- ホーム >
- 政策について >
- 審議会・研究会等 >
- 社会保障審議会(年金数理部会) >
- 2026年10月6日 第111回社会保障審議会年金数理部会 議事録
2026年10月6日 第111回社会保障審議会年金数理部会 議事録
年金局総務課首席年金数理官室
日時
令和8年10月6日 13時00分~16時00分
場所
TKP新橋カンファレンスセンター ホール14G
出席者
- 委員
-
- 寺井部会長
- 猪熊委員
- 小野委員
- 日下部委員
- 駒村委員
- 佐藤委員
- 庄子委員
- 嵩委員
- 松本委員
- 基調講演者
-
- 堀 有喜衣 独立行政法人労働政策研究・研修機構 統括研究員
- 山田 久 法政大学経営大学院 教授
議題
「各世代における就労状況及び就労意識等と年金財政」
議事
○植田首席年金数理官 定刻になりましたので、ただいまから第111回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
審議に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。資料は、議事次第、委員名簿、座席図のほか、資料1「基調講演資料『労働市場はどうなるか』」、山田久氏の提出資料でございます。
資料2「基調講演資料『若者から就職氷河期世代までの働き方』」、堀有喜衣氏提出資料でございます。
そのほか、参考資料として事務局の提出資料がございます。
次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、全委員が御出席されております。
猪熊委員、嵩委員におきましては、オンラインでの御参加となってございます。
また、前回の部会開催以降に、事務局の異動がございましたので、御紹介させていただきます。
年金局長の巽でございます。
審議官の林でございます。
総務課長の重永でございます。
年金課長の水野でございます。
資金運用課長の原田でございます。
最後に、私、植田が首席年金数理官に着任してございます。
なお、本日は基調講演中にZoomのウェビナーのQ&A機能を用いまして、視聴者からの御質問を受け付けます。
受け付けた御質問は、後半の意見交換の中で御紹介し、講師に御回答いただく予定でございます。
それでは、以後の進行につきましては、寺井部会長にお願いいたします。
○寺井部会長 委員の皆様には、御多忙の折、お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
本日の議題は「各世代における就労状況及び就労意識等と年金財政」です。
本日の年金数理部会は、昨年同様、動画配信によるオンラインセミナー形式で開催します。
これまでも、年金数理部会ではセミナー形式で部会を開催することにより、公的年金財政をめぐって、数理的な視点を中核としながら幅広く正確な情報を発信し、多くの方々、とりわけ公的年金財政に関心のある方々に理解を深めていただいてまいりました。
本年度は、公的年金財政の将来推計を行う上で重要な前提となる、若年世代からシニア世代までの各世代の就労状況や就労意識等をテーマとしました。
そこで、外部講師として、法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科の山田久教授と労働政策研究・研修機構統括研究員の堀有喜衣氏をお招きし、お話を伺うこととしました。
その後、後半では、お二人の講師を交えて、委員全員での意見交換を行うこととします。
お二人の講師への御質問は意見交換の中でお願いいたします。
カメラの方がいらっしゃれば、ここで退出をお願いいたします。
(報道関係者退出)
○寺井部会長 それでは、事務局より今回のテーマの選定趣旨と講師の紹介をお願いいたします。
○植田首席年金数理官 年金数理部会では、令和6年財政検証のピアレビューの報告書を取りまとめる中で、公的年金の持続可能性を高め、年金給付を充実させていくためには、女性や高齢者の労働参加の進展や労働分配率の向上に向けた関連施策を進めていくことが必要という指摘をしてきたところです。
そこで今年度のセミナーでは、若年世代からシニア世代までの各世代の就労動向や就労意識などにつきまして、有識者の先生方にそれぞれの専門的な見地から御講演いただくこととしました。
関連して、若年世代における結婚・出産の動向や近年増加している外国人の就労動向、AIが雇用に与える影響等につきましても、講師の方々に御紹介いただきたいと考えまして、今回のテーマとさせていただきました。
次に、講師の山田久教授と堀有喜衣様の略歴を御紹介させていただきます。
まず、山田様は、株式会社日本総合研究所の副理事長などを経まして、2023年より法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科の教授を務められておられます。
また、山田様は、マクロ経済分析や経済政策及び労働経済学を研究されておられまして、労働政策審議会労働政策基本部会委員などを務められております。
次に、堀様は、労働政策研究・研修機構の主任研究員を経まして、現在、統括研究員を務められておられます。
また、堀様は、教育社会学の分野で学校から職業への移行研究や、若年者雇用等の研究をされており、社会保障審議会年金部会・生活困窮者自立支援及び生活保護部会、労働政策審議会職業安定分科会委員などを務められております。
以上でございます。
○寺井部会長 それでは、山田氏から基調講演をいただきます。演台への移動をお願いいたします。
それでは、よろしくお願いいたします。
○山田氏 法政大学の山田でございます。本日は、この場にお招きをいただきまして、ありがとうございます。
私のほうからは、年金財政の前提になる雇用動向ということを、全般的にお話をさせていただきます。
特に若い方及び女性の問題に関しましては、後ほど堀先生のほうでお話があると思いますので、それとかぶらないような形で、お話をさせていただきたいと思います。
内容は、こちらに出ておりますけれども、最初に全体をざっと見た上で、特に2つ目は、シニアの就労の問題、それから外国人就労の問題、それと昨今非常に大きくなっております、生成AIをはじめとした新技術の雇用への影響ということで順にお話をさせていただきます。
まず、現状ですけれども、こちらには、2つ表が載っておりますけれども、一言で言うと、非常に人手不足というのが深刻になってきているということかと思います。
これは、日銀短観の雇用人員判断DIという、下に行けば行くほど、雇用が不足していると答えている事業者数が多いということのわけですけれども、産業別のばらつきというのはありますけれども、全ての業種において不足の状態になっているということです。
特に、いわゆる現場系の方が多いところで、運輸あるいは宿泊、飲食、それから建設などもそうですけれども、そういうところの不足感というのは非常に強いということになっております。
では、何で人手不足かということなのですけれども、これは、直感的に言うと、人口が減っているから当たり前でしょうということが言われるわけです。もっと言いますと、もっとというか少し専門的に言うと、いわゆる生産年齢人口が、もう既に1990年代にピークアウトしたわけですから、当然深刻になっていくだろうということだと思うのですが、これは、皆さん方は御案内かと思いますけれども、人口と生産年齢は、当然違いますし、労働人口とも違うということであります。
労働人口というのは、働いている意思のある人でありまして、ですから、実際に就労している人プラス失業者が入るわけです。この失業者というのは、極めて主観的な統計でありまして、本人が仕事を探しているよと答えれば、職がない場合は失業者ですけれども、そうでなければ失業者にカウントされないということですので、労働人口というのは、かなりそういう不安定なものではあります。
ただ、それは働く意思のあるということを表明しているわけで、これがやはり重要だということなのですけれども、右側の図表を御覧いただきますと、労働人口は、実は増え続けております。一時、コロナのときに一旦落ちてマイナスになったのですけれども、ここ数年かなり、逆に言うと順調に増えているということでありまして、実は、労働人口が減っているから人手不足が深刻化しているという単純な話ではないということです。
それ以外の要因というのを、後ほど、もう一回確認するとして、改めて労働人口の動向というのを確認してみますと、左側に、いわゆる労働者の属性別の労働人口の推移を示しております。
一番上にあるのが、青の実線ですけれども、16歳から64歳、どこまでを現役というかは、あれですけれども、今は、一応65歳まで就労することが基本的に想定されているということでここまで取りますと、これは、もうずっと減り続けているわけですね、極めて早いペースでずっと減ってきて、さらに今後落ちていくということです。
実は、それを補う形で女性がかなり増えていると、特に2010年代の後半以降ペースが加速しているということです。
もう一つは、その下にある65歳以上の男女ともに増えている。ただ、65歳以上の男性については、頭打ち感が出ているわけですけれども、要は、女性が現役世代もそうですし、シニア世代も、実は順調にまだ増えているというのが実態です。
M字カーブというのが有名なカーブですね、真ん中ほどにあります。横軸に年齢、縦軸に労働力率ですね、人口に占める労働力人口の割合ですけれども、これは、ほぼ解消に向かっているということなのですけれども、ただ、これを見ると、例えば海外で見ると、スウェーデンとか、あるいはドイツなどに比べますと、中高年層というのがまだ低い状況にありますので、この辺りがまだ緩やかに上がっていく余地もあるし、実際そういう過程にあるということだと思います。
もう一つ、労働人口が伸びている、統計上はこの中に入っているということなのですけれども、もう一つの塊として重要なのは、言うまでもなく外国人労働者の方々がかなりのハイペースで入って来られて、日本に来られているということですね。
右の端にありますように、一時外国人労働者の方は頭打ちだという声もあったのですけれども、結構、最近は順調に入ってきているということで、この辺りが、労働力人口が増えている要因だということであります。
では、人手不足が労働力人口の要因ではない、いわゆる一般的に思われているような要因ではないとすれば、それ以外に要因がどこにあるかといいますと、大きく2つあるのではないかなと思います。
1つは、生産性の問題であります。左側にグラフが載っておりますけれども、これは産業ごとに、縦軸に付加価値生産性、従業員1人当たりの付加価値額を取りまして、横軸には、1ページ目に見ました雇用人員判断DIです。これは、左側に行けば行くほど不足感が強いということですけれども、この2007年ぐらいを見ますと、あまり明確な相関関係はなかったのですね。若干何となく右肩上がりなのですけれども、決定係数などを見ますと、ほとんど無相関ということなのですけれども、これが2017年度あるいは最近の2022年度を見ますと、これは、かなり順相関が強い。要は、生産性が低い産業ほど、人手不足感が強いというのが、かなりはっきり出てきているということです。
これは、分かりやすく言いますと、一定の売上を伸ばすために、生産性が高ければ少ない人員でいいわけですけれども、低ければたくさん要るという、そういう話ということだと思います。
逆に言うと、生産性を上げていけば、人手不足感というのは解消する余地は、まだまだ十分あるということになると思います。
もう一つは、雇用のミスマッチというものです。右側を御覧いただきますと、これは就業率と失業率と有効求人倍率というものが載っていますが、特に下のほうの求人倍率と失業率というのを見ますと、基本的には逆相関にあるのですが、水準を見ると、1970年代ですね、オイルショックの直前ぐらいというのは物すごい人手不足で、有効求人倍率が1.5倍台半ばぐらいですね。このときの失業率は1%ぐらいで非常に低かったのですが、最近有効求人倍率が、やや、どちらかというと、ハローワークを使わないというのが増えてきているというのもあって、若干落ちてはいますけれども、恐らく労働需給の引き締まりというのは、1970年代の頭にほぼ匹敵する状況なのだと思いますが、失業率を見ていただくと、2%の半ばということで、実は、これだけ人手不足感が強いのに、失業率が2%の半ばあるというのは、やはり少し高いという感覚ではないかなと。要は、これはミスマッチなのですね。働きたい人がいるにもかかわらず、なかなか職が見つからないという、そういうことがあるということかと思います。
これは、もう少し詳しく見ているのですけれども、労働生産性は、これも細かくやっていきますと、少し込み入った話になってしまいますけれども、生産性を考えるときに、実は付加価値生産性あるいは名目生産性というものと、実質労働生産性ということを2つ分けて考える必要があります。実は、局面によって、その生産性が低いということの意味合いが変わっております。
日本は、労働生産性が低いという議論はよくされてきました。普通、この議論をやるときに、マクロでするときは、実質ベースの生産性を考えるのですね。
ところが、ここで見ていただきますと、普通は時間当たり実質労働生産なのですけれども、かなり順調に上がってきたというのが実態なのですね。
これは、ここにはデータはありませんけれども、海外と比較しても、日本は、時間当たり実質労働生産性というのは、かなり順調に回復してきたというのが、90年代半ばから、つい最近までの話だったのです。
ところが、日本だけデフレでしたので、いいものをつくっても安くしか売りませんので、そうすると、薄利多売のビジネスをつくらないと駄目なのですね。だから、そういう中で、先ほどあった付加価値生産性が伸びない、だから薄利多売のビジネスを回すために多くの人がいるという、そういう状況でした。
ところが、ここ5年ぐらいというのは、御案内のようにコロナ禍以降、これは、マクロ的に世界的に大きく変わってきて、はっきり言いますと、もうインフレの時代に入っているということだと私は思っておりますけれども、そういう意味では、値上げができるようになってきたのですね。
ところが、ここで問題になっているのが、逆に実質労働生産性の伸びが鈍化してきているということで、これは後ほど言いますけれども、世界的に見たときに、日本は、やはりデジタル化ということで、かなりまだ遅れているということが、その辺りの背景にあります。後ほど、この話はしたいと思います。
もう一つのミスマッチの問題なのですけれども、これは、違う指標で確認をしておりますけれども、要は、今は、ここに3つのグラフが載っておりますけれども、企業の求人数が、足元は少しハローワーク以外に流れているということもあって、若干減少傾向にありますが、求職者数ですね、働きたいという求職票を出している人よりもはるかに多い状況が続いているのですね。まさに売り手市場という状況になっているわけです。
ところが、就職件数がどんどん下がっているということでありまして、まさにここに、働きたい人、雇いたい人はたくさんいるのですけれども、実際の就職に結びついていないと。これをミスマッチということで原因を説明するわけですけれども、ミスマッチというのは、いろいろな要因があるのですけれども、大きく分けると、恐らくスキルのミスマッチと、労働条件のミスマッチというその2つなのだと思います。
2025年のデータですが、労働力調査の詳細集計というのがありまして、そこに、こういう細かい理由を聞いているものがあります。
ここでは、失業者だけではなくて、非労働力人口のうちでも就業希望の人ですね、最初に言いましたが、失業者というのは極めて主観的なものですから、これをもう少し広げているわけですけれども、これを見ますと、数字ははっきり言われているものだけで集計しているわけなのですけれども、ざっくり言いますと、男性はスキルのミスマッチが結構多いのですね。それで、女性が労働条件のミスマッチが多いと、全体で見ると、労働条件のミスマッチの原因というのが、ざっくりと恐らく3分の2ぐらいを占めているということです。スキルのミスマッチというのは分かりやすいのですが、労働条件のミスマッチというのは、これはいろいろあります。賃金が合わないとか、働きたい場所が合わないとか、あるいは介護・育児というのは、日本は、これがミスマッチの要因になりますけれども、私が長く調べていますと、北欧などに行きますと、原則これはないわけです。これが政府の責任ということになりますから、そういう意味では、これもミスマッチの条件になってきているということで、端的に言いますと、日本の働き方というのは、なかなか企業の都合でつくってきた結果、これだけ制約の多い労働者が増えているにもかかわらず、なかなかそれに合った働き方が提供できていないという辺りが、このミスマッチの背景にあるということが言えるのだと思います。
少し長くなってしまいましたけれども、それを前提に個別の論点に入っていきますけれども、まず、シニアです。見ましたように、シニアの就労はかなり増えてきています。男性が、この先どんどん加速するかというのは少し難しいかもしれませんけれども、女性のシニアが働いていくというのは、かなりまだまだ可能性があるということかと思います。
近年の状況を見ますと、基本的には、左にありますように、60歳以上とここでは見ていますけれども、ずっと60歳以上の就業者は増えているわけですけれども、これは高齢化で、もともとの母集団である高齢人口が増えているということもありますけれども、注目すべきは、就業率が、特にこの10年、20年、着実に上がってきたということだと思います。
こういった背景には何があるかといいますと、これもその整理ということになりますけれども、1つは、年金が関係ありますけれども、年金支給年齢が引き上げられてきたということや、それとセットでしたけれども、企業に対して、かつては定年60歳だったのが、65歳まで順次、努力義務から今は強制法規ということだと思います。さらに、今は70歳まで努力義務で就労の受け皿をつくってくれという話になっている、こういう政策的な支援ということが当然あるということかと思います。ただ、ベースにあるのは、この2つかと思います。やはり、健康年齢が延びてきたという話です。
この話でよくエピソード的に語られるのは、サザエさんに出てくる波平さんは何歳ですかという話がありますが、答えは54歳だったわけですけれども、戦後つくられた時期というのは、定年直前というのは、ああいう形だったと。今、若い学生さんに聞きますと、74歳ですかという答えになってくるわけでありまして、まさに見栄えだけではないですけれども、実際に非常に元気になっている。
もう一つは、やはり人手不足ですね、企業自体に人がいないわけですから、地方などの話を聞いていますと、本当に人がいないという話を聞きます。この辺りにシニアが就労しているということです。
この先を見ても、人口動態は言うまでもないですけれども、このように変わっていく中で、まさに60歳以上がマイノリティではなくてマジョリティになっていく、そういう人口動態が起こっているということです。
量的には、そういう意味では、働いている人は増えているのですけれども、一言で言いますと、質的にシニアが十分活躍できているかというと、まだまだということかと思います。
1つは定年ですね。明確というか、かなり強い形で60歳あるいは65歳ということで、定年が慣例としても、ある意味、制度的にもビルトインされている国というのは、日本ぐらいというと言い過ぎなのですけれども、アメリカは基本的にこういうものはありませんし、ヨーロッパは慣行的にはあるのですけれども、EU全体では、これはなくそうという話になっているわけで、日本ほど明確に、こういうことが見えないわけですけれども、ただ、これをまさに延ばしていこうということですが、その結果、70歳以上まで働ける企業は4割を超えるのですが、では、定年を60歳以上にしている企業はどれぐらいあるかというと、徐々には増えているのですけれども、例えば65歳定年というと24%ぐらいにとどまっているということです。
まさに継続雇用を、一旦60歳でリセットして、有期雇用として労働条件をいろいろ変えて、65歳まで働いていくというのは、まだまだ中心だということです。
そのときに賃金が、平均的には、やはり6割、7割減少するというのが、現状かということです。徐々にこの辺りは、変わっては来ているのですけれども、その変化というのは緩やかなものということかと思います。
そうしますと、先ほども言いましたように、60歳以上の人口というのは、10年ぐらい経ちますと、恐らく働いている人の3分の1ぐらいになるのですね。そうすると、この人たちのモチベーションが低いというのは、組織としてどうなのという形になってくるのですけれども、残念ながら60歳以上の方のモチベーションというのは、大きな課題というのが残っております。
特に60歳前半の方々のモチベーションというのは、大きく低下しているという状況であります。これは、要は、企業は義務的に雇わざるを得ないわけで、もともと企業として基本的にそこまで活躍してもらおうと思って人材育成とか配置をしてきていないという結果ということでもあるのですけれども、こういう問題がまだ残っています。
65歳以上になりますと、これは義務ではないので、結構モチベーションは回復するのですけれども、絶対数も減りますから、それでも、まだモチベーションが低いという人たちもかなりいる。やはり賃金の問題というのは残っております。
明確にその辺りが見えてくるのが、今、御覧になっている年齢別の賃金カーブ、これは30歳代を100としたときに、年齢別の賃金を平均的に見たときにどうなるかということなのですけれども、日本が本当に特異なのは、50歳代が上がるのですけれども、がくっと60歳代で下がると。
これは、慣例的に60歳定年ということを前提に人事の仕組みをつくってきたわけでありまして、それをなかなか急速に変えることができないというのが実態だと思います。その辺りが結果として残っている。
欧米の場合は、基本的に技能とか、仕事の価値に応じて賃金を決めていく、俗に言うジョブ型が基本になっている。日本は、特に正社員の場合は、いわゆるメンバーシップ雇用の中で、長期の中で個人の貢献度と、あと、総人件費、賃金をバランスさせるということですので、こういう違いが出てくるということは、これは教科書的な説明でありますけれども、原則そういうところがあるということかと思います。
ただ、これは、徐々にいろいろと変わってきておりまして、本当に人がいないので、やはりシニアを活躍させようということで、単純に人件費、シニアの賃金を上げますと、多くの経営者というのは、特に中小企業の経営者は、やはりそれでも、もともと人件費の負担に悩んでいると、最低賃金が上がってくるし、いろいろな状況の中で、ですから、それは後ろ向きということになるのですけれども、これは、内閣府の調査、経済財政白書、去年、一昨年ですかね、こちらで分析がされていますけれども、人件費は上がるのですけれども、実は、意外に営業利益率が上がるケースもあるということで、ある意味、人件費が上がるのであれば、それに応じた様々な見直しを、人材活用の見直しとかビジネスの見直しをすることによって、必ずしもマイナスではないということです。少なくともマイナスにはなっていないと、営業利益率は変わらないということがあるということかと思います。
ただ、ミクロで考えますと、シニアに活躍してもらおうというのは、一見良いようには見えるのですけれども、実は若い人たちにとっては少しマイナスになるケースもあります。例えば、いわゆるシニアの人たちが重要なポストに位置づけると、あるいは年功的なカルチャーが残っていますと、なかなか若い人たちが、自分が発揮できないということで、その辺りの矛盾ということがあるわけなのですけれども、1つの突破口というのは、働く場を変えるということなのではないかと思います。あるいは、若いときに実は転職をした経験のある人というのは、この統計を見ますと、実は65歳以上ですね、65歳以上というのは、義務的な雇用ではありませんから、あくまで労使が合意して雇用をした、あるいは働いたということになりますから、そうすると、実は、それまでに転職した経験があるか、ないかによって就業率というのは、かなり明確に差が出てくるのですね。
恐らく、これは様々な要因があるのでしょうけれども、大きくは2つかなと思います。それは結果論でありまして、それだけ現役世代のときに、いろいろな技能を身につけたり、それなりの、いわゆるエンプロイアビリティがあるからこそ、結果として転職できたという話、転職しているというのは、その証明だというのもありますけれども、実は、もう一つあって、幾ら優秀な人でも新しい組織に入ると、非常に面食らうというか、特に大手企業で長く働いていますと、違うところにいきますと、カルチャーが違うと、特に今の中高年世代だと、結構いろいろなサポートを若い人がやってくれたみたいな経験もあって、そのままの調子でやってしまうと総スカンを食らうわけですね。だから1回転職をすると、なかなかカルチャーは違うのだなと、昔のやり方ではやっていけないなということが分かるわけで、そういう意味では、対人スキルみたいなことが、ある意味上がるという側面もあると思います。
要は、シニアで働き続けようということになりますと、いきなりシニアになってから云々という話とか、専門スキルを伸ばせばいいみたいな、そんな単純な話ではないわけですね。やはり、総合的な人間力の話とか、あるいは若いときからそういう意識をしてスキルをつくっていかないと、いろいろな経験を積んでいかないと駄目だということもあるわけですね。あるいは企業としても当然、そういう年功的な、少なくともカルチャーみたいなことは変えていくようなことはやっていかないと駄目だと、その辺りがあるのだと思います。
続きまして、外国人就労の話であります。
冒頭に言いましたように、外国人労働者の方は、ここ数年かなりハイペースで伸びております。2025年10月時点で260万人ということで、大体就労者の割合は、少し前まで1%ぐらいと言われていたのが、今は2%から3%にだんだん近づいてくるという状況になってきているということだと思います。これは、特に中小零細で人手不足ですから増えているという状況です。
かつては、技能実習生と、あとは資格外就労というのは、いわゆる留学生の方々のアルバイトです。これが特に2010年代の後半というのは増えたのですけれども、その間に大きな制度改正がありまして、最近は特定技能と言われる資格で働く人が増えています。
国別には、昔は中国の方が多かったのですが、最近はベトナムの方が増えていると、ベトナムの方が多いのは、結構親日の国民性とか、結構、ある人が来ると、その後にまた来るみたいな、そういう傾向もあるみたいです。
これを見ていますと、国によっては、例えばインドネシアなどは、いろいろな国に人材がいっているのですけれども、ベトナムは結構日本に来てくれるという、そういう傾向があるということです。
業種別には、やはりここにありますように、建設とか、人手不足の産業で増えているということかと思います。
この先どうなるかということで考えていくときに重要になってくるのが、外国人の方の受入れの制度。外国人労働者の受入れの制度というのは、基本的には、今も貫いているわけです。いわゆる単純労働者の方は受け入れられませんと、あくまで技能のある、スキルの高い人を受け入れている、この原則は今も変わっておりません。
ただ、従来は人手不足を理由に入れるということは、制度上はやってこなかったのですけれども、2019年の制度改正以降、これを前面に打ち出した特定技能ということを導入したということです。
特定技能というのは、単純労働かそうではないかというと、そうではないと、熟練のほうに位置づけられるのですが、実態的には、中間的な形態と言っていいと思います。これは、世界のどこの国を見ても完全に自由に外国人の方を受け入れているという国は、制度的には少なくともないということです。実態的にはどうかというのは、いろいろあるのですけれども、日本もある意味、それに乗っかってやってきているわけですけれども、ただ、人手不足ということを数年前に前面に打ち出していると。
もう一つ、これは、来年度から変わるのですけれども、技能実習というのは長くあって、もともとは外国人の方に日本に来ていただいて、日本の技能を身につけていただこうという国際貢献という建付の中で導入された制度ですけれども、なかなか実態的には労働力不足を補うために扱われてきたというのは、よく言われている話です。
残念ながら幾つか、少し目立つようなところで、いろいろな問題が起こったものですから、この制度は、やはり見直そうという話が出てきていまして、その代わり、明確に育成というところを前面に打ち出して育成就労制度に変えようということです。
ただ、この導入によって、実は外国人労働者の受入れの仕組みというのは、かなり基本的に整備されてきたなと、私は感じております。
一旦、ある程度、育成就労の形で入ってきていただいて、日本のこととか、いろいろなことを知っていただいて、中には、全員ここで就労される、帰っていかれる方もあるということだと思うのですけれども、その中で、お互いに御本人も納得される、企業もこの人はいいなという人を特定技能という形で、技能労働者として受け入れていくという、少なくとも制度とその枠組みというのは出てきているのではないかなと思います。
これは、世界的に見ても、例えば、つい10年ぐらい前というのは、日本の賃金というのは、為替が強いということもあって、アジアの中ではかなり高い状態だったわけですけれども、今や韓国のほうが、平均賃金が高いという状況にもなっております。韓国も非常に労働力不足で、制度的には外国人の受入れ方というのは、かなり進んだ制度を入れているということで、日本も、そういう意味では、外国人の方にしっかり来ていただこうと思いますと、しっかり制度を整備していかないと駄目だと、そういう流れに沿っていってということかと思います。
外国人の労働者の話でいきますと、多くの人が入ってくると、生産性が悪化するとか、いろいろな話があるのですけれども、それは受入れ方がうまくないと、そうなっていくのですけれども、少なくとも制度的には、少し違う考えだと思います。
これは、サンプルの関係で、あまり明確に出ていないところもあるのですけれども、要は、ここ数年の変化というのは、やはり長く働いた現場系の人は、やはり技能が身について、それなりに賃金が上がっていくと、そういう仕組みに徐々に変わってきていると、あるべき方向に少しずつ変わってきていると。もちろん、ミクロでいろいろな問題が起こっておりますけれども、そういうことなのではないかなと思います。
これは、まさに非常に大事な話でありまして、外国人労働者を単なる人手不足と考えるのではなくて、日本で長く働いていただける、まさに技能労働者として受け入れていくということが大事です。これをいいかげんにやっていくと、本当にいろいろな問題が起こるわけですね。
