第8回社会保障審議会生活保護基準部会最高裁判決への対応に関する専門委員会 議事録
日時
令和7年11月7日(金) 18:00~20:00
場所
東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎第5号館
厚生労働省 19階 共用第8会議室
厚生労働省 19階 共用第8会議室
出席者(五十音順)
・岩村 正彦 東京大学名誉教授
・太田 匡彦 東京大学大学院法学政治学研究科教授
・興津 征雄 神戸大学大学院法学研究科教授
・新保 美香 明治学院大学社会学部教授
・嵩 さやか 東北大学大学院法学研究科教授
・永田 祐 同志社大学社会学部教授
・別所 俊一郎 早稲田大学政治経済学術院教授
・村田 啓子 立正大学大学院経済学研究科教授
・若林 緑 東北大学大学院経済学研究科教授
・太田 匡彦 東京大学大学院法学政治学研究科教授
・興津 征雄 神戸大学大学院法学研究科教授
・新保 美香 明治学院大学社会学部教授
・嵩 さやか 東北大学大学院法学研究科教授
・永田 祐 同志社大学社会学部教授
・別所 俊一郎 早稲田大学政治経済学術院教授
・村田 啓子 立正大学大学院経済学研究科教授
・若林 緑 東北大学大学院経済学研究科教授
議題
平成25年生活扶助基準改定に関する最高裁判決を踏まえた検討について
議事録
- (議事録)
- ○岩村委員長 皆様、こんばんは。定刻でございますので、第8回「社会保障審議会生活保護基準部会 最高裁判決への対応に関する専門委員会」を始めさせていただきます。
委員の皆様におかれましては、とてもお忙しい中を御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
事務局から、今日の委員の出欠状況と資料の確認をお願いいたしたいと思います。また、毎度のことでございますけれども、オンラインで御出席されていらっしゃる委員の方がいらっしゃいますので、会議での発言方法などについても、改めてではございますけれども、御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○阿部社会・援護局保護課総括調整官 事務局でございます。
本日も、対面及びオンラインを組み合わせての実施とさせていただきます。また、動画配信システムでのライブ配信により一般公開する形としております。アーカイブ配信はいたしませんので、あらかじめ御了承ください。
続けて、本日の委員の出席状況について申し上げます。
本日は、全ての委員に御出席いただいております。
以上でございます。
会議冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきたいと存じます。恐縮でございますけれども、カメラの皆様は御退室をお願いいたします。
(カメラ退室)
○阿部社会・援護局保護課総括調整官 それでは、事務局よりお手元の資料と会議の運営方法の確認をさせていただきます。
本日の資料でございますけれども、議事に関して、資料1「第7回専門委員会においてご指摘のあった事項について」、資料2「取りまとめに向けた方向性(案)について」、また、参考資料として「いのちのとりで裁判全国アクション 提出資料」を御用意しております。
参考資料につきましては原告関係者から御提出されたものでございますけれども、こちらの資料も踏まえながら御議論と存じます。
会場にお越しの委員の皆様におかれては、机上に用意してございます。過不足等ございましたら、事務局にお申しつけくださいませ。オンラインにて出席の委員におかれましては、電子媒体でお送りしております資料を御覧いただければと思います。同様の資料をホームページにも掲載してございますので、資料の不足等がございましたら、恐縮ですが、ホームページからダウンロードいただくなどの御対応をお願いいたします。
次に、発言方法について、オンラインで御参加の委員の皆様は、画面の下にマイクのアイコンが出ているかと存じます。会議の進行中は、基本的に皆様のマイクをミュートにしていただきます。御発言をされる際には、Zoomツールバーの「リアクション」から「手を挙げる」をクリックいただき、委員長の御指名を受けてからマイクのミュートを解除して御発言ください。御発言が終わりました後は、Zoomツールバーの「リアクション」から「手を下ろす」をクリックいただき、併せて、再度マイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
以上でございます。
○岩村委員長 ありがとうございました。
それでは、お手元の議事次第を御覧いただきたいと思います。
本日の議事は、前と同じですけれども、「平成25年生活扶助基準改定に関する最高裁判決を踏まえた検討について」でございます。
今日は、まず最初に、前回の専門委員会での指摘事項につきまして、事務局のほうで関連資料を御用意いただいております。まずその説明をいただきたいと思っております。
その後に、これまでの専門委員会での議論を踏まえまして、事務局で取りまとめに向けた方向性の案を作成したということですので、それを参照しつつ、取りまとめに向けた審議を進めてまいりたいと考えております。
それでは、まず、事務局から資料1「第7回専門委員会においてご指摘のあった事項について」の説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 社会・援護局保護課の榎でございます。
それでは、資料1「第7回専門委員会においてご指摘のあった事項について」の御説明をさせていただきます。
前回の専門委員会において御指摘があった幾つかの事項につきまして、補足する資料を御用意してございます。
1ページを御覧ください。
まずは世帯分布調整値のウエイトに関する資料でございます。前回の専門委員会では、世帯分布調整値を算出するに当たって家計調査のウエイトを使うことについて御指摘がございました。ウエイトの設定に関する考え方と、仮に全国消費実態調査のウエイトを用いるとした場合の影響などをお示ししてございます。
まず、考え方につきましては、上段のボックス、1つ目の○を御覧いただければと思います。もともとの経緯といたしましては、平成21年の全国消費実態調査の消費水準を家計調査の変動率で補正するということを考えてございました。その際に、世帯構成の変化による影響を除くという目的で世帯分布調整値を参照していたところでございます。
このように、家計調査の変動率で補正をするというのが当初の目的であったことに鑑みますと、世帯分布調整値の算出に当たって家計調査のウエイトを用いること、これが言わばシンプルな方法として考えられるものであり、また、一定の合理性があるということも言えるのではないかと考えております。
全国消費実態調査などほかの調査のウエイトを用いるということも候補としては考えられるところでございますけれども、ほかの調査を用いる場合には恣意的な選択とならないように留意する必要があろうかと考えております。
御参考までに、全国消費実態調査のウエイトを用いた場合の変動率を表にお示ししてございます。適宜御参照いただければと思います。
2ページを御覧ください。
平成30年の基準見直しの際に講じた措置に関しまして、改めて考え方を整理してございます。平成30年の見直しでは減額幅が大きくなる世帯が想定されたため、受給世帯の生活への影響に配慮するという観点から激変緩和措置を講じておりました。また、その中には従前額からの減額幅をマイナス5%以内とするといった下限措置が含まれていたところでございます。ここでいう従前額とは、平成30年改定前に受給者が実際に給付されていた生活扶助基準額でございまして、これを言い換えれば、当時、生計の基になっていた額ということになろうかと思います。
今回、仮に再改定して何らか給付するということになった場合には、表面的にはこの下限の額が引上げになるように見えるところでございますけれども、その際に計算される下限の額につきましては、当時実際に支給されていた額を基に算定されるというものではございませんので、その額を仮に保障したとしても生活への影響の緩和を図る効果を持つことにはなりません。このため、平成30年改定前に実際に給付されていた基準額からの激変緩和措置という趣旨に鑑みますと、再改定後の仮想的に計算される下限の額に基づいて遡及的に支給する必要はないと考えている次第でございます。
続いて、3ページを御覧ください。
年収階級第1・十分位を比較対象とすることについて、改めましてその考え方をお示ししてございます。
まずは令和4年検証の取扱いを御紹介しております。令和4年検証では、変曲点の位置を特定する変曲点分析につきまして、生活保護基準部会の議論において必ずしも行う必要はないといった意見もございまして、変曲点分析については行ってございませんでしたが、過去の経緯等を踏まえつつ、平成29年検証時に比較対象とした夫婦子1人世帯の第1・十分位の集団の状況変化を複数の指標で確認した上で、引き続きこの第1・十分位を比較対象としていたところでございます。
本委員会におきましては、令和4年検証で確認したものと同じ指標について、平成21年の全国消費実態調査を基に既に確認が済んでいる状況でございます。結果としましては、生活扶助相当支出額の中位所得対比などについて悪化が見られるといったものでございましたが、家計調査によって補正することで平成16年におおむね近い水準に回復することを確認できている状況でございます。
これに加えまして、平成24年検証当時にはゆがみ調整に関して様々な要素を考慮して第1・十分位を用いる根拠を整理しておりました。こういった点も踏まえますと、今回の水準の検証においても第1・十分位を比較対象として用いることが適当と考えている次第でございます。
参考資料としまして、4ページに令和4年検証で確認した各種指標、それから、5ページに平成24年検証当時に整理した第1・十分位に用いる根拠、それぞれを抜粋してお示ししてございます。適宜御参照いただければと思います。
資料1につきまして、事務局からの説明は以上でございます。御審議のほど、何卒よろしくお願いいたします。
○岩村委員長 ありがとうございました。
前回の委員会で御指摘がございました事項につきまして、事務局で資料を作成していただいて、今、御説明をいただいたところでございます。
そこで、今日のこの資料1を踏まえて、改めて御指摘あるいは御質問がございましたらお願いしたいと思います。いかがでございましょうか。
太田委員、どうぞ。
○太田委員 どうも御説明ありがとうございました。資料を作っていただいた原因者の一人として、お礼をまず申し上げます。
それで、今後のことでお願いしたいのと、改めて説明を聞くとよく分からないところがございまして、発言させていただきたいと思います。
