第5回労働基準法における「労働者」に関する研究会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和8年1月28日(水) 10:00~12:00

場所

厚生労働省 共用第6会議室

議題

労働基準法における「労働者」について

議事

議事内容

○岩村座長 それでは、定刻になりましたので、第5回「労働基準法における「労働者」に関する研究会」を始めさせていただきたいと思います。
 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中を御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 今日の研究会ですけれども、会場で参加される方とオンライン参加の方という形での開催となります。
 今日は、小畑先生、島田先生、そして、新屋敷先生がオンラインで御出席ということになっております。
 また、笠木先生は御欠席でございますけれども、今日の議題に関する御意見を事務局に御提出いただいております。後ほど事務局から御紹介をいただこうと思います。
 カメラ撮りはここまでとさせていただきたいと思います。
 それでは、早速、議事に入らせていただきます。
 本日の議題は「労働基準法における「労働者」について」でございます。
 まず、事務局から用意いただいている資料の説明や笠木構成員からの御意見の紹介をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。まずは、資料1、資料2について通しで御説明を申し上げまして、その後、本日御欠席の笠木構成員からいただいている御意見を読み上げさせていただきます。
 まず、資料1を御覧いただければと思います。資料1は、「これまでの議論の整理(案)」という題名となってございますけれども、これまでの計4回の研究会での御議論や裁判例の分析結果などをまとめた資料でございます。
 具体的には、この時点で、これまでの御議論を整理したものでございまして、これまでの資料や議事録を全て読まずとも、この資料を読めば、これまでの御議論や裁判例の分析結果などの概要が分かるというものを意図してございます。このため、今後、引き続き御議論を続けていただく上での土台のようなものになると考えてはおりますけれども、特定のトピックについて、この時点で結論づけなどをしたりするような資料ではないということでございます。
 なお、本日は、「第1 はじめに」と「第3 今後の研究について」の項目は、タイトル以外は空白としてございます。これらの項目につきましては、本日の御意見も踏まえまして、次回以降の研究会において、草案を御用意させていただきたいと考えております。
 その上で「第2 これまでの議論の整理」について、簡潔に御説明をさせていただきます。
 目次に沿って、御説明をさせていただければと思いますが、「1 国内、諸外国における労働者性判断にかかわる現状」についてでございます。こちらは、フリーランス法の制定や個人事業者などに関する労働安全衛生法の見直しなどといった国内の状況、そして、本研究会で分析対象とした国などの状況について、第3回会議の提出資料、国際動向の資料などを基にまとめたものでございます。
 次に、「2 昭和60年報告に示された判断要素の分析」についてでございます。こちらは、昭和60年報告で示された判断要素ごとに御議論や裁判例の分析結果などをまとめたものでございます。具体的には、基本的な構成としまして、昭和60年報告での当該判断要素の位置づけ、裁判例の分析、法曹専門家からのヒアリングでいただいた御意見、構成員からいただいた御意見などを挙げつつ、まとめたものでございます。
 次に、画面下のほうです。「3 本研究会にてこれまでに個別に議論した点」についてでございます。こちらは、「2 昭和60年報告に示された判断要素の分析」に続きまして、これと同様の構成で、「(1)労働者性判断の枠組及び要素の重み付けについて」から、「(4)昭和60年報告では判断要素として個別に挙げられていない事情(「未分類」の事情)について」までの4点についてまとめたものでございます。
 最後に、「4 その他論点」についてでございます。こちらは、「(1)行政における労働者性判断」や「(2)労働者性判断の予見可能性を高めるための取組」について、現行の制度・取組ですとか、法曹専門家からのヒアリングでいただいた御意見、構成員からいただいた御意見を中心にまとめたものでございます。
 資料1の御説明は、以上でございます。
 続きまして、資料2の水町構成員提出資料についての御説明です。こちらは、10月に開催しました前回の第4回研究会において、フランスにおける従属性の表現について御議論があったという経緯があり、その関係で、水町構成員から提出いただいた資料が資料2ということでございます。
 最後に、本日御欠席の笠木構成員から御意見をいただいておりますので、事務局より読み上げさせていただきます。
 
 昨年末から欠席が続き、誠に申し訳ございません。この度、事務局から過去4回の検討について大変丁寧な取りまとめ資料を頂き、感謝しております。これまでの検討で判例・外国法を中心に一通りの論点が明らかになり、来年度はこれらをさらに深掘りしつつ、取りまとめに向けて議論を続けることになるものと思われますので、頂いた資料をもとに、今後の議論を進める上での視点について、大きく2点のみ、意見を申し上げます。
 これまでの議論の中で、改めて、昭和60年報告が裁判所においても行政機関においても重要な基準として用いられ、訴訟の当事者・代理人によっても参照され、労働者性判断に一定の一貫性を実現することに貢献したことが明らかになったと考えます。他方で、行政による判断と司法による判断では事実認定のあり方や判断が行われる場面の違いによって実際上アプローチが異なってくることは当然であり、そのような違いは専門家からのヒアリングでも一定程度確認されたと考えております。また、本研究会の直接の検討対象からは除かれていると理解しておりますが、行政による判断という観点からは、被用者保険の適用の場面でも労働者性は日々問題となりえますところ、行政判断の中でも、例えば労災発生後の支給決定の場面における労働者性の判断と、社会保険適用の場面におけるそれとでは、理論的には同じであっても、実際にはやはりアプローチが異なってくるものと推測しております。以前の研究会でも申しましたが、裁判所で労働者性が争われるのはごく一部のケースであることもふまえて、例えば労働者性の推定のような仕組みについて考えるとしても、どの場面で、誰によって、どのような効果をもたらすものとして労働者性判断の基準が用いられるのかという少しマクロな視点も有益と考えます。また、こうした視点は外国法を参照する上でも重要と考えております。
