令和7年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A
令和7年11月14日版
1 急性呼吸器感染症(ARI)について
- Q3 インフルエンザの特徴について教えてください。
- Q4 インフルエンザはいつ流行するのですか?
- Q5 現在国内で流行しているインフルエンザウイルスはどのような種類ですか?
- Q6 季節性インフルエンザと新型インフルエンザはどう違うのですか?
- Q7 インフルエンザに感染したら、必ず抗インフルエンザ薬の内服が必要ですか?
- Q8 薬剤耐性インフルエンザウイルスとはどのようなものですか?
- Q9 抗インフルエンザウイルス薬に耐性化したウイルスは国内で流行していますか?
- Q10 インフルエンザウイルス薬の服用後に、転落死を含む異常行動が報告されていると聞きましたが、薬が原因なのでしょうか?
- Q11 異常行動による転落等の事故を予防するため、どのようなことに注意が必要でしょうか?
- Q22 急性呼吸器感染症のうち、定期接種の対象となっている疾病は何がありますか?
- Q23 インフルエンザワクチン、新型コロナワクチンの効果、有効性について教えてください。
- Q24 昨年、インフルエンザワクチン、新型コロナワクチンの接種を受けましたが今年も受けた方がよいでしょうか?
- Q25 インフルエンザワクチンの有効性が、製造の過程で低下することはあるのでしょうか?
- Q26 インフルエンザワクチンは、インフルエンザA型にもB型にも有効ですか?
- Q27 インフルエンザワクチン、新型コロナワクチンの接種はいつ頃受けるのがよいですか?
- Q28 インフルエンザワクチン、新型コロナワクチンの供給量は確保されていますか?
- Q29 定期接種はどこでうけられますか?いくらかかりますか?
1 急性呼吸器感染症(ARI)について
1-1 急性呼吸器感染症に共通する事項
Q1 急性呼吸器感染症(ARI)とは何ですか?
(表1)感染症法上の急性呼吸器感染症(ARI)に関する特定感染症予防指針の対象疾患の概要[359KB]

Q2 なぜ急性呼吸器感染症(ARI)への対策が必要なのですか?
急性呼吸器感染症は、ウイルスや細菌など多様な病原体によって引き起こされ、臨床的には急性の上気道炎又は下気道炎を呈するものであり、飛沫感染、エアロゾル感染、接触感染等を中心に感染が拡大し、場合によっては、罹(り)患後に重症化する等の特徴を持っています。
このように、症状、感染経路等について共通するところが多いことから、これらを一つの「症候群」として捉え、発生動向の把握やそれに応じた対策を一体的に、通年で講ずることで、個々の感染症の流行や重症者の発生を全体として抑え、新たに重篤な急性呼吸器感染症が発生した場合における一定の感染拡大防止が期待でき、より効率的かつ有効に感染拡大防止を図ることができると考えられます。急性呼吸器感染症の発生の予防・まん延の防止への対応については、共通認識を持って取り組むことが重要です。
急性呼吸気感染症については、手洗い、うがい、マスク、換気等の対策が有効です。
1-2 各感染症について(各論)
急性呼吸器感染症のうち、特にインフルエンザ及び新型コロナウイルス感染症については、急性呼吸器感染症に関する特定感染症予防指針(令和7年厚生労働省告示第296号)にも各論として記載されているとおり、インフルエンザは個別予防接種推進指針の対象であり、乳幼児・高齢者が罹患した場合は重症化・合併症が問題になること、新型コロナウイルス感染症については5類感染症に位置づけられてから間もなく、乳幼児・高齢者のほか、一定の基礎疾患を有する方に重症化リスクがあることなどを踏まえ、インフルエンザ及び新型コロナウイルス感染症について、各論として基本的な事項を以下のとおりお示します。
1-2-1 インフルエンザについて
Q3 インフルエンザの特徴について教えてください。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することによって起こる病気です。38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感等の症状が比較的急速に現れるのが特徴です。併せて普通の風邪と同じように、のどの痛み、鼻水、咳等の症状も見られます。お子様ではまれに急性脳症を、高齢者や免疫力の低下している方では細菌による肺炎を伴う等、重症になることがあります。
Q4 インフルエンザはいつ流行するのですか?
季節性インフルエンザは流行性があり、日本では、例年12月~3月が流行シーズンです。
一方、諸外国においては、新型コロナウイルス感染症の流行以降、季節性インフルエンザの流行が過去と異なるタイミングで開始したという報告が見られています。日本においても、令和6年は、例年より早く本格的な流行が生じ、12月に流行シーズンのピークを迎えました。
Q5 現在国内で流行しているインフルエンザウイルスはどのような種類ですか?
インフルエンザの原因となるインフルエンザウイルスは、A型、B型、C型及びD型に大きく分類されます。このうち大きな流行の原因となるのはA型とB型です。
現在国内で流行しているインフルエンザウイルスは、A(H1N1)亜型、A(H3N2)亜型(香港型)とB型(ビクトリア系統)です。このうち、A(H1N1)亜型のウイルスとして、平成21(2009)年より前に季節性として流行していたもの(Aソ連型)は、平成21(2009)年のインフルエンザA(H1N1)pdm2009ウイルス発生後は世界的に検出されていません。また、B型ウイルスのうち、山形系統については、2020年3月以降世界的に検出されていません。
これらのインフルエンザウイルスについて、流行するウイルス型や亜型、系統の割合は、国や地域で、また、その年ごとにも異なっています。日本国内における流行状況の詳細は、国立健康危機管理研究機構(以下「JIHS」という。)感染症情報提供サイトのウェブページを御覧ください。
参考:インフルエンザ|国立健康危機管理研究機構(JIHS) 感染症情報提供サイト
Q6 季節性インフルエンザと新型インフルエンザはどう違うのですか?
