2025年10月17日 第5回労働政策審議会労働条件分科会「組織再編に伴う労働関係の調整に関する部会」 議事録

労働基準局労働関係法課

日時

令和7年10月17日(金) 13:00~15:00

場所

厚生労働省専用第21会議室(中央合同庁舎5号館17階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)

出席者

公益代表委員
山川部会長、池田委員、石﨑委員、髙橋委員、成田委員
労働者代表委員
小林委員、冨髙委員、浜田委員
使用者代表委員
佐久間委員、鈴木委員、松永委員
オブザーバー
水谷事業性融資推進室長(金融庁監督局総務課)
事務局
岸本労働基準局長、尾田大臣官房審議官(労働条件政策、働き方改革担当)、先﨑労働関係法課長、瀧田労働関係法課課長補佐

議題

事業性融資推進法の施行に向けた事業譲渡等指針の見直しについて

議事

○山川部会長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第5回「労働政策審議会労働条件分科会組織再編に伴う労働関係の調整に関する部会」を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては、大変御多忙の中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 本日の部会は、会場からの御参加とオンラインでの御参加の双方で実施いたします。
 委員の御出欠ですが、労働者代表の木村委員、使用者代表の鳥澤委員が御欠席と伺っております。
 オブザーバーとして、金融庁監督局総務課事業性融資推進室の水谷室長に御出席いただいております。よろしくお願いします。
 カメラ撮りがありましたらここまでとさせていただきます。
 本日は、議題「事業性融資推進法の施行に向けた事業譲渡等指針の見直しについて」を御審議いただきます。
 それでは、本日の議題に入ります。
 事務局から説明をお願いします。
○労働関係法課課長補佐 それでは、資料1を御覧ください。
 資料1としまして、事業性融資推進法の施行に向けた事業譲渡等指針の見直しについて、事業性融資推進法、金融審議会「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」報告、「事業性融資の推進等に関する法律等ガイドライン」の記載内容を参考に、これまでの御議論を踏まえまして、事業譲渡等指針の必要な見直しの方向性につき、事務局において整理したものであります。
 なお、第3回までの部会でいただいた御意見は参考資料8として配付しており、また、第4回におけるフリーディスカッションでいただいた御意見をまとめたものにつきましては、参考資料10として配付しております。
 2ページを御覧ください。
 こちらは事業性融資推進法の附帯決議の内容に関する記載でございまして、第1回目の部会で御説明させていただきましたとおり、事業性融資推進法は、昨年の通常国会で成立し、令和6年6月14日に公布された法律であり、不動産等の有形資産に乏しいスタートアップ等が、不動産担保や経営者保証によらず、事業の実態や将来性に着目した融資を受けやすくなるよう「企業価値担保権」を創設するものでございます。
 事業性融資推進法の附帯決議の前段において、事業譲渡等指針について、新たな企業価値担保権の創設を踏まえて、必要な見直し等を行うこととされております。
 また、事業性融資推進法の施行日につきましては、所管省庁である金融庁によれば、令和8年5月25日であるとのことでございます。
 3ページを御覧ください。
 こちらは、「事業譲渡等指針の必要な見直しの方向性について」でございます。
 資料の構成としましては、資料の上部において、企業価値担保制度のイメージにおける、いかなる時点に関するものであるのかということを記載した上で、資料の左から、見直しのポイント、事業譲渡等指針に記載するとした場合の文案、その文案の作成に当たって参考にした事業性融資推進法、金融審ワーキング・グループ報告、事業性融資推進法ガイドラインの該当箇所につき、それぞれ記載しているものでございます。
 最初の見直しのポイントとしましては、企業価値担保権の実行手続開始決定後に関するものとして、管財人に関する基本的な考え方でございます。企業価値担保権においては、実行手続開始決定によって事業の経営権や担保目的財産である総財産の管理処分権を引き継ぎ、これらの権限を基に事業を継続しながら、総財産を換価するために買受人候補の中から買受人、事業譲渡先を探索する方として、管財人が手続に関与していきますので、その管財人に関する基本的な考え方について記載することとしております。
 案としては、「管財人は、企業価値担保権の実行手続開始の決定と同時に、裁判所によって選任され、裁判所が監督するものであること。」としております。
 参考にした記載につきましては、事業性融資推進法第88条第1項及び第110条第1項であります。
 4ページを御覧ください。
 こちらも同様に、管財人に関する基本的な考え方でございます。
 案としては、「管財人によるスポンサー選定のあり方が、労働者保護に照らして不適当であり善管注意義務に違反する場合は、労働者・労働組合等を含む利害関係人は裁判所に管財人の解任を請求できることとなること。」としております。
 参考にした記載につきましては、事業性融資推進法第110条第2項や事業性融資推進法ガイドラインであります。
 5ページを御覧ください。
 こちらも同様に、管財人に関する基本的な考え方でございます。
 案としては、「管財人は、企業価値担保権者のみならず労働者も含めた利害関係人全体に対して善管注意義務を負うものであり、また、管財人が前記の義務に違反したときは、その管財人は、利害関係人に対し、連帯して損害を賠償する義務を負うこと。」としております。
 参考にした記載につきましては、事業性融資推進法第121条や事業性融資推進法ガイドラインであります。
 6ページを御覧ください。
 こちらも同様に、管財人に関する基本的な考え方でございます。
