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第10回労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会議事録
労働基準局安全衛生部労働衛生課
日時
令和7年11月21日(金)15:00~
場所
中央合同庁舎5号館専用第14会議室
議題
(1)労働者の健康確保に必要な健診項目について
(2)その他
(2)その他
議事
- 議事内容
○藤井産業保健室長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまより「第10回労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」を開催いたします。構成員の皆様におかれましては、一昨日に引き続き、御多忙の折御参加いただきまして、誠にありがとうございます。本検討会は、資料及び議事録は原則公開といたします。
本日の出欠状況ですが、荒井構成員、中野構成員からは御欠席の御連絡を頂いております。大須賀構成員、清田構成員、立道構成員、田中構成員、増田構成員、武藤構成員、森構成員、吉村構成員におかれましては、オンラインで御参加いただくということです。そのほか、本日、会議途中で御退室等を頂くという御連絡は、現状ではそういう方はいらっしゃらないと承知しております。
オンラインで御参加いただいている構成員の皆様に、御発言の仕方等を御説明させていただきます。会議中、御発言の際は、「手を挙げる」ボタンをクリックしていただいて、座長の指名を受けてからマイクのミュートを解除し、御発言をお願いいたします。御発言終了後は再度、マイクをミュートにしていただきますようお願い申し上げます。
資料の確認をさせていただきます。本日の資料は事前にお送りしているとおりですが、議事次第、資料1~4、参考資料1~6となっております。この後、議事に沿って画面共有にて御覧いただきますが、不足等がありましたら事務局よりお送りいたしますので、コメント又は御発言にてお申し出ください。報道関係者の皆様におかれましては、カメラ撮影はここまでとしていただきますよう、お願いいたします。
以降の議事進行については、髙田座長にお願いいたします。
○髙田座長 一昨日に続きまして、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。本日の議題は、「労働者の健康確保に必要な健診項目について」です。事務局より本日の進行について説明をお願いいたします。
○樋口産業保健支援室長 私から説明させていただきます。本日は、一昨日もお話させていただいた胸部エックス線検査、心電図検査、喀痰検査について御議論いただく予定です。胸部エックス線検査、心電図検査については、要望を頂いた学会を代表して、参考人として今来ていただいております日本呼吸器学会の高橋先生、日本循環器学会の塚田先生には後ほどお越しいただくこととしております。胸部エックス線検査、心電図検査については、それぞれ参考人のヒアリングを行った後、構成員からの質問、意見交換という流れで進めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。それでは座長、お願いいたします。
○髙田座長 ありがとうございます。それでは早速、胸部エックス線検査のヒアリングに入りたいと思います。高橋参考人から資料1について御説明をお願いいたします。
○高橋参考人 よろしくお願いいたします。ただいま御紹介いただきました順天堂大学の高橋でございます。現在、呼吸器学会の理事長をしております。それでは、スライドをお願いいたします。労働安全衛生法の目的と胸部エックス線健診ですが、労働安全衛生法に基づく一般健康診断は、常時使用する労働者について、その健康状態を把握し、労働時間の短縮、作業転換等の事後措置を行い、脳・心臓疾患の発症の防止、生活習慣病等の増悪防止を図ることなどを目的として事業者により実施されています。その観点から、胸部エックス線健診は労働安全衛生法に基づく一般健康診断の目的に合致しているかどうかを確認させていただきたいと思います。
次のスライドをお願いいたします。一般健康診断の検査項目等に関する検討会での胸部エックス線検査に関する議論について歴史を振り返ってみたいと思います。平成18年に、当時、日本医大だったと思いますが、工藤翔二先生が座長で「労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会」が開催され、その概要については、140歳以上を対象とし、40歳未満は医師の判断により省略可。240歳になるまでは、雇入れ時健診の際、及び5歳ごとを目途に節目健診を行うということを出されています。
その後、10年ほどたって、平成28年10月に、山口先生が座長で「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」が開催されました。
その結果ですが、概要として、胸部エックス線検査は、1「結核等の呼吸器疾患等の一般的なスクリーニング検査」と位置付けられます。2調査対象の産業医等が胸部エックス線検査を主に結核対策などに活用しており、グローバル化に伴う人材の流動性の高まりにより、必要性は高まっているなどと回答されたと聞いています。3以前の調査・検討、平成18年ですから10年ほどたっていることから、今後、知見の集積に努めるということでまとめられています。
しばらくたって令和6年5月に、立道先生が「一般健康診断項目検討会」第3回検討会研究班報告として、胸部エックス線については、140歳未満の結核高まん延国からの外国籍労働者を対象とした結核まん延防止の必要性を説かれています。2として、40歳以上の検査に関しては、精度管理と下記の3と書かれていますが、3以外には、検査を省略することで利益が不利益を上回るという新規の知見・議論はなかったと言われています。3とは何かというと、化学物質、いわゆる高分子ポリマー等ですが、化学物質の自律的管理において一定程度障害の早期発見の役割が期待される可能性があるということです。
そして、昨年11月に、「一般健康診断検討会」中間とりまとめにおいて検討要件が確認され、11項目の着眼点が示されたと理解しています。2で業務起因性又は業務増悪性の重要性が説かれたわけです。すなわち、検査で分かる健康事象又は検出可能な危険因子が業務に起因するか、又は業務により増悪するかという観点で評価することが重要と言われています。
スライドをお願いいたします。これは、米国と日本の結核罹患率の推移について示しています。日本は、以前は結核の罹患率が非常に高く、中まん延国でしたが、ようやく近年低まん延国入りいたしました。これは、米国の1996年~1998年のレベルであり、現在の米国レベルは人口10万人当たり3.1です。現在日本は8.1、8.2、8.1と横ばいですが、米国並みの3.1になるには25年以上かかると言われています。
次のスライドをお願いいたします。日本における新登録結核患者の概要です。新登録結核患者数は少しずつ減少しており、先ほどご説明申し上げたましたように、人口10万人当たり2022年では8.2、2023年には8.1になりました。赤く囲っている箇所を見てください。2023年新登録結核患者10,096人中、職業別分類で勤労者に該当するすなわち括弧で書かれている職種の方が2,809人と全体の27.8%を占め、30%弱が勤労者だったというデータです。
次のスライドをお願いいたします。私が今居住している東京都並びに長崎県のデータも出しています。日本全国のデータを見ていただくと分かりますが、結核患者に占める外国出生結核患者の割合は急増していることが明らかです。一番新しいデータでは、2023年には16%とこのところ加速的に増えています。東京都や他の県においても同様の傾向がありました。
次のスライドをお願いいたします。日本における新登録結核患者の概要で、外国生まれ結核患者の増加が実際にどのような年代の方で、どうなっているのかというデータです。青の折れ線グラフが20~29歳、黄色が次に多いのですが10~19歳、そして30~39歳ということで、外国出生者については、比較的40歳以下の若年者に結核の方が多いということです。2023年における新登録結核患者のうち、外国出生者割合は16%ということで、前年の11.9%から5%弱、大幅に増加しています。先ほどご説明したとおり、年齢階級別の割合で見ると、20~29歳が最も多く84.8%、10~19歳においては69.6%、30~39歳においては61.6%ということで、外国出生者が占めていたというデータでした。
次のスライドをお願いいたします。これも情報としては一部重なりますが、男女別かつ年齢階級別の結核患者数です。男女において特に差はありませんが、男女ともに20代が一番多く、その後30代、40代という順番です。まとめると、外国出生結核患者の特徴は、若年層での患者数が多く、10~39歳で83.3%(1,650人)という結果でした。
次のスライドをお願いいたします。外国出生新登録結核患者の入国した年から結核と診断された年までの期間割合の年次推移で、2013年~2024年のデータを示しております。縦棒を見ていただくと、棒グラフのブルーの所が2年以内、その上のオレンジ色が3年以上5年以下、グレーが6年以上10年以下、黄色が11年以上たってから診断されたということです。2024年の所を見ていただくと、一番右側ですが、外国出生新登録結核患者のうち、入国した年から結核と診断された年までが2年以内の者の割合は70.1%(入国時期判明1,554人中1,089人)、入国した年から結核と診断された年までが5年以内の方は80.4%ということです。したがって、入国時の検査等で結核と診断されなくても、その後、結核として発症することがあることを示しているデータだと思います。
