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- 2023年10月27日 費用対効果評価専門組織 第7回議事録
2023年10月27日 費用対効果評価専門組織 第7回議事録
日時
令和5年10月27日13:00~
場所
オンライン開催
出席者
田倉 智之委員長、齋藤 信也委員長代理、池田 俊也委員、木﨑 孝委員、新谷 歩委員、新保 卓郎委員、野口 晴子委員、花井 十伍委員、飛田 英祐委員、米盛 勧委員、石原 寿光専門委員、福田 敬専門委員
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
木下医療技術評価推進室長 他
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
木下医療技術評価推進室長 他
議題
○ 企業分析の内容及び公的分析による再分析と追加分析結果の審査並びに費用対効果評価案の策定について
議事
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
続きまして、ケレンディア錠について、公的分析による追加分析結果が提出されておりますので、公的分析及び企業から意見聴取を行った上で、企業分析の内容及び公的分析による再分析と追加分析結果の審査並びに費用対効果評価案の策定について先生方に御議論いただきたいと思います。
では、ケレンディア錠について、企業から意見聴取をした後に御議論いただきます。
まずは事務局から説明をお願いいたします。
(事務局より説明)
○国立保健医療科学院
国立保健医療科学院です。
費-2-2の資料「フィネレノン(ケレンディア)に関する公的分析の追加検討・分析の概要」という資料を御参照ください。
2ページ目になりますけれども、こちらは製造販売業者によって提出された経済モデルの概要の図を示しております。基本的には、No CVイベントと、それから、CVイベントという2つの健康状態から成るマルコフモデルを用いて費用対効果を検討しているところになります。
3ページ目になりますけれども、製造販売業者によって提出されたモデルにおけるCVイベントの健康状態について、こちらは少しコミュニケーションにそごがありまして、公的分析としては「ベースラインにおけるCV event既往集団を含むもの」であると認識していましたが、製造販売業者によれば「分析開始後にCV eventを起こしたもののみを含むもの」であるということでありました。
実際に、本モデルの遷移確率等はCVDの既往の有無にかかわらずFIDELITY試験における全体集団データ、すなわちCV既往集団を含むものから設定されていたところです。
このことから、公的分析は製造販売業者による見解を受け入れまして、この点に関して公的分析が再分析したパラメーター等の設定について、製造販売業者の提出によるものに戻すことにいたしました。
なお、5点目になりますけれども、年齢、性別、ベースラインの患者分布などの背景因子についても、公的分析では日本人集団のものと一致するように変更していましたが、製造販売業者の説明により、ベースラインを変更しても、遷移確率等が変化しない。あくまで全体集団をトレースしたモデルでありましたために、FIDELITY試験における全体集団のデータに一致させた上で、次のb)のような心血管イベントと心血管死亡リスクの調整等を行ったところになります。
4ページ目になりますけれども、心血管イベントと心血管死亡のリスクについてになります。製造販売業者は、FIDELITY試験における全体集団データを用いて、分析モデルにおけるCVイベントの発症率や腎イベント発症率、CV死亡率等の遷移確率等の設定を行っております。
一方で、FIDELITY試験の標準治療群について見ますと、全体集団と日本人集団におけるCVイベントを比較した場合、日本人集団のほうがかなり低い傾向が見られております。これは4ページ目の下の表になります。
5ページ目ですけれども、その他の臨床研究の結果、近年のCKD患者におけるコホート研究の結果によっても、やはり年齢や性別、糖尿病の有無等を調整したもの、右側の図においても、米国のCKD患者と比べて日本のCKD患者はCVD無イベント生存率が良好であったことから、日本のCKD患者におけるCVイベント発生率は海外に比して低いことが示唆されるのではないかと考えているところです。
6ページ目ですけれども、上述の点から、FIDELITY試験における全体集団データをそのまま用いた場合、特にCVイベントやCV死亡の発生率が日本人集団の実態よりも過大に設定されているのではないかと考えているところです。
この場合、標準療法群と比較したフィネレノン群の費用対効果は過大に評価されてしまうことが懸念されるところです。
一方で、では、どの程度のイベントリスクが低減するかにつきましては、不確実性が大きく、一意に結果を提示するのは難しいと考えています。
このため、追加分析では、全体集団と比較して日本人集団ではCVイベントやCV死亡の発生率が低くなる可能性を考慮するため、CVイベントの発生率、CV死亡の発生率に対して、一定の係数を乗じて補正を行うことにより、標準療法群のリスクがFIDELITY試験における全体集団のデータよりも低いと想定される場合のICERを算出いたしました。
7ページ目になりますけれども、以上の点から下記の点に関する追加分析を行いましたということでして、1点目は、初回のCVイベントのリスク及びCVイベントの再発リスクのパラメーターに0.5~1.0の係数を乗じた補正を行いました。また、CV死亡のリスクのパラメーターに同様の係数を乗じて補正を行ったところです。上記のリスク補正係数を一意に設定することには大きな不確実性がありましたが、ベースケースとして、一意のICERを算出するために、便宜上、CVイベントの発生率とCV死亡の発生率に補正係数として0.75を乗じたところです。この0.75は単なるアサンプションでありまして、この結果はCVイベントの発生率とCV死亡の発生率に対する補正係数を変動させた場合の感度分析の結果と合わせて御検討いただきたいと考えているところです。
8ページ目ですけれども、公的分析による追加分析の結果として、ICERが補正係数を両方0.75とした場合、ICERが700万円超という結果になっているところです。
9ページ目ですけれども、2元感度分析におけるICERの推移として図をお示しさせていただいています。CVの補正係数が5%程度小さくなると、すぐにICERの値が500万円を超えるような結果が示されていまして、この0.5~1.0の間ですと、最も面積の大きい医療費が500万円から750万円の間のICERの量となります。
10ページ目ですけれども、追加分析結果の考え方としまして、CVイベントの発生率とCV死亡発生率に対して、それぞれの補正係数0.75を乗じた追加分析の結果、こちらはICERが713万円/QALYになりました。
CVイベント発生率とCV死亡発生率に対する補正係数をそれぞれ0.5~1.0に変動させた2元感度分析においては、ICERが500万円/QALY未満になる領域は極めて限定的であることが示唆されていると考えております。
これらの結果を総合的に考慮しますと、標準治療と比較したフィネレノンのICERは500万円/QALYを少なくとも超えると判断することが適切なのではないかと考えているところです。
11ページ目ですけれども、結果のまとめになりますが、患者数の割合は100%、追加的有用性はありとなりますが、ICERは500万円から750万円の間に位置しているのではないかと考えているところです。
御説明は以上になります。
○事務局
(事務局より説明)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、まず本製品に係る公的分析の追加分析結果に対する意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者意見陳述者入室)
○費用対効果評価専門組織委員長
私は費用対効果評価専門組織委員長です。
早速ですが、10分以内でケレンディアの総合的評価について御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。
では、始めてください。
○意見陳述者
よろしくお願いいたします。バイエル薬品の○○と申します。本日は陳述のお時間をいただきましてありがとうございます。
先日、10月6日にお送りいただきました公的分析における追加分析結果につきまして、弊社からの意見を述べさせていただきます。
それでは、まず、2ページ目を御覧ください。こちらは、これまでに検討されました本剤における費用対効果評価の協議につきまして整理させていただいております。
6月23日に開催されました専門組織Ⅱでは企業分析結果が受理されまして、一方で、公的分析班による再分析も実施することとされました。
8月10日には公的分析の結果が提示されましたが、その際には、日本人集団と全体集団の間で異質性の有無が明確ではないために、腎イベントに関するハザード比はガイドラインで推奨されておりますとおり、1として設定した分析がなされました。一方で、CVイベントにつきましては、全体集団のデータを用いることが妥当であると御判断いただいて分析いただいております。
専門組織Ⅲの開催直前となる9月13日には、C2H側から照会事項としまして分析の設定条件についての確認がございました。弊社としまして、ベースラインのCV既往の有無で層別することはモデルの設計上、適切ではないのではないかと説明いたしました。また、モデルで用いる患者背景データにつきましては、全体集団での移行確率等で設定されたモデルに日本人集団の患者背景を当てはめることは許容されるのではないかと、公的分析のお考えに弊社も同意いたしました。
前回9月22日開催の専門組織Ⅲでは、公的分析における追加分析が必要であると判断されたために、総合的評価は保留となりました。そして、公的分析にはCV既往の有無による層別化について追加分析を実施することと指示されておりました。
今回10月6日の時点で提出されました公的分析の追加分析結果では、専門組織で指示された内容ではなく、これまで議論されてこなかった分析方法によって算出された結果が提出されてまいりましたというのがこれまでの議論のまとめになります。
次の3ページを御覧ください。これまでの議論のまとめを整理させていただきましたが、その上で今回、弊社が意見陳述させていただきますのは、今回の公的分析の内容が、前回の専門組織Ⅲでの決定事項の内容から逸脱していると考えられるということでございます。
具体的には、1つ目としまして、前回の専門組織Ⅲでは、日本人集団の患者背景を使用することに合意しているにもかかわらず一転して全体集団の患者背景を使用しておりましたこと。
2つ目としましては、追加分析として指示されたCV既往の有無による層別化した分析ではなく、CVイベントとCV死亡のリスクという新たな論点が追加されて分析が行われたこと。
3つ目としましては、弊社の企業分析では一度提出したモデルから変更はしていないのですけれども、公的分析側では初回の分析内容から事前の指示や合意がないまま分析がなされていることです。これは費用対効果評価分析の費用対効果評価に関する取扱いという通知において、これに沿うものではなかったことでございます。
次の4ページを御覧ください。まず、こちらは先月の専門組織Ⅲでの決定事項でございます。
専門組織における主な意見としまして、日本人集団の患者背景を使用することの妥当性が確認されております。一方で、CV既往歴の有無によるベースラインの患者分布を層別化する方法につきましては企業側の分析が妥当との意見がございましたので、専門組織での審査結果の2として、公的分析について、CV既往の有無によるベースラインの患者分布の層別化による追加分析が指示されてございました。
次の5ページを御覧ください。こちらは先月10月6日に公的分析から提示されました追加分析資料の7ページ目の記載内容でございます。
下線を引いております箇所を読み上げますと「なお、年齢、性別、ベースライン患者分布などの背景因子についても、公的分析では日本人集団のものと一致するように変更していたが、その場合、遷移確率等がFIDELITY試験における全体集団データによるという設定と整合しないので、FIDELITY試験における全体集団データの値に一致させた」と書かれておりました。これまで日本人集団を使用しているにもかかわらず今回、全体集団の患者背景を用いることと変更されておりました。
なお、当初、公的分析では日本人集団の患者背景を使用することを推奨されておりましたけれども、一方で、これまでに評価が終了しております過去のHTA品目の一つでございますパドセブの分析事例におきましては、遷移確率等は全体集団を使って、年齢、性別は日本人集団の患者背景を使ったことが公的分析側でも認めていただいていることもございますので、弊社としましては前回の公的分析の方法には一定の納得をしておりました。
次の6ページを御覧ください。こちらは費用対効果における追加分析に関する制度上の通知文書でございます。
昨年2月9日に厚生労働省医政局長と保険局長との連名で出されたものになりますが、この通知の6ページ目以降に製造販売業者の分析データ等及び公的分析のレビューの審査という項目がございまして、この中に、専門組織は追加分析の必要があると判断される場合にあっては、国立保健医療科学院及び公的分析班に対して、理由を付した上で、追加分析の実施を指示することができるとあるものの、今回、専門組織の指示にはなかった新たな論点にて追加分析がなされておりました。
次の7ページを御覧ください。
最初に提出されました公的分析の結果では、CVイベントの発生率やCV死亡の発生率などの心イベントの治療効果やその他の推移確率など必ずしもデータの異質性が認められないものについては、サンプル数の少ない日本人集団データを用いることによる不確実性の上昇を鑑みて、全体集団データの値を用いた。ただし、年齢、性別、ベースライン患者分布などの背景因子については、日本人集団データの値に一致させたとの報告内容でございましたが、10月6日に提出された追加分析を見てみますと、FIDELITY試験における全体集団のデータをそのまま用いた場合、全体集団と比較して日本人集団ではCVイベントやCV死亡の発生率が低くなる可能性を考慮するために、CVイベントの発生率とCV死亡の発生率に対して、一定の係数を乗じて補正を行うことにより、標準療法群のリスクがFIDELITY試験における全体集団のデータよりも低い場合に想定されるICERを算出したとの記載がございました。
繰り返しになりますが、CVイベントとCV死亡のリスクにつきましては、公的分析の分析方法が前回と今回で指示なく変更された理由の説明がない一方で、CVベースラインを含む日本人集団の患者背景を使用することは専門組織Ⅲで合意していた内容でございます。
次の8ページを御覧ください。弊社からの意見を最後にまとめますと、これまでの公的分析の方法でございます腎イベントのハザード比を1に置き換えること、また、CVベースラインを含む患者背景を日本人集団を使用する設定については同意できるものと我々も考えます。
公的分析の追加分析で実施されたCVイベントとCV死亡のリスクに関する補正方法とその結果が、説明理由がないものの、完全に誤ったとか、そういったものではないと考えておりますので、ある一定の同意はできるかと我々も考えます。一方で、専門組織Ⅲでの追加分析での指示内容にはなかった新たな論点が追加されていることにつきまして、費用対効果分析の通知に照らし合わせると、制度上に限っては許容されるものではなく、専門組織の指示に逸脱しているのではないかと考えます。
また、それについての理由が言及されていないことに関しまして、費用対効果の制度あるいはプロセスに応じて分析する考えの下、専門組織の先生方が今回の追加分析のプロセスに違和感を覚えるようでございましたら、腎イベントのハザード比を1として、CVのベースラインを含む日本人の患者背景を使用する分析方法による結果も御考慮いただくことも我々は希望するものでございます。
さらに今回、追加分析でなされた全体集団の患者背景を用いた分析の場合は、日本人集団の患者背景よりもさらにICERが良好であることについても御考慮いただきたくお願い申し上げます。
弊社の提案する分析内容ごとのICERをこちらの表に提示させていただいておりますけれども、御参考までに、次の9ページにはそれぞれの分析内容に基づいて算出した増分効果と増分費用をお示しいたしております。
こちらも御確認いただきまして、私の陳述を終わらせていただきたいと存じます。最後まで御清聴いただきましてありがとうございました。
弊社からの意見陳述を終了いたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、委員の方々から御質問はございますでしょうか。
○○委員、お願いします。
○○○委員
すみません。私が事実関係を十分理解できていないのかもしれないのですが、科学院というか、今、公的分析が専門組織の指示なく勝手に分析したような言われ方をされたと思うのですけれども、私の理解ではそうではなくて、前回、企業側からの陳述意見について、この専門組織の中で、例えば仮にこういう設定で分析したときにはイベント発生リスクを過大に推計する懸念があることについての議論をしておりまして、それに基づいて科学院は適切に追加分析を行っているという理解を私はしておりますので、特段問題ないプロセス、何か逸脱とか、そういうことは私としては認識しておりません。
その上で、この発生リスクの補正、0.75という数字で今回補正したものというか、要するにその補正の係数が、どのくらいの値が妥当であるかについての何か御見解はありますか。
○意見陳述者
ありがとうございます。
○○先生のおっしゃるとおりでございまして、我々としましては、我々の陳述の後、我々は退室しますので、どのような議論がなされたかは正確には分からないものでして、我々は、その後、決定された内示だけを見て、通知に沿ったものか沿っていないものかを判断いたしましたので、我々が受け取った内示に関しましてだけから見ますと、これまで出された通知とはそごがあるのではないかといった陳述を行ったわけでございまして、我々がいないところでのディスカッションで、○○先生がおっしゃるように、そういった議論がなされていて、そこがないということであればそのように我々も受け取りたいと存じます。
