アフターコロナ期の産業別雇用課題に関するプロジェクトチーム(第1回)議事録

日時

令和4年4月25日(月)10:45~12:00

場所

厚生労働省 省議室(厚生労働省9階)

議題

1.プロジェクトチームの開催について
2.雇用調整助成金及び産業雇用安定助成金の支給動向について

議事

議事内容

○中村雇用開発企画課長
それでは時間になりましたので、古賀副大臣、深澤政務官の下で開催される本プロジェクトチームの第1回をこれから開催させていただきます。
まずは副大臣から御挨拶を頂戴いたします。お願いいたします。

○古賀副大臣
皆様、おはようございます。
副大臣の古賀篤でございます。
皆様におかれましては、コロナ対策をはじめ、常日頃より業務に従事いただいておりますことを心から感謝いたします。
本日は、第1回の「アフターコロナ期の産業別雇用課題に関するプロジェクトチーム」を開催いたしまして、皆様方にお集まりいただきました。
新型コロナウイルス感染症による経営、また雇用への影響が長期化いたしておりますが、そうした中で、厚生労働省としても雇用調整助成金の手厚い支援措置等によりまして、事業主の皆様の雇用の維持を強力に支援してきた一方で、最近では、足元の雇用情勢に求人の持ち直しの動きが見られるなど、多くの産業で人手不足感が強まっているという現状もございます。
今後はアフターコロナ期を見据え、労働市場の健全な流動化を促して、人手不足分野や成長分野における人材活用を進めるとともに、基幹的な産業においては、政策的に人材確保を図り、産業の体質強化を進めていくことが求められるものと考えています。
このため、雇用調整助成金のこれまでの支給動向等を基に、コロナ禍における産業別の人材確保をめぐる傾向を把握するとともに、各産業の関係者の方々からのヒアリング等を通じて、コロナ禍の雇用維持に係る業種別の課題を洗い出し、今後の産業別の政策につなげるとともに、さらには、雇用・人材の側面から、我が国の企業活動の一層の発展に資するような取組につなげてまいりたいと考え、このチームを立ち上げることといたしました。
会の進め方ですが、まずは、雇用調整助成金のこれまでの支給動向や、産業雇用安定助成金の活用状況などを分析するとともに、次回以降、特に課題が多いと考えられる産業分野を中心にヒアリングを実施させていただく予定であります。
また、今回は専門家として、労働政策研究・研修機構、JILPTから戸田主任研究員にも参加いただいております。
ぜひ皆様から活発な御意見をいただきながら、充実した議論ができるようにしていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。

○中村雇用開発企画課長
ありがとうございました。
恐れ入りますが、報道のカメラの方はここまででお願いいたします。議事自体は公開でございます。
(カメラ退室)

○中村雇用開発企画課長
引き続きまして、資料1の説明でございます。
副大臣からも今お話があったとおりなのでございますが、PTの設置の趣旨といたしまして、今後、アフターコロナ期を見据えて経済活動の回復が見込まれる中で、人手不足分野や成長分野における人材活用、基幹的な産業においては政策的に人材確保を図って、産業の体質強化を進めることが大切であるという考えに基づきまして、雇調金の視点から産業別の雇用課題を洗い出し、アフターコロナ期の企業活動の後押しにつなげていけるような趣旨で、副大臣の下でプロジェクトチームを立ち上げたものでございます。
「2 検討内容」でございます。こちらはあらかじめ副大臣に御相談申し上げて決定した内容でございますけれども、(1)として現状分析、雇調金の支給動向から産業別傾向を見る、そして産雇金の好事例と課題を見る。
(2)として、雇調金の活用が多い産業の分野別課題はヒアリングを行ってまいります。それから、上記のヒアリングを踏まえまして、支給動向から見た産業別の雇用課題を整理し、方向性を取りまとめていくという内容でございます。
3枚目に、体制が出ておりましてチームリーダーに古賀副大臣、サブリーダーに深澤大臣政務官を仰いでやってまいります。
以上でございます。

○赤川課長補佐
それでは、以下の進行につきましては、私、事務局の雇用開発企画課課長補佐でございます赤川が務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
次に、資料2を御覧いただければと思います。今後のスケジュールについてでございます。
本プロジェクトチームにつきましては、現在、全4回の開催を予定してございます。
本日が第1回ということでございまして、この後、現下の雇用情勢、及び雇用調整助成金、産業雇用安定助成金の支給動向につきまして、分析の結果を事務局から御説明させていただきます。その後、参加いただいている皆様から御議論をいただくという形で進めさせていただきます。
次回以降の第2回、第3回につきましては、本日の分析結果等を踏まえまして、特に課題が多いと考えられる産業、具体的には、雇用調整助成金の支給が多い産業等を中心に、そういった業界団体あるいは個社の方々から実際にお声を聞かせていただくということで、ヒアリングを予定してございます。第2回、第3回につきましては、そういった忌憚のないお声を伺うという趣旨で、基本的には非公開という形で進めさせていただければと考えております。
そして、6月目処ですけれども、第4回は取りまとめに向けた議論ということで進めさせていただきたいと考えております。
スケジュールについては以上でございます。
それでは、資料3「足下の雇用情勢と人手不足感等」について溝口雇用政策課長より御説明をお願いいたします。

