2022年8月26日 中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門組織 第5回議事録

日時

令和4年8月26日 13:00~

場所

オンライン開催

出席者

田倉 智之委員長、齋藤 信也委員長代理、池田 俊也委員、木﨑 孝委員、新谷 歩委員、新保 卓郎委員、中山 健夫委員、野口 晴子委員、花井 十伍委員、飛田 英祐委員、米盛 勧委員、石原 寿光専門委員、賴 建光専門委員、福田 敬専門委員
国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター 白岩上席主任研究官
<事務局>
中田医療技術評価推進室長 他

議題

○ ケレンディア錠に係る分析枠組みについて

議事

○費用対効果評価専門組織委員長
 最後になります。続きまして、ケレンディア錠に係る分析枠組みについて御議論いただきたいと思います。
 まずは事務局及び公的分析から説明をお願いいたします。
 それでは、審議に入る前に、○○委員におかれましては、審議の間、一時御退席をお願いいたします。
(○○委員退室)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 では、続けていただいてよろしいでしょうか。
 
(事務局・国立保健医療科学院より説明)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 それでは、議論に先立ちまして、まず本製品の検証作業に係る分析枠組みに対する企業意見の聴取を行いますので、事務局は企業を入室させてください。
 
(意見陳述者入室)
 
○事務局
 事務局でございます。
 企業の皆様の準備が整いましたので、よろしくお願いいたします。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 私は、費用対効果評価専門組織委員長です。
 早速ですが、10分以内で、ケレンディア錠に係る分析枠組み(案)についての企業意見の御説明をお願いいたします。続いて、質疑応答をさせていただきます。
 それでは、始めてください。
 
○意見陳述者
 それでは、ケレンディア錠の意見陳述を行わせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、疾患の概要を説明いたしますので、2ページ目を御覧ください。
 近年、糖尿病性腎症や糖尿病性腎臓病という疾患名を包括する概念として、糖尿病と腎障害を合併する状態を糖尿病合併CKDとして、その名前が広く使われております。
 この概念図がこちらになります。典型的な糖尿病性腎症が中心にあり、その周囲を覆うように、非典型的な病態として、アルブミン尿を伴わないまま糸球体ろ過機能が低下する糖尿病関連腎疾患の糖尿病性腎臓病があります。さらに、その上位のカテゴリーとして、糖尿病と直接関連しない腎疾患が糖尿病と合併している状態を糖尿病合併CKDとしております。すなわち、最近ではかような臨床像が確認されてきておりまして、病態の鑑別が容易ではなくなってきているため、糖尿病合併CKDという概念が広く用いられるようになってきました。
 次のページを御覧ください。
 糖尿病合併CKDの治療戦略として、3つの要素に分けることができます。すなわち、血行動態の悪化、代謝の悪化に加えて、炎症及び線維化に対する治療が知られております。近年、ミネラルコルチコイド受容体の過剰活性化がこの炎症及び線維化等に関与することが知られてきております。
 次のページを御覧ください。
 本邦における治療ガイドラインでは、標準治療としてACE阻害剤とARBが第一選択とされ、推奨されております。代謝や炎症及び線維化に対する治療につきましては、現時点では特定の薬剤は推奨されていることはありません。
 次のページを御覧ください。
 本剤ケレンディア錠は、腎臓や心血管系への炎症・線維化をターゲットにした治療薬として本年3月に承認されました。
 品目概要につきましては、次のページから説明させていただきます。次のページを御覧ください。
 ケレンディア錠の効能・効果は、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病となっております。関連する注意としましては、本剤はACE阻害剤あるいはARBが投与されている患者に投与することになっております。
 次のページを御覧ください。
 用法・用量は、1日1回の経口投与でございます。eGFRが60mL未満の場合には10mgから開始することが推奨されております。
 次のページを御覧ください。ここから、本剤のPivotal試験の結果を紹介させていただきます。
 フェーズⅢは2試験実施されておりまして、腎複合エンドポイントを主要評価項目、心血管複合エンドポイントを副次評価項目としたFIDELIO試験、主要評価項目と副次評価項目を入れ替えて実施されたのがFIGARO試験です。腎複合エンドポイントが構成されているイベントは、腎不全の発症、4週間以上持続するベースラインからeGFRの低下、そして、腎臓死です。心血管複合エンドポイントの構成は、心血管死、非致死性の心筋梗塞、非致死性の脳卒中、そして、心不全による入院から構成されております。
 次のページを御覧ください。
 試験デザインとしましては、両試験ともにACE阻害剤あるいはARBによる標準治療を受けているCKD患者を対象とし、いずれの試験も、導入期間、スクリーニング期間の後、ケレンディア投与群とプラセボ投与群に無作為に割りつけられ、観察期間は4か月ごとに来院することとなっておりました。
 次のページを御覧ください。
 こちらはFIDELIO試験の主要評価項目の結果になります。イベントの累積発症率を有意に抑制できていることが確認できます。
 次のページを御覧ください。
 こちらはFIGARO試験での主要評価項目の結果になります。FIDELIO試験と同様に、イベント累積発症率を有意に抑制できていることが確認できます。
 次のページを御覧ください。
 前のページで全体集団での主要評価項目の累積発症率の経時変化を示しておりましたが、複合エンドポイントを構成しているそれぞれのイベントの発症についてはこちらの表で示しております。いずれのハザード比も点推定値では1を下回っておりました。
 次のページを御覧ください。
 さて、日本人サブ集団での各エンドポイントの解析結果がこちらの表になります。FIDELIO試験の腎不全発症や副次評価項目、FIGARO試験の非致死的心筋梗塞や副次評価項目の腎複合エンドポイントで1を上回っておりますが、こちらにつきましては信頼区間が極端に広く、日本人サブ集団の割合に対して発現した例数も少なく、有効性を評価するのは困難であろうと思われます。PMDAでの審査過程におきましても十分に審議されており、日本人と全体集団との有効性が異なることはないとの判断が下されて、承認にまで至っております。
 次のページを御覧ください。ここから分析の枠組みの論点を説明させていただきます。
 まず、C2Hから御提案いただいた枠組みになりますが、おおよそ弊社からの初回提案に合意していただいております。
 ただ1点「その他」の欄に記載がございますとおり「日本人集団でのデータを参照した分析も実施すること」とされており、その理由としまして、異質性が存在する可能性があるためということでございました。
 ここで、○○先生にも臨床的な観点から御見解を述べていただきたいと思います。○○先生、よろしくお願いいたします。
 
