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第5回有期労働契約研究会議事録
日時
平成21年7月31日(金) 17:00~20:00
場所
厚生労働省共用第8会議室(6F)
出席者
〈委員〉
阿部委員、奥田委員、鎌田委員、佐藤委員、橋本委員、藤村委員、山川委員
〈事務局〉
渡延労働基準局審議官
前田労働基準局総務課長
富田労働基準局勤労者生活部企画課調査官
青山労働基準局総務課労働契約企画室長
丸山労働基準局監督課中央労働基準監察監督官
〈報告者〉
学習院大学法学部教授 橋本 陽子 氏
京都府立大学公共政策学部准教授 奥田 香子 氏
専修大学法学部教授 有田 謙司 氏
独立行政法人労働政策研究・研修機構副主任研究員 池添 弘邦 氏
デンマーク大使館参事官領事 ベンツ・リンドブラッド 氏
独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員 呉 学殊 氏
議題
諸外国の法制及び実態について
議事
○鎌田座長 定刻を過ぎていますので、ただいまから、「第5回有期労働契約研究会」を開催したいと思います。お客様がお一人まだお見えになっていませんが、まもなくお出でになるかと思います。それから、阿部委員が少し遅れると聞いています。また、本日は、荒木委員がご欠席されると聞いています。
委員の皆様、今日、ご報告でお出でになった皆様、本当にご多忙のところ、ありがとうございます。では、第5回の研究会を開催したいと思いますが、事務局のメンバーが交替したと聞いていますので、事務局よりメンバーをご紹介いただきたいと思います。
○富田調査官 それでは、厚生労働省の人事異動が7月24日にありまして、メンバーが替わっていますので紹介します。まず、総務課長の前田です。総務課労働契約企画室長の青山です。監督課中央労働基準監察監督官の丸山です。私も実は、勤労者生活部企画課に異動になっていますが、引き続きこの研究会を担当させていただきます富田です。よろしくお願いいたします。以上です。
○鎌田座長 それでは、続きましてお配りした資料の確認をお願いします。表紙が第5回有期労働契約研究会議事次第と資料項目を載せています。次に、座席表です。次に資料1が有期契約労働者の割合(国際比較)です。資料2~7が諸外国の法制及び実態についてです。各先生から提示をされた資料です。本日は、諸外国の法制及び実態についてご報告をいただくことになっています。まず、事務局から「有期契約労働者の割合(国際比較)」について説明をいただき、次に、短いのですが、報告者の方から各15分程度でご説明をいただき、ご報告が終わった後に質疑をする形で進めたいと思いますので、よろしくお願いします。
では、本日の議題に入ります。まず、「有期契約労働者の割合(国際比較)」について、事務局で資料を用意していただいていますので、説明をお願いします。
○富田調査官 それでは、私のほうから資料No.1に基づいて、有期契約労働者の割合について簡単に説明したいと思います。本日、諸外国の有期契約労働法制について、あるいは実態について報告いただくのですが、横で並べたものがあるとわかりやすいと思い、これはJILPTで作成されているデータブックから抜粋したものですけれども、ご紹介します。
1枚目をご覧いただくと、テンポラリー労働者の割合についてで、一部派遣労働者が諸外国によっては入っていることもありますが、並ぶとこうなっているということです。日本が2007年で13.9%で、アメリカは2005年のデータになりますが4.2%と、少し日本よりも少ないという比率になっています。イギリスが5.8%、ドイツ、フランスでは、一部は法制が厳しい国ということも聞いてはいるのですが、比率は14.2%、13.7%といったようになっていて、本日その辺のことも聞かせていただければと思っています。本日、実はデンマークからもご報告いただきますが、ちょうど真ん中にデンマークがありまして、9.1%となっています。
次頁に、性別・年齢別に書いてあります。ここで、注目すべき点としては、日本は女性の比率が高いこと、諸外国については、ドイツ、フランスで若年層が非常に高く、ドイツで56.4%が24歳以下、フランスが49.1%というように、若年層で高いというのが特徴的だと思います。簡単ですが、本日の各先生方のご報告の参考になればと思い、説明しました。
○鎌田座長 はい、ありがとうございました。では、続きまして、ドイツの法制及び実態についてのご報告をお願いします。本日は、本研究会の委員をお務めいただいている、学習院大学法学部、橋本陽子先生よりご説明をいただきます。それでは、橋本先生、よろしくお願いします。
○橋本委員 ドイツの有期労働契約法制について、レジュメとパートタイム労働・有期労働契約法の条文に沿って、簡単に説明します。
1.概観ですが、ここでは参考文献に挙げた、いくつかの文献から得られた最近のドイツの有期労働契約の実態をご紹介したいと思います。レジュメには1990年度後半~2003年と書きましたが、2004年度までの統計はあったので、2004年と訂正しますが、2004年における労働者に占める有期雇用労働者の割合は、先ほど事務局から報告のあったデータより低く出ているのですが、この差はどこにあるのか把握できないのですけれども、西側で大体約5%~7%、東側で約10%~13%という数字が出ています。東側については、雇用助成措置による雇用が多いことも指摘されています。雇用助成措置に基づく有期契約を含めると、ドイツ全体では有期契約の割合は9%、雇用助成措置による雇用を除くと6%です。雇用助成措置による雇用を除けば東西で割合は変わりません。年度によって、1990年度後半~2003年の間で、増えたり減ったり若干の変動があるのですけれども、この変動は景気の動向によると理解されます。
全体的な傾向について、文献によって有期雇用の割合が一定しているという評価と、少しずつは増えているのだという評価と、ニュアンスが分かれています。後で簡単に説明しますが、1980年代後半以降、有期労働契約法制が数回にわたって緩和されていますが、これらの規制緩和によって有期雇用が増大したのかどうかという点については、規制緩和による効果がなかったと認識されているようです。
また、有期雇用の活用は、公共部門で多いことが指摘されています。次に多い部門は、社会的サービス部門という、医療、福祉、教育、NPOです。公共部門で多い理由として、正規職員の雇用が極めて安定しているので、柔軟な労働力として有期雇用が活用されているのではないか、という説明がありました。
民間部門では、大企業で多いことが指摘されています。その理由としては、小規模事業所には解雇制限法が適用されないので、有期雇用を活用しなくても柔軟な労働力の活用ができるという指摘がありましたが、解雇制限法の適用除外となる事業所が、従業員5人以下という極めて小規模の事業所ですので、これだけで大企業で有期雇用の活用が多いことが説明できるのかどうか、疑問を感じています。
有期雇用労働者の特徴としては、職業資格、または教育程度が低いものと高いものと二極化しており、低いものと高いものに有期雇用が多いということが指摘されています。有期雇用労働者の処遇についてですが、詳細はよくわからないのですが、賃金格差について、期間の定めのない労働者との賃金格差が時給に直すと、0.5~1ユーロというデータに接しました。産業別の労働協約により、資格、職種に応じた賃金制度が確立しているドイツでも、勤続年数に応じて上昇する賃金部分がありますので、有期契約労働者はこの点では不利なので、時給0.5~1ユーロの格差では小さすぎるようにかんじましたが、他のデータは同様の調査に接しられなかったので、詳細はわかりません。また、興味深いデータとしては、有期雇用労働者のうち、3年後に期間の定めのない雇用に移行している割合が3分の
2と、高い割合に上るというデータがありました。
次に、法規制の内容について見ていきたいと思います。ドイツで有期労働契約を規制する法律は「パートタイム労働・有期労働契約法(TzBfG)」ですが、その他に特別法として、「学問有期契約法」、継続訓練中の医師との有期労働契約に関する法律があります。直訳で恐縮ですが、「学問有期契約法」は、以前は大学大綱法に規制がありました。大学などの研究機関で博士号や教授資格号を目指す研究者のための有期契約の規制です。後者の医師の契約は、専門医の資格を得るまでの医師の有期契約で、これら2つの分野では有期契約が標準ということで認められています。ここでは、パートタイム労働・有期労働契約法に限定しますが、この法律は判例法理の立法化及びEC有期労働契約指令1990/70号の国内実施法として2000年末に制定されました。
以下事務局から提示していただいた事項について、簡単に内容を見ていきたいと思います。
(1)契約期間、更新回数や期間の制限についてですが、これについては14条2項と2a項、3項という規制がこれに当たると思うのですが、「客観的な理由」すなわち「正当事由」を必要としない有期契約について規制がありますが、これは2年を上限として、3回まで更新が可能という規制がパートタイム労働・有期労働契約法14条2項1文です。14条2項2文では、この正当事由を必要としない有期契約は、労働者が使用者と以前に一度でも雇用契約関係にあった場合には、許容されないと定めています。これも直訳なのですが、これは連結の禁止と呼ばれる原則で、期間の定めのない雇用関係を有期雇用へと切り換えることを防止するために、このような規定があると言われています。
この正当事由を必要としない有期契約について、上限と更新回数の制限がありますが、この沿革は1985年の「就業促進法」に遡ります。現在は、パートタイム労働・有期労働契約法に規制されています。14条2a項と3項は、2002年と2003年に導入されたものですが、新規開設企業と中高年労働者について、正当事由を必要としない労働契約の期間設定の要件を、更に緩和したものであります。
(2)契約締結事由の制限についてですが、14条1項1文では、労働契約の期限設定には「客観的な事由」すなわち「正当事由」が必要であると定められており、正当事由が次の14条1項2文で列挙されています。紹介の順番が逆になりましたが、この正当事由が必要だという、14条1項が原則であって、先に述べた正当事由を必要としない有期契約という14条2項は、1項の例外と位置づけられています。この、原則である14条1項ですが、1960年連邦労働裁判所の判例以来、多くの蓄積を有する判例法理を明文化したものであります。この、1960年10月12日判決は、客観的な理由を欠く有期契約の反復更新、これは連鎖労働契約と呼ばれていますが、これは、解雇制限法の潜脱であって、最後の有期契約は無効となり、期間の定めのない労働契約となると述べたものです。それ以降多くの判例がありますが、14条1項2文に挙げる正当事由は、この判例で認められてきた主な事由を挙げたものと理解されています。ただ、これは限定列挙ではない、例示列挙だと解されています。
(3)雇止め規制ですが、いまご説明した裁判所による正当事由の有無の審査は、日本法での雇止めの判例法理にほぼ対応するといっていいと考えられます。しばしば、締結事由を法律で規制することを「入口規制」、雇止め法理を「出口規制」と区別して呼ぶこともありますけれども、もし、ドイツを入口規制と解するのであれば、全然違う、ややミスリーディングではないかと考えます。ドイツでも何度も反復更新された有期契約が、更新されずに雇用契約関係が終了した場合に紛争となって裁判所に行くのであって、いわば出口で争われるので、裁判所が最後の有期契約の締結に正当事由があるかどうかを審査するということになり、その判断方法は、我が国の裁判所の雇止めの判断とよく似ていると言えると思います。
(4)差別的取扱いの禁止ですが、これは4条2項で、有期期間設定を理由とする不利益取扱いが禁止されています。これは、上述したEC指令を立法、国内法化したものであります。この規定に関する事例はあまり多くないのですが、若干事例を挙げてみます。
最初の2003年12月11日判決というのは、一定の付加手当の支給を有期雇用労働者に認めないことが差別だとされたものです。この付加手当というのは、郵便業の協約で定められていた付加手当で、ある基準日に在籍していた、期限の定めなく雇用されている労働者に対して支払われていたというもので、有期労働者は排除していたというものですが、連邦労働裁判所は、過去の勤続に対する褒賞としての性格を有するのであれば、有期雇用労働者にも比例的に付与されなければならない、と述べています。このポストの協約の付加手当を巡る事例が何件かあり、それ以外は差別禁止に関する事例はほとんどないのですが、何件か挙げておきました。
次の2007年12月19日判決は、8月25日から翌年7月22日までという有期契約で、合わせて3年ぐらい勤務した学校の先生なのですが、夏休み期間が契約期間になってないのですね。夏休み期間は失業手当を受けていたらしいのですが、正規雇用の教員と比べると、同じく夏休みで授業がないのに、有給で勤務できる正規雇用職員と比較して、自分の扱いが差別だと争った事案です。これに対して連邦労働裁判所は、差別ではないと言ったのですが、正規の教員は、授業がなくても夏休み中でも会議などの労働義務を負っていたのだということで、そもそも夏休み期間中は労働契約にない原告とは比較され得ないということを言っています。
次の事案が、2008年11月27日の判決でありますけれども、これは市の臨時職員ですが、2002年8月19日から2005年11月7日までの有期契約に基づいて勤務した市の職員が、そこで一旦11月7日で終了したのですが、また少し置いて、2005年12月12日に再雇用されたのですが、その再雇用は新規雇用と扱われたために、この時期に公勤務協約が大幅に改定されて、この原告は新規雇用ということで、新しい協約が適用されたのですが、もし、ずっと勤務されていたのであれば移行協約、経過的に適用される協約が適用されるので、賃金がより高くもらえたはずだったわけです。ということで、これが差別だと争ったのですけれども、結果として、連邦労働裁判所は主張を認めなかったという事案です。労働契約の期間設定を理由とする不利益取扱いではなくて、移行協約の適用対象者の規定は、あくまで中断なく労働関係が存続したことが適用のポイントであって、この時期中断してしまった原告は適用対象にならないという判断が出されています。
やや細かい話になりますが、この事件では、裁判所は、これは労働関係が中断なく存続したかどうかが決め手であって、有期契約であるかどうかとは直接は関係しないと述べたわけですが、間接差別には当たるのではないかという論点はあるのですけれども、有期雇用を理由とする間接差別も禁止されるのかどうかは、まだわからないという判断で、明確な判断を避けていますが、やや消極的な見解を示しています。この点は、現在ドイツでも明らかになっておらず、有期雇用を理由とする間接差別も禁止されるのかというところが論点となっています。
(5)無期契約への転換についてですが、特に規定はありません。
3.の労働協約や裁判例についてという項目ですが、労働協約について、やや注目すべき規定として、14条2項ですが、先ほど申したように、正当事由のいらない有期契約の規制ですが、上限2年で更新3回という規制ですが、これは協約に開かれていまして、協約によって不利な規定を置くことも可能となっています。14条2項3文及び4文に書かれています。この規定については、あまり、現在特に問題は指摘されてこなかったと思うのですけれども、最近の文献では、派遣業におけるキリスト教組合の協約で、著しく不利益な規制が行われているという実態調査が出されています。参考文献に挙げたシューレン教授の論文なのですが、中小企業の人材派遣業の使用者団体と、キリスト教組合との間の協約で、14条2項1文の上限2年、更新回数3回まで、というルールを大幅に逸脱する不利益な協約が結ばれていることが紹介されており、これから議論があるかもしれません。
以上、簡単にドイツの有期労働契約法制についてご紹介しました。
最後に、ドイツの労働法学において、自国の有期労働契約法制についてどう捉えられているかについて、簡単にご紹介したいと思います。きちんと学説を分析したわけではなく、たまたま見つけた論文の紹介になるのですけれども、最後に挙げたバース教授の論文では、有期労働契約法制の規制緩和、これ以上の規制緩和には労働市場の二極化をもたらすという点で否定的で、解雇制限法の緩和を図ることによって、労働市場の柔軟化を図るべきではないかという提言がなされています。ドイツでは、1960年の連邦労働裁判所判決が、連鎖労働契約を解雇制限法の潜脱であると述べたように、解雇規制と有期契約法制を関連づけて、検討する伝統があると思います。この点は、1つ参考になるのではないかと思われます。以上で終わります。ありがとうございました。
○鎌田座長 ありがとうございました。
続きまして、フランスの法制及び実態についてのご報告をいただきます。本日は、本研究会の委員をお務めいただいています京都府立大学公共政策学部の奥田香子先生よりご説明いただきます。それでは、奥田先生よろしくお願いいたします。
○奥田委員 よろしくお願いします。
お手元の資料3に基づいてフランスの有期労働契約法制についてお話をしていきたいと思います。お配りいただいた資料では、最初にレジュメをつけまして、それ以降に添付資料(1)、添付資料(2)と挙げていまして、内容的には最初にその制度の概要をご説明してから有期労働契約法制の傾向とかあるいは学説等において指摘されている問題点、あるいは裁判例上の論点とかを2番目にご紹介して最後に実態をご紹介しようと思っていたのですが、時間の関係もありますのであまりそういうふうに分けていかずに、添付資料(1)を見ていただいて、制度の内容をピックアップしながら見ていく中で、2番の問題点等も合わせて触れていくということで進めていきたいと思います。
添付資料(1)に関しても、フランスの有期労働契約法制は基本的な枠組みはそれほど大きく変わっていないのですけれども、根拠になっているのは、フランスでは労働法典に各法律のほとんどの部分が法典化されていますので、労働法典の中の有期労働契約に関する条文の一文が根拠法になっていきます。
ただ、2008年の間にも有期労働契約法制に関する法改正があったりとか、あるいは省令で補足的な事項が付け加えられたりとか比較的いろいろな改定が多いものですから、基本的な部分は変わっていないのですけれども、なるべく新しいものをということで、資料1に関しては、フランスの労働省のホームページに3月9日に更新された内容として書かれている制度解説を基本として、制度の細かい概説等がされている文献を合わせて見ていって内容を整理したものになっています。
少し内容が膨大になっていますし、このホームページに載っていた内容が、どこの条文を見てもそれに該当するところが見当たらなかったりとか、少し矛盾点が出てくるところもあるのですが、大きな枠組みとか重要な点はそれほど変更があったりしているわけではないので、重要な点にのみ着目していただいて、特徴をつかんでいきたいと思います。
まず、いちばん最初に概要として整理をしましたが、フランスの有期労働契約は、明確に特定の一時的な業務の遂行を目的とする場合で、法律に列挙された事由に限って締結することができるというふうな、いわゆるそういう意味での入口規制が行われています。
その際に労働法典の中には、労働契約は期間の定めなく締結されるのが原則だというふうなきちんとした条文があります。労働契約は期間の定めなく締結されるというふうに書かれている条文がありますので、そういう点からどちらでも選んでいいわけではなくて、有期労働契約がそれに対する例外という位置づけになってきます。有期労働契約に関しては、実態的な規制と手続的な規制がありますので、例えばそこに書かれているように必ず書面で締結しなければいけないとかそういう手続的な規制も含まれています。
いかなる締結理由、法律に列挙されたものに限られてくるわけですけれども、いかなる締結理由であっても、その企業の常態的な、通常の正規の恒常的な事業活動に関連するような業務には、長期的にそれを永続的に従事させることを目的としたり、あるいはそういうような効果をもたらすものは許されないので、逆の面からそれを規制する、つまりあとで出てくる利用の禁止にもつながってくるのですけれども、そういう面からの規制もあります。
それから、あとで見ていただきますように有期労働契約が法律に違反して締結された場合は、期間の定めのない契約に性質変更、日本で言うと転化ですね。性質変更されることが民事制裁のいちばん重要な部分として設けられていますので、それからフランスの場合は刑事制裁も加わってきますので、
その辺りに着目してずっと以下の内容を見ていただきたいと思います。
まず、有期労働契約の利用可能事由ということで、法律で列挙された利用可能事由はどういうものかを挙げています。
ここもあまり細かいものは削っていますので、代表的なものとして見ていただいたらいいと思うのですけれども、労働者の代替をするための有期労働契約があります。例えば病気で欠勤している労働者のポストに労働者を代替させる。あるいは、そのポストでなくても別の常勤の正規の労働者が入る場合にその別の労働者の代替もあり得るわけですけれども、そういう欠勤の労働者が出てきた場合の代替。あるいはフルタイムの労働者が一時的にパートタイムに移行している場合の労働者の代替だとか、こういうふうな代替に関してもどういうケースであれば可能かが法律の条文に明記されています。
それから、2番目に、これが抽象的概念になってくるのですけれども、事業活動の変動ということで、事業活動が一時的に増加するような場合というようなことが有期労働契約の締結事由として挙げられています。
レジュメで言う2番目の問題点等との関係で見ていただきますと、こういう利用可能事由自体は年を追って拡大してきている傾向がありますし、それから2番目に挙げた事業活動の変動という、一時的な増加はこれは学説の中でもさまざまなケースが入ってくる抽象的な概念であるということで、その利用可能事由の柔軟性の点から批判的に捉えられている利用事由でもあります。
3番目に一時的な性質の業務ということで、季節的な雇用、それから慣行的有期労働契約がわかりにくいのですが、そこに書きましたように業務の一時性を前提として、期間の定めのない契約で採用しないことが恒常的な慣行になっているような産業部門がデクレ、政令であるとか労働協約でリスト化されていまして、そのリストに載っていて、恒常的な慣行になっていることが確認されてかつ、その職務が一時的であるものに関しては、ここに書いた慣行的有期労働契約という位置づけがなされまして、これも利用可能事由に挙がっています。しかし、そこも先ほどの傾向と問題点と合わせて見ていただきますと、こういう季節業務と慣行的有期労働契約は、あとで見ていくような、いわゆるクーリング期間であるとか、そういう重要な規制から適用が除外されている領域になりますので、その点でも利用可能の柔軟性が見られる部分です。
それ以外に、簡単に触れていきますが、最近は雇用政策に対応するため、例えば採用の促進を図るための有期労働契約がさまざまなタイプのものが出てきまして、若者を対象にしたものであったりとか、そこに書きました高齢者を対象にしたものであったりとか、昨年の6月に実験的に導入されたようなエンジニアと幹部職員を対象にしたような有期労働契約であるとか、そういう特定の目的のタイプの有期労働契約が広がってきていることも1つの傾向かと考えています。
次に3頁に移っていただきますと、こういうふうな利用可能事由とはまた別個に、その3点に関しては、こういうケースに関しては利用をしてはいけないということが逆のほうから禁止対象となっていますので、それも一読をしていただきたいと思います。
契約期間の制限なのですけれども、ここに確定期限と不確定期限と書きましたが、確定期限は、例えば欠勤労働者の場合でも、いつからいつまでと期限が確定されたような代替である場合と、その人の病気が治るという不確定期限である場合と2種類あるということで、こういう概念が出てくるのですが、もちろん原則は確定期限で、その中でも原則になるのが、あとで書いてありますように更新は1回のみで、更新を含めて最長18カ月というものが契約期間制限の(1)の原則になってきます。それ以外に(2)で書きましたように、こういう場合では最長9カ月、こういう場合には最長24カ月というふうな、異なる定めがなされている場合がありますが、原則ということで見ていただきますと、更新を含めて
最長18カ月が原則になってきます。
ここに表として、こういうふうなものがあるのだということを労働省のホームページから挙げていますので、18カ月を前提としながらそれ以外の期間設定もなされていることにのみ着目していただいたらいいかと思います。それから、その下に契約の更新と書きましたが、いま申し上げたように確定期限があるものについてのみ更新は1回だけ。それも、更新で延長した分を含めて、ここに書かれているような最長期間内で行うことが前提になっています。
次に4頁に移っていただきますと、契約書に記載すべき事項ということで、書面を作成する。フランスでは有期労働契約は、そういう意味で要式契約になってきますので、書面を作成し利用事由を明記し、以下に挙げたような必要記載事項を必ず明記して、それを2日以内に交付することが手続的な条件として定められていまして、あとで出てきますように、こういうことに違反するのは、期間の定めのない労働契約への転化をもたらしますので、重要な手続事項になってきます。それから、試用期間を設ける場合は、こういうふうな長さでということが決められています。
その次なのですけれども、先ほど更新のことをお話しましたが、日本で言うところの雇止めに関連してくる部分は、この有期労働契約の連続利用にかかわってくると考えられます。それは、(1)(2)で見ていただきますが、同じ職に連続した有期労働契約を締結する場合には、一定期間のクーリング期間をおかなければいけないことが定められていまして、14日以上であれば、あるいは14日未満であればということで(1)(2)というふうなクーリング期間を設定することが求められています。ただし、その下の下を見ていただきますように、例えば慣行的有期労働契約とか季節雇用とかいくつかのものに関しては、そのクーリング期間も適用除外ですので、同じ職であっても、継続して有期労働契約を締結することが可能な領域があります。
2番目に、同じ職ではなくて、同じ労働者と連続した有期労働契約を締結する場合、日本の雇止めとの関係で言いますと、こちらが近いのかと思うのですけれども、有期労働契約の期間満了後も同じ労働者と契約関係を継続しているというのは、これは期間の定めのない契約にみなされていくことになります。ただし、この場合も例外がありまして、何度も申し上げている慣行的業務であるとか季節的業務、それから欠勤労働者の代替の場合も同じ労働者が連続した代替に当たることも認められていますので、この辺りは比較的よく利用されているものではないかと考えられます。
といいますのは、例えばそこに濫用規制と書きましたが、代替であれば欠勤労働者の代替ということで同じ労働者と連続して有期労働契約を締結することができるとしても、例えばこういうケースなのですが、連続的な労働契約を複数の欠勤労働者を代替するために例えばAさんの欠勤の代替、Bさんの欠勤の代替というふうな形で、同じ人が有期労働契約を22回締結して仕事を行っていた裁判例におきましては、これは有期労働契約ではなくて、期間の定めのない契約だと判断されたようなケースもあります。こういうことを考えてみますと、同じ労働者の連続した有期労働契約であっても、場合によっては濫用的な規制が裁判所の段階でチェックされるという状況になっていますので、この辺りが日本の雇止め法理との比較ではいちばん近いところではないかと思います。
5頁です。有期労働契約労働者の権利保障というところで、平等取扱いは今回の対象事項になっているところですので、見ておいていただきますと、有期労働契約と期間の定めのない労働契約の労働者との違いは、基本的には契約の終了に関するところのみだと説明がなされていますので、異なる取扱いがそれ以外の客観的な理由によって正当化されない限りは、比較可能な条件にあるCDI(期間の定めのない労働者)と同じ権利義務を享受することが前提になっています。
