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第9回労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会議事録
労働基準局安全衛生部労働衛生課
日時
令和7年11月19日(水)10:00~
場所
中央合同庁舎5号館専用第14会議室
議題
(1)労働者の健康確保に必要な健診項目について
(2)その他
(2)その他
議事
- 議事内容
○藤井産業保健室長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまより「第9回労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」を開催いたします。構成員の皆様におかれましては、御多忙の折、御参加いただき誠にありがとうございます。本検討会につきましては、資料及び議事録は原則、公開といたします。
初めに、今回の参考資料1の開催要綱の別紙として、構成員名簿をお付けしておりますが、新たに御就任いただいた構成員の方を御紹介いたします。日本労働組合総連合会の冨髙構成員が退任され、新たに漆原構成員が就任されています。
○漆原構成員 連合の漆原です。よろしくお願いいたします。
○藤井産業保健室長補佐 また、日本商工会議所の大下構成員が退任され、新たに清田構成員が就任されています。
○清田構成員 日本商工会議所の清田でございます。よろしくお願いいたします。
○藤井産業保健室長補佐 また、今般、事務局側に人事異動がございましたので紹介いたします。安全衛生部長の安井でございます。続いて、産業保健支援室長の樋口でございます。
本日の構成員の方々の出欠状況でございますが、荒井構成員、大須賀構成員からは欠席の御連絡を頂いております。また、岡村構成員、清田構成員、立石構成員、森構成員、吉村構成員におかれましてはオンラインから御参加いただいております。また、森構成員におかれましては、途中退席の御予定と伺っています。
続きまして、オンラインで御参加いただいている構成員の皆様に、御発言の仕方などを御説明いたします。会議中、御発言を頂く際は、お手元の「手を挙げる」ボタンをクリックし、座長の指名を受けてから、マイクのミュートを解除し御発言をお願いいたします。また、御発言終了後は、再度マイクをミュートにしてくださいますよう、お願い申し上げます。
続いて、資料の確認をいたします。本日の資料は事前にお送りしていますとおり、議事次第、資料1-1、1-2、資料2、資料3、参考資料1~7になっています。この後、議事に沿って画面共有にて御覧いただきますが、不足がありましたら事務局よりお送りしますので、コメント又は御発言でお申し出ください。
報道関係者の皆様、カメラ撮影はここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
それでは、以降の議事進行につきましては、髙田座長にお願いいたします。
○髙田座長 髙田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。本日の議題は「労働者の健康確保に必要な健診項目について」となります。まず、事務局より本日の進行について説明をお願いいたします。
○樋口産業保健支援室長 冒頭、事務局で今日と明後日に予定しています検討会について、簡単に流れを説明いたします。
まず本日ですが、第7回の検討会で御紹介いたしました、新たな健診項目の追加として、眼底検査、それから血清クレアチニン検査について関連学会様から御提案を頂いておりました。本日は、御提案いただきました学会様より御提案の背景やエビデンス等について御発表いただきます。併せて、第4回で宿題となっていました、健康局で実施している骨粗鬆症の研究の進捗状況について、事務局から報告いたします。
続きまして、明日にはまた資料が公開される予定ですが、21日につきましては、規制改革推進会議で指摘されました胸部X線検査、それから心電図検査、喀痰検査、こちらについて関連学会様、あるいは事務局から御報告等いたします。併せて21日においては、幾つか御報告をさせていただく予定でございます。
それでは、座長、以降の進行をよろしくお願いいたします。
○髙田座長 御説明ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御質問がある構成員は挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。
それでは、早速ヒアリングに進みます。まず、眼底検査のヒアリングを行います。本日は、日本眼科医会の白根参考人にお越しいただいております。白根参考人から資料1-1について御説明をお願いいたします。それでは、御準備ができましたらお願いいたします。
○白根参考人 日本眼科医会の白根でございます。本日、よろしくお願いいたします。私からは、眼底検査について説明をいたします。
次をお願いします。こちらは目次です。次をお願いします。眼底検査を提案いたします背景について説明をいたします。次をお願いします。視機能は、「視力」と「視野」で評価されるものであり、身体障害や障害年金の等級がこの両方の要素で判定されます。例えば、視力が1.5であっても、視野欠損が強ければ、身体障害2級という、重度の障害に該当することもあります。一般健康診断では、ふだん使っている眼鏡やコンタクトレンズを付けた状態で、視野の中心の見え方、いわゆる生活視力のみが測定をされており、中心以外の視野の見え方が評価されていません。眼底検査を行えば、視界全体の見え方を推測することができます。
次をお願いします。日本では、年間1万6,000人以上が新たに視覚障害者として認定されています。右のグラフに示すように、高齢になるほど視覚障害は増えますが、60歳以下でも相当数おられます。視覚障害の原因の上位には、緑内障、網膜色素変性などがありますが、いずれも主な症状は視野の異常で、進行するまで視力は低下せず、多くは眼底検査により発見されます。
次をお願いします。眼底検査は、一次検診でスクリーニングとして実施し、網膜・視神経乳頭・血管を観察します。緑内障などの眼底疾患などに加え、白内障などの透光体の混濁も分かります。異常と判定された場合、二次検診で視野などの状態を把握し、診断を確定します。その結果を基に、産業医の先生方のお考えにより、安全に業務を継続するために職場の環境を改善したり、視機能に応じ目の使い方などのアドバイスを行います。
次をお願いします。有病率が高い緑内障について、眼底検査の有用性を説明します。緑内障では、視野に異常が出る前から眼底に特徴的な変化が見られます。青矢印で示す視神経乳頭陥凹拡大や、白矢印で示す網膜視神経繊維層の菲薄化は、緑内障を疑う所見です。なお、緑内障の有病率は40歳以上では約5%で、20人に1人がり患していますが、その9割が発見されていないとされています。
次をお願いします。緑内障では高い眼圧や眼圧の変動により視神経が圧迫されて痛み、視野が欠けていきます。視野の欠損は不可逆的です。右下の写真に示す視神経乳頭の縁の小さな出血も特徴的で、病気の進行に関連するサインです。なお、日本人では眼圧が正常範囲にある正常眼圧緑内障が9割を占めます。高い眼圧は緑内障の進行を早めますが、眼圧が低くても、眼底や視野に特徴的な異常があれば、眼圧を更に下げる治療が必要となります。
次をお願いします。緑内障による視野進行のイメージです。左上1の視野は初期の視野異常です。右半分の中ほどにある黒い部分は、マリオット盲点という誰にでもある視野欠損で、左側の黒い部分が緑内障による欠損です。この段階で発見し、進行を抑制できれば、20年後でも右上2のように、視野欠損の拡大は少なく、生活に大きな支障は生じません。黄色のラインで示す3と4の視野は、中等度の進行イメージです。20年後には視野の上半分が見えなくなっており、運転の際に信号の見落としが予想されるパターンです。赤いラインは進行が早い場合です。筒を通して見るような視野となり、物にぶつかったり、物を探すのが難しくなり、仕事や生活に大きな支障が出ます。しかし、このような状態でも視力は保たれ、1.0が見えていることが大半です。
次をお願いします。緑内障が進行していくイメージを模式図にしました。視野欠損は治療しても回復しませんので、早く治療を始めると緑や青のラインのように就業年齢の期間に大きな支障は出にくいですが、進行してしまうと、転倒や事故のリスクを減らすことは困難です。早く発見し介入すれば、目の健康寿命を延ばし、安全かつ効率的に仕事を続けることができます。
次をお願いします。一般健康診断の項目を選定する上で、重要な要素である業務起因と増悪性について説明します。
次をお願いします。ロシアのカザン市にある2つの大規模病院の眼科を受診している4万887人のデータ解析の結果です。この統計では、緑内障の有病率は60歳以上では2.8%、65歳以上では3.5%となっています。
次をお願いします。こちらに、緑内障に影響する有意なリスクの1つとして、職業要因が挙げられています。次をお願いします。職業要因の内訳です。重労働の要素を組み合わせた場合を含め、ここに示す全ての項目で有意にリスクが高くなっており、全ての要因が複合した場合は30.3%の影響度となっています。グラフの右下にロシアと日本の重労働の定義を記載しています。他の国の重労働の状況を法令の数値だけをもって単純に比較はできませんし、個別の現場の要素を加味し御判断いただく必要があろうかと存じますが、日本においても重労働において類似のリスクが推測されます。
次をお願いします。職業以外の要因としては、予防的な健診をしないことが緑内障に影響していると示されています。
次をお願いします。眼圧の上昇は、心理的な緊張、長時間のうつ向き姿勢、ステロイドの使用など、多用な要因で起こることが知られています。ここでは、重労働に関係するバルサルバ手技について説明します。重い物を持ち上げるなどの際に、息を詰めて力むことにより腹胸腔内圧が上昇し、それにより静脈圧が高くなり、眼圧が上がります。建設・運送・倉庫の業務・介護・農作業などで見られる現象です。一時的に眼圧が上昇したり、変動することにより、視神経に負荷が掛かって緑内障増悪の要因となります。こちらのデータは実験的なもので、実際の仕事による負荷はもっと軽いと考えていますが、緑内障では数mm水銀柱の眼圧変動も視野の悪化の原因となりますので、職場における反復的なバルサルバ負荷のリスクを説明するために引用しました。
次をお願いします。続いて、労働安全・労働生産性についてお話します。下方視野の欠損は、進行とともに転倒のリスクを高めます。その理由を右のイラストで説明します。通常、歩くときはまっすぐ正面を見ておりますが、下方にある視野欠損に水たまりが重なると、見逃してしまいます。カートなどの障害物があると、それに気を取られて更に危なくなります。周りが暗かったり、安全のための職場の「4S」すなわち整理・整頓・清掃・清潔が徹底できていないと一層リスクが高まります。
次をお願いします。左のグラフのとおり、視力低下は転倒への関連は大きいですが、右のグラフのとおり、視野が欠ける緑内障では、視力低下が主な症状である白内障や近視などの未矯正屈折異常よりリスクが高いことが示されています。つまり、視力低下より視野の異常のほうが危ないことが分かります。
次をお願いします。左グラフでは、緑内障が重度になると交通事故のリスクが上がることが示されています。右の写真で補足すると、進行方向を見て運転していると、視野欠損がある人では、信号、歩行者といった重要な情報が視野の欠損部分に重なり、危ないことがお分かりいただけると思います。危険を回避するには、自らの視野にどのような特徴があるかということを理解することが大切です。
次をお願いします。緑内障に影響する要因の科学的根拠を、エビデンスレベルの高い順に記載しました。先ほど、お示ししたバルサルバ手技は、真ん中の「示唆」のレベルとなっています。
次をお願いします。ここまでのまとめです。緑内障による視野欠損は、治療しても回復いたしません。早く発見し、視野を維持し、就業の制限を最小限にするとともに、視機能の状態を理解し安全に働いていただくためには、眼底検査によるスクリーニングが最も有効で簡便です。
次をお願いします。検査の目的、対象、方法をお示しします。次をお願いします。検査の目的は視野異常の可能性がある眼疾患を発見し、産業医の先生が眼科医と連携し、必要があれば就業上の措置や指導を御検討いただき、労働者の皆様に安全に仕事をしていただくことです。それにより、目に起因する労働生産性の低下も防ぐことができると考えています。近視がある人では、20代でも一定数の発症がありますから、40歳以上はもちろん、入職時にも検査を行うことを推奨します。
検査の方法は、眼底カメラによる眼底の撮影です。1分程度で両眼を撮影し、検査終了後、すぐに職場に復帰できます。
