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2024年4月26日 費用対効果評価専門組織 第1回議事録
日時
令和6年4月26日13:00~
場所
オンライン開催
出席者
田倉 智之委員長、齋藤 信也委員長代理、池田 俊也委員、木﨑 孝委員、新谷 歩委員、新保 卓郎委員、野口 晴子委員、飛田 英祐委員、米盛 勧委員、弦間 昭彦専門委員、山口 正雄専門委員、福田 敬専門委員
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
木下医療技術評価推進室長 他
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
木下医療技術評価推進室長 他
議題
○ テゼスパイア皮下注に係る総合的評価について
議事
○費用対効果評価専門組織委員長
では、次の品目に入らせていただきます。続きまして、前回、先生方に御議論いただきましたテゼスパイア皮下注に係る総合的評価に対する企業からの不服意見聴取を行った上で、再び先生方に御議論いただきたいと思います。
まずは事務局から説明をお願いいたします。
(事務局より説明)
○国立保健医療科学院
それでは、費-2-3の資料を御覧ください。先ほど御説明いただいた製造販売業者の主張に対して、公的分析としては以下のように考える次第です。
総死亡率に対する補正の問題についてですけれども、企業の方々に御提案いただいた韓国の研究については、対象患者の平均年齢が高いことに併せまして、全ての患者が経口ステロイドを連用している患者でありまして、一方、モデルで設定している患者層は、一部、経口ステロイドを使用されている患者はその一部という設定でありますので、モデルの設定とそこで使用しているデータが少しそごがあるのではないかなと考える次第であります。
それから、2点目、感度分析の実施についてですけれども、このNetwork Meta-Analysisの論文では、MAICと同じように患者背景を調整して間接比較を実施するSTCの結果が示されています。これによりますと、メポリズマブに対するテゼペルマブの比は0.92、ベンラリズマブに対しては0.69、デュピルマブに対しては0.92という結果になっています。このように、STCかMAICかという、これは分析手法の違いですが、分析手法の違いによって結果が一貫していないということでありますから、MAICの結果のみをもって議論することは不適切なのではないかと考える次第です。
その場合、やはり分析手法の違いによる分析結果の不確実性を慎重に検討する必要があるものと考えておりますが、企業側の主張を受け入れたとしてもICERは1000万円/QALYの境界値をわずかに下回る程度でありまして、そのような状況について、先生方に総合的に考慮していただく必要があるのかなと考えております。
なお、上記の文献、このNetwork Meta-Analysisの文献については製造販売業者が分析の際に用いて御提出いただいたものでありまして、公的分析はそれを受け入れた形になっております。公的分析の結果が提示されてから、参照するデータを変更したほうがいいのではないかという主張はやはり少し適切性を欠くのではないかという懸念を抱いている次第です。
また、仮にMAICの結果を採用したとしても、同様の手法を用いたベンラリズマブやデュピルマブとの比較結果は不明であり、きちんと整合性の取れた分析ができるものであるのかがまず分からない点と、その場合、もし実施できた場合についても、メポリズマブが「最も効果が高い」という結果が変わらず得られるという保証はないものと考えておりますので、やはりこれらを合わせて総合的に御検討いただくのがよいのではないかなと考える次第です。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、議論に先立ちまして、まず、本製品に係る総合的評価に対する不服意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者 入室)
○費用対効果評価専門組織委員長
私は費用対効果評価専門組織委員長です。
早速ですが、10分以内で、テゼスパイア皮下注の総合的評価に対する不服意見について御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。
それでは、始めてください。
○意見陳述者
○○です。意見陳述の時間をいただき誠にありがとうございます。
それでは、始めさせていただきます。各スライドの右上に番号をつけておりますので、御参照ください。
まず、スライド2を御覧ください。
本日は、こちらの3点について意見を述べさせていただきます。
スライド3を御覧ください。
