中央社会保険医療協議会 薬価専門部会 第242回議事録(2025年12月3日)

日時

令和7年12月3日(水) 9:30~

場所

全国都市会館 2 階大ホール

出席者

構成員等
  • 城山英明部会長
  • 小塩隆士委員
  • 本田文子委員
  • 笠木映里委員
  • 鳥潟美夏子委員
  • 松本真人委員
  • 永井幸子委員
  • 奥田好秀委員
  • 江澤和彦委員
  • 黒瀬巌委員
  • 大杉和司委員
  • 森昌平委員
  • 藤原尚也専門委員
  • 越後園子専門委員
  • 荒川隆治専門委員
事務局
  • 間保険局長
  • 林医療課長
  • 吉田保険医療企画調査室長
  • 梅木医療技術評価推進室長
  • 和田歯科医療管理官
  • 清原薬剤管理官 他

議題

  • 令和8年度薬価改定について

議事

○城山部会長
ただいまより、第242回「中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」を開催いたします。
本日も対面を基本としつつオンラインも組み合わせての開催としております。
また、会議の公開についてはYouTubeによるライブ配信で行うこととしております。
まず、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、全員に御出席いただいております。
なお、会議冒頭のカメラの頭撮りはここまでとさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
(カメラ退室)
○城山部会長
それでは、議事に入らせていただきます。
本日は「令和8年度薬価改定について」を議題といたします。
事務局より資料が提出されておりますので説明をお願いいたします。
○清原薬剤管理官
薬剤管理官でございます。
本日は、薬-1、薬-2を通して説明させていただき、御議論いただければと思っております。
まず、資料の薬-1の2ページ、本日御議論いただく内容でございます。
3ページ、市場拡大再算定の特例はイノベーションの評価と国民皆保険の維持を両立する観点から、年間販売額が極めて大きい品目に対して導入され、改定時の再算定は医療機関等への販売量・価格を調査する薬価調査を基に実施しておりました。
4ページ、課題でございますが、保険外での使用が一定数見込まれる品目につきまして、薬価調査の結果に基づく特例の実施は、保険外での使用分も含めた上で実施されることとなるため、医療保険財政を考慮するという本来の趣旨とは一部そぐわない側面がございます。一方、NDBによる販売量の把握は効能追加等による市場規模の急激な拡大を遅滞なく把握するためのものであり、効能追加等が行われていない品目の場合は対象とはなっておりません。
対応の方向性案といたしまして、薬価調査における販売額が特例の要件に該当する品目のうち、保険外での使用が一定数見込まれる品目につきましては、製造販売業者により適正使用のさらなる推進を図ることを前提といたしまして、薬価調査による市場拡大再算定は行わず、効能追加等の有無にかかわらず、NDBにより販売額を把握し、薬価改定以外の機会も含め、特例を実施することとしてはどうか、としております。
以降は参考資料となっております。
続きまして、資料の薬-2、これまでの議論をとりまとめたものでございます。
2ページ、令和8年度薬価改定に向けた改定の方向性として、制度改革の項目整理案についてまとめております。
3ページからは新薬についてでございます。
4ページからは薬価算定方式です。革新的新薬の評価方法について、研究班の結果も踏まえて次々期制度改革で議論してはどうか。類似薬効比較方式における算定方法について、比較薬の補正加算を控除した上で1日薬価合わせを行うこととし、その上で、新薬の補正加算を可能としてはどうか。
5ページは原価計算方式でございます。開示度の向上について、業界団体における開示度向上に向けた努力を継続すること、これを基本とし、今後の原価計算方式における開示度、補正加算の適用の状況を踏まえた上で、次々期制度改革において議論することとしてはどうか、などとしております。
6ページからは新薬の薬価収載時・薬価改定時における評価でございます。
規格間調整のみによる新薬の薬価算定における補正加算について、新薬が市場性加算(Ⅰ)、先駆加算、または迅速導入加算の要件を満たす場合、これらの加算を評価可能としてはどうか。
