第13回精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会 議事録

日時

令和8年3月30日(月)14:00~17:00

場所

航空会館ビジネスフォーラム
(東京都港区新橋1-18-1)

出席者

構成員(五十音順)
  • 家保構成員
  • 北村構成員
  • 長瀬構成員
  • 池原構成員
  • 吉川構成員
  • 長谷川構成員
  • 岩上構成員
  • 桐原構成員
  • 花村構成員
  • 上田構成員
  • 柑本構成員
  • 藤井構成員
  • 江澤構成員
  • 小阪構成員
  • 松本構成員
  • 岡田構成員
  • 小嶋構成員
  • 水野構成員
  • 岡部構成員
  • 田辺構成員
  • 森構成員
  • 柄澤構成員
  • 田村構成員
  • 山口構成員
  • 神庭構成員
  • 辻本構成員
参考人(五十音順)
  • 小林参考人
  • 西参考人
  • 水留参考人
  • 趙参考人

議題

  1. (1)諸外国の精神保健福祉制度における入院医療による支援についてヒアリング
  2. (2)訪問看護事業に関するヒアリング
  3. (3)その他

議事

○田辺座長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第13回「精神保健医療福祉の今後の施策推進に関する検討会」を開催いたします。
 皆様方におかれましては、御多忙のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 初めに、本日の出欠状況と資料の確認につきまして、事務局のほうからお願いしたいと思います。
 では、よろしくお願いします。
○新平課長補佐 事務局でございます。
 本日の会議は、会場とオンライン会議システムを併用しての実施です。
 御出席の構成員の方のうち、会場には17名お越しいただいております。オンラインでの御出席は9名となります。
 松本構成員には、途中で退席されると伺っております。
 本日は、議題1に関連いたしまして、愛知大学の小林参考人、南山大学の水留参考人、韓日法律問題研究所の趙参考人に御出席をお願いしております。趙参考人はオンラインでの御出席となります。
 それから、議題2に関連いたしまして、秦野厚生病院・秦野厚生訪問看護ステーションの西参考人に御出席をお願いしております。
 次に、本日の資料といたしまして、議事次第、資料1から6と参考資料1から2をお配りしております。資料の不足等ございましたら、事務局までおっしゃってください。
 傍聴の方におかれましては、資料を厚生労働省のホームページに掲載しておりますので、そちらを御覧ください。
 オンラインで御参加の構成員・参考人の方は、カメラを常に映る状態にしていただければと思います。また、御発言の都度、マイクをオンにしていただき、発言後はオフにする操作をお願いいたします。
 途中で不都合が生じましたら、事務局まで御連絡ください。
 それでは、冒頭の頭撮り撮影に関しましては、こちらで終了とさせていただきます。
(頭撮り終了)
○新平課長補佐 引き続き、資料の補足をさせていただきます。
 資料1につきましては、前回検討会における主な御意見をまとめております。
 それから、参考資料につきましては、本日のヒアリングの内容に関連するものを事務局よりお配りしております。
 参考資料2につきましては、「情報通信機器を用いた精神療法の適切な実施に関する指針」をお配りしております。
 以上でございます。
○田辺座長 ありがとうございます。
 それでは、具体的な議論のほうに入ってまいりたいと思います。
 まず、議題1の「諸外国の精神保健福祉制度における入院医療による支援についてヒアリング」を行いたいと思います。
 本日は、柑本構成員、それから、小林参考人、水留参考人、趙参考人の順でそれぞれ10分を目安に御発表をいただきたいと存じます。参考人の皆様には連続して御発表いただいた後、併せて質疑、それから、討議の時間を設けたいと思います。
 それでは、早速でございますけれども、柑本構成員、よろしくお願いいたします。
○柑本構成員 東海大学法学部の柑本でございます。本日は、このような貴重な機会を頂戴しまして本当にありがとうございます。私は藤井構成員と一緒に厚労省の科研費の研究班に所属しておりまして、その中で主に法律的な議論のところを担当しているのですけれども、本日はその中から諸外国における非自発的入院制度の仕組みということで、イングランドの非自発的入院制度について御報告をさせていただきたいと思います。
 イングランドと、今、申しましたけれども、通常、イギリスと言うときには、イングランド、ウェールズ、北アイルランド、それから、スコットランドを指すことが多いのですが、スコットランドと北アイルランドは異なる法体系を持っておりまして、イングランドとウェールズは同じ法体系に基づいておりました。ただ、ウェールズはかなり独自の部分を有するようになっておりますので、本日はイングランドに限ってお話をさせていただきたいと思います。
 資料を共有させていただきます。
 まず、本報告で対象とする法制度について、簡単に確認させていただきたいと思います。
 中心となるのは、1983年精神保健法であります。ただ、昨年12月に改正法が成立しまして、今後10年間かけて段階的な施行が予定されています。まだほとんど施行されておりませんので、本日は改正前の1983年法の制度についてお話をさせていただきたいと思います。
 また、実務運用におきましては、1983年法の実務指針、Code of Practiceが重要な役割を果たしていまして、運用の在り方については、かなりそちらに細かい規定が置かれております。これにつきましても2026年中に改定が予定されておりまして、これができないと基本的には法の運用ができないということですので、こちらにつきましても本日は改正前の状況についてのお話ということになります。
 それから、1998年人権法はヨーロッパ人権条約が国内法化された法律なのですけれども、後ほど小林参考人、それから、水留参考人からもお話がありますように、ヨーロッパにおきましてはヨーロッパ人権条約が非常に大きな役割を占めておりまして、人権裁判所で出された判決が各国の法制度にも強い影響を及ぼしていますので、こちらも主な法律として掲げさせていただきました。
 それでは、早速、非自発的入院制度の基本構造について御説明したいと思います。
 イングランドでは、主に非自発的入院制度としては3つのものがございます。2条のアセスメント入院、3条の治療のための入院、そして、4条の緊急アセスメントの入院です。細かい要件等につきましてはこちらに書いてございますので、こちらを御覧いただければと思います。
 2条入院は最大28日間の評価目的の入院です。それから、3条入院は文字どおり治療目的の入院でありまして、現在では6か月を基本として更新可能となっております。それから、4条入院は緊急の場合に限定されまして、1名の医師による判断で最大72時間の入院が可能とされております。
 ここで重要なのは、非自発的入院を申請するのが誰かという点です。ここが恐らく、ほかの国と異なる、イングランドの大きな特徴になるかと思います。
 参考までに、精神障害の定義について、こちらに挙げております。
 申請者のところを見ていただきたいのですけれども、非自発的入院の申請者は、まず、認定精神保健専門職(Approved mental health professional)であり、これは現地では略してAMHP(アンプ)というふうに呼ばれております。このAMHPという専門職が非自発的入院の事実上の最終決定者であるという点が特徴と言えます。
 これは、2007年精神保健法、昨年の改正のすぐ前の改正によって創設された制度でございます。ソーシャルワーカー、看護師、作業療法士、心理士の資格を有する者が、AMHPになるための教育プログラムを受け、そして、地方自治体に申請し、そこで承認されることによって、この役割を担う活動をすることができるということになります。
 昨年3月現在で、イングランドの地方自治体によって承認されたAMHPの数は約3,800ですけれども、そのうちの約79%が地方自治体、約16%が病院を運営しているNHSによって雇用されておりました。それから、イングランドで承認されたAMHPが有する資格というものは、約93%がソーシャルワーカーです。約6%が看護師、約1%が作業療法士、残りが心理士ということで、このAMHPの母体といいますか、AMHPを担っているのはほぼソーシャルワーカーと考えていただいていいと思います。イングランドでは非常にソーシャルワーカーの力が強いというのが大きな特徴かと思います。
 それから、最近親者であるNearest Relativeです。この人たちも強制入院の申請者になることが可能です。
 このNRは、法律上定められた親族順位によって自動的に決定されまして、入院申請権、退院請求権など、非常に強い権限を有しております。ただ、法律上はAMHPとNRが入院申請を行うことができるのですけれども、実務指針では、できればAMHPがやったほうが望ましい。NRは、親族であり、いろいろな問題がそこから生じえますので、そうではない人たちが担ったほうがいいということが明記されております。また、現地でインタビュー調査を行った際にも、ほとんどがAMHPによって申請がなされていると伺いました。
 これは、後で述べますように、2025年法で改正が行われましたので、それについては後ほど御説明させていただきます。
 こちらが、NRの権利となります。
 AMHPによる申請のプロセスにつきましては、こういったプロセスを経て非自発的入院へと至るわけですけれども、2条入院、3条入院、4条入院全てについてAMHPが最終的な申請の決定を行います。どの条文で入院させるのか、全ての要件が満たされているのかどうかということを確認するのはAMHPの仕事になります。ドクターは、あくまでも医学的に要件を満たされているかどうかということでリコメンデーションを出すだけで、ドクターが入院が妥当と言っても、AMHPがノーと言えば入院の申請がなされないというのがイングランドの制度になっております。
 このAMHPになるためには、大学院レベルの教育課程で、AMHPになるためのトレーニングを受け、そして、自治体に申請するというようなプロセスを経ていくわけです。
 次に、退院ですけれども、様々な人によって退院させることができるというのが大きな特色かと思います。
 最初に出てくるのは責任臨床家(Responsible Clinician)という、患者のケース全体に責任を負う臨床家であり、この人たちは治療や拘束の管理を担当し、収容期間の延長、退院の許可などの権限を有します。ただ、これもドクターだけではなく、看護師さんもなれますし、心理士さんたち等もなることができ、患者さんの治療に責任を持つのはドクターに限定されないというのがイングランドの特徴でございます。
 最近親者も退院をさせる権限というものを有しております。しかしながら、ここにありますように、72時間以上前に病院管理者・管理体に通知を出しまして、そこで責任臨床家がノーと言った場合には退院させることができないという仕組みになっています。そうすると、では、最近親者はどこに退院申請を行うかというと、後で出てくる審判所に退院の申立てを行うことになります。
 それから、病院内部の組織としてHospital Managersのもとで審理を行うパネルがございまして、そこでも退院の審査を行うことができるようになっております。
 第一層審判所は、Tribunalというふうに呼ばれていますけれども、御存知の方もいらっしゃるかと思いますが、この前身のMental Health Review Tribunalは、日本の精神医療審査会が参考にした制度です。
 これは独立した司法的な機関というふうに捉えていただいて大丈夫かと思いますけれども、非自発的入院患者の退院を命じることができます。First-tierは第一層なので、そこが基本的に事実関係を明らかにしまして、そこでもし法律的な問題があるということになると第二層の審判所に上訴していくことになります。
 審判所の合議体は、裁判官、精神科医、その他のメンバーである福祉等の方たちの3名によって構成され、審査は非公開で、こちらにあるような図のように審理が行われると考えていただいていいかと思います。現在ではオンラインでの審査も可能になっております。
 冒頭でも申し上げましたけれども、2025年12月に1983年法が改正されまして、幾つか特色があるのですけれども、ここでは2つだけ御紹介したいと思います。
 まずは、入院要件が厳格化されたという点です。重大な危害が患者または他の者の健康または安全に生じるおそれがあるという、この重大な危害が生じるおそれというところが要件に加わったという点が大きなポイントです。これによって入院が厳格化されたということになります。
 それから、NRにつきましては、法律で順位が決められており、本人の意思と無関係にNRが決定され、事前に拒否できませんし、DV加害者等、ふさわしくない人がNRの地位に就くということもありまして、改正の必要性が長く言われておりました。そこで、NRからNominated Personへというふうに、本人自身が判断能力を有するときに任意に指名できる制度にこれから変わっていくことになります。
 そのほかにも、犯罪を行った精神障害者に対する入院制度についてのスライドもつくっております。こちらにつきましては、ここに掲げてありますので、もし何か御質問等々ございましたら後ほどお尋ねいただければと思います。
 イングランドの大きな特徴は、有罪になった精神障害者に刑罰にかえて入院治療を内容とする命令が言い渡される制度があるということです。病院に入ったら、一般の精神科の患者さんと同じように治療がなされていくことになります。
 そういうことで、駆け足になってしまいましたけれども、これで私の報告を終わりにさせていただきたいと思います。御清聴どうもありがとうございました。
○田辺座長 ありがとうございました。
 引き続きまして、小林参考人、よろしくお願いいたします。
○小林参考人 愛知大学法学部の小林真紀と申します。「フランスにおける非同意精神科治療の制度的枠組み」について、概要をお話しさせていただきます。
 私は、法学部の教員で、専門はフランス法ですが、なかでも医事法を専門としておりまして、終末期医療、精神科医療、生殖補助医療といった医療分野における患者の権利保障を中心に研究しております。
 資料を共有させていただきます。
 まず、タイトルの非同意精神科治療という表現は、日本の精神保健福祉法等で使われている言葉とはかなりニュアンスが違うといいますか、言葉が違うと思うのですが、できるだけフランスのシステムを直訳に近い形で正確に皆様にお伝えしようと思いまして、あえて日本法に寄せない形で訳しております。もし説明が必要でしたら、後ほど御質問いただければお答えしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 本日は、10分間という、かなり発表の時間が限られておりますので、かいつまんでお話をさせていただきます。全体としましては、まず、フランスの場合、一言で言いますと、精神科医療に関しては非常に細かい規定がございますので、その大きな枠組みについてお話をさせていただいた後、非同意精神科治療の開始、継続と更新、それが終了する段階について説明をした上で、最後にもう一つ、フランスの場合、監督・審査制度が多岐にわたっておりまして、非常にバラエティーに富んでおり、今日はとても全部は紹介できないと思いますが、その中の主たるものについて、お話をしたいと思います。
 それでは、最初の「1 非同意精神科治療に関する法的枠組み」というところを御覧ください。
 この領域に関するフランス法の大きな特徴は、一般規定と特別規定の二層構造になっている点にあります。一般規定としては、2002年の患者の権利法、すなわちクシュネール法で公衆衛生法典に挿入された、いわゆる、どの病気の患者に対しても保障される権利が第一部第一編の「病者および保健制度の利用者の権利」に、このスライドに列挙されているような権利が、何か条にもわたって保障されております。これらの権利は当然に、同意であろうが非同意であろうが、精神科の患者に対しても保障されることになりますので、これがまず基になります。
 これに加えて、精神科治療に関しては、やはり人権侵害の可能性が非常に高くなる領域ですので、特別法という形で、同じ公衆衛生法典の中に「精神疾患との闘い」というタイトルで第三部第二編に特別の規定があります。本日お話しするのは、ここに書かれている規定が中心となります。ここには幾つかの条文がありまして、その内容について今日は詳細にはお話しできませんけれども、ここに列挙した通りになっております。冒頭の患者の権利に関しては、最初にお話をしたクシュネール法で一般的な患者に保障されている権利の中でもとくに精神科治療の場合に問題になる権利について言及されています。
 スライドの中で、青で示したところが本日の発表の中心になる非同意精神科治療に関わる措置で、主に2つに分類できます。私の専門外になりますので、受刑者が精神障害を持っている場合の措置については、今回は割愛させていただきます。その他、罰則規定、訴訟、それから、医療組織に関する規定という形で、全て法律に細かく決まっているのがフランスの特徴になります。
