2023年12月22日 費用対効果評価専門組織 第9回議事録

日時

令和5年12月22日13:00~

場所

オンライン開催

出席者

田倉 智之委員長、齋藤 信也委員長代理、池田 俊也委員、木﨑 孝委員、新谷 歩委員、新保 卓郎委員、中山 健夫委員、野口 晴子委員、花井 十伍委員、飛田 英祐委員、米盛 勧委員、大久保 ゆかり専門委員、高橋 健造専門委員、福田 敬専門委員
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官

<事務局>
木下医療技術評価推進室長 他

議題

○ ソーティクツ錠に係る企業分析報告及び公的分析レビュー結果について

議事

○費用対効果評価専門組織委員長
 続きまして、ソーティクツ錠に係る企業分析報告及び公的分析レビュー結果について御議論いただきます。
 対象品目について企業分析が提出されておりますので、企業からの意見聴取を行った上で、企業分析の内容について先生方に御議論いただきたいと思います。
 まずは事務局から説明をお願いいたします。
 
○事務局
(事務局より説明)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 それでは、議論に先立ちまして、まず本製品に係る企業分析に対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
 
(意見陳述者入室)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 私は、費用対効果評価専門組織委員長です。
 早速ですが、10分以内でソーティクツ錠に係る企業分析についての企業意見の御説明をお願いいたします。続いて質疑応答をさせていただきます。
 では、始めてください。
 
○意見陳述者
 ありがとうございます。本日、意見陳述資料を紹介する〇〇と申します。よろしくお願いいたします。
 まず、2ページ目を御覧ください。
 こちらは、今年の2月24日に開かれたHTA専門組織Ⅰにて合意されたソーティクツの分析枠組みとなります。詳細は省略させていただきます。
 次の3ページにて、ソーティクツの費用対効果評価の概要を紹介いたします。
 分析対象集団はA群とB群に分かれております。A群は全身治療後、生物学的製剤による治療歴のない患者、つまり、バイオナイーブ患者と定義し、比較対照技術はリサンキズマブとなります。一方で、B群は全身治療歴のない患者と定義し、アプレミラストを比較対照技術として設定いたしました。
 両群において用いられたモデルはマルコフモデル、分析の立場は公的医療の立場でございます。また、分析期間は100歳まで、割引率は2%と規定し、費用対効果分析を行いました。
 それでは、次のスライド4ページ目に行って、モデルの詳細を紹介いたします。
 まず、こちらの図に示されておりますように、患者は一次療法としてソーティクツまたは比較対照技術の治療を受けます。その後、二次療法と三次医療までに治療を受け、三次療法が終わった後はベストサポーティブケアを受ける流れになります。また、治療を受ける期間中には、導入期と維持期といった健康状態がありまして、全ての患者は導入期に入り、治療を始めます。この期間中に効果が十分に得られなかった患者は二次療法に移ります。導入期に効果が見られた患者は、そのまま同じ治療の維持期に移動するような仕組みでございます。効果が十分に得られたという判断は、乾癬の効果指標であるPASI75の達成が用いられております。
 次に、5ページ目を御覧ください。
 こちらにはそれぞれ分析対象集団の追加的有用性についてまとめております。
 A群はスキリージと比較し、追加的有用性ありと報告いたしました。その根拠となるものは、NMAによる間接比較データ、薬剤の投与方法が患者のQALYに及ぼす影響を報告した先行研究です。そして、注射剤の投与により負の効用値が適用されたソーティクツとリサンキズマブの増分QALYの結果、以上3点となります。
 また、B群の場合は、オテズラと比較して追加的有用性ありと報告いたしました。その根拠となるものは、ソーティクツとアプレミラストの直接比較試験であるPOETYK 1とPOETYK 2の結果でございます。両群において追加的有用性ありと報告したため、それぞれのICER値を算出いたしました。
 まず、A群の結果は6ページ目を御覧ください。
 ソーティクツとリサンキズマブを比較した結果、ソーティクツの増分QALYはマイナス0.28、増分費用はマイナス700万円となり、ソーティクツがリサンキズマブより費用が安く、QALYも低い結果となりました。そのため、ICER値は右下の図のように、費用対効果平面の第3象限であるSouth-west quadrantに位置されることになりました。
 このICER値の解釈とSouth-west quadrantについては、次のページを御覧ください。
 まず、ICER値はおよそ2500万円/QALY foregoneという表記をされております。こちらは1QALYを失う代わりに2500万円の費用削減が見込めるという解釈になります。QALY foregoneの場合は、ICERの閾値より数値が高いと費用対効果がよいという判断をします。500万円を閾値とした場合、ソーティクツは1QALY当たりに500万円の費用削減よりも大きな費用削減が見込めるため、費用対効果がよいという解釈をしております。
 こちらの解釈方法は、イギリスのNICEのガイダンス及びNICEのTask groupが行ったいわゆるSouth-west quadrantに一致する医薬品の評価方法の報告書を参考にさせていただきました。実際にNICEはSouth-west quadrantに一致する医薬品の中、費用対効果がよいと判断で推奨されたものでもあります。こちらは、有効性以外の安全性、投与方法によるベネフィットといった様々なバリューを踏まえて、患者と医師は治療を選択する権利があるというNICEの評価が反映されたものと認識しております。
 次に、8ページにてB群のICER結果を紹介いたします。
 御覧のとおり、アプレミラストと比較したソーティクツの増分効果は0.3、増分費用が51万円となります。つまり、ソーティクツはアプレミラストより費用が高く、QALYも高いという結果になります。この結果を基にICER値を算出しますと、価格調整の閾値である500万円/QALYよりも低い174万円/QALYという結果となり、費用対効果がよいと判断させていただいた次第です。
 費用対効果分析のまとめは以上となります。
 次は、投与方法に対するA群の追加的有用性について、弊社の論点を紹介いたします。
 