2つ目としまして、市場性加算(Ⅰ)について、希少疾病用医薬品の指定範囲が小児のみを対象とする場合を除き、市場性加算(Ⅰ)と小児加算の併算定を可能としてはどうか。
3つ目、原則、現行の加算率の範囲を維持しつつ、希少疾病用医薬品の指定基準への該当性の内容に応じて加算率の下限を5%とし、加算率を柔軟に判断することとしてはどうか、としております。
8ページ、標準的治療法に関する加算の評価について、薬価改定時にも評価できるようにしてはどうか。ドイツ価格は価格交渉後の価格を参照することとし、ドイツ価格の状況等を把握できるよう、薬価基準収載希望書に価格交渉後の価格であるか否かの記載を求めてはどうか、などとしております。
9ページ、薬価改定時の加算の見直しのイメージでございます。
10ページからは新薬創出・適応外薬解消等促進加算でございます。
特許期間中の革新的な新薬の薬価が維持されることをより分かりやすくするため、制度の名称を仮称でございますが、革新的新薬薬価維持制度等に変更してはどうか。
品目要件への該当性を明確化し、制度の透明性を高める観点から、品目要件から別表10の基準に該当する医薬品を削除し、新たに薬価収載される医薬品は対象としないということとしてはどうか。
引き続き、乖離率が平均乖離率を超える品目は対象としないこととしてはどうか。
改定前薬価と市場実勢価格に基づく改定額との差額の累積額の控除について、従来どおり薬価改定時に控除することとしてはどうか、としております。
11ページは革新的新薬薬価維持制度(仮称)の全体像のイメージでございます。
12ページ、算定ルールの適用順ですが、累積額の控除を適用してから、薬価の下支えが適用されるようにしてはどうか、としております。
13ページからは市場拡大再算定でございます。
①市場拡大再算定の特例について、制度の名称を仮称でございますが、国民負担軽減価格調整などに変更し、併せて、国民負担の軽減のための価格調整の在り方については、引き続き検討を行ってはどうか。
②原則、希少疾病、小児の効能等の追加のみをもって市場拡大再算定の対象品に該当するとは判断していないこれまでの運用を明確化してはどうか。
③有用性系加算と市場拡大再算定における補正加算の趣旨の違いを踏まえ、市場拡大再算定時の有用性系の加算の適用は行わないこととしてはどうか。
次のページ、④薬価改定の際以外の再算定の実施頻度について、現場の負担に鑑みて、現行の実施頻度を維持することとしてはどうか。
⑤再生医療等製品に対する市場拡大再算定について、再生医療等製品の特徴等を踏まえつつ、次々回薬価制度改革に向けて引き続き議論することとしてはどうか。
⑥市場拡大再算定、または市場拡大再算定の特例の類似品の取扱いについて、後発品が収載されていない新薬が対象品の場合、長期収載品は類似品として取り扱っていないこれまでの運用を明確化することとしてはどうか、としております。
15ページからは長期収載品の薬価についてでございます。
イノベーションの推進に向けて、長期収載品に依存するビジネスモデルからの脱却を促進する観点から、安定供給にも配慮した上で、後発品上市後5年を経過した長期収載品の薬価については、後発品置換率によらずG1を適用し、Z2、G2を廃止してはどうか。
次に、Cを廃止し、G1の補完的引き下げは後発品置換率によらず、2.0%の引き下げ率としてはどうか。
後発品の加重平均まで薬価が引き下げられた長期収載品については、G1を適用しないこととしてはどうか。
令和6年度の薬価改定時点において、G2に該当した品目については、以下のとおり取り扱うこととしてはどうか、としております。
16ページは、長期収載品の薬価のさらなる適正化の見直しのイメージでございます。
17ページは、引き下げの下限、円滑実施措置について廃止をする方向でございますが、今回の改定に限り、安定供給に支障がある場合には適用することとしてはどうか。
バイオシミラーが収載されているバイオ先行品についても、G1を適用することとしてはどうかとしております。
18ページからはオーソライズド・ジェネリック、バイオAGでございます。
バイオAGの新規収載時の対応につきましては、先発品の薬価と同額とすることとしてはどうか。
オーソライズド・ジェネリックの新規収載時の対応につきまして、先発品と有効成分、原薬、添加物、製法等が同一の後発品の新規収載時の薬価については、先発品の薬価と同額とすることとし、客観的にAGであるか否かを判断することが困難なため、薬価基準収載希望書にAGであるか否かの記載を求めてはどうか。
