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2026年5月13日 第209回労働政策審議会労働条件分科会 議事録
労働基準局労働条件政策課
日時
令和8年5月13日(水) 10:00~12:00
場所
厚生労働省専用第22~24会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館18階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館18階)
出席者
- 公益代表委員
- 安藤委員、川田委員、神吉委員、黒田委員、首藤委員、原委員、水島委員、山川委員
- 労働者代表委員
- 亀田委員、櫻田委員、佐藤(好)委員、椎木委員、菅村委員、春川委員、古川委員
- 使用者代表委員
- 加藤委員、鈴木委員、田中委員、田上委員、鳥澤委員、福本委員
- 事務局
- 岸本労働基準局長、尾田審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、松本審議官(労災、賃金担当)、松下総務課長、川口労働条件政策課長、田邉労働条件確保改善対策室長、大野賃金課賃金支払制度業務室長、中島労働条件政策課長補佐、来嶋労働条件政策課長補佐
- オブザーバー
- 小澤金融庁企画市場局デジタル・分散型金融企画室長
議題
(1)資金移動業者の口座への賃金支払制度について
(2)労働市場改革分科会等について(報告事項)
(2)労働市場改革分科会等について(報告事項)
議事
○山川分科会長 おはようございます。
では、定刻になりましたので、ただいまから第209回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の分科会は、会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で開催とさせていただいております。
議事に入ります前に、本分科会委員の交代につきまして、事務局から御紹介をお願いします。
○事務局 本分科会委員の交代につきまして、御報告いたします。
お手元の参考資料No.1として「労働条件分科会 委員名簿」を配付しております。
労働者代表の冨髙裕子委員が御退任され、日本労働組合総連合会総合政策推進局長の菅村裕子委員に御就任いただいております。
事務局からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
本日の委員の御出欠ですが、労働者代表の松田惣佑委員、使用者代表の佐藤晴子委員、兵藤美希子委員が御欠席と承っております。
では、カメラ撮りは、ここまでとさせていただきます。
○山川分科会長 では、本日の議題に入ります。
議題(1)は「資金移動業者の口座への賃金支払制度について」です。
本議題は、金融庁の所管する事項に関係しておりますので、労働政策審議会運営規程第4条に基づきまして、金融庁の御担当の方にオブザーバーとして御出席いただいております。
では、事務局から説明をお願いします。
○大野賃金課賃金支払制度業務室長 賃金課でございます。
それでは、私から資料No.1の「資金移動業者の口座への賃金支払制度について」御説明させていただきます。
1枚ページをおめくりいただきまして、資料右下の1ページ目を御覧いただければと思います。昨年、資金移動業者の口座への賃金支払制度、いわゆる賃金のデジタル払いが施行後2年を経過いたしまして、労働条件分科会において、制度の評価や見直しについて御意見をいただきました。
「制度の評価」につきましては、賃金の受け取り方法の選択肢を広げたことは評価という御意見、一方で、賃金のデジタル払いのニーズ調査によれば、労使双方のニーズはあまりないという印象といった御意見がありました。
「制度の見直し」については、資金保全要件、指定代替口座の必置要件は、労働者の生活の糧である賃金が安全かつ確実に支払われるために必要不可欠ということを踏まえた規制であること。労働者保護の観点から設けられたそういった中核的な要件について、今後の検討では、そのことを十分に踏まえた議論が必要であること。賃金のデジタル払いが実質的に開始されてから時間が経過していない中で、指定要件の見直しを議論するのは時期尚早であること。当面は施行状況を把握しつつ、金融リテラシーを高めていく教育への対応が重要であることといった御指摘をいただいたところです。
2枚目をおめくりいただければと思います。資金移動業者の口座への賃金支払制度の指定の状況や制度利用状況をまとめたものでございます。
まず、上の段の「指定の状況」ですが、制度施行以降、本日時点で4社が指定されております。口座の受入上限額や保証機関は、それぞれの資金移動業者ごとに設定しているところでございます。このほか、現在、指定申請を検討している複数の資金移動業者に対する事前相談に対応しているところでございます。
資料の下段「制度利用状況」につきましては、四半期ごとに資金移動業者からの報告を求めておりまして、その結果をまとめたものになっております。一番左側、労働者の口座件数ですが、直近、令和8年3月時点で約5万件となっておりまして、真ん中の表、1か月間で決済・送金等に利用された取扱金額については2.9億円となっております。いずれも最初の指定以降、上昇傾向にあるところです。右側の表は、労働者1口座当たりの残高の平均、こちらは、あるスポットで口座残高を見たものですが、直近では約2,300円程度となっております。
3ページ目をおめくりいただければと思います。昨年6月に閣議決定されました規制改革実施計画の関係事項を抜粋したものになります。a、bについては、厚労省において措置済みの事項でありますが、cについて、厚労省は金融庁と連携して、労働者の賃金の安全性・確実性を担保しつつ、賃金のデジタル払いの社会実装を実効的に促進する観点から、以下の各事項の見直しの要否を含め検討し、結論次第、速やかに必要な措置を行うとされておりまして、①~③の3つの事項が記載されてございます。
①が「資金移動業者の破綻時の資産保全要件」ということで、資金決済に関する法律の見直しによりまして、保証会社等による労働者に対する直接返還が可能となったことを踏まえて、資産保全要件の廃止または大幅な緩和を行うこと。その際、破綻時に6営業日以内に労働者に弁済するとの要件についても、併せて見直しを行うこと。
②が「指定代替口座の必置要件」でして、賃金デジタル払いの口座上限を超えた場合の送金先とか、資金移動業者の破綻時などに労働者に資産を返還する際に、口座として労働者があらかじめ指定代替口座を登録することになっておりますが、これについて、預貯金口座等以外の手法を認めるということ。
③が「その他の要件」として2点ありまして、1点目が、指定に当たって要件としている個人情報の取扱いに係る第三者機関による認証を求めないということ。2点目として、口座から現金での払出し方法において、1円単位での払出し要件を廃止して、例えば紙幣単位での払出しを認めること。これらにつきまして、見直しの要否を含め、検討することとされているところでございます。
このうち、①については、金融庁の資金決済法の見直し内容とも様々関連してくる論点でございますが、本日は、まず「①資金移動業者の破綻時の資産保全要件」の論点について、次ページ目以降の資料で御説明さしあげて、御議論いただきたいと考えております。
4ページをおめくりいただければと思います。資金移動業者の資産保全要件について、資金決済法に基づき、資金移動業者全体に係る規制と、労働基準法令に基づき、賃金デジタル払いを行う資金移動業者に係る規制の現状をまとめたものとなります。
まず、現行の資金決済法においては、利用者から受け入れた資金を保全することとなっておりますが、資金移動業者の破綻時には、保全された資金は供託手続を通じて国が還付手続を実施することとしておりまして、利用者への資金の還付には最低170日以上という期間を要する制度となっております。また、資金決済法に基づく資産保全は、基準期間ごとに必要となる保全額を算出し、各基準期間の末日から3営業日以内に資産保全を行う仕組みとなっているところでございます。
一方、賃金のデジタル払いにおいては、十分な額が早期に労働者に支払われるようにするという観点から、資金決済法に基づく供託等の手続に加えまして、万が一、破綻した場合は、弁済の請求後6営業日以内に労働者に対して負担する債務の全額を弁済する仕組みを講じることとされております。この要件につきましては、労働者保護の観点から、銀行と同程度の資金保全の仕組みとすることが必要との御意見を踏まえるとともに、資金移動業者の対応の実現可能性も勘案しつつ、制度設計がなされたものでございますが、資金移動業者からは、資金決済法と賃金デジタル払いで保証が重複して、負担が重い。それから、賃金デジタル払いでは、実際の口座残高にかかわらず、常に口座の上限額を負担しなければならず、コスト負担が重い、6営業日以内に労働者に弁済しなければならない体制の構築は負担が重いといった御意見があるところです。
こうした中、昨年6月に資金決済に関する法律の一部改正法が成立いたしまして、資金移動業者が破綻した場合の利用者への返還方法について、新たに銀行等の保証機関や信託会社等による直接返還が可能となりました。本法律は、本日時点ではまだ施行されておりませんが、改正法では、法律の公布から1年以内の施行とされているところです。
また、政令・府令など、下位法令の改正についても同様に、現時点では公布・施行されておりませんが、改正案のパブリックコメントは実施済みでありまして、現在、公布に向けた準備が進められているところと承知しております。
以降は、その内容に沿って御説明させていただきます。
5ページ目をおめくりください。資金決済に関する法律の一部改正法について、今回の議題に関連する事項の具体的な改正内容をまとめたものとなります。
主にこれまであった従来の供託経由の破綻時の返還に加えまして、銀行等の保証機関による直接返還と、信託会社等による直接返還を追加するものでありまして、銀行等の保証機関による直接返還の場合は、資金決済法令上は「履行保証人適格者」と呼ばれる保証機関が、資金移動業者と債務引受契約を締結する、あるいは、履行保証人適格者が利用者と保証契約を締結するといった方法によりまして、直接返還の対応を行うこととされております。
また、資金移動業者が信託会社と信託契約を締結して返還するという方法も可能となります。資金移動業者がこれらの契約を金融庁に届け出ることで、その契約に基づいて引き受けることとされている債務の額について、供託をしないことができるとされているところでございます。
6ページ目は、参考になりますが、5ページ目で、直接返還に係る契約の当事者となる保証機関は、履行保証人適格者に限定しているということで御説明いたしましたが、どういった機関が該当するかということを付記したものとなります。主に銀行、保険会社など、各業法に基づきまして免除・認可等を要し、財務基盤の安定性等について、監督当局からモニタリングを受けている機関が該当しておりまして、資金決済法の政令・府令で具体的な要件が規定されているところでございます。
7ページ目をおめくりいただければと思います。資金移動業者の破綻時の資産保全の仕組みについて、賃金のデジタル払いの指定要件と、資金決済法令等の改正案との対応関係をまとめたものとなります。
「(1)破綻時の弁済期限」については、賃金のデジタル払いでは、省令で速やかに弁済を行う仕組みを有することと規定した上で、審議会での御議論を踏まえまして、ガイドラインにおいて「速やかに」とは、破綻後6営業日以内であるということを示しております。右側の資金決済法令に基づく直接返還制度の場合ですと、同様に府令の中で、速やかに弁済を行うという旨が規定されておりますが、具体的な弁済期限については規定されておらず、特定の日数を定めていない形となっております。
「(2)弁済を担う者の範囲」については、賃金のデジタル払いについては、その主体は限定しておりませんが、資本関係とか相互依存関係等も含め、総合的に考慮の上、適否を判断しています。資金決済法令では、先ほど御説明した履行保証人適格者と信託会社等に限定しているところでございます。なお、現状、賃金のデジタル払いの指定を受けている資金移動業者の保証機関については、結果として、全て履行保証人適格者及び信託会社等の範囲に含まれている状況でございます。