○意見陳述者
 では、ここからはBMSの○○から説明させていただきます。
 投与方法に関する追加的有用性の検討に関しましては、時間の関係でA群だけに絞って説明させていただきます。
 スライドの10を御覧ください。
 こちらは、まず本剤のネットワークメタアナリシスの結果でございます。
 まず、リサンキズマブに対するグローバルネットワークメタアナリシスの結果を示します。こちらはリサンキズマブが150mg、本剤が6mgのデータを用いて、短期的なアウトカムである10週から16週のPASI75のオッズ比を評価しております。こちらはオッズ比が○○で、95%の信頼区間は○○~○○という結果になっております。
 また、日本人を含んだアジア地域のネットワークアナリシスも解析しております。こちらはリサンキズマブの用法・用量によって結果は異なっておりますが、150mgの場合はオッズ比が○○、75mgの場合は○○となっております。
 この場合、日本人を含んだアジア人患者を対象とした場合は、本来のリサンキズマブに対するオッズ比の改善が見られますので、治療効果における民族差の影響というものが示唆されます。しかしながら、ここだけを見ますと、追加的有用性があると判断するのは難しいかと思います。
 そのため、スライド11を御覧ください。
 ここでは、さらに投与方法に関する効用値について検討いたしました。
 まず、日本人を対象とした研究としては、小宮根らの2023年の研究がございます。こちらは離散選択実験方法を用いて、約200名の感染患者さんに対してアンケートを行ったものです。こちらによりますと、感染患者さんは注射薬よりも経口薬を好むという傾向が報告されております。
 また、経口薬における注射薬の負の効用値、すなわち注射が痛いとか不安だ、怖いといったところをQOL値で定量化しました複数の文献が報告されております。こちらの事例に関しましては、こちらに書かれたとおりです。
 この中で、今回のケースにつきまして最も状況が近いもの、さらに、最もデータ的に保守的なものを考慮いたしますと、本剤のリサンキズマブに対するQALYはマイナス○○でございました。したがいまして、本剤のリサンキズマブに対する有効性は保守的に見積もってもほぼ同等と考えられます。
 スライド12を御覧ください。
 この場合の投与方法に関する効用値が適用された結果をお示ししております。この際、先ほどお示ししたとおり、QALYはほぼ同等でマイナス○○でございましたが、費用はより低いマイナス750万という削減という結果でございました。
 このように、ネットワークメタアナリシスによる有効性だけではなく、注射剤によるdisutilityを加味した場合、本剤のリサンキズマブに対する追加的有用性はありと判断いたしました。
 また、データを保守的に見積もった場合でも、QALYはほぼ同等と考えられ、費用対効果評価よりは費用最小化分析を用いるのがふさわしいのではないかということも考えられます。
 スライドの13を御覧ください。
 ここで、最後に患者割合と根拠についてお話しさせていただきます。
 スライドの14を御覧ください。
 弊社では、A群は10%、B群は90%ということを御提案いたします。
 スライドの15が根拠となっております。
 こちらは、日本において帝京大学の多田先生らが、JMDCのデータベースを用いて、乾癬における薬物研究を薬物療法の実態について解析したレセプトデータ研究の結果となっております。こちらの報告によりますと、オテズラを含んだ内服療法が約90%で、これらの治療を中断した患者さんのおよそ10%が新たな治療、ほとんどの場合はバイオロジクスに切り替えるということが報告されております。
 これらのエビデンスに基づきまして、弊社では、A群が10%、B群が90%であることを御提案いたします。
 以上で弊社の発表を終わりにしたいと思います。御清聴ありがとうございました。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 それでは、委員の方から御質問はございますでしょうか。いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、これで質疑応答を終了いたします。
 続きまして、科学院からソーティクツ錠に係る企業分析についての公的分析のレビュー結果の御説明をお願いいたします。続いて質疑応答をさせていただきます。
 では、始めてください。
 