先発品の薬価と同額で算定されたバイオAG、またはAGにつきましては、薬価改定時に先行品、先発品と加重平均を行い、薬価を集約することとしてはどうか、としております。
19ページからは、後発医薬品を中心とした医薬品の安定供給確保のための対応でございます。
20ページは後発医薬品の価格帯集約に関する対応でございます。
後発品等の価格帯集約について、注射薬、バイオシミラーについては、最高価格の30%を下回る算定額となる品目の価格帯集約を除き、価格帯集約を行わないということにしてはどうか。
G1品目に係る後発品の1価格帯集約については、廃止することとしてはどうか。
企業指標の結果を活用した価格帯集約の特例の適用条件を満たす品目につきましては、品目ごとの改定とすることとしてはどうか、としております。
21ページは薬価の下支えの充実でございます。
基礎的医薬品について、必要な対応を検討することとしてはどうか。
最低薬価について、外用塗布剤の最低薬価の設定、点眼・点鼻・点耳液に点眼液の最低薬価を適用することとしてはどうか。
また、物価の動向等や逆ザヤの解消、日本薬局方化の推進の観点も踏まえ、必要な対応を検討することとしてはどうか。
不採算品再算定について、該当する類似薬のシェアが一定以上の場合は、要件に該当するものとし、平均乖離率を超える品目は対象外としてはどうか。
不採算品再算定の取扱いは、企業の希望状況を整理しているところであり、逆ザヤの解消の観点も含め、必要な対応を検討することとしてはどうか、としております。
27ページはその他の課題でございます。
28ページ、高額な医薬品に対する対応でございます。
令和4年度、薬価制度改革の骨子に基づく高額な医薬品への対応を継続し、これまでの対応を規定化してはどうか。
本日の議論を踏まえ、保険外での使用が一定数見込まれる品目については、効能追加等の有無にかかわらず、NDBにより販売額を把握し、薬価改定以外の機会も含め、特例を実施することとしてはどうか。
29ページ、調整幅の在り方につきましては、物価の高騰等の状況も踏まえながら、次々期薬価制度改革において、引き続き検討することとしてはどうか。
販売包装単位の適正化について、次々期薬価制度改革において、必要に応じて薬価上の対応の必要性を検討することとしてはどうか。
イノベーションの適切な評価について、米国の最恵国待遇(MFN)の価格政策に関連し、日本でのドラッグ・ロス等のリスクとなるとの意見があることから、ドラッグ・ロスを解消し、我が国の創薬力を強化する観点等から、機動的な対応ができるよう、引き続き検討を行うこととしてはどうか、としております。
30ページからは診療報酬改定がない年の薬価改定についてでございます。
31ページ、令和8年度薬価改定の影響等を踏まえて、総合的に対応を検討することとしてはどうか、としております。
以上が論点整理でございますが、本日は、この記載内容に関して御意見をいただき、次回、関係業界からの意見聴取を行うことを計画しております。そして、それを基にさらに議論を深めて、骨子の取りまとめに向けた検討を進めていければと考えております。
薬-2 参考として、これまでの主な御意見を論点とともにまとめております。
説明は以上でございます。
○城山部会長
どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関して御意見・御質問等がございましたらお願いいたします。
江澤委員、お願いします。
○江澤委員
それでは、薬-1の4ページの保険外診療の拡大についてコメントいたします。
確かに市場拡大再算定は公的医療保険制度において、市場が大幅に拡大した場合、適切に薬剤費を配分するという役割を担っていることからすれば、保険外で使用される品目について除外するということも一定の合理性があると考えております。
しかし、公的医療保険制度で扱う医薬品であれば、たとえそれが自由診療で使われる場合であっても適正使用がなされるよう、しっかりとした対応を行っていただくことが大前提であります。企業の対応としては当然でありますが、国としても適正使用に向けた環境整備をいただく必要があると考えております。
事務局におかれましては、保険外での使用が一定数見込まれる品目をどのように考えており、どう決定するのか考えをお聞かせいただきたいと思います。こちらは質問でございます。
