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2025年11月18日 第205回労働政策審議会労働条件分科会 議事録
労働基準局労働条件政策課
日時
令和7年11月18日(火) 14:00~16:00
場所
厚生労働省講堂
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館2階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館2階)
出席者
- 公益代表委員
- 安藤委員、川田委員、神吉委員、首藤委員、原委員、水島委員、山川委員
- 労働者代表委員
- 亀田委員、櫻田委員、佐藤(好)委員、椎木委員、冨髙委員、春川委員、古川委員
- 使用者代表委員
- 鬼村委員、佐久間委員、鈴木委員、田中委員、鳥澤委員、兵藤委員、松永委員
- 事務局
- 岸本労働基準局長、尾田審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、松下総務課長、川口労働条件政策課長、先﨑労働関係法課長、玉田労働時間特別対策室長、中島労働条件政策課長補佐
議題
(1)労働基準関係法制について
(2)その他
(2)その他
議事
○山川分科会長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから、第205回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の分科会は会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で開催とさせていただいております。
本日の委員の御出欠ですが、労働者代表の松田惣佑委員、使用者代表の佐藤晴子委員、公益代表の黒田祥子委員が御欠席と承っております。
それでは、カメラでの頭撮りはここまでとさせていただきます。よろしくお願いします。
では、本日の議事に入ります。議題1「労働基準関係法制について」でございます。では、まず、資料につきまして事務局から御説明をお願いします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
まず、資料No.1-1、1-2に基づいて御説明させていただきます。論点ということで、今回、議題としましては、テレワーク等の柔軟な働き方、副業・兼業、管理監督者、労働時間の情報開示でございます。
1ページでございます。
まず、「テレワーク等の柔軟な働き方」についてでありますが、現行のフレックスタイム制は、全ての労働日の始業・終業時刻を労働者本人の決定に委ねるということが導入の要件となっています。このフレックスタイム制によって、始業・終業時刻を労働者が決定する日と使用者が決定する日、具体的には使用者がといいますか、就業規則や労働契約等によって労働する日が決まっている。こういう日が混在することについて、どう考えるかという論点でございます。
また、この始業・終業時刻を労働者が決定する日と、今、申し上げた使用者が決定する日の混在を認める場合には、どの程度混在することを認めるべきか。また、それぞれの労働時間管理をどう考えるか。このような論点でございます。
続きまして、「副業・兼業」についてであります。
労働者が副業・兼業を行う場合には、割増賃金の支払いに係る労働時間を通算することとされておりますが、この副業・兼業を行う労働者の割増賃金の支払いに係る労働時間の通算の在り方について、どう考えるか。
もう一つ、副業・兼業を行う労働者の健康管理について、どう考えるか。このような論点を立てさせていただいております。
2ページです。
「管理監督者」について、本来は管理監督者等に当たらない労働者が管理監督者等と扱われているような裁判例や個々の監督事例があるということ、管理監督者等に特別な健康・福祉確保措置というものは設けられていないということを踏まえて、この管理監督者等の要件、健康確保について、どう考えるかという論点でございます。
「労働時間の情報開示」につきましては、労働時間等の企業内部への情報開示については、企業内部における労使協定等の手続において重要である一方で、企業外部への情報開示について、長時間労働の是正という観点からは、正確な情報が外部に開示されることが望ましいと考えられるが、事業場の実態は様々であるという中で、この外部への情報開示について、どう考えるか。このような論点を出させていただいております。
続きまして、資料No.1-2、関係する資料でございますが、まず「テレワーク等の柔軟な働き方」につきましては、フレックスタイム制について、2ページのデータにおいて、労働者の11.5%が適用されています。
それから、3ページ以降では、制度の概要あるいは現行規定、ガイドライン等を掲載しております。
8ページ以降については、テレワークに関するデータ、主に労働時間制度等に関する実態調査等のデータを掲載させていただいております。
続きまして、「副業・兼業」につきまして、16ページ以降でございますが、16ページは現状の規定、事業場を異にする場合でも通算するという規定あるいはその行政解釈等、さらには、副業・兼業の促進に関するガイドラインを掲載しております。
24ページ以降がデータです。これはJILPTの副業者の就労に関する調査等のデータを掲載しております。
データが続きまして、36ページには、一部、民間の調査でありますが、パーソル総合研究所のデータということで、副業・兼業に関する企業の導入割合等のデータの新しい数字も載せております。
以下、副業・兼業の関係のデータを掲載しておりますが、その上で、49ページからが「管理監督者」関係の資料でございます。管理監督者の概要、それからこれまでの裁判例をいくつか掲載しております。
51ページには少しデータと、53ページには健康・福祉確保措置について、他の制度についての比較というもの等を載せております。
最後、労働時間の情報開示につきましては、58ページ以降ということで、まず、58ページ、他の制度の情報開示における法定開示項目等のデータを掲載しております。
資料No.1-2については以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。労働時間法制の具体的課題について、本日御議論いただきたい論点と、各論点に関する現行制度やデータの資料をお示しいただきました。
以上を踏まえて議論を進めていきたいと思いますけれども、複数の論点がございますので、資料No.1-1で示していただきました一番最初の「テレワーク等の柔軟な働き方」という論点につきまして、まず御議論いただきまして、残る3つの論点については、その後、それぞれ時間を区切って議論してはいかがかと思います。
では、まず、「テレワーク等の柔軟な働き方」という論点について、御質問、御意見があればお願いいたします。オンライン参加の皆様におかれましては、御発言の希望があります場合にはチャット機能でお知らせください。御質問、御意見等ございますでしょうか。
では、冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
柔軟な働き方に関して全般的な考え方を申し上げておきたいと思うのですけれども、労働側としては、この間も、基本的に現行の様々な制度で柔軟な働き方は十分できるということを発言しております。労働者にとって柔軟な働き方の選択肢が増えること自体は、必ずしも否定するものではないと思いますが、現行のフレックスタイム制と通常の労働時間制度を組み合わせる制度について、もし検討を進めるということであれば、それぞれの制度において必要な労働者保護が図られるルールが定められていると思いますので、そのことを十分に踏まえる必要があると考えております。
また、仮に、そうした新たな制度を適用される場合に、働く者にどのような影響があるのか具体的に検証していく必要があると思っております。
加えて、関連のデータも入っておりますので、テレワークについても意見を申し上げておきたいと思いますけれども、11ページなどを見ると、約1割の労働者がテレワークを行っている現状があります。連合でテレワークに関する調査を行ったところ、テレワーク時に時間外・休日労働を行った場合に「残業代の支払いを会社が認めない」との回答は6割近くあり、不適切な運用実態も明らかになっております。まずは、不払い残業全体の根絶に向けた監督指導の徹底が重要だと思いますし、罰則付での労働時間の適正把握の義務化も検討すべきではないかと思っております。
いずれにしましても、新たな制度を検討するに当たっては、その利便性だけではなくて、労働者保護の実効性をどう担保するかという観点からの検討が必要だと思いますので、意見として申し上げておきたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
オンラインで鬼村委員からの御発言希望がございます。お願いします。
○鬼村委員 ありがとうございます。
テレワーク等の柔軟な働き方の部分で意見申し上げたいと思います。
まず、12ページで、フレックスタイム制を導入されている企業の約5割が、フレックスタイム制と通常勤務日を組み合わせる制度が必要だと回答されています。以前の分科会でも申し上げましたが、働き方のフレキシビリティを高めていくことが、今、様々な業界で喫緊の課題になっていると考えます。
我々、特に製造現場ということを考えますと、従来は生産効率重視のために、産業単位で分業して、企業の中では設備・機械ごとに人を当てて、それに併せて働き方を後追いでつくっていくという仕方をやってきたと思います。これによって、我々製造業は効率を高めて、競争力を高めてきたという側面はもちろんありますが、昨今は人手不足等の環境を踏まえますと、産業全体でもっと人を中心にした働き方に変わっていかなければいけないということを、いろいろな場面で議論させていただいております。そうしますと、労働者一人一人のニーズに合うような勤務形態を、製造業の製造現場であってもいかに実現していくかということが課題になっていると思います。
他方、皆様御案内のとおり、現在のフレックスタイム制では、労働者が就業時刻を決める日と会社が決める日というものの混在はできない。もしこれがある程度認めていただけるようになりますと、多くの方に柔軟な働き方を企業としては提供できるということになるかと思いますので、ここはぜひ議論していきたいなというふうに思います。
それから、現場の製造ラインで働く方々にもフレックスタイム制を広げていこうと考えますと、現状の働く時間が固定的に定められている働き方をベースに、どこまでフレックスの日を入れられるかという検討が、企業としては通常のアプローチになるかと思いますので、その混在の度合いについては、フレックスの日に対して通常の勤務日を例えば半分等と限ることなく、多様な混在の在り方を認めていただけると非常にありがたいと思います。
最後に1つ。労働時間管理の在り方については、適切な健康管理がもちろん大前提ではございますけれども、管理の負担感という部分にも配慮した仕組みとなると非常にありがたいなと思いますので、ここもぜひ議論させていただきたいと思います。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
オンラインで何人かの発言御希望がございます。まず、鳥澤委員、お願いします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
資料の取りまとめ及び御説明、ありがとうございました。私からもフレックスタイム制について意見を申し上げます。