当たり前ですけれども、人は人として扱わなければ、当然な話であります。かつて戦後すぐにスイスで、ヨーロッパというのは人手不足で、戦後復興の中で多くの外国人労働者を入れたのですが、スイスのマックス・フリッシュという作家が言っていますけれども、我々は労働力を呼んだつもりが、実は人間だったという、そういう表現があるわけで、まさにそのとおりでありまして、人としてしっかり社会の一員として受け入れている、そういう体制がどうつくれるのかということなのだと思います。ここは、今、いろいろやっておるのですけれども、まだ、課題が残っているところではないかと思います。
最後に、技術の影響ということですね。残り10分ぐらいだと思います。
これは、生産性向上というところと関わってくるわけであります。これは、AIだけではないわけですけれども、いわゆる新技術を導入したときには、基本的には雇用を代替するか、あるいは雇用を補完するかと、英語の文献などで言いますと、オートメーションか、オーグメンテーションかという、そういう議論がされております。
これは、いろいろな議論もありますし、いろいろな研究というのがどんどん進んできているのですけれども、1つ、これは、ILOがワーキングペーパーとして発表した、2023年に出したものです。その後、毎年ですかね、何年かに1回、そのデータ自体を更新しておりますけれども、ベースは2023年に出されたものです。
それは、どういうことをやっているかといいますと、AIの導入によってどれぐらい、要は雇用がまさに代替されるか、補完されるかと、職種別に分析をしたものであります。
これは、結果だけざっくり示していますけれども、大きく分けるとオフィス関係の仕事と、現場関係の仕事で、やはり違うわけですね。よく言われますように、オフィス労働の、特に技能レベルが相対的に低かったり、中間レベルまでというのは、かなり代替される可能性が高いと、これは一般的に想像されるところかと思います。
ただ、本当の意味で、意思決定に関わってくる本来の意味での管理職、マネジャーですね、この辺りは、代替されるものではなくて、むしろそれを使ってオーグメンテーションのほうですね、生産性を上げていったり、パフォーマンスを上げられるように使っていけるということかと、専門職もうまくやればそうなるということですね。
一方で、現場系は、一部販売関係などは、確かにオンラインでできるということもあるのでしょうけれども、一部代替される可能性はあるのですけれども、多くは、むしろオーグメンテーションです。ある程度のやり方が標準化されてきますと、知識が十分ではなくても生産性は上がるわけです。だから、その現場系に関しては、これはAIだけではないのですけれども、実態は、言われているようなフィジカルAIとか、そういうものとの融合の中なのでしょうけれども、生産性を上げていくという、雇用を必ずしも減らすわけではないと。
もちろん、これは、使い方次第です。意思を持ってどういう使い方をするかによって、これは全く変わってくるのですけれども、国によって傾向は、アメリカはどちらかというと、特に未熟練の労働に関しては、代替的に使う傾向は極めて強いですけれども、私が結構研究をしています北欧などは、あまりそういう形では使わないと、これは、まさに使い方次第ということなのですけれども、一般論としては、そういうことが言えるということです。
アメリカに関しては、変化は速くて、結構オートメーションに使っているということで、これは、よく言われますけれども、大卒の方が、かつては大学を卒業すると、法律関係とか、会計士とか、コンサルタントの見習いで入って、将来高給を得るというのは1つのコースだったわけですけれども、今やそれはAIでかなり簡単につくってしまうということで、そこはなかなか職がないということで、ブルーカラービリオネアなどと言われて、これは本当にどれぐらいかというのはあるのですけれども、一部、ブルーカラーに人が移るというような、若干統計を見ても、例えば学歴の賃金差というのが、以前から見ると、高卒の方の相対賃金が上がっているみたいなことが見られるということは起こっています。
日本は、全くそのとおりになるかというと、また少し違うところがあるとは思います。アメリカ以上に人手不足が深刻ですけれども、ただ、アメリカがいうのは、ホワイトカラーはどうもだぶついてきそうな部分が、特に中レベルから低レベルの技能が低いレベルは、どうも仕事は結構なくなっていくけれども、ブルーカラーのほうは比較的当面は仕事がありそうだということですね。
恐らく同じような傾向は日本でも言えるわけでありまして、ある意味、それ以上に深刻に起こっていく、特にブルーカラーの不足というのは深刻に起こっていくということかと思います。実際、もうまさにそうなのですけれども、特にそれがあるのは、右側にありますように、日本の場合は、大学を卒業してブルーカラーになる方は、決して多くはないわけですね、基本的にやはりホワイト的な仕事をするわけでありますけれども、これが、もう一気に、大卒率がもともと低かったということもあって、近年上がってきて、かつ、少子化ですので、ここにありますようにブルーカラーに入っていく可能性の高い人たちのグループが一気に就職してきているということですね。
実際これを見ると、まさに現場系、少し前までは専門職が不足している、スキルの高い人が不足しているということが言われていましたけれども、これは、もちろん不足しているのですが、それ以上に現場の人たちの不足というのが大きくなっているということです。
その中で、これは、私の最近の提案ということでさせていただいているのは、やはり日本の年金財政とかにも関わってきますけれども、最終的には、やはり実質賃金を上げていかないと、年金財政というのは安定していかないということですね。当然、実質賃金を上げていくというのは、生産性を上げていくということかと思います。生産性を上げていくためには、やはり一定の経済成長も必要なわけですね。
ところが、人手不足が、今、深刻なので、例えば、最近、企業はすごい設備投資の意欲が高いのですけれども、見ていますと、計画と実績が大きく乖離するのですね、計画しても建屋を建てないとか、物流がうまくいかないとか、まさに現場の労働力不足がネックになって、実際の設備投資が進捗しないということが起こっているわけです。
だから、この現場の労働力の不足ということを、これは継続的に今後さらに、むしろ強くなっていくわけですから、この部分を解消していかないと、しっかり生産性も上がらないし、経済成長もしないという話なのだと思います。
日本は、今の段階で、それほど深刻ではないのですけれども、理屈から考えると、やはりホワイトカラーの中レベルから下位、技能としては下位レベルというのは、恐らくオートメーションというのは進んでいくし、進んでいかないと駄目だと思います。
問題になってくるのは、大卒の人の受け皿という話になってくるわけですね。これを、やはり現場に入っていくという、ただ、それは今のイメージだと、人は入ってこないわけですね。だから、私は最近申し上げているのは、アドバンスト・エッセンシャルワーカーということで、実はブルーカラーというか、現場系の仕事は、最近はいろいろな機器が入ってきて、安全性というのもかなり上がっています。それから生産性も上げようと思ったら、まだまだ余地はあるのですね。
多分、問題はイメージがあって、あるいは賃金というのは、実は、単に労働需給で決まるのではなくて、社会的に結構ベースが決まっているものがあります。そういうところを、社会全体として底上げをしていくような取組をしていくことで、ここの高い生産性の、非常に社会的にも価値のある労働ということで現場を見直していって、そこに人を増やしていくということが大事ではないかと、これは問題提起ですね。
そのときに、やはり技術が大事なのですね。冒頭に言いましたように、今、日本が、実質生産性が伸び悩んできている背景には、世界全体で見て、やはり固定資産から無形資産への生産要素の転換というのが起こっているわけですね。例えば、自動車は、かつてはエンジンでやって、基本的には、物理的なエンジニアリングの世界ですけれども、今は、ソフトウエアの世界になっているのですね、ソフトウエアがうまくいかないと生産性が上がらないですね。全体として、そういうソフトウエアをはじめとしたデジタルの世界というのをどれぐらい投資するか、それをどう活用するか。
日本は、それなりに実はやっているのですけれども、最近やはり遅れてきているのですね、ほかの国に大分凌駕されてきている。これを見ますと、フランスなどが最近上がってきているとかがあります。
一見、デジタル化というと、新しいものをつくっていくような発想はあるのですが、実は、それもあるのですが違うのですね、違うのですというか、効率化していくということが非常に重要で、品質を上げていくということで、まさに日本が強みだった現場力を上げていくというのは、まず、このデジタル化によってできるのですね。
こういうことを、1つのコアとなってくるのは、現場にデジタル技術を積極的に入れて、それを現場のフィジカルな労働あるいは場合によっては、ロボティックスなどと組み合わせながら、しっかりした生産性の向上、現場力の強化に使っていくということではないかと思います。その辺りどれぐらいできるかというのは、これからの大きな方向性ではないか。
ただ、生産性を上げたからといって、実は実質賃金が上がるかというと、必ずしもそうではないのですね。労働分配率が1つ、もう一つ言いますと、交易条件という問題があって、円安の問題とか、国内のエネルギー体制みたいな話もあるのですが、それは割愛しまして、労働分配率が世界的に下がっています。
日本も傾向的に下がっているのですけれども、アメリカとかヨーロッパと少し理由が違うのですね。アメリカは、デジタルプラットフォーマーのスーパースター仮説というのがあって、あまりにも彼らの独占が進んで、分配率が低いものですから、全体が下がっているという話なのですけれども、日本はどちらかというと、労使関係なのではないかなと思います。やはり、非正規がこれまで増えてこなかったという問題、ざっくり言いますと、やはり労側の力が弱いのですね。例えば、スウェーデンなどは、デジタル技術をかなり使っているのです。実質賃金が上がっている、やはり労側が物すごく強いのです。労働組合は極めて強いので、しっかり交渉できるのですね。
その辺りの労働分配率を適正化していくということで言いますと、労使関係の問題、もう一つ言うと、中小企業と大企業の間の関係というのも、それは、結局は大手に組合があって、中小がないというところも関係しているのですけれども、これは、後ほど議論になると思いますが、取りあえず、論点出しということで、この話をさせていただければと思います。
あと、もう時間が来ていますが、もう一つは、年金と関わるところで、ギグワーカーが増えてきている。この中で、やはり一定のギグワーカーが増えてきます。フリーランスで働いている人が増えてくるので、この人たちをどう考えていくのかというのは、やはり大きなテーマということかと思います。
最後は雑駁になりましたけれども、以上でこちらのほうから、一旦、説明は終わらせていただきます。
どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
○寺井部会長 御講演いただき、ありがとうございました。
引き続いて、堀氏から基調講演をいただきます。演台への移動をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
○堀氏 よろしくお願いいたします。労働政策研究・研修機構の堀と申します。
私からは、若者から就職氷河期世代までの働き方としまして、3つ御説明をさせていただきたいと思います。
最初に「若者の働き方や意識の変化」、続きまして「中年期を迎えた就職氷河期世代の現状」、最後に「結婚・出産・家族の現在と今後」について御説明を差し上げます。本日は、貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。御挨拶を忘れて申し訳ありません。
これは、私の自己紹介ですけれども、後で御覧いただきまして、私は、学校から職業への移行の研究者で、教育社会学なのですけれども、こうした場に呼んでいただけた理由というのは、やはり日本には新卒一括採用があって、どのような形で就職していくかということが、キャリアに大きな影響を与え、そのキャリアが賃金などを通じて年金に強い影響を及ぼしていくということがあるのではないかと思っております。こうしたスタンスから、本日はお話をさせていただきたいと思います。
初めに「若者の働き方や意識の変化」について、御説明をさせていただきます。
スライド5ページでございます。これは、若年失業率の国際比較でありまして、代表的な国を幾つか持ってきております。
カラーで見ていただければと思うのですけれども、紫色が日本であります。見ていただいて分かりますように、1990年ぐらいから30年以上の間、若年失業率がほかの国に比べて低い水準であるということが見て取れるかと思います。
ほかの国ですと、20%以上が恒常的、例えば、フランスなどはそうですけれども、そういう状況に対しまして、日本は若年失業率が低い国として、国際的に評価されてきました。
この要因は、やはり新卒一括採用があることで、ほかの国は職業経験がないと、若い人は採用してもらえないわけですけれども、日本はそうではなく、職業経験がない人を好んで採用するといった新卒一括採用が主流であることから、こうして若年失業率が低く抑えられてきたと解釈されているところであります。
次に15歳から34歳を日本の労働政策では若者と呼んでおるのですけれども、その方たちの就業状況を2007年から2022年まで、就業構造基本調査の二次分析によりまして、御説明をさせていただきます。
右から古いほうになっているのですけれども、赤く囲みました正社員のところを見ていただきたいのですが、2007年は56.4%であったのに対しまして、2022年には66.7%ということで、この15年で10%正社員率が上昇しています。
その代わり、その下の非典型雇用、いわゆる非正社員であるとか、昔、若いパート、アルバイトはフリーターと呼ばれておりましたが、その人たちの割合は減っております。
それから、一番下にいっていただきまして、専業主婦も同じように減少しており、8.7%から3.1%まで減少しております。
このように、この15年間、若者の雇用状況はとてもよくなってきたのですけれども、他方で、下から4つ目の赤く囲みましたところ、非求職無業者なのですが、これは、いわゆるニートであります。雇用の状況は全体として改善しているのですけれども、ニートは2.6%から3.3%にと漸増しているような状況にあります。
もう一つ、雇用の状況に加えまして、やはり大きく変化したのが、7ページ、産業構造であると言われております。
これは、1987年と2022年時点における産業別就業者数の比較であります。これは、産業を全て並べると少し分かりづらいので、幾つかのカテゴライズをしております。
いわゆる製造業に代表されますような従来型のものづくりの人たちというのは、男女とも減少しており、やはり伸びているのが、ビジネスサービス、ビジネスサービスというのは金融、不動産、法務・会計など、高度な知識を要するサービスであります。ビジネスサービスであるとか、それから社会サービスであります。これは、何といっても女性では、本当に上昇しておりまして、女性の就業者の増加というものが、社会サービスに支えられたという部分も多いかと存じます。
さらに、これを若者の正規雇用のみで見たものが、8ページのスライドであります。左側は男性、右側は女性なのですけれども、これも全体的な傾向と似ているのですけれども、特に若い層ではビジネスサービス、社会サービスの伸びが大きくなっております。
女性は、ビジネスサービスの伸びのほうが、伸びとしては大きいのですけれども、就業者としては非常に社会サービスが多いというのが、現在の状況でありまして、若い女性の正規雇用者の結構な割合が社会サービスで働いているということが見て取れます。
ここからは、私どもがオリジナルにやっている調査から御紹介したいのですけれども、では、こうしたマクロな変化のもと、若い人の職業意識がどのように変化しているのかというのを見ようとしたのが、この20代後半層の職業意識の変化であります。
項目自体は、たくさん聞いているのですけれども、代表的な項目のみ、今回はお示しをしているところでございます。
これを見ていただきますと、ブルーの線が一直線に上がっているように見えるかと思うのですが、この項目が、できれば仕事をしたくないという、仕事離れ傾向でございます。これは男女とも上昇しているということが、はっきりと分かるかと思います。
他方で、1つの企業に長く勤めるほうがよいという、いわゆる一社志向ですね、従来の日本型雇用慣行、支持の1つでもありますけれども、これは、多少前後はありますが、基本的には、長期的には下がってきているということが見て取れるかと思います。
また、将来は独立して自分の店や会社を持ちたいという割合は、これも基本的には下がってきているという傾向にあり、今の世の中、定職につかなくても暮らしていける、こちらにつきましては、多少前後はあるのですけれども、一定の割合を占めているといった状況であります。
こうした意識のもと、最近よく就職してすぐに辞めてしまう退職代行などが話題になったりするのですけれども、公的な統計から3年以内の離職率、一般的に早期離職と呼ばれるカテゴリーでございますが、その推移を見てみますと、実は、近年は減少する傾向にあります。高卒者がブルーで、大卒者がオレンジ色なのですけれども、どちらとも近年下がっているということが分かるかと思います。
また、高卒者と大卒者は、昔は学歴差が大きかったのですけれども、近年では縮まってきているということも見て取れるかと思います。
したがいまして早期離職率は、この後御説明する就職氷河期世代のときに上昇したのですけれども、近年の若者におきましては、低くなっているというのが数字からは読み取れるということでございます。
では、早期離職率は下がっているわけですけれども、なぜ早期離職するのかということを尋ねたのが、この図でございます。
男性と女性に分けて見ているのですけれども、これは複数回答です。男性は、キャリアアップするためが一番高いのですけれども、女性は肉体的・精神的に健康を損ねたためというのが高くなっています。
若者でなくても、人間関係がよくなかったということは上位に来るのですけれども、男女で早期離職する理由がやや異なっているということが分かるのではないかと存じます。
スライド12、これは、山田先生のところにも一部M字型カーブのお話がございましたけれども、ここで着目しているのは、L字型カーブでございます。
L字型というのは、M字が就業率でございますけれども、L字は正規雇用率であります。いわゆるM字が水色でありまして、緑色が男性の正規雇用比率、そして、女性がブルーの正規雇用比率でありまして、M字は解消したけれども、L字は解消していないのではないかということが、ずっと言われてまいりました。
ただ、これは、1つの世代の状況を追ったわけではなくて、調査が行われた2022年の時点で、それぞれの年齢層がどうだったかという話ですので、もう少し詳細に見てみたいと思います。
これは、社人研が出している出生動向調査でございますけれども、子供の出生年別に見た出産前後の妻の就業変化でございます。
先ほど見ましたように、M字は解消したけれども正社員ではなくなってしまうという形なのですけれども、これを見てみますと、かなり最近大きく変化しております。
例えば、2000年から2004年に出産した方では、育児休業を利用して就業継続した方が15.3%、就業継続、産休のみの方が12.2%であったわけなのですけれども、直近2020年から24年は、それぞれ56.5%、それから12.0%ということで、実に3倍近くなっているというようなことは、なかなかこれだけ短い間に劇的な変化が起こるということは少ないので、非常に大きな変化だと捉えております。
他方で、これだけ大きな変化を、では、どう対応していくのかということについては、3番目でお話ししたいのですけれども、いろいろと大きな課題が生じているということだと思っております。
さらに、これは就業構造基本調査の二次分析で、図表自体の数字というよりは、この形を見ていただければと思っておるのですけれども、先ほど見たL字型カーブというのは、学歴ごとにも少し違う様相を呈しているということをお示しするための図であります。
これは、1972年生まれから5年ごとにそれぞれの生まれを取っているのですけれども、若い人については、それほど長くまだ生きていないので、完全なL字かどうかということは分からないわけなのですが、高卒者と大卒者を比べた場合に、高卒者はフラット化してきていると、要するに、あまりL字の角度が、頂点が見えなくなっているとでも言いましょうか、そうなっているのに対しまして、大卒者のほうは、もう少し高止まりしているような、そんなイメージが持てるのではないかと推測しております。
これは、高卒者が、特に就職氷河期世代のときに、非常に正社員になるのが難しかったので、もともとL字とかM字は、若い時期は正社員だったけれども、出産のときに正社員を離れるというような形だったのですが、高卒者の場合は、女性はなかなか正社員なることが難しくなり最初の正社員率が低くて、その後も低いままというようなフラット化が起きていると捉えられるかと思います。
これに対しまして、大卒については、あまり下がらなくなったということから、先ほど、前のスライド13、これは学歴別に見ることはできないのですけれども、恐らく学歴によって相当な違いが出ているものと推測されるかと思います。
続きまして、スライド15でございますが、これは男女間所得格差の世代間比較であります。これも出生年ごとの相対所得でありまして、男性を100としたときに女性がどれぐらいかというものであります。
これを見ていただきますと、上の世代に比べますと、最近の若い世代は、男性との相対所得の差といいますか、この数値が上がってきているわけでありますけれども、これは有業者も正規雇用者も言えることだと思いますが、ただ、若い世代でも依然として男性との差があるということが伺えるのではないかと存じます。
16ページは、よく見られる図表だと思うのですけれども、結婚希望のある女性の理想のライフコースが一番左です。予想のライフコースが真ん中、結婚希望のある男性がパートナーに望むライフコースが一番右ということで、確認いたしますと、緑色ですね、この両立コースが女性の理想として、今、最も高くなっておるということで、近年も上昇しております。
以前人気のあった再就職コースというのは、なだらかに減少傾向にあると。
そして、専業主婦コースというのも、かなり低くなっているという状況にあります。
ただ、これは理想ですので、自分の現時点での予想は何かということで真ん中を見てみますと、ここでも一応比率的には両立コースが一番高くはあるのですけれども、ここでやはり注目されるのが、非婚就業コースでオレンジ色であります。非婚就業コースが、昔に比べると、特に2015年から非常に上がっているということが注目される点だろうと考えます。
そして、男性のほうの意識も本当に変わっておりまして、両立コースを希望する男性が非常に多くなってきているというのが、近年の状況で、ちょうど2015年から2021年の間に変わってきているということは、男性も女性も同じような形かと存じます。
今のはライフコースに関する意識なのですけれども、では、実際に性別役割分担意識がどうなっているのかということを、内閣府の調査から引用したものであります。これは、出身地域別に聞いたもので、例えば、家事、育児、介護は女性の仕事だと思っている比率は、やはり都市部では低くて、地方では高くなっておりますし、オレンジ色が女性で、緑色が男性なのですけれども、男性はそう思っていないけれども、女性は感じているということで、男性はあまり気づかないということであろうかと思います。
例えば、地域や親戚の集まりでの食事の準備やお茶出しは女性の仕事であるとか、職場でのお茶出しや事務などのサポート業務は女性の仕事であるとか、こうした辺りも地方で高くなっていますし、女性でも感じたという回答が多くなっているという形になっておるわけです。
以上から簡単にまとめますと、まず、若い人の雇用というのは、この10年から15年、非常に大きく改善してきていました。特に女性の働き方は、大きく変わってまいりましたが、いわゆるニートというのは、上昇傾向にあるのが気がかりであるということです。
第2点目は、脱工業化による製造業が減少し、サービス業が増加するという状況が、一層強まっているのですけれども、特に若い女性では、社会サービス産業の正規雇用者が増加しております。
また、職業意識につきましては、一社志向は長期的に低下する一方、仕事離れ、できれば仕事はしたくないという意識がさらに増加しています。
また、早期離職率はあまり高くなっていないのですが、若い世代でも男女のキャリアや意識にはまだ違いが見られるということでもございます。
それから、L字型カーブの形状は、世代や学歴によっても異なる変化を示しておりまして、高卒以下ではフラット化、大卒以上では下げ止まりという形で捉えられるのではないかと考えます。
先ほどお示ししましたように、2020年から24年に第一子を出産した妻全体に占める就業継続者の割合は68.5%にまで上昇しております。
また、女性の理想と男性がパートナーに望むライフコースでは、両立コースが最多であるということには共通しているのですけれども、ただ、女性の予想は理想に比べて非婚就業コースの割合が高いというところは、やや課題が見えてくるところでもございます。
また、若年女性は今でも性別役割規範を経験しているということで、大きく女性の働き方は変わったのですけれども、社会が変わったかというと、そこは1つ課題があるところなのではないかということが見えてまいりました。
以上が若年者雇用について、簡単な御説明ですけれども、続きまして、中年期を迎えた就職氷河期世代の現状についてお話をさせていただきます。
まず、この氷河期問題がなぜ生まれたかということなのですけれども、もともと日本の若い人の雇用というのは、学校から職業へスムーズに移行できるということで、高度成長期以降バブル崩壊までは、極めて安定したものであり、先ほどの若年失業率に見るように、本当に国際的に見ても高く評価されてきたところでございました。
もちろん、新卒採用は新卒採用だけ単独にあるわけではなく、経験のない若者を採用して、企業の中でしっかり育てて、そして、企業の中で昇進していくという、そうした仕組みがセットであったわけです。
そのため、もし内部労働市場に入れなかったとすると、このあとの能力開発機会などが限られて、結局挽回の機会がなかなか得られないということになるわけです。
したがいまして、新卒一括採用は、若い人の雇用を安定化させるのに非常に寄与しているのですけれども、他方で新卒時につまずいてしまうと、その後のキャリアの形成が困難になり、就職氷河期世代という形で困難が起こるということでございます。
続いて21ページのスライドなのですけれども、これは、新卒正社員率を示したもので、就業構造基本調査の二次分析から示したものであります。
この四角で囲われた部分が特に低くなっているということが見て取れるかと思うのですけれども、ここが、いわゆる氷河期世代と呼ばれておりまして、1993年から2004年卒業者を一般的な氷河期世代と呼んでおります。
まず、高卒者から悪くなって、その後、大卒女性、それから大卒男性が悪くなっていったという形になっております。
とはいえ、氷河期世代が卒業したときから、もう30年以上経ちましたので、そのあと、どうなったのかということなのですけれども、先ほど申し上げたような課題をはらみつつ、単純に正社員率で見ますと、これは労働力調査でございますけれども、就職氷河期世代の正社員率、左側は男性ですが、年齢上昇に伴って改善し、40歳代でバブル世代と同水準には達しました。
こうしたことからすると、もうそんなに氷河期世代は問題がないのではないかと考えることもできるのではないかと思います。
また女性については、世代間ではっきりとした差は見られておりません。
しかしながら、この世代別のキャリア類型を見てみますと、少し違う様相が見えてくるのではないかと思います。
これは、左側上が男性高卒、下が大卒、右側が女性高卒、右下が女性大卒を示しております。
この類型の詳細は後ろにつけてございますけれども、名前を見ると、大体状況が分かるかと思うのですが、ここに丸で囲んだ斜めストライプの部分、氷河期世代でやや多くなっているということが分かるかと思います。
この斜めストライプが、他形態から正社員というカテゴリーであります。これは、卒業時に非正社員か、無業か、失業かというような形から正社員に転換したキャリアということでありまして、先ほど見たように新卒時には、正社員にはなれなかったけれども、その後の人生のどこかで、正社員に転換したという人たちが、やはり氷河期世代では多いということが分かります。
これで問題ないのではないかと、一般的には思われるかと思うのですけれども、スライド23では、現在正社員の人たちのキャリア別に、労働時間、収入を見た表をお示ししております。
左側は男性、右側は女性です。
左側は男性なのですが、大体週の労働時間は、おおむね47時間台で同じなのですけれども、年収は大きく変わっておりまして、男性の正社員定着者ですと、530.7万なのですが、正社員一時非典型であるとか、あるいは多形態から正社員につきましては400万円ということで、実に同じように働いていても100万円以上の差があります。
これは、女性は男性ほどではないのですけれども同じような傾向がありまして、正社員定着者に比べると、やはり後から正社員になった人たちというのは、どうしても収入が低いということで、必ずしも、今、正社員だから問題がなくなったといった解釈は、やや難しいのではないかと思われます。
また、この氷河期世代が若い時期には、まだ、適用拡大が十分に進んでいなかったので、ここでは社会保険について分析することはできないのですけれども、若い時期に、恐らく厚生年金に入れていないという人たちが、それなりにいるのではないかと推測されるところでもございます。
スライドの24ページですが、これは、出生年代別の実質賃金カーブ、内閣官房が出しているものなのですけれども、このブルーが、いわゆるバブル世代辺りに当たる人たちです。
これは、少し似ているのですけれども、ピンク色、1971年から75年生まれに若干氷河期世代が入ってきて、その下が、氷河期世代のコアなのですけれども、見ていただきますと、バブル世代に比べますと、氷河期以降の世代は実質賃金カーブが低くなっているということが分かるかと思われます。
こうした点からも、氷河期以降の世代で、これまでと同じような形で考えることが難しいということを示唆するものでもあるかと思います。
