第206回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 議事録

日時

令和7年10月28日(火) 10:00~12:00

場所

厚生労働省 職業安定局第1会議室
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館12階)

議事

○中窪部会長 それでは、ただいまより第206回「雇用保険部会」を開催いたします。
 最初に、事務局より本日の出欠状況等につきまして御報告をお願いいたします。
○新堀調査官 本日の委員の出欠状況です。
 労働者代表委員の内藤委員が所用のため欠席、また、公益代表委員の小畑委員が所用のため途中退席予定、公益代表委員の風神委員は所用のため遅れての参加となります。
 併せて、事務局に本年10月1日付で異動があり、職業安定労働市場担当として古舘大臣官房審議官が着任した旨を御報告いたします。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 それでは、マスコミの方のカメラ撮影はここまでとさせていただきますので、御協力をよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。
 まず、雇用保険制度のうち、財政運営についてです。資料1につきまして、事務局より説明をお願いいたします。
○新堀調査官 資料1、表紙をめくっていただきまして、まず、財政運営のうち、失業等給付・雇用保険二事業分について御説明いたします。15分程度の説明となります。
 雇用保険制度の財政について御議論いただくため、まずその構造についてです。
 リード文の1つ目。雇用保険では、大きなお金の出し入れの塊として、失業等給付、雇用保険二事業、育児休業等給付の3つがあります。このうち、失業等給付と雇用保険二事業を労働保険特別会計の雇用勘定、育児休業等給付を子ども・子育て支援特別会計の育児休業等給付勘定として区分経理しています。
 リード文の2つ目。保険料負担は、失業等給付・育児休業給付が労働者・事業主の方々の折半、雇用保険二事業は事業主の方のみの御負担となっております。
 リード文の3つ目。この4月に創設した出生後休業支援給付・育児時短就業給付は、共働き・共育ての観点から、子ども・子育て支援納付金が財源となっています。
 これらを図示したものがページ真ん中部分です。詳細は割愛いたします。
 資料3ページ、おめくりください。
 次に、失業等給付に係る雇用保険料率や積立金の推移です。青い線が失業時に支給する基本手当の受給者実人員。緑の線が国庫負担率。赤い線が雇用保険料率。棒グラフのグレーのバーが積立金の残高です。
 平成13年度のところを御覧いただければと思いますが、青の受給者、実人員111万人で支出が増えているため、積立金は相当程度減ってきており、緑の国庫負担の引上げや赤線の保険料率引上げをしてきていることが分かります。
 その後、平成27年度のところを御覧いただくと、青の受給者実人員は40万弱近くまで減ってきておりまして、積立金は過去最高の6.4兆円。そうした状況も踏まえて、平成29年度にかけ国庫負担率や雇用保険料率が下がっています。
 その後、令和6年度は、青の受給者実人員は43万。赤線の料率は0.8%。コロナ禍での雇調金への積立金の貸出しなども得て、積立金額は2.5兆円となっています。
 資料4ページ、おめくりください。
 雇用安定資金残高と二事業に係る保険料率の推移です。赤線が雇用保険料率。縦のバーが安定資金残高です。平成21年のところを御覧ください。リーマンショックがあり、安定資金残高は1兆円から5000億まで減少。その翌年には料率を0.3から0.35に引き上げる対応をしています。その後、安定資金残高は徐々に積み上がっていき、28年度からは料率を0.3%に引き下げています。令和元年には1.5兆円の残高となりました。しかし、令和2年度以降、コロナ禍があり、雇用調整助成金等の対応のため安定資金残高は枯渇。黄色の枠内にありますように、失業等給付の積立金から累計で2.9兆円を借り入れております。
 詳細は後ほど御説明しますが、令和6年度のところを御覧いただくと、料率は0.35、残高は1442億となっています。
 ページ、おめくりください。
 失業等給付関係の収支状況です。令和6年度、縦の欄を御覧ください。収入は約1.7兆。支出は約1.4兆円。差引剰余が3261億円。二事業からの返還の1442億円。積立金残高は2.5兆円。括弧内は雇用安定事業への貸出残高ですが、1.4兆円となっています。
 なお、令和5年度の部分、個別に言及させていただきますが、部会での御議論も踏まえ、予期せぬ雇用情勢の変動に備えるため、雇用安定資金の剰余の3212億円全額を積立金に返還しています。
 右側の水色枠内ですけれども、令和7年度の収支イメージと令和8年度の予算要求上の金額となっております。
 ページ、おめくりください。