フレックスタイム制については、中小企業においては少ない人員での事業運営となるため、事務作業など複数業務を他の労働者と連携して実施する労働者が多いことから、フレックスタイム制と通常勤務日を組み合わせることのできる制度のニーズは一定程度存在し、混在した運用を可能とすべきと考えます。仮に、例えば普段は営業職だけれども、締め日に関しては事務事業をするといったケースも、中小企業では当然想定されますので、混在が必要ではないかと考えます。
一方で、先ほど冨髙委員からのご発言にございました通り、テレワークの場合などに不適切な労働時間管理が行われることがないよう、適切な運用方法の検討が求められます。併せて、中小企業からフレックスタイム制の導入や管理が煩雑であるという声も多く聞かれます。多様で柔軟な働き方に資する制度の導入や運用に向けた支援の強化が必要であると考えます。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
続きまして、安藤委員、お願いします。
○安藤委員 安藤です。よろしくお願いします。
始業・終業時刻を労働者が決定する日と使用者が決定する日を混在するというものを認める場合に、どの程度混在することを認めるのかといったことが論点になり得ると思います。その際に、フレックスタイム制のメリットを生かすために、使用者が決定する日が多くなり過ぎない、例えば半数程度といったものを考えるというのは自然な発想だとは思います。ただし、フレックスタイムをうまく使う際に、テレワークというものをもう少し考える必要があるだろう。テレワークの場合に、労働者が始業・終業を決める。そして、通常の出勤日は使用者が決めるといった就業方法、活用方法も考えられるので、テレワークの頻度に関するデータも念頭に置いて議論する必要があると思います。
資料No.1-2のスライド10を見ますと、テレワークの頻度について、週3日以上よりも週1日、2日、不定期といったものもあり得る。週5日勤務として週3日以上じゃないということは、週3日出社して、その場合には始業・終業時刻を使用者が決める。週1日、2日のテレワークのときには労働者が決めるといったものは、半分以上、労働者が決めるなどとしてしまうと、これは実現できないといったこともあり、考え方としては、使用者が決定する日が多くなり過ぎないようにといったことが必要ではあると思うのですが、週1日、2日のみテレワークを行う。そして、テレワークのときには、自分で始業時刻・終業時刻を決めたいといったニーズも考えられると思う場合には、このようなたまにテレワークで働く労働者でも使うことができるような制度設計ということも、十分に考慮する必要があるかなと感じました。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
続きまして、水島委員、お願いします。
○水島委員 ありがとうございます。水島でございます。
フレックスタイム制の意義は、労働日の始業・終業時刻を労働者本人の決定に委ねることにあると考えます。フレックスタイム制の観点からすると、混在はすべきでないと考えます。他方で、労働基準関係法制研究会でも議論がありましたが、在宅勤務の日に関し、労働日の始業・終業時刻を労働者本人の決定に委ねることはニーズがあるように思いますし、合理的とも思われます。通常の働き方に部分フレックスタイム制を導入するということであれば、理解いたします。現行のフレックスタイム制を変更するのではなく、テレワークを念頭に置いた新たな制度として、労基法32条の3とは別に部分フレックスタイム制を導入する方向で導入の可否を検討すべきと考えます。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
佐久間委員、お願いします。
○佐久間委員 ありがとうございます。
テレワークは新型コロナのパンデミックから急速に発展し、各種の施策とか支援策の後押しもあり、導入が推進できる企業にはかなり導入され、また活用されてきました。しかし、企業の中でも、パソコンの画面越しでは意思疎通に欠けるとか、管理しにくい等の意見もあり、最近ではテレワークを廃止し、または頻度を極端に抑える等の活用により続けている企業も増加していると思います。しかし、テレワークを経験したことにより、通勤時間がなくなることで、必要な作業を同時にこなせるなどのプラスの側面がなくなったわけではありません。今後も推進していけば、効率化、そして安全・安心の観点からも必要な就業形態の一つであると考えています。これは言うまでもありません。
そして、今回議論になっていますフレックスタイム制度の関係ですけれども、労働者自身が始業・終業時刻を決定でき、比較的自由な形態で仕事を行えることから、精神的な面でも効率化が高まるのではないかと思います。そこで、このフレックスタイム制の清算期間において、労働者が始業・終業時刻を決定するというものと、使用者が決定できる日を混在させて推進していただくということは、使用者側にとっても非常に管理しやすいような形態になるのではないかと思います。使用者側としても、始業・終業時刻を決めることができる、いわゆる「固定日」みたいなものを設計できるというのは、就業の機会と有効性が増すのではないか、と思っていますから、制度の改正について、私は賛成させていただきたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
では、まず古川委員、お願いします。
○古川委員 ありがとうございます。
フレックスタイム制と通常の労働時間制度を組み合わせる制度について御意見を申し上げたいと思います。労基研の報告においては、テレワークが検討の出発点だったと思いますので、まず、テレワークの現状を見てみますと、今回の資料No.1-2の9ページでは、そもそもテレワークを行う労働者が全体の1割ということですけれども、そのうちの半数が不定期、また3割が週1~2日となってございます。
また、資料の12ページにおきましても、混在制度の必要性については、「どちらでもよい、わからない」との回答が最も多くなっておりますし、フレックスタイム制適用ありに限れば、わずかに「必要である、ある方がよい」が高い割合であるにすぎないと思います。テレワークと出社勤務が混在する場合においても、単に現行のフレックスタイム制を導入すれば、相当程度対応は可能ではないかとも考えられます。
13ページの結果で注目すべき点については、「対象労働者がいない」場合の理由として最も多いのが、「労務管理が煩雑である」との回答だと思います。通常の労働時間制度との混在を認める制度の検討自体を一概に否定するものではございませんが、現行のフレックスタイム制よりもさらに複雑な仕組みとなり、労働時間管理や割増賃金の支払いといったことなども一層煩雑になるのではないかということが懸念されます。労基研の報告、または使側委員からも発言がありました、シンプルかつ実効性のある形にしていくとの方向とは逆行してしまうのではないかとも思うところであります。
そうした点を踏まえますと、部分的なフレックスタイム制は、必ずしもテレワーク時がフレックスである場合だけではなくて、職場への出勤日がフレックスであるという場合も想定されます。仮にフレックスタイム制と通常の労働時間制度を組み合わせる制度を検討するとしましても、実務的にもシンプルで、そして実効的な労働者保護が図られるものとすべきであると考えております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
続きまして、春川委員、お願いします。
○春川委員 ありがとうございます。
私からも、フレックスタイム制について意見を申し上げます。御説明いただいた資料No.1-2の13ページを見ますと、フレックスタイム制を導入していない理由を踏まえると、まずもって、現行のフレックスタイム制の導入をさらに促す取組が必要ではないかと考えるところです。古川委員からもありましたとおり、「労務管理」の部分、あるいは「社内のコミュニケーションに支障がある」といった理由を見ると、これはあくまでも職場現場の運用の中で対応できる側面もあろうかと思います。そういったところをきちんと理解・促進し、一層浸透させていくということが必要なことではないかと捉えています。
その上で、部分的なフレックスタイム制の導入についてですけれども、例えばコアタイムがないスーパーフレックスタイム制の場合、これは出勤している場合もそうですけれども、厳格に運用していくと、労働者同士が顔を合わせて時間を重ね合わせるということが難しい場面も、職場現場では実質上あります。したがいまして、部分的なフレックスタイム制に関していえば、テレワークに限らず、一定のニーズはあるのではないかと考えております。
また、仮に混在を認める場合の日数等でございますが、フレックスタイム制はまさに始業・終業を労働者が決められるという趣旨ではありますが、通常の労働時間制の下でいけば、1日あるいは週の上限というものを定めて、長時間労働を防止していくという側面がございますので、それらの制度趣旨に沿った検討というものが当然必要だと考えています。
その上で、労働時間管理の部分でいきますと、労働基準関係法制研究会資料の中で例示されていた「清算期間を通じた平均週労働時間を40時間以内とする」というような一定の歯止めが必要と考えております。そうした点を踏まえた検討が必要と考えておりますので、意見として申し上げておきます。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。
川田委員、お願いします。
○川田委員 ありがとうございます。
基本的には、フレックスの労働日と労働時間が固定された労働日が混在するような部分的なフレックスタイム制については、これまで議論されたように、まずはニーズがあるかどうかの把握、これについては私としてはニーズが一定程度あるのかなと思っておりますが、これをもとに労働者保護の必要性、労働者保護が十分かどうかという点と併せて検討していく必要があると思っております。
そういう観点から、1つは、混在の度合いについては同様の意見がありましたが、フレックスの労働日が極端に少ないようなものは、実質的に通常の労働時間制度の一部が緩和されているような実態になってしまうように思われ、そういうものについては、ある程度制限をする必要はあるのかなと思っております。
一方、それ以外のところでどのくらい混在を許容するのかというのは、次に述べたいもう一つの点ですが、制度を導入する場合の制度設計の仕方がある程度いろいろあると思われて、そういうところと併せて考えていくべき問題であると思っています。具体的には、例えば現行のフレックスタイム制は清算期間が最長3か月ですが、部分フレックスタイムの場合には清算期間をもう少し短くしたほうがよいのかどうかとか。
あと、労働時間の計算の仕方をどうするのか。これも、例えば通常の労働時間制度のほかに、フレックスの部分だけで清算期間に基づく管理をするとか。
あと、清算期間が1か月を超える場合に適用されるような、清算期間内であっても実労働時間の一定の上限のフレックスだと、週当たり50時間という数字が設けられていますが、そういう清算期間内でも、これを超えると時間外労働が認識されるというものを何か考えるとか。
あるいは、労働時間が固定される日と労働者が選択する日というのは、基本的に事前に特定されている必要があると思いますが、その特定のルールをどのようにするのかとか。