「(3)口座情報の事前入手」、「(4)人員等の体制確保」につきましては、賃金のデジタル払い制度では、破綻時に速やかな弁済を確実にするという観点から、厚労省において審査時に状況を確認しているところでございます。
「(5)必要な保証額の対応確保」につきましても、保証機関が一時的な資金需要に対応する手段を有していること、特に必要となり得る保証額を調達できることということで、破綻時に必ず労働者の口座残高を保証できるように、ガイドラインでは、原則として100万円に最大口座数を乗じた額が調達可能額の範囲であるということとしております。
これらの(3)以降の要件については、資金決済法令では、現時点で特段の措置が規定されていない状況になっております。
8ページ目になります。本日御説明した資金移動業者の資産保全要件についての論点ということで記載してございますが、現行、資金移動業者が賃金のデジタル払いを行うために保証機関と締結する保証契約については、資金移動業者の破綻時等に、口座残高について6営業日以内に確実に返還すること、それから、資金移動業者の取扱額が大きく変動しているような場合等にかかわらず、労働者に対して負担する債務の全額を返還するための体制確保を求めておりまして、これらは労働者保護の観点で見た場合に、改正資金決済法に基づく直接返還契約で求める基準を上回っているなど、両制度の資産保全に関する仕組みには違いがあるところでございます。
こうした違いや改正資金決済法により、資金移動業者破綻時の利用者への直接返還の制度が設けられたことを踏まえまして、賃金のデジタル払い制度における資金移動業者の資産保全要件について、見直しを行う必要があるかということについて御議論いただければ幸いでございます。
以上が、本資料の説明でございまして、次ページ目以降は参考資料となりますが、本日の御議論の補足として、ページが飛んで恐縮ですが、23ページ目以降の参考資料③、ニーズ調査について御報告させていただければと思います。
24ページ目から御覧いただければと思います。「令和7年度賃金のデジタル払いに関するニーズ調査」ということで、本年1月から2月にかけて、労働者や企業が賃金のデジタル払いを導入するに当たっての課題、潜在的な制度利用意向等を含めたニーズを把握することを目的として、調査を行っております。労働者調査は1万人、企業調査は約2,000社から回答を得ているものでございます。25ページ目から、労働者調査の結果をまとめたものとなりますが、一部抜粋して御報告させていただければと思います。
まず、25ページ目を御覧いただければと思います。右側のグラフですが、労働者の勤務先における給与受け取り方法について聞いたものですが、資金移動業者の口座への支払いについては、右から3番目の1.5%となっております。
次に、1ページ飛ばしまして、27ページ目を御覧いただければと思いますが「賃金のデジタル払いに関して、懸念点として感じることを教えてください」という質問でございますが、最も多い回答は、左から2番目の「安全性に不安がある」で、32.8%でございました。右側の賃金のデジタル払いの安全性で不安な点について、具体的な不安を聞いている質問については、左から口座の不正利用、資金移動業者の破綻、個人情報の漏えいといった回答が全体の過半数程度、あるいは過半数を超えている状況でございます。
次に、28ページ目を御覧いただければと思います。上側の表「破綻時の弁済期間についての考え」について「弁済期間を6営業日より短くすべき」と回答した労働者の割合が全体の35.5%、「6営業日で適当である」と回答した割合が36.8%となってございます。下側の表が「賃金のデジタル払いの利用意向」ということですが「既に利用している」1.5%に加えて「今後利用したい」割合が13.8%、「利用したくない」とした割合が42.4%となっております。
次に、ページを1枚飛ばしまして、30ページを御覧いただければと思います。企業調査の結果になります。主な結果をまとめたものとなっておりますが、上の表「給与等の支払い方法」につきましては、賃金のデジタル払いを利用している企業の割合が約0.4%となっております。
ページを1ページおめくりいただきまして、31ページ目ですが、賃金のデジタル払いの必要性を感じるかという企業への質問については「必要性を感じる」と回答した割合が2.3%、「必要性を感じない」と回答した割合が73.8%となっております。
また1枚おめくりいただきまして、32ページ目になりますが「賃金のデジタル払いの導入・検討状況」ですが、数字が小さくなっておりますが、0.3%が「今後導入する予定である」と回答した割合、18.0%が「従業員からの要望があれば、導入を検討したいと考えている」という割合、62.7%が「導入の検討をしていない」と回答した割合となってございます。
最後に、33ページ目になります。左側、賃金のデジタル払いを導入している、または導入を検討しているという企業に絞って理由を聞いたものになりますが「従業員からの要望があるから」と回答した企業の割合が最も多く、約50%。続いて「福利厚生の一環としての観点から」「給与の支払い方法として新しい制度が出てきたから」といった回答が続いているといったような回答の結果が出ているということでございます。
私からの説明は以上となります。
○山川分科会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの事務局からの説明につきまして、御質問、御意見があれば、お願いいたします。オンライン参加の委員の皆様におかれましては、御発言の希望がありましたら、チャット機能でお知らせください。
御質問、御意見等はございますでしょうか。
菅村委員、お願いします。
○菅村委員 ありがとうございます。
まず、今回の議論の発端は、規制改革推進会議の答申であると認識しておりますが、賃金のデジタル払いについては、一昨年8月に資金移動業者が初めて指定されており、実質的に本制度がスタートして、まだ2年も経過していないものと認識しております。また、資料に記載もございますが、以前の分科会で、労使が共に「見直しは時期尚早である」としている中で、見直しが検討されることについては、強い違和感を覚えるところです。
以前も労側より申し上げておりますが、資産保全要件や、指定代替口座の必置要件、1円単位の払出しなどは、労働者の生活の糧である賃金が安全かつ確実に支払われるために不可欠なものとして、労働者保護の観点から上乗せの規制を課したものです。こうした趣旨を踏まえれば、いずれもデジタル払いを行う上で必須の要件として、堅持すべきものと考えております。
その上で、資料1の8ページ、今回論点となっております資産保全要件についてですが、5ページにあるとおり、資金決済法の改正によって、供託等による方法に加えて、今回、直接返還が追加されることになりますが、7ページの(1)に整理されているとおり、改正資金決済法令等の直接返還では、破綻時に速やかに弁済を行うとされておりまして、具体的な弁済期限は記載されておりません。
一方、デジタル払いでは、「6営業日以内に全額を確実に弁済する」という要件が課されておりまして、明らかに資金決済法令の要件を上回っているものと認識しております。これは先ほど申し上げたように、デジタル払いを導入するかどうかを労政審で議論した際に、労働者保護の観点から上乗せをした、賃金支払いの安全性・確実性を担保するために設けられた重要かつ不可欠な要件であると考えておりまして、維持することが当然であると考えております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
それでは、鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
2ページの「制度利用状況」によると、口座件数が右肩上がりで増加していることと、26ページの調査結果を見ると、労働者から賃金のデジタル払いについて、ポジティブな声が一定程度寄せられていること、それから、33ページに、従業員からの要望により賃金のデジタル払いを導入した企業も少なくないことを踏まえると、まず、賃金の受け取り方法の選択肢を追加したことは意義があったと、改めて感じました。
その上で、本日は、資産保全要件を議論するという御説明がありましたので、その点に絞って発言したいと思います。
2階部分の資産保全要件は、制度設計の議論で最も重視されてきた事項であり、賃金デジタル払いの中核をなすものと理解しています。27ページの労働者調査の結果を見ても、安全性への懸念として、資金移動業者の破綻を挙げる回答が相当数に上っています。労働者保護の観点から、6営業日以内に口座残高の全額を弁済する資産保全要件は大変重要であり、先ほど菅村委員も発言されたように、この要件は堅持すべきと考えます。
4ページに、資金移動業者からの意見が紹介されています。こちらの記述だけでは、言われている負担の詳細が読み取れないところも多く、また、資産移動業者のコスト削減のみを目的に制度見直しをすべきではないと考えていますが、改正資金決済法の施行や、昨今の技術革新を通じて、仮に資金移動業者が破綻しても、労働者に対して有する債務を6営業日以内に全額弁済する確実な方法が別途存在するのであれば、今後、当分科会で議論してもよいのではないかと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
オンラインで春川委員から御希望がございます。
お願いします。
○春川委員 ありがとうございます。
私からも意見を発言させていただきます。
先ほどニーズ調査の御説明もありましたが、28ページを見ますと、賃金のデジタル払いの労働者の利用ニーズは高くはない状況ですし、31ページの企業調査においても、「必要性を感じない」との回答が7割以上といった結果となっています。労使ともに、ニーズはまだあまりない状況は昨年から変わっていないと思っております。また、現行の制度上、支障が生じているわけでもありませんので、見直し自体必要ないと考えています。
加えまして、27ページの調査結果にもありますとおり、労働者が持つ最も大きな懸念として、「安全性に不安がある」との回答が3割以上となっています。賃金のデジタル払いに関わる様々な要件は、こうした不安を払拭していくよう、この分科会で真摯な議論を重ねて、労働者保護の観点で設けられたものであると認識しております。
先ほど菅村委員からもありましたとおり、私たち働く者や家族にとっては、労働の対価である賃金は生活に欠かせないものであり、その重要性を踏まえれば、賃金支払いの安全性・確実性を低下させる見直しは決して行うべきではないと考えています。改正資金決済法における直接返還の制度が創設されたとしても、その趣旨・目的が異なっている、デジタル払いにおける資産保全要件については、当然堅持されるべきものであって、やはり見直しは不要であると考えるところです。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
オンラインで引き続き、安藤委員から御発言の希望がございます。
お願いします。
○安藤委員 安藤です。よろしくお願いします。
今の皆様の議論も伺っていて、労働者保護の観点から、今回、要件を緩和する必要があるかといった点では、まだ当分様子を見るといった方向でも構わないと思いますが、今後、資金決済法に基づいて、より柔軟なルールの下で運用している場合であっても、特段問題がないということが判明してきたら、その際には、今、選択肢が4つしかないということで利便性に欠けているという可能性もあり、また、選択肢がたくさんあれば、その手段同士の競争なども踏まえて、さらに労働者にとっての利便性が向上することも考えられます。
というわけで、資金決済法での要件が設定された上で、当面、現状を維持するにしても、問題はないということが分かった時点では、再度検討を進めてもいいかなと感じております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかに御質問、御意見等はございますでしょうか。
田上委員、お願いします。
○田上委員 田上でございます。
中小企業の事業者の立場からコメントさせていただければと思います。
今回の論点につきまして、資産保全要件についての見直しは、現時点では特に必要は感じないと思っております。なぜなら、中小企業においてまだ導入が進んでいないということでございます。
ニーズの話で、労使ともにニーズがまだない、少ないという部分がありましたが、中小企業の事業者について考えますと、少なくともやりたいとは思っていないところです。