○溝口雇用政策課長
資料3でございます。
2ページ目から「足下の雇用情勢について」というものでございます。
下のグラフの赤い棒が有効求人倍率でございまして、御覧いただきますとおり、コロナに入ってから急激に低下して、足元まで改善傾向が続いているといった状況でございまして、足元2月でございますけれども1.21倍になっております。緑色が完全失業率でございまして、こちらもコロナに入ってから上昇が見られたわけでございますけれども、その後、低下しておりまして、最近では横ばい傾向でございまして足元2月で2.7%でございます。
3ページ目でございますけれども、有効求人数と有効求職者数の動向でございます。
有効求人数につきましては赤い線でございますけれども、コロナに入ってから急激に落ち込んだわけでございますが、その後、回復してきておりまして、足下若干減少しておりますけれども、傾向としては持ち直しの動きが見られているところでございます。
有効求職者数につきましては青い線でございますが、コロナに入って上昇したわけでございますが、その後、横ばいということで高水準で高止まっているといった状況でございます。
4ページ目でございますけれども、足元の業況判断の動向ということで、日銀の短観3月調査でございます。
まず、左側の図でございますが、業種別で見た場合ということですけれども、製造業につきましては「良い」が「悪い」を上回っているといった状況でございます。非製造業につきましては「悪い」が「良い」を上回っているということで、両方とも先行きについてはやや悪化が予測されているところでございます。
右側が企業規模別に見た場合でございますけれども、製造業の大企業、中堅企業、非製造業の大企業については「良い」が「悪い」を上回っておりますけれども、一方で、中小につきましては、製造業、非製造業ともに厳しい状況にあるといったことでございます。いずれも、先行きについて悪化が予測されている状況でございます。
5ページ目でございます。
より詳細に業種別に見た場合でございますけれども、左側の図の製造業でございますが、はん用・生産用・業務用機械もしくは電気機械につきましては「良い」が「悪い」を上回っている。一方で、自動車等ですけれども、輸送用機械につきましては「悪い」が「良い」を上回っている状況でございます。自動車につきましては、半導体等の供給制約があるものと考えております。
右側の非製造業でございますけれども、情報通信、建設で「良い」が「悪い」を上回っておりますけれども、今回、コロナで影響を大きく受けております対人サービス業の宿泊・飲食サービス、もしくは運輸・郵便、卸・小売では「悪い」が「良い」を上回っているという状況でございます。
6ページ目でございます。今度は業況ではなくて雇用人員判断でございます。
左側が業種別の雇用人員判断でございますが、製造業については、不足の状況が続いているということでございます。非製造業につきましては、製造業と比べて人手不足感が高いといった特徴がございまして、足元でもさらなる人手不足感の高まりが予測されているところでございます。
右側は企業規模別でございますけれども、中堅企業あるいはその中小企業では、大企業に比べまして人手不足感が高い傾向にございます。足元では、いずれの規模においても、また製造業、非製造業ともに「不足」が「過剰」を上回っておりまして、人手不足感の高まりが予測されているところでございます。
7ページでございますけれども、製造業につきまして業種別にもう少し詳しく見ております。
輸送用機械、主に青い線のところに自動車がありますけれども、こちらにつきましては、一時期「過剰」が「不足」を上回ったわけでございますが、その後、過剰感が徐々に解消しておりまして、足元になりますと「不足」が「過剰」を上回っておりまして、引き続き人手不足感が高まっているところでございます。
右側は非製造業でございますけれども、こちらも緑の線の宿泊・飲食が一時期「過剰」が「不足」を上回って人手の過剰感が高い状況にございましたけれども、足元では「不足」が「過剰」を上回っておりまして、不足感の高まりが見られて、それが今後も高まっていくと予測されているところでございます。
以上でございます。

○赤川課長補佐
ありがとうございました。
続きまして、資料4「雇用調整助成金及び産業雇用安定助成金の支給動向」について中村雇用開発企画課長より御説明をお願いいたします。

