最高裁判決への対応に関する国と地方の協議 議事録

日時

2025年11月18日(火) 17:30~18:15

場所

東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎第5号館
厚生労働省 9階 省議室
 

出席者(五十音順)

内堀 雅雄  福島県知事      (全国知事会御推薦)
野田 義和  東大阪市長      (全国市長会御推薦)
横山 英幸  大阪市長       (指定都市市長会御推薦)
長内 繁樹  豊中市長       (中核市市長会御推薦)
白石 祐治  鳥取県江府町長    (全国町村会御推薦)
上野 賢一郎 厚生労働大臣

議題

最高裁判決を踏まえた対応について

議事録

○池上総務課長 それでは、時刻となりましたので、ただいまより、「最高裁判決への対応に関する国と地方の協議」を開始させていただきます。
 本日は大変お忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 本日の司会を務めます、厚生労働省社会・援護局総務課長の池上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、まず本日の出席者を御紹介させていただきます。
 全国知事会から、内堀福島県知事でございます。
○内堀構成員 よろしくお願いします。
○池上総務課長 全国市長会から、野田東大阪市長でございます。オンラインでの参加となります。
 それから、指定都市市長会から、横山大阪市長の代理として山本大阪市副市長です。オンラインでの御参加となります。
 中核市市長会から、長内豊中市長でございます。
○長内構成員 どうぞよろしくお願いします。
○池上総務課長 全国町村会から、白石鳥取県江府町長でございます。
○白石構成員 よろしくお願いいたします。
○池上総務課長 続きまして、厚生労働省から、上野厚生労働大臣でございます。
○上野厚生労働大臣 よろしくお願いいたします。
○池上総務課長 鹿沼社会・援護局長です。
○鹿沼社会・援護局長 よろしくお願いします。
○池上総務課長 伊澤大臣官房審議官です。
○伊澤審議官 よろしくお願いいたします。
○池上総務課長 石川地域保健福祉施策特別分析官です。
○石川分析官 よろしくお願いいたします。
○池上総務課長 竹内社会・援護局保護課長です。
○竹内保護課長 よろしくお願いいたします。
○池上総務課長 それから改めまして、私、社会・援護局総務課長の池上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、早速でございますが、開催に当たりまして上野厚生労働大臣より御挨拶を申し上げます。
○上野厚生労働大臣 本日は最高裁判決への対応に関する国と地方の協議に御参加をいただきまして、ありがとうございます。また、皆様におかれましては、日頃から生活保護行政の適正な実施に御尽力いただいておりますことに厚く御礼を申し上げたいと思います。
 本年6月に、平成25年生活扶助基準改定に係る最高裁判決があり、当時の改定について、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続には過誤・欠落があったとして、原告に対する当時の処分が取り消されました。今般の最高裁判決を踏まえた対応の在り方については、社会保障審議会生活保護基準部会の下に設置した最高裁判決への対応に関する専門委員会におきまして本年8月から検討を進めるとともに、本年10月から最高裁判決への対応に関する国と地方の実務者協議を開催し、自治体の実務担当者の皆様と意見交換を行ってまいりました。厚生労働省としては、昨日までの専門委員会での議論を受けて、今後、最高裁判決を踏まえた追加給付を行う場合の対応について検討していくこととしております。
 こうした状況を踏まえ、日頃より生活保護行政の実務を担っていただいている自治体の皆様に御協力をいただきたく、本日、国と地方の協議を開催させていただきました。追加給付を行う場合の支給事務につきましては、最高裁判決により当時の基準改定に基づく処分が取り消されたことから生ずるものであり、自治体の皆様には多大な御負担をおかけすることを大変心苦しく思っております。本日は自治体の皆様に支給事務の実施について御協力をお願いさせていただくとともに、支給事務の実施に当たっての御意見などをいただきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○池上総務課長 ありがとうございました。
 報道関係の方に御連絡いたします。冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきますので、カメラの皆様は御退席をお願いいたします。
(報道関係者退室)