次のスライドは、どの国の方が多いのかというデータです。外国出生新登録結核患者の入国した年から結核と診断された年までの期間割合で、主要6か国別です。これは、いわゆる入国前結核スクリーニングの対象6か国ですが、左側からインドネシア、ネパール、ミャンマー、ベトナム、フィリピン、中国で、2年以内が先ほどと同様に青、3年以上5年以下がオレンジという形で並んでいますけれども、国によって若干違います。インドネシアの場合には、2年以内の割合が87.5%、一番左側です。ネパールが85.2%、ミャンマーが79.8%、ベトナムが71.5%、フィリピンが46.8%、中国は34.1%ということで、国によって少し違いがあるということです。
実際に日本で労働されている外国人労働者はどの国が多いのかということと、それぞれの国別の結核罹患率、推定罹患患者数はどのぐらいかというのが次のスライドです。ベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、ミャンマー、その他ということで分けており、入国人数が一番多いのはベトナムで57万人(24.8%)、それから中国、フィリピン、インドネシア、ミャンマーという順番です。その他が79万人(34.3%)です。その右側の結核罹患率ですが、人口10万人当たりの数ですけれども、一番高いのはフィリピンで、人口10万人当たり650、次がミャンマーで360、インドネシアが354でベトナムが174ということです。入国人数に結核罹患率を掛けたものが推定罹患者数です。その数字が一番右に書かれております。推定患者数として一番多いのはフィリピンで1,625、その後がベトナムの986、インドネシアの602、そしてミャンマー、中国と続きます。
次のスライドをお願いいたします。活動性結核登録患者の結核発見の契機です。上が外国出生、下が日本出生の方に分けて表示したものです。これは2024年で、出生場所不明の160名を除くデータです。これで見ると、外国出生の方は全て健診です。健診で見つかった方が43.5%、一方、赤字で書いてある日本出生の方は10.8%ということです。その中で、様々な健診がありますが、職場健診が黄色で04と書かれているもので、職場の定期健診が外国出生は22.3%、日本出生が4.0%ということで、外国出生者の結核発見の契機は症状が乏しく、健診で発見されることが多いです。一方、日本出生者の結核発見の契機は症状があり、医療機関を受診することが多いことが読み取れます。
これは、あくまでも健康診断のデータだけですので、医療機関を受診した方はどうなのかというのが次のスライドです。極めてビジーなスライドで、ほとんど見えないと思いますが、お手元の資料を御覧いただきたいと思います。先ほどのグラフに医療機関受診等も全部加えたものがこれです。一番上の所を見ていただくと、外国出生ということで、上の43.5%というのが左側を占めるわけで、48.1%の医療機関受診が、右側の黒い所に続きます。日本出生の方を見ていただくと、やはり医療機関受診が多いということで、55.4%が医療機関受診となっています。ですから、年齢ごとによって若干違いはありますが、基本的に外国出生の方は健診で見付かることが多く、日本出生の方は、どちらかというと医療機関受診をされて見付かる方が多いと言えるかと思います。年齢ごとの頻度については割愛させていただきます。
次のスライドです。以上をまとめてみると、日本出生者においては、20歳未満では接触者健診発見割合が多く、20~59歳では医療機関受診とともに健診発見割合が増えてきます。外国出生者においても、40歳未満では接触者健診+定期健診による発見割合が多く、40歳以上では、日本出生者と同様に医療機関受診割合が多くなり、日本出生者と外国出生者については、結核の発見動機が若干異なると言えると思います。
次のスライドをお願いいたします。現在の胸部レントゲン検診システムのいわゆる精度ということで、胸部検診システムの変遷について示しております。平成20年頃は、主ないわゆる撮像システムとして、アナログシステムということで、直接・間接フィルムがありました。被ばく量も今よりも多く、Aです。Aというのは精度・画質管理共に優れているのが15%、緑色の所が評価Bで、精度・画質管理共に適切というのが80%ということで、黄色のほうが良いわけです。平成30年になってデジタルに変わって、第1世代、第2世代のデジタルで被ばく量が半分ぐらいに減って、Aの割合が80%に増えてきています。令和6年になると、最近ですので、デジタルシステム第2世代、第3世代の撮像システムを使うと被ばく量が更に低減し、Aの割合が90%になるということです。ですから、年々精度が上がってきているということが言えると思います。
次のスライドをお願いいたします。具体的な例を1つ挙げると、最近の例ですが、この方は20代男性で、外国籍労働者で、職場健診で胸部異常影を指摘されました。CTを見ていただくと、右上葉並びに左上葉に典型的なtree-in-bud appearanceということで活動性結核を疑わせる陰影がありますが、これが胸部レントゲンで確認できるかというと、赤丸で付けているように、最近のレントゲンではしっかりと確認できるということで、胸部エックス線のレントゲンの精度もかなり上がってきているという一例を示しております。
スライドをお願いいたします。これが最後、まとめです。一般健康診断における胸部エックス線検診についてということで、まず業務起因性疾患ですが、肺結核については、高まん延国からの入国者の増加に伴い、全年齢層に対する対策が必要であり、胸部エックス線検査は有用な手段と言えると思います。外国出生の労働者の増加による結核罹患率の増加は看過できない動きであり、健診の手段として効果をあげている胸部エックス線検査を廃止することは適切ではないと考えています。外国出生の方に関しては、入国してしばらくしてから結核を発症されることがあるということですので、現在始まったばかりですが、入国前結核スクリーニングが行われつつありますが、そのスクリーニングで結核を拾い上げるのは難しいのではないかと考えております。また、外国出生の方のみに検診を行うことに関しては、若干差別的な問題があるのかもしれないということが第3回の検討委員会の中でも議論されたと聞いております。
まとめですが、胸部エックス線検診は、「結核等の呼吸器疾患等の一般的なスクリーニング検査」として労働安全衛生法の求める一般健康診断の目的に合致すると考えています。以上です。
○髙田座長 高橋参考人、ありがとうございました。ただいまの胸部エックス線検査の御説明に関しまして、御質問、御意見のある構成員は挙手をお願いいたします。まず、亀澤構成員、お願いいたします。
○亀澤構成員 高橋先生、詳しい御説明、ありがとうございました。現在の胸部エックス線検査をめぐる現状と課題について、詳細に認識することができました。また、胸部エックス線検査の精度管理につきましてもコメントを頂きまして、御礼申し上げたいと思います。私どもは胸部エックス線検査の事務局を担っておりますので、全衛連からコメントさせていただきたいと思います。
この胸部エックス線検査の精度管理事業は、私ども全衛連が行っております5つの検査に関する精度管理事業の中でも、最も歴史が古いものでございまして、昭和55年から今まで45年間にわたりまして、専門家の先生方の御指導の下、実施をしております。現在は、参加機関が約400機関になっております。400という数字を考えると、少し少ないような気がしますけれども、この400機関におきまして、合計で約2,200万人の方々をカバーしています。これは、各参加機関からの報告の合計でございます。したがいまして、働く人の相当多くの方をカバーしていると考えております。
参加機関の医師、それから診療放射線技師の方々の御努力、さらにはメーカーの技術開発等により、現在では優秀な成績を収める機関が、先ほどは先生からは9割というお話がありましたが、新しい数字ですと92%となっております。健診は、何より精度が重要でございますので、今後とも、全衛連としては健診が精度あるものとなりますよう、事業を進めていきたいと考えております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。そのほか、オンラインで、森構成員、お願いいたします。
○森構成員 只今の御説明で、胸部エックス線検査の現状が大変よく分かりました。そうなると、胸部エックス線検査の一番有効な対象集団というのは外国人ということなのですが、そういった外国人に対して、入国時検診で十分か、一般健診で今後も併せてやっていかなければいけないかということが、議論の中心になろうかと思っています。
その中で、先生が示されたデータで、入国後何年後に結核が発見されるかというデータが国によって異なっていたというのがとても興味深かったのです。例えば、中国の方々だと入ってからかなり時間が掛かってから見付かっている、インドネシアは比較的に短い時間で見付かっているというのは、これは何を表してるかといるのでしょうか。このことは、今後の胸部エックス線検査のあり方を考える上でとても重要な話かなと思いましたので、その辺りについて、何か知見がありましたら教えていただければと思います。
○高橋参考人 ありがとうございます。これは、私も国によって随分ばらつきがあるなということで、その理由について実は様々なものを用いて調査していますが、結論から言うと、まだ分かっておりません。1つの可能性として、結核に感染して発症するまでの期間というのは潜伏期がございますので、その感染した時期が国によって若干違いがあると。そうすると、入国してから発症するまでの期間が違いがあるということは説明できるのではないかと考えているのですが、それを証明する術がございませんので、あくまでもスペキュレーションということでございます。