○中村雇用開発企画課長
ありがとうございます。
資料4を御覧ください。まず、2ページ目でございます。雇調金の支給状況の推移で、この左側は月ごとの支給決定額の合計でございます。昨年中のピークに比べて、足元が4割ぐらいの水準に落ちているところです。
それから右側は、1件当たりの決定額、すなわち、おおむね1社1か月当たりいくらぐらいで申請されて受給されているかという平均になりますけれども、こちらも昨年の夏以降、低下が見られるところでございます。
この2つの指標を業種別で、次に見てみようと思います。3ページを御覧ください。累計、1件当たりで見たものがこちらでございます。
まず、左の青いほうの累計支給決定額でございますけれども、順位ごとに見ますと、飲食店が最多で、主にサービス業が多くて、従来は雇調金の利用の中心だったのは製造業でしたが、コロナ禍において製造業はそれほどランクインしていない状況でございます。
4番目のその他の事業サービス業というのは、警備とか速記、ワープロ入力とかビルメンテナンス、コールセンターといった事業があります。
右側を御覧いただきまして、次は1件当たりの支給決定額が業種別でどうかというのを見ますと、これはこれまでの累計額を件数で割ったものですけれども、左側と異なりまして、運輸業に属する業種が多く見られる状況になっています。
この4番目の協同組織金融業というのは、主にクレジットカード会社や信用組合などが入っております。
この先でございますけれども、左の5業種のうち、その他の事業サービス業を除いた4業種と、右側の1件当たりで高い航空について、次以降のスライドで月別の推移を見ていきたいと思います。4ページを御覧ください。
まずは、1件当たりの支給決定額が業種によってどのような推移をしているかですけれども、全産業の赤を御覧いただきますと、支給決定額は低下傾向にあります。そういう中で、飲食、宿泊、道路旅客運送については、令和4年に入って多少上昇も見られまして、感染動向と緩い関連があるのかなとも見えます。それから、輸送用機械器具製造業については独自の動きになっておりまして、昨年の秋以降、高まりが見られましたが、足元では再び減少しているところです。航空運輸業につきましては、この上のオレンジ色ですけれども、ほかの業種と大分離れた高水準で推移しているところです。
次に5ページを御覧ください。この業種別で支給決定の件数を見たものです。
支給決定件数につきましては、これを見ますと、実際に毎月何社ぐらいが利用されているかというのが大体分かるわけですけれども、件数で見ると飲食店が突出して多い状況になっています。そして、飲食店や宿泊業、道路旅客運送業は、月ごとの増減の動きが比較的近いように見えます。一方で、航空運輸業は一番下のオレンジですけれども、支給決定件数自体は相対的に少ない状況となっています。
次に、机上にのみ配付しております1年を超えて本年2月までの雇調金を受給継続していると考えられる事業所の割合の試算という資料を御覧ください。
この円グラフを御覧いただきますと、令和2年の1月以降、1回でも雇調金を受給した企業が、この48万964事業所あります中で、本年2月から遡って1年を超えて、ずっと毎月受給している企業が6万4468あると推測されます。つまり、全体の13.4%ぐらいが1年を超えて受給を続けている企業に当たっています。さらにこの13.4%のうち、6.2%に当たる約3万事業所が、令和2年の1月~6月のどこかのタイミングで受給を始めて以降、つまり21か月以上にわたってずっと毎月雇調金を継続受給していると見られます。
これを産業別に見ますと、長期継続事業所の割合が高いのは、この右側の表ですけれども、1位が航空運輸業で、受給された企業さんのうち35.2%が長期継続していると見られる割合、2位が道路旅客運送業、3位が運輸に附帯するサービス業と、運輸業を中心に長期継続受給事業所の割合が高い傾向にございます。一方で、飲食店、輸送用機械器具製造業は、長期事業所の割合は平均の13.4%よりも低い傾向にあります。
元の資料に戻っていただいて、6ページでございます。産雇金を活用した在籍型出向の申請状況でございます。
出向元業種別に大分類で見ますと、この表にありますとおり、一番多いのが運輸業・郵便業、そして製造業、宿泊業・飲食サービス業と続いております。これは雇調金の上位業種にも近い状況かなと感じています。これらの出向元の業種から、どこの出向先に行っているかを見ますと、最多ではサービス業(他に分類されないもの)となっています。これを見て分かりますように、出向元の業種と出向先の業種がどちらも同じところもあるのですけれども、必ずしも出向元の業種と同じ出向先ばかりでないという様子もうかがわれるところです。全体では、異業種出向が6割ぐらいを占めている現状であります。
次に、7ページを御覧ください。産雇金の月別出向労働者数の推移でございます。業種別に見ております。
月別で見ると、こちらのグラフのとおりなのですが、グレーの棒グラフが雇調金の支給決定合計額です。雇調金の支給決定合計額は1ページ目で見ていただいたように徐々に下がっているのですけれども、産雇金の月別の出向労働者数は、どの業種を見ましてもおおむね横ばいで推移しているところでございます。
8ページを御覧ください。主な産雇金の活用企業の雇調金の受給状況はどうなっているかというのを例で見てみました。青い棒グラフが雇調金支給額でオレンジ色の折れ線グラフが産雇金の出向労働者数となっています。
結論としては、産雇金の活用に伴って雇調金の活用が減っている事業所もあれば、そうでない事業所もあるという結論なのですけれども、例えば、AとかDは産雇金と雇調金の併用型と言えるかもしれません。それから、Bの事業所は産雇金の活用を続けている一方で、雇調金は減少しています。CとかEの事業所は、産雇金も減っているし雇調金も減っているというパターンも見られるところです。
こうした事業所の中で、次回以降、どういうパターンのところにヒアリングをしていこうかというのも検討の一つのポイントでございます。
9ページに参りまして、以上のデータから分かったことを書き出してみました。
まずは、雇調金全体の支給件数や1件当たりの支給決定額は、令和3年の夏以降徐々に低下傾向にありますが、航空運輸業ですとか一部のサービス業、例えば宿泊とか飲食サービスの分野では、足元でも依然として支給額が多い状況にあります。
1件当たりの支給決定額を見ますと、全産業では低下傾向にありますが、感染者数の推移と支給額の相関関係はやや薄れつつあるようにも見えるところなのですけれども、飲食、宿泊、道路旅客運送で見ますと、令和4年に入りまして支給額に多少の上昇も見られるところです。つまり、感染者数と何らかの動きがあるのではないかとも想定されます。
1件当たりの支給決定額、1社1か月でどのくらいもらっているかということですけれども、産業分野によって大きく差がございました。航空運輸業だと約2400万円、一方で飲食業ですと76万円程度というのが足下の状況でした。
1件当たりの支給決定額が高い分野で、長期化の割合も高いのではないかという傾向が一部に見られました。
また、運輸業、例えば航空運輸業ですとか道路旅客運送業などを中心に長期継続受給事業所の割合が高い傾向が見られます。
産雇金から見ますと、産雇金の申請状況自体は運輸・郵便業が一番多くて全体の約41%を占めます。おおむね雇調金の利用が多いところで産雇金の利用も多いように見えます。
産雇金の個社の例を見ますと、活用に伴い雇調金が減少している事業所もあれば、そうでない事業所もあったという結論でございます。
10ページを御覧いただきまして、今までのまとめでございますけれども、累計支給決定額の1位~5位まで、1件当たり支給決定額の1位についてまとめたものです。飲食につきましては、支給決定件数は突出、一方で1件当たりの支給決定額は低いです。令和3年の秋以降で感染拡大の影響とも思われる動きも見られました。受給の長期化の傾向は平均より低い、産雇金では大分類で見ておりますけれども、宿泊、飲食サービス業が約14%を占めていて、同じ分野への出向が最多となっていました。
宿泊業の視点で見ますと、累計の決定額や支給決定件数は飲食業に次いで多い分野です。同様に、令和3年秋以降で感染拡大の影響とも思われる動きも見られました。また産雇金についても、飲食店と同様の傾向でございます。
道路旅客運送業につきましては、決定額は飲食、宿泊に次いで多いです。また、長期継続受給事業所の割合も高い傾向が見られました。飲食や宿泊と同様に感染拡大の影響とも思われる動きも見られました。産雇金で見ますと運輸業・郵便業が最多の利用分野でございまして、出向先も同じ運輸業・郵便業が最多でございました。
4点目のその他の事業サービスは、先ほど申しましたように警備から速記とかワープロ入力とか多岐にわたっておりますので、業種の傾向と一概には言えないかもしれないのですが、これでくくりますと、累計の支給決定額は大きいけれども、1件当たりは小さい。それから、受給の長期化の傾向は平均より高めという傾向が見られました。
次の決定額5位の輸送用機械器具製造業につきましては、決定額自体は多い。1件当たり支給決定額が累計額のトップ5業種の中では高め。令和3年秋以降に高まりが見られましたが、足元では低下。
次に、1件当たり支給決定額が一番高かった航空運輸業ですけれども、1件当たりの額自体は突出して高い分野です。受給の長期化の傾向も、また突出して高い傾向が見られました。あとは、他業種のように感染拡大期とそれ以外の上下の動きがあまり見られない傾向もあります。
以上が10ページの産業別の発見点でございました。
最後に、11ページのヒアリングに向けてどういう点を視点として置いていくかでございますけれども、1点目、雇調金の活用が多い分野は、どのような職種のものを対象としているのか。また雇調金の活用が多い産業において、そもそも職種の構成とか賃金水準の特徴はどのようなものがあるのか。
2点目として、休業対象者はどのような形で休業しているのか。また、そのような休業を余儀なくされる理由は何なのか。新型コロナウイルス感染症以外に、業種独特の要因として見込まれるような休業要因があるか。
3点目は受給をやめた企業や、受給額が大幅に減少した企業にはどういう背景があったのか。また、雇調金について、企業にとっての受給のメリットやデメリットはどういうものがあるか。
4点目、産雇金を雇調金と併用している企業について、併用している理由は何か。
5点目、アフターコロナ期において、需要回復に向けた人材確保上の課題はそれぞれの業種でどのようなものがあるか。また、業界や個社においてどのような取組をしているのか。
6点目、コロナ以外にどのような産業特有の要因があるのか、もしくは特にないのか。
7点目としまして、先ほど申しましたような人材確保課題や産業特有の要因について、対応するためにどのような産業政策を活用しているのか、またはしていないのかという点を中心にヒアリングをしていってはいかがかという案でございます。
この後、場をオープンにしまして、質疑やディスカッションをいただきますが、本日は、労働政策研究・研修機構から戸田主任研究員にも御出席いただいておりまして、戸田主任にもお入りいただいて御一緒に質疑やディスカッションを進めてまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
説明は以上です。