○池上総務課長 それでは、議事に移らせていただきます。資料につきまして、担当課長より御説明させていただきます。
○竹内保護課長 社会・援護局保護課長の竹内でございます。
 お手元の資料2「平成25年生活扶助基準改定に関する最高裁判決の概要及び専門委員会報告書について」、御説明をさせていただきます。
 まず、資料の1ページ目でございますが、平成25年の生活扶助基準改定の概要でございます。平成25年改定につきましては、デフレ傾向であったことを踏まえた物価によるデフレ調整と、年齢、世帯人員、地域別の消費実態の検証結果を踏まえたゆがみ調整の2つを実施してございます。
 資料の2ページは、最高裁判決の概要でございます。本年6月の最高裁判決では、平成25年基準改定の保護変更決定処分が取り消されました。他方、国に対する損害賠償請求は棄却をされております。
 3ページの4つ目のポツでございますけれども、デフレ調整につきまして、物価変動率のみを直接の指標として用いたことに専門的知見との整合性を欠くところがあり、この点においてデフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続には過誤・欠落があったものとされ、生活保護法3条、8条2項に違反して違法とされました。
 また、資料の4ページの1つ目のポツでございますが、一方でゆがみ調整につきましては、ゆがみ調整に係る厚生労働大臣の判断に統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがあると言うことはできないと判示をされております。
 続きまして、5ページでございます。専門委員会の概要でございます。厚生労働省では最高裁判決を踏まえた対応の在り方について、社会保障審議会生活保護基準部会の下に専門委員会を設置し、学識経験者の皆様に御審議いただいてきたところでございます。開催実績につきましては下段に記載のとおりであり、昨日、報告書案について審議を行いまして、本日、報告書を公表したところでございます。
 6ページでございます。専門委員会の報告書のポイントについてまとめてございます。平成25年改定当時の生活扶助基準の改定率を再検討した結果、マイナス2.49%、マイナス4.01%、マイナス5.54%の3つの改定率が示されたところでございます。
 資料の7ページでございますけれども、再度改定する場合の各種論点といたしまして、各種加算の取扱い、また、適用対象者の範囲、他制度の取扱い、遅延損害金、支給事務、それぞれについてまとめたものになります。主な点でございますけれども、適用対象者の範囲については、死者の取扱いは、生活保護による給付を受ける権利は一身専属的とされていることを踏まえ、遺族等に対する給付は行わないこと。保護廃止者については、追加給付の対象に含めることが適当。ただし、本人による申出等、一定の関与を前提とする仕組みとすることが適当。支給事務については、具体的な事務や受給者への対応の在り方などについて、自治体、福祉事務所の負担も踏まえた現実的な事務設計が不可欠であり、自治体との協議の場などにおける丁寧な検討が求められるとされたところでございます。
 以上が専門委員会報告書のポイントでございます。今回、報告書を踏まえ、厚生労働省としての対応方針を速やかに決定することとしてございます。
 続きまして、お手元の資料3でございます。「最高裁判決への対応を踏まえた支給事務の対応の方向性について(案)」を御説明いたします。本年10月から計3回、最高裁判決への対応に関する国と地方の実務者協議を行ってまいりました。実務者協議におきましては、追加給付を行う場合の支給事務の対応について自治体の皆様から様々な御意見をいただいたところであり、皆様の合意というところまでは至っていないと認識をしておりますが、本資料につきましては、できる限りいただいた御意見を踏まえた上で厚生労働省においてまとめた資料という位置づけでございます。
 まず、基本的な考え方についてでございます。生活保護業務に関する情報・データの保存状況を踏まえたものとするとともに、自治体における事務負担が過大にならないよう十分に配慮する。国においては全国の給付対象となる世帯に対する周知・広報や相談対応について、自治体と連携・協力しながら責任を持って対応するとともに、自治体における支給事務が円滑に行うことができるよう、支給事務マニュアルやQ&Aの作成、計算ツールの提供、実施体制の確保、事務を実施するための財政支援など、支給事務の実施のために必要かつ継続的な支援を行うとしております。
 次に、「保護受給中の世帯への対応」についてでございます。現在保護受給中の世帯のうち、同一の自治体において継続して保護受給中の世帯につきましては、基本的に当該世帯の世帯情報や最低生活費に関する情報・データの把握が可能であることから、当該自治体において職権により追加給付を行う。複数の自治体において保護を受給していた世帯については、過去に保護を行っていた自治体に係る保護費の追加給付については、過去に保護を行っていた自治体において追加給付を行うとしております。