 次に、裁判例との関係では、本研究会としてこれをどう受け止めるかについて、ある程度方向性が見えてきたように感じております。すなわち、前述の通り多くの司法判断が昭和60年報告を参考にしていて、判断にある程度の一貫性が認められる一方で、昭和60年報告の当時は念頭におかれていなかった働き方やフリーランス保護法・特別加入のような新しいタイプの保護の存在との関係について、新たに考慮する必要性が指摘されました。また、例えば「業務の性質」の概念をめぐっては、本研究会で、そもそも昭和60年報告においてこの議論が有していた意義、その後の裁判例によってこの概念が広く用いられていることの意義について、批判も含む活発な議論が行われ、昭和60年報告とその後の裁判例による判断の蓄積をある意味では外在的に評価し、今日的な文脈で整理する必要も顕在化したと理解しております。以上をふまえ、労基研報告の内容を見直す場合、とりわけ、昭和60年報告を基礎に積み上げられてきた裁判例をある程度軌道修正する必要があると考えられるような場面については、本研究会における議論の取りまとめは、ある意味では裁判所に向けた一つのメッセージとなることが期待されるものと考えられます。そのため、これまでの裁判例をどう評価し、どのような趣旨で軌道修正すべきと考えるのか、その理論的バックグラウンドも含めて、構成員の間で意見が分かれる部分があるとしても、少なくとも柱となる考え方・エッセンスの部分についてはある程度明示的に抽出し、取りまとめることが、新たな判断の基準を提案するという観点で有益であろうと考えております。
 
 ここまででございます。
 事務局からの資料の御説明などについては、以上でございます。
○岩村座長 ありがとうございました。
 ただいま事務局のほうから説明をいただき、また、笠木構成員の御意見を読み上げていただきました。これを踏まえて議論を進めていきたいと存じます。
 ただ、資料1も非常に文量がございますことから、目次に沿いながら、それぞれ20分程度、時間を区切って進行していきたいと存じますので、御協力をお願いいたします。
 それでは、まず1番目としまして、目次にあります「1 国内、諸外国における労働者性判断にかかわる現状」について、御意見あるいは御質問等ありましたら御発言いただきたいと思います。
 では、芦野先生、どうぞ。
○芦野構成員 国内の状況を、裁判例も含めて、非常に丁寧に分析・整理していただいており、非常に参考になりました。
 それを改めて見て思ったのですが、民法の観点では、雇用契約の規定を適用するのか、あるいは類推適用するのかという形で、雇用類似であるとか労働者類似という概念を用いて、民法の任意解約の規定を適用できるかということが裁判上争われる場合があります。そこではやはり昭和60年の基準のような要素が幾つか示されることがあります。労働者に当たるかどうかという判断そのものの枠組みだけではなく、その周辺のところから見ていく、例えばアイドルや芸能人など、平成の後期ぐらいから増えてきた事例などではそのような事例が見られたりします。
 もちろん、当事者の主張によって、どの条文の適用が問題になるのかということが主にはなりますが、一方で、裁判所のほうでそういった要素を判断しながら、今回はこれは準委任として651条の適用で判断する、あるいは今回は雇用類似のものとして628条の類推適用でいくというような判断もあります。したがって、今後、ぜひ一度そういう整理もしてもよいのではないかと思いました。
○岩村座長 ありがとうございます。大変示唆に富む御意見だと思います。
 竹内先生、いかがでございましょうか。
○竹内構成員 まず、このような大部の文書を事務局において取りまとめていただきましたこと、お礼申し上げます。
 先ほど事務局から御説明があったことの確認のような形の意見を1つと、あと、アメリカ法に関して少し、参考ということで補足のことを申し上げたいと思っております。
 まず1点目ですけれども、これまでの議論の整理(案)として、本日、資料1としてお出しいただいている文書ですけれども、現段階の議論をまとめたもので、もちろん、今後、引き続いての議論に生かされるべきものであると位置づけられていると思いますし、私としてもそのように考えております。
 ただ他方で、これは事務局の説明で先ほどあった内容かとは理解しておりますけれども、同時に、この文書で書かれている内容であっても、適宜、レビューをして、書かれている内容について、今後の議論の中で修正等をしていくという必要がある場合には、そういう修正を踏まえて、その上で議論をしていく、そういう位置づけのものである、つまり、およそ全くの所与のものとなるものではないということについて、念のため、確認させていただければ幸いです。
 この確認をさせていただくことの趣旨の一つは、いずれかの時点でこの研究会としては最終的な報告書のようなものを取りまとめるかと認識しておりますけれども、当該報告書そのものとはまた別の文書であるということの確認もこの趣旨の一つに含んでおります。その点、よろしくお願いいたします。これが1点目でございます。
 アメリカのこともまとめて申し上げてもいいですか。
○岩村座長 どうぞ。
○竹内構成員 アメリカに関して、ページ数で言いますと、9ページから記載をしていただいているかと思います。
 別段、書いている中身そのものについて修正をするというわけではないのですけれども、3段落目で「一方で、公正労働基準法における労働者性については」と始まる段落がございます。管理権テストと経済的実態テストの2つのテストの話をしていて、経済的実態テストのほうが一般的な広い概念と理解をされているということが述べられています。
 その上での追加の補足的な説明ですけれども、裁判例などではこれらの2つの管理権テスト、経済的実態テスト、それぞれにおける具体的な判断要素の例として列挙されるものについては、実際のところは共通している、あるいは類似するというものも多くございます。全ての学説というわけではなく、とある学説の整理によればということになりますけれども、それぞれのテストの下で、被用者、日本でいう労働者に含まれる範囲の人々を示すベン図のようなもので、その円の広さ、面積ということで言いますと、経済的実態テストのほうが管理権テストの円の面積よりは広いと説明している学説があるのですけれども、同時に、その2つのテストがカバーしている被用者の範囲の円が、実際にはそれなりに重なっているという形で理解をされています。
 私の分析としてさらに付け加わる形になりますけれども、そういった円がかなりの部分重なっているということに関しては、具体的な判断要素が共通ないし類似しているというところも影響しているのではないかと考えられます。ここでは、確かに学説上、経済的実態テストのほうが面積としては広く理解されていると同時に、重なっている部分も多くあるのだということを追加して、あくまで参考として申し上げておきます。
○岩村座長 ありがとうございました。
 それでは、1番目の御質問について、事務局のほうでお願いいたします。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。ありがとうございます。
 基本的には、構成員がおっしゃった御理解のとおりかなと思っておりまして、先程の資料の御説明の中でも、現時点での御議論の状況などをまとめたものということを申し上げました。また、プラットフォームワーカー等については、海外の状況なども引き続き見ていく必要があるということも書かせていただいております。そうした中で、構成員は、「レビュー」とおっしゃいましたけれども、今後、新たな知見などが得られましたら、そうしたことも踏まえた形で御議論をお願いしたいということが、事務局としての思いでございます。
