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第75回中央最低賃金審議会 議事録
日時
令和8年7月28日(火)21:45~22:35
場所
ビジョンセンター東京虎ノ門504会議室
(東京都港区虎ノ門 2-4-7 T-LITE(トライト) 5階)
出席者
- 公益代表委員
- 戎野会長代理、権丈委員(オンライン)、小西委員、首藤委員
- 労働者代表委員
- 伊藤委員、熊谷委員、柴田委員、仁平委員、平野委員、水崎委員
- 使用者代表委員
- 志賀委員、進藤委員、田上委員、土井委員、新田委員、堀内委員(オンライン)
- 事務局
- 岸本労働基準局長、松本大臣官房審議官、
野澤賃金課長、樋口主任中央賃金指導官、大野調査官、
八木賃金課長補佐、南條賃金課長補佐、上条副主任中央賃金指導官
議題
(1)中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告について
(2)令和8年地域別最低賃金額改定の目安について(答申)
(3)その他
(2)令和8年地域別最低賃金額改定の目安について(答申)
(3)その他
議事
〇戎野会長代理
ただいまから、第75回中央最低賃金審議会を開催いたします。
なお、本日、藤村会長はご欠席されるため、本日の議事進行は会長代理の戎野が務めることといたします。どうぞよろしくお願いいたします。
また、本日は所用により松浦委員が欠席、権丈委員、堀内委員は、オンラインでの参加となります。
本日の議題は、「中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告について」、「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」と「その他」です。
ではまず、議題1「中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告について」です。本年度の地域別最低賃金額改定の目安については、目安に関する小委員会において熱心な御審議を重ねていただきまして、本日7月28日の第6回小委員会において、報告が取りまとめられました。そこで、本日ご欠席の藤村会長に代わりまして、私から報告したいと思います。
今年度の目安審議については、去る6月26日にこの本審において諮問が行われるとともに、目安に関する小委員会に付託されました。
その後、小委員会においては、6月26日、7月10日、7月17日、7月23日、7月27日、そして本日7月28日までの6回にわたって会議を開催いたしました。
今年度も、労使の皆様から「目安額の根拠・理由について納得できるものとしてほしい」との御意見をいただきまして、熱心な御議論をいただいたところであります。
目安については、労使の意見の一致を得ることができませんでしたけれども、公益委員の見解を小委員会報告として、地方最低賃金審議会に示すように本審議会に報告することを、先ほどの小委員会において了承いただき、お手元のとおり、報告をとりまとめた次第でございます。
では、小委員会報告について、ご説明を事務局の方からお願いいたします。
○野澤賃金課長
事務局でございます。私の方から、小委員会報告について、概要をご説明させていただきます。
はじめに、令和8年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の根拠等についてそれぞれ真摯な議論が展開されるなど、十分審議を尽くしたところでございます。
労働者側の見解について、ご紹介をさせていただきます。
今年の春季生活闘争では、数多くの労使の真摯な議論の積み重ねによって、全体では3年連続で5%を上回る賃上げ、有期・短時間・契約等労働者では6%台の賃上げが実現した。様々な企業物価が価格転嫁の形で消費者物価に跳ね返ることを考えると、中東情勢などの影響は企業だけでなく消費者である働く人にこそ強い影響を及ぼすものである。労働者側委員は、全ての働く人の生活を守り、景気を底支えしていく観点からも、賃上げと最低賃金の大幅引上げを通じ、賃金・経済・物価を安定した巡航軌道に乗せていくことが、今我が国が取るべきベストなシナリオであると主張した。
最低賃金は、生存権を確保した上で労働の対価としてふさわしいナショナルミニマム水準である必要がある。最低賃金近傍で働く人へのアンケート調査では、「今後も最低賃金が引き上がるべき」と思う人は7割を超え、その最大の理由は、「現在の最低賃金額は生計費を維持するために十分な水準でないから」と答えている。また、地域間の額差は、時間的・距離的に近接した都道府県間では労働力を流出させ、地方の中小・零細企業の事業継続・発展の厳しさに拍車をかける一因となると指摘した。
昨年度は、CランクにA・Bランクを上回る目安を示したが、Cランク県で目安を大幅に超える引上げ額が相次いだ。地域の自主性が発揮された結果である一方、地方審議における目安そのものの意義が問われかねない事態と指摘した。
最賃近傍で働いている仲間の暮らしは厳しく、賃上げ効果を社会全体に速やかに波及させる上で最低賃金の早期発効が重要。発効日は法律上も法定発効が基本であり、指定日発効は特別な理由がある場合に限られる。指定日発効とする場合は、その必要性や影響について広く理解を得られるかなどの観点から公労使で十分に議論した上で決定すべきである。
人手不足の傾向は依然強まっており、各地域の求人募集賃金下限額は最低賃金を上回っている。労働市場や市場賃金の動向も加味して最低賃金の大幅な引上げを図るべきであると述べた。また、最低賃金の引上げと雇用維持は相反せず、むしろ人口流出や人手不足が顕著な地域、中小・零細事業所において、人材確保・定着の観点からも最低賃金を含む賃上げは急務であると主張した。
労働分配率の動向と最低賃金引上げとの相関は観察できないことから、「通常の事業の賃金支払能力」との関連性は限定的である。また、利益剰余金が過去最高水準を更新したこと、保有現金・預金が大幅な増加となっており、資金繰りにも余裕が認められることから、データからは最低賃金審議における一つの考慮要素である「通常の事業の賃金支払能力」は問題ないと述べた。
労働者側委員としては、上記主張が十分に反映されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
続きまして、使用者側見解について、ご説明させていただきます。
使用者側委員は、物価の上昇幅は昨年より緩やかであるが引き続き上昇局面にあること、大幅な賃上げの流れが継続していることを踏まえれば、最低賃金を一定程度引き上げる必要性は十分理解すると述べた。
しかし、業績に関わりなく、法的強制力をもって適用される地域別最低賃金の引上げと、各企業の経営判断や労使交渉による賃金の引上げは意味合いが全く異なり、最低賃金は全企業に例外なく罰則付きで適用される以上、個々の中小企業・小規模事業者を含めた企業の賃金支払能力を十分に踏まえた慎重な判断が不可欠と主張した。
具体的な目安額を審議するに当たっては、最低賃金近傍で働く方々の可処分所得に対する物価上昇の影響は考慮すべきだが、物価上昇の影響は企業側のコスト増としても現れており、家計面のみならず、企業経営への影響と併せて検討する必要がある。
特に、中東情勢により、供給面の停滞・目詰まりに加え、国内企業物価指数や輸入物価指数の急激な上昇にも表れているとおり、燃料・石油化学製品をはじめとするコストの増加に苦慮する企業が多いことに留意が必要である。
また、春季賃上げ妥結状況を見ると企業規模が小さいほど賃上げ率は低い傾向にあることから、賃上げへの対応は規模が小さく労働分配率が高い中小企業ほど負担感が大きいこと、企業業績の改善を伴わない、いわゆる「防衛的賃上げ」による賃上げを行う企業があることを十分考慮する必要があると指摘した。
その他、Cランクを中心とした、目安額を上回る近年の大幅な引上げにより、社会・生活インフラを担う中小企業・小規模事業者の事業継続が困難となり、地域経済に深刻な影響を与えていることにも留意が必要であると述べた。
以上を考慮すると、法定3要素のうち「通常の事業の賃金支払能力」に着目しながら、3要素を総合的に表す賃金改定状況調査の結果、特に第4表の賃金上昇率に着目するとの基本的な考え方は今年度も堅持すると述べた。
その上で、中東情勢の影響や価格転嫁の状況等を含め、事業の持続的発展と雇用維持の観点から、公労使三者構成の枠組みにおいて3要素に関するデータをバランス良く丁寧に確認しながら十分議論を尽くし、全国の企業経営者にとって納得感のある目安を示すことが目安に関する小委員会の社会的な役割であると述べた。
目安制度の在り方に関する全員協議会の取りまとめにおいて、最低賃金額や発効日について、地方最低賃金審議会における審議等の在り方が示されていることも踏まえ、今年度の目安審議では、データに基づく審議・決定を徹底するとともに、各地方最低賃金審議会など最低賃金の決定に関わる全ての人に対し合理的で納得性の高い目安を示すべく審議を尽くすことが重要であると主張した。
発効日について、近年の最低賃金の引上げ幅が大きくなっていることから、事業者の準備期間を十分に確保する観点で発効日を年初にするべきという意見が多く寄せられている中、昨年度、各地方審議の結果として複数の地域で指定日発効とされたことは、企業にとって、一定の意義があったと考えられる。発効日を引上げ額との間で過度に交渉材料とすることなく、労働者の生活や企業経営に与える影響、各地域における様々な地域の事情を考慮しながら、当該地域の公労使委員間で十分に議論することが重要であると述べた。
使用者側委員としては、上記主張が十分に反映されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
意見の不一致でございます。目安小委員会としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところではございますが、労使の意見が一致せず、目安を定めるに至りませんでした。