まず、今後のことでお願いしたいのは、水準均衡方式というのはまずは一般国民との相関で決める。最高裁も最低生活というのは一般国民の生活水準との相関的なもので決まるのだと言っているわけですよね。ですから、第1・十分位、一般低所得層へ突進する前に、まず一般国民と一般低所得層を比較して、一般低所得層を念頭に置いて議論していいのだという検証を必ずやるようにしていただきたいと思います。実際にこれは宇賀裁判官の反対意見で論点化されてしまっていますので、その手順をきちんと踏んでおかないとまずい。取りあえず第1・十分位だけ見ておけばいいだろうみたいな感じでやったと思われたら今後問題を残すと思いますので、その点は、私のように口うるさくお願いする前にやっていただきたいと思います。
その上で、変曲点の話なのですが、恐らく現在のところはある種のベストプラクティスとしての地位を占めるであろう令和4年検証において、議論を踏まえてやらなかったと。やらないけれども大丈夫だと判断された。6割か7割保障されているということからすると、私ももっともらしくは思います。
ただ、改めて頂いた資料を見ていてよく分からなかったのは、平成25年の24年検証、資料でいきますと5ページ目のマル6です。第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化している。他の十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なると考えられるというのは、まさかとは思いますが、第1・十分位と第2・十分位の間に変曲点があるというようなことではないのですね。そのことを24年検証の人たちはきちんと検証したのですか。変曲点分析はやった上で、この第1・十分位と第2・十分位の間の消費の変化というのは変曲点とは関係ないものだということの検証はしていただいているのでしょうか。もししていないとなると、また一つ問題かなと。今日直前に資料が送られてきて読み込みはできませんでしたが、原告団の資料を見ていてもそこは論点化されていたようですので、お伺いしておきたいと思います。
それから、現在、変曲点分析の意味というのは、古い、役に立たない議論であるということになっていれば、私も固執しませんので、できれば経済学の先生方からこの頃どの程度の扱いをされている論点で、意味がないのか、意味はあるけれども調べるのが大変で信頼性に欠けるという程度なのかというのを補足で教えていただければ幸いでございます。そうしたことが一応尽くすべき考慮を尽くしたと言いやすくなるとも思いますので、お願いしたく思います。
それから、平成30年の見直しに関する論点なのですが、最終的には激変緩和措置であるとすれば、平成30年改定で保護基準を切り下げるときの激変緩和措置についてまで一々修正する必要があるかどうかというのは、私も大分性格の違う論点になるだろうと思うのですけれども、今日の御説明の書き方を聞いていても、論理的につながっているのかなというのがよく分からないのです。従前額からの減額幅をマイナス5%にするための下限措置を講じた。下限が上がると追給する可能性はあるが、しかし、それは支給されていた額を基に算定される額ではないので、生活への影響の緩和を図る効果を持たないという論理のように聞こえましたが、当時支給されていた額を基に算定される額でないと、生活への影響の緩和を図る効果を持たないということにはならないと思うのですよね。結局、そこは言わば激変緩和措置ということで、そもそもこの見直しの基準額がある種の定型的加算のように行われているわけですよね。ですから、結局増える可能性があるとしても、要するに平成30年の生活扶助基準見直しのためのもので、それとしては激変緩和措置であるということは、まず激変緩和措置を取らないでいきなりやっても、それはその限りで、最低生活水準は保障される。あくまでも期待的利益とかそういうものへの対応だという位置づけであるから、例えば計算が非常に面倒くさいとか、そういうことを考慮して、そこは対応しないという裁量を行使するということはあり得ると思うのですが、まず御説明の論理がつながっていないのではないかと思えて、その部分はきちんとご説明していただけないかと思います。つながっていない論理を承認するわけにはいかないので、その部分は、御説明を補充していただけないかと思います。
ちょっと長くなって申し訳ありません。以上です。
○岩村委員長 ありがとうございます。
まず、事務局のほうでお答えをお願いします。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 まずは第1・十分位の関係で、5ページ目に資料をお示ししておりましたけれども、平成25年の報告書の中で第1・十分位を用いる理由として6つ挙げておりまして、そのうちの6つ目に分散分析の検証の話を加えておりました。これが言わばその変曲点を特定するような意味合いを持つのかどうか、場合によっては第1・十分位と第2・十分位の間に変曲点があるというような話なのかどうか、こういったところの御質問であったかと思います。
この点については、分散分析自体は変曲点が実際に具体的にどこにあるのか、そこまでを特定できるような分析ではないということがまず一つ言えるかと思います。
その上で、第1・十分位に含まれる集団と第2・十分位の集団の2つの集団を比べて、消費の動向、性質の違いがあるかどうかというのを見たときに、やはり傾向の違いがあるといったことを確認したという意味合いの分析結果であると理解しております。
したがいまして、これだけでもって変曲点の位置が分かるものではないということでございますし、また、第1・十分位と第2・十分位の性質が違うという点を踏まえますと、第1・十分位のさらに中に変曲点が含まれているといった可能性も含んでいるような分析結果であると考えております。
いずれにしましても、当時第1・十分位を比較対象として整理した理由については、分散分析だけで判断したということではなく、ここに挙げている中位所得層との対比の比率や過去の経緯などの6つの観点を勘案しながら第1・十分位を維持するという判断をしたと理解しております。
それから、2点目として御指摘をいただいた、2ページ目、平成30年の改定見直しのところでございます。ここは御質問いただいたところ、私の理解が追いついていなくて大変申し訳ございませんが、生活への影響の緩和を図る効果がないという点に関して補足しますと、まず激変緩和そのものは、当時、生活保護費を基に生活していらっしゃる世帯の方々が改定によって急激に生活に影響が出ないようにという趣旨で設けているものです。具体的には従前受け取られていた額の5%以内ということですので、実質的には95%程度が保障されるように措置を講じていたということでございます。
今回は再改定ということで、仮に何らか追加支給が発生するとしても、それが何か生活との関係で影響するのかどうかというと、改定した後の額で実際に生活をされているわけではございませんし、また、そこから30年の改定の影響が実際の生活に対して出てくるというわけでもないということになろうかと思いますので、そういう意味で、生活への影響というのは特段発生しないのではないかと考えております。
そうしますと、そういった状況の中で激変緩和という必要があるかどうかというところでは、やはりそういう措置は必要ないのではないかと考えて整理させていただいた次第でございます。
御質問の趣旨を踏まえ切れていないかもしれませんけれども、一旦御回答させていただきます。
○岩村委員長 ありがとうございます。
次の太田さんの質問に行く前に、今の事務局の、特に1番目もそうですけれども、2番目について、太田さん、何か反応があればいかがでしょうか。
○太田委員 よろしいですか。
1番目もあれですけれども、まず2番目の平成30年のほうからいくと、お話を聞いていると、ひょっとして生活への影響の緩和を図る効果を持たないというのは、今の御説明だと、今回再改定した後でなお払わないといけない追加支給、要するに平成25年改定本体に関わる追加支給でさえそう思っておられるのですか。
そう思っておられても、それは間違いではないですよ。間違いではありません。とにかく生きてきたわけですからね。原告の方は、生きてこられたわけで、遡って生活水準を回復するということ自体は不可能です。だけれども、2013年改定のミスについては再改定して追加支給を行うわけですよね。違法に改定してしまったから。その違法状態の結果をどこまで除去するかという問題を今議論しているわけです。そうすると、平成30年との関係ではやらないというのだったら、生活への影響の緩和を図る効果を持たないだけでは理由にはならないのではないかと思うのですよね。その点で、どういう御説明の趣旨なのかというのは私もよく分かりかねる。なお分かりかねる御説明だったと思います。
1番目はどうします。今、言ってしまったほうがいいですか。
○岩村委員長 事務局の反応が今の太田さんのコメントについてあればですが、もしあれでしたら、これは一回引き取って再整理していただくということでもいいかと思うのですが。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 ありがとうございます。
一旦いただいたコメントを踏まえまして、また再整理をさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
○岩村委員長 よろしくお願いいたします。
それでは、太田さん、1番目のほうをお願いします。
○太田委員 ありがとうございます。
御説明はそれとして分かりましたが、ただ、結局マル6について、分散分析解析をしただけでは変曲点がどこにあるか分からない。第1・十分位と第2・十分位の間にあるとまでは言えないという御説明は分かりましたけれども、御説明を聞いている限りは第1・十分位の中にあるとも分かっていないという御説明に聞こえました。それはほかのところから大体第1・十分位の中になおあるはずだという推定ができているのですか。
○岩村委員長 いかがでしょうか。
○榎社会・援護局保護課調整官 これは過去を遡りますと、変曲点分析は昭和58年に一度実施してございます。その際には、五十分位で分けてみたときの2.99ですのでほぼ第3・五十分位に近いところになりますけれども、ここがおよその変曲点であったというような分析結果が確認されております。第1・十分位というのは五十分位に分けたときには5番目の五十分位になりますので、それより下側に変曲点があるということが確認されてございました。
分散分析の結果から、第1・十分位と第2・十分位では消費の傾向に違いがあるということが確認されておりまして、すなわちこの結果は、58年のときの結果を踏まえれば、第1・十分位と第2・十分位間ではなく、第1・十分位の中に、すなわち第5番目の五十分位よりさらに下側に変曲点がある可能性とも整合するような結果であると理解しております。
また、重ね重ねでございますけれども、第1・十分位の正当性については、いろいろな指標を確認した上で、その集団の変化ないしは過去の経緯、こういったものに照らし合わせながら、第1・十分位を用いる正当性を整理してきていると理解してございますので、特段変曲点の位置が正確に特定できていないとしても、第1・十分位を用いることは一定程度正当化できるのではないかと考えてございます。