前回の専門組織において、死亡率の補正について御議論いただき、死亡率が6.5%以上になることは考えにくいとの結論に至ったと承知しております。
その後、さらに調査しましたところ、コントロール不良な難治性ぜんそく患者に相当する経口ステロイド連用患者を対象とした韓国の研究がございました。この研究では全死亡率が13.6%となっており、図にお示ししたとおり、フランスのデータとともに、補正を行わない場合の死亡率よりも著しく高い値となっております。また、コントロール不良の難治性ぜんそく患者に用いられます弊社のベンラリズマブの使用成績調査における年齢構成を基に、日本人一般集団の年齢別死亡率を加重平均しましたところ、3.6%となります。
一方、補正を行わずにモデルで計算した死亡率は3.0%ですから、一般集団の死亡率よりも低い値となってしまいます。このように、補正を行わない死亡率は過少な推計となるため、他国のHTA機関と同様に補正を行う必要があると考えます。
スライド4を御覧ください。
公的分析が実施したシナリオ分析において、感度分析の比較対照をベンラリズマブから同じ抗IL-5経口剤のメポリズマブに入れ替えると費用対効果の程度が大きく変わることが示され、こちらも踏まえて、基本分析結果を採用すべきとの御判断になったと承知しております。
しかし、もともと臨床データ的にも、恐らく先生方の臨床的な感覚としても、そこまで有効性に差が認められず、一日薬価もほぼ同じ両剤でICERがここまで異なるのは何か問題があると考え、弊社としては臨床試験のデータを比較したところです。
シナリオ分析ではメポリズマブに対するICERの計算にNetwork Meta-Analysisの値を使用されていますが、図にお示ししたとおり、これに含まれるメポリズマブの臨床試験の患者は、ベースラインにおける年間増悪回数や経口ステロイド連用患者の割合が本剤とベンラリズマブに比べて明らかに高く、重症例に偏っております。この患者背景の違いが本剤とメポリズマブの有効性の差に影響し、結果として4000万円を超える極端に高いICERにつながったと考えます。仮にメポリズマブを比較対照としたシナリオ分析を実施するのであれば、患者背景を調整した上でICERを計算すべきと考えます。
スライド5です。
今回、MAIC法によって本剤とメポリズマブの患者背景がそろうよう調整しましたところ、メポリズマブに対する本剤のぜんそく増悪率の比は0.94から0.74へと低下し、その結果、ICERは、左の図のとおり、死亡率を補正しない場合でも4203万円から932万円に大きく低下しました。なお、仮に死亡率を6.5%に補正した場合、432万円まで低下いたします。
このように、患者背景を適切に調整しますと、いずれの薬剤を比較対照に置いたとしても、ICERに極端な差は生じませんので、専門組織Ⅰで決定された感度分析の枠組みに従ってベンラリズマブを比較対照として評価を行っていただくことに問題はないと考えます。
スライド6を御覧ください。
ここからは、本剤上市後の臨床実態をお示しし、それも踏まえて総合評価に感度分析を考慮いただくことについて御提案をさせていただきます。
スライド7です。
まず、昨年3月の専門組織での分析枠組みに関する御議論を改めて御確認いただきたく、その際の意見陳述資料の1枚を再掲いたしました。
図の左側の基本分析は、最も安価なオマリズマブが使用可能という理由で、好酸球値が高く、抗IL-5で治療されている患者も一まとめにIgE抗原感作陽性集団としたものであり、臨床実態と著しく乖離していること。一方、図の右側の弊社案は、投与されている薬剤に基づいて枠組みを設定しており、ぜんそく病態を含む臨床実態に合致していることを御説明いたしました。
スライド8です。
この際の専門組織は上段に記載した御意見があったと承知しておりますが、下段に記載のとおり、主に分析枠組みと臨床実態との整合性について御議論いただいたものの、どちらか一方のみを選択することが困難だったため、C2H案を基本分析、弊社案を感度分析として分析を行い、両方の結果を考慮して総合的評価を検討いただくことになったと理解しております。
スライド9を御覧ください。
図の左側の3つの帯グラフに生物学的製剤別の投与患者割合を本剤上市前後に分けてお示ししております。本剤上市前に比べ、デュピルマブは増加、オマリズマブは減少しており、ベンラリズマブとメポリズマブを合わせました抗IL-5系抗体は64%と変わっておりません。
図の右側に、本剤が投与された患者について、本剤投与前に使用されていた薬剤別の患者割合を示しております。抗IL-5が約50%、デュピルマブが40%で、オマリズマブから本剤に置き換わったのはわずか11%という状況です。
次に、スライド10にお進みください。
