2023年12月22日 費用対効果評価専門組織 第6回議事録

日時

令和5年12月22日13:00~

場所

オンライン開催

出席者

田倉 智之委員長、齋藤 信也委員長代理、池田 俊也委員、木﨑 孝委員、新谷 歩委員、新保 卓郎委員、中山 健夫委員、野口 晴子委員、花井 十伍委員、飛田 英祐委員、米盛 勧委員、福田 敬専門委員
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
木下医療技術評価推進室長 他

議題

○ ケレンディア錠に係る総合的評価について

議事

○費用対効果評価専門組織委員長
 続きまして、ケレンディア錠に係る総合的評価について御議論いただきたいと思います。
 公的分析によるさらなる追加分析結果が提出されておりますので、公的分析からの意見聴取を行った上で、企業分析の内容及び公的分析によるさらなる追加分析結果の審査、並びに費用対効果評価案の策定について先生方に御議論いただきたいと思っております。
 では、ケレンディア錠について、まずは事務局から説明をお願いいたします。
 
(事務局より説明)
 
 続きまして、科学院から御説明をよろしくお願いいたします。
 
○国立保健医療科学院
 国立保健医療科学院です。
 資料のほうは費-4-2、「フィネレノン(ケレンディア)に関する追追加分析について」という資料を御参照ください。
 1ページ目から2ページ目以降、少し我々のほうの不手際もございましたので、現在の状況について事実関係の整理をまずさせていただきたいと思います。
 2ページ目ですけれども、当初提出された製造販売業者によるベースケースの費用対効果の分析をこちらでお示ししております。こちらはICERが約196万円となっています。
 3ページ目ですけれども、公的分析のレビューを反映した分析結果についてですが、日本人集団における腎イベントの抑制作用については、プラセボと比べて追加的な有用性がないとする評価結果をそれぞれ製造販売業者も専門組織も御了承いただいたものと認識しています。
 そのことを費用対効果に反映するために、腎イベントのハザード比を1.0とした分析結果を専門組織に提出させていただきました。
 公的分析としては、それ以外の点については、製造販売業者によって提出されたモデルの設定を変更していないものとなります。
 こちらの分析結果がICERで479万円というものになっています。
 4ページ目ですけれども、日本人集団における心血管イベントリスクについて、現状はこちらかと認識していますが、製造販売業者によって提出された分析モデルというものは、FIDELITY試験の全体集団の動きをトレースするように設計されたものであります。
 一方で、FIDELITY試験の結果あるいは疫学研究等の結果から、日本人集団CKD患者集団におけるCVイベントの発生リスクは、欧米と比べてかなりの程度低いということが示されています。
 このCVイベントリスクについては、患者背景因子を日本人集団のベースライン値に合わせることによってのみでは、モデル上の推移確率が変化しないということが企業側からの指摘によって明らかになっていることから、ケレンディアに関する第3回の専門組織、9月ですけれども、こちらでは科学院から報告を行い、企業モデルを受け入れる場合にはイベント発生リスクを過大に推計することになるのではないか。すなわち、費用対効果が過剰に改善するのではないかといった懸念を御説明させていただいたところです。
 5ページ目になりますけれども、こちらはそのようなCVイベントリスクの補正を反映した、前回組織で提出した追加分析の考え方等についてです。
 6ページ目ですけれども、前回組織で議論がありましたが、国内外でイベントのベースラインリスクが異なる場合、それを分析結果に反映させる必要があるのかという点についてですけれども、公的分析といたしましては、我が国における費用対効果評価においては、日本人集団におけるICERを求めて意思決定を行うことが原則であると考えております。
 国内外でベースラインリスクが異なる場合、治療効果、ハザード比等の「比」としての治療効果が同等であっても、ICERの値が異なってくるということになってまいります。リスクが低ければ低いほど費用対効果は悪くなるというような状況になります。
 ですから、そもそも企業も意見陳述においてプロセスの適否については異議を申し立てているところですけれども、ベースラインリスクを日本人集団に合わせることについてはその妥当性を理解しているものと認識しています。
 7ページ目ですけれども、そのような具体例として、2型糖尿病治療薬セマグルチド(リベルサス)の例を挙げさせていただきました。2型糖尿病治療薬の評価においては、我が国と欧米圏とでは対象となる患者像が異なることから、企業側が日本人または東アジア系の患者で2型糖尿病患者を対象とした試験をシステマティックレビューの対象にした検討を行い、その方針を公的分析も受け入れております。
 公的分析においても、日本人集団のベースリスクに対応した差を用いて評価を行っているところです。
 8ページ目ですけれども、また、企業側は、費用効果分析において、日本人2型糖尿病患者を対象とした臨床試験からCVイベント等の発症確率が推計された分析モデルを用いて分析を実施しており、公的分析も当該分析モデルを利用することを受け入れております。
 9ページ目ですけれども、以上から、海外集団と日本人集団間でCKD患者におけるCVリスクに関して異質性が存在するということは臨床データ等からも明らかであると考えられ、そのことは分析ガイドライン上の規定からも評価に反映させる必要があるものと考えています。
 よって、FIDELITY試験全体集団のデータをそのまま用いることには課題があり、何らかの手法を用いてCVイベントリスクに対する補正をする必要があると考えております。
 しかし、そのCVリスクイベントの低減の程度については必ずしもはっきりとしておらず、不確実性が大きいものと認識しており、そこで、公的分析としては、日本人集団においてCVリスクが25%低減するというやや保守的な仮定、すなわち少なくともこの程度のリスク低減は確実に存在し得るのではないかということにはコンセンサスが得られるのではないかと考えられる値ですけれども、このような値に基づいて追加分析結果を提出させていただいたところであります。
 その結果は、ICERでの値が約710万円/QALYという結果になります。
 また、この0.25という値については、非常に不確実性の大きいアサンプションでありますので、10ページのように二次元感度分析の結果も併せてお示しして、この両方を御参照いただきながら意思決定を行っていただきたいと考えているところになります。
