2026年7月3日 第7回労働政策審議会労働条件分科会「組織再編に伴う労働関係の調整に関する部会」 議事録

労働基準局労働関係法課

日時

令和8年7月3日(金) 14:00~16:00

場所

厚生労働省専用第21会議室(中央合同庁舎5号館17階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)

出席者

公益代表委員
山川部会長、池田委員、石﨑委員、髙橋委員、成田委員
労働者代表委員
小林委員、菅村委員、浜田委員
使用者代表委員
荒川委員、木村委員、鈴木委員、鳥澤委員
事務局
岸本労働基準局長、尾田大臣官房審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、先﨑労働関係法課長、瀧田労働関係法課課長補佐

議題

(1)組織再編に伴う労働関係について
(2)今後の進め方について

議事

○山川部会長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第7回「労働政策審議会労働条件分科会組織再編に伴う労働関係の調整に関する部会」を開催いたします。
 委員の皆様方、大変御多忙の中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の部会は、会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で実施いたします。
 まず、議事に入ります前に、部会委員の交代がございましたので、事務局から御紹介をお願いいたします。
○労働関係法課課長補佐 事務局でございます。
 本部会委員の交代につきまして、御報告いたします。
 御手元の参考資料8として、「労働条件分科会組織再編に伴う労働関係の調整に関する部会委員名簿」を配布しております。
 昨年11月の第6回部会からこれまでの間につきまして、労働者代表の冨髙裕子委員が御退任され、日本労働組合総連合会総合政策推進局総合政策推進局長の菅村裕子委員に御就任いただいております。
 また、使用者代表の松永恭興委員が御退任され、日立製作所人財統括本部人事勤労本部担当部長の荒川卓也委員に御就任いただいております。
 同じく、使用者代表の佐久間一浩委員が御退任され、全国中小企業団体中央会労働政策部審議役の木村恵利子委員に御就任いただいております。
 事務局からは以上でございます。
○山川部会長 どうぞよろしくお願いいたします。
 本日の委員の御出欠ですが、労働者代表の浜委員が御欠席と伺っております。また、公益代表の池田委員は途中退席と伺っております。
 カメラ撮りはここまでといたします。
 それでは、本日の議事に入ります。
 議題(1)の「組織再編に伴う労働関係について」でございます。
 事務局から、御説明をお願いします。
○労働関係法課課長補佐 それでは、資料1を御覧ください。
 まず、2ページ目、3ページ目に記載の「組織再編に伴う労働関係に関するこれまでの検討経緯①・②」として、過去の経緯をまとめておりますが、こちらは令和7年3月に開催いたしました第1回組織再編部会でお示しした資料と同様のものでありますので、説明は割愛いたします。
 4ページを御覧ください。こちらは、「組織再編部会におけるこれまでの検討経緯」でございます。本部会は事業性融資推進法の附帯決議を踏まえて設置されたところですが、令和7年3月に御議論を開始していただいて以降、委員皆様におかれましては、公労使それぞれの御立場で、事業性融資推進法による企業価値担保権の創設を踏まえた事業譲渡等指針の必要な見直しについて御検討いただきました。その結果を踏まえまして、事業譲渡等指針の改正について令和8年1月20日付で告示し、令和8年5月25日から適用されておりますところ、その経緯を記載しております。
 5ページを御覧ください。こちらは、「事業性融資推進法を踏まえた事業譲渡等指針の改正」の概要でございます。令和7年度の本部会における御議論の取りまとめとして、事業性融資推進法を踏まえ、事業譲渡等指針における「事業譲渡に当たって留意すべき事項等」として「企業価値担保権に関する事項」を新たに規定する改正を行っております。
 改正事項としましては、企業価値担保権の実行手続開始決定後に関するものとして、「管財人が行うべき事項等」について規定し、企業価値担保権を設定する場合に関するものとして、「会社が行うことが望ましい事項」を規定したものでありますが、事業性融資推進法の施行から1か月以上が経過し、実際に企業価値担保権を設定する事例が出てきているものと承知しております。
 この点、企業価値担保権の設定時における労使コミュニケーションの状況に関する事例について金融庁に確認したところ、取組事例として、ある金融機関が行った企業価値担保権を活用した融資において、金融機関等から担保権設定者である個別企業に対しては、労働債権等の保護に関する内容を含む独自資料を作成して説明を実施し、さらに、経営者から労働者に対して説明を行った事例が確認されているとのことでありました。また、その他の金融機関につきましても、改正後の事業譲渡等指針を含め、関係指針の内容を御理解いただいているケースがあるとのことでありました。
 厚生労働省としましても、引き続き金融庁と連携し、事業譲渡等指針の周知等に取り組んでまいります。
 6ページを御覧ください。こちらにつきましては、企業組織の再編に関する主な類型として、合併、事業譲渡、会社分割における法令の規定を比較したものでありまして、7ページには、「事業譲渡等指針」の概要を、8ページには、「労働契約承継法」の概要に加えて、「労働契約承継法指針」等の概要について、それぞれ記載しております。
 続きまして、資料2を御覧ください。こちらの資料2から4につきましては、企業組織の再編に関する裁判例、労働委員会の命令例を法形式ごとにまとめたものでございます。
 これまでに開催してまいりました「組織の変動に伴う労働関係に関する研究会」や「組織の変動に伴う労働関係に関する対応方策検討会」において、企業組織の再編の類型ごとに、裁判例・命令例につき御議論いただいておりましたが、前回の検討会で取り扱った最新の裁判例が平成26年の事例だったことを踏まえまして、本資料では、およそ平成26年以降の事例を集積することを目的として、平成26年以降に判例雑誌等に掲載された主な事案について、合計で17事案ほど資料を作成しておりますので、御説明いたします。
 なお、各資料において、労働条件の変更等の個別的労働関係に関する事例、不当労働行為等の集団的労使関係に関する事例等にそれぞれ区分した上で、テーマごとに事例を掲載しているところです。
 まず、合併に伴う労働関係に関する主な裁判例・命令例です。
 まずは、個別的労働関係に関する事例から御紹介します。
 1つ目は、山梨県民信用組合事件です。労働条件の変更に関するものでございます。
 本件は、信用組合の職員が、同組合と山梨県民信用組合との合併により、その労働契約上の地位を承継した山梨県民信用組合に対し、退職金の支払いを求める事案です。
 裁判所の判断としては、就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく、当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべきであるとされました。
 また、差戻し後の控訴審判決においては、退職金に関する労働条件の変更に対する本件同意書への署名押印に際し、変更によって生ずる具体的な不利益の内容や程度についての情報提供や説明を受けていなかったと判断され、本件同意書への署名押印はその自由な意思に基づいてされたものとはいえないと判断されました。
 ここからは、集団的労働関係に関する事例を御紹介します。
 2つ目は、ユナイテッド・エアーラインズ事件です。団体交渉に応ずべき使用者に関するものでございます。
 本件は、会社が、組合員の解雇の撤回や復職についての団体交渉を、組合員の使用者ではないことなどを理由として拒否したことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事案です。
 労働委員会の判断としては、消滅会社が行った本件解雇に関する交渉事項については、存続会社が消滅会社を合併したことにより会社が交渉すべき地位を引き継いでいるのであるから、存続会社が、本件団交申入れに対応すべき使用者に当たらないとして拒否することは、正当な理由であると評価することはできないとされました。
 その上で、本件においては、組合は、存続会社に対し、改めて交渉の進展が望める事情の変化がある旨は何ら示さずに、行き詰まりとなっていた団交の申入れを再度行ったというものであるから、これに応じても合意の可能性がないとして拒否した存続会社の対応には正当な理由があると認められるとされました。
 3つ目は、日本コンベヤほか2社事件です。団体交渉応諾義務に関するものでございます。
