仕組みが何か必要だと思います。
○鎌田座長 はい、どうぞ。
○荒木委員 最初に佐藤先生が御指摘になったように、有期契約労働者はいろいろいます。正社員同様職務型がいれば、軽易職務型もいれば、専門職型もいる。非常に多様な有期契約労働者がいるとすると、やはりその多様性に応じた規制をしないと、ある一つの人を見て、この人たちのみをターゲットに法律で規制してしまうと、ほかのタイプの人についてはむしろ適切ではないということになると思います。
例えばパート労働法は非常にユニークなアプローチをしまして、先ほどの通常労働者と同視される者については差別的取扱い禁止。つまり、均等待遇を要求してよい人については非常にかたい規制を行ったのです。
それ以外の、つまり同一労働を行っているとは必ずしも言えないような人たちについては、均衡処遇、均衡待遇を、これは配慮義務や努力義務を課し、しかし、それは非常にソフトな規制ですので、その実効性を担保するためにパート法13条で、なぜそういう処遇になっているのかを労働者から問われたらきちんと説明しなさいという規制をかけている。
つまり、ある強行的な規制、法的な効力で契約の内容を無効にしたり、あるいは一定の金銭請求権を与えたりするのではなくて、当事者にちゃんと交渉をさせて、妥当な労働条件に仕向ける。そういう行為規範を課していると言ってもいいと思いますが、そういうアプローチをしている。これは実態は多様である中での工夫された新しいアプローチとして注目していいことだと思います。
有期契約も同様にいろんなタイプの人がいるということになると、ある部分については確かに差別禁止を導入していいかもしれません。しかし、それですべて行うのは必ずしも妥当ではないという場合には、別のアプローチ、なぜそういう処遇になっているのかをきちんと説明させ、それで当事者の交渉のきっかけとする、そういうアプローチも考えられる。多様なアプローチを重層的に使っていくというのは恐らく藤村先生が言われたように、ある部分について、全部、法律でそれは禁止だとか、そういうことではない別のアプローチとして当事者の創意工夫をいい方向に向ける。そういうことにもなるかもしれないという気がいたしました。
○鎌田座長 ありがとうございます。あとはありませんでしょうか。
○橋本委員 前提の確認ですが、有期契約のパートで働いている方はたくさんいるわけで、その人にはパート法の規制がかかるので、現在、議論しているのはフルタイム有期ということで何か新しい規制を考える。前提の確認なのですが、そういうことでよろしいでしょうか。
○富田調査官 そういうことを念頭に、論点で書かせていただいたところです。
○鎌田座長 何か、それに付け加えるということではなくて。それでいいですか。
○橋本委員 はい。それで荒木先生や佐藤先生がおっしゃったとおり、タイプごとの規制は勿論、おっしゃるとおり必要かと思いますが、フルタイム有期でどういう方が、どういう類型が多いのかということもわかればいいのかなと思いました。
○富田調査官 ちょっと言葉が足りなかったかもしれません。論点に書かせていただきましたのは、パート法で一定程度、均衡待遇の確保とか、あるいは正社員転換の規定がありますが、ただ、パートタイム労働法はあくまでも時間が短いということに着目した均衡待遇、ないしは正社員転換でございますので、当研究会におきましては、勿論、有期という特徴に着目した均衡待遇というものも、もしあるのであれば御議論いただきたいと事務局としては考えております。
○鎌田座長 ほかに御発言はありませんでしょうか。今日は全体に関わったことでも結構ですが、よろしいですか。
それでは、一応、時間もちょうど予定の時間がまいりましたので、本日の議論はここまでとしたいと思います。
それでは、今後の日程について事務局から説明をお願いいたします。
○富田調査官 次回の日程でございますけれども、現在、まだ調整中でございますので、委員の皆様には改めて御連絡させていただきます。
○鎌田座長 それでは、以上をもちまして本日の研究会は終了させていただきます。貴重な御意見をありがとうございました。
(照会先)労働基準局総務課政策係(内線:5587)