2023年12月22日 費用対効果評価専門組織 第9回議事録

日時

令和5年12月22日13:00~

場所

オンライン開催

出席者

田倉 智之委員長、齋藤 信也委員長代理、池田 俊也委員、木﨑 孝委員、新谷 歩委員、新保 卓郎委員、中山 健夫委員、野口 晴子委員、花井 十伍委員、飛田 英祐委員、米盛 勧委員、岩田 敏専門委員、福田 敬専門委員
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官

<事務局>
木下医療技術評価推進室長 他

議題

○ ラゲブリオカプセルに係る総合的評価について

議事

○費用対効果評価専門組織委員長
 まずは、ラゲブリオカプセルに係る総合的評価について御議論いただきます。
 公的分析による再分析結果が提出されておりますので、公的分析からの意見聴取を行った上で、企業分析の内容及び公的分析による再分析結果の審査、並びに費用対効果評価案の策定について先生方に御議論いただきたいと思います。
 では、ラゲブリオカプセルについて、まずは事務局から説明をお願いいたします。
 
○事務局
(事務局より説明)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 続きまして、科学院から御説明をよろしくお願いいたします。
 
○国立保健医療科学院
 国立保健医療科学院です。
 資料のほうですけれども、費-1-2の「モルヌピラビル(ラゲブリオ)に関する公的分析の結果概要」という資料を御参照いただければと思います。
 2ページ目ですけれども、こちらに諸外国の医療技術評価機関における評価結果をお示ししております。イギリスはいろいろな経緯があったようでありまして、現在ペンディングというような状況と認識しています。また、オーストラリアにつきましては条件つき推奨ということでパキロビッドの後に使うということで推奨されていると認識しております。
 また、3ページ目ですけれども、こちらは医療技術評価機関ではございませんが、薬事承認機関として、2023年6月、欧州のEMAによりラゲブリオの評価結果が公表されたところでありまして、こちらにおいて、EMAは、酸素投与を受けていない、重症化リスク因子を有する成人のCOVID-19患者におけるモルヌピラビルの臨床的な有用性が証明されていないとして、モルヌピラビルの不承認を勧告しているところであります。結果としまして、製造販売業者は再審査請求の後に、終了前に販売承認申請を取り下げているというような状況が欧州で起きているということでございます。
 5ページ目ですけれども、追加的有用性の評価について、比較対照技術を標準治療と設定した場合、公的分析としましては、追加的有用性はありと判断できないと評価させていただいたところであります。
 その根拠といたしまして6ページ目以降に記載させていただいておりますが、RCTとして入院または死亡を主要評価項目としたRCTとしましては、MOVe-OUT試験、PANORAMIC試験、あるいはインドで実施されたSinhaらの試験が同定されたところでありますが、MOVe-OUT試験あるいはSinhaらの試験というものはオミクロン株以前の株を対象にした状況で、また、ワクチン接種等の状況も未接種のものであったことから、この2試験については本邦の臨床実態とは状況が異なるものと考えたところであります。
 一方で、公的分析では、オミクロン株環境下においてワクチン接種者を対象として実施されたPANORAMIC試験、これは英国で行われたものですけれども、これを中心にモルヌピラビルの追加的有用性の評価を行うことといたしました。ただし、企業側も指摘されていますように、PANORAMIC試験においては、重症化リスク因子の定義あるいは治療内容等が我が国と英国において異なるということに起因して、本邦においては必ずしも重症化リスク因子を有すると定義されない症例や、モルヌピラビル使用時に他の抗ウイルス薬等を使用した症例が含まれているということであります。
 そこで、公的分析といたしましては、PANORAMIC試験の著者、オックスフォード大学ですけれども、オックスフォード大学のほうへ問合せを行いまして、本邦における重症化リスク因子の定義や標準治療の内容に合致した症例のみを抽出した上で、モルヌピラビルの評価を行ったところであります。
 7ページ目、こちらは今御説明したPANORAMIC試験の事後解析について御説明させていただきますが、基本分析といたしましては、PANORAMIC試験の対象患者から、最新版である新型コロナウイルス感染症診療の手引き第10版における重症化リスク因子の定義に基づいて、それらのリスク因子を有する症例のみを抽出いたしました。
 本解析では、そのうち、エビデンスレベルが高に相当する重症化リスク因子を有する症例のみを抽出したところであります。
 8ページ目、9ページ目に実際の定義をお示ししております。
 また、10ページ目には、先ほど御説明したように、モルヌピラビル使用時に他の抗ウイルス薬や中和抗体薬等を使用した患者を除外したというそのリストをお示ししております。
 11ページ目がPANORAMIC試験の事後解析の結果でありますけれども、重症化リスク因子を有する症例の抽出とモルヌピラビル以外のCOVID-19治療薬を併用した症例を除外した結果、ITT集団で2万5708例いたうち、1万8274名が解析対象となりました。本解析対象における平均年齢は56.8歳ということであります。
 12ページ目がPANORAMICの事後解析の結果ですけれども、本解析対象集団においてモルヌピラビルの標準治療に対する主要評価項目のオッズ比は1.053ということで、ほぼ1であったというような結果が示されております。
 また、13ページ目はバックグラウンドの要因ごとにサブ解析の結果をお示ししたものであります。
 14ページ目は感度分析の扱いですけれども、新型コロナウイルス感染症診療の手引き10版というのが公的分析期間中である2023年8月に公表されたものになりますが、前版である第9版から10版の更新に際して重症化リスク因子の定義が大きく変更されていたということから、9版におけるリスクの定義を用いて分析を実施したものを感度分析とさせていただきました。