 なお、最終的な報告書といった話もございました。これについては、現時点で、事務局として、何か具体的なイメージがあるものではございませんけれども、先程申しあげたような考え方でご議論をお願いしたいということを事務局としては思っております。ありがとうございます。
○竹内構成員 どうもありがとうございました。
○岩村座長 それでは、新屋敷先生、どうぞ。
○新屋敷構成員 ありがとうございます。
 具体的には今のアメリカ法の説明とも関係するのですけれども、いただいている資料の3ページの(2)のアのところで、「近年課題となっているプラットフォーム就業者などの新たな働き方について」となっています。確かにイギリスですと、アプリによる制裁・拘束を指揮命令関係を基礎づける事情として認めて労働者性を肯定した事例も認められるのですけれども、イギリスだと経済的従属性は基本的には判断要素には入れないと最高裁判例で確認されています。また、アメリカ法の先ほどの経済的実態テストについても、1946年のUS v Silk事件判決、最高裁判決だったかと思いますけれども、それが基礎になっている、それに基づいてさらに細かな基準が示されていたと理解しています。
 プラットフォーム就労者と経済的依存の事情とは必ずしも結びつかないのではないかと思われるので、その点もうまく表現したほうがいいのではないかと思いました。アメリカ法であれば恐らく経済的実態テストが入っていたのではないかと思いますが、イギリスの場合だと、特に経済的従属性や依存性をそのまま労働者性の判断に入れるということはありませんので、もう少し分けて書いたほうがよいのではないかと思ったところです。
○岩村座長 ありがとうございます。
 おっしゃる趣旨は分かるのですが、他方で、各国の状況、それから、EUの状況というものはそれぞれなものですので、一番最初の書き出しのところであまり細かく書き始めると、その後の各国の状況との関係がややこしくなるかなというようにも思います。
 ですので、今、議論になっているのが主としてプラットフォームの下で働く方々ということで、そこにある程度焦点を合わせた形でここの部分は書いていて、あと、細かいところは各国の状況を見ていただくという構成だと思います。その点、御理解をいただければと思います。ありがとうございます。
○新屋敷構成員 ありがとうございます。
 また、イギリス法の状況から、資料に挙げていただくとはまた別だと思いますが、もう一点、今後の議論を考えていく上でも指摘しておきたい点がございます。国際動向の資料の中にも挙げていただいているPGMOL事件の最高裁判決に関係します。
 具体的には、義務の相互性という要件が、イギリスにおけるemployee概念とworker概念について問題となり、それが両概念に該当するかどうかを認める際のハードルとして長く理解されていました。しかし、裁判例の展開の中で、この義務の相互性の要件が次第に整理され、必ずしも期間の定めのない契約でない臨時的な雇用、日本の文脈で言うと正社員ではない臨時的な雇用・就労についても、義務の相互性が認められるということが、裁判例の中で明らかになっていっているということは言えるかと思っております。
 このイギリス法の発展から、前回の研究会でも少し御議論があったかと思いますが、正社員との比較により、いろいろな基準について厳格に設定するということはよくないといいますか、イギリスの状況に限った話ではあるかもしれませんけれども、国際動向からしても、正社員や期間の定めのない契約を前提として要素を捉えていく、観念するということについては、留意すべきではないかと考えております。
 以前事務局にお出しした資料においては特にこの点についてはお示ししておりませんでしたので、この場で補足させていただければと思いました。
○岩村座長 ありがとうございます。
 お忙しいとは思いますが、今、御説明いただいたものを、後ほどで結構ですが、簡単なメモで事務局のほうにお渡しいただけると大変ありがたいと思いますので、御検討いただければと思います。ありがとうございます。
 では、水町先生、どうぞ。
○水町構成員 ありがとうございます。
 今、ここでまとめられている文章について、特に修正をしていただきたいという点はありませんが、前提となる考え方として、後ろの具体的な検討にもつながるところですが、何のために労働者概念を議論しているのかという点。要は、保護の性質として、人的従属性があるものに対する保護なのか、経済的交渉力の格差のための保護なのか。それを画定するための労働者概念であり、場合によっては労働者には当たらないけれども、プラットフォーム就労者というもので画定して、一定の保護を及ぼそうとしているものも各国法であり、これからEU指令とか、ILO条約も今年採択されるかどうかという動きが出てくる。何のための保護であって、それを適用するためにどのような議論がなされていて、判断要素が組み立てられるのか、という視点を持って考えていくということが、後ろの議論にもつながってくるので、そこを少し意識しながら議論して、最終的な取りまとめにつなげていければと思います。
○岩村座長 ありがとうございます。
 ほかに、最初の1のところにつきまして、いかがでしょうか。
 よろしければ、続いて「2 昭和60年報告に示された判断要素の分析」に移りたいと思います。こちらにつきまして、御質問あるいは御意見がありましたらお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 では、川田先生、どうぞ。
○川田構成員 ありがとうございます。
 少し全般的な話も含まれてきますが、私もまず、こちらのこれまでの議論の整理というものは、まさに前回まで議論されてきたことを取りまとめるという性質のもので、この後、新しい検討の視点が研究会の中で出てくるとか、また、これは現に生じていると思いますが、関連する新しい裁判例や学説が出てくるということについては、今後、現時点の整理案に書かれた内容に付け加えられていくこともありうるということは前提になるかと思います。
 あと、私の発言との関係で言うと、見たところ、この第2の項目全般について、私の発言が基になっているのではないかと思われる部分について、基本的に的確にまとめていただいていると思いますが、より分かりやすくするために細かい表現などを、この後、提案させていただくことはあるかもしれません。
 その上で、全体的なことでもう一つ、これは今までの議論をまとめるとともに、これから検討する必要のある内容をできるだけ明らかにするという視点があると思いますので、今回の整理案をまとめていく際にも、これまでの議論の中で今後検討を深めていくべきということが明らかになってきたものについては、できるだけそのことが分かりやすくなるようにするということが考えられるかなと思います。これは一つの意見で、単純な議論のまとめを超えたことになるかもしれないので、どうしたらいいかという点に関しては違う考えもあると思います。
 あと1つ、特に、昭和60年報告の判断要素の分析については、その検討の課題として、例えば裁判例の判断が一貫していない、同じような事実関係の下で違う判断をしているので、そこのところをもう少し明確にできないかという問題や、あるいは労働者性についての基本的な考え方に照らし、裁判所の判断が適切でないかもしれない。これは、具体的にはいくつかのところで、例えば先ほどもありました、正社員の働き方を過剰にベンチマークにしているのではないかといった点や、諾否の自由について、何に対する諾否なのかということが必ずしも明確になっていないのではないかという点などがあると思います。