ただ、この就業構造基本調査とか、労働力調査ですと、ある一点しか分からないので、ここでプロセスについて確認するためにインタビュー調査を行いました。
ここでは、ハローワークとか、地域若者サポートステーションに来た就職氷河期世代に対しまして、50人ほどインタビューを行いまして、その一部を本日御紹介させていただきたいと思います。
そのインタビューの際に、お話を聞くと同時に、このライフラインというのを書いていただきました。このライフラインは、自分の人生の浮き沈みについて、御自身で書いていただいたものを図化したものであります。
これは、左側が女性、右側が男性で、どちらも大卒者なのですけれども、正社員経験が3社あります。一般的に、このライフラインは若い時期は低くて、年齢を重ねると、40代前半までは上がっていくのが一般的です。というのは、仕事ができるようになって自信もついて賃金も上がっていくので、このライフライン、自分の人生がアップしているということで上がっていくのですけれども、これを見ていただきますと分かりますように、非常に激しく上下をしています。それだけこの人たちが、かなり浮き沈みを経験したということであるかと思います。
この氷河期インタビュー、取りあえず3ケース持ってきたのですけれども、一番上が一度も厚生年金に入っていないという方です。今回、50人インタビューしたのですけれども、全く厚生年金に入って経験がないという人は、実はそんなにおりませんでした。
ただ、このHさんは全く正社員経験がない人で、今でも社会保険に入りたいのだけれども入れてもらえないと、おうちも、お母さんの年金しかないので、それで何とか暮らしているというような方であります。
真ん中が割と典型的なケースでして、50代女性です。ずっと独身の方です。解雇を2回されたり、自分で何とか挽回しようと、留学して大学に進学したりもしているのですけれども、なかなか安定できていません。
正社員の経験はあるのだけれども、正社員になったり、非正規雇用になったり、失業を行きつ戻りつしているといった状況であります。
一番下なのですけれども、この方は、新卒で正社員になったのだけれども、長時間労働のために離職して、その後、正社員で働いたりもしたのですけれども、たまたま20代後半で離職したときに、介護が必要になり、兄弟に介護を押し付けられるような形で、10年以上、介護をしているという方であります。
母の年金で暮らしていて、自身の年金保険料は、正社員として働いた期間以外は払えていないということでありました。
今は、全然働いていない期間が長いので、すぐに正社員になるのは無理だろうけれども、何とか仕事に戻っていきたい。しかしながら、金銭的な問題で携帯電話すら持てていなくて、就職活動に差し支えているような状況であります。
最近、こういう80歳の親が50歳の子供を養うような形の問題も8050問題と呼んでいるのですけれども、こうした課題がある方も氷河期世代の中にはいらっしゃいました。
以上から氷河期世代、正社員になったから、もうこれで問題が解決したのかというと、ここは、やや疑問のあるところでありまして、氷河期世代の問題というのは、今、正社員かどうかということではなくて、キャリアが非常に不安定であるということではないかと思っております。
私は、この氷河期世代のキャリアを、海外のヨーロッパの議論を参照しつつ解釈するに、正社員、非正社員、失業、無業の間を行きつ戻りつするヨーヨー型であるということで捉えられるのではないかと考えております。
右下の図表、ヨーヨー型のキャリアへの変化を御覧いただきたいのですけれども、一番左側、就職氷河期以前というのは、日本の若者は学校から正社員へ、労働市場へスムーズな移行ができるものでありました。しかしながら、氷河期世代の若い時期というのは、先ほど見たように、学校卒業してもすぐに正社員になるのは難しかったということで、しかし、その後、例えばフリーターなどから正社員へ移行するという形になっていたわけでございます。
30代のときに調査したときには、このような形で、一応、一旦正社員になっていたのでよかったという感じだったのですけれども、40代になって見てみると、1回正社員になっても、また、非正社員になったり、失業、無業を繰り返すキャリアがこんなに多いのかということは驚きでありました。
したがいまして、一旦正社員になったから問題が解決するわけではなく、正社員、非正社員、失業、無業を行きつ戻りつするヨーヨー型キャリアというものが、氷河期世代の大きな課題ではないかと考えているところであります。
このヨーヨー型キャリアでは、やはり失業、無業になったときに、まず、第1号被保険者に移行する、そして、ほとんどの人が保険料免除を申請するということなので、ここで年金の穴のようなものが生じてしまい、ずっと厚生年金というわけにはいかない課題というものが生じてしまうという点で、この氷河期世代の課題として指摘できればと思っております。
さて、最後「結婚・出産・家族の現在と今後」についてお話をさせていただきます。
日本では、今、少子化、本当に日本にとっての大きな問題だと思うのですけれども、日本では、やはり結婚して、その後出産というのがあるために、まず、結婚支援をどうするかということは、長年の課題であったかと思います。
ここで、改めて25歳から34歳の未婚者が独身にとどまっている理由、これは、よく出てくる図表なのですけれども、一応最新の調査をここで改めて見ていきたいと思います。
圧倒的にいつも多いのが、適当な相手にまだめぐり合わないからということで、出会いの問題であると、1つ考えられてきたと思うのですけれども、一番下、参考、一生結婚するつもりはないというところがありますけれども、近年やはり気がかりなのは、結婚するつもりはないという人たちが増えてきているということではないかとも思われます。
なぜ、未婚になっているのかということにつきまして、たくさんの研究があるのですけれども、本日は、社人研の岩澤さん、余田さんの研究を参照して、御紹介できればと思っております。
いろいろ大きな表が出ているのですけれども、未婚になる理由というのは様々あるわけですが、ここでは大きく3つの要素から類型をつくろうとしています。
1つは、経済的な基盤です。経済的な基盤は従業上の地位で、要するに正規雇用か、そうではないかというようなことであります。
それから、親密性の基盤として、今、恋人や婚約者がいるか、そして、結婚意欲として、いずれ結婚するつもりかどうかということで、4つ類型をつくられています。
1つが、前駆型で、生活の基盤があり、結婚を望み、結婚の前駆的状態としての未婚ということで、この方たちは、いわゆる晩婚化しているのだけれども、いずれ結婚するであろうという類型です。
それから、マル2ですけれども、基盤はあるが、結婚は望まず、結婚からの解放として、現在未婚であるという解放型です。この解放型は、実際は本当に期間を通じて少ない割合であります。
それから、3番目ですけれども、基盤には欠けるのだけれども、結婚を望み、要するに結婚が剥奪された状態であるというタイプであります。
親密性が欠如している人、経済的基盤が欠如している人、両方欠如している人がいます。
それから、基盤に欠け、結婚も望まず、結婚から離脱するというタイプもいます。
下が、この1982年から2021年の調査におきましての、その類型の変化であります。
期間を通じて、剥奪型の未婚の人たちが一番多いのですけれども、より見てみますと、前駆型未婚というのが、80年代に少し増えて、その後、剥奪型の未婚が再び増えてきたという形で捉えられるかと思うのですけれども、このマル3において、剥奪型が多いとして、この経済的な基盤が欠如しているだけであれば、いろいろな経済的な支援というのが考えられるのですけれども、この親密性の基盤が欠如している場合に、特に政府としてどのように支援していくかということが非常に難しいというのが、この結婚支援の難しいところだと、この分析からは受け止められるかと思います。
今の剥奪型を少し違う角度から見たのが、この30代前半の男性の就業状況、年収別有配偶率の変化であります。スライド31です。
これは、雇用形態と、それから、年収によって有配偶率がどう違うのかということを、2002年から見たものであります。5年に一度の調査なので5回分になっております。
左側は、当然かもしれないのですけれども、正社員は有配偶率が高いですし、それ以外の、例えば、非正社員のような形で働いている場合は低くなっています。また、年収別にも、年収が高いほど有配偶率というのが高くなっています。
全体として、その傾向は、この20年間変わらないところではあるのですけれども、1つやはり気がかりなのは、これまでは年収が高い人たちは、それなりに結婚をしていたのですけれども、年収が高い層でも、この有配偶率が減少してきているように、2022年のデータでは見受けられます。
つまり、経済的な問題は大きな問題としてあるのだけれども、しかし、それだけでは恐らくない、それ以外の要因が大きくなっているのではないかということで、先ほどの分析と重ね合わせますと、やはり親密性の課題が、年収が高い層でも大きくなっているのではないかということを想像させるところであります。
そこで、出会い経路、これも社人研のデータなのですけれども、どのような形で結婚した人が、夫や妻と知り合ったのかというものであります。
全体としては、職場結婚が一時増えて、見合い結婚はどんどん減少していって、本当にネグリジブルになっているぐらいなのですけれども、最近、やはり着目されているのが、一番右側のブルーの部分で、ネットでインターネットでというものであります。これは、いわゆるマッチングアプリだと推測されるかと思います。
つまり、職場や仕事を通じた出会いとか、お見合いなどが減少して、近年はインターネットを通じた出会いが拡大しているということで、今やインターネットが20.2%で、一番左側の青ですけれども、職場や仕事での20.9%に近い割合に達しているということになっています。
これは、結婚につながる人間関係を、昔は職場や親族が取り持っていたわけですが、本人が相手を探すという経路へ出会いが変化しているということを示しているわけなのですけれども、マッチングアプリは、やはり自由競争の世界なので、誰かが仲介してくれるということはありませんし、例えば、性格がよくても相手を紹介してもらえるというような世界でもありません。
結婚相手を見つける力を誰しもが持っているわけではないので、先ほどの親密性の分析と重ね合わせますと、親密性形成の能力が改めて問われてしまうという点で、マッチングアプリも、もちろん有用だと思うのですけれども、こうしたルートで結婚するということは、今の若者の結婚は本当に難しいなと感じさせるデータでもあるかと思います。
そして、今回、婚外出生割合の年次推移なども出してもらいたいということで、公表データから持ってきたものであります。
2016年から出しているのですけれども、基本的には、あまり割合は増えているわけではなく、同じような数字であると認識しています。
言うまでもなく、日本では出生の大部分が、法律上の婚姻関係の中で生じていますので、その状況はあまり変わっていないということだと思っています。
右側が、属性がなかなか取れなかったので、年齢だけ持ってきたのですけれども、19歳以下が、これだけ44.0%を占めるということですので、選択して婚外出生をしているというよりは、結婚の条件がそろわなくて、結果的に、婚外出生に至ったというケースが多いのではないかと推測しております。
したがいまして、今後、諸外国では婚外出生というのは、しばしば生じると言われていますけれども、日本でこれが増えるということは、現状では考えづらいのかなと推測するところであります。
次に、男女別に見た生活時間を確認したいと思います。
こちらは、各国を比較したものなのですけれども、一番左側、日本の特徴としまして、水色の部分が男性で少なく、女性で多いということが、ぱっと見て思うところであります。
特に折れ線グラフですけれども、無償労働時間の男女比を見てみますと、日本は最も高い部類に属しています。要は、日本の男性は有償労働時間が長く、無償労働時間が短いという特徴があるわけなのですけれども、先ほど女性の就業率は急激に上がってきていて、かつ正社員の割合も増えてきているわけなのですが、家庭内の仕事がそれに合わせて配分し直さなければ、仕事と家庭と双方の負担が女性に集中するということになるわけです。
就業継続を可能にする制度、これまで国として随分力を入れてやってきたわけですけれども、日々の生活を回す負担が誰にかかるかという問題は、依然として残るということかと存じます。
35ページですけれども、妻が、つまり共働きといってもパートではなく正社員の場合でも、家事の時間というのは、結局女性にかかってしまっているというデータでございます。
これは、妻が60歳未満の世帯を対象にした、2022年の全国家庭動向調査から持ってきたものであります。
図の上に数字が書いてありますけれども、これは平均の家事時間であります。例えば、妻が正社員の場合、186分あるのですけれども、夫の方は65分ということで、かなり差があります。
妻が非正規雇用になりますと、当然のことですが、さらにこれが増えるということになっておりまして、出産後、正社員として働き続ける女性が増えているというデータを、先ほど見たわけなのですけれども、夫婦ともに仕事を持ちながら、家事や育児をどう担うかという問題が一層重要になっているのですけれども、まだまだ就業を支える条件が整っているかというと、かなり課題のあるところではないかと考えます。
最後ですけれども、出産後の働き方と年金について述べさせていただきます。
先ほど見ましたように、本当に劇的に出産後の就業継続は改善しているのですけれども、正規雇用であっても、家事・育児負担は、なお女性に偏っているということで、この偏っていた場合、例えば、時短のような短時間勤務であるとか、あるいはなかなか昇進できなくなるということであるとか、そうしたことから、結局ケア労働を担っている方が、生涯の所得が少なくなり、それが年金に跳ね返るということについては、依然として変わりはありません。
とはいえ、年金制度の中でも、出産につきましては、様々な支援が行われてきたと認識をしております。
育休中の厚生年金保険料免除であるとか、あるいはまだ始まったばかりだと思うのですけれども、国民年金第1号被保険者の育児期間の保険料免除であるとか、あるいは3歳未満の子を養育する期間の標準報酬月額の特例であるとか、そして、恐らく最も一般に使われているものとしまして、第3号被保険者期間における基礎年金の加入期間というのがあるのではないかと思っております。
3号につきましては、現在、議論が進んでいるところですけれども、どのように対応していくか、非常に難しい問題だなと思っているところでございます。
課題としましては、もちろん適用拡大が進んできたのですけれども、まだ、もちろん適用拡大されていないような仕事もありますし、具体的に時短や、1回出産で離職したことによってよい仕事に就けなくなるであるとか、そうしたことは残っておりますし、第3号被保険者制度が就業選択に及ぼす影響とケア負担への配慮をどうするかなどは、大きな課題として残っているのではないかと考えております。
では、私からは以上です。ありがとうございました。(拍手)
○寺井部会長 お二人より御講演をいただきました。どうもありがとうございました。
この後、意見交換を行い、議論を深めてまいりますが、ここで一旦休憩といたします。
○植田首席年金数理官 それでは、これより10分間の休憩といたします。再開は14時50分を予定しております。よろしくお願いいたします。
(休憩)
○寺井部会長 それでは、部会を再開いたします。
本日は、オンラインセミナー形式で開催しておりますので、ここで改めて委員の紹介をいたします。事務局からお願いいたします。
○植田首席年金数理官 それでは、事務局より、委員の御紹介を差し上げたいと思います。
まず、慶應義塾大学経済学部教授の寺井公子部会長でいらっしゃいます。
年金数理人の小野正昭部会長代理でいらっしゃいます。
本日は、オンラインで参加されていらっしゃいますが、読売新聞東京本社編集委員室の猪熊律子委員でございます。
みずほ総合研究所ヒューマンキャピタルコンサルティング部ディレクターの日下部健児委員でございます。
慶應義塾大学経済学部教授の駒村康平委員でいらっしゃいます。
学校法人国際基督教大学評議員の佐藤久恵委員でございます。
公益社団法人日本アクチュアリー会元理事長の庄子浩委員でいらっしゃいます。
本日は、オンラインで参加されていらっしゃいますが、東北大学大学院法学研究科教授の嵩さやか委員でございます。
りそな銀行信託年金営業部コンサルティング室主席数理役の松本真由委員でございます。
○寺井部会長 ここからは、前半の基調講演を受けて意見交換を行います。講師の山田氏と堀氏にも加わっていただきます。
ここでは大きくテーマを2つに分けて、テーマ1として「労働市場の今後について」、テーマ2として「若年期から中年期への働き方・家族形成の変化と年金制度について」とし、議論を進めてまいりたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○寺井部会長 それでは、そのように進めてまいります。
まず、初めにテーマ1の「労働市場の今後について」を御議論いただきます。御発言のある方、いかがでしょうか。
日下部委員、お願いします。
○日下部委員 ありがとうございます。
山田先生、堀先生、御講演ありがとうございました。大変勉強になりました。
1つ目の質問として、山田先生にお伺いしたいと考えております。
まず、高齢者の就業というか、定年延長後は賃金が3割程度下がるとか、そういったこともありますし、また、外国人人材の就労に関しても、現役世代と比べて3割程度、4割程度低いというデータもございました。
一方で、それぞれその格差は縮小しているとの傾向も伺いました。今後、こういった高齢者ですとか、外国人材の雇用が拡大していくに伴って、現役世代についての雇用と重複する部分が生じて、就労が阻害されるというか、重なってしまう部分があるのではないかと考えておりますけれども、そういった場合、年金形成にも影響があると思われますけれども、その辺りどのようにお考えでしょうか。
○寺井部会長 山田様、お願いします。
○山田氏 御質問ありがとうございます。
今は、日本はすごく人手不足ですね。この先においても、基本的に労働力不足は続いていくのだろうというのは御説明したとおりなのです。だから、量的に見ると、シニアの就労とか、外国人の雇用が、現役世代の日本人の雇用を取るということは、マクロでは基本的には生じにくいということかなと思うのです。
もう一つ言うと、スキル面で見て、基本的には、日本人の現役が総じて、職種的に見るとスキルが要求されるところで働いていて、それを補完的にシニアとか外国人が働いているという、ざっくり言うと、そういう構造になっているので、補完関係になっていますので、それほど深刻になっていくというリスクを今の形で考える必要はないかなとは思っています。
むしろ、特に現場系の人材が不足しているというところで言いますと、外国人を適切に受け入れていって、シニアはできるだけ就労を増やしていくというのが、基本的な方向なのだと思うのです。
ただ、もちろんAI等によって、就業構造とかスキルというのは大きく変わってきますので、それに応じて必要なスキルを身につけていくというのを、特に現役世代のほうでやっていかないと、結局そこで仕事がなくなってくると、より単純な仕事で競合が起こってくるということですので、今、政府はリ・スキリングという言葉で言われておりますし、あるいは、多くの企業が、それに応じて人材育成ということを考えておりますから、その辺が、しっかりされていくということが重要ではないかと、そのように考えております。
○寺井部会長 日下部委員、いかがですか。
○日下部委員 ありがとうございました。
○寺井部会長 小野部会長代理、お願いします。
○小野部会長代理 ありがとうございます。
私も山田先生の資料の29ページについて、お伺いしたいと思います。
公的年金の財政というのは、概して賃金上昇には中立的なのですけれども、賃金が物価に追いつかなかった少し前までの状況というのは、それこそ労働者の労働意欲にとって好ましくない影響があったと思いますし、堀先生の資料にあった、できれば働きたくない若者の増加の背景にもなっているかもしれないなと思ってございます。
資料では、生産性の向上を実質賃金の増加につなげるには、労働分配率の低下を防ぐ必要があると指摘されていますけれども、実質賃金の増加や、将来の年金形成につなげるには、どのような政策が必要かお伺いしたいと思います。
少し言及がありましたが、同じページにスウェーデンでは労働分配率が維持され、実質賃金が増加していると指摘されておりますけれども、日本にとって学ぶべき政策があれば御教示いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○寺井部会長 よろしくお願いします。
○山田氏 御質問ありがとうございます。
実質賃金を上げていく大前提は、やはり労働生産性ですので、その部分は繰り返し説明するはずで、まさにその部分をどう労働者のほうにしっかり分配できるかと。ここは、分配率の話を書いていますから、分配率の話が中心になるのですけれども、実は交易条件と言われる、まさに御指摘されたように物価の上昇という形で海外に出ていくと問題になりますから、そこの問題も実はここに書いていないけれども、実は結構、今、重要な問題になっているのかということ。
その2点でコメントをさせていきますと、労働分配率については、基本的には、やはり労使のバランス、大きく言うと、それで決まってくるということなのです。
スウェーデンで、なぜ、分配率が、むしろ、ここ数年だと若干上がっているぐらいなのです。それは、やはり労働組合の組織率が7割を維持して、しかも非常にアグレッシブに要求はしていくと。
ただ、単純に要求する組合ではなくて、例えば、生産性を向上するために新しい技術を入れていくということに対しては、積極的に受け入れていったり、必要に応じて事業所は閉鎖して、新しい仕事に必要なスキルを身につけていくということに対して、非常に前向きな組合がいるというのが、基本的な構造になっているのです。
だから、その辺を政策でどこまでできるかというのは難しくて、スウェーデンのものをそのまま持ってくるわけにはいかないのですけれども、ただ、1つは賃上げ圧力が日本はどうしても弱いのですね、大手は一定程度かもしれませんが、中小に至っては、なかなかそういう圧力が出てこないので、実は、これはもうここ10年ぐらいは、政府がやっているところなのですけれども、いわゆる政労使会議ということを開催して、ここは、あまり政府がむちゃなことを言うとどうかという議論があって、私などは、かなり昔からそのことは申し上げているのですけれども、少し有識者みたいなのが集まって、しっかり客観的なデータに基づいて、これぐらいだったら可能ではないかみたいなところ、一定のものを示しながら、それをベースに、一定程度労側に対してのサポートをつけながら、適正な形で決めていくという在り方があるのではないか。
それと実は、労働分配率のところで言いますと、今、大手がすごく下がっていまして、中小は、実は高止まっているのです。
ただ、これは表面的に見ると、大手が賃金をもっと払えるのではないかということなのですけれども、でも問題は、今、これは大きな問題にまさになっていますけれども、全体の物価体系が上がってくる中で、中小がまだ適正な価格で取引価格を上乗せできていないという問題が起こっています。いわゆる価格転嫁の問題。だから、これは日本の特殊性であるのですけれども、大中小企業の間の利益というか、付加価値の配分みたいなところを少し考えていかないと、全体として賃金が底上げされていくということができないと。大手は、実はかなり上がってきているのですけれども、中小のところでなかなか上がってこないというところもありますから、大きく言うと労使関係なのですけれども、その間の中にある大企業と中小企業の間の付加価値の在り方みたいな、これは、今、政府がいろいろされているところなのですけれども、そこをやはり継続するというのが大きな中心的なところになってくるのではないかと。
あとは、先ほど言いましたように、交易条件の問題があって、これは為替が円安になってしまうと、輸入価格が、特に日本は今、食糧自給率が低くて、化石燃料に対する依存率が高いので、これも、今、政府が取り組まれようとされていますけれども、自給率を上げていったり、エネルギーの構造転換をしていくということで海外に、少なくとも基礎的なところはもう少し自立できるようなことにしていくということと、あとは、為替は、基本的には貿易収支というのが、今、構造的な赤字になっていますから、この部分は、もう少し競争力が結果的についてきて、対外収支がバランスしていくような、そんなことも考えていかないと、要は、結構総合的に対応を取っていかないと、安定的に実質賃金が上がっていって、年金財政を安定化していくというわけにはいかないという、結構実は射程の広い問題ではないかと考えています。
取りあえずは、先ほど申し上げたように、大手のところの賃金の適正化、ようやく賃上げの動きが定着していますから、ここを定着させるということと、あと中小企業の配分、付加価値の大手と中小の配分を見直す中で、中小にもっと賃上げができるような環境づくり、こういうところを当面継続するというのが、優先順位かなと、そのように考えています。
○小野部会長代理 よく分かりました。どうもありがとうございました。
○寺井部会長 そのほか、いかがでしょうか。
猪熊委員、お願いします。
○猪熊委員 ありがとうございます。オンラインで失礼します。
山田様、堀様、どうも貴重な講演をありがとうございました。
山田様のほうに、高齢者雇用、資料で行きますと、8ページ以降に、進展するシニア就労の現状と課題というのがありまして、これに関連して質問をさせていただければと思います。
高齢者雇用が広がっている反面、定年後、再雇用では賃金低下がみられるなど、雇用の質の問題もあるということが指摘されております。65歳までの雇用確保措置の義務化並びに70歳までの努力義務化が現状ございますけれども、70歳までの義務化を求める声もあるということを聞くのですけれども、これに関してどうお考えになるかというのが一つめの質問です。もう一つは、高齢者雇用に関係した年金制度との関係なのですけれども、在職老齢年金ですとか、年金の繰下げ制度、あるいは国民年金保険料の納付期間など、年金制度と関わりそうなことが、高齢者雇用に関連してあるわけですけれども、その関係性ですとか、影響をどうお考えになるかということについて、お考えをお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○寺井部会長 お願いします。
○山田氏 御質問ありがとうございます。
まず、70歳までの雇用、これは、いきなり義務化というのは、なかなか難しい話で、ただ、今、努力義務ということをされていて、政府が、やはりこれぐらいのことはやるべきだという中長期の考え方なりを示すというのは、私はすごく意味があると思っています。だから、努力義務をやはりしっかり示しながら、幾つかの選択肢が既に出されているのですけれども、やはり、これは重要な話ではないか、65歳のときも振り返ってみますと、まずは努力義務でやって、結果として義務化していったということです。
フォローになったのは、やはり人手不足だったのですけれども、基本的にはその環境は続いていきますので、今の施策をしっかり堅持していくと。
ただ、そのときに大事なのは、実は、シニアのリ・スキリングみたいな話なのです。これは、たまたま私はこの夏にデンマークに行って、デンマークで実はかなり、公的年金に関しては開始がかなり遅い、―実際は労使で上乗せをしているので、もっと早くからはもらえていると思うのですが、本当に基礎的なところに関しては、具体的な数字は聞けなかったのですけれども、かなり後から払うということなのです。
そこで、政策で強化しているのは、シニアが働いていける環境をつくっていく、そのスキルを身につけていく、特にブルーカラー系で働く方というのは、やはり一定の年齢になると肉体的に、もう働けなくなってきますから、その人たちを事務的な仕事であったり、もう少しフィジカルな負荷が少ない仕事に転換していくというところをかなり政策的にやっているそうです。
だから、そこは、やはり政府としての政策としては、労働政策に関わってくることなのですけれども、一定の就労の、これは年金とも関わりますけれども、70歳の義務化というところと、あと年金で言いますと、やはり一定程度繰り上げをすると、少しもらえるようなそういうところをしっかり訴えていくということは、もう既にされていると思います。そういうことを確実にやると同時に、日本のところで、今、もう少し強化すべきは、シニアのリ・スキリングみたいなところに力を入れていくというのは課題になってきているのではないかなということです。
もう一つのほうは、御質問の内容をすみません。
○猪熊委員 恐れ入ります。年金の繰下げ制度、今、75歳までですとか、在職老齢年金で年金が支給停止になる、基準額は上がってきているのですけれども、あと、保険料を何年納めるかとか、というあたりでのコメントです。
○山田氏 失礼しました。
繰下げのほうは、もう申し上げたように、これはしっかりアピールしていくということと、在職老齢年金に関しては、私は、いずれ段階的には撤廃していったらいいのではないかなと思っています。もちろん、これは現役世代との関係の中でされてきているわけだと思うのですけれども、あまり海外ではない制度ではないかと。
だから逆に言うと、シニアも働けるだけ働いていただくと、当然それのいろいろな施策をしていくという象徴的な意味合いで段階的に適用の額を上げて、既にそういう話をされているという形で行かれていると思うのですけれども、それと同時に、当然バランスさせるための例えば年金課税を見直すとか、様々なことはあると思うのですけれども、現役との負担の見直し、高齢世代の見直しというのは、別のところでしっかり一体として議論していくということが大事ではないかと、そのように考えています。
○猪熊委員 どうもありがとうございました。参考になりました。ありがとうございます。
○寺井部会長 そのほかにありますでしょうか。
もし、なければ私のほうから、山田様にお伺いしたいことがございます。
先ほどの御発表で、今、ギグワーカーのようなフリーランスが増加しているというお話がありました。
企業に所属して、厚生年金の被保険者の期間が長い被雇用者に比べて、ギグワーカーのような方たちは年金制度にどのように守られているかという点で違いがあると思うのですけれども、フリーランスの方々が増えることが年金制度にどのような影響をもたらすと思われるのかということと、既に問題は顕在化しているのかどうかと。