図の左に、先ほどの本剤投与前に使用されていた薬剤別の患者割合を臨床実態としてお示ししております。こちらと中央の基本分析を比べますと、臨床実態では11%にすぎないオマリズマブが、基本分析では60%の集団の比較対照となっていること。さらに、半数を占める抗IL-5が基本分析の比較対照に全く含まれていないことから、やはり臨床実態との乖離が大きい状況です。
一方、一番右の感度分析と臨床実態の比較では、本剤の全治療として4割を占めているデュピルマブが含まれていない点で乖離が認められます。
スライド11にお進みください。
先ほど申し上げましたとおり、基本分析はやはり臨床実態から大きく乖離していますので、総合評価を基本分析、感度分析のどちらか一方のみに基づいて行う場合は、弊社としては感度分析のほうがより適切と考えてはおります。
しかしながら、感度分析も臨床実態を完全に反映できているわけではなく、専門組織Ⅰでは感度分析を何らかの形で考慮する必要があるのではないかという御意見もいただいておりましたので、仮に基本分析を主としながら、感度分析の枠組みの要素も取り入れるとすれば図の一番右にお示ししたような形になり、こちらを総合評価案として御検討いただくことを提案いたします。
下段に記載のとおり、このような形でしたら、基本分析と感度分析、両方の対象集団と比較対照が考慮されておりますし、異なる作用機序の生物学的製剤が使い分けて使用されているという「2型喘息の臨床実態」も反映されていますので、基本分析のみ、あるいは感度分析のみに基づく評価よりも妥当・適切であると考えます。
続くスライド12には、御提案した総合評価案を用いた場合の価格調整係数をお示ししております。
次に、スライド13にお進みください。
ここで、○○の専門家のお立場から、○○先生の御意見を頂戴したいと思います。○○先生、よろしくお願いいたします。
○意見陳述者(専門家) よろしくお願いします。○○でございます。
今回の分析は、やはり何を比較対照に置いて、どのようなデータを使って評価するのかがキーになっておりますし、それによって大きく結果が変わることが今までの議論で見えてきていると思います。ある意味で、やはりこのような薬剤において単一の比較対照を取ることは恐らく不可能でありますし、どういう薬剤がテゼスパイアによって置き換えられるのかということに正確な答えを出すのは基本的には不可能だと思っています。
ただ、1点目、先ほどのNMAにありましたように、NMAという道具を使っても、もともとの試験に大きく質の違いがあるのであれば、それは統合することは難しいこと。それから、実際、分析枠組みで提案されたものの比較対照の比はやはり実態からかなり乖離していると言わざるを得ない状況にあると思います。
どの手段を取っても正解にたどり着くことはできないと思うのですけれども、どういう形が妥当かをもう一度考え直してみる必要があると考えます。
以上です。
○意見陳述者
○○先生、ありがとうございました。
最後に、スライド14を御覧ください。
これまで述べた弊社の意見を要約しておりますので、御確認いただけましたら幸いです。
弊社からの説明は以上となります。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
ただいま、企業からの意見陳述にもございましたように、公的分析に対する指摘もございました。これらの指摘に対して公的分析から御意見があればお願いいたします。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
特にコメントなどはありませんけれども、基本的な比較対照技術の考え方といたしましては、ガイドラインの趣旨としましては、置換されているものから最も効果が大きいものと考えております。その比較対照技術を選定する際には、一定のボリュームが入るのはもちろんでありますが、当然、最も使われているものを使うということではないことはガイドライン上でも明記されておりますことから、比較対照技術の選定、先生方に御検討いただいた分析枠組みの設定という点では問題ないのではないかなと考えている次第です。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
これらの御説明を踏まえて、委員の方から御質問、御意見はございますでしょうか。
いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
では、○○先生、どうぞ。
○○○委員
最初に説明いただいた死亡率に関して確認でお伺いします。
死亡率に関して、確かにいろいろな論文で8%、13%といった、高い数値が出ていることを拝見しましたけれども、年齢層が高い集団は死亡率に関してもかなり高い数値がはじき出されてしまうだろうと思います。テゼスパイアの治験あるいは今回のICERの計算で用いられた年代は50歳前後の集団と考えていますが、今回高年齢が含まれている集団の死亡率を適用することの妥当性に関して心配しています。