この比較可能の場合に、日本との比較法で見ると非常に難しい条件になってくると思うのですが、基本的にはその下の報酬に書かれていますように同等の職業の格付けであって、同じ職務に従事することが比較的明確になりますので、そこで比較できる労働者と、というふうなことになってきます。ただし、ここで先ほどの「問題点」と照らし合わせてみますと、例えば協約上のさまざまな権利、利益というのは勤続年数要件がついていることが多いので、その点で有期契約労働者の場合は、そういう平等原則が保障されながら勤続年数要件ではじかれるケースが多いことが従来から指摘がなされています。
もう1点、着目していただきますと、その下に契約終了手当と書きましたが、フランスの有期労働契約法制では、労働者が有期労働契約を終えたときに不安定な状況に置かれることを防止する目的で、契約終了手当を支払うことが制度上設けられています。手当の額はそこに書いたとおりでいくつか例外がありますが、基本的にその契約終了時に、使用者が期間の定めのない契約でその職を継続する提示をしなかった場合には、この手当が支払われます。したがって、逆に言いますと、それが提示された場合は、それで継続することになりますし、もしそれを労働者が拒否した場合はこの契約終了手当の対象にはならないことになってきますが、違法な場合とかそういうことではなくて、一律に支払われる手当ということで着目することができるかと思います。
中途解約の辺りは飛ばしていただいて、最後のところを見ていただきますと、6頁に出てきますように、フランスの場合の1つの特徴として、以上に述べてきたような実体的要件とか手続的要件に違反しているようなケースでは、法的性質の変更、つまり期間の定めのない契約とみなすことがいちばん重要な民事制裁として出てきまして、そこに代表的なものを挙げておきましたが、手続要件、実体要件の多くのものが挙がってきています。それにプラスして、賠償金の支払いがありますし、もう1点その下にありますように、多くの事由は同時に刑事制裁の対象にもなることにも着目していただきたいと思います。
時間の関係もありますので、実態のところはまたあとで見ていただくことにしまして、1点だけ申し上げておきますと、期間の定めのない契約への性質変更なのですが、判例をいくつか見ていますと、日本で言いますと期間の定めのない契約に転化するとなると、そこの従業員で継続的に業務に従事するイメージがどうしてもあるわけですが、多くの訴訟では、一旦契約関係が終了したのだけれども、その終了に対して有期契約で予定されているその就労に対する補償がなされるのか、あるいはこれは期間の定めのない契約に転化するから飽くまで解雇に当たるので、その解雇に対する補償を受けることができるのかという点で訴えがなされていることが多いので、そういう点で言いますとフランスの解雇法制が基本的に金銭賠償で行われていることとのつながりが、やはり一定程度見られるのではないかと理解をしています。
そのあとに、添付資料2として、有期契約の活用状況、以前報告書で書かせていただいたものをそのまま挙げていますが、時間の関係もありますので、またご覧いただくことにしまして以上で報告を終わらせていただきます。
○鎌田座長 ありがとうございました。
それでは、続きましてイギリスの法制及び実態の報告をいただきます。本日は、専修大学法学部から有田謙司先生にお越しいただいています。それでは、有田先生よろしくお願いいたします。
○有田 それでは、イギリスについて報告をさせていただきます。レジュメの項目にそってざっとご説明する形になります。
最初に法制の概要ですけれども、元々イギリスではCommon Law上、有期雇用契約については、ほとんどルールはなかったと言われています。この2002年のレギュレーションですけれども、この規則はEUの指令を国内法化するために設けられまして、そういう意味ではイギリスの有期雇用契約の法規制は、EU法をもとにイギリスの状況に合うようにアレンジをして、設けられたものだと言ってよいかと思います。
最初に、この規則の適用がなされる有期雇用契約被用者ですけれども、これはかなりイギリスに特殊な概念です。employeeとworkerの2つの概念がイギリスにはあります。このemployeeは運用上、そのCommon Law上の雇用契約のもとに働いているものを被用者ということで、しかもその雇用契約の存否について、この*のところに少し小さな文字にして書いていますように、現在、わが国の最高裁に相当する貴族院の判例において、非常に狭い解釈がとられていまして、有期契約の中に本来入るべき不定期な働き方をするカジュアルワーカーが被用者とはみなされない扱いになり、そのためにこの規則の適用から漏れてしまう問題が指摘されています。
実は、元々ブレアさんが政権を取ったときに、フェアネス・アット・ワークという白書で基本的な立法政策の方向性を示していたのですけれども、その中ではこの労働者に対して権利を付与する立法の適用対象をemployeeからworker、workerのほうはもっと広い日本の労働者概念を少し広くした範囲のものと言っていいのですけれども、そちらに切り替えていくということを言っていたのですが、実は労働時間規則等、EU法を国内法化する規則は大体、適用対象をworkerにすることで行われてきたのですが、2002年の有期雇用契約については、適用対象をworkerではなくてemployeeにして、適用対象を狭めてしまったという問題が指摘されています。
もう1つの特徴は、派遣労働者が明確に適用対象外となっています。これは、ご承知のように現在、EUの指令ができましてイギリスも国内法化へ向けて、政府が法案のたたき台を出しまして、協議文書を出してパブリックコメントを求めている段階ですけれども、昔から派遣は別なのだと切り離しているところが特徴です。フランス等にもありましたように、政府が雇用促進のために行っている訓練制度のもとにあるものとか、あるいは徒弟契約のもとで働いているものも適用除外になっています。
この規則では、大きく規制内容が2つのものから成り立っていまして、1つが均等待遇といいますか、不利に扱われない権利を与えるというもの、もう1つが、有期雇用契約の濫用的な利用を制限することで、先ほどのフランスと同じようなルールがもう1つの柱として設けられています。
この不利に扱われない権利ですけれども、比較対象となる被用者と比較して、有期雇用契約であることを理由に不利に扱われない権利だというふうになっているわけですが、その比較対象となる被用者については、かなり厳しく制限されていまして、ここに書いてありますように実際に同一の事業所に就労し、かつ関連する場合には同程度の資格とか技能を有しているか否かを考慮して、同一または大まかに見て類似の仕事に従事している者と定義されています。
もし、無期契約で、期間の定めのない契約で雇われていたのならという仮定をして比較をすることは基本的に認めていません。有期雇用契約の被用者は、同一事業所内に比較対象となる被用者がいない場合には、同一使用者の他の事業所における比較対象となる被用者をその対象として用いることができるとなっています。
行政の解釈を示したガイドブック等によりますと、イギリスでは、使用者概念の拡大として、その資本関係で50%以上の資本関係があるという、そういう支配関係にある、ただし、カンパニーに限定されるわけですけれども、その場合にはアソシエイト・エンプロイヤーということで法令の適用上同一の使用者と扱われる場合がありますけれども、ただし、この場合の比較対象となる被用者は、アソシエイト・エンプロイヤーのもとにある被用者はその対象にはならないというようになっています。
不利益取扱いをどのように見ていくのかということに関して、規則の中で特に労働条件にかかわって不利な扱いを、有期であるということを理由に受けないものとして、明示されているものが3つあります。第1に、先ほどのフランスの例でも出てきましたような一定の勤続期間を資格要件とした給付のようなもの、第2に、教育訓練を受ける機会、第3に、事業所内の期間の定めのない雇用契約の職を得る機会といったようなものです。そして、この無期の雇用契約の職を得る機会を得ることを保障するために、空きポストができた場合に情報提供を受ける権利を同時に定めています。
そして、不利益な取扱いですけれども、事実としてそういうものがあったときに、使用者側が扱いについて客観的理由に基づいて正当化できればそれは不利な扱いとはみなされないことになります。
基本的には、先ほども出ましたような比例原則で見ていくのですけれども、実は客観的正当化ということを見ていく際に、明文の規定をもって、総体的アプローチという言い方が適確かどうか自信がありませんが、パッケージアプローチが規定されています。有期雇用契約被用者の契約条件の総体が比較対象となる被用者の契約条件の総体よりも不利なものではない場合においては、ある特定の契約条件に関しての不利な扱いについては正当化される。
例えば、年休日数が、期間の定めのない契約にある比較対象となる被用者との比較で見たときに数日少ない場合に、その日数分をカバーし得るような年収をプラスアルファとしてつける形で、客観的正当化が満たされるというようなアプローチを許容することが明文上規定されています。そういう意味では、完全な意味での均等待遇というよりは、均衡待遇というか、均衡処遇に近いようなものになっているのではないかと思われます。
理由書の交付を受ける権利というものがあります。実は、これは雇用審判所に訴えを提起する場合に必要なものでもあるわけですけれども、有期雇用契約被用者が不利な扱いを受けていると考えた場合には、その使用者に対してその扱いの理由を記した書面の交付を求めることができます。使用者は、この請求日から21日以内にこれを交付しなければならないことになっています。ここで、先ほどの正当化理由があるのであればそれを書くことになります。実は、この同じような理由書とかの書面交付の請求は、次の有期雇用契約の継続的な利用を制限するルールにも同じく用いられている規定です。
次に、有期雇用契約の継続的利用の制限なのですけれども、イギリスでは有期雇用契約の継続的な利用については、上限4年というルールが原則として設定されています。有期雇用の契約の被用者が既に4年、あるいはそれ以上の期間の継続した雇用を有しているとき、その後に契約が更新された場合、あるいは再雇用で新たな有期雇用契約に基づき再雇用される場合には、当該契約更新または新たな契約は、有期契約に基づく雇用が客観的に正当化されるか、あるいは労働協約または労使協定に基づいて4年の期間が引き延ばされているのでなければ、期間の定めのない雇用契約としての効果を生じる。
規定の文言上は、有期契約の規定が無効になるということですから、期間の定めのない雇用契約に転化するという規定が設けられていることになります。この辺は、フランスと似たような規定のあり方ですが、上限が4年です。回数について制限ということではなくて、更新をされて、それが最終的に4年を超えるときの更新、あるいは再雇用という形で有期契約を新たに設定された場合のその契約を無効にして、期間の定めのない契約に変えるやり方がとられています。
特に問題になるのは、更新の場合ではなくて、一旦中断が入るような再雇用の場合に、中断期間の存在について、これを継続期間として一定の範囲に収まるようなものであれば継続期間として扱うことが行われています。客観的正当化についての判断の仕方は先ほどの不利に扱われない権利と同様の仕方で判断されることになります。
もう1つの特徴は、労働協約、あるいは労使協定によって法律の原則的な規制内容を修正できるというものです。これは、ニューレイバーの労働党の立法政策の中によく見られるもので、法令をデフォルトルールとして設定し、それを協約とか労使協定によって修正して実情に合う形に変えることを許容するような規制のあり方の例であるのですけれども、基本的に法規制が有期雇用契約の継続的利用から生じる悪幣を防止するためのものなので、協約または労使協定によって、1つは記載された被用者が有期雇用契約または反復された有期雇用契約に基づいて継続して雇用される期間の条件、すなわち4年を、例えば4年半とか5年に延ばすこともできる。あるいは、逆にすることも当然できるわけですが、記載された被用者が雇用され得る有期雇用契約の反復・更新の回数について法令上は規定がありませんけれども、回数について上限を設定したり、あるいは記載された被用者が雇用される有期雇用契約の反復・更新を正当化する客観的理由について、具体的なものを法令上は定められていませんけれども、これを明記する形で、法定のルールを修正、あるいはそれを具体化することを認めていることになります。労使協定の当事者である従業員代表の選出手続については、附則で規定されています。
期間の定めのない雇用契約への変更があったかどうか、4年を超えて変更されたことについて争いが生じるわけですけれども、この場合に被用者には先ほどの不利益に扱われない権利の場合と同じように確認書の交付を請求する権利が認められています。使用者は、変更されたことを認めるか、認めないのであれば新たな有期雇用契約を結ぶ正当な理由があることについて、その書面に記して被用者に交付しなければなりません。交付された文書は、裁判所、あるいは雇用審判所の手続において証拠として扱われることになります。
救済の仕方としては、雇用審判所に訴えるわけですが、不利に扱われない権利と、有期雇用契約の継続利用制限の場合で少し違った救済の仕方になります。不利に扱われない権利の場合には基本的に補償金になり、基本的に損害賠償に近い考え方になります。ただし、ここでは慰謝料が含まれないことと、我が国では存在しないものですが、損害軽減義務の適用があるのも1つの特徴ではないかと思います。もう1つ、宣言判決、日本で言う確認判決に当たる、要するに不利益に扱われずに同等の権利を有していることの確認も併せて行われることになります。それから、一定の合理的な措置を所定期間内にとるよう勧告することも審判所が行うことができます。
有期雇用契約の継続利用制限については、我が国で言う確認判決に相当する宣言判決を求める訴えを雇用審判所に行うことができるのですが、そのためには、先ほどの変更確認書の交付請求を行っているということが前提条件となっています。なおかつ、訴えの時点でまだ使用者に雇用されているということも訴えの要件となっています。
出訴期間については、双方について共通して3カ月ということで設定されています。裁判例が、私のほうでまだきちんと調べられていないということもあるのですが、何か教員のケースに偏ってよく見られます。ここに書いてあったようなものがあるのです。正当化理由に関するものとか、不利な扱いの具体的な例について判断が示されたようなものではないかと思うのです。
協約ですが、実際にこの法律がその修正を許容するという意味での具体的な労働協約のようなものを見つけることはできませんでしたが、これも大学の教員についての組合と、大学というか経営者の団体との間で協約を具体化して作っていく場合の枠組みになるような指針を定めたようなものを見つけましたので、ここに載せております。そこでは、賃金については、定期昇給に当たるようなものがあればそれも均等に扱えとか、あるいは法令上はなかった、あるいは協約で設定することができるとなっていましたその入口規制に当たるような客観的理由がある場合に限って有期契約を設定できるのだというようなことをこの指針の中では規定しており、これを受けて各個別の労働協約を結ぶというようなことが進められているのではないかと推測されます。
有期雇用契約の実態については大雑把なことしかわかりませんでしたので、これは、ここを見てい
ただければいいのですが、ただ、具体的な職場について、4年か5年に1回ぐらいですか、調査がある
ものを見ますと、調査対象事業所の約3割に有期契約雇用の被用者が存在しているということで、かな
り柔軟な労働市場ということの中で、活用されているものは活用されているのではないかということ
が推測されます。雑駁ですが、以上で終わらせていただきます。
○鎌田座長 ありがとうございました。続きまして、アメリカの法制及び実態についてのご報告をい
ただきたいと思います。本日は、労働政策研究・研修機構から池添弘邦先生にお越しいただいており
ます。それでは池添先生、ご説明をお願いいたします。
○池添氏 よろしくお願いいたします。ただいまご紹介いただきました池添でございます。15分ぐらいで簡単にご説明申し上げます。
まず法制度ですが、その前提として、大陸ヨーロッパの各国と大きな違いという点を前提として若干申し上げておく必要があるかと思いますのは、大西洋を渡ってアメリカに行きますと、自由主義経済的な考え方が大変根強く、また強い、そういう考え方が濃厚であるということです。したがって、アメリカでは伝統的に労働者を保護する法制度、規制は、他国に比べれば貧弱な状況にあると。アメリカには、日本の労働基準法に類するような公正労働基準法という連邦法がありますが、また、日本の労働組合法に当たるような全国労働関係法という法律がありますが、それは1930年代の不況の時期にニューディール政策の一環として制定されたというもので、その後、労働者保護的な制定法が連邦法として制定されたというのは、1960年代から1970年代にかけての社会的な運動を背景とした差別禁止立法、それから、クリントン政権下で1993年に制定された家族・医療休暇法というものぐらいです。連邦制定法はほかにもありますが、他国に比べて、自由主義的な考え方が大変根強く、その反面での労働者保護的な規制が弱いということがあるかと思います。
もう1点、これは州のCommon Lawですが、雇用関係について規制するのは基本的には州のCommon Lawで、ここ100年以上の間、期間の定めのない雇用関係はemployment at-willだと。日本では随意雇用原則のルールとして紹介されていますが、特に期間を定めていない雇用関係においては当事者からいつ、いかなる理由によっても雇用関係を解消し得るという原則が大変揺るぎがたい形で確立されているところです。したがって、それが使用者からの雇用関係の解消という形で現れますと、日本や他国に見られるような非常に重厚な解雇規制というようなことがないということになるわけで、したがって、使用者は、期間の定めのない雇用関係の場合、労働者をいつでも解雇し得るというような状況があるわけです。
法制度のところですが、結論から申し上げると、有期契約に関する法制度は、連邦、州の制定法では存在しないということが言えると思います。はっきり言えるのは、連邦制定法ではそういう制定法はないと。州制定法については、50州ありますので、各州、つぶさに見るということはなかなか時間もかかりますし労力もかかる問題ですので、今回に関しては細かく見ておりませんが、以前、雇用関係、雇用契約関係に関する調査においてそういう規制があるのかなというのを若干見ましたところ、そういう州制定法は、数年前の当時でも存在しなかったということです。
もう1点、州制定法の詐欺防止法ということを書いてございますが、これは連邦の各州がイギリス法から継受した制定法です。基本的に1年を超える契約期間を定める契約関係においては書面で当該契約関係を締結しなければ執行力、当事者に対する拘束力を有しないという制定法で、有期労働契約をストレートに規制したものではありませんが、関連する制定法としてご紹介しておきたいと。ただ、最近のアメリカの契約関係の書物を見ますと、その基になっていると言いますか、各州でばらばらな規制をしていてはなかなか州際通商、州を超えての取引関係がうまくいかないということで、これは制定法ではないのですが、識者が集まって、連邦国家で統一的な法典をモデル法典という形で作ろうではないかという動きがありました。そういう法典の一部、統一商事法典、UCCですが、これが2003年に改定されたようです。その中で1年を超える契約に関する執行力の付与に書面性を求める、要式性を求めるという条項が削除されたということですので、もしかすると、その後の各州の動向においては、従来有期契約を間接的に規制していた州制定法の規制がもう削除なりされているということがあり得るかもしれません。
しかし、先ほど申し上げたat-will employmentの反面として期間を定めている雇用契約関係が、後ほど見る実態のところでご紹介しますが、ごくわずかですが、あるようです。そうしますと、at-will employmentの反面として契約期間を定めたということは、当該契約期間については、雇用保障があるということになるわけです。法制ではありませんが、at-will employmentの反対の解釈という面での雇用保障はあり得るということになります。
もう1つ、他の法制ということです。間接的に差別禁止法による規制というものがかかり得る場合があるかもしれない。ただ、実際のその紛争例、裁判例というものを目にしたことはありませんので、あくまでも理論的な話ですが。例えば、1964年の公民権法第7編、人種・皮膚の色・性・出身国・宗教等、差別を禁止するという法制度がありますが、特定の人種なりグループに関しては有期契約法制、要するに、期間を定めた有期契約を締結している。つまり、期間を定めないという長期雇用を前提としない短期の雇用だという雇用関係を結んだ。反面で別のグループに関しては、at-will employmentだけれども期間を定めていない長期の雇用というような形で区別なり差別なりの取扱い、差別的な取扱いをしたということであれば、理論的には、差別禁止法に触れるという可能性もあるわけです。ただ、先ほど申し上げた一定期間を雇用保障の期間だと定めた雇用関係を締結しているということは、at-will employmentの反面として雇用保障がなされるということですので、一概に不利益、差別と言えるかは、言えないということになりますので、これは、あくまでも理論的な参考までの話としてお聞きいただければと思います。
法制度に関しては、全体としてアメリカでは、制定法なりということはないということになるわけです。そして、むしろ実態のほうです。他国での実態は比較的簡単にご紹介されたようですが、アメリカにおいては、連邦労働省の労働統計局が1995年以来、Contingent and Alternative Employment Arrangementsという調査を2年に1回出しています。ただ、最近は2年に1回ではなく、従来からの傾向がそんなに変わっていないのでその調査のタームを延ばした、頻度を減らしたということがあるかもしれませんが、最新の調査結果は、公開されているのは2005年のものです。そこでは、Contingent Employmentという長期の雇用を前提としない、しかも実際に働いている期間が1年に満たないというような人たちということで推計を立てています。
ここに掲げております推計1というのは、Independent ContractorですとかContract Workerですね、自営、請負の人たちを除く。つまり、基本的には直用です。ただ、派遣会社や業務請負会社の従業員も含まれてしまうのですが、基本的には直用の人たちに関しての推計で、雇用継続への期待が1年以下で、かつ、実際に1年以下働いた労働者がどれぐらいそのLabor Forceの中にいるかという推計を出していますが、これは、全体との対比で1.8%、250万人という大変少ない数値になっているわけです。
先ほど申し上げたいくつかある推計、ここでは推計1を掲げましたが、これともう1つ、就労形態別にいくつかの形態を代表的なものとして掲げて、各就労形態に当てはまる人たちがどれぐらいの割合、どれぐらいの人数いるかということを算出しております。掲げておりますのは、有期契約というものが締結されているであろうと思われるもの、3つの形態を掲げております。
まず1つ目がOn-call workers。必要に応じて随時呼び出されて、数日あるいは数週間働く労働者ですが、これは1.8%、245万人です。Temporary help agency workersということで、これは派遣会社の労働者で、0.9%。ただ、この場合、期間の定めのない派遣労働者も含まれてしまいますので、いわゆる登録型派遣的な短期の、有期の派遣労働者ということで勘定を考えますと、人数なり割合はもう少し減っていく、少なくなっていくのではないかと思います。
もう1つの就労形態が業務請負会社の労働者です。この場合でもやはり業務請負会社にpermanent、at-will employmentで雇用されている労働者も含まれてしまいますので、ある一定の業務を引き受けた、その期間についてのみ有期、期間雇用で雇われている労働者というものはもう少し実数、割合としては少なくなってくるのであろうと思われます。統計的な面ではそのような状況になっています。
次の頁ですが、雇用関係、雇用法の文献、あるいは私が過去、これは10年ぐらい前になるちょっと古い調査で誠に恐縮なのですが、最近は有期などの人事労務管理の調査を行っておらないという関係で、手持ちの調査をご紹介するということで代えさせていただければと思います。
まず1つ目のポツです。最近のEmployment Lawの文献によれば、役員とか給料が高い労働者、専門技術職、あるいは出来高払制の営業職に就いている労働者、さらに一定期間労務遂行が当初より想定される職務に就いている労働者に関しては、場合によっては期間を定めた雇用関係、これは書面を持った契約関係で定義されているということが述べられています。ただ、これも実数としては大変少ないというようなニュアンスで書かれていましたので、必ずしもこういった職種、地位にある労働者が書面契約で雇用契約期間を定めているというわけではないということにご留意いただきたい。また、書面において当該契約期間においても正当事由、good cause or just causeというものがあれば当事者から期間途中の解約も許容されるというような定めがあった場合には、これはat-will employment
と変わらない状況になりますので、こういった書面契約が実際に締結されているとすれば、先ほど申し上げたような役員とか専門技術職といった労働者にかかる書面契約において必ずしも雇用保障がなされるわけではないということが言えるわけです。
2つ目のポツですが、1998年に在米日系企業という限定がありますが、現地のヒアリング調査を行った結果です。この調査では非正規、特にパートタイム労働者に関して聴取調査を行いました。調査対象になった14社のうち1社のみ、雇用期間を定めていた労働者の方がいらっしゃったのですが、ただ、これはいわゆる業務の中枢に携わるような基幹的な従業員の方ではなくて、専属医の方だったのです。それ以外の非正規の人たち、パートを含めですが、at-will employmentであったと。つまり、有期契約ということでは雇用関係を形成していないということです。その翌年、また同じく在米日系企業のヒアリング調査を行ったのですが、ここでは雇用管理全般についてお話を伺うことができました。8社
聴取調査を行ったのですが、直用の従業員との間で有期契約を締結していた企業は皆無でした。先ほどの1998年、1999年の調査、どちらもいわゆる有期、直用ではないのですが、temporary、有期として活用していたのは外部の人材としての派遣労働者あるいは請負だということです。直用としての有期は、したがって、ごく限られた調査なり文献の範囲では現地の企業は活用していないというのが実情であろうということです。したがって、先ほどの統計で大変低い数値であったというのも、限定的であって、留保が必要であるとは思いますが、統計的にもそういう面では担保されているということが言えるのかと思います。
最後に、僭越ではありますが、私見を述べさせていただきます。皆様ご推測のように、冒頭申し上げたemployment at-willという考え方が非常に根強く付いているアメリカでは、解雇がいつ何時においても自由である。したがって、有期契約労働者を活用するメリットがないということが言えるかもしれません。もう1つ。外部の人材としての派遣、請負あるいはOn-callといったtemporaryの人たちを活用するということが有期契約よりも相対的には発達しているであろうということを仮定しますと、むしろそちらのほうを活用するほうが自らに雇用責任が及ばないということも言えるわけです。したがって、外部人材を直用の有期で活用するということよりも、ContingentやAlternativeの人材を活用するというほうが企業にとってのメリットがあるということが言えるのかもしれません。以上、雑駁、かつ、あまりご参考にならないかもしれませんが、以上でお話を終わらせていただきます。
○鎌田座長 ありがとうございました。続きまして、デンマークの法制及び実態についての報告をいただきます。本日は、デンマーク大使館からベンツ・リンドブラッド様にお越しいただいております。それではリンドブラッド様、ご説明をお願いいたします。