振込の手間もかかりますし、振込の手数料もかかるところでございますので、決してやりたいということにはなっていないはずですので、その点コメントさせていただきたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかに御質問、御意見等はございますでしょうか。
川田委員、どうぞ。
○川田委員 ありがとうございます。
2点述べたいと思います。
一つは、今日議論になっている資産保全要件の部分について、色々な御意見が述べられているところに少し付け加える形で、この議論においては、これは、最初に制度を導入したときと同じですが、今回の資料で言うと、4ページの4番目の○に出てくる「銀行と同程度の資金保全の仕組み」というところが、労基法24条の賃金保護の枠組みの中で問題を考えていく中で、重要と考えていくべきであろうということを述べたいと思います。
2点目は、今回の改正資金決済法の内容についての質問になるのですが、具体的には、同じ資料の4ページの2つ目の○に書いてあることです。資産保全の金額についての制度内容について、今回の改正資金決済法の改正で、何か変更されるところがあるのか。供託だけではなく、直接支払いが新たに加わるわけですが、その場合の金額の考え方に何か変わったところがあるのかどうかという趣旨の質問です。
以上です。
○山川分科会長 2点目は御質問ですが、事務局あるいは金融庁さんからいかがでしょうか。
○小澤金融庁企画市場局デジタル・分散型金融企画室長 御質問ありがとうございます。
今回の法改正で、資産保全の金額について変更があるかという御質問でございますが、特段変更はないと回答させていただきます。
○川田委員 ありがとうございました。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかにございますでしょうか。
菅村委員、お願いします。
○菅村委員 ありがとうございます。菅村です。
先ほど技術の発展があれば、上乗せ要件についても今後検討の余地があるのではないかとの趣旨の御発言がありましたが、資金決済法は、あくまで資金を移動させる業態である資金移動業に対するルールを定めたものです。
賃金のデジタル払いの議論を始めたときもそうですが、お金が滞留していくことを想定していない資金移動業者の口座を賃金の支払い口座に加えることの是非について検討を重ねてきたものと思っています。資金移動業は、そもそも業態などが異なっていることは十分に留意しておく必要があると思っております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかにございますでしょうか。
よろしいでしょうか。
本日、様々な御意見をいただきました。事務局においては、本日の御意見も踏まえて、引き続き検討を進めていただくよう、お願いします。
また、本日の論点以外もあるとのことでしたので、これにつきましても、次回以降、御議論いただければと思います。
では、オブザーバー参加の金融庁の担当者の方におかれましては、ここで御退席いただいて差し支えございません。
ありがとうございました。
○山川分科会長 では、続きまして、次の議題に移りたいと思います。
議題(2)は「労働市場改革分科会等について」。こちらは報告事項です。
事務局から説明をお願いいたします。
○川口労働条件政策課長 労働条件政策課長でございます。
資料No.2-1、資料No.2-2に基づきまして御説明いたします。
まず、資料No.2-1、日本成長戦略会議の労働市場改革分科会でございます。前回、第1回、第2回の議論の状況について御報告いたしました。今回、第3回が4月22日に行われましたので、その御報告をいたします。2ページを御覧ください。
今回のテーマとしましては、労働時間制度、あるいは労働参加の促進という点について議論がありましたが、特に2ページの⑥、労働力希少社会であることを踏まえると、労働投入の効率化、労働参加の促進が重要であるが、労働者の健康確保を前提としつつ、労働時間制度について、柔軟で多様な働き方の実現に向け、どのように対応していくべきか、このような論点の下に御議論いただきました。
当日の議論も、⑥の論点は非常に多くの議論があったということであります。
この際、第3回におきましては、29ページ以降に資料をつけておりますが、地域経済の大宗を占める中小企業・小規模事業者の実態を踏まえた議論を進めていくという観点から、全国中小企業団体中央会様、全国商工会連合会様にも御出席いただき、中小企業・小規模事業者の実態、考え方について、御説明いただいたところであります。
労働時間制度、労働時間規制については、様々な議論をいただいております。50ページ以降に、各委員の資料も載せておりますが、大きなテーマごとにこういう議論があったということを御紹介したいと思います。
まず、労働時間制度の総論的な、あるいは例えば上限規制などに関しての御意見ということで紹介いたします。
上限規制について、業種によっては、事業に何らかの支障が生じているという声が上がっている。時間外労働の月45時間、年6回規制の一部例外といったことが重要であるといった御意見がありました。他方で、労働者の健康確保や生活時間の保障を基本とすべきであって、長時間労働が助長されるような働き方は、結果的に多様な人材の確保の妨げになる、あるいは、長時間労働できる人がそもそも減っている、上限規制、その近傍で働く人がもともと限定的である、こういった観点から、上限規制を緩和すべきではないといった多くの御意見がありました。
続いて、勤務間インターバル、あるいは連続勤務規制等についても様々な御意見がございました。労働者の十分な休息、あるいは生活時間を確保する観点や、現行の変形週休制、4週4日の休日、あるいは勤務間インターバルの努力義務の下では限界があるとして、勤務間インターバル制度の義務化、あるいは長期の連続勤務の制限などについて検討を進めるべき、あるいはそういったものについて、例外措置や代償措置も含めて検討を進めるべきといった御意見。そういったことについては、諸外国の特例措置等を参考にすれば、その義務化も非現実的ではないのではないかといった御意見。あるいは、働き方の柔軟化を進めていくと、その際、家庭内負担との境界の曖昧さ、あるいは長時間労働につながるといった観点から、いわゆるつながらない権利の導入も検討すべきといった御意見がございました。
他方で、勤務間インターバル制度については、これまでの年・月単位での労働時間規制への対応に加えて、さらに1日単位、日単位での規制を課すことは、業務への柔軟性を欠く、各社の実態に応じた柔軟な制度設計が可能となる方向で検討することが重要であるといった御意見がございました。
続きまして、裁量労働制についての御意見です。
これについて、適正に運用されれば、あるいはうまく機能すれば、労働者にとってもよい制度である、メリットもあるという御意見も複数ありましたが、その中でも、制度の濫用防止策とセットで拡充の議論を進めてほしいといった御意見、あるいは、適正に運用されるためにはどうあるべきかということについて、労働政策審議会で慎重に議論をすべきという御意見、あるいは、不適正に適用された場合に、それが続いてしまうことを許すのかといったことについて、慎重に検討すべきであるといった御意見がございました。
他方で、裁量労働制について、長時間労働になりやすく、あるいは裁量や適切な処遇が必ずしも確保されていない実態がある中で、制度拡充ではなく、2024年改正を踏まえた適正運用を徹底すべきであるといった御意見、あるいは、仮に適用拡大した場合の副作用、リスク、あるいは過半数労組であれば大丈夫なのかといったことについては、慎重に検討すべきといったような御意見がございました。
変形労働時間制についても御議論がありました。
天候の変化、あるいは取引先との関係といった他律的な要因で業務の繁忙が当初と変わる、大きく左右されることに対して、変形労働時間制、現行制度が十分に対応できず、特に勤務日を30日前に特定することについて、30日間の短縮とか、一度勤務日を特定した後に、変更を認めるといったことなど、要件の見直しを検討すべきといった御意見がありました。あるいは柔軟な運用を検討していくに当たっては、労働者の予見可能性、健康確保が重要で、その客観的要件を明確化するなど、限定的であるということを前提に議論すべきであるといったような御意見がありました。他方、変形労働時間制については、例外的な制度であって、労働者保護の観点から様々な要件がもともと課されているという趣旨を踏まえれば、労働者のリカレント教育とか、リ・スキリングも含めて、生活時間設計を損なうような要件緩和は行うべきではないといった御意見がございました。
このほか、副業・兼業とかテレワーク、フレックスタイム等についての御議論もあったと思います。
このような御議論がありましたが、労働市場改革分科会につきましては、3月以降、計3回行ってまいりました。各論の議論がこれで一巡したということになりますが、今後、夏の成長戦略取りまとめに向けて、5月の取りまとめを目指していくことが予定されております。労働時間制度、労働時間規制につきましては、労働市場改革分科会の議論も踏まえて、引き続き、労働政策審議会で御議論いただきたいということでございます。
これに関連して、2点ほど追加的な御説明をさせていただければと思います。
労働市場改革分科会は4月22日に行われましたが、同じ日に、言わば親会議に当たる日本成長戦略会議の第4回が開催されております。ここでも様々な御議論、テーマがあったわけですが、その中で、労働市場改革に関する御議論もありました。
一部のみの御紹介になりますが、経団連の筒井委員からは、裁量労働制の運用に当たっては、処遇の改悪につながってはならないのは当然である。経済界として、健康確保を前提に、長時間労働を防止し、処遇の改善に取り組んでいく。企業の取組を後押しする観点から、政府には、自律的に働き手、生産性を高める裁量労働制の拡充をお願いするといった御発言がありました。
一方で、連合の芳野委員から、労働時間法制の在り方について、労働力希少社会であるからこそ、多様な人材が安心して働ける環境整備が不可欠であり、そのためには、上限規制の段階的な強化などを進めることが重要である。経済界等が主張する裁量労働制の拡充、あるいは変形労働時間制の要件緩和などは、労使で懸命に進めてきた働き方改革を逆行させるものであって、決して容認できない。労働時間法制を含む働き方改革の見直しは、公労使三者構成から成る労政審の議論を尊重すべきであり、日本成長戦略会議で方向づけを行うべきではないといった御発言がございました。
これを受けて、高市総理から上野厚生労働大臣に対して、指示という形でこういった御発言がありました。裁量労働制や変形労働時間制など労働時間制度の見直しについて、現場の実態や労使双方の立場を十分に踏まえて、検討を加速すること、裁量労働制について、経済界として健康確保、長時間労働防止、処遇改善にしっかり取り組まれるとの御発言も踏まえ、こうした濫用防止措置を前提に、制度対象の在り方について、見直しの検討を進めることについて御指示がありました。
これが同日に行われました日本成長戦略会議での主な労働時間関係の状況でございます。
最後に、労働市場改革分科会でも議論のあった裁量労働制に関して、前回、現状の実態を把握する調査を行いたいということを申し上げました。その調査案について、資料No.2-2という形で、簡単にこういう調査を行っていきたいということについて、御報告させていただきます。
資料No.2-2の1ページ目を御覧ください。
前回も事務局から御説明しましたが、裁量労働制の実態の把握につきましては、中立的に設計して、詳細に設計した令和元年の裁量労働制実態調査をベースに、限られた状況の中で行ってまいりたいと考えております。その上で、調査の目的については、目的欄にありますとおり、令和6年度(2024年度)に施行された制度改正の内容を含めて、現行の裁量労働制が実際にどのように運用されているか、その実態を把握することを目的として実施するものでございます。調査対象としましては、大きく事業場調査、労働者調査と2本ございます。
事業場調査ですが、まず、基本的には「適用事業場調査」として、専門業務型、または企画業務型の裁量労働制を既に導入している事業場を対象とする調査でありまして、具体的には、令和5年から令和7年に協定の届出、あるいは令和7年に企画業務型裁量の報告を監督署にいただいておりますので、そこで得た事業場を対象に、全数調査を行うことを考えております。