○意見陳述者(専門家)
 ○○です。
 先ほど○○さんから御説明がありましたように、やはり日本人サブ集団と全体集団とは一貫性が確認できていないことについては、もともと解析の項目に日本人のサブ解析をすることが入っておりません。ただし、サプリメントにはアジア集団に関しては解析をするということが入っておりますから、単に日本人だけ抽出したデータから有効性を評価するのは非常に間違った見解に陥る可能性があると考えております。
 したがいまして、今後、日本の実臨床を反映するようなエビデンスを、6月に実薬が発売されましたから、それまでFIDELIOあるいはFIGAROの全体集団のデータを用いた解析が費用対効果を評価するのに適していると考えております。
 以上です。
 
○意見陳述者
 ありがとうございます。
 また、医療経済の専門家として○○先生にも御参加いただいております。どうぞ、一言よろしくお願いいたします。
 
○意見陳述者(専門家)
 ○○でございます。
 今回、このケレンディアに限らず、この日本の費用対効果の使い方において、例えば主分析と従分析のような形で2つのデータがあったときにどちらを生かすのかは非常に議論になるところだとは思います。ある意味で、どちらを使うかによって結果もあらかじめ想定できてしまうところは非常に分析の立場にとってアキレス腱であるとは考えております。
 今回の状況に関して言えば、やはり今、○○先生からおっしゃっていただいたように、臨床的にどちらのデータを使うのが妥当であるか、あるいは審査報告のときにどのような議論が行われているのか。本来はそれにプラスして、実際、今後、リアルワールドで使われたときのデータを含めて評価すべきと考えますが、現時点ではより臨床的に妥当な方法はむしろ全体集団であるのではというふうに、私は○○先生の御意見からは考えております。
 以上です。
 