 ほかにも、昭和60年報告が想定していたものとは違うような事案が現れてきて、それに昭和60年報告を適用して判断しようとする際の方法が問われているという点であるとか、問題の性質もいくつかあると思いますので、議論の中で出てきた問題について、今後検討することをできるだけ明らかにするということから、整理できるところは整理したほうがよいかもしれないと思っています。
 ほかの細かい部分については別途、事務局に提案させていただくことはあるかもしれませんが、ここでは以上にいたします。
○岩村座長 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでございましょうか。
 では、水町先生、どうぞ。
○水町構成員 ありがとうございます。
 これまで議論した後に、いろいろ裁判例が出ています。これは川田構成員もおっしゃったように、これらをどの時点まできちんとフォローするか。今、大きな動きがあるので、その点を今後どうするかというのがあります。
 中身について、昭和60年報告と裁判例の位置づけについて、もう少し注意深く見ていったほうがよい点として、昭和60年報告では労働者性を肯定するための補強要素だと書いてあるところが、裁判例になるとそのために使われる要素だと昭和60年報告は言っていないのに、労働者性を弱めるという判断をしているものがあります。
 今の段階ではそこの区別が必ずしも明確になっていないので、そもそも、昭和60年報告が単に判断要素とするのではなく、例えば賃金が固定的であるとか専属性が強いということは、労働者性を補強する要素になると書いてあるけれども、弱めることには必ずしもならないという文脈で書かれているものについて、弱める事情として用いられている裁判例がそのまま整理されている。そもそも、昭和60年報告において補強する要素にはなるとされている点について、どういう意図で、どういう理論的な背景で書かれたのか。そのことの是非と、それとは違う方向に進んでいる一部の裁判例についてどう位置づけるかを、今後、後半の論点も含めて議論していくべきかと思います。
○岩村座長 ありがとうございます。その点は、また今後の議論の中で注意して検討していくということにさせていただければと思います。
 ほかはいかがでございましょう。
 特段、2についてなければ、次に進みたいと思います。
 それでは、次に、「3 本研究会にてこれまでに個別に議論した点」というところになります。こちらにつきまして、御意見、御質問等あればと思いますので、遠慮なくおっしゃってください。
 では、竹内先生、どうぞ。
○竹内構成員 どうもありがとうございます。
 この3全体、どこからでもよろしいということでしょうか。
○岩村座長 もちろん、それで結構です。
○竹内構成員 ありがとうございます。まず、2点申し上げたいと思います。
 1点目は、これまで川田構成員、水町構成員からも御発言があったところにも関連しまして、本研究会でこれまで個別に議論した点の領域に関わらないかもしれませんけれども、裁判例を分析する中で、それぞれの要素などについて傾向が見られるのではないかというところで、ここでまとめられていますので、この部分で申し上げさせていただきます。
もちろん、一定の検討対象を定めた上で裁判例を検討して、分析して、有益な視点を得ていく、ないしはそれを批判的に検討していくということはあり得るかと思います。
 ただ、裁判としては確定に至っていなくて進行中という側面もあって、取扱いが難しいところもあろうかと思いますけれども、非常にごく最近の裁判例の中で、少なくとも考え方としては注目されるような考え方が示されているものも見られているところです。そういう意味では、検討対象の裁判例のリストにきちんと含めるかどうかというところは議論の余地があるかもしれませんけれども、そういう最近の裁判例の動向でも、少なくとも参考になる考え方としては、もちろんこの場で議論した上でということにはなるかと思いますけれども、研究会の中で考慮していくことは当然あっていいのかなということを、私としても申し上げさせていただきます。
 次に具体的なことに関して、33ページの真ん中少し下の辺りで「一方で、判断要素の重み付けについては、裁判例からは、どの要素が重視されているか必ずしも明らかでなかったが、昭和60年報告で「「労働者性」の判断を補強する要素」とされているものを主な判断要素として労働者性を判断しているものはほとんどないと考えられ、「使用従属性」に関する判断基準を中心に労働者性を判断している状況が確認された」という記載がございます。細かい指摘といいますか、意見になってしまって恐縮ですけれども「ほとんどないと考えられ」という表現について、基本的な方向性については理解できるところでございますけれども、やはりこの点について気になるのは横浜南労基署長(旭紙業)事件の最高裁判決でございまして、以前も判示の順番にそもそも意味があるかという御議論もあったので、その点も含めて慎重に検討する必要はございますけれども、事業者性に関する事情から始まって、それなりの力点が与えられているようにも見えます。その後、指揮監督の欠如と拘束性の弱さというものを挙げた上で、公租公課の負担にもそれなりに力点を置いてしまっているように見えるところもございます。
 ですので、この「ほとんどないと考えられ」に関しては、事実の分析結果の記述として正確かどうかというところも議論がありますし、また、「考えられ」ということで、どのように評価するかという側面で、ほとんどないと分析・評価をするところもあり、事実の記述と評価の記述の両面から検討する余地があろうかと思っております。
 他方で、基本的な方向性としては理解できると先ほど申し上げましたけれども、では、この表現をどう修正しますかとなってくると、この文書自体が最終的に公表されるような文書とはまた別ですので、あまりこだわる必要はないのかもしれませんけれども、どう表現するかというのは難しいものがございまして、その意味では、裁判例としてはそういう補強要素について、それなりの重みを持って、ここで言うところの「主な判断要素」というものとも見えるような形で判断しているように読み得るものもある。他方で、それをどのように評価して受け止めるかということについては、最高裁判決であっても全くの所与の前提として考えるのではなく、その是非も含めて、引き続き、議論する必要があるというようなことを、この文書の中の表現に盛り込めるかは別にして、少なくとも参集者の一人からはそういう意見があったということを申し上げておきたいと思っております。
 先ほど御紹介いただきました笠木構成員の御意見の中でも、裁判例をどう受け止めるかについては、検討会として整理し直す必要がある場合には、そうしたことについて検討することが有益であるといった旨の御意見、御指摘があったかと思いますので、私もその御意見には賛成のところで、そういう観点からも、今、申し上げた、この記述をめぐることの理解について、1つ意見を申し上げさせていただきたいと思った次第です。
○岩村座長 ありがとうございます。
