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2018年10月16日 第1回労働基準法施行規則第35条専門検討会

厚生労働省労働基準局補償課職業病認定対策室

○日時

平成30年10月16日(火)10:00~12:00

 

○場所

中央労働委員会講堂 労働委員会会館7階講堂

○議題

・労働基準法施行規則第35条専門検討会の検討経過等
・「芳香族アミン取扱事業場で発生した膀胱がんの業務上外に関する検討会」報告書(平成28年12月)について
・その他包括救済規定に該当した疾病について
・「業務上疾病に関する医学的知見の収集に係る調査研究  報告書」について

○議事
 

 

○佐藤職業病認定対策室長補佐 初めに、本検討会は原則公開としておりますが、傍聴される方におかれましては、配布させていただいております留意事項をよくお読みいただき、会議の間はこれらの事項を守って傍聴いただきますようお願い申し上げます。

 定刻になりましたので、これより第1回労働基準法施行規則第35条専門検討会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、御多忙中のところ御出席いただき誠にありがとうございます。

 それでは議事に入る前に、本検討会に御参集を賜りました先生方を五十音順に御紹介させていただきます。一般社団法人日本繊維状物質研究協会理事長、北里大学名誉教授の相澤好治先生です。産業医科大学産業生態科学研究所職業性中毒学研究室教授の上野晋先生です。中央労働災害防止協会大阪労働衛生総合センター所長、大阪市立大学名誉教授の圓藤吟史先生です。慶應義塾大学名誉教授の大前和幸先生です。公益財団法人結核予防会理事長の工藤翔二先生です。慶應義塾大学名誉教授の櫻井治彦先生です。精神科医・産業医・大阪樟蔭女子大学名誉教授の夏目誠先生です。関東労災病院副院長・循環器内科部長の並木淳郎先生です。埼玉医科大学名誉教授の西村重敬先生です。一般財団法人労災サポートセンター会長の馬杉則彦先生です。横浜労災病院副院長、運動器センター長の三上容司先生です。東京慈恵会医科大学環境保健医学講座教授の柳澤裕之先生です。千葉労災病院アスベスト疾患センター長の由佐俊和先生です。なお、公益財団法人日本股関節研究振興財団理事長、聖マリアンナ医科大学名誉教授の別府諸兄先生におかれましては、本日の検討会は御欠席との連絡を頂いております。

 続きまして、事務局を紹介いたします。大臣官房審議官の松本です。補償課長の荻原です。職業病認定対策室長の河西です。補償課長補佐の栗尾です。中央職業病認定調査官の西村です。同じく中央職業病認定調査官の岡久です。私は、職業病認定対策室長補佐の佐藤です。どうぞよろしくお願いいたします。

 では、開催に当たり、事務局を代表して大臣官房審議官の松本より御挨拶を申し上げます。

○松本大臣官房審議官 御紹介いただきました、松本でございます。本日、労働基準法施行規則第35条専門検討会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。

 本日、御参集の先生方におかれましては、労働基準行政、取り分け労災補償行政に対しまして日頃より御理解、御協力を賜わっておりますことを、まず厚く御礼を申し上げます。御承知のとおり、労働基準法施行規則の別表第12には、医学経験則上業務との因果関係が明確であると考えられている疾病が、具体的に列挙されています。これによりまして、業務上、疾病に、罹患した被災労働者の労災請求を容易にするとともに、行政庁における認定業務の円滑な処理が図られているところです。

 本日のこの検討会、労働基準法施行規則の別表第12に例示列挙すべき疾病について、医学専門家により検討していただくために開催をしているものです。本検討会は、昭和53年に労働基準法施行規則第35条の抜本的改正を行う際、中央労働基準審議会及び労働者災害補償保険審議会にお諮りしたところ、新しい疾病の発生に対処し得るよう医学専門家による委員会を設置し、今後、定期的な検討を行うことという答申がなされ、その答申に基づき昭和53年から、開催いただいるところです。前回は平成25年度に開催をされ、それから約5年を経過しています。この間、芳香族アミン取扱事業場で発生した膀胱がんの業務上外に関する検討会において、オルト-トルイジンを取り扱う業務と膀胱がん発症との間には、因果関係が認められるとする報告書がとりまとめられています。

 また平成24年度から平成28年度の間に、労働基準法施行規則の別表第12の各号に規定されています、その他包括救済規定に該当した疾病について整理を行いました。さらに前回の検討会において、行政当局において、引き続き新たな化学物質による疾病について幅広く情報収集に努めることを望むという御指摘を頂いていることから、平成26年度から平成29年度にかけて、業務上疾病に関する医学的知見の収集に係る調査研究を行い、労働基準法施行規則の別表第12に基づく告示に規定されている化学物質について、新たな疾病の発生等を報告書にとりまとめています。

 これらの状況を踏まえまして、今回の検討会では、主にオルト-トルイジンによる膀胱がん、2点目として、その他包括救済規定に該当した疾病について、3点目として、前回の検討会での指摘を踏まえて行政において情報収集を行った化学物質による疾病について、御検討いただきたいと考えています。

 検討対象となる疾病は、様々な医学専門分野に属しており、非常に多岐にわたるものであるため、先生方には大変な御苦労をお掛けすることとなりますが、専門的な見地から活発な御議論を賜りますようお願い申し上げる次第です。以上、簡単ですが開催に当たりましての挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○佐藤職業病認定対策室長補佐 続きまして、本日、使用する資料の確認をさせていただきます。本検討会は、ペーパーレスでの開催とさせていただいておりますので、お手元のタブレットで資料の確認をお願いいたします。タブレットの操作方法についても、簡単に御説明いたしますが、操作方法がよく分からない場合には、お近くの係員にお声掛けいただきますようお願いいたします。また正面のスクリーンには、現在、御覧いただいています画面も映写していますので、適宜、御参照いただければと存じます。

 それでは、まず本日の資料です。お手元のタブレットの画面上、マイプライベートファイルという画面で本日の資料が一覧になって表示されていると思われますが、よろしいでしょうか。

