薬事審議会血液事業部会令和8年度第1回安全技術調査会議事録
日時
令和8年9月2日(水)17:00~19:00
場所
Web併用形式
厚生労働省 専用第 15 会議室
厚生労働省 専用第 15 会議室
出席者
- 出席委員(9名):五十音順、敬称略 ◎座長
-
- 朝比奈 靖浩
- 天野 景裕
- 池田 和彦
- 石井 明子
- ◎大隈 和
- 小林 江梨子
- 瀬尾 幸子
- 玉井 佳子
- 水上 拓郎
- 欠席委員(1名):敬称略
-
- 脇田 隆字
- 国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所:敬称略
-
- 関 洋平
- 手塚 健太
- 日本赤十字社:敬称略
-
- 谷 慶彦
- 後藤 直子
- 事務局:
-
- 松岡 輝昌(血液対策課長)
- 山本 光寿(血液対策課長補佐)
- 糸谷 涼(血液対策課長補佐)
議題
- 感染症安全対策体制整備事業について
- NATコントロールサーベイ事業について
- 令和7年度の血液製剤安全性確保の取組
- 輸血歴に係る献血制限について
- 「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」について
- その他
配布資料
資料ページをご参照ください。
議事内容
○糸谷血液対策課長補佐 定刻となりましたので、「薬事審議会血液事業部会令和8年度第1回安全技術調査会」を開催いたします。本日はお忙しい中、御参集いただき誠にありがとうございます。この度は、御参加いただく方の利便性等の観点から、Web併用での審議とさせていただきます。また、本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。
はじめに、委員の御就任がありましたので、御紹介いたします。新たに小林委員が御着任されております。小林委員より、一言、御挨拶を頂けますと幸いです。
○小林委員 城西国際大学の小林です。今年度よりよろしくお願いいたします。
○糸谷血液対策課長補佐 小林委員、ありがとうございました。
次に、本日の委員の出席状況ですが、脇田委員より御欠席との御連絡を頂いております。また、瀬尾委員より少々遅れるというように承っております。したがいまして、現時点で、安全技術調査会委員10名中8名に御出席いただいていることを御報告いたします。
また、本日は参考人として、国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所より、関洋平次世代生物学的製剤研究センター第1室長、手塚健太次世代生物学的製剤研究センター第2室長に御出席いただいております。加えまして、日本赤十字社血液事業本部より、谷血液事業経営会議委員、後藤技術部次長に御出席いただいております。
また、事務局に人事異動がありましたので御報告いたします。血液対策課長として松岡が、課長補佐として山本、糸谷が着任しております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
続きまして、全ての委員の皆様より、今回の議題について、薬事審議会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告させていただきます。委員の皆様には、会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き、御理解、御協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。
議事に入る前に、会場にお越しいただいている委員の皆様におかれましては、本日の資料の確認をお願いいたします。タブレット上に、「1 議事次第」から「14 参考資料5」までのPDFファイルが表示されているか、御確認をお願いいたします。ファイルが表示されていない場合や不足がある場合には、お近くの職員にお声掛けください。
本日はWeb併用での審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、進行方法について御説明させていただきます。審議中に御意見、御質問をされたい委員におかれましては、まず、挙手等により発言したい旨をお示しいただきますようお願いいたします。その後、座長から順に発言者を御指名いただきます。御発言いただく際は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上、御自身のお名前を明示し、御発言ください。また、ノイズを減らすため、御発言が終わりましたらマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
間もなく議事に入りますので、カメラ撮影はここまででお願いいたします。以降の進行を大隈座長にお願いいたします。
○大隈座長 大隈です。ありがとうございます。それでは、早速ですけれども、議事に入りたいと思います。議題1.感染症安全対策体制整備事業について、まずは事務局より説明をお願いします。
○糸谷血液対策課長補佐 事務局です。感染症安全対策整備事業は、新たな病原体が移入した場合などに備えて、血液対策課が国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所に実施を依頼している事業です。令和7年度の実績の報告について、関参考人よりお願いいたします。
○国立感染症研究所関参考人 よろしくお願いいたします。時間の関係で、一部抜粋しての御説明となりますことを御了承いただけますと幸いです。
事業概要につきましては、先ほど御説明を頂いたとおりです。令和7年度は、試験精度管理のための国内参照品が未整備であったウエストナイルウイルスを対象とする参照品の整備、プール血漿、グロブリン製剤の収集及びそれらを用いた血清疫学評価、輸血新興・再興感染症に関する情報収集とリスク評価を行いました。
はじめに、参照品の整備について御説明いたします。ウエストナイルウイルスは、フラビウイルス科フラビウイルス属に属し、蚊-トリのサイクルで維持されています。ヒトへは主に蚊を介して感染をいたします。ヒトでの潜伏期間は3~15日であり、発症した場合、多くは急性熱性疾患を示し、短期間(約1週間)で回復をいたします。しかし、約1%は重篤な症状を示し、致命率は重症者の3~15%とされています。また、感染者の約70~80%は不顕性感染に終わることが知られています。
ウエストナイルウイルスは、アフリカ、ヨーロッパ、中東、中央アジア、西アジアなど広い地域に分布をしています。米国でのアウトブレイク以降、大規模な流行は見られていないものの、2025年には欧州14か国で1,112例の感染者と97例の死亡例が報告されており、米国では47の州で2,076例の感染者が確認されています。また、今シーズンも、8月18日の時点で、米国の32の州で計222例の感染者が確認されており、昨年を上回るペースで増加をしています。米国での報告者に占める重症者の割合は、2025年度では全体の約69%と高いことから、実際の感染者は更に多いと考えられます。
そこで、2025年度は、ウエストナイルウイルスのlineage1系統のNY99株及びlineage2系統のFCG株について、参照品の作製を行いました。作製方法については、これまで御報告しているとおりの方法になりますので、詳細は割愛いたしますが、酸処理及び加熱処理によりウイルスを不活化し、それらを血漿由来のベースマトリックスにスパイクすることによって、400本ずつ参照品を作製いたしました。
次に、共同測定及び値付け値の算出についてです。今回、日本赤十字社及び国立感染症研究所を含む6施設(日本ウォーターズ株式会社、グリフォルス株式会社、タカラバイオ株式会社、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)において、定性法(6施設)、定量法(1施設)での核酸量の値付けを実施しました。こちらの測定方法につきましても、これまで御報告のとおりですので、詳細は割愛させていただきます。今回の参照品の測定におきましては、NIBSCよりlineage1の国際標準品及びlineage2の国際参照品を入手いたしまして、それらを同時に測定することにより、国際標準品に対する国内参照品の相対値を算出し、International unit/mL(IU/mL)を付与しました。表1にその結果を示していますけれども、WNV lineage1及びlineage2の国内参照品の値付け値は、それぞれ7.58log10IU/mL及び6.70log10/IU/mLとなりました。
次に、考察です。ウエストナイルウイルス感染者の約70~80%は不顕性感染に終わることに加えまして、ウイルス血症が感染後数日から見られ、その後、最長で数週間程度持続することが確認されていることから、無症候感染者が献血ドナーとなるリスクが存在します。実際、米国では献血のスクリーニングが行われていますけれども、毎年、多数の陽性例が確認されており、2025年には200例以上が確認をされています。本邦でのウエストナイル熱の輸入症例は、2005年の米国滞在歴のある30代の男性から検出された1例のみで、近年、輸入症例の発生は確認されていませんが、ウエストナイルウイルスを媒介する蚊は国内にも存在することから、今後アウトブレイクが発生する可能性は否定できません。
そのため、大規模なアウトブレイクが発生した場合に備えて、検査体制の構築や試験精度管理に使用可能な不活化ウイルス由来の参照品を整備しておくことは、血液の安全確保において重要であると考えます。今般整備しました参照品については、国立感染症研究所より、受領者の送料負担にて分与を行う予定です。
次に、プール血漿、人免疫グロブリン製剤などを用いた血清疫学の評価に向けた体制整備について御説明いたします。皆様御存じのとおり、血液製剤の製造に用いられるプール血漿は数千人以上の血漿を混合したものであり、人免疫グロブリン製剤は複数のプール血漿をもとに製造されています。そして、これらを用いて様々な病原体に対する抗体価を継続的に評価することにより、採血地域や時期の違いによる血清疫学的状況を把握し、グロブリン製剤の抗体価などの品質特性評価や感染症の流行予測につながることが期待されます。
そこで、これらのバンク構築を目指し、日本血液製剤機構の協力を得て、令和6年度より検査残プール血漿及び外観検査不合格となった製剤の継続的な収集を開始しました。令和7年度は、2025年1月から12月までに製造されたプール血漿全バッチの検査残検体及び外観検査不合格となった製剤8ロットを受領し、分注保管を行っています。この中で採血期間が1か月以内に収束しているプール血漿を各月の代表プール血漿として選出して、測定を行っています。これまでに、代表プール血漿については、2018年6月以降のものを全て収集できています。また、製剤については、2000年以降のロットを各年1ロット以上確保できています。
令和7年度はこれらの検体を用いて血清疫学の調査を実際に開始しており、今回は、2018年から2024年における疫学背景とCOVID-19関連抗体の変化との関連性を調査しました。抗S抗体価、抗N抗体価、中和抗体価を測定した結果、起源株型ワクチンの3回目接種が行われた2022年春以降の抗S抗体価は、実測値ベースでは波状パターンを示しますが、指数的には大きな減少は認められず、高い状態で維持されていることが示されました。また、プール血漿中の起源株を含む各種変異株に対する中和抗体価は、増減を繰り返しながらも全体的には上昇し、一定の水準に達した後は大きく減少することなく、保持されていることが分かりました。加えて、オミクロン株発生以降の中和抗体価の全体的な変動と抗N抗体価の変動との間には一定の相関性が見られることから、抗N抗体価の変動を観察することによって、不顕性を含む市中の感染実態を把握できる可能性があると考えられます。
本結果は、献血者由来プール血漿の各月代表ロットの継続的な観察が、様々な感染症の疫学実態の把握や将来の感染症リスク評価に役立つことを示唆しており、引き続き、様々な病原体に対する血清疫学の解析を進める予定です。
次に、輸血新興・再興感染症に関する情報収集とリスク評価についてです。2025年度は、ISBT、AABB、ECBS等に参加をしまして、我々が作製しました参照品の整備について発表を行うとともに、オロプーシェ等、様々な病原体に対する情報収集を行いました。
次に、結論です。令和7年度は、WNV lineage1及びlineage2の国内参照品を整備し、共同測定により、核酸量(IU/mL)を付与しました。いずれの施設で実施する核酸検査であっても、国内外のキットを用いて検出感度を比較できる体制を整えました。今後も血液を介して感染する新たな病原体等について常に注視して情報収集を行い、血液の安全確保のために適切に対応していくことが必要であると考えます。
また、血液製剤の血清学的背景を明らかにすることを目的とした、献血血液を用いたサーベイランス体制を構築し、令和6年度より、検査残プール血漿及び外観検査不合格となった製剤の継続的な収集を進めています。令和7年度には、収集した検査残プール血漿から採血期間が1か月以内に収束している各月の代表バッチを用いて、2018年から2024年における疫学背景とCOVID-19関連抗体の変化との関連性を調査し、本取組が感染症の疫学実態の把握に有用であることを示唆する結果を得ることができました。そのため、令和8年度以降も継続して取り組み、他の様々な病原体に対する血清疫学解析を進める計画です。報告は以上となります。
○大隈座長 ありがとうございます。ただいまの御説明につきまして、御意見や御質問がございましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。特にございませんか。ないようでしたら、引き続き今年度の事業の実施をお願いしたいと思います。ありがとうございました。
○国立感染症研究所関参考人 ありがとうございました。
○大隈座長 次に、議題2.NATコントロールサーベイ事業についてに移ります。事務局より説明をお願いします。
○糸谷血液対策課長補佐 事務局です。NATコントロールサーベイ事業は、NATの精度管理の実情を把握するため、血液対策課が国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所に実施を依頼している事業です。令和7年度の実績の報告について、手塚参考人よりお願いいします。
○国立感染症研究所手塚参考人 国立感染症研究所の手塚と申します。よろしくお願いいたします。私からは、昨年度のNATコントロールサーベイ事業の実績について報告いたします。委員の先生方におかれましては、PDF資料の4ページ目の事業の概要及び5ページ目の事業の履歴一覧を御覧ください。
まず、本事業の目的です。血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的としたNATの実施に関するガイドライン、いわゆるNATガイドラインに基づき、血漿分画製剤製造所及び献血血液のスクリーニング実施施設は、主に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)及びB型肝炎ウイルス(HBV)の3ウイルスを、このほかのウイルスについても適用可能としてNATを実施してきております。当該施設において実施するNATのバリデーションと精度管理がNATガイドラインによって求められていることから、平成16年度の安全技術調査会の指示に基づき、2006年以来、NATの精度管理の実情を把握するために、コントロールサーベイ事業を継続的に実施してきております。また、2010年に発出されたWHOガイドラインによりまして、献血血液のスクリーニング実施施設において、外部品質検査の実施が求められております。
2020年8月より、採血事業者である日本赤十字社は、輸血用血液製剤の安全性向上のため、新たに個別検体によるE型肝炎ウイルス(HEV)に係るHEV-NATを導入したスクリーニングシステムを開始しております。本システムでは、マルチプレックスNATシステムを用いた、HBV、HCV、HIVと同時にHEVを単独で検出する新しい4価NATが導入されております。そこで、2021年度は、新検査法でのウイルス検出能について、NATコントロールサーベイを実施しております。さらに、2022年度及び翌年の2023年度のNATコントロールサーベイでは、HBV、HCV、HIV-1及びHEV-NATの感度と特異性の実情把握を目的として、複数のウイルスが混在するパネルを用いたサーベイを実施してきております。
昨年度、2025年度の第16回NATコントロールサーベイでは、日本赤十字社を対象に、HEV-NATの感度と特異性の実情把握を目的として、本邦で作製されましたHEVの国内参照品パネルを用いてサーベイを実施しております。
次に参加施設です。PDF資料6ページの表1です。参加施設は、輸血用血液製剤のNAT実施施設8施設と、オブザーバーとして研究施設1施設及び試薬メーカーの1施設が加わり、合計10施設となります。
次に具体的な材料です。PDF資料7ページ目です。材料としまして、HEV国内参照品ウイルスパネルを用いて評価用のパネルを作製いたしました。HEV国内参照品の希釈には陰性血漿を用いて、HEVの低濃度陽性検体として、輸血用血液スクリーニングNAT検査に必要とされる検出限界値、HBVでは100IU、HCVでも100IU、HIV-1では200IU、HEVでは、現状まだ未定というところではありますが、暫定的に100としまして、これの1.5倍あるいは3倍に当たる300IU/mLに検体を希釈調製しております。さらに、HEVの高濃度陽性検体として、3,000IU/mLに希釈した検体を準備しております。また、陰性検体も加えました合計11検体をブラインド化してパネルを作製して、参加施設に配付しております。
次に測定方法です。輸血用血液製剤のNAT実施施設、研究施設及び試薬メーカーは、グリフォルス社製のUltrioPlexを用いて検査しております。この検査法は、HBV、HCV、HIV-1/2を識別せずに検出し、同時にHEVを単独で識別して検出するものであります。参加施設には、同試験法を用いて、先ほどのパネル検体を、それぞれ日を変えて3回独立に検査していただきました。
続いて結果になります。PDF資料8ページ目、表3です。まず、輸血用血液製剤のNAT実施施設8施設の結果です。改正後のNATガイドラインに基づいて実施しているNAT検査は、HEVに関する精度管理が適切に実施されておりました。全施設におきまして、HEVの高濃度(3,000IU/mL)及び低濃度(300IU/mL)に希釈された検体、かつ全てのジェノタイプパネルにおいて、標的のウイルスが特異的に検出できることが確認されております。陰性対照は全て陰性として判定されております。次にオブザーバー施設です。こちらも、先ほどの輸血用血液製剤のNAT施設と同様に、全ての検体で陽性のものは陽性、陰性のものは陰性として判定されております。