また、実際に令和4年検証においても、具体的に変曲点を特定することまではせずとも、第1・十分位を採用するということの適切性について、指標を通じて一定程度確認しているという状況であったと理解しております。
○岩村委員長 ありがとうございます。
太田さん、いかがでしょうか。
○太田委員 大体分かりました。御説明を聞いていると、第2・十分位の中にもし変曲点があったら、第2・十分位と第3・十分位の間で消費の違いがもっと見えるはずだというような考えなのかなと。だったらそう説明していただければそれでいいのかなという気はしました。
分かりましたが、昭和58年の調査で変曲点は第3・五十分位にあった。だから、第5・五十分位はなお超えていないだろうというのはもっともらしいですが、昭和58年で大分古いデータだなという印象が拭えないところはございます。ただ、どちらかというと、それにこだわることにどの程度の意味があるかということ自体がもう一個の問題だと思いますので、そこは令和4年は要らないと言ったわけですが、そこ次第かなと思っていますので、そちらをどなたかから教えていただければ、私としては結構でございます。
○岩村委員長 そうしましたら、もしできましたらということなのですが、経済系の先生でどなたかお話しいただけるかということになりますが、いかがでございましょうか。
では、手を挙げていただいて、そうしましたら、まず若林先生、次いで村田先生ということでお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○若林委員 若林です。よろしくお願いいたします。
私の知っている範囲でお話しさせていただきます。変曲点に関しては、過去の経緯に基づくもので、私の記憶では、福岡大学の玉田先生が全国消費実態調査の個票データを用いて、どこに変曲点があるのかを改めて分析されたことがありました。その結果、変曲点分析は必ずしも絶対的なものではなく、変曲点が複数存在する場合や、そもそも存在しない場合もあるという指摘があったと記憶しています。
このように、変曲点分析は過去の経緯から用いられてきた手法ですが、私の記憶では、2013年の社会保障審議会生活保護基準部会においても、他のアプローチを検討すべきであるとの意見が報告書に記載されていました。
玉田先生は生活保護を中心に社会保障の研究を長く続けておられる方で、当時、私もその報告書を読んで授業などで紹介したことがあります。以上です。
○岩村委員長 ありがとうございます。
それでは、村田先生、お願いいたします。
○村田委員 ありがとうございます。村田です。
今、変曲点分析については御説明いただきましたので、それ以外にも、私が今回この委員会でずっと注意しておりましたのは、時間的制約もある中で、中位所得層との比率を注意しておりました。例えば5ページの平成25年でもマル2で第1・十分位の平均消費水準は中位所得階層の約6割に達していることが目安となっておりますし、あるいは経済学においても一般的なものとしては、マル5のOECDの国際水準だと中位値の半分に満たない層を相対的貧困層と呼んでいるというのは国際的スタンダードになっておりますので、そういったことも照らして、約6割を今までは目安としてきたのかと理解しておりました。
4ページでも、令和4年検証でa)中位所得層に対する消費水準ということで、それが減少していないかを確認する。今回検証しておりましても、大体7割とか、66%とか、6割以上を皆確保しておりましたので、問題ないかと判断していたと。これが説明になるか分かりませんけれども、私自身はそうやって判断していたということです。
以上になります。
○岩村委員長 ありがとうございました。
ほかの先生、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
ありがとうございます。
太田さん、いかがでしょうか。
○太田委員 ありがとうございました。
私自身も、水準均衡方式の普通の説明からすると、今いただいた御説明のほうが納得がいくし、それを踏まえて第1・十分位の生活水準を詳しく見るという考え方のほうが私は整合的だと思うので、お二人の先生方の御説明で了解できます。私としてはこの足りない時間で変曲点分析をやれとかそういう趣旨ではございません。これで安心して第1・十分位に議論を合わせられるだろうと思う次第でございます。ありがとうございました。
○岩村委員長 ありがとうございました。
それでは、資料1についてほかに何か御意見、御質問等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、次に資料2の取りまとめに向けた方向性(案)について御審議をいただきたいと思います。
この資料2は大きく2つの項目に分かれております。そこで、まず前半部分について御議論いただきたいと思いますので、前半部分について事務局から説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○榎社会・援護局保護課調整官 事務局の榎でございます。
それでは、資料2「取りまとめに向けた方向性(案)について」、この中でも前半部分でございます平成25年改定当時の生活扶助基準に係る再検討の部分について御説明をさせていただきます。
まず、資料2自体につきましては、これまで7回にわたって専門委員会で御議論いただいた内容を踏まえまして、取りまとめに向けた方向性の案を整理したものでございます。
前半部分につきましては、生活扶助基準の再検討に関して、25年改定当時の経済情勢の評価、それから、25年改定当時の一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準の乖離の評価、これらにそれぞれ分けて構成してございます。
3ページを御覧いただければと思います。
まず、25年改定当時の経済情勢の評価について整理をしております。最高裁判決の趣旨及び内容を踏まえた対応の在り方を検討するに当たっては、判決の法的効果等の検討とは別に、統計データに基づき、25年改定当時の生活扶助基準の水準を再検討する必要があるということで、まず手始めに主な経済指標を確認してございます。
3つ目の○にございますとおり、平成20年から23年にかけて消費、物価、賃金いずれも大きな落ち込みが確認され、こうした背景には20年のリーマンショックが大きく影響しているものと考えられる、と整理してございます。また、食料や光熱・水道、こういった支出の減少が当時の物価や原油価格の動向と整合しているということで、リーマンショックによって消費が冷えた影響が低所得世帯において特に大きかったといった解釈が妥当ではないか、とまとめております。
続きまして、下段の部分でございます。改定当時の一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準の乖離の評価について整理をしてございます。
まずマル1としまして、「令和4年検証と同様の集計方法に基づく水準の検証」について整理しています。
1つ目、一番下の○でございますけれども、これまでの生活扶助基準の水準に関する評価・検証の経緯をまとめてございます。一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているかといった観点から検証を行うことを基本としてきたこと、また、中位所得層の消費実態に対する低所得層の消費実態の相対的な変化の状況についても参考指標として確認してきたことを記載してございます。
4ページを御覧ください。
2つ目の○になりますけれども、今回の生活扶助基準の水準の再検討は、これまでの定期検証との連続性・整合性を確保する観点から、同様の手法に基づくことが適当と考えられ、最新の知見である令和4年検証と同様の方法に基づくことが合理的、としてございます。
3つ目の○では、平成21年全国消費実態調査を集計した結果として、夫婦子1人世帯(勤労者世帯)の年収階級第1・十分位において、平成25年改定前の生活扶助基準額に対して生活扶助相当支出額はマイナス12.0%乖離していたことなどを整理してございます。
その上で、上から4つ目の○でございます。最高裁は、当時の厚生労働大臣が生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間に不均衡が生じていると判断したことについて、統計等の客観的な数値等との合理的関連性、また、専門的知見との整合性に欠けるところがあるとは言い難いと判示しておりました。これに対しまして、これまでの確認結果は、平成25年改定当時の生活扶助基準の引下げの契機を一定程度裏づけるものと考えることができる、と整理してございます。
5ページを御覧ください。
1つ目の○では、令和4年検証と同様の指標により集団の状況変化を確認した結果として、消費支出額の中位所得層対比の比率、それから、固定的経費割合について、平成16年時点よりも状況の悪化が確認されたといったことなどをまとめております。
2つ目の○では、当時の経済情勢の評価について整理をしております。リーマンショック等の影響を踏まえれば、平成21年時点の年収階級第1・十分位の消費水準は平時の水準としては低過ぎると見るべきであり、一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準の乖離の評価に当たっては、リーマンショックに起因する特殊要因の影響を緩和する観点から、適切に補正した上で補正後の水準に基づく必要がある、とまとめております。
6ページを御覧ください。
マルの2番としまして、「生活扶助相当支出額の補正方法」について整理をしてございます。
1つ目の○では、考えられる補正方法として、評価時点を考慮する方法と他の所得階層の消費動向を反映する方法の2つをお示ししております。
その上で、2つ目の○で、評価時点を考慮する方法、具体的には家計調査の変動率を用いて補正する方法になりますが、この方法は定期検証との連続性・整合性の確保が可能であること。また、令和4年検証において、新型コロナの影響確認に当たって家計調査を用いた経緯があることなどを踏まえて、こちらの方がより適切な方法であると考えられる、と整理してございます。
4つ目の○を御覧いただければと思います。家計調査の変動率の終点について、当時の改定までに参照し得た最新のデータは平成24年平均であることを踏まえて、平成24年を終点とするのが一案、としてございます。
ただし、家計調査の変動率は、平成24年を終点とした場合と25年を終点とした場合では3%ポイント程度の乖離が見られるといった御指摘があったことも踏まえまして、平成25年を終点とすることや、あるいは平成24年と25年の平均水準に対する変動率を用いること、こういった方法も別案として位置づけてございます。この点に関しまして、平成25年平均のデータは平成25年8月の基準改定の時点では利用できなかったといった点に留意が必要ではございますけれども、3段階実施で施行していた中で3年目までには利用可能であったデータでございますので、この点を踏まえれば選択し得るもの、ということで付け加えてございます。
