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第6回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」 議事録
日時
令和7年11月21日(金)13:30~15:00
場所
東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎第5号館
厚生労働省 9階 省議室
厚生労働省 9階 省議室
議題
1.高額療養費制度について
議事
- 議事内容
○佐藤保険課長 それでは、定刻より若干早いですけれども、皆様おそろいということでございますので、ただいまより第6回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、御多忙のところ御参加を賜りまして誠にありがとうございます。
本日の会議は、傍聴希望者向けにYouTubeにおいてライブ配信を行っております。アーカイブ配信はいたしません。あらかじめ御了承賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
まず、本日の委員の出欠状況について申し上げます。
本日は、菊池委員、島委員から御欠席との連絡をいただいております。
また、北川委員、袖井委員におかれましてはオンラインでの御出席となっております。
また、原委員の代理といたしまして池田参考人に、林委員の代理といたしまして岩城参考人にオンラインで御出席をいただいております。
参考人の御出席につきまして委員会の御承認を賜れればと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
(異議なしの意思表示あり)
○佐藤保険課長 ありがとうございます。
なお、本日も、健康・生活衛生局がん・疾病対策課及び難病対策課もオンラインで参加しておりますことを併せて御報告申し上げます。
会議冒頭のカメラの頭撮りは、ここまでとさせていただきます。カメラの方は、御退出をお願いいたします。
(カメラ退室)
○佐藤保険課長 続きまして、お手元の資料の確認をさせていただきます。
本日の資料でございますけれども、資料1といたしまして「高額療養費制度について」、それから天野委員から御提出をいただきました資料、大黒委員から御提出をいただきました資料、以上3点でございます。過不足等ございましたら、事務局にお申しつけをいただければと存じます。
それでは、以後の議事運営につきましては、田辺委員長にお願いをいたします。
○田辺委員長 それでは、早速議事に入ってまいりたいと思います。
本日は、「高額療養費制度について」を議題といたします。
まず、事務局から資料の説明をお願いいたします。では、よろしくお願いします。
○佐藤保険課長 保険課長でございます。
それでは、お手元のタブレットの資料1をお開きいただければと存じます。表紙に「高額療養費制度について」ということでございます。
まず、右下の2ページ目以降でございます。これは前回のこの専門委員会でも御報告申し上げておりますけれども、この専門委員会の議論の状況は、この親元といいましょうか、上の審議会でもある医療保険部会のほうにも適宜御報告し、またこの医療保険部会における議論の状況を、この専門委員会のほうにも御報告するという形で、インタラクティブな御報告をしておりますので、若干その辺りは丁寧に御説明させていただければと存じております。
まず、右下の2ページ目は医療保険制度改革に向けた議論のスケジュールということで、これは前回の専門委員会でも御紹介いたしましたけれども、医療保険部会において医療保険制度全体の議論を今、進めていただいているところでございます。今年の冬に向けて議論を深めているという状況でございます。
1ページ飛ばしまして、右下の4ページ目でございます。医療保険部会における議論の状況ということでございまして、これは本日時点でございますけれども、前回、この専門委員会を開催させていただきましたのが10月22日でございますので、ちょうどこのページで申し上げますと、右側半分が前回の専門委員会後の医療保険部会において、こういう議論を行っておりますという御紹介でございます。
10月23日以降でございますけれども、医療保険制度における出産に関する支援の強化とか、世代内、世代間の公平の更なる確保による全世代型社会保障の構築の推進でありますとか、診療報酬改定の基本方針の話、また薬剤給付の在り方、昨日も医療保険部会を開催いたしましたけれども、OTC類似薬の保険給付の在り方について、患者団体の皆様、今日も御出席いただいている委員の方も含めてでございますが、ヒアリングを行わせていただいております。また、入院時食事療養費・生活療養費といった点についても議論を深めているという状況でございます。
右下ページ、若干飛ばしまして7ページ目以降でございます。これは、前回10月22日にこの専門委員会で論点として事務局のほうからお示しした資料でございますけれども、この論点の資料を用いまして、右肩に日付が書いてございますけれども、11月6日の社会保障審議会医療保険部会に、専門委員会における議論の状況ということで御報告申し上げました。
それから、右下で申し上げますと、8ページ目、9ページ目、10ページ目、11ページ目と4ページにわたってでございますけれども、こういう議論がありました。もちろん、この専門委員会において、いろいろな形で多岐にわたる論点を御指摘いただいておりますけれども、それを一つ一つ御紹介する形で医療保険部会のほうにも御報告申し上げるということを行ってございます。
若干ページは先に進んでいただきまして、12ページ目でございます。12ページ目、13ページ目には、11月6日、医療保険部会に、この専門委員会の議論の状況を御報告申し上げた際に、医療保険部会でどういう意見があったのか、議論があったのかということを事務局のほうでまとめた資料でございます。
○北川委員 すみません。音声が全然聞こえないのですが。
○佐藤保険課長 事務局でございます。
音声、いかがでございますでしょうか。
○北川委員 佐藤課長の声は聞こえるのですが、今どなたかしゃべられていましたか。
○佐藤保険課長 今、事務局のほうでしゃべっておりますが、若干画像の乱れがあったものですから、一旦説明を止めさせていただきまして復旧を待っているところでございます。
○北川委員 そういうことですか。分かりました。
○佐藤保険課長 大変失礼いたしました。
○北川委員 こちらには資料の画像がちゃんと映っているのですけれども。
○佐藤保険課長 承知いたしました。それでは、説明のほうを続けさせていただきます。大変失礼いたしました。
○北川委員 先ほどから全然乱れていなかったので。
○佐藤保険課長 申し訳ございません。大変失礼いたしました。