 では、今のフランスになぜこのような細かい規定があるかということは、歴史を遡らないと分かりにくいかと思いますので、若干ですが、沿革をお話します。
 本当にざっくり言いますと、フランスの精神科医療に係る法制度の歴史は2つの時期に分けられます。まず、1838年のエスキロール法です。これができるまでは精神科医療に関して特別法は全くなかったのですが、その後、次のスライドで紹介するように、1990年に別の法律ができます。この1838年のエスキロール法は、基本的には精神病者は社会では危険な存在なので、どうやって危険な人たちから社会を守るかという視点、つまり精神病者を社会から隔離するという目的でつくられております。全く患者の権利保障という視点はなく、ここで規定されているのは、収容、これはフランス語でplacementというのですけれども、病院にこのような危険な者を収容するという枠組みを初めて作った法律になります。
 スライドには「任意収容」と書きましたが、任意という言葉は決して患者さんの同意があるという意味ではなく、家族からこの人は危険であるという申し出があったときに病院に収容するという形の任意収容という意味です。これに加えて、職権で、県知事の決定によって収容するという形態があり、この2つのカテゴリーがここで初めてつくられました。
 このあと、やはり、被収容者の権利保護が不十分であるということは、かなり批判されます。ただし、フランスも様々な問題を抱えている国ですので、このような精神障害者の権利保障についての政策にスポットライトが当たることがあまりなく、色々と問題は指摘されていたのですけれども、この後、長いこと、この法律のまま制度は動かされていくことになります。
 1990年になりまして、新しい法律がようやくできました。これが1990年の、精神障害により入院している者の権利保護及びその入院条件に関する法律です。スライドに青で示したとおりですけれども、ここに「入院」という言葉が初めて入ったことが大きな特徴になります。それまで「収容」という言葉を使っていましたが、それは患者の権利保護という面ではふさわしくないということで「入院」という言葉に置き換えられ、また、原則として、患者の同意を得た任意入院が精神科においても基本であるということを初めて法律の原則に入れたということが1990年法の大きな特徴です。
 その後、2011年に、今度は、脱入院、すなわち、精神科治療を、入院だけではなくて、それ以外の方法でも行うべきであるということから、法律のタイトルから「入院」という言葉を消して「治療」という言葉に変えるということがおこなわれます。この2011年法は非常に大きな転換期になりましたが、これからお話するような現行のシステムは、全て、この2011年法、若干、2013年で改正があるのですけれども、こちらに基づいた制度であると御理解いただければと思います。
 先ほど申し上げましたが、非同意精神科治療の開始については2つの措置がございます。細かいところは違うのですが、一方は医療施設長、いわゆる病院長の決定に基づく精神科治療と、もう一つは次のスライドで紹介します県知事の決定に基づく精神科治療になります。
 この医療施設長の決定に基づく精神科治療は、基本的には要請者からの要請がないと始まらない仕組みになっています。家族、あるいは以前から患者と関係がある本人の利益のために行動できる者、それから、法的保護者、いわゆる日本で言うところの後見人等々に当たる者ですけれども、こういった人たちからの要請があった場合に、医療施設長が、医師の診断書をもとに判断し決定するというものが一つのタイプです。
 次に、県知事の決定による非同意の精神科治療があります。基本的には、手続としては要請者が要らなくて、県知事の決定に基づくという措置なのですけれども、若干細かいところは異なります。
 ここで、先ほども少し申し上げたように、なぜ、入院という言葉を使わずに、非同意治療という言葉を使っているかという点を説明します。これは、フランスでは、強制的な措置の目的は入院させることではなく、精神科の治療をすることであるという原則に基づくと理解されているためです。
 したがって、非同意の精神科治療でも、最初は入院となるのですが、その後72時間以内に精神科の医師が、ここに挙げています、1の完全入院という、日本で言うような、病院に入院するタイプにするか、あるいは非同意治療プログラムといいまして、これはいろいろな種類があるのですけれども、たとえば、精神科の場合は夜間が多いと聞いておりますが、日中あるいは夜間のみの一時入院にするとか、あと、在宅入院(HAD)という、いわゆる在宅医療とは若干異なる特殊な制度ですが、この在宅入院の対象にする、あるいは外来で通ってもらうなど、様々な治療プログラムがございまして、これら全てをひっくるめて非同意精神科治療という言い方をしております。
 細かいところは、表にいたしましたので、こちらを御覧いただければと思います。青字のところがそれぞれ特徴になっております。 
 以上のような形で、非同意精神科治療が開始された場合には、当然、その治療の継続がふさわしいかどうかは定期的に医師、およびフランスの場合は司法裁判所の裁判官の一つであるJLDという勾留決定裁判官が入って審査を行います。
 更新、解除については、それぞれ医療施設長の決定に基づく場合と、県知事の決定に基づく場合とで、若干の違いはございますが、大体、定期的に強制的に審査が行われ、そこで治療の継続は必要ないということになれば解除となります。
 県知事の決定の場合だけは少し特殊な事例がございまして、精神科医が診断書で、たとえば退院が妥当であると診断した場合でも、県知事は、あくまでも公の秩序に対して危険を及ぼす患者であるという理由から措置を継続するという権限を持っているため、両者間で意見が割れたときの特殊な規定があるという点が少しフランス法らしい特徴かと思います。長くなりますので、ここでは割愛させていただきますが、そのような制度もあるということだけ付言しておきます。
 最後に、監督・審査制度でございます。大きく分けますと、裁判所による監督・審査制度と、行政機関による監督・審査制度と、2つがあります。
 裁判所による監督・審査制度に関しては、公衆衛生法典で自由と勾留に関する裁判官、JLDという特殊な裁判官が精神科治療の非同意精神科治療に関して権限を持つと決められておりますので、この裁判官が非同意精神科治療に関わる決定の実体的審査と手続的審査の両方を行います。それぞれ、色々と課題は抱えていますが規定上はこのような形で審査を行うということになっております。
 それから、行政機関による監督・審査に関しては2つの機関がございます。
 一つは、フランスは県に分かれているので、その県ごとに県精神科治療委員会が設けられます。構成等はスライドに書いたとおりですが、この県精神科治療委員会が、例えば患者からクレームを受け付け、それに基づいて医療機関に立入検査をして、その結果で、措置の解除自体はできないものの、解除の決定を下すことができる適切な機関に申立てをしたり、解除を提案したりするというような権限を持っております。
 もう一つ非常に重要なのが、自由を剝奪する場所に関わる監査官というものです。これは、フランスには独立行政機関が幾つかあるのですけれども、要はどこかの省庁に従属していない、完全に独立した行政機関で、大統領令によって任命されるので、上に指示する機関がありません。この監査官が、司法裁判所の管轄を侵害しない範囲で、非同意精神科治療の対象となっている患者の人権侵害について審査するということになっております。患者本人からも、それから、家族等からももちろん通報を受けることができまして、立入調査や医療施設に対して情報の提供を求めることができます。重大な人権侵害が疑われる場合、監査官自体にはそれをやめさせる権限はないのですが、検察あるいは懲戒権限を持つ職能団体に通報することができるというようになっております。
 最後ですけれども、非同意精神科治療に関するデータがありますので、後ほど御覧ください。最近5年ほどの非同意精神科治療に関してJLDにどれぐらい請求があるかということを示した表で、2025年に司法省が発表した資料を基に作成したものです。今、フランスは人口が約7000万人弱で、日本の半分ぐらいになりますので、その点を少し考慮に入れた上でこの数字を御覧いただければと思います。
 全体的なことを申し上げる時間がないので、ざっくり申し上げますと、JLDの請求のうち、特に退院請求、それから、隔離・拘束の解除の請求は合わせてわずか2%にすぎないということです。その2%のうち請求が認められたのは退院と隔離・拘束を合わせても10%強でして、非常に数は限られています。これらの数字の意味をどう読むかという点については別途考える必要があるかと思います。たとえば、入院や隔離・拘束に関しては法律が非常に細かく規定しているので、それらがきちんと適用されているから人権侵害も起こっていないし、入院はすべて本人にとって意味があるものなので、退院申請が通らないということもありうるでしょうし、場合によっては、解除の申請手続や審査の段階でどこかに問題があるということもありうるかと思いますが、これについては司法省の詳細な解説がございませんので、このデータをお示しするということにとどめたいと思います。
 以上、私からの報告を終了させていただきます。御清聴ありがとうございました。
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは、水留参考人、御報告のほうをお願いいたします。
○水留参考人 御紹介にあずかりました南山大学法学部の水留と申します。刑事法の研究者でございます。私からは、ドイツの精神科医療制度の概要につき、柑本先生の分担研究の一部をなす厚労科研の研究から今のところ分かったというところをお話させていただきたいと思います。
 なお、本日の報告は成人の話のみでございまして、少年の児童・思春期のほうは研究が追いついていないことをおわび申し上げます。
 また、資料が、発表用の資料ですとあまりに情報が少ない状況になってしまったものですので、参考資料として、一応、ここに掲げることができるかなと思うようなものを幾つか掲げさせていただいてございます。
 それでは、お話を始めさせていただきたいのですが、お話に先立ちまして、ドイツの制度の実態把握の困難ということについて申し上げなければなりません。
 ドイツでは精神科医療統計の不備が各所で指摘されており、例えば我が国の630調査のような公的で網羅的な統計は存在しないように思われます。
 精神科医療に特化した統計がない要因の一つとして、ドイツでは精神科医療でも、障害者福祉でも、あるいは認知症ケアでも、とにかく非自発的に病院や施設に入所させる制度をUnterbringung、字義どおりに訳しますと、自由剝奪を伴う収容というふうに総称しているということで、統計も何もかも大体、これが一緒くたになるというような状況がございます。
 以下、今日の話はこのUnterbringungの制度をかいつまんで説明するわけですが、そうしますと、そこには病院への入院以外の多くのものが含まれるということを御了承いただければと思います。また、この制度の運用というものが州によって、あるいは州内の地域ごとにも相当な違いがあるという指摘もあるところでございます。
 なお、このUnterbringungというものはあくまで自由剝奪を伴うものだけを指す言葉で、言い換えれば、非自発的なものだけを指す言葉でございます。そうしますと、以下の説明の射程には我が国の任意入院相当の部分の多くは含まないという形になります。
 ドイツには、非自発的入院の制度は3種類挙げることができます。その概要は表のとおりでございますが、以下、詳述いたします。
 まず、医療保護入院に相当し得るドイツの制度として、民事入院の制度を挙げることができます。これは民法典に根拠を持つものでございますが、2022年の法改正で最近改められ、それが、2023年1月1日から施行されているところでございます。この制度は、法的世話制度、我が国に引き直しますと、成年後見法制の中に精神科の非自発的入院を位置づけております。この点がドイツの特徴的な点ということができるかと思います。民事入院の実体要件は、要するに精神障害のために自傷の危険があるときと表現することができましょう。
 このとき、権限を与えられた法的世話人、我が国で言えば成年後見人とか保佐人、補助人に相当する人ですが、これがいれば、その同意により非自発的入院が行われることになります。そして、その同意の際に裁判所の許可が改めて必要になります。
 この手続のため、本人には手続保護人が選任され、さらに裁判官が本人に会って話を聞くのが原則とされます。手続としては、精神科救急の場合を想定しますと、まずは保全命令手続のほうに乗ることが多いようです。そこでは入院は最大で3か月までということになります。さらに非自発的入院の継続が必要な場合には本案手続に乗ることになります。そこまで行くと、少なくとも法的には入院の上限期間、何年までしかできないという設定はないというようなことのようです。
 民事入院のキーパーソンになるのは法的世話人ですが、その職務範囲は裁判所により個別に指定されております。法的世話人の選任についてはスライドのとおりでございます。
 我が国の任意後見人に相当する任意代理人の制度もございます。任意代理人は世話人同様に権限を行使し得るわけですけれども、ただ、入院や強制的医療措置に関しては特に書面で明確に授権がなされている場合に限って、そういった同意権限を持つというふうにされております。
 さらに非自発的入院の場合も含めて、法的世話人がいわゆる代行決定を行うには後述の同意の留保ということが裁判所によって命じられている必要もございます。つまり、非自発的入院のためには、法的世話人等が民事入院の場合、選任されていなければならないわけですが、選任されているだけでは十分ではないということになります。つまり、その法的世話人が入院のための権限をあらかじめ裁判所から与えられていなければ、ここまで述べた民事入院の制度は動かないということになります。
 とはいえ、精神科救急を念頭に置きますと、そのような状況が整っていないというケースも容易に想像されるわけです。この場合、裁判所が職権で前述の保全処分を行うというような道も認められています。ただ、このようなケースでは、次の次に紹介します「公法上の入院」の制度が先行するということも多いようです。
 民事入院と本人意思との関係ですが、そもそも、ドイツの法的世話制度では行為能力制限はないというのが原則になります。その上で例外的に、本人にいわゆる同意能力がなく、かつ必要な場合には「同意の留保」が裁判所によって命じられ、それによって初めて法的世話人に同意権が与えられるということになります。
 ただ、その場合でも、本人があらかじめ事前指示によって示した意思に沿うことが法的世話人には求められますし、それがなくても法的世話人等は本人の推定的意思を基に行動することが求められるというのが原則であるとされております。
 次いで、民事入院と並んで広く行われておりますのが公法上の入院という制度でございます。これは各州の法律によるもので、州の責任でそれは実施されます。細かく見ると州ごとに要件はいろいろ違うのですけれども、大まかに言えば、精神障害による「自傷又は他害の危険」が入院の要件だということができます。この要件の下で行政が行う入院だという点では、公法上の入院は我が国の措置入院に相当し得る制度です。
 精神科救急を念頭に置きますと、多くの場合、公法上の入院の要件に該当する緊急事態では、まずは警察、あるいは保健当局、これは市とかに相当するような地域の行政ということですが、それらが自らの権限で取りあえず即時入院を行います。これは極めて短時間、多くの州では翌日までしか有効ではございません。その上、さらに入院が必要だということになりますと、保健当局等から裁判所に対して許可を求める必要があります。この先は民事入院と大枠は同じで、保全命令であれば最大3か月、それ以上の入院が必要なら本案手続に移行します。ただし、自傷の危険が理由のときは、この間に法的世話制度に移行する例も多いようです。
 他害行為のある精神障害者に対する入院制度については、今、述べた公法上の入院制度がまずは挙げられます。民事入院は他害の危険には対応しないとされておりますので、他害の危険への対応は公法上の入院が中心となります。ここで言う「危険」の記述は州によって様々ですが、例えば「著しい危険」というように、ある程度、高度の危険を求めるのが一般的な立法例のようです。
 このほか、ドイツ刑法典には犯罪行為を行った者に対する改善保安処分の制度がございます。若干、時間が思ったよりあるので、かいつまんで説明しますと、刑法の改善保安処分制度というものは、昔、我が国で保安処分として大きく立法問題になった制度のひな形になっているもので、犯罪行為者がそのときに例えば精神障害があって、それの治療の必要があるというときに刑事の裁判所が命じて行われるという制度です。重大な犯罪行為を行った責任能力に問題のある人に対して裁判所が命令して行うという意味では、我が国の医療観察法に相当するという面があります。