そうした上で、先ほど最後に御質問いただいたような、0.75が妥当かどうかでございますけれども、そちらにつきまして、我々はその妥当性は少し疑問を持っておる次第で、何が適切かといった根拠がどこにもないのが事実でございます。
ただ一方で、何もない物差しの中でそういった0.75という数字で決めてくださった公的分析側の御意見も一案ではあるのかなと存じますけれども、ただ一方で、我々が今後、企業分析側でもそういった何も明確な物差しがない場合に、我々もこういった、ざっくり0.75でとかといった数字を使えるのかの合理性が今後、我々の企業側も使えるのかどうかも疑問を持っている次第ではございます。
○○○委員
分かりました。
私は、0.75が適切かどうかは、今回、この専門組織の中でまたいろいろな有識者の先生方と議論した上で決定されるものだと理解しております。ありがとうございました。
○意見陳述者
ありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他の委員、いかがでしょうか。
○○委員、お願いします。
○○○委員
企業で1にしたほうがいいのではないかという意見ですけれども、添付文書にも日本人集団の場合は効果が弱い可能性があると書かれているわけですね。その点を踏まえて企業はどうお考えになるのでしょうか。
○意見陳述者
今までのエビデンスで申しますと、臨床試験からは日本人のデータの効果は弱いと出ておりますけれども、それをサポートするデータがこれまでに出てきていない。添付文書が今後変わっていくかどうかも、またエビデンスが出てきてどうなるかといったところでございますので、我々はそこについては1よりも低い0.幾つにするべきとかしないとか、そういった議論は私は持ち合わせておりませんで、申し訳ございません。
ですので、我々も数字を1にしろとかという主張はしておりません。
○○○委員
分かりました。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他、いかがでしょうか。
では、○○先生、お願いします。
○○○委員
用いられた解析について私の理解が追いついていないところがありまして、お尋ねしたいと思うのですけれども、今回は腎関連のハザード比に関しては日本人集団で異質性があるかもしれないから点推定値は1を使うところで、そこは合意されていると思うのです。そこは別に議論するポイントではないと思うのですが、日本人集団の年齢、性別等の背景データを使うのは実際の解析のどこに使われたのかと思いまして、これはCV既往で層別解析をされるときの分布を計算されるときに、日本人集団の年齢、性別を考慮に入れてCVの既往を割り出したというところに反映されている理解でよろしいでしょうか。それとも、それ以外で反映している日本人の年齢、性別を調整したものを反映されるということなのでしょうか。
すみません。私はイベント率の調整自体はしないほうがいいと個人的には考えておりますので、そこはハザード比を使うところで各国のイベント率の違いも考慮に入れた上の知見、グローバルの知見なので、私はハザード比で日本人データの不確実性が担保されているのであればイベント率自体を変える必要はないと個人的には思っています。ただ、1つだけ分からないのが、日本人集団の背景情報をどこに使うべきだというところの議論だったのかなと。もともと、企業さんがどのポイントで日本人集団と言われたのかなというところが教えていただければと思います。
○意見陳述者
日本人集団の患者背景を用いるのは、我々は企業分析では行っておりませんで、公的分析側でCV既往のありなしがあるところから日本人集団のデータを患者背景のデータとして用いるところがなされておりましたので、我々としましては、そういった使い方をされるのであれば我々も同意いたしますと言ったまででございます。
○○○委員
というのは、CV既往の分布を日本人に合わせる意味で企業さんは同意されたということですね。
○意見陳述者
はい。
○○○委員
だから、それ以外の解析で日本人の遷移確率を使うべきだと言われたわけではないということですね。
○意見陳述者
そうではないです。
○○○委員
分かりました。
私もCVの分布を日本人に合わせるべきだというところで公的分析班が提案されて、それに企業さんが合意されて、今、そのように修正されたところになっている。その点は合意されている。それで、合意されていないところは、イベント率自体を調整すべきかどうかという理解でよろしいですか。私もその点は問題かなと個人的には思っています。
○意見陳述者
ありがとうございます。そうです。
○○○委員
私からは以上です。ありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他の委員はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
○意見陳述者
どうもありがとうございました。
(意見陳述者退室)
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、議論に先立ちまして、企業から幾つか公的分析の追加分析についての指摘がございましたので、科学院からこちらについて御意見などはございますでしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。国立保健医療科学院です。
企業さんも、CVイベントとCV死亡リスクに補正係数を掛けること、あるいはその得られた結果、713万円/QALYという点については一定の同意をされているということですので、我々から特に申し上げることはないのですが、プロセスについては、我々が企業の見解を十分に受け取れなかったことが発端になっているので大変申し訳なく思っているのですけれども、前回、池田委員からコメントがありましたように、我々としては、このCVリスク集団については、FIDELITYの全体集団モデルを使うと少し過剰なのではないかという問題提起をさせていただいたという意識を持っておりまして、そのことが必ずしもうまく伝わっていなかったのかもしれないのですが、そういう点ではプロセスの点で大きな問題があるとは考えていないというか、組織の先生方にこの点についても御承認いただいたものと受け止めて追加分析させていただいたところになります。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、当該品目について、御議論をお願いいたします。
なお、御議論に当たっては、追加分析の結果を踏まえ、企業分析結果と公的分析の再分析結果のどちらがより科学的により確からしいかを相対的に評価することを踏まえて御議論を進めていただきますようお願いいたします。
では、○○委員、お願いします。
○○○委員
すみません。今回の追加分析におきまして、補正係数を0.75と置いて点推定をされているのですが、はっきり0.75という数字については、でたらめと言ってはいけないですね。根拠がないとされているわけで、この数字を使って意思決定することは極めて問題だと思います。やはり何らかの根拠は必要だと思います。
それで、この数字をどのような数字が最も、不確実性はあるとはいえ、点推定をするときに最も適正な値として定めるためには、費-2-2、科学院から出していただいた資料の中のどの表やグラフからその数字は割り出すというか、根拠として考えればいいのか。例えば4ページ目の全体集団と日本人集団のイベント発生率の違いを見て、ここから何か数字を、あるいは5ページ目の、もう少し大規模な研究だと思いますが、こちらのグラフのCVイベントの差異を見て、ただ、単純にこれを見ると、0.75という数字よりもよほど小さいような気がしますが、ここからその数字は何らか算出できるのか。その辺りのもし方法があるのであれば教えていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○費用対効果評価専門組織委員長
では、科学院さん、お願いできますでしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
4ページ目、5ページ目に、全体集団と日本人集団のイベント発生率の差異について示させていただきました。こういったデータに基づいて計算する方法ももちろんあると思うのですが、〇〇先生がおっしゃったように、0.75という数字はある種の仮定に基づいているものですので、それが臨床的な意味でサポートいただけるものなのか、あるいは臨床的に少し違和感があるものなのかどうか。そういう臨床的な点から御検討いただけるとよいのではないかと感じているところです。
以上です。
○○○委員
ぜひ何らかの、そういうエキスパートオピニオンでも何でもいいというか、そういうものでもよいのですけれども、企業が本当に気になることをおっしゃっていて、こういう勝手な数字を置いてこれから企業も分析していいのですねみたいな、それの始まりになってはいけないので、これは科学的に妥当な算出をしていく、推計をしていくためにやっているわけで、都合のいい数字を捻出するためにパラメーターを勝手に決めるということでは本末転倒でございますので、ぜひ、この数字の妥当性につきましてはきちんと検討した上で点推定はすべきだと思います。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
では、○○先生、お願いします。
○○○委員
統計的なポイントとして、イベント率で調整するかどうかは非常に大きなポイントだと考えております。といいますのも、グローバル治験を行うときはイベント頻度は各国で違うのは当たり前で、そこがマイナスにならないように、介入群とコントロール群の割合を無作為にバランスを国の中で取る、地域の中で取りながらハザード比を、効果量としては比を見ていくところで科学性を担保しています。
なぜ、比を見るのかというと、例えばイベント率がコントロール群に、大げさな例ですけれども、80%、介入群でそれが40%になる場合、比でいくと0.5、50%のリスク削減になります。8%が4%になるときも、比でいくと0.5ですので、もともとのイベント率が80%と40%と高い国も、8%と4%と低い国でも、効果としてはハザード比は0.5と一定に推定できるようにわざと比を使うのです。
そのときに、ハザード比ではなくてリスク差という考えもありまして、差の考えでいくと、80引く40は40、8引く4は4で、イベント率が統計量に直接的な影響を及ぼしてきますので、疾患の割合が低い国ほど意味がないのだと取られないように、臨床試験ではあえてハザード比、比をもって効果量とするところをやっているのです。
その点から考えますと、今回はハザード比において腎関連イベントであると、日本人集団の点推定値で1を超えているところで異質性があるかもしれない。ただ、明確なエビデンスはないので、日本人集団のハザード比においては、シミュレーション上は1.0という、効果がない値を持たれたところが一つ。
では、日本人集団の背景データはどこに使ったかというと、これはCV、層別解析でどう層別していくかという割合を推計するときに、日本人データで年齢と性別を考慮に入れたCVの既往で考慮に入っているところで、ここで十分ではないかと考えます。日本人集団がイベント率が少ないところでこれを調整してしまうと、ICER自体がバイアスを持って推計される可能性があります。
いけないと言っているわけではないのですけれども、過去に日本人のイベント率で遷移確率を調整し直した例がないのではないか。統計的なポイントでいつも見させていただいていますが、このような調整係数でICERを調整した事例は、私が覚えている限り、過去ではございませんので、イベント率が直接的にICERに影響を及ぼす場合、従来やってこなかった日本人のイベント率で調整するのはすごく大きな決断だと思います。
逆に言うと、今まで評価してきた技術も全て日本人のイベント率で調整すれば別の結果が得られる可能性は高いので、やはりこれはイベント頻度が多い少ないで治療効果の推定にバイアスが入らないために、統計や疫学の領域ではかなり気を遣いながらやっていることですので、急にこの段階で、この技術で突然、このような日本人のイベント率をもって調整し始めた意味が統計家としては理解できないポイントになります。
ですので、いい悪いを言っているのではなく、やるのであったら相当の理由を持ってやる必要があると考えています。これが一つ。
すみません。それから、これは私のコメントなのですけれども、科学院さんに2つ質問があります。
一つは、イベント率が増えた場合、ICERが増えるというふうに、直感的な方向性はそっちかなと私は思っていたのですけれども、イベント率が減ってICERが増えるのはどのような理由で起こったのかという点が一点。
あと、例えばイベント率が低いと必ずICERは高い方向に計算されてしまうのでしょうか。傾向性を持ったものなのかが2つ目の質問になります。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
御意見と御質問だと思いますけれども、科学院さん、いかがでしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
全ての質問にお答えできているか分からないのですけれども、基本的な考え方としまして、ガイドラインの9.1節には、ICER等を算出するに当たって使用する有効性・安全性、QOH等のデータについては、原則として日本における現実の臨床成績を反映しているものを優先的に使用するというふうに記載されていますので、臨床試験の世界ではいろいろ御議論はあるところなのかもしれないのですが、日本においてベースラインリスクが低い場合においては、日本において低い実態を反映して分析する必要があるのだと我々は考えているところです。
不確実性の問題についてですけれども、確かにどの程度、例えば0.75なのか、0.5なのかという定量的な程度については非常に不確実性が高いと我々は考えていますが、日本において、諸外国、特に欧米諸国と比べて、CKD患者さんのCVリスク、ベースラインリスクが低いことは、この点については不確実性が少ないのではないか。つまり、定性的には不確実性がないけれども、定量的には不確実性が大きい状況なのではないかと認識しておりまして、このことをやはり分析上反映させるのは非常に重要なことなのではないかと考えているところです。
それから、CVイベントリスクが一般的に費用対効果においては、イベントリスクが低くなるほど費用対効果は悪化するということでありまして、例えば海外集団においては10人に1人がイベントを起こすような状況で、ただし、日本人集団では100人に1人しかイベントを起こさないような状況であれば、いわゆるリスク差あるいはNNTは10倍程度違ってくるわけでありまして、その点、1人救命するのにかかるコストが当然大きくなってくるのは、NNTあるいはリスク差に費用を掛けていくことになればそういうふうになるのではないかなと、定性的な議論ですけれども、考えているところです。
全てお答えできているかどうか分からないのですけれども、取りあえず、以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
では、今の2点を踏まえながら、○○委員、どうぞ。
○○○委員
すみません。今までCVイベントが日本人集団で低いのは、薬に関係なく、技術に関係なく起こってくることだと思います。そうすると、これまでCV関係のイベントに対する技術を解析されたときは全て調整されていたのでしょうか。これまで調整変数は見たことがなかったので、マルコフのシミュレーションでは日本人特有のデータからイベント発症率も計算してやられていたということですか。
少なくとも、ハザード比に関しては治験のデータだと思うのです。それが点推定値の1.0か何かは別として、薬の効果自体は治験のデータ。ただ、例えばイベント率自体は今まで日本人のデータでマルコフシミュレーションをやられていたのでしょうか。
言い換えると、今回、調整係数を掛けなくても、そのまま日本人のイベント発症率をシミュレーションに使えば逆にいいのではないかというやり方もありますけれども、すみません。私の質問は、今までやってこられなかったと理解しているのですが、これは今までもこのやり方でやられていたのでしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
基本的には、先ほど申し上げたように、日本における臨床成績を反映しているような分析を行うということでありますので、日本におけるリスクイベントを合わせたような形で分析を実施してきているつもりであります。ただし、データが極めて乏しいとか結果に与える影響が小さいような場合にはそういうことを考慮しなかったような場合もあったとは思います。
ただ、糖尿病の治療薬のリベルサスの例などでは心血管イベントのリスク等々が諸外国とは異なるということで、日本人集団に限定したデータをもってネットワークメタアナリシス等を行い、追加的有用性の評価あるいは費用対効果の評価を実施したところでありまして、これは諸外国、世界中のデータをプールして解析を行ったときとは恐らく違った結果が得られ。
○○○委員
すみません。議論がぐちゃぐちゃになっているのですけれども、ネットワークメタ解析はハザード比を使っていますので、実際の疾患のイベント率は影響を及ぼさない統計量ですので、その場合は日本人のサブグループのデータを使ったということであって、日本人のイベント率を使われたわけではないと思うのです。
なので、今、私が心配しているのは。
○国立保健医療科学院
いや、ハザード比等もそうですけれども、ベースラインの推移確率等を求めるに当たって、ベースラインリスクが低い情報を反映してモデルを構築しているところになります。
○○○委員
そうすると、コントロール群のイベント発症率は日本人のコントロール内での発症率でやられているという。
○国立保健医療科学院
はい。プラクティカルに実施できているかどうかはいろいろ御議論はあるところかと思いますが、原則としてはそうすべきものだと考えています。
○○○委員
そうであれば、今後もそうしなければいけないですし、そこの議論はしないといけないと思います。
あと、すみません。先ほどイベント率が小さいとICERが大きくなると言われたのですが、イベント率が小さいとNNTは大きくなります。ただ、NNTは1人の患者さんを救うために何人治療しなければいけないかなので、そうすると、NNTとICERと同じように考えてもいいということなのですね。
すみません。私は医療経済学の専門なもので。
