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- 2026年3月13日 第207回労働政策審議会労働条件分科会 議事録
2026年3月13日 第207回労働政策審議会労働条件分科会 議事録
労働基準局労働条件政策課
日時
令和8年3月13日(金) 13:00~15:00
場所
厚生労働省講堂
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館2階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館2階)
出席者
- 公益代表委員
- 安藤委員、川田委員、神吉委員、黒田委員、首藤委員、原委員、水島委員、山川委員
- 労働者代表委員
- 亀田委員、佐藤(好)委員、椎木委員、冨髙委員、春川委員、古川委員、松田委員
- 使用者代表委員
- 加藤委員、佐久間委員、佐藤(晴)委員、鈴木委員、田中委員、鳥澤委員、松永委員
- 事務局
- 岸本労働基準局長、尾田審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、松下総務課長、川口労働条件政策課長、田邉労働条件確保改善対策室長、中島労働条件政策課長補佐、来嶋企画調整専門官
議題
働き方改革の「総点検」について(報告事項)
議事
○山川分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第207回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の分科会は、会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で開催をさせていただいております。
まず、議事に入ります前に、本分科会委員の交代がございましたので、事務局から紹介をお願いします。
○事務局 本分科会委員の交代につきまして御報告いたします。
お手元の参考資料No.1として「労働条件分科会 委員名簿」を配付しております。使用者代表の鬼村洋平委員が御退任され、トヨタ自動車株式会社人事部グループ長、加藤吏委員に御就任いただいております。
事務局からは以上でございます。
○山川分科会長 加藤委員、よろしくお願いいたします。
ありがとうございます。
では、本日の委員の御出欠ですが、労働者代表の櫻田あすか委員と使用者代表の兵藤美希子委員が御欠席と承っております。
カメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。
では、本日の議題に入ります。議題は、「働き方改革の『総点検』について(報告事項)」でございます。
9月に事務局から報告がありました働き方改革の総点検調査の結果につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
資料No.1を御覧ください。働き方改革関連法施行後5年の総点検調査について御説明をさせていただきます。
今、分科会長からお話がありましたように、9月4日の分科会でも御説明させていただきましたが、総点検調査は昨年6月にいわゆる骨太の方針、新しい資本主義の実行計画に基づきまして、施行後5年の総点検調査を行うということが言われたものでございます。それに基づきまして実施したものであります。
資料の1ページ目を御覧ください。
総点検調査の概要を大きく1ページ目でまとめております。2種類の調査を行っております。左側、「労働時間等に関する労働者の意識・意向アンケート調査」ということで、労働者に対するウェブアンケートを有効回答数3,000人という形で行ったものでございます。
まず、労働時間の増減の希望、「増やしたい」、「減らしたい」、「このままで良い」という希望についてお聞きしたものです。労働時間を「増やしたい」が10.5%、「このままで良い」が59.5%、「減らしたい」が30.0%という結果でございました。
「労働時間を増やしたい」10.5%の内訳でございますが、まず1つは、黄土色の部分ですけれども、週所定労働時間が35時間以下かつ年収が200万円以内という、いわばパートタイム的な働き方の方が3.4%を占めている。それ以外の方、すなわち所定労働時間が週35時間以上または年収が200万円以上の方で見ますと、ピンクの部分、すなわち休日労働を含めて時間外労働等を今より10時間あるいは20時間以上増やしたい、ただし、括弧にありますように、月80時間以内で増やしたいところが3.6%と1.3%を足して4.9%を占めている。もう一つ、薄い緑色の部分ですけれども、月80時間を超えて時間外労働等を今よりも10時間あるいは20時間以上増やしたいというものが0.3%、0.3%で、足すと四捨五入の関係で、注にもありますが、0.5%と。このような結果でございました。
「労働時間を増やしたい」10.5%について、その理由を聞いたものがその次であります。④、⑤の理由、すなわち、たくさん稼ぎたいからという④、それから、同じ収入にしても残業代すなわち所定労働時間以外の労働分の収入がないと家計が厳しいというものも含めて、41.6%、15.6%、両方を合わせると約6割。それから、③自分のペースで仕事をしたいからが19.7%と。このような理由が多く出たということでございます。ちなみに、これは複数回答であります。
一番下ですけれども、3,000人の方に、時間外労働等について1か月当たり何時間程度が妥当だと考えますかという御質問をしております。これはシングルアンサーで聞いております。中には100時間以上というものが1.4%という回答もありますが、多いのは赤線を引いている左側、0時間あるいは0時間超20時間以下、あるいは20時間超45時間以下というところが多く、45時間以下というところまで合わせると93%を占める、このような状況でございました。
続きまして、ヒアリング調査ということで、これは企業あるいは企業で働く労働者の方に訪問してヒアリング調査を行ったものであります。「対象」のところを御覧いただきますと、合計327社で、各都道府県労働局からこれらの企業を訪問してヒアリングを行ったというものです。
業種で見ますと、建設業、製造業、運輸業、郵便業、卸売業、小売業、宿泊業、飲食サービス業、医療、福祉、こういった主要業種を回っていますが、均等にということではなくて、建設業あるいは運輸業はいわゆる上限規制が令和6年4月から施行されたというところですけれども、こういったところを少し多めに聞いてきたところであります。したがいまして、これが全体のデータとしてこういうことだということではなくて、いわゆる定性的な把握ということになります。また、ヒアリング先の企業の御理解をいただいて、一部労働者の方にもヒアリング調査を行った。それが97人であります。
その結果でありますけれども、327社について労働時間に対する企業の希望ということで聞いたものですけれども、まず、「現状のままがいい」が201社、「減らしたい」が73社、「増やしたい」が53社、このような結果になっております。
現状のままがよいという理由としては、点線に書いてありますように、業務量との関係、労働者の健康確保・ワークライフバランスとの関係、人材確保・定着、すなわち採用したい、あるいは辞めてもらっては困る、こういった理由が挙げられております。
減らしたいというところで見ますと、一番多いのが人材確保・定着、健康確保・ワークライフバランスと続くという状況でありました。
増やしたい理由については、53社ですけれども、業務の性質で、天候の影響を受ける、繁閑の差があって忙しい時期にはもう少し労働時間を増やしたい、あるいは、受注の確保、それから、労働者の希望もある、人手不足である、こういったものが挙げられております。
増やしたいという53社について、どのぐらい増やしたいのかという範囲についてお聞きすると、あくまでも月100時間、複数月80時間、年720時間等の上限規制の枠内というものが25社、それから、上限規制を超えてもっと労働時間を増やしたいというものが17社、上限規制を超えてではないけれども、月45時間・年6回という枠を超えて増やしたいというものが11社あったところであります。
ただし、下の注につけてありますとおり、増やしたいが53社、あるいは上限規制を超えて増やしたいが17社ございますが、その企業の平均的な時間外労働を見ると、平均では45時間以下というところが非常に多い。53社中46社あるいは17社中15社という中でのこういう回答であったということであります。
次に、訪問先での労働者の希望をお聞きしたところ、「現状のままがいい」が70人、「減らしたい」が14人、「増やしたい」が13人、このような結果でございます。
また、訪問した際、現状の制度・運用についてのいろいろな課題、認識、要望等をお聞きしたところ、個別制度については、ここに書いてありますような、副業兼業、変形労働時間制、裁量労働制に関する課題・要望が挙げられたということであります。
以上が概要でございますが、その下の本体に沿って一部御紹介させていただきます。まず2ページを御覧いただきたいと思います。
労働者へのアンケート調査についてですが、先ほど申し上げたように3,000人を対象に行ったウェブアンケートでございますが、「対象者」の欄にありますように、都道府県別にあまり極端な形に頼らないように都道府県別に割りつけた上で調査しているということが1点。それから、平均とか妥当だと思う労働時間数をお聞きしていますが、中には副業をされている方もいらっしゃるので、一番下の※にありますように、副業をしている場合には主な仕事についての労働時間等の回答をお願いしたということであります。
3ページ、4ページ、調査対象の属性で見ますと、ウェブアンケートですので全体の分布と必ずしも一致するわけではありませんが、特にということで申し上げますと、産業別の分布で見ますと、大きくずれているということではないのですが、例えば、製造業、卸売業、小売業は労働力調査等で見ますといずれも16%程度を占めているわけですが、製造業に関しては少し多めの回答であり、卸売業、小売業については少し少なめの回答であったという状況でございます。
それから、3ページの右下ですけれども、年齢で見ますと、労働力調査等の分布と比べますと、20~29歳が28%と多く出ていて、40代、50代は少なめに回答が集まったという状況であります。
