2026年7月14日 第210回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和8年7月14日(火) 14:00~16:00

場所

AP新橋 Aルーム
(東京都港区新橋1-12-9 新橋プレイス 3階)

出席者

公益代表委員
川田委員、神吉委員、黒田委員、首藤委員、原委員、水島委員、山川委員
労働者代表委員
亀田委員、佐藤(好)委員、椎木委員、菅村委員、春川委員、古川委員、松田委員
使用者代表委員
加藤委員、佐藤(晴)委員、鈴木委員、田中委員、田上委員、鳥澤委員、福本委員
事務局
岸本労働基準局長、尾田審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、松本審議官(労災、賃金担当)、松下総務課長、川口労働条件政策課長、西海監督課長、田邉労働条件確保改善対策室長、大野賃金課賃金支払制度業務室長、田上労働条件政策調整官、内村労働関係法課長補佐、下田労働条件企画専門官

議題

(1)資金移動業者の口座への賃金支払制度について
(2)労働市場改革分科会等について(報告事項)

議事

 
○山川分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第210回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
 本日の分科会は、会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で開催とさせていただいております。
 本日の委員の出欠状況ですが、労働者代表の櫻田あすか委員、使用者代表の兵藤美希子委員、公益代表の安藤至大委員が御欠席と伺っております。
 カメラ撮りがありましたら、ここまでとさせていただきます。
○山川分科会長 それでは、早速、本日の議事に入りたいと思います。
 議題の(1)は「資金移動業者の口座への賃金支払制度について」ということでございます。事務局から説明をお願いします。
○大野賃金課賃金支払制度業務室長 賃金課でございます。
 それでは、私から資料№1「資金移動業者の口座への賃金支払制度について」、御説明させていただきます。
 1ページ目を御覧いただければと思います。前回5月13日の労働条件分科会における主な意見をまとめたものです。
 制度の見直し(全般)に関する御意見と、破綻時の資産保全要件について項目を分けています。前回の分科会で特に御議論いただいた破綻時の資産保全要件についてですが、制度の中核的要件であり、労働者保護の観点から6営業日以内に口座残高を全額弁済するという要件は重要であり、堅持すべき、また、資金移動業者のコスト削減のみを目的に制度見直しをすべきではないが、資金移動業者が破綻しても6営業日以内に労働者の債権を全額弁済できる確実な方法が別途存在するのであれば分科会で議論してもよいのではないかといった御意見、また、改正資金決済法の直接返還では、破綻時の具体的な弁済期限は定められていないが、賃金のデジタル払いの要件は労働政策審議会の議論を経て賃金支払いの安全性や確実性を担保するために設けた不可欠な要件であり、維持すべき等の御意見を頂きました。
 2ページ目をおめくりいただければと思います。本日御議論いただきたい事項を記載しております。
 1つ目が指定代替口座の必置要件について、2つ目が、その他の要件として、(1)個人情報の取扱いに係る第三者機関による認証の取得要件、(2)資金移動業者の口座から現金で払出しを行う場合、1円以上1円単位で行えるとしている要件でございます。
 3ページ目をおめくりいただければと思います。以降は、本日御議論いただきたい事項に関する制度概要、論点等を記載したものでございます。
 まず、指定代替口座の必置要件についてです。制度の概要ですけれども、資金移動業者の口座への賃金支払いを希望する労働者は、口座残高が受入上限額を超えた場合の超過分の送金、また、指定資金移動業者の破綻時における弁済のため、制度利用時にあらかじめ預貯金口座等を登録するとされております。このため、日本の預貯金口座等を開設していない場合、制度利用に当たって預貯金口座等を開設する必要があるところです。
 現時点で指定を受けている資金移動業者の口座の受入上限額は、企業により異なりますが、10万円から30万円となっておりまして、この上限額を超えた給与が支払われるケースは十分起こり得る状況になっております。また、資金移動業者の破綻時には、労働者に資金が確実に返還される必要があることも踏まえつつ、送金先の運用を見直す必要があるかといった論点を記載しております。
 下の点線囲みは、関連する規制改革実施計画の該当箇所を抜粋したものです。以降のページでこの部分の記載内容に関連する補足説明をさせていただきます。
 4ページ目をおめくりください。外国人に対する預貯金口座の開設状況についてまとめたものです。
 まず、前提として預貯金口座を開設する場合は、マネー・ローンダリング等の観点から利用者情報を確認することとなりますが、外国人の場合について、一般的には在留カード等の提出を求め、確認しているところです。これらの法令・実務上の取扱いは資金移動業者の口座開設に当たっても同様となります。
 日本国内の企業で働く外国人労働者の場合は、必要書類がそろえば日本国内の居住期間にかかわらず預貯金口座の開設が可能となっています。
 留学生など労働者以外の外国人の場合であっても、必要書類がそろえば口座開設は可能ですが、日本入国後6か月未満の場合、国内送金が国際送金として取り扱われる等、預貯金口座の機能に一部制限が加わるといったことがある旨、確認しております。
 なお、金融庁から金融機関に対しては、外国人顧客対応の優良事例等の周知、マニュアル等の整備を求めるなど、外国人口座開設等に関する取組を進めていると承知しております。
 また、下のグラフは、民間企業の調査ではございますが、在留外国人に対する預貯金口座の開設状況に関する回答です。預貯金口座を開設していないと回答した割合は本調査では0.3%でございます。
 続きまして、5ページ目を御覧ください。資金の送金先に関する補足あるいは前提といたしまして、外国人労働者が保有する海外の銀行口座への賃金支払いについて現行制度の状況を説明するものです。
 まず、労働基準法では、賃金の通貨払いの原則を定めた上で、同法施行規則において銀行その他の金融機関に対する預貯金の振込が認められております。ここで銀行とは、銀行法の免許を受けた銀行を指しておりまして、この中には日本国内で銀行業を営んでいない外国銀行は含まれないことから、日本に居住する外国人の賃金支払いに当たって、外国の銀行口座を利用する場合には、日本国内で銀行業を営む外国銀行の国内支店に対する振込のみが認められているところでございます。
 続きまして、6ページ目を御覧いただければと思います。ATMによる現金受取サービスについての説明です。
 一部の資金移動業者では、提携する銀行のATMから現金を受け取ることができるサービスを提供しておりまして、銀行口座を開設していない利用者であっても、メールアドレス等に届いた認証番号の情報等によりまして、現金を受け取ることが可能となっております。このように、銀行口座を保有しない利用者の方も含めて現金受取の選択肢となっているサービスでありますが、ここに記載しておりますとおり、例えば受取上限として数万円から数十万円の上限が設定されていること、受取期限として数日から数十日の受取期限が設定されていること、サービスを提供する企業が破綻した場合の保護の取扱いについて資金決済法に基づき資金が返還されることなど、預貯金口座と異なる取扱いとなっている面があるところです。
 以上、指定代替口座の運用先の御議論に当たっての補足説明でございます。
 続きまして、7ページ目を御覧いただければと思います。ここからは2つ目の課題のその他の要件について、補足となる制度説明や論点を記載したものです。
 1つ目が、個人情報の取扱いに係る第三者機関による認証です。
 まず、前提といたしまして、資金移動業者は、個人情報保護法令等に基づきまして、利用者情報の安全管理措置等を講じることとされております。個人情報の取扱いに関して法令上求められる措置は銀行と同様となっております。
 その上で、資金移動業は銀行業と異なり、他業との兼業禁止規制がない中で、賃金の受取、決済、送金といった個人情報が扱われるようになることを踏まえ、ガイドラインではプライバシーマークまたはISMS認証のいずれかを取得することを要件としているところです。この要件については、プライバシーマークを取得していないので申請は検討していないといった資金移動業者の声があったことを受けまして、規制改革実施計画においては、第三者機関による認証を求めないということについて見直しの要否を含め検討することとされております。
 論点としましては、銀行の場合、賃金支払いに当たって同様の要件は設けられていないことを踏まえ、本要件を緩和することについてどう考えるか、また、制度創設時の御議論においては、プライバシーマークまたはISMS認証等を取得していることを要件とすることについて了承いただいた経緯がございますけれども、必ずしもプライバシーマークまたはISMS認証に限定しないとしても、引き続き、これらに準じた個人情報について適切な保護措置を講ずる体制を整備していることの第三者機関認証を求めることについてどう考えるか、記載しております。
 次に、8ページ目を御覧いただければと思います。その他の要件の2つ目、1円以上1円単位での現金化の論点についてです。
 口座残高の現金化に際しましては、ATM等の利用や預貯金口座等への出金などの手段を通じて、1円以上1円単位でできることが指定要件とされております。なお、提供する払出し方法の全てにおいて1円単位での払出しを求められるものではなく、1円単位で払出しが可能な手段を1つ以上有していれば指定要件を満たすとされております。
