中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会 第74回議事録(2025年11月12日)

日時

令和7年11月12日(水)費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会
合同部会終了後~

場所

厚生労働省講堂(低層棟2階)

出席者

構成員等
  • 飯塚敏晃部会長
  • 小塩隆士委員
  • 城山英明委員
  • 笠木映里委員
  • 鳥潟美夏子委員
  • 松本真人委員
  • 高町晃司委員
  • 奥田好秀委員
  • 伊藤徳宇委員
  • 江澤和彦委員
  • 小阪真二委員
  • 太田圭洋委員
  • 大杉和司委員
  • 森昌平委員
  • 藤原尚也専門委員
  • 越後園子専門委員
  • 守田恭彦専門委員
  • 前田桂専門委員
事務局
  • 間保険局長
  • 林医療課長
  • 梅木医療技術評価推進室長
  • 吉田保険医療企画調査室長
  • 和田歯科医療管理官
  • 清原薬剤管理官 他

議題

業界からの意見陳述について

議事

○飯塚部会長
ただいまより第74回「中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会」を開催いたします。
本日も対面を基本としつつ、オンラインも組み合わせての開催としております。また、会議の公開につきましては、ユーチューブによるライブ配信で行うこととしております。
まず、本日の委員の出欠状況について御報告します。
本日は、鈴木委員、黒瀨委員が御欠席です。
なお、会議冒頭のカメラの頭撮りはここまでとさせていただきたいと思います。
(カメラ退室)
○飯塚部会長
それでは、議事に入らせていただきます。
今回は、関係業界からの意見聴取を行いたいと思います。
関係団体として、日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会、米国研究製薬工業協会、欧州製薬団体連合会、日本医療機器産業連合会、米国医療機器・IVD工業会、欧州ビジネス協会医療機器・IVD委員会より意見を聴取したいと考えております。
それでは、早速、意見陳述に移りたいと思います。
それでは、まず、関係団体の皆様よりプレゼンテーションをしていただいて、その後に質疑を行いたいと思います。
関係団体の皆様は、最初に自己紹介を行った上で、プレゼンテーションをお願いしたいと思います。
それでは、まず、医薬品に関連する4団体よりプレゼンテーションをお願いいたします。
○宮柱日本製薬団体連合会副会長・日本製薬工業協会会長
皆様、おはようございます。日本製薬工業協会の宮柱と申します。
本日は日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会、米国研究製薬工業協会、欧州製薬団体連合会、4団体を代表しまして、費用対効果評価制度改革に関する共同意見を述べさせていただきます。
スライドの2枚目をお願いします。
初めに、2026年度費用対効果評価制度改革に向けた基本的な考えをお示ししております。
医薬品産業は、国民の健康、安全保障、経済成長に重要な役割を果たすものであるとされております。
一方で、我が国は、ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの顕在化、研究開発投資に関わる日本と世界のギャップ、また、安定供給などの課題に直面しております。
我が国の費用対効果評価制度は、薬価制度の補完としての加算部分の評価を目的として、費用対効果評価に基づく加算部分の価格調整を趣旨として導入をされました。
しかし、結果として薬価引下げのツールとしての運用となっており、薬価が引き上げられた事例はございません。これが現状でございます。
本制度導入後6年間の実績が蓄積された今こそ、運用上の整理のみならず、第三者を交えたさらなる検証を客観的に実施し、当制度の在り方を含めた、中長期的な議論を開始することが重要であり、客観的な検証を行うことなく、さらなる活用や拡大をすべきではないと考えております。
スライドの3枚目です。
本日は、業界意見の概要、そして、主な論点と意見、この2点について説明をさせていただきます。
スライドの4枚目です。
初めに、業界意見の概要です。
まず、左側ですが、費用対効果評価制度では、最初に追加的有用性が検討され、その後に、費用対効果が検討されるという2段階の流れになっているとの認識です。
本意見陳述では、2段階目の費用対効果を検討する前の段階、最初の追加的有用性の評価の観点を中心に説明いたします。
中医協費用対効果評価専門部会で挙げられた論点の中に、追加的有用性が示されず、費用増加の価格調整に関する内容がございます。
この点に関して業界としては、追加的有用性が示されず、費用増加の場合であっても、薬価算定時に認められた有用性が否定されるものではなく、当該品目の価格調整範囲を拡大すべきではないと考えております。
次に右側です。
これまでの中医協では、業界意見も取り入れつつ、現状の整理等を実施いただいたことを感謝申し上げます。
一方で、業界としては、重要な論点については、現行制度の本来の目的等に照らして、第三者を交えた客観的な検証をすべきであると考えております。
以降、左側Aについて主に説明をしまして、右側Bについては、内容の重複もあることから、要点のみ触れさせていただきます。
スライドの5枚目です。
ここからは、追加的有用性が示されず、費用増加品目についても、価格調整範囲を拡大すべきではないという点について、順に詳細を説明いたします。
右の図を御覧ください。医薬品の評価の流れをお示ししています。
薬事承認審査の後、まず、青い箱の部分で薬価が算定されます。ここでは、有用性系加算という形で、新規性や治療方法の改善を含む臨床上の幅広い有用性が評価されます。
この後に続く費用対効果評価は、薬価算定時点で既に有用性が認められた新薬のうち、指定対象品目について薬価制度の補完としての位置づけで評価が実施されます。
したがいまして、スライド左側、赤字にて記載のとおり、新薬の有用性は薬価算定時点で既に認められており、その後の追加的有用性の評価で、結果的に、それがないものとみなされることは適切ではないと考えております。
この認識のもとで、追加的有用性が示されず、費用増加となった場合も同様であると考えております。
端的に述べますと、費用対効果評価は、薬価制度の補完的な位置づけであり、薬価算定時に先に評価をされた有用性があることを前提としているということになります。
スライドの6枚目です。
以上の前提から追加的有用性が示されず、費用増加の場合であっても、価格調整範囲を拡大すべきではないと考えます。