○国立保健医療科学院
基本的に、ICERは増分費用にNNTを掛けることによって簡易的には得られることになりますので、1件救うのに例えば10万円かかる。それが何人分必要かということですので、NNTの値に比例してICERは大きくなるものだと考えているところです。
○○○委員
そうしますと、一概には言えないのですが、やはり日本人では医療も発達しておりますし、国民性などからイベントが諸外国に比べて相対的には低い国民の場合は、諸外国に比べてICERの値は技術を問わず大きくなる傾向にあると言えるということでしょうか。そうなりますね。
○国立保健医療科学院
そうです。ベースラインリスクが低い場合はICERの値が高くなる傾向があるので、そういうことになるのかなと認識しています。
○○○委員
そうすると、今後、ベースラインリスクを評価するのであれば、我が国の費用対効果のICERは諸外国より高くなる可能性はあるということですね。
○国立保健医療科学院
そうです。ただし、コストの要素もありますので、あるいはQOLの要素もありますので、例えば日本の治療環境において医療費が安かったりするような場合はまた一概に何とも言えないので、その辺りのトレードオフの関係かなと考えているところです。
○○○委員
すみません。最後にしますけれども、私はやはり慎重に考えていただきたいのは、ハザード比はベースラインのイベントリスクによって解釈が変わらないように、差ではなく、比をもって効果を見るところで私たちは使っているのですが、逆に先ほど出てきたNNTで、差の考え方はイベントリスクによって、統計上影響を及ぼされるので、ICERもしかりであると、やはりイベントリスクで調整するかしないかは今後の費用対効果の解析結果にすごく影響を及ぼすことだと思いますので、やるかやらないかは、この技術だけではなく、今後、費用対効果のどうするのかも含めて慎重に議論していただきたいと思っております。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
○○委員、何かございますか。
○○○委員
多分、その議論は済んでいるのかもしれませんが、例えば日本のように虚血性心疾患の発生が例えば米国よりも少ないようなところだと、それを予防する医療技術の費用対効果は悪くなるわけです。もともと病気になる人は少ないので、一方、脳梗塞みたいに日本のほうが多い場合には、それを予防する薬は費用対効果がよくなるわけで、病気がほとんど発生しないのに予防の医療技術を使っていたら、その分、費用対効果が悪くのは当然というか、計算上はそうなるということで、薬の効き目が日米で違うというよりは、そもそも、そういう病気が進行する、あるいは悪くない人の割合が違えば、当然、費用対効果には跳ねてくるというか、影響してくるので、できる限り、やはり日本におけるベースラインの疾病のナチュラルコースとかといったものを反映させるのが適切だと思いますので、今回も可能な限りそうするべきなのかなと個人的には思っております。
その上で、0.75という値でいいのかどうかをどうしてもこのグラフから読み取れないのなら臨床の先生方の肌感覚でよいと思いますが、そうでなくて、あのグラフから何か読み取れるのなら何か読み取ったものをベースに点推定はすべきだと、すみません。しつこいようですが、思っておりますので、そのようなグラフからの読み取りは可能なのか、御専門というか、お詳しい方に教えていただきたいと思います。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
○○先生にお尋ねしますけれども、今、ご議論があったとおり、日米においてのリスク発生率を先生の御専門の分野から見てどのように捉えていらっしゃるか、御意見をいただけたらと思います。
○○○委員
リスクの発症は、先ほども○○先生がおっしゃっていただいたように、虚血性心疾患とかはかなり少ないですし、あと、脳血管障害は結構、日本人は多くてというのは、多くの生活習慣病を診ているような医師はそう思っていると思います。
ただ、あの0.75とか2元感度分析の図の右のほうだけ色が変わっているものに関しての肌感覚はなかなか難しいかなとは思いますけれども、あれは500以上にはなるのかなとは思いますが、その程度です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
日本の異質性があることは多分、先生方は御同意いただいた上で、分析の中において二重推計になるという科学院さんの指摘も懸念として皆さんは共有されていらっしゃると思います。その上で、今までの議論はそれをどのように分析に落とし込み、明らかにしていくのかという、方法論の内容ではあったと思います。この点について、今までの意見を聞いて科学院さんから何か、追加でコメントとかはございますでしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
○○委員から御質問がありましたが、5ページ目の右側のAdjustedのコホートになりますけれども、こちらは日本人と比べて米国人のイベントの発症リスクが約3.66、信頼区間が2.74~4.89という結果がこの文献上には登場しております。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
活用できるような根拠というか、何かを示すことが必要になった場合はここの情報ぐらいしかないということらしいのですけれども、池田委員、いかがですか。
○○○委員
すみません。そこから0.75と計算上言えるのなら結構だと思いますが、どうやったら0.75になるのか。そこを教えてほしいです。
○国立保健医療科学院
計算上は言えないと思うのですが、ただ、この右側の図の解釈をそのまま、3.66という数字をそのままここに当てはめていいのかは多分、いろいろな解釈があるかと思いますので、ぜひ、その点は臨床的な御見解等々を踏まえて御議論いただければと考えているところです。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
○○委員、どうぞ。
○○○委員
その単純に当てはめられない理由は何ですか。
○国立保健医療科学院
これもコホート研究を単純に比較して背景因子を調整している一つのコホート研究でありますし、また、FIDELITY試験の比較、ベースラインリスクを全て米国人のCKD患者、重症度等々が少し分からない中で同一に見ていいのかどうかが少々、我々でも議論等がありまして、そこは少し保守的にというところで設定したものなのでありますけれども、ぜひ、その辺りは、この辺の外的妥当性、内的妥当性を含めて、組織のほうで御検討いただければと考えているところです。
○○○委員
すみません。ありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
○○委員、どうぞ。
○○○委員
すみません。それでしたら、私は本当に今まで不勉強で、NNTと言われたら私たちの領域ではぴんときたのですけれども、やはりそこまでイベント率によってかなり影響される指標を扱っているのであれば、○○委員がおっしゃるとおり、えいやと0.75でやるのではなく、そこは正確に推計しにいくべきだと思います。
そうしますと、国が出している統計量とかを見るとCVイベントの率などは簡単に分かるようなものではないのでしょうか。諸外国と比べてになると、治験に参加した諸外国のデータを見てというと膨大な労力になるのかもしれませんが、何を言いたいかというと、今まで私が引っかかっていることが、やるのであればきちんとやる必要がある。では、それほど大事なものを今までほかの技術ではやらなかったのはどうしてかという、今、この議論が初めてここで起こっているところで、前例でもあったとはおっしゃいますけれども、ほとんど全ての疾患は諸外国と日本でやはり差があるものだと思うので、今まで全くこの議論がそこまで、私のように医療統計を専門としている者が気にするような、記憶に残るような議論はなかったとは思うのですが、ただ、ここでそこまで重要な事柄が今まで議論されなかったイコールするのであればどうやるべきか。えいやと0.75でやるのか、国の統計量まで調べてやるのかというところの議論が今までなかったのは不思議な気持ちがしております。
○費用対効果評価専門組織委員長
科学院さん、いかがでしょうか。多分、2点あったかと思うのです。
○国立保健医療科学院
国の統計という点に関しては、CKDをバックグラウンドに持っている患者さんの死亡率はなかなか公的統計のデータ等では捕捉し切れていないようなところでありまして、我々も検討したのですけれども、なかなか難しいかなと考えているところです。
もう一点目、過去にこういうことをやったかやらないかなのですけれども、過去にもやはり日本人の発症リスクが非常に低いような疾患についてはベースラインリスクを検討してやってきているつもりなのでありますが、その点、不十分で、これからしっかり検討するようにということでありましたら、さらに注意して公的分析等をやらせていただければと考えているところです。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
最初の1点目については私からも確認させて頂きますが、根拠として使えるようなデータについては、すでに効果として示していただいているようなもの以外についてはほぼないという認識でよろしいですね。国の統計の話もございましたが。
○国立保健医療科学院
そうです。公的分析としてはなかなか一定に決めるのが難しいところで、このようにファンクションに基づいて、感度分析の結果と合わせて御判断いただきたいと考えているところです。
○費用対効果評価専門組織委員長
分かりました。
感度分析の精度とか妥当性についてはまた後で御議論させていただきますが、もう一つの今まで事例がなかった話に関しては、行う必要性というか、優先度みたいな範疇なのか、そこまで議論が深まっていなくて今回顕在化しただけなのか、その辺りについてはどんなお考えになりますでしょうか。
○国立保健医療科学院
我々、公的分析するときにベースラインリスクの違いは常に配慮しながらやっているのですけれども、すみません。私も具体例を今すぐに挙げるのは難しいのですが、ベースラインリスクについては、ちょっとお待ちください。
○費用対効果評価専門組織委員長
なかなか難しい内容なので、ゆっくりご対応いただいていいと思いますけれども、〇〇委員がおっしゃるとおり、これは結構大きなテーマですし、今後の品目にも関係が出てくる可能性もあると考えられます。当たり前なのですが、アカウンタビリティーも必要になると思っていますので、できれば組織の皆さんと協議しながら進めていきたいと考えております。科学院さんとしてはいかがですか。
○国立保健医療科学院
基本的に我々は考慮してきてやってきているつもりなのですが、ただ、それを明示的にお示ししていなかったり、影響が少ない場合はなかなか、データの利用可能性という点もあって、無視というか、考慮しなかったような場合等々もありますので、なるべくそういうベースラインリスクについては、もし分析に大きな影響があるような場合、今回のケースのように、非常に分析に大きな影響があるような場合については、詳しく公的分析としても御説明するような形でさせていただきたいと考えているところです。
○費用対効果評価専門組織委員長
分かりました。
○事務局
すみません。事務局です。
○費用対効果評価専門組織委員長
どうぞ。お願いします。
○事務局
1点、お話を聞いていて、係数によるベースラインリスクの調整が良いか悪いかは専門組織で御議論いただいて決定していただくことかと思いますが、事実関係として、ベースラインリスクの調整を今回のように係数によって補正したことは今まであるのでしょうか。
○国立保健医療科学院
そのように係数によって補正したことはないです。
○事務局
ありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
よろしいですか。
今回は新しいアプローチであって、なおかつ統計の専門家からは少し、違和感があると言ったら変ですけれども、慎重に取り扱うべきという御意見があったものですから、今、整理させていただいているところであります。
事務局に一度お聞きしますけれども、これをもう一度、再追加分析みたいなものを展開することは手続上問題ないでしょうか。
何を申し上げているかというと、意見はそれなりに複雑なところもあるので、科学院さん側にもう少し整理をしていただき、説明変数を少し補強したほうがいいのではないかなと思って伺ってはいたのですけれども、その前に手続的にどうなのかを確認させていただければと思います。
○事務局
事務局でございます。
やはり会議の通例としましては、基本的には決められるものはできるだけ決めていただきたいところはございます。一方で、どういった作業が必要かを少し明確にしていただいた上で、そうした作業をしていただくために追加分析いただくということは差し支えないと考えているところでございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それで、私もそんなに専門ではないのですけれども、いただいた御意見から整理をしてみたいと思います。今回の係数というか、ベースラインリスクをいじって調整していることに関して、論点は3つほどあると思っております。まず、係数に関してはその根拠というのでしょうか、もしくは妥当性、頑健性という論点があると思います。今回、2次元感度分析をされていますが、それで十分なのか、もしかすると、それ以外に何か方法論があるのかという、まずは現状のものをできるだけ評価する前提での話題が挙げられます。
あとは、○○先生がおっしゃっているとおり、ベースラインリスクを今回調整することによる、統計学的な面からの論点が挙げられます。逆に言うと、そういう論点はあるのだけれども、今回は、どのような条件とかこういう前提で結果を出したという説明強化をさらに望まれるということであります。
さらに、先ほどから御議論があるのですけれども、係数の0.75とかについてもう少し確たる根拠が必要ではないかという指摘であります。正直なところ、RCTなどではなくても、ある程度レベルの高いコホート研究なども活用できて、ゼロよりはましという話があるのであれば、そういったものをさらに準備していただくのもご検討頂くのは意味があるのではないかと思っています。
これらについても、先生方から御意見いただきたいと思っています。では早速、○○委員、お願いいたします。
○○○委員
感度分析については後ほどと言われたので待っていました。まず最初からの話で言うと、私は統計の専門家でも何でもないのですが、ただ、この組織に割合、最初の頃から参加している人間ですので、その立場から言うと、やはり日本人の異質性を、これは決して日本人だけが異質というわけではないですが、異質なものを無視して、元の大きい問題だけで扱っていいのかという疑問が残ります。何らか日本人の特色を反映できないかということで、さっきのガイドラインの説明にもありましたけれども、この組織でも、いろいろ工夫してきたのは事実だと思うのです。
しかし、そうすると数が少な過ぎて、統計学的な有意差が出ないという批判の一方で、そうは言っても、日本人のデータもあるのに、日本人を反映しないのが果たしていいのかみたいな議論はずっとやってきたと思います。確かに今回のように補正係数を掛けるのは統計の専門家から見れば非常に驚くようなものに感じられるかもしれないのですけれども、私はそういう営みのうちの一つ、手段の一つぐらいに感じていたので、そういう意味では全然違和感はありませんでした。ただしこれは委員お一人お一人の考え方だと思っています。
それで、○○先生が0.75の根拠とおっしゃるのですけれども、私が感じるのは、意見書にも書きましたし、さっきもお話がありましたが、薬事承認のときに添付文書に反映するような、はっきり日本人は違うのだみたいなことが書いてある点を重視しています。それから、さっきここで使ったピボタル試験の明らかにイベントに違いがあることと、さっきの大規模コホートですね、ああいうものを見て、さすがに同じに扱うのはまずいだろうというふうに感じています。例えば0.5~1の間の真ん中を取って0.75という、まさにアサンプションを置いて、あとは2元感度分析をして、面積の広いところ、つまり、誰がどう見てもやはり500万/QALYよりは下になることは確率的にほとんどないだろうということでされた判断だということで、私は0.75事態にそれほど根拠を求める必要はないと思うのです。
これまでずっと、この組織の在り方として、批判はありながらも、点推定で何らかの数字を出さないと中医協総会に出せないようなイメージがあるので、かなり無理してあの数字を出しているのであって、判断はやはり不確実性を伴いながら妥当な判断をするということで言えば、0.75がアサンプションであってもいいような気がするのですけれども、いかがでしょうか。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
今の御意見を踏まえて、他の先生方からコメントはございますでしょうか。
○○委員、お願いします。
○○○委員
何度もすみません。本当にこれは職業の違いから来るのだと思ってびっくりしているのですけれども、びっくりしているのは、私は医療統計の面からいくと、費用のことなど全く無視して今まで仕事をして、誰でも薬を使ったらいいではないかというところで来ていたので、差ではなくて比を使うべきということで来ていたのですが、それは費用対効果の会はやはり企業に対して効果がない技術は批判していくべき会なのだなと。
そうなると、日本は逆にイベント率が少ない疾患ほど費用対効果は悪くなりますね。言い方を変えると、必要のない人たちが使っているのではないかというようにも解釈できるので、そうすると、重症な病気ほどICERは小さくなって、軽症な病気ほど、イベント発症の少ないものほどICERは大きくなる。そういう制度なのだなと思って、すみません。私も今まで、医療統計家はお金のことは全く考慮に入れず商売をしてきたなと思って反省はしているのです。
ただ逆に、軽症な人には治療は要らないみたいなことにもなり得てしまって、もうちょっと言うと、日本は逆に必要ない人に費用対効果の悪い治療をしているのかみたいなことになってしまうので、すみません。○○先生、患者さんから見たら、こういう議論はどうなのかなと思いました。
○○○委員