A型のインフルエンザはその原因となるインフルエンザウイルスの抗原性が小さく変化しながら毎年世界中のヒトの間で流行しています。これが季節性インフルエンザです。
一方、新型インフルエンザは、時としてこの抗原性が大きく異なるインフルエンザウイルスが現れ、多くの国民が免疫を獲得していないことから、全国的に急速にまん延することによって起こります。新型インフルエンザは、いつどこで発生するのかは、予測することは困難です。しかし、ひとたび発生すれば、人々の生命及び健康、医療体制、生活や経済全体に大きな影響を与えかねません。
過去には新型インフルエンザは、大正7-8(1918-1919)年(スペインインフルエンザ)、昭和32-33(1957-1958)年(アジアインフルエンザ)、昭和43-44(1968-1969)年(香港インフルエンザ)、平成21-22(2009-2010)年(新型インフルエンザA(H1N1)pdm2009)に発生しました(pdm:パンデミック)。世界的な流行となり、多くの市民が新型インフルエンザに対して免疫を獲得すると、新型インフルエンザは、季節的な流行を繰り返す季節性のインフルエンザへと落ち着いていきます。新型インフルエンザA(H1N1)pdm2009についても、平成23(2011)年4月からは、季節性インフルエンザとして取り扱われることになりました。
Q7 インフルエンザに感染したら、必ず抗インフルエンザ薬の内服が必要ですか?
インフルエンザは多くの場合、自然経過の中で4-5日間の発熱等の症状が出現した後自然軽快します。抗インフルエンザ薬は、高齢者や免疫不全者、小児等の重症化リスクが高いと考えられる方に対して重症化予防効果があるとされているとともに、そのほかの方については内服による重症化予防効果は限定的とされています。
抗インフルエンザウイルス薬の服用を適切な時期(発症から48時間以内)に開始すると、発熱期間は通常1~2日間短縮され、のどからのウイルス排出量も減少しますが、症状が出てから2日(48時間)以降に服用を開始した場合、十分な効果は期待できません。
抗インフルエンザ薬の投与は、症状が出始めてからの時間や病状により異なり、また、全ての患者に対して必須ではないため、医師の判断に基づき使用してください。
Q8 薬剤耐性インフルエンザウイルスとはどのようなものですか?
薬剤耐性インフルエンザウイルスとは、本来有効である抗インフルエンザウイルス薬が効かない、あるいは効きにくくなったウイルスのことです。この薬剤耐性ウイルスは、インフルエンザウイルスが増殖する過程において特定の遺伝子に変異が起こることにより生じると考えられています。
薬剤耐性インフルエンザウイルスは、本来有効である治療薬に対し抵抗性を示しますが、他のインフルエンザウイルスと比較して病原性や感染性が強いものは今のところ確認されていません。また、薬剤耐性ウイルスに対してワクチンが効きにくくなることもありません。
Q9 抗インフルエンザウイルス薬に耐性化したウイルスは国内で流行していますか?
毎年、日本では、JIHSと全国の地方衛生研究所が中心となってオセルタミビルやザナミビルなどの抗インフルエンザウイルス薬に耐性をもつウイルスの調査を行っています。詳しくはJIHSの感染症情報提供サイトのウェブページを御覧下さい。
参考:抗インフルエンザ薬剤耐性株サーベイランス|国立健康危機管理研究機構(JIHS) 感染症情報提供サイト
抗インフルエンザウイルス薬に耐性化したウイルスが検出される割合は、アマンタジン塩酸塩を除いて、例年1~2%程度です。ごくまれに、抗インフルエンザウイルス薬による治療前に耐性化したウイルスが検出されることがありますが、耐性化したウイルスの多くは、抗インフルエンザウイルス薬による治療を行った後、採取されたウイルスです。いずれも検出は散発的ですが、引き続き薬剤耐性株サーベイランスを行い、発生動向を注視することとしています。
Q10 抗インフルエンザウイルス薬の服用後に、転落死を含む異常行動が報告されていると聞きましたが、薬が原因なのでしょうか?
抗インフルエンザウイルス薬の服用後に異常行動(例:急に走り出す、部屋から飛び出そうとする、ウロウロするなど)が報告されています。また、これらの異常行動の結果、極めてまれですが、転落等による死亡事例も報告されています。
抗インフルエンザウイルス薬の服用と異常行動との因果関係は不明ですが、これまでの調査結果などからは、
- インフルエンザにかかった時には、抗インフルエンザウイルス薬を服用していない場合でも、同様の異常行動が現れること、
- 服用した抗インフルエンザウイルス薬の種類に関係なく、異常行動が現れること、
が報告されています。
以上のことから、インフルエンザにかかった際は、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無や種類にかかわらず、異常行動の出現に対して注意が必要です(具体的注意はQ11参照)。
参考:タミフルと異常行動等の関連にかかる報告書[406KB]
Q11 異常行動による転落等の事故を予防するため、どのようなことに注意が必要でしょうか?
インフルエンザにかかった際は、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無や種類にかかわらず、異常行動が報告されています(Q10を参照)。
インフルエンザにかかり、自宅で療養する場合は、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無や種類によらず、少なくとも発熱から2日間は、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じて下さい。
なお、転落等の事故に至るおそれのある重度の異常行動については、就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと、発熱から2日間以内に発現することが多いことが知られています。
<転落等の事故に対する防止対策の例>
- 玄関や全ての部屋の窓の施錠を確実に行う(内鍵、補助錠がある場合はその活用を含む)
- ベランダに面していない部屋で寝かせる
- 窓に格子のある部屋で寝かせる(窓に格子がある部屋がある場合)
- できる限り1階で寝かせる(一戸建てにお住まいの場合)
<転落等の事故に対する防止対策の例>
- 突然立ち上がって部屋から出ようとする
- 興奮して窓を開けてベランダに出て、飛び降りようとする
- 自宅から出て外を歩いていて、話しかけても反応しない
- 人に襲われる感覚を覚え、外に飛び出す
- 変なことを言い出し、泣きながら部屋の中を動き回る
1-2-2 新型コロナウイルス感染症について
Q12 新型コロナウイルス感染症と普通の風邪はどう違うのですか?