あと、少し議論が出てきましたが、例えばテレワークとか、何か部分フレックス制を利用できる場合について限定をかけるのかどうかなど、いろいろな点があると思います。そういう点を併せて検討していくことが必要であろうというふうに思っています。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
神吉委員、どうぞ。
○神吉委員 確認ですが、フレックスと通常労働時間制度を混在させる制度について研究会で議論していたときには、例えば1週間の中の一部を、コアタイムを広げる形でコアデイという形で実質的に混在を実現するという選択肢も出ていました。
現在のコアタイムは、労基法32条の3第1項4号の「その他厚生労働省令で定める事項」を受けた労基則12条3第1項2号で「労働者が労働しなければならない時間帯を定める場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻」、3号で「労働者がその選択による労働することができる時間帯に制限を設ける場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻」として規定されています。
この規定は、1日の中の時間帯でコアタイムを想定していますが、これを時間帯ではなくて1週間の中の何日と、日数に制限を設けるかどうかはともかく、コアデイとして修正することで対応できるのかを伺います。先ほど水島委員のほうから、法32条の3を大きく変えるようなことは法の趣旨からもすべきでないという御意見がありましたが、先に述べたような最小限の混在は、法改正しなくても省令で対応できる可能性があるという理解になりますでしょうか。
○山川分科会長 ありがとうございました。
恐らく時間外労働の算定の仕方に関わるようなことかと思いますが、事務局から何かございますか。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
確かにコアタイムの解釈を柔軟にということは、考え方としては1つあるのだろうということで御議論されたかと思いますが、一方でコアタイムを設けるに当たっても、結局、それが始業・終業時刻を委ねるという趣旨を没却するような、つまりコアタイムが本当に大半を占めるということは、もともとフレックスタイムの運用としてはなかなかよろしくなかろうというところはあったと思います。
その上で、仮にそういうことを検討するのであれば、もちろん解釈の変更ということもあるのかもしれませんが、制度として今のフルに委ねるフレックスタイムと、通常の就業規則等で出勤日が決まっているという混在を正面から考えるということが、まずは考えるべき選択肢なのかなということも思いながら、論点という形で示させていただいている状況でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかにございますでしょうか。
冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
今まで混在をどこまで認めるかとの点について、公益委員からはフレックスが半分以上であるべきとの意見もありましたし、また使側からは任意の設定を可能にすべきとの意見もあったと思います。先ほど双方の制度趣旨に沿った検討が必要であることは春川委員のほうからもございましたけれども、通常の労働時間制度の日があまりに多くなると、フレックスタイム制度の趣旨が失われかねないのではないかという点も踏まえるべきだと思います。その点は、意見として申し上げておきたいと思います。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
では、次の論点になりますが、「副業・兼業」という論点につきまして、御質問、御意見があればお願いいたします。いかがでしょうか。
オンラインで松永委員からの御希望がございます。お願いします。
○松永委員 ありがとうございます。
副業・兼業に関しまして、私のほうからコメントさせていただきたいと思います。そもそも割増賃金の趣旨は、会社が残業命令を出して、その場合の補償というふうに考えています。割増賃金の規制をかける前提としては、会社からの残業命令があるということではないかと理解しています。一方で、副業・兼業の場合の多くは、それを希望する労働者が会社に届出を出すとか許可を得ることでするというわけですので、若干、その前提が違ってくるのかなと考えています。
また、今年の3月でしたか、地裁だったと思いますけれども、いわゆるスポットワークに関連するような役務を提供している会社での話ですけれども、ほかで副業している実態を知らない場合は割増賃金を払わなくてもよいというような裁判例があったというふうに理解しています。これは地裁判決ですので、今後どうなっていくかというのはありますけれども、いろいろな労働者の希望をかなえるフレキシビリティのある働き方を可能にするという実態の中でこういう判決が出たというのは、1つ注目すべきかなと思っています。
あと、健康確保に関してですけれども、これはもちろん重要な論点であるというふうに思っています。副業・兼業ガイドラインに健康確保措置の内容がきちんと示されて、これも参考にしながら、例えば会社が副業を認めるに当たって、本業の時間外労働と合わせて、長くならないような条件をつけるとか、様々な形で労務管理上の工夫を行っていくということも少なくないのではないかと思っています。まずは、こうした好事例を周知することが先決であるというふうに考えていまして、規制的な手法で健康確保措置を設けるというのは、かえって副業・兼業が実施しづらくなる。結果として拡大していかないというふうな懸念もあると思いますので、新たな規制の追加というのは慎重に検討すべきではないかというふうに考えています。
私のほうから以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
オンラインでさらに御希望がございます。まず、鳥澤委員、お願いします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
副業・兼業時の割増賃金の支払いに係る労働時間の通算管理については、従来から申し上げているとおり、副業・兼業が労働者の自発的な判断によって行われるものであることから、本来の割増賃金の趣旨となじまないと考えます。中小企業においては、副業・兼業時の労働時間通算は難しいために利用が進まないという声も多く、さらなる利用促進のため、割増賃金については、通算管理の適用外とする方向での検討が必要です。
他方で、労働者の健康確保や過重労働防止の観点からは、好事例の横展開や働き方改革推進支援センターによる支援などを通じた環境整備が必要ではないかと考えます。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
続きまして、田中委員、お願いします。
○田中委員 ありがとうございます。
私からも副業・兼業に関する発言をいたします。資料No.1-2の26ページの図表にもございました。副業・兼業を行う理由として、「収入を増やしたいから」という割合が多いものの、それ以外にも「自分が活躍できる場を広げたいから」「様々な分野の人とつながりができるから」など、様々な理由があります。そのほか、副業・兼業により知識や経験を得るため、また自分自身が知識・経験を活用しながら、キャリア形成に役立てるために行われることも多くあります。
例えば、定年が近づいている社員が、定年後のキャリアを見据えて副業を通じて外部でスキルを広げるケースもあると思います。定年前にこのような業務に取り組むことで、スムーズに定年後のキャリア移行ができる側面もあると考えています。それ以外にも、大企業で働く専門人材が、副業・兼業を通じて、中小企業で新規開発だったり、企画的業務・制度設計の支援などを行うといった、中小企業の生産性向上にも資する社会的なメリットもあると考えます。このように、副業・兼業は企業と労働者の両方にメリットがあることを踏まえることが必要で、副業・兼業ガイドラインを参考に実効性のある取組を広げることが重要であると考えています。
当然に、副業・兼業を認めるに当たっては健康への配慮が必要です。時間外労働の上限規制に関する時間通算を残すということであれば、健康確保も担保でき、そのほかの健康確保措置を現時点で追加するべき理由は特にはないのではないかと考えています。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかに御質問、御意見等ございますか。
佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員 私も副業・兼業の労働者の措置というのは、かねてから本分科会でも申し上げておりますとおり、「労働時間については通算するが、割増賃金の支払いに係る労働時間というのは通算しない」という措置でお願いしたいと思います。時間外労働、月80時間とか、そういうものを超えた場合には、その労働者に通知することとし、その健康確保措置が必要であるとするのであれば、使用者に対し措置を行うべきというか、講ずることにしていただくのがよろしいのではないか、と思います。
現行制度では、主たる事業者と副業先の労働時間を通算して、1日8時間を超えた場合に対して時間外労働となり割増賃金が発生する仕組みとなっていますけれども、例えば主たる事業者をAとして、その所定の8時間を超えた場合、副業先Bで働くと、それは最初の1時間から時間外手当を支払う義務が生じます。こうした制度では、副業先にとっても負担が大きくて、それならば採用を控えようとするという判断になりかねません。結果的に労働者本人が、主たる事業者にも副業先にも報告しないで個人事業者となったり、フリーランスみたいな形を取って、実質的に副業を行う事例も見られ、制度の形骸化というのを招いてしまうという現象が出てくると思います。
また、働き方改革を踏まえ、もっと働いて収入を得たいと望む労働者、これは働かされるということはなく、現行制度では時間に縛られるということも出てきていると思います。さらに、労働時間通算に伴う健康確保義務というのが、複数の使用者に分散されることによって、過重労働とか健康悪化の責任の所在というのが曖昧になってしまうということもあると思います。たとえ副業が労働者の希望であっても、後に健康悪化等が生じた際に主たる事業者に責任を求められてしまう状況になると、事業者として非常に悩ましいところだと思います。ですから、まず、時間外労働の通算措置、それから、時間外労働が多くなった場合に健康確保措置を備えていただくよう、改正というか、そういう措置にしていただければと考えております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかにはございますでしょうか。
冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
先日、国会で、生活費を稼ぐために無理して慣れない副業をすることによって健康を損ねる方が出るということに対して懸念するような答弁がありまして、政府の方針とは若干矛盾するのではないかとも思いましたけれども、副業・兼業を行う労働者の健康確保を図るための長時間労働の抑制という観点でも割増賃金の通算は堅持するべきだと考えているところでございます。
26ページにありますが、以前から申し上げているように、生活費のために副業・兼業せざるを得ない、本業だけでは生活費が賄えないとの回答が大きな割合を占めていることを踏まえると、副業・兼業を推奨するよりも、本業の所定内賃金できちんと生活できるよう、政府として、賃上げを強力に後押ししていくという取組が最優先されるべきと思っているところでございます。