○意見陳述者
 どうもありがとうございます。
 それでは、次のページを御覧ください。こちらが弊社からの最終提案でございます。
 日本人サブ集団の取扱いにつきましては分析の枠組みの中で明確に示しておく必要があると考えており、感度分析として実施する旨の記載をさせていただいております。
 最後に、次のページを御覧ください。
 日本人サブ集団の腎不全の発現等におけるハザード比が1を上回っていた点につきましては、全体集団に対する日本人の症例数が限られており、そのイベントの発現数自体も少なく、全体集団との一貫性が評価できるだけのデータがそろっていなかったことが挙げられます。
 PMDAでの審査過程でもその点につきましては十分に議論されており、最終的に日本人でも臨床的ベネフィットは期待できると判断されております。
 そこで、現行の費用対効果評価ガイドラインの14.4の内容を鑑みまして、日本人サブ集団は感度分析として実施したいと考えます。
 また、今回の論点につきましては費用対効果評価に直接影響を与えられると考えられるので、分析の枠組みの一部として、どのデータを用いるかまで決めておくことによって、恣意的に結果が評価されることを排除することができ、公明正大に評価していただけるものと思われます。
 弊社からの意見陳述は以上となります。どうもありがとうございました。御審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 では、委員及び企業から御質問はございますでしょうか。
 いかがでしょう。
 
○○○委員
 ○○です。よろしいでしょうか。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ○○委員、お願いします。
 
○○○委員
 先ほどアジア人を対象としたサブグループの解析がされるというお話が出てきたかと思うのですけれども、その結果はいかがだったのでしょうか。
 
○意見陳述者
 そちらの結果につきましては、現在、パブリケーション、投稿準備中でございますけれども、大まかに申しまして、全体集団での分析よりもよい結果が出ておりましたと申し上げさせていただきます。
 
○○○委員
 よい結果というのは、人種によって違いがあって、アジア人はほかの人種よりもよいという意味でしょうか。
 
○意見陳述者
 アジア人のサブ集団を全体集団から抜き出したものと全体集団を比較した場合に、評価項目としては、特に腎臓関係の評価項目としてはよりよいデータが出ていたところで、どの民族がといったところよりも、たまたま統計学的に見ますとサブ集団として結果がよかったものでございます。
 
○○○委員
 そうしますと、人種の間の差は一応ありそうだということでしょうか。
 
○意見陳述者
 こちらにつきましては、PMDAの中でも審議されておりますけれども、まず、臨床的な観点から申しますと、治療実態としましてはどこの国でも違いはなく、また、民族的なCKDに関しては違いもないといったところ。
 また、今回のFIDELIO試験、FIGARO試験で見ましても、日本人集団のように幾つかの全体集団と結果が違う国があったりもしましたけれども、そこはやはり症例数の少なさですとか、そういったところで民族的要因や地理的要因などを検討しましたが、何か特別な要因があるといったことは見当たらなかったとして、どの民族も同一であると御判断いただいております。
 
○○○委員
 ありがとうございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 その他、いかがでしょうか。
 ○○委員、お願いします。
 
○○○委員
 私も、日本人のサブグループ集団と全体集団の異質性に関しては、イベント数がかなり少ないので、そのデータを基に異質性が明らかにあることは言えないだろうと思っています。そこは意見としてはもっともだと同意しているところです。
 また、最初に決めておくところは、後づけでどちらを取るかというのは、やはり後で決めるよりは先に決めたほうがいいだろうというところで、企業さんの意見には合意しているのですけれども、質問だけ2点ありますので、させていただきたいと思います。
 企業側からの提案のページのところに保守的な全体集団の結果を用いるというふうに書いてあったのですけれども、例えば全体集団の主要評価項目を見ますと、全体集団の結果が日本人集団に比べて必ずしも保守的ではないと思うので、例えばFIDELIO試験は全体集団のハザード比が1よりも離れている、効果が強い、サブグループ集団が1に近いと思いますので、言葉の使い方で、全体集団が必ずしも保守的ではないと思いますが、その辺はどういった意味で保守的と言われているのか、お伺いしてもよろしいでしょうか。
 
○意見陳述者
 ありがとうございます。
 そちらは統計学的に見まして保守的とかといった意味で私が使ったわけではございませんでして、費用対効果の結果を評価する際に、極端に偏ったデータを用いて評価するよりは、現時点で使えるデータ、きっちり評価されているデータを用いて評価することが保守的であろうと考えました。
 
○○○委員
 分かりました。よりロバストなというか、そういう関係のという意味ですね。
 
○意見陳述者
 左様でございます。
 
○○○委員
 ありがとうございました。
 では、最後の御質問なのですけれども、最終的に費用対効果解析をされるときに、FIDELIO試験とFIGARO試験の結果を統合されると思うのですが、そのときは単にサンプル数の重みづけ平均をされるのか。拝見したところ、やはりeGFRのところでFIGARO試験のほうが少し良好な方が入る、範囲が広いような印象で、ベースラインデータもeGFRは少しずれているのですけれども、そこは考慮に入れながら最終データは統合されるのか、ただサンプル数の重みづけ平均をされるのか、どちらでしょうか。これももしよければ最初に決めておいたほうがいいのではないかと思いまして御質問させていただいております。
 以上です。
 
