第54回 社会保障審議会生活保護基準部会議事録

日時

令和7年10月16日(木) 18:00~20:00

場所

AP虎ノ門11階B室
(東京都港区西新橋1-6-15NS虎ノ門ビル)

出席者(五十音順)

議題

  • 調査実施時点以降の社会経済情勢の変化の反映方法
  • その他報告事項(最高裁判決への対応に関する専門委員会の開催状況)

議事録

○岩村部会長 皆様、こんばんは。定刻でございますので、ただいまから第54回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開始させていただきます。
 委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中を御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 まず、事務局から、本日の委員の出欠状況と資料の確認をお願いいたします。また、オンラインで御出席の委員の方がいらっしゃいますので、会議の発言方法等についても、改めてということになりますが御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○加藤社会・援護局保護課長補佐 本日は、対面及びオンラインを組み合わせての実施とさせていただきます。また、動画配信システムでのライブ配信により一般公開する形としております。アーカイブ配信はいたしませんので、あらかじめ御了承ください。
 まず、本日の委員の出欠状況でございますが、嵩委員から御欠席との連絡を受けております。
 続けて、前回の基準部会の開催以降、事務局に人事異動がございましたので、御紹介させていただきます。
 鹿沼社会・援護局長でございます。
○鹿沼社会・援護局長 社会・援護局長の鹿沼でございます。
 本日は遅い時間に申し訳ございません。どうぞ忌憚のない御意見をいただければと思いますので、よろしくお願いします。
○加藤社会・援護局保護課長補佐 伊澤大臣官房審議官でございます。
○伊澤大臣官房審議官 伊澤でございます。よろしくお願いいたします。
○加藤社会・援護局保護課長補佐 林大臣官房審議官でございます。
○林大臣官房審議官 林です。よろしくお願いいたします。
○加藤社会・援護局保護課長補佐 石川地域保健福祉施策特別分析官でございます。
○石川地域保健福祉施策特別分析官 どうぞよろしくお願いします。
○加藤社会・援護局保護課長補佐 池上社会・援護局総務課長でございます。
○池上社会・援護局総務課長 よろしくお願いいたします。
○加藤社会・援護局保護課長補佐 榎生活保護統括数理調整官でございます。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 榎です。どうぞよろしくお願いいたします。
○加藤社会・援護局保護課長補佐 それでは、事務局より、お手元の資料と会議の運営方法の確認をさせていただきます。
 本日の資料でございますが、議事に関しまして、資料1「社会経済情勢の変化を把握するための経済指標等」、資料2「一般低所得世帯の消費データの充実・活用の方法について」、資料3「最高裁判決への対応に関する専門委員会の開催状況」を御用意しております。
 会場にお越しの委員におかれましては、机上に用意してございます。過不足等ございましたら事務局にお申しつけください。
 オンラインにて出席の委員におかれましては、電子媒体でお送りしております資料を御覧いただければと思います。同様の資料をホームページにも掲載してございますので、資料の不足等ございましたら、恐縮ですが、ホームページからダウンロードいただくなどの御対応をお願いいたします。
 次に、発言方法につきまして、オンラインで御参加の委員の皆様におかれましては、画面の下にマイクのアイコンが出ていると思います。会議の進行中は、基本的に皆様のマイクをミュートにしていただきます。御発言をされる際には、Zoomツールバーの「リアクション」から「手を挙げる」をクリックいただき、委員長の御指名を受けてからマイクのミュートを解除して御発言ください。御発言が終わりました後は、Zoomツールバーの「リアクション」から「手を下ろす」をクリックいただき、併せて、再度マイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
 以上でございます。
○岩村部会長 ありがとうございました。
 それでは、早速議事に入りたいと存じます。
 今日の議事は「調査実施時点以降の社会経済情勢の変化の反映方法」についてでありまして、まずは資料1から、事務局から説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 社会・援護局保護課の榎でございます。
 それでは、資料1「社会経済情勢の変化を把握するための経済指標等」について御説明をいたします。
 まず、2ページ以降でございますが、全国家計構造調査の調査実施時点以降の社会経済情勢の変化について、その反映方法に係る検討課題をお示ししてございます。
 3ページを御覧ください。
 本年6月に生活保護基準部会を開催いたしましたが、その際にお示しをした令和7・8年のこの部会における議題案でございます。このうち、赤で囲ってございます調査実施時点以降の社会経済情勢の変化の反映方法、この部分が今回特に御議論いただきたいテーマでございます。
 なお、消費実態による検証を補完する方法の部分におきまして、※書きを追加してございます。こちらについては、6月の部会で各委員からいただいた御意見を踏まえまして、消費実態による検証を補完する検証方法の検討には、生活扶助と比較する低所得者の所得階層は年収第1・十分位が適当かどうか、この確認も含むということを明示させていただいてございます。
 4ページを御覧いただければと思います。
 こちらも本年6月の本部会の資料でございます。今後のスケジュールをお示ししたものでございますが、令和8年の年末までにかけまして、順次検討作業を進めていくこととなってございます。
 現時点では、令和6年の全国家計構造調査の個票データがまだ利用可能となってございませんので、令和7年中についてはその個票データを使用する必要がないテーマについて御議論いただきたいと考えてございます。
 今回御議論いただく社会経済情勢の変化の反映方法の議論につきましては、今回に加えまして令和8年にも改めて御議論いただくことを想定してございます。
 続きまして、5ページを御覧いただければと思います。
 こちらも本年6月の本部会の資料でございます。調査実施時点以降の社会経済情勢の変化の反映方法に関する論点をお示ししたものでございます。
 ページ下部の赤字部分を御覧いただければと思いますが、全国家計構造調査の調査時点から、検証作業の取りまとめ時点までの消費実態等の社会経済情勢の変化をどのように捉えるか、こういった論点をお示ししてございます。この論点に関する資料をまとめたものが資料1でございます。
 後段に記載してございます消費データの充実方法、こちらがもう一つの論点になりますけれども、こちらについては後ほど御説明をさせていただきます資料2のほうで整理をしてございます。
 7ページを御覧ください。
 6月の本部会において各委員からいただいた主な御意見を概要としておまとめをしてございます。
 1つ目の○にございますが、一般低所得世帯と生活保護基準の関係をどう考えるか、中位所得の方々の水準と比較検討も含め検討する必要があるのではないか、このような御意見をいただいてございます。
 また、2つ目の○にございますとおり、令和6年全国家計構造調査について、検証後適用されるまでに3年ほどラグがある。足元で2%、3%という物価インフレ率があるため3年のラグというのは無視できないインパクトがあると、このような御趣旨の御意見もあったところでございます。
 続いて、8ページ以降でございます。こちらでは足下の経済変動を把握するための経済指標についてお示しをしてございます。
 9ページ目を御覧ください。
 今回、資料1で御議論いただきたい論点案を整理してございます。論点のマル1については経済情勢の変化をどのように捉えるかということでございますが、細かく見て2つほどに分けてございます。
 1つ目のポツが1点目でございます。定期検証との連続性、整合性を踏まえますと、一般低所得世帯の消費データを参照するということが基本になると考えられるところでございますが、その場合において、「消費データとしてどのような指標を参照することが考えられるか」、この点について御議論をいただきたく考えてございます。
 それから、2点目としまして、消費データ以外の経済指標という点では、物価と賃金などが考えられるところでございます。どのような指標をどのような考え方で参照することが考えられるか、この点についても御議論をお願いできればと思います。
 また、論点のマル2でございます。経済指標により把握される経済情勢のほか、生活扶助基準の改定に当たって参酌すべきものがあるか、この点について御議論をいただきたく思います。「例えば」ということで、感染症の感染拡大、生活保護受給者を含めて実施される物価高対策の実施状況、こういったものを例示してございますけれども、これらに限らず何か思い当たるものがございましたら、ぜひ御意見を頂戴できるとありがたく存じます。
 10ページを御覧ください。
 消費・物価・賃金、それぞれに関する主な統計調査の概要をまとめてございます。
 11ページを御覧ください。
 家計調査による消費支出のデータをお示ししてございます。家計調査には様々な系列のデータがございますが、ここでは2人以上の勤労者世帯について、年収階級の全体と十分位や五分位で区切ったものをそれぞれお示ししてございます。