また、兼業・副業から少し離れますが、最長労働時間規制の遵守の徹底に関連して、以前、資料でつけていただいた労働時間制度等の実態調査の中で、副業・兼業以前に、そもそも36協定を締結していない事業所の割合が約42%にのぼっており、特に事業所規模30人未満の事業所で顕著に高くなっておりました。そうなると、本業と副業・兼業先のいずれかが36協定の未締結というケースも少なからず生ずるのではないかと思っているところでございます。
本業と副業先の一方の企業では法定内であっても、通算した場合に法定労働時間を超過しているケースも当然に想定されますので、場合によっては36協定未締結のまま、時間外・休日労働を行わせるようなことがあるのであれば、その是正を早期に図る必要があると思っております。
いずれにしましても、少なくとも副業・兼業に関しましては、現行ルールの遵守・徹底を図る観点から検討を行うべきだと考えておりますし、兼業・副業を広げるために割増賃金の通算を外して使いやすくするというのは、使用者にとってのみ都合のよい見直しではないかと思いますので、意見として申し上げておきたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
では、鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
まず、冨髙委員から、本業の賃上げが重要ではないかとの御指摘をいただきました。この点は労使で共有できるところだと信じております。御案内のとおり、本業の賃金引上げにつきましては、ここ3年間、労使間での真摯な交渉と対応が行われ、中小・零細企業も含めてかなりの賃金引上げが実現してきたと思いますし、経団連におきましても年収が一般的に少ないパート・有期労働者の方への賃金引上げを呼びかけを強力に行ってまいりました。まずは、その点を申し上げたいと思います。
その上で、私からは副業・兼業の健康確保に関連して発言させていただきたいと思います。資料No.1-2の44ページにデータがございます。これを見ると、本業と副業の労働時間の総計、これは恐らく副業先が非雇用の可能性もあるのではないかと思いますので、少し幅を持って見ないといけないデータかと思いますが、それにしても相当程度長い方もいらっしゃるということで、ここは十分留意が必要だと感じております。
この労働時間が長くなることを防ぐ対策を考えないといけないわけですが、幾つか御紹介したいと思います。
1点目として、43ページの下段の図を見ますと、本業の平均残業時間がそもそも長いケースというのが見られます。この場合には、本業企業として本業での残業時間が長い労働者の副業・兼業をそもそも認めないということが、労務管理上、重要になっていくと思っております。
それから、2点目として、副業を開始した後に本業の残業が長くなることも場合によってはあるかと思います。ここは副業・兼業をする際の労務管理における双方の手続負担を軽くするという意味のほかに、労働時間が長くならないような観点からも、管理モデルの利用というのが有効だというふうに思っております。これは副業先が長時間労働を防ぐ観点からも有用ではないかと考えております。
3点目として、当然ながら、時間外労働の上限規制の徹底を図るということは重要だと考えております。ただ、細かい点で恐縮でございますが、管理モデルを利用しない場合に難しいと思いますのは、31ページの左上の図によりますと、本業の勤務先で副業が禁止されている正社員が、本業の勤務先に副業をしていることを知らせていない割合が74.6%、4人に3人が知らせていないという状況でございます。これは副業・兼業が禁止されていますので、知られたくないという気持ちが労働者のほうに働くのは、ある意味自然な面もあろうかと思います。
こうした点をどのように解消していくかは難しい問題だと考えておりますが、緩やかな形で広く事業主に副業・兼業のよさやメリット、長時間労働にならないことも含めた留意点の理解を深めつつ、厚生労働省のモデル就業規則を参考にした対応を丁寧に促していく取組も必要ではないかと思っております。
私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
それでは、佐藤委員、どうぞ。
○佐藤(好)委員 ありがとうございます。
改めて割増賃金の通算について意見させていただければと存じます。先ほど冨髙委員からもあったとおり、資料No.1-2の27ページを見ますと、本業と副業がともに「パート・有期等」である割合は32.9%と最も高く、29ページの本業と副業の月収の総計では30万円未満が合計54.7%と、半数以上を占めているということでございます。本業が非正規の場合は、20万円未満の合計が55.4%となっているということ、また26ページ、副業する理由を見ると、「収入を増やしたいから」が54.5%、「1つの仕事だけでは収入が少なくて、生活自体ができないから」が38.2%との回答が圧倒的に多くなっています。
この点は、37ページの就業構造基本調査を見ても、本業の雇用形態別の副業者の比率は、非正規雇用で働く者が7.3%であるのに対して、正規雇用で働く者が2.6%となっています。本業の所得階層で見ても300万円未満が64.5%と、多数を占めているということでございます。こうした実態を踏まえますと、以前から労側から発言しているとおり、副業者の多くが、本業が低賃金であることからダブルワークやトリプルワークなどを行わざるを得ない非正規雇用で働く方が大半であるということが明らかだと考えております。
そのような中で、健康確保を前提にするとしても、先ほど来出ている割増通算をなくすということは、単に使用者の使い勝手がよくなるだけの見直しではないかと考えます。これまで社会全体で取り組んできた働き方改革を一層定着させ、副業・兼業を行う労働者を含めた長時間労働の是正を進める観点からも、副業・兼業時の割増賃金に係る労働時間の通算を維持して、その遵守・徹底にこそ取り組むべきだと考えます。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
それでは、亀田委員、どうぞ。
○亀田委員 ありがとうございます。
資料No.1-2の34ページにありますように、副業・兼業に関するガイドラインを「知らない」と答えている割合が7割超。また、労働時間の通算についても「知らない」と答えていらっしゃる方が58.4%、「通算の方法までは知らない」が26.3%となっておりまして、そもそも現行ルールの周知が不十分だと思っております。
実際、40ページの割増賃金の支払状況では、「割増賃金を支払っていない」が32.5%と、最も多く、次いで、「自社の労働時間制度において発生した割増賃金のみを支払っている」が28.3%となっています。この回答だけでは断言できませんが、このうち相当程度が割増賃金を適正に支払っていない可能性についても、否定はできないのではないかと思っています。
だからといって、現状を追認する形で、使用者に経済的な負担を課して長時間労働を抑制するという割増通算規制を外すべきではないと考えております。「通算して割増賃金を支払っている」と回答も12.7%ありますので、現行ルールを堅持した上で、その分かりやすい周知とともに、適正運用を一層広げていく取組を進めるべきと考えております。例えば、労働時間通算を行う上での留意点や、工夫していることなどを好事例として示していくことで、望ましい取組をより一層推進していくことが重要であると考えております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
それでは、椎木委員、お願いします。
○椎木委員 御指名ありがとうございます。
資料No.1-2の32ページ、副業の労働時間の報告についてのデータでございます。本業先から労働時間の「報告を求められていないし、報告もしていない」という回答が7割という状況です。明らかに労働時間の通算が適正に行われていないところがほとんどだということが示されています。
さらに、次の33ページにございます健康確保措置の実施状況の部分をみても、「使用者との話し合いも措置が講じられたこともない」との回答が約半数、「使用者と話し合ったことはあるが、措置が講じられたことはない」を合わせますと7割にも上っています。
そうした現状を踏まえますと、議論になっております割増通算の廃止は、企業側の負担を減らすだけであって、労働者には賃金面でも不利になるだけではないかと考えます。そもそも労働時間法制は、労働者の健康確保、命を守るという趣旨で定められたものですし、割増賃金規制も、使用者に対して経済的負担を課すことで長時間労働を抑制するものであり、これを外すということは、割増賃金規制の趣旨を否定することと同じではないかと考えます。使側が主張しております健康確保のための労働時間通算だけ残したとしても、それは絵に描いた餅になってしまうのではないでしょうか。割増賃金に係る労働時間の通算を考える前に、副業・兼業を含めた労働時間管理の徹底と上限規制の遵守・徹底こそが不可欠であると考えます。
以上、よろしくお願いします。
○山川分科会長 ありがとうございました。
鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
先ほど労働側委員から御指摘いただいた中で、幾つか重要な論点があると思います。
亀田委員から、割増賃金が払われていない可能性があるのではないかという御指摘もいただいたところでございますが、32ページの労働者調査では、先ほど引用もあったところですが、約7割の方が本業の勤め先から労働時間の「報告を求められていないし、報告していない」という回答がございます。この点の見方はいろいろとあると思いますが、副業者の労働時間を知り得ない企業が割増賃金を払っていないという回答につながっているとするならば、必ずしも直ちに割増賃金の不払いや法律違反があると言い切れるか、私としては疑問があります。
その上で、そもそも論ということで松永委員からも先ほど来、御発言がありましたが、自分の会社の時間外労働、これは就業規則に定めれば、会社は時間外労働を命ずることができるわけです。他方で、副業・兼業の場合には、本業元が副業先の労働時間を命じることはできないわけです。割増賃金規制が時間外労働を命ずる立場にある使用者にとって、これは先ほど来おっしゃっておられるように、時間外労働の抑制になる面があると思っておりますが、副業先との関係で時間外労働を命じられない以上は、そもそも割増賃金規制を適用する前提を欠いていると私は思っております。
もちろん健康確保は、使用者側の委員から再三申し上げておりますとおり、大変重要だと思っておりまして、時間外労働の上限規制の担保のほかに、労務管理上、様々な工夫で過重労働にならない好事例を横展開することを、引き続きやっていくことが重要と考えます。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかにございますでしょうか。よろしゅうございますか。
では、続きまして、「管理監督者」という論点について、御質問、御意見があればお願いいたします。いかがでしょうか。
冨髙委員、よろしくお願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
資料には掲載ないのですけれども、JILPTが2022年に実施した「管理職ヒアリング調査結果」、これによれば、プレイングマネジャーであることが多くて、特に管理業務が多いことによって多忙となって、労働時間も長くなる傾向があるということが明らかになっているということでございます。
