2023年世界保健デーのテーマは「公衆衛生を向上させた75年間」です。

 

 4月7日は、世界保健機関(WHO)の設立を記念する世界保健デーです。2023年のテーマは、「公衆衛生を向上させた75年間」です。1948年、「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的としてWHOが設立されました。本年はWHO設立から75周年を迎え、生活の質を向上させた公衆衛生の成功を振り返り、また、これからの健康課題に取組むための行動を喚起する機会でもあります。

 

1. 世界保健デーとは

 世界保健デーは、世界保健機関 (World Health Organization: WHO) が設立された 1948 年(昭和 23 年) 4 月 7 日を記念して設けられました。この日には、WHOが国際保健医療に関するテーマを選びます。また、世界各国でその年のテーマに沿った様々なイベントが開催されます。

 

2. 2023年世界保健デーについて

 2023年のテーマは、「公衆衛生を向上させた75年間(75 years of improving public health)」です。WHOは1948年の設立以来、全世界の人々の健康を守るため、様々な活動を行っています。

 

3. WHOのこれまでの歩み

 75年前、第二次世界大戦の余波のなか、WHO憲章が発効し、WHOが設立されました。WHO憲章[i]には「到達しうる最高基準の健康を享受することは、人種、宗教、政治的信念又は経済的若しくは社会的条件の差別なしに万人に有する基本的権利の一つである」とあります。これは、全ての人に健康を促進し、提供し、守るためのWHOの活動の指針となっています。
 過去75年の間、天然痘の根絶、ポリオ患者の99%以上の減少、小児予防接種を通じた数百万人の命の保護、妊産婦死亡率の低下、健康と福祉の向上など、素晴らしい進展がありました。
 しかし、全ての人々が到達しうる最高基準の健康を享受するためには、多くの課題が残っています。具体的には、保健サービスへの不平等なアクセス、公衆衛生上の危機への対応における格差、気候変動による脅威などが挙げられます。
 加えて、昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックは、健康を守ることが経済、社会、安全保障、安定にとっての基盤であることを示しました。また、将来のパンデミックに備えるため、いわゆる「パンデミック条約」、国際保健規則の改正、財政、ガバナンス、運営上のイニシアティブ等の交渉に向けて各国を支援する準備を整えています。

 
[i] 外務省「世界保健機関憲章」https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000026609.pdf 


 

4. 我が国とWHO

 我が国は、1951年5月に加盟して以降、WHO総会や我が国が所属するWHO西太平洋地域の各種会合に積極的に参加し、世界の保健課題への対応に積極的に貢献すると共に、我が国の保健医療分野の対策に資するべく、国際的な情報交換に努めて来ました。
 1996年には、兵庫県内の自治体等の支援により神戸市にWHO健康開発総合研究センター(通称:WHO神戸センター)が設立され、2016年からは新たに持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)[i]を主なテーマに研究を行い、世界に向けて情報を発信しています。
 また、WHOに対する資金的、人的貢献や技術上の協力も行っており、WHOの要請に基づく専門家の派遣や研修生の受け入れを行うほか、国内のWHO研究協力センター[ii]を介して協力を行っています。

 
[i] ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage: UHC)とは、「全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態」を指す。
[ii] 我が国政府の了解の下に指定する研究協力施設



5. 我が国の国際社会における取り組み

 特に昨今のCOVID-19パンデミックは、国際社会に未曾有の影響を与え、現在のグローバル・ヘルス・アーキテクチャーの脆弱性を露呈し、健康危機に対する予防・備え・対応(PPR)の強化や保健システムの強靱化を通じたUHC達成の必要性を示しました。
 本年、我が国が議長国を務めるG7広島サミットやG7長崎保健大臣会合においては、人間の安全保障の重要性を強調しつつ、(1)公衆衛生危機対応のためのグローバル・ヘルス・アーキテクチャーの構築・強化、(2)保健システムの強化を通じたより強靭、より公平、より持続可能なUHC達成への貢献、(3)様々な健康課題に対応するためのヘルス・イノベーションの促進に焦点を当てていきます。グローバルヘルスの推進及びポストコロナ時代を見据え、保健課題への対応の中核的な原則として人間の安全保障を捉え、より健康、より公平、より平和かつより豊かな国際社会の構築に貢献していきます。

 

6. 今後の展望

 「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達する」社会の実現に向けて、厚生労働省は、今後も関係機関と連携しながら、公衆衛生を向上させる取組を支援し、国際保健の議論に貢献していきます。
 
 

参考:

   1.WHOホームページ:世界保健デー2023特設サイト https://www.who.int/campaigns/75-years-of-improving-public-health/key-messages
   2.WHO設立75周年に関するニュースリリースhttps://www.who.int/news/item/03-04-2023-who-celebrates-75th-anniversary-and-calls-for-health-equity-in-face-of-unprecedented-threats
   3.厚生労働省HP「日本とWHO」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/kokusai/who/index.html 
   4.ランセット誌への岸田総理大臣寄稿「人間の安全保障とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ:G7広島サミットに向けた日本のビジョン」https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ghp/page1_001483.html