第5回 日独政労使交流について
2015年1月20日(火)から22日(木)にかけて、第5回日独政労使交流を日本(東京)において開催しました。
1 交流事業開始の経緯
1999 年11月の日独首脳会談において、シュレーダー首相(当時)から小渕首相(当時)に対し日独政労使三者協議の実施について提案がありました。これを受けて2000年4月に日独の政労使の代表が東京において会談を行い、政労使交流の実施に合意して現在に至っています。
2 これまでの実績
両国の大臣等を代表とする政労使交流団が3年に1回、交互に相手国を訪問し、政策対話と関係機関等への訪問を行っています。テーマは開催毎に両国間で協議して決定しています。
第1回 2000年4月 独側訪日 政労使交流の開始に合意
第2回 2003年8月 日側訪独 高齢者雇用対策、若年者職業訓練等
第3回 2006年11月 独側訪日 若年者の就労促進、最低賃金制度等
第4回 2010年2月 日側訪独 人口動態変化、労働市場政策、介護問題等
第1回 2000年4月 独側訪日 政労使交流の開始に合意
第2回 2003年8月 日側訪独 高齢者雇用対策、若年者職業訓練等
第3回 2006年11月 独側訪日 若年者の就労促進、最低賃金制度等
第4回 2010年2月 日側訪独 人口動態変化、労働市場政策、介護問題等
3 今回の日独政労使交流(第5回)の概要
(1)テーマ:「女性の雇用と家庭及びキャリアの両立支援」
・基調講演「日本の女性労働 -現状と政策-」
・セッション1「女性の就労に係る現状」
・セッション2「女性の採用・育成・登用促進」
・セッション3「仕事と家庭の両立支援」
基調講演の後、各セッションのテーマに沿って日本及びドイツの代表からプレゼンテーションを行い、その後テーマに係る活発な意見交換が行われました。女性の活躍促進は両国が抱える重要な共通課題であることから、両国の政労使代表者が一堂に会して現状を報告し、課題に係る議論を交わすことは、両国の今後の政策にも大きく参考となる貴重な機会となりました。
(2)出席者
【日本側】
政府側代表者として、厚生労働事務次官、総括審議官(国際担当)ほか5名、労働者側代表者として日本労働組合総連合会(連合)から4名、使用者側代表者として一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)から4名が出席されました。
また、学識経験者として亜細亜大学経済学部の権丈教授に基調講演をしていただきました。
【独側】
ドイツ連邦労働・社会省代表者とともに、ドイツ労働組合総同盟及びノルトライン・ヴェストファーレン州企業連合会から代表者が出席されました。
(3)議論の概要
■基調講演
人口減少の下で進む少子・高齢化社会を背景として、日本の女性の労働環境の現状や女性の活躍推進への取組の重要性などについて、ドイツなどとの国際比較を交えながら、次のような講演がなされました。
日本の女性の労働の現状を見ますと、就業率が上昇傾向にあるなど改善も見られる一方、男女間の賃金格差、女性管理職割合や男性の育児休業取得率の低さなどの課題もあります。労働力として質・量ともに大きな潜在力を持つ女性を更に活用するためには、ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策や仕事と家庭の両立支援策を推進することにより女性が働きやすい環境整備を進める必要があります。女性の労働力活用に対する政労使トップによる強いリーダーシップが期待されます。
講演を聴いたドイツ側から、日本のパートタイム就労の現状等について質問がなされたほか、女性の就業率を高めるためには女性の就労に関して社会全体で考えていく必要があるとの意見がありました。
■セッション1「女性の就労に係る現状」
日本では、女性が子育てしながら働き続けるために必要なこととして、職場環境の整備や勤務時間の柔軟性といった働き方に関する事項に加え、仕事の内容も重要な要因として挙げられます。また、女性管理職を増やす上では、女性の採用を増やして母集団を厚くすることが重要です。
少子高齢化により人口構造が日本と同様の状況にあるドイツでは、女性の就業率は上昇しておりEU内でも上位に位置しているものの、パートタイム労働者が多く男女間で就業形態や労働時間の差が大きいことや、女性が多く働く分野、職種の給与水準が低いことによる男女間の賃金格差が大きい現状にあります。
