健康・医療世界的なポリオ根絶に向けた対応について

 急性灰白髄炎(以下「ポリオ」という。)については、1988(昭和63)年5月の世界保健総会における決議に基づき、世界保健機関(以下「WHO」という。)によるポリオ根絶に向けた取組(世界ポリオ根絶計画 Global Polio Eradication Initiative (GPEI))が推進されています。

 GPEIでは、WHO加盟国に対して、ポリオ根絶の達成及び根絶後における経口生ポリオワクチン(OPV)の接種停止を視野に入れた対応を求めています。
Global Polio Eradication Initiative (GPEI)【外部リンク】

 日本国内においては、1981(昭和56) 年以降、野生株ポリオウイルスによる発症例は報告されていません。
世界のポリオ発生状況【外部リンク】

1.WHOポリオ根絶計画について

 WHOは世界的なポリオ根絶に向けた取り組みを推進するため、「ポリオウイルス封じ込めのための世界的行動計画(GAP)」を定めています。

 2015(平成27)年世界保健総会で加盟国は第3版(GAPIII)に基づき対応することが承認され、国がポリオウイルスを保有している施設を認定するとともに、定期的に監査を行うこととなりました。
 (現在は2022(令和4)年7月発行の第4版(GAPⅣ))

 WHO Global Action Plan to minimize poliovirus facility-associated risk after type-specific eradication of wild polioviruses and sequential cessation of oral polio vaccine use (GAPIII)[3.9MB]
WHO Global Action Plan for Poliovirus Containment(GAPⅣ)[1.2MB]
 
 

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1-1.不必要なポリオウイルスの廃棄について

 ポリオウイルスが伝播するリスクを最小限にするため、WHO は加盟国に対して、不必要なポリオウイルスの廃棄を求めています。
 

 
1.廃棄の対象となる感染性のある2 型の野生株ポリオウイルス及び変異型ワクチン由来ポリオウイルスを含む材料
  • 2型野生株ポリオウイルス(VDPV(※1)含む)の感染が確認された臨床 検体 
  • 2型野生株ポリオウイルス(VDPV含む)の存在が証明された環境水あるいは水サンプル
  • 2型野生株ポリオウイルス(VDPV含む)の細胞培養分離株と参照株 
  • 2型の不活化ポリオワクチン生産のための種ウイルス株および不活化ポリオワクチン生産から生じた感染性産物 
  • 2型野生株ポリオウイルス(VDPV含む)を感染させた動物(ヒトポリオウイルス受容体トランスジェニックマウスを含む)または感染動物に由来する検体 
  • Sabin株より安全であることが証明されていない、2型野生株ポリオウイルス由来のカプシドシークエンスを含む感染性ウイルス(※2 ※3) 
  • 2型野生株ポリオウイルス(VDPV含む)持続感染細胞
  •  
  • ※1)VDPV(Vaccine-derived poliovirus):変異型ワクチン由来ポリオウイルス 
  • ※2)GAPIIIからGAPIVへの改訂にともなう野生株ポリオウイルスの定義の変更を反映し、「カプシドシークエンスを含む誘導体(derivative)」あるいは「核酸(full-length RNA or cDNA)」は、「カプシドシークエンスを含む感染性ウイルス(infectious viruses)」に改訂した。 
  • ※3)野生ポリオウイルスのカプシドシークエンスを含む新しい感染性ウイルスの安全性は、WHOが招集する専門家パネルによって評価され、Sabin株と比較して(i)弱毒の程度と安定性;(ii)人から人への伝播の可能性;(iii)動物モデルにおける神経病原性が検討される必要がある。
2.廃棄の対象となる感染性のある2型ワクチン株ポリオウイルスを含む材料
  • 2型ワクチン株ポリオウイルス(Sabin2)の細胞培養分離株と参照株 
  • 経口ポリオ生ワクチン生産のための種ウイルス株および経口ポリオ生ワクチン生産から生じた感染性産物 
  • 2型ワクチン株ポリオウイルス(Sabin2)の存在が証明された環境水あるいは水サンプル 
  • 平成24年9月以前に、経口ポリオ生ワクチン被接種者から採取された糞便や気道分泌物で、2型ワクチン株ポリオウイルスの存在が証明されているもの 
  • 2型ワクチン株ポリオウイルスを感染させた動物(ヒトポリオウイルス受容体トランスジェニックマウスを含む)または感染動物に由来する検体 
  • 2型ワクチン株ポリオウイルス(Sabin2)由来のカプシドシークエンスを含む研究室材料
  • 2型ワクチン株ポリオウイルス(Sabin2)由来のカプシドシークエンスを有したポリオウイルス持続感染細胞
 