ナビゲータースタディーでも500例ほどのプラセボ群で、2例であり、何十例も亡くなったわけではありません。死亡率のかなり高い集団とICERの計算の基になる集団とは食い違うのかなという印象も持っておりますが、この辺はいかがでしょうか。
○意見陳述者
御質問いただきありがとうございます。
まず、モデルの計算方法について少し補足させていただきたいのですが、テゼスパイア、このモデルを計算するときは確かにナビゲーター試験に合わせまして平均年齢が50歳少しで計算しております。そのときは、確かに死亡率はモデル上も少ないですが、今回、この補正を行っておりますのはあくまでフランスのデータの平均年齢62歳に合わせたものですので、モデルでもその62歳に合わせたときに死亡率がいわゆるフランスのデータと合うように設定しております。
ですので、モデルで動かすときも、もっと若い年齢に設定いたしますと死亡率はもっと少なくなりますので、では、50歳のときに、先生の御懸念がございますように、実際の死亡率がどうだったのか、モデルがどうなったのか。モデルは計算できますが、どうなったのかというのはなかなか、確かに実際のデータはないので、そこは年齢で調整して類推するしか方法がないと考えております。
○○○委員
ありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
○意見陳述者
ありがとうございました。
(意見陳述者 退室)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、議論に先立ちまして、企業からの不服意見がございましたので、科学院からさらに追加で御意見等があればお願いいたします。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
特に先ほど述べさせていただいた以上のコメントはございませんので、御議論をよろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、当該品目について御議論をお願いしたいと思います。
なお、御議論に当たっては、企業からの不服意見を踏まえた企業からの提案と公的分析の再分析結果のどちらがより科学的により確からしいかを相対的に評価することを踏まえて御議論を進めていただきますようよろしくお願いいたします。
御専門の先生が御参加されていらっしゃいますので、○○先生、いかがでしょうか。
○○○委員
まず、死亡率の補正については、基本的には環境等によってかなり異なるのと、実際、難治性と重症ぜんそくについての関係についてもイコールではないと考えますし、また、日本呼吸器学会とアレルギー学会等でも差があることを踏まえながらターゲットの比較はかなり難しいだろうと考え、補正を安易に用いるのは慎重にならざるを得ないかなと思っていますので、公的分析のとおりでいいのかなという点。
もう一つは、シナリオ分析についてでございますけれども、確かに実態との差は公的分析にもあるので、それに対するいろいろな工夫は必要とは思いますが、基本的にこの生物製剤のどれを用いてどうということに対する基本的に示された使用の基準は、クリアではないという状況からすると、この費用対効果の趣旨からすれば、価格等で考えていくことに関して特に問題ないかなと思っています。
企業のいろいろな努力は分かるのですけれども、その妥当性もちょっと厳しいかなと思いました。ですから、公的分析でいいのかなと思います。
以上でございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
御丁寧な解説、ありがとうございました。
○費用対効果評価専門組織委員長
死亡率の補正と感度分析の取扱いが論点という中において、基本的には基本分析を支持するというお話しであり、企業側の御説明については幾つかの疑義があったということであります。
それを踏まえて、まとめに入らせていただきます。
議決に入らせていただくために、○○委員と○○委員におかれましては、議決の間、一時御退席いただいているところですが、こちらでは御退席いただいておりますので、一応、念のため、事務局のほうで御確認ください。
○事務局
事務局でございます。
退席が確認できております。よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
では、続けさせていただきます。
以上、先生方の御意見を参考に、テゼスパイア皮下注に関する費用対効果を総合的に評価いたしますと、テゼスパイア皮下注に係る総合的評価について、専門組織で決定された総合的評価のとおりとするということでよろしいでしょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