公益委員見解及びその取扱いでございます。公益委員としては、今年度の目安審議については、中央最低賃金審議会「目安制度の在り方に関する全員協議会」における「令和7年度地方最低賃金審議会の審議結果を踏まえた論点と考え方の整理」(令和8年6月23日)で「最低賃金法第9条第2項の3要素のデータに基づき労使で丁寧に議論を積み重ねて目安を導くことが非常に重要であり、今後の目安審議においても徹底すべきである」(令和5年全員協議会報告の1(2))との基本的な考え方に基づいて、今後も中央及び地方最低賃金審議会で審議を行うべきであると合意されたことを踏まえ、「日本成長戦略」及び「経済財政運営と改革の基本方針2026」に配意しつつ、各種指標を総合的に勘案し、公益委員の見解を取りまとめたものでございます。
目安小委員会といたしましては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することといたしました。
また、地方最低賃金審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記のとおり示し、併せて総会に報告することといたしました。
その他、価格転嫁の徹底ですとか、生産性向上の支援として「労働力制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略」の着実な実行、令和8年1月から施行された取適法・振興法の着実な執行、「省力化投資促進プラン」の更なる充実・拡充、業務改善助成金等の各種補助金・助成金の充実や活用促進に取り組むことを、政府に対して要望するという内容をまとめたところでございます。
公益委員見解でございます。公益委員見解といたしましては、令和8年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次に掲げる金額とする。Aランク54円、Bランク56円、Cランク56円。目安小委員会としては、今年度の目安審議に当たっては、「令和7年度地方最低賃金審議会の審議結果を踏まえた論点と考え方の整理」(令和8年6月23日)で「最低賃金法第9条第2項の3要素のデータに基づき労使で丁寧に議論を積み重ねて目安を導くことが非常に重要であり、今後の目安審議においても徹底すべきである」(令和5年全員協議会報告の1(2))との基本的な考え方に基づいて、今後も中央及び地方最低賃金審議会で審議を行うべきであると合意されたことを踏まえ、特に地方最低賃金審議会における自主性発揮が確保できるよう整備充実や取捨選択を行った資料を基にするとともに、「日本成長戦略」及び「経済財政運営と改革の基本方針2026」に配意し、最低賃金法第9条第2項の3要素を考慮した審議を行ってまいりました。
労働者の生計費でございます。「持ち家の帰属家賃を除く総合」、「頻繁に購入」する品目、「1ヶ月に1回程度購入する品目」、「食料」等の指標を丁寧に見てきたところでございます。
そうした指標を確認した結果、消費者物価指数については、「持家の帰属家賃を除く総合」、「食料」、「基礎的支出項目」、「1か月に1回程度購入」する品目については、引き続き上昇局面にあるが、上昇率は昨年から緩やかになっている。一方で、昨年度確認したエンゲル係数については、令和7年は勤労者世帯で26.3%となっており、令和6年の26.5%から低下しているが、近年、上昇傾向にある。また、最低賃金に近い賃金水準の労働者の食費に関する支出の実態として、勤労者世帯のうち最も所得の低いグループについては、更に高い水準となっている。
こうしたエンゲル係数の上昇傾向は、最低賃金に近い賃金水準で働く労働者の家計に直接的な影響を与え、実質的な購買力を押し下げる要因ともなっていると考えられ、生活必需品を含む支出項目を中心とした消費者物価の上昇に伴い、最低賃金に近い賃金水準の労働者においては、生活が苦しくなっている者もいると考えられる。なお、中東情勢に対し、当面の措置として、燃料油に対する緊急的な激変緩和措置が実施されている影響等により、消費者物価指数の「総合」、とりわけ必需品的な支出項目の上昇率が一定程度押し下げられていることにも留意が必要である。こうした状況を踏まえれば、今年度においては、労働者の生計費について、最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を維持する観点から、昨年10月以降の「持家の帰属家賃を除く総合」が示す水準を一定程度上回ることを考慮しつつ、生活必需品を含む支出項目に係る消費者物価の上昇も勘案する必要がある。ただし、その上昇率は昨年より鈍化していることを踏まえる必要がある。
続きまして賃金でございます。賃金に関する指標を見ると、春季賃上げ妥結状況における賃金上昇率は、連合の第7回(最終)集計結果で、全体で5.01%で、3年連続5%を上回っている。また中小でも4.69%で3年連続4%を上回っている。
経団連の指標でございますが、大手企業で5.46%で3年連続5%を超え、昨年の結果を上回っている。また中小企業でも4.20%で3年連続4%を超えており、いずれも高水準で推移している。
その他、日商による中小企業の賃金改定に関する調査の正社員の結果では全体で4.29%で2年連続4%を超え、また20人以下の企業で3.52%となっている。
厚生労働省による30人未満の企業の賃金改定状況調査結果については、第4表①②における賃金上昇率(ランク計)は3.0%であり、最低賃金が時間額のみで表示されるようになった平成14年以降最大値であった昨年の結果を上回っている状況です。継続労働者に限定した第4表③における賃金上昇率は3.4%となっており、これも昨年の結果(3.2%)を上回った。この第4表は、目安審議における重要な参考資料であり、同表における賃金上昇率を十分に考慮する必要がある、といったような指標を確認したところでございます。
通常の事業の支払能力でございます。様々な指標を確認したところですが、ここに記載されているものをいくつかご紹介しますと、まず、業況の厳しい産業や企業の状況のみを見て議論するのではなく、各種統計資料を基に議論を行ってきたところです。経常利益については、令和6年度は資本金1,000万円以上で8.5%の増加となっており、1,000万円未満で12.7%の減少となっているが、令和5年度に比べると改善傾向でございます。売上高経常利益率については、資本金1,000万円以上では、四半期ごとで令和7年は7~10%程度で推移、令和8年の第1四半期は8.0%となっており、安定して改善の傾向にある。従業員一人当たり付加価値額について、令和4年度は2.2%増加、令和5年度は4.7%増加、令和6年度は全体で5.7%増加と、足下で改善の傾向にあるところでございます。一方で、付加価値額に占める人件費の割合である労働分配率は足下で低下の傾向にある。令和4年度で1.4ポイント低下、令和5年度で2.4ポイント低下となっております。企業規模が小さいほど労働分配率は高く、令和6年度は資本金1,000万円以上で61.4%、資本金1,000万円未満で81.5%となっているが、資本金1,000万円未満においても令和5年度と比べると1.5ポイント上昇しているが、令和4年度から3.1ポイント低下しているという状況にございます。国内企業物価指数(前年同月比)については、令和8年6月(速報値)で7.1%となっており、足下で上昇しており、品目別でみると、「石油・石炭製品」で22.8%、「化学製品」で14.4%と、特に足下で上昇の傾向にあるというところでございます。
こうした様々なデータを確認したところでございます。その他、確認したデータとしましては、中小企業景況調査、日銀短観、中小企業庁が公表した令和8年3月の価格交渉促進月間のフォローアップ調査の結果、コスト全体の価格転嫁率や労務費の価格転嫁率等について、丁寧に確認したところでございます。
各ランクの引上げ額の目安についてでございます。
最低賃金について、「日本成長戦略」等において、「最低賃金については、2020年代に全国平均1,500円という高い目標(「経済財政運営と改革の基本方針2025」)の達成に向け、官民でたゆまぬ努力を継続し、労働生産性の継続的な向上を図ることで、遅くとも2030年代前半できる限り早期に全国平均1,500円を達成する」こと、「毎年の最低賃金の引上げ額については、こうした政府の取組も踏まえつつ、法定3要素のデータに基づき、公労使三者構成の中央最低賃金審議会及び地方最低賃金審議会において、実態を踏まえた審議結果となるよう、議論いただく」こととされていることも踏まえ、公労使で真摯に検討を重ねてきたところでございます。今年の政府方針として、「投資と賃上げの好循環」を加速させるとしており、数多くの具体策が示されているところ、今後それらが実行されることが重要であり、「労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略」、「官公需における価格転嫁・取引適正化加速化プラン」、「省力化投資促進プラン」に掲げる施策の迅速な実施が期待されるなどを追記しております。一方で、最低賃金の改定額の審議に当たっては、最低賃金法第9条第2項の3要素のデータに基づき、公労使同数の委員で構成される最低賃金審議会において、丁寧に議論を積み重ねて結論を導くことが、目安額に対する納得感を高める上でも非常に重要であることから、今回の審議でもこの点を再確認し、徹底するように検討を進めてきたところでございます。その結果、①労働者の生計費については、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は、昨年10月から今年6月までで平均2.1%、「頻繁に購入する品目」は平均1.2%、「食料」は平均4.3%、「基礎的支出項目」は平均2.2%、「1か月に1回程度購入」する品目は平均2.3%となり、引き続き上昇局面にあるが、上昇率は昨年より鈍化していることを踏まえる必要がある。