○意見陳述者
 ありがとうございます。
 まず、FIDELIO試験とFIGARO試験の統合する目的としましては、今回の糖尿病合併CKDの病態が2つの視点から治療を行うということがございます。一つは腎臓関係の、腎の予後を見る。もう一つはCKDの患者様の心血管系の予後を見るといった2つの目的が臨床上ありますので、腎のほうを見る目的でFIDELIO試験、そして、心血管系の目的を見る点でFIGARO試験が実施されましたので、CKDの患者全体の有効性を評価するには両方の試験の内容が必要だろうということで両方合わせた統合解析、FIDELITY試験が大変重要になってきます。そういった意味で、両方の試験を合わせて、こちらは先ほどの後者の少しいろいろな検討した重みづけというよりは、配分してプールドするといった部分になるかと存じます。
 
○○○委員
 そうしましたら、背景が少しは異なりますが、そこは考慮に入れず統合される理解でよろしいですか。
 考慮するのも難しいだろうと思って御質問させていただいているので、考慮しないということであれば、今の理由があればそれでいいと思います。
 
○意見陳述者
 現時点だと、私が聞いている限りでは少し、考慮がどこまでされているかは覚えていません。
 
○○○委員
 ありがとうございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 その他の委員、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、これで質疑応答を終了いたします。企業の方は御退室ください。お疲れさまでした。
 
(意見陳述者退室)
 
○事務局
 事務局でございます。
 企業の方が退室されましたので、御議論よろしくお願いいたします。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 それでは、ケレンディア錠に係る分析枠組みについて、御議論をお願いしたいと思います。
 
○○○委員
 ○○です。
 確かにすごく日本人のイベント数は少ないと思いますので、なかなか難しいとは思うのですけれども、それでもFIDELIOの腎不全の発症が21と15というのは少ないですが、まあまあ出ているのかなと思うと、やはりここのところはすごく気になるところがあるので、僕は統計のことを物すごく詳しく理解しているわけではないので、どの程度の精度のものが出るのか分からないのですけれども、日本人の解析はしっかりやっていただきたいと思うところであります。確かにいろいろなことはしっかり最初に決めておいたほうがいいと思うので、そのような方向がいいとは思います。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 ○○先生、いかがでしょうか。
 
○○○委員
 ○○です。
 大ざっぱには大体、今までの議論と同様で、このn数の違いを見ますと、全体集団と日本人集団の間に異質性が存在するという言葉は言い過ぎなのではないかと思いますので、今後はやはりリアルワールドでの解析結果をしっかりとやっていくことが重要なのではないかと思います。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 その他の委員の先生方、いかがでしょうか。
 では、○○委員、お願いいたします。
 
○○○委員
 専門家の先生にお伺いしたいのですけれども、このFIDELIO試験の腎不全の発症でイベントが21と15で、ハザード比が1.349とは出ているのですが、ほかの腎関連のエンドポイント、例えば主要評価項目ですと、腎複合エンドポイントはハザード費は1を下回っている。数としては本剤が42で、プラセボが44なので、2例違うだけなのですけれども、あと、別の4週間以上持続するベースライン時点から40%以上の持続的なeGFR低下に関してもハザード比は1を下回っているところで、本来であれば関連すべき項目が1つだけずれているところであれば、この辺はデータのランダム性なのかなと考えもしています。
 ですので、全体がせめて同じ方向を向いていれば腎機能が日本人では違うのかなと思ったのですけれども、私がお聞きしたいのは、腎不全はほかの腎関連エンドポイントと生物学的に全然違う機序のものなのでしょうか。すみません。ですので、データでずれていることのほかに、臨床的に日本人だけがやはり特異的にそこがずれるような理由は存在するのでしょうか。そこがしない場合はランダムに起こるのも往々にしてあり得るのではないかと思いました。
 すみません。短く言うと、ほかの腎関連のエンドポイントが1よりもハザード比が下回っていて、腎不全だけが上回っているところは何か臨床的、生物学的に説明できるところなのでしょうか。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ○○先生、いかがでしょうか。
 