それから、資料の中に、海外でどのようにフリーランスを捉えているかという事例で、解釈が説明されていたのですけれども、山田様の視点で御覧になって、日本と状況が近くて参考になるという海外の例がありましたら、教えていただけたらと思います。
以上です。
○山田氏 ありがとうございます。
フリーランスに関しては、なかなか公式統計のようなものが整備されているわけではないので、実態は、少し把握が難しいところがあるのですけれども、でも、それなりのスピードで、アメリカなどでは増えてきている。ヨーロッパははっきり分からないのですけれども、意外に増えていないという話もあって、そこは、例えば、私は北欧が結構継続的に見て、北欧は、どうも話を聞いていると、そんなに急速的に増えていないのではないかということなのです。
それは、結構自営業であっても、年金制度に加入するような仕組みがあったりとか、もちろん自営業ですから、労使折半ということではなくて、両方払うわけですけれども、それは組合がかなり、逆にフリーランスをサポートしながら、できるだけ組合になるように誘導しているとか、そんな取組ということがあるのだと思います。
ただ、日本はなかなか、そういう労使関係が違いますから、なかなか入れられないですね。それと、前提に言うのを忘れましたけれども、フリーランスがあまり増えていくというのは、年金のいわゆる空洞化の話もありますし、それと、従来フリーランスというと、典型的な自営業をイメージしていたわけですね。典型的な自営業というのは、いわゆる生産手段を持っている人たちであって、しかも、まさに疑似的に法人というのが継続していくと、子供がその仕事を継いでいく、商店とか、農業とかもそうだと思うのですけれども、今増えているフリーランスというのは、特にギグ系、ネット系、いわゆるプラットフォーム系というのはそうではないわけで、かなり被雇用者との間の垣根というのがはっきりしてこない、個人によって物すごく差のある世界になってきていますから、ここに対しては、あまり急激に増えていくというのは、まさに雇用の空洞化であり、年金制度の空洞化につながるという、そういうところの意識は持っておく必要があると思うのです。
それで言うと、各国いろいろな形で対応しているわけですけれども、例えばアメリカとかだったら、できるだけフリーランスに対して被用者というほうを適用するように厳しく見ているとか、あるいはドイツとか一部の国は、中間形態を設けて、一部の労働者の必要な規制を入れていくとか、各国様々なやり方があるわけですけれども、日本は全体として議論が遅れているような印象がありますから、やはりそれはやっていかないと駄目だと思います。
それで、参考になる海外の事例ということで言いますと、私は、昔から注目しているのはドイツでして、ドイツは御存じの先生方も多いかなと思うのですけれども、昔からドイツに関しては、芸術家、いわゆるアーティストとかジャーナリストというのが、どうしてもギグ的な働きが、昔からそうですね、どこかから原稿料をもらったりとか、出演料をもらったりしますから、それをコーディネートするような会社がプロデューサーをやっているということですから、そうすると、どうしてもフリーランスなのだけれども、働けなくなると不安定だと、生活が成り立たないということで、基本的に本人の拠出と、それと間に入る使用者ではないのですけれども、その人たちが一定の、要は出演料として払ったもの、あるいは原稿料で払ったものに上乗せして拠出するという、特別に年金保険をつくっているわけですね。
だから、そういうものをギグワークに適用して、実は、実現はしていませんけれども、ドイツの一部の学者、研究者が、デジタルソーシャルセキュリティという形で、そういう構想も提示されていますから、その辺り、今後、実際ドイツで導入されるかというのは、別問題なのですけれども、日本もそういうことを研究しながら導入していくということも検討するというのが重要かなと、そのように考えています。
○寺井部会長 ありがとうございました。
それでは、次に、テーマ2の「若年期から中年期への働き方・家族形成の変化と年金制度について」を御議論いただきたいと存じます。
御発言のある方、どうぞよろしくお願いします。
庄子委員、お願いします。
○庄子委員 ありがとうございます。
お二人の先生には、大変興味深いお話をいただきまして、ありがとうございました。
私は堀先生の資料の9ページに関して、「20代後半層の職業意識の変化」というスライドで、先生も御説明されていた、できれば仕事がしたくないというのが急激に伸びているというお話しがありました。
注のところには、そう思う、ややそう思うの合計と書いてありますので、恐らく選択肢としては、その他に、そう思わない、あまりそう思わない、あるいは、どちらとも言えない等の選択肢があって、その中で、そう思う、ややそう思う、を選ばれた方の割合だと思うのですが、私はこれがあまりにも高いなと感じました。
仕事をするということは、単に生計を立てるために収入を得るということだけではなくて、自己実現ということにもつながっていくと思っていまして、そのような仕事の意味等を中学校ぐらいの頃から教育していくことなども重要なのではないかなと個人的には思っていますが、堀先生には、この上昇について何か考えられる要因などを、改めてお話しいただければありがたいと思いました。
以上でございます。
○寺井部会長 堀様、お願いします。
○堀氏 御質問ありがとうございます。
私もこれは、この部会のために最新のデータを慌てて追加して、少し驚いたのですけれども、明らかに上昇しております。
ただ、いわゆる仕事離れ傾向は日本だけではなく、グローバルに起こっていることなので、やはりという気持ちもあったことも事実です。
なぜ、できれば仕事はしたくないという割合が、日本でも高くなっているし、グローバルにも高くなっているかということについて、これだという理由は、まだ、研究としては出ていないのですけれども、先ほど部会長代理からも、インフレのお話があって、多分世界的には1つインフレで、自分が頑張っても手が届かないようなものが増えてしまったというのは、グローバルには言えるのだろうとは思っていると同時に、先ほど山田先生からも人手不足のお話がありましたけれども、人手不足なので、この人たちは、仕事をしたくないと思っているのだけれども働いてはいるのですね。正社員で、それなりに働いてはいるのだけれども、できれば仕事をしたくないという気持ちがある。
これがどうしてなのかというのを、私もさらに研究しなくてはいけない、本当に重要なテーマなのですけれども、氷河期のときは、仕事をしたくても仕事がなかったので、このような回答はあまりなかった。それが、仕事があって人手不足なのに、こうした状況が起こっているということなので、1つは、ある種の余裕が、そう思わせているのだろうという感じはいたします。
それから、先ほどの山田先生のお話でも、生成AIで仕事が奪われるのではないかという気持ちを持っている若い人もいるので、できれば仕事をしたくないというのが、一体何で現れているのかということを一言で御説明することは難しいのですが、おっしゃったような、もちろん仕事というのは、お金を稼ぐこともすごく重要なのですけれども、自己実現のためとか、あるいは社会で自分の居場所をつくっていくためとか、そういうことは、もちろんとても重要なことなのですけれども、恐らくそれを言葉で教えるのではなくて、やはり実感として持てるような機会を様々用意していくということが重要なのではないかと思っております。
ですので、今、いろいろな形で、学校の中だけで勉強するのではなくて、社会に少しずつ関わりを持つような、そんな活動も中高生で行われていたりしますけれども、そうした社会の皆様との関わりによって、仕事の中で、あるいは社会の中で、将来自分の居場所として仕事を続けていくというイメージが持てるのではないかと推測しているところであります。
以上です。
○庄子委員 ありがとうございました。
調査の対象が20代後半ということなので、就職して少し壁にぶつかりかけているタイミングといった要員もあるのか、とは思いました。ありがとうございました。
○寺井部会長 そのほか、御質問いかがでしょうか。
佐藤委員、お願いします。
○佐藤委員 山田先生、堀先生、データに基づいた豊富な分析、インサイトに満ちたお話をありがとうございました。
私は、堀先生に対して質問があるのですけれども、氷河期世代の大きな課題として、正社員、非正社員、失業、職業がない無業の間を行きつ戻りつするヨーヨー型というお話があったのですけれども、これは、この世代だけではなくて、今、介護問題というのも大きな社会問題になっており、そういう世代にとっても大きな問題である、つまり、全世代にわたって雇用の流動性を確保するということが、非常に重要ではないかと思うのですけれども、これを実現するためには、どういった政策が有効と堀先生としてはお考えになられるでしょうか、お聞かせいただけますと幸いです。
○寺井部会長 お願いします。
○堀氏 御質問ありがとうございます。
労働政策のずっと重要な課題であるわけなのですけれども、先ほど山田先生がおっしゃったりリ・スキリングは、もちろん重要だと思うのですけれども、もう少し制度としてつくっていけるといいのだろうなという感覚はありまして、例えば、賃金表のようなものをつくったりですとか、労働政策でも職業能力評価基準をつくって、工夫はしてきたところです。
使われているところもあるのですけれども、なかなかそれが使われていないというところもあり、この制度として、途中から入りやすくする、入りやすくするというのは、この人がこの待遇でもいいのではないかという社会的な基準をつくるということなのですけれども、そうした社会的な基準を、これまでもやってきたことではあるのですけれども、もう一段階進められるといいのではないかなと思っています。
例えば、氷河期世代で正社員経験がないので、40歳でも初任給みたいな感じのことというのは、やはりどうしても起こってしまうのですけれども、今だと例えば、転職する場合に、転職先で大体同じぐらいの年齢で同じような仕事をしている人よりも少し低くするみたいな感じの、いろいろな事例があると思いますが、それぞれの企業がそれぞれの基準で決めているといったところがあるのですけれども、もう少し公的に何かお示しできるような基準ができれば、もう少し流動性というほどではないですけれども、少し助けになるのかなと推測するところでございます。
以上です。
○佐藤委員 ありがとうございます。
客観的な基準、ガイドラインをより周知していく展開が必要だということを理解いたしました。
○寺井部会長 そのほかにいかがでしょうか。
嵩委員、どうぞよろしくお願いします。
○嵩委員 嵩でございます。よろしくお願いいたします。
山田先生と堀井先生には、興味深いデータと貴重な分析について御報告いただきまして、どうもありがとうございました。
私からは、堀先生の資料の34ページ以下のところになりますけれども、先ほど御説明いただきましたように、第1号被保険者について、今年の10月1日から、育児期間の保険料免除が導入されたり、あと、第3号被保険者についても見直しの議論がされているところです。そこで、家事や育児などの無償ケア労働ということについてお聞きしたいのですけれども、先ほどデータを示していただきましたように、家事、育児などの無償ケア労働は依然として女性に偏っているということでした。
やはり、そういったことが女性の就業継続とか、キャリア形成とか、あるいはその後の年金水準にも影響すると思われますが、こういった無償ケア労働が主に女性に偏っているということに伴う課題を改善していくために、どういった政策、特に年金制度上、こういった無償のケア労働をどう取り込んでというか、どう評価していくかということについて御検討されていることや、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○堀氏 御質問ありがとうございます。
とても困難な御質問をいただきまして、どう答えていいのか、ちょっと悩ましいのですけれども、これまでこの無償ケア労働に対して、この第3号被保険者というものが、そのためではないのですけれども、結果的にサポートしてきたところはあるのだろうと思います。
しかし、この先、この3号が縮小されていくとか、撤廃されていくということがあるとすると、どうやってこれに報いるのかということが、1つ大きな課題になってくるということで、長期的には、男性、女性にかかわらず、このケア労働、特に年金の場合は次の世代がいないと成り立たない仕組みなので、出産、子育てについては、何かしらの支援というものがなされていかないと、ますます少子化が進んでしまうのではないかと強く懸念しているところであります。
それとともに、この無償労働を外部化していくということがこれまでも進んできているのですけれども、どこまで外部化できるのかというのが、今のところなかなか難しくて、例えば保育園を拡充するとしたとして、夜遅くまで預かるのがいいのか、あるいは学童保育もすごく遅くまでは預かるのがいいのかなど、私自身、無償労働の時間を有償労働の時間に置き換えていくことだけがいいのかという疑問は、やや持っているところでありまして、全然お答えになっていないのですけれども、やはりこれは急激に変わる女性の就業の中でどう考えていくのかというのは非常に難しい問題だなと思っております。
お答えになっていないですけれども、以上です。
○嵩委員 ありがとうございました。
個人とライフスタイルに関わることは非常に難しいテーマと存じますが、にもかかわらず大変丁寧にお答えいただきまして、ありがとうございました。
○寺井部会長 そのほかにいかがでしょうか。
松本委員、お願いします。
○松本委員 山田先生、堀先生、貴重なお話をいただきまして、どうもありがとうございました。
堀先生の資料の23ページのところに、過去の就業履歴からの給与の表があると思うのですけれども、この中で正社員定着というところと、正社員転職というところでも、転職の収入のほうが低いというデータになっているように感じました。
データのつくり方が、私が思っているものと違うのかもしれないのですけれども、正社員からの転職は、イメージとしてはキャリアアップを目的とするようなイメージを私は持っているのですけれども、実際には、そうではないといったことなのか、正社員の方の転職によって収入が下がる要素というのは、どういったことがあるのでしょうかというところが1点で、こちらの図表が就職氷河期の世代の方のものとなっていると思うのですけれども、特有の事情なのかというところをお聞きしたかったです。
また、それに関連しまして、雇用の流動性というお話が今日ずっと出てきているのかなと思っているのですけれども、一時的に賃金が低下したとしても、長期的に賃金が下がってしまうと、年金の形成に影響が出ますというところがあると思われるのですけれども、転職による賃金低下を防いでいくような取組に、どのようなことが考えられるでしょうかということをお聞きしたかったのですけれども、若干、佐藤委員の質問と重複したかなというところがございまして、もし可能であれば、山田先生にもお答えいただければと思います。よろしくお願いします。
○寺井部会長 では、初めに堀様からお願いします。
○堀氏 ありがとうございます。
まず、23ページのスライドは、氷河期世代に限ってというか、この時点での35歳から44歳に限って示しているものなのですけれども、少なくとも氷河期以上の世代については、転職すると賃金が下がるというものだったと思います。これは割と一般的な常識としてあったと考えておりますし、実際に数値でもそうであったと思います。
しかし、若い世代でどうかというと、これは、現時点ではまだ分からないといいますか、やはりある程度年齢が行かないと収入差は開いていかないので分からないのですが、恐らく定着者と転職者の間の賃金差は縮まるのではないかと推測しています。
特に、今、若い人とお話しすると、転職というとキャリアアップの転職しか全然思いつかないといいますか、そういう方が多いのですけれども、やはり昔は、なかなかうまくいかないから、やむを得ず転職するという転職のほうが比較的ポピュラーであったと思いますので、どこで変わっているのかというのは、現時点では分からないのですけれども、この定着者と転職者の賃金差というのは、若い世代になればなるほど縮まっていくのではないかと推測されるかと思います。
それから、2つ目の御質問は、私は先ほどお答えしたということで、山田先生でよろしかったですか。
○松本委員 もし、追加で何かほかにもあるようでしたら、教えていただけますとうれしいです。
○堀氏 キャリアアップするには、どうしたらいいかと。
○松本委員 転職して賃金が下がりますということがあったとして、それがずっと続いてしまうと、年金水準が下がってしまうと思うのですけれども、転職をしていく中でも賃金水準を保っていくような工夫といいますか、対応といいますか、そういったところです。
○堀氏 年代とか世代によって恐らく違うので、ある程度年収が上がった後にということと、若い時期と事情がかなり違うかなという感じはしています。
先ほど申し上げたように、それぞれの人の中途採用者の賃金というのは、それぞれの企業で決めているので、下がることを防ぐということが、公的にできるかどうかというのは、なかなかすぐには思いつかないのですけれども、どちらかというと、転職は、賃金を上げるだけではなくて、自分の働きやすさとか、納得感とか、そういったところが改善されるという部分はあるので、もちろん賃金がアップすれば、それに越したことはないのですけれども、賃金だけで解釈できる行動でもないのかなという感触がございます。
以上です。
○寺井部会長 山田様、お願いします。
○山田氏 労働移動が果たして賃金を上げるのか下げるのかというのは、理論的にはどっちも言えるのですね。というのは、賃金が上がるというのは能力が上がっていないと上げられないのですね。職業能力が上がると。そうすると、古典的には、企業がなぜその人に人材投資をするかというと、終身雇用とは言えないにしても、一定程度は定着してもらって、人材を育成した後、それを発揮してもらって企業に還元してくれるということがないと、人材投資はしないわけですね。
だから、かつて日本は、そういう傾向が特に強くて、労働市場というのはあまり発達していなかったので、転職すると大体下がるということだったわけですね。
ところが、最近は、もう一つの議論は、やはりマッチングの議論で、必ずしも一企業というのは人材を100%うまく活用できていないのですね。本当は能力があるのに、仕事をしっかり与えていない、あるいは本人のやる気でもって、では、そこをもう少し自主的に、最近の議論では、労働市場の見える化みたいな話、例えばスキルを見える化していきましょうとか、堀先生がおっしゃったように、例えば、一定程度の仕事だったら、これぐらいの賃金水準だとか、欧米で、アメリカは、業者がやっていますし、ヨーロッパなどは、実は組合が間に入ってデータを交換し合って一生懸命つくっているというのがあるのですけれども、だから、そういうことを実は、政府は、今、いろいろとしているのですけれども、ジョブタグというもので仕事を定義していってやっています。
それから、賃金のところはなかなか難しいのですが、ただ、そういうプロセスをやることによって、マッチングをすることで賃金が上がる。例えば、よくあるのは、転職者の賃金が下がるのは、前の賃金を聞くのですね、前の賃金はどれぐらいだったというと、大体それに同じのをつけたりするのですね。そうすると、低いところから来ると低くなるし、という傾向があるので、それが例えば労働市場で一種の基準が出てくると、ある程度上がりやすくなってくるということで、だから、両方考えていかないと駄目で、何でもいいから転職すればいいということではなくて、その人のスキルがしっかり身についてきているのかと、それが曖昧だったのがもう少し見える化していって、そうすると本人が在職していても自分のスキルが上がっているということが見えやすいとか、まさに資格があれば、そういうことで分かったりするわけですけれども、もう少しスキルの見える化みたいなことをやっていくことで、結局、転職したときに上がるという傾向は出てくる。
それで、何度も言いますけれども、転職することが全ていいわけではなくて、中小企業は、むしろ辞められることが非常な問題になっていて、むしろ定着したほうがいいという、だから、そこをもう少しフラットに見えるような、政策的には、それが大事ということなのではないかなと思います。
○松本委員 ありがとうございました。
過去の状況から今の変化であったりとか、いろいろな考え方を聞かせていただいて、大変参考になりました。
○寺井部会長 そのほか、いかがでしょうか。
駒村委員、お願いします。
○駒村委員 山田先生、堀さん、どうもありがとうございました。今日は、いろいろ多角的な情報をいただきまして大変勉強になりました。いろいろ議論したい部分もありますけれども、時間もありませんので、堀先生にだけ御質問します。
21ページの、いわゆる氷河期世代をめぐる瑕疵効果というのでしょうか、労働経済でずっと言われていた氷河期世代のこのハンデはどこまで続くのかということが、最近になって、それが克服されたということが指摘されていて、それが確認されていたわけですね。
一方で、このことによって、氷河期世代の老後はもう大丈夫なのだという議論につながりがちなのですけれども、先生の資料の27ページ、それから24ページは賃金のフラット化の話ですから、これは若い世代も含めてかもしれませんけれども、さらに今日、事務局から配付された資料がございまして、事務局は説明されていないのですけれども、事務局の資料の2ページ、3ページが非常に重要なデータになっていまして、世代別に1号、2号、3号の割合を見ているのですけれども、やはり氷河期世代は若いときに1号の比率が非常に高いということを総合的に考えると、瞬間風速でフローというか、微分で見れば、氷河期世代は問題がなくなったように見えますけれども、年金というのは、ストックで見なければいけないので、ストックで見ると、やはり不安な部分があると。
これを対応するためには、先生と私は前の年金部会でも御一緒で、基礎年金の底上げというのは1個ソリューションとしてあるだろうと。
もう一つ、あのときに分布推計というのをやって、トレンドで見ると、この世代は前の世代よりもより長く働いてくれるので、取り返せる期間もあるのではないかという話だったのですけれども、この氷河期世代を60歳以降も働き続けるためには、働き続けることが期待できるかどうかという点と、あと、働き続けてもらうためには、どういう政策を今からしておく必要があるのかという点を教えていただきたいなと思いました。
以上です。
○堀氏 駒村先生、御質問ありがとうございます。
1点目なのですけれども、働き続ける気持ちにつきましては、インタビューを50人に聞いた限りですけれども、できれば動けなくなるまで働きたいという感じの、すごく就業意欲が高い方ばかりでした。
これは私も驚いたのですけれども、何とか若いとき、いろいろとあったけれども、それを取り返したいという気持ちがあるのか、できれば、できるだけ長く働き続けたいという方が非常に多かったです。
他方で、働き続けるためにはどうしたらいいかということで、先ほど山田先生の資料にもあったと思うのですけれども、この氷河期世代は既に50代に入っているので、10年と少しすると、もうシニアになってきます。
そのときに、人手不足の状況が続いていれば、まず、働けるだけの職場はあるだろうと。既に若い人の数が相当減っているので、一定程度は、このまま頑張っていけば働き続けられるのではないかと考えてはいるのですけれども、とはいえ、生成AI等の技術革新によってなくなっていく仕事もあるだろうということで、そうなってくると、先ほども話が出てきました、シニアのリ・スキリングという話になってくるわけでございます。
ただ、もともと普通に中高年でもリ・スキリングは難しい上に、65歳以降可能なのかという議論はずっとありまして、ただ、今、職業訓練の現場は50歳以上の方が半分以上になっているような感じなので、職業訓練の現場でもだんだんシニアに向かっていく人たちのリ・スキリングの経験が積み重なってきているということがあります。少し前だと65歳以降に新しい技能や技術を見つけるのは正直考えられなかったと思うのですけれども、今のシニアの中には、これまでの知識、技能を生かしつつ、それに少しプラスするということで、できる仕事というのは、ある程度あるのではないか、増えてくるのではないかと推測しているところであります。
もう一つ、駒村先生と御一緒させていただいたときに、拠出期間を40年から45年化するという議論があり、このまま順調に働き続けられる人については、45年化というのは、1つの重要な選択肢だと思うのですけれども、ただ、健康状態はそれぞれ変わってくるところがあるので、調査研究等をして45年化した場合に、どれぐらいの方が払い続けられるのということについては、検討を進めていってもいいのかなと考えております。
以上です。
○駒村委員 どうもありがとうございました。
リ・スキリングのところは、かなり不確実性もある部分ですけれども、時間との競争だと思いますので、ぜひその領域の専門家に頑張っていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
○寺井部会長 ありがとうございました。
少し時間が、まだ、本当は質問をしたい方はいっぱいいらっしゃると思うのですけれども、時間の関係で、視聴者から受け付けた質問について、事務局から紹介いただいた上で、講師に御回答をいただきたいと思います。
事務局には、質問の紹介をお願いいたします。
○植田首席年金数理官 時間の関係がございますので、1点のみお願いしたいと思います。
山田先生の資料の中で、アドバンスト・エッセンシャルワーカーを創出していくという話がありましたけれども、これを進めていくには、どのような方策が必要なのか、また、どのような難点があるとお考えでしょうかという御質問をよろしくお願いいたします。
○山田氏 ありがとうございます。
アドバンスト・エッセンシャルワーカーについては、実は、政策的には少し動き始めてはいるのですけれども、まず、実は何を意味しているのかということが、必ずしも明確ではないのですね、ある程度そこの共有感というのは要ると、これは私の私見ですけれども、少なくとも2つあって、1つは、何となく直接のイメージというのは、例えば、いろいろな技術を使いながら、現場の人が、機械とか、ツールを使って、非常に生産性を上げて効率よくやるという、それが分かりやすい事例なのだと思うのですけれども、実は、もう一つあって、例えば、介護現場などを考えますと、今、実はどんどん機器が入ってきているのですけれども、多くの機器は、実は使われていないのですね。そのままというところが、使っているところもあるのですけれども、それは、なぜかというと、現場の人はどう使ったらいいか分からないとか、あるいは機器を使うことは、実は介護と相入れないのではないかという考え方をお持ちの方もいらっしゃるわけですね。もちろん後者のところというのは、使い方とか、どう介護の質を上げるかという考え方の問題なのだと思います。
だから、その辺のどのように使っていくのとか、使っていくときに職場がどのように変わっていくのとか、共有をどうするのかみたいな、言わばマネジャー的にコーディネートする人材というのは、実は結構重要なのですね。
こういう仕事が、実は、やはり大卒の方がやっていけるような仕事なのではないか。何となく最近は、経営の戦略を書いて、格好いい仕事という人になりたいというか、そこに価値を置くのですけれども、もちろん、その価値はあるのだけれども、もっと大事なのは、現場の人がその機器をどう使っていけるのかということを考えていって、そういう人たちをサポートしていったりしていく人たちなのだと思うのです。それも大事だということです。
だから、そういうところに対して、私は、やはり日本の強さは現場だと思っているので、もう一回社会全体として、そこを再評価していって、そこで価値を、1つの社会運動として、そういうものを提示して、かつ、スキルは要りますから、それを、先ほどの堀先生の議論にもありましたように、スキル標準を明確にしていって、技能が身につけやすいようにしていく、それから、給料などもしっかりそれで上がっていくような、何となくそういうイメージの中でつくっていく。もちろん、これは、やりながら考えていく世界なのではないかと、そのように考えています。
○寺井部会長 ありがとうございます。
それでは、最後に、本日の基調講演や意見交換を通じて、お気づきの点がございましたら、御発言をいただきたいと存じますが、いかがでしょうか。
それでは、小野部会長代理、お願いします。
○小野部会長代理 ありがとうございます。
今の山田先生のコメントをお伺いしまして、最近よく言われるネオ・ブルーカラーがアドバンスト・エッセンシャルワーカーと通じているなと印象を持ちました。どうもありがとうございました。
私からは2点ほど簡単に、私見も入るのですけれども、お話ししたいと思います。
堀先生の資料の26ページのインタビュー調査の御説明をいただきましたが、そこに「今のところが、90時間を超えて働かせてもらえないところなので」ということで、被用者保険に加入できていないという趣旨の発言がありました。
これは、事業主の社会保険料負担回避が強く疑われる例なのではないかなと思っております。氷河期世代にかかわらず、こうした事業主の回避行動を防ぐような政策というのは、勤労者皆保険の実現に向かって欠かせないのではないのかなと思いました。これが1点です。
もう一点は、公的年金というのは保険ですので、氷河期世代を含む、過去に不遇な期間を持つ人々をさかのぼって救済するというのは、なかなか難易度が高いのではないかなと思います。むしろ、公的年金保険で対応できるのは、勤労者皆保険の実現と、それから就労期間の延伸による被保険者期間の増加で、将来に向かって、御自身の年金を充実させていくという機会を提供するということが重要かなと思った次第です。
私のコメントは以上です。
○寺井部会長 ありがとうございます。
今、非常に貴重なコメントを隣で、勉強させていただきながら聞いておりました。
本日は、公的年金財政の将来推計を行う上で重要な前提となる若年世代からシニア世代までの各世代の就労状況や就労意識等について、山田様と堀様から非常に貴重な御講演をいただきました。
今日扱っていただいたトピックスは、就労状況や就労意識だけではなくて、結婚や出産の動向であったり、外国人の就労動向、それからAIが雇用に与える影響など、非常に多岐にわたりました。これだけ多岐にわたったテーマなのですけれども、データをお示しいただき、アンケート結果もお示しいただき、また、海外の事例も取り上げていただきまして、こうではないかと思い込んでいるようなことが実は違っていたというようなこともあり、非常に学びが深まったと実感しております。