次をお願いします。検査に掛かる費用ですが、健診施設への調査により、800円から2,000円程度であるとの回答を得ています。御参考までに、診療報酬では、眼底カメラ撮影が580円、眼科医による眼底検査は両眼で1,120円です。
次をお願いします。判定基準、就業上の措置について説明します。眼底検査では、様々な疾患が発見されます。眼疾患が疑われる場合は、眼科受診をお勧めいただき、精密な検査結果に基づいて就業に関わる判断をしていただくことになるかと存じます。また、眼底は体の中で唯一直接血管を観察できる場所です。全身の動脈硬化の程度も一目瞭然で、メタボ対策においても参考になります。
次をお願いします。進行した眼疾患において、就業上の措置を検討する際には、眼科主治医と連携し、どのように視野が欠損しているか、ステージはどの段階かといった状況を把握し、方針を検討することが大切です。事故発生のリスクが予想される場合は、運転、高所作業、夜間の作業について御判断を頂くことになるかと存じます。視野欠損が広がっており、病気の進行も抑えられていないような場合は、超過勤務、交代勤務や出張の制限もやむを得ないこともありますが、自分では気付きにくい視野異常を把握し、注意を払うことで幅広い仕事ができるようアドバイスをすることが、働く現場では重要であると考えています。
本会では、眼科を専門としない方々に向けて、『はたらく人の目を守る眼科検診ハンドブック』を刊行しホームページに公開しています。目の健診への理解を深めていただく一助になればと考えています。
次をお願いします。眼底検査へのAI導入について、紹介します。先月、眼底画像のAI診断支援プログラムが薬事承認されました。健診での利用が想定されています。AIスクリーニングの併用により、医師の読影労力は40%、健診コストは20%削減できるとされています。また、眼科以外の医師でも専門医でない眼科医と同じレベルの読影が可能となり、不必要な二次検診を回避できるメリットもあります。
次をお願いします。AIプログラムのイメージです。撮影した写真を、眼底カメラ用プログラムに保存し解析します。現段階では、異常があるかないかという結果のみが提示され、それを参考にして医師が最終的に判定します。近日中に比較的安価で上梓される予定です。
次をお願いします。最後に、眼底検査の未来についてお話いたします。眼底写真をAIで解析すると、血圧、血糖、腹囲、BMIといったメタボリック症候群に関する数値を推測できるというデータが出ています。加えて、御覧の疾患も検出できます。こちらは、一般健康診断に用いるというものではありませんが、主要臓器の状態を推測できる、新しいバイオマーカーとして臨床応用が期待されていますので、紹介をいたしました。
次をお願いします。まとめです。視覚障害の原因となる緑内障は、業務により増悪する可能性があります。不可逆性の視機能低下につながりやすい眼疾患の多くは、視野の異常が主な症状であり、進行するまで視力は低下せず、自覚にも乏しいため、その発見には眼底検査が有用です。視機能の維持は、労働安全や生産性の向上、労働年齢の延長にも寄与します。一般健康診断項目への眼底検査導入について、御検討いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。参考資料を付けておりますので、御参照になっていただければと思います。
○髙田座長 白根参考人、ありがとうございました。眼底検査について御説明を頂きました。ただいまの御発表に関しまして、御質問や御意見等がある構成員は、挙手をお願いできればと思います。まず、森構成員が途中退出される御予定ということなので、森構成員からお願いできますでしょうか。
○森構成員 すみません。最初に発言の機会を頂きまして、ありがとうございます。白根先生、御説明ありがとうございました。眼科疾患などで特に緑内障を中心にお話を頂いたわけですけれども、私も労働力の高齢化とか、ディスプレイ作業の増加などを背景に、職域においても眼科疾患の管理というものが重要になると認識しています。そのための基盤として、今回は眼底検査を中心とした眼科検査を提案いただいたというように理解しております。多くの疾患に対して様々な検査が提案されるわけですけれど、一般定期健康診断という、毎年全ての労働者に行う健診の検査項目の中に入れるためには、厚生労働省も日頃から提示いただいていますけれども、幾つかの条件を満たす必要があると認識しています。
そのことを説明するので、ちょっと御質問を2つほどさせていただきたいのですけれども、私が考えるに、第1に標準化された検査方法が確立して、全ての労働者に対して全国で提供するということが可能であること、これは絶対必須であると思っています。2番目に、特定の異常に対して、そもそもその検査の特異度、鋭敏度がどうなのかということが、しっかり評価されていること。それから第三に、検査機器及び今回は画像検査ですので、読影の精度管理がきちんとされたり、その仕組みがあること。そして、その結果、出てきたものに対して、どのような事後措置をする。一般健康診断の場合は、義務としての就業上の措置と、努力義務としての保健指導がありますので、第4に、業務との関連性のエビデンスを基に、現実的な就業措置の方法が提案されていること。そして第5に早期の所見があったときに、疾病の自然歴が明らかになっていて、有効な保健指導や治療介入が明らかであること、最低限、これらの事項が私は必須だと思っています。
その上でご質問です。もう私が産業医をやっている所でも、すでに人間ドック等で眼底検査をしている所がまあまああって、しかし、その所見に対して擬陽性は、結構かなり多かったりとか、いろいろあって、読影でも精度管理というのは本当に今、日本の中で十分なのか、先ほどAIの活用というのがあったのですけれど、AIの場合、恐らく保険点数に収載でありますから、病気の疑いがある人に対して検査をやるという場面なので、健常者が健診を受けたときに、その精度が本当にAIでいけるかどうかというのは、ちょっとまた別の世界のように思います。健常者に検査をやったときの精度管理で、十分できるのかということが1点です。
それから2点目が、早期の所見があったときに、それがどのように変化をしていくかという自然歴が、眼底検査を前提に明らかになっているのか、この2点を教えていただければと思っています。
先ほどの説明の範囲では、エビデンスが十分でないところもあるので、眼科疾患の重要性を鑑み、是非継続的にいろいろなデータ、エビデンスも集めていただけると有り難いなと思っています。これは今後に向けてのお願いです。前の2点について、教えていただければと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。白根参考人、お願いいたします。
○白根参考人 御質問いただきまして、ありがとうございました。まず、健診の精度管理でございますけれども、一般的には眼科専門医による判定では、精度は98.2%、特異度は83.3%となっておりまして、AIを使ったスクリーニングの場合は、95%信頼区間の上限が感度は99.3%です。そして特異度は89.1%というようになっております。
それで全国で写真を判定される場合に、結果のばらつきが大きいのではないかということですけれども、それはやはり読影者の基準が必要ではないかというように推測しております。もしも、きちんと制度の中に眼底検査が組み込まれるのであれば、きちんと眼科専門医が判定するというような方向性での検討は必要ではないかと思っております。
また、日本眼科医会には全ての眼科医が加盟しておりまして、その中で大体1万2,000人ぐらいが眼科専門医です。その方たちが全国におりますから、その方たちに統一的な判断基準などを網羅的に周知すれば、検査の精度はそんなに問題ないのではないかなと考えております。
続きまして、2番目の御質問にお答えしたいと思います。まず、所見としましては、緑内障の早期は、視野には異常が出ませんので、眼底を見れば分かるという状態でございます。そして眼底に視神経の変化、あるいはちょっとした出血で網膜が薄くなっているというような変化が出ますと、その方は緑内障の初期であると判断して、その程度に応じて、例えば6か月置き、3か月置き、1年置きというように頻度を決めてフォローアップをいたします。そして進行があるようでしたら、治療の介入を行います。視野の異常が出始めましたら、軽度であれば特に仕事や生活には問題がありませんけれども、先ほど御説明しましたように、視野欠損はだんだんと広がっていきます。自然経過でも視野は少しずつ広がっていきますので、例えば運転に必要な信号とか、歩行者の見落とし、そのようなことがもし予想される場合は、仕事ができないということではなく、見えないことを自分で自覚して、目を動かしてしっかり確認をすれば、運転できることが大半でございますので、そのような指導も併せて行っていく必要があるかと思っております。産業医の先生がそのような指導を行われると思いますので、眼科医はそれに協力をさせていただくという形になるかと思っております。
○森構成員 ありがとうございました。その精度管理は、基本、眼科専門医が行う体制でやることが前提であれば精度管理ができると、そういう方向ということなのですね、基本は。
○白根参考人 はい、精度管理は、そのとおりでございます。
○髙田座長 ありがとうございました。そのほか、鈴木構成員、お願いいたします。
○鈴木構成員 経団連の鈴木でございます。本日は白根様に分かりやすい丁寧な御説明を頂き、ありがとうございます。私事ですが、今年、加齢が原因で網膜剥離を患い、眼科医の先生に手術をしていただきました。日本眼科医会におかれまして、目の健康を守るという大変重要なお役目を果たされていることに、敬意を表したいと思います。
その上で、私共は第2回の検討会におきまして、今後の健診項目の検討に当たっての大原則を確認いたしました。仔細は省略いたしますが、とりわけ、検査によって把握が期待できる疾病と業務との明確な関係性を示すエビデンスが必要だと考えています。この原則は、検討会委員の合意を得た「健診項目を検討する際の要件、着眼点」の2番目の業務起因性又は業務増悪性に対応するものだと認識しています。
こうした立場から、2点質問させていただきます。12ページから16ページに掛けまして、ロシアのカザン市における緑内障患者の受診データに基づく分析結果をお示しいただきました。1点目の質問ですが、ロシア人ではなく、日本人を対象にしたデータをお持ちでしたら、御披露いただきたいと思います。
2点目です。14ページ目に、「重労働は緑内障リスクを高める」と題して、緑内障への影響度のデータをお示しいただきました。このデータは緑内障を患っていない労働者との比較で、重労働によって緑内障を発症するという因果関係が有意に確認できるデータなのかどうか、確認させていただきたいと思います。以上です。
○髙田座長 白根参考人、お願いいたします。
○白根参考人 御質問ありがとうございました。まず、日本人のデータがあるかということですけれども、日本人の疫学データは住民を対象にした多治見スタディしかないのです。もう少し小規模のものはございますけれども、労働者を対象にした研究は行えていません。網羅的に世界中を探してみましたけれども、全く出てきませんでした。これからになるかと思います。
また、重労働により緑内障を発症するというよりも、緑内障の方が重労働をすると、一定以上の眼圧の変動などが生じますが、緑内障は眼圧が上昇する、あるいは変動すると、進行するということは確定しておりますので、そういうリスクはございます。
ですから、このバルセルバ手技ということも、この文献そのものは実験的に行われていますので、かなりの重量負荷を掛けたときに眼圧は上昇するというデータでございますけれども、ふだんの作業では、ここまで、例えば+30~40mm水銀柱も上昇するというようなことは普通はなくて、数mm水銀柱の上昇から、多くても10mm水銀柱ぐらいかなと推測いたします。
しかし、例え2mm水銀柱でも3mm水銀柱でも、緑内障の方にとっては視神経への負荷は大きなものがあり、それが反復する場合は緑内障の進行につながります。そういう緑内障の患者さんを対象に、負荷を掛けるという研究はちょっと倫理的に難しいと考えておりますので、今後どのような研究デザインが求められるかということは、またいろいろ教えていただきながら考えることになろうかと思っております。
○髙田座長 鈴木構成員、いかがでしょうか。
○鈴木構成員 ありがとうございました。ロシアのカザン市の調査が、必ずしも労働者を対象にした調査ではないということだと理解いたしました。そうしたことも含めて、業務起因性又は業務増悪性があると判断するのは、私としては少々難しいと感じたところです。
改めて申し上げるまでもなく、一般健康診断は全ての事業主に罰則付きで実施義務が課せられ、その費用も事業主が全額負担する性格のものです。そうしたことから、業務が原因となって疾病を発症する、あるいは増悪をするという明らかなエビデンスがなければ、私としては健康診断の項目に追加すべきではないと考えます。以上です。