それでは、右下の12ページ目、13ページ目でございますけれども、医療保険部会における主な御意見ということでございます。
これも多岐にわたる御意見を頂戴いたしておりますけれども、例えば12ページ目で申し上げますと、一番上の○に、この制度の持続可能性、これが将来にわたってセーフティーネットとして機能するように、負担の在り方、また仕組みも含めた必要な見直しを行うべきではないか。また、給付と負担のバランス、世代内・世代間のバランスを踏まえた外来特例の見直しが必要ではないか。また、所得区分については、低所得者に配慮した設定を考えるべきではないかという御意見であったり、あるいは給付と負担のバランスや、公費・保険料・自己負担といった財源のバランスについても検討を深めていくべきではないかといった御意見がありました。
また、医療保険制度の改革全体を進めていくことが不可欠である。これはこの専門委員会でも、また医療保険部会においても共通の認識であろうかと思いますけれども、そういう中において、高額療養費制度についても一定の見直しが必要であるものの、具体的にどこまで見直すのかについては、他の項目も含めた改革全体の中で検討していくべきではないかといった御意見もございました。
また、例えば12ページの一番下でございますけれども、様々な患者に対して過度な自己負担が生じないような、また受診控えといったものがないような丁寧な議論が必要ではないかという御議論もありました。
続きまして、右下の13ページ目でございますけれども、例えば一番上の○であれば、格差の拡大が生じているという点も考慮しながら、財源の在り方について議論が必要ではないか。
また、国民一般への周知・広報等に関する御意見もございましたし、いわゆる低価値医療・無価値医療といった御指摘もございました。
また、例えば外来特例に関しても、外来特例の見直しや所得区分の細分化なども1つの方策であり、また、制度の悪用を防ぐような制度設計も求められるのではないかという御意見であったり、他方で、外来特例に関しては、高齢者で実際恩恵を受けておられる方も多いので、負担の在り方については工夫が必要ではないだろうかという御指摘もございました。
そういう医療保険部会における議論、ただいま御紹介したわけでございますけれども、これら、これまでの本専門委員会における議論も踏まえて、本日御議論いただきたい事項ということで、右下14ページでございますけれども、事務局のほうで論点を若干整理させていただいてございます。
○が2つございます。上のほうの○でございますけれども、これまで高齢化の進展あるいは医療の高度化等により増大する医療費への対応でございますとか、年齢にかかわらない負担能力に応じた負担。また、セーフティーネット機能としての高額療養費制度の在り方。この3つの論点を中心に御議論を深めていただいたところでございますけれども、今日もまたデータを御用意いたしました。後ほど御紹介申し上げますけれども、それらを踏まえて、さらに以下の点について御議論を深めていただければと考えてございます。
黒いポツで3つ記載してございます。
まず、1つ目のポツでございますけれども、前回の議論におきまして、年齢ではなく能力に応じた全世代の支え合いの観点で考えれば、給付と負担のバランス、あるいは世代間のバランスを踏まえて、高齢者の外来特例については見直しが必要ではないだろうかという御意見が多かったわけでございますが、その一方で、外来特例に関しては、高齢者になると御病気になる確率が高くなるという特性も踏まえて考える必要があるのではないだろうかという御意見もございました。高齢者の受診動向や実際の医療費負担のケースといったデータも踏まえながら、さらにこの点について議論を深めていただければと考えております。これが1点目でございます。
それから、2点目、黒い2つ目のポツでございますけれども、前回の議論において、高額療養費制度の在り方を検討する際に、長期に継続して制度を利用される場合と、1か月のみ制度を利用されるなど短期の制度利用の場合で分けて考えるべきではないだろうかという御意見がございました。
前回、複数の医療費負担の事例をお示しいたしましたけれども、継続して制度を利用されておられる方と、短期で利用される方の自己負担の状況もお示しいたしました。こういう事例を踏まえつつ、医療保険制度全体の中で高額療養費制度の在り方について検討していくという大前提に立った上で、仮に自己負担限度額を見直すとした場合、どういった切り口で見直しを行っていくことが考えられるかという点について議論を深めていただければと考えてございます。
それから、3点目、その他ということでございまして、これまでの議論を踏まえて、さらに議論を深めていくべき点があれば、その点についてもお願いできればと考えてございます。
15ページ目以降、資料を御用意しておりますけれども、新しい資料を中心に御説明申し上げたいと考えております。
右下の16ページ目でございます。医療費の1000万円以上のレセプトの件数の年次推移ということでございまして、これは医療保険制度全体ということでございまして、被用者・国保等々を含めました全体の数字でございます。青い部分が1000万から1500万、緑の部分が1500万から2000万、黄色が2000万から3000万で、赤が3000万円以上という形で、2018年から2024年にかけて、どういう形で件数が増えているかということについて整理してございます。
ページをまた若干飛ばしまして、18ページ目でございます。高額療養費制度における自己負担限度額と家計の状況ということでございまして、現行の高額療養費制度における自己負担と家計の総収入から、社会保険料等の非消費支出と生活費を控除した額を比較しているものでございます。グレーの縦の棒グラフが家計の総収入から非消費支出・生活費を控除した金額であって、赤の線がございます。実線がいわゆる最初の1年間の患者さんを想定していただければと思いますけれども、自己負担限度額(定額部分)×3か月+多数回該当×9か月の線、点線もございます。これは、例えば前年度から多数回該当に該当しているようなケースはこういうケースだろうと思いますけれども、多数回該当掛ける12とした数字が点線でございます。
それから、右下の19ページ目、外来特例についてということで、こちらは外来特例の経緯を改めて整理してございます。平成14年に外来の月額上限額を廃止して定率1割負担の徹底を行った際に、高齢者は外来の受診頻度が若い方に比べて高いということ。また、制度改正、定率1割負担を導入してから間もないということで、こういう仕組みを導入したということでございまして、一般の所得区分の方につきましては、平成29年、30年のときに、一旦、それまで1万2000円だった上限額を1万8000円に引き上げるという改正を行ってございます。他方で、低所得者の方については、制度導入以降、見直しを行っていないという状況でございます。