年金数理部会といたしましては、今後、財政検証のピアレビューを行う際に、本日の御講演や委員同士の議論も参考にしつつ、検討を行っていければと思っております。
また、本日、御視聴いただきました皆様方におかれましても、今後の年金数理部会の活動に御注目していただけますと幸いに存じます。
それでは、これをもちまして、本日の部会は終了いたします。長時間にわたり、どうもありがとうございました。
審議に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。資料は、議事次第、委員名簿、座席図のほか、資料1「基調講演資料『労働市場はどうなるか』」、山田久氏の提出資料でございます。
資料2「基調講演資料『若者から就職氷河期世代までの働き方』」、堀有喜衣氏提出資料でございます。
そのほか、参考資料として事務局の提出資料がございます。
次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、全委員が御出席されております。
猪熊委員、嵩委員におきましては、オンラインでの御参加となってございます。
また、前回の部会開催以降に、事務局の異動がございましたので、御紹介させていただきます。
年金局長の巽でございます。
審議官の林でございます。
総務課長の重永でございます。
年金課長の水野でございます。
資金運用課長の原田でございます。
最後に、私、植田が首席年金数理官に着任してございます。
なお、本日は基調講演中にZoomのウェビナーのQ&A機能を用いまして、視聴者からの御質問を受け付けます。
受け付けた御質問は、後半の意見交換の中で御紹介し、講師に御回答いただく予定でございます。
それでは、以後の進行につきましては、寺井部会長にお願いいたします。
○寺井部会長 委員の皆様には、御多忙の折、お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
本日の議題は「各世代における就労状況及び就労意識等と年金財政」です。
本日の年金数理部会は、昨年同様、動画配信によるオンラインセミナー形式で開催します。
これまでも、年金数理部会ではセミナー形式で部会を開催することにより、公的年金財政をめぐって、数理的な視点を中核としながら幅広く正確な情報を発信し、多くの方々、とりわけ公的年金財政に関心のある方々に理解を深めていただいてまいりました。
本年度は、公的年金財政の将来推計を行う上で重要な前提となる、若年世代からシニア世代までの各世代の就労状況や就労意識等をテーマとしました。
そこで、外部講師として、法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科の山田久教授と労働政策研究・研修機構統括研究員の堀有喜衣氏をお招きし、お話を伺うこととしました。
その後、後半では、お二人の講師を交えて、委員全員での意見交換を行うこととします。
お二人の講師への御質問は意見交換の中でお願いいたします。
カメラの方がいらっしゃれば、ここで退出をお願いいたします。
(報道関係者退出)
○寺井部会長 それでは、事務局より今回のテーマの選定趣旨と講師の紹介をお願いいたします。
○植田首席年金数理官 年金数理部会では、令和6年財政検証のピアレビューの報告書を取りまとめる中で、公的年金の持続可能性を高め、年金給付を充実させていくためには、女性や高齢者の労働参加の進展や労働分配率の向上に向けた関連施策を進めていくことが必要という指摘をしてきたところです。
そこで今年度のセミナーでは、若年世代からシニア世代までの各世代の就労動向や就労意識などにつきまして、有識者の先生方にそれぞれの専門的な見地から御講演いただくこととしました。
関連して、若年世代における結婚・出産の動向や近年増加している外国人の就労動向、AIが雇用に与える影響等につきましても、講師の方々に御紹介いただきたいと考えまして、今回のテーマとさせていただきました。
次に、講師の山田久教授と堀有喜衣様の略歴を御紹介させていただきます。
まず、山田様は、株式会社日本総合研究所の副理事長などを経まして、2023年より法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科の教授を務められておられます。
また、山田様は、マクロ経済分析や経済政策及び労働経済学を研究されておられまして、労働政策審議会労働政策基本部会委員などを務められております。
次に、堀様は、労働政策研究・研修機構の主任研究員を経まして、現在、統括研究員を務められておられます。
また、堀様は、教育社会学の分野で学校から職業への移行研究や、若年者雇用等の研究をされており、社会保障審議会年金部会・生活困窮者自立支援及び生活保護部会、労働政策審議会職業安定分科会委員などを務められております。
以上でございます。
○寺井部会長 それでは、山田氏から基調講演をいただきます。演台への移動をお願いいたします。
それでは、よろしくお願いいたします。
○山田氏 法政大学の山田でございます。本日は、この場にお招きをいただきまして、ありがとうございます。
私のほうからは、年金財政の前提になる雇用動向ということを、全般的にお話をさせていただきます。
特に若い方及び女性の問題に関しましては、後ほど堀先生のほうでお話があると思いますので、それとかぶらないような形で、お話をさせていただきたいと思います。
内容は、こちらに出ておりますけれども、最初に全体をざっと見た上で、特に2つ目は、シニアの就労の問題、それから外国人就労の問題、それと昨今非常に大きくなっております、生成AIをはじめとした新技術の雇用への影響ということで順にお話をさせていただきます。
まず、現状ですけれども、こちらには、2つ表が載っておりますけれども、一言で言うと、非常に人手不足というのが深刻になってきているということかと思います。
これは、日銀短観の雇用人員判断DIという、下に行けば行くほど、雇用が不足していると答えている事業者数が多いということのわけですけれども、産業別のばらつきというのはありますけれども、全ての業種において不足の状態になっているということです。
特に、いわゆる現場系の方が多いところで、運輸あるいは宿泊、飲食、それから建設などもそうですけれども、そういうところの不足感というのは非常に強いということになっております。
では、何で人手不足かということなのですけれども、これは、直感的に言うと、人口が減っているから当たり前でしょうということが言われるわけです。もっと言いますと、もっとというか少し専門的に言うと、いわゆる生産年齢人口が、もう既に1990年代にピークアウトしたわけですから、当然深刻になっていくだろうということだと思うのですが、これは、皆さん方は御案内かと思いますけれども、人口と生産年齢は、当然違いますし、労働人口とも違うということであります。
労働人口というのは、働いている意思のある人でありまして、ですから、実際に就労している人プラス失業者が入るわけです。この失業者というのは、極めて主観的な統計でありまして、本人が仕事を探しているよと答えれば、職がない場合は失業者ですけれども、そうでなければ失業者にカウントされないということですので、労働人口というのは、かなりそういう不安定なものではあります。
ただ、それは働く意思のあるということを表明しているわけで、これがやはり重要だということなのですけれども、右側の図表を御覧いただきますと、労働人口は、実は増え続けております。一時、コロナのときに一旦落ちてマイナスになったのですけれども、ここ数年かなり、逆に言うと順調に増えているということでありまして、実は、労働人口が減っているから人手不足が深刻化しているという単純な話ではないということです。
それ以外の要因というのを、後ほど、もう一回確認するとして、改めて労働人口の動向というのを確認してみますと、左側に、いわゆる労働者の属性別の労働人口の推移を示しております。
一番上にあるのが、青の実線ですけれども、16歳から64歳、どこまでを現役というかは、あれですけれども、今は、一応65歳まで就労することが基本的に想定されているということでここまで取りますと、これは、もうずっと減り続けているわけですね、極めて早いペースでずっと減ってきて、さらに今後落ちていくということです。
実は、それを補う形で女性がかなり増えていると、特に2010年代の後半以降ペースが加速しているということです。
もう一つは、その下にある65歳以上の男女ともに増えている。ただ、65歳以上の男性については、頭打ち感が出ているわけですけれども、要は、女性が現役世代もそうですし、シニア世代も、実は順調にまだ増えているというのが実態です。
M字カーブというのが有名なカーブですね、真ん中ほどにあります。横軸に年齢、縦軸に労働力率ですね、人口に占める労働力人口の割合ですけれども、これは、ほぼ解消に向かっているということなのですけれども、ただ、これを見ると、例えば海外で見ると、スウェーデンとか、あるいはドイツなどに比べますと、中高年層というのがまだ低い状況にありますので、この辺りがまだ緩やかに上がっていく余地もあるし、実際そういう過程にあるということだと思います。
もう一つ、労働人口が伸びている、統計上はこの中に入っているということなのですけれども、もう一つの塊として重要なのは、言うまでもなく外国人労働者の方々がかなりのハイペースで入って来られて、日本に来られているということですね。
右の端にありますように、一時外国人労働者の方は頭打ちだという声もあったのですけれども、結構、最近は順調に入ってきているということで、この辺りが、労働力人口が増えている要因だということであります。
では、人手不足が労働力人口の要因ではない、いわゆる一般的に思われているような要因ではないとすれば、それ以外に要因がどこにあるかといいますと、大きく2つあるのではないかなと思います。
1つは、生産性の問題であります。左側にグラフが載っておりますけれども、これは産業ごとに、縦軸に付加価値生産性、従業員1人当たりの付加価値額を取りまして、横軸には、1ページ目に見ました雇用人員判断DIです。これは、左側に行けば行くほど不足感が強いということですけれども、この2007年ぐらいを見ますと、あまり明確な相関関係はなかったのですね。若干何となく右肩上がりなのですけれども、決定係数などを見ますと、ほとんど無相関ということなのですけれども、これが2017年度あるいは最近の2022年度を見ますと、これは、かなり順相関が強い。要は、生産性が低い産業ほど、人手不足感が強いというのが、かなりはっきり出てきているということです。
これは、分かりやすく言いますと、一定の売上を伸ばすために、生産性が高ければ少ない人員でいいわけですけれども、低ければたくさん要るという、そういう話ということだと思います。
逆に言うと、生産性を上げていけば、人手不足感というのは解消する余地は、まだまだ十分あるということになると思います。
もう一つは、雇用のミスマッチというものです。右側を御覧いただきますと、これは就業率と失業率と有効求人倍率というものが載っていますが、特に下のほうの求人倍率と失業率というのを見ますと、基本的には逆相関にあるのですが、水準を見ると、1970年代ですね、オイルショックの直前ぐらいというのは物すごい人手不足で、有効求人倍率が1.5倍台半ばぐらいですね。このときの失業率は1%ぐらいで非常に低かったのですが、最近有効求人倍率が、やや、どちらかというと、ハローワークを使わないというのが増えてきているというのもあって、若干落ちてはいますけれども、恐らく労働需給の引き締まりというのは、1970年代の頭にほぼ匹敵する状況なのだと思いますが、失業率を見ていただくと、2%の半ばということで、実は、これだけ人手不足感が強いのに、失業率が2%の半ばあるというのは、やはり少し高いという感覚ではないかなと。要は、これはミスマッチなのですね。働きたい人がいるにもかかわらず、なかなか職が見つからないという、そういうことがあるということかと思います。
これは、もう少し詳しく見ているのですけれども、労働生産性は、これも細かくやっていきますと、少し込み入った話になってしまいますけれども、生産性を考えるときに、実は付加価値生産性あるいは名目生産性というものと、実質労働生産性ということを2つ分けて考える必要があります。実は、局面によって、その生産性が低いということの意味合いが変わっております。
日本は、労働生産性が低いという議論はよくされてきました。普通、この議論をやるときに、マクロでするときは、実質ベースの生産性を考えるのですね。
ところが、ここで見ていただきますと、普通は時間当たり実質労働生産なのですけれども、かなり順調に上がってきたというのが実態なのですね。
これは、ここにはデータはありませんけれども、海外と比較しても、日本は、時間当たり実質労働生産性というのは、かなり順調に回復してきたというのが、90年代半ばから、つい最近までの話だったのです。
ところが、日本だけデフレでしたので、いいものをつくっても安くしか売りませんので、そうすると、薄利多売のビジネスをつくらないと駄目なのですね。だから、そういう中で、先ほどあった付加価値生産性が伸びない、だから薄利多売のビジネスを回すために多くの人がいるという、そういう状況でした。
ところが、ここ5年ぐらいというのは、御案内のようにコロナ禍以降、これは、マクロ的に世界的に大きく変わってきて、はっきり言いますと、もうインフレの時代に入っているということだと私は思っておりますけれども、そういう意味では、値上げができるようになってきたのですね。
ところが、ここで問題になっているのが、逆に実質労働生産性の伸びが鈍化してきているということで、これは後ほど言いますけれども、世界的に見たときに、日本は、やはりデジタル化ということで、かなりまだ遅れているということが、その辺りの背景にあります。後ほど、この話はしたいと思います。
もう一つのミスマッチの問題なのですけれども、これは、違う指標で確認をしておりますけれども、要は、今は、ここに3つのグラフが載っておりますけれども、企業の求人数が、足元は少しハローワーク以外に流れているということもあって、若干減少傾向にありますが、求職者数ですね、働きたいという求職票を出している人よりもはるかに多い状況が続いているのですね。まさに売り手市場という状況になっているわけです。
ところが、就職件数がどんどん下がっているということでありまして、まさにここに、働きたい人、雇いたい人はたくさんいるのですけれども、実際の就職に結びついていないと。これをミスマッチということで原因を説明するわけですけれども、ミスマッチというのは、いろいろな要因があるのですけれども、大きく分けると、恐らくスキルのミスマッチと、労働条件のミスマッチというその2つなのだと思います。
2025年のデータですが、労働力調査の詳細集計というのがありまして、そこに、こういう細かい理由を聞いているものがあります。
ここでは、失業者だけではなくて、非労働力人口のうちでも就業希望の人ですね、最初に言いましたが、失業者というのは極めて主観的なものですから、これをもう少し広げているわけですけれども、これを見ますと、数字ははっきり言われているものだけで集計しているわけなのですけれども、ざっくり言いますと、男性はスキルのミスマッチが結構多いのですね。それで、女性が労働条件のミスマッチが多いと、全体で見ると、労働条件のミスマッチの原因というのが、ざっくりと恐らく3分の2ぐらいを占めているということです。スキルのミスマッチというのは分かりやすいのですが、労働条件のミスマッチというのは、これはいろいろあります。賃金が合わないとか、働きたい場所が合わないとか、あるいは介護・育児というのは、日本は、これがミスマッチの要因になりますけれども、私が長く調べていますと、北欧などに行きますと、原則これはないわけです。これが政府の責任ということになりますから、そういう意味では、これもミスマッチの条件になってきているということで、端的に言いますと、日本の働き方というのは、なかなか企業の都合でつくってきた結果、これだけ制約の多い労働者が増えているにもかかわらず、なかなかそれに合った働き方が提供できていないという辺りが、このミスマッチの背景にあるということが言えるのだと思います。
少し長くなってしまいましたけれども、それを前提に個別の論点に入っていきますけれども、まず、シニアです。見ましたように、シニアの就労はかなり増えてきています。男性が、この先どんどん加速するかというのは少し難しいかもしれませんけれども、女性のシニアが働いていくというのは、かなりまだまだ可能性があるということかと思います。
近年の状況を見ますと、基本的には、左にありますように、60歳以上とここでは見ていますけれども、ずっと60歳以上の就業者は増えているわけですけれども、これは高齢化で、もともとの母集団である高齢人口が増えているということもありますけれども、注目すべきは、就業率が、特にこの10年、20年、着実に上がってきたということだと思います。
こういった背景には何があるかといいますと、これもその整理ということになりますけれども、1つは、年金が関係ありますけれども、年金支給年齢が引き上げられてきたということや、それとセットでしたけれども、企業に対して、かつては定年60歳だったのが、65歳まで順次、努力義務から今は強制法規ということだと思います。さらに、今は70歳まで努力義務で就労の受け皿をつくってくれという話になっている、こういう政策的な支援ということが当然あるということかと思います。ただ、ベースにあるのは、この2つかと思います。やはり、健康年齢が延びてきたという話です。
この話でよくエピソード的に語られるのは、サザエさんに出てくる波平さんは何歳ですかという話がありますが、答えは54歳だったわけですけれども、戦後つくられた時期というのは、定年直前というのは、ああいう形だったと。今、若い学生さんに聞きますと、74歳ですかという答えになってくるわけでありまして、まさに見栄えだけではないですけれども、実際に非常に元気になっている。
もう一つは、やはり人手不足ですね、企業自体に人がいないわけですから、地方などの話を聞いていますと、本当に人がいないという話を聞きます。この辺りにシニアが就労しているということです。
この先を見ても、人口動態は言うまでもないですけれども、このように変わっていく中で、まさに60歳以上がマイノリティではなくてマジョリティになっていく、そういう人口動態が起こっているということです。
量的には、そういう意味では、働いている人は増えているのですけれども、一言で言いますと、質的にシニアが十分活躍できているかというと、まだまだということかと思います。
1つは定年ですね。明確というか、かなり強い形で60歳あるいは65歳ということで、定年が慣例としても、ある意味、制度的にもビルトインされている国というのは、日本ぐらいというと言い過ぎなのですけれども、アメリカは基本的にこういうものはありませんし、ヨーロッパは慣行的にはあるのですけれども、EU全体では、これはなくそうという話になっているわけで、日本ほど明確に、こういうことが見えないわけですけれども、ただ、これをまさに延ばしていこうということですが、その結果、70歳以上まで働ける企業は4割を超えるのですが、では、定年を60歳以上にしている企業はどれぐらいあるかというと、徐々には増えているのですけれども、例えば65歳定年というと24%ぐらいにとどまっているということです。
まさに継続雇用を、一旦60歳でリセットして、有期雇用として労働条件をいろいろ変えて、65歳まで働いていくというのは、まだまだ中心だということです。
そのときに賃金が、平均的には、やはり6割、7割減少するというのが、現状かということです。徐々にこの辺りは、変わっては来ているのですけれども、その変化というのは緩やかなものということかと思います。
そうしますと、先ほども言いましたように、60歳以上の人口というのは、10年ぐらい経ちますと、恐らく働いている人の3分の1ぐらいになるのですね。そうすると、この人たちのモチベーションが低いというのは、組織としてどうなのという形になってくるのですけれども、残念ながら60歳以上の方のモチベーションというのは、大きな課題というのが残っております。
特に60歳前半の方々のモチベーションというのは、大きく低下しているという状況であります。これは、要は、企業は義務的に雇わざるを得ないわけで、もともと企業として基本的にそこまで活躍してもらおうと思って人材育成とか配置をしてきていないという結果ということでもあるのですけれども、こういう問題がまだ残っています。
65歳以上になりますと、これは義務ではないので、結構モチベーションは回復するのですけれども、絶対数も減りますから、それでも、まだモチベーションが低いという人たちもかなりいる。やはり賃金の問題というのは残っております。
明確にその辺りが見えてくるのが、今、御覧になっている年齢別の賃金カーブ、これは30歳代を100としたときに、年齢別の賃金を平均的に見たときにどうなるかということなのですけれども、日本が本当に特異なのは、50歳代が上がるのですけれども、がくっと60歳代で下がると。
これは、慣例的に60歳定年ということを前提に人事の仕組みをつくってきたわけでありまして、それをなかなか急速に変えることができないというのが実態だと思います。その辺りが結果として残っている。
欧米の場合は、基本的に技能とか、仕事の価値に応じて賃金を決めていく、俗に言うジョブ型が基本になっている。日本は、特に正社員の場合は、いわゆるメンバーシップ雇用の中で、長期の中で個人の貢献度と、あと、総人件費、賃金をバランスさせるということですので、こういう違いが出てくるということは、これは教科書的な説明でありますけれども、原則そういうところがあるということかと思います。
ただ、これは、徐々にいろいろと変わってきておりまして、本当に人がいないので、やはりシニアを活躍させようということで、単純に人件費、シニアの賃金を上げますと、多くの経営者というのは、特に中小企業の経営者は、やはりそれでも、もともと人件費の負担に悩んでいると、最低賃金が上がってくるし、いろいろな状況の中で、ですから、それは後ろ向きということになるのですけれども、これは、内閣府の調査、経済財政白書、去年、一昨年ですかね、こちらで分析がされていますけれども、人件費は上がるのですけれども、実は、意外に営業利益率が上がるケースもあるということで、ある意味、人件費が上がるのであれば、それに応じた様々な見直しを、人材活用の見直しとかビジネスの見直しをすることによって、必ずしもマイナスではないということです。少なくともマイナスにはなっていないと、営業利益率は変わらないということがあるということかと思います。
ただ、ミクロで考えますと、シニアに活躍してもらおうというのは、一見良いようには見えるのですけれども、実は若い人たちにとっては少しマイナスになるケースもあります。例えば、いわゆるシニアの人たちが重要なポストに位置づけると、あるいは年功的なカルチャーが残っていますと、なかなか若い人たちが、自分が発揮できないということで、その辺りの矛盾ということがあるわけなのですけれども、1つの突破口というのは、働く場を変えるということなのではないかと思います。あるいは、若いときに実は転職をした経験のある人というのは、この統計を見ますと、実は65歳以上ですね、65歳以上というのは、義務的な雇用ではありませんから、あくまで労使が合意して雇用をした、あるいは働いたということになりますから、そうすると、実は、それまでに転職した経験があるか、ないかによって就業率というのは、かなり明確に差が出てくるのですね。
恐らく、これは様々な要因があるのでしょうけれども、大きくは2つかなと思います。それは結果論でありまして、それだけ現役世代のときに、いろいろな技能を身につけたり、それなりの、いわゆるエンプロイアビリティがあるからこそ、結果として転職できたという話、転職しているというのは、その証明だというのもありますけれども、実は、もう一つあって、幾ら優秀な人でも新しい組織に入ると、非常に面食らうというか、特に大手企業で長く働いていますと、違うところにいきますと、カルチャーが違うと、特に今の中高年世代だと、結構いろいろなサポートを若い人がやってくれたみたいな経験もあって、そのままの調子でやってしまうと総スカンを食らうわけですね。だから1回転職をすると、なかなかカルチャーは違うのだなと、昔のやり方ではやっていけないなということが分かるわけで、そういう意味では、対人スキルみたいなことが、ある意味上がるという側面もあると思います。
要は、シニアで働き続けようということになりますと、いきなりシニアになってから云々という話とか、専門スキルを伸ばせばいいみたいな、そんな単純な話ではないわけですね。やはり、総合的な人間力の話とか、あるいは若いときからそういう意識をしてスキルをつくっていかないと、いろいろな経験を積んでいかないと駄目だということもあるわけですね。あるいは企業としても当然、そういう年功的な、少なくともカルチャーみたいなことは変えていくようなことはやっていかないと駄目だと、その辺りがあるのだと思います。
続きまして、外国人就労の話であります。
冒頭に言いましたように、外国人労働者の方は、ここ数年かなりハイペースで伸びております。2025年10月時点で260万人ということで、大体就労者の割合は、少し前まで1%ぐらいと言われていたのが、今は2%から3%にだんだん近づいてくるという状況になってきているということだと思います。これは、特に中小零細で人手不足ですから増えているという状況です。
かつては、技能実習生と、あとは資格外就労というのは、いわゆる留学生の方々のアルバイトです。これが特に2010年代の後半というのは増えたのですけれども、その間に大きな制度改正がありまして、最近は特定技能と言われる資格で働く人が増えています。
国別には、昔は中国の方が多かったのですが、最近はベトナムの方が増えていると、ベトナムの方が多いのは、結構親日の国民性とか、結構、ある人が来ると、その後にまた来るみたいな、そういう傾向もあるみたいです。
これを見ていますと、国によっては、例えばインドネシアなどは、いろいろな国に人材がいっているのですけれども、ベトナムは結構日本に来てくれるという、そういう傾向があるということです。
業種別には、やはりここにありますように、建設とか、人手不足の産業で増えているということかと思います。
この先どうなるかということで考えていくときに重要になってくるのが、外国人の方の受入れの制度。外国人労働者の受入れの制度というのは、基本的には、今も貫いているわけです。いわゆる単純労働者の方は受け入れられませんと、あくまで技能のある、スキルの高い人を受け入れている、この原則は今も変わっておりません。
ただ、従来は人手不足を理由に入れるということは、制度上はやってこなかったのですけれども、2019年の制度改正以降、これを前面に打ち出した特定技能ということを導入したということです。
特定技能というのは、単純労働かそうではないかというと、そうではないと、熟練のほうに位置づけられるのですが、実態的には、中間的な形態と言っていいと思います。これは、世界のどこの国を見ても完全に自由に外国人の方を受け入れているという国は、制度的には少なくともないということです。実態的にはどうかというのは、いろいろあるのですけれども、日本もある意味、それに乗っかってやってきているわけですけれども、ただ、人手不足ということを数年前に前面に打ち出していると。
もう一つ、これは、来年度から変わるのですけれども、技能実習というのは長くあって、もともとは外国人の方に日本に来ていただいて、日本の技能を身につけていただこうという国際貢献という建付の中で導入された制度ですけれども、なかなか実態的には労働力不足を補うために扱われてきたというのは、よく言われている話です。
残念ながら幾つか、少し目立つようなところで、いろいろな問題が起こったものですから、この制度は、やはり見直そうという話が出てきていまして、その代わり、明確に育成というところを前面に打ち出して育成就労制度に変えようということです。
ただ、この導入によって、実は外国人労働者の受入れの仕組みというのは、かなり基本的に整備されてきたなと、私は感じております。
一旦、ある程度、育成就労の形で入ってきていただいて、日本のこととか、いろいろなことを知っていただいて、中には、全員ここで就労される、帰っていかれる方もあるということだと思うのですけれども、その中で、お互いに御本人も納得される、企業もこの人はいいなという人を特定技能という形で、技能労働者として受け入れていくという、少なくとも制度とその枠組みというのは出てきているのではないかなと思います。
これは、世界的に見ても、例えば、つい10年ぐらい前というのは、日本の賃金というのは、為替が強いということもあって、アジアの中ではかなり高い状態だったわけですけれども、今や韓国のほうが、平均賃金が高いという状況にもなっております。韓国も非常に労働力不足で、制度的には外国人の受入れ方というのは、かなり進んだ制度を入れているということで、日本も、そういう意味では、外国人の方にしっかり来ていただこうと思いますと、しっかり制度を整備していかないと駄目だと、そういう流れに沿っていってということかと思います。
外国人の労働者の話でいきますと、多くの人が入ってくると、生産性が悪化するとか、いろいろな話があるのですけれども、それは受入れ方がうまくないと、そうなっていくのですけれども、少なくとも制度的には、少し違う考えだと思います。
これは、サンプルの関係で、あまり明確に出ていないところもあるのですけれども、要は、ここ数年の変化というのは、やはり長く働いた現場系の人は、やはり技能が身について、それなりに賃金が上がっていくと、そういう仕組みに徐々に変わってきていると、あるべき方向に少しずつ変わってきていると。もちろん、ミクロでいろいろな問題が起こっておりますけれども、そういうことなのではないかなと思います。
これは、まさに非常に大事な話でありまして、外国人労働者を単なる人手不足と考えるのではなくて、日本で長く働いていただける、まさに技能労働者として受け入れていくということが大事です。これをいいかげんにやっていくと、本当にいろいろな問題が起こるわけですね。
当たり前ですけれども、人は人として扱わなければ、当然な話であります。かつて戦後すぐにスイスで、ヨーロッパというのは人手不足で、戦後復興の中で多くの外国人労働者を入れたのですが、スイスのマックス・フリッシュという作家が言っていますけれども、我々は労働力を呼んだつもりが、実は人間だったという、そういう表現があるわけで、まさにそのとおりでありまして、人としてしっかり社会の一員として受け入れている、そういう体制がどうつくれるのかということなのだと思います。ここは、今、いろいろやっておるのですけれども、まだ、課題が残っているところではないかと思います。