○国立保健医療科学院
 国立保健医療科学院です。
 資料のほうは費-3-4の資料を御覧ください。
 デュークラバシチニブ(ソーティクツ)に関する公的分析のレビュー結果について御説明させていただきます。
 1ページ目ですけれども、分析の課題としまして4点挙げさせていただいています。
 2ページ目ですけれども、分析対象集団への追加的有用性について御説明させていただきます。
 製造販売業者は、10~16週時点のPASI75におけるグローバルネットワークメタアナリシスに基づくオッズ比がリサンキズマブと比較し○○である一方、アジアにおけるネットワークメタアナリシスの結果に基づくオッズ比はリサンキズマブと比べて○○、リサンキズマブ75mgと比べて○○とあることから、世界全体で実施したネットワークメタアナリシスよりオッズ比の改善が見られたため、追加的な有用性があると判断したと記載されています。
 しかしながら、いずれの結果におきましても、デュークラバシチニブのオッズ比はリサンキズマブと比較し、PASI達成のオッズ比1をはるかに下回っているところであります。
 また一方で、費用対効果の基本分析においては、増分QALYの推計値が負の値を示していることから、製造販売業者の追加的有用性の判断に課題があるものと認識しています。
 なお、3ページ目は企業側と公的分析期間中にやり取りした経緯について一覧の表にまとめておりますが、このような点について公的分析としては分析当初から懸念を持っておりまして、企業に対して十分な説明と対応を行った上で、企業側が当該分析を提出してきたものと理解しているところであります。
 具体的には4ページ目ですけれども、こちらは11月24日付で送らせていただいた照会事項になりますが、製造販売業者が実施した分析においては、リサンキズマブに対して追加的有用性がありと判断されていますけれども、一方、費用対効果の基本分析においては、増分QALYの推計値が負の値、すなわち本剤がリサンキズマブに対して獲得できるQALYが減少するという分析結果が提示されています。
 しかし、このことについて、公的分析としてはなかなか結果としては受け入れ難いのではないかということを御説明したところであります。分析期間は生涯で設定しているわけでありまして、本剤に追加できる有用性があることを御主張されるのであれば、通常推計された増分QALYの値が正の値でなければならないと考えています。
 特に当該治療領域において、本剤がアンメットニーズに対応した薬剤であるという御主張に基づけば、アンメットニーズを埋めた結果として当該患者集団の臨床的なアウトカムが改善しないということは想定し難いというところであり、少なくとも既存の生物学的製剤等で十分な治療効果が得られない患者さんにとっては、本剤の臨床的なベネフィットが存在するのではないかと推測するということから、おかしいのではないか、修正が必要なのではないかという御指摘をさせていただいた。
 その上で、上記の公的分析の見解に基づいて、提出物を修正される必要があると判断される場合は、そのような再提出を受け入れる旨をお伝えしているところです。
 また、先ほどNICEの例がありましたが、我が国においては、仮に比較対照技術に対して追加的有用性の点で効果が劣るという判断がなされた場合、増分費用効果費は算出せずに、その段階で分析プロセスが終了するということは分析ガイドライン上でも明記されているというところであります。
 ですので、こういう説明を行った上で企業側は分析を提出してきていただいたということですので、我々の説明を踏まえた上で、こういう状況を理解された上で御提出されたものと我々としては理解しているところです。
 2点目ですけれども、5ページ目、分析モデルについてですけれども、分析モデルについて、企業側の分析モデルにおいては、全ての患者が三次治療まで行った後に、全ての患者が三次医療まで受けた後にBSCに移行すると仮定しているわけでありますが、現実の診療過程においては全ての患者が三次治療まで行くということはなかなか考えづらく、また、それぞれの状況における臨床成績とモデルの過程について、その妥当性を検討する必要があるのではないかと考えているところです。
 3点目、QOL値についてですが、製造販売業者は、各PASI分類に対するベースケースの効用値を算出するために、デュークラバシチニブの臨床試験であるデータをプールして、日本語版の換算表を用いて換算しているところです。
 しかし、算出された値が日本の一般集団の効用値より高く、PASIの改善に伴う効用値の変動幅に天井効果が見られたことから、乾癬におけるNICEの過去の費用効果分析データを統合して分析に用いたとされています。
 しかし、臨床試験において患者本人を対象にQOL値を測定したデータが存在することから、QOL値の制定については再度詳細に検討する必要があるのではないかと考えているところです。
 7枚目ですけれども、最後にBSCの費用についてです。
 製造販売業者は、BSCの費用推定に際し、内服療法の費用、モニタリング費用等を用いて年間費用を○○万円強と推定されています。
 しかし、BSCにおける費用の妥当性、この治療内容の妥当性、制定の妥当性等について再検討する必要があるのではないかと考えています。
 8ページ目ですけれども、以上から、先ほど御説明したような点について、今後公的分析としては再分析を実施させていただきたいと考えているところです。
 以上になります。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 それでは、委員の方から御意見、御質問はございますでしょうか。いかがでしょうか。
 よろしいですか。
 それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
 