続いて、7ページを御覧いただければと思います。
1つ目の○では世帯分布調整値の取扱いを整理してございます。考え方として合理的であり、世帯消費動向指数に導入されている手法ということではありますけれども、これまで生活扶助基準の改定に採用した実績のない手法であるということも踏まえて取り扱うべき、と整理してございます。
それから、2つ目の○は外れ値処理の取扱いでございます。頻度の低い消費支出の状況を反映できなくなる可能性があることに加え、手法の選択に当たって恣意性の排除が課題となることも踏まえて取り扱うべき、とまとめてございます。
続いて、8ページを御覧ください。
マルの3番としまして、「乖離の評価」について整理してございます。
1つ目の○では3つのパターンで補正の試算結果をお示ししております。まず(i)としまして、終点を平成24年とする場合の結果をお示ししてございます。そして、(ii)は、終点を平成25年とする場合、(iii)は終点を24年と25年の平均水準とする場合でございます。いずれも世帯分布調整などの調整を施さないものでお示ししてございます。
2つ目の○については、補正した結果の評価について整理をしてございます。「補正後の結果は、いずれも補正前に比べて水準が上昇する。その一方で、補正後であっても平成16年には満たない水準であり、生活扶助基準額は、平成25年改定前と、ゆがみ調整(2分の1処理)のみ反映した後ともに、いずれのパターンにおいても補正後の額を上回っている」ということで整理をしてございます。
また、3つ目の○でございます。生活扶助相当支出額の中位所得層対比の比率が平成16年とおおむね近い水準となるということにも言及をしてございます。
その上で、4つ目の○で乖離の評価を整理してございます。「平成25年改定前の生活扶助基準の水準は、仮にゆがみ調整(2分の1処理)を反映するとした場合を含め、(i)から(iii)のいずれの補正方法を採るとしても、一般低所得世帯の消費水準に対して不均衡が生じていたと評価すべき」とまとめてございます。
一番下の○については、平成24年検証で生活扶助基準の水準の検証が行われなかったこととの関係を整理してございます。詳細は黒ポツ3つに分けて記載のとおりでございますけれども、平成24年検証当時は統計上の限界などによって乖離の確認ができなかったけれども、その後の平成29年や令和4年の検証において手法が改善されたことにより、確認できるようになったと評価できる旨をおまとめしてございます。
9ページを御覧ください。
仮に(i)~(iii)でお示ししました補正後の生活扶助相当支出額と均衡するように生活扶助基準を改定する場合の改定率をお示ししてございます。この改定率は、ゆがみ調整(2分の1処理)を反映した後の基準額に対する改定率でございまして、平成25年改定のデフレ調整による引下げ幅マイナス4.78%と比較可能な数字ということでございます。
まず、(i)については終点を平成24年とする場合の補正結果に基づく改定率でございまして、数字としましてはマイナス2.49%となってございます。また、(ii)は終点を25年とする場合で、改定率はマイナス5.54%、(iii)は平成24年と25年の平均水準に基づくものでございます。この場合の改定率はマイナス4.01%と見込まれる、としてございます。
(i)と(iii)については、当時のデフレ調整によるマイナス4.78%の引下げ幅に比べて小さな引下げ幅になるものです。その一方で、(ii)については逆により大きな引下げ幅になることを示しております。ただし、(ii)については不利益変更に該当することになりますので、実際に適用するとした場合には、デフレ調整と同じマイナス4.78%が限度になると見込まれるところでございます。
資料2の前半部分について、事務局からの説明は以上でございます。今お示ししました案に対しまして、表現振りや過不足がないかなどを含めまして、お気づきの点がございましたら御指摘いただければと思います。御審議のほど、何卒よろしくお願いいたします。
○岩村委員長 ありがとうございました。
資料2につきまして、まず前半部分について事務局から今説明をいただきました。
性格上、経済に関する論点がどうしても多いのですけれども、本日は冒頭申し上げましたように取りまとめに向けた議論をお願いするということでございますので、経済系の先生方以外、法学系あるいは社会福祉系の先生からも御発言を頂戴できますと大変ありがたいと思っております。
どなたからでも結構ですので、御意見、御質問がありましたらお願いしたいと思います。
では、太田先生、どうぞ。
○太田委員 どうもすみません。もし経済系の先生がおっしゃらないのであれば、私から少しお願いというかお伺いしておきたいことがあります。
まず1点目、報告書のスタイルなのですが、7ページに何々であることも踏まえて取り扱うべきと考えるとあるのですが、これが結論になるのですか。それとも事務局なので遠慮してくださってそう書いてあるだけで、そこから先に、だから今回は世帯分布調整はやめようとか、そういうことを書くつもりで考えておられるのですか。
私としては、意見がまとまるのであれば書くべきだと思います。これこれも踏まえて取り扱うべきであるといった結論はオープンにしておく書き方はどうかと思います。もちろん最終決定は行政が行うべきですが、とはいえ、審議会というか諮問機関ですので、やはり結論が決まる限りは明確に知見を示す必要があると思います。だから、この書き方は一体どういうつもりなのかという気がしますので、そこをお伺いしておきたい。とりわけ、これまでの議論からすると、やる必要はないのではないかという感じの意見が強かったように私は理解していますので、そう書くべきではないのかと。何でこんな中途半端な書き方をするのかとも思います。
それから、5ページの終点の問題でございますが、前回までの議論からすると、24年を終点とするのが一案で、対案は別案として考えられるということですが、もう少し選択が明確にあった。要するにベストは24年だろうと。対案は、そうではなく、これは考えられないではないという形で、要するにプレファレンスがはっきりしていたと思うのですよね。ですから、その点は、私の解釈のミス、間違いかもしれませんが、もうちょっとはっきり書くべきではないかと思います。
それから、これは法学者として個人的な意見でございますが、平成25年改定時に使えた情報以上のものを使うと、その分実質的な遡及性が上がりますので、それは避けるべきだと考えます。だから、私はやはり24年を終期とすることが、経済学的な観点とは別に政策的判断として、法学的な判断としていいと思います。それに対して、27年4月の3段階目の3年目までには利用可能だったと指摘されている。このこと自体は嘘ではないのですが、ただ、3段階で変えていくときに、2段階目、3段階目の際に新しいデータをどんどん取り込んで変えていったわけではないのですよね。だから、その点では関連のない、レレバンスのない事実なので、論拠にならないと思います。
とりわけ結論を見て考えるという部分が出ますが、つまり、終点を遅らせる、25年を終点にすると、24年が終点のときに比べて被保護者に対して不利になる、保護基準を引き下げる方向に働きます。つまり、実際に当時使えたデータ以上のものを使うことで不利な裁量行使を行うとなると、その分やはり裁量の説明責任が生じるわけで、それはやりにくいのではないかと。やりにくいというのは、きちんとした説明を行えないのではないか、行うのが難しいのではないかと思います。
より後ろまで見るほうがベストの裁量行使になるという論証には、6ページの○の5番目の説明、ただしの説明も一応の書き方に止まり、そういうものにはなっていないですよね。後には使えたのだからここまでいっても大丈夫ではないかという程度のものですから、ちょっと弱いのではないかなと思います。そうすると、私としては、ここは明確に24年を終点とするのが最善だと。一番自然であり、合理的であるとはっきり書くべきだと思います。
私からの意見は以上です。
○岩村委員長 ありがとうございました。
御意見のほうは承るということで、またそれを踏まえてどう考えるかということだと思いますが、最初は書き方の問題で御質問がありましたので、その点について御説明いただければと思います。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 ありがとうございます。
表現ぶりについても、御確認いただきたかったところでございます。いただいた御意見を踏まえて、各委員とも御相談させていただきながら、取りまとめに向けて対応したいと考えております。
なお、現時点の書きぶりについては、特に世帯分布調整値や外れ値処理に対してはある程度慎重な御意見が多かったと受け止めてはございましたけれども、明確に否定されるような御意見は特段なかったように受け止めておりましたので、そういったことも踏まえて、結果的にはやや曖昧な表現になっていたかもしれませんけれども、一旦こういう形でお示しさせていただいたところです。
いずれにしましても、御指摘を踏まえて、ほかの委員の御意見なども踏まえながら、表現ぶりについては精査させていただきたいと思います。
○岩村委員長 ありがとうございます。
私の理解では、今日はあくまでも取りまとめの方向性ということで資料を作っていただいているので、そういう点で断定的な表現というのは控えていると理解しております。最終的に方向性が固まれば、今度はどういう書き方をするかということを改めて考えるということかと理解しております。
ほかにはいかがでございましょう。よろしいでしょうか。
それでは、資料2の前半部分についてはひとまずここまでということにさせていただきまして、続けて資料2の後半、判決の効果及び平成25年当時の生活扶助基準に係る検討を踏まえた対応の在り方についてということになりますけれども、それについて事務局からまず説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○千田社会・援護局保護課長補佐 事務局の千田でございます。
私のほうから資料2の後半部分、10ページ以降について説明させていただきたいと思います。
資料11ページを御覧ください。
まず、判決の効果と今回検討する再改定の関係性についての整理でございます。○が4点ございます。
まず○の1点目でございますけれども、今回の最高裁判決の主文については、大阪訴訟及び名古屋訴訟の原告に対する当時の処分を取り消すものということで、これまで法学的観点から御議論を頂戴しました各種の判決の法的評価というのは当該原告の処分に対して及ぶものである。したがって、他の訴訟の原告や訴訟を提起していない被保護者、この後者のほうは、便宜上、この後、以下ということで「原告以外の被保護者」と略称定義をさせていただきますが、これらの方々には直接及ばないと整理ができると考えております。したがいまして、判決の効果の観点からは、生活保護法の8条2項の規律を基本としつつも、当該原告について、判決、そして、これまでの争訟の経緯を踏まえて、どのように対応すべきか、検討することが求められると考えております。