○髙田座長 白根参考人、お願いいたします。
○白根参考人 厳しい意見があることを、よく承知しております。先ほどのロシアのデータですけれども、ロシアのデータは、仕事をしている方としていない方という事前アンケートにより、区別をしています。ですので、このデータの中には仕事をしている人、しかも重労働をしている人というようにカテゴリーがありますので、これを見ますと母集団も4万人以上であり、重労働をしている方は、そうでない方に比べて、やはり緑内障のリスクがあると読み取っております。
○髙田座長 鈴木構成員、お願いします。
○鈴木構成員 患者を対象にした調査ですので、緑内障にかかっていない方は、調査対象ではないのではないか。そうすると、重労働に従事している労働者であっても、緑内障を発症していない可能性が否定できないように思うのですが、いかがでしょうか。
○髙田座長 白根参考人、お願いいたします。
○白根参考人 難しいところですが、この母集団は眼科に受診している人というだけでして、緑内障患者が母集団ではございません。ですので、緑内障になっている人と、なっていない人というのは、この中には混在をしています。お答えになっていますでしょうか。
○髙田座長 鈴木構成員、お願いします。
○鈴木構成員 眼科を受診した患者を対象とした調査だと認識いたしました。専門家の先生方から何かコメントがあればお願いしたいと思います。私からは以上です。
○髙田座長 いかがでしょうか。では増田構成員、お願いいたします。
○増田構成員 御説明ありがとうございました。ふだん、嘱託産業医をやっている増田と申します。1点質問と2点コメントをさせていただければと思います。1点目は先ほど鈴木構成員とのやり取りにあったロシアのデータについてなのですが、14枚目のスライドの所に影響度として、幾つかの項目が列挙されていて、重労働だと5.9なのですが、重労働とストレスだと4.0ということになっていて、あとは重労働とストレスだと4.0と、これは見掛け上は前かがみやストレスが加わったほうが影響が小さくなるというように読み取れますので、この結果の解釈について、どのように解釈すべきなのかを教えていただけたらと思います。
あと、コメントを2点させていただければと思うのですが、スライドの19枚目です。右側の「緑内障により転倒リスクが4.2倍になる」という結果、労災防止という観点では重要視すべき知見だと思いますが、仮に一般健康診断で緑内障の労働者を把握するという場合、視野欠損に至った労働者に対する事後措置が必要となります。先ほど森構成員から御説明があったとおりです。こうすれば転倒を確実に、未然に防止できるという個別対策が確立していればよいのですが、現在、厚生労働省で別に開催している「転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会」というのがあるのですが、そちらにおいても実はまだ明確な対策が提示できていない状況となっています。ですので、個別対策の確立なく健診をただ導入するだけですと、転倒リスクの高い労働者を拾い上げて、その後は何もできないということとなり、往々にして就業機会を単に損ねるだけの結果になる可能性が高いと思いますので、多大なコスト負担を伴わず、かつ十分な効果が得られる事後措置の確立があって、初めて健診として成立する、そういった意味では、まだ時期尚早の感が否めないと思っております。
あと、もう1つ、スライド20枚目の所に記載の交通事故リスク、こちらも社会課題だと思いますが、会社が把握した時点で、運転免許証が既に発行されてしまっておりますので、会社判断で運転禁止といったところまで指導するのは、しばしばトラブルになります。この課題については、一義的には運転免許の発行や更新を所管している公安委員会で、まずは必要な検査を実施していただいて、その、いわば補完としてスライド28枚目にあるようなハンドブックの要領で、職場での対応を実施するといった役割分担の明確化が必要かと感じました。私からは以上です。1点目の質問を、すみません、お願いできればと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。白根参考人、お願いいたします。
○白根参考人 ありがとうございます。まず1点目のグラフのデータの解釈ですけれども、こちらは、例えば重労働と前かがみという項目ですと、重労働が5.9、前かがみが3.7となっており、低いほうの数字に引っ張られて両方をミックスすると影響度は下がるというような数字になる解析です。答えになっていますでしょうか。
○髙田座長 増田構成員、いかがでしょうか。
○増田構成員 別々に母集団があってカテゴライズしたのではなくて、今、おっしゃられた要領で算出してみたら、こうでしたという結果をお示しいただいたということですよね。
○白根参考人 そうです。
○増田構成員 承知いたしました。理解できました。ありがとうございます。
○白根参考人 では、続きまして視野欠損の事後措置についてです。先ほどから事後措置についての話になっていますが、実は産業医に占める眼科医の割合が非常に低いという状況にあり、今のところは明確なラインがないのが現状です。一般的には、やはり緑内障の患者さんの視野を、まずは把握することが大事で、視野の状態を見て、例えば下のほうに見えにくい場所があれば、あなたは下のほうがちょっと見えづらいし、暗くなると更に見えにくくなるので、足下は十分に気を付けて、目を少し動かして見るようにしてくださいというような指導ができます。視野の程度も千差万別ですので、例えば上のほうが見えない方は、信号の見落としがあり得るので、きちんと目を動かしてくださいというように指導することが可能になります。実際に緑内障という診断を受けて、視野の異常が分かった方で、そういう目の使い方を指導することによって、交通事故は減っているというデータはございます。
それからもう1つ、交通事故の免許のことですけれども、現状では、やはり免許の規定は視力だけになっており、視野がどのぐらい見えにくいかということは、免許で縛ることは恐らくできないのだと思いますし、国土交通省が管轄でしょうか、視野は一応検査をして、例えば片目の視力が極端に悪い方は、視野の見え方を検査して、あなたはやはり視野もちょっと狭いので、気を付けて運転してくださいという指導がなされていると思います。
ですから、職場の判断で運転免許が使えないという判断は、もちろんできないと思いますので、医学的に、このぐらいの視野欠損があると、さすがに運転業務は難しいだろうということを個別に判断していくのではないかと思っております。
○髙田座長 増田構成員、何かございますか。よろしいでしょうか。オンラインで岡村構成員が挙手されていらっしゃいますかね。お願いいたします。
○岡村構成員 まず、最初に全般的な議論の話で、研究データをきちんと出されてプレゼンを頂いているのですが、疫学の特性の話で、一般論から最初に言っておくと、今、データがないからエビデンスがないということにはならず、要は、疾患によっては10年や20年たって進行していくので、研究を開始しても、結果が10年、20年たってでないと分からない、結果が出たときには後の祭りということもありますので、1つの結果があるだけでは判断せず、総合的に見てくださいというのが、今、全体的なイメージで思ったところというのが1点。
それから、眼底については、今の作業は非常にVDTとほとんど重なってくるので、目の健康が非常に重要だということについては、多分、否定し難いところがあるので、これは、労安のほうなのか、健康増進で市町村のほうなのかという議論はあるのですけれども、そこを含めて、何か進めていくという方向性は必要だろうなと思っています。ただ、それを前提にして1点あるのですけれども、先ほど、産業医の先生との連携の所でありましたけれども、例えば小さい所で産業医が選任されていないですとか、あと、地方で、例えば自宅の近くに眼科専門医がいないときの対応をどうするかなど、多分、そこが問題になってくるかと思うのですけれども、そこはどのような、専門医の配置がどうだとか、そのような情報をお持ちであれば、教えていただきたいのですけれども。
○髙田座長 ありがとうございます。白根参考人、お願いいたします。
○白根参考人 まず、専門医の配置ですけれども、眼科専門医というのは、日本眼科学会のホームページに検索できるページがありまして、そこで、全て専門医は公開されております。ですから、調べようと思われる場合は、そこを調べていただくといいのですが、大体、網羅的に全国に専門医はおります。個別にどの専門医にお願いをするかということは、今まで眼底検査が行われていなかったこともありまして、日本眼科医会としても、そのような仕組みは今のところ持ち合わせておりませんが、企業の現場で眼底検査が行われるということになりましたら、全国の眼科医に協力を要請して、きちんと漏れがなく、判断、読影ができるような仕組みを作りたいと思っております。
○岡村構成員 検査はもちろんですけれども、事後措置が、やはりとても大事になってくるので、専門医空白地域のようなものがないのかということが一番気になっているところですので、また情報等を集めていただければと思います。
○白根参考人 はい。ありがとうございました。
○髙田座長 ありがとうございました。そうしましたら、立道構成員、お願いいたします。
○立道構成員 私自身は、25、6年ほど、労働者における緑内障の重要性という研究をしてきており、また、白根先生とも一緒に産衛学会等で啓発活動を行っているということで、今回、このような形で、眼科的な視点の重要性を労働者に向けていただいたということは、非常に有り難く思います。
ただ、一方で、岡本先生が言われているように、眼底検査を一般健康診断として取り扱うべきなのか、いわゆる健康増進法等地域のほうの検診で取り扱うべきなのかということについては、私の見解を、これは去年、森先生が班長になられた当検討会にて組織された研究班で、眼底検査を担当した分担研究者として、少し意見を述べさせていただきたいと思います。これは、第3回の検討会でもお話した内容と重複する部分がございます。
まず、1点目。一般健康診断に入れるということでは、やはり業務の関連性、業務の起因性ということが非常に重要です。したがって、緑内障という病気自体は人種差というものもあり、やはり、日本人の大半が正常眼圧緑内障であるという、少し特殊な部類に入ります。そうであれば、やはり日本人において、質の高いエビデンスが必要になってくるということが重要です。
次に、バルサルバ手技等における業務において、増悪する危険があるのではないかということですが、これについても、どの程度の負荷がどの程度緑内障の発症と増悪に影響するのかということがはっきりしないと、現場サイドでどの程度配慮したらよいのかということが不可能になってくるということで、この辺の知見も必要になってくるのではないかと思われます。
あと、転倒との問題があります。確かに、下方視野障害がある方に関して、転倒恐怖という部分に関しての論文は多くありました。ただ、実際に転倒につながったかということに関しては数本の論文でした。一方、転倒全体に関して、視野障害がどの程度、何%を占めるのかというデータはありません。したがって、転倒の原因について、転倒された方に関して、今後、どの程度、視野障害が関与していたのかということの研究が必要になってくるのではないかと考えています。
あと、事後措置の課題があります。視野障害について、眼科の先生に言うのは大変おこがましいのですけれども、緑内障は左右差が出ます、見えている視野の状況、程度も違ってきます。従って非常に個別性が高く、しかも、両眼視するということ、あるいは首を振るということで視野欠損を補完できるので、就業制限あるいは就業配慮とするのは非常に難しい分野になります。従って、眼科医の、特に視野系の専門の先生と、産業保健の現場で働いている産業医と、非常によく協議をして就業制限あるいは就業配慮に関する社会的コンセンサスを作っていくというプロセスは、どうしても必要になってくると考えています。
あと、もう一点。緑内障検診を実施する場合には、開始年齢、そして検診頻度・間隔が重要であり、議論が必要になってくると思います。追加資料の中には、マルコフモデルにおける効果というものが示されました。ただ、マルコフモデルというのは、パラメーター設定をして予測をするモデルです。そのため、このマルコフモデルにおいての弱点というのは、このパラメーター設定を変えると幾らでも変わってしまうという部分がありますので、実際に、リアルワールドデータの中で、どのような検診の間隔が妥当であるかについては、確実なことは10年、20年のスパンは掛かってくると思いますけれども、それも含めながらエビデンスを出せる仕組みの検討が必要になると思います。実際、海外でも、緑内障に関するマススクリーニングを政策的に入れるということは、現時点では推奨レベルにはないというのが現状です。