 その上で、ほかの賃金支払い手段との比較でございますが、まず、銀行等の場合ですと、預金者から返還請求があったときは、その請求と同額の金銭を返還することができるとされておりまして、実務上も、実店舗を有する銀行あるいはネット銀行等の実店舗を有さない銀行のいずれにおいても、何らかの手段を通じて口座残高を1円以上1円単位で払い出すことができるとされております。また、証券総合口座についても、労働基準法施行規則に基づき、賃金支払い先として選択できることとされておりますが、この施行規則の規定により1円単位での払出しができるということを要件としているところです。
 規制改革実施計画においては、この要件について廃止の上、例えば紙幣単位での払出しを認めることについて記載があるところですが、引き続き、本要件を認めることについてどう考えるかということで論点として記載しております。
 なお、前回の分科会でお示ししましたが、令和7年度に実施した労働者のニーズ調査におきまして、賃金のデジタル払いを利用するに当たって重視する点として、約36%が残高を紙幣単位でなく1円単位で現金化できることと回答している結果となっております。
 次のページ以降は、参考資料としてお付けしているものでございます。参考資料①は外国人の銀行口座開設に関する補足資料として、金融庁の取組や外国人労働者に関係する団体へのヒアリング関係資料、参考資料②及び参考資料③では、前回資料との重複もありますけれども、賃金デジタル払いの制度概要あるいは資金移動業の規制等に関する参考資料等、本議題に関連する資料をお付けしております。
 私からの説明は以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 では、ただいまの事務局からの説明につきまして、御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。オンライン参加の皆様におかれましては、御発言の希望があります場合にはチャット機能でお知らせください。御質問、御意見等ございますか。
 菅村委員、お願いします。
○菅村委員 ありがとうございます。
 前回の分科会でも発言いたしましたが、労働者の生活の糧である賃金が安全かつ確実に支払われるための上乗せの要件はいずれも堅持すべきであると考えております。その上で、主に論点の1つ目の指定代替口座の必置要件について意見を申し上げたいと思います。
 そもそも資金移動業は、銀行預金とは異なりまして、資金の滞留を前提としたものではない業態であると認識しております。そうしたことを踏まえて受入上限額が設定されていることからして、受入上限を超えた場合の受入れ先として預貯金口座等の登録を求めることは当然に維持すべきだと考えております。
 一部に、外国人労働者の方を念頭に置いて外国銀行への口座の送金を認めるべきとの意見もあると伺っておりますけれども、資料№1の4~5ページに記載がございますように、預貯金口座の開設に際しては、マネー・ローンダリングやテロ資金供与を防ぐ観点から必要な規制が設けられているものと認識しております。加えて、外国人労働者の方に国内の居住期間にかかわらず日本国内の預貯金口座の開設は認められており、11ページのヒアリング結果を見ても、実態としては支障が生じておらず、ニーズもないということから、要件の見直しは不要であると考えます。
 その他の要件については簡潔に申し上げたいと思います。個人情報に係る第三者認証の取得及び1円単位での現金化の指定要件についても、もともと本分科会で「銀行口座と同等または同程度の労働者保護が図られるようにする」という方向性が確認された上で設けられたものであり、いずれも賃金の確実な支払いのために重要な要件です。仮に第三者機関認証の範囲を見直すという場合であっても、プライバシーマークまたはISMS認証と同水準の認証であることを確実に担保することが必要であると考えます。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかに御質問、御意見等ございますか。
 松田委員、どうぞ。
○松田委員 御指名ありがとうございます。
 菅村委員からも発言がありましたけれども、いずれの要件につきましても、賃金の安全性や確実性を担保するために設けられたものであるということを踏まえれば、引き続き堅持すべきであると考えております。
 その観点で2点、追加的に発言させてください。
 1点目は、指定代替口座の必置要件についてです。規制改革実施計画では、預貯金口座等だけではなく、ATMによる現金受取サービス等への代替に言及されておりますが、資料№1の6ページで御説明いただきましたとおり、受取上限や受取期限が設定されているなど、ATMによる現金受取サービスは預貯金口座とは取扱いが全く異なります。これでは、受取上限額を超えた場合の超過分を全て受け取れなくなるなどの弊害があることから、認められないと考えております。
 2点目につきましては、1円以上1円単位での現金化についてです。こちらにつきましても、通貨払いの原則を踏まえ、デジタル払いで賃金を受け取る場合も現金化できることを保障した上で、その単位は銀行並びで1円単位としたものでありますが、デジタル払いの場合だけ異なる単位にする事情もないことから、本要件も堅持すべきであると考えております。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 本日の論点につきましても、委員の皆様から有益な御意見を頂きました。
 では、事務局においては、前回の審議も含めてこれまでに出た御意見を踏まえながら、各論点への対応について具体的な検討を進めていただくようにお願いいたします。
 本議題につきましては、引き続いて本分科会で御議論いただきたいと考えております。
 では、続きまして、次の議題に移りたいと思います。議題の(2)「労働市場改革分科会等について」、こちらは報告事項でございます。事務局から説明をお願いします。
○松下総務課長 労働基準局総務課でございます。
 私のほうから資料№2-1「日本成長戦略会議 労働市場改革分科会 とりまとめ」の資料につきまして、内容を御報告させていただきます。
 日本成長戦略会議の下に設けられております労働市場改革分科会におきまして、構成員の皆様方に全4回にわたり御議論いただき、6月2日にとりまとめを公表したところでございます。その内容について御説明させていただきます。
 3ページ目を御覧いただきたいと思います。「はじめに」というところでございます。上から4つ目に「労働力がより希少になる中でも、我が国の労働供給力強化を実現していくためには、17の戦略分野等の成長分野における人的資本投資の促進や成長分野への円滑な労働移動といった労働生産性の向上に向けた取組を進めていくとともに、女性や高齢者をはじめとした、多様な人材の労働参加の促進など、労働市場全体の労働供給力強化に向けた改革を進めていく必要がある」としております。
 また、5つ目に「社会インフラの提供体制の確保に向けては、その担い手である中小企業・小規模事業者の活力の維持・強化や必要となる人材の不足を解消する必要があり、AIの活用も含めた省力化や、効率的な業務分担等の推進、他職種と遜色のない処遇改善の継続的な実施、働く環境の基盤整備、多様な人材の参入促進等が求められる」としております。
 続いて、6つ目に「併せて、以上のような改革の推進のためには、第一に適切な価格転嫁やビジネスモデルの転換、新商品・新サービスの開発、事業承継・M&Aなど経営改善に関わる取組とも整合性を持って進めること、第二に業務効率化等を通じた労働生産性の向上やそのための人材の育成・確保、労働者の働く意識に合わせた働き方改革の推進、多様な人材の活躍を可能とする誰もが働きやすい労働環境の整備などの人材マネジメントの見直しを行うことも必要である」としております。また、「労働力供給制約下では、こうした経営戦略と人材戦略の連携強化がより一層重要となってきており、特に我が国の大宗を占め、人材の育成・確保に課題を抱える中小企業におけるこれらの連携を強化していくことが求められる」ととりまとめております。
 5ページ目以降からでございますが、労働市場改革の方向性についてとりまとめをしております。全体について申し上げますと、5ページ目からが、1つ目の柱である「処遇向上に向けたリ・スキリング支援や労働生産性の向上」となっております。
 11ページ目からになりますが、2つ目の柱である「労働者の希望に応じた円滑な労働移動の促進」に関するものとなっております。
 13ページ目からでございますが、3つ目の柱である「多様な人材の労働参加の推進」に関するものとなっております。
 20ページ目以降の「4 中小企業をはじめとした、企業の人材マネジメントへの支援」のところでございますが、この中で、こうした3つの柱による改革については各企業において人材マネジメントが進められていくことを通じて実現するものであり、20ページ目の最後の行にございますが、「人材マネジメント強化のための新たな中小企業支援ネットワークの構築」等を進めていくべきであるととりまとめております。
 本日は、特に3つ目の柱であります「多様な人材の労働参加の推進」のうち、労働基準局、労働基準行政に関連いたします「(1)柔軟で多様な働き方の実現に向けた労働時間法制等」について御説明させていただきます。
 戻りまして、13ページ目を御覧いただきたいと思います。13ページ目から14ページ目の中ほどにかけましては、先ほど申し上げました「多様な人材の労働参加の推進」に関する現状と課題を整理しております。13ページ目の2つ目に「生産年齢人口の減少が続く中でも、リーマンショック以降の労働供給量は、女性や高齢者を中心とした就業者数の増加により維持されてきた。女性や高齢者については、既にこれまでの取組を通じて就業率が高まっていることを念頭に置きつつも、労働力供給制約下での我が国の経済成長の実現に向けて、更なる労働参加を促進していく必要がある」としております。
 また、3つ目に「国内には、就業意欲はあるが求職活動を行っていない無業者や育児・介護等一定の制約を理由に非正規雇用を選択している労働者が約700万人存在していると考えられるほか、一定限度内で労働時間を増やしたいとする労働者も1割程度存在しており、労働力供給余地をいかし労働参加を進展させるシナリオでは、2040年においても2022年の総労働時間をほぼ維持できると推計されている」としております。