なお、括弧書きで記載してございますのは、今般の大阪訴訟及び名古屋訴訟以外の訴訟原告の方々であって、幾つか既に判決の確定したものがございますけれども、それに加えて、今後確定するであろうものというのも大阪・名古屋の原告の方々への対応と同様にすることが適当ではないかと考えてございます。
続きまして、2点目、3点目が関係するというか違った見方ということでございますけれども、2点目という点では、「他方で」と書かせていただいておりますが、原告以外、訴えを起こしていない被保護者との関係においては、今回、判決の理由中の判断として、物価変動率のみを直接の指標としてデフレ調整をすることとした点において、当時の生活扶助基準改定、このことを以下「本件改定」とさせていただきますが、当時の改定の違法性を指摘している。この点に関して、司法判断に対する尊重の観点から行政としてどのように対応するかということの検討が同時に求められると考えてございます。
この点におきまして、3点目でございますが、判決の形成力を見ますと、処分の取り消しがされた原告の方々については前の状態に復元しているという一方で、上に挙げましたその理由中の判断の中ではゆがみ調整は違法ではないと。それから、デフレ調整に関しても、当時不均衡があると判断したことについては、統計等の数字あるいは専門的知見との整合性に欠けるところがあるとは言い難いという判示をされておりますので、そういう意味では、生活保護法の8条2項の規律を踏まえつつ、かつ判決主文に基づく原告への対応、そして、理由中の判断に基づく当時の基準改定に関する検討、これらをどのように両立するかということが問題になろうかと考えています。
したがいまして、最後の○でございますけれども、仮に当時の基準改定を新しい検証結果に基づいてやり直すということにした場合において、そのことは原告の方々にも適用されるということになりますから、そういう意味で、当時の基準改定をやり直すということの適否については、判決の効果等との関連で検討を進めてきたということでまとめをさせていただいているものであります。
次の12ページでございますが、まず1つ目の括弧で、当時の生活扶助基準を再改定することの適否でございます。
○の1つ目でございますけれども、既に改定済みの基準を再度改定できるかという点でございます。この点につきましては、これまでの議論を整理させていただきますと、生活保護法の8条2項の規定に沿うものだと考えております。これは既に改定された当時の基準について、今般の最高裁判決の判示の内容を踏まえつつ、改めてゆがみ調整を行う。それから、専門的知見に基づいて、生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との均衡を図る観点から再度改定をする。このことは8条2項に沿うと言えるのではないかと記載してございます。
それから、マル2の再改定とこれまで御意見、御議論いただきました憲法等の関連性でございます。
○の1つ目としては、生活保護を受ける権利につきましては、その時々の社会的・経済的条件等によって判断決定されるというものでありますので、そういう意味では、生活保護法に基づく権利自体の性質による制約が内在されていると言うべきではないかとおまとめをさせていただいております。
それから、2点目につきましては、御指摘のありました受益的処分の不利益変更に関する判例法理について、今回の事例において直接適用するべきものではないのではないかというのが2つ目。
3点目が結論でございますけれども、これらを踏まえると、憲法あるいは法の一般原則から、当時の基準の再改定が必ずしも否定されるものではなく、むしろ今回の最高裁判決の理由中の判断が行政にどのような対応を求めているのかといった観点、あるいは一般的な国民生活の状況と基準との相関関係、それから、原告の方々への配慮の要否等の観点から、総合的に検討されるということが必要なのではないかとおまとめをさせていただいております。
その上で、下の括弧でございますが、判決の効果、そして、平成25年当時の基準に係る検討を踏まえた対応の基本的な考え方ということで、これも事務局としての整理でございますので、この点についても違った観点等がございましたら御指摘をいただければと思います。
1つ目の○につきましては、今般の司法判断を踏まえた再改定の目的ということで、3つの観点で整理をさせていただきました。まず第一にということで、判決の効果、これまでの訴訟の経緯を踏まえた原告及び後続訴訟の原告への対応を適切に実施すること。2つ目としましては、判決の理由中の判断を尊重しつつ、原告以外の被保護者の方々に対しても適切な対応を行うこと。第三にということで、この点は第一、第二両方に係る点と理解しておりますけれども、生活保護法の8条2項が定める最低限度の生活の需要を満たすに十分かつ超えないものでなければならない。この規定による水準の維持ということが目的の一つに挙げられると考えております。
それから、「また」ということで、再改定を検討するに当たっては、対象者の立場に応じた整理が必要と考えてございます。具体的には、判決で処分の取消しの確定した原告、それから、現在係争中である後続訴訟の原告、そして、訴訟を提起していないその他の方々の3つの立場に区別して考えることが適当ではないかと考えております。
こうした考え方に基づきまして、13ページから再改定の具体的な内容、そして、手段についての整理案をお示しさせていただいております。
まず13ページでございますが、ゆがみ調整の再実施に係る記載でございます。
○が7点ほどございますけれども、まず1点目につきましては最高裁判決の内容でございます。ゆがみ調整については、判決の中で違法性を指摘されているというものではないということが記載されています。
その点を踏まえまして、2つ目の○でございますが、まず原告以外の被保護者の方々との関係においては、統計的根拠に基づくゆがみ調整は制度全体の合理性及び公平性を維持するために不可欠であると考えるべきではないかということであります。
関連しまして、3つ目の○でございますが、御指摘のありましたとおり、ゆがみ調整の実施に当たっては、当時の25年の基準部会の報告書及びその審議経過において、特に子供のいる世帯等に関して慎重な検討を行うということを御指摘いただいておりましたこと、この点からもゆがみ調整に加え、2分の1処理の再実施は妥当と整理することができるのではないかと書かせていただいております。
そして、4点目としては、今回の判決についてはゆがみ分も含めて処分取消しを行っておりますけれども、判決の理由中ではゆがみ調整については違法とされてございませんので、これを再度実施するということは、生活保護法の8条2項の記述も併せて考えますれば、比較衡量として原告の方々との関係においても許容されるということができる。
加えまして、その次の○で、後続訴訟の原告の方々についても、趣旨が共通することから、改定を適用することが適当ではないかと考えております。
以上を踏まえまして、下から2つ目の○でございますが、再改定に際しても、ゆがみ調整を全ての対象者に共通して実施することができると考えることができるのではないかとおまとめをしたいと。これまでの議論も踏まえつつ、このように書かせていただいておりますが、改めて御意見、御指摘があればいただければと思います。
なお、最後の○につきましては、判決で処分取消しが確定した原告の方々については、判決の形成力でゆがみ調整も含めて復元しているということ。このことに加えまして、これまでの争訟の経過として判決に至ったというある種の特別な事情に鑑みて、判決の確定した原告、そして、後続訴訟の方々、原告の方々には、ゆがみ調整分も含めて実施しないということは解決の一手法ということはできるのではないかと考えますけれども、この手法につきましては一方で今回の判決がゆがみ調整を違法とまでは言っていないということであったり、それから、生活保護法の8条2項との関係を考えると、この解決手法についてはやや慎重な考慮が必要なのではないかと考えております。
続きまして、次の14ページでございますが、高さ調整の再実施に関する整理案でございます。
まずもって、1つ目の○でございますが、高さ調整については、今回の判決において、物価変動率のみを直接の指標として用いた点に過誤・欠落があるとされたものでございます。したがいまして、仮に再改定を検討する場合においては、適切な指標を用いて、合理的な根拠に基づく改定を行うことが前提と。その上で、以下、対象者の置かれた状況に応じての整理ということでまとめてございます。
まず、○の2個目、3個目、4個目の記載が原告以外の被保護者、そして、原告及び後続訴訟の原告の皆様との関係性をまとめた基本的な考え方になってございます。
○の2点目でございますけれども、原告以外の被保護者の方々については、生活保護法の8条2項に基づいて、最低限度の生活の需要を的確に反映させる基準の維持の必要性があると考えております。そして、判決の効力というのは今回の判決の対象になった当事者の原告の皆様に及ぶということで、一方で、原告以外の被保険者の方々に直接及ばないという状況でございますことから、むしろ判決の理由中の判断を踏まえた上で、8条2項の規定に沿うように再改定を検討する必要があるのではないかと考えてございます。
加えまして、3点目で、繰り返しではございますけれども、今回の判決の中では一般国民の生活水準との間に不均衡があると判断したことについては、各種統計等との整合性に欠けるところがあるとは言い難いと判示もされておりますことから、8条2項の規定とも併せて、経済学的な検討を踏まえた指標を用いて水準を再設定することが適当と考えるべきではないかとしてございます。
その上で、4点目の○でございますけれども、今回の判決で処分取消しが確定した原告及びその後続訴訟の原告についても、これまでの争訟の経緯を置いて考えれば、原告以外の被保護者と同様に、8条2項に基づいて、当時の適切な水準として経済学的な検討を踏まえた指標を用いて水準を再設定するということが適当であると考えられるのではないかということでございます。
これらを前提としつつ、最後の2つの○でございますが、下から2つ目の○、「この点」とございますけれども、原告の方々、そして、後続訴訟の方々については、本件改定に基づく保護変更決定以降、10年以上という長きにわたって争訟が継続されてきたことへの負担、それから、その争訟の結果として今回の最高裁判決の主文の直接の対象とされているというお立場への配慮を重視して、解決の一手法として改めての高さ調整は行わない。このような手法も考えられるのではないかと。
それから、「他方で」ということで、仮に原告の皆様に対して、このような経緯や立場を重視し、改めての高さ調整を行わないのであれば、原告以外についても、無差別平等原則を重視し、原告と同様の対応とすべきと。このような意見もあったということでございます。