 案としては、「企業価値担保権の実行手続における管財人は、労働組合法上の使用者の地位を承継すると解され、その権限に関し労働組合からの団体交渉に応じる義務があると考えられること。」としております。
 参考にした記載につきましては、事業性融資推進法ガイドラインであります。
 7ページを御覧ください。
 こちらにつきましては、企業価値担保制度のイメージにおける(債務不履行~買受人探索)の場面に関する記載でございます。
 見直しのポイントとしましては、管財人と労働組合等とのコミュニケーションでございます。
 案としては、「管財人が、その職務を行うに当たっては、事業性融資推進法第百二十二条の規定に基づき、労働組合等に対し、労働者(債務者の使用人その他の従業者)の権利の行使に必要な情報を提供するよう努めなければならないこと。」としております。
 参考にした記載につきましては、事業性融資推進法第122条であります。
 8ページを御覧ください。
 時点としましては、先ほどと同様、(債務不履行~買受人探索)の場面に関する記載でございます。
 見直しのポイントとしましては、管財人と個々の労働者とのコミュニケーションでございます。
 案としては、「管財人が、個々の労働者に対して、労働法制上の各種権利(団体交渉等)の行使に必要な情報を提供することが考えられること。」としております。
 参考にした記載につきましては、事業性融資推進法ガイドラインであります。
 9ページを御覧ください。
 こちらは、7、8ページに記載いたしました、管財人と労働組合等及び個々の労働者とのコミュニケーションにおける対象事項を記載したものであります。
 案としては、「管財人が、労働組合等や個々の労働者に対して情報提供を行うに当たっては、この指針の第2の1の(2)のイに規定する留意すべき事項に加えて、分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針(平成十二年労働省告示第百二十七号)の第2の4「労働者の理解と協力に関する事項」に規定する事項を参考にすることが考えられること。」としております。
 参考にした記載につきましては、事業性融資推進法ガイドラインであります。
 なお、事業譲渡等指針の第2の1の(2)のイや労働契約承継法指針の第2の4に規定する事項につきましては、資料1の末尾に参考として記載しております。
 10ページを御覧ください。
 こちらにつきましては、企業価値担保制度のイメージにおける(買受人発見~)の場面に関する記載でございます。
 見直しのポイントとしましては、事業譲渡に当たって留意すべきと考えられる事項でございます。
 案としては、「管財人は、企業価値担保権の実行における事業譲渡を行うに当たり、この指針の第2の1の(2)及び2の(1)に規定する労働者及び労働組合等との協議等をすること。」としております。この点は、事業譲渡等指針において、事業譲渡を行うに当たり、承継予定労働者及び労働組合等との事前の協議等を行うことが適当であるとされていたところでございますので、企業価値担保権の担保目的財産の換価としての事業譲渡においても同様に、協議等をすることを事業譲渡に当たって留意すべきと考えられる事項として記載しております。
 11ページを御覧ください。
 時点としましては、先ほどと同様、(買受人発見~)の場面に関する記載でございます。先ほど7、8ページにおいて記載いたしました、管財人による労働組合等及び個々の労働者に対する情報提供と同様に、買受人が発見された以降の場面においても、必要に応じて適宜行われることが適当と考えられるのではないかとの趣旨で文案を作成しているものであります。具体的には、「管財人が行う、労働組合等や個々の労働者に対する情報提供等は、企業価値担保権の実行手続開始決定後、必要に応じて適宜行われること。」としております。
 12ページを御覧ください。
 時点としましては、先ほど同様、(買受人発見~)の場面に関する記載でございまして、企業価値担保権の担保目的財産の換価としての事業譲渡を行うに当たっての、労働契約の承継に関する考え方を記載したものであります。
 案としては、「事業性融資推進法第百五十七条第一項の規定による営業又は事業の譲渡については、事業を解体せず雇用を維持しつつ承継することが原則となること。」としております。
 参考にした記載としましては、事業性融資推進法第157条第1項、金融審ワーキング・グループ報告、事業性融資推進法ガイドラインであります。
 13ページを御覧ください。
 こちらは買受人の選定に際しての考慮要素であります。
 案としては、「管財人による譲受会社等の選定及び担保目的財産の換価に際しては、裁判所の許可を受ける必要があり、管財人には、事業譲渡の金額の多寡のみを問題にするのではなく、雇用の維持や取引関係の維持、その他多様な事情を考慮して最も適切な承継先を選定することが求められると考えられること。」としております。
 参考にした記載としましては、金融審ワーキング・グループ報告、事業性融資推進法ガイドラインであります。
 14ページを御覧ください。
 時点としましては、企業価値担保制度のイメージにおける、(借入れ担保権設定)の場面に関する記載でございます。
 見直しのポイントとしましては、会社が行うことが望ましい事項であります。
 案としては、「会社においては、企業価値担保権を設定する場合に、会社が置かれている環境や経営課題等について、会社の状況に応じて労働者と意見交換を図ることが考えられ、労働者及び労働組合等の意見も踏まえながら、労働組合等への情報提供等の促進に向けて取り組むことが望ましいこと。」としております。
 参考にした記載としましては、金融審ワーキング・グループ報告、事業性融資推進法ガイドラインであります。
 15ページを御覧ください。
 時点としましては、企業価値担保制度のイメージにおける(借入れ担保権設定~)の場面に関する記載でございます。
 見直しのポイントとしましては、企業価値担保権者や特定被担保債権者に関する基本的な考え方であります。
 案としては、「企業価値担保権者や特定被担保債権者が「基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある」場合や、団体交渉の申入れの時点から「近接した時期」に譲渡会社等の労働組合の「組合員らを引き続き雇用する可能性が現実的かつ具体的に存する」場合等には、労働組合法上の使用者性を有する可能性があることに、留意が必要であること。」と記載しております。