 雇用保険二事業の収支状況です。令和5年度のところ、先ほど少し触れさせていただきましたが、差引剰余の3212億円を全額積立金に返還しています。そして、5年度の安定資金残高は0となっています。その上で、令和6年度の欄を御覧ください。収入は7815億。支出は4931億円。差引剰余は2884億円。昨年の本部会での御議論、財務大臣と厚労大臣との折衝を経て、差引剰余の半額を返済するとの結論を受け、1442億円を積立金に返還、その残りを安定資金残高に組み入れる対応をしています。括弧内の借入累計は1.4兆円となっております。
 右側の水色枠内ですけれども、令和7年度の収支イメージと8年度の予算要求上の金額です。令和7年度の差引剰余のところですが、1700億円の剰余が想定されるため、この部分をどの程度積立金に返還するか、今後御議論いただくことになります。
 資料7ページでございます。この資料に入る前に背景を少し補足いたします。先ほど来雇調金に係る貸出し、借入れといったことを言及させていただきましたが、コロナ禍におきまして、国の休業要請により多額の雇用調整助成金等の財源が必要になりました。このため、この資料のリード文にございますように、雇用保険制度の安定的な財政運営を確保するため、複数回の改正により、以下①から④の措置を講じております。このうち、特に触れたい部分は④です。口頭補足となりますが、各種雇用対策事業に多額の費用が想定される一方で、コロナの影響により、労働保険料の納付猶予の措置に伴い、雇用保険二事業の保険料収入は平時に比べ減少することが見込まれました。このため、雇用安定事業に要する経費を積立金から借り入れることができるという法改正を実施しています。
 ページ下部の④の下のところですけれども、この借入れに関しましては、改正法の附則によりまして、1ポツ目、返還は、雇用保険二事業収支の剰余を活用。ただし、2分の1の範囲内で、安定資金の積立が可能。
 2ポツ目として、雇用保険財政や二事業の状況等を勘案して、厚労大臣が財務大臣に協議して、返済必要額から一定額の控除をすることが可能。
 3ポツ目として、令和6年度までを目途に、雇用保険財政等を踏まえ、控除の在り方を検討とされました。
 ページ、おめくりください。
 この規定を受けまして、本部会での御議論、大臣折衝を行い、このページにある合意事項となりました。特に太字下線のところを少し読み上げさせていただきます。冒頭部分、「雇用保険二事業による失業等給付の積立金からの借入額(2.9兆円)については、1兆円の控除を行い、残りの1.9兆円については、毎年度の雇用保険二事業の剰余金により返済を行うこととする」。
 少し飛んだ太字下線のところですけれども、「また、毎年度の雇用保険二事業の剰余金の取扱いについては、今後の景気後退等における雇用調整助成金の支給等の急増に備えるため、また、近年取り組んできた人への投資や就業調整への対応を含む労働力確保等に引き続き取り組むとともに、賃上げに向けた生産性向上対策等の事業者全体が抱える課題について、雇用保険二事業の対応力を高めつつ、政策的要請に機動的に対応していくため、毎年度の予算編成過程において、失業等給付の安定的な運営に留意しつつ、検討を行うこととする」とされております。
 その上で、「こうした観点から、令和6年度決算において雇用保険二事業に差引剰余が生じた場合には、特別会計法附則の規定に基づき、当該剰余の2分の1を安定資金に組み入れることとし、残余の2分の1を失業等給付の積立金に組み入れる」こととした経緯がございます。
 この合意事項を踏まえて、雇用保険二事業の剰余金の取扱いも本部会において御議論いただくこととなります。
 9ページ、弾力条項についてです。リード文の1ポツ目、失業等給付に係る雇用保険料率は、法律で決まっておりまして、労使折半により、原則1000分の8の御負担となっています。
 2ポツ目ですけれども、財政状況に照らして一定の要件を満たす場合には、法律の規定に基づき、雇用保険料率を大臣が変更可能となっております。具体的には、大臣告示により、法定の料率を変えることができるということで、これを「弾力条項」と呼んでおります。
 参考のところにございますが、労働保険徴収法第12条第5項の冒頭、「厚労大臣は」と主語がございまして、真ん中部分を飛ばして、最後の2行の頭の部分、「必要があると認めるときは、労働政策審議会の意見を聴いて、一年以内の期間を定め、失業等給付費等充当徴収保険率を千分の四から千分の十二までの範囲内において変更することができる」とあります。
 条文の真ん中部分は説明を割愛しましたが、その部分を示したのが青枠内の計算式でございます。式の理解の前提としまして、雇用保険制度は、短期での運用・給付となりますため、不景気に増大する給付の財源が計算上2倍を超えていれば保険料率を引き下げることができる、1を下回っていれば引き上げることができるという立てつけになっています。
 その上で、式の説明に入ります。上のほうですが、保険料率は、保険料率を分母に置きまして、令和6年度の失業等給付費等、この「等」は、求職者支援訓練による費用負担が入っておりますが、そこから景気変動によって影響を受けない給付、つまり、雇用継続給付、そして教育訓練給付費の令和6年度分を引いて、1年分の余力は確保しておく。これが分母となります。