PDF資料8ページ目の表3、考察です。HEVは輸血による感染事例が報告されるようになり、血液製剤やヒト血漿成分を原料とする医薬品の安全対策として、NATの精度管理が重要となっております。国内では、HEV-ID-NATが導入されており、献血スクリーニングは全国で展開されており、世界的にも高い安全性確保の体制が整備されております。HEVは4つの遺伝子型に分類されておりますが、国内で見られるものは主にジェノタイプ3型、4型になり、これらは4種類のクラスターに分類されています。HEVの国内の参照パネルは、国内のブタから分離された日本固有の4クラスター株から構成されており、今回のサーベイでそれらが全て検出可能であることも確認されております。
したがいまして、2025年度に実施したHEVのウイルスパネルを用いた第16回NATコントロールサーベイでは、輸血用血液製剤のNATを実施する施設において、高濃度及び低濃度に希釈されたHEVの陽性検体を全て検出できたということから、試験の精度管理が適切に実施されていることが確認されたと考えております。
最後に、9ページ目の表4の本年度の実施計画になります。本年度、2026年度は、輸血用血液のNAT施設及び血漿分画製剤の原料血漿プールのNAT実施施設を対象に、本邦では初めてA型肝炎ウイルスの検出感度と特異性の実情把握を目的とした第17回のコントロールサーベイの実施を計画しております。発表は以上になります。
○大隈座長 ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御意見や御質問がございましたらお願いします。そうしましたら、私のほうからよろしいですか。
○国立感染症研究所手塚参考人 お願いいたします。
○大隈座長 今年度、A型肝炎ウイルスの件について検討されるということですが、そこに注目されたのはどういった経緯からでしょうか。
○国立感染症研究所手塚参考人 ありがとうございます。このA型肝炎ウイルスの検査なのですが、実は、一昨年の2024年度に実施したNATサーベイのときに、試験法としましてロシュ社製のコバスシステムを用いた検査が対象となったのですが、そのときのいわゆるトゥープレックスPCR法なのですが、こちらはA型肝炎ウイルスとパルボウイルスB19を同時に検出するというシステムであります。そこで、そのときに御参加いただいた施設では、このサーベイが実施可能であるということが体制として確認されておりますし、先ほども申し上げましたとおり、過去のサーベイ事業の履歴を見ていただいても分かるとおり、A型肝炎の検査がまだ実施されていないというところ、実際にはNAT施設でトゥープレックスPCRシステムを用いた検査がなされているというところもありますので、そこでの精度管理の確認が必要と考えたところであります。
○大隈座長 ありがとうございました。ほかに御質問はないでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。では、引き続き今年度の事業の実施をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○国立感染症研究所手塚参考人 ありがとうございます。
○大隈座長 続きまして、議題3.令和7年度の血液製剤安全性確保の取組に移りたいと思います。日本赤十字社より資料の説明をお願いいたします。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日本赤十字社におけるヘモビジランス2025ということで、日本赤十字社の後藤から御説明をいたします。資料3を御覧ください。
2枚目です。本日の内容は、こちらにお示ししたとおり、輸血副作用、輸血感染症に続き、昨年7月末に導入した血小板製剤の細菌スクリーニングの状況について御説明いたします。
3枚目です。まず、輸血副作用のうち、非溶血性副作用のまとめから御説明します。4枚目です。2025年は、医療機関から、輸血による副作用が3,050件余り、輸血による感染症疑いが32件、日本赤十字社の血液センター宛てに報告されました。輸血後GVHDの疑い報告はありませんでした。
5枚目です。非溶血性副作用は合計3,025件の報告があり、そのうち、半分は比較的軽度なアレルギー症状、17%がアナフィラキシー等の重症アレルギー、発熱が14%、TRALIやTACOを含む呼吸困難が6%、血圧低下が3%といった割合となっていました。重篤な症例は、右の棒グラフにお示ししたとおり、全体の26%で、その内訳は、下にあるように、重症アレルギー、呼吸困難などが主なものでした。
6枚目です。副作用の原因製剤は、赤血球が36%、血小板が39%、FFPが17%でした。2025年の供給本数を右にお示ししていますが、こちらを見ると、血小板製剤による副作用の発生割合が高いということが分かると思います。製剤ごとの副作用症状は、下の棒グラフに示したとおり、血小板やFFPなどの血漿成分が多い製剤では、アレルギー性の副作用が8割を超え、血小板製剤は、次いで発熱が多いという状況でした。一方で、赤血球製剤ではアレルギーは4割ほど、発熱が3割近く、呼吸困難が1割と、発現する症状が異なっておりました。
7枚目です。2025年のTRALI・TACOの評価については評価対象が130件ありました。評価の結果、TRALI TypeⅠが7例、TypeⅡが1例、TRALI/TACOが5例、TACOが80例、TAD(輸血関連呼吸困難)が10例、ARDSが1例、その他18例となりました。評価に必要なデータを提供いただけなかった事例も8例ありました。
患者内訳等は右にお示ししたとおりです。TRALI事例で、製剤の抗白血球抗体が陽性だったものが3例あり、そのうち2例は交差適合試験で陽性となりました。残りの1例は実施できませんでした。TACOについては、約8割が60代以上で、がんや循環器疾患のある人が多いという傾向がありました。
8枚目、TRALI・TACOの評価状況です。現在の評価基準となって、TRALI TypeⅠ、TypeⅡ、TRALI/TACOを含め、TRALIに関連する事例が年間10件を超える程度の状況、そして、TACOが多い状況が続いております。日本赤十字社では、2025年7月に輸血用血液製剤の添付文書を改訂し、TACOに係る注意喚起として、「重要な基本的注意」の項目及び「重大な副作用及び感染症」の項目に、TACOに係る詳細な記載を追記いたしました。まだ、これによるTACOの発生の減少は認められていませんが、TACO疑いとして輸血後の呼吸困難事例が報告される数が増加している印象がありました、
9枚目、溶血性の副作用について御説明いたします。10枚目です。輸血から24時間以内に発症する即時型の溶血事例が11例、24時間以降に発症する遅発型の溶血が13例報告されました。原因血と報告されたのは全て赤血球製剤でした。重篤症例は即時性で7例、遅発性で4件あり、即時性ではABO不適合の事例もありました。患者血液から検出された抗体の種類を下にお示ししました。EやCなどのRh系の抗体、Kiddの抗体に加え、Jraが検出された例もありました。
11枚目、輸血副作用のまとめとなります。こちらの御説明は割愛いたします。
12枚目からは輸血感染症について御説明いたします。13枚目です。輸血後に感染が疑われるとして医療機関から血液センターに報告した件数を病原体別にお示ししました。2025年は合計で32例と、過去最少の数となっております。
次です。報告数の内訳は、HBV感染の疑いが11例、HCV疑いが4例、HEVとHAV疑いが1例ずつ、CMV(サイトメガロウイルス)感染疑いが3例、VZV(水痘・帯状疱疹ウイルス)感染疑いが1例、パルボB19が1例、細菌感染疑いが10例の合計32例でした。輸血による感染が特定されたのは、HBVと細菌感染がそれぞれ1例ありました。
次に、輸血後ウイルス感染症について御説明いたします。16ページです。輸血後ウイルス感染の特定例について、原因血液の採血年別件数とその当時の安全対策を併せてお示ししました。2014年に個別NATを導入した後は、個別NAT陰性の血液によるHBVの感染が年に1、2件発生しているという状況です。これらは遡及調査により判明した感染となります。E型肝炎については、2020年にHEV-NATを導入後、引き続き遡及調査を実施していますが、NAT陰性血による感染は確認されておりません。
次のページです。遡及調査についての御説明です。遡及調査は、医療機関発と供血者発の2種類があり、医療機関発は、輸血後に受血者のウイルスマーカーが陽転したという情報に基づき調査を行います。輸血された血液は個別NAT陰性ですが、ウインドウ・ピリオドに献血された可能性も否定できないので、ウインドウ期を超えた時期の次回献血、若しくは事後検査依頼による検査結果により、当該血液の感染リスクを評価いたします。右側の供血者発は、複数回献血者の陽転情報に基づき、遡及調査ガイドラインに定められた遡及調査期間内の過去の献血血液の受血者について、感染状況を調査するものです。これらの遡及調査により判明したHBVの症例を御紹介いたします。
次のページです。輸血後HBV感染の特定例です。献血者は60代男性、HBV陽転の163日前の前回献血から製造された赤血球製剤が、70代女性、血液疾患の方に輸血されました。輸血から161日後に、HBV DNA、HBs抗原、HBc抗体が陽性となり、日本赤十字社に報告がありました。献血者の陽転時と受血者から検出されたウイルスの塩基配列は一致し、Genotype:C、Subtype:adrでした。この製剤のウイルス量は1.0logIU/mLと、通常の検出限界以下のとてもウイルス量の低い事例でした。受血者の方については、核酸アナログを投与されており回復されてきたと報告を頂いております。
次のページ、輸血後細菌感染症について御報告いたします。20ページ目です。細菌スクリーニング導入前の血小板製剤による大腸菌感染の事例です。真ん中、受血者の方は50代の男性、こちらもAMLの方で、血小板の輸血後に細菌感染の症状が現れ、血液培養を実施したところ陽性となり、大腸菌が検出されました。輸血に使用された血小板の残余からも大腸菌が検出され、エンドトキシンも2,000pg/mL以上と高値となっていました。また、同じ献血の血小板から製造されたもう一本の血小板製剤も確保し、調査したところ、大腸菌を検出し、エンドトキシン高値でしたが、このとき一緒に採血されていた原料血漿からは大腸菌は検出されませんでした。血小板と患者から検出された大腸菌の菌株を比較したところ、99.9%以上の一致が認められ、輸血による感染と特定しました。献血者の方には、この血小板献血から3週間後に事後調査に応じていただけましたが、この3週間後の血液培養は陰性という結果を得ております。
次のページです。細菌スクリーニングを開始した後の2025年8月から今年7月までの1年間、輸血後の細菌感染が疑われた症例は全部で15件あり、10件が赤血球製剤が被疑薬となったもの、血小板で5例が報告され、いずれも輸血用血液バッグの培養試験は陰性であり、細菌感染の特定例というのはありませんでした。
次です。輸血後感染症のまとめとなります。説明については割愛いたします。
次のページからは、昨年、2025年7月30日から供給を開始した血小板製剤の細菌スクリーニングについて、導入後の状況を御報告いたします。次のページです。導入後の1年間で約59万本の血小板について細菌スクリーニングを実施いたしました。スクリーニングが陽性となったのは78本、陽性率は0.013%でした。これらの血小板は検査落ちとなり、医療機関へは供給しておりません。陽性となったものは、血小板のバッグから改めてサンプリングし、追加の培養試験を実施したところ、フォールスポジティブ(偽陽性)が21本、陽性が54本、真の陽性率としては0.009%、約1万900本に1本が陽性という結果になりました。月別の陽性数、陽性率は表に示したとおりで、平均すると月4.5本が陽性となっております。なお、スクリーニング陰性となった血小板製剤が医療機関に供給されますが、これらが原因で輸血後感染症の確定例となったものはありませんでした。
次のページです。細菌スクリーニングの陽性検体から同定された菌種をお示ししました。右の円グラフのとおり、ブドウ球菌が24例と最も多く、次いで連鎖球菌が17件でした。内訳は表に示したとおりで、グラム陽性菌は、Staphylococcus aureus黄色ブドウ球菌が11例と最多、次いでepidermidis(表皮ブドウ球菌)が6例検出されました。連鎖球菌では、Streptococcus gallolyticusが7例、dysgalactiaeが3例、agalactiaeが2例となっていました。下にお示ししたグラム陰性菌については、大腸菌2例のほか、セラチアやエルシニア等が検出されました。これらの病原性が高い細菌がスクリーニングで検出され、輸血後の感染症が防止できたということにはなるかと思います。
次のページです。続いて、細菌スクリーニングは陰性と判定された血小板製剤が、血液センターにおける供給前の確認や医療機関での輸血前の確認で、外観異常が認められると連絡されたもののまとめです。献血数ベースで月平均8例ほど連絡がありました。外観異常を認めた場合は、その製剤について無菌試験を実施しており、これまで5例が陽性となり、いずれも採血5日目、6日目に黄色ブドウ球菌が検出されています。外観異常については写真で示したとおりですが、これらの外観異常については、昨年9月の運営委員会でも御報告したとおり、医療機関へ情報提供を実施したところです。
次のページです。スクリーニング陰性の外観異常は黄色ブドウ球菌ばかりで、これは黄色ブドウ球菌の性質によるものと考えています。図にお示ししたとおり、黄色ブドウ球菌は、増殖しても、細菌同士が目に見えないレベルで凝集したり、バイオフィルムを形成したりするため、菌量が少ない場合は、サンプリング検体中に取り込まれる確率が低くなってしまうことが原因と考えられました。細菌スクリーニングを実施している諸外国でも、同様のニアミス事例と呼ばれるものは発生しており、黄色ブドウ球菌はスクリーニングで偽陰性となるリスクの高い菌というように認識されております。
次のページです。ここまでの御報告を踏まえ、今後、検討を予定している内容についてお伝えいたします。まず、24時間培養を終了した後の培養ボトルを有効期間満了まで保管し、外観異常の連絡を頂いた場合の確認に使用する予定です。また、期限切れとなった培養陰性の血小板製剤については再培養を行い、細菌混入の確認をいたします。日本赤十字社では、下に示していますが、初流血除去を導入したときに細菌混入リスクに対する効果検証を行ったことがあります。今回は細菌混入の効果検証として実施しようと考えております。これらにより、増殖の遅い菌の存在や病原性が低い菌の増殖性の確認ができるというように考えております。
次、最後のスライドです。昨年9月の運営委員会で、細菌スクリーニング血小板の課題と対策について御報告しましたが、その後の状況について御説明いたします。血小板単位数の不足や凝集判定による減損率の地域差については対策を実施し、2025年10月にはスクリーニング導入前と同等レベルに終息しておりますが、引き続き改善に努めております。供給関連の課題については、単位不足等の解消や洗浄血小板の予備在庫の製造等により改善はしましたが、時期によっては血小板製剤の納品遅延などが発生もしております。全国の需給調整強化や採血の強化により、安定供給の実現に努めてまいります。御説明は以上です。
○大隈座長 ありがとうございました。ただいまの御説明について、御意見や御質問がありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。玉井委員、お願いします。
○玉井委員 弘前大学の玉井です。重篤な即時型溶血性副作用に、ABO不適合事例が1例あったのですが、差し支えなければ、投与量や起こった状況、予後について、分かる範囲で情報を教えていただけませんでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日本赤十字社の後藤から御回答いたします。この症例は、高度の貧血の患者さんに輸血が行われたという事例で、A型の患者さんにB型の赤血球が4単位投与された事例です。ただ、症状自体は割と早く収束して、余り重篤な転帰にはならないで済んだというような事例でした。よろしいでしょうか。
○玉井委員 ありがとうございます。4単位入っても死亡に至らなかったということですね。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 はい、こちらの症例は大丈夫だったということです。
○玉井委員 ありがとうございました。
○大隈座長 ありがとうございました。ほかはありませんか。よろしいですか。
○糸谷血液対策課長補佐 大隈座長、事務局です。現地から水上委員より挙手を頂いております。
○大隈座長 では、水上委員、お願いします。
○水上委員 感染研の水上です。まず、頂いた20ページの輸血後細菌感染症の所で1点だけ確認なのですが、PC残余の所でエンドトキシンとE.coliの検査をされていて、同時製造のPCでもエンドトキシンが検出されたという話なのですが、原料血漿の所では陰性だったというように書いてあります。こちらでエンドトキシンというのは測定されておりますでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 原料血漿のエンドトキシンということですか。
○水上委員 はい。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 今、手元にデータがないのですが、原料血漿についてもエンドトキシンは測定していると思います。培養も陰性で、エンドトキシンも高くないという結果だろうと思いますが、確認をして後ほどお伝えします。
○水上委員 ありがとうございます。また、最後の黄色ブドウ球菌の所で、まだ凝集による外観異常のところが課題としていろいろあるのかなというお話があったかと思います。例えば、ほかの検査法などで、より高感度なATP法などいろいろあるかと思うのですが、そういう方法で検証すれば、実は検出できたというものなのか、やはり、それでも、今は技術的には限界なのかというところの御見解を頂ければと思いますけれども。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日本赤十字社の後藤です。27枚目のページでお示ししたように、黄色ブドウ球菌についてはサンプリングができるかどうかといった性質がありますので、高感度な検査法を導入したとしても、サンプリングしたものに菌や検出する対象となるものが入らなかった場合は、何をやっても陰性になってしまうと考えられます。ですので、アメリカでやっているように、輸血前にベッドサイドで検査ができるような方法が使えれば、それはそれで追加検査としてはよいのかなと思いますが、スクリーニングという意味では、諸外国の結果を見ても、このぐらいのところが検出限界というか、黄色ブドウ球菌に対する対策の限界というか、そういうようになっていくのではないかと、1年やってみたところでは考えております。
○水上委員 どうもありがとうございました。
○大隈座長 ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございました。日本赤十字社におかれましては、引き続き血液安全の監視の一環として情報収集を行っていただき、安全対策に取り組んでいただくようお願いいたします。