 では、川田先生、どうぞ。
○川田構成員 ありがとうございます。
 今の点にも関わるところで、今回の整理案を示されて改めて考えていたこととして、この判断要素の重みづけという言葉自体に多義的なところがある、すなわち問題になっているケースについて、全体として労働者に当たるか当たらないかを判断するときに主として見ている事柄という意味で重みという場合もあれば、労働者に当たるか当たらないかが微妙であるような事案において、結論を出すための最後の限界的な考慮のところで決定的な役割を果たしている事柄という意味で重みという場合などもあり得て、どちらの意味にとるかで、一つ一つの事案を見ても、重みという概念の捉え方が変わってくることがあるかもしれないと思いました。
 これをこの整理案にどう反映させていくのかというところまで思いが至っていないですが、今のことは、横浜南労基署長(旭紙業)事件を例にして言うと、例えば指揮命令、拘束性などは、基本的には判断している裁判官の頭の中に入っていて、そこをベースに見ている。ただ、ぎりぎりのところで労働者に当たるか当たらないかを判断する上で決定的なものが、自己の危険と計算の下に運送業務に従事していたということだと。全体的な判断の中ではやはり指揮命令、拘束性というものにそれなりの重みがあるけれども、結論との関係では事業者性が大きいということが起こり得る、そういった理解の仕方があり得るのかということです。
○岩村座長 ありがとうございました。両先生の御意見もよく分かるのですが、なかなか、それを文章化しようとすると非常に難しいなと思います。
 ただ、そういう御意見があったということは議事録には残りますので、それをまた参照していただきながら、先生方におかれましても御検討いただければと思います。
 では、水町先生、どうぞ。
○水町構成員 ありがとうございます。
 ページで言うと、55ページ以下の「(4)昭和60年報告では判断要素として個別に挙げられていない事情(「未分類」の事情)について」というところで少し補足をしておきたいのですが、「ア 労働契約により働く者との比較に関する事情」というものが、昭和60年報告の中にも部分的に入っていたり、かつての裁判例等の中にも一部用いられていたりしていますが、最近、この点を濫用しているといいますか、重視している裁判例が見られたりしている。業務の性質論についてはかなり今回の文書の中にも議論の記載がありますが、通常の労働者・正社員との比較というものが本来あり得べきかどうか、どういう意味を持つのかということを、もう少しきちんと議論したほうがよく、ここの部分がまだ手薄になっているので、今後、さらに議論できればと思います。簡単に言うと、比較というものは相対的なもので、絶対的なものではないので、労働者性という客観的実態に基づいて判断するときに、比較をどこまで重視していいのかということが一つのポイントになるかと思います。
 それと、56ページの下のほうで「イ 契約に至った経緯に関する事情」という中で、これもあまり記載がありませんが、57ページの一番上の行で「一定の要件を満たした場合に、当事者間の合意により労働者でないと判断してもよいケースもあり得るのではないか、といった意見があった」ということに対しては、労働基準法・労働契約法等の強行性に反するし、一定の要件を満たした場合というものも必ずしも明確ではないので、こういう経緯とか形式とか主観的な事情というものはやはり労働者性を判断する上で考慮してはいけないのではないかという意見を併せて書いておいていただきたい。
 もう一つ、公租公課の負担について、税金や社会保険上どういう取扱いがなされているかということについては、やはりこれもきちんと議論すべきで、昭和60年報告の中にも一部書かれていますが、裁判例で、これも必ずしも理論的に好ましくないような方法で使われているものもあります。労組法上の労働者性に関するビクターサービスエンジニアリング事件最高裁判決において、労組法は強行的なものであって、こういった公租公課の負担という事情は判断基準として重視すべきではないということを最高裁自身が示している。その後、労基法上の労働者性に関する判決が最高裁で出ていないので、労基法ではそれを敷衍していくとどうなるかということは必ずしも判例上明らかになっていませんが、労組法が強行法規であれば労基法も強行法規なので、形式的な事情で操作しやすい公租公課の負担というものは、労働者性の判断で重視すべきではないのではないかということを併せて議論をして、きちんと報告書の中に盛り込むことが必要かと思います。
 以上です。
○岩村座長 ありがとうございます。
 当事者の合意によって労働者でないと判断してもよいケースがあり得るのではないかという点については構成員からの御意見ということですので、それに対して、そうでない、それはおかしいのではないかという意見もありましたということは付け加えておいたほうがいいかなと思いますので、それは事務局と相談させていただければと思います。
 その他の御指摘の点は重要なところかと思いますので、今後の議論の中でまた検討できればと思います。
 では、竹内先生、どうぞ。
○竹内構成員 何度も恐縮でございます。
 今、水町構成員から御指摘があって、座長からも言及があった当事者の認識に関して、いろいろな意見があるということで少し書き加えるというお話だったですけれども、書き加えていただけるならば追加して申し上げたいこともございまして、当事者の認識であるとか契約に至った経緯といったものとして、現在いくつかの表現のされ方をしている事柄についてお話をしていますけれども、対象とする事柄をもう少し見極めて、考慮すべき、考慮すべきでないということを今後議論していく必要があろうかと思っております。
 と申しますのは、当事者の認識に関して、契約の性質、つまり、労働契約であるとか請負契約であるとか、そういう契約の性質決定に関して、当事者の認識、例えば書面でこれは労働契約でないであるとか、あるいは逆に請負契約だと書き込むであるとか、そういうものも当事者の認識ということもあると思いますし、当事者の認識と広く言えば、契約の内容でどういう義務を負っているかであるとか、労務提供ないしは契約における役務提供の中身に関わることについても、当事者の認識として言及する内容としては考え得るものかと思います。
 契約の性質に関しては、これは司法判断によって最終的には決定されていくものという意味では、当事者がこれは雇用契約ではありませんとか請負契約ですと書いたことが意味を持つべきとは私としては考えていないところはありますけれども、他方で、どういう役務や相互の権利・義務を設定しているかということに関しては、当事者がどう考えているかということが契約の文言なり、文言以外のところも含めて、反映されてくるところはあろうかと思います。
 そういうものまで当事者の認識として検討すべきでない事柄として排除されるべきかどうかは検討の余地がなおあろうかと思っておりまして、その意味で、私としては、契約の性質に関して、契約の締結経緯の中でそういうことに関して当事者がどういう認識であったかということについては考慮要素から排除されるべきではないかと考えておりますけれども、当事者の認識として、どこまでのものを念頭に置いて検討するかも併せて慎重に議論してほしいと考えております。そういう認識として、何を対象にするかも含めて、いろいろな意見があって、今後議論すべきだという方向で少し書き加えていただければありがたいと思います。