 4つ目に「生産年齢人口の減少に伴う労働力供給制約が進む中、長時間労働が可能な一部の者に依存する働き方では、持続的な成長は見込めない。女性や高齢者、さらには自身の創造的な能力を発揮したい者など、多様な事情や希望を持つ誰もが働きやすい労働環境を整備し、心身の健康維持と従業者の選択を前提に、柔軟で多様な働き方の実現が不可欠である」としております。
 最後に「労働時間に関する制度・運用については、罰則付きの上限規制が適用された『働き方改革関連法』の施行から約7年が経過し、週60時間以上働く労働者の割合が低下するなどの成果も見られる一方、一部には、『働き方改革』のメッセージが必ずしも正確に受け止められていなかったのではないかとの指摘も見られる。『働き方改革』の今日的な意義は、労働者の健康確保やワーク・ライフ・バランスの確保の観点から長時間労働の是正を図るとともに、労働生産性の向上を促し、併せて多様な人材の労働参加を可能とすることを通じて労働力希少社会において持続的な労働供給の確保につなげるものである」ととりまとめております。
 14ページ目の1つ目、これは、今年の3月に本分科会におきまして報告させていただきました「働き方改革関連法施行後5年の総点検」の結果を記載しているものでございます。
 続いて「(1)柔軟で多様な働き方の実現に向けた労働時間法制等」について御説明させていただきます。以降の白丸につきましては、現状と課題、主な御意見を記載しております。その後の16ページ目にありますが、●が対応の方向性という形で構成されているものでございます。
 14ページ目から16ページ目の真ん中にかけて労働市場改革における主な御意見を整理しているところでございます。これらの御意見を踏まえまして、16ページ目の2つ目の●についてでございます。「本分科会の議論では、いずれも簡単に結論が得られるものではないが、日本成長戦略会議で取り上げた趣旨も踏まえ、労働参加率や労働生産性の向上の必要性に鑑み、労働者の健康維持やワーク・ライフ・バランスを前提とするとの認識を共有しつつ、柔軟で多様な働き方を含む労働時間法制等に係る政策対応については、夏以降の労働政策審議会において、議論を行う必要がある。時間外労働の実態との間に『隙間』がある中で、上限規制は過労死認定ラインであり、上限規制を維持し、労働者の健康確保やワーク・ライフ・バランスの確保の観点から長時間労働の是正を図るとともに、労働生産性の向上を促し、併せて多様な人材の労働参加を可能とすることが重要である。裁量労働制については、適正に運用されれば労働者にとっても良い制度であるが、長時間労働になる、裁量や適切な処遇が確保されない実態があることが指摘されている。現場の実態や労使双方の立場を十分に踏まえて、健康確保、長時間労働防止、適切な処遇確保などの濫用防止措置を前提に、裁量労働制の対象の在り方について、見直しの検討を行う必要がある。また、変形労働時間制については、他律的な要因に十分対応できていない現場の実態や、労働者の生活時間や予見可能性の確保にも留意しつつ検討を進める必要がある。労働者の健康確保や生活時間の確保が重要であり、これらは多様な人材の労働参加に当たっても重要であることから、連続勤務規制や勤務間インターバル制度の法的位置付け、『つながらない権利』の在り方、副業・兼業に当たっての健康確保、テレワークの活用促進などについて、現場の実態や労使双方の立場を十分に踏まえて、検討を進める必要がある」ととりまとめております。
 また、労働時間制度の運用につきましては、17ページ目の1つ目の●でございますが、「運用については、時間外労働の実態を踏まえた、36協定の締結や柔軟な労働時間制度の活用について、よろず支援拠点等との連携を強化しつつ、『働き方改革推進支援センター』や労働基準監督署による相談支援の充実を速やかに実施するとともに、必要な体制整備については2027年度以降も着実に実施を図る必要がある。労働基準監督署において、重大・悪質な事案に対しては厳正に対応しつつ、労働時間や労働者の健康確保措置に関する労使の合意に則った指導が行われるよう速やかに見直す必要がある」ととりまとめております。
 さらに、2つ目の●でございますが、「運輸業における荷主対策、建設業における適正な工期の確保など、業種・業態の特性に応じた働き方改革推進の取組について、業所管官庁との連携を着実に進める必要がある」ととりまとめております。
 以上が労働市場改革分科会のとりまとめの内容でございます。
 続きまして、資料№2-2「『経済財政運営と改革の基本方針2026(案)』等について」、御説明させていただきます。
 「経済財政運営と改革の基本方針2026」、いわゆる「骨太の方針2026」の案につきましては、6月30日の経済財政諮問会議におきまして、案として提示されております。また、日本成長戦略につきましては、同日6月30日の日本成長戦略会議において案として示されております。また、規制改革実施計画につきましては、同日の規制改革関係府省庁連絡会議におきまして、それぞれ案が示されているところでございます。
 その内容のうち、本分科会に関係する部分について御説明させていただきます。
 まず「経済財政運営と改革の基本方針2026(案)」についてでございます。3ページ目を御覧いただきたいと思います。諮問会議の概要及び議員名簿でございます。4ページ目を御覧いただきたいと思います。賃上げ環境整備についてでございます。3行目、下線を引いているところでございますが、「最低賃金については、2020年代に全国平均1,500円という高い目標(骨太方針2025)の達成に向け、官民でたゆまぬ努力を継続し、労働生産性の継続的な向上を図ることで、遅くとも2030年代前半できる限り早期に全国平均1,500円を達成する」としております。
 2つ目の段落の5行目「各種補助金・助成金や、業種横断的なサポート体制の充実及び活用促進により『省力化投資促進プラン』を着実に実行するとともに、更なる充実・拡充を図り、『稼ぐ力』の強化と賃上げの好循環を実現する」としております。
 また、6段落目「毎年の最低賃金の引上げ額については、こうした政府の取組も踏まえつつ、法定3要素のデータに基づき、公労使三者構成の中央最低賃金審議会及び地方最低賃金審議会において、実態を踏まえた審議決定となるよう、議論いただく。地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き上げる等、地域間格差の是正を図る」としております。「こうした取組については、骨太方針2025の記載も踏まえて対応する」こととされております。
 なお、今年度の最低賃金額改定の目安につきましては、現在、中央最低賃金審議会において御議論いただいているところでございます。
 5ページ目を御覧いただきたいと思います。労働時間法制についてでございます。「心身の健康維持と従業者の選択を前提に、柔軟で多様な働き方を実現するため、労働時間法制等に係る政策対応について、夏以降の労働政策審議会において議論を行う」こととされているところでございます。
 次に、日本成長戦略(案)について御説明させていただきます。
 7ページ目を御覧いただきたいと思います。会議の概要及び構成員の名簿でございます。
 8ページ目を御覧いただきたいと思います。まず、労働市場改革についてでございます。先ほど御説明しました「労働市場改革分科会とりまとめ」におきましてとりまとめられた内容が盛り込まれている中身になっております。
 続いて、9ページ目を御覧いただきたいと思います。賃上げ環境整備についてでございます。一番上の下線が引かれてある部分ですが、「業務改善助成金等の各種補助金・助成金」や、次の行に飛びまして、そうした補助金・助成金の「充実及び活用促進に取り組む」とされております。また、最低賃金の引上げへの対応につきましては、先ほど骨太の方針の案の中で御説明させていただきました内容と同じ内容が盛り込まれているところでございます。
 続きまして、規制改革実施計画(案)について御説明させていただきます。
 11ページ目につきましては、規制改革推進会議の概要及び委員の名簿でございます。
 12ページ目を御覧いただきたいと思います。労働時間法制に係る政策対応の在り方についてでございますが、1年単位の変形労働時間制についてということで「1年単位の変形労働時間制について、厚生労働省は、規制改革推進会議での議論や制度運用状況等の実態も踏まえ、予期しなかった事情にも柔軟に対応できるようにすることについて、労働者の予見可能性の確保についても十分留意しつつ、労働政策審議会において検討し、結論を得次第、速やかに所要の措置を講ずる」こととされております。
 また、裁量労働制についてでございますが、「厚生労働省は、健康確保、長時間労働防止、適切な処遇確保などの濫用防止措置を前提に、裁量労働制の対象の在り方について労働政策審議会において見直しの検討を開始し、結論を得次第、必要な措置を講ずる」とされております。
 13ページ目を御覧いただきたいと思います。シフト制における適正な年次有給休暇の取得等についてでございます。内容につきまして、実施事項のaの下線を引いているところですが、「シフト制労働者について、基準日において所定労働日数を算出し難い場合における取扱いを都道府県労働局への通達や厚生労働省ウェブサイト等において明確化し、広く周知する」とされております。これにつきましては、6月19日付けで都道府県労働局長あての通達を発出しているところでございます。
 続いて、14ページ目を御覧いただきたいと思います。実施事項のbといたしまして、「労働者が年次有給休暇を取得する際の賃金の算定方法の在り方について、労働政策審議会において検討し、結論を得次第、速やかに所要の措置を講ずる」ことと、実施事項のcといたしまして、賃金の算定に当たりまして参照されます所定労働時間数の扱いを明確化、周知することとされております。