 参考にした記載としましては、事業性融資推進法ガイドラインであります。
 16ページを御覧ください。
 こちらにつきましては、先ほども御説明しましたとおり、管財人と労働組合等及び個々の労働者とのコミュニケーションにおける対象事項に関連して、事業譲渡等指針の第2の1の(2)のイや、労働契約承継法指針の第2の4に規定する事項につき記載しているものであります。
 事務局からは以上でございます。
○山川部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいま説明していただきました資料1について、御質問等がありましたらお願いいたします。
 オンライン参加の委員におかれましては、御発言の希望がある場合にはチャットで「発言希望」と書いてお知らせいただければと思います。
 御質問等はございますか。
 佐久間委員、どうぞ。
○佐久間委員 御説明ありがとうございました。
 まず、金融庁が定められましたガイドラインがありながら、今回、国会の附帯決議にもあったとおり、事業譲渡等の事業に関する指針を改定していくということが前提になるわけですが、指針の構成とすれば第1は「趣旨」、第2は「事業譲渡に当たって留意すべき事項」、これは参考資料2で提示いただいているわけですが、今回、事業譲渡をしていくときに管財人が今までの使用者に代わって権限を有するということで、このような章立て構成となっていると思います。この章立て、項目立てに当たっては、私は特段お示しされた項目に疑義はないのですが、その内容をより詳細に記載していくことにはなると思うのです。どこまで深堀りして項目内容を記載していこうと考えられているのか。
 それから、今回の部会審議は、第1弾としては「事業譲渡」ということになりますけれども、「M&A」とか「会社分割」などについて、また新たに改訂していく形で必要な時期に本部会を開催し、内容の追加、改訂として指針を見直し、追加していこうとするのか、まずそこの点を教えていただきたいと思います。これは質問になりますが、お願いいたします。
○山川部会長 2点御質問いただいたかと思います。また、この部会における前段と申しますか、事業性融資推進法に係る部分と、後段と申しますか、そちらの議論との関係にも関わるかと思いますが、事務局からいかがでしょうか。
○労働関係法課課長補佐 御質問ありがとうございます。
 まず、最初の質問につきまして、現行の事業譲渡等指針の目次としては、第1「趣旨」、第2「事業譲渡に当たって留意すべき事項」、第3「合併に当たって留意すべき事項」との構成になっているところ、企業価値担保権の担保目的財産の換価として行われるものであっても、それが事業譲渡の形式により行われるものであることから、第2「事業譲渡に当たって留意すべき事項」のうち、「1 労働者との手続等に関する事項」、「2 労働組合等との手続等に関する事項」に引き続く記載として、「3 企業価値担保権に関する事項」というものを創設することを検討しております。
 その上で、管財人に関する事項、企業価値担保権設定者である会社に関する事項、企業価値担保権者や特定被担保債権者に関する事項については、それぞれ関係者が異なることから、別の項目として規定することが考えられるところなのではないかと思っております。
○山川部会長 第1の御質問についてということですが、佐久間委員、何かございますか。
○佐久間委員 今のお答えで私も分かりました。
○山川部会長 要は、事業譲渡という形を取るので、その中に追加されるということですが、事務局からお願いします。
○労働関係法課長 事務局でございます。
 御指摘いただきましたM&Aや会社分割における議論に関してですが、企業価値担保権が利用される場合に限られない事業譲渡等の組織再編に関する諸問題につきましては後段の議論ということで、こちらは様々な出口を考えながら御検討いただくものかと思いまして、その中の一つとしては指針の改定というものもあり得るものかとは思っておりますが、後段の議論はまだこれからでございますので、既にいただいた御意見もございますが、現在並行している海外の実態把握も踏まえまして御議論いただきたいと思っております。
○山川部会長 佐久間委員、2番目の御質問についてですが、いかがでしょうか。
○佐久間委員 分かりました。必要に応じて、また後段で入れていく可能性があるということで、理解しました。
 あと、ここで質問になるのか、意見になるのか、微妙なところなのですが、事業譲渡の金融庁のガイドラインに「使用者が労働者に対して個別に詳細な説明をする」ということの記載がされています。その部分については、金融庁のガイドラインのほうに委ねていくのか、それとも今回の指針の見直しの中に、例えば使用者が労働者に説明をしなくてはならない詳細な項目として入れていくのか。また、その次の段階として管財人に引き継がれる。管財人に引き継がれた場合には、この項目というのが必要になると思いますが、その後、スポンサー企業が見つかったとして、それから、そのスポンサー企業、譲り受けた企業ですね。それが実際に会社に転籍等した労働者に対して、どのような説明をしていくのか。その辺の説明、項目というのは、どこまで記載をする必要があるのか、または、今回の指針については、中段の「管財人のみ」について、重点的に記載していくのか。それは質問なのか、入れたほうが良いという意見として申し上げた方がいいのか、微妙なところですけれども、その辺を教えていただければと思います。
○山川部会長 ありがとうございます。
 一部御質問の趣旨も入っていたかと思いますので、事務局からいかがでしょうか。要するに、管財人以外のコミュニケーションの相手方等もプロセスの進展に応じて入れるかどうかということでしょうか。
○佐久間委員 さようでございます。
○山川部会長 事務局、いかがでしょうか。
○労働関係法課長 御指摘ありがとうございます。