 ページの下部にございますグラフを御覧いただきますと、それぞれの系列の推移をお示ししてございます。足下の動向はどの系列で見ましても、この期間についてはおおむね同じ傾向となっている状況でございます。
 12ページを御覧いただければと思います。
 こちらも家計調査による消費支出のデータになりますけれども、夫婦子1人世帯の勤労者世帯に限って集計をした結果をお示ししてございます。
 表の中に集計世帯数を掲載してございますけれども、夫婦子1人世帯の場合はこの集計世帯数が少なくなり、2人以上勤労者世帯よりもばらつきが大きくなるといった点に留意が必要になってまいります。
 13ページを御覧ください。
 2人以上勤労者世帯に係る生活扶助相当支出の前年比について、費目ごとの寄与度をお示ししたものでございます。
 家計調査では支出の内訳を細かく把握することができるということで、このような分析も可能になっているというところが一つ特徴としてございます。
 14ページにつきまして、こちらも夫婦子1人世帯の勤労者世帯についてということでございますが、先ほどの前ページと同様の寄与度分解をお示ししたものでございます。やはり年収階級第1・十分位などについてはサンプル数が少なくなるという点に留意をしていただく必要がございます。
 15ページを御覧いただければと思います。
 世帯消費動向指数、CTIミクロと呼ばれる指標を御紹介してございます。
 世帯消費動向指数の詳細につきましては、後ほど資料2のほうで御説明をさせていただければと考えてございますが、家計調査の結果に家計消費状況調査、それから家計消費単身モニター調査、これらを合成することによって、推計精度の向上を図っているという点が特徴でございます。
 また、世帯の消費支出の推移を見る上では、世帯の人数や世帯員の年齢など、このような変化の影響を除去した「分布調整値」を作成しているという点もまたもう一つの特徴になろうかと思います。
 16ページを御覧ください。
 政府の経済見通しにおける民間最終消費支出のデータをお示ししてございます。
 民間最終消費支出につきましては、翌年度の見通しが把握できるという点が特徴でございますけれども、見通しと実績が乖離をするという点が以前から問題点として指摘をされていたところでございます。
 17ページを御覧いただければと思います。
 社会保障生計調査のデータをお示ししてございます。
 この調査では、生活保護受給世帯の消費動向を把握することができるという調査でございまして、消費支出全体に加えまして、10大費目ごとの内訳も作成されてございます。
 18ページにつきましては、単身世帯について同様の調査結果をお示ししてございます。
 19ページを御覧いただければと思います。
 消費者物価指数のデータになります。
 全体の総合指数の推移をお示ししたものでございますけれども、グラフの部分にございますとおり、項目ごとの寄与度を分析することが可能となってございます。
 参考までに足下の動きを少し御紹介いたしますと、足下では生鮮食品を除く食料、それからエネルギー、こういった項目が比較的全体の物価上昇に大きく寄与しているという状況でございます。
 続いて、20ページを御覧ください。
 こちらも消費者物価指数のデータでございます。
 費目ごとに指数が作成されておりまして、費目単位で物価の動向を把握することができるという特徴がございます。
 そのほか、このページ下の表では、年間収入五分位別の指数をお示ししてございます。このような系列も作成されているというのがもう一つの特徴になろうかと思います。
 21ページにつきましても、五分位別の指数の続きでございます。
 22ページを御覧いただければと思います。
 毎月勤労統計調査による賃金の推移をお示ししたものでございます。ボーナスを含む現金給与総額について、全労働者、一般労働者、パートタイム労働者、それぞれで賃金の推移を把握することが可能となってございます。
 23ページ以降では、政府経済見通し等の資料をお示ししてございます。
 24ページを御覧いただきますと、本年1月に閣議決定された政府経済見通しの概要をお示ししてございます。
 民間消費に加えまして、雇用者報酬、消費者物価などについても見通しが示されているという点が特徴的でございます。
 そのほか、御参考でございますが、25ページ、26ページでは、骨太の方針や月例経済報告の抜粋をお示ししてございます。いずれについても足下の経済状況の評価や一部先行きに関する記載が含まれてございます。
 続いて、27ページ以降でございます。こちらは物価と最低限度の消費水準との関係に関する資料をお示ししているものでございます。
 これらの資料については、本年9月に開催されております第4回の最高裁判決への対応に関する専門委員会においてお示しをした資料を引用してございます。
 28ページを御覧ください。
 物価と消費の長期的な推移を比較した資料でございます。
 物価と消費の推移を長期的に見ますと、必ずしも常に同じ動きをしているわけではございませんけれども、グラフで網かけを入れてございます期間、ここが景気後退期でございます。この期間に着目をいたしますと比較的似通った動きになってまいります。とりわけ消費のほうが物価よりも大きく減少しているケースが多く見られる点が特徴かと思います。
 このように、消費の方が物価よりも大きく減少しているといった場合に、消費と物価の減少率の差をどのように解釈できるのかという点に関しまして、関連する資料を次ページ以降におまとめしてございます。
 29ページでございます。
 こちらは総務省統計局の資料を抜粋してございますが、統計局の解説を踏まえますと、消費が物価以上に減少する場合、両者の差は生活水準の低下と見ることもできるということでございます。
 30ページでございます。
 こちらは定量的な分析結果をお示ししたものでございます。
 実質家計可処分所得と消費者マインドの低下、これらがいずれも消費支出の減少に大きく寄与していたといったものになってございます。
 以上、御覧いただきましたように、物価と消費の関係を踏まえますと、物価は消費の一要素であるといった点が理解しやすいのではないかと考えてございます。
 31ページ以降では、その他の社会経済情勢に関する参考資料をお示ししてございます。
 32ページでは、公的年金と最低賃金の改定状況をお示ししてございます。
 生活保護制度とは趣旨・目的が異なるという点に御留意いただく必要がございます。
 33ページでございます。
 これまでに実施された主な物価高対応の施策をお示ししてございます。
 34ページ、35ページにつきましては、令和3年度以降に実施されております生活困窮者等を対象とした各種給付金をおまとめしてございます。
 生活保護受給者も支給対象となるものでございまして、表中の支給額の欄にある金額については、この実施期間中に1回限り、要はワンショットで支給される金額をお示ししてございます。
 また、表の右側の列を御覧いただきますと、生活保護制度上の対応を整理してございます。いずれの給付金についても、最低生活費の算定に当たって給付金を収入として認定しない取扱いとなってございます。
 資料1につきまして、事務局からの説明は以上でございます。これまで資料内で御紹介しました各種の指標や情報を踏まえていただきつつ、9ページで論点をお示ししてございますので、この論点を中心に御議論をお願いできればと思います。御審議のほど、何卒よろしくお願いいたします。
○岩村部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいま資料1につきまして説明をいただいたところでございますので、これについて御質問あるいは御意見がありましたらお願いしたいと思います。
 岡部委員、どうぞ。
○岡部委員 資料1の内容に入る前に、最高裁の違法判決を受けて意見を述べさせていただきます。
○岩村部会長 それは後ほど議題というか、3番目で御報告するということになっていますので、そのときにお願いしたいと思います。
○岡部委員 それは承知しておりますが、資料1の検討に入るに当たって、どうしても発言をしなければいけないことがあります。
○岩村部会長 専門委員会のほうでは、確かに最高裁判決を受けて、どのように考えたらいいのかということを検討はしております。ただ、そこでの整理としては、専門委員会で検討するのはあくまでも最高裁判決に対する対応との関係で議論をしますということにしていて、親である部会でどのようにこれからのものを考えるかというのはまた別の話ですということに整理をさせていただいております。ですので、専門委員会の議論とこちらの部会の議論というのは、一応分けて考えていただきたいと思っております。
○岡部委員 その上で発言をさせていただければと思います。といいますのは、現行の算定方式は水準均衡方式ですので、水準均衡方式の考え方と、今回行うに当たっての資料1に述べております審議内容について、関わっておりますので、御発言をさせていただければと思います。
○岩村部会長 分かりました。あくまでも部会の審議に必要な限りでの御発言にしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○岡部委員 これは部会の下に専門家の委員会が設置されているということで、前回の部会の持ち回りの会議の中でありましたので、それについては承知をしております。後で御説明があるかと思います。専門委員会で審議をされていますが、そもそも今回の部会での議論は、水準均衡方式についての現行算定方式の審議内容になりますので、そこで御発言をさせていただければと思います。
 水準均衡方式については、皆さん御承知かと思うのですが、1983年12月の中央社会福祉審議会の意見具申で、その当時の保護基準が妥当な水準に達した。今後、保護基準は一般国民の消費水準と相対的なもので設定して、1984年から現行の水準均衡方式で生活扶助基準の算定を行なわれているという経緯がございます。