○森構成員 ありがとうございます。今日は心電図もありますけれども、前回の議論と併せますと、新しく健診項目を加えるために必要な要件と、既存項目として実施されているものを継続するための条件は、当然のことながら異なっていても仕方がないとは思います。
長く同じ検査を行っていると、検査の目的の疾患が見つかる割合が徐々に減ってくることになり、1例を見付けるためのコスト負担もかなり大きくなってくる傾向にあるというのは事実だと思います。現実としては、いろいろな懸念があって、ここで中止してもいいと意思決定するための十分なエビデンスがない場合に、まだしばらく続けるということには反対ではありません。しかし、未来永劫これを続けるかという話にはなりませんので、継続的に議論をしていかないといけない話だと、今のお話を聞いていて思いました。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。高橋先生、お願いいたします。
○高橋参考人 ありがとうございます。先生のおっしゃるとおりだと思います。入国前の結核スクリーニングの検査は、ちょうど始まったばかりでございます。これは6か国対象となる予定で、現在、私の知っている範囲では、フィリピン、ベトナム、ネパールが対象で、今後、インドネシア、ミャンマー、中国に広げていくと。ただその検査でどういった結果となっているかというデータがまだ蓄積されておりませんので、それが蓄積された後に、もう一度振り返りをするというのがよろしいと思っております。
○髙田座長 ありがとうございます。続きまして、宮本構成員、お願いいたします。
○宮本構成員 高橋先生、本当にありがとうございました。ちょっと教えていただきたいのですが、まず一番最初、立道構成員のと書いてあるのは、立道先生のほうからなのかもしれないのですが、一番最初の3番目の所のポチの所に、40歳以上の検査に関して、3以外は検査を省略することで利益が不利益を上回るという新規の知見はなかったということなのですが、省略して不利益が利益を上回るというのもないと思ってよろしいのかどうか、これが1点です。
それから、2つ先の日本における新登録結核患者の概要なのですが、右下の赤四角の中にある勤労者なのですが、勤労者の下のほうに、臨時雇い日雇い・その他自営業が入っていますので、これを除くとどのぐらいになるのかというのも、もしデータがありましたら教えていただければと思います。
さらに、先ほど森先生のお話と少しかぶるかもしれませんが、入国時のチェックで見付けられないというのは、潜伏期とおっしゃいましたが、ずっとそこに潜んでいるのか、それとも、一時帰国とかで国に帰ったときに接触して新たにもらってきているのか、この入国というのはどの入国を言っているのか、分かれば教えていただければと思います。
もう1つなのですが、最後、年代別の結核患者の発見動機なのですけれども。年代別で見ると、40~59と20~39というのは、黄色の定期健診で見付かっている比率は、日本人も外国の方も一緒ぐらいの数字に見えるのですが、これはどう考えればいいのかというのも教えていただければと思います。多くなって申し訳ないです。
○髙田座長 お願いいたします。
○高橋参考人 まず、外国の方で、本当に潜伏期だけの問題なのか、あるいは何回か出入国を繰り返していて、そのときに感染したのかどうかについては、可能性としては十分ありますが、先ほどお話したように、御説明するような資料がございませんので、これについては正確にお答えすることはできません。もちろん、これは日本国内に最初に入国するときには感染していなくて、一時帰国してまた感染して、それが発症するという可能性はございますけれども、これについては、回答を持ち合わせておりません。今回のこのデータについては、いわゆる御本人が入国して、一時帰国ではなくて、最初にいわゆる就労目的で入ってきたときからの期間ということですので、実際に一時帰国した場合にどうなのかということについては、その可能性は十分にあると思いますけれども、これは分からないということしか言いようがないと思います。
それから、2つ目は何でしたか。
○宮本構成員 すみません、幾つかあったので。では、勤労者の内訳で、臨時雇い日雇い・その他自営業という、この二つを除く、いわゆる常雇での定期的な健康診断を受ける者というのはどのぐらいいらっしゃるのかと。
○高橋参考人 一度持ち帰れば分かると思いますけれども、現時点においては回答することが難しい状況です。申し訳ございません。
○宮本構成員 ありがとうございます。もう2つなのですけれども、一番上の最初のページの2枚目かな、4点ポイントがある中の3番目の、利益が不利益を上回るというのは、不利益が利益を上回るというところもないという解釈でよろしいのかということ。
○高橋参考人 おっしゃるとおりです。利益が不利益を上回るという新規のエビデンスもなければ、不利益が利益を上回るというエビデンスもないという理解です。
○宮本構成員 ありがとうございます。もう1点が、ちょっと多くて申し訳なかったのですが、年代別の結核患者の発見動機の割合で、総数で見ると違うように見えるのですが、多分60歳代が大分占めているからそうなのだろうと思いますが、20~39と40~59を見ると、職域の定期健診で見付かっている比率は日本人と外国人が同じぐらいに見えるのですが、ここをどうやって解釈したらいいのだろうというのが分からなかったのですけれども、教えていただければと思います。
○高橋参考人 すみません、何ページですか。
○宮本構成員 13ページです。
○高橋参考人 すみません、もう一度お願いします。これのどこですか。
○宮本構成員 これの年代別で見ますと、外国出生と日本出生の20~39及び40~59の黄色で示している定期健診で見付かっている比率は、ほぼ同じぐらいに見えると。総数で見ると随分違って見えるけれども、多分、これは60歳代以上が入ってしまっているということなので、この主に働く世代の20~39と40~59が定期健診で同じぐらい見付かっているように見えるのですが、これは外国人労働者だからというわけでもなく、どう解釈すればいいのでしょうかというところです。
○高橋参考人 先生のおっしゃるとおりかもしれません。これについても今お答えすることは難しいと思いますので、申し訳ございません。
○宮本構成員 分かりました。ありがとうございます。
○髙田座長 よろしいでしょうか。そうしましたら、武藤構成員、お願いいたします。
○武藤構成員 それでは、高橋先生に、先ほど、健診で見付かる人が多いというお話があったので、その健診で見付かるという点について御質問したいのですけれども。我々もたくさん健診をやっていて、結核は確かに少ないのですけれども、健診で見付かる結核は、自覚症状がほとんどない軽症の状態で見付かっています。その後の受診状況を確認してみますと、ほとんどが結核菌を排菌していないということがその後確認されています。排菌をしていると入院が必要であったり、それから他人への感染リスクが高まったり、さらに、接触者に対して調査が必要であったりとか、本人だけではなく周囲への影響も大きいと考えております。
もし、これが廃止となった場合は、そうすると、進行して自覚症状が生じてから受診ということになりますから、排菌リスクが高まって、それから周囲にも感染リスクが高まると考えるのですけれども。軽症で見付かることによる意義、それから排菌との関係辺りを教えていただければと思います。いかがでしょうか。
○高橋参考人 ありがとうございます。一般的に結核の感染指数というのがございまして、症状、すなわち、咳の続いている期間と排菌の量の掛け算がいわゆる感染リスクと言われています。そういう意味では、いわゆる症状がない、たまたまレントゲンで見付かった方というのは、比較的やはり他者への感染のリスクが少ないというのが医学的な常識になっております。ただ、これが本当に症状がないけれども、それを本当に適切に訴えて健診で見付かっているのか、症状があるのだけれども言わなかったのかということで、言語の問題等も外国籍出生の方はありますので、その辺から考えますと、日本出生の方と同等に考えることが本当に適切かどうかについては慎重であるべきかなと考えております。
○髙田座長 武藤構成員、いかがでしょうか。
○武藤構成員 分かりました。ありがとうございました。
○髙田座長 続きまして、立道構成員、お願いいたします。
○立道構成員 ありがとうございます。新登録結核患者のご説明をありがとうございます。研究班における胸部レントゲンを担当した立場で再度報告させていただきたいと思います。まず、労働者の結核まん延については、今、お示しになられたように、外国人労働者の増加が製造業のみならず、IT関係、サービス業を含めた様々な分野に広がっているということで、結核まん延国からの流入によって今後も拡大の可能性があるということ。もう1点、今、入国してから数年間で発症するということに関しては、帰国・再入国ということがあって、帰国時に感染ということが考えられ、さらに治療途中で帰国されてしまうということもあり、多剤耐性菌の流入というものの懸念が大変に高いということはエキスパートパネルの先生方から御指摘された部分でございます。
現在の入国前結核スクリーニングは、先ほど高橋先生がおっしゃられたように、フィリピン、ネパールが3月、ベトナムが5月、インドネシア、ミャンマー、中国は準備中ということ。また、現地でのスクリーニングになっているということで、実際の実効性という部分に関して、まだ未知数の部分があります。特にこれから外国人の労働者の増加というものから全体的な広がりということが懸念される部分がございますので、それについても留意点があるということがエキスパートパネルの先生方からの御意見でございました。私からの追加の発言は以上でございます。ありがとうございます。