最後に、技術の影響ということですね。残り10分ぐらいだと思います。
これは、生産性向上というところと関わってくるわけであります。これは、AIだけではないわけですけれども、いわゆる新技術を導入したときには、基本的には雇用を代替するか、あるいは雇用を補完するかと、英語の文献などで言いますと、オートメーションか、オーグメンテーションかという、そういう議論がされております。
これは、いろいろな議論もありますし、いろいろな研究というのがどんどん進んできているのですけれども、1つ、これは、ILOがワーキングペーパーとして発表した、2023年に出したものです。その後、毎年ですかね、何年かに1回、そのデータ自体を更新しておりますけれども、ベースは2023年に出されたものです。
それは、どういうことをやっているかといいますと、AIの導入によってどれぐらい、要は雇用がまさに代替されるか、補完されるかと、職種別に分析をしたものであります。
これは、結果だけざっくり示していますけれども、大きく分けるとオフィス関係の仕事と、現場関係の仕事で、やはり違うわけですね。よく言われますように、オフィス労働の、特に技能レベルが相対的に低かったり、中間レベルまでというのは、かなり代替される可能性が高いと、これは一般的に想像されるところかと思います。
ただ、本当の意味で、意思決定に関わってくる本来の意味での管理職、マネジャーですね、この辺りは、代替されるものではなくて、むしろそれを使ってオーグメンテーションのほうですね、生産性を上げていったり、パフォーマンスを上げられるように使っていけるということかと、専門職もうまくやればそうなるということですね。
一方で、現場系は、一部販売関係などは、確かにオンラインでできるということもあるのでしょうけれども、一部代替される可能性はあるのですけれども、多くは、むしろオーグメンテーションです。ある程度のやり方が標準化されてきますと、知識が十分ではなくても生産性は上がるわけです。だから、その現場系に関しては、これはAIだけではないのですけれども、実態は、言われているようなフィジカルAIとか、そういうものとの融合の中なのでしょうけれども、生産性を上げていくという、雇用を必ずしも減らすわけではないと。
もちろん、これは、使い方次第です。意思を持ってどういう使い方をするかによって、これは全く変わってくるのですけれども、国によって傾向は、アメリカはどちらかというと、特に未熟練の労働に関しては、代替的に使う傾向は極めて強いですけれども、私が結構研究をしています北欧などは、あまりそういう形では使わないと、これは、まさに使い方次第ということなのですけれども、一般論としては、そういうことが言えるということです。
アメリカに関しては、変化は速くて、結構オートメーションに使っているということで、これは、よく言われますけれども、大卒の方が、かつては大学を卒業すると、法律関係とか、会計士とか、コンサルタントの見習いで入って、将来高給を得るというのは1つのコースだったわけですけれども、今やそれはAIでかなり簡単につくってしまうということで、そこはなかなか職がないということで、ブルーカラービリオネアなどと言われて、これは本当にどれぐらいかというのはあるのですけれども、一部、ブルーカラーに人が移るというような、若干統計を見ても、例えば学歴の賃金差というのが、以前から見ると、高卒の方の相対賃金が上がっているみたいなことが見られるということは起こっています。
日本は、全くそのとおりになるかというと、また少し違うところがあるとは思います。アメリカ以上に人手不足が深刻ですけれども、ただ、アメリカがいうのは、ホワイトカラーはどうもだぶついてきそうな部分が、特に中レベルから低レベルの技能が低いレベルは、どうも仕事は結構なくなっていくけれども、ブルーカラーのほうは比較的当面は仕事がありそうだということですね。
恐らく同じような傾向は日本でも言えるわけでありまして、ある意味、それ以上に深刻に起こっていく、特にブルーカラーの不足というのは深刻に起こっていくということかと思います。実際、もうまさにそうなのですけれども、特にそれがあるのは、右側にありますように、日本の場合は、大学を卒業してブルーカラーになる方は、決して多くはないわけですね、基本的にやはりホワイト的な仕事をするわけでありますけれども、これが、もう一気に、大卒率がもともと低かったということもあって、近年上がってきて、かつ、少子化ですので、ここにありますようにブルーカラーに入っていく可能性の高い人たちのグループが一気に就職してきているということですね。
実際これを見ると、まさに現場系、少し前までは専門職が不足している、スキルの高い人が不足しているということが言われていましたけれども、これは、もちろん不足しているのですが、それ以上に現場の人たちの不足というのが大きくなっているということです。
その中で、これは、私の最近の提案ということでさせていただいているのは、やはり日本の年金財政とかにも関わってきますけれども、最終的には、やはり実質賃金を上げていかないと、年金財政というのは安定していかないということですね。当然、実質賃金を上げていくというのは、生産性を上げていくということかと思います。生産性を上げていくためには、やはり一定の経済成長も必要なわけですね。
ところが、人手不足が、今、深刻なので、例えば、最近、企業はすごい設備投資の意欲が高いのですけれども、見ていますと、計画と実績が大きく乖離するのですね、計画しても建屋を建てないとか、物流がうまくいかないとか、まさに現場の労働力不足がネックになって、実際の設備投資が進捗しないということが起こっているわけです。
だから、この現場の労働力の不足ということを、これは継続的に今後さらに、むしろ強くなっていくわけですから、この部分を解消していかないと、しっかり生産性も上がらないし、経済成長もしないという話なのだと思います。
日本は、今の段階で、それほど深刻ではないのですけれども、理屈から考えると、やはりホワイトカラーの中レベルから下位、技能としては下位レベルというのは、恐らくオートメーションというのは進んでいくし、進んでいかないと駄目だと思います。
問題になってくるのは、大卒の人の受け皿という話になってくるわけですね。これを、やはり現場に入っていくという、ただ、それは今のイメージだと、人は入ってこないわけですね。だから、私は最近申し上げているのは、アドバンスト・エッセンシャルワーカーということで、実はブルーカラーというか、現場系の仕事は、最近はいろいろな機器が入ってきて、安全性というのもかなり上がっています。それから生産性も上げようと思ったら、まだまだ余地はあるのですね。
多分、問題はイメージがあって、あるいは賃金というのは、実は、単に労働需給で決まるのではなくて、社会的に結構ベースが決まっているものがあります。そういうところを、社会全体として底上げをしていくような取組をしていくことで、ここの高い生産性の、非常に社会的にも価値のある労働ということで現場を見直していって、そこに人を増やしていくということが大事ではないかと、これは問題提起ですね。
そのときに、やはり技術が大事なのですね。冒頭に言いましたように、今、日本が、実質生産性が伸び悩んできている背景には、世界全体で見て、やはり固定資産から無形資産への生産要素の転換というのが起こっているわけですね。例えば、自動車は、かつてはエンジンでやって、基本的には、物理的なエンジニアリングの世界ですけれども、今は、ソフトウエアの世界になっているのですね、ソフトウエアがうまくいかないと生産性が上がらないですね。全体として、そういうソフトウエアをはじめとしたデジタルの世界というのをどれぐらい投資するか、それをどう活用するか。
日本は、それなりに実はやっているのですけれども、最近やはり遅れてきているのですね、ほかの国に大分凌駕されてきている。これを見ますと、フランスなどが最近上がってきているとかがあります。
一見、デジタル化というと、新しいものをつくっていくような発想はあるのですが、実は、それもあるのですが違うのですね、違うのですというか、効率化していくということが非常に重要で、品質を上げていくということで、まさに日本が強みだった現場力を上げていくというのは、まず、このデジタル化によってできるのですね。
こういうことを、1つのコアとなってくるのは、現場にデジタル技術を積極的に入れて、それを現場のフィジカルな労働あるいは場合によっては、ロボティックスなどと組み合わせながら、しっかりした生産性の向上、現場力の強化に使っていくということではないかと思います。その辺りどれぐらいできるかというのは、これからの大きな方向性ではないか。
ただ、生産性を上げたからといって、実は実質賃金が上がるかというと、必ずしもそうではないのですね。労働分配率が1つ、もう一つ言いますと、交易条件という問題があって、円安の問題とか、国内のエネルギー体制みたいな話もあるのですが、それは割愛しまして、労働分配率が世界的に下がっています。
日本も傾向的に下がっているのですけれども、アメリカとかヨーロッパと少し理由が違うのですね。アメリカは、デジタルプラットフォーマーのスーパースター仮説というのがあって、あまりにも彼らの独占が進んで、分配率が低いものですから、全体が下がっているという話なのですけれども、日本はどちらかというと、労使関係なのではないかなと思います。やはり、非正規がこれまで増えてこなかったという問題、ざっくり言いますと、やはり労側の力が弱いのですね。例えば、スウェーデンなどは、デジタル技術をかなり使っているのです。実質賃金が上がっている、やはり労側が物すごく強いのです。労働組合は極めて強いので、しっかり交渉できるのですね。
その辺りの労働分配率を適正化していくということで言いますと、労使関係の問題、もう一つ言うと、中小企業と大企業の間の関係というのも、それは、結局は大手に組合があって、中小がないというところも関係しているのですけれども、これは、後ほど議論になると思いますが、取りあえず、論点出しということで、この話をさせていただければと思います。
あと、もう時間が来ていますが、もう一つは、年金と関わるところで、ギグワーカーが増えてきている。この中で、やはり一定のギグワーカーが増えてきます。フリーランスで働いている人が増えてくるので、この人たちをどう考えていくのかというのは、やはり大きなテーマということかと思います。
最後は雑駁になりましたけれども、以上でこちらのほうから、一旦、説明は終わらせていただきます。
どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
○寺井部会長 御講演いただき、ありがとうございました。
引き続いて、堀氏から基調講演をいただきます。演台への移動をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
○堀氏 よろしくお願いいたします。労働政策研究・研修機構の堀と申します。
私からは、若者から就職氷河期世代までの働き方としまして、3つ御説明をさせていただきたいと思います。
最初に「若者の働き方や意識の変化」、続きまして「中年期を迎えた就職氷河期世代の現状」、最後に「結婚・出産・家族の現在と今後」について御説明を差し上げます。本日は、貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。御挨拶を忘れて申し訳ありません。
これは、私の自己紹介ですけれども、後で御覧いただきまして、私は、学校から職業への移行の研究者で、教育社会学なのですけれども、こうした場に呼んでいただけた理由というのは、やはり日本には新卒一括採用があって、どのような形で就職していくかということが、キャリアに大きな影響を与え、そのキャリアが賃金などを通じて年金に強い影響を及ぼしていくということがあるのではないかと思っております。こうしたスタンスから、本日はお話をさせていただきたいと思います。
初めに「若者の働き方や意識の変化」について、御説明をさせていただきます。
スライド5ページでございます。これは、若年失業率の国際比較でありまして、代表的な国を幾つか持ってきております。
カラーで見ていただければと思うのですけれども、紫色が日本であります。見ていただいて分かりますように、1990年ぐらいから30年以上の間、若年失業率がほかの国に比べて低い水準であるということが見て取れるかと思います。
ほかの国ですと、20%以上が恒常的、例えば、フランスなどはそうですけれども、そういう状況に対しまして、日本は若年失業率が低い国として、国際的に評価されてきました。
この要因は、やはり新卒一括採用があることで、ほかの国は職業経験がないと、若い人は採用してもらえないわけですけれども、日本はそうではなく、職業経験がない人を好んで採用するといった新卒一括採用が主流であることから、こうして若年失業率が低く抑えられてきたと解釈されているところであります。
次に15歳から34歳を日本の労働政策では若者と呼んでおるのですけれども、その方たちの就業状況を2007年から2022年まで、就業構造基本調査の二次分析によりまして、御説明をさせていただきます。
右から古いほうになっているのですけれども、赤く囲みました正社員のところを見ていただきたいのですが、2007年は56.4%であったのに対しまして、2022年には66.7%ということで、この15年で10%正社員率が上昇しています。
その代わり、その下の非典型雇用、いわゆる非正社員であるとか、昔、若いパート、アルバイトはフリーターと呼ばれておりましたが、その人たちの割合は減っております。
それから、一番下にいっていただきまして、専業主婦も同じように減少しており、8.7%から3.1%まで減少しております。
このように、この15年間、若者の雇用状況はとてもよくなってきたのですけれども、他方で、下から4つ目の赤く囲みましたところ、非求職無業者なのですが、これは、いわゆるニートであります。雇用の状況は全体として改善しているのですけれども、ニートは2.6%から3.3%にと漸増しているような状況にあります。
もう一つ、雇用の状況に加えまして、やはり大きく変化したのが、7ページ、産業構造であると言われております。
これは、1987年と2022年時点における産業別就業者数の比較であります。これは、産業を全て並べると少し分かりづらいので、幾つかのカテゴライズをしております。
いわゆる製造業に代表されますような従来型のものづくりの人たちというのは、男女とも減少しており、やはり伸びているのが、ビジネスサービス、ビジネスサービスというのは金融、不動産、法務・会計など、高度な知識を要するサービスであります。ビジネスサービスであるとか、それから社会サービスであります。これは、何といっても女性では、本当に上昇しておりまして、女性の就業者の増加というものが、社会サービスに支えられたという部分も多いかと存じます。
さらに、これを若者の正規雇用のみで見たものが、8ページのスライドであります。左側は男性、右側は女性なのですけれども、これも全体的な傾向と似ているのですけれども、特に若い層ではビジネスサービス、社会サービスの伸びが大きくなっております。
女性は、ビジネスサービスの伸びのほうが、伸びとしては大きいのですけれども、就業者としては非常に社会サービスが多いというのが、現在の状況でありまして、若い女性の正規雇用者の結構な割合が社会サービスで働いているということが見て取れます。
ここからは、私どもがオリジナルにやっている調査から御紹介したいのですけれども、では、こうしたマクロな変化のもと、若い人の職業意識がどのように変化しているのかというのを見ようとしたのが、この20代後半層の職業意識の変化であります。
項目自体は、たくさん聞いているのですけれども、代表的な項目のみ、今回はお示しをしているところでございます。
これを見ていただきますと、ブルーの線が一直線に上がっているように見えるかと思うのですが、この項目が、できれば仕事をしたくないという、仕事離れ傾向でございます。これは男女とも上昇しているということが、はっきりと分かるかと思います。
他方で、1つの企業に長く勤めるほうがよいという、いわゆる一社志向ですね、従来の日本型雇用慣行、支持の1つでもありますけれども、これは、多少前後はありますが、基本的には、長期的には下がってきているということが見て取れるかと思います。
また、将来は独立して自分の店や会社を持ちたいという割合は、これも基本的には下がってきているという傾向にあり、今の世の中、定職につかなくても暮らしていける、こちらにつきましては、多少前後はあるのですけれども、一定の割合を占めているといった状況であります。
こうした意識のもと、最近よく就職してすぐに辞めてしまう退職代行などが話題になったりするのですけれども、公的な統計から3年以内の離職率、一般的に早期離職と呼ばれるカテゴリーでございますが、その推移を見てみますと、実は、近年は減少する傾向にあります。高卒者がブルーで、大卒者がオレンジ色なのですけれども、どちらとも近年下がっているということが分かるかと思います。
また、高卒者と大卒者は、昔は学歴差が大きかったのですけれども、近年では縮まってきているということも見て取れるかと思います。
したがいまして早期離職率は、この後御説明する就職氷河期世代のときに上昇したのですけれども、近年の若者におきましては、低くなっているというのが数字からは読み取れるということでございます。
では、早期離職率は下がっているわけですけれども、なぜ早期離職するのかということを尋ねたのが、この図でございます。
男性と女性に分けて見ているのですけれども、これは複数回答です。男性は、キャリアアップするためが一番高いのですけれども、女性は肉体的・精神的に健康を損ねたためというのが高くなっています。
若者でなくても、人間関係がよくなかったということは上位に来るのですけれども、男女で早期離職する理由がやや異なっているということが分かるのではないかと存じます。
スライド12、これは、山田先生のところにも一部M字型カーブのお話がございましたけれども、ここで着目しているのは、L字型カーブでございます。
L字型というのは、M字が就業率でございますけれども、L字は正規雇用率であります。いわゆるM字が水色でありまして、緑色が男性の正規雇用比率、そして、女性がブルーの正規雇用比率でありまして、M字は解消したけれども、L字は解消していないのではないかということが、ずっと言われてまいりました。
ただ、これは、1つの世代の状況を追ったわけではなくて、調査が行われた2022年の時点で、それぞれの年齢層がどうだったかという話ですので、もう少し詳細に見てみたいと思います。
これは、社人研が出している出生動向調査でございますけれども、子供の出生年別に見た出産前後の妻の就業変化でございます。
先ほど見ましたように、M字は解消したけれども正社員ではなくなってしまうという形なのですけれども、これを見てみますと、かなり最近大きく変化しております。
例えば、2000年から2004年に出産した方では、育児休業を利用して就業継続した方が15.3%、就業継続、産休のみの方が12.2%であったわけなのですけれども、直近2020年から24年は、それぞれ56.5%、それから12.0%ということで、実に3倍近くなっているというようなことは、なかなかこれだけ短い間に劇的な変化が起こるということは少ないので、非常に大きな変化だと捉えております。
他方で、これだけ大きな変化を、では、どう対応していくのかということについては、3番目でお話ししたいのですけれども、いろいろと大きな課題が生じているということだと思っております。
さらに、これは就業構造基本調査の二次分析で、図表自体の数字というよりは、この形を見ていただければと思っておるのですけれども、先ほど見たL字型カーブというのは、学歴ごとにも少し違う様相を呈しているということをお示しするための図であります。
これは、1972年生まれから5年ごとにそれぞれの生まれを取っているのですけれども、若い人については、それほど長くまだ生きていないので、完全なL字かどうかということは分からないわけなのですが、高卒者と大卒者を比べた場合に、高卒者はフラット化してきていると、要するに、あまりL字の角度が、頂点が見えなくなっているとでも言いましょうか、そうなっているのに対しまして、大卒者のほうは、もう少し高止まりしているような、そんなイメージが持てるのではないかと推測しております。
これは、高卒者が、特に就職氷河期世代のときに、非常に正社員になるのが難しかったので、もともとL字とかM字は、若い時期は正社員だったけれども、出産のときに正社員を離れるというような形だったのですが、高卒者の場合は、女性はなかなか正社員なることが難しくなり最初の正社員率が低くて、その後も低いままというようなフラット化が起きていると捉えられるかと思います。
これに対しまして、大卒については、あまり下がらなくなったということから、先ほど、前のスライド13、これは学歴別に見ることはできないのですけれども、恐らく学歴によって相当な違いが出ているものと推測されるかと思います。
続きまして、スライド15でございますが、これは男女間所得格差の世代間比較であります。これも出生年ごとの相対所得でありまして、男性を100としたときに女性がどれぐらいかというものであります。
これを見ていただきますと、上の世代に比べますと、最近の若い世代は、男性との相対所得の差といいますか、この数値が上がってきているわけでありますけれども、これは有業者も正規雇用者も言えることだと思いますが、ただ、若い世代でも依然として男性との差があるということが伺えるのではないかと存じます。
16ページは、よく見られる図表だと思うのですけれども、結婚希望のある女性の理想のライフコースが一番左です。予想のライフコースが真ん中、結婚希望のある男性がパートナーに望むライフコースが一番右ということで、確認いたしますと、緑色ですね、この両立コースが女性の理想として、今、最も高くなっておるということで、近年も上昇しております。
以前人気のあった再就職コースというのは、なだらかに減少傾向にあると。
そして、専業主婦コースというのも、かなり低くなっているという状況にあります。
ただ、これは理想ですので、自分の現時点での予想は何かということで真ん中を見てみますと、ここでも一応比率的には両立コースが一番高くはあるのですけれども、ここでやはり注目されるのが、非婚就業コースでオレンジ色であります。非婚就業コースが、昔に比べると、特に2015年から非常に上がっているということが注目される点だろうと考えます。
そして、男性のほうの意識も本当に変わっておりまして、両立コースを希望する男性が非常に多くなってきているというのが、近年の状況で、ちょうど2015年から2021年の間に変わってきているということは、男性も女性も同じような形かと存じます。
今のはライフコースに関する意識なのですけれども、では、実際に性別役割分担意識がどうなっているのかということを、内閣府の調査から引用したものであります。これは、出身地域別に聞いたもので、例えば、家事、育児、介護は女性の仕事だと思っている比率は、やはり都市部では低くて、地方では高くなっておりますし、オレンジ色が女性で、緑色が男性なのですけれども、男性はそう思っていないけれども、女性は感じているということで、男性はあまり気づかないということであろうかと思います。
例えば、地域や親戚の集まりでの食事の準備やお茶出しは女性の仕事であるとか、職場でのお茶出しや事務などのサポート業務は女性の仕事であるとか、こうした辺りも地方で高くなっていますし、女性でも感じたという回答が多くなっているという形になっておるわけです。
以上から簡単にまとめますと、まず、若い人の雇用というのは、この10年から15年、非常に大きく改善してきていました。特に女性の働き方は、大きく変わってまいりましたが、いわゆるニートというのは、上昇傾向にあるのが気がかりであるということです。
第2点目は、脱工業化による製造業が減少し、サービス業が増加するという状況が、一層強まっているのですけれども、特に若い女性では、社会サービス産業の正規雇用者が増加しております。
また、職業意識につきましては、一社志向は長期的に低下する一方、仕事離れ、できれば仕事はしたくないという意識がさらに増加しています。
また、早期離職率はあまり高くなっていないのですが、若い世代でも男女のキャリアや意識にはまだ違いが見られるということでもございます。
それから、L字型カーブの形状は、世代や学歴によっても異なる変化を示しておりまして、高卒以下ではフラット化、大卒以上では下げ止まりという形で捉えられるのではないかと考えます。
先ほどお示ししましたように、2020年から24年に第一子を出産した妻全体に占める就業継続者の割合は68.5%にまで上昇しております。
また、女性の理想と男性がパートナーに望むライフコースでは、両立コースが最多であるということには共通しているのですけれども、ただ、女性の予想は理想に比べて非婚就業コースの割合が高いというところは、やや課題が見えてくるところでもございます。
また、若年女性は今でも性別役割規範を経験しているということで、大きく女性の働き方は変わったのですけれども、社会が変わったかというと、そこは1つ課題があるところなのではないかということが見えてまいりました。
以上が若年者雇用について、簡単な御説明ですけれども、続きまして、中年期を迎えた就職氷河期世代の現状についてお話をさせていただきます。
まず、この氷河期問題がなぜ生まれたかということなのですけれども、もともと日本の若い人の雇用というのは、学校から職業へスムーズに移行できるということで、高度成長期以降バブル崩壊までは、極めて安定したものであり、先ほどの若年失業率に見るように、本当に国際的に見ても高く評価されてきたところでございました。
もちろん、新卒採用は新卒採用だけ単独にあるわけではなく、経験のない若者を採用して、企業の中でしっかり育てて、そして、企業の中で昇進していくという、そうした仕組みがセットであったわけです。
そのため、もし内部労働市場に入れなかったとすると、このあとの能力開発機会などが限られて、結局挽回の機会がなかなか得られないということになるわけです。
したがいまして、新卒一括採用は、若い人の雇用を安定化させるのに非常に寄与しているのですけれども、他方で新卒時につまずいてしまうと、その後のキャリアの形成が困難になり、就職氷河期世代という形で困難が起こるということでございます。
続いて21ページのスライドなのですけれども、これは、新卒正社員率を示したもので、就業構造基本調査の二次分析から示したものであります。
この四角で囲われた部分が特に低くなっているということが見て取れるかと思うのですけれども、ここが、いわゆる氷河期世代と呼ばれておりまして、1993年から2004年卒業者を一般的な氷河期世代と呼んでおります。
まず、高卒者から悪くなって、その後、大卒女性、それから大卒男性が悪くなっていったという形になっております。
とはいえ、氷河期世代が卒業したときから、もう30年以上経ちましたので、そのあと、どうなったのかということなのですけれども、先ほど申し上げたような課題をはらみつつ、単純に正社員率で見ますと、これは労働力調査でございますけれども、就職氷河期世代の正社員率、左側は男性ですが、年齢上昇に伴って改善し、40歳代でバブル世代と同水準には達しました。
こうしたことからすると、もうそんなに氷河期世代は問題がないのではないかと考えることもできるのではないかと思います。
また女性については、世代間ではっきりとした差は見られておりません。
しかしながら、この世代別のキャリア類型を見てみますと、少し違う様相が見えてくるのではないかと思います。
これは、左側上が男性高卒、下が大卒、右側が女性高卒、右下が女性大卒を示しております。
この類型の詳細は後ろにつけてございますけれども、名前を見ると、大体状況が分かるかと思うのですが、ここに丸で囲んだ斜めストライプの部分、氷河期世代でやや多くなっているということが分かるかと思います。
この斜めストライプが、他形態から正社員というカテゴリーであります。これは、卒業時に非正社員か、無業か、失業かというような形から正社員に転換したキャリアということでありまして、先ほど見たように新卒時には、正社員にはなれなかったけれども、その後の人生のどこかで、正社員に転換したという人たちが、やはり氷河期世代では多いということが分かります。
これで問題ないのではないかと、一般的には思われるかと思うのですけれども、スライド23では、現在正社員の人たちのキャリア別に、労働時間、収入を見た表をお示ししております。
左側は男性、右側は女性です。
左側は男性なのですが、大体週の労働時間は、おおむね47時間台で同じなのですけれども、年収は大きく変わっておりまして、男性の正社員定着者ですと、530.7万なのですが、正社員一時非典型であるとか、あるいは多形態から正社員につきましては400万円ということで、実に同じように働いていても100万円以上の差があります。
これは、女性は男性ほどではないのですけれども同じような傾向がありまして、正社員定着者に比べると、やはり後から正社員になった人たちというのは、どうしても収入が低いということで、必ずしも、今、正社員だから問題がなくなったといった解釈は、やや難しいのではないかと思われます。
また、この氷河期世代が若い時期には、まだ、適用拡大が十分に進んでいなかったので、ここでは社会保険について分析することはできないのですけれども、若い時期に、恐らく厚生年金に入れていないという人たちが、それなりにいるのではないかと推測されるところでもございます。
スライドの24ページですが、これは、出生年代別の実質賃金カーブ、内閣官房が出しているものなのですけれども、このブルーが、いわゆるバブル世代辺りに当たる人たちです。
これは、少し似ているのですけれども、ピンク色、1971年から75年生まれに若干氷河期世代が入ってきて、その下が、氷河期世代のコアなのですけれども、見ていただきますと、バブル世代に比べますと、氷河期以降の世代は実質賃金カーブが低くなっているということが分かるかと思われます。
こうした点からも、氷河期以降の世代で、これまでと同じような形で考えることが難しいということを示唆するものでもあるかと思います。
ただ、この就業構造基本調査とか、労働力調査ですと、ある一点しか分からないので、ここでプロセスについて確認するためにインタビュー調査を行いました。
ここでは、ハローワークとか、地域若者サポートステーションに来た就職氷河期世代に対しまして、50人ほどインタビューを行いまして、その一部を本日御紹介させていただきたいと思います。
そのインタビューの際に、お話を聞くと同時に、このライフラインというのを書いていただきました。このライフラインは、自分の人生の浮き沈みについて、御自身で書いていただいたものを図化したものであります。