4ページを御覧いただきますと、就業形態で見ますと、正規の職員・従業員が62.8%といいますのは、労働力調査ともあまり変わらないということでありました。労働時間制度については、変形労働時間制が回答としては少し少ない、あるいは管理監督者が少し少ない、上記以外ということで、回答者としてはどれに該当するか不明といったものも含めて一定の回答があったということでございます。こういった一定のばらつきの下での調査ということでございます。
細かい内容については概要で申し上げたところでありますが、一部御紹介をしますと、例えば11ページです。労働時間を「増やしたい」、「減らしたい」、「このままでよい」という答えと、例えば、下のほうの今の平均実労働時間とのクロスを取ったものです。例えば、平均実労働時間が週で50時間超、60時間超、70時間超のところで見ますと、それぞれの層の中では、括弧書きでそのウエートを載せてありますけれども、「減らしたい」、「やや減らしたい」が多く出て、逆に実労働時間が10時間以下とか少ないところですと、「増やしたい」、「やや増やしたい」が少し多めに出ているという状況が見てとれます。
13ページは、労働時間の希望について産業別に取ったものです。あくまで3,000人という限られた回答数であり、n数が少ないところであれば個々の回答の影響が出ることに御留意いただく必要はありますが、全体としてはこのような状況になっております。
16ページを御覧ください。今回、労働時間に関する希望を聞く際に、割増賃金の支払いについても聞いております。「すべて払われている」、「ほとんど払われている」というもの以外に、「一部は払われている」、「ほとんど払われていない」といった回答もあります。あくまで労働者の認識ということで聞いていて、これが所定時間からの割増しなのか、法定労働時間の割増しなのか、この辺の詳細は分からないということでお聞きした結果ですが、このような分布になっています。それと労働時間の希望との比較で見ますと、「ほとんど払われていない」、「全く払われていない」という場合には、「減らしたい」という回答の割合が少し高く出るという状況になっておりました。
続きまして、20ページでございます。ここから先は企業ヒアリングで、これはもうデータではなくて、個々の意見を全部は掲載できないので幾つか代表的なものをそれぞれ並べております。見方としまして、20ページの下の注に書いてありますが、それぞれ御意見をいただいた企業の業種、従業員規模、売上高規模、平均的な時間外労働時間数を記載しております。その上で様々な御意見をいただいているということでございます。
それ以降の調査内容につきましては、非常に細かい調査が載っておりますので、そこは追って御覧いただければと思います。
私からの概要の説明は以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
働き方改革の総点検についての調査結果を御報告いただきました。
ただいまの事務局の説明について、御質問、御意見があればお願いいたします。オンラインで参加されている委員の皆様におかれましては、御発言の希望があります場合にはチャット機能によってお知らせください。
御質問、御意見等はございますでしょうか。
冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 御説明ありがとうございました。
資料No.1の総点検の結果についての受け止めと意見を申し上げたいと思います。
まず、労働者の意識・意向アンケート調査について、先ほども御説明がありましたけれども、労働時間を「減らしたい」が3割、「このままで良い」が約6割、あわせて約9割の方が増加を望んでいないということで、やはり働き方改革の定着、推進の必要性が高いことを裏づける結果になったのではないかと受け止めています。
確かに「労働時間を増やしたい」という回答も約10%あることは事実ですけれども、その内訳を見ると、週35時間以下で、もともと短く働いている方が全体の6割になっております。その上で、「労働時間を増やしたい理由」を見てみますと、「たくさん稼ぎたいから」が40%を超え、「残業代がないと家計が厳しいから」が16%といった、収入面での課題が多くを占めていると捉えております。
こういった理由を見ると、今求められているのは、長く働いてお金を稼ぐということではなくて、時間外労働に頼ることなく安心して暮らすことができる賃金を確保していくこと、そのための環境整備、支援を行っていくことが政府に求められていると思っております。決して上限時間の緩和ではありません。
また、過労死ラインでもある上限規制を希望があるから緩和するということ自体がそもそも適当ではないと思っていますが、労働者の希望という点で見ても、1ページにあるように、月80時間超の時間外労働を望む割合は0.3%に過ぎず、月100時間超も0.3%であって、現行の上限時間を超えて働きたい方はほぼ皆無ということが示されたと思っております。また、9割以上の方が原則の45時間以下が妥当だと考えていることからも、やはり長時間労働の是正が望まれていると思っているところです。
次に、1ページ右側のヒアリング調査にも触れたいと思います。企業側の希望も示されておりますけれども、統計的な意味は当然持たないと考えておりますが、それでも「現状のままがいい」が201社、「減らしたい」が73社で、両方を併せて8割以上を占めており、先ほどのアンケート調査と併せて見ても、これが企業も含めた今の実態だろうと思っているところです。また、副業・兼業における割増通算の廃止、裁量労働制の拡充、変形労働時間制の柔軟化といった規制緩和の方向での見直しを望む方たちは非常に少ないと捉えているところです。
こうした総点検の結果を踏まえると、今回の見直しを機に「働き方改革」の原点に立ち戻って、過労死ゼロや、多様な人材が活躍できる社会の構築を実現するため、さらには生活時間の保障といった一段階上がった観点からも、段階的・計画的な上限時間数の縮減を含めた労働時間規制の実効性を高める方向での検討を行うべきだと改めて認識をしたところでございます。
最後に、日本成長戦略会議との関係も含めてお話をさせていただければと思います。一昨日から、日本成長戦略会議の労働市場改革分科会で労働時間規制を含めた議論がスタートしています。
この分科会には労働側の関係者も入っていますが、人数バランスなどから経営側よりの政策に偏ってしまうのではないかという懸念の声が、連合にも寄せられているところです。これは事実として申し上げておきたいと思います。
そうした懸念が払しょくされるよう、厚労省におかれては、しっかり議論のグリップをしていただきたいと考えておりますけれども、前回部会でも申し上げたように、職場の実態を熟知した労使を含む三者構成原則を含めた労政審での議論は十分尊重されるべきだと強く考えておりますので、改めて意見として申し上げておきたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 御意見ありがとうございます。
ほかに御質問、御意見等はございますか。
古川委員、お願いします。
○古川委員 御指名ありがとうございます。
私からも、資料No.1の総点検の結果について、1点事務局に御質問をさせていただいた上で意見を申し上げたいと思っております。
具体的には、「労働時間をどのようにしたいか」という問いに対して、13ページに産業別の割合については示されていますけれども、この問いは雇用形態によっても割合が大きく異なるのではないかと考えています。そういったことから、雇用形態別の増減の希望の状況の割合について教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○山川分科会長 御質問ですので、事務局からいかがでしょうか。
○労働条件政策課長 御質問ありがとうございます。
雇用形態、就業形態別にどのようなことになっているかということで申し上げますと、例えば、「増やしたい」、「やや増やしたい」が全体で見ると10.5%であったわけです。これを正規の職員・従業員に限定しますと7.6%であり、パートでありますと「増やしたい」が5.2%、「やや増やしたい」が13.4%、両方を合わせると18.5%で多くなり、「このままでよい」という方がパートの場合ですと68.8%と、全体の59.5%と比べても多いという状況です。アルバイトも同様で、「このままでよい」が7割を超え、71.4%、「増やしたい」、「やや増やしたい」が合計で16.8%という状況になっております。
以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
古川委員、何かございますか。
○古川委員 ありがとうございます。
全体の数字で見ても、労働時間を「このままでよい」、「減らしたい」という回答が合計して約9割になっていますし、私たちの現場から寄せられている声などにも沿った調査の結果が出ているものと考えております。やはり時間外・休日労働を縮減し、長時間労働の是正を強力に推進していくことの重要性が今回の調査の結果でも改めて確認されたのではないかと思います。
他方、「労働時間を増やしたい」という回答も一部ございますが、事務局からお答えをいただきましたように、「増やしたい」という回答の割合が多いのは短時間労働者であることも明らかになったと思っております。
加えて、増やしたい理由として、ここ数年の物価高騰による生活への影響ということも相まって、「たくさん稼ぎたいから」、「残業代がないと家計が厳しいから」といった収入面を挙げる労働者の方が合わせて6割近くに上っています。
来週には2026春季生活闘争がヤマ場を迎えます。そうした社会全体での持続的な賃上げの取組を進めることが非常に重要であることは言うまでもありませんし、あわせて、収入を増加したいのに働き控えにつながっている、いわゆる年収の壁といった問題の解決にも組んでいく必要があるのではないかと考えております。
そして、7ページを見てみますと、いまだに割増賃金が「すべて支払われている」という回答は54.9%にしかすぎず、不払い残業が少なくない実態があぶり出されたのではないかと受け止めております。