(意見陳述者退室)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 それでは、当該品目について御議論をお願いいたします。
 御専門の先生がいらっしゃいますので、○○先生、○○先生からまず追加的有用性などについてのお考えとかもいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 ○○先生、お願いします。
 
○○○委員
○○です。
 なかなか難しいですけれども、前提の中の、これが費用対効果の分析でどういうことに影響するかは分からないのですけれども、オテズラからスイッチする、いわゆる今までの既存の治療からデュークラバシチニブにスイッチする患者さんのパーセンテージを10%と仮定していたと思うのですけれども、実際にはオテズラからスイッチする患者さんや、それから、既存の治療からデュークラバシチニブに行くような症例もあるので、10%よりももう少し多くなる可能性が高いのではないかなと思いました。
 というのも、生物学的製剤で治療を考えているような患者さんに対して、まずはデュークラバシチニブでやってみようと考える可能性も高く、オテズラからスイッチするという人と、あとはバイオに行かないで、生物製剤に行かないでその前にデュークラバシチニブを使うというような患者さんが結構入ってくる可能性が高いのかなと。20~30%ぐらいになるような印象があるので、それがどういうふうに費用対効果の分析に関わるのかというのは、申し訳ないのですけれども、私は具体的には分からないのですが、そういうことで少しずれがあるなと感じました。
 それから、ある程度アジア人、特に日本人が恐らくデュークラバシチニブの有用性、有効性は高いという可能性は高いので、それは分析に加味されているようですけれども、QOLに関しては、なぜか日本人は海外の方に比べると、非常に皮疹の重症度が高くても、QOLの質問票で評価すると、QOLの値があまり海外の人ほど低下していないということが全般的に見られています。したがって、変動幅で見ると、例えばDLQIが海外ですと平均10など非常に高い、要するにQOLが低下している状態ですけれども、日本の患者さんですと、平均が6~7とかというような状態からのベースラインで始まるので、変動幅から見ると非常に少ないので、変動幅で治療前後の効果を見ると、変動幅が小さいためになかなか有用性に結びつけることが難しいのではないかと思いました。
 したがって、例えばDLQIで行うのであれば、ベースラインのスコア値が、実際にDLQIの絶対量が最終的にどのくらいに下がっているのかということで考える。例えばDLQIが0、1とか、あるいはDLQIが1、2といった、非常にほとんど日常生活には問題がないというような患者さんがどのくらいいるのかということで考えたほうが正しいQOLの改善効果が分かるのではないかと思いました。
 EQ-5Dについては、やはりもともと1.0に近いような状態の方が日本人の方はなぜか多いので、せいぜい下がっていても0.78ぐらいだと思うので、なかなかそれもNICEのような形で評価するのは難しいのではないかなと思いました。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 ○○先生、いかがでしょうか。
 