○リンドブラッド氏 資料があまりないのです。申し訳ありません。ここにある資料は大体デンマークの2003年の法律の訳なのですが、実際にデンマークの労働市場は、その法律が出来てから、あまり変わっていないと思うのです。先ほどのイギリスの例と同じように、デンマークではworkerとemployeeというような区別もありまして、結局、有期契約に関する労働者はemployeeのほうが多いと思います。工場とか建設場、造船工場で働いている方々は、やはり自分の組合の契約によって仕事をしているのです。フランスとイギリスと同じように、どのような人が含まれているか、どのような人が含まれていないのかは、大体同じです。どれぐらいこの法律が使われているかは、例えば裁判になったかどうか、ホームページで調べたのですが、1つの例しか出てこなかったのです。こかの音楽大
学の先生が2年間仕事をして、それから、その契約が終わったあとに仕事を失ったわけですが、その裁判によって彼は負けたのです。結局、自分の同じ契約を2年間延ばして、彼が教えた分野はもう必要なくなってしまったのでと裁判は決めました。そのほかには例を聞いていないのです。ただ、私の働いているデンマークの外務省の中にはいくつかの例を覚えているのです。
デンマークの外務省が短い間に職員を雇っていることがある。例えば、デンマークがEUの議長国になっているときには、外務省あるいは関係している官庁の仕事が非常に増えるのです。そういうときには、割合に若い大学を卒業したすぐあとの人たちを雇っているのが普通です。場合によっては、その外務省のスタッフの中でも2、3%ぐらいになるときもあります。その半年が終わったあとにはもうこれが終わりですが、場合によっては外務省は間違っているのです。デンマークの外務省が間違っている例を1つ覚えているのです。
結局、デンマークが議長国だったときには、あるいは別のイベントをやったときは何人かを雇ったのです。その雇った人たちの中には、結局、普通の仕事に回した場合もあったのです。結局、いつもやっている仕事と同じような仕事に回した若い人もいたのです。それで結局、その議長国に関する契約、あるいはそのイベントに関する契約が終わったときには、その人たちの契約も終わったと思ったのですが、こう言ったのです。「自分たちは本当の契約どおりの仕事をしていないのです」。でも、外務省が言うには、「ただ、あなたたちが雇われているときには、大蔵省からこの予算しかもらっていないので」。でも、結局、その有期契約の期間はお金とは関係ないのです。大蔵省がいくらこの金額しか外務省に渡していなくても、結局、外務省の別のスタッフと同じような仕事、いつもと同じよ
うな仕事を続けるのであれば契約違反になったわけです。結局、外務省は決まった金額を払ったか、それとも、その人たちをそのまま外務省のスタッフにしたかどうかわからない。ただ、その問題があった覚えがあるのです。そのほかには、あまり覚えがないのです。
デンマークは、先ほどヨーロッパの国々の労働者に対する法律は、かなり弾力性を持っている法律を持っているわけです。ですから、デンマークでは、労働者をクビにするのは簡単です。デンマーク人の労働者の3分の1が、1年間で仕事を替わるのです。ですから1年間でデンマークの労働人口の80万人が別の仕事に移るのです。これは、ヨーロッパでは非常に多いのです。例えば大体同じような人口を持っているベルギーに比べれば、大体倍ぐらいです。しかし、経済的に見ると、デンマークの労働者の給料、デンマークの経済などは、ほかのヨーロッパの国々に比べれば非常に高いのです。いま、デンマークの失業率はヨーロッパでいちばん低いのです。これは、たぶんこの弾力性によるのです。1つの言葉があります。これはいまの有期契約と直接関係ないのですが、1つのデンマークの単語、フレキシキュリティという言葉があります。たぶんご存じかどうかわからないのですが、フレキシキュリティは2つの単語を合わせて。フレキシは弾力性、キュリティはsecurity、安全性を持っている制度。これには、労働者側と経営者側のほかにもう1つ必要です。これは国です。結局、労働者が仕事を失った場合には誰が補償するか。それは国です。労働者に仕事がなくなってしまったときには必ず仕事を探す、必ず仕事を見つける、あるいは教育に入れる。それだけではなくて、必ずお金を渡す。だから、デンマーク人の労働者が仕事を失っても経済的に大きな問題がないのです。それによって弾力性が高いわけです。いいところがあれば悪いところもあるので、たくさんの人がずっと仕事を替わったりするときには、その仕事場の中の教育はどうなるかとか、いつでも新しい工場に、あるいは仕事場に入ったときには、労働者の質を失うかどうかわからないけど。でも、結局、仕事のないときは、いちばん大切なのは教育です。教育に入れるわけです。だから、たぶんデンマークの労働者の質は高いと思います。有期契約法が出来た大きな原因の1つはEUの指令があったので。でなければ、そのままデンマークの労働法が続いたと思います。でも、それがあったから、ほかのヨーロッパの国々と同じような法律を作りました。先ほど言ったように、例外はいくつかあって、教育のために仕事をする人たちの契約、法律とは関係ない。それから、軍隊の場合も、場合によっては関係ないときもあります。違反をした場合には、経営者側が、例えば同じ仕事場の中で同じ仕事をした有期契約の労働者と無期契約の労働者の給料は同じでなければ、経営者は、当然にその差額を払わなければならないと、まずないと思います。
このような法律の中にはいくつかの穴があると思います。これは、例えば建設。建設あるいは造船は、もともと季節によって仕事をするときもあるのです。デンマークの冬は、結構寒い、暗い、長いのです。仕事ができる期間は、例えば日本に比べれば、かなり限られています。ですから、このように時間的に失業になっているのは、デンマーク人はもう慣れていますので、案外、組合と経営者との間の問題なのです。いまデンマークでかなり大きな問題になっているものの1つは、安い労働力がデンマークに入ってきているのです。特に建設です。そこにいままで、今はちょっと変わってきているのですが、90年代と今世紀に入ってから建設ブームがあったのです。結局、ヨーロッパ全体、特にデンマークには、失業問題とは逆に、労働者が非常に足りなかった時期がつい最近まであったのです。し
たがって、東ヨーロッパ、いちばん近い東ドイツとか、あるいはもっと有力なポーランドから、たくさんの建設関係の労働者がデンマークに入ってきているのです。これは、デンマークの労働市場の中ではかなり大きな問題になっているのです。このポーランドから来る労働者たちの給料は、デンマークで同じ建設の仕事をしている労働者に比べれば低い、割合に低い。これ、どうしてできるか。組合がずっと反対しているのです。組合は、ずっとその仕事場の前でデモ、プラカードを持って反対運動をしているのです。
ただ、そのポーランドから来ている労働者は派遣労働者です。経営者はポーランドにいるのです。ポーランドにその派遣会社がありますので、結局、派遣労働者としてなっているわけです。この有期の法律には含まれていないので、大きな問題になっています。デンマークの組合にも入っていないので、ほかのデンマークの労働者は大変反対運動をしています。いまのところでは、結局、建設ブームはちょっとダウンになったところになりましたので、現在どのようになっているかわからないのですが。でも、これは、直接この有期契約とは関係ないのです。この法律が出来ても、穴がいっぱい出てくるだろうと思うのです。デンマークの資料があまりないのですが、あとでデンマークの労働市場についての何か質問があれば、できる範囲には返事をしたいと思います。
○鎌田座長 ありがとうございました。続きまして、韓国の法制及び実態についてのご報告をいただきます。本日は、労働政策研究・研修機構から呉学殊先生にお越しいただいております。呉先生、お忙しいところ、どうもありがとうございます。それでは、ご説明をお願いいたします。
○呉氏 まず、遅れまして大変ご迷惑をおかけいたしました。心よりお詫び申し上げます。韓国では2年前、即ち、2007年7月1日から施行されたいわゆる非正規労働者保護関連法が出来まして、大きな変化があります。その関連法は3つの法律によって構成されています。1つが「期間制及び短時間労働者保護等に関する法律」。これは制定法です。派遣労働者の保護規定も入りましたので、派遣法が改正され、また差別是正を取り扱うのが労働委員会ですので、労働委員会法も改正されました。その3つの法律が改正されて、有期労働者について大きな規制を加えるという措置がとられました。それにつきまして、簡単にご紹介申し上げたいと思います。
まず法制の概要です。契約期間は、実質上は2年以下、形式上は、期間の制限はありません。期間が2年を超えますと、期間の定めのない労働契約を締結したとみなされます。いわゆるみなし規定です。従来、労働基準法では1年を超過して労働契約を定めてはいけないという法律がありましたが、非正規労働者保護関連法の施行に合わせまして、その有効期限を設定いたしました。即ち、2007年7月1日からその規定は無効になっています。したがって、現在、労働契約期間を規制する法律規定は、原則、ありません。また、更新回数は、特に定めがありません。
次、契約締結事由の制限ですが、基本的に事由制限はありません。その保護関連法の導入に当たってかなり議論がありましたが、労働側は、契約締結事由制限を行うべきだとかなり要求をしたのですが、結局、入れることはせずに今に至っています。しかし、派遣労働者に限っては、それに当たる人が少ないと思いますが、派遣対象業務がいま32業務ありますが、それ以外の場合に次のような事由があれば派遣が許されるという、非常に限られたものがあります。即ち、出産・疾病・負傷等で欠員が生じた場合、または、一時的・間欠的に労働力を確保する必要がある場合、その事由があるのみ派遣対象業務ではないところに派遣が許されているということです。
次、雇止めの規制です。雇用期間が2年以下であれば、原則、雇止めができると思います。しかし、それも、労働基準法第23条に当たるものでなければいけない。即ち、「使用者は、労働者を正当な理由なしに解雇、休職、停職、転職、減俸、そのほかの懲罰をしてはならない」という法律がありますが、2年以下であっても、正当な理由なしに解雇した場合には無効になるわけですが、どちらかと言いますと、今回の非正規労働者保護関連法の導入に伴いまして、2年以下であれば自由に雇止めできるのではないかという見方が強いのが現状です。
次、差別的取扱いの禁止です。使用者は、期間制労働者または短時間労働者、また派遣労働者であることを理由に、当該事業または事業場で同種または類似業務に従事している期間の定めのない雇用契約を締結した労働者、いわゆる正社員に比べまして、差別的処遇をしてはならないという規定があります。差別されたと思う労働者は是正を申請することができますが、それは労働委員会に申請することになっていますが、3カ月以内にすることになっています。差別したかどうかという立証の責任は使用者側にあります。労働委員会が是正命令を行った場合、それを受けた使用者は、その命令に不服の場合には10日以内に中労委に再審を申請することができますが、不服しないでその命令を正当な理由なく履行しない場合には、1千万円以下の、1円に10ウォンというレートですが、過怠料を賦課されることになっています。
無期契約への転換です。2年を超えていわゆる非正規労働者を使用し続ければ正社員、契約の定めのない雇用契約を締結したとみなすという規定がありますが、それに伴って、2年以上になれば、無期契約に転換されるということになっています。また、非正規労働者優先的雇用というものがあります。使用者は、期間の定めのない労働契約を締結して新たに労働者を雇用する場合、即ち、正社員を雇用する場合、当該事業または事業場の同種または類似業務に従事する期間制労働者を優先的に雇用するように努めなければならないということで、優先的雇用規定があります。
裁判例です。期間の定めのある雇用契約であっても、自動反復更新により長期間にわたって勤められた場合に、その期間の定めがただ形式に過ぎないとみなされる場合には、正当な理由がなければいけないということになっています。その期間の定めが形式的かどうかということを判断するに当たりまして判例で定着しているものは、契約締結の動機・経緯、期間を定めた目的、採用当時の当事者の真の意思、労働期間の定めの調書変更回数、同種労働契約の締結方式に関する慣行、労働者保護規定等を総合的に考慮する、というのが判例上、かなり定着していると言えます。
次、有期労働契約の実態です。具体的なことにつきましては、資料として、韓国労働政策の動向と非正規労働者というテーマで、去年、社会政策学会で発表したものがあります。来月、本になる予定ですが、ゲラの段階でちょっと手書きが入って見づらいところがありますが、ご参考にしていただければと思います。非正規労働者保護関連法がなぜ導入されたのか、導入によってどういう変化があったのか、また、それに対して政労使の対応がどうであったのかなどについて書かせていただいたものです。
3頁に戻っていただきまして、有期労働契約の実態についてご報告をいたします。図表1です。韓国では、非正規労働者の割合を言うときに2つの政府の統計があります。1つが従来から行われてきた臨時労働者と日雇労働者を合わせた人を非正規労働者とみなすもの。それと、2001年から労働力調査に付加調査を行いまして、いわゆる雇用形態別の調査を行っております。それは、便宜上、私は新分類と書かせていただきましたが、その2つの統計があります。臨時労働者とは、1カ月以上1年以下の雇用契約で結ばれた労働者です。日雇労働者とは、1カ月未満の雇用契約を結んだ労働者です。新分類ですが、真ん中から下ですが、期間制労働者、いわゆる契約社員ですが、それと時間制労働者、即ちパ
ートタイマー、それと非典型労働者の合計です。日本に比べましていわゆる特殊雇用という、ゴルフ場のキャディーとか持込みトラック運転手などがその非典型労働者、いわゆる非正規労働者に区分されている、それと、下請労働者であれば、いわゆる正社員であっても非正規労働者として分類されることが多いというのがちょっと違うかなと思っております。
図表1をご覧いただきますと、いわゆる従来からの統計、即ち、臨時プラス日雇いは、いちばん高かったのが2000年で、52%でした。その後、徐々に減っています。それと、新分類です。ちょっと見づらいのですが、2005年までずっと上がっているのですが、その後、若干減っているという傾向が見られますが、今年3月、その付加調査を行った統計によりますと、33.4%になっています。
次、4頁、図表2です。具体的に非正規労働者の内訳ですが、ほとんど、6割以上がいわゆる契約社員です。パート労働者は、非正規労働者の中で2割。特殊雇用形態のものが11%。派遣労働者は非常に少ない割合で、3%前後になっています。
図表3は、正社員に比べると、非正規労働者の賃金がどのぐらいなのかということを示しています。非正規労働者全体で見ますと、正社員の賃金の約3割の前半を推移していると言えます。非正規労働者の中でもいわゆる契約社員が最も多く、パート労働者が低い。もともと1カ月の賃金を比較したもので、労働時間が短いということの影響がかなり出ていると言えます。
次、5頁、図表4です。社会保障の加入率、また賃金以外の労働条件の格差は、ご覧のとおりです。
最後ですが、4番、非正規労働者保護関連法の施行と改正の動きです。先ほど申し上げましたが、同法が施行されたのが2007年7月1日ですが、今年7月1日で2年を迎えました。雇用期間が2年を超えている契約社員やパートタイマーの場合には、期間の定めのない雇用への転換をしなければなりませんし、派遣労働者の場合には、直接雇用を義務づけられました。その2年が経過することで企業などの動向がかなり注目を集めましたが、韓国の労働省が今月1日から14日にかけて行った調査をご紹介申し上げます。回答があった事業所の中で約28.1%が期間の定めのない雇用に転換した、残りの71.9%の労働者が解雇されたと調査されています。そのほか、韓国にはナショナルセンターが2つあります
が、そのうちの1つ、韓国労総というナショナルセンターがありますが、そのナショナルセンターが今月15日から何日にかけまして傘下労働組合に調査をいたしましたところ、期間の定めのない雇用に転換したのが68.4%と調査されています。そこは労働組合がある事業所ですので、いわゆる期間の定めのない雇用への転換率が高かったのではないかと思います。
韓国の政府は、期間の定めのない雇用への転換を義務づける2年という期間を4年に延長する法案を今年4月に国会に提出いたしました。その背景ですが、急激な経済危機の中で、企業が期間の定めのない雇用に転換せずに非正規労働者を大量に解雇するのではないかというおそれがあったからです。韓国労働省は、約100万人ぐらい解雇されるのではないかと予想したわけですが、そういう大量解雇を防ぎたいというねらいがあったわけです。しかし、国会で与野党の調整が進まず、現在、国会係留中です。労働省は、非正規労働者から失業者が出ましたら、彼らに対して、失業手当の迅速な支給、再就職支援の強化、職業訓練を通じた能力開発の支援、生計費の支援などの取組みを強めるとともに、正社員への転換を促すために、転換企業に対しては社会保険料の減免、法人税の減免などの政策をとっていく方針です。いまでも国会でさまざまな動きがありますが、これからも非常に注目されるのではないかと思います。
○鎌田座長 ありがとうございました。これから質疑に入りたいと思うのですが、一通りお話を聞いて長丁場になりますので、一度、ここで休憩をとりたいと思いますが、よろしいでしょうか。いま、私の手元では53分になるところですので、7時再開ということにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。では、7時再開ということで、一旦休憩といたします。
(休憩)
○鎌田座長 ちょうど7時となりましたので、質疑に入りたいと思います。これまでのご説明について、ご質問等がありましたらお願いいたします。どなたでも結構ですので、どうぞよろしくお願いします。
○藤村委員 奥田先生にお伺いしますが、私の記憶ではフランスは法定福利費が非常に高くて、正社員を雇うと、とても企業負担が大きい。それが正社員雇用が進まない1つの理由だという理解をしています。この有期雇用の人たちというのは社会保険部分というのはどんな扱いになっているのでしょうか。
○奥田委員 社会保険部分といいますと、具体的には。
○藤村委員 全く同じ、日本で言うと雇用保険とか年金という部分ですよね。
○奥田委員 年金の適用について具体的に調べたわけではないですが、制度として有期契約の労働者とそれ以外の労働者、正社員を区別するということは、これまであまり見たことがないので、基本的には同様の権利で考えられていると理解しています。
○橋本委員 いまのご質問に関連しまして、おそらく社会保険の被保険者となるための要件で、あまりにも短い、短時間労働者を除くという規定はドイツにあるので、たぶんそういう趣旨かと。
○奥田委員 条件に入ってこないということかもしれないですね。すみません。その辺は確認していないので、申し訳ないです。
○藤村委員 わかりました。ありがとうございます。
○佐藤委員 よろしいですか。呉さんの韓国ので、図表1のデータの見方ですが、57%とか69%とあるのは、非正規の分類が2つありますが、基本的には分母は何ですか。全雇用者、全労働者ですか。
○呉氏 全労働者に占める非正規労働者の割合です。
○佐藤委員 そうだとすると、その約半分とか7割ぐらいが非正規ということですね。
○呉氏 そうです。60%以上になっているのは、新分類に基づいて女性の中の非正規労働者の割合です。
○佐藤委員 すべての女性が100となって分母で、その中の働き方を見て非正規の者が60何パーセントとか。
○呉氏 そうです。
○佐藤委員 これは、全部女性の中でということですか。
○呉氏 いいえ、その真ん中にあるもの。
○佐藤委員 それ以外の左側の灰色の50%というのは、すべての男女込みが100ですよね。
○呉氏 2001年から棒が3つありますよね。左の棒が臨時プラス日雇労働者、従来からの統計で、真ん中が女性、いちばん右側が新分類です。
○佐藤委員 要は、第1分類のいちばん左側が例えば2001年は50%になっているけれども、分母は男女込みのオールワーカーが100ですね。
○呉氏 はい。
○佐藤委員 では、オールワーカーの半分が非正規ですか。
○呉氏 はい。
○佐藤委員 それでいくと、日本は大体約3分の1と言っているわけですね。ざっと半分ということですね。
○呉氏 そうです。
○佐藤委員 ありがとうございました。
もう1つ。私は労働法専門ではないので非常にシンプルな質問になりますが、聞いた感じでいうと、アメリカを除くと有期契約に関する法律があってというのは、たぶんどこもそうです。あとは期間を決めている場合には、つまり有期で定めた場合には期間を定めるというのもあって、その場合に、間違っていたら直してもらいたいのですが、フランスは18カ月の約1年半、イギリスは4年、アメリカはちょっと外して、デンマークはどうなのでしょうか。有期で定めた場合には何年になりますか。
○リンドブラッド氏 ないと思います。ただ、何回も繰り返すのは多すぎるために作った法律なのですが、有期の期間は聞いたことがないです。ただ1つだけ聞いたのは、研究期間は大学は大体4年です。2年するから、それを1回延ばすことができます。これは大学だけではない。例えばデンマークの大使館の中では、科学技術の専門家が1人います。1回2期しかできないのです。3期も延ばすことはできない。ただ、これと直接関係があるのか。これは法律の前でも駄目だったのです。直接これができてから、そうなったわけではないです。前からそうだった。その大学の先生の期間も前からそうだったと思います。何回もそれを繰り返す。何か大きな問題になっているような感じがしないのです。
○佐藤委員 事件も少ないという話ですか。
○リンドブラッド氏 少ないです。
○佐藤委員 呉さん、韓国は2年ですか。
○呉氏 実質上は2年。形式的にはありません。
○佐藤委員 ドイツは何年でしょうか。
○橋本委員 条文の14条の2項で、正当事由がない労働契約については2年間です。1項の正当事由がある場合は何回更新してもいいし、何年でも正当事由さえあればいいと。
○佐藤委員 ありがとうございました。
○鎌田座長 フランスとドイツというのは、有期については似たような法制度なのかなと思ったのですが、いま奥田先生と橋本先生の話を聞いて、少し違うのかもしれないという感じがしました。それで確認の意味で少しお聞きしますが、一応契約締結事由の制限というのはドイツでもありますが、契約締結事由以外で結ばれた場合について何か争うことはあまりないと言われました。つまり、雇止めのところで議論になるのがほとんどだということですよね。そういう理解でよろしいですか。
○橋本委員 それでいいと思います。
○鎌田座長 例えば、契約締結事由について、客観的な理由がないと言うのですからないと思いますが、なかった場合の違法に対する効果を定めた規定もないということですか。それはありますか。
○橋本委員 あります。判例法理がありまして、それが条文にもなっていまして、16条にあります。効果はフランスと同じかと思ったのですが、期間の定めなく締結されたものとみなされることになります。
○鎌田座長 期間の設定が無効となった場合。
○橋本委員 はい。
○鎌田座長 つまり争い方として、有期で雇われた。それで雇止めをされた場合に、労働者として争うのは、その期間の定めが期間設定に問題があったのだという争い方になるわけですか。
○橋本委員 そうです。
○鎌田座長 そして、それが正しくない、違法だということになると、期間の定めなく締結されたものとみなされるとなるわけですね。
○橋本委員 はい。でも、韓国も同じなのかなと。呉先生のご報告を聞いて、レジュメの2頁の2で、正当な理由が必要だと。反復更新された契約について、正当な理由がなければならないという大法院の判例が引用されていますが、ドイツ的な理解なのかなと思いました。
○鎌田座長 さらにしつこく聞いて申し訳ないですが、そもそも契約締結事由の制限の規定を導入した趣旨は、1960年のドイツ連邦労働裁判所の大法廷判決があって、この大法廷判決の趣旨というのは解雇制限法、いわゆる解雇規制を潜脱するというところに問題があるというご趣旨ですよね。
○橋本委員 そうです。
○鎌田座長 これは奥田先生に確認したいのですが、フランスはどうもそれとは少し違うような趣旨に聞こえたのです。どういうことかというと、そもそもフランス法に関しては、無期原則というのが明文になるのですか。無期で締結すべきだと。期間の定めというのは、原則「ない」という考え方ですね。
○奥田委員 労働契約は期間の定めなく締結するという条文があります。
○鎌田座長 そういったものは、ドイツには。
○橋本委員 ないです。私も奥田先生のお話を聞いて、ドイツと違うなと思いました。
○鎌田座長 そうすると、ドイツは判例法理を基にして制定法に導入されたというのは、解雇規制の潜脱をなくすために有期についての一定の規制が入ったわけですが、フランスに関してはそもそも解雇潜脱の前に、期間の定めを置くこと自体を認めないという考え方ですね。
○奥田委員 ただ、法律の経緯ということで言いますと、当初、有期というのは使用者にとって非常に縛りがあるもの、保障しなければいけないもので、解雇に対する規制がないときには期間の定めがない契約のほうが解約しやすかった。ただ、その解雇に対していろいろ規制がかかってきたときに、有期のほうに移行していったというところがありますので、そういう意味で言うと解雇の潜脱というのを避けるというのは言われています。
○鎌田座長 それは、実態としてはそうだと思います。
○奥田委員 でも、基本的には同じような考え方はあると思います。
○鎌田座長 ただ、いま言った労働契約から言ったら基本的に期間が曖昧である場合というか、明確でない場合には、無期であるべきだという考え方ですね。
○奥田委員 はい。
○鎌田座長 それは、いつごろできた規定ですか。昔からそうですか。アバウトな質問で申し訳ないですが。
○奥田委員 調べればわかります。
○鎌田座長 要するに、雇用契約に関する基本理念ですかね。ドイツは、おそらく先ほど言ったようにまず解雇規制法があって、解雇規制法の潜脱を許さないという判例法理があって、それをいわば実体法化するということだから、基本的に雇止め規制なのですね。ところが、フランスは昔から、それがそもそも期間の定めを置くことについての例外規定というか、原則は無期なのだということが出発点になっているという。
○奥田委員 その条文が何年に入ったかというのは確かめないとわからないですが、1980年代にいろいろと政権交代があったときに、1982年に現在のような有期契約を規制するような法制度の流れになりました。しかし、1986年の政権交代のときにはこういう利用事由で制限するのではなくて、むしろ利用してはいけないもので制限する、ネガティブかポジティブかというふうな有期契約の考え方の転換もありまして、1990年の法制で、現在のもとの有期契約の利用事由を規制するというふうにもう一度戻っていますので、従来からずっとそういう考え方が当初からあってということではないと思います。ただ、現在の1990年以降の法制度のもとでは無期契約が原則で、だから有期が利用事由として制限されるというふうに、1990年以降は確実にそうだと思いますが、それ以前からそういう考え方のも
とでだったかというと、そうではない考え方の法制に変わったときもありますので、その辺りは一応1990年の、現在の労働法典の内容を形成した1990年法以降だと理解していただいたほうが正確ではないかと思います。
○鎌田座長 実質の意味では解雇規制があって、それを潜脱するということをどう防止するかということが、事実上非常に大きな問題ということですよね。
○奥田委員 はい。
○富田調査官 事実関係について、奥田先生が書かれたJILPTの報告書にいまのことが書いてあって、期間の定めのない契約が原則であるというのが明文化されたのが、1982年2月5日のオルドナンスだと書かれていますから、ミッテラン政権になって、期間の定めのない契約が原則というのが明文化されたということです。
○鎌田座長 それと同時に、利用事由をいまのような例示列挙に上げられたのは、ほぼ同じ時期ですね。
○奥田委員 その法律の中でということですね。それはそうです。でも、先ほど申し上げたみたいに一旦1980年代の半ばで変わっていますが、それがまた1991年に戻るということです。