 管財人あるいは管財人以外の方についてもどこまで盛り込んでいくかということですが、今回、事業性融資推進法の施行のために金融庁のガイドラインに必要な事項については盛り込まれていると思っており、基本的には我々も金融庁ガイドライン等に基づいて作成していくことになるかと思います。
 そのほか必要な点については、金融庁とも相談しながら、周知の中で補っていくことになると考えています。何分まだ施行がされていない制度でございますので、まずはガイドライン等、金融庁のほうで整理いただいた内容を踏まえまして、我々のほうでもしっかり周知をしていくということだと思っております。
○山川部会長 佐久間委員、何かございますか。
○佐久間委員 分かりました。ありがとうございます。
○山川部会長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 ほかに御質問等はございますか。資料1について御説明いただいたところでございます。
 冨髙委員、お願いします。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 先ほど後段の話も出ておりましたので、そうした点も含めて全体的な考え方を申し上げます。
 今回、事業譲渡等指針の見直し案が提示されましたが、これまでの議論にもございましたけれども、事業性融資推進法に関わる部分の指針の一部修正ということで、事業譲渡に際しての全般的な労働者保護ルールの実効性確保の観点からしますと、まだまだ根本的な解決にはならないのではないかと思っております。この間、様々ヒアリングでもございましたが、やはり事業譲渡に伴う整理解雇や、労働条件の不利益変更、また、不誠実な団交などの不当労働行為といった様々な課題も明らかになったのではないかと思っております。こうした点につきましては、事業譲渡等指針の法律への格上げも含めた前向きな議論を行っていくべきであると思っております。
 それを前提とした上で、今回提案いただきました指針の見直しについてですが、法施行とそれに伴う周知をしっかり行っていくということを考えますと、ひとまず指針の見直しを行うことについては、理解するところです。
 企業価値担保権は新しい制度で、その担保権者となる金融機関や、また、活用企業の労使を含めて制度の理解をしっかりと進めていかなければいけないので、ここはまさに厚労省と金融庁が連携をしていただき、正確な理解がしっかりと進むように周知徹底いただきたいと思っています。
 その上で、実際に勤め先の企業が企業価値担保権を活用するという場面になっても、担保権の設定時の情報提供や、また、通知が義務づけられていない中で、労働者・労働組合が担保権の活用により、どういった影響があるというようなことを知る契機というのは法的には保障されているわけではないと考えております。そうしたことが知らされない中で、特に課題が生じるであろう担保権を実行するに至った場合は、やはり労働組合などが労働債権等の優先弁済や、いわゆるカーブアウトなどの仕組みを理解した上で、適切に配当がなされない場合に請求等を行い得るかというようなところについては懸念があるところでございます。本指針は労働者保護を目的としているものと考えておりますので、その見直しにおいては可能な限り分かりやすく、会社や管財人が留意すべき措置や、望ましい取組を網羅的に明示していただく等、実効性が担保されるように関係者の取組を促すことが重要であると考えております。
 それから、先ほど佐久間委員から後段のお話としてございましたが、やはり組織再編全般に関する見直しが必要というのは冒頭申し上げたとおりでございます。これまで事業譲渡を中心に発言してまいりましたが、法的ルールが一定整備されている会社分割についても十分とは言い難く、やはり見直しが必要なのではないかと考えております。また、雇用や労働条件等の承継だけではなく、労使関係上の課題を含めて考えると、株式移転、株式譲渡など多様な手法も視野に入れて、幅広く実態把握と分析、そして、その改善をはかっていくということが重要と考えております。
 したがって、準備時間も必要かと思いますけれども、今後、諸外国の実態把握に加えまして、日本における組織再編時の労働者保護の現状と課題が明らかになるように、裁判例等の整理や、また、必要な調査等を行った上で部会に資料を示していただきたいと考えております。後段の方のお願いも含めた基本的な考えについて申し上げました。
 以上でございます。
○山川部会長 ありがとうございます。
 主として、2つ御要望というような形でいただいたかと思います。一つは周知の充実ということで、これは恐らく先ほど佐久間委員も言われたことと共通しているかと思います。
 もう一つは後段の議論の対象についての話と、それから、言わば資料としてどういうものを出していただくかということもあり、この辺りは事務局にお伺いしてもよろしいかと思いますが、例えば裁判例の整理や海外調査以外について何か用意されてはいかがかという御要望でございましたけれども、事務局、何かございますか。
○労働関係法課長 ありがとうございます。
 周知の際につきましては、御指摘いただいたことを踏まえて対応したいと思っております。
 また、後段の議論につきましては、現行の事業譲渡等に関わる実態把握としまして、既にスタートアップ企業についての調査報告や、前段の議論におきましても労使関係団体、弁護士からのヒアリングを行わせていただきました。こういった実態把握については、附帯決議の後段の議論にも参考になるものとして我々は考えており、その内容や、いただいた御意見については、後段の議論に向けて引き続き精査をして準備をしたいと思っております。
 また、御指摘いただいた裁判例等につきましても可能な限り収集をして、分析したものを準備させていただきたいと思っております。
 また、重ねて海外についての調査も実施しているところでございますので、こういったものと合わせて、少しお時間をいただくことになるかと思いますが、改正告示の施行と併せてそういった準備をさせていただき、また御議論いただけるように進めていきたいと考えております。
○山川部会長 冨髙委員、何かございますか。よろしいでしょうか。
 かなり前の研究会でも裁判例等の整理はしたかと思いますが、時間も経っておりますので、アップデート等もあると思います。その点も含めてお願いできればと思います。