○赤川課長補佐
ありがとうございました。
それでは、ただいまより質疑に入らせていただきたいと思います。
御発言があります方は、恐縮ですが挙手をいただきまして、その後、マイクをオンにしていただき御発言願えればと思います。
戸田主任研究員、お願いいたします。

○戸田主任研究員
労働政策研究・研修機構の主任研究員の戸田と申します。
まずは、今回こうしたプロジェクトチームに参加させていただけるということで、貴重な機会をいただきまして感謝申し上げます。また、中村課長、溝口課長におかれましては、貴重なデータの御説明をありがとうございました。御説明を踏まえまして、私からは何点か申し上げさせていただきます。
1点目は、資料全体を通じた私なりの現状認識でございますが、資料4の10ページで整理されていますように、雇用調整助成金の累計支給決定額や支給決定件数は、飲食業が最も多く、次いで宿泊業、これらに関連する産業だと思われますが、バスやタクシーを含む道路旅客運送業などにおいて多くなっております。
最新2月の労働力調査によりますと、これらの産業の雇用者数は308万人でありまして、雇用者数全体に占める割合は約5.1%程度です。つまり、特定の産業における雇用者全体からすれば部分的といえる雇用者数に対して、集中的に雇調金が活用されている状況だと思われます。特に、飲食業では、1件当たりの支給決定額が小さいにもかかわらず、累計支給決定額が突出して高いといった状況は、業界全体にわたる幅広い雇用者に対して活用されてきているといったことなのだろうと思われます。
こうした状況は、コロナ禍において対人サービス関連産業を中心に厳しい状況が続いてきた、あるいは、続いていることの現れとも考えられますが、今回のプロジェクトの視点にありますような人材確保といった面からも解釈できるのではないかと思っております。つまり、日銀短観をみますと、宿泊業・飲食サービス業や運輸業・郵便業におきましては、業況判断は厳しい状況が続いておりますが、足下では人手不足感が高まってきております。この2つの業種は、コロナ禍以前をみますと、人手不足感がトップクラスに高い業種でありまして、構造的な課題として再び顕在化してきているのだろうと思われます。
例えばですが、アフターコロナにおきまして、飲食店の営業を再開するに当たって、人材を確保しようと思ってもなかなか確保することができないことへの懸念や、店の看板メニューやオペレーションを熟知しているなど、その店で役に立つ人的資本を多く蓄積してきている人材を何とか確保しておきたいといった企業のニーズは、経済学でも雇用保蔵といった表現をされることもありますが、人材確保の観点でみれば、雇調金を活用してこうした雇用保蔵を図りたいといったニーズもあるのだろうと資料全体を通じて感じました。
2点目は、資料にありますヒアリングに向けた視点につきまして、こうした視点も加えたほうがよいのではないか、あるいは、より具体化するとこういったことではないかといった趣旨になります。
まずは、大変興味深いデータとして、1年を超えて2022年2月まで受給継続していると考えられる事業所の割合をお示しいただきました。一定の仮定を置いているかと思いますので、ある程度の幅を持ってみる必要があろうかと思いますが、大きな傾向としては長期にわたって受給継続していると考えられる事業所が、特に航空運輸業や道路旅客運送業などにおいて一定割合存在することがデータから分かります。こうした状況は繁閑や感染状況に伴う変化がありつつも、毎月数日は必ず休業日があり、雇用調整助成金による支援を活用しながら、休業手当を支払ってきているのだろうと推察します。
これを我々がどのように考えていくかといった点に関して、1つヒントになりそうな学術研究として、先般、リクルートワークス研究所から刊行されました本にあります分析の内容を御紹介させていただきます。ごく簡単にポイントのみ御紹介させていただきますと、同一個人を追跡して作成しているパネルデータを活用しまして、休業経験がある在職者と休業経験のない在職者を比較しますと、休業経験というものは仕事からの収入を減少させ、メンタルヘルスや生活満足度を悪化させるとともに、若年層や中途採用で入社後の年数が比較的に短い労働者の方におきまして、人的資本を形成して仕事のレベルアップする機会が失われてしまったことを指摘しております。
つまり、繁閑や感染状況に伴う変化がありつつも、毎月数日は必ず休業日があり、雇用調整助成金による支援を活用し続けてきているような事業所では、従業員の収入やウェルビーイングへの影響が特に懸念される可能性がありますので、こうした事業所あるいは企業をヒアリング候補に加えることを御検討いただきますとともに、事業所または企業を通じてといったことにはなろうかと思いますが、労働者の方への影響や関連する対策についてお伺いすることが有用なのではないかと考えております。
また、航空運輸業やバスやタクシーを含む道路旅客運送業というものは、我々が生活を営むための交通手段に関する事業でもあり、そこで働かれている方はいわゆるエッセンシャルワーカーともいえる存在なのだと思われます。したがいまして、雇用維持支援から転職支援への政策移行は慎重に判断されるべき業種なのだろうと考えます。
一方で、休業が長期化することで従業員の収入やウェルビーイングへの影響が懸念されるとすれば、やはり根本論としては、事業をどのように立て直していくのか、今後の産業政策の方向性がどのように考えられているのか、こういったことが厚労省の政策判断としても重要になろうかと思います。
もう1つは、産業雇用安定助成金と雇用調整助成金を併用している企業があるといった着眼点が大変興味深いと思いました。ヒアリングに向けた視点の中でも併用している理由といった御記載がありますが、より具体的には、ある企業の中で人材マネジメントの一環として休業と在籍型出向をさせる人材について、何か戦略やお考えをお持ちなのかどうかといった点が個人的には気になりました。
先ほど申し上げましたように、休業経験は、若年層や中途採用で入社後の年数が短い労働者といった、まさにこれから人的資本を形成して仕事のレベルアップを図っていこうとしている方々にとっては、マイナスの側面が発生してしまう懸念がございます。そのため、例えば、若年層の人材育成といった観点からは、積極的に在籍型出向を活用したいといった併用理由が企業の人材マネジメントの観点からもしかするとあるのかもしれないと思った次第でして、企業ヒアリングではこういったことも聞いてみたいと思いました。
産業雇用安定助成金と雇用調整助成金は、雇用維持への支援といった目的を同じにする助成金ですが、支給対象やスキームが異なり併用も可能といった中で、企業の人材マネジメント戦略とどういった形で合致しているのかといったことは、それぞれの制度自体の位置づけをより明確にしていく上でも非常に重要なことなのだろうと考えております。
特に、日本の産業全体が一律に厳しい時期には、在籍型出向や転職などへの支援といっても、移動先がなかなか見つからないといった点で厳しい面があったかと思いますが、現在では、いわゆるK字の動きと言われますように、一部では浮揚してきている、あるいは大きな影響を受けなくなってきている業種もあろうかと思いますので、人材が活躍できる場を増やしていくといった観点からは、雇用維持支援が必要な場合には、産業雇用安定助成金がより一層活用されていくことが期待されるのだろうと思っております。
他方、昨今の世界情勢の悪化や急激な為替変動などによりまして、原材料費の高騰による影響を受けている、あるいは、今後より一層懸念されるような業種もございますので、今後の業界の動向やその下での人材戦略の方向性につきましては、次回以降のヒアリングにおきましてしっかりと拝聴できればと思っております。以上です。