さらには、昨年3月に公表されました「労働時間制度等実態調査」の結果で明らかになっていますとおり、そもそも36協定を締結していない事業所が4割を超えており、違法な残業が行われているのではないかという懸念があります。こうした違法な残業や割増賃金逃れといった法規制の潜脱が生じている状況を一刻も早く是正し、サービス残業を根絶すること、働いた分の賃金が漏れなく労働者に支払われるという当たり前のことを徹底させることこそが喫緊の課題ではないかと考えるところであります。
そのため、前回も労側から申し上げましたとおり、客観的な労働時間の管理が確実に行われるよう、労働時間の適正把握の罰則付義務化も含めた規制の強化を行うことが不可欠だと考えております。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
オンラインで幾人か御発言の希望がございます。
まず、鳥澤委員、お願いします。
○鳥澤委員 鳥澤です。
資料の取りまとめ及び御説明をいただきありがとうございます。私から意見を申し上げたいと思います。
まず、前提として1点申し上げます。本調査結果は労働者の意識実態を一定程度表しているものと受け止めておりますが、調査協力をした労働者が単なる労働時間としてこのアンケートを捉えたのか、金銭までを含めての労働時間として捉えたのか、また、労働者の収入状況が実際はどうなのかというところで、労働者個人が置かれている状況が大きく異なるというのを踏まえると解釈が難しい点もございます。
また、企業調査については、労働局が対象企業の選定をしたと伺っておりますが、比較的売上高が大きい企業が中心となっており、中小・小規模事業の実態を踏まえているとは言い難いという点がございます。
こうした点を踏まえますと、改めて地域、業種、規模による影響や受け止めについて精査すべきであり、本調査結果のみでは働き方改革の是非について判断をしかねると受け止めてございます。
働き方改革に対する中小企業の受け止めを改めて申し上げますが、人材の確保・定着、生産性向上への寄与など、プラスの影響を感じる企業も多くあります。また、企業へのヒアリング結果でお示しいただいたとおり、慢性的な長時間労働が発生する環境では人材確保や従業員の定着が難しいことを中小企業の経営者もよく理解してございます。
他方で、時間外労働の上限規制の対応のため、受注の抑制、営業時間の縮減などを行わざるを得ず、売上げの減少を余儀なくされる企業も一定数ございます。また、経営者からは、労働者の年齢、健康状態、意欲、ニーズは極めて多様化し、業種・業態などにより就労環境が大きく異なる中、全業種一律の制限を設けることに疑問を感じる、あるいは、製造業、建設業などのものづくり分野、企画提案などの分野では、よりよい製品・サービスへのこだわりを持ち、時間を意識せずに没頭して働く従業員が一定数いるなどの御意見を多くいただきます。
今回お示しいただきました調査において、「労働時間を増やしたい」と回答した労働者のうち、業務の完成度や業績を高めたい、業務を通じて知識や経験、スキルを高めたい、会社や社会に貢献したいなど、意欲ある労働者がそれぞれ1割程度存在いたします。健康確保は大前提ですが、こうした思いに応えたいと考える経営者は多くございます。
また、商工会議所の調査によると、宿泊・飲食業、運輸業、建設業といった現業系の業種において、4~5割の事業運営への支障があると回答しており、働き方改革による影響が大きくなってございます。
一時期問題となりました飲食店などのいわゆるワンオペも、労働時間削減のため、シフト当たりの労働者数の削減が必要となったことが背景にございます。結果として、労働時間は削減されたものの、時間内に働く労働者への負荷はかえって高まったという弊害が生じてございます。
また、上限規制の対応が困難な理由として、そもそも企業全体での人手不足、特に専門人材が不足する中、厳格な納期、工期の下、天候トラブルや前工程の遅れに伴う工期の短縮が避けられないなど、自社ではコントロールができない他律的な要因で時間外労働が多く発生している現状があります。
こうした現状を踏まえまして、まずは下請構造の強い影響を受けている中小企業において、サプライチェーン全体での理解促進、取引適正化や、宿泊・飲食業、運輸業、建設業、製造業への重点的な支援体制の強化を進めていただくことが重要と考えます。
加えて、深刻な人手不足の中、現場を支え、取引先など外部の影響を受ける中小企業に対しては、健康確保と労使合意を大前提とした上限規制、45時間・年6回までの一部例外措置や1年単位の変形労働時間制について、労働基準監督署に提出後であっても、未到来期間については変更を容認すること、また、労使合意の期限について30日前から短縮するなど、より柔軟な働き方を可能とする制度の検討が必要と考えます。
私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
続きまして、オンラインの安藤委員、お願いします。
○安藤委員 安藤です。よろしくお願いします。
既に鳥澤委員からコメントがあった点と重複してしまいますが、せっかく手を挙げたので発言します。
労働時間を増やしたいのか、減らしたいのかということを労働者に聞いているという点について、先ほど雇用形態によるといったコメントもほかの委員からございましたが、特に「労働時間を減らしたい」という回答について、それが何を意味しているのかということを回答者が正確に理解できているのかということに疑念を持っています。
私が試しに、正社員である同僚の方に労働時間を減らしたいですかと聞いたら、当然減らしたいという答えが返ってきました。そのときに、賃金はどう考えていますかといったら、月給なのでそれが減ることは想定していなかったということになっています。学生に聞いてみたところ、学生は労働時間を減らしたらサークル活動などに使えるお金が減るので減らしたくないと答えたということで、人によって、また、どういう賃金の支払い方をしているのか等によって、回答がかなりずれるのではないかと考えています。
反対に、「労働時間を増やしたい」と答えるかどうかという点についても、労働時間が増えたら、それに比例する、また見合った形で賃金が増えるのか、それともそうでないのかといったことによって回答もかなり変わってくると思います。
そういうわけで、労働時間を増やしたいか、減らしたいかを聞く場合には、それにより何が変わるのかということを適切に情報提供しなければ、調査の回答を正確性の高いものとして捉えることが難しいと思います。今後、同様の調査を行う際には、ぜひ調査設計の段階からアンケート調査の専門家等に設計の支援を受けていただいて、やって意味がある調査を実行していただければと感じております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
では、田中委員、お願いします。
○田中委員 御指名ありがとうございます。田中です。
私からは2件発言をいたします。
まず、労働者が希望する労働時間に関連した内容です。資料にありましたとおり、労働者の労働時間の受け止めは、「現状のままがよい」が約6割、「減らしたい」が約3割、「増やしたい」が約1割という結果になっております。ただし、実態を捉えるためには、それ以外の結果も含めて総合的に見ていく必要があると考えています。
例えば、「労働時間を増やしたい」の理由としては、収入を増やしたいが最多ではありますが、仕事の完成度や業績をより高めたい、業務を通じて知識や経験、スキル、技術を高めたい、自分のペースで仕事をしたいといった理由の合計が約4割あるという点は注目すべきと考えます。
また、資料の9ページの下段にありました、労働時間を減らしたいときとして、減らしたいが特定の期間、時期に増やしたい、減らしたいが時々増やしたいという回答があるとともに、どのようなときに増やしたいと思うかについて、増やしたいが特定の期間、時期に減らしたいや、増やしたいが時々減らしたいという回答も相当数あります。
背景としては、例えば、自身が集中的にキャリアアップをしたいと考える時期に増やしたいとか、子育てを行う時期には減らしたいなど、それぞれのライフステージや状況によって柔軟に自律的に働きたいというニーズが読み取れるように思われます。
そうした点も含めて、調査結果は就労ニーズの多様さを表しているように感じました。そして、そのような多様な労働者の声に応えるためにも、一律の画一的な規制を法律・制度として定めるのではなく、企業が労働者のニーズをしっかり把握しながら柔軟な運用ができるようにすることが重要と考えます。今後、その観点で議論が進むことを期待しています。
2点目、労働時間の削減に関連してです。働き方改革を進める中で、多くの企業では労働時間の削減に取り組んでいますが、人材不足や業務特性などの事情によって部門によっては削減が難しいという課題があろうかと思います。そのため、長時間労働の是正の観点で、特に労働時間の長い部署を対象に重点的に取り組むなど、各社で工夫をして取り組んでいると思います。
ただ、長時間労働の是正という観点からは、28ページの資料にありました取引慣行の改善が不可欠です。1企業、1業界団体の取組だけでは限界があります。発注者や荷主も含めて、長時間労働につながる商慣行の是正に引き続き取り組んでいく必要があると考えます。あわせて、行政からの後押しや好事例の展開なども重要だと思っております。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
続きまして、松永委員、お願いします。
○松永委員 ありがとうございます。
私のほうからは、既に出ている御意見とも少し重複する部分があるのですけれども、感想を述べさせていただきたいと思います。
まず初めに、この調査の御説明を聞いていて思ったのですけれども、7年前、働き方改革関連法が施行されたとき、私はコーポレート部門で労務管理の担当をしておりまして、それから月日が流れて、振り返ってみると、柔軟な働き方をサポートする施策とかいろいろなことをやってきて、確実に長時間労働問題は進歩してきたという実感を私は個人的に持っています。
その前提で資料の説明をお聞かせいただいたのですけれども、これまでもコメントがありました、今の時間をどうしたいかという部分です。これは所定時間との関係とか年収の関係を示していただいたのですけれども、私としては、もう一つ大きな要因としては回答された方の職種も大きく影響してくるのではないかなと思っています。
例えば、労働時間と賃金の関係が比較的強い生産現場で従事されている方と、我々のようなコーポレートスタッフもそうですけれども、間接部門にいる労働者とではやはり感覚が違ってくるのではないかなと思っています。