なお書きで記載しておりますのは、前段部分につきましては、仮に生活扶助基準の1類費、2類費を再改定するという場合には、その部分については平成29年検証において高さ、体系の検証が実施され、それが30年改定に反映されているということから、30年以降の期間については影響が及ばないと考えることができるのではないか。他方で、「加えて」以降につきましては、本日前段の御議論を踏まえまして、これについては改めて整理をさせていただければと思います。
続けて15ページでございますが、これまでの説明を前提としつつ、仮にその再改定をするという場合の具体的手法についての整理の案でございます。
まず、マル1の原告以外の被保護者との関係でございます。
○の1点目、原告以外の被保護者との関係では、当時の処分は現在まで有効である。そうすると、仮にそうした方々に対する追加給付を行うとした場合には、現在時点での新たな職権処分を行うことが必要となるのではないかと考えております。
そして、「また」ということで、本件改定、平成25年当時の改定でございますが、その改定について、判決の理由中で指摘された物価変動率のみを直接の指標としてデフレ調整をするとした点に係る違法性を是正する観点から、高さ調整を再度実施するとした上で、経済学的なこれまでの検討を踏まえたより適切な水準と当時の告示改定後の水準との差額の給付をするという場合には、新しく生活保護法8条に基づく基準を制定して、当該基準に基づいてその差額分というのを追加的にお支払いするという手法が考えられるのではないか。このことによって、判決理由中で指摘された点に対する是正措置とある種考えることができるのではないかというものでございます。
それから、マル2でございまして、判決で処分の取消しが確定した原告及び後続訴訟の原告との関係ということで、原告の方々との関係におきましても、一定の差額を支給するということであれば、そのための新たな基準を制定する方法などが考えられるのではないかということでございます。ただし、仮に原告の皆様については、ゆがみ調整分も含めて前の水準との差額を給付するのであれば、特段の告示制定行為は必要にならず、むしろ判決の形成力によって生じている給付請求権に対する支払いと考えることもできるのではないかというものでございます。
最後、マル3については基準の遡及適用ということで、当時の基準を再度改定した上で、過去時点に遡及で適用するという方法については、3点考慮要素を掲げておりますけれども、この点も踏まえて慎重に考えることが適当ではないかと思っておりますが、この点も必要に応じて御意見をいただければと思います。
1点目としては、法の一般原則として遡及適用はみだりに行うべきではないと解されているということ。
それから、2点目としては、訴えを起こしていない方々との関係では処分は有効であるので、現在時点の処分で足りるということ。
それから、3点目はやや技術的な話ですけれども、生活扶助基準自体、平成25年以降もさらなる改定が重ねられておりますので、既に溶け込んでいるもの、過去時点のものをどう改正するのかという立法技術的な問題も生じてしまうのではないかと考えてございます。
次ページ以降につきましては参考資料ということで、生活保護法の関連規定、それから、17ページ、18ページ、19ページにつきましては、この点に関連する第6回専門委員会における法学の先生からの御意見の再掲となってございます。
以上を踏まえて、御審議のほど、よろしくお願いいたします。
以上です。
○岩村委員長 ありがとうございました。
議論に入る前に1点、入り口のところで私から確認させていただきたいのですが、15ページで改定の具体的方法というので御説明をいただいたところですけれども、これは原告及び後続訴訟の原告と原告以外の被保護者を分けて考えるならばという理解でよろしいのですよね。
○千田社会・援護局保護課長補佐 御指摘のとおりです。それぞれを区別するならば、どういう手法があるかということをまとめたものでございます。
○岩村委員長 ありがとうございます。
それでは、今、資料2の後半部分について御説明をいただいたところであります。
先ほどの前半部分と同じで、後半部分は法学に関する論点が多いのですけれども、今日は取りまとめに向けた議論ということでもございますので、法学系以外の先生からも御発言を頂戴できるとありがたいと思います。
それでは、どなたからでも結構ですので、御意見あるいは御質問、コメントがあればと思いますが、いかがでございましょうか。
興津先生、どうぞ。
○興津委員 興津です。
どうも御説明ありがとうございました。
大変論点が多岐にわたっているのですけれども、まず、14ページの高さ調整の再実施というところから少しコメントさせていただきたいと思います。
高さ調整については、最高裁判決の理由中でデフレ調整については明確に違法とされていますけれども、それ以外の消費を根拠とした調整については必ずしも違法とされていないというのがまず出発点になっていて、それで消費を根拠とする再実施を経済学的な検討に基づいて行う余地があるのではないかというスタンスで書かれているのかと思います。
ただし、4つ目の○ですかね。「また」というところ、最高裁判決により処分取消しが確定した原告及び後続訴訟の原告について、争訟の経緯を置いて考えれば、高さ調整、水準を再設定することが適当であると考えられるとしつつ、次の○では原告と後続訴訟の当事者は別に考える余地があるという両論が併記されている形になっております。
この点について、私の現時点での所見を申し上げますと、生活保護法8条2項を適用して水準を再設定するということを考えたときに、原告とそれ以外の者を異なって取り扱うということは理屈としては出てきにくいのかなという印象を受けております。
5つ目の○に書かれてきたとおり、原告が訴訟追行してきたこれまでの経緯というのを踏まえて、原告を別扱いにするということは心情的には確かに理解できることなのですけれども、生活保護法8条2項に基づく厚労大臣の裁量権行使においての考慮事項になるかというと、直ちにはそう言いにくいかなという印象を受けております。したがって、この点は、8条2項というところからすると、原告とそれ以外の者を分けないほうが理屈は通りやすいかなというのがまず一つであります。
ただ他方で、今度はゆがみ調整のところの13ページの最後の○で書かれていることなのですけれども、最高裁によって減額変更処分の取消判決が確定しているので、それ以前の状態に戻っていて、原告はそれ以前の処分に基づいて追加支給を受けられる権利が現在発生している。それに基づいて満額を支払うというのは、差し当たりの法的な対応としては問題がないということなのかなと思います。この点については原告とそれ以外の者とは法的な違いができているのだろうと思います。
そういうふうに考えたときに、あり得る考え方としては、原告とそれ以外の者とを区別せずに、8条2項を徹底させて、水準調整を両方について行うというやり方もある一方で、原告については、最後の○のところで示されたとおり、満額を支払い、原告以外の者については最高裁の判決理由中の判断を尊重して基準の違法性を是正する。それでしかるべき追給を行うというような余地もあり得るのかなという感じがいたしました。
すなわち、私の現時点での感触としては、原告とそれ以外の者とを区別するのであれば、13ページの最後の○のところが慎重な考慮が必要ではないかというまとめ方をされているのですけれども、この方法もそれなりに理屈は通るのかなという見解でございます。
15ページで改定の具体的手法を幾つか挙げておられるのですけれども、原告とそれ以外の者とを区別した場合、かつ、原告については高さ調整を行わないという14ページで示唆された考え方を取る場合、基準の設定を原告とそれ以外の者とで分けて基準をつくらなければならないという点が告示の一般性という観点から法的にどうなのかという問題が出てくると思うのですけれども、原告については判決の形成力に基づいて満額の追及をするという見解を取るのであれば、この15ページのマル2の2つ目の○の「ただし」というところですけれども、特別の対応をしなくて追加支給が可能になるという対応ができますので、法的にはそれなりの一貫性が出てくるのかなというような印象を持ったところであります。
したがいまして、これから詰めていくべきこととして、原告と原告以外の者を区別することが是か非かというのをまず検討する必要があると思うのですけれども、仮に区別した場合、原告についてどちらの水準で給付をするのか、ゆがみ調整のみを実施した給付をするのか、ゆがみ調整も実施しない給付を実施するのかという点でさらに考え方が分かれてくるのかなというような印象を持ったところでございます。
差し当たり以上です。
○岩村委員長 ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょうか。
では、太田先生、次に嵩先生ということにさせていただきたいと思いますので、太田先生、どうぞ。
○太田委員 すみません。嵩さんを追い抜かしたみたいになって申し訳ないです。
御説明ありがとうございました。
興津委員の意見もあって、なるほどとは思ったのですが、私はやはり今までの自分の立場を変えない立場からの発言と、それから、お伺いしたいところがございます。
まず、13ページについては、最高裁は確かに全部処分を取り消しているわけですが、適法である、裁量の過誤・欠落を基礎づけない部分についてまで取り消して権利救済を与えているわけですが、厳密に考えれば、適法の部分に権利救済を与える権限は最高裁といえどもないはずなので、その部分については、むしろそういうことをやったというのはやはりやり直しを予定しているのだと読むべきではないかと思います。
したがって、主文だけ見れば、一番最後のなお書きにある、興津委員が分けるのだったらいっそこちらもありなのではないかとおっしゃった立場については、成立するとは思いますが、判決の読み方及びその後の行政裁量の行使の仕方として私はやはり抵抗を覚えます。
その上で、14ページですが、原告以外の被保護者について高さ(水準)調整をやるというのは、狭い意味での紛争の蒸し返しというか、紛争の蒸し返しのことを厳格に考えると、原告以外の被保護者との間では紛争がありませんでしたから、成り立たないわけではないと思います。
ただし、前回来言っていますように、この訴訟はかなり代表的性格が強い、要するに没個性といいますか非個性的なものであったということと、高さ調整をもう一度やり直すときの消費を見たという理由は、やはり究極的には前訴において出せたと思います。前訴において理由の差し替えをして、やはり自分を十分にディフェンドする責務、自分をディフェンドするというのは、何が何でも勝つというよりも、自分をディフェンドすることによって公益を守るという責務を行政庁は負っているはずで、それを十分に果たしていないということになるのではないか。その案件について調査検討を続ける義務、責務というのは、原告との間でのみ基礎づけられるわけではないだろうと。とりわけこのような基準改定という一般性の高いものについて違法が指摘されて訴訟になっているときは、適用される人全員との関係で行政はきちんと理由を差し替えてディフェンドをするべきであったということになると思います。その当時の原告でない人との関係では事後的に、原告との関係で蒸し返しと評価されるようなことをやっていいのだということにはならないのではないかなという気がいたします。