あわせて「非適用事業場調査」ということで、すなわち、裁量労働制は導入していないが、裁量労働制の対象業務に相当する業務に従事している労働者がいる事業場を対象とした調査を行います。こちらは、括弧書きに書いてありますとおり、令和元年に実施した裁量労働制実態調査において、裁量制は導入していないけれども、同様の業務に従事している事業場が把握できておりますので、こうした事業場を調査対象として行いたいと思っております。あくまで令和元年の調査リストを使うということでいくので、ある意味参考として把握していくということを考えております。
次に、労働者調査についてであります。
こちらも適用労働者、非適用労働者と2つ分かれておりますが、今回の調査では、特に適用労働者調査においては、事業場ごとに企画業務型・専門業務型それぞれ最大10名といった数を無作為に抽出するという方法を予定しております。
今回の調査では、対象業務、専門業務型であれば20の業務がありますが、それごとの数字は取りますが、集計する際の復元に関しては、専門業務型全体としての数字であったり、回答を得るという形で行う予定でございます。
次に、調査事項について、細々書いてありますが、ここに書いてありますとおり、令和元年に実施した調査の調査項目を中心に行います。それに加えて、令和6年度に施行された制度改正事項として、みなし労働時間の設定の在り方、あるいは健康・福祉確保措置は、どういったものを設定しているか、健康確保措置の結果、適用から外した場合の有無、あるいは外した場合の配置・処遇といったことについて、あるいは、本人同意や撤回について、様々改正されましたので、撤回の申出先とか申出方法、撤回後の配置・処遇といったことについて調査をしてまいります。労使委員会・過半数代表についても、労使委員会の機能強化等の改正が行われましたので、労使委員会への説明内容とか、賃金・評価制度が変更する際の労使委員会への説明等について調査を行います。あわせて、本分科会でも様々議論のある、本当の裁量の度合いがあるのかといった御議論がありますので、業務遂行における裁量の程度においても一部追加いたします。
労働者調査についても同様で、令和元年調査の項目を中心に、令和6年度に施行された改正ということで、調査項目を入れております。同様に健康・福祉確保措置の内容、本人同意・撤回の内容等について追加しております。あわせて、業務遂行における裁量の度合いも事業場調査と並行して行いますし、過半数労組の有無についても追加して、労働者にも聞くということで考えております。
調査期間でありますが、令和8年7月から8月にかけて実施したいと考えておりまして、その後、集計を行い、本年秋をめどに調査結果をお示ししたいと思っております。実施主体につきましては、JILPT(独立行政法人労働政策研究・研修機構)が実施するということを考えております。調査手法につきましては、事業場調査は郵送による調査票回答のほか、オンラインによる回答、あるいは労働者につきましては、事業場を介さずに、直接オンラインによる電子回答ということを予定しております。
こういった調査をこれから行っていきたいと考えております。報告については、以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明につきまして、御質問、御意見があれば、お願いいたします。
オンライン参加の皆様におかれましては、先ほどと同様、チャット機能を御利用ください。
御質問、御意見等はございますでしょうか。
福本委員、どうぞ。
○福本委員 ありがとうございます。
私からは、前回の4月の労働条件分科会で、裁量労働制の拡充や要件緩和はニーズがないので、行うべきではないというコメントがあったところを踏まえて、改めてその意義等について発言させていただきたいと思います。
まず、経団連が実施したアンケートでは、ホワイトカラーの労働者の33%が裁量労働制を希望していて、裁量労働者からは、めり張りを持って自分のペースで働ける、就業時間が短くても一定額の手当がもらえる、成果に応じた処遇が受けられるといった点で評価されています。そのような期待に応えることが必要だと思いますし、厚生労働省の2019年の裁量労働制実態調査で企画業務型裁量労働制適用者の26.7%、4人に1人が、現行対象業務は狭く、見直すべきと答えています。
また、これに加えて、裁量労働制の必要性を感じる理由として、時間から生産性への働くほうのマインドセットチェンジは非常に必要であると考えています。これは、長い視点で見ると、企業の成長につながり、企業が成長すると、労働者に働く環境の整備や賃上げも含めて還元されるという意味では、翻って、長い視点での企業の成長に資するかは労働者にとっても非常に重要だと思います。
日本の労働生産性は、長らくそれほど高くないという状況で、かつ、最近はAIが出てきています。個々人が時間ではなくて、生産性・成果にしっかりとマインドを向け、AIの活用を個々人で進めようというマインドセットが高まってくると、生産性は大きく変わってくると思います。時間ではなく、生産性・成果に目を向けることで、より付加価値の高い業務を従業員が行うようになり、結果として企業が成長し、企業の成長の成果を労働者にしっかりと分配していく。こういった流れをつくっていくことが、長い目で見たときには、成長ないし労働者のメリットにも還元してくると思っています。私は3年間、アメリカで働いていましたが、エグゼンプトと呼ばれる企画型の裁量が非常に多く適用されて成果ベースの評価に基づき、生産性高く働いていたところを見てきていますので、そういったコンテクストも踏まえてであります。
もちろん、言うまでもなく、長時間労働の抑制や健康確保は、非常に重要だと思っています。適切な運用を行っている企業の取組を参考に、抑制の仕方、それから、きちんと自分で意思を示して外せるような保護や処遇の確保の在り方をセットで行うところは当然のことであります。裁量労働の拡大については前述のメリットもあることから、全く不要という10:0の議論ではなく、両立させるための議論を改めて示していくのがいいのだろうと考えております。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
オンラインでお二方御発言希望がございます。
まず、鳥澤委員、お願いします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
鳥澤です。私から意見を申し上げます。
時間外労働の上限規制につきましては、中小企業においては、ならせば対応できている企業が多数でございますが、宿泊、飲食、運輸、建設など、業種によっては、事業運営に支障が生じている企業が多くございます。
中小企業においては、多層構造のサプライチェーンの中で、取引先からの影響を強く受ける環境にあり、前工程の遅れ、短納期の要請、発注内容の変更など、随時対応を求められることも多くございます。
そもそも深刻な人手不足の中、こうした突発的な業務に対応する代替要員もおらず、特に専門性の高い業務など、特定の業務を担う人材を中心に、上限規制への対応が困難となる企業が一定数ございます。
こうした自社ではコントロールできない、他律的な要因の影響を強く受ける中小企業に対しては、健康確保と労使合意を大前提とした、月45時間超・年間6回までの時間外労働の上限規制の一部例外措置や、変形労働時間規制をはじめとした、より柔軟な働き方を可能とする制度の拡充、要件緩和が必要と考えます。
特に変形労働時間制については、外部要因で生じる突発的な業務や、繁閑の変動への対応策としての活用ニーズがある一方、既に労働日・労働時間を特定している場合、特定後の変更が認められない点や、期間を区分する場合において、当該期間開始の30日前に労使合意を得ることが必要である点などから、有効に活用できないとの声が多くございます。
現在、日本商工会議所が全国の中小企業に対して行っている調査では、途中集計の参考値ではございますが、変形労働時間制の拡充および要件緩和など、繁閑や予期せぬ業務に対応できる柔軟な労働時間制度の実現を求める企業は7割に達します。
変形労働時間制について、勤務日・勤務時間の特定後の変更を認める措置、労使合意を得る期間の30日前からの短縮など、より柔軟に活用できる制度となるよう、要件を緩和すべきと考えます。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
では、続きまして、加藤委員、お願いします。
○加藤委員 加藤でございます。
御指名ありがとうございます。
私からは、裁量労働制について、幾つか御発言させていただきたいと思っております。
第3回「労働市場改革分科会」では、裁量労働制については、適正に運用されればいい制度であり、ただし、適正に機能しない例、あるいは一部問題であるので、そういった適正運用について何が必要か、検討していくことが必要であるという趣旨の御発言があったと聞いております。これについては、裁量労働制の意義等、問題点、課題を切り分けた正しい議論だと思っております。
他方、当分科会のこれまでの議論におきましては、成果に応じた処遇は、フレックスタイム制の活用で可能という御指摘を繰り返しいただいているわけではございますが、これは裁量労働制を否定しているように聞こえて、こういった裁量労働制の意義とか役割が伝わっていないことに対しては少し残念に感じております。改めてフレックスタイム制と裁量労働制の違いについて、適正に運用されれば良い制度であるということについて、私から御発言させていただきたいと思っております。
フレックスタイム制の適用によって、労働者に一定の裁量を与えることが可能であるということはそのとおりであると考えます。柔軟な働き方の選択肢の一つとして、当社でも、多くの企業でも活用されているということであります。
ただし、フレックスタイム制については、仕事の進め方について、労働者に裁量を与えることということまでは法律で求めてはおりません。
他方、裁量労働制については、働く時間と仕事の進め方の両方について裁量を与えることが法定されていて、この点がみなしの労働時間が適用されている裁量労働制と異なる点かなと思っております。
また、時間ではなく、成果で評価・処遇するということでありますと、フレックスタイム制では限界があるかなと思っております。
以前のこの会議でも私は御発言させていただきましたが、自動車産業で申し上げますと、課題解決型から課題創造型への働き方が求められていると思っておりますし、先ほど日立の福本委員からもございましたが、労働時間の長さ、イコール成果ということに必ず結びつくということではないと考えております。
また、これも繰り返しになりますが、労働組合等のアンケートを見てみますと、生産性・成果の質、やりがい向上につながるといったような前向きな意見も出ておりますので、こうしたものが労働者の方の成長実感、やりがいにつながれば、企業の生産性もおのずと上がってくるのではないかと思っております。
もちろん、フレックスタイム制の良さもあると考えておりますが、フレックスタイム制では代替できない効果があるからこそ、法律で比較的厳しい手続、要件が課されている裁量労働制を運用して、そういった適用されている労働者から評価されている、やりがいにつながる、成長実感があるといった声が少なくないことについては、御理解いただきたいと考えております。
私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
オンラインでもうお一方、田中委員からの御発言希望がございます。
お願いします。
○田中委員 御指名ありがとうございます。田中です。
私からも裁量労働制に関連して、2点発言させていただきます。
1点目、健康確保との関係であったと思うのですが、前回の分科会で、裁量労働制適用者は13%年収が高いということで、多少労働時間が長くてもよいという誤解につながるという趣旨の御発言があったかと思います。これに関連してです。
厚生労働省の調査の二次分析によりますと、裁量労働制適用労働者は、非適用労働者に比べて、週で見ると3%労働時間が長いとの結果があります。ただし、裁量労働制は柔軟で自立的に働くための選択肢の一つであって、あくまで自身で選択する制度です。健康を害さない範囲で、時に集中して働き、めり張りをつけることが重要です。一定期間内で、事情に応じて長くなっていることのみをもって、直ちに問題視することは、裁量労働制の趣旨に合わないと考えます。