 また、「(2)保護廃止世帯への対応」についてでございます。2ページの一番上のマルでございますけれども、保護廃止世帯につきましては、自治体において当時の文書・データが十分でない場合が想定されることから、国・自治体で広く対象となる世帯に対して周知を行った上で、当時の世帯主から当時保護を行っていた自治体に対して申出を行い、当該自治体で申出を踏まえて追加給付を行うこととしております。
 次に、「(3)情報・データが保存されていない場合の確認方法」についてでございます。情報・データがない自治体につきましては、本人からの申出や行政側で把握できる客観的な情報によりできる限り当時の保護受給状況を確認した上で対応する。また、国からの計算ツールの配布等により自動的に算出できるように対応する。保護決定調書や保護台帳が保存されていない場合は、本人の申出及び挙証資料を踏まえてケース番号登載簿等により当時の世帯主の保護受給状況を確認するとともに、戸籍謄本や加算等に係る各種挙証資料等の客観的な情報に基づき、最低生活費に関する情報・データがある場合と同様にできる限り当時の世帯構成、年齢、加算等を確認して算定する。客観的な情報による確認の程度については、自治体における事務負担が過大なものとならないよう必要最小限度の確認にとどめる。
 保護廃止世帯の申出等に係る支給事務に当たっては、国が中心となって自治体と連携しながら国民に対する広報・周知に責任を持って取り組む。新たに相談センターを設置し、相談・問合せの対応等を行うことを検討する。その際、申出先が不明な場合の相談センターから自治体への照会など、国と自治体が連携した対応を検討する。
 国においては、支給事務マニュアルを整備して支給決定までの判断基準の統一を図るとともに、支給決定の判断に係る疑義が生じた場合は自治体からの情報提供・相談を受け、Q&Aの発出を含めて必要な技術的助言等の支援を継続的に行う。
 情報・データが網羅的に保存されていない自治体における事務フロー等については、支給開始前の準備段階において当該自治体から状況を聴取し、現実的に実施可能な事務内容について検討して支給事務マニュアル等において示すなど、必要な支援を行うこととしております。
 次に、「2.実施体制の確保やスケジュール」についてでございます。個々の自治体の状況に応じて専門的な部署による対応や非常勤職員の雇い上げ、業務委託など、様々な実施体制により行うことを可能とする。国の支給事務マニュアルにおいて具体的な事務フローを示す。スケジュールについては、システム改修や実施体制の確保のための準備期間を十分に考慮した現実的なスケジュールとするとともに、個々の自治体の状況によって一定のばらつきが生じることはやむを得ないものとするとしております。
 「3.財政措置」についてでございます。保護費の追加給付を行う場合の国の予算措置について、必要な対応を検討する。今回の給付は生活保護制度における保護費として支給することを想定していることから、国が4分の3を負担した上で、地方負担分については普通交付税の基準財政需要額に所要額を算入する。支給事務に伴い必要となる非常勤職員の雇い上げ費、システム改修、委託費用等の自治体における事務の実施体制の整備に係る財政負担について、必要な予算措置を検討することとしております。
 資料についての御説明は以上でございます。
○池上総務課長 それでは、これから意見交換に移らせていただきます。順次御発言をいただきたいと存じます。
 それでは、まず内堀福島県知事にお願いできればと思います。
○内堀構成員 福島県知事の内堀雅雄です。本日は全国知事会の社会保障常任委員長として発言いたします。
 この件は、地方にとって極めて大きな負担を生じさせるものであることから、これから申し上げる3点について、強く国に求めるものであります。
 1点目は、公平かつ公正な支給に向けた体制整備についてです。支給の実施に当たっては、具体の事務を明確に示すガイドラインを作成するなど国が責任を持って公平かつ公正な事務の執行に向けた仕組みを構築されるようお願いします。また、実務を担う地方自治体に対する具体的な人的支援の在り方を示すなど、支給事務の簡素化・効率化による負担軽減にも配慮をお願いします。さらに、受給者間や地方自治体間で支給時期に大幅な差が生じることにより公平性に疑念等が生じることのないよう、丁寧な制度設計が必要です。
 2点目は、支給に必要となる財源の確保についてであります。生活保護扶助費に係る国庫負担金を確実に予算措置することはもとより、追加支給により増加する地方自治体の事務負担に対し十分な財政措置を講じるようお願いします。また、各地方自治体においても国の対応と歩調を合わせた予算計上や体制の整備を行うことができるよう、費用積算の考え方や標準的な事務量について早期に示すとともに、特別交付税も含め地方負担に対応する確実な財源の措置が不可欠であります。