②賃金につきましては、春季賃上げ妥結状況における賃金引上げ結果に関して全体で5.01%、中小についても4.69%と、昨年に引き続き高い水準となっており、有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額(時給・加重平均)についても6.18%の引上げで昨年を上回る水準となっているような状況です。③通常の事業の賃金支払能力については、売上高経常利益や従業員一人当たり付加価値額が高い水準で推移するなど、企業の利益において改善の傾向にあることを考慮すべきである。
なお、企業において賃金支払能力等も勘案した賃金決定の結果であると解釈される30人未満の企業の賃金改定状況調査結果の第4表における賃金上昇率が平成14年以降で過去最大となっていることも、考慮すべきである。
しかし、価格転嫁率が示すように、依然として賃上げ原資を確保することが難しい企業も存在すると考えられる。
第4表と春季賃上げ妥結状況の差からも、小規模事業者は賃金支払能力が相対的に低い可能性がある。
さらに、中東情勢の影響により、国内企業物価指数について、足下で上昇している点についても留意が必要である。
そうした中で、最低賃金は、企業の経営状況にかかわらず、労働者を雇用する全ての企業に適用され、それを下回る場合には罰則の対象となることも考慮すれば、引上げ率の水準には一定の限界があると考えられる。
これらを総合的に勘案し、労働者の生計費については、消費者物価が引き続き上昇局面にある中、食料など生活必需品を含む支出項目に係る消費者物価が継続して高いことに着目するが、その上昇率は、昨年より鈍化していることを考慮する必要がある。一方、賃金については、昨年に引き続き高水準の賃上げとなっており、中小企業を含めた賃上げの流れが継続していることを考慮する必要がある。また、売上高経常利益率等の賃金支払能力に関する項目が改善傾向にある。一方、依然として賃上げ原資の確保が難しい企業も存在している。
最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を維持する必要があることを考慮するとともに、賃上げの流れの維持・拡大を図り、非正規雇用労働者や中小企業・小規模事業者にも波及させることや、最低賃金法第1条に規定するとおり、最低賃金制度の目的は、賃金の低廉な労働者について賃金の最低額を保障し、その労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定等に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与するものであることにも留意すると、今年度の各ランクの引上げ額の目安(以下「目安額」という。)を検討するに当たっては全国加重平均4.9%(55円)を基準として検討することが適当であると考えられる。
各ランクの目安額については、「日本成長戦略」等において、「地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正を図る」とされていることも踏まえ、地域間格差への配慮の観点から少なくとも地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き続き上昇させていくことが必要。
こういったことを考慮し、Aランクと比較して、その上で、賃金改定状況調査結果の第4表①②における賃金上昇率は、CランクとBランクが同率となり、Aランクよりも高くなっている。第4表③では、Cランク、Bランク、Aランクの順に高くなっている。また、第4表①②③における、AランクとBランク、AランクとCランクの差は昨年より拡大している。
さらに、雇用情勢としてB・Cランクが相対的に良い状況にあること等のデータを考慮する必要がある。これらのことを踏まえれば、Aランクと比較し、Bランクを相対的に高くするとともに、Cランクを昨年度以上に高くすることが適当であり、具体的には、Aランク54円(4.5%)、Bランク56円(5.2%)、Cランク56円(5.4%)とすることが考えられる。この結果、仮に目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合は、最高額に対する最低額の比率は83.4%から84.3%となり、地域間格差は比率の面で縮小することとなる。また、地域間の金額の差についても改善することとなる。
売上高経常利益率等の賃金支払能力に関する項目が改善傾向にある一方、依然として賃上げ原資の確保が難しい企業も存在していることなどから、目安額を決めた。そのうえで、政府に対する要望として、「官公需における対応」、「労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略」の着実な実行・価格転嫁対策、「取適法対象外の取引への規制強化」、「省力化投資促進プラン」の更なる充実・拡充等、政府に対する要望もまとめております。
地方最低賃金審議会の期待等でございます。目安は、地方最低賃金審議会が審議を進めるに当たって、全国的なバランスを配慮するという観点から参考にされるべきものであり、地方最低賃金審議会の審議決定を拘束するものではない。
こうした前提の下、目安小委員会の公益委員としては、目安を十分に参酌しながら、地方最低賃金審議会において、地域別最低賃金の審議に際し、都道府県別に示される地域の経済・雇用の実態等をデータに基づいて見極めつつ、自主性を発揮することを期待する。地域間格差の是正を引き続き図ることも踏まえて、目安額が検討されたものであることにも配意いただきたいと考える。令和7年度の審議結果を踏まえて、「目安制度の在り方に関する全員協議会」において、令和8年度以降の審議に向けて、「令和7年度地方最低賃金審議会の審議結果を踏まえた論点と考え方の整理」(令和8年6月23日)をとりまとめており、同とりまとめの2(2)及び3(4)に記載された「対応方針」を踏まえた審議を行うことを要望する。中央最低賃金審議会が、地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心を持って見守ることを要望する。
それから、生活保護水準と最低賃金との比較では、昨年に引き続き乖離が生じていないことを確認しております。
最低賃金引上げの影響については、近年大幅な引上げがなされている中で、雇用情勢等の指標の状況を見ると大きな影響は確認できていないですが、令和5年全員協議会報告の3(1)に基づき、引き続き、影響率や雇用者数等を注視しながら、慎重に検討していくことが必要である。今年度も、影響率の詳細な分析や、雇用保険被保険者数、雇用保険適用事業所数等々の影響把握などを中央最低賃金審議会として行ったところであり、今後も丁寧に影響把握を行った上で、公労使で目安の検討を行うことが適当であるといったような内容になっております。
すみません、長くなりまして恐縮ですが。
○戎野会長代理
はい、どうもありがとうございました。皆様のご尽力により、小委員会報告をとりまとめることができました。重ねて御礼申し上げます。
議題1の報告としては、ここまでとしたいと思います。
続きまして、議題2「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)」についてです。
小委員会報告をもとに、答申を取りまとめたいと思います。
なお、この報告にもありますとおり、小委員会としては、政府が中小企業・小規模事業者等の生産性向上のための支援や価格転嫁対策に引き続き取り組むことなどの要望をしておりますので、今年の答申におきましても、この趣旨を盛り込みたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
それでは、答申案を事務局から配布してください。では、読み上げの方よろしくお願いいたします。
○上条副主任
では、朗読いたします。
令和8年7月28日。厚生労働大臣上野賢一郎殿。中央最低賃金審議会会長藤村博之。
令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)。令和8年6月26日に諮問のあった令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について、下記のとおり答申する。
記。
1.令和8年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった。
2.地方最低賃金審議会における審議に資するため、上記目安に関する公益委員見解(別紙1)及び中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(別紙2)を地方最低賃金審議会に提示するものとする。
3.地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることとし、同審議会において、別紙1の2に示されている公益委員の見解を十分参酌され、自主性を発揮されることを強く期待するものである。
4.中小企業・小規模事業者が持続的に賃上げできる環境整備の必要性については労使共通の認識であり、「持続的・安定的な物価上昇の下で、物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇を賃上げのノルム(社会通念)として我が国に定着」させるためにも、特に地方、中小企業・小規模事業者に配意しつつ、生産性向上を図るとともに、官公需における対応や、価格転嫁対策を徹底し、賃上げの原資の確保につなげる取組を継続的に実施するよう政府に対し強く要望する。
5.生産性向上の支援については、可能な限り多くの企業が各種の助成金等を受給し、賃上げを実現できるように、政府の掲げる生産性向上等への支援や経営支援の一層の強化を求める。特に、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される業務改善助成金については、最低賃金引上げの影響を強く受ける中小企業・小規模事業者がしっかりと活用できるよう充実するとともに、具体的事例も活用した周知等の徹底を要望する。加えて、非正規雇用労働者の処遇改善等を支援するキャリアアップ助成金、働き方改革推進支援助成金、人材確保等支援助成金等について、「賃上げ」を支援する観点から、賃上げ加算等の充実を強く要望する。
