照会先

医薬局 国際薬事規制室

室長 
大久保 貴之 (内線4223)
係長 
田村 文弥 (内線4224)

(代表電話) 03 (5253) 1111

(直通電話) 03 (3595) 2431

医薬品規制調和国際会議(ICH)が開催されました

~3ガイドラインが整備されました~

 令和7年11月16日から11月20日まで、シンガポールにおいて、医薬品規制調和国際会議(ICH)の総会・管理委員会・各作業部会(※1)等が開催されました(メンバー・オブザーバーは参考1参照)。当該会合では、主に以下の成果がありました。
 次回ICH会合は令和8年5月30日から6月3日にブラジル・リオデジャネイロで開催されます

(※1)医薬品規制調和国際会議(ICH)とは医薬品規制当局と製薬業界の代表者が協働して、医薬品規制に関するガイドラインを科学的・技術的な観点から作成する国際会議であり、年に2回対面会合を開催しています。対面会合では、全ての参加メンバーで構成される総会、総会での議論の準備やICH の運営を担う管理委員会、専門家がガイドラインの議論を行う各作業部会が開催されます。

1.各作業部会の進捗状況の報告
 総会では、各作業部会におけるガイドライン作成の主な進捗(※2)として、今回のICH 会合開催までに事前に合意した事項及び今回のICH 会合において合意した事項について報告されました。

(※2)作業部会では、ICH のガイドラインを作成しております。このガイドラインが、作成開始からICH 規制当局側メンバーの各国・地域で実装されるまでは、ステップ1 からステップ5 の各段階を経て行われます。(参考2参照)

(1)ステップ4到達
  (ア)今回のICH会合開催前に合意したガイドライン
  ・E2D(R1):「承認後の安全性情報:個別症例安全性報告の取扱い及び報告のための定義と基準」
   (令和7年9月にステップ4到達)
  ・M14:「医薬品の安全性評価においてリアルワールドデータを活用する薬剤疫学調査の計画、
   デザイン、解析に関する一般原則」(令和7年9月にステップ4到達)
  (イ)今回のICH会合において合意したガイドライン
  ・M11:「電子的に構造化・調和された臨床試験実施計画書(CeSHarP)」

(2)ステップ2到達
  (ア)今回のICH会合開催前に合意したガイドライン
  ・Q3E:「医薬品の抽出物及び溶出物ガイドライン」(令和7年8月にステップ2到達)
  ・E20:「臨床試験のためのアダプティブデザイン」(令和7年6月にステップ2到達)
  (イ)今回のICH会合において合意したガイドライン
  ・E22:「患者選好試験の一般的考察」

2.ICH総会及び管理委員会の議長・副議長選挙について
 ICH総会議長・副議長及び管理委員会議長・副議長は、任期を満了する2年ごとに改選が行われることになっています。今般、これらの選挙が行われ、それぞれ次のとおり選定されました。
 総会議長:Gabriela Zenhäusern(Swissmedic)・副議長:Jeffrey Skene(Health Canada)
 管理委員会議長:古賀大輔(※3)(MHLW/PMDA)・副議長:Theresa Mullin (FDA)
 (※3)PMDA国際企画部長。2015年以降で日本から初めての管理委員会議長。

3.新規の規制当局メンバー・オブザーバーの承認
  本会合では、ナイジェリア食品医薬品管理局(NAFDAC)及び南アフリカ医療製品規制当局(SAHPRA)が、ICH規制当局メンバーとして承認されました。また同時に、ドミニカ共和国医薬品食品衛生製品規制局(DIGEMAPS)及びフィリピン共和国保健省食品医薬品局(FDA)が新たに規制当局オブザーバーに承認されました。これにより、ICHのメンバーは25団体、オブザーバーは41団体となりました(参考1参照)。

4.2026 年予算及び2030 年までの予算採択
 今回、ICH の2026年予算の他、メンバーの年会費・MedDRA 購読費が確定されました。また、2030 年までの5か年予算見込みについても承認されました。今後はこの資金計画に基づいて、各活動が行われていくことになります。

5.ICHアワード
 今般総会にて第3回目となるICHアワード授賞式が行われ、ICHガイドラインの整備に顕著な貢献をした専門家5名(うち日本から、当局側1名、業界側1名)に対しICHアワードが贈られました。

6.MedDRA運営委員会(MedDRA SC)の議長・副議長選挙について
 MedDRA運営委員会においても、議長・副議長の選挙が行われました。選挙の結果、MedDRA SC議長にAna Cochino(EC)が、副議長にCharlotte James(MHRA)が選出されました。

7.国際薬事規制当局プログラム(IPRP)
 本会合に続いて、11月19日及び20日にIPRP会合(参考3参照)が開催されました。
 IPRP会合では、ICHガイドラインの実装状況、AIの活用、リライアンスの推進、各作業部会の活動等について、実施状況の報告及び意見交換が行われました。