○○○委員
 ○○です。こんにちは。どうもよろしくお願いします。
 今、○○先生のお話を聞いていて、僕もそう思ったのですけれども、日本の皮膚病、僕は皮膚病しか知らないのですが、皮膚病の患者さんはQOL評価でやると、確かにすごく我慢強いのか、あまり悪いスコアを自己申告しないところがあるように思うのですけれども、全然この意見とは関係ないのですが、ほかの先生たち、皮膚科以外の疾患はQOLというのは全世界と日本人と比較して同じような傾向を示すものなのでしょうか。大体皮膚科にいると、内科の友達と話していても、やはり薬の効果とか薬の価値を考えるので、寿命というのを使えないので、どうしてもQOLとかそちらの価値判断が入ってくるところでいろいろ言われるのですけれども、そんな感じをぼさっと思いました。
 それと、今回もう一度再解析ということになったのですけれども、どんな再解析になるのか、再分析ですか。僕はよく分からないのですけれども、例えば今回は対象薬にオテズラだけではなくてスキリージが入ってきましたが、この会社の肩を持つわけでは全くないのですけれども、スキリージは今、10個ぐらいある皮膚科の抗体の中でも一番新しく出てきて、やはりその分一番強いほうの薬になるかと思います。薬価は、抗体製剤ですので、10種類のお薬は大体年間の投与量は同一の金額にされていますけれども、比較するときにもうちょっと古い抗体製剤で効きの悪い抗体製剤と比較すると、先日僕もレクチャーを受けてお話を聞きましたけれども、グラフで両方ともマイナスの位置に入る。第3象限に入るということで、それが少し変わるような気がして、だけれども、古い抗体製剤をどうしていくのかなという気はするので、僕、この解析の方法は初めて聞いているので、しっくりこなかったのでよく分かりませんでしたけれども、そんな感覚でした。感覚だけですけれども。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 幾つか御質問のような内容もございましたが、併せて他の先生方の御意見も伺いながら進めていきたいと思います。
 ○○先生、どうぞ。
 
○○○委員
 今、○○先生がおっしゃったことに追加というか、先ほど言い忘れてしまったのですけれども、確かにリサンキズマブと対比するというのは一つチャレンジですが、一つ意味はあったことだと思うのですけれども、やはり内服薬のステラーラと同じ機序のものなので、デュークラバシチニブは要するにステラーラの内服版として考えられているような薬剤になりますので、機序としてIL-12と23、それから、インターフェロンを抑えるというところがステラーラとちょっと違いますけれども、12と23のサイトカインを抑制するというところではステラーラと一緒なので、ちょっと古くて、現在としてはあまり使われなくはなっていますけれども、あと、ステラーラもかなり安くなってしまっているというところはあるので、それと比較するのは正しいかどうか微妙なのですけれども、ステラーラと比較するということも一つ考えてもいいのかなと思ったことと、同じIL-23p19であれば、最も古いグセルクマブとか、そういったものと比較するということ、あるいは有効性がやや劣るチルドラキズマブと比較するとか、そういった選択肢はあるのかなと思いました。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。比較対照についての御指南も含む御指摘かと思います。
 他の先生方、いかがでしょうか。御意見はございますでしょうか。
 先生方も御存じのとおり、この品目についての論点は有効性の取扱いと、費用対効果特有の第3象限の取扱いと思いますので、御意見は広くいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 私も確認したい点がありますが、では、○○委員、お先にどうぞ。
 
○○○委員
 いいですか。
 本当はさっきの製造販売業者がいるときに直接聞けばよかったのでしょうけれども、全然公的分析と違う考えのままプレゼンされたような気がいたします。くどいのですけれども、これまで、追加的有用性がなければずっとそのままでそれ以上進まないとしてきたのですが、今後は、第3象限を扱うのですか。まずそこをお伺いしたいです。私の認識では、さっき科学院からも御説明がありましたように、今まで追加的有用性がなければ最小化分析とかそちらに行くのではないかと思っていたのですが、いかがでしょうか。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 私からも同じような質問をしようと思っていましたが、科学院さん、いかがですか。海外の評価機関の動向や状況も含め、御意見というかお考えはありますか。
 