前提が変わるような状況、すなわち補完的な位置づけである費用対効果評価に基づき、薬価算定時に先に評価された有用性がないものとみなされてしまう状況が生じてしまうのであれば、これは、そもそもの費用対効果評価制度の成り立ちを超えた運用となります。このような状況については、改めて慎重な議論をすべきと考えます。
スライドの7枚目です。
実際に、最初の薬価算定時の有用性とその後の費用対効果評価時の追加的有用性では、評価をする観点、そして、方法が異なることは御認識のとおりです。
表の左側、有用性に関わる主な評価項目を御覧ください。
ここには、薬価算定時の有用性加算要件を基に考慮される項目を記載しております。表中水色の部分にあるとおり、薬価算定時は、これらが、いずれも有用性評価の観点として考慮されております。
一方で、ピンク色の部分にあるとおり、費用対効果評価時の追加的有用性では、主に比較対照技術と比較しての有効性が考慮されます。薬価算定時の有用性と費用対効果評価時の追加的有用性の違いを踏まえた具体事例を次にお示しします。
スライドの8枚目です。
ここでは、追加的有用性が示されず、費用増加となった2品目を事例として挙げております。
左側、事例①ユルトミリスを御覧ください。
本品目では、薬価算定時に治療方法の改善を理由として、その有用性が認められましたが、その後の費用対効果評価時には、追加的有用性が示されずと判断されております。まさに前述のとおり、両者の観点が異なることによります。
最近の事例では、右側のようにレクビオも同様の事例として挙げられます。
このような場合については、薬価算定時に有用性がしっかりと認められていることから、費用対効果評価における追加的有用性が示されなかったということを理由に、価格調整範囲を拡大すべきではないと考えております。
スライドの9枚目です。
業界意見の後半のBとなります。ここからは、現行制度の本来の目的等に照らして、客観的な検証を実施すべきということについて、詳細を説明いたします。
冒頭にお伝えしたとおり、現時点では、現状の運用の整理等を実施いただき、中医協に提示がなされたと認識しておりますが、例えば、本表で挙げた①~④のように、意思決定に大きな影響を及ぼすこと等が懸念される論点については、現行制度の本来の目的等に照らしたさらなる検証が必要と考えております。
例えば、先ほどより説明しております、追加的有用性が示されず費用増加となった品目の取扱いについては、追加的有用性の評価は妥当であったか、特に企業分析と公的分析の不一致の要因は何か等を検証することが必要だと考えます。
次に、具体例をお示しします。10枚目です。
ここでは、公表論文より追加的有用性の評価に関する企業分析と公的分析の不一致の要因を紹介いたします。
日本におけるこれまでの評価終了品目について、追加的有用性の評価に関わる企業分析と公的分析の不一致の要因を調べますと、その要因は多岐にわたることが明らかになっております。
このように、要因の内容も含めた、検証を行う必要があると考えております。
以上が業界意見の概要となります。
続いて、スライドの11枚目です。
ここからは、これまでに挙げられた主な個別論点に対する業界意見を示します。前述の内容と重複する部分も多いことから、要点のみお話をさせていただきます。
まず、1つ目の論点、比較対照技術については、赤字にて記載のとおり、臨床実態と異なる比較対照技術が選定されることがないよう、臨床的に幅広く用いられているもののうち、治療効果がより高いものを選定することが原則、こちらをぜひ徹底いただきたいと考えております。
スライドの12枚目です。
スライドの下にお示ししております論点の2つ目、価格調整について追加的有用性が示されず費用増加となった品目の取扱いについては、前述のとおり、当該品目の価格調整範囲を拡大すべきではないと考えております。
スライドの13枚目になります。
最後に業界意見の概要を再掲いたします。本日は、2点について説明をさせていただきました。Appendixには、その他の個別論点に対する意見も含めておりますので、御参照いただければと思います。
今日の陳述の背景として、改めて冒頭に申し上げましたとおり、我が国では、これまで度重なる薬価算定ルールの変更や、毎年の薬価改定により、ドラッグ・ラグ/ロスの顕在化や研究開発投資に関する日本と世界とのギャップなど、様々な課題が生じております。
そのような状況において、直近では、米国の関税や最恵国待遇政策により、世界各国で医薬品市場に多大な影響が生じ得る懸念が高まっております。
費用対効果評価制度のさらなる活用、価格調整範囲の拡大を仮に行うことになった場合には、日本市場の魅力の低下、ひいては日本への投資を断念するドラッグ・ラグ/ロスの悪化が大いに懸念されるところであり、新薬を待ち望んでいる患者さんに不利益が生じることにつながりかねません。
そのような事態は、生命関連企業である我々としても受け入れられるものではございません。
本日は陳述の機会をいただき、誠にありがとうございます。
引き続きまして、PhRMA、そして、EFPIAからも順に追加コメントがございますので、よろしくお願いいたします。
○勝間米国研究製薬工業協会在日執行委員会委員
ありがとうございます。
PhRMAを代表いたしまして、勝間のほうから追加でコメントをさせていただきます。よろしくお願いいたします。
まず、本年5月、アメリカのトランプ大統領は最恵国待遇薬価制度、いわゆるMFNの導入を目指す大統領令に署名をいたしました。
本大統領令の目的は、医薬品が公正な市場価格よりも安い価格で他国に販売されることを防ぐこととされております。
本国日本では、特許期間中であっても様々な制度により価格が引き下げられることがあります。
また、薬価が収載される時点で、米国もしくは欧州よりも低く設定されることも決して少なくありません。
米国でMFN、薬価制度が導入され、日本が参照国となった場合を想定し、日本の薬価が米国の薬価に悪影響を及ぼすことを避けるため、製薬企業が日本への新薬導入に慎重になる懸念が、現在、高まっております。
実際、本年9月、2か月前に、PhRMA JAPANの加盟企業を対象といたしまして本MFNの日本市場への影響に関する調査を実施いたしました。
その実施状況、調査結果を見ますと、PhRMA加盟企業の多くが、既にMFNに対する議論、対策を始めていることが明らかになっております。
また、一部の企業においては、MFNの影響を避けるために、日本での目標薬価の最低価格を引き上げられる、あるいは薬価収載見送りの可能性についても検討されるといったことが確認されております。