 3点目は、協力体制と役割分担の明確化についてであります。対象となる方々をはじめとして国民の納得が得られるまで、国が責任を持って丁寧かつ分かりやすい周知・広報を行うようお願いします。
 また、都道府県における生活保護の実務においては、町村役場が受給の窓口や相談者との橋渡し役として極めて重要な役割を担っています。このため、町村に対しても人的負担、財政的負担に対する支援を行うとともに、窓口での対応マニュアルの提供等により万全な連携・協力体制の構築を図っていただくようお願いします。
 以上、3点申し上げました。支給対象となる方々にとっての公平性と公正性を担保するため、また、実務を担う現場に無用の混乱や過度な負担を生じさせないため、国が責任を持って適切に制度設計を行うよう強く求めます。
 私からは以上であります。
○池上総務課長 ありがとうございました。
 続きまして、野田東大阪市長、お願いいたします。
○野田構成員 全国市長会の副会長を務めております、東大阪市長の野田でございます。
 上野厚生労働大臣におかれましては、本件につきましてこのような場を持っていただきましたことには感謝を申し上げる次第でございます。
 私どもは市の立場から何点か意見を申し上げたいと思います。
 まさにこのことを処理していく事務というのは大変な労力を要する事務であります。一件一件の調査、また、恐らくコールセンター、電話、窓口等で非常に長時間にわたる住民対応というのが求められてくるのではないかと思います。そういった中で、専門委員会の報告書の中でも記述がありますけれども、具体的な支給事務や受給者への対応の在り方などについて、自治体、福祉事務所の負担も踏まえた現実的な事務設計が不可欠であり、自治体との協議の場などにおける丁寧な検討が必要であります。ぜひとも今後も丁寧な検討を行いながら、自治体として事務遂行のために必要な環境づくり、財源づくり等につきまして格段の御配慮をお願いするところであります。
 また、同じく専門委員会の報告書の中にもありますけれども、再検討後の基準を適用する者の範囲でありますとか、外国人への対応でありますとか、あるいは保護対象外となった方の取扱いや他制度の取扱いでありますとか、また、時効につきましても非常に対象者の方たちとのやり取りが煩雑かつ判断が非常に難しいケースもあろうかと思いますので、ぜひともこの点につきましても国において現場で判断にバラつき等が生じないような統一的で明確な制度設計というものをお願い申し上げる次第でございます。
 その上で、これは私自身の考えでありまして、可能性があるかどうかということについては少し割り引いていただいて御検討いただければと思いますが、行政府は法の支配の原則から司法の判断に従わざるを得ないというところ、これはもう大原則があるわけでございます。最高裁で判例が出た以上、このことについては従わざるを得ないと思います。ただ、本件のように遡って様々な事案について検証するということが大変困難、あるいは地方自治体の事務としても非常に大変な労力を要するということを鑑み、立法府による特別法のようなものを制定し、一律の対応ということができるのではないかと私自身は考えております。 
 そういったこともこの後考慮いただきまして、結果としては最高裁の司法判断というものをしっかりと受け止めながら対応していく、国と地方というものが連携しながら対応していくという形が望ましいのではないかと思っておりますので、併せて御検討を賜れればと思うところでございます。
 私からは以上でございます。
○池上総務課長 ありがとうございました。
 続きまして、山本大阪市副市長、お願いいたします。
○山本代理 大阪市副市長の山本でございます。
 本日は国と地方が意見を交わすこのような貴重な機会を設けていただき、感謝申し上げます。
 それでは、指定都市のうち最も多くの生活保護受給世帯を抱える本市の立場から意見を述べさせていただきます。
 まずは今般の判決の趣旨を踏まえ、本市としてもできるだけ早期の解決に向けて真摯に取り組んでまいりたいと考えております。その上で、国に対してお願いを申し上げます。
 自治体においては対象者の特定、支給額の再算定、通知の作成・発送や支払い事務など多岐にわたる事務が発生します。そのための人員体制の確保はいずれの自治体でも極めて困難な状況であると思われます。なお、本市の場合ですと約15万1000世帯に対して追加給付を行う必要があり、膨大な業務量となります。人員体制が整わない場合には支給事務の円滑な実施に支障が生じることを心配しておりまして、自治体の体制整備の負担を最小限にしていただく必要がございます。