 そこで言われているのは、一般世帯と被保護世帯の消費格差ではなく、変曲点という概念を用いて行っているということです。ちなみに、当時における一般世帯と被保護世帯の消費支出格差は約6割です。6割水準をキープするということで、これについては中位所得世帯と生活保護の受給世帯とはどれぐらいの差があるかということを確認をしているはずなのです。
 そこで、今回の部会で、事務局で御説明を今ここでしていただいています一般国民の消費水準は一般低所得世帯の消費水準、第1・十分位階層を指しているわけではないということです。そこで、部会初回で私は意見として第3・五分位階層のデータもお願いしたいと述べさせていただいています。これは第1・十分位だけで生活扶助基準を考えるということは、本来、水準均衡方式を導入したときの導入の考え方も含まれていますけれども、それだけということではないということです。
 ですので、私はこれまで生活扶助の基準部会、また中社審の生活専門分科会の委員、その後、社保審の福祉部会での委員もしておりましたので、この議論の中では、第3・五分位、中位所得との格差をどう考えるかということが一つ大きな争点になっていました。
 そこで、第3・五分位であるとか、場合によっては、第五十分位の中でどれに当たるかということの変曲点分析も行っています。ですから、そういうことで水準均衡方式で行うことの意義とか整合性を立ててきたという経緯がありますので、その趣旨からすると、お手を煩わすことになりますけれど、第3・五分位であるとか、場合によっては第五・十分位のデータも必要になってくると思いますので、ここのところはぜひ提供していただきたいと考えております。
 なお、水準均衡方式の理論的方法論のバックボーンについては、当時の上智大学の籠山京先生、慶應義塾大学の中鉢正美先生、イギリスのピーター・タウンゼント教授の知見を基にしてこの意見具申を行っているという経緯がございます。この点、お詳しい栃本一三郎先生に機会がありましたらお話をしていただければと思っています。これは今回会議でなくて結構です。そういうお時間があればということで、お願いできればと思います。
 その上で、資料1の3ページで、今回の検討に当たって、生活扶助基準本体の検証が、1のところで一般低所得世帯の消費実態と生活扶助基準の比較による検証ということです。高さを見るということ。また2番目の今回のところでいくと、社会経済情勢の変化の反映方法でどう考えるかとか、それを補完するということになります。比較する低所得階層は、年収第1・十分位が適当かどうかの確認を含むという記述となっています。含むと記述してありますので、私の意見としては、以降に御説明が入っておりますけれども、ここのところはより丁寧に、本来の趣旨からして、そういうことでナショナルには決めているわけではありませんので、これをぜひお願いをしたいということが私の意見ということです。専門委員会は議論しているということは承知しておりますけれども、本部会の中で議論をして、これからデータに当たって何が適切かということの御議論をしていただくということです。水準均衡方式の考え方や方法に立脚し行ってきたということで、本部会の審議がそれにかなっているかどうかということになるかと思いますので、それをお願いしたいということです。
 2点目、発言をさせてだきますけれども、今回、デフレ下の問題として生活保護基準の議論をしておりますが、これまでインフレ下において生活保護基準をどう考えるかという議論は、昭和30年代、40年代はこれが主としての議論だったわけです。そこの中で、算定方式がマーケットバスケットからエンゲル、それから格差縮小、そこの中でインフレ下の議論、あるいは高度経済成長から低成長下における生活保護基準の在り方、そして一定6割水準をキープした。それまでの3割、4割等と努力して上げてきたという経緯があります。インフレ下の中でどうするか、物価狂乱の中でどうするかという議論はこれまでも随分しておりますので、厚労省、当時は旧厚生省の蓄積があるところですので、そこのところも参考にしながら御検討いただければと思っております。
 以上です。
○岩村部会長 ありがとうございました。
 ほかに御意見、御質問がありましたらお願いいたします。
 では、宇南山先生、どうぞ。
○宇南山部会長代理 宇南山です。ありがとうございます。
 私は、少し大きいところから申し上げますと、今回、資料1の論点としては、定期検証の結果と併せて反映する仕組みと理解をしておりまして、水準均衡方式について、それを実装していくという点では、やはり5年に一度の全国家計構造調査というデータは絶対的に重要な役割を果たしていて、その調査が5年に一度しかないということと、その集計には一定の時間がかかり、さらに検証にも時間がかかるために、実際に反映されるまでのタイムラグがある。その論点で、均衡水準の水準がどうなっているかというのは5年に一度必ず検証されるという前提で考えると、その途中でやることというのは、私は、ある意味最低限、支障が出かねない部分に注目するべきだろうと考えています。
 また、最近は物価高などに対しても特別加算というような形で対応していますが、少なくとも過去数回にわたっては、全国家計構造調査に基づく水準均衡、特に第1・十分位との比較という形で検証してきておりますので、5年に一度しかなくて、その調査後に3年のラグがあるという仕組みはもう何度も繰り返されていますので、ここはある種構造的に何か反映できるような方法を考えるべきで、あまり過度に現状の経済情勢に合わせたような仕組みにするよりは、もう少しシステマチックに調整できる仕組みというものをつくるべきではないかと思っています。
 その上で、過去20年にわたっての日本との比較で言えば、やはり大きいのはインフレ率の上昇という部分で、その意味では、前回の部会でも発言させていただきましたが、物価上昇に対してどう反映させるかというのに主に注力すべきではないかなと考えています。
 議題2のほうに関連する部分なわけですけれども、消費に関するデータというのは、いろいろな改善があるとはいえ、やはり消費が大規模かつシステマチックに全国にわたって比較ができるのは全国家計構造調査ならではでありまして、家計調査などで代替できるものではないので、家計調査などで類似のことをやろうとすると、むしろ5年に一度の検証との齟齬が発生しかねないと思います。
 もちろんデータの改善で解決できればいいと思うのですけれども、現状の公的統計の体系の中では、それはなかなか難しいのではないかなと思っております。その点では、やはり消費の水準を維持するという観点では、消費者物価が一番重要なのだろうと考えています。
 その意味で気になりましたのが、総務省のQ&Aが出ていたところ、28ページ目で、消費水準と物価で、消費水準のほうが長期的に落ちているというように見えるグラフです。このグラフは30年ちょっとの期間ですので、非常に大きい世帯構造の変化が生じていまして、日本の平均的な世帯サイズ、世帯人員数が縮小していて、そのために消費支出が低下しているという側面がすごく強いのだと思います。少なくとも中期的に見れば、数年単位の動きで見れば、消費者物価指数はかなりの程度、消費水準と連動する。特にインフレ率が高い社会においては、連動性が高くなるだろうと想定できますので、私は、いろいろなデータを見ることは重要だとは思いますけれども、メインとなる論点というのは物価なのではないかなと考えております。
 また、これはどのように足下の経済情勢を捉えるかにもよるのですけれども、例えば毎年毎年の変動となると、家計調査はやはり使いにくいわけです。例えば5年に一度の基準改定の中間年で、前回の検証に使った全国家計構造調査の調査実施時点から以後3年分のデータなどをプールすれば、それなりに使える可能性はあるかと思います。もし消費状況を反映させようとするのであれば、少し家計調査を特別集計するようなことを考えないといけないのかなと思います。毎年ではなくて、検証とその後の3年間の家計調査とセットで、何か構造的、システマチックな制度を考えることとし、その場その場で家計調査が今こうなっているからこうみたいな場当たり的な対応は、何かと批判されやすく、中立性・客観性に劣るところがあると思います。まずはシステマチックな仕組みが必要だし、その際の中心になるのは物価だと思います。もし消費を反映するならば、家計調査を3年分ぐらいプールして分析するのがいいのではないかなと思っております。
 私からは以上です。
○岩村部会長 ありがとうございます。
 ほかの委員の皆様、いかがでございましょうか。
 岡部委員、どうぞ。
○岡部委員 今、宇南山委員から、また最高裁の判決に関連することなのですけれども、判決では、物価変動率のみを直接の指標としてデフレ調整を行った点について、違法という判断が下されているわけです。この点を考えると、物価変動率のみでインフレ調整を行うということも同様に考えるべきではないか。ですので、当然物価の変動率というのは大事な指標ですけれども、それ以外にきちんとこれらの審議を進めていくときには、この点を踏まえて判決と物価の変動率をどう捉えて、どこまで使って、どこまでそれ以外のもので調整していくのかということを検討しなければなりません。二度と同じことを繰り返すということはできませんので、ここのところは慎重に議論していいのではないかなと思っております。
 以上です。
○岩村部会長 ありがとうございます。
 1点だけ補足しますと、最高裁は、物価だけでやるのが違法と言っているわけではなくて、物価を使ってやったのだけれども、消費水準との関係がきちんと説明されていないですよねということなのです。そういう意味では、物価でやってはいけないとは言っていないのです。
