第35回肝炎対策推進協議会 議事録

健康・生活衛生局がん・疾病対策課肝炎対策推進室

日時

令和7年10月24日(金)10:00~12:00

場所

航空会館ビジネスフォーラム
( 東京都港区新橋1−18−1 航空会館501号室)

出席者

委員
  • 赤羽 たけみ(宇陀市立病院長)
  • 秋山 実(健康保険組合連合会理事)
  • 五十川 正記(国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所ウイルス第二部長)
  • 出田 妙子(薬害肝炎原告団)
  • 伊藤 公子(薬害肝炎原告団)
  • 及川 勝(全国中小企業団体中央会常務理事)
  • 金成 由美子(福島県県南保健所所長)
  • 考藤 達哉(国立健康危機管理研究機構 肝炎情報センター長、肝炎・免疫研究センター長)
  • 木下 真純(日本肝臓病患者団体協議会)
  • 郡山 千早(鹿児島大学大学院医歯学域医学系医歯学総合研究科 疫学・予防医学教授)
  • 坂上 博(読売新聞調査研究本部主任研究員)
  • 坂本 泰三(公益社団法人日本医師会常任理事)
  • 竹原 徹郎(独立行政法人労働者健康安全機構関西労災病院病院長)
  • 辰巳 創史(全国B型肝炎訴訟大阪原告団)
  • 新沼 かつら(日本労働組合総連合会労働条件・中小地域対策局長)
  • 萩部 義一(日本肝臓病患者団体協議会)
  • 日浅 陽一(愛媛大学大学院医学系研究科教授)
  • 梁井 朱美(全国B型肝炎訴訟九州原告団)
  • 山﨑 喜彦(日本肝臓病患者団体協議会)
参考人
  • 田中 純子(広島大学 理事・副学長/特任教授)

議題

  1. (1)令和8年度肝炎対策予算概算要求について
  2. (2)肝炎対策推進協議会に期待することについて(梁井委員)
  3. (3)ウイルス肝炎の疫学に関する研究報告について(田中参考人)
  4. (4)その他

議事

○木村肝炎対策推進室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第35回「肝炎対策推進協議会」を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 私、厚生労働省健康・生活衛生局がん・疾病対策課肝炎対策推進室長の木村でございます。冒頭の議事進行を担当させていただきます。
 本日の協議会でございますが、委員の皆様におかれましては対面とオンラインを併用したハイブリッド形式で開催させていただきます。
 また、傍聴される方やメディアの方に対しましてはYouTubeでの配信とさせていただいております。
 本日はウェブ上で御参加される方もいらっしゃるということでございますので、接続状況により画像・音声が乱れる場合がございますので、あらかじめ御承知おきいただきますようお願いいたします。
 会議の進行に当たりまして、委員の皆様にまずお願いがございます。
 会議中、マイクはオフにしていただくようお願いいたします。御発言を希望される方におかれましては挙手を、ウェブ上で御参加の方はZoomの画面下部、リアクションをクリックした後、挙手ボタンを選択いただければと思います。その後、会長より御指名をいただきましたらマイクをオンにしていただきまして御発言をお願いいたします。
 御発言の際にはお名前を名乗っていただきまして、可能な限りゆっくりお話しいただければ幸いでございます。より多くの委員の皆様の御発言の機会を確保するため、できる限り簡潔な御発言をお願いしたいと思います。
 操作の面など、御質問がある場合は事務局へお問合せいただければと思います。
 それでは、まず委員の交代について申し上げます。
 西垣明子委員におかれましては6月30日付で御退任されまして、御後任に金成由美子委員が着任されました。恐縮ではございますけれども、金成委員のほうから一言、簡単に自己紹介をお願いできればと思います。
 それでは、福島県県南保健所所長の金成由美子委員、お願いいたします。
○金成委員 ありがとうございます。
 福島県県南保健所所長の金成由美子と申します。このたび、西垣委員の退任に伴い、全国保健所長会からの推薦により委員に就任いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
○木村肝炎対策推進室長 御挨拶、ありがとうございます。
 このほか、事務局にも異動がございましたので御紹介いたします。
 先ほど申し上げましたが、私、健康・生活衛生局がん・疾病対策課肝炎対策推進室長の木村でございます。
 以下、がん・疾病対策課肝炎対策推進室の担当職員が出席させていただいております。
 なお、大坪健康・生活衛生局長でございますが、別の公務がございまして途中からの出席と本日はさせていただきたいと思います。
 続きまして、委員の出席状況について御説明させていただきます。
 本日は、山下委員から御都合により欠席の御連絡をいただいております。
 また、郡山委員におかれては、御都合により11時過ぎより御参加と伺っております。
 本日は、20名のうち19名の委員に御出席いただいております。
 また、本日は参考人といたしまして、広島大学の田中純子先生に御出席いただいております。
 定足数に達しておりますので、本日の会議は成立しておりますことを御報告いたします。
 続きまして、本日の資料について確認させていただきます。
 議事次第、委員名簿、座席表、配付資料一覧、資料1から5、参考資料1から7となっております。
 資料の不備等ございましたら、お申しつけいただければと思います。
 また、この後、議事に入らせていただきますけれども、ここまでのところで何か接続状況の不具合ですとか操作方法等で御質問がございましたらお申しつけいただければと思います。
 よろしいでしょうか。
 では、以降の議事進行につきましては竹原会長によろしくお願いしたいと思います。
○竹原会長 それでは、議事に入らせていただきます。
 本日の協議会では、事務局より令和8年度肝炎対策予算概算要求についての御説明をいただきます。また、梁井委員より「肝炎対策推進協議会に期待すること」について御発表をいただき、田中参考人より研究成果の御発表をいただくこととしております。
 また、参考資料といたしまして、7月に開催された薬害肝炎全国原告団・弁護団と大臣の定期協議に係る議事確認書、8月に開催された全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団と大臣の定期協議に係る議事録がございます。
 それでは、早速ですけれども、まず議題「(1)令和8年度肝炎対策予算概算要求について」、事務局のほうから資料の御説明をお願いいたします。
○木村肝炎対策推進室長 木村から説明をさせていただきます。
 まず資料1「令和8年度肝炎対策予算概算要求の概要」について御説明させていただきます。
 令和8年度概算要求167億円ということで概算要求をさせていただいております。
 「基本的な考え方」に記載されておりますとおり、「肝炎対策基本指針」に基づきまして肝硬変・肝がんへの移行者を減らすということを目標としまして、肝炎医療、肝炎ウイルス検査、診療体制、普及啓発、研究という5本柱で「肝炎総合対策」を推進するということで必要な予算を要求しているものでございます。
 まず「1.肝疾患治療の促進」でございますけれども、こちらはウイルス性肝炎の医療費助成の事業と、肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業の予算となっております。こちらは対前年で2億円の減の要求となっておりますけれども、この背景でございます。これは昨年も同様でございますけれども、C型肝炎につきましては治療薬によってウイルス排除は可能となっておりまして、それに伴いまして患者数が減少しているということでございます。それを踏まえた形での予算要求となっているということで御理解いただければと思います。
 2の「肝炎ウイルス検査と重症化予防の推進」、3の「地域における肝疾患診療連携体制の強化」、4の「国民に対する正しい知識の普及」につきましては前年度と同額での要求となっているところでございます。
 続いて、5の「研究の推進」でございます。こちらは、医療分野の研究開発全体の方針も踏まえながら43億円での要求となっているところでございます。
 以上が令和8年度に向けた概算要求の概要でございますけれども、今後予算の策定に向けまして政府内で必要な調整等を進めてまいりたいと思います。
 私からの説明は、以上でございます。
○竹原会長 ありがとうございます。
 ただいま、来年度の肝炎対策予算の概算要求の概要について御説明をいただきましたけれども、何か委員の先生方から御質問等、御意見はございますでしょうか。
 では、坂上委員、お願いします。
○坂上委員 読売新聞の坂上です。
 4の正しい知識の普及という項目について意見を述べさせていただきます。今まで、このプロジェクトには、杉良太郎様をはじめ、皆さんに御協力いただいてとてもありがたく思っています。これは確立されたパッケージで行われているのですけれども、啓発内容がどれほど国民に届いていているのか、ちょっと不安になりました。
 私は、ほかの厚労省の会議にも参加しているのですが、イベントをやったら、どういう人たちが参加して、参加者へのアンケートから、どのような要望があるか、などを検証しています。それを踏まえて、「今回はこれが問題だったんだから来年は専業主婦向けにターゲットを絞ってやってみよう」などと対策を練っています。肝炎対策の啓発活動は若干、フレキシブルさに欠けている印象があります。定型のイベントだけでなく、国民にどのようにアウトリーチすべきか、いろいろ方法を考えていただきたいと思います。
 以上です。
○木村肝炎対策推進室長 厚生労働省でございます。御意見ありがとうございます。
 毎年度、この啓発の内容につきましては委託事業者も交えながら、当該年度でどんな取組をしていくかということを内部的には議論しながら決めているところでございます。
 また、積極的にこの地域で、例えば今年は取組を強化しようといったこともさせていただいているところでございますけれども、御指摘を踏まえてこれからも必要な啓発については検証もしながら取り組んでまいりたいと思います。
○坂上委員 あるテレビ局と国立がん研究センターが一緒になって、肝炎ウイルスの検査を勧める番組を放送し、その結果、受検率が上がったそうです。メディアもいっぱい活用していただき、患者さんの団体とも一緒に啓発活動が行われたらいいなと思っています。
○木村肝炎対策推進室長 御発言ありがとうございます。
 啓発の効果ということで申し上げますと、この9月、10月にブロック会議ということで各地域の取組を伺っておりますけれども、まさに先ほど申し上げた積極的広報地域ということで啓発をやった県からは、その結果として例えば検査件数が増えたとか、そうしたよい効果も伺っているところでございますので、御指摘も踏まえながら取り組んでまいりたいと思います。ありがとうございます。
○竹原会長 そのほか、いかがでしょうか。
 萩部委員、どうぞ。
○萩部委員 日肝協の萩部でございます。
 発言というか、質問を1つお願いしたいと思います。
 今、資料1の概算要求の2の「肝炎ウイルス検査と重症化予防の推進」につきまして、重症化予防の推進におきまして最も大きな課題はウイルス検査で陽性となった方々へのフォローアップでございます。早期に受診、受療へと確実につなげることが喫緊の課題かと感じております。
 しかしながら、現状ではウイルス検査で陽性が確認され、医療機関への受診が促されても、実際には受診や治療に至らないケースが多いのかなと、初回精密検査、定期検査、ともに助成を受けている方の数は極めて限られているのではないかと思います。
 現在、ウイルス陽性者に対しましては初回精密検査費用及び年2回の定期検査費用の助成制度が設けられていると思いますが、助成額に対しまして申請手続が毎年必要であること、または助成回数が限られていることなどから制度の利用が進んでいない。結果として陽性者を受診、受療へとつなげることができていないのが実情ではないかと思います。
 肝がんの診療ガイドラインでは、超高危険群に対しまして3、4か月に1回の超音波検査が提案されております。肝細胞がんの早期発見が困難な場合には、CTやMRIの併用も検討すべきとされており、実際に患者の多くは年に3回から4回以上の受診が必要とされております。
 したがいまして、定期検査費用の助成回数を増やすこと、助成申請を初回のみとするなど、手続の簡素化を図ることでウイルス検査陽性者を確実に受診、受療へと導くための、より実効性のある制度設計が求められているのではないかと思います。
 ウイルス検査陽性者を受診、受療につなげていくための有効な手段の策定についてどのようにお考えか、御見解をお聞かせいただければと思います。
 以上でございます。
○木村肝炎対策推進室長 ありがとうございます。
 ウイルス検査陽性者をその後の検査等へどうつなげていくかという御意見をいただきました。後ほどまた御説明させていただきますが、本日の資料5ということで、ウイルス性肝炎の患者さんの方々が初回精密検査、またその後の定期検査につなげていくということで、その促進についての各都道府県への事務連絡を本年5月に出させていただいたところでございます。引き続き、そうした周知依頼をしていきたいと考えております。
 また、御発言の中で定期検査費用の回数を増やしていただきたいという御意見がございました。これについても、かねてより御要望いただいているところでございまして、御指摘のとおり、肝がんの診療ガイドラインでは肝硬変ですとか肝がんの方については3から4か月に1回の定期検査になっていると承知しておりますので、そうしたガイドラインに沿った回数に増やすことができるかどうかといったところは検討していきたいと思います。
 また、更新の手続を含めた申請の負担についても御意見をいただきました。これは自己負担限度額を決めるということで、毎年の所得の状況などを確認する必要があるといったところでございますので、その更新手続自体をなくすということは難しいところでございますけれども、これまでも更新の場合には医師の診断書を省略するとか、そうした手続の簡素化には取り組んでいるところでございます。
 また、加えまして今後はマイナンバーを用いた情報連携といったことを進めていこうとしておりまして、それが実現すれば、課税証明書ですとか、住民票の写しですとか、そうした添付書類を省略することが可能になるところでございます。そうしたことができるように今、都道府県も含めて必要な調整をしておりますので、そうした申請の負担軽減ということにも取り組んでいきたいと考えております。
 以上でございます。
○竹原会長 そのほか、いかがでしょうか。
 山崎委員、お願いします。
○山崎委員 失礼いたします。日肝協の山崎と申します。
 資料1の「令和8年度肝炎対策予算概算要求の概要」の「3.地域における肝疾患診療連携体制の強化」について発言をしたいと思います。
 肝疾患連携拠点病院や大学病院、都市部の大病院等には肝臓の専門医が多くおられ、肝炎患者が適切な肝炎医療を受けられますが、地方の病院には肝臓の専門医が不在の病院や、近隣の大学病院から週に1度派遣されていらっしゃるような病院もございます。肝臓専門医の数や施設、設備等の状況もあり、高度な肝炎医療が受けられない状況にあります。
 肝炎対策基本法の基本理念には、肝炎ウイルスの感染者及び肝炎患者がその居住する地域にかかわらず、等しく適切な肝炎に係る医療を受けることができるようにすること、と明記されています。地域の肝炎医療の実態をどのように把握しておられるのかということと、地域における肝疾患診療連携体制の強化に向けて、今後どのような手だてを講じられるのかをお聞きしたいと思います。
 以上です。
○木村肝炎対策推進室長 ありがとうございます。
 地域における肝炎医療の均てん化についての御質問をいただきました。御指摘のとおり、肝炎対策を進めるに当たりまして、肝炎医療の均てん化を図っていくことは非常に重要でございまして、それぞれの地域の実情や特性を把握しながら取組をしていくことは大事だと考えております。
 毎年、秋の時期に拠点病院ですとか、自治体の皆様とのブロック会議というのを開催しております。今年度も開催をしてきたところでございますけれども、その際には各拠点病院、自治体のほうから各県内の地域ごとの専門医の配置状況ですとか、そういったこともしっかり把握いただきながら、その専門医がいない地域でどのように医療を提供しているかといったことも課題感を持って取り組んでいただいているということを御発表いただいているところでございます。
 今年の発表の中でも、例えばICTを使って専門医がいないような地域には、拠点病院の専門医の先生がそこにいらっしゃる医師の方にいろいろと診療の支援をするというような好事例の御発表もあったところでございます。
 今後ともそうしたブロック会議ですとか、我々が都道府県に伺って意見交換といった機会を活用しまして、取組についてしっかり把握して、また好事例なども共有しながら医療の均てん化に向けて取り組んでいきたいと考えております。
○竹原会長 そのほか、いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、ありがとうございました。次に議題「(2)肝炎対策推進協議会に期待すること」について、梁井朱美委員から御発表をいただきます。資料2を御覧ください。
 梁井委員、よろしくお願いいたします。
○梁井委員 全国B型肝炎訴訟原告団の梁井朱美と申します。
 本日は、このような機会を設けていただき、大変ありがとうございます。
 