○鎌田座長 わかりました。効果の面についてもう1つ。更新規制がなされる中で、利用事由限定についても同じかもしれませんが、無期契約のみなし規定というのは効果的にはフランスもドイツも同じですか。
○橋本委員 同じだと思います。
○鎌田座長 転換請求権とか、そういうのは。
○橋本委員 違います。転換請求権ではなくて、初めからみなしです。
○奥田委員 ただ、それは労働者が請求してということですが。
○鎌田座長 そうです。転換請求権だと直ちに無期になるわけではなくて、そこに法的なワンクッションが出てきますよね。それがなくて、いまはみなしになっているわけですね。
○奥田委員 はい。
○鎌田座長 もう1つだけ奥田先生にお聞きしますが、例の契約終了手当というのは、ちょっと違う趣旨なのだということでしたよね。
○奥田委員 違う趣旨というか、有期契約の違法性を前提とした賠償金のようなものではなくて、有期契約が終了するときの労働者の不安定性をカバーするための手当で、賠償金的なものではないという意味で違う意味です。
○鎌田座長 それは非常に形式論でいえば、もちろん正当な状態で利用事由限定を外すとか違法だということではなくて、両当事者が合意して期間が来て、更新の場合であっても満了して終了することを考えれば、いわゆる合意原則で考えれば、不安定だからといって手当を出すという理屈には簡単にはならないと思います。事実上不安定だとは思うけれども、にもかかわらず、そういったものの手当を保障するというのは、何か理由があったのでしょうか。政策的なものですかね。
○奥田委員 それはそうだと思います。確かにおっしゃるように、合意に基づいて決めたことだから、それで終了するのが不安定と言えるかどうかという議論はあり得るかとは思いますが、政策的と言われれば政策的なものだと思いますね。
○鎌田座長 これは解雇みたいな発想で、解雇予告というか解雇手当的な発想ですか。
○奥田委員 ただ、解雇予告と言うと、当初から予定していないものが解雇として出てきたときに、30日間の準備期間という意味合いがありますよね。そういうことを言うと、若干は違うかもしれません。もっとも、このケースでも有期契約で従事していた者に対して、その職での期間の定めのない契約で、それが継続されるのであれば全くこの手当の対象にはもちろんなりませんし、そういう提案が使用者からあったのに労働者が拒否した場合は、状態としては同じような不安定な状態にはなり得るでしょうけれども、そういう場合にも対象にはなりませんので、基本的には労働者の側での終了ということを前提としない手当と考えると、すべてをカバーするわけではない。
○鎌田座長 質問を換えます。この手当の額がいくらになりますか。
○奥田委員 契約期間中に支払われた税込総報酬の10%というのが、法律上の基本です。
○鎌田座長 契約期間中というのは、例えば1年契約を結んで、1年ごとに3年更新した場合はどうなりますか。それは1年の10%ですか。
○奥田委員 3年更新というのはないですが、例えば18カ月の間で12カ月だけだったらそれが契約期間ですし、更新して18カ月までいくと、それが契約期間ということにはなります。
○鎌田座長 要するに、続いた間の10%ということですか。
○奥田委員 そうですね。ただ、続いた間といっても、例えば先ほど連続というのが出てきましたよね。連続という場合だったら、元の契約と次の契約は別ですので、一旦終了した契約自体が契約期間になります。あとのほうと全部引っ括めてということにはならないです。
○鎌田座長 わかりました。とりあえず、私のほうはありがとうございます。
○山川委員 いまの点に若干関連しますが、フランスとドイツを比較すると、フランスは締結事由の制限と利用期間の制限を「かつ」という形でかけていて、ドイツの場合は「又は」という形でかけているという理解でよろしいでしょうか。イギリスは期間制限のみをかけていて、締結事由は特に制限していないということになるのですか。
○有田氏 はい。ただ先ほど触れましたように、労働協約又は労使協定によって、それを定めることはできるというふうになっていまして、実際にそういう個別の協約ないし協定が結ばれているかどうかはわかりませんが、先ほどお示ししましたようなナショナルセンターレベルでの枠組協定みたいなものがあって、その中にはそういう条項が見られますので、ひょっとするとそれを受けて、個別協定や協約が結ばれている可能性があるとは思います。
○山川委員 韓国は締結事由の制限はないけれども、期間制限が2年という形。
○呉氏 形式的にはないです。2007年6月30日までは、1年以上の雇用契約はできないことになっていますが、非正規労働者保護関連法が7月1日から施行されましたので、そこでは2年以上雇い続ければ、期間の定めのない契約を締結したというみなし規定がありますので、それに伴って労働基準法で、1年以上契約してはいけないということが無効になったのです。私も法律だけを見るとわからないので、前の労働基準課長に電話をして確認しましたら、それは無効になって、労働契約期間の規定は現在ないと確認をいたしました。
○山川委員 デンマークはやや特殊で、リニューアルはしてはいけないという原則はあるけれども、別に締結事由とか期間の定めの制度もないという。
○リンドブラッド氏 ないと思います。いまこれを見ると、ずっと「契約」という言葉を使っていますが、ただデンマークの法律は契約という言葉は「契約しよう」と考える。法律の中で有期雇用条件。デンマークの労働者の中で、契約しようと思っているのは、たぶん有期契約で働いている人だけだと思います。例えば、12月にコペンハーゲンでは気候問題の会議があります、この3カ月の間には。こういうようなことが書いてあるけれども、ほかの人は書いていない。
それから、フランスとドイツに比べれば、デンマークの保険のシステムが随分違います。保険は会社ではないです。保険は国。第三者になっています。だから、1つの会社からクビになった場合には、健康保険とか労働保険に関する問題は起こらないです。雇用関係のない所からお金が出てきます。
もう1つは公務員。デンマークの公務員の大部分は、ある意味では契約です。自分の組合の規制によって給料をもらっています。デンマークの外務省の中にも、4つぐらいの組合が入っています。本当の公務員、国の年金をもらう権利を持っているのは、課長より上だけです。少ないです。消防署、警察はまた別ですが、例えば官庁あるいは地方政府で働いている公務員のほとんどは、正社員ではないです。自分の組合が決めた金額をもらうわけです。例えばエンジニアであれば、コペンハーゲン市の水道局に働いている技術者の人たちの給料は、組合から決まった給料をもらう。そこから交渉ができますが、基本的にはそういうふうになっています。
○山川委員 いまの関係で、そうするとドイツは「又は」という規制だとすると、先ほどの連邦労働裁判所の判決が現在どうなるかということで、先ほどの条文で期間設定が無効になった場合は期間の定めもなく、締結されたものとみなされるということは、解雇制限法がかかって正当な理由がない限り、解雇は許されないことになりますが、締結事由が正当な理由がある場合においては無効にならないということになって、したがって雇止めの合理的な理由が必要である。解雇として扱われて、正当な理由が必要であるという判例法理は、もうかからないということになるのですか。
○橋本委員 はい。その正当事由が要らない有期契約は、結局2年間までしか締結できないので。
○山川委員 言い間違えましたが、正当理由がある契約については雇止めの合理的理由も、16条で無効にならないために要らないということでしょうか。つまり、16条は期間設定が無効になった場合と書いてあるので、締結事由がある、14条の正当化される場合には無効にならないわけですね。
○橋本委員 それで紛争になるのは、この正当事由がなかったときに期間設定が無効となるので、期間がなかったということになります。
○山川委員 したがって、正当な事由がある場合には無効にならないので、16条はかからないということですか。
○橋本委員 そうです。雇止めで終わりということになります。
○山川委員 それは、ある意味では日本よりも規制が弱いことになるのでしょうか。
○橋本委員 私の理解では、正当事由があるか、ないかの判断が、日本の雇止めの法律とよく似ていると思ったのです。
○山川委員 ただ、最初の期間設定の正当性ですので、雇止めの正当性というのは別ですよね。
○橋本委員 雇止めのときで何を見るかというと、雇止めされるまで何度も契約を更新しているわけで、最後の契約を締結したときにこれらの正当事由があったかどうかというのが裁判所によって審査されます。例えば、一時的な労働需要(14条1項1号)だと使用者は言っていますが、結局何度も更新されていて、最後の契約締結のときにはもう何度も更新されたという実態が過去にあるわけで、そうすると一時的な労働需要だという理由は正当化されないという話です。
○山川委員 最初の契約設定時には、仮に正当な理由があったとしても、更新拒絶直前の契約のときに設定の正当性というか正当化理由が必要であって、雇止めが問題になるときにはそれがない場合が多いと。
○橋本委員 そうです。
○山川委員 ありがとうございました。
○鎌田座長 更新の正当性を実質ね。
○橋本委員 そうです。
○鎌田座長 いまのでわかりました。そういう意味では、フランスも同じですかね。最初は18カ月しかないので、その間はたくさん更新することもないとは思いますが、争いになったときには、最初は利用事由限定についてはオーケーだったけれども、直前の更新についてはないという争い方になるわけですか。
○奥田委員 更新が1回ですが、最初にその利用事由が正当かどうかということを確認しますが、更新の段階でも利用事由があるかどうかということを証明しなければいけないので、その段階でなかったことになれば同じようなことになると思います。
○鎌田座長 更新は1回ですか。
○奥田委員 更新は18カ月の中で1回です。
○鎌田座長 更新規制もあるし、期間の上限規制もあるという格好になっているわけですね。
○奥田委員 そうです。1回の更新を入れて18カ月ということですので、もし最初の段階で利用事由が正当だったとしても、もちろん更新の段階でも正当でないと、一応更新できないという形にはなっていますが、問題になるとすればそこの部分になります。でも、実際には最初から利用事由として正当性がなかったという争いはもちろんあります。
○藤村委員 素朴な疑問ですが、今日はEU加盟国が4つ。こんなに違うのかと。例えばEUはどんどん東に拡大していって、先ほどおっしゃったポーランドの会社が派遣みたいにして、建設労働者をたくさん入れてきている。たぶん、ドイツも多いと思います。そうなると、ドイツ国内あるいはデンマーク国内のそれぞれの国の中の法律だけでは統制しきれないものが出てきて、それはEUでEU指令みたいなものが出るのでしょうけれども、この有期契約についてのEU指令とか、これからどうなっていくのかなというのがとても興味があります。何かいまはバラバラで、このまま行ってしまうのか、あるいはある種の統一性を持つ方向に行くのかはいかがでしょうか。
○リンドブラッド氏 いまのデンマークの場合では、特にポーランドからたくさんの建設関係の労働者が出る場合には、給料賃金以外の法律は一緒です。例えば、安全とか病気になったときは変わらないですが、賃金は違います。それは、いつか同じようになるかならないかはわからないけれども、この人たちはポーランド並みの給料をもらっています。ポーランドの会社から派遣されていますから、彼らのデンマークでもらった給料はポーランドに比べれば、非常に高いです。結局いちばん理想的なのは、ヨーロッパ全体の労働者が同じ給料をもらうこと。それはあり得ないです。だから、賃金の面ではまだまだです。
○奥田委員 資料を見ますと、1999年に有期契約のEU指令が出ていますけれども、フランスとの関係ではこの指令自体が、1990年のフランス法がある程度ベースになっていると言われていますから、もちろん解釈では最近たくさん出てきていますが、それほど1999年指令の影響というのはないと思います。それが、どの程度他国に国内法化が要求されているかということだと思います。
○橋本委員 指令を見ると、4条で差別禁止原則があって、これはどこでも立法化されたと思いますが、5条でいま問題になっている期間とか更新の規制がありますが、濫用防止措置という規定になっていて、「以下の措置のいずれか又は複数」という形で、かなり幅のある書き方で、各国に任されているのかなと思いました。更新を正当化する客観的事由とか最長期間という規制が挙がっていますが、いずれか又はという形です。
○藤村委員 勝手に決めていいよという感じですね。
○鎌田座長 韓国の呉さんにお聞きしたいのですが、「2年を超えると期間の定めのない労働契約を締結したものとみなす」ということですが、まず確認ですが、更新を含め2年を超えるとということですね。
○呉氏 そうです。
○鎌田座長 利用事由限定というか、正当な利用事由があるか、ないかということは議論して何もないわけですよね。そうするといかなる場合であっても、2年が経てば期間の定めのない労働契約になるのだということになりますよね。そうすると、例えば建設なんかで2年で建設工事が終わる予定だった。ところが、どうしても遅れてしまって2年半になりますよという場合にはどうなのですか。これも無期になってしまうのですか。
○呉氏 事業が明確に期間を定めてその事業を行う場合には、その事業が終了するまで例えば3年であれば、3年間雇う間、2年を超えたから正社員に切り替えるというものではなくて、例外規定がありまして、明確な期間設定で事業を行う場合には例外になっております。例えば、ある建設現場でこの工事は3年かかる。3年の期間を定めて、労働者を採用しますよね。そういう期間が明確に定められた事業については、2年を超えたということで正社員に切り替える必要はありません。
○鎌田座長 そうすると、特定のプロジェクトについては2年を超えて終わる場合には、それでもいいということになっているわけですね。
○呉氏 そうです。
○鎌田座長 別に建設だけではないですよね。
○呉氏 だけではございません。
○鎌田座長 そうすると、いま私が最初に申しましたような、2年の予定で半年延びましたよというのは駄目なのですね。
○呉氏 駄目です。
○鎌田座長 その場合、延びる理由が明確ですよね。要するに工事が遅れてしまったので、でも半年が経てば、これは終わりますよということも明確ですと。それも駄目なのですね。
○呉氏 それは明確にここに示されていないのです。例外規定を申し上げますと、事業の完了又は特定な業務の完成に必要な期間を定めた場合には、2年以上雇い続ければ期間の定めのない雇用にみなすという規定から除外されております。例外規定になっております。
○鎌田座長 そうすると、かなりわかりやすいというか、極めて形式的な処理が可能となると思いますが、例えばヨーロッパを見ますと本来有期はするべきではないとしても、さまざまな形で正当な理由がある場合にという工夫がなされているわけですよね。ところが、韓国ではすべて期間の問題で集約しているわけですよね、いまは例外的なものもありましたが。そういう制度を導入した趣旨というのをもしご存じだったら教えていただきたいです。
○呉氏 私の論文をご覧いただきたいと思いますが、日本に比べますと非正規労働者問題が非常に深刻で、例えば男性でも非正規労働者がものすごく多いわけです。30歳、40歳でも非正規労働者、契約社員に限ってみても3割ぐらいいまして、彼らの仕事が正社員に比べてどのぐらい違うかといえば、それほど違わない。なのに、処遇はかなりの格差をつけられているという問題がありまして、それに対して労働運動という側面で是正を求めた運動が繰り広げられまして、かなり社会的にクローズアップされまして、その問題を解決しないといけないということになりました。その際に、例えば5人もの非正規労働者が自殺をする。その際に、非正規労働者を撤廃しなさい、差別を撤廃しなさいということを叫びながら自殺をすることがものすごく社会にインパクトを与えまして、それでこの非正規労働者問題を解決しなければいけないということで、非正規労働者保護法というものができるようになったのです。その背景には、前の10年間の政権が民主主義、日本で例えられるかどうかは知りませんが民主党系の政党の大統領だったので、それが可能だったのではないかなという気がいたします。
○鎌田座長 全くよくわかっていないので、本当に初歩的なことをお聞きしますが、有期の場合でもいま言ったようにプロジェクトが決まっている場合とか、あるいは更新する場合でも必要な場合もあるという経営的な観点もあるわけですよね。ただ、それが無制限に延びるというのはまずいでしょうというふうにも考えられるわけですが、そうした場合に2年という期間ですべてを処理してしまおうと考えたのは、有期の場合で例えば更新を含めて、もう少し長期間有期の人たちを使わなければいけない理由がある場合もあると思います。そういった議論というのは特になかったのですか。
○呉氏 ありました。当時この期間設定の際に、韓国労働省は3年というものを考えたのです。それが一般的に、契約社員の勤続年数が大体3年であるということで3年の案を出したのですが、労働側はこれは使用事由制限を行うべきだということで、強行にそういうことを定めることに対して反対したし、経営者側はこの規制はあまりにも強すぎるということで、それ以上に延ばすべきだという労使の対立があったわけです。その中で、当初韓国労働省は3年という案を出したのですが、労働側に押し切られる形で3年が2年になったというのが経緯です。
○阿部委員 韓国では、2年を超えて期限の定めのない雇用に移行しているのが28.何パーセントという調査があった。奥田先生のペーパーを見ると、フランスでは同一企業で期限の定めのない雇用に移行しているかどうかは別として、有期雇用契約者の3分の1は期限の定めのない雇用に移行しているということがあって、フランスではそれが3分の1であっても、有期雇用契約が失業しないとか、次の仕事につながるという意味でポジティブに評価されているように読めたのですが。
○奥田委員 それは報告書ですかね。
○阿部委員 同じ3分の1なのです。そこの評価の違いというのが、それぞれの国によって違うことがあるのはなぜかということと、ドイツ、フランス、イギリスの3カ国に雇止め規制というのがあったときに、韓国のような問題をどのように、つまり雇止め規制があることによって失業が生まれてしまうことに関する評価というのは、どんな議論があったのかというのが興味があります。
○橋本委員 有期契約の規制が厳しいのではないかという議論でしょうか。
○阿部委員 1年半が過ぎたときに、例えば韓国であればそれをいま議論しているそうですが、2年を4年にするという議論をしているわけですよね。そういう議論はないのですか。
○橋本委員 正当事由のない有期契約が1985年に導入された目的は、阿部先生のおっしゃるとおり、失業対策でした。これに対して、労働側は、当時は大きな規制緩和だと批判しましたが、いま、特にこれらの規制について、大きな議論はないと認識しています。結局、正当事由のない有期契約の要件が一貫して少しずつ緩和されているにもかかわらず、雇用創出効果はあまり認められていない、ということが、最近ではあまり議論されていない理由ではないかと推測しています。
○有田氏 イギリスは私の調べが足らなくて、はっきりしないところもありますが、法律の構造上、基本的に有期であっても派遣の形の人は適用されませんし、先ほどemployeeということでカジュアルワーカーなども適用されませんので、もともと適用対象になる有期契約の人の範囲が非常に狭いこと、4年という長さ、上限の設定があること、それから、労働者の側がどういうふうに考えるかにもよりますが、協約や労使協定で修正可能だということ、それらをトータルにして考えるとデンマークでおっしゃられたように、インパクトがそんなに大きくなかったのではないか。だから、裁判例も一部通常のというか、我々が普通念頭に置いて考えるような一般的な民間企業のケースもありますが、多くが教員で、特に日本で言えば日本人学校みたいな所の有期の先生とか、大学の有期契約の先生の問題にかなり偏っているような感じがします。これは、一審の雇用審判所がリーガリスティックにならないようにということと、もともと先例拘束性の原則の範囲外なので、判例集というのが公刊されていませんので、そこまで下りるともっといろいろあるのでしょうけれども、法律審に上がってきたところ、判例集に載るところで検索をするとあまり出てこないことを見ると、インパクトはそれほど大きくないのかなと。そういう意味では、むしろいま法案が作られている派遣のほうの影響が大きいので、どちらかというとそちらのほうに。だから、かなり指令を作る段階からイギリスはずっと抵抗していて、やっと昨年採択されたということですから、イギリスはこの規則はもともと労働党政権がEUとの協調関係の中で、柔軟な労働市場と公正さとを両立し得るものとして、EUに軸足を移して立法政策を進める中で、当然国内法化がもう義務づけられていたわけですから、それを実行した。そのときによく言われるのが、最小限の国内法化、最低限のところでやるということで、先ほども出ましたような利用制限のところは基本的に入れなかったし、正当理由のところも具体的に列挙することもしなかった。そこは、労使で考えてくださいというような作りにしているところに、端的に現れているのではないかと思います。
○リンドブラッド氏 デンマークも大体同じです。それの影響で非常に限られています。
○奥田委員 先ほどの点で、いくつか申し上げますと、報告書の中で若干ポジティブに見えるかもしれないですが、あくまで失業状態が非常にひどくて、その中で正規雇用が見付けられるかどうかがまず前提にあったわけです。その正規雇用が見付けられない状況の中で、短期契約というのが一定の受皿になっていて、一定程度は正規雇用に結び付いているというのが、一応ここでの書かれていた元にしたペーパーの趣旨だと思います。実際には、有期契約は最初に資料で紹介していただいたように、非常に若者が多いとか低資格者の人が有期契約に就くことが多いので、そういうところで言いますと、そういう人をどういうふうに正社員化していくかのほうが現在のところでは政策の目的になってきています。ただ、最初少しおっしゃったような、有期の中でそれを緩和していってというのは、もちろ
ん最近有期契約をもう少し緩和していくべきだという要求は出ていますが、それが具体的に有期の中で緩和をしていって対応していくよりも、いかに正社員化を図るかということのほうが1つの方向性だと思いますので、その点だけお答えしておきたいと思います。
○山川委員 いまのお話との関係で、韓国が期間の定めのない雇用に移行するのに成功した率が28.1%で、フランスが3分の1でドイツが3分の2と国によって随分差がある。これは、たぶん労働市場の状況にもよって、韓国は大体2009年7月ですから、世界経済が悪化してからというのもあるかもしれないですが、韓国はそれで正社員転換を促進する施策をとっていく方針とありました。ドイツ、フランスでも結構数字が違っていて、労働市場の状況はあるかもしれないですが、正社員という概念は、無期雇用への転換の促進策みたいなことはされているのでしょうか。それとも、それは専ら法律の規制の強さによって影響が出てくるのか。つまり、1つは促進転換策があるかどうかと、もう1つは何か数字の違いについての分析というのがあるかどうかはいかがでしょうか。
○橋本委員 先にお答えさせていただきます。参考文献の3番目のホーエンダナーの調査で見た数字なので、詳しいことはよくわからないです。なぜ3年後を見ているのかもよくわからなかったですし、同じ企業かどうかもわからないし、高いという印象だけだったのです。促進策は、特に政策として出していないと思います。
○奥田委員 移行の3分の1という数字をどう分析するかというのはいまのところお答えできる素材はないですが、今日お示ししていない別の資料の中で、最近の労働力移動ということで示された数値で言いますと、有期契約で就職している人というのは少しずつ減っていまして、その一方で有期契約を終了させている人というのは増えてきていて、私の分析能力はその辺りがないですが、その調査報告書で言いますとそういう数値から雇用が一定程度改善されている。つまり、正規化としているという評価もされてきたりしていますから、そういう点で言うと若干の正規に向けての動きはあるかもしれません。ただ、先生がおっしゃった正社員化に向けての措置ということで言いますと、有期契約の法制の中に必ずしもそういう明確なものは出てこないですが、1つ出てくるとすれば職業教育というものが非常に有力に展開されていますので、そちらの分野で正社員化とは言えないですが、有期契約の労働者に対する職業教育の措置というのがある可能性が考えられる。
もう1つは、私のレジュメで言うと5頁に、これはEC指令との関係だと思いますが、期間の定めのない契約での採用に関する情報提供というのは、ほかの国でもあると思いますので、おそらくこれが転換措置の一環だとすれば、そこに位置づけられるかと思います。
○呉氏 ちなみに、韓国で非正社員が正社員に転換した流れを申し上げますと、契約期間を反復更新した人が正社員になったのが、2007年3月から2008年3月までが約15万人ぐらい、2008年3月から今年3月にわたりましては約6万8,000人ぐらいいます。その読み方が難しいのですが、これからこの企業で勤め続けることができないだろうと思っている人が正社員になった人数が、2007年3月から2008年3月までに約4万7,000人ぐらいですが、2008年3月から2009年3月にわたりましては11万人ぐらいになっていますので、反復更新している人であれば、一昨年から去年にかけて正社員に転換されて、これから雇い続けられないだろうと思った人が、去年にかなり正社員転換になったという数値
はあります。
○渡延審議官 アメリカのご説明の中で、at-willの原則があるところで使用者側から眺めて、有期契約のメリットが必ずしも見出し難いのではないかというお話がありましたが、そうするとat-willというのは、働く側から見てもat-willなわけですね。例えば一定の期間、高度の技術者とか専門家を3年間拘束して、すなわち同時に保障して研究開発に従事させたいといったニーズが、先端研究開発の領域で起こらないのだろうか。派遣とか間接雇用が発達しているので、そちらで調達できるというお話がありましたが、そういうことを考えたときに、1年で技術者に逃走されたくないというときに、一定の期間を拘束して働かせようとかのニーズは存在しないのでしょうか。
○池添氏 存在はするとは思います。先ほど私の説明の中で若干申し上げましたが、ごく僅かだけれども、書面契約を締結している労働者がいる。それは、役員であったり高給労働者であったり専門・技術職である。その専門・技術職の中に書面契約。雇用条件はどういう内容で、賃金額はいくらで、働く場所はどこで、従事する職務は何でと、就労条件を細かく内容を規定する形で書面契約を締結して、その中に契約期間も定める例はあるとは思います。しかし、私自身そういった書面契約を実際に見たことはありませんし、ものの本を見ていても、こういうものがフォーマットで、こういう形で有期雇用契約が締結されているのですよという紹介も存じ上げないので、明確にこういうものですということは申し上げられませんが、ニーズとしてはあると思います。
○渡延審議官 ありがとうございます。
○橋本委員 韓国についてお聞きしたいのですが、先ほど30歳台、40歳台の男性でも3割が非正規雇用で、正社員と同じような仕事をしているとおっしゃっていましたが、この新しい法律で差別的取扱いの禁止規定も入ったのですが、その辺の改善状況についてもし何かあれば教えてください。
○呉氏 差別是正の動きですね。私の添付した資料の59頁の「労働委員会」という見出しのところで、2008年1月28日現在、差別是正申請件数が793件にのぼりますが、そのうち内訳の中で175件処理しました。その中で取下がいちばん多くて77件の44%を占めて、是正命令が72件にのぼっております。中労委まで行ったのがいちばん下からの段ですが、韓国のJRの鉄道公社で起きた差別是正ですが、ボーナス、成果賞与金ということで韓国ではものすごくボーナスが多様ですが、正社員のみ支払って非正社員には支払っていないということで、これは差別に当たるという事案でした。中労委でもこれは差別であるということで支払い命令を出したのですが、会社側がそれに不服をしまして、いま地裁にかかっている状況です。