○髙田座長 ありがとうございます。高橋先生、何か追加でございますでしょうか。
○高橋参考人 立道先生、ありがとうございます。おっしゃるとおりでございまして、外国出生で日本で就労されている方に関しましては、診断して治療を始めても、やはりコンプライアンスと言いますか、アドヒアランスと言いますか、非常に、服薬が完遂できる方が必ずしも高くないと。途中でいなくなってしまう。そして帰国をしてまた戻ってきてというようなことで、これが結果的には、やはりまた再入国した場合に日本国内で感染を広げるということもございます。あともう1つ危惧しなければいけないのは、今、先生が言われたように、いわゆる多剤耐性結核です。これが、やはり外国では多いと、国によっても違いますけれども、多いということです。そのようなことを考えますと、外国出生の方に関しては、やはり厳格にしっかりと検査をして対応するということが望ましいのかなと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。立道先生、いかがでしょうか。
○立道構成員 ありがとうございます。あともう1点、長期に入国されている方が、その後発症される1つの理由として、家族を呼び寄せて、そこで暮らされているということから、家族からの感染ということが1つ指摘されてございました。具体的な数値は持ち合わせておりませんが、そのような可能性があるのではという御意見でございました。私からは以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。そうしましたら、会場に戻りまして、漆原構成員、お願いいたします。
○漆原構成員 連合の漆原です。連合の中で安全衛生関係とは別に、外国人の労働者の関係を担当していたものですから、その観点からも発言をさせていただければと思います。正に、今ほど議論されております入国前の結核のスクリーニングですけれども、現地の対象病院は、日本政府が指定した病院で検査をするという枠組みにはなっているところではありますが、そこで発行する結核非感染証明書については、問診と身体検査と胸部エックス線とともに、後ほど出てきます喀痰検査を必要に応じて実施するということになります。問題は、この証明書は180日も有効期間があるのです。その理由は、査証や在留資格認定証明書の取得など入国前の3か月ぐらい必要になる事例もあるためですが、その間に、罹患した者は分からないということになるのです。
それとは別に、例えば、特定技能外国人は、当面の間入国前スクリーニングの対象の外になっているのです。これは、特定技能の要件の1つに、「健康状態が良好であること」が在留資格取得の条件となっており、以前から別途検査を実施しているためです。なお、その検査については日本政府の指定病院に限定されていないことも問題です。とはいえ、別途検査を実施しているので、在留資格別で罹患率が取れるとすれば、特定技能については、データが既にあるのかもしれません。いずれにしても、入国時点の発症の事由を見るというのが入国前のスクリーニングなので、入国後に発症する例を、いかにどう早期発見するかという課題はまだ残っていると理解をしています。そういう意味では、職場の集団感染を防ぐという観点から、我々としては、今後も一般健診として胸部エックス線検査の実施は必要であると考えているところです。
もう1点、これは外国人の話となると、どうしても出てくるところですが、こういった入国前スクリーニングは対象国の国籍を条件としているので、人権侵害に当たるとか、あるいは国際的な批判も否定できないところもあり、一歩間違えると差別として受け取られかねないという危険性もその一方ではあるというところが気になっているところです。
なお、この入国前スクリーニングは中長期滞在者を対象ですので、家族滞在も対象ですが、3か月未満のビザは対象外となっています。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。高橋先生、何かございますでしょうか。
○高橋参考人 ありがとうございます。大変に勉強になりました。やはり大切なことは職場での集団感染を防ぐということでございますので、入国前の結核のスクリーニングだけでは拾い上げられないケースもあるということは容易に想像できるわけです。もう1つ、先ほどお話もございましたように、かなり精度管理が進んできまして、レントゲンの質もかなり上がってきておりますので、やはり今すぐに中止をするということは、いろいろな意味で適切ではないということを、実感しました。
○髙田座長 ありがとうございます。続きまして、オンラインで、吉村構成員、お願いいたします。
○吉村構成員 東京大学ロコモ予防学講座の吉村でございます。エックス線検査に関しまして大変よく分かりましたし、業務起因性又は業務増悪性についても理解することができました。ありがとうございました。その上で、私が思いますに、胸部エックス線検査は、ターゲットは結核だということは大変よく理解できたのですけれども、現在の胸部エックス線では、心疾患あるいは肺がんを含んだ他の肺影、呼吸器疾患についてもある程度読影ができ、私は今の胸部エックス線検査は大変情報量が多いため、是非実施する方向でいくべきだと考えております。
その上で、1つ、情報が多いということからなのですが、読影の上での精度管理と言いますか、読影式が一律のレベルで読影できるような工夫のようなことは、実施、あるいは立案されているのでしょうか。そこについてお伺いしたいです。以上です。
○髙田座長 高橋先生、お願いいたします。
○高橋参考人 ありがとうございます。先生のおっしゃるとおりでございまして、質の高いレントゲンを撮っても、読影する者のスキルが十分にないと、やはりそれは見落としてしまうわけです。それに対してどのような教育を行っているかをお話をさせていただきます。私は日本呼吸器学会の理事長であり、今は日本肺癌学会の常任理事でもあり、先日肺がんを研究対象とする学会の会長も担当しています。そこで、いわゆる肺がん検診の教育のコースがありまして、読影について繰り返し会員に対して教育をしております。これは3時間のコースで基本的に会員には受講していただいています。日本呼吸器学会では、肺がんだけではなく、結核やCOPD、間質性肺炎、その他レントゲンで見つかる異常をどのように拾い上げるのかをeラーニング等々で教育を行っています。以上です。
○髙田座長 吉村先生、いかがでしょうか。
○吉村構成員 ありがとうございました。よく分かりました。できれば、そのような教育を産業医も含めまして広くアピールしていただければと考えております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。武藤構成員、御発言を御希望でしょうか。よろしくお願いいたします。
○武藤構成員 度々すみません。今の吉村構成員の質問に関して、我々は日本人間ドック・予防医療学会ですから、あと全衛連さんもそうなのですが、必ず読影はダブルチェックするようにということになっております。そういったことで精度をある程度担保するように、見逃しのないようにするようにしております。それから、読影した後に、割と重大な疾患に対しては、当日受診を勧めたり、例えば結核などもそうなのですが、従来健診で写真で結核が疑われたような場合は、直接本人、場合によっては会社にも連絡して、当日若しくは後日に受診するようにと受診勧奨にも力を入れておりますので、そういった形で精度管理に努めております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。そのほか、御発言を御希望の構成員はいらっしゃいますでしょうか。高橋先生、お願いいたします。
○高橋参考人 ありがとうございます。私は現在、医学部長という立場で、学生教育にも深く関わっております。それから、またJACMEなど、様々な医学教育の団体にも関わっている人間として、現在の医学生に対する胸部レントゲンの読影の教育というのは、やはり非常に重要であり、医学部を持つ大学において、胸部レントゲン読影をベッドサイドラーニング、病棟実習のときに実践しています。このような学生に対するアーリーエクスポージャーを行っていることを申し添えたいと思います。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。そのほか、よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、胸部エックス線検査に関するヒアリングは以上で終了とさせていただきたいと思います。高橋参考人、本当にお忙しい中、本日はありがとうございました。
○高橋参考人 ありがとうございました。失礼します。
○髙田座長 それでは、入替えをさせていただきますので、少々お待ちください。
(参考人入替え)
○髙田座長 お待たせしました。続きまして、心電図検査のヒアリングを行いたいと思います。なお、岡村構成員におかれましては、心電図検査に係る要望学会の1つである日本循環器病予防学会の理事長をされていますので、ヒアリング内容に対する御質問はお控えいただき、他の構成員から岡村構成員宛ての御質問があった場合の御発言のみとさせていただきますのでよろしくお願いいたします。それでは、塚田参考人、御準備できましたら資料2について御説明をお願いいたします。
○塚田参考人 日本循環器学会予防委員会の委員長を務めております日本医大の塚田と申します。よろしくお願いいたします。