1.廃棄の対象となる感染性のある1型及び3型の野生株ポリオウイルス及び変異型ワクチン由来ポリオウイルスを含む材料(※1)    
  • 1型及び3型野生株ポリオウイルス(VDPV(※2)含む)の感染が確認された臨床検体 
  • 1型及び3型野生株ポリオウイルス(VDPV含む)の存在が証明された環境水あるいは水サンプル 
  • 1型及び3型野生株ポリオウイルス(VDPV含む)の細胞培養分離株と参照株 
  • 1型及び3型の不活化ポリオワクチン生産に必要な種株およびその産物 
  • 1型及び3型野生株ポリオウイルス(VDPV含む)を感染させた動物(ヒトポリオウイルス受容体トランスジェニックマウスを含む)または感染動物に由来する検体 
  • Sabin株より安全であることが証明されていない、1型及び3型野生株ポリオウイルス由来のカプシドシークエンスを含む感染性ウイルス(※3) 
  • 1型及び3型野生株ポリオウイルス(VDPV含む)持続感染細胞 

    ※1)Sabin株を除く。 
    ※2)VDPV(Vaccine-derived polioviruses):変異型ワクチン由来ポリオウイルス 
    ※3)野生ポリオウイルスのカプシドシークエンスを含む新しい感染性ウイルスの安全性は、WHOが招集する専門家パネルによって評価され、Sabin株と比較して(i)弱毒の程度と安定性;(ii)人から人への伝播の可能性;(iii)動物モデルにおける神経病原性が検討される必要がある。 
 

ポリオウイルスを含む可能性がある検体等(Potentially infectious materials, PIM)の管理について

  WHOは、ポリオ根絶に向けた最終的な取り組みとして、「ポリオ根絶戦略2022-2026(The Polio Eradication Strategy 2022-2026)」[8.8MB]による対策を進めています。当計画では、ポリオウイルス(野生株及びワクチン株。以下同じ。)による症例の根絶状態からポリオウイルスの封じ込めへの移行期において、ポリオウイルスが伝播するリスクを最小限にするため、ポリオウイルスを含む可能性のある検体等(Potentially infectious materials、以下「PIM」という。)を保有する施設の把握や、不要な試料の廃棄を含めた適正管理の方向性を示しています。
 
 また、2018(平成30)年5月には、感染性ポリオウイルスを含む可能性のある材料を取り扱う施設を対象としたガイダンスが公開されました。
 PIMについても、ポリオウイルスに準じた管理を行うための方策が具体的に示されました。ポリオウイルスの封じ込めの進展に伴い、経口生ワクチンから不活化ワクチンへの移行が進む中、糞便等の検体(糞便検体、呼吸器検体、濃縮下水検体)についても、目的や意図にかかわらず、採取時期・場所や保存状態によりポリオウイルスが偶発的に含まれている可能性を踏まえ、糞便等特に懸念がある検体等についてPIMとして所有状況を把握し、適切に対応することが求められています。
 これは各施設が保有する糞便等の検体について、採取時期、場所ごとにポリオウイルス感染性を有する可能性を評価し、ポリオウイルスが誤って、あるいは意図的に環境に放出されないことを目的としています。

 Guidance to minimize risks for facilities collecting, handling or storing materials potentially infectious for polioviruses-Second Edition[1.5MB]

ポリオウイルスを含む可能性がある検体等(Potentially infectious materials, PIM)に該当する検体について



以下の検体がPIMに該当します。
○2012 (平成24)年5 月に、国内で、下痢症ウイルス(ノロウイルス、ロタウイルス等)検査用に採取された環境水(下水)をフィルターで濃縮後、現在まで凍結保存した検体

 
日本で2012 年12 月まで(日本において定期接種に三価OPV を使用していた時期)に採取された下水濃縮物はワクチン株を含む可能性があるのでPIM に該当します。
   
○2015 (平成27)年に、ベトナムで、風疹検査用に妊婦から採取した血清および咽頭拭い液 (凍結保存)

 
ベトナムで2016(平成28)年6 月まで(ベトナムにおいて定期接種に三価OPV を使用していた時期)に採取された呼吸器検体はPIM に該当します(血清は、いずれのPIM にも該当しません)。
   
○2009 (平成21)年11 月に、インド(ウタプラディシュ州)で、新規プロバイオティクス製品開発研究のために採取した健常児由来の糞便を現在まで凍結保存した検体

 
インド(ウタプラディシュ州)で2009 年6 月29 日から2010 (平成22)年1 月18 日まで(インド(ウタプラディシュ州)において2 型VDPVが 流行発生していた時期)に採取された糞便検体はPIM に該当します[感染のリスクが高い検体です!!]
   