 2つ制度がございまして、精神科病院収容処分というもの。これが我が国の医療観察法が相当似ているというところなのですけれども、もう一つ、アルコール・薬物の犯罪行為者を対象とした禁絶施設収容処分という制度もございます。
 最後に、処遇等に関する規定というところでございますけれども、まず一つは、ドイツではっきりしているのは、この強制的医療措置の部分でございます。強制的医療措置というものは、本人の「自然的意思」に反する医療の措置というふうに定義をされるわけですけれども、これについては、先ほどの入院とはさらに個別に世話裁判所の許可・命令が必要的、つまり、裁判所の許可が必要となります。これは入院制度を問いません。
 それ以上に何があるかというところなのですけれども、我が国で言えば処遇改善請求や精神医療審査会の審査というような制度の有無というものは、正直に申し上げて、よく分からないというところでございます。少なくとも、ドイツ全土に統一的な仕組みはございません。ただ、各州法に幾つか規定を置く例が見られます。先ほどの公法上の入院を規定している州法がどこまでのことを規定しているかということによりますけれども、少なくとも全州の法律で視察委員会のようなものを規定している例が多いようです。
 さらにそれに加えて、患者擁護者と訳すのが正しいか分かりませんけれども、そのような立場の人を設けているとか、不服申立窓口等を設けるとか、いろいろな仕組みが各州で用意されていたりされていなかったりするようです。これらは公法上の入院を定めた州法が規定しているので、基本的に公法上の入院をターゲットにしているし、多くの州でそれだけをターゲットにしているのですけれども、幾つかの州では民事による精神科入院患者をも対象としているという立法例がございます。
 すみません。駆け足になり過ぎてしまったような気もするのですが、以上、つたない報告・紹介で恐縮ですけれども、終わりにさせていただきたいと思います。
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは、趙参考人、よろしくお願いいたします。
○趙参考人 こんにちは。時間に入れなくて遅くなりました。申し訳ございませんでした。
 まず、共有できるでしょうか。
○田辺座長 大丈夫です。
○趙参考人 では、韓日法律問題研究所の趙晟容と申します。よろしくお願いいたします。今日は「韓国の保護義務者入院制度と他害を行った精神疾患者に対する入院制度」について簡単に申し上げたいと思います。
 韓国の精神医療制度は、一般精神疾患者に対しては精神健康法が適用され、犯罪精神疾患者に対しては治療監護法が適用されております。精神健康福祉法の入院の類型は、自発的入院には自意入院、同意入院があり、非自発的入院には保護義務者入院と行政入院、応急入院があります。
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 日本の医療保護入院と類似した制度として、韓国の保護義務者入院制度について申し上げたいと思います。
 保護義務者入院は、病院長が保護義務者の申請と精神科専門医の診断により、精神疾患者を強制的に入院させる制度であります。まず、手続的要件として、精神疾患者の保護義務者2名以上の申請と、所属が異なる2名以上の精神科専門医の入院が必要であるという診断が必要であります。そこで精神疾患者とは、妄想、幻覚、思考や気分の障害等によって、独立して日常生活を営むことに重大な制約がある人をいいます。すなわち、重度の精神障害者のことをいいます。保護義務者は、民法上の後見人と扶養義務者がここに該当します。韓国の場合は、保護義務者のほとんどは扶養義務者が占めております。
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 実体的要件は、まず、入院の必要性に対する診断条件でありますが、まず、入院治療または入所療養を受けるほどの程度または性質の精神疾患を患っている場合と、自身の健康や安全、または他人に害を及ぼす危険がある場合、すなわち、自傷・他害の危険性があることが要求されております。
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 入院手続は、まず、保護義務者が申請しますと、入院の必要性を診断するために2週間以内の診断入院の中で2人以上の精神科専門医が診断を行うわけであります。その結果に基づいて病院長が入院を決定するわけですが、それで終わるわけではなくて、入院適合性審査をして、適合判定が出た場合に入院が確定されます。保護義務者入院または行政入院にさせられた全ての精神疾患者は入院適合性審査の対象者になります。不適合判定が出れば、直ちに退院させなければなりません。病院長は、必要な審査書類を3日以内に提出しなければならないし、審査と通知は1か月以内に終わらせなければなりません。
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 保護義務者入院の期間は、最初は3か月以内で、1次延長は3か月以内に、2次以降の延長は6か月以内になっております。退院手続は、精神疾患者や保護義務者が退院を申請しますと、原則的には院長は退院させなければなりません。しかし、そのとき、入院の実体的な要件が残っている場合は、院長はその申請を拒否することができるし、精神疾患者や保護義務者は地方自治体の長に退院請求を行うことはできます。そうすると、精神健康審議委員会にその件を回付して、その中の精神健康審査委員会で審査を行い、その結果に基づいて、地方自治体の長が退院命令をするか、継続入院決定をするか、どちらかをやることになります。退院手続は、請求の受理から15日以内に全部終わらせなければなりませんが、やむを得ない事情がある場合は10日ぐらい延長することはできます。
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 2019年7月~2020年6月基準の入院延長審査現況を見ますと、入院延長決定は96.4%、退院命令は0.8%でありまして、退院のケースがかなり少ないことが分かります。
 次をお願いします。
 現在の保護義務者入院制度は、精神疾患者の自己決定権など、人権を保障するには多くの問題があります。今、紹介しました入退院審査制度の限界もその一つでありまして、入退院審査機関の独立性と公正性の限界、書面審査中心と審査人員と時間の不足による実質的な審査の限界、そして、精神疾患者が入退院の請求と審査過程で十分な助力を受ける体系が整っていないことがその原因として挙げられております。また、保護義務者入院制度が保護義務者に過度な責任と義務を負わせている問題も重要であります。これを解決するために、保護者義務者入院の廃止と司法入院の導入が議論されておりますが、まずは導入されず、かわりに現行法の運営において行政入院の適用を拡大する方法をとっています。
 次をお願いします。
 他害行為を行った精神疾患者に対する強制処分制度について見ます。
 司法処分には、保安処分である治療監護法の治療監護処分と治療命令処分があり、行政処分には精神健康福祉法の保護義務者入院、行政入院、応急入院、外来治療支援があります。保護義務者入院は、ここでは説明を省略させていただきます。
 まず、治療監護処分は、禁錮刑以上の刑に当たる犯罪を起こした心神喪失者・心神耗弱者、薬物・アルコール中毒者、精神性的障害者に、再犯の危険性があり、治療の必要性が認められる場合に、これらの治療と保護、社会防衛のために、強制的に収容治療を行う制度であります。これは検察官の請求により裁判所が宣告するものであります。
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 治療命令処分は、禁錮刑以上に該当する犯罪を犯した心神耗弱者や薬物・アルコール中毒者が、刑の宣告猶予または執行猶予を受けるとき、再犯の危険性があり、治療の必要性が認められる場合に、強制的に通院治療をさせる制度であります。これは、裁判所が職権で保護観察とともに治療命令を宣告するものであります。
 その次、4番目、行政入院ですが、これは地方自治体の長が、自傷他害の危険性がある精神疾患者を、2名以上の精神科専門医の診断に基づき、強制入院をさせる制度であります。最近は、保護義務者入院の要件が強化されて、その風船効果、精神疾患者の重大犯罪に対する積極的な対処、そして、保護義務者の負担軽減と国家責任の強化政策のため、行政入院が急増しています。
 次をお願いします。
 行政入院の要件は、手続的には、精神科専門医または精神健康専門要員の申請と、2名以上の精神科専門医の診断が必要でありますが、実体的要件としては、自身の健康または安全あるいは他人に害を及ぼす危険、すなわち、自傷他害の危険性が必要であります。行政入院の手続と期間は、保護義務者入院のそれとほぼ同じでありますが、ここでは時間的な余裕がなく省略させていただきます。
 応急入院は、自傷他害の危険性が高く、非常に緊急な状態にある精神疾患者を3日の範囲内で強制入院させる制度であります。形式的には、警察官の同意と医師の診断が必要であります。このときの医師は必ず精神科専門医である必要ではありません。この医師の診断と実体的要件には、自傷他害の危険が大きいこと、状況が非常に緊迫していること、そして、他類型の入院をさせる時間的な余裕がないことが要件として求められております。
 最後に、外来治療支援は、自傷他害の経歴がある精神疾患者の中で、非自発的入院の退院を控えているか、または外部での治療を中断した人に対して、病院長または精神健康福祉センター長の請求を受けて、地方自治体の長が精神健康審査委員会の審査に基づいて外部で1年の範囲内で強制治療を受けさせる制度であります。現在、2023年の外来治療支援の請求件数は全国11件で、支援された件数は10件、2022年の場合は、請求件数は14件で、支援された件数は11件であります。この制度は人権侵害のおそれが大きいという批判が強く、実際にはあまり利用されていない状況であります。
 これで報告を終了させていただきます。ありがとうございました。
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは、質疑応答のほうに移ってまいりたいと思います。ただいまのヒアリングに関しまして、御質問等ございましたらお願いいたします。
 では、山口構成員、どうぞ。
○山口構成員 保健所長会から来ております山口です。よろしくお願いします。各国のレポート、ありがとうございました。
 日本の措置入院と医療保護入院と医療観察法による入院の3つと対比させながら諸外国の資料を読ませていただきました。ありがとうございます。
 保健所長会では、3年間にわたって措置制度の課題整理ということで、保健所や主管課の自治体に調査しました。テーマにした一番の発端は、都道府県ごとの人口当たりの措置入院率が10倍以上の差があるという実態でした。これはやはり行政処分として不適切ではないかということで調査させていただきました。
 その結果、課題の一つ目、措置入院の対象となる疾患の範囲がはっきりしていない。例えば知的障害や認知症を措置制度の対象にするのかしないのかというものも自治体によってかなり悩まれていました。また、他害行為の種類と程度。6つの重大な行為が医療観察法に示されていますが、措置制度に該当する行為の種類や程度については自治体によって扱いが違うということも確認できました。
 二つ目は、おそれの定義です。資料にも自傷他害のおそれという言葉が出てきているのですが、日本ではおそれの定義の解釈が地域によって異なります。例えば殺してやると思うだけの「念慮」だけでも措置入院の対象とする地域と行動に移した場合だけ措置入院の対象にする地域があります。
 三つめは、司法との関係が非常に不明確であることです。一見、医療観察法は、6つの犯罪で逮捕された人が対象となりますけれども、例えば放火にしても、全焼になっていたら逮捕送検されているけれども、自分の家に火をつけただけだったら措置、火をつけたけれども、被害がわずかな場合は、医療保護の対象になるなど、重大な犯罪とされている放火でも、必ずしも逮捕送検(医療観察法の対象)になりません。また、日本では、措置というものは司法の対応を免除される制度と思っていたのですが、まず逮捕して警察官通報して、措置入院になった場合、症状が落ち着いてから、事情聴取をして、その上で送検するかどうかを改めて決める地域があることがわかりました。ますます司法との兼ね合いが分からなくなっています。外国の場合は司法処分と行政処分を明確に区別するルールが示してあるかを伺いたい。
 つまり、質問は、州とか警察、あるいは県単位での地域格差が外国はあるのか。あるいは自傷他害のおそれ、このおそれというものが具体的に示されているのか。司法処分と行政処分の使い分けはどうなっているのか。
 分かっている範囲で教えていただければと思います。よろしくお願いします。
○田辺座長 答えられる方からいきましょう。
○柑本構成員 柑本です。答えられるところだけお答えしたいと思います。
 地域差については、イングランドについては、正直なところ、よく分からないです。
 それから、おそれということをおっしゃっていましたけれども、現行の1983年精神保健法では、スライドを見ていただくとお分かりのように、患者の健康または安全あるいは他者の保護のためにという規定になっていて、「他者の保護」ということをどういうふうに理解すればいいのかというところが問題になりうるようです。これについては、身体的な危害からだけではなく、精神的な被害からの保護も含む、例えば他人の財産を破壊することでその所有者に精神的な苦痛が及ぶということであれば、それも当然、この対象になり得るという理解になっているようです。
 それから、司法との関係については、ダイバージョンスキームというものがイングランドにはございまして、例えば、重い罪であれば当然、刑事司法のほうに行くことが多いのですけれども、軽い罪の場合には、このまま刑事手続に乗せたほうがいいのか、それとも、治療に完全に回してしまったほうがいいのかということを判断する。そういう仕組みがございますので、そちらで判断されて、この人は治療だと思ったら治療の方向に行くということになります。
 ただ、先ほどもお話ししましたように、イングランドの場合には、有罪になっても刑罰にかえて、入院治療を内容とする命令を言い渡すことができますので、刑事司法手続きに行っても治療的介入が制度的に担保されている点は他の国とは違うのではないかと思います。
 イングランドは以上です。
○小林参考人 小林です。フランスに関して、お答えできる範囲でご質問に回答させていただきます。
 まず、地域格差に関しましては、データが手元にありませんので、明確な答えは差し控えますが、一つ、地域という点で申し上げることができるとすれば、フランスの場合、監督・審査制度については、県単位で行われる県精神科治療委員会と、それから、行政機関ですけれども、自由を剝奪する場所に関わる監査官という、2つがあって、後者が全国統一で、前者が県単位です。
 前者について、やはり県によって非常によく機能しているところと機能していないところがあるというのは指摘されているところですので、そういった欠点を補う形で、自由を剝奪する場所に関わる監査官は、大統領命令で任命される全国統一の機関になりますので、こちらが監督をするということで、地域格差が出ないような形のコントロールを行っていることは指摘されています。
 「おそれ」の解釈ですけれども、フランスの場合は「おそれ」という言葉に該当するものがどれか分からないのですが、表を見ていただくと分かるとおり、フランスの場合は自傷か他害かで完全に分かれます。自傷の場合は、第三者からの要請に基づく医療施設長の決定に基づく非同意精神科治療になりますし、他害の場合は、公の秩序も含めて、県知事の決定に基づく治療になります。
 「おそれ」という言葉が出てはこないのですが、フランスで問題になるのは、重大な危険性という言葉と、これはあえて訳し分けているのですが、差し迫った危機という言葉があり、この重大であるとか差し迫ったというところを実際にどのように判断するのかが難しいということは指摘されておりました。ただ、それを実際にどのような問題として具体的に検証しているかということについて、私は存じ上げませんので、これ以上の回答はできないということでお許しいただければと思います。
 最後に、司法との関係になりますが、罪を犯した者、フランスで言うと受刑者に関する非同意精神科治療が問題になるかと思うのですが、私は刑事司法が専門ではないので、ここについては全く不案内でして、確実なことが申し上げられません。ただ、先ほどから何度も申し上げておりますが、フランスの場合はJLDによる大変細かい審査が徹底されております。JLDは、自由と勾留に関する場所で行われる人権侵害については全て管轄権を持っていますので、この裁判官の司法コントロールの下におかれるということが原則になるかと思います。
 以上です。