 重症化リスク因子の定義に関する取扱い等については、15ページを御参照ください。
 16ページ目は感度分析の結果ですけれども、同じく9版の重症度の定義を参照した場合でも、モルヌピラビルの標準治療に対する主要評価項目のオッズ比は1.022ということで、ほぼ1であったという結果になっております。
 以上、PANORAMIC試験の事後解析の結果から、モルヌピラビルの入院または死亡におけるオッズ比というのは約1.05ということであり、点推定値ではオッズ比が1以上ですけれども、1の近傍であったということであります。また、その構成要素である入院のオッズ比もほぼ同じ値でありまして、点推定値では1を超過しているというような状況でありました。
 18ページ目を御参照ください。
 ただし、多くの高齢者を解析対象として含んだ幾つかの大規模データベースを用いた後ろ向きの観察研究では、モルヌピラビルは標準治療と比較して入院または死亡の発生を抑制し得るという効果についても報告されているところであります。
 また、PANORAMIC試験の事後解析においても、症例数は極めて限定的でありますけれども、80歳以上でのサブグループでは入院または死亡におけるオッズ比は0.5と全体集団よりも治療効果が改善する傾向が見られております。
 事前に御相談させていただいた臨床専門家からの示唆によれば、このように高齢者に対してはモルヌピラビルが一定の重要性を有する可能性があるものと認識していますが、実際のエビデンスとしては極めて限定的であるということから、今後のさらなるデータの蓄積や検討が必要であると考えております。
 よって、PANORAMIC試験の事後解析結果を参照すれば、現時点では、少なくとも全体集団に対してモルヌピラビルが比較対照技術に対して追加的有用性を有するという明確な根拠が欠けており、追加的有用性を有すると判断することは困難であると公的分析といたしましては評価したところであります。
 19ページ目ですけれども、観察研究データの取扱いについて御説明させていただきます。
 ラゲブリオにつきましては、大規模なデータベース研究等を用いた複数の観察研究の結果が報告されています。ただし、我が国におけるものは単施設あるいは極めて限られた施設のデータであり、症例数も少ないことから、解釈が難しいと考えております。
 また、公表年代の古いものについては、ワクチン接種状況や投与対象集団が異なり、現在の我が国における状況とは異なるものが多いと認識しています。
 企業提出分析においても種々の観察研究が存在する中で、観察研究よりも無作為化比較試験の結果を優先して、追加的有用性あるいは費用対効果についての検討を行っており、また、このような当該MOVe-OUT試験の限界点については前述したとおりであります。
 また、過去の抗コロナウイルス薬レムデシビル(べクルリー)の評価においても、本件同様に観察研究の結果はポジティブであり、RCTの結果はネガティブであるというふうに結果が乖離していたところではありますけれども、本組織での議論の結果として、観察研究の結果はバイアスが入り得るものであるから、RCTの結果を採用しているというところになります。
 20ページ目ですけれども、企業分析においてRCTの結果を解釈する上で、1つ以上の重症化リスク因子を有する外来患者のみを対象とした観察研究であるものとして、唯一採用されているものが米国の退役軍人らを対象にしたXieらによるものであります。しかし、当然ながら、ラゲブリオ投与群には選択バイアスが生じるため、ワクチンの接種歴というのは少なく、また、白人人種差あるいは社会経済的な要因の差もかなり存在しているというような状況であります。このような選択バイアスを統計的手法によってのみ本当に補正できるのか、あるいは未測定の交絡因子が多く存在するのではないかというような懸念があるところであります。
 また、企業側も提出しておりますが、その後に発表されたオーストラリアにおけるデータでも、ワクチンの接種状況や社会経済的要因の差が見られるところであります。
 なお、オーストラリアや諸外国においては、ラゲブリオというのはパキロビッドの後の第2選択として使われることが多いということでありまして、我が国の状況と異なる場面もあるのかなと認識しているところです。
 22ページ目ですけれども、企業分析報告書にはここの囲みのような記述がありまして、RCTの結果とリアルワールドデータの結果が一致したことから、MOVe-OUT試験を使用したと記載されているわけでありますが、そもそもデルタ株等の非オミクロン下で得られたRCTの結果と、オミクロンかつワクチン接種下で行われた観察研究の治療効果の大きさがほぼ一致するということこそが、観察研究、リアルワードデータが治療効果を過大に推計しがちであることの根拠の一つなのではないかと公的分析としては懸念しているところであります。
 24ページ目が費用対効果の分析についてですけれども、こちらは製造販売業者による基本分析の結果でありまして、ICERは193万円と提出されております。
 25ページ目、公的分析による再分析の主な点ですけれども、先ほど御説明したとおり、追加的有用性の評価においてプラセボと比較して追加的有用性を認めないというような評価を行ったことから、費用最小化分析を実施したところであります。
 26ページ目は公的分析の結果でありまして、モルヌピラビルが標準治療と比べて費用が増加するというような結果になっております。
 27ページ目、患者数の割合と結果のまとめですが、追加的有用性はありとは判断できない、ICERについては効果が同等、かつ費用が高いというような評価をさせていただいているところであります。
 私からは以上になります。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 それでは、まず本品目に係る公的分析の再分析結果に対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
 