若干飛ばしまして、22ページ目でございます。高齢者の医療利用の推移ということで、健康寿命の推移、高齢者1人当たりの医療費水準の推移、1人当たりの外来受診日数、受診率の推移について、外来特例創設以降の数字をグラフで整理しているものでございます。
それから、24ページでございますけれども、年齢階級別の傷病分類別受療率、平均傷病数ということでございまして、これは当然、お年を召されれば受療率は上昇していくわけでございますし、年齢が高くなるにつれて平均の傷病数についても増加していくというデータでございます。
それから、25ページ目以降でございます。これは前回の専門委員会でも似たような事例をお出ししておりますけれども、今回は外来特例を利用されておられる方のデータを抽出して、これも代表的な例ということではありませんで、こういう患者さんがいらっしゃいましたという意味での事例を幾つか集めているというものでございます。これに関しては、データのソースといいましょうか、出所が協会けんぽのデータを用いております。ですので、外来特例をお使いになっている方で70歳以上でありますけれども、70歳以上で、かつ協会けんぽに加入されておられる方ということになりますので、データの制約がある点については、あらかじめ御了承、御理解いただければと思っておりますけれども、その前提で御覧いただければと思っております。
例えば、25ページ目で申し上げますと、70代の会社員で男性・標報24万円の方で、この方の場合には総医療費が76万円で、高額療養費制度によって自己負担が12.4万円に抑えられているというケースでございます。
次のページ、26ページ目でございますけれども、この方については、例えば70代・標報19万円の男性の方で、総医療費約100万円の方でありますが、高額療養費制度によって自己負担14.4万円となっている。この方の場合には、5月から年間上限に該当しているという方でございます。
27ページ以降も同様に、例えば27ページであれば女性で標報10.4万円の方で、この方の場合には8月から3月まで毎月、外来特例の上限まで自己負担を支払っておられるという方でございました。ですので、4月以降、年間上限に該当するという方でございます。
こういう形で、28ページ目、29ページ目も同様でございますけれども、こういう方がいらっしゃいましたということで事例としてお示ししているというものでございます。
30ページ目以降は参考資料でございますので、時間の関係もございますので、事務局からの説明は割愛させていただきます。
以上でございます。
○田邊委員長 御説明ありがとうございました。
それでは、資料を御提出いただいておりますので、最初に天野委員、続きまして大黒委員のほうから御発言をお願いいたします。
では、天野委員、よろしくお願いします。
○天野委員 ありがとうございます。
私が提出している資料を基に説明させていただきます。テーマは「高額療養費と破滅的医療支出について」ということで、本資料は東京大学大学院薬学系研究科医療政策・公衆衛生学特任准教授の五十嵐中先生の御協力により提出する資料となります。五十嵐先生の御協力に心より感謝申し上げます。
表紙をめくっていただいて、2ページ目になります。このデータについてですが、いわゆる商用レセプトデータベースを用いた自己負担額と破滅的医療費支出の関係ということになります。破滅的医療費支出は、以前から何度か言及しておりますとおり、世界保健機関(WHO)で定義している医療費の支出割合が一定程度を超えた場合、いわゆる破滅的医療費支出に該当することになっているわけですが、今回のデータは日本システム技術株式会社のレセプトデータ(健保由来、患者の実自己負担額の記載あり)のデータを用いて高額療養費利用者のデータを抽出し、また、医療費(及び自己負担額)のデータと、所得区分のデータから「破滅的医療費支出」の有無を区分別・疾患別に推計しているデータとなります。
ただ、組合健保のデータでございますので、若干高所得あるいは健康な人に偏る可能性があることには留意が必要かと存じます。
ページをめくっていただいて、3ページ目です。そもそも先ほど申し上げたように、破滅的医療費支出は、医療費の支出が支払能力の40%を超える場合というふうに一般的に定義されていまして、例えばこのグラフで見ますと、黄色の部分が医療費支払能力に当たる部分でございまして、ピンクの部分が生活費に当たる部分、緑の部分が税金・保険料等に当たる部分ということになっておりますので、それ以外の部分を医療費支払能力として定義しているということになります。
ページをめくっていただいて、4ページ目になります。データベースの中の高額療養費利用者の状況ということになってまいります。N数全体としては15万1931例ございますが、区分アからオまで、この表にあるような分布となっているところでございます。
ページめくっていただいて、5ページです。対象疾患につきましては、抽出対象となった疾患を持っているN数が7万8038でして、内訳は血液腫瘍、固形がん、循環器系疾患、糖尿病・腎疾患、結合組織疾患となっております。
ページをめくっていただきまして、6ページになります。疾患別の医療費・高額療養費の給付・自己負担額で見ますと、この中では血液腫瘍が突出して多いということになるかと思います。
ページをめくっていただいて、7ページです。こちらが破滅的医療費支出にどれだけの方が該当しているのかを機械的に算出しているわけですが、まず、全体で見ますと、区分エの方が8.85%、区分オの37.81%の方が、現状の高額療養費制度でも該当しているということになるかと思います。
ページをめくっていただいて、8ページです。抽出対象疾患がある場合につきましては、区分エが12.28%、区分オが46.37%になってきます。
ページをめくって、9ページになります。こちら、そのうち固形がん、Nが2万7957例に関して見ますと、区分エの患者さんが17.45%、区分オの患者さんの41.76%が該当していることになります。
ページをめくって、10ページ、血液がんになりますと、固形がんよりも若干割合が増えまして、区分エにおいて該当している方が31.39%、区分オにおいて該当している方が44.44%になります。
ページをめくって、11ページ、循環器系疾患になりますと、区分エにつきましては11.85%、区分オについては58.54%の方が該当していることになります。
ページめくって、12ページになりますが、糖尿病・腎疾患の患者さんにつきましては、区分エに該当する方が18.32%、区分オに該当する方が53.45%となってきます。
最後は、筋・結合組織疾患の患者さんになりますが、区分エで該当する方が20.42%、区分オで該当する方が63.75%となっております。
最後に14ページ、このデータに関する留意点でございます。改めてとなりますが、このデータは現物給付のケースを抽出しているため、現金給付のケースは含まれていないことに御留意いただければと思います。