○国立保健医療科学院
 ありがとうございます。
 まず、海外の機関の動向としては、NICEのガイドラインにおいては、第3象限に入る場合というのが記載されておりまして、その場合は同様の2万~3万ポンド/QALYという閾値を適用する。第3象限であるから閾値は変えないということがガイドライン上の6.3.9節というところに明記されているところであります。ただ、これが実際にどのように適用されて、どのような意思決定に結びついているかというのは、まだなかなか難しいところなのかなと考えておるところです。
 ○○先生、それから、○○先生から御質問がありましたように、第3象限の問題については、恐らくこの品目と一般論と区分して考える必要があるのかなと考えておるところでありまして、この品目については、先ほど臨床の専門家の先生方からコメントがありましたように、使われても効かなければ次々切り替えていくわけでありまして、トータルのライフタイムの分析で見た場合、これが果たして本当に第3象限に入るのかというのは、公的分析としては大きな疑問を持っていて、本来であれば企業がきちんと第1象限に入る追加的な有用性があるということを主張すべきものなのではないかと考えているところであります。
 ただ一方で、本当に第3象限に所属すると考えられるような医療技術が出現する場合というのは、もしかしたらその検討が必要になることもあるのかなと思うところでありますけれども、ただ、それはガイドライン上の取扱いというよりも、第3象限に入る比較医療技術の費用対効果というのは、第3象限に入る医療技術の費用対効果がいいということは、比較対照技術の費用対効果が悪い。つまり、本来は比較対照技術の価格調整をすべきものだということがインプリケーションされるわけでありまして、こういった場合に例えばどういう意思決定を行うのかということがそもそも中医協等で検討が必要になってくるのかなと考えているところであります。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ○○委員、いかがでしょうか。
 
○○○委員
 今回の話と一般論を分けるというのはよく分かりました。
 ただ、企業が追加的有用性を出さないままここに出してきたのを公的分析で見つけてあげるかような御発言もあったのですけれども、それも含めて、そこで出ればいいですけれども、なければやはり従来のガイドラインどおりに、取りあえず進むという理解でいいのでしょうか。
 
○国立保健医療科学院
 ありがとうございます。
 公的分析で見つけるというか、我々は基本的に企業が提出してきた分析についてなるべく可能な限り尊重して、学術的に大変受け入れ難いような場合があるのみ公的分析をするという対応を取っていますので、企業さんのほうが追加的有用性を主張されないのであれば、我々としては特にそれに対して抗うようなことはするつもりはないと考えているところです。
 それから、ガイドライン上の取扱いについては、御指摘のとおり、費用対効果等は検討しないということになっておりますので、我々としてはそのように対応させていただくと思っておりますが、それ以上の取扱いについては、事務局あるいは中医協等での検討が必要になるのかなと認識しています。
 
○○○委員
 ありがとうございました。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 第3象限に関わるお話でありました。
 今、コメントのあったライフタイム、ライフサイクルみたいなものを含めた議論は、もし仮に再分析を行う場合はその辺も考慮して対応いただきたいと思いますし、大変興味深い内容かと思っております。
 その他の先生方、いかがでしょうか。よろしいですか。
 では、科学院さん、どうぞ。
 
○国立保健医療科学院
 科学院なのですけれども、先生方の御議論とは少し別のところで、我々も少し分析に当たって悩んでいるところがあって、臨床の先生方に御見解をお聞かせいただけるとありがたいなと考えているところなのですが、先ほど御説明させていただいたとおり、BSC、つまり、バイオロジックスが投与終了になった患者さんの取扱いについてなのですけれども、企業側はBSCの費用推計に際していろいろな先行研究を参考に設定されているのですが、その中で毎年必ず入院する、年に1回必ず入院するという設定に基づいて計算をしてきているのですけれども、我々、既存の文献等を参照しますと、例えばBSCの入院率というのは年3%という報告があったりしますので、そのぐらいの値なのかなと。つまり、さすがに全員入院する、バイオロジックスを受けていなくて、病院に来るのか来ないのかも分からないような患者さんが全員入院するという設定は少し過剰なのではないかなと考えているところなのですけれども、その辺り、臨床の先生方の御見解というか御紹介をいただければと考えているところです。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ○○先生、○○先生、お願いできますでしょうか。
 
○○○委員
 では、さっきは私が先だったので、○○先生、お先にどうぞ。
 
○○○委員
 すみません。僕、一瞬質問の意味が取れなかったのですが。
 
○○○委員
 では、私が先に行きます。
 やはり必ず年に1回入院するというのは取り過ぎだと思います。例えば重症の嚢胞性感染とかですとそういう可能性はあると思いますけれども、今回議論しているのは尋常性乾癬のことだと思いますので、尋常性乾癬であれば、今は入院しなくても対応できるお薬がたくさん出ましたので、入院はかなり減っています。ですので、先生がお示しなさった3%ほどというのは、そのくらいなのではないかなと思います。ですから、そこは取り過ぎで是正したほうがいいのではないかなと思います。
 実際にベストサポーティブケアですかね。BSCになった場合、バイオとかも切ってなった場合に、その後大体どのお薬、どのバイオを使っていても、早いと本当に1~2か月、遅くても半年ぐらいすると相当悪くなってきて、次の新たな生物製剤等、あるいはデュークラバシチニブのような内服薬とか、そういった新しい治療を開始しなければ耐えられない状況になります。したがって、ベストサポーティブケアで当分見られるとか、例えば1年見られるとかということは、まずほとんどの患者さんでないと考えていいと思います。半年以内で別のそういった具体的な治療が必要になってくると思います。
 