 11ページ目ですけれども、これが前回までの組織の議論でありましたが、さらに追追加分析を御指示いただきましたので、それについて検討を行ってまいりました。
 12ページ目ですけれども、本邦と諸外国におけるCVリスクイベントの差異について専門組織から指摘を受けましたので、さらなる追追加分析として、本邦と諸外国におけるイベントリスクの差異について先行研究の調査を行いました。CKD患者におけるCVイベントリスクの国内外差を群間比較した論文については同定できなかったところでありますけれども、一般集団あるいは末期腎不全患者等におけるCVリスクを検討した論文、あるいはCKD患者における単群試験の結果については存在しておりました。
 検討の結果、25%を支持する直接的なデータについては文献等で同定できなかったところであります。一方で、追加的な分析の結果を含めて、他の割合についても明確な根拠を示すまでには至っていないのではないかと考えているところです。
 13枚目は、一般人口における虚血性心疾患における死亡率の差異でありまして、これは広く知られていますように、日本人の虚血性心疾患リスクというのは諸外国と比べてかなり小さいということが知られているところであります。
 また、14ページ目は末期腎不全患者(透析患者)におけるCVイベントの発生率の差異でありまして、北アメリカ、ヨーロッパ、日本というデータを比較したものになりますが、これにおいても日本人集団のイベントリスクというのはかなり低いということが示されています。
 また、保存期のCKD患者におけるCVイベントの発生率の差異については、単群の試験について横並びにしたものでありますけれども、15ページにお示ししたような結果が示されています。
 16枚目ですけれども、このようなパラメーターの設定等に関して不確実性がある場合、どうしたらいいのかということについて、公的分析の考え方を整理させていただいたので御紹介させていただきます。
 前回公的分析が提出した分析結果、すなわちCVリスク低減を25%とした分析結果は、少なくともこの程度のリスク低減は確実に存在するということにコンセンサスが得られるであろう値だと考えているところです。
 ただし、今回追加的分析としてはCVリスク低減について再検討を行ったところですけれども、その結果、日本人におけるCVリスク低減は確実に存在すると考えるものの、その割合についてはいずれのデータにも課題があり、前回専門組織に提示した分析結果にも一定の妥当性があるものと考えているところです。
 一方で、諸外国の医療技術評価機関においては、今回のような不確実性の問題にも同様に直面しており、多くの機関、例えばイギリスのNICEなどでは不確実性に伴う意思決定上のリスクが大きくなるため、分析方法について企業側により詳細な説明を求め、それが十分でなく、依然として大きな不確実性を有すると判断されるような場合には、より厳しい取扱いを行うということが一般的であると認識しています。
 そのため、参考データとして、前回の専門組織でお示ししたFIDELITY試験の国内外差、あるいは疫学研究の内外差を用いて、可能な分析を実施したところであります。
 17ページ目にはNICEのガイドラインにおける該当箇所をお示ししております。
 18ページ目ですけれども、参考として追加的に分析させていただいた分析の1番目ですけれども、こちらはFIDELITY試験における日本人集団と全体集団の心血管複合エンドポイントの発現リスク比に基づいて、ベースラインCVリスクの補正を行ったものであります。この場合、補正係数は0.465となっております。
 なお、分析モデルにおいてCVリスクとCV死亡が異なる2種類のパラメーターとして設定されているところでありますけれども、心血管複合エンドポイントの発現の定義の中には心血管死亡というものが含まれておりますので、このことを考慮して二重カウントにならないよう、2種類のパラメーターに同様の補正係数を乗じて補正を行ったところであります。
 19ページ目がFIDELITYの全体集団と日本人集団のバックグラウンドの比較表になります。
 20ページ目、FIDELITYの日本人集団結果を用いた分析結果というのは、このような表にお示しさせていただいたとおりでありまして、ICERの値が約1458万円/QALYという結果になっておるところです。
 21枚目ですけれども、参考として追加的に実施させていただいた分析その2になりますけれども、前回お示しした疫学研究のデータに基づいてCVリスクを補正したものです。この場合、補正係数は0.273ということになりまして、ICERの値は約5500万円/QALYという結果になっております。
 疫学研究の背景因子については、22ページ目にお示ししております。
 23ページ目ですけれども、こちらは前回は0.5から1までの感度分析の結果を示しましたが、今回は0から1までの二次元感度分析の結果をお示ししています。(1)と振ってあるところがCVリスク25%減の結果でありまして、(2)がFIDELITY試験に基づく結果、(3)が疫学研究に基づく結果の位置をお示ししております。
 24ページ目ですけれども、この追追加分析の結果を解釈する上での限界点ということで、FIDELITY試験の国内外差や疫学研究の内外差のデータを用いて可能な分析を実施したものですけれども、本追加分析の結果には一定の限界があるものと考えています。
 FIDELITY試験のデータを用いた分析では、日本人集団と全体集団のリスク比に基づいてCVリスクの補正を行いましたが、サンプル数の制約等から一定の不確実性を有するものだと認識しています。
 また、既存の比較研究における内外差については、年齢や性別、糖尿病の有無等が調整された上でハザード比が算出されているところでありますけれども、国内外で一部共変量の定義の標準化等に限界があったことに加えて、未調整の交絡因子がハザード比の値に影響を与える可能性についても考慮が必要なのかなと認識しているところです。
 我々からの御報告は以上になります。
 
(事務局より説明)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 それでは、まず本品目に係る公的分析の再分析結果に対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
 
(意見陳述者入室)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 私は、費用対効果評価専門組織委員長です。
 早速ですが、10分以内でケレンディア錠の総合的評価について御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。
 では、始めてください。
 