○赤川課長補佐
ありがとうございました。
古賀副大臣、お願いいたします。

○古賀副大臣
戸田さんからいくつも貴重ないろいろな御指摘いただきましてありがとうございました。冒頭、御挨拶させていただいたのですが、十分付言ができなかった部分もあるので、いろいろな補足の面も含めて発言させていただきたいと思います。
まず、この雇調金は大変多くの業種の会社の方に御利用されているということですし、もう2年を超えている状況であります。その間、本当に一般財源も入って大変大きな額が出ていっているわけですので、国民の方に説明責任があることは頭に置いて資料も整理した部分はありますが、当然、国民の方もこのコロナが2年にわたってまだ続いているという中で、今日いろいろな資料が出てまいりました。データがありましたけれども、大体感覚に合っている部分と、ただ数字で見たときはこんなになっているのかという部分が両方あるのではないかと考えるところです。
それで、今、戸田さんから御指摘いただいた一つに、構造的な課題という指摘がありました。先ほど特定の業者が何回も出てきたところはありますけれども、恐らく先ほど御指摘の中にもあったように、コロナ禍の前からそもそも外国人労働者にも頼らざるを得ない労働力不足の現状があって、そういった中でコロナが重なり雇調金を使う、あるいは産雇金を使うというところ、そして、コロナの影響を受けていない業種もある中で長期的に影響を受け続けている業種があると。これは多分コロナがある程度落ち着いてきた後も、まだまだ続くのだろうということは、多分一般の方でもよく分かることなのだと思います。
具体的に、業種というよりは状況を申し上げると、当然その海外から人が入ってくるインバウンドとか、あるいは国内で移動する、今は少し落ち着いてゴールデンウィークを迎えるみたいな話ですけれども、まだ本格的にコロナ前のような世界的な人の移動が期待できない中で、非常にまだ苦しいと感じてらっしゃる業種というのは少なからずあるのだろうと思います。そのことと、コロナ前のそもそもの雇用の面での課題をどう捉えて、雇調金なり、あるいは産業別の政策を打っていくのかということが大変大事だと思いますので、そういう意味では、今、特に厳しい、あるいは雇調金を使っているところがどういう方を対象とされているのか、そして休業をされているのか、恐らく先ほどお話があったように専門性が高いとか、あるいは、海外から、もともと不足しているとかそういったいろいろな事情があるのだと思います。ですから、その辺は丁寧に伺ってどういったことが求められているのかをしっかり考えていく必要があるのではないかとも思います。
そして、この資料の4でヒアリングに向けた視点という11ページ目に7つ挙げさせていただいておりますが、今申し上げたのが1とか2に当たるわけですけれども、産雇金と雇調金を併用している企業はそれぞれでしたので、よく言われるのは休業と研修を組み合わせてというよりは出向して、先ほど特に若い方も含めてメンタルも含めていろいろな影響があるのではないかとあったと思うのですが、それが産雇金によってどうカバーされているのか、あるいはそれ以外の何か政策が求められているのか。
そして、これも話が出ましたけれども、ウクライナ情勢を含めて世界の景気の動きも懸念されるところですので、こういったことも不確定というか状況として絡んでくるわけですので、こういったものもしっかり見据えながら、いろいろなことをこの場で議論できればと思いますし、何より机上の空論になってはいけませんので、ぜひいろいろな方から生の声、本当に切実な声を伺いながら対応を考えさせていただきたいなと、戸田さんの発言を伺って改めて思ったところです。
以上です。