 本件は、ユニオンショップ制を定める条項を含む労働協約の改定に関する会社側の対応が不誠実である、会社側が有効期間満了後に労働協約を解約すると通知したことが不当労働行為に該当するとして、救済申立てがあった事案です。
 労働委員会の判断としては、吸収合併に先立って、ユニオンショップ制を定める条項を含む労働協約の改定を議題とする団体交渉につき、組合が一切受諾できないとして交渉するに値しない内容であるとの態度を取っているとはいえ、労使関係の根幹にかかわる事項の改正を求めるもので、合理的な理由を示し、相手方の理解が得られるように説明を尽くすべきであるとした上で、合併の当時会社による説明は、ユニオンショップ制の破棄といった労使関係の根幹にかかわる事項の改正を求めるにしては具体性を欠き、組合が被る不利益に比し、改定することが相当と思われる合理的な理由を明示しているとはいえないとして、存続会社等が本件協約を解約しようとしたことは、組合の弱体化を図ったものということが相当であるとされました。
 続いて、資料3を御覧ください。事業譲渡に伴う労働関係に関する主な裁判例・命令例です。
 こちらも個別的労働関係に関する事例から御紹介します。
 1つ目は、ヴィディヤコーヒー事件です。労働契約の承継等に関するものでございます。
 本件は、労働者が、譲受会社は譲渡会社から当該労働者との間の雇用契約を従前の労働条件のまま引き継いだと主張し、退職金を請求するなどした事案です。
 裁判所の判断としては、本件事業譲渡契約において、譲受会社は、本件店舗等の従業員が望めば、勤務地、給与、地位等の条件を変えることなく譲受会社において雇用を維持することを約したにすぎず、譲受会社においては退職金の定めがないこともあって、譲受会社による雇用を望む従業員とは新たに雇用契約を締結し直すことが予定されていたとして、雇用契約の承継に伴い、退職金に関する権利義務関係も譲受会社に承継されたとはいえないとされました。
 また、本件事業譲渡契約における条項の趣旨、覚書に記載された譲渡対象の意味、譲渡会社の常務取締役の説明に鑑みれば、譲渡会社は、本件事業譲渡契約後も、譲渡会社の下で発生した本件労働者に対する退職金債務を引き続き負っているというべきであるとされました。
 2つ目は、東京地判令和7年3月12日の事件です。同じく、労働契約の承継等に関するものでございます。
 本件は、譲渡会社と期間の定めのある労働契約を締結した労働者が、譲受会社及び転籍元に対して、転籍に関する合意が無効であると主張して、移転元との間で労働契約があることの確認を求めるなどした事案です。
 裁判所の判断としては、本件のように転籍の意思表示の有無が問題となる場面では、労働者は、転籍により従前の使用者の指揮命令下から離脱することになり、転籍に伴う不利益の内容を認識し得るといえ、山梨県民信用組合事件とは事案を異にするといえる。もっとも、労働者の個別の転籍同意の有無については、慎重に判断すべきであるといえるとした上で、本件においては、労働者は、事業の移管に伴う転籍の背景や内容、転籍する場合の条件について説明を受けた後、転籍に同意するか否かの判断について検討の猶予が与えられたこと、転籍後の労働条件として、これまでの時給からは増額されていること、合意書に署名押印していることなどの事情からすれば、転籍の意味を相当程度理解した上で、合意したものと認められるとされました。
 3つ目は、社会福祉法人佳徳会事件です。こちらは解雇や労働条件の変更に関するものでございます。
 事案の概要としましては、譲受会社は、NPO法人が運営していた認可外保育施設の園舎を引き続き使用する形で運営を開始した上、雇用契約中の職員について、採用を希望する者は、希望する雇用形態にて新規採用するとしました。本件は、労働者が、譲受会社がした試用期間満了による解雇などはいずれも無効であると主張して、譲受会社に対し、労働契約上の地位の確認を求めるなどした事案です。
 裁判所の判断としては、従前の雇用契約が譲受会社に承継されているか否かは、会社間において雇用契約の承継について特段の合意がされているか否かで判断される。本件の事実関係からすると、譲受会社とNPO法人との間で、雇用契約の承継まで行うとの合意があったとは認定できないとした上で、本件において、労働者と譲受会社との間で締結された雇用契約は、期間の定めのない正社員としての合意であったと認定しています。
 さらに、この事案では、労働者が譲受会社に雇用された後に、雇用期間の定めが記載された労働条件通知書に署名押印がなされていたところ、このことは労働契約の内容の変更の場面に当たるとした上で、譲受会社との雇用関係を期間の定めのある雇用契約へ変更する同意があったか否かについては、労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも判断されるべきである。本件では、雇用形態の変更に関する不利益についての説明を本件労働者に十分行ったと認められず、本件労働者の合意があったとは認められないとされました。
 4つ目は、ザ・キザン・ヒロ事件です。同じく、解雇や労働条件の変更に関するものでございます。
 本件は、労働者が、譲渡会社がタクシー事業をグループ会社に譲渡し、営業所を閉鎖して、営業所に所属する従業員を全員解雇したことにつき、解雇権を濫用した無効なものである旨を主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるなどした事案です。
 裁判所の判断としては、譲渡会社の経営状況からみて、人員削減を含む抜本的な経営再建策を実行する必要性があったとは認められるものの、経営を再建するために直ちに事業の一部を売却して現金化するほかない状態にあったとまで認めることは困難である。
 本件解雇後、譲受会社に乗務員の情報を提供して雇用の要請をしたり、被解雇者の一部に譲受会社への就職を勧誘するなどしたとしても、解雇を回避するための十分な措置を採ったということはできない。
 本件解雇当時、譲渡会社の経営を再建するために直ちに事業の一部を売却して現金化するほかない状態にあったとまでは認めることが困難である以上、解雇人員の選定基準が合理的なものとはいえない。
 説明会において、事業譲渡について一切言及することなく抽象的な解雇理由に言及するに留まり、組合からの団体交渉の要求に応じていないことから、本件解雇は無効であるとして、労働者が譲渡会社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることが確認されたものであります。
 5つ目は、社会医療法人大阪国際メディカル&サイエンスセンター(旧警和会)事件です。こちらは年休消化における不法行為の成否が問題となった事案でございます。
 事案の概要としましては、譲渡会社等は、譲受会社等より事業譲渡を申し込まれ、譲受会社等に本件病院の事業を譲渡することでおおむね合意し、組合に対して本件事業譲渡の概要を説明していました。
 労働者は、譲渡会社等に対し、労働者の年休消化に向けた具体的な措置を行うべき法的義務があったにもかかわらず、これを怠り、労働者に未消化年休日数に相当する賃金相当額の損害を与えたなどと主張した事案です。
 裁判所の判断としては、本件では、年休を申請した日に出勤した職員は、任意に年休申請を撤回したものと認めるのが相当であるとしつつ、「できる限り労働者が指定した時季に休暇を取得することができるように状況に応じた配慮をする」義務ないし義務違反いかんは、使用者が時季変更権を行使することができるかどうかの場面において問題となるものであって、労働者の年休の時季指定を離れて独立に使用者の義務違反の有無等を問題にする意味はない。
 譲渡会社等が、使用者としての通常の配慮、日常的な配慮ないし長期的な配慮を怠っていたといえるか検討するに、譲渡会社等は、本件事業譲渡に向けた交渉段階で、譲受会社等との間で、職員の保有する年休の残日数のうち20日を限度として翌年度に取得することができる旨の合意をしていたところ、本件組合が年休の消化を含む種々の問題を退職金割増しとして集約するよう提案していたこと、譲受会社等が年休の残日数を引き継がないことを表明した時点では、退職日まで約1か月しかなかったこと等を考慮すると、譲渡会社等が、労働者らの年休を取得させるために具体的な措置を講じていないとしても、使用者としての通常の配慮を怠ったとは認められないとされました。
 ここからは、集団的労働関係に関する事例を御紹介します。
 6つ目は、サカキ運輸ほか(法人格濫用)事件です。不当労働行為に関するものでございます。
 本件は、解雇は不当労働行為又は解雇権の濫用に当たり無効であり、かつ、法人格否認の法理等により別会社であることを主張できないとして、組合員らが譲受会社との間で、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める等した事案です。