 分子は、令和7年度の見立ての保険料収入と国庫負担額を足したものから、令和7年度の見立ての失業等給付費を引く。そこに令和6年度の積立金から令和6年度の景気変動によって影響を受けない給付費を引いたものを足し上げる。これが2を超えていれば、不景気に増大する給付の財源に余力があるため、保険料率を引き下げることができる。1を下回っていれば、余力がないので、保険料率を引き上げることができるということになります。
 今回、この計算式に当てはめまして、令和6年度の決算と令和7年度の見立てに基づき計算しますと、赤字のとおり、2.69となりまして、保険料率は引下げ可能という状況になっております。
 資料10ページ、おめくりください。続いて、二事業の弾力条項についてです。リード文1ポツ目、雇用保険料率、法に基づき、事業主の御負担で1000分の3.5となっています。
 2ポツ目にございますが、こちらも財政状況に照らして一定の要件を満たす場合には、保険料率を大臣が変更可能となっています。
 青枠部分がその計算式です。分母に令和6年度の二事業に係る保険料収入。分子に令和7年度の見立ての保険料収入から二事業に要する費用を引いた塊。それに対して令和6年度末の雇用安定資金残高を足したもの。それが1.5を上回っていれば、保険料率は引下げ可能となります。
 今回、令和6年度の決算と令和7年度の見立てに基づき計算しますと、赤字のとおり、0.54となりまして、保険料率の引下げはできないという状況になっています。
 これらの弾力倍率の計算結果に基づき、来年度の保険料率をどのように設定すべきかを御議論いただければと思います。
 続いて、11ページは失業等給付に係る保険料率の推移です。令和7年度のところですけれども、原則1000分の8、下限が1000分の4、上限が1000分の12であるところ、昨年の部会での御議論を経て、実際の料率は1000分の7となっております。
 次ページ以降の参考資料の説明は割愛させていただきます。
 以上が失業等給付及び雇用保険二事業に関する来年度の保険料率を検討するに当たってのデータ、制度の概要等についての資料説明でございます。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 ただいまの説明につきまして、御質問、御意見がありましたらお願いいたします。オンラインの方も「手を挙げる」ボタンを押していただければ、こちらで指名いたしますが。では、平田委員、お願いします。
○平田委員 収支状況を丁寧に御説明いただきありがとうございます。
 失業等給付に係る保険料率について、弾力倍率が2倍超であることを理解しました。他方、雇用保険二事業は令和6年度末時点で依然として借入れが1.4兆円あることは懸念をしていいます。現時点で、久しぶりに、雇用安定資金残高が積立てられ、1400億円となっています。、平常時に段階的に積み立て、必要に応じて使用できるというのが雇用安定資金の基本的な考え方かと思いますので、不測の事態に備えるという観点から、早期の健全化が不可欠だと思っております。
 そこで、恐らく今後試算が示されるものと思っておりますが、2026年度の予算の検討に向け、失業等給付に係る料率をどの程度にするのか、借入金も返済しなければならないということ、そして安定資金への一定程度の積立ては必要と考えておりますので、これら3点についてバランスの取れた対応案を検討いただきたいと思います。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 田上委員、お願いします。
○田上委員 今後の議論に向けてという意味でのコメントとなりますけれども、昨年12月の大臣折衝でありました考え方については、その後、特段の環境変化というのはないのかなと考えておりますので、基本的にはこの考え方と同様で今回も検討していくことでよいのではないかなと考えております。
 弾力条項につきましても、基本的にはこの条項に沿って検討していくことでよいのかなと現時点考えております。
 失業等給付の部分につきましては、下げられるという現時点の計算であることを踏まえて、どれだけ下げるかというところになるかと思うのですが、そこについては幾つかシミュレーションを示していただきたいなというところが1点です。
 その上で、この給付制度の効果を踏まえて検討していく必要があるかなと考えております。税と一線を画すという意味で、保険料負担者がある程度その見返りを期待できるということが重要なファクターになると考えておりますので、例えば事業所への助成金の給付であったりの従業員規模別の実績データがあると、大変ありがたいなと考えております。