また、働き方改革の影響で、労働時間管理の厳格化に伴って、業務負担の増加、部下の残業を減らすために結果的に肩代わりするというようなこともあり、管理職の方の業務負担の増加、長時間労働になりがちという課題が明らかになっていると思います。
加えて、資料No.1-2の50ページに裁判例がいろいろ出ておりますけれども、実態として労働条件その他の労務管理について、経営者と一体的な立場にあるとは言えない労働者が、管理監督者として取り扱われて残業代が支払われていないという不適切な運用がなされています。連合の労働相談でもそうした声が寄せられているところです。そういった状況を踏まえますと、管理職の働き方改革をしっかりと進めていかなければいけませんし、管理監督者の制度趣旨に沿った定義を法律で明確化した上で、厳格な運用がされるように監督指導の強化をしていくべきと考えているところです。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。では、櫻田委員、お願いします。
○櫻田委員 ありがとうございます。
私からも管理監督者について意見を申し上げたいと思います。資料No.1-2の49ページに記載がありますけれども、管理監督者については、年休や深夜割増を除いて、労働時間や休日等の規定が適用除外とされる一方で、手続的要件、例えば労使委員会や、本人同意といった要件がなく、また53ページの表にまとめていただいておりますけれども、健康・福祉確保措置も設けられていないのが現状であります。
それで、労働基準関係法制研究会報告書の中にも、「管理監督者等に関する健康・福祉確保措置について検討に取り組むべき」とされております。裁量労働制をはじめ、特別規制の下で働く労働者に健康・福祉確保措置が設けられているということを踏まえますと、少なくとも管理監督者にも同等の措置を法律で課すべきではないかと考えます。
以前、使用者側の委員から、55ページに示されております実施状況の結果などから、管理監督者に対しても「健康・福祉確保措置が相当程度実施されている」との御発言もあったところであります。そうであるならば、健康・福祉確保措置を法定することは何ら支障がないのではないかと考えます。
以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございます。
続きまして、田中委員、お願いします。
○田中委員 ありがとうございます。
私からは、まず、管理監督者の要件を法律に記載するかどうかという論点があろうかと思います。それについてです。管理監督者制は、個別事案に応じて様々な総合判断をするため、解釈での運用にならざるを得ない面が大きく、法律に管理監督者というのを規定することは難しいと考えています。海外では定義規定を置いている国もありますが、ドイツでは、抽象的な定義規定を置いた上で、裁判所の解釈などに委ねている部分が多いと承知しています。まずは、要件の法定化や要件の見直しではなく、管理監督者制について正しい理解をしてもらうための周知啓発が大切と考えております。
次に、健康確保に関してです。長時間労働の是正に向けた取組が進む中、管理監督者にしわ寄せがいくといったことがあるという声を聞くところであり、使用者として管理監督者の健康確保に十分留意していかないといけないと考えております。ただし、資料No.1-2の51ページにございました管理職の月間残業時間数を見ますと、平均時間が19.5時間であり、原則的な時間外労働の水準45時間を大きく下回っているという状況です。また、我が国では、管理監督者も含めて、医師の面接指導であったり、ストレスチェック制度が適用されています。さらに、1-2の55ページにありました、多くの企業で管理職に対する健康・福祉確保措置がいろいろな形で行われているところです。
労基法では罰則付の措置が置かれる場合、一律的だったり、画一的な措置になることが懸念されます。管理職に特化した罰則付の規制が必要かどうかということについては、慎重な議論が必要であると考えます。また、海外において、管理監督者に対する独自の健康確保措置を設けている国や事例を事務局で把握されているのであれば、またお示しいただければと考えております。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ただいま諸外国での管理監督者に当たる者についての健康・福祉措置の実情というようなお話がございましたが、事務局で把握されているでしょうか。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
現時点で詳細を把握しているものはございませんが、少し調べてみたいと思います。
○山川分科会長 それでは、御検討いただければと思います。
ほかに御質問、御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、「労働時間の情報開示」の論点について、御質問、御意見があればお願いいたします。
それでは、亀田委員、どうぞ。
○亀田委員 ありがとうございます。
資料No.1-2の58ページ、59ページに記載してありますとおり、各法律における法定開示が進んでいる中で、「女性の活躍推進企業データベース」が参考になるかと思いますが、労働者や求職者の立場から申し上げますと、労働時間や休日など労働環境に関する内容につきまして、法令横断的に一覧性や検索性を高めていく取組を進めていただきたいと思います。
また、労働市場だけでなく、投資市場を通じた調整機能にも着目する必要があるのではないでしょうか。現在、中長期投資の観点から、人的資本開示を促進することが国際的な潮流となってきており、今年の「骨太の方針」においても、有価証券報告書の人的資本に関する情報開示の充実を進めるとされ、金融庁のワーキンググループにおいて、2026年3月期から企業戦略と関連づけた人材戦略と、それを踏まえた従業員給与等の決定方針等の開示を求める予定との報告がなされております。そうした動きとも連動していただいて、労働者の健康と安全に係る開示項目として、労働時間などを位置づけていくことも効果的ではないのかと考えております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
オンラインの兵藤委員から御発言希望がございます。お願いします。
○兵藤委員 ありがとうございます。
私からも労働時間の情報開示について発言させていただきたいと思います。
まず、企業外部への情報開示に関しましては、これまで労働市場の調整機能を通じた勤務環境の改善が必要だとする御意見もありました。求職者の厳しい目を通じて会社の取組が進むという面は確かにあろうと思いますが、既に女性活躍推進法や次世代育成支援対策推進法、さらには有価証券報告書の記載などから、各種の情報開示が進められています。また、女性活躍推進法の情報開示が論議された分科会においても、情報が一人歩きする懸念があるとの指摘があったとも聞いております。何よりも、労働基準法が最低基準を罰則付で規律することを主眼としていることを考えると、労働基準法において労働市場の調整についてルールを設ける論議は、違和感があるのではと思います。
次に、企業内部への情報開示につきましては、論点資料もあるとおり、例えば36協定を提供するに際しましては、当該事業場の平均残業時間数を開示することが望ましい点は十分理解しております。ただし、どこまでの情報をどのように開示するかを考える上で、各社の労使コミュニケーションの成熟度が様々であるという実態を踏まえた検討が必要であると考えております。労使コミュニケーションが活発な企業は、恐らく様々な経緯・歴史の中で育んできた面も多いのではないかと想像しています。ここで何か法律で情報提供を義務化したことで労使コミュニケーションが活発化するということには、少し懐疑的に感じるところです。
まずは、組合がないところで労使コミュニケーションをどのように活発化させていったのか、過半数代表が主体的に活動している企業の好事例を丁寧に周知していくことから始めるのが適当ではないかと考えております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
続きまして、櫻田委員からお願いします。
○櫻田委員 ありがとうございます。
今ほど兵藤委員からも内部への情報開示のことについて触れていらっしゃいましたけれども、私からもその点について意見を申し上げたいと思います。過半数代表に係る議論の際にも申し上げてまいりましたけれども、実態に基づいて、時間外や休日労働の上限規制の実効性確保を進めていく観点からしますと、労使協定等の締結に際しては、あらかじめ過半数労働組合等に対して労働時間等の情報を開示するということを、使用者の責務として明確化する必要があるのではないかと考えるところであります。
また、これは要望になりますけれども、企業内部の情報開示の取組がさらに一層進むように、既存のパンフレットなども活用しながら、行政としても積極的な働きかけをお願いしたいと思っております。
私からは以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
では、鳥澤委員からお願いします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
深刻な人手不足に悩む中小企業においては、事業の継続や雇用の維持のためにやむを得ず長時間労働が発生しているケースもございます。そもそも少ない人員や業務の幅の制約から、業務の見直しに取り組みづらい環境において、人材の確保が有効な対策であるにもかかわらず、情報開示が義務化されれば、人材確保がさらに困難となり、長時間労働の是正のみならず、事業の継続すら懸念されると考えます。
さらにもう一点、違う角度から懸念する点として、休日が多く、時間外労働が少ない中小企業においても、そのことを理由に取引先からの短納期での発注、また値下げ要求などが発生することも想定されます。こうした点から、企業が自主的な判断の下で情報開示を実施することに異論はございませんが、義務化には反対であることを意見として申し上げます。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
それでは、種々の御質問、御意見等、大変ありがとうございました。
議題1はここまでとさせていただきまして、次の議題に移りたいと思います。議題2「その他」ということでございますが、まず、事務局から資料No.2-1、2-2、2-3の説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 それでは、資料No.2-1、2-2、2-3について御説明いたします。本日の報告に関する経緯としましては、第185回の本分科会におきまして、解雇無効時の金銭救済に関する議論について、分科会長より、解雇や解雇をめぐる紛争の実態等について、今後、できる限り明らかにしていく必要があると総括いただいたことを踏まえ、JILPTにおいて調査を実施していたものでございます。本日、3つの調査について、概要、ポイントを絞って御紹介させていただきます。
資料No.2-1の1ページでございます。本調査は2023年度における都道府県労働局におけるあっせん事案について調査したものになります。分析においては、過去のあっせんに係る調査のほか、労働審判、裁判上の和解に係る調査との比較を行っております。調査対象の事案はいずれも解雇の有効・無効が確定していない状況のものでございます。
3ページ、あっせんの終了区分でございますが、合意成立の割合は、大きな傾向としては上昇しております。
4ページでございますけれども、あっせんはほとんど3か月未満で終了しております。やや長期化の傾向がうかがえますが、労働審判や裁判上の和解と比較すると、非常に短い状況となっています。