以上のことから、眼科的な疾患、特に視野に関して、労働者に対して注意を向けるということは非常に重要なテーマですけれども、一般健康診断に、今、直ちに加えるということではなく、今後、このような課題を解決した上で、より妥当な検査方法も含めながら検討する課題ではないかと考えております。私からの意見は以上でございます。
○髙田座長 ありがとうございました。白根参考人、何かございますか。
○白根参考人 様々な御意見を頂戴いたしまして、ありがとうございました。私たちも、今、企業における目の調査や研究がほとんど行われてきていないということに、改めて、この検討会に向けての準備を何年も前からさせていただいておりますが、そういうデータが余りにもないということに気付きまして、承知しております。これから、日本人のデータというのは必要になってくると思います。ただ、先ほどおっしゃったように、10年、20年も掛かっていますと、今、例えば40歳の方が50歳、60歳になったときにどうなっているのかなというのは心配なところでもありますので、様々御検討いただけましたら有り難いと思っております。
○髙田座長 ありがとうございます。そうしましたら、続きまして、宮本構成員、その後、立石構成員に移りたいと思いますので、お願いいたします。
○宮本構成員 宮本です。今、立道先生からのお話もありましたが、私どもの所はクレーン操作などもある関係で、眼底検査を40歳以上から5歳刻み、それから、FDT視野計なのですけれども緑内障の早期発見に役立つということで、45歳から5歳刻みでやってきました。それで、やはり視野欠損は高齢者には結構いるなというのが正直なところでして、そういった方々がクレーンで、横でぶつけてしまうとか、あるいはグランドレベルからテレコンで動かしているときにぶつけてしまうとかという、ヒヤリハットも含めてですが視野欠損部位に本人が気付いていないとそういうことがあるという経験もしました。
それで、今のところ精密検査で緑内障となれば早期治療導入はもとより、軽度なものはすぐに就業制限ではなく注意喚起をして、首を振ってきちんと見るようになど、自分の視野の状態を知ってもらうことで事故を防げると信じてやっているというところがあります。また、少し全体的に見にくくなっている方というのは、冬季の帰り道ですとか、あと、交替勤務をやっているので、夜暗いときに出てこなければいけない方の通行経路を、街灯が十分に明るい所を通ってくれとか、いろいろな指導もできるので、そういった事後措置という点では、緑内障の状態を含めた視野の把握というのは、もちろん精密検査の結果を眼科医から入手してですけれども、一定の効果はあるのかなと思っています。
ただ、業務起因性と言われると、そこは、ちょっと分からないところでして、力を使う作業者に多いという印象は特に持っていなかったのですが、近視の方に緑内障が多いというところですと、デスクワークのパソコン作業が非常に増えている関係で、作業以外もスマホを見てしまっているからどう影響しているのか分かりませんが、そういうVDT作業の影響で近視というのはあるのかもしれないのですが、自分の所では狭い範囲ですのでデータはございません。
そういったところを含めながら、先ほど立道先生からもお話がありましたが、この検査をやるとしたら何歳から行うのか。あと、毎年である必要はなさそうなので、例えば5年に1回という検査といったものの導入が可能なのかという点も含めて論じていただけると、少し優位性が上がるかなと。
もう1つ。昔の眼底検査はポラロイドの画質が今一つの写真だったので眼科専門医の判定でも精度が低いものでした。FDT視野計だと結果がデジタル情報として得られることで産業医や健診医でも判断できるということで併用していました。それが最近は、眼底検査の写真の精度が上がってきて、FDT検査と眼底検査の専門医判定の乖離がそんなに出なくなってきているという印象は持っています。そういう意味でいくと、眼底検査というのは、そのほかの情報も入るから良いと思う反面、その辺の精度の向上と、緑内障以外のものがどのぐらいあって、ちょっと幅広に狙い過ぎると住民健診のほうが合っているのではないかという点もあるので、この労働安全衛生のほうに乗せるという趣旨を少し絞って、今、緑内障ということであれば、先ほど言ったように、どんな人たちに対してやって、何歳からどんな間隔で何の検査でやるのか、少し絞っていただけると有り難いかなと思ったところです。ちょっと感想も含めてのコメントでした。
○髙田座長 ありがとうございます。白根参考人、いかがでしょうか。
○白根参考人 今、5年ごとに検査を実施されていると伺いました。一般健康診断は毎年実施ということになっていると思いますので、それを前提にお話はいたしましたけれども、データ、文献的には4年に1度が一番効率が良いと出ておりますが、区切りの良い5年に1度実施するというのはリーズナブルではないかと思っています。おっしゃいましたように、自分の見え方を把握することによって、事故はかなり防げることはもう分かっていますので、そういう自分の見え方を把握する意味でも、検査をしておくということは非常に重要ではないかと思います。
それから、もう1つ、近視との関連ですけれども、VDT作業によって、近視というのは眼球が大きくなっていく状態です。眼軸長が伸びると言うのですけれども、眼球が前後に長くなっていく現象です。VDT作業によって、そういうことが起こり得るのではないかなという文献もございます。また、今、国民に近視の人口が更に増えておりまして、子供の近視も多いのですが、高校ぐらいになりますと、70%ぐらいのお子さんが近視になっています。で、近視は緑内障の発生率が非常に高いので、これからは、緑内障はもっと増えてくると思いますし、若い年齢でも近視がある程度あるお子さんは、緑内障を発生していることが従来もありますので、やはり仕事をする上では視野の異常を把握しておく、企業が把握することも大事なのかもしれませんが、事故を防ぐために、自分自身で把握しておくということも非常に重要ではないかと考えております。
○髙田座長 ありがとうございます。宮本構成員、よろしいでしょうか。お待たせしました、立石構成員、お願いいたします。
○立石構成員 産業医科大学の立石です。既に重複するところがあろうかと思いますが、少し簡単にお話をさせていただければと思います。今、白根参考人からお示しいただいたデータは非常に重要だと思っていて、皆さん緑内障を何とか見付けたいという気持ちは強いかと思います。私自身も私の父が緑内障で全盲になりましたので、是非、国民の皆様が緑内障検診していただきたいという気持ちはあります。ただ、一方で繰り返し出てきていますとおり一般健康診断の中に入れるとなりますと、様々な幅広いところで検討が必要だというようなところです。
今、お示しいただいたデータの中で特にエビデンスが仮にありそうだとすると、バルサルバ手技による高眼圧が緑内障を悪化させるのではないかということが、病態生理的にも疫学的にも出ているのではないかというところです。もしバルサルバ手技というようなことでしたら、重量物の作業を今している方というのは、全労働者の中ではかなり少なくなってきているので、もしかしたら重量物健診等の特殊健診のような考え方のほうが、むしろマッチしているのではないかという感想を持ったところです。
もう1点なのですが、治療と仕事の両立支援というような視点に関してです。私自身は、つい最近までは産業医科大学の医療機関から行う両立支援の担当者ということでやっていました。その中でやはり一番難易度が高いと思ったのが、この視野欠損のあるような方々です。例えば、建築業で足場を組まなければいけないような作業は、これはどうしてもバルサルバ手技がありますし、危険な高所作業というものがあります。これで検診で見付かったときというのは、その労働者が例えば3人ぐらいしか所属していない企業においては、非常に繊細な調整が必要になります。そもそも作業をエッセンシャルな作業として、重たい物を持つ、高所作業がある、などということがありますので、その方にその作業以外のことをふれるのかというと、かなり難しいような調整の話もあります。労使というような問題においても、非常に繊細な調整が必要で、その調整をすることは誰がどのタイミングで、どういう責任においてやるのか、そして私たちもそういう調整に入った経験もありますが、その調整だけでも1件につき10時間とは言わないぐらいの時間が掛かる、何十時間という時間が掛かりながら、調整しながら着地点を見付けていくという非常に繊細なマンパワーが掛かるような問題であると思っています。そういったことに関して、何か検討していることがありましたら教えていただきたいと思います。健康診断より特殊健康診断のほうがいいのではないかという点と、あとは事後措置という点に関して、労使問題というようなところにどのような対応をすべきかという点について教えていただければと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。白根参考人、お願いいたします。
○白根参考人 御質問ありがとうございました。特殊健診というカテゴリーがあることは存じています。ただ、緑内障は重労働においては、こういうことで眼圧が上がるということは言えますが、それ以外でも一定の心理的ストレスが続くなど、様々な要因がありますので、特殊健診をどこに絞るのかというのはどうするのかと、少しお話を聞きながら思いました。
それから、参考資料の36ページ目に主な眼科疾患の有病率を記載しています。このような病気も発見できますし、これらも結構、視力低下や視野の欠損を起こしていきますので、このような病気も発見できるということです。これは必ずしも重労働には相関がない病気です。
それから、検査をすることによって視野異常が分かって、その後、その方にどうやって仕事を続けていただくか、そういうことですが、それは今後の課題ではありますが、それはきちんとこのように指導するのがよいということを、これから考えていくことだと思っています。一方で、検査をしたら事後措置という点について労使間の協議が大変なのだけれども、検査をしないことにより見え方が悪いことに気付かず、事故を起こしてしまうことのほうが私にとっては重大な損失ではないかなと感じるのですが、一般健康診断に入れるという観点からはなかなか難しいのかなと今、感想を持ちました。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。立石構成員、追加で何かありますか。
○立石構成員 ありがとうございます。見えなくなる方に関するケアというのは、非常に重要だと思いますが、どうしてもバルサルバ手技を避けることのできない仕事というものがあるというようなことに関して、その人たちの就業継続を、事業者の立場や産業医の立場だと軽々に言いづらい状況になるかと思いますので、その辺も含めて何かガイドライン的なものが作られることが望ましいのではないかと感じたところでした。以上です。
○白根参考人 かしこまりました。そのようなまとめと言いますか、手引と言いますか、そのようなものが作成できるかどうかも検討したいと思います。できるだけその方向で考えていきます。
○髙田座長 ありがとうございます。立道構成員、お願いいたします。
○立道構成員 度々、申し訳ありません。1点、これは白根先生ではなく岡村先生にお聞きしたいのですが、眼底検査の場合、動脈硬化の所見が出てきます。この動脈硬化の所見に関しての就業上の配慮という課題については、ほとんど議論されていない状況なのですが、ここはどう考えたらよいのか岡村先生から御意見を頂ければと思います。
○髙田座長 申し訳ありません。岡村構成員は11時で途中退室されてしまっているということなので、岡村構成員に立道構成員から御質問があったということで御確認させていただいて、御回答させていただく形でよろしいでしょうか。申し訳ありません。最初にアナウンスが漏れていまして、大変失礼しました。
続きまして、漆原構成員、お願いいたします。
○漆原構成員 御説明ありがとうございます。連合の漆原です。労働組合という立場から、失明を含め、労働者の将来の業務増悪を防ぐという観点からすれば、当然のことながら、こういった眼底検査を一歩でも前進していくということが不可欠だと考えていまです。
その上で、その「一歩でも前進」として一般健診に加えるかというと、先ほど来、議論されているような業務起因性がクリアできなければ難しいのだろうなと受け止めているところです。かなり昔の調査ですが、多治見スタディの内容は拝読させていただいて、興味深い内容でしたが、規模の小さい調査の沖縄の久米島の事例ですと、確か屋外労働者の男性での発症がポイントになっていました。さらに、去年、これは欧米人を中心としたものの中で大規模な調査がおこなわれていて、その中でも環境要因として紫外線ばく露がポイントであったと記憶しています。アブストラクトしか読んでいないので、正確に中を全部読んでいないのですが、その中では確か海面からの反射や雪面からの反射も影響しているので、サングラスを掛けることを推奨するコメントがあったと記憶しています。このような、バルサルバ手技以外の要因もあろうかと思いますので、今すぐに一般健診として加えることが難しいとしても、今後もそういった調査なり、知見なりを積み重ねて、是非、もう一度チャレンジしていただければなと思うところです。
