よくあるお問い合わせ(事業主の方へ)
よくあるお問い合わせ(事業主の方へ)
- 対象家族が要介護状態にあるかどうかは、どのように判断されるのですか。
- 過去に別の会社で介護休業をしたことがある労働者の介護休業取得日数はどのように数えるのですか。
- 事業主は、どの社員がどの対象家族のために何日・何回の介護休業を取得したかを記録し、社員が在籍している間保存しておかなければならないのですか。
- 労働者から入院している家族のために介護休業を取得したいと申出がありました。入院しているのであれば労働者が家族を介護する必要はないと思うのですが、休業させなくてはなりませんか。
- 介護休暇取得日は有給にしなければなりませんか。
- 労働者から、家族の介護のために所定労働時間の短縮措置を利用したい旨申出がありました。そのため、これまでとおりの正社員として勤務をすることが難しくなることが予想されるため、会社からパートタイマーとして勤務又は退職してはどうかと言ってもよいのでしょうか?
対象家族が要介護状態にあるかどうかは、どのように判断されるのですか。
育児・介護休業法に定める「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のこと(障害児・者や医療的ケア児・者を介護・支援する場合を含む。ただし、乳幼児の通常の成育過程において日常生活上必要な便宜を供与する必要がある場合は含まない。)をいい、要介護認定を受けていることが必ずしも要件ではありません。
常時介護を必要とする状態については、判断基準が定められており、この基準を参照しつつ判断することとなります。
会社は、労働者から介護休業の申出を受けた場合、労働者に対して申出に係る対象家族が要介護状態にあること等を証明する書類の提出を求めることができます。
証明書類は「医師の診断書」等に限定されていません。要介護状態にある事実を証明できるもので労働者が提出できるものとしてください。就業規則において介護休業や介護両立支援制度等の申出に医師の診断書の添付を義務づけることはできず、証明書類が提出されないことをもって休業させないということはできません。
常時介護を必要とする状態に関する判断基準
介護休業は、対象家族(注1)であって2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にあるもの(障害児・者や医療的ケア児・者を介護・支援する場合を含む。ただし、乳幼児の通常の成育過程において日常生活上必要な便宜を供与する必要がある場合は含まない。)を介護するための休業で、常時介護を必要とする状態については、以下の表を参照しつつ、判断することとなります。ただし、この基準に厳密に従うことにとらわれて労働者の介護休業の取得が制限されてしまわないように、介護をしている労働者の個々の事情にあわせて、なるべく労働者が仕事と介護を両立できるよう、事業主は柔軟に運用することが望まれます。
「常時介護を必要とする状態」とは、以下の【1】または【2】のいずれかに該当する場合であること。
- 【1】項目(1)~(12)のうち、2が2つ以上または3が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること。
- 【2】介護保険制度の要介護状態区分において要介護2以上であること。
項目\状態 | 1(注2) | 2(注3) | 3 |
---|---|---|---|
(1)座位保持(10分間一人で座っていることができる) | 自分で可 | 支えてもらえればできる(注4) | できない |
(2)歩行(立ち止まらず、座り込まずに5m程度歩くことができる) | つかまらないでできる | 何かにつかまればできる | できない |
(3)移乗(ベッドと車いす、車いすと便座の間を移るなどの乗り移りの動作) | 自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
(4)水分・食事摂取(注5) | 自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
(5)排泄 | 自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
(6)衣類の着脱 | 自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
(7)意思の伝達 | できる | ときどきできない | できない |
(8)外出すると戻れないことや、危険回避ができないことがある(注6) | ない | ときどきある | ほとんど毎回ある |
(9)物を壊したり衣類を破くことがある | ない | ときどきある | ほとんど毎日ある (注7) |
(10)周囲の者が何らかの対応をとらなければならないほどの物忘れなど日常生活に支障を来すほどの認知・行動上の課題がある(注8) | ない | ときどきある | ほとんど毎日ある |
(11)医薬品又は医療機器の使用・管理 | 自分で可 | 一部介助、見守り等が必要 | 全面的介助が必要 |
(12)日常の意思決定(注9) | できる | 本人に関する重要な意思決定はできない(注10) | ほとんどできない |