○○○委員
 もっともな御意見というか、多分、そういうことはなくて、やはり主要評価項目、複合エンドポイントの方向が本当の全体の方向で、腎不全の発症が少し、たまたまこういう形になった可能性が強くて、例えばプラセボでも日本人の、日本のお医者さんは結構しっかりやられたので、プラセボでもそんなに腎不全が発症しなかったのかなという気が私はしますが、そうすると全部、それはほとんど差がないデータですね。数値としてはあれで1を切っているけれども、そういった意味で、これはそっちの方向に向けさせるにはちょっとあれかなという解釈の仕方と私は思っております。
 以上です。
 
○○○委員
 ありがとうございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ○○先生、いかがでしょうか。
 
○○○委員
 今の御質問に対してですと、評価項目に質的差異はあまりないと思いますので、少しエンドポイントについて差が出たのはやはりサンプル数の不足が関係しているのではないかと思っています。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 それでは、その他の先生方、いかがでしょうか。
 日本人の集団をきちんと議論しなければいけないというお話ではあるのですが、検出力的なものというか、データの制約もあろうかと思いますけれども、このあたりはいかがですか。
 では、科学院のほうでいかがですか。コメントをどうぞ。
 
○国立保健医療科学院
 ありがとうございます。科学院でございます。少し追加でコメントさせていただければと思います。
 まず、今回、どのデータを使うかについて御議論いただいておりますけれども、実はこれまで分析枠組みの段階でどのデータを使って分析するかを合意していることはありません。それについて協議していることもないですし、この段階で御了承いただくこともしておりません。これは、理由としては、分析枠組みでは分析対象集団あるいは比較対照を設定して、どういうデータでやるかというのはこれから、それに適切なデータをシステマチックレビュー等を行って収集した上で議論するためという観点から、これまでほかの品目も含めて、どのデータを使うかというのは分析枠組みには入れておりません。そういう意味では今回、これが論点として挙がったのは申し訳ない部分がありまして、まずはおわびしたいと思います。
 ただ、今回、これをその他に入れさせていただいたのは、我々が重要と考えておりまして、今まで御議論いただきましたけれども、Pivotal試験の中では判断が微妙だと。ベースを考えると差がないという見方もできますし、やはり数字そのものとか添付文書等を見ると検討の余地があるかもしれないところであります。
 これについてなのですが、基本的にはやはり、この時点で決めるのは難しいのではないか。今日、企業からもお話がありましたが、今度のあれは現時点で企業の持っている情報に基づいてのお話でありまして、もしかすると企業の方はこれまでのデータのレビューとかを既にされていて、これだけでいくのだと決められているかもしれませんが、我々、公的分析側はそのような時間的な余裕がまだありませんでしたので、これからどういうデータを使うかを議論していきます。その結果に基づいて、例えば今、御議論いただいている試験以外のデータもあって、やはり日本人は違うのだということにもしなったら、分析ガイドライン上は日本人データで分析するのを基本にしなければいけないので、現時点でこれを感度分析として扱う判断はできないのではないかということです。
 一方で、では、これをそもそも書かなくてもよかったのではないかという御指摘もあるかもしれませんが、逆にPivotalの臨床試験などを見ても、やはり両方見ながら、第2回の専門組織、あるいは第3回の専門組織で御議論いただかないといけないようなものになるのではないか。つまり、仮にこのまま、データの設定については何もコメントなしで企業にやっていただくと、日本人のデータでやった分析とかが出てこない可能性もありますので、これは我々のコメントで書きました「日本人集団でのデータを参照した分析も」というのは日本人だけでやってくださいという意味ではなくて、それ以外に全体集団等、企業が適切と思われる方法があればもちろん、それでやったものを出していただいて結構ですという意味合いで、どうやってやるかは事前に決めるべきだという御指摘はごもっともではあるのですけれども、現時点でやはり我々としてはシステマチックレビュー等をちゃんとやって、そのデータをつくるべきだったところを見解が得られておりませんので、現時点で決めていただかないほうをお願いできればというのが一応、御意見からのコメントでございます。
 長くなりましてすみません。以上でございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 背景というか、趣旨の御説明ありがとうございました。
 分析ガイドラインでは日本人のデータを優先するというのがうたわれておりますので、日本人のデータがあったら日本人のデータを優先した分析になるのだろうと思っていて、それは基本分析という形になるのかなと思っていたので、そこはよろしいわけですね。
 お願いします。どうぞ。
 