○白根参考人 ありがとうございます。少し追加させてください。久米島のスタディと多治見スタディは、似たような結果ではあったかもしれませんが、久米島はやはりおっしゃいましたように紫外線も多いなど、いろいろな環境の違いがあることと、恐らく遺伝子の違いもありまして、緑内障のタイプが少し異なります。多治見という場所と、また違った結果になっている点もあったかもしれないと思います。
それから、先ほどのクレーンの作業の場合なのですが、やはりクレーンの作業をされるような方こそ、視野の異常がひどくなる前に、早期発見をして治療介入をすれば、その進行を止めることができて、仕事を続けることができますので、そういう観点から私たちは早く疾患を発見することは大事ではないかと思っています。
○髙田座長 宮本構成員、特に追加はよろしいですか。
○宮本構成員 はい、正にそのつもりで自分の所で入れているということですので、ありがとうございます。
○髙田座長 ありがとうございます。そうしましたら松岡構成員、先にお願いいたします。
○松岡構成員 日本医師会の松岡です。皆様のいろいろなお話と大体同じような印象を持っています。
1点、立道構成員から動脈硬化性の変化が眼底であったときの話がございましたが内科の実務者としては、このような所見があれば高血圧等のコントロールがきちんとできているかの確認をするので、降圧剤の投与を少し増やす等の管理をしていくことになると思います。それに付随した高血圧の就業上の問題があるときは、就業上の措置をお願いする可能性があると思いました。
そして皆様から余り話が出てなかった件ですが、一般健康診断の対象となると、一般の診療所等でも健診をしなくてはならないという状況が多くあるかと思います。その中で、その一般の診療所の先生方が眼底検査をできるかという問題があります。地域健診のほうで実際どのように対処しているかですが、一般的な健診は内科で実施し眼科とは連携をして、眼底検査だけ外部の眼科にお願いをしてやっているというのが現状です。そこでは、全員がスクリーニングというわけではなく、年齢で対象を判別するわけでもなく確か血圧が140以上と糖尿病の幾つ以上という低い値であったとしても、特定の方のみ眼底検査に回すというような状況であり、件数が少ない。もっと件数があってしかるべきだと思いますが、検査としては多分余り上がっていないのではないかと思っています。
その際のコストについては、健康診断は市町村が行っているため、市町村がお金を出していることになっているのですが、もし一般健診となった場合、そのコストがどうなるのか。先ほど800円から2,000円と説明があり現状、健診機関で行った場合は多分そのぐらいのコストになるのだと思いますが、一般の診療所になった場合に、コストがより少しかかる。さらに、プラスしてAI診断を行うことや、その後の判定についても踏まえたうえでコストは本当に考えなくてはいけないかなと思いました。
ただ、一方、視野障害については、とても大事な案件だと思っています。事業所、仕事の内容によって実施する特殊健診の話が出てきましたが、過去、国土交通省で自動車運送事業者における視野障害対策マニュアルが発出されています。恐らく眼科医会も関わっていると思うのですが、そこで視野障害を自覚せずに運転するのは大変であるという旨と、眼底検査を推奨する旨がマニュアルに記載されている状況です。このように運転者へ眼底検診の推奨が強くされていると思います。そのためエビデンスが多分集まってくると思いますので、フォローアップを是非していただき、できるだけ、後になって実務上の対策をしておけば良かったとならないよう、できることは是非、やっていただきたいと思います。健診だけではなくて、いろいろなところでの啓発事業を是非、進めていただきたいと思っています。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。白根参考人、いかがでしょうか。
○白根参考人 御意見ありがとうございます。国土交通省のことについては、私たちも協力している部分もありまして、マニュアルも出ています。今年からは、事故を起こす前と後に必ず眼底検査と視野もするという通知が出ていますので、事実上、運輸に関わる方々、運転従事者の方々は検査を受けなければならないという状況に、今なっていると思っています。おっしゃいますように、視野というものは運転業務において非常に重要なのですが、やはり指導をすることで防げる事故はたくさんありますので、私たちはその観点が非常に重要であると思っています。
コストについては、また計算をしてみます。ありがとうございました。
○髙田座長 ありがとうございます。そうしましたら、武藤構成員、お願いいたします。
○武藤構成員 ありがとうございます。我々健康診断、人間ドックをやっています。眼底写真をたくさん撮っていますが、実際に多治見スタディであるようなデータよりも、もっと多くの有所見者がいるという実感を得ています。軽症の人がかなり含まれていると思いますが、それで今までの議論を聞いていますと、一般健診になかなか入れるのは難しいのではないかという御意見が多かったと思います。60歳以上、特にここの多治見データを見ていますと、これから高齢労働者がかなり増えてくるとなりますと、転倒、転落、眼科疾患に関連する労災等も、もしかしたら増えてくるかもしれないので、その労災と眼科疾患との関連をこれから調査をしていただくのは必要かなと思っています。
あと、眼科の先生にちょっとお願いしたいのですが、我々産業医をやっていますと、緑内障で通院中など既往歴で書いてあるのですが、それで視野欠損があって、こういった仕事に注意したほうがいいなど、ほとんど眼科の先生から情報提供がないものですから、そういった情報提供をしていただけると、労働との関連性で労災の予防にもつながるのではないかなと思っています。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。白根参考人、何かありますか。
○白根参考人 武藤先生、ありがとうございました。まず、緑内障で通院している方の情報提供ですが、多分、眼科医はそういう観点から、産業医の先生に情報提供しなければならないという意識が、現時点ではないのではないかと思います。ですが、やはりそれは大事なことなので、産業医の先生から依頼があれば、返事を返すということは徹底をしていきたいと思っています。産業医の先生との連携ということは、これから私たちも意識をして、きちんと対応していきたいと思っています。
○髙田座長 ありがとうございます。そのほか御発言はありませんか。及川構成員、お願いいたします。
○及川構成員 ちょっと確認なのですが、今の検査をして、そういう所見があるという患者に対して、眼科医の先生から産業医に相談してくださいということは、余り今はなされていないという理解でよろしいですか。
○白根参考人 私も全部は把握していませんが、私は、視野狭搾が著しかったり、この先、必ず悪くなるというような方は産業医の先生に相談をして、配慮をしていただくようにということは申し上げます。一般的にある一定以上の視覚障害というか、見えにくい状態になりますと、ロービジョンケアと言いまして、見えにくい方用のケア、リハビリのようなものがありますので、その一環として就業に関わるアドバイスという項目が入ってきますので、一定以上の見えにくい方はそのような対応をなされていると思っています。
○髙田座長 よろしいでしょうか。そのほかにはよろしいでしょうか。ありがとうございます。長時間にわたりありがとうございました。
○白根参考人 ありがとうございました。
○髙田座長 これで眼底検査に関するヒアリングは終了させていただきたいと思います。それでは入れ替わりがありますので、お願いいたします。
(参考人入替え)
○髙田座長 お待たせいたしました。続いて、血清クレアチニン検査のヒアリングを行います。本日は、日本腎臓学会より猪阪参考人にお越しいたただいております。猪阪参考人から、資料2について御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○猪阪参考人 本日はお時間を頂きまして、ありがとうございます。労働安全衛生法に基づく一般健康診断への血清クレアチニン値の追加につきまして、日本腎臓学会を代表して猪阪から説明させていただきます。スライド、次をお願いします。
まず、慢性腎臓病(CKD)について御説明させていただきます。スライド、次をお願いします。慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の働きが徐々に低下していく、様々な腎臓病を包括した総称ですが、重症化するまで自覚症状がないことが多く、サイレントキラーというふうに呼ばれております。健診でのスクリーニング検査が重要となりますが、CKD進行の指標となる糸球体濾過量(GFR)は、血清クレアチニンを基に計算されますので、それがないとGFRを測定することができませんが、健診では血清クレアチニン値は法定項目に入っておりませんでした。スライド、次をお願いします。
CKDが進行すると、老廃物や水分の貯留により易疲労感、体のむくみなどが出現します。末期腎不全になりますと、倦怠感や呼吸困難感などが出現し、人工透析(若しくは腎移植)を行わなければ死に至ります。血液透析では、通常週3回、1回当たり4時間の治療が永続的に必要です。透析をしている最中は、仕事を休むことになります。透析を行う患者にかかる医療費は高額であり、1人あたり年間500~600万と言われております。
CKDは、脳卒中、心筋梗塞等の心血管病の重要なリスク因子でもありますので、労働者の健康確保のためには、腎機能の低下に早めに気付き、進行を抑制するための対策を取ることが重要となります。スライド、次をお願いします。
日本の勤労世代におけるCKD患者は、約250~500万人と推定されておりまして、勤労世代の約14~28人に1人がCKDにり患しており、勤労世代でも注意が必要な疾患となります。
透析学会の統計調査の結果では、年間1万人の勤労世代が新規に透析が導入されており、現代の日本の透析患者数35万人のうち10万人が勤労世代です。スライド、次をお願いします。
腎臓は、高血圧や糖尿病など生活習慣によって障害されやすいことはよく知られておりますけれども、過労や睡眠不足等のストレスにも弱い臓器とされております。CKDの進行を抑えるためにも、CKDの方には過度な労働等によるストレスを避けるなど配慮が必要となります。スライド、次をお願いします。
腎臓は、尿を作る際に大量の酸素を消費するため、心臓から出た血液の4分の1から5分の1が腎臓に流入します。熱中症等で脱水状態になると、腎臓への血流の低下が起こるため、腎臓が酸素不足に陥ります。慢性腎臓病であることを自覚せずに脱水状態を放置すると、末期腎不全に至ることもあります。スライド、次をお願いします。
食事、運動、市販薬の選択時の注意など、生活療養指導を含む保健指導は、CKD進行抑制に有効とされていますけれども、従来、慢性腎臓病の治療薬はございませんでした。しかし、慢性腎臓病の治療法は慢性腎臓病の原因にかかわらず、進行を抑制する新しい薬剤が出現しております。スライド左に示しているものですけれども、CKDの進展を抑制することができるということが示されております。こういったことから、CKDの診断はより重要度を増しているところです。スライド、次をお願いします。
次に、血清クレアチニン検査についてお話させていただきます。腎臓において、尿を作るのに重要な働きをしている糸球体は、フィルターに例えられております。腎臓が悪いと言っても2つの意味があり、このフィルターが目詰まりしていることと、破れていることの2つとなります。血清クレアチニンは、このフィルターが目詰まりの状態を調べる検査で、尿蛋白というのはフィルターが破れていないかを調べる検査ということになります。これらの2つのことは、同時に起こることもありますが、片方だけが起こることもあります。すなわち、血清クレアチニン検査をしないと、フィルターが目詰まりしている状態を把握できないということになります。
また、このスライドにはお示ししていませんが、尿細管障害によっても腎機能の低下、すなわちクレアチニンの上昇が見られますが、尿蛋白はこの場合には認めれられないということになります。スライド、次をお願いします。このスライドに慢性腎臓病の定義を示していますが、腎臓病のスクリーニング検査には、尿検査と血清クレアチニンの検査の両方が必要となります。スライド、次をお願いします。