○水留参考人 ドイツにつきましてですけれども、まず、最初にお断りしなければいけないのは刑事司法との兼ね合い、正確に言いますと、ドイツの場合は犯罪行為として、それが起訴され、責任無能力ゆえの無罪判決、または有罪判決であっても限定責任能力という場合には、先ほど申しましたように、精神科収容処分というものが刑事裁判所で言い渡されるわけですけれども、先ほどのお話はその前段階の部分ということで、ここがどうなっているかという部分については、申し訳ありませんけれども、私のほうでお話しできる状況にはございません。犯罪行為を見つけたら全部起訴しなければならないというものが一応の建前にはなっておりますけれども、本当にそう動いているかという点は多分、必ずしもそうではないであろうとは思われますが、どの程度までのフレキシビリティーが実際問題あるかは申し上げられないところです。
 その上で、地域格差ですけれども、これは非常に著しいということは間違いなく言えるのですが、ただし、ドイツの場合、そもそも、連邦国家であるということ。それから、公法上の入院というものが各州法で全て別の実体規定で行われているので、当然のことながら、運用が異なってもそこは不思議ではないというところがございます。それをどのくらい、ドイツの人たちが問題意識を持っているかはよく分からないところでございますが、ただ、州の中でも地域ごとに格差が激しいのではないかということを指摘している文献は私も見ているところでございます。
 それから、精神疾患の範囲の不明確さということでございますけれども、公法上の収容の場合、全ての州で大体、精神疾患あるいはその影響において精神疾患と同視できる精神障害または依存症、というようなものを掲げるというところが指摘されております。民事入院の場合には、依存症だけだと含まれないという理解のようなので、この点が違うということはあるのですけれども、では、どこからどこまでを精神障害と呼ぶかというのはまた微妙なところでございまして、例えば民事入院の場合にはICD-10に載っているもので、先ほどの依存症だけという場合以外は全て入るというような理解もなされているので、不明確さというものはやはり残っているのかもしれません。
 それから、他害行為で、どういうものを危険として取り込むか。とりわけ、他害の危険として取り込むかというところでございますけれども、公法上の入院はいずれも自傷または他害の危険。自傷はより正確に言うと、自殺または著しい健康上への害の危険などと表現するような例があり、あるいは他害の危険なのですけれども、多くの州で「著しい危険」という表現をすると、さらに「著しくかつ現在の危険」というふうに言う州もあるという具合に、州法によって異なっているというところでございます。
 より正確に、さらに疾病の結果として害をもたらし得る自傷が切迫している、あるいは現に発生している、またはその発生が現には予見できないが、状況次第でいつでも予期され得る場合というような、かなり細かい言い方をしている州もある。それから、他害の危険の対象として、他人の特に重要な法益とか、または第三者の重要な法益などとして書いている例があるというところでございますが、書き方が違うことによって、どの程度、本当のところは異なるのかというのは、またこれも不明確なところでございます。
 それから、司法との関係で、刑事司法との兼ね合いは微妙ということなのですけれども、これらの公法上の入院、あるいは民事の入院、いずれにしましても、これらは自由剝奪を伴う収容というカテゴリーになり、自由剝奪というふうな表現が行われるという場合には、ドイツの基本法、我が国の憲法に相当するものですが、これのルールで、裁判所の命令に必ずよらなければならないという意味においては、司法関与は明確でございます。
 ただ、自傷の危険がどちらにも含まれているので、それが取りあえず精神科救急を念頭に置いたときに、一体、どこからスタートするのかというところはかなり州によって異なっているようで、まず、公法上の収容からスタートするというものが圧倒的という州もあれば、いや、できるだけ世話人のほうの手続で頑張っていこうという州もあるようで、この辺も地域格差が大きいようです。
 そういうことで、最初に言ったように、実態が全く分からない。これは障害者権利委員会の履行状況調査の際にもドイツに対して指摘されているところでもございますので、正直言って、よく分からないというのが正直なところではございます。
○田辺座長 それでは、趙参考人。
○趙参考人 韓国の場合は、地域の差はあまりありません。地域の差よりは診断を行うお医者さんの御意見が反映されるので、個人差はあるかもしれませんが、地域差は別にないと思います。
 しかし、危険性というものは、韓国の場合は精神健康福祉法の施行規則に一応、基準が書いてありまして、今日のパワーポイントの4ページを御覧になりますと、43条2項2号の「危険性」の判断基準と書いてありまして、危険性とは、次の各号のいずれかに該当する場合を示す。この場合、該当するリスク基準を判断する際には、精神疾患者の病気、症状、既往歴、行為の性質、または健康や安全に与える影響などを総合的に考慮しなければならないとして5つの例が挙げられておりますので、これを一応、基準にして判断するわけですが、この基準が具体的で明確であるかといえば、これもやはり曖昧なところも確かに残っておりまして、何をもって自傷他害の危険性があるかということに対してはお医者さんの判断に任されていると思われます。
 そして、危険性の問題ではなくて、実際に他害行為が行われた場合は、禁錮刑以上の行為でなければ、まず治療監護法の対象者にはなりませんが、有罪で実刑を言渡されたときは刑務所の中で治療を受けることになります。しかし、そうでないときは一般精神疾患者と同様に精神健康福祉法上の自発的入院または非自発的入院の対象者になり得ます。また、他害行為が行われたとき、例えば暴力または器物損害があったが、被害があまり大きくないか、被害者との和解が成立したりして、交番段階で有耶無耶になったか、送検されたが、検察官が基礎便宜主義によって不起訴としたときも、精神健康福祉法上の自発的入院または非自発的入院の対象者になり得ます。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 山口構成員、よろしゅうございますか。
○山口構成員 整理できたらまた伺いたいと思います。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。
 では、長谷川構成員、どうぞ。
○長谷川構成員 静岡赤十字病院の精神科医師の長谷川と申します。本当に大変、各国の特徴をよくまとめていただいてありがとうございます。
 私は、柑本構成員と小林参考人に質問があります。一つは同意の問題で、家族同意の負担を一番減らしているのはやはりイギリスなのかなと思ったのですけれども、AMHPで教育プログラム、例えばどのぐらいの期間とか、あと、夜間・祝日とか、何か負担感とか、そういうものを教えていただけたらありがたいかなと思います。
 質問を先にしてしまいますけれども、小林参考人には、非同意治療で一時入院の話がとても面白いなと思いまして、ナイトホスピタル的な、そういうものが例えばどのぐらいの期間で、これもどんな感じで運用されているのか、もし分かる範囲であれば教えてください。
 以上です。
○柑本構成員 御質問どうもありがとうございます。
 AMHPのことなのですけれども、AMHPになるためには、そもそもソーシャルワーカー、精神保健・知的障害を業務分野とする看護師、作業療法士、又は、公認心理師(と言っていいのか分からないのですけれども)の資格を有していなければいけないわけです。その人たちが、承認されたプログラムを提供している教育機関に入学して、大学院レベルの教育プログラムを受ける。その期間は、通常1年ぐらいではないかと思うのですけれども、私たちも知っているような大学がその教育プログラムを提供していまして、それを終えることが必要となります。
 それから、実務経験も有していることが必要になってきます。そして、教育プログラムが全て終了したら自治体に対して、自分はAMHPとして活動したいのだけれどもという申請を出すことになるわけです。教育プログラムの中では、例えば、マンチェスター大学では、4つの必修ユニットというものがあるらしいのですけれども、精神保健実践における重要な意思決定、応用精神医学、AMHPの役割、それから、精神保健法について、そういったところを学んで、実習を行い、教育プログラムが終わる。それで、自治体の承認手続に入るというような感じになっていますので、非常に丁寧に教育プログラムが行われていると思いました。
 そうしたAMHPになるための教育プログラムを受ける人たちは、既に実務経験があって、その人たちが勤務先からの推薦、大体が地方自治体らしいのですけれども、その推薦を受けてコースに出願します。勤務先である自治体が実習先となることも多いようです。このように、国を挙げて、そういう人たちを養成しようという意識が非常に高いと、プログラムを拝見していて思いました。
 以上になります。
○長谷川構成員 ありがとうございます。
○柑本構成員 とんでもないです。
○小林参考人 フランスの治療について御質問いただいた点について、まず、先ほどは強調しませんでしたが、日本では、言葉上は非同意入院といっても、本人以外の同意を取ります。つまり、家族や市町村長の同意という言葉が法律の文言に入っています。これはフランス法的な観点からするとあり得ないことです。要は、本人が同意できないのに、誰が代わりに同意できるのかということです。フランスの法律上、このsans consentementは、あくまでも誰の同意も取らないという意味になります。したがって、家族の同意も取りませんし、それ以外の市町村長の同意も取りません。
 ですので、負担という面では、同意をする人がほかにいませんので、日本のような形の家族への負担はないと言っていいかと思います。ただし、実際は家族が非同意治療を要請することになりますので、その点での負担はあります。先ほど申し上げなかったのですが、実は同じ医療施設長の決定に基づく入院の中でも、差し迫った危機の場合は、要請者は要りません。実は、家族に要請を求めると負担になるということで、差し迫った危機なのか、そうではないのかという、この文言の解釈が法律上明確ではないところを逆手に取るという形で、手続上は、差し迫った危機という扱いで、要請者がいない形で入院させることもありうるということは文献で拝見したことがあります。
 このように、同意の意味がフランスと日本ではかなり違うということを強調した上で、この非同意治療プログラムは日本の皆さんからも注目されるのではないかと個人的に思っております。これは、脱入院といいますか、必ずしも入院させないで治療するという方向性にのっとったもので、個人ごとに作成されます。
 いろいろな種類をここにも書きましたけれども、一時入院は法律で12時間以内と決まっていますので、これを超えて一時入院という形はできません。さっき申し上げたように、精神科は夜間の需要がやはり多いので、夜間の12時間以内を病院で過ごしてもらうという形の一時入院、あるいは在宅入院があります。多分、最も皆さんのご関心を引くのではないかと思っているのですが、家だけではなくて、たとえば、介護施設や、子どもの場合なら児童保護施設など、とにかく病院以外の、ふだん患者が生活する場を病院とみなして、そこで治療を行うというのがこの在宅入院に該当します。したがって、フランス語のdomicileという言葉は、在宅と訳すのでイメージが湧きにくいかと思うのですが、必ずしも治療がおこなわれるのは家だけではないということが言えます。
 この在宅入院の目的は、やはり、治療終了後を見据えてということになります。たとえば、精神科だけではなく、ほかの科の治療でもそうなのですが、患者を入院させてしまうと、そこから社会に戻すときに、精神科にかかわらず大変ハードルが高くなります。たとえば、母親を子どもと引き離して入院させてしまうと、その後、母子の関係を再構築するのが大変になるので、在宅で治療ができるのであれば、子どもとの関係を維持しながら治療ができる、というようなことがよく例に出され説明されます。そういった形で在宅入院という言葉がよく使われております。
 精神科の場合はもちろん、難しさはあります。非同意精神科治療の下での在宅入院になりますので、非常に細かい治療プログラムがまず作られて、中核となる病院から、その治療プログラムに則って、実際に治療に当たるかかりつけ医や、看護師、ソーシャルワーカー、その他医療に関係するスタッフがそのプログラムにしたがって治療やケアを行うという形になります。
 期限はないのですけれども、基本的に毎月、とくに県知事の決定に基づく場合は、精神科医がこのプログラムの適切性を判断しますので、その都度プログラムの変更は可能になります。あまりにも患者が治療プログラムを守らない、例えば、服薬を守らないとか、いなければいけない時間帯に家にいないとかということになりますと、もちろん、一定の手続はありますが、完全入院に戻すという判断もできます。
 このような形で、患者の病状、症状、回復具合、あるいは置かれている環境に応じてプログラムを実施することが、法律で設定されている在宅入院の目的になります。ただし、やはり実際にこれができるかどうかは、その地域の医療資源の状態によりますので、当然、全て全国統一でできるわけではないということは、どのフランスの専門家に伺っても、おっしゃっていました。
 以上です。
○長谷川構成員 ありがとうございます。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。
 では、池原構成員からお願いいたします。
○池原構成員 ありがとうございます。
 細かい点の質問なのですけれども、まず、イングランドの制度でAMHPというものが興味深いなと思ったのですけれども、申請者になっていて、かつ決定者でもあるのですか。そこが申請する人の決定もするという、別々のAMHPなのかもしれないですけれども、そこの構造を教えていただきたい。
 それから、AMHPは精神科医ではなくてソーシャルワークとかいろいろ、言わば精神障害に関わる様々なファクターを考えられる立場なのかなと思うのですけれども、精神科医とAMHPの判断がずれるという事例は結構あるのですかというのが知りたい。
 フランスも、もう一つ、細かいことで恐縮なのですけれども、フランスの特徴は入院を強制するというよりは治療を強制するというところに特色があって、それは興味深いなと思ったのです。というのは、日本の強制入院制度は、少なくとも精神保健福祉法は、措置入院にしても医療保護入院にしても、入院は強制されるのだけれども、入院中の患者さんが治療を強制されるのかどうかということについてはあまり明確に書いていなくて、医療観察法のほうは入院による処遇を受けなければいけないとか、通院による処遇を受けなければいけないということが書かれているので、一応、治療義務がありそうに読めるとは思うのですけれども、一般の精神保健福祉法はそういう規定がない。
 それで、ロボトミーの裁判では、判断能力がある場合にはやはり強制入院中の患者であっても同意を得なければいけないというようなことがされていて、だから、その辺が、そうすると、治療を拒否している間、ずっと入院していなければいけないのかみたいなことが起こったりとかということがあって、興味深いなと思ったのです。
 ただ、スライドの中の第三者からの申請とか、表で要件とかを整理していただいているものを見ると、重大な危険という要件のほかに、本人が同意ができないという要件が書いてあって、これはいわゆる治療同意能力がないということが要件の一つになっているのかどうかということを教えていただきたいと思いました。
 さらに見ると、国の出先機関による決定という、一番右側の表のほうには患者が同意ができないというものがないので、これについては、要するに安全が害されていれば、同意能力がある場合でもやはり強制的に治療してしまいますという話になっているのかどうかということを、細かいですけれども、教えていただければと思います。
 あと、韓国法についてお聞きしたいこともたくさんあって、特に韓国では、御承知のように、旧精神保健法に関しては、2016年でしたか。憲法裁判所が日本の医療保護入院に当たる入院は憲法に適合しないという判断をしていて、その前後で現在の法律が改正になったというふうに聞いていますけれども、大変細かいことで恐縮なのですけれども、精神疾患者の定義のところで、妄想、幻覚、思考や気分の障害等によって、独立して日常生活を営むことに重大な制約があるという、どちらかというと、日本で言うと障害者総合支援法みたいな、言わば福祉の対象者になるような定義ファクターが入っているような気がするのです。
 逆に言うと、日常生活を営むことに重大な制約があるところまで行かなければ、妄想とか、幻覚とか、思考や気分の障害があっても、言わば精神保健法の対象にはならないということになるのか。そうすると、例えば通院治療を受けるような人は精神保健法の対象外という理解でよいのかどうかを教えていただければと思います。
○田辺座長 では、どうぞ。
○柑本構成員 御質問ありがとうございます。
 AMHPが申請者であり決定者であるということに違和感ということなのですけれども、AMHPが、なぜ、申請者になっているのかという点については、収容に代わる選択肢の有無について独立した判断を提供する役割が求められている。医療的なところはお医者さんたちのメディカルのリコメンデーションがあるので、それで満たされるわけですけれども、そうではなくて、やはり社会的なところも見た上で、本当にこの人にとって入院が必要なのかどうかということを判断する役割を担わされているということだそうです。