○意見陳述者
 バイエル薬品の○○と申します。
 本日の主張内容はこちらでございます。
 次のページを御覧ください。
 弊社から陳述させていただく内容のサマリーがこちらになります。
 今回、公的分析側から提示されました内容は、国内外のCVリスクに異質性があるという前提の下で、FIDELITY試験や先行研究などから日本人集団のCV発現率についての補正係数が示されておりました。前回の専門組織で公的分析側から提示されました0.75という補正係数につきましては、企業としまして一定の同意を示しておりましたが、CVリスクに明確な異質性があると断定できないため、不確実性がより大きな日本人集団のCVリスクを使用するよりも、全体集団データを分析に使用することが妥当であると考えております。
 そして、今回の分析報告書の補遺につきましても、依然としてCV発現率の補正方法には課題があり、補正係数の不確実性が高いと考えております。
 今回、企業側としまして、フィネレノンの対象である2型糖尿病合併のCKDの患者を対象とする適切なエビデンスを改めて検索し、検討した結果、国内外におけるCVリスクに異質性があるかないかは断定できず、CVリスクの補正係数を用いない当初からの企業分析方法が妥当であるとの結論に至りました。
 次のページを御覧ください。
 まず、公的分析報告書の補遺の中では、国内外のCVリスクの異質性につきまして幾つかのエビデンスを挙げていただいておりますが、その研究対象は一般人口を対象としたものや透析患者、CKD保存期の患者でございまして、いずれも本剤フィネレノンの適用である2型糖尿病を合併しているCKD患者とは異なっておりました。
 今回、我々からフィネレノンの適応症が対象となる2つの先行研究を紹介させていただき、次のページ以降で見解を述べさせていただきます。
 次のページを御覧ください。
 こちらに示しましたデータは、〇〇先生が昨年2022年に心、腎関連疾患の疫学や病態生理に関する現在の知見を日本のデータを中心に取りまとめられたレビュー文献になります。
 青の棒グラフで示された糖尿病を合併するCKDの発現率は、グレーで示された一般集団、赤で表示のCKDを合併しない糖尿、黄色で表示の糖尿病を合併しないCKDと比べまして、CVリスクが異なりますため、本剤フィネレノンの臨床効果を論じる際には、不確実性を排除した上で、糖尿病を合併したCKD患者をベースにした研究を参考にして論じるべきであると考えます。
 次のページを御覧ください。
 2つ目のエビデンスは、2型糖尿病院におけるCVイベント及び腎イベントの発現リスクに関する多国籍の大規模コホートでございます。諸外国のデータを統合する前の各国の比較データが掲載されておりました。ベースが糖尿病患者のデータとなりますが、CKDが初めて診断され、かつCVイベントが未発現の患者につきまして、CKDもCVイベントも発現していない、CVRD freeの糖尿病患者とのCVイベントの発現リスクを比較したものでございます。
 赤枠で囲われております各国のイベント発生率では、日本の数値は諸外国の数値と比べて突出しておらず、CVリスクの異質性があるかないかは明らかでないと言えます。分析報告書の補遺の中では、直接群間比較した先行研究はないとされておりましたので、こちらの研究がフィネレノンの対象集団に合致した国内外のCVリスクの異質性を検討した唯一のエビデンスになると思われます。
 また、赤枠の外にある右横に示されたCVRD freeの糖尿病患者に対して、糖尿病を合併したCKD患者のハザード比は1を超えて有意に大きい値を取ることからも、今回のフィネレノンの費用対効果を分析する上では、やはり糖尿病を合併したCKD患者を用いて評価を行うことが重要であるということが御理解いただけるかと思います。
 次のページを御覧ください。
 公的分析報告書の補遺の中で、CVリスクを補正する方法につきまして、FIDELITYの国内外差のデータを用いて、日本人集団と全体集団の心血管複合エンドポイントの発現リスクから補正係数が算出されている点につきまして、我々から2つの見解を述べさせていただきます。
 一つは、フィネレノンの臨床試験は日本人集団でのサブ解析を意図しておらず、全体集団においてのみ有効性の検出が可能となるようなサンプル数で実施されておりました。そのため、ごく少数例での日本人部分集団の分析結果には代表性がなく、不確実性が高いと考えられ、ここから算出された係数にもやはり大きな偏りがあると考えられます。その点は公的分析報告書の補遺でも弊社と同様に懸念されておりました。
 次のページを御覧ください。
 また、補遺の中では、セマグルチドの分析事例を引用されて、日本人集団での分析モデルを採用するべきことを御説明していただいておりましたけれども、こちらにつきましては、セマグルチドの臨床試験、PIONEER 9及びPIONEER 10では日本人集団の有効性/安全性を計画して設計されたサンプル数で実施されていて、本剤フィネレノンの国際共同臨床試験とは異なり、本剤では日本人集団の有効性/安全性を検証することが意図されておらず、サンプルサイズの設計は行われていませんので、セマグルチドとは少々条件が異なります。セマグルチドの事例を本剤フィネレノンに当てはめることは困難ではないかと考えております。
 次のページを御覧ください。
 公的分析側で提案されておりましたもう一つの方法がImaizumiらの疫学研究の国内外差のデータを用いた補正係数の算出ですけれども、こちらの対象集団につきましてもCKD全般が対象となっており、フィネレノンの適応である糖尿病を合併したCKDとは異なっております。この研究の中で患者背景を調整して米国と日本人の患者集団をそろえておりますけれども、米国と日本のCKD患者の背景をそろえているだけで、フィネレノンの糖尿病を合併したCKD患者とは一致しておらず、当該ハザード比を補正係数に用いるのは適切ではないと考えます。さらには、米国だけと比較している点につきましても、米国だけのデータが糖尿病合併CKDの基準であるとする根拠も示されておらず、FIDELITYでの全体集団を捕捉するものではなく、代表性もないと考えられます。
 次のページを御覧ください。
 また、公的分析報告書の補遺では、日本以外の各国の不確実性の取扱いの例として、NICEのHTAマニュアルが引用されており、不確実性が大きい場合は意思決定上のリスクが大きくなるため、より厳しく取り扱うといかにも一般論であるかのように論じられておりましたけれども、我々がNICEのマニュアルを確認しましたところ、そのような記載は見当たりませんでした。
 一方で、このNICEのマニュアルでは、不確実性の対応手法として種々挙げられており、例えば専門家の意見や確率的感度分析の実施、異なるソースを使用した感度分析の実施、専門組織による判断などが挙げられておりましたので、本陳述資料の最終ページにAppendixとしてお示しさせていただいております。
 次のページを御覧ください。
 同様に、このNICEのマニュアルの中で明確な正当性がない場合にはサブグループでのDate dredgingを避けるべきと明確に記載されております。今回のCVリスクについても、サブグループで分析をしたり、補正係数を算出していることに関して、諸外国の基準とそろえるのであれば、明確な正当性はないと判断でき、科学的観点からもDate dredgingは避けるべきと考えます。
 また、サブグループ間の異質性が偶然に報告されるという可能性につきましても、有効性の違いを予測するための明確な根拠などをあらかじめ予測した上で、プロトコルで特定のサブグループを事前に規定することでサブグループ分析の信頼性が高まるという記載もございまして、フィネレノンでの臨床試験では事前に規定されていなかった日本人サブグループによる補正係数を算出することは合理性に欠けると考えております。
 次のページを御覧ください。
 こちらは最後のページとなります。
 分析報告書の補遺には二元感度分析について論じられておりましたが、このグラフの縦軸、横軸の変動範囲がともに0~1までと設定されており、臨床的に起こり得ない0.00が含まれていたりするなど、変動範囲に妥当性がなく、根拠も示されておりませんでした。そのため、ここに表示されている各マス目の一つ一つは同じ確率のもので発生するということではないように思いますので、誤って認識されてしまうリスクもございます。
 さきに紹介いたしました糖尿病を合併したCKD患者における諸外国との比較されたエビデンスにおきましても、各国間のCVリスクについてはばらつきがございました。補正係数でこれらのばらつきを考慮するのでございましたら、NICEのマニュアルにも記載されておりますように、確率的感度分析で評価するほうが適切ではないでしょうか。
 以上から、我々は公的分析の今回の補遺を受け入れることはできず、企業分析結果として算出しましたものが科学的に妥当な結果ではないかと考えております。
 以上で企業側の意見陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 では、委員の方から御質問はございますでしょうか。
 ○○委員、お願いします。
 