勤労世代のCKD患者のうち150~220万人、これは勤労世代の約44~60%に相当しますが、この方は尿蛋白が陰性であり、現在の尿蛋白のみのスクリーニング検査では、近年増加傾向にある腎硬化症等に基づくCKDの方を見逃してしまうということになってしまいます。スライド、次をお願いします。勤労世代の中でも、比較的高齢の層で尿蛋白を伴わないCKDの患者が多い傾向になるということです。スライド、次をお願いします。
スライドにお示ししていますが、尿蛋白のない慢性腎臓病でも、末期腎不全の危険性が高まることが示されております。また、慢性腎臓病は、心血管病や死亡の危険性が高いということも知られていますが、尿蛋白のないCKDでも、心血管病や死亡のリスクが高いということが示されております。スライド、次をお願いします。
日本の複数の産業医に対して、「就業制限を検討する際に考慮する項目で対象とするものを教えてください」という質問に対して、73.5%の産業医が血清クレアチニンを考慮すると回答しているというのが、こちらのスライドです。同調査の中では、産業医が「就業規制をかける」と答えた最頻度の血清クレアチニンの値は2.0で、CKDステージG3b~G4に相当するところです。スライド、次をお願いします。
CKD患者に対するかかりつけ医の受診勧奨の判断においても、血清クレアチニンから計算されるeGFRが用いられており、40歳以上ではeGFR45未満、40歳未満ではeGFR60未満の場合に、かかりつけ医への受診が推奨されております。スライド、次をお願いします。
2016年の労働安全衛生法に基づく定期健康診断等の在り方に関する検討会報告書では、血清クレアチニンについては糖尿病性腎症の原因と考えられる高血糖、腎硬化症の原因と考えられる高血圧の基礎疾患を含めて、労働者の健康状態を勘案しながら医師が必要と認めた場合に、同一検体等を利用して実施することが望ましい検査項目というふうにされていたわけですけれども、最新の調査では、尿蛋白、高血糖、高血圧はないが、腎機能が低下しているケースが多く存在することが分かっており、次のスライドでお示しさせていただきます。
これは、2023年の14万人余りの尿蛋白、血圧、血糖データを含む健診データベースからの解析ですけれども、CKDと診断される尿蛋白検査及び血清クレアチニン検査の有所見者1万9,000人余りのうち、尿蛋白、高血圧、糖尿病のスクリーニング検査が全て陰性の、eGFRのみ低下している方というのが31.9%ということでした。スライド、次をお願いします。
CKD有所見者の全体のうち尿蛋白、高血圧、糖尿病のスクリーニング検査が全て陰性のものが占める割合の、男女別と年齢別のサブグループでそれぞれ検討していますが、全て陰性の患者は性別、年齢問わず存在しているということが、このスライドから見ていただけるかと思います。スライド、次をお願いします。
今回の調査結果と日本の勤労世代(20~65歳)における推定CKD患者数250~500万人のうち、現在の法定項目である尿検査、糖尿病、高血圧のスクリーニングで抽出されないようなCKD患者数を推定すると、保健指導等による介入が望ましいとされるG3a以降のCKD患者が80~160万人、産業医が就業規制の制限を検討するようなCKDステージG3b~G4以降のCKD患者が約2~5万人いることがこの表から分かっていただけるかと思います。スライド、次をお願いします。
診療報酬の点数から計算いたしますと、現在の一般健康診断に血清クレアチニン検査を追加した場合の費用負担は、1人当たり60円程度に過ぎないということです。今回の労働安全衛生法の一般健康診断の目的とは少し異なりますが、1人の労働者が透析導入されると年間500~600万円の医療費が掛かることや、CKDが進行するにつれプレゼンティーイズムの割合が増加するといったことを勘案すると、血清クレアチニンの検査の追加には医療費の適正化、健康経営による労働生産性の維持向上といった、別の視点の投資効果というものも期待されるところです。スライド、次をお願いします。
血清クレアチニン値から簡便な推算式により算出されます推算糸球体濾過量(eGFR)は、最も正確なGFR測定法とされますイヌリンクリアランスと高い相関性があります。この推算式は、臨床実地に広く浸透しております。また、血清クレアチニン値の測定方法についても、より精度の高い酵素法の普及や、妨害物質の影響を軽減するなどの試薬の改善により、測定誤差も減っています。スライド、次をお願いします。
続いて、慢性腎臓病の業務起因性・業務増悪性についてお話させていただきます。スライド、次をお願いします。18歳以上の健診受診者10万人余りを対象としたコホート研究において、長時間労働はCKDの発症リスクの増加と関連しており、1週間当たりの勤務時間が52時間を超える群では、35~40時間の勤務群に比べて、CKDの発症リスクが約2倍高いということが分かっております。スライド、次をお願いします。
労働者7,000人程度を対象としたコホート研究におきましては、累積夜間勤務回数が多くなることは、腎機能低下の発生の増加や、eGFR値の低下に関連しており、労働者1万8,000人程度を対象としたコホート研究では、シフト勤務は腎機能の低下の発生の増加に関連しておりました。スライド、次をお願いいたします。
仕事中の長い座位は、CKD発症・進行のリスクであり、座位の仕事に比べて立位/歩く仕事はCKD発症リスクが低下していること、逆に仕事上座位が長いことは、末期腎不全の発症リスク増加に関連していることが確認されております。スライド、次をお願いします。我が国の前向きのコホート研究では、睡眠時間5時間未満では6.1~7.0時間の睡眠と比べて、末期腎不全の発症リスクが約2倍となることが確認されており、腎臓学会によるCKD診療ガイドライン2023では、CKD患者では適度な睡眠時間を確保することを提案するというふうにしております。スライド、次をお願いします。また、運動不足はCKD発症のリスクであり、CKD診療ガイドライン2023では、合併症や心肺機能を含む身体機能を考慮しながら、可能な範囲で行うことを提案するというふうにしております。スライド、次をお願いします。
今年の夏も含めて、極めて暑い日が続いておりました。職場での熱中症対策が喚起されていましたが、気温の高い地域の労働者において、暑さや脱水へのばく露が原因とされるような流行性のCKDというのが多数報告されております。一方、休憩時間の拡充、水分補給、日陰へのアクセス改善等により、腎障害の発生頻度が低下したといったことも報告されております。スライド、次をお願いします。
最後に、配置転換等の事後措置についてお話させていただきます。スライド、次をお願いします。血清クレアチニン値及びeGFRに異常を指摘された労働者への対応として、CKDステージG3b~G4以降の高度な腎機能低下を有する者については、労働安全衛生法第66条の5に基づきまして、業務負荷による健康障害の回避のため、長時間の残業、頻回の夜間勤務、脱水になりやすい高温環境での仕事等を可能な限り避けるよう、配置転換等の事後措置を検討することを提案したいと思います。スライド、次をお願いします。
CKDの各ステージを通して、過労を避けた十分な睡眠や休養というのは重要です。軽度の腎機能低下でも長時間の残業、頻回の夜間勤務については注意を要します。一方で、安静を強いる必要はございません。特に、高度な腎機能低下を有する方につきましては長時間の残業、頻回の夜間勤務、脱水になりやすい高温環境下での仕事を避けるよう、配置転閑を含めた就業上の配慮を検討したいと思います。スライド、次をお願いします。
令和7年6月に、改正労働安全衛生規則が施行されました。熱中症の予防対策を行う意味でも、腎不全患者をしっかり把握し、職場での適切な措置に生かすことが重要となりますが、暑さによる腎臓病は血清クレアチニンの上昇、GFRの低下を認める一方で、尿蛋白は出現しにくいというようなことがありますので、血清クレアチニン検査の追加が必要と考えております。最後となりますが、スライド、次をお願いします。
慢性腎臓病の業務起因性・業務増悪性に関するエビデンスが蓄積されていることに加えて、労働環境の変化、新たな治療薬登場等により、健康診断におけるCKDスクリーニングの重要性が増しているところです。CKDを早期に発見し、腎機能に応じた適切な事後措置等の介入を行うことで進行を抑制することができると考えております。CKDの適切なスクリーニングには尿検査とともに、血清クレアチニンから計算されるeGFR、この両方が必要となります。労働安全衛生法が定める「事業者が労働者の安全と健康を確保する責務」を果たすためには、一般健診項目に血清クレアチニンを追加することが必要と考えております。以上でございます。御清聴ありがとうございました。
○髙田座長 御説明ありがとうございました。ただいま血清クレアチニン検査について御説明いただきました。ただいまの御発表に関連しまして、御質問や御意見のある構成員は挙手をお願いいたします。いかがですか。亀澤構成員、お願いいたします。
○亀澤構成員 御指名ありがとうございます。猪阪先生、詳しい御説明をありがとうございました。私は健診機関の代表として参加しておりますが、健診機関におきましても血清クレアチニン値の検査を行っている所は多く、その重要性については健診機関としても認識しております。この検討会に先立ちまして、一部の全衛連の会員機関の状況を確認いたしました。一部ではございますけれども、人間ドック健診においては100%に近い割合で実施されており、安衛法健診におきましても、健診機関によりますが、3~6割程度の受診者に対して実施しておりまして、その結果は全て、漏れなく健診依頼者、すなわち、事業者に対して報告しております。そういう状況をまず報告をさせていただきたいと思います。
健診機関として、どのように対応できるかということですが、検査項目追加となりましても、他の生化学検査と同時に実施できますので、そういう点では健診機関としての大きな負担はないのではないかと考えております。コメントになりました。以上でございます。
○猪阪参考人 ありがとうございます。
○髙田座長 ありがとうございます。そのほかはいかがですか。鈴木構成員、お願いいたします。
○鈴木構成員 経団連の鈴木と申します。本日は御説明ありがとうございます。13ページのグラフを見ますと、20~39歳の年齢では、男女とも尿蛋白のみの異常による慢性腎臓病(CKD)患者が最も多くなっております。このページの下のほうに20~39歳では尿蛋白が主体のCKDが多いという記載も見られます。グラフから何が読み取れるかという御質問ですが、費用対効果の観点や、40歳未満の場合(35歳を除く)には、必ずしも血液検査を実施していない場合もあろうかと思います。40歳未満の労働者に血清クレアチニン検査を実施することについて、費用対効果の面から必要性が乏しいのではないかという問題意識を持っているのですが、その辺りについて御所見をお伺いできればと思います。よろしくお願いします。
○猪阪参考人 ありがとうございます。御指摘のとおり糸球体腎炎においてこのように腎機能低下しているような方、特に小児に発症してキャリーオーバーといった方に関しましては、尿蛋白と腎機能低下の両方を示すような方が多いかと思いますけれども、一方、遺伝性疾患などによりまして、若いときから既に尿蛋白は陰性であるけれども、腎機能が低下したという方がやはり少なからずおられるかと思います。そういった方に対して、できるだけ早期に腎機能の低下を発見し、それらが進行していくことを防ぐといったこと。そして、業務上の措置を取るといったことは非常に重要なことであると考えておりますので、可能であれば、40歳未満の方に対しても血清クレアチニンを測定いただいて、腎機能低下を早期に発見していただくということはいろいろな保健指導などをする意味においても重要ではないかと考えているところでございます。
○髙田座長 鈴木構成員、いかがですか。
○鈴木構成員 40歳未満の方に対しても、一部、有用ではないかという御示唆だったと思います。コメントになりますが、40歳以上を主眼として血液検査を実施しているという状況や、常時使用する全ての労働者を健診の対象にするという一般健康診断の趣旨からすると、私としては40歳以上に限って実施することも含めた検討が必要ではないかと考えております。ありがとうございます。
○猪阪参考人 コメントを頂きましてありがとうございます。
○髙田座長 ありがとうございます。オンラインで吉村構成員が挙手されておりますので、お願いいたします。
○吉村構成員 東大ロコモ予防学講座の吉村でございます。クレアチニンにつきましては、私どももずっと住民を対象とした健診を行っておりますが、クレアチニン、CKDの診断の上で入れるということに、学問的な意味で反対という方はいらっしゃらないのではないかというように愚考しております。尿蛋白だけでは不十分であるというのは医療関係者は認識があると考えております。ただ、私もこの労安法に入れるに当たりまして、業務起因性と業務増悪性についてはどうなのかなというのも、少し危惧として持っておりましたが、本日の先生の御発表では、十分な数のコホート研究から業務に関連する要因あるいは業務の改善によって予防し得る要因というものが幾つかピックアップされていると思いますので、非常にレクチャーいただいてよかったなと思っております。