時間が限られておりますので、早速労働安全衛生法における心電図検査の意義について御説明します。スライドをお願いいたします。
平成22年5月の労働基準法施行規則の改正により、労働基準法第75条第2項に基づく業務上の疾病として、脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止、あるいは大動脈解離が規定されました。さらに、令和3年には対象疾患に「重篤な心不全」が追加されております。
次のスライドです。このスライドは、業務に関連して発症した脳・心臓疾患に関する請求件数、決定件数、支給決定件数の推移を示しております。左側が全件の推移です。脳・心臓疾患の労災請求は、一時的に減少した時期もありましたが、近年、再び増加傾向にあります。特に令和5年、令和6年は請求件数が1,000件前後の高水準にあり、支給決定件数も増加しております。これは働き方の変化や、労働負荷の多様化により、脳・心臓疾患のリスクが依然として高いことを示唆しております。右側が死亡に至った事案の推移です。死亡件数は年度によって変動するものの、全体として増加傾向にあり、令和6年は255件と最も高い値を示しております。支給数も増加しており、業務関連の脳・心臓疾患が依然として重大な結果をもたらせていることが分かります。
次のスライドをお願いします。本スライドは、年齢別請求件数です。労災請求は40代で急増しますが、30代でも死亡例が認められていることは看過できません。若年だから安全という認識は成立せず、働き盛りの世代における早期の心疾患リスクの把握は不可欠と思います。
次のスライドをお願いします。日本では年間33万人の方が心血管疾患で亡くなっています。左側のグラフは疾患別の年齢構成を男女別に示しています。突然死に至りうる心室細動、急性冠症候群は、発症は50~60代で急増いたします。一方、急性心不全、大動脈疾患は70代がピークですが、60代でも多いことが分かります。右の図は、高血圧が脳卒中・心血管疾患にどの程度寄与しているかを示したものです。全体では高血圧の寄与が41.1%と最も大きく、日本の心疾患における最大なリスク因子として考えられます。未治療者はⅠ度の高血圧、すなわち軽度の高血圧でも寄与が大きいことが示されております。したがって、軽度の血圧上昇であっても見逃すべきではなく、早期診断と治療介入が心血管死の予防に直結します。日本における心血管疾患の死亡構造からも、高血圧管理とその発見が重要であることは明らかです。
次のスライドをお願いします。左上に示すとおり、長時間労働へのばく露は職業上のリスク要因として位置付けられています。これは中央に示す媒介因子として、心血管リスクを増大させます。生活習慣の悪化に加え、自律神経系、免疫系の過活動が生じ、高血圧や心房細動といった重要な異常を招きます。最終的にこれらを通じて、虚血性心疾患や脳卒中といった重篤なアウトカムに至ります。右側には慢性高血圧に伴う典型的な心電図所見を示しています。心電図は、健診時の単回血圧の値よりも、長期間にわたる血圧負荷の蓄積を的確に反映し、単回の測定で把握しにくい慢性的な血管ストレスの可視化に有用であることが分かります。したがって、長時間労働という上流要因にばく露する労働者では、高血圧や心房細動の早期検出が重要であり、心電図は過重労働の影響による慢性高血圧をもっともよく可視化する検査と言えます。
次のスライドをお願いします。右の上の図に示すとおり、日本の脳卒中新規発症患者のうち、脳梗塞が最も多く64%を占めます。さらに下段に示すとおり、脳梗塞の中でも心原性脳塞栓症は25~30%を占めると報告されています。左の棒グラフは心原性脳塞栓症の危険因子の人口寄与危険割合を示しています。特に高血圧の寄与が28%と最も大きく、次いで不整脈、すなわち心房細動が13%を占めています。心原性脳塞栓症では、高血圧と心房細動が2大リスクであることは明らかです。
次のスライドをお願いします。心原性脳塞栓症は、心臓内で形成された大きな血栓が脳へ運ばれ、太い脳動脈を閉塞することで発症する脳梗塞です。図に示すとおり、心原性脳塞栓症では、広範囲な脳虚血を生じ、脳梗塞の病型の中でも最も重篤で、後遺症や死亡率が高いことが特徴です。一方、原因となる心房細動は、安静時心電図で捉えることができます。早期診断が可能であれば、抗凝固療法により、血栓形成を防ぎ発症を大きく減らせます。したがって、心房細動の早期把握は、重篤な心原性脳塞栓症の予防に極めて重要です。
次のスライドをお願いします。スライドは、性・年齢階級別の心電図の有所見率を示します。健診データでは、心電図有所見率は加齢とともに増加し、男性で高率であることが分かります。
次のスライドをお願いします。このスライドは、要医療措置と心電図異常の健診施設ごとに判定が異なることを示す表ですが、いずれの施設でも、心血管疾患のリスク及び心房細動の所見は加齢とともに上昇し、男性で高い傾向が見られます。しかし、その一方、ほかの致死性不整脈、心原性失神、ペースメーカー調律などは、一部の年齢差があるものの、明確なトレンドは見られていません。
次のスライドをお願いします。このスライドは、2024年に発表された心電図異常と将来予測に関する論文からの引用です。左側の図では、心電図異常が将来の心血管疾患の発症を予測することが示されています。正常心電図の方と比較して、軽度の異常が1つ、2つ以上、そして重度異常の順に累積発症率が段階的に上昇しています。すなわち、安静時心電図に見られる僅かな波形異常が将来的な心不全、心筋梗塞、脳卒中、さらには全死亡に至るリスクを反映していることが分かっています。右の図は、初回検査で重度な異常がなかった場合でも、軽度の異常が多いほど、その後に重度な異常が生じやすいことを示しています。軽度の異常は様子見でよい所見ではなく、将来の重症化リスクを予測する重要なサインであると言えます。定期的な心電図により、症状が出る前の段階で異常をとらえ、早期発見、治療につなげる意義は大きいことを示しています。
次のスライドをお願いします。判定の標準化には、AI心電図の活用が期待されています。静岡市清水医師会及び東京医科歯科大学と協働し、AIとリモート技術を用いた「かくれ心房細動」の早期診断事業を実施しています。2023年7月までの中間報告では、40歳以上362名中11名に新規心房細動を検出し、従来の推定の約4名を大きく上回りました。AIと健診のデジタル化は、事業者の負担軽減、精度の標準化、受診者の利便性向上の両立に有用であることが示されます。
次のスライドをお願いします。結語です。長時間労働等の過重負荷により発症した脳・心臓疾患は、業務に起因する疾病として位置付けられています。安静時心電図は、心血管疾患・突然死・失神・心房細動による脳梗塞のリスクなどの主要リスクを早期に把握できる最も基本的、かつ、信頼性の高い検査です。脳・心臓疾患の発症及び労災請求は、40歳以降で急増しており、現行制度の継続運用の妥当性を裏付けます。一方で、不整脈や心原性突然死は40歳未満の労働者にも見られます。
心電図の軽度の異常であっても、将来的な重症化リスクや、潜在的リスクを推定でき、特に働き盛りの世代では、過重労働・交代勤務・睡眠不足などが高血圧や心房細動を介し、心血管イベントを誘発する可能性があるため、定期的な心電図評価は職域の一次予防の要です。
精度管理や判読の負担の軽減には、心電図データのデジタル化とAI解析の導入が有効です。AIによる異常波形の自動検出と、精度の標準化が進み、健診の質の向上、効率の向上が期待されます。以上です。御清聴ありがとうございました。
○髙田座長 ありがとうございました。ただいま塚田参考人から心電図検査について御説明を頂きました。ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見等ありましたら挙手をお願いします。まず会場からいかがですか。宮本構成員、お願いいたします。
○宮本構成員 御説明ありがとうございました。大変よく分かりました。質問というか、これは意見かもしれませんが、この心電図検査の結果が事業者にどう伝えるかという決まりが恐らくなくて、異常ありとか有所見とかだけが返ってきて、何が起こっているのか、産業医の立場ですがさっぱり分からないということがあります。これは恐らく胸部レントゲンも同じで、詳細な内容が全然分からないまま最終判断の部分だけ、あるいは所見内容があっても程度は不明で、そういう最終判断みたいなところだけが来ると、余り意味を感じなくなってしまうこともあって、これはどう活かせばいいのか悩むところもあるのです。何かそういう伝え方については、今は所見はコード化されて自動判定もあるものの、その先の活かせる伝え方に関して何か御意見はありますか。
○塚田参考人 ご指摘のコードはミネソタコードと言われるもので、いわゆる古典的な心電図の判読所見に基づいたものとして判定に用いられております。一般健診の結果が、結局、アウトカム評価されていないのが最大の制度上の課題で、これをどういうふうに利用すべきか、現在のところ明らかではありません。今後新しい知見と最新の技術を統合して、産業医の先生方、事業者、労働者にとっても分かりやすい管理の在り方を作成していかなければいけないと私たちも思っておりますし、それを実現していきたいと思っております。
○宮本構成員 ありがとうございました。
○髙田座長 ありがとうございます。オンラインで森構成員、お願いいたします。
○森構成員 私は研究班のほうで、心電図の疫学研究の文献調査を担当し、私自身も大変勉強になったことがあります。もともと安静時心電図で意味ある所見が見つかるのは希と、私も安静時心電図の実施について懐疑的に思っていた。文献調査で分かったことの1つは、当然のことながら、致死性不整脈につながるような、致死につながるような心電図所見が一定頻度である。しかし、そのような所見だけでは、毎年続けてやる必要があるのかという話にはならないと思いました。しかし、軽度の所見や非特異的な所見であっても、その数が多くなると、これが脳心血管疾患や全死亡のリスクになるというエビデンスが、NIPPOデータからかなり出されているということを確認しました。