○○○委員
 御説明ありがとうございました。
 最後に言われていた、いわゆる二元感度分析ではなくて確率感度分析で評価をしたほうがいいというのは、私ももしできるものならそのほうがよいと思います。なので、これはやっていただいた結果があればどうなのかということ。確率感度分析と言っても、どういった確率密度関数をどこに設定するとか、そういうことで結果はいろいろ変わるので、確率感度分析をやればいいというものではないと思うのですが、それぞれのパラメーターの分布とか範囲とかそういうものについての根拠となるようなデータなりが必要だと思いますが、これは実際にやってみられたのか。やってみられていないとすれば、これはできるのですか。できないことを主張されても困ってしまうので、できるものなのでしょうか。
 
○意見陳述者
 以前にこちらで用いたデータで感度分析を行うということなのですけれども、用いるデータ自体を我々はまだ特定しておりませんで、今回用いられているこのデータ自体が我々としては受け入れ難いものですので、感度分析自体までは至っておりません。
 
○〇〇委員
 できるものなのですか。どういう確率密度関数を設定するかというのがそれぞれのパラメーターについて設定できるものなのですか。できるとすれば、その中でいわゆる中央値あるいは平均値などを使ったパラメーターで二元感度分析の絵も見られる。つまり、この変数の値が最も基本分析として使えるのかということがもし定められるのであれば、おおよその二元感度分析の絵からICERの値は推定できると思うのですが、何かそういう基にできるようなデータというのはあるのですか。
 
○意見陳述者
 データ自体を私はまだ特定しておりませんが、できるかどうか、データがどこまでそろうのか、私も明確ではございません。すみません。
 
○IQVIA
 お世話になります。IQVIAの〇〇と申します。
 こちらのスライドに書かせていただいていますとおり、現時点で諸外国の比較を行っているものに関しては、Birkelandという6ページで紹介させていただいておりますものが諸外国間のCVリスクのERを報告しているというところになります。
 ですので、例えば実施するのであれば、今回補正係数の部分が感度分析の対象になっているかと思いますので、そこの部分をこのBirkelandのばらつきを利用するなどして出すこともできるのではないかとはもちろん書かせてはいただいているところではあるのですけれども、おっしゃるとおり、かなり難しいものだと認識しています。
 ただし、このスライドで紹介したいのは、マニュアルではPSAを実施するのがよいのではないかというところと、あともう一つ言いたいこととしては、この二元感度分析というのが、〇〇先生も御存じのとおり、かなり極端な例も含まれてはいますので、視覚的にはすごくインパクトの大きいフィギュアにはなるのですけれども、そこの解釈は注意して見ていただいたほうがいいかもしれないというような部分が今回の主張ではございますので、PSAの結果が例えば出たとしても、そのPSAの結果を使ってくださいというところまでは私たちは考えていないところにはなりますので、その点は少し御理解いただきたいというところでございます。
 