先生方、ありがとうございます。
それでは、専門組織で決定された総合的評価を費用対効果評価案として中央社会保険医療協議会に報告いたします。
なお、企業に対する内示及び中央社会保険医療協議会に提出する資料に関しては委員長に一任いただくということで、こちらもよろしいでしょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
では、次の品目に入らせていただきます。続きまして、前回、先生方に御議論いただきましたテゼスパイア皮下注に係る総合的評価に対する企業からの不服意見聴取を行った上で、再び先生方に御議論いただきたいと思います。
まずは事務局から説明をお願いいたします。
(事務局より説明)
○国立保健医療科学院
それでは、費-2-3の資料を御覧ください。先ほど御説明いただいた製造販売業者の主張に対して、公的分析としては以下のように考える次第です。
総死亡率に対する補正の問題についてですけれども、企業の方々に御提案いただいた韓国の研究については、対象患者の平均年齢が高いことに併せまして、全ての患者が経口ステロイドを連用している患者でありまして、一方、モデルで設定している患者層は、一部、経口ステロイドを使用されている患者はその一部という設定でありますので、モデルの設定とそこで使用しているデータが少しそごがあるのではないかなと考える次第であります。
それから、2点目、感度分析の実施についてですけれども、このNetwork Meta-Analysisの論文では、MAICと同じように患者背景を調整して間接比較を実施するSTCの結果が示されています。これによりますと、メポリズマブに対するテゼペルマブの比は0.92、ベンラリズマブに対しては0.69、デュピルマブに対しては0.92という結果になっています。このように、STCかMAICかという、これは分析手法の違いですが、分析手法の違いによって結果が一貫していないということでありますから、MAICの結果のみをもって議論することは不適切なのではないかと考える次第です。
その場合、やはり分析手法の違いによる分析結果の不確実性を慎重に検討する必要があるものと考えておりますが、企業側の主張を受け入れたとしてもICERは1000万円/QALYの境界値をわずかに下回る程度でありまして、そのような状況について、先生方に総合的に考慮していただく必要があるのかなと考えております。
なお、上記の文献、このNetwork Meta-Analysisの文献については製造販売業者が分析の際に用いて御提出いただいたものでありまして、公的分析はそれを受け入れた形になっております。公的分析の結果が提示されてから、参照するデータを変更したほうがいいのではないかという主張はやはり少し適切性を欠くのではないかという懸念を抱いている次第です。
また、仮にMAICの結果を採用したとしても、同様の手法を用いたベンラリズマブやデュピルマブとの比較結果は不明であり、きちんと整合性の取れた分析ができるものであるのかがまず分からない点と、その場合、もし実施できた場合についても、メポリズマブが「最も効果が高い」という結果が変わらず得られるという保証はないものと考えておりますので、やはりこれらを合わせて総合的に御検討いただくのがよいのではないかなと考える次第です。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、議論に先立ちまして、まず、本製品に係る総合的評価に対する不服意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者 入室)
○費用対効果評価専門組織委員長
私は費用対効果評価専門組織委員長です。
早速ですが、10分以内で、テゼスパイア皮下注の総合的評価に対する不服意見について御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。
それでは、始めてください。
○意見陳述者
○○です。意見陳述の時間をいただき誠にありがとうございます。
それでは、始めさせていただきます。各スライドの右上に番号をつけておりますので、御参照ください。
まず、スライド2を御覧ください。
本日は、こちらの3点について意見を述べさせていただきます。
スライド3を御覧ください。
前回の専門組織において、死亡率の補正について御議論いただき、死亡率が6.5%以上になることは考えにくいとの結論に至ったと承知しております。
その後、さらに調査しましたところ、コントロール不良な難治性ぜんそく患者に相当する経口ステロイド連用患者を対象とした韓国の研究がございました。この研究では全死亡率が13.6%となっており、図にお示ししたとおり、フランスのデータとともに、補正を行わない場合の死亡率よりも著しく高い値となっております。また、コントロール不良の難治性ぜんそく患者に用いられます弊社のベンラリズマブの使用成績調査における年齢構成を基に、日本人一般集団の年齢別死亡率を加重平均しましたところ、3.6%となります。