あとは、これも先ほどどなたかの委員からコメントがありましたけれども、回答者のプライベートにおけるライフステージも回答の傾向は大きく変わってくるのではないかと思いますので、この点も踏まえてさらに分析、深掘りをされていくことがいいのかなと思っています。
いずれにしましても、労働生産性を上げていくことは今の日本にとっては大きな課題であると思っていますので、例えば、はやりの「DX」というキーワードがありますが、こういうものを用いた生産性の向上の好事例を横展開していくことを官民で後押しするとか、そういうこともやっていきながら、そのベースとなる労働法制を考えていくことがますます重要になるのではないかなと感じています。
私のほうからは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
では、佐藤委員、お願いします。
○佐藤(晴)委員 ありがとうございます。
私からは、今日のお話の中では直接的な御説明はなかったかもしれませんけれども、労働時間制度の周知について発言をさせていただければと思います。
28ページにもありますとおり、労働時間制度の簡素化に関する意見、制度の周知徹底に関する意見というふうに出ておりますけれども、企業のヒアリング結果を見ましても、労働時間制度の複雑さ、理解が難しいという意見が示されている結果が出ているかと思います。
さらに、34ページは労働者のヒアリング結果かと思いますけれども、こちらでも制度の簡素化を求める意見が見てとれます。
労働者の健康確保のためには、法令を正しく理解し、遵守をすることが最低限必要と思いますけれども、労働者、使用者、双方にとって理解が難しい制度では実効性にも影響しかねないと考えます。
企業の担当者、労働者本人も労働時間制度を正しく理解し、遵守をするためにも、まずは行政から分かりやすいパンフレットの作成、丁寧な相談対応などの支援、こういったことの強化を引き続きお願いをしたいと思います。
もう一点、労働時間法制に関しては、画一的な規制やルールが企業の実態になじまない部分もあると思っています。企業の現場実態や労働者のニーズは多様であり、これからもますます多様化していくと考えておりまして、今後の労働時間法制の見直しの議論に当たっては、なるべく企業の労使に委ねるといった観点もしっかりと重視をしていただいた議論をしていくことが、企業側だけではなくて労働者のニーズにもしっかりと応えていくことにつながると考えておりますので、意見として申し上げます。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
続きまして、加藤委員、どうぞ。
○加藤委員 御指名ありがとうございます。加藤でございます。
私からは、今回の総点検の結果全体について一言申し上げたいと思っております。
資料の6ページの右側の表を見てみると、1か月当たりの平均的な時間外労働等の時間がお示しされていると思うのですけれども、例えば、45時間以下の労働者を見てみますと、約9割以下となっているかなと思っております。働き方改革の労使の取組によって、長時間労働の抑制は着実にできているのかなと理解をしております。長時間労働が是正されたとか業務効率化、生産性が向上した、働きやすさとかワークライフバランスが向上したといった、働き方改革におけるポジティブな効果は、当社だけではなく、多くの企業からもよく聞かれるところではないかなと思っております。
働き方改革を進める上で意識していることですけれども、先ほども幾つかの委員の方から御発言があったと思うのですが、働き方の希望は人それぞれというところになってくるかなと思います。これは、働く方一人一人で見てみますと、ライフステージによっても、例えば育児をするとか、介護をするとか、そういったものが一人一人によって違ってくるのかなと思っています。こういったところは当社も含めて企業としては様々な労働者の方の意見に応えていきたいと考えております。
コロナ禍で在宅勤務が世界全体に広がっていったと思うのですけれども、世の中では出社回帰をしている企業も一部あるかなと思っております。当社では、引き続き在宅勤務を継続して、先ほど申し上げた育児とか介護といった社員に対して応えるという意味で、柔軟な働き方ができるような施策も今検討しているということでございます。こういったところも労働者のニーズに応えているところでございます。
働き方改革の前提となる健康確保についても、労働組合とも適宜協議を行っておりまして、具体的には、時間外労働が非常に多くなっている社員については、産業保健との面談、上司との面談を設けるようにしておりまして、そのような職場では労働組合と話しながら業務負荷の平準化も行っている実態がございます。
また、最近よく感じるところですけれども、通常業務にもAIというものが入ってきていると思います。これによって求められる仕事の質とか働き方も徐々に変わってきていると思います。これから求められるところは、より自律的に働いたり、自らで問いを考えるというような働き方、能力が求められると思っております。
長時間労働の是正とか労働者の健康確保は大前提になると思うのですけれども、働き方改革に取り組んできた経験から申し上げますと、それにとどまらず、労働者のニーズにできるだけ応え、また、今後の働き方の変化を見据えた取組ができる環境を整えていくことが重要ではないかなと思っております。
私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
では、春川委員、お願いします。
○春川委員 ありがとうございます。
私からも意見を申し上げさせていただきます。
1ページ右側にある企業ヒアリング調査の結果を見ましても、たしかに上限規制を超えて、あるいは月45時間・年6回を超えて労働時間を増やしたいという企業の希望はあります。しかし、注釈を見ると、そういった回答を行った企業の9割近くは、月平均の時間外が45時間以下になっています。そういった実態からも、上限規制の緩和を求める意見というはほぼ緊急避難的、予備的に希望しているだけであって、緩和そのものの必要性があるとは言い難いと考えています。
加えて申し上げますと、増やしたい理由として業務の性質が多く挙げられていますけれども、上限規制は、これ以上働かせてはいけないといった最低基準であること、その時間数はあくまでも過労死認定ラインぎりぎりの水準です。これを業種や職種の違い、働く労働者の同意などを理由として緩和をしていくことはそもそも論外であると思っています。上限規制の枠内でありましても、長時間労働を推奨するような方向での見直しも行うべきではないと考えています。
今回実施された総点検の結果を踏まえても、労働時間短縮をはじめとする「働き方改革」のさらなる定着が必要と思っております。繰り返しになりますが、緩和ではなく、労働者の立場に立った法改正を含む実効性の強化に加えて、ぜひとも厚労省におかれましては、労働時間の短縮と生産性の向上を両立するための業務効率化・省力化、DX化といった現場での労使の取組を促すための支援をさらに行っていただきたいと考えています。
また、ヒアリング調査で課題が指摘されている人手不足の解消に向けては、現に働いている労働者の長時間労働に頼るということではなく、多様な働き手が増えるよう、誰もが安心して働き続けられる労働環境の整備を進めていくことが重要だということも最後に付言いたします。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
オンラインで御希望の方から一通り御意見を伺いました。
それでは、亀田委員、どうぞ。
○亀田委員 ありがとうございます。
私からは、健康確保の観点から発言をさせていただきます。
前回部会で労働側から発言したとおり、建設業、運輸業などでは、年間総労働時間や長時間労働者の割合に加えて、脳・心臓疾患の労災請求件数も変わらず高まりしているのが現状でございます。
資料No.1の23ページから25ページのヒアリング調査結果を見ますと、建設業や運輸業・郵便業などを中心に、「労働時間を増やしたい」との回答が一部見られますが、上限規制の枠を超えてまで増やしたいという声は全体の5.2%しかありません。加えて、「増やしたい」とする企業であっても、労働者が希望しない、長時間労働をしない文化が根づいているといった意見や、健康管理や交通事故防止などの観点から上限規制は遵守しているとの回答が複数ある状況でございます。
また、運輸業などでは生活費を稼ぐために長時間労働を希望しがちな実態も指摘されておりますが、13ページの労働者へのアンケート調査を見ましても、運輸業・郵便業でも、労働時間を「増やしたい」、「やや増やしたい」との回答の割合は1割前後で、「減らしたい」、「やや減らしたい」が「増やしたい」「やや増やしたい」の3倍以上の結果となっています。
今回のヒアリング調査でも、建設業では著しく短い工期、運輸業では荷主との関係などが労働時間との兼ね合いで大きな課題となっていることが再確認されたものと考えています。
そうした課題の解決に向けては、2年前に施行されたばかりの上限規制を緩和することではなく、省庁横断的に取引の適正化や商慣行の是正を強力に進めていくことこそが必要であると考えておりますので、よろしくお願いします。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかにございますでしょうか。
佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
まず、この調査結果ですけれども、有効回答3,000名ということで、短期間ではございますけれども、私は全体の傾向がよく出ている調査結果ではないかと思います。
働き方改革関連法の施行から5年が経過して、今回、総点検ということで実施された労働者のデータと企業ヒアリングの調査結果から見ますと、現状の労働時間について、「現状のままがよい」というところと、「もっと働きたい」というのは、労働者側のデータは7.3%ぐらいで、これは少なくなっているのは当然だと思うのですね。ヒアリング調査のほうでも、現状のままでよいと回答した企業は201社と最も多く、減らしたいとする企業も73社ありました。その一方で、増やしたいとする企業が53社。これはとどまっていたというふうに見たほうがいいのかも分かりませんけれども、その多くも現行の上限規制の枠内で対応を想定しているとの結果となっているのではないかと思います。