(意見陳述者入室)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 私は、費用対効果評価専門組織委員長です。
 早速ですが、10分以内でラゲブリオカプセルの総合的評価について御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。
 では、始めてください。
 
○意見陳述者
 ありがとうございます。MSDでございます。
 初めに、お手元の資料3ページの意見陳述要旨を御覧ください。
 公的分析では、単一の海外RCTでありますPANORAMICの結果に基づき、本剤ラゲブリオが追加的有用性を有すると判断することは困難であるとの評価が下されました。
 本日は、この評価結果に対する弊社の見解を述べさせていただきます。その後、弊社へのアドバイスをいただいております○○大学の○○先生より、医学専門家のお立場からの御発言をいただく予定です。
 まず、弊社として、オミクロン環境下における追加的有用性評価を試みた公的分析のアプローチに異論はないことを明確にさせていただきます。
 その上で、PANORAMICのみに基づく結果につきましては、3つの問題点があると考えております。
 すなわち、1点目として、PANORAMICの患者背景が我が国における臨床実態と乖離しており、データの一般可能性が低い点。
 2点目は、その後公表された一連のリアルワールドエビデンスにおいて、本剤の有効性が支持されておりまして、PANORAMICの結果と異なる点。
 そして、3点目として、公的分析では本剤による死亡リスクの低減が評価されていない点が指摘できます。
 その結果、本剤の追加的有用性が過小に評価されたことにつきましては、弊社として同意できかねますため、最新のエビデンスに基づいて再検討が行われ、また、費用対効果評価結果案の決定が慎重に行われることを希望する次第です。
 以下、個々の問題点について陳述させていただきます。
 4ページを御覧ください。
 1点目として、PANORAMIC試験を唯一の根拠とすることの問題点を挙げております。具体的には、患者背景やイベント発生率が我が国における臨床実態と乖離しており、特に重症化しやすい高齢者の割合が明らかに低く、公的分析機関の依頼で実施された事後解析でもこの点は変わらないこと。また、個々の併存疾患の保有割合においても、国内患者と同質とみなすのは難しい点が指摘できまして、このような場合、分析ガイドライン9.1.2に例示されております「RCTの結果が、実際の臨床成績と大きく乖離している可能性がある」に該当すると考えられ、その場合、その他の適切なエビデンスを使用することが推奨されております。
 5ページの参考資料1を御覧ください。
 左の表に本剤の特定使用成績調査、右にはPANORAMICの患者背景をお示しいたします。両者を比較いたしますと、まず65歳以上の高齢者の割合が大きく異なりまして、また、併存疾患の保有状況においても同質とはみなし難い違いがあることを御認識いただけると思います。
 6ページの参考資料2を御覧ください。
 こちらは、同じく本剤の特定使用成績調査における入院または死亡の発生状況ですが、65歳以上の高齢者、悪性腫瘍や慢性腎臓病などを有する患者でイベント発生率が高かったことが見てとれます。
 したがいまして、PANORAMICでこういった患者の割合が極めて低かったことは、国内の臨床実態との相違点として無視できないものと考えます。
 7ページを御覧ください。
 2つ目の問題点として、最新のリアルワールドエビデンス(RWE)が考慮されていない点を挙げております。
 PANORAMIC以降、規模が大きく質の高いRWEが継続的に報告され、いずれにおいても本剤の有効性が支持され、PANORAMICとは異なる結果になっております。
 これらの結果、分析ガイドライン5.2.9に例示されます「症例数の多い主要な研究結果、現在の知見とは異なる結果が得られた信頼性の高い研究等」に該当すると考えられますため、ガイドライン5.4に基づき、RWEを追加的有用性の有無の評価に含めることの必要性が高いと考えております。
 8ページの参考資料3を御覧ください。
 PANORAMIC以降に査読済み論文として報告されました本剤関連の大規模臨床研究のうち、外来患者を含み、入院、死亡のアウトカムを報告しており、かつ適切なバイアス調整が行われている研究を列挙しております。
 一番下にお示しするとおり、いずれにおきましても、本剤の臨床的有効性を支持する結果は報告されております。
 9ページの参考資料4を御覧ください。
 横方向、左から右に時間軸を取り、資料の上半分に8ページでお示ししたRWEにおける患者の診断時期、下半分には国内で流行していた変異株の変遷を重ねた図となります。
 御覧のとおり、PANORAMIC以降の新しい変異株に対しても、本剤の臨床的有効性を支持する結果が継続的に報告されていたことがお分かりいただけると思います。
 10ページを御覧ください。
 3つ目の問題点として、死亡のアウトカムが評価されていない点が挙げられます。
 重症化リスク保有割合が明らかに低いPANORAMICでは、そもそも死亡の発生率が極めて低く、妥当な統計学的検出力を持たないことから、真のアウトカムに関するエビデンスを示しておりません。
 一方、PANORAMIC後のRWEでは、8ページでお示ししたとおり、本剤による死亡リスクの低減が継続的に報告されております。一般に死亡のアウトカムは入院のアウトカムに比べてイベント発生あるいは判定条件の影響を受けにくいことから、観察研究であっても質の高いものであれば、信頼性、一般化の可能性が高いと考えられますので、分析ガイドライン5.2.3に照らしまして、追加的有用性に関し、RWEにおける「真のアウトカム指標」を重視することは適切であると考えております。
 また、単一のRCTで十分なイベント数が観測できない場合は、メタアナリシスの結果を用いることが望ましいですが、PANORAMICのほかにオミクロン株の環境下で実施されたRCTはございません。したがって、死亡のアウトカムについても、やはり最新のRWEを用いることが適切であると考えます。
 11ページの参考資料5を御覧ください。
 PANORAMICにおける入院死亡イベントは極めて少なく、モルヌピラビルは既に低い入院、死亡のリスクをさらには低減させなかったと結論されております。まさにその点において、重症化リスクがより高い患者に対して本剤が処方されている我が国の実態とは異なるものと考えます。
 12ページを御覧ください。
 公的分析結果に対する陳述に加えまして、本剤の社会的価値について追加の意見を述べさせていただきます。
 ここにお示しするような価値は、いずれも容易に数値化はできず、ICERに基づく価格調整の直接的な反映は難しいということは承知しておりますが、評価案の最終決定に際しましては、これらの社会的な価値も併せて御考慮いただき、慎重な御判断をいただきたいと考えております。
 最後になりますが、13ページの参考資料6を御覧ください。
 弊社は、パンデミックの最中という極めて困難な状況下に本剤の治験を実施し、異例の短期間で特例承認を取得し、以降、政府による購買や需要の急拡大等にも対応し、安定供給を維持してまいりました。
 弊社は、このような前例のない企業努力を通じまして、医療への貢献にとどまらない価値を社会に対しても御提供できたものと考えております。
 MSDからの陳述は以上です。
 続きまして、○○大学の○○先生より、本剤ラゲブリオを評価するに当たり重視すべき論点について御発言いただきます。
 ○○先生、よろしくお願いいたします。
 