 ほかに御質問等はございますか。
 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 御指名ありがとうございます。
 ただいまの冨髙委員の御発言につきまして、一部賛同する意見を申し上げます。
 先ほど冨髙委員から企業価値担保権は新しい制度ということで、金融機関をはじめ、管財人への周知に関するお話もございましたけれども、制度の理解をしっかり周知徹底していくことは大変重要な課題だと思っております。それから、後段の話に関連して、日本における現状と課題把握のための裁判例等の調査というのは賛成でございます。広く組織再編について、今までのヒアリングでも聞いていて思うのは、かなり多様性があるということです。そういう意味では、個別のヒアリングも大切ですが、裁判例や各種調査により明らかになった実態をしっかりと委員の中で共有しながら、どんな対策が必要なのかといったことを議論させていただきたいと思いますので、私からもぜひそういった資料の御準備等をお願いできればと思っております。
 1点、冨髙委員から事業譲渡に伴う整理解雇や労働条件の不利益変更についての御懸念から、事業譲渡等指針の法律への格上げを前向きに議論すべきではないかというお話は今までもいただいているところでございます。こちらも繰り返しになって大変恐縮でございますが、解雇規制や不利益変更法理は既に法制化されており、私自身としては事業譲渡時に特化したルールを設ける理由というのは見当たらないのではないかと思っておりますし、先ほど佐久間委員から、事業譲渡の様々な段階で分けた対応についてお話がございましたけれども、例えば管財人に限って申し上げれば、裁判所の監督の下で善管注意義務を負って業務を遂行される方として、弁護士の先生方が多いかと存じますが、当然こうした管財人に関するルールにのっとった適切な対応を取られるのだろうと私自身としても期待しているところでございます。
 私からは以上でございます。
○山川部会長 ありがとうございます。後段は御意見の違いのある部分だと思いますが、前段につきましては御意見が基本的に一致するということで、非常にありがたいことだと思っております。
 松永委員、どうぞ。
○松永委員 ありがとうございます。
 一言コメントさせていただきたいと思います。
 御説明していただいた見直し案ですが、それぞれの法のガイドラインや金融審議会ワーキング・グループの報告書に沿った内容だと思いますので、特に内容については異論ないと思っています。
 前回のフリーディスカッションで申し上げたのですが、企業価値担保権については、労働者保護に資する仕組みというのが多く組み込まれていると考えています。企業価値担保権が設定されている場合は、仮に企業が債務不履行に陥って実行手続に至ったとしても、総財産の一体換価によって従業員の雇用は維持されるということで、ほかの担保権の実行時と比べても労働者保護に資するものと考えています。
 これも今まで申し上げてきたとおりなのですが、企業価値担保権の活用が抑制されることがないように、また、適切なタイミングでスポンサーがきちんと見つかることが非常に重要だと考えています。そのため、過度なルールですとか、画一的なルールを設けるということではなく、むしろ個別の事情はそれぞれあると思っていますので、労使が柔軟に対応できる余地を残しておく必要があるかと考えています。
 先ほど議論もありましたけれども、いずれにしても制度自体が新しいものでございますので、行政としても労働者保護というのがどのように与えられているのかを広く周知していただくことも重要と思っていますし、事例が積み重なってきて、よい事例が出てきた場合には、そのようなものもパンフレット等で広く周知していただく取組も必要かと思いますので、よろしくお願いします。
 私のほうからは以上でございます。
○山川部会長 ありがとうございました。
 ほかに御質問、御意見はいかがでしょうか。
 浜田委員、どうぞ。
○浜田委員 私からは1つ事務局にお伺いしたいと思いますが、管財人の善管注意義務についてでございます。管財人には労働者を含めた利害関係人全体に善管注意義務が課せられていると認識しておりますが、特に労働者に対する内容として具体的にはどのようなことが含まれるのかをお伺いしたいと思います。
○山川部会長 ありがとうございます。
 御質問ですので、事務局からいかがでしょうか。金融庁からの御発言になりますか。
○水谷事業性融資推進室長 ありがとうございます。法に関する御質問ということで、金融庁から発言させていただきます。
 善管注意義務の内容ですが、最終的には司法判断と申しますか、個別の事案を踏まえた総合考慮の下で判断されるものでございまして、一概に内容をあらかじめ示すということはなかなか難しいものと思っております。
○山川部会長 浜田委員、何かございますか。
○浜田委員 国会審議の中では、管財人は、労働者を含む利害関係人に対して善管注意義務を負うこと、また、使用者として労働法制の適用を受ける地位にあると考えられることから、労働関係法令の遵守などが求められていると、金融担当大臣が答弁されていたように認識しております。
 その点を踏まえますと、管財人は使用者として労働関係法令の遵守が求められることなどを指針に明記するとともに、その違反が生じた際には労働者や労働組合が適切に権利行使できるよう、必要な環境整備についても金融庁と連携して取組を進めていただきたいと考えております。
 もう一点よろしいでしょうか。労組法上の使用者性の課題などについてです。資料の15ページになるかと思いますが、労働側からの指摘も踏まえて、資料1の15ページには、管財人だけでなく担保権者、特定被担保債権者が使用者性を有する可能性があることを明記いただいたものと思っております。ただ、ヒアリングでもあったとおり、判例や命令を参考として示すだけでは、実務的にはほぼ効果に乏しいのではないかと思います。会社分割時の承継会社や、事業譲渡時の譲受会社も対象とする労使協議などの手続ルールの整備とともに、組織再編時における使用者性やその責任の範囲などについての考え方等を整理した上で、法的なルールを課す方向で検討すべきであることを改めて申し上げたいと思います。