また、組合健保のデータを基にしているため、データに偏りがある可能性がございます。
また、所得区分内での標準報酬の分布は健保組合加入者全体の数値で仮定しているため、実際の制度利用者の分布とは異なる可能性があることにも留意が必要かと思います。
このように様々な限界があるデータではございますが、特に低所得の方を中心に、既に破滅的医療費支出に該当している方々が一定程度いらっしゃるということが想像できるかと考えます。
私からは以上でございます。
○田邊委員長 ありがとうございました。
それでは、大黒委員、御発言をお願いいたします。
○大黒委員 本日はお時間をいただき、ありがとうございます。
提出資料2を御覧いただければと思います。日本難病・疾病団体協議会が協力して特定非営利活動法人ASridさんが行った「患者当事者・家族視点からみた高額療養費に関するアンケートの結果」について報告いたします。
次のページ、お願いします。調査の目的は、難病の患者当事者・家族の視点から、高額療養費制度の利用状況、上限引上げの影響として想定されることなどを明らかにすることで、対象者は、難病の患者・家族(指定難病・小児慢性特定疾病かは不問)となっています。
次をお願いいたします。回答者は322名、内訳は当事者が251名、家族が70名です。
年齢としては、平均で50歳程度、その6割ぐらいが指定難病の医療費助成を受けている。あるいは、子供さんの場合は小児慢性特定疾病の医療費助成を65%ぐらい受給しているというデータです。また、様々な疾患の領域から御回答いただいているということを載せています。
次のページです。過去1年間で高額療養費制度を利用した方々は36%で、この制度利用者の70%近くの方が多数回該当となっています。難病の方は医療費助成があるからというふうに言われることもありますが、高額療養費を利用している方々も多くおられることが今回の調査で明らかになっています。
次のページです。また、過去1年間ではなくて、今までに一度でも高額療養費制度を使ったことがある方は74.5%となっており、難病の領域でも多くの方々がこの制度を大切に利用しているという結果になっております。
次のページです。それでは、難病患者が高額療養費制度をどういうタイミングで利用しているのかについて、5つのパターンに分けて御説明させていただきます。
まず、1つ目は、指定難病と確定診断される前については、医療費助成の制度は使えませんので、高額療養費制度を利用されている方がおられます。
2番目は、指定難病ではないと確定診断された難病の方々も、この高額療養費制度を利用しております。
3番目以降は各ページに分かれていますけれども、次のページです。指定難病の疾患でも、重症度基準などの基準を満たさないような方々は医療費助成制度を使えませんので、高額療養費制度を利用しておられます。
また、4番目に関しては、指定難病・医療費助成制度の助成期間が終了した後に再燃・再発した場合には、高額療養費制度を利用されている方がおられます。
5番目ですけれども、指定難病との関連を判定されない症状の治療に高額療養費制度を利用されている方がおられます。斜体で書いたのは自由記述ですけれども、全身疾患を伴うような疾病に罹患されているような方々は、指定難病に起因しているのか、それとも指定難病以外のところから来ているのかの判断が難しくなっており、場合によっては高額療養費制度を利用される方がおられるということです。
次のページをお願いします。ここから6枚のスライドについては、もし高額療養費制度の自己負担額が切り上がった場合に、どのような影響が及ぶかについてコメントをまとめたものになります。
まず、治療への影響です。治療選択肢の減少や受診の抑制あるいは断念が出てくる。その結果、重症化を招いたり、命の危険が及ぶ可能性がある。そして、そのまま重症化したり、命の危険が及んでしまったら、それでかえって国の医療費負担が増加するのではないかという意見をいただいております。
自由記述の中では、生活に影響を及ぼすほどの状態で喫緊の治療でなければ受けない。それによって医療が遠のき、健康面も悪化して悪循環になってしまうというような御意見があったり、金銭的負担から治療を諦めることは、自分の命を自分で諦めることだというような厳しい御意見もいただいております。
次のページです。生活への影響というところでは、治療費を捻出するために生活費を切り詰める必要が出てくるという御意見をいただいており、それは食費や趣味のお金を削るという御意見もあれば、本当に差し迫った方では、自宅の売却であったり、資産の切り崩しも辞さないというような御意見も頂戴しております。
また、もし高額療養費等々で経済的な負担が軽くなるのであれば、教育や結婚、出産など、この病気で費用が多額にかかることで諦めている身近な幸せがかなうという意見であったり、高額療養費の切上げが行われた場合には、生きる選択肢を迫られることがあるのかもしれない。あるいは、年金以外の資産を取り崩してでも、通院治療に影響がないようにしたいというような御意見もいただいております。
次のページです。就労も非常に重要なことであるのですが、就労への影響としては、高額療養費が上がって治療が遠のいてしまったり、治療の制限の結果、仕事を辞めざるを得なくなるのではないか。あるいは、治療費を捻出するために無理して働いてしまって症状が重くなってしまうのではないか。また、働けば働くほど、収入が上がれば、その分、上限が引き上がってしまうところがあるので、逆にキャリアを制限するとか働き控えをするような御意見も頂戴しています。
自由記述としては、働くのは正直とてもきつく、限界を感じながらも何とか働いて医療費を捻出しています。貯金を切り崩しながらぎりぎり生活していて、趣味なども捨てざるを得なかった。限度額の引上げが行われたら、どう生きていけばよいのか分からないというようなお声であったり、次のページですけれども、無理して働いているのに、働いているということで自己負担上限の金額が上がってくることには納得がいっていないという御意見。あるいは、高額療養費の上限引上げが起こって、治療を諦めざるを得なくなってしまう。あるいは、将来的に仕事ができなくなってしまうような状況であれば、生活保護を選択して治療を進めていくということも視野に入れるという御意見も頂戴しております。
次のページです。また、心理的な影響というところでは、闘病の負担に加えて、高額療養費の上限額が上がることによる支出増によっても精神的に負担が増える。場合によっては人生を諦めざるを得ないというコメントも複数頂戴しております。
自由記述では、もし今より症状が悪化して高額な薬剤を勧められたとしても、高額療養費の引上げがあったとしたら、恐らく支払えないので、働くことや人生、生きることそのものを諦めてしまうというコメントであったり、あるいは治療がうまくいくかどうかも分からないときに、医療費が高額だと、自分は生きていないほうがいいのではというふうな思考回路に陥るという御意見も頂戴しております。