○○○教授
 ○○大学の○○でございます。
 感染症の専門家という立場で、今回意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、ラゲブリオのエビデンスという面につきましては、PANORAMIC試験の評価についての問題点というのは、先ほどMSDの方が御説明されたとおりだと思っております。確かにRCTではないとしても、相当数の対象者を検討したリアルワールドエビデンスが幾つもあって、そして、それらが有用性を証明しているということを考えますと、やはりこちらのそういったデータもちゃんと重視すべきではないかと思っております。国内のエビデンスというのについては、症例数は確かに少ないのですけれども、有効性を示唆する論文というのは出ております。
 それから、2つ目です。追加的有用性がないということを判断することの影響を考えますと、やはりこれまでラゲブリオは国内で200万人以上に投与されてきました。当然、重症化予防という目的で使用されてきましたので、この薬剤の評価について現時点でも有用性がないのだという評価をされてしまうと、この薬剤を承認したではないか、有用性があるから承認したのでしょうということで、やはり国への批判というのも高まると思いますし、既に投与された患者さんですとか、あるいは処方されてきた医師の方、そういった方への反発も大きいのではないかと考えておりますので、結構大きい影響があり得ると思っております。
 そして、3点目ですけれども、やはり今後の診療への影響が大きくなると懸念されます。ラゲブリオについては、私も患者さんに処方するときは、重症化リスクがある方を対象として、とにかく重症化が防げますからということで納得していただいて処方してきたわけです。この時点で、例えば追加的有用性というのがもし今後否定されるということになれば、ドクターからは積極的に処方しなくなると思いますし、患者さんも処方を希望されなくなってくると思います。そうなった場合、本当に必要な患者さんにもしこの薬が届かなくなって、結局、それが重症化ということにつながるのであれば、その影響はかなり大きいと思います。
 そういったことを総合的に判断しますと、私の立場からは、やはり追加的有用性を否定するということは大きな問題があると考えておりますので、ぜひ御検討いただければと思っております。
 私からは以上です。
 
○意見陳述者
 ○○先生、ありがとうございました。
 MSD側の陳述は以上でございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 では、委員の方から御質問はございますでしょうか。いかがでしょうか。
 ○○委員、お願いします。
 
○○○委員
 委員の○○と申します。
 今の企業側の御説明に先立ちまして、情報提供があったのですけれども、EMAで申請を取り下げたと伺いましたが、事実としてはそれでいいのでしょうか。
 
○意見陳述者
 MSDからお答えいたします。
 先生、御認識は正しい情報でございます。
 EUにおきましては、2023年、本年の2月のCHMP、諮問委員会のほうのレコメンデーションが一旦出まして、承認を勧告しないということがあったわけなのですけれども、その後、弊社MSDの要求によりまして再評価が行われてきたところでございます。その再評価の結果、我々が御提案していた新しいデータといったものを加味せずに再評価の結論が出まして、やはり承認しないという結論に至ったということでして、それを受けまして、弊社としては申請を取り下げたという経過がございます。
 弊社は再評価の過程で新しいデータが加味されなかったという点については問題視しておりまして、このような制約の下で行われた結果には、弊社として同意するものではございませんが、申請を取り下げたことは事実でございます。
 