○岡部委員 それは判決文を読ませていただいて、そうは言っていませんけれども、ただし、物価の変動率を使う場合については、今おっしゃっていたことを含めて、慎重に審議を進めていく必要があるということです。
 ですので、判決文でいくと、物価変動率のみを直接の指標として調整を行うことは駄目だということを言っていますので。
○岩村部会長 ですから、そうは言っていないのです。そうではないのです。
○岡部委員 ですけれども、消費のこととの関連も含めて、そこは慎重に、そこにちゃんと合致するようにしていかないと、基準部会の中での審議というのはそれほど慎重が必要だろうということになるかと思いますので、今ここで物価と消費の関係についてという御議論がありましたので、宇南山委員の御発言も受けて、また、部会長も御発言されましたので、そのことを含めてこのところは審議する必要があるだろうと。ですので、使い方についての議論が必要になってくると思います。
 以上です。
○岩村部会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでございましょうか。
 差し当たり資料1についてはよろしゅうございましょうか。
 栃本委員、どうぞ。
○栃本委員 資料1と2は関連がすごくあるものだから、どっちのほうで言っていいのかなと、ちょっと迷ってしまうところがありまして。
○岩村部会長 それでしたら資料2の説明に進みまして、その上でということでよろしくお願いできればと思いますが、よろしいですか。
○栃本委員 1点だけ、宇南山先生が28ページのところでお話しされた実は世帯のサイズというのが関係あるのだよと。そういうのも本当は見なければいけないというのは6月の議論とも関係あることなのです。
 この間思ったのだけれども、世帯のサイズとともに、素人的な発想かもしれないけれども、勤労者で見ていくとしても、勤労者の中の年齢のボリュームゾーンというのが変わっていくのではないですか。若い人たちの世帯から高齢層の世帯へと。そうすると、勤労世帯であるので、年金で暮らしている世帯とは違うとは言いながら、やはり勤労世帯における年齢のボリュームゾーンが移動するということになると、当然消費行動とか、それの結果でもある、家計支出というのは変わってくると考えます。勤労世帯でも子供が小さく、住宅費や教育費がかさむ、かつかつの生活に実際にはなっている年齢層とたとえば子育ても終わり子供も独立し、ローンもない、家賃も発生しない、夫婦二人の生活で逆にエンゲル係数が高くなる、食事にお金をかけたりするというようなライフスタイルになっているという風に年齢層が違ってきますよね。そして後者のボリュームが大きくなるということです。それがどのぐらいかというのは、科学的に研究はなかなかされていないとは思うのだけれども、また、直ちにそれを今回、来年のことで議論できるか分からないけれども、それで先ほど部会長に、資料2のほうにも関係あることなのでと申し上げたのです。
○岩村部会長 ありがとうございます。
 それでは、話の流れというと変ですが、資料2の説明をいただきたいと思います。「一般低所得世帯の消費データの充実・活用の方法について」というのが資料2でございますので、事務局どうぞよろしくお願いいたします。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 事務局でございます。
 それでは、資料2「一般低所得世帯の消費データの充実・活用の方法について」御説明をさせていただきます。
 まず、3ページを御覧いただければと思います。
 こちらは資料1の方でも御覧いただいたものでございまして、本年6月の本部会の資料でございます。調査実施時点以降の社会経済情勢の変化の反映方法に関する論点をお示ししたものでございます。
 ページの一番下の赤字部分を御覧いただければと思いますけれども、「一般低所得世帯の消費データについて、具体的にどのような情報の充実が必要となり、その充実・活用の方法として、具体的にどのような手法を取ることが考えられるか」、こういった論点をお示ししてございました。
 資料2については、この論点について関係する資料をおまとめしてございます。
 4ページ以降では、一般低所得世帯の消費データの充実・活用の方法に関連した資料を集めてお示しをしてございます。
 5ページ目を御覧いただければと思います。
 資料2を基に御議論いただきたい論点案について整理をさせていただいております。
 論点のマル1では、一般低所得世帯の消費データの具体的な充実の方法に関して御意見を伺いたく考えてございますけれども、細かな論点として、その下、黒ポツになりますが、4つほどお示しをしてございます。
 まず、1点目でございます。データの充実の観点から、消費に関する調査を新たに実施するということや、あるいは既存の消費に関する調査の調査規模を拡大する、こういった対応がまず考えられるかと思います。
 ただ、その場合には、調査にかかる費用、調査実施主体や調査世帯の負担についても考慮する必要があろうかと思います。
 このような点も踏まえまして、新規調査や既存調査の規模拡大について御意見を伺えればと考えてございます。
 それから、2点目でございます。新規調査や既存調査の拡大、こちらは仮に実現できるとしても、実施までに相当の期間を要することが想定されるところでございます。このため、令和9年改定を念頭に置いた場合には、当面の現実的な対応として別途検討が必要になってこようかと考えられます。
 そこで、既存のデータを活用しつつ、一般低所得世帯の消費データによる、推計精度の向上を図る方法に関して、その具体的な方策について何か御知見がございましたら賜れればと考えてございます。
 3点目でございます。総務省が公表している世帯消費動向指数を参考としたデータの充実・活用方法について、御意見を伺いたく考えてございます。
 世帯消費動向指数では、家計調査をほかの調査と合成することで、標本規模を疑似的に拡大し、推計精度の向上を図ってございます。生活扶助基準の改定に当たって、このような方法も参考にして、推計精度の向上を図ることが考えられ得るのかどうか、御意見を頂戴できればと思います。
 続いて、4点目でございます。家計調査の推計精度向上に資するその他の手法としまして、世帯主の年齢、それから世帯人数の変化、こうしたものの影響を除去する世帯分布調整、そのほか外れ値処理などの手法が考えられるところでございますけれども、こういった手法が効果的なものと言えるか、あるいはほかに何かより改善できる余地が考えられるのかどうか、御意見を伺えますと幸いでございます。
 それから、論点のマル2としまして、そのほかにデータの充実・活用に関して何か思い当たる点等ございましたら、併せて御意見を頂戴できるとありがたく存じます。
 6ページ目でございます。
 こちらは消費に関する主な統計調査の概要でございます。資料1でも御覧いただいたものから消費部分を抜粋したものでございます。
 7ページ目を御覧いただければと思います。
 消費動向指数の概要をお示ししてございます。消費動向指数は、家計調査の結果を補完し、消費全般の動向を捉える分析用データとして開発されたものでございます。このうち世帯消費動向指数、CTIミクロと呼ばれるものでございますが、ページの中央部にございますとおり、家計調査の結果を家計消費単身モニター調査と家計消費状況調査の結果と合成することによって、標本規模を疑似的に拡大し、なおかつ推計精度の向上を図ってございます。
 現時点では、所得階層別の指数というものが作成されてございませんので、低所得世帯に特化した動向把握という活用方法ができないという状況でございますけれども、推計精度向上の手法としまして参考になる部分もあるのではないかと考えてございます。
 続いて、8ページを御覧いただければと思います。
 世帯消費動向指数の推定方法の概要をお示ししてございます。
 ページ中央部の図の部分を御覧いただきますと、3つの調査の合成を、世帯主の年齢と世帯人員をクロスしたマトリックスの区分単位で行った上で、区分別のウエイトを用いて各系列の指数を作成する流れになってございます。
 ページの右側にございますとおり、基本的な基本系列に加えまして、世帯分布を調整した調整系列についても作成されているという点が特徴的でございます。1世帯当たりの平均的な消費支出の動向につきましては、各世帯の年齢構成や人員構成の変化についても影響を受けることとなります。この調整系列については、世帯構成を基準年で固定することによりまして、世帯構成の変化が消費支出に与える影響を除去するものでございます。
 9ページを御覧いただければと思います。
 家計消費状況調査の結果を合成する方法についてお示しをしてございます。家計消費状況調査は、高額で購入頻度の少ない品目の支出金額を調査するというものでございまして、家計調査が約9,000世帯を対象としていることに対して、この調査では約3万世帯を対象としてございます。このため、家計調査ではなかなか捉えにくい高額で購入頻度の少ない品目について、その動向の補完が可能になっているということでございます。調査結果の合成は、図の部分にございますとおり、品目単位で一定の算式に基づいて行われているということでございます。
 10ページを御覧いただければと思います。
 家計消費状況調査の対象品目をお示ししてございます。ページにございます表の部分では、2人以上の勤労者世帯のうち年収階級200万~300万円の世帯について、支出金額が高い順に品目を並び替えてございます。上位に入ってくる品目について、その多くは生活扶助相当以外の品目となってございますけれども、10番目のスマートフォン・携帯電話の本体価格、それから14番目のエアコン、この辺りは生活扶助相当であり、なおかつ購入頻度が少ないという品目に該当しますので、こういった品目の動向を家計調査より高い精度で把握することが可能になっているといった特徴がございます。