専門的議論が続いて本当に難しかったのですけれども、日本の場合はまだHTAといっても、NICEのように、採用不採用に関与しないので、アプレイザルにおいて私のような一人が紛れ込んで一応オブザーバーしていればいいみたいな形になると思うのですが、今後、このシステムがいわゆる本格的HTAというか、採用の可否を決めることになってきたときに、日本人の場合は結構、そんな体制ではないのだからということがやはり影響は出てくると思うのです。
だから、今、確かにいわゆるPPIという形でかなり欧米ではもうちょっと疾病ごとの患者会がEUではオーソライズされて、一応、患者会として適切なことが言える集団と、アプレイザルを踏まえてやっていくところであって、アプレイザルは非常に、ある意味、定性的なものも含んだ総合評価のところでアジャストする形になっていると思うので、今までの統計的厳密さといわゆる社会的な必要性はもっと考えるべきという議論は相当ステータスの違う議論だと思うのですけれども、そうしたところでちゃんと患者の薬を使用する権利が保障されていくのであれば、一定の基準で厳密さはやはり必要で、ある意味、薬というものは疾病によって、そもそも、見積りの段階でその価値が変わるもので、副作用も重い疾病であれば強い副作用はアクセプトだし、軽い疾病であれば弱い副作用でも容認し難いという、ある種、社会的な概念でもあるというところで承知しております。
だから、これは私の個人的な見解ですけれども、〇〇委員がおっしゃられるような、ある程度、数理的な厳密さはベースにあった上で、非数理的な定性的あるいは社会的評価は上に乗っかる構造がやはりちゃんと担保されていないと、そもそもHTA自体の運用は難しくなるとも思います。
何を言っているかというと、やはり数理的な適切さと社会的な価値は違う次元で議論すべきと思いますので、今回の議論で言えば、それを今までこの組織が何となく値切ってしまおうみたいな、そういうニュアンスで私も受け止めていて、それはメーカーが困るだけで、患者は困らないのです。全部、今は保険収載されるので、安くなるだけで、使えるものは使えるねというところで静観しているところなのですけれども、やはりこれがこの中で、数理的なことも含めた中で患者の権利を言い出すといろいろな、今の場合だったらバイエル様に肩入れして、いや、これは1でいいではないかという意見を言う局面になるのかなと思っています。
なので、今後の費用対効果が本格的HTAに移行する制度の中で大きな論点として含まれる。現状でも、○○一人がこんなところへいていいのかと、患者会からは何でアプレイザルは日本人が入っていないのだというふうに、多分、外から思われているところはあると思うのですけれども、現状は一応、全部、薬価収載されるので、本当の意味では、むしろ、安いほうが利益があるので問題ない。そこにはコンフリクトはないのですが、やはり採用までにそこがいったときに、このシステムは、ある程度は検証し直される局面があるのかなと思って考えています。
お答えになっていませんが、以上です。
○○○委員
非常に勉強になりました。
ですので、数学的に緻密であればいい方向には行くとやはり危険であるところは理解しました。ありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
闊達な御議論ありがとうございます。
では、○○委員、お願いします。
○○○委員
皆さんの御議論を聞いていて非常に私も今日は勉強になったのですけれども、一言だけ、やはり我々が本当に考えるべきは、無限にお金があればいいのですが、私は費用対効果の専門家ではないし、統計の専門家でもないのですけれども、財政のことを少しは考えるべきで、無限にお金があればいいのですが、本当にこれからどんどん生産年齢人口は、日本は世界の中で今後驚くべき、1000万人から減っていく中で、社会保障を支える意義が起きてくるわけですよ。
その中で、しかも非常に厚い医療、自己負担が非常に低い中で我々は、私も含めてですけれども、費用対効果について、一つ一つは本当に細かい話ですが、コスト抑制を真剣に考えなければいけない。今、○○先生がおっしゃったように、いずれ、このシステムはヨーロッパあるいはアメリカからは全然違うので、抜本的に薬価制度を変えていく必要性も含めて、今はとにかく、この費用対効果の委員会があるからというので安心して、ドラッグラグを気にして、ばんばん保険収載しているので、非常に危険な状態に陥っている。公的分析班は本当に仕事が大変で、限界状況に来ている中で、非常にこの薬価システム、薬価制度自体を抜本的に厚生労働省さんで考え直す。しかも、財政面での配慮をしながら考えるときに来ているのではないかなと思いました。
すごく大きい話ですけれども、すみません。以上、感想です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
少し整理をさせていただいているところでありますけれども、仮に実施すべきというか、やれることを全てやりましたという、体裁というわけではないですが、もう一度見直しをするのであればということでの先ほど3点ほどの話がございましたが、現状でも十分説明できるし、費用対効果という趣旨からはそれで十分ではないかという御意見もあったかと思います。
私から1点、また確認なのですけれども、科学院さんでおつくりになった9ページ目の2次元感度分析で、要は500万円というラインに関して、どういう条件が変わってもほぼ間違いなく500万円オーバーであるということをこれでほぼ説明できるとお考えになっているとは思うのですが、今までの○○委員とかほかの先生方の御意見とかも踏まえて、そういう要件も考慮すると、多少、この見方について変わってくる可能性があるのかどうかとかに関して何かコメントがあればいただければと思います。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
お示ししたとおり、CVのイベント発生リスクが諸外国と比べて日本人が低いとすると、5%程度大きくするだけで500万円を超えていくということですので、ICERが500万円/QALYを超えていくことに関しては、この点に関しては我々は不確実性がないのだと考えているのですけれども、そこから先、どこまでICERが伸びていくかについては非常に不確実性が大きいところかなと認識しておりまして、もちろん、○○委員が意識されている点だと思いますが、4ページ目、5ページ目のような研究の結果をそのままダイレクトに当てはめればICERの値は0.5の先に行くということで、1000万円以上という結果になるところであります。ただ、では、この研究をそのまま当てはめていいかという外的な妥当性の問題等々も控えておりますので、その辺り、こういうまさに不確実性をめぐるディシジョンでHTAにおいて非常に一番難しいところだと認識しているのですけれども、その辺り、どう議論していただけるのかを御検討いただければと考えているところです。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
恐らく、これ以上のアプローチができないという御意見でもあるのかなと思って伺っていたのですが、そうすると、科学院さんがお示ししたこの結果を、ある程度、前提に整理を進めざるを得ないとも考えられます。さりとて、先ほど○○委員とかのコメントもありましたとおり、ベースラインのリスクの調整については多くの御議論があったことに配慮するならば、事務局さんとも御相談しながら企業側に多少メッセージを伝えておいたほうが良いとも思います。今後、その取扱いを今後出てくる品目においてどのように適用されるべきか、特に慎重に活用していただきたい、という話を含めたメッセージとかコメントは、内示書も含め企業側に出すものにおいて工夫したほうがよいとも考えます。
その辺りについては、いかがでしょうか。では、○○委員、どうぞ。
○○○委員
すみません。私が心配しているのは、5%動かしただけでICERがかなり動く指標でありますと、今後は結構、こういう話は出てくると思うのです。例えばがんになった患者さんの死亡リスクを見ると、日本人は極端に低いとか、CVイベントだけではなく、やはり日本人はアウトカムがいいところで、今後、本当にこういう議論がずっと出てきます。
そうすると、少し動かしただけで本当にICERの区分がかなり変わってくるようなセンシティブなパラメーターを今後扱っていくのかというところで、今回はそれを1にするのか、0.5にするのか、0.75にするのかという、何にするのかという議論よりも、調整するのかしないのかというところがすごく大きなディシジョンになっていくのかなと。
すみません。決して反対しているわけではないのですが、心配していますというコメントをさせていただきたいと思います。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
この品目の範疇で多分、今、〇〇先生がおっしゃったような方針みたいなものは出せるわけではなくて、この品目のケースとして、ある一定の条件というか、理由をもって今回は活用したという説明になるのかなと思います。ただし、それに当たっても留意点みたいなものは少ししっかりまとめておいたほうがいいということで、議事録等も公開されるということでありますが、まとめ方はまた後で御相談させていただくということで、そういう前提で少し進めさせていただければと思っております。
その上でもう一度、お話を整理させていただくと、企業側から幾つか不服というか、御意見がございましたが、これについては、冒頭、○○委員から、前回の追加分析の組織としての指示は、今回、科学院さんが概ね対応いただいたという整理で考えていきたいと思っているのですが、それについては、先生方、御異論ないでしょうか。大丈夫ですか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
あとは、少し技術的に細かいところを挙げますと、ベースラインを日本人から全体に戻したというか、変更した理由等々については、今回、科学院さんが御説明している内容の精査が必要かと思います。すなわち、整合性が取れないとか対応が難しかったところについて、説明や合理性は十分なのかどうかということになります。遷移確率を含めて、背景を、日本人の集団をベースラインにすると、いわゆるイベントもしくはリスク等との関係で、それは全体のデータを使ってきているということですが、整合性が取れないというコメントもございました。科学院さん、いかがでしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
このモデルなのですけれども、年齢、性別等のベースラインの患者分布を変えても、死亡率等々は変わるのですが、イベントの発症リスク等の遷移確率は変わらないようなモデルになっておりまして、ベースラインを変えただけでは十分に日本人の状態を反映したような分析にはならないと考えているところでありまして、その結果、やはりこういう補正のようなものが必要なのではないかという御提案をさせていただいたところになります。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
今の説明で私はほぼ整理がついたと思いますが、委員の先生方、よろしいでしょうか。
○費用対効果評価専門組織委員長
○○先生、お願いします。
○○○委員
大方の方が御納得であればいいのですが、0.5~1の間、CVイベントのところで、しつこくてすみません。0.5~1の間での2元感度分析で、多分、感度分析のほうは、そうしたら、これがベストの方法、手法としてはベストだと思いますが、0.5~1の間で動かして真ん中の0.75を取るということだけれども、CVイベントの場合、0.5ではなくて0という値だってあり得るわけだから、0~1の間で動かして真ん中の0.5を点推定としましたということだってできるわけで、いずれにしろ、何らかの、恣意的ではないかという批判が生じる可能性があって、それに対しての何らかのきちんと、反論といいますか、根拠を持って、こういう形での感度分析のレンジも定めましたということも示さないと、本当にこれは非常に重要な意思決定の根拠になる数字だと思いますので、そこがすみません。私自身は腑に落ちていないのですが、大方の先生がそれでも特段の違和感がなければ結構だと思います。
○費用対効果評価専門組織委員長
○○委員、貴重な御意見ありがとうございます。
科学院さん、今の点に関していかがですか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
0.5~1.0の範囲が必ずしも合理的な根拠に基づいておらず、恣意的な設定ではないかという御指摘だと思うのですが、そこの側面については我々としても必ずしも否定できない部分があると思うところですので、もし組織で御議論いただいて感度分析のレンジの幅等を御指示いただければ我々でもぜひ対応させていただきたいと考えているところです。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
レンジの幅を変えると結構、先ほどの図もございましたけれども、変わってくる可能性はございますでしょうか。最終的には9ページの図になるのでしょうか。
○○○委員
すみません。よろしいでしょうか。
○費用対効果評価専門組織委員長
○○先生、どうぞ。
○○○委員
ですので、点推定値を必ず示さなければいけないルールになっているのなら、一例としてこういう数字でこうなるということならいいのですけれども、その数字が独り歩きしてはいけないので、いずれにしても、500という数字を下回ることはほぼあり得ないことが多分、この図からは見えるだけのことで、0.75という数字がここから何か定められるわけではないので、そこをうまく実際に最終的な意思決定をするところに伝えるような形でのきちんとメッセージを出していただければ、私としてはこれ以上、特に意見というか、議論はございません。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
では、○○委員、どうぞ。
○○○委員
本当にしつこくてすみませんが、さっきの9ページの図を見ると、係数を1から0.5まで上げるだけで500万円から1500万円まで動くのですよ。そうすると、0まで引き上げると一体どこまで動くのだという非常にセンシティブな数字、影響力を持った数字になりますので、これはイベント発症率を25%下げる、50%下げるだけであれぐらい動くのであれば、諸外国と比べて日本人のイベント発症率がそれぐらい低い疾患は山のようにあります。
ですので、これはすみません。数学的な判断だけではないと思うのですけれども、数学的には本当にこれは費用対効果のほかの計算結果を吹き飛ばすぐらいの影響を持ったパラメーターになりますので、これは物すごく心配しています。0.75から0.5か、また、0.25かで影響力が強過ぎるから、何が言いたいのか分からないですが、本当に心配しています。すみません。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
当初思った以上に根が深そうな議論になってきておりますし、今後の影響もありますし、説明をしっかりしなければいけないのと、数字が結構振れる可能性もあるという話もあるので、最初、私のほうで3点ほど留意しながら、再追加分析にも触れさせて頂きました。継続審議みたいな形のお話をさせていただきましたが、よろしければ、先生方からいただいたものを含めて、科学院さんでもう一度整理していただいて、最終的にはまた結果が同じであるのかどうかも含めて一度まとめていただく方向でよろしければ、今日の会議は一旦、それで収めさせていただきたいと思っていますが、御参加の先生方、いかがでしょうか。
特段御意見がないようでしたら、継続、再追加分析ということで、同じことを繰り返すのではなくて、今、新しい御指摘があった点を踏まえて、もう一度、内容を御説明いただく方向でまとめていきたいと思います。
その観点で、先生方から何か改めて御意見とかはございますでしょうか。よろしいですか。
では、そういう方向で、科学院さん、今回の議論の内容を踏まえて対応いただくことは大変かと思うのですけれども、御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。また、今回の内容を整理して対応していただくに当たって、日程的には次回の組織に御提示いただけるような形で進めていただけそうでしょうか。
○国立保健医療科学院
はい。日程的には可能かと思うのですが、やはりこれは最後の最後までどうしても不確実性が残るものでありまして、どのように御提示したらいいかが少し我々としても悩ましいところでありまして、例えば諸外国においても不確実性を持った意思決定は通常なされているわけでありまして、そういうときの考え方のようなものを整理するのがよろしいのか、何をしたらよろしいのか。その辺りはいかがですか。
○費用対効果評価専門組織委員長
先ほど、私からも3つ、単純に気になる点のレベルですけれども、御指摘したのと、あと、○○委員から具体的な係数のレンジの話がございましたので、その取扱いを検討していただくということかなと思っております。
さらに、今回の目的は500万円という判断ライン、もしくはそれの上の基準の話にどれだけ影響があるのかどうかの見極めの材料をいただきたいということになろうかと思います。いかがでしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。可能な限り、先生方の意思決定に資するような検討をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○費用対効果評価専門組織委員長
お手数をかけます。
事務局、この件に関して、何かそちらからコメントはございますか。
○事務局
事務局でございます。御決定承りました。
タイムラインに関しましては、少し持ち帰って、例えば資料の御提出をいただくタイムライン等、お伝えさせていただければと思います。それで、次回の専門組織で発表、そして、御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、議決に入らせていただきたいと思いますので、○○委員におかれましては、議決の間、一時御退室をお願いいたします。
(○○委員退室)
○費用対効果評価専門組織委員長