 私は昭和32年、佐賀県で農家の長女として生まれました。地元の小中高校を卒業した後、高知県の大学に進学し、卒業後は実家に戻り、福岡の会社に就職しました。そして、結婚を機に家業を手伝うことになりました。
 私がB型肝炎に感染していると分かったのは、昭和59年、第一子を妊娠したときの妊婦健診でした。医師から、B型肝炎と告げられましたが、当時の私はB型肝炎というのがどのような病気なのか、よく分かっていませんでした。その頃は、まだワクチンが開発途中で、大きな病院であれば母子感染防止のためにワクチンを打つことができると言われました。
 しかし、私は大きな病院の産婦人科ではなく、近くの産婦人科で出産しました。といいますのも、以前は大きな病院の産婦人科にかかっていたのですが、何度も流産を繰り返し、また、そのときの医師の対応が非常に冷たいものだったなど、あまりよい思い出がなかったからです。
 近くの産婦人科の先生はとても親身になってくれて、安心感がありました。私としては、よく分からないB型肝炎の問題よりも、やっと授かった赤ちゃんを無事に出産することしか頭にありませんでした。そのような私の思いを近くの産婦人科の先生も理解してくれて、その産婦人科で出産し、無事に生まれたことを確認して、すぐに大きな病院に子供を連れて行ってもらい、ワクチンを打つよう手配をしてくれました。
 出産後、すぐに大きな病院に連れて行き、ワクチンを打ったのですが、残念ながら子供への感染を防止することはできませんでした。
 昭和60年から母子感染防止事業が始まり、昭和61年に第二子を出産した際も同じ産婦人科で出産し、子供をすぐに大きな病院に連れて行き、ワクチンを打ちましたが、やはり母子感染を防ぐことはできませんでした。
 2人の子供を母子感染させてしまったので、できることならば母子感染を防ぎたい思いで、第三子は大きな病院で出産しました。母子感染はしておりません。
 B型肝炎は血液で感染すると医師から告げられていましたので、私は長女と次女には出血した際にはほかの子供さんに感染させてはいけないからと自分で血液の始末をするように、幼い頃から厳しくしつけてきました。私が2人に母子感染をさせてしまったことの反動だったのかもしれません。子供たちは、言いつけをよく守ってくれました。
 その後、平成15年頃、私の体調が悪化しました。それまでは、B型肝炎に感染しているといっても特に不調を感じることもなく生活をしていました。
 しかし、あるとき倦怠感があり、町民健診でも肝機能数値の異常を指摘され、受診を勧められていましたが、きつい農作業が続いたせいと考え、B型肝炎と結びつけては考えていませんでした。家族からも病院に行くように強く勧められて病院に行ったところ、肝機能の数値が1,000近くまで上がっており、医師からはすぐに入院をするようにと言われました。
 しかし、ちょうどアスパラガスの収穫の最盛期で、入院すると仕事に影響が出るので、入院を1か月ほど延ばしてもらい、その間、毎日、強力ミノファーゲンを打ちに病院に通いました。そして、一段落ついた後、入院しました。
 入院した後、医師は家族を呼んで、このままでは肝硬変になること、そして命の危険があることなどを告げたようです。後から知ったことですが、当時反抗期だった次女は泣きながら私の妹に私のことを電話で話したそうです。私自身は医師から、限りなく肝硬変に近いと言われていましたが、体がきつい以外の自覚症状も特になく、入院してからは仕事もなく、体が楽になったので、特に深刻には考えていませんでした。そのため、後から妹にそのことを聞いて大変驚きました。母子感染させた子供たちは、自分たちも母親と同じように肝硬変になるのだととても心配したのではと、大変申し訳ないと思うばかりでした。
 幸いにも、当時は核酸アナログが出てきた後だったのでゼフィックスの投与を受け、肝機能数値やウイルス量も落ち着き、退院することができました。それからは定期的に通院し、検査を行いました。
 あるとき、耐性ウイルスができて、ウイルス量が増えていると告げられました。そして、ゼフィックスに加えてヘプセラも処方されるようになりました。ゼフィックスだけのときには経済的負担はそれほど感じなかったのですが、ヘプセラと2剤を処方され、薬代も倍になりました。子供たちも将来、私と同じような病状になると、薬代も同じようにかかるのだろうと考えると、子供たちに健康面だけでなく受診にかかる時間や経済的にも負担をかける病気を感染させてしまったのだと思いました。
 B型肝炎で入院した頃に、自分があまりにもB型肝炎という病気のことを知らないことに気づかされ、インターネットでB型肝炎のことを調べるようになりました。そして、東京肝臓友の会のホームページにたどり着き、当時の事務局長であった高畠さんと知り合いました。
 ある日、インターネット上で高畠さんから呼びかけがありました。
 札幌の先行訴訟で、最高裁が集団予防接種によるB型肝炎感染は国に責任があると認めたにもかかわらず、国は5人の救済だけで訴訟の本来の目的であるウイルス性肝炎患者の施策を前に進めることをやろうとしません。もう一度裁判をやります。今度は数が力です。原告になれる人は裁判に参加してください、とありました。
 私は、国と争うなど想像もできないことだし、まして自分が原告になれるかどうかも分からない。しかし、感染させた子供たちには健康の不安も、経済的な不安もない人生を送ってほしい。母親としてやれることはやりたいと随分悩んだ末に、裁判に参加することに決めました。
 第一次提訴の日、福岡地裁には私と同年配の女性の方が何人もおられ、母子感染させたので子供もB型肝炎なの、と、話は子供のことばかりでした。私はそれまでB型肝炎の患者さんと会ったこともなかったので、B型肝炎は私と母子感染させた娘の3人だけの問題と、ずっと思ってきました。
 しかし、私と同じように悩んでいらっしゃるお母さんがたくさんいらっしゃることを知り、驚きました。そして、裁判を通じて全国に多くのB型肝炎患者がいることを知りました。インターネット上では患者会があることなどは知っていましたが、実際にB型肝炎患者の方とお話をしたことはありませんでした。
 しかし、裁判に参加して、福岡の裁判に参加している患者だけでなく、北海道や東京や大阪、広島など、各地の患者と実際に知り合い、自分と同じような体験をしている人の話を聞いて勇気づけられたり、自分が体験していないような経験をしている人の話を聞いて、お互いに励まし合ったりしました。私が裁判に参加してよかったと思う一番のことは、このように多くの仲間と出会えたことです。
 提訴してから、B型肝炎訴訟の基本合意締結の間に肝炎対策基本法をつくる運動も始まりました。訴訟の早期の解決を求める運動と並行して、日肝協や薬害肝炎原告団の皆さんと一緒に、肝炎対策基本法の成立を目指して国会議員会館を回り、要請活動をしたり、ビラ配りや署名集めと運動しました。「もう待てない、350万人の命」と、文字だけ書かれたオレンジ色のビラは私の大切な思い出の品です。
 そして、基本合意ができる前の平成21年に肝炎対策基本法が成立し、翌平成22年に第1回の肝炎対策推進協議会が開催されました。肝炎対策推進協議会では様々な問題が議論され、患者を取り巻く状況、制度は少しずつ改善されてきました。
 平成22年からは、核酸アナログ製剤にも医療費助成が始まり、治療の経済的負担も軽減されました。
 また、推進協議会で日肝協から出られた患者委員の天野さんが、夫が亡くなったときの肝臓は硬くて石ころのようになっていました。心臓の手術をした人は手術後、登山だって楽しんでいます。なぜ肝臓病の患者はこんな肝臓になっても身体障害者手帳がもらえないんですか、と、声を振り絞って訴えられていました。私は、肝炎患者が障害者手帳をもらえるようになったとき、天野さんの話を思い出し、胸がいっぱいになりました。
 B型肝炎訴訟は、平成23年6月に基本合意を結ぶことができました。翌年、集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会が設置され、私も委員として参加しました。また、集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する研究班にも班員として参加しました。
 研究班の一員として、多くの人のヒアリングにも同席させてもらいました。その中で、若い保健師さんが注射器の連続使用は危険だと指摘したところ、ベテランの保健師さんから、私はこのやり方でこの地域の公衆衛生を守ってきたんだ、と言われ、注射器の連続使用をやめることができなかったという話を聞きました。せっかく注射器の連続使用は危険だという知識を教育しても、それが実践されなければ全く意味がありません。
 また、自治体等に対するアンケートでは、注射器の連続使用を早くにやめていたという自治体もあれば、いつまでも続けていたという回答もあり、ヒアリングで訪れた自治体の方は、健康な子供に注射をするのだからそれで病気にさせてはいけないという気持ちで予防接種はやってきました、とおっしゃっていました。地域格差を改めて思い知らされました。
 私たちは、基本合意締結後も重症患者に対して何らの助成もないことから、肝がん患者に対する医療費助成を実現するための取組を始めました。街頭宣伝はもちろんのこと、請願署名集め、国会議員への陳情、地方議会への陳情など、多くの人があらゆる手段に取り組みました。病気を押して署名集めに取り組んでくれた患者や、街頭に立った患者も多くいます。また、多くの支援者も協力してくれました。
 その結果、1,700を超える自治体が肝がん助成のための意見書を採択してくれました。署名を40万筆以上集め、国会の請願も通り、平成30年から肝がん・重度肝硬変治療促進事業として始まりました。
 私は東京肝臓友の会の米澤さん、薬害肝炎原告団の及川さんと一緒に、長崎医療センターの八橋弘先生が研究代表の様々な生活の場における肝炎ウイルス感染症の人権への望ましい配慮に関する研究班に参加させてもらっています。
 私自身は、B型肝炎を理由とした差別を受けた経験はありませんでした。
 しかし、訴訟を通じて知り合った方には、ひどい差別を受けてきた方もたくさんおられます。訴訟の基本合意から15年近くがたった今でも、差別偏見に関する実態がほとんど改善していないことを、研究班活動を通じて知り、非常に残念に思っています。
 特に私が大きな病院の産婦人科で嫌な思いをしたことから、大きな病院で出産をすることに躊躇し、その結果、母子感染を防ぐことができなかったかもしれないのと同様に、今でも医療機関で嫌な思いをして治療に躊躇している患者さんがいるのではないかと思うと、とても胸が苦しくなります。
 八橋班の公開シンポジウムでも取り上げられた事例ですが、母親が子供に母子感染をさせてしまい、母親がひどい差別を受けてきたため、子供に対してB型肝炎のことを絶対に人に話しては駄目と言い続け、子供は一人で抱え込んでしまい、結婚もできないと思い込んでしまったり、ワクチンがあることすらも知らない状態だったということもあります。
 情報を持っている患者と、病気を隠して生活し、情報が届かない患者とでは人生の選択肢の幅が大きく変わってきます。情報が届いていない患者さんの力になりたいと思っていたところ、佐賀県での肝炎コーディネーターの養成がありますので、私も一昨年、コーディネーターの資格を取得しました。同じ患者として悩みを抱えている患者さんの力になれればと考えて交流会に参加したり、学生に対して患者の話をしたりすることに取り組んでいます。
 以上のような私の経験から、肝炎対策推進協議会に望むのは次のことです。
 まず、この肝炎対策推進協議会、その根拠ともなっている肝炎対策基本法や、肝炎対策基本指針の制定には、350万人のウイルス性肝炎患者のためにという多くの患者の願いが背景にあるということです。この場にいる患者委員は7名ですが、多くの患者がこの協議会の議論の行方に関心を持っているということを御理解ください。
 また、同様に肝がん・重度肝硬変治療促進事業は多くの患者の願いの結晶だということを医療関係者、行政関係者の皆様には改めて言いたいと思います。肝炎対策基本法等もそうですが、肝がん・重度肝硬変治療促進事業は多くの患者が文字どおり身を削って運動を行った結果です。そのことを念頭に、厚労省や自治体の方々には一人でも多くの患者が助成を受けることができるような、また、使いやすい制度設計にしていっていただきたいです。また、医療関係者には対象者を一人残らず拾い上げるような努力をしていただければと思います。
 次に、地域格差の解消です。現在の協議会の議題の一つは均てん化、つまり地域格差の解消です。B型肝炎の検証会議でも明らかになったように、戦後から地域格差があり、現在でも解消されていません。この地域格差はウイルス性肝炎感染を拡大させただけでなく、その治療にも生じています。何としてでも、この地域格差を解消していただきたいです。
 これからも肝炎患者が生きやすい世の中になるよう、肝炎対策推進協議会の中で議論を続けてまいりたいと思っています。
 以上です。ありがとうございました。
○竹原会長 ありがとうございます。
 それから、ただいまの梁井委員の御発表に対しまして御質問、御意見などはございますでしょうか。
 木下委員、どうぞ。
○木下委員 日肝協の木下でございます。
 先ほどの梁井委員のお話について申し上げます。
 まず、梁井委員のこれまでの取組に対して敬意と感謝を申し上げるとともに、また、八橋班の班員としても取り組まれ、何年たっても変わらない偏見差別の実態に苦悩し続けておられることを知り、同じB型肝炎患者として大変共感いたしました。同時に、全ての国民がウイルス性肝炎についての正しい知識を持ち、ウイルス性肝炎患者への偏見や差別を払拭するためのさらなる手だてを講じることの重要性を再認識しました。
 ウイルス性肝炎の患者を他者に知られることが怖いということもありますが、それよりも自分に関わる周囲の大切な人に感染させてしまうかもしれないことが一番怖いのです。ウイルス性肝炎の患者の多くは、同じように思われています。
 ここで、この思いは次の世代に残したくないという考えが私たちにはあり、2016年10月から始まった乳幼児期のB型肝炎ワクチン接種のユニバーサルワクチンですが、この年より以前に生まれた10歳以上のワクチンギャップの世代にも国の施策としてワクチン接種を推奨していただきたいと思います。とりわけ思春期の若い世代では感染の機会に触れることが多いと推測されますし、また、学校生活、恋愛、結婚、出産、社会生活の経験の中で、肝炎ウイルスを持つことは心身ともにつらい経験が伴うと考えられます。
 この場をお借りして、新たな国の施策としてワクチンギャップ世代へのワクチン接種の推進に御理解とお願いを申し上げます。
 梁井委員に対しては、本当に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
 以上です。
○竹原会長 ありがとうございます。
 それでは、お願いします。
○木村肝炎対策推進室長 まず、梁井委員におかれましては、本日こうした形で御発表いただきましてありがとうございます。また、これまでの御苦労と、または様々な活動に対して敬意と感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 その上で、今、木下委員からはワクチンとワクチンギャップ、定期接種化以前の若い方へのワクチン接種ということで御意見をいただいたところでございます。
 まず、ワクチンの定期接種、どういった疾病をどういう対象にするかということにつきましては、厚生労働省の専門の審議会のほうで有識者において議論いただいているというふうに承知しております。このワクチン予防接種につきましては別の部局のほうで担当しておりますけれども、本日はそれについてお答えできる材料を持ち合わせておりませんので、そうした御意見があったことについては予防接種担当の部局にはお伝えしたいと思います。
 御意見ありがとうございました。
○竹原会長 そのほか、いかがでしょうか。
 よろしいでしょうか。
 梁井委員の御発表で、過去のウイルス肝炎の状況、肝炎対策基本法の成立前後の状況、それからこの協議会に期待されていること、非常に皆さんによく理解いただけたのではないかと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして議題の(3)に移らせていただきます。「ウイルス肝炎の疫学に関する研究報告について」ということで、広島大学の田中純子参考人から研究成果の御発表をいただきます。資料3を御覧ください。
 それでは、田中先生、よろしくお願いします。
○田中参考人 おはようございます。田中です。
 現在、厚生労働省の肝炎等克服政策研究事業のいわゆる疫学班の代表を務めておりまして、これまでも疫学のデータを出してきておりますけれども、今日はその中から一部紹介をさせていただきたいと思います。
 