 裁判所の判断としては、譲渡会社から組合員らを排除する目的をもって、譲渡会社の長崎での運送事業を廃止し、組合員らとの雇用関係を除いた有機的一体として同事業を支配下にある譲受会社に無償で承継させ、組合員らを排除し、実質的に組合員らのみを解雇したものである。
 これは法人格を濫用した不当労働行為というべきで、労働組合法7条1号により無効であり、かつ、譲渡会社の支配下にある譲受会社は、信義誠実の原則に照らし、譲渡会社と別個独立した法人であるとして、譲渡会社と組合員らの労働契約の効力が及ばないと主張することはできないとされました。
 7つ目は、サイマル・インターナショナル事件です。同じく不当労働行為に関するものでございます。
 本件は、譲渡会社が、事業譲渡に伴う事業部門の閉鎖を、労働組合らが抗議するまで、労働組合らに通知しなかったことなどが不当労働行為に当たる、として救済申立てがなされた事案です。
 労働委員会の判断としては、譲渡会社は、東京南部及び東京南部サイマル支部との間で労働協約を締結したところ、救済申立てを行った組合支部と東京南部サイマル支部との同一性が認められるかは判然としないとした上で、本件労働協約では、「会社は、・・・営業譲渡・・・を決定した場合、速やかに、組合へ通知し、説明する。」と定められているところ、組合組織再編後の本件労使間の経緯からすると、本件労働協約が組合支部に承継されたか否かはさておき、譲渡会社は本件労働協約の趣旨を十分に尊重した対応を執るべきであったとして、譲渡会社は、本件事業譲渡について、従業員である組合員に通知する前又は同時期に組合に通知することが労使関係上求められていたといえるとされました。
 続いて、資料4を御覧ください。会社分割に伴う労働関係に関する主な裁判例・命令例です。
 こちらも個別的労働関係に関する事例から御紹介します。
 1つ目は、東京地判令和5年2月28日の事件です。労働契約の承継に関するものでございます。
 事案の概要としましては、労働者が、分割会社による解雇の無効を主張して、雇用契約上の地位確認を求めた事案です。
 訴訟係属中、承継会社が、会社分割により労働者が所属していた分割会社の事業部門を承継したと主張して、訴訟参加しました。
 裁判所の判断としては、会社分割の当時会社は、会社分割によって、映像制作部門の事業及び映像制作部門に所属する労働者を承継する旨を合意したものと認められる。
 そうすると、映像制作部門は、「承継会社等に承継される事業」に該当するところ、本件解雇が無効である以上、当該労働者は、映像制作部門に所属する労働者として、「承継会社等に承継される事業に主として従事するもの」に該当し、本件雇用契約について、「分割契約等に承継会社等が承継する旨の定めがある」場合に該当すると解すべきであるから、本件雇用契約上の使用者たる地位は、会社分割の効力発生日をもって承継会社に承継されたこととなるとされました。
 2つ目は、エイボン・プロダクツ事件です。5条協議・7条措置に関するものでございます。
 本件は、分割会社が会社分割の方法によって自社工場を分社化した際に、労働契約を承継するとされた労働者が、その手続に瑕疵があるので、労働契約承継の効力を争うことができる旨を主張するなどした事案です。
 裁判所の判断としては、承継法3条によれば、5条協議がまったく行われなかった場合、または、会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため承継法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には、労働者は労働契約承継の効力を争うことができるとし、日本アイ・ビー・エム(会社分割)事件(最二小判平成22年7月12日判決)を参照した上で、労働契約承継法指針の定めるところは合理性を有するといえるから、本件において5条協議が法の求める趣旨に沿って行われたかどうかを判断するに当たっては、それが労働契約承継法指針に沿って行われたものであるか否かも十分に考慮されるべきであるとしました。
 その上で、本件については、当該労働者は、分割会社から本件会社分割の目的や、それによる労働条件の変更が特段ない旨を他の従業員と一緒に大まかに説明されてはいたものの、当該労働者と工場長の個別の話合いにおいては、リストラを示唆される中で、労働組合を脱退することと引替えに労働契約の承継を選択するよう迫られたにすぎず、その話合いは労働契約の承継に関する希望聴取とは程遠く、承継法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかである。
 当該労働者は、本件会社分割により分割会社から新設会社への労働契約承継の効力を争うことができるとされました。
 3つ目は、東京地判令和6年3月26日の事件です。主従事労働者該当性に関するものでございます。
 事案の概要としましては、分割会社は、エラストマー事業を、新たに設立する会社に吸収分割により承継させることとし、本件分割契約の締結時点において、当該労働者が、主従事労働者に該当し、労働契約が承継会社に承継されたと主張していました。
 他方で、労働者は、本件分割契約の締結時点でエラストマー事業に従事していた事実はなく、本件労働契約が承継会社に承継されないと主張して、分割会社を相手に、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めた事案です。
 裁判所の判断としては、ゴム材料に関する業務が当該労働者の専門分野ではないとしても、分割会社は、その経営判断に沿って、担当業務を指定し又は変更することが可能であること、分割会社は、当該労働者がその研究業務において成果を収めるとともに、プロジェクト終了後も、引き続き、ゴム材料の研究開発分野におけるデジタル化等に貢献することを期待して、当該労働者の他法人への在籍出向を決定したといった経緯があることや、分割会社は、当該労働者の出向終了後、エラストマー事業に関連する業務を行っていたチームに配置していること等に照らすと、当該労働者が他法人においてエラストマー事業に関連する業務に一時的に従事していたものとはいい難く、基準日後に承継される事業に主として従事しないこととなることが明らかである場合には当たらないとされました。
 ここからは、集団的労働関係に関する事例を御紹介します。
 4つ目は、朝日放送グループホールディングスほか1社事件です。団体交渉に応ずべき使用者に関するものでございます。
 事案の概要としましては、分割会社が、事業の一部について会社分割を行うこととし、その事業に関して労働者派遣を受けていた派遣元との契約を打ち切ることとしたところ、派遣元の労働者は組合を結成し、分割会社に対して団体交渉を申し入れたが、分割会社はこれに応じなかった。
 本件は、分割会社及び承継会社に対し、労働組合からの団体交渉申入れに応じないことが不当労働行為であるとして、救済申立てを行った事案です。
 労働委員会の判断としては、派遣先が派遣労働者の労働条件等を現実的かつ具体的に支配・決定するに至っているといえるならば、派遣先が労働組合法上の使用者に該当し得るというべきとした上で、本件の事実関係においては、会社分割前の旧会社は、本件組合員らの雇用等に関する団交申入れに関して、労働組合法上の使用者の地位にあると判断されました。
 また、会社分割によって、分割会社はグループ経営管理事業等を除く事業を承継することで持株会社に移行しているところ、会社分割の前後において同一の法人格が継続したものであって、本件会社分割による法律関係の変動をもって、本件会社分割前の不当労働行為責任を免じられたとみることはできない。
 さらに、団交申入れの直後に会社分割が行われたこと、本件会社分割により、当該事業の運営に必要な人員の配置を検討し、決定する権限は承継会社に承継されたとみるべきであることから、本件組合員らの雇用等という未解決問題について団交において協議すべき地位について、本件会社分割により、承継会社に承継され、使用者性を有するとみるのが相当であるとされました。
 5つ目は、日本アイ・ビー・エムほか1社事件です。不当労働行為責任の承継に関するものでございます。
 本件は、労働組合が、分割会社及び承継会社を被申立人として、分割会社による、給与、賞与及び有給休暇に関する団交での対応が不当労働行為であるとして、救済申立てを行った事案です。
 労働委員会の判断としては、組合員らは、団体交渉において、給与が低いことなどについて根拠を示した上で、具体的な説明を求めていたのに対し、分割会社は、質問に応じた具体的な説明や回答を行わず、抽象的な回答を繰り返していたのであるから、不誠実な団体交渉に当たる。
 その上で、雇用に関する分割会社と従業員間の全ての債務等も分割会社から承継会社に免責的に承継された状況においては、分割会社から承継会社に承継される権利義務の一つとして不当労働行為責任も承継されると解すべきであるとされました。