○山川部会長 ありがとうございます。
 御意見ということでよろしいでしょうか。ありがとうございました。
 ほかに御質問等はございますか。
 石﨑委員、どうぞ。
○石﨑委員 ありがとうございます。
 今回御提案いただいた指針の内容につきましては、全体としては特に大きな異存があるというわけではございません。
 その上で、細かな点に関して2点ほど御検討をお願いできればという意見になるかと思うのですが、まず1点目としましては、資料1の7ページ目、8ページ目に、情報提供との関係で、「労働者の権利の行使に必要な情報を提供するよう努めなければならない」、あるいは「必要な情報を提供することが考えられる」という記載がございまして、特に8ページのほうには権利行使の具体例として団体交渉等というのが挙がっているところかと思います。もちろんこれを挙げていただくことに異存はないわけですが、個々の労働者の権利としまして、団体交渉のほかにも各種紛争解決手続の利用ということも含まれ得ると思いますし、また、前回からの議論でもそうした紛争解決手続の利用によって実効性を持たせていくというようなお話もあったように思っておりますので、そこで行使できる権利と申しますか、取り得る手段として紛争解決手続の利用が含まれるということを、ここは指針に明記いただくのか、あるいはそれ以外のパンフレット等で周知されていくのかというのはいろいろ手段があるかと思うのですが、この点に関して御検討いただけたらと思います、というのがまず1点目になります。
 2点目に関しましては、これも情報提供に関わるところですけれども、11ページには買受人発見後の情報提供について、また、先ほどの8ページは債務不履行から買受人探索までの情報提供について書かれているのですが、これまでヒアリングでケース等を伺っていますと、やはり情報提供が適切な時期になされることが重要であるというようなことがうかがわれるケースというのが何件かあったように記憶しており、そういったタイミングと申しますか、時期的な要素を盛り込めるか。盛り込めないとして、またそういったところをちゃんと周知していくことを御検討いただけないかということで意見とさせていただければと思います。
 私からは以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 御意見ということではありましたが、質問の趣旨も一部含まれているように解釈できるかと私は思います。特に例えば必要な情報とは何かという問題と、それから、指針に盛り込むか、それともほかの方法で周知を図るかということもご質問的な趣旨で入っていたかと思いますが、事務局から何かございますか。
○労働関係法課課長補佐 ありがとうございます。
 情報提供の対象事項につきまして、例えば資料1の9ページ目のところで、対象事項に関連して事業譲渡等指針の第2の1の(2)のイや労働契約承継法指針の第2の4に規定する事項につき、参考にすることが考えられることという案にしており、資料1の16ページを御覧いただきますと、そのうち、先ほど委員から御指摘のありました、労働者との間に生じた問題の解決手続に関しましては、一番下、労働契約承継法指針第2の4の(2)のロというところに含まれているところではあるかと認識しているところでございます。こういった形で、対象事項として参考にすることが考えられるラインナップとしてお示しをしているものとは考えているところでございます。
○山川部会長 石﨑委員、どうぞ。
○石﨑委員 ありがとうございます。
 確かに参考とされているところを読んでいけば含まれてはいるのですが、ただ、解決手続について触れているのは承継法指針でしょうか。そのため、事業譲渡指針のほうには必ずしもないということと、情報提供の対象としてそこを含むか含まないかというのはまた一つ議論かとは思うのですけれども、少なくとも情報を何のために提供するのかという趣旨の中に解決手続を利用するのかしないのかの判断を可能にするという趣旨が含まれ得ることといったところを入れていただけないかというような趣旨になります。ありがとうございます。
○山川部会長 ありがとうございます。
 今の点は検討していただきたいということで、御意見かと思いますが、事務局からどうぞ。
○労働関係法課長 御指摘ありがとうございます。
 もう一点御指摘いただいていた点についても、タイミングについてさらに告示のほうでも書けるかどうかでございますけれども、やはり事案によるところもあるかと思いますので、現在、「必要に応じて適宜」ということで書かせていただいているところについては、これ以上細かくというのはなかなか難しいかと思っておるところでございます。一方で、先ほど御説明の中でも9ページのほうでということで御紹介させていただきましたけれども、今回の事業譲渡等指針における企業価値担保権制度における情報提供に関して、まさにこの承継法の指針を参考にすることと書かせていただいているため、そのような意味では、今回の企業価値担保権を踏まえたこの指針の中にも、承継法の指針を引く形で紛争解決制度についても読んでいただけるように、そういった点では先生の御指摘も踏まえた形になっているかと思いますので、周知の中で分かりやすくしていくことが大事かと承りました。
○石﨑委員 ありがとうございました。
 先ほど労使の双方の委員からも出ておりましたけれども、やはり周知の充実というところは改めてぜひお願いしたいところであり、特に企業価値担保制度をはじめ、そもそも事業譲渡や、会社分割もそうだろうと思うのですけれども、一般の労働者にとっては、自分がどういう地位に置かれているのかというのが、なかなか言葉で承継と言われても、承継の言葉の意味自体かなり難しいのではないかと思いますので、恐らく事業者向けに何をすべきかのようなところの案内もされるとは思いますが、なかなか難しいとは思うのですけれども、同時に本当に一般の労働者がそれを見れば分かるような形での周知をしていただくような形で充実化を段階的にでも図っていただけたらと思います。
 以上です。
○山川部会長 ありがとうございます。