○鎌田座長 まだまだお聞きしたいこともありますが、ほぼ予定の時間が参りましたので、特に何かご質問があればお受けいたしますが、よろしいですか。特にないということでありましたら、諸外国の法制及び実態についての報告はこれで終了とさせていただきたいと思います。報告者の皆様におかれましては、お忙しい中本当にありがとうございました。
次回の日程について、事務局からご連絡をお願いします。
○富田調査官 次回の研究会の日程ですが、現在調整中ですので、委員の皆様には改めてご連絡をさせていただきます。以上です。
○鎌田座長 以上をもちまして、第5回有期労働契約研究会をこれで終了します。本日はお忙しい中、ありがとうございました。
照会先:労働基準局総務課政策係(内線:5587)
委員の皆様、今日、ご報告でお出でになった皆様、本当にご多忙のところ、ありがとうございます。では、第5回の研究会を開催したいと思いますが、事務局のメンバーが交替したと聞いていますので、事務局よりメンバーをご紹介いただきたいと思います。
○富田調査官 それでは、厚生労働省の人事異動が7月24日にありまして、メンバーが替わっていますので紹介します。まず、総務課長の前田です。総務課労働契約企画室長の青山です。監督課中央労働基準監察監督官の丸山です。私も実は、勤労者生活部企画課に異動になっていますが、引き続きこの研究会を担当させていただきます富田です。よろしくお願いいたします。以上です。
○鎌田座長 それでは、続きましてお配りした資料の確認をお願いします。表紙が第5回有期労働契約研究会議事次第と資料項目を載せています。次に、座席表です。次に資料1が有期契約労働者の割合(国際比較)です。資料2~7が諸外国の法制及び実態についてです。各先生から提示をされた資料です。本日は、諸外国の法制及び実態についてご報告をいただくことになっています。まず、事務局から「有期契約労働者の割合(国際比較)」について説明をいただき、次に、短いのですが、報告者の方から各15分程度でご説明をいただき、ご報告が終わった後に質疑をする形で進めたいと思いますので、よろしくお願いします。
では、本日の議題に入ります。まず、「有期契約労働者の割合(国際比較)」について、事務局で資料を用意していただいていますので、説明をお願いします。
○富田調査官 それでは、私のほうから資料No.1に基づいて、有期契約労働者の割合について簡単に説明したいと思います。本日、諸外国の有期契約労働法制について、あるいは実態について報告いただくのですが、横で並べたものがあるとわかりやすいと思い、これはJILPTで作成されているデータブックから抜粋したものですけれども、ご紹介します。
1枚目をご覧いただくと、テンポラリー労働者の割合についてで、一部派遣労働者が諸外国によっては入っていることもありますが、並ぶとこうなっているということです。日本が2007年で13.9%で、アメリカは2005年のデータになりますが4.2%と、少し日本よりも少ないという比率になっています。イギリスが5.8%、ドイツ、フランスでは、一部は法制が厳しい国ということも聞いてはいるのですが、比率は14.2%、13.7%といったようになっていて、本日その辺のことも聞かせていただければと思っています。本日、実はデンマークからもご報告いただきますが、ちょうど真ん中にデンマークがありまして、9.1%となっています。
次頁に、性別・年齢別に書いてあります。ここで、注目すべき点としては、日本は女性の比率が高いこと、諸外国については、ドイツ、フランスで若年層が非常に高く、ドイツで56.4%が24歳以下、フランスが49.1%というように、若年層で高いというのが特徴的だと思います。簡単ですが、本日の各先生方のご報告の参考になればと思い、説明しました。
○鎌田座長 はい、ありがとうございました。では、続きまして、ドイツの法制及び実態についてのご報告をお願いします。本日は、本研究会の委員をお務めいただいている、学習院大学法学部、橋本陽子先生よりご説明をいただきます。それでは、橋本先生、よろしくお願いします。
○橋本委員 ドイツの有期労働契約法制について、レジュメとパートタイム労働・有期労働契約法の条文に沿って、簡単に説明します。
1.概観ですが、ここでは参考文献に挙げた、いくつかの文献から得られた最近のドイツの有期労働契約の実態をご紹介したいと思います。レジュメには1990年度後半~2003年と書きましたが、2004年度までの統計はあったので、2004年と訂正しますが、2004年における労働者に占める有期雇用労働者の割合は、先ほど事務局から報告のあったデータより低く出ているのですが、この差はどこにあるのか把握できないのですけれども、西側で大体約5%~7%、東側で約10%~13%という数字が出ています。東側については、雇用助成措置による雇用が多いことも指摘されています。雇用助成措置に基づく有期契約を含めると、ドイツ全体では有期契約の割合は9%、雇用助成措置による雇用を除くと6%です。雇用助成措置による雇用を除けば東西で割合は変わりません。年度によって、1990年度後半~2003年の間で、増えたり減ったり若干の変動があるのですけれども、この変動は景気の動向によると理解されます。
全体的な傾向について、文献によって有期雇用の割合が一定しているという評価と、少しずつは増えているのだという評価と、ニュアンスが分かれています。後で簡単に説明しますが、1980年代後半以降、有期労働契約法制が数回にわたって緩和されていますが、これらの規制緩和によって有期雇用が増大したのかどうかという点については、規制緩和による効果がなかったと認識されているようです。
また、有期雇用の活用は、公共部門で多いことが指摘されています。次に多い部門は、社会的サービス部門という、医療、福祉、教育、NPOです。公共部門で多い理由として、正規職員の雇用が極めて安定しているので、柔軟な労働力として有期雇用が活用されているのではないか、という説明がありました。
民間部門では、大企業で多いことが指摘されています。その理由としては、小規模事業所には解雇制限法が適用されないので、有期雇用を活用しなくても柔軟な労働力の活用ができるという指摘がありましたが、解雇制限法の適用除外となる事業所が、従業員5人以下という極めて小規模の事業所ですので、これだけで大企業で有期雇用の活用が多いことが説明できるのかどうか、疑問を感じています。
有期雇用労働者の特徴としては、職業資格、または教育程度が低いものと高いものと二極化しており、低いものと高いものに有期雇用が多いということが指摘されています。有期雇用労働者の処遇についてですが、詳細はよくわからないのですが、賃金格差について、期間の定めのない労働者との賃金格差が時給に直すと、0.5~1ユーロというデータに接しました。産業別の労働協約により、資格、職種に応じた賃金制度が確立しているドイツでも、勤続年数に応じて上昇する賃金部分がありますので、有期契約労働者はこの点では不利なので、時給0.5~1ユーロの格差では小さすぎるようにかんじましたが、他のデータは同様の調査に接しられなかったので、詳細はわかりません。また、興味深いデータとしては、有期雇用労働者のうち、3年後に期間の定めのない雇用に移行している割合が3分の
2と、高い割合に上るというデータがありました。
次に、法規制の内容について見ていきたいと思います。ドイツで有期労働契約を規制する法律は「パートタイム労働・有期労働契約法(TzBfG)」ですが、その他に特別法として、「学問有期契約法」、継続訓練中の医師との有期労働契約に関する法律があります。直訳で恐縮ですが、「学問有期契約法」は、以前は大学大綱法に規制がありました。大学などの研究機関で博士号や教授資格号を目指す研究者のための有期契約の規制です。後者の医師の契約は、専門医の資格を得るまでの医師の有期契約で、これら2つの分野では有期契約が標準ということで認められています。ここでは、パートタイム労働・有期労働契約法に限定しますが、この法律は判例法理の立法化及びEC有期労働契約指令1990/70号の国内実施法として2000年末に制定されました。
以下事務局から提示していただいた事項について、簡単に内容を見ていきたいと思います。
(1)契約期間、更新回数や期間の制限についてですが、これについては14条2項と2a項、3項という規制がこれに当たると思うのですが、「客観的な理由」すなわち「正当事由」を必要としない有期契約について規制がありますが、これは2年を上限として、3回まで更新が可能という規制がパートタイム労働・有期労働契約法14条2項1文です。14条2項2文では、この正当事由を必要としない有期契約は、労働者が使用者と以前に一度でも雇用契約関係にあった場合には、許容されないと定めています。これも直訳なのですが、これは連結の禁止と呼ばれる原則で、期間の定めのない雇用関係を有期雇用へと切り換えることを防止するために、このような規定があると言われています。
この正当事由を必要としない有期契約について、上限と更新回数の制限がありますが、この沿革は1985年の「就業促進法」に遡ります。現在は、パートタイム労働・有期労働契約法に規制されています。14条2a項と3項は、2002年と2003年に導入されたものですが、新規開設企業と中高年労働者について、正当事由を必要としない労働契約の期間設定の要件を、更に緩和したものであります。
(2)契約締結事由の制限についてですが、14条1項1文では、労働契約の期限設定には「客観的な事由」すなわち「正当事由」が必要であると定められており、正当事由が次の14条1項2文で列挙されています。紹介の順番が逆になりましたが、この正当事由が必要だという、14条1項が原則であって、先に述べた正当事由を必要としない有期契約という14条2項は、1項の例外と位置づけられています。この、原則である14条1項ですが、1960年連邦労働裁判所の判例以来、多くの蓄積を有する判例法理を明文化したものであります。この、1960年10月12日判決は、客観的な理由を欠く有期契約の反復更新、これは連鎖労働契約と呼ばれていますが、これは、解雇制限法の潜脱であって、最後の有期契約は無効となり、期間の定めのない労働契約となると述べたものです。それ以降多くの判例がありますが、14条1項2文に挙げる正当事由は、この判例で認められてきた主な事由を挙げたものと理解されています。ただ、これは限定列挙ではない、例示列挙だと解されています。
(3)雇止め規制ですが、いまご説明した裁判所による正当事由の有無の審査は、日本法での雇止めの判例法理にほぼ対応するといっていいと考えられます。しばしば、締結事由を法律で規制することを「入口規制」、雇止め法理を「出口規制」と区別して呼ぶこともありますけれども、もし、ドイツを入口規制と解するのであれば、全然違う、ややミスリーディングではないかと考えます。ドイツでも何度も反復更新された有期契約が、更新されずに雇用契約関係が終了した場合に紛争となって裁判所に行くのであって、いわば出口で争われるので、裁判所が最後の有期契約の締結に正当事由があるかどうかを審査するということになり、その判断方法は、我が国の裁判所の雇止めの判断とよく似ていると言えると思います。
(4)差別的取扱いの禁止ですが、これは4条2項で、有期期間設定を理由とする不利益取扱いが禁止されています。これは、上述したEC指令を立法、国内法化したものであります。この規定に関する事例はあまり多くないのですが、若干事例を挙げてみます。
最初の2003年12月11日判決というのは、一定の付加手当の支給を有期雇用労働者に認めないことが差別だとされたものです。この付加手当というのは、郵便業の協約で定められていた付加手当で、ある基準日に在籍していた、期限の定めなく雇用されている労働者に対して支払われていたというもので、有期労働者は排除していたというものですが、連邦労働裁判所は、過去の勤続に対する褒賞としての性格を有するのであれば、有期雇用労働者にも比例的に付与されなければならない、と述べています。このポストの協約の付加手当を巡る事例が何件かあり、それ以外は差別禁止に関する事例はほとんどないのですが、何件か挙げておきました。
次の2007年12月19日判決は、8月25日から翌年7月22日までという有期契約で、合わせて3年ぐらい勤務した学校の先生なのですが、夏休み期間が契約期間になってないのですね。夏休み期間は失業手当を受けていたらしいのですが、正規雇用の教員と比べると、同じく夏休みで授業がないのに、有給で勤務できる正規雇用職員と比較して、自分の扱いが差別だと争った事案です。これに対して連邦労働裁判所は、差別ではないと言ったのですが、正規の教員は、授業がなくても夏休み中でも会議などの労働義務を負っていたのだということで、そもそも夏休み期間中は労働契約にない原告とは比較され得ないということを言っています。
次の事案が、2008年11月27日の判決でありますけれども、これは市の臨時職員ですが、2002年8月19日から2005年11月7日までの有期契約に基づいて勤務した市の職員が、そこで一旦11月7日で終了したのですが、また少し置いて、2005年12月12日に再雇用されたのですが、その再雇用は新規雇用と扱われたために、この時期に公勤務協約が大幅に改定されて、この原告は新規雇用ということで、新しい協約が適用されたのですが、もし、ずっと勤務されていたのであれば移行協約、経過的に適用される協約が適用されるので、賃金がより高くもらえたはずだったわけです。ということで、これが差別だと争ったのですけれども、結果として、連邦労働裁判所は主張を認めなかったという事案です。労働契約の期間設定を理由とする不利益取扱いではなくて、移行協約の適用対象者の規定は、あくまで中断なく労働関係が存続したことが適用のポイントであって、この時期中断してしまった原告は適用対象にならないという判断が出されています。
やや細かい話になりますが、この事件では、裁判所は、これは労働関係が中断なく存続したかどうかが決め手であって、有期契約であるかどうかとは直接は関係しないと述べたわけですが、間接差別には当たるのではないかという論点はあるのですけれども、有期雇用を理由とする間接差別も禁止されるのかどうかは、まだわからないという判断で、明確な判断を避けていますが、やや消極的な見解を示しています。この点は、現在ドイツでも明らかになっておらず、有期雇用を理由とする間接差別も禁止されるのかというところが論点となっています。
(5)無期契約への転換についてですが、特に規定はありません。
3.の労働協約や裁判例についてという項目ですが、労働協約について、やや注目すべき規定として、14条2項ですが、先ほど申したように、正当事由のいらない有期契約の規制ですが、上限2年で更新3回という規制ですが、これは協約に開かれていまして、協約によって不利な規定を置くことも可能となっています。14条2項3文及び4文に書かれています。この規定については、あまり、現在特に問題は指摘されてこなかったと思うのですけれども、最近の文献では、派遣業におけるキリスト教組合の協約で、著しく不利益な規制が行われているという実態調査が出されています。参考文献に挙げたシューレン教授の論文なのですが、中小企業の人材派遣業の使用者団体と、キリスト教組合との間の協約で、14条2項1文の上限2年、更新回数3回まで、というルールを大幅に逸脱する不利益な協約が結ばれていることが紹介されており、これから議論があるかもしれません。
以上、簡単にドイツの有期労働契約法制についてご紹介しました。
最後に、ドイツの労働法学において、自国の有期労働契約法制についてどう捉えられているかについて、簡単にご紹介したいと思います。きちんと学説を分析したわけではなく、たまたま見つけた論文の紹介になるのですけれども、最後に挙げたバース教授の論文では、有期労働契約法制の規制緩和、これ以上の規制緩和には労働市場の二極化をもたらすという点で否定的で、解雇制限法の緩和を図ることによって、労働市場の柔軟化を図るべきではないかという提言がなされています。ドイツでは、1960年の連邦労働裁判所判決が、連鎖労働契約を解雇制限法の潜脱であると述べたように、解雇規制と有期契約法制を関連づけて、検討する伝統があると思います。この点は、1つ参考になるのではないかと思われます。以上で終わります。ありがとうございました。
○鎌田座長 ありがとうございました。
続きまして、フランスの法制及び実態についてのご報告をいただきます。本日は、本研究会の委員をお務めいただいています京都府立大学公共政策学部の奥田香子先生よりご説明いただきます。それでは、奥田先生よろしくお願いいたします。
○奥田委員 よろしくお願いします。
お手元の資料3に基づいてフランスの有期労働契約法制についてお話をしていきたいと思います。お配りいただいた資料では、最初にレジュメをつけまして、それ以降に添付資料(1)、添付資料(2)と挙げていまして、内容的には最初にその制度の概要をご説明してから有期労働契約法制の傾向とかあるいは学説等において指摘されている問題点、あるいは裁判例上の論点とかを2番目にご紹介して最後に実態をご紹介しようと思っていたのですが、時間の関係もありますのであまりそういうふうに分けていかずに、添付資料(1)を見ていただいて、制度の内容をピックアップしながら見ていく中で、2番の問題点等も合わせて触れていくということで進めていきたいと思います。
添付資料(1)に関しても、フランスの有期労働契約法制は基本的な枠組みはそれほど大きく変わっていないのですけれども、根拠になっているのは、フランスでは労働法典に各法律のほとんどの部分が法典化されていますので、労働法典の中の有期労働契約に関する条文の一文が根拠法になっていきます。
ただ、2008年の間にも有期労働契約法制に関する法改正があったりとか、あるいは省令で補足的な事項が付け加えられたりとか比較的いろいろな改定が多いものですから、基本的な部分は変わっていないのですけれども、なるべく新しいものをということで、資料1に関しては、フランスの労働省のホームページに3月9日に更新された内容として書かれている制度解説を基本として、制度の細かい概説等がされている文献を合わせて見ていって内容を整理したものになっています。
少し内容が膨大になっていますし、このホームページに載っていた内容が、どこの条文を見てもそれに該当するところが見当たらなかったりとか、少し矛盾点が出てくるところもあるのですが、大きな枠組みとか重要な点はそれほど変更があったりしているわけではないので、重要な点にのみ着目していただいて、特徴をつかんでいきたいと思います。
まず、いちばん最初に概要として整理をしましたが、フランスの有期労働契約は、明確に特定の一時的な業務の遂行を目的とする場合で、法律に列挙された事由に限って締結することができるというふうな、いわゆるそういう意味での入口規制が行われています。
その際に労働法典の中には、労働契約は期間の定めなく締結されるのが原則だというふうなきちんとした条文があります。労働契約は期間の定めなく締結されるというふうに書かれている条文がありますので、そういう点からどちらでも選んでいいわけではなくて、有期労働契約がそれに対する例外という位置づけになってきます。有期労働契約に関しては、実態的な規制と手続的な規制がありますので、例えばそこに書かれているように必ず書面で締結しなければいけないとかそういう手続的な規制も含まれています。
いかなる締結理由、法律に列挙されたものに限られてくるわけですけれども、いかなる締結理由であっても、その企業の常態的な、通常の正規の恒常的な事業活動に関連するような業務には、長期的にそれを永続的に従事させることを目的としたり、あるいはそういうような効果をもたらすものは許されないので、逆の面からそれを規制する、つまりあとで出てくる利用の禁止にもつながってくるのですけれども、そういう面からの規制もあります。
それから、あとで見ていただきますように有期労働契約が法律に違反して締結された場合は、期間の定めのない契約に性質変更、日本で言うと転化ですね。性質変更されることが民事制裁のいちばん重要な部分として設けられていますので、それからフランスの場合は刑事制裁も加わってきますので、
その辺りに着目してずっと以下の内容を見ていただきたいと思います。
まず、有期労働契約の利用可能事由ということで、法律で列挙された利用可能事由はどういうものかを挙げています。
ここもあまり細かいものは削っていますので、代表的なものとして見ていただいたらいいと思うのですけれども、労働者の代替をするための有期労働契約があります。例えば病気で欠勤している労働者のポストに労働者を代替させる。あるいは、そのポストでなくても別の常勤の正規の労働者が入る場合にその別の労働者の代替もあり得るわけですけれども、そういう欠勤の労働者が出てきた場合の代替。あるいはフルタイムの労働者が一時的にパートタイムに移行している場合の労働者の代替だとか、こういうふうな代替に関してもどういうケースであれば可能かが法律の条文に明記されています。
それから、2番目に、これが抽象的概念になってくるのですけれども、事業活動の変動ということで、事業活動が一時的に増加するような場合というようなことが有期労働契約の締結事由として挙げられています。
レジュメで言う2番目の問題点等との関係で見ていただきますと、こういう利用可能事由自体は年を追って拡大してきている傾向がありますし、それから2番目に挙げた事業活動の変動という、一時的な増加はこれは学説の中でもさまざまなケースが入ってくる抽象的な概念であるということで、その利用可能事由の柔軟性の点から批判的に捉えられている利用事由でもあります。
3番目に一時的な性質の業務ということで、季節的な雇用、それから慣行的有期労働契約がわかりにくいのですが、そこに書きましたように業務の一時性を前提として、期間の定めのない契約で採用しないことが恒常的な慣行になっているような産業部門がデクレ、政令であるとか労働協約でリスト化されていまして、そのリストに載っていて、恒常的な慣行になっていることが確認されてかつ、その職務が一時的であるものに関しては、ここに書いた慣行的有期労働契約という位置づけがなされまして、これも利用可能事由に挙がっています。しかし、そこも先ほどの傾向と問題点と合わせて見ていただきますと、こういう季節業務と慣行的有期労働契約は、あとで見ていくような、いわゆるクーリング期間であるとか、そういう重要な規制から適用が除外されている領域になりますので、その点でも利用可能の柔軟性が見られる部分です。
それ以外に、簡単に触れていきますが、最近は雇用政策に対応するため、例えば採用の促進を図るための有期労働契約がさまざまなタイプのものが出てきまして、若者を対象にしたものであったりとか、そこに書きました高齢者を対象にしたものであったりとか、昨年の6月に実験的に導入されたようなエンジニアと幹部職員を対象にしたような有期労働契約であるとか、そういう特定の目的のタイプの有期労働契約が広がってきていることも1つの傾向かと考えています。
次に3頁に移っていただきますと、こういうふうな利用可能事由とはまた別個に、その3点に関しては、こういうケースに関しては利用をしてはいけないということが逆のほうから禁止対象となっていますので、それも一読をしていただきたいと思います。
契約期間の制限なのですけれども、ここに確定期限と不確定期限と書きましたが、確定期限は、例えば欠勤労働者の場合でも、いつからいつまでと期限が確定されたような代替である場合と、その人の病気が治るという不確定期限である場合と2種類あるということで、こういう概念が出てくるのですが、もちろん原則は確定期限で、その中でも原則になるのが、あとで書いてありますように更新は1回のみで、更新を含めて最長18カ月というものが契約期間制限の(1)の原則になってきます。それ以外に(2)で書きましたように、こういう場合では最長9カ月、こういう場合には最長24カ月というふうな、異なる定めがなされている場合がありますが、原則ということで見ていただきますと、更新を含めて
最長18カ月が原則になってきます。
ここに表として、こういうふうなものがあるのだということを労働省のホームページから挙げていますので、18カ月を前提としながらそれ以外の期間設定もなされていることにのみ着目していただいたらいいかと思います。それから、その下に契約の更新と書きましたが、いま申し上げたように確定期限があるものについてのみ更新は1回だけ。それも、更新で延長した分を含めて、ここに書かれているような最長期間内で行うことが前提になっています。
次に4頁に移っていただきますと、契約書に記載すべき事項ということで、書面を作成する。フランスでは有期労働契約は、そういう意味で要式契約になってきますので、書面を作成し利用事由を明記し、以下に挙げたような必要記載事項を必ず明記して、それを2日以内に交付することが手続的な条件として定められていまして、あとで出てきますように、こういうことに違反するのは、期間の定めのない労働契約への転化をもたらしますので、重要な手続事項になってきます。それから、試用期間を設ける場合は、こういうふうな長さでということが決められています。
その次なのですけれども、先ほど更新のことをお話しましたが、日本で言うところの雇止めに関連してくる部分は、この有期労働契約の連続利用にかかわってくると考えられます。それは、(1)(2)で見ていただきますが、同じ職に連続した有期労働契約を締結する場合には、一定期間のクーリング期間をおかなければいけないことが定められていまして、14日以上であれば、あるいは14日未満であればということで(1)(2)というふうなクーリング期間を設定することが求められています。ただし、その下の下を見ていただきますように、例えば慣行的有期労働契約とか季節雇用とかいくつかのものに関しては、そのクーリング期間も適用除外ですので、同じ職であっても、継続して有期労働契約を締結することが可能な領域があります。
2番目に、同じ職ではなくて、同じ労働者と連続した有期労働契約を締結する場合、日本の雇止めとの関係で言いますと、こちらが近いのかと思うのですけれども、有期労働契約の期間満了後も同じ労働者と契約関係を継続しているというのは、これは期間の定めのない契約にみなされていくことになります。ただし、この場合も例外がありまして、何度も申し上げている慣行的業務であるとか季節的業務、それから欠勤労働者の代替の場合も同じ労働者が連続した代替に当たることも認められていますので、この辺りは比較的よく利用されているものではないかと考えられます。
といいますのは、例えばそこに濫用規制と書きましたが、代替であれば欠勤労働者の代替ということで同じ労働者と連続して有期労働契約を締結することができるとしても、例えばこういうケースなのですが、連続的な労働契約を複数の欠勤労働者を代替するために例えばAさんの欠勤の代替、Bさんの欠勤の代替というふうな形で、同じ人が有期労働契約を22回締結して仕事を行っていた裁判例におきましては、これは有期労働契約ではなくて、期間の定めのない契約だと判断されたようなケースもあります。こういうことを考えてみますと、同じ労働者の連続した有期労働契約であっても、場合によっては濫用的な規制が裁判所の段階でチェックされるという状況になっていますので、この辺りが日本の雇止め法理との比較ではいちばん近いところではないかと思います。
5頁です。有期労働契約労働者の権利保障というところで、平等取扱いは今回の対象事項になっているところですので、見ておいていただきますと、有期労働契約と期間の定めのない労働契約の労働者との違いは、基本的には契約の終了に関するところのみだと説明がなされていますので、異なる取扱いがそれ以外の客観的な理由によって正当化されない限りは、比較可能な条件にあるCDI(期間の定めのない労働者)と同じ権利義務を享受することが前提になっています。
この比較可能の場合に、日本との比較法で見ると非常に難しい条件になってくると思うのですが、基本的にはその下の報酬に書かれていますように同等の職業の格付けであって、同じ職務に従事することが比較的明確になりますので、そこで比較できる労働者と、というふうなことになってきます。ただし、ここで先ほどの「問題点」と照らし合わせてみますと、例えば協約上のさまざまな権利、利益というのは勤続年数要件がついていることが多いので、その点で有期契約労働者の場合は、そういう平等原則が保障されながら勤続年数要件ではじかれるケースが多いことが従来から指摘がなされています。