次のページです。影響としては最後のスライドですが、家族や子供についても、この高額療養費の切上げが影響するというコメントも複数頂戴しています。1つは、子供に十分な医療を受けさせることができるか不安である。あるいは、親の治療費の増加が子供の養育費・教育費も切り詰めざるを得ないというところで影響するのではないかという御意見を頂戴しております。
自由記述では、子供の病気が指定難病になっていない病気のため、今後もし発生するかもしれない医療費に対応できるか不安という声であったり、自分が生きていることで、子供の養育費、教育費に影響が出る事態になったことが無念ですし、その影響度合いが増す今回の改正の話というのは、本当に厳しいものがあるという御意見を頂戴しております。
次のページです。これが最後のトピックになりますけれども、この専門委員会でも、高額療養費の支払いが現物給付化されていることで費用総額が見えにくくなっているため、制度を意識する機会が少ない。また、コスト意識という面では課題を指摘する意見がありました。それが本当に難病の領域に当てはまっているのかを調査いたしました。結果を見ていただきますと、77%の方は窓口負担だけではなくて医療費の総額も把握して医療を受けているという回答でした。
どのように確認しているのかというと、マイナポータルで普通に見ることができるであったり、指定難病の方は受給者証とともに自己負担額の上限管理表がありますので、私もそうですけれども、毎月チェックしています。あるいは、加入している保険者のお知らせで把握しているという御意見がありました。
次をお願いします。
自由記述では、月々の医療費総額を見ているからこそ、この月々の負担額の支払いが毎月かつ一生続くことに関して不安を感じているという御意見。
あるいは、総額を自覚させる方向が強くなってしまうと、逆にその金額を見て受診を控える層が出てきてしまうのではないかという御意見。
あるいは、高額療養費を支払う人は「それ以外の治療法としての選択肢がない」場合が多いので、むしろ医療費に対しては敏感ではないかという御意見も頂戴しております。
最後のページです。
簡単にまとめますと、1つは、難病患者の多くが高額療養費制度を利用したことがありました。
また、使用するパターンについても理解することができました。
また、仮に自己負担額の上限が引き上げられた場合には、治療への影響や生活・就労への影響、心理的な影響、家族や子供への影響と、本当に広い範囲にわたっての影響を懸念されています。
また、医療費の総額は、大多数の患者が金額を把握していたという結果になっております。
以上で報告を終わります。ありがとうございました。
○田辺委員長 ありがとうございました。
それでは、天野委員、それから大黒委員への御質問でも構いませんし、また、事務局への質問でも構いませんので、御意見、御質問等がございましたら挙手にてお知らせいただければ幸いです。
では、佐野委員、よろしくお願いします。
○佐野委員 ありがとうございます。また、天野委員、大黒委員、御説明ありがとうございました。
私のほうからは、資料1についてコメントをさせていただきたいと思います。
この中の論点14ページでございます。
まず1点目の高齢者の外来特例については、やはり見直しは不可欠だと考えております。最近、一部のマスコミ報道においても外来特例が受診方法や時期によって過度な支援となっているのではないかという指摘がされております。そういう面で、現在の仕組みにおいても問題があることは否定できないのではないかと思います。
また、大きなリスクに備えるためのセーフティーネット機能という高額療養費制度の趣旨から考えても、廃止を含めて見直すべきだと考えております。
次に、2つ目の高額療養費制度の在り方の検討でございます。これは先ほどお二人の委員からの御説明にもありましたけれども、長期にわたって治療を必要とされている方に対しては配慮する必要があるともちろん考えておりますし、そういった観点を考えますと、長期に継続して制度を利用する場合と、一回のみといった短期で制度を利用する場合は切り分けて検討すべきだと考えております。
その視点で考えますと、仮に自己負担額について引上げを含めて検討する、見直すという場合においては短期を中心に検討していくべきだろうと思っております。
それと、その他のところでございます。これはこれまでも出ていますが、所得区分の細分化についてでございます。やはり負担能力に応じた負担の観点からは、現在大くくりとなっているところの所得区分の細分化については不可欠だと考えております。その際においては、負担能力に応じた負担を徹底するために、所得に応じてもちろん負担の増加には配慮した上で、自己負担限度額をよりなだらかに増加させる見直しが必要であると考えております。
以上でございます。
○田辺委員長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょう。
では、北川委員、よろしくお願いします。
○北川委員 ありがとうございます。今回の論点についてコメントさせていただきたいと思います。
まず、外来特例に関して、制度が創設されました2002年以降、健康寿命が延伸しまして、高齢者の受診率、1人当たりの医療費水準等が低下するなど、健康状態の改善が見られているところでございます。
そうしたことも踏まえますと、創設の経緯等を考え合わせても、外来特例につきましては現役世代との公平性を踏まえれば、本来廃止を含めた検討を行うべきだと考えているところです。
ただ、高齢者の方が医療にかかる頻度が高いという特性も踏まえて考える必要があるとの御意見もあることから、少なくとも健康寿命の延伸等といった高齢者の特性の変化に対応した外来特例の見直しを行うべきと考えているところでございます。具体的には、外来特例の対象年齢を引き上げるという見直しが考えられるのではないかという意見でございます。
また、2点目は長期と短期のお話でございますが、前回の委員会でも申し上げましたが、仮に自己負担限度額を引き上げる場合、制度が家計に対するセーフティーネット機能であることを踏まえると、例えば1か月だけ入院や手術を行い、高額な医療費が必要となったケースと、長期にわたって継続的に制度を利用されるケースに分けて検討を行う必要があると考えております。
この場合、医療費が増大していく中でこの見直しは避けられないという前提に立つと、前回委員会で事務局が示された実際の医療費負担の事例を踏まえると、短期間の療養が高額となった方の自己負担を引き上げるほうが家計への影響がまだ少ないのではないかと考える次第でございます。
私のほうからは以上です。大変申し訳ありませんが、所用がありましてここで退室させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○田辺委員長 ありがとうございました。