心房細動もチャズスコアなどを使うと、本当に何も合併症がなければ治療の対象にならないということもありますので、結果的に心電図というのは単体で使わずに、血圧とかそれ以外の動脈硬化リスクと併せてしっかり事後措置、保健指導をやっていくという使い方が、労働者の高齢化ということもあり、特に重要ではないかということです。そうすれば、ほんの一部の人ではなくて、多くの人に有効になる可能性があるということを発見しました。ある意味、自分の無知も恥じたというでもあります。
実際の産業保健の現場で、先ほど宮本先生からどのように所見を伝えるのかという話がありましたが、軽度の所見をもってして、治療の必要のない所見の場合、どのような事後措置をしていくか、標準がまったくありません。この部分をもう少ししっかりガイドを出して、事後措置にうまく活用していかないと、せっかくの心電図の有効性が余り期待できないということになります。是非、そういったガイドを出していただきたい、または、これは産業保健と連携して作っていてもよいかと思います。これまでどおり安静時心電図を継続する以上は、より多くの人に有効に活用できるような努力を協力していただければと思いました。以上です。
○塚田参考人 ありがとうございます。先ほどもお伝えしたとおり、結局は心電図の所見が所見と文字でテキストで記載されているだけであったり、やはり、今後は波形自体をデジタル化しておいて、それがアウトカムにつなげていくという研究が必要だと思います。そうでないと、この心電図の所見は何だったのかということは、今の我々の段階ではエビデンスがないわけです。エビデンスがないからやらないほうがいいのかということではなく、そのエビデンスを構築して、新しい知見を集積して、フィードバックすることが非常に大切だと考えております。
○髙田座長 ありがとうございます。続きまして、増田構成員、お願いいたします。
○増田構成員 普段、嘱託産業医として活動している増田と申します。御説明ありがとうございました。改めて心電図検査の意義について再確認させていただけたかと思います。
2点コメントさせていただきます。スライドの11枚目に、JAMA Internal Medicineに掲載された論文のグラフが引用されておりますが、左のグラフは全対象者の解析結果で、もともとの出典の論文には、心血管疾患、リスク別の解析結果が載っていたかと思います。リスクの低い集団のみでの解析ですと、正常心電図、軽度異常の1つ、軽度異常2つ以上の分のCumulative incidence、ここでは有所見の累積かと思いますが、そちらは余り差がない結果となっておりました。心電図検査で、心疾患スクリーニングのみを目的とするのであればともかくとして、一般健康診断では血圧や血糖、医師の診察なども併せて総合的に判定するものだと思いますので、心電図検査の実施については、心血管疾患リスクが高リスクと思われる集団に対象を絞り込んだり、低リスク集団では検査の間隔を空けることも検討してよいのではないかと思いました。
もう一点は、そのように思った理由として、産業医として健診結果をチェックして、所見のある従業員に精密検査を指示しておりますが、心房細動を除いて、心電図異常を契機に重大な疾病が見付かったという経験がほとんどありません。大抵の場合、受診した医療機関で、「心配ないです」とか「わざわざ病院に来なくていいよ」とか言われましたという報告を受けることが多いです。恐らく、健診の判定や医療機関の担当医の判断の根拠は、現在の心疾患の有無になっていて、御発表いただいたような将来のリスクの視点に基づいていないからではないかと思います。人間ドックなどの判定と、労働安全衛生法に基づく一般健康診断、事後措置を伴う目的の健診の判定の意味、位置付けについての再定義、再確認が必要かと感じております。以上です。
○塚田参考人 ありがとうございます。最初のほうの御意見ですが、検査の間隔を空けるという御意見もありましたが、やはり、今、労災の長期間の過重業務の認定に向けた評価期間は発症前概ね6か月とされているところです。ですから、2年以上間が空いてしまうと、その前の評価が随分先になってしまうわけです。そのときに、直前の状態がどうだったのかということを、労災の判定をするに当たって参照するのがなかなか難しくなるのではないかと考えております。
また、少なくとも今の指導内容というのが、古典的な所見に基づいた、余り根拠のない指導内容となっているのは事実で、現場で産業医の先生方は非常にお困りだというのも十分理解しております。したがいまして、先ほどから繰り返しになりますが、アウトカムと一般健診の結果を結び付けたような研究を進めることによって、より良い指導内容ができるようにしたいとは考えております。
○髙田座長 増田構成員、いかがですか。
○増田構成員 1点だけ、労災認定の際に、過去半年の検査結果というお話がありましたが、心電図がそこまで重要視されているという、そういう運用実態にあるということですか。
○塚田参考人 私は労働保険審査会で労災の判定をしますが、診断が必ずしも健診結果に基づいてないこともありますので、この人の心疾患、死亡原因は何だったのかと振り返るときに、心電図がないと非常に困るわけです。やはり、心電図が毎年撮られていることによって、この人は心疾患で死亡したかどうかの判定にも使われると私は理解しております。
○増田構成員 それは一般健康診断の心電図ということで間違いないですか。
○塚田参考人 はい。
○増田構成員 承知いたしました。ありがとうございます。
○髙田座長 そうしましたら、立道構成員、お願いいたします。
○立道構成員 構成員の皆様方と意見が同じですが、現状での心電図の活用という部分ではうまく活用されていないという実態があって、先生おっしゃるように、エビデンスに基づいてガイドを出すということですが、どのぐらいの時間軸でそれができるのかということを教えていただきたいのです。
○塚田参考人 非常に難しいのですが、データがデジタル化されていれば、恐らく、そんなに時間は掛からないのではないかと考えております。現状、紙の心電図であったり、あるいはデータの活用が進んでいないですが、施設によってはデジタル化されているものもありますので、そういったデータを統合して速やかにやれば、そんなに時間が掛かるものではないと私は理解しております。
○髙田座長 立道構成員、お願いいたします。
○立道構成員 心電図が導入されて、もう30年近くたつわけで、データの蓄積という部分では十分にあると思いますので、これまで現場サイドで心電図の所見の活用ができていないという部分は事実ですので、なるべく早い時間軸でガイドを出していただきたいというのがお願いです。よろしくお願いいたします。
○塚田参考人 ありがとうございました。逆にお伺いしたいのは、どのぐらいの時間軸で出していただきたいという御要望はありますか。
○立道構成員 できれば2、3年以内にはお願いしたいと思います。
○塚田参考人 ありがとうございます。
○髙田座長 ありがとうございます。そのほかはいかがですか。会場からはよろしいですか。オンラインもそのほか御質問はないということで、よろしいですか。塚田先生のほうから何か付け足すことなどありますか。
○塚田参考人 やはり、一般健診のデータが利活用されていないのは非常に課題だと思います。心電図だけではなくて、血液検査の結果とか、それを統合して今後は労働者の健康管理にいかすということは非常に大切な問題で、先ほどの御指摘もありましたが、これは至急対応すべきものだと思いますので、先生方には是非お力添えを頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○髙田座長 ありがとうございました。それでは、心電図検査に関するヒアリングは以上で終了します。塚田参考人におかれましては、お忙しい中、ありがとうございました。
○塚田参考人 どうもありがとうございました。
○髙田座長 それでは、参考人が退席されるまでお待ちください。
(塚田参考人退席)
○髙田座長 お待たせしました。続きまして、喀痰検査につきまして、事務局から資料3の説明をお願いします。
○樋口産業保健支援室長 それでは、お手元の資料3を御覧ください。喀痰検査については、先ほど議論のあったエックス線と同様、結核の早期発見を目的に実施されているものです。資料にもありますように、2024年結核登録者情報調査年報で確認しますと、労働者以外の方も含めて、全国で約3,000人の方が新規陽性となっています。現在、喀痰検査については一般健康診断の定期健康診断、特定業務、海外派遣の労働者に対して健診が行われております。このうち医師が必要でないと認める場合は省略可能ということで、次のページに掲げる3つの基準がありますけれども、結核のおそれがない方などについては喀痰検査を省略することができるということになっております。
また、上のページに戻っていただいて、実際の実施状況です。資料の下のほうに簡単な表を付けております。受診者数約1,300万人ぐらいに対して喀痰検査を受けている方が約約15万人ということで、98%以上の方が喀痰検査を省略されていて、実施率は1.1%となっております。これからは事務局の提案ということになります。これら現場での医療の判断により省略されていること、さらに今の表にあるように、有所見率が約3,000ということで、検査実施者のうち有所見率が1.9%にとどまっている。加えて先ほどエックス線のところでも議論がありましたが、エックス線により結核が疑われる方で、そもそも喀痰検査ができる程度に自覚症状なり痰が出ているという労働者については、義務として健診機関で喀痰検査を実施させるのではなく、速やかに医療機関を受診いただいて、必要な措置をしていただくことを推奨し、健診項目から喀痰検査を外してはどうかということで、事務局から提案させていただきたいと思います。御意見のほど、よろしくお願いします。