これは、左側が女性、右側が男性で、どちらも大卒者なのですけれども、正社員経験が3社あります。一般的に、このライフラインは若い時期は低くて、年齢を重ねると、40代前半までは上がっていくのが一般的です。というのは、仕事ができるようになって自信もついて賃金も上がっていくので、このライフライン、自分の人生がアップしているということで上がっていくのですけれども、これを見ていただきますと分かりますように、非常に激しく上下をしています。それだけこの人たちが、かなり浮き沈みを経験したということであるかと思います。
この氷河期インタビュー、取りあえず3ケース持ってきたのですけれども、一番上が一度も厚生年金に入っていないという方です。今回、50人インタビューしたのですけれども、全く厚生年金に入って経験がないという人は、実はそんなにおりませんでした。
ただ、このHさんは全く正社員経験がない人で、今でも社会保険に入りたいのだけれども入れてもらえないと、おうちも、お母さんの年金しかないので、それで何とか暮らしているというような方であります。
真ん中が割と典型的なケースでして、50代女性です。ずっと独身の方です。解雇を2回されたり、自分で何とか挽回しようと、留学して大学に進学したりもしているのですけれども、なかなか安定できていません。
正社員の経験はあるのだけれども、正社員になったり、非正規雇用になったり、失業を行きつ戻りつしているといった状況であります。
一番下なのですけれども、この方は、新卒で正社員になったのだけれども、長時間労働のために離職して、その後、正社員で働いたりもしたのですけれども、たまたま20代後半で離職したときに、介護が必要になり、兄弟に介護を押し付けられるような形で、10年以上、介護をしているという方であります。
母の年金で暮らしていて、自身の年金保険料は、正社員として働いた期間以外は払えていないということでありました。
今は、全然働いていない期間が長いので、すぐに正社員になるのは無理だろうけれども、何とか仕事に戻っていきたい。しかしながら、金銭的な問題で携帯電話すら持てていなくて、就職活動に差し支えているような状況であります。
最近、こういう80歳の親が50歳の子供を養うような形の問題も8050問題と呼んでいるのですけれども、こうした課題がある方も氷河期世代の中にはいらっしゃいました。
以上から氷河期世代、正社員になったから、もうこれで問題が解決したのかというと、ここは、やや疑問のあるところでありまして、氷河期世代の問題というのは、今、正社員かどうかということではなくて、キャリアが非常に不安定であるということではないかと思っております。
私は、この氷河期世代のキャリアを、海外のヨーロッパの議論を参照しつつ解釈するに、正社員、非正社員、失業、無業の間を行きつ戻りつするヨーヨー型であるということで捉えられるのではないかと考えております。
右下の図表、ヨーヨー型のキャリアへの変化を御覧いただきたいのですけれども、一番左側、就職氷河期以前というのは、日本の若者は学校から正社員へ、労働市場へスムーズな移行ができるものでありました。しかしながら、氷河期世代の若い時期というのは、先ほど見たように、学校卒業してもすぐに正社員になるのは難しかったということで、しかし、その後、例えばフリーターなどから正社員へ移行するという形になっていたわけでございます。
30代のときに調査したときには、このような形で、一応、一旦正社員になっていたのでよかったという感じだったのですけれども、40代になって見てみると、1回正社員になっても、また、非正社員になったり、失業、無業を繰り返すキャリアがこんなに多いのかということは驚きでありました。
したがいまして、一旦正社員になったから問題が解決するわけではなく、正社員、非正社員、失業、無業を行きつ戻りつするヨーヨー型キャリアというものが、氷河期世代の大きな課題ではないかと考えているところであります。
このヨーヨー型キャリアでは、やはり失業、無業になったときに、まず、第1号被保険者に移行する、そして、ほとんどの人が保険料免除を申請するということなので、ここで年金の穴のようなものが生じてしまい、ずっと厚生年金というわけにはいかない課題というものが生じてしまうという点で、この氷河期世代の課題として指摘できればと思っております。
さて、最後「結婚・出産・家族の現在と今後」についてお話をさせていただきます。
日本では、今、少子化、本当に日本にとっての大きな問題だと思うのですけれども、日本では、やはり結婚して、その後出産というのがあるために、まず、結婚支援をどうするかということは、長年の課題であったかと思います。
ここで、改めて25歳から34歳の未婚者が独身にとどまっている理由、これは、よく出てくる図表なのですけれども、一応最新の調査をここで改めて見ていきたいと思います。
圧倒的にいつも多いのが、適当な相手にまだめぐり合わないからということで、出会いの問題であると、1つ考えられてきたと思うのですけれども、一番下、参考、一生結婚するつもりはないというところがありますけれども、近年やはり気がかりなのは、結婚するつもりはないという人たちが増えてきているということではないかとも思われます。
なぜ、未婚になっているのかということにつきまして、たくさんの研究があるのですけれども、本日は、社人研の岩澤さん、余田さんの研究を参照して、御紹介できればと思っております。
いろいろ大きな表が出ているのですけれども、未婚になる理由というのは様々あるわけですが、ここでは大きく3つの要素から類型をつくろうとしています。
1つは、経済的な基盤です。経済的な基盤は従業上の地位で、要するに正規雇用か、そうではないかというようなことであります。
それから、親密性の基盤として、今、恋人や婚約者がいるか、そして、結婚意欲として、いずれ結婚するつもりかどうかということで、4つ類型をつくられています。
1つが、前駆型で、生活の基盤があり、結婚を望み、結婚の前駆的状態としての未婚ということで、この方たちは、いわゆる晩婚化しているのだけれども、いずれ結婚するであろうという類型です。
それから、マル2ですけれども、基盤はあるが、結婚は望まず、結婚からの解放として、現在未婚であるという解放型です。この解放型は、実際は本当に期間を通じて少ない割合であります。
それから、3番目ですけれども、基盤には欠けるのだけれども、結婚を望み、要するに結婚が剥奪された状態であるというタイプであります。
親密性が欠如している人、経済的基盤が欠如している人、両方欠如している人がいます。
それから、基盤に欠け、結婚も望まず、結婚から離脱するというタイプもいます。
下が、この1982年から2021年の調査におきましての、その類型の変化であります。
期間を通じて、剥奪型の未婚の人たちが一番多いのですけれども、より見てみますと、前駆型未婚というのが、80年代に少し増えて、その後、剥奪型の未婚が再び増えてきたという形で捉えられるかと思うのですけれども、このマル3において、剥奪型が多いとして、この経済的な基盤が欠如しているだけであれば、いろいろな経済的な支援というのが考えられるのですけれども、この親密性の基盤が欠如している場合に、特に政府としてどのように支援していくかということが非常に難しいというのが、この結婚支援の難しいところだと、この分析からは受け止められるかと思います。
今の剥奪型を少し違う角度から見たのが、この30代前半の男性の就業状況、年収別有配偶率の変化であります。スライド31です。
これは、雇用形態と、それから、年収によって有配偶率がどう違うのかということを、2002年から見たものであります。5年に一度の調査なので5回分になっております。
左側は、当然かもしれないのですけれども、正社員は有配偶率が高いですし、それ以外の、例えば、非正社員のような形で働いている場合は低くなっています。また、年収別にも、年収が高いほど有配偶率というのが高くなっています。
全体として、その傾向は、この20年間変わらないところではあるのですけれども、1つやはり気がかりなのは、これまでは年収が高い人たちは、それなりに結婚をしていたのですけれども、年収が高い層でも、この有配偶率が減少してきているように、2022年のデータでは見受けられます。
つまり、経済的な問題は大きな問題としてあるのだけれども、しかし、それだけでは恐らくない、それ以外の要因が大きくなっているのではないかということで、先ほどの分析と重ね合わせますと、やはり親密性の課題が、年収が高い層でも大きくなっているのではないかということを想像させるところであります。
そこで、出会い経路、これも社人研のデータなのですけれども、どのような形で結婚した人が、夫や妻と知り合ったのかというものであります。
全体としては、職場結婚が一時増えて、見合い結婚はどんどん減少していって、本当にネグリジブルになっているぐらいなのですけれども、最近、やはり着目されているのが、一番右側のブルーの部分で、ネットでインターネットでというものであります。これは、いわゆるマッチングアプリだと推測されるかと思います。
つまり、職場や仕事を通じた出会いとか、お見合いなどが減少して、近年はインターネットを通じた出会いが拡大しているということで、今やインターネットが20.2%で、一番左側の青ですけれども、職場や仕事での20.9%に近い割合に達しているということになっています。
これは、結婚につながる人間関係を、昔は職場や親族が取り持っていたわけですが、本人が相手を探すという経路へ出会いが変化しているということを示しているわけなのですけれども、マッチングアプリは、やはり自由競争の世界なので、誰かが仲介してくれるということはありませんし、例えば、性格がよくても相手を紹介してもらえるというような世界でもありません。
結婚相手を見つける力を誰しもが持っているわけではないので、先ほどの親密性の分析と重ね合わせますと、親密性形成の能力が改めて問われてしまうという点で、マッチングアプリも、もちろん有用だと思うのですけれども、こうしたルートで結婚するということは、今の若者の結婚は本当に難しいなと感じさせるデータでもあるかと思います。
そして、今回、婚外出生割合の年次推移なども出してもらいたいということで、公表データから持ってきたものであります。
2016年から出しているのですけれども、基本的には、あまり割合は増えているわけではなく、同じような数字であると認識しています。
言うまでもなく、日本では出生の大部分が、法律上の婚姻関係の中で生じていますので、その状況はあまり変わっていないということだと思っています。
右側が、属性がなかなか取れなかったので、年齢だけ持ってきたのですけれども、19歳以下が、これだけ44.0%を占めるということですので、選択して婚外出生をしているというよりは、結婚の条件がそろわなくて、結果的に、婚外出生に至ったというケースが多いのではないかと推測しております。
したがいまして、今後、諸外国では婚外出生というのは、しばしば生じると言われていますけれども、日本でこれが増えるということは、現状では考えづらいのかなと推測するところであります。
次に、男女別に見た生活時間を確認したいと思います。
こちらは、各国を比較したものなのですけれども、一番左側、日本の特徴としまして、水色の部分が男性で少なく、女性で多いということが、ぱっと見て思うところであります。
特に折れ線グラフですけれども、無償労働時間の男女比を見てみますと、日本は最も高い部類に属しています。要は、日本の男性は有償労働時間が長く、無償労働時間が短いという特徴があるわけなのですけれども、先ほど女性の就業率は急激に上がってきていて、かつ正社員の割合も増えてきているわけなのですが、家庭内の仕事がそれに合わせて配分し直さなければ、仕事と家庭と双方の負担が女性に集中するということになるわけです。
就業継続を可能にする制度、これまで国として随分力を入れてやってきたわけですけれども、日々の生活を回す負担が誰にかかるかという問題は、依然として残るということかと存じます。
35ページですけれども、妻が、つまり共働きといってもパートではなく正社員の場合でも、家事の時間というのは、結局女性にかかってしまっているというデータでございます。
これは、妻が60歳未満の世帯を対象にした、2022年の全国家庭動向調査から持ってきたものであります。
図の上に数字が書いてありますけれども、これは平均の家事時間であります。例えば、妻が正社員の場合、186分あるのですけれども、夫の方は65分ということで、かなり差があります。
妻が非正規雇用になりますと、当然のことですが、さらにこれが増えるということになっておりまして、出産後、正社員として働き続ける女性が増えているというデータを、先ほど見たわけなのですけれども、夫婦ともに仕事を持ちながら、家事や育児をどう担うかという問題が一層重要になっているのですけれども、まだまだ就業を支える条件が整っているかというと、かなり課題のあるところではないかと考えます。
最後ですけれども、出産後の働き方と年金について述べさせていただきます。
先ほど見ましたように、本当に劇的に出産後の就業継続は改善しているのですけれども、正規雇用であっても、家事・育児負担は、なお女性に偏っているということで、この偏っていた場合、例えば、時短のような短時間勤務であるとか、あるいはなかなか昇進できなくなるということであるとか、そうしたことから、結局ケア労働を担っている方が、生涯の所得が少なくなり、それが年金に跳ね返るということについては、依然として変わりはありません。
とはいえ、年金制度の中でも、出産につきましては、様々な支援が行われてきたと認識をしております。
育休中の厚生年金保険料免除であるとか、あるいはまだ始まったばかりだと思うのですけれども、国民年金第1号被保険者の育児期間の保険料免除であるとか、あるいは3歳未満の子を養育する期間の標準報酬月額の特例であるとか、そして、恐らく最も一般に使われているものとしまして、第3号被保険者期間における基礎年金の加入期間というのがあるのではないかと思っております。
3号につきましては、現在、議論が進んでいるところですけれども、どのように対応していくか、非常に難しい問題だなと思っているところでございます。
課題としましては、もちろん適用拡大が進んできたのですけれども、まだ、もちろん適用拡大されていないような仕事もありますし、具体的に時短や、1回出産で離職したことによってよい仕事に就けなくなるであるとか、そうしたことは残っておりますし、第3号被保険者制度が就業選択に及ぼす影響とケア負担への配慮をどうするかなどは、大きな課題として残っているのではないかと考えております。
では、私からは以上です。ありがとうございました。(拍手)
○寺井部会長 お二人より御講演をいただきました。どうもありがとうございました。
この後、意見交換を行い、議論を深めてまいりますが、ここで一旦休憩といたします。
○植田首席年金数理官 それでは、これより10分間の休憩といたします。再開は14時50分を予定しております。よろしくお願いいたします。
(休憩)
○寺井部会長 それでは、部会を再開いたします。
本日は、オンラインセミナー形式で開催しておりますので、ここで改めて委員の紹介をいたします。事務局からお願いいたします。
○植田首席年金数理官 それでは、事務局より、委員の御紹介を差し上げたいと思います。
まず、慶應義塾大学経済学部教授の寺井公子部会長でいらっしゃいます。
年金数理人の小野正昭部会長代理でいらっしゃいます。
本日は、オンラインで参加されていらっしゃいますが、読売新聞東京本社編集委員室の猪熊律子委員でございます。
みずほ総合研究所ヒューマンキャピタルコンサルティング部ディレクターの日下部健児委員でございます。
慶應義塾大学経済学部教授の駒村康平委員でいらっしゃいます。
学校法人国際基督教大学評議員の佐藤久恵委員でございます。
公益社団法人日本アクチュアリー会元理事長の庄子浩委員でいらっしゃいます。
本日は、オンラインで参加されていらっしゃいますが、東北大学大学院法学研究科教授の嵩さやか委員でございます。
りそな銀行信託年金営業部コンサルティング室主席数理役の松本真由委員でございます。
○寺井部会長 ここからは、前半の基調講演を受けて意見交換を行います。講師の山田氏と堀氏にも加わっていただきます。
ここでは大きくテーマを2つに分けて、テーマ1として「労働市場の今後について」、テーマ2として「若年期から中年期への働き方・家族形成の変化と年金制度について」とし、議論を進めてまいりたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○寺井部会長 それでは、そのように進めてまいります。
まず、初めにテーマ1の「労働市場の今後について」を御議論いただきます。御発言のある方、いかがでしょうか。
日下部委員、お願いします。
○日下部委員 ありがとうございます。
山田先生、堀先生、御講演ありがとうございました。大変勉強になりました。
1つ目の質問として、山田先生にお伺いしたいと考えております。
まず、高齢者の就業というか、定年延長後は賃金が3割程度下がるとか、そういったこともありますし、また、外国人人材の就労に関しても、現役世代と比べて3割程度、4割程度低いというデータもございました。
一方で、それぞれその格差は縮小しているとの傾向も伺いました。今後、こういった高齢者ですとか、外国人材の雇用が拡大していくに伴って、現役世代についての雇用と重複する部分が生じて、就労が阻害されるというか、重なってしまう部分があるのではないかと考えておりますけれども、そういった場合、年金形成にも影響があると思われますけれども、その辺りどのようにお考えでしょうか。
○寺井部会長 山田様、お願いします。
○山田氏 御質問ありがとうございます。
今は、日本はすごく人手不足ですね。この先においても、基本的に労働力不足は続いていくのだろうというのは御説明したとおりなのです。だから、量的に見ると、シニアの就労とか、外国人の雇用が、現役世代の日本人の雇用を取るということは、マクロでは基本的には生じにくいということかなと思うのです。
もう一つ言うと、スキル面で見て、基本的には、日本人の現役が総じて、職種的に見るとスキルが要求されるところで働いていて、それを補完的にシニアとか外国人が働いているという、ざっくり言うと、そういう構造になっているので、補完関係になっていますので、それほど深刻になっていくというリスクを今の形で考える必要はないかなとは思っています。
むしろ、特に現場系の人材が不足しているというところで言いますと、外国人を適切に受け入れていって、シニアはできるだけ就労を増やしていくというのが、基本的な方向なのだと思うのです。
ただ、もちろんAI等によって、就業構造とかスキルというのは大きく変わってきますので、それに応じて必要なスキルを身につけていくというのを、特に現役世代のほうでやっていかないと、結局そこで仕事がなくなってくると、より単純な仕事で競合が起こってくるということですので、今、政府はリ・スキリングという言葉で言われておりますし、あるいは、多くの企業が、それに応じて人材育成ということを考えておりますから、その辺が、しっかりされていくということが重要ではないかと、そのように考えております。
○寺井部会長 日下部委員、いかがですか。
○日下部委員 ありがとうございました。
○寺井部会長 小野部会長代理、お願いします。
○小野部会長代理 ありがとうございます。
私も山田先生の資料の29ページについて、お伺いしたいと思います。
公的年金の財政というのは、概して賃金上昇には中立的なのですけれども、賃金が物価に追いつかなかった少し前までの状況というのは、それこそ労働者の労働意欲にとって好ましくない影響があったと思いますし、堀先生の資料にあった、できれば働きたくない若者の増加の背景にもなっているかもしれないなと思ってございます。
資料では、生産性の向上を実質賃金の増加につなげるには、労働分配率の低下を防ぐ必要があると指摘されていますけれども、実質賃金の増加や、将来の年金形成につなげるには、どのような政策が必要かお伺いしたいと思います。
少し言及がありましたが、同じページにスウェーデンでは労働分配率が維持され、実質賃金が増加していると指摘されておりますけれども、日本にとって学ぶべき政策があれば御教示いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○寺井部会長 よろしくお願いします。
○山田氏 御質問ありがとうございます。
実質賃金を上げていく大前提は、やはり労働生産性ですので、その部分は繰り返し説明するはずで、まさにその部分をどう労働者のほうにしっかり分配できるかと。ここは、分配率の話を書いていますから、分配率の話が中心になるのですけれども、実は交易条件と言われる、まさに御指摘されたように物価の上昇という形で海外に出ていくと問題になりますから、そこの問題も実はここに書いていないけれども、実は結構、今、重要な問題になっているのかということ。
その2点でコメントをさせていきますと、労働分配率については、基本的には、やはり労使のバランス、大きく言うと、それで決まってくるということなのです。
スウェーデンで、なぜ、分配率が、むしろ、ここ数年だと若干上がっているぐらいなのです。それは、やはり労働組合の組織率が7割を維持して、しかも非常にアグレッシブに要求はしていくと。
ただ、単純に要求する組合ではなくて、例えば、生産性を向上するために新しい技術を入れていくということに対しては、積極的に受け入れていったり、必要に応じて事業所は閉鎖して、新しい仕事に必要なスキルを身につけていくということに対して、非常に前向きな組合がいるというのが、基本的な構造になっているのです。
だから、その辺を政策でどこまでできるかというのは難しくて、スウェーデンのものをそのまま持ってくるわけにはいかないのですけれども、ただ、1つは賃上げ圧力が日本はどうしても弱いのですね、大手は一定程度かもしれませんが、中小に至っては、なかなかそういう圧力が出てこないので、実は、これはもうここ10年ぐらいは、政府がやっているところなのですけれども、いわゆる政労使会議ということを開催して、ここは、あまり政府がむちゃなことを言うとどうかという議論があって、私などは、かなり昔からそのことは申し上げているのですけれども、少し有識者みたいなのが集まって、しっかり客観的なデータに基づいて、これぐらいだったら可能ではないかみたいなところ、一定のものを示しながら、それをベースに、一定程度労側に対してのサポートをつけながら、適正な形で決めていくという在り方があるのではないか。
それと実は、労働分配率のところで言いますと、今、大手がすごく下がっていまして、中小は、実は高止まっているのです。
ただ、これは表面的に見ると、大手が賃金をもっと払えるのではないかということなのですけれども、でも問題は、今、これは大きな問題にまさになっていますけれども、全体の物価体系が上がってくる中で、中小がまだ適正な価格で取引価格を上乗せできていないという問題が起こっています。いわゆる価格転嫁の問題。だから、これは日本の特殊性であるのですけれども、大中小企業の間の利益というか、付加価値の配分みたいなところを少し考えていかないと、全体として賃金が底上げされていくということができないと。大手は、実はかなり上がってきているのですけれども、中小のところでなかなか上がってこないというところもありますから、大きく言うと労使関係なのですけれども、その間の中にある大企業と中小企業の間の付加価値の在り方みたいな、これは、今、政府がいろいろされているところなのですけれども、そこをやはり継続するというのが大きな中心的なところになってくるのではないかと。
あとは、先ほど言いましたように、交易条件の問題があって、これは為替が円安になってしまうと、輸入価格が、特に日本は今、食糧自給率が低くて、化石燃料に対する依存率が高いので、これも、今、政府が取り組まれようとされていますけれども、自給率を上げていったり、エネルギーの構造転換をしていくということで海外に、少なくとも基礎的なところはもう少し自立できるようなことにしていくということと、あとは、為替は、基本的には貿易収支というのが、今、構造的な赤字になっていますから、この部分は、もう少し競争力が結果的についてきて、対外収支がバランスしていくような、そんなことも考えていかないと、要は、結構総合的に対応を取っていかないと、安定的に実質賃金が上がっていって、年金財政を安定化していくというわけにはいかないという、結構実は射程の広い問題ではないかと考えています。
取りあえずは、先ほど申し上げたように、大手のところの賃金の適正化、ようやく賃上げの動きが定着していますから、ここを定着させるということと、あと中小企業の配分、付加価値の大手と中小の配分を見直す中で、中小にもっと賃上げができるような環境づくり、こういうところを当面継続するというのが、優先順位かなと、そのように考えています。
○小野部会長代理 よく分かりました。どうもありがとうございました。
○寺井部会長 そのほか、いかがでしょうか。
猪熊委員、お願いします。
○猪熊委員 ありがとうございます。オンラインで失礼します。
山田様、堀様、どうも貴重な講演をありがとうございました。
山田様のほうに、高齢者雇用、資料で行きますと、8ページ以降に、進展するシニア就労の現状と課題というのがありまして、これに関連して質問をさせていただければと思います。
高齢者雇用が広がっている反面、定年後、再雇用では賃金低下がみられるなど、雇用の質の問題もあるということが指摘されております。65歳までの雇用確保措置の義務化並びに70歳までの努力義務化が現状ございますけれども、70歳までの義務化を求める声もあるということを聞くのですけれども、これに関してどうお考えになるかというのが一つめの質問です。もう一つは、高齢者雇用に関係した年金制度との関係なのですけれども、在職老齢年金ですとか、年金の繰下げ制度、あるいは国民年金保険料の納付期間など、年金制度と関わりそうなことが、高齢者雇用に関連してあるわけですけれども、その関係性ですとか、影響をどうお考えになるかということについて、お考えをお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○寺井部会長 お願いします。
○山田氏 御質問ありがとうございます。
まず、70歳までの雇用、これは、いきなり義務化というのは、なかなか難しい話で、ただ、今、努力義務ということをされていて、政府が、やはりこれぐらいのことはやるべきだという中長期の考え方なりを示すというのは、私はすごく意味があると思っています。だから、努力義務をやはりしっかり示しながら、幾つかの選択肢が既に出されているのですけれども、やはり、これは重要な話ではないか、65歳のときも振り返ってみますと、まずは努力義務でやって、結果として義務化していったということです。
フォローになったのは、やはり人手不足だったのですけれども、基本的にはその環境は続いていきますので、今の施策をしっかり堅持していくと。
ただ、そのときに大事なのは、実は、シニアのリ・スキリングみたいな話なのです。これは、たまたま私はこの夏にデンマークに行って、デンマークで実はかなり、公的年金に関しては開始がかなり遅い、―実際は労使で上乗せをしているので、もっと早くからはもらえていると思うのですが、本当に基礎的なところに関しては、具体的な数字は聞けなかったのですけれども、かなり後から払うということなのです。
そこで、政策で強化しているのは、シニアが働いていける環境をつくっていく、そのスキルを身につけていく、特にブルーカラー系で働く方というのは、やはり一定の年齢になると肉体的に、もう働けなくなってきますから、その人たちを事務的な仕事であったり、もう少しフィジカルな負荷が少ない仕事に転換していくというところをかなり政策的にやっているそうです。
だから、そこは、やはり政府としての政策としては、労働政策に関わってくることなのですけれども、一定の就労の、これは年金とも関わりますけれども、70歳の義務化というところと、あと年金で言いますと、やはり一定程度繰り上げをすると、少しもらえるようなそういうところをしっかり訴えていくということは、もう既にされていると思います。そういうことを確実にやると同時に、日本のところで、今、もう少し強化すべきは、シニアのリ・スキリングみたいなところに力を入れていくというのは課題になってきているのではないかなということです。
もう一つのほうは、御質問の内容をすみません。
○猪熊委員 恐れ入ります。年金の繰下げ制度、今、75歳までですとか、在職老齢年金で年金が支給停止になる、基準額は上がってきているのですけれども、あと、保険料を何年納めるかとか、というあたりでのコメントです。
○山田氏 失礼しました。
繰下げのほうは、もう申し上げたように、これはしっかりアピールしていくということと、在職老齢年金に関しては、私は、いずれ段階的には撤廃していったらいいのではないかなと思っています。もちろん、これは現役世代との関係の中でされてきているわけだと思うのですけれども、あまり海外ではない制度ではないかと。
だから逆に言うと、シニアも働けるだけ働いていただくと、当然それのいろいろな施策をしていくという象徴的な意味合いで段階的に適用の額を上げて、既にそういう話をされているという形で行かれていると思うのですけれども、それと同時に、当然バランスさせるための例えば年金課税を見直すとか、様々なことはあると思うのですけれども、現役との負担の見直し、高齢世代の見直しというのは、別のところでしっかり一体として議論していくということが大事ではないかと、そのように考えています。
○猪熊委員 どうもありがとうございました。参考になりました。ありがとうございます。
○寺井部会長 そのほかにありますでしょうか。
もし、なければ私のほうから、山田様にお伺いしたいことがございます。
先ほどの御発表で、今、ギグワーカーのようなフリーランスが増加しているというお話がありました。
企業に所属して、厚生年金の被保険者の期間が長い被雇用者に比べて、ギグワーカーのような方たちは年金制度にどのように守られているかという点で違いがあると思うのですけれども、フリーランスの方々が増えることが年金制度にどのような影響をもたらすと思われるのかということと、既に問題は顕在化しているのかどうかと。
それから、資料の中に、海外でどのようにフリーランスを捉えているかという事例で、解釈が説明されていたのですけれども、山田様の視点で御覧になって、日本と状況が近くて参考になるという海外の例がありましたら、教えていただけたらと思います。
以上です。
○山田氏 ありがとうございます。