続いて、11ページでございますけれども、請求金額についてでございます。あっせんについては、2023年度には50から100万円未満が約4分の1で最多ということになっております。
続いて、13ページでございますけれども、解決金額についてお示ししております。中央値については、上の囲みの中でお示ししておりますが、分布としては、それぞれの中央値から高い方、低い方の双方に広がりをもって分布しているというところでございます。
続いて、16ページでございますけれども、労働者の月収表示の解決金額をお示ししたものでございます。こちらについても中央値を上の囲みの中にお示ししておりますが、中央値付近に固まっているわけではなく、前後にかなり幅広く分布しているところでございます。時間の都合上、恐縮ですが、ほかのスライドの説明は割愛させていただきます。
続いて、労働者アンケートについてですけれども、資料No.2-2の1ページを御覧ください。解雇等に関する労働者意識調査の概要でございます。現行制度や解雇等の紛争解決やその予防のための施策についてアンケート調査をしたものであります。調査は令和7年3月に実施しております。
まず、3ページでございますけれども、解雇等の理由について左側、復職・契約更新の希望、また転職先の紹介の有無について、右側に結果をお示ししております。
続いて、4ページでございますけれども、紛争解決制度の利用状況をお尋ねした結果でございます。本調査において制度を「利用した」というふうに回答された方の割合は7.6%となっておりまして、利用しなかった理由については、「制度をよく知らなかったから」が44.9%となっております。
続いて、5ページでございますけれども、労働局の助言・指導、あっせんなどの労働審判・訴訟以外の制度の利用者に利用した理由を尋ねたものでございます。「無料で利用できるから」「迅速に解決できると思ったから」が多くなっております。
6ページでございますけれども、労働審判・訴訟以外の制度を利用した方の利用結果を記載しておりまして、上に紛争が終わらなかった理由、下に労働審判や訴訟も利用しなかった理由をお示ししております。
7ページでございますけれども、解雇等経験者のうち16.8%が労働審判を利用していますが、利用した理由としては、「労働組合、行政機関、弁護士等の専門家に勧められたから」、次いで、「復職することで得られる利益を守りたかったから」が多くなっております。
8ページでございますけれども、労働審判の利用結果を示しております。そしてまた、右側に紛争が終わらなかった理由をお示ししております。
9ページですけれども、訴訟の利用状況についてでございまして、本調査においては10.7%の方が利用しており、真ん中の棒グラフで利用した理由をお示ししております。
また、右の棒グラフですが、判決に至った割合が合計として47.6%、和解全体の割合も47.6%となってございます。
10ページでございますが、訴訟を利用した方に解雇無効後に職場復帰した上で継続就労するために重要なことを回答いただいたものですが、「労働組合や労働者を支持する組織のサポートがあること」が最も多くなっております。
続いて、最後に14ページでございますけれども、必要と考える施策に関する回答をまとめたものでございますが、上段の解雇等経験者について見ますと、15.9%が「金銭救済制度」を選択しておりまして、49%が「わからない」と回答しております。金銭救済制度を選択しなかった方に理由をお尋ねしておりますが、全体から見て27.1%が「どちらともいえない」と回答しており、その理由として複数選択可ですが、50.2%が「解決金額や費用による」、48.9%が「使用者の判断への影響がわからない」を選択しているところでございます。
続きまして、資料No.2-3でございます。諸外国に関する調査でございます。
1ページを御覧ください。ドイツ、フランス、イギリスを対象として、制度制定の経緯や利用状況等について調査したものでございまして、調査期間は令和6年8月から令和7年4月となっております。
こちらについても簡潔に御説明させていただきますが、ドイツにつきましては2ページを御覧いただければと思いますけれども、特色と記載しているところでございますが、ドイツは法的救済として解雇無効を原則としているものの、ヒアリング対象の有識者によると、大多数が復職ではなく、金銭による解決がなされているとのことでございます。
また、金銭解決制度について、法律上、複数整備されているものの、実際にこれらの制度が利用されることは稀であり、大多数が裁判所の和解において金銭解決により終了しています。
金銭解決に当たっては、勤続年数×月収×0.5という算定式を基準として用いるということが、和解等の実務上の慣行として確立したものになっているということでございます。
制度の概要等については、5ページに表の形でまとめて記載させていただいております。
続いて、6ページでございます。フランスについてでございますけれども、上に特色という形でまとめておりますが、フランスについて、調査によると、不当解雇の救済は復職が選択されることは基本的になく、金銭補償が一般化しているということでございます。2つ目のポツですが、裁判で不当解雇と判断された場合は、不当解雇補償金の支払いが課せられるところ、具体的な算定式は法律上も実務上も存在せず、勤続年数に応じた上限・下限を示した一覧表により判断されるとのことです。
最後のポツのところですけれども、不当解雇補償金及びこれに相応する和解金の支払いについては、一覧表の範囲内であれば、使用者側の社会保障負担及び労働者側の税負担から免除されるため、労使双方に一覧表の範囲内で和解するメリットが存在しております。
フランスについても、9ページに制度の概要をまとめているところでございます。
続いて、イギリスについてでございますが、10ページを御覧いただければと思います。イギリスについては、不公正解雇については、法律上、現職復帰または再雇用による救済が原則となっているものの、実際には金銭補償による解決が一般的となっております。
2つ目のポツですが、金銭補償の額は、基本額と補償額を合わせて算定されまして、基本額については、勤続年数×週給×係数という算定式がございまして、補償額については、解雇による全ての経済的損失を考慮して算定されるということでございますけれども、多様な控除・減額の仕組み、それらの順番も含めて、算定方法が複雑であるということでございます。
3つ目のポツですが、雇用審判所への申立ての前に、ACASというあっせん機関の事前調停サービスを利用することが義務化されておりまして、解雇紛争の効率的な処理の促進が図られているというところでございます。
イギリスについても12ページに概要をまとめさせていただいております。
資料の説明は以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
それでは、こちらの議題につきましても、事務局の説明を踏まえて、御質問、御意見があればお願いいたします。また、オンライン参加の皆様におかれましては、御希望があります場合にはチャット機能でお知らせいただければと思います。御質問、御意見等ございますでしょうか。
鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
私からは、資料No.2-2の解雇等に関する労働者意識調査に関連して3点発言させていただきたいと思います。
1点目です。先ほど事務局から御説明がなかったと思いますが、13ページを見ますと、解雇等経験者が解雇等をめぐる紛争解決やその予防のために必要と考える方策として、民間の裁判外紛争解決制度や労働審判、訴訟を利用した方の約2割から3割が、解雇等無効時に労働者の請求により金銭を受け取ることで労働契約を終了させる制度の創設が必要と回答しています。以前に労働者側委員から、既に金銭和解の実態があるので、金銭救済制度の新設は要らないといった御意見もあったと記憶していますが、今回、制度の創設に対する労働者のニーズが一定程度、確認できたと思います。
2点目です。同じく資料No.2-2の14ページを見ますと、解雇等をめぐる
紛争解決やその予防のために何が必要かという設問に対し、解雇等経験者の35.2%が金銭救済制度を選択していませんが、そのうちの約8割が制度の必要性について「どちらともいえない」と回答し、その約半数が「解決金額や費用による」を理由に挙げています。労働契約解消金の水準次第で、金銭救済制度の創設を支持する可能性があると読めますので、潜在的なニーズがあるのではないかと思います。ただし、どの程度の金額が望ましいと考えられるのか、これは重要なポイントですが、この調査結果からはなかなか読み取れませんので、今後、別途の調査や分析が必要だと考えます。
本日お示しいただいた調査の結果とは異なりますが、労働審判制度に関わる弁護士の声として、労働審判制度の利用が近年伸び悩んでいる要因の一つとして、解決金の額の低さがあるのではないかという指摘も聞かれることを参考までに御紹介いたします。解雇無効時の金銭救済制度は、バックペイをベースに、労働契約解消金に上限と下限を設ける方向で議論されてきたと承知しています。制度の創設により、紛争解決の予見可能性を高めるだけではなく、あっせんや労働審判における解決金の水準にも、よい意味で影響を与える可能性があると思います。
労働者側委員からは、解雇無効時の金銭救済制度により、違法な解雇が増えるのではないかという御懸念、御指摘も過去にあったかと思います。私が以前、労働審判に参加していた際、経営者が解決金を出し渋る実態というのを少なからず見聞きしました。そのような経験から、解雇無効時の金銭救済制度の創設により、バックペイに加えて労働契約解消金の上下限が示される。このことにより、安易な解雇はむしろ減る方向に働く可能性もあるのではないかと考えているところです。
繰り返しになりますが、解雇無効時の金銭救済制度は、現行の裁判や労働審判制度で救えない労働者を救済する道を開き、労働者保護の観点から必要な制度だと考えています。
3点目です。12ページでは、解雇等経験者が解雇等をめぐる紛争解決やその予防のために必要と考える方策として、「わからない」を除くと、最も多いのが「紛争となった場合どのような結果になるか予想しやすくするための解雇等に係るルールの分かりやすい周知」であり、4番目が「解雇等無効判決や金銭での和解が成立した具体的事例の周知」となっています。こうした回答が多くなるのは、現行の労働契約法16条の判断、法律の条文上、仕方がない面がありますが、実務担当者にとって必ずしも明瞭でないところにも起因するのではないかと思います。
これに関連して、政府は2014年に新規開業直後の企業やグローバル企業における雇用ルールの理解促進、予見可能性の向上、労働関係の紛争防止を目的に雇用指針という文書を策定しています。この指針では、労働契約を成立、展開、終了という3つの場面に分け、それぞれの項目に応じて、関連する制度や裁判例を記述したり、裁判例を分析したりしています。指針をアップデートする形で、雇用条件や企業特性等に応じた労働契約の終了に関する考え方を整理し、明確化を図ることも必要ではないかと考えます。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
オンラインで何人かの御希望がございます。まず、鬼村委員、お願いします。
○鬼村委員 御指名ありがとうございます。
私は2点、意見です。