○国立保健医療科学院
 すみません。そこが分かりづらくて申し訳ありません。
 ここが、ガイドラインの書き方が、国内外でデータに明確な異質性が存在する場合には国内データを優先するとしておりまして、そういうわけで、これも現時点で明確な異質性があるとは我々も主張しておりませんので、その判断もデータを実際に吟味して、ほかの臨床試験等のデータも見ながら判断する必要があるのではないかと思います。
 仮に異質性がないことがはっきりすれば全体集団で、なるべくエビデンスレベルが高いデータを優先すべき。そういう意味で、例数もしっかりそろっているデータを優先すべきだと思いますので、日本人があれば必ず日本人ということではなくて、それを含む集団で特に異質性がないのであれば全体集団ですし、異質性があるのであれば日本人集団でやるべきという解釈をしております。
 すみません。分かりづらくて申し訳ありません。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 あと一点、瑣末なのですけれども、そういう方針決定をすることによって、評価の結果が出るのが後ろに延びてしまって、関係方面への報告が遅れてしまうような可能性は増えてしまうとかは科学院さんとしてどんなふうにお考えでしょうか。特にないでしょうか。
 
○国立保健医療科学院
 基本的には、仮に我々が提案しているような枠組みでデータを御準備いただければ、日本人集団でやったものもありますし、場合によってはそれ以外のデータでやられたものも両方出てくると理解しておりますので、その段階で御議論いただければ特に遅くはならないと思います。
 これは逆に全体集団だけでやられてしまうと、追加で日本人集団だけやはり必要でしたとかとなるとまた時間がかかる可能性はありますが、少なくとも今の我々の印象では両方されるのではないかと思っています。
 ただ、何度も恐縮なのですが、それがどっちが主で、どっちが従かというのは、現時点で決めるのは難しいと考えているということでございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 今の御説明を踏まえて、委員の先生方、コメントはございますでしょうか。
 では、先に○○委員からお願いできればと思います。
 
○○○委員
 ありがとうございます。
 企業さんとしては日本人でやられた試験も探せばあるかもしれないということなのですか。Literature reviewから科学院さんでまだされていないということなのですけれども、印象として、最終的に例えばFIGARO試験とFIDELIO試験を使わざるを得ないとなったときに、やはり異質性があるかどうか。あのRCTの結果で見ると、もともと設定されなかったサブグループに関しては異質性があるかどうかの統計的な検定はすごくやりにくいというか、あまりやるなと言われて、結局、ノイズで後づけで出た結果ではないかというところもありますので、異質性が明らかにあるかどうかの判断自体も、日本人でやられたRCT等がなければ結構難しい判断になってくるのかなと。もちろん、どういうデータがあるか、見てみないと分からないところではあるのですが、恐らく最終的に使われるであろう、あの2つのRCTの結果から見れば異質性の判断は難しいと思います。
 仮に日本人集団をあの2つの試験のデータで見るとしたときに、心不全のデータでハザード比が1.349で、イベント数が21と15というものがあったのですけれども、FIGARO試験は非致死的心筋梗塞だと3例と2例で、ハザード比が1.59になっているので、その辺の結果は明らかにデータのランダムノイズによるもので、日本人の結果を解析すると仮になったとしても、そうするとハザード比は何を使うのかという議論がまた起こってくると思います。
 過去にサブグループ解析で議論になったときは、あれは多分、○○の感染症のお薬だったと思いますけれども、サブグループ解析では有意差がなかったので、ハザード比を1とした。これでシミュレーションしましたみたいなことも科学院さんのほうでやられていた経緯も記憶しておりますので、やはり実際に数の少ないもので、サブグループでマルコフのシミュレーションのときに点推定値を使うのか、それとも、統計的有意差がないので1とするのかみたいな議論が今後、日本人のサブグループを使うとなったときに、では、具体的にどうするのかというところで恐らく議論にまたなってくるだろうと思いますので、サブグループ解析は本当に非常にいわくつきの、ハンドリングが難しいところではあると思います。
 すみません。何が言いたいかというと、日本人の解析も恐らく難しくなるだろうという感想を述べさせていただきました。
 以上です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 今のコメントについて、科学院さんのほうではいかがですか。
 