 なお、表中にございます支出世帯の欄の数字、こちらは2人以上勤労者世帯全体のデータとなりますので、その点、御留意をいただければと思います。
 続いて、11ページを御覧いただければと思います。
 統計的な手法を用いて推計精度を向上させる方策の例といたしまして、世帯分布調整の事例をお示ししてございます。
 上段の表にございますとおり、世帯主の平均年齢は上昇するという傾向が見られてございます。その一方で、世帯人員数については減少する傾向が見られてございます。1世帯当たりの平均的な消費支出の推移を見る上では、このような世帯構成の変化が影響していると考えられるところでございます。
 こうした世帯構成の変化の影響を除去したものが世帯分布調整値と呼ばれるものでございまして、このページの下段の表を御覧いただきますと、令和元年の世帯分布を固定した場合について試算した結果をお示ししてございます。
 世帯構成の変化の影響につきましては、この下にございます表の中の「影響度」という部分で確認することができます。これは上にございました原数値の表の対前年比と下段の表の対前年比の差を示したものでございまして、年によってプラスとなる場合と、マイナスとなる場合、それぞれございますけれども、世帯分布調整値の推移については、各世帯の消費の変化がより純粋に反映されていると解釈することが可能ではないかと考えてございます。
 全国家計構造調査に基づく夫婦子1人世帯、第1・十分位の生活扶助相当支出に対して、調査実施時点以降の消費動向を反映するといったことを想定した場合には、このような手法を用いて、世帯構成の変化の影響を考慮することも考えられるのではないかと思います。
 続いて、12ページを御覧いただければと思います。
 2人以上勤労者世帯の第1・十分位について、生活扶助相当支出の分布をお示ししてございます。金額が高い方に裾野が長い形状の分布となっている点が特徴的でございまして、高額支出の世帯が若干増えるだけでも、平均値に大きな影響を及ぼす可能性が想定されるところでございます。
 13ページを御覧いただければと思います。
 統計的な手法を用いて推計精度を向上させる方策の例としまして、外れ値処理の事例をお示ししてございます。先ほど御覧いただきました消費の分布の形状を踏まえますと、外れ値が平均値に及ぼす影響は大きくなりやすいという可能性が想定されるところでございまして、そうした場合に外れ値を統計的に処理するという方法が一つ考えられるかと思います。
 ページの中央にございます表では、これまでの定期検証において外れ値の取扱いを整理しているものでございます。
 平成29年検証では、基準体系の検証と水準の検証の双方において外れ値を処理することとしてございました。
 一方、令和4年検証においては、頻度の低い消費支出の状況を反映できなくなる可能性があるということ、それから、平均プラス3.5シグマを閾値とした場合に、閾値を超えるサンプルが存在しない、または存在するけれども仮に外れ値の処理をしたとしても算出結果にはほぼ影響がなかった、この点を確認したということを踏まえて、結果として外れ値の処理を行わないといった判断をしてございました。
 ページ下段の表の部分を御覧いただきますと、主な外れ値処理の方法についてお示しをしてございます。外れ値を検出する基準としては、平均値を中心として、標準偏差の2倍の範囲とする場合と、標準偏差の3倍の範囲とする場合がそれぞれございます。また、外れ値の処理方法としましては、閾値を超えたサンプルの値を閾値そのものに置き換える、トップコーディングと呼ばれます方法と、サンプルから除外をする。その上で平均を取るというトリム平均と呼ばれる方法がございます。
 14ページを御覧いただければと思います。
 2人以上勤労者世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出について、外れ値を処理した場合の試算結果をお示ししてございます。
 ページ左側の上から2つ目の表を御覧いただきますと、平均値を中心に、標準偏差の3倍の範囲を許容範囲としまして、外れ値を除外するトリム平均と呼ばれる方法で処理をした場合の結果をお示ししてございます。閾値を超えて除外されたサンプルの数については、表の下側にございますけれども、どの年も6~7世帯該当がございました。
 また、トリム平均の前年比を原数値と比較してみますと、おおむね毎年の変化幅が小さくなる傾向が確認されてございまして、外れ値を処理したことによって、毎年の数字の振れ幅が抑制されるといった効果が確認されるところでございます。
 15ページを御覧いただければと思います。
 先ほど御覧いただきました外れ値処理の試算結果を基にしまして、外れ値の特徴を分析したものになってございます。費目ごとに外れ値の影響を算出してみると、どの年も贈与金と国内遊学仕送り金の2品目が大きく影響していることが確認できます。
 それぞれの費目の定義については、このページの下側に記載してございます。贈与金については、せんべつ、香典などに加えまして、財産分与金や遺産分与金なども含まれております。このように突発的に高額な支出が発生し得る品目になってございます。
 また、国内遊学仕送り金につきましても、場合によっては突発的な高額というものが発生する可能性のある品目ではないかと考えられます。
 全国家計構造調査の調査実施時点以降の消費動向を反映する上では、このような増減が激しい費目が存在するという実態も踏まえつつ、合理的な方法を検討する必要があろうかと考えてございます。
 17ページを御覧いただければと思います。
 統計的な手法を用いて推計精度を向上させる方策の例としまして、中央値の事例をお示ししてございます。平均値については、支出額が大きい世帯の影響を受けやすいという特徴がございますが、これに対して、中央値はそのような影響を受けにくく、外れ値処理と似たような効果が期待されるところでございます。
 実際に平均値の前年比と中央値の前年比それぞれの推移を見比べてみますと、中央値のほうがおおむね変化幅が小さくなるという傾向が確認されます。外れ値処理のように複数の処理方法があるわけではございませんので、その点では比較的扱いやすい指標と言えるかと考えてございます。
 資料2について、事務局からの説明は以上でございます。資料内で御紹介しました各手法を踏まえていただきつつ、5ページで論点をお示ししてございましたので、そちらを中心に御議論をお願いできればと思います。御審議のほど、何卒よろしくお願いいたします。
○岩村部会長 ありがとうございました。
 それでは、資料1も併せてということになると思いますけれども、資料2を今説明いただきましたので、御意見、御質問があればと思いますが、栃本先生、いかがでございましょうか。
○栃本委員 2つ併せて議論したほうがいいのではないかということと、先ほど少しだけ付け加えたのは、たまたまではないのですけれども、宇南山先生が世帯のサイズのことを話されたので、前に考えたのは、分かりやすく言うと30代中心の勤労世帯のボリュームが多いところと、60代ぐらいの多いところでは当然変わってきますよねということを忘れないうちに言っただけということですので、2つ併せてまた後ほど気がついたところをお話しさせていただきます。
○岩村部会長 承知しました。
 それでは、宇南山先生、そして若林先生とお手を挙げていただいていますので、まず宇南山先生、次いで若林先生ということでお願いをしたいと思います。
 では、宇南山先生、どうぞ。
○宇南山部会長代理 ありがとうございます。
 今回、消費データの充実・活用ということでありますが、これは基本的には全国家計構造調査が5年に一度なので、その間にどういうふうに捉えることができるか、どういうデータが活用可能かということを議論していると理解しております。その意味で、中心になるのは消費データであるならば、家計調査が中心になるだろうと考えております。
 今回の資料では、世帯消費動向指数、もしくはCTIミクロと言われる統計を中心に議論していただいているのですけれども、このCTIミクロというのは、そもそも速報性が高い、かつ消費の動向を捉えるための統計だというところはすごく注意が必要だと思っております。
 CTIミクロが作られたときの論点は、家計調査だけを見ていると日本の世帯全体の消費動向が把握できないという点でした。その一つの理由が、単身世帯が月次では公表されていないということがあります。単身世帯を含めた総世帯が月次では公表されていない理由が、単身世帯は700世帯だけなので、少し分解してしまうと結果が極めて不安定になるので、一般に公的統計として見せるに足る精度を確保できないということです。四半期別では単身世帯を含めた総世帯の消費を公表していたわけですけれども、それではリアルタイムな景気動向を捉えるには不十分だということで、特別に単身世帯を無作為抽出ではないモニターという形で調査することで、月次に公表できるようにしようとしたものが一つの経緯になっています。
 その点では、無作為抽出になっていない単身世帯を含めて、特に消費水準そのものを吟味しようとすると、あまり日本を代表していない可能性があることになってしまいますので、望ましい状況ではありません。
 無作為抽出された単身世帯が700世帯ありますので、1年かければ単身世帯でも8,000世帯ぐらい用意できるということも考えますと、別に毎月毎月基準を変えなければいけない、生活保護の基準を変えるという話でないならば、例えば単身モニター調査を活用するというCTIミクロの立場は、基準の検証には有益ではないのではないと思っています。