6.また、中小企業・小規模事業者の賃上げの実現に向けて、「労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略」の着実な実行により、価格転嫁・取引適正化の更なる徹底、成長志向の企業や生産性向上への支援強化、M&A・事業承継等による事業再編の推進、賃上げも促進、経営改革等のための伴走支援体制の強化等を推進することを要望する。その際、中小企業・小規模事業者がこれらの施策を一層活用できるよう、周知等を徹底するとともに、運用の改善を図ることを要望する。
7.価格転嫁対策については、令和8年1月から施行された取適法・振興法を着実に執行するため、公正取引委員会・中小企業庁・事業所管省庁の連携や取引Gメンの拡充等を通じた執行体制強化と、現場への浸透に向けた一層の周知徹底を行い、あわせて、地方組織を含めた公正取引委員会の体制面の抜本的な強化を図ることを要望する。
8.また、取適法対象外の取引への規制強化に向け、独占禁止法上の告示、知的財産権等の適切な取引に関する指針等の周知・遵守徹底を図ることを要望する。
9.さらに、BtoC事業では相対的に価格転嫁率が低いといった課題があるため、消費者に対して転嫁に理解を求めていくよう要望する。
10.地域経済に与える影響が大きい官公需において、「官公需における価格転嫁・取引適正化加速化プラン」により、2027年度末までに、実勢価格を踏まえた予定価格の形成や低入札価格調査制度又は最低制限価格制度の導入・適用等を100%実施することを要望する。また、価格基準の見直し、進捗状況の見える化や地方公共団体への伴走支援等も実施することで、価格転嫁・取引適正化を強力に推進することを要望する。
11.「省力化投資促進プラン」の更なる充実・拡充を図るとともに、業種ごとのKPIの達成状況についてフォローアップを行って進捗を見える化し、実績に応じて更なる対応策を検討することを要望する。
12.また、中小企業省力化投資補助金、デジタル化・AI導入補助金、業務改善助成金等の各種補助金・助成金や、省力化ナビ、各都道府県の生産性向上支援センター等の業種横断的なサポート体制の充実及び活用促進に取り組むことを要望する。
13.また、いわゆる「年収の壁」への対策として、昨年7月に拡充したキャリアアップ助成金による事業主への支援や、今年4月から開始した被扶養者の新たな認定方法の取扱いの円滑な実施に取り組むことを要望する。加えて、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
以上でございます。
〇戎野会長代理
ただいまの答申案について御意見などございますか。
(異議なし)
よろしいでしょうか。ありがとうございます、ではこの案のとおり答申を取りまとめたいと思います。岸本労働基準局長にお渡ししたいと思いますので、答申を用意してください。
(会長代理より局長に答申文を手交)
それでは、岸本労働基準局長から一言、御挨拶をお願いしたいと思います。
○岸本労働基準局長
一言、御挨拶申し上げます。
本年度の目安につきまして、答申を取りまとめていただき、誠にありがとうございました。
本年度の調査審議におきましては、最低賃金法に規定された3要素を丁寧に考慮していただくとともに、地域間格差の是正にも配慮・留意いただきながら、関係者の納得感が高まるように多岐にわたる論点について真摯に御議論を尽くしていただきました。また、先月23日の「目安制度の在り方に関する全員協議会」で取りまとめていただいた内容も踏まえた議論を行っていただき、目安を示していただきました。
今後、答申を各都道府県労働局に伝達いたしまして、各地方最低賃金審議会における地域別最低賃金額の改定審議が円滑に進められるようにしてまいりたいと考えております。
皆様方の御尽力に心より感謝申し上げまして、御礼の御挨拶とさせていただきます。長時間にわたる御審議、誠にありがとうございました。
〇戎野会長代理
ありがとうございます。
それでは、他に何かございますか。よろしいでしょうか。
では、続きまして、議題3「その他」についてです。資料について、事務局からご説明をお願いします。
○八木賃金課長補佐
事務局でございます。
資料No.1をご覧ください。「目安答申後の地方最低賃金審議会における審議の流れ」という資料でございます。
めくっていただいて2ページでございます。令和7年度を例としました、目安答申後の地方最低賃金審議会の審議の流れの全体像となっております。
中央最低賃金審議会において先ほど答申いただいた地域別最低賃金額改定の目安は、地方に示されまして、地方最低賃金審議会での地域別最低賃金の審議が行われます。
地方最低賃金審議会では、地域別最低賃金に関する審議のほか、特定最低賃金に関する審議を行っております。昨年度は8月から11月頃にかけて審議が行われまして、翌年の3月までに発効をしております。
3ページは、地方最低賃金審議会において議論の結果決定された地域別最低賃金額の一覧になります。
4ページ以降は、労使のイニシアティブにより設定される、特定最低賃金の概要や制度の紹介等の資料になります。
少し飛んでいただきまして、8ページ及び9ページになりますが、特定最低賃金の決定等の必要性の有無に関する調査審議の運営につきまして、これまで中央最低賃金審議会における議論の結果、労使で合意されてきた事項の紹介になります。実際の必要性の有無に関する調査審議に当たっては、これらの事項を参考に、関係労使が参加することにより、より実質的な審議が行われることが期待をされております。
10ページ、11ページになります。特定最低賃金の審議における労使イニシアティブの促進に向けた参考事例をまとめたものでございます。特定最低賃金は労使のイニシアティブにより決定等がされるものです。そのため、これらの事例を参考に、労使イニシアティブが促進されることは、特定最低賃金がその制度趣旨に沿って運用されることに資するものと考えられます。
資料の説明は以上でございます。
○戎野会長代理
ありがとうございました。その他、何かご意見・ご質問等ございますか。
では、土井委員お願いいたします。
○土井委員
ただいまご説明いただいた今後の流れの中の特定最低賃金に関して、使用者側から一言申し上げたいと思います。
特定最低賃金は、ご承知のとおり、地域別最低賃金を上回る水準が必要と認められている場合に、関係労使の申し出によって、特定産業の基幹的労働者に対して、任意に設定されるものであります。全国各地域で決定され、原則として全ての労働者に適用される地域別の最低賃金とは法的位置づけが全く異なるものだと理解しております。また、制度のわかりにくさや煩雑さ、更には人材確保や賃金制度の柔軟性に対する制約となりうる点など、使用者側にとっては、多くの懸念材料を含むものと認識しております。特定最低賃金の新設、改定または廃止については、資料にありましたとおり、関係労使の申し出に基づいて、各地方最低賃金審議会の調査審議を経て行われるものでございます。特定最低賃金の状況を見ますと、2025年度に設定されている特定最低賃金223件のうち、地域別最低賃金額を下回っているものが111件にのぼっており、地域別最低賃金が適用されております。
このように、実質的に機能していない特定最低賃金については、関係労使に意見聴取を行ったうえで、各地方最低賃金審議会において、速やかに廃止を検討するべきだと考えております。
一方で、健全な競争条件の確保、その産業の魅力向上、あるいは人材の確保・定着を促す手段として、特定最低賃金制度を積極的に活用していきたいという意向があるということも承知しております。いずれにしても、各地域の関係労使のイニシアティブによって設定される特定最低賃金については、関係労使にとって、納得感のある結論が得られるように当事者間で検討を重ねていただきたいと思っております。
以上でございます。
○戎野会長代理
はい、ありがとうございました。では、仁平委員お願いします。
○仁平委員
はい、ご説明ありがとうございました。私も特賃について。
人手不足が社会課題となっている中で、特賃をより積極的に活用すべきだと労側としては考えております。各地域で成長が期待される産業、日常生活を支える産業をはじめとする、産業の魅力を高め、人材の確保・定着を促し、産業の持続的発展を図るための手段として、特定最低賃金は役立つものだと考えております。具体的に、3点申し上げたいと思っております。
一点目でございますが、ご説明いただいた資料の一番最後、10ページ11ページに参考事例が載っております。色々な例がありますけども、とりわけ、最後の青くなっている事例は、望ましくない事例として掲載しているという理解で良いのか、これについては、事務局に確認させていただければと思います。こうした望ましくない事例をなくすためには、関係労使がしっかりと会話し、建設的な議論をすることが重要であって、そのために、本省及び地方労働局としてもっと管理をしていただきたいというお願いが一点目でございます。
二点目であります。土井委員もご指摘されておりましたけれど、7ページに地域別最低賃金に追い越された特定最低賃金の件数というのが載っております。私が問題にしたいのは、なぜそうした事態に陥ったのかということでございます。それは、当該産業労使が必要なしと判断したわけではないというふうに考えています。また、昨年も申し上げた話ですが、データに基づくことなく、一方的に必要なしと結論づけられるような話を私は依然として聞く機会がございます。当該産業労使の意向が反映され、データに基づく必要性審議と適切な金額改定が行われていれば、こうした自体に陥っていなかったのではないかというふうに考えています。特定最低賃金の活用を促進するために、運営方針を見直すことも検討すべきではないでしょうか。
三点目でございます。良質な雇用によって、魅力を高め、産業振興や産業集積に取り組む観点から、地域の産業労使が特定最低賃金を設定することに対して、地域産業活性化につながる政府の支援策を求めたいと思います。