もう1点、着目していただきますと、その下に契約終了手当と書きましたが、フランスの有期労働契約法制では、労働者が有期労働契約を終えたときに不安定な状況に置かれることを防止する目的で、契約終了手当を支払うことが制度上設けられています。手当の額はそこに書いたとおりでいくつか例外がありますが、基本的にその契約終了時に、使用者が期間の定めのない契約でその職を継続する提示をしなかった場合には、この手当が支払われます。したがって、逆に言いますと、それが提示された場合は、それで継続することになりますし、もしそれを労働者が拒否した場合はこの契約終了手当の対象にはならないことになってきますが、違法な場合とかそういうことではなくて、一律に支払われる手当ということで着目することができるかと思います。
中途解約の辺りは飛ばしていただいて、最後のところを見ていただきますと、6頁に出てきますように、フランスの場合の1つの特徴として、以上に述べてきたような実体的要件とか手続的要件に違反しているようなケースでは、法的性質の変更、つまり期間の定めのない契約とみなすことがいちばん重要な民事制裁として出てきまして、そこに代表的なものを挙げておきましたが、手続要件、実体要件の多くのものが挙がってきています。それにプラスして、賠償金の支払いがありますし、もう1点その下にありますように、多くの事由は同時に刑事制裁の対象にもなることにも着目していただきたいと思います。
時間の関係もありますので、実態のところはまたあとで見ていただくことにしまして、1点だけ申し上げておきますと、期間の定めのない契約への性質変更なのですが、判例をいくつか見ていますと、日本で言いますと期間の定めのない契約に転化するとなると、そこの従業員で継続的に業務に従事するイメージがどうしてもあるわけですが、多くの訴訟では、一旦契約関係が終了したのだけれども、その終了に対して有期契約で予定されているその就労に対する補償がなされるのか、あるいはこれは期間の定めのない契約に転化するから飽くまで解雇に当たるので、その解雇に対する補償を受けることができるのかという点で訴えがなされていることが多いので、そういう点で言いますとフランスの解雇法制が基本的に金銭賠償で行われていることとのつながりが、やはり一定程度見られるのではないかと理解をしています。
そのあとに、添付資料2として、有期契約の活用状況、以前報告書で書かせていただいたものをそのまま挙げていますが、時間の関係もありますので、またご覧いただくことにしまして以上で報告を終わらせていただきます。
○鎌田座長 ありがとうございました。
それでは、続きましてイギリスの法制及び実態の報告をいただきます。本日は、専修大学法学部から有田謙司先生にお越しいただいています。それでは、有田先生よろしくお願いいたします。
○有田 それでは、イギリスについて報告をさせていただきます。レジュメの項目にそってざっとご説明する形になります。
最初に法制の概要ですけれども、元々イギリスではCommon Law上、有期雇用契約については、ほとんどルールはなかったと言われています。この2002年のレギュレーションですけれども、この規則はEUの指令を国内法化するために設けられまして、そういう意味ではイギリスの有期雇用契約の法規制は、EU法をもとにイギリスの状況に合うようにアレンジをして、設けられたものだと言ってよいかと思います。
最初に、この規則の適用がなされる有期雇用契約被用者ですけれども、これはかなりイギリスに特殊な概念です。employeeとworkerの2つの概念がイギリスにはあります。このemployeeは運用上、そのCommon Law上の雇用契約のもとに働いているものを被用者ということで、しかもその雇用契約の存否について、この*のところに少し小さな文字にして書いていますように、現在、わが国の最高裁に相当する貴族院の判例において、非常に狭い解釈がとられていまして、有期契約の中に本来入るべき不定期な働き方をするカジュアルワーカーが被用者とはみなされない扱いになり、そのためにこの規則の適用から漏れてしまう問題が指摘されています。
実は、元々ブレアさんが政権を取ったときに、フェアネス・アット・ワークという白書で基本的な立法政策の方向性を示していたのですけれども、その中ではこの労働者に対して権利を付与する立法の適用対象をemployeeからworker、workerのほうはもっと広い日本の労働者概念を少し広くした範囲のものと言っていいのですけれども、そちらに切り替えていくということを言っていたのですが、実は労働時間規則等、EU法を国内法化する規則は大体、適用対象をworkerにすることで行われてきたのですが、2002年の有期雇用契約については、適用対象をworkerではなくてemployeeにして、適用対象を狭めてしまったという問題が指摘されています。
もう1つの特徴は、派遣労働者が明確に適用対象外となっています。これは、ご承知のように現在、EUの指令ができましてイギリスも国内法化へ向けて、政府が法案のたたき台を出しまして、協議文書を出してパブリックコメントを求めている段階ですけれども、昔から派遣は別なのだと切り離しているところが特徴です。フランス等にもありましたように、政府が雇用促進のために行っている訓練制度のもとにあるものとか、あるいは徒弟契約のもとで働いているものも適用除外になっています。
この規則では、大きく規制内容が2つのものから成り立っていまして、1つが均等待遇といいますか、不利に扱われない権利を与えるというもの、もう1つが、有期雇用契約の濫用的な利用を制限することで、先ほどのフランスと同じようなルールがもう1つの柱として設けられています。
この不利に扱われない権利ですけれども、比較対象となる被用者と比較して、有期雇用契約であることを理由に不利に扱われない権利だというふうになっているわけですが、その比較対象となる被用者については、かなり厳しく制限されていまして、ここに書いてありますように実際に同一の事業所に就労し、かつ関連する場合には同程度の資格とか技能を有しているか否かを考慮して、同一または大まかに見て類似の仕事に従事している者と定義されています。
もし、無期契約で、期間の定めのない契約で雇われていたのならという仮定をして比較をすることは基本的に認めていません。有期雇用契約の被用者は、同一事業所内に比較対象となる被用者がいない場合には、同一使用者の他の事業所における比較対象となる被用者をその対象として用いることができるとなっています。
行政の解釈を示したガイドブック等によりますと、イギリスでは、使用者概念の拡大として、その資本関係で50%以上の資本関係があるという、そういう支配関係にある、ただし、カンパニーに限定されるわけですけれども、その場合にはアソシエイト・エンプロイヤーということで法令の適用上同一の使用者と扱われる場合がありますけれども、ただし、この場合の比較対象となる被用者は、アソシエイト・エンプロイヤーのもとにある被用者はその対象にはならないというようになっています。
不利益取扱いをどのように見ていくのかということに関して、規則の中で特に労働条件にかかわって不利な扱いを、有期であるということを理由に受けないものとして、明示されているものが3つあります。第1に、先ほどのフランスの例でも出てきましたような一定の勤続期間を資格要件とした給付のようなもの、第2に、教育訓練を受ける機会、第3に、事業所内の期間の定めのない雇用契約の職を得る機会といったようなものです。そして、この無期の雇用契約の職を得る機会を得ることを保障するために、空きポストができた場合に情報提供を受ける権利を同時に定めています。
そして、不利益な取扱いですけれども、事実としてそういうものがあったときに、使用者側が扱いについて客観的理由に基づいて正当化できればそれは不利な扱いとはみなされないことになります。
基本的には、先ほども出ましたような比例原則で見ていくのですけれども、実は客観的正当化ということを見ていく際に、明文の規定をもって、総体的アプローチという言い方が適確かどうか自信がありませんが、パッケージアプローチが規定されています。有期雇用契約被用者の契約条件の総体が比較対象となる被用者の契約条件の総体よりも不利なものではない場合においては、ある特定の契約条件に関しての不利な扱いについては正当化される。
例えば、年休日数が、期間の定めのない契約にある比較対象となる被用者との比較で見たときに数日少ない場合に、その日数分をカバーし得るような年収をプラスアルファとしてつける形で、客観的正当化が満たされるというようなアプローチを許容することが明文上規定されています。そういう意味では、完全な意味での均等待遇というよりは、均衡待遇というか、均衡処遇に近いようなものになっているのではないかと思われます。
理由書の交付を受ける権利というものがあります。実は、これは雇用審判所に訴えを提起する場合に必要なものでもあるわけですけれども、有期雇用契約被用者が不利な扱いを受けていると考えた場合には、その使用者に対してその扱いの理由を記した書面の交付を求めることができます。使用者は、この請求日から21日以内にこれを交付しなければならないことになっています。ここで、先ほどの正当化理由があるのであればそれを書くことになります。実は、この同じような理由書とかの書面交付の請求は、次の有期雇用契約の継続的な利用を制限するルールにも同じく用いられている規定です。
次に、有期雇用契約の継続的利用の制限なのですけれども、イギリスでは有期雇用契約の継続的な利用については、上限4年というルールが原則として設定されています。有期雇用の契約の被用者が既に4年、あるいはそれ以上の期間の継続した雇用を有しているとき、その後に契約が更新された場合、あるいは再雇用で新たな有期雇用契約に基づき再雇用される場合には、当該契約更新または新たな契約は、有期契約に基づく雇用が客観的に正当化されるか、あるいは労働協約または労使協定に基づいて4年の期間が引き延ばされているのでなければ、期間の定めのない雇用契約としての効果を生じる。
規定の文言上は、有期契約の規定が無効になるということですから、期間の定めのない雇用契約に転化するという規定が設けられていることになります。この辺は、フランスと似たような規定のあり方ですが、上限が4年です。回数について制限ということではなくて、更新をされて、それが最終的に4年を超えるときの更新、あるいは再雇用という形で有期契約を新たに設定された場合のその契約を無効にして、期間の定めのない契約に変えるやり方がとられています。
特に問題になるのは、更新の場合ではなくて、一旦中断が入るような再雇用の場合に、中断期間の存在について、これを継続期間として一定の範囲に収まるようなものであれば継続期間として扱うことが行われています。客観的正当化についての判断の仕方は先ほどの不利に扱われない権利と同様の仕方で判断されることになります。
もう1つの特徴は、労働協約、あるいは労使協定によって法律の原則的な規制内容を修正できるというものです。これは、ニューレイバーの労働党の立法政策の中によく見られるもので、法令をデフォルトルールとして設定し、それを協約とか労使協定によって修正して実情に合う形に変えることを許容するような規制のあり方の例であるのですけれども、基本的に法規制が有期雇用契約の継続的利用から生じる悪幣を防止するためのものなので、協約または労使協定によって、1つは記載された被用者が有期雇用契約または反復された有期雇用契約に基づいて継続して雇用される期間の条件、すなわち4年を、例えば4年半とか5年に延ばすこともできる。あるいは、逆にすることも当然できるわけですが、記載された被用者が雇用され得る有期雇用契約の反復・更新の回数について法令上は規定がありませんけれども、回数について上限を設定したり、あるいは記載された被用者が雇用される有期雇用契約の反復・更新を正当化する客観的理由について、具体的なものを法令上は定められていませんけれども、これを明記する形で、法定のルールを修正、あるいはそれを具体化することを認めていることになります。労使協定の当事者である従業員代表の選出手続については、附則で規定されています。
期間の定めのない雇用契約への変更があったかどうか、4年を超えて変更されたことについて争いが生じるわけですけれども、この場合に被用者には先ほどの不利益に扱われない権利の場合と同じように確認書の交付を請求する権利が認められています。使用者は、変更されたことを認めるか、認めないのであれば新たな有期雇用契約を結ぶ正当な理由があることについて、その書面に記して被用者に交付しなければなりません。交付された文書は、裁判所、あるいは雇用審判所の手続において証拠として扱われることになります。
救済の仕方としては、雇用審判所に訴えるわけですが、不利に扱われない権利と、有期雇用契約の継続利用制限の場合で少し違った救済の仕方になります。不利に扱われない権利の場合には基本的に補償金になり、基本的に損害賠償に近い考え方になります。ただし、ここでは慰謝料が含まれないことと、我が国では存在しないものですが、損害軽減義務の適用があるのも1つの特徴ではないかと思います。もう1つ、宣言判決、日本で言う確認判決に当たる、要するに不利益に扱われずに同等の権利を有していることの確認も併せて行われることになります。それから、一定の合理的な措置を所定期間内にとるよう勧告することも審判所が行うことができます。
有期雇用契約の継続利用制限については、我が国で言う確認判決に相当する宣言判決を求める訴えを雇用審判所に行うことができるのですが、そのためには、先ほどの変更確認書の交付請求を行っているということが前提条件となっています。なおかつ、訴えの時点でまだ使用者に雇用されているということも訴えの要件となっています。
出訴期間については、双方について共通して3カ月ということで設定されています。裁判例が、私のほうでまだきちんと調べられていないということもあるのですが、何か教員のケースに偏ってよく見られます。ここに書いてあったようなものがあるのです。正当化理由に関するものとか、不利な扱いの具体的な例について判断が示されたようなものではないかと思うのです。
協約ですが、実際にこの法律がその修正を許容するという意味での具体的な労働協約のようなものを見つけることはできませんでしたが、これも大学の教員についての組合と、大学というか経営者の団体との間で協約を具体化して作っていく場合の枠組みになるような指針を定めたようなものを見つけましたので、ここに載せております。そこでは、賃金については、定期昇給に当たるようなものがあればそれも均等に扱えとか、あるいは法令上はなかった、あるいは協約で設定することができるとなっていましたその入口規制に当たるような客観的理由がある場合に限って有期契約を設定できるのだというようなことをこの指針の中では規定しており、これを受けて各個別の労働協約を結ぶというようなことが進められているのではないかと推測されます。
有期雇用契約の実態については大雑把なことしかわかりませんでしたので、これは、ここを見てい
ただければいいのですが、ただ、具体的な職場について、4年か5年に1回ぐらいですか、調査がある
ものを見ますと、調査対象事業所の約3割に有期契約雇用の被用者が存在しているということで、かな
り柔軟な労働市場ということの中で、活用されているものは活用されているのではないかということ
が推測されます。雑駁ですが、以上で終わらせていただきます。
○鎌田座長 ありがとうございました。続きまして、アメリカの法制及び実態についてのご報告をい
ただきたいと思います。本日は、労働政策研究・研修機構から池添弘邦先生にお越しいただいており
ます。それでは池添先生、ご説明をお願いいたします。
○池添氏 よろしくお願いいたします。ただいまご紹介いただきました池添でございます。15分ぐらいで簡単にご説明申し上げます。
まず法制度ですが、その前提として、大陸ヨーロッパの各国と大きな違いという点を前提として若干申し上げておく必要があるかと思いますのは、大西洋を渡ってアメリカに行きますと、自由主義経済的な考え方が大変根強く、また強い、そういう考え方が濃厚であるということです。したがって、アメリカでは伝統的に労働者を保護する法制度、規制は、他国に比べれば貧弱な状況にあると。アメリカには、日本の労働基準法に類するような公正労働基準法という連邦法がありますが、また、日本の労働組合法に当たるような全国労働関係法という法律がありますが、それは1930年代の不況の時期にニューディール政策の一環として制定されたというもので、その後、労働者保護的な制定法が連邦法として制定されたというのは、1960年代から1970年代にかけての社会的な運動を背景とした差別禁止立法、それから、クリントン政権下で1993年に制定された家族・医療休暇法というものぐらいです。連邦制定法はほかにもありますが、他国に比べて、自由主義的な考え方が大変根強く、その反面での労働者保護的な規制が弱いということがあるかと思います。
もう1点、これは州のCommon Lawですが、雇用関係について規制するのは基本的には州のCommon Lawで、ここ100年以上の間、期間の定めのない雇用関係はemployment at-willだと。日本では随意雇用原則のルールとして紹介されていますが、特に期間を定めていない雇用関係においては当事者からいつ、いかなる理由によっても雇用関係を解消し得るという原則が大変揺るぎがたい形で確立されているところです。したがって、それが使用者からの雇用関係の解消という形で現れますと、日本や他国に見られるような非常に重厚な解雇規制というようなことがないということになるわけで、したがって、使用者は、期間の定めのない雇用関係の場合、労働者をいつでも解雇し得るというような状況があるわけです。
法制度のところですが、結論から申し上げると、有期契約に関する法制度は、連邦、州の制定法では存在しないということが言えると思います。はっきり言えるのは、連邦制定法ではそういう制定法はないと。州制定法については、50州ありますので、各州、つぶさに見るということはなかなか時間もかかりますし労力もかかる問題ですので、今回に関しては細かく見ておりませんが、以前、雇用関係、雇用契約関係に関する調査においてそういう規制があるのかなというのを若干見ましたところ、そういう州制定法は、数年前の当時でも存在しなかったということです。
もう1点、州制定法の詐欺防止法ということを書いてございますが、これは連邦の各州がイギリス法から継受した制定法です。基本的に1年を超える契約期間を定める契約関係においては書面で当該契約関係を締結しなければ執行力、当事者に対する拘束力を有しないという制定法で、有期労働契約をストレートに規制したものではありませんが、関連する制定法としてご紹介しておきたいと。ただ、最近のアメリカの契約関係の書物を見ますと、その基になっていると言いますか、各州でばらばらな規制をしていてはなかなか州際通商、州を超えての取引関係がうまくいかないということで、これは制定法ではないのですが、識者が集まって、連邦国家で統一的な法典をモデル法典という形で作ろうではないかという動きがありました。そういう法典の一部、統一商事法典、UCCですが、これが2003年に改定されたようです。その中で1年を超える契約に関する執行力の付与に書面性を求める、要式性を求めるという条項が削除されたということですので、もしかすると、その後の各州の動向においては、従来有期契約を間接的に規制していた州制定法の規制がもう削除なりされているということがあり得るかもしれません。
しかし、先ほど申し上げたat-will employmentの反面として期間を定めている雇用契約関係が、後ほど見る実態のところでご紹介しますが、ごくわずかですが、あるようです。そうしますと、at-will employmentの反面として契約期間を定めたということは、当該契約期間については、雇用保障があるということになるわけです。法制ではありませんが、at-will employmentの反対の解釈という面での雇用保障はあり得るということになります。
もう1つ、他の法制ということです。間接的に差別禁止法による規制というものがかかり得る場合があるかもしれない。ただ、実際のその紛争例、裁判例というものを目にしたことはありませんので、あくまでも理論的な話ですが。例えば、1964年の公民権法第7編、人種・皮膚の色・性・出身国・宗教等、差別を禁止するという法制度がありますが、特定の人種なりグループに関しては有期契約法制、要するに、期間を定めた有期契約を締結している。つまり、期間を定めないという長期雇用を前提としない短期の雇用だという雇用関係を結んだ。反面で別のグループに関しては、at-will employmentだけれども期間を定めていない長期の雇用というような形で区別なり差別なりの取扱い、差別的な取扱いをしたということであれば、理論的には、差別禁止法に触れるという可能性もあるわけです。ただ、先ほど申し上げた一定期間を雇用保障の期間だと定めた雇用関係を締結しているということは、at-will employmentの反面として雇用保障がなされるということですので、一概に不利益、差別と言えるかは、言えないということになりますので、これは、あくまでも理論的な参考までの話としてお聞きいただければと思います。
法制度に関しては、全体としてアメリカでは、制定法なりということはないということになるわけです。そして、むしろ実態のほうです。他国での実態は比較的簡単にご紹介されたようですが、アメリカにおいては、連邦労働省の労働統計局が1995年以来、Contingent and Alternative Employment Arrangementsという調査を2年に1回出しています。ただ、最近は2年に1回ではなく、従来からの傾向がそんなに変わっていないのでその調査のタームを延ばした、頻度を減らしたということがあるかもしれませんが、最新の調査結果は、公開されているのは2005年のものです。そこでは、Contingent Employmentという長期の雇用を前提としない、しかも実際に働いている期間が1年に満たないというような人たちということで推計を立てています。
ここに掲げております推計1というのは、Independent ContractorですとかContract Workerですね、自営、請負の人たちを除く。つまり、基本的には直用です。ただ、派遣会社や業務請負会社の従業員も含まれてしまうのですが、基本的には直用の人たちに関しての推計で、雇用継続への期待が1年以下で、かつ、実際に1年以下働いた労働者がどれぐらいそのLabor Forceの中にいるかという推計を出していますが、これは、全体との対比で1.8%、250万人という大変少ない数値になっているわけです。
先ほど申し上げたいくつかある推計、ここでは推計1を掲げましたが、これともう1つ、就労形態別にいくつかの形態を代表的なものとして掲げて、各就労形態に当てはまる人たちがどれぐらいの割合、どれぐらいの人数いるかということを算出しております。掲げておりますのは、有期契約というものが締結されているであろうと思われるもの、3つの形態を掲げております。
まず1つ目がOn-call workers。必要に応じて随時呼び出されて、数日あるいは数週間働く労働者ですが、これは1.8%、245万人です。Temporary help agency workersということで、これは派遣会社の労働者で、0.9%。ただ、この場合、期間の定めのない派遣労働者も含まれてしまいますので、いわゆる登録型派遣的な短期の、有期の派遣労働者ということで勘定を考えますと、人数なり割合はもう少し減っていく、少なくなっていくのではないかと思います。
もう1つの就労形態が業務請負会社の労働者です。この場合でもやはり業務請負会社にpermanent、at-will employmentで雇用されている労働者も含まれてしまいますので、ある一定の業務を引き受けた、その期間についてのみ有期、期間雇用で雇われている労働者というものはもう少し実数、割合としては少なくなってくるのであろうと思われます。統計的な面ではそのような状況になっています。
次の頁ですが、雇用関係、雇用法の文献、あるいは私が過去、これは10年ぐらい前になるちょっと古い調査で誠に恐縮なのですが、最近は有期などの人事労務管理の調査を行っておらないという関係で、手持ちの調査をご紹介するということで代えさせていただければと思います。
まず1つ目のポツです。最近のEmployment Lawの文献によれば、役員とか給料が高い労働者、専門技術職、あるいは出来高払制の営業職に就いている労働者、さらに一定期間労務遂行が当初より想定される職務に就いている労働者に関しては、場合によっては期間を定めた雇用関係、これは書面を持った契約関係で定義されているということが述べられています。ただ、これも実数としては大変少ないというようなニュアンスで書かれていましたので、必ずしもこういった職種、地位にある労働者が書面契約で雇用契約期間を定めているというわけではないということにご留意いただきたい。また、書面において当該契約期間においても正当事由、good cause or just causeというものがあれば当事者から期間途中の解約も許容されるというような定めがあった場合には、これはat-will employment
と変わらない状況になりますので、こういった書面契約が実際に締結されているとすれば、先ほど申し上げたような役員とか専門技術職といった労働者にかかる書面契約において必ずしも雇用保障がなされるわけではないということが言えるわけです。
2つ目のポツですが、1998年に在米日系企業という限定がありますが、現地のヒアリング調査を行った結果です。この調査では非正規、特にパートタイム労働者に関して聴取調査を行いました。調査対象になった14社のうち1社のみ、雇用期間を定めていた労働者の方がいらっしゃったのですが、ただ、これはいわゆる業務の中枢に携わるような基幹的な従業員の方ではなくて、専属医の方だったのです。それ以外の非正規の人たち、パートを含めですが、at-will employmentであったと。つまり、有期契約ということでは雇用関係を形成していないということです。その翌年、また同じく在米日系企業のヒアリング調査を行ったのですが、ここでは雇用管理全般についてお話を伺うことができました。8社
聴取調査を行ったのですが、直用の従業員との間で有期契約を締結していた企業は皆無でした。先ほどの1998年、1999年の調査、どちらもいわゆる有期、直用ではないのですが、temporary、有期として活用していたのは外部の人材としての派遣労働者あるいは請負だということです。直用としての有期は、したがって、ごく限られた調査なり文献の範囲では現地の企業は活用していないというのが実情であろうということです。したがって、先ほどの統計で大変低い数値であったというのも、限定的であって、留保が必要であるとは思いますが、統計的にもそういう面では担保されているということが言えるのかと思います。
最後に、僭越ではありますが、私見を述べさせていただきます。皆様ご推測のように、冒頭申し上げたemployment at-willという考え方が非常に根強く付いているアメリカでは、解雇がいつ何時においても自由である。したがって、有期契約労働者を活用するメリットがないということが言えるかもしれません。もう1つ。外部の人材としての派遣、請負あるいはOn-callといったtemporaryの人たちを活用するということが有期契約よりも相対的には発達しているであろうということを仮定しますと、むしろそちらのほうを活用するほうが自らに雇用責任が及ばないということも言えるわけです。したがって、外部人材を直用の有期で活用するということよりも、ContingentやAlternativeの人材を活用するというほうが企業にとってのメリットがあるということが言えるのかもしれません。以上、雑駁、かつ、あまりご参考にならないかもしれませんが、以上でお話を終わらせていただきます。
○鎌田座長 ありがとうございました。続きまして、デンマークの法制及び実態についての報告をいただきます。本日は、デンマーク大使館からベンツ・リンドブラッド様にお越しいただいております。それではリンドブラッド様、ご説明をお願いいたします。
○リンドブラッド氏 資料があまりないのです。申し訳ありません。ここにある資料は大体デンマークの2003年の法律の訳なのですが、実際にデンマークの労働市場は、その法律が出来てから、あまり変わっていないと思うのです。先ほどのイギリスの例と同じように、デンマークではworkerとemployeeというような区別もありまして、結局、有期契約に関する労働者はemployeeのほうが多いと思います。工場とか建設場、造船工場で働いている方々は、やはり自分の組合の契約によって仕事をしているのです。フランスとイギリスと同じように、どのような人が含まれているか、どのような人が含まれていないのかは、大体同じです。どれぐらいこの法律が使われているかは、例えば裁判になったかどうか、ホームページで調べたのですが、1つの例しか出てこなかったのです。こかの音楽大