次に移ります。議題4.輸血歴に係る献血制限についてです。議題4は、まず事務局から現状等について説明していただき、続いて、日本赤十字社より見直しの方向性について御説明いただきます。その説明を踏まえ、最後に事務局より論点について整理をお願いします。
○糸谷血液対策課長補佐 事務局です。輸血歴に係る献血制限については、大隈先生を研究代表者とする令和8年度厚生労働科学研究班「血液製剤の安定供給に資する採血事業体制の構築のための研究」において、諸外国の規制動向や科学的知見の整理・検討を進めていただいております。今後、当研究班等において、この制限の見直しに係る検討に当たり整理すべき事項について、御意見を頂きたいと思います。
資料4-1(1)現状等について御参照ください。まず、現状につきましては、平成3年当時、HBV及びHCVによる輸血後ウイルス性肝炎の発生状況並びにHBV及びHCVに係る検査技術の水準を踏まえ、日本赤十字社において、輸血後6か月以内の者からは採血せず、輸血後6か月を超える者から採血した血液についても、輸血用血液製剤には使用しない取扱いが導入されました。平成7年6月以降は、未知のウイルス等による感染も防止する観点から、輸血歴を有する者について、恒久的な献血制限が運用されております。一方、その後、NATを始めとする検査技術の高度化や、血液製剤に係る安全対策の充実が進み、献血血液に係る安全対策は、当該制限の導入当時と比べ大きく向上しております。
また、諸外国においては、輸血後一定期間の献血延期を設けた上で、献血を受け入れている国がある一方、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病等の特定のリスクを理由として、恒久的な献血制限を維持している国もあり、その取扱いは国によって異なっております。
当該制限の導入から30年以上が経過していることから、現在の科学的知見及び安全対策を踏まえ、輸血歴を一律に恒久的な献血制限の対象とする現行の取扱いについて、改めて検討する必要があると考えております。以上です。
○大隈座長 ありがとうございました。続いて、日本赤十字社より資料の説明をお願いします。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 輸血歴に係る献血制限について、日本赤十字社の後藤より御説明いたします。資料4-2を御覧ください。2ページをお願いします。輸血歴に係る献血制限は、先ほども事務局から御説明がありましたとおり、もともとは平成3年10月に日本赤十字社内で感染症対策として社内通知で開始したものでした。当時は、HBV、HCVとも血清学的検査で抗原検査、抗体検査のみを実施しており、HCV抗体陰性と判定された血液がPCRでHCV-RNA陽性となる率は、輸血歴のある献血者においては、輸血歴のない献血者の10倍近く高いという報告がありました。
このことから、輸血後ウイルス性肝炎の感染の可能性を考慮し、より感度の高い検査法が実施されるまでの間は、輸血後6か月以内の人からは採血をしない、輸血後6か月を超える献血者の血液は、輸血用血液製剤には使用せず、血漿分画製剤(アルブミン)の原料とするという対応を取っておりました。
次のページです。日本赤十字社で輸血歴に係る献血制限を実施していた1990年代初頭の輸血後肝炎の発生率というのは、ちょうど真ん中辺りにあるとおり、2%程度で、ちょうどHCVの抗体検査が開始された時期のことでした。
次のページです。その後、平成7年6月に、前年12月に設置された「血液問題検討会」において、製造物責任法制定を契機に輸血用血液製剤の安全確保対策を検討した結果が、報告書として通知されました。この報告書中の「個別の安全対策」の所に、輸血歴、臓器移植歴のある者は、未知のウイルス等の感染を防ぐ意味から、問診に際して排除すると記載がされ、輸血歴がある者の献血が排除されることとなりました。
次のページです。輸血歴に係る献血制限のまとめです。日本赤十字社の輸血歴による献血制限は、輸血後肝炎対策として始めました。血液問題検討会の報告書から30年近くが経過し、輸血用血液や血漿分画製剤の安全性に係る考え方については、再評価が必要な時期に来ていると考えられます。諸外国においては、過去の輸血歴により無期限献血延期とする措置を講じている国は減少傾向となっていますが、一部vCJDの対策として残している国もあります。輸血歴による献血制限は、30年以上前に、輸血後肝炎対策、未知の感染症対策として開始された安全対策であり、その後、新たな検査項目や高感度検査の導入も進んでいるため、輸血後一定の献血延期期間を設けて(感染症を発症していないことを確認し)、献血を受け入られるかどうかについても検討すべき時期に来ていると思われました。しかしながら、様々な感染症とプリオン病(vCJDリスク)などに関しては分けて考える必要があるかもしれないこと、移植歴については、移植に至った理由等に鑑み、引き続き献血延期が望ましいことなどは、別途検討が必要と考えられます。
次のページです。諸外国の輸血歴に係る献血延期の対応をお示ししました。これらは厚生労働科学研究班において精査中ですが、現在分かっているものをお示ししております。輸血歴による献血制限は多様な期間で定められており、その理由としては、感染症のリスクとvCJDのリスクに二分されているような印象です。
8ページです。輸血歴に該当した献血者がどのぐらいいたかというのを、献血予約アプリであるラブラッド会員を対象に調査したところ、6年間で、献血を申し込んだが輸血歴により献血不適になったのが、1万2,724件あったことが分かりました。
7ページです。まず、課題についてです。輸血歴の該当者の献血受入れに係る課題としては、血液の安全面からは、輸血歴がある人の献血を受け入れる場合、輸血の背景にある疾患(既往歴)の問診を適切に行い判断しなければならないという大きな課題があります。実例としては、交通事故や出産時の出血に対する輸血であれば、その後、献血可能としてもよいかもしれませんが、血液疾患や抗がん剤治療などに伴う輸血などについては、元の疾患を考慮し、献血は御遠慮いただくようになるなど、ケース・バイ・ケースで判断するようになるかと考えています。また、輸血歴がある人は、献血への関心がより高いと考えられ、解除された場合に献血に訪れる可能性が高いことは、この件を考える上では重要な点かと思います。
また、血液事業者としての課題は、現在の献血歴による献血延期措置は「永久」不適になりますので、欧州渡航歴等と同様に、該当者はこれをシステム上で解除する必要があります。解除条件が「○年以内の輸血は輸血延期」等になるような場合は、明確な輸血日を御申告いただいて、輸血期間をシステム上で管理する必要があります。これはリスク行動に係る問診の20番などと同じになります。輸血歴については対象者が多いと推測され、解除できる条件が複雑なことから、健診医への周知、適切な問診の実施についての教育訓練が必須となってくることが挙げられます。
8ページ目に、先ほど少しお話しかけましたが、献血予約アプリで調査した輸血歴に該当する献血者の推測数を参考としてお付けしております。御説明は以上です。
○大隈座長 ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問がありましたらお願いします。
○糸谷血液対策課長補佐 事務局です。本発表に際しての論点について、4点ほど事務局から申し上げます。
○大隈座長 お願いします。
○糸谷血液対策課長補佐 資料4-1(2)論点を御覧ください。今回の検討に当たりまして、事務局としては、こちらに記載している4点について論点があるのではないかと考えておりますが、ほかに検討すべき視点も含めて、先生方、委員の皆様に御意見を頂戴できればと思います。
まず、論点の1番目として、現在の科学的知見及び献血血液に係る安全対策の状況を踏まえ、輸血歴を一律に恒久的な献血制限の対象とする現行の取扱いについて、見直しの検討を進めることは妥当か。2点目、見直しの検討に当たり、HBV、HCV及びHIⅤ等の既知の感染症並びに未知の病原体に起因する受血者への感染症伝播に係る残余リスクを、どのように評価すべきか。3点目、輸血を受けた国、時期その他の条件に応じて、異なる取扱いを設ける必要があるか。4点目、輸血歴を有する者からの献血を受け入れる場合、輸血を必要とした背景疾患、輸血後の回復状況、献血者のその他の健康状態をどのように確認すべきか。この4点について、事務局としては整理させていただきます。以上です。
○大隈座長 ありがとうございました。ただいまの御説明について、御意見、御質問がありましたらお願いします。事務局から4点論点を提起いただいておりますので、それを含めてお願いできればと思います。何かありませんか。
○糸谷血液対策課長補佐 Webの石井先生から挙手ボタンが押されています。
○大隈座長 石井先生、お願いします。
○石井委員 石井です。御説明ありがとうございました。論点の3つ目に、輸血を受けた国、時期その他の条件に応じて異なる取扱いを設ける必要があるかという点を挙げてくださっていますが、海外の例を見ても、解除している所でも一定期間後にという制限があるようで、実際にウインドウ・ピリオドの問題などもあると思いますので、時期については、見直す場合でも何らか制限は必要ではないかと考えます。
日本赤十字社からの御説明で、血液事業者側の課題の2つ目の◆の所で、「明確な輸血日を申告いただき」と書かれておりますが、こちらは人がアサインできれば献血日が分かるようなシステムにはできないのでしょうか。お願いいたします。
○大隈座長 日本赤十字社から御回答いただけますか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日本赤十字社の後藤です。石井先生、人がサインできればというのは、どのようなことを示されているのか、教えていただけますか。
○石井委員 アサインと申し上げました。例えば私がどこかで献血をした場合に、数箇月後にまたどこかでというとき、この人がいつどこで献血したかというのは、トレーサブルではないから、ここで聞かなければいけないのだろうと想像したのですが、その点を管理できるようなシステムにはできないのでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 ありがとうございます。献血者の方がどこで、いつ、何を献血したか、それから、献血を申し込んだけれども献血できなかったというものは、全てシステムに残っておりますので、献血履歴のトレースはできます。しかしながら、今回の輸血歴に係る献血制限の緩和というのが、輸血後1年間は献血は御辞退いただくというような結論になった場合には、日本赤十字社のシステムで一度申告いただいたときには、その後の1年間は、献血の受付けができないとか、もし間違えて受け付けしてしまっても、輸血用血液、血漿分画製剤の原料として供給しないと、そのようなガードを掛ける仕組みを作らなければいけないと考えて、そのような意味で記載いたしました。以上です。
○石井委員 分かりました。ありがとうございました。
○大隈座長 ありがとうございました。それでは、玉井委員、お願いします。
○玉井委員 弘前大学の玉井です。輸血歴に係る献血を見直すことは妥当だとは思いますが、論点の4つ以外のところで、輸血を使用する医療者側として気になっている点があります。
重篤な輸血の副反応に、TRALI(輸血関連急性肺障害)があるのですが、その原因が、全てではないにしても、献血ドナーの抗白血球抗体であることが言われています。このため、日本赤十字社でも、FFP-240は、妊娠・出産歴のない男性から製造するような工夫をされていて、できるだけ他人の血液に曝露歴がある人の血液(血漿)を輸血用血液製剤にしないという努力をしています。それから考えると、輸血を過去に受けた方たちは、抗白血球抗体を保有している危険性が高くなるのではないでしょうか。TRALIの発生率が高くなる危険性を無視できないと思っています。
ヘモビジランスが整備されている英国では、輸血したことがある人は献血不可としているのですが、輸血歴のある人の献血を許可するためには、是非とも、未知のウイルスやバリアントのvCJDなどの危険性も考慮しつつ、抗白血球抗体や不規則抗体などの検出で輸血用血液製剤に不適切なものがどれぐらい入るかという検討もしていただければと思いました。以上です。
○大隈座長 ありがとうございます。今の御意見に関していかがですか。日本赤十字社、いかがですか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日本赤十字社の後藤です。御意見ありがとうございます。もし解除するようなことになりましたら、そこはリスクとしてどのように対応するかについて考えていきたいと思っております。ありがとうございました。
○玉井委員 ありがとうございました。
○大隈座長 ありがとうございました。ほかはいかがですか。よろしいですか。
○糸谷血液対策課長補佐 事務局です。現地の小林委員より挙手いただいています。
○大隈座長 小林委員、お願いします。
○小林委員 小林です。見直しを進めるということについては、私も賛成ですが、もし解除したら対象者は非常に多くなると思われます。献血申込みをして、献血不適になった方が1万2,000件ほどあったというのですが、解除されたら、今まで駄目だったと思う人たちが、きっとどんどん入ってくる、そのようなリスクも御説明の中にあったと思います。先ほどの資料の論点の中の4つ目にもありましたが、どのような背景疾患であれば、輸血後に輸血歴があったとしても可とするのかということについて、諸外国にも、このような基準というか、輸血の背景にある疾患で、そこを区別しているようなものがあったら、そういう情報も参考にあるのではないかと1つ思いました。
もう1つは、資料4-2で書かれていた「様々な感染症とプリオン病は分けて考える必要があるかもしれない」というのは、私もそうだと思いますが、プリオン病を考えてしまうと、結局できないのではないかという気もして、プリオン病の発生状況やそのようなバックグラウンドのデータもあるとよいかと思いました。以上です。
○大隈座長 ありがとうございます。よろしいですか。それでは、ないようでしたら、厚労省及び日本赤十字社におかれましては、委員からの御意見を踏まえて、輸血歴に係る献血制限の見直しに向けた検討をお願いしたいと思います。
次に、議題5.「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」についてに移りたいと思います。議題5も、まずは事務局から現状等について説明を頂きまして、続いて、日本赤十字社より見直しの方向性について御説明いただきます。その説明を踏まえて、最後に事務局より論点について整理をお願いします。
○糸谷血液対策課長補佐 事務局でございます。「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」については、前回の令和4年改正以降に得られた新たな知見及び血液事業を取り巻く状況の変化を踏まえ、日本赤十字社から示された具体的な見直しの方向について、御意見を頂きたいと思います。
資料5-1の(1)現状等を御参照ください。「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」については、平成17年3月の発出以降、感染症に関する知見や検査技術の進展等を踏まえ、薬事審議会血液事業部会安全技術調査会等における議論を経て、随時改正を行ってまいりました。
直近の令和4年5月の改正では、HBV、HCV及びHIVについて、NAT陽性となった供血者(献血者)から過去に採血されたNAT陰性の血漿の取扱い、並びにHEVに係る遡及調査の取扱いについて、見直しを行いました。HEVについては、当面の間、遡及調査の対象病原体として取り扱い、遡及調査期間を6か月とする一方、ウインドウ期間等に関する知見が確立した段階で改めて検討することとされておりました。その後、HEV-NAT導入後の遡及調査実績及びHEVの感染性に関する知見の蓄積、HEV輸血感染事例に係る感染リスク評価上の課題、プールNAT実施時代の保管検体の保管期間満了、遡及調査期間と医療機関における使用記録の保管期間との齟齬、並びに日本赤十字社における細菌関連検査体制の整備等の状況の変化が生じております。以上でございます。
○大隈座長 ありがとうございます。次は日本赤十字社からの御説明でしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 それでは、遡及調査ガイドラインの改正について、日本赤十字社の後藤より御説明をいたします。資料5-2を御覧ください。
次のページです。遡及調査ガイドラインについては、日本赤十字社が作成した「輸血用血液等の遡及調査に関するガイドライン」を平成16年3月の安全技術調査会で報告し、その後、平成17年3月に厚生労働省作成の「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」が通知されました。いずれも、5年に1度程度、改正をされております。
次のページです。血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン、国のガイドラインの改正の歴史になります。直近では、先ほどお話がありましたとおり、HEVの遡及調査の書きぶり等について、2022年5月の改正で見直しがされたところです。
次のページです。直近の改正以降に得られた新たな知見や業務上の変更点について、お示しをしました。HEVの輸血感染の実態把握、ウインドウ期や感染性についての解明が進んできました。また、HBV輸血感染の多様性と、感染リスク評価の表現の食い違いも判明してきております。そして、プールNATから個別NATに切り替えたのが2014年8月なのですが、このプールNAT時期の保管検体の保管期間というのが満了しております。また、遡及調査の遡り期間と医療機関における血液製剤の使用記録の保管期間が、そろそろ現実に合わなくなってきたということもございます。最後に、血小板製剤の細菌スクリーニングや菌種の同定等を日本赤十字社で開始したことなどが挙げられます。
次のページです。最初に、HEVについて輸血感染の実態把握等が進んだ点について御説明をいたします。6ページ目です。E型肝炎に係る遡及調査については、2020年8月に個別NATを導入した後、遡及調査の期間や遡及対象について運営委員会等で議論され、2022年5月のガイドライン改正で、HEVを当面の間は遡及調査の対象病原体として扱うこととされましたが、ウインドウ期間等に関する知見が確立した時点で、改めて調査方法等は検討することとされておりました。
7枚目です。HEV-NAT導入後の遡及調査において保管検体がHEV-NAT陽性と判明した血液由来の輸血用血液製剤を輸血された受血者の方の調査結果です。こちらは何度か御報告していますが、赤字でお示ししたとおり、HEV-NAT陽性で医療機関に供給された製剤は、赤血球が1本、血小板が5本の合計6本あり、それぞれの受血者を調査したところ、明らかな輸血後E型肝炎を発症した人はおりませんでした。