一方、補正を行わずにモデルで計算した死亡率は3.0%ですから、一般集団の死亡率よりも低い値となってしまいます。このように、補正を行わない死亡率は過少な推計となるため、他国のHTA機関と同様に補正を行う必要があると考えます。
スライド4を御覧ください。
公的分析が実施したシナリオ分析において、感度分析の比較対照をベンラリズマブから同じ抗IL-5経口剤のメポリズマブに入れ替えると費用対効果の程度が大きく変わることが示され、こちらも踏まえて、基本分析結果を採用すべきとの御判断になったと承知しております。
しかし、もともと臨床データ的にも、恐らく先生方の臨床的な感覚としても、そこまで有効性に差が認められず、一日薬価もほぼ同じ両剤でICERがここまで異なるのは何か問題があると考え、弊社としては臨床試験のデータを比較したところです。
シナリオ分析ではメポリズマブに対するICERの計算にNetwork Meta-Analysisの値を使用されていますが、図にお示ししたとおり、これに含まれるメポリズマブの臨床試験の患者は、ベースラインにおける年間増悪回数や経口ステロイド連用患者の割合が本剤とベンラリズマブに比べて明らかに高く、重症例に偏っております。この患者背景の違いが本剤とメポリズマブの有効性の差に影響し、結果として4000万円を超える極端に高いICERにつながったと考えます。仮にメポリズマブを比較対照としたシナリオ分析を実施するのであれば、患者背景を調整した上でICERを計算すべきと考えます。
スライド5です。
今回、MAIC法によって本剤とメポリズマブの患者背景がそろうよう調整しましたところ、メポリズマブに対する本剤のぜんそく増悪率の比は0.94から0.74へと低下し、その結果、ICERは、左の図のとおり、死亡率を補正しない場合でも4203万円から932万円に大きく低下しました。なお、仮に死亡率を6.5%に補正した場合、432万円まで低下いたします。
このように、患者背景を適切に調整しますと、いずれの薬剤を比較対照に置いたとしても、ICERに極端な差は生じませんので、専門組織Ⅰで決定された感度分析の枠組みに従ってベンラリズマブを比較対照として評価を行っていただくことに問題はないと考えます。
スライド6を御覧ください。
ここからは、本剤上市後の臨床実態をお示しし、それも踏まえて総合評価に感度分析を考慮いただくことについて御提案をさせていただきます。
スライド7です。
まず、昨年3月の専門組織での分析枠組みに関する御議論を改めて御確認いただきたく、その際の意見陳述資料の1枚を再掲いたしました。
図の左側の基本分析は、最も安価なオマリズマブが使用可能という理由で、好酸球値が高く、抗IL-5で治療されている患者も一まとめにIgE抗原感作陽性集団としたものであり、臨床実態と著しく乖離していること。一方、図の右側の弊社案は、投与されている薬剤に基づいて枠組みを設定しており、ぜんそく病態を含む臨床実態に合致していることを御説明いたしました。
スライド8です。
この際の専門組織は上段に記載した御意見があったと承知しておりますが、下段に記載のとおり、主に分析枠組みと臨床実態との整合性について御議論いただいたものの、どちらか一方のみを選択することが困難だったため、C2H案を基本分析、弊社案を感度分析として分析を行い、両方の結果を考慮して総合的評価を検討いただくことになったと理解しております。
スライド9を御覧ください。
図の左側の3つの帯グラフに生物学的製剤別の投与患者割合を本剤上市前後に分けてお示ししております。本剤上市前に比べ、デュピルマブは増加、オマリズマブは減少しており、ベンラリズマブとメポリズマブを合わせました抗IL-5系抗体は64%と変わっておりません。
図の右側に、本剤が投与された患者について、本剤投与前に使用されていた薬剤別の患者割合を示しております。抗IL-5が約50%、デュピルマブが40%で、オマリズマブから本剤に置き換わったのはわずか11%という状況です。
次に、スライド10にお進みください。
図の左に、先ほどの本剤投与前に使用されていた薬剤別の患者割合を臨床実態としてお示ししております。こちらと中央の基本分析を比べますと、臨床実態では11%にすぎないオマリズマブが、基本分析では60%の集団の比較対照となっていること。さらに、半数を占める抗IL-5が基本分析の比較対照に全く含まれていないことから、やはり臨床実態との乖離が大きい状況です。
一方、一番右の感度分析と臨床実態の比較では、本剤の全治療として4割を占めているデュピルマブが含まれていない点で乖離が認められます。