そういたしますと、今まで言ってきたことの繰り返しにはなるのですが、原告との関係で高さ調整ができないと考えるのであれば、原告以外との関係でも高さ調整はできないのではないかなという気はします。
それから、岩村委員長の質問に対して、15ページの生活保護法に基づく新たな基準を制定しということについて、これは原告と原告以外の人を分けるときのお話だとおっしゃいました。興津委員の提案するケースだとそういうことになります。ただ、私がある種中心にしている、原告か否かを問わず、2分の1処理を含めたゆがみ調整だけやるということになった場合も、基準の遡及適用の技術的な難しさということを考えると、計算して新たな基準を制定するということにやはりなるのではないのかなと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
それから、遡及改定を本当にやると、実際に法技術的には難しいだろうと思いますので、実質的な遡及改定に当たるものを新たな基準を制定してやるということは分かるのですが、そうすると、途中の計算が分からない。要するに基準改定で幾ら幾らだと額しか出てこない可能性があって、これは被保護者との関係で何でそういうことになるのか、ごまかされていないかみたいな感じの途中の思考の経過が分からなくなるような基準だと困るので、その部分は、そういうことをやる際には、反対ではありませんが、御対応いただきたい。基準の制定理由とか、どういう計算式でこれが出てくるのかというのをちゃんと分かるような基準ないしは基準の理由書を作っておいていただきたいと思います。
取りあえずは以上でございます。
○岩村委員長 ありがとうございます。
質問の点がありましたので、嵩さんに発言を回す前に、まず事務局からお答えいただきたいと思います。
○千田社会・援護局保護課長補佐 事務局でございます。御質問ありがとうございます。
太田委員の御質問は、15ページが原告と原告以外を区別しない場合もあり得る対応なのではないかという御指摘だったと思います。それはおっしゃるとおりと認識しております。
パターン分けとして、原告と原告以外を区別する対応と、原告と原告以外を区別せずに一律の対応をする場合、後者については、8条2項に基づいて新しい水準で一本の線を引く場合と、太田委員の言われるようなゆがみ調整だけを実施する案というのが両方論理的にはあるなと思いますけれども、後者のパターンにおいても、仮に追加給付をするということであれば、この15ページのような遡及改定の難しさということを踏まえて、現在の基準設定によって処分をして給付するという方法が法制的には取り得るのではないかと考えております。
差し当たり以上ですけれども、不足があれば御指摘いただければと思います。
○岩村委員長 ありがとうございます。
太田先生、いかがでしょうか。
○太田委員 先ほどの説明は取りあえずそれで分かりました。また改めてお願いします。
○岩村委員長 ありがとうございます。
それでは、お待たせしました。嵩先生、どうぞ。
○嵩委員 ありがとうございました。
御説明ありがとうございます。
原告と原告以外ということで、まず原告については、前回も申し上げたとおりですけれども、結論としまして、ゆがみ調整は2分の1処理も含めて適法とされているので、8条2項の規律に従いますと、やはりあるべき水準を目指していくということですので、改めてゆがみ調整分を実施するということについては、既得権の侵害とかという点については違法ではないということで、なし得るのではないかと考えています。
他方で、デフレ調整については、紛争の一回的解決というような要請が特に強く原告の方については及ぶと思いますし、生活保護は最低限の生活を保障するもので、一身専属権ですので、その要請は強いと思いますので、高さ調整をし直すということについてはやや否定的に考えております。
これを原告以外の方についてはどうするかということで、8条2項の規律があり、前半の議論にあったように、本来あるべきだったと考えられる水準に再設定していくということが一つ考えられますけれども、その際、原告と異なる水準でよいのかということで、先ほどの興津委員と太田委員の御意見はうなずけるところもあります。
他方で、こちらの14ページで「無差別平等の原則を重視し」ということで、生活保護法2条の規律との関係が問題になっていると思います。無差別平等の原則については、同じニーズであれば保護の程度についても平等にすべきという規範とも捉えられます。そうなりますと、原告と原告以外とでニーズが同じであれば、差を設けるということはこの規律に反する可能性が出てくると思います。
ただ他方で、改めて立法担当者の執筆した書籍を読み直しますと、無差別平等の原則は受給資格に関する原則で、保護の程度の決定に関する指導原理はこの無差別平等の原理に求められないとも書いてありました。現在でもその見解が妥当しているということになると、原告と原告以外に差が生じても直ちに無差別平等の原則には抵触しないと考えられます。
ただ、生活保護法2条に抵触しないとしても、さらに憲法14条の平等原則の規律は及ぶのかなと思います。この点、紛争の一回的解決の要請がより強く及ぶ原告と、広く言えば紛争の一回的解決という要請は及ぶと思いますけれども、直ちに原告と同じぐらいの程度では及ぶとはあまり思われない原告以外の方との間で追加支給に関して区別を設けることについては、場合によっては合理的な区別と解される余地はあると思いますけれども、恐らく区別の程度というか差についても合理性の判断は影響が生じると思いますので、前半の議論とも関係してきますが、どの程度の差になるのかとかという点も慎重に確認していく必要があると思っております。
あと、もし一緒にすればあまり問題は多くないのかもしれませんが、別々の基準を原告と原告以外という形で設ける場合には、これまでの告示とはまた違う枠組みになってくると思うので、新たな基準を制定するということなので、別の告示を立てるとか、現行の告示の枠組みというか、そちらの解釈などに影響しないような工夫が必要かなと思っております。
差し当たり以上です。
○岩村委員長 ありがとうございました。
ほかに御発言はいかがでしょうか。
それでは、永田委員、どうぞ。
○永田委員 ありがとうございます。
法学の先生方のお話を聞かせていただいて、私なりの理解ということでお聞きいただければと思います。報告書案では調整方法で項が立てられていると思うのですが、私なりに整理すると、1つ目は原告、これは確定判決を受けていない原告の方も含みますが、に対しては、取消し判決の形成力によって平成25年前の基準に戻す義務があるということ。2つ目に、しかしながら、法第8条2項の最低限度の上限規律の要請があるということ。3つ目に、生活保護は原則として全国一律に平等に行われるという原則があるということ。こういった3つの要請があって、その中で議論を続けているのではないかなと思っています。どうもこれらの3つの要請が完全に満たされる方策というのはないようですので、ある種の判断をして対応の在り方というのを考えて導き出していかないといけないということだと思います。
その際、1番目に、裁判所の判断の執行であり、8条2項の上限の規律というのはこの関係には直接作用しないのではないかなと考えますし、原告の皆さんに対しては、ゆがみ調整の可否は一旦置くとしても、旧基準で原状回復を行わなければならないというのがほぼ一致した考え方かなと思います。
これを基準に考えると、平成25年前の基準に戻して、かつ原告以外の当時の受給者に対してもその基準を適用するということになると、今度は3の統一的な実施という要請には応えられるのですけれども、原告以外の方については8条2項の要請に応えられないということになってしまいます。
判決が「不均衡が生じていることを判断したこと」について認め、それについて、従来とは連続性のある方法で確からしい数値が得られているにもかかわらず、それでよいのかというような問題は、生活保護基準の在り方という観点からは問題意識としては重要ではないかなと思っています。これは太田先生が先ほどおっしゃっていたような形の御意見かなと私は理解しています。
もう一つは、原告に対しては同じく平成25年前の基準に戻して、原告以外については今回計算したような新たな基準で違法性を是正するということが考えられるかと思います。ただ、この場合は判決の形成力と8条2項の要請には応えられるのですが、全国一律にという基準には応えられない。公平性、平等性の原則には応えられないという先ほど嵩委員がおっしゃったような問題があるのかなと思っています。これは分けて考えるというような観点で興津先生もおっしゃっていたのかなと私は理解しました。
もう一つは、2と3の要請を優先して、すなわち今回計算した基準で原告も含めてその基準を適用するという選択肢も考えられるわけですが、裁判所の判断の執行というのはほかの要請よりは強いのではないかなというのが私の意見ですので、実質的には私の理解では1番目と2番目の対応策というのがあって、今議論されているのではないかと。もちろん3番目も理論上はそういうこともあり得るという大きく3つの対応策があるのかなと私としては理解しているところです。
これは質問にもなりますが、今のように3つの大きな対応策について、法学の先生方の中でも御意見が分かれている状況かと思いますが、報告書として意見として1つにまとめていく方向を目指していくのか、もしくは、今回もそういう形になっていると思いますが、両論というか、幾つかの考え方を併記していくような考え方になっていくのか、それはここで議論すべきことなのかもしれませんが、報告書の形としてどういう方向を目指していくのか、その点も少し議論していく必要があるのかなと感じている次第です。
以上です。
○岩村委員長 ありがとうございます。
委員長として、今の最後の点についてお答えすると、報告書としてはもちろん1つの結論にまとめるというのが望ましいとは思いますが、御意見が分かれるということで、なかなか最終的に1つにはまとまらないということであれば、両論併記ということもあるかなとは考えております。そこは、今日は取りまとめに向けての議論の1回目ですけれども、今後また御議論させていただければと思っておりますし、今後の議論の進み方というか流れに依存するかなとは思います。個人的には、委員長としてはやはり1つにまとめたいなとは思いますが、なかなか難しいかもしれないねということは率直に言うとあるかなと思っています。
○永田委員 ありがとうございます。
私自身も今の中でどれが最も適当なのかというのを今クリアカットに判断できないような状況ですので、今後の御議論の中で皆さんと協議していければと思います。ありがとうございます。