○国立保健医療科学院
 ありがとうございます。
 先生、1点追加でお聞かせいただきたいのですけれども、BSCの状況というのはあまり想定されないというお話だったのですけれども、例えばバイオロジックスみたいなものを使ってもバイオロジックスが使えないような状況になってしまうような患者さんというのはあまりいらっしゃらないというか、そういう方がもしいらっしゃった場合はどういうふうに治療するのかとか、教えていただけますでしょうか。
 
○○○委員
 ありがとうございます。
 現時点では11種類、12種類と多くの生物製剤の種類がありますので、1つの製剤が難しい、あるいは1つの系統の生物製剤が使えない場合、別の系統のものを使うとか、何とか対応しています。ただ、一時、そういった新しいものが出てこなかったような状態の時代もありました。そういった時代のこととほぼ同じことになるかと思いますけれども、恐らく最も最後に使った生物学的製剤で、いわゆる逆に悪化するということがない、効果不十分ということであれば、それに対して既存の内服治療、例えばエトレチナートですとかメソトレキセートとか、そういったものを併用するということになると思います。あるいはオテズラに関しても、一部、フルドーズは使えないので、半量とかそういったものを一時的に使うとか、あるいはやむを得ずシクロスポリンを一時的に使うとか、そういった治療をしながら何とか乗り切っていくということになるかと思います。
 ですから、例えば次の生物製剤の選択肢がなくなる状況というのは、現時点ではないですけれども、将来は可能性は十分あると思いますが、非常に少ない症例だと思います。10%ぐらいにしかならないのではないかなと。10%あるいはそれ以下にしかならないのではないかなと思います。ただ、その場合でも、最も効果が不十分だけれども、それを続けながらほかの内服治療をアドオンしていくというような形で見ていくということになるかと思います。
 
○国立保健医療科学院
 ありがとうございます。
 それでは、バイオロジックスが切られるような症例というのはほとんど想定されないという理解でよろしいですか。
 
○○○委員
 一時的に休むことはできると思うのです。例えば3年、5年と完全寛解になって、一度休みたいというような患者さんもいらっしゃいますので、半年間ぐらい休んでみるということはありますけれども、ただ、それは先ほど申し上げましたように、ほとんどの方が半年以内に再燃してきますので、その時点でもう一回始める。
 あるいは、これは保険の通常の治療法とは異なりますけれども、3か月に1回投与していたものを4か月に1回とか、インターバルをできるだけ取りながら、注射での治療の回数を減らしつつ続けていくというような症例もないわけではないです。
 ですから、そういった形で、完全に切るというのはなかなか現時点では難しいと考えています。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ○○先生、いかがでしょうか。
 
○○○委員
 ○○です。
 先ほどの御質問で、何となくベストサポーティブケアという言い方がこういう炎症性疾患でフィットしないので、ちょっと使いづらいですけれども、取りあえず高い抗体製剤やJAK阻害薬の使用をやめるという意味で使うのでしたら、もちろん外用に戻る人はなんぼでもいますので、ざらにいると思います。その一番の理由は、単純にお金が続かないからになります。お金が払えないので、最初は導入してみたけれども、ちょっとよくなって、ずっとこれを支払い続けられないからというのでやめる、離脱する患者さんがほとんどだと思います。
 今、○○先生もおっしゃったとおり、抗体製剤、JAK製剤を使える方で入院するというのは基本的に考えていないですし、今、病院は厳しいので、このぐらいで入院させることはとてもできないですけれども、逆に抗体製剤やJAK製剤を使えないので入院するということはあります。がっつり塗ってあげるとか、外用の指導をするとか、光線療法を一気に続けてあげるという意味での入院だったらあるのですけれども、さすがに全乾癬患者さんの数パーセントほどといるわけでは決してないとは思います。
 そんな感じです。だから、抗体製剤やJAK阻害薬から離脱する一番の理由は、やはり支払いだとは思います。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 科学院さん、いかがでしょうか。
 