 続いて、15ページ目を御覧いただきたいと思います。実施事項のdといたしまして「労働者や使用者などからの意見聴取により、シフト制労働者が年次有給休暇を取得できない要因等を把握する」ことや、「その結果を踏まえ、都道府県労働局への通達の発出や厚生労働省ウェブサイト等による周知など、シフト制労働者が年次有給休暇を適正かつ円滑に取得できるよう必要な措置を講ずる」こととされております。
 16ページ目を御覧いただきたいと思います。オンラインによる労働条件の明示方法について、実施事項のaといたしまして「労働条件の明示方法に関する労使のニーズ及び実態、電子メール等の送信の方法の条件を見直すことによって不利益が生じる可能性・内容などについて、企業の特性も踏まえて調査の上」、次の下線部のところでございますが、「現在の電子メール等の送信の方法で利用するための条件に加えて、労働者に過度な負担を課すことなく、全ての労働者に対して確実に労働条件が明示されるとともに、より円滑に電子メール等の送信の方法を明示することを可能とする条件・方策について検討の上、結論を得次第、速やかに必要な措置を講ずる」こととされております。
 以上、御報告させていただきます。
 なお、引き続き、資料№2-3につきまして、担当課から報告させていただきます。
○西海監督課長 監督課長でございます。
 資料№2-3につきまして、御説明させていただきます。「労働基準法等に基づく届出等に係る電子申請の状況について」でございます。
 1ページ目を御覧ください。参考の囲みの中に書いてありますけれども、政府全体といたしまして、年間10万件以上の手続についてオンライン利用率を引き上げるべく取り組んできているところでございます。
 労働基準法等に基づく届出等につきましては、3つございまして、時間外労働・休日労働に関する協定届、就業規則届、1年単位の変形労働時間制に関する協定届、これら3つの届出について利用率向上を図っていく手続の対象としております。これらの3つの手続を対象といたしまして、令和8年度までに50%まで電子申請の利用率を引き上げることを目標に取り組んできているところでございます。
 電子申請利用率向上に向けた主な取組でございます。まず、令和7年度の取組でございますが、労働条件ポータルサイト「確かめよう労働条件」を改修いたしまして、電子申請の対象手続に、建設、自動車運転者、医師に係る時間外労働・休日労働に関する協定届を追加したところでございます。
 令和8年度の取組でございます。令和9年度から労働基準行政の新しいウェブサイトの運用を開始することを予定しております。労働基準法のみならず労働安全衛生法等も含めまして、各種届出の電子申請機能、あるいは事業場ごとのマイページ機能を設けまして、各事業場の業種等に応じた政府からの様々な情報発信をする、そういった様々な機能を備えた新しいウェブサイトの構築を予定しておりますけれども、その中に、先ほど申し上げました労働条件ポータルサイトの電子申請の機能も設けることといたしております。この新しいウェブサイトの中で引き続き利便性の向上を図るべく、申請に当たっての入力ガイドの追加、エラーチェックの強化の機能の充実、操作ガイドの動画掲載、そういった機能を設けることを予定しております。
 次は、電子申請の届出をしていただいた後の監督署における対応の部分でございまして、電子申請の受付処理の迅速化を図ることを目的といたしまして、監督署の職員が用いる基幹システムの審査支援機能の拡充、こういったことを予定しております。
 2ページ目を御覧ください。電子申請件数と利用率でございますが、3つの手続の合計を赤の折れ線グラフでお示ししております。令和7年は45.9%となっておりまして、令和6年の38.1%から見ますと、7.8%増加しているということでございます。3つの届出は、いずれもややばらつきはございますが、年を経るごとに利用率が上昇してきているということでございまして、先ほど申し上げたような利便性向上に向けた取組を続けまして、電子申請の利用率の向上を図ってまいりたいと考えております。
 御説明は以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 議題の(2)につきまして、資料№2-1から№2-3に基づいて説明いただきました。
 では、ただいまの事務局からの説明につきまして、御質問、御意見がありましたらお願いいたします。先ほどと同様ですが、オンライン参加の皆様は、御希望がありましたらチャット機能でお知らせいただきたいと思います。御質問、御意見等ございますか。
 菅村委員、どうぞ。
○菅村委員 ありがとうございます。
 まず、日本成長戦略会議などにおいて、労働時間法制等の政策的対応は夏以降労政審で議論を行うと結論づけられましたが、裁量労働制などについて規制緩和を示唆するような内容が盛り込まれたことは、労側が繰り返し求めておりました三者構成原則の尊重という観点からすれば大きな問題があると考えております。本分科会での議論こそ尊重すべきであるということは改めて申し上げておきたいと考えております。
 成長戦略の主眼とも言える多様な人材の労働参加を促進するためには、長時間労働に依存した働き方からの一日も早い脱却が必要であり、性別・年齢やライフステージなどにかかわらず、誰もが安心して働ける環境を整備することが重要だと考えております。その実現のためには、「働き方改革」の取組をより一層前進させることが必要でありまして、だからこそ、労側としては、連続勤務規制や勤務間インターバル制度の義務化、「つながらない権利」の法制化などの検討に注力すべきであるということを繰り返し発言してきたところでございます。しかし、この間の議論を顧みますと、裁量労働制や変形労働時間制などに審議時間の大半を費やしていると思っておりまして、その他の論点がないがしろにされているのではないかと考えております。2017年の労使合意で確認した、「過労死ゼロ」、「多様な人材が活躍できる社会」の実現に向けた建設的かつ前向きな議論が滞っている現状には、強い問題意識を労側として持っているということを改めて申し上げておきたいと思います。
 その上で、「日本成長戦略会議労働市場改革分科会とりまとめ」や、「日本成長戦略(案)」、「規制改革実施計画(案)」にも記載がありますが、改めて裁量労働制について意見を申し上げておきたいと思います。先日、裁量労働制を導入している大手企業において不適切な運用が見られるという報道がございましたが、個別の事案には立ち入りませんが、いずれの労働時間制度においても実労働時間の管理を徹底させることが不可欠であって、労働時間の適正把握を義務化する必要性が高いことを改めて認識したところでございます。裁量労働制は、長時間労働になりやすく、不適切な運用がなされている実態があるということを繰り返し申し上げておりますが、この間、連合として、裁量労働制を導入している加盟組合にヒアリングを実施し、現場実態の把握を行ってきたところです。その中では、一定の労働時間を超えた場合の適用解除や勤務間インターバルのほか、事業場ごとの労使で綿密なモニタリングなどの法令や指針を上回る取組が数多く行われていることを確認した一方で、労使で厳格に運用していても長時間労働になりがち、裁量が確保できない状況に陥りやすい、適用にふさわしい処遇が確保しにくいなどの課題がヒアリングを通じて明らかになったと認識しております。
 いずれも各業界の大手企業の労働組合ですけれども、支部との連携を含め、適正運用の維持・確保に心を砕き、苦労されているというのが実態だったと思っております。その業務に裁量があるのかどうかといった確認も含めて、現場にかなりの負荷がかかっているのではないかと受け止めました。そうした中で、制度のさらなる拡充などを行えば、不適切な運用や、適用労働者の長時間労働、健康被害の増加を招きかねないものだと思っております。したがって、裁量労働制については、拡充や緩和は行うべきではないですし、まだ施行されたばかりの2024年改正内容をはじめ、適正運用の徹底に取り組むべきであるということを改めて申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 オンラインでお二方、御発言希望があります。まず、鳥澤委員、お願いします。
○鳥澤委員 御指名ありがとうございます。また、資料の取りまとめ、御説明をいただきありがとうございます。
 まず、労働時間制度について意見を申し上げます。この場でも何度か発信しておりますが、時間外労働の上限規制については、運輸、建設、宿泊・飲食など、業種によって事業運営に支障が生じている企業が多くあります。こうした企業では、受注機会の損失に伴う売上げの減少に加え、人材の育成にも影響が出ております。地域インフラを担うこれらの業種の供給能力が縮小すれば、その影響は当該企業だけにとどまらず、結果として物流停滞による納期遅延、建設コストの上昇、観光受入れ能力の低下などを通じて地域産業の調達、生産、販売といった経済活動全体が制約を受ける懸念もございます。
 資料№2-1の16ページでは、時間外上限規制を維持することは重要との記載がございますが、他律的な影響が大きい中小企業に対しては健康確保と労使合意を大前提とし、45時間・年6回までの上限規制の一部例外措置についても労働条件分科会の場で議論が必要ではないかと考えます。
 また、資料№2-2、日本成長戦略の労働市場改革の対応方針、8ページにおいて「変形労働時間制については、他律的な要因に十分対応できていない現場の実態や、労働者の生活時間や予見可能性の確保にも留意しつつ検討を進める」と記載いただいております。これまで変形労働時間制の見直しの必要性を主張してまいりましたが、こうした記載がなされたことを歓迎いたします。サプライチェーンを支える中小企業には極めて重要な対策であります。議論を深めてまいりたいと存じます。
 繰り返しの主張となり、恐縮ではございますが、中小企業においてはサプライチェーンの下層に位置する企業が多く、取引先からの納期等に関する要請、部材の仕入れの遅れ、天候など、自社ではコントロール不可能な他律的な要因により予期せぬ業務が発生しております。日商の調査では、こうした事象に対し政府に求める対応として、変形労働時間制の拡充、要件緩和など、繁閑や予期せぬ業務に対応できる柔軟な労働時間制度の実現を7割強の企業が求めている結果が出ております。