それでは、袖井委員、よろしくお願いいたします。
○袖井委員 ありがとうございます。
お二人の御発表をお聞きして、高額療養費の限度額は上げるというよりもむしろ下げなくてはいけないのではないかという気がしてきて、非常に心苦しい。いずれ上げなければいけないかもしれないですけれども、今のような経済状況の中で引き上げなければいけないのかということをいつも考えております。
それから、高齢者の外来特例、これは見直す必要があるかもしれません。御説明にもありましたように、もともとは老人医療費の無料化というか、高齢者の医療費における自己負担分を公費で賄うというところだったのを、だんだん有料化していったというところの過渡期的な措置としてできたものですから、ある程度の見直しは必要かと思うのですが、ただ、その一方で、高齢者の自己負担を一律3割にすることによってこの外来特例を消してしまう。いわゆる3割負担の場合は、外来特例はないわけですね。そういうような形でなくしていくのであれば、私は反対でございます。
ですから、どのような形にするかはちょっと考えられないのですが、一律3割にすることで外来特例をやめてしまうということはあり得ないと考えております。外来特例につきましてはある程度の見直しは必要かと思いますが、ただし、どのくらい年間で高齢者の外来特例による出費があるのかということはデータ的によく分からないのでお示しいただきたい。
それから、先ほど資料1にありましたデータが協会けんぽですよね。協会けんぽの方は働いていらっしゃる方なので、年金だけの高齢者の場合の医療費がどのくらいになってしまうのか、家計に占める医療費の割合がどうなるのかというデータができれば知りたいと思います。仕事を持っている高齢者というのはもちろんある程度収入があるのですが、全くなくて年金だけ、あるいは貯金を切り崩して暮らしていらっしゃる方の実態もできれば知りたいと思います。
以上でございます。
○田辺委員長 ありがとうございました。
それでは、岩城参考人、よろしくお願いいたします。
○岩城参考人 ありがとうございます。
まず、天野委員、大黒委員、先ほどは御説明いただき、ありがとうございました。
連合といたしましても、必要な医療へのアクセスが阻害されないよう、見直しの議論に当たっては、とりわけ長期に継続的な治療が必要な方への配慮は必要だと思っておりまして、仮に自己負担限度額を見直す場合はそうした配慮は当然であり、かつ1か月単位となっている算定期間の柔軟化、保険者が替わっても通算可能な多数回該当の仕組みとすること、同一保険者である場合は自己負担限度額が2万1000円未満であっても合算を可能とすることについても併せて検討していくべきではないかと考えております。
また、論点の1つ目にございます高齢者の外来特例に関しましては、連合としては高額療養費制度だけではなく、年齢で区切っている今の制度の在り方を見直すことが重要と考えておりますので、その観点から高額療養費制度においても年齢区分を廃止し、外来特例についてはその支給範囲の縮小に向けて検討が必要と思っております。
以上です。
○田辺委員長 ありがとうございました。
それでは、池田参考人、よろしくお願いいたします。
○池田参考人 ありがとうございます。
高額療養費制度の見直しに当たりましては、セーフティーネットとしての役割の維持をしていくという観点と、医療保険制度の持続可能性の堅持という観点のバランスをどのように確保するかという点が重要であると考えております。これにつきましては、おおむねコンセンサスが得られているのではないかと思っております。その上で、本日の資料の14ページにおける論点についての考え方を述べさせていただきます。
本日の資料の9ページですけれども、私どもの考え方を取り上げていただいておりますが、基本的には年齢ではなく、負担能力と給付の必要性を指標として制度の見直しを行っていくということが望ましいと考えております。
ただ、高齢者につきましては、加齢とともに医療ニーズが増加することはあっても減ることはないという状況がございます。若い世代とは異なる高齢者特有の状況があることや、昨今の物価上昇が高齢者世帯の家計に与える影響等を考慮すると、より丁寧な議論や検討が必要と考えております。
また、給付の必要性が大きいという観点で、難病、がんなどの慢性疾患を有する方に対しては、患者の負担に年間上限を設けるなどの配慮は欠かせないものと考えております。
しかしながら、一方で、所得区分の在り方など、これを細分化し過ぎますと、国民にも分かりにくく、また住民の方と接する市町村の窓口などの現場でも混乱が生じることにもなりかねないと思いますので、制度の設計に当たりましてはこうした点も留意して、国において丁寧かつ十分な対応をお願いしたいと思います。
最後に、私どもの原理事長が医療保険部会でも述べたことの繰り返しになりますけれども、高齢者の医療負担の見直しに当たっては、医療保険制度全体はもとより、介護保険制度等の他の制度も視野に入れながら、抜本的な改革案について時間をかけて具体化するということと、それから高齢者に急激な負担増とならないよう、十分な期間をかけて段階的に実施していくという改革の実施の進め方も、この改革の内容とともに重要な観点ではないかと考えております。
私からは以上でございます。
○田辺委員長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょうか。
では、井上委員、よろしくお願いします。
○井上委員 ありがとうございます。
これまでも既に議論が前回までの会合でもございましたけれども、今後の人口構成でありますとか医療の高度化という中で、医療保険改革全体を進める中で、その一環としてこの高額療養費制度について見直していくというスタンスが必要だと思います。
その中で、今日御提示いただいている論点でございますけれども、まず外来特例につきましては23ページに健康寿命の推移もございますが、制度が導入されたときと比べたデータもございますし、高齢者の年齢階級において医療費と自己負担額にもギャップがあるということもございますので、給付と負担のバランスという観点から一定程度、ここは見直しをするということが考えられると思います。
また、自己負担限度額の引上げにつきましては、継続的な受診が必要であるといった事情には十分に配慮して制度設計をしていくべきだと考えます。
以上でございます。
○田辺委員長 では、城守委員、よろしくお願いします。
○城守委員 ありがとうございます。
まず、天野委員と大黒委員、先ほどの御説明ありがとうございました。
私のほうからも、14ページの論点に沿って少しコメントをしたいと思います。