もちろん、労働者の健康を確保することは前提ですので、長時間労働にならないように、防止策を検討することが重要です。
企業は、制度導入時や問題が発生した場合の対応策を現場の実務に合わせて工夫しています。例えば上司の指示がなくても、自ら考えて行動できる労働者に適用されるよう、一定の職業経験があることを適用の要件とする例がございます。また、一定の時間を超えるような働き方を恒常的にしている場合、適用から外す企業もあると聞いております。こうした企業の事例が参考になると考えます。
2点目、労働組合の有無に応じた規制についてです。
前回の分科会で労働者側委員の方から御発言がありました、労働組合の有無によって規制を変えることはあってはならないということに関してです。
過半数労働組合がある企業の多くは、複数の組合執行部メンバーが組合員とコミュニケーションを取りながら、適切な処遇、十分な健康確保措置を設けるとともに、制度導入後も労使で定期的に情報を共有して、協議・交渉しながらチェック機能も働いていると理解しております。
労働組合の活動は、憲法で保障されている労働三権に裏打ちされていて、労使対等性も担保されていると認識しています。例えば労働組合がある企業が、ない企業に比べて賃金の引上げ率が高いというのは、その交渉力の現れだと考えます。だからこそ、過半数労働組合があることを手続上の要件とすることが、実質的に労働者の保護につながると考えます。
また、労働市場改革分科会の委員からは、労使関係の在り方は多様であるため、あらゆる場面を想定して、事前に法律で決めておくことが現実的ではなく、一定の規制とガイドラインを定めた上で、当事者双方が納得するのであれば、ガイドラインから外れる余地を残すような、複線的な規制の在り方が望ましいという意見があったところです。
裁量労働制の適正運用において重要となるのは、労使委員会ですが、過半数労働組合がある企業では、労使委員会の実効性も高いと推察します。
今回改めて行われる実態調査では、そうした分析も行って、次の議論につなげていくことが有益ではないかと考えます。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかに御質問、御意見等はございますでしょうか。
では、菅村委員、お願いします。
○菅村委員 ありがとうございます。菅村です。
先ほど来、裁量労働制に関わる御意見が出ておりますので、私からも労側の意見を申し上げたいと思います。
労働市場改革分科会でも、裁量労働制については、適正に運用されれば良い制度であるという御発言があったことは承知しておりますが、繰り返しになりますが、厚労省の実態調査からは、長時間労働になりやすいこと、不適正な運用がなされている実態が一定程度データでも明らかになっていると考えております。
連合の加盟組合にもいくつかヒアリングしておりますが、「職場の一部で際限なく長時間労働となっている」、「裁量が必ずしも確保できていない、またはできにくい業務にも適用されている」、「同じ職場の裁量労働制の非適用労働者と比べて、自分の処遇が適切なのかどうかが疑問である」といったような声が実際に現場から寄せられているところでございます。
先ほど裁量労働制の拡充の理由として、労働時間から生産性向上へのマインドチェンジが必要という御意見もございましたが、日本の労働生産性が低くとどまっているのは、企業の内部留保が積み上がる一方で、賃金を含む人への投資が十分になされていないことも原因の一つではないかと思っております。マインドチェンジという御意見がございましたが、それは裁量労働制の問題ではなく、マネジメントの問題ではないかと考えております。
また、時間ではなく、成果に応じた評価が可能となるというお話もありましたが、実際に実労働時間を管理されていても、一定程度の成果給との組み合わせなどもなされていると認識しておりまして、必ずしも労働時間に比例した賃金制度ばかりではないと認識しております。
加えて、労働者自身が同意・不同意を含めて選択できるとの御発言もございましたが、労使関係には圧倒的な力の差があることは必ず踏まえておかなければいけないと思っております。労働者が自ら適用を外れたいときに、その後の処遇がどうなるのか、不利益な取扱いがなされないのかどうかといったことも含めて、真に自由な意思にもとづく同意や同意の撤回が可能となるための環境整備がなされているか否かについても踏まえておかなければいけないと考えております。
フレックスタイム制と裁量労働制の関係について、フレックスタイム制には業務遂行にかかる裁量がないのではないかという御意見があったかと思いますが、先ほど現場の御意見を一部御紹介しましたが、裁量労働制が適用されていても、必ずしも全てに裁量が確保されているとは限らない実態もあると思っております。
前回の労働条件分科会でも申し上げましたが、厚労省の実態調査結果では、裁量の程度について、裁量労働制の適用労働者と非適用労働者とさほど違いがなかったと認識しておりまして、非適用労働者であっても、自分で全く何も判断せずに上司の指示だけ仰いで仕事をしている労働者がどれほどいるのか。通常の労働時間制度でも、業務遂行に当たっては、一定の裁量をもって自分の仕事を行っており、そうした点も踏まえるべきだと思っております。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
会場からほかに御質問、御意見等はございますでしょうか。
では、田上委員、お願いします。
○田上委員 中小企業団体中央会の田上でございます。
資料の40ページに、労働市場改革分科会のときの資料がついておりますが、補足的にコメントさせていただければと思います。
中小企業におきましては、何しろ深刻な人手不足にあるということです。規模の小さい事業者ほど、より厳しいということがあろうかと思います。
人が欠けて、採用したいと思って、募集をかけても、なかなか人が来ない、あるいは来ても、なかなか定着しないという状況になっている。そういったときには、人材、労働力を掘り起こして活用していくことがどうしても必要になるわけでございます。そのときに大事なのは、労使のコミュニケーションと思っておりまして、採用するときの候補者の方がどういう意思を持っていて、どういう希望で働きたいのかというところをよく聞いて、その方が働ける条件で雇用できると良いね、というような声が実際に多くございます。
そういう意味では、制度の問題と運用の問題があると思うのですが、制度につきましては、なるべく簡素に、分かりやすく、複雑でない制度にしていただいて、中小企業の経営者でもすぐに分かって、導入できる、利用できる、というのがまず必要です。
そうした簡単な制度を利用した上で、大事なのは運用で、その運用の中で労働者の希望をしっかりと聞いて、それを実現する働き方を提供して、納得していただく処遇も与えていくことが必要と思っております。
そうやって、地域を支える中小企業の労働者の方々がやりがいを持って、地域を支えることに生きがいを持って働ける環境を整えていく。そのために、使い勝手が悪い制度になっているのであれば、使いやすくするという改善はやるべきだと考えております。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかにございますでしょうか。
では、鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
先ほど菅村委員から適切な処遇がなされていない企業が一定あるのではないか、裁量労働制は長時間労働になりやすいのではないかとの御示唆をいただきました。これまでも労側委員の方から様々な形で御示唆をいただいていることは承知しており、その点は大変重要な論点だと思っていますので、改めて裁量労働制適用労働者の労働時間と適切な処遇について、意見を申し上げたいと思います。
まず、処遇については、前回の分科会でも申し上げましたとおり、裁量労働制の適用労働者と非適用労働者で比較すると、年収が13%高く、黒田先生からも御指摘をいただきましたが、時間単位ベースであっても1%高いという分析結果となっています。裁量労働制の適用労働者の処遇は、総じて問題はないと私としては受け止めています。
また、労働時間についてですが、同じく回帰分析の結果では、適用労働者は、非適用労働者の労働時間と比べると、先ほど田中委員からも御指摘があったと思いますが、週2時間労働時間が長いとの結果が出ています。有識者による「これからの労働時間制度に関する検討会報告書」の中では、回帰分析の結果、制度の適用によって、労働時間が著しく長くなるといった影響があるとは言えないというような評価もされていると承知しています。
過半数労働組合がある裁量労働制導入企業を中心に、一定時間を超えると裁量労働制の適用から外すような例や、一定労働時間を超える労働が続くような社員に対しては、上司との面接などを実施し、該当する職場における業務負荷の平準化を行うなど、長時間労働にならないような工夫を労使の知恵の中で行っていると承知しています。
加えて申し上げますと、企画立案調査及び分析の業務を自律的に行う労働者は、必ずしも成果が労働時間と比例しないという特性がありますので、時間比例だけの視点から処遇の在り方や処遇の相当性を考えるという発想には違和感があります。
裁量労働制につきましては、これから行う実態調査の結果を踏まえつつ、適切な運用を行っている企業の取組を参考に、健康確保策、処遇確保策を議論しながら、対象業務の拡充の検討を進めるべきと考えています。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかにオンラインから原委員の御希望がございます。
お願いします。
○原委員 原です。ありがとうございます。
つい先ほど来、共有されていた資料No.2-2について、つまり、今回の実態調査のことで事務局にお聞きしたいことが2点ほどございます。
1点目は、調査事項の中で、事業場調査の「みなし労働時間の設定」という黒ポツあたりに関係するかと思うのですが、今回の調査においては、みなし労働時間と実際の労働時間の状況の乖離についても明らかになるような調査だと理解してよろしいのでしょうか。いかがでしょうか。
○山川分科会長 御質問ですので、事務局からお願いします。
○川口労働条件政策課長 事務局でございます。
当該事業場におけるみなし労働時間、把握した労働時間の状況は、前回調査でも両方を出していて、それがオールジャパンで全体どうなっているか、つまり、違いがどのぐらいあるかということは、今回も把握したいと思っております。
○原委員 ありがとうございます。
安衛法に基づく状況の把握も義務づけられておりますし、要は、みなし労働時間制の議論をするときに、結局、みなし労働時間と設定された時間と、実際の時間に、どれぐらい乖離があるかということが多分大きなポイントで、その乖離がものすごく大きいということで、例えば実労働時間のほうがものすごく長いということであれば、健康確保等、様々な措置を講じたとしても、労働者の負担は大きいということになりますし、他方、乖離がそこまででもなければ話は違ってくるということもありますから、みなし時間と設定されている時間と実際の労働時間の乖離について、よりしっかりと調べていただければと思ったのが1点です。
もう1点は、少し下のほう、労働者調査の本人同意・撤回の部分なのですが、撤回が加わった関係で、撤回について様々な記載があるのですが、これは、そもそも裁量労働制の適用の開始時点、同意を取る手続についてはあまり調べないという感じになるのでしょうか。
○山川分科会長 こちらも御質問ですが、いかがでしょうか。
○川口労働条件政策課長 今回、2024年改正で、撤回についても様々な規定がされていますので、それは追加して調べます。
同意そのものについては、前回調査でも、どういう方法で同意を取っているかとか、そういう一定の事項は調べております。
あるいは、同意をしなかった人がどれぐらいいたかとか、そういったことも調べておりますが、前回調査したことは今回も調査いたします。
○原委員 ありがとうございます。
前回とそろえることも重要かと思うのですが、撤回に関して、具体的に、例えば撤回の申出先とか、撤回後の配置・処遇に影響があったかを調べるのであれば、撤回よりもむしろ大事なのは同意の部分です。