○○○委員
 先ほど○○先生からもお話がありました。少なくともヨーロッパに関しては、○○先生が御懸念になるようなことはあまり起きていないということでよろしいでしょうか。
 
○意見陳述者
 ヨーロッパにおいては、EMAの承認に関してはそういったことなのですけれども、各国のレコメンデーションでセカンドラインあるいはフォースラインという形で使用されている状況はございます。もちろんされていない国もあるとは思うのですけれども、かなりの数の国で政府の調達あるいは通常の流通に乗りまして、薬剤が供給されている状況がございます。
 
○○○委員
 ありがとうございました。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 その他の委員、いかがでしょうか。
 ○○委員、お願いします。
 
○○○委員
 御説明ありがとうございました。
 リアルワードエビデンスのことをもう少し伺いたいのですけれども、どうしても潜在的な未測定交絡、潜在的なバイアスがあり得ると思いますが、これは積極的に否定するものではないのですけれども、それぞれの研究のCOI、グラント、スポンサーなどについて、製薬企業の関与などについて追加情報があったら教えていただければと思います。
 
○意見陳述者
 弊社として論文に書いてある以上の情報はなく、また、弊社として今回例示させていただきました研究に関与するといったことはなかったことは報告させていただきます。
 あとは、先生方個人のレベルでは、もちろんCOI、弊社との間でのCOI情報がある可能性はあると思うのですけれども、研究そのものに対する関与はないということでございます。
 
○○○委員
 分かりました。ありがとうございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 その他、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
 
(意見陳述者退室)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 御議論ありがとうございました。
 それでは、議論に先立ちまして、企業から公的分析についての御意見がございましたので、科学院から何か追加の御意見等はございますでしょうか。
 
○国立保健医療科学院
 ありがとうございます。保健医療科学院です。
 企業の御見解に対して少しコメントさせていただきたいと思います。
 企業のスライドの4ページ目、PANORAMIC試験を追加的有用性の根拠とすることの問題点というスライドがございますけれども、企業提出分析では、先ほども御説明しましたように、そもそもピボタル試験であるMOVe-OUT試験において追加的有用性の検討を行っているところであります。MOVe-OUT試験における平均年齢は43歳でありまして、確かにこのPANORAMIC試験の結果というのが日本における投与年齢よりも若干若いということは認識しているところではありますが、企業が採用したMOVe-OUT研究よりははるかに日本の臨床実態に適合しているものと考えているところです。
 そもそも企業側の分析においては、ピボタルな無作為化比較試験に基づきまして、リアルワールドエビデンスというのはあくまでそれを補完するための材料として提示されているところであります。にもかかわらず、公的分析の結果が出た後でリアルワールドエビデンスによってRCTの結果を置換するような、自分たちの議論を否定するような議論がなされるということは、結果を見てからのいわゆる後出しじゃんけんにつながるようなところでもありまして、意思決定におけるアルファエラーを増加させるものではないかと懸念するところです。
 また、PANORAMIC試験の追加解析対象集団というのは、御説明しましたように、我が国の重症度基準を用いて、我が国における投与対象となる患者を抽出したものであります。本品目が投与対象となっている全ての患者において、程度の差はあれ有効性を示しているのであれば、当然ながら本追加解析においてもそのような結果が示されるべきものでありまして、少なくとも分析対象集団全体として見たときに追加的有用性は有しないという判断は妥当ではないかと考えているところであります。
 また、80歳以上の高齢集団につきましては、先ほど〇〇先生の御議論にもありましたように、追加的有用性を有する可能性について否定するところでは全くございませんけれども、今のところ、そのようなことを積極的に支持するデータというのは得られていないと考えているところであります。
 また、2番目の論点、7ページ目になりますけれども、最新のリアルワールドエビデンスを考慮に入れる必要性についてということでありますが、御存じのとおり、リアルワールドエビデンスは観察研究でありまして、選択バイアス等が入りやすいということは明らかであります。RCTの結果よりもリアルワールドエビデンスの結果を支持すべきだというところであれば、そのことを支持するデータとともに、なぜRCTの結果は不適切なのかをきちんと説明していただきたいと考えるところであります。
 また、先ほど御議論させていただいたように、過去のレムデシビルの例においても、本件同様にリアルワールドエビデンスの結果よりもRCTの結果を採用してきたというような経緯があると認識しています。
 3番目の論点、真の有用性を重視する必要性についてですけれども、PANORAMIC試験について、これの判断については一律に、つまり、P値が有意水準を下回ったら有効であり、上回ったら無効だと評価しているわけではなく、推定値が1近傍に存在しており、また、欧州等の諸外国等の状況を併せて総合的に評価しているものでありまして、必ずしも検出力の問題に起因するものではないなと考えているところです。
 加えて、当然ながらラゲブリオ投与群には選択バイアスが生じるため、ワクチンの未接種者が多い、あるいは人種差等が存在するという問題、あるいは諸外国においては、ラゲブリオについてはファーストラインではなくて、パキロビッド後のセカンドラインと位置づけられている国が多いところでありまして、このようなデータを我が国においてそのまま外挿できるのかという問いには、非常に疑問があると考えているところであります。
 また、4点目、追加意見、ICERでは取られない本剤の価値についてということでありますけれども、社会的価値というものは十分理解するところではありますけれども、費用対効果、ICERの結果の解釈の際に本来考慮すべきものであって、追加的有用性が認められない、臨床的な有効性に疑問があるという場合は、それ以前の問題ではないかと公的分析としては考えるところであります。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 それでは、当該品目について御議論をお願いしたいと思います。
 なお、御議論に当たっては、企業分析結果と公的分析の再分析結果のどちらが科学的により確からしいかを相対的に評価することを踏まえて、御議論を進めていただきたいと思います。
 臨床の御専門の先生は御参加されておりますが、先ほど〇〇先生からのコメントもございましたが、〇〇先生からコメントはございますでしょうか。
 