 もう既に市民からの問合せが寄せられているという状況を踏まえまして、国におかれましては、現在設置を検討されている相談センターを立ち上げ、今回の対応についての統一的なアナウンスを早急に実施していただきたい。また、廃止世帯からの相談や申出への対応についてはこの相談センターにおいて一元的に担っていただく、つまり前さばきを行っていただいた上で自治体につなぐことでその後の支給事務が円滑に進むよう、また、市民の方に混乱が生じないようにしていただきたいと思っております。
 以上でございます。よろしくお願い申し上げます。
○池上総務課長 ありがとうございました。
 続いて、長内豊中市長、お願いいたします。
○長内構成員 大阪府豊中市長の長内でございます。本日は中核市市長会の会長ということで発言させていただきます。
 まず、上野厚生労働大臣におかれましては、本日、このような場において発言の機会をいただきまして誠にありがとうございます。
 今回の差額追加支給事務については、平成25年の生活扶助基準改定における国の手続上の問題に起因しておるものでございます。生活保護は市町村から見て法定受託事務であるため、本件差額支給事務については財源の確保も含め、基本的には国の責任において実施すべきであると考えております。
 そのことを前提にして、4点お伝えさせていただきたいと思います。
 まず、財政措置についてであります。現在、この支給事務に係る経費については、先ほど御説明がありました。地方が4分の1を負担することが想定されておりますが、これは自治体にとって大変大きな負担となります。また、この地方負担分については普通交付税の中で基準財政需要額に所要額を算入することが想定されているとのことでしたが、はっきりと財源としては特例交付金等でしっかりと明確にした上でその事務を確定していただきたいと考えております。
 2点目は、相談センターの業務についてです。この間、地方の意見を踏まえて国において相談センターの設置を御検討いただいていることに感謝申し上げます。新たに設置される相談センターについては、申出先の自治体につなげる役割のみならず、支給決定に必要な情報の聞き取りや申出の受付事務までを担う仕組みがなければ、自治体での負担が大きくなり、円滑な事務遂行が困難であると考えます。
 3点目の差額支給事務についてであります。差額支給事務においては特に保護廃止世帯において大きな負担と課題が予想されます。保護廃止後5年を超過した世帯については当時の保護決定調書や保護台帳が保存されていない自治体がほとんどであり、差額支給事務の審査において複数機関への照会や確認を要することになるなど、膨大な事務負担が想定されます。したがいまして、そういった観点につきましては、やはり統一的な判断基準がなければ自治体の対応に差が生じ、その事務を行う自治体自身が訴訟リスクを負い、公平性の確保も困難となります。そのために、全国一律に実現可能な仕組みを構築していただくようお願いします。
 4点目のスケジュールであります。これが最後になります。支給事務に関するスケジュールについてはいつから実施されるのか明確に示されていない状況であります。全国統一のスケジュールでなければ支給事務の実施は困難であると考えております。また、地方の自治体としては、議会日程を踏まえた上でスケジュールをお示しいただかなければ、自治体で支給事務を始めることは大変しんどいような状況でございます。こういったことも御理解いただきまして、様々な御検討を加えて、さらに自治体との協議を進めた上で踏み切っていただくようお願い申し上げます。
 ありがとうございました。
○池上総務課長 ありがとうございました。
 続きまして、白石鳥取県江府町長、お願いいたします。
○白石構成員 鳥取県江府町長の白石でございます。私は全国町村会の代表という立場でお話をさせていただきたいと思います。
 初めに、今回の保護費の追加給付につきましては、国が定めた基準の違法性が最高裁判決で指摘されたことに起因したものでございます。自治体に本来生じるはずのない新たな事務が発生するということになりました。そのことをまず申し上げたいと思います。
 町村の現場といたしましては、限られた人員の中で日々の福祉事務を行っております。国の判断によって生じた事務負担が自治体に影響を及ぼすことのないよう強くお願いを申し上げます。
 その上で、具体的な事務内容は現時点で判然とはしておりませんけれども、次の3点について対応をお願いしたいと思います。
 まず、1点目でございます。全国統一的な追加給付の実施についてでございます。自治体によって差額給付の算定に差が生じることがないよう、国は責任を持って全国一律の算定基準と処理方法について明確に提示するようお願いいたします。あわせまして、事務マニュアルやシステム対応などにつきましても、現場が滞りなく処理できますよう、国におきまして一元的に整備することをお願いいたします。