最初の同意の部分で、同意しないことが、例えば同意を拒否しづらい雰囲気だったかとか、同意の手続で例えば使用者側からどういう説明があったかとか、そういった同意そのものに関して具体的に調べていただいて、プラス、撤回についても調べていただけるのはもちろん賛成なのですが、そもそも入り口の同意について、より具体的に、これは、調査項目が少し変わるかもしれませんが、本来はそこが大事だと思うのです。
ですので、撤回に関して調べるだけでなく、同意の手続とか、同意に関する様々な状況について調べることを御検討いただけたらと思いました。
以上です。
○山川分科会長 どうぞ。
○川口労働条件政策課長 今の点に関して申し上げますと、非常に重要な御指摘です。
ただ、調査の手法上、同意をしなかった人、つまり、同意した人が適用労働者になっていて、結果的に同意しなかった人については、直接調査の手が及ばないところはありますが、同様の観点から、一度同意はしたのだけれども、撤回した方がいると。
そういう場合に、なぜ撤回したのか、あるいは撤回はしていないけれども、撤回しづらい雰囲気があるとか、そういった同意しなかった理由を直接聞くことは難しいのですが、それに近いものを聞けないかということは、今、工夫しながら検討したいと思っています。
○原委員 ありがとうございます。
多分、同意をした方はたくさんいらっしゃると思うのですが、同意を撤回する方はあまりいらっしゃらないのではないかという感覚があります。
ですから、もちろん、同意した方が調査の対象だと思うのですが、そのときに例えば同意を拒否しづらいと感じたか、あるいは同意に際して、十分な説明が提供されたかとか、そういったことについては、同意をした方について聞けると思います。
ですから、もちろん、調査の形から、同意をした方が前提だと思うのですが、そのときに、振り返っていただいて、同意せざるを得ないような雰囲気だったかとか、そういったことについて、もしあれば、重要な情報かと思いますので、調査に盛り込んでいただけたら、御検討いただければと思います。
ありがとうございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
では、鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
ただいまの原委員の御指摘について、意見を申し上げたいと思います。
みなし労働時間と実労働時間に乖離があると問題があるのではないかとの趣旨で御発言があったものと理解しています。
まず、裁量労働制の適用労働者が過重労働になって、長時間労働に及ぶことには問題があり、裁量労働制の指針においても、使用者は、業務量が過大である場合や、期限の設定が不適切な場合には、労働者から時間配分の決定に関する裁量が事実上失われることに留意する必要があります。業務量過大による長時間労働は、裁量労働制の肝である裁量性が失われていますので、ここは揺るがせにできないと思っています。
一方で、みなし労働時間制の設定については、指針において、対象業務の内容、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対する賃金制度を考慮して、適切な水準になるよう、決議することとし、対象労働者が適切な処遇を確保することが必要です。過半数労働組合等で適切に運用している企業の多くは、適切な裁量労働手当を支給されていますので、先ほどの評価制度なども含めて、適切な処遇という中で、適切なみなし労働時間を労使で決めていくことが基本だと思っています。
みなし労働時間と労働時間の関係は、適切な処遇確保の議論と、長時間労働にならないかという議論を分けて考える必要があると思っています。長時間労働にならないようにするためには、健康・福祉確保措置としてどのようなものが取られているのか、どのような実効性が担保され、運用されているのかといった観点、また、一定時間を超えるような適用労働者に対しては、一旦対象から外すことを含めた健康・福祉確保措置の実効性をどう担保していくかという議論をすべきだと思っています。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
では、オンラインでもうお二方御希望がございます。
まず、春川委員、お願いします。
○春川委員 ありがとうございます。
私からは、労側の立場で、裁量労働制に関連して、3点意見を述べさせていただきます。
まずもって、裁量労働制を拡充することは、何時間働いてもみなし労働時間しか働いたことにはならない、みなし労働時間制を幅広く適用していくということであって、こうしたことは決して労働者のためではないと考えるところであります。
総点検の調査結果を見ましても、労働者のニーズは明らかであって、「労働時間を増やしたい」という人は1割にすぎず、そのうちの大多数の理由は「賃金を増やしたいから」となっています。何時間働いても賃金が増えない裁量労働制のニーズは、ほぼみられないのではないかと考えております。
前回、裁量労働制は、時期とか繁閑に応じて、労働時間の調整ができるといった御指摘、御意見もありましたが、そういったところは、まさに働き方ということであれば、フレックスタイム制でも十分に対応できるものであって、絶対に裁量労働制でなければならないとも思わないところであります。
それに加えまして、先ほど来、過半数労働組合についてもありましたので、改めて労側の立場として触れさせていただきます。
過半数労働組合が非常に重要であるということは言を俟ちませんし、今も労側である私たちは、全国各地で過半数労働組合を目指して、組織拡大、組織化に取り組んでいるところであります。
使側の委員の皆様からは、労使の対等性が担保できている過半数労働組合がある企業において、例えば裁量労働制の適用業務を広げるべきといった御意見等もこの間ございましたが、そもそも労使の対等性は、過半数労働組合であっても容易に確保できないということを申し上げておきたいと思います。
多くの労働組合が加盟しています産業別労働組合の立場から見ますと、例えばユニオンショップ協定を締結しているような組織率が100%、それに等しい労働組合であっても、労使の対等性を少しでも高めて、さらには維持していくために、日々努力を重ねています。それでも、実際の職場現場、例えばこれは事業場単位においてでもありますが、企業、使側から経営のためにと言われますと、労働組合としては、対等に交渉することが難しい場面も残念ながら存在しています。
そういった中で、労使合意によって、例えば対象業務の拡大を認めてしまうようなことは、結果的に制度の濫用を誘発させることになり、長時間労働、それによる健康被害を招くことになってしまわないかと考えるところであります。
ですから、改めて裁量労働制に限らず、労働組合の有無で最低基準である労基法のルールの適用拡大を行うようなことは行うべきではないということを強調させていただきたいと思います。
それと、先ほどフレックスタイム制のこともありましたので、少し触れさせていただきたいのですが、成果を上げた労働者に対する処遇に対しては、例えば評価制度、賃金制度で対応すべきというところであって、これは労働時間制で解決すべきものではないと考えています。
この御指摘の根底にあるところは、恐らくは割増賃金の部分ではなかろうかと捉えているところでありまして、割増賃金は、あくまでも特別の労働に対する労働者への補償という部分、使用者に経済的な負担を課すことによって、長時間労働を抑制するという趣旨の制度の中にあるものと捉えています。ですから、割増賃金支払いの方は別問題であって、そこに不公平感が生じるのであれば、それは職場現場におけるマネジメント上の課題なのだろうと考えています。
割増賃金規制は、短く働いた者に手厚い処遇を行うことを禁止するルールではありませんので、通常の労働時間管理の中で労働時間が短い労働者に対しても、成果に応じた処遇を行えばよいのではないかと考えております。
以上3点、私から意見を申し上げさせていただきました。
○山川分科会長 ありがとうございます。
続きまして、オンラインで亀田委員の御発言希望がございます。お願いします。
○亀田委員 ありがとうございます。私からは、変形労働時間制について発言させていただければと思います。
労働市場改革分科会において、一部の委員から、変形労働時間制について「天候の変化や取引先との関係などで、現行制度では対応が困難」といった意見も出ておりますが、現行制度においても、繁忙期には最長で1日10時間、1週間で52時間までの所定労働時間が設定でき、さらには36協定を締結すれば、時間外・休日労働すらも可能となっております。こうした柔軟な制度でも対応できないという状況は、本当に労働時間制度の問題なのかと疑問を感じてしまうところでございます。
先ほども御意見がありましたが、緩和要望の背景にあるのは、裁量労働制を含めてそうなのですが、実際のところは、割増賃金の支払い原資の圧縮にあるのではないかと疑ってしまうのが正直なところでございます。
その上で、1年単位の変形労働時間制は、繁忙期に長い労働時間を設定し、閑散期に短い労働時間を設定するものですが、長時間労働を招く可能性や、労働者の生活に大きな影響を及ぼす懸念を防止するために、対象者の範囲、変形期間、勤務カレンダーなどを労使協定で定めることが要件となっております。特に労働者が予定を立てやすくするための開始前の特定に係る期間、30日前の要件につきましては、法律で規制されている非常に重要なものです。
そうしたことを踏まえますと、労使合意を得るまでの期間の短縮や計画申請後の変更といった要件緩和は、労働者の健康確保や生活設計に悪影響を及ぼしかねないため、決して行うべきではないと考えております。
以上、よろしくお願いいたします。
○山川分科会長 ありがとうございます。
では、続けて、オンラインで御参加の加藤委員、お願いします。
○加藤委員 加藤でございます。御指名ありがとうございます。
私からは、再度、裁量労働制と実態調査について、少し意見を述べさせていただければと思います。
先ほど来、裁量労働制の議論がいろいろとあって、裁量制のない適用者への懸念みたいなところも、労側から少し危惧されていたのではないかと思います。そう考えますと、まず、平均の実労働時間数と平均のみなし労働時間数の乖離みたいなことが論点かなと思っております。
先ほど鈴木委員からも御発言がありましたとおり、厚生労働省の裁量労働制の指針みたいなところを見ますと、労使委員会において、みなし労働時間について決議するに当たっては、委員は、対象業務の内容並びに対象労働者に適用される評価制度及びこれに対する賃金制度を考慮して、適正な水準のものとなるよう、決議することとし、対象労働者の相応の処遇を確保することが必要であるとしています。
つまり、みなし労働時間の設定に当たっては、ポイントは適正な処遇ということにあって、平均実労働時間数の乖離という視点はあまり考慮されていないのではないかと考えております。
同時に、指針の中では、使用者は、業務量が過大である場合や、期限の設定が不適切である場合には、労働者から時間配分の決定に関する裁量が事実上失われることがあることに留意する必要があるともされていて、すなわち、みなし労働時間の設定がどうであれ、実際の労働時間が長時間に及ぶ場合には、裁量性が失われている可能性があるということではないかと思っております。
このように、労働が長時間に及ぶかどうかということが重要であることを考えますと、裁量労働制の適用労働者の実労働時間がみなし労働時間よりも1時間長いことと、仮にそう置いたとすると、それをもって労働者に裁量がないとは必ずしも言えないのではないかと思っております。
また、先ほど来出ている制度をどう運用していくかという観点ですが、制度を適切に運用している企業ということであれば、こういった指針を真摯に受け止めて、一定の労働時間を超える場合には、裁量労働制の適用を外すとか、上長と面談をして、目標の見直しといったようなことを行うという工夫もして、裁量性の確保を行っているところでございます。
また、2021年の裁量労働制実態調査を見てみますと、裁量労働制適用労働者の約7割が具体的な仕事の内容・量についても自分が決めていると回答していると思います。
進捗報告の頻度も同様の回答でございます。これについては、業務の時間配分、遂行方法については、約9割の方が自分で決めていると回答しています。このため、全体として、制度は適正に運用されているのではないかと理解しております。
先ほど労側から、一部企業では不適切な運用がなされているという御指摘があったと思うのですが、そういったことを理由にして制度そのものが否定されたり、規制を強化していくということではなく、現行制度の適正な運用を一層促すとともに、必要に応じて、働き過ぎにならないための仕組みを検討していくことが重要ではないかと考えております。