このような状況下で、さらに、特許期間中の薬価を引き下げる費用対効果評価制度の拡大は、日本の市場の魅力を低下させ、さらに国際競争力を低下させる政策となり得ると考えます。
これは、この2年間、官民協議会で首相が製薬産業を基幹産業にするといった御発言とは、相反することであると懸念しております。
ぜひ、国際競争の視点を持って制度改革を御検討いただきますように、PhRMAからお願いを申し上げます。
以上です。
○岩屋欧州製薬団体連合会会長
おはようございます。引き続きまして、欧州製薬団体連合会の岩屋から発言をさせていただきます。
本日は、このような発言の機会をいただき、感謝を申し上げます。
宮柱会長から紹介させていただきましたように、薬価算定におきまして評価された有用性が、費用対効果評価制度の中では考慮されずに、追加的な有用性がないと評価される事例がございます。
例えば、注射薬につきまして、投与間隔を延長する、こういった利便性の向上につきましては、有用性加算の対象として評価をしていただいておりますけれども、また、実際、特に移動が困難な患者さんたちの通院等につきましては、負担を軽減させるなどの明らかな治療効果があると考えておりますが、費用対効果評価制度の中では、必ずしも考慮されておりません。
こういった事例にありますような追加的有用性が示されず、費用が増加していると、そういう分析について、実際、加算を行ったときの根拠に立ち返って、価格調整範囲を考えていただくということが適切ではないかと考えております。
また、今、PhRMAからも発言がございました、薬価専門部会におきましても発言をさせていただいたのですが、トランプ政権によります最恵国待遇薬価政策につきましては、非常に大きな影響が出ております。私どもEFPIAでも状況を把握すべく、理事会社10社に対して調査を実施しました。
結果、グローバル全体で価格戦略については、全ての10社が、影響があると回答しており、研究開発の戦略につきましても、9社が既に影響があるという回答を寄せております。
日本での影響につきまして、まだ、非常に制度的に不透明な部分もある中ではございますが、既に4社が、影響があると、そういう回答でございました。
この結果を踏まえますと、日本の患者に対しまして、革新的な医薬品に持続的にアクセスさせると、こういうことができなくなる可能性というのも、最悪の場合あると受け止めております。
このような環境下におきまして、革新的な新薬を迅速に日本の患者に届ける、そういう環境を存続していくためにも、イノベーション推進を後押しする薬価制度、この補完的位置づけとして運用されてきた本制度をどう運用すべきか、中長期的な議論を行っていくことが重要であると考えておりますし、EFPIAといたしましても、その議論に貢献をしていきたいと考えております。
以上でございます。ありがとうございました。
○宮柱日本製薬団体連合会副会長・日本製薬工業協会会長
以上となります。
○飯塚部会長
ありがとうございます。
そうしましたら、続いて、医療機器に関連する4団体より、まとめてプレゼンテーションをお願いしたいと思います。
○宮田日本医療機器産業連合会副会長
おはようございます。日本医療機器産業連合会副会長を務めます宮田でございます。
本日は、医療機器業界として意見を述べる機会を頂戴し、誠にありがとうございます。時間も限られますので、早速、資料費-2を御覧ください。
本日は、医療機器産業連合会、日本医療機器テクノロジー協会、米国医療機器・IVD工業会、欧州ビジネス協会の4団体の意見として述べさせていただきます。
2ページを御覧ください。
まず、10月15日の専門部会において、価格引き上げ要件や評価手法について御検討いただいたことに感謝申し上げます。
いただいた御意見を踏まえ、医療機器において、RCTがない場合の分析・評価の代替え、追加的有用性が示されず、費用増加となった品目の取扱いに関する現状の課題と、提案について順に御説明いたします。
続きまして、AMDDの鴨川委員長より、要望の詳細について説明いたします。
○鴨川米国医療機器・IVD工業会保険委員会委員長
おはようございます。米国医療機器・IVD工業会の鴨川でございます。
3ページを御覧ください。
提案の1つ目であるRCTがない場合の代替案について、御説明いたします。
8月6日の業界意見陳述では、RCTがない品目では費用対効果評価の対象外とすべきと要望しましたが、RCTがない場合の代替案を提示すべきとの御意見をいただきました。
その御意見を踏まえ、業界で検討を行い、より柔軟な評価方法の導入を改めて御提案いたします。
医療機器の費用対効果評価には大きく分けて3つの課題があると考えます。
1点目、これまで選定された医療機器3品目はいずれもRCTがなく、2品目で追加的有用性が認められておりません。
2点目、医療機器では、費用対効果評価ガイドラインに基づく追加的有用性を示すことが難しいと考えております。
3点目、イギリスのNICEでは、医療機器に対して、費用効果分析以外にも多面的な価値評価が行われておりますが、日本の現行制度では、十分に評価されていないと考えております。
これまでの評価結果を踏まえますと、RCTがない場合、一律に費用最小化分析が行われる傾向があると考えます。
しかしながら、医療機器の多様な価値を評価するためには、例えば、費用結果分析や費用比較分析などの分析の結果を定性的に評価し、総合的評価に含めていただけないかと考え、御提案させていただきます。
今、お話しさせていただきました、費用結果分析及び費用比較分析について、簡単に御説明いたします。
費用結果分析は健康に関する効果だけでなく、患者や介護者への影響や肯定的、否定的な側面なども個別に評価、報告することができます。
費用比較分析は、資源使用量や関連費用、例えば、有害事象の管理、診療パスへの影響なども含めて比較することが可能です。
これらの手法を導入することで、医療機器の多面的な価値をより適切に評価できると考えます。
4ページを御覧ください。
続きまして、提案2点目である追加的データ収集の枠組みについて御説明いたします。
医療機器は、保険収載時に長期データなどのデータが取得できていない場合が多く、本来の価値を反映した分析が困難となっております。
例えば、こちらにお示ししております、Micra 経カテーテルペーシングシステムの事例では、分析時点での植込み後6か月までのQOL値しかなかったため、12か月以降の差分が評価されませんでした。
現状では、追加データがない場合は、データなしとされます。現状においては、実施中の臨床研究の結果を待つ、もしくは新たに臨床研究を行うなどして、追加データを提出することが認められていない理解でございます。
そこで、企業が希望する場合は、追加的データ収集を認めていただき、分析前協議で不足しているデータを同定し、一定期間内に収集・分析を完了する枠組みの導入を提案いたします。