まず外来特例の在り方についてでございますが、この特例というのは以前からお話ししておりますように、収入が限られている中において多くの疾患を抱えて継続的な治療を必要とする。そういう高齢者の方々にとってみたら、高額療養費制度の中でも大変重要なセーフティーネットとしての役割を果たしているというものであろうと思います。
外来特例の廃止という御意見もございますが、万が一、そのような形になりますと、当然経済的な理由によって、これは先ほどの御説明の中にもありましたけれども、高齢の方も一緒でございまして、やはりその受診・受療行動に変化が生じる。その結果として、病態の悪化を招くという事態が生じることも想定されますので、そのようなことが生じないような形で丁寧な議論、または制度設計というものを求めたいと思います。
また、現在、医療保険部会において高齢者の窓口負担の在り方についても議論が行われておりまして、具体的には現役並み所得の判断基準等について検討されているというのは御案内のとおりであると思います。高齢者の保健医療に対しての支出というものは、当然若い方の支出に比べますと多いということは見て取れるわけですが。これは医療保険部会のデータにも出ておりましたが、この自己負担の割合というものも見直しを行うということになりますと、高齢者のいわゆる医療への支出というものはそれだけでほぼ2倍前後に膨れ上がるということで、大変大きな負担増ということにもなろうと思います。
このような中で、高額療養費制度においても外来特例の大幅な見直しという形になりますと、この窓口負担増とともに二重の負担増が強いられる高齢者が出る可能性が非常に高いということも言えるかと思いますので、この辺りで急激な負担増が生じないよう、外来特例についても慎重な検討を求めたいと思います。
もう一つの論点の自己負担限度額でございますが、これは先ほどから多くの方がおっしゃっておられますように、やはり長期に療養されるケースと、そして短期に治療が完結をする場合によって、その患者さんの自己負担ないしは家計にかかる負担というものは大きく影響度合いが変わってくると思いますので、そこは切り分けて議論をすべきだろうと思います。
その中で、この資料の18ページにもありますように、現在の所得区分が示されておりますけれども、この区分が適切なのか、それとももう少し丁寧な区分設定の必要性があるのかどうかということも含めて慎重な議論が必要なのではないかと考えます。
もう一つ、このページを見ていただきますと、年間の自己負担額の家計への影響でありますが、低所得の方々の層ほどその影響が大きいということは見て取れると思いますし、特に一番左側の年収200万円未満でしょうか。ここのグラフを見ますと、家計の総収入から非消費支出とか生活費を差し引いた金額である、年間84.6万に対して、多数回該当に12ヶ月該当した場合としても、自己負担限度額の年額というのは53.3万円ということになるわけで、その6割以上という大きな比重を占めているということが見て取れるかと思いますので、ここは低所得の層に対しての配慮も併せてやはり行うべきではないかと思います。
私のほうからは、以上です。
○田辺委員長 ありがとうございました。
では、山内委員、お願いいたします。
○山内委員 本日もお二方から貴重な御意見をいただきまして、改めて課題の把握と理解を深めることができました。誠にありがとうございます。基本的な考え方を述べた後に、2点申し上げたいと思います。
私ども商工会議所では、社会保障委員会で制度の在り方を検討しております。保険料を折半負担している経営者の立場、あるいは受益者の立場という両方の立場から、制度の持続性の維持には極めて高い関心の声が寄せられております。
公費、保険料の増加に歯止めをかける改革は、この会議でも議論があったように、医療保険全体の中で進めるべきであるということであり、高額療養費制度のセーフティーネット機能、ここは制度の根幹で重要だということは重々理解しております。一方で、制度の維持とか、あるいは現役世代のことを考えますと、この制度におきましても、負担の見直しというものも避けられないのではないかと考えております。
本日も出ておりました、患者の皆様の切実な声や御負担への配慮、これは必要だと思っておりますが、制度の維持に向けた見直しというものも、前に進めていただければと思っています。
その上で、外来特例について、我々としては給付と負担、世代間のバランスを鑑みますと、廃止も含めた見直しが必要ではないかと考えております。資料でも、高齢者の若返りの傾向や環境変化も示されておりました。少なくとも、例えば対象年齢の引上げのようなものも必要なのではないかと思っております。
2つ目としましては、さらに議論を深めていくべきという点で、所得区分の細分化はとても重要だと思っております。細分化されることによって能力に応じた負担が強化され、低所得者の方々にも配慮したきめ細かな負担設定も可能ではないかと考えております。検討の際には、家計などのデータも鑑みまして、自己負担限度額の引上げ幅などについては一定の配慮が必要と考えます。
これまでの議論や、本日、委員会で出された皆様の提案といったものも踏まえながら、ぜひ具体的な制度設計の検討を進めていただきたいと思っております。
以上です。
○田辺委員長 ありがとうございました。
ほかはいかがでございましょうか。
では、天野委員、お願いします。
○天野委員 ありがとうございます。
既に多くの御意見をいただいているところで、かぶる部分もあるかと思いますが、改めて意見を申し上げます。
まず、事務局からお示しいただいた論点のうちの1つ目の高齢者の外来特例について意見を申し上げます。
これにつきましては前回も申し上げたことでございますが、がん患者に関して申し上げますと、例えば外来の抗がん剤治療において、高齢者の方は外来特例により一定の低い自己負担の中で治療を受けることができている一方で、現役世代、特に子育てをされているような家庭の方は、厳しい経済環境の中で同じ治療を受けることにちゅうちょしてしまう、あるいは治療ができないという現状があるということは申し上げたいと思っておりまして、特に医療者の方々からはこの点について公平性の観点から問題があるのではないか、という複数の指摘をいただいているということを改めて申し上げたいと考えております。
また、いわゆる高齢者の外来特例に関連して、今まで私たちも何人かの医療経済の学者の方々ともディスカッションをしてまいりましたが、世代間格差ではなく世代内の格差という観点で見た場合も、医療費の支払いということに関しましては、高齢者の方のほうが現役世代よりも世代内の格差が比較的少ないのではないかという御指摘をいただいています。もちろん、これについてはより精査が必要な部分かと思いますが、世代内の格差の観点からも、現役世代のほうが現行制度でもより負担を強いられている可能性があるということは言えるのではないかと感じております。