 私どもの研究班では左の上ですけれども、時代に対応した肝炎・肝がん対策推進のための科学的根拠となるデータの収集・解析を行いまして、右の上にありますように肝炎、肝がんによる健康被害の抑制、防止、体制整備に資するデータを提供することを目的としています。
 近年、WHOが2030年に向けて肝炎のEliminationを目標に掲げておりまして、それに関連するデータとしても日本の状況はどうかということについて研究しております。
 直近の研究ですけれども、左側にありますように、大きなデータを保有する機構・施設と共同研究をいたしまして、最終的に日本における肝がん疾患の将来予測研究、あるいは全国規模の疫学基盤研究をやっているところでございます。
 大きく申しますと、左側にありますように現状把握、それからその中から出てくる課題を上げていくのが研究班の目的であります。また、右の関連する国内国際機関への情報提供等も行っているところであります。
 こちらは、日本の肝炎対策の取組について簡単に図示をしたものでありますけれども、左の下からB型肝炎、それからC型肝炎の発見に伴いまして、我が国では輸血用血液・血液製剤へのスクリーニングを早期に始めております。
 また、先ほど言及がありましたけれども、1986年の1月からB型母子感染防止事業を世界に先駆けて行っておりまして、同時に妊婦全員を対象に検査するという世界でも早期に導入した検査を始めております。特に2002年ですけれども老人保健事業、現在では健康増進事業ですが、40歳以上の住民を対象にウイルス検査を無料・助成により受けられるというような仕組みを導入して拾い上げを始めているところです。
 その後、2010年の肝炎対策基本法に関連しまして、全ての都道府県で肝炎拠点病院を設置し、治療の均てん化を図っている。また、肝炎治療助成制度も充実をしてきているというのが現在の状況でございます。
 それらのことを踏まえまして、研究班の成果の中からここに示すようなものを今日お話ししたいと思っております。
 我が国の肝がん死亡の成因ですけれども、人口動態統計などではウイルス別のがんの成因は分かりませんので、研究班で推計を行っております。1990年代には肝がん死亡の主な原因としてはC型肝炎の持続感染によるものが多く、B型とC型を合わせますと、当時は9割くらいと推計しております。
 右にいきまして、現在では非B非Cという原因での肝がんの成因も半分くらいと増えておりますけれども、いまだに4割から5割くらいはウイルスの持続感染に起因するという認識をしております。
 こちらは、B型とC型の検査は採血により行いますという簡単な図示をしております。
 