○○○委員
 この異質性の検討、6枚目かな。示していただいた論文ですが、多分日本のデータというのはNDBとかではなくて、DPC病院等の要するに大規模な病院のデータを使われていて、多分DPCデータでやられているので、患者が別の医療機関を受診したり、転院したりというフォローアップが十分できていないし、しかも、受診した医療機関というのがどちらかというと重症患者を診るような医療機関であると思ったので、このデータはそういう意味では他国との比較という点でもかなり課題があると私は読みましたが、そういう理解でよろしいでしょうか。
 
○意見陳述者
 そのような理解でよろしいかと思います。
 ただ、ほかにエビデンスを探したところで、一番対象患者に合致するデータとしましては、こちらのMDVのデータで使ったものが日本では唯一あるかなといったところで、ほかの対象疾患のものを持ってくるよりはこちらのほうがよいと判断したので、今回紹介させていただきました。
 
○IQVIA
 ○○先生のおっしゃるとおり、こちらの研究についても使われているデータソースによってかなりリミテーションはあると思っています。ただし、公的分析の補遺で紹介されているような研究よりは対象集団は合致しているというところと、諸外国の比較は直接同じ研究設計の下で実施されているというのは、かなり評価できるのではないかと思います。ただし、おっしゃるとおり、リミテーションはありますので、CVのリスクが明確にあるかないかは定かではないというところまでは私たちの主張の範囲というところであります。明確にないとは言っていないというところは御理解いただければと思います。
 
○○○委員
 ありがとうございました。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 その他の委員の先生方、いかがですか。よろしいでしょうか。
 では、科学院さん、どうぞ。
 
○国立保健医療科学院
 ありがとうございます。保健医療科学院です。
 我々もCVリスクの補正方法についていろいろ公的分析のメンバーと検討させていただいたのですけれども、そのとき手元にデータがなかったために実施できなかったのですが、FIDELITY試験は確かに日本人集団は非常にサンプル数が少ないという御懸念については十分理解するところなのですけれども、これはサンプル数がもう少し安定するような、皆さん方もサブ集団として御発表されているようなアジア人集団全体について分析を行うというようなやり方も一つあるのかなとは検討段階で考えたところなのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
 
○意見陳述者
 その点につきましても、アジア人集団のデータにつきまして、我々も発表した以外のところのパラメーターについて、全てデータをアジア人に置き換えて分析するところはまだやっておりませんけれども、もしそういうふうにするのであれば、もう一度アジア人集団でデータを入れ替えて分析させていただければと存じます。
 
○国立保健医療科学院
 アジア人集団について分析を実施されるというのは、一定の科学性が担保されるという御認識なのでしょうか。
 
○意見陳述者
 補正係数だけではなくて全てはデータを入れ替えるというところです。
 
○国立保健医療科学院
 ありがとうございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 その他、いかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
 
(意見陳述者退室)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 御議論ありがとうございました。
 それでは、議論に先立ちまして、企業から公的分析についての御意見がございましたが、科学院から何か御意見等はございますでしょうか。
 
○国立保健医療科学院
 ありがとうございます。
 企業から新たに御提出いただいたリアルワールドエビデンスの論文等について、我々のほうでも検討させていただきましたので、それについて少し御説明させていただければと考えています。
 この文献については、各国におけるレジストリデータあるいはレセプトデータ等を用いてデータを解析したものでありますが、そもそもこのデータベースの目的も位置づけも成り立ちも全て異なって、データの粒度や信頼性もばらばらのデータベースを用いて国際比較研究をすること自体が学術的にかなり無理のあることなのではないかなと考えているところです。
 実際に例えばイギリスではプライマリーケアなども含む患者集団であるのに対して、日本ではMDVという症例データベースが用いられており、これはDPC病院を対象集団とするものになっております。
 このようなデータベースの位置づけがかなり異なる中で、例えばお手元に資料等がおありの先生方、参考資料費-13-2という資料があれば、これは企業側から提出された文献のサプリメントのデータになりますけれども、これがお手元にあれば、32ページ目、33ページ目、FigureのSの5のAというものを御覧いただけると明らかと思うのですが、EGFRの分布において、日本人集団だけが明らかに低値のところに偏って分布しているということがこの分布のディストリビューションを見ていただくと明らかかなと認識しています。
 このように、対象とする集団が異なるデータベースを用いていることから、かなり強い選択バイアスがかかっているのではないかということが読み取れるところでありまして、企業がスライドに採用したようなデータを見ても、例えばPADではイギリスとドイツでイベント発生率は約3.5倍の差がある。あるいはheart failureではドイツとイギリスでイベントリスクが約3倍、オランダとの間では約7倍となっておりまして、これは単なる国ごとの環境等の差異だけでは説明し切れない結果の偏りによるものではないかなと考えているところです。
 ですので、この論文を解釈する際にはかなり細心の注意を払って、データの限界等を考慮しながら読み解いていく必要があるのではないかなと考えるところです。
 我々からは以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 それでは、当該品目について御議論をお願いいたします。
 なお、御議論に当たっては、企業分析結果と公的分析のさらなる追加分析結果のどちらがより科学的に確からしいかを相対的に評価することを踏まえて、御議論を進めていただきますようお願いいたします。
 今日は御専門の先生方はお休みということでありますが、先ほどの〇〇先生のお話を伺いますと、いずれにせよ、今回臨床の先生方から見ても、CVイベントについては諸外国に比べて異質性があって25%程度のリスク低減は確実に存在するというようなお話もございましたが、そういうような御意見も踏まえながら、先生方からコメントをいただければと思います。いかがでしょうか。
 よろしいですか。
 意見書を見ますと、基本的には今回科学院さんのほうでかなり苦労されてお作りになった内容でよろしいということだったと思いますので、その方向でまとめさせていただきたいと思います。
 それでは、議決に入らせていただきます。
 〇〇委員、○○委員におかれましては、議決の間、一時御退席をお願いいたします。
 
(○○委員退室)
 