次のページです。こちらは、HEV-NATの陽転をきっかけに、過去6か月の遡及調査期間内に献血されたHEV-NAT陰性の血液由来の受血者の調査結果となります。2020年8月から2025年12月末までに、2,716万本以上スクリーニングをし、HEV陽性となった1万9,291本を基に遡及調査対象となった輸血用血液製剤が1万8,780本ありました。これらの受血者の調査を行ったところ、1万7,900件の情報を受理し、回収率は95.5%と非常に高くなりました。そのうち1,153人が医療機関で輸血後のHEVのIgA抗体の検査を実施し、2名がIgA抗体陽性でしたが、HEV-NATは陰性でした。それ以外は抗体も陰性でした。輸血後の検体については、96人分の依頼がありまして、日本赤十字社でHEV-NATを実施しましたが、全て陰性でした。これらの結果から、2025年末までに保管検体で陽性が判明した6件を含む2万件以上の遡及調査を実施しましたが、HEV-NAT陰性の血液の受血者で、輸血後HEV感染は確認されないという結果になりました。
次のページです。HEVのウインドウ期間や感染性についても分かってきたことについて御報告をいたします。10枚目です。HEVの輸血感染に必要なウイルス量は、欧米の報告では7,056IU、日本で経験した症例の最低量としては325IUでした。そして、ウイルスは血漿に存在するため、製剤の血漿量により感染性が異なるということも分かっております。
11枚目です。日本の報告から、感染に必要なウイルス量を325IU/BAGとした場合の製剤に含まれる血漿量とウイルス濃度は、赤血球の2単位製剤に含まれる血漿は20mLあり、1バッグに325IU入っていることを考えると、献血者血液中のViral loadは16.3IU/mLになります。血小板10単位製剤の血漿量は約180mLで、同じように献血者のViral loadは1.81IU/mL、一番大きいFFP480製剤の血漿量は、ACDを除くと約430mLで、Viral loadとしては0.76IU/mLとなります。献血者のViral loadが、HEV-NATの感度である3.6IU/mLに達するまでの期間がNAT Window Periodとなり、ここから感染性ウインドウ・ピリオドを算出いたしました。
12枚目です。続きとなります。HEVの末梢血での倍加時間は2.2日とされています。献血者の元のViral loadからNAT試薬の感度の3.16IU/mLに達するまでの日数がウインドウ・ピリオドとなります。これから、赤血球製剤の場合は、感染性ウインドウはなし、血小板製剤の場合は、1.81が3.6になるまでの2.2日のウインドウ期、FFP480では、0.76が3.6になるまでの5.1日のウインドウがあることが分かります。これらの感染性ウインドウを基に、現状の最短献血間隔14日間を考慮すると、感染性ウインドウの2倍の日数を遡及期間としても、遡及期間は不要ではないかということになりました。
13枚目です。HEVに感染した場合のviremiaの期間とウインドウ・ピリオドを赤血球モデルで表したのが、この図となります。この大きな弧がウイルス量の変化を表しています。左のHEV RNAレベルからは、HEV-NATで検出できる期間の62.4日よりも感染性ウイルス血症の期間の53.3日のほうが短いため、赤血球は感染性ウインドウ・ピリオドというのはないということになります。
14枚目です。最も血漿量が多いFFP480や分割製造の血小板の場合は、NATの検出期間が62.4日間に対し、感染性ウイルス血症期間が71.8日と長く、感染性ウインドウが5.1日あるのが分かりますが、これは最短献血期間の14日よりもずっと短いという状況です。なお、後ろ側の感染性ウインドウは、NAT陽性が判明すると、その後の献血延期期間となるので、考えなくてもよいかなと思っています。
15枚目です。HEVの感染性とウインドウ・ピリオドから考えるHEVの遡及期間についてまとめました。最短の献血期間は2週間であり、最も血漿量の多い製剤においても、感染性ウインドウ期は5.1日間で、2倍のマージンを取っても最短献血期間に満たないということ、また、最初のほうでお伝えしましたが、今までの遡及調査でもNAT陰性の血液によるHEV感染はなかったということから、HEV-NAT陽転に係る遡及調査は必要なく、遡及対象の病原体からは除外できるのではないかと考えました。
16枚目です。諸外国の対応について簡単に御報告いたします。英国ではプールNATでHEVのスクリーニングを行っているため、遡及調査で保管検体の個別NATを行うと陽性となることがあります。これらの個別NAT陽性となった血液の受血者についてのみ遡及調査を行っております。
17枚目です。アイルランドでは個別NATでHEVのスクリーニングを行っており、遡及調査対象については献血間隔で実施の要否を決定しているところですが、25IU/mL以下の低いウイルス濃度での陽性血で感染が成立した事例はなかったという報告が出ております。
18枚目です。オランダもNAT実施をしていますが、遡及対象血液の個別NATが陽性と判明したときに限り、受血者の調査を実施しております。HEVに係る説明は以上となります。
19枚目です。続いて、HBV輸血感染の多様性と感染リスクの評価についてになります。20枚目です。現在の血液製剤等に係る遡及調査ガイドラインの別添1では、感染リスク評価を、主にウインドウ期間に基づき、ウイルスの混入が確認された血液由来、ウインドウ期の可能性が高い血液由来、ウインドウ期の可能性が低い血液由来の3つに分類しています。しかしながら、2021年以降、ウインドウ期だけでは説明が難しいHBVの輸血感染例が散見され、運営委員会でも何度も御紹介をしてきました。
21枚目です。そこで、感染リスクの考え方について今後見直しを行うのはどうかと考えまして、案としてお示ししたのがこちらです。ウインドウ期だけではなく、献血者のウイルスマーカー、NATやHBs抗原、HBc抗体、HBs抗体などの血清学検査、ALTの推移などから、ウイルス等の混入の可能性がある、若しくは否定できない血液、ウイルス混入の可能性が低い血液と分類するのはいかがかという案です。今後の検討の中で考えていければと思っております。
22枚目です。続いて、プールNAT時期の保管検体の保管期間満了に伴うガイドラインの表現についての御説明となります。23枚目です。現在のガイドラインの別紙3に示されている遡及調査の内容としては、赤字で示したとおり、「保管検体等の個別NATが陰性と判定されるまで」という、スクリーニングがプールNATであることを前提にした表現が多く見られます。次のページです。HCV、HIVについても同様の記載がございます。
25枚目です。遡及調査ガイドラインの本文の記載でも、「保管検体が全て個別NATの場合 陰性の場合」であったり、「個別NATでスクリーニングされていない場合は、日本赤十字社保管の当該輸血用血液製剤等に係る保管検体について個別NATを行う」であったり、スクリーニングがプールNATであることを前提にした表現が多く見られます。
26枚目です。日本赤十字社では、2014年8月に、HBV、HCV及びHIVの個別NATを開始しました。保管検体の保管年限は11年のため、2025年8月をもって、プールNAT時代の保管検体は(冷凍血のFRCを除き)全て廃棄をされています。これらのことから、ガイドラインの「当該輸血用血液製剤が個別NATでスクリーニングされていない場合は日本赤十字社が保管している当該検体の個別NATを実施する」というような表現を見直す、また、遡及調査の考え方を個別NATベースで全体的に見直す必要があるのではないかということで、今回、御提案をした次第となります。
27枚目です。続いて、遡及調査の遡り期間と医療機関における血液製剤の使用記録保管期間についての御説明です。28枚目です。現在のガイドラインでは、遡及期限については「可能な限り過去に遡り」という表現になっております。次のページのHCV、HIVについても同様になっています。
30枚目です。遡及調査では、受血者の状況を医療機関に調査しております。医療機関における血液製剤の使用記録の保管期間についてまとめました。1990年代後半は、行政指導により、輸血用血液製剤の使用記録の保管年限は10年とされました。その後、2003年の改正薬事法により、輸血用血液製剤を含む特定生物由来製品の使用記録の保管期間は20年とされ、また、製造業者等における提供者・製造記録の保管期間は30年とされました。これらの時代背景から、2005年4月に制定された「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」においては、「可能な限り遡り」という表現で調査期間を制定されたと考えております。
次のページです。日本赤十字社で遡及調査を行う中で、製剤供給日から遡及調査としての情報を医療機関に提供するまでの年数と受血者の確認ができたかどうかを調査し、グラフにしました。その結果、10年を超えると確認不能が増えてきて、20年では半数以上が受血者の確認ができなくなっているということが分かりました。この20年超えというのは、輸血用血液製剤の使用記録の保管年限を超えている状況に合致をしておりました。
次のページです。これらの状況に鑑み、スクリーニングNAT及び血清学的検査において陽転が確認されたときの最大遡及期間については、「可能な限り過去に遡り」というのを「過去20年間に遡り」と、特定生物由来製品の医療機関における輸血用血液製剤使用記録の保管期間に合わせるのはいかがかという御提案になります。
次のページです。最後に、細菌感染事例の調査実施施設についての御説明です。34枚目です。遡及調査ガイドラインでは、医療機関から輸血による細菌感染が疑われると日本赤十字社に報告された場合、「使用済みバッグ等」に係る血液培養については、公的検査機関及び必要に応じて第三者機関に血液培養の実施を依頼すると決められています。ガイドライン策定当時は、日本赤十字社内に十分な細菌感染の調査を実施する環境は整備されておりませんでした。
次のページです。日本赤十字社では、2025年7月30日より、細菌スクリーニング済み血小板製剤の供給を開始しており、現在は細菌培養・同定試験を自社で実施可能な状況になっております。また、日本赤十字社では、輸血後細菌感染症が疑われた事例において、第三者機関として東京都の健康安全研究センターに試験を依頼してきましたが、2015年頃からは、中央血液研究所においても細菌関連の検査を試行的に並行して実施しており、第三者機関と同等の結果が得られております。また、先ほどのヘモビジランス報告でも御報告したとおり、血小板の細菌スクリーニング導入に伴い、スクリーニング陽性になった検体の同定検査は中央血液研究所で実施しており、情報を集積している状況でございます。
36枚目です。このような状況に伴い、医療機関からの細菌感染疑い事例の調査に係る「使用済みバッグ」の血液培養については、日本赤十字社でも細菌培養・同定試験を行えるような記載にしていただければということを考えております。これにより、検体を入手次第、検査を実施できるようになり、医療機関へのフィードバックが早くなることはメリットになると考えております。以上、長くなりましたが、御説明を終わります。
○大隈座長 ありがとうございました。今の御説明につきまして、事務局から論点説明をお願いします。
○糸谷血液対策課長補佐 事務局でございます。日本赤十字社から挙げていただきました論点につきまして、多岐にわたるため、資料5-1(2)に挙げさせていただいているとおり、事務局で5つにまとめました。
1ポツ目、日本赤十字社におけるHEV-NAT導入以降の遡及調査対象となった輸血用血液製剤及び受血者の感染状況等の調査結果、HEVの感染成立に必要なウイルス量並びに製剤種別の感染性ウインドウ期間等に関する知見を踏まえ、HEV-NAT陽転時の過去のHEV-NAT陰性血液について、遡及調査を実施しないとする見直しは妥当か。
2ポツ目、現行の「ウインドウ期の可能性が高い又は低い」とする感染リスク評価区分について、個別NATの結果、献血者の検査結果及びウイルスマーカー等の推移を踏まえ、「ウイルス等の混入の可能性がある(否定できない)又は低い」と総合的に評価する区分に見直すことは妥当か。
3ポツ目、日本赤十字社が保管する通常の保管検体の保管期間は、採血後11年間であり、個別NATが導入された平成26年8月から12年が経過したことから、一部の製剤を除き、プールNAT実施時代の保管検体が既に存在しない状況を踏まえ、プールNATを前提とした記載を整理し、遡及調査ガイドライン全体を個別NATを前提とした記載に見直すことは妥当か。
4ポツ目、HBV、HCV及びHIVのスクリーニングNAT又は血清学的検査の陽転時に、「可能な限り過去に遡り」としている一部の遡及調査について、医療機関における特定生物由来製品の使用記録の保管期間及び遡及調査の実効性を踏まえ、最大遡及期間を過去20年間とすることは妥当か。
5ポツ目、細菌感染が疑われる事例における使用済みバッグ等の細菌培養・同定試験等について、公的検査機関等への依頼を原則とする現行の取扱いから、日本赤十字社が実施する取扱いに変更することは妥当か。以上です。
○大隈座長 ありがとうございます。ただいまの御説明について、論点が多岐にわたりますので、事務局から示された論点に従って順を追って御意見や御質問をお受けしたいと思います。まず、1つ目の論点について御質問や御意見があればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。特によろしいでしょうか。では、2つ目の論点についてはいかがでしょうか。では、3つ目はいかがでしょうか。4つ目はいかがでしょうか。水上委員、お願いします。
○水上委員 4つ目の所、科学的に考えれば、遡及期間を20年とすることは妥当かと考えておりますが、この「可能な限り過去に遡り」という文言は恐らく、血液製剤による感染事例が過去に起こってきた経緯を鑑みて、できるだけ見ましょうというところが前提にあった、努力義務的な文言ではあるというところを考えると、この文言自体は残しつつ、その期間は概ね20年程度が妥当とすると決めても良いかと考えたところです。
一方、この20年間の保管というところですが、今後、医療DXにより医療の電子化、製造記録の電子化が進む中で、献血、輸血された方が、いや、もう20年たったから自分の輸血に関する情報が消えているという話になると、本来、紙媒体のカルテではないので置き場所に困るとかそういったものはないはずなので、電子情報なのでできるだけ保存されていると考えている患者さんも少なくないのではないかなという気もいたします。これはちょっと科学的なところではないのですが、そういう意味でいうと、先ほど言ったような努力義務的なところは残しても良いかと考えております。
○大隈座長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。
○池田委員 福島医大の池田です。ただいまの20年の件なのですが、実際には、結構、伝票とかは幾ら電子カルテになっても残ってしまっていて、医療機関では20年の使用記録の保管というのは非常に大きな負担になっている、現場では結構なっている所が実際に多いと思うので、これはやはり20年としてもらったほうが医療機関は助かる所が多いのではないかなと非常に思っています。これは20年にしてもらうと非常に助かると思って聞いていました。反対意見ではないのですが。現実的に20年以上のサーバーとかをどうするのかというのも、実際かなり現場では問題にはなるところなので、電子カルテはどこまで取っておくのかというのも、病院によって大分取決めが違ってくると思うので、その辺も検討いただければ有り難いかなと思いました。以上です。
○大隈座長 ありがとうございます。今の御意見に対していかがでしょうか。水上委員、今の御意見に対して何かありますか。
○水上委員 私も医療の現場のところは十分理解しておりませんでしたので、そういった負担がかなりあるというところは十分考慮していただいて、20年なら20年というところで落しどころをつけていただくのはいいのかなと考えております。
○大隈座長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。では、最後の5ポツ目について御意見、御質問はいかがでしょうか。水上委員、お願いします。
○水上委員 度々すみません。日本赤十字社のほうで既にMALDI-TOF等を導入されて、いろいろな経験を積まれてきて、もう同定のほうは問題ないというところで、現在こういう御意見が出てきたのかなと思いますが、MALDI-TOF自身が、まだデータベース依存性があったり、一部、例えば大腸菌と赤痢菌とかは、スペクトルが、結構タンパクが似ているから、識別が困難とか、その場合は脂質スペクトルを使わなければいけないとか、結構まだまだ開発中というか、やはりデータベースにかなり依存してくるところもあるのかなとは思うのです。そういった意味も含めて日本赤十字社のほうでは問題ないと考えて、こういったところを進められているという理解でよろしいでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日本赤十字社の後藤です。ヘモビジランス報告の中で検出菌の御説明をしましたけれども、1件同定不能というのがあって、あれは恐らく非特異ではないかと考えているのですが、あの中でも同定するまでに少し手こずったものなどもありまして、MALDI-TOFの結果だけでは判別できないものについては、ほかの検討などもやった状態で同定結果を出しているというのが現状となります。ただ、今後、細菌スクリーニングを日々行っていくに当たっては、同定が難しい検体というのも出てくることはあると思いますので、原則として検査は日本赤十字社でできるようにはしていただいて、どうしても日本赤十字社ではできない難しい検査などがあったときには、外部の機関であったり、感染研であったり、検査のできる施設にお願いできるような形にガイドラインを書いていただけると、早くできる調査については、早く結果がフィードバックできて、難しいものについては、外部とも協力しながら結果を出していけるようになるのではないかと思って、お願いした次第です。以上です。
○水上委員 ありがとうございます。よく理解できました。
○大隈座長 ありがとうございます。ほかにはございませんか。よろしいですか。それでは、厚労省及び日本赤十字社におかれましては、委員からの御意見を踏まえまして、引き続き「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」の見直しに向けた検討をお願いしたいと思います。
それでは、本日の議題は以上となりますが、ほかに何か御意見等はございますか。よろしいですか。
ないようですので、最後に御退任予定の委員について御案内したいと思います。来年の1月に、薬事審議会血液事業部会の委員の改選が予定されております。任期満了に伴いまして、玉井委員が本日の調査会をもちまして退任されます。玉井委員におかれましては、当調査会の場で多くの見識をお示しいただきました。それでは、玉井委員より一言御挨拶を頂ければと思いますので、よろしくお願いします。