 では、誰が一体、決定権者なのかというところは、すごく小林先生達との勉強会の中で指摘されています。現地調査においては、AMHPは職務を遂行するに当たって、地方社会福祉当局の承認を得て、その代理として行動するので、行政的な判断を担っているというふうに捉えていいのではないかと、精神保健法の専門家の方がおっしゃっていました。でも、そこは書物を見ても特に書かれていないので、なかなか理解に苦しむところというのが正直なところであります。
 それから、先ほどの発表の中では特に触れなかったのですけれども、イングランドの場合にも、精神保健法の中に強制治療の規定があり、強制治療ができる要件、そのための手続きというものがきっちりと法律の中に書き込まれています。通常の治療、精神科外科手術、ECTというふうに分けて要件が規定されております。それから、説明がありましたように、強制通院の仕組みが韓国にあるわけですけれども、イングランドにも同じような仕組みがありまして、それについても細かい規定がございますし、それから、審判所に命令を解除するように求めるといったようなことについての手続も規定されております。今日は入院制度についてということだったので、特に御説明しませんでした。
 以上となります。
○小林参考人 フランスに関しまして、まず、この同意の部分に関して、先ほど急いで言ってしまったので、もう一回、きちんと整理してお話ししますと、精神科における入院も治療も、原則として本人の同意を取るというのが法律に明記されていますので、同意がない治療とか同意がない入院というものは基本的にはありえないのです。ただ、例外的に、このスライドの表に載っている場合に限り、例外として認めるという形になります。フランスは原則と例外をきちんと分けていまして、もちろん、実際にそれが現場でどうなっているかは置いておいて、少なくとも法律上は非常に明確になっています。この表だけを見ると、日本の医療保護入院や措置入院をイメージするかもしれませんが、フランスの非同意精神科治療は、あくまでも例外的に本人の同意が取れない場合に限られますので、同意ができないという文言を入れざるをえないのです。原則に対する例外という形になりますので、入院でも治療であっても本人の同意を取れないということをまず書かないと、例外であることがわからないということになってしまいます。
 医療施設長の決定に基づく治療は、本人にとって治療が必要であるというところから出発しているので、やはり、治療を続けるべきかということが判断の基準になります。したがって、医療施設長は決定権者ですが、たとえば精神科医が治療は要らないと言っているにもかかわらず、医療施設長が、いや、まだ治療させると言って退院させない場合、この医療施設長には罰則規定が適用される、つまり、退院させないことに対する非常に厳しい規定があります。言い換えると、医療の現場で入院は要らないと言っているのに、なぜ、まだ入院させる必要があるのかということです。基本的に医療施設長の決定に基づく治療は、決定権は医療施設長にあるのですが、決定自体にかなり制約がかかるといいますか、手続が守られていないとか、医療的な判断によらない場合には、医療施設長も制裁の対象になるというところが特徴的です。
 これに対して、国の出先機関である県知事の決定に基づく治療は、これは、おそらく、先ほど申し上げたエスキロール法の、危険な人から社会をどう守るかというところから、脈々と続いてきているものなので、もちろん、今は患者の権利の保障という概念も入っているので、入院だけではありませんが、そういう背景もあり、国の出先機関の決定に基づく治療に関しては、同意という文言は法律には一切出てきません。むしろ、他者の安全や公の秩序を害するかどうかというところが中心になります。ただし、何度も申し上げていますが、基本的には、フランスでは、精神科治療においても、本人の同意を取ることが原則である旨、法律上も明確に文言がありますので、同意が取れる状態にあるのに、本人の同意を取らずに、あなたは危ないでしょうと言って県知事が入院を決定することはできないということにはなると思います。
 以上です。
○趙参考人 韓国の場合は、最初の憲法裁判所の決定との関係で申し上げますと、2016年の新しい精神健康福祉法が改正されて、後で憲法裁判所の憲法不合致決定が出ました。しかし、精神健康福祉法が2016年に改正されるときは、すでに審理中であった裁判と時期がかぶっておりまして、憲法裁判所の議論が一応、改正に影響を及ぼしていると言われております。そして、CRPDの障害者権利委員会の勧告も改正に参考になりました。ここで、注意しなければならないのは、その憲法不合致決定が保護義務者入院制度そのものを否定したわけではなく、その入院要件が憲法に合致しないとしたことと、人権侵害のおそれのある制度の問題点および補完策の必要性を指摘したことであります。
その決定の趣旨から見ますと、改正された現行法は人権保障に十分でありませんでした。その後、2024年の手続助力人制度、助力人養成制度、助力人憩いの場制度および成年後見制利用支援制度と、2025年急性期集中治療病院制度が新設され、精神障害者の権利擁護制度が少しずつ増えていると言えます。
 そして、精神疾患者の定義に関連するご質問について申し上げます。以前の旧精神保健法の精神疾患者の定義は精神病、人格障害、アルコール及び薬物中毒、その他、非精神病的精神障害を有する者でおりまして、日本の定義と大体似ておりました。しかし、現行法では、先ほども申し上げましたように、日常生活を営むことに重大な制約がある人と、精神疾患者の定義を重度の精神障害者と厳格に制限しました。これは、精神障害者の人権保障の観点で重度でない精神障害者、すなわち現行法上の表現(41条、同意入院規定)によると、その他精神健康上の問題がある人を、非自発的入院の対象から排除することにその立法趣旨があります。しかし、症状が重度で日常生活を営むことに重大な制約があるかどうかの判断は、もっぱら診断する医者の判断に頼らざるを得ません。それゆえに、まず、非自発的入院の対象者にもなり得る精神疾患者の症状や程度を一律的に定めることはできず、非自発的入院にはすべて厳格な意味において現行法の精神疾患者の定義に合致する患者しか入っていないとは言い切れないだろうと思います。とにかく、現行法は、精神疾患者と区別される、重度でない精神障害者、すなわちその他精神健康上の問題がある程度の人は任意入院以外には非自発的入院はもちろん、同意入院もできません。
以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは、岩上構成員、小嶋構成員、それから、藤井構成員の順でお願いいたします。
○岩上構成員 どうも、御報告ありがとうございました。全国地域で暮らそうネットワークの岩上でございます。私は平成26年改正の前の作業部会にもいましたので、その当時、保護者制度、保護者を廃止してというときに、誰に同意をしてもらうのかといった混沌とした議論をしていたときから比べて、やはり地域医療構想があり、医療保護入院者を厳格にしてという時代背景の中で議論できるようになったというのはとても大きなことではないかと思っています。
 その中で、まず、柑本先生にお聞きしたいのですが、2つございまして、一つは、この非同意入院の話で今日はお話をいただいているところですが、私は非同意入院を厳格化するためには、日本においては、この曖昧な任意入院の位置づけを変えていかなくてはいけないのではないかと思っているところなのです。
 その点で、私が調べている、学んだところでは、やはりイギリスも曖昧さが残っているように思っていまして、その辺りは小林先生も先ほどお話しになっていたので、小林先生にもお聞きしたいのですが、むしろ、フランスやドイツ、水留先生は今日は非同意入院のことでしたので、その点についてはお答えいただかなくていいのですけれども、同意入院といいますか、任意入院が一般的な病院に入院する入院と同じような位置づけにフランスのほうがなっていて、イギリスのほうが曖昧なのだけれども、曖昧と言ったら怒られるかもしれませんが、むしろ、AMHPを使うことによってしっかり厳格化しているのだ。その辺の説明になるのかなというところをお聞きしたいのが一点です。
 もう一点は、柑本先生に、私はAMHPは、今後、日本で考えていくときには、大きく変えるということでなければ、このAMHPというものが一番親和性が高いのではないかと思っていまして、では、その際にAMHPがどこに所属するかとなっているときに、先生のお話ですと、地方自治体とNHSである。これがまた今後の大きな日本の課題になってくるとは思っているのです。私は保健所経験もございまして、そこからしてみると非常に親和性が高くて、しかし、これを今で言う措置ではなく、どうやって当てはめるのかという技術的な議論をしていかなくてはいけないのではないかと思っているところなのです。そのときに、このNHSについて少し御説明いただけるといいかなと思います。
 ですから、柑本先生には、いわゆる日本の任意入院とイギリスの辺りのことと、小林先生にもそこのお話をいただいて、もう一点は柑本先生に、AMHPの所属というのでしょうか。その辺りをお話しいただけるとありがたいなと思います。
 以上です。
○田辺座長 それでは、まとめて、小嶋構成員、それから、藤井構成員の御質問を聞いた後で御回答のほうをお願いします。
 では、小嶋構成員、よろしくお願いします。
○小嶋構成員 元TBS報道局の小嶋でございます。よろしくお願いいたします。
 私も、イングランドにおけるAMHPに強い関心を抱きました。
立派なバックグラウンドや国家資格を持っていながら、国家資格ではないAMHPという職種に、大きな権限を集中させたということに、何らかの歴史的背景があって、このAMHPが誕生したのではないかと推量しているのですが、その点、何かご存じのことがありましたら、教えていただけませんか。今後、日本のケースを考える際に大きな参考になるのではないかと考えましたので。
 もう一点は、事務局にお願いです。 今回、海外から学ぶ重要性というものを強く感じました。例えばアメリカでは民間がこの分野で大きな役割を果たしているとも聞きますし、そういった意味でもこういった、アメリカをはじめとした、ほかの国々はどうなのかということをもう少しいろいろ聞きたいと思っております。その点について、事務局では何かお考えがあるのか、お示しいただけたらと思います。
 以上です。
○田辺座長 続きまして、藤井構成員、よろしくお願いします。
○藤井構成員 国立精神・神経医療研究センターの藤井です。
 一部、岩上構成員の御質問とかぶるのですけれども、日本の任意入院に関してはやはり再検討が必要ではないかというふうに考えていまして、というのは、障害者権利条約の理念に基づいて考えても、精神障害者ということで別扱いをするということが果たして妥当なのかどうかというのは、この前の検討会でも議論になったところだと思います。御本人が同意しているのにもかかわらず身体疾患の方と別の扱いの法的な立てつけで入院をしてもらうのが妥当なのかどうかということを考える上でも、ほかの国では御本人が同意している場合の入院というものは精神保健法のようなもので、公衆衛生法典だったりとか、そういう精神疾患の方の入院を規定するような法律の中に同意入院が位置づけられているのかどうかということをお伺いしたいと思いました。
 もう一つは、それとも関係するのですけれども、日本の医療保護入院は、ほかの国で言う、いわゆる自傷他害のおそれというようなリスク要件みたいなものと、あと、キャパシティー要件といいますか、判断能力が低下している方の御本人の利益のためにというような理由とが混在していると思うのですけれども、今、お話を伺うと、多くの国ではリスク要件という、自傷他害のおそれを要件にしているところが多いようでした。認知症のような持続的に判断能力が低下しているような方に対しての入院に関しては、イングランドに関してはメンタルキャパシティーアクトがあると思うのですが、ほかの国ではそのようなメンタルキャパシティーアクトに相当するような法律で運用されているのかどうかということが、もし分かればお伺いできればと思いました。
 以上です。
○田辺座長 では、お願いいたします。
○柑本構成員 御質問どうもありがとうございます。
 全ての御質問にお答えできるか分からないのですけれども、岩上構成員のおっしゃっていたAMHPが非常に期待の持てるものではないかというご意見については、実は私もそう思っていて、前回の検討会のときに、家族等に代わる同意者は誰にすればいいのかという議論で、精神保健福祉の方たちにその役割を担っていただくことができるのではないかというような発言をさせていただきました。ただ、現状のままでは十分とは言えず、やはりそこに上乗せで教育が必要だろうと思いますし、指定医のような資格というものを設ける必要があるのではないかというようなことも発言させていただきました。実際に現地でAMHPの仕事を見に行って、PSWの方達が同じようなことをやったら、もしかしたら家族等に代わる承認者といいますか、そういう役割を担えるのではないかと思ったりしました。
 AMHPは、自治体で8割近くが雇用されていて、約16%がNHSということなのですけれども、NHSは病院を運営している、日本に引き直すと、独立行政法人にやや似ている感じだというふうに考えていただければと思います。実際に南ロンドンにあるNHSの病院を私は訪問させていただいたのですけれども、病院の中にAMHPのための部屋みたいなものがあり、そこに何人か勤務している人たちが詰めていて、基本は24時間、サービスを提供できるようにしているというふうにおっしゃっていました。法律の運用が非常に知りたくて訪問したのですが、私が法律の質問をぶつけても大抵の質問にはお答えいただけて、精神保健法に非常に精通しているというふうに感じました。
 それから、インフォーマルペイシェントに関しては、スライドにありますように、1983年精神保健法の手続きはあくまでも強制入院の患者さんに適用されており、インフォーマルな患者さんたちの入院には適用されないので、その人たちが一体、何人入院していてどうなのかというようなところは分からないです。
 ただ、権利擁護というところでは、2025年の改正で、Independent Mental Health Advocate=IMHAという制度(患者さん達に情報提供したり、あるいは意見表明するのを手伝ったりするアドボケイト制度)について改革が行われ、従来は主に非自発的入院の患者が対象とされていたものが、インフォーマルペイシェントについても、希望すれば利用できるようになりました。
 それ以外のところは、すみません。インフォーマルの患者さんについては分かりません。
 こんな感じでよろしいですか。
 では、小林先生、どうぞ。
○小林参考人 まず、任意入院の位置づけについてですが、フランスの場合も、任意入院か非同意精神科治療かという区別はやはり非常に重要です。日本ですと、私の理解が間違っていなければ、任意入院であっても隔離・拘束の対象になるかと思うのですが、フランスでは、隔離・拘束は明らかに非同意精神科治療のうちの完全入院のときに限られる、と決まっていて、必ず司法審査、あるいは行政によるコントロールの対象になるので、任意入院か非同意精神科治療かという、この枠組みは非常に大事になってきます。
 ただし、入り口が違うということは、逆に言うと、たとえばJLDとかCGLPLとかによるコントロールは非同意の精神科治療の患者に対しては及ぶのですが、任意入院の場合は自由が剝奪されるとは考えられない、つまり強制的に自由を剝奪されているわけではないので、そうすると、こうした自動的、あるいは強制的な司法コントロールの対象外になってしまい、権利侵害が起こったときの救済手段という点では、方向性が変わってしまうことが大きな問題であるという指摘はされています。
 たとえば、非同意精神科治療としての入院措置の解除を、退院請求という形でおこない、それが認められなかったことを司法審査で争ったときには、患者は必ず裁判所に呼ばれ、またその場合には弁護士をつけることになっています。さらに、患者の収入によって弁護士費用も補助するといった制度も、全部、法律で決まっています。ところが、任意入院の場合は法廷で争おうとしたときにはこのような規定が適用されません。患者の権利保護という視点からは、同じ精神科に入院していた場合でも、入り口が違うと出口が違ってしまう、という問題は指摘されています。
 ただし、フランスの場合は、今日は申し上げなかったのですけれども、2008年の憲法改正で権利擁護官という、オンブズマンのような制度ができまして、精神科治療に積極的には関わってはいないのですけれども、CGLPLとは連携を取っています。権利擁護官には全国どこでも訴えられることになっているので、こういった人たちに、問題がある状況下におかれている患者自身、あるいは周りの人が訴えるということは、司法審査にはならないものの、そこから道を開いていくというのは可能です。したがって、日本よりは患者の権利保護という視点では多層的な制度が出来上がっているのではないかと思います。