○事務局
 ○○先生の退室が確認できました。○○先生は途中で退席しております。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 分かりました。
 では、先生方の御意見を参考に、ケレンディア錠に関する費用対効果評価については、ケレンディア錠に係る総合的評価について、公的分析による案を費用対効果評価案として決定するということでよろしいでしょうか。
 ○○委員、お願いします。
 
○○○委員
 意見書にも書いたのですが、この場合の公的分析案というのはどれを指すのですか。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 よい御質問ですね。
 事務局さん、そこはもしよろしかったら御回答いただけますか。
 
○事務局
 ありがとうございます。
 公的分析班の分析結果というのは、最初の費-4-1の資料にございます約○○万円/QALYという分析結果になる予定でございます。
 
○○○委員
 追追加分析で何か根拠を求めろと前回指摘があって、その根拠に基づいて出したのはもっとICERが大きな値になっていると思うのですけれども、そちらを採用しないで追追加分析を指示する前のものを採用するというのはどういう根拠によるのでしょうか。
 
○事務局
 事務局でございます。
 こちらに関しましては、科学院のほうからお答えいただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 では、科学院さん、お願いします。
 
○国立保健医療科学院
 我々としましては、先ほど御説明したように、前回御提示させていただいたICERのコスト/QALYが710万円という結果が現時点でも一定の妥当性を有しているのではないかと考えておるところですけれども、一方で、専門組織の先生方から、単純な仮定によって、根拠のない仮定によって25%と設定するのはいかがなものかという御指摘をいただいたことから、FIDELITY試験あるいはこの疫学研究の結果に基づいた結果を提出したところでありまして、我々としては、710万円だと今のところ十分な妥当性があるのではないかと思っていますが、そこから先の議論については先生方の御判断になるのかなと認識しているところです。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 前回科学院さんが出された数字について、いわゆる根拠と頑健性みたいなものについての議論があって、追加分析をしていただいたということでありますので、スタートラインとしては前回の結果がまずは基準であって、今回参考的に出されたものを正採用するかどうかということを一度先生方と諮りたいと思いますけれども、科学院さん、そういう理解でよろしいですよね。
 
○国立保健医療科学院
 我々の理解としてはそのように考えているところです。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 いかがでしょうか。今回、幾つかの仮定をもって、前回の数字が正しいということをより丁寧に御説明いただく過程の中で参考として一部今回数字が出されていて、その結果がより悪くはなっているのですけれども、この位置付けについてはどういうふうにこの組織の中で整理をさせていただきましょうか。
 ○○委員、御質問された手前、いかがですか。
 
○○○委員
 前回私が発言したのは、科学院さんがおっしゃったように、保守的なアサンプションで、今回の臨床家の先生方の御意見にもあるように、さすがに25%ぐらいは日本人集団は低いだろうという非常に保守的なものを使って七百何万円というのが出たのでした。そこでこれは、アサンプションではあるけれども、そういう大きな不確実性をはらむ中での最善の判断とすればその辺が妥当ではないかということを申し上げたのですけれども、私の意見は少数意見で、アサンプションなんかに基づいて評価してはならないということで、それなりの根拠を持ってこいという御指示で今回の追追加分析が出たと思います。ですので、そもそも今回の結果にそれなりの根拠があるのだったら今回のものを採用すべきだし、今回のものよりアサンプションのほうがまだましだというのだったら前回のを採用すればいいと思うのですけれども、違いますでしょうか。
 
○国立保健医療科学院
 ありがとうございます。
12ページ目で25%のデータについて検討を行っていましたが、そのような文献は同定できなかった。一方で、他の割合についてもなかなか難しい側面があるということは、もちろん追追加分析の結果の一部というか、先生方に御質問いただいたことに対する我々なりの御回答だと考えています。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 そう考えると、前回の25%はある程度妥当というか受け入れられる範囲に入っていたということを今回は先生方と科学院さんと御一緒に整理をしたと思いますので、前回の数字で中医協に諮るのがいいかなと思うのですけれども、いかがでしょうか。
 ○○委員、どうぞ。
 
○○○委員
 分かりました。
 ですから、根拠をそれなりに求めてこいと言われまして、一生懸命探していただいたけれども見つからなかったというのがまず第1の答えで、でも、そういう中で、前回もありましたけれども、疫学の調査とかFIDELITYの日本人のちっちゃい集団などをしたら、参考までにああいう数字が出たという整理ですね。分かりました。
 それなら、追追加分析はしたけれども、前の結果に落ち着いたという理解で承知しました。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 その他の先生方、いかがでしょうか。コメントがあれば御遠慮なくお願いします。
 では、○○先生、お願いします。
 
○○○委員
 費-4-2の9ページの公的分析の考え方というところは、この25%という値はやや保守的な仮定、すなわち少なくともこの程度のリスク低減は確実に存在するということにはコンセンサスが得られるであろう値ということで、これはベストアサンプションとかベストエスティメートではなくて、やや保守的な仮定なのですよね。つまり、企業にとって有利な仮定、設定と読めたのですが、そうではなくてベストゲスの値を使うべきではないのでしょうかと思いました。
 今回は追追加分析をやっていただいて、少なくとも25%を支持するデータはなかったというのが12ページの結論ですね。そうすると、ますます企業にとって有利な、やや保守的な仮定ではなくて、ベストエスティメートとかベストゲスで値を推計すべきではないかと思うのですが、そういうことは可能ですか。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 科学院さん、それはいかがですか。
 
○国立保健医療科学院
 我々としては、なかなか明確にお勧めできるような数値を先生方に提示し得る状況にはまだ至っておらず、この25%のデータを含め、先生方に御検討いただければと考えているところです。
 