まず、1点目ですけれども、資料No.2-2の4ページです。紛争解決制度の利用状況というのがあったと思いますが、こちらを見ますと、制度を利用しなかったときの理由で最も多いのが制度を知らなかったとなっていますので、厚生労働省では制度の利用促進に向けて周知・広報に取り組んでいただきますようお願いしたいと思います。
それから、2点目、6ページ、右下のグラフでございますけれども、労働審判や訴訟を利用しなかった理由で最も多いのが、「処理に長時間を要するから」。2番目が、「処理に多額の費用を要するから」「労働審判や和解で得られる金銭の水準が低い又は水準がわからないから」、このようになっているかと思います。
あと、8ページです。労働審判から訴訟に移行したケースを対象とした、紛争が終わらなかった理由を見ますと、「復職ではなく金銭の支払を希望していたが、復職を内容とする調停案が提示されたから」というのが22%、「復職ではなく金銭の支払を希望しており、金銭の支払を内容とする調停案が提示されたが、金額が低く納得できなかったから」が14.6%となっております。こうした結果は、一定の金銭を受け取ることで労働契約を終了させたいというニーズがあることを示唆しているのではと受け止めております。
当分科会でも検討・議論してまいりました解雇無効時の金銭救済制度でございますが、先ほど鈴木委員からもございましたけれども、労働審判もその対象に含める、いわゆるバックペイも前提とした上で、労働契約解消金の算定に当たって、その上限なり下限なりを設けるというものを想定しております。これによって労働契約解消金の予見可能性が高まるとともに、労働審判等の枠組みにおける金銭解決の金額にも一定のよい影響を与えるのではないかと期待されますので、こうした観点から、解雇無効時の金銭救済制度については、ぜひ創設すべきではないかと考えております。
以上でございます。
○山川分科会長 ありがとうございました。
続きまして、鳥澤委員、お願いします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
解雇無効時の金銭救済制度については、復職を望まれない労働者にとって有効な選択肢となり得る制度であり、先ほど鈴木委員からのご発言にもございましたが、資料No.2-2の14ページに記載のとおり、解雇等経験者のうち15.9%が「金銭救済制度を選択」すると回答し、選択していない35.2%のうち約4割が「解決金額や費用による」と回答している点などを鑑みれば、制度に一定のニーズはあるものと想定されます。労使双方の予見可能性を高める観点から、解雇無効時の金銭救済制度については、引き続き導入を検討する必要があると考えます。
また、先ほど鬼村委員からも指摘がございましたが、私も気になりましたのは、資料No.2-2の4ページに記載があるとおり、解雇時に紛争解決制度を利用しなかった割合は92.4%と高く、そのうち44.9%は「制度をよく知らなかったから」と回答しております。あっせんや労働審判制度など、労働者の救済に資する制度については、引き続き周知が必要だと考えます。
私からは以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
続きまして、安藤委員、お願いします。
○安藤委員 安藤です。
今回、諸外国の制度についても御説明いただきました。このような、ほかの国でどのようなことが行われているかという点については、過去の議論の中でも取り上げられてきた経緯がありますが、より詳細な実態が明らかになったと思っています。ただ一方、ほかの国でどうやっているかというのが、そのまま日本に適用できるとは限らないといったところが重要な論点かと思っています。日本でも近年、いわゆるジョブ型と言われるような、契約によって仕事内容などを明確に定める。勤務地であったり、労働時間も定める。そして、年功賃金などではなく、貢献度に見合った賃金をその段階で支払うといったような形、少しずつ増えてきてはおりますが、とはいえ、従来型のいわゆる日本的雇用慣行もかなり維持されているということがあります。
そうすると、解雇に関する解決金額などがどの程度必要なのかといったときに、貢献度に見合った賃金を受け取っているということを前提として、雇用関係が終了する。解雇されたことに対する解決といったことに対する適正な金額なのかといった話、これが諸外国では議論の出発点にあるかと思いますが、日本の場合、そうはなっていない。年功賃金などの場合には、実質的に賃金の後払いといった面もある。このようなことを踏まえると、日本において具体的な算定方法とか上限・下限を設けるということがそもそも可能なのか。また、どのような水準が適切なのかといった点。また、この設定によって、労働者の行動、使用者の行動がどう変化するのかといったところ、諸外国の制度が参考になる面もありますが、日本独自で検討しないといけない要素もまだまだあろうかと思っています。
というわけで、今回の資料自体は参考にはなるものの、これだけで議論を進めていくというのはなかなか難しいかなという感想を持っております。
私から以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
では、佐久間委員。
○佐久間委員 ありがとうございます。
解雇の金銭救済制度についてですけれども、これは2022年12月6日の第184回の労働政策審議会、この労働条件分科会の中でも申し上げた意見なのですが、要は解雇を言い渡された労働者というのは、それが無効であっても、裁判や労働審判に至るまでに使用者との間で解決してしまっている例もあると思います。労働審判とか裁判になった場合、特に上告までいくか分かりませんけれども、日本は三審制がありますので、裁判を続けていくことになると、お互いに弁護士等の費用がもちろんかかってくるし、規模の小さい中小企業ですと、解決するまでの間の解決金、そしてバックペイの関係で、これが何年になるか分からないということがあって、その資金繰りもままならないまま支払い額が決定されると倒産してしまうということも大いに考えられます。
労働側にとっては、それだけの資金を使用者側が補償するのは当然だという意見だと思うのですが、現段階では早々に結論が出せる問題ではなく、費用と賃金の支払いの問題が必ず出てくると思います。特に、私ども中小企業のほうでは、月数関係で上限制というのを設けていただければ、それだけの資金繰りの関係もあるので、そういう目安になるものを設けていただきたいと考えおります。今回、この解雇無効の金銭救済というテーマを上げられたわけですので、早々に労働基準法を改正してとか、そういうことはなかなかすぐできないと思います。
また、前回、解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会の報告書を先生方にまとめていただいたわけですけれども、その中で「政策的に判断すべき」ということで、この労働条件分科会の中で審議するということを、多くの項目としてあげられております。合併の問題とか解決金の算定方法の問題。そういう中で、そこにこのような項目を詰めていくというのは、現状、すぐに結論が出せる問題という観点というのは変わっていないと思います。
労働者にとっても、連合さんみたいなしっかりした労働組合に入っていれば後ろ楯というのがあると思うのですけれども、今、個人単位、例えば外国人であっても労働者ですから、事業所内に労働組合がなくても、その日に個人で入ることができる労働組合があり、そこから顧問や委託されている弁護士さんを呼んでくるという例があると思います。また、その審理が解決されれば、その労働組合から脱退してしまうという選択もあり、使用者側にとって、このような労働組合さんの力がバックにあるというのは、非常に力が強いですから、労働者や労働組合に身構える企業というのが少なくないと私は思っております。
そのためにも、この議論というのは一度整理して、例えば上限制もそうですし、仕組みづくりというのをしていくことが必要ではないかというのを私は思っていますので、ぜひこの解雇無効時の金銭救済制度の仕組みを議論していきたいと考えております。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
解雇の金銭救済制度につきましては、結果として不当な解雇を正当化するだけではなくて、安易な解雇を促進しかねないということで、導入すべきではないということは従来から申し上げてきているところです。
先ほどから使用者側委員から、労使の予見可能性について触れられておりましたけれども、我々労働側からみれば、使用者の労働契約解消金の予見可能性を高めるだけの制度でしかないと考えております。また、その上限・下限を示すことで安易な解雇が減るのではないかとの意見もありましたけれども、訴訟すればかえって大変になるとして示談の強要などの乱用を招くような制度でしかないのではないかと考えているところでございます。
今回、調査の中で、紛争解決制度を知らない労働者が非常に多いことが明らかになったということですけれども、既に現行制度の中で迅速な解決の仕組みは整備されていると考えますので、まずは、そうした制度の周知をきちんとすべきではないかと考えております。何よりも労働者の救済を図るという視点でいえば、労基署などによる監督・指導の徹底を一層強化することによって、不当解雇とか労働関係法令違反が生じない職場環境をきちんとつくっていくことが最も重要と考えておりますので、意見として申し上げておきたいと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
神吉委員、どうぞ。
○神吉委員 解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する研究会には、座長とともに私も参画しておりましたので、その観点から一言申し上げます。
まさにその研究会で議論していたのは、「解雇無効時」の金銭救済制度であり、バックペイが必ず発生する状況において、バックペイを中心とした金銭補償に加えて固有の労働契約解消金というものが観念できるかを中心に議論してきたということでございます。それに対して、今回、資料No.2-1の労働局あっせんにおける解雇型雇用終了事案は、非常に簡易・迅速な手続の中で、解雇が無効なのか有効なのかという問題には白黒つけずに、とにかく早く紛争解決する趣旨の金額であることに注意が必要であると思います。
資料No.2-2の4ページと9ページを参照しますと、実際にはほとんどの人が紛争解決制度自体を使っていません。わずか7.6%の方が利用した紛争解決制度の中で、訴訟を使ったという人はそのうち10.7%に限られます。さらに、その訴訟を利用した結果として解雇無効とはっきり白黒ついた方はそのうち22.0%ですので、解雇無効時の金銭救済として考えてきた労働契約解消金の在り方は、全体の紛争の中からすればかなりレアケースの論点だったことになります。解雇が無効だとは必ずしも言い切れないいろいろなケース、なかには解雇が当然有効と判断されるケースも入っているかもしれないあっせんの解決金額を一人歩きさせないことが重要だと思います。
また、今回の資料No.2-3では諸外国の金銭救済制度に関して計算式も含めて整理されていますが、これも各国におけるあくまでも不当・違法な解雇についての制度であることに留意が必要だということを申し上げます。そうした解雇について金銭救済をする場合、金額の算定についてバックペイの発想を中心に据えるのであれば、過去の賃金額と年数・年月が原則として考慮要素となり、予測可能性はそれほど低くないと思います。