具体的には、費用対効果評価を行うために不足しているデータを協議、同定、専門組織で承認をえた期間内に合意したデータ収集を実施、追加的データ収集の終了後に分析を完了し、速やかに結果を提出、このような枠組みを設けていただくことで、医療機器の本来の価値をより正確に評価できると考えます。
5ページを御覧ください。
提案の3点目、価格調整に関する御提案です。
医療機器においては、エビデンス不足から追加的有用性を示すことが困難な場合があります。
類似機能区分比較方式において、有用性系加算を超えて価格調整が行われますと、既存品から改良された製品にもかかわらず、既存品の償還価格よりも下回ってしまいます。
そうなりますと、イノベーションを否定し、改良、改善へのモチベーションを阻害することにつながる懸念がございます。
特に加算率が低い医療機器の場合、過度な価格引下げが安定供給の妨げとなるリスクもございます。
そのため、エビデンス不足の場合は、現行の調整体系、係数を維持し、過度な価格引下げを避けるべきと考えます。
これは、持続的に改良、改善を続けられる環境を維持していただくとともに、安定供給を維持するためにも重要な視点と考えております。
6ページを御覧ください。
提案の4点目、チャレンジ申請の特例について御説明いたします。
こちらは、前回8月の意見陳述で御提案したものの再掲でございます。
チャレンジ申請を行う医療機器は、一旦既存の機能区分で収載されている製品であり、加算による医療費増額は限定的です。
市場に類似する構造などを有する製品があって、費用対効果評価の対象となることが想定される製品のチャレンジ申請においては、患者メリットが評価されて、加算が付与された直後に、費用対効果評価で価格引下げになることがございます。
スライドにお示しした2品目の事例においては、予測販売金額の増額分が限定的であることが示されています。
このため、費用対効果評価の対象品目選定基準について、チャレンジ申請に該当するものは対象から除外もしくは市場規模の変化分のみを基準とすることを提案いたします。
続きまして、欧州ビジネス協会、田中副委員長より御説明いたします。
○田中欧州ビジネス協会 医療機器・IVD委員会副委員長
欧州ビジネス協会、EBC副委員長の田中でございます。
7ページを御覧ください。
10月15日の専門部会から示された、以下、2つの論点について、業界として賛同いたします。
費用対効果評価の実施に当たっては、ICERを基本としつつ、その不確実性を踏まえ、専門組織による総合的評価を継続すること。
ICERで十分に評価されているかについては、諸外国の状況調査を踏まえて、議論を進めること。
医療機器は、多様な価値を提供しており、ICERのみでは十分に評価できない場合もあるため、諸外国の事例も参考にしていただきたいと考えております。
8ページを御覧ください。
医療機器は、診断、治療、モニタリング、様々な場面で使用され、形態も多様です。
医療現場では、多様な価値を期待され、医療機器が選択されています。
具体的事例として、脳梗塞患者における健康寿命の延伸や介護予防、例えば血栓回収デバイス、入院患者の入院期間延長回避や医療資源の節約、コーティングカテーテルなど、画像診断における異常所見の見落とし防止や重症化予防、あるいはがん放射線治療の遅延による重症化や精神的苦痛の回避、このように医療現場が必要とする多様な価値が存在します。
今後も医療現場が必要とする多様な価値を反映した医療機器が登場することが期待されています。業界団体としても、多様な価値が費用対効果で評価されるよう、協力してまいります。
最後に、AMDDの玉井課長よりコメントをさせていただきます。
○玉井一般社団法人米国医療機器・IVD工業会会長
AMDD会長の玉井でございます。
まず、9ページを御覧ください。
最後に、業界団体としまして、今回の意見陳述のまとめをお話しさせていただきます。
医療機器の費用対効果評価については、これまでの議論も通じまして、現行の評価手法だけでは、医療機器の持つ本来の価値を十分に反映できない場面が多いことを、改めて実感しております。
医療機器は、薬剤とも異なりまして、費用対効果評価で求められる長期データや無作為化比較試験の取得が難しい場合も多く、現場での実際の使われ方や、患者さんへの影響、医療従事者への波及効果など、様々な側面から価値を生み出しています。そのような理由からも、私たちは評価手法の幅を広げていただきたいと考えております。
具体的には、先ほども御紹介した費用結果分析や費用比較分析など、複数の分析手法を導入していただくことで、医療機器の価値をさらにより正確に捉えられるのではないかと期待しております。
また、医療機器の価値を評価する際には、追加的なデータの収集の枠組みを設けていただくことも重要だと考えております。
価格調整につきましても、過度な引下げがイノベーションの阻害や安定供給の妨げにつながるリスクがあることも、ぜひ御理解いただきたいと思います。
世界的に続くインフレの中でも、医療機器の開発や供給が持続的に行われるためにも、現行の調査体系や係数を維持し、慎重な運用をお願いしたいと考えております。
また、チャレンジ申請の特例につきましても、実際の市場規模や医療現場での使われ方を踏まえた柔軟な対応をお願い申し上げます。
医療機器は、診断、治療、モニタリングなど、医療現場の様々な場面で使われており、今後も多様な価値を提供する製品が登場することが期待されます。
私たち業界団体としましても、医療現場が必要とする多様な価値が、費用対効果の評価の中で適切に評価されるよう、引き続き尽力をしてまいります。
本日は、貴重なお時間をいただきまして、誠にありがとうございました。
○飯塚部会長
ありがとうございました。
それでは、一通り御説明をいただきましたので、これより質疑に移りたいと思います。御質問、御意見等ありましたら、よろしくお願いします。
では、江澤委員、お願いいたします。
○江澤委員
業界からの御説明、誠にありがとうございます。
まず、総論としまして、薬価と材料の両方に当てはまることかと思っておりますけれども、今回は、保険収載時の価格設定と、費用対効果の価格調整の手法に違いがあるのが不合理ではないかという観点からの御提案をいただいたと理解しております。
しかしながら、薬価や材料価格は保険収載時の評価であるのに対しまして、費用対効果は保険収載後の価格が標準的な方法と比較して、費用に見合った効果があるかどうかという全く別の視点から検討する仕組みであります。
したがって、両者には差異があるのは当然のことと思いますけれども、その点についてコメント等ありましたら、よろしくお願いしたいと思います。