 資料は、資料1から資料12まであります。まず資料1「「労働基準法施行規則第35条専門検討会」開催要綱」の所を、タップして開いていただければと思います。この画面で上の方又は下の方を参照する場合には、画面を触っていただいて下にずらすとスクロールという形で、画面をずらすことができます。このように操作していただいて、御覧いただく部分を御参照いただければと思います。また親指と人差し指を2本使いまして、画面上に当て、これを開くと拡大し、逆に縮めると縮小することもできますので、適宜、拡大縮小して御覧いただければと存じます。資料1は開けましたでしょうか。

 続きまして、資料2を御確認いただきますために、この画面上の上にマイプライベートファイルという青色のメニューがありますので、こちらを触っていただきますと、先ほどの資料一覧に戻ることができます。もし、このメニューがない場合は、一旦、資料をどこかタッチしていただくとこのメニューが表示されますので、表示されたメニューを触っていただいて、資料一覧にお戻りいただければと思います。資料2「業務上疾病の関係法令等」です。タッチして、開けるかどうかの御確認をお願いいたします。よろしいでしょうか。

 また資料一覧にお戻りいただきまして、資料3「労働基準法施行規則の一部を改正する省令等の施行について」、施行通達及び告示の通達の関係です。資料3をお開きください。よろしいでしょうか。またお戻りいただきまして、資料4「労働基準法施行規則の規定に基づき労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物並びに労働大臣が定める疾病を定める告示の全部改正について」、告示改正通達です。開けましたでしょうか。資料一覧にお戻りください。資料5「労働基準法施行規則第35条専門検討会の検討経過」です。よろしいでしょうか。では資料一覧にお戻りください。続きまして、資料6「労働基準法施行規則別表第12の例示列挙の考え方」です。よろしいでしょうか。資料一覧にお戻りください。

 続きまして、資料735条専門検討会で検討対象とする疾病」です。開けましたでしょうか、よろしいでしょうか。では、資料一覧にお戻りください。続きまして、資料8「「芳香族アミン取扱事業場で発生した膀胱がんの業務上外に関する検討会」報告書」です。開けましたでしょうか。では資料一覧にお戻りください。続きまして、資料9「労働基準法施行規則別表第12の各号の「その他に包括される疾病」における労災補償状況調査結果」です。では資料一覧にお戻りください。

 続きまして、資料10「業務上疾病に関する医学的知見の収集に係る調査研究報告書」です。資料一覧にお戻りください。資料10-1から資料10-4まであります。こちらは研究報告書そのものです。触って開けるかどうかを御確認いただければと思います。よろしいでしょうか。

 続きまして、また資料一覧から、資料11をお開きください。「業務上疾病に関する医学的知見の収集に係る調査研究(概要)」です。またお戻りいただきまして、資料12「労働安全衛生法令における化学物質管理体系(概要)」です。よろしいでしょうか。では、資料一覧にお戻りいただきますようお願いいたします。

 本日、使用する資料は以上ですが、このほかにもお手元に議事次第、配席表を紙でお配りしています。以上の資料に、不足又は開くことができなかった資料等はありませんでしょうか。資料の不備やタブレットの操作方法について御不明な場合は、いつでもお近くの係員にお声掛けいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは議事に入らせていただく前に、本検討会の開催要綱について説明させていただきたいと思います。資料1をお開きください。こちらは、本日の検討会の開催要綱です。まず、1の開催目的を御覧いただければと思います。2行目から書いてあるとおり、労基則第35条の規定は、昭和53年に抜本的な改正が行われたところです。その際に、中央労働基準審議会、労働者災害補償保険審議会から、新しい疾病の発生等に対処し得るような医学専門家による定期的な検討を行うべきとの意見が答申に付記されたことを受けまして、本35条専門検討会を設置、定期的な検討を行ってきたものです。

 前回の開催、平成25年から5年経過しましたが、その後に新たな業務上疾病の発生等が見られる状況もあり、また化学物質による新たな疾病に関する情報についても一定の収集を行ったことを受けまして、新たに労基則別表第12に追加すべきものの有無について検討いただくことを目的として、本検討会を開催させていただくものとなっています。

 下の方のスクロールいただきまして、2の検討会の構成及び検討事項を御覧いただければと思います。本検討会の構成です。(1)のイにありますとおり、本検討会には座長を置き、検討会を統括していただくこととしています。またウにありますとおり、この座長は参集いただきました委員の互選により選出することとしています。またエにありますとおり、必要に応じて分科会を開催することができるともしています。

 続きまして検討事項です。検討事項は2つあります。アとイの2つです。平成24年度から平成28年度までに、業務上疾病としたもののうち、新たに労基則別表第12に追加すべきものの有無の検討。それから、この5年の間に集まりました医学的知見に関する調査研究の結果の御検討を頂くこと、この2つを検討事項とさせていただくこととしています。

 さらにその下の3のその他です。本検討会は、原則として公開とさせていただきます。ただし、検討事項に個人情報等を含み、特定の個人の権利又は利益を害するおそれがあるときは非公開とさせていただきます。この場合には、検討会に参集していただいた委員の先生方におかれましては、本検討会で知ることのできた秘密を漏らしてはならないこととしています。また、これは検討会終了後も同様とさせていただいていますので、よろしくお願いいたします。以上です。

 それでは、ただいまより議事次第に従いまして進行させていただきます。初めに、ただいま御説明いたしました開催要綱に従い、本検討会の座長を選出していただきたいと思います。座長は、参集者の互選により選出することとされていますが、どなたか御推薦等はありませんか。

○圓藤委員 櫻井治彦先生が適任だと考えますが、よろしくお願いいたします。

(異議なし)

○佐藤職業病認定対策室長補佐 ありがとうございました。ただいま、皆様の御賛同を頂きましたので、櫻井先生におかれましては、恐れ入りますが、座長としてこの後の議事の進行をお願いいたします。

 なお、カメラ撮影についてはここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。それでは櫻井先生、よろしくお願いいたします。

○櫻井座長 議事進行の役目を務めさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。それでは座らせていただき、議事進行に入らせていただきます。