 私個人も、承継法指針を参考にすると言っても、具体的にどう参考にするのか、パンフレット等でしたら可能かと思いますので、具体的なイメージがつかめるような周知を何らかの形でするのが望ましいのかと思っております。
 ほかにいかがでしょうか。
 小林委員、どうぞ。
○小林委員 何点か意見を述べさせていただきます。
 まず、労働者側としては、先ほど冨髙委員が発言したとおり、ヒアリング等で示された課題解決を図って、労働者保護の実効性を確保するための対応として、事業譲渡等指針の一部見直しだけでは不十分であると考えております。これまでも繰り返し発言しているとおり、指針の内容を充実させた上で法律に格上げしていく方向で検討することが必要であると考えております。
 また、今回の資料にある設定時の労使コミュニケーションについて3点ほど意見を述べさせていただきます。
 資料1の14ページに担保権設定時の労使での意見交換と事前の情報提供について記載がございますが、企業価値担保権の目的財産は労働契約を含む総財産であり、その当事者である労働者が担保権設定の事実や内容を十分に知らされることなく実行時に不利益な取扱いを強いられることがあってはならないと考えております。
 ヒアリングにおいても、平時から良好な労使関係を確立した上で、早期に労使での協議等を積み重ねたことで円滑な譲渡につながったとの好事例も見られました。しかし一方で、労使の交渉力等の格差を背景に、協議どころかほとんど説明すらなく金融機関や会社の意向だけで譲渡が進められた事案も複数見られました。
 そうした実態を踏まえれば、先ほど石﨑委員からも御意見がございましたが、単なる情報提供等の促進にとどまらず、設定前の段階で労使協議等を行うことが重要と考えておりますし、そのような取組を促す観点での記載も盛り込んでいただきたいと思っております。
 そして、事業性融資推進法の目的であるところの会社の事業継続及び成長発展を着実に実現していくためにも、労働者が前向きに日々の仕事に取り組めるよう、事業の将来性を含めた本制度活用の意義などについて、労使協議等を通じて労働者の理解と協力を得ていくことは極めて重要であると考えております。
 事業性融資推進法の附帯決議においても、設定時の協議の在り方を含めた検討も求められていることから、まずは指針において取組を促すことが必要ではないかと考えております。
 私からは以上でございます。
○山川部会長 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 ありがとうございます。
 ただいまの小林委員からの御意見に対して、コメントさせていただきます。
 小林委員からは企業価値担保の担保財産は総財産だということで、労働者が不利益を受けることないようにすべきという点は、まさにおっしゃるとおりだと思っております。ただ、御主張は企業価値担保権設定前の労使協議について指針に記載すべきというような御趣旨だったかと思うのですが、企業価値担保権が設定されることで労働者の地位や労働条件について変更が生じるものでは決してないというところは法令上も明確ではないかと思っておりますし、これも繰り返しで大変恐縮ですけれども、担保権実行時も原則一体換価ということとされておりますので、こういったこととセットで考えれば、他の担保権に比べると相当程度、労働者保護に資する仕組みになっていると考えております。
 企業価値担保権が実行されたら、労働者はどうなるのかといったことについて、働き手の皆さんが少し不安を感じられることがあるかもしれませんが、先ほど申し上げた労働者保護に資する仕組みが相当程度ビルトインされているということを考えると、指針等で、担保権設定時の説明を強く求めることが必要なのかということについては、私は疑問に感じるところでございます。
 例えば主要な動産、不動産にも担保権が設定されることはあるわけでございますけれども、企業価値担保権と異なって、担保権実行時に労働契約が原則買受人に承継されるというような法的保護はございません。一般的には働き手の不安や懸念は、そういった他の担保権設定時のほうが大きくなってもおかしくないかもしれませんが、そのような場合には説明等の手続はなく、必要に応じた意見交換や情報提供がなされるものだと思っております。
 もちろん、企業価値担保権を活用した資金調達をするというタイミングで、あるいはさらにこれを契機に事業の成長に向けてみんなで頑張っていきましょうと労使で話し合うということは妨げられるものでありませんし、望ましいことだと思っておりますけれども、企業によって労使関係は様々であり、先ほど申し上げたとおり、企業価値担保権の設定自体によって労働者の地位に影響は与えないということや、他の担保権とのバランスを考慮すると、私は見直し案のとおり、「情報提供の促進に向けて取り組むことが望ましい」という表現が適当ではないかと考えております。
 私からは以上でございます。
○山川部会長 ありがとうございます。
 ほかに御質問あるいは御意見等はいかがでしょうか。
 池田委員、お願いします。
○池田委員 私からは半分意見のような、半分質問のような感じで恐縮ですが、今回の指針の見直しというのは、事業性融資推進法で設定された企業価値担保権というのが事業譲渡によって最終的に解決されるということになっているところ、その中に従来の事業譲渡にはない登場人物として管財人というのが新しく出てくるため、管財人の存在から生じる不明な点を指針で補足するという御趣旨と承っております。ただ、私の専門が絡むといえば絡むのですが、管財人という存在が介在する事業譲渡の手続というのは事業性融資推進法に基づくものに限られません。破産等の法的倒産手続でも事業譲渡は盛んに行われているわけでありまして、その中で例えば破産だと債権の届出に向けた情報提供努力義務などがありますし、あるいは先ほど問題になっていた善管注意義務というのも当然法的倒産手続の管財人は負っているということになるわけでして、この指針の見直しに異議があるわけではないですが、管財人という未知のものが登場することによって指針を見直すということであれば、管財人が関与する事業譲渡として、もっと古くからある法的倒産手続のほうについては何もしないのかというのが若干気になります。この点について、対応を検討されるか否かというのを教えていただきたいと思います。