 2000年時点ですね。今から25年前、まだ検査が広くには導入されていなかった時代に、日本にどれくらいのキャリアの方がいるのかということを研究班で推計をしたものです。
 2000年時点で15歳から69歳のC型のキャリアは大体88.5万人、うちの86%以上が40歳以上だということがこのときに明らかになりました。また、B型肝炎についても96.8万人のうち74%が40歳以上ということで、2002年に開始しました住民健診では40歳以上を対象にしたというのは合理的な施策だったと考えております。
 現在では、25年経過しておりますので、当時の40歳以上は65歳以上に移行し、高齢化が課題と考えております。
 2002年から開始しました住民健診は現在もまだ続けられておりまして、現在までに、B型、C型、いずれもこの事業による検査をそれぞれ2100万人の方が受けていらっしゃいます。
 2002年、当初はB型、C型の陽性率、それぞれ1%くらいでしたが、この事業による40歳以上の陽性率は年々減っておりまして、B型、C型、それぞれ0.6%、0.2%という値になってきております。
 
 こちらは同様に、健康増進事業による検査数をブロック別に分けて同じように示したものであります。北海道から東北、関東、中部東海ですが、関東ブロックは人口が多いためやはり検査数も多くなっております。
 四国につきましては、人口規模が小さいので検査数も少なくなっております。また、健康増進事業による肝炎ウイルス検査数を示したものです。ほかにも国では感染症等検査事業による検査を重点的にを行っている県もありますので、一概にこれが全ての肝炎ウイルス検査数と言えません。傾向としてお示ししたものです。
 
 こちらは日赤の長年の協力によりまして、1995年から初回献血者集団におけるB型のHBs抗原陽性率と、C型のHCV抗体陽性率を出生年別に示したものです。1995年から約5年ごとにまとめたものを示しています。
 赤のところが1990年代、まだ肝炎ウイルス検査が普及していなかった時期の陽性率ですけれども、それと比べますと近年になりますとどの年齢世代でも低くなっております。特に左側の1986年、B型の母子感染防止事業が開始されて以降に生まれた世代においては、B型では0.05から0.1、HCV抗体についても非常に低い値を示しており、若い世代での感染率の低下が顕著であるということを認識しております。
 以上のように、日本においてはいろいろな肝炎ウイルス検査の検査受検機会がございます。献血であったり、妊婦さん検診、それから手術を受ける方は事前検査が1993年から行われています。その他、職域、人間ドック、病院に行ったときの検査と、いろいろな機会があるわけです。しかし、国民の中で何割の人が今まで肝炎ウイルス検査を受けたことがあるのかということを把握するのは難しいということで、当研究班のほうでは郵送質問紙による調査を、全国民の中から無作為抽出を行いまして、今まで4回ほど行ってきております。
 最新のデータを見ますと、国民の88.2%の人がB型肝炎ウイルス検査を1度は受けたことがある。C型肝炎では、79.2%の人が検査経験を持つと推定しております。
 また、日本国民の中でのB型、あるいはC型の陽性率を把握したいと思っているわけですけれども、一律に国民が一斉に受ける検査というのはございません。
 ただ、妊婦健診については全ての妊婦が受けることになっておりますので、研究班のほうで全国の市町村へ調査をかけまして、妊婦健診の結果についての調査を行いました。2回行っております。2014年から15年に全国の自治体に向けまして、妊婦健診の結果を集計させてもらったものです。その結果、HBs抗原陽性率0.2%になりました。7年後の2021年に同様に調べましたところ、0.09%と、いずれも平均年齢が大体31歳の妊婦集団であり、女性だけになりますが、こ非常に低い値ということが言えます。
 右を見ていただきますと、出生年別のグループに分けてHBs抗原陽性率を示しております。特にB型母子感染防止事業対策以前に生まれた世代と、以後に生まれた世代では、このように有意差を持って防止事業対策以降に生まれた世代のHBs抗原陽性率が非常に低くなっておりまして、下の段の左側のほうを見ていただくと0.07%、特に2002年以降に生まれた妊婦さんの中ではs抗原陽性者はゼロだったということになります。この世代から次世代へのB型の母子感染はないものと疫学班のほうでは考えております。
 次は治療の状況です。我が国では、レセプトにより審査報酬請求、そのデータを全部統合しております。NDBと言うのですけれども、そのNDBレセプト情報の使用許可を厚生労働省から得まして研究班のほうで解析しているものです。抽出したレセプトは64.5億件と非常に多いのですけれども、その中からB型、C型を診断を受けたものを抽出しまして病態あるいはレジメンごとに分けたものです。
 治療を受けている患者数であります。B型のほうを見ていただきますと、2012年から治療を受けている患者数は微増しております。これは、今まで治療を受けなかった方が、核酸アナログあるいは耐性の少ない治療薬が開発されたこと等により、または肝臓学会治療ガイドラインで対象者の拡大などがあり、治療を受ける患者さんが徐々に増えてきたものと考えています。
 一方で、C型の治療中の患者数につきましては、特に2015年以降、DAAが開発され治癒される方が増えまして、治療中の患者数は減ってきております。これは、治療対象の患者数そのものも減っているのではないかと我々は考えております。
 