 また、10枚目のスライドでお示しいただいている家計消費状況調査についてですが、こちらは家計調査の調査項目の中で一部が極めて不安定な動きをする、特に不安定かつ過少になっているのではないかという批判に対して、2002年から調査を開始したものです。家計調査と家計消費状況調査は1対1で品目が比較できるような形で調査されていますが、2つの調査の調査結果で大きな差があるのは、自動車と家屋に関する設備費・工事費・修理費、あと授業料、葬儀・法事費用、大体この4つか5つぐらいの品目だけです。大きなと言っても金額にすれば品目あたり1万円ぐらいで、いずれの品目も生活扶助相当の品目からは外れているように思います。つまり、家計消費状況調査も、生活保護の対象になるような一般低所得世帯の消費実態を見る、特に生活扶助相当の支出を見るというときには、あまり活用できる統計ではないかなと考えております。
 何といっても家計調査が最も重要な調査で、CTIミクロのほうで学ぶべきところがあるとすれば世帯分布調整済みの系列というものです。家計調査は単純に全世帯を平均しており、先ほどお話ししましたように、世帯人員が減っていけば消費も減ってくような体系になっています。それに対し、CTIミクロは世帯人員数を調整した系列も公表しています。家計調査を中心に一般低所得世帯の消費実態を把握していくなら、このCTIミクロのこうした工夫は取り入れられると思います。ただ、CTIミクロそのものは景気動向をリアルタイムに把握しようとするようなときには有用だけれども、やや中期的な数年単位での補正をしようというときにはあまり有効なデータではなく家計調査で十分だろうと思います。
 先ほど言ったことと繰り返しになりますが、家計調査は確かに全国家計構造調査と比べると5分の1ぐらいしかサンプルサイズがないのですけれども、2年分、3年分ぐらいをプールすることができれば、十分なサンプルが確保できます。正確に言いますと、家計調査は毎月8,000世帯調査していますけれども、実際には1戸の世帯が6か月調査されますので、1,300世帯が毎月毎月抽出されているという形になります。1年間で1万5000世帯ぐらいが抽出されますので、2年分、3年分ためると、3万世帯とか4万世帯近くになります。この意味で、全国家計構造調査とそれなりに比較可能なサンプル数は用意できるということになりますので、もし何か中間年的なところで調整をするというのであれば、家計調査を何らかの形で特別集計して、その結果に基づいて何かを調整していくというのが望ましいのではないかと。
 まとめますと、今回、消費データの充実・活用の方法という点ですけれども、一言で言えば家計調査の特別集計が最も有効なデータソースであり活用方法ではないかなと思います。
 私からは以上です。
○岩村部会長 ありがとうございました。
 それでは、若林委員、よろしくお願いいたします。
○若林委員 ありがとうございます。
 すみません、宇南山先生のご発言よりも少し大きなコメントになってしまい、順番としては私が先のほうがよかったかもしれませんが、意見を述べさせていただきます。
 私は令和4年当時の委員ではなかったため、実際にどの方法が用いられ、どの方法が検討されたのか、またその際にどのような判断で採用・不採用が決まったのかを報告書など資料の内容以上は把握できておりません。例えば、世帯分布調整は採用されたが、外れ値の処理については実施したものの影響が小さかったため採用しなかった、あるいは、当時は家計調査やCTIの利用も検討されたが、最終的に全国家計構造調査を採用した、などの経緯があったのではないかと推察します。
 こうした過去の検討経緯を整理した上で、今回、5年を経て改めて再検討すべき点が出てきたという形で議論を進めていただくと、少なくとも私にとっては理解しやすいと感じました。
 今日のご説明では、使用した手法と使用しなかった手法が並列的に示されていたため、当時の採否の理由や判断基準がやや分かりづらく感じました。したがって、可能であれば、長期的な視点でどの方法をどのように検討してきたか、また今回変更を検討する理由は何かを明確に整理してご説明いただけるとよいと思います。
 以上です。
○岩村部会長 ありがとうございます。
 今の若林委員の御発言との関係で、事務局、もしコメントがあればお願いします。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 御指摘いただきまして、ありがとうございます。
 令和4年検証のときの扱いにつきましては、また少し整理をしてお示しをすることを考えたいと思いますけれども、少し補足をさせていただきますと、今回の資料の中でお示しをしているCTIミクロですとか、あるいは世帯分布調整等々の手法については、令和4年検証の段階では特段検討の材料としてはしてございませんでした。
 背景としまして少し御説明をさせていただきますと、直近の生活扶助基準改定としましては、令和7年度に特例加算ということで、1世帯当たり1,500円というものをお示ししてございます。令和7年度の基準改定を検討している段階においては、やはり消費データ等の経済指標を参照して、それを改定に活かしていくということを検討したわけでございますけれども、なかなか家計調査だけでは、サンプル数が多くないというような制約もございまして、特例加算の設定の直接的な根拠として用いることができなかったという背景がございます。
 そういう背景もございまして、今回、令和9年度に定期検証の結果を反映していくということに当たっては、令和6年の全国家計構造調査の調査時点以降の消費動向を見るということが必須になるわけでございますけれども、その際にデータの充実・活用が必要であるといったことが骨太の方針などでも記載されていたということでございまして、言わば令和7年度の基準改定の検討のプロセスの中で、このデータの充実・活用というのがより大きな課題として設定されてきたというような経緯がございます。
 その意味で、今回、今まで以上にほかに何か使えるものがないかということを確認させていただきまして、CTIミクロなり、世帯分布調整なりの手法をお示しさせていただいたと、このような経緯になってございます。
○若林委員 ありがとうございます。
 宇南山先生の意見にも重なる部分もあるのですけれども、私のほうも、家計調査は長く取っているデータでありまして、非常に使う価値のあるデータだと思っていますので、もちろんほかのデータに関しても考えていくことは重要だと思うのですけれども、もう一回まず家計調査について考えてみるということもやはり重要だなと思っております。
○岩村部会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでございましょうか。
 では、栃本先生、よろしくお願いします。
○栃本委員 最初のほうで、資料1の4ページ目で、令和7年度に行うこと、令和8年度に行うことというので、今回7月~12月、今は10月ですけれども、赤い囲みのところをやるというわけです。ただ、従来から使っている全消、今は全国家計構造調査と名称は変わりましたけれども、そのデータがいずれ上がってくる。だから、とりあえずということではないのだけれども、根本的なことも含めて、例えば資料2の5ページ目に、一般低所得世帯の消費データの充実・活用の方法についての論点案があって、マル1で4つ並んでいて、骨太とかそういうところの議論との関係で言うと、マル1の一番最初の黒ポツみたいなところが当たると思うのだけれども、これは端的に言うと、今回の先ほどの資料1の4ページ目にある令和7年度、令和8年度で行うことには間に合わないということだと思うのです。
 ただ、その一方で、骨太でこれは考えとかなければいけないよということなのだから、7年、8年には間に合わない、できないとしても、この基準部会ではそのことについて、一定のことについて議論するというのは必要であるということだと思うのです。それはもっと後の時期にそれが反映されて、骨太で示された赤い字で書いてあった部分だと思うのだけれども、それに生かすということになるのではないかと思うのです。
 その上で、今、10月ですけれども、今回用いるのが令和6年全国家計構造調査旧全消ですから調査時点からこういうことなので、社会経済情勢の変化を把握する指標についての議論をしてもらいたいというのが事務局の依頼です。旧全消調査、今の家計構造調査を使わないとかいうことは全くあり得ないので、それは基本中の基本なわけです。先ほどもお話がありましたけれども、令和4年のとき、私は部会長代理をしていましたけれども、そのときいろいろ検討していますので、研究者であったら、また研究者に限らずですけれども、毎回の審議の議事録であるとか資料を見て、僕なんかは自分なりに見ていますが、その中でどれが重要だったかとか、重要でなかったかというのは出てくるわけだと思うので自分で確かめるべきです。
 その上で、先ほど事務局のほうで御説明されたように、今回、家計調査というのはもう基本中の基本で、従来から使っているもの、サンプル数が少なくても、宇南山先生がおっしゃったように、それを足し合わせると一定の数になるということがありました。その上で、CTIについても、今回初めて出てきたもので、これが活用できないかどうかという議論をしてほしいということで、もう既に宇南山先生が答案を話してしまったみたいな形になっているので、なかなか言いにくいと言うとあれなのですけれども、一つは事務局からすると、消費動向指数のCTIの概要で、3万標本数のあるものと、単身モニター調査というものと、すでにある従来の家計調査のそれぞれのデータがあるわけではないですか。3つのうちのまだ基準部会では見ていない二つの調査のそのデータそのものが重要だ、それを活用しよう、できないかという話と、もう一つ、CTIがいろいろな形で、この説明によれば、私の理解するところによれば、推計精度が向上する手法としてそれなりのことをしてきたわけでその結果物としての指数、指数化したもの、これも新しいもの、参照可能なもの、その両方について基本は従来の家計調査もしながら、これが参考にできないかということなので、そういう意味で、むしろ宇南山先生にお聞きしたいのですけれども、というかもう答えは出ていたのですけれども、精度を高めるための手法というものをどの程度今回の議論、検討に参照できるかというのをもう一回教えていただきたいなと思いました。