○国立保健医療科学院
 ありがとうございます。参考にして公的分析を進めさせていただきます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 その他、いかがでしょうか。
 ○○先生、さっき○○先生がおっしゃっていたのですけれども、今回、QOLはEQ-5Dのレスポンスがあまりよくないという話ですが、他の領域でも痛みとかは、海外に比べると日本人は我慢強かったりして、ベースラインが異なり、効用値とかQOLに差が出ないケースはあります。本品目について、いろいろな御報告がありましたけれども、臨床実態として、もしくは測定ツールとしての特性から、ほぼ妥当だとお考えになりますか。いきなりお聞きするのも申し訳ないのかもしれませんが、ご専門の御立場から頂ければと思います。
 
○○○委員
 おっしゃるとおりで、痛みなどは日本人だとあまり低く出ないとかありますので、そういった疾患の特性でQOLの変化が、そもそもいわゆるEQ-5Dなどに基づく尺度であると、他国に比べると変化が捉えにくいということはあり得ると私も思います。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 ○○先生から先ほど御質問的なものがあったので、それらも絡めながら今回のQOLの結果についての解釈を念のため整理させていただきました。
 その他の先生方、いかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、再分析をさせていただくということで議決に入らせていただきます。
 ○○委員におかれましては、議決の間、一時御退席をお願いいたします。
 
(○○委員退室)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 先生方の御意見をまとめますと、企業の分析につきまして、決定された分析枠組みに沿って分析がなされているということでよろしいでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 次に、企業の分析データなどの科学的妥当性は妥当ではないと考えられる部分があるということでよろしいでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 こちらもありがとうございます。
 最後になりますけれども、公的分析によるレビュー実施により再分析を実施するという結果の妥当性はおおむね妥当ということでよろしいでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 ○○委員、お願いします。
 
○○○委員
 すみません。確認させていただいてよろしいですか。
 再分析をするというのは、まずは追加的有用性の評価を行って、追加的有用性が認められれば費用効果分析をするし、効果が同等だと考えられたら費用最小化分析をするし、有用性が劣るということであれば、そこで分析を中止というか、そこで終了ということでよろしいですね。第3象限とかそういうようなことの議論もあるわけですけれども、ガイドラインに従うとそういう理解でいいですか。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 追加的有用性の整理が最初に来るべきですので、私としてもガイドラインに沿って、○○委員のおっしゃったような形でまずは整理をしていただくと考えております。その上で、最後に議論とかをしたかったのですけれども、第3象限の在り方みたいなものについて何か追加で検討が可能であれば、それも組織に御報告していただきたいというオプション的なものを入れるか入れないか、という話は少し考えておりました。なぜなら、先生方に今諮ってもその点はなかなか難しい印象があります。そこで、一旦、再分析を今の追加的有用性を中心に進めていただき、その様子も踏まえながら、御報告の場でまた改めて第3象限についての取扱いを議論させていただきたいと考えていたのですけれども、○○委員、そこはいかがでしょうか。
 
○○○委員
 どうでしょうか。科学院のほうで、まずは追加的有用性でアウトカムが比較対照技術に比べて優れているのかを取るのかどうなのかというところの御判断をまずしたところで、この組織のほうに御相談されるのか、それとも第3象限のことも含めて、その先もガイドラインどおりではないけれども試行的にやってみるのか、その辺はいかがなのでしょうか。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 科学院さんにもお尋ねしたいと思います。まずはガイドラインに沿って、追加的な有用性についての整理をして、それを一回組織に諮っていた段階で、恐らく第3象限にかかる議論も多少整理され、象限が明確に整理されないような可能性も含めて結果としてあり得る場合は、改めてそこで第3象限も含めて議論させていただくしかないのかなと思っていたのですけれども、いかがですか。科学院さんのお考えを伺いたいと思います。
 
○国立保健医療科学院
 ありがとうございます。
 第3象限の議論については、もちろん分析することは可能かもしれないのですけれども、我々、ガイドラインに従って分析をそこでストップするという前提で今まで公的分析等を実施しておりますので、なかなかタイムライン的に第3象限の分析を提出することが難しい状況なのかなと考えているところです。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ○○委員、いかがでしょうか。
 
○○○委員
 分かりました。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 では、改めて確認しますけれども、今回は追加的有用性についてまずは科学院さんのほうで分析をしていただいて、その中において第3象限にかかるような議論があれば、それも併せて御提示いただくという方向で進めさせていただきます。
 委員の皆様、いかがでしょうか。今のような整理で今回はお願いしてもよろしいでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 それでは、先ほどの議決に戻らせていただきますけれども、公的分析のレビュー実施により再分析を実施するということについて、今お話をさせていただいたとおりであります。
 ○○委員、御意見、色々ありがとうございました。
 それでは、公的分析において再分析を実施していただくということで進めさせていただきます。