 6つ目は、生コン製販会社経営者ら(会社分割)事件です。不当労働行為に関するものでございます。
 本件は、組合員ら及び労働組合が、分割会社の元代表取締役らは、共謀の上、労働組合の組合員を分割会社から排除するために、会社分割を行った上で、組合員らが所属する分割後の分割会社の事業を閉鎖して組合員らを事実上解雇したとして、不法行為に基づく損害賠償を求める事案です。
 裁判所の判断としては、分割会社の事業のうち製造部門を新設会社に承継させ、本件組合の組合員である本件従業員らが所属する輸送部門を分割会社に残すという会社分割をし、その後、分割会社の事業を閉鎖することにより、本件会社から本件組合の組合員である本件従業員を排除することを企て、本件会社分割を行い、その後、分割後の本件会社の事業を閉鎖したことが認められる。
 事業の主要部分を会社分割により新設会社に移転し、分割会社の事業を廃止したことは、本件組合壊滅を目的とした不当労働行為であり違法であり、分割会社の元代表取締役及び新設会社の代表取締役による共同不法行為に当たるとされました。
 7つ目は、昭和ゴム外2社事件です。団体交渉事項に関するものでございます。
 事案の概要としましては、旧会社は、労働組合に対し、会社分割を行う旨を通知した際に、労働組合は、団交において会社分割に反対するなどしましたが、旧会社は会社分割を実施しました。
 労働組合は、旧会社及び子会社らを被申立人として、会社分割前における旧会社による、会社分割に関する団交での対応等が不当労働行為であるとして、救済申立てを行った事案です。
 労働委員会の判断としては、一般的に、会社分割それ自体は、経営事項に属するものと考えられるが、会社分割による組織再編においては、労働契約の承継いかんを始め労働者の労働条件に影響を及ぼす事項が生じ得るものであるところ、本件では、労使間において本件会社分割における労働契約の取扱いが問題となっていたことからすると、本件会社分割については、分割先への雇用の承継について在籍出向の形で実施するか否かという問題を含めた従業員の労働条件に関する限りにおいて、義務的団体交渉事項に当たり得るというべきであるとした上で、本件会社分割直前の時点においては、双方が主張を出し尽くし、行き詰まりの状況に達していたものとみることができ、また、その交渉経緯において旧会社の態度が不誠実であったと認めることはできないとされました。
 それぞれの企業組織の再編ごとの裁判例・命令例の御説明は以上でございますが、再編の法形式ごとの分類ではなく、個別的労働関係に関する裁判例、集団的労働関係に関する裁判例・命令例といった形で御紹介しますと、まず、個別的労働関係に関する裁判例として、労働条件の変更の場面における労働者の同意に関して判示されたものとして、1つ目に、合併に先立って行われた、就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意が争われた山梨県民信用組合事件、合併①の事案がございました。
 2つ目に、転籍に対する労働者の同意の有無が争われた事案、事業譲渡②の事案。
 3つ目に、事業譲渡後において、譲受会社が期間の定めのない正社員として採用した労働者につき、その契約内容を期間の定めのある労働契約へ変更する同意があったかが争われた社会福祉法人佳徳会事件、事業譲渡③の事案がございました。
 次に、集団的労働関係に関する裁判例・命令例について、団体交渉に応ずべき使用者に関するものとして、合併における存続会社の使用者性に関するユナイテッド・エアーラインズ事件、合併②の事案や、会社分割における分割会社の使用者性について判示した朝日放送グループホールディングスほか1社事件、会社分割④の事案がございました。
 ほかにも、不当労働行為に関するものとして、事業譲渡の場面における不当労働行為に関するサカキ運輸ほか(法人格濫用)事件、事業譲渡⑥の事案や、会社分割におけるものとして、生コン製販会社経営者ら(会社分割)事件、会社分割⑥の事案がございました。
 続きまして、資料5を御覧ください。「事業譲渡における労働関係のルールに関する見解」でございます。こちらは、事業譲渡における労働関係のルールについて、直近で示されている見解をまとめたものでございます。
 まず、1点目でございますが、事業譲渡の場合に労働関係の当然承継ルールを設定することの当否について検討するに当たっては、第1に、多種多様な事案が存在し得る事業譲渡について、一律の強行的承継ルールが妥当するかは慎重な検討を要する。第2に、苦境に至った企業が不採算部門を売却するという場合において、事業譲渡に全従業員の承継及び労働条件維持を強制すると、事業譲渡契約自体が成立し難くなり、事業譲渡が成立していれば救われた雇用が全て失われかねないといった諸点につき、慎重に検討して判断すべきであろうとする見解。
 次に、2点目でございますが、事業譲渡における労働契約の承継については、合意承継説を基本としつつも、一定の修正的解釈を行う必要がある。具体的には、事業譲渡当事者による労働契約の承継排除については、譲渡事業の実質的同一性を要件に、解雇権濫用規制(労働契約法16条)を類推適用し、譲渡当事者の不法行為責任を肯定すべきとする見解。
 最後に、3点目でございますが、学説・裁判例では、事業譲渡の債権契約的な性格を前提にしつつ、譲渡企業・譲受企業・労働者間の合意の合理的な解釈として、雇用の承継をできるだけ認めていこうという考え方が有力であるとした上で、使用者としての地位の譲渡の類型においてのみならず、譲渡企業による解雇と譲受企業による採用の類型でも、雇用承継の黙示の合意が認められることがあるとする見解が示されているところでございます。
 最後に、資料6を御覧ください。「これまでの組織再編部会における主な御意見」でございます。こちらは、第4回組織再編部会における資料1、第5回組織再編部会における参考資料10としてお示ししておりました「主な御意見」をテーマごとに集めて再構成したものであります。なお、資料作成に当たりましては、令和7年度の部会で取りまとめを行いました企業価値担保権の創設を踏まえた事業譲渡等指針の必要な見直し等に関していただいた御意見部分は除いております。
 事務局からは以上でございます。
○山川部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいま説明いただきました議題(1)について、御質問、御意見等がありましたら、会場の委員におかれましては挙手をお願いいたします。オンラインで御参加の委員におかれましては、チャットのメッセージから「発言希望」と入力いただくか、挙手ボタンで御連絡をお願いします。御質問、御意見等ございますでしょうか。
 髙橋委員、お願いします。
○髙橋委員 ありがとうございます。委員の髙橋でございます。
 今回取り上げていただいた裁判例や命令例につき、そのまとめ方に関連しまして2点ほどコメントを申し上げます。私は労働法を専門としておりませんので、ごく雑駁なものとなることをお許しいただければと思います。
 まず、先ほど既に口頭で御案内くださいましたように、再編手法別の整理ももちろん可能なのですが、それ以外の整理もあり得るのかなと感じています。その際、再編手法の違いが事例に適用されるべき法律構成に影響を及ぼす場合とあまり関係のない場合とに分かれているのではないかとお見受けしました。例えば、集団的労働関係に関する裁判例や命令の類いは、全て労働組合法の枠組みで処理されておりますので、再編スキームの別を問わず、同じ法的枠組みの中で議論されています。これらについては、後で申し述べますが、再編スキームの事例として紹介することに意味があるのかという点から見て、若干グラデーションがあるのではないかと感じております。
 次に、個別的労働関係についてですが、労働契約の承継の有無に関しては、合併は当然承継、会社分割は主従事要件、事業譲渡は合意の有無というように、再編スキームの差異が法律構成に直結しているなと感じました。ところが、同じ個別的労働関係でも、承継後の労働条件の同意等については、いわゆる自由な意思論と呼ばれるものですが、これが再編スキームの差異を超えて、比較的横断的に適用されているかのように拝見しました。
 自由な意思論というものが、どの程度、どの範囲で妥当するものかということについては、できれば御専門の先生から御教示いただきたいところですが、それなりに広がりのある理屈であるかのように思っています。これらのまとめ方というのは、結局、これらの裁判例からどんな示唆を取り出すのが良いかということに関係しているのかと感じております。
 また、このどのようにこれらの裁判例を資料として用いるかという点に関連しまして、コメントの第2点です。例えば企業再編時の労働問題にどのようなものがあるかという事例集のように紹介するとして、それが企業再編の場面でさえあれば良いかということについても疑問に思っております。裁判所や労働委員会の判断というのは、全て当該事例の事実関係の下での特別な個別的な判断であるかと存じます。判断の内容が特に事例に依存的な内容ですと、それはちょっと極端な例ですねという事例紹介の域を出ないかと思われ、そこから何か特に規範的な内容を見いだすというのは、少し難しいのではないかと思っております。