 最初の議事、労働基準法施行規則第35条専門検討会の検討経過等について、事務局より説明をお願いいたします。

○佐藤職業病認定対策室長補佐 それでは、労働基準法施行規則第35条専門検討会の検討経過等について、資料25を用いて御説明いたします。よろしくお願いいたします。

 まず、本検討会での検討事項となっております労基則別表第12に関する関係法令について御説明いたします。資料2の上から御説明いたします。労働基準法第75条に、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならないと規定されております。この規定上の業務上の負傷については、比較的業務との因果関係が明瞭ですが、「又は疾病にかかった」とある業務上の疾病については、それが業務により生じたものであるかどうか不明瞭である場合が多いことから、この第75条の第2項において、業務上の疾病の範囲は厚生労働省令で定めるとされております。そして、この厚生労働省令として規定されておりますのが、その下にあります労働基準法施行規則です。こちらの第35条において、業務上の疾病は別表第12に掲げる疾病とされております。この第35条が本検討会の名称として使われているものです。

 そして、別表の第12が以下に掲げられておりますが、こちらの一の「業務上の負傷に起因する疾病」から、ずっと下の十一の「その他業務に起因することの明らかな疾病」までの11に分類して示されているところです。2ページの四と書いてあります化学物質等による次に掲げる疾病を御覧ください。この1の所には、厚生労働大臣の指定する単体たる化学物質とあり、こちらに厚生労働大臣が指定するという規定がございます。また、4ページの上の十に、前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣の指定する疾病という規定がございます。

 先ほどの四の1、それからこの十にある厚生労働大臣の指定する疾病というものを受け、告示という形で具体的に規定されておりますが、その告示が、今御覧いただいている4ページの下の所にあります平成8年労働省告示第33号と、また昭和56年労働省告示第7号です。このような法体系になってございます。

 資料一覧に戻り、資料34については、ただいま御説明いたしました別表第12の各号の考え方について詳細に御説明している通達です。こちらの説明は省略いたしますが、このような通達により詳細に規定されているということで御紹介いたしました。

 最後に資料5は、労働基準法第35条専門検討会の検討の経過についてまとめた資料です。1(1)にありますが、この第35条専門検討会については、昭和53年に設置され、当初は常設の委員会として平成11年度まで26回開催したところです。その後、平成12年に常設の委員会から、必要の都度、開催する専門検討会という形に改め、以後、平成14年度、20年度から21年度、そして25年度に開催してきたところです。直近の開催である平成25年度の検討会においては、1(2)の下にありますカの項目ですが、テレビン油による皮膚疾患、ベリリウム及びその化合物による肺がん、1,2-ジクロロプロパン及びジクロロメタンによる胆管がん、それから、化学物質分科会により報告されたアジ化ナトリウム等の17の化学物質等について、新たに別表第12等に追加するとの結論を頂いたところです。

 また、前回の検討会においては、行政当局に対して、引き続き新たな化学物質による疾病について幅広く情報収集に努めることを望むとの御意見も頂いたところです。以上が、これまでの第35条専門検討会の経過等の御説明です。

○櫻井座長 はい、ただいま事務局から資料25についての説明がありましたが、これについて御質問等ありましたら御発言をよろしくお願いいたします。特に、御質問等ないようです。よろしいでしょうか。

 それでは次の議事、労働基準法施行規則別表第12の例示列挙の考え方について、事務局より説明をお願いいたします。

○佐藤職業病認定対策室長補佐 労働基準法施行規則別表第12の例示列挙の考え方について、資料6に基づき御説明いたします。この考え方については、平成21年度の専門検討会において整理されております。そちらが資料6です。この資料にありますとおり、原則は、業務との間に因果関係が確立していると認められる疾病については、別表第12に例示列挙することが適当であるとしております。

 ただし、これには例外があり、職業病として発生することが極めて少ないもの等として、この資料の囲みの中にあります1~4に掲げる疾病については除かれることとしております。例えば、1については、労働衛生管理が充実されたことで、今日においては発症例が極めて少ないと考えられる疾病です。また、2については、その疾病の発生に係る化学物質そのものが、製造、輸入等が禁止されていることにより、現時点においては使用される見込みがないものです。こういったものについては、別表第12の例示列挙の中から外すという形で整理されております。今回の検討会においても、以上の考え方に基づき、別表第12等への追加の必要性について御検討いただければと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○櫻井座長 ただいま事務局より提案のありました件について御意見、御質問等ありますでしょうか。これはあくまで例示として掲載しないということであって、個別の課題として挙がった場合には当然、因果関係について詳細に検討し判断するということです。よろしいですか。

(異議なし)

○櫻井座長 それでは、今回の検討会も従来の例示列挙の考え方に基づいて進めたいと思います。それでは、次の議事、検討対象とする疾病について、事務局より説明をお願いいたします。

○佐藤職業病認定対策室長補佐 それでは検討対象とする疾病について御説明いたします。資料7です。今回の検討会において検討対象としていただければと考えている疾病についてです。まず、資料1の開催要綱で御説明いたしました検討事項として2つあります。平成24年度から28年度までに業務上疾病としたもののうち、新たに別表に追加するべきものの有無です。こちらの関係で申し上げますと、資料の1番目にありますオルト-トルイジンによる膀胱がんがあります。こちらは、平成281月に染料・顔料の中間体を製造する化学工場において、オルト-トルイジン等の化学物質を取り扱う業務に従事していた労働者の方から、使用していた化学物質が原因で膀胱がんを発症したとして労災請求がなされたもので、労災認定をしている事案です。このほか、その他の包括救済規定に該当した疾病ということで、この平成24年度から28年度の間に認定された化学物質に基づく疾病について、今回、御議論いただければと考えている疾病です。

 そのほかに3番目として、前回の検討会での指摘を受け、その後、情報収集を行っておりました化学物質による疾病についても、その調査結果について御議論いただくことを予定しております。以上の3つの疾病について御検討いただければと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○櫻井座長 ただいま事務局より、本検討会において3つの疾病について検討をお願いしたいという提案がありましたが、これについて御意見、御質問等ありますか。また、事務局より提案されたもの以外にも本検討会で検討すべき疾病があれば、御意見を頂きたいと思います。もし、ありましたら御発言をお願いいたします。よろしいでしょうか。

(異議なし)