 藤井先生の御質問についてですが、私は医師ではないので、藤井先生の問題関心をきちんと理解できているかが不安なのですが、恐らく私が素人なりに考えるに、患者の同意能力が、たとえば、今日と明日と明後日で変化しうるような場合に、誰が同意能力があると判断するかということにも関わってくるのだろうと思いました。フランスは、そこについて法律には規定がないのですが、ただし、先ほども申し上げたとおり、フランスの場合は非同意精神科治療なので、そこで治療が必要であると医師が判断しても、その先に必ず入院があるわけではないです。場合によっては外来での治療ということにもなるので、もちろん、そこには強制力が働きますし、患者が医師の処方どおりに治療を受けなかった場合は、完全入院になる可能性はありますが、日本のような、入院かそうではないかという判断の岐路には、医師は立たされません。あくまで、非同意で精神科治療をするかどうかというところがポイントなので、本人の同意による入院をさせるかどうかよりは、今、患者にどのような治療が必要かというところが医師にとっては重要であって、かつ1回入院したあとでも、あるいは治療プログラムが始まっても、定期的に精神科医の診断が入りますので、そこでプログラムの変更は可能ですし、最終的に司法審査がかなりきちんと行われますので、そこで争うことも可能です。そういった全体を見ると、一応、法律上は、組織としては機能するようになっていると言えるかと思います。
 ただし、フランスの専門家に聞くと、公衆衛生法典の規定が多過ぎて、これを現場の医師が全て把握することは不可能に近いとか、書類にサインするのに大変な時間がかかって、本来おこなうべき治療に時間を費やせないとか、どこでもそうですけれども、ルールを作れば作るほど、それを実施するための労力がかかるので、そこは大きな問題であるということや、ルールとルールの間の齟齬も出てくるので、それらの調整が非常に難しいということは聞いております。
 以上です。
○柑本構成員 すみません。先生、ちょっといいですか。
○田辺座長 どうぞ。
○柑本構成員 小嶋構成員の御質問に答え損ねておりました。AMHPがこのような役割を担うようになった背景には、イングランドで、かつて医療的判断の影響が強く、入院の要否の判断が主として医師に委ねられていたことへの反省があります。入院の要否は単なる医療的必要性だけでなく、本人が地域社会の中で生活していけるかどうかといった社会的観点をも踏まえて判断されるべきであるということで、ASW(現在のAMHP)が関与する仕組みが制度化されました。Responsible Clinicianという責任臨床家は医師に限られないという点も、まさにそういうところから来ているものだというふうに聞いております。
 すみません。ありがとうございました。
○水留参考人 私のほうには、藤井先生からイギリスにおけるメンタルキャパシティーアクト、要するにいわゆる意思決定能力といいますか、同意能力といいますか、そこら辺を判定するための根拠法、あるいはそのための判定基準があるかというような御質問をいただきました。
 まず、ドイツの前提といたしましては、民事入院は法的世話制度を前提とするわけですが、その法的世話制度の導入に際しても、また、入院に際しても、もうちょっと言うと、強制的な医療措置に対しても「自由な意思」がある場合にはそれらは発動しないという形になりますから、その自由な意思、意思の自由さというものがあるかないかということがそれぞれの制度を導入する際の判定基準になるということは明確です。これらは手続上、裁判所がいずれも命令するわけですが、それには鑑定が必要的で、精神科領域の経験のある医者がこれを判定しなければならないというふうにされております。
 では、その意思の自由さというものが一体、どの程度で存在するかということについては、それ以上の下位基準が法制化されているということはどうもないようでございます。一応、ドイツの憲法裁判所は、病気になる自由というものは誰にでもあるのだということを強調しているようです。では、どこで自由な意思がなくなるのかということで、今、手元にある本などを見ますと、例えば病識が欠けている場合などは意思の自由さは欠けることが多いというようなことがあるので、一つの参考になろうかとは思われます。
 併せて、質問の範囲外になるかもしれませんけれども、任意入院の話等について若干補足申し上げますと、先ほど来、私はUnterbringung、厳密に言うと、自由剝奪を伴う収容ということを話の射程に入れますということを申し上げました。それで、自由な意思によって閉鎖環境下に入る場合には要するにこの制度の対象外ですけれども、必ずしもそうでない、今、言ったような意味である場合にはやはり入院の法規制に入ってくるという形になります。
 そして、いつが自由剝奪を伴う入院であるかという点についてなのですけれども、これはひょっとしたら日本の理解と異なるかもしれなくて、例えば任意入院では閉鎖病棟が使われる場合があるとかというようなことがあるわけですけれども、ドイツの場合には、例えば夜間は施錠するとか、そういうような時間を限ってでも自由に出入りができなくなる環境に置かれることは全てUnterbringungになり得るので、そこに関する自由な意思というものに反対して、それが行われる場合、あるいはそれがあるかどうか分からないときに行われる場合は全てUnterbringungのルールにのっとらなければなりません。
 その意味では、これは確たることまでは言えないのですけれども、ひょっとすると日本で任意入院と考えられているものの一部がここに取り込まれている可能性もあるかもしれません。ただ、この点についてはやはり統計的な裏づけが何とも言えないというところがネックにはなります。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 小林
参考人がぼちぼち退席しないとまずいということでございますので、この議題1に関しましてはここら辺で終了させていただきます。
 質問等ございましたら、事務局のほうに投げかけてください。これは本日の報告者のほうに回して回答いただきますので、その質問と回答に関しましては次回に、ないしは議事録のほうに載せていきたいと思います。
 では、ここで5分間休憩でございます。
 
(休憩)
 
○田辺座長 それでは、再開いたします。
 続きまして、議題2の「訪問看護事業に関するヒアリング」を行いたいと存じます。
 西参考人、よろしくお願い申し上げます。
○西参考人 秦野厚生病院の西でございます。私は当院の看護部長をしておりまして、精神看護専門看護師でございます。2019年より現職にありますが、本日は大変ミクロ的なお話になりますが、精神科病院併設・精神科医療特化型訪問看護ステーションでの取組として当院での実践を御紹介させていただきます。
 当院は、人口16万人程度の神奈川県秦野市にある160床の単科の精神病院でございます。同市には入院施設としての精神病院が4病院あり、市内全体で900床のベッド数を持っております。多いときは一日3万6000人程度の乗降客の利用がある小田急線東海大学駅前から徒歩4分程度にあるところに病院は位置していまして、周囲は東海大学の学生が多く在住する環境にあります。精神科病院には珍しく、駅近のアクセスのよい環境にございます。
 当院は、昭和23年に開設し、理念には「皆が安心して地域で暮らせるような精神科医療サービスを提供する」ということを掲げております。これはとてもすてきな理念だなと思って、これをミッションとして私たちは精神医療に取り組んでまいります。
 精神科の病院の機能としましては、精神科急性期60床、療養病棟47床、認知症治療病棟53床で、同法人には通所リハビリ施設、訪問看護ステーション、大規模型デイケア、精神科グループホーム、認知症対応型グループホームがございます。
 精神科病院としては急性期型のスタイルを取っておりますが、一昨年、神奈川県認知症疾患医療センターの認定を受け、重度の認知症の受入れも積極的に行っております。病院の核になる理念に基づく精神科医療を健全に遂行するために日々努力しているところでございます。
 訪問看護ステーションの概要になります。医療法人厚仁会の訪問看護ステーション秦野厚生というものが訪問看護ステーションの名称になります。
 ステーションの設立ですが、当ステーションは長きにわたって訪問看護部として月間150~180件程度の訪問件数を10人のスタッフでのんびりやっておりました。当院の患者に限りサポートし、長期間管理してきました。外来、デイケア、訪問の3部門におきましては、それまで事務方が全部管理をして、運営をしたところなのですが、私が2019年に着任して、医療情勢も変わり、地域包括ケアの推進がうたわれる中にある中で、より積極的に、経営的な視点も含めて、地域に重点を置くべきであり、これからのキーになるということと、看護部にとってもここが大事なケアの対象になるということで、企画運営を看護部に委ねてもらいました。
 そして、2020年から地域支援部として外来・デイケア・訪問看護ステーションを、訪問看護部を再構成して再スタートしました。その際に当初からステーション化を繰り返し訴えてきましたが、すぐにはゴーサインが出ず、準備期間を設けて、2023年1月からステーション化にこぎつけました。神奈川県下では、精神科医療特化型としては初めての申請でした。これを機に、訪問看護ステーションの概要などを再構成しまして、スタッフを精神科臨床実践の高い看護師のみに配置をし、現在に至っております。
 現在は、スタッフは精神科認定看護師が2名、常勤の看護師が4名、非常勤の看護師。これは現在、大学院の専門看護師課程に在学している看護師が1人ということで、かなり高い実践能力のある方々を集めています。
 対象利用者の特徴ですが、これは令和4年から令和6年にかけての過去3年間ですが、全体として3年間平均で416件になります。登録者数は3年間平均116件になります。
 対象利用者の特徴になりますけれども、そこに示しましたように、統合失調症が多くを占めていまして、続いて、双極性障害、発達遅滞に続いております。当院は、病院全体でのクロザピンの投与者数が2月現在で59名、外来投与者数は40名に上ります。そのうち、訪問看護が対象としている患者さんのクロザピン投与者は17名、LAIが17名で、うちTRIが6名になります。GAFは、40点以下の方が訪問看護の対象者としては月間20人程度に上っております。
 対象者の年齢構成になりますが、御覧のとおり、30代から50代が67%程度、60代以上が30%程度という数を示しています。
 対象利用者の対応状況ですけれども、自宅外訪問に関しましては、グループホームが月平均33回、高齢者施設が月平均1.7回、保護施設が月平均1回になっております。複数名訪問は月平均40件、夜間電話対応は月平均38件、通常訪問・短時間訪問は、そちらに示したように、通常が月平均403件、短時間が月平均7回程度になっております。
 予定外の緊急訪問に関しましては、そんなに多くないのですが、どういったときに緊急訪問があるかといいますと、幻聴の再燃とか家族トラブルです。あとは、落ち着かないから来てほしいということと、定期通院に来なくて、連絡をこちらから取り、了承にて訪問しています。あとは、希死念慮が強く出た場合などです。
 でも、開設以来、基本的に夜間の出動は0件になります。夜間の電話対応は比較的、38件程度なので、そんなに多くもないのですが、夜間の緊急出動みたいなものはありません。これはなぜ、そのようなことが維持できているかというと、昼間、かなり色濃く訪問しているということと、あと、病院併設型というメリットを生かして、訪問看護だけではなくて、外来スタッフ、デイケアスタッフなどが踏まえて、合同でアプローチしているので、そこが有効に働いているのではないかと私たちは考えています。
 支援の内容に関しましては、症状観察、服薬支援、再発予防、家族支援、生活支援、危機介入というものが主な訪問の内容になっております。
 支援内容に関しましては、訪問看護が優先して行く場合なのですけれども、各ケース、皆、違いますので異なっていますが、優先順位が高いのは、クロザリル服用のケースや怠薬傾向のある方々の服薬チェックです。あとは、対人関係に問題がある。これは当院の特徴なのかもしれませんけれども、家族トラブルがとても多いのです。それに対して御本人のところに行って、家族と状況を伺ったりとか、関係機関、市町との連携とかをしながら共有してまいります。あとは年齢的な特徴も先ほど示しましたが、かなり高齢化してきていますので、身体的なことが多くの方に合併しておりますので、身体的なフィジカルアセスメントみたいなものと、身体的な合併症の方の急変などがございます。そういったところで、心配があった場合は、ADLの確認も含めて伺うようなことになっております。
 これは訪問の事例で、よくあるパターンなのかもしれませんけれども、1つ、例を示したいと思います。50代女性で指導の方です。母親が80代の指導の方、父親は調理師さんをしている方で、3人暮らしの方でした。地域包括からの連絡で、50代女性のお嬢さんが独語空笑が活発で、怠薬ではないかという介入依頼の連絡がありました。訪問看護の介入が開始されました。介入開始後間もなく、父親が病気によって死去して、半年後ぐらいに母親が死去している状況です。訪問時応答がなくて、トイレで倒れているところを訪問看護師が発見しました。両親死去後は訪問とデイケアにてサポーティブな介入をすることによって、心配した御本人もLAIを開始し、訪問が週1回入ること、デイケアに通所することによって、現在、外来月2回の通院で経過を見ていて、入院することなく単身生活を送られているような状況です。
 病院併設型の強みとしまして、地域支援部。これは看護部が管理しておりますけれども、外来・デイケア・訪問看護の月1回の地域支援部会議をしております。そうしますと、それは所属職員全員が参加しての情報交換とか方針の共有をする場なのですが、やはり患者さんの多角的・多面的なアプローチが可能になってきていて、訪問だけの点で見るのではなく、外来・デイケアを通した線でアプローチすることが可能だなと思います。または、主治医へのアクセスがしやすく緊急時の対応なども連携が速やかに行われ、再入院の予防、軽減もそうなのですけれども、万が一、入院が必要になった場合にも入院調整が迅速で、速やかな入院対応ができるような状況です。
 ステーションのスタッフが今現在感じている課題として挙げられるのは、訪問時不在なことが多かったり、無断キャンセルが多かったりということで労を損しているということです。あとは、電話が頻回の患者への対応が困難だということ。単独訪問時、患者の状態悪化があるということで、そうした場合は、単独で行った場合に応援要請があって、控えているスタッフが駆けつけるというようなこともあるようです。
 同一世帯の患者以外の家族への対応にすごく時間がかかったりする。あとは、医療依存度の高い患者の増加。これは精神疾患だけではなくて、合併症を含む、高齢化による身体的なアプローチの部分が多いということ。そしてあとは、精神科訪問看護の人材がとても不足していまして、例えば訪問看護ステーションにニーズがあるスタッフというものは、お子さんを育てたり、御自身が介護をしていたりということで、昼間の勤務だけを望まれるのです。それに対して、24時間体制の当院は訪問看護ステーションですので、夜間の輪番の電話当番などをしなければいけないというところで、なかなか人気がなくて、臨床実践能力も踏まえて配置をしてはいるのですけれども、人材が集まらないというような現状があります。
 今後のことを考えまして、精神科訪問看護ステーションとしての必要な政策としましては、精神科訪問看護の専門教育がもっと盛んに行われるべきではないかと思います。あとは、病院併設モデルの評価をぜひしていただきたい。単体で民間の企業さんなどがやっている訪問看護ステーションは増えてきていますけれども、やはり病院併設モデルということで、医療モデルに基づくものにはなりますが、そのメリットとかスケールメリットも含めて評価していただきたい。
 そして、医療・福祉の連携強化ということで、当院は訪問看護ステーションを看護師のみでやっていますが、必然的にほかのスペシャリストたちの力も必要になってきているような状況があります。
あと、危機介入体制に関して、この危機介入というものは精神科のことだけではなくて、合併症によるものとか、そうしたところの危機介入体制がとても脆弱だなということをやっていて思います。例えば身体疾患の急性の発症の場合に、病院を通して連絡をしてもなかなか受入れが難しい。統合失調症だからというだけで受け取ってもらえないということで、地域の二次救急、三次救急が拒否をするということが多々あります。こういうようなものをもう少しシステム化して再構築していただけると、もっと地域で患者さんたちが安心して過ごされるのではないかというふうに思います。
 あと、精神科訪問看護の政策的な位置ですけれども、地域包括ケアシステムを精神科が進めるに当たっては、これはとても強化しなければいけない点だと思っていますし、現場サイドで、ミクロ的な視点ですけれども、ここは本当に大事になってくると思います。地域移行支援も地域の枠組みがなければできないわけで、どこがどういうふうに地域の政策をかけていくかというところも大事になってくると思います。そして、精神科訪問看護の拡充。これは一般訪問看護の方々にヒアリングしたこともあるのですけれども、精神科の問題がとても大きいのと、そこがすごく労力が取られるということで御相談を受けたようなこともありますけれども、オールアプローチで、精神科訪問看護だけではなくて、多くの方々が精神科のケアもできるような体制を取られるといいなと思います。