学の先生が2年間仕事をして、それから、その契約が終わったあとに仕事を失ったわけですが、その裁判によって彼は負けたのです。結局、自分の同じ契約を2年間延ばして、彼が教えた分野はもう必要なくなってしまったのでと裁判は決めました。そのほかには例を聞いていないのです。ただ、私の働いているデンマークの外務省の中にはいくつかの例を覚えているのです。
デンマークの外務省が短い間に職員を雇っていることがある。例えば、デンマークがEUの議長国になっているときには、外務省あるいは関係している官庁の仕事が非常に増えるのです。そういうときには、割合に若い大学を卒業したすぐあとの人たちを雇っているのが普通です。場合によっては、その外務省のスタッフの中でも2、3%ぐらいになるときもあります。その半年が終わったあとにはもうこれが終わりですが、場合によっては外務省は間違っているのです。デンマークの外務省が間違っている例を1つ覚えているのです。
結局、デンマークが議長国だったときには、あるいは別のイベントをやったときは何人かを雇ったのです。その雇った人たちの中には、結局、普通の仕事に回した場合もあったのです。結局、いつもやっている仕事と同じような仕事に回した若い人もいたのです。それで結局、その議長国に関する契約、あるいはそのイベントに関する契約が終わったときには、その人たちの契約も終わったと思ったのですが、こう言ったのです。「自分たちは本当の契約どおりの仕事をしていないのです」。でも、外務省が言うには、「ただ、あなたたちが雇われているときには、大蔵省からこの予算しかもらっていないので」。でも、結局、その有期契約の期間はお金とは関係ないのです。大蔵省がいくらこの金額しか外務省に渡していなくても、結局、外務省の別のスタッフと同じような仕事、いつもと同じよ
うな仕事を続けるのであれば契約違反になったわけです。結局、外務省は決まった金額を払ったか、それとも、その人たちをそのまま外務省のスタッフにしたかどうかわからない。ただ、その問題があった覚えがあるのです。そのほかには、あまり覚えがないのです。
デンマークは、先ほどヨーロッパの国々の労働者に対する法律は、かなり弾力性を持っている法律を持っているわけです。ですから、デンマークでは、労働者をクビにするのは簡単です。デンマーク人の労働者の3分の1が、1年間で仕事を替わるのです。ですから1年間でデンマークの労働人口の80万人が別の仕事に移るのです。これは、ヨーロッパでは非常に多いのです。例えば大体同じような人口を持っているベルギーに比べれば、大体倍ぐらいです。しかし、経済的に見ると、デンマークの労働者の給料、デンマークの経済などは、ほかのヨーロッパの国々に比べれば非常に高いのです。いま、デンマークの失業率はヨーロッパでいちばん低いのです。これは、たぶんこの弾力性によるのです。1つの言葉があります。これはいまの有期契約と直接関係ないのですが、1つのデンマークの単語、フレキシキュリティという言葉があります。たぶんご存じかどうかわからないのですが、フレキシキュリティは2つの単語を合わせて。フレキシは弾力性、キュリティはsecurity、安全性を持っている制度。これには、労働者側と経営者側のほかにもう1つ必要です。これは国です。結局、労働者が仕事を失った場合には誰が補償するか。それは国です。労働者に仕事がなくなってしまったときには必ず仕事を探す、必ず仕事を見つける、あるいは教育に入れる。それだけではなくて、必ずお金を渡す。だから、デンマーク人の労働者が仕事を失っても経済的に大きな問題がないのです。それによって弾力性が高いわけです。いいところがあれば悪いところもあるので、たくさんの人がずっと仕事を替わったりするときには、その仕事場の中の教育はどうなるかとか、いつでも新しい工場に、あるいは仕事場に入ったときには、労働者の質を失うかどうかわからないけど。でも、結局、仕事のないときは、いちばん大切なのは教育です。教育に入れるわけです。だから、たぶんデンマークの労働者の質は高いと思います。有期契約法が出来た大きな原因の1つはEUの指令があったので。でなければ、そのままデンマークの労働法が続いたと思います。でも、それがあったから、ほかのヨーロッパの国々と同じような法律を作りました。先ほど言ったように、例外はいくつかあって、教育のために仕事をする人たちの契約、法律とは関係ない。それから、軍隊の場合も、場合によっては関係ないときもあります。違反をした場合には、経営者側が、例えば同じ仕事場の中で同じ仕事をした有期契約の労働者と無期契約の労働者の給料は同じでなければ、経営者は、当然にその差額を払わなければならないと、まずないと思います。
このような法律の中にはいくつかの穴があると思います。これは、例えば建設。建設あるいは造船は、もともと季節によって仕事をするときもあるのです。デンマークの冬は、結構寒い、暗い、長いのです。仕事ができる期間は、例えば日本に比べれば、かなり限られています。ですから、このように時間的に失業になっているのは、デンマーク人はもう慣れていますので、案外、組合と経営者との間の問題なのです。いまデンマークでかなり大きな問題になっているものの1つは、安い労働力がデンマークに入ってきているのです。特に建設です。そこにいままで、今はちょっと変わってきているのですが、90年代と今世紀に入ってから建設ブームがあったのです。結局、ヨーロッパ全体、特にデンマークには、失業問題とは逆に、労働者が非常に足りなかった時期がつい最近まであったのです。し
たがって、東ヨーロッパ、いちばん近い東ドイツとか、あるいはもっと有力なポーランドから、たくさんの建設関係の労働者がデンマークに入ってきているのです。これは、デンマークの労働市場の中ではかなり大きな問題になっているのです。このポーランドから来る労働者たちの給料は、デンマークで同じ建設の仕事をしている労働者に比べれば低い、割合に低い。これ、どうしてできるか。組合がずっと反対しているのです。組合は、ずっとその仕事場の前でデモ、プラカードを持って反対運動をしているのです。
ただ、そのポーランドから来ている労働者は派遣労働者です。経営者はポーランドにいるのです。ポーランドにその派遣会社がありますので、結局、派遣労働者としてなっているわけです。この有期の法律には含まれていないので、大きな問題になっています。デンマークの組合にも入っていないので、ほかのデンマークの労働者は大変反対運動をしています。いまのところでは、結局、建設ブームはちょっとダウンになったところになりましたので、現在どのようになっているかわからないのですが。でも、これは、直接この有期契約とは関係ないのです。この法律が出来ても、穴がいっぱい出てくるだろうと思うのです。デンマークの資料があまりないのですが、あとでデンマークの労働市場についての何か質問があれば、できる範囲には返事をしたいと思います。
○鎌田座長 ありがとうございました。続きまして、韓国の法制及び実態についてのご報告をいただきます。本日は、労働政策研究・研修機構から呉学殊先生にお越しいただいております。呉先生、お忙しいところ、どうもありがとうございます。それでは、ご説明をお願いいたします。
○呉氏 まず、遅れまして大変ご迷惑をおかけいたしました。心よりお詫び申し上げます。韓国では2年前、即ち、2007年7月1日から施行されたいわゆる非正規労働者保護関連法が出来まして、大きな変化があります。その関連法は3つの法律によって構成されています。1つが「期間制及び短時間労働者保護等に関する法律」。これは制定法です。派遣労働者の保護規定も入りましたので、派遣法が改正され、また差別是正を取り扱うのが労働委員会ですので、労働委員会法も改正されました。その3つの法律が改正されて、有期労働者について大きな規制を加えるという措置がとられました。それにつきまして、簡単にご紹介申し上げたいと思います。
まず法制の概要です。契約期間は、実質上は2年以下、形式上は、期間の制限はありません。期間が2年を超えますと、期間の定めのない労働契約を締結したとみなされます。いわゆるみなし規定です。従来、労働基準法では1年を超過して労働契約を定めてはいけないという法律がありましたが、非正規労働者保護関連法の施行に合わせまして、その有効期限を設定いたしました。即ち、2007年7月1日からその規定は無効になっています。したがって、現在、労働契約期間を規制する法律規定は、原則、ありません。また、更新回数は、特に定めがありません。
次、契約締結事由の制限ですが、基本的に事由制限はありません。その保護関連法の導入に当たってかなり議論がありましたが、労働側は、契約締結事由制限を行うべきだとかなり要求をしたのですが、結局、入れることはせずに今に至っています。しかし、派遣労働者に限っては、それに当たる人が少ないと思いますが、派遣対象業務がいま32業務ありますが、それ以外の場合に次のような事由があれば派遣が許されるという、非常に限られたものがあります。即ち、出産・疾病・負傷等で欠員が生じた場合、または、一時的・間欠的に労働力を確保する必要がある場合、その事由があるのみ派遣対象業務ではないところに派遣が許されているということです。
次、雇止めの規制です。雇用期間が2年以下であれば、原則、雇止めができると思います。しかし、それも、労働基準法第23条に当たるものでなければいけない。即ち、「使用者は、労働者を正当な理由なしに解雇、休職、停職、転職、減俸、そのほかの懲罰をしてはならない」という法律がありますが、2年以下であっても、正当な理由なしに解雇した場合には無効になるわけですが、どちらかと言いますと、今回の非正規労働者保護関連法の導入に伴いまして、2年以下であれば自由に雇止めできるのではないかという見方が強いのが現状です。
次、差別的取扱いの禁止です。使用者は、期間制労働者または短時間労働者、また派遣労働者であることを理由に、当該事業または事業場で同種または類似業務に従事している期間の定めのない雇用契約を締結した労働者、いわゆる正社員に比べまして、差別的処遇をしてはならないという規定があります。差別されたと思う労働者は是正を申請することができますが、それは労働委員会に申請することになっていますが、3カ月以内にすることになっています。差別したかどうかという立証の責任は使用者側にあります。労働委員会が是正命令を行った場合、それを受けた使用者は、その命令に不服の場合には10日以内に中労委に再審を申請することができますが、不服しないでその命令を正当な理由なく履行しない場合には、1千万円以下の、1円に10ウォンというレートですが、過怠料を賦課されることになっています。
無期契約への転換です。2年を超えていわゆる非正規労働者を使用し続ければ正社員、契約の定めのない雇用契約を締結したとみなすという規定がありますが、それに伴って、2年以上になれば、無期契約に転換されるということになっています。また、非正規労働者優先的雇用というものがあります。使用者は、期間の定めのない労働契約を締結して新たに労働者を雇用する場合、即ち、正社員を雇用する場合、当該事業または事業場の同種または類似業務に従事する期間制労働者を優先的に雇用するように努めなければならないということで、優先的雇用規定があります。
裁判例です。期間の定めのある雇用契約であっても、自動反復更新により長期間にわたって勤められた場合に、その期間の定めがただ形式に過ぎないとみなされる場合には、正当な理由がなければいけないということになっています。その期間の定めが形式的かどうかということを判断するに当たりまして判例で定着しているものは、契約締結の動機・経緯、期間を定めた目的、採用当時の当事者の真の意思、労働期間の定めの調書変更回数、同種労働契約の締結方式に関する慣行、労働者保護規定等を総合的に考慮する、というのが判例上、かなり定着していると言えます。
次、有期労働契約の実態です。具体的なことにつきましては、資料として、韓国労働政策の動向と非正規労働者というテーマで、去年、社会政策学会で発表したものがあります。来月、本になる予定ですが、ゲラの段階でちょっと手書きが入って見づらいところがありますが、ご参考にしていただければと思います。非正規労働者保護関連法がなぜ導入されたのか、導入によってどういう変化があったのか、また、それに対して政労使の対応がどうであったのかなどについて書かせていただいたものです。
3頁に戻っていただきまして、有期労働契約の実態についてご報告をいたします。図表1です。韓国では、非正規労働者の割合を言うときに2つの政府の統計があります。1つが従来から行われてきた臨時労働者と日雇労働者を合わせた人を非正規労働者とみなすもの。それと、2001年から労働力調査に付加調査を行いまして、いわゆる雇用形態別の調査を行っております。それは、便宜上、私は新分類と書かせていただきましたが、その2つの統計があります。臨時労働者とは、1カ月以上1年以下の雇用契約で結ばれた労働者です。日雇労働者とは、1カ月未満の雇用契約を結んだ労働者です。新分類ですが、真ん中から下ですが、期間制労働者、いわゆる契約社員ですが、それと時間制労働者、即ちパ
ートタイマー、それと非典型労働者の合計です。日本に比べましていわゆる特殊雇用という、ゴルフ場のキャディーとか持込みトラック運転手などがその非典型労働者、いわゆる非正規労働者に区分されている、それと、下請労働者であれば、いわゆる正社員であっても非正規労働者として分類されることが多いというのがちょっと違うかなと思っております。
図表1をご覧いただきますと、いわゆる従来からの統計、即ち、臨時プラス日雇いは、いちばん高かったのが2000年で、52%でした。その後、徐々に減っています。それと、新分類です。ちょっと見づらいのですが、2005年までずっと上がっているのですが、その後、若干減っているという傾向が見られますが、今年3月、その付加調査を行った統計によりますと、33.4%になっています。
次、4頁、図表2です。具体的に非正規労働者の内訳ですが、ほとんど、6割以上がいわゆる契約社員です。パート労働者は、非正規労働者の中で2割。特殊雇用形態のものが11%。派遣労働者は非常に少ない割合で、3%前後になっています。
図表3は、正社員に比べると、非正規労働者の賃金がどのぐらいなのかということを示しています。非正規労働者全体で見ますと、正社員の賃金の約3割の前半を推移していると言えます。非正規労働者の中でもいわゆる契約社員が最も多く、パート労働者が低い。もともと1カ月の賃金を比較したもので、労働時間が短いということの影響がかなり出ていると言えます。
次、5頁、図表4です。社会保障の加入率、また賃金以外の労働条件の格差は、ご覧のとおりです。
最後ですが、4番、非正規労働者保護関連法の施行と改正の動きです。先ほど申し上げましたが、同法が施行されたのが2007年7月1日ですが、今年7月1日で2年を迎えました。雇用期間が2年を超えている契約社員やパートタイマーの場合には、期間の定めのない雇用への転換をしなければなりませんし、派遣労働者の場合には、直接雇用を義務づけられました。その2年が経過することで企業などの動向がかなり注目を集めましたが、韓国の労働省が今月1日から14日にかけて行った調査をご紹介申し上げます。回答があった事業所の中で約28.1%が期間の定めのない雇用に転換した、残りの71.9%の労働者が解雇されたと調査されています。そのほか、韓国にはナショナルセンターが2つあります
が、そのうちの1つ、韓国労総というナショナルセンターがありますが、そのナショナルセンターが今月15日から何日にかけまして傘下労働組合に調査をいたしましたところ、期間の定めのない雇用に転換したのが68.4%と調査されています。そこは労働組合がある事業所ですので、いわゆる期間の定めのない雇用への転換率が高かったのではないかと思います。
韓国の政府は、期間の定めのない雇用への転換を義務づける2年という期間を4年に延長する法案を今年4月に国会に提出いたしました。その背景ですが、急激な経済危機の中で、企業が期間の定めのない雇用に転換せずに非正規労働者を大量に解雇するのではないかというおそれがあったからです。韓国労働省は、約100万人ぐらい解雇されるのではないかと予想したわけですが、そういう大量解雇を防ぎたいというねらいがあったわけです。しかし、国会で与野党の調整が進まず、現在、国会係留中です。労働省は、非正規労働者から失業者が出ましたら、彼らに対して、失業手当の迅速な支給、再就職支援の強化、職業訓練を通じた能力開発の支援、生計費の支援などの取組みを強めるとともに、正社員への転換を促すために、転換企業に対しては社会保険料の減免、法人税の減免などの政策をとっていく方針です。いまでも国会でさまざまな動きがありますが、これからも非常に注目されるのではないかと思います。
○鎌田座長 ありがとうございました。これから質疑に入りたいと思うのですが、一通りお話を聞いて長丁場になりますので、一度、ここで休憩をとりたいと思いますが、よろしいでしょうか。いま、私の手元では53分になるところですので、7時再開ということにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。では、7時再開ということで、一旦休憩といたします。
(休憩)
○鎌田座長 ちょうど7時となりましたので、質疑に入りたいと思います。これまでのご説明について、ご質問等がありましたらお願いいたします。どなたでも結構ですので、どうぞよろしくお願いします。
○藤村委員 奥田先生にお伺いしますが、私の記憶ではフランスは法定福利費が非常に高くて、正社員を雇うと、とても企業負担が大きい。それが正社員雇用が進まない1つの理由だという理解をしています。この有期雇用の人たちというのは社会保険部分というのはどんな扱いになっているのでしょうか。
○奥田委員 社会保険部分といいますと、具体的には。
○藤村委員 全く同じ、日本で言うと雇用保険とか年金という部分ですよね。
○奥田委員 年金の適用について具体的に調べたわけではないですが、制度として有期契約の労働者とそれ以外の労働者、正社員を区別するということは、これまであまり見たことがないので、基本的には同様の権利で考えられていると理解しています。
○橋本委員 いまのご質問に関連しまして、おそらく社会保険の被保険者となるための要件で、あまりにも短い、短時間労働者を除くという規定はドイツにあるので、たぶんそういう趣旨かと。
○奥田委員 条件に入ってこないということかもしれないですね。すみません。その辺は確認していないので、申し訳ないです。
○藤村委員 わかりました。ありがとうございます。
○佐藤委員 よろしいですか。呉さんの韓国ので、図表1のデータの見方ですが、57%とか69%とあるのは、非正規の分類が2つありますが、基本的には分母は何ですか。全雇用者、全労働者ですか。
○呉氏 全労働者に占める非正規労働者の割合です。
○佐藤委員 そうだとすると、その約半分とか7割ぐらいが非正規ということですね。
○呉氏 そうです。60%以上になっているのは、新分類に基づいて女性の中の非正規労働者の割合です。
○佐藤委員 すべての女性が100となって分母で、その中の働き方を見て非正規の者が60何パーセントとか。
○呉氏 そうです。
○佐藤委員 これは、全部女性の中でということですか。
○呉氏 いいえ、その真ん中にあるもの。
○佐藤委員 それ以外の左側の灰色の50%というのは、すべての男女込みが100ですよね。
○呉氏 2001年から棒が3つありますよね。左の棒が臨時プラス日雇労働者、従来からの統計で、真ん中が女性、いちばん右側が新分類です。
○佐藤委員 要は、第1分類のいちばん左側が例えば2001年は50%になっているけれども、分母は男女込みのオールワーカーが100ですね。
○呉氏 はい。
○佐藤委員 では、オールワーカーの半分が非正規ですか。
○呉氏 はい。
○佐藤委員 それでいくと、日本は大体約3分の1と言っているわけですね。ざっと半分ということですね。
○呉氏 そうです。
○佐藤委員 ありがとうございました。
もう1つ。私は労働法専門ではないので非常にシンプルな質問になりますが、聞いた感じでいうと、アメリカを除くと有期契約に関する法律があってというのは、たぶんどこもそうです。あとは期間を決めている場合には、つまり有期で定めた場合には期間を定めるというのもあって、その場合に、間違っていたら直してもらいたいのですが、フランスは18カ月の約1年半、イギリスは4年、アメリカはちょっと外して、デンマークはどうなのでしょうか。有期で定めた場合には何年になりますか。
○リンドブラッド氏 ないと思います。ただ、何回も繰り返すのは多すぎるために作った法律なのですが、有期の期間は聞いたことがないです。ただ1つだけ聞いたのは、研究期間は大学は大体4年です。2年するから、それを1回延ばすことができます。これは大学だけではない。例えばデンマークの大使館の中では、科学技術の専門家が1人います。1回2期しかできないのです。3期も延ばすことはできない。ただ、これと直接関係があるのか。これは法律の前でも駄目だったのです。直接これができてから、そうなったわけではないです。前からそうだった。その大学の先生の期間も前からそうだったと思います。何回もそれを繰り返す。何か大きな問題になっているような感じがしないのです。
○佐藤委員 事件も少ないという話ですか。
○リンドブラッド氏 少ないです。
○佐藤委員 呉さん、韓国は2年ですか。
○呉氏 実質上は2年。形式的にはありません。
○佐藤委員 ドイツは何年でしょうか。
○橋本委員 条文の14条の2項で、正当事由がない労働契約については2年間です。1項の正当事由がある場合は何回更新してもいいし、何年でも正当事由さえあればいいと。
○佐藤委員 ありがとうございました。
○鎌田座長 フランスとドイツというのは、有期については似たような法制度なのかなと思ったのですが、いま奥田先生と橋本先生の話を聞いて、少し違うのかもしれないという感じがしました。それで確認の意味で少しお聞きしますが、一応契約締結事由の制限というのはドイツでもありますが、契約締結事由以外で結ばれた場合について何か争うことはあまりないと言われました。つまり、雇止めのところで議論になるのがほとんどだということですよね。そういう理解でよろしいですか。
○橋本委員 それでいいと思います。
○鎌田座長 例えば、契約締結事由について、客観的な理由がないと言うのですからないと思いますが、なかった場合の違法に対する効果を定めた規定もないということですか。それはありますか。
○橋本委員 あります。判例法理がありまして、それが条文にもなっていまして、16条にあります。効果はフランスと同じかと思ったのですが、期間の定めなく締結されたものとみなされることになります。
○鎌田座長 期間の設定が無効となった場合。
○橋本委員 はい。
○鎌田座長 つまり争い方として、有期で雇われた。それで雇止めをされた場合に、労働者として争うのは、その期間の定めが期間設定に問題があったのだという争い方になるわけですか。
○橋本委員 そうです。
○鎌田座長 そして、それが正しくない、違法だということになると、期間の定めなく締結されたものとみなされるとなるわけですね。
○橋本委員 はい。でも、韓国も同じなのかなと。呉先生のご報告を聞いて、レジュメの2頁の2で、正当な理由が必要だと。反復更新された契約について、正当な理由がなければならないという大法院の判例が引用されていますが、ドイツ的な理解なのかなと思いました。
○鎌田座長 さらにしつこく聞いて申し訳ないですが、そもそも契約締結事由の制限の規定を導入した趣旨は、1960年のドイツ連邦労働裁判所の大法廷判決があって、この大法廷判決の趣旨というのは解雇制限法、いわゆる解雇規制を潜脱するというところに問題があるというご趣旨ですよね。
○橋本委員 そうです。
○鎌田座長 これは奥田先生に確認したいのですが、フランスはどうもそれとは少し違うような趣旨に聞こえたのです。どういうことかというと、そもそもフランス法に関しては、無期原則というのが明文になるのですか。無期で締結すべきだと。期間の定めというのは、原則「ない」という考え方ですね。
○奥田委員 労働契約は期間の定めなく締結するという条文があります。
○鎌田座長 そういったものは、ドイツには。
○橋本委員 ないです。私も奥田先生のお話を聞いて、ドイツと違うなと思いました。
○鎌田座長 そうすると、ドイツは判例法理を基にして制定法に導入されたというのは、解雇規制の潜脱をなくすために有期についての一定の規制が入ったわけですが、フランスに関してはそもそも解雇潜脱の前に、期間の定めを置くこと自体を認めないという考え方ですね。
○奥田委員 ただ、法律の経緯ということで言いますと、当初、有期というのは使用者にとって非常に縛りがあるもの、保障しなければいけないもので、解雇に対する規制がないときには期間の定めがない契約のほうが解約しやすかった。ただ、その解雇に対していろいろ規制がかかってきたときに、有期のほうに移行していったというところがありますので、そういう意味で言うと解雇の潜脱というのを避けるというのは言われています。
○鎌田座長 それは、実態としてはそうだと思います。
○奥田委員 でも、基本的には同じような考え方はあると思います。
○鎌田座長 ただ、いま言った労働契約から言ったら基本的に期間が曖昧である場合というか、明確でない場合には、無期であるべきだという考え方ですね。
○奥田委員 はい。
○鎌田座長 それは、いつごろできた規定ですか。昔からそうですか。アバウトな質問で申し訳ないですが。
○奥田委員 調べればわかります。
○鎌田座長 要するに、雇用契約に関する基本理念ですかね。ドイツは、おそらく先ほど言ったようにまず解雇規制法があって、解雇規制法の潜脱を許さないという判例法理があって、それをいわば実体法化するということだから、基本的に雇止め規制なのですね。ところが、フランスは昔から、それがそもそも期間の定めを置くことについての例外規定というか、原則は無期なのだということが出発点になっているという。
○奥田委員 その条文が何年に入ったかというのは確かめないとわからないですが、1980年代にいろいろと政権交代があったときに、1982年に現在のような有期契約を規制するような法制度の流れになりました。しかし、1986年の政権交代のときにはこういう利用事由で制限するのではなくて、むしろ利用してはいけないもので制限する、ネガティブかポジティブかというふうな有期契約の考え方の転換もありまして、1990年の法制で、現在のもとの有期契約の利用事由を規制するというふうにもう一度戻っていますので、従来からずっとそういう考え方が当初からあってということではないと思います。ただ、現在の1990年以降の法制度のもとでは無期契約が原則で、だから有期が利用事由として制限されるというふうに、1990年以降は確実にそうだと思いますが、それ以前からそういう考え方のも
とでだったかというと、そうではない考え方の法制に変わったときもありますので、その辺りは一応1990年の、現在の労働法典の内容を形成した1990年法以降だと理解していただいたほうが正確ではないかと思います。
○鎌田座長 実質の意味では解雇規制があって、それを潜脱するということをどう防止するかということが、事実上非常に大きな問題ということですよね。
○奥田委員 はい。
○富田調査官 事実関係について、奥田先生が書かれたJILPTの報告書にいまのことが書いてあって、期間の定めのない契約が原則であるというのが明文化されたのが、1982年2月5日のオルドナンスだと書かれていますから、ミッテラン政権になって、期間の定めのない契約が原則というのが明文化されたということです。
○鎌田座長 それと同時に、利用事由をいまのような例示列挙に上げられたのは、ほぼ同じ時期ですね。
○奥田委員 その法律の中でということですね。それはそうです。でも、先ほど申し上げたみたいに一旦1980年代の半ばで変わっていますが、それがまた1991年に戻るということです。
○鎌田座長 わかりました。効果の面についてもう1つ。更新規制がなされる中で、利用事由限定についても同じかもしれませんが、無期契約のみなし規定というのは効果的にはフランスもドイツも同じですか。
○橋本委員 同じだと思います。
○鎌田座長 転換請求権とか、そういうのは。
○橋本委員 違います。転換請求権ではなくて、初めからみなしです。
○奥田委員 ただ、それは労働者が請求してということですが。
○鎌田座長 そうです。転換請求権だと直ちに無期になるわけではなくて、そこに法的なワンクッションが出てきますよね。それがなくて、いまはみなしになっているわけですね。
○奥田委員 はい。