○玉井委員 ありがとうございます。弘前大学病院の輸血部の玉井と申します。輸血を実際にたくさん医療現場で使う者として、委員に参加させていただきました。2023年度からだったので、ちょうどCOVID-19のパンデミックが終わって、ワクチン接種後の対応等が議題となっておりました。ウイルスをはじめとする感染症に関しては、たくさん勉強させていただきました。任期も4年で満了いたしましたので、この回をもちまして退任させていただきます。調査会のますますの御発展をお祈りしております。ありがとうございました。
○大隈座長 玉井委員、ありがとうございました。これまでいろいろ御指摘いただきまして、ありがとうございます。それでは、事務局に議事進行を戻したいと思います。
○糸谷血液対策課長補佐 大隈座長、ありがとうございました。次回の安全技術調査会の日程は、別途、御連絡差し上げます。これをもちまして、血液事業部会令和8年度第1回安全技術調査会を終了いたします。ありがとうございました。
(了)
はじめに、委員の御就任がありましたので、御紹介いたします。新たに小林委員が御着任されております。小林委員より、一言、御挨拶を頂けますと幸いです。
○小林委員 城西国際大学の小林です。今年度よりよろしくお願いいたします。
○糸谷血液対策課長補佐 小林委員、ありがとうございました。
次に、本日の委員の出席状況ですが、脇田委員より御欠席との御連絡を頂いております。また、瀬尾委員より少々遅れるというように承っております。したがいまして、現時点で、安全技術調査会委員10名中8名に御出席いただいていることを御報告いたします。
また、本日は参考人として、国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所より、関洋平次世代生物学的製剤研究センター第1室長、手塚健太次世代生物学的製剤研究センター第2室長に御出席いただいております。加えまして、日本赤十字社血液事業本部より、谷血液事業経営会議委員、後藤技術部次長に御出席いただいております。
また、事務局に人事異動がありましたので御報告いたします。血液対策課長として松岡が、課長補佐として山本、糸谷が着任しております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
続きまして、全ての委員の皆様より、今回の議題について、薬事審議会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告させていただきます。委員の皆様には、会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き、御理解、御協力を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。
議事に入る前に、会場にお越しいただいている委員の皆様におかれましては、本日の資料の確認をお願いいたします。タブレット上に、「1 議事次第」から「14 参考資料5」までのPDFファイルが表示されているか、御確認をお願いいたします。ファイルが表示されていない場合や不足がある場合には、お近くの職員にお声掛けください。
本日はWeb併用での審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、進行方法について御説明させていただきます。審議中に御意見、御質問をされたい委員におかれましては、まず、挙手等により発言したい旨をお示しいただきますようお願いいたします。その後、座長から順に発言者を御指名いただきます。御発言いただく際は、マイクがミュートになっていないことを御確認の上、御自身のお名前を明示し、御発言ください。また、ノイズを減らすため、御発言が終わりましたらマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
間もなく議事に入りますので、カメラ撮影はここまででお願いいたします。以降の進行を大隈座長にお願いいたします。
○大隈座長 大隈です。ありがとうございます。それでは、早速ですけれども、議事に入りたいと思います。議題1.感染症安全対策体制整備事業について、まずは事務局より説明をお願いします。
○糸谷血液対策課長補佐 事務局です。感染症安全対策整備事業は、新たな病原体が移入した場合などに備えて、血液対策課が国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所に実施を依頼している事業です。令和7年度の実績の報告について、関参考人よりお願いいたします。
○国立感染症研究所関参考人 よろしくお願いいたします。時間の関係で、一部抜粋しての御説明となりますことを御了承いただけますと幸いです。
事業概要につきましては、先ほど御説明を頂いたとおりです。令和7年度は、試験精度管理のための国内参照品が未整備であったウエストナイルウイルスを対象とする参照品の整備、プール血漿、グロブリン製剤の収集及びそれらを用いた血清疫学評価、輸血新興・再興感染症に関する情報収集とリスク評価を行いました。
はじめに、参照品の整備について御説明いたします。ウエストナイルウイルスは、フラビウイルス科フラビウイルス属に属し、蚊-トリのサイクルで維持されています。ヒトへは主に蚊を介して感染をいたします。ヒトでの潜伏期間は3~15日であり、発症した場合、多くは急性熱性疾患を示し、短期間(約1週間)で回復をいたします。しかし、約1%は重篤な症状を示し、致命率は重症者の3~15%とされています。また、感染者の約70~80%は不顕性感染に終わることが知られています。
ウエストナイルウイルスは、アフリカ、ヨーロッパ、中東、中央アジア、西アジアなど広い地域に分布をしています。米国でのアウトブレイク以降、大規模な流行は見られていないものの、2025年には欧州14か国で1,112例の感染者と97例の死亡例が報告されており、米国では47の州で2,076例の感染者が確認されています。また、今シーズンも、8月18日の時点で、米国の32の州で計222例の感染者が確認されており、昨年を上回るペースで増加をしています。米国での報告者に占める重症者の割合は、2025年度では全体の約69%と高いことから、実際の感染者は更に多いと考えられます。
そこで、2025年度は、ウエストナイルウイルスのlineage1系統のNY99株及びlineage2系統のFCG株について、参照品の作製を行いました。作製方法については、これまで御報告しているとおりの方法になりますので、詳細は割愛いたしますが、酸処理及び加熱処理によりウイルスを不活化し、それらを血漿由来のベースマトリックスにスパイクすることによって、400本ずつ参照品を作製いたしました。
次に、共同測定及び値付け値の算出についてです。今回、日本赤十字社及び国立感染症研究所を含む6施設(日本ウォーターズ株式会社、グリフォルス株式会社、タカラバイオ株式会社、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)において、定性法(6施設)、定量法(1施設)での核酸量の値付けを実施しました。こちらの測定方法につきましても、これまで御報告のとおりですので、詳細は割愛させていただきます。今回の参照品の測定におきましては、NIBSCよりlineage1の国際標準品及びlineage2の国際参照品を入手いたしまして、それらを同時に測定することにより、国際標準品に対する国内参照品の相対値を算出し、International unit/mL(IU/mL)を付与しました。表1にその結果を示していますけれども、WNV lineage1及びlineage2の国内参照品の値付け値は、それぞれ7.58log10IU/mL及び6.70log10/IU/mLとなりました。
次に、考察です。ウエストナイルウイルス感染者の約70~80%は不顕性感染に終わることに加えまして、ウイルス血症が感染後数日から見られ、その後、最長で数週間程度持続することが確認されていることから、無症候感染者が献血ドナーとなるリスクが存在します。実際、米国では献血のスクリーニングが行われていますけれども、毎年、多数の陽性例が確認されており、2025年には200例以上が確認をされています。本邦でのウエストナイル熱の輸入症例は、2005年の米国滞在歴のある30代の男性から検出された1例のみで、近年、輸入症例の発生は確認されていませんが、ウエストナイルウイルスを媒介する蚊は国内にも存在することから、今後アウトブレイクが発生する可能性は否定できません。
そのため、大規模なアウトブレイクが発生した場合に備えて、検査体制の構築や試験精度管理に使用可能な不活化ウイルス由来の参照品を整備しておくことは、血液の安全確保において重要であると考えます。今般整備しました参照品については、国立感染症研究所より、受領者の送料負担にて分与を行う予定です。
次に、プール血漿、人免疫グロブリン製剤などを用いた血清疫学の評価に向けた体制整備について御説明いたします。皆様御存じのとおり、血液製剤の製造に用いられるプール血漿は数千人以上の血漿を混合したものであり、人免疫グロブリン製剤は複数のプール血漿をもとに製造されています。そして、これらを用いて様々な病原体に対する抗体価を継続的に評価することにより、採血地域や時期の違いによる血清疫学的状況を把握し、グロブリン製剤の抗体価などの品質特性評価や感染症の流行予測につながることが期待されます。
そこで、これらのバンク構築を目指し、日本血液製剤機構の協力を得て、令和6年度より検査残プール血漿及び外観検査不合格となった製剤の継続的な収集を開始しました。令和7年度は、2025年1月から12月までに製造されたプール血漿全バッチの検査残検体及び外観検査不合格となった製剤8ロットを受領し、分注保管を行っています。この中で採血期間が1か月以内に収束しているプール血漿を各月の代表プール血漿として選出して、測定を行っています。これまでに、代表プール血漿については、2018年6月以降のものを全て収集できています。また、製剤については、2000年以降のロットを各年1ロット以上確保できています。
令和7年度はこれらの検体を用いて血清疫学の調査を実際に開始しており、今回は、2018年から2024年における疫学背景とCOVID-19関連抗体の変化との関連性を調査しました。抗S抗体価、抗N抗体価、中和抗体価を測定した結果、起源株型ワクチンの3回目接種が行われた2022年春以降の抗S抗体価は、実測値ベースでは波状パターンを示しますが、指数的には大きな減少は認められず、高い状態で維持されていることが示されました。また、プール血漿中の起源株を含む各種変異株に対する中和抗体価は、増減を繰り返しながらも全体的には上昇し、一定の水準に達した後は大きく減少することなく、保持されていることが分かりました。加えて、オミクロン株発生以降の中和抗体価の全体的な変動と抗N抗体価の変動との間には一定の相関性が見られることから、抗N抗体価の変動を観察することによって、不顕性を含む市中の感染実態を把握できる可能性があると考えられます。
本結果は、献血者由来プール血漿の各月代表ロットの継続的な観察が、様々な感染症の疫学実態の把握や将来の感染症リスク評価に役立つことを示唆しており、引き続き、様々な病原体に対する血清疫学の解析を進める予定です。
次に、輸血新興・再興感染症に関する情報収集とリスク評価についてです。2025年度は、ISBT、AABB、ECBS等に参加をしまして、我々が作製しました参照品の整備について発表を行うとともに、オロプーシェ等、様々な病原体に対する情報収集を行いました。
次に、結論です。令和7年度は、WNV lineage1及びlineage2の国内参照品を整備し、共同測定により、核酸量(IU/mL)を付与しました。いずれの施設で実施する核酸検査であっても、国内外のキットを用いて検出感度を比較できる体制を整えました。今後も血液を介して感染する新たな病原体等について常に注視して情報収集を行い、血液の安全確保のために適切に対応していくことが必要であると考えます。
また、血液製剤の血清学的背景を明らかにすることを目的とした、献血血液を用いたサーベイランス体制を構築し、令和6年度より、検査残プール血漿及び外観検査不合格となった製剤の継続的な収集を進めています。令和7年度には、収集した検査残プール血漿から採血期間が1か月以内に収束している各月の代表バッチを用いて、2018年から2024年における疫学背景とCOVID-19関連抗体の変化との関連性を調査し、本取組が感染症の疫学実態の把握に有用であることを示唆する結果を得ることができました。そのため、令和8年度以降も継続して取り組み、他の様々な病原体に対する血清疫学解析を進める計画です。報告は以上となります。
○大隈座長 ありがとうございます。ただいまの御説明につきまして、御意見や御質問がございましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。特にございませんか。ないようでしたら、引き続き今年度の事業の実施をお願いしたいと思います。ありがとうございました。
○国立感染症研究所関参考人 ありがとうございました。
○大隈座長 次に、議題2.NATコントロールサーベイ事業についてに移ります。事務局より説明をお願いします。
○糸谷血液対策課長補佐 事務局です。NATコントロールサーベイ事業は、NATの精度管理の実情を把握するため、血液対策課が国立健康危機管理研究機構国立感染症研究所に実施を依頼している事業です。令和7年度の実績の報告について、手塚参考人よりお願いいします。
○国立感染症研究所手塚参考人 国立感染症研究所の手塚と申します。よろしくお願いいたします。私からは、昨年度のNATコントロールサーベイ事業の実績について報告いたします。委員の先生方におかれましては、PDF資料の4ページ目の事業の概要及び5ページ目の事業の履歴一覧を御覧ください。
まず、本事業の目的です。血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的としたNATの実施に関するガイドライン、いわゆるNATガイドラインに基づき、血漿分画製剤製造所及び献血血液のスクリーニング実施施設は、主に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)及びB型肝炎ウイルス(HBV)の3ウイルスを、このほかのウイルスについても適用可能としてNATを実施してきております。当該施設において実施するNATのバリデーションと精度管理がNATガイドラインによって求められていることから、平成16年度の安全技術調査会の指示に基づき、2006年以来、NATの精度管理の実情を把握するために、コントロールサーベイ事業を継続的に実施してきております。また、2010年に発出されたWHOガイドラインによりまして、献血血液のスクリーニング実施施設において、外部品質検査の実施が求められております。
2020年8月より、採血事業者である日本赤十字社は、輸血用血液製剤の安全性向上のため、新たに個別検体によるE型肝炎ウイルス(HEV)に係るHEV-NATを導入したスクリーニングシステムを開始しております。本システムでは、マルチプレックスNATシステムを用いた、HBV、HCV、HIVと同時にHEVを単独で検出する新しい4価NATが導入されております。そこで、2021年度は、新検査法でのウイルス検出能について、NATコントロールサーベイを実施しております。さらに、2022年度及び翌年の2023年度のNATコントロールサーベイでは、HBV、HCV、HIV-1及びHEV-NATの感度と特異性の実情把握を目的として、複数のウイルスが混在するパネルを用いたサーベイを実施してきております。
昨年度、2025年度の第16回NATコントロールサーベイでは、日本赤十字社を対象に、HEV-NATの感度と特異性の実情把握を目的として、本邦で作製されましたHEVの国内参照品パネルを用いてサーベイを実施しております。
次に参加施設です。PDF資料6ページの表1です。参加施設は、輸血用血液製剤のNAT実施施設8施設と、オブザーバーとして研究施設1施設及び試薬メーカーの1施設が加わり、合計10施設となります。
次に具体的な材料です。PDF資料7ページ目です。材料としまして、HEV国内参照品ウイルスパネルを用いて評価用のパネルを作製いたしました。HEV国内参照品の希釈には陰性血漿を用いて、HEVの低濃度陽性検体として、輸血用血液スクリーニングNAT検査に必要とされる検出限界値、HBVでは100IU、HCVでも100IU、HIV-1では200IU、HEVでは、現状まだ未定というところではありますが、暫定的に100としまして、これの1.5倍あるいは3倍に当たる300IU/mLに検体を希釈調製しております。さらに、HEVの高濃度陽性検体として、3,000IU/mLに希釈した検体を準備しております。また、陰性検体も加えました合計11検体をブラインド化してパネルを作製して、参加施設に配付しております。
次に測定方法です。輸血用血液製剤のNAT実施施設、研究施設及び試薬メーカーは、グリフォルス社製のUltrioPlexを用いて検査しております。この検査法は、HBV、HCV、HIV-1/2を識別せずに検出し、同時にHEVを単独で識別して検出するものであります。参加施設には、同試験法を用いて、先ほどのパネル検体を、それぞれ日を変えて3回独立に検査していただきました。
続いて結果になります。PDF資料8ページ目、表3です。まず、輸血用血液製剤のNAT実施施設8施設の結果です。改正後のNATガイドラインに基づいて実施しているNAT検査は、HEVに関する精度管理が適切に実施されておりました。全施設におきまして、HEVの高濃度(3,000IU/mL)及び低濃度(300IU/mL)に希釈された検体、かつ全てのジェノタイプパネルにおいて、標的のウイルスが特異的に検出できることが確認されております。陰性対照は全て陰性として判定されております。次にオブザーバー施設です。こちらも、先ほどの輸血用血液製剤のNAT施設と同様に、全ての検体で陽性のものは陽性、陰性のものは陰性として判定されております。
PDF資料8ページ目の表3、考察です。HEVは輸血による感染事例が報告されるようになり、血液製剤やヒト血漿成分を原料とする医薬品の安全対策として、NATの精度管理が重要となっております。国内では、HEV-ID-NATが導入されており、献血スクリーニングは全国で展開されており、世界的にも高い安全性確保の体制が整備されております。HEVは4つの遺伝子型に分類されておりますが、国内で見られるものは主にジェノタイプ3型、4型になり、これらは4種類のクラスターに分類されています。HEVの国内の参照パネルは、国内のブタから分離された日本固有の4クラスター株から構成されており、今回のサーベイでそれらが全て検出可能であることも確認されております。
したがいまして、2025年度に実施したHEVのウイルスパネルを用いた第16回NATコントロールサーベイでは、輸血用血液製剤のNATを実施する施設において、高濃度及び低濃度に希釈されたHEVの陽性検体を全て検出できたということから、試験の精度管理が適切に実施されていることが確認されたと考えております。