理由としては、業務量との関係、労働者の健康確保、ワークライフバランス、人材確保・定着といった観点が多く挙げられており、働き方改革による労働時間の適正化が企業経営の現場にも一定程度定着してきていることがうかがえると思います。
こうした状況を踏まえると、長年の議論を経て導入された時間外労働の上限規制、すなわち年720時間が上限ですけれども、単月100時間未満、そして、複数月の月平均80時間といった枠組みや、健康確保措置にも対応しながら、長時間労働の抑制という観点から、基本的に私は維持していくべきではないかなと考えます。その一方で、労働者からは、もっと働きたい、稼ぎたい、技能を高めたいといった理由で労働時間を増やしたいという声も一定程度見られるわけです。
こうした点を踏まえると、現行の上限規制や健康確保措置を維持しつつ、現在の労働時間の上限の隙間を労使の十分なコミュニケーションを前提に、労働者本人の意向に応じた一定の柔軟な働き方を可能とする運用について進めていく必要があるのではないかなと考えます。
また、従前から私は申し上げているのですけれども、副業・兼業に対する労働時間の通算のルールの分かりにくさとか、実務上の負担を指摘する声が出されております。現行制度では、本業で8時間働いた場合、副業先での労働が直ちに時間外労働として扱わなくてはならず、これが副業・兼業の受入れを躊躇させる要因となっているとの指摘もあるのではないかと思います。副業・兼業を推進する政策との整合性を考えると、副業先においても、副業先の事業場における1日8時間を基準に時間外労働時間を判断するなど、制度を検討する余地があるのではないかと思っております。
また、複数企業に就業しているとき、現行では先に勤めた事業を主、あとが副業・兼業先となりますけれども、本来、主とする事業者と副業・兼業先は、本人の重要度とか自分の意思により、どちらが主でどちらが従ということもあると思います。この辺の見直しも必要ではないかと思っております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかにございますでしょうか。
鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
私からも一言コメントをさせていただきたいと思います。
先ほど冨髙委員からは、この総点検を踏まえて、規制の緩和の方向での見直しはすべきではないという御発言があったかと思います。長時間労働を是とするような時代に戻るべきではないと私自身も思っておりますが、一方で、今日特に使用者側委員の方から結構御発言があったと思いますけれども、働き方改革の意味合いは、多様なライフステージに合った働き方ができる柔軟性の確保という御指摘があったかと思っています。そういう意味では、働き方改革は多様な人材の活躍を促す観点も重要ではないかと思っているところです。そのなかで、ホワイトカラーの働き手の創造性を発揮してもらうという観点からは、例えば裁量労働制の拡充という議論も当然必要だと改めて申し上げたいと思います。
一方で、裁量労働制につきましては、制度趣旨に沿わない運用がされると健康面とか処遇面の観点で問題が生じるという指摘があることは重々承知をしています。
過半数労働組合がある企業で行っているような好事例も参考にしながら、適切な運用の徹底を図ることは大変重要ですし、同時に、改めて実態調査を行いながら、長時間労働の抑制策、裁量労働制の処遇の確保の在り方など、制度の濫用防止策とセットで見直しに向けた議論を進めていければなと思っているところです。
私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかにございますでしょうか。
それでは、古川委員、お願いします。
○古川委員 ありがとうございます。
私からも、裁量労働制に関して若干コメントをさせていただきたいと思います。
裁量労働制の見直しの検討に対しては、連合には、「労使関係が成熟している大手企業でも運用が難しいのに拡充する必要性を感じない」、「さらに、対象が拡大されれば長時間を正当化する仕組みとして悪用されるのではないか」、「働き過ぎの実態が把握しづらく、結果として心身に不調を来す人が増えるのではないか」といった不安、懸念の声が多く寄せられています。
資料No.1の1ページには、労働基準関係法に対する課題・要望について、裁量労働制に関するものはわずか4社ということですが、29ページを見ると、対象労働者の範囲や適用業務が分かりにくいといった意見も含まれておりまして、定性的なヒアリング調査であるとことは承知をしつつも、結果全体から見れば、拡充や緩和を求める声は圧倒的に少ないと思います。
この間も労側から繰り返し発言をさせていただいておりますが、裁量労働制は厚労省の実態調査においても、みなし労働時間よりも実労働時間のほうが1時間長いこと、長時間労働者の割合が高いこと、裁量や適切な処遇が確保されていないケースがあることなどの課題が浮き彫りになっておりまして、適正運用を進めるために2024年改正が行われたばかりだと認識をしております。
その改正内容を含め、適正運用が徹底されるよう取組を進めることが要請されているおであって、対象業務の拡充、導入手続等の要件緩和は行うべきではないと考えております。
前回、公益委員からも御発言がございましたが、2024年改正の施行状況についての実態調査などもない中で見直しを行うことは適切ではないと考えております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
オンラインで原委員から御発言希望があります。お願いします。
○原委員 ありがとうございます。原です。
今の御発言と重なる部分があるのですけれども、裁量労働制について一言申し上げたいと思います。
労働者に裁量を持ってもらって力を発揮してもらうことと、労働時間を裁量労働のみなし労働時間制でカウントすることは、決してイコールではないということを改めて意識すべきと思うのです。裁量を持って働く、イコール、労働時間をみなしでカウントしなければいけない、という必然性はございませんので、その点について問題をしっかりと意識しながら議論を進めていくことが、裁量労働制に関しては極めて重要であると感じております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかに御質問、御意見等はございますでしょうか。
では、神吉委員、どうぞ。
○神吉委員 ありがとうございます。
今の原委員がおっしゃったことに重なりますが、裁量労働制についても、今回の点検の示唆は一定程度見いだせると思います。調査規模などによる制約はあるとはいえ、これまでの調査結果とも大きな乖離はありませんので、今回の点検で現状を把握することは一定程度できていると思います。
何度も言及されたとおり、実際に労働者の希望で「もっと働きたい」人はそもそも少数派で、かつその6割は稼ぎを増やしたいという希望に集約されます。
こうした希望からは、上限規制を緩和する、それを基礎づける立法事実は、私自身は見いだせないと思っています。一律の上限規制の緩和ではなく、多様な労働者、ライフステージやニーズの異なる働き手それぞれに対応するために、裁量労働制を拡大する、ないしは運用を見直すという方向については、もし労働者の希望に沿おうとするのであれば、裁量労働制は実労働時間ではなくみなし時間で処遇されるだけなので、労働者の希望の側から見ると、労働時間を増やしたい大多数の労働者の「賃金を増やしたい」という希望には沿えなくなることが注意のポイントです。もっと働きたい人が本当は賃金を増やしたいのであれば、裁量労働制を適用することによってむしろ逆方向に働く可能性すらあります。
裁量労働制の制度改正や運用の見直しを、労働者の希望に沿う方向で目指すのであれば、裁量労働制が現在の労働者の希望の多くを占める、労働時間の現状維持やむしろ減らすことが可能な制度でなければならないのではないでしょうか。裁量労働制の適用で労働時間を増やさざるを得ない方向一辺倒になってしまうのであれば、労働者の希望はかなわないのと同じです。
現在、裁量労働制は、時間配分や業務の遂行方法を労働者に委ねることが適切な場合に適用されることになっていますが、業務量自体や納期が裁量で動かせなければ、働かざるを得ない状況に追い込まれることも十分考えられるわけです。今後、裁量労働制の見直しを考えていく上ではそういったことに留意する必要があると考えています。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
それでは、椎木委員、お願いします。
○椎木委員 御指名ありがとうございます。
裁量労働制について発言したいと思います。連合傘下の労働組合がある職場においても、綿密なモニタリングなどにより適正に運用されている事例も見られております。
ただ、適正運用がしっかり確保されなければ、みなし労働時間制の下で実質的に労働時間規制がかからなくなって長時間労働を招く懸念も大きい制度であると考えています。この点については、今し方、鈴木委員からも、しっかりした運用をしなければ制度の濫用を招くという御指摘があったとおりだと考えております。
また、これまでの議論の中でも、使側の皆さんから、過半数労働組合との合意の下で対象業務を決定できる仕組みについて発言がありますが、労働組合の有無によって法的な規制が異なることがあってはなりませんし、強い違和感を持っております。2024年改正の内容を含めて適正に運用されるよう、しっかりした取組を進めることが重要であると考えます。
この点については、強行法規である労基法全体にも言えることですが、労使合意を根拠とした最低基準の緩和、あるいは例外の拡大等は認めるべきでないと考えてございます。
以上、よろしくお願いします。
○山川分科会長 ありがとうございました。
鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
裁量労働制につきまして、いろいろと委員の先生方から御意見があったところでございます。まずもって、使用者側としては、裁量労働制を長く働かせたいために導入するつもりはないということは御理解をいただきたいと思います。また、裁量労働制で働く労働者からは、短時間で効率的に仕事を終えて、仕事以外の時間を充実させることができるといった意見も企業から寄せられているところでございます。