○○○委員
 そうすると、臨床の専門家でない私などにとっては、その後示していただいた追追加分析あるいはそれの元となったデータぐらいしか判断をするための根拠の情報はないわけですが、一方で、もし臨床の専門家の意見ですよね。エキスパートオピニオンで値を決めるということも、どうしても数字が定まらないときにはあり得ると思うのですけれども、その先生方の御意見を先ほど伺う限りでは、なかなか微妙な表現だったと思うのですが、25%がベストゲスだというように読み取っていいのかどうかです。そうであれば、この25%で結構だと思いますが、そうでないとすれば、これは企業にとって有利というか甘い値を採用したという形での結論の持っていき方のように思うのですが、エキスパートというか臨床専門家の方の御意見は、25%が最も妥当あるいは適切ということで捉えてよろしいのでしょうか。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 今日は臨床の専門の方々がいらっしゃらないので、これから先の議論は難しいところもあるとは思うのですけれども、個人的にはベストかベターかとかというものは論じられるレベルで先ほどの25%とかの係数になっているかどうかが気になります。科学院さんに聞くのも変な話かもしれませんが、そもそも今回の議論の中でベストというか最適解みたいなものを探索的に議論できるような状況にあるのかどうかというと、多少科学的なところを含めて、御意見があれば伺いたいのですけれども、いかがでしょうか。
 
○国立保健医療科学院
 大変難しい状況で、非常にデータが限られている中で、あるいはFIDELITY試験における日本人集団のデータが限られている中で、なかなか御期待に添えるようなきちんとしたデータが御提示できないという状況なのは、我々としては非常にじくじたる思いでおるところであります。
 ただ、これの値を検討するに当たって、先ほど企業の方にも質問させていただきましたけれども、例えば企業の方も納得されるのであれば、もう少しn数の多い、不確実性の小さいけれども、日本と環境が多少類似しているようなアジア人集団において同様の形で企業の方に補正係数を出していただいて、その値で計算するというようなやり方もあるのではないかという議論があったということは一応御紹介しておきますが、それがいいのかどうかというのはまた少し別の問題になるかなと感じているところです。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 逆に言うと、科学院さんから見たときに、それがある意味ではベストに近い議論というか、この議論をやり切ったということに関してはそこまでやるべきみたいな考え方もあるということでしょうか。先ほどのディスカッションも確かにそのとおりだなと思っていたので、一定の理解はしています。
 
○国立保健医療科学院
 我々としては、今のところ、手持ちの情報でできる限りのことはさせていただいて、もしもう一歩やれと御指示いただくのであれば、そういうアジア人集団、もう少しnの大きいアジア人集団を含めた分析というのはもしかしたらあり得るのかなと思っている段階でありまして、ただ、我々としては、現時点でそのデータはないので検討できなかったので、現時点では、我々としては、委員長がおっしゃるとおり、大いに探してできる限り手を尽くさせていただいて、このような状況だと考えています。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ちなみに事務局さんに確認しますけれども、これにまた追加分析みたいなものは、スケジュール的にも制度の立てつけとしても物理的には無理ではないかなと考えていたのですが、事務局さんから何かそこについてのコメントはございますでしょうか。
 
○事務局
 事務局でございます。
 技術的には、当然何らかの理由があれば再びということはあり得るかと考えておりますが、どういったことが理由でやはりもう一回ということを整理するかというのは理由の整理が必要かと考えてございます。基本的には、今、そして、この会議に至るまでで公的分析でできる限りの手を尽くしていただいたということですので、今提示しているデータで御議論いただければと考えているところでございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。いずれにせよ、この場で先生方とは決めさせていただかなければいけないということと理解しました。
 大変恐縮なのですけれども、この場に上がってきている情報の範囲で意思決定を先生方とさせていただきたいと思います。
 その前提で、論点は前回の結果を中医協に報告するのか、今回科学院さんが御苦労して出してきたICERを出すのかというところでありますが、○○委員としては、そうすると、今回の結果のほうがより確からしいというのでしょうか。科学的に説明がしやすいものになっているというお考えになりますでしょうか。
 
○○○委員
 限界はあるものの、そういう何かの実データなり疫学データなりを使って意思決定を下すのか、あるいはいわゆるエキスパートオピニオンに基づいてということなのか、いずれも何らかの根拠が示せればよいとは思います。
 ただ、私は、時間ばかりかかって申し訳ないのですが、費-4-2の16ページとか17ページで説明していただいている不確実性に関する公的分析の考え方ということで言いますと、イギリスでは、こうした不確実性の程度が大きいときには判断をより厳しい取扱いにしているということなわけですよね。日本はそうしませんということだったら別にいいのですけれども、日本の場合にはやや保守的な仮定に基づいて25%と言っている。イギリスとやっていることが反対なのですけれども、こういう考え方で日本は行くのだということであれば、これはある意味一つの前例として、今後も不確実性が一定程度あるときには、より保守的、つまり甘めの結果を採用しようということで議論していけばいいとは思いますが、そういうようなことでよいのかどうかということです。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 分かりました。
 そうすると、ガイドラインの解釈も含めてということですが、結果を見て甘いかどうかというのではなくて、あくまでも分析の前提条件として保守的な要件に基づいた分析結果がどちらなのかという御議論かなと思うのですけれども、科学院にお尋ねしますが、その点に関してはどうなるのでしょうか。
 
○国立保健医療科学院
 本件がどこまで一般化できるのかということについてはなかなか難しい側面もあるのかなと思っていますけれども、企業側の御説明でもあったように、イギリスのNICE等では非常に不確実性が大きいような場合については、きちんとした説明責任が特に企業側のほうに求められるということが、いろいろ議論の材料をより出していただくということが一般的なのかなと認識しているところです。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 それで、逆に言うと、分析をされた立場から、どちらが科学的に保守的なアプローチなのかどうかというのを改めてお伺いするとしたら、そこはなかなかお答えにくいとは思うのですけれども、いかがですか。
 