 あと、重症患者の地域支援ということで、当院はクロザピンの数も全国的にも多いほうですし、LAIの投与も多いほうです。GAFなども低い方々を対象としていますけれども、重症と思われる患者さんたちの地域支援というものを強化していく必要性が十分にあると思います。あとは、医療との連携と危機対応のところでございます。
 以上でございます。
○田辺座長 御報告ありがとうございました。
 では、ただいまのヒアリングに関しまして、御質問等ございましたらお願いしたいと思いますけれども、途中で退席なさった松本構成員より御意見をあらかじめいただいておりますので、事務局のほうで代読をお願いいたします。
○新平課長補佐 事務局です。代読させていただきます。
 規制改革実施計画において令和7年末までにオンライン精神療法の普及促進及び初診・再診での活用拡大の検討が求められたことを受け、本検討会では情報通信機器を用いた診療について議論され、「精神療法の適切な実施に関する指針」の改訂に結びつきました。日本看護協会としては、オンライン精神療法においてもD to P with Nの活用が重要であると考えています。
 貴ステーションではオンライン精神療法に関わられた経験がございますでしょうか。訪問看護の現場におけるD to P with Nの実際の状況や課題、さらに今後オンライン精神療法の普及に向けて、訪問看護ステーションとしてD to P with Nを円滑に実施するための方策についてお考えをお聞かせいただけますと幸いです。
 もう一点、西参考人の発表資料、資料6の「精神科訪問看護ステーションとして必要な政策」について、御発表の中で詳細に御発表がなかった場合にはということで伺っておりますが、「4危機介入体制」に関して、症状の急変等があったときに、訪問看護ステーションとして地域のかかりつけ精神科医療機関や精神科救急医療施設との役割分担など、地域として必要な体制とその課題について教えていただきたいということです。
 以上です。
○西参考人 御質問ありがとうございます。
 まず、一点目のオンライン精神療法のところでございますが、これは普及の促進は進められるべきだと思いますけれども、当院では、患者さんのニーズも含めて、オンライン診療を現在行われていません。やろうと思えばできるのですけれども、ニーズがないというところでは現在は行っておりません。
 オンラインの前に、例えば訪問看護が活動的に向かっていくので、オンラインの必要性もないのかなというところがありますが、これからはこういうところも含めて、例えば体が動かなくて病院に来られないとかという方々も含めて、普及の必要性は感じているところでございます。
 二点目の質問、危機介入のときに関してですけれども、急変があったとき、訪問看護ステーションとしての地域のかかりつけになっているのですけれども、秦野市に関しましては二次救急病院に秦野日赤病院という病院を抱えています。なかなか、ここも窓口が固く鍵を閉じているようなところがありまして、受入体制のところで秦野市は、先ほども申しましたが、4つの精神病院を有して、900床のベッド数を設けているものですから、どうしても身体的な合併症という場合の危機介入みたいなところは、周囲の理解も含めて、ネットワークをつくっていかなければいけないということで、最近、4病院の院長と日赤の院長などが提携をするということで、まず、ヒアリングから始めていまして、どういうところで、どういうニーズがあるか、そこにはどんな人材が必要かということで、精神科リエゾンも含めて、秦野日赤へのサポートをしていくような案も出ているような状況でございます。
 あとは、役割分担としましては輪番制を取っていますので、自分のところの患者さんでも緊急の場合は輪番で他病院に入院するということもあるのだと思いますけれども、地域といいますか、小田原地区といいますか、県西部のところではそれぞれが救急の対応を取っているような状況です。地域のかかりつけの精神科医療機関というものはクリニックさんのことを言われているのかなと思いますけれども、クリニックさんには入院のあった際には連携室のほうから御連絡をして、必要な情報提供の協力体制にあります。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。
 それでは、どなたからでも結構でございますけれども、御質問等ございましたらお願いいたします。
 田村構成員、どうぞ。
○田村構成員 日本精神保健福祉士協会の田村です。御報告ありがとうございました。私もかつて同じ地域の900床のうちの一つの精神科に勤めていて、訪問看護も担当していたので、当時の風景を思い浮かべながらお聞きしました。
 それで、私の理解が乏しくて申し訳ないのですけれども、今回の御発表は医療併設型ということに一つの大きな特徴があるというお話だったのですが、精神科病院でも訪問看護指導を行っていると思うのですが、それと、この併設型の訪問看護ステーションで行うところの違いといいますか、何がメリットで、どんな違いがあるのかということをお伺いできればと思います。
 あと、統合失調症の方が非常に多いというお話でしたので、比較的、訪問看護で支える例はあると思いますが、ずっと必要といいますか、なかなかやめどきが見つけにくいというところもあるかと思います。他方で、地域の様々な障害福祉サービス等につないでいくこともあると思うのですが、訪問看護の終結ですとか、ほかのサービス等へのつなぎとか、その辺りの判断などはどのようにしていらっしゃるかということをお伺いできればと思います。
○西参考人 ありがとうございます。
 一点目ですが、メリットですが、これは訪問看護部でやっていた時期がうちは長かったのですけれども、ステーション化すると、まず、病院としてのメリットは診療報酬が同じことをやっても1.5倍あるということです。これは現金な話で申し訳ありませんけれども、そこは大きいと思いますので、積極的に看護師を配置して機能的に出向かうということは病院としてもメリットがあったわけです。
 あと、やめどきです。訪問が引きどきというものは必ずありまして、うちの訪問看護ステーションは450件前後ぐらいをキープしているような状況でこの3年間は来ていますけれども、必ず卒業させるように努力しています。それはよくなっていくのです。必要がなくなるというときを見計らって、それは訪問看護師、地域支援部門の外来看護師、デイケアのスタッフのトリプルアプローチで、もういいのではないかというところと、あとは訪問を対象とされている患者さんたちには、いわゆる就労支援B型とかA型とかに行かれている方もいらっしゃるので、そちらに安定して行けるようになればもちろん、訪問の頻度も減らすことができますし、そうなるように全体的にアプローチをしているというところです。
 卒業者が結構たくさんいます。そうしないと新しいところを取れないというような現状もあるのですが、それをさせていかないと終わらないので、ある程度、卒業させていくということを目標に頑張っております。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。
 では、池原構成員、よろしくお願いします。
○池原構成員 対象利用者の対応状況のところで自宅外訪問という項目がありますけれども、つまり、御家族との対応が難しいというお話もありましたけれども、自宅でお住まいの方の訪問はどれぐらいあるのかというものを教えていただきたい。
 それから、二点目は、夜間での対応というものが、時間帯とか相談の内容に何か特色とかあれば教えていただきたい。
 あとは、もし差し支えがなければですけれども、秦野厚生病院さんでは、最初のほうのスライドで、急性期治療病棟60床で、精神科療養病棟47床だから、恐らく訪問看護の中心になっている統合失調症系の人たちの病床はこの辺に含まれるとすると、その入院対象者は100人ちょっとというところですね。それと、訪問看護の登録者が116件という辺りで、すみません。もし分かれば参考までに教えていただきたいのですけれども、この病院の経営バランスとして、先ほどステーションにすると1.5倍の診療報酬というものがありましたけれども、経営的にやはりそれはかなりステーションを増やしていって、むしろ、そういう訪問看護を開発していくのは病院にとってもメリットが大きいのかというのは分かれば教えていただきたいと思います。
○西参考人 先に、今、言われていた御質問のほうからお答えしたいと思いますけれども、訪問看護ステーションがうまく軌道に乗り始めたら、それまで繰り返し入院されていた方が入院しなくなったのです。ということは、急性期のベッドが埋まらなくなるという現象は起こりました。でも、これは我々、健全な精神医療を推進したというところで、しようがない。だから、訪問看護や外に出ていくということでアプローチをしていこうというふうに考えております。
 それで、より広い範囲から入院を受け取るように、それこそ営業活動などと言ったら怒られてしまいますけれども、看護部や訪問看護を中心として、クリニックさんからの患者さんの依頼を受けられるように、訪問看護ステーションのスタッフが定期的にクリニックさん回りをしたりとかということもしてございますので、急性期のベッドが、どこの病院も治療がよくなってきていますので、昔のように急性期は常に満床ということはないのだと思いますし、秦野地区でもベッドが空いてしまうのだよという話をよく聞きますので、皆さん苦労されているところかもしれませんけれども、多分、健全にやればそういうことが起こり得るだろうと思います。
 あとは、先ほどの夜間の電話の対応に関しましてですけれども、夜間の電話の対応が、内容ですけれども、やはり不安とか不眠とか、あとは家族内トラブルみたいなものが大きな三大対応になります。時には興奮したり衝動的になったりということで、激しい状況で電話を一晩20回もしてくる方もいらっしゃるときがありますけれども、それが一つのサインでして、そういうことがあった次の日には訪問が臨時でお伺いをして、調子が悪いねということで通院の期間を短縮して、できるだけ早いところで受診ができるように、緊急受診の受入れも含めて、準備ができているような状況でございます。
 あと、自宅外訪問以外のところは、そこに示しましたが、自宅への訪問というものは月平均のここを除く数ということになりますので、400件前後の数が自宅訪問となっています。複数回訪問も含めてになっております。
 以上でございます。
○田辺座長 3番目の質問があったような気もして。
○西参考人 3番目の質問は何でしたか。
○田辺座長 経営的なものです。
○西参考人 経営的なところは、先ほど申しましたとおり、診療報酬が看護部で行っているときよりも、ステーション化して独立採算すると、1.5倍というものはとても大きくて、もともと急性期型の病院でしたので、急性期が病院の経営の多くを担っていたのですけれども、現在はその両輪となっているのが訪問看護ステーションで、訪問看護ステーションの収益も含めて、法人は訪問看護ステーションがステーション化したことによるメリットは大きかったように思います。
○田辺座長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでございましょう。
 では、吉川構成員、よろしくお願いします。
○吉川構成員 西参考人、御説明ありがとうございました。専門性の高い看護師の方も非常に多く配置されていて、今回、発表の中にもありましたけれども、病院併設型の強みというところで、地域支援部門、あと、主治医との連携・情報共有がしやすいというところは確かに併設型のかなり強みとなって、患者さんにもその効果が現れているのだろうというふうに思いました。
 そこで追加で教えていただきたいことが、入院部門との連携状況といいますか、これだけ併設型でやっていらっしゃるときに、例えば入院治療の目標であったり、ゴール設定であったり、そういったところに何かしらの影響があるのでしょうかという、それが一つの御質問。
 あと、病院の入院部門の受け持ちナースとか看護師との連携についても教えていただければというふうに思います。
 もう一つ、身体ケアについてかなり行われていらっしゃる。そこもすばらしいなというふうに思いましたが、その身体ケアの指示内容については精神科の主治医から出ているのか、それとも、その辺り、またさらに何かあるのか。もしあれば教えていただければと思います。
○西参考人 御質問ありがとうございます。
 入院部門との連携ということですけれども、当院は急性期病棟に関しては退院前訪問というものを必ず行っています。3か月の入院の中で必ず3回は、対象範囲内であれば、退院前訪問を病棟のスタッフ並びに精神保健福祉士、または作業療法士などが一緒になって出かけております。これがすごく患者さんも退院をイメージしていけるということと、あと、スタッフも、受け持ちのスタッフなどが行くことが退院前訪問は多いのですが、患者さんの家での生活をより具体的にイメージして、それに対して準備ができるというところです。大体、治療期間が2か月を超える前ぐらいから退院前訪問が開始されます。1か月で3回程度、行ってからの退院というものが常ですので、みんながイメージをして、患者さんの退院後の生活を捉えている急性期の連携体制はあるかと思います。
 2番目のところですけれども、受け持ちの体制みたいなところも、今、申しましたように、必ず受け持ちが退院前訪問に3回行きまして、医師との連携、精神保健福祉士との連携、時には地域で合同会議をするので、それにも必ず受け持ちが日程調整をして介入するようにしています。多職種連携会議も活発に行われています。
 あとは、指示でしたか。
○吉川構成員 そうです。身体ケアの指示内容といいますか。
○西参考人 身体ケアに関しましては、当院は非常勤の内科医師が週に1回来ます。それで、入院中の患者さんに関しましてはそこの指示がありますし、外来に通院してきている方でも、外来部門とか訪問看護部から内科医に対して相談をしていますので、そういうアプローチができます。あとは、身体疾患に関しましては、訪問看護の対象の患者さんたちにすごく教育をしていまして、訪問看護が開始されるときに身体の夜間輪番のことを伝えていたりとか、あとはいのちの電話の電話番号を伝えたりとか、それをラミネートして各お家に貼っていただいていて、体のことで何か困ったら、まず一番はここに連絡とかということと、あと、訪問看護ではなくて、本当に不安なときは24時間体制でしっかり話を聞いてくれるのがこういうところだということで、説明をして、御家族にも同意を得て、ラミネートしているプレートを電話のところに置いておいてくださいなどと言ってやっているような状況です。
 あと、身体的な急変の場合は、昼間の段階で一般病院にお連れすることもございます。訪問看護が行ったときに、これは急いだほうがいいという場合は、緊急で時間を割いて、内科への通院などをするようなことがあります。でも、できるだけ地域で、または御家族に自律的に関わっていただけるように、指導の内容を徹底しているような状況でもございます。
○吉川構成員 どうもありがとうございました。
○田辺座長 長瀬構成員、どうぞ。
○長瀬構成員 西さん、大変貴重な御講演ありがとうございました。日精協の長瀬でございます。いつも坂井先生にはお世話になっております。
 私のほうからは少し感想と質問をさせていただきたいのですけれども、恐らく西さんがやっているこのステーションは、秦野厚生の患者さんを退院させて、それもかなり医療必要度がまだ高い方で、クロザピンも外来40名のうち17名かかっていますね。決して少ない数ではないと思うのですよ。だから、比較的、治療がまだまだ必要な方が地域に出て、西さんたちの支援を受けているという感じで聞いておりました。
 それは恐らく、西さんが中心にやっている秦野厚生のこのステーションのクオリティーが非常に高くて、専門看護師が2人おられて、それで教育もされているということなのですけれども、昨今、民間の独立系のステーションが結構あって、精神疾患の理解があまりない方々も参入されて、それは西さんが言っておられたように、報酬の問題もあるとは思うのですけれども、そうなると、やはり我々も質の担保ということが地域に出た患者さんについて非常に気になるところではあるのです。その質の担保については、そういったステーションも見ながら、今後、どんなふうにそういう精神科訪問看護ステーションの力を高めていけばいいのかというふうに思われているのか、御参考までにお聞きしたいのです。
○西参考人 ありがとうございます。
 すみ分けとして、精神科病院から発信できる訪問看護というものはやはり精神科の看護の臨床実践能力が高いということだと思います。当院の特徴としましては、クロザピンやLAIなどの利用者が多く訪問看護の対象者にございますので、病態と薬理などの経過が分かっていなければいけないということと、精神疾患に対する、点ではなくて長い線でのアプローチが可能だということと、スタッフが精神科の看護に関心が高い人たちが質を上げているのではないかというふうに思っております。