○櫻井座長 それでは、今回の検討会は事務局より提案のありました3つの疾病について、検討を進めたいと思います。

 それでは、次の議事、オルト-トルイジンによる膀胱がんに入ります。資料8の報告書については、芳香族アミン取扱事業場で発生した膀胱がんの業務上外に関する検討会の座長を務めておられました柳澤先生より、御説明をお願いいたします。

○柳澤委員 柳澤です。御説明いたします。芳香族アミン取扱事業場で発生した膀胱がんの業務上外に関する検討会の報告事項です。

 第1は検討会の開催経緯についてです。平成281月に福井労働局管内の染料・顔料の中間体を製造する化学工場において、オルト-トルイジン等の化学物質を取り扱う業務に従事していた労働者から、使用した化学物質が原因で膀胱がんを発症したとして労災請求がありました。過去にオルト-トルイジンによって膀胱がんを発症したという労災請求はなかったことから、労災認定のため、平成286月から12月までの間に5回の検討会を開催し、業務と膀胱がん発症の因果関係について検討を行ったものです。

 第2は膀胱がんに関する医学的知見です。(1)特徴:膀胱がんは尿路上皮のがん化によって引き起こされ、膀胱がんの90%以上が移行上皮がんで、まれに扁平上皮がんや腺がんが見られます。(2)危険因子:膀胱がんの危険因子としては、喫煙、職業性発がん物質へのばく露、飲料水中のヒ素などが挙げられますが、中でも喫煙は最も重要な危険因子とされ、男性の膀胱がんの50%、女子の膀胱がんの30%は喫煙が関与していると考えられています。タバコに関連した発がん物質として60種類以上の物質が指摘されていますが、中でも煙に含まれる芳香族アミンの一種や活性酸素種が、膀胱がんの発症に関与していると考えられております。(3)好発年齢:死亡状況等、年齢別の膀胱がんの罹患率は男女ともに60歳代から増加し、40歳未満の若年での罹患率は低くなっています。また、男性の罹患率は女性の約4倍となっています。(4)職業性の膀胱がん:職業性の発がん物質へのばく露から膀胱がん発症までは約20年の潜伏期間があると考えられており、ベンジジン等の発がん性のある芳香族アミン類によって生じる膀胱がんの臨床病理学的特徴としては、1若年発生の傾向があること、2悪性度が高く浸潤性の傾向があること、3上部尿路の再発リスクが高いことなどが指摘されております。

 第3は膀胱がんの有害因子の考察です。1、危険因子:厚生労働省の依頼により実施した独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の調査によると、本件事業場は、アニリン、オルト-トルイジン、2,4-キシリジン、オルト-アニシジン、オルト-クロロアニリン、パラ-トルイジンの6種類の芳香族アミンを原料に溶媒として有機溶剤を加え、ジケテンを滴下しながら中間体を製造しており、6種類の中でもオルト-トルイジン、アニリン、2,4-キシリジンの使用量が多かったと報告されています。この6種類の芳香族アミンの中で、IARC(国際がん研究機関)が膀胱がんを引き起こすとして、ヒトに対する発がん性を認めている化学物質はオルト-トルイジンのみで、IARC2012年にオルト-トルイジンの発がん分類をグループ1として評価しております。その他、5種類の芳香族アミンは全てグループ2以下とされており、また本件事業場において取り扱われている化学物質のうち、芳香族アミン以外の化学物質で、IARCがヒトに対する発がん性を認めているものはありませんでした。これらのことから、検討会においてはオルト-トルイジンのばく露と膀胱がん発症との関連性について検討することといたしました。

 2、ばく露の形態:前述の労働安全衛生総合研究所の調査結果報告書によると、平成281月の作業環境測定時のガス状オルト-トルイジンの平均値は0.003ppmであり、この数値は日本産業衛生学会の許容濃度1ppmや米国の産業衛生専門家会議などの基準値を下回るものでした。また、この調査において実施されたガス状オルト-トルイジンの個人ばく露測定と、オルト-トルイジンの尿中代謝物の測定から、高濃度ばく露が疑われる作業と個人ばく露の程度との間に合理的な関連性は認められませんでした。一方で、尿中代謝物が高値を示した労働者は、就業後に作業で使用していた手袋を蒸留有機溶剤で洗浄していたことから、労働者のゴム手袋に付着していたオルト-トルイジンの総量と尿中代謝物の関係を確認したところ、相関傾向が認められ、オルト-トルイジンの経皮ばく露による生体への取り込みが示唆されました。

 第4はオルト-トルイジンのばく露と膀胱がん発症の関連性です。1、検討項目:検討会においては、オルト-トルイジンのばく露と膀胱がんとの関連性について、現時点の医学的知見を整理した上で、ばく露期間と潜伏期間の観点から検討することといたしました。医学的知見の収集に当たっては、IARC2012年にオルト-トルイジンをグループ1へ分類換えを行った際のモノグラフや、その根拠となった文献に加えて、Pub Medが作成するデータベースを検索し、文献の収集を行い参考といたしました。

 2、発症のメカニズム:オルト-トルイジンによる膀胱がんの発症のメカニズムは、多数の酵素による代謝活性化が関与していると考えられており、完全には解明されていないものの、検討会で収集した文献の検討結果としては、1つ目、体内に取り込まれたオルト-トルイジンは、肝臓内の酵素によって代謝生成物を形成し、それらは腎臓でろ過され、膀胱内の尿中に高濃度に蓄積する。2つ目、尿中のオルト-トルイジン及び代謝生成物は、膀胱内の酵素により活性化されDNA付加体を形成し、発がんを誘導すると考えられる。3つ目、また、オルト-トルイジンの代謝生成物とキノンイミン誘導体の酸化還元サイクルにより生成される活性酸素は、DNAを損傷し、発がんを助長すると考えられる、という結論に至りました。