両国からの発表や議論を通じて技術系など女性の職域の拡大、女性管理職割合の増加、仕事と家庭の両立などが両国の課題であることが明らかになりました。
■セッション2「女性の採用・育成・登用促進」
日本とドイツは女性の活躍推進に向けて取り組んでいます。
具体的には、日本では「男女雇用機会均等法」において性別を理由とする差別を禁止しているほか、「ポジティブ・アクション」として男女間に事実上発生している格差解消に向けた企業の取組への支援や女性の活躍状況の「見える化」の推進等を行っています。
ドイツではこれまで女性があまり進出していなかった職業に女性が就くにはどのようにすべきかが課題と認識されています。技術系、理工系等女性の進出が進んでいない分野に関心を持たせるための意識啓発を実施しています。
また、両国ともに、女性の活躍推進のための新たな法律の制定に向けて取り組んでおり、その内容の共有を行いました。日本では、事業主に女性の活躍推進に向けた行動計画の策定を求め、また、各事業主の女性の活躍に関する情報公表を求めることなどを内容とする「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」を今通常国会に提出し、ご審議いただく予定です。また、ドイツでは、上場企業に対して取締役会・監査役会の女性割合を30%以上にすることなどを内容とする「男女共同参画クオータ法案」が閣議決定され、今後議論されることとなっています。
■セッション3「仕事と家庭の両立支援」
日本とドイツは、ともに保育所の整備や育児・介護休業中の経済的支援を含めた支援策が実施されています。
日本では、仕事と家庭の両立支援制度が法的に整備されており、育児・介護休業取得が権利として認められています。また、「イクメンプロジェクト」として積極的に育児をする男性「イクメン」や男性の仕事と子育ての両立を支援する「イクメン企業」を紹介する取組や、待機児童を解消するための保育施設整備を進めています。
ドイツでは、女性の職場復帰促進のため、2013年に保育施設入所請求権を3歳から1歳に引き下げましたが、次のステップとしてパートタイム労働からフルタイム労働に戻ることが権利として認められることを目指しています。
さらに日本の労使はそれぞれワーク・ライフ・バランス実現に向けた具体的な取組を進める一方、ドイツでは管理職のジョブシェアリングや労働者自身に労働時間決定権を付与することによる労働時間の柔軟化や、学校を全日化する対策などが推進されています。
今後は、保育の質の向上、長時間労働の是正、男性の育児の促進が両国の共通課題であり、男女双方にとって働きやすい環境作りを政労使で進めていくことが重要であるとの認識が共有されました。
「会議の様子」


・基調講演「日本の女性労働 -現状と政策-」
・セッション1「女性の就労に係る現状」
・セッション2「女性の採用・育成・登用促進」
・セッション3「仕事と家庭の両立支援」
基調講演の後、各セッションのテーマに沿って日本及びドイツの代表からプレゼンテーションを行い、その後テーマに係る活発な意見交換が行われました。女性の活躍促進は両国が抱える重要な共通課題であることから、両国の政労使代表者が一堂に会して現状を報告し、課題に係る議論を交わすことは、両国の今後の政策にも大きく参考となる貴重な機会となりました。
(2)出席者
【日本側】
政府側代表者として、厚生労働事務次官、総括審議官(国際担当)ほか5名、労働者側代表者として日本労働組合総連合会(連合)から4名、使用者側代表者として一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)から4名が出席されました。
また、学識経験者として亜細亜大学経済学部の権丈教授に基調講演をしていただきました。
【独側】
ドイツ連邦労働・社会省代表者とともに、ドイツ労働組合総同盟及びノルトライン・ヴェストファーレン州企業連合会から代表者が出席されました。
(3)議論の概要
■基調講演
人口減少の下で進む少子・高齢化社会を背景として、日本の女性の労働環境の現状や女性の活躍推進への取組の重要性などについて、ドイツなどとの国際比較を交えながら、次のような講演がなされました。