つまり問題になるのは、そもそもバックペイが支払われるべき無効な解雇なのか、それとも解雇は有効でバックペイはそもそも発生しないのかという点で、金銭救済の額の算定や予測可能性確保の問題が解雇の有効性判断にかかってしまっている。他方で、もし解雇の有効性に白黒をつけた上でという話になるのであれば、その判断をするまでの時間や費用がかかります。その点では、問題状況はあまり変わらないのではないか。計算式が明確になれば問題が簡単に解決することはないのではないかと先ほど御指摘がありましたように、判断までに時間や費用がかかることがこの紛争解決手段を使わないネックになっているのであれば、計算式を明確化すれば単純にクリアできる問題ではないと考えます。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
オンラインで水島委員からの御発言希望がございます。お願いします。
○水島委員 ありがとうございます。
各調査につき御報告いただき、ありがとうございました。詳細な資料を作成いただいたことに感謝申し上げますが、率直に申し上げて、今回の資料を拝見して、私には制度のあるべき姿や労働者のニーズをイメージするのがなかなか難しく思いました。
3点、意見を述べさせていただきます。
まず、資料No.2-1のスライド13で解決金額の比較をお示しいただきました。あっせんを利用した場合、解決金額が低いことはたびたび指摘され、解決金額だけを考えれば、あっせんではなく、他の制度あるいは新しい金銭解決制度を利用するのがよいとも考えられます。
神吉委員の御発言にもありましたが、あっせんには早期の解決ができるという利点があります。私はかつて労働局あっせん委員を務めたことがありますが、あっせん当事者から、あっせん日まで落ち着かない状態だった、早く解決したいといったお声をよく聞きましたし、労使双方がメンタル不全に陥っているという事案もありました。紛争が長引くことは、当事者の精神的負担につながります。解決金額だけでなく、解決までの期間も考慮材料として重要と考えます。
次に、資料No.2-2のスライド12と13で、企業規模や紛争解決制度ごとに、紛争解決やその予防のために必要と考える方策について、ニーズを集計いただきました。例えば労働者の属性ごとの分析など、もう少し何らかの資料があればありがたいと思いました。
最後に3点目ですけれども、解雇の実態は多様ですので、個々の労働者、そして使用者側の納得を得られるために、どのような点を考慮して労働契約解消金の額を決定すべきかについて、もっと深掘りした検討の必要があると思います。法技術的論点検討会でも御議論があったと思いますが、当事者が納得性を得られる合理的な算定方法とはいかなるものか。また、労働者の個別の事情や解雇により被る不利益をどの程度まで配慮すべきかなど、経済学的な見地、あるいは諸外国の制度などを踏まえてシミュレーションを行うなどして、検討のための材料を集めていただければと思います。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
ほかに御意見等ございますか。
川田委員、お願いします。
○川田委員 ありがとうございました。
私も、方向性としては何人かの委員から示されました、解決金の点を中心に具体的な内容の検討を深める必要があるのではないかというのが基本的な考え方です。以前にも解雇無効時の金銭救済について、この分科会で議論されたことがあり、そのときにも意見として述べましたが、私はこのような制度を設けるか設けないかという段階の議論、今、労使それぞれの委員からそのような御意見が示されているところだと思いますが、そういう段階の検討においても、仮に制度をつくるとしたらどのような制度になるのかということをある程度具体的に示しながら検討することが重要ではないかと考えております。
また、これも以前の分科会のときに述べたことですが、参考になり得るような情報、先ほど出てきたように、現状では現行法制下の解雇の金銭解決というのは、その解雇が有効か無効かについて明確な判断をしない形で、当事者の合意による解決を図るというものが主流ですが、そういうものだということは認識した上で、その実態であるとか、あるいはこれも御指摘あったとおり、単純に日本で同じように考えることはできないとしても、外国における関連する制度などを可能な限り調査して、データを示しながら検討することも重要だと考えています。
そういう観点からすると、今回お示しされた資料No.2-1から2-3までのデータは、私としては考えていたより充実したものをお示しいただいたのかなと思っていますが、それでもデータが示されたことで、検討課題がより鮮明になったところがあるというふうに思っております。
具体的には、これは既に他の委員からも御指摘あったところですが、資料No.2-2でいうと、まとめられているのは14ページです。14ページでは、上のほうの解雇等経験者の中で何が必要かという問いに対して、金銭救済制度を選んだ方が大体16%。それから、選ばなかった方の中で金銭救済制度はあまり必要ではないとか必要でない、これはネガティブな意見を明確に示したもので、ポジティブ、ネガティブ、合わせても4分の1ぐらいの方が明確な意見を示すにとどまっており、分からないというような意見が多数を占めている状況かと言えます。
それから、金銭救済制度を選択しなかった方の中で、金銭救済制度の必要性について、「どちらともいえない」という方の中で、「解決金額や費用による」という答えが半分ぐらいということです。解雇等未経験者についても、大まかな方向性としては同じような数字かなと思っています。そのようなことを考えると、解決金額の具体的なイメージがないと、特に制度を利用したい労働者からすると、その制度の必要性についてもイメージが持ちにくいということになるのではないかというふうに考えているところで、これはこの分科会で審議する場合にも、解決金額などの制度の具体的なイメージを持ちながら検討することの重要性というのが改めて分かったかなというふうに、この数字を受け止めています。
それから、もう一つ、私が今回の調査で気にしたのは、これも既に指摘されていますが、資料No.2-2でいうと、例えば11ページで、解雇等を経験された方の中で紛争解決制度を利用された方が7.6%にとどまっているということです。これは、それ自体が改善することが検討課題になっていると言えますが、解雇無効時の金銭救済制度の検討の中では、現行法制の下での運用状況以外の検討素材も見ていくことも、それなりに重要だということになるのかなというふうに思っています。そういうことから、今回、事務局に調査いただいた内容を踏まえつつ、冒頭述べたように、さらに金銭解決の金額に関する考え方などについて検討を深めることが必要ではないかと思っています。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございました。
鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
先ほど神吉委員から、あっせんや労働審判の実務では、必ずしも解雇の有効・無効を白黒はっきりさせずに金銭和解になるという趣旨の御発言があったかと思います。私の経験からすると、確かに白黒つけずに審判に至らない形で金銭和解というのは多いわけですが、労働審判員としては、解雇の有効・無効の心証はある程度共有しながら、どのような解決があるかを探りながら、和解勧告のようなことをしているのが実態ではないかと理解しております。
そうした中で、私の経験から、これはどう考えても心証が悪いのではないか、解雇が無効に近いのではないかというケースでも、バックペイ程度の解決金で和解することも多く、バックペイにプラスアルファの解決金が支払われない場合もあることを考えますと、金銭救済制度をつくった上で、心証が100%解雇無効でなかったとしても、そちらに近い場合にはバックペイ、プラス労働契約解消金の上下限を念頭に置いた金銭の提示があり得る。そういう意味で、よい影響があるのではないかと私自身は思っているところです。
以上です。
○山川分科会長 ありがとうございます。
ほかに御意見、御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
今の鈴木委員、その前の神吉委員の御発言に関しましては、資料No.2-1の8ページに、あっせんの場合と労働審判の場合と赤の裁判上の和解の3つに分かれて金額のデータが出てきて、これはそれぞれの制度の特性をある種反映したようなところがあるのかなというふうに思っております。失礼しました。13ページのほうでしたが、同じような感じになっておりますけれども、青とピンクと赤での分布状況の差異が出てきております。
それで、様々な御意見ありがとうございました。それぞれの御意見をお伺いしておりますと、また、アンケートでも、解決水準・内容等が分からないと、そもそも判断がつかないというご感想がかなり出てきたということでございます。委員の皆様方から、さらに検討が必要な事項等についての御指摘もいただきました。そういうことを考えますと、今後の議論の素材ないし前提として、具体的な政策的検討を進めるためには、バックペイ等のお話もありましたけれども、解雇による不利益と解決金との関係、あるいは算定方法、上下限の設定可能性等について、より具体的な資料、データを用いて議論しておくことが必要ではないかというふうに感じた次第でございます。
そうしますと、さらに有識者による議論、これも御指摘がありましたけれども、先だって行われました法技術検討会は相当に法技術的な分析に特化した性格のものでありますけれども、今日の、特に公益委員の先生方の御指摘を踏まえますと、より別個の観点から改めて、さらに有識者による議論を行うべきではないかというふうに感じた次第でございます。専門的な観点から、法学のみならず、経済学等の専門家も交えて、有識者による議論をまず行っておくということが必要かと考えた次第でございます。
この点につきまして、御質問、御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。様々な課題が指摘されましたので、議論の素材ないし前提としての有識者による検討をさらに続けるということでございます。
それでは、特段ございませんでしたら、皆様から様々御意見いただきましたので、それも留意しつつ、今後の対応をお考えいただきたいと事務局にお願いしたいと思いますが、事務局としては何かございますか。
それでは、岸本基準局長、お願いします。
○労働基準局長 労働基準局長でございます。
ただいま分科会長から御指摘いただいた点につきましては、有識者に検討いただく場を設ける方向で検討させていただきたいと思います。
○山川分科会長 それでは、御検討をお願いいたしたいと思います。よろしいでしょうか。
さて、本日の議題の各テーマにつきましては、皆様方、それぞれのお立場から非常に貴重な御意見等をいただきました。いずれも非常に重要なものだと思いますので、事務局におかれましては、本日の議論も踏まえて検討を進めて、次回以降の資料を、これは議題1の労働基準関係法制についてということでございますけれども、その議題につきましては、次回以降の資料の準備をいただくようにお願いいたしたいと思います。
本日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。
では、次回の日程等について、事務局から説明をお願いします。
○事務局 次回の日程等につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○山川分科会長 それでは、これをもちまして、第205回「労働条件分科会」を終了いたします。
本日は、お忙しい中、貴重な御審議をいただき、大変ありがとうございました。散会いたします。