続きまして、費-1の製薬団体からの御説明について、幾つか質問をさせていただければと思います。
まず、本日、御業界意見の概要のAの追加的有用性が示されず、費用増加となった場合についてでございます。
今回の御意見は、対象品目と比べて追加的有用性が示されなかったとしても、薬価算定時に認められた有用性自体は否定されるものではないということだったと思います。
類薬と比較して収載時の費用対効果的には、追加的有用性がないと判断されたにもかかわらず、薬価上は加算がついていたわけですけれども、この点についてどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
すなわち、7ページの薬価算定時の有用性と、費用対効果評価時の追加的有用性について、両方に○がついている項目もございますけれども、この辺りが明確に切り分けられるものなのかどうか、お考えを伺えればと思います。
次に、前回の部会でも示されておりますが、諸外国においては、比較対照技術に対する追加的有用性が示されない場合、比較対照技術の価格を基準として、同等の価格またはそれ未満の価格が設定されるなどの対応が行われているということでありますけれども、諸外国において、代替薬の価格を基準に価格が決められていることは好ましくないというか、不当であるとお考えになられているかどうか、Aの項目については、この2点をお伺いさせていただければと思います。
続いて、Bの第三者を交えた客観的な検証をすべきという点についてでございます。
費用対効果評価専門部会は、多様な委員により構成され、所掌事務として費用対効果評価制度導入の在り方を調査審議するとされているところでございます。
また、本部会は費用対効果評価の実務とは機能を分けつつ、制度運用の検証を担っており、第三者性、客観性は確保されていると考えておりますが、この点については、どのようなお考えか、いかがでしょうか。
また、現状の仕組みについて問題点があれば、御指摘いただければと思います。
最後に、イノベーションの推進は、当然、行っていくべきと思っておりますが、高額薬剤の薬事承認も目白押しの中で、他国と違うのは、我が国は、国民にとって皆保険であります医療保険制度の仕組みがある中で、近年、長年にわたり持続可能性ということについて議論がなされているわけですけれども、その辺りの持続可能性について、何かお考えなりコメントがあれば、よろしくお願いしたいと思います。
次に、もう一点だけ、費-2について質問をさせていただきます。3ページのところでございます。
RCTがない場合の代替案として、費用結果分析あるいは費用比較分析の御提案があったと理解しております。
この費用結果分析は、これまでのICERを用いるような費用対効果の分析に近いものだと理解しておりますけれども、その点と、費用比較分析は、効果が同等であることを前提として、その上での比較というものの分析だと理解しているところでございますが、こういったものが代替案として活用できるのかどうか、あるいはそういった手法が可能なのかどうかについて、教えていただければと思います。
私からの質問は以上でございます。
○飯塚部会長
ありがとうございます。
そうしましたら、何点か御質問がありましたので、まず、製薬団体のほうから御回答がありましたら、お願いします。
○宮柱日本製薬団体連合会副会長・日本製薬工業協会会長
江澤委員、ありがとうございます。我々に対しては、5つ質問をいただいたかと認識をしております。1つずつお答えをさせていただきます。
まず、質問の1のところにありますが、薬価、そして材料価格について保険収載時の価格であるのに対して、収載後の価格が標準的な方法と比較して費用に見合った効果があるかというところで、全くの別の視点から、そもそも見ているのではないかと、それに対して、追加のコメントという認識をしております。
スライドの5ページにお示ししておりますとおり、おっしゃるとおり、薬価算定時点では、有用性系加算という形で新規性あるいは治療方法、こういった改善を含む臨床上の幅広い有用性が評価されておるところでありますし、この後に続く、費用対効果評価では、薬価算定時点で既に有用性が認められた新薬のうちに指定された新薬を対象として、薬価制度の補完としての位置づけで評価がされると認識を我々もしております。
したがいまして、プレゼンテーションでも申し上げましたとおり、新薬の有用性というところは、薬価算定時点で既に認められており、その後の追加的有用性の評価でも、結果的にそれがないものとみなされるところは、適切ではないと我々業界としては考えております。
これは、追加的有用性が示されず、費用増加となった場合においても同様であると考えております。
2つ目に関しましてですけれども、類薬と比較して収載時に費用対効果的には追加的有用性がないと判断されたにもかかわらず、薬価上加算がついて、この点についてどのように考えるかという点であるかと思いますけれども、これにつきましては、追加的有用性が示されず、費用増加となった品目の価格調整範囲を拡大することは、自然な考えであるが、いかがかという質問かと捉えております。
こちらも、スライド5に示すとおり、薬価算定時点では、有用性系加算という形で、新規性や治療方法の改善を含む、臨床上の幅広い有用性が評価されますし、この後に続く費用対効果評価での算定時点においても、先ほどの御説明のとおりかと思います。
また、スライド10に挙げた具体例でお示ししておりますとおり、追加的有用性の評価に関する企業分析、そして、公的分析の不一致の要因が多岐にわたることが示されておりますので、追加的有用性の評価自体の検証も行っていくことが重要であると考えております。
そして、3点目になりますが、諸外国の状況と比較してどうかというところでございますが、おっしゃるとおり、例えば、まず、この承認をされた医薬品が原則60日あるいは90日で薬価収載されて、患者さんに新薬がお届けできるというのは、日本にとっては本当にすばらしい仕組みであると考えております。
この優れた制度を維持するためにも、諸外国の制度を参照する際には、やはり各国の社会保障、医療制度の違い等も十分に考慮していく必要があると考えております。
例えば、ドイツ、フランスといった諸外国においては、企業の申請価格、言わば自由薬価を何かしらの物差しで妥当性を判断する必要がありまして、その1つの手段に追加的有用性の有無、費用効果分析も加えて、そういったものが含まれております。
日本においては、薬価制度を基に、費用対効果評価はあくまでも補完の位置づけにあると我々は捉えておりまして、したがいまして、ドイツ、フランスをはじめとする諸外国を参照する際には、そういった背景の違いも十分に議論、考慮する必要があると考えております。