改めて、裁量労働制の意義について私どもなりの考え方を申し上げますと、仕事は、働いた時間で比例するような形で成果が現れるものと、必ずしも働いた時間に比例しなくて、成果が上がる、上がらないが表れやすいものがあると思っております。
もちろん仕事に比例した形で成果が現れる仕事は、日本全体では現状大多数であり、こうした仕事に対しては、通常労働時間制度など、すなわち1日8時間、週40時間を超えるところで割増賃金が発生をするという仕組みがマッチするのはそのとおりだと思っています。一方、必ずしも就労時間と成果が比例しない仕事にこうした制度がかなり厳格に適用されていることが適切かどうかを考えたときに、やはり今の規制では実態に合っていないのではないかと思っているところでございます。
もちろん、成果に応じた処遇が労働時間制度を変えずにできるのではないかという御指摘もこれまでにいただいていますが、成果に応じた処遇を徹底するためには、裁量労働制の導入が私としては適していると考えています。企業からは時間に比例する処遇の部分が残ると、どうしても成果に応じた処遇をするという会社から労働者へのメッセージが浸透しないという声も聞いているところでございます。
また、先ほど椎木委員から、労働組合の有無で制度の効果を変えるのはいかがなものかという趣旨の御発言もいただきました。労働組合は御案内のとおり、憲法で保障された労働三権で裏打ちをされた活動を行っておられて、労使対等性が十分担保されているものと私自身は認識しております。さらに、過半数労働組合だと、なおさら組合員の声を丁寧に酌み取って、各種労働条件の設定・変更を行う際の交渉や合意に関与するだけではなくて、日々の労働時間管理とか、運用されている労働時間制度の運用においても、チェック機能を十分果たされていらっしゃると私自身は思っているところでございます。
そうした観点からも、ぜひ裁量労働制の見直しは必要だということを改めて申し上げたいと思います。
私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
オンラインでお二方、御発言希望がございます。
まず、松永委員、どうぞ。
○松永委員 どうもありがとうございます。
今の鈴木委員からコメントに重複する部分があるのですけれども、企業の実態も踏まえということで少しコメントさせていただきます。
裁量労働に関してですけれども、当社でも裁量労働を導入していまして、当然ですけれども、本人の申請があって上長が承認してというステップとか、あとは一定の労働時間、閾値を超えるとその期はもう適用しないとか、いろいろな枠組みを決めていまして、その中で労働時間と健康確保をきちんとマネージしていくことをやっています。
確かに、法の趣旨どおりに適用されずに、うまくできていない部分が全体を見渡すとあると思うのですけれども、一方で、企業の立場からすると、従業員に対して、本人の働き方に対する考え方もそうですけれども、全体として効率よく働くこと、一定の時間の中で最大限のパフォーマンスを発揮してもらいたいし、そういうふうに日頃から業務を遂行してほしいという思いがありますので、労働時間と処遇がリンクするという発想をずっと続けていく中でいうと、少しメッセージが伝えにくいのかなという部分もあります。
全体を見渡してなかなかうまくできていない部分があるのは事実かもしれませんけれども、各企業のそれぞれの努力によってうまく運用できている部分もあると思いますので、そういう実態も踏まえて今後議論をしていく必要があるのではないかと個人的には思っています。
以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
では、加藤委員、どうぞ。
○加藤委員 御指名ありがとうございます。加藤でございます。
私も少し重複するところがあるかもしれませんけれども、裁量労働制について一言申し上げたいと思っております。
当社でも裁量労働制を導入しておりまして、労働組合とも日々話合いをしながら、徐々に対象者が増えていっている実態でございます。
社内でもそういった対象者に対してアンケートを取ってみますと、制度を肯定的に捉えている方が多くいらっしゃいます。例えば、裁量労働制で働くことで仕事をやり切るといったことができるとか、やりがいが向上したというようなポジティブな声もいただいております。
また、例えば、ほかの企業さんでも、出産後に復帰された女性の社員が裁量労働制を適用することによって時間にとらわれず働けることで、中抜けとか短時間で働くといったことが柔軟にできて、育児と仕事を両立する見通しが持てた、そこでキャリアを諦めずに働くことができたという事例も聞いております。
ですので、先ほども申し上げたのですけれども、裁量労働制というのはそういった多様な人材に対して応えていく制度の一つではないかと思っております。
やはり様々な働き方のオプションを用意して、より柔軟な働き方を実現していくことで、従業員のやりがいとかエンゲージメント向上につなげていきたいと思っておりますし、そうしたオプションが導入しやすくなることで、当社だけでなく、多くの企業で社員が活躍して社会全体の生産性向上につながるのではないかなと考えております。
ですので、柔軟かつ自律的に働けるといった裁量労働制を拡充していって、働く人の選択肢とかそういったことをきちんと整備できる環境を整えていくことが重要ではないかと考えております。
私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
オンラインでもうお一方、春川委員、どうぞ。
○春川委員 ありがとうございます。
私からも、裁量労働制について提起させていただきます。
今、お話がありましたとおり、多様で柔軟な働き方に向けた環境整備を進めていくことはとてもよいことだと考えております。
ただ、その上で、裁量労働制を導入している連合の加盟組合からは、裁量労働制の運用が難しいという意見は従前から上がってきています。それは、月、クォーターごと、半年ごとというふうに考えれば、実際に職場現場のそれぞれの仕事は日々変化していますし、「業務量、労働時間の配分が自分では決められない」、「結果的に長時間労働が常態化してしまう」ということも現に起こっています。さらに、「制度適用に見合う処遇ではなくて、残業代逃れの手段として使われているのではないか」といった職場からの声も寄せられてきているというのが実情です。
こうした実態を踏まえれば、今行うべきは制度の拡充ではなく、2024年に行われた適正運用のための制度改正の徹底を含めて、いま一度、職場現場で労使が制度を適切に運用していくことこそが強く要請されていると考えます。そして、先ほど古川委員からも発言がありましたけれども、2024年改正が行われたばかりであり、その状況について実態調査もなされていない中で検討を進めるべきではないと思いますので、その点も意見として申し上げます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかにございますでしょうか。
佐藤委員、どうぞ。
○佐藤(好)委員 御指名ありがとうございます。
私からも裁量労働について意見を申しあげます。先ほど来いろいろな御意見が出る中で、裁量労働制は時間に比例した処遇ではなく、それ以外をベースとする処遇が実現できるといった趣旨のご発言がありましたけれども、そもそも裁量労働制は裁量を持って働くということと、みなし労働時間でカウントする制度となっています。
使側委員の皆様からは、自律的に働くというメッセージだとか、自己の仕事をやり切るとか、やりがいといったことが挙げられていましたけれども、そもそも裁量労働でなければそれらが達成できないのかというと、そうではないと捉えております。
我々としては、裁量労働制の拡充や要件の緩和ではなく、いずれの労働時間制度の働き方においても、働く者の満足度を高めるために、企業のマネジメントの課題として、現場の裁量をいかに確保するのかということを労使でしっかりと検討することが重要であると考えています。このことを意見としてお伝えさせていただきます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかはいかがでしょうか。
川田委員、お願いします。
○川田委員 ありがとうございます。
まず、多くの委員から御発言がございました裁量労働制に関してで、これは昨年も分科会の中でそれぞれの立場からいろいろな御意見が出されてたところであると思います。また、私が関わってきた中でも、働き方改革関連法の中で、当初は案の中に入っていたけれども、結果的にそのときには制度が実現しなかった。また、先ほど何人かの委員の御発言の中にもあった、2024年の制度改正等があったという流れがございますが、私としては、なおいろいろな御意見があるという前提で検討すべき課題にはなっていると思います。
ただ、今日の議題の関係で、働き方改革の総点検との関係ということで言いますと、さっき触れましたように、結局、働き方改革関連法の中では裁量労働制の見直しというのは入っていないものということになります。今回の資料No.1でお示しいただいた調査については、例えば、29ページとか34ページの労使の当事者の意見の中で出てきたり、あと、先ほど神吉委員からも御発言がありましたとおり、このデータ自体は裁量労働制の在り方を考える上で基本的なデータとしての意義があるものと思っております。その一方で、働き方改革関連法の点検という流れの中では、直接的な対象にはなっていない話になるのだろうと思います。
先ほど申し上げたように、私自身は検討課題としての意義はあると思っておりますので、この問題については、恐らく今日の議題との関係では、働き方改革の成果を踏まえたデータを検証することをした上でのその先の問題としてこの分科会の中で扱われていく問題と整理されるのが適当ではないのかと考えているということで、これが申し上げたかった最初の点です。
それから、言いたいことがいろいろあって、できるだけ長くならないように、1つの流れのある話なのですけれども、3つに整理してお話ししたいと思います。