 3、発症リスクの関係:検討会で収集した複数のコホート研究によると、1つ目、既知の発がん物質であるベンジジンなどの取扱作業に従事する労働者全体の膀胱がん死亡の期待値に対する観察値の比は29.27でしたが、オルト-トルイジンの取扱作業に従事する労働者における膀胱がんの期待値に対する観察値の比は更に高い62.50となり、このことから、オルト-トルイジンのばく露は、膀胱がん発症の有力な原因であると考えられました。2つ目、ばく露期間については、ばく露期間10年以上で有意差が認められました。また、統計学的には有意に至っていないものの、5年以上10年未満のばく露が膀胱がんの発症に関与していることも示唆されましたが、5年未満のばく露では発症リスクを増加させることを示唆する報告はありませんでした。3つ目、潜伏期間では、オルト-トルイジンのばく露開始から膀胱がんの発症までの潜伏期間について、20年以上で有意差が認められました。また別の研究でも、ばく露開始10年から20年の発症例が報告されていることから、ばく露開始から10年以上経過した後、膀胱がんが発症するものと考えられました。4つ目、喫煙の影響ですが、喫煙は膀胱がんのリスクファクターの1つであることは間違いありませんが、文献等を精査した結果、オルト-トルイジンと喫煙の影響を分けてリスク評価をすることは困難であるとの結論になりました。

 最後に結論です。これらのことから、オルト-トルイジンのばく露業務に10年以上従事した労働者で、ばく露開始後10年以上経過して発症した膀胱がんについては、業務が相対的に有力な原因となって発症したことが高いと考えられました。また、オルト-トルイジンのばく露業務への業務期間、又は膀胱がん発症までの潜伏期間が10年に満たない場合は、作業内容、作業ばく露、発症時の年齢、既往歴の有無などを総合的に勘案して、業務と膀胱がんとの関連性を検討する必要があるという結論に至りました。説明は以上です。

○櫻井座長 柳澤先生ありがとうございました。ただいま御説明いただいた内容について御質問を頂きたいと思います。また、オルト-トルイジンによる膀胱がんについて別表に追加すべきか否かについても、御議論をお願いいたします。いかがでしょうか。まず、報告書の内容について特段の御質問等はないようですので、それでは、別表に追加するかという点についてはいかがでしょうか。特に御異存はないようです。それでは、オルト-トルイジンによる膀胱がんについては、別表に追加する方向でまとめたいと思います。

 では、先へ進みます。次の議事、その他包括救済規定に該当した疾病について事務局より説明をお願いいたします。

○西村中央職業病認定調査官 それでは、包括救済規定で認定した疾病についての検討を報告させていただきたいと思います。タブレットで資料9をお開きください。これは、その他包括的救済規定で平成24年度から平成28年度にかけて認定した状況を、事務局で精査したものです。包括救済規定で認定した疾病を、業務と疾病との因果関係があるとされている列挙疾病に追加するかどうかについて、平成25年度の検討会においては、平成20年度から平成23年度、4か年の間に包括救済規定でその他疾病として認定した事例を検討させてもらいました。ですので、今回の検討会においては、平成24年度から平成28年度、5か年の包括救済規定の認定状況を報告させていただき、その上で、この中で列挙疾病として追加すべき疾病があるかどうかについて、御議論いただきたいと考えております。

 では、順を追って説明をさせていただきたいと思います。資料92ページ目、これに1として総括表というものが書かれております。一番左端の5323については、これまでの累計数字になっております。それの右以降の24から28を、今回、この検討会で報告させていただく検討件数として書かせていただきます。縦の列に21335496511号とありますが、その下の(1)の中にそれぞれ2号、3号、4号、6号、11号の説明書きが書かれております。2号は物理的因子にさらされる疾病のその他、3号は身体に過度の負担のかかる作業態様による疾病のその他、4号は化学物質、6号はウィルス等の感染症、11号はそれらに当たらないその他となっております。なお、先ほど柳澤先生から御説明いただきました職業がんが7号、その他としてあるのですが、平成24年度から平成28年度までにがんのその他として疾病したのは、先ほど柳澤先生から御報告いただきましたオルト-トルイジンのがんだけです。ですので、今回、この表からは落とさせていただいております。したがって、今回は、2号、3号、4号、6号、11号のその他により、包括救済で認定したものについて報告をさせてもらいたいと考えております。

 2ページ、2として表が出てきます。これが労基則第122号の物理的因子によるその他の疾病です。平成24年度から平成28年度までを見ますと、「潜水作業による耳の疾患」とありますが、これについては、潜水士とか海に潜ってあるいは水の中で作業を行うような方の中耳炎とか外耳炎、そういったものが認定されております。

 3ページは作業態様に係る労災状況です。各年度ありますが、一番下にその他疾患で血行障害があります。これが平成27年度を除いて3件、1件、1件、2件という形で結構労災認定されておりますが、ここについてはエコノミー症候群というのでしょうか、深部静脈血栓症からの肺塞栓症、そういったものをここの中で認定している事例がほとんどです。この血行障害については、そういう状況になっております。

 タブレットを更に上のほうにたぐっていただくと、4ページで化学物質のその他で認定した状況について触れさせていただいております。この化学物質はこれから結構ずらっとあるのですが、大きく分けて単体又は化合物としての認定と、混合物としての認定という形で分けさせていただいておりますが、まず単体又は化合物として認定したものについて説明させていただきます。ずっとたぐっていただきますと、(8)で次亜塩素酸ナトリウムによる皮膚炎、化学熱傷、これが平成24年度2件とか平成27年度1件、あるいは次亜塩素酸ナトリウムによる急性中毒があります。これらの災害については、清掃作業に従事している労働者の方が消毒液等に接触して化学熱傷とか、中毒を起こしたというものです。

 次亜塩素酸ナトリウムについては、過去の検討状況をひもときますと、平成25年度の検討会においても一応検討させていただいております。その中では、平成25年度の段階では、ばく露が非常に事故的、災害的なばく露であるということで、あと、疾病の発症も分かりやすいというか、急性中毒的な感じで出てくるということもあって、あえて列挙疾病に追加すべきではないでしょうという結論を頂いているところです。今回の(8)(9)の次亜塩素酸ナトリウムについても、中を見ますと、直接体に接触したものとか、そういった事故的なばく露ですので、内容的には同じかと考えております。

 さらに、少し上のほうにいかせていただきますと、6ページの(46)に「フロンガスによる肝障害、肺障害及び中毒」ということで、平成2526年度、それぞれ1件ずつの認定があります。累計としても、総計として右端に22件と書いてあり、結構大きいのかとは思うのですが、これは冷房の空調機の冷媒ガスで使われているフロンガスが空調機の故障で出てしまって、それを吸入してしまった方が中毒症状を起こしたものです。その同じようなものが1件、1件とあります。