 あと、今回金融庁からも出席くださっていますので、伺いたいのですが、これは法律を読めというだけの話かもしれないのですが、今回の企業価値担保権の実行手続は、事業性融資推進法に基づくと事業譲渡という形で、管財人を選任した事業譲渡という形になるようなのですが、それ以外の実行手続というのも想定されるのでしょうか。要するに、私的実行と申しますか、事業譲渡以外の形のものも想定され、あるいは法的倒産手続に移行した場合にも、別除権として行使される以外の形で最終的に解決されることが当然あり得るのだと思うのですけれども、事業性融資推進法に基づく事業譲渡に至らない可能性というのは、どの程度想定されているのかというのを教えていただければと思います。よろしくお願いします。
○山川部会長 ありがとうございます。
 2つ御質問がありまして、1つは管財人が関わる他の倒産手続について何か検討を考えられているかという点と、2番目が金融庁に対する質問で、事業性融資推進法上の実行のパターンはどんなものがあるかという点だったかと思いますが、それぞれ事務局からいかがでしょうか。
○労働関係法課長 御指摘ありがとうございます。
 御指摘の倒産法制に関する点でございますけれども、今般の検討の契機としては、この企業価値担保権に関する法案の附帯決議において検討するということで契機となったわけでございますが、この部会で取り扱う企業組織の再編というテーマとしては、いわゆる会社法における組織再編行為というイメージで我々としては捉えており、それは合併や会社分割、事業譲渡等というイメージでございまして、今のところ、いわゆる倒産法制自体については直接対象にするという認識ではなかったところでございます。
○水谷事業性融資推進室長 ありがとうございます。
 御質問いただいた実行手続以外の形があり得るのかという点でございますけれども、他の担保制度と同様のものがあり得ると認識しております。今回の事業譲渡等指針でもともと対象になっているような会社の株主総会決議を経て行う事業譲渡、その譲渡代金を被担保債権者の弁済に充てるといった出口もあり得ると思われますし、また、倒産手続のうち、更生手続であれば更生担保権者として更生手続に従うこともあり得ます。破産や民事再生ですと、別除権協定を結んでいくということ、これが実務上うまく組めるかというところは意見が分かれ得るところかと思いますけれども、現時点で可能性として否定されるものではないと理解しております。
 以上でございます。
○山川部会長 ありがとうございました。
 池田委員、何かございますか。
○池田委員 今の金融庁の方のお答えを聞く限りは、事業成長担保権の行きつく先にも法的倒産手続など色々あり得るようですので、管財人が関わる事業譲渡でなぜ企業価値担保権としての実行のときだけ指針があるのかという印象にならないか若干気がかりでして、理想を言えば、法的倒産手続の内外を問わず事業譲渡を行う場合の留意点が分かるような指針であっても良いのではないかと私個人としては思いました。
○山川部会長 ありがとうございます。
 倒産手続は法務省との関係をどうするかという点も出てくるのではないかと思いました。ただ、先ほど前半での池田委員の御質問にありましたように、管財人の善管注意義務ということを考える場合に、各種手続の性格、例えば破産法でしたら債権者間の公平な分配と申しますか、弁済という観点に照らしてということですが、制度によって善管注意義務の中身が変わってきて、かつ事案によっても変わってくるという難しいところがあるかと思いますが、その辺を具体的に考えていくというのは、指針のレベルではないかもしれませんけれども、理論的には非常に有意義なことかなと感じた次第でございます。
 ほかに何かございますか。
 冨髙委員、どうぞ。
○冨髙委員 ありがとうございます。
 先ほどの鈴木委員と小林委員のやり取りにつきまして、担保権設定時の協議の部分ですが、ハードルが高いというのは理解するところではあるのですけれども、やはり当事者に何も知らされずに実行時に影響が及ぶというのは不合理ではないかと考えております。ほかの担保権とのバランスとの御指摘もあったのですけれども、労働者の雇用とその家族の人生といったところも含め、労働者一人一人にとって非常に大きな影響のある問題です。これまでのヒアリングの中で、事前の労使での話合いが非常に効果的であり、円滑な譲渡につながったという事例もございましたので、少なくともそういったことを促していくような好事例の紹介等、取組は工夫できるのではないかとも思いますので、その点は意見として申し上げておきたいと思います。
○山川部会長 ありがとうございます。
 これまでのヒアリングで出た好事例のようなことも含めて、ということでしょうか。ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 既に後段も含めての御議論をいただいていますが、資料1に限らず、今回参考資料として実態調査、フリーディスカッションの結果の整理、労使団体、弁護士の方々のヒアリングの内容等も用意していただいております。改めてこちらも含めて御議論がもしありましたらよろしくお願いいたします。
 いかがでしょうか。既にこれまでの議論の中でヒアリング等も適宜御紹介ないし援用しながら御発言をいただいていると思いますが、資料1でも結構ですし、何か追加的にございましたらお願いいたします。
 よろしいですか。
 それでは、本日も非常に有益かつ活発な御議論をいただき、大変ありがとうございました。
 本日の議事はここまでとさせていただきます。
 それでは、次回あるいは今後の方針につきまして、事務局からお願いいたします。
○労働関係法課課長補佐 委員の皆様におかれましては、本日も御参集いただきましてありがとうございました。
 これまで御議論いただきました内容を踏まえまして、事務局においては、取りまとめに向けた準備を進めてまいりたいと考えております。
 次回の部会の日時、場所については調整中ですので、追って御連絡いたします。
○山川部会長 ありがとうございます。
 皆様方、よろしいでしょうか。
 それでは、本日の第5回部会は、これで終了いたします。
 皆様、お忙しいところ、お集まりいただき、大変ありがとうございました。