○○○委員
 ○○でございます。よろしくお願いいたします。
 ○○先生の考えと大体私も同じようなのですけれども、公的分析の科学的妥当性が妥当でないと考えられる部分があると記したのは私一人だけだったのですが、本当のことを言うと、どちらもおっしゃっていることはおおむね妥当なのかなと思っていたのですけれども、以下のようなことをコメントしようと思って、公的分析のほうを妥当でない部分があるとさせていただきました。
 もちろん、今回のRCT、PANORAMIC試験のデータを解析して、それも事後解析でいろいろバックグラウンドをそろえて解析していただいて、その結果としての評価は公的分析のとおりで全く異論はないのですけれども、ただ、原因ウイルスの変異とかワクチン接種などの患者の背景の変化で、いろいろ新型コロナの感染者の状況というのはこの薬が最初に開発した当時に出したデータとは大きく異なってきているというところもあります。そういうことで、別の抗ウイルス薬でやはりオミクロン株流行下で重症化予防の試験をやって、結局、それはあまり重症化する方の率が少ないこともあって、差がなかなか出にくかったということもありますし、そういった意味で、オミクロン流行下あるいはワクチン接種下でも重症化の有無を見る試験はすごく難しいと思うのです。
 そういう意味で、公的分析の結果では、リアルワールドデータはあまり信頼性がないので採用するべきではないという御意見だったのですけれども、ある程度いろいろな背景を考えると、リアルワールドデータも質の高いものであれば考慮してもいいのではないかと私は思った次第です。
 それから、国内の報告で、オミクロン株流行下での死亡リスクというのはかなり高齢の方で強く関連している。高齢であることが関連していると言われていまして、それ以外の基礎疾患との関連は比較的なかったという点がございます。これについては科学院のほうでもコメントされていましたけれども、そういう意味では、PANORAMIC試験のサブ解析で高齢者で死亡リスクを低下させる傾向が見られたというところは、ある程度評価していいのかなと思いました。ただ、もちろん全体で見ると公的分析の結果のとおりだと思います。
 あとは、追加分析の要否について一応要としてしまったのですけれども、新型コロナウイルス感染症に対する抗ウイルス薬の効果は発症が早期であるほど高いことが知られておりますけれども、もちろんPANORAMIC試験の事後解析の分析の中でも発症してから3日のところを境に評価していて、3日以内に投与してもあまり大きな効果はないようだというような結果だったと思うのですけれども、この辺を高齢者のところと絡めて、あるいはもう少し発症後早期に投与した場合にはどうなのかというようなところも一応知りたいかなというところで、追加分析は要といたしました。
 あとは、臨床のほうから言いますと、確かにモルヌピラビルはニルマトレビルとは使えなかったというのも、第2選択で使うというようなスタンスは私もそういうふうに考えていますし、それでいいかなと思うのですけれども、実際には今使用できる抗ウイルス薬は経口では3種類しかなくて、いろいろ薬物の作用等によってニルマトレビルとかモルヌピラビルが使用できない症例も当然出てくるので、そういったときに、対象はかなり絞らないといけないのかもしれないのですけれども、有用性が期待できる対象に対して使う価値はあるのかなと思いました。
 あとは、今は変異ウイルス、オミクロン株でも病原性は低いと言われていますけれども、今後また新たに病原性の高いウイルスが出現したりすることが可能性としては考えられるので、そういったことも考えると、費用対効果の評価としては今回のような評価がやむを得ないのかもしれないのですけれども、その中でもこういったことには有効性を否定できないというようなコメントが入ってもいいのかなと思ってコメントさせていただきました。
 私からは以上でございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 今の○○先生の御意見なども踏まえながら、その他の先生方、いかがでしょうか。コメントはございますでしょうか。
 ○○委員、お願いします。
 