 この点は、集団的な労働問題として御紹介いただいた例で特に出てきているように思っていまして、具体的には、資料3の6番目、サカキ運輸、法人格濫用に関するものや資料4の6番目、生コン製販会社のケースでしょうか。こちらは組合員排除の目的という主観的な要件がクリティカルなポイントになっているように拝見しました。これらはつまり、企業再編の手法云々の問題というよりかは、主観的な目的のところで結論が出ているようにお見受けしております。
 こうした事例は、企業再編時の労働問題なのかと問われると、もちろん場面としては企業再編の話ではあるのですが、法的な議論としては再編スキームとはあまり関係がないのではないかとも感じております。もっとも、こうした事例を紹介することに全く意味がないということではございませんので、再編が組合員排除の潜脱に使われ得るという実態を示すなら、有用な御紹介かなと思っております。
 また資料4の4番目、朝日放送グループホールディングスの事件など、再編と団交義務とか不当労働行為の責任の承継の問題というか、これは本当に再編の法的効果をどう捉えるのかという問題の一端であるようにも感じております。結局、これらの仕分けを何のために紹介するのかという目的があると、どれを取り、どれを取らないということがより可能になるのかなと考える次第です。
 そういう意味では、事務局への御質問になるかと存じますが、これらの裁判例や命令の例をどのような趣旨で御紹介になるかということにつきまして、もし何か現段階での御示唆がございましたら御教示いただければと思います。
 私からは以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 では、事務局からいかがでしょうか。
○労働関係法課長 御指摘ありがとうございます。
 今回御紹介しました資料2から資料5の裁判例や命令例につきましては、説明の中でも触れましたが、直近、労働者保護の在り方に関して検討を行った場というのは、平成28年にまとめていただいたものでございますので、そこからの進捗といった、この間にあった裁判例・命令例について、新たな枠組みが示されたかということも含め、ある程度網羅的にお示しし、検討の材料としていただくためにお示ししたものでございます。
 法的な構成あるいは法的な意義ということの御示唆も当然いただきたいわけでございますが、組織再編に伴う労働紛争を未然に防ぐという上でも、労使コミュニケーションというのは非常に重要でございまして、必ずしも法的なことだけにかかわらず、どういったことが問題になり得るのかということを認識した上で、労使双方あるいは行政も含めて、どういったことに留意することが必要なのかという議論も重要と思っております。1つの裁判例・命令例から、どういった示唆が1対1で出てくるかというよりは、御指摘もありましたが、これらの裁判例・命令例から問題となっている実態を把握するということも含めて、これらについて評価、御意見いただければと思っているところです。
○山川部会長 髙橋委員、いかがでしょう。何かございますか。
○髙橋委員 いえ、特にございません。ありがとうございました。
○山川部会長 ありがとうございます。
 恐らくは、裁判例をどのように見て、どのように利用するのかも含めて議論の対象になるということかと思います。
 ほかに御質問、コメント等ございますか。
 荒川委員、お願いします。
○荒川委員 初めての出席で発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
 私の実務経験を踏まえてコメントさせていただきます。内容は、丁寧な説明の重要性に関するものでございます。資料3の②の事案は、労働者の個別の転籍同意の有無については慎重に判断すべきであることが示されています。それから、③の事案では、労働者に十分説明を行ったと認められないことを理由に、合意があったと認められないとされました。この②と③の事案を踏まえ、労働者への説明においては、説明の程度や労働者に与えられた時間の猶予などが何よりも重要であると考えます。特に、私の実務経験上、事業譲渡では、会社がしっかりと説明をして、労働者もしっかりと内容を理解した上で、同意するかしないかを判断してもらうことが何よりも重要であると感じたところです。
 それから、資料2の①の山梨県民信用組合事件の最高裁判決についてです。これは退職金や賃金についての判断ですので、それ以外の労働条件にどう効力が及ぶかについては、今後の判例の蓄積を待つ必要がある一方で、重要な労働条件について、単に同意者の署名や押印という形式要件だけではなく、労働者が被る不利益の内容・程度を会社としてしっかりと説明する。あるいは、労働者もしっかりと理解した上で判断することを定着化させていくことが重要であると考えています。
 以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。
 菅村委員、お願いします。
○菅村委員 ありがとうございます。
 まず、組織再編全般における労働者保護に関する議論のスタートに当たり、改めて労側としての基本的な考え方を申し上げておきたいと思います。
 現在、いわゆるM&Aなどによる組織再編が様々な業界で進むとともに、企業価値担保権を含めて、企業の資金調達手法の多様化が進展していると考えております。一方で、組織再編に伴う労働者保護の課題に対する法的な対応は、遅々として進んでいません。前回までの部会で、企業価値担保権の実行時などの課題を踏まえて事業譲渡等指針の改正がなされましたが、それ以降も全国から、「統廃合に伴い賃金が下げられた」、「持株会社が実質的に決定権を有しているにもかかわらず、団体交渉に応じない」といった声が連合にも届いているところです。
 そうした現状を踏まえれば、今一段の組織再編時における労働者保護のルールの整備・強化は、喫緊の課題だと考えております。特に事業譲渡は特定承継であることから、労働契約の承継・不承継、労働条件の引下げをめぐる紛争が後を絶たないものと認識しております。会社都合によって、事前の話合いもなされないまま、労働者が一方的に不利益を被る事態を招くことがあってはならないと考えております。事業譲渡についても、労働契約承継法と同様に、雇用の承継ルール、労働組合等との協議の義務付けなど、法的なルールの整備をすべきであると考えております。
 その上で、資料3の事業譲渡に関する裁判例・命令に関連して、2点意見を申し上げます。
 1点目は、事例①のヴィディヤコーヒー事件についてですが、譲受会社による情報提供や、労働組合等との事前協議がなされなかったということが紛争の大きな原因になったと考えております。また、事例⑦のサイマル・インターナショナルの都労委の命令においては、労働組合への通知が労使関係上求められていると判断されたとありますが、こうした方向での対応がしっかりと行われるように、現在の指針においては全く手当てがされていない、譲受会社に対する労働組合等との手続や協議の義務付けを含め、法制化に向けた具体的な検討を進めるべきであると考えております。
 2点目です。事例③の佳徳会事件のように、正社員の地位が承継されなかったケースや、事例④のザ・キザン・ヒロ事件のように、雇用を除く事業のみが譲渡され、雇用が承継されず、整理解雇されてしまったというケースがありましたが、事業譲渡時の雇用の承継ルールがない現状については、非常に問題であると考えております。大多数の労働者は泣き寝入りを強いられているのが実態です。労働者の雇用が原則として承継されるというルールを定めた上で、雇用の維持がどうしても困難であるという場合については、労働組合等や労働者との協議を行い、譲渡会社に残留することを選択できるような法的なルールについても整備すべきであると考えております。
 以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 では、木村委員、お願いします。
○木村委員 ありがとうございます。私も今回から参加させていただきます木村と申します。よろしくお願いいたします。
 まず、資料の御説明ありがとうございました。組織再編のうち事業譲渡について、中小企業の立場から少し申し上げたいと思います。中小企業の場合は、この事業譲渡につきまして、経営状況が大変厳しくなり存続が危ぶまれるような状況において、例えば同業他社で、より規模の大きな企業に事業譲渡を行うようなケースというのが比較的多いかなと思っております。その場合に、移転する従業員の労働条件に関しては、元の所属企業よりも、一般的には業績の良い、少し規模の大きな会社というケースであれば、良くなる場合が多いのかなと推察されます。