 2点目でございます。追加給付に係る経費への財政措置についてでございます。多くの町村では職員が少なく、生活保護事務をほかの業務と兼務して行っているというのが実情でございます。追加給付への対応によりまして現行の相談支援や生活保護の適正実施に支障が生じることが懸念をされます。さらに、小規模な自治体では現行の事務体制での対応が困難なこともあります。臨時的に職員を雇うなどの対応をせざるを得なくなることもございます。したがいまして、保護費だけではなく追加給付のために必要となる人件費、事務費などの経費は国が全額措置していただければと考えます。
 3点目でございます。問合せ対応や周知・広報についてでございます。自治体への直接の問合せを最小限に抑えることからも、国は責任を持って問合せや相談を受ける体制を整備していただきたいと思います。あわせまして、今回の保護費の追加給付の取扱いにつきましては、国が国民に対しまして丁寧に周知・広報を行うようお願いいたします。
 最後になりますが、国による十分な財政的・技術的支援がなければ、自治体は追加給付事務を円滑に進めることはできません。ぜひ現場の実態を踏まえた制度設計と運用支援を講じていただきたく、お願い申し上げます。
 私からは以上でございます。
○池上総務課長 ありがとうございました。御出席の皆様から御意見を頂戴いたしました。
 それでは、皆様からの御意見を踏まえまして、大臣より御発言をお願いいたします。
○上野厚生労働大臣 大変貴重な御意見をいただきまして本当にありがとうございます。皆様のお声を頂戴いたしまして、このような事態になりましたことを重ね重ねでございますが大変心苦しく感じております。本当に貴重な御意見をいただきましたので、私からは総論的なお話をさせていただいて、個別の話につきましては局長なり担当課長からお答えをさせていただきたいと思います。
 まず、一つは体制の整備の大切さをそれぞれにお話しいただいたと思います。具体の支給事務を担っていただく上で現場の様々なニーズがあろうかと思います。今、その一端を御披露いただきましたけれども、そうした皆さんのニーズをしっかり把握して、公平かつ公正な支給事務が実施できるように、体制の整備には特に力を尽くしていきたいと思います。
 2つ目は、財源の問題であります。これも本当に皆様の御関心事項だと思っております。必要な予算措置、事務負担の追加のようなものも含めまして、必要な予算措置につきましてはできる限り措置ができるように私どもも努力をさせていただきたいと考えているところであります。
 3つ目に、役割分担の明確化というお話がございました。国としても、1点目と重なりますが、先ほどからお話のある相談センターの充実であったり、あるいはマニュアルの整備であったり、現場の皆様がお困りにならないように全面的に御支援ができるような支援をさせていただければと考えておりますので、その点につきましても御理解を賜りますようによろしくお願い申し上げたいと思います。
 いずれにいたしましても、様々な事務が発生をし、大変複層的な状況になるかと思いますが、私どもとして対応できる部分はしっかり皆様に寄り添いながら頑張らせていただきたい、力を尽くしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをしたいと思います。
 詳細につきましては、担当局長、または課長からお話をさせていただきたいと思います。
 以上です。
○石川分析官 分析官の石川でございます。本日は貴重な御意見をありがとうございました。大臣から総括的なお答えをいたしましたけれども、私からより具体的なお答えをさせていただきたいと思います。
 まず、支給事務の実施体制につきましては、今回の追加給付につきましては生活扶助基準の新たな水準と従前の水準との差額を保護費として支給することを想定しております。また、自治体において当時の保護決定や世帯構成などの情報やデータを踏まえて世帯の状況に応じて給付額を算定する必要があると考えております。こうしたことからしますと、自治体の皆様方の御協力がなければ対応は非常に難しいと考えておりますので、何とぞ御理解いただければと考えているところでございます。
 また、統一的な事務マニュアルの作成や事務の負担軽減についても十分配慮する必要があると考えておりまして、本日の御意見を伺いまして、改めてそのような必要性の認識を一層強くしたところでございます。引き続きこの点につきましては自治体の皆様方ともよく御相談させていただきながら、自治体の事務負担が過大なものとならないように十分に配慮したいと考えておりますし、そういった観点から、統一的な支給事務マニュアルの策定なども含めまして、具体的な事務の内容についてしっかりと検討させていただきたいと考えております。
 相談センターにつきましては、国において設置を予定しております。このセンターの役割や業務につきましては、主に保護廃止世帯の申出の手続の問合せや相談への対応、また、申出先となる自治体が分からないといった問合せがあった場合に自治体への照会などをすることを考えておりますけれども、今後、具体的には、支給対象者の利便性や自治体における負担軽減なども考慮しながら、具体的な事務フローを今後検討していく中で、自治体の皆様ともよく御相談しながら、この相談センターについて検討をさせていただきたいと考えております。