○国立保健医療科学院
 ありがとうございました。
 ○○先生の御指摘のとおりで、やはり十分注意してやらないと駄目だと思うのです。これまでの例でも統計的な有意差とかではなくて、いろいろな要素を考慮しながらやっていくということだと思いますので、きちんとデータをそろえた上で、我々としては今のような御議論をぜひ第2回、第3回の専門組織で十分御検討いただければと思っているところでありますので、我々としても、今、見ている範囲でのPivotal試験で明確に異質性があるという主張はしていないつもりでございます。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ○○委員、お待たせしました。お願いいたします。
 
○○○委員
 今までほぼ指摘されたことなので、重複することは割愛しますが、事前相談のときにこの点はどうだったのですか。つまり、今、科学院から御説明されたようなことを聞けば大方、それは受け入れられる話だと思うのですけれども、そのあたりはいかがですか。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 では、これは科学院さんですか。
 
○国立保健医療科学院
 科学院でございます。御指摘ありがとうございます。
 分析前協議の過程で今、お話ししたようなことは説明して、この段階ではデータを取り扱うかというのは特に決めないのだとか、それは第2回、第3回でやっていくのだと考えていることはお伝えしたのですが、それでもあえてこういう点は第2回、第3回でも論点になり得るということで、企業としては現段階から少しお話をしておきたいという意向だという御要望がありまして、通常は論点とするところではないのは御指摘のとおりではあるのですけれども、一応、それを認めさせていただいて、ここで御議論いただいている次第でございます。
 
○○○委員
 分かりました。
 あとはほかの先生方が御指摘されたことと重なりますので、結構です。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。
 今のお話を伺うと、取りあえず、ここで決めるよりは、今、科学院さんが御指摘したとおり、少し状況を見ながら先で議論させていただくのが合理的なのかなとは思っております。
 1点だけ、せっかく御専門の先生がいらっしゃっているので、先ほど企業さんは、アジアの集団では比較的よくなったというコメントがありました。その辺は、私は専門外なので分かっていないですけれども、結局、日本人をしっかりとした分析をすると、全体、グローバルに対して、成績がよくなるような可能性はおありでしょうか。
 
○○○委員
 この薬をやらなくても日本では、他の部分で治療を行っているのでよかったみたいなデータになって、そんな差が出なかった部分があって、ほかのアジアの国ではこの薬は結構効いたのかなという印象はあります。これをちゃんと多くやったらどうなるかというのはまだ私としては分からないです。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 やはり日本人のデータでしっかり、一回議論できたほうがいいというのは先生方の御指摘のとおりかと思います。
 ○○先生、もしその点でコメントがあれば追加でお願いできますでしょうか。ございますでしょうか。
 
○○○委員
 いえ、全く同様です。やはりどういうスタディーを組むかでそこのところは差を出せるかどうかは結構変わってくるかと思うので、今後、どういう研究結果が出てくるかは注目が必要かと思いますけれども、リアルワールドのデータになるのか、RCTになるのか、私、その辺はよく分からないので、どういう結果が出てくるかで大分変わってくるのではないかと思います。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございました。今のような点も含めて、これから科学院さんで御議論いただけると思っております。
 全体を通して、先生方、コメントはいかがでしょうか。よろしいですか。
 今のお話ですと、公的分析のほうで今回進めていくようなお話だと思いますけれども、よろしいでしょうか。
 では、日本人部分の集団取扱いについてはそのような方針とさせていただきますので、議決に入らせていただきたいと思います。
 先生方の御意見を参考に、ケレンディア錠に関する費用対効果評価については、ケレンディア錠に係る分析枠組みについて、公的分析の提案が妥当と考え、公的分析の枠組み(案)を了承する形とさせていただきます。よろしいでしょうか。
 
(首肯する委員あり)
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 ありがとうございます。
 それでは、○○委員に御入室いただきたいと思うのですけれども、その前に、○○委員、何かコメントがございますか。
 
○○○委員
 すみません。今回はどちらを感度解析で、どちらを基本分析にするか、そもそも決めなくていいので、公的分析を採用するということですね。なので、最終的に企業さんの提案を最終解析でやらないという意味ではなく、そもそも、そこは決めなくていい論点なのでという理解でよろしいですか。
 
○費用対効果評価専門組織委員長
 よい御質問だと思います。改めて先生方との共有といたしますが、ここでは決め切れなかったということなので、結果として企業分析のような形になる可能性もあるというふうに理解して、今、進めております。
 よろしいでしょうか。
 
○○○委員
 はい。よろしくお願いします。