新型コロナウイルス感染症は、特に、乳幼児や高齢者、免疫不全、末期腎不全、慢性閉塞性肺疾患等の一定の基礎疾患を有する者等が感染すると重症化するリスクがあり、とりわけ後期高齢者等については、死亡例の多くを占めており、特に疾病負荷が高い傾向にあります。
また、一部の患者については、新型コロナウイルス感染症に罹患した後、他に原因が明らかでなく、罹患してすぐの時期から持続する症状、回復した後に新たに出現する症状、症状が消失した後に再び生じる症状等の罹患後症状が長く継続することもあります。
Q13 新型コロナウイルス感染症はいつ流行するのですか?
令和5年5月に新型コロナウイルス感染症が感染症法上の5類に分類されて以降、夏と冬に流行する傾向が見られます。
Q14 令和2(2020)年ごろから流行した、新型コロナウイルス感染症の状況を教えてください。
新型コロナウイルス感染症は、令和2年1月に国内初の感染者が報告されてから、令和5年5月に5類感染症へと位置づけられるまでの間に、我が国で約3,400万人の感染者、7万4千人を超える死亡者が報告されています。この間、感染症法や検疫法等に基づく入院措置や就業制限、検疫措置等にとどまらず、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の発令などの社会経済活動の制限を伴う対応もとられるなど、新型コロナウイルス感染症は我が国社会に様々な影響を及ぼしました。
令和5年5月8日に感染症法上の「5類感染症」へ位置づけを変更し、それまでの法律に基づき行政が様々な要請・関与をしていく仕組みから、個人の選択を尊重し、国民の自主的な取組みを基本とする対応に転換しました。「5類感染症」へと位置づけの変更を行った後も、新規感染者数については、定点医療機関の報告による新規感染者の把握を基本とし、血清疫学調査(抗体保有率)や、下水サーベイランス等を含む重層的な把握、ゲノム解析の実施による変異株の発生状況のモニタリング、入国時感染症ゲノムサーベイランスなどにより、引き続き感染状況等の注視を続けており、病原性が大きく異なる変異株の出現等科学的な前提が異なるような状況が生じた場合には対応を見直すこととしています。
2 予防・治療について
2-1 予防・治療に関する基本的な考え方
Q15 急性呼吸器感染症にかからないためにはどうすればよいですか?
急性呼吸器感染症を予防するには、以下のような方法が有効だと考えられています。
(1)外出後の手洗い等
流水・石鹸による手洗いは手指など体についた病原体を物理的に除去するために有効な方法であり、接触や飛沫感染などを感染経路とする感染症の対策の基本です。インフルエンザウイルス・新型コロナウイルスにはアルコール製剤(エタノール濃度80%前後)による手指衛生も効果があります。
(2)適度な湿度の保持
空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下し、急性呼吸器感染症にかかりやすくなります。特に乾燥しやすい室内では、加湿器などを使って適切な湿度(50~60%)を保つことも効果的です。
(3)十分な休養とバランスのとれた栄養摂取
体の抵抗力を高めるために、十分な休養とバランスのとれた栄養摂取を日ごろから心がけましょう。
(4)人混みや繁華街への外出を控える
インフルエンザなどの急性呼吸器感染症が流行してきたら、特に御高齢の方や基礎疾患のある方、妊婦、体調の悪い方は、人混みや繁華街への外出を控えましょう。やむを得ず外出して人混みに入る可能性がある場合には、ある程度、飛沫感染等を防ぐことができる不織布(ふしょくふ)製マスク※を着用することは一つの防御策と考えられます。
※不織布とは、繊維を絡ませたり、接着剤や熱で固めたりしてシート状にし、糸や布を織らずに作られた布状の素材のこと。
(5)室内ではこまめに換気をする
季節を問わず、十分な換気が重要です。一般家庭でも、建物に組み込まれている常時換気設備※や台所・洗面所の換気扇により、室温を大きく変動させることなく換気を行うことができます。常時換気設備や換気扇を常時運転し、最小限の換気量を確保しましょう。
※2003年7月以降に着工された住宅には「常時換気設備(24時間換気システム)」が設置されています。常時換気設備が設置されている場合には常に稼働させましょう。また、定期的にフィルタの掃除を行い、強弱スイッチがある場合は強運転にして換気量を増やすようにしましょう。吸気口の位置にもご注意ください。家具等でふさぐと効果が落ちてしまいます。「常時換気設備」が設置されていない建物でも、台所や洗面所などの換気扇を常時運転することで最小限の換気量は確保できます。
<窓開けによる換気のコツ>
- 対角線上にあるドアや窓を2か所開放すると効果的な換気ができます。
- 窓が1つしかない場合は、部屋のドアを開けて、扇風機などを窓の外に向けて設置しましょう。
<冬場における換気の留意点>
- 窓開けを行うと一時的に室内温度が低くなってしまいます。暖房器具を使用しながら、換気を行ってください。
- 暖房器具の近くの窓を開けると、入ってくる冷気が暖められるので、室温の低下を防ぐことができます。なお、暖房器具の種類や設置位置の決定に当たっては、カーテン等の燃えやすい物から距離をあけるなど、火災の予防に留意してください。
- 短時間に窓を全開にするよりも、一方向の窓を少しだけ開けて常時換気を確保する方が、室温変化を抑えられます。この場合でも、暖房によって室内・室外の温度差が維持できれば、十分な換気量を得られます。
- 人がいない部屋の窓を開け、廊下を経由して、少し暖まった状態の新鮮な空気を人のいる部屋に取り入れることも、室温を維持するために有効です。
- 窓を十分に開けると室温を18℃以上に維持できない場合には、換気不足を補うために、HEPAフィルタによるろ過式の空気清浄機を併用することが有効です。
(6)ワクチン接種
予防接種が可能な感染症については、ワクチンを接種することも有効です。
インフルエンザワクチンは、感染後に発症する可能性を低減させる効果と、発症した場合の重症化防止に有効と報告されています。(→【3 予防接種について】を参照)
新型コロナウイルスワクチンは、国内外で実施された研究などにより、新型コロナウイルス感染症にかかった場合の入院や死亡等の重症化等を予防する重症化予防効果が認められたと報告されています。(→【3 予防接種について】を参照)
Q16 急性呼吸器感染症の症状があります。どうすればよいのですか?