さらなる追加分析が必要という前提で、先生方の御意見を参考に、ケレンディア錠に関する費用対効果については、先ほど来、議論していた3点及び他の先生方からのコメントがございましたレンジ等についての再検討を中心に、公的分析によるさらなる追加分析を実施するということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、公的分析は、追加分析を実施した上で速やかに報告書を、できれば次回、ただし、これについては、今、事務局からございましたとおり、タイムラインも含めた調整があるということですが、それを踏まえて、費用対効果評価専門組織に提出するということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
ありがとうございます。
続きまして、ケレンディア錠について、公的分析による追加分析結果が提出されておりますので、公的分析及び企業から意見聴取を行った上で、企業分析の内容及び公的分析による再分析と追加分析結果の審査並びに費用対効果評価案の策定について先生方に御議論いただきたいと思います。
では、ケレンディア錠について、企業から意見聴取をした後に御議論いただきます。
まずは事務局から説明をお願いいたします。
(事務局より説明)
○国立保健医療科学院
国立保健医療科学院です。
費-2-2の資料「フィネレノン(ケレンディア)に関する公的分析の追加検討・分析の概要」という資料を御参照ください。
2ページ目になりますけれども、こちらは製造販売業者によって提出された経済モデルの概要の図を示しております。基本的には、No CVイベントと、それから、CVイベントという2つの健康状態から成るマルコフモデルを用いて費用対効果を検討しているところになります。
3ページ目になりますけれども、製造販売業者によって提出されたモデルにおけるCVイベントの健康状態について、こちらは少しコミュニケーションにそごがありまして、公的分析としては「ベースラインにおけるCV event既往集団を含むもの」であると認識していましたが、製造販売業者によれば「分析開始後にCV eventを起こしたもののみを含むもの」であるということでありました。
実際に、本モデルの遷移確率等はCVDの既往の有無にかかわらずFIDELITY試験における全体集団データ、すなわちCV既往集団を含むものから設定されていたところです。
このことから、公的分析は製造販売業者による見解を受け入れまして、この点に関して公的分析が再分析したパラメーター等の設定について、製造販売業者の提出によるものに戻すことにいたしました。
なお、5点目になりますけれども、年齢、性別、ベースラインの患者分布などの背景因子についても、公的分析では日本人集団のものと一致するように変更していましたが、製造販売業者の説明により、ベースラインを変更しても、遷移確率等が変化しない。あくまで全体集団をトレースしたモデルでありましたために、FIDELITY試験における全体集団のデータに一致させた上で、次のb)のような心血管イベントと心血管死亡リスクの調整等を行ったところになります。
4ページ目になりますけれども、心血管イベントと心血管死亡のリスクについてになります。製造販売業者は、FIDELITY試験における全体集団データを用いて、分析モデルにおけるCVイベントの発症率や腎イベント発症率、CV死亡率等の遷移確率等の設定を行っております。
一方で、FIDELITY試験の標準治療群について見ますと、全体集団と日本人集団におけるCVイベントを比較した場合、日本人集団のほうがかなり低い傾向が見られております。これは4ページ目の下の表になります。
5ページ目ですけれども、その他の臨床研究の結果、近年のCKD患者におけるコホート研究の結果によっても、やはり年齢や性別、糖尿病の有無等を調整したもの、右側の図においても、米国のCKD患者と比べて日本のCKD患者はCVD無イベント生存率が良好であったことから、日本のCKD患者におけるCVイベント発生率は海外に比して低いことが示唆されるのではないかと考えているところです。
6ページ目ですけれども、上述の点から、FIDELITY試験における全体集団データをそのまま用いた場合、特にCVイベントやCV死亡の発生率が日本人集団の実態よりも過大に設定されているのではないかと考えているところです。
この場合、標準療法群と比較したフィネレノン群の費用対効果は過大に評価されてしまうことが懸念されるところです。
一方で、では、どの程度のイベントリスクが低減するかにつきましては、不確実性が大きく、一意に結果を提示するのは難しいと考えています。
このため、追加分析では、全体集団と比較して日本人集団ではCVイベントやCV死亡の発生率が低くなる可能性を考慮するため、CVイベントの発生率、CV死亡の発生率に対して、一定の係数を乗じて補正を行うことにより、標準療法群のリスクがFIDELITY試験における全体集団のデータよりも低いと想定される場合のICERを算出いたしました。
7ページ目になりますけれども、以上の点から下記の点に関する追加分析を行いましたということでして、1点目は、初回のCVイベントのリスク及びCVイベントの再発リスクのパラメーターに0.5~1.0の係数を乗じた補正を行いました。また、CV死亡のリスクのパラメーターに同様の係数を乗じて補正を行ったところです。上記のリスク補正係数を一意に設定することには大きな不確実性がありましたが、ベースケースとして、一意のICERを算出するために、便宜上、CVイベントの発生率とCV死亡の発生率に補正係数として0.75を乗じたところです。この0.75は単なるアサンプションでありまして、この結果はCVイベントの発生率とCV死亡の発生率に対する補正係数を変動させた場合の感度分析の結果と合わせて御検討いただきたいと考えているところです。
8ページ目ですけれども、公的分析による追加分析の結果として、ICERが補正係数を両方0.75とした場合、ICERが700万円超という結果になっているところです。
9ページ目ですけれども、2元感度分析におけるICERの推移として図をお示しさせていただいています。CVの補正係数が5%程度小さくなると、すぐにICERの値が500万円を超えるような結果が示されていまして、この0.5~1.0の間ですと、最も面積の大きい医療費が500万円から750万円の間のICERの量となります。
10ページ目ですけれども、追加分析結果の考え方としまして、CVイベントの発生率とCV死亡発生率に対して、それぞれの補正係数0.75を乗じた追加分析の結果、こちらはICERが713万円/QALYになりました。
CVイベント発生率とCV死亡発生率に対する補正係数をそれぞれ0.5~1.0に変動させた2元感度分析においては、ICERが500万円/QALY未満になる領域は極めて限定的であることが示唆されていると考えております。
これらの結果を総合的に考慮しますと、標準治療と比較したフィネレノンのICERは500万円/QALYを少なくとも超えると判断することが適切なのではないかと考えているところです。
11ページ目ですけれども、結果のまとめになりますが、患者数の割合は100%、追加的有用性はありとなりますが、ICERは500万円から750万円の間に位置しているのではないかと考えているところです。
御説明は以上になります。
○事務局
(事務局より説明)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、まず本製品に係る公的分析の追加分析結果に対する意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
(意見陳述者意見陳述者入室)
○費用対効果評価専門組織委員長
私は費用対効果評価専門組織委員長です。
早速ですが、10分以内でケレンディアの総合的評価について御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。
では、始めてください。
○意見陳述者
よろしくお願いいたします。バイエル薬品の○○と申します。本日は陳述のお時間をいただきましてありがとうございます。
先日、10月6日にお送りいただきました公的分析における追加分析結果につきまして、弊社からの意見を述べさせていただきます。
それでは、まず、2ページ目を御覧ください。こちらは、これまでに検討されました本剤における費用対効果評価の協議につきまして整理させていただいております。
6月23日に開催されました専門組織Ⅱでは企業分析結果が受理されまして、一方で、公的分析班による再分析も実施することとされました。
8月10日には公的分析の結果が提示されましたが、その際には、日本人集団と全体集団の間で異質性の有無が明確ではないために、腎イベントに関するハザード比はガイドラインで推奨されておりますとおり、1として設定した分析がなされました。一方で、CVイベントにつきましては、全体集団のデータを用いることが妥当であると御判断いただいて分析いただいております。
専門組織Ⅲの開催直前となる9月13日には、C2H側から照会事項としまして分析の設定条件についての確認がございました。弊社としまして、ベースラインのCV既往の有無で層別することはモデルの設計上、適切ではないのではないかと説明いたしました。また、モデルで用いる患者背景データにつきましては、全体集団での移行確率等で設定されたモデルに日本人集団の患者背景を当てはめることは許容されるのではないかと、公的分析のお考えに弊社も同意いたしました。
前回9月22日開催の専門組織Ⅲでは、公的分析における追加分析が必要であると判断されたために、総合的評価は保留となりました。そして、公的分析にはCV既往の有無による層別化について追加分析を実施することと指示されておりました。
今回10月6日の時点で提出されました公的分析の追加分析結果では、専門組織で指示された内容ではなく、これまで議論されてこなかった分析方法によって算出された結果が提出されてまいりましたというのがこれまでの議論のまとめになります。
次の3ページを御覧ください。これまでの議論のまとめを整理させていただきましたが、その上で今回、弊社が意見陳述させていただきますのは、今回の公的分析の内容が、前回の専門組織Ⅲでの決定事項の内容から逸脱していると考えられるということでございます。
具体的には、1つ目としまして、前回の専門組織Ⅲでは、日本人集団の患者背景を使用することに合意しているにもかかわらず一転して全体集団の患者背景を使用しておりましたこと。
2つ目としましては、追加分析として指示されたCV既往の有無による層別化した分析ではなく、CVイベントとCV死亡のリスクという新たな論点が追加されて分析が行われたこと。
3つ目としましては、弊社の企業分析では一度提出したモデルから変更はしていないのですけれども、公的分析側では初回の分析内容から事前の指示や合意がないまま分析がなされていることです。これは費用対効果評価分析の費用対効果評価に関する取扱いという通知において、これに沿うものではなかったことでございます。
次の4ページを御覧ください。まず、こちらは先月の専門組織Ⅲでの決定事項でございます。
専門組織における主な意見としまして、日本人集団の患者背景を使用することの妥当性が確認されております。一方で、CV既往歴の有無によるベースラインの患者分布を層別化する方法につきましては企業側の分析が妥当との意見がございましたので、専門組織での審査結果の2として、公的分析について、CV既往の有無によるベースラインの患者分布の層別化による追加分析が指示されてございました。
次の5ページを御覧ください。こちらは先月10月6日に公的分析から提示されました追加分析資料の7ページ目の記載内容でございます。
下線を引いております箇所を読み上げますと「なお、年齢、性別、ベースライン患者分布などの背景因子についても、公的分析では日本人集団のものと一致するように変更していたが、その場合、遷移確率等がFIDELITY試験における全体集団データによるという設定と整合しないので、FIDELITY試験における全体集団データの値に一致させた」と書かれておりました。これまで日本人集団を使用しているにもかかわらず今回、全体集団の患者背景を用いることと変更されておりました。
なお、当初、公的分析では日本人集団の患者背景を使用することを推奨されておりましたけれども、一方で、これまでに評価が終了しております過去のHTA品目の一つでございますパドセブの分析事例におきましては、遷移確率等は全体集団を使って、年齢、性別は日本人集団の患者背景を使ったことが公的分析側でも認めていただいていることもございますので、弊社としましては前回の公的分析の方法には一定の納得をしておりました。
次の6ページを御覧ください。こちらは費用対効果における追加分析に関する制度上の通知文書でございます。
昨年2月9日に厚生労働省医政局長と保険局長との連名で出されたものになりますが、この通知の6ページ目以降に製造販売業者の分析データ等及び公的分析のレビューの審査という項目がございまして、この中に、専門組織は追加分析の必要があると判断される場合にあっては、国立保健医療科学院及び公的分析班に対して、理由を付した上で、追加分析の実施を指示することができるとあるものの、今回、専門組織の指示にはなかった新たな論点にて追加分析がなされておりました。
次の7ページを御覧ください。
最初に提出されました公的分析の結果では、CVイベントの発生率やCV死亡の発生率などの心イベントの治療効果やその他の推移確率など必ずしもデータの異質性が認められないものについては、サンプル数の少ない日本人集団データを用いることによる不確実性の上昇を鑑みて、全体集団データの値を用いた。ただし、年齢、性別、ベースライン患者分布などの背景因子については、日本人集団データの値に一致させたとの報告内容でございましたが、10月6日に提出された追加分析を見てみますと、FIDELITY試験における全体集団のデータをそのまま用いた場合、全体集団と比較して日本人集団ではCVイベントやCV死亡の発生率が低くなる可能性を考慮するために、CVイベントの発生率とCV死亡の発生率に対して、一定の係数を乗じて補正を行うことにより、標準療法群のリスクがFIDELITY試験における全体集団のデータよりも低い場合に想定されるICERを算出したとの記載がございました。
繰り返しになりますが、CVイベントとCV死亡のリスクにつきましては、公的分析の分析方法が前回と今回で指示なく変更された理由の説明がない一方で、CVベースラインを含む日本人集団の患者背景を使用することは専門組織Ⅲで合意していた内容でございます。
次の8ページを御覧ください。弊社からの意見を最後にまとめますと、これまでの公的分析の方法でございます腎イベントのハザード比を1に置き換えること、また、CVベースラインを含む患者背景を日本人集団を使用する設定については同意できるものと我々も考えます。
公的分析の追加分析で実施されたCVイベントとCV死亡のリスクに関する補正方法とその結果が、説明理由がないものの、完全に誤ったとか、そういったものではないと考えておりますので、ある一定の同意はできるかと我々も考えます。一方で、専門組織Ⅲでの追加分析での指示内容にはなかった新たな論点が追加されていることにつきまして、費用対効果分析の通知に照らし合わせると、制度上に限っては許容されるものではなく、専門組織の指示に逸脱しているのではないかと考えます。
また、それについての理由が言及されていないことに関しまして、費用対効果の制度あるいはプロセスに応じて分析する考えの下、専門組織の先生方が今回の追加分析のプロセスに違和感を覚えるようでございましたら、腎イベントのハザード比を1として、CVのベースラインを含む日本人の患者背景を使用する分析方法による結果も御考慮いただくことも我々は希望するものでございます。
さらに今回、追加分析でなされた全体集団の患者背景を用いた分析の場合は、日本人集団の患者背景よりもさらにICERが良好であることについても御考慮いただきたくお願い申し上げます。
弊社の提案する分析内容ごとのICERをこちらの表に提示させていただいておりますけれども、御参考までに、次の9ページにはそれぞれの分析内容に基づいて算出した増分効果と増分費用をお示しいたしております。
こちらも御確認いただきまして、私の陳述を終わらせていただきたいと存じます。最後まで御清聴いただきましてありがとうございました。
弊社からの意見陳述を終了いたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、委員の方々から御質問はございますでしょうか。
○○委員、お願いします。
○○○委員
すみません。私が事実関係を十分理解できていないのかもしれないのですが、科学院というか、今、公的分析が専門組織の指示なく勝手に分析したような言われ方をされたと思うのですけれども、私の理解ではそうではなくて、前回、企業側からの陳述意見について、この専門組織の中で、例えば仮にこういう設定で分析したときにはイベント発生リスクを過大に推計する懸念があることについての議論をしておりまして、それに基づいて科学院は適切に追加分析を行っているという理解を私はしておりますので、特段問題ないプロセス、何か逸脱とか、そういうことは私としては認識しておりません。
その上で、この発生リスクの補正、0.75という数字で今回補正したものというか、要するにその補正の係数が、どのくらいの値が妥当であるかについての何か御見解はありますか。
○意見陳述者
ありがとうございます。
○○先生のおっしゃるとおりでございまして、我々としましては、我々の陳述の後、我々は退室しますので、どのような議論がなされたかは正確には分からないものでして、我々は、その後、決定された内示だけを見て、通知に沿ったものか沿っていないものかを判断いたしましたので、我々が受け取った内示に関しましてだけから見ますと、これまで出された通知とはそごがあるのではないかといった陳述を行ったわけでございまして、我々がいないところでのディスカッションで、○○先生がおっしゃるように、そういった議論がなされていて、そこがないということであればそのように我々も受け取りたいと存じます。
そうした上で、先ほど最後に御質問いただいたような、0.75が妥当かどうかでございますけれども、そちらにつきまして、我々はその妥当性は少し疑問を持っておる次第で、何が適切かといった根拠がどこにもないのが事実でございます。
ただ一方で、何もない物差しの中でそういった0.75という数字で決めてくださった公的分析側の御意見も一案ではあるのかなと存じますけれども、ただ一方で、我々が今後、企業分析側でもそういった何も明確な物差しがない場合に、我々もこういった、ざっくり0.75でとかといった数字を使えるのかの合理性が今後、我々の企業側も使えるのかどうかも疑問を持っている次第ではございます。