○鎌田座長 もう1つだけ奥田先生にお聞きしますが、例の契約終了手当というのは、ちょっと違う趣旨なのだということでしたよね。
○奥田委員 違う趣旨というか、有期契約の違法性を前提とした賠償金のようなものではなくて、有期契約が終了するときの労働者の不安定性をカバーするための手当で、賠償金的なものではないという意味で違う意味です。
○鎌田座長 それは非常に形式論でいえば、もちろん正当な状態で利用事由限定を外すとか違法だということではなくて、両当事者が合意して期間が来て、更新の場合であっても満了して終了することを考えれば、いわゆる合意原則で考えれば、不安定だからといって手当を出すという理屈には簡単にはならないと思います。事実上不安定だとは思うけれども、にもかかわらず、そういったものの手当を保障するというのは、何か理由があったのでしょうか。政策的なものですかね。
○奥田委員 それはそうだと思います。確かにおっしゃるように、合意に基づいて決めたことだから、それで終了するのが不安定と言えるかどうかという議論はあり得るかとは思いますが、政策的と言われれば政策的なものだと思いますね。
○鎌田座長 これは解雇みたいな発想で、解雇予告というか解雇手当的な発想ですか。
○奥田委員 ただ、解雇予告と言うと、当初から予定していないものが解雇として出てきたときに、30日間の準備期間という意味合いがありますよね。そういうことを言うと、若干は違うかもしれません。もっとも、このケースでも有期契約で従事していた者に対して、その職での期間の定めのない契約で、それが継続されるのであれば全くこの手当の対象にはもちろんなりませんし、そういう提案が使用者からあったのに労働者が拒否した場合は、状態としては同じような不安定な状態にはなり得るでしょうけれども、そういう場合にも対象にはなりませんので、基本的には労働者の側での終了ということを前提としない手当と考えると、すべてをカバーするわけではない。
○鎌田座長 質問を換えます。この手当の額がいくらになりますか。
○奥田委員 契約期間中に支払われた税込総報酬の10%というのが、法律上の基本です。
○鎌田座長 契約期間中というのは、例えば1年契約を結んで、1年ごとに3年更新した場合はどうなりますか。それは1年の10%ですか。
○奥田委員 3年更新というのはないですが、例えば18カ月の間で12カ月だけだったらそれが契約期間ですし、更新して18カ月までいくと、それが契約期間ということにはなります。
○鎌田座長 要するに、続いた間の10%ということですか。
○奥田委員 そうですね。ただ、続いた間といっても、例えば先ほど連続というのが出てきましたよね。連続という場合だったら、元の契約と次の契約は別ですので、一旦終了した契約自体が契約期間になります。あとのほうと全部引っ括めてということにはならないです。
○鎌田座長 わかりました。とりあえず、私のほうはありがとうございます。
○山川委員 いまの点に若干関連しますが、フランスとドイツを比較すると、フランスは締結事由の制限と利用期間の制限を「かつ」という形でかけていて、ドイツの場合は「又は」という形でかけているという理解でよろしいでしょうか。イギリスは期間制限のみをかけていて、締結事由は特に制限していないということになるのですか。
○有田氏 はい。ただ先ほど触れましたように、労働協約又は労使協定によって、それを定めることはできるというふうになっていまして、実際にそういう個別の協約ないし協定が結ばれているかどうかはわかりませんが、先ほどお示ししましたようなナショナルセンターレベルでの枠組協定みたいなものがあって、その中にはそういう条項が見られますので、ひょっとするとそれを受けて、個別協定や協約が結ばれている可能性があるとは思います。
○山川委員 韓国は締結事由の制限はないけれども、期間制限が2年という形。
○呉氏 形式的にはないです。2007年6月30日までは、1年以上の雇用契約はできないことになっていますが、非正規労働者保護関連法が7月1日から施行されましたので、そこでは2年以上雇い続ければ、期間の定めのない契約を締結したというみなし規定がありますので、それに伴って労働基準法で、1年以上契約してはいけないということが無効になったのです。私も法律だけを見るとわからないので、前の労働基準課長に電話をして確認しましたら、それは無効になって、労働契約期間の規定は現在ないと確認をいたしました。
○山川委員 デンマークはやや特殊で、リニューアルはしてはいけないという原則はあるけれども、別に締結事由とか期間の定めの制度もないという。
○リンドブラッド氏 ないと思います。いまこれを見ると、ずっと「契約」という言葉を使っていますが、ただデンマークの法律は契約という言葉は「契約しよう」と考える。法律の中で有期雇用条件。デンマークの労働者の中で、契約しようと思っているのは、たぶん有期契約で働いている人だけだと思います。例えば、12月にコペンハーゲンでは気候問題の会議があります、この3カ月の間には。こういうようなことが書いてあるけれども、ほかの人は書いていない。
それから、フランスとドイツに比べれば、デンマークの保険のシステムが随分違います。保険は会社ではないです。保険は国。第三者になっています。だから、1つの会社からクビになった場合には、健康保険とか労働保険に関する問題は起こらないです。雇用関係のない所からお金が出てきます。
もう1つは公務員。デンマークの公務員の大部分は、ある意味では契約です。自分の組合の規制によって給料をもらっています。デンマークの外務省の中にも、4つぐらいの組合が入っています。本当の公務員、国の年金をもらう権利を持っているのは、課長より上だけです。少ないです。消防署、警察はまた別ですが、例えば官庁あるいは地方政府で働いている公務員のほとんどは、正社員ではないです。自分の組合が決めた金額をもらうわけです。例えばエンジニアであれば、コペンハーゲン市の水道局に働いている技術者の人たちの給料は、組合から決まった給料をもらう。そこから交渉ができますが、基本的にはそういうふうになっています。
○山川委員 いまの関係で、そうするとドイツは「又は」という規制だとすると、先ほどの連邦労働裁判所の判決が現在どうなるかということで、先ほどの条文で期間設定が無効になった場合は期間の定めもなく、締結されたものとみなされるということは、解雇制限法がかかって正当な理由がない限り、解雇は許されないことになりますが、締結事由が正当な理由がある場合においては無効にならないということになって、したがって雇止めの合理的な理由が必要である。解雇として扱われて、正当な理由が必要であるという判例法理は、もうかからないということになるのですか。
○橋本委員 はい。その正当事由が要らない有期契約は、結局2年間までしか締結できないので。
○山川委員 言い間違えましたが、正当理由がある契約については雇止めの合理的理由も、16条で無効にならないために要らないということでしょうか。つまり、16条は期間設定が無効になった場合と書いてあるので、締結事由がある、14条の正当化される場合には無効にならないわけですね。
○橋本委員 それで紛争になるのは、この正当事由がなかったときに期間設定が無効となるので、期間がなかったということになります。
○山川委員 したがって、正当な事由がある場合には無効にならないので、16条はかからないということですか。
○橋本委員 そうです。雇止めで終わりということになります。
○山川委員 それは、ある意味では日本よりも規制が弱いことになるのでしょうか。
○橋本委員 私の理解では、正当事由があるか、ないかの判断が、日本の雇止めの法律とよく似ていると思ったのです。
○山川委員 ただ、最初の期間設定の正当性ですので、雇止めの正当性というのは別ですよね。
○橋本委員 雇止めのときで何を見るかというと、雇止めされるまで何度も契約を更新しているわけで、最後の契約を締結したときにこれらの正当事由があったかどうかというのが裁判所によって審査されます。例えば、一時的な労働需要(14条1項1号)だと使用者は言っていますが、結局何度も更新されていて、最後の契約締結のときにはもう何度も更新されたという実態が過去にあるわけで、そうすると一時的な労働需要だという理由は正当化されないという話です。
○山川委員 最初の契約設定時には、仮に正当な理由があったとしても、更新拒絶直前の契約のときに設定の正当性というか正当化理由が必要であって、雇止めが問題になるときにはそれがない場合が多いと。
○橋本委員 そうです。
○山川委員 ありがとうございました。
○鎌田座長 更新の正当性を実質ね。
○橋本委員 そうです。
○鎌田座長 いまのでわかりました。そういう意味では、フランスも同じですかね。最初は18カ月しかないので、その間はたくさん更新することもないとは思いますが、争いになったときには、最初は利用事由限定についてはオーケーだったけれども、直前の更新についてはないという争い方になるわけですか。
○奥田委員 更新が1回ですが、最初にその利用事由が正当かどうかということを確認しますが、更新の段階でも利用事由があるかどうかということを証明しなければいけないので、その段階でなかったことになれば同じようなことになると思います。
○鎌田座長 更新は1回ですか。
○奥田委員 更新は18カ月の中で1回です。
○鎌田座長 更新規制もあるし、期間の上限規制もあるという格好になっているわけですね。
○奥田委員 そうです。1回の更新を入れて18カ月ということですので、もし最初の段階で利用事由が正当だったとしても、もちろん更新の段階でも正当でないと、一応更新できないという形にはなっていますが、問題になるとすればそこの部分になります。でも、実際には最初から利用事由として正当性がなかったという争いはもちろんあります。
○藤村委員 素朴な疑問ですが、今日はEU加盟国が4つ。こんなに違うのかと。例えばEUはどんどん東に拡大していって、先ほどおっしゃったポーランドの会社が派遣みたいにして、建設労働者をたくさん入れてきている。たぶん、ドイツも多いと思います。そうなると、ドイツ国内あるいはデンマーク国内のそれぞれの国の中の法律だけでは統制しきれないものが出てきて、それはEUでEU指令みたいなものが出るのでしょうけれども、この有期契約についてのEU指令とか、これからどうなっていくのかなというのがとても興味があります。何かいまはバラバラで、このまま行ってしまうのか、あるいはある種の統一性を持つ方向に行くのかはいかがでしょうか。
○リンドブラッド氏 いまのデンマークの場合では、特にポーランドからたくさんの建設関係の労働者が出る場合には、給料賃金以外の法律は一緒です。例えば、安全とか病気になったときは変わらないですが、賃金は違います。それは、いつか同じようになるかならないかはわからないけれども、この人たちはポーランド並みの給料をもらっています。ポーランドの会社から派遣されていますから、彼らのデンマークでもらった給料はポーランドに比べれば、非常に高いです。結局いちばん理想的なのは、ヨーロッパ全体の労働者が同じ給料をもらうこと。それはあり得ないです。だから、賃金の面ではまだまだです。
○奥田委員 資料を見ますと、1999年に有期契約のEU指令が出ていますけれども、フランスとの関係ではこの指令自体が、1990年のフランス法がある程度ベースになっていると言われていますから、もちろん解釈では最近たくさん出てきていますが、それほど1999年指令の影響というのはないと思います。それが、どの程度他国に国内法化が要求されているかということだと思います。
○橋本委員 指令を見ると、4条で差別禁止原則があって、これはどこでも立法化されたと思いますが、5条でいま問題になっている期間とか更新の規制がありますが、濫用防止措置という規定になっていて、「以下の措置のいずれか又は複数」という形で、かなり幅のある書き方で、各国に任されているのかなと思いました。更新を正当化する客観的事由とか最長期間という規制が挙がっていますが、いずれか又はという形です。
○藤村委員 勝手に決めていいよという感じですね。
○鎌田座長 韓国の呉さんにお聞きしたいのですが、「2年を超えると期間の定めのない労働契約を締結したものとみなす」ということですが、まず確認ですが、更新を含め2年を超えるとということですね。
○呉氏 そうです。
○鎌田座長 利用事由限定というか、正当な利用事由があるか、ないかということは議論して何もないわけですよね。そうするといかなる場合であっても、2年が経てば期間の定めのない労働契約になるのだということになりますよね。そうすると、例えば建設なんかで2年で建設工事が終わる予定だった。ところが、どうしても遅れてしまって2年半になりますよという場合にはどうなのですか。これも無期になってしまうのですか。
○呉氏 事業が明確に期間を定めてその事業を行う場合には、その事業が終了するまで例えば3年であれば、3年間雇う間、2年を超えたから正社員に切り替えるというものではなくて、例外規定がありまして、明確な期間設定で事業を行う場合には例外になっております。例えば、ある建設現場でこの工事は3年かかる。3年の期間を定めて、労働者を採用しますよね。そういう期間が明確に定められた事業については、2年を超えたということで正社員に切り替える必要はありません。
○鎌田座長 そうすると、特定のプロジェクトについては2年を超えて終わる場合には、それでもいいということになっているわけですね。
○呉氏 そうです。
○鎌田座長 別に建設だけではないですよね。
○呉氏 だけではございません。
○鎌田座長 そうすると、いま私が最初に申しましたような、2年の予定で半年延びましたよというのは駄目なのですね。
○呉氏 駄目です。
○鎌田座長 その場合、延びる理由が明確ですよね。要するに工事が遅れてしまったので、でも半年が経てば、これは終わりますよということも明確ですと。それも駄目なのですね。
○呉氏 それは明確にここに示されていないのです。例外規定を申し上げますと、事業の完了又は特定な業務の完成に必要な期間を定めた場合には、2年以上雇い続ければ期間の定めのない雇用にみなすという規定から除外されております。例外規定になっております。
○鎌田座長 そうすると、かなりわかりやすいというか、極めて形式的な処理が可能となると思いますが、例えばヨーロッパを見ますと本来有期はするべきではないとしても、さまざまな形で正当な理由がある場合にという工夫がなされているわけですよね。ところが、韓国ではすべて期間の問題で集約しているわけですよね、いまは例外的なものもありましたが。そういう制度を導入した趣旨というのをもしご存じだったら教えていただきたいです。
○呉氏 私の論文をご覧いただきたいと思いますが、日本に比べますと非正規労働者問題が非常に深刻で、例えば男性でも非正規労働者がものすごく多いわけです。30歳、40歳でも非正規労働者、契約社員に限ってみても3割ぐらいいまして、彼らの仕事が正社員に比べてどのぐらい違うかといえば、それほど違わない。なのに、処遇はかなりの格差をつけられているという問題がありまして、それに対して労働運動という側面で是正を求めた運動が繰り広げられまして、かなり社会的にクローズアップされまして、その問題を解決しないといけないということになりました。その際に、例えば5人もの非正規労働者が自殺をする。その際に、非正規労働者を撤廃しなさい、差別を撤廃しなさいということを叫びながら自殺をすることがものすごく社会にインパクトを与えまして、それでこの非正規労働者問題を解決しなければいけないということで、非正規労働者保護法というものができるようになったのです。その背景には、前の10年間の政権が民主主義、日本で例えられるかどうかは知りませんが民主党系の政党の大統領だったので、それが可能だったのではないかなという気がいたします。
○鎌田座長 全くよくわかっていないので、本当に初歩的なことをお聞きしますが、有期の場合でもいま言ったようにプロジェクトが決まっている場合とか、あるいは更新する場合でも必要な場合もあるという経営的な観点もあるわけですよね。ただ、それが無制限に延びるというのはまずいでしょうというふうにも考えられるわけですが、そうした場合に2年という期間ですべてを処理してしまおうと考えたのは、有期の場合で例えば更新を含めて、もう少し長期間有期の人たちを使わなければいけない理由がある場合もあると思います。そういった議論というのは特になかったのですか。
○呉氏 ありました。当時この期間設定の際に、韓国労働省は3年というものを考えたのです。それが一般的に、契約社員の勤続年数が大体3年であるということで3年の案を出したのですが、労働側はこれは使用事由制限を行うべきだということで、強行にそういうことを定めることに対して反対したし、経営者側はこの規制はあまりにも強すぎるということで、それ以上に延ばすべきだという労使の対立があったわけです。その中で、当初韓国労働省は3年という案を出したのですが、労働側に押し切られる形で3年が2年になったというのが経緯です。
○阿部委員 韓国では、2年を超えて期限の定めのない雇用に移行しているのが28.何パーセントという調査があった。奥田先生のペーパーを見ると、フランスでは同一企業で期限の定めのない雇用に移行しているかどうかは別として、有期雇用契約者の3分の1は期限の定めのない雇用に移行しているということがあって、フランスではそれが3分の1であっても、有期雇用契約が失業しないとか、次の仕事につながるという意味でポジティブに評価されているように読めたのですが。
○奥田委員 それは報告書ですかね。
○阿部委員 同じ3分の1なのです。そこの評価の違いというのが、それぞれの国によって違うことがあるのはなぜかということと、ドイツ、フランス、イギリスの3カ国に雇止め規制というのがあったときに、韓国のような問題をどのように、つまり雇止め規制があることによって失業が生まれてしまうことに関する評価というのは、どんな議論があったのかというのが興味があります。
○橋本委員 有期契約の規制が厳しいのではないかという議論でしょうか。
○阿部委員 1年半が過ぎたときに、例えば韓国であればそれをいま議論しているそうですが、2年を4年にするという議論をしているわけですよね。そういう議論はないのですか。
○橋本委員 正当事由のない有期契約が1985年に導入された目的は、阿部先生のおっしゃるとおり、失業対策でした。これに対して、労働側は、当時は大きな規制緩和だと批判しましたが、いま、特にこれらの規制について、大きな議論はないと認識しています。結局、正当事由のない有期契約の要件が一貫して少しずつ緩和されているにもかかわらず、雇用創出効果はあまり認められていない、ということが、最近ではあまり議論されていない理由ではないかと推測しています。
○有田氏 イギリスは私の調べが足らなくて、はっきりしないところもありますが、法律の構造上、基本的に有期であっても派遣の形の人は適用されませんし、先ほどemployeeということでカジュアルワーカーなども適用されませんので、もともと適用対象になる有期契約の人の範囲が非常に狭いこと、4年という長さ、上限の設定があること、それから、労働者の側がどういうふうに考えるかにもよりますが、協約や労使協定で修正可能だということ、それらをトータルにして考えるとデンマークでおっしゃられたように、インパクトがそんなに大きくなかったのではないか。だから、裁判例も一部通常のというか、我々が普通念頭に置いて考えるような一般的な民間企業のケースもありますが、多くが教員で、特に日本で言えば日本人学校みたいな所の有期の先生とか、大学の有期契約の先生の問題にかなり偏っているような感じがします。これは、一審の雇用審判所がリーガリスティックにならないようにということと、もともと先例拘束性の原則の範囲外なので、判例集というのが公刊されていませんので、そこまで下りるともっといろいろあるのでしょうけれども、法律審に上がってきたところ、判例集に載るところで検索をするとあまり出てこないことを見ると、インパクトはそれほど大きくないのかなと。そういう意味では、むしろいま法案が作られている派遣のほうの影響が大きいので、どちらかというとそちらのほうに。だから、かなり指令を作る段階からイギリスはずっと抵抗していて、やっと昨年採択されたということですから、イギリスはこの規則はもともと労働党政権がEUとの協調関係の中で、柔軟な労働市場と公正さとを両立し得るものとして、EUに軸足を移して立法政策を進める中で、当然国内法化がもう義務づけられていたわけですから、それを実行した。そのときによく言われるのが、最小限の国内法化、最低限のところでやるということで、先ほども出ましたような利用制限のところは基本的に入れなかったし、正当理由のところも具体的に列挙することもしなかった。そこは、労使で考えてくださいというような作りにしているところに、端的に現れているのではないかと思います。
○リンドブラッド氏 デンマークも大体同じです。それの影響で非常に限られています。
○奥田委員 先ほどの点で、いくつか申し上げますと、報告書の中で若干ポジティブに見えるかもしれないですが、あくまで失業状態が非常にひどくて、その中で正規雇用が見付けられるかどうかがまず前提にあったわけです。その正規雇用が見付けられない状況の中で、短期契約というのが一定の受皿になっていて、一定程度は正規雇用に結び付いているというのが、一応ここでの書かれていた元にしたペーパーの趣旨だと思います。実際には、有期契約は最初に資料で紹介していただいたように、非常に若者が多いとか低資格者の人が有期契約に就くことが多いので、そういうところで言いますと、そういう人をどういうふうに正社員化していくかのほうが現在のところでは政策の目的になってきています。ただ、最初少しおっしゃったような、有期の中でそれを緩和していってというのは、もちろ
ん最近有期契約をもう少し緩和していくべきだという要求は出ていますが、それが具体的に有期の中で緩和をしていって対応していくよりも、いかに正社員化を図るかということのほうが1つの方向性だと思いますので、その点だけお答えしておきたいと思います。
○山川委員 いまのお話との関係で、韓国が期間の定めのない雇用に移行するのに成功した率が28.1%で、フランスが3分の1でドイツが3分の2と国によって随分差がある。これは、たぶん労働市場の状況にもよって、韓国は大体2009年7月ですから、世界経済が悪化してからというのもあるかもしれないですが、韓国はそれで正社員転換を促進する施策をとっていく方針とありました。ドイツ、フランスでも結構数字が違っていて、労働市場の状況はあるかもしれないですが、正社員という概念は、無期雇用への転換の促進策みたいなことはされているのでしょうか。それとも、それは専ら法律の規制の強さによって影響が出てくるのか。つまり、1つは促進転換策があるかどうかと、もう1つは何か数字の違いについての分析というのがあるかどうかはいかがでしょうか。
○橋本委員 先にお答えさせていただきます。参考文献の3番目のホーエンダナーの調査で見た数字なので、詳しいことはよくわからないです。なぜ3年後を見ているのかもよくわからなかったですし、同じ企業かどうかもわからないし、高いという印象だけだったのです。促進策は、特に政策として出していないと思います。
○奥田委員 移行の3分の1という数字をどう分析するかというのはいまのところお答えできる素材はないですが、今日お示ししていない別の資料の中で、最近の労働力移動ということで示された数値で言いますと、有期契約で就職している人というのは少しずつ減っていまして、その一方で有期契約を終了させている人というのは増えてきていて、私の分析能力はその辺りがないですが、その調査報告書で言いますとそういう数値から雇用が一定程度改善されている。つまり、正規化としているという評価もされてきたりしていますから、そういう点で言うと若干の正規に向けての動きはあるかもしれません。ただ、先生がおっしゃった正社員化に向けての措置ということで言いますと、有期契約の法制の中に必ずしもそういう明確なものは出てこないですが、1つ出てくるとすれば職業教育というものが非常に有力に展開されていますので、そちらの分野で正社員化とは言えないですが、有期契約の労働者に対する職業教育の措置というのがある可能性が考えられる。
もう1つは、私のレジュメで言うと5頁に、これはEC指令との関係だと思いますが、期間の定めのない契約での採用に関する情報提供というのは、ほかの国でもあると思いますので、おそらくこれが転換措置の一環だとすれば、そこに位置づけられるかと思います。
○呉氏 ちなみに、韓国で非正社員が正社員に転換した流れを申し上げますと、契約期間を反復更新した人が正社員になったのが、2007年3月から2008年3月までが約15万人ぐらい、2008年3月から今年3月にわたりましては約6万8,000人ぐらいいます。その読み方が難しいのですが、これからこの企業で勤め続けることができないだろうと思っている人が正社員になった人数が、2007年3月から2008年3月までに約4万7,000人ぐらいですが、2008年3月から2009年3月にわたりましては11万人ぐらいになっていますので、反復更新している人であれば、一昨年から去年にかけて正社員に転換されて、これから雇い続けられないだろうと思った人が、去年にかなり正社員転換になったという数値
はあります。
○渡延審議官 アメリカのご説明の中で、at-willの原則があるところで使用者側から眺めて、有期契約のメリットが必ずしも見出し難いのではないかというお話がありましたが、そうするとat-willというのは、働く側から見てもat-willなわけですね。例えば一定の期間、高度の技術者とか専門家を3年間拘束して、すなわち同時に保障して研究開発に従事させたいといったニーズが、先端研究開発の領域で起こらないのだろうか。派遣とか間接雇用が発達しているので、そちらで調達できるというお話がありましたが、そういうことを考えたときに、1年で技術者に逃走されたくないというときに、一定の期間を拘束して働かせようとかのニーズは存在しないのでしょうか。
○池添氏 存在はするとは思います。先ほど私の説明の中で若干申し上げましたが、ごく僅かだけれども、書面契約を締結している労働者がいる。それは、役員であったり高給労働者であったり専門・技術職である。その専門・技術職の中に書面契約。雇用条件はどういう内容で、賃金額はいくらで、働く場所はどこで、従事する職務は何でと、就労条件を細かく内容を規定する形で書面契約を締結して、その中に契約期間も定める例はあるとは思います。しかし、私自身そういった書面契約を実際に見たことはありませんし、ものの本を見ていても、こういうものがフォーマットで、こういう形で有期雇用契約が締結されているのですよという紹介も存じ上げないので、明確にこういうものですということは申し上げられませんが、ニーズとしてはあると思います。
○渡延審議官 ありがとうございます。
○橋本委員 韓国についてお聞きしたいのですが、先ほど30歳台、40歳台の男性でも3割が非正規雇用で、正社員と同じような仕事をしているとおっしゃっていましたが、この新しい法律で差別的取扱いの禁止規定も入ったのですが、その辺の改善状況についてもし何かあれば教えてください。
○呉氏 差別是正の動きですね。私の添付した資料の59頁の「労働委員会」という見出しのところで、2008年1月28日現在、差別是正申請件数が793件にのぼりますが、そのうち内訳の中で175件処理しました。その中で取下がいちばん多くて77件の44%を占めて、是正命令が72件にのぼっております。中労委まで行ったのがいちばん下からの段ですが、韓国のJRの鉄道公社で起きた差別是正ですが、ボーナス、成果賞与金ということで韓国ではものすごくボーナスが多様ですが、正社員のみ支払って非正社員には支払っていないということで、これは差別に当たるという事案でした。中労委でもこれは差別であるということで支払い命令を出したのですが、会社側がそれに不服をしまして、いま地裁にかかっている状況です。
○鎌田座長 まだまだお聞きしたいこともありますが、ほぼ予定の時間が参りましたので、特に何かご質問があればお受けいたしますが、よろしいですか。特にないということでありましたら、諸外国の法制及び実態についての報告はこれで終了とさせていただきたいと思います。報告者の皆様におかれましては、お忙しい中本当にありがとうございました。
次回の日程について、事務局からご連絡をお願いします。
○富田調査官 次回の研究会の日程ですが、現在調整中ですので、委員の皆様には改めてご連絡をさせていただきます。以上です。
○鎌田座長 以上をもちまして、第5回有期労働契約研究会をこれで終了します。本日はお忙しい中、ありがとうございました。
照会先:労働基準局総務課政策係(内線:5587)