最後に、9ページ目の表4の本年度の実施計画になります。本年度、2026年度は、輸血用血液のNAT施設及び血漿分画製剤の原料血漿プールのNAT実施施設を対象に、本邦では初めてA型肝炎ウイルスの検出感度と特異性の実情把握を目的とした第17回のコントロールサーベイの実施を計画しております。発表は以上になります。
○大隈座長 ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御意見や御質問がございましたらお願いします。そうしましたら、私のほうからよろしいですか。
○国立感染症研究所手塚参考人 お願いいたします。
○大隈座長 今年度、A型肝炎ウイルスの件について検討されるということですが、そこに注目されたのはどういった経緯からでしょうか。
○国立感染症研究所手塚参考人 ありがとうございます。このA型肝炎ウイルスの検査なのですが、実は、一昨年の2024年度に実施したNATサーベイのときに、試験法としましてロシュ社製のコバスシステムを用いた検査が対象となったのですが、そのときのいわゆるトゥープレックスPCR法なのですが、こちらはA型肝炎ウイルスとパルボウイルスB19を同時に検出するというシステムであります。そこで、そのときに御参加いただいた施設では、このサーベイが実施可能であるということが体制として確認されておりますし、先ほども申し上げましたとおり、過去のサーベイ事業の履歴を見ていただいても分かるとおり、A型肝炎の検査がまだ実施されていないというところ、実際にはNAT施設でトゥープレックスPCRシステムを用いた検査がなされているというところもありますので、そこでの精度管理の確認が必要と考えたところであります。
○大隈座長 ありがとうございました。ほかに御質問はないでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。では、引き続き今年度の事業の実施をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○国立感染症研究所手塚参考人 ありがとうございます。
○大隈座長 続きまして、議題3.令和7年度の血液製剤安全性確保の取組に移りたいと思います。日本赤十字社より資料の説明をお願いいたします。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日本赤十字社におけるヘモビジランス2025ということで、日本赤十字社の後藤から御説明をいたします。資料3を御覧ください。
2枚目です。本日の内容は、こちらにお示ししたとおり、輸血副作用、輸血感染症に続き、昨年7月末に導入した血小板製剤の細菌スクリーニングの状況について御説明いたします。
3枚目です。まず、輸血副作用のうち、非溶血性副作用のまとめから御説明します。4枚目です。2025年は、医療機関から、輸血による副作用が3,050件余り、輸血による感染症疑いが32件、日本赤十字社の血液センター宛てに報告されました。輸血後GVHDの疑い報告はありませんでした。
5枚目です。非溶血性副作用は合計3,025件の報告があり、そのうち、半分は比較的軽度なアレルギー症状、17%がアナフィラキシー等の重症アレルギー、発熱が14%、TRALIやTACOを含む呼吸困難が6%、血圧低下が3%といった割合となっていました。重篤な症例は、右の棒グラフにお示ししたとおり、全体の26%で、その内訳は、下にあるように、重症アレルギー、呼吸困難などが主なものでした。
6枚目です。副作用の原因製剤は、赤血球が36%、血小板が39%、FFPが17%でした。2025年の供給本数を右にお示ししていますが、こちらを見ると、血小板製剤による副作用の発生割合が高いということが分かると思います。製剤ごとの副作用症状は、下の棒グラフに示したとおり、血小板やFFPなどの血漿成分が多い製剤では、アレルギー性の副作用が8割を超え、血小板製剤は、次いで発熱が多いという状況でした。一方で、赤血球製剤ではアレルギーは4割ほど、発熱が3割近く、呼吸困難が1割と、発現する症状が異なっておりました。
7枚目です。2025年のTRALI・TACOの評価については評価対象が130件ありました。評価の結果、TRALI TypeⅠが7例、TypeⅡが1例、TRALI/TACOが5例、TACOが80例、TAD(輸血関連呼吸困難)が10例、ARDSが1例、その他18例となりました。評価に必要なデータを提供いただけなかった事例も8例ありました。
患者内訳等は右にお示ししたとおりです。TRALI事例で、製剤の抗白血球抗体が陽性だったものが3例あり、そのうち2例は交差適合試験で陽性となりました。残りの1例は実施できませんでした。TACOについては、約8割が60代以上で、がんや循環器疾患のある人が多いという傾向がありました。
8枚目、TRALI・TACOの評価状況です。現在の評価基準となって、TRALI TypeⅠ、TypeⅡ、TRALI/TACOを含め、TRALIに関連する事例が年間10件を超える程度の状況、そして、TACOが多い状況が続いております。日本赤十字社では、2025年7月に輸血用血液製剤の添付文書を改訂し、TACOに係る注意喚起として、「重要な基本的注意」の項目及び「重大な副作用及び感染症」の項目に、TACOに係る詳細な記載を追記いたしました。まだ、これによるTACOの発生の減少は認められていませんが、TACO疑いとして輸血後の呼吸困難事例が報告される数が増加している印象がありました、
9枚目、溶血性の副作用について御説明いたします。10枚目です。輸血から24時間以内に発症する即時型の溶血事例が11例、24時間以降に発症する遅発型の溶血が13例報告されました。原因血と報告されたのは全て赤血球製剤でした。重篤症例は即時性で7例、遅発性で4件あり、即時性ではABO不適合の事例もありました。患者血液から検出された抗体の種類を下にお示ししました。EやCなどのRh系の抗体、Kiddの抗体に加え、Jraが検出された例もありました。
11枚目、輸血副作用のまとめとなります。こちらの御説明は割愛いたします。
12枚目からは輸血感染症について御説明いたします。13枚目です。輸血後に感染が疑われるとして医療機関から血液センターに報告した件数を病原体別にお示ししました。2025年は合計で32例と、過去最少の数となっております。
次です。報告数の内訳は、HBV感染の疑いが11例、HCV疑いが4例、HEVとHAV疑いが1例ずつ、CMV(サイトメガロウイルス)感染疑いが3例、VZV(水痘・帯状疱疹ウイルス)感染疑いが1例、パルボB19が1例、細菌感染疑いが10例の合計32例でした。輸血による感染が特定されたのは、HBVと細菌感染がそれぞれ1例ありました。
次に、輸血後ウイルス感染症について御説明いたします。16ページです。輸血後ウイルス感染の特定例について、原因血液の採血年別件数とその当時の安全対策を併せてお示ししました。2014年に個別NATを導入した後は、個別NAT陰性の血液によるHBVの感染が年に1、2件発生しているという状況です。これらは遡及調査により判明した感染となります。E型肝炎については、2020年にHEV-NATを導入後、引き続き遡及調査を実施していますが、NAT陰性血による感染は確認されておりません。
次のページです。遡及調査についての御説明です。遡及調査は、医療機関発と供血者発の2種類があり、医療機関発は、輸血後に受血者のウイルスマーカーが陽転したという情報に基づき調査を行います。輸血された血液は個別NAT陰性ですが、ウインドウ・ピリオドに献血された可能性も否定できないので、ウインドウ期を超えた時期の次回献血、若しくは事後検査依頼による検査結果により、当該血液の感染リスクを評価いたします。右側の供血者発は、複数回献血者の陽転情報に基づき、遡及調査ガイドラインに定められた遡及調査期間内の過去の献血血液の受血者について、感染状況を調査するものです。これらの遡及調査により判明したHBVの症例を御紹介いたします。
次のページです。輸血後HBV感染の特定例です。献血者は60代男性、HBV陽転の163日前の前回献血から製造された赤血球製剤が、70代女性、血液疾患の方に輸血されました。輸血から161日後に、HBV DNA、HBs抗原、HBc抗体が陽性となり、日本赤十字社に報告がありました。献血者の陽転時と受血者から検出されたウイルスの塩基配列は一致し、Genotype:C、Subtype:adrでした。この製剤のウイルス量は1.0logIU/mLと、通常の検出限界以下のとてもウイルス量の低い事例でした。受血者の方については、核酸アナログを投与されており回復されてきたと報告を頂いております。
次のページ、輸血後細菌感染症について御報告いたします。20ページ目です。細菌スクリーニング導入前の血小板製剤による大腸菌感染の事例です。真ん中、受血者の方は50代の男性、こちらもAMLの方で、血小板の輸血後に細菌感染の症状が現れ、血液培養を実施したところ陽性となり、大腸菌が検出されました。輸血に使用された血小板の残余からも大腸菌が検出され、エンドトキシンも2,000pg/mL以上と高値となっていました。また、同じ献血の血小板から製造されたもう一本の血小板製剤も確保し、調査したところ、大腸菌を検出し、エンドトキシン高値でしたが、このとき一緒に採血されていた原料血漿からは大腸菌は検出されませんでした。血小板と患者から検出された大腸菌の菌株を比較したところ、99.9%以上の一致が認められ、輸血による感染と特定しました。献血者の方には、この血小板献血から3週間後に事後調査に応じていただけましたが、この3週間後の血液培養は陰性という結果を得ております。
次のページです。細菌スクリーニングを開始した後の2025年8月から今年7月までの1年間、輸血後の細菌感染が疑われた症例は全部で15件あり、10件が赤血球製剤が被疑薬となったもの、血小板で5例が報告され、いずれも輸血用血液バッグの培養試験は陰性であり、細菌感染の特定例というのはありませんでした。
次です。輸血後感染症のまとめとなります。説明については割愛いたします。
次のページからは、昨年、2025年7月30日から供給を開始した血小板製剤の細菌スクリーニングについて、導入後の状況を御報告いたします。次のページです。導入後の1年間で約59万本の血小板について細菌スクリーニングを実施いたしました。スクリーニングが陽性となったのは78本、陽性率は0.013%でした。これらの血小板は検査落ちとなり、医療機関へは供給しておりません。陽性となったものは、血小板のバッグから改めてサンプリングし、追加の培養試験を実施したところ、フォールスポジティブ(偽陽性)が21本、陽性が54本、真の陽性率としては0.009%、約1万900本に1本が陽性という結果になりました。月別の陽性数、陽性率は表に示したとおりで、平均すると月4.5本が陽性となっております。なお、スクリーニング陰性となった血小板製剤が医療機関に供給されますが、これらが原因で輸血後感染症の確定例となったものはありませんでした。
次のページです。細菌スクリーニングの陽性検体から同定された菌種をお示ししました。右の円グラフのとおり、ブドウ球菌が24例と最も多く、次いで連鎖球菌が17件でした。内訳は表に示したとおりで、グラム陽性菌は、Staphylococcus aureus黄色ブドウ球菌が11例と最多、次いでepidermidis(表皮ブドウ球菌)が6例検出されました。連鎖球菌では、Streptococcus gallolyticusが7例、dysgalactiaeが3例、agalactiaeが2例となっていました。下にお示ししたグラム陰性菌については、大腸菌2例のほか、セラチアやエルシニア等が検出されました。これらの病原性が高い細菌がスクリーニングで検出され、輸血後の感染症が防止できたということにはなるかと思います。
次のページです。続いて、細菌スクリーニングは陰性と判定された血小板製剤が、血液センターにおける供給前の確認や医療機関での輸血前の確認で、外観異常が認められると連絡されたもののまとめです。献血数ベースで月平均8例ほど連絡がありました。外観異常を認めた場合は、その製剤について無菌試験を実施しており、これまで5例が陽性となり、いずれも採血5日目、6日目に黄色ブドウ球菌が検出されています。外観異常については写真で示したとおりですが、これらの外観異常については、昨年9月の運営委員会でも御報告したとおり、医療機関へ情報提供を実施したところです。
次のページです。スクリーニング陰性の外観異常は黄色ブドウ球菌ばかりで、これは黄色ブドウ球菌の性質によるものと考えています。図にお示ししたとおり、黄色ブドウ球菌は、増殖しても、細菌同士が目に見えないレベルで凝集したり、バイオフィルムを形成したりするため、菌量が少ない場合は、サンプリング検体中に取り込まれる確率が低くなってしまうことが原因と考えられました。細菌スクリーニングを実施している諸外国でも、同様のニアミス事例と呼ばれるものは発生しており、黄色ブドウ球菌はスクリーニングで偽陰性となるリスクの高い菌というように認識されております。
次のページです。ここまでの御報告を踏まえ、今後、検討を予定している内容についてお伝えいたします。まず、24時間培養を終了した後の培養ボトルを有効期間満了まで保管し、外観異常の連絡を頂いた場合の確認に使用する予定です。また、期限切れとなった培養陰性の血小板製剤については再培養を行い、細菌混入の確認をいたします。日本赤十字社では、下に示していますが、初流血除去を導入したときに細菌混入リスクに対する効果検証を行ったことがあります。今回は細菌混入の効果検証として実施しようと考えております。これらにより、増殖の遅い菌の存在や病原性が低い菌の増殖性の確認ができるというように考えております。
次、最後のスライドです。昨年9月の運営委員会で、細菌スクリーニング血小板の課題と対策について御報告しましたが、その後の状況について御説明いたします。血小板単位数の不足や凝集判定による減損率の地域差については対策を実施し、2025年10月にはスクリーニング導入前と同等レベルに終息しておりますが、引き続き改善に努めております。供給関連の課題については、単位不足等の解消や洗浄血小板の予備在庫の製造等により改善はしましたが、時期によっては血小板製剤の納品遅延などが発生もしております。全国の需給調整強化や採血の強化により、安定供給の実現に努めてまいります。御説明は以上です。
○大隈座長 ありがとうございました。ただいまの御説明について、御意見や御質問がありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。玉井委員、お願いします。
○玉井委員 弘前大学の玉井です。重篤な即時型溶血性副作用に、ABO不適合事例が1例あったのですが、差し支えなければ、投与量や起こった状況、予後について、分かる範囲で情報を教えていただけませんでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日本赤十字社の後藤から御回答いたします。この症例は、高度の貧血の患者さんに輸血が行われたという事例で、A型の患者さんにB型の赤血球が4単位投与された事例です。ただ、症状自体は割と早く収束して、余り重篤な転帰にはならないで済んだというような事例でした。よろしいでしょうか。
○玉井委員 ありがとうございます。4単位入っても死亡に至らなかったということですね。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 はい、こちらの症例は大丈夫だったということです。
○玉井委員 ありがとうございました。
○大隈座長 ありがとうございました。ほかはありませんか。よろしいですか。
○糸谷血液対策課長補佐 大隈座長、事務局です。現地から水上委員より挙手を頂いております。
○大隈座長 では、水上委員、お願いします。
○水上委員 感染研の水上です。まず、頂いた20ページの輸血後細菌感染症の所で1点だけ確認なのですが、PC残余の所でエンドトキシンとE.coliの検査をされていて、同時製造のPCでもエンドトキシンが検出されたという話なのですが、原料血漿の所では陰性だったというように書いてあります。こちらでエンドトキシンというのは測定されておりますでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 原料血漿のエンドトキシンということですか。
○水上委員 はい。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 今、手元にデータがないのですが、原料血漿についてもエンドトキシンは測定していると思います。培養も陰性で、エンドトキシンも高くないという結果だろうと思いますが、確認をして後ほどお伝えします。
○水上委員 ありがとうございます。また、最後の黄色ブドウ球菌の所で、まだ凝集による外観異常のところが課題としていろいろあるのかなというお話があったかと思います。例えば、ほかの検査法などで、より高感度なATP法などいろいろあるかと思うのですが、そういう方法で検証すれば、実は検出できたというものなのか、やはり、それでも、今は技術的には限界なのかというところの御見解を頂ければと思いますけれども。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日本赤十字社の後藤です。27枚目のページでお示ししたように、黄色ブドウ球菌についてはサンプリングができるかどうかといった性質がありますので、高感度な検査法を導入したとしても、サンプリングしたものに菌や検出する対象となるものが入らなかった場合は、何をやっても陰性になってしまうと考えられます。ですので、アメリカでやっているように、輸血前にベッドサイドで検査ができるような方法が使えれば、それはそれで追加検査としてはよいのかなと思いますが、スクリーニングという意味では、諸外国の結果を見ても、このぐらいのところが検出限界というか、黄色ブドウ球菌に対する対策の限界というか、そういうようになっていくのではないかと、1年やってみたところでは考えております。
○水上委員 どうもありがとうございました。
○大隈座長 ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございました。日本赤十字社におかれましては、引き続き血液安全の監視の一環として情報収集を行っていただき、安全対策に取り組んでいただくようお願いいたします。
次に移ります。議題4.輸血歴に係る献血制限についてです。議題4は、まず事務局から現状等について説明していただき、続いて、日本赤十字社より見直しの方向性について御説明いただきます。その説明を踏まえ、最後に事務局より論点について整理をお願いします。
○糸谷血液対策課長補佐 事務局です。輸血歴に係る献血制限については、大隈先生を研究代表者とする令和8年度厚生労働科学研究班「血液製剤の安定供給に資する採血事業体制の構築のための研究」において、諸外国の規制動向や科学的知見の整理・検討を進めていただいております。今後、当研究班等において、この制限の見直しに係る検討に当たり整理すべき事項について、御意見を頂きたいと思います。