○○○委員
分かりました。
私は、0.75が適切かどうかは、今回、この専門組織の中でまたいろいろな有識者の先生方と議論した上で決定されるものだと理解しております。ありがとうございました。
○意見陳述者
ありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他の委員、いかがでしょうか。
○○委員、お願いします。
○○○委員
企業で1にしたほうがいいのではないかという意見ですけれども、添付文書にも日本人集団の場合は効果が弱い可能性があると書かれているわけですね。その点を踏まえて企業はどうお考えになるのでしょうか。
○意見陳述者
今までのエビデンスで申しますと、臨床試験からは日本人のデータの効果は弱いと出ておりますけれども、それをサポートするデータがこれまでに出てきていない。添付文書が今後変わっていくかどうかも、またエビデンスが出てきてどうなるかといったところでございますので、我々はそこについては1よりも低い0.幾つにするべきとかしないとか、そういった議論は私は持ち合わせておりませんで、申し訳ございません。
ですので、我々も数字を1にしろとかという主張はしておりません。
○○○委員
分かりました。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他、いかがでしょうか。
では、○○先生、お願いします。
○○○委員
用いられた解析について私の理解が追いついていないところがありまして、お尋ねしたいと思うのですけれども、今回は腎関連のハザード比に関しては日本人集団で異質性があるかもしれないから点推定値は1を使うところで、そこは合意されていると思うのです。そこは別に議論するポイントではないと思うのですが、日本人集団の年齢、性別等の背景データを使うのは実際の解析のどこに使われたのかと思いまして、これはCV既往で層別解析をされるときの分布を計算されるときに、日本人集団の年齢、性別を考慮に入れてCVの既往を割り出したというところに反映されている理解でよろしいでしょうか。それとも、それ以外で反映している日本人の年齢、性別を調整したものを反映されるということなのでしょうか。
すみません。私はイベント率の調整自体はしないほうがいいと個人的には考えておりますので、そこはハザード比を使うところで各国のイベント率の違いも考慮に入れた上の知見、グローバルの知見なので、私はハザード比で日本人データの不確実性が担保されているのであればイベント率自体を変える必要はないと個人的には思っています。ただ、1つだけ分からないのが、日本人集団の背景情報をどこに使うべきだというところの議論だったのかなと。もともと、企業さんがどのポイントで日本人集団と言われたのかなというところが教えていただければと思います。
○意見陳述者
日本人集団の患者背景を用いるのは、我々は企業分析では行っておりませんで、公的分析側でCV既往のありなしがあるところから日本人集団のデータを患者背景のデータとして用いるところがなされておりましたので、我々としましては、そういった使い方をされるのであれば我々も同意いたしますと言ったまででございます。
○○○委員
というのは、CV既往の分布を日本人に合わせる意味で企業さんは同意されたということですね。
○意見陳述者
はい。
○○○委員
だから、それ以外の解析で日本人の遷移確率を使うべきだと言われたわけではないということですね。
○意見陳述者
そうではないです。
○○○委員
分かりました。
私もCVの分布を日本人に合わせるべきだというところで公的分析班が提案されて、それに企業さんが合意されて、今、そのように修正されたところになっている。その点は合意されている。それで、合意されていないところは、イベント率自体を調整すべきかどうかという理解でよろしいですか。私もその点は問題かなと個人的には思っています。
○意見陳述者
ありがとうございます。そうです。
○○○委員
私からは以上です。ありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
その他の委員はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
○意見陳述者
どうもありがとうございました。
(意見陳述者退室)
○費用対効果評価専門組織委員長
それでは、議論に先立ちまして、企業から幾つか公的分析の追加分析についての指摘がございましたので、科学院からこちらについて御意見などはございますでしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。国立保健医療科学院です。
企業さんも、CVイベントとCV死亡リスクに補正係数を掛けること、あるいはその得られた結果、713万円/QALYという点については一定の同意をされているということですので、我々から特に申し上げることはないのですが、プロセスについては、我々が企業の見解を十分に受け取れなかったことが発端になっているので大変申し訳なく思っているのですけれども、前回、池田委員からコメントがありましたように、我々としては、このCVリスク集団については、FIDELITYの全体集団モデルを使うと少し過剰なのではないかという問題提起をさせていただいたという意識を持っておりまして、そのことが必ずしもうまく伝わっていなかったのかもしれないのですが、そういう点ではプロセスの点で大きな問題があるとは考えていないというか、組織の先生方にこの点についても御承認いただいたものと受け止めて追加分析させていただいたところになります。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
それでは、当該品目について、御議論をお願いいたします。
なお、御議論に当たっては、追加分析の結果を踏まえ、企業分析結果と公的分析の再分析結果のどちらがより科学的により確からしいかを相対的に評価することを踏まえて御議論を進めていただきますようお願いいたします。
では、○○委員、お願いします。
○○○委員
すみません。今回の追加分析におきまして、補正係数を0.75と置いて点推定をされているのですが、はっきり0.75という数字については、でたらめと言ってはいけないですね。根拠がないとされているわけで、この数字を使って意思決定することは極めて問題だと思います。やはり何らかの根拠は必要だと思います。
それで、この数字をどのような数字が最も、不確実性はあるとはいえ、点推定をするときに最も適正な値として定めるためには、費-2-2、科学院から出していただいた資料の中のどの表やグラフからその数字は割り出すというか、根拠として考えればいいのか。例えば4ページ目の全体集団と日本人集団のイベント発生率の違いを見て、ここから何か数字を、あるいは5ページ目の、もう少し大規模な研究だと思いますが、こちらのグラフのCVイベントの差異を見て、ただ、単純にこれを見ると、0.75という数字よりもよほど小さいような気がしますが、ここからその数字は何らか算出できるのか。その辺りのもし方法があるのであれば教えていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○費用対効果評価専門組織委員長
では、科学院さん、お願いできますでしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
4ページ目、5ページ目に、全体集団と日本人集団のイベント発生率の差異について示させていただきました。こういったデータに基づいて計算する方法ももちろんあると思うのですが、〇〇先生がおっしゃったように、0.75という数字はある種の仮定に基づいているものですので、それが臨床的な意味でサポートいただけるものなのか、あるいは臨床的に少し違和感があるものなのかどうか。そういう臨床的な点から御検討いただけるとよいのではないかと感じているところです。
以上です。
○○○委員
ぜひ何らかの、そういうエキスパートオピニオンでも何でもいいというか、そういうものでもよいのですけれども、企業が本当に気になることをおっしゃっていて、こういう勝手な数字を置いてこれから企業も分析していいのですねみたいな、それの始まりになってはいけないので、これは科学的に妥当な算出をしていく、推計をしていくためにやっているわけで、都合のいい数字を捻出するためにパラメーターを勝手に決めるということでは本末転倒でございますので、ぜひ、この数字の妥当性につきましてはきちんと検討した上で点推定はすべきだと思います。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
では、○○先生、お願いします。
○○○委員
統計的なポイントとして、イベント率で調整するかどうかは非常に大きなポイントだと考えております。といいますのも、グローバル治験を行うときはイベント頻度は各国で違うのは当たり前で、そこがマイナスにならないように、介入群とコントロール群の割合を無作為にバランスを国の中で取る、地域の中で取りながらハザード比を、効果量としては比を見ていくところで科学性を担保しています。
なぜ、比を見るのかというと、例えばイベント率がコントロール群に、大げさな例ですけれども、80%、介入群でそれが40%になる場合、比でいくと0.5、50%のリスク削減になります。8%が4%になるときも、比でいくと0.5ですので、もともとのイベント率が80%と40%と高い国も、8%と4%と低い国でも、効果としてはハザード比は0.5と一定に推定できるようにわざと比を使うのです。
そのときに、ハザード比ではなくてリスク差という考えもありまして、差の考えでいくと、80引く40は40、8引く4は4で、イベント率が統計量に直接的な影響を及ぼしてきますので、疾患の割合が低い国ほど意味がないのだと取られないように、臨床試験ではあえてハザード比、比をもって効果量とするところをやっているのです。
その点から考えますと、今回はハザード比において腎関連イベントであると、日本人集団の点推定値で1を超えているところで異質性があるかもしれない。ただ、明確なエビデンスはないので、日本人集団のハザード比においては、シミュレーション上は1.0という、効果がない値を持たれたところが一つ。
では、日本人集団の背景データはどこに使ったかというと、これはCV、層別解析でどう層別していくかという割合を推計するときに、日本人データで年齢と性別を考慮に入れたCVの既往で考慮に入っているところで、ここで十分ではないかと考えます。日本人集団がイベント率が少ないところでこれを調整してしまうと、ICER自体がバイアスを持って推計される可能性があります。
いけないと言っているわけではないのですけれども、過去に日本人のイベント率で遷移確率を調整し直した例がないのではないか。統計的なポイントでいつも見させていただいていますが、このような調整係数でICERを調整した事例は、私が覚えている限り、過去ではございませんので、イベント率が直接的にICERに影響を及ぼす場合、従来やってこなかった日本人のイベント率で調整するのはすごく大きな決断だと思います。
逆に言うと、今まで評価してきた技術も全て日本人のイベント率で調整すれば別の結果が得られる可能性は高いので、やはりこれはイベント頻度が多い少ないで治療効果の推定にバイアスが入らないために、統計や疫学の領域ではかなり気を遣いながらやっていることですので、急にこの段階で、この技術で突然、このような日本人のイベント率をもって調整し始めた意味が統計家としては理解できないポイントになります。
ですので、いい悪いを言っているのではなく、やるのであったら相当の理由を持ってやる必要があると考えています。これが一つ。
すみません。それから、これは私のコメントなのですけれども、科学院さんに2つ質問があります。
一つは、イベント率が増えた場合、ICERが増えるというふうに、直感的な方向性はそっちかなと私は思っていたのですけれども、イベント率が減ってICERが増えるのはどのような理由で起こったのかという点が一点。
あと、例えばイベント率が低いと必ずICERは高い方向に計算されてしまうのでしょうか。傾向性を持ったものなのかが2つ目の質問になります。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
御意見と御質問だと思いますけれども、科学院さん、いかがでしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
全ての質問にお答えできているか分からないのですけれども、基本的な考え方としまして、ガイドラインの9.1節には、ICER等を算出するに当たって使用する有効性・安全性、QOH等のデータについては、原則として日本における現実の臨床成績を反映しているものを優先的に使用するというふうに記載されていますので、臨床試験の世界ではいろいろ御議論はあるところなのかもしれないのですが、日本においてベースラインリスクが低い場合においては、日本において低い実態を反映して分析する必要があるのだと我々は考えているところです。
不確実性の問題についてですけれども、確かにどの程度、例えば0.75なのか、0.5なのかという定量的な程度については非常に不確実性が高いと我々は考えていますが、日本において、諸外国、特に欧米諸国と比べて、CKD患者さんのCVリスク、ベースラインリスクが低いことは、この点については不確実性が少ないのではないか。つまり、定性的には不確実性がないけれども、定量的には不確実性が大きい状況なのではないかと認識しておりまして、このことをやはり分析上反映させるのは非常に重要なことなのではないかと考えているところです。
それから、CVイベントリスクが一般的に費用対効果においては、イベントリスクが低くなるほど費用対効果は悪化するということでありまして、例えば海外集団においては10人に1人がイベントを起こすような状況で、ただし、日本人集団では100人に1人しかイベントを起こさないような状況であれば、いわゆるリスク差あるいはNNTは10倍程度違ってくるわけでありまして、その点、1人救命するのにかかるコストが当然大きくなってくるのは、NNTあるいはリスク差に費用を掛けていくことになればそういうふうになるのではないかなと、定性的な議論ですけれども、考えているところです。
全てお答えできているかどうか分からないのですけれども、取りあえず、以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
では、今の2点を踏まえながら、○○委員、どうぞ。
○○○委員
すみません。今までCVイベントが日本人集団で低いのは、薬に関係なく、技術に関係なく起こってくることだと思います。そうすると、これまでCV関係のイベントに対する技術を解析されたときは全て調整されていたのでしょうか。これまで調整変数は見たことがなかったので、マルコフのシミュレーションでは日本人特有のデータからイベント発症率も計算してやられていたということですか。
少なくとも、ハザード比に関しては治験のデータだと思うのです。それが点推定値の1.0か何かは別として、薬の効果自体は治験のデータ。ただ、例えばイベント率自体は今まで日本人のデータでマルコフシミュレーションをやられていたのでしょうか。
言い換えると、今回、調整係数を掛けなくても、そのまま日本人のイベント発症率をシミュレーションに使えば逆にいいのではないかというやり方もありますけれども、すみません。私の質問は、今までやってこられなかったと理解しているのですが、これは今までもこのやり方でやられていたのでしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
基本的には、先ほど申し上げたように、日本における臨床成績を反映しているような分析を行うということでありますので、日本におけるリスクイベントを合わせたような形で分析を実施してきているつもりであります。ただし、データが極めて乏しいとか結果に与える影響が小さいような場合にはそういうことを考慮しなかったような場合もあったとは思います。
ただ、糖尿病の治療薬のリベルサスの例などでは心血管イベントのリスク等々が諸外国とは異なるということで、日本人集団に限定したデータをもってネットワークメタアナリシス等を行い、追加的有用性の評価あるいは費用対効果の評価を実施したところでありまして、これは諸外国、世界中のデータをプールして解析を行ったときとは恐らく違った結果が得られ。
○○○委員
すみません。議論がぐちゃぐちゃになっているのですけれども、ネットワークメタ解析はハザード比を使っていますので、実際の疾患のイベント率は影響を及ぼさない統計量ですので、その場合は日本人のサブグループのデータを使ったということであって、日本人のイベント率を使われたわけではないと思うのです。
なので、今、私が心配しているのは。
○国立保健医療科学院
いや、ハザード比等もそうですけれども、ベースラインの推移確率等を求めるに当たって、ベースラインリスクが低い情報を反映してモデルを構築しているところになります。
○○○委員
そうすると、コントロール群のイベント発症率は日本人のコントロール内での発症率でやられているという。
○国立保健医療科学院
はい。プラクティカルに実施できているかどうかはいろいろ御議論はあるところかと思いますが、原則としてはそうすべきものだと考えています。
○○○委員
そうであれば、今後もそうしなければいけないですし、そこの議論はしないといけないと思います。
あと、すみません。先ほどイベント率が小さいとICERが大きくなると言われたのですが、イベント率が小さいとNNTは大きくなります。ただ、NNTは1人の患者さんを救うために何人治療しなければいけないかなので、そうすると、NNTとICERと同じように考えてもいいということなのですね。
すみません。私は医療経済学の専門なもので。
○国立保健医療科学院
基本的に、ICERは増分費用にNNTを掛けることによって簡易的には得られることになりますので、1件救うのに例えば10万円かかる。それが何人分必要かということですので、NNTの値に比例してICERは大きくなるものだと考えているところです。
○○○委員
そうしますと、一概には言えないのですが、やはり日本人では医療も発達しておりますし、国民性などからイベントが諸外国に比べて相対的には低い国民の場合は、諸外国に比べてICERの値は技術を問わず大きくなる傾向にあると言えるということでしょうか。そうなりますね。