続きまして、薬-2について、今回示された対応の方向性案につきましてはおおむねこれまでの議論を踏まえた内容になっていると受け止めておりますが、幾つかの点についてコメントさせていただきます。
まず、8ページの③標準的治療法に関する薬価改定時の加算の評価についてでございます。これは薬価収載後にガイドラインで標準療法となった場合は、薬価改定時に評価するという内容であります。しかし、以前主張しましたとおり、標準的な治療と位置づけられれば当然市場も拡大するはずですので、その点も踏まえた評価方法となるよう、引き続きの御検討をお願いいたします。
続きまして、13ページの使用拡大再算定の制度の名称について、国民負担軽減価格調整(仮称)という案が示されておりますけれども、対外的に見ましても、公的医療保険制度を健全に持続するための価格調整の意味合いのほうがなじむと思っております。
次に、15ページの長期収載品の薬価のさらなる適正化についてでございます。今回、Z2やG2、Cの廃止が提案されておりますが、こちらも以前申し上げたとおり、必要な医薬品が安定的に供給されることを大前提に進めるべきであります。そうした意味で、今回は非常に大きな見直しが行われますので、現行ルールの廃止によって実際にどのような影響が生じるのか、もう少し詳しく分かるような資料の提出を事務局にお願いしたいと思っております。
続いて、18ページのAG、バイオAGの取扱いについてでございます。対応の方向性として、AGやバイオAGの価格については、先発品や先行品と同額とすることが提案されております。この提案はAGやバイオAGではなく、後発医薬品やバイオシミラーを促進させることを考慮したものと認識しておりますが、特許切れの医薬品が先発品や先行品と同価格であるということは、医療保険の持続性や患者さんの御負担も考えると簡単に納得できるものではないと考えます。先発品・先行品と同価格とすることの意義や、メリット・デメリットなどを踏まえた上で、引き続きの検討が必要と考えております。
私からは以上でございます。
○城山部会長
どうもありがとうございました。
1点目のところで御質問がございましたので、事務局、いかがでしょうか。
○清原薬剤管理官
御質問いただきました自由診療で保険外で使われている品目を選定する方法でございますが、我々のほうといたしましては、薬価調査に基づき市場拡大再算定の対象となる品目を選定いたしますが、そのときに企業側が自社のデータをお持ちだと思いますから、それには該当しないというようなことでしたら、それで理由をつけて資料を提出されるということになります。
それをもって、我々のほうでできる限り保険診療で使われている数量のデータを集めまして、その数字の確かさを確認して、それが確かだろうということになれば除外をするというようなことで、基本的には企業からの申請に基づいて、その数字を我々のほうが精査をするというような形で対象品目を選定していこうと考えております。
以上でございます。
○江澤委員
これまでも自由診療で必ずしも適切かどうか、疑義があるような、自由診療での使用がなされているわけですけれども、ちなみにそういったものについては、かなりタイムリーに事務局において把握が可能なのでしょうか。
○清原薬剤管理官
タイムリーにというのは難しいのですが、NDBも含めていろいろデータがありますので、それを後から取ってくる等になりますので少し時間はかかりますが、我々としては確認できる方法で、企業からの主張に対して、補足するデータを我々は集めて検証するということにしております。
○江澤委員
適正使用も含めて、引き続き事務局におかれましてはよろしくお願いしたいと思います。
○城山部会長
よろしいでしょうか。
森委員、お願いします。
○森委員
お示しいただいた対応の方向性について幾つか意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、薬-1の4ページ目について、今、意見がありましたけれども、NDBのデータでの使用状況を把握することには異論ありません。ただ、保険外でのことですけれども、適正使用が前提だと思っています。その上で心配しているのが、保険外で使用されることによって、本来保険診療で使用する人への医薬品の供給が不足するようなことがあってはいけないと思いますので、そこはしっかりと気をつけていただきたいと考えております。