(1)人混みへの外出を控える
人混みや繁華街への外出を控え、無理をして学校や職場等に行かないようにしましょう。
(2)咳エチケットの徹底
咳やくしゃみ等の症状のある時は、家族や周りの方へうつさないように、飛沫感染対策としての咳エチケットを徹底しましょう。
急性呼吸器感染症の主な感染経路は咳やくしゃみの際に口から発生される小さな水滴(飛沫)による飛沫感染、接触感染、エアロゾル感染等によるものです。インフルエンザや新型コロナウイルス感染症に感染していても、症状が出ない(不顕性感染)場合や、軽い症状が出るだけの場合もあります。
したがって、周囲の人にうつさないよう、
- 普段から皆が咳エチケットを心がけ、咳やくしゃみを他の人に向けて発しないこと
- 咳やくしゃみが出ているときはできるだけ不織布製マスクをすること(※)。とっさの咳やくしゃみの際にマスクがない場合は、ティッシュや腕の内側などで口と鼻を覆い、顔を他の人に向けないこと
- 鼻水・痰などを含んだティッシュはすぐにゴミ箱に捨て、手のひらで咳やくしゃみを受け止めた時はすぐに手を洗うこと
(※)マスク着用に係る留意事項
- 子どものマスクの着用については、すこやかな発育・発達の妨げとならないよう配慮することが重要です。
- 乳幼児については、2歳未満では、息苦しさや体調不良を訴えることや、自分で外すことが困難であることから、窒息や熱中症のリスクが高まるため、着用は奨められていません。
- なお、感染が大きく拡大している場合には、一時的に場面に応じた適切なマスクの着用を広く呼びかけるなど、より強い感染対策を求めることがあり得ます。ただし、そのような場合においても、子どものマスク着用については、健康面などへの影響も懸念されており、引き続き、保護者や周りの大人が個々の子どもの体調に十分注意をお願いします。
- マスクの着用は個人の判断に委ねられるものではありますが、事業者が感染対策上又は事業上の理由等により、利用者又は従業員にマスクの着用を求めることは許容されます。ただし、障害特性等により、マスク等の着用が困難な場合には、個別の事情に鑑み、差別等が生じないよう十分配慮をお願いします。
(3)十分な休養
安静にして、休養をとりましょう。特に、睡眠を十分にとることが大切です。
(4)水分補給
水分を十分に補給しましょう。お茶でもスープでも飲みたいもので結構です。
(5)医療機関の受診
高熱が続く、呼吸が苦しい、意識状態がおかしいなど具合が悪ければ早めに医療機関を受診しましょう。特にインフルエンザについては、小児・未成年者が罹患したとき、急に走り出す、部屋から飛び出そうとする、ウロウロと歩き回る等の異常行動を起こすことがあります。小児・未成年者がインフルエンザと診断され治療が開始された後、自宅で療養する場合は、治療開始から少なくとも2日間は小児・未成年者を一人にさせないなどの配慮が必要です(Q11を参照)。
Q17 急性呼吸器感染症の治療薬にはどのようなものがありますか?
急性呼吸器感染症のうち、よくご質問をいただくインフルエンザ・新型コロナウイルス感染症に対する治療薬については以下のようなものがあります。
(1)インフルエンザに対する治療薬
- オセルタミビルリン酸塩(商品名:タミフル等)
- ザナミビル水和物(商品名:リレンザ)
- ペラミビル水和物(商品名:ラピアクタ)
- ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(商品名:イナビル)
- バロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)
- アマンタジン塩酸塩(商品名:シンメトレル等)(A型にのみ有効)
これらの治療薬の効果はインフルエンザの症状が出始めてからの時間や病状により異なり、また、抗インフルエンザ薬の投与は全ての患者に対しては必須ではないため、医師の慎重な判断に基づき使用してください。
抗インフルエンザウイルス薬の服用を適切な時期(発症から48時間以内)に開始すると、発熱期間は通常1~2日間短縮され、鼻やのどからのウイルス排出量も減少します。なお、症状が出てから2日(48時間)以降に服用を開始した場合、十分な効果は期待できません。使用する際には用法、用量、期間(服用する日数)を守ることが重要です。
A型にのみ有効なアマンタジン塩酸塩は、ほとんどのインフルエンザウイルスが耐性を獲得しており、使用の機会は少なくなっています。
バロキサビル マルボキシルについては、一般社団法人日本感染症学会と公益社団法人日本小児科学会が以下の趣旨の提言を出しています。
(1)6歳から11歳までの小児については、B型には使用を考慮する。
(2)1歳から5歳以下の小児では、同薬の積極的な使用を推奨しない。B型には剤型適応の可否を判断した上での使用も考慮する。
(3)10Kg 未満の小児に適応はなし。
(4)ノイラミニダーゼ阻害薬耐性株が疑われる状況では、使用が考慮される。
(5)重症患者および免疫不全患者のインフルエンザの治療において、推奨/非推奨を論じることのできるエビデンスは現時点では不十分である。
公益社団法人日本小児科学会
(2)新型コロナウイルス感染症に対する治療薬
新型コロナウイルス感染症に対する治療薬としては、主に下記の抗ウイルス薬があります。
- モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)
- ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック)
- エンシトレルビル フマル酸(商品名:ゾコーバ錠)
- レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注用)
重症化予防、症状軽減を目的とした抗ウイルス薬の投与については、化学療法や免疫抑制剤の使用による高度な免疫不全に加え、重症化リスク因子の数、基礎疾患のコントロール状況、当該シーズンのワクチン接種状況、および臨床経過などを踏まえ、重症化リスクが総合的に判断されます。
ラゲブリオ及びゾコーバ錠は、動物実験で催奇形性が認められており、妊婦又は妊娠している可能性のある女性は投与禁忌とされています。また、パキロビッドパック及びゾコーバ錠は、複数の薬剤が併用禁忌とされており、服薬中のすべての薬剤を確認する必要があります。さらに、ラゲブリオ及びパキロビッドパックは発症から5日以内に、ゾコーバ錠は発症から3日以内に服用する必要があります。
参考:5学会による新型コロナウイルス感染症診療の指針[6.2MB]
Q18 抗菌薬は急性呼吸器感染症に効果がありますか?