 今度は、IQVIAという医薬品販売データを疫学班で得て、貴重なデータでありますけれども、これについてC型のDAA抗ウイルス製剤の販売実績でありますが、これを都道府県別に10万人当たりにしめしたものであります。遠目で見ていただきますと、左が北海道で右が沖縄ですので、真ん中を日本の真ん中にしますと、右側、西日本地域で該当の患者数がちょっと多いという傾向がありまして、特に佐賀県、和歌山県、山梨県というのは10万人当たりの投与患者数が多いことが分かると思います。
 これは、もともと西日本地域で多いということを反映しているのか、それとも患者さんを診断し、治療に結びつける対策を一生懸命やっていらっしゃる県なのか、本当のところ、そこは調査できていませんので分からないということであります。
 それらの数字と、肝炎対策推進室のほうで集計されております受給者証交付数を基にどれくらいの方がC型SVRを日本で達成しているのかというのを累積でお示ししたものです。これも推計値です。発行数から、また後期高齢者医療分で治療をされている方もありますので、SVRの率を推定して書いてみますと、2023年時点で37万人、少なくとも40万から70万人の方はHCV治療でSVRになったと研究班のほうでは考えております。
 それらを基に、肝がんだけではなくて肝疾患関連、死亡数、死亡率を、WHOのElimination関連のデータを出す必要もありまして、集計しております。左がB型、右がC型でありますけれども、肝疾患関連の患者数は2015年の基準年と比べまして2020年にはB型、C型、それぞれ12.5%、31%減少しており、WHOが掲げている目標をある程度達成していると研究班では考えております。
 
 こちらは、肝がんによる粗死亡率です。これはウイルス性を分けることはできませんので、全ての原因による肝がんの総死亡率10万人当たりの都道府県であります。
 特徴的なのは、やはりベスト10に入っている都道府県は中国、四国、九州地域の、西日本の都道府県が上位を占めているということでありますけれども、1位の数字を見ていただきますと、1990年代と比べまして右の2023年の1位の10万人当たりの数字は37.3から27.5と、全体的に肝がんの粗死亡率は下がってきているということが分かると思います。
 