次に、薬-2の5ページ目について、原価計算方式における薬価の原価の開示度に関して、これは何回もここで議論されていますけれども、まず、業界の意見陳述の中でも医薬品のサプライチェーンの複雑化等により、申請企業の努力だけではどうにもならないという意見があります。引き続き、まずは業界団体における開示度の向上に向けた取組は継続をしていただきたいといます。その上で、同一企業内で移転価格の開示度がどうなっているのか。独立企業間価格の場合の開示度の状況等を踏まえた上で議論を今後進めていくべきだと考えております。
次に、薬-2の8ページ目の③について、薬価の収載後、国内の診療ガイドラインにおいて標準療法となるということは、リアルワールドでの評価がなされたものと考えます。薬価改定時に評価することに賛同いたします。
次に、薬-2の13ページ目について、企業にとっては予見性が高まり、希少疾患、小児のさらなる開発促進につながることは重要で、希少疾患、小児の効能追加における市場拡大再算定については、使用実態が著しく変化した既収載品には該当しないということを明確化することに賛成いたします。
次に、薬-2の15ページ目について、G1、G2ルール策定時等とは、後発品使用に関する環境が変化しており、また、特許期間満了後は市場を後発品に明け渡していくという観点から異論ありませんが、安定供給への配慮とイノベーションの評価とのセットで行うことが必要であると考えております。
次に、21ページ目の②最低薬価について、最低薬価の医薬品は、物価や人件費の高騰、配送コストなどの影響を大きく受けるため不採算となりやすく、医療現場に逆ザヤとして影響が出ることが考えられます。最低薬価の引き上げは必要と考えます。
また、③の不採算品再算定については対応案に異論ありませんが、不採算品再算定を受けた品目は確実に増産となることが必要だと考えます。
次に、29ページ目について、医薬品の製造のみならず、卸、薬局、医療機関においても物価高や流通コスト上昇などの影響を受けています。また、調整幅を設定した当時と比較して乖離率は大幅に縮小しています。このような状況に鑑みると、安定供給の確保のための調整幅の重要性は増しており、医薬品を取り巻く状況の変化を踏まえた検討が必要だと考えます。
また、包装販売単位の適正化について、処方実態と合わない販売包装単位の高額医薬品は医療現場で特に困っています。関係団体による対応状況を注視するだけではなく、販売包装単位をどのように適正化していくのか、次々期薬価制度改革の議論では具体的な検討ができるようにお願いをいたします。
今後、医薬品の新規収載において明らかに処方実態と合わず販売包装単位が原因で残薬が発生する懸念があるものや、水剤等、品質の点からボトル単位で投与すべきもの等については、方向性が出る前であっても販売包装単位の薬価収載など、柔軟な対応をお願いします。この柔軟な対応については今回の対応の中で明記をお願いしたいと考えております。
また、今回の対応の方向性案には異論ありませんが、先発医薬品と後発医薬品の薬価の逆転についても発言させていただきます。
改定時薬価は市場実勢価に基づくため、これまでも先発医薬品と後発医薬品で薬価が逆転するものがありましたが、令和7年4月の薬価改定で最低薬価の引き上げ、不採算品再算定の幅広い対応が行われ、薬価の逆転現象が発生し、後発医薬品の使用促進や選定療養の長期収載品の関係など、医療現場では患者さんへの説明などを含め、大きな混乱がありました。先発医薬品の薬価を超えた後発品から価格の低い後発医薬品への切り換えも増加し、安定供給にも影響が出ています。
次回の薬価改定では、後発医薬品に関する企業指標の活用、長期収載品のさらなる適正化により、薬価が逆転する医薬品がさらに増加していく可能性もあります。薬価の逆転は患者さんのみならず、薬局・医療機関での後発医薬品の使用率やカットオフ値の計算にも影響します。薬価が逆転しても医療現場での混乱などが発生しないような制度が必要です。来年4月の薬価改定に合わせた対応をお願いしたいと考えています。
私からは以上です。
○城山部会長
どうもありがとうございました。
それでは、松本委員、お願いします。
○松本委員
まず、資料の薬-1の保険外での使用が一定数見込まれる品目の取扱いについて、市場拡大再算定の特例が医療保険財政の持続可能性を確保するために導入された趣旨を踏まえますと、保険外での使用分を含めて特例再算定を適用することに一定の難しさがあることは理解しております。