 以上になります。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 先ほどの御説明でもありましたように、令和5年、6年で二事業に剰余金が生じており、失業等給付の積立金への返還が行われておりますが、非常時におけるセーフティネット機能を十分に発揮し得る財政状況かというと、まだまだ程遠いと考えています。雇用のセーフティネットの機能を強化するという視点でも雇用保険会計に対する十分な国庫負担を維持することが重要だと思いますし、その上で、適切な労使からの保険料負担と、一般会計からの繰入れなどを通じ、安定的な制度運営に必要な十分な予算、財源を確保することが重要だと考えています。
 その上で、御説明いただいた資料について、失業等給付については保険料率の引下げが可能ということですが、これも先ほどから皆様が言われているとおり、将来的な雇用保険財政の安定性とのバランス等も勘案しながら検討していかなければいけないと考えておりますので、事務局には次回以降、保険料率、また雇用保険二事業から積立金への返還割合による違い、こういった様々な推計・試算を提示していただきまして、丁寧な議論ができるようにしていただきたいと思います。これは後ほどの育児休業給付についても同様でございますので、併せて申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 では、佐藤委員、お願いします。
○佐藤委員 日商の佐藤でございます。
 先ほど委員の皆様からもお話がありましたとおり、失業等給付につきましては、現行の弾力倍率を踏まえると、保険料率の引下げが可能な状況にあります。財政の安定的な運営という観点はもちろんですが、足元の物価高、あるいは賃上げ原資の確保に向けた経費の圧縮等、中小企業の経営は依然として厳しい状況でございます。こうした経営状況等も踏まえ、次回以降、料率を引き下げる方向が望ましいとは思いますが、具体的な料率については慎重な検討が必要かと思います。よろしくお願いいたします。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 そのほか、いかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、資料1については以上とさせていただきます。
 事務局におかれましては、本日委員からいただきました御意見を踏まえて対応について御検討をお願いいたします。
○堀雇用保険課長 御意見ありがとうございました。
 雇用保険につきまして、求職者の生活の安定や就職の促進のために重要なものと認識しております。雇用保険財政につきましては、まずもって安定的な運営が大事だと考えておりまして、それに加えまして保険料負担の軽減ということも考えていく必要があると考えております。したがいまして、次回シミュレーションをお示しするということになると思いますけれども、その際には受給者実人員の動向ですとか、借入金の返還割合、保険料率、これは昨年も幾つかシミュレーションのパターンをお示しして御議論いただいたかと思いますので、本年もそういったものを踏まえて御検討いただければと思っております。
 それから田上委員から助成金の従業員規模別の実績というお話がありました。これについては対応について検討させていただければと思っております。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 続きまして、資料2について、事務局より御説明をお願いいたします。
○新堀調査官 資料2の説明でございます。
 表紙をおめくりいただきまして、財政運営のうち、育児休業給付について御説明いたします。約10分の説明となります。
 リード文にございますが、令和6年の雇用保険法改正により、出生後休業支援給付と育児時短就業給付が創設され、育児休業給付と併せて、育児休業等給付となっております。それを図示したのがページ下部の「現行」のところです。赤枠をつけておりますのが今回御説明する財政の部分です。といいますのも、この資料の注で書いておりますように、出生後休業支援給付や育児時短就業給付は、雇用保険料ではなく、子ども・子育て支援納付金を財源としているためでございます。
 資料3ページは育児休業給付の概要です。こちらは基礎資料となりますので、説明は割愛させていただきます。
 資料4ページをお開きください。育児休業給付の財政について御議論いただくに当たりましては、本部会において人口や出生数、育児休業の取得率や期間、育児休業給付の支給実績等の育児休業給付の現状・見通しに基づいた丁寧な議論を行うべきと御指摘いただいております。
 このため、4ページから13ページにかけ関係データを御説明させていただきます。
 まず、4ページですけれども、日本の人口の推移です。リード文のところ、「日本の人口は近年減少局面を迎えている。2070年には総人口が9000万人を割り込み、高齢化率は39%の水準になる」と推計されております。
 下のグラフですが、2020年のところを御覧ください。2020年の総人口は1億2615万人。薄色のバーの部分、グラフの点線箇所は推計値になりますが、2070年には総人口は出生中位、死亡中位の推計で8700万人になるとされております。