 一方、変形労働時間制については、既に労働日を特定している場合、特定後の変更が認められないことや、期間開始の30日前に労使合意を得ることが必要であるため、現場において有効に活用できない実態がございます。取りまとめに記載のとおり、こうした他律的な要因に十分対応できない現場の実態を踏まえ、変形労働時間制の見直しが必要と考えております。労働者の予見可能性にも留意しつつ、勤務日、勤務時間の特定後の変更を求める措置、労使合意を得る期間の30日前からの短縮など、要件の緩和の在り方について労働条件分科会で議論を深めてまいりたいと思います。
 私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 では、続きまして、オンラインで田中委員、お願いいたします。
○田中委員 御指名ありがとうございます。
 私からは裁量労働制について発言させていただきます。
 分科会の取りまとめには、柔軟で多様な働き方の実現に向けた労働時間法制の見直しに向けた議論の必要性が記されています。その上で、裁量労働制に関しては、適正に運用されれば労働者にとってもよい制度であるという認識が示されましたので、この点を出発点として議論を進めていければよいと考えます。
 導入している各社では、仕事の進め方を自分で決められるため、プライベートとのバランスが取りやすくなったという社員の声や、育児休業明けの社員からも、従来のように決められた時間に働くという働き方は不可能であり、育児を優先しながら限られた時間で効率的に働きたいという声であったり、仮に労働時間が短くなっても処遇を維持できる、また、労働時間の長さではなく成果で評価されるといったポジティブな意見があると聞いています。
 また、分科会での取りまとめでは、健康確保、長時間労働防止、適切な処遇確保などの濫用防止措置を前提に、裁量労働制の対象の在り方について見直しの検討を行う必要があるとされています。今後、濫用防止措置と対象の在り方の両面から議論していくことになると思いますが、その際、現場の実態や労使双方の立場を十分に踏まえた検討を進めていくことが重要と考えます。適正でない運用事例が一部に見られるということのみを理由に制度拡充に向けた議論そのものを行わないということではなく、必要な濫用防止策を考えつつ、労働者にとってメリットがある制度へ見直していけるよう多角的な議論がこの分科会においても行われればよいと考えます。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 同じくオンラインで御希望がございました佐藤委員、お願いします。
○佐藤(晴)委員 ありがとうございます。
 私からは、資料№2-2にあります規制改革実施計画におけるシフト制における適正な年次有給休暇の取得等に関連して、2点申し上げたいと思います。
 まず、1点目ですけれども、資料の13ページにあります年休日数の算定方法の明確化についてです。解釈で示されました実績を考慮して年休日数の算出が可能というのは、契約締結日に具体的な労働日・労働時間が確定していないという場合かと存じます。例えば学生アルバイトが学業などの事情に応じて労働日数等を変動させたり、あるいは企業側の事情に労働者が応じたりということがあろうかと思います。ただ、あくまで原則は労働契約上の所定労働日数を堅持すべきであると考えておりまして、可能な限り所定労働日数を確定するよう後押しすることが大切かと思います。所定労働日数を算定し難い場合に限って実績を考慮して算出が可能となる点などの周知徹底を改めてお願いしたいと思います。
 次に、2点目です。14ページにあります年休取得時の賃金の算定方法についてでございます。労働者に有利な形で統一化していくという点に関しては、これまでも使用者側から発言しているかと存じますが、改めて賛成の立場であるということを申し上げたいと思います。
 私からは以上2点です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 では、オンラインで御参加の御希望が、もうお二方おられます。春川委員、お願いします。
○春川委員 ありがとうございます。
 議題として労働市場改革分科会とりまとめの御報告を頂きましたので、この間の本分科会での議論も含めて2点意見を申し上げます。
 まず、裁量労働制についてですが、使用者代表委員からは、これまでも「労働時間から生産性へのマインドチェンジするためにも裁量労働制の拡大が必要」といった旨の御発言があったかと思います。生産性の向上や成果に対する、労働者へのインセンティブについては、あくまでも人事評価や賃金制度で設計すべきものであろうと考えています。マインドチェンジといった情緒的なものを理由として、長時間労働を助長しかねない裁量労働制を拡大すべきではないと考えております。
 その上で、例えば過半数労働組合がある企業では労使対等性が確保されているとして、手続上の要件と位置づけて裁量労働制の対象業務拡大を可能とすべきとの御意見もあったと認識しています。集団的労使関係の担い手である労働組合は、当然、過半数労働組合になるべく各事業場において組織拡大の取組を展開しているところでありますが、過半数労働組合であっても、労使の対等性は確保・維持していくことが難しい面があるということも実態であります。そうした中で、例えば労使合意によって対象業務の拡大を認めてしまいますと、結果的に現場においては濫用を招くリスクが大きいと思います。労働基準法はあくまでも最低基準を定めた強行法規であることを踏まえれば、いずれのルールについても労働組合の有無で規制を変えるようなことがあってはならないと考えております。
 その上で、「働き方改革」の実効性向上の必要性について意見を申し上げます。本来、「働き方改革」は単に労働時間を短縮するだけではなく、業務の効率化や省力化などによって生産性の向上を図るものであったと理解しているところであります。そうした中で、2020年度の内閣府「年次経済財政報告」の中では、「働き方改革」の雇用や生産性への影響について、有給休暇の取得を推進する企業においては、例えば離職率の低下や労働時間の短縮を伴って生産性が向上したといった分析結果も明らかになっております。また、その先行研究においては、長時間労働の是正などの健康経営を実施した場合、利益率が高まる傾向にあることも示されているところです。このような調査研究の結果からすれば、裁量労働制の拡充ではなく、長時間労働の是正やしっかりと休みが取れるような環境整備を進めていくことこそが生産性を高めることが明らかになっているということは改めて認識しておく必要があると思っています。
 最後になりますけれども、労働者の健康確保と生活時間を保障していくという観点からすれば、労働からの解放規制の強化は欠かせないものと考えています。特に長期にわたっての連続勤務については、実態調査によれば、業種にはよりますが、1割弱の労働者が14日以上の連続勤務を経験している実態もあります。このような働き方は労働者の心身への影響が非常に大きく、ひいては過労死などを招きかねないと思っていますので、休日を含め、制限する連続勤務規制の導入が必要だと考えています。勤務間インターバルの義務化の重要性は繰り返しませんが、ICTの進展により、心理的にも仕事から離れられないような課題に対処するための「つながらない権利」の法制化、このようなルールの強化こそが労働者のニーズが高いものと考えておりますので、改めて意見として申し上げておきます。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 では、オンラインで加藤委員、お願いします。
○加藤委員 御指名ありがとうございます。加藤でございます。
 資料の取りまとめ、御説明ありがとうございました。
 私からは、少し重複もあるかもしれませんけれども、裁量労働制についての発言をさせていただきたいと思っております。
 日本成長戦略会議労働市場改革分科会の取りまとめでも御指摘がありましたとおり、裁量労働制というものは適正に運用されれば労働者にとってもよい制度であるという点は強く共感できるところでございます。経団連の会員企業からは、先ほど田中委員からもコメントがあったと思いますけれども、例えば仕事の効率化によってプライベートな時間の確保が増えるとか、仕事の成果で評価していただけるということで業務効率が上がった、こういった適用労働者の声が寄せられていると聞いております。
 当社でも、何度か申し上げているのですけれども、業務の「やる気」によるモチベーション向上といったような制度に対する肯定的な意見というものも多く頂いているところでございます。したがって、裁量労働制というものを同様に適用するということは、働き手の生産性を高める要素となっていると考えますし、働き方の意識改革、業務遂行の質の向上につながっているのではないかと考えるところでございます。
 従前より労働側の委員の方からは、裁量労働制の導入・拡充によって生産性向上ができたというエビデンスがないではないかというような指摘を頂いているのではないかと思います。生産性というものは、働き手のエンゲージメントの向上ですとか、優秀人材の採用・定着、働きやすい環境整備といった様々な要因が複合的に絡んで向上していくものではないかと考えております。したがって、裁量労働制のみの効果だけを切り取って評価したり分析するということは非常に難しい面があるのではないかと考えております。しかしながら、各社は労使での話合いをもって働き手のニーズを酌み取りながら、モチベーション、仕事の質を高めるといったようなことを行って、生産性の向上、それがひいては国内拠点を維持することや、事業の持続的発展につなげられていくように考えられる施策を行っている、いわゆる人への投資といったものを行っている実態があるのではないかと思っております。