ただ、薬価収載された医薬品は保険診療の中で使用することがそもそも前提であり、適用外使用の場合でもレセプト審査で認められるケースや、保険外併用療養費制度による対応もあります。こうした枠組みの外で完全な自由診療として使用することは患者の安全に対する懸念があり、さらに保険診療において使用する医薬品の安定供給に支障を来す可能性も否定できません。この点はほかの委員からも御意見があったとおりかと思っています。
したがいまして、4ページの対応の方向性に示されているとおり、製造販売業者による適正使用の推進は当然であり、効能追加等の有無にかかわらずNDBで販売額を把握し、保険診療での販売額が特例の基準に該当した場合には、速やかに再算定で薬価を引き下げるべきだと考えます。
次に、資料の薬-2で事務局が示されている対応の方向性については、今後、業界ヒアリングも踏まえまして最終的に判断をしたいと思いますが、本日は特に課題となっている項目に絞ってコメントいたします。
まず、5ページの原価計算方式についてですが、開示度を高めるためにはあらゆる手を尽くし、それでも開示度が低い場合には別の切り口で医薬品の価値を評価することも徹底すべきだと考えております。
次に、10ページの新薬創出加算については、特許が切れたら速やかに後発品に市場を譲る考え方で、後発品の薬価収載と同時に累積額は控除することが本来のあるべき姿であるということは改めて指摘させていただきます。
続きまして、21ページにございます薬価の下支え制度についてです。このページには3つの仕組みが示されており、いずれも安定供給のために必要なことは理解しておりますが、そもそも市場取引の中で医薬品の価値に見合った実勢価格が形成されることが重要であり、財源に限りがあることを踏まえますと、優先順位は慎重に判断すべきだと改めて強調させていただきます。
最後に、29ページの(2)にあります調整幅についてですが、今回も議論が深まらず引き続きの課題ということですが、これまでも申し上げてきているとおり、カテゴリー別や投与経路別、剤形別、高額薬剤かどうかといった切り口で調整幅を変える余地は十分にあると考えておりますので、事務局には早急な議論の準備をお願いしたいと思います。
私からは以上でございます。
○城山部会長
どうもありがとうございました。
永井委員、お願いします。
○永井委員
国民負担の軽減と創薬イノベーションの両立に加えて、ドラッグラグ/ロスの解消、医薬品の安定供給確保を図ることは重要であり、その観点から、適切に見直すことが必要と考えております。
医薬品流通に関する課題である調整幅の在り方につきましては、安定的な医薬品の流通に必要な経費はどれほどなのか。イノベーションの適切な評価として革新的な新薬の薬価の在り方についても適切な対応に向けて継続した検討が必要と考えております。
以上です。
○城山部会長
ありがとうございます。
それでは、オンラインで鳥潟委員、お願いします。
○鳥潟委員
まず、薬-2の令和8年度薬価改定につきまして幾つか意見を述べさせていただきたいと思います。
オーソライズド・ジェネリックやバイオAGについて、先発品の薬価と同額とする方針で異論はありません。AGか否かを判断するために薬価基準収載希望書に記載を求めることは必要なことだと思います。しかしながら、客観的な判断を可能とできるよう、今後も継続的に検討いただきたいと考えております。
なお、AG、バイオAGにつきましては、長期収載品と同様に扱っていくという方針で受け止めております。そのため、長期収載品の選定療養制度や各種加算等の後発品使用状況の要件においても整理し直す必要があると考えております。
不採算品再算定について、該当類似薬のシェアが一定割合以上の場合に対象とする点につきまして、少数多品目構造を解消し、安定供給を確保する方針を後押しする観点から重要であると考えております。
加えまして、前回の議論でほかの委員の方々からも御指摘がありましたが、供給改善に寄与するもののみを対象とするべきであり、市場から撤退する予定の品目については対象外とする必要があるとともに、例えば数量シェアが極端に低い品目について、今後、安定供給に寄与するほどの供給増が見込まれないと想定されるため対象外とすることもあり得るのではないかと考えております。
以上です。
○城山部会長
どうもありがとうございました。
ほかはいかがでしょうか。専門委員の方からも何かございましたら。
藤原専門委員、お願いします。
○藤原専門委員