○国立保健医療科学院
そうです。ベースラインリスクが低い場合はICERの値が高くなる傾向があるので、そういうことになるのかなと認識しています。
○○○委員
そうすると、今後、ベースラインリスクを評価するのであれば、我が国の費用対効果のICERは諸外国より高くなる可能性はあるということですね。
○国立保健医療科学院
そうです。ただし、コストの要素もありますので、あるいはQOLの要素もありますので、例えば日本の治療環境において医療費が安かったりするような場合はまた一概に何とも言えないので、その辺りのトレードオフの関係かなと考えているところです。
○○○委員
すみません。最後にしますけれども、私はやはり慎重に考えていただきたいのは、ハザード比はベースラインのイベントリスクによって解釈が変わらないように、差ではなく、比をもって効果を見るところで私たちは使っているのですが、逆に先ほど出てきたNNTで、差の考え方はイベントリスクによって、統計上影響を及ぼされるので、ICERもしかりであると、やはりイベントリスクで調整するかしないかは今後の費用対効果の解析結果にすごく影響を及ぼすことだと思いますので、やるかやらないかは、この技術だけではなく、今後、費用対効果のどうするのかも含めて慎重に議論していただきたいと思っております。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
○○委員、何かございますか。
○○○委員
多分、その議論は済んでいるのかもしれませんが、例えば日本のように虚血性心疾患の発生が例えば米国よりも少ないようなところだと、それを予防する医療技術の費用対効果は悪くなるわけです。もともと病気になる人は少ないので、一方、脳梗塞みたいに日本のほうが多い場合には、それを予防する薬は費用対効果がよくなるわけで、病気がほとんど発生しないのに予防の医療技術を使っていたら、その分、費用対効果が悪くのは当然というか、計算上はそうなるということで、薬の効き目が日米で違うというよりは、そもそも、そういう病気が進行する、あるいは悪くない人の割合が違えば、当然、費用対効果には跳ねてくるというか、影響してくるので、できる限り、やはり日本におけるベースラインの疾病のナチュラルコースとかといったものを反映させるのが適切だと思いますので、今回も可能な限りそうするべきなのかなと個人的には思っております。
その上で、0.75という値でいいのかどうかをどうしてもこのグラフから読み取れないのなら臨床の先生方の肌感覚でよいと思いますが、そうでなくて、あのグラフから何か読み取れるのなら何か読み取ったものをベースに点推定はすべきだと、すみません。しつこいようですが、思っておりますので、そのようなグラフからの読み取りは可能なのか、御専門というか、お詳しい方に教えていただきたいと思います。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
○○先生にお尋ねしますけれども、今、ご議論があったとおり、日米においてのリスク発生率を先生の御専門の分野から見てどのように捉えていらっしゃるか、御意見をいただけたらと思います。
○○○委員
リスクの発症は、先ほども○○先生がおっしゃっていただいたように、虚血性心疾患とかはかなり少ないですし、あと、脳血管障害は結構、日本人は多くてというのは、多くの生活習慣病を診ているような医師はそう思っていると思います。
ただ、あの0.75とか2元感度分析の図の右のほうだけ色が変わっているものに関しての肌感覚はなかなか難しいかなとは思いますけれども、あれは500以上にはなるのかなとは思いますが、その程度です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
日本の異質性があることは多分、先生方は御同意いただいた上で、分析の中において二重推計になるという科学院さんの指摘も懸念として皆さんは共有されていらっしゃると思います。その上で、今までの議論はそれをどのように分析に落とし込み、明らかにしていくのかという、方法論の内容ではあったと思います。この点について、今までの意見を聞いて科学院さんから何か、追加でコメントとかはございますでしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
○○委員から御質問がありましたが、5ページ目の右側のAdjustedのコホートになりますけれども、こちらは日本人と比べて米国人のイベントの発症リスクが約3.66、信頼区間が2.74~4.89という結果がこの文献上には登場しております。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
活用できるような根拠というか、何かを示すことが必要になった場合はここの情報ぐらいしかないということらしいのですけれども、池田委員、いかがですか。
○○○委員
すみません。そこから0.75と計算上言えるのなら結構だと思いますが、どうやったら0.75になるのか。そこを教えてほしいです。
○国立保健医療科学院
計算上は言えないと思うのですが、ただ、この右側の図の解釈をそのまま、3.66という数字をそのままここに当てはめていいのかは多分、いろいろな解釈があるかと思いますので、ぜひ、その点は臨床的な御見解等々を踏まえて御議論いただければと考えているところです。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
○○委員、どうぞ。
○○○委員
その単純に当てはめられない理由は何ですか。
○国立保健医療科学院
これもコホート研究を単純に比較して背景因子を調整している一つのコホート研究でありますし、また、FIDELITY試験の比較、ベースラインリスクを全て米国人のCKD患者、重症度等々が少し分からない中で同一に見ていいのかどうかが少々、我々でも議論等がありまして、そこは少し保守的にというところで設定したものなのでありますけれども、ぜひ、その辺りは、この辺の外的妥当性、内的妥当性を含めて、組織のほうで御検討いただければと考えているところです。
○○○委員
すみません。ありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
○○委員、どうぞ。
○○○委員
すみません。それでしたら、私は本当に今まで不勉強で、NNTと言われたら私たちの領域ではぴんときたのですけれども、やはりそこまでイベント率によってかなり影響される指標を扱っているのであれば、○○委員がおっしゃるとおり、えいやと0.75でやるのではなく、そこは正確に推計しにいくべきだと思います。
そうしますと、国が出している統計量とかを見るとCVイベントの率などは簡単に分かるようなものではないのでしょうか。諸外国と比べてになると、治験に参加した諸外国のデータを見てというと膨大な労力になるのかもしれませんが、何を言いたいかというと、今まで私が引っかかっていることが、やるのであればきちんとやる必要がある。では、それほど大事なものを今までほかの技術ではやらなかったのはどうしてかという、今、この議論が初めてここで起こっているところで、前例でもあったとはおっしゃいますけれども、ほとんど全ての疾患は諸外国と日本でやはり差があるものだと思うので、今まで全くこの議論がそこまで、私のように医療統計を専門としている者が気にするような、記憶に残るような議論はなかったとは思うのですが、ただ、ここでそこまで重要な事柄が今まで議論されなかったイコールするのであればどうやるべきか。えいやと0.75でやるのか、国の統計量まで調べてやるのかというところの議論が今までなかったのは不思議な気持ちがしております。
○費用対効果評価専門組織委員長
科学院さん、いかがでしょうか。多分、2点あったかと思うのです。
○国立保健医療科学院
国の統計という点に関しては、CKDをバックグラウンドに持っている患者さんの死亡率はなかなか公的統計のデータ等では捕捉し切れていないようなところでありまして、我々も検討したのですけれども、なかなか難しいかなと考えているところです。
もう一点目、過去にこういうことをやったかやらないかなのですけれども、過去にもやはり日本人の発症リスクが非常に低いような疾患についてはベースラインリスクを検討してやってきているつもりなのでありますが、その点、不十分で、これからしっかり検討するようにということでありましたら、さらに注意して公的分析等をやらせていただければと考えているところです。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
最初の1点目については私からも確認させて頂きますが、根拠として使えるようなデータについては、すでに効果として示していただいているようなもの以外についてはほぼないという認識でよろしいですね。国の統計の話もございましたが。
○国立保健医療科学院
そうです。公的分析としてはなかなか一定に決めるのが難しいところで、このようにファンクションに基づいて、感度分析の結果と合わせて御判断いただきたいと考えているところです。
○費用対効果評価専門組織委員長
分かりました。
感度分析の精度とか妥当性についてはまた後で御議論させていただきますが、もう一つの今まで事例がなかった話に関しては、行う必要性というか、優先度みたいな範疇なのか、そこまで議論が深まっていなくて今回顕在化しただけなのか、その辺りについてはどんなお考えになりますでしょうか。
○国立保健医療科学院
我々、公的分析するときにベースラインリスクの違いは常に配慮しながらやっているのですけれども、すみません。私も具体例を今すぐに挙げるのは難しいのですが、ベースラインリスクについては、ちょっとお待ちください。
○費用対効果評価専門組織委員長
なかなか難しい内容なので、ゆっくりご対応いただいていいと思いますけれども、〇〇委員がおっしゃるとおり、これは結構大きなテーマですし、今後の品目にも関係が出てくる可能性もあると考えられます。当たり前なのですが、アカウンタビリティーも必要になると思っていますので、できれば組織の皆さんと協議しながら進めていきたいと考えております。科学院さんとしてはいかがですか。
○国立保健医療科学院
基本的に我々は考慮してきてやってきているつもりなのですが、ただ、それを明示的にお示ししていなかったり、影響が少ない場合はなかなか、データの利用可能性という点もあって、無視というか、考慮しなかったような場合等々もありますので、なるべくそういうベースラインリスクについては、もし分析に大きな影響があるような場合、今回のケースのように、非常に分析に大きな影響があるような場合については、詳しく公的分析としても御説明するような形でさせていただきたいと考えているところです。
○費用対効果評価専門組織委員長
分かりました。
○事務局
すみません。事務局です。
○費用対効果評価専門組織委員長
どうぞ。お願いします。
○事務局
1点、お話を聞いていて、係数によるベースラインリスクの調整が良いか悪いかは専門組織で御議論いただいて決定していただくことかと思いますが、事実関係として、ベースラインリスクの調整を今回のように係数によって補正したことは今まであるのでしょうか。
○国立保健医療科学院
そのように係数によって補正したことはないです。
○事務局
ありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
よろしいですか。
今回は新しいアプローチであって、なおかつ統計の専門家からは少し、違和感があると言ったら変ですけれども、慎重に取り扱うべきという御意見があったものですから、今、整理させていただいているところであります。
事務局に一度お聞きしますけれども、これをもう一度、再追加分析みたいなものを展開することは手続上問題ないでしょうか。
何を申し上げているかというと、意見はそれなりに複雑なところもあるので、科学院さん側にもう少し整理をしていただき、説明変数を少し補強したほうがいいのではないかなと思って伺ってはいたのですけれども、その前に手続的にどうなのかを確認させていただければと思います。
○事務局
事務局でございます。
やはり会議の通例としましては、基本的には決められるものはできるだけ決めていただきたいところはございます。一方で、どういった作業が必要かを少し明確にしていただいた上で、そうした作業をしていただくために追加分析いただくということは差し支えないと考えているところでございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それで、私もそんなに専門ではないのですけれども、いただいた御意見から整理をしてみたいと思います。今回の係数というか、ベースラインリスクをいじって調整していることに関して、論点は3つほどあると思っております。まず、係数に関してはその根拠というのでしょうか、もしくは妥当性、頑健性という論点があると思います。今回、2次元感度分析をされていますが、それで十分なのか、もしかすると、それ以外に何か方法論があるのかという、まずは現状のものをできるだけ評価する前提での話題が挙げられます。
あとは、○○先生がおっしゃっているとおり、ベースラインリスクを今回調整することによる、統計学的な面からの論点が挙げられます。逆に言うと、そういう論点はあるのだけれども、今回は、どのような条件とかこういう前提で結果を出したという説明強化をさらに望まれるということであります。
さらに、先ほどから御議論があるのですけれども、係数の0.75とかについてもう少し確たる根拠が必要ではないかという指摘であります。正直なところ、RCTなどではなくても、ある程度レベルの高いコホート研究なども活用できて、ゼロよりはましという話があるのであれば、そういったものをさらに準備していただくのもご検討頂くのは意味があるのではないかと思っています。
これらについても、先生方から御意見いただきたいと思っています。では早速、○○委員、お願いいたします。
○○○委員
感度分析については後ほどと言われたので待っていました。まず最初からの話で言うと、私は統計の専門家でも何でもないのですが、ただ、この組織に割合、最初の頃から参加している人間ですので、その立場から言うと、やはり日本人の異質性を、これは決して日本人だけが異質というわけではないですが、異質なものを無視して、元の大きい問題だけで扱っていいのかという疑問が残ります。何らか日本人の特色を反映できないかということで、さっきのガイドラインの説明にもありましたけれども、この組織でも、いろいろ工夫してきたのは事実だと思うのです。
しかし、そうすると数が少な過ぎて、統計学的な有意差が出ないという批判の一方で、そうは言っても、日本人のデータもあるのに、日本人を反映しないのが果たしていいのかみたいな議論はずっとやってきたと思います。確かに今回のように補正係数を掛けるのは統計の専門家から見れば非常に驚くようなものに感じられるかもしれないのですけれども、私はそういう営みのうちの一つ、手段の一つぐらいに感じていたので、そういう意味では全然違和感はありませんでした。ただしこれは委員お一人お一人の考え方だと思っています。
それで、○○先生が0.75の根拠とおっしゃるのですけれども、私が感じるのは、意見書にも書きましたし、さっきもお話がありましたが、薬事承認のときに添付文書に反映するような、はっきり日本人は違うのだみたいなことが書いてある点を重視しています。それから、さっきここで使ったピボタル試験の明らかにイベントに違いがあることと、さっきの大規模コホートですね、ああいうものを見て、さすがに同じに扱うのはまずいだろうというふうに感じています。例えば0.5~1の間の真ん中を取って0.75という、まさにアサンプションを置いて、あとは2元感度分析をして、面積の広いところ、つまり、誰がどう見てもやはり500万/QALYよりは下になることは確率的にほとんどないだろうということでされた判断だということで、私は0.75事態にそれほど根拠を求める必要はないと思うのです。
これまでずっと、この組織の在り方として、批判はありながらも、点推定で何らかの数字を出さないと中医協総会に出せないようなイメージがあるので、かなり無理してあの数字を出しているのであって、判断はやはり不確実性を伴いながら妥当な判断をするということで言えば、0.75がアサンプションであってもいいような気がするのですけれども、いかがでしょうか。
以上です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
今の御意見を踏まえて、他の先生方からコメントはございますでしょうか。
○○委員、お願いします。
○○○委員
何度もすみません。本当にこれは職業の違いから来るのだと思ってびっくりしているのですけれども、びっくりしているのは、私は医療統計の面からいくと、費用のことなど全く無視して今まで仕事をして、誰でも薬を使ったらいいではないかというところで来ていたので、差ではなくて比を使うべきということで来ていたのですが、それは費用対効果の会はやはり企業に対して効果がない技術は批判していくべき会なのだなと。
そうなると、日本は逆にイベント率が少ない疾患ほど費用対効果は悪くなりますね。言い方を変えると、必要のない人たちが使っているのではないかというようにも解釈できるので、そうすると、重症な病気ほどICERは小さくなって、軽症な病気ほど、イベント発症の少ないものほどICERは大きくなる。そういう制度なのだなと思って、すみません。私も今まで、医療統計家はお金のことは全く考慮に入れず商売をしてきたなと思って反省はしているのです。
ただ逆に、軽症な人には治療は要らないみたいなことにもなり得てしまって、もうちょっと言うと、日本は逆に必要ない人に費用対効果の悪い治療をしているのかみたいなことになってしまうので、すみません。○○先生、患者さんから見たら、こういう議論はどうなのかなと思いました。
○○○委員
専門的議論が続いて本当に難しかったのですけれども、日本の場合はまだHTAといっても、NICEのように、採用不採用に関与しないので、アプレイザルにおいて私のような一人が紛れ込んで一応オブザーバーしていればいいみたいな形になると思うのですが、今後、このシステムがいわゆる本格的HTAというか、採用の可否を決めることになってきたときに、日本人の場合は結構、そんな体制ではないのだからということがやはり影響は出てくると思うのです。