 裁量労働制の拡充の議論では、大前提として、制度の濫用防止、適正運用を促すために必要な仕組みをつくっていくということは必須であると考えております。一方で、企業の実態、現場を見てみますと、やはり自律的かつ柔軟に働きたいというような働き手が多いということも事実ではないかと思います。そのような働き手のニーズに応えていくということも企業側としては一つの責務であると考えます。労使合意の下で裁量労働制を法の趣旨に則って適切に運用して、適用対象者から高い満足度を得ているといったような企業の取組を参考にしながら、労使双方にとって望ましいと感じられる制度構築に向けた建設的な議論ができればと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
 私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。
 それでは、佐藤好一委員、どうぞ、お願いします。
○佐藤(好)委員 御指名ありがとうございます。
 私からは、裁量労働制の非対象業務との混在について意見させていただきたいと思います。
 労働者の裁量が認められない非対象業務の混在は、たとえ一部であっても実質的な裁量を失わせることになるため、認めるべきではないと考えております。前回、使用者側委員より、非対象業務に関して、「上司とのコミュニケーションを通じ、業務の内容や量を調整管理することも十分可能」である旨の発言があったと認識しております。しかし、これは、労使の力関係に差があることを踏まえて考える必要があります。会社が人事権を持ち、また、パワハラなどの問題も少なくない中、自分の業務に裁量がないと感じた労働者が業務指示を拒否することは不可能に近いと考えております。この点、昨年度の都道府県労働局等に寄せられた、いじめ・嫌がらせやパワハラの相談件数が12万5,000件を超え、増加し続けている現実があるということを付け加えておきたいと思います。
 さらに言えば、先ほど菅村委員が言及した、連合が行った裁量労働制導入組合へのヒアリングの中では、現行ルールの下で会社全体のほぼ全ての部署が適用対象となっている事例のほか、組合から改善を求めているものの、ルーチンワークが多いとか、他部署から短納期の依頼が多いといった、裁量が確保しにくい部署や業務にも裁量労働制が適用されているという実態が確認されました。また、裁量が確保されていないため、際限のない長時間労働が行われているという事案も見られました。このように労使で適正運用に継続的に取り組んでいる職場ですら、実際には課題が見られる中で、不適切な運用をさらに広げることになりかねない非対象業務の混在は断じて行うべきではないと考えます。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかにございますか。
 では、古川委員、先にお手が挙がりましたので、お願いします。
○古川委員 ありがとうございます。
 私からは規制改革実施計画のシフト制労働者の年休取得について意見を申し上げたいと思います。
 私たちUAゼンセンにおきましても、流通小売業、外食業といったようなサービス産業の組合にシフト制で働く組合員が数多くおります。そうした組合の実態を見ますと、「働き方改革」以降、シフト制労働者も年休が付与されることに対する理解が進むとともに、実際に年休の取得状況についても改善が進んできています。ただ一方で、いまだにシフト制労働者には年休制度はないといったような誤った認識が一部に残っているほか、資料№2-2の15ページにも記載がありますが、業務が多忙であることを理由に使用者が取得させない事例、シフト変更が可能なことなどから労働者が自ら取得をためらう事例があることについては労働組合としても把握しているところです。シフト制労働者の適正な年休の取扱いについて、改めて分かりやすい周知を徹底していくことが重要であって、厚生労働省におかれましては、引き続き、しっかりと取り組んでいただきたいと思っております。
 また、資料の13ページを見ますと、年休の日数の算定におきまして、所定労働日数を算出し難い場合があることが示されております。その原因は、雇い入れ時に所定労働日数などを明確にしていないことにあると思います。そもそも労働日数や労働時間数、シフト作成、変更時のルールなど、重要な事項については雇い入れ時に明示するということが不可欠であり、適切な労働条件明示がなされるように、こちらも周知・啓発をお願いしておきたいと思います。
 その上で、雇い入れ後6か月経過後の年休について、「過去半年の実績を2倍したものを1年の所定労働日数とみなす」との取扱いにつきましては、実務的な観点から必要性は理解するところであります。一方で、目安となる労働日数等を示していたにもかかわらず、実績によるみなし労働日数が少ない場合に、少ないほうをもとに年休の日数が算定されて労働者が不利益を被ることがないように制度の正しい周知はもとより、労働基準監督署による監督・指導の徹底も含め、対策の強化をお願いしたいところであります。
 なお、14ページに記載されています年休取得時の賃金算定方法につきましては、本分科会でも既に論点となっております。使用者の恣意的な運用を確実に防止するためには、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を原則とするということを法令等で明確化すべきであることを重ねて申し上げておきたいと思います。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 椎木委員、お願いいたします。
○椎木委員 御指名ありがとうございます。
 裁量労働制につきまして、労働市場改革分科会の取りまとめでも、あくまでも「適正に運用されれば」との条件つきで、「よい制度」とされていると認識しています。連合のヒアリング調査では、加盟組合から裁量労働制は運用が難しいという声が多く寄せられています。「実際には業務量や労働時間の配分などの裁量が確保できない」、「一部では長時間労働が常態化している」、あるいは「裁量労働手当などが制度の適用に見合う処遇となっていない」といった声も寄せられております。2024年にルールが変わったばかりである中で、制度の拡充や緩和は行うべきではなく、現行のルールがしっかり適正に運用されているのかどうか、その実態をしっかりと確認することが必要であると考えます。
 以上、私からの意見でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
 私からも裁量労働制について申し上げます。その前に一言、先ほど菅村委員から三者構成主義の重要性についての御発言がありました。その点については使用者側としても同感であると改めて申し上げたいと思います。
 一方で、裁量労働制以外の他の論点については、当分科会での議論が不十分で、ないがしろにされているとの御趣旨の発言があったかと思いますが、私の理解は、議論の回数や時間を考えても、裁量労働制以外の論点についても相当程度議論されていると思います。
 その上で、裁量労働制の一部非対象業務に就く場合における対象業務の拡充について発言させていただきます。これまでも、それから本日、佐藤好一委員からも御指摘がありましたが、一部混在業務が入ることにより裁量がなくなるのではないかという御指摘もこれまでもいただいています。
 繰り返しで恐縮ですが、裁量性の確保、これは裁量労働制の根幹をなす要件です。2019年の厚生労働省調査では約9割の労働者が、時間配分、業務遂行に裁量があると回答されていますが、一方で、一部に裁量がなく、濫用があるとの御指摘、これはしっかりと受け止める必要があると思っております。対象業務の拡大を検討するに当たり、新しい実態調査の結果を踏まえつつ、裁量労働制の裁量性を確保するため、濫用防止措置の具体化の検討を行っていくことが必要だと考えております。
 裁量性の確保は、様々な角度からの議論があり得ると思いますが、例えば一定時間を超えて就労した方に対して適用を外すという仕組み、これは一義的には長時間労働を防止することでの有効な施策と考えますが、加えて、長時間労働になっていると裁量性が失われている状態にあると評価できると思いますので、一定時間を超える裁量労働制適用者を制度から外すという企業の工夫は、裁量性の確保という意味でも参考にすべきではないかと考えております。
 それから、労使委員会等における裁量のある・なしを判断する場面で、過半数労働組合があると、そのチェック機能がより働くものだと考えております。本日も春川委員のほうから、労使対等性は容易に確保できないという御指摘もいただいていますが、労使対等性は、ある・なしではなく、やはり制度の導入の是非や対象の範囲について十分話し合いが行われ、また、制度導入後も、御苦労もあるとお話でしたが、適正な運用が行えるような様々な工夫を行いやすくなる、そのような相対的に捉えることは可能ではないかと考えております。いずれにしても、これから行われる厚生労働省の実態調査において、例えば、過半数労働組合のある・なしが、労使委員会の実効性などと関係性があるのかどうかといった分析も踏まえながら、さらに議論を進めたいと思っております。
 それから、一定の範囲で非対象業務の従事を企画業務型裁量労働制等において認める場合、同意や同意撤回が法律の趣旨どおりに可能となっているかどうか、改正内容がしっかりと機能しているかとの御指摘が労働側委員からされています。大変重要な御指摘だと思っております。多少の幅を持って見なければいけませんが、我々の調査によると、企業で1人でも同意しなかった、あるいはその後、同意を撤回したという方がいる企業は約4割ということです。法の趣旨どおりに、同意しやすい、同意撤回しやすいという環境づくりを法的に担保すること自体は難しいテーマだと思いますが、そのような工夫を探っていくことは必要ではないかと思っております。当然、適正な運用をしている企業の多くでは、制度適用される候補者やその上長の管理職向けに丁寧に社内手引書を作成したり、社内教育・研修にも力を入れていると承知しており、そうした企業の好事例の展開を図っていくということも併せて大切なことではないかと思っております。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかに、松田委員、どうぞ。