以上、三点でございます。
〇戎野会長代理
はい、ありがとうございました。事務局からございますか。
〇野澤賃金課長
ありがとうございます。今ご質問いただきました、最後の青い事例でございますが、これはタイトルにございますとおり、労使双方の歩み寄りが十分に行われなかった例ということで、好ましくない例として、記載をさせていただいたところでございます。
〇戎野会長代理
はい、ありがとうございます。その他なにかございますか。よろしいでしょうか。
それでは、これをもちまして、第75回中央最低賃金審議会を終了いたします。本日は大変お疲れ様でございました。
ただいまから、第75回中央最低賃金審議会を開催いたします。
なお、本日、藤村会長はご欠席されるため、本日の議事進行は会長代理の戎野が務めることといたします。どうぞよろしくお願いいたします。
また、本日は所用により松浦委員が欠席、権丈委員、堀内委員は、オンラインでの参加となります。
本日の議題は、「中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告について」、「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」と「その他」です。
ではまず、議題1「中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告について」です。本年度の地域別最低賃金額改定の目安については、目安に関する小委員会において熱心な御審議を重ねていただきまして、本日7月28日の第6回小委員会において、報告が取りまとめられました。そこで、本日ご欠席の藤村会長に代わりまして、私から報告したいと思います。
今年度の目安審議については、去る6月26日にこの本審において諮問が行われるとともに、目安に関する小委員会に付託されました。
その後、小委員会においては、6月26日、7月10日、7月17日、7月23日、7月27日、そして本日7月28日までの6回にわたって会議を開催いたしました。
今年度も、労使の皆様から「目安額の根拠・理由について納得できるものとしてほしい」との御意見をいただきまして、熱心な御議論をいただいたところであります。
目安については、労使の意見の一致を得ることができませんでしたけれども、公益委員の見解を小委員会報告として、地方最低賃金審議会に示すように本審議会に報告することを、先ほどの小委員会において了承いただき、お手元のとおり、報告をとりまとめた次第でございます。
では、小委員会報告について、ご説明を事務局の方からお願いいたします。
○野澤賃金課長
事務局でございます。私の方から、小委員会報告について、概要をご説明させていただきます。
はじめに、令和8年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の根拠等についてそれぞれ真摯な議論が展開されるなど、十分審議を尽くしたところでございます。
労働者側の見解について、ご紹介をさせていただきます。
今年の春季生活闘争では、数多くの労使の真摯な議論の積み重ねによって、全体では3年連続で5%を上回る賃上げ、有期・短時間・契約等労働者では6%台の賃上げが実現した。様々な企業物価が価格転嫁の形で消費者物価に跳ね返ることを考えると、中東情勢などの影響は企業だけでなく消費者である働く人にこそ強い影響を及ぼすものである。労働者側委員は、全ての働く人の生活を守り、景気を底支えしていく観点からも、賃上げと最低賃金の大幅引上げを通じ、賃金・経済・物価を安定した巡航軌道に乗せていくことが、今我が国が取るべきベストなシナリオであると主張した。
最低賃金は、生存権を確保した上で労働の対価としてふさわしいナショナルミニマム水準である必要がある。最低賃金近傍で働く人へのアンケート調査では、「今後も最低賃金が引き上がるべき」と思う人は7割を超え、その最大の理由は、「現在の最低賃金額は生計費を維持するために十分な水準でないから」と答えている。また、地域間の額差は、時間的・距離的に近接した都道府県間では労働力を流出させ、地方の中小・零細企業の事業継続・発展の厳しさに拍車をかける一因となると指摘した。
昨年度は、CランクにA・Bランクを上回る目安を示したが、Cランク県で目安を大幅に超える引上げ額が相次いだ。地域の自主性が発揮された結果である一方、地方審議における目安そのものの意義が問われかねない事態と指摘した。
最賃近傍で働いている仲間の暮らしは厳しく、賃上げ効果を社会全体に速やかに波及させる上で最低賃金の早期発効が重要。発効日は法律上も法定発効が基本であり、指定日発効は特別な理由がある場合に限られる。指定日発効とする場合は、その必要性や影響について広く理解を得られるかなどの観点から公労使で十分に議論した上で決定すべきである。
人手不足の傾向は依然強まっており、各地域の求人募集賃金下限額は最低賃金を上回っている。労働市場や市場賃金の動向も加味して最低賃金の大幅な引上げを図るべきであると述べた。また、最低賃金の引上げと雇用維持は相反せず、むしろ人口流出や人手不足が顕著な地域、中小・零細事業所において、人材確保・定着の観点からも最低賃金を含む賃上げは急務であると主張した。
労働分配率の動向と最低賃金引上げとの相関は観察できないことから、「通常の事業の賃金支払能力」との関連性は限定的である。また、利益剰余金が過去最高水準を更新したこと、保有現金・預金が大幅な増加となっており、資金繰りにも余裕が認められることから、データからは最低賃金審議における一つの考慮要素である「通常の事業の賃金支払能力」は問題ないと述べた。
労働者側委員としては、上記主張が十分に反映されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
続きまして、使用者側見解について、ご説明させていただきます。
使用者側委員は、物価の上昇幅は昨年より緩やかであるが引き続き上昇局面にあること、大幅な賃上げの流れが継続していることを踏まえれば、最低賃金を一定程度引き上げる必要性は十分理解すると述べた。
しかし、業績に関わりなく、法的強制力をもって適用される地域別最低賃金の引上げと、各企業の経営判断や労使交渉による賃金の引上げは意味合いが全く異なり、最低賃金は全企業に例外なく罰則付きで適用される以上、個々の中小企業・小規模事業者を含めた企業の賃金支払能力を十分に踏まえた慎重な判断が不可欠と主張した。
具体的な目安額を審議するに当たっては、最低賃金近傍で働く方々の可処分所得に対する物価上昇の影響は考慮すべきだが、物価上昇の影響は企業側のコスト増としても現れており、家計面のみならず、企業経営への影響と併せて検討する必要がある。
特に、中東情勢により、供給面の停滞・目詰まりに加え、国内企業物価指数や輸入物価指数の急激な上昇にも表れているとおり、燃料・石油化学製品をはじめとするコストの増加に苦慮する企業が多いことに留意が必要である。
また、春季賃上げ妥結状況を見ると企業規模が小さいほど賃上げ率は低い傾向にあることから、賃上げへの対応は規模が小さく労働分配率が高い中小企業ほど負担感が大きいこと、企業業績の改善を伴わない、いわゆる「防衛的賃上げ」による賃上げを行う企業があることを十分考慮する必要があると指摘した。
その他、Cランクを中心とした、目安額を上回る近年の大幅な引上げにより、社会・生活インフラを担う中小企業・小規模事業者の事業継続が困難となり、地域経済に深刻な影響を与えていることにも留意が必要であると述べた。
以上を考慮すると、法定3要素のうち「通常の事業の賃金支払能力」に着目しながら、3要素を総合的に表す賃金改定状況調査の結果、特に第4表の賃金上昇率に着目するとの基本的な考え方は今年度も堅持すると述べた。
その上で、中東情勢の影響や価格転嫁の状況等を含め、事業の持続的発展と雇用維持の観点から、公労使三者構成の枠組みにおいて3要素に関するデータをバランス良く丁寧に確認しながら十分議論を尽くし、全国の企業経営者にとって納得感のある目安を示すことが目安に関する小委員会の社会的な役割であると述べた。
目安制度の在り方に関する全員協議会の取りまとめにおいて、最低賃金額や発効日について、地方最低賃金審議会における審議等の在り方が示されていることも踏まえ、今年度の目安審議では、データに基づく審議・決定を徹底するとともに、各地方最低賃金審議会など最低賃金の決定に関わる全ての人に対し合理的で納得性の高い目安を示すべく審議を尽くすことが重要であると主張した。
発効日について、近年の最低賃金の引上げ幅が大きくなっていることから、事業者の準備期間を十分に確保する観点で発効日を年初にするべきという意見が多く寄せられている中、昨年度、各地方審議の結果として複数の地域で指定日発効とされたことは、企業にとって、一定の意義があったと考えられる。発効日を引上げ額との間で過度に交渉材料とすることなく、労働者の生活や企業経営に与える影響、各地域における様々な地域の事情を考慮しながら、当該地域の公労使委員間で十分に議論することが重要であると述べた。
使用者側委員としては、上記主張が十分に反映されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
意見の不一致でございます。目安小委員会としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところではございますが、労使の意見が一致せず、目安を定めるに至りませんでした。
公益委員見解及びその取扱いでございます。公益委員としては、今年度の目安審議については、中央最低賃金審議会「目安制度の在り方に関する全員協議会」における「令和7年度地方最低賃金審議会の審議結果を踏まえた論点と考え方の整理」(令和8年6月23日)で「最低賃金法第9条第2項の3要素のデータに基づき労使で丁寧に議論を積み重ねて目安を導くことが非常に重要であり、今後の目安審議においても徹底すべきである」(令和5年全員協議会報告の1(2))との基本的な考え方に基づいて、今後も中央及び地方最低賃金審議会で審議を行うべきであると合意されたことを踏まえ、「日本成長戦略」及び「経済財政運営と改革の基本方針2026」に配意しつつ、各種指標を総合的に勘案し、公益委員の見解を取りまとめたものでございます。