 ページ、おめくりください。出生数の動向です。赤い線が出生数の実績、それ以外の青やグレーが推計値となっています。赤の実績のところ、2015年の欄、100.6万人だった出生数ですが、2024年には68.6万人と約10年で30万近く出生数は落ち込んでおります。その下、薄い水色の線は、2020年の国勢調査に基づき推計した出生低位での推計値となっておりますが、2024年には66.8万人という推計値が出ておりまして、現在の実績はこの水準に近い出生数となっている状況です。
 ページ、おめくりください。育児休業の取得率・取得期間の状況です。
 リード文1ポツ目。育休の取得率は、女性は8割台、男性は上昇傾向にあるものの、女性に比べ低い水準です。それをグラフで示しておりますのが左側のグラフです。男性は令和6年度において過去最高の40.5の育休取得率です。
 上に戻っていただきまして、リード文の2ポツ目。育児休業の取得期間は、女性は9割以上が6か月以上である一方、男性は徐々に取得期間が延びているものの、約4割が2週間未満であり、依然として女性に比べて短期間の取得が多い状況になっています。
 右側の表が取得状況です。男性の部分で補足させていただくと、令和5年度については、「2週間~」「1月~」のカテゴリーの合計が48.4となっておりまして、「5日未満」「5日~」といったカテゴリーの37.7を上回ってきている状況にあります。
 資料7ページをお開きください。出生数・育児休業給付の取得者数です。
 リード文のところ。直近10年で出生数は減少しているが、育児休業給付の初回受給者数は一貫して上昇している状況にあります。
 左側は、先ほどグラフで御覧いただいたとおり、出生数は減少傾向。一方、右側の初回受給者数は、実績や対前年比のところを御覧いただければと思いますが、伸び続けている状況にあります。
 次のページ、おめくりください。
 育児休業給付の受給者数、給付額の推移です。育児休業給付の初回受給者数及び給付額は年々増加傾向にありまして、令和6年度において初回受給者数は約55万、給付総額は約7950億となっています。
 それを図示したのが下のグラフです。7950億の内訳ですが、女性は6888億、男性は1062億となっています。
 ページ、おめくりください。
 育児休業給付に係る保険料率、国庫負担割合、支給額、残高についてです。赤い線が収入額、黄色は支給額、ピンクの線が国庫負担割合、青い線が雇用保険料率となっております。令和5年度までの収入額と支給額を見ていただきますと、支給額が増えてきている中で徐々に収支差が縮まってきておりました。こうしたことを受けまして、育児休業給付の財政基盤強化のため、令和6年度の法改正では、国庫負担の本則復帰ということで、80分の1負担から8分の1負担に変え、その結果、ピンクの線ですけれども、令和5年から6年にかけて急激に伸びている状況です。
 次に、令和6年度のところですけれども、収入額は9366億、支給額は8113億、育児休業給付資金残高4744億となっています。
 令和7年度、8年度は推計となりますが、収入額は9900億、支出は男性の育休増加なども見込み、9000億ほどを見込んでおります。
 ページ、おめくりください。
 子ども・子育て支援特別会計育児休業等給付勘定の収支状況です。先ほどのグラフの内容を表にしたものでございまして、右側の水色部分が令和7年度の収支イメージ、8年度要求の詳細となっております。
 次のページ以降ですけれども、11ページは育児休業給付の年度別の支給状況、12ページは月別の支給状況、13ページは出生時育児休業給付金の月別の支給状況となっておりますので、詳細は割愛させていただきます。
 続いて、14ページです。先ほど少し触れさせていただきましたが、令和6年度の法改正により行った育児休業給付に係る国庫負担の引上げや保険財政の状況に応じた弾力的な仕組みの導入です。真ん中の令和6年度改正内容の①②の部分です。まず、財政基盤強化のため、国庫負担割合を本則の8分の1に引き上げるということ。こちらにつきましては令和6年度から実施しています。次に、②の部分です。この法改正におきまして、本則料率を令和7年度から0.5%に引き上げる改正を行いましたが、実際の保険料率につきましては、保険財政の状況に応じて弾力的に調整する仕組みを導入しています。
 その下の図は、次のページで御説明させていただきます。
 15ページ、お願いいたします。
 リード文の1つ目。本則料率は1000分の5。2つ目ですが、財政状況に応じて1000分の4に引き下げることができるという弾力条項を導入しています。
 では、保険料率1000分の4に引き下げることができるのはどのような場合かというのが青枠の部分です。式の説明です。まず、分母となります。令和6年度の育児休業給付費に令和7年度、8年度の見立ての給付費の伸びを分母とする。分子に、令和6年度末の資金残高プラス7年度の見立ての保険料収入と国庫負担額を足したものから、7年度の育児休業給付費を引いた額の塊。それにプラスして8年度の保険料収入と国庫負担額を足したもの。それを計算して1.2を上回っていれば、労政審で御議論いただき、保険料率を1000分の4とすることができます。