発言の機会をいただきましてありがとうございます。
次回、業界の意見聴取の機会をいただいておりますので、当日、業界代表より各論点に対する意見を述べさせていただきたいと思います。
本日は、専門委員として3点コメントをさせていただきたいと思います。
まず、薬-2、スライド13の①市場拡大再算定の特例の見直しについてでございます。特例拡大再算定につきましては、業界としてはかねてより廃止を要望してきたところでございますけれども、今回、国民皆保険の維持のための対応という趣旨を明確化するため、制度の名称を国民負担軽減価格調整に変更することが提案されております。これは前提条件に大幅な変更があった際に薬価を再算定するという市場拡大再算定の本来の趣旨からは大きく変わるものであり、単に名称を変えるということではないと考えております。国民負担の軽減は薬価だけで行うものでもなく、その方法については十分に時間をかけて丁寧に議論を行う必要があると考えます。
次に、同じスライドの③有用な効能追加に対する引き下げ率の緩和についてでございます。前回の薬価専門部会でも申し上げましたけれども、収載時であれば補正加算の対象となるような有用性が高い効能を追加した場合には、追加した効能効果の価値を考慮し、再算定の引き下げ率を緩和いただきたいと考えております。その際、改定時加算との違いを明確にするために、名称については薬価収載後の臨床的有用性の評価と変更することも検討に値するのではないかと考えております。
最後に、スライド14の⑥市場拡大再算定及び特例の類似品の取扱いについてでございます。これまでの薬価専門部会、そして、本日も委員の方々から御発言をいただいておりますけれども、長期収載品の薬価の適正化とイノベーションの評価はセットで行われる必要があると考えております。それによって初めて創薬イノベーションの推進と国民負担の軽減を両立する仕組みになると認識をしております。特に予見可能性が極めて低い共連れルールにつきましては、創薬イノベーションを推進する観点から廃止に向けた検討を改めてお願いしたいと考えております。
私からは以上でございます。
○城山部会長
どうもありがとうございました。
それでは、荒川専門委員、お願いします。
○荒川専門委員
発言の機会をいただいてありがとうございます。
薬-2の21ページの薬価の下支え制度の充実についての部分につきまして、安定供給の観点から卸の立場で現状報告をさせていただきます。
低薬価品の安定供給ということで、これまで限定出荷品というのが安定供給でいろいろ問題になっておりましたけれども、この中でも特に20円未満の限定出荷数量が82.6%ということで圧倒的に多い傾向にございます。また、保険薬局における逆ザヤ品目につきましても、調べてみましたところ、薬価20円未満の品目が57%と品目数で多く占めております。こういった低薬価帯の品目を取り扱うことにより、薬局様、または医療機関様に損失が生じかねない構造になっています。こういったことを鑑みまして、低薬価品であっても流通不採算が生じることのないように薬価の下支えをぜひお願いしたいと思います。特に20円未満の薬価引き上げは喫緊の課題と認識しております。
また、今年度の上半期の限定出荷、供給停止となっている製品の中には、少なからずもともとの安定確保医薬品、新しく決まりました需要供給確保医薬品が対象として含まれています。今回の医療法の改正の趣旨に鑑みまして、需要供給確保医薬品の対象品目につきましても、供給不安が発生することのないように薬価の下支えをぜひお願いしたいと思います。
以上、医薬品を取り扱う現場の状況を報告申し上げました。ありがとうございます。
○城山部会長
ありがとうございました。
ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、ほかに意見等もないようでしたら本件に係る質疑はこの辺りとして、今後、事務局において本日いただいた御意見も踏まえて御対応いただくようにお願いをしたいと思います。
本日の議題は以上でございます。
次回の日程につきましては、追って事務局より御連絡させていただきますのでよろしくお願いします。
なお、次回は既にお話がありましたように、関係業界からの意見聴取を行う予定としておりますので、よろしくお願いします。
それでは、本日の薬価専門部会はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。