資料4-1(1)現状等について御参照ください。まず、現状につきましては、平成3年当時、HBV及びHCVによる輸血後ウイルス性肝炎の発生状況並びにHBV及びHCVに係る検査技術の水準を踏まえ、日本赤十字社において、輸血後6か月以内の者からは採血せず、輸血後6か月を超える者から採血した血液についても、輸血用血液製剤には使用しない取扱いが導入されました。平成7年6月以降は、未知のウイルス等による感染も防止する観点から、輸血歴を有する者について、恒久的な献血制限が運用されております。一方、その後、NATを始めとする検査技術の高度化や、血液製剤に係る安全対策の充実が進み、献血血液に係る安全対策は、当該制限の導入当時と比べ大きく向上しております。
また、諸外国においては、輸血後一定期間の献血延期を設けた上で、献血を受け入れている国がある一方、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病等の特定のリスクを理由として、恒久的な献血制限を維持している国もあり、その取扱いは国によって異なっております。
当該制限の導入から30年以上が経過していることから、現在の科学的知見及び安全対策を踏まえ、輸血歴を一律に恒久的な献血制限の対象とする現行の取扱いについて、改めて検討する必要があると考えております。以上です。
○大隈座長 ありがとうございました。続いて、日本赤十字社より資料の説明をお願いします。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 輸血歴に係る献血制限について、日本赤十字社の後藤より御説明いたします。資料4-2を御覧ください。2ページをお願いします。輸血歴に係る献血制限は、先ほども事務局から御説明がありましたとおり、もともとは平成3年10月に日本赤十字社内で感染症対策として社内通知で開始したものでした。当時は、HBV、HCVとも血清学的検査で抗原検査、抗体検査のみを実施しており、HCV抗体陰性と判定された血液がPCRでHCV-RNA陽性となる率は、輸血歴のある献血者においては、輸血歴のない献血者の10倍近く高いという報告がありました。
このことから、輸血後ウイルス性肝炎の感染の可能性を考慮し、より感度の高い検査法が実施されるまでの間は、輸血後6か月以内の人からは採血をしない、輸血後6か月を超える献血者の血液は、輸血用血液製剤には使用せず、血漿分画製剤(アルブミン)の原料とするという対応を取っておりました。
次のページです。日本赤十字社で輸血歴に係る献血制限を実施していた1990年代初頭の輸血後肝炎の発生率というのは、ちょうど真ん中辺りにあるとおり、2%程度で、ちょうどHCVの抗体検査が開始された時期のことでした。
次のページです。その後、平成7年6月に、前年12月に設置された「血液問題検討会」において、製造物責任法制定を契機に輸血用血液製剤の安全確保対策を検討した結果が、報告書として通知されました。この報告書中の「個別の安全対策」の所に、輸血歴、臓器移植歴のある者は、未知のウイルス等の感染を防ぐ意味から、問診に際して排除すると記載がされ、輸血歴がある者の献血が排除されることとなりました。
次のページです。輸血歴に係る献血制限のまとめです。日本赤十字社の輸血歴による献血制限は、輸血後肝炎対策として始めました。血液問題検討会の報告書から30年近くが経過し、輸血用血液や血漿分画製剤の安全性に係る考え方については、再評価が必要な時期に来ていると考えられます。諸外国においては、過去の輸血歴により無期限献血延期とする措置を講じている国は減少傾向となっていますが、一部vCJDの対策として残している国もあります。輸血歴による献血制限は、30年以上前に、輸血後肝炎対策、未知の感染症対策として開始された安全対策であり、その後、新たな検査項目や高感度検査の導入も進んでいるため、輸血後一定の献血延期期間を設けて(感染症を発症していないことを確認し)、献血を受け入られるかどうかについても検討すべき時期に来ていると思われました。しかしながら、様々な感染症とプリオン病(vCJDリスク)などに関しては分けて考える必要があるかもしれないこと、移植歴については、移植に至った理由等に鑑み、引き続き献血延期が望ましいことなどは、別途検討が必要と考えられます。
次のページです。諸外国の輸血歴に係る献血延期の対応をお示ししました。これらは厚生労働科学研究班において精査中ですが、現在分かっているものをお示ししております。輸血歴による献血制限は多様な期間で定められており、その理由としては、感染症のリスクとvCJDのリスクに二分されているような印象です。
8ページです。輸血歴に該当した献血者がどのぐらいいたかというのを、献血予約アプリであるラブラッド会員を対象に調査したところ、6年間で、献血を申し込んだが輸血歴により献血不適になったのが、1万2,724件あったことが分かりました。
7ページです。まず、課題についてです。輸血歴の該当者の献血受入れに係る課題としては、血液の安全面からは、輸血歴がある人の献血を受け入れる場合、輸血の背景にある疾患(既往歴)の問診を適切に行い判断しなければならないという大きな課題があります。実例としては、交通事故や出産時の出血に対する輸血であれば、その後、献血可能としてもよいかもしれませんが、血液疾患や抗がん剤治療などに伴う輸血などについては、元の疾患を考慮し、献血は御遠慮いただくようになるなど、ケース・バイ・ケースで判断するようになるかと考えています。また、輸血歴がある人は、献血への関心がより高いと考えられ、解除された場合に献血に訪れる可能性が高いことは、この件を考える上では重要な点かと思います。
また、血液事業者としての課題は、現在の献血歴による献血延期措置は「永久」不適になりますので、欧州渡航歴等と同様に、該当者はこれをシステム上で解除する必要があります。解除条件が「○年以内の輸血は輸血延期」等になるような場合は、明確な輸血日を御申告いただいて、輸血期間をシステム上で管理する必要があります。これはリスク行動に係る問診の20番などと同じになります。輸血歴については対象者が多いと推測され、解除できる条件が複雑なことから、健診医への周知、適切な問診の実施についての教育訓練が必須となってくることが挙げられます。
8ページ目に、先ほど少しお話しかけましたが、献血予約アプリで調査した輸血歴に該当する献血者の推測数を参考としてお付けしております。御説明は以上です。
○大隈座長 ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問がありましたらお願いします。
○糸谷血液対策課長補佐 事務局です。本発表に際しての論点について、4点ほど事務局から申し上げます。
○大隈座長 お願いします。
○糸谷血液対策課長補佐 資料4-1(2)論点を御覧ください。今回の検討に当たりまして、事務局としては、こちらに記載している4点について論点があるのではないかと考えておりますが、ほかに検討すべき視点も含めて、先生方、委員の皆様に御意見を頂戴できればと思います。
まず、論点の1番目として、現在の科学的知見及び献血血液に係る安全対策の状況を踏まえ、輸血歴を一律に恒久的な献血制限の対象とする現行の取扱いについて、見直しの検討を進めることは妥当か。2点目、見直しの検討に当たり、HBV、HCV及びHIⅤ等の既知の感染症並びに未知の病原体に起因する受血者への感染症伝播に係る残余リスクを、どのように評価すべきか。3点目、輸血を受けた国、時期その他の条件に応じて、異なる取扱いを設ける必要があるか。4点目、輸血歴を有する者からの献血を受け入れる場合、輸血を必要とした背景疾患、輸血後の回復状況、献血者のその他の健康状態をどのように確認すべきか。この4点について、事務局としては整理させていただきます。以上です。
○大隈座長 ありがとうございました。ただいまの御説明について、御意見、御質問がありましたらお願いします。事務局から4点論点を提起いただいておりますので、それを含めてお願いできればと思います。何かありませんか。
○糸谷血液対策課長補佐 Webの石井先生から挙手ボタンが押されています。
○大隈座長 石井先生、お願いします。
○石井委員 石井です。御説明ありがとうございました。論点の3つ目に、輸血を受けた国、時期その他の条件に応じて異なる取扱いを設ける必要があるかという点を挙げてくださっていますが、海外の例を見ても、解除している所でも一定期間後にという制限があるようで、実際にウインドウ・ピリオドの問題などもあると思いますので、時期については、見直す場合でも何らか制限は必要ではないかと考えます。
日本赤十字社からの御説明で、血液事業者側の課題の2つ目の◆の所で、「明確な輸血日を申告いただき」と書かれておりますが、こちらは人がアサインできれば献血日が分かるようなシステムにはできないのでしょうか。お願いいたします。
○大隈座長 日本赤十字社から御回答いただけますか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日本赤十字社の後藤です。石井先生、人がサインできればというのは、どのようなことを示されているのか、教えていただけますか。
○石井委員 アサインと申し上げました。例えば私がどこかで献血をした場合に、数箇月後にまたどこかでというとき、この人がいつどこで献血したかというのは、トレーサブルではないから、ここで聞かなければいけないのだろうと想像したのですが、その点を管理できるようなシステムにはできないのでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 ありがとうございます。献血者の方がどこで、いつ、何を献血したか、それから、献血を申し込んだけれども献血できなかったというものは、全てシステムに残っておりますので、献血履歴のトレースはできます。しかしながら、今回の輸血歴に係る献血制限の緩和というのが、輸血後1年間は献血は御辞退いただくというような結論になった場合には、日本赤十字社のシステムで一度申告いただいたときには、その後の1年間は、献血の受付けができないとか、もし間違えて受け付けしてしまっても、輸血用血液、血漿分画製剤の原料として供給しないと、そのようなガードを掛ける仕組みを作らなければいけないと考えて、そのような意味で記載いたしました。以上です。
○石井委員 分かりました。ありがとうございました。
○大隈座長 ありがとうございました。それでは、玉井委員、お願いします。
○玉井委員 弘前大学の玉井です。輸血歴に係る献血を見直すことは妥当だとは思いますが、論点の4つ以外のところで、輸血を使用する医療者側として気になっている点があります。
重篤な輸血の副反応に、TRALI(輸血関連急性肺障害)があるのですが、その原因が、全てではないにしても、献血ドナーの抗白血球抗体であることが言われています。このため、日本赤十字社でも、FFP-240は、妊娠・出産歴のない男性から製造するような工夫をされていて、できるだけ他人の血液に曝露歴がある人の血液(血漿)を輸血用血液製剤にしないという努力をしています。それから考えると、輸血を過去に受けた方たちは、抗白血球抗体を保有している危険性が高くなるのではないでしょうか。TRALIの発生率が高くなる危険性を無視できないと思っています。
ヘモビジランスが整備されている英国では、輸血したことがある人は献血不可としているのですが、輸血歴のある人の献血を許可するためには、是非とも、未知のウイルスやバリアントのvCJDなどの危険性も考慮しつつ、抗白血球抗体や不規則抗体などの検出で輸血用血液製剤に不適切なものがどれぐらい入るかという検討もしていただければと思いました。以上です。
○大隈座長 ありがとうございます。今の御意見に関していかがですか。日本赤十字社、いかがですか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日本赤十字社の後藤です。御意見ありがとうございます。もし解除するようなことになりましたら、そこはリスクとしてどのように対応するかについて考えていきたいと思っております。ありがとうございました。
○玉井委員 ありがとうございました。
○大隈座長 ありがとうございました。ほかはいかがですか。よろしいですか。
○糸谷血液対策課長補佐 事務局です。現地の小林委員より挙手いただいています。
○大隈座長 小林委員、お願いします。
○小林委員 小林です。見直しを進めるということについては、私も賛成ですが、もし解除したら対象者は非常に多くなると思われます。献血申込みをして、献血不適になった方が1万2,000件ほどあったというのですが、解除されたら、今まで駄目だったと思う人たちが、きっとどんどん入ってくる、そのようなリスクも御説明の中にあったと思います。先ほどの資料の論点の中の4つ目にもありましたが、どのような背景疾患であれば、輸血後に輸血歴があったとしても可とするのかということについて、諸外国にも、このような基準というか、輸血の背景にある疾患で、そこを区別しているようなものがあったら、そういう情報も参考にあるのではないかと1つ思いました。
もう1つは、資料4-2で書かれていた「様々な感染症とプリオン病は分けて考える必要があるかもしれない」というのは、私もそうだと思いますが、プリオン病を考えてしまうと、結局できないのではないかという気もして、プリオン病の発生状況やそのようなバックグラウンドのデータもあるとよいかと思いました。以上です。
○大隈座長 ありがとうございます。よろしいですか。それでは、ないようでしたら、厚労省及び日本赤十字社におかれましては、委員からの御意見を踏まえて、輸血歴に係る献血制限の見直しに向けた検討をお願いしたいと思います。
次に、議題5.「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」についてに移りたいと思います。議題5も、まずは事務局から現状等について説明を頂きまして、続いて、日本赤十字社より見直しの方向性について御説明いただきます。その説明を踏まえて、最後に事務局より論点について整理をお願いします。
○糸谷血液対策課長補佐 事務局でございます。「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」については、前回の令和4年改正以降に得られた新たな知見及び血液事業を取り巻く状況の変化を踏まえ、日本赤十字社から示された具体的な見直しの方向について、御意見を頂きたいと思います。
資料5-1の(1)現状等を御参照ください。「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」については、平成17年3月の発出以降、感染症に関する知見や検査技術の進展等を踏まえ、薬事審議会血液事業部会安全技術調査会等における議論を経て、随時改正を行ってまいりました。
直近の令和4年5月の改正では、HBV、HCV及びHIVについて、NAT陽性となった供血者(献血者)から過去に採血されたNAT陰性の血漿の取扱い、並びにHEVに係る遡及調査の取扱いについて、見直しを行いました。HEVについては、当面の間、遡及調査の対象病原体として取り扱い、遡及調査期間を6か月とする一方、ウインドウ期間等に関する知見が確立した段階で改めて検討することとされておりました。その後、HEV-NAT導入後の遡及調査実績及びHEVの感染性に関する知見の蓄積、HEV輸血感染事例に係る感染リスク評価上の課題、プールNAT実施時代の保管検体の保管期間満了、遡及調査期間と医療機関における使用記録の保管期間との齟齬、並びに日本赤十字社における細菌関連検査体制の整備等の状況の変化が生じております。以上でございます。
○大隈座長 ありがとうございます。次は日本赤十字社からの御説明でしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 それでは、遡及調査ガイドラインの改正について、日本赤十字社の後藤より御説明をいたします。資料5-2を御覧ください。
次のページです。遡及調査ガイドラインについては、日本赤十字社が作成した「輸血用血液等の遡及調査に関するガイドライン」を平成16年3月の安全技術調査会で報告し、その後、平成17年3月に厚生労働省作成の「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」が通知されました。いずれも、5年に1度程度、改正をされております。
次のページです。血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン、国のガイドラインの改正の歴史になります。直近では、先ほどお話がありましたとおり、HEVの遡及調査の書きぶり等について、2022年5月の改正で見直しがされたところです。
次のページです。直近の改正以降に得られた新たな知見や業務上の変更点について、お示しをしました。HEVの輸血感染の実態把握、ウインドウ期や感染性についての解明が進んできました。また、HBV輸血感染の多様性と、感染リスク評価の表現の食い違いも判明してきております。そして、プールNATから個別NATに切り替えたのが2014年8月なのですが、このプールNAT時期の保管検体の保管期間というのが満了しております。また、遡及調査の遡り期間と医療機関における血液製剤の使用記録の保管期間が、そろそろ現実に合わなくなってきたということもございます。最後に、血小板製剤の細菌スクリーニングや菌種の同定等を日本赤十字社で開始したことなどが挙げられます。
次のページです。最初に、HEVについて輸血感染の実態把握等が進んだ点について御説明をいたします。6ページ目です。E型肝炎に係る遡及調査については、2020年8月に個別NATを導入した後、遡及調査の期間や遡及対象について運営委員会等で議論され、2022年5月のガイドライン改正で、HEVを当面の間は遡及調査の対象病原体として扱うこととされましたが、ウインドウ期間等に関する知見が確立した時点で、改めて調査方法等は検討することとされておりました。
7枚目です。HEV-NAT導入後の遡及調査において保管検体がHEV-NAT陽性と判明した血液由来の輸血用血液製剤を輸血された受血者の方の調査結果です。こちらは何度か御報告していますが、赤字でお示ししたとおり、HEV-NAT陽性で医療機関に供給された製剤は、赤血球が1本、血小板が5本の合計6本あり、それぞれの受血者を調査したところ、明らかな輸血後E型肝炎を発症した人はおりませんでした。
次のページです。こちらは、HEV-NATの陽転をきっかけに、過去6か月の遡及調査期間内に献血されたHEV-NAT陰性の血液由来の受血者の調査結果となります。2020年8月から2025年12月末までに、2,716万本以上スクリーニングをし、HEV陽性となった1万9,291本を基に遡及調査対象となった輸血用血液製剤が1万8,780本ありました。これらの受血者の調査を行ったところ、1万7,900件の情報を受理し、回収率は95.5%と非常に高くなりました。そのうち1,153人が医療機関で輸血後のHEVのIgA抗体の検査を実施し、2名がIgA抗体陽性でしたが、HEV-NATは陰性でした。それ以外は抗体も陰性でした。輸血後の検体については、96人分の依頼がありまして、日本赤十字社でHEV-NATを実施しましたが、全て陰性でした。これらの結果から、2025年末までに保管検体で陽性が判明した6件を含む2万件以上の遡及調査を実施しましたが、HEV-NAT陰性の血液の受血者で、輸血後HEV感染は確認されないという結果になりました。