だから、今、確かにいわゆるPPIという形でかなり欧米ではもうちょっと疾病ごとの患者会がEUではオーソライズされて、一応、患者会として適切なことが言える集団と、アプレイザルを踏まえてやっていくところであって、アプレイザルは非常に、ある意味、定性的なものも含んだ総合評価のところでアジャストする形になっていると思うので、今までの統計的厳密さといわゆる社会的な必要性はもっと考えるべきという議論は相当ステータスの違う議論だと思うのですけれども、そうしたところでちゃんと患者の薬を使用する権利が保障されていくのであれば、一定の基準で厳密さはやはり必要で、ある意味、薬というものは疾病によって、そもそも、見積りの段階でその価値が変わるもので、副作用も重い疾病であれば強い副作用はアクセプトだし、軽い疾病であれば弱い副作用でも容認し難いという、ある種、社会的な概念でもあるというところで承知しております。
だから、これは私の個人的な見解ですけれども、〇〇委員がおっしゃられるような、ある程度、数理的な厳密さはベースにあった上で、非数理的な定性的あるいは社会的評価は上に乗っかる構造がやはりちゃんと担保されていないと、そもそもHTA自体の運用は難しくなるとも思います。
何を言っているかというと、やはり数理的な適切さと社会的な価値は違う次元で議論すべきと思いますので、今回の議論で言えば、それを今までこの組織が何となく値切ってしまおうみたいな、そういうニュアンスで私も受け止めていて、それはメーカーが困るだけで、患者は困らないのです。全部、今は保険収載されるので、安くなるだけで、使えるものは使えるねというところで静観しているところなのですけれども、やはりこれがこの中で、数理的なことも含めた中で患者の権利を言い出すといろいろな、今の場合だったらバイエル様に肩入れして、いや、これは1でいいではないかという意見を言う局面になるのかなと思っています。
なので、今後の費用対効果が本格的HTAに移行する制度の中で大きな論点として含まれる。現状でも、○○一人がこんなところへいていいのかと、患者会からは何でアプレイザルは日本人が入っていないのだというふうに、多分、外から思われているところはあると思うのですけれども、現状は一応、全部、薬価収載されるので、本当の意味では、むしろ、安いほうが利益があるので問題ない。そこにはコンフリクトはないのですが、やはり採用までにそこがいったときに、このシステムは、ある程度は検証し直される局面があるのかなと思って考えています。
お答えになっていませんが、以上です。
○○○委員
非常に勉強になりました。
ですので、数学的に緻密であればいい方向には行くとやはり危険であるところは理解しました。ありがとうございます。
○費用対効果評価専門組織委員長
闊達な御議論ありがとうございます。
では、○○委員、お願いします。
○○○委員
皆さんの御議論を聞いていて非常に私も今日は勉強になったのですけれども、一言だけ、やはり我々が本当に考えるべきは、無限にお金があればいいのですが、私は費用対効果の専門家ではないし、統計の専門家でもないのですけれども、財政のことを少しは考えるべきで、無限にお金があればいいのですが、本当にこれからどんどん生産年齢人口は、日本は世界の中で今後驚くべき、1000万人から減っていく中で、社会保障を支える意義が起きてくるわけですよ。
その中で、しかも非常に厚い医療、自己負担が非常に低い中で我々は、私も含めてですけれども、費用対効果について、一つ一つは本当に細かい話ですが、コスト抑制を真剣に考えなければいけない。今、○○先生がおっしゃったように、いずれ、このシステムはヨーロッパあるいはアメリカからは全然違うので、抜本的に薬価制度を変えていく必要性も含めて、今はとにかく、この費用対効果の委員会があるからというので安心して、ドラッグラグを気にして、ばんばん保険収載しているので、非常に危険な状態に陥っている。公的分析班は本当に仕事が大変で、限界状況に来ている中で、非常にこの薬価システム、薬価制度自体を抜本的に厚生労働省さんで考え直す。しかも、財政面での配慮をしながら考えるときに来ているのではないかなと思いました。
すごく大きい話ですけれども、すみません。以上、感想です。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
少し整理をさせていただいているところでありますけれども、仮に実施すべきというか、やれることを全てやりましたという、体裁というわけではないですが、もう一度見直しをするのであればということでの先ほど3点ほどの話がございましたが、現状でも十分説明できるし、費用対効果という趣旨からはそれで十分ではないかという御意見もあったかと思います。
私から1点、また確認なのですけれども、科学院さんでおつくりになった9ページ目の2次元感度分析で、要は500万円というラインに関して、どういう条件が変わってもほぼ間違いなく500万円オーバーであるということをこれでほぼ説明できるとお考えになっているとは思うのですが、今までの○○委員とかほかの先生方の御意見とかも踏まえて、そういう要件も考慮すると、多少、この見方について変わってくる可能性があるのかどうかとかに関して何かコメントがあればいただければと思います。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
お示ししたとおり、CVのイベント発生リスクが諸外国と比べて日本人が低いとすると、5%程度大きくするだけで500万円を超えていくということですので、ICERが500万円/QALYを超えていくことに関しては、この点に関しては我々は不確実性がないのだと考えているのですけれども、そこから先、どこまでICERが伸びていくかについては非常に不確実性が大きいところかなと認識しておりまして、もちろん、○○委員が意識されている点だと思いますが、4ページ目、5ページ目のような研究の結果をそのままダイレクトに当てはめればICERの値は0.5の先に行くということで、1000万円以上という結果になるところであります。ただ、では、この研究をそのまま当てはめていいかという外的な妥当性の問題等々も控えておりますので、その辺り、こういうまさに不確実性をめぐるディシジョンでHTAにおいて非常に一番難しいところだと認識しているのですけれども、その辺り、どう議論していただけるのかを御検討いただければと考えているところです。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
恐らく、これ以上のアプローチができないという御意見でもあるのかなと思って伺っていたのですが、そうすると、科学院さんがお示ししたこの結果を、ある程度、前提に整理を進めざるを得ないとも考えられます。さりとて、先ほど○○委員とかのコメントもありましたとおり、ベースラインのリスクの調整については多くの御議論があったことに配慮するならば、事務局さんとも御相談しながら企業側に多少メッセージを伝えておいたほうが良いとも思います。今後、その取扱いを今後出てくる品目においてどのように適用されるべきか、特に慎重に活用していただきたい、という話を含めたメッセージとかコメントは、内示書も含め企業側に出すものにおいて工夫したほうがよいとも考えます。
その辺りについては、いかがでしょうか。では、○○委員、どうぞ。
○○○委員
すみません。私が心配しているのは、5%動かしただけでICERがかなり動く指標でありますと、今後は結構、こういう話は出てくると思うのです。例えばがんになった患者さんの死亡リスクを見ると、日本人は極端に低いとか、CVイベントだけではなく、やはり日本人はアウトカムがいいところで、今後、本当にこういう議論がずっと出てきます。
そうすると、少し動かしただけで本当にICERの区分がかなり変わってくるようなセンシティブなパラメーターを今後扱っていくのかというところで、今回はそれを1にするのか、0.5にするのか、0.75にするのかという、何にするのかという議論よりも、調整するのかしないのかというところがすごく大きなディシジョンになっていくのかなと。
すみません。決して反対しているわけではないのですが、心配していますというコメントをさせていただきたいと思います。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
この品目の範疇で多分、今、〇〇先生がおっしゃったような方針みたいなものは出せるわけではなくて、この品目のケースとして、ある一定の条件というか、理由をもって今回は活用したという説明になるのかなと思います。ただし、それに当たっても留意点みたいなものは少ししっかりまとめておいたほうがいいということで、議事録等も公開されるということでありますが、まとめ方はまた後で御相談させていただくということで、そういう前提で少し進めさせていただければと思っております。
その上でもう一度、お話を整理させていただくと、企業側から幾つか不服というか、御意見がございましたが、これについては、冒頭、○○委員から、前回の追加分析の組織としての指示は、今回、科学院さんが概ね対応いただいたという整理で考えていきたいと思っているのですが、それについては、先生方、御異論ないでしょうか。大丈夫ですか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
あとは、少し技術的に細かいところを挙げますと、ベースラインを日本人から全体に戻したというか、変更した理由等々については、今回、科学院さんが御説明している内容の精査が必要かと思います。すなわち、整合性が取れないとか対応が難しかったところについて、説明や合理性は十分なのかどうかということになります。遷移確率を含めて、背景を、日本人の集団をベースラインにすると、いわゆるイベントもしくはリスク等との関係で、それは全体のデータを使ってきているということですが、整合性が取れないというコメントもございました。科学院さん、いかがでしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
このモデルなのですけれども、年齢、性別等のベースラインの患者分布を変えても、死亡率等々は変わるのですが、イベントの発症リスク等の遷移確率は変わらないようなモデルになっておりまして、ベースラインを変えただけでは十分に日本人の状態を反映したような分析にはならないと考えているところでありまして、その結果、やはりこういう補正のようなものが必要なのではないかという御提案をさせていただいたところになります。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
今の説明で私はほぼ整理がついたと思いますが、委員の先生方、よろしいでしょうか。
○費用対効果評価専門組織委員長
○○先生、お願いします。
○○○委員
大方の方が御納得であればいいのですが、0.5~1の間、CVイベントのところで、しつこくてすみません。0.5~1の間での2元感度分析で、多分、感度分析のほうは、そうしたら、これがベストの方法、手法としてはベストだと思いますが、0.5~1の間で動かして真ん中の0.75を取るということだけれども、CVイベントの場合、0.5ではなくて0という値だってあり得るわけだから、0~1の間で動かして真ん中の0.5を点推定としましたということだってできるわけで、いずれにしろ、何らかの、恣意的ではないかという批判が生じる可能性があって、それに対しての何らかのきちんと、反論といいますか、根拠を持って、こういう形での感度分析のレンジも定めましたということも示さないと、本当にこれは非常に重要な意思決定の根拠になる数字だと思いますので、そこがすみません。私自身は腑に落ちていないのですが、大方の先生がそれでも特段の違和感がなければ結構だと思います。
○費用対効果評価専門組織委員長
○○委員、貴重な御意見ありがとうございます。
科学院さん、今の点に関していかがですか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。
0.5~1.0の範囲が必ずしも合理的な根拠に基づいておらず、恣意的な設定ではないかという御指摘だと思うのですが、そこの側面については我々としても必ずしも否定できない部分があると思うところですので、もし組織で御議論いただいて感度分析のレンジの幅等を御指示いただければ我々でもぜひ対応させていただきたいと考えているところです。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
レンジの幅を変えると結構、先ほどの図もございましたけれども、変わってくる可能性はございますでしょうか。最終的には9ページの図になるのでしょうか。
○○○委員
すみません。よろしいでしょうか。
○費用対効果評価専門組織委員長
○○先生、どうぞ。
○○○委員
ですので、点推定値を必ず示さなければいけないルールになっているのなら、一例としてこういう数字でこうなるということならいいのですけれども、その数字が独り歩きしてはいけないので、いずれにしても、500という数字を下回ることはほぼあり得ないことが多分、この図からは見えるだけのことで、0.75という数字がここから何か定められるわけではないので、そこをうまく実際に最終的な意思決定をするところに伝えるような形でのきちんとメッセージを出していただければ、私としてはこれ以上、特に意見というか、議論はございません。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございました。
では、○○委員、どうぞ。
○○○委員
本当にしつこくてすみませんが、さっきの9ページの図を見ると、係数を1から0.5まで上げるだけで500万円から1500万円まで動くのですよ。そうすると、0まで引き上げると一体どこまで動くのだという非常にセンシティブな数字、影響力を持った数字になりますので、これはイベント発症率を25%下げる、50%下げるだけであれぐらい動くのであれば、諸外国と比べて日本人のイベント発症率がそれぐらい低い疾患は山のようにあります。
ですので、これはすみません。数学的な判断だけではないと思うのですけれども、数学的には本当にこれは費用対効果のほかの計算結果を吹き飛ばすぐらいの影響を持ったパラメーターになりますので、これは物すごく心配しています。0.75から0.5か、また、0.25かで影響力が強過ぎるから、何が言いたいのか分からないですが、本当に心配しています。すみません。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
当初思った以上に根が深そうな議論になってきておりますし、今後の影響もありますし、説明をしっかりしなければいけないのと、数字が結構振れる可能性もあるという話もあるので、最初、私のほうで3点ほど留意しながら、再追加分析にも触れさせて頂きました。継続審議みたいな形のお話をさせていただきましたが、よろしければ、先生方からいただいたものを含めて、科学院さんでもう一度整理していただいて、最終的にはまた結果が同じであるのかどうかも含めて一度まとめていただく方向でよろしければ、今日の会議は一旦、それで収めさせていただきたいと思っていますが、御参加の先生方、いかがでしょうか。
特段御意見がないようでしたら、継続、再追加分析ということで、同じことを繰り返すのではなくて、今、新しい御指摘があった点を踏まえて、もう一度、内容を御説明いただく方向でまとめていきたいと思います。
その観点で、先生方から何か改めて御意見とかはございますでしょうか。よろしいですか。
では、そういう方向で、科学院さん、今回の議論の内容を踏まえて対応いただくことは大変かと思うのですけれども、御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。また、今回の内容を整理して対応していただくに当たって、日程的には次回の組織に御提示いただけるような形で進めていただけそうでしょうか。
○国立保健医療科学院
はい。日程的には可能かと思うのですが、やはりこれは最後の最後までどうしても不確実性が残るものでありまして、どのように御提示したらいいかが少し我々としても悩ましいところでありまして、例えば諸外国においても不確実性を持った意思決定は通常なされているわけでありまして、そういうときの考え方のようなものを整理するのがよろしいのか、何をしたらよろしいのか。その辺りはいかがですか。
○費用対効果評価専門組織委員長
先ほど、私からも3つ、単純に気になる点のレベルですけれども、御指摘したのと、あと、○○委員から具体的な係数のレンジの話がございましたので、その取扱いを検討していただくということかなと思っております。
さらに、今回の目的は500万円という判断ライン、もしくはそれの上の基準の話にどれだけ影響があるのかどうかの見極めの材料をいただきたいということになろうかと思います。いかがでしょうか。
○国立保健医療科学院
ありがとうございます。可能な限り、先生方の意思決定に資するような検討をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○費用対効果評価専門組織委員長
お手数をかけます。
事務局、この件に関して、何かそちらからコメントはございますか。
○事務局
事務局でございます。御決定承りました。
タイムラインに関しましては、少し持ち帰って、例えば資料の御提出をいただくタイムライン等、お伝えさせていただければと思います。それで、次回の専門組織で発表、そして、御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、議決に入らせていただきたいと思いますので、○○委員におかれましては、議決の間、一時御退室をお願いいたします。
(○○委員退室)
○費用対効果評価専門組織委員長
さらなる追加分析が必要という前提で、先生方の御意見を参考に、ケレンディア錠に関する費用対効果については、先ほど来、議論していた3点及び他の先生方からのコメントがございましたレンジ等についての再検討を中心に、公的分析によるさらなる追加分析を実施するということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。
それでは、公的分析は、追加分析を実施した上で速やかに報告書を、できれば次回、ただし、これについては、今、事務局からございましたとおり、タイムラインも含めた調整があるということですが、それを踏まえて、費用対効果評価専門組織に提出するということでよろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○費用対効果評価専門組織委員長
ありがとうございます。