(参考1)ICH 参加団体一覧(令和7年11月27 日時点)
※:管理委員会メンバー 太字:今般会合で追加
【メンバー(25 団体)】
○創設規制当局メンバー(3):厚生労働省/医薬品医療機器総合機構(MHLW/PMDA)(※)、米国食品医薬品局(FDA)(※)、欧州委員会/欧州医薬品庁(EC/EMA)(※)
○創設産業界メンバー(3):日本製薬工業協会(JPMA)(※)、米国研究製薬工業協会(PhRMA)(※)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)(※)
○常任規制当局メンバー(2):ヘルスカナダ(※)、スイスメディック(※)
○規制当局メンバー(14):ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)(※)、中国国家医薬品監督管理局(NMPA)(※)、シンガポール保健科学庁(HSA)、韓国食品医薬品安全処(MFDS)(※)、台湾食品薬物管理署(TFDA)、トルコ医薬品医療機器庁(TITCK)、サウジ食品医薬品庁(SFDA)(※)、メキシコ連邦衛生リスク対策委員会(COFEPRIS)、英国医薬品医療製品規制庁(MHRA)、エジプト医薬品庁(EDA)、アルゼンチン医薬品食品医療技術管理局(ANMAT)、ヨルダン食品医薬品局(JFDA)、ナイジェリア食品医薬品管理局(NAFDAC)南アフリカ医療製品規制当局(SAHPRA)
○産業界メンバー(3):バイオテクノロジーイノベーション協会(BIO)(※)、国際ジェネリック・バイオシミラー医薬品協会(IGBA)(※)、世界セルフケア連盟(GSCF)

【オブザーバー(41 団体)】
○常任オブザーバー(2):世界保健機関(WHO)、国際製薬団体連合会(IFPMA)
○規制当局オブザーバー(26):インド中央医薬品基準管理機構(CDSCO)、キューバ国家医薬品医療機器管理機関(CECMED)、イスラエル保健省医薬品・監督センター(CPED)、コロンビア医薬品食品監督庁(INVIMA)、モルドバ医薬品医療機器庁(MMDA)、イラン国家規制当局(NRA)、マレーシア国家医薬品規制庁(NPRA)、南アフリカ医療製品規制当局(SAHPRA)、カザフスタン国家医薬品医療機器専門機関、ロシア連邦保健・社会発展監督局(Roszdravnadzor)、アルメニア医薬品医療技術専門科学センター(SCDMTE)、オーストラリア医療製品管理局(TGA)、レバノン公衆保健省(MOPH)、アゼルバイジャン保健省分析センター(AEC)、インドネシア共和国食品医薬品庁(BPOM)、ウクライナ保健省専門家センター(SEC MOH)、アルジェリア医薬品庁(ANPP)、チュニジア医薬品局(DPM)、ナイジェリア食品医薬品管理局(NAFDAC)、香港薬剤業及び毒薬管理局(PPBHK)、タイ保健省食品医薬品庁(FDA)、ウズベキスタン薬事安全センター(CPPS)、ペルー医薬品医療資材局(DIGEMID)、パラグアイ公衆衛生・社会福祉省国家衛生監視局(DINAVISA)、クウェート保健省(MOH)、エルサルバドル衛生規制監督庁(SRS)、ドミニカ共和国医薬品食品衛生製品規制局(DIGEMAPS)フィリピン共和国保健省食品医薬品局(FDA)
○地域調和イニシアティブ(6):東南アジア諸国連合(ASEAN)、アジア太平洋経済協力(APEC)、東アフリカ共同体(EAC)、湾岸協力理事会(GCC)、汎アメリカ医薬品規制調和ネットワーク(PANDRH)、南部アフリカ開発共同体(SADC)
〇業界団体オブザーバー(1):医薬品原薬委員会(APIC)
○医薬品関連国際団体(6):ビル&メリンダ・ゲイツ財団(Bill & Melinda Gates Foundation)、国際医学団体協議会(CIOMS)、欧州医薬品医療品質部門(EDQM)、国際医薬品添加物機関(IPEC)、医薬品査察協同スキーム(PIC/S)、米国薬局方(USP)

(参考2)ICH のガイドライン作成ステップ

ステップ1

新しい調和ガイドラインを作成する提案が、新しいトピックとして総会の承認を受けると、専門家作業部会が設置されます。専門家作業部会では、協議を重ねて技術ドキュメント(ガイドライン案のベース)を作成します。

ステップ2

ステップ2a: 技術ドキュメントの確認
ステップ1 の技術ドキュメントが総会で承認されるとステップ2a となります。
ステップ2b: ガイドライン案の採択
ステップ2aの技術ドキュメントをベースにしたガイドライン案が総会の規制当局代表者により承認されるとステップ2b となります。

ステップ3

ICH の各地域・国の規制当局(日本では厚生労働省)からガイドライン案が公表され、公に意見が求められます。寄せられた意見に基づいて専門家作業部会で協議が行なわれ、ガイドライン案が修正されます。

ステップ4

ガイドライン案が総会の規制当局代表者によって最終的に合意、採択されるとステップ4 となります。

ステップ5

ICH の各地域・国の規制当局において、それぞれの手続きにしたがってガイドラインが実施されます。
日本では、厚生労働省医薬局から各都道府県衛生主管部(局)に通知されます。


(参考3)IPRP
 IPRP(International Pharmaceutical Regulators Programme、国際薬事規制当局プログラム)は、日本、米国、EU、カナダ、スイス等、計42 か国・地域の規制当局が参加し、規制当局間の協力や、規制情報に関する交換等を実施している国際会議です。年2回、ICH に併せて会合が開催されます。