 人口規模が違いますので、死亡率が高い、低いといっても実際の患者さんはどれくらいいるのかということを示すために、肝がん死亡数の多い都道府県もランキングしております。こうしますと、やはり人口規模の多い東京、大阪、福岡等に患者さんが多いことが分かります。
 こちらは二次元で、右横軸は死亡数が多い、縦軸は死亡率が高いとしますと、右の上の四角のところは死亡率も高く死亡数が高いので、早急にすくい上げと治療・受療等の対策が必要だと分かると思います。
 では、世界の現状について簡単にお話ししたいと思います。
 2022年の段階における世界のB型、C型の感染状況であります。左がB型でありますけれども、2002年と比べましてやはり徐々に減ってきております。右側のC型につきましても、2002年に1.3億人おられたキャリア数は現在5600万人まで減っており、治療薬の効果が大きく現れてきているところであります。
 世界においては、新規感染を90%減、死亡も65%減というWHOの目標がありますけれども、新規感染については効果的に下がってきている。しかし、肝がん死亡についてはなかなか難しいという現状が見えていると思います。
 それらを踏まえまして、日本での持続患者数の推移をお示ししたものです。一番左が2000年時点に厚生労働省から300から370万人のB型あるいはC型の感染者が存在すると報告されました。けれども、2002年に開始した住民健診、2008年から医療費助成制度が始まり、検査や治療が進みまして2015年には200万人から250万人、2020年には100万人から140万人減少したと推定しております。
 これをB型とC型に分けて図でお示ししたものです。
 これらの数字を基に、研究班のほうでどれくらいの方が2020年時点で診断されているか、あるいは治療をされているかということを推計したものであります。診断率、治療率、ともに右の上にありますWHOの掲げている目標にほぼ近い状況でありまして、日本の診断と治療の現状はまずまずと研究班では判断しております。
 研究班で様々な今までのビッグデータを使ったり、独自の調査、解析によりまして、2030年、2050年までの推計を行っております。赤い点線のところが現在、ちょっとずれますけれども、2025年くらいのところであります。B型については治癒という定義は難しい、ウイルス排除というのが難しいので、治癒はほぼないと仮定定義しており、なかなか減りは少ないのです。けれども、現在の状況でいけばというある一定の仮定を置いて推計をしたものであります。
 「残された課題」としましては、WHOの示している目標にはPWID、薬物乱用者の問題であったり、幾つかありますけれども、引き続き、指標のモニタリングが必要と考えております。
 最後のスライドになります。
 まずまず対策としては進んでいると思っておりますけれども、緩めることなく、対策と課題に向けて継続する必要があると研究班では考えている次第です。
 以上です。
○竹原会長 ありがとうございました。田中参考人から、最新の疫学動向についてお話をいただきました。
 以下、御質問、御意見等はございますでしょうか。
 伊藤委員、どうぞ。
○伊藤委員 薬害肝炎原告団の伊藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 資料3のウイルス肝炎の疫学に関する研究報告、11、12ページの日本の肝炎対策の取組と、17ページの医薬品販売実績を基にしたHCV-DAA抗ウイルス剤別人口10万人当たり投与患者数について発言させていただきたいと思います。
 11、12ページのグラフから、地域別健康増進事業による肝炎ウイルス検査受検者数は中国と四国ブロックが他のブロックと比べて極めて少ないのはどのような要因からでしょうか。要因がお分かりになれば教えていただきたいと思います。
 また、人口10万人当たりのHCV-DAA抗ウイルス剤投与患者数が、佐賀県、和歌山県、山梨県で多い要因がお分かりになれば教えていただきたいと思います。
 以上です。
○田中参考人 御質問どうもありがとうございます。
 こちらは先ほども申し上げたのですが、健康増進事業による検査数のみを挙げております。国が助成を行っている肝炎ウイルス検査については、健康増進事業による検査と、特定感染症事業による検査と、あると思います。都道府県により、特定感染症検査事業の検査に重点を置いて、県のあるいは市町村の検査数を増やすという取組をやっているところも多々あります。その影響もあって少ない報告数となっていることもあります。けれども、大きな原因は、人口10万当たりの検査数ではなくて実数を示しているので、やはり関東ブロックなどと比べますと中国・四国ブロックは人口そのものが少ないので、検査数が少なく報告されていると考えています。
 1つ目についてはよろしいでしょうか。
○伊藤委員 はい、ありがとうございました。
○田中参考人 では、17ページのIQVIAの医療品販売実績でなぜ佐賀県などが多いのかという御質問ですけれども、販売実績を基に10万人当たりに集計したものなのですが、そもそもこの地域の患者さんが多いのか、それとも患者検査をたくさんされて治療に結びつけている、つまり対策を一生懸命やっていらっしゃる結果、患者治療を受けていらっしゃるのか。その2つの理由が考えられると思いますけれども、そのどちらが正解なのかということについてはこちらでは把握しようがありませんので、その両方を考えております。
 以上です。
○竹原会長 伊藤委員、よろしいでしょうか。
○伊藤委員 はい、ありがとうございました。
○竹原会長 それで、続きまして坂本委員、お願いいたします。
○坂本委員 日本医師会の坂本でございます。田中先生、データをありがとうございます。
 質問ですが、肝がんの死亡率とかが出ておりますが、感染死亡率と、C型で治療されてネガティブになられた方と、B型の治療ということになるかもしれませんけれども、治療された方での肝がんの発生率とかのデータを見落としているのか、そういうデータはないということでよろしいのでしょうか。
○田中参考人 治療された方での死亡というデータですが、私どものほうではまず1つNDBというレセプト情報を用いて集計しております。これからは、治療を受けている方というのは分かります。それから、肝がんに罹患されたということも分かりますけれども、NDBは匿名化情報で死亡の情報とまだ連結をされておりませんので、その中でどれくらいの方が死亡されたかというのは、今のところ分からない状況になっています。治療を受けて肝がんになった方ということと、あとは人口動態の死亡統計のほうで何人が肝がんで死亡されたかということを両方提示することで、エビデンスとしているのであります。
 よろしいでしょうか。
○坂本委員 分かりました。
 そうしたら、NDBで検査を受けられた方と受けられていない方との、それもデータでは難しいのでしょうか。その辺の発生率は。
○田中参考人 やはりNDBは医療機関に行って診断を受けられたところから治療が始まりますので、その方がそれまでに検査をどこで受けられたのか、いつ受けられたのか、どの機会で分かったのかということはレセプト情報からは分からない仕組みになっています。
○坂本委員 ありがとうございます。その辺が分かれば対策上は非常に有用かと思ったのですけれども、ありがとうございます。
 以上です。
○竹原会長 そのほか、いかがでしょうか。
 辰巳委員、お願いします。
○辰巳委員 B型肝炎訴訟原告団の辰巳です。
 私も少し質問なのですけれども、20ページの肝がんの粗死亡の高い都道府県というデータなのですが、先ほど田中先生も、この粗死亡のデータにはウイルス性のものと、ウイルス性以外のものが含まれていて、分けることができないとおっしゃっていたのですが、データベースからはその抽出というのは難しいということで、ウイルス性で亡くなった方、それ以外で亡くなった方のデータはお持ちでないということなのでしょうかという質問と、まとめて幾つかさせていただきます。
 ここでも死亡率は中・四国、九州地域の都道府県が上位を占めているというふうに書いていただいているのですが、この中・四国、九州地域が高くなっている要因について何か考えられる点があれば教えていただきたいということと、その中で佐賀県がずっと上位を占めていた中で、この22年、23年においてはかなり下がっているということについて何か理由があれば教えていただきたいということです。
 あとは、こちらは肝炎対策推進室のほうにお伺いしたいのですが、こういったデータが出てきた中で、死亡率の高い都道府県で、かつ健診率が低迷しているような自治体というのを割り出すことはできると思うのですけれども、改善策を作成していただいた上で数年単位にかけてフォローしていただく必要があるとは考えているのですが、この点はどのようにお考えになっているのかというのをお聞かせいただきたいと思います。
 あともう一点だけ、27ページを見ると、C型肝炎の患者さんはもちろん減ってきていて、B型肝炎の患者さんも2000年以降、今は2020年に至る経過でいくと減ってきているということですが、その1つ前の26ページのスライドでは、受療中のB型肝炎の持続感染の患者数はむしろ増えている。これは、B型肝炎の持続感染者が受診されている、治療につながっているということで、むしろいい数字だというふうに理解していいのかどうかという点について教えていただきたいと思います。
○田中参考人 たくさんあるので最初からいきますけれども、20ページでしょうか。粗死亡率が高いのはなぜかでしたか。
 ウイルス性で分けられるかでしたか。そうですね。これは死亡統計なんですね。だから、死亡されたときの統計で、その死亡の分類がウイルス別にはなっていないので、ICD分類という世界で決めている死因のコード分類があるのですけれども、そちらに基づいて日本も分類していますので、ウイルス性というものがないので、肝がんということでピックアップして並べたデータです。
 それから、中国、四国、九州地域の都道府県が上位を占めるのはなぜか。これは昔から言われておりまして、今日のデータではお示ししていないのですけれども、日本地図で都道府県別に1970年代、40年前に遡って死亡統計に基づいて示している研究成果があるのですが、そちらを見ますと、やはり西日本地域がちょっと高く、西高東低の傾向があったのですけれども、近年、2010年以降のデータを解析していますが、ほぼ全国的に平均ということで地域差がなくなってきております。
 そういう地域差がなくなってきている中で、佐賀県が下がってきているのはなぜかということなのですけれども、どの県も下がってきているのですが、相対的に佐賀県では肝がん死亡率がずっと1位だったということもありまして、自治体の方や医療機関の先生方が、一生懸命治療をしましょう、拾い上げをしましょうという活動をされてこられています。その成果とも言えます。また、佐賀県は実は人口が80万人という県でありますので、死亡者数が4人、5人減ると、死亡率減少に表れる。東京都などでは10人死亡数が減ってもなかなか数字には表れないという統計的な理由もあります。そういう統計上の、データ上のことが相まってなっております。また、西高東低というのは昔から言われていることで、最近は西高東低の傾向がなくなってきているというふうに御理解ください。
 それから、患者数・感染者数は日本においてはC型あるいはB型、いずれも減ってきております。一方、増えているとお示しをした16ページのスライドは、治療を受けている方が増えていることです。先ほども申しましたけれども、新規治療、ウイルス減少あるいは肝がんにならない治療、耐性が出にくいような治療薬が開発されてきたことで、治療を受けようという方が増えている。いい傾向ではないですか?とおっしゃいましたけれども、私はそう思っております。
 それから、竹原先生は御専門ですけれども、治療ガイドラインの変更もあり、増えてきているのでないかと思っております。
○辰巳委員 ありがとうございます。
○木村肝炎対策推進室長 厚生労働省に対しましては、データが必ずしも状態がよくない都道府県への働きかけということで御意見をいただいたところでございます。
 まず、肝がんの年齢調整死亡率と、ウイルス健診率自体には必ずしも相関があるわけではないというようなことは過去にも把握をしているところでございます。その上で、本日も田中先生から各都道府県のデータなどをお示しいただきましたけれども、こちらも今年度のブロック会議でこうした都道府県ごとのデータ、または順位ということを田中先生からお示しいただきまして、各都道府県の方々、またはそれぞれの拠点病院の方々にも御自身の県なりの状況というのは意識づけというか、把握していただいて、今後の取組の参考にしていただいているといったところでございますので、今後ともそうした形でブロック会議ですとか、意見交換の場を使ってそうした情報提供を含めてやっていきたいと考えております。
○竹原会長 そのほか、いかがでしょうか。
 日浅委員、どうぞ。
○日浅委員 愛媛大学の日浅です。
 29ページのスライドなのですけれども、今、C型肝炎はWHOが2030年の撲滅を目指して、日本は2027年の撲滅を目指していると思います。最近、いろんなところでセミナーとか聞くと、若干減ってきたけれども、ちょっと対策が停滞しているというデータを示されることがあり憂慮していたのですが、このデータで見ると着実に進んでいると受け取りました。C型肝炎ウイルスのEliminationとして、日本では2040年か50年くらいにはできそうだという理解になりますでしょうか。
○田中参考人 ありがとうございます。
 何年までにというのは、研究班ではまだ公式には申し上げておりません。まだ検討中ということで、いろいろな情報を踏まえまして日本のEliminationがいつかというのは出していきたいと思っております。皆さんがこのデータを見ていただいて、日浅先生も何年かというようなことをサゼスチョンいただくのは構わないかと思いますが、何年までということはまだ考えておりません。
 よろしいでしょうか。
○竹原会長 うなずいておられます。
 そのほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、続きまして議題「(4)その他」でございます。
 これにつきましては、事務局から資料の御説明をお願いいたします。