○髙田座長 御説明、ありがとうございました。ただいまの喀痰検査の件について、御質問や御意見のある構成員は挙手をお願いいたします。立石構成員、お願いいたします。
○立石構成員 産業医科大学の立石です。まず喀痰の検査ですが、採取がものすごく困難を極めるという点があります。たばこを吸わない者にとっては、痰を出すというのは非常に難しいものです。病院等においてはネフライザーといってわざわざ加湿して、やっと採れるか採れないかぐらいの状況で、喀痰検査に関してはまず採取が非常に大変だという問題があります。それで採取したものを検診の所に持ってきて検査をするという大変さがあります。
そして今、現実問題として検査そのものが実施されていないということがある。本件に関して事前に幾つかの機関にヒアリングをしたところ、喀痰検査をやっている所でも自分たちの機関が、がんの検診の喀痰検査としてやっているのか、結核の健診としてやっているのかが定かでないという申出が多かったのです。また、フォロー体制等も特に確立していないという所も比較的多く見られたということで、実態として結核を見付けるための技術として機能していないという点がありました。仮にがん検診の一部のような形で、喀痰検査を見たという点に関しても、2025年の肺がんのガイドラインにおいては、喀痰検査は推奨しないという形で改定されているというところもあります。このような状況を踏まえて、推奨しないということは検査の利益よりも不利益のほうが大きいということが記載されているというところがありました。このような幾つかの観点から振り返ってみて、事務局から御提案のあった廃止ということに関しては、私は妥当ではないかと感じております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。そのほかに。漆原構成員、お願いいたします。
○漆原構成員 連合の漆原です。確かにデータとしては事実上、98%以上検査が実施されていないというのは、そうだとは思うのです。逆に裏返せば、僅か1.1%ではあるけれど、喀痰検査が実施されているということになると思います。私には、実施された理由は分かりませんが、医師が省略しなかったのか、あるいは年齢や喫煙など何等かの要因の場合、検査をする仕組みだったのかもしれません。新たな検査を一般健診に入れるときと、逆に除外するときの「要件が全く同じかどうか」というのも気になりますが、その1.1%の内訳については理由もさることながら、例えばどのような業種でどのような職種、年齢層なのか、もし特徴が分かるのであれば、その資料なりデータをお示しいただければと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。事務局からお願いいたします。
○樋口産業保健支援室長 今、手元にあるのは業種別のデータですけれども、絶対数としては製造業、保健衛生業、その他業種が多くなっております。ただ労働者数に対しての実施率では、建設業や公官庁が多いということで、特に特定の業種に多いということではないという傾向になっております。
先ほど立石先生からお話されたことの補足ですけれども、どういう方が対象になっているかということで、事務局でも幾つか先生にお伺いしました。先ほど立石先生がおっしゃったように、やはり肺がん検診の細胞診をやっているということで、逆に言うと結核の検査目的での喀痰検査は余りやったことがないとか、経験がないという方がほとんどです。この1.1%というのは、業種別には今お話したとおりですけれども、内容的には細胞診、肺がん目的の検査がほとんどではないかと考えております。ただ、この辺りは現場の実態の話でありますので、もし構成員の先生からも、現場ではどうだということをお話いただければ参考になるかと思います。よろしくお願いしたいと思います。いずれにしても先ほどお話したように、エックス線で結核が疑われた状態があるのであれば、そこで喀痰検査ということになるのですけれども、そういう状況であれば健診機関で喀痰検査をするのではなく、医療機関につなげていくことをより優先したほうが、感染拡大という面ではいいのかなというように事務局としては考えているところです。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。立石構成員、お願いいたします。
○立石構成員 先ほど聞いてきた中で、やっていない機関が多い中でやっていることについて、もし良かったらヒアリングさせていただけませんかと、幾つかの機関にお願いしたところ、聞いていただけたケースが幾つかありました。それによると今おっしゃったとおり、がん検診として誤解してやっているような所があったり、法律に書いてあるからやっているだけですという御意見もあって、純粋にそのまま法律を読んでやっていたという所でした。ただ、一方で検査をしていない所が圧倒的に多く、私の手元で聞いた限りでは、1.1%よりもうちょっと少ないぐらいの割合という状況でした。以上、追加の情報でした。
○髙田座長 ありがとうございます。森構成員、いかがでしょうか。
○森構成員 残念ながら実際に結核目的で喀痰検査をやって、どのような効果が出たのか本質的なデータはないだろうと思っています。多くの産業医の意見交換の中でも、当然のことながら胸部エックス線検査で病変があれば、一般健診の一部として喀痰検査をするのではなく、やはり健診の外で医療機関で精密検査をやるのが一般的で、意見交換の中ではほとんどというか、全ての産業医がそういう意見を持っていました。
私自身も、40年ほど産業医をやっています。正直、胸部レントゲン検査で異常があって、一般健康診断の中で喀痰検査の指示をした経験は全くない。逆に2,892人の有所見者、14万8,623人が検査対象という数字自体が、こんなにあるのかと驚いた次第です。恐らく、もともとの目的とは違う理由で実施されたものではないかと推察しています。統計データではありませんけれども、現場実感としてはそのような感じです。以上です。
○髙田座長 ありがとうございます。亀澤構成員、お願いいたします。
○亀澤構成員 検討会に先立ち、全衛連の会員機関の一部に実態を尋ねました。その結果、結核に関して喀痰検査を実施した例が全くないわけではなく、私が幾つか確認した施設の中で1施設は、数は少ないのですけれども、結核の喀痰検査を行っているという報告がありました。あとの所は結核に関する喀痰検査は全くやってないという回答をした所もありますし、先ほど事務局からもお話があったように、結核を疑う結果の場合は、健診機関で詳細な検査を行うのではなく、専門医に検査を依頼しているという実態もありました。多くは肺がんを目的とした喀痰検査を実施しているということで、数は圧倒的にというか、ほぼ100%、肺がんに関する喀痰検査であるという回答でした。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。そのほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは喀痰検査については、ここまでの議論とさせていただきます。
続いて残りの資料について、事務局から御説明をお願いいたします。
○樋口産業保健支援室長 最後に2点の報告と、1点の確認をお願いしたいと思います。まず1点目の報告ということで、参考資料2を見ていただければと思います。「C型肝炎検査を含むウイルス肝炎検査の追加」ということで御要望が出ておりました。こちらについて日本肝臓学会等様からコメントを頂いておりますので、それを読み上げさせていただきたいと思います。
本日は御説明の機会を賜り、ありがとうございます。私ども両学会は、職域におけるウイルス性肝炎対策の推進を目的として、意見を申し上げます。
近年、治療薬の進歩により、ウイルス性肝炎は早期発見と治療によって治癒が期待できる疾患となりました。自治体では検査体制が整いつつありますが、職域では検査機会が十分でないことから、更なる対策が求められています。
両学会では、「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」の開催に当たり、ウイルス肝炎検査の追加に係る要望書を提出しましたが、その趣旨は、自治体だけではなく、職域においても肝炎検査を確実に実施いただくことにより、より多くの方々の将来の肝がん発生を減らしたいとするものです。
他方、要望書にあるとおり、ウイルス性肝炎はその歴史的背景から、個人情報の取扱いは極めて慎重であるべきであり、労働安全衛生法の枠組みにはなじまないものと承知しています。
このため、両学会としては、厚生労働省において現在実施されている、事業者等に対する協力要請の取組等を通じて、職域でのウイルス肝炎検査の更なる推進を図っていただきたいと切に願うところです。
したがいまして、本検討会でウイルス肝炎検査の追加を検討いただく必要はありませんが、検討会の構成員の皆様におかれましては、職場におけるウイルス肝炎検査の推進によせる当学会の思いに対し、一層の御理解、御協力を賜りますようお願い申し上げるとともに、今後も職域における肝炎ウイルス検査の推進と国民の肝疾患予防に向け、学会として協力を続けてまいります。
御理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