○岩村部会長 ありがとうございます。
 今、宇南山先生にお答えいただけますか。何となく、先ほどある程度お答えになったのではないかという気がしますが、宇南山先生は先ほどお話しいただいたこと以外で何か今の栃本先生の御質問との関係で補足するようなことがあればと思いますが、いかがでございましょうか。
○宇南山部会長代理 ありがとうございます。
 先ほど申し上げました点で1点付け加えるとしますと、一般低所得世帯のうちの特に生活扶助相当額を見るだけであれば、家計消費状況調査の活用の場面はあまり大きくないということを申し上げましたが、例えばこれが第3・五分位であるとかの中位所得の人たちも視野に入れるということであるとか、日本の消費動向全体を視野に入れるというときには、家計消費状況調査はやはり有効なデータソースになり得るかなと思います。
 一般低所得世帯の把握という論点に限れば、家計調査に加えて追加的な情報量は多くないというのが私の主張になっております。
 それだけは追加させていただきます。
○栃本委員 私は今の部分をお聞きしたかったのです。つまり、第1・十分位とかいうので比較というのはもちろん従来からしていますけれども、その一方で、一般世帯であるとか、そういうものと比較で参照的というか、それは従来もしていたと思うので、そういう意味では、この部会にとって、意味のある調査であり、全体的なものと見比べたときには意味があるというので、従来はそれを使っていないわけだから、これは今回、活用出来るもの・活用出来ないものを総ざらいにするということを申し上げましたように、ほかに何か参考になるものはないのかなということに対する一つのお答えでもあったと思っています。それで再度、宇南山先生からもう少し詳しい御説明を頂戴したいと思ってお尋ねしました。
 以上です。
○岩村部会長 ありがとうございました。
 そのほかにはいかがでございましょうか。
 では、永田先生、どうぞ。
○永田委員 ありがとうございました。
 タイムラグのある期間の変化をどう反映させるかということについて、消費動向の精度をどうやって向上させるかという方策を検討するということが論点だったわけで、家計調査を中心に、特に経済学の若林先生、宇南山先生のお話から、家計調査を中心に見ていくのがいいのではないかと感じました。また、家計調査で、世帯分の調整をしていくことには意義があるのではないかと宇南山先生のほうからも御意見があったかと思います。
 なので、家計調査を特別集計していく、そういう形で見ていくのがいいのではないかという御議論かなと聞いていたのですけれども、一方で、消費だけでなくまたむしろ物価も併せて見たほうがいいのではないかという趣旨で、宇南山先生は最初にご発言されたと記憶しているので、専門ではないものですから、改めて今の議論の中で、家計調査をブラッシュアップしてくということと同時に、物価を考慮に入れていくということも併せて検討したほうがいいのか、むしろそっちのほうが有効なのではないかということもおっしゃっていたのではないかと思いますので、その点についてもう一度補足いただけるとありがたいと思って御質問をさせていただきました。
○岩村部会長 ありがとうございます。
 宇南山先生、恐縮ですがいかがでございましょうか。
○宇南山部会長代理 宇南山です。
 すみません。私、議題1と2で少し混乱させてしまったかもしれないのですが、やはり調整の中心は、私は物価だと思っております。ただ、議題2としては、消費データをどうそろえるかという点ですので、家計調査だというのがまず一個の主張です。もしも家計調査のほうで、それなりに安定して、なおかつ5年に一度やっている検証とそれなりに整合的な調整が可能だということになれば、それはより望ましいとは言えます。家計調査の支出額は物価の変動も反映した名目支出額になりますので、物価の調整も自動的にできると。5年に一度の検証の際に名目額でやっており、原理的には物価変動と消費水準の変化、同時に調整できますという考え方ですが、家計調査の名目消費を使って調整すれば同様に両者が調整できます。家計調査を特別集計するというような作業はぜひトライしてもらいたいと思うのですけれども、なかなかそれで安定した結果が出てくるとは思えないので、少なくとも向こう3年、もしくは次回検証したらその後といった決まりきった3年のラグを補正する仕組みとしては、まずは物価を中心にした仕組みをつくっておいて、家計調査のブラッシュアップの作業を進めていくというのが現実的ではないかなと考えております。
 混乱させてしまって申し訳ないと思いますが、資料2について、一般低所得世帯の消費データの充実という論点にだけ絞れば、家計調査が中心かなと考えているということです。
 以上です。
○岩村部会長 宇南山先生、ありがとうございました。
 永田委員、どうぞ。
○永田委員 ありがとうございました。
 先生の御趣旨はよく理解した上で、冒頭にそうおっしゃっていたので改めて御質問させていただきました。ありがとうございました。
○岩村部会長 ほかにはいかがでございましょうか。
 では、村田委員、どうぞ。
○村田委員 村田です。
 今までの宇南山先生の御意見とそれほど変わらないと思うのですが、私の理解としては、家計構造調査が出てからラグがあるというときに、補完の手段として、名目消費額がある程度信頼できるデータがあるのであれば、それで補正していくというのが理想かなと思います。特に1年ぐらいのラグであれば物価でやるということもいいと思うのですが、何年か経つとやはり生活水準が向上したり、あるいは逆もあるかもしれないしということがありますので、そういうことを考えると、物価だけでいいのかという問題があるかと思います。宇南山先生も、そういうことを分かっておっしゃっているのだと思うのですけれども、消費データがアベイラブルであれば、消費で補完するのが理想なのだけれども、問題があるようであれば、代替的な指標も見ながら判断していくということかなとだんだん理解してきているところです。そうすると例えばCTIミクロも、統計局が参考指標ではなくて正式な指標として今年から公表するようになっているかと思いますが、ただ、問題はCTIミクロだと、収入別とかはないのです。そこがないというのは、もちろん一般世帯と比較することも重要だということはあるかと思うのですけれども、低所得世帯の動向に着目してある程度分析する必要もあると思いますので、そうするとやはり家計調査を生かしたいということもあるし、でも、それでなかなか難しいということであれば、物価ももちろん使って、底割れしないようにちゃんと支えてあげるということかなと思っております。
 一つ質問というかお願いしたいのは、先ほど令和7年の特別加算のときに、家計調査の問題点があって課題となったと御説明いただいたのですけれども、今日でなくても構いませんので、それをぜひ教えていただいたほうが、今後やり方を考えていく上でも参考になるかと思います。
 
○岩村部会長 ありがとうございました。
 事務局のほうで、今すぐにお答えいただけるのか、次回以降ということにするかだけお願いします。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 基本的には家計調査のデータの月次ベースの動きを見てございました。令和7年度改定ということで、時期としましてはちょうど1年ぐらい前の時期に検討しており、令和6年の家計調査のデータを追いながら、所得階級ごとにどのような動きをしているかというのを月次ベースでデータとして追っていたわけでございますけれども、毎月毎月データが追加されるたびに、割と動きが大きく出てしまっていて、なかなかどこを信用したらいいのかというところが見極めにくかったという事情がございました。
 それが全てサンプル数だけの問題ということではないのかもしれませんけれども、やはり調査の特性として、やや振れが大きいというところが、実際の改定に使う上では少し使いづらい部分があったと思います。令和6年の年末というのが少し特殊な動きをするなど時期的な影響もあったのかもしれませんけれども、いずれにしても令和7年改定の検討の状況はそのような形でございました。
○岩村部会長 どうぞ。
○村田委員 分かりました。ありがとうございます。
 月次でやられるとなると、先ほど宇南山先生からも御説明がありましたけれども、1,300ずつ入れ替わっていきますので、その辺りに課題があったのかなと。理解が進みました。ありがとうございます。
○岩村部会長 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでございましょうか。
 では、岡部委員、どうぞ。
○岡部委員 先ほど水準均衡方式の成り立ちというか趣旨についてお話をしましたけれども、今回、一般低所得世帯のデータの充実・活用についての事務局説明と意見交換については、私自身は今の御意見については非常に傾聴に値すると考えております。
 その上で、先ほど冒頭にお話ししましたように、水準均衡方式というのは一般世帯と生活保護世帯の均衡を是正するということからそもそもで始まっているわけです。一般低所得世帯というのは第1・十分位というところで議論が進められていくということについて、私自身としては、先ほどお話ししましたように、もう少し細かく、一般の中位所得である第3・五分位であるとか、そもそものところでお話しした変曲点分析も加えて進めてきたことが、これはある意味では第1・十分位に収束をしている。これは丁寧にやっていただくことが非常にありがたいのですけれども、水準均衡方式の均衡は、一般低所得世帯と生活扶助基準の均衡だということで、再度整理し直したのだということの理解でよろしいのかどうかということです。