目安小委員会といたしましては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することといたしました。
また、地方最低賃金審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記のとおり示し、併せて総会に報告することといたしました。
その他、価格転嫁の徹底ですとか、生産性向上の支援として「労働力制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略」の着実な実行、令和8年1月から施行された取適法・振興法の着実な執行、「省力化投資促進プラン」の更なる充実・拡充、業務改善助成金等の各種補助金・助成金の充実や活用促進に取り組むことを、政府に対して要望するという内容をまとめたところでございます。
公益委員見解でございます。公益委員見解といたしましては、令和8年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次に掲げる金額とする。Aランク54円、Bランク56円、Cランク56円。目安小委員会としては、今年度の目安審議に当たっては、「令和7年度地方最低賃金審議会の審議結果を踏まえた論点と考え方の整理」(令和8年6月23日)で「最低賃金法第9条第2項の3要素のデータに基づき労使で丁寧に議論を積み重ねて目安を導くことが非常に重要であり、今後の目安審議においても徹底すべきである」(令和5年全員協議会報告の1(2))との基本的な考え方に基づいて、今後も中央及び地方最低賃金審議会で審議を行うべきであると合意されたことを踏まえ、特に地方最低賃金審議会における自主性発揮が確保できるよう整備充実や取捨選択を行った資料を基にするとともに、「日本成長戦略」及び「経済財政運営と改革の基本方針2026」に配意し、最低賃金法第9条第2項の3要素を考慮した審議を行ってまいりました。
労働者の生計費でございます。「持ち家の帰属家賃を除く総合」、「頻繁に購入」する品目、「1ヶ月に1回程度購入する品目」、「食料」等の指標を丁寧に見てきたところでございます。
そうした指標を確認した結果、消費者物価指数については、「持家の帰属家賃を除く総合」、「食料」、「基礎的支出項目」、「1か月に1回程度購入」する品目については、引き続き上昇局面にあるが、上昇率は昨年から緩やかになっている。一方で、昨年度確認したエンゲル係数については、令和7年は勤労者世帯で26.3%となっており、令和6年の26.5%から低下しているが、近年、上昇傾向にある。また、最低賃金に近い賃金水準の労働者の食費に関する支出の実態として、勤労者世帯のうち最も所得の低いグループについては、更に高い水準となっている。
こうしたエンゲル係数の上昇傾向は、最低賃金に近い賃金水準で働く労働者の家計に直接的な影響を与え、実質的な購買力を押し下げる要因ともなっていると考えられ、生活必需品を含む支出項目を中心とした消費者物価の上昇に伴い、最低賃金に近い賃金水準の労働者においては、生活が苦しくなっている者もいると考えられる。なお、中東情勢に対し、当面の措置として、燃料油に対する緊急的な激変緩和措置が実施されている影響等により、消費者物価指数の「総合」、とりわけ必需品的な支出項目の上昇率が一定程度押し下げられていることにも留意が必要である。こうした状況を踏まえれば、今年度においては、労働者の生計費について、最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を維持する観点から、昨年10月以降の「持家の帰属家賃を除く総合」が示す水準を一定程度上回ることを考慮しつつ、生活必需品を含む支出項目に係る消費者物価の上昇も勘案する必要がある。ただし、その上昇率は昨年より鈍化していることを踏まえる必要がある。
続きまして賃金でございます。賃金に関する指標を見ると、春季賃上げ妥結状況における賃金上昇率は、連合の第7回(最終)集計結果で、全体で5.01%で、3年連続5%を上回っている。また中小でも4.69%で3年連続4%を上回っている。
経団連の指標でございますが、大手企業で5.46%で3年連続5%を超え、昨年の結果を上回っている。また中小企業でも4.20%で3年連続4%を超えており、いずれも高水準で推移している。
その他、日商による中小企業の賃金改定に関する調査の正社員の結果では全体で4.29%で2年連続4%を超え、また20人以下の企業で3.52%となっている。
厚生労働省による30人未満の企業の賃金改定状況調査結果については、第4表①②における賃金上昇率(ランク計)は3.0%であり、最低賃金が時間額のみで表示されるようになった平成14年以降最大値であった昨年の結果を上回っている状況です。継続労働者に限定した第4表③における賃金上昇率は3.4%となっており、これも昨年の結果(3.2%)を上回った。この第4表は、目安審議における重要な参考資料であり、同表における賃金上昇率を十分に考慮する必要がある、といったような指標を確認したところでございます。
通常の事業の支払能力でございます。様々な指標を確認したところですが、ここに記載されているものをいくつかご紹介しますと、まず、業況の厳しい産業や企業の状況のみを見て議論するのではなく、各種統計資料を基に議論を行ってきたところです。経常利益については、令和6年度は資本金1,000万円以上で8.5%の増加となっており、1,000万円未満で12.7%の減少となっているが、令和5年度に比べると改善傾向でございます。売上高経常利益率については、資本金1,000万円以上では、四半期ごとで令和7年は7~10%程度で推移、令和8年の第1四半期は8.0%となっており、安定して改善の傾向にある。従業員一人当たり付加価値額について、令和4年度は2.2%増加、令和5年度は4.7%増加、令和6年度は全体で5.7%増加と、足下で改善の傾向にあるところでございます。一方で、付加価値額に占める人件費の割合である労働分配率は足下で低下の傾向にある。令和4年度で1.4ポイント低下、令和5年度で2.4ポイント低下となっております。企業規模が小さいほど労働分配率は高く、令和6年度は資本金1,000万円以上で61.4%、資本金1,000万円未満で81.5%となっているが、資本金1,000万円未満においても令和5年度と比べると1.5ポイント上昇しているが、令和4年度から3.1ポイント低下しているという状況にございます。国内企業物価指数(前年同月比)については、令和8年6月(速報値)で7.1%となっており、足下で上昇しており、品目別でみると、「石油・石炭製品」で22.8%、「化学製品」で14.4%と、特に足下で上昇の傾向にあるというところでございます。
こうした様々なデータを確認したところでございます。その他、確認したデータとしましては、中小企業景況調査、日銀短観、中小企業庁が公表した令和8年3月の価格交渉促進月間のフォローアップ調査の結果、コスト全体の価格転嫁率や労務費の価格転嫁率等について、丁寧に確認したところでございます。
各ランクの引上げ額の目安についてでございます。
最低賃金について、「日本成長戦略」等において、「最低賃金については、2020年代に全国平均1,500円という高い目標(「経済財政運営と改革の基本方針2025」)の達成に向け、官民でたゆまぬ努力を継続し、労働生産性の継続的な向上を図ることで、遅くとも2030年代前半できる限り早期に全国平均1,500円を達成する」こと、「毎年の最低賃金の引上げ額については、こうした政府の取組も踏まえつつ、法定3要素のデータに基づき、公労使三者構成の中央最低賃金審議会及び地方最低賃金審議会において、実態を踏まえた審議結果となるよう、議論いただく」こととされていることも踏まえ、公労使で真摯に検討を重ねてきたところでございます。今年の政府方針として、「投資と賃上げの好循環」を加速させるとしており、数多くの具体策が示されているところ、今後それらが実行されることが重要であり、「労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略」、「官公需における価格転嫁・取引適正化加速化プラン」、「省力化投資促進プラン」に掲げる施策の迅速な実施が期待されるなどを追記しております。一方で、最低賃金の改定額の審議に当たっては、最低賃金法第9条第2項の3要素のデータに基づき、公労使同数の委員で構成される最低賃金審議会において、丁寧に議論を積み重ねて結論を導くことが、目安額に対する納得感を高める上でも非常に重要であることから、今回の審議でもこの点を再確認し、徹底するように検討を進めてきたところでございます。その結果、①労働者の生計費については、消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は、昨年10月から今年6月までで平均2.1%、「頻繁に購入する品目」は平均1.2%、「食料」は平均4.3%、「基礎的支出項目」は平均2.2%、「1か月に1回程度購入」する品目は平均2.3%となり、引き続き上昇局面にあるが、上昇率は昨年より鈍化していることを踏まえる必要がある。
②賃金につきましては、春季賃上げ妥結状況における賃金引上げ結果に関して全体で5.01%、中小についても4.69%と、昨年に引き続き高い水準となっており、有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額(時給・加重平均)についても6.18%の引上げで昨年を上回る水準となっているような状況です。③通常の事業の賃金支払能力については、売上高経常利益や従業員一人当たり付加価値額が高い水準で推移するなど、企業の利益において改善の傾向にあることを考慮すべきである。