 財政措置につきましても御要望を頂戴いたしました。まず保護費につきましては、生活保護制度上、国が4分の3、地方が4分の1という負担割合とされております。追加給付をする場合の地方負担分については、普通交付税の基準財政需要額の所要額への算入を検討させていただいております。
 また、御要望のございました人件費やシステム改修などの経費といった支給事務に要する経費につきましては、できる限り自治体の負担が生じないように必要な予算の確保を検討していきたいと考えております。
 支給事務については、自治体において多大な業務が生じることと想定しております。そうすると、自治体においてそれぞれ準備期間も含めて一定の期間が必要になると思っております。そういったことも含めたスケジュールにつきましては、自治体の皆様方の御意見をしっかりと伺いながら、自治体の実情を踏まえたスケジュールについて今後検討させていただきたいと思います。
 国におきましては、今回の事務についてできる限りの自治体に対する御支援、対応を検討していきたいと考えておりますので、追加給付を行う場合の支給事務の実施について何とぞ御理解、御協力いただきますよう改めてお願いさせていただきたいと思っております。
 私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。
○池上総務課長 ありがとうございました。
 そろそろ終了の時間が近づいてまいりましたけれども、自治体の皆様から特段の御意見はございますでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、意見交換につきましては以上とさせていただきたいと思います。
 最後に、大臣より御挨拶を申し上げます。
 失礼いたしました。東大阪市野田市長、お願いいたします。
○野田構成員 時間が迫って申し訳ございません。
 先ほど私から申し上げました、特別立法による一律の対応ということについては理論上無理なのでしょうか。理論的にはできるけれども国会での各政党の御判断が必要ということなのでしょうか。特別立法による一律の対応というのが最もある意味では私は公平かつ地方自治体の負担も軽減されるものであろうかと思うのですが、その点だけお考えがもしございましたら、ぜひともお願いいたします。
○鹿沼社会・援護局長 恐れ入ります。厚生労働省の社会・援護局長でございます。
 今回の支給の関係、追加の部分についてお支払いすることになった場合には、本来生活保護法8条2項に基づく最低生活の保障のラインの部分と今まで過去においてお支払いした部分の差額というものをお支払いすることになると思いますが、その部分について特別立法という形で、例えば言い方は悪いですが、ある意味決めみたいな形でお支払いをした場合に、今の実際に払うべき額との過不足が生じる可能性もございます。その場合には不足されている方々からまた裁判が起こるという可能性もございますし、それは逆に言うとまた国・地方事務も含めて非常に大変な問題になろうかとも思っております。
 あわせまして、法制局といろいろ御相談をさせていただく中で、本来保護費で払うものという性格もございますので、立法という形ではなくて保護費で払うのが適当ではないかという御指摘もあるところでございます。
 いずれにいたしましても、そういった形で私どもといたしましては、できればこの保護費という中でお支払いする場合は保護費という形でお支払いをさせていただければと思っているところでございます。
○池上総務課長 野田市長、よろしいでしょうか。
○野田構成員 はい。
○池上総務課長 ありがとうございます。
 それでは、最後に上野厚生労働大臣より御挨拶を申し上げます。
○上野厚生労働大臣 本日は皆様から現場の実情を踏まえて大変貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。国と自治体がしっかり協力をしなければこの事務は遂行できないと考えておりますので、今日は総論的なお話が中心であったかと思いますが、個別具体的なお話、あるいは皆様が現場で大変御苦労されるような課題といったものにつきましては、逐一私どもに御相談をいただければ、我々としてもしっかり受け止めさせていただいて対応を進めていきたいと考えているところであります。
 最後になりますけれども、今後とも皆様に一層の御理解、または御協力を賜りますことを切にお願い申し上げまして、終わりの御挨拶とさせていただきます。
 本日は誠にありがとうございました。
○池上総務課長 以上をもちまして、本協議を終了させていただきます。
 本日は御多忙の中、最高裁判決への対応に関しまして、御議論の場にお運びいただきまして大変ありがとうございました。
 以上とさせていただきます。