4点目、第三者の関与と課題というところであるかと思いますが、我々が申し上げております第三者を交えた客観的な検証というものが、具体的にどのような対応かというところを御説明させていただきますが、第三者におきましては、現在の厚労省であったり、国立保健医療科学院、そして、費用対効果評価専門組織等の現制度の関係者に加えて、例えば、試行導入以降の関係者としての元中医協委員であったり、医療経済専門家や医療政策、疫学、公衆衛生、そして統計の先生方、また、重要なのは実際に診療を行っている臨床医の先生方あるいは関連学会、さらには我々企業サイド、業界団体などを想定しております。
費用対効果評価分析は本当に複雑でありまして、個別の事例について妥当であったかどうか、その評価結果を検討する必要があると考えておりますし、そういった機会を設けていただくことが、制度の信頼性、そして、透明性の確保に資するものであると考えております。
最後、皆保険制度の持続可能性についてのコメントというところでありますが、我々としても、医療財源が非常に逼迫している中での陳述となっていることは十分に理解しておりますし、こういったところは、本当に関係者の皆様としっかり議論していく必要があります。
特に我々製薬団体としましては、4団体から、今日、陳述を申し上げたとおり、やはり日本の患者さんに、いかに早く革新的な新薬をお届けするか、ここに注力をしてまいりたいと思いますし、ドラッグ・ラグ/ロスを引き起こさない、そして、安定供給をする、国民の健康、そして、命を守る、こういったところに貢献をしていきたいと考えております。
以上でございます。
○飯塚部会長
ありがとうございます。
そうしましたら、医療機器団体からも質問が1点ございましたので、お願いできますか。
○鴨川米国医療機器・IVD工業会保険委員会委員長
ありがとうございます。
まず、1点目、コメントのほうになりますけれども、最初に江澤委員から保険収載時と費用対効果で、評価の部分に差分があるという点に関しましては、現在、医療機器に対する費用対効果評価について、この評価のガイドライン上、医療機器の特性を加味した評価方法になっていないのかなと考えております。ですので、そういったところを、ぜひ今後、御検討いただきたいと考えております。
次に、御質問としていただきました、費-2のスライドの3ページのところの費用結果分析、費用比較分析に関する御質問についてでございます。
まず、現行使われております費用効用分析のICERやQALYを算出する件につきまして、こちらと今回お示しさせていただいた費用結果分析や、費用比較分析は異なるものになります。これら2つの手法は、ICER、QALYを算出しないものになります。
費用結果分析につきましては、評価対象製品と比較対象製品の費用と結果や効果を幅広く評価して、それぞれを個別に報告するというもので総合的に評価するというものになります。費用と効果を統合しない点が、費用効用分析とは大きく異なると理解しております。
もう一つの費用比較分析につきましては、評価対象製品と比較対象製品との間で、費用と資源の使用量を比較して分析するものと理解しております。
今後、このような手法も考慮していただきたいと考えております。
以上です。
○飯塚部会長
ありがとうございます。
御回答いただきましたから、江澤委員、いかがですか。
○江澤委員
丁寧な御回答をありがとうございます。
まず、前段の費-1の資料の5ページの御説明をされたところですけれども、非常に難しい問題だと思いますけれども、薬価収載時の有用性と追加的有用性について、追加的有用性が示されず費用が増加した場合に、薬価収載時の有用性に影響を及ぼさないというお考えだったと思われますが、なかなかここが、追加的有用性が示されず費用が増加した場合に、薬価収載時の有用性の評価に抵触するものではないのか、あるいは影響を全くしないものとしていいのかどうかが、ここは、多分いろいろとお立場もあって、お考えが当然違う部分だと思いますけれども、臨床的には同じ疾患をターゲットにして、いろいろ既存の治療と比較したりしているわけなので、その点が、1つはどうであるか、今後の課題だと思いますけれども、お互いに共有できればと思っています。
もう一点は、10ページに企業分析と公的分析の不一致の要因が出ておりますけれども、これが今の公的分析のプロセスなどに課題があるとお考えかどうか分かりませんけれども、この辺りについて、また、企業の立場としては、なぜ不一致が起きているのかとか、ここをどのようにすれば解消できるかについては、また、引き続き御検証をいただければと思っております。どうもありがとうございました。
もう一点、費-2のところですけれども、いずれにしましても、費用結果分析のほうも費用対効果を見ていく指標の物差しの1つではありますし、それから、費用比較分析については、効果が同等であることを前提とした上で、比較してどうなのかというものだと思っています。
したがって、恐らく、医療機器は、非常に幅広い多様な製品がございますから、なかなか一概には言えないと思うのですけれども、いきなりこれが実用できるかどうかというのが、まだまだ準備なり、いろいろ必要だと思いますから、引き続き、客観的に評価できるものについては、また、業界団体として御検討いただければと思います。どうもありがとうございます。
○飯塚部会長
ありがとうございます。
では、引き続き、御質問等、森委員、お願いいたします。
○森委員
ありがとうございます。御説明いただきありがとうございました。医薬品関係で幾つか質問をさせていただきたいと思っております。江澤委員と若干かぶるところもありますけども、御容赦いただければと思います。
費用対効果評価制度が運用されて6年が経過して、45品目が終了して、実績が蓄積されてきたと思っております。
そうした中で、幾つかの課題、例えば、比較対照技術の選定や不確実性に対する対応等の課題が出てきていますけれども、現行制度が基本方針に沿って本来の目的を果たしているかということを検証することが、一番重要な視点であるかと考えております。
業界として、第三者を交えた客観的な検証を提案しています。先ほど、第三者の構成については御説明をいただきました。
具体的な対応ですけれども、9ページにあるようなもの、それから、10ページの企業分析と公的分析の不一致の要因というのがありますけれども、こういうことを含めて、どのようなことを希望されているのかということがあれば、もう少し教えていただきたいと思っております。
それから、11ページ目の比較対照技術の選定なのですけれども、適切な評価を行う上で重要なポイントだと考えております。臨床実態と異なる技術が選定されることがないことを要望されていますけれども、臨床実態と異なる技術が選定されたという事例が、これまであったのでしょうか、あれば、具体的な事例についてお示しいただきたいのと、そのときは協議があったのかどうかということも教えていただければと思っております。