 ただ、譲渡企業といっても、小規模事業者であっても、労働条件の法定以上の部分が制度として、あるいは明文化されていなくとも、経営者との距離の近さ等によって、あるいは企業における重要な人材ということであれば、非常に厚遇されているようなケースなどもあり、そういった場合には、元の雇用条件のほうが良いというようなケースも中にはあるのではないかと思っております。
 ほかにも、そうしたケースだけではなく、人事評価や労働条件、企業文化といったことが、譲渡会社と譲受会社、それぞれで全く異なるような場合というのは、一般的に事業譲渡といっても、本当に多種多様なケースがあるのではないかと思いますので、そこは今、御紹介いただいた判例だけでなく、実務上、様々なケースがあるのではないかと思っております。そうした企業ごと、あるいは企業二者間、そして移転対象となる従業員の方々、その三者のケースというのは本当にいろいろなケースがありまして、そこをパターン化して一律的なルールを当てはめるというのは、なかなか大変ではないかというのが、特に規模の小さい中小企業にとって率直なところではないかなと思っております。
 ただ、こうした事業譲渡の場合に、企業と移転対象の従業員の双方にとって、雇用条件や労働環境の変化において、先ほど丁寧な説明が必要だという御意見がありましたが、意思疎通や手続の不足といった、あるいは解釈の相違によって生じる争いを避けるために、企業にとっても、相手方の企業あるいは労働者との間であらかじめ明らかにしておくべきことが何なのかといったことは、判例や企業の現場における実態をもう少し多く聞いた上で参考にしながら、現行の指針をより参考となる内容、中小企業にとっても非常に分かりやすいものに見直すことができれば、それは本当に望ましいと思っております。
 これから詳細な議論に入っていくと聞いておりますが、第1回目として御説明いただいた中で感じたところです。
 以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
 まず、資料5の事業譲渡における労働関係のルールに関する見解についてコメントをさせていただきます。荒木先生は、事業譲渡の場合、労働関係の当然承継ルールを立法で整備すべきとの議論に対し、慎重な検討が必要との御見解であると理解しました。その中で、第1の理由に掲げる、多種多様な事案が存在し得る事業譲渡において、一律の強行的承継ルールが妥当するかどうかという点、つまり柔軟性の確保という観点を、労働者保護に重きを置いて考えた場合、自動承継を原則とし労働者に拒否権を与えるという労働者側委員の案は、労働者にとって、柔軟性が確保されるものと見ることも可能かとは思います。
 他方、荒木先生が、当然承継ルールに慎重な検討が必要との御指摘の第2の理由として掲げるように、そうしたルールは窮境状態における事業譲渡契約の成立を難しくすることは重く考えなければならず、事業譲渡が成立すれば、一部でも救われたであろう雇用が失われるような最悪のケースが増えるおそれがあるのではないかと思います。
 もとより、会社分割における労働契約承継法上、5条協議や7条措置といった様々な手続は、労働者の個別同意を要することなく労働契約が承継されるという法的効果に対応する形で設けられた、特別の労働者保護手続として理解すべきです。これに対して、事業譲渡の場合、労働契約の移転には、労働者本人の同意を要する個別同意原則が妥当するものであり、会社分割とは制度趣旨が異なります。
 円滑な組織再編を実現するためには、企業の置かれた状況や再編の目的・対応に応じて、多様な手法が様々に用意されていることが重要です。その意味で、事業譲渡の手続を労働契約承継法上の手続に近づけることは、こうした選択の幅を狭める意味からも慎重に考えなければなりません。
 最近の事例を見ても、民事再生法や会社更生法等の法的整理において、事業譲渡が会社の迅速な再建手段となっている側面があると思います。そうした側面を重視すれば、事業譲渡に規制をかけることについては、慎重に考えるべきです。
 最後に、労働者側委員の皆様からの、事業譲渡における譲受会社の手続に関する御提案について、一言コメントさせていただきます。これまでの部会におけるヒアリングにおいても、事業譲渡における労使コミュニケーションの主体としての役割を、譲渡会社が担う場合もあれば、譲受後の方針や事業継続への意欲を直接説明し、労働者と信頼関係の醸成を図るために譲受会社が担う場合もあり、多種多様なケースがあったと思います。
 私どもがお話を伺った事例では、例えば、譲渡会社の経営者が高齢かつ事業譲渡後にその方が経営に携わらない場合や、組織再編について、譲渡会社の経営者が経験に乏しく得手でない場合など、様々な事情から、譲受会社が主体となって譲渡会社の労働条件等を説明することで、結果として事業譲渡が円滑に進められた事例も把握しているところです。強調したいことは、事業譲渡や転籍合意方式による会社分割においては、多種多様な状況、ケース、背景があるため、コミュニケーションの主体を画一的に決めるのはふさわしくないということです。
 また、別のケースとして、会社分割において、7条措置の説明等にも含まれる内容だと思いますが、主従事労働者かどうかの判断が重要であり、その判断基準については、分割会社がよく把握していることが一般的だと思います。また、会社分割の場合、労働者の労働条件は承継の前後で変化しないため、現行法どおり、これらを最も具体的に把握している分割会社が主体となって説明等を行うのが適切ではないかと思います。
 私からは以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 オンラインで石﨑委員からの御発言希望があります。石﨑委員、お願いします。
○石﨑委員 ありがとうございます。
 今日は、事務局のほうから非常に多数の裁判例の御紹介、整理をいただきましてありがとうございました。最初の髙橋委員の御発言の趣旨と多少重なる部分もありますが、この裁判例の整理の仕方という点に関して、若干意見を述べさせていただければと思います。
 今回、まさに合併、事業譲渡、会社分割という形で、かつ、個別・集団という形で切り分けて御説明いただいたかと思いますが、この一連の裁判例について、どう横串を刺して見ていくかが、私も重要ではないかと思っています。いただいた事例の中では、組織再編スキームがどれかという、当然承継なのかどうなのかというところから、直接結論が決まるような判断がなされているもの。例えば、当然承継なので使用者の地位は受け継ぐとか、そういった判断がされているものがあり、加えて、既に各指針の中で、こういう事業譲渡の局面などで濫用的な使われ方、例えば組合員を排除するとか、正確な表現は失念してしまいましたが、譲渡に当たって不当労働行為をしてはいけないとか、法人格否認的な場合には承継が認められる場合があるとか、留意事項に記載されているかと思うのですが、そうした留意事項に当たる具体例を示すような裁判例もあるというような認識をしております。
 また、承継や組織再編のタイミングで問題になるケースと、その前後の解雇であったり、労働条件変更だったり、そういうものが問題になる事例もあるというところで、今日の御説明の最後のところでもまとめていただいていたかと思いますが、その辺り、少し区別して整理いただくとよろしいのではないかと思いました。
 もう一つ、注目できるポイントとして、これもほかの委員の方からも御発言があったかと思いましたが、プロセスというところに関して、一定の示唆を導き得るような例が何例か含まれているように思いました。例えば、合併のところですと②、事業譲渡のケースですと⑦の通知に関わるところ、会社分割ですと②。5条協議、7条措置は既に立法で規制されているものなので、当然といえば当然ですが。あと、⑤の団交に関わるところ。この辺り、どう理解するのか、そして、どう整理していくのかというところが1つ課題になると思いました。
 他方で、これも髙橋委員がおっしゃられていたことかと思いますが、例えば、資料3の⑦の通知の事例は、きちんと通知しなかったことによって支配介入に当たると判断されたところで、これはある面ではプロセスの重要性を示す意味で、非常に興味深い例だと思って読ませていただいています。
 ただ、恐らくこのケースは、労働協約の定めや、その後の労使間の経緯というものも踏まえた上での判断というところもあり、事案依存的な部分も当然ありますので、そういった点を踏まえた上で、今後、指針にせよ、パンフレットにせよ、より良く改定していくことを考えたときに、どういった形で取り上げていくのかは検討の必要があり、あるいは、どういった形で望ましい形を示していくのかというところを検討する際に参考になるのかなと思いました。
 もう一点、自由な意思に基づく同意の法理がどこまで適用されるのか、研究者的には非常に興味深い論点も見られるように思いました。この辺りは、個人的にも考えていきたいと思っていますが、いずれにしても、「自由な意思に基づく同意」や「真の同意」というような言い方をするかどうかはともかくとしても、この組織再編に伴う労働条件変更等において、同意を得るまでのプロセスとして丁寧な手続が要請される点は、実際上、あまり大きな違いはないのかなと考えています。