次のページです。HEVのウインドウ期間や感染性についても分かってきたことについて御報告をいたします。10枚目です。HEVの輸血感染に必要なウイルス量は、欧米の報告では7,056IU、日本で経験した症例の最低量としては325IUでした。そして、ウイルスは血漿に存在するため、製剤の血漿量により感染性が異なるということも分かっております。
11枚目です。日本の報告から、感染に必要なウイルス量を325IU/BAGとした場合の製剤に含まれる血漿量とウイルス濃度は、赤血球の2単位製剤に含まれる血漿は20mLあり、1バッグに325IU入っていることを考えると、献血者血液中のViral loadは16.3IU/mLになります。血小板10単位製剤の血漿量は約180mLで、同じように献血者のViral loadは1.81IU/mL、一番大きいFFP480製剤の血漿量は、ACDを除くと約430mLで、Viral loadとしては0.76IU/mLとなります。献血者のViral loadが、HEV-NATの感度である3.6IU/mLに達するまでの期間がNAT Window Periodとなり、ここから感染性ウインドウ・ピリオドを算出いたしました。
12枚目です。続きとなります。HEVの末梢血での倍加時間は2.2日とされています。献血者の元のViral loadからNAT試薬の感度の3.16IU/mLに達するまでの日数がウインドウ・ピリオドとなります。これから、赤血球製剤の場合は、感染性ウインドウはなし、血小板製剤の場合は、1.81が3.6になるまでの2.2日のウインドウ期、FFP480では、0.76が3.6になるまでの5.1日のウインドウがあることが分かります。これらの感染性ウインドウを基に、現状の最短献血間隔14日間を考慮すると、感染性ウインドウの2倍の日数を遡及期間としても、遡及期間は不要ではないかということになりました。
13枚目です。HEVに感染した場合のviremiaの期間とウインドウ・ピリオドを赤血球モデルで表したのが、この図となります。この大きな弧がウイルス量の変化を表しています。左のHEV RNAレベルからは、HEV-NATで検出できる期間の62.4日よりも感染性ウイルス血症の期間の53.3日のほうが短いため、赤血球は感染性ウインドウ・ピリオドというのはないということになります。
14枚目です。最も血漿量が多いFFP480や分割製造の血小板の場合は、NATの検出期間が62.4日間に対し、感染性ウイルス血症期間が71.8日と長く、感染性ウインドウが5.1日あるのが分かりますが、これは最短献血期間の14日よりもずっと短いという状況です。なお、後ろ側の感染性ウインドウは、NAT陽性が判明すると、その後の献血延期期間となるので、考えなくてもよいかなと思っています。
15枚目です。HEVの感染性とウインドウ・ピリオドから考えるHEVの遡及期間についてまとめました。最短の献血期間は2週間であり、最も血漿量の多い製剤においても、感染性ウインドウ期は5.1日間で、2倍のマージンを取っても最短献血期間に満たないということ、また、最初のほうでお伝えしましたが、今までの遡及調査でもNAT陰性の血液によるHEV感染はなかったということから、HEV-NAT陽転に係る遡及調査は必要なく、遡及対象の病原体からは除外できるのではないかと考えました。
16枚目です。諸外国の対応について簡単に御報告いたします。英国ではプールNATでHEVのスクリーニングを行っているため、遡及調査で保管検体の個別NATを行うと陽性となることがあります。これらの個別NAT陽性となった血液の受血者についてのみ遡及調査を行っております。
17枚目です。アイルランドでは個別NATでHEVのスクリーニングを行っており、遡及調査対象については献血間隔で実施の要否を決定しているところですが、25IU/mL以下の低いウイルス濃度での陽性血で感染が成立した事例はなかったという報告が出ております。
18枚目です。オランダもNAT実施をしていますが、遡及対象血液の個別NATが陽性と判明したときに限り、受血者の調査を実施しております。HEVに係る説明は以上となります。
19枚目です。続いて、HBV輸血感染の多様性と感染リスクの評価についてになります。20枚目です。現在の血液製剤等に係る遡及調査ガイドラインの別添1では、感染リスク評価を、主にウインドウ期間に基づき、ウイルスの混入が確認された血液由来、ウインドウ期の可能性が高い血液由来、ウインドウ期の可能性が低い血液由来の3つに分類しています。しかしながら、2021年以降、ウインドウ期だけでは説明が難しいHBVの輸血感染例が散見され、運営委員会でも何度も御紹介をしてきました。
21枚目です。そこで、感染リスクの考え方について今後見直しを行うのはどうかと考えまして、案としてお示ししたのがこちらです。ウインドウ期だけではなく、献血者のウイルスマーカー、NATやHBs抗原、HBc抗体、HBs抗体などの血清学検査、ALTの推移などから、ウイルス等の混入の可能性がある、若しくは否定できない血液、ウイルス混入の可能性が低い血液と分類するのはいかがかという案です。今後の検討の中で考えていければと思っております。
22枚目です。続いて、プールNAT時期の保管検体の保管期間満了に伴うガイドラインの表現についての御説明となります。23枚目です。現在のガイドラインの別紙3に示されている遡及調査の内容としては、赤字で示したとおり、「保管検体等の個別NATが陰性と判定されるまで」という、スクリーニングがプールNATであることを前提にした表現が多く見られます。次のページです。HCV、HIVについても同様の記載がございます。
25枚目です。遡及調査ガイドラインの本文の記載でも、「保管検体が全て個別NATの場合 陰性の場合」であったり、「個別NATでスクリーニングされていない場合は、日本赤十字社保管の当該輸血用血液製剤等に係る保管検体について個別NATを行う」であったり、スクリーニングがプールNATであることを前提にした表現が多く見られます。
26枚目です。日本赤十字社では、2014年8月に、HBV、HCV及びHIVの個別NATを開始しました。保管検体の保管年限は11年のため、2025年8月をもって、プールNAT時代の保管検体は(冷凍血のFRCを除き)全て廃棄をされています。これらのことから、ガイドラインの「当該輸血用血液製剤が個別NATでスクリーニングされていない場合は日本赤十字社が保管している当該検体の個別NATを実施する」というような表現を見直す、また、遡及調査の考え方を個別NATベースで全体的に見直す必要があるのではないかということで、今回、御提案をした次第となります。
27枚目です。続いて、遡及調査の遡り期間と医療機関における血液製剤の使用記録保管期間についての御説明です。28枚目です。現在のガイドラインでは、遡及期限については「可能な限り過去に遡り」という表現になっております。次のページのHCV、HIVについても同様になっています。
30枚目です。遡及調査では、受血者の状況を医療機関に調査しております。医療機関における血液製剤の使用記録の保管期間についてまとめました。1990年代後半は、行政指導により、輸血用血液製剤の使用記録の保管年限は10年とされました。その後、2003年の改正薬事法により、輸血用血液製剤を含む特定生物由来製品の使用記録の保管期間は20年とされ、また、製造業者等における提供者・製造記録の保管期間は30年とされました。これらの時代背景から、2005年4月に制定された「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」においては、「可能な限り遡り」という表現で調査期間を制定されたと考えております。
次のページです。日本赤十字社で遡及調査を行う中で、製剤供給日から遡及調査としての情報を医療機関に提供するまでの年数と受血者の確認ができたかどうかを調査し、グラフにしました。その結果、10年を超えると確認不能が増えてきて、20年では半数以上が受血者の確認ができなくなっているということが分かりました。この20年超えというのは、輸血用血液製剤の使用記録の保管年限を超えている状況に合致をしておりました。
次のページです。これらの状況に鑑み、スクリーニングNAT及び血清学的検査において陽転が確認されたときの最大遡及期間については、「可能な限り過去に遡り」というのを「過去20年間に遡り」と、特定生物由来製品の医療機関における輸血用血液製剤使用記録の保管期間に合わせるのはいかがかという御提案になります。
次のページです。最後に、細菌感染事例の調査実施施設についての御説明です。34枚目です。遡及調査ガイドラインでは、医療機関から輸血による細菌感染が疑われると日本赤十字社に報告された場合、「使用済みバッグ等」に係る血液培養については、公的検査機関及び必要に応じて第三者機関に血液培養の実施を依頼すると決められています。ガイドライン策定当時は、日本赤十字社内に十分な細菌感染の調査を実施する環境は整備されておりませんでした。
次のページです。日本赤十字社では、2025年7月30日より、細菌スクリーニング済み血小板製剤の供給を開始しており、現在は細菌培養・同定試験を自社で実施可能な状況になっております。また、日本赤十字社では、輸血後細菌感染症が疑われた事例において、第三者機関として東京都の健康安全研究センターに試験を依頼してきましたが、2015年頃からは、中央血液研究所においても細菌関連の検査を試行的に並行して実施しており、第三者機関と同等の結果が得られております。また、先ほどのヘモビジランス報告でも御報告したとおり、血小板の細菌スクリーニング導入に伴い、スクリーニング陽性になった検体の同定検査は中央血液研究所で実施しており、情報を集積している状況でございます。
36枚目です。このような状況に伴い、医療機関からの細菌感染疑い事例の調査に係る「使用済みバッグ」の血液培養については、日本赤十字社でも細菌培養・同定試験を行えるような記載にしていただければということを考えております。これにより、検体を入手次第、検査を実施できるようになり、医療機関へのフィードバックが早くなることはメリットになると考えております。以上、長くなりましたが、御説明を終わります。
○大隈座長 ありがとうございました。今の御説明につきまして、事務局から論点説明をお願いします。
○糸谷血液対策課長補佐 事務局でございます。日本赤十字社から挙げていただきました論点につきまして、多岐にわたるため、資料5-1(2)に挙げさせていただいているとおり、事務局で5つにまとめました。
1ポツ目、日本赤十字社におけるHEV-NAT導入以降の遡及調査対象となった輸血用血液製剤及び受血者の感染状況等の調査結果、HEVの感染成立に必要なウイルス量並びに製剤種別の感染性ウインドウ期間等に関する知見を踏まえ、HEV-NAT陽転時の過去のHEV-NAT陰性血液について、遡及調査を実施しないとする見直しは妥当か。
2ポツ目、現行の「ウインドウ期の可能性が高い又は低い」とする感染リスク評価区分について、個別NATの結果、献血者の検査結果及びウイルスマーカー等の推移を踏まえ、「ウイルス等の混入の可能性がある(否定できない)又は低い」と総合的に評価する区分に見直すことは妥当か。
3ポツ目、日本赤十字社が保管する通常の保管検体の保管期間は、採血後11年間であり、個別NATが導入された平成26年8月から12年が経過したことから、一部の製剤を除き、プールNAT実施時代の保管検体が既に存在しない状況を踏まえ、プールNATを前提とした記載を整理し、遡及調査ガイドライン全体を個別NATを前提とした記載に見直すことは妥当か。
4ポツ目、HBV、HCV及びHIVのスクリーニングNAT又は血清学的検査の陽転時に、「可能な限り過去に遡り」としている一部の遡及調査について、医療機関における特定生物由来製品の使用記録の保管期間及び遡及調査の実効性を踏まえ、最大遡及期間を過去20年間とすることは妥当か。
5ポツ目、細菌感染が疑われる事例における使用済みバッグ等の細菌培養・同定試験等について、公的検査機関等への依頼を原則とする現行の取扱いから、日本赤十字社が実施する取扱いに変更することは妥当か。以上です。
○大隈座長 ありがとうございます。ただいまの御説明について、論点が多岐にわたりますので、事務局から示された論点に従って順を追って御意見や御質問をお受けしたいと思います。まず、1つ目の論点について御質問や御意見があればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。特によろしいでしょうか。では、2つ目の論点についてはいかがでしょうか。では、3つ目はいかがでしょうか。4つ目はいかがでしょうか。水上委員、お願いします。
○水上委員 4つ目の所、科学的に考えれば、遡及期間を20年とすることは妥当かと考えておりますが、この「可能な限り過去に遡り」という文言は恐らく、血液製剤による感染事例が過去に起こってきた経緯を鑑みて、できるだけ見ましょうというところが前提にあった、努力義務的な文言ではあるというところを考えると、この文言自体は残しつつ、その期間は概ね20年程度が妥当とすると決めても良いかと考えたところです。
一方、この20年間の保管というところですが、今後、医療DXにより医療の電子化、製造記録の電子化が進む中で、献血、輸血された方が、いや、もう20年たったから自分の輸血に関する情報が消えているという話になると、本来、紙媒体のカルテではないので置き場所に困るとかそういったものはないはずなので、電子情報なのでできるだけ保存されていると考えている患者さんも少なくないのではないかなという気もいたします。これはちょっと科学的なところではないのですが、そういう意味でいうと、先ほど言ったような努力義務的なところは残しても良いかと考えております。
○大隈座長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。
○池田委員 福島医大の池田です。ただいまの20年の件なのですが、実際には、結構、伝票とかは幾ら電子カルテになっても残ってしまっていて、医療機関では20年の使用記録の保管というのは非常に大きな負担になっている、現場では結構なっている所が実際に多いと思うので、これはやはり20年としてもらったほうが医療機関は助かる所が多いのではないかなと非常に思っています。これは20年にしてもらうと非常に助かると思って聞いていました。反対意見ではないのですが。現実的に20年以上のサーバーとかをどうするのかというのも、実際かなり現場では問題にはなるところなので、電子カルテはどこまで取っておくのかというのも、病院によって大分取決めが違ってくると思うので、その辺も検討いただければ有り難いかなと思いました。以上です。
○大隈座長 ありがとうございます。今の御意見に対していかがでしょうか。水上委員、今の御意見に対して何かありますか。
○水上委員 私も医療の現場のところは十分理解しておりませんでしたので、そういった負担がかなりあるというところは十分考慮していただいて、20年なら20年というところで落しどころをつけていただくのはいいのかなと考えております。
○大隈座長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。では、最後の5ポツ目について御意見、御質問はいかがでしょうか。水上委員、お願いします。
○水上委員 度々すみません。日本赤十字社のほうで既にMALDI-TOF等を導入されて、いろいろな経験を積まれてきて、もう同定のほうは問題ないというところで、現在こういう御意見が出てきたのかなと思いますが、MALDI-TOF自身が、まだデータベース依存性があったり、一部、例えば大腸菌と赤痢菌とかは、スペクトルが、結構タンパクが似ているから、識別が困難とか、その場合は脂質スペクトルを使わなければいけないとか、結構まだまだ開発中というか、やはりデータベースにかなり依存してくるところもあるのかなとは思うのです。そういった意味も含めて日本赤十字社のほうでは問題ないと考えて、こういったところを進められているという理解でよろしいでしょうか。
○日本赤十字社血液事業本部後藤技術部次長 日本赤十字社の後藤です。ヘモビジランス報告の中で検出菌の御説明をしましたけれども、1件同定不能というのがあって、あれは恐らく非特異ではないかと考えているのですが、あの中でも同定するまでに少し手こずったものなどもありまして、MALDI-TOFの結果だけでは判別できないものについては、ほかの検討などもやった状態で同定結果を出しているというのが現状となります。ただ、今後、細菌スクリーニングを日々行っていくに当たっては、同定が難しい検体というのも出てくることはあると思いますので、原則として検査は日本赤十字社でできるようにはしていただいて、どうしても日本赤十字社ではできない難しい検査などがあったときには、外部の機関であったり、感染研であったり、検査のできる施設にお願いできるような形にガイドラインを書いていただけると、早くできる調査については、早く結果がフィードバックできて、難しいものについては、外部とも協力しながら結果を出していけるようになるのではないかと思って、お願いした次第です。以上です。
○水上委員 ありがとうございます。よく理解できました。
○大隈座長 ありがとうございます。ほかにはございませんか。よろしいですか。それでは、厚労省及び日本赤十字社におかれましては、委員からの御意見を踏まえまして、引き続き「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」の見直しに向けた検討をお願いしたいと思います。
それでは、本日の議題は以上となりますが、ほかに何か御意見等はございますか。よろしいですか。
ないようですので、最後に御退任予定の委員について御案内したいと思います。来年の1月に、薬事審議会血液事業部会の委員の改選が予定されております。任期満了に伴いまして、玉井委員が本日の調査会をもちまして退任されます。玉井委員におかれましては、当調査会の場で多くの見識をお示しいただきました。それでは、玉井委員より一言御挨拶を頂ければと思いますので、よろしくお願いします。
○玉井委員 ありがとうございます。弘前大学病院の輸血部の玉井と申します。輸血を実際にたくさん医療現場で使う者として、委員に参加させていただきました。2023年度からだったので、ちょうどCOVID-19のパンデミックが終わって、ワクチン接種後の対応等が議題となっておりました。ウイルスをはじめとする感染症に関しては、たくさん勉強させていただきました。任期も4年で満了いたしましたので、この回をもちまして退任させていただきます。調査会のますますの御発展をお祈りしております。ありがとうございました。
○大隈座長 玉井委員、ありがとうございました。これまでいろいろ御指摘いただきまして、ありがとうございます。それでは、事務局に議事進行を戻したいと思います。
○糸谷血液対策課長補佐 大隈座長、ありがとうございました。次回の安全技術調査会の日程は、別途、御連絡差し上げます。これをもちまして、血液事業部会令和8年度第1回安全技術調査会を終了いたします。ありがとうございました。
(了)