 この計算結果が赤字のところですけれども、1.7ですので、保険料率を引き下げることができるという状況となっております。
 ページ、おめくりいただきまして、16ページ。昨年の雇用保険部会における御指摘の紹介です。1つ目の丸のところですが、弾力条項の導入に係る記載がございまして、中ポツのところで、この仕組みの下で、本部会において、実際の保険料率を弾力的に調整できるかを毎年度丁寧に確認すべきと御指摘をいただいております。
 以上の点を踏まえまして、来年度の育児休業給付の保険料率について御議論いただければと思います。
 以降の参考資料の説明は割愛いたします。
 事務局からは以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 ただいまの御説明につきまして、御質問、御意見がありましたらお願いいたします。田上委員、お願いします。
○田上委員 こちらも今後の議論に向けての意見ということで申し上げさせていただきます。弾力条項に基づいて考えていくと、0.4に引下げる検討をしていくということでよいというところがまず1つありまして、それをまた検討していくときには、先ほどと同じですけれども、この制度の効果を踏まえるということが必要だと考えております。長くやってきて出生率がそれでも下がり続けているというところもございます。もう一点は、中小企業、特に従業員規模の小さい小規模事業者のニーズに応えている制度なのかというところは、ぜひ確認したいなと考えております。したがいまして、これも先ほどと同じになるのですけれども、従業員規模別の実績のデータがあるとありがたいと考えております。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 佐藤委員、お願いします。
○佐藤委員 資料の記載を踏まえますと、現在の保険料率1000分の4を維持することが可能な状態であるということは理解いたしました。その上で、長期的な話になりますが、御案内のとおり、育児休業給付の初回受給者、給付総額共に年々増加傾向にございます。男性の育休の取得状況を踏まえますと、今後もこの増加トレンドは続くのではないのかと思料しております
 育児休業給付の目的が雇用の維持・安定にとどまらず、男女共に家事・育児を分担する取組、ないし少子化対策など、多様化していることを踏まえますと、今後雇用保険制度のみで支えることにはいずれ限界が訪れるのではないかと思っております。
 商工会議所といたしまして、これまでも申し上げ参りましたが、弾力条項の適用により0.4%の据え置きが可能である間に、国庫負担割合の引上げを検討すべきと考えてございます。
 私からは以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございます。
平田委員、お願いします。
○平田委員 ありがとうございます。
 こちらも恐らく試算を示していただくと思いますが、そちらとは別に、財政状況や支給状況を適便フォローし、適切なタイミングで報告をしていただきたいと思います。本部会や、場合によっては職業安定分科会において、適切なタイミングでの報告をお願いします。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 そのほか、いかがでしょうか。よろしいですか。
 事務局から何か。
○堀雇用保険課長 御指摘いただきましてありがとうございました。
 少子高齢化が進展する中で、仕事と育児の両立支援は重要な課題であると考えておりますが、育児休業給付だけで成し遂げられるものでもありませんので、いろんな関係部局とも連携しながら対応してきたところでございます。その中で育児休業給付につきまして、先ほど資料2の14ページの中で御説明させていただきましたけれども、その財源の在り方についてはこの雇用保険部会でも御議論があったところでございます。令和6年の改正の中でも注2のところに「雇用保険法の規定により育児休業給付及びその財源の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」ということが規定されたことも踏まえまして、①と②の改正、国庫負担割合を8分の1に引き上げ、保険料率についても弾力的に調整する仕組みが設けられたということでございます。
 その上で、さらに今後の議論といたしまして、同じ資料2の16ページの雇用保険部会報告において、先ほど説明を省略させていただきましたが、「8 その他」に「育児休業給付に係る財政基盤強化策を講じた上で、今後、将来において、育児休業給付の財政状況が安定的に推移することとなった場合には、育児休業給付の財政状況、一般会計の財政状況等を踏まえ、今般の財政基盤強化策について、必要な見直しを行うこととすべきである」という御指摘をいただいているところでありますので、引き続きこの雇用保険部会においても御議論いただければと考えているところでございます。