一方で、本日事務局からお示しいただいた資料1の中の29ページ、外来特例の利用時の医療費負担の例ということで、70歳代会社員、男性、年収約230万の間質性肺炎の患者さんの実例をお示しいただいていますが、本日お示しいただいた中で、この患者さんに関してはいわゆる破滅的医療支出ということに関して計算をしますと、仮に2割負担の場合には破滅的医療支出の水準とされる4割を大きく超えてしまいまして、5割を超える可能性のある患者さんが外来特例となっている患者さんの中にもいらっしゃるということが分かるかと思います。
そうなってきますと、先ほども御指摘がありましたが、この高額療養費だけではなく、ほかに例えば高齢者の自己負担割合の変更であるとか、そういった様々な医療環境の変化、あるいは自己負担の変化によっては、いわゆる破滅的医療支出に容易に陥る患者さんが増えてしまう可能性があるということですので、外来特例に何らかの変更を加えるのであれば、ほかの医療費制度の変更とも組み合わせて慎重に検討を進めないと、過重な負担増となってしまう可能性があるかと思いますので、その部分については十分な留意が必要と考えます。
また、事務局がお示しいただいた論点の2つ目、いわゆる長期にわたり継続して制度を利用される場合と、短期間の方との切り分けということについてでございますが、これにつきましても以前から申し上げているように、長期にわたり継続して治療を受ける患者さんの負担はやはり大きいですので、多数回該当を含め、こういった患者さんへの配慮は必須ですし、また、複数の委員からも御指摘いただいていますが、いわゆる年額上限の考え方をぜひ検討いただきたいと考えております。
というのは、現行の制度では多数回該当に当たれば一定程度の負担は軽減されるのですが、ぎりぎり多数回該当に当たらないという患者さんが現状でも既にいらっしいます。ぎりぎり多数回該当に該当せずに上限額ぎりぎりの金額をずっと払い続けている患者さんが一定数いて、これはその疾患の標準治療によって違うのですけれども、多数回該当に当たらないまま、高額な医療費を毎月支払っている疾患のある患者さんがかなりいるらしいと聞き及んでおりますので、やはり年額上限を設けていただくことが必須ではないかと考えております。
また、最後に3点目になりますが、先ほど大黒委員の資料の中で、患者は医療費の総額を把握しているかという資料がございまして、大黒委員の資料の中では総額も窓口負担額も把握している患者さんが77.6%いらっしゃるということでした。
これについて一言意見を申し上げますと、以前この専門委員会で委員か、あるいは参考人からだったかと思いますが、患者さんは御自身がどれぐらいの医療費を使っているか、自覚がないのではないかという御指摘がありました。もちろん個々の患者さん全てがどういった自覚をお持ちなのかというのを調べるのは不可能ではあるのですが、患者さんが医療費を使っていることに無自覚かどうかというと、少なくともこの難病患者さんの例では7割以上の患者さんがもちろん窓口負担額だけではなく、総額も把握しているということがうかがえるかと思いますので、こういった特に社会保障であるとか医療費について議論する際は、印象論ではなくできるだけファクトに基づいて議論していただくことを望んでおきたいと考えております。
私からは以上です。
○田辺委員長 ありがとうございました。
では、大黒委員、よろしくお願いします。
○大黒委員 ありがとうございます。
外来特例の在り方についてですけれども、高齢者の特性を踏まえた仕組みがやはり必要ではないかと思いますので、見直す場合にも部分的な調整にとどめるべきだと考えております。
外来医療というのは、薬物の治療の継続であったり、症状のコントロール、重症化の予防のためにも欠かせないものだと考えています。過剰受診を減らす効果がどれくらいかは分からないですけれども、限定的で、むしろ必要受診の抑制リスクが大きい可能性もあります。
また、高額療養費全体の中でも外来特例の財政規模は限定的ではないかと思います。負担増の割に財政効果は小さいということもあり得ますので、この部分も見直しに当たってはデータをお示しいただいて、どれくらいの効果があるかもお知らせいただければありがたいと思っています。
ただし、外来特例のために受けられる医療が現役世代では厳しい経済環境の中でその治療を受けることができないという医療格差が指摘されています。この増加する現役世代の保険料を軽減していくという重要性もずっと大事だというふうにここでも述べられていましたけれども、現実世代の医療の負担の在り方についても考えていただければと思っていますので、外来特例を見直すに当たってはこのような考え方でお願いできればと思っています。
また、高額療養費制度の短期利用者と長期利用者で生活への影響が大きく異なるというふうに私たちも感じています。短期利用者では一時的な家計の問題を緩和することで済みますけれども、長期利用者の場合は負担の累積が大変で、そのインパクトが大きくて、生活や就労に直結する深刻な問題となっています。就労面では、収入の減少や非正規雇用への転換というケースも少なくありません。
こうした長期利用者にとっては、高額療養費制度は生活を支える基盤そのものです。よって、制度全体の整合性を考えながらも分けて考える必要性は高いのではないかと思っています。現在の多数回該当のみの制度では、長期利用者の生活への影響を緩和することが難しいと思われますので、年間上限を加えることなども考慮しながら制度を考える必要があると思っています。
また、最後に先ほど天野委員から、破滅的な医療支出に関してのデータをありがとうございました。先ほどからの私のデータもありましたように、現状でもかなり厳しい医療費の負担であるという事実をデータとして見せていただけたことは大いにありがたく思います。特に低所得者の方々に負担が大きいということも非常に分かりやすく示していただいていますので、今後の改革に当たってはこのようなデータも参考にしながらお願いできればと思います。
以上です。
○田辺委員長 ありがとうございました。
一通り御発言いただきましたけれども、さらに追加ということでございましたらお手を挙げていただければと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
それでは、予定時間よりも前ではございますけれども、本日の議事は終了したいと思います。
天野委員、それから大黒委員、非常に重要な情報を御提供いただきましてありがとうございます。深く御礼申し上げます。
本日の議事はこれにて終了といたします。次回の日程等につきましては、事務局のほうから連絡をお願いいたします。
○佐藤保険課長 保険課長でございます。
次回の日程につきましては、また改めて御連絡申し上げたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
○田辺委員長 それでは、本日は御多忙の折、御参加いただきまして、また非常に有意義な御意見を賜りましてありがとうございました。
これにて散会いたします。