○3 代前の細菌学教室の教授が冷凍庫に保管していた検体(糞便、細菌分離株等、採取地・採取時期不明)

 
検体の由来が不明な場合には、野生株、VDPV、ワクチン株を含む2 型ポリオウイルスが含まれている可能性を否定できないため、PIMに該当します [感染のリスクが高い検体です!!]

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1-2.AFPサーベイランス

 急性弛緩性麻痺(Acute Flaccid Paralysis。以下「AFP」という。)とは、脊髄・末梢神経・神経筋接合部・筋肉のいずれか、又はそのいくつかに病変を有し、急性的に弛緩性の運動麻痺を呈する疾患の総称です。AFPの原因としてはギラン・バレー症候群、重症筋無力症、急性横断性脊髄炎、急性弛緩性脊髄炎、急性脳脊髄炎、急性脊髄炎、Hopkins 症候群などがありますが、感染症においてAFPの原因として考えられるのは、ポリオ、エンテロウイルスA71感染症、エンテロウイルスD68感染症、コクサッキーB群ウイルス感染症、エコーウイルス感染症、ボツリヌス症、狂犬病、ヘルペスウイルス感染症、日本脳炎、ウエストナイルウイルス感染症、アデノウイルス感染症、ライム病、ジフテリア等があります。

 WHOは、ポリオ対策の観点から、各国でAFP を発症した15歳未満の患者を把握し、当該患者に対してポリオにり患しているか否かの検査(以下「ポリオウイルス検査」という。)を実施し、ポリオが発生していないことを確認するよう求めています。

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2.WHOポリオ根絶計画を踏まえた厚生労働省の対応について

 WHOポリオ根絶計画を踏まえた厚生労働省の主な対応は以下のとおりです。

不必要なポリオウイルスの廃棄を促進

 自治体、医療機関、研究機関等に対して、継続して保有する必要がある場合を除き、感染性のあるポリオウイルスを含む材料を廃棄することについて周知及び協力要請依頼を行っています。

ポリオウイルスを保有する施設に対する監査

 厚生労働省では、ポリオウイルスを継続して保有する必要があると申出のあった施設に対して、ポリオウイルス封じ込めのための世界的行動計画(GAP)に沿った対応として定期的な監査を実施することとしています。

AFPサーベイランスへの対応

 AFP を発症した15 歳未満の患者に対してポリオウイルス検査が確実に実施されることを担保するため、AFP(ポリオを除く。)を感染症法上の五類感染症に位置付けるとともに、医師がAFP を発症した15 歳未満の患者を診断したときは、最寄りの保健所長を経由して都道府県知事等に届け出ることとされています。

感染症法に基づく医師の届出について

急性弛緩性麻痺の情報提供について(依頼)[135KB]
別紙:急性弛緩性麻痺症例60日後追跡報告書 [41KB]
 

不活化ポリオワクチンの定期接種導入について

 2012(平成24)年9月1日から生ポリオワクチンの定期予防接種が中止され、不活化ポリオワクチンの定期接種が導入されました。

 

日本ポリオ根絶会議の開催について



  WHOの「ポリオ根絶戦略2022-2026」に基づき、日本ポリオ根絶会議(National Commissions Certification of the Eradication of Poliomyelitis ;NCC)を開催し、日本のポリオ対策やポリオウイルス封じ込めを含む根絶状況を確認しています。

・2024年9月10日に令和6年度第2回 日本ポリオ根絶会議が開催されました。
 議事概要:2024年9月10日開催分[78KB]
・2024年8月26日に令和6年度第1回 日本ポリオ根絶会議が開催されました。
 議事概要:2024年8月26日開催分[48KB]
・2023年10月12日にNCC会議が開催されました。
 議事次第:2023年10月12日開催分[43KB]

 
 

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3.ポリオワクチンについて

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4.関連通知

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5.リンク集

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