○岩村委員長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでございましょうか。
それでは、まず若林委員、お願いします。
○若林委員
若林です。
これまで法律の先生方や福祉の先生方のお話を伺い、私の立場から少し意見を述べさせていただきます。
まず、物価のみに基づく判断は時期尚早であったと考えています。結果的に、全国消費実態調査や家計調査の結果を見ても明らかなように、水準をやや低く見積もり過ぎていた点は否めないと思います。
その上で申し上げたいのは、高さ調整そのものは制度の持続性を確保するうえで一定の必要性があったということです。物価による調整は即時性のあるデータをもとに迅速に判断できるという利点がある一方で、今回のように、全国消費実態調査や家計調査の個票を厚生労働省に取得していただき、丁寧に分析するには時間を要します。その結果を踏まえても、物価で調整した際に下げ過ぎであったものの、高さ調整の必要性自体は指標上も明らかであったと考えます。つまり、これまでの物価調整での調整方法を用いても、今回のように過去と整合的な調整をしても、やはり高さ調整が必要だったということは明らかだと思います。
したがって、金額をどのように扱うか、あるいは裁判の結果をどのように反映するかを考える際には、修正前の数値を「本来の値であった」と理解するのではなく、あくまで判決の趣旨を踏まえたうえで、整合性のある計算を用いた高さ調整後の数値と、法律上受給者に給付していく金額を検討していくべきだと考えます。その際、高さ調整の考え方を明確に位置づけ、制度としての必要性を明記しておくことが重要だと思います。
当時はデフレ局面であり、結果的に水準を引き下げる方向で調整が行われましたが、現在はインフレ局面にあり、逆の事象が生じています。今後、高さ調整の考え方を曖昧にしたままでは、制度の持続性の観点からも課題が残るのではないかと懸念しています。その意味で、高さ調整は必要な措置であったという点を改めて申し上げたいと思います。
ただし、実際にどこまで金額を戻すかといった具体的な判断については、法律の観点から本日ご議論のあった先生方のご意見を参考に、まとめていければと考えております。
以上です。
○岩村委員長 ありがとうございます。
そのほか、いかがでございましょうか。
では、別所委員、どうぞ。
○別所委員 別所です。
大体若林さんのおっしゃったことに同意しているのですが、僕も一応意見を言っておこうかなと思います。
いろいろ論点があるので、よく分からないところもあるので、よく分からないことについては言わないことにして、高さ調整とゆがみ調整なのですが、ゆがみ調整については実施しても問題なさそうということです。
高さ調整についてですが、今の改定というか水準の決め方として、平成25年時点でどうすべきであったのかということを考えるべきかなという気がします。そうすると、高さ(水準)の調整というのをもうちょっとこのような専門委員会に聞いてやるべきで、やった結果こうだったという数字が出ましたので、それに従う形で設定するのがよいのではないかなと。だから、しないというのは、それはそれでどうかなという気はします。
しないと思ったもう一つの理由が、あまり法学的ではない、法律の話とは関係ないといえば関係ないのですけれども、行政の責任とかという話が言われるのですが、残念ながら行政はお金もうけをしている団体ではないので、財源はほかの人からもらってこないといけないという事情があって、そうすると、それが多分8条2項に具体化というか、規定の下にある考え方なのだと思うのですけれども、そう考えると、紛争の一回的解決という話は分かるのですが、高さ調整は今回はゼロでというのは行き過ぎのような気がするなと私は今のところ思っています。
以上です。
○岩村委員長 ありがとうございます。
ほかにございますでしょうか。
では、村田先生、お願いします。
○村田委員 村田です。
私も今の若林先生と別所先生と基本的にはほぼ同じかなとは思っているのですが、申し上げますと、今回、専門委員会を立ち上げて検討するということで、水準についてもいろいろなやり方で検討してまいりまして、時間の制約もありましたけれども、今日の資料にもありましたように、いろいろなやり方をやっても「一般低所得世帯の消費水準に対して不均衡が生じていたと評価すべきと考える」ということについて私は賛成しております。ですので、やはり8条2項に照らしても、それは行うのが原則というか基本だと考えております。
ただ一方で、いろいろ法律の話もあって、できないということであれば、そういう事情があるということなのかもしれないですが、それはなるべく一般国民の方々にも分かりやすい形で説明していただくほうが理解が得やすいと思いますので、これはお願いになるかもしれませんが、そう考えております。
あと一つ、まだ私がちゃんと理解できていないのかもしれないのですが、思いましたのは、全国一律の平等の原則という表現で説明された方もいらっしゃったかと思うので、平等ということですね。経済学でも平等とか格差の問題はいろいろ議論があるところなのですが、先ほど嵩先生もおっしゃったかもしれないのですが、平等と言った場合、何で測るか。今回、間違っているかもしれませんが、原告の方とか後続訴訟の方は、そのために労力や時間を費やして、いろいろな犠牲を、犠牲と言ってはいけないかもしれないのですけれども、努力というか、経済学的に言うとコストをかけたということ、努力をした方々ですよね。一方で、何かしたのかもしれないですが、少なくとも何かしたのかがよく分からない方々もたくさんいらっしゃる。そういう方々に同じことをするということが平等なのだということであれば、やはりそれについても分かりやすくどこかに書いていただいたほうが誤解されないのではないかと思うのです。
私、一所懸命聞いていても、まだ100%理解できているか分からない部分があるので、なるべく誤解のないように取りまとめていただければと思いますし、繰り返しになりますが、不均衡が生じていたという結果が得られているわけですから、私はそこについては尊重していただければという気持ちを今日時点では持っております。
以上になります。
○岩村委員長 ありがとうございます。
そのほかいかがでございましょうか。
太田委員、どうぞ。
○太田委員 ありがとうございました。
1点自分で言い忘れたと思っていたことと、経済の先生からの御指摘を踏まえて、及ばずながら少し補充しておきたいと思います。
まず、今回のような検討を平成24年検証のときにちゃんとやっておいてくれればよかったというのは間違いありません。したがって、私は個人的には24年検証当時の委員会と事務局の振る舞いに非常に不満を持っています。こんな苦労をしなくてよかったはずだ。真面目にやっておけと正直思っております。
問題は、結局、あのときにきちんとした検証をせずに乱暴な引下げをしてしまったというコストを誰がどのような形で負担するかということなのだろうと思います。もちろん考え方として、少なくとも、何人かおっしゃったように、興津さんもおっしゃったように、原告と原告でない人を分けるというのはその観点ではある意味素直な発想でございます。間違いなく争う、闘うことにコストを費やされて犠牲を払った。それに対する見合いはあってしかるべきだというのはもちろん考えられるところでございます。
ただ、私や嵩先生が気にしているのは、恐らく生活保護で保護基準を改定するときに、争ったか争っていないかというのはそんなに重要な事実と評価するべきものなのかというところに疑問がある。とりわけ新しい基準という表現から、保護基準を今の保護基準の横づけでつくるのかなと私は思っていますが、それでもやはり生活保護法の8条1項に基づいて、8条2項の枠内でつくらないといけない。8条2項に掲げられているものを考慮しないといけない。その中には確かに「その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮」するとなっているのですけれども、何よりも重要なのは最低限度の生活の需要なのです。問題は、需要に関わるかどうかということです。そうすると、争ったかどうかというのは生活保護、最低生活を営むときのニーズにはやはり関わらないのではないか。そうなったときに、それで嵩さんと私は恐らく被保護者の中で争ったか争っていないかで分けてしまうことへの抵抗があるのだと理解しています。嵩さんの意見を誤解しているかもしれませんが。
ですから、あとは取扱いをどうするのかというところで、だったら原告も含めて全部高さ調整をもう一度行うということもあるのですけれども、これは言わばもう一度原告に対して、彼らが争った箇所について是正をしたと称して同じような処分をやって、再度争うことを強要することになります。今度の判断が間違えているとは私は思いません。24年当時にこれだけ慎重な考慮をやっておいてくれれば行政が勝てたかもしれないとは正直思いますけれども、その争うコストをもう一度原告に負担させるのが全体として公正なのかと。やはり平成24年当時にこれだけ詰めた検討をなぜしておかなかったかと。その詰めた検討しておかなかったことはすべてひたすら行政の側に責任があるのです。その点で、諦めるなら行政の不利益に諦めないといけないのではないかなという感じで思っている次第でございます。
○岩村委員長 ありがとうございます。
そのほかいかがでしょうか。
それでは、おおむね皆様御意見を頂戴したと思いますので、今日はこの辺りでということにさせていただければと思います。
いずれにせよ、先生方から非常に貴重な御意見、コメントなどをいただきまして、取りまとめに向けた議論の第1回目としては充実した内容であったと思います。
今日先生方から頂戴した御意見の内容を踏まえて、次回に向けて事務局で報告書案を作成いただいて、最終的なまとめということになるので、適宜各委員の先生方と御相談をさせていただくということになろうと思いますので、その上で、次回は報告書案について審議をしたいと考えております。
先生方、大変お忙しいとは思いますけれども、事務局のほうから御相談のお願いがありましたら、大変恐縮ですけれども、快くお受けいただければありがたく存じます。
それでは、今日の審議はここまでということにさせていただきたいと思います。
最後、次回の開催について事務局から説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○千田社会・援護局保護課長補佐 事務局でございます。
次回の開催日程については、事務局より追って連絡をさせていただきます。よろしくお願いします。
○岩村委員長 ありがとうございました。
それでは、今日のこの委員会の審議は終了とさせていただきたいと思います。
本当に先生方、お忙しい中をお集まりいただきまして、また、今日は非常に貴重な御意見等をいただきまして、ありがとうございました。
それでは、これをもちまして散会といたします。どうもありがとうございました。