○木村肝炎対策推進室長 それでは、資料4、肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業につきまして、令和6年度の助成実績のデータの御紹介を中心に御説明させていただきます。
 1ページ目を御覧いただければと思います。御承知のところかと思いますけれども、この事業につきましては、B型肝炎・C型肝炎ウイルスに起因する肝がん・重度肝硬変の予後が悪く長期の療養が必要といった特徴を踏まえまして、患者の方々の医療費の負担の軽減を図りつつ、臨床データを収集しまして、治療研究を促進するということで、平成30年12月から開始しているところでございます。
 この間、要件について2度見直しを行ってきたところでございますが、現在の要件といたしましては、2のところにございますとおり、肝がん・重度肝硬変の患者さんで、年収が約370万円以下の方で、入院治療または肝がんの通院治療の医療費について、高額療養費の限度額を超える月が過去2年間で2か月以上ある場合、2か月目以降の医療費について、自己負担額が1万円となるように助成をするという仕組みでございます。
 右下の※のところにございますとおり、昨年4月から2度目の要件緩和を行っておりまして、過去1年間で3か月以上という要件だったものを、過去2年間で2か月以上ということで要件緩和をしてきたところでございます。
 2ページ目を御覧いただければと思います。令和6年度の要件緩和後の助成実績について、今回、令和6年度のデータが出ましたので、御紹介させていただくものでございます。
 まず上の赤枠を御覧いただければと思いますけれども、認定患者さんの数といったところでございます。新規の認定患者数が令和5年度で553名に対しまして、令和6年度では年間1,098件ということで、新規の認定患者数が2倍になったといったところでございます。
 また、それらを踏まえた助成件数につきましても、下の赤枠のとおり、4,589件から5,657件ということで、令和6年度にかけて令和5年度から2割強増加したというデータになっているところでございます。
 3ページ目を御覧いただければと思います。こちらは各都道府県での助成件数をお示ししたものでございます。
 全体として伸びているといったところではございますけれども、これは人口比で調整したデータではございませんが、都道府県ごとにばらつきがあるという状況はあろうかと思っております。
 4ページを御覧いただければと思います。こちらはこの事業の普及啓発・利用促進の強化ということで、令和6年度からの要件緩和と併せまして、この事業をしっかり周知し、利用していただくための取組を併せて進めているものでございます。
 具体的には実施方法のところにありますとおり、肝炎情報センター戦略的強化事業の中で、この事業の普及啓発・利用促進に係る事業を追加いたしまして、各拠点病院等において取組を行っていただいているところでございます。
 下にありますとおり、取組(例)といたしましては、普及啓発資材の作成ですとか、研修会の実施、また、院内での連携体制の強化、こういったことに取り組んでいただいているところでございます。
 5ページでございます。こちらは令和6年度の取組の一例をお示ししたものでございます。
 上にありますとおり、医療機関向けのアプローチといたしましては、左側、山形大学医学部附属病院の例でございますけれども、拠点病院と県の担当部局で協力いただきまして、勉強会資料を作成し、県内の基幹病院の医師、また、スタッフの方々に向けて勉強会を実施いただいたということでございます。
 その際には、この制度がしっかり理解され、利用されるように、患者側・医療機関側、それぞれの視点からどのようなフローでこの申請手続が行われるのかといった資材も作成いただいて、この事業の御理解と周知を行っていただいたという例でございます。
 右側は武蔵野赤十字病院の例でございますけれども、こちらは都内の指定医療機関向けに、制度の解説と実際に院内でどう対象者を拾い上げていくかといったことについて、2つの解説動画を作成いただいております。
 そして、その動画を都の担当部局を通じまして、管内の指定医療機関へ視聴を促すという形での周知をいただいたといった例でございます。
 下の枠が患者向けアプローチということでございまして、この制度について患者さん向けの周知ということで、リーフレット、パンフレット、クリアファイル等を作成して、周知をいただいたといったところでございます。
 令和6年度はこうした取組を行ってきたところでございますけれども、こうした成果もあって、要件緩和と相まって助成件数が増加したと考えておりますけれども、この周知・啓発については、今年度も継続して実施しているといったところでございます。
 私からの説明は以上になります。
○竹原会長 それでは、ただいまの御説明に御意見、御質問等はございますでしょうか。
 山崎委員、お願いします。
○山崎委員 失礼します。日肝協の山崎です。
 資料4の肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業の2ページの治療研究促進事業の認定、助成実績について発言いたします。
 先ほど梁井委員からお話もありましたように、肝炎対策基本法が制定されて、患者のいろいろな思い、あるいは理解者のいろいろな思いがあって、肝がん・重度肝硬変の事業が促進されているということで、行われた事業です。
 令和6年4月に2度目の要件緩和を行っていただいたのですが、その結果からも明らかなのですが、新規認定件数が令和5年度の2倍、助成件数は令和5年度の2割強増加している。非常に増えています。つまり要件を緩和すれば、成果は当然上がるということです。
 平成30年12月の制度開始以来、2回要件緩和を行っていただいているのですが、やはりいまだ制度が肝炎支援に結びついていなくて、多くの患者がこの制度を活用できないまま亡くなっていらっしゃいます。
 令和6年度の助成件数は5,657件、月平均でいうと約470件です。要件緩和によって件数は徐々に伸びてはいますけれども、あまりにも助成件数が少な過ぎるように感じています。年齢の壁、高額療養費の壁、月数の壁など、多くの壁によって多くの重篤な患者がこの制度に手が届かない状況が今もあります。さらなる要件緩和が必要だと考えます。この現状をどのように捉えていらっしゃるのか。
 それから、医原病によって肝がん・重度肝硬変となった患者救済のため、今後どのような手当てを講じて行こうとお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
 以上です。
○木村肝炎対策推進室長 肝がん・重度肝硬変事業のさらなる促進、また、要件緩和を含めた御要望をいただきました。
 まず現状でございますけれども、先ほども申し上げましたとおり、今回件数が増えているというのは、当然要件緩和もございますが、各地域で、拠点病院、また、自治体の皆様にこの事業の周知にかなり取り組んでいただいたことも貢献していると考えております。
 繰り返しになりますが、先ほども一部御紹介いたしましたけれども、今年のブロック会議でも各拠点病院の皆様から院内の連携強化ですとか、もしくは県内の病院に対する説明といったことにかなり力を入れていただいているといったところでございます。
 先ほど申し上げたとおり、この事業は今年度も継続しておりますので、年明け以降、令和7年度のデータの一部ということで、件数は御紹介させていただきたいと思いますし、恐らく令和7年度になれば、また件数の増加も見込まれると考えているところでございます。
 その上で、さらなる取組ということで申し上げますと、B型肝炎の原告団の皆様との大臣協議の際には、申請手続を簡素化いただきたいという御要望もいただいたところでございます。その際にも申し上げましたし、先ほども少しお話がありましたが、マイナンバーを利用した情報連携などを進めることで、利用される方の申請手続も簡素化できるのではないかと考えております。
 その上で、先ほどのB型肝炎の大臣協議と同様に、薬害肝炎の皆様との大臣協議の記録も参考資料で配付させていただいておりますけれども、さらなる要件緩和ということで御要望をいただいていることも承知しております。
 引き続き、こうした周知・啓発等を通じた助成件数の状況などもしっかり注視しつつ、また、皆様方からの要件緩和の御要望といったことも承知しておりますので、引き続き様々な機会で意見交換・協議をさせていただきながら、検討を進めていきたいと思います。ありがとうございます。
○山崎委員 ありがとうございました。
 また様々な手当てを講じていただいて、苦しんでいる患者が救済されますように、今後もお世話になりますけれども、よろしくお願いいたします。
 以上です。
○竹原会長 そのほかいかがでしょうか。
 伊藤委員、どうぞ。
○伊藤委員 薬害肝炎原告団の伊藤でございます。
 再度お願いいたします。資料4の肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業、3ページの都道府県別の肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業の助成件数について発言させていただきたいと思います。
 田中先生の勤務地である広島県は助成件数が非常に多いのですが、広島県ではどのような手だてを講じておられるのか、田中先生にお聞かせいただきたいと思います。
 以上です。よろしくお願いいたします。
○田中参考人 ありがとうございます。
 助成件数が進んでいる点については、県の肝炎対策協議会でも何回か議題にしております。
 申請件数の6割から7割が拠点病院からです。広島県には拠点病院が2つあります。拠点病院でどういう仕組みをしているかといいますと、電子カルテシステムにポップアップ機能を導入しています。ポップアップで患者さんが来られた、対象患者さんがおられるということになると、肝炎相談室にすぐにつなぐことにしています。相談室では肝炎コーディネーターの資格を持った方、制度に非常に詳しい方を配置していまして、その方が丁寧に説明する。また、県との連携もよくできているということがあり、拠点病院からの申請が非常に多いということです。
 また、県の担当者が専門医療機関に訪問して、専門医療機関には肝炎コーディネーターの方がいらっしゃるので、その方を中心に制度の説明、申請の仕方などを説明したことで、全国一というのは非常に誇らしいのですけれども、そういう数字になっているかと思います。このことはブロック会議などでも共有しまして、好事例として伝達していると認識しております。
 よろしいでしょうか。
○伊藤委員 他県も、広島県、田中先生の勤務地と同様、そういった形が取れることを望んでいます。ありがとうございました。
○竹原会長 ありがとうございます。
 そのほかいかがでしょうか。
 出田委員、どうぞ。
○出田委員 薬害肝炎原告団の出田と申します。
 資料4の4ページ、肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業に係る普及啓発・利用促進の強化のところで御質問いたします。
 前回3月の協議会で、薬局側の目線から見たマニュアルやQ&A等の作成についてお尋ねしたところ、実際の実績については、今、集めている段階で、取りまとまったら何らかの報告をするとのお答えでした。その後、薬剤師向けマニュアル作成が実際にどの程度進んでいるのか、また、薬局との連携で具体的な取組や好事例があれば、教えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○木村肝炎対策推進室長 御質問ありがとうございます。
 御承知のとおり、もともとこの事業をスタートするときの例として、薬局との連携といったことも例示をさせていただいていたと思いますけれども、先ほど資料でも5ページで紹介させていただきましたが、医療機関の中、もしくは医療機関同士の周知というのが今年度の成果の多くでございます。
 その上で、今年度以降もこの取組を進めていく中で、院外の薬局との連携といった事例も今後さらに出てくるかと思います。御指摘の点は、引き続き今後の取組の中で、薬局との取組といったものがあれば、御紹介させていただきたいと思います。ありがとうございます。
○出田委員 よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○竹原会長 ほかはいかがでしょうか。
 日浅委員、どうぞ。
○日浅委員 先ほどの肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業の件数を増やすというところですけれども、現場の意見といいますか、実態からいきますと、事務的作業にかなり労を要しており、そこに協力をいただけるかいただけないかということ、病院の体制が整うか整わないか、件数が増加するかはそれにかなり大きく依存しているように思います。
 先ほど木村室長がおっしゃっていましたように、せっかくマイナンバーカードとそれに付随する健康保険証の制度ができている現状があるので、もっとDXとか、そういうものも使って、事務的なところが簡素化できるようなシステムといいますか、そういう体制ができれば、進むのではないかと思っておりまして、ぜひマイナンバーカードの有効利用を意識していただければと思っております。意見です。
○木村肝炎対策推進室長 マイナンバーカードを使った情報連携について、御意見ありがとうございます。
 先ほども少しお話しさせていただきましたけれども、マイナンバーを使った情報連携の仕組みが整えば、申請書類の一部が省略できるような形になるといったこともございますので、引き続きそうした取組を進めていきたいと思います。御意見ありがとうございます。
○竹原会長 そのほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、続きまして、ウイルス性肝炎患者等に対する初回精密検査及び定期検査の促進について、資料5を御覧ください。この御説明をお願いいたします。
○木村肝炎対策推進室長 お手元の資料5を御覧いただければと思います。
 こちらはウイルス性肝炎患者等に対する初回精密検査及び定期検査の促進についてということで、先ほども少し言及させていただきましたけれども、本年5月に都道府県宛てに事務連絡を発出し、協力依頼を行ったものの御報告でございます。