まず、今日のデータに関しては、既に安藤委員、鳥澤委員からもお話がありましたように、特に労働者側の意識、意向に関しては、労働時間について聞いているのだけれども、答える側の感覚として賃金との関連をどのぐらい重く見ているのかという点については、いろいろな視点での回答者の捉え方、考え方が回答の中に入ってきているのではないか、そういうものとしてこのデータを見る必要があるのではないかということは私も同じように考えております。
加えて言うと、ほかの委員からの御発言でも、裁量的な働き方を念頭に置いているのか、例えば労働時間を増やす、減らすというとき、自分自身の判断で労働時間を増やしたり減らしたりできるということを念頭に答えているのかという辺りもいろいろなものが入ってきていると思います。その辺りは、今回のデータを見るという意味ではいろいろなものがあり得るのだという前提で見ていく必要があり、また、もし今後さらにきめ細かい政策のベースになる情報を収集するという機会があれば、その辺りをより細かく見ていくことが考えられるのかなと思っています。
この辺りは、法的な観点からいうと難しい話で、賃金と労働時間の関係は、第一義的には労働契約でどう定まっているかで決まるもので、契約が明確でない場合の解釈、労働時間が増えたときに賃金が増えるのか、減ったときに減るのかという辺りは、結構難しい問題であるというのが一つ言えることです。
そういう中で、例えば、時間外労働とか最低賃金なんかも関わってきますが、当事者が定めた契約が法律で定める最低基準を下回るものになってしまった場合には、賃金を足りない分を増やしてくださいと。そういう意味では、賃金を上げる方向にだけ法のルールが存在する。そういう意味で、賃金と労働時間は増やす方向と減らす方向で完全に対称的ではないと言えることなどについて、法律的に見ると複雑な話があり、その辺りは実態を見るときにそういう細かいところある程度詰めて調査を設計するのか、その辺りは細かく詰め切れないので、答え方に幅があるという前提で調査をしてデータを解釈するということなどは、今後もし何らか調査が行われるとすると課題になるのかなと思っています。それが1点目です。
2点目として、そういう中で、今回の調査で全体として、すごく雑駁な言い方になりますが、例えば現状の法定の上限を超えるところまで労働時間を延ばしたいという意向を持っておられる労働者の方はそんなに多くはなく、その一方で、どのデータを取るかで数字が若干変わってくると思いますが、一定程度もっと働きたいという方がいることも確かなのかなということは言えるかと思います。この辺りは後で述べる3点目の話とも関わってきますが、本人が働きたいという中で、例えば、健康被害のリスクが生じてでもそれを認めていいのかという話があると思います。具体的には、先ほど少し触れた長く働きたいという動機の中には、経験を積んで自分の能力を高めたい、将来に向けた投資的な意味で働きたいという考え方があると思います。一面でそういうものを実現させてあげる必要はあるのかなと思いつつ、一方で、過去、過重労働による健康被害、心身の故障が問題になった裁判例などを見ると、経験の少ない労働者に経験に見合わない過重な負担を伴う仕事をさせてしまったというケースなどもあるので、その辺りに歯止めをかける必要もあるのではないか。労働者の意向を見ていく際には、その辺りのことには留意していく必要はあるのかなと思っています。それが2点目です。
3点目として、本人の意向をどれだけ実現するかということとの関係では、労働法の観点からは、強行法規、すなわち労働者と使用者側がお互いにそれでいいと言っていても、これは駄目ですという形で規制をかける法制度があるので、それとの関係をどう考えていくのかということもあると思います。
労働法でなぜそのような強行法規による規制をかけるのかについて、1つは、労働者本人のためというか、労働者本人がいいと言っていても、客観的に見てよくないものは駄目という、後見的あるいはパターナリスティックという言い方をしますが、そういう視点からのものがあります。その辺りは、本人の意思をどれだけ尊重するかという辺りを丁寧に見ていく必要があるということになると言えます。
この場で特に強調して申し上げたいのは、今のこととは別の観点から強行法規の意義として、本人とは別の周りの労働者とか社会への影響を考えて強行法規にしているという面があるだろうということです。労働法の伝統的な考え方としては、Race to the bottomというか、強行法規をかけずに自由に取引を任せてしまうと、自分は労働条件は悪くてもいいから働かせてください、もっと悪くていいので働きたいですという状況、つまり、周りの労働者に低い労働条件で働くことを認めることを誘発してしまうという問題があります。
これについては、今日の労働条件、産業構造が近代的な労働法ができたときとは変わっているところはあると思いますが、今日的に見ても似たような他の労働者に与える影響として、例えば、長く働いて多く稼ぐことに対する歯止めが弱いと、日本の社会経済の中で大きな課題になっていると思いますが、一定の単位時間当たりの生産性を高める方向に企業活動を誘導していくことが弱まってしまうのではないかとか、あるいは、育児・介護、自分自身に病気とか障害があるというような制約がある中で、働ける範囲では働きたいという人に多く労働に参加してもらいたいという中で、長く働くことが相対的に高い価値を持つことが認められると、そういった方が能力とか意欲に見合った形で適正な条件で働くことが妨げられるのではないか。これは、例えば、育児・介護の負担を反映した男女間の地域格差とか、正規・非正規雇用労働者の間の処遇格差問題にも跳ね返っていくような問題だと言えますが、そういったところまで視野に入れて長時間労働に強行法的に歯止めをかけるのが一面ではあると思います。そうしたことと、労働者本人の意欲をどこまで実現していくのかということのバランスを考えていくというような話になるのかなと思います。
長く話してしまいましたが、そういう課題があるということを踏まえてこの審議会での検討が進められることが望ましいということを意見として述べたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
オンラインで安藤委員からの御発言希望があります。お願いします。
○安藤委員 安藤です。よろしくお願いします。
裁量労働制の拡充については、これまで労働者側からは否定的または抑制的な意見が見られ、反対に使用者側委員からは拡充の必要性や柔軟な働き方に関する労働者の希望を述べられるというように、意見が大きく分かれているように感じます。
そもそも裁量がある働き方になっていて、それが労働者の求めるものであるなら、労働者側から、自分たちの働き方も裁量労働の対象にしてほしいという声が上がることで拡充の対象となることが検討されるというのが自然な姿かなと感じております。
例えば、私の職場はそうではないのですが、大学教員の中で、多くの教員が専門業務型で裁量労働制の対象となっている方がいらっしゃると思いますが、これは実際に働き方に一定以上の裁量があって、納得して働いている。その下で個別同意をして働いているのだと思います。細かく管理されたり、研究室を使っていい時間などについて、全て括弧付きの「上司」から許可を得ないと自由に研究活動が行えないといったことよりも、みなし労働時間でよいといったことを選んでいる人が多いのではと推察しています。
そういう考え方に基づきますと、これまでどちらかというと使用者側からのみ拡充の意見が出ることに幾分違和感があります。ぜひ労働者側の意見として、どのような職種・業種のどのようなライフステージの方が自分たちも対象としてほしいと考えているのか、これを調査することが必要だと思っています。
その上で、もう一点重要な点として、個別の同意が必要だという点と、同意しなかった、または同意していたけれども同意を取り下げた、やめた人に対して、不利益取扱いをしないといったことがルールとなっておりますが、これが実際にどう実現できているのか、ここもしっかり調べることが重要かと思っています。
例えば、チームメンバーの全員が裁量労働制の下で働いているときに、1人だけが本当にそこから外れることが可能なのか。その際に、昇進や賃金などで不利益取扱いがあるかないかといったときに、そもそも何が不利益取扱いなのかといったことを明確にする必要もありますし、普通の人が理解できるようにしていくことが求められていると思います。
例えば、裁量労働制ではなかった職場に新たに裁量労働制が導入され、個別合意で切り替わったけれども、やめたいという場合には従前の仕組みに戻る、不利益ではないというものが幾分分かりやすいと思います。
しかし、最初から裁量労働であることを前提として求人され、そこに採用され、その職場では裁量労働の人しかいないといった状況下で裁量労働制はやめてほしいといった場合に、不利益ではない取扱いとは何なのか、この辺りを明確に定めるのが難しいようにも思いますので、この辺りも同時に検討が必要かと思っています。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかにございますでしょうか。
松田委員、どうぞ。
○松田委員 上限規制について意見を申し上げます。
資料No.1の24ページのほか、先日の労働市場改革分科会の中でも一部の委員から、特別条項の年6か月までの要件を緩和してほしいといった発言があったように聞いておりますが、特別条項は、あくまでも本来予見し難い業務量の大幅な増加等による臨時的必要性がある場合に締結できると認識しております。この回数を増やすということは、現在の特別条項の趣旨を没却することはもちろん、常態的に長時間労働ができるようにするものだと考えております。これは、労働者の健康管理はもとより、育児や介護などの様々な事情を抱えながらも働く者にとって大きな悪影響と及ぼすものであり、決して認められるものではないと考えております。
なお、現行の過労死認定基準では、発症前1か月間に100時間、または2~6か月平均で月80時間を超える水準には至らないが、これに近い時間外労働と一定の労働時間以外の負荷要因を踏まえて評価されると認識しております。過労死等の労災請求件数が過去最多を記録している中で、過労死として認定され得る時間を超えてまで働くことができるような緩和は許されないと考えておりますので、意見として述べさせていただきます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかにございますでしょうか。
冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 ありがとうございます。