 以上です。
○岩村座長 今、おっしゃった点は全く新しいといいますか、今までの議論の中で出ていないので、それを今回の議論の整理に書き込むのは難しい気がいたします。
 少なくとも、今日の資料の中で書いてある、労働者性が認められるかに関して、労働者ではないと当事者が合意した場合、どうなのかという点については、先ほど水町先生の御指摘もありましたので、書き込むということにさせていただきますが、今、竹内さんがおっしゃったことはこれまでもあまり意見交換してきていないので、これを書き込むというのは、今の判断としては私自身は難しいかなとは思います。また今後の議論の中で御指摘いただいて、それで議論をするということでよろしいかと思います。
 新屋敷先生がお手を挙げていらっしゃるので、お願いいたします。
○新屋敷構成員 ありがとうございます。
 今の竹内先生の御議論とかなり重なっておりまして、当事者の認識とか、合意の意義とか、契約内容に当事者の意思内容がどう反映されているのかなど、そうした点の評価については、とりわけ、恐らく業務の性質をどう理解するかということに関わってくると思います。私の方では、業務の性質というのは、判断要素というよりも、恐らく労務提供の具体的な内容を見るに当たって業務の内容を見ます、というだけのワードとして理解しております。
 その点については、この研究会でもその位置づけや機能といったことは議論があったと思います。しかし、今、竹内先生に御整理いただいたように、それをどう見ていくかということは、今後の研究会の中で議論していくという方向で理解していったほうがよいと思います。もっとも、これまでの議論の整理としては入れないと理解しておいたらよいということでよろしいでしょうか。
○岩村座長 はい。先ほど申し上げたのは、今、新屋敷先生がおっしゃっていただいたような趣旨であると考えておりますので、御理解をいただければと思います。ありがとうございます。
○新屋敷構成員 承知しました。ありがとうございます。
○岩村座長 芦野先生、どうぞ。
○芦野構成員 ほぼ同じことの繰り返しになってしまうところもありますが、労働契約で捕捉されている者が労働者であると考えた場合に、民法では契約の解釈をするに当たって、当事者の合意内容そのものが契約の解釈に影響を与えるということはほとんどありません。
 どのような役務の内容であるとか、あるいはある条文の適用を排除できるかどうかという問題では、当事者の合意の問題が出てきますが、契約の性質そのものについては、当事者が例えば売買と言っていても、どう見てもこれは売買ではないだろうと判断されることもあり得ますので、基本的には客観的基準に基づいていくのが筋だろうと思います。そういう意味では、先ほどの水町先生の御指摘のような御意見もここに書いていただくのが適切ではないかと思います。
○岩村座長 ありがとうございます。
 今、ぱっと頭の中で例が浮かばないのですが、一定の要件の下で、例えば当事者の合意というものを要件としつつ規制から外れるというものは、今、労基法でも厳しくなっていますが、かつて労働時間などについてあったので、恐らく、ここで言われていた御意見もそういうものを念頭に置いたものなのかとは思います。
 それはそれであり得るのかもしれないとは思いますが、他方で水町先生が御指摘のように、これは安易に認めると、労基法の規制から逃れようとしてあの手この手を使うということにもなってしまいますので、そこはそことして、もしそういう方向を考えるのであれば、やはりかなり慎重な検討が必要だろうとは今のところは思います。
 では、川田構成員、どうぞ。
○川田構成員 度々ですみません。
 今の議論も踏まえて、一つは55ページの労働契約により働く者との比較、それから、56ページの契約締結に至った経緯に関する事情について、これまでの議論の反映を逸脱するかもしれないかなと悩んでいましたが、これに関連した裁判所の判断で割とよくある重要な考え方と思うのが、以前労働契約に基づいて労働者として働いていた人が、形式上労働者でないという形になったけれども、その実態がそれによって大きく変わったわけではないというようなことから労働者性を肯定するという考え方があり、これは取り上げた裁判例の中にそのものずばりというものが出てきていない気もしていて、その結果、今、挙げたような考え方というものは現在の整理の中には出てきていないのですが、そういうものにも言及するということは検討されてもよいのではと思います。裁判例を追加することとも関わるのかもしれませんが、そのように思ったというのがまず一点です。
 もう一点は、議論されていた契約に関わることで、これは私も今後の段階で議論の対象になる話だと思っていたのですが、いろいろ議論が出てきたので一言だけ述べたいと思います。私も労組法については労働委員会で労働者性の判断に携わったことがあり、そういうところで自分自身が経験したこととして、客観的な実態とはいっても、証拠として契約書が出てくるのは必ずしも珍しくないことで、当事者の契約ないし契約書を、客観的な判断が基本である労働者性判断の中でどう扱っていくのかということは、実際の裁判等の場での具体的な判断の在り方を念頭に置きながら、今後検討を深めていく必要があるということを、関連して述べておきたいと思います。
 以上です。
○岩村座長 ありがとうございます。
 第1点目の御指摘というものは、裁判例でぴたりというものはないかなと思いますが、比較的、講壇事例としてはよく言われる例かなと思います。
○川田構成員 名目上取締役である者について従業員兼務取締役等の形で労働者性を認め得るかとかのケースだと何かあったような気がします。
○岩村座長 そういうものはあるのかもしれません。ある意味、正規従業員との比較とも距離の近い議論であるので、そういうことをテイクノートしつつ、またこの後の議論で御検討いただくということにさせていただければと思います。
 それでは、島田先生、新屋敷先生、それから、小畑先生という順序でお願いしたいと思います。それでは、島田先生、どうぞ。
○島田構成員 ありがとうございます。
 先ほどから出ている「イ 契約に至った経緯に関する事情」のところで「一定の要件を満たした場合に、当事者間の合意により労働者でないと判断してもよいケースもあり得るのではないか」というのは、私が第1回のときに発言した内容をまとめていただいたものかと思います。私としては、岩村先生がおっしゃったように、高プロのようなものを若干イメージしていたわけですけれども、具体的に制度を詰めて主張したいというわけではなく、どちらかというと、厳格に客観的な事情を見て労働者性を判断するということが、時に労働者にとっても必ずしも利益となっていない現状があるのではないかという認識から考え、「あり得る」と表現したものです。
 ただ、こういう資料として「意見があった」と書いてしまうと、インパクトが強過ぎるようでしたら、これは丸ごと削除していただいても構いません。
○岩村座長 ありがとうございます。
 申し出がありましたので、事務局と相談して、どう取り扱うかということは判断させていただければと思います。ありがとうございます。
 それでは、新屋敷先生、お願いします。