○松田委員 私からは、「働き方改革」の一層の定着・推進の観点から発言させていただきます。
 「働き方改革」の見直しの趣旨は、2017年の労使合意で確認した「過労死等ゼロ」をはじめ、労働時間縮減による働く者の健康確保とともに、長時間労働に依存した企業文化の見直しと生産性の向上が実現できたか否かを検証し、そのさらなる推進のための方策を検討することであると認識しております。
 客観的なデータを見ますと、過労死などはなくなっていないどころか、脳・心臓疾患及び精神障害の労災請求件数は増加しているのが実情でございます。そうしたことからも、「働き方改革」の実現にはほど遠い状況であると言わざるを得ないと考えております。そのような状況にもかかわらず、この間、使側から裁量労働制をはじめ、規制緩和を求める意見が相次いでいることは、労側としては強い違和感を禁じ得ません。
 加えまして、総点検の調査結果でも、9割が「労働時間を減らしたい」、「このままでよい」と回答しており、労働者のほとんどが緩和を望んでいないことは明らかです。その上で、残る1割の「労働時間を増やしたい」という者についても、大多数が「賃金を増やしたいから」としており、何時間働いても賃金が増えない裁量労働制のニーズは見られないため、その拡充や緩和は行うべきではないと考えております。
 「働き方改革」の実効性を高めるためには、上限規制の段階的な強化、連続勤務規制、勤務間インターバル制度の義務化、「つながらない権利」の法制化こそ進めるべきです。前回も労側から指摘させていただいたとおり、これらの方策につきましては、健康確保の実効性を高めるといった多くのエビデンスが蓄積されております。過労死等ゼロに向けて早急に法改正に取り組むべきであるということは再度強調させていただきます。政府全体としましてもEBPMを推進していることからすれば、厚労省においても統計法に基づいた労働時間制度等の実態調査のほか、労働者健康安全機構の過労死等防止調査研究センターの研究成果などを踏まえた政策立案が重要であると考えております。
 今後の分科会での検討に当たっては、各論点に関わる過労死等防止の調査・研究成果についても示していただきたいと考えております。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 それでは、福本委員、お願いします。
○福本委員 私からはオンラインによる労働条件の明示について意見を申し上げます。
 厚生労働省のQ&Aや通達を見ますと、労働者への確実な到達と保存、確認可能性について強調しており、労働条件の明示の本質は、知らなかった、聞いていないという紛争を防止し、労働条件の内容が労働者にしっかり伝わる点にあり、書面による明示はあくまで方策の一つという理解ができると考えております。
 現在の解釈例規において、原則、書面での対応が求められる理由を示しており、具体的には、電子メール等は文書交付に比べて簡便な側面がある一方で、誤送信等のリスクも高く、労働条件が不明確なことによる紛争を未然に防止するという労働条件明示の趣旨に反する可能性があるため、労働者が希望した場合に限って認めたという説明をしております。しかしながら、郵送で送る場合であっても、本人に届かないリスクの程度はメール等の送付によるものとどの程度違うのかという点の確認は必要だと思いますし、デジタル技術や通信環境が進展しており、企業実務では面接や採用手続をオンラインで実施するケースも増えてきています。さらに、政府全体としての手続の電子化の方針を踏まえますと、書面で明示するという現行の原則の考え方は今日の企業活動の実態と乖離しているようにも感じます。原則を電子的方法による明示とした上で、労働者本人が希望する場合には書面交付する形へと見直していくべきであると考えております。
 ちなみに、給与所得の源泉徴収票や給与等の支払明細書等を電子交付する場合、一定期限までに電子交付の承諾か否かの回答がなければ承諾があったものとみなし、書面交付の請求があれば書面交付する扱いが認められています。今後はこのような例も参考に検討していくべきと考えております。
 もう一点、労基法諸手続の電子申請について、労基法諸手続の電子申請の利用が非常に拡大しており、厚労省の普及促進の取組に御礼申し上げたいと思います。36協定、1年単位の変形労働時間制協定、就業規則届については、厚労省の労働条件ポータルサイト「確かめよう労働条件」の電子申請様式作成支援ツールからも電子申請でき、従来のe-Govよりも便利に申請できるとの指摘を耳にする機会もありました。ほかの労基法の届出申請についてもぜひ利便性向上をお願いしたいと思います。
 私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 では、亀田委員、どうぞ。
○亀田委員 ありがとうございます。
 直近の本分科会での議論が裁量労働制に偏っている中で、国際的な動きとしまして、先月、ILO総会において「プラットフォーム経済における適正な労働に関する条約(第193号条約)」が採択されたことにつきましては、プラットフォーム労働者の権利保護に向けた重要な前進であると受け止めております。日本としましても、批准に向けた積極的な対応が求められる中、現在、労働者性研究会において専門的な検討が続いていると承知しておりますが、実際的な働き方として労働者に近いにもかかわらず、労働法の保護を受けることができない者が増えている現状を直視すれば、具体的な検討をさらに加速すべきではないかと考えております。
 もう一点、「日本成長戦略(案)」や「規制改革実施計画(案)」などにも記載された変形労働時間制について発言させていただきたいと思います。
 天候の変化や取引先との関係など予期しなかった事象への対応を理由に緩和を求める意見がございます。しかしながら、現行でも1年単位の変形労働時間制では繁忙期には最長で1日10時間、1週52時間までの所定労働時間が設定できまして、さらに36協定を締結すれば時間外・休日労働すら可能であり、極めて柔軟性が高い制度であると認識しております。しかしながら、繁忙期の長時間労働が長引いたり、急な予定変更が生じたりすれば、労働者は一定の見通しを持って安心して働くことや心身の疲労をしっかりと回復することができなくなってしまいます。そのため、現行ルールでは労働者保護の観点から、対象者の範囲、変形期間、勤務カレンダーなどを労使協定で定めることが要件となっています。特に労働者が予定を立てやすくするための開始前の特定に係る期間は法律に明記された重要な要件であると思っています。そうしたことを踏まえますと、「労使合意を得るまでの期間の短縮や計画申請後の変更」といった要件緩和は、労働者の健康や生活設計に悪影響を及ぼしかねないため、決して行うべきではないと考えております。
 もう一点、先ほども使側から上限規制の一部例外措置について発言がなされております。繰り返しになりますが、「働き方改革」に逆行する規制緩和は行うべきではないと考えます。そもそも月45時間・年6回の回数制限についても医学的知見に基づいた過労死認定基準を踏まえて設定されたものであり、過労死や健康被害を増加させかねない要件緩和など許されるものではないと思っています。中小企業における短納期の要請、発注内容の直前の変更などの取引上の課題については、取引適正化や商慣行の是正で改善を図るべきであって、労働者の長時間労働に依存した対応は決して持続可能なものではありません。むしろ、そうした働かせ方を許容するような業界等を避ける傾向を強めることになり、結果として人手不足を加速しかねません。やはり誰もが健康で安心して働き続けられる環境整備こそが必要であり、総点検調査結果を踏まえましても、時間外労働の上限時間数の低減を図っていくことが求められていることは明らかであると考えております。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 では、椎木委員、どうぞ。
○椎木委員 御指名ありがとうございます。
 私からは、労働時間制度の運用面の見直し、電子申請に関連して2点発言したいと思います。
 まず、労働時間制度の運用面の見直しでございます。
 資料№2-1「日本成長戦略会議 労働市場改革分科会とりまとめ」の17ページ、1つ目の●に、労働基準監督署において「労働時間や労働者の健康確保措置に関する労使の合意に則った指導が行われるよう速やかに見直す必要がある」と示されています。ここでの労使合意は、特別条項を念頭に置いたものと理解しました。しかしながら、「働き方改革」の趣旨を踏まえれば、労働基準監督署に求められる役割というのは、時間外労働の原則である月45時間に近づけるよう促し、長時間労働の是正を着実に進めることではないでしょうか。個別労使の合意があることをもって例外的な長時間労働を勧奨するような監督行政であってはいけないと考えます。そのような方向への運用の見直しには強い懸念を持っております。これまでも繰り返し申し述べておりますが、労働基準法は、労働者の命と健康を守るための最低基準を定めた法律です。その実効性を確保することこそ労働基準監督行政の最も重要な使命であると考えます。法違反が認められる場合はもちろんのこと、そのおそれがある場合についても毅然とした監督指導を徹底し、速やかな是正を図る姿勢を堅持すべきであることを改めて申し上げておきたいと思います。
 続いて、労基法等に基づく届出等に関する電子申請についてです。
 資料№2-3で整理いただいておりますが、電子申請の推進そのものについては、行政手続の効率化の観点から、労働側としてもその必要性は理解しています。一方で、電子申請の利用率向上や本社一括届出の対象拡大によって、例えば36協定について本来必要な事業場ごとの労使協議が十分に行われないまま、さらに各事業場の実態を踏まえることなく時間外労働の上限時間数等が一律に設定されるような運用が広がることを懸念しております。36協定は、事業場ごとの実態を踏まえ、労使が真摯に協議した結果として締結されるものであります。事業場ごとの丁寧な労使協議や、過半数労働組合または過半数代表者との適正な手続の重要性について、これまで以上に周知徹底が必要でありますし、労働基準監督署におかれましては、届出内容の厳格な確認と必要な監督指導を徹底していただくよう強く求めます。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 では、田上委員、お願いします。