以上のようなコメントを頂いており、この度ヒアリングを行わないこととなったことを御報告させていただきます。
2点目の報告です。資料4をお手元に御用意いただければと思います。肝炎検査については資料にありますように、労働安全衛生規則第43条第7号においてGOT、GPT、γ-GTPという名前で肝酵素の名前を指定し、「肝機能検査」ということで指定させていただいております。これらの名称に関しては資料の中ほどにありますように、検査に関する国際基準ということで、IFCCでは今GOT、GPT、γ-GTPという名前ではなく、AST、ALT、γ-GTという名前で使われています。
既に、下のほうにある他の法令は、新しい国際基準の名前で酵素名や肝炎検査を指定しているところです。今回の議論等もありますけれども、このタイミングで労働安全衛生法の省令のほうも、国際基準の名前に変更させていただきたいということです。もちろん名称は国際基準に合わせますが、内容が変わるものではありません。現場のほうで古い名称等を使っていただいて、お客さんとの関係で分かりやすい名前を使っていただくことを止めるものではありませんが、省令としてより分かりやすく名称で特定するという観点から、新しい国際名称を使わせていただきたいということで、そういった変更を検討していることを御報告させていただきます。こちらについては労働安全衛生規則だけではなく、特化則、有機則などでも同様の名称を使っておりますので、そちらについても同様の改正を今考えているところです。
最後が確認事項です。参考資料6を開いていただければと思います。もともとこの検討会のきっかけは、次のページにあるように規制改革推進会議のほうで、後ろに出ている各検査について御提案があり、今回、エビデンスに基づいた検討をこの検討会でやらせていただいているところです。こちらに挙げている胸部エックス線、喀痰検査、心電図、骨粗鬆症、慢性腎臓疾患等については、水曜日と本日に御議論させていただきました。それ以外にも空腹時血糖、血清トリグリセリド、胃がん、肺がん、血中脂質、血圧、HbA1c、がん検査等がここに挙げられています。これらの項目について広く学会にお声掛けさせていただいたところ、御要望等のお声はなかったわけですけれども、皆様におかれましては、これらの項目について改めて、また、ここに掲げられている項目以外のものについても、追加でこういったエビデンスがあるとか、議論をしてほしいとか、これは注目すべきデータがあるというのがありましたら、御意見も含めて御発言を頂ければと思います。これは確認ということでお願いします。
○髙田座長 ありがとうございます。事務局からウイルス肝炎検査の件と、肝機能検査の件について報告がありました。それから、規制改革推進会議の件についても御説明がありました。先日と本日議論をした健診項目以外で、御意見がないか確認させていただきたいと思います。今の点について何か御質問、御意見等はありますか。及川構成員、お願いいたします。
○及川構成員 前者の2つの御報告についてです。最初に、ウイルス肝炎の被害者のお声を直接聞く場がありましたけれども、今の御報告のとおり、しっかり理解をいたしました。大変偏見や人権の問題があるというお声も聞いておりますので、今の御報告で結構だと思います。
あと、国際基準についてです。全くこのとおりで、グローバルにそろえることは重要だと思います。他方でγ-GTPなど、かなり人口に膾炙した言葉があります。そのうち慣れるとは思いますが、是非現場部門では併記するとか、なじむまで、同じことですよというしっかりした広報についての御指導を頂きたいと思います。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。事務局、いかがでしょうか。
○樋口産業保健支援室長 ありがとうございます。2つ目の省令の名称等については、先ほどもお話したとおり、あくまでも省令上は新しい名前にさせていただきますけれども、現場で分かりやすい名前でやることについて、特段それを妨げるものではありません。そこは健診機関と御相談しながら、円滑な進行や現場が混乱しないような形で、いろいろな指導をさせていただきたいと考えております。
○髙田座長 よろしいでしょうか。では岡村構成員、お願いいたします。
○岡村構成員 ここに挙げている項目というのは、恐らく労安法の健診ではなく、多分、一般的な健診についての提案というように私は理解しております。そのときに、例えば血糖や脂質、血圧については別途、特定健診のほうの検討会でも十分検討されているということと、それぞれの専門学会で山のようなエビデンスがあるので、一般的な健康管理、スクリーリング、ハイリスク者を見つける等については、特に特定健診の項目については、もうある程度確立しているものであろうと、個人的には考えております。以上です。
○髙田座長 ありがとうございました。そのほかに立道構成員、お願いいたします。
○立道構成員 発言の機会をありがとうございます。これ以外の項目についての提案というか、御検討いただきたい点があります。肝機能異常については今、アルコールを含め、脂肪肝による肝線維化状態というのが、心血管イベント等に関係する独立した危険因子とのことで重要な生活習慣病の病態として、世界的にも注目されています。また、脂肪肝からの肝がんについても増加しております。それを受けて肝臓学会は、ALT30を超えるとかかりつけ医に紹介するという奈良宣言というのを出しています。基本的に肝線維化の状態を知るには、血球検査でヘモグロビン等々を測られるときに、一緒に測定されている血小板値が、線維化の状態を知る上で非常に重要な項目として臨床ではFib-4indexとして活用されています。血小板値が同時に測定されているのですが、法定項目ではないということで捨てられているという実態があります。そこで、産業医が提案し事業者が了解した場合においては、血小板値を活用できる枠組みと言いますか、現時点のクレアチニンのような形で、医師が必要とされるときに実施すべき項目という位置付けで、検討いただくことができないかという御提案です。
○髙田座長 ありがとうございます。事務局、いかがでしょうか。
○樋口産業保健支援室長 御提案、ありがとうございました。今回はエビデンスベースでの議論ということになりますので、エビデンスがあるかどうかも含めて個別相談をして、また御提案をさせていただければと思います。一旦預からせていただきます。
○髙田座長 岡村構成員、お願いいたします。
○岡村構成員 今の御意見は非常に重要ですが、1点だけ。特定健診のときも若干議論したのですが、すぐに検査、オートアナライザーにポンと入れられるのだったら、余り問題ないのですが、運んでいる間に血球や血小板は壊れてしまうのです。例えば、どこかの公民館で健診をして、大分置いて運んでいくということになると、これなどは昭和の時代からそういう問題があるのです。だから今までヘモグロビンしか入ってないという状況があるのです。これは検査の先生に聞かないと分からないところですが、運んで大丈夫かということと、ある程度入れるとどのような場所でもできないといけないので、そこだけがネックになるのかなというのが、単に純粋に技術的な懸念点です。
○髙田座長 ありがとうございます。宮本構成員、お願いいたします。今と違う内容でも構いません。
○宮本構成員 ありがとうございます。検査の省略のことです。先ほどの喀痰のほうの資料3の2ページにあったのです。安衛則の第44条の健診の省略について、ここに書かれているのです。特定業務従事者は第44条の代わりに、第45条を年2回やることになっています。年2回ですから、省略の規定の追加があり、この一覧の一番下、血液や心電図などは年に1回でいいという形に省略規定が追加されています。恐らく単に技術的に漏れてしまっただけだと思うのですが、腹囲はメタボの特定健診のほうにデータを提供するということもあって、同時に血液検査がないと意味がないというのは分かっていることだと思うのです。それが年に2回測れということになってしまっているので、年1回でいいという省略に入ってないというのがあります。しかし普通は、意味がないからやっていない所のほうが大多数だと思うのですが、ちゃんと読むと意味はなくても2回やらなければいけないようにも読めてしまうのです。ここはちゃんと適正化して、第45条のほうは腹囲は表にある内容に加えて年1回でいいと。要するに、血液検査と同じような扱いで省略できるというように付け足していただく必要があるのではないかと思っておりますので、御検討いただければと思います。
○髙田座長 ありがとうございます。事務局、いかがでしょうか。
○樋口産業保健支援室長 回答も一緒になりますが、それも含めてエビデンスがあるかないかというところで、また御提案や検討をさせていただきたいと思います。預からせていただきます。
○髙田座長 そのほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。様々な御意見を頂戴いたしまして、ありがとうございました。事務局から確認のあった最後の点については、引き続き健診項目の見直しに係る新たなエビデンス等に係る御提案等を踏まえて、事務局のほうで検討をお願いしたいと思います。また、先日からのヒアリングや本日いただいた委員からの意見も踏まえて、次回の検討会においては報告書のとりまとめ(案)を御提案させていただきたいと思います。事務局のほうで準備をよろしくお願いいたします。
本日の議題は以上で終了となります。それでは事務局にお返しいたします。
○藤井産業保健室長補佐 次回の検討会の日程は、事務局から改めて御連絡差し上げたく思います。以上です。
○髙田座長 それでは、本日はこれにて閉会といたします。お忙しい中、本当にありがとうございました。