 逆に言うと、低所得世帯と生活保護基準の背比べをやるということですので、そういうことが健康で文化的な最低生活なのだということ、これが見解なのだということでこの基準部会の中で議論するのだという、ここのところの理解は図っておかないといけない。
 私自身は、一般低所得世帯についての丁寧な議論をするということは必要だと思うのですけれども、もう一方で、最低生活というのは、水準均衡方式では第1・十分位と生活保護基準なのだとここでおっしゃっているということで理解をしていますけれども、それでいいのかどうなのか。水準均衡方式が持っているよさは、均衡しないようにするということでいいのですけれども、もう一方では、水準均衡方式の課題でもあるのですけれども、要するに収入と支出の関係で、低所得世帯が下がれば生活保護基準も下げるという関係にあって、そこで生活保護基準というのは最低生活が守られているのだという考え方で計算をしているのかと。
 今ここでということではなくて結構なのですけれども、この辺りのところ、いろいろな手法が考えられるけれども、ここは要するに一番の基本中の基本なので、そうなのだとおっしゃっていただくならば、それは一般低所得世帯と生活保護基準で最低生活が決まるのだということ。要するにこれが皆さんの中で整理されているものだということですね。
 先ほど言ったように、資料1では含めてと書いてあるので、それ以外のところを含めてより精査していくということで理解していいのかがあるので、今回でなくて結構なのですけれども、この中で一般低所得世帯の消費データでどんどん出されてきて、先ほど言ったように第1・十分位のデータしか入っていませんので、これは第1・十分位の話なので、それ以外のデータとの比較、水準均衡の対象とする均衡はどこなのだということになってきます。ここは意見だけ述べさせていただいて回答は求めませんので、一応お話をさせていただきます。
○岩村部会長 ありがとうございます。
 そこは重要なポイントのところかなとも思いますので、今の御意見を踏まえて、事務局のほうでも、どういう考え方をするのかということの整理をしていただければと思います。
 では、池上課長、よろしくお願いします。
○池上社会・援護局総務課長 令和4年検証に携わったということで、1点、今の岡部先生からの御指摘についてお話ししたいと思います。
 資料1の3ページで、議題について書いてあるところです。岡部先生の問題意識は、3の※書きのところ、水準均衡方式の下で比較をする対象として年収第1・十分位でいいのかどうかという話かと思います。
 これは令和4年の検証のときにもまさにいろいろ議論があって、最終的に報告書の中では、第3・五分位との比較の数字なども示されたところでございます。そうしたものも見た上で、第1・十分位との丈比べをするという結論になったかと思います。
 今後の基準部会の議論、委員の先生方との御相談ではありますけれども、3ページに書いてあるとおり、第1・十分位がどうかということは、中位との比較の数字も最終的には見て、チェックをするということになろうかと思います。
 一方、本日の議論は、2番目の5年に一度のデータのない、はざまの年をどうするかという論点になりますので、はざまの年についても毎年毎年、どこの水準と比べればいいのかまで議論するというのは、実際にはなかなか難しいかと思っております。ですので、はざまの年については、5年に一度の丈比べのときに1回セットされた第1・十分位をその後推移を見ていくというのが作業としては現実的かなとは考えるところですけれども、今、御意見も頂戴したので、事務局のほうでも改めて考え方は整理していきたいと思います。
○岡部委員 どうもありがとうございます。
○岩村部会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 それでは、2番目の議題はこの辺までということにさせていただきます。
 今日は、「その他報告事項」ということで、最高裁判決への対応に関する専門委員会の開催状況についてというのが上がっております。これにつきまして、事務局から御報告をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○榎社会・援護局保護課生活保護統括数理調整官 事務局でございます。
 資料3に基づきまして、「最高裁判決への対応に関する専門委員会の開催状況」について御報告をさせていただきたいと思います。
 資料の2ページ目を御覧いただければと思います。
 最高裁判決への対応に関する専門委員会につきましては、平成25年、生活扶助基準改定に関する令和7年6月27日の最高裁判決を踏まえた今後の対応に関して、最高裁判決の趣旨及び内容を踏まえた対応の在り方について、法律・経済・福祉の専門的知見に基づく検討を行うといったことを目的としまして、ちょうど前回の第53回の生活保護基準部会で持ち回りの御審議をいただきまして、この生活保護基準部会の下に設置されてございます。
 委員の構成につきましては、この資料に記載のとおりでございまして、この生活保護基準部会からも6名の先生方に御参画をいただいてございます。そのほか3名の学識経験者を加えまして、計9名の構成となってございます。委員長につきましては、岩村部会長に担っていただいているところでございます。
 本年8月13日にこの専門委員会は第1回を開催いたしました。それ以降、直近まで計5回開催してございまして、精力的に御議論を進めていただいている状況でございます。
 これまでの主な議論につきましては、ページ下部の開催実績で項目のみ列記してございますけれども、既判力、形成力、拘束力、反復禁止効等の判決の法的効果に加えまして、平成25年改定当時の経済指標の評価ですとか、一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準の乖離の評価に当たっては、リーマンショックなどの特殊要因を補正するという方法等について、主に御議論いただいてきてございまして、今後整理すべき論点について、おおむね洗い出されつつあるような状況であると実感してございます。
 今後、できる限り速やかに専門委員会としての結論をいただけるよう、論点に関する議論を精力的に進めていただくことを想定してございます。最終的な取りまとめに至った際には、改めましてこちらの部会に内容を御報告させていただきたいと考えてございます。
 非常に簡単ではございますけれども、資料3については以上でございます。
○岩村部会長 ありがとうございました。
 まだ専門委員会での議論が継続しているという段階でございますので、今日は現状の御報告を行っていただくということにさせていただきました。
 岡部委員、どうぞ。
○岡部委員 今の報告を受けまして意見を述べさせていただきます。
 1点目ですけれども、最高裁での違法判決は初めてのことで、私、基準部会に関わってきましたので、一委員として重く受け止めております。一委員として、おわびをしたいと思っております。
 7月1日に厚生労働大臣の会見で、真摯に受け止め、判決の趣旨・内容を十分精査し、今後の対応を検討していきたいということが述べられて、専門委員会の設置がされました。そこでは、謝罪は行われておりません。
 一般的に、このような判決が出た場合、謝罪等の意を示して、今後の対応について対応策が講じられるのではないかと私自身は感じています。今後、対応策は専門委員会の中でいろいろ御意見が出されて、その受け止めを行われると思うのですが、今後何らかの意を示していただくこと、謝罪でなくても何らかの意を示していただくと、被保護者であるとか国民に一定納得をしていただけるのではないかと思っております。出過ぎた発言かと思いますが、私自身はいろいろな方々、特に生活困窮者と関わることが多いものですから、このことについて述べさせていただきました。
 もう一点、争点になったゆがみ調整についての議論もされているかと思うのですが、これは違法とはされていなくて、判断の過程及び手続に欠落があったものとまでは言うことはできないと判決文の中では書かれております。
 しかしながら、今後、本部会の委員としては、部会委員や専門家の意見、また、国民への周知や理解を図るということ、一定透明性であるとか説明責任を果たしていただくということが今後必要なのではないかと思っております。これも少し出過ぎた意見かと思いますが、こういう機会がありませんので、判決が出た後の基準部会の最初の会議ですので述べさせていただきました。
 以上です。
○岩村部会長 ありがとうございました。御意見として承っておきたいと思います。
 ほかにはいかがでございましょうか。
 よろしゅうございましょうか。
 御意見は、今日の議題に関しては出尽くしたかと思います。
 予定より少し早いのですけれども、本日の審議はこれで終了とさせていただきたいと思います。
 次回の開催について、事務局から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○加藤社会・援護局保護課長補佐 次回の開催日程につきましては、事務局より追って皆様方に連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。
○岩村部会長 ありがとうございました。
 それでは、本日の審議はこれをもちまして終了とさせていただきたいと思います。
 本日は、委員の皆様、大変お忙しい中お集まりをいただきまして、また、併せて、貴重な御意見などもいただきまして、大変ありがとうございました。
 それでは、これで散会とさせていただきます。どうもありがとうございました。