○赤川課長補佐
ありがとうございました。
深澤政務官、お願いいたします。

○深澤政務官
政務官の深澤でございます。
本日は古賀副大臣ともどもこのようなPTを設立できましたこと、関係者の皆さんに心から感謝申し上げたいと思います。
今、様々御説明また御意見も賜りまして、私なりの感想といいますかコメントをさせていただきます。
そもそも雇調金、産雇金は、コロナに大切なもの、欠かせないものという認識でおります。当初コロナが起きてから、国民の生活、産業、雇用を守るのだということで、緊急的にスピード感を持って何をしなくてはいけないか、それでこの雇調金、また産雇金というものが活用されて、そしてされ続けているのだなと思っております。その中で、先ほど古賀副大臣からも御発言がありました。しかし2年余りたって、やはり国民への説明責任が必要だというところで、ここはしっかり整理が必要なのかなと。当初の目的と、落ち着いてきたときの改めての振り返りというものはまた別物なのだけれども、国民への説明責任があるというところで、そこを冷静に分析する必要があるのかなと感じております。
また、今日御説明いただいたデータも、感覚に合っているものと違っているものという古賀副大臣からのお話がありましたが、例えば、御説明いただいた資料の中で、人手不足感の中で、資料3のデータから見てみますと、6ページ、7ページで2021年ぐらいからほとんどの業種で人手不足が入ってきているというところを見てみますと、これをどのように受け止めればいいのかと。ただ数字だけを見て、安易に雇調金から違う形での、要はマッチングとかそっち側にシフトしたほうがよかったのではないかというようなことも、数字だけ見ると考えることができるのですけれども、こういったデータの部分をどのように捉えればいいのかということをぜひしっかりと考えていかなければいけないなと感じました。
また、これは今後の課題の部分であるのですけれども、業種ごとにそれぞれ事情が違うという御説明もありましたが、いずれは、アフターコロナで雇調金、あるいは産雇金を終了する出口戦略の部分で、業種ごとで違う中で、一律に雇調金を終了する可能性が当然あるのですけれども、あっていいのか。あるいは出口のタイミングをずらすことが果たしてできるのかどうかとかといったことも、今後、課題として出てくるのではないかなと感じております。
また、この課題の中でも資料4の9ページで、特に宿泊業、飲食業、道路旅客運送業というものが、令和4年に入って多少支給額の上昇が見られた。そうするとやはり感染者数との相関関係が出てくるのかなと考えられるという話がございましたが、そもそもこういったことが厳しい相関関係があるところがある一方で、航空産業とかそういったところは継続的にもらっていると。飲食店とか宿泊業というのは、悪くなると支給を受ける、よくなると支給を受けないというものが、これは厳しい経営の中で、厳しい社会環境の中でも営業を再開せざるを得ないと取るのか、あるいは取れないから取っていないのかとか、こういったところがこの数字だけでは見てとれない部分がありますので、そういったところも深めていけたらありがたいなと思います。
いずれにしても、現状で、この雇調金、産雇金を活用しなければいけないという認識は継続していると思いますので、これを今後に生かすために、どのように受け止めればいいのかということをぜひ皆さんと一緒に深めていけたらいいなと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。

○赤川課長補佐
ありがとうございました。
中村課長、お願いします。

○中村雇用開発企画課長
ありがとうございます。
戸田主任、副大臣、政務官からいただいた点を心得て進めてまいりたいと思いますが、少しお話もしますと、副大臣から言われましたように、これまで雇調金は大体総額とか全産業でこういう動きが出ているということを中心に見て、様々なありようを考えてまいりましたけれども、副大臣から産業別に様々な事情があろうから、もう少し丁寧にエビデンスをしっかり見てデータを分析してありようを考えて、産業ごとに課題があるのであればそれも併せて雇用課題としてしっかりという御指摘をいただいたことがそもそものこのPTの始まりでございました。そういう点で、今回、まずはデータでお出ししておりますけれども、しっかりと業界や個社の方のお話も伺いながら進めてまいりたいと思っております。
それで、戸田主任から雇用保蔵という御指摘をいただきました。統計上からはその事業者さんが雇用保蔵のためにもらっているのか、それとも、別にそういうことまで考えているわけではないけれども、厚労省が制度上の趣旨としたように、本来だったら事業活動が衰えているので解雇するところを、お金がもらえるのだったら休業で何とかしのいで、雇用保険の保険事故を防ごうというつもりでお使いになっているのか、そこの真相は事業者さんでしか分かりません。私が1つ思い出しましたのが、先日、とある県で事業者さんのお話を伺ったときに、その事業者さんが飲食業だったのですが、こういう例がありました。
長いことお客さんが減って、お酒を出すお店だったので、もう今は開けられないけれども、コロナが落ち着いたらまたお店を開けようと思って、何か月も雇調金をもらって雇っているアルバイトの方や従業員の方をキープしてきたと。それが長くなって、ずっと休業手当だけをだらだら払って1日も出勤させない状況になっていた。あるとき、去年の暮れぐらいは少し感染動向もよくなったところですけれども、いざお店を開けようとして、じゃあ戻ってきてくださいと言ったら、それらのアルバイトさんたち、または正規の従業員の方たちが、ずっと休業していた間、よその違う産業の事業所でアルバイトをされていて、飲食業よりもそっちのほうが比較的自分に合っていると思うので、もう休業手当をもらえないのだったらやめて転職しますと言って辞めてしまった人がたくさん出たという話もございました。
雇用保蔵で使っているつもりが、実際はうまくできなかった例ということなのですけれども、そういうこともあるので、そういった事業者さんが、実際に経済が再オープンしたときに、ちゃんと事業活動が立ち行くように人を採っていかなくてはいけないものですから、そうしたところもこのプロジェクトでしっかり見据えて考えていかねばならないなと思っております。
それから、高い特例が続いている中で、雇用保険の財政もかなり厳しくなって、二事業予算も令和2年度で枯渇してしまったものですから、労働政策審議会においては、使用者側からも高い特例が真に厳しい事業者さんに使われるように、特例を受けるに足る事業者であるかの審査をしっかり厳しくやるようにという御意見もいただいております。
それから、使われている事業主さんや労働者の方からどういう意見が出てきているかというと、労働局経由で今のところお聞きしている範囲ですけれども、例えば10分の10の率で雇調金の給付を受けられる間は出向をさせる必要もあまり感じないので休業でやっていますとか、助成額や助成率が高いのでむしろ休業しないほうが損であるとか、あとは従業員をシフトに入れようとしても、働いても休業しても同じ額をもらえるのだったら私はシフトに入りたくありませんと断られるケースが増えて困っているというお声も出ています。
また、働く側の方からも、働かなくても給料がもらえるので働くのが面倒になってしまったという士気の低下ですとか、あとは逆にずっと仕事をしていないので、自分の技術が低下するのが心配というお声なども労働局に寄せられておりまして、まさに今、戸田主任がおっしゃった、特に若い層とかこれからしっかりキャリアを積んでいかねばならない層で少し課題が生じつつあるのかなといった片鱗も見えてきているところでございます。
以上でございます。
あとは、産雇金の利用について、先ほどその出向先を見つけたりするのも企業にとって課題があるのではないかという指摘もいただいておりましたけれども、その点でもし何かございましたらお願いします。