もう一つは、ICERに関しては、一定の不確実性があるということですけれども、そのために区分で幅を持たせていると理解しています。
そもそも、不確実性を最小化にしていく取組というものが重要だと考えますけれども、業界として何か考えがあれば、お願いしたいと思います。
もう一点、教えていただきたいのですが、8ページ目のところで、価格調整範囲の拡大が適切でないと考えられる品目のところで、最初の①のユルトミリス点滴静注ですけれども、薬価算定時に有用性ありということで、注射の頻度が4分の1となって患者負担の軽減につながるということでしたが、費用対効果評価時に、薬剤の投与間隔の延長が健康QOLの定量的な向上にはつながったかどうか評価できなかったということなのですけれども、直接的に評価することができなかったことが費用増大になったわけではなくて、例示として、ここのところの価格調整範囲の拡大が適切でないということを示したのかどうかということを教えていただければと思います。
以上です。
○飯塚部会長
ありがとうございます。
それでは、医薬品の業界からお願いします。
○宮柱日本製薬団体連合会副会長・日本製薬工業協会会長
森委員、御質問いただきまして、ありがとうございます。
まず、1つ目として、本来の目的としての費用対効果評価の検証というところでございますが、まず、第三者的な観点というところでは、先ほど江澤委員の御質問に回答申し上げたところでありますし、どのようにしていくべきかというところに関しまして、具体的な内容としましては、これまでに中医協でも報告されました運用上の整理に加えて、個別論点に対して深く議論を行いたいと考えております。
本日提示をしましたとおり、検討項目の1つ目として、スライドの10枚目に挙げた具体例がございます。
追加的有用性の評価に関する企業分析、そして、公的分析の不一致の要因を調べると、その要因が多岐にわたることが示されております。
個別の事例に対して追加的有用性の判断が、公平性に足るものであったのか、あるいは配慮が十分であったか、さらには企業分析、そして、公的分析の意見の不一致についても個別に判断の妥当性について、また、一貫性について十分に検証して、よりよい制度への検討を進めていく必要があると考えております。
2つ目の御質問に関して11ページ目であると思いますが、実態としての事例というところであります。
まず、分析ガイドラインにおける比較対照技術の選定の原則というものは、幅広く使用されており、新薬によって置き換わるものと、かつその中で効果が高いものであると、それにもかかわらず、市場シェアが低く、また、幅広く使用されていると考えにくいものが選定された事例が幾つか確認されております。
約2年前の中医協でも資料を提出させていただいたと記憶しておりますが、具体的には、GIP/GLP-1受容体作動薬の事例におきましては、当時の市場シェアが1%未満のものが比較対照技術に選定されていた。別のGLP-1受容体作動薬の事例では、当時のシェアが同じく2%程度のものが選定されておったと。
また、実際に、全身型重症筋無力症の事例では、臨床自体のそもそもの考え方について、企業と公的な立場での主張に大きな相違があったと伺っております。
企業と公的の主張に相違があるというのは、双方で議論をしていくというのは、制度の仕組み上で想定されていることであると考えておりますけれども、過去の対象品目において、このような事例があったということで議論を振り返り、決定内容の妥当性、そういったものをしっかりと議論、そして、検証していくことが重要ではないかと考えております。
3点目、ICERに関する不確実性の点での質問であったかと思いますが、まず、価格引上げの状況についての認識をいただいて感謝を申し上げたいと思いますし、御認識のとおり、2024年4月に制度改正が行われた中で、価格引上げ要件の一部を緩和いただきましたが、現在までに引き上がった事例はないという認識でおります。
実際には、要件の緩和のみではなくて、費用対効果に優れた結果を得られる必要があり、これが1つの大きなハードルになっていると考えられますので、ぜひ過去の評価品目も含めて、仮に要件の緩和等を行った場合でも実際に引上げとなる事例があるのかどうなのか、こういったところを検証いただきたい。
ICERの不確実性に関しては、御理解のとおり、一般的には、本当に不確実性の高い指標であると考えております。分析条件等を議論させていただく中で、それらを最小化するように取り組んではおりますが、なかなかこの不確実性をゼロにすることは難しいと。
したがいまして、意思決定の際には、その不確実性も踏まえた十分な考慮をするというのが重要であると考えておりますし、現制度において、その1つの方法が区分の幅であると理解しております。
しかしながら、これまでの実績を振り返りますと、区分の幅では十分でない状況としまして、例えば、分析条件の一部を変更することで結果が変わってしまうと、こういった場合も散見されておりますし、こういった感度分析等に関しまして、最終的な意思決定である価格調整には、基本的には用いられない、区分での幅のみでの考慮で十分であったのか、そういったものも含めて検証いただきたいと考えております。
長くなりましたが、3つ回答を申し上げましたし、4点目のユルトミリスの事例について、岩屋さんからお願いいたします。
○岩屋欧州製薬団体連合会会長
御質問ありがとうございます。私のほうからユルトミリス点滴静注の話につきまして、分かっている範囲でお答えさせていただきます。
本件につきましては、隣にありますレクビオと同様、薬価算定時におきまして有用であるという形で評価をされて、加算をいただいた部分について、実際に価格評価、費用対効果評価の段階におきましては、その有用性というのが評価をされないことによって、結果的には価格調整されたと、そういう事例でございます。
ユルトミリスにつきましては、議論の中で注射の頻度が4分の1になりますと、この点につきましてのQOLの改善について、企業側がお示ししているものに対する評価というのが見解として一致しないと、これが2回繰り返されて、結果的には有用性加算の部分についての評価を受けないまま、価格が調整された、そのように理解しております。
○飯塚部会長
ありがとうございます。
森委員、お願いいたします。
○森委員
ありがとうございます。
ユルトミリスは、費用対効果の中で追加的有用性としては評価されなかったと理解いたします。そのことが費用増加につながったわけではなく、ただ評価をされなかったという理解でよろしいでしょうか。
○岩屋欧州製薬団体連合会会長