加えて、実態調査の調査票についてなのですが、これについても少し発言させていただきたいと思います。2019年の調査と比較できることが優先されると思っていますので、2024年にありました改正事項以外は、追加の質問は最小限にすることが基本になるのではないかと推察するのですが、幾つか検討いただく点が3つほどございます。
1つ目は、これまで議論されてきた業務量の裁量の有無についてでございます。2019年の調査では、仕事の内容及び業務量の裁量という質問があったと思うのですが、それを先ほど来出ております業務量の裁量のみの質問に変更してはどうかと思っております。
2つ目ですが、前回調査は、適用されている労働者の制度適用に関する満足度の質問があったと思うのですが、一方で、非適用者の制度適用に関する満足度の質問はなかったと思っております。裁量労働制の適用労働者と非適用労働者を比較する上では、こういった質問は追加で考えられないのか、御検討をぜひお願いしたいと思っております。
3つ目、最後になりますが、労働時間の状況の把握方法についてですが、2019年の調査では単一回答になっていると思います。選択肢を見てみますと「自己申告」があって、過半数労働組合がある企業では原則は自己申告としつつも、例えばPCのログオン・ログオフとか、事業場に対する入退場の歴を見て突合を行っているケースがほとんどではないかと思っています。こうした企業がこのような調査に回答する場合、一義的な労働時間把握方法としては「自己申告」を選んでしまうのではないかと思っておりまして、今回の調査では、何らかの工夫ができないか、検討いただきたいと思っております。
また、前回の事業場調査では、過半数労働組合の有無の項目があったと思うのですが、今回の調査では、先ほどからも議論がいろいろと出ていると思うのですが、過半数労働組合の有無によって、例えば労使委員会そのものに実効性があって、そういったものに違いがあるのかどうかというものも含め、こういったものを集計後に、議論の参考となるような分析をお願いしたいと思います。
長くなりましたが、以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
それでは、会場の椎木委員、お願いします。
○椎木委員 御指名ありがとうございます。
前回、労働市場改革分科会の議論状況として御報告をいただきましたが、資料No.2-1の54ページにも記されている、「月45時間・年間6回までの上限規制の一部例外措置の要件」を緩和すべきとの意見が表明されたことは大変残念に思っております。働き方改革以降、労使で知恵を絞って取り組んできた上限規制の遵守の取組と全く逆の方向の考えが示されたことには違和感を覚えざるを得ません。
今必要なのは、長時間労働に頼る経済発展や企業経営ではなくて、誰もが健康で、安心して働き続けられる職場環境の整備ではないでしょうか。その観点からすれば、現状の上限規制を強化していく方向で検討を行うべきと考えます。
ましてや、特別条項の緩和といった長時間労働頼みの政策などは論外だと考えます。
そもそも特別条項は、本来は、予見し難い業務量の大幅な増加等による臨時の業務上の必要性がある場合に限って結べるものです。この回数を増やすことは、特別条項の趣旨を没却させ、長時間労働の常態化を招きかねないと考えます。
この年6回の回数制限は、医学的知見に基づいた過労死認定基準を踏まえて設定されたものであり、過労死や健康被害を増加させかねない要件の緩和は行うべきではないと、再度強調しておきたいと思います。
よろしくお願いします。
○山川分科会長 ありがとうございます。
それでは、古川委員、どうぞ。
○古川委員 御指名ありがとうございます。
私からは、労働からの解放規制の強化について意見を申し上げたいと思います。
労働市場改革分科会においても、複数の有識者の委員の方から御発言があったと承知しておりますが、労働者の健康確保の実効性を高めるという観点から、勤務間インターバル制度の義務化、つながらない権利の法制化に向けた検討を行うべきであると考えております。
特に勤務間インターバル制度につきましては、労基法による義務化が望ましいという有識者委員の発言もあったことは重要だと考えております。
2019年4月より、労働時間等設定改善法に基づく努力義務化が図られておりますが、2025年に至っても、導入率は僅か6.9%にとどまっているのが実態であり、これまでの取組の延長線上では、大幅な導入の増加は難しいのではないかと考えています。
また、過労死等防止対策推進協議会におきましても、過労死等を生じさせないための歯止めとして、当事者委員をはじめ、勤務間インターバル制度の重要性や義務化の必要性が 縷々議論されたところでありまして、まさに働き方改革の目的の一つである過労死等ゼロを実現するために、非常に有効な対策だと思います。私たち働く者の健康確保に向けた休息や生活時間をしっかりと確保するためには、11時間を基本とした勤務間インターバル制度の義務化を検討していくべきと考えております。
続けて、つながらない権利の法制化についてです。連合の調査におきましては、労働者の7割超が「勤務時間外にもかかわらず、部下・同僚・上司から連絡がある」と回答しており、時間外の連絡に「ストレスを感じる」という割合も6割超となっています。
また、多様な働き方の一環として、テレワークが定着するとともに、ICT技術が発達を続ける中で、心身の疲労回復を図るためには、心理的にも仕事から離れるディタッチメントが重要という研究の成果も蓄積されてきております。
これまで様々な論点で労働者の健康確保は大前提とされておりますが、健康さえ確保されれば、現行ルールを緩和してよいということには当然なりません。本分科会では、そうした緩和の議論に多くの審議時間を割くのではなくて、まさに健康確保の実効性を高めるという多くのエビデンスがある、勤務間インターバル制度、つながらない権利の法制化に向けた前向きな検討こそ、進めていく必要があるのではないかと考えております。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかにございますでしょうか。
それでは、まず、佐藤好一委員、お願いします。
○佐藤(好)委員 ありがとうございます。
自動車総連の佐藤です。
裁量労働制につきまして、本日は発言は出ておりませんが、以前の分科会で指摘があった非対象業務との混在について、労側の立場で意見させていただきたいと思います。
その前に、1点事務局に質問ですが、非対象業務が予定されている場合には、裁量労働制が適用されないという現行ルールを課している理由をまずはお伺いできればと思います。
○山川分科会長 では、事務局からお願いします。
○川口労働条件政策課長 御質問ありがとうございます。
まず、労働時間規制全体としては、まさに労働者の健康確保の観点から、実労働時間に着目した規制となっているわけでありますが、裁量労働制については、業務遂行、時間配分の裁量を労働者に委ねる業務について、例外的にみなし労働時間による規制といいますか、対応を認めている制度設計になっております。
そういう意味では、業務が混在してしまった上でみなし時間、労使の合意した時間で働いたものとみなすとした場合に、これが長時間労働とか健康確保、処遇といった観点で課題が生じることが考えられるということでありますが、そういった中で、委員御指摘のとおり、現行の解釈としては、非対象業務が全体の一部、短時間であっても、それが予定されている場合、たまたま入ったのではなく、予定されている場合については、裁量労働制を適用することはできないというような解釈をしております。
以上です。
○佐藤(好)委員 ありがとうございます。
非対象業務の混在につきましては、課題解決型提案業務のように、労働者の裁量が認められない非対象業務を一部でも混在させると、会社の都合で恣意的に非対象業務の割合を高めることで、適用労働者の裁量が失われ、みなし労働時間制の下で過大な長時間・過重労働を強いられかねないと思っております。
加えて申し上げれば、今の日本企業における働き方や現場の実態からすれば、非対象業務の割合を制限することはほぼ不可能と言っても過言ではなく、裁量労働制の適用に当たって、非対象業務との混在を認めるべきではないと考えております。
もう一点御意見させていただきたいと思います。
同じく、裁量労働制の実態調査の二次分析から得られる示唆ということで、前回、黒田委員から補足説明があり、先ほども使側からもありましたが、裁量労働制の適用の有無によって、年収への影響について、時間換算ではほぼ違いがないことが明らかになったと思います。
その上で、二次分析結果の肝は、政策的示唆に明記されているとおり、裁量労働制を適用する際には、労働者が十分な裁量を持てる環境を整備することが重要であるということ、裁量を持たない労働者への適用は、長時間労働や健康への悪影響を招く可能性があるため、慎重な対応が求められるという2点だと思っております。
この点は、裁量労働制を導入している職場からも、「適用労働者に必ずしも十分な裁量が確保されず、慢性的な長時間労働に至っている」、「現行の対象業務に含まれていても、企業での業務の性質や時期等によって裁量が確保できないものもあるため、労使で対象範囲の協議を続けている」といった実態も聞いているところでございます。
長時間労働の防止、十分な裁量や適正な処遇といった適正運用を確保することが重要でありまして、二次分析でも問題が指摘された、裁量を持たない労働者への適用が広がりかねない拡充や緩和などは行うべきではないと考えております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
では、櫻田委員、どうぞ。
○櫻田委員 ありがとうございます。
本日御報告いただきました労働市場改革分科会の各論点について、御意見を申し上げたいと思っております。
まず、時間外労働の上限規制についてですが、これは労働市場改革分科会の中でも堅持すべきという意見が多かったと認識しておりますが、一部の委員からは、小規模事業者や一部の業種の事情を考慮して、緩和が必要という趣旨の御意見もあったと承知しております。
しかし、上限規制で定められた時間数は、過労死認定ラインであって、いかなる理由があっても、過労死に至るほどの長時間労働は決して許されるものではないと思っております。小規模企業や建設業、運輸業などにおける課題解決に向けては、労働者の長時間労働に頼ったその場しのぎの対応ではなく、業務効率化や省力化に向けた経営支援のほか、商慣行の是正や取引環境の是正化といった根本的な解決にこそ、取り組むべきではないかと考えております。
加えて、女性や高齢者、障害者など、様々な事情を抱えた働く方たちが自らの能力を発揮して安心して働くためには、真の働き方改革を進めて、長時間労働が当たり前の社会からの早期の脱却を図って、現行制度の正しい理解と適正運用を通じた柔軟で多様な働き方を促進することが重要であると思っています。
そして、休息をしっかりと取るために、生活時間確保の観点からの見直しが急務であって、長期の連続勤務規制、勤務間インターバル制度の義務化、つながらない権利の法制化に向けた議論を深めるべきだと考えます。
とりわけ特に早急に対応すべきと思っておりますのは、長期の連続勤務の日数を制限するルールの強化だと思っています。
資料No.2-1の13ページに示されておりますが、厚労省で行っていただいた調査でも、14日以上の連続勤務が一定あることが示されております。特に建設業では14日以上が7.8%、宿泊・飲食サービス業では、同じく14日以上の方たちが計8.2%、おおむね1割弱との結果が出ております。28日以上の勤務が1%程度ある産業もありますから、こうした職場で今も労働者が心身の疲労を抱えながら働き続けていることに思いを致せば、1日も早く長期の連続勤務を制限して、安心して働き続けられるようにすべきではないかと考えます。
私が所属しますサービス連合は、宿泊業もありますが、人手不足という背景もありまして、連続勤務、長時間勤務が発生している状況にあります。こういったことがパフォーマンスの低下を招くこともありますし、ミスの誘発にもつながると考えております。
そして、サービス連合で行ったアンケート調査によりますと、長時間の労働が離職の意向の要素の一つにもなるという結果も出ているところであります。