急性呼吸器感染症のうち、肺炎球菌などの細菌によりかかる感染症については抗菌薬が効果的ですが、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルス等の、ウイルスを病原体とする感染症に抗菌薬は効きません。
しかしながら、特にご高齢の方や慢性疾患を持つ方、免疫機能が低下している方は、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などのウイルスを病原体とする感染症にかかることにより、肺炎球菌などの細菌にも感染しやすくなっています。この場合、細菌にもウイルスにも感染すること(混合感染)によって起こる気管支炎、肺炎等の合併症に対する治療として、抗菌薬等が使用されることはあります。
Q19 急性呼吸器感染症にかかったら、どのくらいの期間外出を控えればよいのでしょうか?
急性呼吸器感染症のうち、よくお尋ねのある、インフルエンザ及び新型コロナウイルス感染症についてお答えいたします。
(1)インフルエンザ
一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれています。このため、ウイルスを排出している間は、外出を控える必要があります。排出されるウイルス量は解熱とともに減少しますが、解熱後もウイルスを排出するといわれています。排出期間の長さには個人差がありますが、咳やくしゃみ等の症状が続いている場合には、不織布製マスクを着用する等、周りの方へうつさないよう配慮しましょう。
現在、学校保健安全法施行規則では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としています(ただし、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときは、この限りではありません)。
(2)新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルス感染症は、鼻やのどからのウイルスの排出期間の長さに個人差がありますが、発症2日前から発症後7~10日間は感染性のウイルスを排出しているといわれています。発症後3日間は、感染性のウイルスの平均的な排出量が非常に多く、5日間経過後は大きく減少することから、特に発症後5日間が他人に感染させるリスクが高いと言われています。
現在、学校保健安全法施行規則では「発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過するまで」を新型コロナウイルス感染症による出席停止期間としています(ただし、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときは、この限りではありません)。
(3)その他の急性呼吸器感染症
そのほかの急性呼吸器感染症についても、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症の場合と同様に、咳やくしゃみなどの症状が続いている場合は不織布製マスクを着用する等、周りの方へうつさないよう配慮しましょう。もし医師から外出を控えるよう指示された場合は、その期間中外出を控えてください。
Q20 急性呼吸器感染症にり患して休んでいた従業員が復帰する際に、職場には治癒証明書や陰性証明書を提出させる必要がありますか?
診断や治癒の判断は、診察に当たった医師が身体症状や検査結果等を総合して医学的知見に基づいて行うものです。インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などの急性呼吸器感染症は陰性を証明することが一般的に困難であることや、患者の治療にあたる医療機関に過剰な負担をかける可能性があることから、職場が従業員に対して、治癒証明書や陰性証明書の提出を求めることは望ましくなく、提出は不要です。
Q21 急性呼吸器感染症にり患して休んでいた児童生徒等が治ったら、学校には治癒証明書や陰性証明書を提出させる必要がありますか?
児童生徒等がインフルエンザや新型コロナウイルス感染症などの急性呼吸器感染症に感染し、快復して登校を始める前に、改めて検査を受ける必要はなく、当該児童生徒等が学校に復帰する場合には、治癒証明書や陰性証明書の提出は不要です。
3 予防接種について
3-1 基本的な考え方
予防接種のうち、急性呼吸器感染症一般に共通している事項についてお示しします。また、急性呼吸器感染症のうち、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症については、定期接種の対象であり、個人の重症化予防のために毎年接種することが望ましいとされている感染症であることから、特にご質問いただく点についてもお示ししています。
Q22 急性呼吸器感染症のうち、定期接種の対象となっている疾病は何がありますか?