なお、企業において賃金支払能力等も勘案した賃金決定の結果であると解釈される30人未満の企業の賃金改定状況調査結果の第4表における賃金上昇率が平成14年以降で過去最大となっていることも、考慮すべきである。
しかし、価格転嫁率が示すように、依然として賃上げ原資を確保することが難しい企業も存在すると考えられる。
第4表と春季賃上げ妥結状況の差からも、小規模事業者は賃金支払能力が相対的に低い可能性がある。
さらに、中東情勢の影響により、国内企業物価指数について、足下で上昇している点についても留意が必要である。
そうした中で、最低賃金は、企業の経営状況にかかわらず、労働者を雇用する全ての企業に適用され、それを下回る場合には罰則の対象となることも考慮すれば、引上げ率の水準には一定の限界があると考えられる。
これらを総合的に勘案し、労働者の生計費については、消費者物価が引き続き上昇局面にある中、食料など生活必需品を含む支出項目に係る消費者物価が継続して高いことに着目するが、その上昇率は、昨年より鈍化していることを考慮する必要がある。一方、賃金については、昨年に引き続き高水準の賃上げとなっており、中小企業を含めた賃上げの流れが継続していることを考慮する必要がある。また、売上高経常利益率等の賃金支払能力に関する項目が改善傾向にある。一方、依然として賃上げ原資の確保が難しい企業も存在している。
最低賃金に近い賃金水準の労働者の購買力を維持する必要があることを考慮するとともに、賃上げの流れの維持・拡大を図り、非正規雇用労働者や中小企業・小規模事業者にも波及させることや、最低賃金法第1条に規定するとおり、最低賃金制度の目的は、賃金の低廉な労働者について賃金の最低額を保障し、その労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定等に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与するものであることにも留意すると、今年度の各ランクの引上げ額の目安(以下「目安額」という。)を検討するに当たっては全国加重平均4.9%(55円)を基準として検討することが適当であると考えられる。
各ランクの目安額については、「日本成長戦略」等において、「地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正を図る」とされていることも踏まえ、地域間格差への配慮の観点から少なくとも地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き続き上昇させていくことが必要。
こういったことを考慮し、Aランクと比較して、その上で、賃金改定状況調査結果の第4表①②における賃金上昇率は、CランクとBランクが同率となり、Aランクよりも高くなっている。第4表③では、Cランク、Bランク、Aランクの順に高くなっている。また、第4表①②③における、AランクとBランク、AランクとCランクの差は昨年より拡大している。
さらに、雇用情勢としてB・Cランクが相対的に良い状況にあること等のデータを考慮する必要がある。これらのことを踏まえれば、Aランクと比較し、Bランクを相対的に高くするとともに、Cランクを昨年度以上に高くすることが適当であり、具体的には、Aランク54円(4.5%)、Bランク56円(5.2%)、Cランク56円(5.4%)とすることが考えられる。この結果、仮に目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合は、最高額に対する最低額の比率は83.4%から84.3%となり、地域間格差は比率の面で縮小することとなる。また、地域間の金額の差についても改善することとなる。
売上高経常利益率等の賃金支払能力に関する項目が改善傾向にある一方、依然として賃上げ原資の確保が難しい企業も存在していることなどから、目安額を決めた。そのうえで、政府に対する要望として、「官公需における対応」、「労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略」の着実な実行・価格転嫁対策、「取適法対象外の取引への規制強化」、「省力化投資促進プラン」の更なる充実・拡充等、政府に対する要望もまとめております。
地方最低賃金審議会の期待等でございます。目安は、地方最低賃金審議会が審議を進めるに当たって、全国的なバランスを配慮するという観点から参考にされるべきものであり、地方最低賃金審議会の審議決定を拘束するものではない。
こうした前提の下、目安小委員会の公益委員としては、目安を十分に参酌しながら、地方最低賃金審議会において、地域別最低賃金の審議に際し、都道府県別に示される地域の経済・雇用の実態等をデータに基づいて見極めつつ、自主性を発揮することを期待する。地域間格差の是正を引き続き図ることも踏まえて、目安額が検討されたものであることにも配意いただきたいと考える。令和7年度の審議結果を踏まえて、「目安制度の在り方に関する全員協議会」において、令和8年度以降の審議に向けて、「令和7年度地方最低賃金審議会の審議結果を踏まえた論点と考え方の整理」(令和8年6月23日)をとりまとめており、同とりまとめの2(2)及び3(4)に記載された「対応方針」を踏まえた審議を行うことを要望する。中央最低賃金審議会が、地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心を持って見守ることを要望する。
それから、生活保護水準と最低賃金との比較では、昨年に引き続き乖離が生じていないことを確認しております。
最低賃金引上げの影響については、近年大幅な引上げがなされている中で、雇用情勢等の指標の状況を見ると大きな影響は確認できていないですが、令和5年全員協議会報告の3(1)に基づき、引き続き、影響率や雇用者数等を注視しながら、慎重に検討していくことが必要である。今年度も、影響率の詳細な分析や、雇用保険被保険者数、雇用保険適用事業所数等々の影響把握などを中央最低賃金審議会として行ったところであり、今後も丁寧に影響把握を行った上で、公労使で目安の検討を行うことが適当であるといったような内容になっております。
すみません、長くなりまして恐縮ですが。
○戎野会長代理
はい、どうもありがとうございました。皆様のご尽力により、小委員会報告をとりまとめることができました。重ねて御礼申し上げます。
議題1の報告としては、ここまでとしたいと思います。
続きまして、議題2「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)」についてです。
小委員会報告をもとに、答申を取りまとめたいと思います。
なお、この報告にもありますとおり、小委員会としては、政府が中小企業・小規模事業者等の生産性向上のための支援や価格転嫁対策に引き続き取り組むことなどの要望をしておりますので、今年の答申におきましても、この趣旨を盛り込みたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
それでは、答申案を事務局から配布してください。では、読み上げの方よろしくお願いいたします。
○上条副主任
では、朗読いたします。
令和8年7月28日。厚生労働大臣上野賢一郎殿。中央最低賃金審議会会長藤村博之。
令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)。令和8年6月26日に諮問のあった令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について、下記のとおり答申する。
記。
1.令和8年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった。
2.地方最低賃金審議会における審議に資するため、上記目安に関する公益委員見解(別紙1)及び中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(別紙2)を地方最低賃金審議会に提示するものとする。
3.地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることとし、同審議会において、別紙1の2に示されている公益委員の見解を十分参酌され、自主性を発揮されることを強く期待するものである。
4.中小企業・小規模事業者が持続的に賃上げできる環境整備の必要性については労使共通の認識であり、「持続的・安定的な物価上昇の下で、物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇を賃上げのノルム(社会通念)として我が国に定着」させるためにも、特に地方、中小企業・小規模事業者に配意しつつ、生産性向上を図るとともに、官公需における対応や、価格転嫁対策を徹底し、賃上げの原資の確保につなげる取組を継続的に実施するよう政府に対し強く要望する。
5.生産性向上の支援については、可能な限り多くの企業が各種の助成金等を受給し、賃上げを実現できるように、政府の掲げる生産性向上等への支援や経営支援の一層の強化を求める。特に、事業場内で最も低い時間給を一定以上引き上げ、生産性向上に取り組んだ場合に支給される業務改善助成金については、最低賃金引上げの影響を強く受ける中小企業・小規模事業者がしっかりと活用できるよう充実するとともに、具体的事例も活用した周知等の徹底を要望する。加えて、非正規雇用労働者の処遇改善等を支援するキャリアアップ助成金、働き方改革推進支援助成金、人材確保等支援助成金等について、「賃上げ」を支援する観点から、賃上げ加算等の充実を強く要望する。
6.また、中小企業・小規模事業者の賃上げの実現に向けて、「労働供給制約社会における中堅・中小企業の「稼ぐ力」強化戦略」の着実な実行により、価格転嫁・取引適正化の更なる徹底、成長志向の企業や生産性向上への支援強化、M&A・事業承継等による事業再編の推進、賃上げも促進、経営改革等のための伴走支援体制の強化等を推進することを要望する。その際、中小企業・小規模事業者がこれらの施策を一層活用できるよう、周知等を徹底するとともに、運用の改善を図ることを要望する。