○長瀬構成員 どうもありがとうございました。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。
 では、岡部構成員、よろしくお願いします。
○岡部構成員 日本相談支援専門員協会の岡部と申します。御発表ありがとうございました。
 私の理解が追いついていないところが1個あるような気がして、まず1個確認したいのは、今のステーションさんは認知症の方は含まずという理解でよろしいでしょうかということが一点。
 あと、指示書は秦野厚生病院さんのみで受けていらっしゃるか。それとも、ほかのクリニックさんや病院からも受けているかというものをまずお伺いしてもいいでしょうか。その後にもう一つお伺いできればと思います。
○西参考人 認知症は、認知症疾患医療センターになっていますが、訪問看護の対象ではありません。中には老年期精神病という診断をつけて伺うこともありますが、まれでございます。
 あとは、もう一点は。
○岡部構成員 指示です。
○西参考人 指示に関しては、病院の指示が最も多いのは間違いありませんが、地域の近隣のクリニックさんです。近隣に接続する伊勢原市、平塚市とか、山北町とか、近隣の市町のクリニックさんからも依頼を受けてございます。
○岡部構成員 ありがとうございました。
 最後になりますけれども、私もデータとして持っていないのですが、病院併設型といいますか、ステーションではあるのですけれども、病院さんに併設する形で精神科に力を入れているという訪問看護さんが世の中的に何割ぐらいあるか、御存じかということ。
 あと、そんなに多くないという認識があって、そうだとすれば、これから、この間の検討会でも議論されてきたような、病院側の構造変化で訪問看護ステーションを併設してとか、きめ細かなケア、精神科医療を提供するというような方向に向かう中で、もし、今、そういうステーションが少ないと仮定するならば、なぜ進まないのか、もし御意見があったらお聞きしたいというふうに思って質問させていただきます。
 以上です。
○西参考人 精神科の病院併設型の訪問看護ステーションがなかなか拡大していかないのは、一つは人材の問題だと思います。なかなか人材確保ができなくて、病棟のスタッフですら確保が難しい状況に全国的にあるのではないかと思っておりますので、いろいろな条件の中で訪問看護ステーションに趣を置く看護師を確保するのはどこも大変です。特に病院併設型のステーションと一般企業の併設型のステーションで、平均の基本給が10万円ぐらい違うのです。それを精神科の訪問看護ステーションに求められてもというのが現実的ですが、当院でもそこはすごく苦慮していまして、病院のスタッフよりも訪問看護ステーションのスタッフのほうが1.5倍ぐらい給料を上げてみたりとか、あと、少し優遇した福利厚生をつけてみたりという努力はしてございます。やはり民間の財力といいますか、財源の豊富なところに比べると、看護師さんたちが働く環境みたいなところが大きく違うのかなというのが一番ネックなのではないでしょうか。そこが民間が優位に広がっているところですし、病院がなかなか広げられないところのような気がしております。
 あと、全国でどのぐらいあるかというのは、すみません。私は数を見てこなかったのですけれども、秦野市4病院のうち3病院が訪問看護ステーションをつくっております。900床をカバーする訪問看護ステーションが3つあって、それにプラス、民間のあやめさんが入っておられるということで、かなり地域としても訪問看護ステーションが網羅している地域でございます。
○田辺座長 あと、山口構成員、たしかお手を挙げられていたと思います。
○山口構成員 医師とかほかのスタッフとの情報共有にICTとか、何かツールを使っていらっしゃいますでしょうか。
○西参考人 全国でまだ精神科病院は電子カルテ化が3割から4割程度だというふうに私は認識しているのですが、当院では訪問看護ステーションだけICT化を、最新のものを利用しております。どこのルートを通って、何分で訪問看護が一日何件行けるかみたいなものもかなり綿密に、緻密に計算をしております。どこでさぼっているかもGPSが捉えて分かるような状況になっていますので、訪問看護ステーションはそれをやることによってすごく合理的に、効率的に訪問に行けますので、そういった取組はしてございます。病院のほうは、もう少しICT化は時間がかかりそうです。
○山口構成員 職員の管理以外に、患者様の訪問時の状態共有や医師の指示に関するICTの活用はありませんか。訪問に行ったところ、具合が悪そうなとき、医師の判断が必要な時に、ICTを使わずに電話で聞くのか、というようなところです。
○西参考人 身体疾患の場合のアセスメントに関してはかなり早い段階でしておりまして、もともと合併症を持っているプラスアルファ体調がよくないらしいというときには、昼間訪問に行った間にいち早く病院へのアプローチをするようにということで御家族並びに本人に伝えますが、単身生活高齢者の方々も結構いますので、そういった場合は訪問看護で臨時のスタッフを出して病院まで一緒に同行するようなことも、本当はあまりよくないのですが、しております。
○山口構成員 ありがとうございました。
○田辺座長 ほかは。
 では、どうぞ。
○辻本構成員 積極的な活動、どうもありがとうございます。
 ケースによっては生活困窮とか、市町や保健所と一緒に支援する必要があるとか、虐待のことは分からないかもしれないですけれども、学校とか、そういう関係機関と一緒に活動するということはあるのでしょうか。
○西参考人 比較的、いろいろな取組を市町とか県の保健所の関連のところで、訪問だけのケースではなくて、例えば妊産婦さんなどのアプローチに関してとか、あと、虐待もそうですけれども、病院から必要があったときにはできるだけ出向いて、地域の保健師さんとかと共同でアプローチするということはしておりまして、特に最近、秦野市は妊産婦の自殺が重ねてあったことがありまして、その際に私も自殺予防に関する講義などに保健所に出向いて、地域の産婦人科と、あとは病院さんで産科などで働いている助産師さんたちを集めて、秦野市が開設の下、そういう勉強会を年に何回かやっていたりとかということで、そういうところに出向くことによって精神科へアクセスしやすくするとか、精神科への相談を受けやすくするとか、精神科病院というハードルを下げる努力はしているし、市もそれを要求しております。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。
 では、小嶋構成員、よろしくお願いします。
○小嶋構成員 元TBS報道局の小嶋でございます。貴重なプレゼンテーションありがとうございました。
 時間が押しているので、簡単に質問させていただきたいのですが、夜間出動がないということは非常にすばらしいことだと思います。夜間出動が多いと現場のスタッフに大きな負担がかかるので、そういった意味でも非常に注目すべき点だと思っています。その理由として、「昼間の濃厚なケアというものが功を奏している」といった趣旨のお話がありました。恐らく、傾聴に徹するみたいな、裏技といいますか、電話相談の仕方というものに、何らかのコツみたいなものがあるのではないかと思っています。そういったものが、もしあれば教えていただきたいということが一点。
 とはいえ、全ての患者が電話で相談をすることで、満足して電話を切るというわけではないと思います。病院内で、いろいろな医療的な対応をしなくてはならないケースがあると思うのです。そういった場合、救急外来への移行を誘導するというようなケースというものがどれぐらいあるのでしょうか。この二点をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
○西参考人 御質問ありがとうございます。
 当院に関しては、開設以来、ステーションが夜間の出動はないというふうに先ほど申しました。最初、開設当時、訪問看護部だったスタッフが、夜間の電話当番は私たちは受けたくない、そういう契約ではないということを強く主張したので、しようがないなと思いまして、私が3か月から5か月ぐらい、電話を1人でもって対応しました。それで、統計を取りました。本当にどこへ行くときにも常に首からぶら下げて持って歩いていたのですけれども、そうしたときに、私がやってよかったなと思うのは、トリアージしたところで、そんなに大したことがないということが分かったのです。内容に鬼気迫るものはそんなになくて、そういう繰り返しされている方というものは、少し服薬を怠っているなとか、あとは調子を崩し始めたなというところで、早く発見できるので、そうしたときに早めに、昼間の間にアプローチをかけるということをしました。それは有効だったなと思いますし、それをやって、そんなに大したことがないというものをステーションのスタッフに言ったら、それでは、私たちもやりますというようなことと、あとは夜間電話を持つ人に対しては夜間手当がつくのです。それで皆さん、私にはつかなかったのですけれども、管理者だからつけないといってつけなかったのですけれども、スタッフにはその労力も含めて夜間手当を十分に保障するということをいたしました。
 緊急時に関しましては、それがあまりない。身体疾患の緊急時は何件かあって、出向かなければいけない、自殺企図みたいなものも含めてあったのですけれども、それでも対処ができる家族だったり、明け方だったので、あと3時間したら病院が開くから待っているねと言ったり、訪問看護のスタートの8時半に一番最初に訪問を入れたりとかということで、夜間の対応はそんなに難しくなかったように思います。
 大丈夫でしょうか。答えになっていましたでしょうか。
○小嶋構成員 はい。ありがとうございます。
○田辺座長 では、構成員、よろしくお願いします。
○上田構成員 日本精神神経科診療所協会の上田と申します。本日は、精神科専門の方々の訪問看護ステーションの話をお聞きして非常に心強いと思ったのと、また、クリニックのほうにも営業をかけておられているという話を聞いて、私は東京ですけれども、このような精神科の専門の訪問看護ステーションさんにうちの患者さんもお世話になってもらいたいというふうに思ったぐらいです。
 今後、診療報酬も新しくなりますと、診療所が病院と連携をしていく必要がますます強くなっていって、文書で連携していますみたいなことも交わさなければいけないようなことになるのですけれども、1つお聞きしたいのは、クリニックの患者さんが入院された場合、退院する前に退院時共同指導料として、クリニックのスタッフも一緒になって、退院前の患者さんとそちらの病院のスタッフの方と、会議といいますか、面談するということは実際ございますか。
○西参考人 多職種会議とかというものをやりますけれども、なかなかクリニックの先生はお一人でやられていたりしますので、そこからスタッフを招いて会議をやるというのは現実的でないというのが分かっております。ただ、地域のスタッフ、ケアマネさんとか、市町の保健師さんとか、患者さんを支えるスタッフたちは比較的、声をかけると速やかに来てくれて、病棟や会議室などで積極的にミーティングをして、退院の準備をしている現状はございます。
○上田構成員 ありがとうございます。
 クリニックのほうとしても、退院時共同指導料を取らないと診療報酬上非常に問題になってきますので、ぜひ参加させていただきたいというふうに考えています。オンラインでも可能ですので、日時が分かれば診療の間もちゃんと開けて参加しますので、ぜひ退院が決まりましたら教えていただければと思うのですけれども、今、それはなかなか難しくて、今日もさっき、1人退院が決まったから、こちらからも電話をかけて、何とか面談させてくださいという形でオンラインにさせてもらいましたけれども、そういうクリニックの事情もございますので、これからもますます一緒に連携して医療をしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○西参考人 よろしくお願いいたします。
○田辺座長 ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますでしょうか。
 それでは、ほかに御発言がないようでしたら、この議題2のヒアリングにつきましては以上としたいと存じます。
 西参考人におかれましては、貴重なお話をいただきましたこと、感謝申し上げる次第でございます。
 その他、全体を通じまして、御発言のある構成員の方は。
 では、桐原構成員、お願いいたします。
○桐原構成員 全国「精神病」者集団の桐原です。
 オンライン診療実施指針についてです。前回の検討会において御要望いたしましたパブリックコメントを実施してくださりありがとうございました。このたび、オンライン診療実施指針が見直されて、条件つきで初診からの利用が可能になりました。今後、普及を推進していくとともに、知見の集積を踏まえて、さらなる指針の見直し・検討を加えてくださいますよう、この場で御要望いたします。
 加えまして、時間がない中、大変恐縮ですが、議題1の諸外国の入院制度のヒアリングを踏まえた今後の検討の在り方について、手短に二点、意見を述べさせてください。
 一点目は、本検討会ではそれぞれの国の法体系に基づく特徴ある仕組みを知ること以上に、当事者目線、すなわち、障害者権利条約の観点から、我が国を含め、各国に共通した課題があるということを確認していく必要があるのではないかと考えています。参考人の報告で、これだけ多様な法体系がありながら、理性・判断能力がない人に対して、その人のことを代わりに決める人を決める仕組みという点で共通していることと、それから、理性・判断能力がない人の医師選考能力の行使に当たって必要となる支援が不在であるという点が共通しており、各国が共通の問題・課題を抱えているということが確認できたと思います。
 残念ながら、現在の自己決定というものは、理性・判断能力がある人に限られた特権と化しています。ひとたび理性や判断能力がないとみなされれば、まずもって法的能力を剝奪され、理性や判断能力がない状態で出された決定は無効化されます。そして、その人のことを代わりに決める人を決めるという手続が開始されます。この際に、誰が代わりに決める人として適当であるのかということが争点になります。
 これら一連の過程は代理意思決定パラダイムと呼ばれ、障害者権利条約が趣旨とする、支援された意思決定のパラダイムとは対極にある法構造という位置づけになります。障害者権利条約の趣旨に基づく権利を実現するためには、代理意思決定パラダイムを廃止して、法的能力の行使に当たって必要な支援の在り方を検討・蓄積すべきと考えます。また、治療が必要になるのだったら、判断能力の有無を問わずして、他の者との平等の観点から、必要な治療を受けられるようにすべきであると考えます。
 二点目です。今回の参考人の報告は、各国の非自発的入院制度を調査したものということでしたので、その意味でも、障害者権利条約の実施に関わる各国の取組のデータがどうしても不足している印象は否めませんでした。
 そのことを踏まえると、本検討会では、障害者権利条約の実施に関わる各国の取組のデータが不足していることを確認した上で、今後の検討を進めていく必要があると考えます。引き続き、入院制度の抜本的見直しにつながるよう、忌憚なく意見を出し合っていければと思っています。
 以上です。
○田辺座長 ありがとうございました。非常に大切な御指摘かとお伺いいたしました。
 ほかはいかがでございましょう。
 では、小阪構成員、よろしくお願いします。
○小阪構成員 すみません。日本メンタルヘルスピアサポート専門員研修機構の小阪です。議事録に残る形で少し発言しておきたいと思いました。
 入院医療について、それから、訪問看護について、貴重な話を伺えてよかったと思っています。
 一方で、精神科医療を利用しているほとんどの患者さんは外来診療を受けているわけです。外来診療について、正面からこの検討会で議論したことは一回もないというふうに記憶しています。外来診療を良質化するというのは、僕は非常に重要ではないかと思っていまして、そこについて率直に議論し合う回というものをぜひ事務局には設けていただきたいというふうに強く要望したいと思います。
 以上になります。
○田辺座長 ありがとうございました。
 全くないとは思いませんけれども、何か一回議論した記憶はございますけれども、私の記憶なので、あったと思います。
 ほかはいかがでございましょう。よろしゅうございますか。
 それでは、本日はここまでにしたいと存じます。
 あと、加えまして、私事ではございますけれども、本日をもちまして、私はこの検討会を去らさせていただくということになっております。次に行くところが、兼職禁止が物すごくきついところなので、道半ばで去るのは心苦しいのではありますが、それは申し訳ございません。
 この間、皆様方、活発な御議論に本当に啓発されました。こういう場所を持てたことに御礼申し上げます。ありがとうございました。
○新平課長補佐 すみません。最後に、今後のスケジュールに関して。
○田辺座長 まだ続きがあるのでしたね。事務的な連絡をお願いします。
○新平課長補佐 本日もどうもありがとうございました。
 次回の予定につきましては、改めて御案内をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。以上です。