本Q&Aの対象としている急性呼吸器感染症には、インフルエンザ、新型コロナウイルス、RSウイルス、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、ヘルパンギーナなどが含まれます。そのうち、急性呼吸器感染症の定期接種の対象疾病は、主にインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、百日せき、肺炎球菌感染症などです。
Q23 インフルエンザワクチン、新型コロナワクチンの効果、有効性について教えてください。
(1)インフルエンザワクチン
インフルエンザにかかるときは、インフルエンザウイルスが口や鼻あるいは眼の粘膜から体の中に入ってくることから始まります。体の中に入ったウイルスは次に細胞に侵入して増殖します。この状態を「感染」といいますが、現行のワクチンはこれを完全に抑える働きはありません。
ウイルスが増えると、数日の潜伏期間を経て、発熱やのどの痛み等のインフルエンザの症状が出現します。この状態を「発病」といいます。インフルエンザワクチンには、この「発病」を抑える効果が一定程度認められていますが、麻しんや風しんワクチンで認められているような高い発病予防効果を期待することはできません。発病後、多くの方は1週間程度で回復しますが、中には肺炎や脳症等の重い合併症が現れ、入院治療を必要とする方や死亡される方もいます。これをインフルエンザの「重症化」といいます。特に基礎疾患のある方や高齢の方では重症化する可能性が高いと考えられています。インフルエンザワクチンは発病を予防する効果に加え、「重症化」を予防する効果も期待されています。
国内の研究によれば、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者については34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったとされています※1
「インフルエンザワクチンの有効性」は、ヒトを対象とした研究において、「ワクチンを接種しなかった人が病気にかかるリスクを基準とした場合、接種した人が病気にかかるリスクが、『相対的に』どれだけ減少したか」という指標で示されます。6歳未満の小児を対象とした2015/16シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は60%と報告されています※2。「インフルエンザ発病防止に対するワクチン有効率が60%」とは、下記の状況が相当します。
- ワクチンを接種しなかった方100人のうち30人がインフルエンザを発病(発病率30%)
- ワクチンを接種した方200人のうち24人がインフルエンザを発病(発病率12%)
→ ワクチン有効率={(30-12)/30}×100=(1-0.4)×100=60%
ワクチンを接種しなかった人の発病率(リスク)を基準とした場合、接種した人の発病率(リスク)が、「相対的に」60%減少しています。すなわち、ワクチンを接種せず発病した方のうち60%(上記の例では30人のうち18人)は、ワクチンを接種していれば発病を防ぐことができた、ということになります。
現行のインフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではありません。しかし、インフルエンザの発病を予防することや、発病後の重症化や死亡を予防することに関しては、一定の効果があるとされています。
※1 平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者:神谷齊(国立療養所三重病院))」
※2平成28年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「ワクチンの有効性・安全性評価とVPD(vaccine preventable diseases)対策への適用に関する分析疫学研究(研究代表者:廣田良夫(保健医療経営大学))」
(2)新型コロナワクチン
新型コロナワクチンについては、有効性や安全性が確認された上で薬事承認されており、さらに、国内外で実施された研究などにより、新型コロナウイルス感染症にかかった場合の入院や死亡等の重症化等を予防する重症化予防効果が認められたと報告されています。
2024/25シーズン(令和6年秋冬の接種)において用いられたJN.1系統対応ワクチンの効果として、新型コロナウイルス感染症による入院を約45~70%程度予防した等の報告が国内外でなされています。(令和7年7月時点)
【国内の報告】
(JN.1対応ワクチン未接種者と比較)※1
・60歳以上における入院予防効果が63.2%
【海外の報告】
(KP.2対応ワクチン及びJN.1対応ワクチン未接種者と比較) ※2
・65歳以上において、入院予防効果 45%
・18歳以上において、救急受診予防効果 33%
(KP.2対応ワクチン未接種者と比較) ※3
・18歳以上において、入院予防効果 68%、救急受診予防効果 57%、外来受診予防効果 56%
・65歳以上において、入院予防効果 75%、救急受診予防効果 56%、外来受診予防効果 58%
※1VERSUS Study第12報
※2MMWR.2025;74:73-82
※3Nat Commun.2025;16:4033
Q24 昨年、インフルエンザワクチン、新型コロナワクチンの接種を受けましたが今年も受けた方がよいでしょうか?
(1)インフルエンザワクチン
インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行することが予測されると判断されたウイルスを用いて製造されています。このため、昨年、インフルエンザワクチンの接種を受けた方であっても、今年のインフルエンザワクチンの接種を検討していただく方が良いと考えられます。
(2)新型コロナワクチン
新型コロナワクチンの接種については、流行している株に対応したワクチンを用いることで、より高い中和抗体価の上昇等が期待されることから、重症化予防効果はもとより、発症予防効果の向上が期待されると考えられています。このため、昨年、新型コロナワクチンの接種を受けた方であっても、今年の新型コロナワクチンの接種についてご検討ください。
Q25 インフルエンザワクチンの有効性が、製造の過程で低下することはあるのでしょうか?
インフルエンザワクチンは発育鶏卵を用いて製造されますが、ウイルスを発育鶏卵の中で増えやすくするためには馴化(じゅんか)させなければなりません。馴化とは、ウイルスを発育鶏卵で複数回増やし、発育鶏卵での増殖に適応させることです。このような馴化の過程で、ウイルスの遺伝子に変異が起きる場合があります。
遺伝子に変異が起きた場合、実際に流行しているインフルエンザウイルス(流行株)と、ワクチンのもとになっているインフルエンザウイルス(ワクチン株)とで、免疫への作用の程度に違い(抗原性の乖離)が認められる場合があります。しかしながら、そのような場合であっても、ヒトでは一定程度の有効性が保たれることが、疫学的な研究により明らかとなっています。この理由として、ヒトは、インフルエンザウイルスの抗原性の乖離の程度を調べるために用いられている実験動物とは異なり、毎年の流行に曝露されることで一定の交差反応性のある抗体を作る細胞を有しているためと考えられています。
Q26 インフルエンザワクチンは、インフルエンザA型にもB型にも有効ですか?
現在国内で広く用いられている不活化のインフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスA型株(H1N1株とH3N2株の2種類)及びB型株(ビクトリア系統株の1種類)のそれぞれが含まれる「3価ワクチン」です。
Q27 インフルエンザワクチン、新型コロナワクチンの接種はいつ頃受けるのがよいですか?
(1)インフルエンザワクチン
日本では、インフルエンザは例年12月~4月頃に流行し、例年1月末~3月上旬に流行のピークを迎えますので、12月中旬までにワクチン接種を終えることが望ましいと考えられます。
(2)新型コロナワクチン
定期接種では、感染症の状況やワクチンの有効性に関するデータを踏まえ、これまで冬にかけて感染拡大が見られていること等から毎年秋冬に1回行うこととしています。感染拡大前にワクチン接種を終えることが望ましいと考えられます。
Q28 インフルエンザワクチン、新型コロナワクチンの供給量は確保されていますか?
(1)インフルエンザワクチン
今シーズンの供給予定量(令和7年8月現在)は、インフルエンザHAワクチン(0.5 mL/回換算)及び経鼻弱毒生ワクチン(0.2 mL/回換算)で約5,293万回分と、近年の平均使用量を超える供給量となる見込みです。
(2)新型コロナワクチン
今シーズンの供給予定量(令和7年8月現在)は、約909万回分と、昨シーズンの使用量を超える供給量となる見込みです。
なお、いずれのワクチンについても、ワクチンの効率的な使用と安定供給を推進するため、都道府県を通じて、市町村や医療機関等の関係者に対して、ワクチンの円滑な流通について連携に努めていただくよう依頼をしています。
Q29 定期接種はどこでうけられますか?いくらかかりますか?