 その上で、効果検証というのも重要な課題であると考えておりますので、田上委員からいただきました規模別のデータなどの必要なデータ、また、平田委員からも財政状況等のフォローということも御指摘いただきましたので、この部会にお出しして御議論いただきたいと考えております。
 いずれにいたしましても、来年度の財政運営につきましては、次回財政のシミュレーション、試算をお示しして御議論いただきたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございました。
 それでは、資料2については以上とさせていただきます。
 事務局におかれましては、本日委員からいただきました意見を踏まえて対応について御検討をお願いいたします。
 続きまして、雇用保険手続における電子化についてということで、資料3につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
○新堀調査官 資料3についての説明となります。表紙をおめくりいただきまして、7分程度御説明させていただきます。
 リード文にございますが、雇用保険手続において電子化を進めております。令和7年1月からは、以下1)、2)とありますが、2つの電子化を進めておりまして、その進捗についての御報告と今後の方向性について御説明いたします。
 まず、1)マイナポータルを利用した離職票の直接交付についてです。1ポツ目、雇用保険の被保険者が離職により被保険者資格を喪失した際に交付する雇用保険被保険者離職票について、マイナポータルを利用することで、ハローワークから離職者本人に直接交付する仕組みが開始されています。これまではハローワークから企業に離職票が届き、企業は離職票を離職者本人へ手渡し、または郵送等しておりました。
 2ポツ目、その実績。令和7年1月~8月末で7万5005件となっています。
 3ポツ目、本手続にはマイナポータルを利用しますので、「個人番号登録・変更届」が必要ですが、その件数も対前年比で令和6年の約30万から令和7年の約64万件に増えています。こうした状況ですので、赤字、今後の方向性ですけれども、引き続き、積極的な周知等を行うことにより本取組の促進を図っていくということを考えております。
 続いて、2)の失業認定のオンライン化です。失業認定は、ハローワーク職員との面談により、就労の有無、労働の意思、能力の有無等の確認を行うものですけれども、そのオンライン化には、①オンライン面談による対応を実施するもの。②面談はなく、オンラインで手続のみすれば失業認定を行うものの2パターンがございます。いずれも令和5年の規制改革に係る閣議決定を受け、対応してきた経緯があります。
 先に実績ですけれども、下の水色の枠内の右上にございますが、認定実績、全国展開した令和7年1月から9月末で約5300件となっています。
 では、詳細に入ります。①の1ポツ目。令和5年7月から一部のハローワークでオンライン面談を試行的に開始し、令和7年1月から全国展開しております。
 2ポツ目。試行実施期間では、障害者、難病、介護、子育て中の者等、来所困難者を対象に実施していました。その後の全国展開時には、新たに「管轄ハローワークへの往復4時間超の者」を加えて実施しています。赤字のところが今後の方向性ですが、引き続き、当該手続の対象者に対して、しっかりと周知・促進を図っていくということを考えております。
 続いて、②です。1ポツ目。令和5年7月から、就職に際して、深刻な課題があると認められる等により「就職支援プログラム」の対象として、ハローワークから選定された方に対しては、オンライン手続のみによる失業認定を試行実施してきました。これは本プログラムの対象になった場合には、ハローワークにたびたび来所いただき就職支援等を受けていただいているため、改めての失業認定は不要という整理の下、認定日に来所せずともオンラインで手続するなどによって失業認定を行うというものです。こちらも令和7年1月から全国展開しています。
 2ポツ目。令和6年5月の雇用保険部会において、この手続の対象者について、令和7年1月からの全国展開を踏まえて、対象範囲について検討するとしておりました。
 その下の矢印部分が今後の方向性ですけれども、能登半島地震等を含め、自然災害時にはハローワークへの来所が難しいといった現状も踏まえまして、令和7年12月1日以降、現対象者に加えて、激甚災害や災害救助法における求職者給付の支給に関する特例の対象となっている方についても、希望に応じてオンライン手続のみによる失業認定の対象としてはどうかという御提案をさせていただいております。これは具体的には通達を見直すことで対応可能なものでございます。
 なお、右側に※がありますが、現状は失業認定日の変更等によって対応しているという状況にあります。
 ページ、おめくりいただきまして、参考ですけれども、能登半島地震における雇用保険業務の対応を整理した資料になっております。上側の枠内ですけれども、当時の状況として、交通インフラ、ハローワーク、地域企業も大きな被害を受け、労働者の方も片道100キロを超える避難施設への避難を余儀なくされた方もいらっしゃったという状況でございました。