 さらに、ずっと上にたぐっていただきますと、単体はそのような感じですが、11ページで混合物の化学物質の状況について触れさせていただいております。4.「労基則別表第1249」の労災補償状況として、「混合物及びその他」ということで、同じ化学物質の包括救済規定で認定したものですが、混合物としての化学物質で認定したものです。これを見ると、やはり一番最初に出てくる、理美容師のシャンプー、洗剤又はコールドパーマ液の使用による接触性皮膚炎等とか、洗剤、洗浄剤による湿疹、皮膚炎、中毒、咽頭炎というものが、各年度の件数、全体の総数としても非常に多いところではあります。これらについては、平成25年度の検討会においてもシャンプー液については検討しており、現時点では恐らく2物質について、シャンプーに使われております物質で、コカミドプロピルベタイン(CAPD)、システアミン塩酸塩(CHC)と呼ばれる、その2物質について化学物質分科会、本検討会で検討しましたが、現時点では因果関係はまだよく分からないということで、列挙疾病への追加は見送っているところです。

 最近の状況としましては、ここら辺については、認定件数も非常に多いということと、前回の検討会においても引き続き情報収集ということもありましたので、平成30年度から文献収集ということで知見を集約させていただいているところです。化学物質の関係は以上です。

 さらに、上のほうにずっとたぐっていただきますと、19ページ、6号です。6号については、細菌、ウイルス等に係る労災補償状況です。6号については、ここも結構、その他として認定されるところが多いのですが、海外出張での感染症ということが、毎年、数件ちらほらと認定されております。ここについては、昭和63年に行政通達を出しており、海外作業者に係るこういった感染症の取扱いを行政通達で示しております。また、その当時、第35条検討会においては、これらの海外出張者に関する感染症については、その他包括救済規定で認定しましょうということになっており、従来、このような包括救済、その他疾病という形で認定させていただいているところです。海外出張者の感染症以外では、事業場で提供された給食等による食中毒であるとか、そういったものが2で書いております。

 あと、3のその他ですが、特に3のその他の(5)その他で、その他、その他の件数が多くなっているのですが、このその他はどのようなものがあるかと説明させていただきます。中を見るとレジオネラ菌、例えばスーパー銭湯とか、公衆浴場とか、そういった所に勤めている方がレジオネラ菌が入ったエアロゾルというか、水をかぶったり吸い込んだりして、レジオネラ菌の肺炎を発症したというものとか、あと、国内で発生したダニとか蚊を媒介とした感染症。数年前、少しにぎわしたデング熱で労災認定された方も中にはいらっしゃいます。海外での感染症については上になりますが、国内なものですから、その他のその他という形で書かせていただいております。それ以外では、保育士とか、介護士とか、そういった人と接するような仕事に就いている方のノロウイルスとかアデノウイルス、そういった感染症といったものが集団的に発生している状況です。

 最後にある20ページ、いずれの各号にも該当しないその他業務に起因する疾病ということですが、ここでは大声を出したことによる声帯炎とか、物の販売をしているような方が呼び込み等で大きな声を出して声をからした、痛くしたというような事案というふうに認識しております。あと、下肢静脈瘤、立ち仕事をされている方で下肢静脈瘤を発生したと。特に飲食店の方が多いのですが、そういう事案を認定している状況です。

 大変簡単で雑ぱくな説明になってしまったのですが、平成24年度から平成28年度までにかけて、その他包括救済規定として認定された事案について、件数等の概要を説明させていただきました。事務局といたしましては、これらの事案については、過去の検討状況とか災害の発生状況、そういったものを踏まえますと、冒頭説明しました例事列挙の考え方に照らして考えますと、現時点では、例事列挙規定として追加すべき、業務と疾病との因果関係がはっきりした疾病はないのかと考えているところです。事務局からは以上です。

○櫻井座長 ただいま事務局から提案のありました資料の説明の内容、それから、現時点では別表への例示列挙の必要はないという事務局の考え方について、御意見、御質問等はありますか。

○大前委員 6ページの(46)のフロンガスですが、フロンガスと言えば単体でも何でもなくて総称だと思うのですが、フロンガスの中には、当然、肝障害を強く起こすものもあれば、全然起こさないものもあるというのは分かっていることなのですが、今回、2件新たに発生していますが、これのガスの中身、単体としてのガスは何だったのでしょうか。

○西村中央職業病認定調査官 今、用意している資料の中ではフロンガスの成分まではないものですから、調べて御報告させていただきたいと思います。すみません。

○大前委員 と申しますのは、フロンガスの中でもHCFC-123というのは、肝障害を起こすことはクリアになっているのですが、そのほかのフロンガスは、例えば肝障害に関しては余り聞いたことがないので。

○西村中央職業病認定調査官 今回の2件は、肺障害というよりも、一応、中毒というような形で報告はされております。ただ、その中毒の中身も、具体的詳細にどのような症状が出たかということまでの報告を求めていなかったものですから、その原因物質と中毒の内容、そういったことも含めて再度御報告させていただければと思います。ありがとうございました。

○櫻井座長 少し調べて、また次回にでも。

○西村中央職業病認定調査官 了解いたしました。

○櫻井座長 そのほか何かありますか。

○工藤委員 2点ありますが、6.6表で、この中に抗マラリア剤服用による薬剤性肝障害がありますが、これはどういう理由で労災になったのかを教えていただければと思います。もう1つは、例えば刑務官とかああいう閉鎖している環境で働いている人に、結核が感染したりするのですが、こういったのはここには入らないのですか。この2点です。

○櫻井座長 事務局、分かりましたか。

○西村中央職業病認定調査官 抗マラリア肝障害は、昭和53年から平成23年のものなので、これについてはまた調べさせてもらいます。薬剤性の副作用なのか、すみません、調べさせていただきます。もう一点、結核についての御質問については。