 まだ固まっていない部分もあって非常に恐縮ですが、以上、意見とさせていただきます。
○山川部会長 ありがとうございます。
 今おっしゃられた山梨県民信用組合事件は、最高裁判決の射程等について、まさに学者がいろいろ議論しているという状況でございます。
 ほかに何か。
 浜田委員、お願いします。
○浜田委員 ありがとうございます。
 私からは、会社分割時の労働者保護ルールについて発言させていただきます。会社分割は、ご存じのとおり、承継法や同指針が適用されており、事業譲渡よりは法的なルールが整備されておりますが、実際には未だ課題があると考えており、その観点で3点ほど意見を申し上げたいと思います。
 まず、1点目は、不採算事業の分割についてです。不採算事業に主に従事している労働者は、分割に伴って分割先の会社に移ることになるものの、今の会社に残りたいと思っても、現行ルールでは異議申出が認められておりません。経営上の理由で不採算事業に残され、異議申出すらも認められないというのは不合理ではないかと考えております。当事者となる労働者には、異議申出を認める方向で検討を行うべきではないかと考えております。
 2点目は、会社分割の判例等についてですが、資料4の①や③の事例のように、承継される事業に主に従事しているか、そうでないかという点が問題になる事案が幾つかあるのですが、これは先ほど申し上げた異議申出ができるか否かにも関わってくる問題であり、承継法指針では、働き方の実態に基づいて判断されることなどが明記されています。ルールとしての実効性を高めるには、法律などへの格上げが必要ではないかと考えております。
 最後に、労働組合等との事前協議についてです。現行ルールでは、資料1の8ページにあるように、分割会社には、労働者との個別協議や、労働者・労働組合への通知が課せられておりますが、分割前の過半数労働組合等との協議は努力義務にとどまっており、さらには承継会社には何ら手続や義務は課されておりません。分割だけではなく、組織再編全般に言えることですが、再編後の事業活動の発展にも労働者の理解と協力が不可欠であることを踏まえれば、労働組合等との事前協議の義務化を図った上で、承継会社等にも同様のルールを課すことが必要ではないかと思っております。
 早い段階から、移行する労働者の範囲や移行後の労働条件を丁寧に説明し、労働者の不安を解消して納得感を高めることは、結果としてスムーズな企業再編につながります。こうしたルールは、決して労働者のためだけではなく、円滑な再編が実現されることで、企業の経営にも良い影響が及ぶことを申し添えておきたいと思います。
 私からは以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。
 小林委員、お願いします。
○小林委員 ありがとうございます。
 私からは、先ほど菅村委員も指摘していた事業譲渡の承継ルールの法制化の必要性について発言させていただきます。資料5に記載がある事業譲渡時の承継ルールについて、学説、裁判例では、3つ目の黒丸に、譲渡企業・譲受企業・労働者間の合意の合理的な解釈として、雇用の承継をできるだけ認めていこうとの考え方が有力とした上で、譲渡企業による解雇と譲受企業による採用の類型でも、雇用承継の黙示の合意が認められることがあるとの記載があります。そうしたことからすれば、事業譲渡時の承継ルールを法制化することは、実務や実態とかけ離れたものではないと言えるのではないかと思います。譲渡前に締結された労働協約の承継ルールも併せて法整備を進めることが必要であると考えております。
 続いて、会社分割や事業譲渡などに共通する使用者性の課題について意見を申し上げます。事業譲渡の裁判例、資料3の⑥のサカキ運輸ほか(法人格濫用)事件や、会社分割の事例、資料4の④の朝日放送グループホールディングスほか1社事件、そして⑤の日本アイ・ビー・エム事件ほか1社事件にも関連しますが、再編時においては、労働契約の当事者である使用者が変動することから、労働組合による団体交渉の相手方としての使用者性が問題となっております。この点、実質的な決定権を持っているのは親会社や持株会社であるにもかかわらず、労使関係がないとして団交を拒否されるケースも実際に見られるところです。
 私が所属している電機連合においても、指針にも記載された判例・命令を踏まえて、個別事案ごとに対応を図っておりますが、法的な担保がないため、実効性には大いに課題があるのが実態です。実際、加盟組織においては、ホールディングスとグループ労連本部とで、個社の労使協議や交渉と並行して真摯な協議が行われている組織があるのも事実です。しかし、一方では、実質的な決定権を持っていると思われるホールディングスに、グループ労使関係の在り方について協議を要請しても、それさえ受けてもらえないようなケースもあります。こうしたことを踏まえますと、親会社、持株会社や投資ファンドなどを含め、労使関係の実態を踏まえた使用者概念や団交応諾義務の明確化が必要であると考えております。
 以上の点も含めて、この部会では、労働者保護の強化を図る方向での前向きな検討を進めていくべきであると考えております。私からは以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。
 荒川委員、お願いします。
○荒川委員 2回目の発言となり、恐縮です。
 先ほど、会社分割における主たる従事労働者、従たる従事労働者の話が出たかと思いますが、私も実務上、特に従たる従事労働者で非常に悩ましい検討や判断をした経験があります。御本人にとっては判断が非常に難しく、また、先ほども意見があったように、承継会社に移った後でどれだけ活力を持って働いていただくかという観点も非常に大事だと思います。そのため、出向者や複数部門の兼務者、研究開発や間接部門の方々について、どういった条件や事情により主たる従事労働者への該当性を判断すべきかを、指針やQ&Aにおいて、事例、判例を踏まえて具体的に示すことが、今後の検討課題の一つであると考えます。
 以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 成田委員、お願いします。
○成田委員 発言の機会をいただき、ありがとうございます。
 私からは、2点意見を申し上げます。
 まず、1点目は、先ほど髙橋委員と石﨑委員から既に出されましたが、裁判例の整理についてです。既に意見が出されており、私も同じ意見ですが、この部会が何を目的として、どういう方向で議論しているのかというところに沿って、少し交通整理の必要があるのではないかと思います。
 2点目ですが、資料5について3つ学説を挙げていただいております。研究雑誌レベルの研究論文ですと、最新の論文がいくつか出ております。ただ、あまり検討の素材を広げ過ぎると収拾がつかなくなってしまう可能性はありますが、もう少し検討する素材として幅を広げて取り上げてもいいのかなと思いました。
 以上です。ありがとうございます。
○山川部会長 ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。
 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 まず、先ほど小林委員からの御発言についてです。学説に関して、私がコメントするのはおこがましいのは承知しつつ、申し上げたいと思います。菅野先生、山川先生は、雇用承継の黙示の合意が認められることがあると指摘されており、これを肯定的に捉えていると理解しております。ただし、留意点として、裁判官が個別事案を見て行う合理的な意思解釈に基づく黙示の合意は、労働者救済の側面が強いため、立法化にはなじまないと感じています。つまり、望ましい行動規範として参考にすることはあるかもしれませんが、やはり個別事案ですので、どのようなケースで黙示の同意が認められるのかという裁判例の分析はなかなか難しいのではないかという感想を持ったところです。
 それから、サイマル・インターナショナル事件について、石﨑先生から事案依存の色彩があるのではないかとの御発言があったと思います。この事件から得られる示唆として、労働協約に通知義務条項を入れている個別企業労使があることは、広く周知してもいいのではないかと思いますが、通知義務があるかの判断は事案依存的であり、こうした事案において義務が発生する射程はかなり狭いことは、認識しておく必要があると感じます。
 かねてより申し上げておりますが、通知については、例えば情報開示によりインサイダー取引の発生が懸念される場合や、事業譲渡の相手方との秘密保持契約を締結している場合も想定されます。組合への通知や協議を行うことの望ましさは、私も十分理解していますが、画一的な規律を設けることについては、難しさがあることを改めて申し上げます。