フリーランスに関しては、なかなか公式統計のようなものが整備されているわけではないので、実態は、少し把握が難しいところがあるのですけれども、でも、それなりのスピードで、アメリカなどでは増えてきている。ヨーロッパははっきり分からないのですけれども、意外に増えていないという話もあって、そこは、例えば、私は北欧が結構継続的に見て、北欧は、どうも話を聞いていると、そんなに急速的に増えていないのではないかということなのです。
それは、結構自営業であっても、年金制度に加入するような仕組みがあったりとか、もちろん自営業ですから、労使折半ということではなくて、両方払うわけですけれども、それは組合がかなり、逆にフリーランスをサポートしながら、できるだけ組合になるように誘導しているとか、そんな取組ということがあるのだと思います。
ただ、日本はなかなか、そういう労使関係が違いますから、なかなか入れられないですね。それと、前提に言うのを忘れましたけれども、フリーランスがあまり増えていくというのは、年金のいわゆる空洞化の話もありますし、それと、従来フリーランスというと、典型的な自営業をイメージしていたわけですね。典型的な自営業というのは、いわゆる生産手段を持っている人たちであって、しかも、まさに疑似的に法人というのが継続していくと、子供がその仕事を継いでいく、商店とか、農業とかもそうだと思うのですけれども、今増えているフリーランスというのは、特にギグ系、ネット系、いわゆるプラットフォーム系というのはそうではないわけで、かなり被雇用者との間の垣根というのがはっきりしてこない、個人によって物すごく差のある世界になってきていますから、ここに対しては、あまり急激に増えていくというのは、まさに雇用の空洞化であり、年金制度の空洞化につながるという、そういうところの意識は持っておく必要があると思うのです。
それで言うと、各国いろいろな形で対応しているわけですけれども、例えばアメリカとかだったら、できるだけフリーランスに対して被用者というほうを適用するように厳しく見ているとか、あるいはドイツとか一部の国は、中間形態を設けて、一部の労働者の必要な規制を入れていくとか、各国様々なやり方があるわけですけれども、日本は全体として議論が遅れているような印象がありますから、やはりそれはやっていかないと駄目だと思います。
それで、参考になる海外の事例ということで言いますと、私は、昔から注目しているのはドイツでして、ドイツは御存じの先生方も多いかなと思うのですけれども、昔からドイツに関しては、芸術家、いわゆるアーティストとかジャーナリストというのが、どうしてもギグ的な働きが、昔からそうですね、どこかから原稿料をもらったりとか、出演料をもらったりしますから、それをコーディネートするような会社がプロデューサーをやっているということですから、そうすると、どうしてもフリーランスなのだけれども、働けなくなると不安定だと、生活が成り立たないということで、基本的に本人の拠出と、それと間に入る使用者ではないのですけれども、その人たちが一定の、要は出演料として払ったもの、あるいは原稿料で払ったものに上乗せして拠出するという、特別に年金保険をつくっているわけですね。
だから、そういうものをギグワークに適用して、実は、実現はしていませんけれども、ドイツの一部の学者、研究者が、デジタルソーシャルセキュリティという形で、そういう構想も提示されていますから、その辺り、今後、実際ドイツで導入されるかというのは、別問題なのですけれども、日本もそういうことを研究しながら導入していくということも検討するというのが重要かなと、そのように考えています。
○寺井部会長 ありがとうございました。
それでは、次に、テーマ2の「若年期から中年期への働き方・家族形成の変化と年金制度について」を御議論いただきたいと存じます。
御発言のある方、どうぞよろしくお願いします。
庄子委員、お願いします。
○庄子委員 ありがとうございます。
お二人の先生には、大変興味深いお話をいただきまして、ありがとうございました。
私は堀先生の資料の9ページに関して、「20代後半層の職業意識の変化」というスライドで、先生も御説明されていた、できれば仕事がしたくないというのが急激に伸びているというお話しがありました。
注のところには、そう思う、ややそう思うの合計と書いてありますので、恐らく選択肢としては、その他に、そう思わない、あまりそう思わない、あるいは、どちらとも言えない等の選択肢があって、その中で、そう思う、ややそう思う、を選ばれた方の割合だと思うのですが、私はこれがあまりにも高いなと感じました。
仕事をするということは、単に生計を立てるために収入を得るということだけではなくて、自己実現ということにもつながっていくと思っていまして、そのような仕事の意味等を中学校ぐらいの頃から教育していくことなども重要なのではないかなと個人的には思っていますが、堀先生には、この上昇について何か考えられる要因などを、改めてお話しいただければありがたいと思いました。
以上でございます。
○寺井部会長 堀様、お願いします。
○堀氏 御質問ありがとうございます。
私もこれは、この部会のために最新のデータを慌てて追加して、少し驚いたのですけれども、明らかに上昇しております。
ただ、いわゆる仕事離れ傾向は日本だけではなく、グローバルに起こっていることなので、やはりという気持ちもあったことも事実です。
なぜ、できれば仕事はしたくないという割合が、日本でも高くなっているし、グローバルにも高くなっているかということについて、これだという理由は、まだ、研究としては出ていないのですけれども、先ほど部会長代理からも、インフレのお話があって、多分世界的には1つインフレで、自分が頑張っても手が届かないようなものが増えてしまったというのは、グローバルには言えるのだろうとは思っていると同時に、先ほど山田先生からも人手不足のお話がありましたけれども、人手不足なので、この人たちは、仕事をしたくないと思っているのだけれども働いてはいるのですね。正社員で、それなりに働いてはいるのだけれども、できれば仕事をしたくないという気持ちがある。
これがどうしてなのかというのを、私もさらに研究しなくてはいけない、本当に重要なテーマなのですけれども、氷河期のときは、仕事をしたくても仕事がなかったので、このような回答はあまりなかった。それが、仕事があって人手不足なのに、こうした状況が起こっているということなので、1つは、ある種の余裕が、そう思わせているのだろうという感じはいたします。
それから、先ほどの山田先生のお話でも、生成AIで仕事が奪われるのではないかという気持ちを持っている若い人もいるので、できれば仕事をしたくないというのが、一体何で現れているのかということを一言で御説明することは難しいのですが、おっしゃったような、もちろん仕事というのは、お金を稼ぐこともすごく重要なのですけれども、自己実現のためとか、あるいは社会で自分の居場所をつくっていくためとか、そういうことは、もちろんとても重要なことなのですけれども、恐らくそれを言葉で教えるのではなくて、やはり実感として持てるような機会を様々用意していくということが重要なのではないかと思っております。
ですので、今、いろいろな形で、学校の中だけで勉強するのではなくて、社会に少しずつ関わりを持つような、そんな活動も中高生で行われていたりしますけれども、そうした社会の皆様との関わりによって、仕事の中で、あるいは社会の中で、将来自分の居場所として仕事を続けていくというイメージが持てるのではないかと推測しているところであります。
以上です。
○庄子委員 ありがとうございました。
調査の対象が20代後半ということなので、就職して少し壁にぶつかりかけているタイミングといった要員もあるのか、とは思いました。ありがとうございました。
○寺井部会長 そのほか、御質問いかがでしょうか。
佐藤委員、お願いします。
○佐藤委員 山田先生、堀先生、データに基づいた豊富な分析、インサイトに満ちたお話をありがとうございました。
私は、堀先生に対して質問があるのですけれども、氷河期世代の大きな課題として、正社員、非正社員、失業、職業がない無業の間を行きつ戻りつするヨーヨー型というお話があったのですけれども、これは、この世代だけではなくて、今、介護問題というのも大きな社会問題になっており、そういう世代にとっても大きな問題である、つまり、全世代にわたって雇用の流動性を確保するということが、非常に重要ではないかと思うのですけれども、これを実現するためには、どういった政策が有効と堀先生としてはお考えになられるでしょうか、お聞かせいただけますと幸いです。
○寺井部会長 お願いします。
○堀氏 御質問ありがとうございます。
労働政策のずっと重要な課題であるわけなのですけれども、先ほど山田先生がおっしゃったりリ・スキリングは、もちろん重要だと思うのですけれども、もう少し制度としてつくっていけるといいのだろうなという感覚はありまして、例えば、賃金表のようなものをつくったりですとか、労働政策でも職業能力評価基準をつくって、工夫はしてきたところです。
使われているところもあるのですけれども、なかなかそれが使われていないというところもあり、この制度として、途中から入りやすくする、入りやすくするというのは、この人がこの待遇でもいいのではないかという社会的な基準をつくるということなのですけれども、そうした社会的な基準を、これまでもやってきたことではあるのですけれども、もう一段階進められるといいのではないかなと思っています。
例えば、氷河期世代で正社員経験がないので、40歳でも初任給みたいな感じのことというのは、やはりどうしても起こってしまうのですけれども、今だと例えば、転職する場合に、転職先で大体同じぐらいの年齢で同じような仕事をしている人よりも少し低くするみたいな感じの、いろいろな事例があると思いますが、それぞれの企業がそれぞれの基準で決めているといったところがあるのですけれども、もう少し公的に何かお示しできるような基準ができれば、もう少し流動性というほどではないですけれども、少し助けになるのかなと推測するところでございます。
以上です。
○佐藤委員 ありがとうございます。
客観的な基準、ガイドラインをより周知していく展開が必要だということを理解いたしました。
○寺井部会長 そのほかにいかがでしょうか。
嵩委員、どうぞよろしくお願いします。
○嵩委員 嵩でございます。よろしくお願いいたします。
山田先生と堀井先生には、興味深いデータと貴重な分析について御報告いただきまして、どうもありがとうございました。
私からは、堀先生の資料の34ページ以下のところになりますけれども、先ほど御説明いただきましたように、第1号被保険者について、今年の10月1日から、育児期間の保険料免除が導入されたり、あと、第3号被保険者についても見直しの議論がされているところです。そこで、家事や育児などの無償ケア労働ということについてお聞きしたいのですけれども、先ほどデータを示していただきましたように、家事、育児などの無償ケア労働は依然として女性に偏っているということでした。
やはり、そういったことが女性の就業継続とか、キャリア形成とか、あるいはその後の年金水準にも影響すると思われますが、こういった無償ケア労働が主に女性に偏っているということに伴う課題を改善していくために、どういった政策、特に年金制度上、こういった無償のケア労働をどう取り込んでというか、どう評価していくかということについて御検討されていることや、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○堀氏 御質問ありがとうございます。
とても困難な御質問をいただきまして、どう答えていいのか、ちょっと悩ましいのですけれども、これまでこの無償ケア労働に対して、この第3号被保険者というものが、そのためではないのですけれども、結果的にサポートしてきたところはあるのだろうと思います。
しかし、この先、この3号が縮小されていくとか、撤廃されていくということがあるとすると、どうやってこれに報いるのかということが、1つ大きな課題になってくるということで、長期的には、男性、女性にかかわらず、このケア労働、特に年金の場合は次の世代がいないと成り立たない仕組みなので、出産、子育てについては、何かしらの支援というものがなされていかないと、ますます少子化が進んでしまうのではないかと強く懸念しているところであります。
それとともに、この無償労働を外部化していくということがこれまでも進んできているのですけれども、どこまで外部化できるのかというのが、今のところなかなか難しくて、例えば保育園を拡充するとしたとして、夜遅くまで預かるのがいいのか、あるいは学童保育もすごく遅くまでは預かるのがいいのかなど、私自身、無償労働の時間を有償労働の時間に置き換えていくことだけがいいのかという疑問は、やや持っているところでありまして、全然お答えになっていないのですけれども、やはりこれは急激に変わる女性の就業の中でどう考えていくのかというのは非常に難しい問題だなと思っております。
お答えになっていないですけれども、以上です。
○嵩委員 ありがとうございました。
個人とライフスタイルに関わることは非常に難しいテーマと存じますが、にもかかわらず大変丁寧にお答えいただきまして、ありがとうございました。
○寺井部会長 そのほかにいかがでしょうか。
松本委員、お願いします。
○松本委員 山田先生、堀先生、貴重なお話をいただきまして、どうもありがとうございました。
堀先生の資料の23ページのところに、過去の就業履歴からの給与の表があると思うのですけれども、この中で正社員定着というところと、正社員転職というところでも、転職の収入のほうが低いというデータになっているように感じました。
データのつくり方が、私が思っているものと違うのかもしれないのですけれども、正社員からの転職は、イメージとしてはキャリアアップを目的とするようなイメージを私は持っているのですけれども、実際には、そうではないといったことなのか、正社員の方の転職によって収入が下がる要素というのは、どういったことがあるのでしょうかというところが1点で、こちらの図表が就職氷河期の世代の方のものとなっていると思うのですけれども、特有の事情なのかというところをお聞きしたかったです。
また、それに関連しまして、雇用の流動性というお話が今日ずっと出てきているのかなと思っているのですけれども、一時的に賃金が低下したとしても、長期的に賃金が下がってしまうと、年金の形成に影響が出ますというところがあると思われるのですけれども、転職による賃金低下を防いでいくような取組に、どのようなことが考えられるでしょうかということをお聞きしたかったのですけれども、若干、佐藤委員の質問と重複したかなというところがございまして、もし可能であれば、山田先生にもお答えいただければと思います。よろしくお願いします。
○寺井部会長 では、初めに堀様からお願いします。
○堀氏 ありがとうございます。
まず、23ページのスライドは、氷河期世代に限ってというか、この時点での35歳から44歳に限って示しているものなのですけれども、少なくとも氷河期以上の世代については、転職すると賃金が下がるというものだったと思います。これは割と一般的な常識としてあったと考えておりますし、実際に数値でもそうであったと思います。
しかし、若い世代でどうかというと、これは、現時点ではまだ分からないといいますか、やはりある程度年齢が行かないと収入差は開いていかないので分からないのですが、恐らく定着者と転職者の間の賃金差は縮まるのではないかと推測しています。
特に、今、若い人とお話しすると、転職というとキャリアアップの転職しか全然思いつかないといいますか、そういう方が多いのですけれども、やはり昔は、なかなかうまくいかないから、やむを得ず転職するという転職のほうが比較的ポピュラーであったと思いますので、どこで変わっているのかというのは、現時点では分からないのですけれども、この定着者と転職者の賃金差というのは、若い世代になればなるほど縮まっていくのではないかと推測されるかと思います。
それから、2つ目の御質問は、私は先ほどお答えしたということで、山田先生でよろしかったですか。
○松本委員 もし、追加で何かほかにもあるようでしたら、教えていただけますとうれしいです。
○堀氏 キャリアアップするには、どうしたらいいかと。
○松本委員 転職して賃金が下がりますということがあったとして、それがずっと続いてしまうと、年金水準が下がってしまうと思うのですけれども、転職をしていく中でも賃金水準を保っていくような工夫といいますか、対応といいますか、そういったところです。
○堀氏 年代とか世代によって恐らく違うので、ある程度年収が上がった後にということと、若い時期と事情がかなり違うかなという感じはしています。
先ほど申し上げたように、それぞれの人の中途採用者の賃金というのは、それぞれの企業で決めているので、下がることを防ぐということが、公的にできるかどうかというのは、なかなかすぐには思いつかないのですけれども、どちらかというと、転職は、賃金を上げるだけではなくて、自分の働きやすさとか、納得感とか、そういったところが改善されるという部分はあるので、もちろん賃金がアップすれば、それに越したことはないのですけれども、賃金だけで解釈できる行動でもないのかなという感触がございます。
以上です。
○寺井部会長 山田様、お願いします。
○山田氏 労働移動が果たして賃金を上げるのか下げるのかというのは、理論的にはどっちも言えるのですね。というのは、賃金が上がるというのは能力が上がっていないと上げられないのですね。職業能力が上がると。そうすると、古典的には、企業がなぜその人に人材投資をするかというと、終身雇用とは言えないにしても、一定程度は定着してもらって、人材を育成した後、それを発揮してもらって企業に還元してくれるということがないと、人材投資はしないわけですね。
だから、かつて日本は、そういう傾向が特に強くて、労働市場というのはあまり発達していなかったので、転職すると大体下がるということだったわけですね。
ところが、最近は、もう一つの議論は、やはりマッチングの議論で、必ずしも一企業というのは人材を100%うまく活用できていないのですね。本当は能力があるのに、仕事をしっかり与えていない、あるいは本人のやる気でもって、では、そこをもう少し自主的に、最近の議論では、労働市場の見える化みたいな話、例えばスキルを見える化していきましょうとか、堀先生がおっしゃったように、例えば、一定程度の仕事だったら、これぐらいの賃金水準だとか、欧米で、アメリカは、業者がやっていますし、ヨーロッパなどは、実は組合が間に入ってデータを交換し合って一生懸命つくっているというのがあるのですけれども、だから、そういうことを実は、政府は、今、いろいろとしているのですけれども、ジョブタグというもので仕事を定義していってやっています。
それから、賃金のところはなかなか難しいのですが、ただ、そういうプロセスをやることによって、マッチングをすることで賃金が上がる。例えば、よくあるのは、転職者の賃金が下がるのは、前の賃金を聞くのですね、前の賃金はどれぐらいだったというと、大体それに同じのをつけたりするのですね。そうすると、低いところから来ると低くなるし、という傾向があるので、それが例えば労働市場で一種の基準が出てくると、ある程度上がりやすくなってくるということで、だから、両方考えていかないと駄目で、何でもいいから転職すればいいということではなくて、その人のスキルがしっかり身についてきているのかと、それが曖昧だったのがもう少し見える化していって、そうすると本人が在職していても自分のスキルが上がっているということが見えやすいとか、まさに資格があれば、そういうことで分かったりするわけですけれども、もう少しスキルの見える化みたいなことをやっていくことで、結局、転職したときに上がるという傾向は出てくる。
それで、何度も言いますけれども、転職することが全ていいわけではなくて、中小企業は、むしろ辞められることが非常な問題になっていて、むしろ定着したほうがいいという、だから、そこをもう少しフラットに見えるような、政策的には、それが大事ということなのではないかなと思います。
○松本委員 ありがとうございました。
過去の状況から今の変化であったりとか、いろいろな考え方を聞かせていただいて、大変参考になりました。
○寺井部会長 そのほか、いかがでしょうか。
駒村委員、お願いします。
○駒村委員 山田先生、堀さん、どうもありがとうございました。今日は、いろいろ多角的な情報をいただきまして大変勉強になりました。いろいろ議論したい部分もありますけれども、時間もありませんので、堀先生にだけ御質問します。
21ページの、いわゆる氷河期世代をめぐる瑕疵効果というのでしょうか、労働経済でずっと言われていた氷河期世代のこのハンデはどこまで続くのかということが、最近になって、それが克服されたということが指摘されていて、それが確認されていたわけですね。
一方で、このことによって、氷河期世代の老後はもう大丈夫なのだという議論につながりがちなのですけれども、先生の資料の27ページ、それから24ページは賃金のフラット化の話ですから、これは若い世代も含めてかもしれませんけれども、さらに今日、事務局から配付された資料がございまして、事務局は説明されていないのですけれども、事務局の資料の2ページ、3ページが非常に重要なデータになっていまして、世代別に1号、2号、3号の割合を見ているのですけれども、やはり氷河期世代は若いときに1号の比率が非常に高いということを総合的に考えると、瞬間風速でフローというか、微分で見れば、氷河期世代は問題がなくなったように見えますけれども、年金というのは、ストックで見なければいけないので、ストックで見ると、やはり不安な部分があると。
これを対応するためには、先生と私は前の年金部会でも御一緒で、基礎年金の底上げというのは1個ソリューションとしてあるだろうと。
もう一つ、あのときに分布推計というのをやって、トレンドで見ると、この世代は前の世代よりもより長く働いてくれるので、取り返せる期間もあるのではないかという話だったのですけれども、この氷河期世代を60歳以降も働き続けるためには、働き続けることが期待できるかどうかという点と、あと、働き続けてもらうためには、どういう政策を今からしておく必要があるのかという点を教えていただきたいなと思いました。
以上です。
○堀氏 駒村先生、御質問ありがとうございます。
1点目なのですけれども、働き続ける気持ちにつきましては、インタビューを50人に聞いた限りですけれども、できれば動けなくなるまで働きたいという感じの、すごく就業意欲が高い方ばかりでした。
これは私も驚いたのですけれども、何とか若いとき、いろいろとあったけれども、それを取り返したいという気持ちがあるのか、できれば、できるだけ長く働き続けたいという方が非常に多かったです。
他方で、働き続けるためにはどうしたらいいかということで、先ほど山田先生の資料にもあったと思うのですけれども、この氷河期世代は既に50代に入っているので、10年と少しすると、もうシニアになってきます。
そのときに、人手不足の状況が続いていれば、まず、働けるだけの職場はあるだろうと。既に若い人の数が相当減っているので、一定程度は、このまま頑張っていけば働き続けられるのではないかと考えてはいるのですけれども、とはいえ、生成AI等の技術革新によってなくなっていく仕事もあるだろうということで、そうなってくると、先ほども話が出てきました、シニアのリ・スキリングという話になってくるわけでございます。
ただ、もともと普通に中高年でもリ・スキリングは難しい上に、65歳以降可能なのかという議論はずっとありまして、ただ、今、職業訓練の現場は50歳以上の方が半分以上になっているような感じなので、職業訓練の現場でもだんだんシニアに向かっていく人たちのリ・スキリングの経験が積み重なってきているということがあります。少し前だと65歳以降に新しい技能や技術を見つけるのは正直考えられなかったと思うのですけれども、今のシニアの中には、これまでの知識、技能を生かしつつ、それに少しプラスするということで、できる仕事というのは、ある程度あるのではないか、増えてくるのではないかと推測しているところであります。
もう一つ、駒村先生と御一緒させていただいたときに、拠出期間を40年から45年化するという議論があり、このまま順調に働き続けられる人については、45年化というのは、1つの重要な選択肢だと思うのですけれども、ただ、健康状態はそれぞれ変わってくるところがあるので、調査研究等をして45年化した場合に、どれぐらいの方が払い続けられるのということについては、検討を進めていってもいいのかなと考えております。
以上です。
○駒村委員 どうもありがとうございました。
リ・スキリングのところは、かなり不確実性もある部分ですけれども、時間との競争だと思いますので、ぜひその領域の専門家に頑張っていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
○寺井部会長 ありがとうございました。
少し時間が、まだ、本当は質問をしたい方はいっぱいいらっしゃると思うのですけれども、時間の関係で、視聴者から受け付けた質問について、事務局から紹介いただいた上で、講師に御回答をいただきたいと思います。
事務局には、質問の紹介をお願いいたします。
○植田首席年金数理官 時間の関係がございますので、1点のみお願いしたいと思います。
山田先生の資料の中で、アドバンスト・エッセンシャルワーカーを創出していくという話がありましたけれども、これを進めていくには、どのような方策が必要なのか、また、どのような難点があるとお考えでしょうかという御質問をよろしくお願いいたします。
○山田氏 ありがとうございます。
アドバンスト・エッセンシャルワーカーについては、実は、政策的には少し動き始めてはいるのですけれども、まず、実は何を意味しているのかということが、必ずしも明確ではないのですね、ある程度そこの共有感というのは要ると、これは私の私見ですけれども、少なくとも2つあって、1つは、何となく直接のイメージというのは、例えば、いろいろな技術を使いながら、現場の人が、機械とか、ツールを使って、非常に生産性を上げて効率よくやるという、それが分かりやすい事例なのだと思うのですけれども、実は、もう一つあって、例えば、介護現場などを考えますと、今、実はどんどん機器が入ってきているのですけれども、多くの機器は、実は使われていないのですね。そのままというところが、使っているところもあるのですけれども、それは、なぜかというと、現場の人はどう使ったらいいか分からないとか、あるいは機器を使うことは、実は介護と相入れないのではないかという考え方をお持ちの方もいらっしゃるわけですね。もちろん後者のところというのは、使い方とか、どう介護の質を上げるかという考え方の問題なのだと思います。
だから、その辺のどのように使っていくのとか、使っていくときに職場がどのように変わっていくのとか、共有をどうするのかみたいな、言わばマネジャー的にコーディネートする人材というのは、実は結構重要なのですね。
こういう仕事が、実は、やはり大卒の方がやっていけるような仕事なのではないか。何となく最近は、経営の戦略を書いて、格好いい仕事という人になりたいというか、そこに価値を置くのですけれども、もちろん、その価値はあるのだけれども、もっと大事なのは、現場の人がその機器をどう使っていけるのかということを考えていって、そういう人たちをサポートしていったりしていく人たちなのだと思うのです。それも大事だということです。
だから、そういうところに対して、私は、やはり日本の強さは現場だと思っているので、もう一回社会全体として、そこを再評価していって、そこで価値を、1つの社会運動として、そういうものを提示して、かつ、スキルは要りますから、それを、先ほどの堀先生の議論にもありましたように、スキル標準を明確にしていって、技能が身につけやすいようにしていく、それから、給料などもしっかりそれで上がっていくような、何となくそういうイメージの中でつくっていく。もちろん、これは、やりながら考えていく世界なのではないかと、そのように考えています。
○寺井部会長 ありがとうございます。
それでは、最後に、本日の基調講演や意見交換を通じて、お気づきの点がございましたら、御発言をいただきたいと存じますが、いかがでしょうか。
それでは、小野部会長代理、お願いします。
○小野部会長代理 ありがとうございます。
今の山田先生のコメントをお伺いしまして、最近よく言われるネオ・ブルーカラーがアドバンスト・エッセンシャルワーカーと通じているなと印象を持ちました。どうもありがとうございました。
私からは2点ほど簡単に、私見も入るのですけれども、お話ししたいと思います。
堀先生の資料の26ページのインタビュー調査の御説明をいただきましたが、そこに「今のところが、90時間を超えて働かせてもらえないところなので」ということで、被用者保険に加入できていないという趣旨の発言がありました。
これは、事業主の社会保険料負担回避が強く疑われる例なのではないかなと思っております。氷河期世代にかかわらず、こうした事業主の回避行動を防ぐような政策というのは、勤労者皆保険の実現に向かって欠かせないのではないのかなと思いました。これが1点です。
もう一点は、公的年金というのは保険ですので、氷河期世代を含む、過去に不遇な期間を持つ人々をさかのぼって救済するというのは、なかなか難易度が高いのではないかなと思います。むしろ、公的年金保険で対応できるのは、勤労者皆保険の実現と、それから就労期間の延伸による被保険者期間の増加で、将来に向かって、御自身の年金を充実させていくという機会を提供するということが重要かなと思った次第です。
私のコメントは以上です。
○寺井部会長 ありがとうございます。
今、非常に貴重なコメントを隣で、勉強させていただきながら聞いておりました。
本日は、公的年金財政の将来推計を行う上で重要な前提となる若年世代からシニア世代までの各世代の就労状況や就労意識等について、山田様と堀様から非常に貴重な御講演をいただきました。
今日扱っていただいたトピックスは、就労状況や就労意識だけではなくて、結婚や出産の動向であったり、外国人の就労動向、それからAIが雇用に与える影響など、非常に多岐にわたりました。これだけ多岐にわたったテーマなのですけれども、データをお示しいただき、アンケート結果もお示しいただき、また、海外の事例も取り上げていただきまして、こうではないかと思い込んでいるようなことが実は違っていたというようなこともあり、非常に学びが深まったと実感しております。
年金数理部会といたしましては、今後、財政検証のピアレビューを行う際に、本日の御講演や委員同士の議論も参考にしつつ、検討を行っていければと思っております。
また、本日、御視聴いただきました皆様方におかれましても、今後の年金数理部会の活動に御注目していただけますと幸いに存じます。
それでは、これをもちまして、本日の部会は終了いたします。長時間にわたり、どうもありがとうございました。