そうした実態を是正するためには、休日労働を含めて制限する連続勤務の規制を早期に導入することが必要であると考えておりますので、この点は重ねて申し上げておきたいと思っております。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
では、鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
先ほどの佐藤委員からの裁量労働制の混在業務についての御懸念点、また混在業務によって恣意的運用になるのではないかというような御指摘がありましたので、関連して御発言させていただきたいと思います。
現行の裁量労働制の対象業務であっても、上司が仕事量を恣意的に、いかようにも増やせるか考えたときに、物理的には不可能ではないかと思います。
その中でも労使の知恵の中で、長時間労働にならないように、目標や役割の明確化を図ることや、定期的な上司との面談、一定時間を超えた場合に裁量性が失われていると判断して、裁量労働制の適用から外すなど、様々な工夫をされていると思います。混在業務について御懸念を持たれることは十分に理解しているつもりです。
ただ、非対象業務についても、一定のボリュームとすることを上司と適用労働者で内容や範囲をしっかりと確認し、毎月上司と適用労働者の中で確認するなどの工夫の中で、その内容・量を調整、管理することも十分に可能だと思っています。
それから、佐藤委員からも、裁量労働制は裁量性を確保することが肝であるとご意見をいただきました。その際に、総じて裁量性があるかどうかについては、これまでの実態調査から、私は一定程度確保されていると思っています。一方で、濫用的な問題となっている例があることは御指摘のとおりかもしれませんので、そのような問題点をどう労使の知恵の中で改善していくかという方向での議論を進めていきたいと思っています。
最後に、つながらない権利の法制化に関して御指摘をいただきました。
これは以前にもお話しさせていただきましたが、この問題は、労働条件に関わる問題というよりは、業務遂行方法や働き方に関わる面が強く、労働基準法で本当に正面から取り上げるべき問題かどうかについては疑問を持っています。
メール送信の抑制や、システムへのアクセス制限等、テレワークガイドラインには記載がありますので、このようなガイドラインの周知を行いつつ、勤務時間外の連絡を抑制するような社会全体での意識改革も含めて行うことがまずは重要ではないかと考えています。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかに御質問はございますか。
では、まず、椎木委員、お願いします。
○椎木委員 御指名ありがとうございます。椎木でございます。
今回御報告いただきました「労働市場改革分科会」第3回では扱われていないようですが、第2回で議論がありました労働時間制度の運用面の見直しについて、重要なことですので、繰り返しになりますが、意見を申し上げます。
結論から申しますと、労働基準監督署の監督指導を緩和するような運用の見直しは行うべきではないと考えております。労働時間制度の運用面の対応として、働き方改革推進支援センターと労働基準監督署との一層の連携などによって、36協定の適切な締結・改定とともに、事業主における各労働時間制度の適正な運用を促すことは、上限規制の実効性を高めるためにも重要であると考えます。
その上で、労働者の命と健康を守るための最低基準である労働基準法の趣旨を踏まえた労働基準監督署における厳格な対応は堅持すべきであり、法違反が生じている場合やそのおそれがある場合は、毅然とした監督指導を行う、さらには早急な是正を図ることが欠かせません。当然のことながら、法律の範囲内であっても、労働時間を短くしていく労使の取り組みのサポートを行う機能も重要であると考えております。
そもそも労働基準法は、最低基準を定めた法律です。労働基準法第1条第2項にあるとおり、労働関係の当事者は労働条件の向上を図るように努めなければならないのであって、法律の範囲内で36協定を結んでいるからといって、時間外労働を増やすような方向での制度運用の見直しは行うべきではないということを重ねて申し上げておきたいと思います。
よろしくお願いします。
○山川分科会長 ありがとうございました。
では、古川委員、お願いします。
○古川委員 ありがとうございます。
先ほど鈴木委員から、つながらない権利は法制化にはなじまないのではないかという御発言がございましたので、それに関連して一言コメントさせていただきます。
まずは意識改革に取り組むべきではないかという御発言がございましたが、我々としては、顧客や取引先との関係も含めて、社会全体での意識改革が必要だからこそ、社会規範の醸成にも資するつながらない権利の法制化に取り組むべきではないかと考えております。意識改革だけを先に進めていくのは非常に難しいことであって、法制化をきっかけとして、社会規範の醸成にもつながっていくのではないかと考えているところでございます。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
では、菅村委員、お願いします。
○菅村委員 ありがとうございます。
非対象業務の混在について、先ほど鈴木委員から、上司と当該労働者との間で細かく確認すれば調整可能ではないかという御趣旨の発言があったと理解しております。
私ども労働側としましては、上司と当該労働者が確認していく中で、当然に業務の遂行にかかわる内容や、成果とそれにもとづく評価が含まれるものだと思っております。そうした中で、上司から確認を求められたときに、果たして労働者として、非対象業務の割合が多くなったとしても、それを労働者として拒否できるのか甚だ疑問です。
したがって、労働者の裁量を失わせることになりかねない非対象業務の混在は認められないと思っております。
また、先ほど別の使側委員からも、裁量労働制の実態調査について御発言がございましたが、拙速な調査を行うことは、使側からの要望を受けて、拡大するための調査なのではないかと疑われてもやむを得ないと思っています。
今回の調査は、あくまで2024年改正の施行状況の運用についての実態調査であるべきと考えておりますし、前回調査が専門家検討会での議論を経て精緻に実施されたものであることを踏まえると、基本的な設問は変更すべきではないと考えております。
また、裁量労働制に関して、濫用防止策として、一定の労働時間を超えた場合において、裁量労働制の適用を外す運用をされているというお話がございました。ただ、その一定の労働時間の設定を見ますと、過労死ラインである月80時間の時間外労働を超えた場合とされている事例もあると認識をしております。そうした適用解除の対策が果たして有効なのかどうか大いに疑問があるところです。
加えて、裁量労働制の拡充を求めるねらいは、割増賃金を払いたくないからではないかとも思ってしまうところでございます。例えば、時間外労働が80時間であったとしても、裁量労働手当は時間外労働30時間や40時間分しか払っていないというケースがあると認識しています。
真に労働者に裁量権が確保されていない実態もある中で、相当の業務量が与えられ、それを拒否できず、結果として長時間労働になり、なおかつ相応の処遇も伴っていない実態が現実としてあることを重く捉えるべきであると思っております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
では、佐藤好一委員、お願いします。
○佐藤(好)委員 まず、混在のところについてですが、いみじくも先ほど使側委員から、上限規制や変形労働時間の部分で、短納期での発注や自社でコントロールできない業務が現にあるという発言があったかと思います。労側としては、そうした実態があるからこそ、裁量労働制について、非対象業務の混在を認めてしまえば、労働者の裁量が確保できず長時間労働になってしまうのではないかということを懸念しているということです。
また、裁量労働制適用者に裁量があるのか、ないのかという問題ですが、先ほどこれも使側委員から労使の知恵で改善しているとの発言がありました。そうした実態があるからこそ、裁量労働制の拡充や緩和をするべきではないと考えます。運用改善をしっかりと現場に根付かせていくことが重要ではないかと考えております。
以上です。
○山川分科会長 申し訳ありませんが、時間になってはおりますが、まず、鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
混在業務の中で、拒否権があるかどうかは大変重要なポイントだと思います。
以前に申し上げたように、経団連のアンケート回答数はn数が少ないので、幅を持って見ていただかないといけないのですが、一人でも適用に同意しない、あるいは撤回した方がいる企業は36%であり、それなりに拒否が行われている点は強調したいと思います。
それから、一定時間を超えたときに、80時間では不十分ではないかという御指摘と私は受け止めたのですが、時に集中して働く中で、一定期間の枠を設けることは、重要かつ有効な健康・福祉確保措置であり、まさに現場の労使の知恵であると思っています。
加えて、処遇の話は、どうしても時間に応じて処遇をすることが適しているということを前提で議論されているような印象を受けていますが、成果が時間に必ずしも比例しないような方の処遇は、別の軸で考えるべきものと思っています。
以上です。
○山川分科会長 では、福本委員、お願いします。
○福本委員 私も重複する部分ですので、手短に。
非対象業務は、結構いろいろな業務をやっている中で、一部混在が僅かにあるケースにおいても適用できない、モチベーションが下がるという声もありますし、同意がちゃんと機能しないかというのは、先ほどおっしゃったアンケートできちんと確認しながら見ていかないと、全てそういった同意が本人の希望ではなく、同調圧力によるものだという決めつけを前提として議論を行っていくのは、少し行き過ぎた議論かなと思います。
それから、時間と評価で分けられるという話ですが、先ほど労側から、賃金を増やしたいから働くという声があると紹介がありました。そういう声があるということは、残業時間も含めて、長時間働くことで賃金につなげたい、つまり、生産性と相反する要素があるのも事実ですし、弊社の中の声も含め、裁量にすることで、より成果・生産性にフォーカスできるようになったという声もあります。この辺りは本人同意、生産性の議論を含めて、全否定というよりは、裁量労働制の現在の仕組み・現状についてしっかりと調査した中で、どれぐらいワークしているのかを確認。ワークしていない部分については、今やっている企業の事例で、うまくいっているところがあるのも事実ですから、それを見ながらきちんと対応を考えていくということが必要。裁量労働制の拡大がまったく不要というような両極にならないような議論をしないと、今、好意的にこの制度を捉えている方も多くいる中で、方向性が間違ってしまうかなというのが全体の印象です。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
よろしいでしょうか。
本日、大変熱心で活発な御議論をありがとうございました。
今回も、裁量労働制に関する御議論が多くなされまして、手続面も含めた過重労働の防止の点、手当・賃金等も含めた処遇に関する点が多く議論なされたかと思います。
そのほか、様々な論点について御議論いただきました。
労働市場改革分科会については、先ほどの御説明のとおり、今後、取りまとめに向けて議論が行われるとのことです。
本分科会での議論の状況も、労働市場改革分科会で共有されているということでありますので、本分科会においても、また労働市場改革分科会の御議論の御報告をお願いできればと思います。
また、裁量労働制に関する調査につきましては、本日も御意見をいただきましたので、事務局としてもそれを踏まえて、調査の準備を進めていただくようにお願いいたしたいと思います。
よろしいでしょうか。
では、若干時間が過ぎてしまいましたが、本日の議事はここまでとさせていただきたいと思います。
最後に、次回の日程等について、事務局から説明をお願いします。
○事務局 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○山川分科会長 それでは、これをもちまして、第209回「労働条件分科会」を終了いたします。
本日は皆様お忙しい中、大変ありがとうございました。