その上で、私どもが診療などしておりますと、住民調査から精査という形で来られるときに、クレアチニンを測っている場合なのですが、eGFRが58とか、ちょっとどう指導していいのか、少し困る場合がございます。実際にクレアチニンを入れた場合、ほとんど引っ掛かってくる方は、業務配置が必要ではない方だと思うのですが、そのような方々に対する指導についての何らかの手立ては考えていらっしゃるのであれば御指導いただければと思います。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。猪坂参考人、お願いいたします。
○猪阪参考人 ありがとうございます。御指摘のように、従来は、高血圧や糖尿病がないときちんとした治療法がないというところがございました。しかし、現在のエビデンスとしては、適切な塩分摂取やカロリー摂取を行うことによりまして、高血圧や糖尿病の発症とは独立してCKDの進展が抑制されるということが確かめられております。そういったことから、日本腎臓学会の診療ガイドラインでも高血圧や糖尿病のないCKDにも栄養指導を推奨しているところでございます。これは過剰な塩分摂取やカロリー摂取により糸球体過剰濾過が起こりまして、糸球体障害がより進展するためにそれらを制限することはCKDの進行を抑制し得るということから、ガイドラインにて推奨しているところでございます。そのほか、禁煙や運動、睡眠などといった生活指導も有効とされております。そういったことから、先ほどスライドでお示ししましたけれども、高熱環境下での業務や脱水時の水分摂取などについて気を付けていただくといったことを説明いただくことも必要かなと思っております。
一方で、先ほど御指摘いただきましたように、eGFRは60を少し切っているという方に対して、すべからくきちんとした指導をするというのは難しいかなと思っております。日本腎臓学会として、CKDを持つ方に対して生活上の注意点を説明する際に役立つような資料等を作成しております。これは研究班のホームページなどに無料で公開しておりますのでダウンロードすることが可能でございます。リスク因子が比較的に少ないようなCKDの方には、例えば保健師の方から患者さんへの生活状況などを聴取いただいた上で、生活指導のパンフレットをお渡ししながらアドバイスするといった、比較的負担の少ないようなやり方でCKDの進展、あるいはその就労者がきちんとした形で就労できるような形で御指導することができるのではないかなと考えております。以上でございます。
○髙田座長 ありがとうございます。吉村先生、よろしいですか。
○吉村構成員 ありがとうございました。
○髙田座長 それでは立石構成員、お願いいたします。
○立石構成員 産業医科大学の立石でございます。大変御丁寧な御説明いただきまして、ありがとうございます。既にクレアチニン等が自動的に入っているような健診機関等も多く、既に半分実装されているのに近い状況もあるような実態もあるのではないかと私自身も推察しているとともに、あと、特定の臓器の障害について見られるということは大変利益があると私も思っておりまして。例えば化学物質を使っている所で、腎代謝の化学物質を使っているような労働者等においては、その蓄積等が行われていないかどうかみたいなことの判定にも使われるのは非常に汎用性の高い、臓器障害を見るという点においてもそのまま使えるということ。何よりも既に行われている採血の項目を一項目を増やすだけですので、特に労働者に負担が余りないのかなというところにおいて、有用性が非常にあるような御提案だったのではないかと思っております。
ただ一方で、我々の現場の中であるのは、今、吉村構成員から御質問があった点と、比較的に近いようなものなのですけれども、eGFRが高値というように要精密検査などを健診等機関から指摘されていると、どうしても精密検査等を進めざるを得ないというところがございます。
産業医に指示され精密検査を受診して、主に専門医ではない先生だと思いますけれども、このくらいの問題だったら来なくてもいいみたいなことになって、その時点で産業医と労働者の関係性が悪くなるみたいなことも、多くの産業医が経験しています。
対応策としては、軽度のCKDに関しては生活指導で対応できるというところですので、多くは産業保健職でも対応できるようなことも多いのではないかと、保健指導でできるのではないかというところで、その辺りの制度設計という意味においてクリアカットにeGFRが例えば45以下、60以下だと、必ず精密検査しなければいけないみたいな形で示されてしまうと、少し困惑するようなところが出てくるのではないかということがございますので、その辺りの医療機関と産業医との立場において、どのようなすみ分けをするかということについて御検討いただきたいというところを考えた点が1点です。
もう1つは、産業医という立場で見たときに、余りクリアカットに、夜勤はできる限り避けたほうがいいのではないか、脱水にならないようにしたほうがいいのではないかみたいなことを余りやってしまうと、やはりそれがクリアカットになればなるほど、労働者の方々はそのような作業から外さなければいけないということになります。これが非常に大きな企業であれば、幾らでも配置転換の仕様があるのですけれども、主に小規模事業場の方々のほうが、こういうばく露にさらされている機会が多いかと思います。そのようなときに制限事項がたくさん出てくると、かなり労働者の方々に関して不利益が出てくるので、むしろ、こういう対応をしたらこのような働き方ができるというような働けるための提案という形で、ガイドライン等で示していただけると有り難いと思いながら拝聴をさせていただいておりました。以上です。
○猪阪参考人 コメントありがとうございます。御指摘いただいたeGFRが低下したような方は、高熱環境で働いては駄目というような指導をするつもりではなくて、そのような方に対しては水分摂取をするとか、そのような生活上の注意点をきちんと周知いただく、そして、何より労働者自身が自分はCKDであるという自覚を持って、そのような対応をしていただくということが重要かなと思っておりまして、必ずしも厳しい就労規制を掛けるというようなことではないということをコメントさせていただきたいと思います。御指摘いただきまして、ありがとうございました。
○髙田座長 ありがとうございます。立石先生、よろしいですか。
○立石構成員 それとともに、先ほど言いましたクリアカットな基準を決められると、受診した後でこれくらいで来なくてもいいみたいな形で職場の側に返されて、我々が困惑するみたいなことがありますので、その辺りについてもある程度、何かコンセンサス情報でもガイドラインでも構いませんので、何か御提言を頂けると。例えばeGFRが42、43ぐらいの方々に関して、なかなか地域医療のリソースに得られないようなところが産業医の側である程度指導しながらやってもよいみたいな、必ずしも精密検査をする必要はないというような何かコンセンサスみたいなものを併せて頂けると、産業医の立場としては有り難いのではないかと思いまして発言をさせていただきました。この点に関しても、もし、よろしければお願いします。
○猪阪参考人 先生の御指摘のとおり産業医がおられるような事業所におきましては、産業医の先生方がこれまでの健診データを参考にして、このように縦割のものではなく柔軟に対応していただく、労働者の健康状態を継続的にフォローしていくということが、やはり勤務者にとっては非常に望ましい状態ではないかなと思いますので、先生の御指摘のとおりだと考えております。ありがとうございました。
○髙田座長 よろしいですか。続きまして、立道構成員、お願いいたします。
○立道構成員 東海大学の立道と申します。よろしくお願いいたします。私は腎臓が専門でないのでお聞きしたいのですが、高血圧もない、糖尿病もない、尿蛋白もないという方のeGFR、CKDの方が30%いるということを問題視されています。この方と、ほかのいわゆる高血圧や糖尿病がある方の予後というのは、基本的にはどのぐらい変わるものなのでしょうか。というのは、eGFRだけで見ていくと、それで就業配慮をしていくということになると、この何もない群と合併がある群において違いがあるとなると、そこで強弱を付ける必要があると思うのですが、その点はいかがなのでしょうか。
○猪阪参考人 ありがとうございます。先生の御指摘は非常に重要かと思います。スライド14にお示ししておりますが、尿蛋白、高血圧、糖尿病がないようなCKDの患者さんでも、経時的に腎機能が低下していくリスクが高いということも分かっておりますし、CKDステージG3aの患者さんで尿蛋白陰性の患者さんにおける末期腎不全のオッズ比がこの13倍となっておりますが、これは尿蛋白、高血圧、糖尿病の影響を調整したものですので、13倍リスクが高いということです。
また、最近、心不全のガイドライン2025においても、この尿蛋白がないようなCKDの患者さんでも心不全のリスクが高いということも分かっております。それは、CKDでない方に比べて10倍心不全のリスクが高いということですので、こういった方をきちんと把握した上で、状態を把握しながらきちんと指導をしていくということが重要ではないかと考えております。
○立道構成員 すみません、私の質問は、この合併のない方とある方において、予後に差があるのかという点です。
○猪阪参考人 もちろん、例えば糖尿病がある、蛋白尿があるといった方のほうが予後が悪いということですが、CKDのない方と比べても予後が高いということですので、やはりCKDであると13倍ぐらい高くて、更に糖尿病や蛋白尿があると、更にリスクが上がってくるということになります。
○立道構成員 ありがとうございます。もう一点は、今、立石構成員がお示しになったことなのですが、これは次回の検討会でもあると思いますが、例えば肝臓学会がALT30を超えた場合にはかかりつけ医へという奈良宣言というものを出されています。いろいろな学会で、ある基準からかかりつけ医受診ということを促すというようなことが推奨されています。しかし、実際かかりつけ医に送っても、かかりつけ医の専門性によって何しに来たのかというようなことは結構現場で起こります。先ほどの眼底のこともそうなのですが、結構の頻度で経験するので、クレアチニン値によって医療機関の受診が必要な場合に、かかりつけ医の先生方に対して、先生方からしっかりとフォローの仕方を周知していただくことが、健診項目に入れてそれが良好な介入成果を得ることの必要条件だと思います。健診項目に入れるだけではなくて、その後のことに関してのフォローアップ体制を整えていただければと思います。私からは以上です。
○猪阪参考人 ありがとうございます。先生御指摘のように、一部の医師においては、この尿蛋白や糖尿、高血圧を持っていないCKDの患者さんを診ることがないというような形で御判断されている方がおられることは、十分認識しているところです。これについては、かつては確かに高血圧や糖尿病がないと治療薬がなかったということが影響しているのではないかと思います。最近になってCKDという診断の下、処方可能な治療薬が出てきていることもありますので、かかりつけ医の先生方の考え方もかなり変わってきているのではないかと考えています。
そのために、腎臓学会としても、先生に御指摘いただきましたが、現在CKD患者を診療するかかりつけ医の先生方が質の高い診療を行えるように、CKD診療ガイドライン2024を出したところですし、指導のためのパンフレットなども作成しております。また、現在はCKD協力医制度というものを立ち上げようとしております。これは、各都道府県の医師会や行政とも協力しながら、CKDの治療に関心が高いようなかかりつけ医の先生に、軽度から中等度のCKDの患者さんの保健指導、薬物指導を担っていくという制度で、我々専門医がそういった協力医の先生方に啓発しているところですので、健診へのクレアチニンの盛り込みも含めて、そういった制度設計もしているところです。
○髙田座長 そのほか、よろしいでしょうか。宮本構成員からお願いします。
○宮本構成員 今のお話に少し関連するのですが、今までは尿蛋白しかなかったので、この16ページのかかりつけ医への受診勧奨のフローなのですが、尿蛋白を1+以上で紹介するというのは現実的にはかなり無理があると。機会蛋白尿とかいろいろありますし、毎年同じ人たちを診ているということもあるので、これがeGFR、クレアチニンが入ることによって、例えばこのフローは今回尿蛋白は1+なのだけれども、腎機能が落ちていないという方は、その下のG1かG2になるでしょうから、1年後の尿蛋白の様子まで見ていいということですと、このフローが変わってきますよね。そんなに急速に悪化するものではないと思いますので、1回限りの一見さんではなく、産業医や健診医がずっと診ている方についての紹介フローがもう少し絞り込めたら実効性を高めることができると思います。こちらも自信を持って勧奨できるとか、今のフローでは空振りが多すぎると、先ほど立道構成員も言われたように、受診指示が出ても行かなくなってしまうとか、臨床の先生やかかりつけの先生を労働者が信用しなくなってしまうとか、何か変なネガティブな要素が出てきてしまってもよくないと思います。ですから、もっと絞り込めるように、このフローがクレアチニンの検査を前提にすると変わるということを少し期待したいのですが、そういう可能性はおありでしょうか。