○田上委員 全国中央会の田上と申します。御説明いただきまして、誠にありがとうございました。
 本日、裁量労働制あるいは変形労働時間制について御意見がありましたので、関連して申し上げたいと思います。中小企業の視点で、実態に応じた、実際に活用できる制度、この選択肢をまずは広げていくことが重要であるということです。
全国の都道府県中央会の調査員2,420名を通じて中小企業の生の声を毎月集約しているのですけれども、事業者、また労働者の双方から、労働時間制度についてはそれぞれの実情に応じて柔軟に活用できる選択肢を充実させてほしい、という声が寄せられているところです。
 中小企業においては深刻な人手不足が続いており、限られた人員で事業を維持・継続していかなければならない状況にあります。そのため、地域経済を最前線で支え、事業活動を継続していく上では、取引先からの急な要請等に対応しなければならない場面もあり、特定の従業員に頼らざるを得ないような実態もございます。一方で、労働者の側からは、働けるときに働き、その成果や追加的な労働に見合った収入を得たいという声も伺っております。時間外労働の上限規制の適用以降、労働時間の減少に伴って収入が減り、生活への影響を感じているという声もいまだに聞かれているところです。このように、事業者、労働者の双方に多様なニーズが存在していることを踏まえますと、適切な健康確保措置や労働者保護を前提としつつ、現場の実態に応じて活用できる制度の選択肢を広げていくことが重要であると考えます。
 特に変形労働時間制については、今、全国の中央会で実施している「中小企業労働事情実態調査」の第1次集計結果によりますと、従業員300人以下の中小企業5,637社のうち38%が活用しています。繁閑差が大きく実労働時間内の業務が多いと感じている企業では43%が活用しているという状況です。現に多くの企業で既に活用されている制度ですので、労働日を特定した後の変更が認められないなどの実務上の柔軟性の課題、この点について検討を深めていくことによって、労使双方にとって、より使いやすい制度となるのではないかと考えております。働く意欲のある方が必要な場面で能力を発揮し、その貢献に応じた適切な処遇を受けられる環境を整備する、そのことが重要であると考えます。もちろん単に労働者の希望に沿うだけではなくて、予見可能性の確保や健康確保は極めて重要な視点であると認識しております。こうした点とのバランスを十分に踏まえながら、労働条件分科会においてさらに見直しに向けた議論を深めてまいりたいと考えております。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 菅村委員、どうぞ。
○菅村委員 ありがとうございます。
 幾つか使側からの御発言について改めて発言しておきたいと思います。
 先ほど「働き方改革」によって収入が減ったとの御発言もございましたけれども、そもそも残業時間に依存した賃金こそが問題であると思っておりまして、残業がなくても生計が維持できる賃金確保のための賃金体系の見直しや持続的な賃上げの取組こそが重要ではないかと考えております。
 また、上限規制について、他律的な要因で月45時間・年6回を超える実態があることを念頭に柔軟化すべきという御発言もございましたが、先ほど亀田委員から発言があったとおり、社会全体での適正な取引を確保する観点から事前の調整など様々な工夫が可能ではないのかと思っておりまして、それを労働者の労働時間で調整することはいかがなものかと思っております。労働者の労働時間をバッファーとすべきではないと思っております。
 また、裁量労働制につきまして、「育児支援の観点から効果的である」、「短い時間で働いても処遇は確保される」といった御発言もございましたが、裁量労働制は育児支援の制度ではございませんし、短い時間で働いた場合の処遇確保も、労働時間制度にかかわらず処遇を上げればいいだけではないかと思っております。また、成果で評価されることについても、それは必ずしも裁量労働制自体とは関係ないのではないかと思っておりますし、「自律的に柔軟性を持って働きたい」というニーズについても、仕事の与え方、マネジメントの問題であって、裁量労働制を導入しなければできないものなのかという点には疑問があるということを改めて申し上げておきたいと思います。「裁量労働制が生産性向上に資する効果については、複合的なものであって、制度適用のみを取り出して効果を評価することは難しい」との御発言もございましたけれども、そうであるならば、なぜ裁量労働制を導入しなければ生産性が上がらないとの主張をされているのか疑問があるということを申し上げておきます。
 その上で、「規制改革実施計画(案)」のオンラインによる労働条件明示の方法の見直しについて1点発言しておきたいと思います。
 資料№2-1の16ページを見ますと「結論を得次第、速やかに必要な措置を講ずる」とされておりますけれども、他の項目と異なりまして「労働政策審議会において」という文言はございません。そもそも労働条件の明示は、使用者による一方的な決定や変更を防いで紛争を未然に回避する意味で働く者にとって非常に重要であると思っております。その見直しについては、三者構成ではない規制改革推進会議で議論して方向づけられることについて違和感を持っているということを申し上げておきます。
 その上で、使側委員の方からも御発言がありましたけれども、情報通信技術が発達している中において、デジタル化を推進しておりますので、オンラインによる明示を促進することは必要であると思っております。ただ、労働条件明示の義務違反率が近年も1割前後で推移しているということ、高年齢者の就業率が高まっている中でもスマートフォンの端末の保有率が低いこともございますし、工場などでは労働者ごとにパソコンが貸与されていないという職場も少なくないといった実態を踏まえまして、業種や職種、年齢にかかわらず確実な明示が保障されることを担保することが必要であるということは付言しておきます。
 以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。
 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 ありがとうございます。
 ただいまの菅村委員から裁量労働制についての御発言について、改めて、コメントをさせていただきます。
 まず、裁量労働制の成果に応じた処遇は裁量労働制を入れなくても可能ではないかという御指摘がこれまでもあったと思います。仕事の進め方と仕事のやり方、その双方に裁量性を与えて自律的に働くということは、フレックスタイム制にはない仕組みです。自律的に働くことと成果に応じて処遇することは大変親和的ですので、処遇を受ける側の働き手にとっても制度導入は納得性を高める面があると感じております。その上で、労働基準法上は、みなし労働時間制でない場合には、御案内のとおり、結果的に時間に比例した処遇を強制するような側面があるので、成果に応じた処遇ということの徹底は難しいところがございます。賃金を上げれば良いというご発言もありました。直近のデータで、今年の春季労使交渉で5%を超える賃金引上げが実現しました。これは各社の労使の尽力によるところが大きいと思いますが、全社的な処遇の見直しが行われ、また、賃金原資である労働生産性を上げながらやっていく必要がある中で、裁量労働制適用労働者だけ、さらに成果反映のための処遇原資を確保する、報酬を引上げることが難しい面もある点はぜひ御理解いただきたいと思いますし、処遇については、別途、適正な処遇の確保が大変重要である点は我々もしっかりと受け止めているつもりです。適正な処遇についてどのようなことが考えられるのかについて、今後、さらに議論を深めていきたいと思っています。
 それから、生産性の向上が複合的というところについてですが、労働者の委員からも、裁量労働制は運用する上で負担が大きいこと、手間もかかるという御指摘があったかと思います。それでもなお、労使協定で、おそらく1年で締結している企業が多いと想像しますが、課題に工夫し対応しながら運用し続けておられる企業が多いと我々は理解しております。つまり、各企業あるいは各事業場の労使の中で、全体としてよい制度だという評価をされた上で運用され、当然、濫用についてはチェックしながら工夫されていると思いますので、制度の話と運用の話は一旦切り離した議論が重要ではないかと思った次第でございます。
 私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
 ほかに御質問、御意見等ございますか。よろしゅうございますか。
 今回、委員それぞれのお立場から貴重な御意見を頂きました。これまでにも頂いた御意見も含まれていましたけれども、新たな視点も示されましたし、先ほどの労働市場改革分科会等では労政審において議論を行う必要があると明言されていますので、今後さらに本分科会において一層議論を深めていければと思っております。事務局にはそれも踏まえた対応をお願いしたいと思います。電子申請の関係につきましては、引き続き、利用率の向上等に向けた取組をお進めいただくようにお願いいたします。
 特段ございませんでしたら本日の議事はここまでとさせていただきたいと思います。
 最後に、次回の日程等について事務局からお願いいたします。
○下田労働条件企画専門官 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
 以上でございます。
○山川分科会長 それでは、これをもちまして第210回の「労働条件分科会」を終了いたします。本日はお忙しい中、大変ありがとうございました。散会いたします。