先ほど、鳥澤委員が変形労働時間制について触れられていましたので、その点についての受け止めを申し上げたいと思います。
変形労働時間制は例外的なルールであることを踏まえて、対象者の範囲や対象期間の特定などを労使協定に記載して届出が必要とされています。これは例外であることを踏まえて様々な要件が課されているわけですから、当然のことながら柔軟化することは極めて慎重に考えるべきであることをまず申し上げておきたいと思います。
それから、全体的なお話でございますけれども、先ほど鈴木委員が多様な働き方、柔軟性を持たせることは重要であるとおっしゃっていたと思います。私も、労働者にとっても多様な選択肢が増えることはとても重要だと思っておりますが、重要なのはそれが誰の視点に立ったものなのかという点だと思っております。
これまでに幾度となく申し上げておりますけれども、労働基準法は、労使間の圧倒的な力関係の差がある中で労働者を守るためにできた強行法規であって、そして、最低基準であると捉えているところです。したがいまして、当然のことながら、労働者の視点に立った見直しを図るべきだと思っております。
とりわけ裁量労働制につきましては、先ほどほかの委員からもございましたけれども、みなし時間の実労働時間の間に外れ値を除いても1時間弱の差がある中で、ましてや2024年改正の検証が行われていない中で、拡充の方向性で議論をするのは全くもってナンセンスだと考えているところでございます。
使側委員は、裁量労働も含めて労働者のニーズを強調していますが、連合には拡充に対する懸念の声がかなり寄せられておりますので、そういったことを踏まえても、裁量労働制の拡充や緩和を行うべきではないと考えているところでございます。
それから、先ほど使側委員からは、裁量労働でないとメッセージが伝えにくいというお話がありましたけれども、私は全くその意味が分かりません。メッセージが伝えにくいからといった漠然とした理由で裁量労働制を拡大するべきではないと考えておりますし、それは単なるマネジメントの問題ではないかと考えるところもございます。
改めて申し上げますけれども、労基法がなぜ制定されたのかという視点で、どういう見直しが必要なのかということを考えていただきたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 何度も発言させていただきまして申し訳ございません。
確かに、労働基準法は労使の中で力関係の差があることを背景にできたという歴史的な事実は承知しております。一方で、厚生労働省の実態調査では、仕事のやり方と時間配分について、裁量労働制適用労働者の9割ぐらいの方が裁量を持っているという結果があります。裁量労働制の適用対象となる労働者は、上司に一々指示されながら仕事をするという方ではありません。厚生労働省「雇用動向調査」によれば近年、転職により賃金が増加した割合は、減少した割合を大きく上回っており、特に専門的な仕事に従事する方々はその傾向が強いと思われます。また、労働市場の供給面はこれから厳しくなっていく中で、企業としてもそうした人材に対していかに働きやすい環境を整えるかということに腐心していると思っております。もちろん労使間の力関係の差があることを完全に否定するわけではありません。しかし、集団的な合意等があることも含め考えた場合、そうした企画職・専門職の方々が何も判断ができない方でもないと考えます。この点に関しまして、2024年の裁量労働制の改正では専門業務型、企画業務型の両方に労働者の同意と同意撤回要件を入れたわけでございますけれども、自ら判断できないということであれば、同意・不同意要件は全く意味のない制度ということになります。しかし、分科会のコンセンサスとしては、同意・不同意をしっかりと自分の意思でできる環境を整えるという前提でこの要件を追加したのであり、それをすることができる方を対象に制度運用しているということと理解しております。
それから、労基法が強行法規でありミニマムの基準だというご指摘はおっしゃるとおりだと思います。ただ、裁量労働制については、同意・不同意、健康福祉確保措置など、ほかの通常労働時間制度にはない規制があり、全く労基法の規制の趣旨をなくす制度ではないことを踏まえると、裁量労働制などの特別規制等を含めて全体が最低基準だと受け止めるのが自然ではないかと思っています。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかはよろしいでしょうか。
黒田委員、どうぞ。
○黒田委員 ありがとうございます。黒田です。
裁量労働について、私からも少し発言させてください。
裁量労働に関しては議論が平行線のままという印象を持っております。ですので、今後は、どうしても裁量労働制ではなくてはならない理由はどこにあるのかをいったん整理したうえで、議論を進めたほうが良いのではないかと感じております。
何人かの委員からは、裁量労働制の導入理由として、裁量労働をしている従業員の満足度が高いことが述べられてきましたが、これまでの調査研究からは、裁量労働制だから満足度が高いのではなくて、裁量が与えられているから満足度が高いということが見えてきています。
また、働きやすい環境を整えることの重要性についての御発言もありましたけれども、働きやすい環境や柔軟性のある働き方は、従業員に裁量を与えれば、裁量労働制を導入しなくても可能だということも分析から明らかになっています。
例えば、スーパーフレックスやテレワークなどを導入することや、現場レベルで上司から部下に権限委譲をすることで、かなりの程度の裁量は担保できるのではないかと思います。
今後のこの場での議論は、こうした工夫をもってしても、やはり裁量労働制を導入しなければならないという理由があるのか、ないのか、あるとしたらそれは具体的にどのような点なのかを整理していくことが必要なのではないかと考えます。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。
大変有意義な御議論をいただきました。今回も裁量労働制についての議論が多くなりましたけれども、ほかの制度についても若干の議論がございました。
伺っておりますと3つぐらいの検討の視点があるような感じがしまして、1つは制度そのものの問題、2つ目が制度の運用あるいは実態の把握、さらには制度の周知に関わる問題、3番目が制度を離れた人事管理あるいは処遇の在り方、取引慣行、社会全体を取り巻く環境のようなもの、3つぐらいあるのではないかなと感じた次第でございます。それらの3つは相互に関連し合っているということではございます。
事務局から、ほかの点も含めて何かございますか。
○労働条件政策課長 様々な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
本日の議題であった総点検調査も、確かに限られた時間、手法で行ったものですし、質問の仕方によって回答が変わるだろうということももちろんあったわけですけれども、これまでの調査との整合性、逆に、賃金を増やしたいかと聞けば、逆に増やしたいという回答が多くなる。見合った賃金をもらったら増やしたいかとか、いろいろな聞き方は可能性としてはあるわけですが、なるべくニュートラルに、これまでも調査したような聞き方で今回聞いてみたという限られた中で行った調査であって、様々な御意見をいただいたとおりであります。
今日の議題とは違う話なのですが、労働時間規制の検討については、委員の皆様も報道等で目にされているかと思いますが、一昨日も、日本成長戦略会議の下に設けられた労働市場改革分科会において、様々な議論がなされています。
これは12月24日、ちょうど前回の労働条件分科会と同じ日の数時間後に日本成長戦略会議が開かれて、その中で様々なワーキングチームや分科会が設けられ、働き方改革も含めた労働市場改革についてこの問題だけではなくて労働生産性の問題やリ・スキリングの問題など、様々な労働市場改革について、検討する舞台として労働市場改革分科会を設けて議論する方向になったということであります。したがいまして、働き方改革も含めて労働市場改革分科会という場で幅広く議論されるとことになりまして、まさに一昨日その1回目が行われたということになります。
今後は、労働市場改革分科会の議論も踏まえて、本分科会において具体的な御議論をお願いしていくことになりますし、労働市場対策分科会も一昨日から始まって、これから夏に向けて何度か開かれると思いますので、できますれば、そちらの議論状況、検討状況も労働条件分科会のほうにも適宜御報告をさせていただいて、こちらのほうでも御議論いただくことができればなと考えておるところでございます。
以上です。
○山川分科会長 今の点につきまして、何か御質問、御意見等はございますでしょうか。
冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 ありがとうございます。
冒頭に申し上げたとおりですが、本分科会での議論は平行線となっておりますが、どういったところに課題があるのかという点を含め、本分科会の課題認識を労働市場改革分科会でも理解をいただいた上で議論いただきたいと思います。同時並行で議論されていく中で、それぞれの検討状況を把握された上で適切な議論がされるよう、事務局にはご対応をお願いしたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
情報提供あるいは情報共有の必要性につきましては、皆様、御異存はないかと思いますので、事務局のほうでどうぞよろしくお願いいたします。
ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。
本日は、非常に貴重な御意見をいただきました。いずれも非常に有意義なものと思いますので、事務局におかれましては、本日の議論も踏まえて検討を進めて、改めて資料の準備等をお願いいたします。今回の議事はここまでとさせていただきたいと思います。
今後の日程等について事務局から何かございますか。
○事務局 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○山川分科会長 それでは、以上で第207回「労働条件分科会」を終了いたします。本日は、お忙しい中、活発な御議論をいただきまして大変ありがとうございました。