スライド11にお進みください。
先ほど申し上げましたとおり、基本分析はやはり臨床実態から大きく乖離していますので、総合評価を基本分析、感度分析のどちらか一方のみに基づいて行う場合は、弊社としては感度分析のほうがより適切と考えてはおります。
しかしながら、感度分析も臨床実態を完全に反映できているわけではなく、専門組織Ⅰでは感度分析を何らかの形で考慮する必要があるのではないかという御意見もいただいておりましたので、仮に基本分析を主としながら、感度分析の枠組みの要素も取り入れるとすれば図の一番右にお示ししたような形になり、こちらを総合評価案として御検討いただくことを提案いたします。
下段に記載のとおり、このような形でしたら、基本分析と感度分析、両方の対象集団と比較対照が考慮されておりますし、異なる作用機序の生物学的製剤が使い分けて使用されているという「2型喘息の臨床実態」も反映されていますので、基本分析のみ、あるいは感度分析のみに基づく評価よりも妥当・適切であると考えます。
続くスライド12には、御提案した総合評価案を用いた場合の価格調整係数をお示ししております。
次に、スライド13にお進みください。
ここで、○○の専門家のお立場から、○○先生の御意見を頂戴したいと思います。○○先生、よろしくお願いいたします。
○意見陳述者(専門家) よろしくお願いします。○○でございます。
今回の分析は、やはり何を比較対照に置いて、どのようなデータを使って評価するのかがキーになっておりますし、それによって大きく結果が変わることが今までの議論で見えてきていると思います。ある意味で、やはりこのような薬剤において単一の比較対照を取ることは恐らく不可能でありますし、どういう薬剤がテゼスパイアによって置き換えられるのかということに正確な答えを出すのは基本的には不可能だと思っています。
ただ、1点目、先ほどのNMAにありましたように、NMAという道具を使っても、もともとの試験に大きく質の違いがあるのであれば、それは統合することは難しいこと。それから、実際、分析枠組みで提案されたものの比較対照の比はやはり実態からかなり乖離していると言わざるを得ない状況にあると思います。
どの手段を取っても正解にたどり着くことはできないと思うのですけれども、どういう形が妥当かをもう一度考え直してみる必要があると考えます。
以上です。
○意見陳述者
○○先生、ありがとうございました。
最後に、スライド14を御覧ください。
これまで述べた弊社の意見を要約しておりますので、御確認いただけましたら幸いです。
弊社からの説明は以上となります。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
ただいま、企業からの意見陳述にもございましたように、公的分析に対する指摘もございました。これらの指摘に対して公的分析から御意見があればお願いいたします。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
特にコメントなどはありませんけれども、基本的な比較対照技術の考え方といたしましては、ガイドラインの趣旨としましては、置換されているものから最も効果が大きいものと考えております。その比較対照技術を選定する際には、一定のボリュームが入るのはもちろんでありますが、当然、最も使われているものを使うということではないことはガイドライン上でも明記されておりますことから、比較対照技術の選定、先生方に御検討いただいた分析枠組みの設定という点では問題ないのではないかなと考えている次第です。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
これらの御説明を踏まえて、委員の方から御質問、御意見はございますでしょうか。
いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
では、○○先生、どうぞ。
○○○委員
最初に説明いただいた死亡率に関して確認でお伺いします。
死亡率に関して、確かにいろいろな論文で8%、13%といった、高い数値が出ていることを拝見しましたけれども、年齢層が高い集団は死亡率に関してもかなり高い数値がはじき出されてしまうだろうと思います。テゼスパイアの治験あるいは今回のICERの計算で用いられた年代は50歳前後の集団と考えていますが、今回高年齢が含まれている集団の死亡率を適用することの妥当性に関して心配しています。
ナビゲータースタディーでも500例ほどのプラセボ群で、2例であり、何十例も亡くなったわけではありません。死亡率のかなり高い集団とICERの計算の基になる集団とは食い違うのかなという印象も持っておりますが、この辺はいかがでしょうか。
○意見陳述者
御質問いただきありがとうございます。