○国立保健医療科学院
 資料に記載させていただいたとおり、CVリスク25%という結果は、エビデンスがあるわけではないのですが、少し保守的な印象があるということで、それに基づいて前回分析を提出させていただいたということは公的分析の見解として持っているというところです。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 それに対して、今回数字が変わってきていますけれども、それはより保守的に精度を上げた分析をされた内容であると受け取っていいのかどうかというところなのですけれども。
 
○国立保健医療科学院
 この追加分析の結果について保守的かどうかという点については、正直なところ、真の値が分かりかねるので、我々としては学術的には何とも分かりかねるということになるのかなと考えています。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 分かりました。なかなか難しい話になってきましたね。
 どうぞ。○○委員、お願いします。
 
○○○委員
 ですから、私も○○先生と基本的には同じで、保守的と言えば聞こえがいいですけれども、このぐらいなら企業が呑むのではないかみたいなお話ではなくて、もっとちゃんとした根拠のものを持ってこいよというので、それを持ってきて新たにやったらああいう数字が出たと理解していました。ところが、科学院さんに今お伺いしたら、そうではなくて、探したけれども、それなりのデータはなかったけれども、御参考までに疫学とFIDELITYで数字を当てはめたらこうなりましたと。先ほどどなたかがシナリオ分析とおっしゃったけれども、そういう扱いだと。ですから、やはり前回のものが今回の議決の対象になっていると理解しました。そういう意味で、前回のほうを委員長が諮られたら賛成しようと思っています。ただ、そういう理由で賛成しようと思っているので、○○先生のおっしゃることはよく分かります。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 私も○○先生と○○先生のおっしゃるのはよく分かります。ありがとうございます。
 いかがですか。今までの意見を聞いて、ほかの先生方から何かお話はありますでしょうか。○○委員のほうから助け船みたいな話をいただいたところであります。
 随分このテーマについては議論をしてきていますし、これ以上は科学的な議論という意味ではなかなか難しいと思いますので、いずれにせよ整理をさせていただきたくて、改めて先生方にもお諮りします。今、いろいろな御専門の先生方も含めた御意見をいただきましたが、前回の結果についていろいろな論点があったので、今回それを整理していただいてきて、前回の結果はある程度の範囲に入っているということは確認し、もしかするともっと結果の悪い内容もあり得るかもしれないということだったと思います。ただし、これは多分今の科学院さんのお話を伺うとあくまでも参考であって、前回の結果でよろしいという話であれば、前回の結果で一回今回はまとめさせていただきたいと思います。もちろん、こういうものを次の品目に有効活用していきたい、議論をさらに深めていきたいという前提でありますけれども、それについて何か御異論というか御議論のある先生がいらっしゃったらいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 ○○先生、どうですか。
 
○○○委員
 事務局に伺いますが、これは多数決で決めるのでしたか。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 多数決はあまりしたくないなと思ったりもしていたのですけれども、最後はそうすると多数決という話ですが、ただ、御指摘は確かにそこを一回確認しておかないと、科学院さんのほうがICERの新しい数字を出されたので、それをちゃんと今回議論すべきというのは大変重要なメッセージだなと思って今伺っていたのですけれども、それがどれだけ今回選択すべき優先順位があるのかというのは科学院さんの話を聞いても分からないということですから、科学院さん、これは参考的なデータという取扱いでよろしいということですか。
 
○国立保健医療科学院
 参考と言っていいのか分からないのですけれども、正確に申し上げれば、我々としては前回提出させていただいた分析が適切なのではないかといまだ認識しているところでありますけれども、前回の議論の中で純粋な仮定に基づいて設定するのはいかがかという御指摘を受けて、組織の先生方からの依頼を受けて御提出させていただいた分析だというのが正確な表現になるのかなと思っています。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 分かりました。
 では、それを踏まえて、十分に先生方の御意見をいただいたと思いますので、あえて前回の結果に御反対の先生がいらっしゃったら、挙手というか御発言いただきたいと思います。もしなければ、前回のもので今回は整理させていただきたいと思います。いかがでしょうか。
 
○○○委員
 臨床の専門家の先生方にもしも改めて確認可能であれば、この25%というのは先生方が御判断される最も妥当な値だと御認識されるのかどうかということです。事後的にて結構ですので、そこが御確認いただけるということであれば、私はこれで異存はありませんが、公的分析のほうで書かれている完全に仮定に基づくということでこれを決めてしまうのはとてもよくないと思いますので、臨床専門家もこの値ということで御納得ということであれば、私は異存はございません。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 
○事務局
 事務局です。
 追加ですが、補足させていただければと思いますけれども、委員の意見書の中で○○先生と○○先生から臨床的な立場から御意見をいただいております。○○先生の御意見については、簡単に述べれば25%リスク低減は一定程度理解はできると。○○先生におかれましては、25%でもCVリスクが存在することは臨床的にも妥当と考えるということかと思います。
 前回からの議論でもそうですが、係数は受入れ可能というところまでは臨床的に言えるということでありまして、では何が一番適切なケースなのかということであれば、前回もそういったやり取りがあったかと思いますが、幾つと言うのは難しいというところがこれまでの臨床の先生方の御見解だと理解してございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 そのような点もあって、最初、冒頭に○○先生の話も私のほうからさせていただいたところであります。ただ、○○委員のおっしゃるのももっともな話なので、どういう形になるか分からないですけれども、今回御欠席されている臨床の御専門の先生方に改めて確認を行うということは事務局さんのほうでも少し御留意いただいても宜しいでしょうか。先生方、一応そういう形で今回はまとめさせていただければと思います。
 お手数をかけますけれども、そういう形で、改めて先ほどの議決のほうに戻らせていただきたいと思います。
 そうすると、先生方から今いろいろな御議論をいただきましたけれども、前回の科学院、公的分析のほうが出された結果を中医協に報告するということで先生方に御了解いただければと思いますが、いかがでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。