○○○委員
 ○○でございます。
 今回に関しましては、科学院などのほうで大変苦労されたのだと思いますけれども、実際のRCTのデータの再解析といいますか、日本の投与対象集団にきちんと合わせた形でのデータが入手できたので、そちらのデータを基本として分析結果を採用するということでいいのではないかと私としては思いますが、ただ、仮にこういった非常によいデータが入手できるとは限らない場合も今後あるのではないかと思いますので、科学院のほうで御説明いただいたのは、リアルワールドデータというのは非常にいろいろなバイアス、その他いろいろな注意点はあるけれども、それを一律に否定するのではなくて、今回の場合はより確かなデータソースが利用可能であったということでの見解であって、今後、あくまでもRCTのほうをどのような状況であっても優先すべきだという見解ではないと理解していいのかどうかということが一点です。
 あと、もう一つは、企業のほうが示してきたリアルワールドデータがあって、どれもこの薬剤にとってよい数字が出ているわけですけれども、私もその中の幾つかは細かく見ておりますけれども、今の日本の状況に合ったものはこの中には必ずしもすごく存在しないというか、その中から採用すべきデータというのは見いだせないという認識でいいのかどうか、その2点を伺えればと思います。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 では、科学院さん、お願いできますでしょうか。
 
○国立保健医療科学院
 ありがとうございます。
 今回、このPANORAMIC試験の事後解析についてですけれども、PANORAMIC試験がたまたま製薬等の企業スポンサーが入っておらず、イギリスのNIHRという公的なファンドが100%出資するものであったことから、オックスフォード大学等の許可を得られたものだと認識しているところでありまして、民間スポンサー等が入っている場合は、RCTの再解析というのも難しい場面が多々存在すると認識していますので、そのような場面は、またリアルワールドデータ等、様々なデータソースを使いながら総合的に判断していく必要があるのかなと認識しているところでありまして、○○先生と恐らくあまり認識のそごはないのかなと考えているところです。
 先生、2点目は何でしたか。
 
○○○委員
 企業が幾つか示してきた研究もあるよというそれぞれについてですね。
 
○国立保健医療科学院
 リアルワールドデータについては、企業からそれ以上のデータを受け取っておらず、我々も文献情報に限ったところなのですけれども、やはり日本と違って、どうしてもワクチン接種状況がラゲブリオ群のほうが良好でプラセボ群のほうが悪いですとか、あるいは社会経済状態のよい方がラゲブリオ群に多くてプラセボ群に少ないといった、どうしても選択バイアスが入るものでありますし、米国あるいはオーストラリア等においては、ラゲブリオというものは、パキロビッドが第一選択となる中で、それが使えない患者さんというかなり強いセレクションが入っている状況だと認識していますので、なかなかこの結果をそのまま日本の状況にダイレクトに適用するというのは難しい側面もあるのかなと考えているところです。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ○○委員、お願いします。
 
○○○委員
 先ほどのリアルワールドエビデンスのところで一言コメントさせていただきたいと思います。
 今回使われたリアルワールドデータのほうは、公的分析班もおっしゃいますように、かなり選択バイアスや交絡バイアスの問題があり、本当にgarbage in garbage outのことがあるので、かなり気をつけて取捨選択をしなければいけない。一概に全てが駄目というわけではなく、一つ一つ吟味する必要があると思います。
 そういう意味では、公的分析のほうがおっしゃったように、ほとんどのリアルワードエビデンス、日本におけるリアルワールドは単施設のものが多いというところで、単施設のリアルワールドデータというのはやはり偏りがすごく大きいものですので、内的妥当性、交絡バイアスも含め、選択バイアスが非常に問題になってくると思います。
 そこで、企業分析のほうが言われている退役軍人病院のデータに関してなのですけれども、退役軍人病院のデータに関しては多施設でnも相当大きいですし、あそこは統計解析もしっかりしているところではありますので、エミュレーション方法も使われたということで、かなり統計解析手法としてはよいものだとは考えております。
 ただ、退役軍人病院の患者さん自体がアメリカ人の一般人口ともかなり違っております。私も4年ほど働いておりましたけれども、インカムのスレッシュホールドというのがありまして、地域によってそれは異なるのですが、大体200万円前後ぐらいの収入未満の方が無料でサービスを受けられるというところで、社会経済学的な観点から言いましても、アメリカ人の一般ポピュレーションよりも乖離しているというところで、日本のデータとはまたさらにより乖離してくるのではないかなと思います。
 また、今は違うかもしれませんが、私がいた当時は男性の割合が相当数多いというところで、かなり偏った集団ではあるというところを考えると、やはり今回のリアルワールドエビデンスとしては、それをもって日本のデータに置き換えるほどはエビデンスレベルとしては高くないのではないかと考えました。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。その他、いかがでしょうか。
 ○○委員、意見書で日本のデータのアウトカムの位置づけについてコメントをいただいておりますが、何か追加でございますでしょうか。
 