地域の医療機関、かかりつけ医等でワクチンの接種を受けることができますが、自治体によって実施期間や費用は異なります。ワクチン接種可能な医療機関や地域での取組については、お住まいの市町村(保健所・保健センター)、医師会、医療機関、かかりつけ医等に問い合わせていただくようお願いします。
また、予防接種は病気に対する治療ではないため、健康保険が適用されません。原則として全額自己負担となり、費用は医療機関によって異なります。
しかし、予防接種法(昭和23年法律第68号)に基づく定期接種の対象者等については、接種費用が市区町村によって公費負担されているところもありますので、お住まいの市区町村(保健所・保健センター)、医師会、医療機関、かかりつけ医等に問い合わせていただくようお願いします(定期接種の対象でない方であっても、市区町村によっては、独自の助成事業を行っている場合があります)。
3-2 定期接種の対象者等について
Q30 予防接種法に基づく定期接種の対象はどのような人ですか?
(1)インフルエンザワクチン
以下の方々は、インフルエンザにかかると重症化しやすく、インフルエンザワクチン接種による重症化の予防効果による便益が大きいと考えられるため、定期接種の対象となっています。予防接種を希望する方は、かかりつけの医師とよく相談の上、接種を受けるか否か判断してください。
(1)65歳以上の方
(2)60~64歳で、心臓、じん臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される方(概ね、身体障害者障害程度等級1級に相当します)
(3)60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方(概ね、身体障害者障害程度等級1級に相当します)
(2)新型コロナワクチン
以下の方々は、新型コロナウイルス感染症にかかると重症化しやすく、新型コロナワクチン接種による重症化の予防効果による便益が大きいと考えられるため、定期接種の対象となっています。予防接種を希望する方は、かかりつけの医師とよく相談の上、接種を受けるか否か判断してください。
(1)65歳以上の方
(2)60~64歳で、心臓、じん臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される方(概ね、身体障害者障害程度等級1級に相当します)
(3)60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方(概ね、身体障害者障害程度等級1級に相当します)
Q31 予防接種法に基づく定期接種を受けられない場合もありますか?
定期接種であっても、希望すれば必ず受けられるわけではありません。以下に該当する方は予防接種を受けることが適当でない又は予防接種を行うに際して注意を要するとされています。
予防接種の対象者から除かれる者(予防接種施行規則(昭和23年厚生省令第36号))
- 急性呼吸器感染症の予防接種に相当する予防接種を受けたことのある者で当該予防接種を行う必要がないと認められるもの
- 明らかな発熱を呈している者
- 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
- 急性呼吸器感染症に係る予防接種の接種液の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな者
- 結核に係る予防接種の対象者にあっては、結核その他の疾病の予防接種、外傷等によるケロイドの認められる者
- 肺炎球菌感染症(高齢者がかかるものに限る。)に係る予防接種の対象者にあっては、当該疾病に係る定期の予防接種を受けたことのある者
- インフルエンザの定期接種で接種後2日以内に発熱のみられた者及び全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある者
- そのほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者
予防接種の判断を行うに際して注意を要する者(定期接種実施要領(「予防接種法第5条第1項の規定による予防接種の実施について」の一部改正について)(令和6年9月27日感発0927第2号厚生労働省感染症対策部長通知)の別紙))
(ア) 心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等の基礎疾患を有する者
(イ) 予防接種で接種後2日以内に発熱のみられた者及び全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある者
(ウ) 過去にけいれんの既往のある者
(エ) 過去に免疫不全の診断がされている者及び近親者に先天性免疫不全症の者がいる者
(オ) 接種しようとする接種液の成分に対してアレルギーを呈するおそれのある者
(カ) バイアルのゴム栓に乾燥天然ゴム(ラテックス)が含まれている製剤を使用する際の、ラテックス過敏症のある者
(キ) 結核の予防接種にあっては、過去に結核患者との長期の接触がある者その他の結核感染の疑いのある者
(ク) ロタウイルス感染症の予防接種にあっては、活動性胃腸疾患や下痢等の胃腸障害のある者
3-3 副反応等について
Q32 インフルエンザワクチン、新型コロナワクチンの接種によって引き起こされる症状(副反応)には、どのようなものがありますか?