 1にありますとおり、肝炎ウイルス陽性患者の方の初回精密検査の検査促進の依頼でございます。都道府県以外が実施する各種の検査で陽性となった方々が、必ずしもその後の初回精密検査の実施、助成制度の利用にはつながっていないということで、改めてそうした各種の検査の実施主体、市町村であるとか、職域、その他医療機関も含めてですけれども、そうした検査主体に対して初回精密検査の助成制度の周知を行っていただくとか、もしくは市町村等の検査結果の通知に併せて、こうした助成制度を紹介していただくといった取組を取組例としてお示しした上で、改めて依頼をしたものでございます。
 2でございますけれども、こちらは治療によりC型肝炎のウイルス排除がなされた場合でも、肝がんのリスクが一定残るということから、そうした方でも定期的な検査が必要であるといったことについて、なかなか理解が進んでいないといったこともございますので、そうした理解促進のために、別添をつけさせていただいておりますが、今回リーフレットを作成いたしましたので、こうしたリーフレットも活用いただいて、医療機関等に定期検査の促進に向けた周知等をいただくよう、都道府県に依頼したものでございます。
 私からの説明は以上になります。
○竹原会長 それでは、ただいまの初回精密検査・定期検査の促進につきまして、御質問、御意見はございますでしょうか。
 出田委員、どうぞ。
○出田委員 薬害肝炎原告団の出田です。よろしくお願いします。
 資料5の2番、定期検査の費用助成のところで御質問します。特にC型肝炎のSVR後の定期検査の必要性についてお尋ねいたします。
 2008年にC型肝炎の治療費助成が始まって、もう18年が経過しますけれども、この間、多くの患者がSVRを達成しています。しかし、近年、SVR後に肝硬変や肝がんを発症する患者さんが後を絶ちません。私どもの団体でもそのような報告が増えております。患者はウイルス排除を肝炎の治癒と勘違いし、その後の定期検査を受けていないのではないかと思われます。SVR後も肝がんの発症リスクは残っていて、年に1回または複数回の検査の必要性を知らせる取組をぜひ考えていただきたいと思います。
 5月にリーフレットをつくっていただいたところですけれども、患者の中には既に肝臓専門医を離れた患者も多く存在していて、リーフレットがなかなか届かない患者も多いと思われます。ぜひリーフレットを併用して、ほかの手だてを考えていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○木村肝炎対策推進室長 御意見をいただきまして、ありがとうございます。
 こうしたリーフレットを使って、専門医ではないところで受診されている方にどう周知をしていくかというところが課題だという御意見だったと思います。どのような方法があるかということについては、引き続き検討してまいりたいと思います。御指摘ありがとうございます。
○出田委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
○竹原会長 そのほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。そのほか、特に委員の先生方から御発言はよろしいでしょうか。どうぞ。
○日浅委員 日浅です。
 今、初めのほうで、研究支援とか、そういう話がありました。私が発言することではないのかもしれないのですけれども、創薬に結びつきそうな薬、あと、アンチセンスを使ったような新しい治療法とか、そういうものが出てこようとしておりますし、日本でもその開発が非常に進んでいるという実態がありますので、ぜひ御期待いただきたいと思います。
 以上です。
○竹原会長 ありがとうございます。
 萩部委員、どうぞ。
○萩部委員 参考資料に対しての質問でもよろしいでしょうか。
○竹原会長 どうぞ。
○萩部委員 創薬に関してといいますか、研究絡みで概算要求の5番にも研究の促進がありますが、参考資料4に肝炎研究推進戦略がございます。これに関して発言をさせていただきたいと思います。
 現時点では、残念ながら、B型肝炎のウイルスを完全に排除できる治療が存在していないというのが実情でございます。創薬が容易ではない、なかなか難しいということは十分に承知しておりますけれども、今回、予算額が増額をしておると思うのですが、増額のみで政策研究の推進に必要な体制や成果が十分に担保されるとお考えでしょうか。
 研究力強化の観点では、別の資料にいろいろとあるのですが、内閣府においても研究の生産性、時間、人材、投資の各方面から、日本の研究力向上に向けた対応策が検討されておると認識しております。創薬力の強化に向けた政府の取組も承知しております。
 参考資料4によりますと、平成24年からB型肝炎創薬の実用化研究が開始されております。既に13年が経過しておるかと思います。現在、国内外の研究者がHBs抗原の陰性化を目指す機能的治癒、Functional Cureの創薬に取り組んでおられるかと思います。日本でも迅速審査品目に指定されていますベピロビルセンとか、siRNAなど、有望な治療法の開発が国内外で進められていることも承知しております。また、ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスへの対策が政府において進められていることも認識をしております。
 そこで、お伺いいたします。日本国内において、B型肝炎ウイルスの完全排除を目指す治療薬の開発に向けて、難しいと思うのですが、現状で具体的に何が不足しているとお考えでしょうか。研究資源、制度設計からグローバル化の国際連携などの要素のうち、最も課題となっている点とその対策の実施状況について、御意見をお聞かせいただけると幸いでございます。
 以上でございます。
○竹原会長 これは木村室長からお願いいたします。
○木村肝炎対策推進室長 研究の促進について御質問をいただきました。
 御承知のとおり、C型肝炎につきましては、ウイルスを完全に排除する治療薬が開発されています。一方で、B型肝炎については、そうしたものが患者の皆様から非常に待ち望まれているといったことは、承知しているところでございます。
 その上で、我々は、AMEDにおける研究においても、B型肝炎創薬実用化等研究事業ということで、肝炎対策の中でもこうした実用化に向けた研究事業を1つ立てて、27の課題ということで、各研究者の方々に取り組んでいただいているところでございます。
 その上で、そうしたウイルスの完全排除を目指す薬の開発というのは、もちろん日本に限らず、世界中で取り組んでいただいていて、難しいところがあると思っておりますけれども、27課題の中では、陰性化の確率を上げるといいますか、改善するような研究もしていただいていると理解しておりますし、企業導出に向けて準備をしていただいているものもあると伺っておりますので、引き続きこうした形で研究をしっかり推進していきたいと考えているところでございます。
 その上で、この内容は非常に専門的な内容でございますので、ほかの委員の方ですとか、もしくは竹原会長も含めて、補足があれば、お願いできればと思います。
○竹原会長 日浅委員から御発言をお願いいたします。
○日浅委員 B型の創薬につきましては、我々もいろいろとやっているところで、最後の13ページにありますように、ここにいらっしゃる考藤先生、私、熊本大学の田中先生のところで、最も実用化に近いような形の提案ではないかということで、採択いただいた課題があります。私もスタートアップミーティング等でいろいろとお話を聞きますと、これらは創薬にかなり近づいているという実感はあります。
 ただ、実際に薬にするとなりますと、金額的には非常に多くの金額を要するプロジェクトになりまして、これは大型プロジェクトではあるのですけれども、やはりそれでも創薬には足りないというところがございます。ですので、そこは、最近、AMEDの支援などでもありますベンチャー企業とか、いわゆる資金を獲得するような方策も講じられておりまして、それらをうまく使いながら、費用面をどう確保するかというのが創薬実用化の課題になっていると認識をしております。
 現状では、提示のありましたベピロビルセンの話が出てきます。
 ただ、それもHBs抗原の低下ということは実現できても、高い頻度の消失と維持はなかなか難しいという局面もあり、その課題に対する実用化に向けた創薬のテーマでは、大きくは免疫に関するようなもの、あと、ドラッグリポジショニング、そういうものを目指したような課題が挙がっておりまして、我々も治療ワクチンという形で抗原特異的な免疫を誘発することで、自分の体の免疫でウイルスを抑え込むという治療の実用化を目指しています。
 費用面もさることながら、臨床試験という形になったときに、今、苦労しているのは、逆に臨床試験に参加いただける患者さんの数が日本で十分に確保できないというところもありまして、今後、B型肝炎の治療、創薬実用化ということになりますと、海外への展開とか、エントリーを増やすような方策も必要ではないかということを課題として感じているところです。
 いろいろと開発を進めておりますので、御期待をいただきたいと思います。
○竹原会長 同じくB型肝炎創薬研究をされています、考藤委員から何か御発言はございますか。
○考藤委員 ありがとうございます。肝炎情報センターの考藤です。
 創薬研究ということで、私も日浅先生と同様に、AMEDとうちの施設(JIHS)の多大なる御支援をいただいて進めています。
 費用面に関しましては、日浅先生が御説明になったので、そのとおりなのですけれども、具体的に言いますと、実際にアカデミア発のシーズを臨床試験に持っていくときに、ほとんどは医師主導治験という形になるわけですが、そのときに安全性を確保するという意味で、非臨床の安全性試験で数億円必要になります。加えて、それを今度はヒトの体に最初に投与するという段階になりますと、GMPというグレードの非常に安全性の高い薬をつくっていく必要がありまして、それもまた数億円必要になっていきます。そういった意味で、従来の研究費、基礎研究の支援の枠組みよりも、桁が少し違うぐらいの金額が実際に臨床試験を始めるときには必要になるということを1点申し上げたいと思います。
 もう一点は、いわゆるレギュラトリーサイエンスの部分になりますけれども、安全性の担保でどういった試験が必要ですとか、実際にヒトに投与するときの安全性の考え方について必要な事項をいろいろと準備していく段階で、現在、ソフト面でのサポートが日本の場合は少し足りなくて、実際にPMDAに相談に行ったときにも、必要な事項をたくさん御指摘いただくようなこともありますので、金額面に加えて、アカデミアのシーズを臨床試験に持っていくときのソフト面でのサポートも、今後、少し体制を強化していただければと考えています。
 以上です。
○竹原会長 ありがとうございます。
 研究成果は出つつあるけれども、これを治験に持っていく。あとは、認可のプロセス等に関して、これまで以上の支援をお願いしたいということだと思います。
 いかがでしょうか。
○萩部委員 ありがとうございました。患者は薬をずっと待っておりますので、今回、お金は若干増額という要求にはなってはおると思うのですけれども、今のお話からすると、桁が違う費用が必要だということもありますし、研究の現場の方々、創薬企業の方々、官民一体で協力をしていただいて、ぜひウイルスが排除できる薬を早期にお願い申し上げたいと思います。ありがとうございます。
○竹原会長 そのほかいかがでしょうか。
 木下委員、どうぞ。
○木下委員 日肝協の木下です。
 最後になりますが、事例の紹介をさせていただいて、お願いがあります。
 B型肝炎の核酸アナログの製剤を服用していることは、医療現場においてはほぼ周知されていることかと思います。折に触れて、皆様が御話題にされているとは思いますが、今年の8月に兵庫県の医療センターで、B型肝炎患者が悪性リンパ腫の治療後に抗ウイルス剤の処方を失念され、急性肝炎で亡くなるといった大変残念な医療事故がありました。
 B型肝炎患者も肝臓以外のがん治療や免疫疾患の治療を受けることがあります。患者側も一生飲み続ける薬だと把握していますが、医師の治療を受ける時点で信頼して治療に入っております。この医療事故を単に病院だけのせいにせずに、肝炎治療の重大な問題として捉えて、二度とこのような医療事故が起こらないように、徹底した周知と肝炎コーディネーターの活用や医療者間での体制を強化して、十分な対策を講じる手だてを策定していただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 以上です。
○木村肝炎対策推進室長 ウイルスの再活性化の医療事故の関係で、御発言をいただきました。
 御承知のとおり、本年、そういう事故があったと思いますし、それ以前も類似の事故が起きたと認識しております。医療機関の皆様は、今回の事故も含めて、過去の類似の事案も含めて、問題意識を持って取り組んでいただいていると認識しております。
 今年度のブロック会議でも、複数の拠点病院から再活性化予防に向けての院内の仕組みの構築ですとか、連携の取組について御紹介があったところでございます。そうした取組状況については、引き続き我々も注視しながら、ブロック会議ですとか、連絡協議会等の場も活用しながら、取組の把握・共有を図っていきたいと考えております。
○竹原会長 ありがとうございます。
 そのほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、これで本日の議事を終了させていただきます。
 それでは、事務局から連絡事項等がございましたら、お願いします。
○木村肝炎対策推進室長 本日は長時間にわたり御審議いただきまして、誠にありがとうございました。
 次回は、国と地方自治体の取組状況等について、また御報告させていただきたいと思っております。
 開催日程につきましては、後日、事務局にて調整の上、御連絡させていただきたいと思います。
 以上になります。
○竹原会長 それでは、これをもちまして、閉会とさせていただきます。
 本日はどうもありがとうございました。
 

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