日本の女性の労働の現状を見ますと、就業率が上昇傾向にあるなど改善も見られる一方、男女間の賃金格差、女性管理職割合や男性の育児休業取得率の低さなどの課題もあります。労働力として質・量ともに大きな潜在力を持つ女性を更に活用するためには、ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策や仕事と家庭の両立支援策を推進することにより女性が働きやすい環境整備を進める必要があります。女性の労働力活用に対する政労使トップによる強いリーダーシップが期待されます。
講演を聴いたドイツ側から、日本のパートタイム就労の現状等について質問がなされたほか、女性の就業率を高めるためには女性の就労に関して社会全体で考えていく必要があるとの意見がありました。
■セッション1「女性の就労に係る現状」
日本では、女性が子育てしながら働き続けるために必要なこととして、職場環境の整備や勤務時間の柔軟性といった働き方に関する事項に加え、仕事の内容も重要な要因として挙げられます。また、女性管理職を増やす上では、女性の採用を増やして母集団を厚くすることが重要です。
少子高齢化により人口構造が日本と同様の状況にあるドイツでは、女性の就業率は上昇しておりEU内でも上位に位置しているものの、パートタイム労働者が多く男女間で就業形態や労働時間の差が大きいことや、女性が多く働く分野、職種の給与水準が低いことによる男女間の賃金格差が大きい現状にあります。
両国からの発表や議論を通じて技術系など女性の職域の拡大、女性管理職割合の増加、仕事と家庭の両立などが両国の課題であることが明らかになりました。
■セッション2「女性の採用・育成・登用促進」
日本とドイツは女性の活躍推進に向けて取り組んでいます。
具体的には、日本では「男女雇用機会均等法」において性別を理由とする差別を禁止しているほか、「ポジティブ・アクション」として男女間に事実上発生している格差解消に向けた企業の取組への支援や女性の活躍状況の「見える化」の推進等を行っています。
ドイツではこれまで女性があまり進出していなかった職業に女性が就くにはどのようにすべきかが課題と認識されています。技術系、理工系等女性の進出が進んでいない分野に関心を持たせるための意識啓発を実施しています。
また、両国ともに、女性の活躍推進のための新たな法律の制定に向けて取り組んでおり、その内容の共有を行いました。日本では、事業主に女性の活躍推進に向けた行動計画の策定を求め、また、各事業主の女性の活躍に関する情報公表を求めることなどを内容とする「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」を今通常国会に提出し、ご審議いただく予定です。また、ドイツでは、上場企業に対して取締役会・監査役会の女性割合を30%以上にすることなどを内容とする「男女共同参画クオータ法案」が閣議決定され、今後議論されることとなっています。
■セッション3「仕事と家庭の両立支援」
日本とドイツは、ともに保育所の整備や育児・介護休業中の経済的支援を含めた支援策が実施されています。
日本では、仕事と家庭の両立支援制度が法的に整備されており、育児・介護休業取得が権利として認められています。また、「イクメンプロジェクト」として積極的に育児をする男性「イクメン」や男性の仕事と子育ての両立を支援する「イクメン企業」を紹介する取組や、待機児童を解消するための保育施設整備を進めています。
ドイツでは、女性の職場復帰促進のため、2013年に保育施設入所請求権を3歳から1歳に引き下げましたが、次のステップとしてパートタイム労働からフルタイム労働に戻ることが権利として認められることを目指しています。
さらに日本の労使はそれぞれワーク・ライフ・バランス実現に向けた具体的な取組を進める一方、ドイツでは管理職のジョブシェアリングや労働者自身に労働時間決定権を付与することによる労働時間の柔軟化や、学校を全日化する対策などが推進されています。
今後は、保育の質の向上、長時間労働の是正、男性の育児の促進が両国の共通課題であり、男女双方にとって働きやすい環境作りを政労使で進めていくことが重要であるとの認識が共有されました。
「会議の様子」