○猪阪参考人 ありがとうございます。確かに、今までは健診で尿蛋白ということでしたので、今後、血清クレアチニンが盛り込まれてくると、こういったフローも少し変えていかなければいけないと考えております。私は大阪府ですが、大阪府内科医会の先生方と協力しながら、健診などで紹介されてきた患者さんには尿蛋白と血清クレアチニンをきちんと測定した上で、このような形で対応するということをもう少し分かりやすいようなチャートフローを一緒に作っているところです。そのような形にすることによって、より、このように健診で引っ掛かってきた患者さんに対しては、このように対応するというようなことを、専門医とかかりつけ医の先生方で連携しながら、きちんとやっていけるような体制づくりを進めているところです。先ほど紹介させていただきました協力医制度はそれに基づくもので、それを全国的に広げていきたいと考えているところです。
○宮本構成員 ありがとうございます。私どもの所ですと、例えばCKD協力医の制度も、人口35万人ぐらいの所に開業医で5-6軒しかなく、かなり無理があるということもあります。例えば、産業医のほうでこれを見ていくときにe-GFRがあれば1年の結果だけで見るのではなく、2、3回の、例えば今の話ですと翌年やもう少し先の尿蛋白の有無まで見ていいとか、そういうフローになるといいと思った次第ですので、是非改定を期待しております。
○猪阪参考人 御指摘ありがとうございます。そのようにさせていただきたいと思います。
○髙田座長 増田構成員、お願いいたします。
○増田構成員 ふだん、嘱託産業医をしております増田と申します。御説明ありがとうございました。一般健康診断ですと、業務起因性が関心事になり、幾つかお伺いさせてください。エビデンスとして挙げておられるスライドの24枚目のデータなどを見ますと、発生レートが1万人年当たりで示されています。人年なのですが、年1回の健診でしょうから、恐らくほぼイコール1万人ということだと思うのですが、それぞれ3.53と6.20と、思ったよりも発生していないと感じました。
それから、スライドの25枚目の夜勤勤務について、グラフを拝見する限り、夜勤を5,000回やってeGFRが4下がるという読み方になるのでしょうか。これは、夜勤勤続40年でeGFRが3から4程度低下するオッズ比が1.37という結果を示しているものだと思うのですが、こちらも40年間で4しか下がらないのかというような読み方もできなくはないと思いました。これは、私の読み方に問題があって、そういう読み方ではないというものなのか、あるいはこの数字が持つインパクト、例えば重症高血圧で1年間放置したのと同じぐらいの影響なのだとか、そういった比較ができると、健診事後措置をしっかりやらないといけないといった活きた対応につながると思うのですが、ここのデータの読み方、解釈を少し補足いただけたらと思います。
○猪阪参考人 御指摘いただきましてありがとうございます。まず、長時間労働のほうのスライド24に関してですが、こちらは比較的若年者を多数含むところから絶対的なリスクが比較的少なかったのではないかとは考察しております。確かに御指摘いただきましたように、勤務時間がCKDに与える影響というのは、例えば高血圧や糖尿病の影響といったものに比べますと、低いということにはなってまいります。本日のプレゼンテーションでお示ししましたが、業務は長時間労働といったものだけではなく、多様な因子が影響してまいります。それらが加算的に影響してくるというようなことがありますので、やはりこういったことをきちんと把握した上で、できる限りこのCKDというものが進行して、末期腎不全で透析にならないようにというようなことを指導することは、積み重ねという意味でも重要ではないかと思っております。
また、確かに個々の業務起因性は、必ずしも1つずつはGFRの低下速度に与える影響は少ないのですが、それらを相加的に全てきちんと指導していくということが、CKDが進行して、例えば特に若い方などになってまいりますと、勤務中に透析をしないといけないことを避ける、それを10年後、20年後に遅らせるといったことに関して、非常に重要ではないかと考えております。御指摘のように、個々の業務が与える影響というのはそれほど多くないにしても、相加的に影響するということを鑑みて生活指導していただくということは、重要ではないかと考えているところです。
○髙田座長 増田構成員、いかがでしょうか。
○増田構成員 夜勤のほうは、いかがでしょうか。
○猪阪参考人 夜勤に関しても、確かにこの論文というのはeGFRのトラジェクトリーを見ていると解釈したほうがよいと考えております。eGFRの低下と関連していたのは、確かに長期、かつ高頻度の夜勤回数になりますが、長期的に見ましてCKDの発症、進展のリスクに関するようなシフト勤務を業務起因性と考えて、今回提示させていただいたということになります。
ただ、夜勤、勤務以外のいろいろな要因がありますので、必ずしも夜勤だけがCKDの発症の進展に影響を与えるものは大きくありませんが、ほかの要因と複合的にCKDの発症、進展に影響すると考えております。そういった意味でも、クレアチニンを測定してCKD患者さんを同定することは重要ではないかと考えているところです。
○髙田座長 増田構成員、お願いいたします。
○増田構成員 細かくて、すみません。多変量解析をされているので、その辺りは先生がおっしゃる様々な要因というのはかなり除外した上での影響が、ここには出てきていると理解しております。それで、思ったよりもインパクトとしては小さいかと感じたので、質問させていただきました。ですので、先ほども申し上げたように、例えば重症高血圧1年放置分に相当するとか、HbA1C二桁を何年も放置することと同じぐらいというような比較対象があれば分かりやすくなるかと思ったのですが、臨床的、疫学的な意味合いとしてどのような位置付けになるのかという点をお伺いできればと思います。
○猪阪参考人 確かに、今は高血圧がGFR低下の要因として非常に大きいです。それは、年間のGFRが1程度低下速度が速くなるということになってまいります。それに比べると、確かに夜間勤務単独ではそんなには大きくないということにはなりますが、それ以外の高熱環境下での要因、長時間など様々な要因が相加的に重なることによって、それぞれGFRの低下速度がだんだん速くなっていくということで、多変量で解析すると長時間労働単独ではこれだけですが、ほかの要因も相加的に影響すると考えているところです。
○増田構成員 ありがとうございました。
○髙田座長 ありがとうございます。そのほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。長時間ありがとうございました。それでは、血清クレアチニン検査に関するヒアリングは、以上で終了いたします。猪坂参考人、ありがとうございました。それでは、参考人は退席をお願いいたします。
(参考人入替え)
○髙田座長 予定を過ぎており、申し訳ありませんが、続いて議事を進めさせていただきたいと思います。
続きまして、骨粗鬆症検査について、事務局から資料3の説明をお願いいたします。
○樋口産業保健支援室長 事務局からの御報告になります。骨粗鬆症検査ということで、資料3を御覧いただければと思います。3ページを御覧いただければと思いますが、こちらについては第4回の検討会で既にお示しさせていただいた資料ですけれども、骨粗鬆症については第3回で研究班のほうから発表いただいて、それについてこちらの資料3ページにあるような御議論を頂いたところです。
4ページですけれども、同検討会で御提案させていただきました。検診として実施すべきという意見もありましたが、業務とその関連性については更なる議論が必要という中で、一方で、健康局が中心になり、骨粗鬆症の検査についてやってるということで、この研究成果も併せて見てはどうかということで、御提案をさせて頂いたところです。この度は、この健康局の研究班の成果ということでの御報告になります。
6ページですか、健康増進法の骨粗鬆症の位置付けにつきましてはこちらのとおりでして、この赤字の書いている所については問診、骨粗鬆症の検査をやられていて、次のページになりますけれども、今、5%ぐらい実施をされているという状況です。この中で、検査の判定ということで、左下の骨粗鬆症の検査の後、マニュアルによって判断するということになっております。このマニュアルの研究を健康局の研究班のほうでされていたということで、次のページです。結論になりますけれども、令和4年度から令和5年度についてマニュアルの検討をされています。この研究が令和6年度以降も今、続いているという状況でして、まだ、この研究班としての研究成果は出ていないということです。
また、こちらのいわゆる業務との関連性等、我々の検討会の中で何か参考になるデータはありませんかということで、お問い合わせさせていただいているものの、そちらについても今、御提示できるものはないということでしたので、結果としてはこの研究班について現段階で我々のほうで御議論、皆さんのほうで御議論いただけるデータはなかったという報告になります。事務局からの報告は以上になります。
○髙田座長 ありがとうございます。ただいま、事務局から骨粗鬆症検査のことについて御説明を頂きました。ただいまの説明について御質問や御意見のある構成員はよろしくお願いいたします。田中構成員お願いします。
○田中構成員 研究班代表者をやっております田中と申します。どうもありがとうございます。骨粗鬆症検診は将来的な骨折を予防するという観点で重要だと考えていますが、業務に起因するか、あるいは業務によって悪化するかという点に関しては、データがありません。また骨粗鬆症があるから業務を制限する必要はないと考えておりますので、今回の一般健診の検査項目としてはそぐわないと我々も考えております。
○髙田座長 ありがとうございます。そのほか、何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。オンライン参加の構成員も特に御発言の御希望がないということでよろしいでしょうか。立道構成員お願いします。
○立道構成員 発言の機会をありがとうございます。今日の議論もあったのですが、この検討会の進め方について一言、提案させていただきたいと思います。今日、エビデンスレベルはどうなのかという議論が冒頭され、先ほどはデータに関して増田構成員からも、これはどういう解釈なのかという議論があったと思います。基本的に、まず学会等の要望で提出された論文に関して専門家にて議論し、どの程度のエビデンスレベルで、どのぐらいのインパクトがあるのかという報告をこの会議に出して、ステークホルダーの皆さんで議論をする。そのような検討会のすすめ方のほうが望ましいのではないかということを思いました。
というのは、冒頭、鈴木構成員と漆原構成員からのこのエビデンスはどうなのですかという質疑がされました。この議論は、本来ならば専門家が論文を精読し、数人の者で、どの程度のエビデンスレベルがあるのかの評価を踏まえてこの会議に提出するということが必要と考えます。この検討会ではステークホルダーの方もいろいろな方がいらっしゃるので、それとエビデンスの評価というのは切り分けた会議体として、事前にエビデンスの評価結果をもってステークホルダーの方にそれぞれの立場から議論していただくという場にしたほうがスムーズかなと思い、発言させていただきました。
○髙田座長 ありがとうございます。事務局いかがでしょうか。
○樋口産業保健支援室長 ありがとうございます。貴重な御意見だと思います。会議の進め方、ちょっと次回ですぐにということはできませんけれども、今後の宿題ということで承りさせていただきますので、今後また御相談させてください。
○髙田座長 ありがとうございます。そのほか、追加で御発言ございますでしょうか。よろしいでしょうか。そうしましたら、事務局にお返しいたします。
○藤井産業保健室長補佐 長時間に渡り、ありがとうございました。また、連日になり恐縮ですけれど、明後日11月21日もヒアリングが続きますので、どうぞよろしくお願いいたします。その他、特に事務局から報告等はありません。
○髙田座長 ありがとうございます。本日は検討会の時間を超過してしまいまして、申し訳ございませんでした。本日はこれにて閉会といたします。お忙しい中、御参集いただきまして、ありがとうございました。