(注1)「対象家族」とは、配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母をいうものであり、同居の有無は問わない。
(注2)各項目の1の状態中、「自分で可」には、福祉用具を使ったり、自分の手で支えて自分でできる場合も含む。
(注3)各項目の2の状態中、「見守り等」とは、常時の付き添いの必要がある「見守り」や、認知症高齢者、障害児・者の場合に必要な行為の「確認」、「指示」、「声かけ」等のことである。
(注4)「(1)座位保持」の「支えてもらえればできる」には背もたれがあれば一人で座っていることができる場合も含む。
(注5)「(4)水分・食事摂取」の「見守り等」には動作を見守ることや、摂取する量の過小・過多の判断を支援する声かけを含む。
(注6)「危険回避ができない」とは、発達障害等を含む精神障害、知的障害などにより危険の認識に欠けることがある障害児・者が、自発的に危険を回避することができず、見守り等を要する状態をいう。
(注7)(9)3の状態(「物を壊したり衣類を破くことがほとんど毎日ある」)には「自分や他人を傷つけることがときどきある」状態を含む。
(注8)「(10)認知・行動上の課題」とは、例えば、急な予定の変更や環境の変化が極端に苦手な障害児・者が、周囲のサポートがなければ日常生活に支障を来す状況(混乱・パニック等や激しいこだわりを持つ場合等)をいう。
(注9)「(12)日常の意思決定」とは、毎日の暮らしにおける活動に関して意思決定ができる能力をいう。
(注 10)慣れ親しんだ日常生活に関する事項(見たいテレビ番組やその日の献立等)に関する意思決定はできるが、本人に関する重要な決定への合意等(ケアプランの作成への参加、治療方針への合意等)には、支援等を必要とすることをいう。
過去に別の会社で介護休業をしたことがある労働者の介護休業取得日数はどのように数えるのですか。
同一の対象家族について、他の事業主の下で介護休業をしたことがある場合でも、その日数は現在の勤務先での介護休業取得日数には算入されません。
事業主は、どの社員がどの対象家族のために何日・何回の介護休業を取得したかを記録し、社員が在籍している間保存しておかなければならないのですか。
事業主に、労働者ごとの介護休業取得実績を記録し保存する義務はありません。しかし、労働者は、介護休業の申出をする際に、申出に係る対象家族についてのこれまでの介護休業日数を記載して申し出なければならず、事業主が、労働者が申し出たこれまでの介護休業日数が事実と異なることの証明ができなければ、最低基準である93日の介護休業を拒むことはできないと考えられます。労働者がこれまで介護休業を取得した実績(回数を含めて)は分かるようにしておくことが望ましいでしょう。
労働者から入院している家族のために介護休業を取得したいと申出がありました。入院しているのであれば労働者が家族を介護する必要はないと思うのですが、休業させなくてはなりませんか。
「介護」とは、歩行、排泄、食事、入浴等の日常生活に必要な便宜を供与することをいいます。他の者の手伝いを受けている場合であっても、労働者本人が便宜を供与しているのであれば、社会通念上、「対象家族を介護する」に該当します。
よって、対象家族が入院している場合でも、労働者本人が歩行、排泄、食事、入浴等の日常生活に必要な便宜を供与する必要があるか否かをみて判断すべきです。また、介護休業制度は、「要介護状態にある対象家族の介護の体制を構築するため一定期間休業する場合に対応するもの」と位置付けられており、「介護に専念するためのもの」ではありません。このような介護休業制度の趣旨を踏まえつつ、介護をしている労働者の個々の事情にあわせて、なるべく労働者が仕事と介護を両立できるよう、柔軟に判断いただくことが望ましいです。
介護休暇取得日は有給にしなければなりませんか。
労働者が介護休暇を取得して労務を提供しない日や時間について、事業主に給与を支払う義務はなく、就業規則等で決めていただくことになります。企業によっては、失効年次有給休暇を利用するなど一定の範囲で有給としている例も見られます。
なお、実際に働かなかった日や時間数を超えて賃金を減額したり、賞与・昇給等で不利益な算定を行う等の、不利益な取扱いは禁止されています。
労働者から、家族の介護のために所定労働時間の短縮措置を利用したい旨申出がありました。そのため、これまでとおりの正社員として勤務をすることが難しくなることが予想されるため、会社からパートタイマーとして勤務又は退職してはどうかと言ってもよいのでしょうか?
育児・介護休業法では、労働者が仕事と介護を両立して働き続けるための制度として、介護休業、介護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、所定労働時間の短縮等の措置が定められており、労働者の方は、ご自身の仕事内容、家族の介護の必要度や利用するサービスなどを考慮して、自分にあった制度を利用することが可能です。
労働者がこれらの制度の利用を申し出たり、実際に利用したことを理由として、正社員からパートタイマーになるよう強要したり、解雇や退職を強要することは育児・介護休業法で禁止されています。