はい、有用性加算として評価をされた点について、評価をされなかったということでございます。
○森委員
分かりました。御説明ありがとうございました。重要なことは、本制度の第2ステージに向けて費用対効果評価制度の成熟度を上げるために、客観的な検証を進めていくことだと思います。
今、お伺いして感じたのは、特に追加的有用性の評価が妥当であったかということを考えると、企業分析と公的分析の不一致の要因というものも、どういうものだったのかというのをしっかり見ていくことも重要なことと思います。
もう一点は、比較対照技術の選定ですけれども、もちろん選定が難しく決まらない場合、協議することになっていますけれども、企業として何か意見がある場合には、しっかりと国立保健医療科学院と十分に協議を行って、両者がしっかりと合意した上で対照技術を選定していくべきと考えます。
私からは以上です。
○飯塚部会長
ありがとうございます。
それでは、引き続き、御質問、御意見を、小阪委員、お願いいたします。
○小阪委員
小阪でございますが、少し気になるのは、薬のほうの13ページの追加的有用性が示されず、費用増加があっても、薬価算定時に認められた有用性が否定されるものではない、否定されないことは分かるのですが、価格調整を拡大すべきではないと述べられておりますが、そうすると、やはり比較対照技術よりも高くなるのですね。
そして、今、国はフォーミュラリーを進めようとしている。フォーミュラリーを進めていくということは、最低価格で同等の効果を得られる場合、最低価格の薬を使うということなので、要するに、下げられなかった薬は、少なくとも第1推奨薬にはなり得ない。だから、そこにある追加的有用性というのは、腎不全に使えるとか、いろいろとありますから否定はいたしませんが、やはり、ある程度の条件をつけて第2推奨薬に落とすという運用を、恐らくフォーミュラリーではされると思います。
価格もそうなのですが、どのような形で適正に薬を使っていくか、その辺を推奨ガイドラインに書くのか、もしくはフォーミュラリーを本当に国がつくって全国に広めるのか、そういうことを考えていかないと、追加的有用性を考慮する必要がない方にも高い薬を使って医療経済をつぶしてしまうというのは非常に問題なので、この運用に関しては、かなり慎重にやっていただければと思います。
○飯塚部会長
ありがとうございます。
ほかには、いかがでしょうか。
では、松本委員、お願いいたします。
○松本委員
業界からの御説明、どうもありがとうございました。
多くの私が尋ねようとしたことは、ほかの委員の方が、ほぼ尋ねられましたので、私からは1点だけお尋ねしたいと思います。
医療機器についてになりますけれども、資料の6ページにチャレンジ申請の特例についての記載がございますけれども、特例的に費用対効果評価の対象から外すことを提案されておりますけれども、チャレンジ申請というものは、企業の意思によって行われるものだと認識しております。こうした企業の意思によって、費用対効果評価を適用するかどうかが変わるということに関して、これは、業界にお伺いすべきものなのか、あるいは事務局にお伺いするものなのか、2つあると思うのですけれども、御意見があったらお伺いしたいと、この1点をお願いしたいと思います。
○飯塚部会長
御質問がありました。では、医療機器からお願いします。
○鴨川米国医療機器・IVD工業会保険委員会委員長
松本委員、御質問ありがとうございます。
現在、我々が考えているところは、まず一旦、既存のところに収載される部分については、費用対効果評価の増額分ではないと考えておりましたので、まずは対象から除外するということも御提案させていただいているのですが、それが難しい場合は、医療機器の償還価格の評価のときに加算がついたところ、こちらの部分で評価対象かどうかというところを見ていただけないかと考えておりました。
○飯塚部会長
ありがとうございます。
松本委員、いかがですか。
○松本委員
業界の御意見は意見として承りました。もし、事務局として何か御意見があれば、お願いできればと思います。
○梅木医療技術評価推進室長
事務局でございます。医療技術評価推進室長です。
こういった制度全般でございますが、基本的には公平性の観点というところは重要でございますし、何らかの基準を設けて、それに合致する場合には対象になるということが、制度上は求められるだろうと考えております。
松本委員、よろしいですか。
○松本委員
はい、ありがとうございました。
○飯塚部会長
それでは、引き続き、御意見、御質問等ございますでしょうか。
よろしいですか。
すみません、私からも1点質問があるのですけれども、費-1の7ページで、こちらで有用性というのが2つあるという形で整理いただいているように思います。
1つ目の行と4つ目の行、これは、費用対効果の評価では用いられないと、薬価算定時には用いるけれども、費用対効果の評価時には用いられない。
2番目と3番目の行は、費用対効果評価で分析されるということで丸と三角がついているということなので、1つの考え方は、この2つのタイプを分けて費用対効果の評価の結果を用いるべきとも聞こえるのですけれども、そのようなことで業界は御認識なのかどうか、御質問になります。
○宮柱日本製薬団体連合会副会長・日本製薬工業協会会長
ありがとうございます。
こちらにお示ししておるのは、事例としての相違がある部分ということでお示しをしておりますし、おっしゃられるとおり、本日、陳述させていただいたとおり、それぞれの評価項目における妥当性であったり、例えば企業分析、そして、公的分析での相違であったり、いろいろな観点からの分析評価を、やはり丁寧にするというのが我々の主張となっております。
ほかに追加コメントがあれば。
○岩屋欧州製薬団体連合会会長
今、宮柱会長がおっしゃられたとおりでございますけれども、今、ここでお伝えしたかったのは、有用性加算につきまして評価をされている項目が、現状の費用対効果評価制度では評価をされないことがあるということでお伝えしております。
評価をされない部分について、外して別立てにすべきというところまで申し上げているわけではございません。今、費用対効果評価制度の運用について検証している中で、こういう課題もあるということを御指摘させていただいたものと承知しております。
○飯塚部会長
分かりました。ありがとうございます。
追加では、御質問等ございませんか。
ありがとうございました。そうしましたら、大体御意見、御質問も出尽くしたようですので、関係業界からの意見陳述につきましては、ここまでとさせていただきます。
本日の議題は以上です。
次回の日程につきましては、追って事務局より連絡いたします。
それでは、本日の「費用対効果評価専門部会」は、これにて閉会ということといたします。どうもありがとうございました。