○柴田労働移動支援室長
労働移動支援室の柴田でございます。
産雇金は送出情報と受入情報というのがございまして、産業雇用安定センターでマッチング支援をしてございます。その状況といたしましては、受入情報が令和2年度よりも非常に多くなってございます。ちなみに、産雇センターの令和2年度の受入情報は8,200人であったのに対しまして、令和3年度は1万8000人と2.2倍に増えている状況になっております。また、送出情報も3,400人から5,800人と1.7倍。成立件数でも3,100人から5,600人の1.8倍と増えておりまして、産雇センターの積極的な取組が着実に進められているのだなと考えております。
あわせて、副大臣から雇調金の影響を産雇金によってどのようにカバーしているのか、という話と戸田主任からウェルビーイングへの影響の話がございました。そちらに簡単に触れさせていただきたいのですけれども、産雇金のアンケート調査がございまして、昨年の8月に実施してございます。出向元の企業からの声としましては、休業よりも自らのスキルを高められる環境にいるほうが労働意欲の維持・向上につながるであるとか、卸売・小売から飲食店に在籍型出向を行った出向元企業からは、最終消費者との会話を通じて自社商品に対する新たな発見が多くあり、出向元に戻った際に新商品の開発を進めたいと意欲を示しているという声がございました。
また、製造業から製造業に在籍型出向を行った出向先企業からは、即戦力として従事していただいているであるとか、自社になかった発想やアイデアが出るようになり、職場が活性化しているという意見がございました。
また、労働者の声ですけれども、これはバスの溶接からダンプやクレーン車の溶接に出向された方ですが、同じ溶接でも使用する機械や塗料が異なり、技術面で得るところが多く良い経験であったという声や、出向期間終了後は元の会社に復職できることが約束されているので安心して働くことができた、休業しているよりも仕事をしている方が充実していたという声がありました。
あと、在籍型出向のメリットといたしまして、出向元企業からは、労働意欲の維持・向上が63%、能力開発効果が59%と高い評価が出ております。また、労働者からは57%の方が能力開発・キャリアアップに効果があったとしている状況でございます。在籍型出向が雇用の維持・安定を確保しつつ、能力やモチベーションを高めているという結果が出ているかと考えております。

○赤川課長補佐
ありがとうございました。
ほかにご発言のあります方。

○倉永地域就労支援室長
倉永です。
直前まで労働局におりました。そこで飲食店の方々から話を聞いたりもしていたのですけれども、このコロナが少し収まったときにお店を開いたのだけれども、今まで1人で回していたことが、皆様の能力が少し落ちてきたのか2人ではないと回らないとか、そんなところでさらに人の確保をどうしようみたいなことを困っておられる方もいました。そんな中で、飲食店に限らずですけれども、ヒアリングの事項として、休業中の社員の方のモチベーションの維持というのはいろいろあると思うのですけれども、その需要が回復したときに、スタートダッシュにどう備えるか、そんなことで能力開発を含めてどんな工夫や取組をされてらっしゃるのかというのを、ヒアリングの中で聞いていけるといいなと思いました。
以上です。

○赤川課長補佐
ありがとうございました。
戸田主任研究員、お願いいたします。

○戸田主任研究員
お話をありがとうございました。
御参考までに海外の状況でございますが、事業主への雇用維持支援の特例が続いている国としては、フランスとドイツがありますが、例えば、フランスですと、実は21年の6月のロックダウンが終了した後に、やはり飲食業とか宿泊業の部門で非常に人手不足が顕著になりまして問題化したといった経緯がございまして、その後、労使が交渉しまして賃上げにつなげたといった事象がございました。雇用維持を支援するということで労働者の方にとっては失業に至る劇的な変化を防ぐ効果はあるのですが、一方で、あまりにも休業が長期化することで、こうした労使の賃上げに向けた話し合いで人手不足を解消していこうといった機会を逃すことも懸念されますので、やはり人手不足に対して構造的な問題として今後どう対応していくかといったこと自体は非常に重要な観点なのかなと思いました。

○赤川課長補佐
中村課長、お願いいたします。

○中村雇用開発企画課長
興味深いお話をありがとうございます。
他国の雇用維持政策はどう変わるかというのも見ながらやっておりまして、主に注目しているのがドイツとフランスとイギリスです。ドイツについては、雇調金と同じ政策を今のところ6月30日までは延長ということでお聞きしておりますので、雇調金と同じような形でずっと長くやっていますけれども、おっしゃるとおりフランスは状況に応じてぎゅっと締めたり、あと一部の観光とか飲食業とかの影響の多い分野だけ非常に手厚くして、ほかの業種については絞ってみたり、その状況に応じて動かしたりと割と柔軟にしているのかなという印象がありました。
雇調金も昔は業種指定でやっていたのですけれども、現在は業種にかかわらず、業況が悪いところはということで一律の運用をしておりますが、戸田主任から御覧になって海外の制度と日本の制度のありようというのはどんなふうに見えますでしょうか。急に振って恐縮です。