○新屋敷構成員 ありがとうございます。
 1点は、先ほどの2のところで、希望として述べておくべきだったかと思ったのですけれども、具体的には28ページの専属性の判断の点なのですけれども、確か第2回のヒアリングのときに、労働側・使用者側双方の弁護士が、専属性については議論してもあまり意味がないのではないかということを一致しておっしゃっていたように記憶しておりまして、その点、これからの議論といいますか、判断要素を整理していく上では結構重要な点かと思っておりますので、そこの点について加えていただくことは考えていただけないかと思ったのが一点です。
 もう1点は、先ほどの島田先生のお話、また、水町先生や竹内先生、芦野先生、川田先生の御意見を伺いながら、私の理解では、労働者性の判断において、当事者意思や契約、書面の意義などは、関係がない、実態を見て判断すると一般に言われつつも、実際には、先ほど川田先生が御指摘のように、労組法上の労働者性を判断するに当たっても、具体的な判断に当たっては契約書の内容を見たりするということになるので、結局、恐らく当事者意思をどのようにどこまで見るかというところが問題で、重要な論点なのではないかと考えています。言い換えると、当事者の合意や契約書面を見ない、実態で判断するといった場合に、当事者の合意の内容を示す契約などの内容のどこまでを判断に入れていくべきなのかということは、議論、整理して、お示しすることはすごく重要ではないかと思います。
 ですので、先ほど竹内先生がおまとめいただいたように、当事者意識というときにどこまでを意味するのかということをはっきりさせるということも、この研究会においては重要であると思いますし、私は島田先生がこのように御意見いただいているものをさらに詰めて議論していくということが、むしろ重要なのではないかと思いました。
 すみません。後者のほうは感想も入れて恐縮なのですけれども、以上になります。
○岩村座長 ありがとうございます。
 第1点の専属性の程度のところは、ここではたまたま、構成員の意見とか、それから、ヒアリングでどういうものがあったということは書いていないのですが、もう一度、ヒアリングでお話しいただいた内容をチェックしまして、書き込めるようであれば書き込むということも検討したいと思います。
 それでは、小畑先生、お願いします。
○小畑構成員 ありがとうございます。今回の趣旨というものが、今までの様々な、議事録でありますとか資料を正確に反映してまとめていただいた。それを確認するというものが趣旨かと思っておりました。そのことに関しては、非常に大部にわたるものを要領よくまとめていただいて大変感謝しております。それについては異論があるということではございません。
 本日、それと加えて、今後の方向性のような御議論も既に御意見として出ているかと思います。先ほどの当事者の認識の話は、座長におまとめいただいたような方向で私は異論ございません。それから、水町先生から御指摘がありました公租公課とか社会保険のお話について、少し議論したほうがいいのではないかということは私も全く同じことを考えております。
 それから、もしかしたら4のところで発言すべきなのかもしれないのですが、こちらの昭和60年基準というものが行政においても大変重要視されているということとともに、やはり総合判断を迅速に行っていくために、行政でその基準をどのように活用していくかということに関して、様々な要素の中で分かりやすい、非常にはっきりと結論が出せる要素というものに、つい目が行きがちだというところもあると考えております。
 というのは、例えば雇用保険に入っているかどうかという点だとか、労働者を雇っているかどうかという点だとか、そういった非常に分かりやすい点をつい重く見るところもあるのかもしれないと思いますが、そうしたことについては、先頃からずっと議論が行われておりますように、当事者によって操作可能なものであり、非常にリスクがあると、そういった点に注意をしていく必要があるということも重要。そうしたことからすると、昭和60年基準が広く使われ、その中にたくさんの要素が並んでいる。それをどのように活用するかについて、もう少し骨組み、そして、その枝葉の使われ方みたいなものを整理していくことをこれから意識したほうがよいかということを考えた次第でございます。
 以上でございます。
○岩村座長 ありがとうございます。今後の進め方の関係で、貴重な御指摘かなと思います。
 ほかはいかがでございましょうか。
 それでは、最後の「4 その他論点」に移ることにいたします。こちらにつきましても、御自由に御意見、御質問等をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 水町先生、どうぞ。
○水町構成員 ありがとうございます。
 これは、労働基準関係法制研究会においても、労働者性について今後どうするかというときに、労働者性の推定と、あとはチェックリスト方式というものをさらに専門的な検討を行うということで、この研究会ができるきっかけになったところですが、やはり今後はこの2点をきちんとさらに検討していくべき。
労働者性推定については、プラットフォーム労働についてのEU指令に基づいて、これから国内法化が進んでいくので、EU加盟国が国内法でそれぞれどういう制度にしているかということを、この研究会と並行してきちんと調べる。それがチェックリスト方式の検討にも活かされるのではないかと思います。
 チェックリスト方式については、どういう場面で使うのかということが一つ。例えば当事者が契約を締結するときに使う、行政の窓口で相談が来たときなどに使うなど、使える場面を想定すること。そして、中身についてはいくつかの点で考慮すべき重要なポイントがあって、一つは、先ほど労働者性の判断要素の重みづけの話がありましたが、労働者性の判断要素の中で、これとこれはやはり重要な要素ということが、例えばこれまでの裁判例・判例の中でも言われているところがあれば、それがチェックリスト方式の中で重要なポイントになると思いますし、例えば先ほどのEU指令の国内法化の前提として、コントロールとダイレクションというもので、支配・監視されているという点と、指揮命令を受けているという点が重要なポイントになるということがEU指令自体に書かれているので、EU加盟国の国内法化の検討の中でもチェックリスト方式の中で重視すべき点が出てくるかもしれない。
 それと、先ほどの小畑先生の話ともつながりますが、情報収集能力が労働者と使用者の間で大きく違うので、裁判で言うと証拠をどちらが持っているかというところにも関わってきますが、例えば労働者が、我々は労基法上の労働者だ、労働契約法上の労働者だというときに、労働者側で集めやすい証拠についてはチェックリスト方式の最初のチェックのポイントにするとか、そういう情報収集能力の格差の点でどうチェックリストをつくるかという点も少し具体的にイメージしながら、これから議論をしたり、取りまとめに向かってほしいと思います。
 以上です。
○岩村座長 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。
 小畑構成員、どうぞ。
○小畑構成員 ありがとうございます。