まず、モデルの計算方法について少し補足させていただきたいのですが、テゼスパイア、このモデルを計算するときは確かにナビゲーター試験に合わせまして平均年齢が50歳少しで計算しております。そのときは、確かに死亡率はモデル上も少ないですが、今回、この補正を行っておりますのはあくまでフランスのデータの平均年齢62歳に合わせたものですので、モデルでもその62歳に合わせたときに死亡率がいわゆるフランスのデータと合うように設定しております。
ですので、モデルで動かすときも、もっと若い年齢に設定いたしますと死亡率はもっと少なくなりますので、では、50歳のときに、先生の御懸念がございますように、実際の死亡率がどうだったのか、モデルがどうなったのか。モデルは計算できますが、どうなったのかというのはなかなか、確かに実際のデータはないので、そこは年齢で調整して類推するしか方法がないと考えております。
○○○委員
ありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
○意見陳述者
ありがとうございました。
(意見陳述者 退室)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、議論に先立ちまして、企業からの不服意見がございましたので、科学院からさらに追加で御意見等があればお願いいたします。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
特に先ほど述べさせていただいた以上のコメントはございませんので、御議論をよろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、当該品目について御議論をお願いしたいと思います。
なお、御議論に当たっては、企業からの不服意見を踏まえた企業からの提案と公的分析の再分析結果のどちらがより科学的により確からしいかを相対的に評価することを踏まえて御議論を進めていただきますようよろしくお願いいたします。
御専門の先生が御参加されていらっしゃいますので、○○先生、いかがでしょうか。
○○○委員
まず、死亡率の補正については、基本的には環境等によってかなり異なるのと、実際、難治性と重症ぜんそくについての関係についてもイコールではないと考えますし、また、日本呼吸器学会とアレルギー学会等でも差があることを踏まえながらターゲットの比較はかなり難しいだろうと考え、補正を安易に用いるのは慎重にならざるを得ないかなと思っていますので、公的分析のとおりでいいのかなという点。
もう一つは、シナリオ分析についてでございますけれども、確かに実態との差は公的分析にもあるので、それに対するいろいろな工夫は必要とは思いますが、基本的にこの生物製剤のどれを用いてどうということに対する基本的に示された使用の基準は、クリアではないという状況からすると、この費用対効果の趣旨からすれば、価格等で考えていくことに関して特に問題ないかなと思っています。
企業のいろいろな努力は分かるのですけれども、その妥当性もちょっと厳しいかなと思いました。ですから、公的分析でいいのかなと思います。
以上でございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
御丁寧な解説、ありがとうございました。
○費用対効果評価専門組織委員長
死亡率の補正と感度分析の取扱いが論点という中において、基本的には基本分析を支持するというお話しであり、企業側の御説明については幾つかの疑義があったということであります。
それを踏まえて、まとめに入らせていただきます。
議決に入らせていただくために、○○委員と○○委員におかれましては、議決の間、一時御退席いただいているところですが、こちらでは御退席いただいておりますので、一応、念のため、事務局のほうで御確認ください。
○事務局
事務局でございます。
退席が確認できております。よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
では、続けさせていただきます。
以上、先生方の御意見を参考に、テゼスパイア皮下注に関する費用対効果を総合的に評価いたしますと、テゼスパイア皮下注に係る総合的評価について、専門組織で決定された総合的評価のとおりとするということでよろしいでしょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
先生方、ありがとうございます。
それでは、専門組織で決定された総合的評価を費用対効果評価案として中央社会保険医療協議会に報告いたします。
なお、企業に対する内示及び中央社会保険医療協議会に提出する資料に関しては委員長に一任いただくということで、こちらもよろしいでしょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。