7.価格転嫁対策については、令和8年1月から施行された取適法・振興法を着実に執行するため、公正取引委員会・中小企業庁・事業所管省庁の連携や取引Gメンの拡充等を通じた執行体制強化と、現場への浸透に向けた一層の周知徹底を行い、あわせて、地方組織を含めた公正取引委員会の体制面の抜本的な強化を図ることを要望する。
8.また、取適法対象外の取引への規制強化に向け、独占禁止法上の告示、知的財産権等の適切な取引に関する指針等の周知・遵守徹底を図ることを要望する。
9.さらに、BtoC事業では相対的に価格転嫁率が低いといった課題があるため、消費者に対して転嫁に理解を求めていくよう要望する。
10.地域経済に与える影響が大きい官公需において、「官公需における価格転嫁・取引適正化加速化プラン」により、2027年度末までに、実勢価格を踏まえた予定価格の形成や低入札価格調査制度又は最低制限価格制度の導入・適用等を100%実施することを要望する。また、価格基準の見直し、進捗状況の見える化や地方公共団体への伴走支援等も実施することで、価格転嫁・取引適正化を強力に推進することを要望する。
11.「省力化投資促進プラン」の更なる充実・拡充を図るとともに、業種ごとのKPIの達成状況についてフォローアップを行って進捗を見える化し、実績に応じて更なる対応策を検討することを要望する。
12.また、中小企業省力化投資補助金、デジタル化・AI導入補助金、業務改善助成金等の各種補助金・助成金や、省力化ナビ、各都道府県の生産性向上支援センター等の業種横断的なサポート体制の充実及び活用促進に取り組むことを要望する。
13.また、いわゆる「年収の壁」への対策として、昨年7月に拡充したキャリアアップ助成金による事業主への支援や、今年4月から開始した被扶養者の新たな認定方法の取扱いの円滑な実施に取り組むことを要望する。加えて、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
以上でございます。
〇戎野会長代理
ただいまの答申案について御意見などございますか。
(異議なし)
よろしいでしょうか。ありがとうございます、ではこの案のとおり答申を取りまとめたいと思います。岸本労働基準局長にお渡ししたいと思いますので、答申を用意してください。
(会長代理より局長に答申文を手交)
それでは、岸本労働基準局長から一言、御挨拶をお願いしたいと思います。
○岸本労働基準局長
一言、御挨拶申し上げます。
本年度の目安につきまして、答申を取りまとめていただき、誠にありがとうございました。
本年度の調査審議におきましては、最低賃金法に規定された3要素を丁寧に考慮していただくとともに、地域間格差の是正にも配慮・留意いただきながら、関係者の納得感が高まるように多岐にわたる論点について真摯に御議論を尽くしていただきました。また、先月23日の「目安制度の在り方に関する全員協議会」で取りまとめていただいた内容も踏まえた議論を行っていただき、目安を示していただきました。
今後、答申を各都道府県労働局に伝達いたしまして、各地方最低賃金審議会における地域別最低賃金額の改定審議が円滑に進められるようにしてまいりたいと考えております。
皆様方の御尽力に心より感謝申し上げまして、御礼の御挨拶とさせていただきます。長時間にわたる御審議、誠にありがとうございました。
〇戎野会長代理
ありがとうございます。
それでは、他に何かございますか。よろしいでしょうか。
では、続きまして、議題3「その他」についてです。資料について、事務局からご説明をお願いします。
○八木賃金課長補佐
事務局でございます。
資料No.1をご覧ください。「目安答申後の地方最低賃金審議会における審議の流れ」という資料でございます。
めくっていただいて2ページでございます。令和7年度を例としました、目安答申後の地方最低賃金審議会の審議の流れの全体像となっております。
中央最低賃金審議会において先ほど答申いただいた地域別最低賃金額改定の目安は、地方に示されまして、地方最低賃金審議会での地域別最低賃金の審議が行われます。
地方最低賃金審議会では、地域別最低賃金に関する審議のほか、特定最低賃金に関する審議を行っております。昨年度は8月から11月頃にかけて審議が行われまして、翌年の3月までに発効をしております。
3ページは、地方最低賃金審議会において議論の結果決定された地域別最低賃金額の一覧になります。
4ページ以降は、労使のイニシアティブにより設定される、特定最低賃金の概要や制度の紹介等の資料になります。
少し飛んでいただきまして、8ページ及び9ページになりますが、特定最低賃金の決定等の必要性の有無に関する調査審議の運営につきまして、これまで中央最低賃金審議会における議論の結果、労使で合意されてきた事項の紹介になります。実際の必要性の有無に関する調査審議に当たっては、これらの事項を参考に、関係労使が参加することにより、より実質的な審議が行われることが期待をされております。
10ページ、11ページになります。特定最低賃金の審議における労使イニシアティブの促進に向けた参考事例をまとめたものでございます。特定最低賃金は労使のイニシアティブにより決定等がされるものです。そのため、これらの事例を参考に、労使イニシアティブが促進されることは、特定最低賃金がその制度趣旨に沿って運用されることに資するものと考えられます。
資料の説明は以上でございます。
○戎野会長代理
ありがとうございました。その他、何かご意見・ご質問等ございますか。
では、土井委員お願いいたします。
○土井委員
ただいまご説明いただいた今後の流れの中の特定最低賃金に関して、使用者側から一言申し上げたいと思います。
特定最低賃金は、ご承知のとおり、地域別最低賃金を上回る水準が必要と認められている場合に、関係労使の申し出によって、特定産業の基幹的労働者に対して、任意に設定されるものであります。全国各地域で決定され、原則として全ての労働者に適用される地域別の最低賃金とは法的位置づけが全く異なるものだと理解しております。また、制度のわかりにくさや煩雑さ、更には人材確保や賃金制度の柔軟性に対する制約となりうる点など、使用者側にとっては、多くの懸念材料を含むものと認識しております。特定最低賃金の新設、改定または廃止については、資料にありましたとおり、関係労使の申し出に基づいて、各地方最低賃金審議会の調査審議を経て行われるものでございます。特定最低賃金の状況を見ますと、2025年度に設定されている特定最低賃金223件のうち、地域別最低賃金額を下回っているものが111件にのぼっており、地域別最低賃金が適用されております。
このように、実質的に機能していない特定最低賃金については、関係労使に意見聴取を行ったうえで、各地方最低賃金審議会において、速やかに廃止を検討するべきだと考えております。
一方で、健全な競争条件の確保、その産業の魅力向上、あるいは人材の確保・定着を促す手段として、特定最低賃金制度を積極的に活用していきたいという意向があるということも承知しております。いずれにしても、各地域の関係労使のイニシアティブによって設定される特定最低賃金については、関係労使にとって、納得感のある結論が得られるように当事者間で検討を重ねていただきたいと思っております。
以上でございます。
○戎野会長代理
はい、ありがとうございました。では、仁平委員お願いします。
○仁平委員
はい、ご説明ありがとうございました。私も特賃について。
人手不足が社会課題となっている中で、特賃をより積極的に活用すべきだと労側としては考えております。各地域で成長が期待される産業、日常生活を支える産業をはじめとする、産業の魅力を高め、人材の確保・定着を促し、産業の持続的発展を図るための手段として、特定最低賃金は役立つものだと考えております。具体的に、3点申し上げたいと思っております。
一点目でございますが、ご説明いただいた資料の一番最後、10ページ11ページに参考事例が載っております。色々な例がありますけども、とりわけ、最後の青くなっている事例は、望ましくない事例として掲載しているという理解で良いのか、これについては、事務局に確認させていただければと思います。こうした望ましくない事例をなくすためには、関係労使がしっかりと会話し、建設的な議論をすることが重要であって、そのために、本省及び地方労働局としてもっと管理をしていただきたいというお願いが一点目でございます。
二点目であります。土井委員もご指摘されておりましたけれど、7ページに地域別最低賃金に追い越された特定最低賃金の件数というのが載っております。私が問題にしたいのは、なぜそうした事態に陥ったのかということでございます。それは、当該産業労使が必要なしと判断したわけではないというふうに考えています。また、昨年も申し上げた話ですが、データに基づくことなく、一方的に必要なしと結論づけられるような話を私は依然として聞く機会がございます。当該産業労使の意向が反映され、データに基づく必要性審議と適切な金額改定が行われていれば、こうした自体に陥っていなかったのではないかというふうに考えています。特定最低賃金の活用を促進するために、運営方針を見直すことも検討すべきではないでしょうか。
三点目でございます。良質な雇用によって、魅力を高め、産業振興や産業集積に取り組む観点から、地域の産業労使が特定最低賃金を設定することに対して、地域産業活性化につながる政府の支援策を求めたいと思います。
以上、三点でございます。
〇戎野会長代理
はい、ありがとうございました。事務局からございますか。
〇野澤賃金課長
ありがとうございます。今ご質問いただきました、最後の青い事例でございますが、これはタイトルにございますとおり、労使双方の歩み寄りが十分に行われなかった例ということで、好ましくない例として、記載をさせていただいたところでございます。
〇戎野会長代理
はい、ありがとうございます。その他なにかございますか。よろしいでしょうか。
それでは、これをもちまして、第75回中央最低賃金審議会を終了いたします。本日は大変お疲れ様でございました。