 4のお話をする際に、いわゆる労働基準法の民事的な性質とともに、行政法的な性質、刑罰法規でもあるといったような前提、そして、労働基準法上の労働者というものがほかの法律においても労働者性として使われ、それが跳ね返って、事業者や事業主、使用者に当たる人のいろいろな義務というものを考えていかなければならないことになっておりますが、4との関係で申しますと、そういった刑罰法規でもあるといったような性質というものを、例えばそれを外して考えたらどうかであるとか、そういったきちんと前提を整理した上で議論していくことがとても重要なように思いまして、私自身、自戒しながら、そこを検討していく必要があると考えている次第でございます。
 以上でございます。
○岩村座長 ありがとうございます。
 竹内先生、どうぞ。
○竹内構成員 ありがとうございます。
 これは4の項目にうまく入る話か、あるいはこれもまた今後の議論で出すべきとなってしまうかもしれませんけれども、この第2の冒頭である、資料1で言いますと3ページ目のところでは「本研究会の検討事項の一つである「労働基準法上の労働者性に関する事例、裁判例等や学説の分析・研究や、プラットフォーム就業者を含む新たな働き方に関する課題や国際的な動向の把握・分析」について、本研究会における現在の検討状況は以下のとおりである」という形で第2という部分が構成されております。
 国際的な動向のところでは紹介がございますけれども、今の読み上げたところとの関係で言うと、この研究会の非常に重要な焦点、そして、実際に力点が置かれているところが労働基準法上の労働者性の判断基準であるということはもちろん認識をしているのですけれども、他方で、プラットフォーム就業者について、労働者か否かという問題ももちろんございますし、また、諸外国とまとめて言ってしまっていいかは議論の余地があるかもしれませんけれども、諸外国を見ると、少なくとも一部の国においては、労働者であるかどうかを問わない、あるいは明確に判断しない、ないしは労働者でないことを前提にしつつも、一定の保護を与えるという法制も存在しているということが、この文書の中でも諸外国の動向の中で報告されているところでございます。
 その関係で言うと、この研究会の最終的な提言事項にどこまで入ってくるかという点は今後議論したいと思いますけれども、4などの項目で、そういった労働者でないとしてもといいますか、プラットフォーム就業者に関しての保護の動向のようなことについてまとめたものはあってもよいかということも併せて思いましたし、これは今後に向けての個人的な希望になってしまいますけれども、労働者性の判断基準のみにとどまらず、そういう点についても議論ができていければありがたいと思っております。
 以上です。
○岩村座長 ありがとうございます。
 諸外国の動向についてのまとめを、これから書いて入れるというのは実際上難しいかなと思います。今後の議論を受けながら最後の報告書でどこまで書けるかということだと思います。
 先ほど水町先生が御指摘のように、少なくもEU加盟国との関係では、指令が採択されて、今後、国内法化が各国で検討されるということになるので、EU法がどの程度、労働者性の問題に影響を及ぼすかというものは今後を見ないと実際のところがよく分からないということもあり、それもどこまで分かるかという問題もありますけれども、今後の検討の中で観察しつつ、最終的な段階でどこまで書けるかということかと思います。
 そんな感じが私はしておりますので、今後の検討の中でまた適宜、竹内先生のほうからいろいろ御指摘いただければと思います。
 ほかにはいかがでしょうか。
 では、芦野先生、どうぞ。
○芦野構成員 最後の4がどうしてもまだ記述として弱いところがあるのは、今後、これはさらにやっていかなければならないこともあるからだろうということと理解しております。書かれていることは、こういう議論をなされて、きちんと整理されているなと思います。
 そうすると、フリーランス新法という新しい法律ができたので、それとの関連を考えてもよいのではないかと思います。この点については、例えばフリーランス110番における事例において、これはフリーランスではないから労働基準監督署に行ってくださいであるとか、これは労働者には当たらないから、こちらでやりましょうというような判断が出てきているのではないのかと思います。そういった新しい法律ができたことによって、その部署の役割が明確になったようなところがいくつかあると思いますので、そういう連携をさらにここの部分でしていければよいのではないかと思いました。
○岩村座長 非常に重要な御指摘だと思います。
 事務方で、そういう作業は実際上できそうかというものだけ感触を伺えればと思いますが、いかがでしょうか。
○労働条件確保改善対策室長 どこまでどのようにできるかというところはあるかと思いますけれども、努力したいと思います。
○岩村座長 よろしくお願いいたします。
 ほかはいかがでございましょう。よろしいでしょうか。
 最後、もし全体を通じて何か御意見等あればと思います。
 では、竹内先生、どうぞ。
○竹内構成員 意見ではなくて純粋な質問になりますけれども、今回にとどまらず、もう少し議論をしてからという形で初めのほうでもお話があったかという気はしておりますけれども、この「これまでの議論の整理」という文書について、研究会での議論が終わったとなった場合には、この文書はどういう扱いになるのでしょうか。純粋な質問としてお伺いさせていただく次第です。
○労働条件確保改善対策室長 事務局でございます。
 研究会の場でご議論をいただいた後も、会議後に、細かいところの確認や手直しがあり得るのではないかとは考えておりますが、厚労省のホームページ、具体的には、研究会のウェブページだと考えておりますけれども、そこで公表するのが通常のやり方ではないかと考えております。なお、その際は、今も、「第2」の冒頭のところに書いておりますし、まだ「第1 はじめに」のところなどは、ブランクとなってございますけれども、この文書の位置づけは、はっきりとさせることが重要ではないかと、そういうことは前提ではないかと考えております。
○竹内構成員 ありがとうございます。
○岩村座長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょう。よろしゅうございましょうか。
 ありがとうございました。それでは、一通り御議論いただいたと思いますので、今日の議論はここまでということにさせていただきたいと思います。
 今日は、このこれまでの議論の整理(案)について御意見を頂戴いたしました。いただいた御意見の中で、この案に書き込めるものと、それから今後、さらに検討を進めていく上で御議論いただくものがあったと思いますので、事務局のほうで、今日の議論も踏まえて、特にこれまでの議論の整理(案)にどのように書き込むか内容を検討いただき、さらには「第1 はじめに」と、それから「第3 今後の研究について」という点についても起案をしていただいた上で、資料の準備などを次回に向けてお願いしたいと思います。
 それでは、第5回「労働基準法における「労働者」に関する研究会」は、今日はこれをもちまして終了とさせていただきたいと思います。構成員の先生方におかれましては、お忙しい中、御参集をいただいて、活発に御議論いただきました。本当にありがとうございました。
 それでは、これで散会といたします。