(1)インフルエンザワクチン
免疫をつけるためにワクチンを接種したとき、免疫がつく以外の反応がみられることがあります。これを副反応といいます。季節性インフルエンザワクチンで比較的多くみられる副反応には、接種した場所(局所)の赤み(発赤)、はれ(腫脹)、痛み(疼痛)等が挙げられます。接種を受けられた方の10~20%に起こりますが、通常2~3日で消失します。
全身性の反応としては、発熱、頭痛、寒気(悪寒)、だるさ(倦怠感)などが見られます。接種を受けられた方の5~10%に起こり、こちらも通常2~3日で消失します。
また、まれではありますが、ショック、アナフィラキシー様症状(発疹、じんましん、赤み(発赤)、掻痒感(かゆみ)、呼吸困難等)が見られることもあります。ショック、アナフィラキシー様症状は、ワクチンに対するアレルギー反応で接種後、比較的すぐに起こることが多いことから、接種後30分間は接種した医療機関内で安静にしてください。また、帰宅後に異常が認められた場合には、速やかに医師に連絡してください。
そのほか、重い副反応(注1)の報告がまれにあります。ただし、報告された副反応の原因がワクチン接種によるものかどうかは、必ずしも明らかではありません。インフルエンザワクチンの接種後に報告された副反応が疑われる症状等については、順次評価を行い、公表しています。
▼インフルエンザワクチン接種後の副反応疑い報告として医師に報告が義務付けられている症状と接種から症状発生までの期間
| 医師に報告が義務付けられている症状 | 接種から症状発生 までの期間 |
|
|---|---|---|
| インフルエンザ | 1. アナフィラキシー 2. 急性散在性脳脊髄炎(ADEM) 3. 脳炎・脳症 4. けいれん 5. 脊髄炎 6. ギラン・バレ症候群 7. 視神経炎 8. 血小板減少性紫斑病 9. 血管炎 10. 肝機能障害 11. ネフローゼ症候群 12. 喘息発作 13. 間質性肺炎 14. 皮膚粘膜眼症候群 15. 急性汎発性発疹性膿疱症 16. その他の反応 |
4時間 28日 28日 7日 28日 28日 28日 28日 28日 28日 28日 24時間 28日 28日 28日 ― |
(注1)重い副反応として、ギラン・バレ症候群、急性脳症、急性散在性脳脊髄炎、けいれん、肝機能障害、喘息発作、血小板減少性紫斑病等が報告されています。
(2)新型コロナワクチン
新型コロナワクチンの主な副反応として、注射した部分の痛み、疲労、頭痛、筋肉や関節の痛み等がみられることがあります。また、頻度は不明ですが、重大な副反応としてmRNAワクチンについては、ショック、アナフィラキシー、心筋炎、心膜炎、組換えタンパクワクチンについては、ショック、アナフィラキシーがみられることがあります。もし、アナフィラキシーが起きたときには、医療機関ですぐに治療を行うことになります。
ワクチン接種後の副反応疑い報告の状況や健康状況に係る調査の結果について公表しており、新型コロナワクチンの安全性については審議会での評価を踏まえ、特段の懸念はないものと考えられています。
▼新型コロナワクチン接種後の副反応疑い報告として医師に報告が義務付けられている症状と接種から症状発生までの期間
| 医師に報告が義務付けられている症状 | 接種から症状発生 までの期間 |
|
|---|---|---|
| 新型コロナウイルス感染症 | 1. アナフィラキシー 2. 血栓症(血栓塞栓症を含む。) (血小板減少症を伴う者に限る。) 3. 心筋炎 4. 心膜炎 5. 熱性けいれん 6. その他の反応 |
4時間 28日 28日 28日 7日 ― |
Q33 インフルエンザワクチン、新型コロナワクチンの接種後の死亡例はありますか?
(1)インフルエンザワクチン
インフルエンザワクチンの接種後の副反応疑い報告において、医師や製造販売業者等から予防接種を受けたことによるものと疑われるとして報告された死亡例は副反応検討部会において報告されています。これらの副反応疑い報告について、副反応検討部会において専門家による評価を行ったところ、死亡とワクチン接種の直接の明確な因果関係があるとされた症例は認められませんでした。また、死亡例のほとんどが、基礎疾患等がある高齢者でした。基礎疾患がある方は、いろいろな外的要因により、病気の状態が悪化する可能性もありますので、必要に応じて、主治医及び専門性の高い医療機関の医師に対し、接種の適否について意見を求め、接種の適否を慎重に判断してください。
資料は、厚生労働省のウェブページの下記アドレスに掲載しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei_284075.html
(2)新型コロナワクチン
新型コロナワクチンの接種後の副反応疑い報告において、医師や製造販売業者等から予防接種を受けたことによるものと疑われるとして報告された死亡例は副反応検討部会において報告されています。副反応検討部会では医療機関等から報告があったワクチン接種後の副反応疑い報告を全例評価しており、現時点でワクチンの安全性にかかる重大な懸念は認められないと評価されています。
資料は、厚生労働省のウェブページの下記アドレスに掲載しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei_284075.html
Q34 インフルエンザワクチン、新型コロナワクチンの接種によって、感染症を発症することはありますか?
(1)インフルエンザワクチン
接種するワクチンの種類によって異なります。弱毒生ワクチンは、病原性を弱めたインフルエンザウイルスからできており、まれにインフルエンザを発症したときと同様の発熱などを起こすことがあります。一方、不活化ワクチンは、インフルエンザウイルスから免疫をつくるのに必要な成分だけを取り出して作ったものです。したがって、ウイルスとしての働きはないので、ワクチン接種によってインフルエンザを発症することはありません。
(2)新型コロナワクチン
mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンは、ウイルスのタンパク質をつくるもとになる遺伝情報の一部、組換えタンパクワクチンは、新型コロナウイルスの表面にあるスパイクタンパク質の遺伝子をもとに作られた組換えタンパク質をナノ粒子化した製剤です。したがって、ウイルスとしての働きはないので、ワクチン接種によって新型コロナウイルス感染症を発症することはありません。
Q35 インフルエンザワクチンの接種によって、著しい健康被害が発生した場合は、どのような対応がなされるのですか?
Q29の回答で示した対象者の方への接種については、定期接種を受けたことによる健康被害であると厚生労働大臣が認定した場合に、予防接種法に基づく健康被害救済制度の対象となります。
救済制度の内容については、下記アドレスを御参照ください。
参考: 予防接種健康被害救済制度
また、予防接種法の定期接種によらない任意の接種については、ワクチンを適正に使用したにもかかわらず発生した副反応により、健康被害が生じた場合は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法(平成14年法律第192号)による医薬品副作用被害救済制度又は生物由来製品感染等被害救済制度の対象となります。
救済制度の内容については、下記を参照するか、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(TEL:0120-149-931)に御照会ください。
参考: 医薬品副作用被害救済制度
【感染症・予防接種相談窓口】
電話番号:0120-995-956(午前9時~午後5時 ※土・日曜、祝日、年末年始を除く)
※行政に関する御意見・御質問は受け付けておりません。
※本相談窓口は、厚生労働省が業務委託している外部の民間会社により運営されています。
※オペレーターへの暴言、性的発言、セクハラ等の入電はご遠慮ください。他の入電者様の対応に支障が生じております。