 その対応が下の部分です。1ポツ目、全国のハローワークから職員応援によって対応してきた。
 2ポツとして、事業所が災害により休止・廃止したため、休業して賃金を受けることができない方については、実際に離職していなくても基本手当を支給する対応。
 3ポツとして、支給日数の120日延長といった対応をしてきました。
 その下の※の黄色部分ですけれども、休業して賃金を受けることができない方については、事業再開後、元の会社に戻りますため、認定期間、言い換えれば休業期間ともなりますが、この期間に就職活動は必要としないという対応をしてきました。
 こうした能登半島地震における対応実例も踏まえまして、今回、前のページの赤字のとおり、震災等の場合には、希望に応じてオンライン手続のみによる失業認定の対象としてはどうかと御提示させていただきました。
 事務局からは以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 それでは、本件につきまして御質問や御意見がありましたらお願いいたします。オンラインで古賀委員、お願いいたします。
○古賀委員 御説明ありがとうございました。
 失業認定のオンライン化というところで、事務局から御提案いただいた内容につきまして、基本的には異論はございません。引き続き周知徹底と求職者への丁寧な対応をお願いしたいと思います。
 また、以前の部会において求職者支援の質の担保、ハローワーク職員の負担、こちらを含めた体制構築など、オンライン化による懸念について申し上げさせていただいたかと思います。今、ハローワークの現場では、法改正などを含めまして業務負担が大変大きくなっているということもございますし、今後の雇用保険の適用拡大を見据えますと、今後対応できるのかと心配する声も少なからずあると聞いております。オンライン化に対する課題のみならず、現場で働く労働者の声をしっかりと把握していただいて、予算確保を含めて必要十分な体制整備を図っていただきたいと思いますので、そういった面も含めてお願いしたいと思います。
 私のほうからは以上でございます。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 そのほか、御質問、御意見はいかがでしょうか。風神委員、お願いいたします。
○風神委員 ありがとうございます。
 御提案のオンラインによる失業認定について、賛同したいと思いますけれども、災害時などに遠隔地に避難する方などにとっては利便性が高まると思うので、賛同したいと思いますが、一方で、震災のときに電源が落ちたり、Wi-Fiが使えなかったり、オンラインでの申請自体も難しくなる労働者も出てくるので、引き続きその方々への対応というものも忘れずにする必要があるかなと思いました。
 もう一点としては、この部会の範囲外のことにも関わってくることになると思いますけれども、マイナポータルを使って求人情報とか職業訓練とか、ほかの情報などもワンストップで使えるように、利便性をどんどん高められる可能性もあるのかなと思いました。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 そのほか、いかがでしょうか。よろしいですか。
 事務局のほうからお願いいたします。
○堀雇用保険課長 御意見ありがとうございました。
 このオンライン手続の推進に当たりまして、利用者の利便性の向上、それから今、御指摘いただきましたハローワークの現場の職員の負担の軽減といったことも重要な課題と考えております。また、それは今後の適用拡大への対応も含めてということで、しっかり対応していきたいと考えております。
 オンライン面談に当たりましては、システムの操作方法に関する動画の作成や、利用者向けのヘルプデスクの設置等によりまして利用者の利便性、職員の負担軽減を図っているところでございます。
 体制面の強化といたしましては、令和8年度概算要求におきまして、今までの雇用保険相談員より業務範囲を拡充した「雇用保険専門員(仮称)」を新たに新設するといったことも考えておりまして、これによりまして現場体制の強化を図っていくこととしております。
 災害時の対応につきましても、オンラインで対応できない場合には窓口に来ていただくことも必要ですので、窓口対応の強化といったことも災害時にはしっかりやっていくということが必要かと認識しております。
 また、マイナポータルを活用した各種手続といったことも引き続き取り組んでまいりたいと思っております。
 以上です。
○中窪部会長 ありがとうございます。
 それでは、資料3については以上とさせていただきます。
 これにつきましても事務局におかれましては、本日委員からいただきました意見を踏まえて対応をお願いいたします。
 本日予定されています議題は以上ですが、特にこの機会に御発言はありますか。
 よろしければ、本日の部会はこれで終了といたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席いただきまして、どうもありがとうございました。