○工藤委員 例えば、刑務官、看護師等の医療従事者はもちろんそうですが、結核感染は結構起こるわけですよね。そういうものはここに感染症として入っていないのですが。

○西村中央職業病認定調査官 考え方としまして、実はその他の中で、医療従事者の結核もあるいは介護施設とかでの結核も、認定事例はあります。ただ、結核は、6号の細菌、ウイルスの病原体による疾病で、医療従事者等、介護従事者については、病原体を取り扱う業務による伝染性疾患という形で、例事列挙の規定には入っております。それ以外の、業務で医療従事者とか介護施設とかではない刑務官という形になりますと、この例事列挙の業種に当たらないものですから、その他の包括救済規定として認定される余地はあるかと思います。

○工藤委員 ありがとうございました。

○荻原補償課長 補足になりますが、刑務官の場合は国家公務員という扱いになるので、労基法の対象から外れてしまうので、データとしては出てこないことになるかと思います。

○工藤委員 人事院の公務災害などでは見たことはあります。

○荻原補償課長 公務災害のほうで出てくる形になるのかと思います。

○工藤委員 分かりました。

○櫻井座長 そのほか何かお気付きの点はありますか。よろしいですか。それでは、包括救済規定により認定した事例については、事務局から提案があったように、現時点では別表に追加する必要はないのですが、引き続き行政において、情報収集に努めた上で必要に応じて検討を行うということでまとめたいと思います。御承認いただけますでしょうか。

(異議なし)

○櫻井座長 そのようにさせていただきます。

 それでは、次の議事、前回の検討会での指摘を踏まえて、行政において情報収集を行った化学物質による疾病について、事務局から説明をお願いします。

○岡久中央職業病認定調査官 それでは、岡久から議事次第の()前回の検討会での指摘を踏まえて、行政において情報収集を行った化学物質による疾病について、御説明をさせていただきます。お手元の次第にあるように、まず1つ目が医学文献の収集結果、2つ目が労働安全衛生法令に基づく管理対象物質、3つ目が今後の検討の進め方の3つのパートに分けて御説明させていただきます。まだ資料は開いていただかなくて結構なので、資料一覧を見てください。資料10、資料10-1~資料10-4がこれから御説明させていただく、医学文献の収集結果になります。5つの資料がありますが、最初の資料10は表紙1枚で、資料10-1~資料10-4はそれぞれこの4年間で収集を行った検討会の報告書で、それぞれが200ページぐらいありますので、今開いて見ていただく必要はございません。この4年間、行政で収集を行ったものになります。

 では、具体的に何を収集したかと言いますと、現在、別表の4号の規定に基づいて、大臣の告示に規定されている化学物質は168種類あります。その168種類の化学物質を起因として生じるとされている症状や障害に、新たなものを加えるべき必要がないかという観点で情報を収集したものです。資料10-1~資料10-4をまとめたものが資料一覧の資料11になりますので、資料11を開いてください。資料11、表題が業務上疾病に関する医学的知見の収集に係る調査研究の概要という、結構長い表になっております。一番上にいっていただいて、この表の見方を御説明させていただきますと、一番上の左から化学物質、真ん中に症状又は障害、一番右に新たな症例と3つの欄に区分をしております。一番左の化学物質の所には、現在告示に規定されている168の物質名を縦に記載しております。真ん中の症状又は障害の所にも、現在告示に規定されている168の物質を起因とする症状又は障害を記載しております。最後に一番右の新たな症例の所には、先ほど御説明した調査研究の結果、医学文献等で報告のあった、告示に規定されていない疾病や障害について記載をしております。

 まとめとして、この4冊の報告書によると、現在告示に規定されている168物質のうち、97の物質について、医学文献等において新たな症例が報告されているという結果となっています。報告書の中を読みますと、この新しい症例に関しては、複数の医学文献で同じような症例が報告されているものも含まれていたり、単一の文献で症例が報告されているにすぎないものも含まれております。また、例えば、この項番の8を見ていただくと、化学物質の所に弗化水素酸というのがあると思いますが、そこの一番右の新たな症例の所には、内分泌・代謝系の疾病、骨格系の疾患という新たな症例が報告されています。しかし、これをそのまま告示に追加するわけにはいかず、もう少し具体的な症状、障害に対しての絞り込みが必要だろうと考えております。ですので、こういった状況を踏まえて、事務局としましては、今回収集した結果をそのまま告示に追加するのではなくて、別途、告示に追加すべきか否かという観点と、追加する際の症状、障害としてはどのような記載にするのが望ましいかという観点での精査と検討を行う必要があると考えております。

 続きまして、2番目の労働安全衛生法令等に基づく管理対象物質の御説明をいたします。もう一度資料一覧に戻っていただきまして、資料12を開いてください。こちらはパワーポイントの絵になっていますが、こちらの資料は、現在、安全衛生法令等によって管理対象とされている物質について、その概要を示した資料です。資料の一番左の上下の矢印の所、まず現在物質数としてはおよそ7万物質あり、そのうち673物質については、労働安全衛生法により、労働者の健康障害を生じさせるおそれがあるものとして、ラベル表示、SDS交付制度の対象とされているということを示した資料です。先ほど、労基則別表の告示の話をしましたが、告示に規定されている物質は168あると申し上げました。逆に言いますと、この673が管理対象とされておりますが、673から168を引いた505物質については、労働者の健康障害を生じさせるおそれはあることは認められておりますが、具体的に物質へのばく露と疾病発症との間に明確な因果関係が確立しているとまでは至っていない、という整理になります。

 平成23年度から、実は前回の35条専門検討会の前に、平成23年度から平成24年度にかけて、このSDS交付義務のある物質のうち、告示に規定されていない物質について、別途、検討会を設置した上で、告示に規定すべきか否かを議論していただいております。その結果、前回の35条専門検討会では、17の化学物質について追加すべきという結論を頂いて、告示の改正を行っております。

 資料121ページめくっていただきますと、平成301016日という日付が入っている資料があります。ここは、SDS交付対象の物質が増えてきているという、簡単に言いますと、そういう内容になっています。前回検討を行った平成2324年のときは640物質しかなかったのですが、それが現時点では、673物質にも増加しているということを御説明する資料となっております。また、前回検討時から新たな医学文献等も出版されていることを踏まえて、事務局としては、改めて、このSDS交付義務のある化学物質のうち、今我々の告示に規定されていない物質について、改めて告示に追加すべきかどうかという検討を行う必要がある時期に来ていると考えております。