○○○委員
 1つ、日本からのリアルワールドエビデンスということで、著者は〇〇先生、2023年ですかね。これはモルヌピラビルを使った群と使っていない群を比較している。それで、一応背景等はプロペンシティ・スコア・マッチング等で調整はしているということにはなっているのですが、私はこの論文のアウトカムの設定が少し引っかかっておりまして、アウトカムの設定が増悪というのをアウトカムに置いているのですが、その増悪の定義が新しい治療を加えたというのをもって増悪と定義している。そういうふうになりますと、ラゲブリオ等が入っていない患者さんには新しい治療が入りやすいのかなということもあるので、アウトカムの設定に問題があるのではないかなという気がしたということを書かせていただいたというところで、現状で国内のリアルワールドエビデンスはまだまだ物足りない。やはりPANORAMICのデータを用いるのがいいのではないかなと思った次第です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。ご議論で大分整理が進んだと思って伺っておりました。
 あと、その他、いかがでしょうか。
 では、最後に念のためですけれども、私のほうからコメントさせて頂きます。先ほど○○先生から発症後投与開始までの日数のサブ解析のようなお話があって、それが臨床的にも重要であるとも伺っておりました。これに関わり、科学院さんのほうにお聞きしていいのかどうか分かりませんが、こういった論点について今まで御議論とかされていた経緯とかはありますか。もしくはこの件に関して何かコメントがあればいただきたいと思います。
 
○国立保健医療科学院
 ありがとうございます。
 こちらの投与開始までの日数によってサブグループ解析ですとか、そういったことは検討したことはなかったのですけれども、背景因子として中央値として発症から投与までの日数が4日であるというような報告は受けているところであります。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 ○○先生、何かこの点で追加はございますか。よろしいですか。
 
○○○委員
 ○○ですけれども、ありがとうございます。
 中央値が4日ということは、結構発症からたってから投与されている例もかなり多いというところで、実際には発症してから2日以内とかそのぐらいで投与を開始しないと、抗ウイルス薬としての効果というのはあまり期待できない可能性もあるので、一応公的分析の中で、あるいはPANORAMIC試験の中では3日のところで分けていたと思うのですけれども、もう少し早くしたらどうなのかとか、そういうところ、それにさらに年齢の因子も65歳で切っていますけれども、さらにもう少し年齢も高いほうが重症化、あるいは死亡するリスクが高くなるので、その辺をもう少し細かく分析してはどうかなという気持ちでコメントさせていただいた次第です。
 ありがとうございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 御意見としていただくような形で整理を進めさせていただいたほうがいいかなと思って伺ってはいたのですけれども、科学院さん、分析みたいなのは難しいと思いますのでそのような考えでよろしいですか。
 
○国立保健医療科学院
 そうですね。御意見ありがとうございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 その他、いかがでしょうか。
 ○○委員、お願いします。
 
○○○委員
 リアルワードエビデンスのことについて気になった点です。一つは、今回みんな有効だというようなリアルワールドエビデンスが出てきましたけれども、これは決してシステマティックレビューをしたものではなくて、聞いたものだけをセレクトして紹介されているということが一点あり得ると思います。
 もう一つは、RCTと違ってリアルワールドデータのほうは事前登録がまだ義務化されていないので、出版バイアス自体も当然RCTよりもあり得るかと思います。
 そういうところは注意した上で、使い方も今後また検討が必要かと思いました。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。リアルワールドデータの制約について追加で御意見をいただいたかと思います。
 その他、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 ○○委員、お願いします。
 
○○○委員
 私は、今回は公的分析のほうがPANORAMIC試験の公表データを入手されて、細かくポピュレーションをそろえた解析をされたというのは非常にすばらしいことだなと。統計家として本当に大変なことをされたのだなと思って、非常に敬意を表しています。
 それを踏まえて、そのデータでサブグループ解析もやっていただいて、65歳以上に関しては症例数は少ないものの、ある程度の有効性はあるのではないかという結果が出ております。ですので、もし再解析を今後仮にやられるとすれば、個人的に私は今回は必要ないと思っているのですけれども、有効性のデータはやはりRCTのPANORAMIC試験から取っていただいて、年齢の割合、分布に関しては日本のデータで考慮されてもいいかと思いますが、今回はあくまでも解析集団としては65歳以上を対象とした評価を求められているのではなく、年齢全体としての平均的な効果というところで見ることを考えますと、65歳以上で一定の効果があったとしても、日本人の年齢の分布で平均化した場合は効果が認められるということは可能性としては少ないのではないかなとは思っております。
 ですので、65歳以上は一定のサブグループで効果があるサブグループはあるかもしれませんが、分析集団としてはそこを見ているのではなく、もっと広い集団を見て議論しているのだというところをもう一度再掲したいなと思ってコメントさせていただきました。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 論点というか考え方の整理として、大変貴重な御意見であったかなと思います。
 その他、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、先生方の今までの御議論、意見書の内容も踏まえてまとめさせていただくと、今回は先生方として公的分析の内容を選択するということであろうかと思います。そういった意味では、追加分析も不要という御意見が多かったということだと思いますので、議決に入らせていただきたいと思います。
 ○○委員、○○委員におかれましては、議決の間、一時御退席をお願いいたします。
 
(○○委員、○○委員退室)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 では、先生方の御意見を参考に、ラゲブリオに関する費用対効果評価については、公的分析を採用するという形で、ラゲブリオに係る総合的評価について、公的分析による費用対効果評価案として決定するということでよろしいでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 それでは、専門組織で決定された総合的評価を費用対効果評価案として中央社会保険医療協議会に報告いたします。
 なお、企業に対する内示及び中医協に提出する資料に関しては、委員長に一任していただくということでよろしいでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。