 以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 菅村委員、どうぞ。
○菅村委員 ありがとうございます。
 先ほど、事業譲渡においても承継法の手続に近づけるのは慎重に考えるべきではないかとの御発言がありましたが、労使の力関係の差には大きなものがあり、何らルールがない中においては、労働者が大きな不利益を被っています。その力関係の差を埋めるためには一定のルールが必要であると考えており、原則承継ルールを定めていくことは欠かせないと思っております。
 加えて、これまでも、強制的に雇用を維持することについては、逆に事業譲渡がうまくいかなくて雇用が失われるのではないかとの御指摘があったと承知しておりますが、雇用が失われることを理由としてルールを一律に設けなくて良いということにはならないのではないかと思っておりますので、意見として申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。
 文献のほうで菅野先生と私のものが出てきていますが、参考にされている記述の判例も見ていただければと、それだけ申し上げておきます。
 ほかはよろしいでしょうか。
 種々有益な御意見ありがとうございました。成田委員の御質問との関係ですが、何のための議論をするのか。そのこと自体、最終的な取りまとめがどうなるのかに大幅に依存するお話ではあるので、なかなか難しい点はありますが、いずれにしても、事例は現実に起きていることなので、今日は広めに紹介していただいたのですが、それをベースに何を学べるかを考えることについては、行為規範的なものも含めて、さらなる分析が必要かと思っております。
 研究者としては大変面白いお話があり、髙橋委員が言われた、不当労働行為事件は少し違うのではないかというのは、まさにおっしゃるとおりで、会社分割や事業譲渡にしても、権利義務関係が移転するかどうかの話ですが、不当労働行為は権利義務を取り扱うものではなく、労組法7条に該当するかどうかということで、不当労働行為責任の承継という言葉も、一旦命令が出るまではそれに基づく権利義務はないので、手続上の地位の承継みたいなことになるということで、考え出すと切りがないですが、行為規範レベルでどうするかという問題は出てくるかと思います。
 あと、会社分割そのものについて、労働契約承継法そのもののルールをどう考えるかということも出てきました。会社分割の場合、労働契約承継法のもとで、従たる従事と主たる従事の区別がつきにくいケースがあることはおっしゃるとおりかと思います。その場合、今の承継法は、御指摘がありましたように、分割される事業に主として従事している労働者は、本人が嫌だと言っても転籍されるということですが、事業譲渡のルールを会社分割に合わせるのは、先ほどの労働側委員の2人のお話を合わせると、そうした強制的な転籍まで認めるという意味ではないという御意見と理解してよろしいのかなと思ったところです。
 私の個人的な感想まで申し上げてしまいましたが、事務局から何かございますか。
○労働関係法課長 部会長のほうからも総括いただきまして、ありがとうございました。引き続き御意見いただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○山川部会長 今の話に関係してくる部分がありますが、次の議題(2)「今後の進め方について」に移りたいと思います。では、事務局からお願いします。
○労働関係法課課長補佐 それでは、資料7を御覧ください。今後の進め方について、本年度以降のスケジュールを記載したものでございます。
 具体的には、今後、JILPT海外の実態把握調査の報告、M&A調査会社へのヒアリング、JILPT企業・労働組合アンケート調査の報告、弁護士へのヒアリング、労使関係団体へのヒアリングを行った上で、委員皆様に御議論いただきながら論点整理を進めてまいりたいと考えているところです。また、各項目について、逐次フリーディスカッションを予定しております。
 この点につきまして、参考資料9を御覧ください。こちらは「海外及び国内の実態把握のための調査の概要」として、JILPTに依頼しております海外及び国内の実態把握に関する調査概要を記載したものでございます。
 調査の内容でございますが、組織再編に伴う労働法制及び実務上の影響に関する海外調査につきましては、海外の実態把握として、イギリス、ドイツ及びフランスにおける事業譲渡時の労働関係に関する法令及び実務の取扱い等を調査するものとなっております。
 また、企業組織の再編に伴う労働関係上の諸問題に関する調査(企業調査・労働組合調査)につきましては、国内の実態把握として、企業及び労働組合における企業組織の再編時の労使関係(労使コミュニケーションの内容等)等を調査するものとなっております。
 これらの調査結果につきましては、結果を取りまとめ次第、本部会に報告する予定となっております。
 事務局からは以上でございます。
○山川部会長 ありがとうございます。
 では、ただいまの説明につきまして、御質問、御意見がありましたら、先ほどと同様の形で御連絡あるいは御発言をお願いいたします。
 菅村委員、お願いします。
○菅村委員 ありがとうございます。
 先ほどから、様々な御意見があったところかと思いますが、組織再編全般を射程に置いて、それぞれの形式にこだわらず、共通する問題などがあったのかと思っております。それぞれの場面における労働者の保護の在り方として、幅広く議論することを踏まえれば、事務局よりお示しいただいた進め方の案について異存はないところです。
 先ほど山川先生からもありましたが、集団的労使関係も含めて、労働者・労働組合等が直面している組織再編時における課題・実態を踏まえつつ、法整備を念頭に置いたルール化に向けて、労働側としては積極的に議論に臨んでまいりたいと考えております。
 以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 成田委員、どうぞ。
○成田委員 ありがとうございます。
 少し議論を戻してしまい恐縮ですが、先ほど会社分割の際の主従事労働者かどうかの判断のところで、浜田委員や荒川委員から御発言がありましたとおり、日本はジョブ型雇用ではないので、主従事労働者かどうかの判断は非常に難しいところだと思います。今後の進め方に海外調査がありますが、特にドイツはジョブ型雇用で職務がはっきりしていますが、それでもなお、再編時には事業所委員会とよばれる従業員代表が非常に大きく関与します。今後の検討に対して非常に大きな示唆があるのではないかなと期待しております。
 以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 研究会のようになって恐縮ですが、成田委員、ドイツでは、主たる従事者かどうかが包括承継ルールと特定承継ルールで特に区別されていないですね。その場合に、それが直接議論されるということはあるのでしょうか。
○成田委員 直接議論されるというか、日本よりも主従事者がはっきりしているけれども、従業委員代表が承継対象者の選定等を含めた使用者との協議に、積極的に関与しているという印象です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 つまり、労使協議で承継される方を決めていく場合に、ジョブ型雇用ですと、どういう職務をしているかというのが実際上、非常に重要になるという議論ですね。ありがとうございました。非常に勉強になりました。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 今後の部会の進め方や調査の進め方については、異存ございません。
 ただいま成田先生からも発言されたように、法令だけでなく、海外における実務上の取扱いというところは結構重要だと思います。日本と諸外国では、労使慣行や様々な労働条件の変更、雇用関係の終了に関する仕組みも異なりますので、組織再編だけでなく、周辺部分も含め全体像が分かる調査となるよう御留意いただけるとありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
○山川部会長 ありがとうございます。
 その辺りは、事務局のほうで御配慮いただければと思います。
 ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
 では、予定されておりました議題は以上ですが、事務局から次回の件等について何かございますか。
○労働関係法課課長補佐 次回の部会の日時、場所については、調整中ですので、追って御連絡いたします。
○山川部会長 それでは第7回の部会はこれで終了いたします。
 お忙しい中、お集まりいただき、また活発な御議論いただきまして、大変ありがとうございました。