 最後に3番目、今後の検討の進め方なのですが、今2つ御説明しました、この4年間で収集を行った医学文献の情報と、労働安全衛生法令に基づく管理対象物質について、これらの精査、検討方法につきましては、事務局としては、化学物質による疾病に関する分科会を設置したいと考えております。この化学物質による疾病に関する分科会は、前回は、先ほども説明したように、平成23年度から24年度にかけて行われ、同じくSDS交付対象物質と告示に規定されている物質と告示されていないものの精査と、前回は改訂が行われたILOの職業病一覧についても検討していただいて、化学物質の分科会の報告を35条のこの検討会に上げて、最終的に告示に追加、省令改正をするかどうかという検討を行ったというのがありますので、そういったことで進めたいと思っております。

 先ほど包括救済規定のところで、シャンプー等の調査研究をただいま30年度に行っていると御説明をさせていただきましたが、その報告書が今年度末には取りまとめられます。そこで収集した新たな情報についても、改めてこの化学物質分科会に詳細な検討をまた依頼して、そこで報告を頂きたいと考えております。分科会の設置につきましては、文献の収集、整理といった準備をし、今年度行った調査研究の中身を踏まえて、また検討を行っていくことになりますので、来年度以降に設置したいと考えております。事務局からの説明は以上になります。

○櫻井座長 事務局から業務上疾病に関する医学的知見の収集に係る調査研究報告書、それから労働安全衛生法に基づくSDS交付制度等の対象物質、さらに化学物質分科会での検討についての御報告、御説明がありましたが、これらについて御意見、御質問等がございますでしょうか。

○圓藤委員 最後の資料12で、SDSの対象物質673物質に対して、何らかのアクションが必要であるというのは私も賛成なのですが、先ほど資料9にあったように、たくさんの化学物質が列挙されているのですが、そのうちで、急性障害を来すものに関しては、列挙しないという方針できていたと思うんですよね。そこに、SDSで設けている物質の考え方とギャップがあるのではないか。すなわち、急性障害を来すものについては、別途何らかの形で列挙しておくほうが、SDSを作る上で参考になるのではないか。労働者が急性障害を予防するための対策を取れるのではないかと。そういう意味で、別表で考えているのは認定のための判断の基準であって、急性で明らかなものは、あえて書かないという方式と、SDSで求めているものとのずれ、これは何らかの別の形で作っていく必要があるのではないかなという気がするのですが、いかがでしょうか。

○櫻井座長 事務局のほうで何か御意見がございましたら、どうぞ。

○岡久中央職業病認定調査官 先生のおっしゃる問題意識は十分理解しました。まずSDSのものをどう整理していくかは、来年度以降に、まず、我々で全物質に対しての情報収集をする必要があると思っております。それを踏まえて、化学物質分科会で検討していただくことになると思いますが、その際にそういった観点も踏まえて御議論していただくことはできるのではないかと思います。

○櫻井座長 確かに急性中毒に関する見方を整理する必要はあるという御意見。分科会の1つのテーマにはなりますか。

○岡久中央職業病認定調査官 そうですね。まず調査研究をして、我々で情報収集した上で、分科会に当然諮りますので、その中で整理したいと考えております。

○櫻井座長 そのほかにいかがでしょうか。

○上野委員 資料11の調査研究の概要をまとめていただいた場合に、細かいところで恐縮なのですが、言葉の使い方として、神経系の疾病又は障害と、「神経系」という言葉を使ってあるのですが、これが末梢神経の話なのか、中枢神経の話なのか、文献の情報から拾い上げるときに、できるだけ区別していただけないかと。例えば25のタリウムの新たな症例の所で、ざっくり神経系の疾病又は障害と書いてあるのですが、実際タリウムに関しては、末梢神経障害というのは既に情報として載せられているので、新たな症例として上がったこの神経系の疾病又は障害というのが、どの神経系の話なのかというところ。そこを区別していただくと、例えばこれまでに言われていたものの、何らかの延長線上にあるものなのか、それとも、これは全く別に考えたほうがいいのかと。末梢神経も細かく言うと、運動神経なのか、感覚神経なのかという違いももちろんあります。これまで言われたことの延長線上にあるのか、それとも、やはり新たな知見として非常に注意すべきことなのかという区別を、できるだけつけられるようにしていただければと思うのですが、いかがでしょうか。

○岡久中央職業病認定調査官 はい、上野先生に御指摘いただいたとおり、新たな症例として追加されているのは、結構包括した言い方で、先ほど私が説明したように、このままではちょっと、絞り込みがもっと必要だろうと考えております。実際には報告書の中を見ていただくと、ここはどの文献に載っていたかというのは全部出ていますので、ここを書いたのは私なのですが、報告書に書かれてある傷病名をぱっと書いただけなので、実際に告示に載せるにはこのままでは当然駄目で、先生のおっしゃったように、どこの部分の神経なのかというのは、分科会で文献等を見ながら、また検討していかないといけないだろうと考えております。

○上野委員 ありがとうございます。

○櫻井座長 よろしいですか。そのほかは何か。よろしいですか。

(異議なし)

○櫻井座長 それでは、業務上疾病に関する医学的知見の収集に係る調査研究の報告書の内容については、現時点では別表に追加すべきとまでは言えないため、化学物質の分科会を設置の上、検討すること、さらに、行政において現在告示に規定されていない化学物質についても、最新の情報を収集した上で、化学物質分科会において検討すること、ということでまとめたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 それでは、本日予定されていた議事は以上になりますが、事務局から次回のスケジュール等について何かありましたら、説明をよろしくお願いいたします。

○佐藤職業病認定対策室長補佐 次回の検討会では、今回御検討いただいた各疾病の別表への追加等について、報告書をまとめていただきたいと存じます。次回の検討会の日時、開催場所につきましては、後日改めてお知らせさせていただきますので、よろしくお願いいたします。以上です。

○櫻井座長 本日はどうもありがとうございました。これをもちまして、本日の検討会を終了いたします。

(了)

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