○戸田主任研究員
非常に難しい御質問かなとは思いますが、基本的に海外も事業主に対して支援をするということでいろいろな形でやられているかと思います。アメリカとイギリスは雇用維持支援を既に終了しているという状況で、そうした中で1つ重要なのは終了した後に雇用情勢がどうなったかといった点だと思うのですけれども、一応今のところは大きく失業者が増えるような状況にはないとJILPTのほうでは把握しております。
ただし、これは1点留意が必要だと思うのですけれども、失業者が増えていないということは、非労働力人口が増えている可能性もありますので、ここは我々としても、もう少し情報を引き続き得なければいけないのかなと思ってはいるのですが、少なくとも現状としては、雇用維持支援といったものが終了した後に失業者があふれ出ているという状況にはないのが、1つ日本へのインプリケーションなのかなという気はしております。

○赤川課長補佐
ほかに御発言があります方はいらっしゃいますでしょうか。

○中村雇用開発企画課長
溝口課長、先ほどの非労働力化の点はいかがでしょうか。

○溝口雇用政策課長
非労働力化の関係については日本でもやはりコロナの影響で非労働力化が一部見られております。コロナ前の状況を思い出すと人手不足が強かったのですけれども、労働力需給推計をしていて、推計よりも実際の労働力供給はコロナ前は多かったということでございます。そこは何だったのかというと、やはり女性の方と高齢者の方の非正規の方が飲食店だとかそういったサービス業に就かれていたことがあったということだろうと思っております。今回、コロナ禍でそこに直接影響が生じたために、女性もしくは高齢者の方がお辞めになったり非労働力化したりとしたことで影響が出ているといったことかなと思います。
企業から見た場合に、雇調金を論じるときにコストで比較しているということなのだろうなと思っております。雇調金がなくて、今回のような大きな経済的なダメージを受けた場合には、離職を余儀なくされる方も出るわけですけれども、そういった際に新たに育成するコストですとか、再度採用するコストがかかってくるということでございます。雇調金をもらいながら雇用し続けるということであれば、その雇用し続けることに関するコストがあるわけなのですけれども、そこについては雇調金が一定程度を緩和しているという状況なのだろうと思います。
一定程度雇い続けるコストに影響するのが、まさにヒアリングをされようとしている業界の方向性ですとか、どういった新しい仕事が作れるかとかですとか、インバウンドが復活するかとかですとか、事業主の方も状況を把握しながら決められているのだろうなと思っておりますので、ヒアリングの中で、そういった事業主としての経営上の努力というか、例えば、簡単に言えば、飲食店であれば宅配を始めますとかといったところも聞ければ良いなと思っております。そこで新しい人材ニーズが生じていて、それがまた人手不足感にもつながっているという可能性もあるのではないかなと思いました。
以上です。

○赤川課長補佐
ほかに御発言があります方はいらっしゃいますでしょうか。
戸田主任研究員、お願いいたします。

○戸田主任研究員
溝口課長、ありがとうございます。
今の採用面も含めたコストといったお話に関連しまして、一応学術的にどこまで示されているかといった点を補足させていただきますと、前回のリーマンショックと東日本大震災の後の分析でございますが、雇調金を活用していた企業と活用していなかった企業を比較しますと、活用していた企業のほうが、早く企業利益等が回復していったということが実証分析上は示されております。先程お話しのありました新たに人材を採用するコストですとか人材育成するといったコストがあり、雇用保蔵した人材の活躍といったところが中心になって企業利益がいち早く回復していったということだと思われ、雇用保蔵といった面でみた雇調金の利点かと思いますので、情報共有として補足させていただきます。

○赤川課長補佐
ありがとうございました。
ほかに御発言があります方はいらっしゃいますでしょうか。
それでは、終了時刻も近づいておりますので、最後に古賀副大臣から本日のまとめの御発言をお願いいたします。

○古賀副大臣
今日は1回目ということで、活発な議論ができたと思っております。皆さんありがとうございました。
いくつかありますが、1つは海外の動向の話が出ました。今日は急だったと思うので、もしまた2回目以降、少し分かる部分があったら資料も含めて教えていただければと思います。戸田さんだけに押し付けてもあれなので、うちの役所の中もありましたら、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
2点目なのですが、コロナが落ち着いてきたので雇調金を縮減しようとかそういう趣旨では全くありませんので、そこは誤解がないように、マスコミの方も含めてお願いしたいのですけれども、今日の議論でも分かるように、まだまだ厳しい業種、あるいは逆にこの人手不足の中でどうしようかと次の展開を悩まれている方、それぞれあるわけですので、2年たちましたので、そういったところの状況を丁寧に拾いながら、次の展開を後押しできるような議論ができたらなと、資料を集めてエビデンスベーストの議論ができたらなと考えております。
3点目ですけれども、雇調金自体は6月末までの延長となっておりまして、7月以降の話は来月末までに判断して、雇用情勢を見て判断し決めるということでありますし、今後の雇調金の内容とかをここで決める場ではありませんので、あくまで、現状をしっかり把握をし、そして次の雇用政策を考えるという場にさせていただければなと思いますので、2回目は恐らく来月になると思いますが、またしっかり準備して臨みたいなと思いますので、御協力のほどよろしくお願いします。
以上です。

○赤川課長補佐
ありがとうございました。
次回以降のスケジュールについてですけれども、本日いただいた御議論を踏まえまして、事務局のほうでいくつかのヒアリングの対象の業界団体ないし個社につきまして、検討させていただきたいと思っております。
次回の日程につきましては、決まり次第、改めてホームページ等でお知らせさせていただければと思っております。
ほかに御発言がなければ、本日は以上とさせていただきます。ありがとうございました。

○古賀副大臣
どうもありがとうございました。またよろしくお願いします。